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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

400 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:21:03 ID:VvIV98zV0

『自分のほうが幽霊みたいよね』
とビアンカが俺の耳元で囁いて、俺は思わず笑いそうになった。
ここを後数歩離れた時の、ビアンカの反応が楽しみだ。

期待通りのビアンカの反応をひとしきり(勿論心の中で)笑った後、
俺達はもう一度城に足を踏み入れた。今度は簡単だった。
王の力か、あれだけ固く閉ざされていた正面扉は、驚くほどあっさりとその両の手を解いた。
広間を抜けて真っ直ぐに、俺達は玉座の間を目指した。

出くわすモンスターは敵ではなかった。
呪文を唱える隙も与えず叩き落す。
例え呪文を食らったとしても、覚悟をしていればそれはもう恐ろしいものではなかった。
取り乱すこともなかった。
あの僅かな眠りの中で。何が自分を変えたのか、自分にも測りかねていた。

暗闇に松明の明かりを放って、とうとう俺とビアンカは玉座の間に立っていた。
真っ赤な絨毯と黄金色に装飾された玉座の中央に、
ゴーストの親玉はゆったりと深く腰掛け、こちらを見て微笑んだ。
『ほう・・・、ここまで来るとは。大した餓鬼共だ』
ちらちらと揺れる松明の炎が、浅黒いボスの表情をより不気味に演出している気がした。
つり上がった細い両の目を更に細め、舐めるようにこちらの表情を伺っているのが判る。
時折、暗い色のローブからはみ出した湿った枯れ枝のような細い指で、
持て余すように金の肘掛をかちりと鳴らす。

401 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:22:13 ID:VvIV98zV0

耳元まで避けた口をまた開き、愉快そうにボスはヒヒヒ、と笑い声を上げた。
『ここまで来た褒美に、美味い料理を振舞ってやろうじゃないか。
さあ、こっちに来なさい』
ビアンカは黙りこくり、視線をボスに釘付けたまま首を横に振る。
親玉は目を見開き、威圧を込めた声色で『まさか俺様が怖いのかな?』と言った。
『あんたなんかに従わないわ』
ビアンカがはっきりした声で言う。
ボスはまたヒィヒヒ、と嫌な笑い声を立てると、馬鹿な餓鬼だ、と呟いた。

刹那、世界がぐらりと傾いた。
覚悟はしていた筈なのに、咄嗟の出来事に一瞬、事態の理解が遅れる。
床が抜けたのだと、ボスの足元を通過しながらやっと気付く。
『貴様らに食わせる料理なぞないわ。貴様らは材料―――』

語尾が遠のき、今まで立っていた高さが頭上に消えていく。そして音楽。
物の数秒で大広間を通過し、俺は仄暗い小部屋に尻から着地した。
直後に何かが潰れるような衝撃音と、ビアンカの
キャアとヒャアの間のような悲鳴が耳に届く。

左手に何か柔らかいものがべっとりと張り付いて、俺は手元を見下ろした。
半分腐った果物や、野菜や肉が足元に敷き詰められていて、
それが落下の衝撃を多少和らげてくれたのだろう、
俺の体の下で可哀相なほど無残に潰れ、飛び散っている。
その下には良く割れなかったものだ、白い陶器のような床が見え隠れする。

402 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:23:10 ID:VvIV98zV0

『そ、そんな・・・』
すぐ横で男の声がして俺は振り向いた。
『子供を料理するなんて・・・!私にはできない・・・』
泣き顔のコックが俺の方を見て首を振っていた。
直後、ばちん、と何かが弾ける音がして、コックがひいい、と悲鳴を上げる。

『サン、今のうちに行きましょうよ!』
物語の流れを待っていた俺にビアンカが囁いた。
思わずえ?と間抜けな言葉を返す。
『お化けの親分を倒さなきゃ!なにぐずぐずしてるの?』
ビアンカはもう片足を皿の縁にかけ、今にも飛び降りんという姿勢で俺の腕を引く。
というか、物語を外れるという発想を今まで考えなかったことに、今更ながらに気付いた。
それよりも物語の中のキャラクターであるビアンカが、そんな提案をしていいんだろうか。

呆気に取られている俺に
ビアンカはじれったそうに『なにしてるの?』と声を荒げた。
ああ、うん、と曖昧な返事を返し、どうしようかと思案した刹那
がくん、と足元が揺れた。バランスを崩しかけたビアンカが
悲鳴を上げながら俺の腕にしがみつく。

ぎしぎしと金属が擦れあう音を立てながら、足元の皿が、
正確には皿を載せたゴンドラのようなものが、
ゆっくりとテーブルを離れて持ち上がっていく。
『もう、間に合わなかったじゃない。どうするのよ』
苛立ちを隠さずにビアンカが言った。
ある意味物語の通りなんだけど。俺はちょっと失敗したなあと思っていた。

403 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:32:59 ID:VvIV98zV0

物語を外れたらどうなるのか。そんなこと考えても見なかった。
外れるといっても、お化け退治には違いないからほんの僅かな相違だけれど、それでも。
もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。
ゆっくりと下に流れていくキッチンの壁を見ながら、
俺は言い知れぬ期待が胸に湧き上がるのを感じていた。

頭の中はこの先のストーリーで一杯だった。
浮ついた気持ちのまま三匹の蝋燭を叩き伏せる。
呪文で食らったダメージを薬草で癒し、俺達は再び玉座のフロアへ向かった。
暗闇で松明に火を点しながら、ボス戦に向けて息を整える。

思えば、初めてのボス戦だ。
初めての戦闘・・・三匹のスライムの時に比べれば
多少は経験も積んだし、不安も少ない。
先への期待で揺らぐ集中力を必死で諌めながら、俺は最後のフロアに足を踏み入れた。

先ほどボスが鎮座していた玉座に、今はもう誰もいなかった。
きい、と蝶番が軋む音を立てて、玉座と反対側にある小さな扉が閉まった。
『サン・・・あっち』
ビアンカが声を震わせる。
俺の手を握った指先が震えているのが伝わってくる。
耳の奥で心臓が拍を早め、鼓動が神経を伝い脳まで脈打つようだ。

小さな扉を開けると、冷たい風と雷光が俺を出迎えた。
ごごう、と大きな音を立てて天が震える。

404 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:35:41 ID:VvIV98zV0

ボスは小狭いテラスにもたれ掛かるようにして振り向くと、
『おやあ、奴らはお前達を食い損なったようだな』
待ち構えていたように俺達を見て言った。
風が唸り、松明の明かりが不意に掻き消える。

『ふん、仕方ない・・・俺様が直々に料理してくれるか』
にやあ、と開いた口元から真っ赤な舌が覗いている。
俺はビアンカにちらりと目配せすると、自分の武器を腰紐から引き抜いた。

ざらりと音を立てて、ボスの引きずるほどに長いローブが揺らいだ。
覆い被さるように高く掲げられた両の手から閃光が走る。
ヒィヒヒヒ、とボスの高笑いが響いた刹那、目の前を炎が走った。
ビアンカが悲鳴を上げる。
『人間の餓鬼共が!俺様に勝てると思うなァ』
ボスが吼えるのに呼応するように、天上か雷鳴が降り注ぐ。

ビアンカは怯まなかった。
きっ、と意志の強い瞳でボスを睨み付けると、『なめんじゃないわよっ』と鞭を翻す。
負けじと俺も手にした武器を叩き付けた。鈍い音がしてボスの体がよろめく。
『ヒィヒヒ、やってくれる』
再度呪文の詠唱に入るボスより僅かに早く、ビアンカが叫んだ。
炎の塊が空を切り、ボスの顔面に吸い込まれる。

405 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:37:20 ID:VvIV98zV0

ギャア、と嫌な悲鳴が雷鳴に掻き消える。ボスはまだ倒れない。
ローブの奥まで切り裂くように俺は力を込めて武器を振り下ろすが、
致命傷を与える前にその腕に振り払われた。
間髪いれず追ってくる一撃を避けきれず、俺は固いタイル張りの床に叩きつけられる。
『この餓鬼共がァ!やってくれるじゃねえか!』
ボスがもう一度何か唱えた。
今度はテラス一面を覆うような大きな炎が、俺達を包む。

がくん、と、膝が落ちるのが自分でもわかった。
辺りには埃の焦げたようなすすけた匂いが立ち込めている。
俺より少し前方に、一瞬尻を着いたビアンカが身を起こしまた駆け出すのが見えた。
反射的に俺は呪文を唱える。
ビアンカが振り返り『ありがと』と言った。
攻撃呪文のように目に見える効果がわからないから心配だったが、
回復呪文はちゃんとその効果を発揮したようだ。
ビアンカの持つ鞭が天に大きく翻る。

振り下ろされるボスの鋭い爪先をひらりとかわすビアンカの姿を確認しながら、
俺はもう一度呪文を唱えた。
体の痛みがすう、と引き、俺は武器を取り立ち上がる。

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 10:09:15 ID:KNhGhnufO
支援です

407 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 19:27:49 ID:O9p9uTom0
投下乙です!
いよいよ初のボス戦、クライマックス直前!
続きめっさwktkです。

408 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/06/04(月) 21:21:17 ID:MauHMLqg0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
このカキコミからおよそ3分で更新完了します。
書き手さんの指示してくれた修正点は反映しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

また、まとめサイト内のナビゲーションリンクが今日まで間違っていたのをお詫びします。

409 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:10:06 ID:9aMesSF60
>>399-405
> もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。

今後のことを考えるともの凄いwktkです。なんか今から緊張してきたw
続き期待してます。

410 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:57:03 ID:/plKNQHo0
重婚展開wktk

411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/06(水) 13:25:45 ID:R7WDkLzg0
期待ほしゅ

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/07(木) 22:48:08 ID:vF5NT0yHO
投下待ち保守

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/08(金) 18:37:57 ID:bOOjCgdRO
保守

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 00:28:58 ID:jCDxDa7WO
ほっしゅ

415 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:02:26 ID:PtFsKJ270
前回のあらすじ>>365-368

 こんにちはこんばんは、俺です。
 昨日はミヤ王を仲間にした後、宿屋で泥のように眠りました。
 平日は日がな一日パソコンとにらめっこしてるような事務職、休日は2ちゃんやゲームが大好きなインドア派。
 全身筋肉痛なのは実に当たり前。……元の世界に戻れたらジムに通おうかなあ。

 そんなわけで俺は今、ミヤ王と一緒にマイラの村に向かっている。
 今のところ出てきたモンスターはスライム、ドラキー、ゴーストといった雑魚のみ。
 ミヤ王のおかげで楽勝www楽しちゃってサーセンwwwwwwwwwwwwwww

「お前は戦いは不慣れなのか?」
 そう訊いてきたのはラダトーム平野とマイラの森を結ぶ橋を渡ってからのことだ。

「やっぱわかるもんなのか?」
「ああ。実戦慣れもしてないが、モンスターの死に対してすら慣れてないようだからな」
「…………」
「図星か」

 そう、俺はまだ殺すことに慣れていない。
 今まで戦ってきた敵は『倒して』終わり。
 完全に『斃して』はいない。

 ミヤ王がドラキーを『斃した』時、無様にも吐き出した。
 滑らかな切り口とすら言える断面から覗く内臓は、健康な人間のそれと同じ色。
 限りなく黒に近い紫色の血。いや、ありゃ体液か?
 鋭利に切断された白いものは骨だろう。
 地面に落ちたショックで飛び出た眼球は白い糸を引いていた。
 鳴き声を発しながら二度三度と痙攣して動かなくなる様を直視することができなかった。

 これが『死』なんだ。

416 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:04:32 ID:PtFsKJ270
 新聞を見ればどこかの国でテロや戦争で死者が出たと載っている。
 テレビをつければ他県の殺人事件の特集を組んでいる。
 だが、俺にとっては『どこかの国』であり、『他県』でしかなかった。
 自分とは無縁の世界の出来事なんだと無意識に思っていた。
 新聞を折り畳めばテロや戦争の記事は目に入らない、テレビを消せば殺人事件の続報は入ってこない。
 決して忙しいとは言えない日常の中で忘れられていくだけの出来事。
 俺にとって『死』とは身近なものではあったが、現実とは遠いところにあった。

 以前、ディルレヴァンガーと名乗る気違いが猫を殺した事件があった。
 ネット上に上げられた殺害の過程の画像は俺も見た。
 すぐに画像を閉じ、なんてことをしやがると憤ったこともある。
 だが、画像を開いたのは俺の意思だ。
 騙したわけでも騙されたわけでもない。
 ディルレヴァンガーが逮捕された時、ニュー速+のスレに誰かがリンクを貼った。ただそれだけだ。
 俺は自分の意思でそれを見たのだ。

 子供の頃、蟻の巣に水をぶちまけたことはある。
 大人になってからも蚊を叩き潰したり、殺虫剤を使ったこともある。
 車に轢かれた猫の死骸を見たこともある。
 だが、それでも俺は自分とは関係ない世界の出来事なんだと思っていた。
 俺にとって、 『殺す』とは無縁の世界だった。

「襲ってくる魔物はためらわずに殺すことだ。そうしないと自分が殺されかねない」
「……ああ」
 それは俺もわかっている。
 この世界では俺のいた世界の常識は通用しない。
 覚悟を決めなきゃ生きていけない。
 動物を殺すのは可哀相と言うのは簡単だ。
 何しろ、自分の命がかかっていないから。
 自分の安全が保障されている世界では真っ当な話だ。
 しかしここでは自分の安全は保障されていない。己の身を守るのは己しかいない。
 ここでは人の命も魔物の命も全てが平等なのだから。

417 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:06:46 ID:PtFsKJ270
「今ここで実戦経験を積むのもいいが、ゆうていと合流してからの方が安全だ」
「なして?」
「ゆうていはホイミが使えるからな」
「みやおうは使えないのか?」
「自慢にならんが魔法の才能はゼロだ。魔力そのものがないらしい」
「魔力の有無なんてわかるもんなのか。俺はどうよ?」
「ある程度魔力を持っていればわかるらしいんだが、俺は全くないからお前が魔法を使えるかどうかはわからんがな」
「ダメじゃん」
「そう言うな。キムこうならわかる」
「キムこうは呪文使えるのか?」
「ああ。ゆうていはそこそこの魔法しか使えないが、キムこうはかなりの使い手だ」

 みやおう=戦士、ゆうてい=魔法戦士、キムこう=賢者。
 この認識でいいのだろうか。
 だとしたらバランスの取れたパーティーだ。
 不安要素は……俺、だよな。
 うん、頑張ろう。

「実戦に勝る修行なしってことだな」
「お前の世界ではそんな言葉があるのか?」
「by躯」
「?」
「……スルーしてくれ」
 ま、要は『飛影はそんなこと言わない』ってことだ。
 わかる奴だけニヤリとして欲しい。

「マイラに向かいながら実戦慣れでもしていくか?」
「何もしないよりはマシかもな。危なくなったらフォロー頼む」
「任せておけ。――タイミングよく大さそりが現れたぞ」

 ゲームと違って結構グロい上にデカくね?
 つうか、怖えーよ!

418 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:09:36 ID:PtFsKJ270
「だああ!」
 地面を素早く移動する大さそりを叩き潰す。
 棍棒を通じて殴った衝撃が俺の手に伝わる。大さそりというモンスターの生を奪う感触。
 しかし怯んではいられない。

「浅い!」
 ミヤ王の言葉通り、一撃を食らった大さそりは持ち前の堅さで持ちこたえていた。
 俺の攻撃を屁とも思わぬ動きで砂塵を巻き上げ、視界から消えた。

「しまっ……」
 背後を取られた俺めがけ、尾が伸びた瞬間――
 ミヤ王の一閃。
 大さそりはきれいに半分になっていた。

「サンキュ、助かった」
「気をつけろ。大さそりの外殻はスライムやドラキーの比じゃないからな」
「棍棒じゃ無理か?」
「鍛えればそのうち素手でも貫ける」
「いやいやもっと無理だから」
 そこで見ていろ、との言葉とともに俺に剣を預け、また新たに現れた大さそりと戦闘に入る。
 先の大さそりが斃されたことに腹を立てているのか、大さそりから攻撃を仕掛けてきた。
 ハサミの攻撃を難なくかわし、大股で大さそりに近づくミヤ王。

「ふっ――」
 軽い呼気をもらしただけで、ミヤ王の五指は大さそりを貫いていた。
 あんぐり、の表現はこういう時のためにある。
 まさしく俺はあんぐりと口を開けてミヤ王を呆然と見ていた。

「意外に簡単だろ? さ、やってみろ」
「できるかボケ!」
 みやおう=バトルマスター。
 こうですか!わかりません><

419 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:11:35 ID:PtFsKJ270
 マイラの森に棲む魔物が、素手で大さそりを貫いたミヤ王に恐れをなしたのかどうかはわからない。
 だが、あれから魔物とは一匹も出会わずにマイラの村に到着した。
 途中、野宿したり大さそり相手に苦戦したりゴーストの帽子を取ってハゲなのを確認して大笑いしたり
 スライムを蹴り飛ばしたりミヤ王が百円ライターに感激したりしたが、大して重要なことではないので割愛させていただく。

 普通に歩いてガライから丸一日以上かかった。
 地図で見ると近いが実際は遠いもんだ。ラダトーム→ガライ間をおよそ40分で爆走したのが信じられん。

「ここがマイラか……」
 ラダトームやガライでも思ったが、ゲーム上で見るのと実際に見るのとでは全然違う。
 ゲームではただの緑が多い村でしかないマイラの村は、実に自然豊かな村だ。
 風がそよぐと草花の揺れる音、仄かに香る木々の香り。
 日本では失われているもの――自然との共生がここにはある。……っと、マイラの村に圧倒されている場合じゃないな。

「ゆうていは中央の広場近くだ」
「広場近く……」
「もしかしてあそこにいる戦士じゃね?」
「ゆうてい!」
 俺が指差すよりも早くミヤ王が走り出した。

「……みやおう?」
 戦士は、みやおうの声に驚いた表情を浮かべている。
 どちらかといえば軽装のミヤ王に対し、防具で身を包んだ戦士。
 もし仮にミヤ王がいなくても、彼がゆう帝だということはすぐにわかった。
 やや薄めの頭がその決め手――と言ったら現実世界の堀井雄二は怒るだろうか。
 間違いない、彼がファミコン神拳の一人、ゆう帝だ。

ゆう帝のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたたっ
素早さ:あたたたっ
髪の毛:あっ……ごめん。――ハゲは病気じゃないよ!悩み無用!!

420 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:19:01 ID:PtFsKJ270
ここで投下終了です。

>>408
お疲れ様です。
まとまっている自分の分を見てニヤニヤさせてもらっています。

421 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 13:30:12 ID:4kXMdp+5O
乙!ステータスに噴いたw

422 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:15:24 ID:AI+IYRnv0
 前回のあらすじ>>415-419

 こんばんは、俺です。
 ついさっきの話ですが、ゆう帝が仲間になりました。
 包み隠さずに全てを打ち明けた俺に対し、ゆう帝は快く協力してくれると言ってくれました。
 さすがはドラゴンクエストの生みの親。心が広い。
               . -―- .
             /       ヽ
          //         ',      俺の言葉を
            | { _____  |        平然と信じてくれるッ!
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′     そこにシビれる!
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ     _ _      あこがれるゥ!
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ


 そんなこんなで今は二人と別行動。
 積もる話もあるだろうし、俺に対する話もしてるはず。
 んで、今の俺は何をしているかと言いますと。
 THE・入浴。
 マイラの村といえば温泉ですよ温泉。
 もっと言うなら混浴ですよ混浴!!ヒャッホーイ!!1!11!

423 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:18:44 ID:AI+IYRnv0
 わたくし思うに、風呂に水着を着て入るといった行為は許されないことなのですよ。
 肌着ですか?あれもダメ。風呂を温泉を混浴を、いや、それ以上に色々と期待する男達を裏切る行為じゃありませんか!
 もしあなたが女で、水着を着て混浴に入ったとしましょう。
 オンドゥルルラギッタンディスカー!!と叫ばれること間違いありません。誰も叫ばなくてもこの俺が叫ぶ!
 とまれ、混浴に対する冒涜行為を減らすため、こうしてマイラ温泉(たった今命名)に浸かっているわけです。
 べ、別に女の裸が見たいからじゃないんだからねっ!

 茹でダコのように真っ赤になった俺が温泉から上がったのは2時間後のことである。
 いや、わかっちゃいたんだけどね。
 わかっちゃいるけどやめられなねぇって植木等さんだって言ってるじゃないか。
 はあ……現実は厳しいよ。

『キャー! のび太さんのエッチ!』
 みたいなイベントがあったっていいじゃない。そのくらい夢見たっていいじゃない。
 あのメガネにはあって俺にはない。
 あれか、俺の机の引き出しがタイムマシンの入り口じゃないからなのか?
 現実は厳しいねえ、厳しいよ。


 ……取り乱しすぎた。
 ここ数日、風呂にさえ入ってなかったことを考えると、久々の入浴ができたと思えばそれでいい。
 うん、それでいいのさ。
 うん……。

 ションボリと宿屋に戻った俺を迎えたのは、実戦慣れのためにしばらくマイラに逗留しようと言ってきたミヤ王とゆう帝だった。
 てことは、もしかしてまだ温泉に入れるってことでFA?
 キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

「やってやるぜ!」
 矢尾一樹ばりの声でガッツポーズまで決めた俺。
 ドン引きされてるのは仕方がない。
 明日からの混浴――もとい、修行を考えると身が引き締まる思いだ。うん、ホントに。

424 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:21:46 ID:AI+IYRnv0
 翌日。ミヤ王、ゆう帝の宣言通りにマイラ周辺で魔物相手に実戦を始めていた。
 この周辺の魔物はスライム、スライムベス、ドラキー、ゴーストに加えて大さそり、魔法使い、メイジドラキー、骸骨である。

「注意するのは魔法使いのギラと骸骨だな」
「ギラ自体は大したダメージにはならないし、ギラを浴びてもすぐにホイミをかけるから安心してください」
 できるか。俺は超人じゃねえんだ。
 そもそも、俺とお前らとのレベル差を考慮しろ。
 ある程度は戦えるといってもスライムやドラキーを相手にした場合だぞ。

「だから、ここいらの敵に苦戦しない程度まで強くなるんでしょう」
「ギラ程度のダメージを恐れるようではこれから先厳しいことになるぞ」
 それを言われると困る。
 俺が戦う相手の竜王はベギラマや火炎の息を平然と吐いてくるような化物だしな。
 ダースドラゴンやスターキメラ、死神の騎士の攻撃なんかは今までよりもずっと痛いんだろう。

「こうなったら腹括るか。本当にすぐに回復頼むぞ?」
「任せてください。ギラ程度のダメージは簡単に治してみせますよ」
 すぐに回復しろよ、すぐに回復するんだぞ、と何度も確認しておきたいがやめておいた。
 俺はダチョウ倶楽部じゃないんだ、ネタ振りと勘違いして回復されなかったら大変だ。
 ――などとバカなことを考えていると魔法使いが現れていた。
 くそ、本当に出てくるんじゃねえ。

「うらあ!」
 魔法使いがギラ放つ前に先制攻撃。
 一撃入魂の棍棒を振りかぶって、そのまま魔法使いの頭上へ――!

 棍棒が根元から折れたと理解したのは、魔法使いが死の間際に放ったギラを無防備な体で浴びてからのことだ。

 棍棒蛾物故割れたwwwwwwwwwwww
 なんて草生やしてる場合じゃねえな。

425 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:23:56 ID:AI+IYRnv0
「……マジ?」
 半ば呆然と口にしたのはミヤ王が魔法使いをぶった切ってからのことだ。
 手元には剣で言う柄の部分しかなく、釘が生えている棍棒は足元に転がっている。
 こうなってしまっては、棍棒もただの釘の生えた塊でしかない。
 焚き木くらいには使えるだろうが武器としては無理だよなあ。

「棍棒ってこんなに簡単に壊れるもんなの?」
「メタルスライムを叩いても壊れないくらい頑丈にできてるはずですが……」
「じゃあこれはどういうこと?」
「元々壊れてたとか……」
「買って5日目なのに?」
「……武器屋に行くか」

 マイラに置いてある武器は銅の剣か鉄の斧……だったな。
 ゲームなら攻撃力の面で鉄の斧一択なんだが、実際はそうはいかないらしい。
「戦いのスタイルは武器によって変わるといっても過言じゃない」
 とのことだ。
 殴ることを主体とした棍棒と斬ることを主体とした剣では確かに戦闘スタイルが違う。
 だが、鋳型に青銅を流し込んだだけの銅の剣よりは鉄の斧の方が……。

「剣ならあることはありますよ」
 武器屋に向かう最中、ゆう帝が言った。

「マジで?」
「ええ」
「なんだよー、最初から渡してくれよー」
「ですがね……扱いにくいんですよ」
「ああ、アレか」
 躊躇うゆう帝に、何か知っているかのようなミヤ王。
 まさか破壊の剣ってオチはねえだろうな。

426 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:27:07 ID:AI+IYRnv0
「この剣だ」
 ゆう帝が宿屋から持ってきた剣は変わった形をしていた。
 変わったと言っても、剣の先がバイブになってるわけでもミサイルが出てくるわけでもない。
 濃いオレンジ色の刀身は、燃え盛る炎の形を象っていた。

「炎の剣……か?」
「知ってるのか?」
「いや……」
 公式ガイドブックで見ただけだがそんなこと言えるはずもなく曖昧に言葉を濁す。

「以前メルキドの旅商人から買ったんだが、どうも扱いにくい剣でな」
「私達向きの剣ではないから売ろうかどうか迷ってたんですよ」
「試してみるか?」
 手渡された炎の剣は見た目よりは軽かった。
 喩えるなら……すまん、思いつかない。そもそも何を喩えようとしたのかもわかんね。

 気を取り直し、炎の剣を構えて振ってみる。
 ――軽い。
 金属を使ってるはずなのに棍棒と同じくらいの重さでしかない。
 もしかしてミヤ王の装備している鋼鉄の剣より軽いんじゃないだろうか。

「随分軽々と……」
「扱ってますね……」
 ミヤ王とゆう帝には悪いが、どこが扱いにくい剣なのかわからない。
 剣なんてのは小学生の頃に傘でアバンストラッシュした程度だが、これは扱いやすいってことくらいわかる。
 もしかしてこれが装備できる奴とできない奴の違いってことか?

「ついでに試し切りもしてみては?」
 二人の間では炎の剣は俺が使うことになったようだ。
 異論はないし、返せといったところで返す気もないがね!
 故人曰く――『お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの』
 ビバ!ジャイアニズム!!

