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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

201 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:24:51 ID:qtWD4ula0
ここはブランカの宿屋だそうだ。
なんだよブランカって。
どっかで聞いたことあるんだよな。どこだっけ。
そもそも宿屋ってなんだよ。まるでドラクエじゃないか。

……思い出した。ブランカってドラクエの城だよ。
脳に電撃ビリビリっときた感じで頭に浮かんだ。ドラクエ4だ。
むかし散々やったよドラクエ。そっか、ドラクエの城かー。
ドラクエ4の中でもかなり地味な城だけどよく覚えていたな俺。

だから何で俺はそんなところにいるんだよ……。

いや待て。まだドラクエ世界のブランカだと決まったわけじゃない。
調査をして確かめてみなければ。通りを行く人の会話に聞き耳を立ててみよう。

「西のほうにトンネルを造るなんて話があったけど、ちゃんとできるのかしら?」
「今ごろ必死にいたずらモグラを集めてたりしてね。」

「いっこうに現れない地獄の帝王って遅刻の帝王なんじゃないか。」
「おまえスタンシアラに行くといいよ。でも二度と帰ってくるなよ。」

「昨日は不思議な踊りの真似して遊んだんだ。お母さんにも見せてあげるね!」
「あやらだ。母ちゃん魔法使えないから意味ないわよー。」

はい。ドラクエ世界で間違いありません。イメージとだいぶ違うけど。
結論が出ました。ここはドラクエ4のブランカです。

202 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:25:53 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。

203 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:26:31 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。

204 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:27:32 ID:qtWD4ula0
あとは本当にドラクエの世界があってそこに迷い込んだという場合。
しかしゲームの世界だなんて本気で考えなきゃならないのか……

いくら俺がドラクエが好きだからといってゲームの世界にくることはないよな。
俺がドラクエはじめたのは姉ちゃんに勧められてやったのがきっかけだっけ。
その姉ちゃんといえば結婚して子供まで産むっていうんだからな。
何ていうか身内の出産ってちょっと引くよなー。
そんなこと気にする年でもないんだけどさ。
こういうの考える時点で駄目なんだろうけどな。
あ、そうだ。姉ちゃんの出産祝い何か考えとかなきゃ。

……そうじゃなくて、ここがゲームの世界だって話だったな。
この場合ゲームをクリアすれば元に戻れるってことだろうか。
クリアするってことはピサロかエビルプリーストを倒せばいいのか?
でもそこに俺の介入する余地はないよな。
黙っていても勇者が世界を平和にしてくれる。
俺のやるべきことはないな。

205 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:27:39 ID:qzfARRZg0
1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪い、噴いた(wwwwww

206 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:29:05 ID:qtWD4ula0
なんだ。結局どの場合でも何もしないということになるじゃないか。
……いいのか?
ゲームなのに何もしないというのはありなのか?

そういえば遭難したときは動き回らずひとつの場所にじっとしてるのが鉄則らしいな。
俺のこの状況はそれに近いのかもしれない。
うん、そう考えれば何もしないというものありだと思えてきたぞ。

そもそもこの世界で俺に何ができるのかということを考えてみよう。
話を聞く限りまだトルネコは洞窟を掘っていないようだ。
つまりゲームで言うと少なくとも3章は終了していないということだな。
思うに今はゲーム開始時点なのではないだろうか。
つまりバトランドではライアンが行方不目になった子供たちを捜すところだ。
ライアンといえば彼がホイミンが並んでいたらどっちがモンスターか分からないよな。
いや、分かるけど。分かるけど害がなさそうなのはホイミンのほうだって。
とにかくゲームの世界だというならゲーム開始時点に来るのはありそうなことだ。
決め付けは良くないがほかに考えようもない。

そしてゲームでの出来事がドラクエの歴史だという仮説を立ててみる。
そうすると俺はこれからこの世界で起きることを知っていることになる。
自分が何故ここにいるのか分からないのに奇妙な話だな。
俺が勇者たちの手助けをすれば冒険がスムーズに進むのではないだろうか。
いや、俺が勇者たちに介入することで歴史が変わることになりかねない。
勇者が世界を平和にしてくれないのは非常に困る。
やはり何もしないのが正解なのだな。
よし決めた。俺は何もしない。

こうして俺の何もしない試みが始まった……はずだった。

―「承諾の承」へ続く―

207 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:39:38 ID:qzfARRZg0
一段落かな。
投下乙でございます。
主人公が勇者ではなく、何もしない(ように努力する)というのも面白い設定ですね。
次回も楽しみにしてますね。

208 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:41:59 ID:1vkawdv70
dion軍規制解除でやっと感想書き込める!
新しい設定の新作乙です
何もしないと決めたのに巻き込まれる展開楽しみ〜

209 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 15:31:33 ID:sTfqlIBh0
過去レスのアリーナむっちゃ萌えます!
当方、D道塾ですけど道着に着替えて空気イスや柔軟(逆エビ)したらスンゴイきますよ^^
道場の皆さんにちょっと罪悪感、、、orz
でも短大の頃にPS版のドラクエWやってから、アリーナ目当てでドラクエの関連商品を集めるようになりました。
D道塾もその頃から始めました。アリーナのコスじゃなく、格闘技の習得にいくところが我の特色ですw
右手の親指で左足の親指を引っ掛け、弓手で右足を同じようにする逆エビ。関節も筋もよく解れるし、適度な負荷が全身にかかります。
でもデスピサロの足元でやるときは枷有りに決まってるから、つらさ的にはアリーナはこんなもんじゃないんだろうな。
いつでも姿勢を自分の意志で解除できるか否かは重要。
それを考慮しても、やっぱりサントハイムよりデスパレスに居る方が、アリーナには幸せかもね。デスピに愛されて・・・。
デス様のことだから、きっとアリーナのために擦過傷を極力防ぐための細工をした非金属・非繊維の何かを用意しているでしょう。
ピサロ×アリーナまた新しいの読みたいです。

210 :Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:17:21 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はリアルサイドの続きですね。では前回のおさらいです」
アルス「それ恒例化してんの? 俺がアレフとかってサイコ野郎と喧嘩したあと意識不明になって、
   ユリコの家で介抱されてたんだけど、目が覚めたらいきなしユリコの親父にひっぱたかれた。
   タツミとの確執のとばっちり食らったみたいだから、ちょっと試合でもしてカタつけてやろうか、
   ってところで終わってた」
タツミ「ユリコのお父さんにはえらく嫌われてたからなー、僕」
アルス「いい迷惑だ」
タツミ「そう言うなよ。それではいつもの、届け!愛のサンクスコ〜ル!」
アルス「おいw」

タツミ「>>121様、いいお母さんだよねー。どうして息子はこんなヒネクレたクソガキに……」
アルス「うるせえよ。>>124様、おふくろも優しいのはいいが、なんでも笑って許しちまうから、
   近所のバカもつけあがるんだと……まあ俺が黙らせてたからいいけどさ……」
タツミ「素直に心配だって言えばいいのに。反抗期?」
アルス「だからうるせえよ!」
タツミ「>>125様、へぇ、そんなことあったんだー。確かにあの王様、サヤさんも持て余し気味だったな」

アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「>>164様、竜探大学には付属の竜探幼稚園〜竜探高校まであります。
   しかし片岡……『おもしろい』から好きってどうなんだよ」
アルス「良かったなぁ、お前の奇人変人ぶりに惚れてくれる女の子がいて」
タツミ「うるさいよ! って、さっきと逆転したな」
アルス「さーて、ユリコの親父さんをあんまり待たせるわけにもいかないし――」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 リアルサイド続編 [10]〜[16]

211 :Stage.10 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:19:21 ID:MaX8wX3a0
  Prev >>108-119(Rial-Side Prev (マエスレ)>>567-576
 ----------------- Rial Side -----------------

「なに考えてるのランバート君、危ないよ。まだ起きたばかりだし」
 ユリコが慌てて俺の腕を引っ張った。まあまあと抑えて、先を歩き出したあのオッカネー
親父さんの後についていく。
 しかし広い家だな。エキゾチックな庭園がずーっと奥まで続いている。池があって、小
さな橋までかかってるし。タツミもすごいトコのお嬢さんに惚れられたもんだ。
「ランバート君! さっきのことは代わりに謝るから、まずタツミに連絡取って……」
「アルスでいいぜ、アルとか。別に叩かれたのを怒ってんじゃねえよ。ただ、せっかくの
チャンスを利用しない手はないだろ? 今は俺が『タツミ』なんだから」
 ユリコは先を行く父親の背中に視線を向け、少し黙った。俺の真意に気付いたようだ。
「でも、もしラン……アル君になにかあったら、あたしがタツミに怒られるよ。お父さん、
ああ見えて免許皆伝なの。意味わかる?」
「強いってこったろ? 雰囲気がそうだもんな。――だからこそなんだが」
 あれだけ厳格な父親が、自身も相当の腕前を持ってて、娘にもしっかり武道をやらせて
るってことは、だ。価値観もそういうところにあるタイプと見ていいだろう。
 あの手合いを黙らせるには、実力を認めさせるのが手っ取り早い。まだあちこち痛みは
あるが、こっちの人間相手なら、このくらいのハンデがあって丁度いい。
 こういう荒事は、あのお人好しは苦手だろうし。
「一肌脱いでやるさ」
「なに?」
「いや。そうだ、すまないが時間を計っておいてくれないか」
 それに、早いとこ自分のステータスを正確に把握しておきたい、という理由もある。
「もし試合の途中で俺の力や動きがガクっと落ちたら、それがリミットらしい。まあ負け
ることはまずないと思うが」
「よくわからないけど……じゃあ時計、見ておくね」

「なにをこそこそ話しとるんだね。着いたぞ」
 長い渡り廊下の突き当たりに、これまた古風な趣の家が独立して建っていた。板張りの
床で、真四角の広い空間になっている。壁にいくつも竹製のカタナが掛けられていた。
 この国流の稽古場らしい。

212 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:19:45 ID:DNyKG5aB0
初のリアルタイム支援!
しかも一番楽しみにしていたIFDQさんとはっ。

213 :Stage.10 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:21:22 ID:MaX8wX3a0

「そういや、戸田和弘はどうしたんだ?」
 小声でユリコに聞くと、彼女は少しバツが悪そうに答えた。
「適当にごまかして先に帰ってもらったよ。すごく心配してたけど……」
 あいつもイイヤツだもんなぁ。本当のことを伝えるかどうかは別として、あとで謝っと
かないとな。

 さて、と。
「まさかとは思うが、真剣でやる気かね?」
 ユリコの親父さんが、俺の手元を見て小馬鹿にするように笑った。
「ああ、そうですね。怖いんでしたら、そこに掛かってるのに換えますけど」
「――口だけは達者だな」
 向こうも控えていた女中にホンモノを持って来るよう命じた。マジで真剣勝負に乗って
くれちゃうらしい。いいねー、俺はこういう思い切りのいいオッサン好きだぜ。
 ユリコは頭を抱えているが。
「あ・ん・の時代錯誤のバカ親父〜! まさか試合中の事故で片付けようって魂胆!? ア
ル君、本っ当に大丈夫なんでしょうね?」
「どうかねぇ」

 軽く身体をほぐしてから、中央に進み出る。
「そうだ、俺、外国で剣術を習ったんで、日本式の礼儀とかは全然わかんないんですよ。
そこは許してもらえます?」
「好きなようにしたまえ。しかしそれならなおさら、日本刀など扱えるのかね?」
「心配ご無用♪」
 一級討伐士、いわゆる「勇者」の認定条件においては、初級剣術や初級槍術の他に特殊
武器の技術も必要とされる。鎖鎌からブーメランなんてものまで使いこなせなくちゃなら
んのだ。俺もそういう訓練をしてきたから、手に持っただけでだいたいその武器の特性を
つかめたりする(だから鉄杭でも戦えちゃうわけ)。
 それに……この日本刀ってやつ。なんというか、慎ましくも凜とした雰囲気がどこか俺
の愛剣に通じる物があって、妙に手に馴染む。
「では、いざ尋常に――」
 勝負!

