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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

101 :剣魂一擲【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:09:10 ID:2csESLk60
「…私ハ…私の身に降りカかる咎ヲ…乗り越エてみせル…
 なぜナラ…それガ生きてイる者ノ役目…ダロウ?
 ……喋りスギた…もウ休メ…明日に障ル…」

乗り越える…乗り越える…絶対に乗り越える…
何があっても…それが、生きている人間の役目…

スミスに促され、悶々としたまま野営用のシェラフに入ったが、
胸から消えない感じた事のないプレッシャー…世界に押し潰される…恐怖…

その夜の夢見は最悪だった。



イサミ  LV 12
職業:異邦人
HP:68/68
MP:10/10
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

102 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:14:05 ID:2csESLk60
第七話はここまでです。

イサミの振るう天空の剣の威力は、破邪の剣レベル。
少し値の張る市販の剣と同等の威力です。
振っても凍てつく波動は出ません。

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 12:05:13 ID:6HSNYSQq0
腐った死体という名前とその外観からくる嫌悪感とは裏腹に、スミスってほんといい奴ですね。
もし、できることなら、肉体が再生して、マチュアさんと再会できるといいですね。マーサさまならもしかしたら・・・・。
ただ、死後何年経っているんだろう。マチュアさん、まだ生きてるのかな・・・。

しかし、伝説がイレギュラーをおこしはじめる・・・。
するとどうなるのだろう。
伝説の勇者が出現しなくなるとか、この剣が本来の所有者である伝説の勇者に使えなくなるとか。
うーん、心配だ・・・。

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 15:04:16 ID:kItbzrEbO
片言の台詞が読みづらい
昭和の文豪かよ

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 16:13:26 ID:JFv12fYKO
はよ消せや

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 20:59:24 ID:C+csvYdQ0
>>101
お前まだガム持ってるのかwwww
天空の剣から神性消えたって興味深いな
イサミの存在がバグだからかな…

107 :Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:11:52 ID:E3XTDxMH0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はゲームサイドか……前回はどうなったんだっけ?」
アルス「あん? 確か、勇者資格がまだ仮免中で、急いで本試験を受けなきゃいけなくて、
   そういうこと事前に説明しとけよ!って俺にキレて電話したらなぜかユリコが出て、
   びっくりしたところで終わってた。――ってかお前が聞くな!」
タツミ「そのあと君のことが心配で電話かけまくってたら、ユリコに怒られたんだよなー」
アルス「……………………MP無駄遣いしてんじゃねえよ」
タツミ「はいはい。では恒例のサンクスコールに参りまーす!」

アルス「>>81様、乙ありがと。ふむ、DQに火器持ち込んだらどんくらい強いんだろうな」
タツミ「魔法と違って初動に時間がかからないのがほとんどだからね、いい線いくかも。
   >>82様、込み入った話ですみません。現在まとめ制作中です。
   次のStageとの間に投下予定でおりますので、もうしばらくお待ちください」
アルス「>>83様、八城翔ってオタク大学生はどうなったんだろうな。俺も心配だ」
タツミ「ではショウ君本人からどうぞw」
ショウ「いきなり呼ばないでください。僕のPLですが、ちゃんと生きてますよ。ええ。
   あと>>84様、準備しないと脱ぎ散らかった服の上に胃酸たっぷりの○○が
   ぶちまけられていて、帰ってきたときの始末が大変です」
アルス「食事中の方すみませんでした。お、次の人もお前についてだぞ」
ショウ「了解です。>>85様、自分では正義か悪かとか、あまり考えてないですね。
   詳しくは言えませんが、目的のための手段として請け負ってるだけですので。では」
タツミ「じゃあね〜。>>86様、Vさん(仮)みたいなタイプがラスボスだと、僕はありがたいけど。
   有無を言わさず世界制服な魔王様と違って、交渉でカタがつきそうだし」
アルス「>>97様、R氏でおk! まとめは上記の通り。あとちょっと我慢してくれな」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 ゲームサイド [1]〜[9]

108 :Stage.10 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:12:52 ID:E3XTDxMH0
  Prev >>71-79 (Game-Side Prev (マエスレ)>>478-484
 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者資格の本試験までまだ若干の日にちがあったから、まずは当初の予定通りエジンベ
アに直行した。ゲームのルールなんて知るかいな。こっちは常識に合わせて行動してるん
だ、それで通らなきゃゲームがおかしいっつーの。

 というわけで、例の差別主義な門番。やっぱり通せんぼをしてきたんだけど、
「ロマリア国王から事前に書状が送られてるはずだけど? ここにあるポルトガ王の紹介
状も疑うわけ? エジンベアは二国の王を敵に回す気か? 国際問題だぞ? あんたごと
きが責任取れんの? ああコラ?」
 詰め寄ってやったら、泡食って上司に報告しにいった。
 こっちは「アルスが襲われて意識不明」なんて話をユリコに聞いた上、彼女からの連絡
待ちの状態でイライラしてるんだ。余計な神経を使わせるな。

 んで、王様から地下への立入許可をもらったはいいけど、これまた予想通りというか。
縦横100マスくらいの広大な地下室に、池やらドクロマークのタイルやらが点在し、動か
す岩も50個以上という超難解なパズルになっていた。
 徹夜で解いて「渇きの壺」をゲット。賢さ245をナメんなよ。

 その後、即行でアリアハンにルーラして一泊。明日の早朝にランシールに向かえば、ギ
リギリ本試験の前日までに到着する予定だ。

 ちなみに、ランシールの本試験は、言わずもがな、例の「一人でお使いできるかな?」
な単身洞窟攻略だ。
 通常、神殿へ入るには「最後の鍵」が必要なのだが、試験のときは特別に開けてもらえ
るとのこと。ここはゲーム本来のストーリーを無視してもOKらしい。
 どうもこの旅は、フラグが立つ基準がよくわからない。ストーリー外のショートカット
が使えるなら素直に使わせてもらうが、またあとで面倒になるのは嫌だなー。

   ◇
 

109 :Stage.10 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:14:52 ID:E3XTDxMH0

 そんなこんなで、僕たちは久々にアリアハンに帰ってきた。
 仲間はそれぞれの家に帰り、僕は今、アルスの実家に戻っている。
 もちろん実のお母さんを騙すわけにもいかないから、エリスたち同様、彼女にも僕がニ
セモノであることは出発前に説明している。
 出がけの慌ただしいときに、いきなり重大な話を告げるのも申し訳ないと思ったんだけ
ど、その時のDQ版お母さんの反応は以下の通り。
「あらまぁ、ちっとも気付かなかったわ。言われてみれば、確かに少し違うかしらね」
 さすが勇者の母。

 ちなみに彼女の名前は「サヤ」さん。突然現れた怪しい異世界人にも関わらず、また笑
顔で出迎えてくれたサヤお母さんに、「こんな素敵な人が僕のお母さんだったらいいな」
と素直に話したら、「嬉しいわ」とまたギュっとされました。ちょっと照れるなー。

 そしてもうひとり。
「タツミ君、と言ったかな。旅はどうじゃね?」
 これまたのんびりしたお人柄のデニーおじいちゃんが、夕食のテーブルを挟んで聞いて
きた。僕はヘニョにちぎったパンをやりながら、事前に用意しているセリフを答える。
「アルス君が一級討伐士の資格を取ってくれていたお陰で、とても順調ですよ。仲間も彼
を取り戻そうと、一丸となって協力してくれてますし」
「そうかそうか。しかしあの子も、元気でいるのかのう」
 自慢の孫が消えたんだ、やっぱり心配だよね。本当のことを教えてあげたいけど……

【本人は豆乳に花見に大はしゃぎな挙げ句、サイコな男に襲われて意識不明らしいです】

 ……やっぱり事実を告げるのは僕にはムリです。代わりにアルスをヨイショしておく。
「彼はルビス様に選ばれた、かけがえのない世界でただ一人の勇者です。きっとご無事で
いらっしゃいますよ。――すみません、僕ごときが彼を騙るのは心苦しいのですが」
「いいえ、あの子のために頑張ってくれているんですもの。さ、おかわりはどう?」
 フワンと笑顔を向けてくれるサヤお母さん。そのあたたかい笑みが逆に心苦しい。
 僕は明日の準備を理由に早々に席を辞して、ヘニョを連れて二階に上がった。
 

110 :Stage.10 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:16:52 ID:E3XTDxMH0

 久しぶりに戻ってきたアルスの部屋は、急の帰宅であるにも関わらず、きれいに掃除さ
れていた。
 出るときはゆっくりする余裕もなかったけど、こうして見てみると、文化の違いはあれ
ど年頃の男の子らしい部屋だと思う。
 壁には剣と盾の飾り。怪物と闘う勇ましい騎士の絵がピンで留めてあって(ポスターみ
たいなものかな)、落書きを消した跡とか、なにかおもしろくないことがあって暴れたの
かヘコんでるところもあったり。
 ロダムに取ってくるよう言われた「一級討伐士」の仮免許証を探す。知らないで置いて
出てしまったもので、本試験で必要とのこと。
 それは机の引き出しの中にすぐ見つかった。金色のプレートに彫られている名前は、
【Arsed Deny Rangbart】

 アルセッド=D=ランバート。
 16歳という史上最年少の若さで、特別職一級討伐士の一次試験に合格した、アリアハン
の天才少年。世界的にも有名な討伐士オルテガ=S=ランバートの息子ということもあっ
て、冒険が始まる前から伝説が始まっちゃってるような人物。
 ……なんだそうだ、実は。
 改めて話を聞くと、とんでもないヤツだったんだねー。周囲の反応から薄々感じてはい
たけど、まさかここまでとは。彼のネームバリューの高さも、これで納得がいったよ。


 アルスという少年が、このあと本当に伝説の英雄になれることを、僕は知っている。
 家族から愛されて、世界から愛されて。普通の少年らしい一面を持ちながらも、勇者に
足る能力と資格を有し、実際に過酷な使命を成し遂げてみせるだけの――。

