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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

108 :Stage.10 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:12:52 ID:E3XTDxMH0
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 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者資格の本試験までまだ若干の日にちがあったから、まずは当初の予定通りエジンベ
アに直行した。ゲームのルールなんて知るかいな。こっちは常識に合わせて行動してるん
だ、それで通らなきゃゲームがおかしいっつーの。

 というわけで、例の差別主義な門番。やっぱり通せんぼをしてきたんだけど、
「ロマリア国王から事前に書状が送られてるはずだけど? ここにあるポルトガ王の紹介
状も疑うわけ? エジンベアは二国の王を敵に回す気か? 国際問題だぞ? あんたごと
きが責任取れんの? ああコラ?」
 詰め寄ってやったら、泡食って上司に報告しにいった。
 こっちは「アルスが襲われて意識不明」なんて話をユリコに聞いた上、彼女からの連絡
待ちの状態でイライラしてるんだ。余計な神経を使わせるな。

 んで、王様から地下への立入許可をもらったはいいけど、これまた予想通りというか。
縦横100マスくらいの広大な地下室に、池やらドクロマークのタイルやらが点在し、動か
す岩も50個以上という超難解なパズルになっていた。
 徹夜で解いて「渇きの壺」をゲット。賢さ245をナメんなよ。

 その後、即行でアリアハンにルーラして一泊。明日の早朝にランシールに向かえば、ギ
リギリ本試験の前日までに到着する予定だ。

 ちなみに、ランシールの本試験は、言わずもがな、例の「一人でお使いできるかな?」
な単身洞窟攻略だ。
 通常、神殿へ入るには「最後の鍵」が必要なのだが、試験のときは特別に開けてもらえ
るとのこと。ここはゲーム本来のストーリーを無視してもOKらしい。
 どうもこの旅は、フラグが立つ基準がよくわからない。ストーリー外のショートカット
が使えるなら素直に使わせてもらうが、またあとで面倒になるのは嫌だなー。

   ◇
 

109 :Stage.10 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:14:52 ID:E3XTDxMH0

 そんなこんなで、僕たちは久々にアリアハンに帰ってきた。
 仲間はそれぞれの家に帰り、僕は今、アルスの実家に戻っている。
 もちろん実のお母さんを騙すわけにもいかないから、エリスたち同様、彼女にも僕がニ
セモノであることは出発前に説明している。
 出がけの慌ただしいときに、いきなり重大な話を告げるのも申し訳ないと思ったんだけ
ど、その時のDQ版お母さんの反応は以下の通り。
「あらまぁ、ちっとも気付かなかったわ。言われてみれば、確かに少し違うかしらね」
 さすが勇者の母。

 ちなみに彼女の名前は「サヤ」さん。突然現れた怪しい異世界人にも関わらず、また笑
顔で出迎えてくれたサヤお母さんに、「こんな素敵な人が僕のお母さんだったらいいな」
と素直に話したら、「嬉しいわ」とまたギュっとされました。ちょっと照れるなー。

 そしてもうひとり。
「タツミ君、と言ったかな。旅はどうじゃね?」
 これまたのんびりしたお人柄のデニーおじいちゃんが、夕食のテーブルを挟んで聞いて
きた。僕はヘニョにちぎったパンをやりながら、事前に用意しているセリフを答える。
「アルス君が一級討伐士の資格を取ってくれていたお陰で、とても順調ですよ。仲間も彼
を取り戻そうと、一丸となって協力してくれてますし」
「そうかそうか。しかしあの子も、元気でいるのかのう」
 自慢の孫が消えたんだ、やっぱり心配だよね。本当のことを教えてあげたいけど……

【本人は豆乳に花見に大はしゃぎな挙げ句、サイコな男に襲われて意識不明らしいです】

 ……やっぱり事実を告げるのは僕にはムリです。代わりにアルスをヨイショしておく。
「彼はルビス様に選ばれた、かけがえのない世界でただ一人の勇者です。きっとご無事で
いらっしゃいますよ。――すみません、僕ごときが彼を騙るのは心苦しいのですが」
「いいえ、あの子のために頑張ってくれているんですもの。さ、おかわりはどう?」
 フワンと笑顔を向けてくれるサヤお母さん。そのあたたかい笑みが逆に心苦しい。
 僕は明日の準備を理由に早々に席を辞して、ヘニョを連れて二階に上がった。
 

110 :Stage.10 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:16:52 ID:E3XTDxMH0

