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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

42 :ラムと偽牛乳 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:12:03 ID:XRFQec6R0
 前回 >>8-19
【Stage.2 ラムと偽牛乳】

 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者アルスのナビが当てにできないので、僕はさっさとこの世界に慣れることに決めた。

 まずは素直にルイーダの酒場に行ってみる。いつか映画で見たような中世ヨーロッパ風
の薄暗い店内で、3人の男がジョッキを片手に騒いでいる。その男達の他に客の姿はない。
 なんだかガラの悪い連中で、あまり近づきたくない雰囲気だ。仕事が無いのか、夜からの
仕事なのか、どちらにしても昼間から飲んだくれてる人間にまともなヤツはいなさそうだ。
 どっちの世界も一緒だな。

 奥のカウンターで、ハデな化粧のお姉さんがこっちを見てニヤニヤしていた。
 優雅にキセルをふかしている様は、なかなか堂に入ったものだ。そんじょそこらのアラ
クレじゃあ太刀打ちできないしたたかさがにじみ出ている。彼女がルイーダさんかな?
「いらっしゃいよ。話は聞いてるわ」
 チョイチョイと人差し指を手前に倒す。一応僕が噂の勇者様だから遠慮したみたいだが、
そうでなければ、きっと最後に「坊や」とか入っていただろう。

 彼女のセリフで僕の存在に気付いた飲んだくれ達が、人を小馬鹿にするような笑みを浮
かべた。僕がカウンターに着くなり、3人の酔っぱらいは当然のように僕を取りかこむ。
 そのうちの1人が馴れ馴れしく肩に腕を回してきて、酒臭い息を吹きかけた。
「勇者様ぁ、今日が旅立ちでしたっけぇ? こちらにはお仲間を探しにぃ?」
 わかりきってることをわざと聞いている感じだ。
「でもせっかく酒場に来たんだし、勇者様も景気付けに一杯飲んでいかねえかい?」
「もちろんここは、勇者様のおごりでな!」
 3人目の言葉と同時に、全員が爆笑。

 勇者だからって、誰もが諸手を挙げて万歳三唱ってわけでもないんだな。
 まさかいきなりカラまれるとは思わなかった。

43 :ラムと偽牛乳 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:12:42 ID:XRFQec6R0

 出だしから騒動を起こすのもなんだし、ここはヘタに逆らわない方がいいかな……。
「バカ言ってんじゃないよ。勇者様にタカったなんて知れたら、しょっぴかれるわよ」
 ルイーダさんが僕と肩を組んでいた(というかもはや羽交い締め状態だった)男の腕を、
キセルでパンっと叩いた。中の粉が飛んで、2、3度咳こんでしまう。
 それを見て、またもやみんな爆笑。
「いやいや勇者様、もちろんおごれってのは冗談ッスよ?」
「緊張してるみたいだからほぐしてやろうと思っただけだって。なぁ?」
 ふーむ。こんなのに構ってるヒマないんだけどなぁ。
「だっけど勇者様もよぉ、酒場に来たんなら礼儀として、一杯くらいは飲んでいかな……」

 ガシャン!

 いきなり大きな音が店内に響いた。やいのやいの騒いでいた男達がピタリと黙る。
 カウンターにはゴールドの山。王様からもらったお金を、僕が全額ぶちまけたのだ。
「いいよ、飲もう。でもこれじゃ足りないと思うから、ここは飲み比べといかない?」

「ちょっと、無茶すんじゃないよ、坊や!」
 ルイーダさんの顔がこわばった。意外といい人だったり? いや、勇者に悪さをしたら
捕まるぞ、みたいなこと言ってたから、そっちが心配なのか。
 もう遅いけど。

「ここは酒場でしょ、ルイーダさん。お客に酒を出せないの?」
「うおっしゃ、よく言った勇者様!」
「大丈夫大丈夫、これくらいありゃあ、多少アシが出るくらいだぜ!」
「この剣とかも売れば釣りが来るしな!」
 男達が再び大騒ぎしだしたのを横目に、僕は最初の一杯を注文した。

44 :ラムと偽牛乳 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:13:12 ID:XRFQec6R0


「……マジかよ、強すぎだろ……」

 最後の1人が口元を押さえて表に飛び出していったのを、先にダウンした男が見送りつ
つ、呆然とつぶやいた。
 そいつの足下には、もう1人の男がいびきをかいて寝ている。
 しんと静まりかえった店内に、僕がくるくると揺らしているグラスの、カランと氷が
ぶつかる音だけが響く。
「いやぁ、おじさんたちが先にだいぶ飲んでたからだよ」
 僕は残りのロックを一気にあおった。
「あ、あんた、大丈夫なの?」
 ルイーダさんがカウンター越しに手を伸ばして、僕の頬に触れる。
 その手をやんわりと遠ざけて、代わりに空になったグラスを手渡した。
「もちろん大丈夫じゃないよ。さすがに、ちょっと酔ったかも」
 ラムなんて強いお酒で勝負しちゃったしね。

「っぷ……くくくく……アハハハハハ!」
 と、ルイーダさんは突然ゲラゲラ笑い出した。さっきまでの妙にシナを作った笑い方じゃ
なくて、ちょっと中年オバサンが入ってる品のない笑い方だ。
「参ったねぇ。お高く止まった優等生だとばっかり思ってたけど」
「へえ、そんな風に思われてたんだ」
 アルスってば、こっちでも性格悪いって思われてるのかよ。ダメじゃんあの勇者。

「意地悪してごめんよ。仲間を探すんだろ? こっから選んでちょうだい」
 ルイーダさんはボンっと厚い冊子を投げてよこした。
 開いてみると、1人1ページずつ、似顔絵付きで人物紹介がされている。
 これが例の名簿か。

45 :ラムと偽牛乳 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:14:32 ID:XRFQec6R0

「うわー……」
 こっちの世界の文字が普通の日本語として認識できるのはありがたいんだけど。
 パラパラとめくってみて、僕はガックリきた。
 どこまでいっても「Lv.1」ばかりだ。
 いやゲームではそうなんだけど、実際問題、こんな履歴書で本気で雇われたいと思っ
てんのか。ナメてないか?
「――そう言えば、あの人は12だったな」
 城で声をかけてきた「例のアレ頼みますね」の兵士のことを思い出す。
 あの時はろくに話もしなかったけど、彼の胸には城の外門の紋章と同じ形をしたプレー
トが付けられていて、それには「Lv.12」と書いてあったんだよね。
 う〜、いるところにはいるんだよな。連れ出せるなら、あの人がいいんだけど。

 まあだけど、載ってないのも当たり前か。
 とりあえず最後まで目を通した僕は、使い物にならない名簿をカウンターに投げ出した。
「いい加減にしてよルイーダさん、これ全部じゃないでしょ? 何で隠すのさ」

 少し間があった。――それからニヤリと笑うルイーダさん。
「ふふん、勇者の方から言ってきたなら、違反にゃならないからねぇ」
 とか言いながら、奥の階段から2階に上がっていく。

 すぐに戻ってきた彼女は、僕が今持っているのと同じ冊子を持ってきた。
 ただし、こちらの表紙には大きく「特選」と書いてある。
「本当はこっちも見せるべきなんだけど、王様に止められててさ」
 開いてみると、なるほど、特選と銘打ってるだけあってトップページから「Lv.10」だ。
「勇者の指名は断れない、って決まりを先に出しちまったもんだからさ。優秀な人材を引っ
張って行かれるとマズイから、こっちの名簿は見せるなって言われてたんだよ」
 ルイーダさんはあっけらかんと真相を語る。
 おいおい王様、人の良さそうな顔して、それはひどくないか?

46 :ラムと偽牛乳 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:16:19 ID:XRFQec6R0

 特選の名簿には、あの兵士さんも載っていた。サミエルさん。うそ! 22歳? 意外と
若かったんだなー。てっきり30代半ばくらいかと思ってた。
「ああ、サミエルね。ずいぶんあんたについて行きたがってたわよ?」
 ルイーダさんが思い出したように笑顔をこぼす。登録時は相当意気込んでいたようだ。
 ということは「例のアレ」ってのは、旅仲間に指名してくれってことだったのかな。

 その2ページ後で、僕はようやく、目当ての彼女を見つけることができた。

<エリス/魔法使い/女/16歳 「Lv.14」>

 アルスの言っていた魔法使いの女の子。
 さっきの名簿に彼女が載っていなかったからこそ、別冊があると思ったんだ。嫌がらせで
元カノを勧めてきたのに、その子が架空の人間というのもおかしいからね。
 それにしてもLv.14とは。

「じゃあまず、このエリスさんを指名するね」
「あら、別れたんじゃなかったの?」
 ルイーダさんが訝しげに尋ねる。さすが酒場のママ、他人の色恋話には詳しいようだ。
「うん、ヨリを戻したくなって」
 面倒だから適当に答えておく。僕の淡白な対応に、ルイーダさんも簡単に流してくれた。
 「あとはコレを持って本人を迎えに行ってね」と3人分の契約書を渡される。
 「Lv.10」以上ともなると、別の場所で働いている人も多いから、雇い主が迎えに行く
のが習慣らしい。ようやく酒場を出られるな。

「全員お城勤めだから楽でいいわよ。じゃあ頑張ってね♪」
 ルイーダさんは、すっかり僕に気を許した風だ。
 だから僕は最後に、気になっていたことを聞いてみた。
「ねえルイーダさん。もし僕が特選名簿のことに気付かなかったら――
 Lv.1のヒヨッコどもを押しつけて、世界を救えと言うつもりだったの?」

47 :ラムと偽牛乳 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:21:24 ID:Jn/qKYCi0

 今度は、少しの間もなく。彼女は笑顔のまま答えた。
「当然でしょ。どうせあんた、ルビス様の加護がついてんだから簡単に生き返るし」
 ――――了解。
 わざわざ入り口まで見送りに来てくれた彼女を、僕は二度と振り返らなかった。


 店を出ると、外はすでに日が傾いていた。うわ、けっこう長くいたんだなー。
 でも携帯の時計の方は、まだ正午を少し過ぎたあたりだ。ゲーム内の時間と現実時間の
相対比率を考えて、僕は少し気持ちが楽になった。
 始めからレベルの高い仲間を得ることに成功したし、この分なら、探せばまだまだ
ショートカットできるところはありそうだ。うん、思ったより早く戻れるかもしれない。

 さて。
 城に向かう前に、僕は裏路地の井戸に立ち寄った。運良く誰も使ってなかったので、桶に
水を汲んで、路に沿って掘られている側溝まで持って行く。
 側溝にかかっている踏み板を外して、僕はその場に膝をついた。
「ゲホッ…うぇっ……ゲホゴホ!」
 さすがに限界だった。いくらなんでも飲み過ぎだ。量で勝負の安酒なんて、悪酔いするに
決まってる。

 でも気分は悪くなかった。
 あの根性のねじくれた大人達が、呆気に取られている様子は見ものだった。
 まったく――16歳の少年に、いい大人が揃いも揃ってとんでもない大儀を押しつけといて、
よくも「お高くとまった優等生」なんて言えたもんだ。ふざけんな。
 だからアルスだって嫌になるんだよ。

 でも……現実も、同じようなもんなんだけどね。

 手酌で口の中をゆすぎながら、携帯越しに聞いた彼のはしゃいだ声を思い出して、僕は少し、
心が苦しくなった。

48 :ラムと偽牛乳 7/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:22:06 ID:Jn/qKYCi0

 ----------------- Real-Side -----------------

 上着をはおって部屋を出ると、リビングのテーブルにヤツの母親が伏せっていた。
「……いまごろ起きてきたの?」
 顔も上げず、かすれ気味の声で非難してくる。
 そういう自分も昼寝してたんじゃねえのかよ?と突っ込みたかったが、まあ初日はおと
なしくしておこう。
「ちょっと出かけてくるよ」
 普通に声をかけておく。彼女がなにか言っていたが、俺は無視して靴を履き玄関を出た。

 マンションの廊下に出て、エレベーターで1階へ。こういう仕掛けは向こうにもあった
から、大した珍しくもない。
 だが一歩外に出ると、俺は視界一面にあふれている意味不明な記号群に圧倒された。
 「止まれ」とか言葉が書かれているものはわかるんだが、絵だけの表札はハッキリ言っ
てさっぱりわからん。あの青い親子連れはなんだ。人さらい注意?
 もっとも、徒歩の場合は自動車にさえ注意すれば、移動はそれほど難しくないはずだ。
 信号はわかる。何度か夢に見た。赤はNG、青はOK、インパスと一緒だな。

 住宅街の一角に、目の前の住人の日照権を完全に無視した形で立っているデッカイ茶色
の建物がヤツの住居だ。入り口を出てすぐ裏側に回る。こっち側からはマンションのベラ
ンダが見えて、4階の一番右端に今出てきた部屋がある。
 迷子にならないように、この景観を頭にたたき込む。通学路だから、ヤツを通してしょっ
ちゅう見ていた景色なんだが、やっぱり現実に目にすると感覚が違う。
 ここで暮らすからには、こうやって一つ一つ確実に自分の物にしていかないとな。