427 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:28:06 ID:AI+IYRnv0
 結論から言おう。炎の剣は使いやすい。
 試しに魔法使いや骸骨と戦ってみたが、面白いほどサクサク斬れた。
 ちなみにギラは多少食らったが想像していたほどのダメージではない。痛いし熱いけど我慢すれば何とかなる。
 俺のレベルが上がったからかもしれない。
 もしかしたら竜王斃せるんじゃね?
 みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwwwwwwwwwwww

「落ち着け。今竜王に挑んでも死ぬだけだ」
「ですね。強いのは炎の剣のおかげですし」

        盛
             り
                 上
                     が
                        っ
                          て
                           参
                             り
                              ま
                               し
                               た

 俺涙目wwwwwwwwwwwwwwwwww
 大人しく魔法使いや骸骨相手に実戦経験でも積むとしよう。

LV:9
HP:30/34
MP:20/20
攻撃力:54 防御力:23 素早さ:11
E:炎の剣 E:ジャージ+皮の服 E:皮の盾

428 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:35:08 ID:AI+IYRnv0
といったところで投下終了です。
次回はマイラで一イベント終わらせてからリムルダールに行く予定です。

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/10(日) 01:58:56 ID:aQlYW0gL0
投下乙!
主人公の俺TUEEEEEEEワロスw

430 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 12:48:05 ID:ihFODq/x0
>傘でアバンストラッシュ
あるあるwww

431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 13:40:44 ID:H6DX5WZNO
俺はモップでブラッディスクライドだっちゃ。

432 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 00:59:22 ID:hEAtUHAi0
◆IFDQ/RcGKI氏の続きも気になる。

433 :Stage.5-1 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:28:43 ID:gSbhhAoC0
うは、投下しにきたらすごいタイミングだww
>>432さん
ご期待いただいて光栄です。お待たせしてすみません。

ところで、
「ゲームサイドの携帯の充電はどうしてるのか?」
というご質問が来ましたので、当事者たちに聞いてみました。


アルス「あ、当事者って俺らか」
タツミ「実は僕も気になってたんだよね、携帯の充電。これどうなってんの?」
アルス「んなもん決まってんだろ、お前どこに飛ばされたと思ってんだよ」
タツミ「じゃあ、この電池残量のマークに重なってついてる『M』ってのは……」
アルス「当然『MP』だろ。使う人間の」
タツミ「なるほどー。って、僕にMPなんてあったの!?」
アルス「知らん。お前のステータス見てねえからわかんねえや」
タツミ「遊び歩いてないでちゃんとモニタリングしてくれよ。
   こっちからは客観的な数値がわかんないんだから」
アルス「うるせえ命令すんな。だいたい俺、お前にクリアさせる気ねえし」
タツミ「それ以前に僕が死んだら君もくたばるってこと忘れてない?」
アルス「ほぉ、死ねるモンなら死んでみろ」
タツミ「実際そうなりかけたら大慌てのくせにねぇ」
アルス「なんだと」
タツミ「なにさ」


……なんか脱線してきたので本編に参ります。

434 :Stage.5-1 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:30:01 ID:gSbhhAoC0
 前回 >>293-305
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 ----------------- Game-Side -----------------

「もう二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!」
 怒鳴り散らして通話を切り、直後、僕は壁に背をつけてずり落ちるように座り込んだ。
 バカなことをしたのはわかってる。電波状況が最悪のこのダンジョンで奇跡的につな
がった瞬間だったってのに、なんで切っちゃってるんだよ僕。
 まあ今のこの状況で、電話越しのナビがどの程度役に立つかは疑問だけど――。
 すぐに「圏外」表示に戻ってしまった携帯をぼんやり眺めた。ここは、そこら中に散ら
ばる白骨死体がぼんやりした燐光を発している以外、いっさい光の差さない闇の回廊。小
さなモニターから漏れるわずかな明かりさえ、まるで太陽みたいにまぶしく目に映る。
「……ゆ、勇者様……?」
 エリスが身を起こして、不安そうに僕を見上げた。携帯を閉じる。
「ああ、ごめんね。なんでもないよ」
 腕を伸ばし、その頬に手を当てながら「大丈夫だよ。大丈夫だから」と何度も繰り返し
て言ってあげると、彼女は微笑んで、また目を閉じた。

 冷たい石畳に僕のマントをひいて、エリスはぐったりと横たわっている。
 さっき火炎ムカデにやられた彼女の右足は焼けただれ、真っ赤に腫れ上がっている。手
持ちの薬草で簡単な応急処置はしたが、早くロダムに回復してもらわないとまずい。
 ロダム、サミエルの2人とはぐれて、どれくらい経つのか。現実の時刻を示すだけの携
帯じゃよくわからない。このダンジョンに入った時間を考えれば、もうじき外は日暮れ頃
だろう。昼間でも肌寒かった気温はますます下がってる。これからもっと冷え込むんだろ
うか。

 まったく。16歳の健全男子が可愛い女の子と暗闇で二人っきりだっていうのに、まるで
色っぽい思考に走れないって、なんなんだろうね。
 生き残ることしか頭にないって――そんな状況って、なんなんだよ。

   ◇

435 :Stage.5-1 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:33:27 ID:gSbhhAoC0

 ロマリアから使者が馬を飛ばして追ってきたのは、僕たちがアッサラームまでまだ3分
の1も来ていない森の中で、早々に野営準備を始めた頃だった。

 二つに斬られて のたうつ魔物〜♪ 飛び散る内臓や 跳ねる血しぶき〜♪
 呪文でバラバラ 見る影もなく〜♪ 勇者がまたもや うしろで吐いた〜♪

 近道しようと公道をそれたせいか、あの後、何度もモンスターと戦うことになった。
 慣れる間もなく次々に惨殺シーンを見せつけられ、かといって戦闘を任せきりにしてい
る仲間に申し訳なくて目をそらすこともできず、吐く物もなくなって完全にグヘ〜となっ
てしまった僕を心配し、まだ早いけど今日はここでキャンプをしましょう――という運び
になったのである。なんとも情けない。
「どうかお気になさらずに。まだ1日目なんですから、当たり前です」
「ありがとう。本当にごめん、必ず近いうちになんとかするから」
 正直なところ僕「血」はダメなんだよ。ホラー映画もサイコ系は平気だけど、スプラッ
タは気分が悪くなって観られない。いざとなればなんとかなるかなーと思ってたんだけど、
なんともならなかった。人間、簡単には変われないもんだね。

 そこへ息を荒くした人馬が走り込んできたのだ。
「ゆ、勇者様でいらっしゃいますね!?」
「そうだけど……」
「良かった、間に合った!」
 国に使わされたのではなく、ある人からの個人的な使者だというその青年は、封蝋もさ
れていない書状を僕に押しつけるように手渡してきた。
 この場で読んでくれ、と急かされて、目を通した僕は思わず舌打ちした。
「どうなさったんです?」
 声を低めるロダムに、黙って書状を回す。
「なになに……魔法の鍵を壊した? 勇者様が!? どういうことですか!?」
「罪をなすりつけられたんだよ。ま、きっかけを招いたのは僕だけど」

436 :Stage.5-1 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:36:31 ID:gSbhhAoC0

 ポルトガとの重要な陸路であるはずの関所が、何年も閉鎖されているのは不思議だった
が、なんのことはない。
 ロマリアの現国王が、イシス女王から親善の証として贈られた「魔法の鍵の複製」をダ
メにしちゃって開けられなくなっていたのだ。当然、んなアホな失態を表沙汰にはできな
いから、適当な理由をつけて閉鎖していたらしい。
 ところが僕が開門命令を出したので、ポルトガとの交易を望む商人を始め、国民は大喜
びした。王様が戻ってすぐに撤回されたが、そりゃ不満の声も出てくるだろう。
 今まで閉鎖理由を心底では納得していなかった国民は事実を疑い始め、困った王様は、
「勇者が国王代理を務めている間に勝手に持ち出して壊しおったのだぁ!」
 と思いっきりデタラメこいてくれたのだった。小学生かおまいは。

「んで僕たち、お尋ね者になっちゃったワケだ」
「もちろん勇者様に咎はございません。真実をご存じの前国王様も、まずは勇者様に事の
次第をお伝えし、ご助力差し上げよと私を派遣なさったのです」
 助けたい、ねぇ。
「でもこの手紙の内容だと、結局僕たちが責任を取るんじゃないの?」
 “追っ手は差し止めておくから、その間にピラミッドから『本物の』鍵を取ってくれば万
事解決だよ” ってアンタ、アドバイスにかこつけた命令じゃないか。
 僕がジトーッと横目で睨むと、使者の青年は済まなそうに目を伏せた。
「行くことないッスよ! 真実を話して本人に責任を取らせればいい」
 サミエルがそう息巻くのももっともだ。エリスもロダムも難しい顔をしている。

 だが僕はその時、もう少し別の観点から物事を考えていた。

 ――たぶん僕が懸念していた通り、このイベントはカットできないのだろう。
 だから本来のシナリオに対し、本当に飛ばしても構わないノアニールの話はその片鱗も
出てこないし、魔法の鍵にいたってはやや強引とも思える選択肢がここに用意された。
 「はい」と「いいえ」。僕の中なにか予感めいたものが「断るな」と告げている。
 ここで無理に断れば、物語が破綻して身動きが取れなくなってしまうような……。

437 :Stage.5-1 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:38:48 ID:gSbhhAoC0

「わかりました。お引き受けしましょう」
「勇者様!」
 そろって抗議の声をあげる3人に、僕は苦笑を返した。
「仕方ないよ。どちらにしても鍵は必要なんだから、僕たちが責任を取ってなんとかする
のが一番すっきり治まる。一度そう発表されてしまった話を二転三転させても、ロマリア
国民の不安を煽るだけだしね」
 それから小声で、
「ヘタに言い訳したって話がややこしくなるだけだしさ。鍵さえ手に入れば、今度はこっ
ちから王様に『いろいろ』お願いできるかも?」
 とたんに3人の目がキラーンと光る。

 薄ら笑いを浮かべ合う僕たちには気付かず、使者の青年はブワッと涙を溢れさせた。
「すばらしい、さすが勇者様です! 感動です! あの、これ!」
 ふくろからゴソゴソと引っ張り出してきたのは、キレイな装飾の腕輪だった。
「前国王より預かって参りました、『星降る腕輪』というものです。不思議な力が込めら
れているそうで、きっと勇者様の冒険をお助けしてくれるだろうと」
 ほお、ここで手に入っちゃうんだ。話が話だけにイシス女王に挨拶には行けないから、
さっき引き受けた時点でコレは諦めていたんだが。
「そしてこれがですね……」
 使者の青年はさらになにか取り出して、満面の笑みで差し出した。
 今度はなんだろう。前国王ってばなかなか気前いいじゃん。
「ピラミッドの場所を記憶させた特別なキメラの翼です。追っ手をとどめるにも限界がご
ざいますし、すぐにも向かった方がよろしいかと」
 ちょ、待てコラそっこう行けってかww

 そうこう言ってる間に、遠くにロマリアの旗を掲げた一団が現れた。本当に追っ手を差
し止めていたのか? なんて考えるだけムダだ。王族なんてもう信用ならない。
 僕たちは慌てて、渡されたばかりのキメラの翼でピラミッドに飛んだ。

438 :Stage.5-1 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:44:00 ID:gSbhhAoC0

   ◇

 乾燥したきった空気と照りつける日差しの強さは、想定していたから驚きはしなかった。
 砂漠とはこんなものなんだろう、と認識するに留まる。問題はピラミッドだ。
「結構……きれいなんだね」
 本物は観たことないが、現実側のそれはしょっちゅうテレビで紹介されている。今その
通りの光景が目の前にあり、それがかえって僕に奇妙な感想を抱かせた。
 観光名所として手入れの行き届いているエジプトの王墓ならともかく、こちらはもっと
自然のままに、砂に埋もれたり崩れたりしているもんじゃないのかな。
「きっとイシスの人間が、定期的に清掃を行っているのかもしれませんね」
 王墓なのだからあり得そうだが、そう言うエリスも腑に落ちない顔をしている。国が管
理している遺跡に、他国の冒険者が土足でズカズカ入り込むことを黙認するだろうか?

「あ、そうだ」
 僕はロマリアでくすねてきた紙の巻物を取り出した。この世界は羊皮紙が一般的だが、
普通の「紙」の方がインクのノリも良いし薄くて軽い。でも高くてなかなか手に入りにく
いから、ここぞとばかりクスねてきたのだ。
 巻物には、これから向かうことになるダンジョンのマップが描かれている。ロマリアに
泊まった夜に、僕が事前に描いておいたのだ。
 最初の方にピラミッド内部の簡易図もある。念のため描いておいたけど、まさかこんな
に早く使うことになるとは思わなかった。
 そこをビリッと破ってロダムに渡す。僕は頭に入っているから、実質2枚の内部図を分
けて持つことになる。
「これもルビス様のお告げですか? どれが人食い箱かもわかるのですね」
 ロダムが苦笑する。
 まあ自分でもちょっと異常な気はするけど、そこは気にしない気にしない。

 その他、簡単に打合せを済ませて、いよいよピラミッドへ突入だ!

 
 と、勇んで踏み込んだは良かったが……。

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:45:07 ID:s/zle9kv0
さるさる回避

440 :Stage.5-1 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:46:29 ID:gSbhhAoC0

 中に入った瞬間だった。いきなり僕たちのうしろで「ズゥゥン!!!」と大きな音がした。
「うそ、閉じこめられた!?」
 こんな演出、ゲームにはなかったはず。
 わずかな明かり取りの窓から入る光だけとなり、視界の明度が一気に落ちる。サミエル
が手早くたいまつに火を灯すと、それが合図だったように、暗がりから大量のモンスター
が襲いかかってきた。

 それでも普通に戦闘をこなすだけならば、出発時よりさらにレベルが上がっているエリ
スたちの敵ではない。
 中も存外に広い造りで、人が3人余裕で並んで歩けるくらいの通路が真っ直ぐに続いて
いる。天井も高く、これくらい広さがあれば互いにカバーしながら戦える。余裕のはずだ。
「持つよ、気をつけて」
 僕がサミエルからたいまつを受け取ると、彼はニカッといつものいい笑顔を見せて、前
に出た。

 だが、切り込みを買って出たサミエルが、何歩か進んだそのとき――。「うあ!」と叫
んで剣を取り落とし、彼はその場に倒れ込んでしまった。
 エリスが慌ててベギラマを唱え、倒れた戦士に群がるミイラたちを牽制する。
 駆け寄ってたいまつをかざすと、サミエルの脇腹に数本の矢が刺さっていた。

「トラップ……?」
 全身から血の気が引いた。
「みんな伏せてぇ!!」
 エリスとロダムが弾かれたように身を伏せる。瞬間、風を切る音がいくつも聞こえ、近
くまで寄っていた蛙型のモンスターが真っ二つになって吹っ飛んでいった。今度は矢では
なく、巨大な刃物のようなものが横切っていったのだ。
 入り口からたいした進んでもいないのに、ここまでのわずかな距離に、一撃で命に関わ
るような罠がいくつも仕掛けられているのだ。
 なにこれ。話が違いすぎだろ?

441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:47:24 ID:s/zle9kv0
支援

442 :Stage.5-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:49:35 ID:gSbhhAoC0
本日はいったんここまでとなります。
あんまり間が空きすぎるので、
今回から小分けして投下してみることにしました。
7/12-12/12は数日後に。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:58:12 ID:s/zle9kv0
新作GJ
ピラミッドのトラップ怖いな。
窮地に追い込まれたタツミが、これからどう行動するのか気になるw
続きwktkしながら待ってますねw


444 : ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:59:57 ID:gSbhhAoC0
>>439
支援ありがとうございます。

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 19:02:59 ID:A1yrz2fxO
うはww
新作の投下超ナイスタイミング。
なにはともあれGJです。

446 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:50:17 ID:WcZO1yAJO
苦しい!息ができない!身動きがとれない!右も左も上も下もあったもんじゃない!
光はどっち?
もがけばもがくだけ、絡 ま っ て …

ふっ、と浮き上がるように目が覚めた。
妙に胸が騒ぐ。焦躁。幻想?
額に手を当てると酷く冷たく濡れていた。
気をやれば、全身が汗でびっちょりなことに気付く。
――夢か。
ビビった!いやまじで。死ぬかと。もう死ぬかと。
いや、でもありえないよね、いきなり海で溺れるとかさ。
海なんてもう5年は行ってないんだぜ。ありえないんだぜ。
と、安心しようとする私を、打ち落とす事実。
嫌でも鼻につく磯の香に、波の音。そしてこの見知らぬ部屋の窓から、望むこのオーシャン…ビュー……
「やってらんないんだぜ!」
夢だと思い込もうにもこのハイクオリティ!
いくら私が想像力(妄想力)豊かな花の16歳とはいっても!
色々考えた末に私はもう一度ベッドに潜った。
都合の悪い事からは目を逸らす。無かった事にする。これがゆとりクオリティ。
……。
……………。

お腹、減った。




447 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:52:44 ID:WcZO1yAJO
結局人間欲には勝てないのだ。
睡眠欲は満たされてしまっているから、次は食欲。
ああー良い匂いがする。
匂いに誘われて私は階段を下りた。

「あらあらあら!ようやく起きたみたいだね」

階下には、なんというか、肝っ玉母ちゃんを絵で描いたような女性がいた。
母ちゃんはこうも続けた。
「あんたが海に打ち上げられてるの見た時は驚いたよ!無事でよかった」
……。網に。ふぅん。
……。
「夢じゃなかったんかい。」
呆然として呟くと同時にグーキュルルルル、とお腹がなった。
「お腹が空くなら大丈夫だね」
にっこり笑った女性は忙しく食事の用意を始めた。
魚を3枚に卸して刺身。余った身と骨、内臓を叩いて丸めて揚げた団子とたっぷりの野菜を煮込んであったスープ。それに作り置いてあった小魚の佃煮に茶碗いっぱいに盛られた白ご飯がテーブルに並べられた。
「さあ、ぼーっと立って無いで、食べな!」





448 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 21:55:20 ID:V4ORlyJRO
支援

449 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:08:06 ID:WcZO1yAJO
肝っ玉母ちゃん――マーレさんのご飯は死ぬほど美味しかった。
お腹が空いてるってだけじゃない。きっと食材が新鮮なのも、単にマーレさんの料理の腕が良いのもあるだろう。
とにかく、いままで食べたご飯の中で一番美味しかった。
「ご馳走さまでした!」
マーレさんはにこにこ、お粗末様でした、とお皿を下げる。そして、さて、と話を始めた。
まず、私の名前から始まり、何故海岸に打ち上げられていたのか、そもそもどこから来たのか。
私も出来るだけ正確に、分かるだけの範囲で答えた。
私の名前はユウキで、何故海岸に打ち上げられていたのかは、私も分からない。ここに来る前は日本という所でギリギリながらも女子高生をしていました。
私の答えにマーレは目をぱちくりさせた後に訝しげに細くなった。
「…ニホン?」
「ニッポンともジャパンともジパングとも言うけど」
「…グランエスタードでも、フィッシュベルでもないのね」
「ええと、そうみたい」
何か言い辛そうに、マーレさんが口を開いた。
「世界にはこのグランエスタード島以外に人が住んでる島なんて、ないんだよ」

な、なんだってー!!


450 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:10:24 ID:WcZO1yAJO
私はそのビックリ情報に目を見開いた。
「あ、アメリカ大陸も?」
マーレさんは無言で首を横に振った。
「ユーラシア大陸も!?」
「聞いたこともないねえ」
「オーストラリアは?アフリカは?え?インドネシアも?パプアニューギニアも?ガラパゴスも?」
マーレさんが頷く事はなかった。大陸も、島も、ここ一つ………?
「そ、そんなっ……」
ありえない!そんな、今まで考えたくなくて避けて来たけど、やっぱりここは、まるで、異世界、じゃないか。

行き着くべき結論に至って、私は絶句した。
夢ではない、でも私の現実ではありえない、この事実。
「何かショックな事があって記憶を落としてきちゃったのかねぇ」
マーレさん――なんて呑気な――
私は意識を保つのに精一杯だった。\(^O^)/オワタ!とかおどけて見せるので。
その時、扉が開いた。
マーレさんが優しい笑顔で「おかえり」と言う。
振り向くとそこには緑色の服を着た少年がいた。
\(^O^)/……
↑の状態の私を見て多少引きつっているが、なかなかに感じのよい笑顔だ。
少年は、アルスといって、マーレさんの息子だった。
マーレさんは息子さんに私の紹介をし、簡単に事情の説明をしてくれた。
「で、アルス。この子に見覚えはないかい?」
「ええと、ユウキ…さん?」
「は、はい」
「見覚え…ないなぁ。」
そりゃそうでしょうとも。私は声にならない言葉で返事すると、ため息をついた。
そのため息を落胆の意味と捉えたのか、アルスは慌てて慰めるような口調で
「じゃ、じゃあ…グランエスタードに、行って見る?」
と、言った。



451 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 11:47:49 ID:a80QQpm0O
新作乙!
7の世界だね。応援しているよ

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 18:37:42 ID:Lvgrew1o0
新作乙。
アルスさんと恋の予感・・・。

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 21:16:28 ID:FY/xd5ec0
乙おつー!
7キタワァ^^
ツンデレマリベルに期待wwwww

454 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/16(土) 01:45:31 ID:+oX9XX/u0
うわお
こんな面白いのが投下されてたのにdion軍の超長規制のせいで
何にも書けんかった〜

作家さん達皆さん乙!
続きwktkしてます

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/17(日) 08:41:14 ID:5iMBz8ACO
保守

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 00:30:25 ID:mDLNjS9O0
7の世界大好きだからwktkwww
しかも女の子主人公ww
次回を楽しみにまってます!

457 :Stage.5-2 [hjmn] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:28:18 ID:h6mFqMtJ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。続編投下にきましたっ。けどその前に……」
アルス「まずはサンクスコール!」

アルス「改めて>>439様、そして>>441様、規制回避支援サンキュです!」
タツミ「>>443様、wktk言われてつい張り切っちゃいましたよ。ご期待に添えられたかなぁ」
アルス「>>445様、やっぱGJは嬉しいぜ。今回のタイミングはどうでしたでしょーかw」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


 前回 >>434-440
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 Game-Side 続編

458 :Stage.5-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:29:41 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
 どこからともなく低くくぐもった声が響いてくる。これって確か、上の階の宝物庫にあ
る宝箱を開けたときのセリフだったっけ? 内容が少し違う気もするが、それなりにゲー
ムを継承しているわけだ。
 こんなえげつない罠が仕掛けられている時点で、すでにドラクエとは言えないけどさ!

「く……油断したッス……」
「大丈夫サミエル!?」
 苦しそうにうめくサミエルの脇腹に、みるみる血がにじんでいく。人間の、まして仲間
のケガだ。心臓が跳ね上がった。でもここで、血はダメだなんて言ってられない。
「立てる? 早くロダムに回復を――」
 瞬間、目の前にユラリと黒い影が現れた。そいつの腕が首に巻き付いてきて、一気に締
め上げられる。見た目と裏腹にとんでもない力だ。
「!……!…!!」
 声が出ない。く、首の骨が折れる〜!
「青き女王の御子ら氷の精霊たちよ古き盟約に従い我が戦陣に馳せ汝が力を示せヒャド!」
 エリスがものすごい早口で詠唱を完了させた。青く煌めく氷の刃が、僕をシメあげてい
たモンスターに突き刺さった。
 グギャア、とおぞましい悲鳴をあげて飛びすさる影。
 その場に投げ出された僕は、肺に無理やり新しい空気を送り込むのと、転がってるたい
まつを手に持つのと、反対の手でサミエルを引きずって後ろに下がるのとを同時にやって
のけた。おお、すごいぞ「星降る腕輪」効果。

「……の精霊の名においてかの者たちに癒しの光を――ホイミ、ベホイミ!」
 先に詠唱を開始していたロダムが、這い戻ってきた僕とサミエルにタイミング良く回復
呪文をかけた。喉の痛みがすうっと引いていく。サミエルの脇腹から折れた鏃(ヤジリ)が自
然に押し出されて出血も止まった。
 瞬間的に負傷度合いを測り、呪文を使い分ける年配僧侶に感心しつつ、僕は通路の奥に
向き直った。

 さて、仕切り直しだ。

459 :Stage.5-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:33:34 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
「うるさいなぁ。エリス、なるべく中央に向けてベギラマお願い」
「はい勇者様っ」
 彼女の閃光呪文が、追いすがってきたモンスターを散らすついでに、通路の奥の方まで
明るく照らし出した。

 両サイドの壁にはいかにもエジプトっぽい絵が延々と描かれている。
 そして床。
 僕たちが待機している場所は真っ平らだが、やや先の方から、床に1メートル平方の大
きな石がタイル状に敷き詰められているのがわかった。タイル1枚1枚にエジプトの象形
文字のような(あるいはそのものか)レリーフが刻まれている。
 そのうち数枚が、周りと比べてやや下に引っ込んでいた。1枚はちょうどサミエルが踏
み出したあたりではないだろうか。「蛇」の形をしたマークの文字だ。
 一番手前に目をやる。たいまつの光に浮かび上がるのは「鳥」をかたどった文字のタイ
ル。さっき戻ってきたときに、間違いなく僕はこれを踏んでいるが、なにかが動いた気配
はなかった。暫定的に「鳥」は安全ルートと決定。もう少し検証したいところだが、そん
な余裕はない。

 エジプト神話における「蛇」の象徴は多々あるが、ここは有名な悪い蛇の神様「アポピ
ス」と見立てていいだろうか。「墓守の蛇の女神」といういかにもな神様もいるけど、壁
画はその女神とは無関係の神話のものだし。だとすると……アレかな。

 ――ここまでの思考を数秒でまとめる。
 えい、読みが外れたらそれまでだ。僕は腹を据えた。
「この中で一番身軽なのは、今のところ僕だよね」
「それはどういう意味ですか」
 トラップ地帯をすり抜けて迫ってきたあやしい影を真空呪文で吹き飛ばしつつ、ロダム
が訝しげに問う。
「なにかわかったんスか!?」
 逆にサミエルが期待に満ちた声を上げる。剣を構えて前方を睨みつけているが、接近戦
が得意の彼としては、思い切り戦えないこの状況が歯がゆいだろう。

460 :Stage.5-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:34:53 ID:h6mFqMtJ0

「うん、任せて」
 その彼に僕は持っていたたいまつを返した。星降る腕輪が「途中」で外れないようグッ
と上に押し上げて、それから片膝を立てて前傾姿勢で両手を床につける。
 こういうのは勢いが大事。クラウチング・スタートの体勢から重心を前に移動し――、
「まさか、勇者様?」
「援護ヨロシク!」
 
 タイルの模様と位置は、さっきベギラマで見えたときに、すべて頭に叩き込んだ。
 通路は薄暗いが、敵のモンスターがどこにいるかくらいは視認できる。トラップ障害の
条件は敵方も同じ。まごついているモンスターたちの足下をすり抜け、飛び石を渡るよう
に「鳥」のタイルを踏みながら、目的の場所へ!

