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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

208 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:24:11 ID:hWVRMulU0


 目を開けると前方に光が見えた……大きな、まぶしい光が。
 前へと歩いても光に近づいていく気がしない。ずっと同じ距離のままだ。
『ようこそ……我が世界へ』
 しばらく歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。
 聞こえてくる、というよりも頭の中に響くという方が正しいかもしれない。
 俺はどこから聞こえてくるのかわからない声に警戒し、あたりを見回す。白の空間と光しか見えない。
「誰だ!?」
『私は竜の女王……世界の創造主です』
 創造主……つまり、神様か? もしかして、こいつが俺をあの世界に連れてきたのか?
「神様が俺になんの用だ!」
 声の主の位置が掴めない。俺はとりあえず光に向かって叫んだ。
「俺を元の世界に帰せ! あんたが俺をこっちに連れてきたんなら、帰すことだってできるだろう!?」
『できません』
「どうしてだ!?」
 ふざけるな。俺は元の世界に帰りたいんだ。
 俺の叫びも空しく、神様は淡々とした声で話を先へと進める。
『あなたは導き手。あなたに力を授けましょう』
「……導き、手?」
 意味がわからない。俺がこの世界に連れてこられた理由がそれなのか? 力を授けるって一体……?
「おい、神さ……っ!」
 問いかけようとしたその時、光が強さを増し俺の体を包んだ。
 眩しい、目を開けていられないくらい眩しい。
『あなたに授ける力は一つの呪文。私の力の一部です』
 ”なにか”が俺の中に入っていく感覚がある。その”なにか”は俺の中に入ると染み渡るように全身に広がっていく。
 じわりと体が温かくなっていく。不思議な感覚だ。
「あんたは、俺に、なにをさせたいんだ?」
『導きなさい。勇者を、そしてその仲間たちを』
 導く? 勇者? ああもう、なにがなんだかわからない。

209 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:24:49 ID:hWVRMulU0
「とりあえず俺はその勇者様とやらを導けばいいんだな? ……導いたあと、元の世界に帰れるんだろうな!?」
『……約束しましょう』
 帰れる。元の世界に帰ることができる。暗かった道に希望の光が見えた。
「で、勇者をどこへ導けばいいんだ?」
『天空へ』
「天空?」
 変なことを言う。こんな飛行機もなさそうな世界で、どうやって天空に導けと。
 っていうか勇者って誰だ。名前は何だ。どんな姿をしてるんだ。どこに行けば会えるんだ。
『……時間が来ました……導き手、あなたに授けた呪文、それは――』
「おい! 神様! 神様っ!」
 神様が言い終わる前に、光が一層強くなりあたりは光に包まれた。
 眩しくて反射的に目を閉じた。まぶたを閉じていても強い光を感じる。
 すうっと意識が落ちる感覚。消えそうな意識の中で、神様の声が聞こえた。

 ――ドラゴラム、と。


「っ!」
 ガバッと布団をはね飛ばし目を覚ます。一筋の汗がこめかみを伝い、首まで流れ落ちた。
 ……不思議な夢だった。竜の女王、勇者、導き手、呪文……鮮明に覚えている。
 なぜか心臓がドキドキしている。息苦しい。落ち着こうと、胸に手を乗せてみる。
 大切なものが芽生えているような、そんな温かさを感じた。

210 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:25:59 ID:hWVRMulU0

 
「ごめんね、今用意しているからもう少し待ってて」
 マリアさんはそう言って部屋の中へと戻っていった。暇なのでしばらく教会内を散策してこよう。
 ちなみに先程マリアさんが言っていた用意とは、旅支度のことだ。
 あの夢を見た後、不思議なことに体力が元に戻っていたのだ。神様の力だろうか。
 そのため、急遽旅立つことになってしまった。俺は明日でいいのに。「善は急げ!」らしい。
 
 俺は大広間にある絵を見ていた。広大な海に数隻の船と鳥。全体的に青っぽい絵だ。
 うーん、綺麗だとは思うがいまいち芸術というものがわからない。
 そういえば家の本の中にムンクとかモナリザとかの絵があったな。モナリザは確か、ダヴィンチが描いたんだったか。
 ……旅に出ようと決めた次の日に目標ができるなんて、よくできてるなあ俺の運命。
 やっぱり神様が操作でもしているのかな、人の運命は。創造主だもんな。
 元の世界にいたときなんて、神様なんかテストの時ぐらいしか信じていなかったけど、ここには神様は存在するんだ。
 不思議だなあ。本当に不思議だ。この間まで毎日学校に通って勉強してバイトして……そんな毎日だったのに。
 そんな俺が、剣と魔法のファンタジーな世界に来るなんて。どこの漫画の話だよ。

211 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:26:37 ID:hWVRMulU0

 絵の前でふらふらしていると、小さな女の子が俺に声をかけてきた。
 ちょこんと俺の前にやってきてお辞儀をする。俺もつられてお辞儀をする。
「お兄ちゃん、元気になったんだね!」
「うん、心配してくれたんだね。ありがとう」
 茶色の髪に大きな赤いリボンをつけている。小学校低学年くらいの子供だろうか。
 そういえばこれくらいの妹がいたなと思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。
 妹? そうだ、俺には妹がいる。でも、名前はなんだっただろうか。あれ? 思い出せない……
「……あれ、お兄ちゃん、どうしたの? まだ痛いの?」
「あ、ああ、いや、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだから」
 どうやら難しい顔になっていたらしい。小さい子は人の感情に敏感だっていうよな。
 心配そうにのぞき込む女の子にへらりと笑顔を見せる。女の子も笑顔になった。
「よかった!」
 妹の名前を思い出せないのが少し引っかかるが、ただの記憶喪失だろ。そう思うことにしておいた。

 しばらく女の子と会話していると、用意を終えたマリアさんが階段から下りてきた。
 マリアさんの服装はあの青い修道服ではなく、白いローブに赤いずきんをしている。まるで赤ずきんちゃんみたいだ。
 ちなみに俺は水色っぽい服。しかしスカートっぽいひらひらが。まあズボンははいているからそこは安心だ。
 この服装はこの世界での一般的な旅装束らしい。マリアさんが用意してくれたものだ。
 俺は持ち物として食糧といくつかの薬草、木の棒を受け取った。
 薬草とは傷を瞬時に治す優れものの薬で、木の棒はひのきの棒という武器とのこと。ぶっちゃけおもちゃにしか見えません。
 外に出たらモンスターがうようよしている、自分の身を守るのは自分しかいないと言われた。
 ……これは遊びじゃない、ゲームじゃないんだ。
 俺は頬をパァンと叩き気合いを入れた。強く叩きすぎて痛い。

212 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:27:30 ID:hWVRMulU0


 この教会で一番偉いマザーだかいう人にお礼を言い、俺たちは教会を出た。
 あの女の子が窓から手を振ってくれている。俺は大きく手を振り返した。
「まずはここから一番近い町、リムルダールに向かいましょう。そこで大体の装備を調えなくっちゃ」
 世界地図を広げマリアさんは言う。部屋の中で見た地図だ。
 リムルダールはここから南西の草原地帯にある町。一番近い町といっても3日はかかるらしい。それ全然近くない。
 途中大きな森があって、その森は周辺の住人から迷いの森と呼ばれているという。
 入ったっきり出てこられなくなって行方不明になった旅人もいるというのだ。覚悟していかねば。
 あと、この町は湖の上につくられており、内陸でありながら水資源が豊富なのだという。
 町を更に西に行くと砂漠があるため、砂漠を渡る人たちにとって水の豊富なこの町はいい拠点となる。
 俺たちはまだ冒険歴が浅いので砂漠の向こうへ行くようなことはしないが、いつか行くことになるだろう。

213 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:28:30 ID:hWVRMulU0

「あ、ねえ、あなたの名前……どうする?」
 手に持っていた地図をしまいながら俺に尋ねる。
 すっかり頭から抜けていた。今俺は記憶喪失なんだった。
「あー……やっぱ名前が無いと不便ですよね。なんて名前にしようかな……うーん……」
 頭を捻って考える。自分の名前を考えるというのも変な感じだが、まあそれは仕方がないだろう。
 名前名前名前……。
「……そうだわ、私があなたの名前を考えてげましょうか?」
「本当ですか?」
 それはありがたい。正直サトチーやらゆきのふやら変な名前しか思い浮かばなかったところだ。
 是非お願いしますと言うと、マリアさんはしばらく考え込み、こう言った。
「トンヌラはどう?」
「全力で拒否させていただきます」
 俺とレベルが変わらないくらいの酷さだ。トンヌラ……なんて間抜けな響きなんだ。
 とてつもない人生を送ることになりそうな名前だ。なんとなく。
「そう? じゃあ、もょもと」
「勘弁して下さい」
 今どうやって発音しましたかマリアさん。
 もよもと、もゅよもと、ももと……言えねえ。
「うーん……なら、アレフはどう?」
「あ、その名前いい!」
 アレフ! 勇者っぽくて格好いい、っていうか今までのより遙かにいい名前だ。
「決まりね。……アレフって名前はね、私の国では聖なる名前なの」
 聖なる名前って……んなご大層な名前俺がもらっちゃっていいんですか。
 
「これからよろしくね、アレフ」
「よろしくお願いします、マリアさん」
 俺たちはどちらともなく手を差し出し、握手を交わした。
 あ、またマリアさんの旅の理由を聞くの忘れてた。まあいいや、歩いている途中にでも聞こう。

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/23(月) 22:09:27 ID:NryVkRQA0
支援

215 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:25:33 ID:hWVRMulU0


 リムルダールへ向かう間、マリアさんはこの世界について話してくれた。
 簡単に纏めると、この世界には竜王という魔王が存在している。けど竜王の住処は誰にもわからない。
 昔人間と一緒に暮らしていたモンスターが凶悪化したのは、この竜王が出す悪の波動の所為らしい。
 闇の波動は年々強力になってきていて、それを見かねた神様が竜王を倒す運命を持った勇者を誕生させた。
 それが今から16年前。ってことは勇者は俺と同い年なのか。
 ていうか、神様……って、この間の夢に出てきた竜の女王のことだよな。竜王と竜の女王か。
「そして、その勇者が誕生したとお告げがあった後に――」
 竜王は自分を脅かす勇者を、力のない子供のうちに潰してしまおうと考えた。
 そして、その年に産まれた子供たちを配下のモンスターを使い、無差別に捕らえて殺していった。
「……っ」
「……私の弟も、その年に産まれたの」
「弟がいるんですか」
「ええ……実はね、私の旅の目的は弟を探すことなんだ」
 いままでこちらを向いていた顔を前方に向け、淡々とした口調で続ける。
 視線は遠くを見つめており、どこか寂しげな雰囲気を出している。

 マリアさんの話を要約すると、幼い頃に彼女の家族が住んでた国はモンスターに滅ぼされてしまった。
 モンスターたちは国中の子供を次々に捕らえていった。その中、マリアさんたちは両親に逃がしてもらう。
 その間に弟さんと色々あってはぐれ、マリアさんはあの修道院に迷い込んだ。
 弟を探しに行こうとしたけどマザーに止められ、力をつけるためにあそこで修行をすることになった。
 で、そろそろ旅に出ようかというときに俺が現れた。
 ひとり旅よりふたり旅の方が危険は少ないから、俺を誘ったと言う訳だ。
 でも俺なんか誘っても……全然戦力にはならないのに。

216 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:26:33 ID:hWVRMulU0
 
 話し終えた後、マリアさんの顔に影が落ちる。辛い話なのに、俺に話してくれて……
「……すみません」
「? ああ、いいのよ。気にしないで。この世界ではそう珍しいことではないし。
 ……あなたには全部話しておかなきゃって思って。なんでそう思ったかはわからないけど」
 俺のいた日本で起きることなんか話にならないくらい、酷い人生を送ってきたマリアさん。
 マリアさんはよく笑う。いつも笑顔だし些細なことでもよく笑う。俺だったらあんな生活送ってきたら笑顔じゃいられない。
 この人は俺よりずっとずっと強い人だ。
 俺も強くならなきゃ。マリアさんがこれからも笑顔でいられるように。マリアさんを守れるように。
 ……って、うわ、俺シリアス! 俺超シリアス! かゆくなった!
 

 話題を変えて、呪文について話すことにした。
 呪文というものは、魔力を使い様々な現象を起こす能力。魔法とも呼ばれている。
 マリアさんも呪文が使えるという。呪文には正の力と負の力があって……うんたらかんたら。
 まあ、攻撃呪文と補助呪文と回復呪文と特殊呪文に分けられるらしい。
 で、マリアさんの得意なのは攻撃呪文。
「修道院にいたら、普通は回復や補助呪文が得意になるはずなのにね……どうも私には合わないみたい」
 との談。ふむ。呪文の習得は、人により得手不得手があるってことか。
 ん? 呪文……そういえば夢の中で神様に呪文をもらったな。あれは俺に使えるんだろうか。
「マリアさん、呪文って俺にでも使えます?」
「魔力と努力があれば誰にでも使えるわよ。あなたには微かだけど魔力があるから、修行すればきっと身につくわ」
「俺にも呪文が使えるのかぁ……」
 目線を自分の両手に落とす。大きな苦労をしてきたことのない綺麗な手。
 まあ実家の畑仕事の手伝いおかげで多少ごつくなってはいるが。
 今までそんな能力とは無関係な世界で生きてきた俺だけど、そんな俺にも呪文が使えるかもしれない。
 ……俺、なんだかワクワクしてきたぞ!

217 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:27:26 ID:hWVRMulU0

「そうだわ、呪文がどういうものか少し見せてあげる」
 マリアさんはそう言って近くに落ちていた小枝を拾ってきた。なにをする気だろうか。
「この枝と杖を見ててね」
 そう言うとマリアさんは杖を構えた。すると杖を握る手から赤い光が見えた。
 光はそのまま杖を伝い、杖の先の大きな赤い石に。石の中で光がスパークしている。
 そしてその石からからバチリと雷のように反対の手へと流れた光は、人差し指に集まる。
「メラ!」
 なにやら変な言葉を唱えた途端、その指先から火の玉が飛び出す。
 そして指のさし示す先にあった小枝に命中し、小枝は勢いよく燃えた。
 ほんの一瞬の出来事だったが、俺の意識は完璧にその火の玉に持って行かれた。
「すっげー!」
「ふふっ、これはメラといって呪文の中では基本中の基本なのよ」
「あの、質問なんですけど、その杖の役割ってなんです? 先っぽの赤いのからボワーって光が! 赤いのボワーって!」
 興奮の所為か大げさなボディランゲージ付きで話す俺に苦笑し、マリアさんはその杖を手渡してくれた。
 思ったより軽くて、手によく馴染む。ぶんぶんと振ってみるとひのきの棒より振りやすい。
「これは装備者の魔力を増幅させる杖で、その石は魔力が込められている特殊な鉱物なのよ」
「へえええ……」

218 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:28:05 ID:hWVRMulU0
 そう言われ先っぽの石をよく見てみると、石の中心にキラキラした光が見えた。これが魔力か。
 ワクワクドキドキ、俺の中の好奇心がうずく。俺は宙に向かい杖を振り、先程のマリアさんを真似て呪文を唱えてみた。
「……メラァ!」
 アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
 俺の叫びは空に消えていった。隣ではマリアさんがクスクス笑っている。ああ、恥ずかしい!
「魔力があるからっていきなり使えるものじゃないわよ。毎日の精神集中、そして呪文理論について勉強しなくちゃ」
 呪文は一日にしてならずですね。でも大丈夫です。こう見えても俺、勉強好きってわけじゃないけど、嫌いじゃないですから。
 しばらく落ち込んでいたら、マリアさんに励まされた。で、呪文を教わることになった。わーい。
 当面の目標は魔力を増やすこと。魔力がなければ呪文は唱えられないからだ。
 魔力の量は元々の才能もあるけど、努力次第で幾らでも増やせるそうだ。よし、頑張ろう。
 とりあえず元気に前へ進んでみましょうかね。

 神様、竜の女王様。俺たちの旅にどうか祝福を。

219 : ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:29:39 ID:hWVRMulU0
第三話投下終了しました。
規制に引っかかり途中で止まってしまいました。
>>214さん、支援ありがとうございました。

220 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/23(月) 23:01:06 ID:YZjlrzJk0
乙です。
前向きな主人公に好感!
序盤から気になる伏線も出てきて、
続きが楽しみです。

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 16:37:48 ID:3sU1O7zN0
今4の人◆gYINaOL2aEの作品を読み返してるんだが
何度読み返しても涙が止まらなくなる程感動してしまう件について

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 17:36:19 ID:4ikbC09NO
完結した職人への感想とか完全にチラ裏だろ。自演乙と言われても仕方ないくらいにな

223 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 19:57:15 ID:/oWal092O
頭の中がぼーっする。
なんだか色々ありすぎた気がするから。
なんで私、こんな所にいるんだっけ?
 
寮の自室で眠りについた、あぁ、眠った時もなんだかあやふやだったっけ。
とにかく疲れたな、寝るか…いや寝ているのか?
とりあえず…1匹2匹3…
 
「ピキー!」
 
「うん…3ピキ〜…」
 
ん?ピキー!っtqあwせdrftgyふじこlp;@
 
「ピキー?」
 
「あぁ、ごめんごめん、サスケ」
 
ここは(絶対に)DQ6の世界だったんだ…やっぱり夢ではないらしい。
私達は石畳の上に転がっていた、まわりは霧がたっていて、へたに動けばサスケの姿も見えなくなりそうだった。

224 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:00:22 ID:/oWal092O
「サスケ、ちょっとおいで」
 
見慣れた場所だが、未開の土地だ。
離れたらもう会えないかもしれないと思えたので、とりあえず固まって移動する事にした。
 
そしてふと思った。この言葉の通じない異国のスライムに何度助けられたのだろう。
この肩の重みに、温もりに、本当に最弱の生き物なのだろうか?そんな疑問がうかんだ。
 
霧の切れ目から陽射しが差し込む。出口が近い事を私は確信した。
 
青空が顔を覗かせた。
なかなか清々しい空気だ、さすが車が通っていないだけある。
私の記憶が正しければ南に行って突き当たったら左…また南…うん、とりあえず歩け、私。
 
少年は荒野を行く。
すまん、聖剣伝説だった。

225 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:01:12 ID:/oWal092O
馬鹿な事を考えつつ、南下を続ける、すると一カ所、雰囲気の違う場所があった。
私は近付くと大地にぽっかりと穴が開いていたのだ。
なかなかの圧巻だった。
そこを覗くと、下にはトルッカの街が見え、その上には雲がゆったりと泳いでいた。
 
「すごい…サスケ、街が下に見えるよ」
 
こんなのはなかなか見れないんじゃないの?カメラでも持ってこればよかったと思っていた。
のんきに景色を楽しんでいると、男の人の叫び声がした。
 
「助けてくれェーーー!」
 
幻聴ではない、という事はまた私達はあの大地に滑り落ちるんじゃ…
 
「助けてくれェーーー!」
 
この野郎、私に感謝しやがれ、私は声のする方へ走った。

226 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:02:08 ID:/oWal092O
「誰かー!」
 
「今行きますよー!」
 
当たってくだけろ、くだけちゃいかんが。
注意をしながら大地の穴の周りを見る。
 
「ここだ、ここだ〜!」
 
叫ぶな、まったく。
 
「すまんが引っ張り上げてくれんかのぅ」
 
はいはい。
 
「それは木の枝じゃ!」
 
サーセンwwwww
 
私の力が強かったのか、無事におじさんを助ける事が出来た。
御礼としてシェーナの街まで送ってくれると言って、馬車の荷台に乗せて貰った。
痩せた馬だったが、倒れたりする事なく、夕暮れにはシェーナの街にたどり着いてくれた。
 
おじさんは御飯を御馳走すると言って、私を招きいれてくれた、結構いい奴じゃないか。
 
市場に近い緑の屋根の家の扉を開けると、娘さんらしい赤毛の女性がおっさんに抱き付く。
よっぽど心配していたんだな、と思った。
娘さんは私を見るとこういった。
 
「貴方ね、ライフコッドから来た青い髪の人って!」
 
なんですと?

227 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:04:51 ID:/oWal092O
娘さん…メイサさんの話によると、ライフコッドから頼りなさそうな青い髪の人間がくると連絡があったらしい。
おっさんも「女なのに関心な奴だ!」とガハガハ笑った、けなされていると見ていいのだろうか。
 
何はともあれ、冠職人の家で晩餐をする事になった。
見た事のない料理だったが、これがなかなか美味しい。
材料は私達の食べるものとそう変わらないようで、調味料だけが違うようだった。
 
塩や胡椒はあったものの、醤油はなく、かわりに「ひとしこの実」というのがあった。
なんだか危険な調味料のように見えたが、高級な香辛料らしい。
 
夜になったら部屋を貸してくれた。
なんていい家族なんだろう…1日くらいしかたっていないのに、なんだか久しぶりにシャワーを浴びた気がした。
 
明日、ライフコッドへ向けて歩こう、一応冠を届けなくてはいけない…その前に武器も欲しいなぁ…そんな事を考えながらベットの中に体を滑らせた。
そんな今日はヒツジを数える事なく私と1匹は眠りについた。

228 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:10:18 ID:/oWal092O
今日はここまでです
 
>>166 乙あざっす、でもこっち見んなww
 
>>167 可愛くて健気な奴です、長い目で見てやってください
 
>>168 その辺はよくわからないです…
 
>>169 乙とフォローありがとうございました
 
>>まとめのタカハシ様 次回の更新時に>>159-163を第2話、>>223-227を第3話でまとめていただけませんか?
迷惑かけてすみません

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 23:39:35 ID:Ut22lTtHO
乙です
職人方の書くスライムは可愛いなぁ

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/25(水) 02:11:50 ID:clvWPCJs0
スライムたん、かわいいです♪

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/26(木) 21:41:50 ID:RldONRZl0
ほしゅ

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/27(金) 10:35:22 ID:dZUU6VQT0
鈴木はどうなった

233 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/27(金) 23:50:08 ID:Hx34xILu0
鈴木日記

4月20日

今日は屈強な兵士の方と面接をした。
平和だと思っていたこの世界だがその実「魔王」と呼ばれる人物によって危機にさらされているようだ。
よくわからないがどこかの国の独裁者が世界中に戦争を仕掛けたという事だろう。
どの世界でも人はどうしてこう争いだがるのだろうか。
まあそれは置いといて慢性的に兵士が不足しているらしくなんとこんな私でも正式に採用されてしまった。
と言っても前線に立つのではなく城や町の簡単な警備なので問題は無いだろうとの事。
不安は大きいが明日からこの国の平和のために頑張ろうと思う。

田中日記

4つき20にち

いたい
いたいよ
しごとやすみたいよ

234 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/27(金) 23:56:56 ID:Hx34xILu0
鈴木日記

4月21日

私に与えられた仕事は町の見回りだ。さっそく地図を頭に叩き込んでいざ町へ…
だが現実はそんなに甘くなかった。重い。甲冑が非常に重いのである。
もちろん剣も重い。こう見えて私は剣道三段だ。高校大学と剣道部で汗を流したものだ。
だからといって甘く見ていた。それはそうであろう。真剣を振り回した経験など当然無い。
とにかく一番軽装な甲冑を貸してもらい先ずはこの格好で動き回る事から始めなければ。
重子、沙織、お父さん頑張るよ。元戸中商事営業部部長の名にかけて!


田中日記

4月22日 いたい

恐い…ママが凄く恐い…今日さすがに動けなくて仕事休もうと思ったらいきなり押しかけてきた…
目が全然笑ってねーでやんの…俺は思ったね。ママほど「極道の妻」というフレーズが似合う女はそういない!
あとロシーヌちゃんが筋肉痛の腹筋をつついてくる。痛い。凄く痛い。
しかし男田中こんな事でヘコたれるわけにはいかない!
夏にはムキムキになって奇麗なおねーちゃん達と海にいくのだ!

235 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:03:10 ID:MRj3Ydtc0
鈴木日記

4月22日 晴れ

見かねた兵士長が剣の振り方を教えてくれた。なかなかどうして難しいものである。
早く仕事を始めなければいけないのに多数の人に迷惑をかけて非常に申し訳ない。
体を鍛えて技を磨くのも兵士の仕事のうちだと慰めてもらったがいつまでもこのままではいけないだろう。
しかし腰にくるなこの仕事は…


田中日記 

4月22日 あったかいむしろあつい

ちょっと筋肉痛にも慣れてきた。心なしか腹筋が割れてきた気が…
やべ今の俺超かっこいいかも!

236 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:11:41 ID:MRj3Ydtc0
鈴木日記

4月23日 晴れ

今日は町の地理に慣れる為に町を散策した。改めてこの世界の人たちを見て回ったわけだが
古きよき時代の田舎といった所だろうか。道行く人が気さくに声を掛けてくれて非常に心地よかった。
それはそうと今更だが初めて田中の働いてる現場を見た。昼食を田中の働いている店でとったわけだが
破廉恥な格好をした若い女の子にちょっかいかけたり奇麗な店主にデレデレしたり本当に不真面目な奴である…
店主の話によると店の空気が明るくなるし雑用はしっかりこなしているからこれでいいとの事だが
上司としてなんともやるせない気持ちになった。

追伸:田中の手料理とやらを初めてて食べた。これは人前に出すべきでは無い。断じて。


田中日記

4月23日 あったかい

今日鈴木さんが店に来た。ママが自分の実力を試すいいチャンスだと言って俺に飯を作らせた。
鈴木さん感動して固まってやんの(笑)そりゃそうだなかわいい部下がうまい飯作ってくれたんだから(笑)
こんどネネちゃんにも作ってやるか!

237 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/28(土) 00:17:04 ID:tYQ8q3Vc0
支援

238 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/28(土) 00:20:50 ID:rLqBStxL0
じゃあ俺も支援w

239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/28(土) 00:22:17 ID:PV57gD+B0
田中ww

240 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:22:35 ID:MRj3Ydtc0
>>237
いつもありがとうございます!すいません今日ここまでですorz
GW中に追いつく予定で…

241 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/28(土) 00:56:02 ID:tYQ8q3Vc0
>>240 さん
おつかれさまです。
気負いしすぎず、ご自分のペースでがんばってください!

職人さんから個別に指定頂いたまとめ方は、反映しています。
もし、考えていたまとめられかたと違う場合は気軽に言ってください。

まとめサイトはここまでまとめました。
また、避難所で要望のあった絵板を設置しています。
アプロダとあわせて、自由に使ってください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

*余談
ファイル数も250を超え、容量もテキストだけなのに過去ログを省いて約4MB…
書いていただいている書き手さん、読んでくれている読み手さん、感謝です。

242 :R:2007/04/29(日) 00:14:30 ID:6E2YpHveO
まとめお疲れさまです!

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 21:54:42 ID:/4dowCYVO
田中は今日何してるんだろな

244 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 23:28:57 ID:4jV8mZnZ0
まとめ人さん乙です。
今日某神書き手さんの作品をプリントアウトしたんだが、えらい紙の量になったw
改めて書き手さん方やまとめ人さんの苦労に乙と言いたい。


245 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 23:39:33 ID:adF24d930
こんだけマメなまとめ様がいらっしゃって、ありがたいです。
多謝!

246 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/01(火) 01:33:46 ID:X3Zp195h0
お疲れ様です。

>>242-245
ありがとうございます。
書いてくれる人と読んでくれる人がいないとまとめは成り立ちません。
今後ともよろしく…

絵板、いい絵を描いてくれた人がいますね〜
萌えというヤツですか!

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/02(水) 06:05:07 ID:gDXwYXX4O
保守

248 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 08:31:10 ID:wTE2TpVC0
保守!

249 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:00:58 ID:2VXz2OdM0


 俺たちは迷い森の中へ入った。さっきまでの平野と違って随分歩きづらい。
 森の中は光が入りにくいらしく薄暗い。霧が発生しているようで、視界も絶不調。
 更に同じような木ばかり生えていてさっきまでいた位置と今の位置の区別がつき辛い。迷うわけだ。
 しかも土や木の根がところどころ盛り上がっていて足が取られる。さっきなんてつまずいて転んでしまった。
 幼い頃から裏山の中を駆けずりまわっていた俺だけど、流石にこれは辛い。段々と体力が削られる。
 一方マリアさんはザクザク先へと進んでいく。この世界の人はみんなああも道ならぬ道を歩くのに慣れているのか?
 置いて行かれないよう、俺は震える足を前へ前へと踏み出していった。
 
 突然ガサリと背後の草むらから音がした。
 マリアさんはすぐさま振り向き身構えた。遅れて俺もひのきの棒を取り出し身構える。
 バサバサッという音とともに草むらから出てきたのは、空飛ぶ黒い塊と青いタマネギみたいな生き物が1匹ずつ。
「スライムとドラキーよ! アレフ、気をつけて!」
 どっちがスライムでどっちがドラキーだ! 軽く混乱していると、タマネギが俺に襲いかかってきた。
 タマネギのタックルが俺の腹に直撃。一瞬息が詰まり衝撃で後方に吹っ飛ぶ。マリアさんが俺の名前を叫んだ。
 体当たりされた腹と、地面に打った背中が痛い。起き上がるとタマネギが降ってきた。
 俺は反射的に手に持っていたひのきの棒を振った。するとうまくヒットし、タマネギを吹っ飛ばした。
「このっ、タマネギ!」
 吹き飛んだ方向に向かい、思い切り踏みつけた。ぐにょっとした感触が気色悪い。俺は何度も踏みつけた。
 マリアさんの方を見やると、黒い塊をメラで火だるまにしているところだった。よかった、無事だ。
 もう一度タマネギの方を見る。タマネギはもがいていたがしばらくすると動かなくなり、光になって消えていった。
 消えた後に残っていたのは小さな石。宝石みたいにキラキラしている。何だろう。とりあえず拾っておいた。

250 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:01:36 ID:2VXz2OdM0
 
 出発前にマリアさんにもらっていた薬草をかじる。苦い。じいちゃんに無理矢理飲まされた青汁よりまずい。
 しかし腹と背中の痛みがスッと消えていった。おお、凄い効果だ。
 マリアさんが言うには、さっきのモンスターはタマネギがスライムで黒いのがドラキーというらしい。
 どちらも下等なモンスターで、そんなに手強い相手ではない。最初に出会ったのがこいつらでよかった。
 さっき拾った石をマリアさんに見せた。これは”いのちの結晶”というものらしい。
 この世界に存在する生物、人間もモンスターも、このいのちの結晶を身に宿している。核みたいなものだ。
 結晶は本体の種族や能力により色や形が違う。本体が強ければ強いほど結晶の質も上がる。
 それを利用しての報奨金制度というものがこの世界にはあるという。
 町に設置されている施設に結晶を持っていくと、倒したモンスター本体の種類や強さに応じてお金が貰えるのだ。
 ……なんだか、凄い世界だな。
 

 草をかき分け歩いていると、またモンスターが出てきた。今度はドラキーが3匹。
 キィキィ鳴いて俺たちの周りを飛び回る。動きが素早い、目で追いかけるのがやっとだ。
 ドラキーの笑っているような口が俺を馬鹿にしてるみたいに見えて胸くそ悪い。
 ひのきの棒を握る手に汗がにじむ。落ち着け俺。集中するんだ俺。
「メラ!」
 隣にいたマリアさんが呪文を唱えた。指先から火の玉が出て1匹を炎に包む。
 するとギィギィと耳障りな声をあげて地面へと落下していった。
 そちらの方に気を取られていたら、もう1匹のドラキーがこちらへ向かってきた。
 ……さっきの戦いの後、マリアさんはアドバイスをしてくれた。
 ドラキーは動きが速く飛び回るけど、攻撃は体当たりだけ。しかも一直線にしか向かってこない、と。
 向かってくるドラキーにタイミングを合わせ、ひのきの棒を野球バットのようにスウィングする。
 会心の一撃! ひのきの棒にあたったドラキーは向かいの木に衝突し、消滅した。

251 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:02:08 ID:2VXz2OdM0
「やったわね!」
 マリアさんが駆けつけてくる。その顔には笑顔が浮かんでいた。
 緊張が解けた俺は、糸の切れた操り人形のようにその場にへたりと座り込んだ。
 しかもただドラキーを避けて棒をひと降りしただけなのに肩で息をする始末。情けない。
 でも二人とも怪我がなくてよかった。
「モンスターの動きを見極めて攻撃……一度の助言で実行できるなんて、すごいわ」
 ありがとうマリアさん。実は無我夢中でした。きっとまぐれです。
 

 幾ら歩いても出口が見えない。日も傾いてきたし、俺たちはこの近くで野宿をすることにした。
 女性と二人きりの野宿。……ドキドキワクワクってレベルじゃねーぞ!
 さっきのところから少し進むと、草が生えていないそこそこ広い場所があった。
 周りが確認しやすくちょうどいい。俺たちはそこで休むことにした。
 野営に火は付きもの。ということで小枝をいくつか集めてきて焚き火をする。
 着火はマリアさんのメラで一発。なんて便利なんだ呪文。俺も早く使いてー。

 ホウホウとフクロウが鳴く声が聞こえる。この世界にもフクロウがいるのか。
 するとマリアさんが、あれはフクロウではなくてアウルベアーというモンスターだと教えてくれた。
 フクロウみたいな顔をしているけど、体は熊のように大きく腕力も相当なもの。
 夜行性で、まれに寝込みを襲われることがあるから、旅人にとって結構恐れられているモンスターなんだそうだ。
 ガクブル、俺たちのところに来ませんように。
 でも、もしアウルベアーが襲ってきたら俺は戦えるのかな。
 マリアさんみたいに呪文を使える訳でもないし、こんな木の棒で熊に勝負を挑むなんて死にに急ぐようなものだ。

252 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:02:44 ID:2VXz2OdM0

 と、いうわけで早速マリアさんに呪文を教えてもらうことになった。
「必要なのはイメージよ。全身に分散している魔力をを指先に集めるように、そして唱えたい呪文をイメージするの」
「イメージ……」
「メラを唱えるなら火の玉をイメージするといいわ」
 火の玉火の玉……駄目です先生、イメージすればするほどお化けの鬼火しか思いつきません。赤じゃなくて青い炎になります!
「最初は目を閉じててもいいからゆっくり落ち着いて、深呼吸して心を静かに……」
 言われる通りに俺は目を閉じる。深く息を吸ってゆっくりと吐き、深呼吸。頭の中に火の玉を浮かべる。
 ああ、なにか掴める感じがするぞ。メラメラ燃えるメラの炎……
「メラ!」
 アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
「……駄目でした」
「毎日続けていたらできるようになるわ、絶対」
 うなだれる俺の肩に手を置いて励ましてくれるマリアさん。そうですよね、すぐできたら修行なんていりませんよね。
 とりあえずしばらくの間はイメージと集中を重点的にすることにした。


「そろそろ夕食にしましょうか」
 修行を中断し夕食にすることにした。夕食といっても固焼きパンとジャムに少しの木の実だけだ。
 なんだかひもじい気もするが、この先なにがあるかわからない。少しでも食料を節約しなくては。
「マリアさん、この木の実ってなんですか?」
 俺はこの不思議な形をした木の実が気になった。紫色で、貝殻が合わさったような形をしている。
「これは賢さの種といって、能力が上がる効果が稀にある木の実よ」
「へぇ……でもこれって貴重なものじゃないですか?」
「まあ、簡単に人の目には触れるものではないわね。
 昔マザーがどこからか持ってきた苗を育てたらこの実が生った、ということらしいけど。詳しいことはわからないわ」
「そうなんですか……」
 そんなもん栽培してるなんて、マザー何者だ。
 その後マリアさんとの会話もそこそこに、食事を終える。満腹とは言い難いけど、空腹は治まったからいいか。

253 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:03:27 ID:2VXz2OdM0
 
 森が闇に包まれる。俺たちは炎に照らされていて明るいが、火から離れると深く飲み込まれてしまいそうな闇が続く。
「まず私が番をするわ。アレフは寝てていいわよ。なにかあったら起こすから」
「あ、はい」
 番は交代制。マリアさんが眠くなったら俺が起きて番をする。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 地べたにそのまま寝るのは汚いけど、寝袋なんて物はこの世界にはない。
 俺は薄い毛布にくるまり、アウルベアーの鳴き声を子守歌に眠りに落ちた。


「マリアさん、朝です。起きてください」
 相変わらず薄暗い森の中だけど、木の葉の間から光が差し込んできている。朝だ。
 あれからマリアさんと交代し、俺はずっと起きていた。夜更かし早起きは得意だから、そんなに疲れはない。
 今回の野宿は危なげなく終わった。毎回こうだったらいいのに。そう呟きながら俺は朝食のパンを頬張る。
 食事も終え支度をし、俺たちはここを出発した。もちろん火の始末も完璧に。
「西は……こっちね」
 コンパスを片手にマリアさんは方向を指し示す。うっそうと草が茂っており、獣道すらない。
 だが旅に道のあるないは関係ない。さくさく進むことにした。
 腰程まである草をかき分けて進んでいく。足を取られたりしてうっとうしいのこの上ない。
 頭の上からゲアゲアとカラスの鳴き声が聞こえる。まるで俺たちを馬鹿にしているように聞こえる。気味が悪い。
 突然前を歩いていたマリアさんが歩みを止めた。
「マリアさん、どうしました?」
「……私たち、迷ったみたいね」
 マリアさんが見つめる先を見て、俺は驚いた。俺たちは野宿したところに戻ってきてしまっていたのだ。
 俺が砂をかけて消した焚き火の後。間違いなかった。
「これって……」
「流石迷いの森と呼ばれるだけあるわね」
 やれやれとため息を吐くマリアさん。まあ、ある意味振り出しに戻ったのだから仕方がない。
「まあいいわ、とにかく進みましょう」

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:06:02 ID:1oHOWIOmO
携帯から自分で支援(・∀・)

255 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:07:12 ID:2VXz2OdM0
 
 コンパスを見て進むも、なぜか最初の場所に戻ってしまう。何度も何度も西へ行っても戻ってきてしまう。
 3周目の時点でドッと疲れが襲ってきた。
 そしてグルグル回って5周目、肉体的にも精神的にも流石に疲れたので休憩を取ることにした。
「……駄目。全然先へ進めないわ」
 疲れ切った声でマリアさんが言う。
 俺たちが休んでいるところはあの寝泊まりした場所。この焚き火の後をもう何回見ただろう。
 長い道を歩いていくより同じところを何度も歩く方が疲れる。
 そう、同じところを何度も。
「……」
 同じところ……同じ道が駄目なら、違う……そう、逆の道とか。
「……そうだ!」
 大声を出すと同時にいきなり立ち上がった俺を、マリアさんは怪訝な目で見つめる。
 俺は立ったままマリアさんに向き直り、声高に話した。
「マリアさん、逆に考えるんだ。押して駄目なら引いてみればいいんだ!」
「引いてみる?」
「はい。西に行くとここに戻ってしまう。なら、反対方向の道……東に行けば!」
「なるほどね……いい考えだわ。このまま回っているのも時間の無駄だし、東に向かってみましょう」

256 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:08:36 ID:1oHOWIOmO
また規制。流しすみません。

257 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:11:09 ID:nlG9FOnx0
>>256
がんがれ支援

258 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:13:03 ID:tk2Z8m2WO
支援

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:14:19 ID:1oHOWIOmO
さるさんのおかげで、しばらく投下できません。
時間をおいてからチャレンジしてみます。半端ですみません。

>>257>>258
ありがとうございました。(つ∀`)

260 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 18:50:57 ID:2VXz2OdM0


 東に向かってしばらくすると、開けた空間が見えてきた。
 そこは石がいくつも積み重ねられ表面は苔生している、祭壇のような場所だった。
 傍に立つ柱は元の形を保っているもの、崩れ落ちているものと、様々だ。
「……なにかの遺跡かしら。だとしても、そうとう古いわね」
「遺跡かあー」
 俺は興味津々に遺跡を見て回る。こういう歴史あるものを見るのは好きなのだ。
 ピラミッドのように何十にも積み重ねられた石たち。中央には頂上へと続く階段がある。
 それの傍には小さな社が左右に一つずつ……片方は崩れていて見る影もないが、たぶんそうだろう。
 俺は崩れていない方の社へ向かった。マリアさんと離れてしまったが、そんなことは気に止めなかった。
 危険の心配よりも好奇心の方が勝ってしまったのだ。
 壁を見ていると、表面に変な模様があることに気がついた。文字だろうか……読めないな。
 よく見ようと表面をこすっていると、突然大きな影が俺に被さった。
「よう、そこの坊や。……なにかお探しかい?」
 声に驚き振り向くと、そこには狼の顔をした人間の姿があった。

261 : ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 18:52:10 ID:2VXz2OdM0
祝・規制解除。
以上で今回の投下終了です。

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 19:09:53 ID:RP+9TnHc0
しまった、いいとこで終わっちゃってる!


続き期待していますよ〜

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 01:35:28 ID:WKmQog9F0
GW投下、お疲れ様でした!
本当さる規制ウザイですよね。
SS系などの連投がデフォルトのスレはみんな不満みたいです。

モンスター退治とゴールドの関係の処理がうまいですね〜! 違和感ない。
初投下から毎回楽しみです。続きwktkです。

264 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:53:13 ID:ulthyi6uO
次の日メイサさんにシェーナの街を案内してもらった。
なんでもライフコッドで祭があるのは今から3日もあるらしい。

「でもバザーは今日でおしまい、商人達は皆必死よ、きっと良いお買い物ができるわ」

そういったメイサさんの笑った横顔は少し寂しげだった。
バザーが終われば、ここにいるほとんどの人がいなくなるのだろう。
少し複雑な感じだった。
プレイ中にこんな事を考えるなんてなかったから。

「今日は何を買うつもりなの?」

「へ、あ、と…武器とか、薬草を調達しようかな〜…っと」

考えている最中に話かけないでもらいたかったなぁ、なんて思いながら歩いていると辺りから商人の声が飛び交う。

265 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:53:51 ID:ulthyi6uO
「さぁ安いよ!安いよ!薬草が安いよ!薬草6こと聖水1つ!あわせて50Gだよ!」

「革の鎧が230Gのところ200Gだぁ!さぁ買った買った!」

「革の盾が115Gだ!」

とりあえず

「メイサさん」

「何かしら?」

「つかぬ事をお聞きしますが…どれがどのお金に相当するのでしょうか?」

私はこの世界の通貨をよくわからないのだ、財布の中に入っているお金が使えなかったら…とりあえず財布の中身をメイサさんに見せる。
100円玉と10円玉ばかりが入った恥ずかしい財布だったが、その100円玉と10円玉が両替の対象になるとは意外だった。

「案外お金持ってたじゃない!」

「それはどうも…アハハ…」

占めて1250G
とんでもねぇ…ありがとう愛と信頼のゴールド銀行。
お札に至っては「何?この紙きれ」と一蹴されてしまった、が、まぁそれは元の世界に…

266 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:55:40 ID:ulthyi6uO
「戻れるのかなぁ…」

「え?」

ふと放った一言。
それと共に涙が流れた。
メイサさんが私を落ち着かせようと懸命に話かけるが、その内容はまともに聞こえていなかった。


……
………
…………
……………

「…落ち着いた?」

「うん…」

心配そうに私の顔を見る1人と1匹。
私はたまらなくなって話したのだ。

起きたらトルッカの宿にいたこと、自分の姿が他の人に見えてなかったこと、サスケに出会ったこと、夢見る井戸に飛び込んだことも、冠職人のおじさんを助けたことも、全部、全て。

267 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:16 ID:ulthyi6uO
「頑張ったんだね」

馬鹿、そんな事言わないでよ、私の緩んだ涙腺からさらに涙が分泌されるじゃないか。
涙でまた顔がぐしゃぐしゃになる。

「…じゃあこれからどうするの…?」

そうだ、泣いていても元の世界に戻れる事はないだろう。

「とにかくライフコッドへ行きます…もしかしたらヒントがあるかもしれない…」

「そう…頑張ってね…!」

「はい!」

そのあと薬草セット6セット分と大きめのリュックサック、水と日持ちのよさそうな食糧を購入した、武器はめぼしいものが見つからなかった。
地図はメイサさんからせんべつとして買ってもらった。
その日、疲れた私は食事をとる事なく眠りについた。

268 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:59 ID:ulthyi6uO
そして次の朝、朝食中、私はライフコッドに向かうとメイサさんと冠職人のおっさんに言った。
朝食を済ませると貸してもらっている部屋に戻る。

昨日買った薬草セットの1つをコートのポケットに入れ、財布と残りの薬草セット、地図と食糧はリュックの中に詰め込んだ。
これに私の命がかかっていると言っても過言ではない、それから靴の紐を解けないようおもいっきりかたく締める、まるで自分自身に言い聞かせるように。

「入るわよ」

どうぞ、と私が言うと青色のワンピースのような服と一降りのナイフを持ったメイサさんが入ってきた。

「ちょっとしたものだけど…役に立つと思ったから持ってきたわ」

「ありがとう、メイサさん」

なんでもこの世界での旅人の基本的な装束らしい。
元着ていた服はメイサさんの家に置いていく事にした。
宿代には不十分だとは思うがこれが精一杯だった。

269 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:58:57 ID:ulthyi6uO
青色の服に袖を通すと、麻が入っているのか、少しチクチクとした。

私の旅が始まるんだ、不安より期待の方が大きすぎるような気がした。

モンスターの知識もあるのだからと言うのが要因だろうか、私は着替えを済ませると後ろから視線が。

 人
(゚д゚)

「こっち見んなw」

旅に乙女心はいらないとわかった。
服にはソードベルトなるものがついていたのでナイフはそこにいれる事にする。
リュックを背負い、サスケを肩に乗せる、ついにお別れだ。

メイサさんには気をつけてねとか忘れないでとか、辛くなったら来てとか言われた。
おっさんも、また来いと行った、その時に髭面の間から涙が見えていたのがわかった。

歩き出した時、後ろからメイサさんの声が聞こえる

「行く前に、名前、教えて」

私の名前…

「星良[セイラ]!星に良いって書いて星良!」

「また会おうね!セーラ!」

こうして私の長い旅が始まった。

270 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 12:02:00 ID:ulthyi6uO
本日の投下はこれにて終了です
ありがとうございました

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:12:46 ID:AqNLWx3jO
サスケwwwww乙ww

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:12 ID:Tn0giKIA0
面白い!
ゲームでいえばまだ序盤なのに大冒険になりそうな予感
自分に自信の無い主人公てのはつい感情移入しちゃいますね

続き期待してます!

