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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

166 : ◆xl1KPT9CWI :2007/10/31(水) 01:40:15 ID:QkZkkLvU0
地下通路を抜けた先。ラインハット城の中庭は驚くほど静かだ。
無駄な戦闘は出来るだけ避け、見張りの衛兵を数名ぶっ飛ばして城内へ侵入。
そのような作戦を立てていたのだが、見張りどころか人の話し声すら聞こえない。

「安心しきってるのかもな。王家の有力者以外は地下通路の事を知らない筈だし。」

予想外に容易に進入できた事に安堵してはいるが、周囲の警戒は怠らない。
地下牢にモンスターを放つような国家だ、城内だろうが油断は出来ない。

「ヘンリー。アレ…何だい?」
周囲の様子を注意深く探っていたサトチーが指差す方向には、妙な形状の金属塊。
丸みを帯びた鎧のような、人型のような…何かが数体。
無残に焼け焦げている物、痛々しい貫通痕を残す物、バッサリと切断された物。
残された全てが酷く損傷しており、その姿からは本来の姿を想像できないが、
胴体(?)の部分から伸びた、弱々しいまでに細い手足は昆虫のそれを連想させ、
千切れた手足の内部からは、多数の無機質な繊維状のものが覗く。

「何だコリャ?人形…にしちゃ変な形だな。」
「鎧にも見えるけど、こんな鎧に合う体型の人間なんていないよねえ。」

その沈黙すらも不気味ではあるが、動かないソレに対して警戒心が緩んだのか、
無防備にペタペタと触りながら正体を模索する。
「…コレが何かはわからないけど、コレをここまで壊すのは普通じゃないね。」

硬質の金属で出来たコレを、破壊し尽くした存在…明らかに人間技じゃない。

「なあイサミ、昨日の夜に聞いた音…覚えてるだろ?」

ヘンリーの言葉を聞いた途端、背中を冷たい汗が伝ったのがわかった。
正体不明のオブジェ…正体不明の破壊音…正体不明の破壊者…
自分が恐怖を覚えている対象がわからない…
きっと、何もわからない事が恐怖なのだろう。

167 :入り旅人に出女【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:43:58 ID:QkZkkLvU0
暫くの間、触ってみたり、ひっくり返してみたり、ハンマーで殴ったりしていたが、
中庭のアレについては、今の段階では何もわからない。
わからない物の正体を探るよりも、今の俺達が優先すべきはデールに会う事。
中庭に繋がる勝手口から城内へ侵入し、デールがいるであろう謁見の間を目指す。

「ストップ。」
先頭を走るヘンリーが大きな扉の前で立ち止まり、後に続く俺達の足を止める。

「大広間の中から大勢の人の気配がする。」
渡り廊下の突き当たり。謁見の間から階段を下りた真下に位置する大広間。
豪華な装飾が施された巨大な扉は閉じられ、中の様子を窺い知る事は出来ないが、
ヘンリーの言う通り、扉の向こう側からざわめきが聞き取れる。

ほんの少しの扉の隙間から中を覗き込むと、多数の兵士の姿が見える。
「なるほどねえ。ここに城の兵士が集まってたから、警備が手薄だったのか。」
「城下守衛兵に王家近衛兵…番兵まで集まってるな。一体、何が…」
「静かに。何か始まるみたいだ。」

ざわついていた扉の向こうが一瞬で静まり返り、空気が緊迫した物に変わる。
コツ…コツ…と、張り詰めた静寂が支配する広間の中に己の足音を大きく響かせ、
大広間と上階とを繋ぐ階段をゆっくりと下りてきた男。
女性の様に艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い眼光が印象的だ。

「…あれは…デール…」

…あの人がヘンリーの弟、現ラインハット王デールか…イメージとは随分違うな。

ヘンリーの口から聞いていたデールは、優しい性格だが気弱で鈍臭い面もある…
いわゆる、イイ人なんだけど頼りない彼…って感じのイメージだったのだが、
今、姿を現したデールから感じられるのは、猛禽類のような油断のない目と、
王…と言うよりも、暴君のような威風堂々とした立ち振る舞い。
事前情報が間違っているのではと錯覚させる、冷たい威圧感を感じさせる。

168 :入り旅人に出女【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:44:57 ID:QkZkkLvU0
恰幅の良い貴族風の男―大臣だろうか?―が、最敬礼を持って王を演説台へと導く。

「我がラインハット軍は、近日中に商業都市オラクルベリーを侵攻・制圧する。」

女性のような艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い…冷たい目で広間を見渡す。
王の言葉に、若干どよめく兵達…それを一通り眺め、さも満足そうに手を上げる。

ぴたり…と、元の静寂を取り戻す広間。王の演説は続く。

「自治都市であるオラクルベリーを落とし、それを拠点としてポートセルミに侵攻。
 西方の物資さえ手にすれば、テルパドールやグランバニアの軍も恐るに足らず。
 北方、西方、南方、東方、全ての大陸を制覇し、我がラインハット王国は未来永劫、
 世界の頂点に君臨する国になる!諸君等はその輝かしい歴史の目撃者となるのだ!」

熱を帯びたデールの言葉に、広間の中に歓声が挙がる。
城の中、全てが狂ってる…侵攻…侵略…制圧…誰もそれをおかしいとは思わないのか?

「デールの奴、マジで言ってるのか…」
世界の制圧…それを口にしたのは、紛れもないデール本人。
眉間にしわを寄せたまま、ヘンリーの手が鋼の剣に掛けられる。

「待つんだ。今、騒ぎを起こすのはまずい。」
今にも扉を蹴り飛ばして広間に乱入しそうなヘンリーを、サトチーが押し留める。

―元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る―
俺の頭の中でリフレインするヘンリーの言葉。

「ところで…」
声量は大きくないが、歓声を突き破って聞こえる王の声。
先ほどの熱が冷めたように、底冷えのする冷たい声。

「扉の外に来客のようだ。丁重にもてなせ。」

169 :入り旅人に出女【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:46:42 ID:QkZkkLvU0
!!バレてる!?

頭が認知した時には既に広間の扉は開け放たれ、槍を構えた兵達に取り囲まれていた。

「参ったね…まさか、最初からバレてるなんて思わなかったよ。」
大人しく手を上げ、無抵抗の意思を示すサトチー。
さすがに、多勢に無勢。俺も仕方なくそれに従う。(ちなみにブラウンも)

「先日、オラクルベリーに浸入した密偵から―南の修道院に怪しい三人組が漂着した―
 そう連絡が入りましてね。調べてみたら、ヘンリー兄さんの可能性が大。
 本当にヘンリー兄さんだったら、城門が閉ざされていても王家の地下通路を通って、
 城の中に侵入してくるはず…まあ、僕の予想通りです。」

クスクスと笑いながら愉快そうに話すデール。
対峙するヘンリーの目は、明らかな敵意を放ち続けている。

「デール…さっきの話は本気なのか?」

剣の柄に手を掛けたまま問い掛けるヘンリー。それをデールは余裕の表情で眺める。

「よく聞いていなかったみたいですね。僕は本気ですよ。」

あっさりと肯定するデール。その言葉を合図に、ヘンリーが鋼の剣を鞘から抜き放ち
…かけた所で、その先の動作は再度サトチーによって阻止される。

「賢明ですね。兄さんが剣を抜いていたら、こちらにも多少の犠牲は出たでしょうが、
 僕の所に刃が届く前に、そちらは全員串刺しになっていましたよ。」

デールは相変わらず冷たい笑みを浮かべたまま、懐から取り出した葉巻を加え、
横に控える大臣に手を差し出す。
大臣から手渡されたのは、豪華な細工が施された小さな金色の…

170 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 01:47:28 ID:s+up9XRu0
通りがかり支援

171 :入り旅人に出女【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:51:29 ID:QkZkkLvU0
「どうです?貴方達もラインハット軍に協力する気はありませんか?
 今なら、それなりのポストは用意できますが…」

金色の物体から迸る小さな炎を葉巻に点け、細く煙を吐き出す若い王。


…え?


アレって…もしかして…

「…っざけるなあっ!!」
怒りが理性のタガを弾き飛ばし、ヘンリーが剣を抜き放つ。

「抜きましたね…残念です。」
笑みの消えた表情…大臣が手にした灰皿に葉巻を押し付け、王が手を上げる。
手が振り下ろされた時、広間内の全ての兵が俺達に槍を突き出すのだろう。
そして、その瞬間は思ったよりもあっさりと…

「…やれ。」

無常な合図に、広間を支配する怒号…雄叫び…
一瞬視界から消え、その一瞬後には同時に繰り出される無数の先端…
剣を構える暇もない…死を覚悟する暇さえも…
誰かに肩を掴まれる…視界が真っ白になる…

思わず、目を瞑る…

…が、その瞬間はなかなかやって来ない。


そぉーっと目を開けると、ラインハット城下町の光景が目に入ってきた。

172 :入り旅人に出女【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:52:14 ID:QkZkkLvU0
「危なかったね。キメラの翼を使うタイミングが遅れていたら今頃は…」
あの瞬間。サトチーが宙に投げたキメラの翼は、俺達を城下町の外れまで転送した。

そうだ…ヘンリーは?
弟の心変わりを目の当たりにしたんだ。正気でいられる筈が…

「何をボーっとしてるんだ?早くここを離れないと追っ手が来るぞ。」
俺の心配をよそに、ヘンリーは御者台に上がり、馬を繰る手綱を握っていた。

…あれ?意外と冷静。

「デールはオラクルベリーに侵攻すると言っていた。そして修道院も…
 今は修道院のみんなを安全な所へ非難させるのが先決だろ?」
言いながらヘンリーが手綱をグイッと引き、パトリシアが軽くいななく。

「ほら。イサミも早く乗り込まないと置いて行かれるよ。」
サトチーに促され、慌てて馬車に乗り込むと同時に全速力で走り出す馬車。

逃げるわけじゃない。守るのが俺達の役目。俺達はその為に戦う。

馬車に揺られながら、ふと、御者台に乗るヘンリーに目をやる。
荷台からは、手綱を操るヘンリーの顔は見えない。けど、その表情は想像できる。

ヘンリーは、俺達に背を向けてさめざめと泣くような弱い男じゃない。

「…な?ブラウン?」
よくわからないという表情を浮かべるブラウンの頭を軽く撫でてやる。


夕暮れの道を馬車が走る。

守る物の元へと急ぐ男達を乗せる馬車は、逢魔ヶ時の暗がりの中で一層輝いて見えた。

173 :入り旅人に出女【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:52:49 ID:QkZkkLvU0
          ◇           ◇

日没の夕闇に溶け込むラインハット城、謁見の間。
玉座に座らせた女性の膝枕に寝そべる若い王と、その前に跪く大臣。

「申し訳ありません。追っ手を差し向けたのですが、取り逃がしました。」

深々と頭を下げる大臣を見下ろして、クスリと笑って見せるのは若い王。

「深追いせずともよい。どうせ、行き先はオラクルベリー南の修道院だろう。
 逃げ道を塞ぐ為に、わざわざ情報を与えてやったのだから…ねえ、ママ?」

ママと呼ばれたのは、王の頭をその膝に預ける女性。

その身を包むのは、華やかな紫のドレス。宝飾品の類は一切身に着けていない。
薄紫のベールに覆われた顔は、その目からしか表情を探る事は出来ないが、
鮮やかに彩色された長い爪が、王の柔らかな金髪をサラサラと撫でる。

恍惚の表情を浮かべながら、王が告げる。

「アレを放て…標的は、国賊ヘンリーとその一味。」



イサミ  LV 14
職業:異邦人
HP:56/71
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

174 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/31(水) 01:55:51 ID:QkZkkLvU0
支援ありがとうございます。
第八話はここまでです。

166でタイトルをコピペする場所をミスりました…
正しくは―入り旅人に出女【8】―です。

175 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 01:57:30 ID:s+up9XRu0
>>174

