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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
1 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。
前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/
PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi
ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
417 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/23(日) 16:04:04 ID:lk4No4lZO
童貞かと思った………
418 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/24(月) 00:38:47 ID:VSS2U8IrO
ハーフの西洋妖怪狩人じゃね
漏れのマイキャラもDが付いてる
フェンサ・D・ドルーガ
頭悪りぃから、名前として成り立ってるか分かんねえ
419 :
Stage.? 雑談-Deep Red-[1]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/24(月) 17:59:57 ID:jEoq8oIa0
今回の雑談はちょっとワルっぽい雰囲気です。ご注意ください。
タツミ「おお、ワルっぽくだってさ♪ じゃあ少しディープなオトナの話をしようか?」
アルス「はぁ? 俺はいいけど……なんでノリノリなんだよお前、なんか企んでるだろ」
タツミ「別に〜。まずは可愛らしく、今のD談義からとある読者様の一言より、お題。
ぶっちゃけアル君、まさかDじゃないよね? だから最初が聞きたいなー」
アルス「っかぁ! アホか。つまんねえ話だぞ。実ははっきりしねえし」
タツミ「はっきりしない? よけい聞きたいんだけど」
アルス「しゃあねえなぁ」
アルス「とりあえず、俺んちの向かいにある天下のルイーダ's バーだがな。
腕っ節が自慢の冒険者なんざ、8割は魔物狩りで金を稼いでる荒くれまがいだ。
そんなんが世界中から集まってりゃ、当然、酒と賭博ともう一つ、
夜の人材派遣が相当な稼ぎになるんだが、そういうのと間違えられたんだよ、俺」
タツミ「おっとぉ。それはそれは」
アルス「俺もガキの時分は不用心というか、好奇心に勝てなくて、つい覗いてみたワケ。
ま、宵の口はカワイイ坊やに薄めたラムを舐めさせて笑ってるだけの、
気のいい酔っ払いばかりだったんだが、長居しすぎて客相が変わってな。
いつの間にかガラの悪い女パーティーの席で飲んでて、ラリホー耳打ちされてから記憶がねえ」
タツミ「それでも女の人が相手ならねぇ。不幸中の幸い?」
アルス「けっこう美人揃いだったしなw 目が覚めたら城の医務室で、しかも王様が見舞いにきてたよ。
よそ者だったから、まさか俺がオルテガ・ジュニアとは思わなかったんだろう。
可哀想に、そのあと彼女たちを一度も見たことがない。国外追放じゃ済まないだろうしなぁ」
タツミ「ほえ〜! アルって本当に特別扱いだったんだねー」
アルス「俺がじゃない、オルテガの名前がだ。死んだ後もかなりの客寄せになってたからな、
経済効果を考えりゃ、引き継がせる前の俺に、くだらねえスキャンダルは御法度だ。
あのババアも監督不行届で裏稼業はしばらく停止。かなりのあおりを食らったろうよ」
タツミ「お客さんにとってもいい迷惑だw ルイーダさんが君を嫌うわけだよ」
420 :
Stage.? 雑談-Deep Red-[2]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/24(月) 18:02:30 ID:jEoq8oIa0
アルス「まあな。んで問題はほら、記憶がねえって言ったろ? マジでまーったく覚えてねえのよ。
現場に駆けつけたのは正規兵だけで、箝口令でその時の状況はどんなに聞いても口割らねえ。
俺を嫌ってる連中は『アバズレに食われてざまあみろ』って今でも酒の肴にしてるが、
実際は未遂だったんだか最後までイっちゃったんだか、真実は闇の中。
お前ならどう思う?」
タツミ「どうっていうか……五体満足ならどっちでもいいよね。僕ならどうでもいい」
アルス「お前もそう思うか。まぁ俺もそう思ったから、今の今まですっかり忘れてた話だ。
いつ内臓ブチまけてくたばるかもしれない身で、そんなん騒いでもなぁ」
タツミ「あーあ、Y談にもならなかったねー」
アルス「だからつまんねえっつったろ。……それより、こんな話だぜ。持ってねえの?」
タツミ「ちょっと、マジメな首席奨学生にそれを聞く?w 高校入る前にスッパリやめたよ」
アルス「なんだよシケてんなぁ」
タツミ「うっそ。そう言うと思って持ってきた。――って、ゴメン。ガス切れてやんの」
アルス「メラ。100円ライターでも簡単には着けらんねえんだなw あ、意外とうまい」
タツミ「そう? 僕にも……ちょ、動くな……。ん、どうも」
タツミ「んじゃ次のお題ー。なんで魔物ってお金持ってるの?」
アルス「つくづく性格悪いな……お前くらい頭良けりゃわかるだろ」
タツミ「魔王が仕組んでるのはわかるけど。くたばった冒険者の金も自動回収で流通に戻るなら、
悪い話じゃないと思うんだよね。まあ、裏はあるんだろうけど」
アルス「わかってんじゃんw
冒険者なんて、結局どっかの死人が持ってた金をあさる因果な商売さ。
でも腕に自信があるなら一番手っ取り早い稼ぎ方だ。今や世界中に冒険者が溢れてる――。
そこで問題、冒険者って、なんでしょう?」
タツミ「生産性はないしなぁ。減価償却資産? その価値がすり減っていくだけの人たち。
やめる頃には使い物にならないのがほとんどっぽいしね」
421 :
Stage.? 雑談-Deep Red-[3]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/24(月) 18:07:11 ID:jEoq8oIa0
アルス「ご名答。一見そいつらが世界中に金をばらまいてるお陰で活性化してるように思うが、
血を流して稼いでる連中の掃き溜めがいくら潤ったところで、いずれそこから腐っていくだけだ。
なまじ優秀なヤツほど冒険者になりたがり、より多く稼ぐために強い魔物に挑んでは死んでいく。
強い魔物ほど多くのゴールドを持つって習性も、実にうまく機能してるよ」
タツミ「そして若い働き手がいなくなり、潰れる街や村も増える。人類社会は緩やかに廃退していく、か」
アルス「そこまでわかってて、その仕組みを最大限に利用しつつ、『正義』を掲げて魔王打倒を誓う。
勇者なんざ一番ヤクザな稼業だよなぁ。相応の代価もあるがね」
タツミ「他の冒険者と違って、『ダメでしたぁ、テヘ♪』じゃ済まないもんねー」
アルス「そゆこと。……くはは、『現実側』からゲームを見たときは笑ったぜ。
そういう裏事情は見事にカットされてんのな」
タツミ「天下のドラクエで、そりゃ表に出ちゃヤバイでしょw」
アルス「うん、だから安心した。夢とロマンの冒険活劇に見えてるなら、そのままの方がいい」
アルス「よーし、次はお前の番だろ?」
タツミ「そろそろ行数も足りなくなってきたし、今日はここまで♪」
アルス「お、お前ってヤツぁ〜! 人に語らせるだけ語らせといて、自分は逃げる気か」
タツミ「行数がないだけだってば〜」
アルス「違うだろ。俺がユリコとハグしたからムカついたんだろ、実は」
タツミ「……アハ、バレた? 君ってば、どさくさに紛れてあの豊満なプルプルを堪能しやがって」
アルス「不可抗力だっつーの。プルプルとか言うな。ってか、フッといて俺の女扱いかよ?」
タツミ「いいじゃん、番外なんだから。多少の本音は許してよ。ふみゅ〜」
アルス「はいスネないスネない。俺も以後気をつけますから」
タツミ「じゃあいいよ。――さて、そろそろ僕もピュアな本編仕様に戻るかな」
アルス「じゃあ俺も、正義感の強い純粋勇者に戻るかねぇ」
タツミ「次はゲームサイドみたいだから行くね。バイバイ」
アルス「おう」
タツミ「ま、そんな世界でも全部背負って救おうってんだから……すごいよねぇ」
422 :
Stage.? 雑談-Deep Red-atgk
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/24(月) 18:09:33 ID:jEoq8oIa0
本日の雑談はここまでです。
今回は、本編ではほとんど描かれる予定がないゲーム世界の闇部分を書いてみました。
(あくまで「三津原辰巳所有のドラクエ3」の世界のお話でありますが)
決定的な言葉はなるべく省きましたが、苦手な人はごめんなさい。
423 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/24(月) 20:27:14 ID:r9FngCXl0
>>422
本編だけでいいですよw
424 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/24(月) 20:51:36 ID:mFi5ub0WO
なんでよ?本編も番外もひっくるめてこの人の作品だろ。
俺はハメ外し気味の番外好きだからやめないでほしい。
アルスもタツミも意外と不良だなww
でも話の内容すげえレベル高い。
俺にはついていけないw
425 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/24(月) 20:57:19 ID:WgVCPPBl0
>>424
同感。楽しみました。
設定細かいなー
また待ってます。
426 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/24(月) 21:41:33 ID:h1hIeM/QO
>>422
いつも雑談乙。
設定細かくて物語が深みを増すよ。これからもガンガレ。
427 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/25(火) 10:18:44 ID:6I5mHSFj0
アルス淡々と語ってるけど、
当時は結構ショックだったんじゃないかな?
オトナって汚いよね 。・゚・(ノД`)・゚・。
428 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 17:11:18 ID:iiEm08sr0
保守
429 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:35:05 ID:AfZF5mFo0
―上の巻―
……どこだここは?
俺はなぜ滝の前にいるんだ?
これは夢か?
それとも俺は死んであの世にいるのか?
呆然としている俺の耳に妙な声が聞こえてきた。
「あなたの名前を教えてください。」
「誰だ? ……俺は死んだのか?」
「私はルビス。すべてを司るもの。」
どっちだろう。こいつは神か、それとも痛い人か。
「俺の名前はエンだ。」
後者だと判断して偽名を使うことにした。こんな奴に本名が知られるのはやばい。
エンは通貨単位の円だ。これが思いついたのは俺が為替専門のデイトレーダーだからだろう。
「それは本名ですか、戒名ですか?」
ルビスがそう聞けば「やっぱ死んでるんかい!」と返したところだが言ってこなかった。
奴はせっかくの笑いを取るチャンスをつぶしたわけだ。
もっとも、そんなもので笑うやつがいればの話だが。
その後ルビスはいくつかの質問を出し、俺はそれに答える。
奴は質問から分かったという俺の性格について駄目出しをしてきた。
いるよな、こういう占い師って。
言うこと聞かないと不幸が訪れるとか。
そういうのは言うこと聞いたほうが不幸になるんだよな。
不幸ってなんだ。死ぬのか。……あれ、俺って死んだんだっけ?
