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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/12(金) 00:47:05 ID:mq/uwqFRO
`_ ∧ ∧_
| ( ゚Д゚)|早く向かえ
|\⌒⌒⌒⌒\ にこいよ
| \     \
\ |⌒⌒⌒⌒⌒|
 \|_____|


3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/12(金) 02:11:50 ID:SQjjw07S0
>>1
スレ立て乙です!

4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/12(金) 04:37:41 ID:JKnN6qvQ0
ほしゅ

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/13(土) 07:24:21 ID:oUVSaZ2YO
保守

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/13(土) 16:02:08 ID:wx1hBhVd0
期待

7 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/13(土) 19:12:04 ID:Dbjcbn8WO
>>1
(*^ー゚)b グッジョブ!!

8 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/13(土) 23:15:37 ID:32qNDRSy0
>>1
スレ建ておつです!

9 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/14(日) 01:15:31 ID:ZzBzmdVA0
>>1お疲れ〜

10 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:11:30 ID:KCeqaYQy0
新スレでもよろしくお願いします。
では、本編投下です。

LOAD DATA 第五話(前スレ)>>664-677

11 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/15(月) 00:11:57 ID:8um0n2Fv0
丁度支援

12 :風前風樹の嘆【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:14:06 ID:KCeqaYQy0
ライター…使うとメラの効果がある。何度か使うと壊れる…800G
ボールペン…貫通力がある刺突武器。字も書ける…200G
輪ゴム…モンスターの顔を目掛けて放つと、怯ませる事ができる…550G
フリスク…眠った仲間に食べさせると目を覚ます…150G
ガム…魔物を大人しくさせる。人が口にすると呪われる…Priceless

この世界の価値基準、やっぱりおかしいだろ。
フリスクとライターは良いとして、輪ゴムとボールペンは明らかに間違ってるって。

俺の世界の道具(ほぼガラクタだが…)を売った金で旅の準備を整え、
馬車を300Gで買い取った俺達が向かっているのは サンタローズ。
オラクルベリーから北に向かった先にある、サトチーの思い出の村。

『輪ゴム>馬車』の方程式が成り立つ価値観が平気でまかり通るんだよなあ。
う〜ん…やっぱり、コッチの価値観は俺には理解できないや。

今更ながらのカルチャーショックを感じる俺をよそに、
上機嫌なサトチーとヘンリーが手綱を操りながら談笑する。

「へえ〜。そのサンチョさんの作る飯はそんなに旨いのか。」
「うん、凄く。特に自家製バターを使ったキノコのバター炒めは絶品だよ。」
―♪♪―
「ははは…もうすぐブラウンも、お腹いっぱい美味しいご飯を食べられるよ。」
サトチーにとって、10年ぶりの故郷だもんな。
村を目指すサトチー足取りは軽く、自然と俺達の足まで軽やかになる。


「そう言えば…イサミ。お前だけ武器を買わなかったけど平気なのか?」
「う〜ん。銅の剣じゃあ心細いけどさ。俺に使えそうな武器が売ってなかったし。」
「この辺りにはそんなに強いモンスターは生息していないから、銅の剣でも充分だよ。」

実際、道中何度かモンスターに遭遇したが、どれも大した苦戦もなく撃退できた。

13 :風前風樹の嘆【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:14:49 ID:KCeqaYQy0
「しかし、お前も小さい体で頑張るなぁ。パワーなら俺達の中で一番じゃないのか?」
―♪☆♪☆!―
俺の正直な賛辞に、オラクルベリーで仲間になったブラウニーのブラウンが胸を張る。

後をついて来た時は、こんなチビスケ足手まといだと思ったけど、なかなかどうして。
人は見かけじゃ判断できないって事か……コイツは人じゃないけど…

ブラウンのパワーは凄まじく、襲って来るモンスターをほぼ一撃で仕留める。
正直、アウルベア―を一撃で昏倒させた時は内心ビビッた。
コイツとの戦闘の時に喰らわないで良かった…本気でそう思った。

「当たればデカイんだけど、問題は相変わらずの大振りなんだよな…痛ぇ!!」
ヘンリーが小さく呟いた言葉に反応したブラウンが、ヘンリーの脛を木槌で小突く。
「こっ…おま…木槌没収!コラ逃げるな!!…痛ぇ!てめ…もう許さねえ!」
ヘンリーをからかう様に小突きながら逃げるブラウンと、逆上して追うヘンリー。
まるでトム&ジェリーの様な二人を見て声を出して笑う俺とサトチー。

「で?サンタローズってのは、まだ先なのか?」
「いや、もうすぐ見える筈…ホラ、あの村……………え?」
「…どうした?」

村の方向を指差したサトチーの表情が凍り付く…
「サトチー?」
直後、サトチーが全力で駆け出した。
「サトチー!」
サトチーが指差した先に目をやる。
そこには遠目からでも廃墟とわかる、まるで生気を感じない村が見えた。

14 :風前風樹の嘆【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:15:29 ID:KCeqaYQy0
「サトチー…」
ヘンリーの言葉が続かない。掛ける言葉がないとはこのような時に使うのだろう。
自分の家。見知った人々。澄んだ風にそよぐ花々。長年帰る事を夢見た思い出の地。
それが、今では見る影もなく焼き払われたままの姿を晒している。
かつて自分の家であった瓦礫の山。自分を大事にしてくれた人の姿はない。
美しかった花畑は焦げた土で覆われ、風は絶望の残り香を運ぶ。

「…っああぁぁぁ……くぅ…」
サトチーの嗚咽が漏れる。初めて聞くサトチーの絶望しきった声。
いつも優しく、強く、俺を助けてくれた友人に俺は何もしてやれない。

俺は無力だ。
仲間が自らの心を潰されかけている時に、何も出来ない。
何をすべきかわからない。
何を言うべきかわからない。

サトチーの慟哭をすぐ傍で聞きながら、立ち尽くす事しか俺には出来ない。


「…っ…済まない。取り乱したね……行こう、誰か町に残っているかもしれない。」
何分くらいそうしていただろう。
焦げた地面に突っ伏していたサトチーが顔を上げた。
サトチーは本当に強い男だ…心からそう思う。

その目に涙の痕跡はない…けど…

「サトチー。」

先を歩き始めるサトチーを呼び止める。
その目に涙の痕跡はないけどさ…わからないほど俺は馬鹿じゃないよ。

15 :風前風樹の嘆【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:16:39 ID:KCeqaYQy0
両手を大きく広げ、想像する…彼の泣き腫らしたまぶたが元に戻る事を…
強引に涙を拭って赤くなった瞳が、元の澄んだ色を取り戻す事を…

いつも、サトチーが俺に施してくれた回復魔法。
温かい、安らぎに満ちた光。

俺には、サトチーの心を癒す術はない。
俺自身には、何も出来ない。
だから…この村に僅かに残る、思い出の残り香に呼び掛ける。



…俺の仲間を…大事な仲間を救ってくれ。



俺の呼びかけに応え、一陣の風が吹く。

優しい風は絶望の香りを押し流し、懐かしい香りを運ぶ。
故郷の風が渦を巻き、俺達を…サトチーを優しく包み込む。
サトチーが良く知る風が安らぎのメロディーを奏でる。
サトチーを良く知る風の歌は、癒しの言霊となって光り輝く。

風の歌声 名付けるなら そう ―安らぎの歌―


風が止んだ時、彼の瞳は元の澄んだ輝きを取り戻していた。
「古い知り合いに会うのにさ…赤いままの目じゃあ…その…格好悪いだろ?」
「イサミ…済まない…いや、ありがとう。」

16 :風前風樹の嘆【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:17:32 ID:KCeqaYQy0
山間にある美しい花と緑に囲まれた小さな村。
…そうサトチーから聞いていただけに、俺達の見た光景は衝撃的だった。

「…そうですか…ラインハット軍がこの村を…」
「そうじゃ、その際に多くの村人が傷を負い、命を落とした者もおった。
 生き残った村人達の多くは、この村を捨てて別の町へ移ってしまったわい…」
崩れかかった一軒家で俺達を迎えてくれたのは一人の老人。
パパスさん…つまり、サトチーの親父さんの知人だという老人は茶を淹れながら、
10年前にこの村で起こった出来事を俺達に語った。

「この村を攻めたラインハット軍の将校がワシ等に告げおった…
 ラインハットの王子が攫われたのはパパス殿の責任。即ちパパス殿は国の怨敵。
 そのパパス殿の住んだこの村の存在もまた国害と…」
ギリ…と、サトチーが唇を噛み締める。
小さく聞こえたサトチーの唇が軋む音…そして、次に聞こえた音はあまりにも唐突。

ガタン!

俺の横に座っていたヘンリーが、椅子を倒して立ち上がる。
無言のまま、サトチーを見つめるその目には……涙?

そうか、ラインハットはヘンリーの…

「……っ!」

悲痛な顔を俺達から逸らし、開かれたままの扉に向かってヘンリーが走り、
そのまま、呼び止める暇もなく走り去る。
…いや、呼び止める事なんて最初からできなかった。

「…どうかなさったか?」
「ヘンリーは…彼は僕と一緒に攫われたラインハットの王子です。」
「…そうじゃったか…辛い思いをさせてしまったのう…」

17 :風前風樹の嘆【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:18:29 ID:KCeqaYQy0
クイ…クイ…と、足をを引っ張られる感覚がした。
足元を見ると、ブラウンが俺のズボンの裾を引っ張っている。


「お前もヘンリーが心配なのか?」
―☆☆!―
「…でもな、今はそうっとしておいてやるのが一番…」
―!!?!―

俺の言葉が終わりきらないうちに、ブラウンがヘンリーを追って飛び出す。

「……悪い。ちょっとヘンリーの様子を見てくる。」

言葉は通じないけど、ブラウンの言いたい事はよくわかる。
いや、わかってないのは俺だけだ。
何をするのが一番かなんて、俺が決める事じゃないのに…
小さなモンスターの行動は、俺の勝手な理論の数歩先を行く。


いた。

いつも強気なヘンリーが小さく背中を丸め、淀んだ川のほとりで膝を抱えている。
その横に、ちょこんと座るブラウン。

ブラウンに語りかけるヘンリーの小さな声が聞こえる。
「俺…サトチーの事を友達だって思ってたけどさ…俺にはそんな資格ないよな…
 …俺がサトチーから大事な物を奪っちまった…馬鹿なイタズラをしたせいで…
 …サトチーの時間も…パパスさんも…この村も…全部俺のせいで…」

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/15(月) 00:19:02 ID:8um0n2Fv0
支援

19 :風前風樹の嘆【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:19:35 ID:KCeqaYQy0
―☆☆!!―