 ここからコンビニまではそんなに遠くない。マンションの裏手にある小さな公園を横切り、
狭い路地裏を200メートル(単位は俺の世界と同じ。アレフガルドは違ってたけど)も歩く
と、青い看板が見えてきた。
 ところで、このコンビニの看板はなぜミルクタンクのマークなんだろう。
 気になるじゃないか。

49 :ラムと偽牛乳 8/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:23:25 ID:Jn/qKYCi0

 実は俺、牛乳が大好きだ。
 だがイイ女ほど冷たいのと一緒で、あの白磁色の甘い液体は、俺の腹に入った瞬間に
暴れ出す。飲んだ端からすーぐゴロゴロきちまうんだよな。
 だから俺の朝食はいつでも野菜ジュースだ。おふくろは蜂蜜を入れたり、あれこれ
工夫して飲みやすくしてくれてはいたが、やはり牛乳の魅力には敵わない。
 さて、こっちではどうだろう。
 俺はワクワクしながら、縁起の良いマークのコンビニに入った。

 それにしてもスゲエ品揃えだ。こんな狭い敷地内に、いったい何千点のアイテムがあ
るんだか。アリアハンで年に一度開かれる大百貨市でも、店の規模はともかく、これほ
どの種類は集まらないだろう。
 さっそく愛しの牛乳ちゃんが並んでいる場所を目指す。
 もちろんこんな大事な部分はちゃんと予習済みだ。こっちの牛乳は、紙の箱に入って
冷やされてるんだよな? 壁際の方から冷気が漂ってくるから、あっちかね。

 そう言えばレーベの発明ジジイが、低温の食料貯蔵庫を作るとかってはりきってたな。
 エサをやることを条件にスライムつむりにヒャドらせてたら、気がついたら食料みん
な食い逃げされたとか。こっちの「冷蔵庫」を見せたら、どう思うだろ。

「あったあった♪ えーと、メグ…ミル…?」
 赤いパッケージのは他のと比べてちょっと高い。せっかくだからこれにしよう。
 ただ、さすがに1リットルのを買っても飲みきれないから、俺は同じデザインの一番
小さい紙箱、じゃない紙パック(だっけか?)を手に取った。

 と――同じ段の左側に並んでいる、緑色の細長い紙パックが目に入った。
「まめちち?」
 “乳”とつくからには、これも牛乳の仲間だろうか。しかし、「まめちち」って。
 エリスに言ったら泣くだろうなー。いや、俺は大きさも大事だが形も大事だと思……コホン。
「違うな。TO…NYU……とうにゅう、か」
 とうにゅう。とうにゅう。不思議な響きだ。

50 :ラムと偽牛乳 9/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:24:23 ID:Jn/qKYCi0

 俺はついでにソレも買うことにした。勇者たる者、つねにチャレンジ精神を忘れてはな
らない。他にも数点、ツルツルした袋に入った軽い食い物を選ぶ。スナックとかいうやつ。
 持ちきれなくなってきたので、俺は精算することにした。金はレジで、だよな?

 青いシマシマ服を着た姉ちゃんが、カウンターの向こうで、しきりにこっちを気にして
いた。俺は別に変な行動は取ってないはず。他に客もいないからヒマしてるのか、
「それとも――顔がいいからかな〜?」
 一応ゲームキャラですから。まあ美少年と呼んで差し支えはないでしょう。
 とはいえ、俺のプレイヤーが俺にそっくりだっつーのは、ちょっとシャクに障るが。

 そんなことより問題はあれだ。どうやって牛乳を飲めばいいか。これ開け方わかんねーぞ。
 商品を店員の前に並べつつ、俺はさらに頭を回転させた。
 よし! ここは――
「すみません。それ飲んで帰りたいんで、そういう風にしてもらえます?」
 つらっと頼んでみる。店員は怪しむこともなく、牛乳の箱の横に張り付いていた小さな棒を、
箱の上部にプツッと突き刺した。あ、なーる。そうやるのね。
「638円になります。会員カードはお持ちですか?」
 カイーンカード。わからん単語は飛ばすに限る。「ありません」。こまかい貨幣計算はまだ
不慣れなので、俺はヤツの財布から紙幣を一枚抜き出し、渡して様子を見た。足りたようだ。

「ところでお客様」
 釣りを受け取って立ち去りかけた瞬間、姉ちゃんが声をかけてきた。
「そのぉ……」言いにくそうな姉ちゃんは、「ズボンのファスナーが……」と視線をそらす。

「あ、どうも」
 そうか、ここが開いていたのか。確か、こっちでは恥ずかしいことなんだよなー。あはは。

 ……って向こうでも恥ですから! うわー、これで歩いてたのかよ俺!!
 やっぱ緊張してんのかな。

51 :ラムと偽牛乳 10/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:25:24 ID:Jn/qKYCi0

 買い物を終え、俺は店から少し離れたところで立ち止まった。
 コンビニの袋を片手に、もう一方の手には言わずもがな、牛乳のパックを持っている。
 これがビン入りだったら腰に手を当て、斜め45度に向かって仁王立ちで飲みたいとこ
ろだが、そこまで望むのは贅沢というものだろう。いよいよ念願の現実牛乳だ。
 いざ、リアルミルクターイム!

 チュウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーー………………ぷはぁ!

「…………」
「……………………」
「……………………………………マズイ?」
 なんだろう。妙に水っぽくないか? いやこんなもんだっけか? 向こうでも久しく
飲んでないから、味を忘れてるんだろうか。でもなんか違うような気がする。あれ〜?

 しかも腹のあたりで嫌〜な感触がしている。まだ大丈夫だがこれ以上はヤバイ、という
警告らしきものが、胃の腑のあたりで沸々している。
 こんな微妙なもんで腹を壊すのも嫌だ。ちょっともったいない気もしたが、俺は残りを
適当な排水溝に捨てて、空の紙パックをコンビニの袋に入れた。
「楽しみが一つ減っちまったなぁ……」
 まあ仕方ない。牛乳だけが人生じゃないさ。

 
「いいもん。牛乳だけが人生じゃないもん 。・゚・(ノД`)・゚・。」
 俺は公園のベンチに座り、しばらくシクシク泣いていた。本当はめっさショックでした。
 しかし勇者は決して希望を捨てないものだ。俺はコンビニの袋をあさり、謎の「まめちち」
を取り出す。俺はこいつに賭けるぜ!
「でも一応、成分表を見てからだな。……うむ。牛乳は入ってないのか」 
 乳が入ってないのに乳とはこれいかに。
 店員がやっていたように、俺はパックの横についていた細い筒を頂部に突き刺した。
 どれどれ……?

52 :ラムと偽牛乳 11/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:30:21 ID:p/xBX0tk0

 ----------------- Game-Side -----------------

 アリアハン城で3人分の仲間の契約を終えた頃には、すっかり夜も遅くなっていた。
 僕が指名した3人の仲間は、宮仕えの中ではレベルこそまだ中の下くらいらしいが、
どの人も将来を有望視されているエリートで、王様には散々嫌味を言われた。
 だーから、世界を救う勇者に人材の出し惜しみをするなっつーの。

「疲れた〜」
 夜中に帰ってきたにもかかわらず、DQ版お母さんは優しく迎え入れてくれた上に、
夕食も用意すると言ってくれて、すごく嬉しかったんだけど。
 とてもご飯なんか食べる気力もなくて、僕は二階の自室に戻るなり、ろくに着替えも
しないで、そのままベッドに倒れ込んだ。
 明日からはいよいよ本格的に冒険が始まるのだが、そんな興奮も押し寄せる眠気の前
には消し飛んで……

 プルルルルルル! プルルルルルル!

「うはぁ!」
 いきなり鳴り響いた甲高い電子音に、僕は心臓が止まりそうになった。
 反射的に携帯を手にとって確かめると「ARS」と出ている。
 え……アルス? 向こうからかけてくるなんて、もしかしてなんかあったのか?

「どうしたのアルス!? まさか事故にでも遭っ――」
『聞けよタツミー! すげえぞコレ! ウマイってもんじゃねえの! まめちち最高!』
 ぎぃやああ!! ふ、二日酔いの頭にガンガン響くぅぅ!
「はぁ? な、なんだってぇ?」
『だから、まめちち? いやトウニュウ? これマジウマー!』
 こらこらこらこら、ちょっと待て。

53 :ラムと偽牛乳 12/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:31:07 ID:p/xBX0tk0

「うるさいよ! なんだよもー! 何時だと思ってんだよ!」
『あん? 午後3時22分だが、どうかしたか』
「こっちはもう夜中だ! 時差を考えろ!」
『時差ぁ? 知るかよ。それより、まめちち!』
「ワケわかんないっつーの!」
『いいから聞いてくれよ〜! でなきゃこの感動を、俺は誰に伝えればいいんだ!
だって牛乳じゃないんだぞ? 腹ゴロゴロいわねーんだぞ? なのにマッタリとして
コクがあって、それでいて動物性タンパク質にある独特の脂っぽさが無いこの上品な
テイスト! 作ったヤツはもはや ネ申 だぜ! なあ!?』

 ……なんだか知らんが、すっかり現実世界を謳歌していらっしゃるらしい勇者様。
 この様子なら当分はなにも心配なさそうですね。

『しかも、このハバネロってのがまた辛いけどサックリ感が――ッピ』
 通話を切って、今度はこっちから電源をオフにする。
 さらに輪をかけてグッタリ疲れた僕は、

「カンベンシテヨモウ……zzz」

 次の瞬間には、意識を失っていた。

54 :ラムと偽牛乳 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/04(水) 05:35:22 ID:p/xBX0tk0
本日はここまでです。

区切りがわかりづらいので
----- Side-T ----- → ----- Game-Side -----
----- Side-A ----- → ----- Real-Side -----
に変更しました。

55 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:06:59 ID:WalTHzy6O
>>26から続き
見渡す限りの緑が目に痛い。
『参ったな、全く見覚えが無い場所だ・・・。』
思わずその場にへたりこむ、頭を抱えパニックになりそうな頭を懸命に整理しようとする。

『ここはどこだ?全く想像つかんな・・・、そもそも俺は城の稽古場で剣術の修練をしていたはずだ・・・。』

何をどう考えてもこの場所にいると言う事実を説明出来ない、男はまた考えだした。

『もう一度最初から思い出そう、城の稽古場であのくそ女と模擬刀で打ち合っていた・・・。で、あの馬鹿力で叩きのめされて・・・。』

男の脳裏に不吉な考えが浮かび上がる・・・。
『ま、まさか・・・、俺は死んだのか?奴に殺されたのか??なんてこった・・・。』
『いや、俺がそんなやわな男である筈がない。きっと夢か何かだろう。』
『とりあえず腹が減ったな、それに酒も飲みたい』

男は立ち上がり先程の宿屋に入っていった。

56 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:07:59 ID:WalTHzy6O
俺「親父!酒だ!あとなにか肴も持ってこい!!」
店主「貴方は何を考えているのですか?ここは宿屋であって酒場ではありませんよ!」
俺「酒と食い物くらいあるだろ、なんか持ってこい」
店主「ここにはお客様に出す食事しかありません、貴方が泊まると言うなら食事くらい出しますが・・・。」
俺「いや、眠くはないから泊まる気は無い」
店主「でしょうねぇ・・・。ならば町に行ってみてはどうですか?」
俺「何!町があるのか!?」
店主「この宿から東に半日ほど進んだ所にかなり賑わった町がありますよ」
俺「そうか!そこに行けば美味い酒と食い物もありそうだな!うむ、親父!世話になった!」
店主「気を付けてくださいね」


意気洋々と店を飛び出した男、彼の足ならば半日とかからないだろう。

途中獣の気配を感じたが特に出くわす事もなく、半日とかからずに町に到着した・・・。

57 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 14:09:10 ID:WalTHzy6O
〜アリアハン〜

『ずいぶんデカイ町だな、城下町か・・・。』

入口すぐ左手に酒場を発見、「ルイーダの酒場」

『ルイーダの酒場ねぇ・・・。まあ酒だ酒!』

ルイーダ「ハーイ、いらっしゃい」
俺「おう、ねえちゃん酒だ酒をくれ。」
ルイーダ「お酒を出すのもいいけどさ、あんた先に登録書を出すもんじゃ無いかい?」
俺「登録書?なんだそりゃ?」
ルイーダ「あんた大丈夫かい?冒険者の登録書だよ。何年も前から世界中でやってんのに」
俺「聞いたこともないな、ここでできんのか?」
ルイーダ「あんた本当に大丈夫かい?相当な田舎者なんだね。このご時世にここまで何にも知らない男がいたとはね・・・。」
俺「なんでもいいからとっとと登録ってやつをしてくれ!」
ルイーダ「はいはい、わかってるわよ。で、あんた名前は?」
俺「カイエンだ」