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:36 ID:Y8piABFwO
ちょwwサスケwwこっち見んなwww

274 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 14:11:40 ID:ulthyi6uO
× 祭があるのは今から3日もあるらしい。
○ 祭があるのは今から3日後らしい。

まとめる時に修正出来たらお願いします…
さすがゆとりって言われる前に吊ってきます

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/08(火) 09:48:43 ID:OLhBWyJl0
ほっしゅ

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/09(水) 19:54:14 ID:CR90JAoe0
ほしゅーー

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 09:31:03 ID:/xPwAdXfO
ぴるりりゅん!

ぴるりりゅん!

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 11:14:34 ID:7LPR8Gbt0
もょもと

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 16:07:54 ID:DSN9UtZgO
とんぬら

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 23:25:24 ID:AZ6WcEDO0
ゆきのふ

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/11(金) 12:07:43 ID:kiDuyOId0
鈴木さーん、田中ー、生きてるかー?

282 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:16:04 ID:gVvwJ5tL0
皆さんお疲れ様です。
このスレに入って初の投下行っきまーす

283 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:18:25 ID:gVvwJ5tL0
                  〜The Sacrifice of Isaac〜

――――――――――――――――――1――――――――――――――――――――

  「はい、あ〜ん」
  「……」

困惑した表情を浮かべる少女。

  「どうしたの? あ〜んして?」

しかし催促には勝てず、おずおずと唇を動かすと果物がその小さな口に運ばれた。
果実の甘さが舌を満たしていく。

  「ふふ、おいしーね」

問いかけられた少女はどうしたもんかと思いながらも、
自分を抱きしめている人の機嫌を損ねないように小さく頷くのが精一杯だった。
けれど、怖いからそうしているのかと言われると、ちょっと違う気がした。
手を引かれ、木の下まで連れていかれた時は何をされるか不安だったけど、
今のところ、後ろから抱きすくめられながら、果物を食べさせてもらっているだけだから。

これが「お前をたべちゃうぞー!!」とかそういう目的だったなら怖いけど、
このお姉さんは優しいし、髪を撫でてくれるし、可愛いねって言ってくれたから、
何となくそうじゃない、と少女は思う。
お姉さんのそういう行為、それはそれで恥ずかしいのだけれど、
イヤじゃなかった。
けれどこの一連の行為が何の為にあるのか分からない少女だから、
とりあえず逆らわないように事態の流れに身を任せているのだ。
とは言えどう対応したらいいのかも分からないので、
少女は口をぱくぱくさせて、困ったアピールをするのだった。

284 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:21:00 ID:gVvwJ5tL0
  「ん? もっと欲しいの? はいどうぞ。あ〜ん」
  「……何やってんだよ」
  「お〜ジュード。もう出発?」
  「そうだけどよ」
  「ちぇ〜もう何泊かくらいしてってもいいじゃーん」
  「あのなぁ、だいたい爪を修理しに来たのだって寄り道だったんだ。
   余裕はないの。
   アヴァルスだって犯罪者として連合に引き渡す予定なんだし」
  「じゃあ1回アリアハンに帰るの?」
  「そうなるだろうな」

少女は自分とは関係のない話が始まってしまったのを感じた。
一緒にいるのにその輪に入れないのは何となく居心地が悪いものだ。
何だか一人ぼっちになってしまったような気がした。
けれどそう感じるという事はやっぱり構ってもらいたいのだろうか。
そうかと思うと少女は複雑な気分なのである。
答えを出せない少女はいつも微妙な立ち位置にあった。

  「で?」
  「あ、この子? 可愛いでしょ〜?」

頬をスリスリしながら、少女はギュッと強めに抱きしめられる。
こんな風に他人に甘えられた事がないエルフの少女は、
真理奈の行動にいちいちドギマギしてしまう。

  「ねぇ、この子一緒に連れてってもいい?」
  (え?!)

やっぱり誘拐とかされちゃうんだ!
女王様が言ってた通り、人間は怖いんだ(((( ;゚Д゚)))
と少女はガクガクブルブルしてしまう。

285 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:24:07 ID:gVvwJ5tL0
  「ダメ」
  「え〜? ファンタジーな冒険にはエルフは付き物なのにぃ!」
  「知らねぇよ。なんだそりゃ」
  「ジュードのケチっ!」
  「この子は行きたくないってよ」
  「そんな事ないよ〜。ね〜? 一緒に行きたいよね〜?」

同意、というよりは強要に近いように聞こえたのか、
ぁぅぁぅと助けを求めるようにジュードを見上げる少女。
少し涙目になりつつあるのが何とも可哀相だ。
仕方なくジュードが助け舟を出す。

  「分かった分かった。
   じゃあ後で【いつでもエルフに会いに行ける券】やるからそれでいいだろ?
   キメラの翼一年分付きだぞ」
  「お〜それいただきだ〜!」

ぐおーと腕を振り上げる真理奈。
よっぽどエルフの事が好きなんだろう。

  「ったく、小さい子をあんまり困らせるなよ。
   お前が変な事言うから泣きそうじゃねーか」
  「あ〜ゴメンゴメン! もうしないから! ね?」

チュッと頬にキスをし、頭をナデナデする真理奈。
ちょっと必死な真理奈が可笑しかったのか、
少女は片目をつぶりながらも、安心したように笑顔を見せた。

  「よしよし、んじゃあ行きますかね!」

真理奈はヒョイっと立ち上がり、少女をようやく解放した。
そして少女と手を繋いでエルフの里への道を歩き出す。

286 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:27:07 ID:gVvwJ5tL0
  「ジュードも手、繋ぐ?」
  「いらん!」

馬鹿話をしながら真理奈は少女を家まで送っていった。
エルフの少女は手を振って真理奈を見送った。
不思議な人だけど、また会いたいなと思いながら。


エルフの誘拐事件が起こってから3日と経たぬ内に
真理奈一行は出発する事を決めた。
女王の葬式とソールとフォルテの結婚式で1日強滞在したが、
それでも長い休暇だったかもしれない。

  「フィリアねぇ、もう行っちゃうの?」
  「そうだよ、もう少しゆっくりしていってよ」

フィリアは繋いでいた手を解き、ソールとフォルテの頭に乗せた。
フィリアも別れたくはなかったが、やるべき事があるので仕方がない。
もちろん一生会えないという事はないんだけれど。
それでも寂しいものは寂しいのだ。

  「また来るね」
  「約束だよ」
  「ゆびきりしよ?」

そんな子供らしい光景をパトリスは微笑みながら見ていた。
やはり無垢なものは見ていて心が洗われる。
この子らのようにいつまでも純粋にいる事が出来たなら、
きっとエルフが人間から逃げ隠れるような事態は起こりえなかったはずだ。
それが逃れる事の出来ない運命だったとしても、
再びあのような事件を目にすれば悔しいと感じてしまうパトリスだった。
どんな呪文を覚えようとも、運命を変える事はできないのだから。

287 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:29:22 ID:gVvwJ5tL0
  「お待たせ〜」
  「やっと来たか。何をしておったんじゃ」
  「へへへ、ちょっとね〜」
  「ちょっと何じゃ?」
  「考え事〜♪」

そんないい訳にもならない事を言うと真理奈はフィリア達の方へ歩いていった。
後ろから来たジュードがパトリスに告げ口する。

  「アイツ何かエルフを連れて行こうとしてたぜ」
  「なっ…!!」

唖然としたパトリスは慌てて真理奈を追いかける。
が、真理奈さんのすばやさには追いつけない…!

  「よ〜し!
  「ソール君とフォルテちゃんに今日はお姉さんからプレゼントをあげよう!」
  「え? 何なに?」
  「こらソール、はしたないでしょ?」
  「いいのいいの。貰ってくれないと私が困っちゃうんだから」
  「ほらみろ。遠慮すんなって。何くれるの?」
  「ジャジャーン!」

真理奈はバッグから深緑に光るオーブを取り出して、2人に手渡した。

  「お〜キレイだな」
  「ホントね…」
  「グリーンオーブって言うんだよ〜」
  「……」

パトリスは真理奈ののんきな声に体を震わせ、
怒りが爆発しそうなのを静かに堪えた。

288 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:32:18 ID:gVvwJ5tL0
  「……真理奈さん? ちょっとよろしいかの?」
  「え? 今いいとこなんだけど」
  「どういう事か説明してもらえるとありがたいのじゃが」
  「いや〜エルフって言ったら何か緑ってイメージがあるからさ〜」
  「そうではない! オーブをそんな軽々と――」
  「軽々じゃないよ。ちゃんと考えたもんねーだ!」

パトリスの声を遮った真理奈は腰を手に当て、皆の注目を自分に集める。

  「おほん!
   え〜こうして巡り合ったのも何かの縁!
   という事でエルフの皆にも今日から連合に参加してもらいます!
   さらにエルフは超保護対象とするように
   連合を通じて世界中に通達していきましょ〜!
   これでエルフの皆も安心して暮らせるね♪」
  「……」
  「あれ? どうしたの?」

一同唖然。
ソール・フォルテは何の事か分からずポカーンと真理奈を見、
ジュードとパトリスは判断しかねて考え込み、
フィリアだけはうんうんと小さく頷いていた。

  「なぁじいさん。これっていいのか?」
  「……」
  「そういえば俺らってどこと連合結ぶかって全部決めてないよな?」
  「……そうじゃったかのう」
  「……どうする?」
  「ふ〜む……ここはエルフさんに決めてもらおうかの!」
  「あ、逃げやがったな」

289 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:35:36 ID:gVvwJ5tL0
さすがに真理奈の言葉だけでは説明不足なのでパトリスが補足する。
魔王に対抗する為、世界中で協力しようとしている事。
そして世界中の人々の架け橋となるべく旅をしている事。

  「確かに連合がしっかりと機能すればエルフ保護も出来るかもしれんな」
  「でしょ?! どう? どう?」
  「そうですね。
   私の一存では決められないですけど、お願いしたいです」
  「俺も賛成!」

  「けどさ、『保護』じゃあ立場が対等じゃないだろ。
   協力するんだからもっと違う言葉じゃねぇか?」
  「そうじゃのう。擁護…愛護…庇護…」
  「そんな難しいのなんてダメだよ〜」
  「……友達、がいいと思う」
  「お〜さすがフィリアちゃん! それ採用!!」

有無を言わさず決定という感じでビシっと親指を立てる真理奈。

  「じゃあ友達記念って事で、イエーイ!」
  「イエーイ!」

何のノリか知らないが真理奈はフォルテとソールとハイタッチを交わす。
その時不意に、パトリスの心に懐かしい言葉が甦ってきた。

  "過ぎ去った苦しみの思い出は、喜びに変わるのよ"
  (確かにそうかもしれない。だから生きていける、か)

昔の記憶につられたのかパトリスも少しだけ若さを取り戻した気になり、
真理奈たちがはしゃぐ輪の中に入っていった。
妖精と人間の未来がありますように、と願いながら。

290 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:36:56 ID:gVvwJ5tL0
短いですが、今日はここまで。
ではまた( ^ω^)

291 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 00:39:05 ID:F3yFevY80
乙です!
初リアルタイム遭遇でかなり嬉しい。

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 07:42:44 ID:I8sDJVVs0
乙でした〜。
凝り固まったオトナのジョーシキなんか軽々とぶっ飛ばす真理奈ちゃんは
本当に見ていて清々しいですね。
これからの冒険も応援します。

293 :Stage.4 [前編] 1/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:39:15 ID:1V5Xv7vG0
 前回 >>129-141
【Stage.4 ミイラ男と星空と(前編)】

 ----------------- Game-Side -----------------

「エリス、この手紙をポルトガ王に届けるよう頼んできて。あとこっちはイシス女王へ。
で、こっちがエジンベア王宛てね」
 各手紙の隅に、ロマリア国王直筆の書簡であることを表す判を押して、すっかり秘書役
になっているエリスに手渡す。
 ポルトガ王には「死ぬほど黒コショウ贈ってやるからノルドに道を開けさせろ」。
 イシス女王には「勇者に魔法の鍵を貸してあげて。まだピラミッド内から発掘されてい
ないのであれば、ピラミッド関連の資料を勇者に渡してほしい」というお願い。
 エジンベア王には「いずれ勇者が訪ねるから、番兵一人にいたるまでしっかり伝えてお
くように!」。差別主義のアホな門番一人のために、何度も海を越えてられるかっての。

 エリスは各手紙をくるくる巻いて紐でくくると、遠慮がちに声をかけてきた。
「ところでゆう……じゃなくて新国王様。なにかお召し上がりになりませんか?」
 言われて時計を見ると、正午を回っていた。そういや朝からろくに食べていない。
「じゃあ厨房にサンドイッチでも作らせてくれる? あ、ピクルスは入れないでね」
「わかりました。あまりご無理をなさないでくださいね」
 ふわりと笑って退室するエリス。優しくてよく気がつくコだ。
 ホント、仲間には恵まれたなぁ。

 サミエルたち3人がカンダタから金の冠を取り返して来たのは、実に明け方すぐだった。
最短でという僕の要望に、期待以上に応えてくれた3人には超感謝!
「ロマリアで雇った傭兵の中に、カザーブ出身者がいましてね」
 その人にまずキメラの翼でカザーブまで連れて行ってもらって、今度は地元の猟師から
シャンパーニの塔への近道を教えてもらい、普通は丸1日かかるところを半日で到着した
のだ、とサミエルが得意気に説明する。
「それに、カンダタも賢い男で助かりましたよ、ははは」
 話を引き継いだロダムが思い出したように笑った。手下より大勢の傭兵部隊に囲まれて、
カンダタ一味は剣も抜くことなくさっさと降伏したとのこと。ビビったんだろうなw

294 :Stage.4 [前編] 2/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:41:49 ID:1V5Xv7vG0

 そんなこんなで僕は今、ロマリアの新国王(仮)をやっている。
 朝イチで王様に金の冠を届け、さっそく祝いの宴じゃ!と騒ぐ王様をなだめすかして、
さっさとカジノに追い出した。
 仲間の労をねぎらってやりたい気持ちは山々だったんだけど、
「別に城の公式パーティならいいッスよ」
 肩をすくめるサミエル他、全員が「堅苦しいのはパス」になったので、仲間が泊まって
いる宿にごちそうを運ばせるだけにしておいた。
 それからずっと執務室のデスクに張り付いている。王様権限を駆使して、今の内に打て
る手は打っておかないとね。

 ポルトガへの関所は、真っ先に国王命令で鍵を開けるよう通達を出した。
 なので直接バハラタに向かって黒コショウを手に入れ、ポルトガで船をゲット。
 エジンベアで渇きのつぼを取って、すぐ浅瀬の祠に向かい、最後の鍵を入手してから、
旅の扉を使って世界を回るのが手っ取り早いはずだ。
 ただ鍵関係のイベントは大切だから、イシスには行かないとダメかもしれない。できれ
ばあの罰当たりな墓荒らしイベントは飛ばしたいんだけど。
 あ、よくわからない方は攻略本や攻略サイトをごらんください。

「あとは、あれがこうなってそうなるから、あれは飛ばせるはず。でもあそこをハショる
とヤバイかなぁ。だけど時間無いし……痛ぅ」
 目の奥がズキッとして、僕は両手の親指でこめかみのあたりを抑えた。ドラクエ世界に
飛ばされて、眼精疲労で頭痛を訴える主人公なんて僕くらいだろうな。
 結局きのうもほとんど寝てないし、ダメだ、頭が回らなくなってきた。
 少しだけ仮眠を取るか――。

 と、急にドアが開いた。
 入ってきたのは前国王だった。城の塔の最上階に隠居している、放楽息子に頭を悩ませ
ているロマリア国王の父君その人である。
 僕は慌てて立ち上がり、彼の前に膝をついた。彼は「まあまあ」と言って僕の腕をつか
んで立ち上がらせると、ソファに腰をおろして僕にも座るよう促した。

295 :Stage.4 [前編] 3/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:44:46 ID:1V5Xv7vG0

「いやはや、正直ワシは参っておるよ。うちの息子よりよっぽど評判ではないか」
 言葉とは裏腹に、父君はなにやら上機嫌だ。
 評判もなにも、こんだけ女官さんを抱えてるんだ。若い男の子が一日署長、じゃない、
一日王様やってれば、城中がキャーキャー騒がしくもなるわいな。
「どうじゃ、いっそ本当に継いでみんか?」
 彼はフォフォと笑った。一見すると王族というより、田舎の旅籠のご隠居さんという感
じの、冗談好きのただのおじいちゃんだ。
 でも目が笑ってない。本気らしい。「勇者アルス」のネームバリューの高さを考えれば
傀儡として飼っておきたいと思うのは当然か。
 王様…か。確かに向こうで普通のリーマンやってるよりは楽しいかもなー……。

 いかんいかん。ここで誘惑に負けたらいけない。ヘタに「はい」なんて選んだ日には、
またとんでもないことになるに決まってる。 
「申し訳ありません。このような重責は、わたくしごときには耐えかねます」 
「そうかのう。頭も良し、見目も良し、しかもあのオルテガ殿のご子息とあれば、ワシは
申し分ないが。ほれ、うちの姫も年頃じゃし」
 いやいやそんな、まあ頭脳と容姿は少し自信ありますけどぉ……って、はいぃ!?

 姫なんかいたっけか? 僕は急いで昨日の謁見の模様を脳内再生した。ビデオのように
はっきりと情景が浮かび、偉そうな王様の隣にフォーカスをずらすと――うわ、いた。
 確かに年増の地味な、もとい、熟女の魅力を放つ慎ましやかな姫君が、鎮座ましまして
いらっしゃるぅ! 濃ゆい王様の存在感に負けて、そっちまで意識が行ってなかったよ。
 もちろん、丁重にお断りさせていただきマス。
 だいたい大国ロマリアの姫君ともなれば、引く手あまたのはず。なのに今まで独り身な
のは、あの国王が見かけによらず親バカってことじゃないの?
 ヘタすれば僕の首がハネられる。冗談じゃない。

 前国王はとても残念そうだったけれど、僕に再三断られると、しぶしぶ退室していった。
 ヤ、ヤバかったぁ。ほんと下手な選択肢は選べないゲームだな。

296 :Stage.4 [前編] 4/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:47:59 ID:1V5Xv7vG0


 これ以上長居すると、さらに余計なトラブルに巻き込まれそうだ。
 王様がまだ陽の高い内に帰ってきてくれたのを幸いに、僕はすぐ王位を返還し、その日
の内にロマリアを出発することにした。
「みんな、慌ただしくてゴメンね」
 次の目的地バハラタまでの旅程を確認してから、チェックアウトしてもらう。
「気にしなくていいッスよ。それにしても、ようやく勇者様と旅ができますね」
 サミエルがにかっと笑った。いよいよ冒険らしくなるとウキウキしているようだ。
 僕はこの時点ですでにウツ気味だけどネ。

 はぁああああ。とうとうこの時が来ちゃったよ。
「もう少しでロマリアの警戒域を抜けます。ここからはモンスターが出ますから、お気を
つけてくださいね、勇者様」
 エリスが心配そうに僕を振り返る。
 前にも言ったけど僕は「Lv.1」で「経験値ゼロ」。無論、僕のレベルが低いことは最初
の契約時に確認してることだから、戦闘に慣れるまでは後方支援に徹する、という打ち合
せは済ませている。
 なんだけど、本当に問題なのは、たぶんそこじゃない。

「って、言ってるそばからなんかいっぱいキター!」
 獲物だ、とばかり茂みの中から4つの塊が飛び出してきた。ついに宿スレ定番の初戦闘
シーンだ! ちょっといまさら感もあるけど、そこはほら、初スライムまで平均5時間と
いう噂のDQ7もあることだし。
 敵は紫色の一角ウサギが2匹と、緑色のイモムシが1匹、それに頭から黒いフードをスッ
ポリ被った怪しい人型のが1匹。アルミラージ、キャタピラー、まほうつかいだ。
 ロマリアのモンスター格闘場で遠目には見たけど、間近だとホント迫力ある。
「これまた出ましたねぇ。下がっていてください勇者様」
「はーい、お任せしまーす」
 最後部に回って「ぼうぎょ」に入る僕。って言ってもどうしていいかわからないから、
とりあえず逃げることを優先に構えてるって感じ?
 うはww情けなーwww

297 :Stage.4 [前編] 5/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:51:14 ID:1V5Xv7vG0

 反面、この地点での目標レベルを軽く越えている3人は、余裕の笑みさえ浮かべている。
「精霊界の偉大なる女王ルビスの名において汝らを召還す、ジン、イフリート、サラマン
ドラよ、我のもとに集いて我を守る盾となり、敵を貫く剣となれ……ベギラマ!」
 エリスが高らかに詠唱する。彼女の手の平から目もくらむ閃光が放たれ、ウサギ2匹が
巻き込まれた。
 あっけなく炎上したアルミラージのそばをすり抜け、サミエルがカザーブで買ったとい
うチェーンクロスを巧みに操って、イモムシを薙ぎ払う。
 その間にロダムがまほうつかいにマホトーンをかけて呪文を封じ、オロオロしているソ
イツを、駆けつけたサミエルがすかさず斬り捨てた。
 なんとも鮮やかな連係プレー。初戦闘は、呆気ないほど簡単に終わってしまった。

 だが、問題はここからだ。
 僕の様子を見たロダムが慌てて駆け寄ってきた。
 サミエルも走ってきてくれたが、その彼の背中には、モンスターの体液がベッタリ付着
したチェーンクロスが背負われている。ほっぺたにも紫色の返り血が飛んでたり。
「ちょ、ごめ、やっぱダメ!」
 僕は急いでその場を離れ、適当な木の陰に回りこんで幹にすがりついた。
「うっ…うぇぇっ……ケホ、ゴホッ……」
 ああもう、僕吐いてばっかりいないか? 後世に「吐瀉王伝」などと伝わるのは激しく
抵抗があるんだが。

 でもねー。ここで行われたのは、あくまで「殺害行為」なワケだし。

 アルミラージは火だるまになって、しばらくのたうち回ってから動かなくなった。獣の
体毛と肉の焼ける臭いって、ほんと形容しがたいようなキツさがある。
 サミエルがキャタピラーを斬った時はグチャッと音がしたし、飛び散った体液と内臓器
官は全部ドス黒い紫で、それもしばらくピクピク動いていた(一部まだ動いてる)。
 まほうつかいなんて最悪、本当にモンスターかと疑いたくなるような、まるで人間みた
いな声で悲鳴を上げるんだもん。最期の瞬間、僕の方を見てなにか叫んでたけど、それが
「命乞いだ」と容易に察しがついた時点で、もう限界。

298 :Stage.4 [前編] 6/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:54:07 ID:1V5Xv7vG0

「……どうぞ」
 エリスが遠慮がちに近づいてきて、水筒を差し出してくれた。小さく礼を言って受け取
り、胃酸くさい口内を洗い流す。それからなんとなくバツが悪くて、汚した場所にブーツ
の先で土をかけた。
「大丈夫ッスかー? なーに、最初は誰でもそうですよ」
 サミエルは予想通りといった様子で、カラカラ笑う。
「そうですよ。勇者様は実技の成績もとても優秀でいらしたんですから、場慣れさえすれ
ば、すぐに我々に追いつきますよ」
 ロダムも優しくほほえんでいる。今ちょっと気になるコトを言ってたが(あのバカがな
んだって?)、僕は問い返す気力もなく、素直にうなずいた。


 落ち着いたところで行軍再開。
 3人はまるで何事もなかったように、また談笑している。タフだなぁ。
 僕は彼らの少し後ろを歩きながら、腰のベルトに差してある「聖なるナイフ」の柄に、
そっと触れてみた。銅の剣なんて重量武器は、どう考えたって僕に使えるわけがないので
さっさと売り払ったし、鉄の槍や鎖鎌も同じ理由で却下。とりあえず扱えそうな武器とし
てロマリアで買っておいたのが、このナイフだ。
 次にモンスターが現れたときは、僕もこいつで戦うことになるのか――。

「ま、考えても仕方ないよな」
 殺せというなら殺すさ。たとえどんな手段を使っても、絶対にクリアしなきゃ。

 だって僕が戻れなかったら、アルスも帰ることができないから。
 あのおっちょこちょいのバカ勇者様は、逃げる先を完全に間違えてる。まだ物見遊山で
済んでいるうちにこちらへの退路を確保してあげないと、きっともっと傷つくことになる。

 いろいろ考えたけど、やっぱりね。
 あの人に、あんな現実を押しつけるわけにはいかない。

299 :Stage.4 [前編] 7/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:58:14 ID:1V5Xv7vG0

 ----------------- Real-Side -----------------

「へ…っくしゅ!」
 うぃー。冷えてきたかな。もう陽も沈みかけているし。
 俺はちょっと迷ったが、ユリコを呼んでパソコンの後始末の仕方を教わった。このイン
ターネットってやつでだいたいのことは調べたし、図書室は次の機会にしよう。

「そんじゃ付き合ってくれてありがとね」
 ユリコが校門の前で手を振り、そのまま別の方角へ歩いていった。バスの中で、今日は
「ジュク」があるとかで、帰りは学校前で別れることを話していたのだ。
「ところでさーっ」
 少し離れてから、ユリコが振り返って叫んだ。同時にバスがやってくる。
「なんでまた名前で呼ぶことにしたの?」
「は?」
 バスのドアが開く。
「カノジョでもないのに名前で呼ぶのは変だからって、あんたが言い出したのに」
「え?」
「乗らないんですか?」バスの運転手が言うから「いや、乗ります!」思わず乗り込む。
「嬉しいけど……私はやっぱり『片岡』に戻してくれた方が――」
 ドアが締まって彼女の声が途切れ。
 走り出したバスが、片岡百合子を追い越していく。彼女はうつむいて歩いていて、顔は
見えなかった。
 
 ……カノジョじゃないって?

「おっかしーなー…」
 別に「甘酸っぱい青春な毎日!」を期待してこっち来たんじゃねえから(いや多少の憧
れはあるが)、ヤツの女関係なんざどうでもいい。
 しかし「間違う」ってのはどういうことだ? 「知らない」ことはあったとしても、こ
の俺が自発的に覚えようとしたことを記憶違いをすることは絶対ない。

300 :Stage.4 [前編] 8/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:02:40 ID:1V5Xv7vG0

 いっぺんイチから情報を洗い直さなきゃダメか? タツミ本人に聞くのが手っ取り早い
が、ここぞとばかり、あることないこと吹き込まれそうだし。
「三津原ぁ?」
 いっそ頭でも打って、記憶喪失になったフリでもするか。でも下手に大怪我したら治せ
ないで死ぬしな。
「おい、三津原ってば」
 アホみたいな難病も治せるくせに、死んだらそれまでってのは中途半端な話だ。いや、
ベホマだのザオリクだの、究極の回復呪文が存在する向こうが極端なのか――。
「ミツハラタツミー」
「うお!?」
 いきなりポンと肩を叩かれて俺は飛び上がった。振り返ると、黒髪を短く刈り込んだ、
俺より10センチくらい背の高い少年が、俺の大げさな反応に苦笑している。
 肩にでかいバッグをひっかけて、青赤の派手な色合いの服を着ている。黒のごついヒモ
靴は泥だらけ。なんかのスポーツ系の、動きやすそうな格好だ。
 戸田和弘。こいつもヤツの同級生で友人……のはずだが、合ってるかはもはや疑問だ。

「三津原の私服見たの久々だな。お前でも休みに出歩くことあるんだ」
 また言われたよ。うちのプレイヤーはヒキコモリかと、俺はちょっとガックリきた。
「ユ……片岡に付き合わされてさ。携帯、教室に忘れたとかで」
「片岡が。あいつも健気だね。マジお前さ、なんで断ったのよ。付き合ってやれば?」
 なんとヤツの方がフッたのか!? 生意気な! って俺も人のこと言えねえか。
 俺の複雑な心情をよそに、カズヒロが屈託の無い笑顔を見せる。
「まあ三津原にとっちゃ、俺も片岡も子供っぽく見えんのかもしんねえけど。若いもんが
変に達観しててもつまんねえぞ? うん?」
 こいつは「夢」の通りにイイ友達らしい。俺は内心ホッとした。
「ほっとけよ。んでそっちは? あーと…『部活』?」
「ん、試合の帰りだけど。昨日言わなかったっけ?」
 こういう食い違いはこれからいくらでも出てくる。サラッと流すに限る。
「だっけか。すまん、最近どうも記憶力に自信なくてさぁ」
「え、マジで? ヤバイだろ、それ」
 途端に真面目な顔になるカズヒロ。俺そこまで変なこと言ったか?

301 :Stage.4 [前編] 9/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:07:29 ID:1V5Xv7vG0

「まあ三津原なら問題ねえだろうけど……なんか困ってたら言えよ?」
 なんだかわからんが、騙してる手前、心配かけるのは悪い気がする。「大丈夫」と首を
振ったら、相手は一瞬だけ斜め下に視線を流した。
「じゃあ俺にも付き合えよ」
 言いながら「次、停まります」のボタンを押す。
「試合負けちまってさ。気晴らしにゲーセンでも行こうぜ」
 ゲーセン? 気晴らしというならカジノみたいな娯楽施設の一種か。
 それもよくわからんが、さっきからどうもモヤモヤした状態だからな。スッキリできる
場所なら大歓迎だ。俺は一も二もなく賛成して、カズヒロに続いてバスを降りた。


「なるほど、『Game Center』の略でゲーセンか……」
 カズヒロが案内した施設は、向こうのカジノとはまるっきり違っていた。
 雇われ楽士が奏でる景気の良い音楽の代わりに、所狭しと置かれた機械の一個一個が、
好き勝手に甲高い音を垂れ流している。大勢の人間がいるのに、ほとんど「人の声」がし
ない。多少騒いだところで機械の音が掻き消してしまっている。
 うるさいのに静かな、なんか不思議な場所だ。
「なにやる?」
 カズヒロに聞かれて俺は困った。そうだな。
「モンスターとか派手にやっつけるようなの、ないか?」
「へえ、意外。じゃあこれなんかいいよ」
 引っ張っていかれたのは、おどろおどろしい装飾がされたデッカイ画面の前だった。
 前に小さな操作台があって、その横にヒモに繋がれた、赤い「へ」の字型のものが2つ
ひっかけてある。
 カズヒロは慣れた手つきで操作台の穴にコインを投入した。画面に「プレイ人数」だの
「難易度」だのといった文字が浮かび、操作台のボタンで設定していく。
「まずは初心者向けにしとくな。一緒にやろうぜ。ほれ」
 への字型の1つを渡される。あ、前にヤツが観てたテレビに出てたのと形が似てる。
「これ、銃だよな。どーやんの?」
「普通に握りゃいいよ。んで、敵が出たら狙って撃つ!」

302 :Stage.4 [前編] 10/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:11:53 ID:1V5Xv7vG0

「おお!? おおお!!」
 いきなり画面に腐った死体みたいなのが出てきたと思ったら、そいつがバンと弾けて飛
び散った。カズヒロがかっこつけて、銃の先端にフッと息を吹きかけてみせる。
「すげえっ。えーと、狙ってここを引くと……」
 腐った死体をやっつけた!
「おもしれー! うわ、なんかたくさん出てきたぞ。あれみんな敵か?」
「そうだ。左下に弾数が出てるだろ? 無くなったら銃を下に向けると補充されるぞ」
「え? あー撃てなくなった! んで下に向けると、うん増えた」
 ルールは単純だが、あれだけ苦労したゾンビ系モンスターが、こんなもんをカチッとや
るだけで吹っ飛んでいくのは爽快だ。
「っく〜、気ぃ持ちいい〜! なあなあ、これもっといっぱい出てこないか?」
「うまいじゃねえかオイw じゃあ難易度、思いっきり上げてやるよ」
 画面が薄暗くなって止まり、さっきEASYに設定した項目がVERY HARDに変わる。
「足引っ張んなよ、三津原?」
 カズヒロがちょっと意地悪く笑った。
 ふん、挑戦されたら受けて立つのが勇者だぜ。やったろうじゃん!


 ――なんて意気込んで臨んだのだが。
「おいカズぅ、お前また撃ち漏らしたぞ?」
「いや三津原がおかしいから! お前こそ本当に初めてかぁ!?」
 だって簡単なんだもん。前方向しか来ないのに全部の敵に出現予告あるし、弱点とか
見え見えだし。ちょっとのミスで死ぬような向こうのバトルと比べたら、なあ?
「んじゃそっちのも貸して」
 俺はカズヒロからもう1個の銃を取り上げた。画面をほとんど埋め尽くしている敵が、
俺の銃撃で次々と倒されていく。弾数の補充はいちいち腕を下げるより、輪っかの部分
に指を引っかけて銃をクルッと一回転させる方が楽だな。
 あーあ、向こうでもこんな風にやっつけられたら、俺も楽だったのに。
「マジかよ……全国レベルじゃん、このスコア」
 カズヒロが傍らでぼやいている。

303 :Stage.4 [前編] 11/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:17:40 ID:1V5Xv7vG0

 なんとなーく白けた空気が流れた。その時だ。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 携帯? なんだよこんなときに。
 察したカズヒロが俺から銃を取り上げて、目だけで「出てこいよ」と促す。俺は店の入
り口まで移動した。携帯を開けた。みると表示は「TATSUMI」。
 へぇ、向こうからかかってくるとは珍しいこともあるもんだ。

「うーっす。話の途中でブチ切りするような相手に、なにかご用ですかぁ?」
『あの時はごめん。君も、時差のこと知らなかっただけだよね』
 およ? なんか素直じゃないか。まあ俺も時差のことは知っててかけたけどな。
『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
 聞き取りづらい小さな声で、ヤツは言った。
『その――ゾンビ系のモンスターの楽な倒し方って、ある?』

「ップハ!」
 やべえ、なにこのタイミングw 思わず吹き出した俺に、タツミが『なんだよ』とムッ
としたような声を出す。
「悪い、こっちのことだ。リビングデッド系の楽な倒し方だよな? 簡単だぜ」
『ホント? どんな!?』
「まずな、弾切れする前にリロードすること」(だはははは!)
『え、リロード?』
「あとはよーく弱点を狙って撃つことかな。参考になりましたでしょうか?w」
『…………』
 タツミは電話の向こうで黙ってしまった。ありゃ、反応無し?
 ああ、元ネタがわかんねえのか。ヒキコモリ(らしい)コイツが、外にある店のゲーム
を知らないのも仕方ない。
 いやもちろん俺もそこまで性格悪くねえし、ちゃんとナビってやるけどさ。
「なんてな、教えてやるからありがたく思え。有効なのは火炎系魔法だが、もうひとつ、
武器にあらかじめ聖水をかけておくと……」

304 :Stage.4 [前編] 12/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:24:15 ID:1V5Xv7vG0

『もういい!!』

 いきなり怒鳴られて、俺はその場で固まってしまった。
「タ、タツミ?」
『自分でやるよ! 二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!』
 同時にブツッと切られて「ツー、ツー」と数回鳴った後に、静かになる。
「もしかして……マジでヤバいのかな」
 なんかちょっと、泣きそうだった、ような。

 って、しかもお前、ゾンビ系の攻略法を聞いてきたってことは、
「嘘だろ、今ピラミッドかよ!!??」
 俺はてっきり、今頃はアリアハンを脱出したあたりかと踏んでいた。時差があるとしても
早すぎる。いったいヤツはどういうルートをとってんだ。
「すまん、急用ができたから帰るわ!」
 俺はカズヒロに向かって叫び、すぐ店外に走り出した。気のいい友人が追いかけてきてる
かどうかも、気にする余裕はなかった。
 ヘタをしたら俺もヤツもここで「死ぬ」。


 冒険を肩代わりさせるにあたり「ここはナビが必要だ」というポイントがいくつかある。
 ピラミッドもそのひとつだ。
 たぶん現実側からプレイしてる限りわからないだろうが、実はあそこ、とんでもない数の
トラップが仕掛けられている。回避策さえ知っていればなんともないんだが、普通は絶対に
わからないだろう。かなり複雑な謎解きだから誘導してやるにしても、俺もいったん家に戻っ
て、あっちの現状をモニタリングしながらでないと難しい。
 しかもあそこの地下は……頼むから落ちてくれるなよ、普通の神経じゃまず保たねえ。

305 :Stage.4 [前編] 13/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:29:25 ID:1V5Xv7vG0

「ったく、でつながんねえんだよっ」
 何度もリダイアルしたが「電波の届かないところにおられるか……」の繰り返しだ。
 ゲーム内の時間の進み方は現実と比べると恐ろしく早いが、通話している間だけは同期す
るらしい(でなきゃ普通に会話できん)。つながってさえくれりゃ、こっちも同じ時間の流
れで動けるが、このままだと俺が家に帰る前にすべて終わってしまうかもしれない。
 さっきのバス亭に戻り、時刻表を確認する。
「10分後か」
 家はここからそんな遠くない。次の便を待つより走った方が早いか? 判断に迷う。

「待てよ三津原」
 その瞬間、グイっと乱暴に肩をつかまれた。
「だから急用だって……っと!」
 カズヒロじゃない、と思うと同時に、咄嗟に避けた耳元を相手の拳がかすめていった。背
後からいきなり殴りかかられたのだ。
「へえ、タッちゃんやるぅ」
 そいつの後ろで手を叩いているのが2人。どいつも見たことのない顔だ。
 俺と同い年くらいの3人組で、揃いの紺色の服を着ている。向こうじゃ王族が着るような
良質の生地だろうに、着こなしがだらしないせいで、ひどく俗っぽい印象を受ける。
「ビックリさしてごめんな? なんせ久々だったからさ〜」
 ニヤついた顔に見て取れるのは明らかな敵意。
「…………」
「ま、待てっつってんだろ!?」
 無言できびすを返した俺の前に、他の2人が回り込む。なに慌ててんだよ。

 ああああああめんどくせええ!!
 なんなのよコイツら! いや不良さんにカラまれちゃったみたいテヘ♪ってのはすぐ理解
したんだけどね、なんで今ここで湧くんだよ!
 時間ねえっつーのに、どうすっかな。黙らせるのは簡単だが、初日から騒ぎを起こすのも
どうよ。俺、静かで平穏な生活を望んでこっちに来たんですけど。
 それにしてもうちのプレイヤー、おとなしそうに見えて、実はロクに出歩けないほど敵が
多いのか? どうなってんだいったい。

306 :Stage.4 [前編] atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:37:45 ID:1V5Xv7vG0
本日はここまでです。
なんか「名前が長すぎる」というエラーが出たので、タイトルはステージ番号にしました。
書いてみて初めてわかりましたが、いろんな規制があるんですね。

エリスのベギラマの詠唱、わかる人にはわかる懐かしネタです(ニヤリ)

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 23:34:00 ID:p6Lfrp8y0
>>お二方

乙であります!

くそ、更新されてたら読まねぇわけにはいかんわな
詳しい感想書けなくてすまんが今回も面白かった〜
疲れが吹っ飛んだわ

次回もwktk

308 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:14:15 ID:9in4XXbA0
「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」
「う……う〜ん……あと5分……」
「急がないと8時になっちゃうよ」
「キスしてくれたら起きる」
「……ホントに起きてよ?」

 アホな一人遊びをやめて俺は目を開けた。
 俺には血の繋がらない義妹どころか妹そのものがいねえ。

「おはよう、マイサン」
 しっかりと目が覚めているムスコに呼びかける。股間に話しかける画もかなりシュールに違いない。
 だが許して欲しい。
 ムスコへの呼びかけは精通して以来の日課のようなものだ。
 息子とムスコの違いがわからない奴はぐぐれ。

「9時過ぎか」
 枕元に置いてあった携帯に手を伸ばして時間を確認。
 朝食にはちょっと遅いがホテル内のレストランにでも行くとしよう。
 顔を洗おうとベッドから下りても、ムスコは重力に身を委ねるのを由とせず、地面と平行の姿勢を保っている。
 いつか釘も打てるんじゃないだろうか。

「やらないけどな!」

 洗顔道具を取り出そうとしたが、あるべき場所に鞄がない。
 確かベッド横に置いといたはずなんだが。
 つーか――
「何もなくね?」

 ――騒がしい俺の様子を見に来た宿屋の親父によって、ここがラダトームの宿屋だということを知ることになったのは30分後のことだ。

追記
 さすがにムスコも萎えました。

309 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:14:59 ID:9in4XXbA0
「なるほど。事情はわかった」
「はあ」

 自分がラダトーム城下町の宿屋にいることを理解してから1時間後、俺はラダトーム城内にいた。
 宿屋の親父に事情を話すとすぐにラダトーム城に連れて行かれ、あれよあれよという間にラダトーム王と対面していた。
 信用するかしないかは別として、俺は全てを打ち明けた。
 とはいえ、寝て起きたら宿屋にいたとしか言えないのだが。
 自分でも何を言っているのかわからんというのに、ラダトーム王は何やら納得した様子でいる。

「かつてアレフガルドを救った勇者ロトも天から現れたという」
「それが俺と何の関係が?」
 うげ、何やら嫌な予感。

「そなたもまた、ルビス様が遣わした救世主なのかもしれんな」
「……竜王を斃して光の玉を取り返せと?」
「竜王を知っておるのか?」
「あー……まあ、一応」

 自分で言うのもなんだが、俺はゲームは勿論のこと、漫画小説ドラマCDサントラカードゲーム、果ては同人ゲームにすら手を染めているほどだ。
 DQのストーリーを知らないわけがない。
 俺の精通は水の羽衣を着たムーンブルクの王女で始まったといっても過言じゃない。
 その後アブない水着賢者、踊り娘の服マーニャ、エッチな下着ビアンカ、エッチな下着バーバラ、アイラを経てゼシカに至る。
 魔法のビキニ賢者や神秘のビキニ盗賊、天使のレオタードマーニャでも捨てがたい。
 7のポリゴンアイラで抜いた時の俺は神が降りていたとしか思えない。
 ……いや違う。そういうことじゃない。
 狂信者ってレベルじゃねえぞ!ということだ。

「ならば話が早い。竜王を倒し、その手から光の玉を取り戻してくれ!」

 ほーら、やっぱりきたよ。
 イヤな予感ってのはどうしてこうも当たるんだ。

310 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 00:16:37 ID:9in4XXbA0
「仮に竜王を斃したとして、俺は元の世界に戻れるのか?」
「それはわからんが……他に戻る方法はあるまい」
「……確かに」
 戻れる可能性は五分五分。
 ゲーム中、異世界の話は一切出てきていない。
 EDで勇者とローラは旅に出る。
 ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの三国を建国したのは2で語られるが、その後の勇者の行方は誰にもわからない。
 ローラ姫を抱えて門をくぐったということくらいだったはずだ。――戻れる可能性があるとするならED後しかない。

 ロト編で異世界に移動できるのはルビス、ラーミア=レティス、ハーゴン、マガルギ……後は旅の扉か。
 ギアガの大穴は閉じているはずだし、マサールクリムトコンビは6だ。
 リメ3での神竜はこの時代に生きてるのかどうかも怪しい。
 ハーゴン、マガルギに至ってはこの時代よりも後。
 オルゴも神も7だし……頼みの綱はルビスのみか。

「……わかった」
 王の言いなりになるのは癪だが、それしか方法はなさそうだ。
 竜王よりもルビス目的だがわざわざ言うほど馬鹿でもない。

「おお! まことか! ではわしからの贈り物じゃ! そなたの横にある宝の箱を取るが良い!
 そしてこの部屋にいる兵士に聞けば旅の知識を教えてくれよう」
 現金な奴め。
 渋々宝箱の中から120Gと鍵と松明を取り出した。
 もう少し景気よく出せよドケチ野郎とは口に出さない。

「ローラ姫は取り戻さなくていいんだな?」
 王の返事を待つ前に、俺は階段を下りてラダトーム城を出て行った。
 さて、120Gでどんな装備を整えるとするかな。

311 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:17:14 ID:9in4XXbA0
 悩みに悩んで結局買ったのは竹竿。
 棍棒を持たせてもらったが重たくてダメだった。
 もうちょっと力をつけないことには持って歩くだけで疲れる。
 そう考えるとレベル1で剣を扱えるDQ勇者すげえ。

 120Gで揃えた竹竿、薬草×3。残金は38Gだ。
 で、俺が持ってた物はパジャマ代わりに着ていたジャージ。あ、トランクスとTシャツもか。
 ドラクエができるからという理由で3年も買い換えてない携帯(N900i)。
 旅のお供のニンテンドーDSライト(ブラック)。
 ホテルに着く前に買っておいた100円ライター×1、タバコ×10。
 着替えや洗面道具を詰めこんだ鞄はなくなっていた。
 どうやらベッドの上に置いてあった物だけがこっちの世界に着たらしい。
 ベッドじゃなくて床で寝ていればこんなことにならなかったんじゃね?