寝る前にいいもの読ませてもらったんだぜ
いよいよオリジナル展開だな
続き超期待

176 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 08:19:37 ID:0rVsNHlA0
先が楽しみすぎる展開に乙。
ジッポとか、どっから出たんだろうなあ。
微妙に本来の展開から外れていくのがワクワクして堪らん。

177 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 13:04:47 ID:TAW1c/M20
デール、こ、怖ぇぇーーー。
それと偽大后はやっぱりいるのね。

サトチー、GJ。
ライターも、謎の鎧の固まりも気になる。さまようよろいとかぢゃないのね。

178 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 13:48:34 ID:2sCfMMab0
投下乙です

一瞬ドロイド兵とかの類かと思ったけどよく考えたらDQ世界にはもっとふさわしいのがいるな。

179 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:07:46 ID:3WgSOctz0
乙!
wktkが止まらねぇ

180 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:28:33 ID:Jt/WFBF40
先が読めないオリジナル展開って燃えるなw

181 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:29:28 ID:dngXiD9/O
ちゃんと馬糞が売れるか実験する

182 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/31(水) 14:59:43 ID:i7/qFPQH0
>>181
馬糞販売業者乙

183 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:16:37 ID:kki4ihLe0
前回のあらすじ前スレ>>238-243

 ここで俺ですよ。
 キム皇との魔法特訓を無事に終え、色々と魔法を使えるようになりましたよ。
 基礎の魔法とはいえ短期間で色々覚えた俺ってばすごくね?
 きっと俺の中に眠っていた力がドラクエ世界に来たことで覚醒して(ry

 んで。俺達は今ラダトームの宿屋でまったりしている真っ只中。
 リムルダールまで行ったのになんで今更ラダトームなのかっつうと。
 初めてラダトームを訪れた時に渡された120Gと鍵と松明の「贈り物」を王に投げ返してきてやったわけだ。
 ファミコン神拳のおかげで金は1万以上あるし、鍵もジジイから安く買い叩いたし、ダンジョンを暗記している俺に松明は不要。
 ついでに王を罵倒してきた。

『まだ竜王を倒せぬのか?』
 返した後にこんなこと言われたらキレて当然でしょ。

『ヤバイ。ラルスヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。ラルスヤバイ。まずセコい。もうセコいなんてもんじゃない。ツルセコい(ry』
『ローラの下痢便を肛門から直飲みしたいやつ』
『このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?』
『120Gしか渡さないおとこのひとって…』
『そんな事より大臣よ、ちょいと聞いてくれよ。スレとあんま関係ないけどさ。このあいだ、初めてラルスに会ったんです。ラダトームの。そしたらなんか(ry』
『ローラはともかく、マナカナのどっちが好みか語ろうぜ!』
『ノアだけはガチ』

 ラルス涙目wwwざまあwwwwwwwwwwwwwwwwww

184 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:18:23 ID:kki4ihLe0
「ところで、お前の名前を聞いてなかったな」
 宿屋で作戦を立てた後、ミヤ王が改まって聞いてきた。
 つうか、今更聞くことじゃないよね。ファミコン神拳がおかしいの?名乗らない俺が悪いの?

「俺だよ」
「そういうことじゃなくてですね……」
「だから俺なんだよ」
「酔ってるんだすか?」
「酒ないのにどうやって酔うんだよ」
「名前を聞いてるのに俺だ俺だ言うからだ」

 意外に頭の悪い連中――とも言えないか。
 名前が名前だ、仕方ない。

「俺のフルネームは姓は江良井、名前は俺――って、この世界じゃオレ・エライか」
「……本名か?」
「本名だよ。戸籍謄本でも何でも見て確認してみろ」
「それはなんとも」
「冗談のような名前だな……いや、バカにしているつもりはないんだ」
「気にすんな。よく言われる」
「オレ・エロイとは……ドエロじゃないっすか」
「お前は死ねばいいと思うよ^^」

 我ながら凄い名だとは思うし、コンプレックスを持っていたのも確か。
 だが、名前をからかった教師をクラスのヤンキーがフルボッコにしてくれて以来、人の価値は名前で決まるもんじゃないと理解した。
 その出来事がきっかけでヤンキーとは仲良くなり、今でも付き合いがある。
 そもそも彼の結婚式に出るために俺は上京してきたんだ。
 なぜかアレフガルドにいるけど。
 人生って不思議ですね。

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/01(木) 22:20:46 ID:VJbQAcS/0
支援!

186 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:22:10 ID:kki4ihLe0
 翌日、キム皇のルーラでリムルダールに飛んだ。
 キム皇曰く、「あてが使うルーラは勇者ロトが使っていた時代に使われていたルーラだす」とのこと。
 FC版公式ガイドブックによると3勇者がゾーマを斃したのは400年以上前。嘘だと思うなら73ページを読んでくれ。
 400年も前なら使い手がいなくなったり、性質が変わっていても不思議じゃない。
 恐らくギラもいつの間にか変わっていったんだろう。
 俺の予想では今使われているギラはメラが変化していったものと推測する。
 今の俺には何の関係もないことだけど。

 リムルダールに飛んだ俺らが何をしているかと言うと。

「どこじゃキメラああああああああああああああああああああああああああああ!」
 リムルダール島に棲息するキメラをひたすら捕獲してますが何か?
 聖なる祠付近に出るキメラをひたすらに、ただただひたすらに捕獲。
 キメラ以外の魔物はどうでもいい。

「ウララー!!」
 ゴールドマンはアパッチの雄叫びで。

「お前はもう死んでいる」
 骸骨には北斗神拳で。

「オーロラサンダーアタック!」
 鉄のサソリは凍らせて。

「男は度胸!なんでもためしてみるのさ」
 リカントマムルは掘って。

 ま、そんなこんなでキメラだけを捕獲。
 携帯の時計では現在18時6分。キメラ捕獲開始したのが7時過ぎだったから11時間くらい?
 さすがに疲れたがその甲斐はあった。

「キメラ、計151匹ゲットだぜ!」

187 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:24:03 ID:kki4ihLe0
「お前らの中に人間の言葉を話せる奴いるか?」
「少ιナニ″レナナょら言舌せゑ」
         なんという聞きにくさ・・・
         一言聞いただけでイライラしてしまった
         この言葉は間違いなくギャル語
                
            / ̄\
           | ^o^ | 
            \_/

「お前らを殺さず、捕まえたのには理由がある。――お前らと取り引きしたい」
「耳又丶)弓|、キ?」
「そうだ。俺達四人を魔の島に運んでもらいたい。そうすればお前達キメラの命は保障する」
「正気τ″言っτレヽゑ@カゝ?」
「幸か不幸か、俺の頭は正気さ」
「断ゎっナニらー⊂″ぅナょゑ?」
「戦闘だな。この場にいるお前達を皆殺しにした後で別のキメラを探すだけさ。要求を呑むキメラが現れるまでな」
「……我々≠乂ラ一族レニ竜王様を裏七刀れー⊂言ぅ@カゝ?」
「逆に考えるんだ、『裏切ってもいいさ』と考えるんだ」

 黙るキメラ。
 それもそうだ。逆に考えられるわけないだろ、常考。

「今すぐに答えを聞かせろとは言わない。明朝、俺達は魔の島に一番近い場所にいる。その時に答えを聞かせてもらいたい」
「人質を取っておくだすか?」
「人質を取ったら脅迫になるからな。――俺が保障するキメラの命はキメラ一族の命全部ってことだけは言っておく」
「ー⊂″ぅレヽぅ⊇ー⊂ナニ″?」
「魔の島まで送った後、俺達は永遠にキメラを襲わない。もしも一人でもキメラを襲ったら俺がそいつを殺す。俺が襲っても同様だ」
「……日月朝、答ぇを出ξぅ」

188 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:25:53 ID:kki4ihLe0
 キメラ達との交渉後、さすがに疲れたのでリムルダールの宿屋でダラダラしている。
 ファミコン神拳の3人はどっか行った。

 ベッドの上でゴロゴロしていたわけだがゴロゴロも飽きた。
 かといって飲む気はないし。
 寝るには早い時間だし……久々にDSでもするか。つうか、充電大丈夫か?

「なんだこりゃ?」
 電源は入りっぱなしだった。
 いつから入ってたんだ?と思うよりも先に、俺はDSの画面に目を奪われていた。
 上画面には「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」と書かれていた。
 左側にドラゴン、中央に「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」の文字、右側に人のシルエット。
 この画像には見覚えがある。FF・ドラクエ板のスレのはずだ。どどどどういうこと?
 下画面にはドラクエのコマンド画面が6分割されて表示されている。

  ゲーム   じゅもん
  どうぐ    そうび
  つよさ    きろく

「はなすコマンドは必須だろ!」
 いや違う。ツッコミ入れてる場合じゃない。

 とりあえず「ゲーム」を選んでみる。
 ドラゴンクエストの序曲とともに上画面にドラクエ1のタイトル画面が表示される。ご丁寧にFC版だ。
 下画面にはアレフガルド全域の地図。
 光点が光っている場所と光っていない場所があるが、行ったことがあるか否かってことだろう。
 ラダトーム、ガライ、マイラ、沼地の洞窟、リムルダールだけには光点が光っているがそれ以外は光点すらない。
 試しにタッチペンでリムルダールをタッチしてみると、上画面のFC版のロゴが消えてリムルダールの地図と説明が表示される。
 武器屋防具屋で売っている物の種類や値段、宿屋の値段……随分と親切な設計だなオイ。

 ……何か引き返せないようなヤバい感じがビンビンなんだけど、どうするべえか。

189 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:28:43 ID:kki4ihLe0
 深く考えても仕方ないかということで続けて「じゅもん」を選択。ポチッとな。
 俺が唱えることのできる呪文の一覧が下画面に表示。上画面は使用MPと呪文の説明。お約束と言えばお約束だ。
 一つ気になるんだが、呪文のコマンドが存在する=DSLを使って呪文の使用もできる、でおk?
 試したいのは山々だが、また宿屋の中でギラを発動させるわけにもいかないので自重しておこう。
 ただでさえ宿屋の親父に断わられかけたんだ。 あの騒ぎのせいで。

 続きましては「どうぐ」のコマンド。
 上画面には選んだ道具の説明と個数。
 下画面は二分割されていて、左側の一番上には俺の名前と俺が持っている道具の一覧。
 右側一番上には「ふくろ」と書かれていて、道具欄には何も入っていない。

 ……ペンでドラッグ可能だよな。
 消えても嫌なので、とりあえずタバコを移動させてみる。タバコなら消えても惜しくないし。
 タバコを右にドラッグ――うおおおおおお!
 手元にあったタバコが消えたあああああああああああああ!
 こここ今度はタバコをひひひ左にドドドドラッグ――うぎゃああああああああ!いきなり手元に出たああああああ!!
 KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!111!