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ……】
「だからうるさいっつーの!」
 襲いかかってきたミイラ男のすぐ前にあった「蛇」マークを思いっきり踏んづけて、横
の「鳥」に転がる。ドカカッ!と矢だらけになってひっくり返ったそいつを飛び越えたと
ころで、物理トラップ無効のあやしい影が、サッと前に回り込んできた。
「ヤバ……」
 仲間の援護を信じて、とっさにその場に伏せる。
「「バギ・ベギラマ!!」」
 同時に、灼熱を伴った真空波が実体のない魔物をぶち抜いていった。その狙いの精度と、
仲間に向かって迷い無く呪文を放てる思い切りの良さは、大したものだ。

 チラッと壁に目をやる。延々と続く壁画は、数あるエジプト神話の中でも最も有名なス
トーリーを描いたものだ。僕が目指しているのはそこにいるべき、ある神様。
 ヘリオポリス九柱神の一人であり、厄災の蛇神「アポピス」の天敵とされる、地下世界の
王「セト」。「蛇」を鎮めるなら、そのお方しかいないでしょう!

 ……たぶん。
 ノーヒントじゃこれが限界です。これで読み違えてたら諦めるしかありません。

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:39:35 ID:PQ8q4cx7O
携帯で自力回避

462 :Stage.5-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:39:41 ID:h6mFqMtJ0

 モンスターたちは目標を僕に絞ったらしい。例のセリフを繰り返しつつ、トラップにも
ガンガン引っかかりながら、とにかく追っかけてくる。
「これだけの殉死者を道連れって、ここの王様も最悪だな。――おりゃ!」
 再び「蛇」を踏んで「鳥」に待避。天井から円盤形の刃物が降りてきてミイラが胴体か
ら半分になって転がった。これが自分だったらと思うとゾッとするけど、今は考えない。
「勇者様、大丈夫ですか!」
「今のところはね。えーとオシリスが暗殺されてイシスが逃げて……」
 エジプト神話なんて、小学生のときに軽く流し読みしただけだからなぁ〜。
 しかも暗くてよく見えないから、ところどころ天井の隙間から漏れてくる光で見える場
所から、前後を推測しなきゃならない。
「イシスがホルスを産んで、セトと一騎打ちになって……っていたぁ!」
 セトちゃん発見! 動物のかぶり物しててちょっと愛嬌のある絵だけど!
 壁、壁、なんかスイッチとかないか!?

 あれ……なんにもない?
 うーわー、まさかやっぱり読み違えたんじゃ――。

「勇者様危ないですぅ!」
 立ち止まったせいでミイラ共がわらわら集まってきてしまった。気がついたらすっかり
取り囲まれている状態だ。
【【【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】】】
「ごめんアルス、僕死んだかもww」
 ミイラが一斉にたかってきて、僕は反射的にその場にしゃがみ込んだ。


 ――と、目の前にいかにも「押してください」といわんばかりの丸いボタンが、床から
出っ張っている……。


 あったじゃん。
 ポチっとな。

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:41:16 ID:Tk7hcM0s0
リアルタイムキタコレ支援

464 :Stage.5-2 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:42:45 ID:h6mFqMtJ0

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 今にも僕を袋だたきにしようとしていたミイラたちが、一瞬、動きを止める。
 同時に、
「勇者様になにさらすんじゃワレァ!!!」
 戦士らしからぬ素晴らしいスピードで走ってきたサミエルが、一振りで3体まとめて薙
ぎ飛ばした。エリス・ロダムの呪文組が一気にとどめを刺し、ハイ、終・了。
「……普通に戦えればホント強いよね、うちのパーティ」

「いやはや、いきなり飛び出して行かれるから、びっくりしましたよ」
「さすが勇者様、ちょこまかと素晴らしい動きでしたね!」
 サミエル、それ微妙に褒めてない。
「なにをのんきなことを! もう、一人でご無理はなさらないでください!」
 泣きそうになってるエリスに、僕は手を合わせた。
「ごめんごめん。また誰かが罠にかかったら、って思ったら、嫌だったから」
「勇者様……」
 それになんとなく、こういうドラクエらしくない部分は、僕が担当のような気がする。

「しかし、こんなものよく見つけましたね」
 ロダムが足下のボタンを指して感心する。そこは影になっていて、確かに言われなきゃ
気付かないような場所だ。
 だから、そのボタンの上に文字が彫りつけられているのも、今気がついた。 
「ふむ、『礼節を知る者、客として歓迎する』という意味ですな」
「読めるの? さすが宮廷司祭殿」
 そうか……神の前ではひざまずくもの、だよな。

「そう言えば、魔物の気配が消えましたね」
 エリスがあたりを見回した。さっきまであれだけいたモンスターが消えていた。
「じゃあ俺たち、ここのお客様になったんスかね」
 うーん、だといいんだけど。

465 :Stage.5-2 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:44:59 ID:h6mFqMtJ0

 あとは普通のダンジョンであることを祈って、僕たちは先に進むことにした。

 ガコン!
 ――という大きな音が、通路全体に響き渡った。

 なんだこの前レスと同じ文章は。作者のミスか?
 とか思ったら、なんか、急に、フワッと身体が、軽くなった、ような……。

「落とし穴忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「きゃあああ勇者様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕とエリスが落ちたとたん、頭上で穴が再び閉じ始めた。
 慌てて追ってこようとするサミエルたちに気付いた僕は、とっさに叫んでいた。
 、、、、 、、、、、
「構うな! 鍵を探せ!」

   ◇

 あとのことは、正直あまり語りたくない。
 魔法が使えないピラミッドの地下で、この組み分けが最悪だってのは説明不要だよね。
 上と違って肌寒いくらいのジメジメした地下室を、逃げ回って逃げ回って、なんとか身
を隠せる場所を見つけ出して、今はつかの間の休息を取っている状態だ。
 いつ敵が襲ってくるかわからない緊張感でほとんど休まる気はしないが、エリスの様子
があまりに痛々しくて、これ以上動かすのは可哀想だった。
 ここでようやく、このパートの「1」に続くってワケ。

 さーて、次はどうしたもんかな。
 寒さ、飢え、疲労。さすがに考えがまとまらなくなってきた。
 上でちょっと張り切りすぎたか。

 ――でも、考えなきゃ。どちらか一人でも、ここから生きて出るための方法を。

466 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 10:54:14 ID:Tk7hcM0s0
乙ー!
タツミの潜在能力はどうなってんだwww
それとも勇者の「おぼえる」能力が影響してるのか。

なんにせよGJ!
エリスタン・・・

467 :Stage.5-2 [atgk] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:56:45 ID:h6mFqMtJ0
本日はここまでです。
次はリアルサイド、アルス君の出番です。

468 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 22:18:24 ID:SpASF7F0O
乙乙乙!


469 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 17:29:20 ID:/KJaAq3S0
書き手=主人公

このスレの小説の主人公達がデブスやキモオタだと思うと鬱になる

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 17:41:19 ID:m+42TVhLO
>>469
君もこのスレの主人公さ!!

471 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:13:40 ID:8vCQuhLbO
グランエスタードとやらにはお城があって、それに付き物の王様や王女様、王子様なんかもいちゃったりして、城下町も栄えてるらしい!
お、王子様!なんて良い響きだろう。
別にシンデレラにも白雪姫にも憧れる歳ではないけど、その言葉だけでなんとなくドキッとする。
いやぁ、元の世界にも王子様とか皇太子様とかいたけどさ!

グランエスタードについての簡単な説明をしてくれるアルスにマーレさんが、そうだこれを持って行きな、と大口の瓶を渡した。
中身はというと、さっき私もお腹に納めた小魚の佃煮だった。
……道中のお弁当にしなさいってこと?
んまあ、今ご飯食べたのに、マーレさんってば気の早い。

さて、では出発しますか、とドアを開いた。
後ろでアルスが慌てて何か言った気がしないでもないけどキニシナイ!!(゚ε゚)
で、ドアを開くと一番に私の目に飛び込んできたのは、鬼――の形相をした女の子と振り上げられた拳。


ごごご、ごめんなすわぁぁぁぁぁい!!!!!!!

思わず負け犬根性丸出しで謝ってしまいそうなマイチキンハート。




472 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:16:42 ID:8vCQuhLbO
「うわぁ!!!」
「きゃあ!!?」
寸での所で拳を交わした私の情けない声とまさか交わされると思っていなかったんだろう女の子が空振ってクルンと回って悲鳴をあげた。
「何で避けるのよ!」
「避けるわ!」
ここでやっと私を見たらしい女の子がキョトーンとして、私とアルスに視線を行き来させて一言。
「あんた誰!」
「先に謝らんかい!」
これが、私とマリベルの出会いだ。第一印象最悪。

そんなわけで私たち三人はtoグランエスタードの道中にいる。
そんなわけっていうのは、単にアルスとマリベルは、
一緒にグランエスタードに行く約束をしていたってことなんだけど。
ちなみに私が殴られそうになったのは、`いつまで私を待たせる気!?'なマリベルの怒りが込められていたらしい。
ちなみにちなみに!結局私謝られてません!!
HAHAHAHAHA!!

今私達はアルスを挟んでそっぽ向いて歩いている。




473 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:20:36 ID:8vCQuhLbO
…痛い。ああ、いけない。また、アルスに心配かけちゃう。
顔を上げて、大丈夫だって、笑わなきゃ。

そう考えるのに、体はそう動いてくれない。

……痛い、痛い!!もうやだ、何でこんなことしてんの、私!
いきなりこんなわけわかんない所に来て、いきなり殴られそうになって、挙句にこんな、いたい目に、あって。
泣き出したいのを肩を震わせてやり過ごそうとした。うまく行かない。

ずるずる、鼻をすする私の目に飛び込んで来たのは鮮やかな緑色の葉っぱだった。
「もう、はやく使いなさいよ!」
続いてマリベルの声。私はわけがわからないままその葉っぱを受け取る。
「べ、別にあんたの為じゃないんだからね!あんたの怪我のせいでグランエスタードに着くのが遅くなって困るのは私なんだから!!」
そう怒ったように、怒鳴るようにマリベルの顔は真っ赤だ。アルスが私に耳打ちをする。
「さっきのこと、本当は謝りたいんだよ、マリベル。」
素直じゃないんだから。
そう囁くアルスの声は優しくって、嘘のない声だった。だから、私も素直に言えたんだと思う。
「ありがと、マリベル」



「ところで」
「何よ、まだなにかあるの?」
「この葉っぱの使用法が分からない件」
「……。」
「……。」



私は正座をしてこの葉っぱ――薬草の使用法を教授して頂くことになった。
……足、痛いです、マリベル先生。


474 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:23:39 ID:8vCQuhLbO
>>473の前に入れてください、すいません…


……。
……………。
…………………気まずい。非常に気まずい。
元来私はふるえるこの胸チキンハートの持ち主で、他人と喧嘩なんて小学生以来だ。
…兄貴とは頻繁に喧嘩するけど。
まあ、そんなのは関係なくって、とにかく、私はこの女子の喧嘩特有の冷戦状態が苦手でしかたがないのだ。
…ああ!早く着かないかな、グランエスタード!!


―――話は変わりますが、グランエスタードに向かう道、舗装されてないんです。
デコボコ道ってレベルじゃねーぞ!
体力はない方ではないと思うんだけど、軽く酸欠。酸素くれ。
フラフラと歩く私をアルスが心配そうに見ている。
「大丈夫?」
と声を掛けられた。
マリベルも意外にヒョイヒョイ歩いてるし、私だけ、情けない…
そう思うと見栄を張りたくなる。そりゃあもう、精一杯。

大 丈 夫 ! !

とびきりの笑顔で顔を上げた私からその3文字の声が上がることはなかった。
「おひゃん!!」
情けない、悲鳴ともつかない叫び声をあげて私は地面に突っ伏した。
……足元の石ころに歩をとられて。




475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 22:50:02 ID:WEvhBGd90
ツンデレktkr

476 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/20(水) 22:50:41 ID:9JEBheu1O
>>458-465
今度はタイミング合いませんでしたがGJ!!
タツミ頭よすぎww
エジプト神話とか遊戯王しか知らない
>>471-474
GJっす!
いい感じにツンデレきてますねww

477 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 08:39:20 ID:UTPcNGFs0
>>458-465
乙っした!
>>457の二人を見てるとなぜか懐かしの某オリラジを思い出してしまうw
エジプト神話って同じ神話でもいろいろパターンあるから、使うの難しいんだよな。
次回リアルサイド、wktk待機!

>>471-474
マリベル原作に忠実なツンデレで良い感じだ。
女の子主人公に期待大!

478 :Stage.?[1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:08:09 ID:6jlyry6F0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。ってこの挨拶、固定化しそうだな」
アルス「じゃあさっそくサンクスコールいってみますかっ」

タツミ「>>466様、ほんと僕の潜在能力ってどうなってんでしょうね。自分でもわかりません」
アルス「自分のことだろが。463でのグッタイミンな支援も助かりました」
タツミ「>>468様、乙3連打サンクスです」
アルス「>>476様、コイツなんて頭いいってか、ただの変態ですよねw」
タツミ「うるさいなぁ。
   >>477様、おっしゃるとおりエジプト神話は色々あって、組み立て結構悩みました」

アルス「ところで、俺らオリラジっぽいって」
タツミ「懐かしいね。こんなんだっけ by Youtube」
つttp://www.youtube.com/watch?v=A5rkI5kp-cQ&mode=related&search=
アルス「ふーん」


アルス「…………」
タツミ「…………」




479 :Stage.?[2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:10:12 ID:6jlyry6F0

アルス・タツミ『デンデンデンデ デンデデンデンデン♪』
タツミ「ドラクエサンラジオです!」
アルス「お願いします!」

タツミ「アル君いつものやったげて♪」
アルス「オウ! 聞きたいか 俺の武勇伝!」
タツミ「そのスゴイ武勇伝をゆったげて♪」
アルス「俺の伝説ベストテン!」
タツミ「レツゴー!」

アルス「むっつりスケベに認定される」
タツミ「スゴイ! 今では神龍マブダチに」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス「ポルトガ王を黒ゴマでだます」
タツミ「スゴイ! セサミンパワーで長寿大国」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス「ラスボスがなんと多段変身」
タツミ「スゴイ! 道に迷って相手はピサロ」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」

アルス・タツミ『意味は無いけれど ムシャクシャしたから〜♪ ラーミア青く染めてみた〜♪』
アルス・タツミ『デンデンデンデデン♪』

アルス「ハイ! レイアムランドのそっくり巫女に モスラのテーマを歌わせる」
タツミ「ペケポン!」

480 :Stage.?[3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/21(木) 14:11:09 ID:6jlyry6F0

アルス「―――― orz」
タツミ「―――― orz」


タツミ「もう早く本編スタートさせちゃおう。怒られそうだ」
アルス「できん」
タツミ「………………はい?」
アルス「俺の方、まだ本編の収録終わってない」
タツミ「はぃぃぃい!!!??? じゃあなにか? 今回オリラジネタだけか!?」
アルス「朝に477様のレス読んで、思いついたから昼休みに書いたらしい >作者」
タツミ「仕事先からなにやってんのこの人! 合作間近の大事な時期に余計なレス消費して!」
アルス「さっき353KBだったな。この書き込みでもう少し増えてるかも」
タツミ「ああああ!!!!!!」

アルス「次の本編投下は明日の予定です。お邪魔しやした〜」



マジゴメンナサイ。

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 19:16:17 ID:z/x/QTm4O
タツミとアルス武勇伝ワロタwwこういうネタもいいな。乙です!

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/21(木) 20:48:44 ID:2tMO19vD0
最近まとめサイトを読んできたけど、こんなネタもやってたとはwww
◆IFDQ/RcGKI 氏、乙! 明日の本編も楽しみにしてます!

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 10:21:08 ID:/2mUTMy6O
477だが、まさかオリラジ披露してくれるとは思わなかったww
電車の中で吹きそうになったよ。ありがとう。

484 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:27:11 ID:ft3gEZr80
また遅くなりました
>>405きです

485 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:28:32 ID:ft3gEZr80

『餓鬼共が!餓鬼共がァ!』
ボスの余裕が徐々に失われていくのが、手に取るように解った。
ゴーストのボスは決して強い敵ではなかった。
その表情に不安が過り、次第に攻撃も精彩を欠いていく。
ビアンカの放った炎がもう一度ボスの体にぶつかり、
とうとう尻をついたボスの眼前に俺は
止めを刺そうと自分の武器を振り上げた。

『ヒイィィ!わかった!もうやめてくれェ!』
武器を振り上げた姿勢のまま、俺は動きを止めた。
ビアンカが『なにしてるのよ!』と背後から叫ぶ。

顔の前に両手を掲げ、顔を伏せたままボスは
『もうこの城からは出て行く!だから助けてくれェ』と
まるで情けない声で懇願の悲鳴を上げている。
顔周りが焼け落ち、ところどころ切り裂かれたローブが痛々しげにボスの体を覆っていた。
俺は掲げていた武器を下ろす。
『サン、目的を忘れたの?そんなやつ、やっちゃいなさいよ』
ビアンカが明らかに怒った声で言った。ボスが再びヒィ、と泣いた。

『頼むから見逃してくれよ・・・。約束する、もう俺達ァこの城からは出て行くからよォ』
ぼろぼろのローブからはみ出た両腕を必死で振りながら、
ボスは俺とビアンカに交互に泣きついた。
ビアンカはそれを半ば呆れたような目で見下ろしている。

486 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:30:06 ID:ft3gEZr80

『あんた、自分のしたことがわかってるの?今更そんな事言われたって許せないわよ!』
武器を振おうとするビアンカにボスは悪かったよ!と叫んだ。
『俺達ァ楽しく暮らしたかっただけなんだ。
魔界の仲間にも、幽霊の仲間にも疎ましがられちまってよォ』
当然だわ、と冷たく言うビアンカにボスは情けない声で『この城は誰も寄ってこないしよ、
王様気分でちょっと楽しみたかっただけなんだ』と言った。

『頼むよ、もう悪さはしねえ。ここから出て行けばそれでいいだろう?』
『どうする?サン』
顔を上げたビアンカに、俺は逃がしてやろう、と言った。
『本気なの?信じられないわ!サンってお人好しよね』
今度は俺に向かって呆れた表情を作り、
仕方なさげにビアンカは腰に手を当てると、ボスの方に向き直った。
『行きなさいよ』
渋々と言った声色に、ボスはへっへっへ、と笑い
『ありがとうよ。あんた立派な大人になるぜ』言いながら立ち上がると、
長いローブをばさりと翻した。

瞬きする間もなく、ボスの姿は消えていた。
始めからこうやって逃げればよかったのに。
と思ったけれど、ゲームの世界のルールなんだろうなとぼんやりと俺は納得した。

487 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:31:11 ID:ft3gEZr80

いつの間にかあれだけ煩く鳴き続けていた雷は止んでいた。
城を包んでいた重く息苦しい空気が和らいで、月明りが切れ切れの雲間から世界を照らし始めていた。
ゆらりとあの暖かい空気が俺達の周りを包んでいた。
王の気配を感じ見上げると、薄い雲を払って顔を出した月と、
穏やかに微笑む王と王妃の姿が見えた。
二人はゆっくりと空を歩き、それぞれに俺とビアンカの手を取った。

浮遊。

世界の理に囚われないその二人の影響か
俺達の足は地面を離れ、ふわりと空中に浮いていた。
手を引かれ、王と王妃の眠るべきバルコニーへと誘われる。

墓石の前に足を着くと、王は俺の手を離し『よくやってくれた。礼を言う』と微笑んだ。
『本当に、感謝します。これで穏やかに眠れそうです』
王妃も王と良く似た笑顔を浮かべ、俺とビアンカの瞳を目を細めて見詰めている。
『城内の者達も、眠りについたようだ。さあ、おまえ。我々も行こうか』
『ええ、あなた』

淡く輝いていた二人の体が、一瞬、更に暖かな輝きを放った。
王が王妃の肩を抱き、王妃は寄り添うようにその腕に体を預ける。
『そなた達のことはきっと忘れまい。本当にありがとう』
嬉しそうに微笑む王妃の笑顔と、王の声が、白い光に包まれていく。
そして少しの余韻を残して、夜の闇に消えた。
最後に墓石が惜しむようにこつり、と音を立てた気がした。

488 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:32:29 ID:ft3gEZr80

『これで二人は幸せに眠れるのね』
ぼんやりと、今見た光景を刻み付けるように目を閉じて、ビアンカが言った。
ことりと、もう一度墓石が鳴いた。
『・・・何かしら。なにかあるわ』
目を開けたビアンカが墓石を見下ろす。
子供の掌よりも大きな、月光に金色に輝く大きな宝玉が、
王の墓の前に供えるように置かれていた。
ビアンカがそれを手に取り『お礼かしら』と笑った。

手を繋いで夜の道を戻る。
城内にあれだけいた幽霊や魔物は、すっかりとその姿を消していた。
城門をくぐり草原へ出る。
ざわりと風に靡く草花は、入る前のそれと同じ筈なのに、何故か何処か違うもののように思えた。
魔物の気配ももうしない。モンスターも寝るのかしら、とビアンカが言う。
不意にビアンカが俺の手を離し立ち止まった。歩を止め振り向くと、草原の真ん中。
城門の見える位置でビアンカがしゃがみ込んでいる。
『あたし、今日沢山モンスターを殺したわ』
一歩、少女の下へ踏み出しかけた俺に、ビアンカは呟いた。
少女の見下ろす地面に、つい数時間前戦った、小さなモンスターの爪あとがくっきりと残されていた。
『猫ちゃん・・・』
その両の手を顔の前で組み、ビアンカは目を閉じた。
その整った顔立ちの向こうに、快感や優越はもう、見えなかった。

俺は今後にしたばかりの大きな城を見上げた。
暗闇の象徴のように感じたその城は今は、月明りの中、
世界を見守るように、静かに穏やかに佇んでいる。

489 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/22(金) 12:34:58 ID:ft3gEZr80
今回ここまでで。
ありがとうございます。

490 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 14:54:38 ID:W9LkVEJ40
>>478-480
武勇伝ナツカシスww なんてサービス精神旺盛な主人公ズだ。
ところでリアルサイドのアルスってどんなカッコしてるんでしょう?

>>485-488
GJ! ついにボス倒したサン&ビアンカ、乙!
最後のビアンカが女の子らしくていい感じだなぁ。

491 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/22(金) 16:36:27 ID:6vFKv05d0
うわ、GJです。
王様と王妃様の情景が目に浮かぶようでじ〜〜んとしました。

これから先、生き残っていくにはモンスターたちをいっぱいやっつけないといけないからビアンカさんがちょっと心配です。
もっとも、嬉々としてモンスターを虐殺しまくるヒロインもいやですけどね(wwww

492 :Stage.5-3 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:36:43 ID:SKqRKooU0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。って、やっぱりこの挨拶で定着か……」
アルス「だな。投下の前に、恒例のサンクスコール」

アルス「>>481様、ウケて良かった〜。シラけられたら目も当てられねえw」
タツミ「>>482様、本編はどっちかというとシリアスなんで、番外はハメはずし気味ですね」
アルス「あれでシリアスかぁ? >>483(477)様、楽しいネタ振りありがと!」
タツミ「>>490様、当社は読者様への徹底したサービスを心掛けております♪」

アルス「しかし、俺の今の格好か。えーと、ちょっと丈の短い黒いのと……」
タツミ「はいはい。こんな感じだね」

   【アルス(元勇者):装備】
    上着:リブスタンドブルゾン(ブラック)
     上:2ボタンのカットソー(レッド) 
     下:ストレートデニム(ダークグレイ)
     靴:スニーカー(ダークレッド)

タツミ「僕、本当は白系の服の方が多いんだけど、黒でまとめたね」
アルス「とりあえず濃い色のを適当に選んだ。それより(元勇者)ってイヤミかよ」
タツミ「事実でしょうが。――さて、そろそろ行数も押してきましたし」
アルス「なんか久々の出番だな」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】
 続編 リアルサイド

493 :Stage.5-3 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:38:30 ID:SKqRKooU0
 Prev >>458-465 (Rial-Side Prev >>299-305)

 ----------------- Rial-Side -----------------

 久しぶり、と言われた相手をまったく覚えていないというのは、普通は失礼な話だ。
 ヤツの日常を「夢」という形で見ていた俺は、曖昧だったり、抜け落ちている情報も多
分にある。あまりしたてに出るのは得意じゃないが、最初のうちは「すまん、ど忘れした」
と頭を下げなきゃならん場面もたくさんあるだろう、と覚悟はしていた。

 が、こいつらにその必要はないと思われる。

「さっき見てたけど、お前ゲームもすげえのな。さすが天才?」
「俺らもれんしゅーしてえんだけど、先立つモノっつーのがちょっと無くてさ」
「なあタッちゃん、また貸してくんねーかな〜? 2、3万でいいからさー」
 お決まりの要求パターンだ。ったく、五体満足で衣食住にも恵まれてそうなのに、こい
つらはなんでこんな、場末でやさぐれてるゴロツキみたいなマネをするんだ?
「おい三津原、聞いてんのかよ」
「無きゃそこのコンビニで降ろしてくりゃいいし。な、俺らの仲だろ?」 
 ねとねとした口調がひどく勘に障る。しかも今の話だと、
「アイツ、以前からこんな連中にカモにされてた、ってことか……」
「へ?」

 最初に殴りかかってきた少年が一番近かったから、そいつにした。
 相手を見ることもなく逆手で襟元をひっつかみ、そのまま振りかぶって、
「な……」
 丁度そこにいたお仲間のひとりに適当にブン投げる。一回転して背中から激突し、巻き
込まれたガキ共々、そいつは数メートル先までフッ飛んでいった。
「そんな、片手で投げた……!?」
 残ったひとりが引きつった声を出す。
 右腕を回すとコキッと音がした。思ったより重さを感じたな。
「やっぱちょっと肩にくるな。向こうの半分ってとこか」

494 :Stage.5-3 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:40:57 ID:SKqRKooU0

 元の世界じゃボストロールにヘッドロックかまして遊んでたからな。
 さすがに「現実」だと制限がかかるようだが、今の自分のステータスが把握できてない
から、かえって加減の取り方がわからん。
 かなり力を抜いたつもりだが、やりすぎたかね。
「悪い。いちおう教会、じゃねえ病院? 連れてった方がいいかもよ。んじゃ」
 お前らみたいなのに構ってるヒマはねえんだよ。

 と――。
「ふ、ふざけんなぁ!!」
 甲高い叫びが上がった。投げ飛ばしたガキが立ち上がる。そいつの手元でチャキっと音
がして、なにかが小さく光った。
「おい……」
 どうやらナイフらしい。待て待て、向こうならともかく、こっちの世界でそんな簡単に
刃物を持ち出していいのか。
「お前、それはまずいんじゃないか? ケーサツとか大丈夫なのかよ」
「黙れ!」
 相手は完全に激昂していて、俺の言うことなんかまるで聞く気なしだ。周囲から悲鳴や
制止の声があがる。

「やべえって栄治、ほんとに捕まるって……うわ!」
 エージと呼ばれたそいつは、止めに入った仲間にまで斬りかかった。
「落ち着いてくれよ栄治!」
「うるせえ! タツミてめえ! 俺にそんな、く、口きいていいと……!」
「なんだよこいつは――」
 わざと力の差を見せつけてやったのに、まるで前後がわかってない。こっちの若者はキ
レんの早すぎだ。
 ラリホーでも使えれば一発で片がつくんだが、「しかしなにも起こらなかった!」って
地文にテロップが流れるだけだろうしな。
 しゃあねえ、殴って気絶させるか。「当てる」となると手加減が難しいんだが――。

495 :Stage.5-3 [15] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:42:24 ID:SKqRKooU0

「三津原やめろ!」
 今度は俺の方が止められた。聞き覚えのある声に振り返ると、戸田和弘が必死の形相で
俺の腕を押さえている。
「ダメだろ、手ぇ出したら! 今度こそ取り消されるって言ってたじゃねえか」
「取り消される……? なんだよそりゃ」
「なんとかって奨学金、出なくなるんだろ? 学校これなくなるって」
 は? そんなの知らねーぞ!?
「とにかく逃げるぞ」
 軽くメダパニっている俺は、カズヒロに引っ張られるままその場を離れた。
「待ちやがれ、このクソヤロウ! 死ね!」
 エージ少年は、ザキが発動しそうなくらい憎しみのこもった叫びをあげながら追いかけ
て来る。もしやタツミの方があのガキになにかしたのか?
 あんなザコ相手に逃げなきゃならんってのもめっちゃストレスだし、ホントどうなって
んだよ、ったく――! 