 久しぶりに戻ってきたアルスの部屋は、急の帰宅であるにも関わらず、きれいに掃除さ
れていた。
 出るときはゆっくりする余裕もなかったけど、こうして見てみると、文化の違いはあれ
ど年頃の男の子らしい部屋だと思う。
 壁には剣と盾の飾り。怪物と闘う勇ましい騎士の絵がピンで留めてあって(ポスターみ
たいなものかな)、落書きを消した跡とか、なにかおもしろくないことがあって暴れたの
かヘコんでるところもあったり。
 ロダムに取ってくるよう言われた「一級討伐士」の仮免許証を探す。知らないで置いて
出てしまったもので、本試験で必要とのこと。
 それは机の引き出しの中にすぐ見つかった。金色のプレートに彫られている名前は、
【Arsed Deny Rangbart】

 アルセッド=D=ランバート。
 16歳という史上最年少の若さで、特別職一級討伐士の一次試験に合格した、アリアハン
の天才少年。世界的にも有名な討伐士オルテガ=S=ランバートの息子ということもあっ
て、冒険が始まる前から伝説が始まっちゃってるような人物。
 ……なんだそうだ、実は。
 改めて話を聞くと、とんでもないヤツだったんだねー。周囲の反応から薄々感じてはい
たけど、まさかここまでとは。彼のネームバリューの高さも、これで納得がいったよ。


 アルスという少年が、このあと本当に伝説の英雄になれることを、僕は知っている。
 家族から愛されて、世界から愛されて。普通の少年らしい一面を持ちながらも、勇者に
足る能力と資格を有し、実際に過酷な使命を成し遂げてみせるだけの――。

「…………」
 なんか胸につっかえる感じがする。少し外の空気を吸ってこようか。
「ヘニョも行く?」
 まん丸の目で僕を見上げたヘニョは、当然のようにピョンと僕の腕に飛び込んできた。
抱っこ犬とか抱っこ猫とかはよく聞くけど、こいつは抱っこスライムなのかな。
 ヘニョを抱いて階下に降りる。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:16:53 ID:+YAKNage0
そういえばヘニョいたんだっけなww支援

112 :Stage.10 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:18:52 ID:E3XTDxMH0

「ちょっと散歩してきますね」
 台所の方に声をかけたが、サヤお母さんの姿がない。どこに行ったんだろう。

   ◇

 玄関を出て城壁沿いに歩いていった。
 アリアハンは初夏を迎えた頃。現実側よりはだいぶ暖かいけれど、夜風はまだ肌にひや
りとして、身体の熱と一緒にくだらない考えも奪っていってくれる。
(ま、アルスはアルスで、僕は僕なんだし……)
 正面入り口を守る夜番の兵士さんに挨拶しつつ、適当にブラブラしていたら、やがて共
有井戸がある広場に出た。いつの間にか街の端っこまで来ちゃったらしい。

 そろそろ戻るか。そう思ってUターンしようとした、その時だ。 
 風に乗って女性の声が聞こえてきた。聞き覚えのある――サヤお母さん?

 広場の隅の薄暗いところに人影が見えた。間違いない、サヤお母さんだ。人目を忍ぶよ
うな暗い色のマントを着ていて、彼女の前にも同じような格好をした背の高い人がいる。
 そのもう一人が、低い声で言った。
「そなたはなにを考えておるのだ。これ以上好きにさせておく法はないであろう?」
「しかし真相がはっきりするまでは、様子を見るべきかと存じます」
 深刻そうな空気を感じて、僕は咄嗟に物陰に隠れた。
 相手は男の人みたいだけど……ん?

 えーー!!?? こんな夜に男の人と密会デスカ? これなんてFLASHネタ?

「余はもう我慢がならんのだ! あのような紛い物がアルセッドの名を騙り、世界を偽り、
遊び半分に勇者ごっこをしておるのだぞ?」
「ですがいきなり捕らえるとは性急にすぎます。もしあの子の言っていることが真実だと
したら、ルビス様の遣いを害することになる。そうでございましょう、陛下?」

 “これなんてFLASHネタ?” じゃねーや。思いっきり僕のことじゃん。

113 :Stage.10 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:20:51 ID:E3XTDxMH0