 すっかりお馴染みの「つよさ」は俺の強さが表示。
 FC版のステータスの他にかっこよさとかも出るんだけど……俺ってこんなにダメだったか。イケメンじゃないとは知ってたけどさ。

 んで、「きろく」だが。これが実にシンプルに怖い。
 上画面に『これまでの冒険を 冒険の書に記録しますか?』と表示。勿論答えは「はい」か「いいえ」の二択。
 この世界での死=現実世界での死、だとしたら記録すべきだろう。
 しかし記録することによって俺はこの世界に繋ぎとめられるのかもしれない。
 セーブすることでこの世界に縛られるのか、セーブしないことでやり直しがきかなくなるのか。


 俺は、どちらを選べばいいんだ――

190 :俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:32:27 ID:kki4ihLe0
「ゆうていが対竜王のことで話があるそうだ。ゆうていの部屋に来てくれ」
「はいはい、今行く」

『ピッ』

「……おい、今聞き慣れた音しなかったか? Aボタンを押したような音」
「何のことかわからないが、お前のケイタイとかいうやつの音じゃないのか?」
「……先言っててくれ」

 恐る恐るDSLの画面を見、混乱。その後にミヤ王への「はいはい」=「はい」だと理解。
 そして俺は叫んだ。

俺「おまえ何やってるんだDSL――ッ!」
DSL「最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアア!」




『冒険の書を記録しています 電源を切らないでください』




LV:11
HP:26/39  MP:27/27
E:炎の剣 E:Tシャツ+鎖かたびら E:皮の盾
呪文:ギラ ホイミ レミーラ ラリホー
特技:思い出す 舐めまわし 百裂舐め ぼけ つっこみ 雄叫び 口笛 寝る 穴掘り
    急所突き マヒャド斬り 
道具:携帯電話 網
DSL:聖水 100円ライター 臭い靴下 古びたトランクス アディダスのジャージ
    タバコ×7 鍵×18 曲がった釘×6

191 : ◆yeTK1cdmjo :2007/11/01(木) 22:37:29 ID:kki4ihLe0
投下終了です。
次回ラストバトルになります。

>>141
これまでありがとうございました。
本当にお疲れ様でした。

>>159
お疲れ様です。
早速投下予告スレを利用させていただきました。

192 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/01(木) 22:43:42 ID:Mt1NpCHwO
次回ラスト!?
楽しみだが早いような。
しかし名前、本当に俺だったのかww

193 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/02(金) 08:08:41 ID:dClhBlNT0
色々突っ込みどころが多すぎるが乙。特技増えすぎだろw
あとどうぐの反応に吹いた。確かに怖いよな、消えたり現れたりしたらw
ラストバトル、楽しみにしてます。あといいヤンキーが幸せになって俺歓喜。

勿論最終決戦であって最終回とは限らないんだよな!

194 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/02(金) 13:28:12 ID:ymkck0W10
セーブするかどうかの入力画面のまま、「はい」って発声してしまったから、セーブしたことになったのか・・・(wwwwwwwww
ギャル言葉のキメラ、萌へ〜。

195 :番外編 at 三日遅れ ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/03(土) 01:17:30 ID:YvlvMMRk0
※今回の内容は本編とは関係ありません。

「Trick or treat!」
「うぉ!モンスター!!…なんだイサミか、ビビらせるなよ。」
「山賊ウルフの格好なんかして何やってるんだい?」
「俺の世界にはハロウィンってのがあってさ。夜にオバケの衣装を着てビビらせて
 お菓子を貰うってお祭り。だから二人ともお菓子くれ。」
「なんだか性質の悪りぃ祭りだなあ…」
「まあ、そういう儀式なら驚いた僕達の負けだよ。はい、ヌーバキャラメル。」
「悔しいがビビった俺が悪いか。ホラ、エテポンゲキャンディーだ。持ってけ。」
「サンキュー♪」
「行っちゃったね。妙な儀式だけど、楽しそうだね。」
「こっちの世界でも流行ったら面白いかもな。」

「「とりっく おあ とりー…」」
ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!

「何?今の凄い声…って、うわ!何やってるんだ?二人して。」
「いや、イサミの真似をしてはろうぃんってのを試してみたんだ…村の人に。」
「…そしたら…逃げて…行った…」
「今の人、お菓子じゃなくってお金を置いて行ったけど、失敗かな?」
「そりゃ強盗って言うんじゃね?」
「…コー…ホー…」
「で…因みに今の二人の格好は何?」
「僕?デッドエンペラーだよ。レヌール王に王冠を借りてね。」
  サトチー Eかしの杖 Eただのぬのきれ Eレヌールの王冠
「…俺は…さまようよろい…」
  ヘンリー E鋼の剣 Eさまようよろい
「外せ!今すぐ外せ!!お菓子のために呪われてるんじゃねえ!!」
「ははは…昔からヘンリーはイタズラには手を抜かないからね。」
「…人のビビる顔を見るためなら…喜んで呪われて…やる…」
「ハロウィンはそんな殺伐とした祭りじゃねえ!!」

196 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 05:47:16 ID:qrBh+ZQzO
ヘンリーwwww
体張りすぎだろ、常識的に考えて…

197 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 12:45:21 ID:qzfARRZg0
ぐはぁ、さまようよろい・・・。

知らない人相手にやったら、ただの嫌がらせでしかないですよね(wwww

198 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:22:46 ID:qtWD4ula0
―起床の起―

考え抜いたた末の行動が考え通りにいくとは限らない。
それはゲームの世界でも同じことらしい。

俺はその日もいつもと同じように目覚めたはずだった。

199 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:23:50 ID:qtWD4ula0
――

ああ、朝か。今何時だろう?
4時間くらいは眠ってたかな。
寝てたときの時間の感覚なんて当てにならないけどさ。

眠い。もう一回寝ようかな……。
なんか俺どんどん夜型になってるような気がするなー。
人間のバイオリズムって24時間よりも少し長いって聞いたことがある。
だからどんどん後ろにずれ込んでいくんだろうな。
普通は決まった時間に起きて修正するんだっけ。
俺の場合、研究室にはいつ行っても構わないからいけないんだよなぁ。

あーあ、大学院まで行ったのに俺って何やってるんだろうな。
確かに研究は好きだけどこのままでいいのか俺。
好きなだけじゃどうしようもないこともあるんだよ。
将来のことを考えると今の研究じゃ食っていけないよなー。
だからといってほかにやりたいことなんて見つからないし。
あー、こうやって問題をずるずる先延ばしにしているだけなんだよなぁ。

なんだかつまんないこと考えているうちに目が冴えたな。
……起きるか。

それで結局、今何時なんだろう。
あれ、時計がない。……ん、テレビもない。ラジオまでないぞ。

ここ俺の部屋じゃない……

嘘だろ。じゃあここはどこだよ?

200 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:24:49 ID:qzfARRZg0
紫煙

201 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:24:51 ID:qtWD4ula0
ここはブランカの宿屋だそうだ。
なんだよブランカって。
どっかで聞いたことあるんだよな。どこだっけ。
そもそも宿屋ってなんだよ。まるでドラクエじゃないか。

……思い出した。ブランカってドラクエの城だよ。
脳に電撃ビリビリっときた感じで頭に浮かんだ。ドラクエ4だ。
むかし散々やったよドラクエ。そっか、ドラクエの城かー。
ドラクエ4の中でもかなり地味な城だけどよく覚えていたな俺。

だから何で俺はそんなところにいるんだよ……。

いや待て。まだドラクエ世界のブランカだと決まったわけじゃない。
調査をして確かめてみなければ。通りを行く人の会話に聞き耳を立ててみよう。

「西のほうにトンネルを造るなんて話があったけど、ちゃんとできるのかしら?」
「今ごろ必死にいたずらモグラを集めてたりしてね。」

「いっこうに現れない地獄の帝王って遅刻の帝王なんじゃないか。」
「おまえスタンシアラに行くといいよ。でも二度と帰ってくるなよ。」

「昨日は不思議な踊りの真似して遊んだんだ。お母さんにも見せてあげるね!」
「あやらだ。母ちゃん魔法使えないから意味ないわよー。」

はい。ドラクエ世界で間違いありません。イメージとだいぶ違うけど。
結論が出ました。ここはドラクエ4のブランカです。

202 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:25:53 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。

203 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:26:31 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。

204 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:27:32 ID:qtWD4ula0
あとは本当にドラクエの世界があってそこに迷い込んだという場合。
しかしゲームの世界だなんて本気で考えなきゃならないのか……

いくら俺がドラクエが好きだからといってゲームの世界にくることはないよな。
俺がドラクエはじめたのは姉ちゃんに勧められてやったのがきっかけだっけ。
その姉ちゃんといえば結婚して子供まで産むっていうんだからな。
何ていうか身内の出産ってちょっと引くよなー。
そんなこと気にする年でもないんだけどさ。
こういうの考える時点で駄目なんだろうけどな。
あ、そうだ。姉ちゃんの出産祝い何か考えとかなきゃ。

……そうじゃなくて、ここがゲームの世界だって話だったな。
この場合ゲームをクリアすれば元に戻れるってことだろうか。
クリアするってことはピサロかエビルプリーストを倒せばいいのか?
でもそこに俺の介入する余地はないよな。
黙っていても勇者が世界を平和にしてくれる。
俺のやるべきことはないな。

205 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:27:39 ID:qzfARRZg0
1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪い、噴いた(wwwwww

206 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/03(土) 13:29:05 ID:qtWD4ula0
なんだ。結局どの場合でも何もしないということになるじゃないか。
……いいのか?
ゲームなのに何もしないというのはありなのか?

そういえば遭難したときは動き回らずひとつの場所にじっとしてるのが鉄則らしいな。
俺のこの状況はそれに近いのかもしれない。
うん、そう考えれば何もしないというものありだと思えてきたぞ。

そもそもこの世界で俺に何ができるのかということを考えてみよう。
話を聞く限りまだトルネコは洞窟を掘っていないようだ。
つまりゲームで言うと少なくとも3章は終了していないということだな。
思うに今はゲーム開始時点なのではないだろうか。
つまりバトランドではライアンが行方不目になった子供たちを捜すところだ。
ライアンといえば彼がホイミンが並んでいたらどっちがモンスターか分からないよな。
いや、分かるけど。分かるけど害がなさそうなのはホイミンのほうだって。
とにかくゲームの世界だというならゲーム開始時点に来るのはありそうなことだ。
決め付けは良くないがほかに考えようもない。

そしてゲームでの出来事がドラクエの歴史だという仮説を立ててみる。
そうすると俺はこれからこの世界で起きることを知っていることになる。
自分が何故ここにいるのか分からないのに奇妙な話だな。
俺が勇者たちの手助けをすれば冒険がスムーズに進むのではないだろうか。
いや、俺が勇者たちに介入することで歴史が変わることになりかねない。
勇者が世界を平和にしてくれないのは非常に困る。
やはり何もしないのが正解なのだな。
よし決めた。俺は何もしない。

こうして俺の何もしない試みが始まった……はずだった。

―「承諾の承」へ続く―

207 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:39:38 ID:qzfARRZg0
一段落かな。
投下乙でございます。
主人公が勇者ではなく、何もしない(ように努力する)というのも面白い設定ですね。
次回も楽しみにしてますね。

208 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/03(土) 13:41:59 ID:1vkawdv70
dion軍規制解除でやっと感想書き込める!
新しい設定の新作乙です
何もしないと決めたのに巻き込まれる展開楽しみ〜

209 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 15:31:33 ID:sTfqlIBh0
過去レスのアリーナむっちゃ萌えます!
当方、D道塾ですけど道着に着替えて空気イスや柔軟(逆エビ)したらスンゴイきますよ^^
道場の皆さんにちょっと罪悪感、、、orz
でも短大の頃にPS版のドラクエWやってから、アリーナ目当てでドラクエの関連商品を集めるようになりました。
D道塾もその頃から始めました。アリーナのコスじゃなく、格闘技の習得にいくところが我の特色ですw
右手の親指で左足の親指を引っ掛け、弓手で右足を同じようにする逆エビ。関節も筋もよく解れるし、適度な負荷が全身にかかります。
でもデスピサロの足元でやるときは枷有りに決まってるから、つらさ的にはアリーナはこんなもんじゃないんだろうな。
いつでも姿勢を自分の意志で解除できるか否かは重要。
それを考慮しても、やっぱりサントハイムよりデスパレスに居る方が、アリーナには幸せかもね。デスピに愛されて・・・。
デス様のことだから、きっとアリーナのために擦過傷を極力防ぐための細工をした非金属・非繊維の何かを用意しているでしょう。
ピサロ×アリーナまた新しいの読みたいです。

210 :Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:17:21 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はリアルサイドの続きですね。では前回のおさらいです」
アルス「それ恒例化してんの? 俺がアレフとかってサイコ野郎と喧嘩したあと意識不明になって、
   ユリコの家で介抱されてたんだけど、目が覚めたらいきなしユリコの親父にひっぱたかれた。
   タツミとの確執のとばっちり食らったみたいだから、ちょっと試合でもしてカタつけてやろうか、
   ってところで終わってた」
タツミ「ユリコのお父さんにはえらく嫌われてたからなー、僕」
アルス「いい迷惑だ」
タツミ「そう言うなよ。それではいつもの、届け!愛のサンクスコ〜ル!」
アルス「おいw」