   ◇

 俺たちはひとまず、どこかの路地裏に入って相手をやりすごした。
 これだけ建物が密集していると追っ手をまくのも容易だ……が、俺はすでにここがどこ
だかわからなくなっていた。こっちの街って、ホント似たような景色ばかりなのな。
「よりによって一條たちに出くわすとは。ゲーセンに誘ったの、悪かったよ」
「いいけどさ。しかし、アイツらはなんなんだ」
 神妙な顔で謝る友人に、俺はつい、自分が関係者であることを忘れてぼやいた。
「まさか心当たり無いとか言わないだろ? お前って肝心なことはなにも言ってくれねえ
し……。なあ三津原、本当は一條となにかあったんじゃないのか?」
 逆に問われる。そんなの俺が聞きてーよ。

 正直、1分1秒でも惜しいところだが、俺は思い切ってカズヒロに聞いてみた。
「あのさカズ、いきなり変なこと、聞くけどさ」
「お、おう。なんだ?」
「俺は……『三津原辰巳』ってヤツは――そんなに特徴的な人間か?」

496 :Stage.5-3 [16] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:44:03 ID:SKqRKooU0

「そりゃそーじゃねえ? 本読むのメチャクチャ早えーとか、見た物ぜんぶ写真みたいに
覚えられるとか。言っちゃ悪いがちょっと普通とは違うと思う」
 やっぱりか!
 ユリコが言ってた「忘れるなんて珍しい」って言葉も、アイツらが天才呼ばわりしてた
ことも、これで納得がいった。俺とは少し方向性が違うようだが、ヤツも「思い出す」に
類する特技を持っているらしい。
「うちみたいな進学校で、満点以外取ったことねえヤツが他にいるかよ」
 しかも遠慮なくフルで能力発揮しまくりかよ。
 となると、さっきの「しょーがくきん」ってやつも、たぶんアレだろ。
「それで国とかそういう上の方から、特別な援助金が出てたりするのか」
「俺はよく知らねえよ。お前んち、一度も学費払ったことないって聞いてるけど」
 マジかーッ。これじゃうちと一緒じゃねえかよ!


 嫌なことを思い出す――。
 勇者オルテガの名前のせいで、うちはやたらと国王から厚遇されていた。親父が死んで
からさらに、高額の生活補助金まで支払われるようになった。
 でも魔王討伐に「失敗」した勇者の家だぜ? そんなのやっかまれるに決まってる。
「……この家はどうも、風の突き当たりになっているみたいねぇ」
 直しても直しても割られる窓ガラスを、おふくろは困ったように見つめていた。じじい
は出歩かなくなったし、俺の友達は全員「敵」か「他人」でしかなくなった。
 俺が周囲を、実力で黙らせるしかなかったんだ。

 逆に俺が「夢」で知っている「三津原辰巳」は、学業も運動も人並みで、一般的な家の
生まれという設定だった。おとなしくて目立たない少年だが、人当たりはいいのでいじめ
に遭っていることもない。
 特に問題は無いが、強いて言えば父親が単身赴任とかって遠方勤務で留守がちの上、母
親が子供に無関心で少し寂しい家庭だ、とかそんな程度。
 ごく平凡なそこらの学生、のはずだった。

 なのに「夢」と「現実」がズレてる。俺がなにか大きな勘違いをしているのか――?

497 :Stage.5-3 [17] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:46:26 ID:SKqRKooU0

「あ、俺バカだ!」
 カズヒロがいきなり叫んだ。内側に向いていた意識が引き戻される。
「完全に振り切ったら、アイツらお前の家の前で待ち伏せするに決まってるよな?」
 うへー? あのキチ(ピー!)君、タツミんちも知ってるのか。
 カズヒロは眉根を寄せて考え込むと、すぐに「よし」とうなずいた。
「俺が引きつけとくから、お前先に帰っとけ」
「え、ちょっと――」
「いいか、お前は顔を出すなよ。大事になるから警察とかにも捕まらないように!」
 止める間もなく行ってしまう。追いかけていいのかどうか迷ってるうちに、カズヒロは
雑踏の中に紛れてしまい、俺はぽつんと一人、薄暗い路地裏に取り残された。

「おーい……こっからどうやって帰れと」
 拝啓、母上様。
 アルスはただいま、異世界で迷子になりました。

   ◇

 とにかく帰ろう。住所はわかってるから、誰かに聞くのが早いよな。
 路地から表を観察し、エージ少年らがいないことを確かめてから出ていった。
 最初に近くを通りかかったオッサンを捕まえる。
「あの、すみません」
「ん?」
 頭のてっぺんが横にシマシマになっているオッサンは、あからさまに迷惑そうな顔を向
けて来た。
「道に迷ったんですけど、教えてもらえないかと――」
「忙しいんで他の人に聞いてくれる?」
 足を止めることさえなく、スタスタと行ってしまう。
 ずいぶん淡泊な反応だ。そんなに忙しそうに見えなかったが。

498 :Stage.5-3 [18] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:47:40 ID:SKqRKooU0

 まあ人口の密集度はすさまじい世界だ。すぐに別な人間に声をかける。
 今度はまじめそうな雰囲気の、年配の女性だ。
「すみません、道を――」
 が、その女なんか目も合わせようとしない。いきなり歩調が早くなって逃げるように離
れていく。
 なにそれ。俺そんな不審人物? 慣れない反応に戸惑うが、とにかく時間がない。合間に
携帯のリダイアルを続けているが一向につながる気配がないし。
「ちょっと! 道をですねっ」
 次にもう少し若い女を捕まえた。今度は俺のウケの良さそうな20代くらいのお姉さんで、
案の定、彼女は変な顔もせず微笑んでくれた。
「どうしたの?」
「はい、あの、道を尋ねたくて」
 住所を告げる。彼女は首をかしげて「ごめん、わからない」と言った。
「交番に聞いた方が早いんじゃないかな。すぐ近くだし、案内するよ」
 コーバンって、ケーサツの詰め所のことだっけ?
「いやあの、ケーサツはまずいっていうか……」
 途端に相手の顔が険しくなる。
「ああ、やっぱり。もしかしてと思ったけど、あんた家出してるのね」
「はぁ?」
「近頃のガキはホントどうしようもないわ。さっさと帰りなさい、かまってられない」
 厳しい口調で言い捨てて、やたらかかとの細い靴をカッカッと鳴らしながら去っていく。
 だから、その家に帰れなくて困ってるんだってば!

「なんだかなー……」
 そりゃ向こうでも、話しかけても冷たい反応を返されることはあった。だがたいがいの
街人は、きちんとこちらを向いて丁寧に情報提供してくれたものだ。
 それに比べてこっちの人間は、冷淡すぎやしないか。
 他人のことなんか、本当にどうでもいいみたいな……。

499 :Stage.5-3 [19] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/22(金) 23:49:12 ID:SKqRKooU0

 ふるっと震えがきた。この時間にもなると一気に冷え込むようで、肩にひっかけていた
だけの上着の前を合わせる。
 日の暮れた街は、たいまつやランプとはまるで違う白く冴えた光で溢れかえっていて、
なにもかもが作り物めいて見えた。
 作り物は、向こうの世界のはずなのに。
「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」

 
「あはははは!」
 いきなり後ろから笑い声が聞こえた。
 驚いて振り向くと、一人の細身の少年が立っていた。
 俺と同い年か、少し上くらいだろうか。ダフッとした黄色のシャツを着て、首回りや両
腕に幾重にも派手なアクセサリを巻きつけている。
「いや失礼。ここは場所が悪いんですよ。さっきみたいに家出少年か、キャッチだと思わ
れちゃうんですよね。もう1本先の表通りに出れば、また反応も違いますよ」
 少し長めの茶色の髪をかき上げる。チャラチャラした格好だが、エージたちよりはずっ
とまともそうだ。
「さっきの立ち回りを見て、もしやと思って追いかけてきたんですが……。良ければ僕が
家までお送りしますよ?」
「それは助かるが……あんた誰だ」
 タツミの記憶にはないし、相手も知り合いというわけではなさそうだ。
「そうですね――今は詳しいことは秘密にしておきますよ」
 唇に人差し指を立てて、彼は人好きのしそうな笑みを浮かべた。
「あなたも移行が完了しないうちは、簡単に素性を明かさない方が賢明でしょう」
 移行……? って、まさか!
「お前も『向こう』の人間なのか!?」

「ええ。僕もまだ1ヶ月くらいですけどね」
 彼の左耳で、小さなピアスがきらりと光った。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」

500 :Stage.5-3 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/23(土) 00:05:05 ID:j2KoNgk00
本日はここまでです。

501 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 00:19:13 ID:xpeii2Lu0
おおお…投下乙!新キャラ向こう側の人間かよ
俄然面白くなってきたwwww期待w

502 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 00:23:18 ID:oQsAYyYg0
乙です!
ピアスの新キャラってもしかして・・・続きめっちゃ気になる

503 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 09:09:34 ID:ScnqKa2Q0
素晴らしい!◆IFDQ/RcGKIさま乙
ゲーム世界篇が面白くて正直次はリアル篇かよ〜と思っていたら
何かもっと面白そう!
おもいだすの特技がリアルでは天才と評価される切り口は新鮮ですね
次も期待しています

それから◆u9VgpDS6fg さま、遅まきながら乙です
続き待ってました
レヌーる城篇クライマックス、良かったです。
ビアンカも乗り越えるべき葛藤があって成長物語らしくなってきましたね
次のベビーパンサーとのからみ期待してます!

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 12:33:42 ID:rDqLBcqj0
わー、タツミ君もアルス君も人知れず苦労してたんですね・・・。
新キャラ、なんかあまり信用しないほうがいい予感?

505 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 14:10:04 ID:dUT2/mTAO
乙!

リアルサイドでは「不慣れな日常生活」ってだけでもつのかなぁ?
などと思っていたのですが…
全くの邪推でしたね!こんな展開に持っていくとは!!
そこにシビ(ry

506 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/23(土) 17:37:22 ID:g5kY8jGbO
長髪にピアスといえば4勇者か…?

507 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/25(月) 11:00:15 ID:1RYblbuT0
>>303 『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
>>499 「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」

なんだかんだで相手を頼ってるのなw

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/25(月) 22:54:50 ID:wP7NDng/O
◆u9VgpDS6fg氏GJです。
続きまってました!背景や心理の描写うますぎ!
続きwktk

まさか武勇伝くるとは!!◆IFDQ/RcGKI氏!
てか,新キャラですね!でも最初マルチかなんかの勧誘かと思ったww

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/27(水) 03:52:04 ID:r9zx5GBN0
眠れずの保守

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/27(水) 21:21:49 ID:oiWt4v8xO
鈴木さんと田中は今頃なにしてるんだろう

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/28(木) 14:50:44 ID:U01CzWfe0
>>510
たぶん・・・。バイト先の酒場でえっちなこと。
居候先のおかみさんとえっちなこと。

512 :Stage.? [雑談] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/29(金) 08:27:43 ID:BCQ4QTbt0

アルス「なんでもいいから雑談しろってよ」
タツミ「どう見ても間をつないでるだけです。本当にあり(ry」

アルス「ところで、お前の本名の『三津原辰巳』ってさ」
タツミ「うん」
アルス「辰って竜と同じような意味の字だろ。つまりDQ3? 単純じゃね?」
タツミ「悪かったね。単純なのは作者の命名センスだろ」
アルス「っつーか、それはお前もだろ。なんで俺デフォルト名なのよ」
タツミ「もしかして僕が『アルス』ってつけたから、君その名前なの?」
アルス「そうだって。4周もしてたのに全部同じにしてるし」
タツミ「うん、考えるの面倒だったから」
アルス「ありえねー、なにその思い入れの無さ!」
タツミ「こら、『アルス』って名前を気に入ってプレイしてる人もいるかもしれないだろ」
アルス「お前は今、考えるの面倒だったからって言ったじゃねえか」
タツミ「じゃあ『ジョニー』とか?」
アルス「このSSの印象変わりそうだな」
タツミ「それなら『ゲパルト』とか」
アルス「てめえワザとだろ」
タツミ「わがままだなぁ。もう『ヘニョ』にしていい?」
アルス「なんだそりゃ!」
タツミ「いいじゃないか。ヘニョに決定」
ヘニョ「決定するニャ! うニャ、名前まで変わってるニョ!?」
タツミ「語尾も変わってるw」
ヘニョ「ニョwwwwwwやめwwwwwwww助けてマリニャン様ぁ!」

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/29(金) 09:55:42 ID:fB3zTJbgO
ちょwwwwwwマリニャンて誰だよ?

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/29(金) 09:56:45 ID:fB3zTJbgO
あ 今気付いた
命名神マリナンか

515 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/30(土) 20:46:02 ID:m2jFDiYf0
ドイツ連邦軍の対空戦車吹いた

516 :Stage.6-1 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:00:56 ID:KaTnT6e30
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。それではさっそく、サンクスコールいっきまーす」

アルス「>>501様、謎の新キャラ登場です。これからもっと面白くなる……かはわかんないけど」
タツミ「しなきゃダメでしょうが。>>502様は誰だと予想しましたか? 特に伏せようとしてる
   わけじゃないんですが、ピアスはひっかけになるかもしれません」
アルス「>>503様、今までリアルサイドはのんびりしてたからなぁ。俺もこいつが『おもいだす』の
   特技を持ってるとは思わなかったぜ」
タツミ「>>504様、しかしもっとも苦労してるのは、誰かさんのせいでゲーム世界に飛ばされた
   今現在なんですけどね(ノ∀`)」
アルス「>>505様、地味に大変なんすけどね。俺いまだにあの青い親子連れの看板がわからん」
タツミ「>>506様、4って長髪にピアスなんだ。僕DQ3以外やったことないからなぁ。どうなの?」
アルス「俺に聞くな、他シリーズのことなんか知るか。そして>>507様、それは大・勘違い!です」
タツミ「僕はけっこう頼りにしてたんだけどねぇ……まるっきり役立たずだけど」
アルス「タイミング悪いんだよお前は! 意外にキレ易いし」
タツミ「人が命懸けで冒険してんのにふざけるからでしょうが。
   こんなのほっといて、>>508様、確かにあの登場の仕方はマルチっぽいかもw」

アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「>>513様、はい、命名神マリナン様です。ダーマまで進んだらぜひアルスを『ヘニョ』に」
アルス「するなぁ! >>515様、そんなごっついシロモノの名前だったんすね。つけられなくて良かった」

アルス「以上かな? たくさんの応援メッセージありがとうございました!」
タツミ「なんだかんだで物語もStage.6となりまして――」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
 リアルサイド  続編

517 :Stage.6-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:02:10 ID:KaTnT6e30
 Rial-Side Prev >>493-499

 ----------------- Rial-Side -----------------

「別に急ぐ必要なんかないですよ。所詮ゲームです、本当に死にやしませんから」
 早く帰ろうと焦る俺に、ショウはあっさりそう言い切った。
「でも相手が死んだら俺も消えるって……」
「確かに消えはしますけど、主人公は自動で生き返りますし。相手が蘇生すればこっちも
元に戻ります。誰かの前でいきなり消えたり出たりしたらちょっとまずいかな、というて
いどの問題なんですよ」
「マジで? うわー心配して損した!」
 なんだよ、タツミのヤツも復活するのか。神竜も紛らわしい言い方しやがって、死んだ
らそれまでって意味だと思い込んでいたから、気が気じゃなかったっつーのに。
「――ただ僕たちにも、一応『生き返らない条件』ってあったじゃないですか」
 ショウが続けた言葉に、俺はつい顔をしかめた。あまり触れたくない話だ。
「あったな。心から絶望して自殺したら生き返らない、とか」
 もっとも主人公の自殺判定はかなりシビアで、ほとんどは戦略上の理由として片付けら
れて自動蘇生の対象となる。成功することは滅多にない。
 正義の主人公というのは、そう簡単には死なせてもらえないものだ。
「一応そこは気をつけた方がいいでしょうね」
 まあうちのあのプレイヤーに限っちゃ、まずあり得ねーな。

「ちょっと待ってください。コーラでいいですか?」
 表通りに向かう途中の自販機の前で、ショウが立ち止まった。コインを入れ、一斉に点
灯した購入ボタンのうちのひとつを2度押して、先に出てきた缶を手渡してきた。
「えっと……」
 どうすれば、と思うと同時に、相手が自分の缶を目の前に持ってきた。
「ここに指を引っかけて、こうやって開けるんですよ」
 プシュッといい音がして、缶の上に水滴型の穴が空く。うまくできてるもんだ。 
「あんがと。そういう細かいとこが、ところどころわかんないんだよなぁ」
「僕も苦労しました。こっちじゃ常識だから、聞くに聞けないし」
「わかるわかるw」

518 :Stage.6-1 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:03:23 ID:KaTnT6e30

 プレイヤーの生死に神経質になる必要はないとわかったし、事情が同じヤツと話してい
るのもあって、俺はすごく気が楽になった。
 やがて大きな通りに出ると、ショウは片手を上げて一台の車を止めた。屋根に変な形の
ランプがついている。
「住所がわかってるなら、こうやってタクシーを拾った方が早いですよ」
 なるほど、勉強になります。
 自動的にドアが開いて、ショウが先に乗り込もうとする。
「待てよ、これに乗ってけば帰れるんだろ? わざわざついて来なくてもいいんだぜ」
 さすがに俺も遠慮したんだが、彼は首を振った。
「落ち着かないんで、きちんと家まで送りたいんです。嫌じゃなければ、ですけど」
 嫌なわけはない。本音ではありがたい申し出だ。やっぱこっちの人間と違って、向こう
のヤツはみんな親切だよなーっ。

 人工の光に溢れかえる街中を、車がゆっくりと走り出す。
 さて、いい機会だし、あとはなにを聞いておこうかな――。


「ところで、さっき『心配した』って言ってましたよね?」
 俺が口を開く前に、少し低いトーンでショウが聞いてきた。
「言ったけど、どうかしたか?」
 ふと、彼の顔から笑みが消えた。
「プレイヤーに同情は禁物ですよ」
 一瞬、返す言葉に詰まる。相手は「ふぅ」と溜息をついた。

「右も左もわからない異世界で、お互いに自分の正体を知っているのは立場を交換した相
手だけ。情が湧くのも当たり前ですけどね。でも、地位も名誉も、家族も仲間もすべて捨
てて――よっぽどの覚悟を決めて、こっちに来たんでしょう?」
「そりゃ……まあ」
「プレイヤーに同情してクリアまで手伝ってたら、すべてフイになりますよ」

519 :Stage.6-1 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:05:08 ID:KaTnT6e30

 こいつは、本当はそれが言いたくてタクシーに乗り込んだんだなと、俺は悟った。
 冷たく突き放したような内容だが、言ってる本人も少ししぶい顔をしている。
「僕も最初はずいぶん悩みましたよ。プレイヤーも『帰りたい』って泣きましたし。でも
考えてもみてください。相手は、つかの間でも現実の生活を忘れたくて『ゲーム』を楽し
んでたんです。慣れれば必ず向こうを選びます。現に僕のプレイヤーなんて、一週間で永
住を決めましたよ」
「帰りたくない、って?」
「もちろん、そうなるように僕も誘導しましたけど。――今は僕たちが『プレイヤー』な
んですから、うまく相手を動かさないとね」
 小さく肩をすくめて、彼は俺を見た。
「あとは好きに生きればいい。いつまでも相手のフリをする必要もありません。僕たちが
こっちで生活するために利用してるだけで、どうせ親兄弟も赤の他人なんだし」

 その通りだった。
 俺が感じていた不安や疑問をすべて的確に晴らしてくれる答えだ。
 ただ――なぜか俺はそこで、すぐに返事ができなかった。

 黙り込んだ俺に、ショウはフッと笑った。
「よけいなお世話、でしたか?」
「いや……そうだな。お前が正しいよ」
 救うべき世界をプレイヤーに押しつけて逃げ出してきた罪悪感と。
 命懸けで守ろうとした世界が作り物だと知ってしまった虚無感と。
 全部振り切って、ここで生きていこうと決めたのだ。いまさら引き返せない。


 車が停まった。いつの間にかタツミのマンションの前まで来ていたのだ。
「そう言えば、あなたはこちらでは、なんて?」
「タツミ。三津原辰巳」
「いい名前じゃないですか。……じゃあまた、頑張ってくださいね、タツミ君」
 俺を降ろしたタクシーは、少し行った先で角を曲がり、すぐに見えなくなった。

520 :Stage.6-1 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:05:58 ID:KaTnT6e30

 ----------------- Rial-Side Another -----------------

 ――1台のタクシーが夜の住宅街をすべるように進んでいく。
 とあるマンションの前でいったん停車し、黒髪の少年を一人降ろして再び走り出す。
 その車は、近くの十字路を折れてマンションからの死角に入ると、もう一度停まった。

「ここまででいいです」
 後部席に乗っていた黄色シャツの少年が運転手に告げた。財布から紙幣を数枚出して、
座席の間のカウンターに置く。運転手は紙幣を数えると、メーターの示す金額を引いた釣
り銭を代わりにカウンターに置いた。
「ところで、さっきのはゲームの話だよね?」
 運転手が聞いてくる。少年は釣り銭を財布に戻しながら「ええ」とうなずいた。
「いまどきのゲームって凄いよねえ。自分みたいなオジサンにはついていけないよ」
「やってみたらそんなに難しくもないですよ。特にドラクエとかは」
 少年は愛想良く答え、車を降りた。

 そして、走り去っていくタクシーのテールランプに向かって、少年は呟いた。
「近いうちに、嫌でもかかわることになるけどね――」
 さきほど別れたもう一人の少年が帰っていったマンションを注意深く眺める。4階の右
端の部屋に明かりが灯ったのを確かめると、携帯電話を取り出した。
「……僕です。やっぱりゲームサイドの人間でしたね。でも、あんまり期待できないと思
いますよ。なんか人の良さそうな子だし。……いや、それはないと思いますけど」
 通話口の向こうで懸念を示す相手に、彼は静かに言った。
「もう少し様子を見ましょう。それでもしもの時は……僕がちゃんと、処理しますから」

 彼はもう2、3言交わしたあと、通話を切って歩き出した。
 街灯と街灯の合間にある影の溜まりに踏み込んだところで、ふと立ち止まる。
 次の瞬間、そこから光の柱が立ち上がり、空を貫いていった。
 あとには誰の姿もなかった。

521 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 14:06:06 ID:Mngw2y6W0
SIENQUEST

522 :Stage.6-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/01(日) 14:09:51 ID:KaTnT6e30
本日はここまでです。
謎キャラが本格的に絡んでくるのはもう少しあとになります。
次はゲームサイドの予定です。

523 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 17:16:17 ID:rqsMJx4v0
なんか本格的な感じになってきたな
もっとこう、軽めの話なのかと思ってたんだが

だが、それがいい


524 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 21:06:55 ID:BtC/VkWvO
GJ!!
ピアス男何者?!
とりあえず味方ではなさそうですね。
続きwktk

525 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/01(日) 21:53:16 ID:WQf8nEtSO
乙!
自分も>>523と同じくマターリな感じの作品かと思ってたんだが(特にリアルサイド)。
実は結構シリアスなストーリーだったりするのかな?

そういえば俺が好きだったあの人の作品も、最初はギャグ一辺倒だったなぁ。
こんなサービス旺盛なサンクスコールは全く無かったがw

まぁあれだ。ヘニョガンガレ!!

526 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/03(火) 12:56:36 ID:TvnDpJiU0
やはり新キャラ、あやしいですね・・・。
ゲームサイドからこちらの世界をのっとろうとしている悪の組織の手先チック
わくわく・・・。

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 10:55:54 ID:1LlyXZAXO
保守…

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 23:30:17 ID:/fPogsIv0
同人キモオタ小説スレ晒しage

529 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 23:38:29 ID:OoBm8tpA0
sine

530 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 17:38:23 ID:4DjClDfe0
読み返してみるとやっぱり4の人のが一番面白いね
終わってしまって残念

531 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:29:28 ID:cLWjOIcO0
>>530
そういう感想は避難所に書けよ。
なんで現行で頑張ってる書き手さんのモチベーションが
下がるようなことをわざわざここで言うんだ。
少しは気を遣え。

532 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:43:56 ID:UKvE9Atu0
4の人のが素晴らしかったのは事実だし。
読み手が感想を書きたくなるような
面白いものを書くよう努力するさ。

533 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/06(金) 20:57:07 ID:cLWjOIcO0
>>532
すまん、かえって余計なこと言った。
マターリ待機してるよ。

534 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:05:07 ID:MwaIw4hS0
 前回のあらすじ>>422-427

 ……ああどうも、俺です。
 皆さんはマイラの村にいるぱふぱふしてくれる女の子が未成年だって知っていましたか?
 俺は知りませんでした。
 たとえ合意の上でも立派な淫行に当たることをご存知ですか?
 俺は知っていました。


  \
:::::  \            俺の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた。
\:::::  \
 \::::: _ヽ __   _     外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
  ヽ/,  /_ ヽ/、 ヽ_
   // /<  __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、俺、どうして・・・
   || | <  __)_ゝJ_)_>    こんなこと・・・しちゃったのかな?」
\ ||.| <  ___)_(_)_ >
  \| |  <____ノ_(_)_ )   とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
   ヾヽニニ/ー--'/        震える俺の掌を濡らした。
    |_|_t_|_♀__|
      9   ∂        「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
       6  ∂
       (9_∂          俺は声をあげて泣いた。


                                                −完−


 ご愛読ありがとうございました。
 ◆yeTK1cdmjoの次回作にご期待ください。

535 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:06:01 ID:MwaIw4hS0
「未成年とは知らなかった。10ゴールドを支払……ってちょっと待て!」
「?」
「ここは条例ないんだよな!?」
「条例? 何の条例?」

 アレフガルドは日本じゃない! てか、地球じゃない!
 つまり! 淫行条例適・用・外!
 素晴らしき哉! 人生!!