ヘンリーの横で大人しく座っていたブラウンが立ち上がり、ハンマーを地面に下ろす。
丸っこい胸に大きく息を吸い込み、短い両手をいっぱいに広げ、目をギュッと閉じる。
「…ブラウン?」

あの動作は…

小さな体をプルプルさせ、頭巾に覆われてほとんど見えない顔を真っ赤にして力む。
―!!!―
「お前……イサミの真似してるのか…」
―!!!!!……??―
肩で息をしながら『あれ?』と、いった表情でヘンリーを見つめるブラウン。
その小さな頭の上に、日焼けしてボロボロの大きな手が乗せられる。

「ありがとうな…ブラウン…」


「ヘンリー…」
いつの間にか、俺の横にいたサトチーの呼びかけに、俺とヘンリーが同時に振り向く。
サトチーの目がまっすぐにヘンリーを見つめる。
ヘンリーの目がその視線を避けるようにそらされる。
俺の目が二人の間を行き来する。

「サトチー………俺のせいで…」
「この先の洞窟に、父さんが僕に遺した物があるらしいんだ。
 …ヘンリーとイサミに一緒に来て欲しい。父さんの墓はないけれど、せめて…
 せめて、父さんの形見に僕の親友を…ヘンリーとイサミを紹介したい。」

『ヘンリーは親友。何があっても変わらない。』そんなサトチーの想いが伝わる言葉。

20 :風前風樹の嘆【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:20:54 ID:KCeqaYQy0
堰を切ったようにヘンリーの涙が溢れ出す。
「サトチー…ごめん…」
「ヘンリー。言葉を知らない男は嫌いだったんじゃねえの?」
「…ああ…ありがとうサトチー…それに、イサミも…(ゴン!)
 痛え!…大丈夫、忘れてねえよ。ブラウンも、ありがとうな。」

グイッと胸を張るブラウンを見て、三人の顔に笑みが漏れる。

「ふふ…ブラウンも頼りにしてるよ。それじゃあ、行こうか。」
「そうだな、か弱い子分達だけで危険な場所に行かせられねえもんな。」
「ふーん。さっきまでメソメソしてたのは誰かねえ?」
「うるせえ!イサミこそ影でウジウジしてやがったくせに!」

…あ…バレてたの?

「でもまあ…サトチーと…お前と知り合えて良かったよ…」

ポソッと、ヘンリーは聞こえないように言ったつもりなのだろうが、
その言葉ははっきりと俺の耳に入った。

「!!…ホラ、お前等ボサッとすんな。行くぞ!!」
赤面して走り出すヘンリーを見て、クスクスとサトチーが笑う。
「昔っからああなんだ。素直じゃないよね。」

しっかりとサトチーの耳にも入ってやがんの。本当、素直じゃねえヤツ…

まあ…俺の考えてる事もヘンリーと同じだけどな。

21 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/15(月) 00:23:16 ID:KCeqaYQy0
第六話前半はここまでです。

この世界ではガムはプライスレス。売れませんでした。
呪われたキャンディーとして買い取ってくれなかったようです。

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/15(月) 02:52:05 ID:qQV+bnNf0
このスレに触発されて、またDQ5をはじめました。
ブラウニーって、ほんと頼りになりますね。袋(?)を背負って歩く姿もかわいいし。
イサミもブラウンも、いい奴ですね。
ヘンリーも心中おだやかでなかったでしょうね。
すべてを受け入れて前に進むサトチー、かっこいいです。




23 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/15(月) 12:22:14 ID:43U3iXlY0
サトチーの心情がリアルすぎてたまらんな。
また5やりたくなってきた。
最高だよアンタw

24 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/15(月) 13:09:41 ID:6UpsK5Er0
呪われたキャンディー噴いたw

しかし落ちてるのを踏むとなかなか取れないし
呪われてるってのもある意味正解かw

25 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/17(水) 17:39:22 ID:p6dys0Lc0
なんと、もょもとは保守の剣を手にいれた。

26 :風前風樹の嘆【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:16:53 ID:/Kcy+Dv30
「なあ、サトチー?この洞窟には強いモンスターはいない…そう言ったよな?」
「うん。確かに言ったよ。」
「だったら何で…っと、また来やがった!」
「撤回するよ。ここのモンスターは強い。皆、気を抜かないで。」


パパスさんの遺した物を取りに向かったのは、サンタローズの洞窟。
サトチーは6歳の頃にここを攻略した…そう聞いていた。
だから、安心していた…否、油断していた。

ここのモンスターは、スライムやブラウニーとは比べ物に(ゴン!)
…訂正。ここのモンスターのレベルは、スライムやガスミンクとは比べ物にならない。

毒を仕込んだ槍を振り回すガイコツ兵。スカラで仲間を強化する土偶戦士。
前面に気を取られていると、背後からともしび小僧のメラが襲う。

厄介なのはガメゴン。
巨大な亀のモンスターが背負う強固な甲羅は、銅の剣では文字通り刃が立たない。


「…っ!イオ!!」


洞窟内の空気が圧縮され、小規模な爆発を起こす。

サトチーの魔力を回復に回さなければならない現状では、
ヘンリーの放つ爆発魔法が、ガメゴンに対抗できる唯一の手段だ。


「ふひゅー…こいつはしんどいわ。」
事も無げに軽く話すヘンリーの息は荒い。
休みなく攻撃魔法を放つヘンリーの疲労は相当だろう。

27 :風前風樹の嘆【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:19:27 ID:/Kcy+Dv30
「どうする?今なら引き返して体勢を整えるって手段も取れるけど?」
「そうだなあ。ヘンリーの魔力が尽きる前に一度戻るのも考える必要があるかもな。」
サトチーが提案する一時撤退。
戦略的撤退とも言える提案だが、ヘンリーは頑として首を縦に振らない。

「ここまで来て引き返す?冗談じゃない。パパスさんの形見はこの先なんだろ?
 親分として絶対サトチーをそこまで送り届けてやるさ。
 イオの10発や100発で根を上げるヘンリー様じゃねえ!」
ダンッ!と地面を打ち鳴らし、ヘンリーが啖呵を切る。
あまりに芝居がかった仕草に、俺とサトチーの口からプッと笑いが漏れる。

「わかった。でも絶対に無理はしないこと。いいね?」
「ヤバくなったら言うさ。大事な子分達の命は俺様の魔力が頼りなんだからな。」
「頼りにしてるぜ。親分。」
ヘンリーが、任せとけ!…と、胸を叩く。

「じゃあ、作戦変更だ。がむしゃらに進んでも途中で力尽きる。
 ヘンリーの魔力は対ガメゴン用に温存。それ以外の相手はイサミとブラウンが前線。
 僕がチェーンクロスで相手を足止めするから、その隙に各個撃破。作戦はこれで。」
「了解。二人共、援護は任せたからな。」
「ヘッヘッヘ…子分が頑張ってるうちに親分は休ませてもらうぜ。」
「…静かに…」

サトチーの顔が強張り、武器を構える。
辺りに漂う腐臭。
地の底から響くような無気味な声。

『…オォオ…』

「…どうやら、そう簡単には休ませてくれないみたいだね。」

28 :風前風樹の嘆【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:20:34 ID:/Kcy+Dv30
地面が盛り上がり、人の姿が現れる。
いや、人の形をしているのはソレの後に伸びる影だけ。
朽ち果て、ボロボロの衣服…それよりもなお崩れ落ちた皮膚。
どんよりと淀んだ眼球…そこに意思の色はない。
筋肉が弛緩して、開いたままの口からはドブ色の体液が流れ落ちる。
辺りに漂っていた腐臭がより強くなり、鼻腔の奥のほうをチリチリと突き刺す。

「腐った死体…」
サトチーが口にしたのは、まさに目の前のコレそのものを体現した名前。

『…オオォォォオオォーー』

爪が剥がれ、内部組織が剥き出しの腕が振り下ろされる。
…が、動きは遅い。
剣で受け止めて受け流す。ガラ空きの側面に一撃を…

ドガッ!!

受け止めた…が、重い…受け流せない…こんなボロボロの体のくせに…

「イサミ離れろ!吹き飛べ化け物!!イ…」
「使うな!イサミまで巻き込む!!」
背後でイオを放とうとするヘンリーをサトチーが一喝。ヘンリーの動きが止まる。
サトチーは鞭を構えたまま動けない。この距離では俺にまで鞭が当たるから。

「イサミ!腐った死体相手に真っ向勝負は危険だ。一旦下がれ!!」
サトチーが大声を上げる…が、俺も動けない。
一歩でも後退すれば、こいつの腕が容赦なく俺の体に食い込む。

―!?!!―

ベゴン!と、嫌な音がして腐った死体が体勢を大きく崩す。

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/18(木) 00:21:07 ID:CvBUJuQE0
支援

30 :風前風樹の嘆【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:22:13 ID:/Kcy+Dv30
ブラウンのハンマーが腐った死体の後頭部にその頭部をめり込ませている。

チャンス!

上から押さえつけていた力が緩んだ隙に剣を振り上げ、両腕を跳ね上げる。
さらに、銅の剣をボロボロの胴体に叩き込む。

腐敗臭を放つ肉片と体液を撒き散らし、腐った死体は文字通り崩れるように倒れた。

「ふぅ…。」
動かなくなった腐った死体を確認し、銅の剣を背中の鞘に戻す。

「ヒヤヒヤさせやがって。今回はブラウンのナイスアシストだな。」
―☆♪☆!―
「イサミもお疲れ様。動けるかい?」
「ああ、ブラウンのお陰で助かった。」

こんなヤバイモンスターが集団で出てきたらたまらないな…
何がヤバイって、あんなのが集団で出た時の匂い…想像だけでヤバイだろ…

チラッと後ろを振り返り、動かない姿を確認する。

南無南無…安らかに成仏しろよ。

「あのモンスターが気になるのかい?」
サトチーが歩きながら俺に尋ねる。
「気になるって言うか…アレ…人なのか?」

「昔、父さんから聞いたんだけど…腐った死体は元は普通の人間なんだって。」
なんとなしに問い掛けた俺の疑問に、サトチーが答える。

31 :風前風樹の嘆【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:22:55 ID:/Kcy+Dv30
「未練を残して倒れた死体が、邪悪な魔力によって蘇った存在。それが腐った死体。
 死体だから、痛みも疲れも忘れて生きた人間を襲い続けるんだ。
 それこそ、休む事も眠る事もなく体が動く限り…ね。
 彼等が安息を得るのは、人間との戦いに敗れて灰に還った時だけ…
 だから、本当は安息を求めて彷徨っているんじゃないかな。」
「…で、人間を手当たり次第襲うってか?冗談じゃねえって。
 死体は死体らしく一生土の中で眠ってろってんだ…一生は終わっちまってるけど。」

後味悪りぃー…
モンスターを倒すたびに感じていたけど…元人間かあ…

魔力によって安息を奪われた元人間…
安息を得るために望まぬ戦いを続ける元人間…
自分を灰に還す人間を求めて彷徨い続ける元人間…

やるせねえな…

アイツを灰に還してやった事が弔いになるのかな?