タツミ「>>121様、いいお母さんだよねー。どうして息子はこんなヒネクレたクソガキに……」
アルス「うるせえよ。>>124様、おふくろも優しいのはいいが、なんでも笑って許しちまうから、
   近所のバカもつけあがるんだと……まあ俺が黙らせてたからいいけどさ……」
タツミ「素直に心配だって言えばいいのに。反抗期?」
アルス「だからうるせえよ!」
タツミ「>>125様、へぇ、そんなことあったんだー。確かにあの王様、サヤさんも持て余し気味だったな」

アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「>>164様、竜探大学には付属の竜探幼稚園〜竜探高校まであります。
   しかし片岡……『おもしろい』から好きってどうなんだよ」
アルス「良かったなぁ、お前の奇人変人ぶりに惚れてくれる女の子がいて」
タツミ「うるさいよ! って、さっきと逆転したな」
アルス「さーて、ユリコの親父さんをあんまり待たせるわけにもいかないし――」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 リアルサイド続編 [10]〜[16]

211 :Stage.10 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:19:21 ID:MaX8wX3a0
  Prev >>108-119(Rial-Side Prev (マエスレ)>>567-576
 ----------------- Rial Side -----------------

「なに考えてるのランバート君、危ないよ。まだ起きたばかりだし」
 ユリコが慌てて俺の腕を引っ張った。まあまあと抑えて、先を歩き出したあのオッカネー
親父さんの後についていく。
 しかし広い家だな。エキゾチックな庭園がずーっと奥まで続いている。池があって、小
さな橋までかかってるし。タツミもすごいトコのお嬢さんに惚れられたもんだ。
「ランバート君! さっきのことは代わりに謝るから、まずタツミに連絡取って……」
「アルスでいいぜ、アルとか。別に叩かれたのを怒ってんじゃねえよ。ただ、せっかくの
チャンスを利用しない手はないだろ? 今は俺が『タツミ』なんだから」
 ユリコは先を行く父親の背中に視線を向け、少し黙った。俺の真意に気付いたようだ。
「でも、もしラン……アル君になにかあったら、あたしがタツミに怒られるよ。お父さん、
ああ見えて免許皆伝なの。意味わかる?」
「強いってこったろ? 雰囲気がそうだもんな。――だからこそなんだが」
 あれだけ厳格な父親が、自身も相当の腕前を持ってて、娘にもしっかり武道をやらせて
るってことは、だ。価値観もそういうところにあるタイプと見ていいだろう。
 あの手合いを黙らせるには、実力を認めさせるのが手っ取り早い。まだあちこち痛みは
あるが、こっちの人間相手なら、このくらいのハンデがあって丁度いい。
 こういう荒事は、あのお人好しは苦手だろうし。
「一肌脱いでやるさ」
「なに?」
「いや。そうだ、すまないが時間を計っておいてくれないか」
 それに、早いとこ自分のステータスを正確に把握しておきたい、という理由もある。
「もし試合の途中で俺の力や動きがガクっと落ちたら、それがリミットらしい。まあ負け
ることはまずないと思うが」
「よくわからないけど……じゃあ時計、見ておくね」

「なにをこそこそ話しとるんだね。着いたぞ」
 長い渡り廊下の突き当たりに、これまた古風な趣の家が独立して建っていた。板張りの
床で、真四角の広い空間になっている。壁にいくつも竹製のカタナが掛けられていた。
 この国流の稽古場らしい。

212 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:19:45 ID:DNyKG5aB0
初のリアルタイム支援!
しかも一番楽しみにしていたIFDQさんとはっ。

213 :Stage.10 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:21:22 ID:MaX8wX3a0

「そういや、戸田和弘はどうしたんだ?」
 小声でユリコに聞くと、彼女は少しバツが悪そうに答えた。
「適当にごまかして先に帰ってもらったよ。すごく心配してたけど……」
 あいつもイイヤツだもんなぁ。本当のことを伝えるかどうかは別として、あとで謝っと
かないとな。

 さて、と。
「まさかとは思うが、真剣でやる気かね?」
 ユリコの親父さんが、俺の手元を見て小馬鹿にするように笑った。
「ああ、そうですね。怖いんでしたら、そこに掛かってるのに換えますけど」
「――口だけは達者だな」
 向こうも控えていた女中にホンモノを持って来るよう命じた。マジで真剣勝負に乗って
くれちゃうらしい。いいねー、俺はこういう思い切りのいいオッサン好きだぜ。
 ユリコは頭を抱えているが。
「あ・ん・の時代錯誤のバカ親父〜! まさか試合中の事故で片付けようって魂胆!? ア
ル君、本っ当に大丈夫なんでしょうね?」
「どうかねぇ」

 軽く身体をほぐしてから、中央に進み出る。
「そうだ、俺、外国で剣術を習ったんで、日本式の礼儀とかは全然わかんないんですよ。
そこは許してもらえます?」
「好きなようにしたまえ。しかしそれならなおさら、日本刀など扱えるのかね?」
「心配ご無用♪」
 一級討伐士、いわゆる「勇者」の認定条件においては、初級剣術や初級槍術の他に特殊
武器の技術も必要とされる。鎖鎌からブーメランなんてものまで使いこなせなくちゃなら
んのだ。俺もそういう訓練をしてきたから、手に持っただけでだいたいその武器の特性を
つかめたりする(だから鉄杭でも戦えちゃうわけ)。
 それに……この日本刀ってやつ。なんというか、慎ましくも凜とした雰囲気がどこか俺
の愛剣に通じる物があって、妙に手に馴染む。
「では、いざ尋常に――」
 勝負!

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:23:19 ID:CtzstB1q0
しえん

215 :Stage.10 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:23:23 ID:MaX8wX3a0

   ◇

「……っつーわけで、ユリコパパをゲットしちゃったわけ。すっかり気に入られちゃって、
すっげーごちそう出てさぁ♪」
 最初はマジで危なかったんだが(オッサン本当に強かったよ。ナメてましたごめんなさ
い)、上手に引き分けに持ってったら手の平返したみたいに待遇が良くなったのだ。
 実は会った瞬間に、このオッサンとは気ぃ合うなと思ったんだよ。「男は黙って拳で語
れ!」って感じの武闘派バカ(またもや失礼)、俺も嫌いじゃないからさ。
「まさかこんな劇的にうまくいくとは思わなかったけどなw」
『あーそう、良かったね』
 携帯の向こうで、タツミは思いっきりふて腐れたような声を出している。
「なに怒ってんだよ、むしろ感謝してほしいぞ。これでお前も彼女と堂々と付き合えるだ
ろ? 悪い印象ってやつは、いったん覆したら逆に前よりずっと良くなるもんだしな」
『でもそれは……僕じゃないもん。ってか君は僕をそっちに戻す気ないんじゃなかったっ
け? 適当なこと言うなっつーの』
「そこはフェアだろうが。クリアすれば帰れるんだし、俺はそれを邪魔することはできな
いってルールなんだから。なんだよ妬いてんのか? お前もけっこう――」
 プッ ツー ツー
 あ、切られたw あいつも素直になりゃいいのに。

「アル君……タツミなんて言ってた?」
 ユリコが顔をのぞかせた。気を利かせて離れていたらしい。
「僕のユリコに手ぇ出したらタダじゃおかない、ってさ」
 携帯を放ってやると、受け取ったユリコはカァっと耳まで赤くなった。
「冗談でしょ? あいつそんなこと、絶対言わないわよ」
「確かめてみれば?」
 ユリコは少し携帯を見つめていたが、なぜか小さく首を振って、俺に返してきた。
「今度ね。それより、お父さんのせいでまたケガ増えちゃって、ごめん」
「え、いや俺の方こそ、親父さんケガさせちまって悪かった」
 思った以上に腕の立つ相手だったから、無傷で済ませられなかったんだよな。どちらも
軽傷とはいえ、今は片岡氏もあちこちに包帯が巻かれている状態だ。

216 :Stage.10 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:25:21 ID:MaX8wX3a0

 もっとも、本人はまったく気にしていないようだが。
 俺が中座していた宴席に戻ると、片岡氏は庭に面した廊下(エンガワというらしい)で、
静かに酒を飲んでいた。
「終わったのかね?」
 続きをやろう、と盃を掲げてみせる。ハイ、最初は未成年だからと断ったんだけど、片
岡氏があんまり勧めるのでいただいちゃってました。「ダイギンジョウ」ウマー。 

 外は夕暮れ。ここから見る庭にも見事な桜があって、薄桃色の花を風に散らしている。
 漆塗りの雅な盃に、ユリコがいい香りの酒を注いでくれる。「こーん」とたまに小気味
のいい音を響かせているのは、シシオドシというらしい。風流だねぇ。
「しかし、少し見ない間にずいぶん変わったものだ。まるで別人だな、今の君は」
 そりゃあ別人ですから。
「タツ……じゃない、以前の俺と、そんなに違うんですか?」
「まったく違う。あの頃の君は『自分の命などどうでもいい』という者の目をしていたぞ。
あんな生きた屍のような人間に、大事な娘は近づけられんよ」
「はぁ? え、そうなの?」
 なんかすごい言われようだぞタツミ。ってか、お前そういうキャラだったっけ?
「ちょっとお父さん、変なこと言わないでよ! ……ええとほら、本人の前で」
「ははは、失礼。だが今は、あれだな、親の屍を食ってでも生き残るようなしたたかさを
感じるよ。そういう人間は信用できる」
 そ、そうすか。俺もすごい言われようだな。ってユリコ、今度は笑ってるし。
 片岡氏はしみじみと酒をすする。
「この子の母親は早くに亡くなってね。私も過保護だとは思っているんだよ――」 
 ふむ。人にはそれぞれの事情ってのがあるんだな。

 そのとき、ピリリリリリ! と甲高い音が鳴った。一瞬タツミからかと思ったが、片岡
氏が胸元から携帯を取り出してその場を離れた。
 今までとは違うせわしない口調で、なにやら難しい単語をやりとりしている。
「やはりイグリス社か? そのルートだけは必ず確保しろ。私もすぐ行く」
 仕事のことでなにかトラブルが発生したらしい。こっちの人ってよく働くからなぁ。
「すまんな三津原君、急用ができたので私は失礼するよ」

217 :Stage.10 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:27:22 ID:MaX8wX3a0

「ああ……じゃあ俺も帰りますよ」
「なに、ゆっくりしていきたまえ。ユリ、あとで送ってあげなさい」
 言うだけ言って、片岡氏は颯爽と去っていった。
「あんなにタツミのこと毛嫌いしてたくせに……なんなのよもう」
 ユリコもすっかり呆れていたが、俺と目が合うと苦笑に変わった。
「まあいいや、結果オーライよね。もう一杯いかがですか、勇者様」
「お、もらおうかな。こんな美人の酌なら何杯でもいけるやね♪」
「っぷ、どこのおっさんよぉw アル君って、本当に異世界で魔王を倒した勇者なの?」
 実はちょっと自信なくなってきたかも。すまんゾーマ、宿敵がこんなんでw

 と――。
「あの、アル君。もしかしてだけど……タツミから、なにか聞いてたりする?」
 ユリコが急に神妙な声で切り出してきた。
「なにかって、なにを?」
「あいつが人を避ける理由。アル君にはなにか言ってるかなって思って」
「いや、そんな話はしてないけど」
 俺が首を振ると、ユリコは「そう……」と、少しだけ肩を落とした。

「タツミってけっこうモテるのよ。顔はいいし頭もいいし、性格だって悪くないし。でも
誰とも付き合おうとしないのね。っていうか、友達も作らない感じ。要領がいいから周囲
に悟らせないようにうまく逃げてるけど。休みになったら、ほとんど外出もしない。あた
しと戸田くらいかな、しつこくまとわりついてるの」
「なんだそりゃ」
 ヒキコモリっぽいとこがあるなぁ、とは思っていたが、そこまで徹底していたとは。
「だから今日の花見みたいに、強引に誘うこともあるんだけど。……あたし、実はタツミ
にフられちゃったのね。去年の暮れかな、あいつに『もう僕に近づかない方がいい』って
言われたんだ」
 ユリコの表情は硬い。その時も、そんな顔をしていたんだろうか。
「でもその理由が理解できなくて。正直、今でもどう受け取っていいかわからないのよ」
「あの親父さんが怖くて、適当な理由で遠ざけたんじゃねえの?」
「普通はそう考えるわよね。でもそれにしては、なんか強烈な言い訳だったし」