「うおおおおお! セフセフ! いいいやっほおおおおおおお!!」
「な、なんかわからないけど落ち着いてよ!」
「素数を数える必要がないほどに落ち着いてるじゃないか! ひゃっほーーーーーーい!」
「落ち着け!」
「ぐふっ」
 ……見事なアッパーだ……。
 燃えたよ……まっ白に……燃えつきた……まっ白な灰に……。

「お、いたいた」
「みやおうか。どした?」
「悶絶してるところ悪いが、そろそろ宿に戻らないと明日が辛いぞ」
「そういや明日はリムルダールだったな」
 実戦経験の乏しい俺の特訓のためにマイラに逗留すること数日。
 ゆう帝曰く、「そこそこ実戦慣れしてきましたね」とのことで俺達三人はようやくリムルダールに向かうことにした。

「ほんじゃ、プリンセス・ハオの夢を見るくらいに寝るとするか」
「プリンセス……何?」
「気にすんな」



「あ、10ゴールドもらってない!」
 (∩゚д゚)アーアーきこえなーい

536 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:08:02 ID:MwaIw4hS0
 そんなわけで、リムルダール島を結ぶ洞窟に向かう俺ら。

「って、毒の沼じゃねえか!」
「何か問題でもありました?」
「いやいやいや、『何か問題でもありました?』じゃねえよ。どうやって行くんだ?」
「歩いていくに決まってるだろう」
「さ、行きましょう」
 ゆう帝はちゃっかりと魔法の鎧を着ているからいいものの、俺とミヤ王はどうすんだ?

「気をしっかり持てばこの程度大したことはない」
 筋肉馬鹿め。

 ゲームの毒の沼と実際に見る毒の沼は全然違う。
 ゲーム上では黒のダメージマップだけど、現実はもっと毒々しい。黒に赤紫を混ぜた色してやがる。
 それに臭い。
 スピードワゴンじゃないが、ゲロ以下の臭いがプンプンする。
 臭いなのか何なのかわからないが目も痛い。
 タバコや排気ガスなんか可愛いもんだ。
 まだ足を踏み入れてないのにこのヤバさ。
 5分もいたら死ぬ。マジで死ぬ。この場所にいるだけで死ぬ。ヤバい。超ヤバい。

「ってもう行ってんじゃねえよ!」
「急ぎましょう」
「早めに洞窟を抜けきりたい。急げよ」
 言いたい放題言いやがって。
 ――よし、行ってやるよ!
 Bダッシュで行ってやろうじゃねえか!

「うおおおお! 痛え! 痛え!」
 バリッとした痛みが伝わってくる。もしかして靴溶けてんじゃね?
 Bダッシュとか無理! マリオすげえ!
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:10:19 ID:msRcUqSD0
ちょうど>>534でスレ開いてテラ焦ったwww

538 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:11:33 ID:MwaIw4hS0
 沼地の洞窟に頭から飛び込んだのは俺くらいだろうね。

「最短距離で行くからはぐれないようにしっかり捕まっとけよー」
「松明ありますよ?」
「松明なんざいらん。右手を向かって右側の壁に当てろ」
 真っ暗で二人の顔は見えないが半信半疑といったところだろう。
 いくら真っ暗で自分の足元くらいしか見えなくてもこの洞窟は難しくない。
 RPGの基本は左手の法則だが、このダンジョンは右手を使う。
 右手をピッタリと壁に当ててそのまま歩いていけば松明がなくとも攻略できる。
 ローラ姫は……いつか来るであろう勇者に任せておこう。
 姫は攫われてるうちが華ってもんだ。

「いいか、何があっても真っ直ぐ進めよ」
「わかった」
「モンスターが出てきた場合は?」
「踏め」

 暗闇に目が慣れるまではゆっくりと、慣れてからは普通の速度で洞窟内を真っ直ぐ進む。
 ゲームなら下に向かってるはずだ。
 魔法使いらしき奴には「どこに目ェつけとんじゃボケェ!」と恫喝し、メーダらしきものは踏んで難を逃れた。
 これぞ男塾名物直進行軍。たとえ飛行帽の家でも真っ直ぐ進んでやるぜ!

 平坦な洞窟かと思っていたが微妙に坂になっているようだ。
 テレビの前でコントローラーを握っているだけではわかるはずもなかったドラクエ世界。
 子供の頃、自分も冒険してみたいと誰もが夢見たことだろう。
 何の因果か知らんがドラクエ世界に飛ばされて、実際に冒険している俺はラッキーと言え――るわけねえよな。
 パソコンが無いし電波は届かないしコンビニも無いし捻るだけで水が出る蛇口も無い。そう考えると日本すげー。

 元の世界に戻ったら色々やりてえなあ。
 2ちゃんの溜まってるログ読んで、乗り遅れた祭りに参加して……そういやあのスレ落ちてないだろな。
 この経験生かして「もし目が覚めたら〜」に投下してみるのもありだな。
 待てよ、即レスを求めるならVIPもあり――って、どれだけ2ちゃんに依存してんだよ俺('A`)

539 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:13:44 ID:MwaIw4hS0
「まさか本当にいけるとは……」
「言った通りだったろ?」
 松明一つも消費せずに沼地の洞窟、難なく攻略。
 沼地の洞窟程度、俺にしてみりゃ超楽勝。
 下押すだけのゲームと実際に歩くリアルドラクエとの違いはあるけど。

「リムルダールまでもう少しだな」
「モンスターも強くなってるでしょうから気をつけてください」
「強いモンスターってのは、今みやおうにボコボコにされてるアレのことか?」


      =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  ∧_∧ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡∧_∧≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  ( ・ω・)=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ))д´)≡つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
  (っ ≡つ=つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ (っ  ⊂)≡つ =つ≡つ =つ≡つ
  /   ) =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡| x |≡つつ =つ≡つ =つ≡つ
 ( / ̄∪ ババババ ババババ ババババ ババババ ∪ ̄ ∪ ババババ ババババ
      =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ


 強すぎだろ。
 何だよあのラッシュ。どこの聖闘士だよ。

 もうやめて!  リカントのライフは0よ!!
 などと考えてるうちに哀れリカントは海に転落。南無。
 ミヤ王だけで竜王フルボッコにできるんじゃね?

「待たせてすまん。少々てこずった」
「さ、行きましょうか」
「……」
 今更だが、俺はとんでもない連中と旅をしてるんじゃなかろうか。

540 :魁!!男俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:14:49 ID:MwaIw4hS0
 リムルダールに向かう途中、リカントだの魔道士だの鉄のさそりだの出てきたが全部ミヤ王とゆう帝が一掃。
 早くキム皇と合流したいそうです。
 ま、俺は足手まといになるだろうし、楽なのはいいんだけどさあ。
 怖いよ。
 文字通りフルボッコにするミヤ王もだが、急所を的確に狙って一撃で殺すゆう帝には流石の俺もドン引き。
 キム皇はまともな奴でありますように。
 ……望みは薄そうだけどさ。

「キムこうは確かこっちに……。あそこで佇んでる奴、ではないよなあ……」
 俺の視線の先にはなぜか体育座りをして何か口ずさんでる男の姿が。
 こういう嫌な予感はよく当たるんだよなあ。

「おい、キムこう!」
 ほーら当たった。

「もしかしてゆうていとみやおうだすか? あて……あて、寂しかっただすよ〜」
 仲間同士の再会ってのは別に悪くはない。
 むしろ感動するシーンだとは思う。
 勉三を彷彿とさせる謎の方言じゃなければの話だが。

「ところで、この人はどちらさんっすか?」
「話すと長くなるのでひとまず宿屋へ向かいましょうか」
「でも、あて……」
「?」
「1ゴールドも持ってないだす……」
 だからあんなところで佇んでやがったのか。

キム皇のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたっ
方言力:うわぁ…勉三さんの中…あったかいナリ…

541 : ◆yeTK1cdmjo :2007/07/07(土) 01:17:22 ID:MwaIw4hS0
空気を読まず投下終了です。

>>537
むしゃくしゃしてやった。
今は反省していない。

542 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:19:01 ID:US+GQySaO
腹筋割れたwww
GJ

543 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/07(土) 01:28:57 ID:be6jNVGZ0
オモシレ〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ステータス方言力てwwwwww
まるで読めないキャラ設定と展開、GJ!

あ〜もう続きが読み手〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

544 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 01:46:45 ID:KHivypzf0
>>541
超乙
夜中に一人で大爆笑しちまったい。
寂しくなんかないんだからっ。

545 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 10:51:52 ID:L9Nqx6H00
DQ1のぱふぱふ娘はリムルダールだった気がするんだが、リメイク版は違うんだっけ?

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/08(日) 11:03:28 ID:L9Nqx6H00
あ、調べたらやっぱし変更されてた。
つーかFC版は「ぱふぱふしてほしいなら50G〜」と出るだけで、出来ない。

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 07:23:45 ID:CHoq2kXBO
エイコたん待ち保守

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 12:28:47 ID:pBn8tBxP0
エイコなら、オレの隣で満ち足りた顔をして、かわいい寝息をたててるよ。

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 14:15:25 ID:+qwtutd4O
対象は
未成年 ×
満18才以下 〇
高校卒業したての18才は余裕でセフセフ

550 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:46:26 ID:QJkwVmKCO
神様、私はどうも過大な期待を寄せていたようです。
や、でも。だって。現代社会に生まれた夢見る乙女だったら誰でも思うじゃない?
王子様=完璧超人ってさ。
でも、そうでもないらしい。
ここグランエスタードの王子様は、そらもうやんちゃ盛りで、朝から晩まで、いや朝から朝まで城を抜けて遊ぶなんてざららしい。
でも、街の声によると王子様は悪い人間ってわけでもなさそうだ。
案外気さくだったりするらしいし、やんちゃっていってもトンでもないゴシップなんかは聞こえてこない。酒も飲まない。
そういう点に置いて駄目なのは意外や意外、アルスの叔父さんだった。

酒クサい部屋に転がる瓶。中身は多分お酒だったんだろう、口から零れてそれが更に発酵しているみたいで、異様な臭いがした。
よーくみると小バエが無数にたかっていて鳥肌がたつ。
そんな中、床に寝転んでいるのが、アルスの叔父さん――ホンダラさんだった。





551 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:47:15 ID:QJkwVmKCO
ホンダラさんはアリスを見つけるなり、なんとかストーンという石っころを自慢した。

ほら、触ってみろ、あったかいだろ?俺が見つけたんだ、羨ましいか?やらねーよ、金、出すなら話は別だけどな。

酒クサい息を吐き散らしながらアルスに絡む。
あーあ、どこにでもいるもんなんだなぁ、酔っ払い。
私の知る限りのそれらは見境がない。この場合次に絡まれるのはもう決まっている。

ん?なんだこの姉ちゃん。浮気か?アルス、マリベル以外の女と一緒とはな。フン、マリベルより体の凹凸ははっきりしてるが…地味な顔してるな

私を爪先から頭のてっぺんまで見渡してホンダラが言う。

「んなっ……!」
頭に血が昇った。頭の中ぐるぐる言葉が巡るけど出てこない。言葉が喉に詰まる。

こんな時人はどんな風な行動をとるか。


グッと我慢してやり過ごす
怒りを物理的に表現する。






552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 21:48:01 ID:znQtBP+p0
わ〜い支援

553 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 21:49:15 ID:QJkwVmKCO
グッと我慢してやり過ごす
 ニア 怒りを物理的に表現する < ピッ

私は無言のまま腕を振り上げ、そのままホンダラに振り下ろした。
――…はず、だった。

「うわっ」
私の拳は空を切った。
見るとホンダラさんは床に昏倒していた。
「な、何で?え?」
私まだ殴ってないのに…
足元のホンダラさんから視線を上げると、真犯人がにっこり笑った。
…酒瓶を逆手に持って。
「ごめんね、うちの叔父が。」
「…アルス…?」
「大丈夫。死なない!」
「……そう?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

何か確信を持ったアルスの物言いに、内心ガクブルしながら私は納得しようとした。
まあ、アルスが殴ってなきゃ、私が殴ってたわけだし、結果は同じか。
………同じか?
床のホンダラさんは白目剥いて倒れてる。
靴の先でツンツンと突っ突いて見る。
返事がない ただの酔っ払いのようだ …多分
私はそっとホンダラさんに、放り出されていたタオルケットを掛け、目を逸らした。






554 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 22:01:22 ID:QJkwVmKCO
一応顔は広いらしかったホンダラさんが頼りにならないので
(頼りにならないというか、ならなくしたというか…)
私とアルスは町中を歩いて回った。
当たり前だけど、私を知る人はいない。
途中、グランエスタードに着くなり別行動をとったマリベルが買い物をしているのを見た。
どこの世界でも女の子は買い物好きってのは共通事項らしい。

「うーん。見つからないね」
「ごめんね…」
見つかるはずがないのだ。
アルスと一緒に歩き回ってるうちに嫌でも実感させられる。
異 世 界
この3文字。私の世界の常識は通用しない。私の世界には傷を一瞬にして直してしまう『薬草』なんてない。
ここは、私の住む世界ではない。

「謝ることないよ」
アルスは優しく言うけれど、多分こうやって探すことに意味なんてないんだ。

……もう、帰れないんだろうか








555 : ◆kyK/MpMz4o :2007/07/11(水) 22:09:33 ID:QJkwVmKCO
「お城に行こう!」
沈む私の肩を叩いてアルスが言った。
彼はきっと、私の家族が、私の帰る場所がここに、この世界にあることを信じて疑わないんだろう。
いや、別世界なんて考えもしないんだと思う。…当たり前よね。

「お城…そうね、うん行って見よう」

行こう。
私の世界に帰る方法が見つかるか、見つからないか。
どちらにせよ私は決めなきゃならない時なんだ。
帰れない時、私はこの世界で暮らしていくことになる。もしかすると、生涯を。





556 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/12(木) 06:33:32 ID:fd9+4VkDO
乙。
アルス意外といい性格してんなw
いよいよ次は王子登場か。

557 :Stage.6-2 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:19:04 ID:q9+p+guA0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。……なんかさ、この頃シナリオちょっと暗くない? 今回もそうだし」
アルス「いきなり内容に触れるなよ。だから今回いっきに投下する予定になってる。
   それより、まずはサンクスコール!」
タツミ「はーい」

アルス「>>523様、乙ありがと。タツミも言ってたけど、本格的っつーか、
   たま〜にジメっとした話にはなるかもなー」
タツミ「まあこのメンバーなんで、バカやってる方が多いと思いますけどね。
   >>534様、あのピアス男やっぱ怪しいよねー? アルスに変なこと吹き込まないで欲しいな」
アルス「えー? 意外とイイヤツかもしれないだろ。
   そして>>525様……って、ヘニョはやめてー! 定着するー!
   スレトップの【キーワード】にヘニョって入ったらどうすんだよー!!」
タツミ「うはw連呼したら入りそうだなww ヘニョヘニョヘニョ……痛! わかった叩くなって!
   でもほら、>>526様も『悪の組織の手先チック』だと言ってるし、あんまり信用するなよ」
アルス「お前にはマイナスっぽいヤツだしな。まあそれなりに対処しておきますよ」

タツミ「いつもご感想いただいて感謝!」
アルス「ほんと、これがあるから徹夜で書ける」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
 続編 ゲームサイド&リアルサイド

558 :Stage.6-2 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:20:30 ID:q9+p+guA0
 Prev >>517-520 (Game-Side Prev >>458-465)

 ----------------- Game-Side -----------------

「少し、いいかな」
 僕は周囲を警戒しつつ、エリスに小声で話しかけた。
「……はい」
 暗闇の中から、エリスのか細い声が返ってくる。
「死んだ時、生き返ることが "不可能" な条件って、なに?」
 この世界じゃあまりに常識だからか、かえって本なんかには載っていなかった。こんな
時に話したい内容ではないが、こんな時だからこそ早めに確認しておくべきだろう。
「そうですね。自ら命を絶った者は生き返らないケースがあります」
 彼女がゆっくりと答える。知らなかった、自殺は蘇生対象外なのか。
「それから、魂を呼び戻すための器である肉体が必要です。半分もあればいいそうですが」
「つまり、バラバラになったら半分くらいはかき集めろってこと?」 
「ですね」
 ふー。ますます「血はダメだ」とか言っていられなくなってきたな。
 ってかおかしいよこのドラクエ。堀井先生もそこまで生々しい世界を想定して作ってた
とは思えないんだけど。
「あ〜、それで遺体を運ぶときって、やっぱりアレに入れて引きずるの?」
「折りたたみ式の車輪の付いた棺桶が人気があるそうです」
 さいでっか。
「うち棺桶なんか用意してないけど、ふくろに詰め込んでもいいのかな……」
「それだと、教会に渡すとき、うっかりパーツを取り出し忘れたりしそうですね」
 エリスがフフっと笑う。うわー、ありそうだ。
「あとからアイテム出そうとしたら、干涸らびた腕とか出てきたりね」
「それでサミエルなんて『記念にとっておく』って言い出すんですよ」
「やーめれー。なんの記念だよ〜w」

 しっかし僕らも不謹慎な話をしてるよなぁ。まあエリスも笑ってくれたし、少しは気が
軽くなったかな。
 あとは脱出をどうするかだけど……。

559 :Stage.6-2 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:22:27 ID:q9+p+guA0

「勇者様」
 不意に彼女が動く気配がした。やわらかい重さが僕の全身に被さってくる。
 首に回される細い腕。耳元でささやく、優しい声。
「私は、いいんですよ……?」
 エ、エリス!? びっくりして混乱しかかった僕に、彼女はちょっと笑った。
「落ち着いてください、勇者様。あなたは頭のいい人ですから、本当はずいぶん前から、
決断されていたのではないですか?」
 この状況で、どうするのがベストなのか――。
「それでいいんです。冒険には、よくあることですもの」

 ………………頭の芯が、すうっと冷えていくのが自分でわかった。

「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」 
 気がつくと、僕は彼女にこう言い渡していた。
 エリスはどこかほっとしたような、諦めたような、そんな笑顔でコクリとうなずいた。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
「もちろん」
 即答した僕に、彼女は少し迷ってから、そっと唇を重ねた。
 全面的な肯定を態度で示してくれたのだろう。本当に優しい子だなぁ、と思う。


 そして僕はエリスと別れ、一人で通路を歩き出した。
 まずは現在位置をはっきりさせよう。頭の中にピラミッドの地下室のマップを引っ張り
出し、落下した位置と逃げてきた方向を照らし合わせる。たぶん、このあたりは出口に近
い方の区画のはず。例の隠し階段もこの辺だ。
 上に置いてきた二人だが、戦闘面はお任せのサミエルに、お堅い職業の割には機転の利
くロダムがついていればまず心配ない。事前の打合せ通りに他の宝箱をすべて無視し、地
図に従って進んでいれば、もう魔法の鍵を取って脱出してもいい頃だ。
『構うな、鍵を探せ』
 あれは一応、そこまで計算した上での指示だ。

560 :Stage.6-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:24:50 ID:q9+p+guA0

 もう一つ。地下室に散らばっている死体をいろいろ観察しているが、さすがピラミッド
パワーが効いているのか、どれも意外と保存状態がいい。きれいに片付いている地上と違っ
て、地下には死体を食い荒らすようなモンスターもいないようだ。
 以上より、結論はこうなる。

 【さっさと脱出して、3人で彼女を「回収」しに戻った方が早い】

 しばらく進んだところで、後ろからエリスの叫び声が聞こえた。助けを求めるものでは
なく「さっさとこっちに来なさいよ!」とか「やれるものならやってごらん!」なんて、
彼女らしくない威勢の良い啖呵を切っている。
 そこかしこでざわめいていた魔物の気配が、そちらへと流れていくのを感じる。
 僕はただ、敵との遭遇を避けることに専念しつつ、出口を目指して進む。

 本当は、地下に落とされた瞬間にここまでのシナリオはできていた気がする。先刻の
「死」についての談義も、僕はきっと、彼女が自発的に囮役を引き受けるよう促していた
んだろう。……結局、僕は昔からなに一つ変わってないらしい。

   ◇

 途中で何度かミイラに襲われたが、ここでも星降る腕輪が効力を発揮して助かった。
 とはいえ、なんとか地上までたどり着いた時点でほとんど立っていられない状態で、僕
はその場に突っ伏したまま動けなくなった。
「勇者様! ご無事でしたか!」
 その途端にロダムの声が聞こえた。いやはや、僕の計算も大したもんだね。
「エリスがまだ中にいるんだ。案内するから、急いで僕を回復してくれる?」
 可能性は低いけど、まだ間に合うかもしれないし。

 ……が、サミエルとロダムはなにやら戸惑ってて、顔を見合わせたりしている。
 ちょっと、そっちも疲れてるかもしれないけど、早くしないとエリスが可哀想だから。
「それともロダム、MPない? 薬草でもいいよ」
 僕の方は使い切っちゃったけど、ロマリアで買い込んできたからそれは残ってるはずだ。

561 :Stage.6-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:26:09 ID:q9+p+guA0

 だが、彼らの道具袋に手を伸ばそうとしたところで、ロダムに止められた。
「お待ちください勇者様。もうよろしいですから」
「は? なに言ってるんだ、エリスがまだ中にいるんだよ?」
 思わず声が荒くなる。年配の僧侶は、まるで諭すように穏やかに続ける。
「彼女は我々が迎えに行きます。こちらの地図に印をつけてくださればけっこうです」
「俺らの方は全然OKッスから。勇者様のお陰でホントにお客さん扱いで、あのあとまっ
たく敵も出なくて……」
「僕が案内した方が早いって言ってんの。いいからさっさと回復して!」
 さらに言いつのる僕に、ロダムとサミエルはますます困ったような顔をする。

「では言い方を変えましょう。地下に置いてきたということは、彼女を助けに行くので
はなくて、遺体の回収に向かうということなんですよね?」
「そうだね。はっきり言ってしまえば」
「でしたらそこまで急ぐ必要もないでしょう。それに正直なところ、疲弊しているあな
たを連れて行くより、我々だけで向かう方が楽なんです」
 あーなるほど。僕を連れて行くメリットとデメリットを考えると、デメリットの方が
大きいということか。戦闘じゃまだまだお荷物にしかならないもんなw
「了解。確かに二人に任せた方が効率的だね。いいよ、地図貸して」
 差し出された地図に印をつける。回復呪文を受けてる間に、地下での注意点を簡単に
説明して、僕はすぐに二人を送り出した。


「さすが最年長、冷静で助かるね」
 二人とも妙な顔で僕を見てたのは気になるけど、エリスの件はこれで片付くだろう。
 預けられた『魔法の鍵』を見てみる。それは小さくて煤けてて、想像よりずっとみす
ぼらしいシロモノだった。伝説のアイテムといってもこんなもんなんだろうか。

 さてと、みんなが戻ってくる前に、一応あの人にも報告しておこうか。心配してるか
もしれないし……っていうか、イヤミのひとつも言っておかないと気が済まない。
 なーにが「リロードは早めに」だ、バカ勇者。

562 :Stage.6-3 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:28:14 ID:q9+p+guA0

 ----------------- Rial-Side -----------------

 家に戻ってみると、部屋の中は明かりもなく静まりかえっていた。
 玄関にあった女物の靴が無くなっているから、どうやらヤツの母親はでかけたらしい。
もう夜も8時を回っているんだが、こんな遅くにどこに行ったんだろうか。
 そういや俺も連絡すら入れてなかったな。放任主義という情報は正しいようだ。

 タツミの自室に入る。テレビは出かける前に消していたから、ここも暗かった。
 明かりはつけずに、ベッドが寄せてある壁側の窓にカーテンをひく。窓に背を向けてベッ
ドに腰掛けると、ちょうど正面にテレビが来る。
 手元にあったリモコンで――どうにも気が向かなかったが――スイッチを入れた。
 黒光りする鏡でしかなかったモニターが、命を吹き返したように光を放つ。
 が、思ったほどの光量でもない。画面の向こうも夜らしい。
「やっぱピラミッドか……」
 砂漠の真ん中にぽつんと配置されている△の前に、勇者が一人でたたずんでいた。
 あいつ仲間はどうしたんだ。まさか一人旅ってことはないよな。今までろくに連絡を取っ
てないから、まるっきり状況がわからん。
 今なら携帯も繋がるだろう。向こうが電源を切ってなければだが――。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 かけようとした途端、向こうからコールがきてちょっとビビった。
「……よう」
『やほーアルス! 今どこ?』
 なんだ、いきなりテンション高いな。
「お前の部屋だ。画面で見てるが、まさか本当にピラミッドまで来てるとはな」
『ふっふっふ、早いだろ。ダテに4周してませんから』
「鍵はもう手に入ったのか?」
『まあね。取ってきたのは僕じゃないんだけど、その辺の報告しとこうかと思ってさー』

563 :Stage.6-3 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:29:53 ID:q9+p+guA0

 奇妙に軽いノリでしゃべるヤツは、そのまま『実はねー』と続けた。
『ごめんアルス! 君の元カノ、見殺しにして逃げて来ちゃってさ。今サミエルとロダム
が回収しに……って、そうそう、この三人が仲間なんだけど知ってる?』
「ああ、1回目の冒険の最終パーティーだった連中だ」
『え、そうなの? 僕はそんな名前のキャラ作ってないんだけどな』
 そのあたりのズレは俺にもよくわからないが。
 それよりお前――その声。
『なんだっけ。そうだエリスちゃん。いやホントごめん、助けたかったのは山々だったん
だけどさ。力及ばずというか、ぶっちゃけそこらの高校生には荷が重いっていうかw』
「……タツミ」
『だいたいピラミッド最悪だよ、なにあの罠。ありえないって。本当にここはドラクエか
と小一時間問い詰めたい! でもスクエニ本社に問い合わせても意味ないしねー』
「タツミ、落ち着け」
『っていうかアルスが一番ひどいって。こっちは必死だってのに、なにふざけて……』
「タツミ!」

『……………』
 遮られて、急に機嫌が悪くなったみたいに黙り込む。
 参ったな。相手の心情がわかりすぎるだけに、対処に困るというか。
「とりあえず、ちょっと上見てみ。その様子じゃ気づいてないだろ」
 普通は気がつかない方がおかしいってもんだが、俺もあの時は顔を上げる気力もなくて、
しばらくわかんなかったからな。
『は? 上ぇ? なんでさ』
「いいから、騙されたと思って」
『上ってなにが――』
 次の瞬間、携帯の向こうで、はっと息を呑むのが聞こえた。

『…………すごい……星が、降ってる……!?』
「そこな、世界的な流星群の観測地帯なんだそうだ。俺も初めて見たときは、言葉をなく
したよ」

564 :Stage.6-3 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:31:17 ID:q9+p+guA0

 今でも鮮明に思い出せる。
 遮る物のない砂漠の空いっぱいに広がる星の海と、そこから雨のように降ってくる大量
の流れ星と。信じられないくらいきれいで、思わずぽかーんと見上げてたっけ。