 どうやらアリアハン国王その人が、僕の処罰をどうするか、サヤお母さんに聞いている
ようです。
 まあ王様にはバレてて当然か。僕の仲間は全員、城勤めの人間なんだから――。
「ルビスの遣いなどと、そんなたわごとを信じろと? おおかた、どこぞでご子息を見か
けたあやつめが、似た容姿を利用して成り代わろうと画策したのではないのか」
「しかしそれでは、うちの息子がなぜそれを許したのかが……」
「そこらの小童に遅れをとるような子ではないが、ご子息は情が深い。聞けばあの紛い物
め、頭は回るようだからな。騙されてどこぞに封じられておるのやもしれん」
 苦々しく吐き捨てる王様の言葉に、僕は思わず苦笑が漏れた。
 ま、普通はそう考えるよねー。ある意味、この世界に来て一番常識的な意見を聞いた気
がする。実際「ルビスの遣い」なんてデタラメだしね。
 王様は怒り心頭といった様子だ。
「忌々しい。いっそ今すぐ捕らえ、手足の一本も落とせば吐くのではないか? もっとも
亡き親友の忘れ形見を偽った罪、その程度で済ます気はないがな」
「おやめください陛下。仮に偽りであったとしても、魔物に親を殺されたかしたみなしご
が、生きるために取らざるを得なかった手段かもしれません」
「今の世に、親のない子が他にどれだけいると言うのだ。みなそれぞれに働いて生きてい
る。勇者を騙る理由にはならん!」
「ですが、アルセッドと同じ年頃の、それもうり二つの子に、そんなひどい目に遭わせる
なんておっしゃらないで。あなたはもっと優しいお方のはずです」
「……まったく、優しいのはサヤ殿だ。そなたは昔からそうであったな」
 そうか、王様とオルテガさんって親友だったんだ。あの親しげな雰囲気を見るに、昔は
サヤさんを巡って2人が争ったり、なんて青春の日々もあったのかもしれないなー。 

「紛い物、か」
 必要とされているのはアルスであって、僕ではない。ここに僕の居場所はない。
 最初からわかっていたことだ。
「誰かそこにおるのか!?」
 王様が鋭く叫んだ。
 僕はヘニョにこの場で静かにしているよう言いつけて、両手を挙げて出て行った。
「すみません、聞いてしまいました」

114 :Stage.10 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:22:52 ID:E3XTDxMH0

   ◇

 サヤお母さんが、まるで僕を庇うように王様との間に入った。
「なりませんよ、陛下っ」
「……わかっておる」
 咄嗟に剣の柄に手をかけていた王様が、しぶしぶという感じで一歩下がる。どうもサヤ
お母さんには弱いらしい。
 この王様も、基本的にはいい人なんだろうね。
「ご処断はお任せします」僕は言った。「手でも足でも、どうぞ」
「なにを言うの!?」
 驚いているサヤお母さんを制して、僕は王様と向かいあった。
「ただし、それは僕が旅に失敗してからにしてください。僕が勇者の後継を任されてここ
にいるのは本当です。そして旅が無事に終われば、本物のアルスが戻ってくるということ
も。でも、僕が勇者でなくなったら、それは叶わない」

 神龍の前で交わした契約の中に、「主人公」をやめない、というのがある。
 主人公、つまりこの世界における中心キャラクターとしての特別な立場を放棄、あるい
は資格を失うと、物語を進める力がなくなるんだとか。
 たとえば僕が「勇者」でなくなり、町民Aみたいな1NPCになってしまえば、普通に生
活はしていけるだろうけど、魔王を倒すことも、神龍に再び会うことも出来なくなる。
 でなければ、僕は「勇者」なんてとっくに辞めていただろう。ただ神龍に会えばいいだ
けなら、もっと合理的な方法が他にいくらでもあるしね。

 ひゅんと風を切る音がした。
 王様が剣を抜き放ち、その切っ先をぴたりと僕の喉もとに据えていた。
「貴様は何者だ」
「言えません」
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
「なぜ言えない?」

115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:23:53 ID:ValBstli0
支援を唱えた!

116 :Stage.10 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:24:52 ID:E3XTDxMH0

「僕にとってもアルスは大切な人間だからです。僕は絶対に彼を連れ戻します。あなたが
信じようと信じまいと関係ない」
「答えになっておらんわ!」
 気色ばんだ王様は、次の瞬間にフッと笑った。
「本試験は明後日だったか。貴様の条件からすれば、まず試験に合格しなければ、勇者で
はなくなるぞ?」
「そうですね。ですから、その時は」
 ご自由に。

 しばし無言の時が過ぎた。
 射殺さんばかりに睨み付ける王様の目を、僕はただ見返していた。
 すうっと頭の芯が冷めていく、いつものあの感覚。
 こんな時の僕は、きっとまた冷淡な人間になっているんだろう。

「――まるで正反対だな。その目、見ているだけで虫酸が走る」
 王様が剣を収め、マントを翻して背を向けた。サヤお母さんを一瞥し、通りに向かって
歩き出す。
 二人の兵士が音もなく寄ってきて、王様を守るように前後につくと、彼らは闇に紛れる
ように去っていった。