ルビスは俺が死んだかどうか答えていないよな。
そんなことを考えていたら、そこで意識が途切れた。
430 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:36:09 ID:AfZF5mFo0
……
「起きなさい。私のかわいいエンや……」
きっつい台詞とともに俺は目を覚ました。
目の前の女は一方的にしゃべったあとついて来いと言って出て行った。
あいつ誰? さっき俺が名乗ったエンと呼んでいたが……。
ふと、部屋の鏡が目に入った。
そこに俺の顔は映っていなかった。その代わり見知らぬ顔があった。
女の後をついていったところ、俺は王様だと言う男から世界を託された。
状況を整理すると、俺は勇者であり父の果たせなかった魔王退治の旅に出るらしい。
さっきの女は母親だ。何をどうしたらこんなことが起きるのだろうか。
ひょっとして死んでこの男に生まれ変わったのだろうか?
だが、母が俺の考えたエンという名前で呼ぶのはどういうことだ。
考えても答えは出そうになかった。あきらめてこの状況を受け入れるしかなさそうだ。
旅に出るにははじめに酒場で仲間を募るのが筋らしい。
「連れて行くなら戦士、僧侶、魔法使いの3人がいいぜ。ひっく!」
酒場の酔っ払いがそんなことを言ってくる。
酔っ払いの言うことは真に受けないことにしている。
しかもこいつは魔法使いなんて薦めてくる。
魔法使いを自称するような奴には近づかないのが身のためだ。
俺は武闘家、商人、盗賊の3人を連れて行くことにした。
どういうシステムか分からんが俺が名前を決めていいらしい。
仲間とはコードネームで呼び合うシステムなのだろうか。
俺は仲間の名前と職業を決めて酒場に呼び出してもらった。
431 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:37:18 ID:AfZF5mFo0
「俺はゲン。武闘家だ。」
無愛想な東洋人風の男が出てきた。
一匹狼を気取っているのだろうがただのむっつりスケベだろう。
「私は商人のドルよ。稼がせてもらうわよー。」
今度は金に汚そうな女が出てきた。
このキャラならば関西弁でしゃべるべきだろう。
道理をわきまえない女だ。
「おいらはユーロって言うんだ。盗賊さ!」
最後はガキンチョじゃないかよ。俺に子守をしろと言うのか。
「おまえ、親は?」
こう俺が聞くとこの子供は泣きそうな顔になった。
……うぜぇ。
そうだよな。まともな親がいればこの歳で盗賊なんてしていないよな。
だが、ここでつまらない身の上話なんて始めるなよ。
俺は他人の不幸自慢で同情するほど人間ができちゃいない。
それに不幸だというなら俺だってそうだ。
たった1人でこんなところに来てしまったのだから。
結局ユーロは涙目になったものの泣きはしなかった。
俺はこの3人を冒険に連れて行くことにした。
3人の本名は知らないがビジネス上の付き合いなので問題ない。
こいつらの給与は国王が払うことになっているだろう。
俺に払えと言ってきても契約書がないので払うつもりはない。
432 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:38:28 ID:AfZF5mFo0
むっつりスケベの武闘家、抜け目がない商人、泣き虫の盗賊。
3人の仲間を連れて楽しい旅の始まり始まり。
これで魔王を倒せばいいわけか。魔王ラモスだかモスラだとか言ったっけ。
冒険して魔王を倒して世界を平和にする。昔話ではお約束のような物語。
その物語の主人公が俺というわけだ。
しかし、このとき俺はまだ理解していなかった。
自分がどこにいてどんな立場なのかを。
冒険は思いのほか順調に進んだ。
この世界にはまだ慣れていないが旅という非日常のおかげで目立たずにすむ。
町での買い物なんかはドルに任せているのでこちらも問題はない。
思ったよりも使える女だ。
旅に出るため知っている人間に会わずに済むのも都合がいい。
母親にもなるべく会わないほうがいいだろう。さようなら俺の母。
そういえばリアルの俺の親はどうしているだろうか。
俺がいなくなったからといって泣いている姿が想像できない。
旅には危険がつきものだ。道中モンスターが襲ってくる。
モンスターまで出てくるとはどこまでもお約束な世界だ。
初めての戦闘こそ戸惑ったがそれ以降は何とかなっている。
しかし仲間全員モンスターとの戦闘経験がなかったのは予想外だった。
特にゲン。こいつが一番モンスターにびびっていたんじゃなかろうか。
武闘家を名乗ってこの体たらく。今までいったい何と闘っていたんだ?
それ以外は問題なかった。一度ユーロが口から血を吐いたことはあったが。
みんなで慌てたが乳歯が抜けただけだった。
433 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:39:30 ID:AfZF5mFo0
その後は盗賊の鍵を手に入れて喜ぶユーロを見て将来を心配してみたり、
魔法の玉で壁が吹っ飛ぶのを見てはしゃぐドルにおびえてみたり、
ゲンにぼこぼこにされるカンダタにちょっぴり同情したり、
村民がみんな寝ている村で俺が変な真似をしようとして止められてみたりしていた。
一方、俺の自身はどんどんおかしなことになっている。
旅を始めて間もなく俺は魔法が使えるようになった。
そのあとロマリアという国では突然王様になった気がする。
続いて武闘家の幽霊が見えた。幽霊のくせに生前の姿ではなく骸骨なのは何故だ。
そして、ついには妖精が見えるようになった。性悪のエルフだったが。
長い旅ではごたごたも起きる。きっかけはアッサラームでの出来事だ。
ユーロがキャットフライというモンスターから宝箱を奪った。
中身はぬいぐるみ。猫の着ぐるみだった。ちょっと小さい。
「これじゃユーロにしか装備できないかしら。」
「いや、ちょっと待て。」
そういうと俺はぬいぐるみを解体した。
「ちょっと細工してみた。装備してみてくれ。」
俺がそう言ってぬいぐるみをドルに渡した。ドルは物陰で着替えて出てきた。
手足の部分に猫手猫足、腰にはしっぽ、頭には猫耳をつけている。
「ねえ、どうかしら。似合う?」
「どうって……」
434 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:40:36 ID:AfZF5mFo0
.
い い の で は な い で し ょ う か 。
.
435 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:41:38 ID:AfZF5mFo0
はじめは『いまさら猫耳ですか』なんて思いました。
でも、やっぱりいいものはいいんです!
などと、つい、広告でよくある商品を使った人の声のようになってしまった。
「ねえ、ちょっとユーロもつけてみて。」
そういうとドルは猫耳をユーロにつけた。
「あら、かわいいわ。」
まあ、これはこれで一部マニアの人に受けそうではあった。
「いいわね。新しい商売になるかも。」
などと言っている。こいつのこういう金の匂いに敏感なところは嫌いではない。
「ぬいぐるみって結構いい防具なのよ。誰が装備する?」
「持っているほかの防具との兼ね合いを考えもっとも守りが固められるように……」
などとゲンが言っているが、そんなことはどうでもいい!
ここで小一時間ほど討論になった。
「おいら、すごろくに行ってていい?」
ユーロが飽きてきたころに結論が出た。誰も装備しないことになった。
次の目的地は砂漠でとてもぬいぐるみなんて着ていられないのだ。早く気づけよ。
436 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/09/26(水) 21:42:42 ID:AfZF5mFo0
その砂漠にある城、イシスで恐ろしい事件が起きた。
魔法の鍵を手に入れるべくピラミッドに入るため墓を管理するイシスの女王に挨拶に行ったときだ。
「女王様に見ていただきたいものがあります。きっと気に入ってもらえると思いますわ。」
ドルがこんなことを言い出した。
「猫耳少年ユーロ君です!」
そう言ってぬいぐるみを装備したユーロを見せた。
どうやら女王は猫耳少年ユーロ君を気に入ったようだ。
城に猫と子供が多いことから気に入るだろうと踏んだらしい。
女王陛下が一部マニアの人と見抜いたドルの目に狂いはなかったようだ。
これでピラミッドに入る許可を得られるだろう。
にゃんこの姿で『盗賊の鼻』の特技を使い鼻をくんくんさせているユーロを見て思った。
連れてくる盗賊は女にすべきだったと。
しかし、俺たちは女王のマニア加減を見誤っていた。
なんと俺の猫耳姿が見たいと言ってきやがった。
恐ろしい女だ……
俺はぬいぐるみを装備した。
なんと言う屈辱。
しかし、俺は相手をたたえることにした。
さすが女王様だ! とんでもないドSだぜ!
こうして俺のプライドという大きな犠牲を払い魔法の鍵を手に入れた。
それを捨てるなんてとんでもない……
―中の巻に続く―
437 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 21:48:14 ID:q9GRL+sd0
>>434
一レス使ってそれですかwww
438 :
Stage.8 hjmn - 1
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:08:07 ID:LfZZ9TuH0
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。さてサンクスコールの前にちょっとこの場を借りまして、
アルスにど〜しても言っときたいことがあるんだよね」
アルス「ちょうどいい。俺もお前に言いたいことがある」
タツミ「ふーん、別にいいけど」
アルス「んじゃ、せーの――」
タツミ「アルスごめん、おとといの雑談は僕が悪かった!」
アルス「タツミすまん、おとといの雑談は俺が悪かった!」
タツミ「………………」
アルス「………………どうぞ」
タツミ「その、冗談のつもりだったんだよ、あんな重い過去があるなんて知らなくてさ。
心の中では『ヤッベ地雷踏んだぁぁ!!??』って血の気引いてたんだけど、
君は淡々と語り続けてるし、僕が変に同情するのもおかしいしって、
こっちもなるべく『大したことじゃないよねー』みたいな返事してたり……ホントごめん」
アルス「あーいや、俺も断りゃいいのに大人げないっつーか、あんなん人前で話すことじゃねえよな。
引っ込みつかなくなって続けてたが、お前も平然と流してくれて逆に助かった。
あとアレも、まさかマジで持ってるとは思わなかったんだよ。一瞬出すの迷ってたろ。
優等生で通してんのに、吸ってたこと知られたくなかったんじゃって……こっちこそすまん」
タツミ「……じゃあこの話はここまでということで。うん」
アルス「おk。しっかし、お前ってもっと生真面目なタイプだと思ってたんだがなぁ」
タツミ「そう見せてるだけで、僕もそんなカタブツじゃあないよ。まあいろいろとねー」
439 :
Stage.8 hjmn - 2
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:10:04 ID:LfZZ9TuH0
アルス「では、こちらの事情でこれ以上お待たせするのも申し訳ないし」
タツミ「恒例のサンクスコール、始めまーす!」
タツミ「えーと、
>>409
様、アレフさんあやしい人になってましたね……。
ショックでしたらすみません。なにか理由があるんだとは思いますが」
アルス「
>>410
様、もしかして相手の正体わかってる? 俺は他のドラクエ知らないからなぁ。
ユリコに関しては、俺もビックリしたよ。役得だったけどなw」
タツミ「ま、まあ不可抗力だから仕方ないか。
>>412
様、キックボクシングだか
テコンドーだか知りませんが、彼女に本気で蹴られたらマジで吹っ飛びますw」
アルス「経験あるのかよ。
>>413
様、確かにリアルサイドの戦闘は制限があるみたいだな。
もう一回くらい誰かと手合わせして、その辺の調査しないとマズイなぁ。
ちなみに目の色は、もともとうっすら色が入ってんの。詳しくは近々本編で」
タツミ「
>>414
様、そう! 知らなかったよ、君の本名アルセッドって言うんだね?」
アルス「言ってなかったっけ。真ん中(ミドルネーム)はうちの習慣で名付け親の名前が入るんだ。
なので
>>415
様が言う、ワンピースでの定義とはちょっと違うんじゃねえかな」
タツミ「
>>416
様、ということで『ドラクエ』も違うみたいですね。んで、なんて入るの?」
アルス「少なくとも
>>417
様のは違うかなw 大したことでもないんで説明するが、
俺の場合は名付け親がデニーじいちゃんだったから、Denyって。それだけ」
タツミ「なるほど。
>>418
様、違ったらごめんなさい、吸血鬼ハンターの人ですか?