「…………」
 なんか胸につっかえる感じがする。少し外の空気を吸ってこようか。
「ヘニョも行く?」
 まん丸の目で僕を見上げたヘニョは、当然のようにピョンと僕の腕に飛び込んできた。
抱っこ犬とか抱っこ猫とかはよく聞くけど、こいつは抱っこスライムなのかな。
 ヘニョを抱いて階下に降りる。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:16:53 ID:+YAKNage0
そういえばヘニョいたんだっけなww支援

112 :Stage.10 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:18:52 ID:E3XTDxMH0

「ちょっと散歩してきますね」
 台所の方に声をかけたが、サヤお母さんの姿がない。どこに行ったんだろう。

   ◇

 玄関を出て城壁沿いに歩いていった。
 アリアハンは初夏を迎えた頃。現実側よりはだいぶ暖かいけれど、夜風はまだ肌にひや
りとして、身体の熱と一緒にくだらない考えも奪っていってくれる。
(ま、アルスはアルスで、僕は僕なんだし……)
 正面入り口を守る夜番の兵士さんに挨拶しつつ、適当にブラブラしていたら、やがて共
有井戸がある広場に出た。いつの間にか街の端っこまで来ちゃったらしい。

 そろそろ戻るか。そう思ってUターンしようとした、その時だ。 
 風に乗って女性の声が聞こえてきた。聞き覚えのある――サヤお母さん?

 広場の隅の薄暗いところに人影が見えた。間違いない、サヤお母さんだ。人目を忍ぶよ
うな暗い色のマントを着ていて、彼女の前にも同じような格好をした背の高い人がいる。
 そのもう一人が、低い声で言った。
「そなたはなにを考えておるのだ。これ以上好きにさせておく法はないであろう?」
「しかし真相がはっきりするまでは、様子を見るべきかと存じます」
 深刻そうな空気を感じて、僕は咄嗟に物陰に隠れた。
 相手は男の人みたいだけど……ん?

 えーー!!?? こんな夜に男の人と密会デスカ? これなんてFLASHネタ?

「余はもう我慢がならんのだ! あのような紛い物がアルセッドの名を騙り、世界を偽り、
遊び半分に勇者ごっこをしておるのだぞ?」
「ですがいきなり捕らえるとは性急にすぎます。もしあの子の言っていることが真実だと
したら、ルビス様の遣いを害することになる。そうでございましょう、陛下?」

 “これなんてFLASHネタ?” じゃねーや。思いっきり僕のことじゃん。

113 :Stage.10 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:20:51 ID:E3XTDxMH0

 どうやらアリアハン国王その人が、僕の処罰をどうするか、サヤお母さんに聞いている
ようです。
 まあ王様にはバレてて当然か。僕の仲間は全員、城勤めの人間なんだから――。
「ルビスの遣いなどと、そんなたわごとを信じろと? おおかた、どこぞでご子息を見か
けたあやつめが、似た容姿を利用して成り代わろうと画策したのではないのか」
「しかしそれでは、うちの息子がなぜそれを許したのかが……」
「そこらの小童に遅れをとるような子ではないが、ご子息は情が深い。聞けばあの紛い物
め、頭は回るようだからな。騙されてどこぞに封じられておるのやもしれん」
 苦々しく吐き捨てる王様の言葉に、僕は思わず苦笑が漏れた。
 ま、普通はそう考えるよねー。ある意味、この世界に来て一番常識的な意見を聞いた気
がする。実際「ルビスの遣い」なんてデタラメだしね。
 王様は怒り心頭といった様子だ。
「忌々しい。いっそ今すぐ捕らえ、手足の一本も落とせば吐くのではないか? もっとも
亡き親友の忘れ形見を偽った罪、その程度で済ます気はないがな」
「おやめください陛下。仮に偽りであったとしても、魔物に親を殺されたかしたみなしご
が、生きるために取らざるを得なかった手段かもしれません」
「今の世に、親のない子が他にどれだけいると言うのだ。みなそれぞれに働いて生きてい
る。勇者を騙る理由にはならん!」
「ですが、アルセッドと同じ年頃の、それもうり二つの子に、そんなひどい目に遭わせる
なんておっしゃらないで。あなたはもっと優しいお方のはずです」
「……まったく、優しいのはサヤ殿だ。そなたは昔からそうであったな」
 そうか、王様とオルテガさんって親友だったんだ。あの親しげな雰囲気を見るに、昔は
サヤさんを巡って2人が争ったり、なんて青春の日々もあったのかもしれないなー。 

「紛い物、か」
 必要とされているのはアルスであって、僕ではない。ここに僕の居場所はない。
 最初からわかっていたことだ。
「誰かそこにおるのか!?」
 王様が鋭く叫んだ。
 僕はヘニョにこの場で静かにしているよう言いつけて、両手を挙げて出て行った。
「すみません、聞いてしまいました」

114 :Stage.10 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:22:52 ID:E3XTDxMH0

   ◇

 サヤお母さんが、まるで僕を庇うように王様との間に入った。
「なりませんよ、陛下っ」
「……わかっておる」
 咄嗟に剣の柄に手をかけていた王様が、しぶしぶという感じで一歩下がる。どうもサヤ
お母さんには弱いらしい。
 この王様も、基本的にはいい人なんだろうね。
「ご処断はお任せします」僕は言った。「手でも足でも、どうぞ」
「なにを言うの!?」
 驚いているサヤお母さんを制して、僕は王様と向かいあった。
「ただし、それは僕が旅に失敗してからにしてください。僕が勇者の後継を任されてここ
にいるのは本当です。そして旅が無事に終われば、本物のアルスが戻ってくるということ
も。でも、僕が勇者でなくなったら、それは叶わない」

 神龍の前で交わした契約の中に、「主人公」をやめない、というのがある。
 主人公、つまりこの世界における中心キャラクターとしての特別な立場を放棄、あるい
は資格を失うと、物語を進める力がなくなるんだとか。
 たとえば僕が「勇者」でなくなり、町民Aみたいな1NPCになってしまえば、普通に生
活はしていけるだろうけど、魔王を倒すことも、神龍に再び会うことも出来なくなる。
 でなければ、僕は「勇者」なんてとっくに辞めていただろう。ただ神龍に会えばいいだ
けなら、もっと合理的な方法が他にいくらでもあるしね。

 ひゅんと風を切る音がした。
 王様が剣を抜き放ち、その切っ先をぴたりと僕の喉もとに据えていた。
「貴様は何者だ」
「言えません」
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
「なぜ言えない?」

115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:23:53 ID:ValBstli0
支援を唱えた!

116 :Stage.10 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:24:52 ID:E3XTDxMH0

「僕にとってもアルスは大切な人間だからです。僕は絶対に彼を連れ戻します。あなたが
信じようと信じまいと関係ない」
「答えになっておらんわ!」
 気色ばんだ王様は、次の瞬間にフッと笑った。
「本試験は明後日だったか。貴様の条件からすれば、まず試験に合格しなければ、勇者で
はなくなるぞ?」
「そうですね。ですから、その時は」
 ご自由に。

 しばし無言の時が過ぎた。
 射殺さんばかりに睨み付ける王様の目を、僕はただ見返していた。
 すうっと頭の芯が冷めていく、いつものあの感覚。
 こんな時の僕は、きっとまた冷淡な人間になっているんだろう。

「――まるで正反対だな。その目、見ているだけで虫酸が走る」
 王様が剣を収め、マントを翻して背を向けた。サヤお母さんを一瞥し、通りに向かって
歩き出す。
 二人の兵士が音もなく寄ってきて、王様を守るように前後につくと、彼らは闇に紛れる
ように去っていった。

「もう……タツミさんっ。私でも怒るわよ?」
 サヤお母さんが僕の腕をつかんで、強い口調で言った。そりゃそうだよな。僕に騙され
てたんだと、明白になったんだから。
「ごめんなさい、サヤさん。確かに今は言えないんですけど、でも近いうちに……」
「そうじゃなくて!」
 遮られて、僕は口をつぐんだ。
「なんであんな無茶をするの。無茶な約束を平気でしちゃうの。冗談じゃ済まないことだ
とわかってるでしょう。もっと自分を大切になさいっ」
「サ、サヤさん?」
「どうせなら『知らない』とシラを切ればいいのに、『言えない』なんて正直に言っちゃ
うんだもの。あの子よりよっぽど賢そうなのに、あなた、アルセッドより無鉄砲だわ」

117 :Stage.10 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:26:52 ID:E3XTDxMH0

 あのぉ、えーと。……ど、どうしよう。
 僕の頭が珍しくパニックを起こしている。こんな予想外の反応をされるとは。
「そんなことより、アルス君のことは気にならないんですか?」
「だから『そんなこと』とか言わないの。もちろん気になるわよ、実の息子のことだもの。
でも元気でいるのは本当なんでしょう?」
「ええ、まあ(ちょっと今は寝込んでるみたいだけど)」
「ならいいわ。あなたの言い分だけを信じることもできないから、あの子が帰ってきたら、
一緒にみっっちり話を聞かせてもらいます。いいわね?」
「は、はいっ」
 ぶんぶん首を縦に振る僕に、サヤお母さんはまたいつものフワンとした笑顔を浮かべた。
マントを脱いで僕の肩にかけてくれる。
「なにが起きてるか、私にはよくわからないけれど。でもあなた、あの子を庇ってくれて
るんでしょう? ありがとう、ごめんなさいね」

 ああ、お母さんなんだな――と思った。
 この人は、アルスが自分の意志で消えたことをわかっている。でも、そこには必ず正当
な理由があるはずだと信じてる。そのせいで僕に迷惑がかかっているのなら、責任は母親
の自分が負うべきだという覚悟も持っている。
 そして、僕を真っ直ぐに見る彼女の目には、ちゃんと僕のことも映ってる。アルスへの
信頼と同じように、僕のことも信じようとしてくれている。

