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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:58:26 ID:XgSwbg4B0
代行依頼あったので立てますたぜ

3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 03:00:57 ID:QD9Hpnu00
































4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 03:01:28 ID:QD9Hpnu00
































5 :ドラクエ3 始まり編1:2007/04/02(月) 05:50:32 ID:9xtwCkDMO
>>1


つまんないかもしれんがSSを初めて書いてみようかと思う


〜なんだか心地よい声が聞こえてきた。まるで聖母がぼくに語りかけてきているようだった。
まあ、怪物になったりしたけれど、人をなるべく殺さずぼくは村を後にした。夢であろうが、ぼくは無血主義、言いかえれば喧嘩なんかとは無縁の男なのだ。
ああ、目が覚める。夢が覚める感覚がする。また平和な現実が待っているんだ。

女「おはようゆきひろ。今日から旅が始まるのね…。わたしのかわいいゆきひろ、さあ起きて」
ぼく「ゆきひろ?」
女「さあ、王様が待っているわよ。ごはんをたべて顔を洗ったら、出かけるのよ、ゆきひろ」
ぼく「う、うん…」
ぼくはまだ夢の中にいるらしい。ためしに自分の顔を殴ってみたのだけど、空間にみょうな文章がでた。
『ゆきひろは1のダメージをうけた。』
痛い…。もしかして夢ではないのかもしれない。
ぼくは、目を覚ました。つまりいままでが長い眠りの中だったのだろうか…。
まあいい、とにかくベッドから起きなきゃはじまらない。
窓を見ると朝日がまぶしく、やさしく祝福してくれたような光だった。
ぼくは目玉焼きにかりかりに焼いたパンという、天空の城ラピュタのパズーが食べていたような朝食を食べて城にいくことにした。もうラピュタも見れないのだろうか。そういえばデスノートの映画の後編をまだみていない…。気になっていた。
まさかこんな世界にこようとはだれが思っただろう。
街の誰もがぼくが勇者であると力一杯話しかけてくる。
ところで、ぼくの名前はゆきひろだったのだろうか。もう前の日に見た夢を忘れてしまうように、大切なものがすこしずつ失われていく。…まだ忘れてはいない、ぼくの本当の名前は、うん覚えている。
そして王の前にぼくはきた。
しけた金を手に入れ、なにやら強そうな得体のしれない怪物を倒せなどとほざいている。
これだけの兵力をもつおまえが倒しにいけという話ではないか。
この世界は平和で、争いとは無縁にみえたのに、なにがあるのだろう。
すこし、好奇心がかきたてられてきた。よしルイーダの酒場とやらにいってみるか!

6 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/02(月) 08:56:39 ID:Sns83H3O0
>>1-2
お疲れ様です!

>>5
続きまってます!

7 :Stage.0.5 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 14:41:06 ID:esTY3Tw80
>>5さん
新規参入めでたや! 続き楽しみです。
わたくしも今回から新規参入で、同じくDQ3がベースです。
お互いに完結を目指して頑張っていきましょう!

>>6 タカハシ様及び諸事情ご存じのみなさま
前スレではいろいろお騒がせしました。
それでは投下させていただきます。

8 :エスケープ 1/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 14:41:40 ID:esTY3Tw80
【Stage.1 エスケープ】

 ----------------- Side-T -----------------

 そりゃ確かに、現実を忘れたいって気持ちがあったことは認めるよ。

 もう何年前になるのか、ドラクエなんかにハマってた幼少時は、僕も平和な毎日を送っていた。
 あの頃が急に懐かしくなって、衝動的に本体ごと押し入れから引っ張り出して、裏ボス直前の
冒険の書を再開したのが昨日の夜中。
 夜更かしなんて滅多にしないんだけど、人間たまには精神的に「避難」したい時ってあるでしょ。

 でもあくまでゲームってのは、一時的な心の休憩時間に過ぎないものだと、僕は思う。
 それで活力を養って、また明日から厳しい現実に立ち向かっていくわけですよ。
 よく「異世界に行ければ」なんてアホな夢語るヤツがいるけど、別に僕はそういうの
あんまり興味ない。

 なんというか、人選ミスだと思います。
 僕みたいに、それなりに生活こなしてる人間じゃなくてさ。こういうのは、もっとこう、
救いようのないヒッキーなヲタとかが適任だと思うわけ。

【ダメダメな主人公が異世界で困難に立ち向かい、成長する感動物語!】

 ほら、その方がサマになるって、絶対。

9 :エスケープ 2/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 14:42:10 ID:esTY3Tw80

 ――なんてことをダラダラ考えながら寝てるフリを続ける僕を、こちらの世界の
お母さんは、優しく優しーく揺すって起こそうとしている。
「まったく、こんな大切な日だっていうのに寝起きが悪いのは、あの人に似たのね」
 むしろ嬉しそうな声。「頼もしい」という解釈なんだね。ポジティブな親だ。

 今日は僕の16歳の誕生日。
 勇者オルテガの息子である僕が、魔王バラモス討伐のために旅立つ、大切な日。
 FC版はないけど、SFC版は4回もクリアしてますから、よーく存じ上あげている流れだ。
 そうか、最初からなのか。神竜まで行ってたのになんてこった。

 っていうかこれでDQ3何本目だ? そろそろ読者様もお腹いっぱいなんじゃないのか?
 ここで無視ブッちぎって投下するこの作者はもうアホかと、バカかと、小一時間問い詰め(ry



「――おはよう、母さん」
 腹をくくって身体を起こす。こうなったら仕方ない、やることやってさっさと戻ろう。
 切り替えの早いヤツが生き残るもんだって、死んだ曾祖父の口癖だったし。リアル戦争
体験者の言葉には重みがある。
「ようやくお目覚めね、私のかわいい勇者さん」
 DQ版お母さんは(美人だ。しかも若い)ふんわり笑って、僕の頭をクシャッとなぜた。
「さ、早く支度してちょうだい。王様にご挨拶、しないとね」
 笑顔が少し切ない。そりゃそうだろうな。一人息子で、愛する夫の忘れ形見を、死地に
送り出すんだから。
 初プレイ当時、マセガキだった僕はこの時点でそういう裏事情を想像して、実はかなり
根の暗いゲームなんじゃないか?とか思ってたっけ。
 嫌な裏付け取れちゃったな。

10 :エスケープ 3/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 14:54:00 ID:esTY3Tw80

 まだ寝ぼけている演技で、勝手のわからない「支度」を手伝ってもらう。
 それなりに整ったところで、パンと野菜ジュース(ナゼ青汁?習慣?)で軽い朝食を取り、僕と
DQ版お母さんは城に向かった。

 ゲームでは一人で王に謁見するはずだったが、ここはDQ版お母さんがついてきた。
 案内がなければ一発で迷いそうな立派な城だったけど、そこにおわします王様はなかなか
気さくな人で、僕やDQ版お母さんとも親しげに話してくれた。
 ゲームでは出てこない雑談をカットすると、ここも記憶にあるシナリオとそう違いはない。
 激励を受け、いくらかのお金とアイテムをもらい、ルイーダの酒場で仲間を連れて行くよう
助言を与えられて、退室。

 途中、知り合いらしい兵士に「例のアレ、頼みますね」とかなんとか言われてヒヤッとした。
 どう見ても年下の僕に敬語だから、友人未満の間柄と推測。曖昧な返事でやり過ごす。

 城の前でDQ版お母さんと別れた。
 別れ際にギュウっと抱きしめられてドギマギした。母親に抱きしめられるなんて、もう何年も
無い経験だ。こっちのお母さんはずいぶん感情表現がストレートだな。ちょっと羨ましいかも。


 さて……そろそろかかってくる頃か。

 一人になった僕は、近くの建物の裏側に回り、周囲に人がいないことを確かめてから、
ポケットから携帯を取り出した。
 ベッドの中にいた時から、ずっと隠し持っていたものだ。

 案の定、取り出した途端、マナーモードにしていた携帯が震えた。

11 :エスケープ 4/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 14:58:06 ID:esTY3Tw80

『どうだ、俺のおふくろ。なかなかイイ女だろう?』

 開口一番それですか。まさか勇者がマザコンとは思わなかったよ。
 僕はため息をこらえつつ、昨日の対話の内容を確認した。
「で? ナビはしてくれるって約束だよね」
 僕の言葉に、彼は「まあなー」と面倒そうに答える。
『でもこっちもドッキドキの異世界生活だしぃ? んなヒマねえかも』
「ふざけるな。だいたい僕は本気で承知したわけじゃないんだぞっ」

 思わず怒鳴った僕に、彼は――勇者アルスは、くっくと嫌な笑いをもらした。

『でもお前、言ったじゃねえか。“代われるものなら代わりたい”――ってさ。
 だから俺は、お前の願いをかなえてやったんだぜ?」
「悪魔か君は……」

 初めて会話したときは、そりゃもう立派な勇者様って感じで、僕も思わず彼の話に
引き込まれてしまったものだけど。
 だからつい、こんなアホな話に乗ってしまったんだけども。

 ダーマ神殿にはきっと「詐欺師」という裏職業が存在するんだ。そうに違いない。

12 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 14:58:48 ID:mzXlxd8e0
支援しましょう

13 :エスケープ 5/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 15:03:33 ID:esTY3Tw80

「君がサポートについてくれなきゃ、とてもじゃないけどクリアなんて不可能だよ?」
『大丈夫大丈夫。パラレルじゃ「じょしこーせー」だって元気に冒険してるし』
「やめーい!」
 投下寸前で3&ケータイが偉大な先輩様と被ってたと思い出したけどそのまま投下したなんて言えません。
『4回もクリアしてんだからナビなんざいらねえんじゃねえの?』
「あのね、自分の母親の名前すら知らないのに、どうしろっていうんだよ」

 多少の知識はインストールされるかと期待してたのに、僕は本当に僕のままだった。
 さっきの兵士だって、もしかしたら過去にアルスの命を救った恩人かもしれないが、僕には
さっぱりだ。

 人間関係の話だけじゃない。
 ブーツひとつ履くのにも苦労した。麻製の布地は少しゴワゴワしてて、これも慣れるまで
かかりそうだ。
 四次元ポケットみたいな「ふくろ」は、とりあえず入れるだけでいいみたいなんで、王様から
もらったアイテムを担いで歩く必要はなくて助かったけど。
 たとえば、いずれ数万単位で持ち運ぶことになるはずのゴールドとか、どうやって管理するんだ?

 どんな体感ゲームでも味わえないリアリティ。
 うわっつらのシナリオを知ってるだけでどうにかなるほど、この世界は安っぽい作りじゃない。
 目覚めから数時間たっただけで、僕はそれを痛感している。

『大丈夫大丈夫。中には言葉も通じなくて困ってるのもいたじゃん。お前恵まれてる方』
「やめーい!」
 だから他の先輩様の作品を引き合いに出すなますます被ってる印象になるじゃないか。
「じゃなくて。とにかくナビ。ゲームと実際に携わるのとじゃ、勝手が違いすぎる」
 僕が辛抱強く繰り返すと、彼は電話の向こうで『へいへい』と投げやりに返事をした。

14 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 15:32:57 ID:9xtwCkDMO
>>6
がんばって書くので続きもぜひ読んでください
>>7
しかし大変な作業ですなあ
お互いがんばろう

夕方また投下予定

15 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 15:42:03 ID:i0YPw5o6O
>>1
スレ立て乙です

色々と新作が投下されてますね
ぜひ最後まで書き続けてほしいです

16 :エスケープ 6/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 15:58:41 ID:esTY3Tw80

『わーったよ。んで、これからルイーダか?』
「そうだよ、君のオススメは?」
 ゲーム上では数値しか見えない相手だったけど、これから生死をともにする仲間だ。
 実際の選択基準には、もっと細かい要素があって当然だろう。
『そーだなー。宿屋の娘でエリスってのが、魔法使い登録してるはずだ』
「人の話は聞こうよ。友達とかは避けて欲しいんだって言ってるだろ」
 僕は君の交友関係を知らないんだってば。
 舌打ちしそうになったのをなんとかこらえた僕に、バカ勇者は追い打ちをかけた。
『安心しろ。友達じゃなくて元カノだ。こないだ捨てたんだよな。
 でも魔法の才能はホンモノだから、連れてって損はねーぞ、うん』
 うおおおおい、そんなの押しつけるなー!

