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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

458 :Stage.5-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:29:41 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
 どこからともなく低くくぐもった声が響いてくる。これって確か、上の階の宝物庫にあ
る宝箱を開けたときのセリフだったっけ? 内容が少し違う気もするが、それなりにゲー
ムを継承しているわけだ。
 こんなえげつない罠が仕掛けられている時点で、すでにドラクエとは言えないけどさ!

「く……油断したッス……」
「大丈夫サミエル!?」
 苦しそうにうめくサミエルの脇腹に、みるみる血がにじんでいく。人間の、まして仲間
のケガだ。心臓が跳ね上がった。でもここで、血はダメだなんて言ってられない。
「立てる? 早くロダムに回復を――」
 瞬間、目の前にユラリと黒い影が現れた。そいつの腕が首に巻き付いてきて、一気に締
め上げられる。見た目と裏腹にとんでもない力だ。
「!……!…!!」
 声が出ない。く、首の骨が折れる〜!
「青き女王の御子ら氷の精霊たちよ古き盟約に従い我が戦陣に馳せ汝が力を示せヒャド!」
 エリスがものすごい早口で詠唱を完了させた。青く煌めく氷の刃が、僕をシメあげてい
たモンスターに突き刺さった。
 グギャア、とおぞましい悲鳴をあげて飛びすさる影。
 その場に投げ出された僕は、肺に無理やり新しい空気を送り込むのと、転がってるたい
まつを手に持つのと、反対の手でサミエルを引きずって後ろに下がるのとを同時にやって
のけた。おお、すごいぞ「星降る腕輪」効果。

「……の精霊の名においてかの者たちに癒しの光を――ホイミ、ベホイミ!」
 先に詠唱を開始していたロダムが、這い戻ってきた僕とサミエルにタイミング良く回復
呪文をかけた。喉の痛みがすうっと引いていく。サミエルの脇腹から折れた鏃(ヤジリ)が自
然に押し出されて出血も止まった。
 瞬間的に負傷度合いを測り、呪文を使い分ける年配僧侶に感心しつつ、僕は通路の奥に
向き直った。

 さて、仕切り直しだ。

459 :Stage.5-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:33:34 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
「うるさいなぁ。エリス、なるべく中央に向けてベギラマお願い」
「はい勇者様っ」
 彼女の閃光呪文が、追いすがってきたモンスターを散らすついでに、通路の奥の方まで
明るく照らし出した。

 両サイドの壁にはいかにもエジプトっぽい絵が延々と描かれている。
 そして床。
 僕たちが待機している場所は真っ平らだが、やや先の方から、床に1メートル平方の大
きな石がタイル状に敷き詰められているのがわかった。タイル1枚1枚にエジプトの象形
文字のような(あるいはそのものか)レリーフが刻まれている。
 そのうち数枚が、周りと比べてやや下に引っ込んでいた。1枚はちょうどサミエルが踏
み出したあたりではないだろうか。「蛇」の形をしたマークの文字だ。
 一番手前に目をやる。たいまつの光に浮かび上がるのは「鳥」をかたどった文字のタイ
ル。さっき戻ってきたときに、間違いなく僕はこれを踏んでいるが、なにかが動いた気配
はなかった。暫定的に「鳥」は安全ルートと決定。もう少し検証したいところだが、そん
な余裕はない。

 エジプト神話における「蛇」の象徴は多々あるが、ここは有名な悪い蛇の神様「アポピ
ス」と見立てていいだろうか。「墓守の蛇の女神」といういかにもな神様もいるけど、壁
画はその女神とは無関係の神話のものだし。だとすると……アレかな。

 ――ここまでの思考を数秒でまとめる。
 えい、読みが外れたらそれまでだ。僕は腹を据えた。
「この中で一番身軽なのは、今のところ僕だよね」
「それはどういう意味ですか」
 トラップ地帯をすり抜けて迫ってきたあやしい影を真空呪文で吹き飛ばしつつ、ロダム
が訝しげに問う。
「なにかわかったんスか!?」
 逆にサミエルが期待に満ちた声を上げる。剣を構えて前方を睨みつけているが、接近戦
が得意の彼としては、思い切り戦えないこの状況が歯がゆいだろう。

460 :Stage.5-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:34:53 ID:h6mFqMtJ0

「うん、任せて」
 その彼に僕は持っていたたいまつを返した。星降る腕輪が「途中」で外れないようグッ
と上に押し上げて、それから片膝を立てて前傾姿勢で両手を床につける。
 こういうのは勢いが大事。クラウチング・スタートの体勢から重心を前に移動し――、
「まさか、勇者様?」
「援護ヨロシク!」
 
 タイルの模様と位置は、さっきベギラマで見えたときに、すべて頭に叩き込んだ。
 通路は薄暗いが、敵のモンスターがどこにいるかくらいは視認できる。トラップ障害の
条件は敵方も同じ。まごついているモンスターたちの足下をすり抜け、飛び石を渡るよう
に「鳥」のタイルを踏みながら、目的の場所へ!

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ……】
「だからうるさいっつーの!」
 襲いかかってきたミイラ男のすぐ前にあった「蛇」マークを思いっきり踏んづけて、横
の「鳥」に転がる。ドカカッ!と矢だらけになってひっくり返ったそいつを飛び越えたと
ころで、物理トラップ無効のあやしい影が、サッと前に回り込んできた。
「ヤバ……」
 仲間の援護を信じて、とっさにその場に伏せる。
「「バギ・ベギラマ!!」」
 同時に、灼熱を伴った真空波が実体のない魔物をぶち抜いていった。その狙いの精度と、
仲間に向かって迷い無く呪文を放てる思い切りの良さは、大したものだ。

 チラッと壁に目をやる。延々と続く壁画は、数あるエジプト神話の中でも最も有名なス
トーリーを描いたものだ。僕が目指しているのはそこにいるべき、ある神様。
 ヘリオポリス九柱神の一人であり、厄災の蛇神「アポピス」の天敵とされる、地下世界の
王「セト」。「蛇」を鎮めるなら、そのお方しかいないでしょう!