58 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:22:02 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「カ・イ・エ・ンっと、珍しい名前だね。で、職業はなんだい?」
カイエン「侍だ」
ルイーダ「侍?なんだいそりゃ、どんな事をやるんだい?」
カイエン「侍とは、弱きを助け、悪を斬る者だ。行動ももちろんそうだが志もたk」
ルイーダ「騎士みたいなもんだね、はいはい・・・。」
カイエン「騎士とはなんだ?俺は侍だ!」
ルイーダ「あーはいはい・・・。ハイッ登録終了よ。」
カイエン「むぅ・・・。」ルイーダ「これが、登録書よ。」
カイエン「うむ・・・。」
ルイーダ「それにしてもあんたずいぶん変わった剣を持っているのねぇ・・・。ちょっと見せてごらんよ」
カイエン「やめろ馬鹿女!武士の魂に気安く触るな!!」
ルイーダ「馬鹿女ですって!そんな事言うならお酒も食べ物も出さないし登録も抹消するわよ!?」
カイエン「ぬう・・・。食べ物をくれないのは困る、ここに来てから何も食ってないのだ・・・。だが刀は触らせん!これだけはダメだ!!」
ルイーダ「そう・・・、まあいいわ。ちょっと待ってなさい今何か持ってきてあげる。」
カイエン「すまんな」

そう言ってルイーダはカウンターの奥に入って行った。

59 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:23:39 ID:WalTHzy6O
『しかし・・・、ずいぶん変だな、夕方の酒場なのに誰もいない。それに壁一面似顔絵にわけのわからん説明文』

おもむろに一枚剥がしとってみる。

『なになに?エリス17歳ピチピチの魔法使いで〜す(はぁと)レベルは1だから魔法はまだまだだけど、恋の魔法はレベル99よん(はぁと)・・・、なんだこりゃ?』

ルイーダ「お待たせ、ってダメよ勝手にとっちゃ〜。」
カイエン「ねえちゃん、こりゃなんだ?」
ルイーダ「ル・イー・ダよ!それはね、勇者様に対する冒険付き添いの嘆願書よ」
カイエン「勇者?嘆願書?」
ルイーダ「あきれた、あんた本当になんにも知らないのね。テドンにでも住んでたのかしら?」
カイエン「??」
ルイーダ「はぁ・・・、説明してあげるわ。」
カイエン「頼む。」
ルイーダ「最近この世界に自ら魔王と名乗る奴が現れたのよ、で、その魔王討伐の為に各国の王様達が共同で作ったのが世界勇者連盟なの。」
カイエン「ほうほう。」
ルイーダ「各国の王様に勇者と認定された人達はこの酒場みたいに冒険者登録所で仲間を募って旅に出る。その付き添い嘆願書がそこに貼ってあるのよ。」
カイエン「ほー、でもさっきのエリスとやらは使い物になるとは思えんな、それに文章の書き方も間違ってる、はっきり言ってアホだ。」
ルイーダ「それが悩みの種なのよー!勇者様と一緒に旅をするってのは大変な事なのよ?魔王に対抗するって事は世界中の魔物に喧嘩を売るようなもんよ。」
カイエン「そりゃそうだ。」
ルイーダ「それだけ大変な旅をするんだから見返りも凄いのよ、金品の受け渡しは原則禁じられてるんだけど世界中どこへでも顔パスで行けるしどこへ行っても超VIP待遇だしね。認定された勇者の中にも表向きだけ魔王討伐を装って裏でいろいろやってるのも多いのよ。」
カイエン「ふーん」
ルイーダ「付き添い志望の中にもそんな甘い汁を吸いたいって輩が出てくるってわけ。」
カイエン「なるほどねぇ・・・。」

60 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:24:35 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「そうそう、あんたも嘆願書作る?」
カイエン「カ・イ・エ・ンだ、俺は別に興味ない。」
ルイーダ「いいじゃない、作るだけでも・・・、ねっ?」
カイエン「なんか気持悪いな、まあいいだろう。」
ルイーダ「うふっ、じゃあまずはレベルからね・・・。ちょっと目を瞑って。」
カイエン「む?こうか?」
ルイーダ「そう、それで何も考えないで心を開いて・・・。」
カイエン「・・・。」
ルイーダ「いくわよ?・・・。」

ルイーダは紙とペンを手元に置き、カイエンの頭に手をかざし何か呪文らしきものを唱えはじめた・・・。

ルイーダ「我、識別の神ディルナと経験の神ソロンの名において汝の全てをここに記す・・・。」
カイエン『おおっ!なんか暖かい・・・。』
ルイーダ「・・・ふう。」
カイエン「終わったのか?」
ルイーダ「ええ、もう終りよ。」
カイエン「で、どうなんだ?」
ルイーダ「どれどれ・・・えっ!!」
カイエン「なんだ、どうした?」
ルイーダ「レベル78・・・あんたムチャクチャね。」
カイエン「それは凄いのか?」
ルイーダ「凄いも何も、レベルだけならあんた世界一よ。」
カイエン「何?」
ルイーダ「他のステータスも信じられない程高いわ、HP8000とか・・・、あんた人間?」
カイエン「失礼な事言うな!」
ルイーダ「あんた一人でも魔王を倒せそうね。」
カイエン「そうか、そんなに俺は強かったのか・・・。」

61 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:30:19 ID:WalTHzy6O
『ピンポンパンポーン』

カイエン「なんだ?」
ルイーダ「来た・・・あの女だ・・・!って事はあんたまさか!!」

ルイーダと二人で酒場を飛び出す、街の住人皆が空を眺めている方を見ると空に女性が映し出されていた。

?『はぁ〜い、皆元気してるぅ〜?皆のアイドルルビスちゃんでぇ〜す!』
カイエン「なんだこの頭の悪そうな女は・・・。」
ルイーダ「創造主ルビス、神よ。」
カイエン「神だと!?」
ルビス『今日はねぇ〜、新しい異世界人が来たから皆に紹介するねぇ〜。』
ルビス『カイエンちゃんって言ってぇ〜なんとレベルが78もあるのよぉ〜!すっご〜い。』
カイエン「ちょっと待て、異世界人ってなんだーーーーー!!」
ルビス『カイエンちゃんはぁ〜、えふえふって世界から来てもらったの。だからこの世界とは強さの桁がぜんぜん違うの。』
ルビス『カイエンちゃんがその気になると魔王ちゃんなんて一撃なんだよぉ〜。』
ルビス『でもねでもね、それだと魔王ちゃんが可哀想だしぃ〜、だ・か・ら、カイエンちゃんはルビスの魔法で弱くしちゃうの、えいっ!』

空に映し出された女がそう言った瞬間!
カイエンの体を光が包みこんだ!

カイエン「うぉぉぉぉぉーーーー!」



62 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:31:12 ID:WalTHzy6O
ルビス『いきなりレベル1にしちゃうのも可哀想だから2にてあげたわ、キャ〜ルビスちゃんったらやっさし〜い!』
ルイーダ「ルビス!あんたあたしの体を元に戻しなさいよ!」
ルビス『その声はルイーダちゃんね、なんのことぉ〜?』
ルイーダ「とぼけるんじゃないよこのアホ女!『ルイーダちゃんってばおっぱい重くて疲れちゃうでしょ?ルビスが軽くしてあげる(はぁと)』なんて気まぐれであたしを貧乳にしやがってぇぇぇ!」
ルビス『アホ女だなんてひっど〜い!ルビスはルイーダちゃんの事を思ってやってあげたのに〜。』
ルイーダ「誰が頼んだ馬鹿女!」
ルビス『アホ女の次は馬鹿女ですって!酷いよルイーダちゃ〜ん・・・。』
ルビス『もう知らないっ!』
ルイーダ「あっ、待て!逃げるな!!」

空に映し出された女性は消えた・・・。

63 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:34:55 ID:WalTHzy6O
カイエン「おい、俺は本当に弱くなったのか?」
ルイーダ「そうね、本当にレベル2だってんならそこら辺のスライムにも苦戦するくらい弱くなったわ。」
カイエン「スライムとはなんだ?強いのか?」
ルイーダ「世界最弱の魔物よ。」
カイエン「なッッ!!」
ルイーダ「同情するわ・・・。」
カイエン「俺が異世界人ってのは本当か?」
ルイーダ「あのアホ女は神なのにアホなのよ、前にも数回あったけど気まぐれで召喚されたのね・・・。」
カイエン「なんてこった・・・。」
ルイーダ「自分は魔王に幽閉されてるのに一体何を考えているのかしら?頭がおかしいとしか思えないわね。」
カイエン「あのアホ女にもう一度会えば俺を元に戻してくれるのか?」
ルイーダ「さあね、でも殺せば元に戻るんじゃない?」
カイエン「そうか・・・。よし、殺そう!」


64 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:36:46 ID:WalTHzy6O
ルイーダ「あたしも付いていくよ、もう我慢の限界だわ。」
カイエン「そうと決まればすぐ出発だ!」
ルイーダ「待って、勇者も連れていった方が何かと便利よ。えーっと・・・、おい、そこの見習い勇者!名前は?」
勇者「(ビクッ!)はい!アレンと言います!」
ルイーダ「アレンね、いい事?たった今から私とアレンとカイエンがパーティよ?おわかり?」
アレン「はっはい!!」
ルイーダ「わかったらさっさと私の酒場で嘆願書にサインしてきなさい。」
アレン「ひっ!」
ルイーダ「早く!」
アレン「ヒイィーー!!」
カイエン「おい、あんなガキで大丈夫なのか?」
ルイーダ「勇者として認定されている人間ってのは素質を見込まれているのよ、だからあんな子供でも鍛えればそれ相応にはなるわ。」
カイエン「ほぅ、相応ねぇ・・・。」
ルイーダ「どれ程になるのか?まではわからないけどね。」
カイエン「頼りねえな。」
ルイーダ「今のあんたよりは強いわよ?」
カイエン「本当にショックなんだ、それは言わないでくれ・・・。」
ルイーダ「ふぅ・・・。まあまずは訓練もかねてナジミの塔へ行くわよ?あんたも一から鍛えなおさなきゃならないしね。」
カイエン「クソッッ!ぜってぇ許さねえぞアホルビス!」


序章end


65 :ただの屍 ◆fOZritkFNE :2007/04/04(水) 20:39:05 ID:WalTHzy6O
とりあえずここまででまた少しロムります。

稚拙な文書ですが、これからも頑張っていきますので何卒ご容赦を・・・。


あとカイエン達のステータスを書き忘れたのでここに書いていきます。

ではでは。



カイエン
Lv78→2
Hp8000→28
Mp600→8
装備
無銘の刀・着物

ルイーダ
Lv12
Hp76
Mp28
装備
皮の鞭・木綿のメイド服・シルバートレイ

アレン
Lv5
Hp36
Mp14
装備
ひのきのぼう・布の服・お鍋の蓋

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 20:45:50 ID:t5xoVVlmO
>>よし、殺そう!
wwwwwwwwwwwwwww

67 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/04(水) 21:05:09 ID:cB/eDgSj0
新スレ&書き手さん達乙です。
少しだけ告知をさせてください。

今回で9泊目。
次スレで10泊目となりますが、
その記念として合同作品を作れないだろうか、と企画しています。
作品構成としては、
執筆者の人数分登場人物を用意して最終的に一つの物語に仕上げていく。
つまり複数の人がドラクエ世界に来たというような設定で、
ドラクエ4のようにそれぞれの物語を書いた上で最後をまとめるという形を考えました。
ですがあくまで案なので、最終的には話し合いで決めたいと思っています。

そこで合作の参加者募集をしたいと思います。
担当は執筆・ネタ出し・編集・その他なんでも結構です。
参加して頂く方の負担はなるべく少ない方がいいかと思うので、
物語の長さは短編か中編くらいと考えています。
実際の作品発表は次スレとなります。

何か書いてみたいという方、使ってみたいネタがある方、
赤ペン先生の方、ぜひ参加をお待ちしています。
避難所のほうにスレを立てておきますので、
詳しくはそちらまでよろしくお願いします。。
では失礼しました。

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 22:05:22 ID:CvbNuZPrO
>>42ー54
ゲームと現実の同時進行とはおもしろいですね!
豆乳に感激するアルスかわいいw
プレイヤーのタツミの方がしっかりしてるっていうのも珍しいかも?
今後が楽しみです。wktkしてます。

69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 00:54:52 ID:fbJbKMLj0
ここで唐突に、書き手さん達に話題提起
荒らしでも煽りでもない、しかし忌避の無い意見って欲しいものなのかな?

70 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 01:08:18 ID:y4CESL9+O
避難所に書くのが好ましいかと・・・。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 08:50:27 ID:riu2JSWm0
>42-54
豆乳に感動するアルスに和んだ。
ヤバイ。めっちゃ面白いこれ。
完結させれば4の人に並ぶ良作になる予感。
それにしても感動してるのが豆乳ってことを除けば現実世界における
普通少年と悪友のやり取りだな。

>69
俺は書き手じゃないけど、あったら良いと思う。
どこが悪いか明確に分かればクオリティ向上に繋がるし
逆に言えば、ナァナァな意見ばかりだと悪い部分に気付かない
ままになってしまうから。

匿名掲示板ってのは読者の感情がストレートに出てくるもの。
そこに投稿するってことは指摘や酷評を受ける覚悟が
出来てるってことだろうからそういう意見はあった方がいいんじゃ
ないかな。

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 10:42:34 ID:kDAdJlw6O
DQ6でネタ考えた
でも、Dat落ちが早くなるかも知れないから載せないほうが良い?