「でさ、先にカミングアウトしちまうとな。俺、最初の時そこでかなり泣いた」
『え、泣いた……?』
 タツミがびっくりしたみたいに聞き返してくる。
「泣いた泣いたw だってピラミッドなんて暗いし死体だらけだし、マジこえーじゃん」
 1周目はまだ冒険の進め方もよくわからなくて、序盤の難関のピラミッドでは当然のよ
うに全滅寸前になって。
 古ぼけた小さな鍵を握りしめて、たった一人、命からがら逃げ出して。
「もうやってられっか!って叫んで上見たら、そんなのが一面だもんなぁ。なんか急に切
なくなって、ずいぶん長いこと一人でわんわん泣いてた」
『そんなこと、あったんだ』
「だからさ、お前も我慢すんな。――エリスが死んだのは、お前のせいじゃない」


 しばらく返事はなかった。
 待っていると、やがて少しかすれた声が、途切れ途切れに漏れてきた。
『……でも、僕のミスだし』
 しゃくりあげそうなのを必死にこらえている感じだ。
『こうなること、わかってたのに……僕は、仲間より鍵を優先して』
「まあ指揮官なんだから、目的を優先するのは当然だな」
『でも……女の子を見捨てて、逃げ出しただけで……』
「戦場で男も女も関係ねえよ。その方がいいと判断したことなんだろ?」
『だけど……こんな……僕……勇者なのに……!』
「相手は天下の魔王様だぜ? キレイゴトだけじゃ戦えねっつーの」
『……でも………うぅ……うわぁぁぁぁぁああああ!!!』

565 :Stage.6-3 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:32:41 ID:q9+p+guA0

 はいはい、それでいいんです。
 リーダー張ってるからには、仲間の前じゃなかなか見せられないが。一人になったとき
くらい素直に泣けるようにしとかねえと、この先保たねえぞ。これも冒険のコツだぜ。

 ふと、あいつの言葉がよぎる。
(プレイヤーに同情は禁物ですよ)

 しかしなぁ。後輩クンが昔の俺と同じところで悩んでたら、つい励ましたくなるのが人
情ってもので。
 いや、偽善もいいとこだってのも、わかってるけどさ……。
 俺は画面から目を離して、そのままベッドに寝ころんだ。
 横になったまま、カーテンの端をつまんで隙間から空を眺めてみる。こっちは地上の光
が強すぎて、ただ灰がかった闇がよどんでいるだけだ。

 あの星空も、俺が捨ててきた物のひとつなんだろうな。
 堰が切れたように泣きじゃくるタツミの声を聞きながら、俺はそんなことを考えていた。





566 :Stage.6-3 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 09:34:16 ID:q9+p+guA0
 ----------------- Game-Side Another -----------------
 
「いや〜、あんなつらそうな顔してんのに、自分でわかってないんだもんなぁ」
 地下へ続く狭い階段を下りながら、サミエルは深々と溜息をついた。
「本当はかなりムリしてるんスかね?」
「なんというか……あの子は頭が良すぎるんでしょうな。冷静な考えが先行してしまって、
感情が置き去りにされてしまうというのか」
 ここ数日の付き合いではあったが、ロダムも時折、同じ不安を抱いていた。
 モンスターとの戦闘でも、「血はダメなんだよねぇw」などとヘラヘラ笑っていたが、
その目の奥に押さえつけられている恐怖は本物だった。
 だが、それを表に出したところで意味がないと、理性が先に判断したのだろう。握り込
んだ手が小刻みに震えていたことも、はやり気づいていないようだった。
 今回も、せめて一人にしてあげようと地上に残してきたが、あの少年は一人になったと
ころでそのままのような気がする。なにか切っ掛けがあれば別かもしれないが――。
「えーと、本名なんて言いましたっけ? 珍しい名前でしたよね」
「タツミ=ミツハラですよ」
「だったっけ。呼んじゃいけないとなると、つい忘れるッスよ」


 彼らを迎えにアリアハン城にやってきたその少年は、3人を別室に集めるなり、とんで
もないことを切り出した。
「この世界に、勇者アルスはもういません。僕はその人の代理としてここに遣わされた、
まったく別の世界の人間です」
 いったいなんの話だ? そうロダムが思うと同時に、エリスが立ち上がった。
「ではあなたはアルス様ではないのですか? アルス様はどうなされたのですか!?」
「わかりません。しかし彼は『勇者』ですから、魔王が関わっている可能性は高い。真実
を知るには、やはり魔王を倒す以外に方法はないでしょうね」
 全身から力が抜けたようにガクリと椅子に座り込むエリス。少年はあくまで冷静に、先
を続ける。

567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 09:42:02 ID:vE4EysVeO
自力回避

568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 09:43:48 ID:vE4EysVeO
しかし さるには きかなかった!

規制解除待ち

569 :Stage.6-3 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 10:06:24 ID:vE4EysVeO

「ですので、あなた方は偽りの勇者を掲げて旅をすることになります。注意事項は二つ」
 あとで教えるが、本名では呼ばないこと。アルスの名でも呼ばないこと。
「特にこだわるわけではありませんが、咄嗟の時に対応が遅れる可能性があります。対外
的にはアルスとして通してもらいますが、普段は肩書きで呼んでください」
「勇者様、ですか?」
 エリスがぼんやりと問い返すと、少年はにっこり笑った。
「結構です。ところで、あなたはアルスの恋人だったそうですね? 僕をここに導いたル
ビス様が、あなただけは必ず仲間にしなさいと言っていました」
「え、私を……?」
「アルスには、なくてはならない存在なんだそうです。一緒に来ていただけますか?」
 目に見えて元気になった彼女が、大きくうなずく。そこですかさず、彼はテーブルに3
枚の契約書を広げた。
「ではここにサインをお願いします。あなたがたはどうなされます?」
 実に手際がいい。サミエルがおそるおそる手を挙げた。
「んで、その……あんたは、魔王を倒せるのか?」
 お前は勇者たるに相応しい人物なのか。戦士の質問に対し、少年はやはり顔色ひとつ変
えずに、さらりと言ってのけたのだった。
「倒しますよ。――最短でね」


「俺はハッキリ言って、どっちでも良かったんスよね。オルテガさんに憧れて魔王退治に
出たいだけだったッスから」
 言いながら戦士が剣を抜く。
 新たな獲物を見つけたミイラたちがじりじりと寄ってきていた。
「でも、今は『ほっとけない』って感じッスかねぇ」
「私もですよ」
 あの少年が何者かはわからない。だが彼は確かに、命懸けでこの世界を救おうとしてく
れている。そこにどんな事情があるにせよ。

 子供たちにばかり、苦労させるわけにはいかない。
 二人は全力で武器を振るいながら、仲間の少女の元へと急いだ。

570 :Stage.6-3 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/14(土) 10:11:24 ID:vE4EysVeO
本日はここまでです。
>>563はStage.6-3 [10] の間違いでした。

最後は携帯にメールで飛ばして書き込みました。
さるさんは厳しいなぁ。


571 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 10:56:15 ID:uzBDvQc5O
乙であります!

なんと仲間達は勇者=タツミだって知ってたのか!
端から見たら戦闘は他の3人に押し付けてる風だったけど…
なるほど。納得してそれぞれ働いてるんだね。

今回は本編でアルスとタツミが久々に長めに絡んだけど、和んだって言うか
なんか二人の友情的なものを感じて泣けるでぇ〜。



あとエリス萌え。

572 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:27:43 ID:ENWfM0l90
乙でした!
エリスや仲間達の気持ちとか、アルスとの会話とか、タツミの抱えてるものとか、
なんか説明できないんだけどぐっとくる。頭よすぎるのも考えもんだな…。
ピラミッドは夕日のイメージが強かったけど、星降るつながりで来ましたか。
続きめちゃくちゃ気になります、頑張ってください!





俺はロダム燃え。

573 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:59:54 ID:+0yplX890
エリスさん、いいですね。
生き返れるとはいえ、できれば無事でいてほしいですね。

サミエルさんもロダムさんも、「いい奴」ですね。
ベストパーティーで、無事冒険の目的を達成できるといいですね。

しかし、現実サイドで暗躍するゲームサイド人・・・。
一波乱ありそうですね。

574 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 21:54:03 ID:lsMxx3Yr0
いやーめちゃめちゃ乙
かなりじっくりと読ませていただきました

個人的にいろんなスレでいろんなSSを読んでいるんだけど、
今は◆IFDQ/RcGKI氏のが一番楽しみ

4の人のようにじっくりと続けて欲しいです

575 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:34:52 ID:0YmYRk3X0
○ラダトーム○

ラダトーム・・・・・・・・ここはもょもと達の祖先、アレフが竜王を倒し、ローラ姫と共に
旅立ったという縁の地でもある。

アレフが旅立ち、あれから150年・・・・・町は王国制度というのが廃止され、今は共和国になった国である。
俺の世界で言ったら大統領や総理大臣に当たるものだ。

但し不思議なルールがある。ラルス16世が亡くなった後、ラルスの血を継ぐローラ姫が
アレフと旅立ってしまったため、王家の血がラダトームから途絶えてしまった。

そこで当時の大臣や有権者達は国民の中から王を選び、3年を任期に継続または交代するという
システムを作り上げた。まぁ共和国なので誰でも国の代表者になれるチャンスがあるらしい。
もちろん前任者は国民投票によって継続するか退任するかを決めているみたいなのだが。

って何で俺がこんなこと言っているかというともょもと達が町に入ってしばらくしたら
人が集まってきたのだ。

何でも、もょもとがアレフにそっくりなので人々が集まり、俺達はラダトームの博物館に案内された。

そこにはアレフの使った武器、防具、道具なのが展示されているのだがレヴァティンに関しては
書物より全くなかった。



576 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:35:32 ID:0YmYRk3X0
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。


577 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:01 ID:0YmYRk3X0
>>576はあぼんしてくださいorz

 タケ「(手がかりは無しか)」
 もょ「(まいったな。)」

ムーン「ねえ、みんな。竜王の城に行かない?」

サマル「どうしたんだい?急に。」
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。



578 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:51 ID:0YmYRk3X0
それにしても廃墟とは言え、進めば進むほど綺麗な雰囲気になっていっている。
誰かが最奥にいるんじゃないのだろうか?

タケ「(気がついたか?)」
もょ「(ああ。)」
タケ「(奥に誰かがおるって事や。まさか竜王か?)」
もょ「(それはないだろう。ごせんぞさまがたおしたはずだぞ。)」
タケ「(しかしムーンブルグやドラゴンの角みたいに邪悪な雰囲気は無いんだけどな。逆に引っかかるわ。)」
もょ「(わかった。タケのいういけんにもいちりがある。きをつけるよ。」

どーやら最下層についたみたいだ。
そこは地下とは言えない美しい場所だった。
例えると綺麗な庭園みたいな感じで心地よい場所だ。
しかもしっかり手入れがされてある。

 リア「きれい・・・・・・」
ムーン「これは凄いわね。地下でこんな物が見れるなんて・・・・・・・・」
サマル「それにしてもどうやって作ったんだろう・・・・?」

感心していると誰かがやってきた。初老の人間だ。




579 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:39:35 ID:0YmYRk3X0
 老人「何か用かな?」
 リア「あ、あの・・・」
ムーン「綺麗な場所だなって思いまして。」
 老人「久々に人間が来たもんだからちょっと嬉しゅうてのぉ。ホッホッホ。」
サマル「人間じゃないの?」
 老人「ワシ等は竜人族じゃ。見た目は人間と変わらんがの。」
 もょ「う〜ん、なるほどなぁ・・・・」

このじーさんにこやかに話して来るんだがどーしても引っかかる・・・・・・・・・・

 老人「ちなみに君達は何しに来たんじゃ?」
サマル「あ、ざいほ・・・・」

ムーンがとっさに口を塞いだ。

ムーン「竜王の城がどんなっているのか見学しに来たんです。
      まさかこんなに綺麗な庭園があるとは思いませんでしたわ」




 老人「なるほどなるほど・・・・・・・・・ってあの世に行く準備は出来ましたかの?」





 リア「えっ!?」

じーさんが態度を変えた。

580 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:40:39 ID:0YmYRk3X0

 老人「ふん。忌々しいアレフの子孫共め!我が一族の積年の恨みを晴らしてくれる!!」
 もょ「どういうことだ!」
 老人「貴様はアレフにそっくりだ!ほっかむりをかぶった女はローラに似ている・・・・」
サマル「ま、まさか・・・・」
 老人「ワシは竜人族最後の生き残りのギィン。貴様等に復讐するチャンスが訪れたのだ。嬉しいことは無いわ。」
 リア「ど、どうしよう・・・・」
ムーン「バカ!逃げるわよ!」

ギィン「逃がすか!」

ギィンが紐みたいな物を引っ張ると壁に囲まれた・・・・・・逃げられない!

ギィン「生を掴みたかったらワシを殺すんだな!かかって来るがいい!そして絶望の底に落としてやる・・・」

もょもと&タケ
Lv.16
HP:112/112
MP:  2/  2
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
 もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
 タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ


581 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:12:42 ID:R+MRP4UbO
レッドマン氏キター(゜∀゜)ーーー!!
お帰りなさいませ。具合は良くなりましたか?

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:32:24 ID:XgncK/aJ0
待ってましたレッドマンさん!
久し振りの続編面白!
またいいところで終っちゃってるなぁ
竜王の城が名所扱いになってるのがワロ

583 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 23:45:05 ID:b/E6FKHOO
レッドマンが久々の投下か………

( ;∀;)おかえり

584 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/16(月) 15:11:22 ID:z2PeEpKOO
レッドマン乙!そしてお帰り!!
竜王の曾孫敵なんだ!もょ達で相手になるのか…?



最近新人さんたちが頑張ってるけど、
レッドマン
タカハシ
暇つぶし        この三人は数スレ前から続いてる書き手だから、最後まで応援してる。



総長はまた失踪しちゃったし(´・ω・`)

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/18(水) 00:08:48 ID:A3n3p/VlO
>>◆IFDQ/RcGKI氏
GJ!泣いた。
エリス萌え。そしてアルスや仲間達が格好良かった。
>>レッドマン氏
GJ!そしてお帰り!じいさんの変貌ぶりが笑えた。

確かに。真理奈(漢字間違ってたらスマソ)が恋しい。

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/20(金) 12:22:34 ID:rZcYp+yIO
保守

587 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:18:37 ID:zMYJt4JZ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。あ〜あ、前回は情けないトコ見せちゃったなぁ。
   僕、物心ついた頃から人前で泣いたこと一度もなかったのに」
アルス「マジかよ! 俺もたいがい強情なガキだったが、そこまでひどくなかったぞ」
タツミ「ほっとけw 気を取り直して、サンクスコールいってみよー!」

タツミ「>>571様、はい実は仲間3人、僕がタツミだというのは知っていました。
   慣れない異世界生活の様々な面でサポートしてくれて、本当に助かってます」
アルス「>>572様、ピラミッドは夕日もきれいだぜ。バラモス討伐後は安全度もあがって、
   観光名所になってたからな。ちなみに中の罠は、実は外から切ることもできたりして」
タツミ「うう、アルスが最初から素直に教えてくれてればもっと楽に……まあ過ぎたことだけど。
   でもほんと、>>573様のおっしゃるとおり、すごくいい仲間です。
   エリスは……やっぱり間に合わなかったんですが、蘇生後も笑って許してくれました」
アルス「>>574様、良質なSSがいっぱいある中で一番だなんて、嬉しいこと言ってくれるぜ!
   タツミなんて、こんなワケのわからん主人公なのにな」
タツミ「君も主人公の1人だろうが。>>585様、GJありがとう!
   良かったねアルス、格好良かったって。でもエリちゃん人気あるね〜?w」
アルス「別に? エリスが人気あるのはいいんじゃね? 俺はなんっっっにも思わないけどな」
タツミ「はいはいw」
アルス「なんだよ、なにか言いたいのか。え?」
タツミ「なーにーも。ほら、行数も押してるから、そろそろ始めないと」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part1- 】
 リアルサイド

588 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:22:00 ID:zMYJt4JZ0
  Prev >>558-569
 ----------------- Rial-Side -----------------

 ヴヴヴヴヴ.......! ヴヴヴヴヴ.......!

 頭のすぐ横で妙な音がしている。まくらを通して細かい振動が伝わってきて、ほっぺた
がくすぐったい。
「んあ……なんら?」
 それがマナーモードにした携帯が震えているんだと、俺はようやく気づいた。そう言え
ば昨日、夜間は着信音が出ないように設定しておけとタツミに言われて、そうしたような
覚えがある。
 その後の記憶は曖昧だ。俺はいつの間にか寝てしまったらしい。 
「うに……もしもし、タツミかぁ……?」
『ちょっとタツミはあんたでしょ? なに寝ぼけてんのよ』
「おぁああ!!??」
 予想外に高いキーで返答されて、寝ぼけ半分だった俺の脳ミソはいっきに覚醒した。
「エ、エリス?」
『……ちょっと、エリスって誰?』
 違った、まだ寝ぼけてんな。えーとこの子は、
「片岡百合子?」
『そうですよ。ってかなんでフルネームで呼ぶかな』
 苗字と名前のどっちで呼ぶかまだ決めかねてるからだが。
『まあいいや、おはよう。まったくいつまで寝てるんですか、天才クン』
 ユリコが呆れたように言う。俺、そんなに寝過ごしたんだろうか。
「――ってまだ朝の5時じゃねえか!!」
 時計を見て俺は思わず怒鳴った。電話の向こうでユリコが笑う。
『あはは、起こしてごめんね。とりあえず、出かける支度して降りてきてよ』
「出かけるだぁ? こんな早くにどこ行くんだ」
『いくら平日でも、このくらいの時間に出ないとイイ場所取られちゃうもん』
 なにを言われてるんだかサッパリな俺に、彼女はやはりわからない単語を、実に嬉しそ
うに投げてよこした。
『この季節はやっぱりお花見でしょ! ね?』

589 :Stage.7-1 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:24:21 ID:zMYJt4JZ0

 オハナミってなんだ。しかもこいつ「降りてこい」って言わなかったか?
「もしかして下にいるのか」
『玄関の前で待ってる。お弁当も敷物も用意してるから手ぶらでいいよ』
 おk、レジャー関連のお誘いですね。
 どうすっかな、そういうのは嫌いじゃないが、ゲームの方も気になるし。でも俺の分の
メシまで作って来てるんじゃ、断るのも悪いしな……。
『もしかして今日に限ってなにか用事がある、とか?』
 急に心配そうな声を出すユリコに、俺は「いやいや」と否定した。
「そうじゃないんだ、少し待っててくれ。すぐ折り返す」


 俺はいったん携帯を切って、タツミを呼び出した。
『はいはい、どしたのアルス?』
 タツミの方はワンコールですぐに繋がった。お互いかけても繋がらないってパターンが
多かったから、なんか新鮮だ。
「おう。どうだ、あれから落ち着いたか?」
『え……? そうか、そっちは朝になったばっかりだもんね。おとといはどーも』
 相方が苦笑する。言われて俺も時差のことを思い出した。ピラミッドの夜のことは、向
こうではもう2日前の話になるのか。

 俺が寝る前に消したらしいテレビの電源を入れると、優雅な音楽とともに海原を進む白
い帆船が映った。全体がオレンジ色がかっているから、あっちは夕方のようだ。
「もう船を手に入れたのか。……ってポルトガとバハラタを2日で往復したのか!?」
 とんでもない強行スケジュールだぞ。またこのバカは――。
 俺がムッとすると、気配が伝わったのかタツミは慌てて説明した。
『無理はしてないよ。僕の場合、システム外のショートカットが使えるから。魔法の鍵を
餌に、ロマリア国王からバハラタ座標の入ったキメラの翼をもらって、直行できたんだ』
 そこで、なにか思い出したのか深〜いため息をつく。
『でもそのせいでひずみが出てるのか、なんかストーリーがおかしいんだよねぇ』
「なにがあったんだ」

590 :Stage.7-1 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:26:44 ID:zMYJt4JZ0

『……バハラタに黒胡椒をもらいに行ったら、タニアさんの代わりに僕がさらわれた』
「お前がさらわれたんかよ!」
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシナリオの斜め上を行くんだ。
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
「いやその前に、なぜ勇者がカンダタに拉致られたのか聞きたいんだが――」
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
 ループしやがった。あまり話したくないことらしい。

 まあ俺も人を待たせてるし、そのうち番外で語ってもらおう。
 前回は場合が場合だったから、けっきょくユリコのことも、奨学金やあの不良少年エー
ジとの関係についても、なにも聞けなかったんだよなぁ。
 その辺の確認も、また後回しだな。

「今ユリコから、オハナミに行こうって誘われててさ」
 俺が本題を切り出すと、タツミは急に静かになった。1秒、2秒、3秒。
『あっそう。ユリコがね。うん、いいんじゃない?』
 おや〜、ちょっと引っかかるような言い方だな。しかも普通に名前で呼んでるしぃw
「本・当・にいいのか?」
『なんだよその言い方。いいよ、せっかく現実にいるんだから、楽しんできなよ』
 タッちゃんやーさしー。ではお言葉に甘えさせていただきます。
「んじゃ行ってくるわ。お前もなんかあったらすぐ電話しろよ」
『了解。あ! その前に僕のステータスだけ教えてくれる?』

 そうだった、お互いにそのことを思い出した瞬間に向こうのメンバーが戻って来て、そ
れも後回しになったのだ。
「よし、ステータスウィンドウ出せ」
『えーと? コマンドを思い浮かべればいいのかな』
 ピッという軽い音とともに、画面上に黒いウィンドウが展開される。


 ――その瞬間、俺は言葉を失った。

591 :Stage.7-1 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:28:50 ID:zMYJt4JZ0

『どうしたの』
「あー……詳細ステータスの方を出せるか?」
『やってみる。コマンド>つよさ>ゆうしゃ、かな』
 あいつの言葉に合わせて、画面上で自動的にカーソルが動き、勇者タツミの詳細ステー
タスが表示される。
 なんだこりゃ。こんなステータスってありか?
『ねえどうしたの。そっちからピッピッて聞こえるから、表示は出てるんでしょ?』
 タツミの不安そうな声に、俺はなるべく冷静に事実を告げた。

「実はその――レベルと経験値が『??』でな、最大HPは64だからまあ普通なんだが、
最大MPが999なんだよ。素早さ170は……星降る腕輪の効果か。それでも高い方だな。
賢さが245ってのはどうなんだろう」
『…………なにそのバランスの悪さ。レベル??ってどゆこと。MP999ってなに』
「俺にもわからん。現在のMPは975なんだが、お前、今日なにか呪文使った?」
『まだひとつも使えないよ、呪文の練習なんてしてるヒマないし』
「あ、しかも減った! 今974になったぞ、オイ」
『はぁ? 僕はなにも……あ』
 俺も同時に気がついた。
 もしかしなくても、携帯、だよな?

『えーー!!?? 番外の “携帯の電池がMP” って、あれ冗談じゃなかったの?』
「それに宿屋とかに泊まったあとで最大MPに戻ってないってことは、減った分は増えな
いってことじゃないのか」
『僕のMPはプリペイド式かよ! しかも呪文と電話代の合算請求?』
「ということになるな」
『っもう信じらんない! 電話代もったいないから切るね! 行ってらっしゃい!』
「あ、待てって……」

 ツー ツー
 切られてしまった。しっかし、今後はうかつに長電話できないのか。
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシステムの斜め上を行くんだ。

592 :Stage.7-1 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:32:32 ID:zMYJt4JZ0

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 途端に電話がかかってきた。表示は「YURIKO」になっている。
『遅いからかけたんだけど……やっぱりダメかな?』
 こっちはこっちで最初の元気はドコへやら、ふみ〜んと沈んだ声になってるし。
「大丈夫だ。今行くからもう少し待ってろ」
『良かった! 待ってる』
 ありゃま、ずいぶん嬉しそうだなぁ。

 そういやこの子、タツミに惚れてるんだっけ。
「あのさぁ、やっぱりユリコって呼んでいいか?」
 ちょっと聞いてみる。ぶっちゃけ「カタオカ」って言いにくいし。それに、タツミ君も
本当はそう呼びたいみたいですしね♪
『え? ……うん、あんたがそう言うなら、いいよ』
 ふはは、もじもじしてるのが見ないでもわかるww かわいーじゃんw

 エリスもそういうとこあったなぁ、なんてニヤニヤしつつ、俺は簡単に身支度を整えた。
 出がけに別室をそっと覗くと、いつの間に帰ってきていたのか、ヤツの母親が眠ってい
た。こんな時間に起こすのも悪いから、声はかけないでおこう。
 リビングのテーブルにメモを残して、玄関を出る。


 というわけで、現実生活2日目は友達とレジャーでGO!
 昨日はいろいろあったが、俺の異世界ライフ、まあまあ順調じゃねえ?

 ……向こうはワヤクチャみたいだが、まあ頑張ってくれたまえタツミ君。

593 :Stage.7-1 [オマケ] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:34:20 ID:zMYJt4JZ0

   ◇

アルス「はいこれ、宿スレ定番のステータス。だけどお前の場合、意味あるのかねぇ?」
タツミ「知らないよ! なんだよこれぇ……」

【タツミ】
レベル:??
HP:58/64
MP:974/999(プリペイド式)
装備:E聖なるナイフ、E旅人の服、E星降る腕輪

力:12
すばやさ:170
体力:19
賢さ:255
運の良さ:118
攻撃力:22
守備力:18
Ex:??

594 :Stage.7-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:38:29 ID:zMYJt4JZ0
本日はここまでです。
ここからしばらくはリアルサイドとなります。

タツミ君のステータスが出るのは、たぶん最初で最後な気がします。
しかもさっそく間違えました。賢さは本文でアルスが言ってる「245」が正しいです。

595 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/22(日) 22:06:14 ID:bpKzZS+xO
255が最大値だから、まだあと10上がる余地が…

596 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 00:13:17 ID:RxCmUsPl0
IFDQ/RcGKIさんのSSが楽しみでならない今日この頃。

597 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 18:42:57 ID:fJZrIIgBO
ちょww
二人とも本編で「番外」とか言ってるしw

そういえばリアルサイドはまだまだ明かされてない事多いねぇ。

ともあれGJ!