…灰に……還してやった?



「うわあぁぁっ!!」

気付いた時には既に遅く、背後から聞こえるヘンリーの悲鳴。

しまった…まだ終わっていなかった…

アイツはまだ…灰に還っていない!!

32 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/18(木) 00:28:36 ID:/Kcy+Dv30
第六話中編を投下完了です。第六話は三編に分かれます。

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/18(木) 00:53:21 ID:22d0ncbjO
>>32
乙です。
この展開はスミス来るのかな?


34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/18(木) 03:06:35 ID:XE6CjWhI0
ゲームやってる時は気づかなかったが、
文章で表されると物凄い気持ち悪いモンスターだったのねw


35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 10:04:08 ID:4XkaLWLGO
スライムは呪文を唱えた!「保守!」

36 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:29:27 ID:ziCgFva70
全スレの続き……orz

――――――――――――――――

……アレン。
君は世界を救った後、やがて一国を担う者となるんだろう?
妃として私は到底相応しくないはずさ。

  「そういう逃げ方はズルいです」

当然本心ではないのだからアレンは納得しない。
でも結果としては君の手から逃げるんだから同じだろう?
そんな風に返してしまうのは、まだもう少しでも一緒にいたいからか。
アレンが納得しない限りは側にいれるのだから。

  「他の人のところへ帰るんですね」

背中に手を回して逃げれないように捕まえられてしまった。
それで言葉遊びは終わりだと感じる。
だからその胸に顔をうずめた。

  「しなのさん……」

アレン、私も好きだよ。
でも君とは一緒に行けない。
やり残した事があるんだ。
だから、帰るよ。

37 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:32:42 ID:ziCgFva70
  「しな――」

何か言いかけたアレンの口を塞いだ。

  「……」

私のファーストキス。
受け取ってくれたかな。

  「……やっぱりしなのさんはズルいです」

アレンの話を遮ったからか、一緒にいる事を断られたからか、
それとも明らかな嘘をつかれたからか、アレンが寂しそうに目を閉じる。

勇者でも女がズルい生き物だって事は知らないんだな。
私が茶化して言うと、そのセリフには少しだけ笑ってくれた。
しかしな……本気にはしてくれなかったか。
残念だな。

  「元の世界に帰ったら、たまに僕の事を思い出して下さいね。
   僕もそうします」

あぁ、分かったよ。
そう言って彼の体温をいつまでも忘れないように確かめた後、
私はアレンの腕からするりと抜け出した。
ありがとう。
さよなら、ばいばい。


――最終章へ――

38 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:41:37 ID:ziCgFva70
ようやく終わりました。
以外に容量食っちゃって焦りました。

前スレでアリスちゃんを楽しみにしていた方ごめんなさい。
新スレで投下されるのをお待ちください。

そして◆IFDQ/RcGKIさんにもごめんなさい。
アリスちゃんは埋め用なのに僕が埋めてしまいました。

と言うかしなのさんがイケナイんだ!
短編予定なのにあんなに長々と旅してくれちゃってさ!!(`ω´ )プンプン
なので苦情はしなのさん宛てにお願いします。
ではでは。

39 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:53:04 ID:a9eBz6DDO
前スレで支援して下さった方、ありがとうございました!

40 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 16:04:11 ID:fcMnCnV10
お疲れ。また一つ一段落だね。
スレ一つまたいで、ちゃんと終わりまで進むといいな。

41 : ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/19(金) 16:25:30 ID:CjfdCU/w0
>暇潰しさん
投下お疲れ様でした! 感想及び諸々は避難所にて書きますが、
いろいろとお気遣いいただき、こちらこそ申し訳ないです。

そしてアリスをお待ちいただいている読者様方、本当にすみません。
執筆中ではありますが、もう少しかかりそうです。

42 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 16:51:04 ID:ji8VEmHA0











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  この話は超濃厚な卑屈的内容であり、嫌気が注します!免疫がない方は読まないで下さい!




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43 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 16:53:13 ID:ji8VEmHA0

○対立○

ムーン「もょもと、私達は抜けさせてもらうわ。」

ムーンがいきなり俺達に別れを告げてきたのだ。

  もょ「どうして……?」
ムーン「貴方のもう一人の人格のタケは竜王の手先じゃない。そんな人と一緒なんて信用できないわよ!」
  もょ「そんなことないぞ。タケはおれにとってはかけがえのないなかまだ!」

サマル「もょも少しおかしいんじゃないのかい?ギィンが呼び出したタケを仲間だって……リアもそう思うだろ?」
  リア「わ、私は……」
ムーン「まぁいいわ。私達は貴方と別れることにするのだわ。だっていつ殺されるか心配だもの。」
サマル「それにタケがいなければもょは何も出来ないんだろ?全く最低だよ。」

このクソガキ共黙っていりゃあ好き勝手な事に言いやがって……『俺の怒りが有頂天になった』といってもいい…。

タケ「あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!
     素晴らしい発言やでホンマ!素晴らしすぎて笑いが止まらんわ!!」
 もょ「タ、タケ!?」

 タケ「こいつら頭がおかしいんじゃないかな?かな?お礼すらいえない王族だってよ!!最高の話やで!!」

ムーン「な、何笑っているのよ…いきなり笑い出して……気持ち悪いわ。」
  タケ「人が黙って聞いていたら好き勝手な事を言っているなぁ…このクソガキ共が!!」
  もょ「い、いったいどうしたんだ?」

 タケ「もょ、お前には悪いがこれからこいつらに説教タイムや。言わんと分からん馬鹿共に色々教えてやらんとなぁ…
     しかもこいつ等も卑怯モンやで。文句があれば俺に直接言ったらええのによぉ…!」
 もょ「お、おれが……わるいのだから……べつにいいよ。」
 タケ「もょ!お前は黙って見とれ。ここからは大人の喧嘩や。――――――――覚悟せえよ!!」

44 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 16:55:47 ID:ji8VEmHA0
―――――――――――――――――――――大人の喧嘩―――――――――――――――――――――


即ち、頭脳戦――――――――いかに自分のペースに持ち込むかが課題だ。


ムーン「あ、貴方が何の用なの!!関係ないでしょ!!」

  タケ「十分大有りなんじゃボケ!!散々俺等のプライドを砕いてくれたなぁ……この淫乱雌犬が!!」
ムーン「な、何ですってぇ!?だ、誰が淫乱雌犬よ!!」

  タケ「お前な、ギィンとのもょもとが傷ついているのに何で治療せえへんかったんや!?」
ムーン「そ、それは……その……」

  タケ「怖かったからか!?そんな下らん理由で仲間を見捨てるなんて最低なクズやで!そりゃもょもとと別れようとするわな!
      プライドが高いお前にはその事実を認めたくないモンな!!」  

ムーン「うう………」


ムーンが泣いてもおかしくない状態になっていたが更に追い討ちをかける事にした。


 タケ「そりゃお前の親父もハーゴンに殺されるわな。娘のお前が悪党なら親父は大悪党やで!!
    お前の親父が行った悪事の影響で俺ごときに罵倒される目になったもんな!因果応報じゃ!この淫乱女が!」

ムーン「い、いい加減にしなさいよ!幾等なんでも侮辱しすぎだわ!根拠も無いくせに!!」



45 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 16:57:42 ID:ji8VEmHA0
 タケ「ふーん……それがどないしたんや!?そりゃこっちの台詞やで。この雌犬!!もょもとが一番可哀想や。
    お前等を自分自身の力で守れないから俺を信用して託したにも拘らず、殺されるとか最低など罵倒とかするからなぁ〜?オイ!?
    信じていた仲間達に裏切られたんだから。てめぇらの勝手な判断のせいでな!」

ムーン「そ、その………………………………」

 タケ「後な、トーマスやカタリナが今のお前の姿見たら失望するだろうよ。
    こんなクズが度量も全くない一国の王女なんやから…
    救い様がないわ。あの二人がホンマに可哀相やで。
    それに俺達にお前を頼むって言われたにも関わらず当の本人がこれやからなぁ…
    お前の下らん発言がトーマスやカタリナの気持ちを蹂躙する事になるんやで!
    そこまで考えた事があるか!?王女様よぉ〜?」

ムーン「あ、ああ………」

ムーンは体を振るえさせながら俯いていた。

 タケ「泣いたら許されると思っているのか!!そんなん甘い考えや!
    そのまま一生立ちすくんでおけや!!嫌やったらさっさとムーンペタに帰れ!!」

  タケ「サマル、俺達の事最低って言ったよなぁ〜!?」
サマル「あ、ああ…!言ってやったさ!」
  タケ「お前の親は一体どう育て方をしたんや?お前の様な下衆に懐いているリアにも気が知れへんわ。」
サマル「な、何を根拠にいっているんだ!」
 
 タケ「俺は見たんやで……リリザで妹とはいえ、お前が罵倒している場面をなぁ!」

サマル「!!!!」
  リア「!!!」

流石にこれは二人に衝撃が走ったようだ。やはり弱みを握っている方が口撃しやすい。

46 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 16:58:56 ID:EO6+SVo0O
支援

47 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:00:28 ID:ji8VEmHA0
サマル「そ、そんなの嘘だッ!!」
  タケ「お前も雌犬以上の愚かやのぉ…こっちはお前らが腹違いの兄妹って言うのは把握済みやねん。これでも言い逃れするか?」
サマル「で、出鱈目だ!」
  タケ「お前の知らん所でこっちは色んな相談受けているねん。リア本人から。いい加減認めたら!?見苦しいで。」
サマル「………………………………うわあああああああああああっ!!」

いきなりサマルが槍で攻撃を仕掛けてきたがあっさりと回避できた。

 タケ「……事実を言っただけでそんなにムキになるとは…やっぱり救い様が無いガキや。
    自分が追い込まれたらビビッて何もする事が出来へんし情けないわ。――――――――それに今のは宣戦布告と捕らえてええんやな?」

サマル「あ、あ……」
ムーン「そ、そうよ!これは貴方に対しての宣戦布告よ!絶対に許せないのだわ!」

  リア「も、もうやめてよ…」
  もょ「タケもムーンもやめろ!!けんかしているばあいじゃないだろう!」

  タケ「もょやリアには悪いが……吐いた唾は飲み込む事はできへんのや。いいか、良く覚えておけ。
     自分の行動には自分自身で責任を持たないといけない事をな。」

  タケ「それなら始めるとするか……1対2でも俺は別に構わん。かかってこいや!」
  もょ「やめるんだ!!」
  
  タケ「……………………許せ、もょ。」
 
  もょ「お、おいっ!!なんだ………?は、はなすのがくるしい…」
  リア「も、もょもとさんはどうなったの?」
  タケ「心配せんでええ。ちょっと干渉されるのをやめる様にしただけやで。じゃあ始めよか。」

自分自身の怒りの感情を高める事によってもょもとからの干渉を退く事ができた。
嫌な戦いが始まるが・・・・・・・早かれ遅かれ来る運命。仕方があるまい!