「そうだ!携帯で!」
 ……繋がらない。

俺「もしかして圏外ですかーッ!?」
携帯「YES! YES! YES!」
俺「OH MY GOD」

 ……一人ジョジョごっこに興じる俺は、DSLの画面に文字が現れたことを気付いていなかった。


レベル:1
最大HP:13
最大MP:4
攻撃力:6
すばやさ:8
武器:竹竿
鎧:なし
盾:なし

312 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:21:56 ID:9in4XXbA0
何の予告もなく投下させてもらいました。
続きは明日以降になると思います。

>>311は鳥忘れです。

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 00:59:41 ID:iG/kA3/A0
wktk

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 02:15:13 ID:NpD8jXgk0
DQ(初代)のストーリーを知ったうえで、うまく立ち回る主人公にわくわく。


315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 02:41:53 ID:jveBO9mB0
なんかここ最近新しい趣向の作品が増えてwktkがとまらないぜ・・・っ

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 08:47:02 ID:+KqiWjCl0
これは期待

きのうはおたのしみでしたねを目指そうぜw

317 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/13(日) 12:43:32 ID:1XLoiDx/0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

またしばらくまとめが滞ると思いますが、よろしくお願いします。

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 14:26:06 ID:kBhAT/50O
まとめ乙です。

DQをゲームとして客観的に知ってる上で冒険するパターンと、
まったく知らず「スライム、はぁ?」から始まるパターンに分かれるよな。

合作話も出てるし、各主人公の座談会とか読んでみたいなw

319 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:12:33 ID:TqHLeIXy0
 こんにちは、俺です。
 わけもわからぬままアレフガルドに来て2回目の朝です。
 戦いにもちょっとだけ慣れてきました。
 ドラキーに多少てこずるものの、スライム、スライムベスはもう敵じゃありません。

「ピキーッ!」
 竹竿を買ってから、スライムを数匹斃したところでドラキーが登場。
「ピキーッ!」
 宙を飛び交うトリッキーな攻撃に危うく死にそうになりました。
「ピキーッ!」
 念のためにと買っておいた薬草のおかげで何とk
「ピキーッ! ピキーッ!」
「だあああああ! うるせえええええええ! スライムごときが邪魔すんじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
「ピ、ピキーッ!」
「(´・ω・`)ぶち殺すぞ」
「……ぴきー……」

 大人しくなったスライムを海に蹴り飛ばした俺は防具を買いにラダトーム城下町に向かった。
 目的は一つ、竹竿から棍棒へのレベルアップ。――と、その前に便所だ。
 ラダトーム――DQ世界にはトイレというものが存在しない。これ豆知識な。
 住人は草むらや林の中でしている。
 小便をしようと草むらに向かったら下半身丸出しで用を足している女に出会った俺が言うんだ、間違いない。
 俺には気付いていない様子だったので、そのまま田代。別の意味でスッキリさせてもらいました。

 小便をし、棍棒をいくつか見せてもらった俺は、一番手に馴染んだ棍棒を購入した。
 できればもっと攻撃力のある武器がいいんだが、銅の剣を買えるほど金はない。
 棍棒に釘を刺して攻撃力増強を、とも思ったのだが、この棍棒には初めから釘が打ち付けられてある。
 釘の打ち付けられていない棍棒は3からのはずだ。

「まずは……ガライだな」
 ガライには鍵が必要な場所があったな……鍵、か。

320 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:13:26 ID:TqHLeIXy0
 というわけでラダトーム城に到着。
 ガライに行く前に色々と準備が必要なのよ。

 ラダトーム城には鍵屋が存在する。
 しかし城前の池が遮っているため、城内の鍵屋に行くにはリムルダールで鍵を買わなければならない。
 ゲームではそんな二度手間三度手間はイベントの一つかもしれないが、実際問題そんなことはやってられない。
 池を泳いで渡る?
 池を泳いで渡るのは正解に近い。最も限りなく正解に近い。
 でも溺れる可能性もあるので油断は禁物でーす♪
 というわけでボッシュート。

    ⌒ ⌒ ⌒
   _⌒ ⌒ ⌒__
  /:::::Λ_Λ:::::::::::::::/
 /::::::(∩;´Д`)∩ :::::/
/:::::::(      /::::/  チャラッチャラッチャーン





「城の裏から行けばいいんだよね」





 工エエェェ(´д`)ェェエエ工といった顔の兵士は放置。
 若人よ! 柔軟な発想を持て!

321 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:14:28 ID:TqHLeIXy0
「どんな扉でも開けてしまう魔法の鍵はいらんかな? 一つ85Gでどうじゃ?」
「よし! 買った!」
「ほれ、鍵を一つ渡そ――」
「その前に。壊れたら返品ができるんだよな」
「いや、これは一度きりじゃ」
「ああ? 一回しか使えない鍵が85Gだと? ジジイ、何でそれをもっと早く言わねえんだよ!」
「か、鍵が一度で壊れるのは常識じゃろう」
「それはジジイの常識だろうが。普通の鍵は壊れねえんだよ。舐めてんのか(゚Д゚)ゴルァ!」
「い、いや、別に舐めてるわけでは――」
「“ムカつき”が止まんねーよ……」
「ままま待て待て!」
「教えてやるよ? “ジジ”ィ……ナゼ俺のパールホワイトの“FX”が“最強外道”のカンバンなのかよ……?」

 以上、俺の交渉術でした! よい子もよい大人も悪い子も悪い人もマネしちゃダメだぞ!
 一つ8Gまで負けてくれたんで10個も買っちゃったよ。
 いや〜、いい買い物したなあ。
 危うくジジイは“不運” (ハードラック )と“踊”(ダンス )っちまうところだったんだぜ……?

 予定通り浮いた金でラダトーム城下町で皮の服と皮の盾を購入。
 皮の服ってよりは皮の鎧って感じだな。

「ならば! 『ジャージ』プラス『皮の服』――二刀流!!」
 思わずジョジョ立ちしてしまう俺。これがジョジョならゴゴゴゴゴと文字が出てるくらいだ。

「二刀流じゃないじゃん」
「せっかくノッてるんだから言うなよ――って誰?」
 思わず振り向くと、女がクスクスと笑っていた。
 む、乳がデカい。乳スカウター発動!
 87……88……89……90……バカな、まだ上昇していくだと!

「あなた、昨夜草むらで覗いてたでしょ?」
 /(^o^)\ナンテコッタイ

322 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:15:14 ID:TqHLeIXy0
 というわけで、3日目の朝を迎えました。
 何が起きたかポケモン風に表現だけしておこう。
 つきのひかり
 てんしのキッス
 あまえる
 くすぐる
 メロメロ
 かたくなる
 したでなめる
 がまん
 あくまのキッス
 どくどく
 たくわえる
 のみこむ
 はきだす
 ちいさくなる
 てだすけ
 メガホーン
 のしかかり
 つのでつく
 からみつく
 みだれづき
 しめつける
 こらえる
 はなびらのまい
 だくりゅう
 しおふき
 アンコール
 ねむる
 あさのひざし

   ご 馳 走 様 で し た 。

323 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:17:34 ID:TqHLeIXy0
「どおりゃああああああああああああああああああ!!」
 俺は今、ラダトーム→ガライ間を爆走している。
 鬼気迫る顔をしているのか、モンスターも寄ってこない。
 途中で何匹かスライムを轢いた気がするが、気のせいだ。
 ダンジョン練習場として配置されたであろうロトの洞窟はすでにスルー。

「ダメだ……」
 運動不足が祟ったのか、それとも昨夜の運動が祟ったのか、体が休憩を求めている。
 少し休むか……いや、ダメだ。
 何としても今日中に――少しでも早くガライの町に着かなくては。
 ただでさえ昨日一日を無駄に費やしてしまったんだ。ここで取り返さなくてどうする。

 萎えつつある俺の気力を取り戻すべく、目をつぶって思い出す。
 ――竜王の呪いで変わり果ててしまったモモたん。
 ――良きパートナーであったモモたんを殺さなくてはならなかった剣神勇者の悲しみを。
 こみあげてくる深い悲しみと怒り……

「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!! ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 人間、やればできるもので。
 ラダトーム城下町を出ておよそ40分でガライの町に着きました。


レベル:6
HP:21/21
MP:17/17
攻撃:18
防御:14
すばやさ:6
E:棍棒
E:ジャージ+皮の服
E:皮の盾

324 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:22:18 ID:TqHLeIXy0
といったところで今日の分はこれまでです。
>>1に書いてあるようにレス安価忘れたのは勘弁してください。
次回以降は気をつけます。
次回は早くて明日、明後日前後だと思います。

>>317
まとめお疲れ様です。
そして掲載ありがとうございます。
更新作業大変でしょうがご自分のペースで頑張って下さい。

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 00:41:37 ID:WALDniG20
>>322
ちょwwエロスwww

326 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 03:32:45 ID:8texZOd8O
町娘たんとお楽しみしたのか!
ローラ様に祟られるぞ…

327 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 11:57:16 ID:LrmXOX3W0
>>310
城の兵士を大量に動員して、ローラー作戦で、ローラ姫を捜索すべし。

328 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 13:43:03 ID:acDpFiJd0
>>327
【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'

329 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:27:51 ID:+qIRY+we0
 剣と魔法の世界。
 ファンタジーの王道であり、その筋の人間なら誰もが一度は夢見る事だろう。
 伝説の剣を手に取り、可憐なヒロインや勇敢な仲間と共に魔王を討ち果たす。
 で、最後はヒロインとハッピーエンド。お決まりだよな。

 俺もそんな事を夢に見なかった、といえば当然嘘になる。
 でも実際行ってみようとはまで思わない。
 いや、年を重ねるにつれ思わなくなった、と言うべきだろう。
 現代の便利な生活が骨まで染みた身に、きっと中世レベルの世界は耐えられないからだ。
 水洗トイレが無い生活。ネットが無い生活。車が無い生活。
 正直考えも付かない。
 更に付き纏う死の危険。
 もうやばすぎだろ、常識的に考えて。

 ん? 前振りが長い? 何が言いたいのかって? 
 それはだな……。

『結局は住み慣れた場所が一番って事。
 世の中そんなに甘くないよな』
「はあ? いきなり何言ってんの!?」
『いや、なんで俺がこんな状況に陥ってるのか今一度自分に問いかけt』

 女性A(仮名)と俺の声が、甲高い金属音にかき消される。
 そして俺の体に軽く衝撃が二度響く。体感震度3って所か。


330 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:28:40 ID:+qIRY+we0
 さて、ここで何が起こったのか説明せねばなるまい。
 女性A(仮名)が敵(なんか中身が空のピンク色の鎧)の鋭い斬撃を受け止め、はじき返したのだ。俺で。
 そしてそのまま女性A(仮名)は攻撃を弾かれ体勢が崩れた相手に縦一閃。俺で。
 哀れ一撃で真っ二つになった鎧はそのまま崩れ落ち、光に還った。

『しかし、とても女の力には見えないよな。腕も細いし』
「ああもう戦闘中にうっさい! へし折るわよ!」
『はいはい』

 女性A(仮名)のお叱りの言葉を戴いた俺は、気の抜けた返事を返す。
 彼女の言葉通り、まだ3体の鎧と箒に乗った婆さんが俺たちを取り囲んでいる。
 死を覚悟とまではいかなくとも、それぞれが弱くは無い連中だ。
 ああ、なんでそんな相手に俺はこんなに落ち着いてるんだろう。慣れか、慣れなのか。

『酷いや皆! 僕はこんな命の遣り取りなんか慣れたくなかったのに!』
「だから! 煩いって! 言ってるでしょっ!」

 人が折角悲劇の主人公を演じてみたというのに、女性A(仮名)はお気に召さなかったらしい。
 婆さんが連続で放つ呪文を、蝶の如くヒラリと避けながらまた怒声。

「……ちぃっ」

 三度目の呪文をアクロバティックな挙動で回避した先、およそ女性らしさとは無縁な舌打ちをかます女(ry
 舌打ちの理由は至って簡潔。
 呪文を回避し終えた瞬間、三方から鎧が突っ込んできた為である。
 中身は無くともその技量と殺意は間違いなく本物。

 それに対し、女(ryは正面から迫る鎧に俺を投擲。
 当然余裕で弾かれるが、それこそ女(ryの狙い。
 弾かれ宙を舞う俺を疾駆、跳躍しながらキャッチ。そして鎧を飛び越える。
 再び俺を構える頃には鎧の包囲の外。相変わらず見事な手並みである。

331 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:32:11 ID:+qIRY+we0
『そして流石は俺だ。手荒に扱われてもなんともないぜ!
 ていうか、ここまで自分を客観的に見れるようになるって結構悲しい事だと思うんだけどどうよ』
「…………」

 さて、ここに来ていよいよ目と殺気が本気と書いてマジになった女(ry。
 こうなったらもう俺の話なんて聞いちゃくれない。
 仕方ないので俺は故郷を偲ぶという名の現実逃避に入るとしよう。

――拝啓 親父様、お袋様、お元気でしょうか。
「スカラ! ピオリム! スカラ! バイキルト! ピオリム!」
――そちらでは俺が蒸発してしまい、大変な事になっている事でしょう。
「ボミオス! ボミオス! ボミオス!」
――ご迷惑をおかけしてしまい、まことに申し訳ありません。
「ルカナン! ルカナン! ルカナン!」
――ですがご安心を。不肖の息子は異世界で元気に生きております。……剣として。
「ずっと私のターン!」
『どう見ても格下相手をレイプです。本当にありがとうございました』

 追伸
 俺のHDDは中身を見る前に物理的手段をもって破壊していただきたい所存であります。


332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 19:40:10 ID:LrmXOX3W0
なんかへんだな?と思っていたが、そういうオチだったか。
第一話、ということは続くのかな?
元の世界に戻れるのだろうか?
せめて元の姿に戻れるのだろうか。wktk

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/16(水) 00:52:53 ID:X8Jo0VjE0
期待ほす

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/17(木) 23:34:55 ID:2NA6ZwuJO
保守

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/18(金) 23:20:47 ID:0eJL2YsHO
保守

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/19(土) 16:25:10 ID:ZRNyXIm/O
レッドマンは元気だろうか…

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/20(日) 18:14:11 ID:hmCffOiaO
保守

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/21(月) 01:41:24 ID:JA3TVn+P0
1週間ほど来なかったら新作の嵐だったとは!
どれもこれも面白い!皆さんGJです!
今度はこまめによって感想書きます

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/21(月) 09:06:39 ID:AcaFUuD20
>>338
書き手の一人ですが、嬉しいお言葉です。
一言でもご感想をいただけるとウラン並の執筆燃料になります!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 10:17:26 ID:l2P2n+iEO
保守

341 :携帯まとめ申請:2007/05/22(火) 12:29:17 ID:9d7j93O30
突然失礼いたします。
こちら宿スレの携帯向けまとめを作らせていただきたいな、
と思っているのですが、よろしいでしょうか。
可・不可、条件等、ご遠慮なくおっしゃってください。
どのような感じになるかは、現在稼動している下記サイトをご参考ください。

【DQ歴代主人公が雑談するスレ保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/dqzdn/

【FFDQバトルロワイアル保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/

342 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 19:50:52 ID:LIVH/BATO
携帯で見れるのは嬉しいだろうから俺はwktk

343 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 20:09:14 ID:SeIABa0wO
>>341
もはや超GJといいたいくらいだ

344 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/23(水) 03:09:58 ID:ktTpY5jD0
お疲れ様です。

>>341
携帯まとめサイト、良いと思います。
正直、いつか「携帯のまとめマダー」と書かれるんじゃないかとヒヤヒヤしてましたからw
PC版は時間があかない限り更新はしないのですが、よろしくお願いします。

345 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/23(水) 03:11:12 ID:ktTpY5jD0
書き忘れ。
まだPC版は最新へ更新されていません、ごめんなさい。
また後日。

346 :携帯まとめ(暫定):2007/05/23(水) 04:38:32 ID:rXkmUX4R0
>>342>>343 >>タカハシ様
ご許可いただきましてありがとうございます。
さっそくですが、暫定的にここまでまとめてみました。
リンク切れや改善点など、ご連絡いただけると助かります。

【もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら 保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

347 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/23(水) 10:05:54 ID:wRfJy0IBO
>>346さんGJです
携帯からも見れるなんて嬉しい限りです

348 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:37:28 ID:/lTcDKcTO
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!」

どう見ても基地外です、本当にどうもありがとうございました、と言われるほど私は爆走しています。

「たまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖い」

オニオーン
シェーナ周辺に出没するたまねぎ型の魔物…ゲーム内では序盤ザコとして登場、単体であれば初期装備で叩けるが…

「まだ追ってくるー!」

集団で出てこられるとかなり厄介なのはゲームでも、ここでも同じようだ。
サスケの知り合いがここにはいないため、説得して平和的な方法が実行出来なかった。

349 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:39:45 ID:/lTcDKcTO
私の腰にはメイサさんに渡されたナイフ(たぶんブロンズナイフだろう)が出番を待っているが、攻撃力があっても勇気がないため、攻撃をためらってしまった。

相手は姿形は人や見知った動物でなくても生き物だ、いざ攻撃となると胸が痛くなる。

「ピキーッ!」

あれこれ思案しているそばからサスケの悲鳴が聞こえた。

囲まれた、完璧に。

逃げ道はなさそうだ、ついに最終手段実行だと思った。
ベルトに収まっていた刃物に手をかける。

もう、ためらっては駄目だ。

すっとその刃が姿を表す。
曇りのない刃、私は恐る恐る右手に構える。

350 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:40:36 ID:/lTcDKcTO
傍から見ればへっぴり腰で顔もひきつっていて、見るからに弱そうなのは私でもわかる。
初めて構えた命を奪う物はとても重い気がした。

「さぁ来い!」

勇気を持って叫ぶ、自分で言うの何だと思うが、かなり声が震えていた。

その言葉を待っていたと言わんばかりにオニオーン達が私に飛び掛かる。
複数の敵に取り囲まれた私は戦うと言うよりも、相手を振り払うような形になった。
たまねぎの魔物どもは攻撃の手を休めない、休めているのだろうが、数が多過ぎる。
戦闘に集中しているがゆえに仲間へのミスが出る。

「ピーッ!」

「サスケ!」

351 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:41:46 ID:/lTcDKcTO
サスケはオニオーンの角(と言うよりも茎?)によって跳ね飛ばされてしまった。
どうしよう、助けたい、助けられない。

仲間のピンチなのに、このたまねぎめ、うら若き乙女を囲むとは、もう許せない。

「──っ!ぎゃっ!」

サスケを突き飛ばしたオニオーンの中心にナイフが突き刺さる。
会心の一撃だろうか、オニオーンはそのまま動かなくなった。

その様子を見た他のオニオーン達は我れ先に、とでも言わんばかりに退却していった。

倒した、オニオーンはもう動かない。
私の中には安心と小さな罪悪感が渦巻いていた。
倒したと言う事は相手の生を奪った事。
危なかったとは言え、殺してしまった。

352 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:42:57 ID:/lTcDKcTO
「ピキーッ」

涙目になったサスケが私に飛び付く。
敵の命を奪う事で私は仲間を助けた。

自己中心的な考え方だが、サスケが死んでいない、私はサスケを助けた、それでよいじゃないか。
自分を正当化させなければきっとこの世界ではやっていけれないんだ。

「ピキー!」

サスケが倒れたオニオーンの方に誘導する、そうだナイフを回収しなくちゃ。
とっさに投げたナイフが当たってよかった。

ナイフの持ち手に力をかけて引き抜く、生々しい音とともに刃が顔だす、そしてその先には宝石のようなものがくっついている。

「なんだろう」

まさかとは思ったが、どうやらこの世界の魔物は宝石モンスターに属するらしい。

「アベル伝説かよ」

小さくつっこむ私だった。

353 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:49:30 ID:/lTcDKcTO
今日はこれで終了です

>>271-273
感想ありがとうございます
感情移入等をしてくださるなんて感激です

>>携帯まとめ様
自分も携帯厨なのでうれしい限りです
ありがとうございました

>>タカハシ様
まとめでの訂正、ありがとうございました
御迷惑をお掛けしてすみませんでした

354 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/23(水) 20:54:24 ID:lXjeX65BO
おつんつん!
乙女ぃぃょ乙女

355 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:31:30 ID:M221zl7u0


「……誰だ」
「それはこっちの台詞だぜ坊や。あンたこそ誰だい? ここでなにしてるンだ?」
 その狼男は大きな口から舌をだらりと出しこちらを見つめている。
 ――嫌な予感がする。
 俺はゆっくりと壁から離れた。狼男はそれに気づいたのか、じりじりと間合いを詰めてきた。
 手に汗がにじみ、心臓もドキドキと大きな音がする。
「アレフー! どこいったのー!」
 マリアさんの声が聞こえた。なんだか迷子の子供を呼んでいる見たいに聞こえる。
 それを合図に俺は声のした方向へとダッシュする。すると狼男も俺の後をついてきた。
「待て!」
「っ、マリアさん!」
 角を曲がるとすぐにマリアさんが見えた。
 こちらを向き困り顔を見せたが、俺の後ろの狼男を見てすぐさま顔を引き締めた。
「モンスターね!?」
「……もう一人いたのか」
 狼男が忌々しげに呟く。俺はそのままマリアさんのところへと思いっきり走った。
「アレフ、伏せて! メラ!」
 ボウッという音とともにマリアさんの指から火の玉が飛び出す。俺は慌てて前へと倒れ込んだ。
 間一髪火の玉は俺の頭上すれすれを通過。後ろから炎が燃え移ったような音がした。
 狼男に当たった音かと思い振り返る。するとそこには短めの剣を手にした狼男が無傷で立っていた。
「な、メラを弾くなんて……」
「お嬢ちゃン、魔法使いか」
 狼男の眼帯をしている方とは反対の目がギラリと輝く。金色をした、鋭い目付きをしている。
 どうやらこの狼男はマリアさんのメラを弾き飛ばしたらしい。なんて奴だ。
「俺にメラは効かねえ、ぜ」
 ぶんと剣を振って威嚇してくる。怖い。俺は立ち上がり、急いでマリアさんの方へ走った。
 ……この光景は漫画でもゲームのシーンじゃない。本当にすぐそこで起きていることなんだ。
「っ! それなら、ヒャドッ!」

356 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:32:23 ID:M221zl7u0

 マリアさんが杖を狼男へと向けると、杖の先からキラキラしたものが飛び出した。
 そのキラキラは狼男目掛けて飛んでいく。狼男は直ぐさま避けたが、完璧に避けられず左肩へと命中した。
 すると左肩からみるみるうちに氷が広がり、狼男の左腕は氷漬けになってしまった。
「くっ、ヒャドも使えるのか」
 悔しそうに呟きながらその氷を忌々しそうに見やる。力を込めているようだが、左手はぴくりとも動かない。
「……おい、お嬢ちゃンたち。悪いことは言わねえ、早くここから立ち去りな」
「なんですって?」
 突然狼男は氷に向けていた目線をこちらに移し、俺たちに逃げろと言った。
「私たちを襲ったモンスターの言葉を信じるわけがないでしょう?」
 マリアさんが構えを解かないまま威圧感たっぷりの声音で話す。
 俺もマリアさんと考えることは同じだ。向こうから先に襲ってきたのに、逃げろって言うのはどうも信じられない。
 俺たちが逃げようと後ろを向いた瞬間、攻撃でもするつもりなんだろうか?
「モンスター、ね。まあ、信じないのは当然だよなあ。でもさっさと逃げてくれねえと、俺が困るンだよ」
 狼男は頭をボリボリと掻きながらそう言う。
「あなたの事情なんて関係ないわ」
 スッとマリアさんは杖を構える。戦闘態勢だ。
 狼男がこちらへ向ける目を一瞬細めた気がした。
 

「今度はこれをくらいなさ……」
「グレッグ」
 マリアさんが呪文を唱えようとした瞬間、狼男の後ろからしわがれた声が聞こえた。
 狼男はそれに驚いたのか目を見開き、ゆっくりとその声の主の方へ向いた。
「グレッグ……どうした、そんな大声を出して」
「……ボス」
 のしのしと俺たちに近づいてきたそいつは、緑色をしたしわくちゃの肉の塊でとても気色が悪い姿をしている。
 この緑肉は狼男をグレッグと呼んでいる。だとしたらこの狼男の名前はグレッグというのだろう。
 グレッグは俺たちの方に目線を向けた後、耳を掻いて下を向いた。

357 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:33:22 ID:M221zl7u0
「ん? グレッグ、こいつらは旅人か?」
 緑肉は俺たちに気づき、そのたぷんとした肉に囲まれた目玉をギョロリと動かす。死んだ魚のような濁った目玉だ。
「そうか、お前たちが迷い込んだ旅人だな? フェフェフェ、そちらから出向くとは……実に好都合。手間が省けたわ」
 なんて耳障りな笑い声だ。
 顔をしかめていると、マリアさんが緑肉を睨んで言った。
「もしかしてあなたたち、迷い込んだ人たちを……?」
「フェッ、お前たちのような旅人はなかなか良い魔力を持っているのでな……よい栄養になるわ」
「っ!」
 こいつら、旅人を食べて……! なんてやつらだ!
「……なら、ここであなたたちを始末しておかなきゃ、犠牲者は次々と出るって訳ね」
 マリアさんが一歩踏み出す。その声音は淡々としているが、怒気が含まれており威圧感がある。
 それを馬鹿にしたようにふふんと緑肉は鼻息を噴き、手に持っていた杖を振る。
 一方グレッグは動かず、このやりとりを見つめているだけだ。俺も見つめているだけだが。
「お前に我らが殺せるか? 小娘」
「もちろんよ! ギラ!」
 先制攻撃! マリアさんの両手から発された炎は帯状になり緑肉へと向かっていく。
 俺は戦闘の邪魔にならないよう脇に離れる。戦力にならなくてすみませんね! ふんだ!
「ギラか……甘いわ!」
 緑肉はしたり顔(肉で表情はよく読めないが多分)でマリアさんを見つめ、杖を振った。
 すると炎は風に巻かれたように一瞬でかき消された。
 嘘だろ、呪文が消されるなんて!
「なっ!?」
 マリアさんも今の光景が信じられないという表情をしている。
 すると緑肉は俺の方を見てからグレッグの方を見やり、手を振ってなにか合図をした。
 その合図を受けたグレッグは、指を口に当て口笛を吹いた。ピィーというその口笛独特の音は森の中に響いていった。
「これでいいですかい、ボス」
「……なにをしたの?」
「なあに、ちょっとした余興よ」

358 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:34:28 ID:M221zl7u0
 余裕といった表情(多分)で俺たちを見つめる緑肉。くそ、馬鹿にしやがって。
「よくわからないけど、まあいいわ……くらいなさい! ヒャド!」
 杖から出たキラキラが緑肉の方へと向かう。緑肉はその場から動く気配がない。やった、命中する!
 しかしキラキラは緑肉との間に突然飛び込んできた影に当たった。
 そいつはグレッグによく似た狼男だった。その狼男は両腕が氷に包まれたまま緑肉の横に立った。
「おお、来たか」
 緑肉は手にしていた杖をカツンと地面に一打した。
 するとマリアさんの周囲に狼男たちが出現した。数はグレッグを入れて6匹。
 マリアさんのところへ行こうと足を出した時、背後から羽交い締めにされてしまった。
「アレフ!」
 しまったと思ってももう遅く、俺はグレッグに捕らわれてしまった。
 凄い力だ、片手で押さえられているのに苦しい。潰れてしまいそうだ。
「くっ、卑怯者!」
「フェッ、なんとでも言うがいい……食料よ」
 噛みつくように声をあげるマリアさん。しかし緑肉は勝ち誇ったように高笑いをあげる。
 マリアさんの周りには5匹の狼男がいる。危ない!
 グレッグの手を引き剥がそうともがくが、手応えがない。逆に力を入れられて押さえつけられる。
「大人しくしてな、坊や」
 おまっ、坊やって呼ぶな! そう言おうとしても声が出ない。
「……だから、早く逃げなって言ったのによ」
 グレッグはそう小さな声でボソリと俺の耳元で呟いた。……グレッグ?
 ふと狼の鳴き声が聞こえてきた。俺はハッと顔を上げ、声のした方へ意識をやった。
 狼男たちが剣を抜き、マリアさんに近寄っていく。緑肉は祭壇の上の方で高みの見物を決め込んでいるようだ。

359 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:35:27 ID:M221zl7u0
「っ……ギラ!」
 マリアさんはギラを放つ。炎は大きくうねり狼男たちを包み込んだ。
 しかし火力が弱かったのか、炎は狼男たちの服を一部焼くだけだった。
 俺はグレッグの脇腹にエルボーを喰らわした。何度も打ったが、角度が悪いらしく力を込めて打つことができない。
 野郎! このままじゃマリアさんが、マリアさんが! くそッ! 放せッ! 放せよッ!
「この……っ、は!」
 もう一度呪文を唱えようとマリアさんが杖を構えた瞬間、背後からの剣撃が降り注いだ。
 そしてそのまま崩れるように地面へと倒れていく。その光景がまるでスローモーションのように感じる。
 背中から流れ出る血が白いローブを真っ赤に染め上げた。

 ――ドクン

 その光景を目にした刹那、俺の中で”なにか”が動き出した。

360 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:37:45 ID:M221zl7u0
投下は終了です。
今回はさるの邪魔が無くてよかったです。

>>344
まとめ乙です!
いつもまとめサイトには色々とお世話になってます。
>>346
携帯まとめ乙です!GJ!
>>353
サスケ可愛いよサスケ(*´∀`*)

361 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 18:12:00 ID:9KRULlPFO
(´・ω・`)   n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(

362 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 20:52:26 ID:v1K+2esBO
>>360さん乙!いいところで区切りやがって(笑)wktkで待っている

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/26(土) 19:09:30 ID:ryChdz9RO
保守

364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 00:59:19 ID:Ibx7AMqc0
久しぶりに来たが、4の人の完結してたんだな…本当に遅ればせながら面白いSSをありがとう、そしてお疲れ様です。
あれ、最後に主人公はどうなったんだ?死んじゃったのか?

365 :俺王 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:26:20 ID:/bh2DbrV0
前回までのあらすじ>>319-323

「あああああああああ! そうだよ、銅の剣はスーファミじゃねえか!」

 そんなわけでこんにちは。俺です。
 俺は今、ガライの町に来ています。
 いきなりで申し訳ありませんが、とんでもない勘違いをしていました。
 ガライの町にある鍵を使って入る建物内。そこに宝箱が三つあるのは皆さんご存知のことと思います。
 約600G、銅の剣、たいまつが入ってると思って来たわけですが…… S F C 版 と 勘 違 い 。
 中には10G、薬草、たいまつの3つ。……鍵一個と引き換えと考えるとどう考えても損だよなあ。
 仕方ないのでさっさと建物を出る。
 唖然としている宝箱の持ち主らしき親父はスルー。
 私の宝箱が……と呟いてるのは気のせい気のせい。

 この建物内に入る=ガライの墓で銀の竪琴を取りに行く、なんだけど今の俺は無理。
 棍棒と皮の服装備の俺に過度な期待はしないように。

 ともあれ、目的の一つは果たした。
 残る目的はある剣士の捜索。

「……って簡単に見つかったよ」
 武器屋の隣に、目的の剣士はいた。
 にしても、何と声をかけたらいいのか。
 すいません、ちょっとお時間よろしいですか。……これじゃキャッチだな。
 こんにちは! 竜王を斃しに行く途中なんですけど、どうやって斃せばいいのか教えてくださいm(_ _)m
 ……どこの厨だ。
 調べたけどわかりませんでした。

366 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:27:05 ID:/bh2DbrV0
「俺に何か用か?」
「うぉう! 脅かすな!!」
 どう声をかけるべきか俺が迷っていたら剣士から声をかけてくれました。

367 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:27:51 ID:/bh2DbrV0
「ええと……人違いだったら申し訳ない、みやおうさん?」
「いかにも。俺はみやおうだが――」
 ファミコン神拳110番創成期の一人、ミヤ王。
 平成生まれのお子様達にはわからないだろう。詳しくはググれ。

「ワケあってあんたを探してた」
「俺を? 何のためにだ?」
「竜王を斃すために、あんたら――ゆうてい、みやおう、キムこうの力を貸して欲しい」
「なにい?」
「俺の仲間になってくれ」
 ファミコン神拳110番のメンバーである堀井雄二、宮岡寛はドラクエの製作に関わっていた。
 彼らがドラクエに自己を投影させたのかはわからない。
 十中八九お遊びだろうが。
 ともあれ、ドラクエ製作陣が仲間に加えておいて損はない。たとえ別物であってもだ。

「冗談ではないようだな。……話を聞かせてもらおうか」

 ・俺が異世界から来たこと。
 ・竜王を斃すことしか俺が元の世界に戻る可能性がないこと。
 ・俺の世界ではこの世界は創作物であること。

 ミヤ王に語ったことを今北産業用にまとめておく。
 創作物と表現したのはこの世界ではゲーム云々で説明するよりも手っ取り早いと判断してのことだ。
 ゲームとはなんだと聞かれても困るしな。

「嘘ではないようだな」
 黙って俺の話を聞き終えたミヤ王は、じっくりと考え込んでから口を開いた。
『私は異世界から来た人間です、元の世界に帰るには金正日を斃すしか方法はありません。一緒に北朝鮮を攻めましょう』
 なんて言われたら正気を疑うだろ?
 誰だってそーなる。俺もそーなる。
 しかし、ミヤ王は信じてくれたようだ。
 流石はファミコン神拳110番。

368 :俺王 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:28:47 ID:/bh2DbrV0
「ゆうていとキムこうの居場所も知っていると言ったな」
「ああ。ゆうていはマイラ、キムこうはリムルダールにいる」
「間違いはないな?」
 真面目な顔で聞くミヤ王に頷いてみせる。
 ミヤ王がガライの町にいたように他の2人もそれぞれの町にいるはずだ。……確証はないけど。

「竜王を斃す斃さないは俺一人では決められん。二人と合流してからになるが……」
「……ま、リムルダールまでの仲間ってことでもいいさ」
 ここにいる「みやおう」とファミコン神拳の「ミヤ王」は別人。
 だが、現実のミヤ王をモチーフとしている以上、決して見捨てるはずがない。
 3人揃った時は竜王打倒に力を貸してくれるはずだ。

「こっちは実戦慣れしてないんで色々と迷惑かけると思うがよろしく頼む」
 そう言うと、ミヤ王は男らしい笑みを浮かべて、気にするなと言ってくれた。
 いい奴だ。
 ミヤ王になら掘られてもいい。
 実際にそうなったら全力で貞操を守るが。

「マイラにゆうていがいるんだったな」
「ああ。明日、マイラを目指そう」
「今からでもかまわないぞ」
「俺がかまうんだよ。ラダトームから全力疾走はしんどいわ」

 ともあれ、こうしてミヤ王が仲間になった。

ミヤ王のステータス
攻撃力:あたたたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたたっ

369 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 01:33:33 ID:cwiUr2oBO
支援します

370 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:34:48 ID:/bh2DbrV0
投下終了ですが…あああ、どうしてこうミスが多いんだ。
もう自分が嫌になる。
俺なんてハッサンに掘られちゃえばいいんだ。

というわけで訂正です
>>365-366
二つで一つのレスとして読んでください。
>>366-367
×特攻の俺
○俺王



>>344-345
お世話になってます。
今回も本当すいません。

>>346
乙であります。
出先で読めるのはありがたいです。

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 02:05:26 ID:IzksAbqi0

オサーンの俺にはググルらなくとも全てが手に取るように分かるw

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 08:43:18 ID:uKDoWz5E0
ファミコン神拳的パラメータ表示吹いたw

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 12:46:56 ID:1O1uChZSO
分からない俺は間違いなくゆとり。ともあれ乙

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 15:00:59 ID:+EasbWRT0
乙です

メタルサーガ鋼の季節をプレイして
ミヤ王は過去の人なんだなぁと寂しく思った…

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/28(月) 19:58:16 ID:rkQPRYtyO
まともサイト読み返したら、隙間風氏の続きが気になって仕方ない
あのぶっ飛びっぷりがたまらんW

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 02:35:08 ID:0rKudwBk0
hossyu

377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 20:09:08 ID:LmwZfsfmO
スレ違いな話しになっちゃうけど
>>341 のバトロア面白いね!個人的にはドラクエ5の子ども達とバッツの絡みが良かった!
あれはリレー?このスレもリレーの話し出てましたが職人さん頑張って!


378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 23:20:20 ID:nBRISody0
田中と鈴木はどうなった!?

379 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/31(木) 16:45:50 ID:KSoMkPaWO


380 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:13:03 ID:3/VUBAzF0
「うあああああああ!!」
 アレフは突然大きな叫び声をあげた。天をつんざく程の大きな叫び。
 その叫びは今まで己を捕らえていたグレッグの腕をほどき、マリアににじり寄る狼男たちの歩みを止めた。
「何事だグレッグ!」
 緑肉――幻術師は慌てた様子で部下の名を呼ぶ。
 その方向には部下とその場にうずくまる少年の姿があった。
 両肩を抱き、震え、その目はどこか虚を見つめている。

(……俺は、俺は……マリアさんを守れなかった……マリアさんが倒れたのは、俺が弱いからだ!)
 アレフは心の中で己に叱咤を浴びせかける。
(さっきの俺はただ逃げ回ってただけじゃないか! マリアさんを守ろうって! 強くなろうって! そう誓ったじゃないか!)
 肩を抱く腕に力が入る。爪が肌を圧迫し、血が滲んでくる。
(神様だって、俺に力をくれた!)
 一瞬思考が止まる。
 アレフは気づいた。自分にはまだマリアを守れる力があるということに。
(……力……そうだ、俺には、あるんだ……あの呪文が……)
 肩から手を放し、ゆっくり立ち上がる。
 数度瞬きをする。すると先程まで虚を見つめていたその目は元の生気ある輝きを取り戻した。
 幻術師は先程とは打って変わった様子のアレフを怪しんだ。
「グレーッグ!」
 幻術師が叫ぶ。その声により正気を取り戻したグレッグは、アレフをもう一度捕らえるため腕を伸ばした。
「チッ!」
 アレフは向かってくるグレッグの方へとその体を向け、真っ直ぐ彼を見つめた。口を引き締める。
(……神様が俺にくれた力、それは――)

「ドラゴラム!」

381 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:14:22 ID:3/VUBAzF0

 グレッグの腕がアレフを捕らえた瞬間、彼から放たれる光によってグレッグは弾き飛ばされた。
 光、そして大気はそのままアレフの周りを囲むように渦巻く。
 ごうと渦巻くそれは、まるで昇竜のように天高くへと向かっているように見えた。
「ぐっ!」
「な、なにが起きた!?」
 幻術師は言い知れぬ恐怖にその肉に包まれた顔を引きつらせた。
 狼男たちもアレフから感じる威圧感に身を強張らせ、その場を動けないでいる。
(……ア、レフ……)
 マリアは薄れゆく意識の中、アレフを見た。
 そこには以前の力ない少年の姿ではなく、強大な竜の姿があった。


「なんだこいつはッ! お前たち、かかれ、かかれッ!」
 突然目の前に現れたドラゴンに肝を潰し、幻術師は慌てて部下に攻撃するよう命令した。
 しかし狼男たちは飛びかからない。ドラゴンの持つ力に本能から怯えているからだ。
 緑色の身体と金の瞳を持ったドラゴン――アレフは、マリアの元へと向かった。
 ズシン、と一歩進む度に大気が揺れる。
『これがドラゴラム……竜に変身する呪文なのか……』
 アレフは力に飲まれることもなく、はっきりとした意識を持っていた。
「グォォオオオオオ!!」
 天に向かってアレフは雄叫びをあげた。己に活を入れるよう、勇気を出すように。
 すると狼男たちは我を取り戻したのか、一目散に森の方へと逃げ出していく。
 だがアレフはそれを逃がさない。
 ズンと一歩踏み出し大きく息を吸い込む。周囲の空気が震えている。
 そして狼男たちに狙いを定め、勢いよく炎を吐いた。その炎は大きな波となり狼男たちに襲いかかる。
「うわああああ!!」
「熱い! 熱いィッ!」
「助けてくれぇえ!」
 ごうごうと音とともに狼男たちは炎にまかれ、その熱さと痛みにのたうち回った。
 肉の焼ける臭いがする。狼男たちの身体がジュウと焼け、ただれていく。

382 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:15:35 ID:3/VUBAzF0
『マリアさんを傷つけたお前たちを、絶対に許さない!』
 アレフはもう一度炎を吐いた。先程の炎よりも火力を上げた、灼熱の炎を。
 空を燃やすほどの炎。それはもがき苦しむ狼男たちを飲み込み、黒い炭へと変えた。
「ヒィッ!」
 一部始終を見ていた妖術師は、そのあまりにも圧倒的な力の差におののき逃げ腰になる。
『……っ』
 消し炭にした狼男たちの残骸を見ると、ちくりと胸が痛くなる。
 モンスターなんだ、モンスターだから。そう己に言い聞かし、アレフは標的を変えた。
 マリアを守るよう背にし、妖術師へとその巨体を向ける。金色に変化した瞳には既に妖術師しか映ってない。
「くっ、おのれ……おのれぇええッ!!」
 逃げたいと思う本能と逃げてたまるかというプライドの間で揺らぐ。
 足下の小石を蹴り上げ地団駄を踏む。その顔は今までよりも更に醜悪に歪んでいた。
「マヌーサァ!」
 惑わしの霧が杖の先から発生しアレフを包むが、アレフが大きく首を振ると霧はたちまちに散開した。
 その間もアレフの目は妖術師から離れない。金の視線は妖術師を貫く。
 アレフは後ろ足で立ち上がり、ブゥンと尻尾を降って妖術師の乗っている祭壇に衝撃を与えた。
 そのあまりもの揺れに、幻術師はその場を動くことができなかった。
 幾度目かには大きな亀裂が入り、轟音とともに祭壇は大小様々な破片となって崩れていった。
「なっ、ぎゃぁぁあああ!!」
 足場を亡くした妖術師は重力に逆らえるべくもなく地面へと落下していった。
 ズン、ドグチァ。落ちた上から祭壇の破片が降り注ぎ、妖術師は破片の下敷きになった。
 重なった石の間から緑色の体液が流れ出ていく。妖術師はそのまま息絶えた。

383 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:16:30 ID:3/VUBAzF0


「グルルルル……」
 地に倒れ伏しているマリアの前で、アレフは呪文も解かずに為す術もなく立ちつくしている。
 いや、”解かず”ではなく”解けない”の方が正しいだろう。力が不安定らしく、変身を解くことができないのだ。
 敵を倒したのはいいが、アレフは回復呪文を持っていない。
 道具袋の中にあった薬草を使っても治療が追いつかない。
 今はまだマリアに息があるからいいが、このままでは死んでしまう。
『どうしよう、マリアさんが……このままじゃ……!』
 マリアの前で半泣きになっていると、近づいてくる影がひとつやってきた。
 その気配に気づきアレフはそちらへ目を向ける。するとそこにはグレッグの姿があった。
 腕の氷は既に溶けており、自由に動いている。
『グレッグ! 生きてたのか』
 アレフは身構えた。いつでも攻撃に転じることができるよう、呼吸を整える。
 しかし当のグレッグには攻撃する気はないらしい。両手を挙げ降参のポーズで近づいてきたのだ。
「もうおたくらに危害を加える気はねーよ、安心しな」
 出会ったときと変わらない軽い口調で語りかける。だがアレフは気を許さない。
 こいつはマリアさんを襲った狼男たちと同じ種族なのだ。モンスターなのだ。
「この嬢ちゃン、微かに生きてはいるが、このままじゃあちとアブねえな。血が流れすぎてる」
 倒れるマリアの前にひざまずき、状態を確認する。腕を掴み脈をとると、とてもゆっくりとしたリズムだった。
 アレフはとたんに狼狽えだした。どうしようどうしようどうしよう。顔を左右に揺らし落ち着きが無くなる。
「……坊や。この嬢ちゃンを助けて欲しいか?」
 アレンの目が驚きに見開かれる。「本当に?」そう言っているような目だ。
 縋るような思いでアレンは頷く。もう敵であることは関係ない。マリアを助けてくれるのなら。

384 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:17:33 ID:3/VUBAzF0
「グルル……」
「了解。ちょっと待ってろ」
 グレッグはマリアの手のひらを天に向け、なにやら呪文を唱えだした。
 するとぽつぽつと水滴が地面へと落ちてきた。雨だ。グレッグによって雨が召喚されたのだ。
 不思議な雨だ。身体に当たっても濡れることがない。まるで幻の雨に当たっているようだ。
 その雨の雫はマリアの背の傷に染み込んでゆき、みるみるうちに傷が塞がっていった。
 意識までは戻らないが、マリアの顔に赤みが増えていく。
『っ、マリアさん……ッ!』
 アレフはその長い鼻先をマリアに近づけ、擦り寄った。助かってよかったという想いを込めて。
「ふう……これで大丈夫だ。坊や、おたくはどう……」
 治療を終えたグレッグはアレフの方へ顔をやった。
 しかし当のアレフはいつの間にか元の姿に戻っており、その場で気絶していたのだ。
 安心して気が抜けてしまったのだろう。その顔には安堵の表情を浮かべていた。
「……ここまで無防備でいいのかねぇ」
 その光景を見て、グレッグは呆れたように耳を掻き苦笑する。
 静かになった森にアレフとマリア、ふたりの寝息が響いた。

385 : ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:20:28 ID:3/VUBAzF0
投下終了です。
今回はアレフの一人称じゃなくて神視点で話を書きました。

っていうか、途中「アレフ」じゃなくて「アレン」になってる場所があります。
アレンじゃあ2の主人公の名前だよ……
まとめ様、保管庫に入れるときは直してください。すみません。orz

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 00:03:07 ID:eE0i5KeJ0
投下乙です。
グレッグ、なんかいいですね。
早く逃げないと・・・っていうセリフも幻術師が出てくる前に逃がしてあげるつもりだったんでしょうね。
考えてみれば、グレッグさんの言い分も聞かずにこちらから一方的に攻撃してしまったような。

それとドラゴラム、圧倒的ですね。
読んでてもすごい迫力でした。

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 05:45:33 ID:pjc7SiI50
ルビスが出た辺りからふってわいたいやな予感・・・
厨房好みの展開んになってきましたよっと。普通切り札のはずだろ登場早えなオイ。
どうせこれから勇者呪文とか無節操に覚えンだろ。職の概念ないVが下敷きなのはそのためか。
なんでこうホイホイ力をテキトウに力をもらって手軽に強くなるんだろ。レベル幾つなんだよ頭の。
他力本願だな独力でなんとかしようとはおもわんのか、思いつかんのか、おもしろいか。
挙句にわけのわからんオリキャラにオリ呪文かよアホか?
これがゲーム脳かね?わけわかんね。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 09:49:14 ID:+G12BdZs0
>>387
>>69

389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 11:10:56 ID:+XKeG7ksO
というか一人で勝手に続きを予想してそれにケチつけるなんてスゲーな
投下されたものに対する意見だけならまだ許せるけど

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 15:34:14 ID:dZzRIA+uO
>>387これがゲーム脳かね?(笑)

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 16:04:55 ID:vdlhumSi0
みんな落ち着くんだ!
>>387はきっと朝早すぎて寝ぼけながらレスしたに違いない

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 19:42:13 ID:S877CBGR0
ゲーム脳の恐怖・・・・。
Oh!、Noぉぉぉぉぉ〜〜〜〜っ!!!