『というわけで、今日のヒントはここまでー。じゃあ頑張ってね。ばいばい』
「ええ? 切るなよオイっ……って……ちょっと……」

 ――ただいまおかけになった番号は、
   電波の届かないところにおられるか、電源が――

 あのバカ電源まで切りやがった!
 その後なんどリダイアルしても、あの無情な音声案内が流れるのみで。



 失敗した。あそこでうかつに「はい」なんて選ばなきゃ良かった。
 どう考えてもあの人、僕を身代わりにする気マンマンだ。

 これは、あれだな。
 ゲームキャラの現実逃避に、プレイヤーが付き合わされた――ってことですかね。

17 :エスケープ 7/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 16:15:15 ID:esTY3Tw80

 ----------------- Side-A -----------------

 うるさくなりそうなんで、俺はさっさと通話を打ち切り、携帯の電源をオフにした。
 どうせヤツのことだ、たとえクリア経験が無かったとしても、それなりにこなせるだろう。
 よっぽどヤバイときはナビしてやるが、基本的にはほっとくつもりでいる。

 いい加減、あの世界とはしばらく関わりたくない。
「ようやく“こっち”に来れたんだし……さ」

 ゴチャゴチャした狭い部屋。
 窓の外を眺めれば、この部屋以上にゴチャついた街並みが、どこまでも広がっている。

 いつもいつも、夢で見ていた通りだ。

 魔王も魔物もいない平和な世界。勇者なんか、まったくもって不要。
 それどころか魔法も必要ない。あんな疲れるもんなくったって、100円ライターで
火は着くし、金さえあれば電車だのバスだの飛行機だの、夢みたいな乗り物でどこまで
だっていける。

 ホント、死ぬ気でラーミア蘇らせてんの、バカみてー。
 そもそも、無理に移動する必要もほとんどない。
 狭い一地域で、狭い人間関係の中で、毎日決まり切ったことをテキトーにこなしてれば
いいだけなんて、ここはパラダイスですか。

18 :エスケープ 8/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 16:19:20 ID:esTY3Tw80

 室内に目を戻す。付けっぱなしのテレビの画面では、ヤツが丁度ルイーダの酒場に入る
ところだった。ドット絵の二頭身キャラクターが、恐る恐るといった感じで歩いている。

 さっき試してみたが、こちらからのコントロールは一切受け付けない。そういう設定なのか、
「俺」だからなのかはわからないが、手を出せないというのはつまらん。
 しかも、今はまだお互いに移行が完了していないから、もしデータがブッ飛んだり、ヤツが
あっちで死んだりすると、俺も一緒に消えるらしい。
 そうでなければ、とっくの昔に本体ごと叩き壊しているところだ。
 
「ま、せいぜい頑張って、お前も神竜を倒すことだな」 
 そして俺と同じ願いを叶えてもらうこと。


【もし目が覚めたら そこが現実世界の一室だったら】


 血を吐くような思いで神竜に願った瞬間。
 渡されたのは、小さな精密機械。
 遠く離れた個人と個人を一瞬でつないでしまう、魔法のような道具。
 開いた途端にコールが始まり、出た相手は、夢の中のあの少年で――。
 
「初めまして、タツミ君。キミ、勇者をやってみる気はないかい?」
 考えるより先に、言葉が出ていた。

19 :エスケープ 9/9 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 16:23:23 ID:esTY3Tw80

「さてと――まずは“コンビニ”でも行ってみるか」
 口慣れない単語をわざと声に出してみる。それだけでちょっと楽しい。
 ヤツも言っていたが、確かに、夢で見ているのと実際に携わるとではだいぶ違う。
 こっちは少し、空気が悪いかな。

 さーて、あんまりのんびりしてもいられない。
 ヤツが戻ってくるまでに、なんとか完全に入れ替わる方法を見つけないとな――。

 部屋を出る。
 剣も魔法もない奇跡のような世界での、記念の第一歩だ。

20 :Stage.1 エスケープ ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/02(月) 16:25:48 ID:esTY3Tw80
本日はここまでです。

21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 17:03:16 ID:cXVCPijoO
ヤバイ、マジで面白い・・・。


お願いですので最後まで読まさせてください。

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 17:18:04 ID:cXVCPijoO
と、大絶賛したものの触発されて書きたくなってきたのでちょっと考えてみます。

23 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 17:30:17 ID:o8BHbQBVO
>>20
すごいおもしろいです。新しい発想ですね!

24 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/02(月) 18:30:01 ID:cXVCPijoO
緊張しますがよろしくお願いします。


〜序章〜

昨日は散々しごかれたな・・・。

あのくそ女容赦なく切りつけてきやがって!模擬刀っつったって重量あるんだからいてーし変な所に食ったら死ぬっつーの!

?「お・・・さ・・・。」

だいたい師範代だかなんだか知らねーが偉そうにご託並べやがって・・・。

?「おきゃ・・ま・。」


クソッ!いつかボコボコに負かして犯してやる!

?「お客様、起きてください」


・・・うるせえ、誰だ?

?「お客様、もうチェックアウトの時間ですよ」

人が気持ちよく寝てんのに誰だ?意味わかんねー事言いやがって、ここは俺の家だろ?


?「いい加減起きてくださいよ!何時だと思ってるんですか?」


25 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/02(月) 18:32:05 ID:cXVCPijoO
俺「うるせえーーーーーー!!」

安眠を阻害され半分キレながら飛び起きる。

?「うひぃぃぃぃーーーーーー!」
俺「??・・・お前・・・、誰だ?」
目の前には真ん丸の体に真ん丸の顔、その顔を引きつらせながら転がるボールみたいなおっさんがいた。

店主「あービックリした、誰だ?じゃないですよここの店主です。もうチェックアウトの時間ですよ?とっとと出ていってください」
俺「あ?何わけわかんねー事言ってんだ?ここは俺の家だろ、オメーが出ていけよ」
店主「あなたこそ何を意味がわからない事を・・・。ここは私の宿です、さあ!さっさと出ていってください!早くしないと憲兵を呼びますよ?」
俺「憲兵だぁ?なんだそりゃ?警察みたいなもんか?」
店主「さあ!早く!さあ!さあ!!」
俺「わかった、わかった」

真ん丸親父の勢いに押され何も理解できないままとりあえず部屋から出る、振り向くと親父は俺の事を睨みつけながら後ろを歩いてついてきてカウンターらしき場所に入っていく・・・。


26 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/02(月) 18:40:19 ID:cXVCPijoO
『いっぱいいっぱいだな、ちったー痩せろよ。』
親父は台帳に何かを書き込み、俺の顔を見て咳払いを一つ。

店主「ゴホン、おはようございます旅の人、昨夜は良く眠れましたか?」
俺「目覚めは最悪だったがな」
店主「そんな事は聞いてません。では、マタイラシテクダサイ」

唸るほどの棒読みだ、清々しくもある・・・。

しかし一体どういう事なのだろうか?夢でも見てんのか?それともアヘンでも吸っちまったか?
『昨日はあのくそ女にボコボコにされて、気絶して・・・。』

沸々と怒りがこみあげてきた。

『クソッ!まあいい、で、恐らくは兄弟子が部屋まで運んでくれたはずだ』


そう、俺は自分の部屋で寝ていたはずだ!だが目が覚めて現れたのは真ん丸親父・・・。

『あのくそ女の新しい亭主か?奴はデブ専だからな。だがあのおっさんは自分の宿と言っていたな・・・。』

やはり考えれば考えるほど事態が飲み込めない。『とにかくここから出よう、まずはそこからだ!』

なんとなく振り返ると真ん丸親父が満面の作り笑いでこちらに向かって手を振っていた。
叩き斬ってやろうかと思ったが、いきなり人を斬るなんて俺の武士道に反する。こみあげる怒りを抑え、眼前の薄汚い扉を開けた。


「・・・、参ったなこりゃ・・・。」

27 :ドラクエ3 始まり編2 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/02(月) 19:02:30 ID:9xtwCkDMO
前回までのあらすじ>>5

ルイーダの酒場にきた。
どうも場違いな気がしてきたが、ここをおとずれないことには冒険などはじまらないだろう。
説明好きな老人に話しかけられ、職業のことやこの酒場のことを教わった。
バラモスというモンスターによりこの世界は闇におおわれてしまうことも。
数百、数千、数万、数千万のモンスターを従える魔王バラモス。
その魔力は絶大。ふきかける息すら恐ろしい武器になる、ということだ。
はっきりいって勝てそうにはない。あの王様はたかが50Gでどうしろというんだ。
とにかく仲間が3人集まったので、冒険に出ることにする。
母にしばしの別れをつげて。

男勇者 ゆきひろ レベル1
女武闘家 エリー レベル1
男戦士 サイモン レベル1
女僧侶 ナナ レベル1

28 :ドラクエ3 始まり編3 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/02(月) 20:14:14 ID:9xtwCkDMO
前回までのあらすじ>>5>>27

ぼく「次の街か村はどっちだろう」
アリアハンをでて早くも問題が発生していた。
男戦士「おれに聞かれてもな。いや、酒飲んでばかりで旅なんてしたことがねえからな。まいった…」
女武闘家「…あきれた。ふつうは情報収集してから慎重に慎重をかさねて冒険していくものよ」
ぼく「しょうがないアリアハンで聞いてこよう」
女武闘家「北にレーベという村があるわ」
男戦士「知ってたのか。まあいい、日が暮れないうちにさっさといこうぜ」
僧侶はというと、ぼんやりとぼくらを見ていた。おっとりした性格の持ち主らしい。
戦士はいまのところよく分からないが、武闘家はしっかり者といった性格だろう。
ぼく「じゃあ、あんまり離れずゆっくりと村に向かおう。後ろからモンスターに襲われないように気をつけてね」
女武闘家「そうね。じゃあ、いきましょう」
男戦士「了解、勇者様」
女僧侶「勇者様とわれらに神のご加護を」
ぼく「ぼくらはパーティーだ。最後まで戦いぬこう。世界の平和のために!」
そういえば新学期が始まるのは今日からだった…。

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 23:25:54 ID:RsjXXxna0
なんか新人職人がいっぱい来てていい感じなんだな
「みんながんばれ」

30 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/03(火) 00:12:01 ID:T7w04izM0
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>5,8,24
お疲れ様です。
いろいろな話がたくさん増えたので、続きをとても楽しみにしてます。
まとめでなにかあれば、いつでも言ってください。

タカハシもそろそろ再開させなければ。

31 :ドラクエ3 始まり編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/03(火) 00:36:39 ID:Qi7zRpy2O
前回までのあらすじ>>5>>27-28

ぼくは前の世界ではふつうの高校生だったはずだった。
それが運悪く、理由もわからずにいつものように起きたらこんな世界にきていたのだ。
一昔前のマンガじゃあるまいしあってはならないことだ。
いまは勇者になったんだ。戦いもしらないぼくが…。
広いフィールドがおそろしかった。
なんどかモンスターに襲われた。村まではまだかかるというのに、みんな疲労しきっていた。ぼくは剣もふるえずただたっていた。
女武闘家「ちょっと、勇者なんでしょ!?戦いなさいよ!」
モンスターの群れにでくわした。…もう…駄目だ。
男戦士「ナナ回復してくれ」
女僧侶「魔法力がもう…ないんです…」
もう終わりなのだろうか。
まだ会ったばかりで何もしらない母だけど、またアリアハンに帰りたい。あの人の姿が目にうかんだ。実の母のようにあたたかかった笑顔にあいたい。
戦士のサイモンが、僧侶のナナをかばって深手をおった。
武闘家のエリーだってもう戦えるHPなんか残ってやしない。
この3人が戦うのは、なんのためなんだ。…そうだ仲間のため、みんなのために明日のために、戦うんだ!
ぼく「モンスターたちよ来い!勇者が相手になってやる」
戦えるんだ!体だって動いている!
女武闘家「は、はやい」
ぼく「はあああああっ!」
一撃二撃。のこりあと2匹倒せば戦いが終わる。
これで最後だ!
男戦士「すげえ…、すげえじゃんか、ゆきひろ!」
ぼく「サイモン、大丈夫か」
女僧侶「ごめんなさい…私…足手まといになって…」
ちがう…。弱いのはぼくだ。
女武闘家「あんたはタフそうだから大丈夫よね」
男戦士「ちぇ。あ、ナナ大丈夫だから心配するなよ。…ほら。あれ、あそこ村か?」
レーベの村がみえた。

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 09:57:44 ID:YNcfUy6oO
質問
ここって1レス何文字まで書きこむことが出来ますか?