48 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:02:03 ID:ji8VEmHA0
  タケ「その前に、お前らにハンデをつけてやる。」
ムーン「ハンデですって!?」

  タケ「魔法剣や防具ありなら俺が必ず勝つからやってもつまらん。素手と防具無しで相手してやるわ。」

ムーン「バッカじゃないの!?」

サマル「い、いや…、逆にこれはチャンスだよ。とりあえず勝てればいいんだ!!」

  タケ「ほー、まだサマルの方がまだ戦況判断能力が高いな。
     割合的には4対6で俺が不利って所やけど、じゃあボチボチやりまひょか。」

ムーン「言われなくても始めるわよ!!バギッ!!」
ムーンがバギを放って来たが大した威力は無い。俺自身もレベルアップしている証拠か。

  タケ「なんやぁ…このショボイ呪文は。ゼシカやククールより更に劣るで。」
ムーン「くっ……………」

  タケ「よーこんな呪文で今までやって来れたのが奇跡や!ホンマ情けない…お前の今の価値はベホイミ専用の薬箱位しかあらへんわ。」

サマル「な、ならばこれでどうだ!」

サマルの攻撃が腰を引けている。ボクサーで例えると腰が入っていない手打ちパンチと同様。
この攻撃も大した事がない。すんなりと懐に潜り込めた。

  タケ「油断しやがったな。槍は超接近戦では不利なんや。素手でも人を撲殺できるんやで…」
サマル「えっ!?」


まずは顎に思いっきりストレートパンチを食らわせ、サマルがよろけて羽帽子が脱げた所にテンプル(こみかみ)に更にパンチを打ち込んだ。 
この2箇所は大概の人間が鍛える事ができない場所。確実に決まればまず立ち上がることが出来ない。


49 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:04:53 ID:ji8VEmHA0
ムーン「サ、サマル!!」
  タケ「無駄や。意識がぶっ飛んで立つ事すらも出来へん状態やで。」

ムーン「も、もしかして素早く行動するために武器と防具を…」
  タケ「ビンゴ。無防備と油断したお前らが悪いで。」

サマル「くっ…頭がグラグラして立てない…」
  タケ「普通オチてもおかしいのに意識があるとは。やるじゃん。安心するのはまだ早いがな。」


俺はサマルの槍を持ち顔に向けて構えた。


  タケ「ふっふーん。チェック・メイトやね。」
サマル「ああっ…」



  タケ「耳をかっぽじってよく聞け。神への祈りは済ませたか?小便は?
      この場でガタガタ震えて命乞いする準備はOK?」



サマル「た、たすけて……」
  タケ「だーめ(^o^)…………じゃあ顔面にこいつを貫通させて死んでもらいましょ。」

実際殺すつもりはなく掠らせてびびらそうとしたのだが、サマルは気を失って倒れこんだ。

 タケ「やれやれ……歪んだ動機だが立ち向かって来た事に関しては敬意を表するわ。
    しかし、これが実戦なら確実に死んでいたで。後、お前一人だけやなぁ…」

ムーン「あ、貴方ごときに負けはしないわよ!!」

50 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:06:53 ID:ji8VEmHA0
 タケ「
       巛彡彡ミミミミミ彡彡
       巛巛巛巛巛巛巛彡彡
   r、r.r 、|:::::           |
  r |_,|_,|_,||::::::     ⌒   ⌒|
  |_,|_,|_,|/⌒     -="-  (-="     ぁぁそうでっかそうでっか
  |_,|_,|_人そ(^i    '"" ) ・ ・)""ヽ    なるほどね・・・
  | )   ヽノ |.  ┃`ー-ニ-イ`┃
  |  `".`´  ノ   ┃  ⌒  ┃|
  人  入_ノ´   ┃    ┃ノ\
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      /   \ ト ───イ/   ヽヽ

       巛彡彡ミミミミミ彡彡
       巛巛巛巛巛巛巛彡彡
   r、r.r 、|:::::           |
  r |_,|_,|_,||::::::     /'  '\ |
  |_,|_,|_,|/⌒      (・ )  (・ )|
  |_,|_,|_人そ(^i    ⌒ ) ・・)'⌒ヽ   ・・・で?
  | )   ヽノ |.   ┏━━━┓|
  |  `".`´  ノ   ┃ ノ ̄i ┃|
  人  入_ノ´   ┃ヽニニノ┃ノ\
/  \_/\\   ┗━━┛/|\\
      /   \ ト ───イ/   ヽヽ              」

※AAはイメージです。
ムーン「本当にムカつくわね!!殺してやるのだわ!!」
  タケ「あっそ。お前がそんな発言しても全く威圧感が無いんやけど。ギィンやドルマゲスに比べたら迫力が無いわ。ダセェw」
ムーン「呪文なら絶対負けないのだわ!」
  タケ「どーせバギやイオなど下らん呪文やろが。」
ムーン「それはどうかしら。これで息の根をとめてやるのだわ!」


51 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:10:36 ID:ji8VEmHA0
ムーンから4メートルくらい大きな竜巻が発生した。しかしムーンは血を吐いた状態で呪文を詠唱している。

ムーン「あ、貴方には呪文同士だけで戦う度胸はないでしょうね……ゴホッ……ゴホッ…」

  タケ「無理しやがって……けど、命よりプライドをとるお前の行動に応えないと男が廃る。
     じゃあ俺もこいつでいくとするか!!」


ゼシカと同じ呪文メラミで対抗する事にした。しかし体に大きな負担がかかるが
どれぐらい自分自身耐えれるか分からない。だが、プライドに関してはムーンに負けたくない。




ムーン「これで終わりよ!!バギマ!!」
  タケ「貫けぇ!!メラミ!!」





メラよりも3倍くらい大きい火炎球を出す事を成功したのだがその瞬間、眩暈や全身に痺れ込んできた。
しかも口から大量に血も吐いている。

肝心な呪文の方だが軍配はムーンに上がった。
俺のメラミが竜巻の中で分散され、小さな火炎球がムーンに当たるがあまり危害がない。
逆に俺には飲み込まれた炎の竜巻が襲い掛かる!!

しかし大防御が取れればいいのだが、痺れの影響で体を動かす事ができない。……それ以外の対処方法が無い。
諦めかけた時、もょもとが俺をかばった。



52 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/10/19(金) 17:16:01 ID:ji8VEmHA0
  もょ「だ、だいじょうぶか……タケ。」
  タケ「な、何でやねん…?かばう必要は無いのに…ゴホッ!!ゴホッ!!」
  もょ「いっただろ。かけがいのないなかまだって。」
  タケ「す、すまねぇ…」
ムーン「あはははははは!!私が勝ったのだわ!!……ゲホッ!ゲホッ!」
  もょ「………それはちがうぞ。ムーン。」
ムーン「はぁ!?何言っているのよ!もょもと!!」
  もょ「ムーンはいつからじゅもんをならいはじめたんだ?」
ムーン「3年前よ!それがどうかしたの!?」
  もょ「タケがじゅもんをおぼえたのはごくさいきんだぞ。かってあたりまえのじょうきょうで
     まけたときのほうがぎゃくにはずかしいぞ。」
ムーン「い、一体何が言いたいのよ!?」

  もょ「タケがじゅもんじゃなく、けんやパンチ、だいぼうぎょをつかうやりかたならかくじつにムーンはまけていた。
     タケはあえてムーンのとくいぶんやでいどんだんだ。それすらわからないのか?」

ムーン「くっ…でも勝ちは勝ちよ!!」
  もょ「………もういい、わかった。はなしをきいていたらどうかんがえてもタケのほうがただしい。
     ムーンやサマルはひきょうものだ!ここでおれたちとおわかれだな。」
 リア「そ、そんな!!」
 タケ「お、おい…ホンマにええんか…?」
 もょ「ああ…いくぞ、タケ。おれたちだけでハーゴンをたおそう!」

もょもと&タケ
Lv.18
HP: 21/130 
MP: 0/  9
E内服(布の服) 鋼の剣 鋼の鎧 鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
  タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
        火炎斬り

53 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 18:49:25 ID:xee8CfR+0
>暇潰し ◆ODmtHj3GLQさん、
うは、1レスすすむごとに大どんでん返し、いい意味で予想を遥かに上回る驚きの連続です。
それと、しなのさん、かっこいい。
思えば、この3人が(しなのさんも)であったのは必然だったのかもしれませんね。

>レッドマン ◆U3ytEr12Kgさん
すごい急展開。
しかし、ムーンやサマルがこんなに性格悪かったとは・・・。
この先、どうなってしまうんでしょうね。


54 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 19:22:07 ID:EO6+SVo0O
とりあえず乙。
前半部分がかなり生々しいな。
このスレ初めてじゃないのか?仲間同士で争うのは。

55 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:07:16 ID:BEUp8zJv0
第六話後編投下します。

LOAD DATA 第六話中編 >>26-31

56 :風前風樹の嘆【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:08:26 ID:BEUp8zJv0
ゆっくりと起き上がった…死体。
相変わらず足取りは鈍いが、その朽木のような両足はしっかりと地に付いている。

「ビビらせやがって!今度こそ永遠に眠らせてやる…イオ!」

ヘンリーの魔力によって引き起こされた爆風で、腐った体が枯葉のように吹き飛ぶ。
そして、また立ち上がる。
飛び散った中身を拾う事もせず、何かに突き動かされるように。

「ヘンリー止めろ!相手にもう敵意はない。」
サトチーがイオの詠唱を制して、ヘンリーと腐った死体の間に立つ。
確かに、さっきまで充満していた明らかな殺意が消えている。

たどたどしく、弛緩した舌を動かして声を発する死体。
「…ナゼ…逃げなイ…?」
その機能を失った脊髄をククッと曲げ、俺達に問いを投げかける。
「私ノ…姿…怖れなイ…か?…死ぬ…怖く…なイか?」
自らの掌を…ボロボロの手を見つめる瞳に嘆きの色が浮かび、滲み出す…

「ふん。親分が子分を見捨てて逃げたら末代までの恥だろうが。」
ヘンリーは強気な口調で

「後列でへばってる親分を庇うのが優しい子分の役目だろ?」
俺は皮肉めいた口調で

―☆☆☆!!―
ブラウンは(言葉はわからないけど)胸をはって

「誰も死なせない。そして、誰も悲しませない。
 誰にでも帰る場所がある。待つ人がいる。どんな状況でも皆で生きる術を探すさ。」
サトチーは強く答える。
それは、表現こそ違えど全員同じ答え。