218 :Stage.10 [15] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:29:24 ID:MaX8wX3a0

 そこで逡巡するユリコ。
「タツミね……『僕は何人も殺してる人間だから』って、そう言ったの」
「こ、殺してる?」
「うん。『君まで巻き込みたくない』って……。亡くなったご両親も自分が殺したんだっ
て、そんなこと言うのよ」

   ◇

「亡くなったご両親――? タツミの親、両方とも死んでんの!?」
 俺は思わず叫んでいた。ユリコの方は別の意味で驚いている。
「知らないで入れ替わってたの? あいつが引っ越したあとのことで、詳しくは知らない
んだけど。事故でお父さんが亡くなって、その3ヶ月後にお母さんも亡くなったって」
 おいおいおい、なんだその話。じゃあ今マンションに同居してるあのオバチャンは誰な
んだ。単身赴任とやらで遠くにいるはずの父親って?
「一緒に住んでる人はタツミのお母さんのお姉さん、つまり伯母さんよ。彼女は独身だか
ら他に家族はいないと思うけど……。アル君、いったいどういう風に聞いてたの?」
「聞いてたっていうか、勝手に覗いてたっていうか――」
 タツミの生活については、俺が向こうにいる間に「夢」を通して知ったのだ。それが事
実と食い違ってる部分は今までにもあったが、まさかここまで違うとは思ってなかった。
 本人に確かめたくても、なーんかずっとバタバタしてて聞きそびれていたし。

 ……いや、俺も無意識に、タツミに聞くのを避けていたかもしれない。
 あいつ、一度も俺を問い詰めてきたことがないから。いきなり命懸けの冒険を押しつけ
られればわめき散らしたって当然なのに、タツミはいつも「仕方ないなあ」って感じで飲
み込んでくれてて。
 だからなおさら、こっちだけ詮索するのも悪い気がして。

「でも殺したってのは、尋常じゃないよな……。他には?」
「ううん。あいつ、肝心なことはなにも教えてくれないもん」
 昨日カズヒロも同じようなこと言ってたな。
 こうなったら腹を据えて聞いてみるか!

219 :Stage.10 [16] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:31:27 ID:MaX8wX3a0


 ――おかけになった番号は、電波の届かないところにおられるか、
   電源が入っていないため、かかりません。

 ........... orz 

 またかよ〜。もしかして本格的にスネちゃったんか?
「つながらないの?」
「ん。まあそのうちかかってくるだろ。連絡が取れたら、あんたにもすぐ伝えるよ」
 俺が立ち上がると、ユリコは心配そうに袖を引いた。
「帰るの、危険じゃない? 今日はうちに泊まっていったら」
「いやーさすがにタツミに悪いから帰るよw」
 別にやましいこたぁないけどさ。それに、ゲームがどこまで進んだかモニタリングしと
かないと、俺の方も連絡をつけるタイミングが計れない。
「それでユリちゃん、ちょっと頼まれて欲しいことがあるんだが―――」



 その後、ユリコにタクシーを呼んでもらい、俺はタツミのマンションに帰ってきた。
 くだんの「伯母さん」はまたでかけているようだ。甥っ子の面倒を独りで見ているわけ
だから、もしかしたら夜系の仕事でもしているんだろうか。
 ゲーム画面は、帆船が夜の海を西に進んでいた。ランシールに到着し、一行は真っ直ぐ
宿屋に入っていく。「一晩」たてばほとぼりも冷めるだろうし、少し待ってもう一度かけ
てみよう。
 それにしても、両親を殺した、なんて冗談で言えることじゃないよな。

(自分の命などどうでもいい、そういう者の目をしていたよ――)

「タツミ……お前いったい、なにしたんだよ」
 ゲームキャラの俺よりプレイヤーの方が謎って、なんか変じゃね?


220 :Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 20:32:52 ID:MaX8wX3a0
本日はここまでです。
今日の夜中の12時くらいから、お約束の「まとめ」を投下させていただきたいと思います。
その時にはまたよろしくお願いいたします。

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 20:33:01 ID:CtzstB1q0
支援

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 21:22:48 ID:Vpxzm+RZ0
うは、真剣をつかって勝負とは・・・。お互いに軽傷ですんでよかったですね(滝汗
大吟醸、おいしそう。だんだんこちらの世界になじんできますね(笑)

しかし、タツミくんの過去・・・。尋常じゃないですね。気になる・・・。
話が進むうちに明らかになっていくのでしょうか。

223 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/04(日) 23:54:02 ID:NksgkbF30
おお!このままリアルサイドの続きが読みたいような

とにかく乙です!

224 :Stage.10.5 mtm ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/04(日) 23:58:37 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。数時間ぶりですが改めまして、みなさんこんばんは♪」
アルス「今回の番外は、今までのまとめ、というか解説編だな」
タツミ「登場人物紹介、用語の説明、という形でお送りします」
アルス「ここだけの新事実発覚! みたいなのも多少あるらしい」
タツミ「DQ離れしたオリジナル設定が多い本作ですが、少しでも楽しんでいただけたらと思います」


アルス・タツミ『それではまとめ、スタートです!』


【Stage.10.5 まとめ】
 登場人物紹介/用語解説 [1]〜[11]

225 :Stage.10.5 紹介 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:00:36 ID:/C7eX2Ut0

 ■主人公1■

【タツミ】 本名:三津原辰巳(ミツハラタツミ)
 本作の主人公の1人。ドラクエ3の世界に飛ばされ、元の世界に戻るためにイヤイヤな
がら勇者をやりつつ、ゲームクリアを目指す。見たものを写真の様に記憶できる「直感像
記憶力」と超スピードで本を読める「ラピッド・リーディング(速読)」の特技を持って
おり、それがゲーム世界では「思い出す」の能力として扱われている。
 ゲーム中では一部の関係者にのみ自分がアルスではないことを告げているが、自分は
「ルビスに遣わされてやってきた」ことにしており、行方不明のアルスについては「魔王
に封じられたので魔王を倒せば戻ってくる」と嘘をついている。
 高校の成績は常にパーフェクトで首席。奨学金をもらっており戸田和弘いわく「一度も
学費を払ったことがない」。運動神経も容姿もなかなかと三拍子そろった少年。
 しかし、両親が幼い頃に立て続けに死亡するという不幸に見舞われ、現在は母親の姉
(伯母)と二人でマンションに暮らしている。一見すると明るくポジティブな性格だが、
「両親を殺したのは自分だ」と言い、現実ではさり気なく人付き合いを避けていた。
 一條英治に恨まれており、何度か金銭を巻き上げられている。片岡百合子の父親からは
「自分の命などどうでもいい、生きた屍のような目をしている」と酷評されている。
 無理やり勇者を押しつけられたアルスを、それでも大切な人間だと言い切り、一方的に
恩人としているようだが……。
 MPが最初から999あり、携帯電話を利用するたびに減っている。プリペイド方式で減っ
た分は増えない。現在呪文の習得は皆無だが、今後使う機会があればさらに減ることを懸
念している。

[誕生日]7月7日生まれ
[性格判断]ずのうめいせき
[よく観る映画]ダスティン・ホフマン主演の「レインマン」
[好きだった銘柄]ラッキー・ストライク(もうやめたけど)
[気に入った魔物]スライム(というかヘニョ)
[苦手なもの]血(見ると気分が悪くなりヒドくなると吐く)
[嫌いな食べ物]ピクルス
[関わりたくない人種]わがままな王族

226 :Stage.10.5 紹介 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:01:40 ID:MaX8wX3a0

 ■主人公2■

【アルス】 本名:アルセッド=D=ランバート
 本作の主人公の1人。ドラゴンクエスト3(SFC版)の勇者であり、プレイヤーの三津
原辰巳と立場を交換する契約を交わした。ほんの少し目の色に青みがかっている以外は、
タツミと見分けがつかないほどそっくりな容姿をしている。ゲーム世界にいた頃から「夢」
を通してタツミに同調(シンクロ)し、彼の生活や現実の常識などを事前に学んでいた。が、実
際と食い違うことがいくつも発覚し戸惑っている状態。実はLv.99。
 現段階ではタツミとの入れ替え(移行)が不完全であり、ゲーム世界でのステータス値
が半分以下に制限された状態になっている。それでも常人より遙かに強靱な肉体と力を持っ
ているが、全力を出す時間にリミットがあり、無理をしすぎると激しい疲労に襲われ、意
識を失うこともある。今のところ呪文は使えない。
 タツミが元の世界に戻ることを諦めれば「移行」が完了し、上記のしばりが無くなる。
アルスもそれを望んでいるが、内心ではプレイヤーを犠牲にすることに躊躇している。
 仲間も家族もすべて捨てて異世界へと来たが、その理由が「あの世界には決定的なもの
が欠けていてどんなにあがいても救われない」ということを、自分だけが知ってしまった
ためらしい。
 言動は荒っぽいが、意外と常識的でリアリスト。八城翔(エイト)には「人の良さそう
な子」と評されている。

[誕生日]12月24日生まれ
[性格判断]くろうにん
[好きな飲み物]豆乳(以前は牛乳だったがすぐ腹を壊すので変わった)
[普段着の色]赤系か黒でまとめることが多い
[気に入ったゲーム]セガのHOD(簡単で飽きるけどまたやりてえw)
[やってみたい職業]商人・遊び人
[苦手な科目]地理とか歴史などの暗記物
[消したい人種]ねちねち意地悪するような連中は全員だ!

227 :Stage.10.5 紹介 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:03:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・リアルサイド■

【ユリコ】 本名:片岡 百合子(カタオカユリコ)
 三津原辰巳の高校のクラスメイトでタツミを慕っている、ショートヘアの似合う元気で
明るい性格の美少女。実は格闘技をたしなんでおり、かなりの強さ。花見に行った際アレ
フに急襲され、それを機にアルスの正体を知ることとなる。大変よろしい感じに発育して
おり、アルスいわく「かなり着やせするタイプ」。
 大金持ちのお嬢様で広い日本屋敷に住み、家では着物を着せられている。母親を早くに
亡くしており、そのせいで父親からちょっと過保護にされている。

【カズヒロ】 本名:戸田 和弘(トダカズヒロ)
 三津原辰巳のクラスメイトで友人。人付き合いを避けているタツミを気遣い、ユリコと
二人でなにかと彼に構っている。高校では運動系の部活に所属しているスポーツ少年。
 父親は市議会議員で、タツミに絡んでいる一條英治のこともなんとかできないかと気に
かけている。一條英治とその取り巻きを「あいつら頭悪いからなぁ」と評している。

【エージ】 本名:一條 英治(イチジョウエイジ)
 三津原辰巳を憎んでいる不良少年。他校の生徒で(カズヒロによると三流高校)、学業
面だけでなく、すぐにカッとなりナイフを振り回すなど、普段の思考力においても優秀と
は言い難い。なぜこの少年の言うことをタツミが聞いているのかは不明。
 妹がおり、彼女と入れ替わりで現実に来たアレフの世話を焼いていた。アレフが強いと
知るや「タツミを半殺しにしろ」とけしかけたが、今のタツミがアルスだと知らずに失敗。
 実の妹が異世界に飛ばされてしまったことは、なんとも思っていないようだ。

228 :Stage.10.5 紹介 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:05:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・ゲームサイド■