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 10:09:23 ID:O1nEHjvfO
32行

なので推敲が必要

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 10:49:52 ID:YNcfUy6oO
ありがとうノシ

35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 12:49:47 ID:r2qgeq7d0
>>32
行数以外にも制約があるから気をつけて。

1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
1回の書き込み行数上限:32行
1行の最大文字数    :255文字
(名前欄の文字数上限24文字)

36 :ドラクエ3 始まり編5 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/03(火) 13:59:51 ID:Qi7zRpy2O
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31

レーベはおだやかな村だった。
アリアハンとくらべるならちょっと田舎な村といえるかもしれない。だいぶ日が暮れてきていた。
男戦士「じゃあゆきひろ、宿屋とってくるからな」
ぼく「ああ、それよりサイモン、体は大丈夫?」
男戦士「さっきの胸の一撃なら大丈夫さ。この鎧のしたにくさりかたびらを装備しててな。はは」
さっさといってしまった。つき合いやすいヤツなんだ。
エリーは池のほとりで休んでいる。ナナはというと神父となにやら話している。お互い干渉しあわない性格がそろったパーティーなのかもしれない。初期のパーティーってこんなものなのかな。
あたりが暗くなって、村の人々も家へと帰っていく。
そういえばまだ冒険1日目だった…。なんて長い1日だろう…。
もといた世界に帰れるほしょうなんかどこにもないにもかかわらず、魔王バラモスを倒せればなんとか戻れるような気もうっすらしている。
男戦士「宿屋いこうぜ。あと2人もつれてきな」
ぼく「ああ、わかったよ」
冒険の初日は終わった。明日から本格的な旅がはじまるんだ。
まっていろ、魔王、バラモス!
けど、なんでこんなにいやな雲行きなんだろう…。

37 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 19:33:06 ID:PAgvoA8iO
>>30
がんば、まとめという大役を果たしながらの投下は大変だと思うが、がんば。

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 01:43:51 ID:wAJjbmsb0
ギャグとシリアスの配分って難しいよね
自分は5:5くらいがちょうどいいと思ってるけど

39 :ドラクエ3 旅立ち編1 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/04(水) 03:04:38 ID:RBuaBwvuO
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36

ぼくたちはというと、嵐のために村から出れない状況にあった。冒険2日目の朝。
宿屋の店主「この時期にはよくあることなんだが、なんだかいつもより激しいみたいだね。なにもできないがゆっくりしていってくれ」
ぼく「はい」
宿泊費もばかにできない。かといってすることもない。なるようにしかならない。
男戦士「この嵐がなきゃおれたちも故郷に帰れたんだがな。ナナとは幼なじみでね。船での旅の途中にアリアハンによったんだ。
数日間滞在していたがこの嵐で、のってきた船が沈んじまったのさ。もう一年にもなる。すっかりくさっていたが、あんたと旅ができることになるとはわからないもんだな…」
ぼく「へえ…」
男戦士「昔語りをするにはこういう日しかない、嵐ってのはふあんにもなるが不思議とおちつくんだ。おれはな」
すこし年上のサイモンがひどく大人にみえた。
ぼくはオルテガの息子、世界の希望…。違うんだ、本当はただの高校生にすぎない。でもいえない。いまはまだ…。
男戦士「別室の女たちはなにやってんだろうねぇ。ちょっとみにいくか?」
ぼく「ああ、そうだね」

40 :ドラクエ3 旅立ち編2 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/04(水) 03:18:05 ID:RBuaBwvuO
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39

ぼく「いま、だいじょうぶ?」
ドアをノックしたら、エリーがどうぞと声をかけてきた。
男戦士「おいおい、ひまそうだな。ナナは聖書、おまえはなにをやってたんだ?」
女武闘家「べつになにも。こんな日になにをしろっていうのかしら」
そういわれれば、もっともだ。
男戦士「腕立てふせでもやってりゃあいいじゃないか。腕をなまらせるのは関心できんな」
ぼく「こっちもひまだから何か話さないかなと思ってきたんだ」
ぼくらの後ろから宿屋の店主がきた。朝ごはんの用意ができたらしい。

しかし会話があまりないな。
食事の時間がこんなにしずかでいいのだろうか。
ぼく「エリーってアリアハン出身なの?」
女武闘家「ええそうよ、あなたと同じよね」
いっておくが、エリーとは昨日今日の面識しかない。
女武闘家「いつか世界のために役立ちたいと思ってこの武闘家の道をえらんだの。オルテガ様についていきたくても幼かったから無理で、でも修業を続けてきたわ。あなたとはあまり話せなかったわね、同じ街で生まれたのに」
エリーとぼくは同い年くらいだから、17歳くらいだろう。
男戦士「どうして、ゆきひろと話さなかったんだ?興味なかったか」
女武闘家「話したいとは思ってたけれど、勇者になることを決められてた人よ。でもこうして今は話してるんだからいいじゃない」
ぼく「ぼくはふつうだよ。ふつうに接してくれてよかったんだ」
女武闘家「そう…ね」
オルテガという人は偉大だったんだ。
どんな人だったんだろうか。
2日間の嵐だったがさり、いよいよ冒険の再開となる。

41 :ドラクエ3 旅立ち編3 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/04(水) 03:41:16 ID:RBuaBwvuO
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40

岬の洞窟からナジミの塔へきた。レーベの村に来てから一週間ほどたっている。
レベルもそこそこ上がってきているだろう。モンスターの強さからなかなか上にすすめずにいたので装備品なども買いそろえ、やくそうの準備もバッチリだ。
男戦士「まったくいやになるな。女性方はだいじょうぶなのか」
女武闘家「なめないでね、あんたよりは体力、しっかりしてるつもり」
女僧侶「ちょっとやすみたいですね」
ぼく「もうすこしのぼってみないか?休めるところがあるかもしれないし、さ」
自分の言葉どおり、階段をのぼっていくうちに休める宿屋があった。
ぼく「塔に宿屋があるなんてかわってるな…」
塔の宿屋の店主「ひさしぶりの客だよ!高いけど泊まっていくかい?」
男戦士「ありがたいね。そうするよ」
女武闘家「一部屋だけね、えっちなことかんがえないでよね」
ぼく「はいはい」
男戦士「おまえのぺったんこの胸なんかみない」
女武闘家「あんたみたの?」
女僧侶「だいじょうぶですよ、泊まりましょう」
シャワーもなしか…。エリーとナナにはつらいだろう。
男戦士「さっさと休んでさきにいこうぜ。バラモスはまってはくれないんだ。こうしてる間にもモンスターたちの各地への侵略はすすんでんだぜ。なっ、勇者ゆきひろ」
ぼく「そうだね…。すぐに休んで進もう」
ひさしぶりのベッド。たまる疲労。すぐにみんな寝てしまった。アリアハンの母は元気だろうか。

42 :ラムと偽牛乳 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:12:03 ID:XRFQec6R0
 前回 >>8-19
【Stage.2 ラムと偽牛乳】

 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者アルスのナビが当てにできないので、僕はさっさとこの世界に慣れることに決めた。

 まずは素直にルイーダの酒場に行ってみる。いつか映画で見たような中世ヨーロッパ風
の薄暗い店内で、3人の男がジョッキを片手に騒いでいる。その男達の他に客の姿はない。
 なんだかガラの悪い連中で、あまり近づきたくない雰囲気だ。仕事が無いのか、夜からの
仕事なのか、どちらにしても昼間から飲んだくれてる人間にまともなヤツはいなさそうだ。
 どっちの世界も一緒だな。

 奥のカウンターで、ハデな化粧のお姉さんがこっちを見てニヤニヤしていた。
 優雅にキセルをふかしている様は、なかなか堂に入ったものだ。そんじょそこらのアラ
クレじゃあ太刀打ちできないしたたかさがにじみ出ている。彼女がルイーダさんかな?
「いらっしゃいよ。話は聞いてるわ」
 チョイチョイと人差し指を手前に倒す。一応僕が噂の勇者様だから遠慮したみたいだが、
そうでなければ、きっと最後に「坊や」とか入っていただろう。

 彼女のセリフで僕の存在に気付いた飲んだくれ達が、人を小馬鹿にするような笑みを浮
かべた。僕がカウンターに着くなり、3人の酔っぱらいは当然のように僕を取りかこむ。
 そのうちの1人が馴れ馴れしく肩に腕を回してきて、酒臭い息を吹きかけた。
「勇者様ぁ、今日が旅立ちでしたっけぇ? こちらにはお仲間を探しにぃ?」
 わかりきってることをわざと聞いている感じだ。
「でもせっかく酒場に来たんだし、勇者様も景気付けに一杯飲んでいかねえかい?」
「もちろんここは、勇者様のおごりでな!」
 3人目の言葉と同時に、全員が爆笑。

 勇者だからって、誰もが諸手を挙げて万歳三唱ってわけでもないんだな。
 まさかいきなりカラまれるとは思わなかった。

43 :ラムと偽牛乳 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:12:42 ID:XRFQec6R0

 出だしから騒動を起こすのもなんだし、ここはヘタに逆らわない方がいいかな……。
「バカ言ってんじゃないよ。勇者様にタカったなんて知れたら、しょっぴかれるわよ」
 ルイーダさんが僕と肩を組んでいた(というかもはや羽交い締め状態だった)男の腕を、
キセルでパンっと叩いた。中の粉が飛んで、2、3度咳こんでしまう。
 それを見て、またもやみんな爆笑。
「いやいや勇者様、もちろんおごれってのは冗談ッスよ?」
「緊張してるみたいだからほぐしてやろうと思っただけだって。なぁ?」
 ふーむ。こんなのに構ってるヒマないんだけどなぁ。
「だっけど勇者様もよぉ、酒場に来たんなら礼儀として、一杯くらいは飲んでいかな……」

 ガシャン!