 ……たぶん。
 ノーヒントじゃこれが限界です。これで読み違えてたら諦めるしかありません。

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:39:35 ID:PQ8q4cx7O
携帯で自力回避

462 :Stage.5-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:39:41 ID:h6mFqMtJ0

 モンスターたちは目標を僕に絞ったらしい。例のセリフを繰り返しつつ、トラップにも
ガンガン引っかかりながら、とにかく追っかけてくる。
「これだけの殉死者を道連れって、ここの王様も最悪だな。――おりゃ!」
 再び「蛇」を踏んで「鳥」に待避。天井から円盤形の刃物が降りてきてミイラが胴体か
ら半分になって転がった。これが自分だったらと思うとゾッとするけど、今は考えない。
「勇者様、大丈夫ですか!」
「今のところはね。えーとオシリスが暗殺されてイシスが逃げて……」
 エジプト神話なんて、小学生のときに軽く流し読みしただけだからなぁ〜。
 しかも暗くてよく見えないから、ところどころ天井の隙間から漏れてくる光で見える場
所から、前後を推測しなきゃならない。
「イシスがホルスを産んで、セトと一騎打ちになって……っていたぁ!」
 セトちゃん発見! 動物のかぶり物しててちょっと愛嬌のある絵だけど!
 壁、壁、なんかスイッチとかないか!?

 あれ……なんにもない?
 うーわー、まさかやっぱり読み違えたんじゃ――。

「勇者様危ないですぅ!」
 立ち止まったせいでミイラ共がわらわら集まってきてしまった。気がついたらすっかり
取り囲まれている状態だ。
【【【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】】】
「ごめんアルス、僕死んだかもww」
 ミイラが一斉にたかってきて、僕は反射的にその場にしゃがみ込んだ。


 ――と、目の前にいかにも「押してください」といわんばかりの丸いボタンが、床から
出っ張っている……。


 あったじゃん。
 ポチっとな。

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:41:16 ID:Tk7hcM0s0
リアルタイムキタコレ支援

464 :Stage.5-2 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:42:45 ID:h6mFqMtJ0

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 今にも僕を袋だたきにしようとしていたミイラたちが、一瞬、動きを止める。
 同時に、
「勇者様になにさらすんじゃワレァ!!!」
 戦士らしからぬ素晴らしいスピードで走ってきたサミエルが、一振りで3体まとめて薙
ぎ飛ばした。エリス・ロダムの呪文組が一気にとどめを刺し、ハイ、終・了。
「……普通に戦えればホント強いよね、うちのパーティ」

「いやはや、いきなり飛び出して行かれるから、びっくりしましたよ」
「さすが勇者様、ちょこまかと素晴らしい動きでしたね!」
 サミエル、それ微妙に褒めてない。
「なにをのんきなことを! もう、一人でご無理はなさらないでください!」
 泣きそうになってるエリスに、僕は手を合わせた。
「ごめんごめん。また誰かが罠にかかったら、って思ったら、嫌だったから」
「勇者様……」
 それになんとなく、こういうドラクエらしくない部分は、僕が担当のような気がする。

「しかし、こんなものよく見つけましたね」
 ロダムが足下のボタンを指して感心する。そこは影になっていて、確かに言われなきゃ
気付かないような場所だ。
 だから、そのボタンの上に文字が彫りつけられているのも、今気がついた。 
「ふむ、『礼節を知る者、客として歓迎する』という意味ですな」
「読めるの? さすが宮廷司祭殿」
 そうか……神の前ではひざまずくもの、だよな。

「そう言えば、魔物の気配が消えましたね」
 エリスがあたりを見回した。さっきまであれだけいたモンスターが消えていた。
「じゃあ俺たち、ここのお客様になったんスかね」
 うーん、だといいんだけど。

465 :Stage.5-2 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:44:59 ID:h6mFqMtJ0

 あとは普通のダンジョンであることを祈って、僕たちは先に進むことにした。

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 なんだこの前レスと同じ文章は。作者のミスか?
 とか思ったら、なんか、急に、フワッと身体が、軽くなった、ような……。

「落とし穴忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「きゃあああ勇者様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕とエリスが落ちたとたん、頭上で穴が再び閉じ始めた。
 慌てて追ってこようとするサミエルたちに気付いた僕は、とっさに叫んでいた。
 、、、、 、、、、、
「構うな! 鍵を探せ!」

   ◇

 あとのことは、正直あまり語りたくない。
 魔法が使えないピラミッドの地下で、この組み分けが最悪だってのは説明不要だよね。
 上と違って肌寒いくらいのジメジメした地下室を、逃げ回って逃げ回って、なんとか身
を隠せる場所を見つけ出して、今はつかの間の休息を取っている状態だ。
 いつ敵が襲ってくるかわからない緊張感でほとんど休まる気はしないが、エリスの様子
があまりに痛々しくて、これ以上動かすのは可哀想だった。
 ここでようやく、このパートの「1」に続くってワケ。

 さーて、次はどうしたもんかな。
 寒さ、飢え、疲労。さすがに考えがまとまらなくなってきた。
 上でちょっと張り切りすぎたか。

 ――でも、考えなきゃ。どちらか一人でも、ここから生きて出るための方法を。

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