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:20:31 ID:CsuSUuSf0
>>70
俺もそう思う

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:28:34 ID:6FlXYX8T0
>>72
wktk

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 13:58:02 ID:VPs7ravM0
帰ってきておやレスがこんなに伸びてるなっと思ったらなんですかこの大量投下は?

スレにこんなに活気が出てくるなんてすげぇ。
新入りさんもおもしろい。
一回ここで書こうと考えたけどいい文章が思いつかなくてエターなった。

合作とは面白い案だけど、リスク高そうだな。

76 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:07:15 ID:kDAdJlw6O
ちょっと投下してみます
ゆとりが書いたので酷い文章です
 
 
 
酷く疲れた
 
今日は初めて髪が黒以外の色になった
 
なんでもこの学校の寮生には避けて通れないものらしい
 
青色の髪、アニメかゲームキャラのようだ
 
青にしたと言われ鏡を見た時、昔遊んだDQ6を思い出した
 
「(ターニアみたい…かな)」
 
言い忘れたが私は女だ
 
DQ6やりたいな〜だとか、明日は休みだから中古屋を回ろうだとか思っているうちに私の体は重くなり、眠りについてしまった
 
そして不思議な夢を見た
 
どんどん体が沈んでいく、それがベットを突き抜け、空を突き抜け、落ちていく、落ちていく、落ちていく…そして地面に…

77 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:08:30 ID:kDAdJlw6O
叩きつけられる寸前で目を覚ました
かなりファンタジーな夢を見たものだと小さく笑ったが…
 
「ここ…どこ?」
 
どう見ても寮じゃないですどうもありg(ry
 
それはさておき、小洒落たペンションのような部屋に、窓からは子供の遊ぶ声と暖かい陽射しが注がれていた
 
服装は特に変わっておらず、お気に入りのタートルネックにジーパンそれと
 
「持ってたけど着てなかったような…」
 
それと黒のカシミヤのコート
ポケットの中には財布がちゃんと入っていた
とりあえず外に出よう…

78 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:09:51 ID:kDAdJlw6O
受付には宿の主人が暇そうな顔をしてぼーっとしていた
 
「あの〜…」
 
主人は聞く耳を持っていないようだ
シカトですか、いい度胸だコノヤロウ
主人の前に進み出て言う
 
「す み ま せ ん !」
 
「はひぃっ?!」
 
だいぶ驚いたようだ、ザマァミロ
主人はきょろきょろし辺りを見る
私は目の前にいると言うのに
 
「空耳かぁ〜」
 
…こいつ殴っていいですか?
もうどうでもいいや、そんな時主人の後ろに鏡がかけられていた
 
高級感の漂う銀の装飾が施されているようで、ほこりはついていなかった 
井戸のまわりで遊ぶ子供や緑に萌える木々が煌めきながら映し出されていたが──覗き込んだ私の姿は映っていなかった

79 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/05(木) 17:12:45 ID:kDAdJlw6O
本当の投下はとりあえずこれで終了します
 
それからちょっと吊ってくる

80 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 18:26:02 ID:QN1nol5b0
>>75
「合作をやる」という事がなにぶん初めてなので、
どうしてリスクが高いと思ったのか聞かせてもらえませんか?
参考にしたいと思います。


今のところ考えている問題点は、
「複数の書き手がいる状況で、うまく話をまとめられるのか」
という事を一番危惧しています。
まぁそこは試行錯誤という形になってしまうと思いますが……

一応物語のスタートとゴール地点を最初に決めておいて、
それぞれが担当するパートはある程度自由にしてもらう。
という形にしたい思っています。


>>79
お疲れ様です。
青にしなくちゃいけない寮とかwww

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 19:16:16 ID:uaO89Aif0
75じゃないけど。

┼―――┼―――┼―――┼―――┼→エンディング
1     2     3     4     5
っていう風に1〜2の人、2〜3の人…という具合に時間軸で分けてしまうと
どうしても書き手の負担は後半になってくるに連れて増えて行ってしまう。
(DQ4みたいなオムニバス形式でも、1章、2章…と結果的に5章への伏線があるので
時間軸で区切った場合と似てる様な気がする)
その分、クライマックスに近づくにつれて物語の盛り上がり部分を書けるのも
後半の人って事になるだろうけれど、同時に最初の方に張られた伏線も
きっちり回収しなければならない。また、書き手が違えば考え方も違うから
最初の伏線が思わぬ障害になったり(逆で言えば読者の予期しない展開に
なって面白味を増す要素にもなるけど)する。最初に書いた人は後半の人に
うまくバトンを渡さないといけないから、これも地味だけど楽じゃない。
盛り上げ部分の配分とかも、作品全体で調整しなきゃいけないだろうから
各書き手さんたちの綿密な打ち合わせが必要だろうなとも。

もう1つはテーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か。

もう一つ懸念要素は実生活との兼ね合い(もしくはスランプとか)で書き手が継続困難になって
そのパートに穴が空くこと。こうなってしまうと合作どころか話そのものが崩れかねない。
その場合の対処方法も予め決めておいた方が良いと思う。機械じゃないんだから手が止まる事もあるだろうし。
他にも土台にするDQがどのシリーズかとか、この辺も作者の好みが出るだろうし。
そう言った理由から考えて、1つの物語を時間軸で区切ったパートごとに分けて
別々の人達が書いていくのは難しいんじゃないかな?

なんか後ろ向きな事ばかり思いつくだけ書いてみたけど、すごく面白そうだとは思う。参加できるならやってみたいかもw

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 20:13:25 ID:ud5o6gIKO
同じく>>75じゃないけど

やっぱりそのまんま合作というアイディアじゃ>>81さんがあげたような問題があるし、
だったらいっそ共同テーマ、共通ワードをいれた短編作品を書いてみるという方法は?

悪例な気がするけど10スレ記念ということだから、
「お祝い」と「10」というワードをどんな形にせよ盛り込んだ短編を皆で書くとか

83 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 21:14:59 ID:QBWSHixl0
>>81
意見ありがとうございます。
今のところ僕個人の考え方ですが返答させていただきます。

(1)皆で1本物語を書く
 合作として作品を作る際に、まず最初に思い浮かんだのがこれです。
 ですが、おっしゃる通りかなり綿密にやならければならない。
 書く人によって文体も違うので難しそうな感じ。
 なのでこれは無理だろうと思いました。
 つまり時間軸で分けて書いていく事はしない、という事ですね。

(2)同じ設定で執筆者それぞれに物語を書く
 次に浮かんだのはこの形です。
 これだと設定だけ決めて、
 後は各々で書けばいいだけなので(1)よりは楽だろう、と。
 そこで、そこから1歩進んで↓

(3)執筆者の人数分、登場人物を用意して、最終的に一つの物語に仕上げていく
 つまりそれぞれの書き手が書くのは担当する登場人物の物語だけで、
 登場人物が5人なら5人とも時間軸は同じ(場所は別々)と考えています。
 最後のまとめ(DQ4で言うなら5章)はどうするかまだ決まってませんが、
 最低でも全員が集合するところまでは書いてみたい…と思っています。

設定をどう出していくか、そして伏線をどう回収するかは、
最初に決めてしまってから書く事で幾らか回避できるだろうと考えていますが、
どうでしょうか。

伏線は書き手同士で前もって確認して把握しておくのがベストでしょう。
そして書いたものは他の人も目を通しておくと、より良いかもしれませんね。

84 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/05(木) 21:32:57 ID:QBWSHixl0
>>テーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か

書き手が違いますから、それは当然出てくるでしょう。
むしろそれをまとめるのが最後の章になるんじゃないか、
とぼんやりと考えています。
登場人物全員が同じ結論だと面白くないでしょうし。
うまく出来るかどうかは別問題ですが……

そして実生活との兼ね合いですが、確かに難しいですね…
スランプの場合は他の執筆者が協力する。
仕事等で書けなくなったという場合は、代わりが書く。
としか現時点では言えません…
これはきちんと話し合って決めようと思います。

どちらにせよ、
参加者同士で互いの作品をかなりオープンに見せ合いたい、
と僕は考えています。
そうする事で何かの問題にも対処しやすくなるのではないでしょうか。

>>82
いいですね。
それも一つの形として全然アリだと思います。
最終的には参加者の話し合いで決めたいと思っているので、
候補に挙げておこうと思います。


きちんと返答できたか少々不安ですが、
また何か疑問等々ありましたら書き込んでください。
避難所の方でもお待ちしております。

合作は色々と難しいでしょうが、やってみる価値はある、と思います。

85 : ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:34:32 ID:970cVnjU0
こんばんは
珍しくこんな時間にお邪魔します

>>タカハシさん
まとめお疲れさまです
いつも感謝です

>>暇潰しさん
真理奈さんキターーー!!
せつなすぎて涙です。も、ぞくぞくします。鳥肌です。
やっぱすごい好きです。告白です。

>>新人さん方
まとめてしまってすみません
なんだか急激に盛り上がっていてドキドキですが
自分もまだまだ新人なので宜しくお願いします

では前スレ>>667続きです

86 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:35:32 ID:970cVnjU0

更に階段を降りると、フロアは今までに無い暗闇に支配されていた。
明らかに今までの城内とは異なった空気がフロア全体を支配している。
気味の悪い気配がそこかしこを行き来しているような、
異様な雰囲気を感じて俺は立ち止まった。

不意に雷光が窓を貫く。
轟音と共に照らし出された踊り場には
浮遊する得体の知れない何か(人魂、ってきっとこんな感じだろうな)が
幾つも連なって漂っていた。

窓から時折差し込む灯りを頼りに、人魂を避けて慎重に一歩ずつ進む。
人魂のような何かは、こちらに何かしてくるでもなく、
ただそこにふわふわと浮いていた。
降り積もった砂埃が足元でじゃり、と音を立てる度に
その何かが振り向いて襲い掛かってくるんじゃないかと
ありえない(だって俺は知っているのに)想像が脳を過り背筋が凍る。

やっと辿り着いた反対側の階段を駆け下りると、
そこはまたほのかに明かりが差す小さな部屋だった。
ふう、と緊張を解くように息をついてビアンカが
『あれ、なんだったのかしら。別に何かしてくる訳じゃないのね』
と可笑しそうに言った。

87 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:36:59 ID:970cVnjU0

部屋を見回そうと振り返ったとき、不意に空気が揺れるのを感じた。
あ、と思わず声を上げる。
それに気付いたビアンカが俺の見るほうに顔を向け、笑顔を消した。

階段から少し離れた場所。
上品な、王の身なりをした男が、王妃と同じ
悲しいような穏やかな表情をこちらに向けていた。
その体はやはりうっすらと半透明に景色を通し、白く淡い光を纏っている。

声を掛けようと一歩近付こうとした時、
王はするりと地面をすべり片隅にある小さな扉の向こうへ消えていった。
ついて来なさい、とその背中が言っていたように感じた。

扉へ向かおうとする俺に、ビアンカは
『もう、今のってきっと王様よね?
王様も王妃様も、どうしてすぐに何か言わずに消えちゃうのかしら』
言って、少し困ったようにまたくすくすと笑った。

扉を開けると、大広間を見下ろす渡り廊下。
薄闇の中には音楽が鳴り響き、至る場所で至る姿の人間が手をとり踊っていた。
たった一枚の扉越しにも聞こえてこなかったその舞踏会は、
とても華やかとも楽しげとも言えない物だった。
音楽に合わせて聞こえるのはすすり泣く声と
それを囃し立てるしゃがれた不気味な声。

88 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:39:35 ID:970cVnjU0

そろそろと足を踏みはずさないよう、気をつけて進みながら広間を見下ろす。
豪奢な装飾はどれも光を失い、悲しげにくるくると回る人々の影を微かに映している。
薄くどんよりとした空気が部屋中に漂っているようで、俺は息苦しさを感じた。

渡り廊下を抜け扉を開くと、奥の階段の向こう、
小さな扉を抜けていく王の後姿が見えた。
言葉の通り、扉を開閉することもなく
薄く透き通った体は薄い板を通り抜けて扉の向こうに消えていく。

追いかけて扉を開け放つと、城の外壁を回る細い通路だった。
俄かに強い風が吹きつけ、合わせるように雷鳴が唸り声を上げる。
角を曲がり覗き込んだ先、崩れ落ちた通路の手前に王は立ち止まりこちらを見ている。

『おお、ここまで来る勇気のあるものが居ったとは』
王様らしく蓄えた髭の奥で、目を細めながら王はか細い声で言う。
時折鳴り響く雷に掻き消えてしまうのではないかと、
俺は一歩距離を詰めて耳を澄ました。