マイキャラさんとは、どうぞ仲良く♪」
アルス「しかし……ふぅ」
タツミ「どうしたの」
アルス「いやさぁ……。なんかユリコちゃんの大活躍のおかげで、
俺の前半の死闘がすべてオマケだったような気がするんだけど .....orz」
タツミ「仕方ないんじゃないかなー。インパクトあるでしょ、あっちの方が」
アルス「そうだな……」
440 :
Stage.8 hjmn - 2
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:16:10 ID:LfZZ9TuH0
アルス「では、こちらの事情でこれ以上お待たせするのも申し訳ないし」
タツミ「恒例のサンクスコール、始めまーす!」
タツミ「えーと、
>>409
様、アレフさんあやしい人になってましたね……。
ショックでしたらすみません。なにか理由があるんだとは思いますが」
アルス「
>>410
様、もしかして相手の正体わかってる? 俺は他のドラクエ知らないからなぁ。
ユリコに関しては、俺もビックリしたよ。役得だったけどなw」
タツミ「ま、まあ不可抗力だから仕方ないか。
>>412
様、キックボクシングだか
テコンドーだか知りませんが、彼女に本気で蹴られたらマジで吹っ飛びますw」
アルス「経験あるのかよ。
>>413
様、確かにリアルサイドの戦闘は制限があるみたいだな。
もう一回くらい誰かと手合わせして、その辺の調査しないとマズイなぁ。
ちなみに目の色は、もともとうっすら色が入ってんの。詳しくは近々本編で」
タツミ「
>>414
様、そう! 知らなかったよ、君の本名アルセッドって言うんだね?」
アルス「言ってなかったっけ。真ん中(ミドルネーム)はうちの習慣で名付け親の名前が入るんだ。
なので
>>415
様が言う、ワンピースでの定義とはちょっと違うんじゃねえかな」
タツミ「
>>416
様、ということで『ドラクエ』も違うみたいですね。んで、なんて入るの?」
アルス「少なくとも
>>417
様のは違うかなw 大したことでもないんで説明するが、
俺の場合は名付け親がデニーじいちゃんだったから、Denyって。それだけ」
タツミ「なるほど。
>>418
様、違ったらごめんなさい、吸血鬼ハンターの人ですか?
マイキャラさんとは、どうぞ仲良く♪」
アルス「しかし……ふぅ」
タツミ「どうしたの」
アルス「いやさぁ……。なんかユリコちゃんの大活躍のおかげで、
俺の前半の死闘がすべてオマケだったような気がするんだけど .....orz」
タツミ「仕方ないんじゃないかなー。インパクトあるでしょ、あっちの方が」
アルス「そうだな……」
441 :
Stage.8 hjmn - 3
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:17:28 ID:LfZZ9TuH0
アルス「続いて雑談についてのサンクスコール。
>>423
様、いやーすみません。やっぱ聞いてて気分のいい話じゃないよな」
タツミ「くだらない話題を振っちゃった僕が悪かったんです。ごめんなさーい。
>>424
様、本編も番外も楽しんでもらってありがたいです。
僕の場合は、バレないようにちょーっと悪いことやってるタイプですねw」
アルス「
>>425
様、あくまで俺みたいなガキから見た世界観なんで、
たくさん間違ってるところもあるんだろうけどな」
タツミ「
>>426
様、アルスが言うように、これから物語が進んでいくうちに、
新たにわかってくることも多いと思います」
アルス「
>>427
様、……まあ当時はそれなりに。三日間くらい部屋に閉じこもってたかなぁ。
もう過去のことだし、今はまったく気にしてないけどさ」
タツミ「以上になりますね。いろいろ至らない主人公ですけど」
アルス「今後ともよろしくお願いしやっす」
タツミ「いやはや、すっかり前座が長くなってしまいましたが……」
アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』
【Stage.8 新しいお友達】
ゲームサイド [1]〜[6]
442 :
Stage.8 [1]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:18:15 ID:LfZZ9TuH0
Prev
>>400-407
(Game-Side Prev (マエスレ)
>>558-569
)
----------------- Game-Side -----------------
アルスがなんだか大変なことになっていた、その頃。
そんなことは露も知らず、僕は初めての船旅に浮かれていた。真っ白な帆船『リリーシェ
号』は、ロマン溢れる冒険の旅に相応しく。
夕日が世界中を黄金色に灼きながら、水平線の向こうに沈みかけている。思いきり潮風
を吸い込めば、自然と歓声も上がる。
「っん〜っ、気持ちいい! けっこうスピード出るんだね」
「今日は潮も風も最高だ。勇者ってのは、自然も味方につけるみたいだな」
船長のモネさんがガッシリした手を僕の肩に置いて笑った。
もじゃもじゃの白ヒゲと、ちょっと悪党っぽい刺青と、トレードマークのキセル。ポル
トガ王から僕らの航海を任された人なんだけど、まさに「いよっ海の男!」って感じの、
頼りがいのあるおじいちゃん船長だ。
「これなら、明日の朝にゃあエジンベアに着くぜ」
「お願いします」
問題はあの差別主義の番兵だな。ロマリア国王(仮)をやってたときに事前に釘を刺し
ておいたし、ポルトガ王の紹介状もあるから大丈夫だとは思うけど……くしゅん!
「おっと、風邪ひいちゃいけねぇ。さ、中に入んな」
「はーい」
船室に戻ろうとしたら、入れ違いにロダムとサミエルが出てきた。ロダムは口に手を当
てて青い顔をしている。船酔いがひどいらしい。
「大丈夫?」
「え、ええ、ご心配なさらz……うぷ!」
船縁に駆け寄り、身を乗り出してまた吐いている。
ロダムの背中をさすりながら、サミエルは脳天気に笑った。
「しっかし意外ッスよねえ。てっきり勇者様だと思ってたのに」
「別に僕は、酔いやすくて吐いてたわけじゃないってば」
でも気持ちはよーくわかる。あんまり吐くと胃を痛めるし。頑張れロダムー。
443 :
Stage.8 [2]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:20:38 ID:LfZZ9TuH0
船室に降りていくと、なにやらみんなが騒いでいた。「あっち行ったぞ!」「こっちに
逃げた!」とか叫んでいるから、ネズミでも出たんだろうか。
エリスがいたので聞いてみると、なんでも魔物が荷物に紛れて乗り込んでいたらしい。
「教会の洗礼を受けていない魔物を乗せるのは、縁起が悪いんだそうです」
「そうか。船乗りさんは験(ゲン)を担ぐ人たちだからね」
こういうのはただの迷信じゃなく、昔からの知恵が反映されていることが多い。僕も手
伝った方がいいかな。
「勇者さーん、そっちに行きゃしたぜ!」
「え?」
瞬間、足下をなにかが駆け抜けていった。ランプの明かりじゃ暗くてよく見えなかった
んだけど、サッカーボールくらいの青いカタマリが、僕の後ろの、樽の陰に隠れたようだ。
「勇者様は下がっていてください」
エリスが杖を構えて前に出ようとする。
「待って待って、たまには僕に任せてよ」
逃げ回ってるくらいだからそんなに強い魔物でもないんだろうし。
船員にランプを取ってもらって、かざしてみる。どれ、確かこの辺に……
そこで僕は、見てしまった。
こ、こんな……こんなことがあっていいのか?
ありえない。ありえないモノが、こ・こ・に・い・る!!!!!
「カ………………………カ〜ワ〜イ〜イ〜ッッ☆♪!!」
ちょ、ちょっと待ってよ、なにこの、つぶら〜な瞳!
丸くてね、半透明でね、プルプルしててね、もうなんて言ったらいいのか!
444 :
Stage.8 [3]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:21:19 ID:LfZZ9TuH0
「いや〜カワイ過ぎるッッッッ!! え、もしかしてこれがスライム?」
「そうみたいですね」
横からのぞき込んだエリスがうなずいた。あんまりカンドー無いみたいだけど、女性は
こういうのに弱いんじゃないの?
「私たちは子供の頃から見慣れてますから。そう言えば勇者様、アリアハンからロマリア
に直行しましたから、近くで見るのは初めてでしたか」
そうなんだよ。これならアリアハンでちょっと外に出てみれば良かった。
さて、モニターの前の読者様は「たかがスライムだろ?」と思われるかもしれない。
ドラクエ界ナンバー1の有名モンスター、あまりにいろんなメディアやグッズで出回っ
てるから、いまさらというか……。
だぁがしかし、ホンモノはもう想像の範囲外! ウェルシュコーギーの子犬にもアメリ
カンショートヘアの子猫にも負けず劣らずの愛らしさだ。そんなのがウルウルした目で僕
を見上げているのだから、言うことはひとつしかない。
「飼う!」
「ダメです」
光の速さで却下されたぁ!
僕が味方だとわかったのか、スライムは物陰から出てくると、ピョンと僕の胸に飛び込
んできた。柔らかくてひんやりした肌触りも超GOOD!だ。あ、なんか震えてるよぉ。
「いいでしょエリス。こんなに怖がってるのにっ」
スライムを抱きしめて訴える僕を、エリスと屈強な船乗りさんたちがじりじり取り囲む。
「そうは言ってもなぁ。勇者さん、洗礼してないのはヤバイんだよ」
「他の魔物を呼び寄せてしまうそうです。海のモンスターは手強いんですから、危険はで
きるだけ回避するべきですよ、勇者様」
「じゃあ、どうするの……?」
「海に捨てます」
そ、そんな〜!
「死んじゃうじゃないか! 可哀想だよ、この子なんにも悪いコトしてないのに!」
ランランララランランラ〜♪
445 :
Stage.8 [4]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:22:30 ID:LfZZ9TuH0
誰だナウシカのBGMかけてるヤツぁ! やめやめ、あれ防衛に失敗してるじゃん!