 参ったな。今ちょっとでも気を抜いたら……泣きついちゃいそうだw

 僕は慌ててヘニョを呼び出した。我慢しきれなくなったみたいに勢いよく飛び出してき
たスライムに体当たりされて、その場にひっくり返る。
「ごめんヘニョ、忘れてたわけじゃないってば」
 プニプニの身体をなぜてやると、まん丸の目がウルウルしている。スライムにまで気を
遣われるとは情けない。

「王様との約束に関しては心配ありません。僕もそこまで無謀じゃないですよ、それなり
の計算はあります。試験には絶対に合格しますから」

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:27:35 ID:ValBstli0
「支援は装備できないけど、それでもいいかい?」

119 :Stage.10 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:28:53 ID:E3XTDxMH0

 僕が断言すると、サヤお母さんは「本当に?」と念を押してきた。しっかりうなずいて
安心してもらう。僕だって腕や足を切られたかないもんね。
「ただ世の中に100%なんてないですし、これからエリスの家に行って、打ち合せしてき
ます。今晩はそちらに泊まりますけど、いいですか?」 
 サヤお母さんはまだなにか言いたいことがあるみたいだったけど、
「わかったわ。でも無理はしないでね」
 僕のおでこにキスをして、家に戻っていった。


「ま……やるしかないよな」
 自分に喝を入れるという意味では、今回の厳しい条件も良かったかもしれない。
 正直なところ、胸の内はまだちーっとも整理がついていない。アルスが羨ましいのは本
音だし、なんで僕がこんな苦労しなきゃなんないんだとも思うし。
 でも僕には、そうするだけの理由がある。立場を完全に交換するわけにはいかないけど、
少しくらいなら、わがままを叶えてあげたい。
 伝説の勇者に実際に会ってみて、ショックなことも多かったけどさ。それでも僕にとっ
てアルスは命の恩人なんだよね。一方的な話ではあるけど。

「向こうは……5時間か。さすがにもう起きたかな」
 携帯を取り出し、リダイアルボタンを押す。最近はこれしか使ってないな。
「もしもし片岡? アルスの様子は……って、え? アルス!?」
 出た相手は、ユリコではなくて彼本人だった。
「ケガは大丈夫なの? うん、うん。ならいいけど――って、はぃい? 片岡のお父さん
と? 試合? ちょ、なにやってんの! ええ?」
 なんか向こうはえらく盛り上がっている。
「ふーん……。あーそう、良かったね」
 話を聞いているうちに、僕は再びイライラしてきて、話の途中で通話を打ち切った。
 こっちは君の立場を考えて、自分の命もヤバイところで駆け引きしてるってのに……。

 ああもう! 電源も切っちゃえ! エリスのとこで試験準備してこよう。
 え、なに話したかって? 次のリアルサイドで本人に聞いてください。ではまたねっ。

120 :Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:38:45 ID:lKUj41AlO
本日はここまでです。
さるさん回避のために、2分置きくらいに投下しているのですが、
ここで引っかかりました……携帯から投下です。

>>111様 はい、ちゃんとヘニョいますよ〜w
他のご支援の方々も、いつもありがとうございます。感謝!

121 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 12:13:44 ID:RMFdoqHU0
サヤさん、萌え・・・・。
王様にもばればれだったのね・・・。

122 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 15:59:19 ID:u6DqBPRC0
職人さん達に質問です。
初めて読んだ小説って覚えていますか?

123 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 16:49:25 ID:ql8Y0aI90
それは避難所向けの話じゃないかな? スレに関係ないし。
表に出るのを嫌う職人もいるだろうから、
名無しのままで応答するとしたら、ただの名無しの雑談になっちゃうし・・・。

124 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 20:37:23 ID:X1CL9aLb0
>>120
いつもながらに乙

やべぇ。ちょっと泣いた。
いい母さんだな。

125 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/25(木) 12:01:12 ID:YvU0JoYd0
そういえばアリアハンの王様、やたらとアルスの家をひいきしてて、
そのせいでご近所から嫌がらせされてたって過去にあった。
サヤさん目当てか王様ww

126 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:35:05 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下です。

いつも湿っぽい表現が多い文章を書いてますが、今回は特に顕著です。
では、どうぞ。

LOAD DATA 第七話 >>88-101

127 :入り旅人に出女【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:36:14 ID:2FnjT+LA0
その町のメインストリートである大通りを歩く人々の顔は暗い。
通りに沿って並ぶ家々の窓は全て壊され、人同士の争いの醜い傷跡を残す。
路地裏では、複数の衛兵が一人の男をを取り囲み、私刑の真っ最中。
それでも、道行く人々の誰もが、我関せず…
荒廃したスラム街。かつては北方の都と呼ばれたラインハット城下町の今の姿。

城下町に入ってから、ヘンリーはずっと険しい顔のまま歩き続けている。
その表情から読み取れるのは、国民を苦しめる王家への怒り…
愛する国が荒廃しきっている現実の悲しみ…
不可抗力とは言え、国を守れなかった自分への悔しさ…
それでも、メインストリートの奥にそびえる城を捕える眼光は力強い。

サトチー・ヘンリー・ブラウン・俺の四人は、逸るヘンリーを抑え、
城に程近い場所にある寂れた宿で部屋をとる事にした。
勿論、サトチーや俺にとっても、急いで城へ向かいたいのは同じだが、
夜営続きで一行の疲労は頂点に達しており、この状態で厳戒態勢の城へ
向かうのは危険だというサトチーの判断だ。
日中は出歩きたがらないスミスは、馬車番として町の外れで待機している。

寂れた宿の埃だらけの窓から見える、スラム街と化した城下町とは不釣合いな城。
ヘンリーの生家でもある城の城門は固く閉ざされ、一切の来訪者を拒むように
物々しい雰囲気を漂わせている。

「確かに、城の内情が把握しきれていない現状では、正面からの突入は危険過ぎる。
 城の外堀から城内へ通じる、王族専用の地下通路を使って浸入しようと思う。」
夜の話し合いで、ヘンリーが出した提案を採り、俺達は明朝ラインハット城内へ
地下から浸入する事が決定した。

「それじゃあ、今夜は良く休んで明日に備えよう。明日の隊列と作戦は…」

窓から見える夜のラインハット城は、昼間と同じく不気味な沈黙を保ったまま、
ちっぽけな俺達を見下ろして威圧しているかのように建ちそびえていた。

128 :入り旅人に出女【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:37:19 ID:2FnjT+LA0
          ◇           ◇
…眠れない…

今夜に限った事じゃないけどさ。
何度も窓の外の月に目をやって、何度も無為な時間が過ぎた事を実感する。
森の中でのスミスとの会話が離れない…

―世界の流れを狂わせるバグ―

気持ちを落ち着かせようと、枕元の水差しを手に取る…が、水差しは空っぽ。
「…井戸はすぐ近くだったよな。」

宿帳をチェックしている女将さんに声を掛け、宿のすぐ傍にある井戸へ向かう。

井戸から掬った水は冷たく、渇いた俺の喉に染み渡り、血が上った頭を休息に冷やす。
色々と不便な世界だけど、こっちの世界の水はミネラルウォーターよりも純粋で旨い。

…今の俺がどうこう出来る問題じゃないのはわかってるけどさ…あれ?

「あれ?イサミ…そっか、お前も眠れないのか。」
カップを片手に宿から出てきたのはヘンリー。彼もまた眠れずにいたのだろう。

「水か?ほら。」
「ん。ありがとな。」
水差しから注がれた冷たい水を飲み干し、ふぅ…と、一息。
そして…暫しの無言。

「王家は…デールはどうなっちまってるんだろうな…」
月に照らされた城の方の目を向け、ヘンリーが口を開く。

デール…確かヘンリーの異母弟で、今のラインハットの国王だったな。
ラインハットが狂っている現状では、国王のデールに何かあったと見るのが当然だ。

129 :入り旅人に出女【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:39:19 ID:2FnjT+LA0
「もし、この国がこうなっちまった原因がデールの弱さによるものだったら、
 俺は王家に戻って、デールを支えて国を建て直す。だが、もし…」
城の方に向けていたグリーンの瞳を地に落とし、深く呼吸をする。

「もし、元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る。」

王家の人間としてではなく、兄としての決意。
そうでないで欲しい…いや、そうでないに決まってる。
悲し過ぎる決意と、小さな希望。

「…全部、明日になればハッキリするんだよな…」
そう言うのが精一杯。何の答えにもなっていない曖昧な返事。
俺達が願う希望は夜の星のように小さい。

気が利かない薄雲は、夜空に広がって小さな星すらも覆い隠す。
薄雲に消え入りそうになりながら、儚く浮かぶ月はそれでもなお公平に、
荒れた町と、狂った城でもがく俺達を照らしている。

そろそろ戻ろうか…そう言い掛けた俺達の耳に入る轟音。
ドン! ドン!と立て続けに数発、夜を引き裂くような轟音。

そして、元通りの夜の静寂。

「な…なんだ?城の中から…」
「イオよりも派手な音だな…こりゃ、本当に城の中がおかしいぞ。」
「とにかく今日は宿に戻ろう。全部、明日になればわかる。」

怪訝な顔をするヘンリーを促し、宿に戻る。
宿に戻った俺達の表情を見て、女将さんが溜息をつきながら話す。

「ふぅ…今夜も派手にやってるわね。驚いたでしょう?」

130 :入り旅人に出女【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:41:27 ID:2FnjT+LA0
薄暗く、堀に通じるからかジメジメとした地下通路。