【エリス】 本名:エリス=ダートリー(魔法使い)
 タツミのパーティーメンバー。ルイーダの店の「冒険者名簿」の「特選」に選ばれてい
る優秀な魔法使いで、最初から「Lv.14」の実力を持つ16歳。現在は城に勤めている。ロ
マリアに留学経験があり、彼女のルーラで一気にロマリアまで連れて行ってもらった。
 アルスに強く惚れており、彼の役に立ちたいと幼い頃から猛勉強を積み、12歳にして正
式な「冒険者ライセンス」を取得した才女。行方不明になる前に、アルスから別離を告げ
られるも健気に慕い続けている。
 次項サミエル・ロダムと一緒に、タツミからは「アルスは魔王に封じられたらしい。自
分はルビスの遣いでアルスに代わり勇者をしつつ魔王打倒を目指す」と説明されており、
ニセモノの勇者と知りつつ同行を承諾する。

【サミエル】 本名:サミエル=レイトルフ(戦士)
 アリアハン第二近衛隊の副隊長を勤めるエリート戦士。「〜ッス」という口調で話す、
少々老けて見える22歳。オルテガに強い憧れを抱いており、魔王討伐の遺志を継ぐため
に同行を承諾。アルス奪還という点にはあまり重きを置いていない。だがタツミが懸命に
勇者職を勤めようとする姿を見て、タツミ本人に協力する気持ちが強くなっている。

【ロダム】 本名:ロダム=J=W=シャンメール(僧侶)
 アリアハン宮廷司祭見習いの32歳。若い頃は「神父」を目指していたが、妹夫婦の住む
村が魔物に襲われたのを切っかけに、殺生を許された聖職「僧侶」に転向した。常に穏や
かで落ち着いた雰囲気を保ち、パーティーの保護者的存在。タツミも内心で頼っている。

【ヘニョ】(スライム)
 ポルトガからエジンベアへの航海中、船に紛れ込んでいたスライム。「縁起が悪い」と
船員たちに海に捨てられるところを、その愛らしさに一目で参ってしまったタツミに庇わ
れ、そのまま飼われることになった。基本的には草食だがなんでも食べる。しかし消化の
様子がすべて透けて見えるため、与えるエサは考えないといけない。名前の由来は過去の
番外を参照のこと。

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 00:07:02 ID:HnUADTix0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙


230 :Stage.10.5 紹介 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:07:40 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・アナザーサイド■

【ショウ】 現実での名前:八城 翔(やしろしょう)/本名:ラグエイト=ハデック 
 ドラゴンクエスト8の主人公であり、すでにプレイヤー八城翔への「移行」を完了して
いる。そのため現実におけるステータス修正がなく、ゲーム内での能力をフルパワーで発
揮することができる。呪文が使えるかは不明だが、ルーラらしき呪文を使用した描写があ
る。また自分の肉体のみに限定されるが、携帯電話を使って自由にゲームと現実を往来す
ることが可能。
 表向きは八城翔として普通の大学生をしているようだが、裏では謎の組織に所属してお
り、他のPC(プレイ・キャラクター)の動向を監視、場合によってはライフルなどの火
器を用いて拘束したり、「抹消」する任を負っている。
 彼のPL(プレイヤー)である本物の八城翔は美少女アニメのオタクで、ショウにクズ
呼ばわりされている。ゲーム世界から帰れなくなった状態らしいが、今どうなっているか
は不明。

【アレフ】 本名:アレフィスタ=レオールド
 ドラゴンクエスト1の主人公で、一條英治の妹と相互置換し、現実にやってきた。他の
PCと違い「入れ替わっても周囲の人間が気付かないほどPLとそっくり」というパター
ンに当てはまらない。まだ移行は完了していないため、ステータス修正・時間制限がある。
 一條英治の世話になり、タツミを半殺しにしろと頼まれて承諾するも、相手が自分の先
祖にして伝説の勇者ロトであることを知り、本気で襲う。ユリコに邪魔をされ逃走したあ
と、ショウに捕獲されどこかに連れ去られた。行きすぎた勇者教育を受けて育ち、人格的
に少々問題がある。アルスに「サイコさん」呼ばわりされている。

【謎の青年社長(?)】
 その言動から、ほぼドラゴンクエスト5の主人公と推測される。中央区のオフィス街の
高層ビルで、最上階のフロアにてショウを出迎えた。ショウが所属する組織の一員か、あ
るいはトップの人間かもしれない。移行が完了しているかどうかは不明。
 ゲーム内では正妻が二人おり、また現実でも似た女性たちをわざわざ探し出し、秘書と
してそばに置いている。

231 :Stage.10.5 紹介 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:09:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・リアルサイド■

【片岡氏(ユリコパパ)】
 お金持ちなユリコの父親。剣術は免許皆伝の腕前で、普段着は和装。一人娘のユリコを
大切にしており、三津原辰巳を毛嫌いしていた。
 タツミのフリをしたアルスと真剣試合をして一発で気に入り、すっかり仲良くなってし
まったが、ニセモノとバレた時が心配される。

【伯母さん(タツミの保護者)】
 タツミの保護者として一緒に暮らしている彼の伯母。幼い頃に亡くなったタツミの母親
の姉ということだが、それ以外はいっさい謎。昼間は寝ていて夜に出て行くことが多く、
これまでアルスとほとんど会話を交わしていない。アルスは「夜系の仕事をしているので
は」と推察している。

【タツミの両親】
 タツミが幼い頃、引っ越した先の街で二人とも死亡している。経緯は不明だが、タツミ
が話したがらないところから、ただの事故ではないことがうかがえる。

232 :Stage.10.5 紹介 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:11:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・ゲームサイド■

【サヤお母さん】
 アルスの母親。息子が急に姿を消したことを心配するも、タツミの正体を知っており、
タツミを信じてアルスの帰りをおとなしく待っている。またタツミのことも実の息子のよ
うに心配してくれる。おっとりしているようだが、優しくて芯の強い素敵な女性だ。

【デニーおじいちゃん】
 アルスの父方の祖父。アルセッド=D=ランバートの真ん中の「D」は、名付け親であ
るデニーおじいちゃんの「D」である。アルスのことに関するスタンスはサヤお母さんと
一緒だが、可愛い孫のことが心配でならない様子。

【アリアハン国王】
 オルテガを親友とし、忘れ形見のアルスを特別に可愛がっていた。母親のサヤのことも
強く気にかけている。タツミの話を信じておらず、アルスに成り代わろうとしている「紛
い物」をただちに捕らえて拷問にかけると言ってサヤに止められ、今度の試験の結果次第
で実行する、とタツミに厳しい条件を課す。
 ちなみに、世界退魔機構を提案したのがこの人。いち早く魔王の存在に気がついた国王
は各国に協力を呼びかけたが、先の大戦で大敗を喫し、世界統一国の成れの果てである弱
小国の提案に、他の国は口を揃えて「まずお前がやれよ」。親友であるオルテガを死地に
向かわせるハメになった(オルテガ本人はノリノリだったが)、という裏設定がある。
 決して悪い人間ではないのだが、いまいち空回り気味の王様である。

233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 00:13:28 ID:AAevm/xRO
支援

234 :Stage.10.5 用語 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:13:47 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・リアルサイド■

【PC】ピー・シー
 プレイ・キャラクターの略。主にゲームの世界から現実にきた人間のことを指す。ショ
ウの組織で便宜上そう呼んでいる。

【PL】ピー・エル
 プレイヤーの略。本作では主にPCと入れ替わったプレイヤーのことを指す。これもショ
ウの組織で使われている呼称。「相互置換対象」と称することもある。

【相互置換】そうごちかん
 PCとPLが入れ替わる現象そのものを指す言葉。

【移行】いこう
 PCがPLと入れ替わって現実の存在となること。移行初期の段階では不完全な状態で
あり、能力に制限がかかる(ステータス修正)。完全に移行するためには「ゲーム世界の
プレイヤーがクリアを諦め、完全にゲーム世界の住人となる」という条件を満たさなけれ
ばならない。

【移行の完了】
 PCが完全に現実の存在となること。移行が完了したPCは、現実においてもゲーム内
同様の超人的な能力をフルに発揮できるようになる。
 また携帯電話を利用することで、ゲームと現実を往来することが可能となる。ただし自
身の肉体以外は、持ち込み・持ち出しできない(胃に残る未消化物さえも対象外)。

235 :Stage.10.5 用語 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:15:36 ID:/C7eX2Ut0

【PCは単一的な存在】
 相互置換されたPCは、あくまでそのPLが所有するソフト内から出現した単一的な存
在であり、作品全体の代表としての存在ではない。
 ただし現段階では同タイトルから同キャラクターが移行した例はない。

【PLの影響】
 個々のPCについて、原作では表現されない詳細設定はPLの潜在意識に大きく影響を
受ける。どのような形で影響されるかは明確ではなく、PCの人格そのものに反映されて
いることもあれば、PCの生活環境や対人関係に影響を及ぼしている場合もある。

【PCのストレス】
 影響を与えるPLの潜在意識がゆがんでいる場合、PCに悪影響が及ぶ。
 たとえば、現実ではおとなしい性格の人間が、内心に暴力的な衝動を抑えつけ鬱屈を溜
めていた場合、PCが勇者にあるべからず凶暴な性格になってしまったり、PC自身は普
通でも周囲に暴力的な人間が多くなる、などの弊害が起きる可能性がある。

236 :Stage.10.5 用語 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:17:37 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・ゲームサイド■

【冒険者】
 魔物を退治して得たゴールドで生計を立てている人間の総称。「ダーマ冒険者協会」に
よって各専門職ごとにライセンスが発行されており、正式にライセンスを取得している冒
険者には様々な特典がある。しかし協会の管理下に置かれるのを嫌い、モグリでやってい
る人間も多い。

【冒険者職の中の「各職業」】
 「冒険者職」の中に「戦士」や「魔法使い」など専門職が区分されている。冒険者でな
くともライセンスは取れるが、ただの「魔法使いライセンス」よりも「冒険者職の魔法使
いライセンス」を取得する方が難易度が高い。また1年ごとに簡単な更新試験がある。
 基本的にこの世界における「職業」はすべて「やる気のある初心者を支援するため」の
制度であり、実務経験を問われることはない。取得後は全員が「Lv.1」からのスタートと
なる。

【冒険者職の中の「特別職」】
 ダーマ冒険者協会とは別の機関「世界退魔機構」が管理している特別な職業で、「勇者」
「賢者」などがこれにあたる。

【特別職の特典】
 特別職のライセンスを持つ冒険者は、以下の特典を受けることができる。
 ・加盟国、または加盟店のアイテムを安く提供してもらえる。
 ・ほぼ売買を拒否されない。
 ・アイテムの買取価格が、商品的価値の有無に関わらず売値の4分の3。
 ・宿屋に何時でもチェックイン可能。また宿泊拒否されない。
 ・真夜中でも教会の利用が可能。
 ・親族への生活補助金を、所属国家に支払うよう促す(強制ではない)。

237 :Stage.10.5 用語 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:30:38 ID:pqiM/cEN0

【特別職の試験】
 かなりの難易度、年齢制限や一度不合格を取ると再試験は不可といった条件がある。
 1次試験と本試験とに分かれており、1次試験合格から3ヶ月は仮免期間で、その後の
本試験に合格してから正式なライセンスを取得できる。更新試験は半年ごとに行われる。
 ◆受験資格・30歳以下の健康な男女で、犯歴が無い者。初受験者のみ。
 ◆1次試験
  「ペーパーテスト」
   ・呪文理論 ・魔物学 ・その他学問全般
  「実技」
   ・初級剣術(各国の型でOK) ・初級槍術
   ・その他特殊武器(ブーメラン・鎖がま・杖などの特殊型の武器から選択)
   ・初等呪文(ホイミ・メラの成功率が100%・確実に発動する・確実に当てられる)
 ◆本試験
  「仮免期間の間に、以下の条件のうちいずれかを満たしていること」
   ・なにか大きな人助けをする
   ・魔物から村や町、教会など慈善組織(海賊等は含まれない)を護る、救う等
    (上記はいずれも援助対象者に真偽を確認し、虚偽が発覚した場合は
     ライセンスの永久剥奪及び罰金が科せられる)
   ・世界退魔機構が指定している試練をクリアする(ランシールの洞窟など)
 ◆更新試験
  「半年の実働期間中に本試験と同様の条件を満たしていること」