『もう気付いて居ろうが、何年か前からこの城にゴースト達が住み着いてしまった。
私も妻も、城の皆も、穏やかに眠る事さえ叶わぬ・・・。
どうか願いじゃ。ゴースト達のボスを追い出してはくれぬか?』

>いいえ

を選びたい衝動に駆られたが、思案する一瞬の沈黙の隙にビアンカが
『もちろんよ!ねえ、サン!』と叫んだ。

勝手なことしてくれてんじゃねえよ。
思ったが相手はガキだと自分に言い聞かせ、なんとか拳を収めて俺は「はい」と頷いた。

89 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:41:10 ID:970cVnjU0

『そうか、やってくれるか。そなた達はまことに勇気のある者達じゃ。』
王は満足げに双眸を崩し、深く頷く。
『ゴーストのボスは4階の玉座の間に居る。暗闇に閉ざされた階があったじゃろう?
扉の向こうの奥の階段を上がればすぐに辿り着けるじゃろう』
『サン、行きましょう!』
真後ろから急に裾を引かれて、俺はたたらを踏みながら
駆け出すビアンカを追って走り出した。

『ちょっと待ちなさい。まったく若者はせっかちでいかん』
奥の階段に差しかかろうとした刹那、先回りしていたのか王が俺達の前に立ちはだかった。
『そのまま行っても真っ暗で何も見えんだろう。
大広間を抜けて地下に降りれば台所に松明があったはずじゃ。それを使いなさい』
王は言うとゆっくりと俺達の背後の、下り階段を指さした。

『さあ、あっちじゃ。錆び付いていたドアも開くようにしておいたから、頼んだぞ』
王が言うと、ふうっ、と暖かな風が流れて、掻き消えるように王の姿が闇に溶けて消えた。
『王様も一応手伝ってくれるのね。行きましょ』
くるりと振り返って言うと、ビアンカは今度は俺の手を取って歩き出した。

広間を抜けて地下に降りる。
閉ざされた扉に手をかけると、一瞬暖かな空気が流れ
かちり、と微かな音を立てて扉が開いた。王の気配を感じたが、姿は見えない。

広間の奥、ロビーの隅の小さな階段を降りて、
俺達は何事も無く地下のフロアに足を下ろした。

90 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:43:03 ID:970cVnjU0

気配を感じてキッチンを覗き込む。
透き通った体のコックが一人、中央の大きなテーブルに置かれた
テーブルからはみ出すほどに大きな皿に料理を盛り付けていた。

『松明はどこにあるのかしら・・・』
ビアンカが囁く。
そろりと一歩ずつキッチンに足を踏み入れるが、
コックはこちらには気付かない様子で忙しなく皿の周りを行き来しながら
色鮮やかに皿を料理で埋め続けていた。
時折『もうやめてください』とか『わかってます、わかってますよ』とか
『助けて・・・』とか、姿の見えぬ何かに向かって呟き続けている。

コックの後ろを抜けて奥の物置き場を探る。
手を分けて木箱や壷の中を探していると
壷の底にぽつんと置かれた小さな松明を見つけた。
木の棒に何か模様が織り込まれた布が巻きつけられ、
銀の取っ手と火種らしい金具が設えられている。
『これで暗い部屋も大丈夫ね、良かったわ』
物珍しそうに松明を手にとってビアンカが言った。

音を立てないようにまたこっそりとコックの背後を階段まで戻り、
広間へ続く階段を駆け上がる。

『ねえ、早く行きましょうよ』
そう言って袖を引くビアンカに頷いて、俺達はまた来た道を戻った。
大広間では相変わらず悲しげなダンスが繰り広げられている。
囃し立てるゴースト達を振り落とそうかと思ったが
フロアの中腹辺り、俺の体では手の届かない位置に浮遊している。

91 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:44:31 ID:970cVnjU0
諦めて通路に戻ろうとしたとき、俺達が今までいたその場所に、
その瞬間まで居なかった、白い蝋燭がぽつんと佇んでいた。
丁度俺達の目の高さ。
ちらつくように揺れる点いたままの炎があたりをほんのりと照らしている。

驚いて立ちすくむ俺達の目の前でそれはゆっくりと向きを変えた。
そして大きく開いた口でにたりと笑うと、聞き取れない声で何かを発した。

ごう、と空気を裂いて赤い小さな塊が俺の視界を塞いだ。咄嗟に両手を掲げる。
『サン!』
轟音、熱と耳鳴り。
その向こうから微かにビアンカの声が聞こえた。
呪文を食らったんだとやっと気付く。肌の表面がびりびりと痛む。熱い。

『なにすんのよ!こいつ!』
叫びながらビアンカが鞭を振るうのが、下ろしかけた両腕の隙間から見えた。
敵は床に叩きつけられると、またよろよろと立ち上がり
くすぶった頭上の炎を気にするようにふらりと視線を上げた。
裂けた口の隙間からだらりと赤い舌が覗いている。

痛みを堪えて俺は、鞭を引き寄せるビアンカの脇をすり抜け
まだふらつく敵の顔面に武器を振り下ろした。
不意を突かれた敵はギャア、と叫び声を上げて床に転がり、
ごろりと半回転して動かなくなった。

『サン、大丈夫!?』
思わず尻をついた俺に駆け寄って、ビアンカが心配そうにしゃがみ込む。
両腕はまだひりひりしたが、熱と衝撃で受けた鋭い痛みはゆっくりと引いていた。
「大丈夫」と答えるとまだ不安そうにビアンカが俺の腕を覗き込む。
薄暗く良く見えないが、おそらく真っ赤に腫れているだろう事は判った。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 00:45:00 ID:jjw3OcLx0
支援いたしましょう

93 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:45:59 ID:970cVnjU0

『どうしよう、冷やさなきゃ。
それかどこかで少し休みましょ?お城だって寝室くらいはあるでしょ』
ビアンカの言葉でふと思い出す。
確かここには宿屋があった。
場外に投げ出されるのは少し面倒だったが、宿に泊まれば傷は回復するだろうし
魔力の回復もしておきたかった。

幸い足にダメージは無かった。
立ち上がると俺は「あっちに部屋が」とだけ言って今来たロビーへと歩き出した。

出来ればもう敵には会いたくない。
祈るような気持ちで俺はゆっくりとロビーのドアを開ける。
祈りは届かなかった。
ロビーの中央、丁度俺達の目の高さに、赤茶色い
絵に書いたような“お化け”の形をしたモンスターが、ゆらゆらと浮遊していた。
それは俺達の姿を確認すると、にたりと舌を出して両腕を振り上げた。

『なんなのよ!もう!』
怒ったようにビアンカが鞭を振るう。
追い討ちをかけて俺が武器を振ると、あっさりとモンスターは沈黙した。
半透明に横たわる死骸を跨いで俺達はロビーに足を踏み込む。
案の定、階段の脇にさっきは気がつかなかった扉があった。
開いて中に入ると、カウンターが据え付けてあり
その向こうには炎のような人魂のようなものが揺れている。

カウンター越しに覗き込むと?人魂は『なんだい客かい?』と面倒くさそうに言い、
『奥のベッドが空いてるから、勝手に休みな』と吐き捨てるように言った。

94 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:47:14 ID:970cVnjU0

言葉に従って奥を覗き込むと、意外にも
真新しげな白いシーツの掛けられたベッドが二台、並んで置いてある。
『なんだか気持ち悪いけど、いいわ。サン、少しでも休まなきゃ』
聞き終わらないうちに俺は手前のベッドに倒れ込んだ。
ビアンカの心配そうな気配が通気を伝って俺にも感じられたが、答える余裕もなかった。。

呪文のダメージは、思ったよりも深かった。
本当は体力は、まだそれなりに動けるだけを体に残してはいた。
けれど呪文を放たれた時の空気の粘つくような嫌な感じと
目の前に迫ってくる真っ赤な炎の塊の残像が、俺の精神的な
なにか軸のようなものまで焦がしていったような気がした。

恐怖。

それが俺の心に芽生えたのは決してこれが初めてではなかったが。
得も知れない理解の届かない「呪文」というものの恐ろしさを
初めて身に染みて理解したような気がした。

こんなものが当たり前の世界。こんなものが。
息を止めて目を閉じて、俺は只暗闇に逃げ込もうとしていた。
目を閉じて耳を塞いで、自分の中に潜ることが、この世界で唯一の逃げ道になっていた。

ビアンカは心配そうに暫くベッドの周りを歩き回っていたが、
やがて諦めたようにもう一つのベッドに潜り込む音だけが聞こえた。

95 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/04/06(金) 00:48:15 ID:970cVnjU0
>>92
支援感謝です

本日ここまでで
ありがとうございます

ではおやすみなさーい

96 :ドラクエ3 旅立ち編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/06(金) 01:38:12 ID:E0zEUzt5O
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41

ナジミの塔をさらに、さらにのぼっていった。人がすむ部屋があるフロアまできた。その部屋にはおじいさんが1人いた。
じいさん「ほう、おまえらは誰じゃ」
自己紹介をすませると、また塔からしたの景色をみはじめた。
どうやら下界をみるのが日課であるようだ。
じいさん「ここまで来たんじゃ、そこの宝箱にある物でももっていっていいぞ」
男戦士「じいさんはなにやってんだ。こんなところに1人でいて気がへんにならないのか」
じいさん「暗雲がひろがっておるな、なにかよくないことが起きる前触れじゃろう…。ときにそこの青年よ」
誰のことだ。…ぼくらしい。
ぼく「はい」
じいさん「そなたの目は澄んでおる。強き者がもちうる目じゃ…。にたような目をみたことがあるぞ…何年前じゃろうか…」
会話がへんなほうこうにいってしまう。
男戦士「お!宝箱のなかは何かのカギだぜ!」
女武闘家「おじいさんはここでなにしてるの?」
じいさん「忘れてしまった、どうしてじゃろうか。わしはいつまでいてもらってもよいが、急がれる旅じゃろう。ここでそなたたちの無事を祈っておるよ」
女僧侶「わかりました…。おじい様のこと、わたしたちもお祈りいたしましょう」
じいさん「ありがとう」

そしてナジミの塔をあとにした。レーベの村までいくのにまた時間がかかると思っていたが、そうでもなかった。

男勇者 ゆきひろ レベル7
女武闘家 エリー レベル6
男戦士 サイモン レベル8
女僧侶 ナナ レベル6

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 01:44:23 ID:vzEVw/R9O
乙です
おやすみなさい

98 :ドラクエ3 旅立ち編5 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/06(金) 01:48:23 ID:E0zEUzt5O
前回までのあらすじ>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41>>96

この世界に来てから10日以上がすぎた。順調というよりは、悪戦苦闘のことばがピッタリくる。
レーベの村で魔法の玉というアイテムを手に入れ、今はいざないの洞窟にきていた。
この前もらった盗賊のカギがなければここまでこれなかったろう。どうやらこの先からあたらしい地に行けるようだ。
男戦士「いやいや、なんだか感慨深いね。さらばアリアハンというわけだ」
女武闘家「どんな土地につくのかしら?わくわくするわ」
女僧侶「ちょっとだけこわい気もしますけど…あたらしい出会いもありますね」
ぼく「なるようになる、さあ行こうみんな!」
男戦士「おっしゃ!」
女武闘家「ええ!」
女僧侶「はい」
さあ、あたらしい地へ!
母さん、いってくる!

…学校だいじょうぶかな。

99 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/06(金) 02:40:50 ID:bwHJNX8t0
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>98 ◆Tz30R5o5VIさん
こんな時間までおつかれさまです!

100 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/06(金) 10:52:20 ID:EvsbC1OS0
いつもいつもまとめご苦労さまです
本当にありがたいことで

101 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/07(土) 05:17:02 ID:860WKPsN0
>>100
ありがとうございます!