「…で?本当にヘンリーの王家はどうなってるわけ?」
いきなり喧嘩腰だが、今日の俺は機嫌が相当悪い。
と言うのも、昨夜は結局明け方まで眠れず、やっとの事で眠りについたところで、
ブラウンのハンマーによる爽やかな痛恨の一撃で起こされた。
朝一で側頭部にハンマーの一撃を喰らって、当然悶絶。
寝た筈なのに、HP15位は減った気がする。

本来の寝起きの悪さ+ブラウンによる爽やかモーニング+今の状況
これだけの要素が揃って陽気でいられるほど俺は聖人じゃない。

「いやあ、確かに外敵対策としては素晴らしいんだろうけどね。」
「サトチーも笑い事じゃねえってば。城の地下通路にモンスターが放し飼いって、
 どんなセキュリティーシステム採用してるんだよ?」

王族専用非常脱出経路に、ガメゴンやクックルーや腐った死体を放し飼いにする王家。
これじゃあ、いざ脱出って時にモンスターの餌になっちまうだろ。

まあ、機嫌の悪さが一つの原動力になってか、ここのモンスター達に苦戦はしない。
守りに入ったガメゴンですら、固い甲羅の上からの怒涛の連撃で叩きまくる。

コノヤロウナニビビッテヤガルゴルァテメエノスズシゲナメツキガキニクワネエンダヨグゲァーカミツキヤガッタコンチクショウ…

「…イサミ、相当荒れてるね…」
「まさか、あそこまで寝起きが悪いとはなあ…」
「ブラウンに『起こしておいで』って、曖昧な命令したからまずかったのかなあ…」
「あ…凄え、ガメゴンを剣で叩き潰しやがった。」
「…あれ?おかしいなあ。」

131 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 03:45:34 ID:0Zy6ehcBO
セルフ連投回避

132 :入り旅人に出女【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:57:05 ID:2FnjT+LA0
「ふぅ。相変わらず固ってえの。」
半ば八つ当たりでガメゴンを叩き潰し、一息。さすがに疲れるな。

「はーん…なるほどね、イサミはハンマーで起こせば戦力が上昇するんだな。」
ヘンリーがニヤニヤしながら恐ろしい事を言う。
「勘弁してくれよ。毎朝痛恨じゃ溜まったもんじゃ…ん?どうした?サトチー。」

普段は真っ先にねぎらいの言葉と回復魔法を掛けてくれる筈のサトチーの反応がない。
難しい顔をして、なにやら考え込んでいるような…

「サトチー?」
「ん?…ああ…お疲れ様、イサミ。怪我はないかい?」

やっぱり様子がおかしい。

「なあ、サトチー。何かあった?」
「え?…いや…そうそう、さっきガメゴンに噛み付かれたところ治療しなきゃね。」

サトチーが俺に回復魔法をかける。
その温かな光はいつもと同じだけど…

「あの…サトチー?…もう治ってるけど、いつまで続けるんだ?」
「え?…ああ、済まない。ついボーっとしちゃって。」
「おいおい、大丈夫か?サトチーも寝不足なんじゃねえの?」

ケケケと笑うヘンリーに、心配ないと返すサトチーの表情はいつもと同じ。
続いて、ブラウンの治療に入るサトチー。優しい言葉をかけながら回復魔法を唱える。

…いつもと同じ…かな?気にし過ぎか。

「はい、おしまい。ブラウンとイサミは最前線で消耗も一番激しいだろうからね。
 どこか調子悪くなったらすぐ言うんだよ。」

133 :入り旅人に出女【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:57:47 ID:2FnjT+LA0
「そう言えば、ここは城の地下牢も兼ねてるんだったな。」
治療中、周囲を警戒していたヘンリーがボソッと呟く。

冷静に周囲を見渡してみると、なるほど鉄格子がいくつも見える。
囚人は皆、生気のない恨めしそうな目で俺達を眺めている。
何となく、俺達が奴隷として放り込まれた神殿の宿舎を連想させて嫌な気分になるな。

「あれ?…まさか、あの人…」

突然、数多く並ぶ鉄格子の一つ目掛けてヘンリーが走り出す。
誰だ?知り合いか?

「誰か?わらわを助けに来てくれた者かえ?」
その初老の女性は他の囚人と違い、薄汚れてはいるが豪華なドレスを身に纏い、
言葉使いからも高貴な身分の出身である事が窺える。

「なんで…なんで太后のあんたが牢に入ってるんだ?デールはどうした?」
ヘンリーが牢の中の女性に詰め寄る。

ラインハット大后…王妃のいないこの国では、王に次ぐ身分の筈だが、
その王家の有力者が地下牢に幽閉されている。

「そなたは…まさか…ヘンリーかえ?」
「ああ、ヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット、あんたの義理の息子だ。」
「おお、10年間よくぞ生きて…許してたもれ、わらわが間違っておった。」

大后の口から告げられた告白は衝撃的だった。
10年前、奴隷商にヘンリーを攫わせたのはこの大后。
王家の長男であるヘンリーを消し、自分の実の子であるデールを王位に就かせようと
裏で画策をした…とんでもねえ女だな。放置しといて良くね?…あ、ダメ?

134 :入り旅人に出女【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 04:07:37 ID:2FnjT+LA0
「待てよ。あんたがここにいるって事は、誰がこの国を動かしてるんだ?
 誰がこの国を腐らせてやがるんだ?」
てっきり、大后が国を動かしていると思っていたのであろうヘンリーの語気が強まる。

「他でもない…我が子にして、ラインハット国王デールじゃ。」

場の空気が凍る…

呼吸も出来ないほどの冷たい空気…

湿っぽい地下牢の空気が、乾いた物へと変わる…

「デールは、ラインハット王国を世界の頂点に君臨する国にしようと国民に重税を課し、
 若い男達を兵役に就かせ、税金と兵役労働の者を使って他国侵略の準備を進めておる。
 さすがにやり過ぎじゃと進言したわらわをここに幽閉したのも…」

大后の言葉を聞いたヘンリーの顔色が見る見る青白くなり、唇が震え出す。
当たって欲しくなかった最悪の予測…


「ヘンリー…まだ、僕達は全てを知ったわけじゃない。城へ行こう。」
サトチーがヘンリーの肩を叩く。

そうだ、まだ実際にデールに会っていない。
直にデールの口から真実を聞くまでは…

「わかってる…大后さん、暫く待ってな。近い内に出してやるからさ。」
「待て!待つのじゃヘンリー!まさか、そなたデールを…」

無言で踵を返すヘンリーの目は、今まで見た事のない荒々しく悲しい炎を宿し、
その手は、腰に下げた鋼の剣に掛けられていた。

135 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 04:12:10 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下完了です。
ちょっとずつバグが出てます。

136 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 04:16:40 ID:nvQ6wGBx0
>>135
乙です!
大后の勘違いかと思ったら、本当にデールの仕業だったのか…。
ヘンリー…(つД`)

137 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 08:41:52 ID:bn3lGS660
乙です。
バグの影響で色々変化あるのかな?よくわかんないから先が楽しみだ。
あと、なんかそのうち天空の剣折れそうな予感。

138 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 10:39:08 ID:nGp1eD+o0
乙です。
少しずつ動き出してきた感がたまらんです。
デールと偽大后がどうなるのか楽しみ。

139 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 12:43:46 ID:KAb42TgF0
カメごん破壊攻撃といい、バグで、なんか異常な攻撃力になってるですね。
サトチーさんがとまどったのは、なにかイサミの様子がおかしくなってるのだろうか。

偽大后でわなくてデールさんが悪の元凶だったとわ・・・。

140 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 17:13:13 ID:L0fk9FKj0
今の避難所が携帯対応じゃないっぽいので、こっそり作ってみました。
【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

あくまで今の本家避難所の補佐的にどうかな?というテスト段階です。
ご意見をお願いします。

141 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 20:22:05 ID:pp+BTL+00
>>140
補佐ってよりそちらに完全移行したほうがいいと思うので、
避難所のほうは11月中に削除しようと思います
(管理も全然できてないしOTL)

142 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:24:23 ID:/eqXYdx10
みなさまお疲れ様です。
まとめは恐ろしく遅れていますがお待ちください。

>>140
お疲れ様です。
まとめサイトへの反映はしばらくお待ちください。

>>141
これまでの運営ありがとうございました!
避難所のおかげでたくさん助けられたと思ってます。
これからもよろしくです。


では合作の投下を始めたいと思います。

143 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:25:46 ID:/eqXYdx10
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv8
     → 2:ヨウイチ Lv8
        3:タロウ  Lv6

144 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:27:10 ID:7W9evhlN0
→ 支援をする

145 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:28:19 ID:/eqXYdx10
二十六、 ドラオの変化

「ああ! スラぼう大丈夫かー!」

スライムはむくむく元の大きさに戻りましたが、その目はひどくおびえています。

「おおお、おい! 降参してるのに攻撃してくるなんてヒドイぞ!」

ナイトが恨めしそうにヨウイチを睨み、ドラオはもうろうとしていました。

「ドラオ、なんでこんなことを!」
「きぃ」
「おい!」

ドラオをつかみゆさゆさしながら問います。

「もう戦いは終わったんだ、わかったな!」
「き…」
「!!」

ヨウイチは驚きます。
つかむ手を、ドラオは振りほどき噛み付いたのです。
手には歯型が残っていました。

「お… おい…
 なんで、どうしたんだよ…」

声が届いているようには思えません

146 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:31:13 ID:/eqXYdx10
「もしかして… こうなったのはお前が変なことを…!」

ヨウイチはナイトにつめよりました。

「中途半端に手なずける技が効いてしまったからかもしれない。
 だがそれはオレのせいじゃないぞ! お前が…」
「どうでもいい! 早くもとに戻すんだ!」
「いや、出来ない。 戻し方は知らない」
「知らないって適当な…!」

ドラオがふらふら飛びながら壁にぶつかって、そのまま意識をなくしてしまいました。

「大丈夫か…?
 気を失っただけか… とにかく!
券は渡したんだから、さっさとすごろくいって来い!」
「む。 言われなくたってスラぼうが元気になったら行く。
 そっちこそここから早く出て行ってくれ!」