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:23:19 ID:CtzstB1q0
しえん

215 :Stage.10 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:23:23 ID:MaX8wX3a0

   ◇

「……っつーわけで、ユリコパパをゲットしちゃったわけ。すっかり気に入られちゃって、
すっげーごちそう出てさぁ♪」
 最初はマジで危なかったんだが(オッサン本当に強かったよ。ナメてましたごめんなさ
い)、上手に引き分けに持ってったら手の平返したみたいに待遇が良くなったのだ。
 実は会った瞬間に、このオッサンとは気ぃ合うなと思ったんだよ。「男は黙って拳で語
れ!」って感じの武闘派バカ(またもや失礼)、俺も嫌いじゃないからさ。
「まさかこんな劇的にうまくいくとは思わなかったけどなw」
『あーそう、良かったね』
 携帯の向こうで、タツミは思いっきりふて腐れたような声を出している。
「なに怒ってんだよ、むしろ感謝してほしいぞ。これでお前も彼女と堂々と付き合えるだ
ろ? 悪い印象ってやつは、いったん覆したら逆に前よりずっと良くなるもんだしな」
『でもそれは……僕じゃないもん。ってか君は僕をそっちに戻す気ないんじゃなかったっ
け? 適当なこと言うなっつーの』
「そこはフェアだろうが。クリアすれば帰れるんだし、俺はそれを邪魔することはできな
いってルールなんだから。なんだよ妬いてんのか? お前もけっこう――」
 プッ ツー ツー
 あ、切られたw あいつも素直になりゃいいのに。

「アル君……タツミなんて言ってた?」
 ユリコが顔をのぞかせた。気を利かせて離れていたらしい。
「僕のユリコに手ぇ出したらタダじゃおかない、ってさ」
 携帯を放ってやると、受け取ったユリコはカァっと耳まで赤くなった。
「冗談でしょ? あいつそんなこと、絶対言わないわよ」
「確かめてみれば?」
 ユリコは少し携帯を見つめていたが、なぜか小さく首を振って、俺に返してきた。
「今度ね。それより、お父さんのせいでまたケガ増えちゃって、ごめん」
「え、いや俺の方こそ、親父さんケガさせちまって悪かった」
 思った以上に腕の立つ相手だったから、無傷で済ませられなかったんだよな。どちらも
軽傷とはいえ、今は片岡氏もあちこちに包帯が巻かれている状態だ。

216 :Stage.10 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:25:21 ID:MaX8wX3a0

 もっとも、本人はまったく気にしていないようだが。
 俺が中座していた宴席に戻ると、片岡氏は庭に面した廊下(エンガワというらしい)で、
静かに酒を飲んでいた。
「終わったのかね?」
 続きをやろう、と盃を掲げてみせる。ハイ、最初は未成年だからと断ったんだけど、片
岡氏があんまり勧めるのでいただいちゃってました。「ダイギンジョウ」ウマー。 

 外は夕暮れ。ここから見る庭にも見事な桜があって、薄桃色の花を風に散らしている。
 漆塗りの雅な盃に、ユリコがいい香りの酒を注いでくれる。「こーん」とたまに小気味
のいい音を響かせているのは、シシオドシというらしい。風流だねぇ。
「しかし、少し見ない間にずいぶん変わったものだ。まるで別人だな、今の君は」
 そりゃあ別人ですから。
「タツ……じゃない、以前の俺と、そんなに違うんですか?」
「まったく違う。あの頃の君は『自分の命などどうでもいい』という者の目をしていたぞ。
あんな生きた屍のような人間に、大事な娘は近づけられんよ」
「はぁ? え、そうなの?」
 なんかすごい言われようだぞタツミ。ってか、お前そういうキャラだったっけ?
「ちょっとお父さん、変なこと言わないでよ! ……ええとほら、本人の前で」
「ははは、失礼。だが今は、あれだな、親の屍を食ってでも生き残るようなしたたかさを
感じるよ。そういう人間は信用できる」
 そ、そうすか。俺もすごい言われようだな。ってユリコ、今度は笑ってるし。
 片岡氏はしみじみと酒をすする。
「この子の母親は早くに亡くなってね。私も過保護だとは思っているんだよ――」 
 ふむ。人にはそれぞれの事情ってのがあるんだな。

 そのとき、ピリリリリリ! と甲高い音が鳴った。一瞬タツミからかと思ったが、片岡
氏が胸元から携帯を取り出してその場を離れた。
 今までとは違うせわしない口調で、なにやら難しい単語をやりとりしている。
「やはりイグリス社か? そのルートだけは必ず確保しろ。私もすぐ行く」
 仕事のことでなにかトラブルが発生したらしい。こっちの人ってよく働くからなぁ。
「すまんな三津原君、急用ができたので私は失礼するよ」

217 :Stage.10 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:27:22 ID:MaX8wX3a0

「ああ……じゃあ俺も帰りますよ」
「なに、ゆっくりしていきたまえ。ユリ、あとで送ってあげなさい」
 言うだけ言って、片岡氏は颯爽と去っていった。
「あんなにタツミのこと毛嫌いしてたくせに……なんなのよもう」
 ユリコもすっかり呆れていたが、俺と目が合うと苦笑に変わった。
「まあいいや、結果オーライよね。もう一杯いかがですか、勇者様」
「お、もらおうかな。こんな美人の酌なら何杯でもいけるやね♪」
「っぷ、どこのおっさんよぉw アル君って、本当に異世界で魔王を倒した勇者なの?」
 実はちょっと自信なくなってきたかも。すまんゾーマ、宿敵がこんなんでw

 と――。
「あの、アル君。もしかしてだけど……タツミから、なにか聞いてたりする?」
 ユリコが急に神妙な声で切り出してきた。
「なにかって、なにを?」
「あいつが人を避ける理由。アル君にはなにか言ってるかなって思って」
「いや、そんな話はしてないけど」
 俺が首を振ると、ユリコは「そう……」と、少しだけ肩を落とした。

「タツミってけっこうモテるのよ。顔はいいし頭もいいし、性格だって悪くないし。でも
誰とも付き合おうとしないのね。っていうか、友達も作らない感じ。要領がいいから周囲
に悟らせないようにうまく逃げてるけど。休みになったら、ほとんど外出もしない。あた
しと戸田くらいかな、しつこくまとわりついてるの」
「なんだそりゃ」
 ヒキコモリっぽいとこがあるなぁ、とは思っていたが、そこまで徹底していたとは。
「だから今日の花見みたいに、強引に誘うこともあるんだけど。……あたし、実はタツミ
にフられちゃったのね。去年の暮れかな、あいつに『もう僕に近づかない方がいい』って
言われたんだ」
 ユリコの表情は硬い。その時も、そんな顔をしていたんだろうか。
「でもその理由が理解できなくて。正直、今でもどう受け取っていいかわからないのよ」
「あの親父さんが怖くて、適当な理由で遠ざけたんじゃねえの?」
「普通はそう考えるわよね。でもそれにしては、なんか強烈な言い訳だったし」

218 :Stage.10 [15] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:29:24 ID:MaX8wX3a0

 そこで逡巡するユリコ。
「タツミね……『僕は何人も殺してる人間だから』って、そう言ったの」
「こ、殺してる?」
「うん。『君まで巻き込みたくない』って……。亡くなったご両親も自分が殺したんだっ
て、そんなこと言うのよ」

   ◇

「亡くなったご両親――? タツミの親、両方とも死んでんの!?」
 俺は思わず叫んでいた。ユリコの方は別の意味で驚いている。
「知らないで入れ替わってたの? あいつが引っ越したあとのことで、詳しくは知らない
んだけど。事故でお父さんが亡くなって、その3ヶ月後にお母さんも亡くなったって」
 おいおいおい、なんだその話。じゃあ今マンションに同居してるあのオバチャンは誰な
んだ。単身赴任とやらで遠くにいるはずの父親って?
「一緒に住んでる人はタツミのお母さんのお姉さん、つまり伯母さんよ。彼女は独身だか
ら他に家族はいないと思うけど……。アル君、いったいどういう風に聞いてたの?」
「聞いてたっていうか、勝手に覗いてたっていうか――」
 タツミの生活については、俺が向こうにいる間に「夢」を通して知ったのだ。それが事
実と食い違ってる部分は今までにもあったが、まさかここまで違うとは思ってなかった。
 本人に確かめたくても、なーんかずっとバタバタしてて聞きそびれていたし。

 ……いや、俺も無意識に、タツミに聞くのを避けていたかもしれない。
 あいつ、一度も俺を問い詰めてきたことがないから。いきなり命懸けの冒険を押しつけ
られればわめき散らしたって当然なのに、タツミはいつも「仕方ないなあ」って感じで飲
み込んでくれてて。
 だからなおさら、こっちだけ詮索するのも悪い気がして。

「でも殺したってのは、尋常じゃないよな……。他には?」
「ううん。あいつ、肝心なことはなにも教えてくれないもん」
 昨日カズヒロも同じようなこと言ってたな。
 こうなったら腹を据えて聞いてみるか!

219 :Stage.10 [16] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:31:27 ID:MaX8wX3a0


 ――おかけになった番号は、電波の届かないところにおられるか、
   電源が入っていないため、かかりません。

 ........... orz 

 またかよ〜。もしかして本格的にスネちゃったんか?
「つながらないの?」
「ん。まあそのうちかかってくるだろ。連絡が取れたら、あんたにもすぐ伝えるよ」
 俺が立ち上がると、ユリコは心配そうに袖を引いた。
「帰るの、危険じゃない? 今日はうちに泊まっていったら」
「いやーさすがにタツミに悪いから帰るよw」
 別にやましいこたぁないけどさ。それに、ゲームがどこまで進んだかモニタリングしと
かないと、俺の方も連絡をつけるタイミングが計れない。
「それでユリちゃん、ちょっと頼まれて欲しいことがあるんだが―――」



 その後、ユリコにタクシーを呼んでもらい、俺はタツミのマンションに帰ってきた。
 くだんの「伯母さん」はまたでかけているようだ。甥っ子の面倒を独りで見ているわけ
だから、もしかしたら夜系の仕事でもしているんだろうか。
 ゲーム画面は、帆船が夜の海を西に進んでいた。ランシールに到着し、一行は真っ直ぐ
宿屋に入っていく。「一晩」たてばほとぼりも冷めるだろうし、少し待ってもう一度かけ
てみよう。
 それにしても、両親を殺した、なんて冗談で言えることじゃないよな。

(自分の命などどうでもいい、そういう者の目をしていたよ――)

「タツミ……お前いったい、なにしたんだよ」
 ゲームキャラの俺よりプレイヤーの方が謎って、なんか変じゃね?