102 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/07(土) 12:47:48 ID:CUxtqiwE0
4月7日 晴れ

今私は理解できない状況下に置かれている。
昨日新入社員の田中を研修後飲みに連れて行った。典型的な使えない若者である
田中を今後鍛えていかなければならないためのコミュニケーションの一環としてだ。
田中は私の奢りであるのをいい事に信じられないほど飲んだ挙句
このあとキャバクラ行きましょうよ!キャバ!と言って強引に私を引っ張って行き
高そうな店に入った。そこで女の子に流され私もつい飲みすぎてしまった。
記憶があるのはそこまでである。
今私は見知らぬ家のベッドの上にいる。田中は床で寝ている。
調度品や窓の外の景色を眺めるにここは日本では無いようだ。
おそらくあのキャバクラはどこかのマフィアの経営で私達は金銭を取られた上拉致されたに
違いない。もう生きて帰る事はできないかもしれないので私の人生の証として
出切る限りこの手帳に記録していきたいと思う。
願わくばいつか愛する妻と娘にこの手帳が届きますように。

田中はまだ寝ている。

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/07(土) 19:32:17 ID:Ms3o+8gJO
田中ワロスwww

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/07(土) 21:56:42 ID:ktQTsRdH0
続き気になる

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/07(土) 22:33:08 ID:hMxcvh0c0
田中wwwww
可哀相な上司(妻子持ち)の名前が気になるwww

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/07(土) 22:51:12 ID:uYkz75mQ0
>>105
タイトルから察するに、鈴木と思われる。

107 :ドラクエ3 ロマリア編1 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/08(日) 03:29:10 ID:KeQN9na8O
前回までのあらすじ>>28>>31>>36>>39>>40>>41>>96>>98

新しい地に来た。
いざないの洞窟をでたものの、これからどこに行くかなんて決まってはいなかった。
これまで高校生だったけど、ある日起きたら勇者になっていた。普通ならびっくりしてしまうだろうが、ぼくはあるがままをうけいれ、深く考えないことにした。
今がぼくにはすべて、そう思うことにした。
そういえば、この地に来てからモンスターが強くなってきている。!また、モンスターだ…。
『さまようヨロイがあらわれた。』
鋼のヨロイを着たモンスター。
武闘家のエリーが先制攻撃をする。かなり苦戦をしたがなんとか倒せた。
剣の刃がかけてしまった、新しいモンスターの強さに武器も防具もついていけてなかった…。
女武闘家「拳が痛い、もう、ダメねあたし…」
ぼく「素手じゃ無理ないよ。ナナ、回復してあげて」
女僧侶「え、ええ」
モンスター1匹にこのざま、モンスターに襲われる回数も増えて、何度か逃げたこともあった。
勇者一行としてなさけない。
この時にも命を失う人達がいる…、バラモスを許せない。
男戦士「ゆきひろ、あそこに国があるぜ。行ってみないか」
ぼく「うん。行こう」

男「ロマリアへようこそ!」
アリアハンよりもにぎやかな国だ。
ぼく「宿屋に行こう」
男戦士「なんだい、街を見に行かないのか」
女僧侶「わたしも休みたい…」
女武闘家「体力だけのバカはいいわね、疲れも知らないのかしら?」
こうなるとサイモンが気の毒なので、ぼくとサイモンは街を見に行くことにし、エリーとナナは宿屋で一足早く休んでもらうことにした。

108 :ドラクエ3 ロマリア編2 ◆Tz30R5o5VI :2007/04/08(日) 07:41:26 ID:KeQN9na8O
前回までのあらすじ>>31>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107

男戦士「へっへっへ、ゆきひろ、まずは酒場に行こうぜ!」
ぼく「そうだなぁ…。誰かに場所を聞いてみようよ。あっ、すみませ〜ん」
というわけで酒場に来た。未成年なんだけど、男同士のつき合いということで仕方なかった。まぁ、酒は飲まないけども。
酒場のマスター「おいおい、そこの人はダメだな、ジュースにするからね」
席につき、そのうち果実をしぼったジュースがきた。なかなか美味しい。
ぼく「これからどうしようか、サイモン…」
男戦士「あとは装備品でも買いに行こうぜ。今の装備品を高く売るのにも、安く買うにもテクニックが必要なんだ。その交渉術ってのを、見せてやる」
ぼく「バラモスはどうすればいいかな、今のままじゃ勝てないだろうし…。正直、迷ってる」
男戦士「強くなれば勝てるさ。各地のモンスター達を倒していって、バラモスにたどり着ければいい」
そうだ、それだけのことなんだ。強くなること、侵略を止めていくこと、あとは情報か。
男戦士「エリーはどうだ?けっこうカワイイと思うけどさ」
ぼく「まぁカワイイよな…うん…」
男戦士「…それだけかよ。おまえは奥手っぽいから心配だ、俺は、ははは…」
サイモンは幼なじみのナナが好きなのだろうか?
ぼくにも、もといた世界で好きな女の子がいる…はずなのに少し記憶がぼんやりしている。帰れるかどうかも分かりはしない。
今のぼくは、心以外、体が、違う人になっていた。
オルテガの息子の心は、もといた世界の、ぼくの体に宿っている…。
きっと、入れ替わっているはずだ…。
今のぼくは勇者を演じ続けなければいけない責任からこうしている。
ごめん、サイモン…みんな…。
ぼく「うう…あっ…」
男戦士「泣いてんのか!?どうしたんだ…」
誰かぼくを助けてくれ。誰か…誰か…。
それから数時間、ぼくとサイモンはこの酒場にいた。

109 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/08(日) 09:06:27 ID:fI/vFdkf0
>>108
お疲れ様です。
ゆきひろ、泣いちゃった( ´Д⊂ ガンバレ

110 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/08(日) 09:57:12 ID:fI/vFdkf0
最新レスしか見てなかった orz

>>102
お疲れ様です。
"私"と田中、どうなるのかなー

111 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/08(日) 19:06:47 ID:04ExFo+S0
4月8日 晴れ

私達が寝ていた家は親切にも道端で倒れていた私達を運んでくれた人の家らしい。
とりあえずマフィアではない事が分かってよかった。
ここは王政の小さな国らしく王様に会えば何とかなるかもしれないとの事。
この奥さんが日本を知らないという事に驚いたがきっと日本とはまったく交流の無い国なのだろう。
日本語が通じるのが唯一の救いだ。明日は王様に会って日本の大使館に連絡してもらおうと思う。
どうやら帰れそうなので仕事にそんなに支障をきたす事は無さそうだ。
本日は奥さんのご好意に甘えもう一泊お世話になろうと思う。

追記:田中にもいい機会なので日記を書かせ自分という人間を見つめ直さそうと思う。




俺様日記



4月8日

なんかよくわかんねーけど鈴木さんに日記かけっていわれた。
めんどくせーけどあの人顔真っ赤にしてチョー怒るから書く。
多分俺がキャバクラでハメはずしたから怒ってんだろなー
つーかせっかくアドレス聞きだしたのにここ圏外だし連絡できねーじゃん!
ヒロミちゃーん…はやく帰りてーよ!
テレビも電話も電柱すらねーってどういうことだよ!どこだよここ!

112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/08(日) 21:25:02 ID:g3YmimM3O
GJ!鈴木ガンガレ

113 :冒険の書1 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/08(日) 23:22:55 ID:HxYHbBMR0
いやー、これは参ったね。
何が参ったって今の俺のこの状況。
もうね、どうなってるのか分からんよ。

気がついたら俺ね、宿屋に泊まっていたわけよ。
それがどうしたって?
どうもしないよね。普通なら。

だけどね、これがまったくどうかしてんだわ。
変なんだよ。だってさ、俺宿に泊まった覚えないもの。
なんか支離滅裂で分からないかな。

でも、俺も訳わかんないわけよ。
どう説明したらいいんだろうね。
はじめから説明するのがいいかな、やっぱり。

そもそも俺普通に生活してたの。で、次の日には見知らぬ土地。
俺思わず「これドッキリ?」とか呟いちゃったよ。
やっぱり説明になってないな。

でも仕方ない。気がつけば未知の世界、何かね異世界なの。
だって、魔物がいるんよ。魔物。モンスターね。
まあ、それでもまだ少しはドッキリかもって思ってたんだけどさ。

だけど魔法使うのよ。魔法。マジック。いや、手品じゃないよ。
これもう絶対ドッキリじゃないでしょ。
そもそも俺芸能人じゃないし。

114 :冒険の書1 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/08(日) 23:23:57 ID:HxYHbBMR0
でさ、訳がわかんないまま王様に呼ばれたのよ。
キング。ほんと、トランプのキングみたいなのに。
いや呼びにきたのは家来よ。だってキングだもん。

それで王様こういうわけよ。
「勇者ロトの子孫よ。待っておったぞ!」って。
ちょっと違うかも知んないけど、こんなことをさ。

でもさ俺の先祖にロトなんていないのよ。
いや、いたかも知んないけどさ。
だけどこのキングが俺の家系知ってるはずないでしょ。

キングが言うには姫を助けて欲しいって。
攫われちゃったんだって。いかにも姫っぽいね。
そんなの警察に頼めっての。ないだろうけど。

でも、キングよ。俺1人になにができるのさ。
俺ね、姫捜索部隊の指揮官じゃなく全部1人やるみたい。
オールセルフサービス。

なんと俺、引き受けちゃった。姫救出。
まあ、本物のロトの子孫が来るまでの辛抱だと思ってさ。
キングの頼み断ると後々面倒そうだし。

で、俺の冒険が始まったのよ。
町で情報集めて、モンスター叩いての日々。
慣れない生活の始まり始まり。

115 :冒険の書1 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/08(日) 23:28:56 ID:HxYHbBMR0
はじめ勇者ロトの墓に行ったわけ。
そこに子孫宛のメッセージ。でも、お墓の前では泣かなかった。
他人だから。

その後は町や村を巡った。徒歩で。交通機関なんてないの。
ガライは地味。マイラは最高。リムルダールは鍵買った。
その鍵使ってガライの墓行った。ロトといい墓ばかり。エジプトか。

調子に乗って姫助けまでしちゃった。宿屋に泊まってお楽しみ。
お楽しみと言っても、あんなこと想像するなよこのスケベ。
いや、何を想像したか知らんけど。

そのあと姫拉致監禁犯人の竜王倒すことになった。
いや、はじめから倒すことになってたんだっけ?
そういや本物のロトの子孫はまだ来ないんだけど。

それからドムドーラやメルキドに行った。
ドムドーラ今はモンスターの町。メルキドはゴーレム邪魔。
そのあと雨雲の杖や太陽の石、ロトのしるしで虹の雫ゲット。

俺ついに竜王と対峙。そしてこのまま退治。ラッパーか。
そう思ってたら竜王から世界の半分で手を組もうってお誘い。
思わずイエス。俺世界の半分の闇の世界ゲット。

気がついたら俺ね、宿屋に泊まっていたわけよ。
変なんだよ。だってさ、俺宿に泊まった覚えないもの。
やっぱさ、これってドッキリなんじゃないの?

116 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/09(月) 03:59:39 ID:awMXNexb0
無限ループワロス

117 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/09(月) 08:42:21 ID:RmCgVmiVO
ちょwwwww世界の半分もらっちゃったのかよwwwwwwwwww

118 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/09(月) 23:00:53 ID:BfYzf0Vi0
4月9日 晴れ

今日は精神的に非常に疲れた一日だった。
国王の話によるとこの国に日本の大使館はないらしくそもそも国連にも加盟していない国だったのだ。
いやむしろ国王は国連の存在を知らなかった。ここは世界でも物凄く隔離された国なのだろう。
アメリカや中国の事も知らないとなるとこれは本当に由々しき事態である。
おそらく太古の昔から他の文明と関わらずに独自の文化を築いてきたに違いない。
とにかくどこか飛行機かフェリーに乗れる所までは自分の足で行かなければいけない。
また明日国王の所へ行き詳しく今後の予定をたてようと思う。
来月の娘の誕生日までには帰れたらよいのだが…



俺様日記


4月9日 あったけえ

マジありえねーっつの!鈴木さん今日城に行くとか言って俺置いていきやがった!
本気ありえねーっすよ!田中が来るとややこしくなるとか!
俺も行きてーよ城!だって王様だぜ王様(笑)チョーうけるどこのド田舎だよ(笑)
明日は絶対ついていくぜチクショウ

119 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/09(月) 23:09:17 ID:ZGxMO+J20
リーマンwktk

120 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 02:03:25 ID:hPfK9L6NO
田中がいい感じにDQNだなww

121 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 11:09:29 ID:5EsCI/3N0
真面目にwktk

122 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/10(火) 16:30:06 ID:oifMHch50
4月10日

おかしい。ここの奥さんとも国王とも話がまったく噛み合わない。
ここはアマゾンの秘境にあるまだ人類が足を踏み入れた事のない土地なのか。
謎は深まるばかりだ。田中は相変わらずヘラヘラしている。
今日も酒ないっスか酒!一日家いると暇なんスよー仕事してるよりはマシですけどね!
とか言っていた。仕事も何も田中おまえちょっと研修うけただけでまともに働いた事ないだろ…
本気でこいつの扱いには頭が痛い。
いつまでもここにお世話になるわけにもいかない。
そろそろ何かしらの行動に移さなくては。




俺様日記


4がつじゅうにち

きょうもおいてきぼりだった。
しかも鈴木さんは帰ってきてから一言も口聞いてくれず難しい顔して部屋こもりっぱなし。
なんかちょっと機嫌悪いし。ひでーよもうなんもやるきがおきねー
ヒロミちゃーんすぐ帰るから俺のこと忘れないでねー
せめてケータイだけでもつながればいいのに

123 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 18:24:58 ID:NTiBxAkrO
鈴木さんガンガレ

124 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 20:59:21 ID:iv+GzQ0hO
田中www

125 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/11(水) 14:25:19 ID:oMmlikfU0
4月11日 晴れ

まさかここは…。いやまさかそんな事が現実に…。



俺様日記

4月11日 あったけえ

鈴木さんがマジやべえ。これぜってー5月病だよ。ちょっと早いけどあの人もう歳だから
ズレてんだよ。ヤバイくらい元気無いし。ますますしょぼくれてるよ。
しゃーねー俺が元気になるイベントでも考えてやるか!フッフッフ