ヨウイチは黙ってドラオを抱え洞窟を後にします。
入るときよりも早く出口を抜け、マウントスノーへと急ぎ足で戻るのでした。

147 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:32:27 ID:7W9evhlN0
ドラオ……( ´・ω・`)

148 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:36:03 ID:/eqXYdx10
二十七、 もうひとつの世界

「…キィキ…」

呼び声がします。

「キィ…」

ぼんやりする意識のなか目を開けると、ドラオがふわふわとんでヨウイチに話しかけていました。

「……!? ドラオ…」
「キィー!」

ドラオは普段のドラオでした。
いつものように顔へしがみつかれ、いつもと同じように羽で叩かれます。

「ここ… ライフ、コッドじゃ…ない?
 ……ああ マウントスノー、なんだな。
 俺… そうか、お前がおかしくなって町へ戻って様子を見てたら眠って……
おまえ、元に戻ったんだな、よかった」
「キィ?」
「大丈夫だ。 俺はどれくらい寝てた?」
「キィキィ」
「一晩…!? たったの一晩……」
「キー?」
「…俺、眠っている間にもう一つの世界を生きてきた。
 こことは別の、似たような世界で。
タカハシとメイ… トルネコやテリー…
彼らと一緒に、長い時間を」

149 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:40:34 ID:/eqXYdx10
ヨウイチは寝ている間、夢とは違う現実を過ごしたのです。
あまりに長い時間だったので、目覚めてもここが元の異世界だとは実感することが出来ずにいました。

「おはよう、ヨウイチくん。
 スライムナイトにすごろく券を渡してくれたんだね。
 町のものに様子を見に行かせたら洞窟はもぬけの殻だった。
感謝する、さあこれを」

声を聞いて部屋へと入ってきたブルジオが、石版を手渡してくれました。

「あ…」

石版を手にしたヨウイチはようやくこの現実へと戻ることが出来ます。

「…ありがとうございます。 いろいろ助かりました」
「こちらこそ助けてもらったよ。
ヤツがいない間に対策を考えねばならない。
そこでどうだろう、君の助けがあれば良いアイデアも出てくると思うのだが」
「…お手伝いしたいのはやまやまですが、すみません。 先を急がないといけないんです」
「そうか。
 ふむ、私が貸してあげた道具は全てもらっていってほしい。
 それから、君の道具袋に食料や薬草を補充しておいた。
君達を苦しめた吹雪は来年までこないからすぐふもとへ降りられるだろう。
私はすぐに対策会議を開かねばならないので失礼するよ。
出発するまでここを好きにしてもらってかまわない。
では気をつけてな、感謝している」

そういい残し、ブルジオは部屋から出て行きました

150 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:43:33 ID:7W9evhlN0
メイ……( ´・ω・`)

151 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:45:34 ID:/eqXYdx10
「…おまえ大丈夫だよな。
 あれはスライムナイトのせいでちょっとおかしくなったんだよな…」
「キキー!」
「覚えてないか。 まぁ、平気だろ」
「キィキー?」
「寝ている間の話を聞きたいって?
 話すには、時間がなさ過ぎるよ。
長かった。 とても、永かったんだよ」

ドラオは目をきょとんとさせています。
ヨウイチは一言だけ、小さくつぶやきました。

「でもあの生きた時間は、足りないのかもしれない……」

気持ちの奥にゆらゆらする、不思議と寂しい思いがなんなのかヨウイチにはわかりません。
ですがどうしても、あの二人を思い出すとそういう気持ちになってしまうのです。

 なんの意味があったのか。
自分には到底わからないことだ。
けれど、誰に意味があるのかは知っている。
 きっとこれ以上考えてあの時間を乱してはいけない。
確かに現実だったけど、あれは自分の現実ではなかったに違いない。
一人の心においておくべきだ。

そんなふうに考え、ヨウイチはこれ以上寝ている間の事についてあれこれと考えるのを止めることにしました。
そうして、渡された石版を改めてしっかり掴みます。

「それより石版、やっと手に入ったな!」
「キキィー!」

石版をくるくる回していろんな方向からゆっくり観察します。
何か文字か絵のようなものが彫ってあるくらいで、後は欠けた石の板でした。

152 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:50:11 ID:/eqXYdx10
「こんなので本当にもとの世界へ帰れるのかな。
 どうも信じられないよ…
けど、今は他に手がかりはないんだよなぁ」
「キィ〜、キーキィ」
「うん。 ちょっと危ない目にもあったりして手に入れたもんな。
 ゲレゲレを信じて次は神殿を探そう!」
「キー!」

二人はすぐに身支度を整えブルジオの家を出ます。
町は最初に訪れた時よりも明るく見えて名残惜しくなってしまいましたが、門をくぐり山を降り始めます。
目指すべき神殿が何処にあるのか、噂ですら聞いたことはありません。
ですが、一つの大きな目標を達成した二人にはなんの躊躇も無く、ひたすら道を進むのでした。

153 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:55:07 ID:/eqXYdx10
今日はここまで。

ごめんなさい、早速まちがいがありました。
名前欄を「作り合わされし世界」にするのを忘れています。
そして、出だしの冒険の書一覧でのしなの編のレベルが間違っていました。
正しくは「1:しなの  Lv10」になります。
申し訳ないです。

最後に確認ですが、前スレの最終レスは706でよいでしょうか?
もし違っていたら、どなたか過去ログをアップローダーにあげてもらえませんか。
DATでもHTMLでも構いません。
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
よろしくおねがいします。

ではまた。

154 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:56:16 ID:/eqXYdx10
>>150
支援ありがとうございました。

155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:56:23 ID:3Yeof0n+0
おさるさん防止支援

156 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 23:00:47 ID:7W9evhlN0
乙〜
前スレは706であってますよ〜

157 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 23:01:13 ID:3Yeof0n+0
ドラオさん、とりあえずなおった?みたいなのでよかったです。
さて、石版を手にいれていよいよ大詰めですね。
wktkしながら次の投下を待ちますね。

158 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 23:04:28 ID:/eqXYdx10
>>156
あってましたか〜
確認ありがとうございます。

>>157
支援ありがとうございます。
なかなか進展させてあげることができませんが、157さんのwktkでwktkして頑張ります。

159 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/28(日) 09:50:48 ID:/yXpBg2Z0
新避難所管理者です。
前避難所管理者様から正式に委任されました。
ありがとうございます。今まで本当にお疲れ様でした。
今後ともよろしくお願いいたします。

【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

160 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 04:30:34 ID:3mypkaVw0
こんな物を見つけてしまいました。
ttp://lou5.jp/?url=http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/

161 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 08:03:35 ID:0WtuWhw1O
>>160
なんだこれwwwwww面白過ぐるwwww

162 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 13:57:11 ID:qhKiAf880
しかも、レス番までずれるところが、芸がこまかい・・・。
なんぢゃこりゃ。

163 :Stage? [雑談] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/30(火) 00:50:33 ID:qc6FGwzF0
* 本日の雑談はアルス君とユリコさんにお願いします。

アルス「ほいさ。んじゃあ、ユリコってタツミのどこに惚れてんの?」
ユリコ「どこって……。そうねえ、そう言えば前にこんなことがあったわ」

ユリコ「たまには回転寿司もいいわね」
タツミ「そうだねー」
ユリコ「ところで、なんで魚って赤身と白身があるの?」
タツミ「それ先週テレビでやってたな。確か……、
  『我々 ”日常生活謎解き隊” は魚の赤身と白身の違いを探るべく、魚の生態に詳しい池上氏の
  元を訪れた。「謎解き隊の榎本です! こちらは竜探大学の池上博士です」「よろしくお願
  いします」「さっそくですが池上先生、魚には赤身と白身がありますが、どうしてですか?」
  「それは魚の筋肉の種類に関係があるんですよ。魚の筋肉には、瞬発力は高いが持久力のな
  い速筋(普通筋)と、逆に持久力が高い遅筋(血合筋)があります。後者の遅筋にはミオグ
  ロビンという赤い色素蛋白質が多く含まれているため赤く見えます。マグロのように長距離
  を泳ぐ魚は遅筋を多く持つので赤身になり、ヒラメなど海底であまり動かない魚は筋肉組織
  のほとんどが速筋なので白身になるのです」「なるほど! ところでサケとかマスはピンク
  じゃないですか。これは、え〜速筋と遅筋の半々だからなんですか?」「違います。サケや
  マスは実は白身の魚なんです」「白身?」「はい。これはアスタキサンチンというカロチノ
  イド系色素が関係します」「ア、アスタ……」「アスタキサンチンです。カニやエビの体表
  を赤くしている色素で、餌から取り込まれます。甲殻類のプランクトンを食べることで、ア
  スタキサンチンが蓄積され、白身に赤い色素が混じることでピンクになるわけです」「よく
  わかりました! 池上先生ありがとうございました」「いえ」こうして我々 ”日常生活謎解
  き隊” は日常の何気ない疑問をまた1つ解決したのであった! ジャジャジャ-ン!!』
   ……とか言ってたよ。わかった?」

アルス「み、店の中でまるまる再生してみせたってか」
ユリコ「うん、一人芝居で。登場人物の表情とか仕草とかすごい臨場感あって、
   ビデオ観てるみたいだった。こんなおもしろいヤツ他にいないでしょ?」
アルス「俺はそばにいたくないけどな……」

164 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/30(火) 11:38:06 ID:o/qaNjuI0
おもいだすの特技、すごいですね。
そういえば、赤くなるえさをあげなければ鮭の身はしろっぽくなるってきいたことありました。
そういうことだったんですね。
竜探大学ってドラゴンクエスト大学?(wwwww

165 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:39:22 ID:QkZkkLvU0
第八話後半投下です。