393 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 20:10:30 ID:+G12BdZs0
実は意外と、読み流しおざなり感想じゃなさげな濃さに思うが。
いや、そうでもないか。

さて、またまったり新作投下を待つとしよう。

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 23:17:42 ID:2ufAussd0
ドリーム少s…いや何でもない

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 23:58:58 ID:oYnUYcuwO
(=ω=.)

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/02(土) 21:54:05 ID:EQKEosTr0


397 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/06/03(日) 22:54:58 ID:7mGjuyeu0
お疲れ様です。
携帯まとめサイトをPCまとめサイトからリンクさせていただきました。

まとめ作業の方はまだ出来ていません。
しばらくお待ちください。

398 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:18:01 ID:VvIV98zV0
お久し振りです、おはようございます
かなり間が開いてしまいましたが
>>173の続きです


399 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:19:45 ID:VvIV98zV0

目を開けると俺は城の外に立っていた。
予想通りだったので動揺はしなかったが、ビアンカは
不可思議そうに辺りを見回して『あら?』と呟いた。
入るときには気付かなかった、城門の内側すぐの小さな観賞用の池のほとりに、
皺だらけで頭の禿げ上がった老人が一人佇み、
俺達はその老人が焚いている小さな焚き火のそばにいた。

『おや、目が覚めたかね』
老人が俺の視線に気付き、しわがれた声で言う。

傷んだはずの腕の痛みは、すっかりと消えてなくなっていた。
触れてみるとすべすべときれいな子供の肌。
疲労していた体も、心も。驚くほどきれいに元に戻っている。
恐怖さえ、僅かな休憩でなかった物のように俺の中から消えている。
そのほとんど気分のいい感覚に、逆に俺は少し気味悪さを覚えた。

寝てる間に変な薬でも飲まされてるんじゃないか。
そんな薬がこの世界にあるのかも判らないけれど。
老人は伺うように俺とビアンカを交互に見、
『この城には幽霊が出るそうじゃから、気をつけなされよ』
言ってほっほっほ、と笑った。

400 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:21:03 ID:VvIV98zV0

『自分のほうが幽霊みたいよね』
とビアンカが俺の耳元で囁いて、俺は思わず笑いそうになった。
ここを後数歩離れた時の、ビアンカの反応が楽しみだ。

期待通りのビアンカの反応をひとしきり(勿論心の中で)笑った後、
俺達はもう一度城に足を踏み入れた。今度は簡単だった。
王の力か、あれだけ固く閉ざされていた正面扉は、驚くほどあっさりとその両の手を解いた。
広間を抜けて真っ直ぐに、俺達は玉座の間を目指した。

出くわすモンスターは敵ではなかった。
呪文を唱える隙も与えず叩き落す。
例え呪文を食らったとしても、覚悟をしていればそれはもう恐ろしいものではなかった。
取り乱すこともなかった。
あの僅かな眠りの中で。何が自分を変えたのか、自分にも測りかねていた。

暗闇に松明の明かりを放って、とうとう俺とビアンカは玉座の間に立っていた。
真っ赤な絨毯と黄金色に装飾された玉座の中央に、
ゴーストの親玉はゆったりと深く腰掛け、こちらを見て微笑んだ。
『ほう・・・、ここまで来るとは。大した餓鬼共だ』
ちらちらと揺れる松明の炎が、浅黒いボスの表情をより不気味に演出している気がした。
つり上がった細い両の目を更に細め、舐めるようにこちらの表情を伺っているのが判る。
時折、暗い色のローブからはみ出した湿った枯れ枝のような細い指で、
持て余すように金の肘掛をかちりと鳴らす。

401 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:22:13 ID:VvIV98zV0

耳元まで避けた口をまた開き、愉快そうにボスはヒヒヒ、と笑い声を上げた。
『ここまで来た褒美に、美味い料理を振舞ってやろうじゃないか。
さあ、こっちに来なさい』
ビアンカは黙りこくり、視線をボスに釘付けたまま首を横に振る。
親玉は目を見開き、威圧を込めた声色で『まさか俺様が怖いのかな?』と言った。
『あんたなんかに従わないわ』
ビアンカがはっきりした声で言う。
ボスはまたヒィヒヒ、と嫌な笑い声を立てると、馬鹿な餓鬼だ、と呟いた。

刹那、世界がぐらりと傾いた。
覚悟はしていた筈なのに、咄嗟の出来事に一瞬、事態の理解が遅れる。
床が抜けたのだと、ボスの足元を通過しながらやっと気付く。
『貴様らに食わせる料理なぞないわ。貴様らは材料―――』

語尾が遠のき、今まで立っていた高さが頭上に消えていく。そして音楽。
物の数秒で大広間を通過し、俺は仄暗い小部屋に尻から着地した。
直後に何かが潰れるような衝撃音と、ビアンカの
キャアとヒャアの間のような悲鳴が耳に届く。

左手に何か柔らかいものがべっとりと張り付いて、俺は手元を見下ろした。
半分腐った果物や、野菜や肉が足元に敷き詰められていて、
それが落下の衝撃を多少和らげてくれたのだろう、
俺の体の下で可哀相なほど無残に潰れ、飛び散っている。
その下には良く割れなかったものだ、白い陶器のような床が見え隠れする。

402 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:23:10 ID:VvIV98zV0

『そ、そんな・・・』
すぐ横で男の声がして俺は振り向いた。
『子供を料理するなんて・・・!私にはできない・・・』
泣き顔のコックが俺の方を見て首を振っていた。
直後、ばちん、と何かが弾ける音がして、コックがひいい、と悲鳴を上げる。

『サン、今のうちに行きましょうよ!』
物語の流れを待っていた俺にビアンカが囁いた。
思わずえ?と間抜けな言葉を返す。
『お化けの親分を倒さなきゃ!なにぐずぐずしてるの?』
ビアンカはもう片足を皿の縁にかけ、今にも飛び降りんという姿勢で俺の腕を引く。
というか、物語を外れるという発想を今まで考えなかったことに、今更ながらに気付いた。
それよりも物語の中のキャラクターであるビアンカが、そんな提案をしていいんだろうか。

呆気に取られている俺に
ビアンカはじれったそうに『なにしてるの?』と声を荒げた。
ああ、うん、と曖昧な返事を返し、どうしようかと思案した刹那
がくん、と足元が揺れた。バランスを崩しかけたビアンカが
悲鳴を上げながら俺の腕にしがみつく。

ぎしぎしと金属が擦れあう音を立てながら、足元の皿が、
正確には皿を載せたゴンドラのようなものが、
ゆっくりとテーブルを離れて持ち上がっていく。
『もう、間に合わなかったじゃない。どうするのよ』
苛立ちを隠さずにビアンカが言った。
ある意味物語の通りなんだけど。俺はちょっと失敗したなあと思っていた。

403 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:32:59 ID:VvIV98zV0

物語を外れたらどうなるのか。そんなこと考えても見なかった。
外れるといっても、お化け退治には違いないからほんの僅かな相違だけれど、それでも。
もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。
ゆっくりと下に流れていくキッチンの壁を見ながら、
俺は言い知れぬ期待が胸に湧き上がるのを感じていた。

頭の中はこの先のストーリーで一杯だった。
浮ついた気持ちのまま三匹の蝋燭を叩き伏せる。
呪文で食らったダメージを薬草で癒し、俺達は再び玉座のフロアへ向かった。
暗闇で松明に火を点しながら、ボス戦に向けて息を整える。

思えば、初めてのボス戦だ。
初めての戦闘・・・三匹のスライムの時に比べれば
多少は経験も積んだし、不安も少ない。
先への期待で揺らぐ集中力を必死で諌めながら、俺は最後のフロアに足を踏み入れた。

先ほどボスが鎮座していた玉座に、今はもう誰もいなかった。
きい、と蝶番が軋む音を立てて、玉座と反対側にある小さな扉が閉まった。
『サン・・・あっち』
ビアンカが声を震わせる。
俺の手を握った指先が震えているのが伝わってくる。
耳の奥で心臓が拍を早め、鼓動が神経を伝い脳まで脈打つようだ。

小さな扉を開けると、冷たい風と雷光が俺を出迎えた。
ごごう、と大きな音を立てて天が震える。

404 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:35:41 ID:VvIV98zV0

ボスは小狭いテラスにもたれ掛かるようにして振り向くと、
『おやあ、奴らはお前達を食い損なったようだな』
待ち構えていたように俺達を見て言った。
風が唸り、松明の明かりが不意に掻き消える。

『ふん、仕方ない・・・俺様が直々に料理してくれるか』
にやあ、と開いた口元から真っ赤な舌が覗いている。
俺はビアンカにちらりと目配せすると、自分の武器を腰紐から引き抜いた。

ざらりと音を立てて、ボスの引きずるほどに長いローブが揺らいだ。
覆い被さるように高く掲げられた両の手から閃光が走る。
ヒィヒヒヒ、とボスの高笑いが響いた刹那、目の前を炎が走った。
ビアンカが悲鳴を上げる。
『人間の餓鬼共が!俺様に勝てると思うなァ』
ボスが吼えるのに呼応するように、天上か雷鳴が降り注ぐ。

ビアンカは怯まなかった。
きっ、と意志の強い瞳でボスを睨み付けると、『なめんじゃないわよっ』と鞭を翻す。
負けじと俺も手にした武器を叩き付けた。鈍い音がしてボスの体がよろめく。
『ヒィヒヒ、やってくれる』
再度呪文の詠唱に入るボスより僅かに早く、ビアンカが叫んだ。
炎の塊が空を切り、ボスの顔面に吸い込まれる。

405 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:37:20 ID:VvIV98zV0

ギャア、と嫌な悲鳴が雷鳴に掻き消える。ボスはまだ倒れない。
ローブの奥まで切り裂くように俺は力を込めて武器を振り下ろすが、
致命傷を与える前にその腕に振り払われた。
間髪いれず追ってくる一撃を避けきれず、俺は固いタイル張りの床に叩きつけられる。
『この餓鬼共がァ!やってくれるじゃねえか!』
ボスがもう一度何か唱えた。
今度はテラス一面を覆うような大きな炎が、俺達を包む。

がくん、と、膝が落ちるのが自分でもわかった。
辺りには埃の焦げたようなすすけた匂いが立ち込めている。
俺より少し前方に、一瞬尻を着いたビアンカが身を起こしまた駆け出すのが見えた。
反射的に俺は呪文を唱える。
ビアンカが振り返り『ありがと』と言った。
攻撃呪文のように目に見える効果がわからないから心配だったが、
回復呪文はちゃんとその効果を発揮したようだ。
ビアンカの持つ鞭が天に大きく翻る。

振り下ろされるボスの鋭い爪先をひらりとかわすビアンカの姿を確認しながら、
俺はもう一度呪文を唱えた。
体の痛みがすう、と引き、俺は武器を取り立ち上がる。

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 10:09:15 ID:KNhGhnufO
支援です

407 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 19:27:49 ID:O9p9uTom0
投下乙です!
いよいよ初のボス戦、クライマックス直前!
続きめっさwktkです。

408 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/06/04(月) 21:21:17 ID:MauHMLqg0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
このカキコミからおよそ3分で更新完了します。
書き手さんの指示してくれた修正点は反映しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

また、まとめサイト内のナビゲーションリンクが今日まで間違っていたのをお詫びします。

409 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:10:06 ID:9aMesSF60
>>399-405
> もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。

今後のことを考えるともの凄いwktkです。なんか今から緊張してきたw
続き期待してます。

410 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:57:03 ID:/plKNQHo0
重婚展開wktk

411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/06(水) 13:25:45 ID:R7WDkLzg0
期待ほしゅ

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/07(木) 22:48:08 ID:vF5NT0yHO
投下待ち保守

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/08(金) 18:37:57 ID:bOOjCgdRO
保守

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 00:28:58 ID:jCDxDa7WO
ほっしゅ

415 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:02:26 ID:PtFsKJ270
前回のあらすじ>>365-368

 こんにちはこんばんは、俺です。
 昨日はミヤ王を仲間にした後、宿屋で泥のように眠りました。
 平日は日がな一日パソコンとにらめっこしてるような事務職、休日は2ちゃんやゲームが大好きなインドア派。
 全身筋肉痛なのは実に当たり前。……元の世界に戻れたらジムに通おうかなあ。

 そんなわけで俺は今、ミヤ王と一緒にマイラの村に向かっている。
 今のところ出てきたモンスターはスライム、ドラキー、ゴーストといった雑魚のみ。
 ミヤ王のおかげで楽勝www楽しちゃってサーセンwwwwwwwwwwwwwww

「お前は戦いは不慣れなのか?」
 そう訊いてきたのはラダトーム平野とマイラの森を結ぶ橋を渡ってからのことだ。

「やっぱわかるもんなのか?」
「ああ。実戦慣れもしてないが、モンスターの死に対してすら慣れてないようだからな」
「…………」
「図星か」

 そう、俺はまだ殺すことに慣れていない。
 今まで戦ってきた敵は『倒して』終わり。
 完全に『斃して』はいない。

 ミヤ王がドラキーを『斃した』時、無様にも吐き出した。
 滑らかな切り口とすら言える断面から覗く内臓は、健康な人間のそれと同じ色。
 限りなく黒に近い紫色の血。いや、ありゃ体液か?
 鋭利に切断された白いものは骨だろう。
 地面に落ちたショックで飛び出た眼球は白い糸を引いていた。
 鳴き声を発しながら二度三度と痙攣して動かなくなる様を直視することができなかった。

 これが『死』なんだ。

416 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:04:32 ID:PtFsKJ270
 新聞を見ればどこかの国でテロや戦争で死者が出たと載っている。
 テレビをつければ他県の殺人事件の特集を組んでいる。
 だが、俺にとっては『どこかの国』であり、『他県』でしかなかった。
 自分とは無縁の世界の出来事なんだと無意識に思っていた。
 新聞を折り畳めばテロや戦争の記事は目に入らない、テレビを消せば殺人事件の続報は入ってこない。
 決して忙しいとは言えない日常の中で忘れられていくだけの出来事。
 俺にとって『死』とは身近なものではあったが、現実とは遠いところにあった。

 以前、ディルレヴァンガーと名乗る気違いが猫を殺した事件があった。
 ネット上に上げられた殺害の過程の画像は俺も見た。
 すぐに画像を閉じ、なんてことをしやがると憤ったこともある。
 だが、画像を開いたのは俺の意思だ。
 騙したわけでも騙されたわけでもない。
 ディルレヴァンガーが逮捕された時、ニュー速+のスレに誰かがリンクを貼った。ただそれだけだ。
 俺は自分の意思でそれを見たのだ。

 子供の頃、蟻の巣に水をぶちまけたことはある。
 大人になってからも蚊を叩き潰したり、殺虫剤を使ったこともある。
 車に轢かれた猫の死骸を見たこともある。
 だが、それでも俺は自分とは関係ない世界の出来事なんだと思っていた。
 俺にとって、 『殺す』とは無縁の世界だった。

「襲ってくる魔物はためらわずに殺すことだ。そうしないと自分が殺されかねない」
「……ああ」
 それは俺もわかっている。
 この世界では俺のいた世界の常識は通用しない。
 覚悟を決めなきゃ生きていけない。
 動物を殺すのは可哀相と言うのは簡単だ。
 何しろ、自分の命がかかっていないから。
 自分の安全が保障されている世界では真っ当な話だ。
 しかしここでは自分の安全は保障されていない。己の身を守るのは己しかいない。
 ここでは人の命も魔物の命も全てが平等なのだから。

417 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:06:46 ID:PtFsKJ270
「今ここで実戦経験を積むのもいいが、ゆうていと合流してからの方が安全だ」
「なして?」
「ゆうていはホイミが使えるからな」
「みやおうは使えないのか?」
「自慢にならんが魔法の才能はゼロだ。魔力そのものがないらしい」
「魔力の有無なんてわかるもんなのか。俺はどうよ?」
「ある程度魔力を持っていればわかるらしいんだが、俺は全くないからお前が魔法を使えるかどうかはわからんがな」
「ダメじゃん」
「そう言うな。キムこうならわかる」
「キムこうは呪文使えるのか?」
「ああ。ゆうていはそこそこの魔法しか使えないが、キムこうはかなりの使い手だ」

 みやおう=戦士、ゆうてい=魔法戦士、キムこう=賢者。
 この認識でいいのだろうか。
 だとしたらバランスの取れたパーティーだ。
 不安要素は……俺、だよな。
 うん、頑張ろう。

「実戦に勝る修行なしってことだな」
「お前の世界ではそんな言葉があるのか?」
「by躯」
「?」
「……スルーしてくれ」
 ま、要は『飛影はそんなこと言わない』ってことだ。
 わかる奴だけニヤリとして欲しい。

「マイラに向かいながら実戦慣れでもしていくか?」
「何もしないよりはマシかもな。危なくなったらフォロー頼む」
「任せておけ。――タイミングよく大さそりが現れたぞ」

 ゲームと違って結構グロい上にデカくね?
 つうか、怖えーよ!

418 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:09:36 ID:PtFsKJ270
「だああ!」
 地面を素早く移動する大さそりを叩き潰す。
 棍棒を通じて殴った衝撃が俺の手に伝わる。大さそりというモンスターの生を奪う感触。
 しかし怯んではいられない。

「浅い!」
 ミヤ王の言葉通り、一撃を食らった大さそりは持ち前の堅さで持ちこたえていた。
 俺の攻撃を屁とも思わぬ動きで砂塵を巻き上げ、視界から消えた。

「しまっ……」
 背後を取られた俺めがけ、尾が伸びた瞬間――
 ミヤ王の一閃。
 大さそりはきれいに半分になっていた。

「サンキュ、助かった」
「気をつけろ。大さそりの外殻はスライムやドラキーの比じゃないからな」
「棍棒じゃ無理か?」
「鍛えればそのうち素手でも貫ける」
「いやいやもっと無理だから」
 そこで見ていろ、との言葉とともに俺に剣を預け、また新たに現れた大さそりと戦闘に入る。
 先の大さそりが斃されたことに腹を立てているのか、大さそりから攻撃を仕掛けてきた。
 ハサミの攻撃を難なくかわし、大股で大さそりに近づくミヤ王。

「ふっ――」
 軽い呼気をもらしただけで、ミヤ王の五指は大さそりを貫いていた。
 あんぐり、の表現はこういう時のためにある。
 まさしく俺はあんぐりと口を開けてミヤ王を呆然と見ていた。

「意外に簡単だろ? さ、やってみろ」
「できるかボケ!」
 みやおう=バトルマスター。
 こうですか!わかりません><

419 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:11:35 ID:PtFsKJ270
 マイラの森に棲む魔物が、素手で大さそりを貫いたミヤ王に恐れをなしたのかどうかはわからない。
 だが、あれから魔物とは一匹も出会わずにマイラの村に到着した。
 途中、野宿したり大さそり相手に苦戦したりゴーストの帽子を取ってハゲなのを確認して大笑いしたり
 スライムを蹴り飛ばしたりミヤ王が百円ライターに感激したりしたが、大して重要なことではないので割愛させていただく。

 普通に歩いてガライから丸一日以上かかった。
 地図で見ると近いが実際は遠いもんだ。ラダトーム→ガライ間をおよそ40分で爆走したのが信じられん。

「ここがマイラか……」
 ラダトームやガライでも思ったが、ゲーム上で見るのと実際に見るのとでは全然違う。
 ゲームではただの緑が多い村でしかないマイラの村は、実に自然豊かな村だ。
 風がそよぐと草花の揺れる音、仄かに香る木々の香り。
 日本では失われているもの――自然との共生がここにはある。……っと、マイラの村に圧倒されている場合じゃないな。

「ゆうていは中央の広場近くだ」
「広場近く……」
「もしかしてあそこにいる戦士じゃね?」
「ゆうてい!」
 俺が指差すよりも早くミヤ王が走り出した。

「……みやおう?」
 戦士は、みやおうの声に驚いた表情を浮かべている。
 どちらかといえば軽装のミヤ王に対し、防具で身を包んだ戦士。
 もし仮にミヤ王がいなくても、彼がゆう帝だということはすぐにわかった。
 やや薄めの頭がその決め手――と言ったら現実世界の堀井雄二は怒るだろうか。
 間違いない、彼がファミコン神拳の一人、ゆう帝だ。

ゆう帝のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたたっ
素早さ:あたたたっ
髪の毛:あっ……ごめん。――ハゲは病気じゃないよ!悩み無用!!

420 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:19:01 ID:PtFsKJ270
ここで投下終了です。

>>408
お疲れ様です。
まとまっている自分の分を見てニヤニヤさせてもらっています。

421 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 13:30:12 ID:4kXMdp+5O
乙!ステータスに噴いたw

422 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:15:24 ID:AI+IYRnv0
 前回のあらすじ>>415-419

 こんばんは、俺です。
 ついさっきの話ですが、ゆう帝が仲間になりました。
 包み隠さずに全てを打ち明けた俺に対し、ゆう帝は快く協力してくれると言ってくれました。
 さすがはドラゴンクエストの生みの親。心が広い。
               . -―- .
             /       ヽ
          //         ',      俺の言葉を
            | { _____  |        平然と信じてくれるッ!
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′     そこにシビれる!
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ     _ _      あこがれるゥ!
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ


 そんなこんなで今は二人と別行動。
 積もる話もあるだろうし、俺に対する話もしてるはず。
 んで、今の俺は何をしているかと言いますと。
 THE・入浴。
 マイラの村といえば温泉ですよ温泉。
 もっと言うなら混浴ですよ混浴!!ヒャッホーイ!!1!11!

423 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:18:44 ID:AI+IYRnv0
 わたくし思うに、風呂に水着を着て入るといった行為は許されないことなのですよ。
 肌着ですか?あれもダメ。風呂を温泉を混浴を、いや、それ以上に色々と期待する男達を裏切る行為じゃありませんか!
 もしあなたが女で、水着を着て混浴に入ったとしましょう。
 オンドゥルルラギッタンディスカー!!と叫ばれること間違いありません。誰も叫ばなくてもこの俺が叫ぶ!
 とまれ、混浴に対する冒涜行為を減らすため、こうしてマイラ温泉(たった今命名)に浸かっているわけです。
 べ、別に女の裸が見たいからじゃないんだからねっ!

 茹でダコのように真っ赤になった俺が温泉から上がったのは2時間後のことである。
 いや、わかっちゃいたんだけどね。
 わかっちゃいるけどやめられなねぇって植木等さんだって言ってるじゃないか。
 はあ……現実は厳しいよ。

『キャー! のび太さんのエッチ!』
 みたいなイベントがあったっていいじゃない。そのくらい夢見たっていいじゃない。
 あのメガネにはあって俺にはない。
 あれか、俺の机の引き出しがタイムマシンの入り口じゃないからなのか?
 現実は厳しいねえ、厳しいよ。


 ……取り乱しすぎた。
 ここ数日、風呂にさえ入ってなかったことを考えると、久々の入浴ができたと思えばそれでいい。
 うん、それでいいのさ。
 うん……。

 ションボリと宿屋に戻った俺を迎えたのは、実戦慣れのためにしばらくマイラに逗留しようと言ってきたミヤ王とゆう帝だった。
 てことは、もしかしてまだ温泉に入れるってことでFA?
 キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

「やってやるぜ!」
 矢尾一樹ばりの声でガッツポーズまで決めた俺。
 ドン引きされてるのは仕方がない。
 明日からの混浴――もとい、修行を考えると身が引き締まる思いだ。うん、ホントに。

424 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:21:46 ID:AI+IYRnv0
 翌日。ミヤ王、ゆう帝の宣言通りにマイラ周辺で魔物相手に実戦を始めていた。
 この周辺の魔物はスライム、スライムベス、ドラキー、ゴーストに加えて大さそり、魔法使い、メイジドラキー、骸骨である。

「注意するのは魔法使いのギラと骸骨だな」
「ギラ自体は大したダメージにはならないし、ギラを浴びてもすぐにホイミをかけるから安心してください」
 できるか。俺は超人じゃねえんだ。
 そもそも、俺とお前らとのレベル差を考慮しろ。
 ある程度は戦えるといってもスライムやドラキーを相手にした場合だぞ。

「だから、ここいらの敵に苦戦しない程度まで強くなるんでしょう」
「ギラ程度のダメージを恐れるようではこれから先厳しいことになるぞ」
 それを言われると困る。
 俺が戦う相手の竜王はベギラマや火炎の息を平然と吐いてくるような化物だしな。
 ダースドラゴンやスターキメラ、死神の騎士の攻撃なんかは今までよりもずっと痛いんだろう。

「こうなったら腹括るか。本当にすぐに回復頼むぞ?」
「任せてください。ギラ程度のダメージは簡単に治してみせますよ」
 すぐに回復しろよ、すぐに回復するんだぞ、と何度も確認しておきたいがやめておいた。
 俺はダチョウ倶楽部じゃないんだ、ネタ振りと勘違いして回復されなかったら大変だ。
 ――などとバカなことを考えていると魔法使いが現れていた。
 くそ、本当に出てくるんじゃねえ。

「うらあ!」
 魔法使いがギラ放つ前に先制攻撃。
 一撃入魂の棍棒を振りかぶって、そのまま魔法使いの頭上へ――!

 棍棒が根元から折れたと理解したのは、魔法使いが死の間際に放ったギラを無防備な体で浴びてからのことだ。

 棍棒蛾物故割れたwwwwwwwwwwww
 なんて草生やしてる場合じゃねえな。

425 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:23:56 ID:AI+IYRnv0
「……マジ?」
 半ば呆然と口にしたのはミヤ王が魔法使いをぶった切ってからのことだ。
 手元には剣で言う柄の部分しかなく、釘が生えている棍棒は足元に転がっている。
 こうなってしまっては、棍棒もただの釘の生えた塊でしかない。
 焚き木くらいには使えるだろうが武器としては無理だよなあ。

「棍棒ってこんなに簡単に壊れるもんなの?」
「メタルスライムを叩いても壊れないくらい頑丈にできてるはずですが……」
「じゃあこれはどういうこと?」
「元々壊れてたとか……」
「買って5日目なのに?」
「……武器屋に行くか」

 マイラに置いてある武器は銅の剣か鉄の斧……だったな。
 ゲームなら攻撃力の面で鉄の斧一択なんだが、実際はそうはいかないらしい。
「戦いのスタイルは武器によって変わるといっても過言じゃない」
 とのことだ。
 殴ることを主体とした棍棒と斬ることを主体とした剣では確かに戦闘スタイルが違う。
 だが、鋳型に青銅を流し込んだだけの銅の剣よりは鉄の斧の方が……。

「剣ならあることはありますよ」
 武器屋に向かう最中、ゆう帝が言った。

「マジで?」
「ええ」
「なんだよー、最初から渡してくれよー」
「ですがね……扱いにくいんですよ」
「ああ、アレか」
 躊躇うゆう帝に、何か知っているかのようなミヤ王。
 まさか破壊の剣ってオチはねえだろうな。

426 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:27:07 ID:AI+IYRnv0
「この剣だ」
 ゆう帝が宿屋から持ってきた剣は変わった形をしていた。
 変わったと言っても、剣の先がバイブになってるわけでもミサイルが出てくるわけでもない。
 濃いオレンジ色の刀身は、燃え盛る炎の形を象っていた。

「炎の剣……か?」
「知ってるのか?」
「いや……」
 公式ガイドブックで見ただけだがそんなこと言えるはずもなく曖昧に言葉を濁す。

「以前メルキドの旅商人から買ったんだが、どうも扱いにくい剣でな」
「私達向きの剣ではないから売ろうかどうか迷ってたんですよ」
「試してみるか?」
 手渡された炎の剣は見た目よりは軽かった。
 喩えるなら……すまん、思いつかない。そもそも何を喩えようとしたのかもわかんね。

 気を取り直し、炎の剣を構えて振ってみる。
 ――軽い。
 金属を使ってるはずなのに棍棒と同じくらいの重さでしかない。
 もしかしてミヤ王の装備している鋼鉄の剣より軽いんじゃないだろうか。

「随分軽々と……」
「扱ってますね……」
 ミヤ王とゆう帝には悪いが、どこが扱いにくい剣なのかわからない。
 剣なんてのは小学生の頃に傘でアバンストラッシュした程度だが、これは扱いやすいってことくらいわかる。
 もしかしてこれが装備できる奴とできない奴の違いってことか?

「ついでに試し切りもしてみては?」
 二人の間では炎の剣は俺が使うことになったようだ。
 異論はないし、返せといったところで返す気もないがね!
 故人曰く――『お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの』
 ビバ!ジャイアニズム!!

427 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:28:06 ID:AI+IYRnv0
 結論から言おう。炎の剣は使いやすい。
 試しに魔法使いや骸骨と戦ってみたが、面白いほどサクサク斬れた。
 ちなみにギラは多少食らったが想像していたほどのダメージではない。痛いし熱いけど我慢すれば何とかなる。
 俺のレベルが上がったからかもしれない。
 もしかしたら竜王斃せるんじゃね?
 みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwwwwwwwwwwww

「落ち着け。今竜王に挑んでも死ぬだけだ」
「ですね。強いのは炎の剣のおかげですし」

        盛
             り
                 上
                     が
                        っ
                          て
                           参
                             り
                              ま
                               し
                               た

 俺涙目wwwwwwwwwwwwwwwwww
 大人しく魔法使いや骸骨相手に実戦経験でも積むとしよう。

LV:9
HP:30/34
MP:20/20
攻撃力:54 防御力:23 素早さ:11
E:炎の剣 E:ジャージ+皮の服 E:皮の盾

428 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:35:08 ID:AI+IYRnv0
といったところで投下終了です。
次回はマイラで一イベント終わらせてからリムルダールに行く予定です。

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/10(日) 01:58:56 ID:aQlYW0gL0
投下乙!
主人公の俺TUEEEEEEEワロスw

430 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 12:48:05 ID:ihFODq/x0
>傘でアバンストラッシュ
あるあるwww

431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 13:40:44 ID:H6DX5WZNO
俺はモップでブラッディスクライドだっちゃ。

432 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 00:59:22 ID:hEAtUHAi0
◆IFDQ/RcGKI氏の続きも気になる。

433 :Stage.5-1 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:28:43 ID:gSbhhAoC0
うは、投下しにきたらすごいタイミングだww
>>432さん
ご期待いただいて光栄です。お待たせしてすみません。

ところで、
「ゲームサイドの携帯の充電はどうしてるのか?」
というご質問が来ましたので、当事者たちに聞いてみました。


アルス「あ、当事者って俺らか」
タツミ「実は僕も気になってたんだよね、携帯の充電。これどうなってんの?」
アルス「んなもん決まってんだろ、お前どこに飛ばされたと思ってんだよ」
タツミ「じゃあ、この電池残量のマークに重なってついてる『M』ってのは……」
アルス「当然『MP』だろ。使う人間の」
タツミ「なるほどー。って、僕にMPなんてあったの!?」
アルス「知らん。お前のステータス見てねえからわかんねえや」
タツミ「遊び歩いてないでちゃんとモニタリングしてくれよ。
   こっちからは客観的な数値がわかんないんだから」
アルス「うるせえ命令すんな。だいたい俺、お前にクリアさせる気ねえし」
タツミ「それ以前に僕が死んだら君もくたばるってこと忘れてない?」
アルス「ほぉ、死ねるモンなら死んでみろ」
タツミ「実際そうなりかけたら大慌てのくせにねぇ」
アルス「なんだと」
タツミ「なにさ」


……なんか脱線してきたので本編に参ります。

434 :Stage.5-1 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:30:01 ID:gSbhhAoC0
 前回 >>293-305
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 ----------------- Game-Side -----------------

「もう二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!」
 怒鳴り散らして通話を切り、直後、僕は壁に背をつけてずり落ちるように座り込んだ。
 バカなことをしたのはわかってる。電波状況が最悪のこのダンジョンで奇跡的につな
がった瞬間だったってのに、なんで切っちゃってるんだよ僕。
 まあ今のこの状況で、電話越しのナビがどの程度役に立つかは疑問だけど――。
 すぐに「圏外」表示に戻ってしまった携帯をぼんやり眺めた。ここは、そこら中に散ら
ばる白骨死体がぼんやりした燐光を発している以外、いっさい光の差さない闇の回廊。小
さなモニターから漏れるわずかな明かりさえ、まるで太陽みたいにまぶしく目に映る。
「……ゆ、勇者様……?」
 エリスが身を起こして、不安そうに僕を見上げた。携帯を閉じる。
「ああ、ごめんね。なんでもないよ」
 腕を伸ばし、その頬に手を当てながら「大丈夫だよ。大丈夫だから」と何度も繰り返し
て言ってあげると、彼女は微笑んで、また目を閉じた。

 冷たい石畳に僕のマントをひいて、エリスはぐったりと横たわっている。
 さっき火炎ムカデにやられた彼女の右足は焼けただれ、真っ赤に腫れ上がっている。手
持ちの薬草で簡単な応急処置はしたが、早くロダムに回復してもらわないとまずい。
 ロダム、サミエルの2人とはぐれて、どれくらい経つのか。現実の時刻を示すだけの携
帯じゃよくわからない。このダンジョンに入った時間を考えれば、もうじき外は日暮れ頃
だろう。昼間でも肌寒かった気温はますます下がってる。これからもっと冷え込むんだろ
うか。

 まったく。16歳の健全男子が可愛い女の子と暗闇で二人っきりだっていうのに、まるで
色っぽい思考に走れないって、なんなんだろうね。
 生き残ることしか頭にないって――そんな状況って、なんなんだよ。

   ◇

435 :Stage.5-1 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:33:27 ID:gSbhhAoC0

 ロマリアから使者が馬を飛ばして追ってきたのは、僕たちがアッサラームまでまだ3分
の1も来ていない森の中で、早々に野営準備を始めた頃だった。

 二つに斬られて のたうつ魔物〜♪ 飛び散る内臓や 跳ねる血しぶき〜♪
 呪文でバラバラ 見る影もなく〜♪ 勇者がまたもや うしろで吐いた〜♪

 近道しようと公道をそれたせいか、あの後、何度もモンスターと戦うことになった。
 慣れる間もなく次々に惨殺シーンを見せつけられ、かといって戦闘を任せきりにしてい
る仲間に申し訳なくて目をそらすこともできず、吐く物もなくなって完全にグヘ〜となっ
てしまった僕を心配し、まだ早いけど今日はここでキャンプをしましょう――という運び
になったのである。なんとも情けない。
「どうかお気になさらずに。まだ1日目なんですから、当たり前です」
「ありがとう。本当にごめん、必ず近いうちになんとかするから」
 正直なところ僕「血」はダメなんだよ。ホラー映画もサイコ系は平気だけど、スプラッ
タは気分が悪くなって観られない。いざとなればなんとかなるかなーと思ってたんだけど、
なんともならなかった。人間、簡単には変われないもんだね。

 そこへ息を荒くした人馬が走り込んできたのだ。
「ゆ、勇者様でいらっしゃいますね!?」
「そうだけど……」
「良かった、間に合った!」
 国に使わされたのではなく、ある人からの個人的な使者だというその青年は、封蝋もさ
れていない書状を僕に押しつけるように手渡してきた。
 この場で読んでくれ、と急かされて、目を通した僕は思わず舌打ちした。
「どうなさったんです?」
 声を低めるロダムに、黙って書状を回す。
「なになに……魔法の鍵を壊した? 勇者様が!? どういうことですか!?」
「罪をなすりつけられたんだよ。ま、きっかけを招いたのは僕だけど」

436 :Stage.5-1 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:36:31 ID:gSbhhAoC0

 ポルトガとの重要な陸路であるはずの関所が、何年も閉鎖されているのは不思議だった
が、なんのことはない。
 ロマリアの現国王が、イシス女王から親善の証として贈られた「魔法の鍵の複製」をダ
メにしちゃって開けられなくなっていたのだ。当然、んなアホな失態を表沙汰にはできな
いから、適当な理由をつけて閉鎖していたらしい。
 ところが僕が開門命令を出したので、ポルトガとの交易を望む商人を始め、国民は大喜
びした。王様が戻ってすぐに撤回されたが、そりゃ不満の声も出てくるだろう。
 今まで閉鎖理由を心底では納得していなかった国民は事実を疑い始め、困った王様は、
「勇者が国王代理を務めている間に勝手に持ち出して壊しおったのだぁ!」
 と思いっきりデタラメこいてくれたのだった。小学生かおまいは。

「んで僕たち、お尋ね者になっちゃったワケだ」
「もちろん勇者様に咎はございません。真実をご存じの前国王様も、まずは勇者様に事の
次第をお伝えし、ご助力差し上げよと私を派遣なさったのです」
 助けたい、ねぇ。
「でもこの手紙の内容だと、結局僕たちが責任を取るんじゃないの?」
 “追っ手は差し止めておくから、その間にピラミッドから『本物の』鍵を取ってくれば万
事解決だよ” ってアンタ、アドバイスにかこつけた命令じゃないか。
 僕がジトーッと横目で睨むと、使者の青年は済まなそうに目を伏せた。
「行くことないッスよ! 真実を話して本人に責任を取らせればいい」
 サミエルがそう息巻くのももっともだ。エリスもロダムも難しい顔をしている。

 だが僕はその時、もう少し別の観点から物事を考えていた。

 ――たぶん僕が懸念していた通り、このイベントはカットできないのだろう。
 だから本来のシナリオに対し、本当に飛ばしても構わないノアニールの話はその片鱗も
出てこないし、魔法の鍵にいたってはやや強引とも思える選択肢がここに用意された。
 「はい」と「いいえ」。僕の中なにか予感めいたものが「断るな」と告げている。
 ここで無理に断れば、物語が破綻して身動きが取れなくなってしまうような……。

437 :Stage.5-1 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:38:48 ID:gSbhhAoC0

「わかりました。お引き受けしましょう」
「勇者様!」
 そろって抗議の声をあげる3人に、僕は苦笑を返した。
「仕方ないよ。どちらにしても鍵は必要なんだから、僕たちが責任を取ってなんとかする
のが一番すっきり治まる。一度そう発表されてしまった話を二転三転させても、ロマリア
国民の不安を煽るだけだしね」
 それから小声で、
「ヘタに言い訳したって話がややこしくなるだけだしさ。鍵さえ手に入れば、今度はこっ
ちから王様に『いろいろ』お願いできるかも?」
 とたんに3人の目がキラーンと光る。

 薄ら笑いを浮かべ合う僕たちには気付かず、使者の青年はブワッと涙を溢れさせた。
「すばらしい、さすが勇者様です! 感動です! あの、これ!」
 ふくろからゴソゴソと引っ張り出してきたのは、キレイな装飾の腕輪だった。
「前国王より預かって参りました、『星降る腕輪』というものです。不思議な力が込めら
れているそうで、きっと勇者様の冒険をお助けしてくれるだろうと」
 ほお、ここで手に入っちゃうんだ。話が話だけにイシス女王に挨拶には行けないから、
さっき引き受けた時点でコレは諦めていたんだが。
「そしてこれがですね……」
 使者の青年はさらになにか取り出して、満面の笑みで差し出した。
 今度はなんだろう。前国王ってばなかなか気前いいじゃん。
「ピラミッドの場所を記憶させた特別なキメラの翼です。追っ手をとどめるにも限界がご
ざいますし、すぐにも向かった方がよろしいかと」
 ちょ、待てコラそっこう行けってかww

 そうこう言ってる間に、遠くにロマリアの旗を掲げた一団が現れた。本当に追っ手を差
し止めていたのか? なんて考えるだけムダだ。王族なんてもう信用ならない。
 僕たちは慌てて、渡されたばかりのキメラの翼でピラミッドに飛んだ。

438 :Stage.5-1 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:44:00 ID:gSbhhAoC0

   ◇

 乾燥したきった空気と照りつける日差しの強さは、想定していたから驚きはしなかった。
 砂漠とはこんなものなんだろう、と認識するに留まる。問題はピラミッドだ。
「結構……きれいなんだね」
 本物は観たことないが、現実側のそれはしょっちゅうテレビで紹介されている。今その
通りの光景が目の前にあり、それがかえって僕に奇妙な感想を抱かせた。
 観光名所として手入れの行き届いているエジプトの王墓ならともかく、こちらはもっと
自然のままに、砂に埋もれたり崩れたりしているもんじゃないのかな。
「きっとイシスの人間が、定期的に清掃を行っているのかもしれませんね」
 王墓なのだからあり得そうだが、そう言うエリスも腑に落ちない顔をしている。国が管
理している遺跡に、他国の冒険者が土足でズカズカ入り込むことを黙認するだろうか?

