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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
26 :
風前風樹の嘆【9】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/18(木) 00:16:53 ID:/Kcy+Dv30
「なあ、サトチー?この洞窟には強いモンスターはいない…そう言ったよな?」
「うん。確かに言ったよ。」
「だったら何で…っと、また来やがった!」
「撤回するよ。ここのモンスターは強い。皆、気を抜かないで。」
パパスさんの遺した物を取りに向かったのは、サンタローズの洞窟。
サトチーは6歳の頃にここを攻略した…そう聞いていた。
だから、安心していた…否、油断していた。
ここのモンスターは、スライムやブラウニーとは比べ物に(ゴン!)
…訂正。ここのモンスターのレベルは、スライムやガスミンクとは比べ物にならない。
毒を仕込んだ槍を振り回すガイコツ兵。スカラで仲間を強化する土偶戦士。
前面に気を取られていると、背後からともしび小僧のメラが襲う。
厄介なのはガメゴン。
巨大な亀のモンスターが背負う強固な甲羅は、銅の剣では文字通り刃が立たない。
「…っ!イオ!!」
洞窟内の空気が圧縮され、小規模な爆発を起こす。
サトチーの魔力を回復に回さなければならない現状では、
ヘンリーの放つ爆発魔法が、ガメゴンに対抗できる唯一の手段だ。
「ふひゅー…こいつはしんどいわ。」
事も無げに軽く話すヘンリーの息は荒い。
休みなく攻撃魔法を放つヘンリーの疲労は相当だろう。
27 :
風前風樹の嘆【10】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/18(木) 00:19:27 ID:/Kcy+Dv30
「どうする?今なら引き返して体勢を整えるって手段も取れるけど?」
「そうだなあ。ヘンリーの魔力が尽きる前に一度戻るのも考える必要があるかもな。」
サトチーが提案する一時撤退。
戦略的撤退とも言える提案だが、ヘンリーは頑として首を縦に振らない。
「ここまで来て引き返す?冗談じゃない。パパスさんの形見はこの先なんだろ?
親分として絶対サトチーをそこまで送り届けてやるさ。
イオの10発や100発で根を上げるヘンリー様じゃねえ!」
ダンッ!と地面を打ち鳴らし、ヘンリーが啖呵を切る。
あまりに芝居がかった仕草に、俺とサトチーの口からプッと笑いが漏れる。
「わかった。でも絶対に無理はしないこと。いいね?」
「ヤバくなったら言うさ。大事な子分達の命は俺様の魔力が頼りなんだからな。」
「頼りにしてるぜ。親分。」
ヘンリーが、任せとけ!…と、胸を叩く。
「じゃあ、作戦変更だ。がむしゃらに進んでも途中で力尽きる。
ヘンリーの魔力は対ガメゴン用に温存。それ以外の相手はイサミとブラウンが前線。
僕がチェーンクロスで相手を足止めするから、その隙に各個撃破。作戦はこれで。」
「了解。二人共、援護は任せたからな。」
「ヘッヘッヘ…子分が頑張ってるうちに親分は休ませてもらうぜ。」
「…静かに…」
サトチーの顔が強張り、武器を構える。
辺りに漂う腐臭。
地の底から響くような無気味な声。
『…オォオ…』
「…どうやら、そう簡単には休ませてくれないみたいだね。」
28 :
風前風樹の嘆【11】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/18(木) 00:20:34 ID:/Kcy+Dv30
地面が盛り上がり、人の姿が現れる。
いや、人の形をしているのはソレの後に伸びる影だけ。
朽ち果て、ボロボロの衣服…それよりもなお崩れ落ちた皮膚。
どんよりと淀んだ眼球…そこに意思の色はない。
筋肉が弛緩して、開いたままの口からはドブ色の体液が流れ落ちる。
辺りに漂っていた腐臭がより強くなり、鼻腔の奥のほうをチリチリと突き刺す。
「腐った死体…」
サトチーが口にしたのは、まさに目の前のコレそのものを体現した名前。
『…オオォォォオオォーー』
爪が剥がれ、内部組織が剥き出しの腕が振り下ろされる。
…が、動きは遅い。
剣で受け止めて受け流す。ガラ空きの側面に一撃を…
ドガッ!!
受け止めた…が、重い…受け流せない…こんなボロボロの体のくせに…
「イサミ離れろ!吹き飛べ化け物!!イ…」
「使うな!イサミまで巻き込む!!」
背後でイオを放とうとするヘンリーをサトチーが一喝。ヘンリーの動きが止まる。
サトチーは鞭を構えたまま動けない。この距離では俺にまで鞭が当たるから。
「イサミ!腐った死体相手に真っ向勝負は危険だ。一旦下がれ!!」
サトチーが大声を上げる…が、俺も動けない。
一歩でも後退すれば、こいつの腕が容赦なく俺の体に食い込む。
―!?!!―
ベゴン!と、嫌な音がして腐った死体が体勢を大きく崩す。
29 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/18(木) 00:21:07 ID:CvBUJuQE0
支援
30 :
風前風樹の嘆【12】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/18(木) 00:22:13 ID:/Kcy+Dv30
ブラウンのハンマーが腐った死体の後頭部にその頭部をめり込ませている。
チャンス!
上から押さえつけていた力が緩んだ隙に剣を振り上げ、両腕を跳ね上げる。
さらに、銅の剣をボロボロの胴体に叩き込む。
腐敗臭を放つ肉片と体液を撒き散らし、腐った死体は文字通り崩れるように倒れた。
「ふぅ…。」
動かなくなった腐った死体を確認し、銅の剣を背中の鞘に戻す。
「ヒヤヒヤさせやがって。今回はブラウンのナイスアシストだな。」
―☆♪☆!―
「イサミもお疲れ様。動けるかい?」
「ああ、ブラウンのお陰で助かった。」
こんなヤバイモンスターが集団で出てきたらたまらないな…
何がヤバイって、あんなのが集団で出た時の匂い…想像だけでヤバイだろ…
チラッと後ろを振り返り、動かない姿を確認する。
南無南無…安らかに成仏しろよ。
「あのモンスターが気になるのかい?」
サトチーが歩きながら俺に尋ねる。
「気になるって言うか…アレ…人なのか?」
「昔、父さんから聞いたんだけど…腐った死体は元は普通の人間なんだって。」
なんとなしに問い掛けた俺の疑問に、サトチーが答える。
31 :
風前風樹の嘆【13】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/18(木) 00:22:55 ID:/Kcy+Dv30
「未練を残して倒れた死体が、邪悪な魔力によって蘇った存在。それが腐った死体。
死体だから、痛みも疲れも忘れて生きた人間を襲い続けるんだ。
それこそ、休む事も眠る事もなく体が動く限り…ね。
彼等が安息を得るのは、人間との戦いに敗れて灰に還った時だけ…
だから、本当は安息を求めて彷徨っているんじゃないかな。」
「…で、人間を手当たり次第襲うってか?冗談じゃねえって。
死体は死体らしく一生土の中で眠ってろってんだ…一生は終わっちまってるけど。」
後味悪りぃー…
モンスターを倒すたびに感じていたけど…元人間かあ…
魔力によって安息を奪われた元人間…
安息を得るために望まぬ戦いを続ける元人間…
自分を灰に還す人間を求めて彷徨い続ける元人間…
やるせねえな…
アイツを灰に還してやった事が弔いになるのかな?
…灰に……還してやった?
「うわあぁぁっ!!」
気付いた時には既に遅く、背後から聞こえるヘンリーの悲鳴。
しまった…まだ終わっていなかった…
アイツはまだ…灰に還っていない!!
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