LOAD DATA 第八話前半 >>127-134

166 : ◆xl1KPT9CWI :2007/10/31(水) 01:40:15 ID:QkZkkLvU0
地下通路を抜けた先。ラインハット城の中庭は驚くほど静かだ。
無駄な戦闘は出来るだけ避け、見張りの衛兵を数名ぶっ飛ばして城内へ侵入。
そのような作戦を立てていたのだが、見張りどころか人の話し声すら聞こえない。

「安心しきってるのかもな。王家の有力者以外は地下通路の事を知らない筈だし。」

予想外に容易に進入できた事に安堵してはいるが、周囲の警戒は怠らない。
地下牢にモンスターを放つような国家だ、城内だろうが油断は出来ない。

「ヘンリー。アレ…何だい?」
周囲の様子を注意深く探っていたサトチーが指差す方向には、妙な形状の金属塊。
丸みを帯びた鎧のような、人型のような…何かが数体。
無残に焼け焦げている物、痛々しい貫通痕を残す物、バッサリと切断された物。
残された全てが酷く損傷しており、その姿からは本来の姿を想像できないが、
胴体(?)の部分から伸びた、弱々しいまでに細い手足は昆虫のそれを連想させ、
千切れた手足の内部からは、多数の無機質な繊維状のものが覗く。

「何だコリャ?人形…にしちゃ変な形だな。」
「鎧にも見えるけど、こんな鎧に合う体型の人間なんていないよねえ。」

その沈黙すらも不気味ではあるが、動かないソレに対して警戒心が緩んだのか、
無防備にペタペタと触りながら正体を模索する。
「…コレが何かはわからないけど、コレをここまで壊すのは普通じゃないね。」

硬質の金属で出来たコレを、破壊し尽くした存在…明らかに人間技じゃない。

「なあイサミ、昨日の夜に聞いた音…覚えてるだろ?」

ヘンリーの言葉を聞いた途端、背中を冷たい汗が伝ったのがわかった。
正体不明のオブジェ…正体不明の破壊音…正体不明の破壊者…
自分が恐怖を覚えている対象がわからない…
きっと、何もわからない事が恐怖なのだろう。

167 :入り旅人に出女【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:43:58 ID:QkZkkLvU0
暫くの間、触ってみたり、ひっくり返してみたり、ハンマーで殴ったりしていたが、
中庭のアレについては、今の段階では何もわからない。
わからない物の正体を探るよりも、今の俺達が優先すべきはデールに会う事。
中庭に繋がる勝手口から城内へ侵入し、デールがいるであろう謁見の間を目指す。

「ストップ。」
先頭を走るヘンリーが大きな扉の前で立ち止まり、後に続く俺達の足を止める。

「大広間の中から大勢の人の気配がする。」
渡り廊下の突き当たり。謁見の間から階段を下りた真下に位置する大広間。
豪華な装飾が施された巨大な扉は閉じられ、中の様子を窺い知る事は出来ないが、
ヘンリーの言う通り、扉の向こう側からざわめきが聞き取れる。

ほんの少しの扉の隙間から中を覗き込むと、多数の兵士の姿が見える。
「なるほどねえ。ここに城の兵士が集まってたから、警備が手薄だったのか。」
「城下守衛兵に王家近衛兵…番兵まで集まってるな。一体、何が…」
「静かに。何か始まるみたいだ。」

ざわついていた扉の向こうが一瞬で静まり返り、空気が緊迫した物に変わる。
コツ…コツ…と、張り詰めた静寂が支配する広間の中に己の足音を大きく響かせ、
大広間と上階とを繋ぐ階段をゆっくりと下りてきた男。
女性の様に艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い眼光が印象的だ。

「…あれは…デール…」

…あの人がヘンリーの弟、現ラインハット王デールか…イメージとは随分違うな。

ヘンリーの口から聞いていたデールは、優しい性格だが気弱で鈍臭い面もある…
いわゆる、イイ人なんだけど頼りない彼…って感じのイメージだったのだが、
今、姿を現したデールから感じられるのは、猛禽類のような油断のない目と、
王…と言うよりも、暴君のような威風堂々とした立ち振る舞い。
事前情報が間違っているのではと錯覚させる、冷たい威圧感を感じさせる。

168 :入り旅人に出女【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:44:57 ID:QkZkkLvU0
恰幅の良い貴族風の男―大臣だろうか?―が、最敬礼を持って王を演説台へと導く。

「我がラインハット軍は、近日中に商業都市オラクルベリーを侵攻・制圧する。」

女性のような艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い…冷たい目で広間を見渡す。
王の言葉に、若干どよめく兵達…それを一通り眺め、さも満足そうに手を上げる。

ぴたり…と、元の静寂を取り戻す広間。王の演説は続く。

「自治都市であるオラクルベリーを落とし、それを拠点としてポートセルミに侵攻。
 西方の物資さえ手にすれば、テルパドールやグランバニアの軍も恐るに足らず。
 北方、西方、南方、東方、全ての大陸を制覇し、我がラインハット王国は未来永劫、
 世界の頂点に君臨する国になる!諸君等はその輝かしい歴史の目撃者となるのだ!」

熱を帯びたデールの言葉に、広間の中に歓声が挙がる。
城の中、全てが狂ってる…侵攻…侵略…制圧…誰もそれをおかしいとは思わないのか?

「デールの奴、マジで言ってるのか…」
世界の制圧…それを口にしたのは、紛れもないデール本人。
眉間にしわを寄せたまま、ヘンリーの手が鋼の剣に掛けられる。

「待つんだ。今、騒ぎを起こすのはまずい。」
今にも扉を蹴り飛ばして広間に乱入しそうなヘンリーを、サトチーが押し留める。

―元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る―
俺の頭の中でリフレインするヘンリーの言葉。

「ところで…」
声量は大きくないが、歓声を突き破って聞こえる王の声。
先ほどの熱が冷めたように、底冷えのする冷たい声。

「扉の外に来客のようだ。丁重にもてなせ。」

169 :入り旅人に出女【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:46:42 ID:QkZkkLvU0
!!バレてる!?

頭が認知した時には既に広間の扉は開け放たれ、槍を構えた兵達に取り囲まれていた。

「参ったね…まさか、最初からバレてるなんて思わなかったよ。」
大人しく手を上げ、無抵抗の意思を示すサトチー。
さすがに、多勢に無勢。俺も仕方なくそれに従う。(ちなみにブラウンも)

「先日、オラクルベリーに浸入した密偵から―南の修道院に怪しい三人組が漂着した―
 そう連絡が入りましてね。調べてみたら、ヘンリー兄さんの可能性が大。
 本当にヘンリー兄さんだったら、城門が閉ざされていても王家の地下通路を通って、
 城の中に侵入してくるはず…まあ、僕の予想通りです。」

クスクスと笑いながら愉快そうに話すデール。
対峙するヘンリーの目は、明らかな敵意を放ち続けている。

「デール…さっきの話は本気なのか?」

剣の柄に手を掛けたまま問い掛けるヘンリー。それをデールは余裕の表情で眺める。

「よく聞いていなかったみたいですね。僕は本気ですよ。」

あっさりと肯定するデール。その言葉を合図に、ヘンリーが鋼の剣を鞘から抜き放ち
…かけた所で、その先の動作は再度サトチーによって阻止される。

「賢明ですね。兄さんが剣を抜いていたら、こちらにも多少の犠牲は出たでしょうが、
 僕の所に刃が届く前に、そちらは全員串刺しになっていましたよ。」

デールは相変わらず冷たい笑みを浮かべたまま、懐から取り出した葉巻を加え、
横に控える大臣に手を差し出す。
大臣から手渡されたのは、豪華な細工が施された小さな金色の…

170 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 01:47:28 ID:s+up9XRu0
通りがかり支援

171 :入り旅人に出女【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:51:29 ID:QkZkkLvU0
「どうです?貴方達もラインハット軍に協力する気はありませんか?
 今なら、それなりのポストは用意できますが…」

金色の物体から迸る小さな炎を葉巻に点け、細く煙を吐き出す若い王。


…え?


アレって…もしかして…

「…っざけるなあっ!!」
怒りが理性のタガを弾き飛ばし、ヘンリーが剣を抜き放つ。

「抜きましたね…残念です。」
笑みの消えた表情…大臣が手にした灰皿に葉巻を押し付け、王が手を上げる。
手が振り下ろされた時、広間内の全ての兵が俺達に槍を突き出すのだろう。
そして、その瞬間は思ったよりもあっさりと…

「…やれ。」

無常な合図に、広間を支配する怒号…雄叫び…
一瞬視界から消え、その一瞬後には同時に繰り出される無数の先端…
剣を構える暇もない…死を覚悟する暇さえも…
誰かに肩を掴まれる…視界が真っ白になる…

思わず、目を瞑る…

…が、その瞬間はなかなかやって来ない。


そぉーっと目を開けると、ラインハット城下町の光景が目に入ってきた。

172 :入り旅人に出女【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:52:14 ID:QkZkkLvU0
「危なかったね。キメラの翼を使うタイミングが遅れていたら今頃は…」
あの瞬間。サトチーが宙に投げたキメラの翼は、俺達を城下町の外れまで転送した。

そうだ…ヘンリーは?
弟の心変わりを目の当たりにしたんだ。正気でいられる筈が…

「何をボーっとしてるんだ?早くここを離れないと追っ手が来るぞ。」
俺の心配をよそに、ヘンリーは御者台に上がり、馬を繰る手綱を握っていた。

…あれ?意外と冷静。

「デールはオラクルベリーに侵攻すると言っていた。そして修道院も…
 今は修道院のみんなを安全な所へ非難させるのが先決だろ?」
言いながらヘンリーが手綱をグイッと引き、パトリシアが軽くいななく。