 いきなり大きな音が店内に響いた。やいのやいの騒いでいた男達がピタリと黙る。
 カウンターにはゴールドの山。王様からもらったお金を、僕が全額ぶちまけたのだ。
「いいよ、飲もう。でもこれじゃ足りないと思うから、ここは飲み比べといかない?」

「ちょっと、無茶すんじゃないよ、坊や!」
 ルイーダさんの顔がこわばった。意外といい人だったり? いや、勇者に悪さをしたら
捕まるぞ、みたいなこと言ってたから、そっちが心配なのか。
 もう遅いけど。

「ここは酒場でしょ、ルイーダさん。お客に酒を出せないの?」
「うおっしゃ、よく言った勇者様!」
「大丈夫大丈夫、これくらいありゃあ、多少アシが出るくらいだぜ!」
「この剣とかも売れば釣りが来るしな!」
 男達が再び大騒ぎしだしたのを横目に、僕は最初の一杯を注文した。

44 :ラムと偽牛乳 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:13:12 ID:XRFQec6R0


「……マジかよ、強すぎだろ……」

 最後の1人が口元を押さえて表に飛び出していったのを、先にダウンした男が見送りつ
つ、呆然とつぶやいた。
 そいつの足下には、もう1人の男がいびきをかいて寝ている。
 しんと静まりかえった店内に、僕がくるくると揺らしているグラスの、カランと氷が
ぶつかる音だけが響く。
「いやぁ、おじさんたちが先にだいぶ飲んでたからだよ」
 僕は残りのロックを一気にあおった。
「あ、あんた、大丈夫なの?」
 ルイーダさんがカウンター越しに手を伸ばして、僕の頬に触れる。
 その手をやんわりと遠ざけて、代わりに空になったグラスを手渡した。
「もちろん大丈夫じゃないよ。さすがに、ちょっと酔ったかも」
 ラムなんて強いお酒で勝負しちゃったしね。

「っぷ……くくくく……アハハハハハ!」
 と、ルイーダさんは突然ゲラゲラ笑い出した。さっきまでの妙にシナを作った笑い方じゃ
なくて、ちょっと中年オバサンが入ってる品のない笑い方だ。
「参ったねぇ。お高く止まった優等生だとばっかり思ってたけど」
「へえ、そんな風に思われてたんだ」
 アルスってば、こっちでも性格悪いって思われてるのかよ。ダメじゃんあの勇者。

「意地悪してごめんよ。仲間を探すんだろ? こっから選んでちょうだい」
 ルイーダさんはボンっと厚い冊子を投げてよこした。
 開いてみると、1人1ページずつ、似顔絵付きで人物紹介がされている。
 これが例の名簿か。

45 :ラムと偽牛乳 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:14:32 ID:XRFQec6R0

「うわー……」
 こっちの世界の文字が普通の日本語として認識できるのはありがたいんだけど。
 パラパラとめくってみて、僕はガックリきた。
 どこまでいっても「Lv.1」ばかりだ。
 いやゲームではそうなんだけど、実際問題、こんな履歴書で本気で雇われたいと思っ
てんのか。ナメてないか?
「――そう言えば、あの人は12だったな」
 城で声をかけてきた「例のアレ頼みますね」の兵士のことを思い出す。
 あの時はろくに話もしなかったけど、彼の胸には城の外門の紋章と同じ形をしたプレー
トが付けられていて、それには「Lv.12」と書いてあったんだよね。
 う〜、いるところにはいるんだよな。連れ出せるなら、あの人がいいんだけど。

 まあだけど、載ってないのも当たり前か。
 とりあえず最後まで目を通した僕は、使い物にならない名簿をカウンターに投げ出した。
「いい加減にしてよルイーダさん、これ全部じゃないでしょ? 何で隠すのさ」

 少し間があった。――それからニヤリと笑うルイーダさん。
「ふふん、勇者の方から言ってきたなら、違反にゃならないからねぇ」
 とか言いながら、奥の階段から2階に上がっていく。

 すぐに戻ってきた彼女は、僕が今持っているのと同じ冊子を持ってきた。
 ただし、こちらの表紙には大きく「特選」と書いてある。
「本当はこっちも見せるべきなんだけど、王様に止められててさ」
 開いてみると、なるほど、特選と銘打ってるだけあってトップページから「Lv.10」だ。
「勇者の指名は断れない、って決まりを先に出しちまったもんだからさ。優秀な人材を引っ
張って行かれるとマズイから、こっちの名簿は見せるなって言われてたんだよ」
 ルイーダさんはあっけらかんと真相を語る。
 おいおい王様、人の良さそうな顔して、それはひどくないか?

46 :ラムと偽牛乳 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:16:19 ID:XRFQec6R0

 特選の名簿には、あの兵士さんも載っていた。サミエルさん。うそ! 22歳? 意外と
若かったんだなー。てっきり30代半ばくらいかと思ってた。
「ああ、サミエルね。ずいぶんあんたについて行きたがってたわよ?」
 ルイーダさんが思い出したように笑顔をこぼす。登録時は相当意気込んでいたようだ。
 ということは「例のアレ」ってのは、旅仲間に指名してくれってことだったのかな。

 その2ページ後で、僕はようやく、目当ての彼女を見つけることができた。

<エリス/魔法使い/女/16歳 「Lv.14」>

 アルスの言っていた魔法使いの女の子。
 さっきの名簿に彼女が載っていなかったからこそ、別冊があると思ったんだ。嫌がらせで
元カノを勧めてきたのに、その子が架空の人間というのもおかしいからね。
 それにしてもLv.14とは。

「じゃあまず、このエリスさんを指名するね」
「あら、別れたんじゃなかったの?」
 ルイーダさんが訝しげに尋ねる。さすが酒場のママ、他人の色恋話には詳しいようだ。
「うん、ヨリを戻したくなって」
 面倒だから適当に答えておく。僕の淡白な対応に、ルイーダさんも簡単に流してくれた。
 「あとはコレを持って本人を迎えに行ってね」と3人分の契約書を渡される。
 「Lv.10」以上ともなると、別の場所で働いている人も多いから、雇い主が迎えに行く
のが習慣らしい。ようやく酒場を出られるな。

「全員お城勤めだから楽でいいわよ。じゃあ頑張ってね♪」
 ルイーダさんは、すっかり僕に気を許した風だ。
 だから僕は最後に、気になっていたことを聞いてみた。
「ねえルイーダさん。もし僕が特選名簿のことに気付かなかったら――
 Lv.1のヒヨッコどもを押しつけて、世界を救えと言うつもりだったの?」

47 :ラムと偽牛乳 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:21:24 ID:Jn/qKYCi0

 今度は、少しの間もなく。彼女は笑顔のまま答えた。
「当然でしょ。どうせあんた、ルビス様の加護がついてんだから簡単に生き返るし」
 ――――了解。
 わざわざ入り口まで見送りに来てくれた彼女を、僕は二度と振り返らなかった。


 店を出ると、外はすでに日が傾いていた。うわ、けっこう長くいたんだなー。
 でも携帯の時計の方は、まだ正午を少し過ぎたあたりだ。ゲーム内の時間と現実時間の
相対比率を考えて、僕は少し気持ちが楽になった。
 始めからレベルの高い仲間を得ることに成功したし、この分なら、探せばまだまだ
ショートカットできるところはありそうだ。うん、思ったより早く戻れるかもしれない。

 さて。
 城に向かう前に、僕は裏路地の井戸に立ち寄った。運良く誰も使ってなかったので、桶に
水を汲んで、路に沿って掘られている側溝まで持って行く。
 側溝にかかっている踏み板を外して、僕はその場に膝をついた。
「ゲホッ…うぇっ……ゲホゴホ!」
 さすがに限界だった。いくらなんでも飲み過ぎだ。量で勝負の安酒なんて、悪酔いするに
決まってる。

 でも気分は悪くなかった。
 あの根性のねじくれた大人達が、呆気に取られている様子は見ものだった。
 まったく――16歳の少年に、いい大人が揃いも揃ってとんでもない大儀を押しつけといて、
よくも「お高くとまった優等生」なんて言えたもんだ。ふざけんな。
 だからアルスだって嫌になるんだよ。

 でも……現実も、同じようなもんなんだけどね。

 手酌で口の中をゆすぎながら、携帯越しに聞いた彼のはしゃいだ声を思い出して、僕は少し、
心が苦しくなった。

48 :ラムと偽牛乳 7/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:22:06 ID:Jn/qKYCi0

 ----------------- Real-Side -----------------

 上着をはおって部屋を出ると、リビングのテーブルにヤツの母親が伏せっていた。
「……いまごろ起きてきたの?」
 顔も上げず、かすれ気味の声で非難してくる。
 そういう自分も昼寝してたんじゃねえのかよ?と突っ込みたかったが、まあ初日はおと
なしくしておこう。
「ちょっと出かけてくるよ」
 普通に声をかけておく。彼女がなにか言っていたが、俺は無視して靴を履き玄関を出た。

 マンションの廊下に出て、エレベーターで1階へ。こういう仕掛けは向こうにもあった
から、大した珍しくもない。
 だが一歩外に出ると、俺は視界一面にあふれている意味不明な記号群に圧倒された。
 「止まれ」とか言葉が書かれているものはわかるんだが、絵だけの表札はハッキリ言っ
てさっぱりわからん。あの青い親子連れはなんだ。人さらい注意?
 もっとも、徒歩の場合は自動車にさえ注意すれば、移動はそれほど難しくないはずだ。
 信号はわかる。何度か夢に見た。赤はNG、青はOK、インパスと一緒だな。

 住宅街の一角に、目の前の住人の日照権を完全に無視した形で立っているデッカイ茶色
の建物がヤツの住居だ。入り口を出てすぐ裏側に回る。こっち側からはマンションのベラ
ンダが見えて、4階の一番右端に今出てきた部屋がある。
 迷子にならないように、この景観を頭にたたき込む。通学路だから、ヤツを通してしょっ
ちゅう見ていた景色なんだが、やっぱり現実に目にすると感覚が違う。
 ここで暮らすからには、こうやって一つ一つ確実に自分の物にしていかないとな。

 ここからコンビニまではそんなに遠くない。マンションの裏手にある小さな公園を横切り、
狭い路地裏を200メートル(単位は俺の世界と同じ。アレフガルドは違ってたけど)も歩く
と、青い看板が見えてきた。
 ところで、このコンビニの看板はなぜミルクタンクのマークなんだろう。
 気になるじゃないか。

49 :ラムと偽牛乳 8/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:23:25 ID:Jn/qKYCi0

 実は俺、牛乳が大好きだ。
 だがイイ女ほど冷たいのと一緒で、あの白磁色の甘い液体は、俺の腹に入った瞬間に
暴れ出す。飲んだ端からすーぐゴロゴロきちまうんだよな。
 だから俺の朝食はいつでも野菜ジュースだ。おふくろは蜂蜜を入れたり、あれこれ
工夫して飲みやすくしてくれてはいたが、やはり牛乳の魅力には敵わない。
 さて、こっちではどうだろう。
 俺はワクワクしながら、縁起の良いマークのコンビニに入った。

 それにしてもスゲエ品揃えだ。こんな狭い敷地内に、いったい何千点のアイテムがあ
るんだか。アリアハンで年に一度開かれる大百貨市でも、店の規模はともかく、これほ
どの種類は集まらないだろう。
 さっそく愛しの牛乳ちゃんが並んでいる場所を目指す。
 もちろんこんな大事な部分はちゃんと予習済みだ。こっちの牛乳は、紙の箱に入って
冷やされてるんだよな? 壁際の方から冷気が漂ってくるから、あっちかね。

 そう言えばレーベの発明ジジイが、低温の食料貯蔵庫を作るとかってはりきってたな。
 エサをやることを条件にスライムつむりにヒャドらせてたら、気がついたら食料みん
な食い逃げされたとか。こっちの「冷蔵庫」を見せたら、どう思うだろ。

「あったあった♪ えーと、メグ…ミル…?」
 赤いパッケージのは他のと比べてちょっと高い。せっかくだからこれにしよう。
 ただ、さすがに1リットルのを買っても飲みきれないから、俺は同じデザインの一番
小さい紙箱、じゃない紙パック(だっけか?)を手に取った。

 と――同じ段の左側に並んでいる、緑色の細長い紙パックが目に入った。
「まめちち?」
 “乳”とつくからには、これも牛乳の仲間だろうか。しかし、「まめちち」って。
 エリスに言ったら泣くだろうなー。いや、俺は大きさも大事だが形も大事だと思……コホン。
「違うな。TO…NYU……とうにゅう、か」
 とうにゅう。とうにゅう。不思議な響きだ。

50 :ラムと偽牛乳 9/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:24:23 ID:Jn/qKYCi0

 俺はついでにソレも買うことにした。勇者たる者、つねにチャレンジ精神を忘れてはな
らない。他にも数点、ツルツルした袋に入った軽い食い物を選ぶ。スナックとかいうやつ。
 持ちきれなくなってきたので、俺は精算することにした。金はレジで、だよな?