【勇者=「一級討伐士」】
 「勇者」の正式名称は「世界退魔機構認定特別職一級討伐士」という、「特別職」のひと
つである。以前は「一級討伐士」と呼ばれていたが、今は「勇者」という通称が定着してい
る。アルスやオルテガもこのライセンスを取得している。

【世界退魔機構(WMMO - World Monster Measures Organization - )】
 ほぼ世界中の国や街が加盟している、魔物被害の対策機構。エジンベアは未加盟国だが、
国内のほとんどの店は独自に加盟している。アリアハン国王が提唱・発足した。

238 :Stage.10.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/11/05(月) 00:33:22 ID:pqiM/cEN0
本日の投下はこれにて終了です。
多数のご支援、ありがとうございました。
忘れている登場人物や設定、説明不足の部分などありましたら、
今後すこしずつ補完していきたいと思います。

239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 02:33:26 ID:tPKJQVr20
久しぶりに来たが…これまた随分と本格的なのをやってるなw

240 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 08:02:34 ID:5xmqLCJWO
>>220
投下乙!
少しずつタツミの過去が明らかになってきたな。
アルスも本人に早く聞いちゃえばいいのにと思っていたが、
無意識に遠慮してたのか。

>>238
すげえ細かいな!
タツミとアルスの誕生日がわかりやすいww

241 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:05:26 ID:TUfCckLV0
では、予告どおり第9話を投下します。

LOAD DATA 第8話後半 >>166-173

242 :迷鏡止水【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:08:28 ID:TUfCckLV0
「そうですか…ラインハット軍がこの修道院に…」

ラインハットから帰還した俺達の報告を耳にしたシスター・シエロ。
沈痛な面持ちで目頭を手で覆い、深い溜息をつく。
彼女達が毎日、神に祈ってきたのは『世界中の人々の平和』
それを裏切ろうとしているのは、他でもない人間そのもの。

「私達は…ここに留まります。」
シスター・シエロの決断。顔を上げ、窓の外に目をやりながら言葉を続ける。
「貴方がたの好意はありがたく思います。ですが、修道院の外は魔物だらけです。
 ここには老人や幼い子供もいます。連れて逃げるのは難しいでしょう。」

窓の外。手入れの行き届いた花壇の周囲を走り回る幼い少女。
それを幸せそうな顔で眺めるのは年老いた女性の姿。
多少の心得では、非戦闘員を庇いながらの逃避行は不可能だろう。

「じゃあさ、せめて近場の町まででも…」
言い掛けた言葉が詰まる。
ビスタ港が封鎖されている以上、逃げられる場所は三ヶ所。
まず、オラクルベリーは却下だ。ラインハット軍の第一目標に揚げられている。
次に、サンタローズ…ラインハット国境に程近いこの村も危険過ぎる。却下。
サンタローズの西に存在するアルカパの町は距離がありすぎる。
まさか、シスター達に樽に乗って逃げろなんて言えるわけもなく…

「…これは、八方塞がり…ってヤツだなあ…」
「こうなりゃ、もう一度城に忍び込んで力づくでデールを止めるしか…」
「いや、あれだけの騒ぎになった直後だ。それこそ難しいんじゃないかい?」

「ときに、ヘンリー様。一つお聞きしたいのですが…」
 黙ったまま、窓の外の小さな幸せを眺めていたシスター・シエロが口を開く。

243 :迷鏡止水【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:10:09 ID:TUfCckLV0
「ヘンリー様の知るデール王は、そのような非道を冒せる御人でしょうか?
 兄のヘンリー様から見て、デール王の行為は本心からの物だと思われますか?」

どこまでも真っ直ぐなシスター・シエロの瞳がヘンリーを捉える。
ヘンリーは目を逸らさない。同じく真っ直ぐに、シスター・シエロを見据える。
「デールは俺とは違って、誰にでも優しい心の広いヤツだったよ…
 俺が子分と認めた男に、あんな外道な真似を出来るような男はいねえ。」

目線と同じく真っ直ぐなその言葉に、シスター・シエロの顔に笑みが浮かぶ。
「危険な場所ですので、本来はお教えするべきではないのかもしれませんが…
 南の塔の最上階に、ラーの鏡と呼ばれる真実を映す鏡が安置されております。
 ラーの鏡でデール様を映せば、その心の奥底に隠された真実が見えるやも…」

優しく心が広い弟。ヘンリーが語るデールの姿とは噛み合わない今のデール。
ラーの鏡…真実を映す鏡…それを使えば、デールの本当の心が見える。
きっと、ヘンリーが語る優しく心が広いデールが姿を現す。

「これは、決まり…でいいのかね?」
「ああ、あれがデールの本心であるわけがねえ。」
「行こう。急がないとラインハット軍が攻めて来る。」

三人で目を合わせ、頷き合う。
目的地は南の塔。

「今のヘンリー様が、ほんの少しでもデール王を信じておられるのでしたら、
 信じるままに王を導いて下さいませ。それが兄であるヘンリー様の役目です。」
子供をあやす母親のように、優しく語りかけながるシスター・シエロ。

優しい言葉と同時に向けられた笑みはどことなく悲しげにも見えた。
…のは気のせいだろうか?

244 :迷鏡止水【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:12:16 ID:TUfCckLV0
          ◇           ◇
修道院の南に存在する、神の塔と呼ばれる建造物。
その巨大な門は、神に仕える修道女にしか開く事が許されない。

荘厳な建造物の前に跪き、祈りを捧げる女性はマリア。
俺達と一緒に神殿を逃げ出した後、洗礼を受け修道女となった彼女は、
俺達が神の塔に赴く話を聞き、自ら旅の同行を名乗り出てくれた。

神聖なレリーフが刻まれた重厚な門。
固く封印された巨大な門が、乙女の祈りに呼応してゆっくりと開く。

「さあ、参りましょう。」

足場の狭い塔の中。先頭をサトチーが進み、前方の安全を確実に確保。
二番手にはヘンリーが、非戦闘員であるマリアを守る形で進む。
隊列の最後尾を守るのは俺とスミス。
高い場所が苦手なブラウンには馬車番をしてもらっている。

太陽がギラギラと照り付ける広大な砂漠に程近い場所にありながら、
塔の内部は風がよく通り、ひんやりとして心地良い。

「ラーの鏡…だっけ?相当な宝物らしいけど、どこにあるんだろうな。」
「…上階から…何か神聖な力を感じる…」
「神聖な力?死体のあんたがウロついて平気なのか?」
「…私は…魔王の魔力の呪縛から逃れた存在…心配ない…」

か弱い女性を守らなければならない中、スミスの頑丈さは心強いが、
内心、神聖な力とやらでいきなり成仏されでもしないかと気が気ではない。

「…デール王…奇妙な道具から炎を出したらしいな…」
普段は感情に乏しいスミスにしては珍しい、興味の色を感じさせる声。

245 :迷鏡止水【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:14:33 ID:TUfCckLV0
「…サトチー卿達は…それを魔法の道具の類だと認識しているようだが…
 私の生前の記憶では…そのような道具はこの世界には存在しない筈…
 お前なら…それが何かを知っているのではないか?」

目線は前に向けたまま、ぴくり…と俺の全身が反応する。
我ながらわかりやすい反応だと思う。肯定の返事は必要ないだろう。

アレに似た道具を俺はよく知っている。
アレは俺がこっちの世界に持ち込んだ道具。
豪華な装飾という違いはあれ、オラクルベリーで売り払ったライターそのもの。

「…魔法理論で作動する道具なら…力の発現には何かしら動作が必要となる…
 精神集中…呪文の詠唱…対外的な意思表現…それらを何も必要としない…
 それは魔法理論の定義から外れる…ならばなぜ炎が発現したか?
 恐らく…私達の知る理論とは別の要素で作動する道具だろうと予想する…」
その姿に似合わないインテリジェンスを発揮するスミスに驚くと同時に、
一つの疑問が俺の頭に浮かぶ。

科学の概念が存在しないこっちの世界で、容易くライターを扱って見せた王。
オラクルベリーの道具屋でライターを売ったという経緯こそあれ、
情報伝達、構造解明、技術伝播、製品開発、操作習得…
この世界の科学レベルを考えると、全ての段階におけるスピードが早すぎる。
ラインハットという国家が、たまたま高度な技術力を持っていたのか…
もしくは…
「…私が投げかけた疑問とは言え…思案に夢中になりすぎるのは感心できん…」

ぐしゃり、という耳障りな音にハッと我に返る。

天井からぶら下がった目玉が、血の通わない冷たい腕で握り潰される。
前方では、毒々しい紫の植物に鞭を振るうサトチーの姿も見える。

畜生。人が考え事をしている時に空気の読めないモンスターだな。

246 :迷鏡止水【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:17:49 ID:TUfCckLV0
――――――――――――
「イライラさせるヤツだったなあ。眩しい光とか反則じゃね?」
「…接近戦主体のお前にとっては…相性の悪い相手だろうな…」
「ま、ヘンリー様がいれば、マリアさん他三名の安全は保証されてるって事よ。」
得意のイオでモンスターを蹴散らしたヘンリーが気分爽快と言った顔で笑い、
それにつられたかのように、マリアさんもクスクスと笑ってみせる。

俺はと言うと、初っ端にインスペクターの放つ眩しい光で目を眩まされ、
『目がぁ〜目がぁ〜!!』と、軽くパニック。
手に触れた触手を半ば強引に引き摺り下ろし、その目玉を剣で叩き潰した。

惚れ惚れするほど不細工な戦いだったな…畜生。

「はぁ、もう少し攻撃魔法を練習しねえとなあ…ん?サトチーどうした?」
俺達から少し離れた場所で、潰れたインスペクターの残骸を調べているサトチー。

何か宝物でも見つけたかな?
とどめを刺しきれてなかったとか?
実は『ぷるぷる ぼくはいいインスペクターだよ』だったとか…
まさかね。

「サトチー?」
「ん?…ああ、済まない。先を急ぐんだったね。」
二回目の呼びかけでやっと気が付いたらしく、俺達の所へ戻って来る。

「あの目玉がアイテムでも持ってたか?ホラ、親分に献上しとけ。」
「ははは…残念だけど何も持ってなかったみたいだね。」

ヘンリーと笑い合いながら、隊列の先頭を進むサトチー。

最近、サトチーが上の空になることが多いんだよなあ…人の事言えねえけど。

247 :迷鏡止水【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:20:50 ID:TUfCckLV0
足場の悪い吹き抜けを恐る恐る通り過ぎ、いくつかの階段を上った先は、
狭く入り組んだ下層と違い、一直線にのびる通路のみという実にシンプルな、
下層とは明らかに雰囲気の違う空間。
その通路の奥の祭壇。燦々と差し込む太陽の光を浴びて輝く鏡が見える。
あれが、ラーの鏡…

だが、祭壇へ続く通路の途中には床の裂け目が存在し、俺達の行く手を阻む。
幅は10メートル強といった所か、助走つきのジャンプでも届かない距離。
裂け目の縁から下を覗き込むと、遥か下の方に中庭が見える。

「イサミ。ジャンプ。」(*´∀`)b
「斬るぞ。」
にこやかに俺の肩を叩くヘンリーに対して、思わず剣を向けそうになる。
落ちたら一階までまっ逆さま…潰れたトマトみたいになっちまう。
「マジになるな。冗談だよ。」

「神は、鏡を手にする者の勇気を試されると言われています。でも、これでは…」

…悪趣味な神だな。コレじゃあ身投げじゃねえか、せめてバンジーにしろよ。
マリアさんの語る神に、心で毒づきながら祭壇を見やる。
「ロープを引っ掛けるような取っ掛かりもないね。」
「…跳ぶしかない…な…」
「そうだよなあ…跳ぶしか……は?」