220 :Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:32:52 ID:MaX8wX3a0
本日はここまでです。
今日の夜中の12時くらいから、お約束の「まとめ」を投下させていただきたいと思います。
その時にはまたよろしくお願いいたします。

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:33:01 ID:CtzstB1q0
支援

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 21:22:48 ID:Vpxzm+RZ0
うは、真剣をつかって勝負とは・・・。お互いに軽傷ですんでよかったですね(滝汗
大吟醸、おいしそう。だんだんこちらの世界になじんできますね(笑)

しかし、タツミくんの過去・・・。尋常じゃないですね。気になる・・・。
話が進むうちに明らかになっていくのでしょうか。

223 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 23:54:02 ID:NksgkbF30
おお!このままリアルサイドの続きが読みたいような

とにかく乙です!

224 :Stage.10.5 mtm ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 23:58:37 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。数時間ぶりですが改めまして、みなさんこんばんは♪」
アルス「今回の番外は、今までのまとめ、というか解説編だな」
タツミ「登場人物紹介、用語の説明、という形でお送りします」
アルス「ここだけの新事実発覚! みたいなのも多少あるらしい」
タツミ「DQ離れしたオリジナル設定が多い本作ですが、少しでも楽しんでいただけたらと思います」


アルス・タツミ『それではまとめ、スタートです!』


【Stage.10.5 まとめ】
 登場人物紹介/用語解説 [1]〜[11]

225 :Stage.10.5 紹介 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:00:36 ID:/C7eX2Ut0

 ■主人公1■

【タツミ】 本名:三津原辰巳(ミツハラタツミ)
 本作の主人公の1人。ドラクエ3の世界に飛ばされ、元の世界に戻るためにイヤイヤな
がら勇者をやりつつ、ゲームクリアを目指す。見たものを写真の様に記憶できる「直感像
記憶力」と超スピードで本を読める「ラピッド・リーディング(速読)」の特技を持って
おり、それがゲーム世界では「思い出す」の能力として扱われている。
 ゲーム中では一部の関係者にのみ自分がアルスではないことを告げているが、自分は
「ルビスに遣わされてやってきた」ことにしており、行方不明のアルスについては「魔王
に封じられたので魔王を倒せば戻ってくる」と嘘をついている。
 高校の成績は常にパーフェクトで首席。奨学金をもらっており戸田和弘いわく「一度も
学費を払ったことがない」。運動神経も容姿もなかなかと三拍子そろった少年。
 しかし、両親が幼い頃に立て続けに死亡するという不幸に見舞われ、現在は母親の姉
(伯母)と二人でマンションに暮らしている。一見すると明るくポジティブな性格だが、
「両親を殺したのは自分だ」と言い、現実ではさり気なく人付き合いを避けていた。
 一條英治に恨まれており、何度か金銭を巻き上げられている。片岡百合子の父親からは
「自分の命などどうでもいい、生きた屍のような目をしている」と酷評されている。
 無理やり勇者を押しつけられたアルスを、それでも大切な人間だと言い切り、一方的に
恩人としているようだが……。
 MPが最初から999あり、携帯電話を利用するたびに減っている。プリペイド方式で減っ
た分は増えない。現在呪文の習得は皆無だが、今後使う機会があればさらに減ることを懸
念している。

[誕生日]7月7日生まれ
[性格判断]ずのうめいせき
[よく観る映画]ダスティン・ホフマン主演の「レインマン」
[好きだった銘柄]ラッキー・ストライク(もうやめたけど)
[気に入った魔物]スライム(というかヘニョ)
[苦手なもの]血(見ると気分が悪くなりヒドくなると吐く)
[嫌いな食べ物]ピクルス
[関わりたくない人種]わがままな王族

226 :Stage.10.5 紹介 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:01:40 ID:MaX8wX3a0

 ■主人公2■

【アルス】 本名:アルセッド=D=ランバート
 本作の主人公の1人。ドラゴンクエスト3(SFC版)の勇者であり、プレイヤーの三津
原辰巳と立場を交換する契約を交わした。ほんの少し目の色に青みがかっている以外は、
タツミと見分けがつかないほどそっくりな容姿をしている。ゲーム世界にいた頃から「夢」
を通してタツミに同調(シンクロ)し、彼の生活や現実の常識などを事前に学んでいた。が、実
際と食い違うことがいくつも発覚し戸惑っている状態。実はLv.99。
 現段階ではタツミとの入れ替え(移行)が不完全であり、ゲーム世界でのステータス値
が半分以下に制限された状態になっている。それでも常人より遙かに強靱な肉体と力を持っ
ているが、全力を出す時間にリミットがあり、無理をしすぎると激しい疲労に襲われ、意
識を失うこともある。今のところ呪文は使えない。
 タツミが元の世界に戻ることを諦めれば「移行」が完了し、上記のしばりが無くなる。
アルスもそれを望んでいるが、内心ではプレイヤーを犠牲にすることに躊躇している。
 仲間も家族もすべて捨てて異世界へと来たが、その理由が「あの世界には決定的なもの
が欠けていてどんなにあがいても救われない」ということを、自分だけが知ってしまった
ためらしい。
 言動は荒っぽいが、意外と常識的でリアリスト。八城翔(エイト)には「人の良さそう
な子」と評されている。

[誕生日]12月24日生まれ
[性格判断]くろうにん
[好きな飲み物]豆乳(以前は牛乳だったがすぐ腹を壊すので変わった)
[普段着の色]赤系か黒でまとめることが多い
[気に入ったゲーム]セガのHOD(簡単で飽きるけどまたやりてえw)
[やってみたい職業]商人・遊び人
[苦手な科目]地理とか歴史などの暗記物
[消したい人種]ねちねち意地悪するような連中は全員だ!

227 :Stage.10.5 紹介 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:03:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・リアルサイド■

【ユリコ】 本名:片岡 百合子(カタオカユリコ)
 三津原辰巳の高校のクラスメイトでタツミを慕っている、ショートヘアの似合う元気で
明るい性格の美少女。実は格闘技をたしなんでおり、かなりの強さ。花見に行った際アレ
フに急襲され、それを機にアルスの正体を知ることとなる。大変よろしい感じに発育して
おり、アルスいわく「かなり着やせするタイプ」。
 大金持ちのお嬢様で広い日本屋敷に住み、家では着物を着せられている。母親を早くに
亡くしており、そのせいで父親からちょっと過保護にされている。

【カズヒロ】 本名:戸田 和弘(トダカズヒロ)
 三津原辰巳のクラスメイトで友人。人付き合いを避けているタツミを気遣い、ユリコと
二人でなにかと彼に構っている。高校では運動系の部活に所属しているスポーツ少年。
 父親は市議会議員で、タツミに絡んでいる一條英治のこともなんとかできないかと気に
かけている。一條英治とその取り巻きを「あいつら頭悪いからなぁ」と評している。

【エージ】 本名:一條 英治(イチジョウエイジ)
 三津原辰巳を憎んでいる不良少年。他校の生徒で(カズヒロによると三流高校)、学業
面だけでなく、すぐにカッとなりナイフを振り回すなど、普段の思考力においても優秀と
は言い難い。なぜこの少年の言うことをタツミが聞いているのかは不明。
 妹がおり、彼女と入れ替わりで現実に来たアレフの世話を焼いていた。アレフが強いと
知るや「タツミを半殺しにしろ」とけしかけたが、今のタツミがアルスだと知らずに失敗。
 実の妹が異世界に飛ばされてしまったことは、なんとも思っていないようだ。

228 :Stage.10.5 紹介 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:05:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・ゲームサイド■

【エリス】 本名:エリス=ダートリー(魔法使い)
 タツミのパーティーメンバー。ルイーダの店の「冒険者名簿」の「特選」に選ばれてい
る優秀な魔法使いで、最初から「Lv.14」の実力を持つ16歳。現在は城に勤めている。ロ
マリアに留学経験があり、彼女のルーラで一気にロマリアまで連れて行ってもらった。
 アルスに強く惚れており、彼の役に立ちたいと幼い頃から猛勉強を積み、12歳にして正
式な「冒険者ライセンス」を取得した才女。行方不明になる前に、アルスから別離を告げ
られるも健気に慕い続けている。
 次項サミエル・ロダムと一緒に、タツミからは「アルスは魔王に封じられたらしい。自
分はルビスの遣いでアルスに代わり勇者をしつつ魔王打倒を目指す」と説明されており、
ニセモノの勇者と知りつつ同行を承諾する。

【サミエル】 本名:サミエル=レイトルフ(戦士)
 アリアハン第二近衛隊の副隊長を勤めるエリート戦士。「〜ッス」という口調で話す、
少々老けて見える22歳。オルテガに強い憧れを抱いており、魔王討伐の遺志を継ぐため
に同行を承諾。アルス奪還という点にはあまり重きを置いていない。だがタツミが懸命に
勇者職を勤めようとする姿を見て、タツミ本人に協力する気持ちが強くなっている。

【ロダム】 本名:ロダム=J=W=シャンメール(僧侶)
 アリアハン宮廷司祭見習いの32歳。若い頃は「神父」を目指していたが、妹夫婦の住む
村が魔物に襲われたのを切っかけに、殺生を許された聖職「僧侶」に転向した。常に穏や
かで落ち着いた雰囲気を保ち、パーティーの保護者的存在。タツミも内心で頼っている。

【ヘニョ】(スライム)
 ポルトガからエジンベアへの航海中、船に紛れ込んでいたスライム。「縁起が悪い」と
船員たちに海に捨てられるところを、その愛らしさに一目で参ってしまったタツミに庇わ
れ、そのまま飼われることになった。基本的には草食だがなんでも食べる。しかし消化の
様子がすべて透けて見えるため、与えるエサは考えないといけない。名前の由来は過去の
番外を参照のこと。

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 00:07:02 ID:HnUADTix0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙


230 :Stage.10.5 紹介 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:07:40 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・アナザーサイド■