「ほら。イサミも早く乗り込まないと置いて行かれるよ。」
サトチーに促され、慌てて馬車に乗り込むと同時に全速力で走り出す馬車。

逃げるわけじゃない。守るのが俺達の役目。俺達はその為に戦う。

馬車に揺られながら、ふと、御者台に乗るヘンリーに目をやる。
荷台からは、手綱を操るヘンリーの顔は見えない。けど、その表情は想像できる。

ヘンリーは、俺達に背を向けてさめざめと泣くような弱い男じゃない。

「…な?ブラウン?」
よくわからないという表情を浮かべるブラウンの頭を軽く撫でてやる。


夕暮れの道を馬車が走る。

守る物の元へと急ぐ男達を乗せる馬車は、逢魔ヶ時の暗がりの中で一層輝いて見えた。

173 :入り旅人に出女【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:52:49 ID:QkZkkLvU0
          ◇           ◇

日没の夕闇に溶け込むラインハット城、謁見の間。
玉座に座らせた女性の膝枕に寝そべる若い王と、その前に跪く大臣。

「申し訳ありません。追っ手を差し向けたのですが、取り逃がしました。」

深々と頭を下げる大臣を見下ろして、クスリと笑って見せるのは若い王。

「深追いせずともよい。どうせ、行き先はオラクルベリー南の修道院だろう。
 逃げ道を塞ぐ為に、わざわざ情報を与えてやったのだから…ねえ、ママ?」

ママと呼ばれたのは、王の頭をその膝に預ける女性。

その身を包むのは、華やかな紫のドレス。宝飾品の類は一切身に着けていない。
薄紫のベールに覆われた顔は、その目からしか表情を探る事は出来ないが、
鮮やかに彩色された長い爪が、王の柔らかな金髪をサラサラと撫でる。

恍惚の表情を浮かべながら、王が告げる。

「アレを放て…標的は、国賊ヘンリーとその一味。」



イサミ  LV 14
職業:異邦人
HP:56/71
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

174 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:55:51 ID:QkZkkLvU0
支援ありがとうございます。
第八話はここまでです。

166でタイトルをコピペする場所をミスりました…
正しくは―入り旅人に出女【8】―です。

175 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 01:57:30 ID:s+up9XRu0
>>174

寝る前にいいもの読ませてもらったんだぜ
いよいよオリジナル展開だな
続き超期待

176 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 08:19:37 ID:0rVsNHlA0
先が楽しみすぎる展開に乙。
ジッポとか、どっから出たんだろうなあ。
微妙に本来の展開から外れていくのがワクワクして堪らん。

177 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 13:04:47 ID:TAW1c/M20
デール、こ、怖ぇぇーーー。
それと偽大后はやっぱりいるのね。

サトチー、GJ。
ライターも、謎の鎧の固まりも気になる。さまようよろいとかぢゃないのね。

178 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 13:48:34 ID:2sCfMMab0
投下乙です

一瞬ドロイド兵とかの類かと思ったけどよく考えたらDQ世界にはもっとふさわしいのがいるな。

179 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:07:46 ID:3WgSOctz0
乙!
wktkが止まらねぇ

180 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:28:33 ID:Jt/WFBF40
先が読めないオリジナル展開って燃えるなw

181 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:29:28 ID:dngXiD9/O
ちゃんと馬糞が売れるか実験する

182 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:59:43 ID:i7/qFPQH0
>>181
馬糞販売業者乙

183 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:16:37 ID:kki4ihLe0
前回のあらすじ前スレ>>238-243

 ここで俺ですよ。
 キム皇との魔法特訓を無事に終え、色々と魔法を使えるようになりましたよ。
 基礎の魔法とはいえ短期間で色々覚えた俺ってばすごくね?
 きっと俺の中に眠っていた力がドラクエ世界に来たことで覚醒して(ry

 んで。俺達は今ラダトームの宿屋でまったりしている真っ只中。
 リムルダールまで行ったのになんで今更ラダトームなのかっつうと。
 初めてラダトームを訪れた時に渡された120Gと鍵と松明の「贈り物」を王に投げ返してきてやったわけだ。
 ファミコン神拳のおかげで金は1万以上あるし、鍵もジジイから安く買い叩いたし、ダンジョンを暗記している俺に松明は不要。
 ついでに王を罵倒してきた。

『まだ竜王を倒せぬのか?』
 返した後にこんなこと言われたらキレて当然でしょ。

『ヤバイ。ラルスヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。ラルスヤバイ。まずセコい。もうセコいなんてもんじゃない。ツルセコい(ry』
『ローラの下痢便を肛門から直飲みしたいやつ』
『このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?』
『120Gしか渡さないおとこのひとって…』
『そんな事より大臣よ、ちょいと聞いてくれよ。スレとあんま関係ないけどさ。このあいだ、初めてラルスに会ったんです。ラダトームの。そしたらなんか(ry』
『ローラはともかく、マナカナのどっちが好みか語ろうぜ!』
『ノアだけはガチ』

 ラルス涙目wwwざまあwwwwwwwwwwwwwwwwww

184 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:18:23 ID:kki4ihLe0
「ところで、お前の名前を聞いてなかったな」
 宿屋で作戦を立てた後、ミヤ王が改まって聞いてきた。
 つうか、今更聞くことじゃないよね。ファミコン神拳がおかしいの?名乗らない俺が悪いの?

「俺だよ」
「そういうことじゃなくてですね……」
「だから俺なんだよ」
「酔ってるんだすか?」
「酒ないのにどうやって酔うんだよ」
「名前を聞いてるのに俺だ俺だ言うからだ」

 意外に頭の悪い連中――とも言えないか。
 名前が名前だ、仕方ない。

「俺のフルネームは姓は江良井、名前は俺――って、この世界じゃオレ・エライか」
「……本名か?」
「本名だよ。戸籍謄本でも何でも見て確認してみろ」
「それはなんとも」
「冗談のような名前だな……いや、バカにしているつもりはないんだ」
「気にすんな。よく言われる」
「オレ・エロイとは……ドエロじゃないっすか」
「お前は死ねばいいと思うよ^^」

 我ながら凄い名だとは思うし、コンプレックスを持っていたのも確か。
 だが、名前をからかった教師をクラスのヤンキーがフルボッコにしてくれて以来、人の価値は名前で決まるもんじゃないと理解した。
 その出来事がきっかけでヤンキーとは仲良くなり、今でも付き合いがある。
 そもそも彼の結婚式に出るために俺は上京してきたんだ。
 なぜかアレフガルドにいるけど。
 人生って不思議ですね。

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/01(木) 22:20:46 ID:VJbQAcS/0
支援!

186 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:22:10 ID:kki4ihLe0
 翌日、キム皇のルーラでリムルダールに飛んだ。
 キム皇曰く、「あてが使うルーラは勇者ロトが使っていた時代に使われていたルーラだす」とのこと。
 FC版公式ガイドブックによると3勇者がゾーマを斃したのは400年以上前。嘘だと思うなら73ページを読んでくれ。
 400年も前なら使い手がいなくなったり、性質が変わっていても不思議じゃない。
 恐らくギラもいつの間にか変わっていったんだろう。
 俺の予想では今使われているギラはメラが変化していったものと推測する。
 今の俺には何の関係もないことだけど。

 リムルダールに飛んだ俺らが何をしているかと言うと。

「どこじゃキメラああああああああああああああああああああああああああああ!」
 リムルダール島に棲息するキメラをひたすら捕獲してますが何か?
 聖なる祠付近に出るキメラをひたすらに、ただただひたすらに捕獲。
 キメラ以外の魔物はどうでもいい。

「ウララー!!」
 ゴールドマンはアパッチの雄叫びで。

「お前はもう死んでいる」
 骸骨には北斗神拳で。

「オーロラサンダーアタック!」
 鉄のサソリは凍らせて。

「男は度胸!なんでもためしてみるのさ」
 リカントマムルは掘って。

 ま、そんなこんなでキメラだけを捕獲。
 携帯の時計では現在18時6分。キメラ捕獲開始したのが7時過ぎだったから11時間くらい?
 さすがに疲れたがその甲斐はあった。

「キメラ、計151匹ゲットだぜ!」

187 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:24:03 ID:kki4ihLe0
「お前らの中に人間の言葉を話せる奴いるか?」
「少ιナニ″レナナょら言舌せゑ」
         なんという聞きにくさ・・・
         一言聞いただけでイライラしてしまった
         この言葉は間違いなくギャル語
                
            / ̄\
           | ^o^ | 
            \_/

「お前らを殺さず、捕まえたのには理由がある。――お前らと取り引きしたい」
「耳又丶)弓|、キ?」
「そうだ。俺達四人を魔の島に運んでもらいたい。そうすればお前達キメラの命は保障する」
「正気τ″言っτレヽゑ@カゝ?」
「幸か不幸か、俺の頭は正気さ」
「断ゎっナニらー⊂″ぅナょゑ?」
「戦闘だな。この場にいるお前達を皆殺しにした後で別のキメラを探すだけさ。要求を呑むキメラが現れるまでな」
「……我々≠乂ラ一族レニ竜王様を裏七刀れー⊂言ぅ@カゝ?」
「逆に考えるんだ、『裏切ってもいいさ』と考えるんだ」

 黙るキメラ。
 それもそうだ。逆に考えられるわけないだろ、常考。

「今すぐに答えを聞かせろとは言わない。明朝、俺達は魔の島に一番近い場所にいる。その時に答えを聞かせてもらいたい」
「人質を取っておくだすか?」
「人質を取ったら脅迫になるからな。――俺が保障するキメラの命はキメラ一族の命全部ってことだけは言っておく」
「ー⊂″ぅレヽぅ⊇ー⊂ナニ″?」
「魔の島まで送った後、俺達は永遠にキメラを襲わない。もしも一人でもキメラを襲ったら俺がそいつを殺す。俺が襲っても同様だ」
「……日月朝、答ぇを出ξぅ」

188 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:25:53 ID:kki4ihLe0
 キメラ達との交渉後、さすがに疲れたのでリムルダールの宿屋でダラダラしている。
 ファミコン神拳の3人はどっか行った。

 ベッドの上でゴロゴロしていたわけだがゴロゴロも飽きた。
 かといって飲む気はないし。
 寝るには早い時間だし……久々にDSでもするか。つうか、充電大丈夫か?