スミスには珍しい冗談か、もしくは俺の鼓膜がイカレたかと思ったが、
スミスは既に後方でクラウチングスタートの体勢を取っている。

「…落ちたらもう一回登れば良い…幸い…私は痛みも感じないしな…」
「ちょ…待…」

サトチーが静止するよりも早く走り出し、スミスが一気に跳んだ。

248 :迷鏡止水【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:23:38 ID:TUfCckLV0
やっぱり跳躍力が足りねえ。スミスはタフだけど基本的に鈍い。
跳躍したスミスの体は、目標の手前で失速。放物線を描いて落下をはじめる。
その姿は、一秒後には床の裂け目の中に消えてしまっているのだろう。

…1…2…3…4…5秒が経過してもスミスは、まだ俺の視界の中にいる…

俺は呆然としながら、足場のない空間を歩くスミスを見つめる事しか出来ない。
不思議そうな顔をしながら歩を進め、祭壇に安置された鏡を手に取るスミス。

「…見えない足場があるみたいですね…」
腰を抜かしてしまい、自力で立つ事の出来なくなったマリアが呆けたように言う。

「…受け取れサトチー卿…ラーの鏡だ…」
何もない空間の上、駆けつけたサトチーに鏡を手渡すべくスミスが一歩進み出る。

               ||||
               |||| ヒュン!!
                ∧_∧
                (´∀` )
'''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''``````''''''''''''''''''

……
瞬間。スミスが裂け目に消え、数秒後には下のほうからドチャリ…と音がする。

「スミスーーーーーーー!!」
「あそこだけ、足場が途切れてたみてえだな。」
サトチーが叫び、妙に冷静なヘンリーが状況を分析。
マリアさんはあまりの事態に気絶しちまっている。

本当に悪趣味な神だな。人(?)の命をなんだと思ってやがる。
神様に会う機会があるのなら、チェーンソーを持参しようと思います。

249 :迷鏡止水【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:29:49 ID:TUfCckLV0
慌てて一階に下りてみると…うん、予想通りと言うか…酷い事になってた。

体半分××ったスミスを中心に、駅のホームにぶち撒けてあるアレみたいなモノやら、
流し台の排水溝に溜まったソレみたいな残骸やら、夏場放置したカレーみたいな…(ry
…色んな○○がばら撒かれた中庭は、まさに地獄絵図。

「…鏡は無事だ…改めて受け取れ…」

そんな状況でも生きているのは、さすが痛みを感じないアンデッドと言うべきか、
ベホイミで治療を受けながら、平然とサトチーに鏡を手渡している。

「イサミよお…こう言っちゃ悪いが、スミスの旦那に任せて正解だったな。」
「ああ、俺達だったら破裂したミートパイみたいになってたろうな…」

「よし、これで大丈夫だ。どうだい?動き難い場所とかあるかい?」
「…問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…」
体のあちこちを動かしながら、スミスが事も無げに言う。

「それじゃあ一度、修道院に戻ろうぜ。マリアさんも疲れてるだろうしさ。」
「そうだね。軽く休息を取って、もう一度ラインハットに忍び込む作戦を練ろう。」

ラーの鏡が太陽の光を反射して輝く。
鏡の中にはどこまでも透明な空色が広がっていた。


イサミ  LV 15
職業:異邦人
HP:69/74
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

250 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/05(月) 20:32:42 ID:TUfCckLV0
第9話投下終了です。

塔の最上階から落下しても無事なDQ勇者はミステリーだと思います。

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 21:12:18 ID:JgyGZVR80
乙。スミスが無駄に格好良すぎるw
ラーの鏡に、イサミ君がどう映るか心配するのはちょっと行き過ぎかね。

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/05(月) 21:13:44 ID:pOH88M600
投下乙でございます。
スミスかっこいい! 頭も良いし、鋭い洞察力もあるし、元は偉い学者だったり?
カタカナ語なくなりましたね。孤独だった頃と違って、常に回復してくれる仲間がいるから、
声帯器官も前より修復されたからでしょうか。

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 00:54:37 ID:iD1GAL4l0
乙!
こんどやるときスミスを仲間にしよう

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 10:44:39 ID:KXyBII/q0
乙!スミスかっこよすぎる!
「サトチー卿」と呼ばれると「サトチー」がすごくカッコいい名前に見えてくるなw

255 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 12:11:22 ID:2/n6cuIq0
> 問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…
スミスさん、すごい・・・・

しかし、ライターはいかに・・・。
やはりこちらの世界からの人間なのだろうか・・・。

256 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:41:51 ID:iRpgzK9P0
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv10
     → 2:ヨウイチ Lv9
        3:タロウ  Lv6

257 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:44:55 ID:iRpgzK9P0
二十八、 始まりへの帰路

「なぁ。 さっきのモンスターってお前より強いのかな?」
「キィ! キキィキィ」
「メイジドラキーっていうのか。
 色違いなだけじゃなくて魔法まで使うし、やっぱり強かったんだろうな」

マウントスノーからだいぶ離れた後、ヨウイチは初めて攻撃魔法というものを経験します。
ドラオをピンク色にした外見だけでなく、不思議な炎の波を起こしてきました。
炎の波はメイジドラキーのつぶやきの後に起こったので魔法だと気づいたのです。

「剣で殴ってもなかなか傷をつけられなかったけど、負ける気はしなかったよ。
 なんてったってブルジオさんにもらった革の鎧があったからな!」
「キキ?」
「いや、熱かったよ。
 炎がこう… バァーっと。 お前も見ただろ?
これが旅人の服だと思うと恐ろしいよ。
…けど鎧の下は普通に布で出来た服だし、やっぱり恐いことに変わりは無いかも」

言いながらヨウイチは銅の剣を抜き、眺めます。
刃は若干こぼれており、切れ味を感じることが出来ません。
そもそも銅の剣は斬るというより殴りつけるふうに使うので、鋭い刃ではないのです。

「銅の剣… 何度も助けてくれたんだけどそろそろ限界だよ。
 そういったって、新しいのを買う金もないし…」

ふぅとため息をついてから、銅の剣を鞘へ収めます。

258 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:48:29 ID:iRpgzK9P0
「まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだからいいか」
「キキィ?」
「これからか…
 神殿の手がかりはなんにも無いし、いちどクレージュへ帰ろうか。
女将さんも心配してるだろうし」
「キー! キー!」
「ははっ。
 俺も早く女将さんのご飯を食べたいよ!」

後ろに大きな山が、だんだんと小さくなっていきます。

「この石版と… どこかにある神殿があれば元の世界に帰れるんだ、きっと……」

ドラオはふわふわ軽く飛んでいましたが、ヨウイチの足元には一歩二歩と踏み込めた後がうっすらと残っていました。

259 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:52:10 ID:iRpgzK9P0
二十九、 モンスター

帰りは順調に進んでいる、つもりでした。
ところが、何処で間違えたのか帰り道とは違う土地へ入り込んでいたのです。
二人は気持ちを落ち込ませないために気づかないふうを装っていましたが、
嫌でも気付かされる事があり、元の路へと引き返そうとしていました。

「くそっ… ドラオ、薬草はいくつ残ってる?」
「キ… キィ」
「五つか。 まずいな…
 お前は怪我してないか?」
「キィキ」
「大丈夫だな。
 とにかく、なんとかしてここを…」
「キキィ、キキキ」
「それは、俺も気付いてたんだけど、間違いであって欲しかったよ。
 …お前の言うとおり、ここは帰り道じゃないみたいだ。
地形が似てるから大丈夫だろうと思ってたんだけど」

メイジドラキーと遭遇したときに周りを良く見渡せばよかったのです。
あの時から方向を見失っていました。

「モンスターが強すぎる…
 もうこの剣に鎧じゃ太刀打ちできそうには…
もしかするとここで…」
「キ! キーキーッ!」
「ふぅ、そうは言っても薬草は節約しなきゃだめだよ。
 とにかく、どこでもいいから町へいける路を見つけるまではガマンするよ。
目処がたつまでとにかくモンスターからは逃げるんだ」

ヨウイチのお腹には大きな爪痕がありました。
大きく削られたそこからは勢いこそなくなりましたが血がしたたります。

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 21:54:34 ID:aGQ9ch840
支援!

261 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 21:57:55 ID:iRpgzK9P0
「ここなら、隠れられそうだ」

ヨウイチが見つけたのは大きな岩に囲まれた平地です。
痛みと出血で弱った身体を休める事にしました。

「イテテ… まいったな…」
「キィ…」

ドラオが心配そうにヨウイチを覗き込みます。

「だいじょうぶ、少し休めば元気になるよ」
「キィ〜?」
「いや、いい。 ほんとに大丈夫だから」
「キキッキキキィィ」
「…わかったよ、薬草ひとつ食べるから。
 それだったらいいだろ? お前、戦えもしないのに探しにいくったって…」

ドラオはヨウイチのために薬草を探しに行こうとしていました。
ですが、こんなにもモンスターの強い場所で一人にさせるわけにはいきません。
ヨウイチは荷物から薬草一つを取り出し口へ放り込みました。

「むぐ、ニガイ………
 ほら、傷口がふさがったよ。 な?
もう大丈夫だ」
「キィ〜〜」

ドラオが安心したようにくるくる飛び回ります。
そんな姿を見ていると、なんだかずっと昔から友達だった気がして、ずっと一緒に旅をしたいとも思うのです。
けれどヨウイチは別世界の人間で、今まさに元の世界へ帰る方法を探しています。
帰ることが出来れば別れが訪れ、お互いは二度と会うこともないでしょう。
ですからこの瞬間をせめて楽しく、無事に旅を終わらせたいと強くつよく信じるのです。

262 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:01:54 ID:iRpgzK9P0
「傷も治ったし、暗くならないうちにいこうか」
「キィ」

立ち上がり一歩、感じたことの無い不穏な空気があたりを包み始めました。
ヨウイチはとても嫌な予感がして、ドラオを促し早足でもときたであろう路を引き返し始めます。
空にはとうとう夕暮れが始まろうとしていました。

「…やばいな」

その時です。
はっきりと何かが駆け始めたと感じた瞬間、目の前に不安の正体が姿を現しました。

「くそ!!」

急いで銅の剣を突き出します。
ドラオも一生懸命にヨウイチのやや後ろへと下がりました。

「なぜ人間とわれわれ魔の者が行動を共にしている?」

全身をローブで覆われ片手に杖を携えるモンスター、まどうしです。

「お、俺達に戦う意思は無い! だから─」
「ドラキーよ、貴様はこの人間に操られているのか?
 ならばいますぐその縛を解いてやろう」

ヨウイチの言葉を無視し、まどうしがスライムナイトと同じような仕草を始めます。

「やめろ!!」
「…ラリホー!」

263 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:06:54 ID:iRpgzK9P0
剣を振りかぶりまどうしへ切りかかりましたが、刃先が当たる瞬間身体から力が抜けてしまいます。

「う、あ、なんだねむい…」

とても我慢できるような眠気ではありません。
まどうしは何も無かったかのように再び、ドラオへおかしな術を施しています。
ドラオをみると怯えてはいましたが、目は釣りあがり明らかに変化し始めていました。

「くっ…」

ドサリと地へ身体ぜんぶを横たえ、重くなったまぶたと一緒に意識が薄れていきます。
どうにか目線だけをドラオへ向け、驚きました。
それはドラオではなく、ヨウイチを今にも襲わんとするモンスターと化していたのです。

「どう、して…… どらお… ドラオー!」

力を絞りドラオへ呼びかけます。
ドラオがどうしてしまったのかはわかりませんが、ヨウイチを見ながらただケケケと笑うだけ。

覚えているのはそこまでです。
もう完全にヨウイチは、求めない深い眠りへと落ち、生きているのか死んでいるのかわからなくなりました。

264 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:07:43 ID:iRpgzK9P0
今日は此処まで。
お粗末さまでした。

まとめ作業は停滞しております。
いましばらくお待ちください。

265 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/11/06(火) 22:08:32 ID:iRpgzK9P0
>>260
支援ありがとうございました!

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/06(火) 22:26:54 ID:aGQ9ch840
乙!! ヨウイチもドラオもヤバイ……(´;ω;`)ブワッ

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