「お願い、ちゃんと面倒見るから。ね? ね?」
「ダメったらダメです。わがまま言わないでください」
「お願い、ちゃんと面倒見るから。ね? ね?」
「ループ合戦なら負けませんよ。朝まで続けますか?」
「よーし朝までやろうじゃないか。その頃にはエジンベアだ、真っ先に教会に行って、そ
の『洗礼』とかいうの、やってもらえばいいんでしょ?」
「勇者様ってば……」
あきれ顔でため息をつくエリス。わかってはいるけど、でも〜。
「おや、皆さんどうしたんですか?」
そこにロダムとサミエルが戻ってきた。船員さんの1人が説明する。
穏やかに聞いていたロダムは、事情がわかると僕の方に近づいてきた。
「まあまあ、そんな涙目で睨まないで。この子に洗礼をしてあげれば良いんでしょう?」
「え……ロダム、できるの?」
にっこり笑う宮廷司祭殿。
「あんた神父の経験があるのかい?」
モネ船長がほぉっと感心する。ロダムは少し照れたように頭をかいた。
「まだ駆け出しの時に武僧に転向したもので、簡単な典礼だけですがね」
ロダムは僕からスライムをそっと受け取ると、テーブルの上に置いた。スライムはおと
なしくしている。
気を利かせた船員さんが分厚い本を持ってきた。バイブル――聖書か。
ロダムが祈祷を始めると、みんなが手を組んで祈り始めた。僕もそれに倣う。
お、スライムも目を閉じてるし。賢いやつだなぁ♪
たっぷり10分くらい祈ったのち、精霊神ルビスに誓いを立てて聖水をかけて(ダメー
ジ食らうんじゃ!?と心配したけど平気そうで良かった)、スライムの洗礼は終わった。
◇
446 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 22:23:53 ID:q9GRL+sd0
リアルタイムktkr支援
447 :
Stage.8 [5]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:25:27 ID:LfZZ9TuH0
下を向いて本(聖書)を読んだせいで、ロダムはまた酔いがぶり返し、儀式が終わった
途端に甲板に出て行った。ありがとうロダム、あなたの犠牲は無駄にしないよ!
「プニプニしてかわいーなー♪ よし、お前の名前はヘニョだ」
「ヘ、ヘニョ……?」
エリスとサミエルが口の端をヒクヒクさせている。そのいかにも「こいつセンスねぇな」
的な眼差しが痛いんだけど。
だって誰かさんがあんまり嫌がるからさー。いいじゃないか、スライム本人だって気に
入ったみたいだし。ずーっとニヘラっとしてるから、いまいちわからないけど。
「そろそろメシにするぞ」
「お、待ってました!」
船員さんに声をかけられて、サミエルがさっそくとなりの食堂に移動する。
「ここのシェフのメシはうまいッスよねぇ」
「だねー。そういえばヘニョはどんなもの食べるの?」
「基本は草食ですが、だいたいなんでも食べますよ」
雑食と思っていいのかな。じゃあ旅の間もエサには困らなそうだ。
……だが、その雑食性であることがどのような問題を引き起こすのか、僕はすぐに思い
知ることとなった。
今日の夕飯は子羊のシチュー。黒胡椒がピリッと効いてなかなかの美味。ヘニョも食べ
たそうだけど、まだ熱すぎるかな。
「冷ましてあげるから、もうちょっと待ってね?」
僕のひざの上で不服そうにしているヘニョをなぜてやる。
と、視界の隅をなにかがカサカサっと走り抜けた。
同時に、ヘニョがピョンと飛び降りて素早く追いかけていく。隅の方でガタガタなにか
と格闘して、すぐに僕のひざに戻ってきたんだけど。
448 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 22:25:58 ID:fAepN6m90
支援支援
449 :
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:40:49 ID:FyRAD7UqO
さる規制の解除はどのくらい待てばいいんでしょう?
450 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 22:48:21 ID:ypx9CU/uO
支援!!
451 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/26(水) 22:52:28 ID:RGxEUlICO
支援!
452 :
Stage.8 [6]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:54:44 ID:FyRAD7UqO
その口には――ネズミがくわえられていた。
すごいでしょ、と目をキラキラ輝かせているヘニョ。……まったく動けない僕。
まだバタバタ暴れているネズミを丸呑みするヘニョ。……顔がひきつってる僕。
パキパキ絞め殺されるネズミが透けて見えるヘニョ。……鳥肌たちまくりな僕。
ニヘラっと笑う口の中が血まみれになってるヘニョ。……今にも吐きそうな僕。
「やるもんだなぁ! よっぽど腹が減ってたんだな」
モネ船長や船員さんたちの評価が上がったことは喜ぶべきなんだろうけど。
僕は震える手でそーっとヘニョを床に降ろし、できるだけゆっくりと食堂の出入り口に
向かった。みんな必死で笑いをかみ殺してるんだけど、僕にそれを抗議する余裕はない。
ドアを開けて、ドアを閉めた瞬間に、甲板への階段を駆け上がる。見張りに出ていた船
員さんが驚いて声をかけるのも無視して、ロダムのいる船縁に猛ダッシュ。
彼のとなりに立つなり、今食べてたシチューをお魚さんのエサにしてやったわけで。
「……おや、勇者様も酔ってしまわれたんですか?」
「まあ、ね」
だーかーらー! こんなリアルなのドラクエじゃねえっつーのぉ!
せめてスライムくらい、可愛いままでいて欲しかったよ、ううっ。
――To be Continued.
453 :
Stage.8 atgk
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/26(水) 22:58:49 ID:FyRAD7UqO
本日はここまでです。
なんか
>>440
が重複してしまいました。
まだ専ブラに使い慣れていないもので……どうもすみません。
それにしても、本当にさるさんはキツイなぁ。
今回も最後は携帯で投下。改行とか不安です。
454 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 10:11:03 ID:yG617Fvu0
>>429-436
冒険の書シリーズキター!
今回はデイトレーダーが主人公か。仲間の名前がみんな通貨単位だw
猫耳主人公・・・いろいろ捨てちゃったなww
次の巻が待ち遠しい
>>438-453
二人とも仲いいよな
お互いしまったとか思いながら会話してたのかw
そしてヘニョktkrwwww
涙目で訴えてるタツミの方がかわいいw
455 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 18:41:59 ID:efRvWzNwO
◆IFDQ/RcGKI氏
乙です。
いつの間にか船を手に入れたんですね
回想と云う形でも良いので
エリス救出からの話も語ってもらえたら
幸いです。
456 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 21:21:25 ID:JNDw+xYXO
R氏乙です。
スライムはペットとして絶大な人気ですねw
それにしてもスライムを観察しとけば消化の様子が分かるのだろうか…(((゚Д゚;)))
457 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:37:54 ID:EPkVQ+2r0
○竜王○
タケ「お前が竜王か。どう見てもガキっぽい奴やなぁ……」
ハッキリ言って驚いておるんよ。
竜王って威厳があるおっさん顔の様な奴だと思っていたんやけど、どー見ても中坊ぐらいのガキしか見えへんのや。
けど……幼顔だからっと言って気は抜けへん……
ターバンみたいなモンを被って顔を隠しているんやで。性別すら判断できん。
竜王「そう睨むな…混沌の戦士よ。まだ戦いを望むか?」
タケ「アンタがやる気なら……俺はやるで。」
竜王「無理するのはよせ。実際は立っているのがやっとだろう。回復させてやる。」
あっさり俺の状態を見抜きやがった。
その直後竜王は俺に回復呪文を唱えたんや。疲労も怪我した箇所も一瞬にして回復したで!
しかしスゲエ呪文や。
タケ「どういうつもりや!?敵に塩を送る真似しやがって。」
俺はとっさに剣を構えた。
竜王「剣を納めろ。私はお前達と争うつもりはない。少し時間が立てばお前の相棒も目が覚めるだろう。」
一体どういうつもりや?竜王は即座にギィンにも同じ呪文をかけた。
458 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:39:06 ID:EPkVQ+2r0
ギィン「す、すみませぬ。竜王様……」
竜王「まぁよい。やはり老いには勝てぬか。」
ギィン「お恥ずかしい限りです。」
竜王「ギィン。お前の執念は理解できるが我慢しろ。今はこの者達と話がしたい。」
ギィン「はっ………かしこまりました。」
竜王「さて、アレフの子孫達、そして混沌の戦士よ。私が竜王だ。」
ムーン「あ、あなたが……りゅ、竜王……」
竜王「何を震えておる……私は話をするだけだ。すまないがお前の様な臆病者とは話しにならん。」
ムーン「くっ…」
さりげなくきつい事を言うなぁ…このガキは。けどおどおどした奴と会話する事に対して
腹が立つのは理解できる。
459 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 22:40:09 ID:8Vy5dXH0O
おっ!リアルタイム遭遇。支援
460 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:41:16 ID:EPkVQ+2r0
タケ「なら俺と話するか?」
竜王「混沌の戦士か………………お前が我々と敵対する状況になっていたとは。正直驚いたぞ。」
タケ「勝手にこの世界に呼び出しやがって。済んだ話の事はもうええわい。
これも一つの因果関係やろ。話は変わるが混沌の戦士と呼ぶのはやめてくれ。俺にはタケって言う名前があるんやで。」
竜王「名前などどうでも良いだろう?仕方があるまい。
タケよ、お前はなぜそんな危険な戦い方をしたのだ?死んでいてもおかしくはなかったんだぞ。」
タケ「運が悪けりゃ死んでいたやろな。ハッキリ言って俺達とギィンではかなりの実力差がある訳や。
ましてたかが鋼の剣がドラゴンに通用するわけがない。にも関らず通用した事がおかしい。
それに全盛期のギィンなら確実に全滅していた。
もょもとに比べたら、あらゆる面で俺が劣っているし。
俺が勝っているのは知恵と予測能力だけ。それに俺なりの自分の意地があったからな。」
竜王「意地だと?……理解できん。
人間とは不思議なものだな。意地で自己犠牲をする価値などあるとは思えんが。」
タケ「なんやて?」
竜王「とりあえずここまでだ。そろそろお前の宿主と代わってもらおう。どうやら目覚めた様だからな。」
あっさり会話を打ち切りやがった。完全に竜王のペースに乗せられちまったわい。
461 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:42:41 ID:EPkVQ+2r0
もょ「う……ううん………ああ、タ、タケ!だいじょうぶなのか!?しかもかいふくしている…」
タケ「心配すんな。ちゃんと約束は守ったで。安心しろ。」
もょ「あ、ありがとう!ムーンがてあてをしてくれたのか?」
タケ「ちゃうよ。手当てをしたのは竜王や。」
もょ「な、なんだって!?」
タケ「理由はわからん。しかし俺の存在が完全にばれたわい。ミスしてもうた…すまん…」
もょ「そうか…」
タケ「それよりも今は竜王がもょと話したがっている。ここは任せるよ。」
もょ「おれにはなしがあるとは……どうしたんだ?」
竜王「成る程。タケとは全く正反対の性格だな。もょもとよ。」
もょ「なんでおれのなまえをしっているんだ?」
竜王「お前たちの戦いと今の会話で知ったよ。話は変わるが、危なっかしかったな…」
もょ「……………だろうな。タケがいなけりゃおれたちぜんいんしんでいた。」
462 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:44:00 ID:EPkVQ+2r0
サマル「なっ………」
リア「……………」
ムーン「で、でもっ……」
竜王「臆病者に回答は聞いておらん。それにしてもすんなりと自分の欠点を認めるとは。大した男だ。
人間とは自分の欠点を認めたがらない生物だからな。」
もょ「いったいどういうつもりなんだ。なにがいいたい?」
竜王「本題に入ろう。まず一つ、このままではお前の友タケは消滅する。」
俺が……消える!?どういうこっちゃ!?