【ショウ】 現実での名前:八城 翔(やしろしょう)/本名:ラグエイト=ハデック 
 ドラゴンクエスト8の主人公であり、すでにプレイヤー八城翔への「移行」を完了して
いる。そのため現実におけるステータス修正がなく、ゲーム内での能力をフルパワーで発
揮することができる。呪文が使えるかは不明だが、ルーラらしき呪文を使用した描写があ
る。また自分の肉体のみに限定されるが、携帯電話を使って自由にゲームと現実を往来す
ることが可能。
 表向きは八城翔として普通の大学生をしているようだが、裏では謎の組織に所属してお
り、他のPC(プレイ・キャラクター)の動向を監視、場合によってはライフルなどの火
器を用いて拘束したり、「抹消」する任を負っている。
 彼のPL(プレイヤー)である本物の八城翔は美少女アニメのオタクで、ショウにクズ
呼ばわりされている。ゲーム世界から帰れなくなった状態らしいが、今どうなっているか
は不明。

【アレフ】 本名:アレフィスタ=レオールド
 ドラゴンクエスト1の主人公で、一條英治の妹と相互置換し、現実にやってきた。他の
PCと違い「入れ替わっても周囲の人間が気付かないほどPLとそっくり」というパター
ンに当てはまらない。まだ移行は完了していないため、ステータス修正・時間制限がある。
 一條英治の世話になり、タツミを半殺しにしろと頼まれて承諾するも、相手が自分の先
祖にして伝説の勇者ロトであることを知り、本気で襲う。ユリコに邪魔をされ逃走したあ
と、ショウに捕獲されどこかに連れ去られた。行きすぎた勇者教育を受けて育ち、人格的
に少々問題がある。アルスに「サイコさん」呼ばわりされている。

【謎の青年社長(?)】
 その言動から、ほぼドラゴンクエスト5の主人公と推測される。中央区のオフィス街の
高層ビルで、最上階のフロアにてショウを出迎えた。ショウが所属する組織の一員か、あ
るいはトップの人間かもしれない。移行が完了しているかどうかは不明。
 ゲーム内では正妻が二人おり、また現実でも似た女性たちをわざわざ探し出し、秘書と
してそばに置いている。

231 :Stage.10.5 紹介 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:09:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・リアルサイド■

【片岡氏(ユリコパパ)】
 お金持ちなユリコの父親。剣術は免許皆伝の腕前で、普段着は和装。一人娘のユリコを
大切にしており、三津原辰巳を毛嫌いしていた。
 タツミのフリをしたアルスと真剣試合をして一発で気に入り、すっかり仲良くなってし
まったが、ニセモノとバレた時が心配される。

【伯母さん(タツミの保護者)】
 タツミの保護者として一緒に暮らしている彼の伯母。幼い頃に亡くなったタツミの母親
の姉ということだが、それ以外はいっさい謎。昼間は寝ていて夜に出て行くことが多く、
これまでアルスとほとんど会話を交わしていない。アルスは「夜系の仕事をしているので
は」と推察している。

【タツミの両親】
 タツミが幼い頃、引っ越した先の街で二人とも死亡している。経緯は不明だが、タツミ
が話したがらないところから、ただの事故ではないことがうかがえる。

232 :Stage.10.5 紹介 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:11:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・ゲームサイド■

【サヤお母さん】
 アルスの母親。息子が急に姿を消したことを心配するも、タツミの正体を知っており、
タツミを信じてアルスの帰りをおとなしく待っている。またタツミのことも実の息子のよ
うに心配してくれる。おっとりしているようだが、優しくて芯の強い素敵な女性だ。

【デニーおじいちゃん】
 アルスの父方の祖父。アルセッド=D=ランバートの真ん中の「D」は、名付け親であ
るデニーおじいちゃんの「D」である。アルスのことに関するスタンスはサヤお母さんと
一緒だが、可愛い孫のことが心配でならない様子。

【アリアハン国王】
 オルテガを親友とし、忘れ形見のアルスを特別に可愛がっていた。母親のサヤのことも
強く気にかけている。タツミの話を信じておらず、アルスに成り代わろうとしている「紛
い物」をただちに捕らえて拷問にかけると言ってサヤに止められ、今度の試験の結果次第
で実行する、とタツミに厳しい条件を課す。
 ちなみに、世界退魔機構を提案したのがこの人。いち早く魔王の存在に気がついた国王
は各国に協力を呼びかけたが、先の大戦で大敗を喫し、世界統一国の成れの果てである弱
小国の提案に、他の国は口を揃えて「まずお前がやれよ」。親友であるオルテガを死地に
向かわせるハメになった(オルテガ本人はノリノリだったが)、という裏設定がある。
 決して悪い人間ではないのだが、いまいち空回り気味の王様である。

233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 00:13:28 ID:AAevm/xRO
支援

234 :Stage.10.5 用語 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:13:47 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・リアルサイド■

【PC】ピー・シー
 プレイ・キャラクターの略。主にゲームの世界から現実にきた人間のことを指す。ショ
ウの組織で便宜上そう呼んでいる。

【PL】ピー・エル
 プレイヤーの略。本作では主にPCと入れ替わったプレイヤーのことを指す。これもショ
ウの組織で使われている呼称。「相互置換対象」と称することもある。

【相互置換】そうごちかん
 PCとPLが入れ替わる現象そのものを指す言葉。

【移行】いこう
 PCがPLと入れ替わって現実の存在となること。移行初期の段階では不完全な状態で
あり、能力に制限がかかる(ステータス修正)。完全に移行するためには「ゲーム世界の
プレイヤーがクリアを諦め、完全にゲーム世界の住人となる」という条件を満たさなけれ
ばならない。

【移行の完了】
 PCが完全に現実の存在となること。移行が完了したPCは、現実においてもゲーム内
同様の超人的な能力をフルに発揮できるようになる。
 また携帯電話を利用することで、ゲームと現実を往来することが可能となる。ただし自
身の肉体以外は、持ち込み・持ち出しできない(胃に残る未消化物さえも対象外)。

235 :Stage.10.5 用語 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:15:36 ID:/C7eX2Ut0

【PCは単一的な存在】
 相互置換されたPCは、あくまでそのPLが所有するソフト内から出現した単一的な存
在であり、作品全体の代表としての存在ではない。
 ただし現段階では同タイトルから同キャラクターが移行した例はない。

【PLの影響】
 個々のPCについて、原作では表現されない詳細設定はPLの潜在意識に大きく影響を
受ける。どのような形で影響されるかは明確ではなく、PCの人格そのものに反映されて
いることもあれば、PCの生活環境や対人関係に影響を及ぼしている場合もある。

【PCのストレス】
 影響を与えるPLの潜在意識がゆがんでいる場合、PCに悪影響が及ぶ。
 たとえば、現実ではおとなしい性格の人間が、内心に暴力的な衝動を抑えつけ鬱屈を溜
めていた場合、PCが勇者にあるべからず凶暴な性格になってしまったり、PC自身は普
通でも周囲に暴力的な人間が多くなる、などの弊害が起きる可能性がある。

236 :Stage.10.5 用語 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:17:37 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・ゲームサイド■

【冒険者】
 魔物を退治して得たゴールドで生計を立てている人間の総称。「ダーマ冒険者協会」に
よって各専門職ごとにライセンスが発行されており、正式にライセンスを取得している冒
険者には様々な特典がある。しかし協会の管理下に置かれるのを嫌い、モグリでやってい
る人間も多い。

【冒険者職の中の「各職業」】
 「冒険者職」の中に「戦士」や「魔法使い」など専門職が区分されている。冒険者でな
くともライセンスは取れるが、ただの「魔法使いライセンス」よりも「冒険者職の魔法使
いライセンス」を取得する方が難易度が高い。また1年ごとに簡単な更新試験がある。
 基本的にこの世界における「職業」はすべて「やる気のある初心者を支援するため」の
制度であり、実務経験を問われることはない。取得後は全員が「Lv.1」からのスタートと
なる。

【冒険者職の中の「特別職」】
 ダーマ冒険者協会とは別の機関「世界退魔機構」が管理している特別な職業で、「勇者」
「賢者」などがこれにあたる。

【特別職の特典】
 特別職のライセンスを持つ冒険者は、以下の特典を受けることができる。
 ・加盟国、または加盟店のアイテムを安く提供してもらえる。
 ・ほぼ売買を拒否されない。
 ・アイテムの買取価格が、商品的価値の有無に関わらず売値の4分の3。
 ・宿屋に何時でもチェックイン可能。また宿泊拒否されない。
 ・真夜中でも教会の利用が可能。
 ・親族への生活補助金を、所属国家に支払うよう促す(強制ではない)。

237 :Stage.10.5 用語 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:30:38 ID:pqiM/cEN0

【特別職の試験】
 かなりの難易度、年齢制限や一度不合格を取ると再試験は不可といった条件がある。
 1次試験と本試験とに分かれており、1次試験合格から3ヶ月は仮免期間で、その後の
本試験に合格してから正式なライセンスを取得できる。更新試験は半年ごとに行われる。
 ◆受験資格・30歳以下の健康な男女で、犯歴が無い者。初受験者のみ。
 ◆1次試験
  「ペーパーテスト」
   ・呪文理論 ・魔物学 ・その他学問全般
  「実技」
   ・初級剣術(各国の型でOK) ・初級槍術
   ・その他特殊武器(ブーメラン・鎖がま・杖などの特殊型の武器から選択)
   ・初等呪文(ホイミ・メラの成功率が100%・確実に発動する・確実に当てられる)
 ◆本試験
  「仮免期間の間に、以下の条件のうちいずれかを満たしていること」
   ・なにか大きな人助けをする
   ・魔物から村や町、教会など慈善組織(海賊等は含まれない)を護る、救う等
    (上記はいずれも援助対象者に真偽を確認し、虚偽が発覚した場合は
     ライセンスの永久剥奪及び罰金が科せられる)
   ・世界退魔機構が指定している試練をクリアする(ランシールの洞窟など)
 ◆更新試験
  「半年の実働期間中に本試験と同様の条件を満たしていること」

【勇者=「一級討伐士」】
 「勇者」の正式名称は「世界退魔機構認定特別職一級討伐士」という、「特別職」のひと
つである。以前は「一級討伐士」と呼ばれていたが、今は「勇者」という通称が定着してい
る。アルスやオルテガもこのライセンスを取得している。

【世界退魔機構(WMMO - World Monster Measures Organization - )】
 ほぼ世界中の国や街が加盟している、魔物被害の対策機構。エジンベアは未加盟国だが、
国内のほとんどの店は独自に加盟している。アリアハン国王が提唱・発足した。

238 :Stage.10.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:33:22 ID:pqiM/cEN0
本日の投下はこれにて終了です。
多数のご支援、ありがとうございました。
忘れている登場人物や設定、説明不足の部分などありましたら、
今後すこしずつ補完していきたいと思います。

239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 02:33:26 ID:tPKJQVr20
久しぶりに来たが…これまた随分と本格的なのをやってるなw

240 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 08:02:34 ID:5xmqLCJWO
>>220
投下乙!
少しずつタツミの過去が明らかになってきたな。
アルスも本人に早く聞いちゃえばいいのにと思っていたが、
無意識に遠慮してたのか。

>>238
すげえ細かいな!
タツミとアルスの誕生日がわかりやすいww

241 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:05:26 ID:TUfCckLV0
では、予告どおり第9話を投下します。