57 :風前風樹の嘆【15】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:09:11 ID:BEUp8zJv0
死んだ魚のように濁った目から零れる濁った涙。
「…帰れナイ…悲しませてゴメン…逢イたイよ……」
その言葉から、涙から感じられるのは、確かな意思。

逢いたい?
そうか、こいつは故郷で帰りを待つ人を残して逝くのが未練で…

「…帰りタイ…愛しイ…マチュア…」
湿っぽい土の上に数滴落ちる雫。
僅かな光源を反射するソレは、キラキラと輝いて見えた。


          ◇           ◇


「なあ、死体の旦那。一番奥の小部屋ってのはまだなのかい?」
「…もう少し…」
「かぁーっ!さっきからそればっかじゃねえか。本当に覚えてるのか?」

腐った死体の道案内。
思い出を呼び覚ましてくれたお礼にと、腐った死体が先導してくれているわけだが、
正直、脳味噌まで腐っているようなモンスターの案内は不安でしかない。

いやいや、(元)人を見かけで判断するのはいけないんだけどさ…

「なあなあ、死体の旦那。もういい加減着いても良いんじゃねえの?」
「…もう少し…」
「本当だな?信じてるからな?頼りにしてるからな?」
ヘンリーもイライラしてるようだが、それなりに打ち解けている。
あの、人当たりの良さは一種の才能なんだろうなあ。

58 :風前風樹の嘆【16】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:09:53 ID:BEUp8zJv0
「どうしたんだい?何か考え込んでるようだけど。」
そして、仲間の様子に敏感に反応するサトチー。これも才能だよな。

「大丈夫。別に悩んでるとかそういうのじゃないからさ。」
「…そう?それなら良いんだけど…」
「それより、アレに案内を任せて大丈夫なのか?正直、俺は不あn…」
言いかけた俺の足元を銀色の何かが駆け抜け、それに遅れて通過の余波を感じた。

何だアレ?やたらと速いけど、モンスターか?
「…メ…」

め?

「メタルスライムだ!!」
先を歩いていたヘンリーが叫び、興奮した様子で銀色に斬りかかる。
…が、ヘンリーの鎖鎌は掠りもせずに空を切る。

「逃がすな!ヘンリーとイサミは退路を塞げ!!ブラウンは全力で攻撃!!」
「おうよ!任せろ!!…って、畜生!チョロチョロすんな!!」

何だ?あのテンション…

「あぁっ!逃げる。追うぞ、ヘンリー!!」
「うおおぉぉ!逃がさねえぞおぉぉぉ!!」

銀色を追いかけて洞窟の方へ走りだすサトチー達。
完全に置いて行かれた俺と…腐った死体…

「…あの…行っちゃいました…ね?」
「…走って行っタ…方向…部屋…」

あ…そう…じゃあ問題ないね。

59 :風前風樹の嘆【17】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:10:42 ID:BEUp8zJv0
腐った死体の言う通り、少し先にそれらしい扉を発見した。
…けれど、サトチー達の姿はない。メタルスライムを追って走り回っているのだろう。
さらに、扉には鍵がかかっているらしく、押しても引いても動く気配はない。

「参ったね。サトチー達と合流するまでここで待つしかないのかね。」
ジメジメした上の階とは違い、石畳で覆われたこの階の地面は乾いているので、
座って休む事に躊躇しないで済む。

俺と向かい合うような形で、腐った死体も腰を下ろす。
道中、会話らしい会話は全くなかったけど、最初に感じた嫌悪感は消えており、
むしろ、二人きりの状況では、コイツのタフさはとても頼りになる。

「はぁ…しかし、だいぶ傷だらけになっちまったなあ。」
聞いているのか聞いていないのか、俺の声に全く反応を見せない腐った死体。
頭蓋骨が陥没したままの状態で、だらりと足を投げ出して休んでいる姿だけを見ると、
コイツが動いたり話したりするのが信じられなくもなる。
「あんたの怪我もそのままだったな。」
「…私ハ…痛みを感じ…なイ…平気…」
目を伏せたまま、やっと返ってきた反応はそっけない。

「…あんたは平気でもね…」
改めてその凄惨な怪我を目にして平気でいられるほど俺は冷酷じゃない。

ふぅ…と、一息ついて安らぎの歌を呼ぶ。
陥没した頭蓋骨を完全に治すには至らないが、傷口から滲み出る体液は止まった。

「サトチーのベホイミほどの効果はないけどさ、何もしないよりはマシだろ?」
「…ありガとう……デも…そノ技ハ…」

「肝心なトコで何で外すかな?このノーコンハンマー。」
―!!!!!―
「まあまあ、ブラウンのせいじゃないよ。」

60 :風前風樹の嘆【18】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:16:45 ID:BEUp8zJv0
呟くような腐った死体の声を掻き消して、一気に賑やかになる空間。
サトチー達が戻ってきた…けど、あの様子じゃあメタルスライムは取り逃したのかな?

「だってよお、コイツのハンマーが当たってれば…アレ?何やってんだイサミ。」
「ナニやってる?散々人を放置して第一声がソレ?」
素っ頓狂なヘンリーの言葉に俺の機嫌が一気に悪くなる。
「いやあ、済まない。メタルスライムを見たら、思わず血が熱くなってね。」

いつも冷静なサトチーが熱くなる存在。メタルスライム…
コレもこっちの世界の常識なのかね?

「…で?ココで待ってるって事は、この扉の先にパパスさんの形見があるって事か?」
「らしいね。でも、鍵がかかってて扉が開かないんだ。」
「どれどれ…あぁ、このタイプの鍵なら…ホラ、簡単。」

サトチーが鍵穴に何か…と、思ったら一瞬で開錠。

…ソレ、ピッキングって言うんじゃねえの?

「子供の頃に覚えたんだけどね。このタイプの鍵なら目をつぶってても開けられるさ。」
得意げに物凄い事を話しながら、扉を開けるサトチー。

…気にするな…きっと、コレもこっちの世界の常識なんだ…

十年振りに開け放たれた扉。
その奥に安置された一振りの剣。


剣の心得など全くない俺にもわかる眩いばかりの神性を放つ剣。

その剣を前に、俺達は暫し時間を忘れて立ち尽くしていた。

61 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:17:32 ID:BEUp8zJv0
イサミ  LV 11
職業:異邦人
HP:45/65
MP:10/10
装備:E銅の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

62 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/20(土) 01:25:04 ID:BEUp8zJv0
第六話投下終了です。
腐った死体の描写が必要以上にグロくなったのは申し訳ないです。
ドラマがありそうで好きなモンスターなんですけどね…

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 01:28:05 ID:BnV7Gxk50
DQ世界を知らないイサミからすれば
メタスラ狩りに熱くなったりするのは理解できないよなw
そしてあの時覚えたカギの技法はピッキング技術だ確かにwwww

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 09:52:47 ID:+nPDpNEd0
小説ドラクエXを好きな俺は、腐った死体にドラマを感じる事に同意せざるを得ない。
しかし、はたから見るとグロいにも程があるのに、余裕あるなw

65 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 10:17:34 ID:89QzY+EN0
メタスラ狩り、いいですね。まさに目の色をかえるという感じでしょうか。
はぐれメタルなんかでた時にはすごいことになりそう(wwwwwwwwww

腐った死体さんが動くっていうのはゲームだとただの敵キャラですけど、リアルに考えるとこわいですよね。
腐った死体さんの願い、かなうといいですね。でも、会えたとしても、この姿だとお相手さんもびっくりですよね。悲しいけど・・・。

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 10:34:50 ID:kJjJ+8voO
スミス(仮)にもドラマがありそう。
メタスラ狩りは同意出来るな。
暇つぶし、レッドマンも乙。
しかしこのスレでノリさんAAが見れるとはw

67 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 13:13:12 ID:P1xeMY6M0
週末に向けての怒涛の投下!
作家さんたちGJ!

堪能しました〜

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 13:42:51 ID:8mcUQYMo0
すげえ……
作者にはそれぞれの色が出ているな。
各主人公で例えると

しなの…ピンク
 タケ…ブラック
イサミ…パープル って感じかな。


69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 06:39:45 ID:OdbIyG/4O
作者の皆さんには感謝している。
続きを読むのがすごい楽しみ。

70 :Stage.9.5 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:03:39 ID:OQlcC0ua0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。まずのっけからごめんなさい。アリスちゃんもうちょっと待ってくださーい!」
アルス「嬉しそうに見えるのは気のせいか?」
タツミ「とんでもない! お待ちいただいてる読者様に申し訳なくて、ああ胸が痛ひ……」
アルス「え〜冗談抜きですんません。現在本編の方で、物語の根幹に関わる部分を書いてまして、
   本編をキリのいいところまで進めてから投下させてください」
タツミ「では前回ご感想いただいた読者様へのサンクスコール!」

タツミ「前スレ>>580様、ドキドキしつつの初リアルタイム支援、ありがとうございます!」
アルス「同じく前スレ>>581様、狙った終わり方になってる?w 楽しみにしていただいて感謝!」
タツミ「そして毎回、たくさんのご支援にも助かっております」

アルス「しかしこの話、リアルサイドとゲームサイドで飛ぶから、流れつかみにくくないのかね?」
タツミ「あるかも。時々番外も入るし、『あれこっちの最後どうなってたっけ?』なんてねー」
アルス「一応、前話へのアンカーと一緒に各サイドの最終アンカーを入れてるけどな」
タツミ「登場人物も多いしね。すでに忘れられてる人もいるよ、きっとw」
???「たとえば僕なんかそうですよね」
タツミ「うわ! え、どなた?」
アルス「お〜久しぶりじゃん! えーと……なんだ、ほら、あれだ」
???「あれだ、はないでしょう。コーラおごったのに。ショウですよ」
タツミ「あ〜いたね、黄色シャツの謎のゲームサイド人。で、なにかご用?」
ショウ「実は今回、僕がけっこう多く出るもので」
アルス・タツミ『へ?』


ショウ「というわけで、今回はアナザー中心『Stage.9.5』をお送りします。
   それでは本編スタート!」


【Stage.9.5 Border Breakers】
 [1]〜[9] リアルサイド・アナザー

71 :Stage.9.5 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:05:47 ID:OQlcC0ua0
  Prev(マエスレ) >>567-576
 ----------------- Rial-Side Another -----------------