598 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 21:53:36 ID:02RbB+Cw0
MPプリペイド式ってwww
今後のこと考えると笑い事じゃないんだが、祈りの指輪や魔法の聖水も効かないのかな。

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 23:31:31 ID:geIYf+0Z0
更新ktkr
乙でございます。
エリスさん、無事復活よかった。

すごい呪文が使えるのかとおもったら、まさかこんな罠があろうとは・・・。
リアルサイド、楽しくすすむのかと思えば、なにやら、前回の不良集団や、暗躍するゲームサイド人や波乱の予感。


600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:28:15 ID:4amYMSqk0
4の人の続編をお願いしますm(_ _"m)

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:48:56 ID:qcf7COZc0
俺もその後のストーリーに興味はあるけど、
きれいに完結したものを無理に続けて欲しくはないなぁ。
これで、仮に続編がなんかの理由で完結しなかったら、
あの神作品がまるごと「未完」扱いになっちまうだろ。
それよか新作で心機一転、頑張ってもらいたいと思う。

おっと、これ以上は避難所かな。

602 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 20:44:42 ID:g0vVtQT10
厨にマジレスry>>601


603 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 13:41:47 ID:U3xqoqxLO
保守

604 :Stage.7-2 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:50:03 ID:wKfMMwcN0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
アルス「しかし劇中は春休みですので、俺は今日はお花見に行ってたりします」
タツミ「さくらいろ〜のじだいをわすれなーい〜♪ さて、本日のサンクスコール!」

タツミ「>>595様、まだ上がる余地はあるみたいですが、いまいちピンと来ませんね。
   あと10賢くなるって、どういう感覚なんだろう?」
アルス「>>596様、そんなこと言われちゃったらいろいろサービスするしか!
   夏休みスペシャルでも企画するかぁ」
タツミ「>>597様、リアルサイドの謎って、アルスが変にカッコつけて僕にちゃんと聞かないから、
   おざなりになってるってだけなんですけどね」
アルス「お前がなんか大変そうだったから遠慮してやったんだろうがっ。
   >>598様、こんなプリペイド勇者、心配する必要ないから思い切り笑ってやってくれ」
タツミ「MP節約しないとなぁ。>>599様、エリちゃんを気にかけていただいてありがとうございます。
   僕のフリをしているアルスには、ぜひ大人しくしてて欲しいんですが……無理でしょうね。はぁ」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part2- 】
 リアルサイド 続編

605 :Stage.7-2 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:52:19 ID:wKfMMwcN0
  Prev >>588-593
 ----------------- Rial-Side -----------------

 朝日に照らされた街並みが、のんびりと後方に過ぎていく。窓のすぐ外を等間隔でふっ
飛んでいく柱を見るに、けっこうなスピードなんだろうな――とは思うんだが、初めて乗
る電車は意外と退屈だった。
 風を肌で感じられるラーミアの方が「移動してる」って気はするな……。

 悪い癖がつきかけてる。
 俺は軽く頭を振って、黄金の鳥の幻影を追い出した。ことあるごとに向こうと比較して
懐かしがってたら、この先やっていけない。
「なんか三津原も眠そうだな。俺も倒れそうだよ……ふぁ〜」
 向かいの席で、戸田和弘が大きくあくびをした。
 この長身のスポーツ少年も、片岡百合子に朝早くから駆り出されたとのこと。マンショ
ンの下で再会した俺たちは、「では出発ー!」と腕を振り上げるユリコを挟んで、お互い
に苦笑したのだった。
 朝から元気いっぱいな彼女を少し「ウゼえw」と思わないでもなかったんだが、パステ
ルブルーのワンピースでキメちゃってるユリコちゃんは、ちょっとホンキでかわいいので
俺は許す。カズヒロもそうなんだろう。男って単純よねぇ。

「しかし、あの不良どもをよく振り切れたな」
 俺が聞くと、カズヒロはまたあくびをした。
「あいつら頭悪いからなぁ。こういう言い方はなんだが、所詮、三流高校の連中っつうか」
 そういやあの三人が着てた服、タツミが学校で着てるのとは違ってたっけ。こっちの学
生って、他校の生徒とはほとんど交流が無いものと認識していたが。なんか複雑な背景が
ありそうだ。面倒は避けたいんだがねー。
 カズヒロがちょんと足の先で俺をつついた。
「前にも言ったけど、困ってたら遠慮しないで頼れよ? うちの親父ってほら、市会議員
とかやってっから、あいつらもあんまり俺には手ぇ出してこねえしさ」
「ん、わかった」
 カズヒロの親父さんはエライ人なのか。覚えとこ。

606 :Stage.7-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:53:59 ID:wKfMMwcN0

「お待ちどう。はいどうぞ」
 そこにユリコが戻ってきた。俺とカズヒロに冷たい缶をくれて、となりに座る。
「探したんだけど、豆乳は売ってなかった。お茶で良かった?」
「そうか。いやいいんだ」
 牛乳が体質的に飲めないだけで好き嫌いはねえから、独特の渋みがある「緑茶」も平気。
「お腹空いたでしょう。待ってね」
 ユリコは足下に置いてあったバスケットを膝に抱え上げて、中から半透明の箱を取り出
した。サンドイッチとサラダが、彩り良く収まっている。
「これ朝の分だから、全部食べちゃっていいからね」
「おー、うまそうじゃん」
「いただきまーす」
 あ、うめえ。昨日は結局ロクなモン食ってねえからな。旅してると丸一日食えないなん
てザラだったから苦痛じゃないが、さすがに腹減ってたから幸せだ。
「しっかし片岡も上手になったよなー」
 すぐに二つ目のサンドイッチに手を伸ばしながら、カズヒロが思い出したように笑う。
「俺と片岡、中1ん時に同じクラスだったんだけどさ、家庭科の実習で片岡が作ったマド
レーヌ食って、ハライタ起こしたやつがいたんだぜ」
「マジで?w」
「戸田! もうあんた食べるなッ」
 サッとカズヒロの手からサンドイッチを奪い取るユリコ。すかさず新しいのを取ろうと
した彼から、俺も素早く箱ごと遠ざける。
「だっ、お前ら、なにその連携プレー」
「自分は女の子とご飯の味方っす」
「可哀想に、儚い友情ねぇ」
 一拍おいて、三人で同時に吹き出した。

   ◇

 それから俺たちは二駅目の「サクラ坂台」ってところで降りた。謎の単語「オハナミ」
が出がけに引いた辞書で「花見/桜の花をながめ、遊び楽しむこと。」だとわかったので、
目的通りの地名だ。

607 :Stage.7-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:55:24 ID:wKfMMwcN0

 駅の正面から真っ直ぐゆるい坂が続いていて、その先に、所々淡いピンクに染まった山
があった。
「小学校の何年生だったか、遠足で来たっきりだな」
 カズヒロが懐かしそうに山を見遣る。ユリコが相づちを打った。
「あたしもそうだよ。タツミはその前に引っ越したから、来るの初めてだよね」
 らしいな。ヤツの生まれはこの街だが、幼い頃に遠くに引っ越して、今の高校に入るた
めにまた戻って来たと記憶している。ユリコもヤツの幼なじみではあるが、せいぜいここ
一年の付き合いなのだ。ありもしない「想い出話」に付き合う必要がないから、その辺は
気楽でいい。
 
「このあたりでいいか。三津原、そっち引っ張って」
 20分くらい坂をのぼったところで、カズヒロが敷物を取り出した。俺が手伝ってる間に、
ユリコが風で飛ばないように重石(オモシ)を持ってきて四隅に置いた。
「貴重品だけ持てば大丈夫だろ。この上に広場あったよな。フリスビー持ってきた」
「確かあそこから海も見えたよね」
 荷物を置いてさっそく歩き出した二人の後に、俺もついて行く。
 それにしても、どの木も満開で見事なものだ。
 アリアハン城にもジパングから輸入された木が一本だけあって、エリスと夜中にこっそ
り忍び込んで見に行ったことがあった。月夜の桜もきれいだったな。懐かしい。


「タツミ行ったよー!」
 薄い青空をオレンジの円盤が飛んでくる。背面キャッチ! おーっと歓声を上げる二人
に(かなり力を抜いて)投げ返してやる。
 いいねいいねー。こういう普通のガキっぽい遊び方、憧れだったんだよ。旅の間はどこ
行ってもモンスターの影がちらついて、のんびりできなかったし。
「あ、ごめーん!」
「こーら、どこ投げてんだw」
 その方向は、先が急な坂になっていて、そこを超えると取りに行くのが面倒になる。本
気を出せば取れないことはないけど、ここは追いつけないのが普通かな。

608 :Stage.7-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:56:47 ID:wKfMMwcN0

 見当違いな方向に飛んでいったフリスビーは、たまたまそこにいた男の手に収まった。
坂の手前の大きな桜の木に寄りかかって、男はフリスビーをしげしげと眺めている。
 黒いサングラスに、上下は黒いレザー、かな? そんなのを着ている。風雅な桜の下に、
全体的にタイトなその格好はあんまり似合わない気がした。
「すんませーん」
 投げ返してくれ、の意味で声をかけたが、男は逆に俺に手招きした。まさか「ちゃんと
ここに来て謝れ」ってんじゃねえだろうな。

「すいません。わざとじゃないよ」
 言いながら近づいていくと、男はサングラスを外して胸のポケットに納めた。
「ここ、いい場所だな」
 男の背景には、住宅街が見下ろせて、その遠くにうっすらと青い水平線が見える。
「あっちの二人は友達か?」
 こっちを見て、彼はフッと笑顔を浮かべた。まだ若い、20代前半くらいか。
「ですけど……あの、それ返してくれませんか」
「ああ――」
 男は円盤を持った手をスッと後ろに引いた。そして……思いっきり海の方に投げた。
 唖然とした俺だったが、男がまだニヤニヤしているのを見て、ついカッときた。
「なにすんだよ!」
 そいつの胸ぐらをつかみかけた、その瞬間。
 俺は逆に腕を取られ、坂に投げ出された。

   ◇

「とっとっとととととと、とあー!」
 前転で着地成功! こんくらいの奇襲で無様に転がる勇者様じゃないぜ。
 って、奇襲されたのか俺?
 ザン! と土を蹴る音がする。反射的に横に避けると、一瞬前まで俺がいた場所に、男
のごっついブーツがめり込んでいた。

609 :Stage.7-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:01:06 ID:wKfMMwcN0

「てめ……!」
「あんなくだらないお遊びより、こっちの方が楽しいだろう?」
 男は笑顔のまま、太ももに縛り付けていたホルダーから、刃渡り30センチはあるブレー
ドナイフを取り出した。
 マジかよ。
「タツミ、大丈夫か!?」
 カズヒロとユリコが坂の上で叫んだ。降りてこようとする二人を手で制し、
「来るな!」
 怒鳴り返してから、俺は身を翻した。
 場所を変える。そろそろ増えてきた桜の見物人や、あいつらを巻き込まないためもある
が、なにより俺が思い切り動けねえ。

 桜並木が続く歩道をそれて林道に飛び込むと、男も後を追ってきた。山林の奥まで行け
ば、簡単には第三者の介入もないだろう。
「足も速いな。防御力はどうかな?」
 再び地を蹴る音がする。柔らかい腐葉土の上で音がするって、どんだけの脚力だよ。
 林道のサイドには、散策者が迷い込まないようにか黄色のロープが渡されている。俺は
ロープを通している鉄製の杭を一本引き抜いて、振り向き様、横に払った。
 金属がぶつかる甲高い音が響き渡る。受けた力を手前に逃して、邪魔なロープを相手の
ナイフで切り落とす(いや、わざとやってくれたか)。
 バックステップで距離を取った。
「あっちのヤツ……だよな? 降りかかるメラはギガデインで返すのが俺の流儀だぜ」
「でもこっちじゃ呪文が使えないだろう」
「まあな。名前と理由を述べる気はあるか」
 一応尋ねてみたが、相手は肩をすくめるだけだ。
 あーそう、じゃあもう聞かんよ。――言い訳もな。
「ったく、せっかくの『祝・青春』を3レスで台無しにしやがって、覚悟しろよ」
「覚悟なんてマジメに構えることでもないだろ。これは……お遊びだ」
 左肩をやや下げて、右肘をしぼるように引いてナイフを構える。
 俺と同じ型?
 そう認識したと同時に、相手は一気に間合いを詰めてきた。

610 :Stage.7-2 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:05:29 ID:wKfMMwcN0
本日はここまでです。

次はホントに夏休みスペシャルでもやろうかな、と。
あれ、でもお盆過ぎたら夏休み終わってますか?
それまでにあがらないかも……ダメじゃんw

611 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 18:56:47 ID:Q8ne6+leO
乙でした!
着実にホームシックにかかりつつあるアルス少年16歳にニヤニヤしてたら
また波乱の展開キター-(゜∀゜)!!
同じ型ですか、勇者対勇者とかだと燃えますね。

612 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 00:34:25 ID:hp7T1Iv8O
女勇者も出してほしいです
名前はアリスとかで

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 12:54:58 ID:dQ/vr3cb0
おおお、更新されてるッ!!!
乙です。

黒服ビンテージ男、怖ぇぇぇ・・・。
いくら勇者VS勇者でも武器がないのはきついですね。アルスがんがれーーー。
リアルサイドでは死んだら生き返らないぞー。
(と無責任に応援をする)

エリス→エリちゃんですか。仲良くなって親しみがこもってる感じでいいですよね。
惚れたな?(w

614 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 15:24:38 ID:mbqmMfCLO
GJです!
まさかの勇者対決!!
続きが楽しみで夜も眠れません。

ゆりこ萌え。

615 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 21:06:36 ID:bUuRQZyW0
ゆりこたんもかわいいけど、やっぱり俺はエリちゃん萌えだな。

616 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 22:57:48 ID:Pw4MmSo7O
>>613はビンテージとボンテージ(皮革)を間違えてると思うんだ…

617 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 00:47:53 ID:B9FTepogO
アルスとタツミだけじゃなく、書き手もレベル上がってる感じだなぁ。
マターリとシリアスのバランスが絶妙。


>>振りかかるメラはギガデインで返す
向こう(ゲームサイド)のことわざ?w

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 09:23:17 ID:VMJs1JomO
>>617
ギガデイン使えるのは勇者だけだもの
アルスが自分で考えた格言じゃね?

619 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 16:30:18 ID:5bpRYANeO
小説途中でほっぽってた
ずいぶんスレ進んでんだな

620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 23:16:11 ID:N80Kk7rZO
>>619
おかえり

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 01:04:28 ID:cyYxvVr0O
>>619待ってたよ。

622 :ドラクエ3 ロマリア編3 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 10:49:58 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108

巨大都市、ロマリアはそんな言葉がよくにあうのである。
体調もよくなりカラッカラによく晴れている。買い物日和といえるのではないだろうか。
ぼくらの装備品はもう寿命をこえてぼろぼろになっている。
所持金といえば一万ほどあるのだから、贅沢はできないにしても、一通り装備品をそろえるには十分ある。
サイモンはきのう久々に酒を飲んだせいか、まだ酒がぬけてないみたいだった。
男戦士サイモン「おう、ヒーロー、今日は天地がグルグルまわってんなぁ…」
ヒーロー…ぼくのことらしい。
エリーとナナは一日休んで実に晴れやかな表情をしている。
女武闘家エリー「武闘家といえば、つめの武器なのよ? 素手じゃさまようヨロイにまた苦戦するわよ、…もう」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「防具を新調するだけでだいぶ変わると思うよ」
女武闘家エリー「そうかしら……、うん、そうね…。次の街はあるわよね、きっと」
女僧侶ナナ「新しいバンテージにかえましょうエリー、ね」
女武闘家エリー「切らしてたかな?あ、もうない…あぶなかった」

そんなこんなで楽しい久々の装備新調も終わり、ぶらぶらと買い物をしていた。
ある占い師がぼくらを呼び止めた。
謎の占い師「運命に逆らいし、選ばれしもの達…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「? どなたですか?」
男戦士サイモン「ふうん、なんかみえるのかい?」
謎の占い師「おまえたちはこの旅の末にかけがいのないものを失うぞ。バラモス…いや…。もっと巨大な悪によって…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「旅をやめろと? そういうんですか」
謎の占い師「…この道具を持っておくがいい、運命をかえられるかもしれん」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「これはなんですか?」
謎の占い師「虹のペンダント」
風が吹き荒れるといつのまにか、占い師は消えてしまった。

623 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/07/31(火) 17:49:46 ID:6L8o2ACI0
みなさま、お疲れ様です。
ここまでまとめました。
不備がありましたらご指摘ください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 17:59:56 ID:cyYxvVr0O
>>622
GJ!かけがえのないものを失う…気になるな。

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 18:02:10 ID:cyYxvVr0O
>>623久しぶり!まとめ乙

626 :ドラクエ3 ロマリア編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 20:45:01 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108>>622

ロマリアの占い師…。虹のペンダント……。
これがなんだというのだろう。
男戦士サイモン「すてちまえよ。そんなもん」
女僧侶ナナ「いえ、不思議な波長の魔法力が凝縮されていますよ…強い力と意志力を感じます」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「じゃあ、もっておくよ」
道具ぶくろに入れておくことにした。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ん?」
二人の兵士がぼくらの前に駆け足できた。
女武闘家エリー「なんなの。あんたたちは!?」
ロマリア城の兵士A「あっ、あなたたちが、勇者御一行でありますか!」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…はい、そうですが」
男戦士サイモン「なんなんだい」
ロマリア城の兵士B「わが国王があなたたちにご相談したいことがあるとの事です! とにかく城に来て下さい、お願いします! 緊急をようします!!」
さっさといってしまった。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「何でこの国に来てるって知っているんだろう?」
女武闘家エリー「あなたね…、ルイーダの酒場で登録した冒険者カード持ってるでしょう。それは本人の位置と健康状態を世界中に知らしてるのよ」
なんという恐ろしいカードだ。
魔王にも知られてたりして、………そんなわけないか。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「なんかあったら、助けにきてくれたりするのかな」
男戦士サイモン「戦闘でたおれたりしたら、体がカードに収納されるんだ。全滅したら最寄りの教会にルーラで飛んでいくんだぜ」
ハイテクだ。
なくさないようにしよう。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「よし。それじゃあ買い物は終わったし、城に行こう」
男戦士サイモン「たしかこの国の王サマは遊び人で有名だったぜぇ。…めんどくさいことにならなきゃいいがなぁ」

627 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:40:19 ID:SVgYayco0
次スレの容量になりましたので立てたいと思います。
テンプレを出す前に告知をさせてください。

10スレ目を迎えるにあたり、「10スレを記念して合作を作ろう」企画が進行しています。
誰でも参加可能で、現在話し合いが以下の掲示板にて進行しています。
10スレ記念共同作品 制作進行専用掲示板
ttp://bb2.atbb.jp/ifdqstory/index.php
提案や書いてみたい方など募集中ですのでぜひ参加をお待ちしています。

スレのテンプレですが、お絵かき掲示板とファイルアップローダーも追加しました。
次レスへ書きます。

628 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:41:48 ID:SVgYayco0
スレタイ:もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
----以下テンプレ----
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
----以上テンプレ----

629 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:48:29 ID:SVgYayco0
次スレです
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

合同作品も含め、10スレでもよろしくお願いします。

630 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:30:50 ID:8wfabvRD0
−前編−

まだまだボケる年ではない。
そう思っていたけれど、その考えは改めなくてはならないかもしれないわ。
自分がどこにいるのか、まったく思い出せないのだから。
確かに私は旅行へ出ようとしていた。しかし、飛行機に乗り遅れた。
だからここは旅行先ではない……はずよね。
部屋の中はどこかの地味なホテルの一室のようだった。
窓の外を見ると、どこか外国の田舎の風景のようね。
はっきり言ってまったく知らない場所だわ。つじつまが合わない。
私は家に帰って寝たはずだわ。これは夢なのかしら?
それとも飛行機に乗り遅れたのが夢で本当は旅行に来ていたのかしらね。

「あら、目を覚めましたのね!」
部屋に若い娘が入って来てそう言った。
外国人のようにも見えるけど日本語が達者ね。
このホテルの従業員だろう。もうチェックアウトの時間なのかしら?
そういえばここの宿泊料金はどうなっているのかしら。
ここが旅行先ならお金はツアー会社に払い込んである。だが、そうでないとしたら大変だ。
私は自分の手持ちはいくらくらいあったかしらと考えていた。

ホテル従業員の話では、私はこの町の外に倒れていたらしい。
それを助けてここまで運んでくれたという。お金のことは心配しなくていいとまで言ってくれた。
この世知辛い世の中、奇特な人もいたものだわ。
しかし、どうして倒れていたのか思い出せない。きっとどこかで頭を打ったに違いない。
記憶があいまいなこと以外自覚症状はないが早めに病院に行ったほうがいいわね。
その前に、自分がどこにいるのか確かめなくては。私は従業員に尋ねた。
「すみません。最寄の警察署はどこかしら?」
私の言葉に従業員はきょとんとした顔をしている。
よもやここは日本国内ではないのかしら。私は従業員にここはどこなのかと尋ねた。
「ここはリリザの町ですよ。」

631 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:32:41 ID:8wfabvRD0
リリザ。聞いたこともない地名だわ。私は町の中を歩いてみることにした。
私のいたところはホテルというより宿屋とでも呼んだほうが似合いそうだった。
分からないことだらけだが、私なりに考えてみた。
そして、ひとつの結論に達した。
ここは映画村のようなところなんだわ。
外国風の町並みはドラマや映画を撮るためのものでしょうね。
リリザというのもひょっとしたら『リリ座』という劇団の名前なのかもしれない。

気がつくと私は町の外れに来ていた。
町から出れば都会の町並みが見られると思ったがそうでもなかった。
なんだかすべてが非現実的な気がするわ。
そんなことを考えていたせいか、もっと非現実的なものを見てしまった。

落ち武者だ。

武将というよりは西洋の兵士のような服装だが落ち武者という言葉がぴったり。
その落ち武者はゆっくり私の方に近づくと持っていた槍を構えた。
冗談はやめてほしい。これじゃホラー映画じゃないのよ。
落ち武者はその槍を振り下ろした。

落ち武者の槍は私の後ろにいた大きなねずみに刺さっていた。
こんなねずみ見たことない。保護動物になっていたりしないのかしら。
むやみに珍しい動物を殺したら怒られるだけではすまないかもしれないわ。
そんなことを考えていると落ち武者が叫んだ。
「ムーンブルクの城が陥落した! こんなところにいては危険だぞ!」

どうも映画村という私の考えも間違いだったようだわ。
この落ち武者の人の怪我も特殊メイクには見えない。
そもそも私以外に観光客がいないというのもおかしな話だったのだ。

632 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:33:42 ID:8wfabvRD0
それよりも落ち武者の人の怪我を治療しなくてはならない。
私は彼を無理やりリリザの宿屋に連れて行くことにした。
宿屋の人に迷惑をかけてしまうが我慢してもらおう。
「私は一刻も早くローレシアのお城に……」
などと言っているが、そんなことを気にしている場合ではないわ。

私と宿屋の娘の必死の看病の甲斐もあり、落ち武者君はずいぶん回復した。
しかし、彼はまるで喜んでいなかった。
「私は命に代えてもローレシアの城に行かなければならなかったのに……」
などと泣きそうな顔で言っている。
「私だけが生き残ってしまった……」

この青年は自分の仕事に命をかけているようだわ。
「あなたは仕事熱心なのね。それなら仕事を全うしなくちゃいけないわね。」
男ってみんなこういう考え方をするのかしら。
「いまからでもローレなんとかに行きましょう。それがあなたの仕事なんでしょ?」
女の私にはどうにも理解できないことだ。
「なぜあなたが遅れたのか、私が一緒に言って説明するわ」
理解はできないが、励ますことはできる。
こんなところで腐っているより何かしているほうがいい。

元落ち武者の彼は一緒に来なくていいと言ってきた。
「その代わりサマルトリアへ行ってくれませんか。」
などと頼んできくる。私はよくわからないまま承諾した。
「それで、そこへ行くバスか電車はどこに行けば乗れるのかしら?」

633 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:35:12 ID:8wfabvRD0
……まさか歩いていくことになろうとは。
サマルトリアというのはお城で王様までいるという。ここは日本じゃなかったのね。
とにもかくにも王様にお近づきになれるのはチャンスだわ。
何とか王様に取り計らって日本に帰らなくては。
旅行に行っていることになっている私を誰も探してはくれまい。

私は『せいすい』と呼ばれるものを振りまきながら歩いていた。
こうするとモンスターが近寄ってこないという。
何でもこの辺りでは害獣や害虫をそう呼ぶらしい。

半日ほどかけてサマルトリアのお城らしいところに着いた。
後はあの落ち武者の兵士から預かった手紙を渡せばいい。
さすがに疲れたわ。日ごろからもう少し運動をしておけばよかった。
日本に帰ったら何か運動を始めようと思った。でも、結局しないのよね。

城下町ではよくない噂が広まっていた。それは噂ではなく事実なのだが。
どうやらムーンブルクのお城のほうから煙が上がっているのが見えたらしい。
城に何があったか、わざわざ私が伝えに来ることもなかったかもしれない。
私が煙が見えたなら消防に通報しなさいよと言ったら変な目で見られた。

さすがに単なる旅行者がこんなに簡単に王様に会えるとは思わなかった。
ムーンブルクからの使者だと思われているのかしら。
「せいすい」を使えるなら大丈夫だろうって、どんな基準なのよ。
この国はセキュリティーなんて気にならないほど平和なのかしらね。

私は王様に手紙を渡した。これで私の役目は終わりだわ。
王様は手紙の内容、ムーンブルク陥落に驚いていたようだが覚悟していたようでもあった。
きっとこの国はムーンブルクの同盟国で戦いに協力しなければならないのでしょうね。
平和そうなこの国が戦争に巻き込まれていくのかしら。
なんだかやるせない気持ちになったが私にはどうしようもない。

634 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:36:13 ID:8wfabvRD0
私は自分のことで手一杯なのよ。私は自国へ帰れるように王様に願い出てみた。
しかし、王様は日本を知らなかった。日本の知名度は思っていたより低いのかもしれない。
「お主は違う世界から来たのかも知れぬな。伝説の勇者ロトも異世界より来たと言う。」
この国では伝説や神話が事実とされているのかしら。

「もしそうならば、わが願いを聞いてくれ。息子の旅を手助けしてほしいのじゃ。」
王様の話によれば王家の人間は伝説の勇者であるロトの子孫なのだという。
そして世界に危機が訪れたとき悪を討つことになっているそうだ。
なんとも荒唐無稽な話だ。この人は本気でそんなことを言っているのかしら。

王様は息子を紹介してきた。……まだ子供じゃないの。
私は幼い王子様に旅に出ることに不安はないか聞いてみた。
「伝説の勇者ロトも言っています。『勇者だって暗いのは怖い』って。」
どんなご先祖様よ。とにかく怖いことは怖いらしいわね。さらに王子様は続ける。
「この国を作ったご先祖様の言葉です。『ドッキリだと思えば何でもできる』と。」
……もうちょっとマシな言葉は残せなかったのかしらね。

私は断ろうと思ったが無駄だった。拒否すると『そんな酷い』と訴えかけてくる。
有無を言わせぬ強制力。きっとこれが勇者ロトの力なのね。
結局彼がローレシアの王子と合流するまで旅のお供をすることになった。
……私とこの王子様が2人でいたら周りからどんな関係だと思われるだろうか。
親子というにはちょっと無理があるわよね。

「よろしくお願いします。ええと……」
「私の名前はメグミよ。よろしくね。」
「お世話になりますメグミおばさん。あ、おばさんって呼ぶのは失礼かなぁ。」
そんなことを本人に聞いてどうするのよ。
確かにこのちょっとずれている王子様を一人旅に出すのは不安だわね……

後編に続く

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/01(水) 22:10:38 ID:Tmrywm0z0
新作(?)キター。

メグミお姉さま、乙でございます。
落ち武者さんも助かってよかった。
それにしても、メグミさんはいくつくらいなんだろう・・。
本来の勇者+落ち武者さん+メグミさんでにぎやかになる予感。

ちなみに、このスレは容量制限で、もうすぐ書きこめなくなるようです。
次スレは>>>629です。

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 08:38:54 ID:T1jZlh160
まだ26KBあるからいけないこともない希ガス

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 12:01:40 ID:Za5GHFwF0
自分も埋め用短編を書いているんですが、ちょっと長くなってきました。
1行40文字折り返しで12レスがビッチリくらいだと、足りなくなりますかね……。

638 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:33:17 ID:aEtRfsXsO
>>637
投稿してみて足りなければ続きは新スレに書けばいいじゃない

639 :Stage.? 埋め用番外編 ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:52:07 ID:Za5GHFwF0

タツミ「なんか今回は『埋め用』の番外編やれって」
アルス「あれ、俺はなんも台本もらってないぞ?」
タツミ「そうなの? 僕の方はさっき渡されたよ。まだ中身は見てないけど」
アルス「お前だけってことは、タツミの知られざる過去とか、そんなんじゃねえのか」
タツミ「そういえば今回はリアルサイドで撮影って言われたな。ひとまず指定スタジオに移動するね」
アルス「おう、行ってらっしゃーい」


アルス「でもなんで俺の出番ないんだろ?」

……バタバタバタ!!
???「きゃーん☆ 遅刻しちゃったお〜。タツミくんと一緒に行く予定だったのにぃ。
   すみませんそこのお兄さん、りあるさいどのすたじおって、ドコですかぁ?」
アルス「へ? ああ、えーと……あっち、だけど」
???「りょーかーい! 急がなくっちゃネ♪」
……バタバタバタ!!