「あ、そうだ」
 僕はロマリアでくすねてきた紙の巻物を取り出した。この世界は羊皮紙が一般的だが、
普通の「紙」の方がインクのノリも良いし薄くて軽い。でも高くてなかなか手に入りにく
いから、ここぞとばかりクスねてきたのだ。
 巻物には、これから向かうことになるダンジョンのマップが描かれている。ロマリアに
泊まった夜に、僕が事前に描いておいたのだ。
 最初の方にピラミッド内部の簡易図もある。念のため描いておいたけど、まさかこんな
に早く使うことになるとは思わなかった。
 そこをビリッと破ってロダムに渡す。僕は頭に入っているから、実質2枚の内部図を分
けて持つことになる。
「これもルビス様のお告げですか? どれが人食い箱かもわかるのですね」
 ロダムが苦笑する。
 まあ自分でもちょっと異常な気はするけど、そこは気にしない気にしない。

 その他、簡単に打合せを済ませて、いよいよピラミッドへ突入だ!

 
 と、勇んで踏み込んだは良かったが……。

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:45:07 ID:s/zle9kv0
さるさる回避

440 :Stage.5-1 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:46:29 ID:gSbhhAoC0

 中に入った瞬間だった。いきなり僕たちのうしろで「ズゥゥン!!!」と大きな音がした。
「うそ、閉じこめられた!?」
 こんな演出、ゲームにはなかったはず。
 わずかな明かり取りの窓から入る光だけとなり、視界の明度が一気に落ちる。サミエル
が手早くたいまつに火を灯すと、それが合図だったように、暗がりから大量のモンスター
が襲いかかってきた。

 それでも普通に戦闘をこなすだけならば、出発時よりさらにレベルが上がっているエリ
スたちの敵ではない。
 中も存外に広い造りで、人が3人余裕で並んで歩けるくらいの通路が真っ直ぐに続いて
いる。天井も高く、これくらい広さがあれば互いにカバーしながら戦える。余裕のはずだ。
「持つよ、気をつけて」
 僕がサミエルからたいまつを受け取ると、彼はニカッといつものいい笑顔を見せて、前
に出た。

 だが、切り込みを買って出たサミエルが、何歩か進んだそのとき――。「うあ!」と叫
んで剣を取り落とし、彼はその場に倒れ込んでしまった。
 エリスが慌ててベギラマを唱え、倒れた戦士に群がるミイラたちを牽制する。
 駆け寄ってたいまつをかざすと、サミエルの脇腹に数本の矢が刺さっていた。

「トラップ……?」
 全身から血の気が引いた。
「みんな伏せてぇ!!」
 エリスとロダムが弾かれたように身を伏せる。瞬間、風を切る音がいくつも聞こえ、近
くまで寄っていた蛙型のモンスターが真っ二つになって吹っ飛んでいった。今度は矢では
なく、巨大な刃物のようなものが横切っていったのだ。
 入り口からたいした進んでもいないのに、ここまでのわずかな距離に、一撃で命に関わ
るような罠がいくつも仕掛けられているのだ。
 なにこれ。話が違いすぎだろ?

441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:47:24 ID:s/zle9kv0
支援

442 :Stage.5-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:49:35 ID:gSbhhAoC0
本日はいったんここまでとなります。
あんまり間が空きすぎるので、
今回から小分けして投下してみることにしました。
7/12-12/12は数日後に。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:58:12 ID:s/zle9kv0
新作GJ
ピラミッドのトラップ怖いな。
窮地に追い込まれたタツミが、これからどう行動するのか気になるw
続きwktkしながら待ってますねw


444 : ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:59:57 ID:gSbhhAoC0
>>439
支援ありがとうございます。

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 19:02:59 ID:A1yrz2fxO
うはww
新作の投下超ナイスタイミング。
なにはともあれGJです。

446 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:50:17 ID:WcZO1yAJO
苦しい!息ができない!身動きがとれない!右も左も上も下もあったもんじゃない!
光はどっち?
もがけばもがくだけ、絡 ま っ て …

ふっ、と浮き上がるように目が覚めた。
妙に胸が騒ぐ。焦躁。幻想?
額に手を当てると酷く冷たく濡れていた。
気をやれば、全身が汗でびっちょりなことに気付く。
――夢か。
ビビった!いやまじで。死ぬかと。もう死ぬかと。
いや、でもありえないよね、いきなり海で溺れるとかさ。
海なんてもう5年は行ってないんだぜ。ありえないんだぜ。
と、安心しようとする私を、打ち落とす事実。
嫌でも鼻につく磯の香に、波の音。そしてこの見知らぬ部屋の窓から、望むこのオーシャン…ビュー……
「やってらんないんだぜ!」
夢だと思い込もうにもこのハイクオリティ!
いくら私が想像力(妄想力)豊かな花の16歳とはいっても!
色々考えた末に私はもう一度ベッドに潜った。
都合の悪い事からは目を逸らす。無かった事にする。これがゆとりクオリティ。
……。
……………。

お腹、減った。




447 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:52:44 ID:WcZO1yAJO
結局人間欲には勝てないのだ。
睡眠欲は満たされてしまっているから、次は食欲。
ああー良い匂いがする。
匂いに誘われて私は階段を下りた。

「あらあらあら!ようやく起きたみたいだね」

階下には、なんというか、肝っ玉母ちゃんを絵で描いたような女性がいた。
母ちゃんはこうも続けた。
「あんたが海に打ち上げられてるの見た時は驚いたよ!無事でよかった」
……。網に。ふぅん。
……。
「夢じゃなかったんかい。」
呆然として呟くと同時にグーキュルルルル、とお腹がなった。
「お腹が空くなら大丈夫だね」
にっこり笑った女性は忙しく食事の用意を始めた。
魚を3枚に卸して刺身。余った身と骨、内臓を叩いて丸めて揚げた団子とたっぷりの野菜を煮込んであったスープ。それに作り置いてあった小魚の佃煮に茶碗いっぱいに盛られた白ご飯がテーブルに並べられた。
「さあ、ぼーっと立って無いで、食べな!」





448 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 21:55:20 ID:V4ORlyJRO
支援

449 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:08:06 ID:WcZO1yAJO
肝っ玉母ちゃん――マーレさんのご飯は死ぬほど美味しかった。
お腹が空いてるってだけじゃない。きっと食材が新鮮なのも、単にマーレさんの料理の腕が良いのもあるだろう。
とにかく、いままで食べたご飯の中で一番美味しかった。
「ご馳走さまでした!」
マーレさんはにこにこ、お粗末様でした、とお皿を下げる。そして、さて、と話を始めた。
まず、私の名前から始まり、何故海岸に打ち上げられていたのか、そもそもどこから来たのか。
私も出来るだけ正確に、分かるだけの範囲で答えた。
私の名前はユウキで、何故海岸に打ち上げられていたのかは、私も分からない。ここに来る前は日本という所でギリギリながらも女子高生をしていました。
私の答えにマーレは目をぱちくりさせた後に訝しげに細くなった。
「…ニホン?」
「ニッポンともジャパンともジパングとも言うけど」
「…グランエスタードでも、フィッシュベルでもないのね」
「ええと、そうみたい」
何か言い辛そうに、マーレさんが口を開いた。
「世界にはこのグランエスタード島以外に人が住んでる島なんて、ないんだよ」

な、なんだってー!!


450 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:10:24 ID:WcZO1yAJO
私はそのビックリ情報に目を見開いた。
「あ、アメリカ大陸も?」
マーレさんは無言で首を横に振った。
「ユーラシア大陸も!?」
「聞いたこともないねえ」
「オーストラリアは?アフリカは?え?インドネシアも?パプアニューギニアも?ガラパゴスも?」
マーレさんが頷く事はなかった。大陸も、島も、ここ一つ………?
「そ、そんなっ……」
ありえない!そんな、今まで考えたくなくて避けて来たけど、やっぱりここは、まるで、異世界、じゃないか。

行き着くべき結論に至って、私は絶句した。
夢ではない、でも私の現実ではありえない、この事実。
「何かショックな事があって記憶を落としてきちゃったのかねぇ」
マーレさん――なんて呑気な――
私は意識を保つのに精一杯だった。\(^O^)/オワタ!とかおどけて見せるので。
その時、扉が開いた。
マーレさんが優しい笑顔で「おかえり」と言う。
振り向くとそこには緑色の服を着た少年がいた。
\(^O^)/……
↑の状態の私を見て多少引きつっているが、なかなかに感じのよい笑顔だ。
少年は、アルスといって、マーレさんの息子だった。
マーレさんは息子さんに私の紹介をし、簡単に事情の説明をしてくれた。
「で、アルス。この子に見覚えはないかい?」
「ええと、ユウキ…さん?」
「は、はい」
「見覚え…ないなぁ。」
そりゃそうでしょうとも。私は声にならない言葉で返事すると、ため息をついた。
そのため息を落胆の意味と捉えたのか、アルスは慌てて慰めるような口調で
「じゃ、じゃあ…グランエスタードに、行って見る?」
と、言った。



451 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 11:47:49 ID:a80QQpm0O
新作乙!
7の世界だね。応援しているよ

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 18:37:42 ID:Lvgrew1o0
新作乙。
アルスさんと恋の予感・・・。

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 21:16:28 ID:FY/xd5ec0
乙おつー!
7キタワァ^^
ツンデレマリベルに期待wwwww

454 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/16(土) 01:45:31 ID:+oX9XX/u0
うわお
こんな面白いのが投下されてたのにdion軍の超長規制のせいで
何にも書けんかった〜

作家さん達皆さん乙!
続きwktkしてます

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/17(日) 08:41:14 ID:5iMBz8ACO
保守

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 00:30:25 ID:mDLNjS9O0
7の世界大好きだからwktkwww
しかも女の子主人公ww
次回を楽しみにまってます!

457 :Stage.5-2 [hjmn] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:28:18 ID:h6mFqMtJ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。続編投下にきましたっ。けどその前に……」
アルス「まずはサンクスコール!」

アルス「改めて>>439様、そして>>441様、規制回避支援サンキュです!」
タツミ「>>443様、wktk言われてつい張り切っちゃいましたよ。ご期待に添えられたかなぁ」
アルス「>>445様、やっぱGJは嬉しいぜ。今回のタイミングはどうでしたでしょーかw」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


 前回 >>434-440
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 Game-Side 続編

458 :Stage.5-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:29:41 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
 どこからともなく低くくぐもった声が響いてくる。これって確か、上の階の宝物庫にあ
る宝箱を開けたときのセリフだったっけ? 内容が少し違う気もするが、それなりにゲー
ムを継承しているわけだ。
 こんなえげつない罠が仕掛けられている時点で、すでにドラクエとは言えないけどさ!

「く……油断したッス……」
「大丈夫サミエル!?」
 苦しそうにうめくサミエルの脇腹に、みるみる血がにじんでいく。人間の、まして仲間
のケガだ。心臓が跳ね上がった。でもここで、血はダメだなんて言ってられない。
「立てる? 早くロダムに回復を――」
 瞬間、目の前にユラリと黒い影が現れた。そいつの腕が首に巻き付いてきて、一気に締
め上げられる。見た目と裏腹にとんでもない力だ。
「!……!…!!」
 声が出ない。く、首の骨が折れる〜!
「青き女王の御子ら氷の精霊たちよ古き盟約に従い我が戦陣に馳せ汝が力を示せヒャド!」
 エリスがものすごい早口で詠唱を完了させた。青く煌めく氷の刃が、僕をシメあげてい
たモンスターに突き刺さった。
 グギャア、とおぞましい悲鳴をあげて飛びすさる影。
 その場に投げ出された僕は、肺に無理やり新しい空気を送り込むのと、転がってるたい
まつを手に持つのと、反対の手でサミエルを引きずって後ろに下がるのとを同時にやって
のけた。おお、すごいぞ「星降る腕輪」効果。

「……の精霊の名においてかの者たちに癒しの光を――ホイミ、ベホイミ!」
 先に詠唱を開始していたロダムが、這い戻ってきた僕とサミエルにタイミング良く回復
呪文をかけた。喉の痛みがすうっと引いていく。サミエルの脇腹から折れた鏃(ヤジリ)が自
然に押し出されて出血も止まった。
 瞬間的に負傷度合いを測り、呪文を使い分ける年配僧侶に感心しつつ、僕は通路の奥に
向き直った。

 さて、仕切り直しだ。

459 :Stage.5-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:33:34 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
「うるさいなぁ。エリス、なるべく中央に向けてベギラマお願い」
「はい勇者様っ」
 彼女の閃光呪文が、追いすがってきたモンスターを散らすついでに、通路の奥の方まで
明るく照らし出した。

 両サイドの壁にはいかにもエジプトっぽい絵が延々と描かれている。
 そして床。
 僕たちが待機している場所は真っ平らだが、やや先の方から、床に1メートル平方の大
きな石がタイル状に敷き詰められているのがわかった。タイル1枚1枚にエジプトの象形
文字のような(あるいはそのものか)レリーフが刻まれている。
 そのうち数枚が、周りと比べてやや下に引っ込んでいた。1枚はちょうどサミエルが踏
み出したあたりではないだろうか。「蛇」の形をしたマークの文字だ。
 一番手前に目をやる。たいまつの光に浮かび上がるのは「鳥」をかたどった文字のタイ
ル。さっき戻ってきたときに、間違いなく僕はこれを踏んでいるが、なにかが動いた気配
はなかった。暫定的に「鳥」は安全ルートと決定。もう少し検証したいところだが、そん
な余裕はない。

 エジプト神話における「蛇」の象徴は多々あるが、ここは有名な悪い蛇の神様「アポピ
ス」と見立てていいだろうか。「墓守の蛇の女神」といういかにもな神様もいるけど、壁
画はその女神とは無関係の神話のものだし。だとすると……アレかな。

 ――ここまでの思考を数秒でまとめる。
 えい、読みが外れたらそれまでだ。僕は腹を据えた。
「この中で一番身軽なのは、今のところ僕だよね」
「それはどういう意味ですか」
 トラップ地帯をすり抜けて迫ってきたあやしい影を真空呪文で吹き飛ばしつつ、ロダム
が訝しげに問う。
「なにかわかったんスか!?」
 逆にサミエルが期待に満ちた声を上げる。剣を構えて前方を睨みつけているが、接近戦
が得意の彼としては、思い切り戦えないこの状況が歯がゆいだろう。

460 :Stage.5-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:34:53 ID:h6mFqMtJ0

「うん、任せて」
 その彼に僕は持っていたたいまつを返した。星降る腕輪が「途中」で外れないようグッ
と上に押し上げて、それから片膝を立てて前傾姿勢で両手を床につける。
 こういうのは勢いが大事。クラウチング・スタートの体勢から重心を前に移動し――、
「まさか、勇者様?」
「援護ヨロシク!」
 
 タイルの模様と位置は、さっきベギラマで見えたときに、すべて頭に叩き込んだ。
 通路は薄暗いが、敵のモンスターがどこにいるかくらいは視認できる。トラップ障害の
条件は敵方も同じ。まごついているモンスターたちの足下をすり抜け、飛び石を渡るよう
に「鳥」のタイルを踏みながら、目的の場所へ!

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ……】
「だからうるさいっつーの!」
 襲いかかってきたミイラ男のすぐ前にあった「蛇」マークを思いっきり踏んづけて、横
の「鳥」に転がる。ドカカッ!と矢だらけになってひっくり返ったそいつを飛び越えたと
ころで、物理トラップ無効のあやしい影が、サッと前に回り込んできた。
「ヤバ……」
 仲間の援護を信じて、とっさにその場に伏せる。
「「バギ・ベギラマ!!」」
 同時に、灼熱を伴った真空波が実体のない魔物をぶち抜いていった。その狙いの精度と、
仲間に向かって迷い無く呪文を放てる思い切りの良さは、大したものだ。

 チラッと壁に目をやる。延々と続く壁画は、数あるエジプト神話の中でも最も有名なス
トーリーを描いたものだ。僕が目指しているのはそこにいるべき、ある神様。
 ヘリオポリス九柱神の一人であり、厄災の蛇神「アポピス」の天敵とされる、地下世界の
王「セト」。「蛇」を鎮めるなら、そのお方しかいないでしょう!

 ……たぶん。
 ノーヒントじゃこれが限界です。これで読み違えてたら諦めるしかありません。

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:39:35 ID:PQ8q4cx7O
携帯で自力回避

462 :Stage.5-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:39:41 ID:h6mFqMtJ0

 モンスターたちは目標を僕に絞ったらしい。例のセリフを繰り返しつつ、トラップにも
ガンガン引っかかりながら、とにかく追っかけてくる。
「これだけの殉死者を道連れって、ここの王様も最悪だな。――おりゃ!」
 再び「蛇」を踏んで「鳥」に待避。天井から円盤形の刃物が降りてきてミイラが胴体か
ら半分になって転がった。これが自分だったらと思うとゾッとするけど、今は考えない。
「勇者様、大丈夫ですか!」
「今のところはね。えーとオシリスが暗殺されてイシスが逃げて……」
 エジプト神話なんて、小学生のときに軽く流し読みしただけだからなぁ〜。
 しかも暗くてよく見えないから、ところどころ天井の隙間から漏れてくる光で見える場
所から、前後を推測しなきゃならない。
「イシスがホルスを産んで、セトと一騎打ちになって……っていたぁ!」
 セトちゃん発見! 動物のかぶり物しててちょっと愛嬌のある絵だけど!
 壁、壁、なんかスイッチとかないか!?

 あれ……なんにもない?
 うーわー、まさかやっぱり読み違えたんじゃ――。

「勇者様危ないですぅ!」
 立ち止まったせいでミイラ共がわらわら集まってきてしまった。気がついたらすっかり
取り囲まれている状態だ。
【【【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】】】
「ごめんアルス、僕死んだかもww」
 ミイラが一斉にたかってきて、僕は反射的にその場にしゃがみ込んだ。


 ――と、目の前にいかにも「押してください」といわんばかりの丸いボタンが、床から
出っ張っている……。


 あったじゃん。
 ポチっとな。

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:41:16 ID:Tk7hcM0s0
リアルタイムキタコレ支援

464 :Stage.5-2 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:42:45 ID:h6mFqMtJ0

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 今にも僕を袋だたきにしようとしていたミイラたちが、一瞬、動きを止める。
 同時に、
「勇者様になにさらすんじゃワレァ!!!」
 戦士らしからぬ素晴らしいスピードで走ってきたサミエルが、一振りで3体まとめて薙
ぎ飛ばした。エリス・ロダムの呪文組が一気にとどめを刺し、ハイ、終・了。
「……普通に戦えればホント強いよね、うちのパーティ」

「いやはや、いきなり飛び出して行かれるから、びっくりしましたよ」
「さすが勇者様、ちょこまかと素晴らしい動きでしたね!」
 サミエル、それ微妙に褒めてない。
「なにをのんきなことを! もう、一人でご無理はなさらないでください!」
 泣きそうになってるエリスに、僕は手を合わせた。
「ごめんごめん。また誰かが罠にかかったら、って思ったら、嫌だったから」
「勇者様……」
 それになんとなく、こういうドラクエらしくない部分は、僕が担当のような気がする。

「しかし、こんなものよく見つけましたね」
 ロダムが足下のボタンを指して感心する。そこは影になっていて、確かに言われなきゃ
気付かないような場所だ。
 だから、そのボタンの上に文字が彫りつけられているのも、今気がついた。 
「ふむ、『礼節を知る者、客として歓迎する』という意味ですな」
「読めるの? さすが宮廷司祭殿」
 そうか……神の前ではひざまずくもの、だよな。

「そう言えば、魔物の気配が消えましたね」
 エリスがあたりを見回した。さっきまであれだけいたモンスターが消えていた。
「じゃあ俺たち、ここのお客様になったんスかね」
 うーん、だといいんだけど。

465 :Stage.5-2 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:44:59 ID:h6mFqMtJ0

 あとは普通のダンジョンであることを祈って、僕たちは先に進むことにした。

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 なんだこの前レスと同じ文章は。作者のミスか?
 とか思ったら、なんか、急に、フワッと身体が、軽くなった、ような……。

「落とし穴忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「きゃあああ勇者様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕とエリスが落ちたとたん、頭上で穴が再び閉じ始めた。
 慌てて追ってこようとするサミエルたちに気付いた僕は、とっさに叫んでいた。
 、、、、 、、、、、
「構うな! 鍵を探せ!」

   ◇

 あとのことは、正直あまり語りたくない。
 魔法が使えないピラミッドの地下で、この組み分けが最悪だってのは説明不要だよね。
 上と違って肌寒いくらいのジメジメした地下室を、逃げ回って逃げ回って、なんとか身
を隠せる場所を見つけ出して、今はつかの間の休息を取っている状態だ。
 いつ敵が襲ってくるかわからない緊張感でほとんど休まる気はしないが、エリスの様子
があまりに痛々しくて、これ以上動かすのは可哀想だった。
 ここでようやく、このパートの「1」に続くってワケ。

 さーて、次はどうしたもんかな。
 寒さ、飢え、疲労。さすがに考えがまとまらなくなってきた。
 上でちょっと張り切りすぎたか。

 ――でも、考えなきゃ。どちらか一人でも、ここから生きて出るための方法を。

466 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:54:14 ID:Tk7hcM0s0
乙ー!
タツミの潜在能力はどうなってんだwww
それとも勇者の「おぼえる」能力が影響してるのか。

なんにせよGJ!
エリスタン・・・

467 :Stage.5-2 [atgk] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:56:45 ID:h6mFqMtJ0
本日はここまでです。
次はリアルサイド、アルス君の出番です。

468 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 22:18:24 ID:SpASF7F0O
乙乙乙!


469 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 17:29:20 ID:/KJaAq3S0
書き手=主人公

このスレの小説の主人公達がデブスやキモオタだと思うと鬱になる

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 17:41:19 ID:m+42TVhLO
>>469
君もこのスレの主人公さ!!

471 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:13:40 ID:8vCQuhLbO
グランエスタードとやらにはお城があって、それに付き物の王様や王女様、王子様なんかもいちゃったりして、城下町も栄えてるらしい!
お、王子様!なんて良い響きだろう。
別にシンデレラにも白雪姫にも憧れる歳ではないけど、その言葉だけでなんとなくドキッとする。
いやぁ、元の世界にも王子様とか皇太子様とかいたけどさ!

グランエスタードについての簡単な説明をしてくれるアルスにマーレさんが、そうだこれを持って行きな、と大口の瓶を渡した。
中身はというと、さっき私もお腹に納めた小魚の佃煮だった。
……道中のお弁当にしなさいってこと?
んまあ、今ご飯食べたのに、マーレさんってば気の早い。

さて、では出発しますか、とドアを開いた。
後ろでアルスが慌てて何か言った気がしないでもないけどキニシナイ!!(゚ε゚)
で、ドアを開くと一番に私の目に飛び込んできたのは、鬼――の形相をした女の子と振り上げられた拳。


ごごご、ごめんなすわぁぁぁぁぁい!!!!!!!

思わず負け犬根性丸出しで謝ってしまいそうなマイチキンハート。




472 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:16:42 ID:8vCQuhLbO
「うわぁ!!!」
「きゃあ!!?」
寸での所で拳を交わした私の情けない声とまさか交わされると思っていなかったんだろう女の子が空振ってクルンと回って悲鳴をあげた。
「何で避けるのよ!」
「避けるわ!」
ここでやっと私を見たらしい女の子がキョトーンとして、私とアルスに視線を行き来させて一言。
「あんた誰!」
「先に謝らんかい!」
これが、私とマリベルの出会いだ。第一印象最悪。

そんなわけで私たち三人はtoグランエスタードの道中にいる。
そんなわけっていうのは、単にアルスとマリベルは、
一緒にグランエスタードに行く約束をしていたってことなんだけど。
ちなみに私が殴られそうになったのは、`いつまで私を待たせる気!?'なマリベルの怒りが込められていたらしい。
ちなみにちなみに!結局私謝られてません!!
HAHAHAHAHA!!

今私達はアルスを挟んでそっぽ向いて歩いている。




473 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:20:36 ID:8vCQuhLbO
…痛い。ああ、いけない。また、アルスに心配かけちゃう。
顔を上げて、大丈夫だって、笑わなきゃ。

そう考えるのに、体はそう動いてくれない。

……痛い、痛い!!もうやだ、何でこんなことしてんの、私!
いきなりこんなわけわかんない所に来て、いきなり殴られそうになって、挙句にこんな、いたい目に、あって。
泣き出したいのを肩を震わせてやり過ごそうとした。うまく行かない。

ずるずる、鼻をすする私の目に飛び込んで来たのは鮮やかな緑色の葉っぱだった。
「もう、はやく使いなさいよ!」
続いてマリベルの声。私はわけがわからないままその葉っぱを受け取る。
「べ、別にあんたの為じゃないんだからね!あんたの怪我のせいでグランエスタードに着くのが遅くなって困るのは私なんだから!!」
そう怒ったように、怒鳴るようにマリベルの顔は真っ赤だ。アルスが私に耳打ちをする。
「さっきのこと、本当は謝りたいんだよ、マリベル。」
素直じゃないんだから。
そう囁くアルスの声は優しくって、嘘のない声だった。だから、私も素直に言えたんだと思う。
「ありがと、マリベル」



「ところで」
「何よ、まだなにかあるの?」
「この葉っぱの使用法が分からない件」
「……。」
「……。」



私は正座をしてこの葉っぱ――薬草の使用法を教授して頂くことになった。
……足、痛いです、マリベル先生。


474 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:23:39 ID:8vCQuhLbO
>>473の前に入れてください、すいません…


……。
……………。
…………………気まずい。非常に気まずい。
元来私はふるえるこの胸チキンハートの持ち主で、他人と喧嘩なんて小学生以来だ。
…兄貴とは頻繁に喧嘩するけど。
まあ、そんなのは関係なくって、とにかく、私はこの女子の喧嘩特有の冷戦状態が苦手でしかたがないのだ。
…ああ!早く着かないかな、グランエスタード!!


―――話は変わりますが、グランエスタードに向かう道、舗装されてないんです。
デコボコ道ってレベルじゃねーぞ!
体力はない方ではないと思うんだけど、軽く酸欠。酸素くれ。
フラフラと歩く私をアルスが心配そうに見ている。
「大丈夫?」
と声を掛けられた。
マリベルも意外にヒョイヒョイ歩いてるし、私だけ、情けない…
そう思うと見栄を張りたくなる。そりゃあもう、精一杯。

大 丈 夫 ! !

とびきりの笑顔で顔を上げた私からその3文字の声が上がることはなかった。
「おひゃん!!」
情けない、悲鳴ともつかない叫び声をあげて私は地面に突っ伏した。
……足元の石ころに歩をとられて。




475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 22:50:02 ID:WEvhBGd90
ツンデレktkr

476 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 22:50:41 ID:9JEBheu1O
>>458-465
今度はタイミング合いませんでしたがGJ!!
タツミ頭よすぎww
エジプト神話とか遊戯王しか知らない
>>471-474
GJっす!
いい感じにツンデレきてますねww

477 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 08:39:20 ID:UTPcNGFs0
>>458-465
乙っした!
>>457の二人を見てるとなぜか懐かしの某オリラジを思い出してしまうw
エジプト神話って同じ神話でもいろいろパターンあるから、使うの難しいんだよな。
次回リアルサイド、wktk待機!

>>471-474
マリベル原作に忠実なツンデレで良い感じだ。
女の子主人公に期待大!

478 :Stage.?[1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:08:09 ID:6jlyry6F0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。ってこの挨拶、固定化しそうだな」
アルス「じゃあさっそくサンクスコールいってみますかっ」

タツミ「>>466様、ほんと僕の潜在能力ってどうなってんでしょうね。自分でもわかりません」
アルス「自分のことだろが。463でのグッタイミンな支援も助かりました」
タツミ「>>468様、乙3連打サンクスです」
アルス「>>476様、コイツなんて頭いいってか、ただの変態ですよねw」
タツミ「うるさいなぁ。
   >>477様、おっしゃるとおりエジプト神話は色々あって、組み立て結構悩みました」

アルス「ところで、俺らオリラジっぽいって」
タツミ「懐かしいね。こんなんだっけ by Youtube」
つttp://www.youtube.com/watch?v=A5rkI5kp-cQ&mode=related&search=
アルス「ふーん」


アルス「…………」
タツミ「…………」




479 :Stage.?[2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:10:12 ID:6jlyry6F0

アルス・タツミ『デンデンデンデ デンデデンデンデン♪』
タツミ「ドラクエサンラジオです!」
アルス「お願いします!」

タツミ「アル君いつものやったげて♪」
アルス「オウ! 聞きたいか 俺の武勇伝!」
タツミ「そのスゴイ武勇伝をゆったげて♪」
アルス「俺の伝説ベストテン!」
タツミ「レツゴー!」

アルス「むっつりスケベに認定される」
タツミ「スゴイ! 今では神龍マブダチに」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス「ポルトガ王を黒ゴマでだます」
タツミ「スゴイ! セサミンパワーで長寿大国」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス「ラスボスがなんと多段変身」
タツミ「スゴイ! 道に迷って相手はピサロ」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス・タツミ『意味は無いけれど ムシャクシャしたから〜♪ ラーミア青く染めてみた〜♪』
アルス・タツミ『デンデンデンデデン♪』

アルス「ハイ! レイアムランドのそっくり巫女に モスラのテーマを歌わせる」
タツミ「ペケポン!」

480 :Stage.?[3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:11:09 ID:6jlyry6F0

アルス「―――― orz」
タツミ「―――― orz」


タツミ「もう早く本編スタートさせちゃおう。怒られそうだ」
アルス「できん」
タツミ「………………はい?」
アルス「俺の方、まだ本編の収録終わってない」
タツミ「はぃぃぃい!!!??? じゃあなにか? 今回オリラジネタだけか!?」
アルス「朝に477様のレス読んで、思いついたから昼休みに書いたらしい >作者」
タツミ「仕事先からなにやってんのこの人! 合作間近の大事な時期に余計なレス消費して!」
アルス「さっき353KBだったな。この書き込みでもう少し増えてるかも」
タツミ「ああああ!!!!!!」

アルス「次の本編投下は明日の予定です。お邪魔しやした〜」



マジゴメンナサイ。

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 19:16:17 ID:z/x/QTm4O
タツミとアルス武勇伝ワロタwwこういうネタもいいな。乙です!

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 20:48:44 ID:2tMO19vD0
最近まとめサイトを読んできたけど、こんなネタもやってたとはwww
◆IFDQ/RcGKI 氏、乙! 明日の本編も楽しみにしてます!

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 10:21:08 ID:/2mUTMy6O
477だが、まさかオリラジ披露してくれるとは思わなかったww
電車の中で吹きそうになったよ。ありがとう。

484 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:27:11 ID:ft3gEZr80
また遅くなりました
>>405きです

485 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:28:32 ID:ft3gEZr80

『餓鬼共が!餓鬼共がァ!』
ボスの余裕が徐々に失われていくのが、手に取るように解った。
ゴーストのボスは決して強い敵ではなかった。
その表情に不安が過り、次第に攻撃も精彩を欠いていく。
ビアンカの放った炎がもう一度ボスの体にぶつかり、
とうとう尻をついたボスの眼前に俺は
止めを刺そうと自分の武器を振り上げた。

『ヒイィィ!わかった!もうやめてくれェ!』
武器を振り上げた姿勢のまま、俺は動きを止めた。
ビアンカが『なにしてるのよ!』と背後から叫ぶ。

顔の前に両手を掲げ、顔を伏せたままボスは
『もうこの城からは出て行く!だから助けてくれェ』と
まるで情けない声で懇願の悲鳴を上げている。
顔周りが焼け落ち、ところどころ切り裂かれたローブが痛々しげにボスの体を覆っていた。
俺は掲げていた武器を下ろす。
『サン、目的を忘れたの?そんなやつ、やっちゃいなさいよ』
ビアンカが明らかに怒った声で言った。ボスが再びヒィ、と泣いた。

『頼むから見逃してくれよ・・・。約束する、もう俺達ァこの城からは出て行くからよォ』
ぼろぼろのローブからはみ出た両腕を必死で振りながら、
ボスは俺とビアンカに交互に泣きついた。
ビアンカはそれを半ば呆れたような目で見下ろしている。

486 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:30:06 ID:ft3gEZr80

『あんた、自分のしたことがわかってるの?今更そんな事言われたって許せないわよ!』
武器を振おうとするビアンカにボスは悪かったよ!と叫んだ。
『俺達ァ楽しく暮らしたかっただけなんだ。
魔界の仲間にも、幽霊の仲間にも疎ましがられちまってよォ』
当然だわ、と冷たく言うビアンカにボスは情けない声で『この城は誰も寄ってこないしよ、
王様気分でちょっと楽しみたかっただけなんだ』と言った。

『頼むよ、もう悪さはしねえ。ここから出て行けばそれでいいだろう?』
『どうする?サン』
顔を上げたビアンカに、俺は逃がしてやろう、と言った。
『本気なの?信じられないわ!サンってお人好しよね』
今度は俺に向かって呆れた表情を作り、
仕方なさげにビアンカは腰に手を当てると、ボスの方に向き直った。
『行きなさいよ』
渋々と言った声色に、ボスはへっへっへ、と笑い
『ありがとうよ。あんた立派な大人になるぜ』言いながら立ち上がると、
長いローブをばさりと翻した。

瞬きする間もなく、ボスの姿は消えていた。
始めからこうやって逃げればよかったのに。
と思ったけれど、ゲームの世界のルールなんだろうなとぼんやりと俺は納得した。

487 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:31:11 ID:ft3gEZr80

いつの間にかあれだけ煩く鳴き続けていた雷は止んでいた。
城を包んでいた重く息苦しい空気が和らいで、月明りが切れ切れの雲間から世界を照らし始めていた。
ゆらりとあの暖かい空気が俺達の周りを包んでいた。
王の気配を感じ見上げると、薄い雲を払って顔を出した月と、
穏やかに微笑む王と王妃の姿が見えた。
二人はゆっくりと空を歩き、それぞれに俺とビアンカの手を取った。

浮遊。

世界の理に囚われないその二人の影響か
俺達の足は地面を離れ、ふわりと空中に浮いていた。
手を引かれ、王と王妃の眠るべきバルコニーへと誘われる。

墓石の前に足を着くと、王は俺の手を離し『よくやってくれた。礼を言う』と微笑んだ。
『本当に、感謝します。これで穏やかに眠れそうです』
王妃も王と良く似た笑顔を浮かべ、俺とビアンカの瞳を目を細めて見詰めている。
『城内の者達も、眠りについたようだ。さあ、おまえ。我々も行こうか』
『ええ、あなた』

淡く輝いていた二人の体が、一瞬、更に暖かな輝きを放った。
王が王妃の肩を抱き、王妃は寄り添うようにその腕に体を預ける。
『そなた達のことはきっと忘れまい。本当にありがとう』
嬉しそうに微笑む王妃の笑顔と、王の声が、白い光に包まれていく。
そして少しの余韻を残して、夜の闇に消えた。
最後に墓石が惜しむようにこつり、と音を立てた気がした。

488 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:32:29 ID:ft3gEZr80

『これで二人は幸せに眠れるのね』
ぼんやりと、今見た光景を刻み付けるように目を閉じて、ビアンカが言った。
ことりと、もう一度墓石が鳴いた。
『・・・何かしら。なにかあるわ』
目を開けたビアンカが墓石を見下ろす。
子供の掌よりも大きな、月光に金色に輝く大きな宝玉が、
王の墓の前に供えるように置かれていた。
ビアンカがそれを手に取り『お礼かしら』と笑った。

手を繋いで夜の道を戻る。
城内にあれだけいた幽霊や魔物は、すっかりとその姿を消していた。
城門をくぐり草原へ出る。
ざわりと風に靡く草花は、入る前のそれと同じ筈なのに、何故か何処か違うもののように思えた。
魔物の気配ももうしない。モンスターも寝るのかしら、とビアンカが言う。
不意にビアンカが俺の手を離し立ち止まった。歩を止め振り向くと、草原の真ん中。
城門の見える位置でビアンカがしゃがみ込んでいる。
『あたし、今日沢山モンスターを殺したわ』
一歩、少女の下へ踏み出しかけた俺に、ビアンカは呟いた。
少女の見下ろす地面に、つい数時間前戦った、小さなモンスターの爪あとがくっきりと残されていた。
『猫ちゃん・・・』
その両の手を顔の前で組み、ビアンカは目を閉じた。
その整った顔立ちの向こうに、快感や優越はもう、見えなかった。

俺は今後にしたばかりの大きな城を見上げた。
暗闇の象徴のように感じたその城は今は、月明りの中、
世界を見守るように、静かに穏やかに佇んでいる。

489 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:34:58 ID:ft3gEZr80
今回ここまでで。
ありがとうございます。

490 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 14:54:38 ID:W9LkVEJ40
>>478-480
武勇伝ナツカシスww なんてサービス精神旺盛な主人公ズだ。
ところでリアルサイドのアルスってどんなカッコしてるんでしょう?

>>485-488
GJ! ついにボス倒したサン&ビアンカ、乙!
最後のビアンカが女の子らしくていい感じだなぁ。

491 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 16:36:27 ID:6vFKv05d0
うわ、GJです。
王様と王妃様の情景が目に浮かぶようでじ〜〜んとしました。

これから先、生き残っていくにはモンスターたちをいっぱいやっつけないといけないからビアンカさんがちょっと心配です。
もっとも、嬉々としてモンスターを虐殺しまくるヒロインもいやですけどね(wwww

492 :Stage.5-3 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:36:43 ID:SKqRKooU0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。って、やっぱりこの挨拶で定着か……」
アルス「だな。投下の前に、恒例のサンクスコール」

アルス「>>481様、ウケて良かった〜。シラけられたら目も当てられねえw」
タツミ「>>482様、本編はどっちかというとシリアスなんで、番外はハメはずし気味ですね」
アルス「あれでシリアスかぁ? >>483(477)様、楽しいネタ振りありがと!」
タツミ「>>490様、当社は読者様への徹底したサービスを心掛けております♪」

アルス「しかし、俺の今の格好か。えーと、ちょっと丈の短い黒いのと……」
タツミ「はいはい。こんな感じだね」

   【アルス(元勇者):装備】
    上着:リブスタンドブルゾン(ブラック)
     上:2ボタンのカットソー(レッド) 
     下:ストレートデニム(ダークグレイ)
     靴:スニーカー(ダークレッド)

タツミ「僕、本当は白系の服の方が多いんだけど、黒でまとめたね」
アルス「とりあえず濃い色のを適当に選んだ。それより(元勇者)ってイヤミかよ」
タツミ「事実でしょうが。――さて、そろそろ行数も押してきましたし」
アルス「なんか久々の出番だな」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】
 続編 リアルサイド

493 :Stage.5-3 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:38:30 ID:SKqRKooU0
 Prev >>458-465 (Rial-Side Prev >>299-305)

 ----------------- Rial-Side -----------------

 久しぶり、と言われた相手をまったく覚えていないというのは、普通は失礼な話だ。
 ヤツの日常を「夢」という形で見ていた俺は、曖昧だったり、抜け落ちている情報も多
分にある。あまりしたてに出るのは得意じゃないが、最初のうちは「すまん、ど忘れした」
と頭を下げなきゃならん場面もたくさんあるだろう、と覚悟はしていた。

 が、こいつらにその必要はないと思われる。

「さっき見てたけど、お前ゲームもすげえのな。さすが天才?」
「俺らもれんしゅーしてえんだけど、先立つモノっつーのがちょっと無くてさ」
「なあタッちゃん、また貸してくんねーかな〜? 2、3万でいいからさー」
 お決まりの要求パターンだ。ったく、五体満足で衣食住にも恵まれてそうなのに、こい
つらはなんでこんな、場末でやさぐれてるゴロツキみたいなマネをするんだ?
「おい三津原、聞いてんのかよ」
「無きゃそこのコンビニで降ろしてくりゃいいし。な、俺らの仲だろ?」 
 ねとねとした口調がひどく勘に障る。しかも今の話だと、
「アイツ、以前からこんな連中にカモにされてた、ってことか……」
「へ?」

 最初に殴りかかってきた少年が一番近かったから、そいつにした。
 相手を見ることもなく逆手で襟元をひっつかみ、そのまま振りかぶって、
「な……」
 丁度そこにいたお仲間のひとりに適当にブン投げる。一回転して背中から激突し、巻き
込まれたガキ共々、そいつは数メートル先までフッ飛んでいった。
「そんな、片手で投げた……!?」
 残ったひとりが引きつった声を出す。
 右腕を回すとコキッと音がした。思ったより重さを感じたな。
「やっぱちょっと肩にくるな。向こうの半分ってとこか」

494 :Stage.5-3 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:40:57 ID:SKqRKooU0

 元の世界じゃボストロールにヘッドロックかまして遊んでたからな。
 さすがに「現実」だと制限がかかるようだが、今の自分のステータスが把握できてない
から、かえって加減の取り方がわからん。
 かなり力を抜いたつもりだが、やりすぎたかね。
「悪い。いちおう教会、じゃねえ病院? 連れてった方がいいかもよ。んじゃ」
 お前らみたいなのに構ってるヒマはねえんだよ。

 と――。
「ふ、ふざけんなぁ!!」
 甲高い叫びが上がった。投げ飛ばしたガキが立ち上がる。そいつの手元でチャキっと音
がして、なにかが小さく光った。
「おい……」
 どうやらナイフらしい。待て待て、向こうならともかく、こっちの世界でそんな簡単に
刃物を持ち出していいのか。
「お前、それはまずいんじゃないか? ケーサツとか大丈夫なのかよ」
「黙れ!」
 相手は完全に激昂していて、俺の言うことなんかまるで聞く気なしだ。周囲から悲鳴や
制止の声があがる。

「やべえって栄治、ほんとに捕まるって……うわ!」
 エージと呼ばれたそいつは、止めに入った仲間にまで斬りかかった。
「落ち着いてくれよ栄治!」
「うるせえ! タツミてめえ! 俺にそんな、く、口きいていいと……!」
「なんだよこいつは――」
 わざと力の差を見せつけてやったのに、まるで前後がわかってない。こっちの若者はキ
レんの早すぎだ。
 ラリホーでも使えれば一発で片がつくんだが、「しかしなにも起こらなかった!」って
地文にテロップが流れるだけだろうしな。
 しゃあねえ、殴って気絶させるか。「当てる」となると手加減が難しいんだが――。

495 :Stage.5-3 [15] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:42:24 ID:SKqRKooU0

「三津原やめろ!」
 今度は俺の方が止められた。聞き覚えのある声に振り返ると、戸田和弘が必死の形相で
俺の腕を押さえている。
「ダメだろ、手ぇ出したら! 今度こそ取り消されるって言ってたじゃねえか」
「取り消される……? なんだよそりゃ」
「なんとかって奨学金、出なくなるんだろ? 学校これなくなるって」
 は? そんなの知らねーぞ!?
「とにかく逃げるぞ」
 軽くメダパニっている俺は、カズヒロに引っ張られるままその場を離れた。
「待ちやがれ、このクソヤロウ! 死ね!」
 エージ少年は、ザキが発動しそうなくらい憎しみのこもった叫びをあげながら追いかけ
て来る。もしやタツミの方があのガキになにかしたのか?
 あんなザコ相手に逃げなきゃならんってのもめっちゃストレスだし、ホントどうなって
んだよ、ったく――! 