 ――彼は「勇者」となるべく育てられた。

 勇者は常に、慈愛に満ちた存在でなければならない。特定の人間に愛を傾けず、世の中
のすべての人間を平等に慈しみ、他人を助け、他人を優先し、他人の非を許せる優しさを
持たねばならない。
 また勇者は、憎悪や嫉妬などの醜い感情を持ってはならない。他人を憎んだり、ねたん
だりするのは「悪」であり、そのような感情はみずから速やかに排除し、自省できる人間
でなければならない。
 また勇者は、清廉潔白でなければならない。俗人と同じ劣情を持たず、他者の感情に左
右されず、泰然としていなくてはならない。
 また勇者は、他者に弱さを見せてはならない。常に平静な状態を保ち、どのような問題
にも完全に対処できなければならない。
 また勇者は――。勇者は――。勇者は――。


 世は文字通りの暗黒時代。
 竜王の魔力によって陽の光は厚い雲に遮られ、真昼でも夜のように暗い日々が続いた。
人々は魔物に怯え、寒さに震え、飢えに苦しみ、ただじりじりと滅亡の道へと追い込まれ
ていくだけだった。

 英雄が必要だった。絶望の淵に追い込まれた人間たちが、最後の心の希望としてすがり
つくための存在が必要だった。
 ゆえに、本来は結果論であるはずの「勇者」をゼロから作り上げるという行為が、どれ
ほど不自然なことなのかも、誰一人気づくことはなかった。

 伝説の再来から、救世の終わりに至るまでの間……誰一人として。

   ◇
 

72 :Stage.9.5 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:07:25 ID:OQlcC0ua0

 腹に突き刺した鉄杭を、さらに正確に蹴りつけてきた相手の格闘センスに、アレフィス
タ・レオールドは内心で舌を巻いた。ただのガキだと思ったが、なかなかどうしてやるじゃ
ないか。さすが伝説の英雄、そうでなければ倒し甲斐がない。

「なあ、本当に大丈夫なのかよ、アレフ。くそ、あの野郎なんなんだよ」
 傍らで不安そうにしている少年は、さっきから同じことを繰り返している。
「わけわかんねえよ。なんでいきなし強くなんだよ。タツミの野郎、運動しんけーとかそ
んな悪くなかったけどよ、あんなんじゃねえよ。なんなんだよ」
「少し黙れ」
 いい加減うっとうしくなり、アレフは低い声で呟いた。少年はビクッと肩を震わせると、
顔色をうかがうように上目遣いにアレフを見つめた。
「わ、わかったよ」
 どうにも使えそうにないヤツだ。未だにあれが別人だと気付いていないのも鈍すぎて呆
れるが、ここは説明してやることにする。
「あいつは、お前が言うミツハラタツミという人間じゃない。俺と同じく、ゲームの世界
からこちらに来た人間だ」
「なんだと!?」
 大声を出す少年を、人差し指を唇に当てて黙らせる。
「たぶん、ミツハラタツミと入れ替わったんだろう。俺が、お前の妹と入れ替わったのと
同じように、な」

 少年の名はエージ……一條栄治という。『現実』に来て最初に出会った人間であり、自
分が入れ替わりのために犠牲にしたプレイヤーの実の兄である。
 妹が異世界に飛ばされたにも関わらず、こいつは「すげぇ!」を連発し、自分に常人以
上の力があると知るや、「タツミというガキを半殺にしてくれ」と頼んできた。話を聞け
ばそれなりの情状はあり、衣食住の世話から武器の調達までおこなってくれたことへの礼
として引き受けたのだが――それがまさか、偉大なるご先祖様だったとは。
「これも運命か……。まあいい、ひとまずここを離れるぞ」
 追っ手がかかれば面倒なことになる。今日は出直した方がいい。
 

73 :Stage.9.5 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:08:26 ID:OQlcC0ua0

「――なるほど、その子に頼まれてやったことだったんですね」
 いきなり声が掛かった。
 木の陰から現れたのは、鮮やかな黄色の服を着た少年だった。首や腕にジャラジャラと
装飾品をぶら下げ、左耳にピアスが光っている。
 肩に妙な形をした大きめの黒いケースを背負っていた。エージの家にもあった、ギター
とかいう楽器をしまうものだったか。
「でも、平穏な生活を望んでいるマジメなPCに手を出すのは、良くないですよ?」
 少年は人の良さそうな笑みを浮かべたまま、二人を交互に見ている。
「なんだぁ? てめえ誰だ……わっ」
「下がってろ」
 吠えかかるエージの襟首をつかんで後ろに転がし、アレフはナイフを抜いた。
 同じ「におい」がする――こいつも、明らかに向こうの人間だ。

「ピーシー、とはなんだ。ヤツのこちらでの名前か?」
 距離を調整しながらアレフが聞く。
「いいえ、まさか。PCというのは、プレイ・キャラクターの略です」
 少年はクスクス笑いながら、ギターケースを地面に置いた。
「僕やあなたのようにゲームから来た人間のことを、僕らはそう呼んでるんですよ。ゲー
ム側の人間、とか、いちいち言いづらいじゃないですか」
 説明しつつ中から取り出したのは、ギターなどではなかった。ジャキッと慣れた様子で、
なにか禍々しさを感じる複雑な構造のもの――間違いなく武器だ――を携える。
「ちなみに、入れ替わりの対象となるプレイヤーのことも、単純にPLと略してますが」
「……嘘だろ、あれ銃だぞっ。やべえよ、あんなんで撃たれたらぜってー死ぬって!」
「だったら逃げろ!」
 また騒ぎ出したエージをアレフが突き飛ばした瞬間、ダン! っと腹に響く音がした。
 現実側の人間よりも遙かに優秀な知覚を持つアレフには、二人の間をなにかが高速で突
き抜けていくのがわかった。撃たれる、というのは今のを食らうことらしい。
「ひ、ひぁ! アレフぅ!」
「行け、邪魔だ!」
 アレフに怒鳴られ、エージはつんのめるように森の奥へと走り出した。
「へえ……現実の人間なんかどうでもいいタイプだと思いましたが」

74 :Stage.9.5 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:09:56 ID:OQlcC0ua0

「どうでもいいさ。だが、まだ後見人は必要だからな。少々頼りないが」
 相手の皮肉に苦笑で返しつつ逃走ルートを探す。まともにやりあうには分が悪すぎる。
 少年も気づいているのか、ゆっくりと退路に回り込むように動いてくる。
「やめた方がいいですよ。まだ半端なあなたでは無理です」
 瞬間、目の前に少年がいた。とっさに両腕を十字に組んで防御するが、一見ぞんざいと
も見える蹴りに、身体ごと後方に吹き飛ばされた。
 頭ひとつ分の身長差がある、どちらかといえば小柄な少年に簡単にパワーで押し切られ、
アレフは相手が言った「半端な」の意味がわかった。
「っぐ……貴様、制限がないのか?」
 ゲーム内では自身の何倍もあるモンスターを剣一本で両断できるだけのその力を、現実
でも最大限に発揮している。少年が相変わらずの笑顔で肯定した。
「僕はもう移行が完了してますので。ですから、時間制限もありません」
 セリフが終わると同時に、先刻聞いた重い音が轟いた。
 彼の持つ銃器はライフル。本来はストック後端にあるバットプレートをしっかり肩に固
定して狙い撃つものだが、少年は長身の銃器を片手で軽々と持ち、常人なら脱臼しかねな
い強烈な反動も意に介さずトリガーを引いている。  
 ほぼ動物的勘で弾道を読み、危ういところを避けたアレフに、少年が再び肉薄した。ロ
ングレンジの武器を持つにも関わらず接近戦をしかけてくるのは、あまり撃ちたくないた
めか。繰り出したアレフのナイフをスライディングするような姿勢で避け、すり抜けざま
銃の柄で脇腹を殴りつけていく。たまらず膝をついたアレフに容赦なく蹴りが入る。
「あなたのようにおかしくなっちゃう英雄が多いんですよね。そういうPCを『狩る』の
が僕の仕事です。勇者狩り、とでも言うのかな」
「がぁっ……!」
 背中を踏みつけられる。それだけで肋骨がきしみ、呼吸ができなくなった。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」

 ダン! ダン! ダン! と間近で立て続けに発射音が響いた。
 同時にアレフの意識も吹き飛ばされた。

   ◇
 

75 :Stage.9.5 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:18:20 ID:OQlcC0ua0

 ショウは「ふう」と息をつくと、動かなくなった青年を足で転がし、仰向けにさせた。
 PCは総じて現実の人間より遙かに体力も耐久力もあるが、さすがに大型獣用の麻酔弾
を3発もぶち込めば、しばらくは起きないだろう。
 と、胸元で細かい振動が起きた。マナーモードにしていた携帯電話だ。付近の封鎖にあ
たっていた組織の人間からで、逃げた少年についての処置を尋ねてくる。
「いえ、放置してください。まずはこのPCの搬送を頼みます」
 相互置換対象の実兄となれば、一條栄治もまた、他のPCと入れ替わる現象が起きるか
もしれない。泳がせておく方が得策だろう。
 確保したばかりのPCの扱いを手短に指示し、携帯を切る。愛用のライフルをギターケー
スにしまうと、自分はさっさとその場を離れた。

 ふと、たった今逃がしてやった不良少年が、現在監視下にある他のPCに要らぬちょっ
かいをかけていることを考えた。
 あのPCは――タツミと言ったか――今のところ良識的に行動しており、移行完了後の
スカウトも検討している。移行前の半端な状態では使い物にならないので様子を見ている
が、その障害になるようなら、やはり一條栄治も監視しておくべきか。
「いつまでも僕一人じゃキツイしなぁ。タツミ君も早く割り切れればいいけど……」


 ショウは公園を出てその場でタクシーを拾い、1時間後には中央区に戻った。
 オフィス街の一角にある高層ビルの前で車を停めさせる。ビルのフロントにIDカードを
示してギターケースを預け、エレベーターで一気に最上階まで昇り、いくつものセキュリ
ティを通ってたどり着いた先の広いオフィスで、一人の青年が待っていた。
「やあ、お疲れ様」
 やや長めの黒髪を後ろで結い、上品な濃紫のスーツを着ている。
 彼の傍らには美しい秘書が二人控えており、そのうちの一人が無言で進み出た。見事な
ストレートブロンドをゆるやかに編んで肩にかけ、緑のスーツをまとった大人らしい雰囲
気の女性だ。中央にある応接セットのソファに優雅に腰を下ろし、ショウを見て微笑む。
 彼はわずかに眉をひそめたが、にこやかにこちらを見守っている青年を見て、小さくた
め息をついた。ソファに大股で近づいて、秘書の太ももを枕に、乱暴にドサッと背中から
横たわる。

76 :Stage.9.5 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:19:47 ID:OQlcC0ua0