 青いシマシマ服を着た姉ちゃんが、カウンターの向こうで、しきりにこっちを気にして
いた。俺は別に変な行動は取ってないはず。他に客もいないからヒマしてるのか、
「それとも――顔がいいからかな〜?」
 一応ゲームキャラですから。まあ美少年と呼んで差し支えはないでしょう。
 とはいえ、俺のプレイヤーが俺にそっくりだっつーのは、ちょっとシャクに障るが。

 そんなことより問題はあれだ。どうやって牛乳を飲めばいいか。これ開け方わかんねーぞ。
 商品を店員の前に並べつつ、俺はさらに頭を回転させた。
 よし! ここは――
「すみません。それ飲んで帰りたいんで、そういう風にしてもらえます?」
 つらっと頼んでみる。店員は怪しむこともなく、牛乳の箱の横に張り付いていた小さな棒を、
箱の上部にプツッと突き刺した。あ、なーる。そうやるのね。
「638円になります。会員カードはお持ちですか?」
 カイーンカード。わからん単語は飛ばすに限る。「ありません」。こまかい貨幣計算はまだ
不慣れなので、俺はヤツの財布から紙幣を一枚抜き出し、渡して様子を見た。足りたようだ。

「ところでお客様」
 釣りを受け取って立ち去りかけた瞬間、姉ちゃんが声をかけてきた。
「そのぉ……」言いにくそうな姉ちゃんは、「ズボンのファスナーが……」と視線をそらす。

「あ、どうも」
 そうか、ここが開いていたのか。確か、こっちでは恥ずかしいことなんだよなー。あはは。

 ……って向こうでも恥ですから! うわー、これで歩いてたのかよ俺!!
 やっぱ緊張してんのかな。

51 :ラムと偽牛乳 10/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:25:24 ID:Jn/qKYCi0

 買い物を終え、俺は店から少し離れたところで立ち止まった。
 コンビニの袋を片手に、もう一方の手には言わずもがな、牛乳のパックを持っている。
 これがビン入りだったら腰に手を当て、斜め45度に向かって仁王立ちで飲みたいとこ
ろだが、そこまで望むのは贅沢というものだろう。いよいよ念願の現実牛乳だ。
 いざ、リアルミルクターイム!

 チュウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーー………………ぷはぁ!

「…………」
「……………………」
「……………………………………マズイ?」
 なんだろう。妙に水っぽくないか? いやこんなもんだっけか? 向こうでも久しく
飲んでないから、味を忘れてるんだろうか。でもなんか違うような気がする。あれ〜?

 しかも腹のあたりで嫌〜な感触がしている。まだ大丈夫だがこれ以上はヤバイ、という
警告らしきものが、胃の腑のあたりで沸々している。
 こんな微妙なもんで腹を壊すのも嫌だ。ちょっともったいない気もしたが、俺は残りを
適当な排水溝に捨てて、空の紙パックをコンビニの袋に入れた。
「楽しみが一つ減っちまったなぁ……」
 まあ仕方ない。牛乳だけが人生じゃないさ。

 
「いいもん。牛乳だけが人生じゃないもん 。・゚・(ノД`)・゚・。」
 俺は公園のベンチに座り、しばらくシクシク泣いていた。本当はめっさショックでした。
 しかし勇者は決して希望を捨てないものだ。俺はコンビニの袋をあさり、謎の「まめちち」
を取り出す。俺はこいつに賭けるぜ!
「でも一応、成分表を見てからだな。……うむ。牛乳は入ってないのか」 
 乳が入ってないのに乳とはこれいかに。
 店員がやっていたように、俺はパックの横についていた細い筒を頂部に突き刺した。
 どれどれ……?

52 :ラムと偽牛乳 11/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:30:21 ID:p/xBX0tk0

 ----------------- Game-Side -----------------

 アリアハン城で3人分の仲間の契約を終えた頃には、すっかり夜も遅くなっていた。
 僕が指名した3人の仲間は、宮仕えの中ではレベルこそまだ中の下くらいらしいが、
どの人も将来を有望視されているエリートで、王様には散々嫌味を言われた。
 だーから、世界を救う勇者に人材の出し惜しみをするなっつーの。

「疲れた〜」
 夜中に帰ってきたにもかかわらず、DQ版お母さんは優しく迎え入れてくれた上に、
夕食も用意すると言ってくれて、すごく嬉しかったんだけど。
 とてもご飯なんか食べる気力もなくて、僕は二階の自室に戻るなり、ろくに着替えも
しないで、そのままベッドに倒れ込んだ。
 明日からはいよいよ本格的に冒険が始まるのだが、そんな興奮も押し寄せる眠気の前
には消し飛んで……

 プルルルルルル! プルルルルルル!

「うはぁ!」
 いきなり鳴り響いた甲高い電子音に、僕は心臓が止まりそうになった。
 反射的に携帯を手にとって確かめると「ARS」と出ている。
 え……アルス? 向こうからかけてくるなんて、もしかしてなんかあったのか?

「どうしたのアルス!? まさか事故にでも遭っ――」
『聞けよタツミー! すげえぞコレ! ウマイってもんじゃねえの! まめちち最高!』
 ぎぃやああ!! ふ、二日酔いの頭にガンガン響くぅぅ!
「はぁ? な、なんだってぇ?」
『だから、まめちち? いやトウニュウ? これマジウマー!』
 こらこらこらこら、ちょっと待て。

53 :ラムと偽牛乳 12/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:31:07 ID:p/xBX0tk0

「うるさいよ! なんだよもー! 何時だと思ってんだよ!」
『あん? 午後3時22分だが、どうかしたか』
「こっちはもう夜中だ! 時差を考えろ!」
『時差ぁ? 知るかよ。それより、まめちち!』
「ワケわかんないっつーの!」
『いいから聞いてくれよ〜! でなきゃこの感動を、俺は誰に伝えればいいんだ!
だって牛乳じゃないんだぞ? 腹ゴロゴロいわねーんだぞ? なのにマッタリとして
コクがあって、それでいて動物性タンパク質にある独特の脂っぽさが無いこの上品な
テイスト! 作ったヤツはもはや ネ申 だぜ! なあ!?』

 ……なんだか知らんが、すっかり現実世界を謳歌していらっしゃるらしい勇者様。
 この様子なら当分はなにも心配なさそうですね。

『しかも、このハバネロってのがまた辛いけどサックリ感が――ッピ』
 通話を切って、今度はこっちから電源をオフにする。
 さらに輪をかけてグッタリ疲れた僕は、

「カンベンシテヨモウ……zzz」

 次の瞬間には、意識を失っていた。

54 :ラムと偽牛乳 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:35:22 ID:p/xBX0tk0
本日はここまでです。

区切りがわかりづらいので
----- Side-T ----- → ----- Game-Side -----
----- Side-A ----- → ----- Real-Side -----
に変更しました。

55 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:06:59 ID:WalTHzy6O
>>26から続き
見渡す限りの緑が目に痛い。
『参ったな、全く見覚えが無い場所だ・・・。』
思わずその場にへたりこむ、頭を抱えパニックになりそうな頭を懸命に整理しようとする。

『ここはどこだ?全く想像つかんな・・・、そもそも俺は城の稽古場で剣術の修練をしていたはずだ・・・。』

何をどう考えてもこの場所にいると言う事実を説明出来ない、男はまた考えだした。

『もう一度最初から思い出そう、城の稽古場であのくそ女と模擬刀で打ち合っていた・・・。で、あの馬鹿力で叩きのめされて・・・。』

男の脳裏に不吉な考えが浮かび上がる・・・。
『ま、まさか・・・、俺は死んだのか?奴に殺されたのか??なんてこった・・・。』
『いや、俺がそんなやわな男である筈がない。きっと夢か何かだろう。』
『とりあえず腹が減ったな、それに酒も飲みたい』

男は立ち上がり先程の宿屋に入っていった。

56 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:07:59 ID:WalTHzy6O
俺「親父!酒だ!あとなにか肴も持ってこい!!」
店主「貴方は何を考えているのですか?ここは宿屋であって酒場ではありませんよ!」
俺「酒と食い物くらいあるだろ、なんか持ってこい」
店主「ここにはお客様に出す食事しかありません、貴方が泊まると言うなら食事くらい出しますが・・・。」
俺「いや、眠くはないから泊まる気は無い」
店主「でしょうねぇ・・・。ならば町に行ってみてはどうですか?」
俺「何!町があるのか!?」
店主「この宿から東に半日ほど進んだ所にかなり賑わった町がありますよ」
俺「そうか!そこに行けば美味い酒と食い物もありそうだな!うむ、親父!世話になった!」
店主「気を付けてくださいね」


意気洋々と店を飛び出した男、彼の足ならば半日とかからないだろう。

途中獣の気配を感じたが特に出くわす事もなく、半日とかからずに町に到着した・・・。

57 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:09:10 ID:WalTHzy6O
〜アリアハン〜

『ずいぶんデカイ町だな、城下町か・・・。』

入口すぐ左手に酒場を発見、「ルイーダの酒場」

『ルイーダの酒場ねぇ・・・。まあ酒だ酒!』

ルイーダ「ハーイ、いらっしゃい」
俺「おう、ねえちゃん酒だ酒をくれ。」
ルイーダ「お酒を出すのもいいけどさ、あんた先に登録書を出すもんじゃ無いかい?」
俺「登録書?なんだそりゃ?」
ルイーダ「あんた大丈夫かい?冒険者の登録書だよ。何年も前から世界中でやってんのに」
俺「聞いたこともないな、ここでできんのか?」
ルイーダ「あんた本当に大丈夫かい?相当な田舎者なんだね。このご時世にここまで何にも知らない男がいたとはね・・・。」
俺「なんでもいいからとっとと登録ってやつをしてくれ!」
ルイーダ「はいはい、わかってるわよ。で、あんた名前は?」
俺「カイエンだ」

58 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:22:02 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「カ・イ・エ・ンっと、珍しい名前だね。で、職業はなんだい?」
カイエン「侍だ」
ルイーダ「侍?なんだいそりゃ、どんな事をやるんだい?」
カイエン「侍とは、弱きを助け、悪を斬る者だ。行動ももちろんそうだが志もたk」
ルイーダ「騎士みたいなもんだね、はいはい・・・。」
カイエン「騎士とはなんだ?俺は侍だ!」
ルイーダ「あーはいはい・・・。ハイッ登録終了よ。」
カイエン「むぅ・・・。」ルイーダ「これが、登録書よ。」
カイエン「うむ・・・。」
ルイーダ「それにしてもあんたずいぶん変わった剣を持っているのねぇ・・・。ちょっと見せてごらんよ」
カイエン「やめろ馬鹿女!武士の魂に気安く触るな!!」
ルイーダ「馬鹿女ですって!そんな事言うならお酒も食べ物も出さないし登録も抹消するわよ!?」
カイエン「ぬう・・・。食べ物をくれないのは困る、ここに来てから何も食ってないのだ・・・。だが刀は触らせん!これだけはダメだ!!」
ルイーダ「そう・・・、まあいいわ。ちょっと待ってなさい今何か持ってきてあげる。」
カイエン「すまんな」

そう言ってルイーダはカウンターの奥に入って行った。

59 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:23:39 ID:WalTHzy6O
『しかし・・・、ずいぶん変だな、夕方の酒場なのに誰もいない。それに壁一面似顔絵にわけのわからん説明文』