   ◇

 俺たちはひとまず、どこかの路地裏に入って相手をやりすごした。
 これだけ建物が密集していると追っ手をまくのも容易だ……が、俺はすでにここがどこ
だかわからなくなっていた。こっちの街って、ホント似たような景色ばかりなのな。
「よりによって一條たちに出くわすとは。ゲーセンに誘ったの、悪かったよ」
「いいけどさ。しかし、アイツらはなんなんだ」
 神妙な顔で謝る友人に、俺はつい、自分が関係者であることを忘れてぼやいた。
「まさか心当たり無いとか言わないだろ? お前って肝心なことはなにも言ってくれねえ
し……。なあ三津原、本当は一條となにかあったんじゃないのか?」
 逆に問われる。そんなの俺が聞きてーよ。

 正直、1分1秒でも惜しいところだが、俺は思い切ってカズヒロに聞いてみた。
「あのさカズ、いきなり変なこと、聞くけどさ」
「お、おう。なんだ?」
「俺は……『三津原辰巳』ってヤツは――そんなに特徴的な人間か?」

496 :Stage.5-3 [16] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:44:03 ID:SKqRKooU0

「そりゃそーじゃねえ? 本読むのメチャクチャ早えーとか、見た物ぜんぶ写真みたいに
覚えられるとか。言っちゃ悪いがちょっと普通とは違うと思う」
 やっぱりか!
 ユリコが言ってた「忘れるなんて珍しい」って言葉も、アイツらが天才呼ばわりしてた
ことも、これで納得がいった。俺とは少し方向性が違うようだが、ヤツも「思い出す」に
類する特技を持っているらしい。
「うちみたいな進学校で、満点以外取ったことねえヤツが他にいるかよ」
 しかも遠慮なくフルで能力発揮しまくりかよ。
 となると、さっきの「しょーがくきん」ってやつも、たぶんアレだろ。
「それで国とかそういう上の方から、特別な援助金が出てたりするのか」
「俺はよく知らねえよ。お前んち、一度も学費払ったことないって聞いてるけど」
 マジかーッ。これじゃうちと一緒じゃねえかよ!


 嫌なことを思い出す――。
 勇者オルテガの名前のせいで、うちはやたらと国王から厚遇されていた。親父が死んで
からさらに、高額の生活補助金まで支払われるようになった。
 でも魔王討伐に「失敗」した勇者の家だぜ? そんなのやっかまれるに決まってる。
「……この家はどうも、風の突き当たりになっているみたいねぇ」
 直しても直しても割られる窓ガラスを、おふくろは困ったように見つめていた。じじい
は出歩かなくなったし、俺の友達は全員「敵」か「他人」でしかなくなった。
 俺が周囲を、実力で黙らせるしかなかったんだ。

 逆に俺が「夢」で知っている「三津原辰巳」は、学業も運動も人並みで、一般的な家の
生まれという設定だった。おとなしくて目立たない少年だが、人当たりはいいのでいじめ
に遭っていることもない。
 特に問題は無いが、強いて言えば父親が単身赴任とかって遠方勤務で留守がちの上、母
親が子供に無関心で少し寂しい家庭だ、とかそんな程度。
 ごく平凡なそこらの学生、のはずだった。

 なのに「夢」と「現実」がズレてる。俺がなにか大きな勘違いをしているのか――?

497 :Stage.5-3 [17] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:46:26 ID:SKqRKooU0

「あ、俺バカだ!」
 カズヒロがいきなり叫んだ。内側に向いていた意識が引き戻される。
「完全に振り切ったら、アイツらお前の家の前で待ち伏せするに決まってるよな?」
 うへー? あのキチ(ピー!)君、タツミんちも知ってるのか。
 カズヒロは眉根を寄せて考え込むと、すぐに「よし」とうなずいた。
「俺が引きつけとくから、お前先に帰っとけ」
「え、ちょっと――」
「いいか、お前は顔を出すなよ。大事になるから警察とかにも捕まらないように!」
 止める間もなく行ってしまう。追いかけていいのかどうか迷ってるうちに、カズヒロは
雑踏の中に紛れてしまい、俺はぽつんと一人、薄暗い路地裏に取り残された。

「おーい……こっからどうやって帰れと」
 拝啓、母上様。
 アルスはただいま、異世界で迷子になりました。

   ◇

 とにかく帰ろう。住所はわかってるから、誰かに聞くのが早いよな。
 路地から表を観察し、エージ少年らがいないことを確かめてから出ていった。
 最初に近くを通りかかったオッサンを捕まえる。
「あの、すみません」
「ん?」
 頭のてっぺんが横にシマシマになっているオッサンは、あからさまに迷惑そうな顔を向
けて来た。
「道に迷ったんですけど、教えてもらえないかと――」
「忙しいんで他の人に聞いてくれる?」
 足を止めることさえなく、スタスタと行ってしまう。
 ずいぶん淡泊な反応だ。そんなに忙しそうに見えなかったが。

498 :Stage.5-3 [18] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:47:40 ID:SKqRKooU0

 まあ人口の密集度はすさまじい世界だ。すぐに別な人間に声をかける。
 今度はまじめそうな雰囲気の、年配の女性だ。
「すみません、道を――」
 が、その女なんか目も合わせようとしない。いきなり歩調が早くなって逃げるように離
れていく。
 なにそれ。俺そんな不審人物? 慣れない反応に戸惑うが、とにかく時間がない。合間に
携帯のリダイアルを続けているが一向につながる気配がないし。
「ちょっと! 道をですねっ」
 次にもう少し若い女を捕まえた。今度は俺のウケの良さそうな20代くらいのお姉さんで、
案の定、彼女は変な顔もせず微笑んでくれた。
「どうしたの?」
「はい、あの、道を尋ねたくて」
 住所を告げる。彼女は首をかしげて「ごめん、わからない」と言った。
「交番に聞いた方が早いんじゃないかな。すぐ近くだし、案内するよ」
 コーバンって、ケーサツの詰め所のことだっけ?
「いやあの、ケーサツはまずいっていうか……」
 途端に相手の顔が険しくなる。
「ああ、やっぱり。もしかしてと思ったけど、あんた家出してるのね」
「はぁ?」
「近頃のガキはホントどうしようもないわ。さっさと帰りなさい、かまってられない」
 厳しい口調で言い捨てて、やたらかかとの細い靴をカッカッと鳴らしながら去っていく。
 だから、その家に帰れなくて困ってるんだってば!

「なんだかなー……」
 そりゃ向こうでも、話しかけても冷たい反応を返されることはあった。だがたいがいの
街人は、きちんとこちらを向いて丁寧に情報提供してくれたものだ。
 それに比べてこっちの人間は、冷淡すぎやしないか。
 他人のことなんか、本当にどうでもいいみたいな……。

499 :Stage.5-3 [19] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:49:12 ID:SKqRKooU0

 ふるっと震えがきた。この時間にもなると一気に冷え込むようで、肩にひっかけていた
だけの上着の前を合わせる。
 日の暮れた街は、たいまつやランプとはまるで違う白く冴えた光で溢れかえっていて、
なにもかもが作り物めいて見えた。
 作り物は、向こうの世界のはずなのに。
「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」

 
「あはははは!」
 いきなり後ろから笑い声が聞こえた。
 驚いて振り向くと、一人の細身の少年が立っていた。
 俺と同い年か、少し上くらいだろうか。ダフッとした黄色のシャツを着て、首回りや両
腕に幾重にも派手なアクセサリを巻きつけている。
「いや失礼。ここは場所が悪いんですよ。さっきみたいに家出少年か、キャッチだと思わ
れちゃうんですよね。もう1本先の表通りに出れば、また反応も違いますよ」
 少し長めの茶色の髪をかき上げる。チャラチャラした格好だが、エージたちよりはずっ
とまともそうだ。
「さっきの立ち回りを見て、もしやと思って追いかけてきたんですが……。良ければ僕が
家までお送りしますよ?」
「それは助かるが……あんた誰だ」
 タツミの記憶にはないし、相手も知り合いというわけではなさそうだ。
「そうですね――今は詳しいことは秘密にしておきますよ」
 唇に人差し指を立てて、彼は人好きのしそうな笑みを浮かべた。
「あなたも移行が完了しないうちは、簡単に素性を明かさない方が賢明でしょう」
 移行……? って、まさか!
「お前も『向こう』の人間なのか!?」

「ええ。僕もまだ1ヶ月くらいですけどね」
 彼の左耳で、小さなピアスがきらりと光った。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」

500 :Stage.5-3 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/23(土) 00:05:05 ID:j2KoNgk00
本日はここまでです。

501 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 00:19:13 ID:xpeii2Lu0
おおお…投下乙!新キャラ向こう側の人間かよ
俄然面白くなってきたwwww期待w

502 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 00:23:18 ID:oQsAYyYg0
乙です!
ピアスの新キャラってもしかして・・・続きめっちゃ気になる

503 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 09:09:34 ID:ScnqKa2Q0
素晴らしい!◆IFDQ/RcGKIさま乙
ゲーム世界篇が面白くて正直次はリアル篇かよ〜と思っていたら
何かもっと面白そう!
おもいだすの特技がリアルでは天才と評価される切り口は新鮮ですね
次も期待しています

それから◆u9VgpDS6fg さま、遅まきながら乙です
続き待ってました
レヌーる城篇クライマックス、良かったです。
ビアンカも乗り越えるべき葛藤があって成長物語らしくなってきましたね
次のベビーパンサーとのからみ期待してます!

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 12:33:42 ID:rDqLBcqj0
わー、タツミ君もアルス君も人知れず苦労してたんですね・・・。
新キャラ、なんかあまり信用しないほうがいい予感?

505 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 14:10:04 ID:dUT2/mTAO
乙!

リアルサイドでは「不慣れな日常生活」ってだけでもつのかなぁ?
などと思っていたのですが…
全くの邪推でしたね!こんな展開に持っていくとは!!
そこにシビ(ry

506 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 17:37:22 ID:g5kY8jGbO
長髪にピアスといえば4勇者か…?

507 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/25(月) 11:00:15 ID:1RYblbuT0
>>303 『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
>>499 「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」

なんだかんだで相手を頼ってるのなw

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/25(月) 22:54:50 ID:wP7NDng/O
◆u9VgpDS6fg氏GJです。
続きまってました!背景や心理の描写うますぎ!
続きwktk

まさか武勇伝くるとは!!◆IFDQ/RcGKI氏!
てか,新キャラですね!でも最初マルチかなんかの勧誘かと思ったww

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/27(水) 03:52:04 ID:r9zx5GBN0
眠れずの保守

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/27(水) 21:21:49 ID:oiWt4v8xO
鈴木さんと田中は今頃なにしてるんだろう

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/28(木) 14:50:44 ID:U01CzWfe0
>>510
たぶん・・・。バイト先の酒場でえっちなこと。
居候先のおかみさんとえっちなこと。

512 :Stage.? [雑談] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/29(金) 08:27:43 ID:BCQ4QTbt0

アルス「なんでもいいから雑談しろってよ」
タツミ「どう見ても間をつないでるだけです。本当にあり(ry」

アルス「ところで、お前の本名の『三津原辰巳』ってさ」
タツミ「うん」
アルス「辰って竜と同じような意味の字だろ。つまりDQ3? 単純じゃね?」
タツミ「悪かったね。単純なのは作者の命名センスだろ」
アルス「っつーか、それはお前もだろ。なんで俺デフォルト名なのよ」
タツミ「もしかして僕が『アルス』ってつけたから、君その名前なの?」
アルス「そうだって。4周もしてたのに全部同じにしてるし」
タツミ「うん、考えるの面倒だったから」
アルス「ありえねー、なにその思い入れの無さ!」
タツミ「こら、『アルス』って名前を気に入ってプレイしてる人もいるかもしれないだろ」
アルス「お前は今、考えるの面倒だったからって言ったじゃねえか」
タツミ「じゃあ『ジョニー』とか?」
アルス「このSSの印象変わりそうだな」
タツミ「それなら『ゲパルト』とか」
アルス「てめえワザとだろ」
タツミ「わがままだなぁ。もう『ヘニョ』にしていい?」
アルス「なんだそりゃ!」
タツミ「いいじゃないか。ヘニョに決定」
ヘニョ「決定するニャ! うニャ、名前まで変わってるニョ!?」
タツミ「語尾も変わってるw」
ヘニョ「ニョwwwwwwやめwwwwwwww助けてマリニャン様ぁ!」

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/29(金) 09:55:42 ID:fB3zTJbgO
ちょwwwwwwマリニャンて誰だよ?

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/29(金) 09:56:45 ID:fB3zTJbgO
あ 今気付いた
命名神マリナンか

515 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/30(土) 20:46:02 ID:m2jFDiYf0
ドイツ連邦軍の対空戦車吹いた

516 :Stage.6-1 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:00:56 ID:KaTnT6e30
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。それではさっそく、サンクスコールいっきまーす」

アルス「>>501様、謎の新キャラ登場です。これからもっと面白くなる……かはわかんないけど」
タツミ「しなきゃダメでしょうが。>>502様は誰だと予想しましたか? 特に伏せようとしてる
   わけじゃないんですが、ピアスはひっかけになるかもしれません」
アルス「>>503様、今までリアルサイドはのんびりしてたからなぁ。俺もこいつが『おもいだす』の
   特技を持ってるとは思わなかったぜ」
タツミ「>>504様、しかしもっとも苦労してるのは、誰かさんのせいでゲーム世界に飛ばされた
   今現在なんですけどね(ノ∀`)」
アルス「>>505様、地味に大変なんすけどね。俺いまだにあの青い親子連れの看板がわからん」
タツミ「>>506様、4って長髪にピアスなんだ。僕DQ3以外やったことないからなぁ。どうなの?」
アルス「俺に聞くな、他シリーズのことなんか知るか。そして>>507様、それは大・勘違い!です」
タツミ「僕はけっこう頼りにしてたんだけどねぇ……まるっきり役立たずだけど」
アルス「タイミング悪いんだよお前は! 意外にキレ易いし」
タツミ「人が命懸けで冒険してんのにふざけるからでしょうが。
   こんなのほっといて、>>508様、確かにあの登場の仕方はマルチっぽいかもw」

アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「>>513様、はい、命名神マリナン様です。ダーマまで進んだらぜひアルスを『ヘニョ』に」
アルス「するなぁ! >>515様、そんなごっついシロモノの名前だったんすね。つけられなくて良かった」

アルス「以上かな? たくさんの応援メッセージありがとうございました!」
タツミ「なんだかんだで物語もStage.6となりまして――」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
 リアルサイド  続編

517 :Stage.6-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:02:10 ID:KaTnT6e30
 Rial-Side Prev >>493-499

 ----------------- Rial-Side -----------------

「別に急ぐ必要なんかないですよ。所詮ゲームです、本当に死にやしませんから」
 早く帰ろうと焦る俺に、ショウはあっさりそう言い切った。
「でも相手が死んだら俺も消えるって……」
「確かに消えはしますけど、主人公は自動で生き返りますし。相手が蘇生すればこっちも
元に戻ります。誰かの前でいきなり消えたり出たりしたらちょっとまずいかな、というて
いどの問題なんですよ」
「マジで? うわー心配して損した!」
 なんだよ、タツミのヤツも復活するのか。神竜も紛らわしい言い方しやがって、死んだ
らそれまでって意味だと思い込んでいたから、気が気じゃなかったっつーのに。
「――ただ僕たちにも、一応『生き返らない条件』ってあったじゃないですか」
 ショウが続けた言葉に、俺はつい顔をしかめた。あまり触れたくない話だ。
「あったな。心から絶望して自殺したら生き返らない、とか」
 もっとも主人公の自殺判定はかなりシビアで、ほとんどは戦略上の理由として片付けら
れて自動蘇生の対象となる。成功することは滅多にない。
 正義の主人公というのは、そう簡単には死なせてもらえないものだ。
「一応そこは気をつけた方がいいでしょうね」
 まあうちのあのプレイヤーに限っちゃ、まずあり得ねーな。

「ちょっと待ってください。コーラでいいですか?」
 表通りに向かう途中の自販機の前で、ショウが立ち止まった。コインを入れ、一斉に点
灯した購入ボタンのうちのひとつを2度押して、先に出てきた缶を手渡してきた。
「えっと……」
 どうすれば、と思うと同時に、相手が自分の缶を目の前に持ってきた。
「ここに指を引っかけて、こうやって開けるんですよ」
 プシュッといい音がして、缶の上に水滴型の穴が空く。うまくできてるもんだ。 
「あんがと。そういう細かいとこが、ところどころわかんないんだよなぁ」
「僕も苦労しました。こっちじゃ常識だから、聞くに聞けないし」
「わかるわかるw」

518 :Stage.6-1 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:03:23 ID:KaTnT6e30

 プレイヤーの生死に神経質になる必要はないとわかったし、事情が同じヤツと話してい
るのもあって、俺はすごく気が楽になった。
 やがて大きな通りに出ると、ショウは片手を上げて一台の車を止めた。屋根に変な形の
ランプがついている。
「住所がわかってるなら、こうやってタクシーを拾った方が早いですよ」
 なるほど、勉強になります。
 自動的にドアが開いて、ショウが先に乗り込もうとする。
「待てよ、これに乗ってけば帰れるんだろ? わざわざついて来なくてもいいんだぜ」
 さすがに俺も遠慮したんだが、彼は首を振った。
「落ち着かないんで、きちんと家まで送りたいんです。嫌じゃなければ、ですけど」
 嫌なわけはない。本音ではありがたい申し出だ。やっぱこっちの人間と違って、向こう
のヤツはみんな親切だよなーっ。

 人工の光に溢れかえる街中を、車がゆっくりと走り出す。
 さて、いい機会だし、あとはなにを聞いておこうかな――。


「ところで、さっき『心配した』って言ってましたよね?」
 俺が口を開く前に、少し低いトーンでショウが聞いてきた。
「言ったけど、どうかしたか?」
 ふと、彼の顔から笑みが消えた。
「プレイヤーに同情は禁物ですよ」
 一瞬、返す言葉に詰まる。相手は「ふぅ」と溜息をついた。

「右も左もわからない異世界で、お互いに自分の正体を知っているのは立場を交換した相
手だけ。情が湧くのも当たり前ですけどね。でも、地位も名誉も、家族も仲間もすべて捨
てて――よっぽどの覚悟を決めて、こっちに来たんでしょう?」
「そりゃ……まあ」
「プレイヤーに同情してクリアまで手伝ってたら、すべてフイになりますよ」

519 :Stage.6-1 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:05:08 ID:KaTnT6e30

 こいつは、本当はそれが言いたくてタクシーに乗り込んだんだなと、俺は悟った。
 冷たく突き放したような内容だが、言ってる本人も少ししぶい顔をしている。
「僕も最初はずいぶん悩みましたよ。プレイヤーも『帰りたい』って泣きましたし。でも
考えてもみてください。相手は、つかの間でも現実の生活を忘れたくて『ゲーム』を楽し
んでたんです。慣れれば必ず向こうを選びます。現に僕のプレイヤーなんて、一週間で永
住を決めましたよ」
「帰りたくない、って?」
「もちろん、そうなるように僕も誘導しましたけど。――今は僕たちが『プレイヤー』な
んですから、うまく相手を動かさないとね」
 小さく肩をすくめて、彼は俺を見た。
「あとは好きに生きればいい。いつまでも相手のフリをする必要もありません。僕たちが
こっちで生活するために利用してるだけで、どうせ親兄弟も赤の他人なんだし」

 その通りだった。
 俺が感じていた不安や疑問をすべて的確に晴らしてくれる答えだ。
 ただ――なぜか俺はそこで、すぐに返事ができなかった。

 黙り込んだ俺に、ショウはフッと笑った。
「よけいなお世話、でしたか?」
「いや……そうだな。お前が正しいよ」
 救うべき世界をプレイヤーに押しつけて逃げ出してきた罪悪感と。
 命懸けで守ろうとした世界が作り物だと知ってしまった虚無感と。
 全部振り切って、ここで生きていこうと決めたのだ。いまさら引き返せない。


 車が停まった。いつの間にかタツミのマンションの前まで来ていたのだ。
「そう言えば、あなたはこちらでは、なんて?」
「タツミ。三津原辰巳」
「いい名前じゃないですか。……じゃあまた、頑張ってくださいね、タツミ君」
 俺を降ろしたタクシーは、少し行った先で角を曲がり、すぐに見えなくなった。

520 :Stage.6-1 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:05:58 ID:KaTnT6e30

 ----------------- Rial-Side Another -----------------

 ――1台のタクシーが夜の住宅街をすべるように進んでいく。
 とあるマンションの前でいったん停車し、黒髪の少年を一人降ろして再び走り出す。
 その車は、近くの十字路を折れてマンションからの死角に入ると、もう一度停まった。

「ここまででいいです」
 後部席に乗っていた黄色シャツの少年が運転手に告げた。財布から紙幣を数枚出して、
座席の間のカウンターに置く。運転手は紙幣を数えると、メーターの示す金額を引いた釣
り銭を代わりにカウンターに置いた。
「ところで、さっきのはゲームの話だよね?」
 運転手が聞いてくる。少年は釣り銭を財布に戻しながら「ええ」とうなずいた。
「いまどきのゲームって凄いよねえ。自分みたいなオジサンにはついていけないよ」
「やってみたらそんなに難しくもないですよ。特にドラクエとかは」
 少年は愛想良く答え、車を降りた。

 そして、走り去っていくタクシーのテールランプに向かって、少年は呟いた。
「近いうちに、嫌でもかかわることになるけどね――」
 さきほど別れたもう一人の少年が帰っていったマンションを注意深く眺める。4階の右
端の部屋に明かりが灯ったのを確かめると、携帯電話を取り出した。
「……僕です。やっぱりゲームサイドの人間でしたね。でも、あんまり期待できないと思
いますよ。なんか人の良さそうな子だし。……いや、それはないと思いますけど」
 通話口の向こうで懸念を示す相手に、彼は静かに言った。
「もう少し様子を見ましょう。それでもしもの時は……僕がちゃんと、処理しますから」

 彼はもう2、3言交わしたあと、通話を切って歩き出した。
 街灯と街灯の合間にある影の溜まりに踏み込んだところで、ふと立ち止まる。
 次の瞬間、そこから光の柱が立ち上がり、空を貫いていった。
 あとには誰の姿もなかった。

521 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 14:06:06 ID:Mngw2y6W0
SIENQUEST

522 :Stage.6-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:09:51 ID:KaTnT6e30
本日はここまでです。
謎キャラが本格的に絡んでくるのはもう少しあとになります。
次はゲームサイドの予定です。

523 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 17:16:17 ID:rqsMJx4v0
なんか本格的な感じになってきたな
もっとこう、軽めの話なのかと思ってたんだが

だが、それがいい


524 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 21:06:55 ID:BtC/VkWvO
GJ!!
ピアス男何者?!
とりあえず味方ではなさそうですね。
続きwktk

525 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 21:53:16 ID:WQf8nEtSO
乙!
自分も>>523と同じくマターリな感じの作品かと思ってたんだが(特にリアルサイド)。
実は結構シリアスなストーリーだったりするのかな?

そういえば俺が好きだったあの人の作品も、最初はギャグ一辺倒だったなぁ。
こんなサービス旺盛なサンクスコールは全く無かったがw

まぁあれだ。ヘニョガンガレ!!

526 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/03(火) 12:56:36 ID:TvnDpJiU0
やはり新キャラ、あやしいですね・・・。
ゲームサイドからこちらの世界をのっとろうとしている悪の組織の手先チック
わくわく・・・。

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 10:55:54 ID:1LlyXZAXO
保守…

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 23:30:17 ID:/fPogsIv0
同人キモオタ小説スレ晒しage

529 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 23:38:29 ID:OoBm8tpA0
sine

530 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 17:38:23 ID:4DjClDfe0
読み返してみるとやっぱり4の人のが一番面白いね
終わってしまって残念

531 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:29:28 ID:cLWjOIcO0
>>530
そういう感想は避難所に書けよ。
なんで現行で頑張ってる書き手さんのモチベーションが
下がるようなことをわざわざここで言うんだ。
少しは気を遣え。

532 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:43:56 ID:UKvE9Atu0
4の人のが素晴らしかったのは事実だし。
読み手が感想を書きたくなるような
面白いものを書くよう努力するさ。

533 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:57:07 ID:cLWjOIcO0
>>532
すまん、かえって余計なこと言った。
マターリ待機してるよ。

534 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:05:07 ID:MwaIw4hS0
 前回のあらすじ>>422-427

 ……ああどうも、俺です。
 皆さんはマイラの村にいるぱふぱふしてくれる女の子が未成年だって知っていましたか?
 俺は知りませんでした。
 たとえ合意の上でも立派な淫行に当たることをご存知ですか?
 俺は知っていました。


  \
:::::  \            俺の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた。
\:::::  \
 \::::: _ヽ __   _     外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
  ヽ/,  /_ ヽ/、 ヽ_
   // /<  __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、俺、どうして・・・
   || | <  __)_ゝJ_)_>    こんなこと・・・しちゃったのかな?」
\ ||.| <  ___)_(_)_ >
  \| |  <____ノ_(_)_ )   とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
   ヾヽニニ/ー--'/        震える俺の掌を濡らした。
    |_|_t_|_♀__|
      9   ∂        「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
       6  ∂
       (9_∂          俺は声をあげて泣いた。


                                                −完−


 ご愛読ありがとうございました。
 ◆yeTK1cdmjoの次回作にご期待ください。

535 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:06:01 ID:MwaIw4hS0
「未成年とは知らなかった。10ゴールドを支払……ってちょっと待て!」
「?」
「ここは条例ないんだよな!?」
「条例? 何の条例?」

 アレフガルドは日本じゃない! てか、地球じゃない!
 つまり! 淫行条例適・用・外!
 素晴らしき哉! 人生!!

「うおおおおお! セフセフ! いいいやっほおおおおおおお!!」
「な、なんかわからないけど落ち着いてよ!」
「素数を数える必要がないほどに落ち着いてるじゃないか! ひゃっほーーーーーーい!」
「落ち着け!」
「ぐふっ」
 ……見事なアッパーだ……。
 燃えたよ……まっ白に……燃えつきた……まっ白な灰に……。

「お、いたいた」
「みやおうか。どした?」
「悶絶してるところ悪いが、そろそろ宿に戻らないと明日が辛いぞ」
「そういや明日はリムルダールだったな」
 実戦経験の乏しい俺の特訓のためにマイラに逗留すること数日。
 ゆう帝曰く、「そこそこ実戦慣れしてきましたね」とのことで俺達三人はようやくリムルダールに向かうことにした。

「ほんじゃ、プリンセス・ハオの夢を見るくらいに寝るとするか」
「プリンセス……何?」
「気にすんな」



「あ、10ゴールドもらってない!」
 (∩゚д゚)アーアーきこえなーい

536 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:08:02 ID:MwaIw4hS0
 そんなわけで、リムルダール島を結ぶ洞窟に向かう俺ら。

「って、毒の沼じゃねえか!」
「何か問題でもありました?」
「いやいやいや、『何か問題でもありました?』じゃねえよ。どうやって行くんだ?」
「歩いていくに決まってるだろう」
「さ、行きましょう」
 ゆう帝はちゃっかりと魔法の鎧を着ているからいいものの、俺とミヤ王はどうすんだ?

「気をしっかり持てばこの程度大したことはない」
 筋肉馬鹿め。

 ゲームの毒の沼と実際に見る毒の沼は全然違う。
 ゲーム上では黒のダメージマップだけど、現実はもっと毒々しい。黒に赤紫を混ぜた色してやがる。
 それに臭い。
 スピードワゴンじゃないが、ゲロ以下の臭いがプンプンする。
 臭いなのか何なのかわからないが目も痛い。
 タバコや排気ガスなんか可愛いもんだ。
 まだ足を踏み入れてないのにこのヤバさ。
 5分もいたら死ぬ。マジで死ぬ。この場所にいるだけで死ぬ。ヤバい。超ヤバい。

「ってもう行ってんじゃねえよ!」
「急ぎましょう」
「早めに洞窟を抜けきりたい。急げよ」
 言いたい放題言いやがって。
 ――よし、行ってやるよ!
 Bダッシュで行ってやろうじゃねえか!

「うおおおお! 痛え! 痛え!」
 バリッとした痛みが伝わってくる。もしかして靴溶けてんじゃね?
 Bダッシュとか無理! マリオすげえ!
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:10:19 ID:msRcUqSD0
ちょうど>>534でスレ開いてテラ焦ったwww

538 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:11:33 ID:MwaIw4hS0
 沼地の洞窟に頭から飛び込んだのは俺くらいだろうね。

「最短距離で行くからはぐれないようにしっかり捕まっとけよー」
「松明ありますよ?」
「松明なんざいらん。右手を向かって右側の壁に当てろ」
 真っ暗で二人の顔は見えないが半信半疑といったところだろう。
 いくら真っ暗で自分の足元くらいしか見えなくてもこの洞窟は難しくない。
 RPGの基本は左手の法則だが、このダンジョンは右手を使う。
 右手をピッタリと壁に当ててそのまま歩いていけば松明がなくとも攻略できる。
 ローラ姫は……いつか来るであろう勇者に任せておこう。
 姫は攫われてるうちが華ってもんだ。

「いいか、何があっても真っ直ぐ進めよ」
「わかった」
「モンスターが出てきた場合は?」
「踏め」

 暗闇に目が慣れるまではゆっくりと、慣れてからは普通の速度で洞窟内を真っ直ぐ進む。
 ゲームなら下に向かってるはずだ。
 魔法使いらしき奴には「どこに目ェつけとんじゃボケェ!」と恫喝し、メーダらしきものは踏んで難を逃れた。
 これぞ男塾名物直進行軍。たとえ飛行帽の家でも真っ直ぐ進んでやるぜ!

 平坦な洞窟かと思っていたが微妙に坂になっているようだ。
 テレビの前でコントローラーを握っているだけではわかるはずもなかったドラクエ世界。
 子供の頃、自分も冒険してみたいと誰もが夢見たことだろう。
 何の因果か知らんがドラクエ世界に飛ばされて、実際に冒険している俺はラッキーと言え――るわけねえよな。
 パソコンが無いし電波は届かないしコンビニも無いし捻るだけで水が出る蛇口も無い。そう考えると日本すげー。

 元の世界に戻ったら色々やりてえなあ。
 2ちゃんの溜まってるログ読んで、乗り遅れた祭りに参加して……そういやあのスレ落ちてないだろな。
 この経験生かして「もし目が覚めたら〜」に投下してみるのもありだな。
 待てよ、即レスを求めるならVIPもあり――って、どれだけ2ちゃんに依存してんだよ俺('A`)

539 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:13:44 ID:MwaIw4hS0
「まさか本当にいけるとは……」
「言った通りだったろ?」
 松明一つも消費せずに沼地の洞窟、難なく攻略。
 沼地の洞窟程度、俺にしてみりゃ超楽勝。
 下押すだけのゲームと実際に歩くリアルドラクエとの違いはあるけど。

「リムルダールまでもう少しだな」
「モンスターも強くなってるでしょうから気をつけてください」
「強いモンスターってのは、今みやおうにボコボコにされてるアレのことか?」


      =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  ∧_∧ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡∧_∧≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  ( ・ω・)=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ))д´)≡つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  (っ ≡つ=つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ (っ  ⊂)≡つ =つ≡つ =つ≡つ
  /   ) =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡| x |≡つつ =つ≡つ =つ≡つ
 ( / ̄∪ ババババ ババババ ババババ ババババ ∪ ̄ ∪ ババババ ババババ
      =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ


 強すぎだろ。
 何だよあのラッシュ。どこの聖闘士だよ。

 もうやめて!  リカントのライフは0よ!!
 などと考えてるうちに哀れリカントは海に転落。南無。
 ミヤ王だけで竜王フルボッコにできるんじゃね?

「待たせてすまん。少々てこずった」
「さ、行きましょうか」
「……」
 今更だが、俺はとんでもない連中と旅をしてるんじゃなかろうか。

540 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:14:49 ID:MwaIw4hS0
 リムルダールに向かう途中、リカントだの魔道士だの鉄のさそりだの出てきたが全部ミヤ王とゆう帝が一掃。
 早くキム皇と合流したいそうです。
 ま、俺は足手まといになるだろうし、楽なのはいいんだけどさあ。
 怖いよ。
 文字通りフルボッコにするミヤ王もだが、急所を的確に狙って一撃で殺すゆう帝には流石の俺もドン引き。
 キム皇はまともな奴でありますように。
 ……望みは薄そうだけどさ。

「キムこうは確かこっちに……。あそこで佇んでる奴、ではないよなあ……」
 俺の視線の先にはなぜか体育座りをして何か口ずさんでる男の姿が。
 こういう嫌な予感はよく当たるんだよなあ。

「おい、キムこう!」
 ほーら当たった。

「もしかしてゆうていとみやおうだすか? あて……あて、寂しかっただすよ〜」
 仲間同士の再会ってのは別に悪くはない。
 むしろ感動するシーンだとは思う。
 勉三を彷彿とさせる謎の方言じゃなければの話だが。

「ところで、この人はどちらさんっすか?」
「話すと長くなるのでひとまず宿屋へ向かいましょうか」
「でも、あて……」
「?」
「1ゴールドも持ってないだす……」
 だからあんなところで佇んでやがったのか。

キム皇のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたっ
方言力:うわぁ…勉三さんの中…あったかいナリ…

541 : ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:17:22 ID:MwaIw4hS0
空気を読まず投下終了です。

>>537
むしゃくしゃしてやった。
今は反省していない。

542 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:19:01 ID:US+GQySaO
腹筋割れたwww
GJ

543 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:28:57 ID:be6jNVGZ0
オモシレ〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ステータス方言力てwwwwww
まるで読めないキャラ設定と展開、GJ!

あ〜もう続きが読み手〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

544 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 01:46:45 ID:KHivypzf0
>>541
超乙
夜中に一人で大爆笑しちまったい。
寂しくなんかないんだからっ。

545 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 10:51:52 ID:L9Nqx6H00
DQ1のぱふぱふ娘はリムルダールだった気がするんだが、リメイク版は違うんだっけ?

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 11:03:28 ID:L9Nqx6H00
あ、調べたらやっぱし変更されてた。
つーかFC版は「ぱふぱふしてほしいなら50G〜」と出るだけで、出来ない。

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 07:23:45 ID:CHoq2kXBO
エイコたん待ち保守

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 12:28:47 ID:pBn8tBxP0
エイコなら、オレの隣で満ち足りた顔をして、かわいい寝息をたててるよ。

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 14:15:25 ID:+qwtutd4O
対象は
未成年 ×
満18才以下 〇
高校卒業したての18才は余裕でセフセフ

550 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:46:26 ID:QJkwVmKCO
神様、私はどうも過大な期待を寄せていたようです。
や、でも。だって。現代社会に生まれた夢見る乙女だったら誰でも思うじゃない?
王子様=完璧超人ってさ。
でも、そうでもないらしい。
ここグランエスタードの王子様は、そらもうやんちゃ盛りで、朝から晩まで、いや朝から朝まで城を抜けて遊ぶなんてざららしい。
でも、街の声によると王子様は悪い人間ってわけでもなさそうだ。
案外気さくだったりするらしいし、やんちゃっていってもトンでもないゴシップなんかは聞こえてこない。酒も飲まない。
そういう点に置いて駄目なのは意外や意外、アルスの叔父さんだった。

酒クサい部屋に転がる瓶。中身は多分お酒だったんだろう、口から零れてそれが更に発酵しているみたいで、異様な臭いがした。
よーくみると小バエが無数にたかっていて鳥肌がたつ。
そんな中、床に寝転んでいるのが、アルスの叔父さん――ホンダラさんだった。





551 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:47:15 ID:QJkwVmKCO
ホンダラさんはアリスを見つけるなり、なんとかストーンという石っころを自慢した。

ほら、触ってみろ、あったかいだろ?俺が見つけたんだ、羨ましいか?やらねーよ、金、出すなら話は別だけどな。

酒クサい息を吐き散らしながらアルスに絡む。
あーあ、どこにでもいるもんなんだなぁ、酔っ払い。
私の知る限りのそれらは見境がない。この場合次に絡まれるのはもう決まっている。

ん?なんだこの姉ちゃん。浮気か?アルス、マリベル以外の女と一緒とはな。フン、マリベルより体の凹凸ははっきりしてるが…地味な顔してるな

私を爪先から頭のてっぺんまで見渡してホンダラが言う。

「んなっ……!」
頭に血が昇った。頭の中ぐるぐる言葉が巡るけど出てこない。言葉が喉に詰まる。

こんな時人はどんな風な行動をとるか。


グッと我慢してやり過ごす
怒りを物理的に表現する。






552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 21:48:01 ID:znQtBP+p0
わ〜い支援

553 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:49:15 ID:QJkwVmKCO
グッと我慢してやり過ごす
 ニア 怒りを物理的に表現する < ピッ

私は無言のまま腕を振り上げ、そのままホンダラに振り下ろした。
――…はず、だった。

「うわっ」
私の拳は空を切った。
見るとホンダラさんは床に昏倒していた。
「な、何で?え?」
私まだ殴ってないのに…
足元のホンダラさんから視線を上げると、真犯人がにっこり笑った。
…酒瓶を逆手に持って。
「ごめんね、うちの叔父が。」
「…アルス…?」
「大丈夫。死なない!」
「……そう?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

何か確信を持ったアルスの物言いに、内心ガクブルしながら私は納得しようとした。
まあ、アルスが殴ってなきゃ、私が殴ってたわけだし、結果は同じか。
………同じか?
床のホンダラさんは白目剥いて倒れてる。
靴の先でツンツンと突っ突いて見る。
返事がない ただの酔っ払いのようだ …多分
私はそっとホンダラさんに、放り出されていたタオルケットを掛け、目を逸らした。






554 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 22:01:22 ID:QJkwVmKCO
一応顔は広いらしかったホンダラさんが頼りにならないので
(頼りにならないというか、ならなくしたというか…)
私とアルスは町中を歩いて回った。
当たり前だけど、私を知る人はいない。
途中、グランエスタードに着くなり別行動をとったマリベルが買い物をしているのを見た。
どこの世界でも女の子は買い物好きってのは共通事項らしい。

「うーん。見つからないね」
「ごめんね…」
見つかるはずがないのだ。
アルスと一緒に歩き回ってるうちに嫌でも実感させられる。
異 世 界
この3文字。私の世界の常識は通用しない。私の世界には傷を一瞬にして直してしまう『薬草』なんてない。
ここは、私の住む世界ではない。

「謝ることないよ」
アルスは優しく言うけれど、多分こうやって探すことに意味なんてないんだ。

……もう、帰れないんだろうか








555 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 22:09:33 ID:QJkwVmKCO
「お城に行こう!」
沈む私の肩を叩いてアルスが言った。
彼はきっと、私の家族が、私の帰る場所がここに、この世界にあることを信じて疑わないんだろう。
いや、別世界なんて考えもしないんだと思う。…当たり前よね。

「お城…そうね、うん行って見よう」

行こう。
私の世界に帰る方法が見つかるか、見つからないか。
どちらにせよ私は決めなきゃならない時なんだ。
帰れない時、私はこの世界で暮らしていくことになる。もしかすると、生涯を。





556 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/12(木) 06:33:32 ID:fd9+4VkDO
乙。
アルス意外といい性格してんなw
いよいよ次は王子登場か。

557 :Stage.6-2 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:19:04 ID:q9+p+guA0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。……なんかさ、この頃シナリオちょっと暗くない? 今回もそうだし」
アルス「いきなり内容に触れるなよ。だから今回いっきに投下する予定になってる。
   それより、まずはサンクスコール!」
タツミ「はーい」

アルス「>>523様、乙ありがと。タツミも言ってたけど、本格的っつーか、
   たま〜にジメっとした話にはなるかもなー」
タツミ「まあこのメンバーなんで、バカやってる方が多いと思いますけどね。
   >>534様、あのピアス男やっぱ怪しいよねー? アルスに変なこと吹き込まないで欲しいな」
アルス「えー? 意外とイイヤツかもしれないだろ。
   そして>>525様……って、ヘニョはやめてー! 定着するー!
   スレトップの【キーワード】にヘニョって入ったらどうすんだよー!!」
タツミ「うはw連呼したら入りそうだなww ヘニョヘニョヘニョ……痛! わかった叩くなって!
   でもほら、>>526様も『悪の組織の手先チック』だと言ってるし、あんまり信用するなよ」
アルス「お前にはマイナスっぽいヤツだしな。まあそれなりに対処しておきますよ」

タツミ「いつもご感想いただいて感謝!」
アルス「ほんと、これがあるから徹夜で書ける」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
 続編 ゲームサイド&リアルサイド

558 :Stage.6-2 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:20:30 ID:q9+p+guA0
 Prev >>517-520 (Game-Side Prev >>458-465)

 ----------------- Game-Side -----------------

「少し、いいかな」
 僕は周囲を警戒しつつ、エリスに小声で話しかけた。
「……はい」
 暗闇の中から、エリスのか細い声が返ってくる。
「死んだ時、生き返ることが "不可能" な条件って、なに?」
 この世界じゃあまりに常識だからか、かえって本なんかには載っていなかった。こんな
時に話したい内容ではないが、こんな時だからこそ早めに確認しておくべきだろう。
「そうですね。自ら命を絶った者は生き返らないケースがあります」
 彼女がゆっくりと答える。知らなかった、自殺は蘇生対象外なのか。
「それから、魂を呼び戻すための器である肉体が必要です。半分もあればいいそうですが」
「つまり、バラバラになったら半分くらいはかき集めろってこと?」 
「ですね」
 ふー。ますます「血はダメだ」とか言っていられなくなってきたな。
 ってかおかしいよこのドラクエ。堀井先生もそこまで生々しい世界を想定して作ってた
とは思えないんだけど。
「あ〜、それで遺体を運ぶときって、やっぱりアレに入れて引きずるの?」
「折りたたみ式の車輪の付いた棺桶が人気があるそうです」
 さいでっか。
「うち棺桶なんか用意してないけど、ふくろに詰め込んでもいいのかな……」
「それだと、教会に渡すとき、うっかりパーツを取り出し忘れたりしそうですね」
 エリスがフフっと笑う。うわー、ありそうだ。
「あとからアイテム出そうとしたら、干涸らびた腕とか出てきたりね」
「それでサミエルなんて『記念にとっておく』って言い出すんですよ」
「やーめれー。なんの記念だよ〜w」

 しっかし僕らも不謹慎な話をしてるよなぁ。まあエリスも笑ってくれたし、少しは気が
軽くなったかな。
 あとは脱出をどうするかだけど……。

559 :Stage.6-2 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:22:27 ID:q9+p+guA0

「勇者様」
 不意に彼女が動く気配がした。やわらかい重さが僕の全身に被さってくる。
 首に回される細い腕。耳元でささやく、優しい声。
「私は、いいんですよ……?」
 エ、エリス!? びっくりして混乱しかかった僕に、彼女はちょっと笑った。
「落ち着いてください、勇者様。あなたは頭のいい人ですから、本当はずいぶん前から、
決断されていたのではないですか?」
 この状況で、どうするのがベストなのか――。
「それでいいんです。冒険には、よくあることですもの」

 ………………頭の芯が、すうっと冷えていくのが自分でわかった。

「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」 
 気がつくと、僕は彼女にこう言い渡していた。
 エリスはどこかほっとしたような、諦めたような、そんな笑顔でコクリとうなずいた。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
「もちろん」
 即答した僕に、彼女は少し迷ってから、そっと唇を重ねた。
 全面的な肯定を態度で示してくれたのだろう。本当に優しい子だなぁ、と思う。


 そして僕はエリスと別れ、一人で通路を歩き出した。
 まずは現在位置をはっきりさせよう。頭の中にピラミッドの地下室のマップを引っ張り
出し、落下した位置と逃げてきた方向を照らし合わせる。たぶん、このあたりは出口に近
い方の区画のはず。例の隠し階段もこの辺だ。
 上に置いてきた二人だが、戦闘面はお任せのサミエルに、お堅い職業の割には機転の利
くロダムがついていればまず心配ない。事前の打合せ通りに他の宝箱をすべて無視し、地
図に従って進んでいれば、もう魔法の鍵を取って脱出してもいい頃だ。
『構うな、鍵を探せ』
 あれは一応、そこまで計算した上での指示だ。