463 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 22:44:15 ID:8Vy5dXH0O
支援
464 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:45:07 ID:EPkVQ+2r0
タケ「お、おい!どういうつもりやねん!」
竜王「まず私の話を聞け。今更バタバタしても仕方があるまい。」
確かに如何し様もねえ。
竜王「本来は私が別の混沌の戦士を呼び出すはずだった。しかしギィンが勝手に呪文を使用し失敗したため、
タケの魂だけがこの世界に来たのだ。当然、憑依する肉体がなければ魂がすぐに消滅することになる。」
もょ「そ、そうだったのか…」
竜王「タケがお前の体内に入ったのは、皮肉にもお前の恐怖の波長がタケの魂の波長に一致したために
緊急避難として最適だったのだ。しかし、いつまでも魂の共有は出来ない。
それにタケはお前や仲間達を守るために生命を削りながら戦ったのだ。」
もょ「なっ…」
竜王「タケは戦闘中に魔法力が無くなって呪文を唱えられる状態ではなかった。そこでタケは己の生命を削って呪文を唱えたのだ。
この方法が一番危ない。魂の消滅を更に加速させてしまう。」
もょ「じゃあどうすればタケのたましいをたすけることができるんだ!?」
竜王「ただでは教えるわけにはいかん。だが、お前達が私の条件を飲んだら教えても良い。」
もょ「いいだろう!」
465 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:46:23 ID:EPkVQ+2r0
竜王「封印を解く紋章を集めて精霊ルビスを呼び出すのだ。誰かがルビスを封印したらしい。
恐らくはハーゴンだろう。」
ムーン「ハーゴン………!!!」
竜王「ほぅ。その名前を聞いただけで恐怖から怒りの感情に変化するとは。只の臆病者ではないな。」
ムーン「いい加減にしなさいよ!誰が臆病者ですって!!」
タケ「落ち着けムーン。今のお前じゃ勝てん。」
ムーン「うるさいわね!!貴方には関係ないでしょ!」
タケ「自分を過信し過ぎじゃボケ!お前の呪文がギィンに全く通用せえへんかったやないかい!現実を知れ!」
ムーン「ううっ……」
竜王「話を戻そう。この呪文の欠点は術者の目の前で召還できないのだ。この世界のどこかに召還されるらしい。」
リア「不思議な呪文だね……」
竜王「なぜ精霊ルビスの封印を解く必要がある理由は、他の世界からの人間を召還する呪文の本を頂戴したからだ。
その本はちょっと特殊でな。一度唱えると呪文を唱えた本人や他の者がいくら試しても二度と唱えることが出来ないみたいなのだ。
悪魔でもギィンの報告を述べただけだが、実際私も試したが呪文が唱えられなかった。」
466 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:47:18 ID:EPkVQ+2r0
サマル「じゃ、じゃあ……他の世界から来た人間が数人いるのだけどその人達は誰が召還したの?」
竜王「タケ以外で異世界から来た人間がいるのか!?」
サマル「そ、そうだけど…」
竜王「もしや……私の予測だが、精霊ルビス本人かハーゴンが呼び出した可能性があるかもしれん。」
ククール達が呼び出したのは多分精霊ルビスだろう。じゃあドルマゲスを召喚したのはハーゴンなのか?
もょ「タケをたすけるためにはもんしょうをあつめればいいのか?」
竜王「そう言う事だ。精霊ルビスしか対応できないだろう。私達にとってもタケが必要だからな。
お互いにとって悪い話ではあるまい。」
もょ「わかった!おれたちがせいれいルビスのふういんをとこう。そのじょうけんはのむぞ。」
竜王「交渉成立じゃな。まずはこれを渡しておこう。」
竜王は太陽の形を紋章をもょもとに渡した。
竜王「この太陽の紋章の他に紋章があるみたいなのだが…確か我が城の書物にあった本によると
5種類あるらしい。しかし具体的などの場所にあるかはわからぬ。」
リア「そんな…」
竜王「心配するのではない。山彦の笛という道具を渡しておこう。
紋章が近くにある場合笛を吹くと、笛の音と紋章と共鳴して音色が少し遅れてもう一度聞こえるそうだ。」
準備周到な奴だ。
竜王「さて、決まった所でもう一つお前達に渡すものがある。いや、返すというべきか…」
もょ「なにをだ?」
竜王「ロトの剣をだ。」
この城に封印されていたのか!!これで確実に戦力が大きく変化する。
467 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 22:47:34 ID:8Vy5dXH0O
支援
468 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:49:01 ID:EPkVQ+2r0
ギィン「りゅ、竜王様!あれは私が封印したのですよ!それを忌々しいこやつらに渡すとは一体どういう考えのつもりです!?」
竜王「ギィン。世の中は変化しておるのだ。それに対応しなければなるまい。」
ギィン「し、しかし…」
竜王「私なりの考えがある…(ゴニョゴニョゴニョ…)」
ギィン「―――――――――――その理由なら仕方がありませぬ…お前達。着いて来るが良い。」
ギィンが俺達を案内し始めた。何か企みがあるみたいだが今は従うしかあるまい。
ギィンが案内した部屋に到着すると不気味な感じの部屋だった。黒い煙の様な物が剣を取り囲っている。
ギィン「では……封印を解くぞ。」
ギィンが詠唱始めたら黒い煙が徐々に消えていって剣が姿を表した……
サマル「こ、これがロトの剣……」
驚くのは無理もない。何せ150年も封印されていたために剣全体が寂び付いていたのだ!
竜王「ふむ……長い歳月は聖剣ですら時の流れには逆らえぬみたいだな。」
ムーン「こ、これは本物なの!?貴方達嘘ついているんじゃない!?」
ギィン「貴様何を言っている。封印した私が言っているから間違いない。
竜王様が不在ならとっくに貴様を切り裂いている所だ!!」
ムーンもいい加減にしてくれよ。こいつは対人恐怖症なのか?
もょ「いや、もっていこう。」
リア「ええっ!?」
もょ「たぶんごせんぞさまがみまもってくれそうなきがするんだ。しかしほんとうにもっていっていいのか?」
竜王「かまわぬ。お前達が持ったほうが都合が良いだろう。」
ロト剣を手に入れた。しかしただの錆びた剣しか見えないが、御守代わりにはなるだろう。
469 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2007/09/27(木) 22:50:19 ID:EPkVQ+2r0
竜王の城から出た時にそれが起こった―――――――――――――――――――――
人の醜悪の部分――――――――――避けられぬ状況が――――――――――――
もょもと&タケ
Lv.18
HP: 77/130
MP: 4/ 9
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
火炎斬り
470 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 22:53:53 ID:8Vy5dXH0O
レッドマン乙です!
しかしwktkする展開だな。
続きを待ってるぞ( ^ω^)
471 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/27(木) 23:32:45 ID:rt0mO95o0
レッドマン氏乙
初回からほぼリアルタイムで読ませてもらってるが
正直かなり巧くなってるな
文章もシナリオも
毎回すげー楽しみだ
472 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/28(金) 14:35:02 ID:qac/B8ie0
レッドマンの最近の展開が読めない。
いい感じだ。GJ!
473 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/28(金) 21:00:46 ID:oM6IygMU0
あえて苦言を呈させてもらうが、台詞の前にキャラ名を付けるのは何とかならないかな。
読みにくいし。
付けなくても誰の台詞か判る工夫をして欲しい。
474 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/28(金) 23:07:58 ID:SZkRJD+CO
レッドマン乙!
もぅ
じらさないでよ///
475 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/29(土) 13:11:42 ID:Pner0Evt0
作者さんのスタンスだし良いんじゃない?
ただ誤字は良作が駄作になってしまうから気をつけた方がいいね。
次回も期待!
476 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/29(土) 20:30:26 ID:V7PDbWqFO
誤字脱字や各キャラクターの自然なセリフ回しをチェックする簡単な方法。
声に出して感情込めて読む!