LOAD DATA 第8話後半 >>166-173

242 :迷鏡止水【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:08:28 ID:TUfCckLV0
「そうですか…ラインハット軍がこの修道院に…」

ラインハットから帰還した俺達の報告を耳にしたシスター・シエロ。
沈痛な面持ちで目頭を手で覆い、深い溜息をつく。
彼女達が毎日、神に祈ってきたのは『世界中の人々の平和』
それを裏切ろうとしているのは、他でもない人間そのもの。

「私達は…ここに留まります。」
シスター・シエロの決断。顔を上げ、窓の外に目をやりながら言葉を続ける。
「貴方がたの好意はありがたく思います。ですが、修道院の外は魔物だらけです。
 ここには老人や幼い子供もいます。連れて逃げるのは難しいでしょう。」

窓の外。手入れの行き届いた花壇の周囲を走り回る幼い少女。
それを幸せそうな顔で眺めるのは年老いた女性の姿。
多少の心得では、非戦闘員を庇いながらの逃避行は不可能だろう。

「じゃあさ、せめて近場の町まででも…」
言い掛けた言葉が詰まる。
ビスタ港が封鎖されている以上、逃げられる場所は三ヶ所。
まず、オラクルベリーは却下だ。ラインハット軍の第一目標に揚げられている。
次に、サンタローズ…ラインハット国境に程近いこの村も危険過ぎる。却下。
サンタローズの西に存在するアルカパの町は距離がありすぎる。
まさか、シスター達に樽に乗って逃げろなんて言えるわけもなく…

「…これは、八方塞がり…ってヤツだなあ…」
「こうなりゃ、もう一度城に忍び込んで力づくでデールを止めるしか…」
「いや、あれだけの騒ぎになった直後だ。それこそ難しいんじゃないかい?」

「ときに、ヘンリー様。一つお聞きしたいのですが…」
 黙ったまま、窓の外の小さな幸せを眺めていたシスター・シエロが口を開く。

243 :迷鏡止水【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:10:09 ID:TUfCckLV0
「ヘンリー様の知るデール王は、そのような非道を冒せる御人でしょうか?
 兄のヘンリー様から見て、デール王の行為は本心からの物だと思われますか?」

どこまでも真っ直ぐなシスター・シエロの瞳がヘンリーを捉える。
ヘンリーは目を逸らさない。同じく真っ直ぐに、シスター・シエロを見据える。
「デールは俺とは違って、誰にでも優しい心の広いヤツだったよ…
 俺が子分と認めた男に、あんな外道な真似を出来るような男はいねえ。」

目線と同じく真っ直ぐなその言葉に、シスター・シエロの顔に笑みが浮かぶ。
「危険な場所ですので、本来はお教えするべきではないのかもしれませんが…
 南の塔の最上階に、ラーの鏡と呼ばれる真実を映す鏡が安置されております。
 ラーの鏡でデール様を映せば、その心の奥底に隠された真実が見えるやも…」

優しく心が広い弟。ヘンリーが語るデールの姿とは噛み合わない今のデール。
ラーの鏡…真実を映す鏡…それを使えば、デールの本当の心が見える。
きっと、ヘンリーが語る優しく心が広いデールが姿を現す。

「これは、決まり…でいいのかね?」
「ああ、あれがデールの本心であるわけがねえ。」
「行こう。急がないとラインハット軍が攻めて来る。」

三人で目を合わせ、頷き合う。
目的地は南の塔。

「今のヘンリー様が、ほんの少しでもデール王を信じておられるのでしたら、
 信じるままに王を導いて下さいませ。それが兄であるヘンリー様の役目です。」
子供をあやす母親のように、優しく語りかけながるシスター・シエロ。

優しい言葉と同時に向けられた笑みはどことなく悲しげにも見えた。
…のは気のせいだろうか?

244 :迷鏡止水【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:12:16 ID:TUfCckLV0
          ◇           ◇
修道院の南に存在する、神の塔と呼ばれる建造物。
その巨大な門は、神に仕える修道女にしか開く事が許されない。

荘厳な建造物の前に跪き、祈りを捧げる女性はマリア。
俺達と一緒に神殿を逃げ出した後、洗礼を受け修道女となった彼女は、
俺達が神の塔に赴く話を聞き、自ら旅の同行を名乗り出てくれた。

神聖なレリーフが刻まれた重厚な門。
固く封印された巨大な門が、乙女の祈りに呼応してゆっくりと開く。

「さあ、参りましょう。」

足場の狭い塔の中。先頭をサトチーが進み、前方の安全を確実に確保。
二番手にはヘンリーが、非戦闘員であるマリアを守る形で進む。
隊列の最後尾を守るのは俺とスミス。
高い場所が苦手なブラウンには馬車番をしてもらっている。

太陽がギラギラと照り付ける広大な砂漠に程近い場所にありながら、
塔の内部は風がよく通り、ひんやりとして心地良い。

「ラーの鏡…だっけ?相当な宝物らしいけど、どこにあるんだろうな。」
「…上階から…何か神聖な力を感じる…」
「神聖な力?死体のあんたがウロついて平気なのか?」
「…私は…魔王の魔力の呪縛から逃れた存在…心配ない…」

か弱い女性を守らなければならない中、スミスの頑丈さは心強いが、
内心、神聖な力とやらでいきなり成仏されでもしないかと気が気ではない。

「…デール王…奇妙な道具から炎を出したらしいな…」
普段は感情に乏しいスミスにしては珍しい、興味の色を感じさせる声。

245 :迷鏡止水【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:14:33 ID:TUfCckLV0
「…サトチー卿達は…それを魔法の道具の類だと認識しているようだが…
 私の生前の記憶では…そのような道具はこの世界には存在しない筈…
 お前なら…それが何かを知っているのではないか?」

目線は前に向けたまま、ぴくり…と俺の全身が反応する。
我ながらわかりやすい反応だと思う。肯定の返事は必要ないだろう。

アレに似た道具を俺はよく知っている。
アレは俺がこっちの世界に持ち込んだ道具。
豪華な装飾という違いはあれ、オラクルベリーで売り払ったライターそのもの。

「…魔法理論で作動する道具なら…力の発現には何かしら動作が必要となる…
 精神集中…呪文の詠唱…対外的な意思表現…それらを何も必要としない…
 それは魔法理論の定義から外れる…ならばなぜ炎が発現したか?
 恐らく…私達の知る理論とは別の要素で作動する道具だろうと予想する…」
その姿に似合わないインテリジェンスを発揮するスミスに驚くと同時に、
一つの疑問が俺の頭に浮かぶ。

科学の概念が存在しないこっちの世界で、容易くライターを扱って見せた王。
オラクルベリーの道具屋でライターを売ったという経緯こそあれ、
情報伝達、構造解明、技術伝播、製品開発、操作習得…
この世界の科学レベルを考えると、全ての段階におけるスピードが早すぎる。
ラインハットという国家が、たまたま高度な技術力を持っていたのか…
もしくは…
「…私が投げかけた疑問とは言え…思案に夢中になりすぎるのは感心できん…」

ぐしゃり、という耳障りな音にハッと我に返る。

天井からぶら下がった目玉が、血の通わない冷たい腕で握り潰される。
前方では、毒々しい紫の植物に鞭を振るうサトチーの姿も見える。

畜生。人が考え事をしている時に空気の読めないモンスターだな。

246 :迷鏡止水【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:17:49 ID:TUfCckLV0
――――――――――――
「イライラさせるヤツだったなあ。眩しい光とか反則じゃね?」
「…接近戦主体のお前にとっては…相性の悪い相手だろうな…」
「ま、ヘンリー様がいれば、マリアさん他三名の安全は保証されてるって事よ。」
得意のイオでモンスターを蹴散らしたヘンリーが気分爽快と言った顔で笑い、
それにつられたかのように、マリアさんもクスクスと笑ってみせる。

俺はと言うと、初っ端にインスペクターの放つ眩しい光で目を眩まされ、
『目がぁ〜目がぁ〜!!』と、軽くパニック。
手に触れた触手を半ば強引に引き摺り下ろし、その目玉を剣で叩き潰した。

惚れ惚れするほど不細工な戦いだったな…畜生。

「はぁ、もう少し攻撃魔法を練習しねえとなあ…ん?サトチーどうした?」
俺達から少し離れた場所で、潰れたインスペクターの残骸を調べているサトチー。

何か宝物でも見つけたかな?
とどめを刺しきれてなかったとか?
実は『ぷるぷる ぼくはいいインスペクターだよ』だったとか…
まさかね。

「サトチー?」
「ん?…ああ、済まない。先を急ぐんだったね。」
二回目の呼びかけでやっと気が付いたらしく、俺達の所へ戻って来る。

「あの目玉がアイテムでも持ってたか?ホラ、親分に献上しとけ。」
「ははは…残念だけど何も持ってなかったみたいだね。」

ヘンリーと笑い合いながら、隊列の先頭を進むサトチー。

最近、サトチーが上の空になることが多いんだよなあ…人の事言えねえけど。

247 :迷鏡止水【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:20:50 ID:TUfCckLV0
足場の悪い吹き抜けを恐る恐る通り過ぎ、いくつかの階段を上った先は、
狭く入り組んだ下層と違い、一直線にのびる通路のみという実にシンプルな、
下層とは明らかに雰囲気の違う空間。
その通路の奥の祭壇。燦々と差し込む太陽の光を浴びて輝く鏡が見える。
あれが、ラーの鏡…

だが、祭壇へ続く通路の途中には床の裂け目が存在し、俺達の行く手を阻む。
幅は10メートル強といった所か、助走つきのジャンプでも届かない距離。
裂け目の縁から下を覗き込むと、遥か下の方に中庭が見える。

「イサミ。ジャンプ。」(*´∀`)b
「斬るぞ。」
にこやかに俺の肩を叩くヘンリーに対して、思わず剣を向けそうになる。
落ちたら一階までまっ逆さま…潰れたトマトみたいになっちまう。
「マジになるな。冗談だよ。」

「神は、鏡を手にする者の勇気を試されると言われています。でも、これでは…」

…悪趣味な神だな。コレじゃあ身投げじゃねえか、せめてバンジーにしろよ。
マリアさんの語る神に、心で毒づきながら祭壇を見やる。
「ロープを引っ掛けるような取っ掛かりもないね。」
「…跳ぶしかない…な…」
「そうだよなあ…跳ぶしか……は?」

スミスには珍しい冗談か、もしくは俺の鼓膜がイカレたかと思ったが、
スミスは既に後方でクラウチングスタートの体勢を取っている。

「…落ちたらもう一回登れば良い…幸い…私は痛みも感じないしな…」
「ちょ…待…」

サトチーが静止するよりも早く走り出し、スミスが一気に跳んだ。

248 :迷鏡止水【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:23:38 ID:TUfCckLV0
やっぱり跳躍力が足りねえ。スミスはタフだけど基本的に鈍い。
跳躍したスミスの体は、目標の手前で失速。放物線を描いて落下をはじめる。
その姿は、一秒後には床の裂け目の中に消えてしまっているのだろう。