おもむろに一枚剥がしとってみる。

『なになに?エリス17歳ピチピチの魔法使いで〜す(はぁと)レベルは1だから魔法はまだまだだけど、恋の魔法はレベル99よん(はぁと)・・・、なんだこりゃ?』

ルイーダ「お待たせ、ってダメよ勝手にとっちゃ〜。」
カイエン「ねえちゃん、こりゃなんだ?」
ルイーダ「ル・イー・ダよ!それはね、勇者様に対する冒険付き添いの嘆願書よ」
カイエン「勇者?嘆願書?」
ルイーダ「あきれた、あんた本当になんにも知らないのね。テドンにでも住んでたのかしら?」
カイエン「??」
ルイーダ「はぁ・・・、説明してあげるわ。」
カイエン「頼む。」
ルイーダ「最近この世界に自ら魔王と名乗る奴が現れたのよ、で、その魔王討伐の為に各国の王様達が共同で作ったのが世界勇者連盟なの。」
カイエン「ほうほう。」
ルイーダ「各国の王様に勇者と認定された人達はこの酒場みたいに冒険者登録所で仲間を募って旅に出る。その付き添い嘆願書がそこに貼ってあるのよ。」
カイエン「ほー、でもさっきのエリスとやらは使い物になるとは思えんな、それに文章の書き方も間違ってる、はっきり言ってアホだ。」
ルイーダ「それが悩みの種なのよー!勇者様と一緒に旅をするってのは大変な事なのよ?魔王に対抗するって事は世界中の魔物に喧嘩を売るようなもんよ。」
カイエン「そりゃそうだ。」
ルイーダ「それだけ大変な旅をするんだから見返りも凄いのよ、金品の受け渡しは原則禁じられてるんだけど世界中どこへでも顔パスで行けるしどこへ行っても超VIP待遇だしね。認定された勇者の中にも表向きだけ魔王討伐を装って裏でいろいろやってるのも多いのよ。」
カイエン「ふーん」
ルイーダ「付き添い志望の中にもそんな甘い汁を吸いたいって輩が出てくるってわけ。」
カイエン「なるほどねぇ・・・。」

60 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:24:35 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「そうそう、あんたも嘆願書作る?」
カイエン「カ・イ・エ・ンだ、俺は別に興味ない。」
ルイーダ「いいじゃない、作るだけでも・・・、ねっ?」
カイエン「なんか気持悪いな、まあいいだろう。」
ルイーダ「うふっ、じゃあまずはレベルからね・・・。ちょっと目を瞑って。」
カイエン「む?こうか?」
ルイーダ「そう、それで何も考えないで心を開いて・・・。」
カイエン「・・・。」
ルイーダ「いくわよ?・・・。」

ルイーダは紙とペンを手元に置き、カイエンの頭に手をかざし何か呪文らしきものを唱えはじめた・・・。

ルイーダ「我、識別の神ディルナと経験の神ソロンの名において汝の全てをここに記す・・・。」
カイエン『おおっ!なんか暖かい・・・。』
ルイーダ「・・・ふう。」
カイエン「終わったのか?」
ルイーダ「ええ、もう終りよ。」
カイエン「で、どうなんだ?」
ルイーダ「どれどれ・・・えっ!!」
カイエン「なんだ、どうした?」
ルイーダ「レベル78・・・あんたムチャクチャね。」
カイエン「それは凄いのか?」
ルイーダ「凄いも何も、レベルだけならあんた世界一よ。」
カイエン「何?」
ルイーダ「他のステータスも信じられない程高いわ、HP8000とか・・・、あんた人間?」
カイエン「失礼な事言うな!」
ルイーダ「あんた一人でも魔王を倒せそうね。」
カイエン「そうか、そんなに俺は強かったのか・・・。」

61 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:30:19 ID:WalTHzy6O
『ピンポンパンポーン』

カイエン「なんだ?」
ルイーダ「来た・・・あの女だ・・・!って事はあんたまさか!!」

ルイーダと二人で酒場を飛び出す、街の住人皆が空を眺めている方を見ると空に女性が映し出されていた。

?『はぁ〜い、皆元気してるぅ〜?皆のアイドルルビスちゃんでぇ〜す!』
カイエン「なんだこの頭の悪そうな女は・・・。」
ルイーダ「創造主ルビス、神よ。」
カイエン「神だと!?」
ルビス『今日はねぇ〜、新しい異世界人が来たから皆に紹介するねぇ〜。』
ルビス『カイエンちゃんって言ってぇ〜なんとレベルが78もあるのよぉ〜!すっご〜い。』
カイエン「ちょっと待て、異世界人ってなんだーーーーー!!」
ルビス『カイエンちゃんはぁ〜、えふえふって世界から来てもらったの。だからこの世界とは強さの桁がぜんぜん違うの。』
ルビス『カイエンちゃんがその気になると魔王ちゃんなんて一撃なんだよぉ〜。』
ルビス『でもねでもね、それだと魔王ちゃんが可哀想だしぃ〜、だ・か・ら、カイエンちゃんはルビスの魔法で弱くしちゃうの、えいっ!』

空に映し出された女がそう言った瞬間!
カイエンの体を光が包みこんだ!

カイエン「うぉぉぉぉぉーーーー!」



62 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:31:12 ID:WalTHzy6O
ルビス『いきなりレベル1にしちゃうのも可哀想だから2にてあげたわ、キャ〜ルビスちゃんったらやっさし〜い!』
ルイーダ「ルビス!あんたあたしの体を元に戻しなさいよ!」
ルビス『その声はルイーダちゃんね、なんのことぉ〜?』
ルイーダ「とぼけるんじゃないよこのアホ女!『ルイーダちゃんってばおっぱい重くて疲れちゃうでしょ?ルビスが軽くしてあげる(はぁと)』なんて気まぐれであたしを貧乳にしやがってぇぇぇ!」
ルビス『アホ女だなんてひっど〜い!ルビスはルイーダちゃんの事を思ってやってあげたのに〜。』
ルイーダ「誰が頼んだ馬鹿女!」
ルビス『アホ女の次は馬鹿女ですって!酷いよルイーダちゃ〜ん・・・。』
ルビス『もう知らないっ!』
ルイーダ「あっ、待て!逃げるな!!」

空に映し出された女性は消えた・・・。

63 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:34:55 ID:WalTHzy6O
カイエン「おい、俺は本当に弱くなったのか?」
ルイーダ「そうね、本当にレベル2だってんならそこら辺のスライムにも苦戦するくらい弱くなったわ。」
カイエン「スライムとはなんだ?強いのか?」
ルイーダ「世界最弱の魔物よ。」
カイエン「なッッ!!」
ルイーダ「同情するわ・・・。」
カイエン「俺が異世界人ってのは本当か?」
ルイーダ「あのアホ女は神なのにアホなのよ、前にも数回あったけど気まぐれで召喚されたのね・・・。」
カイエン「なんてこった・・・。」
ルイーダ「自分は魔王に幽閉されてるのに一体何を考えているのかしら?頭がおかしいとしか思えないわね。」
カイエン「あのアホ女にもう一度会えば俺を元に戻してくれるのか?」
ルイーダ「さあね、でも殺せば元に戻るんじゃない?」
カイエン「そうか・・・。よし、殺そう!」


64 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:36:46 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「あたしも付いていくよ、もう我慢の限界だわ。」
カイエン「そうと決まればすぐ出発だ!」
ルイーダ「待って、勇者も連れていった方が何かと便利よ。えーっと・・・、おい、そこの見習い勇者!名前は?」
勇者「(ビクッ!)はい!アレンと言います!」
ルイーダ「アレンね、いい事?たった今から私とアレンとカイエンがパーティよ?おわかり?」
アレン「はっはい!!」
ルイーダ「わかったらさっさと私の酒場で嘆願書にサインしてきなさい。」
アレン「ひっ!」
ルイーダ「早く!」
アレン「ヒイィーー!!」
カイエン「おい、あんなガキで大丈夫なのか?」
ルイーダ「勇者として認定されている人間ってのは素質を見込まれているのよ、だからあんな子供でも鍛えればそれ相応にはなるわ。」
カイエン「ほぅ、相応ねぇ・・・。」
ルイーダ「どれ程になるのか?まではわからないけどね。」
カイエン「頼りねえな。」
ルイーダ「今のあんたよりは強いわよ?」
カイエン「本当にショックなんだ、それは言わないでくれ・・・。」
ルイーダ「ふぅ・・・。まあまずは訓練もかねてナジミの塔へ行くわよ?あんたも一から鍛えなおさなきゃならないしね。」
カイエン「クソッッ!ぜってぇ許さねえぞアホルビス!」


序章end


65 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:39:05 ID:WalTHzy6O
とりあえずここまででまた少しロムります。

稚拙な文書ですが、これからも頑張っていきますので何卒ご容赦を・・・。


あとカイエン達のステータスを書き忘れたのでここに書いていきます。

ではでは。



カイエン
Lv78→2
Hp8000→28
Mp600→8
装備
無銘の刀・着物

ルイーダ
Lv12
Hp76
Mp28
装備
皮の鞭・木綿のメイド服・シルバートレイ

アレン
Lv5
Hp36
Mp14
装備
ひのきのぼう・布の服・お鍋の蓋

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 20:45:50 ID:t5xoVVlmO
>>よし、殺そう!
wwwwwwwwwwwwwww

67 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/04(水) 21:05:09 ID:cB/eDgSj0
新スレ&書き手さん達乙です。
少しだけ告知をさせてください。

今回で9泊目。
次スレで10泊目となりますが、
その記念として合同作品を作れないだろうか、と企画しています。
作品構成としては、
執筆者の人数分登場人物を用意して最終的に一つの物語に仕上げていく。
つまり複数の人がドラクエ世界に来たというような設定で、
ドラクエ4のようにそれぞれの物語を書いた上で最後をまとめるという形を考えました。
ですがあくまで案なので、最終的には話し合いで決めたいと思っています。

そこで合作の参加者募集をしたいと思います。
担当は執筆・ネタ出し・編集・その他なんでも結構です。
参加して頂く方の負担はなるべく少ない方がいいかと思うので、
物語の長さは短編か中編くらいと考えています。
実際の作品発表は次スレとなります。

何か書いてみたいという方、使ってみたいネタがある方、
赤ペン先生の方、ぜひ参加をお待ちしています。
避難所のほうにスレを立てておきますので、
詳しくはそちらまでよろしくお願いします。。
では失礼しました。

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 22:05:22 ID:CvbNuZPrO
>>42ー54
ゲームと現実の同時進行とはおもしろいですね!
豆乳に感激するアルスかわいいw
プレイヤーのタツミの方がしっかりしてるっていうのも珍しいかも?
今後が楽しみです。wktkしてます。

69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 00:54:52 ID:fbJbKMLj0
ここで唐突に、書き手さん達に話題提起
荒らしでも煽りでもない、しかし忌避の無い意見って欲しいものなのかな?

70 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 01:08:18 ID:y4CESL9+O
避難所に書くのが好ましいかと・・・。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 08:50:27 ID:riu2JSWm0
>42-54
豆乳に感動するアルスに和んだ。
ヤバイ。めっちゃ面白いこれ。
完結させれば4の人に並ぶ良作になる予感。
それにしても感動してるのが豆乳ってことを除けば現実世界における
普通少年と悪友のやり取りだな。

>69
俺は書き手じゃないけど、あったら良いと思う。
どこが悪いか明確に分かればクオリティ向上に繋がるし
逆に言えば、ナァナァな意見ばかりだと悪い部分に気付かない
ままになってしまうから。

匿名掲示板ってのは読者の感情がストレートに出てくるもの。
そこに投稿するってことは指摘や酷評を受ける覚悟が
出来てるってことだろうからそういう意見はあった方がいいんじゃ
ないかな。

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 10:42:34 ID:kDAdJlw6O
DQ6でネタ考えた
でも、Dat落ちが早くなるかも知れないから載せないほうが良い?

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:20:31 ID:CsuSUuSf0
>>70
俺もそう思う

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:28:34 ID:6FlXYX8T0
>>72
wktk

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:58:02 ID:VPs7ravM0
帰ってきておやレスがこんなに伸びてるなっと思ったらなんですかこの大量投下は?