126 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/04/11(水) 15:42:33 ID:HqWB79w60
またまた失礼します。

合作についてですが、
タカハシさんに避難所とは別に話し合いをする場を用意して頂きました。
これはネタバレを防ぐためなので、興味のある方以外は見ないようにして下さい。
見たい方は避難所の合作スレにURLが載っていますので、そちらでどうぞ。

以前に避難所に合作スレを立てましたが、そこを見てもネタバレする事はないので、
避難所は通常通り利用してください。

合作の話し合いが徐々に始まってますが、途中からの参加でもおおいに歓迎します。
定期的に話し合いの内容をまとめた物をテキスト等でアップしていこうと思うので、
これから参加しようと思われる方はそちらをご覧下さい。
参加と言っても、通常どおり名無しでの書き込みでも構いません。
  「猫耳キャラ出して」
なーんて一言でもオッケーです。

タチコマ曰く、
「異文化との交流を描くのはいつの時代にもエンターテインメントの基本なんだねぇ」
らしいです。
このスレのテーマもそれに当てはまりますよね。
そして基本は王道とも言えるでしょう。
合作としての王道エンターテインメントを成功させる為にも、参加をお待ちしています。

127 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/12(木) 12:20:07 ID:7Ks+WBEb0
鈴木さんショック受けてる。ガンガレ鈴木!
そして田中、ノーテンキもいいところwwww

128 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/12(木) 12:38:10 ID:nqIEimQ70
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>126 暇潰しさんが書いてある通り、10スレ記念作品専用掲示板が出来ました。
記念作品が完成するまでの、期間限定です。
ttp://bb2.atbb.jp/ifdqstory/
誰でも書き込めるようになっていますので、どうぞご参加ください。
設置報告が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

129 :リサーチ 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:13:19 ID:xUpZpA5m0
 前回 >>42-53
【Stage.3 リサーチ】

 ----------------- Real-Side -----------------

「ハバネロもいいが、かっぱえびせんってのもまた……あれ? もしもし? おーい!」
 なんだよタツミの野郎。話の途中で携帯ブチ切りしやがって。
 ……しかも繋がんねえし。まめちち発見記念に、大サービスでいろいろナビってやろう
と思ったのにさ。
「まあ俺もヒマじゃねえから、いいんだけどよ」

 俺はメシ代わりにスナックを平らげ、まとめてコンビニの袋に突っ込んだ。えーと、
こういった不要物の処理システムは、かなり整備されていたはず。
 狭い公園内を見渡すと、隅の方に白いカゴが2つ並んで設置されていた。緑に白字で
「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」と書かれたプレートが取り付けられている。一応「燃
えるゴミ」の方に袋を放り込む。

「あれ、タツミ? なにやってんの?」
「ハイィッ!?」

 ――おっとぉ。
 なまじ「俺はタツミだ」としつこいくらい自分に言い聞かせてきたから、タツミという
単語に過剰反応してしまったな。
 声をかけてきたのは若い女だった。ショートカットの小柄な少女で、ポカンとしている。
「あ、ごめん。びっくりさせたかな」
「いや、俺の方こそ悪かった。……カタオカ、ユリコ?」
 頭の中からヤツと関係する人間のリストを引っ張り出す。夢の中で断片的に拾った記憶
のつなぎ合わせだから心許ないが、確か同じ学校に通う人間で、家も近所だったはずだ。

130 :リサーチ 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:14:14 ID:xUpZpA5m0

 っていうか「片岡百合子」って、ヤツのガールフレンドじゃなかったか!?
 嘘だろー……。確か今は「春休み」とかいう長期休暇期間で、知人に会う確立が低い時
期だから安心してたんだが。
 俺もヤツと同じで、こっちの人間関係をきっちり把握してるわけじゃない。休みの間に
電話などで間接的に確認し直しておく予定だったんだが、いきなりこんな濃い間柄の人間
と出くわすとはな。
 エリス似のカワイイ子だから引き継ぐのは構わないんだが、さぁて、どうしたものか。

「休みは滅多に外に出ないのに、珍しいね」
 俺が思考を巡らせる間に、彼女は疑いもせず寄ってきた。それからふと首をかしげる。
「さっき“オレ”って言った?」
 ヤツの一人称は「僕」だっけか。いいや、のちのち面倒だからここで変えちまえ。
「ちょっとイメチェン。おかしいか?」
「う…ん、正直、違和感はあるけど。まあ、その方が取っ付き易いからいいんじゃない」
 なんだか歯切れの悪い言い方だ。彼女的には「僕」の方が好みなんだろう。

「それよりもさ! ヒマしてんなら付き合ってくんない?」
 ユリコは話題を切り替えるようにパンっと手を合わせた。さっそくデートktkr!
 この際うまく誘導して、あちこち案内させるのも手か。
「いいよ。どこに?」
「ガッコ。昨日の補習ん時に、教室に携帯忘れちゃって」
 やっぱ落ち着かないのよねえ、と苦笑する。なんだ、デートじゃねえんかよぉ。

 でも学校なら本や資料も豊富だろうし、この世界のことを調べるには丁度いいか。
 そこに行けば例の、なんだっけ、調べ物するのに便利な……「インターネット」!
あれも使えるだろうし。
 そう、タツミの家にはインターネットがない。俺の夢研究が正しければ、16歳の少年
が住む家には、当たり前にある設備のはずだが。

131 :リサーチ 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:15:09 ID:xUpZpA5m0

 改めて考えると、タツミんちって、ちょっと変わった家なのかもなぁ。
 なんて思って、俺はもう一度マンションを振り返った。
「ん?」 
 4階の自分の家のベランダに、ヤツの母親が立っている。じっとこちらを見下ろしてい
たが、俺と目が合うと、ふいっと中に引っ込んでしまった。
 どうしたんだろ。用があんなら声をかけてくれりゃいいのに。
 なんか感じの悪い親だよなぁ。ぶっちゃけうちのおふくろの方が若くて美人だし。
 ま、あんな親父にいつまでも入れあげてるバカ親よりゃ、よっぽどマシだからぁ?
贅沢は言わねえけどさ。


 近くのバス停から、がらがらに空いたバスに乗り込む。
 道順はけっこう単純だ。10分ほど揺られていると、学校の名前がそのままついた停留所
が出てきたので、そこで降りる。次は一人でも迷うことはなさそうだ。
 初めてのバスだったから、「次停まります」のボタンが押せなくて悔しかったり(俺も
ピンポーンって鳴らしたかったぁ!)「定期券」がわかんなくて、ユリコにうまーく言っ
て財布から出してもらったりと、いろいろあったがひとまず無事に到着。

 ヤツの通う学校はなかなか立派な門構えで、他の建物と比べると歴史を感じさせるよう
な古びた風情があった。
 門の横に掲示板があり「合格者」と墨字で書かれた下に3桁の数字が羅列されている。
 こっちにも「試験」ってあるんだもんな。しかもなんか、やったらペーパーに偏った査
定方法だったはず。向こうでは常にトップ張ってた俺だが、剣術や呪文なんかの実技の方
が得意だったし、こっちじゃどうなるかな。
 本物のタツミに合わせて、勉強もスポーツも真ん中くらいにしといた方が、無難っちゃ
無難なんだろうが……。
「ちょっと、置いてくよ?」
「あ、待てよユリコ!」
 置いてかれたら自分の教室わかんねーっての。

132 :リサーチ 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:16:13 ID:xUpZpA5m0

 ユリコは携帯を取ってくるなりスゴイ勢いでボタンを操作し始めた。たまっていた友達
からのメールに返信しているらしい。かけた方が早いんじゃないか。

 ちなみに、俺が今持っている携帯は通話機能しかない。
 カメラもなければインターネットにも未対応なのでメールも当然ムリ。折りたたみ式の
ツルッとした黒いボディで、内側のモノクロ画面に表示できるのは文字のみだ。
 しかも裏側に、色あせてほとんど白くなってるロトのマークのシールとか貼ってるし。
 タツミの私物だが、はっきり言ってダセぇ。「着うたフル」とか楽しみだったのに。

「お待たせ。えーと、図書室だっけ?」
「いや、先にインターネット」
 俺が最初に調べたいことは、学校の図書には載ってなさそうだからな。
「じゃあ職員室でコンピュータールームの鍵借りないとね」
 ユリコはさっさと前を歩きだした。俺が命令するまでジーッと待ってるエリスと違って
自発的に行動してくれる子で助かる。

 んで、新しく出てきた単語「職員室」。鍵の管理をしているなら、たぶん講師や管理側
の人間の詰め所のことだろう、と予想したら正解だった。イエーイ。
 向こうにいた間も、「夢」に出てきた知らない単語は、そのあとの展開と照らし合わせ
ながら意味を覚えてきた。「情報」を集めて「推測」するってのは、冒険中は当たり前の
ことだったから慣れたもんだ。

 まったく、旅の間はずっと脳みそフル回転だったからな。
 そこらのガキが歌ってた「お日様ボタン〜♪」とかのふざけた歌詞が、古代文明の大い
なる遺産にして伝説の巨大迷宮ピラミッドの謎を解くヒントだなんて――
 普通は絶っ対わかりませんからぁ!
 俺がちょっと判断をミスれば、仲間の命を危険にさらすことになるし。ああ俺バカじゃ
なくて良かった……なんて、グタグタに疲れながら思ったもんだ。
 
 でもこっちはそんなキバんなくても平気なんだよな。ビバ現実世界!

133 :リサーチ 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:20:04 ID:W5bWO3XL0

「――さっきから難しい顔したり、ニタニタしたり、どうしたの」
「気にすんな。それより、これどーやって使うんだっけ?」
 俺はユリコに案内されたコンピュータールームの一席で、ついに「パソコン」と対峙し
ていた。はい、使い方はサッパリです。
「忘れたの? 珍しい。まあ家にパソコン無いからね……貸してみて」
 彼女は俺の隣に立って、手元にあった線が付いた丸いヤツを動かした。画面の中の矢印
が一緒に動く。あとデコボコがついた板状のものをカタカタやったら文字が出てきた。
 指示をするのは丸いの、何か記入するときはこっちの板だな。よし覚えた。
「パスワードっと……繋がったよ。何を観たいの?」
 そりゃ「無修正」とか「動画」とか「18歳未満は閲覧禁止」とか!☆
 なんて女の子にゃ頼めないしなぁ。っち。

 ――いやまあ、それは今度として。
「ドラゴンクエスト3ってゲームについてなんだけど」 
「ゲームぅ? ああ、ドラクエ3だけは好きだって言ってたっけ。攻略方法?」
「いや、内容は嫌っつーほど知ってるから、いい。なんつうのかな、位置づけというか、
ゲームそのものの情報というか、たとえば、実際に作った人間のこととか」

 俺が「1ゲームの登場人物に過ぎない」という残酷な事実を、認識するために。
 
「じゃあウィキがいいかな。『ドラゴンクエスト3』っと……。はい出たよ」
「ありがと。悪い、ちょっと集中していいか? すぐ終わるから」
「ん…じゃ、あっちのパソで私もなんか観てるよ。終わったら声かけて」

 彼女が離れてから、俺はひとつ深呼吸して「ドラゴンクエスト3」という項目のページ
を読み始めた。知らない用語が多すぎていまいち理解しきれないが、「システム」「作品」
なんて単語を目にすると、本当に俺の世界は作り物なんだな、と思い知らされる。

 初期型の売上本数、国内だけで380万本。リメイクを含めるとそれ以上。
 そんな星の数ほどの「勇者」の中で……俺の存在に、どれだけの意味があるんだろう。

134 :リサーチ 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:20:39 ID:W5bWO3XL0

 ----------------- Game-Side -----------------

 翌日。
 夜中にアルスの電話で叩き起こされて少々寝不足だったが、僕は予定通り家を出た。
 街の入り口に行くと、昨日契約を交わした仲間たちが待っていた。

 現在の僕の仲間は3人。戦士、僧侶、魔法使いと、ごく基本的な構成だ。
 戦士は前述でも登場しているサミエル。
 22歳でアリアハン第二近衛隊の副隊長を勤めるエリートさんだ。剣術もなかなかの腕前
だそうで、「新入りの指南役がいなくなるなぁ」と彼の上司は残念そうにしていた。
 もう一人の仲間は宮廷司祭見習いの32歳、ロダム。
 司祭職……つまり僧侶は年功序列の職業なので、この年齢の彼もまだ見習いだそうだが、
実力は「Lv.16」と、パーティーの中で一番高い。

 そして問題の魔法使い……エリス。
 アルスの元カノで、「こないだ捨てた」なんて不穏なことを聞いていたから、初見の時
はドキドキしたもんだけど。
 彼女はアルスに対して、まったく怒っていなかった。それどころかすこぶる低姿勢で、
別れた原因も自分が悪いからと、会うなりいきなり謝られた。
 しまいには「こんな私を旅に加えてくださるなんて!」などと号泣する始末。
 他人の色恋沙汰に首を突っ込む趣味はないけどさ、なんとういうか……やっぱりこれは、
アルスが悪かったんじゃないのかなー。