…1…2…3…4…5秒が経過してもスミスは、まだ俺の視界の中にいる…

俺は呆然としながら、足場のない空間を歩くスミスを見つめる事しか出来ない。
不思議そうな顔をしながら歩を進め、祭壇に安置された鏡を手に取るスミス。

「…見えない足場があるみたいですね…」
腰を抜かしてしまい、自力で立つ事の出来なくなったマリアが呆けたように言う。

「…受け取れサトチー卿…ラーの鏡だ…」
何もない空間の上、駆けつけたサトチーに鏡を手渡すべくスミスが一歩進み出る。

               ||||
               |||| ヒュン!!
                ∧_∧
                (´∀` )
'''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''``````''''''''''''''''''

……
瞬間。スミスが裂け目に消え、数秒後には下のほうからドチャリ…と音がする。

「スミスーーーーーーー!!」
「あそこだけ、足場が途切れてたみてえだな。」
サトチーが叫び、妙に冷静なヘンリーが状況を分析。
マリアさんはあまりの事態に気絶しちまっている。

本当に悪趣味な神だな。人(?)の命をなんだと思ってやがる。
神様に会う機会があるのなら、チェーンソーを持参しようと思います。

249 :迷鏡止水【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:29:49 ID:TUfCckLV0
慌てて一階に下りてみると…うん、予想通りと言うか…酷い事になってた。

体半分××ったスミスを中心に、駅のホームにぶち撒けてあるアレみたいなモノやら、
流し台の排水溝に溜まったソレみたいな残骸やら、夏場放置したカレーみたいな…(ry
…色んな○○がばら撒かれた中庭は、まさに地獄絵図。

「…鏡は無事だ…改めて受け取れ…」

そんな状況でも生きているのは、さすが痛みを感じないアンデッドと言うべきか、
ベホイミで治療を受けながら、平然とサトチーに鏡を手渡している。

「イサミよお…こう言っちゃ悪いが、スミスの旦那に任せて正解だったな。」
「ああ、俺達だったら破裂したミートパイみたいになってたろうな…」

「よし、これで大丈夫だ。どうだい?動き難い場所とかあるかい?」
「…問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…」
体のあちこちを動かしながら、スミスが事も無げに言う。

「それじゃあ一度、修道院に戻ろうぜ。マリアさんも疲れてるだろうしさ。」
「そうだね。軽く休息を取って、もう一度ラインハットに忍び込む作戦を練ろう。」

ラーの鏡が太陽の光を反射して輝く。
鏡の中にはどこまでも透明な空色が広がっていた。


イサミ  LV 15
職業:異邦人
HP:69/74
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

250 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:32:42 ID:TUfCckLV0
第9話投下終了です。

塔の最上階から落下しても無事なDQ勇者はミステリーだと思います。

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 21:12:18 ID:JgyGZVR80
乙。スミスが無駄に格好良すぎるw
ラーの鏡に、イサミ君がどう映るか心配するのはちょっと行き過ぎかね。

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 21:13:44 ID:pOH88M600
投下乙でございます。
スミスかっこいい! 頭も良いし、鋭い洞察力もあるし、元は偉い学者だったり?
カタカナ語なくなりましたね。孤独だった頃と違って、常に回復してくれる仲間がいるから、
声帯器官も前より修復されたからでしょうか。

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 00:54:37 ID:iD1GAL4l0
乙!
こんどやるときスミスを仲間にしよう

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 10:44:39 ID:KXyBII/q0
乙!スミスかっこよすぎる!
「サトチー卿」と呼ばれると「サトチー」がすごくカッコいい名前に見えてくるなw

255 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 12:11:22 ID:2/n6cuIq0
> 問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…
スミスさん、すごい・・・・

しかし、ライターはいかに・・・。
やはりこちらの世界からの人間なのだろうか・・・。

256 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:41:51 ID:iRpgzK9P0
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv10
     → 2:ヨウイチ Lv9
        3:タロウ  Lv6

257 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:44:55 ID:iRpgzK9P0
二十八、 始まりへの帰路

「なぁ。 さっきのモンスターってお前より強いのかな?」
「キィ! キキィキィ」
「メイジドラキーっていうのか。
 色違いなだけじゃなくて魔法まで使うし、やっぱり強かったんだろうな」

マウントスノーからだいぶ離れた後、ヨウイチは初めて攻撃魔法というものを経験します。
ドラオをピンク色にした外見だけでなく、不思議な炎の波を起こしてきました。
炎の波はメイジドラキーのつぶやきの後に起こったので魔法だと気づいたのです。

「剣で殴ってもなかなか傷をつけられなかったけど、負ける気はしなかったよ。
 なんてったってブルジオさんにもらった革の鎧があったからな!」
「キキ?」
「いや、熱かったよ。
 炎がこう… バァーっと。 お前も見ただろ?
これが旅人の服だと思うと恐ろしいよ。
…けど鎧の下は普通に布で出来た服だし、やっぱり恐いことに変わりは無いかも」

言いながらヨウイチは銅の剣を抜き、眺めます。
刃は若干こぼれており、切れ味を感じることが出来ません。
そもそも銅の剣は斬るというより殴りつけるふうに使うので、鋭い刃ではないのです。

「銅の剣… 何度も助けてくれたんだけどそろそろ限界だよ。
 そういったって、新しいのを買う金もないし…」

ふぅとため息をついてから、銅の剣を鞘へ収めます。

258 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:48:29 ID:iRpgzK9P0
「まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだからいいか」
「キキィ?」
「これからか…
 神殿の手がかりはなんにも無いし、いちどクレージュへ帰ろうか。
女将さんも心配してるだろうし」
「キー! キー!」
「ははっ。
 俺も早く女将さんのご飯を食べたいよ!」

後ろに大きな山が、だんだんと小さくなっていきます。

「この石版と… どこかにある神殿があれば元の世界に帰れるんだ、きっと……」

ドラオはふわふわ軽く飛んでいましたが、ヨウイチの足元には一歩二歩と踏み込めた後がうっすらと残っていました。

259 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:52:10 ID:iRpgzK9P0
二十九、 モンスター

帰りは順調に進んでいる、つもりでした。
ところが、何処で間違えたのか帰り道とは違う土地へ入り込んでいたのです。
二人は気持ちを落ち込ませないために気づかないふうを装っていましたが、
嫌でも気付かされる事があり、元の路へと引き返そうとしていました。

「くそっ… ドラオ、薬草はいくつ残ってる?」
「キ… キィ」
「五つか。 まずいな…
 お前は怪我してないか?」
「キィキ」
「大丈夫だな。
 とにかく、なんとかしてここを…」
「キキィ、キキキ」
「それは、俺も気付いてたんだけど、間違いであって欲しかったよ。
 …お前の言うとおり、ここは帰り道じゃないみたいだ。
地形が似てるから大丈夫だろうと思ってたんだけど」

メイジドラキーと遭遇したときに周りを良く見渡せばよかったのです。
あの時から方向を見失っていました。

「モンスターが強すぎる…
 もうこの剣に鎧じゃ太刀打ちできそうには…
もしかするとここで…」
「キ! キーキーッ!」
「ふぅ、そうは言っても薬草は節約しなきゃだめだよ。
 とにかく、どこでもいいから町へいける路を見つけるまではガマンするよ。
目処がたつまでとにかくモンスターからは逃げるんだ」

ヨウイチのお腹には大きな爪痕がありました。
大きく削られたそこからは勢いこそなくなりましたが血がしたたります。

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 21:54:34 ID:aGQ9ch840
支援!

261 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:57:55 ID:iRpgzK9P0
「ここなら、隠れられそうだ」

ヨウイチが見つけたのは大きな岩に囲まれた平地です。
痛みと出血で弱った身体を休める事にしました。

「イテテ… まいったな…」
「キィ…」

ドラオが心配そうにヨウイチを覗き込みます。

「だいじょうぶ、少し休めば元気になるよ」
「キィ〜?」
「いや、いい。 ほんとに大丈夫だから」
「キキッキキキィィ」
「…わかったよ、薬草ひとつ食べるから。
 それだったらいいだろ? お前、戦えもしないのに探しにいくったって…」

ドラオはヨウイチのために薬草を探しに行こうとしていました。
ですが、こんなにもモンスターの強い場所で一人にさせるわけにはいきません。
ヨウイチは荷物から薬草一つを取り出し口へ放り込みました。

「むぐ、ニガイ………
 ほら、傷口がふさがったよ。 な?
もう大丈夫だ」
「キィ〜〜」

ドラオが安心したようにくるくる飛び回ります。
そんな姿を見ていると、なんだかずっと昔から友達だった気がして、ずっと一緒に旅をしたいとも思うのです。
けれどヨウイチは別世界の人間で、今まさに元の世界へ帰る方法を探しています。
帰ることが出来れば別れが訪れ、お互いは二度と会うこともないでしょう。
ですからこの瞬間をせめて楽しく、無事に旅を終わらせたいと強くつよく信じるのです。

262 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:01:54 ID:iRpgzK9P0
「傷も治ったし、暗くならないうちにいこうか」
「キィ」

立ち上がり一歩、感じたことの無い不穏な空気があたりを包み始めました。
ヨウイチはとても嫌な予感がして、ドラオを促し早足でもときたであろう路を引き返し始めます。
空にはとうとう夕暮れが始まろうとしていました。

「…やばいな」

その時です。
はっきりと何かが駆け始めたと感じた瞬間、目の前に不安の正体が姿を現しました。

「くそ!!」

急いで銅の剣を突き出します。
ドラオも一生懸命にヨウイチのやや後ろへと下がりました。

「なぜ人間とわれわれ魔の者が行動を共にしている?」

全身をローブで覆われ片手に杖を携えるモンスター、まどうしです。

「お、俺達に戦う意思は無い! だから─」
「ドラキーよ、貴様はこの人間に操られているのか?
 ならばいますぐその縛を解いてやろう」

ヨウイチの言葉を無視し、まどうしがスライムナイトと同じような仕草を始めます。

「やめろ!!」
「…ラリホー!」

263 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:06:54 ID:iRpgzK9P0
剣を振りかぶりまどうしへ切りかかりましたが、刃先が当たる瞬間身体から力が抜けてしまいます。

「う、あ、なんだねむい…」

とても我慢できるような眠気ではありません。
まどうしは何も無かったかのように再び、ドラオへおかしな術を施しています。
ドラオをみると怯えてはいましたが、目は釣りあがり明らかに変化し始めていました。

「くっ…」

ドサリと地へ身体ぜんぶを横たえ、重くなったまぶたと一緒に意識が薄れていきます。
どうにか目線だけをドラオへ向け、驚きました。
それはドラオではなく、ヨウイチを今にも襲わんとするモンスターと化していたのです。

「どう、して…… どらお… ドラオー!」

力を絞りドラオへ呼びかけます。
ドラオがどうしてしまったのかはわかりませんが、ヨウイチを見ながらただケケケと笑うだけ。

覚えているのはそこまでです。
もう完全にヨウイチは、求めない深い眠りへと落ち、生きているのか死んでいるのかわからなくなりました。

264 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:07:43 ID:iRpgzK9P0
今日は此処まで。
お粗末さまでした。

まとめ作業は停滞しております。
いましばらくお待ちください。

265 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:08:32 ID:iRpgzK9P0
>>260
支援ありがとうございました!