560 :Stage.6-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:24:50 ID:q9+p+guA0

 もう一つ。地下室に散らばっている死体をいろいろ観察しているが、さすがピラミッド
パワーが効いているのか、どれも意外と保存状態がいい。きれいに片付いている地上と違っ
て、地下には死体を食い荒らすようなモンスターもいないようだ。
 以上より、結論はこうなる。

 【さっさと脱出して、3人で彼女を「回収」しに戻った方が早い】

 しばらく進んだところで、後ろからエリスの叫び声が聞こえた。助けを求めるものでは
なく「さっさとこっちに来なさいよ!」とか「やれるものならやってごらん!」なんて、
彼女らしくない威勢の良い啖呵を切っている。
 そこかしこでざわめいていた魔物の気配が、そちらへと流れていくのを感じる。
 僕はただ、敵との遭遇を避けることに専念しつつ、出口を目指して進む。

 本当は、地下に落とされた瞬間にここまでのシナリオはできていた気がする。先刻の
「死」についての談義も、僕はきっと、彼女が自発的に囮役を引き受けるよう促していた
んだろう。……結局、僕は昔からなに一つ変わってないらしい。

   ◇

 途中で何度かミイラに襲われたが、ここでも星降る腕輪が効力を発揮して助かった。
 とはいえ、なんとか地上までたどり着いた時点でほとんど立っていられない状態で、僕
はその場に突っ伏したまま動けなくなった。
「勇者様! ご無事でしたか!」
 その途端にロダムの声が聞こえた。いやはや、僕の計算も大したもんだね。
「エリスがまだ中にいるんだ。案内するから、急いで僕を回復してくれる?」
 可能性は低いけど、まだ間に合うかもしれないし。

 ……が、サミエルとロダムはなにやら戸惑ってて、顔を見合わせたりしている。
 ちょっと、そっちも疲れてるかもしれないけど、早くしないとエリスが可哀想だから。
「それともロダム、MPない? 薬草でもいいよ」
 僕の方は使い切っちゃったけど、ロマリアで買い込んできたからそれは残ってるはずだ。

561 :Stage.6-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:26:09 ID:q9+p+guA0

 だが、彼らの道具袋に手を伸ばそうとしたところで、ロダムに止められた。
「お待ちください勇者様。もうよろしいですから」
「は? なに言ってるんだ、エリスがまだ中にいるんだよ?」
 思わず声が荒くなる。年配の僧侶は、まるで諭すように穏やかに続ける。
「彼女は我々が迎えに行きます。こちらの地図に印をつけてくださればけっこうです」
「俺らの方は全然OKッスから。勇者様のお陰でホントにお客さん扱いで、あのあとまっ
たく敵も出なくて……」
「僕が案内した方が早いって言ってんの。いいからさっさと回復して!」
 さらに言いつのる僕に、ロダムとサミエルはますます困ったような顔をする。

「では言い方を変えましょう。地下に置いてきたということは、彼女を助けに行くので
はなくて、遺体の回収に向かうということなんですよね?」
「そうだね。はっきり言ってしまえば」
「でしたらそこまで急ぐ必要もないでしょう。それに正直なところ、疲弊しているあな
たを連れて行くより、我々だけで向かう方が楽なんです」
 あーなるほど。僕を連れて行くメリットとデメリットを考えると、デメリットの方が
大きいということか。戦闘じゃまだまだお荷物にしかならないもんなw
「了解。確かに二人に任せた方が効率的だね。いいよ、地図貸して」
 差し出された地図に印をつける。回復呪文を受けてる間に、地下での注意点を簡単に
説明して、僕はすぐに二人を送り出した。


「さすが最年長、冷静で助かるね」
 二人とも妙な顔で僕を見てたのは気になるけど、エリスの件はこれで片付くだろう。
 預けられた『魔法の鍵』を見てみる。それは小さくて煤けてて、想像よりずっとみす
ぼらしいシロモノだった。伝説のアイテムといってもこんなもんなんだろうか。

 さてと、みんなが戻ってくる前に、一応あの人にも報告しておこうか。心配してるか
もしれないし……っていうか、イヤミのひとつも言っておかないと気が済まない。
 なーにが「リロードは早めに」だ、バカ勇者。

562 :Stage.6-3 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:28:14 ID:q9+p+guA0

 ----------------- Rial-Side -----------------

 家に戻ってみると、部屋の中は明かりもなく静まりかえっていた。
 玄関にあった女物の靴が無くなっているから、どうやらヤツの母親はでかけたらしい。
もう夜も8時を回っているんだが、こんな遅くにどこに行ったんだろうか。
 そういや俺も連絡すら入れてなかったな。放任主義という情報は正しいようだ。

 タツミの自室に入る。テレビは出かける前に消していたから、ここも暗かった。
 明かりはつけずに、ベッドが寄せてある壁側の窓にカーテンをひく。窓に背を向けてベッ
ドに腰掛けると、ちょうど正面にテレビが来る。
 手元にあったリモコンで――どうにも気が向かなかったが――スイッチを入れた。
 黒光りする鏡でしかなかったモニターが、命を吹き返したように光を放つ。
 が、思ったほどの光量でもない。画面の向こうも夜らしい。
「やっぱピラミッドか……」
 砂漠の真ん中にぽつんと配置されている△の前に、勇者が一人でたたずんでいた。
 あいつ仲間はどうしたんだ。まさか一人旅ってことはないよな。今までろくに連絡を取っ
てないから、まるっきり状況がわからん。
 今なら携帯も繋がるだろう。向こうが電源を切ってなければだが――。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 かけようとした途端、向こうからコールがきてちょっとビビった。
「……よう」
『やほーアルス! 今どこ?』
 なんだ、いきなりテンション高いな。
「お前の部屋だ。画面で見てるが、まさか本当にピラミッドまで来てるとはな」
『ふっふっふ、早いだろ。ダテに4周してませんから』
「鍵はもう手に入ったのか?」
『まあね。取ってきたのは僕じゃないんだけど、その辺の報告しとこうかと思ってさー』

563 :Stage.6-3 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:29:53 ID:q9+p+guA0

 奇妙に軽いノリでしゃべるヤツは、そのまま『実はねー』と続けた。
『ごめんアルス! 君の元カノ、見殺しにして逃げて来ちゃってさ。今サミエルとロダム
が回収しに……って、そうそう、この三人が仲間なんだけど知ってる?』
「ああ、1回目の冒険の最終パーティーだった連中だ」
『え、そうなの? 僕はそんな名前のキャラ作ってないんだけどな』
 そのあたりのズレは俺にもよくわからないが。
 それよりお前――その声。
『なんだっけ。そうだエリスちゃん。いやホントごめん、助けたかったのは山々だったん
だけどさ。力及ばずというか、ぶっちゃけそこらの高校生には荷が重いっていうかw』
「……タツミ」
『だいたいピラミッド最悪だよ、なにあの罠。ありえないって。本当にここはドラクエか
と小一時間問い詰めたい! でもスクエニ本社に問い合わせても意味ないしねー』
「タツミ、落ち着け」
『っていうかアルスが一番ひどいって。こっちは必死だってのに、なにふざけて……』
「タツミ!」

『……………』
 遮られて、急に機嫌が悪くなったみたいに黙り込む。
 参ったな。相手の心情がわかりすぎるだけに、対処に困るというか。
「とりあえず、ちょっと上見てみ。その様子じゃ気づいてないだろ」
 普通は気がつかない方がおかしいってもんだが、俺もあの時は顔を上げる気力もなくて、
しばらくわかんなかったからな。
『は? 上ぇ? なんでさ』
「いいから、騙されたと思って」
『上ってなにが――』
 次の瞬間、携帯の向こうで、はっと息を呑むのが聞こえた。

『…………すごい……星が、降ってる……!?』
「そこな、世界的な流星群の観測地帯なんだそうだ。俺も初めて見たときは、言葉をなく
したよ」

564 :Stage.6-3 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:31:17 ID:q9+p+guA0

 今でも鮮明に思い出せる。
 遮る物のない砂漠の空いっぱいに広がる星の海と、そこから雨のように降ってくる大量
の流れ星と。信じられないくらいきれいで、思わずぽかーんと見上げてたっけ。

「でさ、先にカミングアウトしちまうとな。俺、最初の時そこでかなり泣いた」
『え、泣いた……?』
 タツミがびっくりしたみたいに聞き返してくる。
「泣いた泣いたw だってピラミッドなんて暗いし死体だらけだし、マジこえーじゃん」
 1周目はまだ冒険の進め方もよくわからなくて、序盤の難関のピラミッドでは当然のよ
うに全滅寸前になって。
 古ぼけた小さな鍵を握りしめて、たった一人、命からがら逃げ出して。
「もうやってられっか!って叫んで上見たら、そんなのが一面だもんなぁ。なんか急に切
なくなって、ずいぶん長いこと一人でわんわん泣いてた」
『そんなこと、あったんだ』
「だからさ、お前も我慢すんな。――エリスが死んだのは、お前のせいじゃない」


 しばらく返事はなかった。
 待っていると、やがて少しかすれた声が、途切れ途切れに漏れてきた。
『……でも、僕のミスだし』
 しゃくりあげそうなのを必死にこらえている感じだ。
『こうなること、わかってたのに……僕は、仲間より鍵を優先して』
「まあ指揮官なんだから、目的を優先するのは当然だな」
『でも……女の子を見捨てて、逃げ出しただけで……』
「戦場で男も女も関係ねえよ。その方がいいと判断したことなんだろ?」
『だけど……こんな……僕……勇者なのに……!』
「相手は天下の魔王様だぜ? キレイゴトだけじゃ戦えねっつーの」
『……でも………うぅ……うわぁぁぁぁぁああああ!!!』

565 :Stage.6-3 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:32:41 ID:q9+p+guA0

 はいはい、それでいいんです。
 リーダー張ってるからには、仲間の前じゃなかなか見せられないが。一人になったとき
くらい素直に泣けるようにしとかねえと、この先保たねえぞ。これも冒険のコツだぜ。

 ふと、あいつの言葉がよぎる。
(プレイヤーに同情は禁物ですよ)

 しかしなぁ。後輩クンが昔の俺と同じところで悩んでたら、つい励ましたくなるのが人
情ってもので。
 いや、偽善もいいとこだってのも、わかってるけどさ……。
 俺は画面から目を離して、そのままベッドに寝ころんだ。
 横になったまま、カーテンの端をつまんで隙間から空を眺めてみる。こっちは地上の光
が強すぎて、ただ灰がかった闇がよどんでいるだけだ。

 あの星空も、俺が捨ててきた物のひとつなんだろうな。
 堰が切れたように泣きじゃくるタツミの声を聞きながら、俺はそんなことを考えていた。





566 :Stage.6-3 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:34:16 ID:q9+p+guA0
 ----------------- Game-Side Another -----------------
 
「いや〜、あんなつらそうな顔してんのに、自分でわかってないんだもんなぁ」
 地下へ続く狭い階段を下りながら、サミエルは深々と溜息をついた。
「本当はかなりムリしてるんスかね?」
「なんというか……あの子は頭が良すぎるんでしょうな。冷静な考えが先行してしまって、
感情が置き去りにされてしまうというのか」
 ここ数日の付き合いではあったが、ロダムも時折、同じ不安を抱いていた。
 モンスターとの戦闘でも、「血はダメなんだよねぇw」などとヘラヘラ笑っていたが、
その目の奥に押さえつけられている恐怖は本物だった。
 だが、それを表に出したところで意味がないと、理性が先に判断したのだろう。握り込
んだ手が小刻みに震えていたことも、はやり気づいていないようだった。
 今回も、せめて一人にしてあげようと地上に残してきたが、あの少年は一人になったと
ころでそのままのような気がする。なにか切っ掛けがあれば別かもしれないが――。
「えーと、本名なんて言いましたっけ? 珍しい名前でしたよね」
「タツミ=ミツハラですよ」
「だったっけ。呼んじゃいけないとなると、つい忘れるッスよ」


 彼らを迎えにアリアハン城にやってきたその少年は、3人を別室に集めるなり、とんで
もないことを切り出した。
「この世界に、勇者アルスはもういません。僕はその人の代理としてここに遣わされた、
まったく別の世界の人間です」
 いったいなんの話だ? そうロダムが思うと同時に、エリスが立ち上がった。
「ではあなたはアルス様ではないのですか? アルス様はどうなされたのですか!?」
「わかりません。しかし彼は『勇者』ですから、魔王が関わっている可能性は高い。真実
を知るには、やはり魔王を倒す以外に方法はないでしょうね」
 全身から力が抜けたようにガクリと椅子に座り込むエリス。少年はあくまで冷静に、先
を続ける。

567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 09:42:02 ID:vE4EysVeO
自力回避

568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 09:43:48 ID:vE4EysVeO
しかし さるには きかなかった!

規制解除待ち

569 :Stage.6-3 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 10:06:24 ID:vE4EysVeO

「ですので、あなた方は偽りの勇者を掲げて旅をすることになります。注意事項は二つ」
 あとで教えるが、本名では呼ばないこと。アルスの名でも呼ばないこと。
「特にこだわるわけではありませんが、咄嗟の時に対応が遅れる可能性があります。対外
的にはアルスとして通してもらいますが、普段は肩書きで呼んでください」
「勇者様、ですか?」
 エリスがぼんやりと問い返すと、少年はにっこり笑った。
「結構です。ところで、あなたはアルスの恋人だったそうですね? 僕をここに導いたル
ビス様が、あなただけは必ず仲間にしなさいと言っていました」
「え、私を……?」
「アルスには、なくてはならない存在なんだそうです。一緒に来ていただけますか?」
 目に見えて元気になった彼女が、大きくうなずく。そこですかさず、彼はテーブルに3
枚の契約書を広げた。
「ではここにサインをお願いします。あなたがたはどうなされます?」
 実に手際がいい。サミエルがおそるおそる手を挙げた。
「んで、その……あんたは、魔王を倒せるのか?」
 お前は勇者たるに相応しい人物なのか。戦士の質問に対し、少年はやはり顔色ひとつ変
えずに、さらりと言ってのけたのだった。
「倒しますよ。――最短でね」


「俺はハッキリ言って、どっちでも良かったんスよね。オルテガさんに憧れて魔王退治に
出たいだけだったッスから」
 言いながら戦士が剣を抜く。
 新たな獲物を見つけたミイラたちがじりじりと寄ってきていた。
「でも、今は『ほっとけない』って感じッスかねぇ」
「私もですよ」
 あの少年が何者かはわからない。だが彼は確かに、命懸けでこの世界を救おうとしてく
れている。そこにどんな事情があるにせよ。

 子供たちにばかり、苦労させるわけにはいかない。
 二人は全力で武器を振るいながら、仲間の少女の元へと急いだ。

570 :Stage.6-3 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 10:11:24 ID:vE4EysVeO
本日はここまでです。
>>563はStage.6-3 [10] の間違いでした。

最後は携帯にメールで飛ばして書き込みました。
さるさんは厳しいなぁ。


571 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 10:56:15 ID:uzBDvQc5O
乙であります!

なんと仲間達は勇者=タツミだって知ってたのか!
端から見たら戦闘は他の3人に押し付けてる風だったけど…
なるほど。納得してそれぞれ働いてるんだね。

今回は本編でアルスとタツミが久々に長めに絡んだけど、和んだって言うか
なんか二人の友情的なものを感じて泣けるでぇ〜。



あとエリス萌え。

572 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:27:43 ID:ENWfM0l90
乙でした!
エリスや仲間達の気持ちとか、アルスとの会話とか、タツミの抱えてるものとか、
なんか説明できないんだけどぐっとくる。頭よすぎるのも考えもんだな…。
ピラミッドは夕日のイメージが強かったけど、星降るつながりで来ましたか。
続きめちゃくちゃ気になります、頑張ってください!





俺はロダム燃え。

573 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:59:54 ID:+0yplX890
エリスさん、いいですね。
生き返れるとはいえ、できれば無事でいてほしいですね。

サミエルさんもロダムさんも、「いい奴」ですね。
ベストパーティーで、無事冒険の目的を達成できるといいですね。

しかし、現実サイドで暗躍するゲームサイド人・・・。
一波乱ありそうですね。

574 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 21:54:03 ID:lsMxx3Yr0
いやーめちゃめちゃ乙
かなりじっくりと読ませていただきました

個人的にいろんなスレでいろんなSSを読んでいるんだけど、
今は◆IFDQ/RcGKI氏のが一番楽しみ

4の人のようにじっくりと続けて欲しいです

575 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:34:52 ID:0YmYRk3X0
○ラダトーム○

ラダトーム・・・・・・・・ここはもょもと達の祖先、アレフが竜王を倒し、ローラ姫と共に
旅立ったという縁の地でもある。

アレフが旅立ち、あれから150年・・・・・町は王国制度というのが廃止され、今は共和国になった国である。
俺の世界で言ったら大統領や総理大臣に当たるものだ。

但し不思議なルールがある。ラルス16世が亡くなった後、ラルスの血を継ぐローラ姫が
アレフと旅立ってしまったため、王家の血がラダトームから途絶えてしまった。

そこで当時の大臣や有権者達は国民の中から王を選び、3年を任期に継続または交代するという
システムを作り上げた。まぁ共和国なので誰でも国の代表者になれるチャンスがあるらしい。
もちろん前任者は国民投票によって継続するか退任するかを決めているみたいなのだが。

って何で俺がこんなこと言っているかというともょもと達が町に入ってしばらくしたら
人が集まってきたのだ。

何でも、もょもとがアレフにそっくりなので人々が集まり、俺達はラダトームの博物館に案内された。

そこにはアレフの使った武器、防具、道具なのが展示されているのだがレヴァティンに関しては
書物より全くなかった。



576 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:35:32 ID:0YmYRk3X0
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。


577 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:01 ID:0YmYRk3X0
>>576はあぼんしてくださいorz

 タケ「(手がかりは無しか)」
 もょ「(まいったな。)」

ムーン「ねえ、みんな。竜王の城に行かない?」

サマル「どうしたんだい?急に。」
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。



578 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:51 ID:0YmYRk3X0
それにしても廃墟とは言え、進めば進むほど綺麗な雰囲気になっていっている。
誰かが最奥にいるんじゃないのだろうか?

タケ「(気がついたか?)」
もょ「(ああ。)」
タケ「(奥に誰かがおるって事や。まさか竜王か?)」
もょ「(それはないだろう。ごせんぞさまがたおしたはずだぞ。)」
タケ「(しかしムーンブルグやドラゴンの角みたいに邪悪な雰囲気は無いんだけどな。逆に引っかかるわ。)」
もょ「(わかった。タケのいういけんにもいちりがある。きをつけるよ。」

どーやら最下層についたみたいだ。
そこは地下とは言えない美しい場所だった。
例えると綺麗な庭園みたいな感じで心地よい場所だ。
しかもしっかり手入れがされてある。

 リア「きれい・・・・・・」
ムーン「これは凄いわね。地下でこんな物が見れるなんて・・・・・・・・」
サマル「それにしてもどうやって作ったんだろう・・・・?」

感心していると誰かがやってきた。初老の人間だ。




579 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:39:35 ID:0YmYRk3X0
 老人「何か用かな?」
 リア「あ、あの・・・」
ムーン「綺麗な場所だなって思いまして。」
 老人「久々に人間が来たもんだからちょっと嬉しゅうてのぉ。ホッホッホ。」
サマル「人間じゃないの?」
 老人「ワシ等は竜人族じゃ。見た目は人間と変わらんがの。」
 もょ「う〜ん、なるほどなぁ・・・・」

このじーさんにこやかに話して来るんだがどーしても引っかかる・・・・・・・・・・

 老人「ちなみに君達は何しに来たんじゃ?」
サマル「あ、ざいほ・・・・」

ムーンがとっさに口を塞いだ。

ムーン「竜王の城がどんなっているのか見学しに来たんです。
      まさかこんなに綺麗な庭園があるとは思いませんでしたわ」




 老人「なるほどなるほど・・・・・・・・・ってあの世に行く準備は出来ましたかの?」





 リア「えっ!?」

じーさんが態度を変えた。

580 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:40:39 ID:0YmYRk3X0

 老人「ふん。忌々しいアレフの子孫共め!我が一族の積年の恨みを晴らしてくれる!!」
 もょ「どういうことだ!」
 老人「貴様はアレフにそっくりだ!ほっかむりをかぶった女はローラに似ている・・・・」
サマル「ま、まさか・・・・」
 老人「ワシは竜人族最後の生き残りのギィン。貴様等に復讐するチャンスが訪れたのだ。嬉しいことは無いわ。」
 リア「ど、どうしよう・・・・」
ムーン「バカ!逃げるわよ!」

ギィン「逃がすか!」

ギィンが紐みたいな物を引っ張ると壁に囲まれた・・・・・・逃げられない!

ギィン「生を掴みたかったらワシを殺すんだな!かかって来るがいい!そして絶望の底に落としてやる・・・」

もょもと&タケ
Lv.16
HP:112/112
MP:  2/  2
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
 もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
 タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ


581 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:12:42 ID:R+MRP4UbO
レッドマン氏キター(゜∀゜)ーーー!!
お帰りなさいませ。具合は良くなりましたか?

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:32:24 ID:XgncK/aJ0
待ってましたレッドマンさん!
久し振りの続編面白!
またいいところで終っちゃってるなぁ
竜王の城が名所扱いになってるのがワロ

583 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 23:45:05 ID:b/E6FKHOO
レッドマンが久々の投下か………

( ;∀;)おかえり

584 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/16(月) 15:11:22 ID:z2PeEpKOO
レッドマン乙!そしてお帰り!!
竜王の曾孫敵なんだ!もょ達で相手になるのか…?



最近新人さんたちが頑張ってるけど、
レッドマン
タカハシ
暇つぶし        この三人は数スレ前から続いてる書き手だから、最後まで応援してる。



総長はまた失踪しちゃったし(´・ω・`)

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/18(水) 00:08:48 ID:A3n3p/VlO
>>◆IFDQ/RcGKI氏
GJ!泣いた。
エリス萌え。そしてアルスや仲間達が格好良かった。
>>レッドマン氏
GJ!そしてお帰り!じいさんの変貌ぶりが笑えた。

確かに。真理奈(漢字間違ってたらスマソ)が恋しい。

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/20(金) 12:22:34 ID:rZcYp+yIO
保守

587 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:18:37 ID:zMYJt4JZ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。あ〜あ、前回は情けないトコ見せちゃったなぁ。
   僕、物心ついた頃から人前で泣いたこと一度もなかったのに」
アルス「マジかよ! 俺もたいがい強情なガキだったが、そこまでひどくなかったぞ」
タツミ「ほっとけw 気を取り直して、サンクスコールいってみよー!」

タツミ「>>571様、はい実は仲間3人、僕がタツミだというのは知っていました。
   慣れない異世界生活の様々な面でサポートしてくれて、本当に助かってます」
アルス「>>572様、ピラミッドは夕日もきれいだぜ。バラモス討伐後は安全度もあがって、
   観光名所になってたからな。ちなみに中の罠は、実は外から切ることもできたりして」
タツミ「うう、アルスが最初から素直に教えてくれてればもっと楽に……まあ過ぎたことだけど。
   でもほんと、>>573様のおっしゃるとおり、すごくいい仲間です。
   エリスは……やっぱり間に合わなかったんですが、蘇生後も笑って許してくれました」
アルス「>>574様、良質なSSがいっぱいある中で一番だなんて、嬉しいこと言ってくれるぜ!
   タツミなんて、こんなワケのわからん主人公なのにな」
タツミ「君も主人公の1人だろうが。>>585様、GJありがとう!
   良かったねアルス、格好良かったって。でもエリちゃん人気あるね〜?w」
アルス「別に? エリスが人気あるのはいいんじゃね? 俺はなんっっっにも思わないけどな」
タツミ「はいはいw」
アルス「なんだよ、なにか言いたいのか。え?」
タツミ「なーにーも。ほら、行数も押してるから、そろそろ始めないと」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part1- 】
 リアルサイド

588 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:22:00 ID:zMYJt4JZ0
  Prev >>558-569
 ----------------- Rial-Side -----------------

 ヴヴヴヴヴ.......! ヴヴヴヴヴ.......!

 頭のすぐ横で妙な音がしている。まくらを通して細かい振動が伝わってきて、ほっぺた
がくすぐったい。
「んあ……なんら?」
 それがマナーモードにした携帯が震えているんだと、俺はようやく気づいた。そう言え
ば昨日、夜間は着信音が出ないように設定しておけとタツミに言われて、そうしたような
覚えがある。
 その後の記憶は曖昧だ。俺はいつの間にか寝てしまったらしい。 
「うに……もしもし、タツミかぁ……?」
『ちょっとタツミはあんたでしょ? なに寝ぼけてんのよ』
「おぁああ!!??」
 予想外に高いキーで返答されて、寝ぼけ半分だった俺の脳ミソはいっきに覚醒した。
「エ、エリス?」
『……ちょっと、エリスって誰?』
 違った、まだ寝ぼけてんな。えーとこの子は、
「片岡百合子?」
『そうですよ。ってかなんでフルネームで呼ぶかな』
 苗字と名前のどっちで呼ぶかまだ決めかねてるからだが。
『まあいいや、おはよう。まったくいつまで寝てるんですか、天才クン』
 ユリコが呆れたように言う。俺、そんなに寝過ごしたんだろうか。
「――ってまだ朝の5時じゃねえか!!」
 時計を見て俺は思わず怒鳴った。電話の向こうでユリコが笑う。
『あはは、起こしてごめんね。とりあえず、出かける支度して降りてきてよ』
「出かけるだぁ? こんな早くにどこ行くんだ」
『いくら平日でも、このくらいの時間に出ないとイイ場所取られちゃうもん』
 なにを言われてるんだかサッパリな俺に、彼女はやはりわからない単語を、実に嬉しそ
うに投げてよこした。
『この季節はやっぱりお花見でしょ! ね?』

589 :Stage.7-1 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:24:21 ID:zMYJt4JZ0

 オハナミってなんだ。しかもこいつ「降りてこい」って言わなかったか?
「もしかして下にいるのか」
『玄関の前で待ってる。お弁当も敷物も用意してるから手ぶらでいいよ』
 おk、レジャー関連のお誘いですね。
 どうすっかな、そういうのは嫌いじゃないが、ゲームの方も気になるし。でも俺の分の
メシまで作って来てるんじゃ、断るのも悪いしな……。
『もしかして今日に限ってなにか用事がある、とか?』
 急に心配そうな声を出すユリコに、俺は「いやいや」と否定した。
「そうじゃないんだ、少し待っててくれ。すぐ折り返す」


 俺はいったん携帯を切って、タツミを呼び出した。
『はいはい、どしたのアルス?』
 タツミの方はワンコールですぐに繋がった。お互いかけても繋がらないってパターンが
多かったから、なんか新鮮だ。
「おう。どうだ、あれから落ち着いたか?」
『え……? そうか、そっちは朝になったばっかりだもんね。おとといはどーも』
 相方が苦笑する。言われて俺も時差のことを思い出した。ピラミッドの夜のことは、向
こうではもう2日前の話になるのか。

 俺が寝る前に消したらしいテレビの電源を入れると、優雅な音楽とともに海原を進む白
い帆船が映った。全体がオレンジ色がかっているから、あっちは夕方のようだ。
「もう船を手に入れたのか。……ってポルトガとバハラタを2日で往復したのか!?」
 とんでもない強行スケジュールだぞ。またこのバカは――。
 俺がムッとすると、気配が伝わったのかタツミは慌てて説明した。
『無理はしてないよ。僕の場合、システム外のショートカットが使えるから。魔法の鍵を
餌に、ロマリア国王からバハラタ座標の入ったキメラの翼をもらって、直行できたんだ』
 そこで、なにか思い出したのか深〜いため息をつく。
『でもそのせいでひずみが出てるのか、なんかストーリーがおかしいんだよねぇ』
「なにがあったんだ」

590 :Stage.7-1 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:26:44 ID:zMYJt4JZ0

『……バハラタに黒胡椒をもらいに行ったら、タニアさんの代わりに僕がさらわれた』
「お前がさらわれたんかよ!」
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシナリオの斜め上を行くんだ。
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
「いやその前に、なぜ勇者がカンダタに拉致られたのか聞きたいんだが――」
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
 ループしやがった。あまり話したくないことらしい。

 まあ俺も人を待たせてるし、そのうち番外で語ってもらおう。
 前回は場合が場合だったから、けっきょくユリコのことも、奨学金やあの不良少年エー
ジとの関係についても、なにも聞けなかったんだよなぁ。
 その辺の確認も、また後回しだな。

「今ユリコから、オハナミに行こうって誘われててさ」
 俺が本題を切り出すと、タツミは急に静かになった。1秒、2秒、3秒。
『あっそう。ユリコがね。うん、いいんじゃない?』
 おや〜、ちょっと引っかかるような言い方だな。しかも普通に名前で呼んでるしぃw
「本・当・にいいのか?」
『なんだよその言い方。いいよ、せっかく現実にいるんだから、楽しんできなよ』
 タッちゃんやーさしー。ではお言葉に甘えさせていただきます。
「んじゃ行ってくるわ。お前もなんかあったらすぐ電話しろよ」
『了解。あ! その前に僕のステータスだけ教えてくれる?』

 そうだった、お互いにそのことを思い出した瞬間に向こうのメンバーが戻って来て、そ
れも後回しになったのだ。
「よし、ステータスウィンドウ出せ」
『えーと? コマンドを思い浮かべればいいのかな』
 ピッという軽い音とともに、画面上に黒いウィンドウが展開される。


 ――その瞬間、俺は言葉を失った。

591 :Stage.7-1 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:28:50 ID:zMYJt4JZ0

『どうしたの』
「あー……詳細ステータスの方を出せるか?」
『やってみる。コマンド>つよさ>ゆうしゃ、かな』
 あいつの言葉に合わせて、画面上で自動的にカーソルが動き、勇者タツミの詳細ステー
タスが表示される。
 なんだこりゃ。こんなステータスってありか?
『ねえどうしたの。そっちからピッピッて聞こえるから、表示は出てるんでしょ?』
 タツミの不安そうな声に、俺はなるべく冷静に事実を告げた。

「実はその――レベルと経験値が『??』でな、最大HPは64だからまあ普通なんだが、
最大MPが999なんだよ。素早さ170は……星降る腕輪の効果か。それでも高い方だな。
賢さが245ってのはどうなんだろう」
『…………なにそのバランスの悪さ。レベル??ってどゆこと。MP999ってなに』
「俺にもわからん。現在のMPは975なんだが、お前、今日なにか呪文使った?」
『まだひとつも使えないよ、呪文の練習なんてしてるヒマないし』
「あ、しかも減った! 今974になったぞ、オイ」
『はぁ? 僕はなにも……あ』
 俺も同時に気がついた。
 もしかしなくても、携帯、だよな?

『えーー!!?? 番外の “携帯の電池がMP” って、あれ冗談じゃなかったの?』
「それに宿屋とかに泊まったあとで最大MPに戻ってないってことは、減った分は増えな
いってことじゃないのか」
『僕のMPはプリペイド式かよ! しかも呪文と電話代の合算請求?』
「ということになるな」
『っもう信じらんない! 電話代もったいないから切るね! 行ってらっしゃい!』
「あ、待てって……」

 ツー ツー
 切られてしまった。しっかし、今後はうかつに長電話できないのか。
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシステムの斜め上を行くんだ。

592 :Stage.7-1 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:32:32 ID:zMYJt4JZ0

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 途端に電話がかかってきた。表示は「YURIKO」になっている。
『遅いからかけたんだけど……やっぱりダメかな?』
 こっちはこっちで最初の元気はドコへやら、ふみ〜んと沈んだ声になってるし。
「大丈夫だ。今行くからもう少し待ってろ」
『良かった! 待ってる』
 ありゃま、ずいぶん嬉しそうだなぁ。

 そういやこの子、タツミに惚れてるんだっけ。
「あのさぁ、やっぱりユリコって呼んでいいか?」
 ちょっと聞いてみる。ぶっちゃけ「カタオカ」って言いにくいし。それに、タツミ君も
本当はそう呼びたいみたいですしね♪
『え? ……うん、あんたがそう言うなら、いいよ』
 ふはは、もじもじしてるのが見ないでもわかるww かわいーじゃんw

 エリスもそういうとこあったなぁ、なんてニヤニヤしつつ、俺は簡単に身支度を整えた。
 出がけに別室をそっと覗くと、いつの間に帰ってきていたのか、ヤツの母親が眠ってい
た。こんな時間に起こすのも悪いから、声はかけないでおこう。
 リビングのテーブルにメモを残して、玄関を出る。


 というわけで、現実生活2日目は友達とレジャーでGO!
 昨日はいろいろあったが、俺の異世界ライフ、まあまあ順調じゃねえ?

 ……向こうはワヤクチャみたいだが、まあ頑張ってくれたまえタツミ君。

593 :Stage.7-1 [オマケ] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:34:20 ID:zMYJt4JZ0

   ◇

アルス「はいこれ、宿スレ定番のステータス。だけどお前の場合、意味あるのかねぇ?」
タツミ「知らないよ! なんだよこれぇ……」

【タツミ】
レベル:??
HP:58/64
MP:974/999(プリペイド式)
装備:E聖なるナイフ、E旅人の服、E星降る腕輪

力:12
すばやさ:170
体力:19
賢さ:255
運の良さ:118
攻撃力:22
守備力:18
Ex:??

594 :Stage.7-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:38:29 ID:zMYJt4JZ0
本日はここまでです。
ここからしばらくはリアルサイドとなります。

タツミ君のステータスが出るのは、たぶん最初で最後な気がします。
しかもさっそく間違えました。賢さは本文でアルスが言ってる「245」が正しいです。

595 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/22(日) 22:06:14 ID:bpKzZS+xO
255が最大値だから、まだあと10上がる余地が…

596 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 00:13:17 ID:RxCmUsPl0
IFDQ/RcGKIさんのSSが楽しみでならない今日この頃。

597 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 18:42:57 ID:fJZrIIgBO
ちょww
二人とも本編で「番外」とか言ってるしw

そういえばリアルサイドはまだまだ明かされてない事多いねぇ。

ともあれGJ!

598 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 21:53:36 ID:02RbB+Cw0
MPプリペイド式ってwww
今後のこと考えると笑い事じゃないんだが、祈りの指輪や魔法の聖水も効かないのかな。

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 23:31:31 ID:geIYf+0Z0
更新ktkr
乙でございます。
エリスさん、無事復活よかった。

すごい呪文が使えるのかとおもったら、まさかこんな罠があろうとは・・・。
リアルサイド、楽しくすすむのかと思えば、なにやら、前回の不良集団や、暗躍するゲームサイド人や波乱の予感。


600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:28:15 ID:4amYMSqk0
4の人の続編をお願いしますm(_ _"m)

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:48:56 ID:qcf7COZc0
俺もその後のストーリーに興味はあるけど、
きれいに完結したものを無理に続けて欲しくはないなぁ。
これで、仮に続編がなんかの理由で完結しなかったら、
あの神作品がまるごと「未完」扱いになっちまうだろ。
それよか新作で心機一転、頑張ってもらいたいと思う。

おっと、これ以上は避難所かな。

602 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 20:44:42 ID:g0vVtQT10
厨にマジレスry>>601


603 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 13:41:47 ID:U3xqoqxLO
保守

604 :Stage.7-2 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:50:03 ID:wKfMMwcN0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
アルス「しかし劇中は春休みですので、俺は今日はお花見に行ってたりします」
タツミ「さくらいろ〜のじだいをわすれなーい〜♪ さて、本日のサンクスコール!」

タツミ「>>595様、まだ上がる余地はあるみたいですが、いまいちピンと来ませんね。
   あと10賢くなるって、どういう感覚なんだろう?」
アルス「>>596様、そんなこと言われちゃったらいろいろサービスするしか!
   夏休みスペシャルでも企画するかぁ」
タツミ「>>597様、リアルサイドの謎って、アルスが変にカッコつけて僕にちゃんと聞かないから、
   おざなりになってるってだけなんですけどね」
アルス「お前がなんか大変そうだったから遠慮してやったんだろうがっ。
   >>598様、こんなプリペイド勇者、心配する必要ないから思い切り笑ってやってくれ」
タツミ「MP節約しないとなぁ。>>599様、エリちゃんを気にかけていただいてありがとうございます。
   僕のフリをしているアルスには、ぜひ大人しくしてて欲しいんですが……無理でしょうね。はぁ」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part2- 】
 リアルサイド 続編

605 :Stage.7-2 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:52:19 ID:wKfMMwcN0
  Prev >>588-593
 ----------------- Rial-Side -----------------

 朝日に照らされた街並みが、のんびりと後方に過ぎていく。窓のすぐ外を等間隔でふっ
飛んでいく柱を見るに、けっこうなスピードなんだろうな――とは思うんだが、初めて乗
る電車は意外と退屈だった。
 風を肌で感じられるラーミアの方が「移動してる」って気はするな……。

 悪い癖がつきかけてる。
 俺は軽く頭を振って、黄金の鳥の幻影を追い出した。ことあるごとに向こうと比較して
懐かしがってたら、この先やっていけない。
「なんか三津原も眠そうだな。俺も倒れそうだよ……ふぁ〜」
 向かいの席で、戸田和弘が大きくあくびをした。
 この長身のスポーツ少年も、片岡百合子に朝早くから駆り出されたとのこと。マンショ
ンの下で再会した俺たちは、「では出発ー!」と腕を振り上げるユリコを挟んで、お互い
に苦笑したのだった。
 朝から元気いっぱいな彼女を少し「ウゼえw」と思わないでもなかったんだが、パステ
ルブルーのワンピースでキメちゃってるユリコちゃんは、ちょっとホンキでかわいいので
俺は許す。カズヒロもそうなんだろう。男って単純よねぇ。

「しかし、あの不良どもをよく振り切れたな」
 俺が聞くと、カズヒロはまたあくびをした。
「あいつら頭悪いからなぁ。こういう言い方はなんだが、所詮、三流高校の連中っつうか」
 そういやあの三人が着てた服、タツミが学校で着てるのとは違ってたっけ。こっちの学
生って、他校の生徒とはほとんど交流が無いものと認識していたが。なんか複雑な背景が
ありそうだ。面倒は避けたいんだがねー。
 カズヒロがちょんと足の先で俺をつついた。
「前にも言ったけど、困ってたら遠慮しないで頼れよ? うちの親父ってほら、市会議員
とかやってっから、あいつらもあんまり俺には手ぇ出してこねえしさ」
「ん、わかった」
 カズヒロの親父さんはエライ人なのか。覚えとこ。

606 :Stage.7-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:53:59 ID:wKfMMwcN0

「お待ちどう。はいどうぞ」
 そこにユリコが戻ってきた。俺とカズヒロに冷たい缶をくれて、となりに座る。
「探したんだけど、豆乳は売ってなかった。お茶で良かった?」
「そうか。いやいいんだ」
 牛乳が体質的に飲めないだけで好き嫌いはねえから、独特の渋みがある「緑茶」も平気。
「お腹空いたでしょう。待ってね」
 ユリコは足下に置いてあったバスケットを膝に抱え上げて、中から半透明の箱を取り出
した。サンドイッチとサラダが、彩り良く収まっている。
「これ朝の分だから、全部食べちゃっていいからね」
「おー、うまそうじゃん」
「いただきまーす」
 あ、うめえ。昨日は結局ロクなモン食ってねえからな。旅してると丸一日食えないなん
てザラだったから苦痛じゃないが、さすがに腹減ってたから幸せだ。
「しっかし片岡も上手になったよなー」
 すぐに二つ目のサンドイッチに手を伸ばしながら、カズヒロが思い出したように笑う。
「俺と片岡、中1ん時に同じクラスだったんだけどさ、家庭科の実習で片岡が作ったマド
レーヌ食って、ハライタ起こしたやつがいたんだぜ」
「マジで?w」
「戸田! もうあんた食べるなッ」
 サッとカズヒロの手からサンドイッチを奪い取るユリコ。すかさず新しいのを取ろうと
した彼から、俺も素早く箱ごと遠ざける。
「だっ、お前ら、なにその連携プレー」
「自分は女の子とご飯の味方っす」
「可哀想に、儚い友情ねぇ」
 一拍おいて、三人で同時に吹き出した。

   ◇

 それから俺たちは二駅目の「サクラ坂台」ってところで降りた。謎の単語「オハナミ」
が出がけに引いた辞書で「花見/桜の花をながめ、遊び楽しむこと。」だとわかったので、
目的通りの地名だ。

607 :Stage.7-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:55:24 ID:wKfMMwcN0

 駅の正面から真っ直ぐゆるい坂が続いていて、その先に、所々淡いピンクに染まった山
があった。
「小学校の何年生だったか、遠足で来たっきりだな」
 カズヒロが懐かしそうに山を見遣る。ユリコが相づちを打った。
「あたしもそうだよ。タツミはその前に引っ越したから、来るの初めてだよね」
 らしいな。ヤツの生まれはこの街だが、幼い頃に遠くに引っ越して、今の高校に入るた
めにまた戻って来たと記憶している。ユリコもヤツの幼なじみではあるが、せいぜいここ
一年の付き合いなのだ。ありもしない「想い出話」に付き合う必要がないから、その辺は
気楽でいい。
 
「このあたりでいいか。三津原、そっち引っ張って」
 20分くらい坂をのぼったところで、カズヒロが敷物を取り出した。俺が手伝ってる間に、
ユリコが風で飛ばないように重石(オモシ)を持ってきて四隅に置いた。
「貴重品だけ持てば大丈夫だろ。この上に広場あったよな。フリスビー持ってきた」
「確かあそこから海も見えたよね」
 荷物を置いてさっそく歩き出した二人の後に、俺もついて行く。
 それにしても、どの木も満開で見事なものだ。
 アリアハン城にもジパングから輸入された木が一本だけあって、エリスと夜中にこっそ
り忍び込んで見に行ったことがあった。月夜の桜もきれいだったな。懐かしい。


「タツミ行ったよー!」
 薄い青空をオレンジの円盤が飛んでくる。背面キャッチ! おーっと歓声を上げる二人
に(かなり力を抜いて)投げ返してやる。
 いいねいいねー。こういう普通のガキっぽい遊び方、憧れだったんだよ。旅の間はどこ
行ってもモンスターの影がちらついて、のんびりできなかったし。
「あ、ごめーん!」
「こーら、どこ投げてんだw」
 その方向は、先が急な坂になっていて、そこを超えると取りに行くのが面倒になる。本
気を出せば取れないことはないけど、ここは追いつけないのが普通かな。

608 :Stage.7-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:56:47 ID:wKfMMwcN0

 見当違いな方向に飛んでいったフリスビーは、たまたまそこにいた男の手に収まった。
坂の手前の大きな桜の木に寄りかかって、男はフリスビーをしげしげと眺めている。
 黒いサングラスに、上下は黒いレザー、かな? そんなのを着ている。風雅な桜の下に、
全体的にタイトなその格好はあんまり似合わない気がした。
「すんませーん」
 投げ返してくれ、の意味で声をかけたが、男は逆に俺に手招きした。まさか「ちゃんと
ここに来て謝れ」ってんじゃねえだろうな。

「すいません。わざとじゃないよ」
 言いながら近づいていくと、男はサングラスを外して胸のポケットに納めた。
「ここ、いい場所だな」
 男の背景には、住宅街が見下ろせて、その遠くにうっすらと青い水平線が見える。
「あっちの二人は友達か?」
 こっちを見て、彼はフッと笑顔を浮かべた。まだ若い、20代前半くらいか。
「ですけど……あの、それ返してくれませんか」
「ああ――」
 男は円盤を持った手をスッと後ろに引いた。そして……思いっきり海の方に投げた。
 唖然とした俺だったが、男がまだニヤニヤしているのを見て、ついカッときた。
「なにすんだよ!」
 そいつの胸ぐらをつかみかけた、その瞬間。
 俺は逆に腕を取られ、坂に投げ出された。

   ◇

「とっとっとととととと、とあー!」
 前転で着地成功! こんくらいの奇襲で無様に転がる勇者様じゃないぜ。
 って、奇襲されたのか俺?
 ザン! と土を蹴る音がする。反射的に横に避けると、一瞬前まで俺がいた場所に、男
のごっついブーツがめり込んでいた。

609 :Stage.7-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:01:06 ID:wKfMMwcN0

「てめ……!」
「あんなくだらないお遊びより、こっちの方が楽しいだろう?」
 男は笑顔のまま、太ももに縛り付けていたホルダーから、刃渡り30センチはあるブレー
ドナイフを取り出した。
 マジかよ。
「タツミ、大丈夫か!?」
 カズヒロとユリコが坂の上で叫んだ。降りてこようとする二人を手で制し、
「来るな!」
 怒鳴り返してから、俺は身を翻した。
 場所を変える。そろそろ増えてきた桜の見物人や、あいつらを巻き込まないためもある
が、なにより俺が思い切り動けねえ。

 桜並木が続く歩道をそれて林道に飛び込むと、男も後を追ってきた。山林の奥まで行け
ば、簡単には第三者の介入もないだろう。
「足も速いな。防御力はどうかな?」
 再び地を蹴る音がする。柔らかい腐葉土の上で音がするって、どんだけの脚力だよ。
 林道のサイドには、散策者が迷い込まないようにか黄色のロープが渡されている。俺は
ロープを通している鉄製の杭を一本引き抜いて、振り向き様、横に払った。
 金属がぶつかる甲高い音が響き渡る。受けた力を手前に逃して、邪魔なロープを相手の
ナイフで切り落とす(いや、わざとやってくれたか)。
 バックステップで距離を取った。
「あっちのヤツ……だよな? 降りかかるメラはギガデインで返すのが俺の流儀だぜ」
「でもこっちじゃ呪文が使えないだろう」
「まあな。名前と理由を述べる気はあるか」
 一応尋ねてみたが、相手は肩をすくめるだけだ。
 あーそう、じゃあもう聞かんよ。――言い訳もな。
「ったく、せっかくの『祝・青春』を3レスで台無しにしやがって、覚悟しろよ」
「覚悟なんてマジメに構えることでもないだろ。これは……お遊びだ」
 左肩をやや下げて、右肘をしぼるように引いてナイフを構える。
 俺と同じ型?
 そう認識したと同時に、相手は一気に間合いを詰めてきた。

610 :Stage.7-2 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:05:29 ID:wKfMMwcN0
本日はここまでです。

次はホントに夏休みスペシャルでもやろうかな、と。
あれ、でもお盆過ぎたら夏休み終わってますか?
それまでにあがらないかも……ダメじゃんw

611 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 18:56:47 ID:Q8ne6+leO
乙でした!
着実にホームシックにかかりつつあるアルス少年16歳にニヤニヤしてたら
また波乱の展開キター-(゜∀゜)!!
同じ型ですか、勇者対勇者とかだと燃えますね。

612 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 00:34:25 ID:hp7T1Iv8O
女勇者も出してほしいです
名前はアリスとかで

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 12:54:58 ID:dQ/vr3cb0
おおお、更新されてるッ!!!
乙です。

黒服ビンテージ男、怖ぇぇぇ・・・。
いくら勇者VS勇者でも武器がないのはきついですね。アルスがんがれーーー。
リアルサイドでは死んだら生き返らないぞー。
(と無責任に応援をする)

エリス→エリちゃんですか。仲良くなって親しみがこもってる感じでいいですよね。
惚れたな?(w

614 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 15:24:38 ID:mbqmMfCLO
GJです!
まさかの勇者対決!!
続きが楽しみで夜も眠れません。

ゆりこ萌え。

615 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 21:06:36 ID:bUuRQZyW0
ゆりこたんもかわいいけど、やっぱり俺はエリちゃん萌えだな。

616 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 22:57:48 ID:Pw4MmSo7O
>>613はビンテージとボンテージ(皮革)を間違えてると思うんだ…

617 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 00:47:53 ID:B9FTepogO
アルスとタツミだけじゃなく、書き手もレベル上がってる感じだなぁ。
マターリとシリアスのバランスが絶妙。


>>振りかかるメラはギガデインで返す
向こう(ゲームサイド)のことわざ?w

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 09:23:17 ID:VMJs1JomO
>>617
ギガデイン使えるのは勇者だけだもの
アルスが自分で考えた格言じゃね?