「相変わらず手際がいいね。今度の『勇者』くんはどうだった?」
 青年も向かい側のソファに腰を下ろし、気軽な口調で尋ねてきた。
「どうもこうもないですよ。一度は世界を救った英雄だろうに、どうしてこうネジが外れ
ちゃうんでしょうね」
 ショウは目を閉じたまま、億劫そうにひらひらと手を振った。
 その手ですでに、二人の『狂った勇者』をこの世界から抹消している。現実側での生も
死も仮のものでしかないとわかってはいるが、決して気持ちのいいものではない。
「仕方ないさ。それだけの大命を果たしたからこそ、よけい『現実』とのギャップに苦し
むんだろう。君だって最初、たった一枚のディスクの存在だと知ってどうだった?」
「僕はそれどころじゃありませんでしたから」
 即答する。現実もゲームも、ショウにとってはどうでもいい話だった。
「あなたはどうだったんですか?」
 横目で見つつ逆に問い返すと、青年はあごに指をあてて少し考え込んだ。
「私の場合は……それほど驚きはしなかったな。私の世界にも妖精界だの魔界だの、いく
つも平行世界があったから、『現実』もそんなに突拍子のない話じゃなかったしね」
 自分の息子が伝説の勇者だと知ったときの方がよっぽどショックだったよ、と笑う。

 そこにもう一人の秘書が、コーヒーを煎れて戻ってきた。
 こちらの女性は白を基調としたスーツに身を包み、ほぼ黒に近い濃紺の長髪の上半分を
まとめ、残りを背中に流している。枕にしている方と比較するとやや幼い印象を受けるが、
その物腰には深窓の令嬢を思わせる慎ましさがあった。
「ありがとう。君もここへ」
 ソファを叩いて隣に座らせた彼女を、青年は自然な動作で抱き寄せた。

 どちらの女性も現実の人間だ。青年がゲーム内で妻とした女性たちによく似た人間をわ
ざわざ捜し出し、そばに置いているのだという。
 最初、妻が二人という意味がわからず、重婚ではないのかと聞いたところ、青年はあっ
さり肯定した。こいつのPLはよほど女好きらしいな、と内心で毒づいたものだ。
 あるいは逆に、表向きはとんでもない堅物で、内側に鬱屈を溜め込んでいたタイプか。
どちらにしろ、こいつのプレイヤーも褒められた性格ではなさそうだ。
 

77 :Stage.9.5 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:21:31 ID:OQlcC0ua0

 PL(プレイヤー)の性格や生活環境が、ゲームの未表現領域の設定(ゲーム上で表現
されない詳細設定)に大きく関与していることは、今までの研究でわかっている。
 DQシリーズのコンセプトが「主人公=プレイヤー」である以上それも道理であるが、
問題は、PLの隠れた願望や深層心理が、より顕著に影響を与えるという点にある。
 PLの現実生活が歪んでいれば、それだけ理想や願望は大きく強くなっていく。それら
が強引に投影されることにより、PCは本来のストーリーとの軋轢によって過剰なストレ
スにさらされ続け、あげく『現実とゲーム』というショッキングな事実に直面し、精神に
異常をきたしてしまうのだ。
 先刻確保したPCも、肉親を奪われたにも関わらず懇意にしている一條栄治の異常な行
動を見れば、PLである妹のゆがみ具合もおのずと察せられる。
 アレフも被害者なのだ。でなければ、彼もひとつの世界を救うほどの人物であり、たと
え異世界でも立派にやっていけるだけの器量を保っていられたはずである。

 ――それに自分だって、狂ってない、とは言い切れない。
 しょせんおのれも、PLを犠牲にしてこちらに来た時点で、他の連中と大差はない。
 ただ目的を果たすため、より詳細な研究データを集めるのにやむをえず、この役を引き
受けているだけだ。

「すみません、僕、そろそろ戻ります。向こうにも顔を出さないとまずいし」
 ショウは身体を起こした。
「もう行くのかい?」
 つまらなそうな顔をする青年に「あなたもヒマじゃないでしょう」と言い捨てて、さっ
さとドアに向かう。
「――八城翔君」
 振り返ると、青年はやはり人の良さそうな、少し子供っぽいほどの笑顔で手を振った。
「君の愛しい彼女にヨロシク」
「…………」
 こいつのPLには一度会ってみたいものだ。

   ◇
 

78 :Stage.9.5 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:22:44 ID:OQlcC0ua0

 フロントでギターケースを受け取り、ビルの前ですぐタクシーを拾った。どうせ経費は
すべてあの青年が持つので、遠慮せず楽な方法を使う。
 込み入った中心街を抜け、20分ほどで自分の今の家に着いた。庭付きの一戸建て、こ
のあたりでは割と広い方だろうか。
 ショウが戻ると、やや年かさの母親が満面の笑みで出迎えた。
「おかえりなさい、ショウちゃん。今日は早かったのね。お昼はどうする?」
「さっき軽く食べたから、もう少しあとでいいよ」
 なかなか面倒見のいい、気の優しい親だ。春休みにも関わらず毎日のように出かけてい
ることや、いつも持ち歩いているギターケースについては、大学のサークル活動だと説明
している。中身を知ったら卒倒するに違いない。
「ちょっと疲れたんだ、少し寝るね」
「あら大丈夫なの? 無理しちゃだめよ」
 心配そうにする母親をなだめつつ、ショウは2階の自室に入った。

 ついこの間まではアニメの美少女グッズが山と積まれた最悪の部屋だったが、ショウは
ろくに中身を確認せずに一掃した。万が一、大切な彼女をおもちゃにしたような書籍など
出ようものなら、その場でPLを始末してしまいそうだったからだ。
 ヤシロ・ショウ。 
 最初の旅の頃からずっと相手の生活を夢で追っていたが、どうしようもないクズだった。
入れ替わり、少しいい目を見させてやっただけで、肉親も生活も捨てた無責任な人間だ。
 最近はまた帰りたいと嘆いているらしいが――いまさら遅い。

 まずテレビの電源をつける。音量はゼロにしている。テレビには電源が入りっぱなしの
ゲーム機が接続されており、とあるゲームが無音で始まった。
 自分が生まれ育ち、旅をし……そして一度は救った世界が、そこにある。
 ショウは画面の中が無人であることを確認すると、部屋のドアに鍵を掛けた。
 ピアスなどのアクセサリーを外し、服もすべて脱いで準備をする。食事を取ったのは3
時間以上も前なので、胃の中に未消化物も残っていないはずだ。

【自分以外のいっさいの持ち込み・持ち出しができない】
 

79 :Stage.9.5 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:24:38 ID:OQlcC0ua0

 それが、自分たちが未だに突破できない障壁であり、最大の研究テーマだ。
 唯一の例外は携帯電話である。ショウはいつものアドレスに向け、空メールを送信した。
 少年の身体の輪郭がぶれ、その姿がメールの送信と共に消えていく。


 ――次に目を開けると、視界が一転していた。
 木調に統一された簡素な室内。長年過ごしてきた、本当の自分の部屋だ。
 衣装ダンスから服を引っ張り出して袖に腕を通す。生地の肌触りなどは現実の物の方が
いいが、こちらの格好の方が落ち着く。黄色のチュニックのポケットに携帯を入れ、ブー
ツを履いて部屋を出ると、鉢合わせた部下がサッと敬礼した。
 自分よりかなり年配の兵士だが、年若い上司によく仕えてくれている。ショウも敬礼を
返し、長い廊下を渡って王宮に入った。

 いくつも階段を上り、最上階のテラスに出たところで、ようやく目当ての姿を発見した。
 この城の王女にして、幼なじみ。そして、永遠の忠誠を誓った愛しい人。
「あまり風に当たりますと、お身体に障りますよ」
 声をかけると、艶やかな黒髪を風に遊ばせていた少女が振り返った。少年の姿を認めて
花のような笑顔を浮かべる。

「――エイト!」

 駆け寄ってきた少女を抱きとめて、彼も微笑んだ。
「ただいま戻りました、ミーティア姫」
 現実では誰にも見せない、心から湧き出す純粋な笑み。
 それが八城翔の名前と人生を奪った少年の――

 トロデーン国近衛隊長・ラグエイト=ハデックの素顔だった。




80 :Stage.9.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:32:34 ID:0HfV2Tjp0
本日はここまでです。
本当はアサルトライフルかショットガンを持たせたかったのですが、
それだと麻酔弾が使えないのでライフルで我慢。
レミントンM700シリーズに代表される、命中精度の高いボルトアクション方式です。
っていうか、ますますDQ離れしてますね……(^_^;

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 19:11:38 ID:u5b1NhJo0
乙です。

もしかして火器持ち込もうとしてるんだろうか…

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 20:09:54 ID:H0ghTqO00
>>80
乙でした
かなりwktkな展開なんだけど
ここらでちょろっとまとめかあらすじが必要な気がしてきた
個人的には十分付いてこれてるんだけどさ
このスレ始まって以来の複雑な話だと思うんで(もちろんいい意味で)

83 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 23:24:11 ID:U+E6ti/c0
乙です。だんだん話が大きくなってきたなぁ…。
完全に移行しちゃうと、現実とゲームの間を自由に行き来できるのか。
エイトのPLはいったいどうなってるんだろう…(((゚Д゚;)))

84 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 00:02:02 ID:sEJiGKSP0
未消化物があった場合・・・(阿鼻叫喚

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 01:55:40 ID:lKZU9rDxO
R氏乙。
エイトも微妙な位置にいるな。善とも悪とも言いきれない感じだ。
しかしあの無表情でライフル振り回してるの想像すると笑えるw

>>82
なんか前の話の後書きで、まとめやるみたいなことR氏本人が言ってたよ。

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 03:15:50 ID:oW1JLbvB0
乙!今回も楽しく読ませて頂きました。
V主人公がラスボスっぽいですねぇ。
いや〜次回も楽しみです。

87 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:39:24 ID:5D4V6BEj0
おはようございます。
早朝に第七話前半投下です。

LOAD DATA 第六話後編 >>56-61

88 :剣魂一擲【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:40:37 ID:5D4V6BEj0
天空の剣

嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
その白金の刀身は、一切の穢れを祓うかの様に荘厳な光を放ち、
柄に装飾された竜神のレリーフは、一切の不浄を退けるかの様に鋭く瞳を輝かせる。

天空の剣、鎧、兜、盾が本当の所持者…伝説の勇者の元に揃った時、
この世界と魔界との境界が切り開かれる。

…この世界と魔界との境界を切り開く力…
それは、別世界との境界を切り開く力…
もしかして…その力があれば、俺も元の世界に帰れるんじゃ…

「父さんは…根拠のない迷信の類いは信じない人だった。」
剣と共に安置されていた手紙…
サトチーの父親…即ち、パパスの遺した手紙に目を通していたサトチーが口を開く。