スレにこんなに活気が出てくるなんてすげぇ。
新入りさんもおもしろい。
一回ここで書こうと考えたけどいい文章が思いつかなくてエターなった。

合作とは面白い案だけど、リスク高そうだな。

76 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:07:15 ID:kDAdJlw6O
ちょっと投下してみます
ゆとりが書いたので酷い文章です
 
 
 
酷く疲れた
 
今日は初めて髪が黒以外の色になった
 
なんでもこの学校の寮生には避けて通れないものらしい
 
青色の髪、アニメかゲームキャラのようだ
 
青にしたと言われ鏡を見た時、昔遊んだDQ6を思い出した
 
「(ターニアみたい…かな)」
 
言い忘れたが私は女だ
 
DQ6やりたいな〜だとか、明日は休みだから中古屋を回ろうだとか思っているうちに私の体は重くなり、眠りについてしまった
 
そして不思議な夢を見た
 
どんどん体が沈んでいく、それがベットを突き抜け、空を突き抜け、落ちていく、落ちていく、落ちていく…そして地面に…

77 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:08:30 ID:kDAdJlw6O
叩きつけられる寸前で目を覚ました
かなりファンタジーな夢を見たものだと小さく笑ったが…
 
「ここ…どこ?」
 
どう見ても寮じゃないですどうもありg(ry
 
それはさておき、小洒落たペンションのような部屋に、窓からは子供の遊ぶ声と暖かい陽射しが注がれていた
 
服装は特に変わっておらず、お気に入りのタートルネックにジーパンそれと
 
「持ってたけど着てなかったような…」
 
それと黒のカシミヤのコート
ポケットの中には財布がちゃんと入っていた
とりあえず外に出よう…

78 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:09:51 ID:kDAdJlw6O
受付には宿の主人が暇そうな顔をしてぼーっとしていた
 
「あの〜…」
 
主人は聞く耳を持っていないようだ
シカトですか、いい度胸だコノヤロウ
主人の前に進み出て言う
 
「す み ま せ ん !」
 
「はひぃっ?!」
 
だいぶ驚いたようだ、ザマァミロ
主人はきょろきょろし辺りを見る
私は目の前にいると言うのに
 
「空耳かぁ〜」
 
…こいつ殴っていいですか?
もうどうでもいいや、そんな時主人の後ろに鏡がかけられていた
 
高級感の漂う銀の装飾が施されているようで、ほこりはついていなかった 
井戸のまわりで遊ぶ子供や緑に萌える木々が煌めきながら映し出されていたが──覗き込んだ私の姿は映っていなかった

79 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:12:45 ID:kDAdJlw6O
本当の投下はとりあえずこれで終了します
 
それからちょっと吊ってくる

80 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 18:26:02 ID:QN1nol5b0
>>75
「合作をやる」という事がなにぶん初めてなので、
どうしてリスクが高いと思ったのか聞かせてもらえませんか?
参考にしたいと思います。


今のところ考えている問題点は、
「複数の書き手がいる状況で、うまく話をまとめられるのか」
という事を一番危惧しています。
まぁそこは試行錯誤という形になってしまうと思いますが……

一応物語のスタートとゴール地点を最初に決めておいて、
それぞれが担当するパートはある程度自由にしてもらう。
という形にしたい思っています。


>>79
お疲れ様です。
青にしなくちゃいけない寮とかwww

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 19:16:16 ID:uaO89Aif0
75じゃないけど。

┼―――┼―――┼―――┼―――┼→エンディング
1     2     3     4     5
っていう風に1〜2の人、2〜3の人…という具合に時間軸で分けてしまうと
どうしても書き手の負担は後半になってくるに連れて増えて行ってしまう。
(DQ4みたいなオムニバス形式でも、1章、2章…と結果的に5章への伏線があるので
時間軸で区切った場合と似てる様な気がする)
その分、クライマックスに近づくにつれて物語の盛り上がり部分を書けるのも
後半の人って事になるだろうけれど、同時に最初の方に張られた伏線も
きっちり回収しなければならない。また、書き手が違えば考え方も違うから
最初の伏線が思わぬ障害になったり(逆で言えば読者の予期しない展開に
なって面白味を増す要素にもなるけど)する。最初に書いた人は後半の人に
うまくバトンを渡さないといけないから、これも地味だけど楽じゃない。
盛り上げ部分の配分とかも、作品全体で調整しなきゃいけないだろうから
各書き手さんたちの綿密な打ち合わせが必要だろうなとも。

もう1つはテーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か。

もう一つ懸念要素は実生活との兼ね合い(もしくはスランプとか)で書き手が継続困難になって
そのパートに穴が空くこと。こうなってしまうと合作どころか話そのものが崩れかねない。
その場合の対処方法も予め決めておいた方が良いと思う。機械じゃないんだから手が止まる事もあるだろうし。
他にも土台にするDQがどのシリーズかとか、この辺も作者の好みが出るだろうし。
そう言った理由から考えて、1つの物語を時間軸で区切ったパートごとに分けて
別々の人達が書いていくのは難しいんじゃないかな?

なんか後ろ向きな事ばかり思いつくだけ書いてみたけど、すごく面白そうだとは思う。参加できるならやってみたいかもw

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 20:13:25 ID:ud5o6gIKO
同じく>>75じゃないけど

やっぱりそのまんま合作というアイディアじゃ>>81さんがあげたような問題があるし、
だったらいっそ共同テーマ、共通ワードをいれた短編作品を書いてみるという方法は?

悪例な気がするけど10スレ記念ということだから、
「お祝い」と「10」というワードをどんな形にせよ盛り込んだ短編を皆で書くとか

83 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 21:14:59 ID:QBWSHixl0
>>81
意見ありがとうございます。
今のところ僕個人の考え方ですが返答させていただきます。

(1)皆で1本物語を書く
 合作として作品を作る際に、まず最初に思い浮かんだのがこれです。
 ですが、おっしゃる通りかなり綿密にやならければならない。
 書く人によって文体も違うので難しそうな感じ。
 なのでこれは無理だろうと思いました。
 つまり時間軸で分けて書いていく事はしない、という事ですね。

(2)同じ設定で執筆者それぞれに物語を書く
 次に浮かんだのはこの形です。
 これだと設定だけ決めて、
 後は各々で書けばいいだけなので(1)よりは楽だろう、と。
 そこで、そこから1歩進んで↓

(3)執筆者の人数分、登場人物を用意して、最終的に一つの物語に仕上げていく
 つまりそれぞれの書き手が書くのは担当する登場人物の物語だけで、
 登場人物が5人なら5人とも時間軸は同じ(場所は別々)と考えています。
 最後のまとめ(DQ4で言うなら5章)はどうするかまだ決まってませんが、
 最低でも全員が集合するところまでは書いてみたい…と思っています。

設定をどう出していくか、そして伏線をどう回収するかは、
最初に決めてしまってから書く事で幾らか回避できるだろうと考えていますが、
どうでしょうか。

伏線は書き手同士で前もって確認して把握しておくのがベストでしょう。
そして書いたものは他の人も目を通しておくと、より良いかもしれませんね。

84 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 21:32:57 ID:QBWSHixl0
>>テーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か

書き手が違いますから、それは当然出てくるでしょう。
むしろそれをまとめるのが最後の章になるんじゃないか、
とぼんやりと考えています。
登場人物全員が同じ結論だと面白くないでしょうし。
うまく出来るかどうかは別問題ですが……

そして実生活との兼ね合いですが、確かに難しいですね…
スランプの場合は他の執筆者が協力する。
仕事等で書けなくなったという場合は、代わりが書く。
としか現時点では言えません…
これはきちんと話し合って決めようと思います。

どちらにせよ、
参加者同士で互いの作品をかなりオープンに見せ合いたい、
と僕は考えています。
そうする事で何かの問題にも対処しやすくなるのではないでしょうか。

>>82
いいですね。
それも一つの形として全然アリだと思います。
最終的には参加者の話し合いで決めたいと思っているので、
候補に挙げておこうと思います。


きちんと返答できたか少々不安ですが、
また何か疑問等々ありましたら書き込んでください。
避難所の方でもお待ちしております。

合作は色々と難しいでしょうが、やってみる価値はある、と思います。

85 : ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:34:32 ID:970cVnjU0
こんばんは
珍しくこんな時間にお邪魔します

>>タカハシさん
まとめお疲れさまです
いつも感謝です

>>暇潰しさん
真理奈さんキターーー!!
せつなすぎて涙です。も、ぞくぞくします。鳥肌です。
やっぱすごい好きです。告白です。

>>新人さん方
まとめてしまってすみません
なんだか急激に盛り上がっていてドキドキですが
自分もまだまだ新人なので宜しくお願いします

では前スレ>>667続きです

86 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:35:32 ID:970cVnjU0

更に階段を降りると、フロアは今までに無い暗闇に支配されていた。
明らかに今までの城内とは異なった空気がフロア全体を支配している。
気味の悪い気配がそこかしこを行き来しているような、
異様な雰囲気を感じて俺は立ち止まった。

不意に雷光が窓を貫く。
轟音と共に照らし出された踊り場には
浮遊する得体の知れない何か(人魂、ってきっとこんな感じだろうな)が
幾つも連なって漂っていた。

窓から時折差し込む灯りを頼りに、人魂を避けて慎重に一歩ずつ進む。
人魂のような何かは、こちらに何かしてくるでもなく、
ただそこにふわふわと浮いていた。
降り積もった砂埃が足元でじゃり、と音を立てる度に
その何かが振り向いて襲い掛かってくるんじゃないかと
ありえない(だって俺は知っているのに)想像が脳を過り背筋が凍る。

やっと辿り着いた反対側の階段を駆け下りると、
そこはまたほのかに明かりが差す小さな部屋だった。
ふう、と緊張を解くように息をついてビアンカが
『あれ、なんだったのかしら。別に何かしてくる訳じゃないのね』
と可笑しそうに言った。

87 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:36:59 ID:970cVnjU0

部屋を見回そうと振り返ったとき、不意に空気が揺れるのを感じた。
あ、と思わず声を上げる。
それに気付いたビアンカが俺の見るほうに顔を向け、笑顔を消した。

階段から少し離れた場所。
上品な、王の身なりをした男が、王妃と同じ
悲しいような穏やかな表情をこちらに向けていた。
その体はやはりうっすらと半透明に景色を通し、白く淡い光を纏っている。

声を掛けようと一歩近付こうとした時、
王はするりと地面をすべり片隅にある小さな扉の向こうへ消えていった。
ついて来なさい、とその背中が言っていたように感じた。

扉へ向かおうとする俺に、ビアンカは
『もう、今のってきっと王様よね?
王様も王妃様も、どうしてすぐに何か言わずに消えちゃうのかしら』
言って、少し困ったようにまたくすくすと笑った。

扉を開けると、大広間を見下ろす渡り廊下。
薄闇の中には音楽が鳴り響き、至る場所で至る姿の人間が手をとり踊っていた。
たった一枚の扉越しにも聞こえてこなかったその舞踏会は、
とても華やかとも楽しげとも言えない物だった。
音楽に合わせて聞こえるのはすすり泣く声と
それを囃し立てるしゃがれた不気味な声。

88 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:39:35 ID:970cVnjU0

そろそろと足を踏みはずさないよう、気をつけて進みながら広間を見下ろす。
豪奢な装飾はどれも光を失い、悲しげにくるくると回る人々の影を微かに映している。
薄くどんよりとした空気が部屋中に漂っているようで、俺は息苦しさを感じた。

渡り廊下を抜け扉を開くと、奥の階段の向こう、
小さな扉を抜けていく王の後姿が見えた。
言葉の通り、扉を開閉することもなく
薄く透き通った体は薄い板を通り抜けて扉の向こうに消えていく。

追いかけて扉を開け放つと、城の外壁を回る細い通路だった。
俄かに強い風が吹きつけ、合わせるように雷鳴が唸り声を上げる。
角を曲がり覗き込んだ先、崩れ落ちた通路の手前に王は立ち止まりこちらを見ている。