619 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 16:30:18 ID:5bpRYANeO
小説途中でほっぽってた
ずいぶんスレ進んでんだな

620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 23:16:11 ID:N80Kk7rZO
>>619
おかえり

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 01:04:28 ID:cyYxvVr0O
>>619待ってたよ。

622 :ドラクエ3 ロマリア編3 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 10:49:58 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108

巨大都市、ロマリアはそんな言葉がよくにあうのである。
体調もよくなりカラッカラによく晴れている。買い物日和といえるのではないだろうか。
ぼくらの装備品はもう寿命をこえてぼろぼろになっている。
所持金といえば一万ほどあるのだから、贅沢はできないにしても、一通り装備品をそろえるには十分ある。
サイモンはきのう久々に酒を飲んだせいか、まだ酒がぬけてないみたいだった。
男戦士サイモン「おう、ヒーロー、今日は天地がグルグルまわってんなぁ…」
ヒーロー…ぼくのことらしい。
エリーとナナは一日休んで実に晴れやかな表情をしている。
女武闘家エリー「武闘家といえば、つめの武器なのよ? 素手じゃさまようヨロイにまた苦戦するわよ、…もう」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「防具を新調するだけでだいぶ変わると思うよ」
女武闘家エリー「そうかしら……、うん、そうね…。次の街はあるわよね、きっと」
女僧侶ナナ「新しいバンテージにかえましょうエリー、ね」
女武闘家エリー「切らしてたかな?あ、もうない…あぶなかった」

そんなこんなで楽しい久々の装備新調も終わり、ぶらぶらと買い物をしていた。
ある占い師がぼくらを呼び止めた。
謎の占い師「運命に逆らいし、選ばれしもの達…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「? どなたですか?」
男戦士サイモン「ふうん、なんかみえるのかい?」
謎の占い師「おまえたちはこの旅の末にかけがいのないものを失うぞ。バラモス…いや…。もっと巨大な悪によって…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「旅をやめろと? そういうんですか」
謎の占い師「…この道具を持っておくがいい、運命をかえられるかもしれん」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「これはなんですか?」
謎の占い師「虹のペンダント」
風が吹き荒れるといつのまにか、占い師は消えてしまった。

623 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/07/31(火) 17:49:46 ID:6L8o2ACI0
みなさま、お疲れ様です。
ここまでまとめました。
不備がありましたらご指摘ください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 17:59:56 ID:cyYxvVr0O
>>622
GJ!かけがえのないものを失う…気になるな。

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 18:02:10 ID:cyYxvVr0O
>>623久しぶり!まとめ乙

626 :ドラクエ3 ロマリア編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 20:45:01 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108>>622

ロマリアの占い師…。虹のペンダント……。
これがなんだというのだろう。
男戦士サイモン「すてちまえよ。そんなもん」
女僧侶ナナ「いえ、不思議な波長の魔法力が凝縮されていますよ…強い力と意志力を感じます」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「じゃあ、もっておくよ」
道具ぶくろに入れておくことにした。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ん?」
二人の兵士がぼくらの前に駆け足できた。
女武闘家エリー「なんなの。あんたたちは!?」
ロマリア城の兵士A「あっ、あなたたちが、勇者御一行でありますか!」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…はい、そうですが」
男戦士サイモン「なんなんだい」
ロマリア城の兵士B「わが国王があなたたちにご相談したいことがあるとの事です! とにかく城に来て下さい、お願いします! 緊急をようします!!」
さっさといってしまった。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「何でこの国に来てるって知っているんだろう?」
女武闘家エリー「あなたね…、ルイーダの酒場で登録した冒険者カード持ってるでしょう。それは本人の位置と健康状態を世界中に知らしてるのよ」
なんという恐ろしいカードだ。
魔王にも知られてたりして、………そんなわけないか。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「なんかあったら、助けにきてくれたりするのかな」
男戦士サイモン「戦闘でたおれたりしたら、体がカードに収納されるんだ。全滅したら最寄りの教会にルーラで飛んでいくんだぜ」
ハイテクだ。
なくさないようにしよう。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「よし。それじゃあ買い物は終わったし、城に行こう」
男戦士サイモン「たしかこの国の王サマは遊び人で有名だったぜぇ。…めんどくさいことにならなきゃいいがなぁ」

627 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:40:19 ID:SVgYayco0
次スレの容量になりましたので立てたいと思います。
テンプレを出す前に告知をさせてください。

10スレ目を迎えるにあたり、「10スレを記念して合作を作ろう」企画が進行しています。
誰でも参加可能で、現在話し合いが以下の掲示板にて進行しています。
10スレ記念共同作品 制作進行専用掲示板
ttp://bb2.atbb.jp/ifdqstory/index.php
提案や書いてみたい方など募集中ですのでぜひ参加をお待ちしています。

スレのテンプレですが、お絵かき掲示板とファイルアップローダーも追加しました。
次レスへ書きます。

628 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:41:48 ID:SVgYayco0
スレタイ:もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
----以下テンプレ----
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
----以上テンプレ----

629 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:48:29 ID:SVgYayco0
次スレです
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

合同作品も含め、10スレでもよろしくお願いします。

630 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:30:50 ID:8wfabvRD0
−前編−

まだまだボケる年ではない。
そう思っていたけれど、その考えは改めなくてはならないかもしれないわ。
自分がどこにいるのか、まったく思い出せないのだから。
確かに私は旅行へ出ようとしていた。しかし、飛行機に乗り遅れた。
だからここは旅行先ではない……はずよね。
部屋の中はどこかの地味なホテルの一室のようだった。
窓の外を見ると、どこか外国の田舎の風景のようね。
はっきり言ってまったく知らない場所だわ。つじつまが合わない。
私は家に帰って寝たはずだわ。これは夢なのかしら?
それとも飛行機に乗り遅れたのが夢で本当は旅行に来ていたのかしらね。

「あら、目を覚めましたのね!」
部屋に若い娘が入って来てそう言った。
外国人のようにも見えるけど日本語が達者ね。
このホテルの従業員だろう。もうチェックアウトの時間なのかしら?
そういえばここの宿泊料金はどうなっているのかしら。
ここが旅行先ならお金はツアー会社に払い込んである。だが、そうでないとしたら大変だ。
私は自分の手持ちはいくらくらいあったかしらと考えていた。

ホテル従業員の話では、私はこの町の外に倒れていたらしい。
それを助けてここまで運んでくれたという。お金のことは心配しなくていいとまで言ってくれた。
この世知辛い世の中、奇特な人もいたものだわ。
しかし、どうして倒れていたのか思い出せない。きっとどこかで頭を打ったに違いない。
記憶があいまいなこと以外自覚症状はないが早めに病院に行ったほうがいいわね。
その前に、自分がどこにいるのか確かめなくては。私は従業員に尋ねた。
「すみません。最寄の警察署はどこかしら?」
私の言葉に従業員はきょとんとした顔をしている。
よもやここは日本国内ではないのかしら。私は従業員にここはどこなのかと尋ねた。
「ここはリリザの町ですよ。」

631 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:32:41 ID:8wfabvRD0
リリザ。聞いたこともない地名だわ。私は町の中を歩いてみることにした。
私のいたところはホテルというより宿屋とでも呼んだほうが似合いそうだった。
分からないことだらけだが、私なりに考えてみた。
そして、ひとつの結論に達した。
ここは映画村のようなところなんだわ。
外国風の町並みはドラマや映画を撮るためのものでしょうね。
リリザというのもひょっとしたら『リリ座』という劇団の名前なのかもしれない。

気がつくと私は町の外れに来ていた。
町から出れば都会の町並みが見られると思ったがそうでもなかった。
なんだかすべてが非現実的な気がするわ。
そんなことを考えていたせいか、もっと非現実的なものを見てしまった。

落ち武者だ。

武将というよりは西洋の兵士のような服装だが落ち武者という言葉がぴったり。
その落ち武者はゆっくり私の方に近づくと持っていた槍を構えた。
冗談はやめてほしい。これじゃホラー映画じゃないのよ。
落ち武者はその槍を振り下ろした。

落ち武者の槍は私の後ろにいた大きなねずみに刺さっていた。
こんなねずみ見たことない。保護動物になっていたりしないのかしら。
むやみに珍しい動物を殺したら怒られるだけではすまないかもしれないわ。
そんなことを考えていると落ち武者が叫んだ。
「ムーンブルクの城が陥落した! こんなところにいては危険だぞ!」

どうも映画村という私の考えも間違いだったようだわ。
この落ち武者の人の怪我も特殊メイクには見えない。
そもそも私以外に観光客がいないというのもおかしな話だったのだ。

632 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:33:42 ID:8wfabvRD0
それよりも落ち武者の人の怪我を治療しなくてはならない。
私は彼を無理やりリリザの宿屋に連れて行くことにした。
宿屋の人に迷惑をかけてしまうが我慢してもらおう。
「私は一刻も早くローレシアのお城に……」
などと言っているが、そんなことを気にしている場合ではないわ。

私と宿屋の娘の必死の看病の甲斐もあり、落ち武者君はずいぶん回復した。
しかし、彼はまるで喜んでいなかった。
「私は命に代えてもローレシアの城に行かなければならなかったのに……」
などと泣きそうな顔で言っている。
「私だけが生き残ってしまった……」

この青年は自分の仕事に命をかけているようだわ。
「あなたは仕事熱心なのね。それなら仕事を全うしなくちゃいけないわね。」
男ってみんなこういう考え方をするのかしら。
「いまからでもローレなんとかに行きましょう。それがあなたの仕事なんでしょ?」
女の私にはどうにも理解できないことだ。
「なぜあなたが遅れたのか、私が一緒に言って説明するわ」
理解はできないが、励ますことはできる。
こんなところで腐っているより何かしているほうがいい。

元落ち武者の彼は一緒に来なくていいと言ってきた。
「その代わりサマルトリアへ行ってくれませんか。」
などと頼んできくる。私はよくわからないまま承諾した。
「それで、そこへ行くバスか電車はどこに行けば乗れるのかしら?」

633 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:35:12 ID:8wfabvRD0
……まさか歩いていくことになろうとは。
サマルトリアというのはお城で王様までいるという。ここは日本じゃなかったのね。
とにもかくにも王様にお近づきになれるのはチャンスだわ。
何とか王様に取り計らって日本に帰らなくては。
旅行に行っていることになっている私を誰も探してはくれまい。

私は『せいすい』と呼ばれるものを振りまきながら歩いていた。
こうするとモンスターが近寄ってこないという。
何でもこの辺りでは害獣や害虫をそう呼ぶらしい。

半日ほどかけてサマルトリアのお城らしいところに着いた。
後はあの落ち武者の兵士から預かった手紙を渡せばいい。
さすがに疲れたわ。日ごろからもう少し運動をしておけばよかった。
日本に帰ったら何か運動を始めようと思った。でも、結局しないのよね。

城下町ではよくない噂が広まっていた。それは噂ではなく事実なのだが。
どうやらムーンブルクのお城のほうから煙が上がっているのが見えたらしい。
城に何があったか、わざわざ私が伝えに来ることもなかったかもしれない。
私が煙が見えたなら消防に通報しなさいよと言ったら変な目で見られた。

さすがに単なる旅行者がこんなに簡単に王様に会えるとは思わなかった。
ムーンブルクからの使者だと思われているのかしら。
「せいすい」を使えるなら大丈夫だろうって、どんな基準なのよ。
この国はセキュリティーなんて気にならないほど平和なのかしらね。

私は王様に手紙を渡した。これで私の役目は終わりだわ。
王様は手紙の内容、ムーンブルク陥落に驚いていたようだが覚悟していたようでもあった。
きっとこの国はムーンブルクの同盟国で戦いに協力しなければならないのでしょうね。
平和そうなこの国が戦争に巻き込まれていくのかしら。
なんだかやるせない気持ちになったが私にはどうしようもない。

634 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:36:13 ID:8wfabvRD0
私は自分のことで手一杯なのよ。私は自国へ帰れるように王様に願い出てみた。
しかし、王様は日本を知らなかった。日本の知名度は思っていたより低いのかもしれない。
「お主は違う世界から来たのかも知れぬな。伝説の勇者ロトも異世界より来たと言う。」
この国では伝説や神話が事実とされているのかしら。

「もしそうならば、わが願いを聞いてくれ。息子の旅を手助けしてほしいのじゃ。」
王様の話によれば王家の人間は伝説の勇者であるロトの子孫なのだという。
そして世界に危機が訪れたとき悪を討つことになっているそうだ。
なんとも荒唐無稽な話だ。この人は本気でそんなことを言っているのかしら。

王様は息子を紹介してきた。……まだ子供じゃないの。
私は幼い王子様に旅に出ることに不安はないか聞いてみた。
「伝説の勇者ロトも言っています。『勇者だって暗いのは怖い』って。」
どんなご先祖様よ。とにかく怖いことは怖いらしいわね。さらに王子様は続ける。
「この国を作ったご先祖様の言葉です。『ドッキリだと思えば何でもできる』と。」
……もうちょっとマシな言葉は残せなかったのかしらね。

私は断ろうと思ったが無駄だった。拒否すると『そんな酷い』と訴えかけてくる。
有無を言わせぬ強制力。きっとこれが勇者ロトの力なのね。
結局彼がローレシアの王子と合流するまで旅のお供をすることになった。
……私とこの王子様が2人でいたら周りからどんな関係だと思われるだろうか。
親子というにはちょっと無理があるわよね。

「よろしくお願いします。ええと……」
「私の名前はメグミよ。よろしくね。」
「お世話になりますメグミおばさん。あ、おばさんって呼ぶのは失礼かなぁ。」
そんなことを本人に聞いてどうするのよ。
確かにこのちょっとずれている王子様を一人旅に出すのは不安だわね……

後編に続く

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/01(水) 22:10:38 ID:Tmrywm0z0
新作(?)キター。

メグミお姉さま、乙でございます。
落ち武者さんも助かってよかった。
それにしても、メグミさんはいくつくらいなんだろう・・。
本来の勇者+落ち武者さん+メグミさんでにぎやかになる予感。

ちなみに、このスレは容量制限で、もうすぐ書きこめなくなるようです。
次スレは>>>629です。

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 08:38:54 ID:T1jZlh160
まだ26KBあるからいけないこともない希ガス

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 12:01:40 ID:Za5GHFwF0
自分も埋め用短編を書いているんですが、ちょっと長くなってきました。
1行40文字折り返しで12レスがビッチリくらいだと、足りなくなりますかね……。

638 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:33:17 ID:aEtRfsXsO
>>637
投稿してみて足りなければ続きは新スレに書けばいいじゃない

639 :Stage.? 埋め用番外編 ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:52:07 ID:Za5GHFwF0

タツミ「なんか今回は『埋め用』の番外編やれって」
アルス「あれ、俺はなんも台本もらってないぞ?」
タツミ「そうなの? 僕の方はさっき渡されたよ。まだ中身は見てないけど」
アルス「お前だけってことは、タツミの知られざる過去とか、そんなんじゃねえのか」
タツミ「そういえば今回はリアルサイドで撮影って言われたな。ひとまず指定スタジオに移動するね」
アルス「おう、行ってらっしゃーい」


アルス「でもなんで俺の出番ないんだろ?」

……バタバタバタ!!
???「きゃーん☆ 遅刻しちゃったお〜。タツミくんと一緒に行く予定だったのにぃ。
   すみませんそこのお兄さん、りあるさいどのすたじおって、ドコですかぁ?」
アルス「へ? ああ、えーと……あっち、だけど」
???「りょーかーい! 急がなくっちゃネ♪」
……バタバタバタ!!

アルス「い――いまの格好って……もしや……?」

   ◇

タツミ「すみません遅くなりましたー。着替え室ってどこですか?
   ってガクラン? 僕、中学も高校もブレザーのはずなんですけど……え、パラレル……?
   いや実は、どうせすぐ頭に入っちゃうから、まだ台本読んでなくて―――(パラララ.....)


   ちょ………………………………はい?…………………………………………なにコレ」


640 :斬殺勇者アリスちゃん![1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:53:29 ID:Za5GHFwF0

【第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん!】

 そりゃ確かに現実は厳しいものですし、「誰かゲームに出てくるようなスゴイ人物が、
都合良く味方になってくれないかなぁ」なんて気持ちもあったことは認めますよ。
 でもあくまでゲームはゲームのままであるからこそ、心から楽しめるものだと僕は思う
わけです。よく「異世界の英雄に会ってみたい」なんてアホな夢語るヤツがいますけど、
別に僕はそういうのには、あまり興味はなかったんです。

 なかったん……ですけども!

「やほー、タ・ツ・ミ・く・ん♪ もう朝なんだよ☆ 起きないと遅刻しちゃうよーん♪」
 クリンクリンの可愛らしい声とともに、「彼女」が僕の布団をひっぱろうとします。
 ですが僕は16歳(花のシックスティーン)の健全な男の子でありまして、いかに普段は
品行方正で通っている高校生でも、眠って起きたあとの身体に生じるごく自然な生理的現
象にまで意識的に紳士な態度を貫くことは困難なのであります。
「ダメダメダメー! アリスちゃん! 今はお布団引っ張っちゃらめぇぇえ!!」
 僕は必死で(そりゃもう必死で)抵抗したのですが、なにせLv.99で「ちから」もMAX
値255を余裕で誇っているアリスちゃんは、いともあっさり僕の秘密のベールを剥ぎ取っ
てしまったのでした。

「っもう、タツミくんのお寝坊さん☆ ほらほら、丸くなってないで起きた起きた〜♪」
「ダメだよやめてよアリスちゃん! ああ、首根っこをつかまないで!」
 握力も255(Kg)なんじゃないかというアリスちゃんが、布団の上でうずくまり、前の方
(主に中心部)を懸命に隠している僕の後ろ首をむんずとつかんで、無理やり引き起こそ
うとします。
「ぐ、ごが…や゛め゛…ア゛リ゛ズちゃ゛………!」
 その瞬間、僕の延髄が「ベキェベキャベキャ」と潰れていくのが自分の耳にしっかり聞
こえました。鼻と口からダラダラ血を流しながらガクリとのけぞった僕に、アリスちゃん
は「きゃあ、大変ッ」とまるで「いやーんクッキー焦がしちゃったぁッ」みたいなノリで
悲鳴を上げました。

641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:54:03 ID:LWmhhO5x0
リアルタイム遭遇ktkr

642 :斬殺勇者アリスちゃん![2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:55:49 ID:Za5GHFwF0

「ゴメンねぇ、タツミくん! ベ・ホ・マ〜☆」

 ティロリロリロ♪

 おなじみの呪文とともにどこで鳴っているのか謎な効果音が響き渡り、プロレスラーが
デモンストレーションで潰した空缶のようにひしゃげていた僕の延髄が、みるみる元に戻
ります。
「おっはよ〜だよン、タツミくん♪ サワヤカなお目覚めだネ☆」
「全然サワヤカじゃないよアリスちゃん! 今キレイな川の向こうに死んだおじいちゃん
が見えたよ!」
 ある意味サワヤカかもしれないと思いつつ抗議する僕でしたが、アリスちゃんはニコニ
コしたまま、空中にいくつか浮き上がった小さなフキダシには「?」が一個ずつ書いてあ
るだけです。
「と、に、か、く、ボクのスペシャ〜ルな朝ごはんも用意できて……」
 ふとアリスちゃんが言葉を途切れさせました。大きな愛らしい瞳がパチパチと2、3度
まばたいて、僕の腹部からやや下の方に視線を向けて固まっています。

 あ。

「い……いやぁぁぁあ!!!」
 アリスちゃんは今度こそ掛け値なしの悲鳴をあげて、背中の「王者の剣」をジャキンと
抜き放ちぃぃぃぃぃぃ!!!
「ぃぃぃ落ち着いてアリスちゃん! 朝なんだから仕方なqあwせdrfgtyありす!!!」
 ズゴバァ! と王者の剣が僕の胴体を真一文字に薙いでいきます。僕の上半身と下半身
はそれぞれの方向にキリモミ状態で吹っ飛んでいき、押し入れのフスマに頭から突っ込ん
だ僕は再びキレイな川のほとりに立っていました。

 ティロリロリロ♪

 彼女の回復呪文で、ズルズルズルっと下半身がくっつきます。僕はぜぇはぁ言いながら
フスマから這い出しました。

643 :斬殺勇者アリスちゃん![3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:57:54 ID:Za5GHFwF0

「またやっちゃったぁ。ゴメンねタツミくん。テヘ☆」
 茶目っ気たっぷりに舌を出すアリスちゃん。
「もう、アリスちゃん王者の剣はやめてって……」
 そこで僕は、なにかブニュっとした生モノめいた感触を足の裏に感じました。見ると、
つい先日デパートの精肉コーナーの隅で見かけたカタマリの、もう少し血色のいいモノが
転がっているではありませんか。
「ぎゃあぁぁあ!!! アリスちゃん、なんかしまい忘れてるよぉ!!」
 途端にゴプッと吐血した僕は、三たびキレイな川のほとりへといざなわれたのでした。


   ◇


 僕こと三津原辰巳は、南龍探高校1年生。ちょっとIQが200近かったりジャニーズ系の
カッコカワイイ容姿だったりスポーツもそれなりにーみたいなところはありますが、ごく
普通の男の子です。

 ところが昨日、なにかのきっかけでフッと昔のゲームがやりたくなり、幼少にハマって
いたドラクエ3を始めたときでした。なんと「アリス」と名付けていた最高レベルの女勇
者さんが、突如まばゆい光とともにテレビの画面から飛び出してきたのです!
「ピコピコピコ〜ン☆ ボクはアリス♪ キミを守るためにゲームの世界からやって来た、
正・真・正・銘の、勇者ちゃんだヨーン!」
 そのとき僕は、具現化した彼女の強烈なボディータックルをまともに胸に受け、折れた
肋骨が肺に刺さってのたうち回っていたので、彼女の口上の半分も聞いてあげることがで
きませんでした。
「ああ! ごめんなさい! ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪


644 :斬殺勇者アリスちゃん![4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:59:46 ID:Za5GHFwF0

 彼女が指を空中でクルリンと回すと、僕の胸腔で肋骨が所定の位置に戻っていきます。
「な、な、なんだぁぁああ!!!???」
 僕は循環器系が正常に働き出したと同時に手足をめちゃくちゃに動かし、とにかく彼女
から距離を置こうと部屋の隅まで後退しました。

 目の前には、それはもう愛くるしい笑顔の少女が僕を見つめて小首をかしげています。
 ショートの黒髪には青い宝石が埋め込まれたサークレット。首周りから背中を紫のマン
トが覆い、その下には水色のチューブトップスと同色のミニスカート、足は黄色のスパッ
ツで、土足ブッちぎりの革ブーツといういでたちです。
 ロリロリキュートな表情に似合わず、しっかりばっちり発育しているカラダ。しかも彼
女がズイっとさらに近づいてきたので、トップスの上からタプンと揺れる渓谷がしっかり
見おろせてしまいます。なんという絶景かな。僕はゴクリと唾を飲み込みました。

「実はキミは、大魔王ちゃんに狙われてしまったんだよネ」
 キャロリン♪とサウンドエフェクトがつきそうな可愛い声で彼女が言います。
「大魔王ってゾーマ? なんでゾーマが僕を……」
「でもノープロブレム!なんだヨ♪」
 僕の質問はサクッと無視してガッツポーズをキメるアリスちゃん。
「ボクが絶対にキミを守ってあ・げ・る・か・ら☆」

 もはや宿スレの定義など完璧にドコ吹くです。
 それが僕とアリスちゃんとの、スイートでブラッディなファーストメモリーでした。


   ◇


 朝っぱらから三度も瀕死にされての起床でしたが、遅刻もなにも今日は日曜日です。
 アリスちゃんは週七日サイクルの生活を知らなかったので、いつも通り学校があると思っ
たみたいでした。

645 :斬殺勇者アリスちゃん![5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:02:21 ID:Za5GHFwF0

「なぁんだ、今日はお休みの日だったんだネ! ……じゃあボクもお休みなさーい☆」
「ええ? 寝ちゃうのアリスちゃん!?」
 彼女はモゾモゾと僕の布団に潜り込むと(昨日は押し入れで寝たのですが戻るのが面倒
になったようです)、「スピルル〜…ムニャ」と幸せそうな寝息を立て始めました。
 僕は深々とため息をつきました。僕は二度寝ができないタイプです(人生の大きな損失
だと自分でも思います)。とりあえず顔を洗って朝ご飯を食べることにしました。

 リビングに行くと、アリスちゃんが言っていたスペシャ〜ルな朝ご飯が用意されていま
した。平たくて四角くて真っ黒な物体がお皿の上でおとなしく僕を待っています。デイン
系呪文で一撃された食パンのようです。
 僕はこの炭水化物のなれの果てをリビングの隅にある「燃えるゴミ」に放り込みました。
ふたたび燃やされる運命の食パン君が少々哀れな気もしましたが、僕は七輪ではないので
ほぼ練炭と化した彼を食べてあげることはできません。
 他になにかないかと冷蔵庫をあさってみましたが、見事なまでに空っぽでした。昨晩ま
ではいろいろ入っていたはずですが、どうやらアリスちゃんが朝ご飯の支度中につまみ食
いしてしまったようです。
「仕方ない……コンビニでなんか買ってくるか」
 僕はそう独りごちていったん自室に戻り、眠っているアリスちゃんを起こさないように
そーっと着替えをしました。
 それからなにか書き置きしていこうかとメモ用紙とペンを探しかけたのですが、アリス
ちゃんは起きる様子はないし、こんなワケのわからない女の子がイキナリ同居を申し出て
も「好きにしてちょうだい」の一言で片付ける、放任主義を通り越して無責任きわまりな
い僕の保護者に気を遣う必要もないので、やめました。
「行ってきまーす」
 小さな声で言ってマンションを出ます。


 マンションの裏にまわり、住宅街を200メートルほど歩くと青い看板のコンビニがあり
ます。僕はそこに向かいました。
 と、いつも横切っている小さな児童公園に入ったときです。敷地のちょうど真ん中あた
りに造られている砂場から、突然ボシュ!と光の柱が吹き上がりました。

646 :斬殺勇者アリスちゃん![6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:05:06 ID:Za5GHFwF0

「なんだ……?」
 昨日から不可思議なことが起こりっぱなしでしたので、僕もさすがにこの程度でパニッ
クになったりはしません。
「メラゾーマなんですぅぅ!!!」
 いきなり高いキーの声が響いた瞬間、光の柱から巨大な火球が打ち出されました!
「うわわわわウッキャ〜〜!!!!!!!」
 僕は0.2秒で大パニックに陥り、どうしていいかわからなくてその場にガバッと伏せま
した。火の玉は僕の上を素通りし、道路に停めてあった自動車にあたり、車は無惨に爆発
炎上してしまいます。
「あなたがタツミくんですかぁ?」
 顔を上げると、光の柱がシュウっと細くなって消えていき、中から小柄な少女が一人現
れました。
「き、君は……!?」

 大変です、この女の子もアリスちゃんに負けず劣らずのプリティフェイスです!
 ゆるいカールがかかっている焦げ茶色の髪。ピンクの襟付きマント姿で、緑のゆったり
したローブを着込んでいます。服の上からでもその至福のふっくら感がわかる胸の真ん中
に、大きなペンダントが揺れています。
「あなたがタツミくんで、間違いないですかぁ?」
 僕が言葉につまっていると、彼女は急に瞳をウルウルと潤ませました。今にも泣き出し
そうです。僕は慌てて立ち上がり、彼女に近づいてそのフワフワした髪の毛をポンと軽く
叩きました。
「大丈夫だよ、僕がタツミで間違ってないよ」
 ニッコリ笑いかけます。もちろん斜めから差し込んでいる朝日に白い歯がキラーンと輝
くよう、角度を計算するのを忘れません。
 彼女はフワンと笑顔になりました。見ているこちらまで幸せにな気持ちになるような、
心が洗われる笑顔です。
「良かったですぅ。違う人にメラゾーマしてたら、困っちゃうところでしたぁ」
 困るどころの騒ぎじゃNEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!
 彼女のあまりの可愛らしさに、僕は背後でモクモクと黒煙を吹き上げている自動車の存
在をすっかり忘れていました。

647 :斬殺勇者アリスちゃん![7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:08:46 ID:Za5GHFwF0

 しかも今の話だと、彼女は明確に「僕」に対して攻撃を仕掛けてきたワケです。
「もしかして、キミは魔王の仲間なのかい!?」
 僕が聞くと、彼女はエッヘンと咳払いして両手を腰にあて、プルンと胸を張りました。
「そうですぅ。私は大魔王様の右腕にして上の世界の支配者、魔王バラモス――」
「マヌーサかゴルァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
 僕のコンピュータ並の頭脳は一瞬ですべてを悟りました。
 騙されました騙されました騙しやがったなコノヤロウ。僕の怒りは大空に駆け上る竜神
の如く、1ターンでスーパーハイテンションです!
「貴様カバかぁ! あのモツ好きのカバ親父なのかぁああ!」
 えり首をつかまれてガックンガックン揺すられ、またもや涙目になった相手は必死に首
を振って否定しました。
「ちち違いますぅ! 私は娘のバラミですぅ!」
「へ?」
 バラミと名乗った少女は、僕が手を放すとその場にペタンと座り込んでしまいました。
「ふえ〜ん、タツミくんヒドイですぅぅ」
「あらら、ゴメンねバラミちゃん。ほんとゴメン」
 なんだ娘さんだったのかぁ。こりゃ勘違い。
「いやでも! あの物体からどうしてこんな美少女が!?」
 どう遺伝子改良をほどこしても、あのカバから美少女を造るのは不可能です(断言)。
仮に100%母親似とすると、この子のお母さんもかなりの美女ということになります。カ
バにはあまりに贅沢です、宇宙の摂理が許しても僕が許しません。
「お父様をカバカバ言わないでくださいですぅ。お父様はちょっと個性的なだけですぅ」
「ああ、悪かったよ、個性的なカバなんだね?」
「違いますぅぅ!」
 バラミちゃんはよろよろ立ち上がると、僕を見上げて必死に訴えます。
「大好きなお父様だったのに……アリスちゃんに倒されちゃったんですぅ。でもタツミく
んならお父様を助けられるって聞いたんですぅ!」
「僕が?」
 どうも事情があるようです。
 
   ◇

648 :斬殺勇者アリスちゃん![8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:12:01 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんの話によると、アリスちゃんたち勇者一行に倒された魔王は、しかし完全
に死んでしまうわけでなく、世界のどこかに封じられるだけなのだそうです。
 そしてその封印を解く鍵を持っているのが、この僕、三津原辰巳だというのでした。

「でもねバラミちゃん。悪いけど僕、そんな方法さっぱりわからないよ」
 困惑する僕に、バラミちゃんはますます瞳をウルウルさせます。
「そ、そんなぁ……どうしてイジワルするですかぁ? 教えてくださいですぅ!」
「いやイジワルじゃなくて、本当に知らないんだよ」
 女の子に泣いて頼まれれば、僕だってなんとかしてあげたいと思います。ちょっと殺さ
れかけた過去なんて、もうどうでも良いことです。
 しかし一介の高校生である僕が、異世界の魔王の復活方法を知るはずがありません。
「ふぇ……ふぇえええん……」
 うつむいて華奢な肩を震わせるバラミちゃんに、僕も胸がキューンとなりました。どう
したらいいんでしょう。

「こうなったら……」
 バラミちゃんが低い声で呟きました。彼女の全身からゾワワワっとドス黒いオーラが立
ちのぼり、僕は威圧感に我知らず後ずさりしました。
 クワッと顔を上げたバラミちゃん、目が真っ赤に光っています。まさに魔王の娘!
「拷問してでも吐かしてやりますぅ!!!」
「だから知らないんだってぇ!」
「い・い・か・ら、素直に吐くですぅぅう!!!」
 バラミちゃんが両手を高く掲げます。高圧のエネルギーが凝縮され、宙に巨大な火球が
膨らんでいきます。
「待って! 待ってよバラミちゃん! ってかなんで誰も来ないんだよ!!??」
 これだけ大騒ぎしているのに、公園には他に誰一人やってきません。
「ここは私の結界が張ってあるから、外からは普通の景色に見えるんですぅ!」
 意外と用意周到です。このままでは殺されてしまう! 僕は焦りましたが、星の誕生を
思わせる発動寸前の極大呪文を前に、身体がすくんでしまいました。
 もうダメだ……!

649 :斬殺勇者アリスちゃん![9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:15:25 ID:Za5GHFwF0

「ラ・イ・デ・イ・ンーーーーーー!!!!!!!!!!」

 高らかな詠唱と同時に、鋭い落雷がバラミちゃんを頭上の火球ごと貫きました!
 ピッシャァァァァアアアアン!!!
 すさまじい電力が僕の身体をもバリバリバリっと焼いていきます。ついで破裂した火球
の爆風に吹き飛ばされ、幼稚園児が好きそうな可愛いワンちゃんの背もたれがついたシー
ソーに背中から突っ込みました。
 ズギャリ、と形容しがたい音がしました。仰向けに倒れている僕の腹から、熱で半分溶
けかかってバリイドドッグのようになったワンちゃんが飛び出ています。
「大丈夫タツミくん! 無事!!??」
 珍しく焦ったような声を出してアリスちゃんが駆け寄ってきます。
「き、君が…来るまでは……ね(ガクッ)」
「バラミちゃんってば、なんてヒドイことを……」
 アリスちゃんが僕を抱き起こしました(バリイドドッグがズボっと抜けました)。
「エイッ、ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪

「あ、待っておじいちゃん……!」
 意識を失いかけていた僕は、ハッと目を開けました。
 とっても優しかったおじいちゃん。大好きだったおじいちゃん。おじいちゃんは別れ際
に暖かい微笑みを浮かべ、「頑張るんだよ辰巳」と力強く励ましてくれました。
「うう……おじいちゃん」
 この状況でなにをどう頑張れば良いのでしょうか。

「タツミくんをこんなヒドイ目に遭わせて〜。謝ってよバラミちゃん!」
「やったのはアリスちゃんですぅ!」
 僕の前で、彼女たちはバチバチと火花を散らしてにらみ合っています。火花はまだライ
デインの残滓が残っているだけかもしれませんが、真剣な表情はどちらもホンモノです。
 二人の美少女が僕を巡って争うという夢のようなシチュエーションですが、なぜかちっ
とも嬉しくありません。

650 :斬殺勇者アリスちゃん![10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:18:16 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんは体中あちこち焦げています。髪の毛のカールもチリチリです。
 やがてバラミちゃんはアリスちゃんから視線をはずして僕の方を見ました。ちょっとだ
け悲しそうな顔をしてから、またキッとアリスちゃんをにらみます。
「仕方ないですぅ。今日は大人しく引き上げますぅ。でも次は必ず!」
 バサッとマントの前を閉じると、バラミちゃんの足下にパァ!と光の魔法陣が浮かび上
がりました。彼女が地面に飲み込まれるように消えていきます。
 同時に、空から「パリン」とガラスが割れるような音が聞こえました。それまで気付か
なかったことですが、完全にシャットアウトされていた「世界のざわめき」のようなもの
が、ふっと戻ってきたのを感じました。
 バラミちゃんが張っていた結界が解けたのでしょう。

「……何度でも来ていいヨ。そのたびにボクが、返り討ちにしてあげるから」
 バラミちゃんが消えていったあたりを見つめ、アリスちゃんがグッと拳を握ります。そ
の横顔は、可愛いけれど、どこか凛々しくて、僕はつい見とれてしまいました。
 やはりアリスちゃんは魔王を討ち倒した、伝説の勇者なんでしょう――。



「お、お、俺の車が〜!!!」
「きゃあ、なにこの公園!!?? え、火事? 火事でもあったの?」
 しまったぁ! バラミちゃんの結界が解けて、一般ピープルの方々が公園の異変に気付
いたようです。
「に、逃げるよアリスちゃん」
「うに〜? なんで?」
「いいから!」
 僕はアリスちゃんの手を引いて、騒ぎのどさくさに紛れてマンションに逃げ帰りました。

651 :斬殺勇者アリスちゃん![11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:20:51 ID:Za5GHFwF0


   ◇


 この日の事件について、あとから警察に事情聴取をされたりはしましたが、さいわい僕
たちが原因だと気付いた人はいなかったようでした。
 しかし、アリスちゃんが来てたった二日目でこのざまです。
 この先のことを考えると、僕は暗澹たる気持ちになりました。


 ああ、僕はこれからどうなるのでしょうか。



                 第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん! (完)




652 :斬殺勇者アリスちゃん!atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:21:38 ID:Za5GHFwF0



タツミ「誰かぁ! 誰か止めてくださいぃ! 誰かこの作者を止めてくださいぃぃ!!」
アルス「世界の中心で愛を叫ぶ以上に切なく叫んでるな」
タツミ「冗談じゃないってば! アリスちゃん可愛いけど、これじゃ命がいくつあっても足りないって!」
アルス「こらこらユリコちゃんに言いつけるぞ〜w」
アリス「やほ〜☆ タツミくぅん♪」
タツミ「出たぁぁああ!」
アリス「ダメだよタツミくん、いつ大魔王ちゃんの手下が襲ってくるかわかんないんだから☆
   ちゃんとボクのそばにいないと危険なんだヨ! 死んじゃうかもしれないんだヨ!」
タツミ「君のそばがこの世で一番デンジャーだよ! 僕すでにありえないくらい死にかけたよ!」
アルス「うはww楽しそうでいーねーwww 俺もパラレル番外一本持ちたいなぁ」
タツミ「もう他人事だと思ってぇ〜!」

アリス「以上! 埋め用番外編『斬殺勇者アリスちゃん!』♪
   ここでいったん終了でぇすッ。次回も、お・た・の・し・み・に・ネ☆!」





※本作品は知る人ぞ知る、某ライトノベル「撲殺○使ド○ロちゃん」のパロディです。
※この物語はパラレルです。本編に登場する人物、 団体名とは一切関係ありません。
※次回は、次の次のスレが立ったときに、次のスレの埋め用に書く予定でおります。

 それでは次スレも盛り上がって参りましょう。
 See You Again in Next Sled!!




653 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 17:32:27 ID:LWmhhO5x0
冗談のつもりで言ったアリスまさか採用されるとは・・・・
バラミちゃんはきっとこんなカンジ↓

http://parumezan.sakura.ne.jp/enikki-61.jpg

654 :俺の隣であがけ ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:31:17 ID:e+ZMvCB50

    |                    \
    |  ('A`)      タ・ツ・ミ・ク・ン♪
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   モウアサナンダヨ☆/


    |    !?               \
    |  (゚A゚)         グ、ゴガ…
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄      ヤ゛メ゛…/


    |     ・・・?            \
    |  (;'A`)    ゴメンネェ、タツミクン!
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   ベ・ホ・マ〜☆/

655 : ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:34:25 ID:e+ZMvCB50
◆IFDQ/RcGKさんに便乗してみました、すいません。
>534-541の続きは近いうちに次スレで。

一応次スレ誘導。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

656 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 20:04:19 ID:ZCdxrJ3C0
アリス(レベル99)ちゃん、いいですね。
しかし、何度も殺されそうになるのはなんとも(wwwww

でもやっぱりうらやましいかも。

657 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 15:52:21 ID:WMp+2DRrO
埋めようか

658 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 17:36:03 ID:xEBfrTKl0
そして 夜が明けた

659 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 18:58:11 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

660 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 21:21:46 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    どようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:14:00 ID:B446nPZ00
何を勘違いしているんだ?
まだ金曜日は終わってないぜ!

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:36 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    つきようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:57 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

664 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:29:58 ID:oztQAM/N0
                      - '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
                    /           \
                     /                  ヽ
                   /   __   、、    「l} ヽ
                  {_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、    ヽ  、
                 / /   /7/j/ /\   ヽ  |    500ゲット!
                  /  /rイ /  / ∠/! /\   |  !     次スレはいよいよ大台10スレ目!
                  | /l |/ /、  /  , -ェ-レ'|/i/ヽ_  | /      みんなで盛り上げていきましょう!
                V i レイr、`/  イr、 }    l/⌒j レ′
                   Vヘゞ'    ゞ'     _,) /_」
                     、"<    ""   r┬' \
                     ヽ、 ‐      /! | ト、|-、
                       ` _--‐  ´   |i/ヽ|   ヽ
                      rく__|       |  /ト、___ム_
                    ,.ィ「!__] _   __〉〈 `丶、` - ゝ
                   rく  iヘ |   入 ` ´ j  >   ` ̄ヽ、
                 /  |  ヽヘ  \ヘ   // |       /7、
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