アルス「い――いまの格好って……もしや……?」

   ◇

タツミ「すみません遅くなりましたー。着替え室ってどこですか?
   ってガクラン? 僕、中学も高校もブレザーのはずなんですけど……え、パラレル……?
   いや実は、どうせすぐ頭に入っちゃうから、まだ台本読んでなくて―――(パラララ.....)


   ちょ………………………………はい?…………………………………………なにコレ」


640 :斬殺勇者アリスちゃん![1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:53:29 ID:Za5GHFwF0

【第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん!】

 そりゃ確かに現実は厳しいものですし、「誰かゲームに出てくるようなスゴイ人物が、
都合良く味方になってくれないかなぁ」なんて気持ちもあったことは認めますよ。
 でもあくまでゲームはゲームのままであるからこそ、心から楽しめるものだと僕は思う
わけです。よく「異世界の英雄に会ってみたい」なんてアホな夢語るヤツがいますけど、
別に僕はそういうのには、あまり興味はなかったんです。

 なかったん……ですけども!

「やほー、タ・ツ・ミ・く・ん♪ もう朝なんだよ☆ 起きないと遅刻しちゃうよーん♪」
 クリンクリンの可愛らしい声とともに、「彼女」が僕の布団をひっぱろうとします。
 ですが僕は16歳(花のシックスティーン)の健全な男の子でありまして、いかに普段は
品行方正で通っている高校生でも、眠って起きたあとの身体に生じるごく自然な生理的現
象にまで意識的に紳士な態度を貫くことは困難なのであります。
「ダメダメダメー! アリスちゃん! 今はお布団引っ張っちゃらめぇぇえ!!」
 僕は必死で(そりゃもう必死で)抵抗したのですが、なにせLv.99で「ちから」もMAX
値255を余裕で誇っているアリスちゃんは、いともあっさり僕の秘密のベールを剥ぎ取っ
てしまったのでした。

「っもう、タツミくんのお寝坊さん☆ ほらほら、丸くなってないで起きた起きた〜♪」
「ダメだよやめてよアリスちゃん! ああ、首根っこをつかまないで!」
 握力も255(Kg)なんじゃないかというアリスちゃんが、布団の上でうずくまり、前の方
(主に中心部)を懸命に隠している僕の後ろ首をむんずとつかんで、無理やり引き起こそ
うとします。
「ぐ、ごが…や゛め゛…ア゛リ゛ズちゃ゛………!」
 その瞬間、僕の延髄が「ベキェベキャベキャ」と潰れていくのが自分の耳にしっかり聞
こえました。鼻と口からダラダラ血を流しながらガクリとのけぞった僕に、アリスちゃん
は「きゃあ、大変ッ」とまるで「いやーんクッキー焦がしちゃったぁッ」みたいなノリで
悲鳴を上げました。

641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:54:03 ID:LWmhhO5x0
リアルタイム遭遇ktkr

642 :斬殺勇者アリスちゃん![2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:55:49 ID:Za5GHFwF0

「ゴメンねぇ、タツミくん! ベ・ホ・マ〜☆」

 ティロリロリロ♪

 おなじみの呪文とともにどこで鳴っているのか謎な効果音が響き渡り、プロレスラーが
デモンストレーションで潰した空缶のようにひしゃげていた僕の延髄が、みるみる元に戻
ります。
「おっはよ〜だよン、タツミくん♪ サワヤカなお目覚めだネ☆」
「全然サワヤカじゃないよアリスちゃん! 今キレイな川の向こうに死んだおじいちゃん
が見えたよ!」
 ある意味サワヤカかもしれないと思いつつ抗議する僕でしたが、アリスちゃんはニコニ
コしたまま、空中にいくつか浮き上がった小さなフキダシには「?」が一個ずつ書いてあ
るだけです。
「と、に、か、く、ボクのスペシャ〜ルな朝ごはんも用意できて……」
 ふとアリスちゃんが言葉を途切れさせました。大きな愛らしい瞳がパチパチと2、3度
まばたいて、僕の腹部からやや下の方に視線を向けて固まっています。

 あ。

「い……いやぁぁぁあ!!!」
 アリスちゃんは今度こそ掛け値なしの悲鳴をあげて、背中の「王者の剣」をジャキンと
抜き放ちぃぃぃぃぃぃ!!!
「ぃぃぃ落ち着いてアリスちゃん! 朝なんだから仕方なqあwせdrfgtyありす!!!」
 ズゴバァ! と王者の剣が僕の胴体を真一文字に薙いでいきます。僕の上半身と下半身
はそれぞれの方向にキリモミ状態で吹っ飛んでいき、押し入れのフスマに頭から突っ込ん
だ僕は再びキレイな川のほとりに立っていました。

 ティロリロリロ♪

 彼女の回復呪文で、ズルズルズルっと下半身がくっつきます。僕はぜぇはぁ言いながら
フスマから這い出しました。

643 :斬殺勇者アリスちゃん![3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:57:54 ID:Za5GHFwF0

「またやっちゃったぁ。ゴメンねタツミくん。テヘ☆」
 茶目っ気たっぷりに舌を出すアリスちゃん。
「もう、アリスちゃん王者の剣はやめてって……」
 そこで僕は、なにかブニュっとした生モノめいた感触を足の裏に感じました。見ると、
つい先日デパートの精肉コーナーの隅で見かけたカタマリの、もう少し血色のいいモノが
転がっているではありませんか。
「ぎゃあぁぁあ!!! アリスちゃん、なんかしまい忘れてるよぉ!!」
 途端にゴプッと吐血した僕は、三たびキレイな川のほとりへといざなわれたのでした。


   ◇


 僕こと三津原辰巳は、南龍探高校1年生。ちょっとIQが200近かったりジャニーズ系の
カッコカワイイ容姿だったりスポーツもそれなりにーみたいなところはありますが、ごく
普通の男の子です。

 ところが昨日、なにかのきっかけでフッと昔のゲームがやりたくなり、幼少にハマって
いたドラクエ3を始めたときでした。なんと「アリス」と名付けていた最高レベルの女勇
者さんが、突如まばゆい光とともにテレビの画面から飛び出してきたのです!
「ピコピコピコ〜ン☆ ボクはアリス♪ キミを守るためにゲームの世界からやって来た、
正・真・正・銘の、勇者ちゃんだヨーン!」
 そのとき僕は、具現化した彼女の強烈なボディータックルをまともに胸に受け、折れた
肋骨が肺に刺さってのたうち回っていたので、彼女の口上の半分も聞いてあげることがで
きませんでした。
「ああ! ごめんなさい! ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪


644 :斬殺勇者アリスちゃん![4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:59:46 ID:Za5GHFwF0

 彼女が指を空中でクルリンと回すと、僕の胸腔で肋骨が所定の位置に戻っていきます。
「な、な、なんだぁぁああ!!!???」
 僕は循環器系が正常に働き出したと同時に手足をめちゃくちゃに動かし、とにかく彼女
から距離を置こうと部屋の隅まで後退しました。

 目の前には、それはもう愛くるしい笑顔の少女が僕を見つめて小首をかしげています。
 ショートの黒髪には青い宝石が埋め込まれたサークレット。首周りから背中を紫のマン
トが覆い、その下には水色のチューブトップスと同色のミニスカート、足は黄色のスパッ
ツで、土足ブッちぎりの革ブーツといういでたちです。
 ロリロリキュートな表情に似合わず、しっかりばっちり発育しているカラダ。しかも彼
女がズイっとさらに近づいてきたので、トップスの上からタプンと揺れる渓谷がしっかり
見おろせてしまいます。なんという絶景かな。僕はゴクリと唾を飲み込みました。

「実はキミは、大魔王ちゃんに狙われてしまったんだよネ」
 キャロリン♪とサウンドエフェクトがつきそうな可愛い声で彼女が言います。
「大魔王ってゾーマ? なんでゾーマが僕を……」
「でもノープロブレム!なんだヨ♪」
 僕の質問はサクッと無視してガッツポーズをキメるアリスちゃん。
「ボクが絶対にキミを守ってあ・げ・る・か・ら☆」

 もはや宿スレの定義など完璧にドコ吹くです。
 それが僕とアリスちゃんとの、スイートでブラッディなファーストメモリーでした。


   ◇


 朝っぱらから三度も瀕死にされての起床でしたが、遅刻もなにも今日は日曜日です。
 アリスちゃんは週七日サイクルの生活を知らなかったので、いつも通り学校があると思っ
たみたいでした。

645 :斬殺勇者アリスちゃん![5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:02:21 ID:Za5GHFwF0

「なぁんだ、今日はお休みの日だったんだネ! ……じゃあボクもお休みなさーい☆」
「ええ? 寝ちゃうのアリスちゃん!?」
 彼女はモゾモゾと僕の布団に潜り込むと(昨日は押し入れで寝たのですが戻るのが面倒
になったようです)、「スピルル〜…ムニャ」と幸せそうな寝息を立て始めました。
 僕は深々とため息をつきました。僕は二度寝ができないタイプです(人生の大きな損失
だと自分でも思います)。とりあえず顔を洗って朝ご飯を食べることにしました。

 リビングに行くと、アリスちゃんが言っていたスペシャ〜ルな朝ご飯が用意されていま
した。平たくて四角くて真っ黒な物体がお皿の上でおとなしく僕を待っています。デイン
系呪文で一撃された食パンのようです。
 僕はこの炭水化物のなれの果てをリビングの隅にある「燃えるゴミ」に放り込みました。
ふたたび燃やされる運命の食パン君が少々哀れな気もしましたが、僕は七輪ではないので
ほぼ練炭と化した彼を食べてあげることはできません。
 他になにかないかと冷蔵庫をあさってみましたが、見事なまでに空っぽでした。昨晩ま
ではいろいろ入っていたはずですが、どうやらアリスちゃんが朝ご飯の支度中につまみ食
いしてしまったようです。
「仕方ない……コンビニでなんか買ってくるか」
 僕はそう独りごちていったん自室に戻り、眠っているアリスちゃんを起こさないように
そーっと着替えをしました。
 それからなにか書き置きしていこうかとメモ用紙とペンを探しかけたのですが、アリス
ちゃんは起きる様子はないし、こんなワケのわからない女の子がイキナリ同居を申し出て
も「好きにしてちょうだい」の一言で片付ける、放任主義を通り越して無責任きわまりな
い僕の保護者に気を遣う必要もないので、やめました。
「行ってきまーす」
 小さな声で言ってマンションを出ます。


 マンションの裏にまわり、住宅街を200メートルほど歩くと青い看板のコンビニがあり
ます。僕はそこに向かいました。
 と、いつも横切っている小さな児童公園に入ったときです。敷地のちょうど真ん中あた
りに造られている砂場から、突然ボシュ!と光の柱が吹き上がりました。

646 :斬殺勇者アリスちゃん![6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:05:06 ID:Za5GHFwF0

「なんだ……?」
 昨日から不可思議なことが起こりっぱなしでしたので、僕もさすがにこの程度でパニッ
クになったりはしません。
「メラゾーマなんですぅぅ!!!」
 いきなり高いキーの声が響いた瞬間、光の柱から巨大な火球が打ち出されました!
「うわわわわウッキャ〜〜!!!!!!!」
 僕は0.2秒で大パニックに陥り、どうしていいかわからなくてその場にガバッと伏せま
した。火の玉は僕の上を素通りし、道路に停めてあった自動車にあたり、車は無惨に爆発
炎上してしまいます。
「あなたがタツミくんですかぁ?」
 顔を上げると、光の柱がシュウっと細くなって消えていき、中から小柄な少女が一人現
れました。
「き、君は……!?」

 大変です、この女の子もアリスちゃんに負けず劣らずのプリティフェイスです!
 ゆるいカールがかかっている焦げ茶色の髪。ピンクの襟付きマント姿で、緑のゆったり
したローブを着込んでいます。服の上からでもその至福のふっくら感がわかる胸の真ん中
に、大きなペンダントが揺れています。
「あなたがタツミくんで、間違いないですかぁ?」
 僕が言葉につまっていると、彼女は急に瞳をウルウルと潤ませました。今にも泣き出し
そうです。僕は慌てて立ち上がり、彼女に近づいてそのフワフワした髪の毛をポンと軽く
叩きました。
「大丈夫だよ、僕がタツミで間違ってないよ」
 ニッコリ笑いかけます。もちろん斜めから差し込んでいる朝日に白い歯がキラーンと輝
くよう、角度を計算するのを忘れません。
 彼女はフワンと笑顔になりました。見ているこちらまで幸せにな気持ちになるような、
心が洗われる笑顔です。
「良かったですぅ。違う人にメラゾーマしてたら、困っちゃうところでしたぁ」
 困るどころの騒ぎじゃNEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!
 彼女のあまりの可愛らしさに、僕は背後でモクモクと黒煙を吹き上げている自動車の存
在をすっかり忘れていました。

647 :斬殺勇者アリスちゃん![7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:08:46 ID:Za5GHFwF0

 しかも今の話だと、彼女は明確に「僕」に対して攻撃を仕掛けてきたワケです。
「もしかして、キミは魔王の仲間なのかい!?」
 僕が聞くと、彼女はエッヘンと咳払いして両手を腰にあて、プルンと胸を張りました。
「そうですぅ。私は大魔王様の右腕にして上の世界の支配者、魔王バラモス――」
「マヌーサかゴルァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
 僕のコンピュータ並の頭脳は一瞬ですべてを悟りました。
 騙されました騙されました騙しやがったなコノヤロウ。僕の怒りは大空に駆け上る竜神
の如く、1ターンでスーパーハイテンションです!
「貴様カバかぁ! あのモツ好きのカバ親父なのかぁああ!」
 えり首をつかまれてガックンガックン揺すられ、またもや涙目になった相手は必死に首
を振って否定しました。
「ちち違いますぅ! 私は娘のバラミですぅ!」
「へ?」
 バラミと名乗った少女は、僕が手を放すとその場にペタンと座り込んでしまいました。
「ふえ〜ん、タツミくんヒドイですぅぅ」
「あらら、ゴメンねバラミちゃん。ほんとゴメン」
 なんだ娘さんだったのかぁ。こりゃ勘違い。
「いやでも! あの物体からどうしてこんな美少女が!?」
 どう遺伝子改良をほどこしても、あのカバから美少女を造るのは不可能です(断言)。
仮に100%母親似とすると、この子のお母さんもかなりの美女ということになります。カ
バにはあまりに贅沢です、宇宙の摂理が許しても僕が許しません。
「お父様をカバカバ言わないでくださいですぅ。お父様はちょっと個性的なだけですぅ」
「ああ、悪かったよ、個性的なカバなんだね?」
「違いますぅぅ!」
 バラミちゃんはよろよろ立ち上がると、僕を見上げて必死に訴えます。
「大好きなお父様だったのに……アリスちゃんに倒されちゃったんですぅ。でもタツミく
んならお父様を助けられるって聞いたんですぅ!」
「僕が?」
 どうも事情があるようです。
 
   ◇

648 :斬殺勇者アリスちゃん![8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:12:01 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんの話によると、アリスちゃんたち勇者一行に倒された魔王は、しかし完全
に死んでしまうわけでなく、世界のどこかに封じられるだけなのだそうです。
 そしてその封印を解く鍵を持っているのが、この僕、三津原辰巳だというのでした。

「でもねバラミちゃん。悪いけど僕、そんな方法さっぱりわからないよ」
 困惑する僕に、バラミちゃんはますます瞳をウルウルさせます。
「そ、そんなぁ……どうしてイジワルするですかぁ? 教えてくださいですぅ!」
「いやイジワルじゃなくて、本当に知らないんだよ」
 女の子に泣いて頼まれれば、僕だってなんとかしてあげたいと思います。ちょっと殺さ
れかけた過去なんて、もうどうでも良いことです。
 しかし一介の高校生である僕が、異世界の魔王の復活方法を知るはずがありません。
「ふぇ……ふぇえええん……」
 うつむいて華奢な肩を震わせるバラミちゃんに、僕も胸がキューンとなりました。どう
したらいいんでしょう。

「こうなったら……」
 バラミちゃんが低い声で呟きました。彼女の全身からゾワワワっとドス黒いオーラが立
ちのぼり、僕は威圧感に我知らず後ずさりしました。
 クワッと顔を上げたバラミちゃん、目が真っ赤に光っています。まさに魔王の娘!
「拷問してでも吐かしてやりますぅ!!!」
「だから知らないんだってぇ!」
「い・い・か・ら、素直に吐くですぅぅう!!!」
 バラミちゃんが両手を高く掲げます。高圧のエネルギーが凝縮され、宙に巨大な火球が
膨らんでいきます。
「待って! 待ってよバラミちゃん! ってかなんで誰も来ないんだよ!!??」
 これだけ大騒ぎしているのに、公園には他に誰一人やってきません。
「ここは私の結界が張ってあるから、外からは普通の景色に見えるんですぅ!」
 意外と用意周到です。このままでは殺されてしまう! 僕は焦りましたが、星の誕生を
思わせる発動寸前の極大呪文を前に、身体がすくんでしまいました。
 もうダメだ……!

649 :斬殺勇者アリスちゃん![9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:15:25 ID:Za5GHFwF0

「ラ・イ・デ・イ・ンーーーーーー!!!!!!!!!!」

 高らかな詠唱と同時に、鋭い落雷がバラミちゃんを頭上の火球ごと貫きました!
 ピッシャァァァァアアアアン!!!
 すさまじい電力が僕の身体をもバリバリバリっと焼いていきます。ついで破裂した火球
の爆風に吹き飛ばされ、幼稚園児が好きそうな可愛いワンちゃんの背もたれがついたシー
ソーに背中から突っ込みました。
 ズギャリ、と形容しがたい音がしました。仰向けに倒れている僕の腹から、熱で半分溶
けかかってバリイドドッグのようになったワンちゃんが飛び出ています。
「大丈夫タツミくん! 無事!!??」
 珍しく焦ったような声を出してアリスちゃんが駆け寄ってきます。
「き、君が…来るまでは……ね(ガクッ)」
「バラミちゃんってば、なんてヒドイことを……」
 アリスちゃんが僕を抱き起こしました(バリイドドッグがズボっと抜けました)。
「エイッ、ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪

「あ、待っておじいちゃん……!」
 意識を失いかけていた僕は、ハッと目を開けました。
 とっても優しかったおじいちゃん。大好きだったおじいちゃん。おじいちゃんは別れ際
に暖かい微笑みを浮かべ、「頑張るんだよ辰巳」と力強く励ましてくれました。
「うう……おじいちゃん」
 この状況でなにをどう頑張れば良いのでしょうか。

「タツミくんをこんなヒドイ目に遭わせて〜。謝ってよバラミちゃん!」
「やったのはアリスちゃんですぅ!」
 僕の前で、彼女たちはバチバチと火花を散らしてにらみ合っています。火花はまだライ
デインの残滓が残っているだけかもしれませんが、真剣な表情はどちらもホンモノです。
 二人の美少女が僕を巡って争うという夢のようなシチュエーションですが、なぜかちっ
とも嬉しくありません。

650 :斬殺勇者アリスちゃん![10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:18:16 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんは体中あちこち焦げています。髪の毛のカールもチリチリです。
 やがてバラミちゃんはアリスちゃんから視線をはずして僕の方を見ました。ちょっとだ
け悲しそうな顔をしてから、またキッとアリスちゃんをにらみます。
「仕方ないですぅ。今日は大人しく引き上げますぅ。でも次は必ず!」
 バサッとマントの前を閉じると、バラミちゃんの足下にパァ!と光の魔法陣が浮かび上
がりました。彼女が地面に飲み込まれるように消えていきます。
 同時に、空から「パリン」とガラスが割れるような音が聞こえました。それまで気付か
なかったことですが、完全にシャットアウトされていた「世界のざわめき」のようなもの
が、ふっと戻ってきたのを感じました。
 バラミちゃんが張っていた結界が解けたのでしょう。

「……何度でも来ていいヨ。そのたびにボクが、返り討ちにしてあげるから」
 バラミちゃんが消えていったあたりを見つめ、アリスちゃんがグッと拳を握ります。そ
の横顔は、可愛いけれど、どこか凛々しくて、僕はつい見とれてしまいました。
 やはりアリスちゃんは魔王を討ち倒した、伝説の勇者なんでしょう――。



「お、お、俺の車が〜!!!」
「きゃあ、なにこの公園!!?? え、火事? 火事でもあったの?」
 しまったぁ! バラミちゃんの結界が解けて、一般ピープルの方々が公園の異変に気付
いたようです。
「に、逃げるよアリスちゃん」
「うに〜? なんで?」
「いいから!」
 僕はアリスちゃんの手を引いて、騒ぎのどさくさに紛れてマンションに逃げ帰りました。

651 :斬殺勇者アリスちゃん![11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:20:51 ID:Za5GHFwF0


   ◇


 この日の事件について、あとから警察に事情聴取をされたりはしましたが、さいわい僕
たちが原因だと気付いた人はいなかったようでした。
 しかし、アリスちゃんが来てたった二日目でこのざまです。
 この先のことを考えると、僕は暗澹たる気持ちになりました。


 ああ、僕はこれからどうなるのでしょうか。



                 第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん! (完)




652 :斬殺勇者アリスちゃん!atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:21:38 ID:Za5GHFwF0



タツミ「誰かぁ! 誰か止めてくださいぃ! 誰かこの作者を止めてくださいぃぃ!!」
アルス「世界の中心で愛を叫ぶ以上に切なく叫んでるな」
タツミ「冗談じゃないってば! アリスちゃん可愛いけど、これじゃ命がいくつあっても足りないって!」
アルス「こらこらユリコちゃんに言いつけるぞ〜w」
アリス「やほ〜☆ タツミくぅん♪」
タツミ「出たぁぁああ!」
アリス「ダメだよタツミくん、いつ大魔王ちゃんの手下が襲ってくるかわかんないんだから☆
   ちゃんとボクのそばにいないと危険なんだヨ! 死んじゃうかもしれないんだヨ!」
タツミ「君のそばがこの世で一番デンジャーだよ! 僕すでにありえないくらい死にかけたよ!」
アルス「うはww楽しそうでいーねーwww 俺もパラレル番外一本持ちたいなぁ」
タツミ「もう他人事だと思ってぇ〜!」

アリス「以上! 埋め用番外編『斬殺勇者アリスちゃん!』♪
   ここでいったん終了でぇすッ。次回も、お・た・の・し・み・に・ネ☆!」





※本作品は知る人ぞ知る、某ライトノベル「撲殺○使ド○ロちゃん」のパロディです。
※この物語はパラレルです。本編に登場する人物、 団体名とは一切関係ありません。
※次回は、次の次のスレが立ったときに、次のスレの埋め用に書く予定でおります。

 それでは次スレも盛り上がって参りましょう。
 See You Again in Next Sled!!




653 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 17:32:27 ID:LWmhhO5x0
冗談のつもりで言ったアリスまさか採用されるとは・・・・
バラミちゃんはきっとこんなカンジ↓

http://parumezan.sakura.ne.jp/enikki-61.jpg

654 :俺の隣であがけ ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:31:17 ID:e+ZMvCB50

    |                    \
    |  ('A`)      タ・ツ・ミ・ク・ン♪
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   モウアサナンダヨ☆/


    |    !?               \
    |  (゚A゚)         グ、ゴガ…
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄      ヤ゛メ゛…/


    |     ・・・?            \
    |  (;'A`)    ゴメンネェ、タツミクン!
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   ベ・ホ・マ〜☆/

655 : ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:34:25 ID:e+ZMvCB50
◆IFDQ/RcGKさんに便乗してみました、すいません。
>534-541の続きは近いうちに次スレで。

一応次スレ誘導。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

656 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 20:04:19 ID:ZCdxrJ3C0
アリス(レベル99)ちゃん、いいですね。
しかし、何度も殺されそうになるのはなんとも(wwwww

でもやっぱりうらやましいかも。

657 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 15:52:21 ID:WMp+2DRrO
埋めようか

658 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 17:36:03 ID:xEBfrTKl0
そして 夜が明けた

659 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 18:58:11 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

660 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 21:21:46 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    どようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:14:00 ID:B446nPZ00
何を勘違いしているんだ?
まだ金曜日は終わってないぜ!

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:36 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    つきようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:57 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

664 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:29:58 ID:oztQAM/N0
                      - '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
                    /           \
                     /                  ヽ
                   /   __   、、    「l} ヽ
                  {_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、    ヽ  、
                 / /   /7/j/ /\   ヽ  |    500ゲット!
                  /  /rイ /  / ∠/! /\   |  !     次スレはいよいよ大台10スレ目!
                  | /l |/ /、  /  , -ェ-レ'|/i/ヽ_  | /      みんなで盛り上げていきましょう!
                V i レイr、`/  イr、 }    l/⌒j レ′
                   Vヘゞ'    ゞ'     _,) /_」
                     、"<    ""   r┬' \
                     ヽ、 ‐      /! | ト、|-、
                       ` _--‐  ´   |i/ヽ|   ヽ
                      rく__|       |  /ト、___ム_
                    ,.ィ「!__] _   __〉〈 `丶、` - ゝ
                   rく  iヘ |   入 ` ´ j  >   ` ̄ヽ、
                 /  |  ヽヘ  \ヘ   // |       /7、
  、__,、___       /    ヽ  ヽヘ   〜iヽ/i   |      /7/|
  <      `ヽ    /rァ ,、   \  V!  l 十 i   |      j,7/ !
   \, ---、    ト、  マ\゙ ,、    「^!  i 十 i   |     / /  |
    〈 , - ┴、   | |  ノ  \ ,、    \ニ>、   i   |      レ'     |
    V , --f'′  L__! 」__   ヽ ,、  /  丁 ト、  i   |       |      |
     ヽ , -〈     |ーヘ    | ,、 /    |  | \    |     | \

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