最初こそ恥ずかしいかもしれないが、マジお薦め。
477 :
Stage.9 hjmn
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 22:52:58 ID:4pwvblo40
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。まずは改めて皆さんにご紹介します。うちの新メンバー、ヘニョちゃん!」
アルス「その名前どうにかしろ。いくらスライムたって、そんな弱そうなのはないだろ」
タツミ「実はヘニョは愛称なんだもんね。本名は立派だよ?」
アルス「ほぉ、言ってみろ」
タツミ「ヘニョリゲス!」
アルス「もっと弱そうだろ! ワザとか!?」
タツミ「もしドルマゲスがヘニョリゲスだったら、あんなに売れなかっただろうな」
アルス「なんの話だよ……」
タツミ「と、雑談はこれくらいにして、恒例サンクスコールいっきまーす!」
アルス「
>>454
様、うーん最近は『仲いいのかな』と思い始めてる。なぁタッちゃん?」
タツミ「ヒトを騙し半分で危険な世界に放り込んだ人間がなに言ってんだw
さて、
>>455
様……それはつまり黒胡椒を取ってくるあたりも含まれますよね」
アルス「そうだ忘れてた! お前カンダタにさらわれたんだよな? なにがあったんだ」
タツミ「うっ、読者様のリクエストじゃあ断れないもんなー。そのうち語ります、そのうち。
>>456
様、普通の草なんかを食べてるだけだったら、それほどでもないんですけどね。
もう生きたエサは与えないようにしないと。とほほ」
アルス「いつも感想レスありがとさん!」
タツミ「投下中のご支援にも本当に感謝しています。これからも応援よろしくお願いします」
アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』
【Stage.9 仮免勇者と彷徨勇者】
[1]〜[6] ゲームサイド
478 :
Stage.9 [1]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 22:56:04 ID:4pwvblo40
Prev
>>442-452
----------------- Game-Side -----------------
トントン、とボールが弾むような音がした。ヘニョだ。相変わらずの笑顔だけど、少し
手前で留まってモジモジしている。気にしてるのかな。
おいで、と手を差し出すとピョンと飛びついてきた。
「ごめんごめん。君が悪いんじゃないよ」
スライムも生きているんだから、100%「かわいい」だけで済むはずがない。勝手な理
想を押しつけようとした僕が悪いんだよね。
リアル……か。
「そう言えば、ロダムは神父さんだったの?」
さっき気になったことをそれとなく聞いてみる。ロダムは少し口ごもった。
「そうなんですがね……いや、お恥ずかしい話なんですが」
頭をかく彼に、僕は首をひねった。「神父」と「僧侶」の違いもよくわからない僕には、
なにが「お恥ずかしい」んだかも理解できない。
ロダムもそれに気づいたのか、「異世界の方なんでしたね……」と苦笑した。
「簡単に言うと、神父は殺生できないから、僧侶になったということですな」
神父はあくまで「救う」職業であって、たとえ魔物でも無闇に命を奪うわけにいかない。
だが世界規模で魔物被害が拡大している昨今、彼らの強力な退魔能力を正当に利用するた
めに、殺生を許された特別な聖職が設けられた。
それが「僧侶」。だが名目上はどうあれ、殺すために聖職に就くという矛盾は埋めよう
がなく、特に神父からの転職は「宗旨替え」と中傷を受けることも多かったという。
「最近は理解されてますがね。現実問題、きれいごとで魔物は払えませんしなぁ」
「ロダムはどうして……やっぱり、街が魔物に襲われたから、とかで?」
「よくある話ですよ。妹一家が犠牲になりまして」
ロダムはただ穏やかに、月明かりに煌めく夜の海を見つめている。
「本来は神父の修行をする『宮廷司祭』も返上するべきなんですが、国王様が認めてくだ
さいましてね。ありがたいことですよ」
旅が終わったあとは、たとえどんなに殺生を犯してもまた神父に戻っていいってことだ
そうだ。こんな特別待遇を設けてるのは、世界中でもアリアハンだけなんだって。
479 :
Stage.9 [2]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 22:58:28 ID:4pwvblo40
「へぇ、あの王様もけっこういいとこあるじゃん」
優秀な人材が勇者にスカウトされないよう、ルイーダに手を回したりしてたけど。それ
だけ「人」の力を大事にしてるってことなのかもしれないな。
本当に複雑だ。「現実」と同じように。
この世界もまた、様々な人間模様があって、そこに悲哀があって、歓喜があって、みん
な一生懸命に生きている。とてもこれが「ゲーム」だなんて思えない。
いや、ゲームだからなんだっていうんだ? そんなのは、僕の住む世界から見たときの
勝手な枠組みでしかない。ここにはここの、確かな「リアル」がある。
でも……それでも、彼には耐えられなかったんだろうか。
すべて投げ出してもかまわないくらい、「ゲーム」という事実が嫌だったんだろうか。
アルスは捨ててしまった。勇者であることも、家族や恋人や、仲間も、なにもかも。
そんなこと、アルスを信じ切っているみんなにはとても言えなくて、僕は彼の行き先も、
彼と連絡が取れることも隠している。魔王を倒せば戻ってくる、なんて嘘をついている。
本当は、ちょっと、苦しい。
「――勇者様?」
「あ、はい! ……え、どうしたの?」
つい考え込んでしまった僕は、ロダムがなんだか険しい顔をしているのに驚いた。
「大変なことを忘れていましたよ。職業の話で思い出したのですが、勇者様はまだ本試験
に受かっていらっしゃいませんよね?」
「ホンシケン? なにそれ」
「まずい、もう日にちがありませんぞ」
ロダムは急に僕を船内に引っ張っていった。ヘニョもピョンピョンあとをついてくる。
僕らに割り当てられた船室に戻るなり、そこにいたエリスやサミエルも交えて、いきな
り作戦タイムに突入。
480 :
Stage.9 [3]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 23:02:20 ID:4pwvblo40
なんと僕、まだ「勇者」の仮免中なんだって。
……仮免?
◇
「そうですよ、忘れてました! アルス様、本試験の前にいなくなられましたから」
エリスも口に手を当てて「参ったな」って顔をしている。
「よくわかんないんだけど……僕はまだ正式な勇者じゃないってこと?」
「勇者様は、『勇者』というものについてご存じですか」
逆に問い返されて、僕はふるふる首を振った。
ダーマで転職できないから「勇者」が職業だっていうのはわかるんだけど、勇者は勇者
だってなんとなく思ってたし。
「勇者というのは通称なんです。正式には『世界退魔機構認定特別職一級討伐士』という
んですよ」
そ、そりゃまたご大層な。
世界退魔機構とは、ほぼ世界中の国や街が加盟している、モンスター被害の対策機構だ。
ダーマ神殿で認定される「戦士」や「魔法使い」などの一般の冒険職とは別に、この退
魔機構が認定しているのが特別職であり、冒険において格別の特典が与えられる。
その特典というのが――
・加盟国、または加盟店のアイテムを安く提供してもらえる。
・ほぼ売買を拒否されない。
・アイテムの買取価格が、商品的価値の有無に関わらず売値の4分の3。
・宿屋に何時でもチェックイン可能。また宿泊拒否されない。
・真夜中でも教会の利用が可能。
・親族への生活補助金を、所属国家に支払うよう促す(強制ではない)。
――などなど。
481 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/09/30(日) 23:03:53 ID:mIVAYlVa0
支援!
482 :
Stage.9 [4]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 23:04:39 ID:4pwvblo40
言われてみれば納得できる。普通は使い古しのステテコパンツなんて絶対に買い取るわ
けないもんな。
武器や防具なんかも、本当は僕たちが買ってた値段の1.2倍〜1.5倍はするんだとか。
それだけの特典があるので、当然のように特別職に就くための道は険しい。
ただし、基本的にこの世界における「職業」はすべて「やる気のある初心者を支援する
ため」の制度であり、特別職においても試験で実務経験を問われることはない。「Lv.1」
の勇者が存在するのもそのためだ。
でも怠けられても困るから、取得後3ヶ月間は仮免で、その後の本試験を経て正式に認
められる。さらに1年ごとに更新試験があり、資格を維持する方が大変なんだって。
「その本試験ってどんなの? 正直、実技だったらキツイよ僕」
ペーパーだったら自信あるんだけどなぁ。
「一級討伐士の場合、本試験も更新試験も内容は一緒でして、期限までに次の3つの条件
の内、いずれかをクリアしていればいいんですが……」
1)なにか大きな人助けをする。
2)魔物から街や村、教会など慈善組織(海賊等は含まれない)を護る、救う。
3)世界退魔機構が指定する試練をクリアする。
サミエルがぽんとひざを叩いた。
「なーんだ、それなら今までの旅の中で、どれか当てはまりそうじゃないッスか?」
「そうですね、それを退魔機構に申請すればいいんですよね」
エリスもほっと胸を押さえている。が、ロダムはまだ難しい顔をしたままだ。
「無理でしょうなぁ。たとえば大きな人助け、なにかしましたか?」
「金の冠を取り返したじゃないッスか」
「……では、ロマリア国王がそれを認めますか? 対象者が認めない限り、審査を通りま
せんよ」
申請内容の真偽を確認されるのは当然として。なるほど、冠を盗まれるなんて失態、あ
のロマリア国王が公に認めるわけないよな。魔法の鍵についても同じく。
483 :
Stage.9 [5]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 23:07:28 ID:4pwvblo40
「バハラタでも、カンダタ一党をこらしめましたが……」
そう言うエリスも自信なさげだ。答えは聞くまでもない。
「あくまで『人さらいらしい』という噂の範囲で、実害が出ていたわけではありませんか
らね。私たちが向かったのも、勇者様がさらわれたためですし」
そうそう、変にストーリー狂ったんだよね。思い出したくもない……あの変態オヤジに
は二度と会いたくないよ。
あ、誤解がないように言っておきますが、宿スレ的にヤバイことはされてませんよ。
「となると3番だけか。『世界退魔機構が指定する試練』って、たとえば?」
「そうですな、今の勇者様でもこなせそうなものとなると……」
ロダムはしばらくうなっていたが、ようやく言葉を絞り出した。
「……ランシール、でしょうな」
ガターン! と椅子ごとひっくり返る僕。全員が驚いた顔で僕を見ている。
「ど、どうなされたんですか勇者様!?」
みんなが助け起こそうとしてくれてるんだけど、さすがに身体に力が入らない。
じょ、冗談じゃないよ。ポルトガからすぐエジンベアに直行したいからこそ、あれだけ
根回ししたのに! 消え去り草を売っているランシールに先に行くんだったら、同じこと
じゃないか。なんなんだよソレ。
「軌道修正されてるのか……?」
ロマリアからピラミッド行きを強制されたときにも感じたことだけど。
確かに、勇者職の話も試験の話もおかしいとは思わない。でもなんでそれが「今」なん
だ? まるでなにか見えない力が、ドラクエ3のストーリーに無理やり当てはめようとし
て、圧力をかけてるように思える。
それに、考えてみればアルスもアルスだ。こんな大切なことは先に教えておいてくれて
もいいじゃないか。あの夜……ピラミッドで、少しは見直したのに。
「ごめん。ちょっと甲板に出てくる」
「こんな時間にですか?」
484 :
Stage.9 [6]
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 23:11:57 ID:4pwvblo40
「頼むから人を来させないで。しばらく1人にして欲しい」
言い捨てて、僕は部屋を飛び出した。ついてこようとしたヘニョをどうするか一瞬迷っ
たけど、立ち止まった途端に飛びついてきたスライムを抱きしめて、また小走りに甲板に
向かう。
そろそろハッキリ言ってやらなきゃダメだ。あの人は僕をクリアさせたくないみたいだ
けど、それがどういうことなのかわかってないのか?
故郷に戻れなくなる。そのつらさは、ゾーマを倒したあとに嫌なほど味わってるだろう
に、なんで自分から帰り道を閉ざそうとするんだ。
プルルルルルル! プルルルルルル! ……ッピ
「もしもし、アルス? 楽しんでるところ悪いけど、大事な話があるんだ。ちょっと長く
なると思うんだけど、ユリコたちから離れられる?」
『……………………タツミなの?』
頭の中が、真っ白になった。
片岡百合子。どうして。
『タツミ? アルスってこの子の名前? ねえ、あんたいったいドコにいるのよ!』
叫ぶようなユリコの声を、僕はただ呆然と聞いているしか、できなかった。
485 :
Stage.9 atgk
◆IFDQ/RcGKI
:2007/09/30(日) 23:14:33 ID:4pwvblo40
本日はここまでです。
一般冒険職の試験は、職業によってもバラつきがありますが、
有名私立中学の入試、簿記3〜2級、英検3〜2級など、
大人でも子供でも頑張ればいけそうなレベル。
特別職の一次試験は、東大クラスの大学入試、弁護士資格、
くらい難しいと思ってください。
486 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 00:35:08 ID:UvUZ4iqJO
◆IFDQ/RcGKI氏キタ――!!
勇者試験そんなに難しいのか?w
ってことは、アルスも実はすげえ頭いいのかな
ロダムも苦労あったんだな
いつも思うけど、脇役がいい味出してるよ
487 :
人生の雨とムチ
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 04:26:18 ID:uFmNvnQM0
目の前に広がる光景をどう理解したものか。
…と、言っても薄暗くカビ臭い部屋…波の音が聞こえるから船の中なのだろうか?