それはつまり…その伝説の勇者の話は…

「手紙の内容は真実だと思う。勇者の話も、天空の武具の話も、母さんの話も…」
手紙に記されていた内容は、伝説の勇者の話以外にもう一つ。
魔界に捕われているというサトチーの母親の話。
サトチーの母親を魔界から救出するには、魔界に渡れる伝説の勇者の力が必要。

「僕は世界を廻って天空の武具を揃える。そして、必ず母さんを助ける。」
10年の時を跨いで受け継がれた父の遺志。
己の決意を口にするサトチーの目は、あの剣のレリーフの目よりも輝いている。

89 :剣魂一擲【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:41:45 ID:5D4V6BEj0
天空の剣を手にした俺達は、サンタローズを後にしラインハットに向かう。

旅に出ようにも、ラインハット王家の勅命によって、港は封鎖されている。
ただの旅人であるサトチーが開港を嘆願するよりも、王家の人間が間に入ったほうが
話も通じやすいだろうというヘンリーの意見。

ただ一つ、気になる事。
巷では王家の評判はすこぶる悪い。
現に、サンタローズの惨状を目の当たりにした後ではその噂も真実味を増す一方。

「ま…王家で何かおかしなことが起こってても、俺様の凱旋で元に戻るだろうさ。」
ヘンリーの口調はいつも通り軽いが、その表情はどことなく曇っている。

王家に異変が起こっている事を確信しているんだろうな。

思考を邪魔されるのは、いつも同じシチュエーション。
ギャアギャアと、耳障りな声を上げて迫り来るモンスター達。
「おちおち話してもいられねえな…ピッキーの群れか。」
「じゃあ、さっきと同じくヘンリーが後方支援。僕とイサミとブラウンが前線。」
「了解。間違っても俺に魔法を当てるなよ。」
「ガンガン飛ばしていくからな。イオ!」

もうすっかり日常となった光景。
ヘンリーの放つ魔法の弾幕で怯んだ相手に前線の俺達三人が踊りかかる。

サトチーのチェーンクロスが、ピッキーの丸っこい体に絡みつき叩き伏せる。
ブラウンのフルスイングが、鳥型モンスターを遥か彼方までかっ飛ばす。
そして俺の剣が振るわれた先では、赤い液体と極彩色の羽が舞う。

一つ違うのは、俺の武器。

俺の手に握られているのは『天空の剣』

90 :剣魂一擲【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:44:41 ID:5D4V6BEj0
まあ、俺の存在自体がこっちではバグなんだろうなあ。

その剣は、それ自体が意思を持ち、勇者以外の者には持ち上げる事すら叶わないと言う。
事実、安置されていた剣を手にしたサトチーは、持ち上げるのが精一杯と言った様子で、
それを構えて振り回す事など、傍目から見ても不可能である事は明らか。

「参ったな。まるで鉄の塊を持ち上げてるみたいだ。」
カラン…と、まるで重さを感じさせない音をたて、剣が地に置かれる。
どちらかと言えば小振りで薄刃の剣は、怪力のブラウンですら持ち上げるのが辛そうだ。

「さて、こんなに重いんじゃあ持ち運ぶのも一苦労だな。」
「俺が運ぶよ。サトチー達が自由に動けなくなったら大問題だからな。」

情けない話だが、戦闘スキルに於いては俺の存在はパーティーの中で一歩劣る。
肉弾戦に優れるブラウン。魔法戦に優れるヘンリー。総合力で優れるサトチー。
この三名のいずれかが、行動を制限される事は戦力的に大きな損失だろう。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな。本当に重いから気を付けてね。」

腰をやらないように、しっかりと足を地に付けて柄を両手で強く握る。

持ち上がらなかったとか…恥ずかしすぎるよな。気合入れねえと…

深呼吸を一回…二回…そして、一気に持ち上げる。
「おりゃああ!!……でええぇぇぇぇ!?」

あっさりと跳ね上げられた剣は、クルクルと回転しながら天井まで跳ね上がり、
必要以上に力を込めていた俺は、その反動で後ろに思いきりスッ転んだ。

( ゚д゚)<ポカーン ( ゚д゚)<ポカーン ↓ブラウン

一同絶句…

91 :剣魂一擲【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:45:36 ID:5D4V6BEj0
「いやあ、あの時は驚いたね。まさかイサミが天空の勇者?…って。」
馬車の前でサトチーがクスクスと思い出し笑いを浮かべる。

きっと、俺の派手な転びっぷりも笑いに一役かってるんだろうな…orz

「イサミはこの世界の人間じゃないから、この世界の伝承に当てはまらない…だっけ?
 ずりいよなあ。つい最近まで剣術のケの字も知らなかったクセにさあ。」
「まあ、おかげで苦労なくこの剣を運べてるんだ。結果オーライじゃね?」

この世界の流れから外れた存在…バグ…特異点…
あっちの世界の法則がこっちの世界で通じないように、
こっちの世界の法則が俺自身に通じない事もあるんだな。

「…ダガ…イレギュラーは常に良イ結果をもたラス物でハなイ…」
「どういう意味だい?スミスの旦那。」
馬車の中から呟いたのはサンタローズで知り合った腐った死体。
『恋人にもう一目会うために旅をしたい』…と、同行を願い出てきた。

「…例えバ…私ノ存在…死と言ウ概念から外れタ…イレギュラー…
 死ト言う…概念を外レ…死ヲ超越シた代償…ガ…この肉体ダ…
 …概念…法則…逸レる事…常に影ガ…付きマトう…」
「つまり、イサミが天空の剣を使いこなせた事で逆に不幸が起こるってのかい?
 スミスの旦那。死体だからって、辛気臭い話は勘弁してくれや。」
「…イサミ…個人…それガ必然デ…アレ…ば…問題ハ…ないの…ダガ…」

俺が伝説の剣を振るう…必然…であるわけないよな。
それは、概念の外。即ち、バグ技。
バグ技にはデメリットが存在する…これは当然。

それっきりスミスは黙り込み、俺達まで無言になった。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 06:35:02 ID:iTkypMcQO
支援

93 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 07:14:09 ID:5D4V6BEj0
第七話前半部分投下完了です。

仲間モンスターの選択に悩む今日この頃。
人気の仲間モンスターで固めるか、マイナー路線で行くか…

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 07:40:45 ID:ha9HNS7j0
使える特技で決めるのもいんじゃね?(戦闘描写的な意味で)

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 11:27:37 ID:psm2A7iz0
天空の剣装備可、かっこえーーー。
だけど、バグってなんだろう。まさかプーーーーという音とともにいきなりフリーズするとか(滝汗
気になる。

96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 13:36:42 ID:AtK5IYnJ0
え?勇者でてきたらどうすんだって思ったら
なるほどバグで天空の剣装備できたのか

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 22:44:39 ID:+tBDBbaD0
>>お二方とも
乙であります。

軽く個別に
>>R氏(って呼んでおk?)
連想させてくれる書き方は大好きだわw
確かにまとめ欲しくなってきたかも
いまんとこでギリっすw

>>GEMA氏(ほっほっほw)
スミスいたんだw
ここで天空装備できたらそらスタメンだわなwww
ポカーンワロタw

モンスターは愛着があればなんでもおkじゃね

98 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:05:30 ID:2csESLk60
第七話後半投下
…の前に、仲間モンスターについての助言ありがとうございます。

全種類はさすがに無理ですが、話の中で出来るだけ色んなモンスターを
活躍させられるように頑張ります。

スライムを仲間にしそびれた異端作品orz。どうぞお楽しみください。
では投下です。

99 :剣魂一擲【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:06:26 ID:2csESLk60
星すら見えない夜の森の中、焚き火の前に座り込む人の姿。
赤々と燃える炎によって、血色の悪い顔色を橙色に照らされているスミス。

夜営時の見張りと火の管理は彼の役割。
アンデッドである彼の体は睡眠という物を欲しない。
日中は太陽の光を嫌うアンデッドの体質ゆえに、馬車から滅多に姿を出さないが、
日光の届かない場所や夜間の戦闘では、そのタフさとパワーが非常に頼りになる。

「…起きてイタ…のか?」
「ああ…ちょっと目が冴えちまってね。」
彼の目は火を見つめたまま動かない。

「…夕飯のスープの残リ…温メてあル…飲ンで休メ…」
「サンキュ。」
夕食後にスープをわざわざ火に当てて温めておく様な事は普通はしない。

俺が眠れないでいるの、最初から気付いてたんだな。

節くれだった手で渡されたスープを受け取り、少しづつ喉に流し込む。
銅製のカップに注がれたスープは、熱過ぎず、ぬる過ぎずの丁度良い温度。
遠火で温めてあったのだろう。愚鈍そうにな外見に似合わぬ細やかな気配り。

お互いに無言のまま、静かな時間が流れる。
聞こえるのは焚き木のはぜる音と、俺がスープをすする音。


「…私ノ言葉…気にしテ…いるノダろう?」
相変わらず目は火に向けたまま、感情の読めない声でポツリと呟くスミスの言葉に、
カップを傾けていた俺の手がピタリと止まる。

俺の沈黙を肯定と取ったのだろう、淡々と無感情な言葉が続けられる。

100 :剣魂一擲【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:08:06 ID:2csESLk60
「私ハ…私自身に定めラれタ…生命ノ概念カラ…逸れタ…存在…
 ソノ代償…私自身に降リかカり…この体ト言う咎(トガ)ヲ背負っタ…
 …この世界ノ全てノ概念カラ…逸レた…存在…イレギュラー…
 ソノ…代償…咎が向かう先…恐ラく…世界…」

スミスが言う『この世界のイレギュラー』とは、俺の存在だろう。
言いづらい事をアッサリと言ってくれるな…

スミス個人に発生したバグの代償が、スミス本人に降りかかったように、
この世界そのものに発生したバグの代償は、恐らくこの世界全てに向かう。
俺の存在が世界を狂わせる…

「イサミが振ルう…天空の剣…私ノ目にハ…神性ヲ全く感じナい…
 剣自体ハ素晴ラしい逸品ダガ…それダけノ剣に見えル…
 剣ノ…真の所有者デないカラ?…それとモ…世界ガ…」

気付いていた…実際に剣を振るう俺が一番に。
あれほど荘厳に輝いていたのに、今では神性を感じさせない伝説の剣…
それは、俺が剣の真の所有者じゃないから?
それとも…

「…それとモ…世界ガ…伝説が…イレギュラーを起こし始めテいる…?」

ガツンと、頭の奥のほうを殴られたような感覚。

俺の存在が、世界を狂わし始めている…

「そンな顔ヲするナ…マダ…推測ニ過ぎナい…」

あまりに重すぎる最悪の推測…そうだ、まだ推測の段階だ…
でも、どんなに楽観視しようとしても心の中が押し込まれて苦しくなる。

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