 素直だし、僕の幼なじみとちょっと似ていてカワイイ子だし、一瞬マジに付き合っちゃ
おうかな、とかとか、頭をかすめたんだけども。
 なんだか友達の彼女とこっそり浮気しているような、妙に後ろめたい気持ちがしたので、
「ここは友人からリスタート」ということで話をまとめておいた。

 そんなこんなで僕もいよいよ冒険の旅へ。
 もちろん目指すは、かつて誰も為し得たことのない、超最速クリアだ。

135 :リサーチ 7/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:21:21 ID:W5bWO3XL0

 で、最初の目的地はロマリア。
【レーべ > 岬の洞窟 > ナジミの塔(盗賊の鍵)> レーべ(魔法の玉)> いざないの洞窟】
 などという序盤のまどろっこしい順当ルートは、さっそく無視させていただきましたw

 実はエリスちゃん、つい半年ほど前までロマリアに留学していたそうで。
「もちろん私のルーラで行けますわ。お任せ下さい勇者様」
 とのこと。ショートカット第二弾。まだ二日酔いは抜け切ってないんだけど、頑張った
甲斐があったなぁ。
「では勇者様、私から離れませんようお気を付けくださいませ」
 頭にバカがつくほど丁寧に言いつつ、エリスがルーラの詠唱に入った。
 彼女を中心に、地面に複雑な文様の光の円が浮かび上がる。
 初めて呪文を目の当たりにした僕は、内心かなり感動した。やっぱりここはドラクエの
世界なんだな、と再認識する。


 軽い酩酊感を覚えたあと、目を開けると世界は一変していた。
 僕らは森の中にいた。アリアハンとはまるで違う種類の植物が茂っていて、湿度が低い。
カラッと晴れ渡る青空と、爽やかな風。
 木立の向こうに、巨大な建造物がどーんと構えていた。白い頑強な城壁が左右に長く続
き、二つの高い塔が天空に高く突き出していて、その先端には、ここからでも視認できる
くらい大きな旗が翻っている。

 赤地に黄金の獅子の紋章を掲げる、王都ロマリア。
 現在、世界の中心はここと言ってもいいような、大きな都市だ。

136 :リサーチ 8/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:22:08 ID:W5bWO3XL0

 3階建ビルに匹敵する巨大な門の前に、二人の兵士が直立不動で番をしていた。ヨロイ
も上等とわかる凝った意匠で、彼らは僕たちが近づくと、長い槍を素早く交差させた。
 ロダムが先頭に出て、柔和な笑顔を向ける。
「我々はアリアハンより参りました。魔王討伐のために旅立った勇者アルスの名は、こち
らにも届いておられるかと存じますが?」
「おお、アルス様ご一行でございましたか!」
 厳めしい顔をしていた兵士の表情が、アルスの名を聞いた途端に明るく崩れた。最敬礼
でサッと道を開け、高々と「開門」を告げる。
 勇者アルスの名前って実はすごいんだな。本物はアレだってのにさー。


「さっそく王様にお会いください」と案内をされかけたのを、僕は「失礼になるので旅の
汚れを落としてから」とやんわり断った。
 それは建前で、真っ直ぐ「ある」場所に向かう。訝しげな顔をしている仲間たちを連れ
て、街の南西にある大きな建物へ。

 武器・防具屋と道具屋のテナントが並んでいる向かい側から、賑々しい音楽が響いてく
る。その先の大きな階段を降りていくと、そこがかの有名な「カジノ」。
 モンスター同士を戦わせ、その勝敗を予想する賭博場だ。
「ほぉ、こんなところに……。よくご存じでしたね、勇者様」
 サミエルが感心したように僕を見る。そりゃ予習してるからね。プレイ経験があるって
だけじゃなく、実際、アリアハンを出る前に城内の図書館に寄って、ロマリアについて調
べてきているし。

 奥の「受付」と書かれたコーナーの前に人だかりができていた。大きな黒板が立てられ
ていて、男の人が二人がかりでモンスター名とそのオッズを、ひっきりなしに書いたり消
したりしている。
 その隣には一回り小さな黒板があり、本日の結果の一覧が出ていた。
 よーし、これがあれば何とかなる。結果一覧をザッと見て、受付カウンターへGO。

137 :リサーチ 9/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:22:57 ID:W5bWO3XL0

 現在の所持金は、仲間から預かった分も合わせると約300ゴールド。
 僕は次の試合の2番目に高いオッズのアルミラージに、所持金の全額を賭けた。
「えっ!? ちょ、ちょっと勇者様!!??」
 仲間たちが目を白黒させるが、まあまあと手を振りつつ賭札を購入してしまう。

 ――2時間後。

 資金を20倍ほどに増やした僕たちは、カジノ内のバーの一角を陣取っていた。
 もはや声も出ない仲間たちに、テーブルに積んだゴールドの山から4分の3ほど取り分
けてあげる。
「さすが勇者様ですわ……」
 エリスなんか目をキラキラさせているが、種明かしをすれば、モンスターの強さや特性
を「数値」としてよく知った上で、実際の戦績表から統計を取ったら、ほとんど外すこと
もないってワケ。大したことじゃない。
 それよりも、大事なのはこのお金の使い方だ。
「ちょっとみんなに頼みがあるんだ。国王様には僕が一人で会ってくるから、その間に、
みんなには『金の冠』というものを取ってきてほしい。このお金で腕の立つ傭兵を雇える
だけ雇って、とにかく最短でね」
 どうせ「Lv.1」の僕がついていったって、足手まといになるだけだもんね。

 僕はロマリアから目的地までの地図を、羊皮紙に描いてサミエルに渡した。
ルーラで来たので世界地図を取り損なっているんだけど、頭に入ってるから問題ない。
 北上してカザーブに行き、そこから西に向かうとカンダタが根城にしている「シャン
パーニの塔」がある。
「この最上階のカンダタ一味を倒せばOK。たださっきも言ったけど、絶対に殺さないこと。
うるさく命乞いしてくるはずだから、見逃してやってね」
 カンダタとその子分の特技についても説明しつつ、そこは何度も念を押す。
 あとからまた出てくるキャラだから、殺してしまったりするとストーリーが大きく崩れ
てしまう。そうなると、僕が知っているシナリオからも逸脱し、その後のショートカット
が使えなくなる可能性があるから、ここは慎重に。

138 :リサーチ 10/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 03:24:40 ID:ZTzKoKNG0

「あと、こっちはシャンパーニの塔。出入口や階段が見つかりにくいから気をつけて」
 塔の内部図まで書き出した僕に、さすがにサミエルやロダムは「こいつはなんでそんな
ことを知ってるんだ?」という顔をしていたけど、
「昨日の夜、ルビス様からお告げがあったんだよ」
とか言っておいたら、なんだか納得したみたいだった。ルビス様バンザイ。
 半端な加護で迷惑こうむってる女神様だし、これくらいは利用させてもらおう。


 3人を送り出してから、僕は一人でロマリア城に向かった。
 正門の番兵にはすでに話が通っていたようで、僕はすぐに入城を許可された。

 そして入った瞬間に、思わず引きそうになった。目に痛い真っ赤な毛氈が、入り口から
遙か先の階段まで一直線に続いているその両サイドに、きれいなドレス姿の女性たちがズ
ラーッと並んでいたのだ。僕が歩くのに合わせてお辞儀をしていく。
 歓迎の意……というよりは、権力を見せつけたいんだろうね。気後れしたら負けだ。

 階段を上がると、そこが謁見の間だった。王の前まで進んで膝を折る。サミエルに事前
に教えてもらっていた「騎士の礼」というやつだ。
 ロマリア王は思ったよりガタイのいいオジサンで、豊かなヒゲをなぜながら、僕を上か
ら下まで一通り眺めた。
「勇者オルテガのご子息、アルス殿。よくぞ我がロマリアに参られた」
 王の声が広間に響いた。大勢の人がいるのに、他に物音ひとつしない。教育が行き届い
ているというか、この王様も一筋縄ではいかない御仁のようですね。

 うっしゃ、こちらも気合い入れてご挨拶させていただきましょう。僕のターン。
「わたくしも特別のご歓待を賜り、身に余る光栄に存じます。陛下のご聖采はかねがねう
かがっておりましたが、聞きしに優る素晴らしい都ですね。まさに明君の賢政隅々までゆ
き渡りし様、ただただ感嘆の声を漏らすばかりです」
 必殺褒め殺し! さらにとっておきの営業スマイル発動! ここでターンエンド。

139 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/13(金) 03:32:14 ID:WNH1LDDIO
支援

140 :リサーチ 11/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 04:18:01 ID:bvfQCODq0

 王座の左右に控える大臣たちが「ほぉ」と小さく声を上げた。
「……ふむ。勇者殿に誉められると、儂も鼻が高いのぉ。ゆるりとしていかれよ」
 王様もまんざらでもないようだ。偉そうにふんぞり返っている相手は、とにかくヨイ
ショしとけば間違いない。

 そのあとは予想通り、派手な歓迎パーティーに突入した。
 僕はあんまり騒がしいのは好きじゃないので、仕事でしたくもない接待に付き合わされ
てるのと同じことなんだけど、今頃モンスターを相手にしている仲間たちには、ちょっと
申し訳ない。
 王様の機嫌がいいときを見計らい、僕は仲間たちが事情があってロマリアを離れている
ことと、戻ってきたら改めて紹介したい旨を伝えた。王様は二つ返事で承諾。
 その時には、金の冠奪還の記念に、さらに盛大なパーティーが開かれることだろう。

 そのついでのように、僕は本来の用件を切り出した。
「ところで陛下、あとで書庫を拝見せていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「書庫とな?」
 ワインを片手に鼻歌交じりだった王様が、怪訝な顔をする。
「ええ、古い歴史を持つ由緒正しきお国ですから、その蔵書もさぞかし素晴らしいので
しょう。ぜひ一度、この目で見てみたいと思っておりました」
「さすが勇者殿は篤学でおられるの。好きに見ていかれよ、あとで案内させよう」
 良かった。だってアリアハンのお城にはロクな本が無かったんだもん。

 アルスと「神竜の間」で最初に話し合ったときには、お互いに携帯を通して丁寧なフォ
ロー、つまり「ナビ」をすると約束していたんだけど――。
 向こうにその気がないのもあるけど、結局いちいち聞いてる方が面倒なんだよね。自分
で学んでしまった方が早い。ドラクエは書籍に関する表現が多い世界だから、そういった
意味では知識を得るのが楽なゲームだ。
 アルスからのコールがほとんどないのも、きっと彼も同じ結論を出したからだろう。

141 :リサーチ 12/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 04:19:36 ID:bvfQCODq0

 ところで、本は量より質が大事。ただ小難しいことが書いてあればいいってもんでもな
く、読み手のレベルと目的に合った本こそが、その人にとっての「良書」だ。

 パーティーがお開きになってから、僕はすぐに書庫に案内してもらった。
 ロマリアの王様が遊び人、って事前知識があったから目をつけていたんだけど。いやー
あるわあるわ、今の僕にとってのお役立ち本の数々♪ よだれ出そう。
「まずは『宮廷マナー入門(全2巻)』『公文書の書き方(全5巻)』『正しい帝王学の
ススメ(全12巻)』と。これもいいな『今日からあなたもカリスマ国王(全3巻)』『常
勝必至の兵法150選(全22巻)』。あ、全部あっちのテーブルに運んじゃってください」
 案内役のお兄さんが手伝いを申し出てくれたので、僕は遠慮なく彼の手にどんどん本を
積み重ねていった。
「あの、勇者様……これ全部、今から読まれるんですか?」
「もちろん。大丈夫、眠くなる前に片付けるから」
 めぼしい本はこのくらいかな。テーブルに移動する。
 さっそく1冊目を手に取り、右手の親指の腹でパラララっとぺージをしごくこと数回、
「次の本…と」
「えーっ!? 今のでもう読み終わったんですか!!??」
 うん、これでだいたい頭に入っちゃうんだよね、僕。

 ラビッド・リーディング――「速読」ってやつ。
 ちなみに「直感像記憶力」という、目で見た情報を細部にいたるまで写真のように記憶
できる能力もあったりする。
 勇者専用の呪文に「思い出す」というのがあったけど、つまりはコレのことなんじゃな
いのかな? 他の人にはきっと、魔法のように思えたんだろうね。

 だからアルスが僕の代わりをすること自体は、無謀ではないのだけれど。
「でもあの人には、あんな『現実』なんて、合わないと思うんだよなー」
 まったく、あっちの世界の何を見て「羨ましい」なんて思ったんだろう。
 こっちの方がずっとラクだろうに。

142 :リサーチ atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/04/13(金) 04:21:18 ID:bvfQCODq0
本日はここまでです。
それにしても10レス以上が平均になりそうなんですが、
「バイバイさるさん」の規制はきついですね……orz

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