「なんだこりゃ?」
 電源は入りっぱなしだった。
 いつから入ってたんだ?と思うよりも先に、俺はDSの画面に目を奪われていた。
 上画面には「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」と書かれていた。
 左側にドラゴン、中央に「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」の文字、右側に人のシルエット。
 この画像には見覚えがある。FF・ドラクエ板のスレのはずだ。どどどどういうこと?
 下画面にはドラクエのコマンド画面が6分割されて表示されている。

  ゲーム   じゅもん
  どうぐ    そうび
  つよさ    きろく

「はなすコマンドは必須だろ!」
 いや違う。ツッコミ入れてる場合じゃない。

 とりあえず「ゲーム」を選んでみる。
 ドラゴンクエストの序曲とともに上画面にドラクエ1のタイトル画面が表示される。ご丁寧にFC版だ。
 下画面にはアレフガルド全域の地図。
 光点が光っている場所と光っていない場所があるが、行ったことがあるか否かってことだろう。
 ラダトーム、ガライ、マイラ、沼地の洞窟、リムルダールだけには光点が光っているがそれ以外は光点すらない。
 試しにタッチペンでリムルダールをタッチしてみると、上画面のFC版のロゴが消えてリムルダールの地図と説明が表示される。
 武器屋防具屋で売っている物の種類や値段、宿屋の値段……随分と親切な設計だなオイ。

 ……何か引き返せないようなヤバい感じがビンビンなんだけど、どうするべえか。

189 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:28:43 ID:kki4ihLe0
 深く考えても仕方ないかということで続けて「じゅもん」を選択。ポチッとな。
 俺が唱えることのできる呪文の一覧が下画面に表示。上画面は使用MPと呪文の説明。お約束と言えばお約束だ。
 一つ気になるんだが、呪文のコマンドが存在する=DSLを使って呪文の使用もできる、でおk?
 試したいのは山々だが、また宿屋の中でギラを発動させるわけにもいかないので自重しておこう。
 ただでさえ宿屋の親父に断わられかけたんだ。 あの騒ぎのせいで。

 続きましては「どうぐ」のコマンド。
 上画面には選んだ道具の説明と個数。
 下画面は二分割されていて、左側の一番上には俺の名前と俺が持っている道具の一覧。
 右側一番上には「ふくろ」と書かれていて、道具欄には何も入っていない。

 ……ペンでドラッグ可能だよな。
 消えても嫌なので、とりあえずタバコを移動させてみる。タバコなら消えても惜しくないし。
 タバコを右にドラッグ――うおおおおおお!
 手元にあったタバコが消えたあああああああああああああ!
 こここ今度はタバコをひひひ左にドドドドラッグ――うぎゃああああああああ!いきなり手元に出たああああああ!!
 KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!111!

 すっかりお馴染みの「つよさ」は俺の強さが表示。
 FC版のステータスの他にかっこよさとかも出るんだけど……俺ってこんなにダメだったか。イケメンじゃないとは知ってたけどさ。

 んで、「きろく」だが。これが実にシンプルに怖い。
 上画面に『これまでの冒険を 冒険の書に記録しますか?』と表示。勿論答えは「はい」か「いいえ」の二択。
 この世界での死=現実世界での死、だとしたら記録すべきだろう。
 しかし記録することによって俺はこの世界に繋ぎとめられるのかもしれない。
 セーブすることでこの世界に縛られるのか、セーブしないことでやり直しがきかなくなるのか。


 俺は、どちらを選べばいいんだ――

190 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:32:27 ID:kki4ihLe0
「ゆうていが対竜王のことで話があるそうだ。ゆうていの部屋に来てくれ」
「はいはい、今行く」

『ピッ』

「……おい、今聞き慣れた音しなかったか? Aボタンを押したような音」
「何のことかわからないが、お前のケイタイとかいうやつの音じゃないのか?」
「……先言っててくれ」

 恐る恐るDSLの画面を見、混乱。その後にミヤ王への「はいはい」=「はい」だと理解。
 そして俺は叫んだ。

俺「おまえ何やってるんだDSL――ッ!」
DSL「最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアア!」




『冒険の書を記録しています 電源を切らないでください』




LV:11
HP:26/39  MP:27/27
E:炎の剣 E:Tシャツ+鎖かたびら E:皮の盾
呪文:ギラ ホイミ レミーラ ラリホー
特技:思い出す 舐めまわし 百裂舐め ぼけ つっこみ 雄叫び 口笛 寝る 穴掘り
    急所突き マヒャド斬り 
道具:携帯電話 網
DSL:聖水 100円ライター 臭い靴下 古びたトランクス アディダスのジャージ
    タバコ×7 鍵×18 曲がった釘×6

191 : ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:37:29 ID:kki4ihLe0
投下終了です。
次回ラストバトルになります。

>>141
これまでありがとうございました。
本当にお疲れ様でした。

>>159
お疲れ様です。
早速投下予告スレを利用させていただきました。

192 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/01(木) 22:43:42 ID:Mt1NpCHwO
次回ラスト!?
楽しみだが早いような。
しかし名前、本当に俺だったのかww

193 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/02(金) 08:08:41 ID:dClhBlNT0
色々突っ込みどころが多すぎるが乙。特技増えすぎだろw
あとどうぐの反応に吹いた。確かに怖いよな、消えたり現れたりしたらw
ラストバトル、楽しみにしてます。あといいヤンキーが幸せになって俺歓喜。

勿論最終決戦であって最終回とは限らないんだよな!

194 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/02(金) 13:28:12 ID:ymkck0W10
セーブするかどうかの入力画面のまま、「はい」って発声してしまったから、セーブしたことになったのか・・・(wwwwwwwww
ギャル言葉のキメラ、萌へ〜。

195 :番外編 at 三日遅れ ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/03(土) 01:17:30 ID:YvlvMMRk0
※今回の内容は本編とは関係ありません。

「Trick or treat!」
「うぉ!モンスター!!…なんだイサミか、ビビらせるなよ。」
「山賊ウルフの格好なんかして何やってるんだい?」
「俺の世界にはハロウィンってのがあってさ。夜にオバケの衣装を着てビビらせて
 お菓子を貰うってお祭り。だから二人ともお菓子くれ。」
「なんだか性質の悪りぃ祭りだなあ…」
「まあ、そういう儀式なら驚いた僕達の負けだよ。はい、ヌーバキャラメル。」
「悔しいがビビった俺が悪いか。ホラ、エテポンゲキャンディーだ。持ってけ。」
「サンキュー♪」
「行っちゃったね。妙な儀式だけど、楽しそうだね。」
「こっちの世界でも流行ったら面白いかもな。」

「「とりっく おあ とりー…」」
ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!

「何?今の凄い声…って、うわ!何やってるんだ?二人して。」
「いや、イサミの真似をしてはろうぃんってのを試してみたんだ…村の人に。」
「…そしたら…逃げて…行った…」
「今の人、お菓子じゃなくってお金を置いて行ったけど、失敗かな?」
「そりゃ強盗って言うんじゃね?」
「…コー…ホー…」
「で…因みに今の二人の格好は何?」
「僕?デッドエンペラーだよ。レヌール王に王冠を借りてね。」
  サトチー Eかしの杖 Eただのぬのきれ Eレヌールの王冠
「…俺は…さまようよろい…」
  ヘンリー E鋼の剣 Eさまようよろい
「外せ!今すぐ外せ!!お菓子のために呪われてるんじゃねえ!!」
「ははは…昔からヘンリーはイタズラには手を抜かないからね。」
「…人のビビる顔を見るためなら…喜んで呪われて…やる…」
「ハロウィンはそんな殺伐とした祭りじゃねえ!!」

196 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 05:47:16 ID:qrBh+ZQzO
ヘンリーwwww
体張りすぎだろ、常識的に考えて…

197 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 12:45:21 ID:qzfARRZg0
ぐはぁ、さまようよろい・・・。

知らない人相手にやったら、ただの嫌がらせでしかないですよね(wwww

198 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:22:46 ID:qtWD4ula0
―起床の起―

考え抜いたた末の行動が考え通りにいくとは限らない。
それはゲームの世界でも同じことらしい。

俺はその日もいつもと同じように目覚めたはずだった。

199 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:23:50 ID:qtWD4ula0
――

ああ、朝か。今何時だろう?
4時間くらいは眠ってたかな。
寝てたときの時間の感覚なんて当てにならないけどさ。

眠い。もう一回寝ようかな……。
なんか俺どんどん夜型になってるような気がするなー。
人間のバイオリズムって24時間よりも少し長いって聞いたことがある。
だからどんどん後ろにずれ込んでいくんだろうな。
普通は決まった時間に起きて修正するんだっけ。
俺の場合、研究室にはいつ行っても構わないからいけないんだよなぁ。

あーあ、大学院まで行ったのに俺って何やってるんだろうな。
確かに研究は好きだけどこのままでいいのか俺。
好きなだけじゃどうしようもないこともあるんだよ。
将来のことを考えると今の研究じゃ食っていけないよなー。
だからといってほかにやりたいことなんて見つからないし。
あー、こうやって問題をずるずる先延ばしにしているだけなんだよなぁ。

なんだかつまんないこと考えているうちに目が冴えたな。
……起きるか。

それで結局、今何時なんだろう。
あれ、時計がない。……ん、テレビもない。ラジオまでないぞ。

ここ俺の部屋じゃない……

嘘だろ。じゃあここはどこだよ?

200 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:24:49 ID:qzfARRZg0
紫煙

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