体を動かす事すらままならない今の俺にはその狭い部屋の一部しか見えないのだが、
なんとか周囲に目をやると、なんとも暗〜い表情の人が十余名。
老若男女分け隔てなくそれぞれ後ろ手に腕を縛られ、両足首も拘束された状態で
ここに押し込められている。当然、俺の体も同じように拘束されている。
まぁとにかく俺は今そんな所にいるわけだ。
昨日の記憶を思い返してみてもこの状況に繋がる要素は全くなし。
いつも通り大学に向かう電車の中で一眠り。
そして目が覚めたらこの光景。
ふむ、これはひょっとすると北の国の『アレ』に巻き込まれたかね?
もしくは俺の新鮮な『中身』を移植用に切り売りされるのかね?
はたまたどこかの無人島に投げ出されて『殺し合い』でもさせられたり?
ハハハ…ファンタスティック。
「…って、落ち着いてる場合じゃねえ!」
そうだ、これは明らかにヤバイ。
平和ボケした日本人の俺でも生命の危機をビンビンに感じる。
何とかしないと…
そうだ、まずは今の状況の把握だ。
横で同じように拘束されている男に声をかけてみる。
488 :
人生の雨とムチ【2】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 04:28:44 ID:uFmNvnQM0
「おい、あんた。教えてくれ。ここは一体どこなんだ?」
我ながらマヌケな質問だと心の中で自嘲する。
しかし今はなりふり構っていられない。
男は一度こちらに顔を向けるとすぐに目線を元に戻して語りだした。
「…わからない…一体何が…行商の旅の途中にモンスターに襲われて意識を失って…」
ダメだこいつは…
モンスターだなんて完全に錯乱している。
恐らく屈強な悪の組織(仮定)の連中に襲われたショックでアヒャになっているのだろう。
だいたい科学の発達した近代世界にモンスターだなんてドラクエじゃあるまいs…
ガチャ…ガチャリ
不意に扉の方から金属音がした。
反射的にそちらに目をやった先には
悪の組織にふさわしい覆面で顔を隠した人影(両手は大蛇)に
その周囲をふよふよ飛び回る顔が多数付いた球体。
どう見てもモンスターです。本当に(ry
「…って、落ち着いてる場合じゃねえ!モンスターだあ!!」
錯乱なんかじゃない。現実だ。
部屋の中のあちこちでキャーとかウワーとか悲鳴が上がる。
かく言う俺も腹の底から絶叫したわけだが…
「チッ…暴れられて傷物にでもしちまったら厄介だな…エビルスピリッツ!」
低い声で覆面が言い放つと、浮遊していた球体が前に進み出た。
瞬間、鼻腔をくすぐる甘い香りに包まれて俺の意識は再びまどろみに消えていった…
489 :
人生の雨とムチ【3】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 04:30:21 ID:uFmNvnQM0
……き……ろ………きろ…
心地良い眠りを妨げる雑音は俺の大嫌いなモノの一つだ。
強制的に眠りを覚まされた直後の俺はハッキリ言ってとても機嫌が悪い。
単に『寝起きが悪い』のだが、その性質が災いして目覚まし時計を何度投げ壊したか…
まあ最近では体が学習して、設定した時刻の数秒前に自然と目が覚めるようになった。
これも人体の神秘…そもそも睡眠とは生命の維持にとって不可欠な脳の休息であり…
「起きろ!」
――目が覚めた。
自分でも驚くくらいにパッチリと目が覚めた。
何が起こったのかすぐには理解できなかったが、次の瞬間には体で理解できた。
ヒュッという風きり音に続けてバシィッという乾いた音。
背中の一部が一瞬冷たくなり、一瞬遅れて灼熱したような痛みが走る。
「新入りの分際でいつまで寝てやがる!」
ピエロのような格好をした男が叫びながら手に持った鞭を振るう。
その度に俺の体が乾いた音をあげ灼熱する。
「…ってぇ…いきなり何をする!」
突然理不尽な仕打ちを受ければ、いくら温厚な日本人の俺でもキレる。
だが、怒りに任せて掴みかかった俺の突進は次の鞭の一撃で止められる。
490 :
人生の雨とムチ【4】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 04:31:22 ID:uFmNvnQM0
ボロボロの服から露出している胸元に鞭を受け、俺はたまらず倒れこむ。
俺のお気に入りの白いライダーズブルゾンがいつの間にか子汚いボロの服に
変わっているショックも忘れるくらいの衝撃。
…ゴメン、忘れられないや…
…って、服を気にしてる場合じゃねぇ!
さらに倒れた俺に二度三度と鞭が振るわれる。
痛え…シャレになんねえ…
「威勢がいいじゃねえか…だがなぁ、逆らうヤツはここではこうなるんだ!
俺様が直々にその体に教訓を叩き込んでやる!!」
四度五度六度…数えるのも嫌になるくらい同じ音を聞き、同じ痛みに襲われる。
生まれて初めて味わう激痛に俺はただうずくまるしかできない。
何分…何十分こうして鞭で打たれているんだろう…
相変わらず鞭が振るわれる乾いた音と半狂乱なピエロ男の声が聞こえているが、
目の前がチカチカしていたのはおさまっている…
むしろ目の前が暗くなってきた…まるで睡眠に入る直前の思考回路のようだな…
「そのくらいにしておいたらどうだ?」
背後から男の声が聞こえ、うるさく響いていた鞭の音が止んだ。
もう視覚も聴覚もグチャグチャだったが、彼の声はなぜか透き通って聞こえた。
「それ以上やったらその人は死んでしまうぞ。」
491 :
人生の雨とムチ【5】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 04:33:12 ID:uFmNvnQM0
死
…あぁ…死なんて実感した事がなかったなぁ…そうかこれが…
死?
…嫌だ…
死にたくない!!
飛び起きた俺の全身を痛みが走り、俺はその場にへたり込んだ。
それでも痛みを堪えて声のほうに目を向けると、ピエロ男に向かい合う二人の男の姿。
片方は紫の布(ターバンっていうのかアレ?)を頭に巻いた男。
恐らく彼がピエロ男を止めてくれたのだろう。
「なんだ?またお前か。いつまでも反抗的なヤツだ。」
ピエロ男が忌々しげに舌打ちをする。
「お前は何度痛い目を見ても懲りないらしいな。」
ピエロ男が鞭をしならせ、バシィッと地面を打ち鳴らす。
ヤツの照準は完全に俺からターバンの男に替わったらしい。
…助かった…けど、このままだとあの男が…
492 :
人生の雨とムチ【6】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 05:02:19 ID:uFmNvnQM0
「まあまあ二人とも落ち着いて。」
険悪な雰囲気の二人の間に、ターバンの男と一緒にいた緑の髪の男が口を挟んだ。
「いつもすみませんね。本当にコイツは反抗的で、俺からも言って聞かせますので。」
…え?俺見捨てられた?…死亡フラグってヤツですか?
「でも、コイツの言うとおりそれ以上やったらその人たぶん死んじゃいますよ。
今は神殿の完成が最優先ですよね?人手を減らすのはマズいんじゃないですか?」
緑髪がニコニコと愛想笑いをしながらピエロ男に語りかける。
その少し後ではターバンの男がピエロ男を睨みつけている。
数秒の沈黙を破ったのはピエロ男だった。
「ふん。気に食わんがお前の言うとおりだ。今人手を減らすのは得策ではないな。
今日はこれで勘弁してやるが、お前はその二人にしっかり言い聞かせておけ。
次に歯向かうような事があったらその時は容赦しないからな。」
ドスドスと乱暴な足音を立ててピエロ男が去っていった。
ターバンの男と緑髪は安堵した表情で顔を見合わせている。
…本当に助かったのか?
ボンヤリしている俺にターバンの男が声をかけてきた。
「酷い目にあったね。大丈夫だったかい?」
493 :
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 05:05:22 ID:uFmNvnQM0
新作投下してみました。世界は5です。
現実の人間を幼少期から同行させるのは難しかったので青年時代からのスタートです。
494 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 08:15:15 ID:hI19NMb2O
>>492
新作ktkr
次回も楽しみに待ってまつ
495 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 13:48:03 ID:SJLnF0e10
>>487-493
トリップがゲマwww
新作乙! これからどう発展するのか楽しみ
496 :
人生の雨とムチ【7
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 18:59:32 ID:uFmNvnQM0
「あ…あぁ…ありがとう…」
差し伸べられた手を取り立ち上がろうとするも、足元がフラついてしまう。
「おっと…ベホイミ…よし、これでもう歩けるだろうけど無理しないほうがいいよ。
アレの辛さは僕達もよく知っているから。」
ベホイミってあんた…それなんてドラクエ?
かめはめ波を出そうとする小学生じゃあるまいし、こんな場面でそのギャグは…
え?…痛みが消えてる…?
ほんの数秒前までまともに立ち上がることすらできなかったはずなのに、
彼が手をかざして言葉を発した瞬間、全身の痛みが全て消えていた。
あれだけ鞭で打たれたのに、今では痺れも残っていない。
ハハハ…ファンタスティック。
だいたい科学の発達した近代世界に魔法だなんてドラクエじゃあるまいs…
「おや?まだミミズ腫れが残っているね…ホイミ。」
彼が言葉を発すると赤く膨らんでいたミミズ腫れが飛行機雲のように消える。
どう見ても魔法です。本当に(ry
いやいや魔法だなんてそんな馬鹿な。
バミューダトライアングルだって科学的に証明できているこの近代社会に魔法って、
そしたらアレか?もし俺がここでイオナズンとか叫んだら凄い事になるのか?
就活の履歴書に【特技:イオナズン】とか【趣味:ザラキ】とか書けるのか?
ハハハ…それだったら使っちゃいますよ?イオナズン。良いんですか?
しかし、確かに今あれだけの痛みと傷が一瞬で…
いやいや…でも、船の中で見たモンスターとか、魔法とか…
モンスター…魔法…まさかね…
497 :
人生の雨とムチ【8
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 19:01:55 ID:uFmNvnQM0
「知ってて何でお前は毎回歯向かうかなあ。その度に止める俺の身にもなれっての。」
混乱している俺をよそに緑髪がターバンに茶々を入れる。
「…って言うか、お前もいきなりムチ男に殴りかかるなんて何考えてんだ!
俺達が間に入らなかったら本当に死んでてもおかしくなかったんだぞ?」
そうだ。死ぬところだったんだ…俺…
いまさらの様に思い出して背筋がぞっとする。
あの時、視覚も聴覚も痛みも感覚も消えて意識も手放してたら今頃は…
「本当にありがとう。二人が助けてくれなかったら俺は今頃…」
慌てて立ち上がり、俺は二人に心からの礼を言う。
二人は一瞬驚いたような表情を見せ、次の瞬間には笑顔になっていた。
「気にしなくていいよ。でも、ヘンリーの言った事は覚えていてくれないかい?