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 22:26:54 ID:aGQ9ch840
乙!! ヨウイチもドラオもヤバイ……(´;ω;`)ブワッ

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 22:47:34 ID:GzrDtcvZ0
ぐあ、まどうし、こぇぇぇぇ。
無事だといいな・・・・。

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 23:57:03 ID:8RyexqQ60
おお、何てこった!ドラオよ〜
またエライとこで終ったなあ。続きが気になるううううううう!

タカハシさん乙でした!

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/07(水) 14:29:14 ID:2VBeNSHC0
いわゆるひとつの、次回お楽しみにってことだな。

270 : ◆Tz30R5o5VI :2007/11/09(金) 03:09:47 ID:xbdIqUd9O
>>1


271 : ◆Tz30R5o5VI :2007/11/09(金) 03:19:47 ID:xbdIqUd9O
携帯版まとめのほう、ロマリア編3と4が更新されてないけど誰に頼めばいいの?

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/09(金) 05:24:56 ID:gUqg4lxWO
>>271
まとめサイトにある報告BBSに書き込んでおけば、対応してくれると思いますよ

273 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/10(土) 07:05:39 ID:q0MZk8+R0
―承諾の承―(>>198-206

俺はゲーム上の出来事に干渉しないため何もしないと決めた。
だが本当に何もしないというわけではない。
要するに導かれし者たちのような主要キャラに接触しなければいい。
ゲームでのイベントを変えるようなことをしなければそれで良いわけだ。

そう考えればいろいろできることは多い気がする。
俺はこの世界のことを知りたいという好奇心にかられてしまっているのだ。
建物、食べ物、服装、文化、風習、動物、植物。俺の興味は尽きない。
しかし、世の中知らない方がいいことがあるものだ。
だが俺は知ってしまった。この世界のモンスターの恐ろしさを。

俺はいつの間にかブランカの敷地から外に出てしまっていた。
そして何か見たことのない生き物に出くわした。
大きなくわがたのような昆虫。
分かった。あれはモンスターの「はさみくわがた」だ。

奴は俺に気がつくといきなり襲い掛かってきた。
巨大なはさみが俺の腹部を締め付けてくる。
はさみのとげが肉にぐいっと食い込む。

痛い。

さらにぐいぐいと食い込む。信じられないような力で締め付けてくる。
ぐいっ。ぐいっ。ぐいっ、ぐい、ぐいぐいぐいぐい……

痛い痛いいたい痛いイタイいたい痛い!
異常なほど腹が熱い。苦しい。息ができない。
はさみが取れない。取れない取れない取れない。
取れない外れない動けない逃げられない助からな……

274 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/10(土) 07:08:43 ID:q0MZk8+R0
ああ、俺も終わりなのか、と思っていると急に締め付けがなくなった。
そして、直後に何か焦げ臭い匂いが鼻を襲う。
しかしそんなことを気にする余裕はなく、俺はぜいぜい言いながら空気を吸う。
痛みと苦しみから開放され、俺はやっとこの世界が夢ではないと実感した。

「そんな格好で町の外に出るなんて自殺行為よ。」
急に声をかけられて俺は少しばかり血の気が引いた。
声のしたほうを見ると女の子がいた。しかもすごい美少女。

「そいつはもう倒したから大丈夫よ。怪我はなかった?」
そう言われてはじめて、何かが燃えていることに気づいた。
焦げた匂いをさせていたのは、はさみくわがただった。
彼女が助けてくれたのか。ああ、まるで女神のようだ。見た目も含めて。
俺は地獄からいきなり天国に来てしまったようだ。

はさみくわがたの様子を見るから判断するにおそらくは魔法で倒したのだろう。
俺は改めて自分がドラクエの世界にいるんだということを思い知った。
この娘は魔法使いなんだろうか。
ドラクエ4の魔法使いといえばマーニャかブライだ。
だが、この娘はマーニャではないだろう。
この可憐な少女があのふんどし姉さんのわけがない。
いや、決してふんどしが嫌いだというわけではないのだが。
言うまでもないが彼女がブライのわけがない。あるはずがない。

つまり俺は彼女に干渉しても問題ないわけだな。よしよし。

「助けてくれてありがとう。何かお礼をさせてもらえないかな。」
俺は思い切って彼女に言ってみた。
彼女は少し迷ったようだがすぐにこう答えた。
「それじゃ私の買い物に付き合ってくれる?」
俺は二つ返事で承った。

275 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/10(土) 07:10:45 ID:q0MZk8+R0
買い物といっても彼女が買うのは日用品ばかりだ。
洋服やアクセサリーではないけれど、そこまでデートっぽくなくても満足だよ俺は。
聞けば彼女は田舎に住んでいて、ときどきこうしてブランカまで買い物に来るそうだ。
村人の分も含め生活に必要なものを調達するのだという。
可愛い上になんていい子なんだ。
こういう娘は幸せにならなきゃ嘘だよな。
ああ、できることなら俺が幸せにしてやりたい。それで俺も幸せになりたい。

「重くない?」
「これくらい大丈夫さ。」
俺は彼女の買う品物の荷物持ちをしている。
ああいい子だ。俺のことを気遣ってくれる。いやーホント可愛いな。
こんな可愛い娘と知り合えるなんて現実世界じゃいないよなー。

いままで知り合った可愛い子を思い出そうとすると小学生時代までさかのぼってしまう。
同級生だったリカちゃんという可愛らしい子がいたんだ。
リカちゃんは自分のことを「僕」というんだよな。
そのことで皆にからかわれていたけど、俺だけ可愛くていいじゃないかって言っちゃってさ。
小学生にありがちなことだけど、今度は俺がからかわれたりしていたっけ。いい思い出だ。
そいうえば小学校の同窓会の話があったんだよな。
行ってみようかなー。いや、無事に帰れたらの話だけど。
でもこんなかわいい娘と知り合いになれるなら帰らなくてもいいかなーなんて……

「どうしたの。何か考え事?」
「いやなんでもないよ。」
彼女が俺の顔を覗き込むように見てくる。
俺の目の前に彼女の顔がある。
改めて見てもやっぱりいい。なんというか神秘的な美しさだよ。

276 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/10(土) 07:12:47 ID:q0MZk8+R0
何かこうして2人で日用品を買うのって夫婦みたいだよな。
こんな嫁さん欲しいよなー。
朝起きたら彼女が朝食を作ってくれているのだ。
ええのう。実にええのう。

嫁といえばこんな童話がある。ネズミの嫁入りという話だ。
ネズミが最強の婿をもらおうと太陽に嫁入りしようとする。
しかし太陽は雲に隠されてしまう。そこで次は雲にもらわれようとする。
だが雲は風に飛ばされる。その風は壁にさえぎられてしまう。
壁に嫁入りをしようとしたときその壁はネズミに向かってこう言うのだ。
「私が最も強いだなんてとんでもない。壁を簡単に破る者がいるではないですか。」
それを聞いてネズミたちは悟ったのだ。
世界で一番強いのはアリーナ姫であると。

以上ドラクエジョークでした。絶好調だな俺。

しかし幸せな時間というものは長くは続かないものだ。
そのときは突然にやってきた。

「今日は荷物を持ってくれてありがとう。」
彼女の買い物が終了した。彼女はこのまま自分の村まで帰るという。

お別れか。お別れのときなのか。
このまま終わっていいのか。

否! なんとしても次につなげなければ。
「君はどこに住んでるの? 良かったら送るよ。」
俺は再び精一杯の勇気を振り絞って聞いた。
だが……

277 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/10(土) 07:14:19 ID:q0MZk8+R0
「私の住んでる場所を聞いてどうするつもりなの!」
ああ、ものすごい拒絶反応……。ストーカーだと思われたのだろうか。
よく考えたらモンスターの出るなか俺が送るなんてできないんだよな。
そうだよ。俺がバカだったんだ。全ては俺のせいですよ。

俺が唖然としているのを見て彼女は自分の口調のきつさに気づいたようだ。
「ごめんなさい。でも、どうしても教えられないの……」
変に気を使わないでくれ。いっそのことばっさり切り捨てておくれ。
クリフトみたいにマホカンタしてる敵にザラキ唱えれば楽に逝けるかな……

振られた。なんだろうこの悲しさ、この寂しさは。
何か最近これに似た経験をした気がする。どこでだっけ。
思い出した。姉ちゃんが子供の名前を考えているときだ。
俺が「トンヌラというのはどうだろう?」と提案したときの姉ちゃんの反応。
もちろん冗談だったのに、姉ちゃん本気で嫌がっていたっけ。
あれ昔だったら乗ってくれていたよ。ちょっと寂しかった。
でも、意外なことにお義兄さんのほうが話に乗ってくれたんだよな。
姉ちゃんはいい人を見つけたもんだ。
それなのに俺ときたらゲームの世界ですらこのありさま……

名前といえばこの娘の名前を聞いていなかったじゃないか。
「せめて、せめて名前だけでも教えてよ。俺の名前はジンって言うんだ。」
その女の子はすぐに笑顔になってこう言ってくれた。
「名前なら教えてあげられるわ。」
しかし彼女の名前を聞かないまま別れたほうが楽だったのかもしれない。
俺は世の中には知らない方がいいことがあると改めて思ったのだ。

「シンシア。私の名前はシンシアよ。」

―「転職の転」へ続く―

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 11:40:35 ID:Hr84AUuX0
うは、女勇者きたーーー(・∀・)

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 12:03:24 ID:Bo4/6xxCO
シンシアは勇者じゃなくてエルフの方やんw

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 16:04:24 ID:YPLfSd2l0
おお、そうだった・・・・orz

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 17:50:34 ID:ou84x4oN0
>>277

スラスラと読めてしまうのは文章の巧さか
物語も今までのSSと違う切り口で絶妙!
続き楽しみにしてるよ

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 20:42:17 ID:IAR8AtOx0
干渉しちまったわけだなw
面白い。続き楽しみにしてます

283 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:23:32 ID:s21p2SaR0
作り合わされし世界

           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv10
     → 2:ヨウイチ Lv10
        3:タロウ  Lv6


>>263より

284 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:26:37 ID:s21p2SaR0
三十、 こころ