『おお、ここまで来る勇気のあるものが居ったとは』
王様らしく蓄えた髭の奥で、目を細めながら王はか細い声で言う。
時折鳴り響く雷に掻き消えてしまうのではないかと、
俺は一歩距離を詰めて耳を澄ました。

『もう気付いて居ろうが、何年か前からこの城にゴースト達が住み着いてしまった。
私も妻も、城の皆も、穏やかに眠る事さえ叶わぬ・・・。
どうか願いじゃ。ゴースト達のボスを追い出してはくれぬか?』

>いいえ

を選びたい衝動に駆られたが、思案する一瞬の沈黙の隙にビアンカが
『もちろんよ!ねえ、サン!』と叫んだ。

勝手なことしてくれてんじゃねえよ。
思ったが相手はガキだと自分に言い聞かせ、なんとか拳を収めて俺は「はい」と頷いた。

89 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:41:10 ID:970cVnjU0

『そうか、やってくれるか。そなた達はまことに勇気のある者達じゃ。』
王は満足げに双眸を崩し、深く頷く。
『ゴーストのボスは4階の玉座の間に居る。暗闇に閉ざされた階があったじゃろう?
扉の向こうの奥の階段を上がればすぐに辿り着けるじゃろう』
『サン、行きましょう!』
真後ろから急に裾を引かれて、俺はたたらを踏みながら
駆け出すビアンカを追って走り出した。

『ちょっと待ちなさい。まったく若者はせっかちでいかん』
奥の階段に差しかかろうとした刹那、先回りしていたのか王が俺達の前に立ちはだかった。
『そのまま行っても真っ暗で何も見えんだろう。
大広間を抜けて地下に降りれば台所に松明があったはずじゃ。それを使いなさい』
王は言うとゆっくりと俺達の背後の、下り階段を指さした。

『さあ、あっちじゃ。錆び付いていたドアも開くようにしておいたから、頼んだぞ』
王が言うと、ふうっ、と暖かな風が流れて、掻き消えるように王の姿が闇に溶けて消えた。
『王様も一応手伝ってくれるのね。行きましょ』
くるりと振り返って言うと、ビアンカは今度は俺の手を取って歩き出した。

広間を抜けて地下に降りる。
閉ざされた扉に手をかけると、一瞬暖かな空気が流れ
かちり、と微かな音を立てて扉が開いた。王の気配を感じたが、姿は見えない。

広間の奥、ロビーの隅の小さな階段を降りて、
俺達は何事も無く地下のフロアに足を下ろした。

90 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:43:03 ID:970cVnjU0

気配を感じてキッチンを覗き込む。
透き通った体のコックが一人、中央の大きなテーブルに置かれた
テーブルからはみ出すほどに大きな皿に料理を盛り付けていた。

『松明はどこにあるのかしら・・・』
ビアンカが囁く。
そろりと一歩ずつキッチンに足を踏み入れるが、
コックはこちらには気付かない様子で忙しなく皿の周りを行き来しながら
色鮮やかに皿を料理で埋め続けていた。
時折『もうやめてください』とか『わかってます、わかってますよ』とか
『助けて・・・』とか、姿の見えぬ何かに向かって呟き続けている。

コックの後ろを抜けて奥の物置き場を探る。
手を分けて木箱や壷の中を探していると
壷の底にぽつんと置かれた小さな松明を見つけた。
木の棒に何か模様が織り込まれた布が巻きつけられ、
銀の取っ手と火種らしい金具が設えられている。
『これで暗い部屋も大丈夫ね、良かったわ』
物珍しそうに松明を手にとってビアンカが言った。

音を立てないようにまたこっそりとコックの背後を階段まで戻り、
広間へ続く階段を駆け上がる。

『ねえ、早く行きましょうよ』
そう言って袖を引くビアンカに頷いて、俺達はまた来た道を戻った。
大広間では相変わらず悲しげなダンスが繰り広げられている。
囃し立てるゴースト達を振り落とそうかと思ったが
フロアの中腹辺り、俺の体では手の届かない位置に浮遊している。

91 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:44:31 ID:970cVnjU0
諦めて通路に戻ろうとしたとき、俺達が今までいたその場所に、
その瞬間まで居なかった、白い蝋燭がぽつんと佇んでいた。
丁度俺達の目の高さ。
ちらつくように揺れる点いたままの炎があたりをほんのりと照らしている。

驚いて立ちすくむ俺達の目の前でそれはゆっくりと向きを変えた。
そして大きく開いた口でにたりと笑うと、聞き取れない声で何かを発した。

ごう、と空気を裂いて赤い小さな塊が俺の視界を塞いだ。咄嗟に両手を掲げる。
『サン!』
轟音、熱と耳鳴り。
その向こうから微かにビアンカの声が聞こえた。
呪文を食らったんだとやっと気付く。肌の表面がびりびりと痛む。熱い。

『なにすんのよ!こいつ!』
叫びながらビアンカが鞭を振るうのが、下ろしかけた両腕の隙間から見えた。
敵は床に叩きつけられると、またよろよろと立ち上がり
くすぶった頭上の炎を気にするようにふらりと視線を上げた。
裂けた口の隙間からだらりと赤い舌が覗いている。

痛みを堪えて俺は、鞭を引き寄せるビアンカの脇をすり抜け
まだふらつく敵の顔面に武器を振り下ろした。
不意を突かれた敵はギャア、と叫び声を上げて床に転がり、
ごろりと半回転して動かなくなった。

『サン、大丈夫!?』
思わず尻をついた俺に駆け寄って、ビアンカが心配そうにしゃがみ込む。
両腕はまだひりひりしたが、熱と衝撃で受けた鋭い痛みはゆっくりと引いていた。
「大丈夫」と答えるとまだ不安そうにビアンカが俺の腕を覗き込む。
薄暗く良く見えないが、おそらく真っ赤に腫れているだろう事は判った。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 00:45:00 ID:jjw3OcLx0
支援いたしましょう

93 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:45:59 ID:970cVnjU0

『どうしよう、冷やさなきゃ。
それかどこかで少し休みましょ?お城だって寝室くらいはあるでしょ』
ビアンカの言葉でふと思い出す。
確かここには宿屋があった。
場外に投げ出されるのは少し面倒だったが、宿に泊まれば傷は回復するだろうし
魔力の回復もしておきたかった。

幸い足にダメージは無かった。
立ち上がると俺は「あっちに部屋が」とだけ言って今来たロビーへと歩き出した。

出来ればもう敵には会いたくない。
祈るような気持ちで俺はゆっくりとロビーのドアを開ける。
祈りは届かなかった。
ロビーの中央、丁度俺達の目の高さに、赤茶色い
絵に書いたような“お化け”の形をしたモンスターが、ゆらゆらと浮遊していた。
それは俺達の姿を確認すると、にたりと舌を出して両腕を振り上げた。

『なんなのよ!もう!』
怒ったようにビアンカが鞭を振るう。
追い討ちをかけて俺が武器を振ると、あっさりとモンスターは沈黙した。
半透明に横たわる死骸を跨いで俺達はロビーに足を踏み込む。
案の定、階段の脇にさっきは気がつかなかった扉があった。
開いて中に入ると、カウンターが据え付けてあり
その向こうには炎のような人魂のようなものが揺れている。

カウンター越しに覗き込むと?人魂は『なんだい客かい?』と面倒くさそうに言い、
『奥のベッドが空いてるから、勝手に休みな』と吐き捨てるように言った。

94 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:47:14 ID:970cVnjU0

言葉に従って奥を覗き込むと、意外にも
真新しげな白いシーツの掛けられたベッドが二台、並んで置いてある。
『なんだか気持ち悪いけど、いいわ。サン、少しでも休まなきゃ』
聞き終わらないうちに俺は手前のベッドに倒れ込んだ。
ビアンカの心配そうな気配が通気を伝って俺にも感じられたが、答える余裕もなかった。。

呪文のダメージは、思ったよりも深かった。
本当は体力は、まだそれなりに動けるだけを体に残してはいた。
けれど呪文を放たれた時の空気の粘つくような嫌な感じと
目の前に迫ってくる真っ赤な炎の塊の残像が、俺の精神的な
なにか軸のようなものまで焦がしていったような気がした。

恐怖。

それが俺の心に芽生えたのは決してこれが初めてではなかったが。
得も知れない理解の届かない「呪文」というものの恐ろしさを
初めて身に染みて理解したような気がした。

こんなものが当たり前の世界。こんなものが。
息を止めて目を閉じて、俺は只暗闇に逃げ込もうとしていた。
目を閉じて耳を塞いで、自分の中に潜ることが、この世界で唯一の逃げ道になっていた。

ビアンカは心配そうに暫くベッドの周りを歩き回っていたが、
やがて諦めたようにもう一つのベッドに潜り込む音だけが聞こえた。

95 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:48:15 ID:970cVnjU0
>>92
支援感謝です

本日ここまでで
ありがとうございます

ではおやすみなさーい

96 :ドラクエ3 旅立ち編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/06(金) 01:38:12 ID:E0zEUzt5O
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41

ナジミの塔をさらに、さらにのぼっていった。人がすむ部屋があるフロアまできた。その部屋にはおじいさんが1人いた。
じいさん「ほう、おまえらは誰じゃ」
自己紹介をすませると、また塔からしたの景色をみはじめた。
どうやら下界をみるのが日課であるようだ。
じいさん「ここまで来たんじゃ、そこの宝箱にある物でももっていっていいぞ」
男戦士「じいさんはなにやってんだ。こんなところに1人でいて気がへんにならないのか」
じいさん「暗雲がひろがっておるな、なにかよくないことが起きる前触れじゃろう…。ときにそこの青年よ」
誰のことだ。…ぼくらしい。
ぼく「はい」
じいさん「そなたの目は澄んでおる。強き者がもちうる目じゃ…。にたような目をみたことがあるぞ…何年前じゃろうか…」
会話がへんなほうこうにいってしまう。
男戦士「お!宝箱のなかは何かのカギだぜ!」
女武闘家「おじいさんはここでなにしてるの?」
じいさん「忘れてしまった、どうしてじゃろうか。わしはいつまでいてもらってもよいが、急がれる旅じゃろう。ここでそなたたちの無事を祈っておるよ」
女僧侶「わかりました…。おじい様のこと、わたしたちもお祈りいたしましょう」
じいさん「ありがとう」

そしてナジミの塔をあとにした。レーベの村までいくのにまた時間がかかると思っていたが、そうでもなかった。

男勇者 ゆきひろ レベル7
女武闘家 エリー レベル6
男戦士 サイモン レベル8
女僧侶 ナナ レベル6

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 01:44:23 ID:vzEVw/R9O
乙です
おやすみなさい

98 :ドラクエ3 旅立ち編5 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/06(金) 01:48:23 ID:E0zEUzt5O
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41>>96

この世界に来てから10日以上がすぎた。順調というよりは、悪戦苦闘のことばがピッタリくる。
レーベの村で魔法の玉というアイテムを手に入れ、今はいざないの洞窟にきていた。
この前もらった盗賊のカギがなければここまでこれなかったろう。どうやらこの先からあたらしい地に行けるようだ。
男戦士「いやいや、なんだか感慨深いね。さらばアリアハンというわけだ」
女武闘家「どんな土地につくのかしら?わくわくするわ」
女僧侶「ちょっとだけこわい気もしますけど…あたらしい出会いもありますね」
ぼく「なるようになる、さあ行こうみんな!」
男戦士「おっしゃ!」
女武闘家「ええ!」
女僧侶「はい」
さあ、あたらしい地へ!
母さん、いってくる!

…学校だいじょうぶかな。

99 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/06(金) 02:40:50 ID:bwHJNX8t0
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>98 ◆Tz30R5o5VIさん
こんな時間までおつかれさまです!

100 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 10:52:20 ID:EvsbC1OS0
いつもいつもまとめご苦労さまです
本当にありがたいことで

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