「もう……タツミさんっ。私でも怒るわよ?」
 サヤお母さんが僕の腕をつかんで、強い口調で言った。そりゃそうだよな。僕に騙され
てたんだと、明白になったんだから。
「ごめんなさい、サヤさん。確かに今は言えないんですけど、でも近いうちに……」
「そうじゃなくて!」
 遮られて、僕は口をつぐんだ。
「なんであんな無茶をするの。無茶な約束を平気でしちゃうの。冗談じゃ済まないことだ
とわかってるでしょう。もっと自分を大切になさいっ」
「サ、サヤさん?」
「どうせなら『知らない』とシラを切ればいいのに、『言えない』なんて正直に言っちゃ
うんだもの。あの子よりよっぽど賢そうなのに、あなた、アルセッドより無鉄砲だわ」

117 :Stage.10 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:26:52 ID:E3XTDxMH0

 あのぉ、えーと。……ど、どうしよう。
 僕の頭が珍しくパニックを起こしている。こんな予想外の反応をされるとは。
「そんなことより、アルス君のことは気にならないんですか?」
「だから『そんなこと』とか言わないの。もちろん気になるわよ、実の息子のことだもの。
でも元気でいるのは本当なんでしょう?」
「ええ、まあ(ちょっと今は寝込んでるみたいだけど)」
「ならいいわ。あなたの言い分だけを信じることもできないから、あの子が帰ってきたら、
一緒にみっっちり話を聞かせてもらいます。いいわね?」
「は、はいっ」
 ぶんぶん首を縦に振る僕に、サヤお母さんはまたいつものフワンとした笑顔を浮かべた。
マントを脱いで僕の肩にかけてくれる。
「なにが起きてるか、私にはよくわからないけれど。でもあなた、あの子を庇ってくれて
るんでしょう? ありがとう、ごめんなさいね」

 ああ、お母さんなんだな――と思った。
 この人は、アルスが自分の意志で消えたことをわかっている。でも、そこには必ず正当
な理由があるはずだと信じてる。そのせいで僕に迷惑がかかっているのなら、責任は母親
の自分が負うべきだという覚悟も持っている。
 そして、僕を真っ直ぐに見る彼女の目には、ちゃんと僕のことも映ってる。アルスへの
信頼と同じように、僕のことも信じようとしてくれている。

 参ったな。今ちょっとでも気を抜いたら……泣きついちゃいそうだw

 僕は慌ててヘニョを呼び出した。我慢しきれなくなったみたいに勢いよく飛び出してき
たスライムに体当たりされて、その場にひっくり返る。
「ごめんヘニョ、忘れてたわけじゃないってば」
 プニプニの身体をなぜてやると、まん丸の目がウルウルしている。スライムにまで気を
遣われるとは情けない。

「王様との約束に関しては心配ありません。僕もそこまで無謀じゃないですよ、それなり
の計算はあります。試験には絶対に合格しますから」

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:27:35 ID:ValBstli0
「支援は装備できないけど、それでもいいかい?」

119 :Stage.10 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:28:53 ID:E3XTDxMH0

 僕が断言すると、サヤお母さんは「本当に?」と念を押してきた。しっかりうなずいて
安心してもらう。僕だって腕や足を切られたかないもんね。
「ただ世の中に100%なんてないですし、これからエリスの家に行って、打ち合せしてき
ます。今晩はそちらに泊まりますけど、いいですか?」 
 サヤお母さんはまだなにか言いたいことがあるみたいだったけど、
「わかったわ。でも無理はしないでね」
 僕のおでこにキスをして、家に戻っていった。


「ま……やるしかないよな」
 自分に喝を入れるという意味では、今回の厳しい条件も良かったかもしれない。
 正直なところ、胸の内はまだちーっとも整理がついていない。アルスが羨ましいのは本
音だし、なんで僕がこんな苦労しなきゃなんないんだとも思うし。
 でも僕には、そうするだけの理由がある。立場を完全に交換するわけにはいかないけど、
少しくらいなら、わがままを叶えてあげたい。
 伝説の勇者に実際に会ってみて、ショックなことも多かったけどさ。それでも僕にとっ
てアルスは命の恩人なんだよね。一方的な話ではあるけど。

「向こうは……5時間か。さすがにもう起きたかな」
 携帯を取り出し、リダイアルボタンを押す。最近はこれしか使ってないな。
「もしもし片岡? アルスの様子は……って、え? アルス!?」
 出た相手は、ユリコではなくて彼本人だった。
「ケガは大丈夫なの? うん、うん。ならいいけど――って、はぃい? 片岡のお父さん
と? 試合? ちょ、なにやってんの! ええ?」
 なんか向こうはえらく盛り上がっている。
「ふーん……。あーそう、良かったね」
 話を聞いているうちに、僕は再びイライラしてきて、話の途中で通話を打ち切った。
 こっちは君の立場を考えて、自分の命もヤバイところで駆け引きしてるってのに……。

 ああもう! 電源も切っちゃえ! エリスのとこで試験準備してこよう。
 え、なに話したかって? 次のリアルサイドで本人に聞いてください。ではまたねっ。

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