クレージュの宿屋にいました。
身体は調子よく、天気はカラカラで気持ちよい気候です。

「女将さん、おはよう」
「ああ、今ちょうど暇になったところだよ」

そういって女将さんがお茶の入った器二つと一緒にヨウイチを席へ座らせます。

「おはよう。
 …どうだい、落ち着いたかい?」

まどうしとの戦いから、ヨウイチは眠ることもせずただクレージュを目指したのです。
宿屋へつく頃にはすっかり疲弊しきってあまり話もせず一晩を過ごしていました。

「うん…」

ヨウイチは一つうなずき話し始めました。

「…ドラオなんだけど、さ。
 ドラオは死んでしまったんだ。 理由、全部は俺が弱いせいだった」



285 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:33:15 ID:s21p2SaR0

「キ、キィィィ!」

瞳がぼんやりと世界を写し、ドラオの声と戦いの風を感じます。

「う… ど、ドラオ?」

まどうしが放つ魔法「ギラ」を素早い動きでかわすドラキー。
ヨウイチにはわかりませんでした。
ドラキーの身体は白く、まどうしと同じ攻撃魔法を使うのです。
ドラオのような雰囲気を持ちながら、けれどもドラオとは違っていました。

「お、おい! ドラオ… なのか!?」

まどうしはかなり弱っていましたが、巧みにギラをドラキーへと引火させます。
炎を浴びるドラキーもまた火傷や傷を負いつつ、鋭いツメで応戦していました。

「なぁ!!」

とっさに、戦いのさなかだというのに声を荒げてモンスターへと近づこうとしましたが、
どうやら眠らされている間に攻撃されてしまったようです。
足や腕に激痛が走り立ち上がるのがやっとでした。

「キッ!!」
「ぐぅっ!!」

286 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:38:44 ID:s21p2SaR0
その時、戦いは決着を見ます。
ドラキーの胴体にはまどうしの杖が飲み込まれ、まどうしの首はドラキーのツメによって切り裂かれたのです。
ヨウイチは動けず、お互いが崩れ落ちていくのをただ見ているしか出来ません。
やがてまどうしの首から噴出した血はわずかになり、地面をじわりと染めるだけになりました。
ドラキーは杖の当たり所が悪かったのかそのまま地面へ落ち、大きくゆっくりと呼吸を繰り返すだけです。

「あ… おい! お前はドラオなのか?!」

ヨウイチがようやく我を取り戻す頃には、白いドラキーの息も絶えつつありました。
腕に抱え上げるとその身体はとても重く、力が失われつつあることを知らしめます。
そして、顔を見てはっとしました。
表情はいつも見慣れたドラオだったのです。
色は違いますが元のドラオに戻り、戦っていたのです。

「き… きぃききぃきききききぃ…
 き、キィキー、キィー……」

ヨウイチの身体の傷が治るのと一緒に、ドラオの身体が不思議な光に包まれすぅと消えてしまいます。
両の腕は軽くなりそのまま空を抱くだけでした。

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 21:40:53 ID:BU4ljMjbO
支援(T_T)

288 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:43:39 ID:s21p2SaR0

「…ドラオが守ってくれたんだね」

女将さんはショックをうけていましたが、優しく言います。

「そう、ドラオ。
 最後に回復魔法をかけてくれて、それから言い残して…
どうして白い身体になったのかはわからないけど、そんなことより…」

悔しくて仕方がありません。
大事な友達が、ずっと一緒に歩いてきた友が、自分を守るために命を落としたのです。

「ヨウイチ」
「……俺はずっと、ずっと一緒に旅したいって。
 俺が守っていくはずだった、なのに眠って……
女将さん、ドラオは俺を恨んだりしてないかな」

女将さんは少し黙って、それからヨウイチの肩に手を置いて言いました。

「あんたはなんにも悪くないんだよ。
ただのモンスターから戻ったのも、ドラオのこころにヨウイチがいたからなんだから。
最後の言葉はきっと、守れてうれしかったんだろうね。
…恨んだりなんかしないよ、ドラオはヨウイチが大好きだったんだよ」

289 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:49:06 ID:s21p2SaR0
三十一、 旅の続き

「じゃあ、女将さん。
 たくさん、返せなかったけどいっぱい、ありがとう」
「いいんだよ。
 私もあんたと出会えてうれしかったし。
きっと、目的を果たせるといいね。
良い意味で、もう会うことがない事を祈ってるよ。
……まぁ、どうしようもなくなったらいつ戻ってきてもいいんだよ!」

その言葉にうなずいて宿屋を離れ、なるべく振り返らずクレージュの町を後にします。
少し外れた大地の上で大きな空を見上げて深呼吸し、それからまた歩き始めました。



それから二週間ほど後の晩、海の見える森の中にドラオの墓を立て言いました。

「いろいろあったよなぁ」

ネックレスをその墓へおき、旅やドラオやシエーナの女の人、そしてゲレゲレを思い出しくすりと笑います。

「しっかし、女将さんもよくこんな剣を手に入れられたな」

体のすぐ側に銅の剣よりもっと強力な破邪の剣を携えます。
女将さんが神殿の噂と一緒に入手しておいてくれたものでした。

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 21:52:50 ID:q0MZk8+R0
.

291 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 21:55:00 ID:NYRwan280
支援

292 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 21:56:05 ID:s21p2SaR0
「…ドラオ、本当ならお前と一緒にこの場所にいたかもしれない。
 俺はお前が本当に俺と旅をしてよかったのかってまだ迷ってる。
もし、女将さんと一緒だったら死なずにすんだのに…
ほんとに俺を守れてうれしかったのか?」

クレージュを出てからどの町へ立ち寄ってもキレイな場所を見つけても、素直に喜べませんでした。
それは、今までならドラオと分け合ってきた喜びや感動が半分になってしまったからです。
もし、ちゃんとした別れが出来たなら半分にはならなかった、ヨウイチはそう考えていました。

「お前の行動に報いるには、俺はぜったいに帰らなきゃならない。
 …叶うならお前に会って一言だけでも交わしたい」

空は答えを与えず願いは叶いません。
流れ星がいくつか線を引いた後、やがてまどろみ始めます。

陽が昇ればまた旅は続きます。
目が覚めればいつものようにドラオを探してしまうでしょう。
それでも、歩かなければならないのです。
よく聞くことがあります。

293 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 22:02:43 ID:Sv/zpao+0
支援

294 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 22:03:24 ID:s21p2SaR0
『時間が全てを癒してくれる』

それは確かなことでしょう。
これからの路は全てが悲しいものではありません。
苦しくも楽しく、辛くとも幸せな事の繰り返しです。
そうやって悲しい記憶はたくさんの思い出の一つになって、ほんの少しだけ薄れるのです。
忘れるのではありません。

ヨウイチもそれは知っていました。
ですが、時間は過ごさなければ流れません。
その時間を過ごす間をどうすればいいのか、まだわかりませんでした。

考えているうちに眠りへと落ちます。
その困難な時間を過ごす明日を迎えるためにそして、元の世界へと帰るため。





最終章へ

295 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 22:05:08 ID:s21p2SaR0
合作のヨウイチ編は以上です。
迷う表現もありましたが、思い切って。
最終章でまた。

あ、まとめはとっても停滞してます…

296 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/10(土) 22:05:38 ID:CY6aEvyb0
投下乙でございました。
いよいよ最終章、wktk


297 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/10(土) 22:50:34 ID:s21p2SaR0
大事なことを忘れていた。

>>支援
ありがとうごいざいました!

298 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/10(土) 23:56:38 ID:wSm2A5uf0
では、そろそろ時間ですので第十話前半を投下します。

LOAD DATA 第九話>>242-249

299 :背水の刃【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/11(日) 00:03:35 ID:wSm2A5uf0
進軍を告げる太鼓が打ち鳴らされる。
勇ましい太鼓の音に合わせ、足音が通り過ぎる。
人々の歓声は聞こえない。
枠だけの窓にボロのカーテンを閉め、静まり返った町並みを足音が通り過ぎる。
鬨の声は挙がらない。
聞こえるのは一人の兵士の足音と、金属同士が擦れ合う不快な音。
静まり返った町並みを、一人と一個が通り過ぎる。
誰にも祝福されない二つの影が、城下町を通り過ぎる。

城下を一望するラインハット城のバルコニーから、その光景を眺める三つの人影。
血のように赤い酒の注がれたグラスを優雅に傾ける金髪の王。
一歩下がった場所で、ラベルの擦り切れた瓶を抱える初老の大臣。
王の座る椅子の真横に控えるのは、紫のドレスにその身を包んだ女。

「首尾は?」
「上々で御座います。仰せの通り、討伐隊は南の修道院に向かいました。」
「討伐隊…ね…」

若い王が、大臣の言葉にイタズラな少年のような笑みを返す。
「生きた兵士が一人。それで一隊を編成できるとはね…」
「デール王もお人が悪い。アレの戦力を一番よくご存知なのはデール王でしょうに。」
「さてね…結局アレも、人の力がなければ何も出来ない木偶(デク)に過ぎないさ。」
皮肉に笑う王の持つ空のグラスに酒の追加を注ぎながら、大臣も笑ってみせる。

「人々を束ねるのが王。そして、世の愚鈍な王を束ねるのはラインハット王国。
ならば、世の愚鈍な王どもを束ねるラインハット王国の国王である僕…
デリシア=ドラード=コロナ=ド=ラインハットは…神か?」
注がれた酒を一息にあおり、椅子から立ち上がった王が笑う。
その姿を見て、目だけで笑う女。

王の高笑いも届かない静かな城下町を、一人きりの討伐隊が進軍する。

300 :背水の刃【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/11(日) 00:05:33 ID:wSm2A5uf0
ラーの鏡を入手した俺達は、修道院の一室で休息を取っている。

下着のままベッドに腰掛け、少し硬めの黒パンを齧りながら明日の作戦を練る俺達。
清楚なシスター達に見られたら”行儀が悪い”と怒られそうな、だらしない姿だが、
その表情も話の内容も真剣そのものだ。

ラインハットの異変…デール王の豹変…明日はそれらにカタをつける。
修道院を守る…人々を守る…失敗は許されない。チャンスは一度限り。

「明日はラインハットにとんぼ返りか…侵入経路は前と同じでOK?」
「いや、前回の一件で警備も厳しくなってるだろうし、同じ経路は使えないよ。」
「そっか…じゃあ、別の隠し通路とかはねえの?…ヘンリー?」
「…すぴー…ぴるるるる…」
―……☆…―

さっきまでブラウンと一緒に騒いでたわりに、やけに大人しいと思ったら
二人して爆睡してやがる…

ラインハット〜神の塔での連戦で疲れが相当溜まっていたんだろうな。
ヘンリーは作戦会議もそこそこに、ベッドに潜って寝息を立てている。
「ふわぁ…見てたら俺まで眠くなってきちまったよ。」
「バタバタした一日だったからね。僕達もたまには早く休もうか。」

真っ白でふかふかの布団に顔を埋めると太陽の香りがする。

不思議だよな。
ベッドのふかふかした感触も、布団に残るお日様の匂いも同じなのに、
こいつらは全部、俺の知らない違う世界のモノ。
理論とか生態系は全然違うけど、心地良いものを求める人間の嗜好ってのは、
世界が変わっても同じなんだな…Zzz…
布団から見えていた茶色い髪の動きが止まり、規則正しい寝息が聞こえてきた。


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