君の命は君自身にとっても、君の大切な人にとってもかけがえのない物なんだ。
ここの生活でどんなに辛い事があっても、どんなに理不尽で悔しい思いをしても
まず生きる事を考えて欲しい。君に何かあったら悲しむ人が絶対にいるから。」
ターバンが諭すように僕に語りかける。
表情は笑顔だったが、その瞳は真剣だった。
俺はただ黙って頷いていた。
俺が死んで悲しむ人か…
親父やお袋はやっぱり悲しむのだろうか?
大学の飲み仲間やバイト先の人間はどうだろう?
もう数年連絡を取っていない中学、高校のクラスメイトは…
もう俺の事を忘れてしまっているだろうか…
498 :
人生の雨とムチ【9】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 19:04:45 ID:uFmNvnQM0
「ま、新入りのお前もすぐにここでの立ち回りがわかるようになるだろうさ。
そうすりゃ二度とあんな無茶をしないに決まってるぜ。な?」
ヘンリーと呼ばれた緑髪が馴れ馴れしく俺の肩をバンバン叩く。
普段ならウザイと思う所だが、何故か今は心地良い。
「おっ、そうだ。なんならお前もこのヘンリー様の子分にしてやろうか?
ヘンリー様が直々に奴隷生活のエンジョイの仕方をレクチャーしてやるぜ?」
前言撤回…
普段ならウザイと思う所だが、今でも普通にウザイ。
緑髪の後ろではターバンがこちらに向かって申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら、
顔の前で両手を合わせている。『ゴメン、合わせてやって。』…といった感じか。
これも恐らく毎回の事なのだろう。思わず苦笑がもれる。
「あ〜ん?何笑ってるんだ?新入り。そう言えばお前の名前を聞いてなかったな。
お前、名前は何て言うんだ?」
「あ…俺の名前はイサミ。村崎 勇。」
促されて慌てて自己紹介をする。
勇…勇ましい…勇気…
温厚な小市民には不釣合いで好きではない自分の名前。
499 :
人生の雨とムチ【10】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 19:05:27 ID:uFmNvnQM0
「イサミ…変わった名前だな。俺はヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット
ヘンリーと呼んでくれ。よろしくなイサミ。」
「そう言えば僕も自己紹介がまだだったね。僕はサトチー。」
前言撤回…
少しだけ自分の名前が好きになりました。
拝啓 お父様、お母様。
素敵な名前をありがとうございます。
「よ、よろしく。ヘンリーに…えっと…サトチー…?」
半ば引いた笑みを浮かべているのが自分でもわかる。
うん、あえて触れないでおこう。それがオトナの付き合い方ってヤツだ。
「いつまでサボってやがる!新入りの手当てが済んだならさっさと持ち場に戻れ!!」
石壁剥き出しの粗末な部屋の外からムチ男の怒鳴る声が聞こえる。
「あ〜あ、またヒステリーだよ。仕方ない、今日も適当に仕事を終わらせますか。
ホラ、イサミもついて来い。親分が直々に仕事を教えてやるよ。」
いつの間にか子分になっていた俺は、二人に誘われるままに部屋を後にした。
500 :
人生の雨とムチ【11】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 19:06:42 ID:uFmNvnQM0
部屋の外で待っていたのは俺の新しい職場。
就職先が就活もせずに決まるなんて大学生にとってはまるで夢のよう。
皆さん額に汗して一心不乱に石や木材を運んでいます。実に健康的です。
上司のムチ男さんは俺達に対して常に真剣に愛の鞭を振るってくれます。
しかも食事付の寮完備。今日の夕飯は腐りかけたジャガイモでした。ヘルシーです。
湿ったゴザに疲れた体を横たえると明日への希望が徐々に失われてゆきます。
どう見てもタコ部屋です。本当に(ry
悪夢のような内定(辞退不可)に目の前が滲んでよく見えません。
イサミ LV 1
職業:大学生 改め 建設作業員
HP:18/18
MP:0
装備:E奴隷の服
501 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 19:13:25 ID:LhLPtzsV0
新作乙! 主人公はドラクエは知ってるけど5は知らないんだな。
サトチーwとヘンリーも違和感ないし、文章とか読みやすくて好みだ。
次の投下も楽しみにしてます。
502 :
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/01(月) 19:28:28 ID:uFmNvnQM0
>>500
まで第一話を投下させて頂きました。
おおまかなストーリーは考えてあっても文章にするのは難しい…
では、イサミの冒険活劇、第二話の投下まで暫しの幕間で御座います。
503 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 20:36:14 ID:p9UCNGXQ0
読みやすくて良いね。ぜひ完結させて欲しい。
妄想を形にするのは難しいけど、頑張れ。
504 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/01(月) 21:15:32 ID:I/dHHXDo0
ちょwサトチーかよwwwwにしてもヘンリー世渡り上手いな
同じく読みやすくて好きな文章なので続き待ってます
505 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:52:59 ID:7ftfxckl0
―中の巻―(
>>429-436
)
鍵の次は船が欲しくなった。船を手に入れるとなるといろいろ大変だ。船舶免許とか税金とか。
だが、それは俺の世界の話。この世界では黒胡椒さえあれば万事解決するらしい。
そんなわけで胡椒を求めいざ東の地へ。
胡椒売りの娘がさらわれたとかで助けてやったらただで胡椒をくれた。
ちなみに犯人はカンダタ。またカンダタか。
結果的にただで胡椒が手に入ったのである意味カンダタGJなのだが。
奴は人質に手荒な真似はしていなかったので許してやった。
また何かやらかして俺たちが手柄を立てることを期待したわけではない。断じてない。
あまりあっさり胡椒を持ち帰るとありがたみがないのではないかと思う。
だからもう少しこの地を探索して時間をつぶすことにした。
その結果、ダーマという神殿を見つけた。ここでは職業や名前を変えることができるらしい。
せっかくだからキャラ的に地味なゲンを、せめて名前だけでも素敵なものに変えよう。
こいつは最早いつかの幽霊のように素手で熊を倒せるくらいに強い。だが存在感がない。
お互いあまりしゃべらないのでこいつとの会話はこんな感じになってしまう。
「この世界で信じられるのは己のみ。だからこそ俺は強さを求めるのだ。」
「あ、そう。」
いい名前を思いついたが「名前というものをなめておるのか?」と言うので改名は断念した。
しかし、その後見つけた村の連中こそ名前をなめていると言っていいだろう。
こいつらオルテガと言う名前をポカパマズさんと呼んでやがった。
俺がそのポカパマズさんに似ていると言ってくるのは何かの嫌がらせだろうか。
だが、似ていると言う理由でポカパマズさんの使っていた兜をくれたのでよしとする。
探索も飽きたので胡椒を船と交換した。思っていたよりもいい船だった。
国王は胡椒をうまそうに食べていた。それは調味料だと教えてやらないほうが親切だろうか。
船を手にいれたら今度はオーブというものを集めることになった。
6個集めると何かが起きるらしい。7個集めるやつなら知っているのだが。
506 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:54:03 ID:7ftfxckl0
夜の船旅では交代で見張りをしている。今は俺とドルが担当だ。
しかし、俺はついうとうとしてしまった。
「うわっ!」
俺は叫び声を上げ夢から目覚めた。
「大丈夫? すごい汗よ。」
「すまん、寝てしまった。ちょっと寝込みを襲われる夢を見てな。」
「そうなの? それにしては寝顔がうれしそうだったわよ。」
まさか本当は猫耳に襲われる夢だったなんて言えない。
「夢と言えばさ。エンは将来の夢ってある?」
夢。……元の世界に帰ることが俺の夢なのだろうか。
「もちろん世界を平和にすることでしょうけど、聞きたいのはその後のことよ。」
俺が答えなかったのを、俺の夢は魔王討伐だと解釈したらしい。
「その後のこと?」
「うん。平和になったあと何するのかなと思ってさ。」
……確かに元の世界に戻れなかったときにことも考えておいたほうがいいかもしれないな。
エンの過去を知る者が多いアリアハンに帰って暮らすのはまずい。他でで働かねば。
この世界の通貨はゴールドで統一されている。為替のトレーダーにとっては住みにくい世界だ。
「そうだな。何か商売を始めてみるかな。よかったら教えてくれないか?」
「私が? いいわよ、教えてあげる。格安で。」
「金取るのかよ!」
「だって私が信じられるのはお金だけだもん。」
素敵な台詞を吐いてくれる。こういう金に執着する姿勢は嫌いではないけど。
「でもさ、バラモスを倒した勇者を周りが放っておくわけないわよ。」
そんなものか。『魔王の倒し方』なんてハウツー本の執筆の依頼が来るかもしれないな。
……待て。そのときにはもう倒すべき魔王はおらんではないか。
「それにさ、勇者が客商売なんてプライドが許さないんじゃないの?」
プライドなら捨てた。猫耳をつけたときに。……うーん、様にならんな。
それと俺は猫耳を引きずりすぎだと思う。
507 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:55:05 ID:7ftfxckl0
「ところでドルの夢って何だ?」
あまり自分の話はしないほうがいい。相手に話を振ることにする。
「私の夢はね、町を作ることなの。誰でも自由に商売ができる町よ。」
「今だって自由に商売できるんじゃないか?」
「まだまだ規制が多いわ。私が目指すのは、がんばった人ががんばっただけ稼げる。そんな町よ。」
どこの世界にも同じようなことを考える人がいるようだ。自由主義経済とか言うんだったかな。
ドルにとっては夢なのだろうが俺の世界では一般的なことだ。俺は知っている。その問題点も……
「そんな町を作りたいんだったらしっかりしたシステム作りが必要だな。」
「システム?」
「ああ、経済を動かす法律、法律を動かす政治、そういった町を動かすシステムのことだ。」
「ずいぶん難しいことを言うのね。」
「ああ、昔ゼミで……いや、昔読んだ本に書いてあった。」
「ふーん。あなたはずっと魔王を倒すための修行をしていたのかと思ったわ。」
「ああ、実を言えば俺はまったく違う世界の人間だからな。」
「……なにそれ?」
ドルは俺言葉の意味を探っているようだった。なぜ俺はこんなことを言ったのだろうか。
ちょっと親しくなっただけで自分の秘密を打ち明けるなんて。
いや、親しいどころか俺は彼女の本名すら知らないではないか。
「いや、修行中にそんなことを考えていたということだ。つまらない冗談だったな。」
俺の言葉にドルは納得していなかったようだが深くは追求しなかった。
そのあと俺たちはドルの夢と俺の昔の知識について語り明かした。
さほど昔のことではないはずなのに大学での勉強はあまり覚えていない。記憶なんて曖昧なものだ。
そして、夜が明けた。
「見て! 陸地が見える!」
朝日の光によって遠くまで見渡せるようになり、うっすらと陸地が見えたようだ。
新しい朝に新しい大陸、まるでドルの夢を象徴しているようじゃないか。
そんなことを考えていた。
ただし、上陸するまでの話だ。……新しい大陸かと思ったらアリアハンでやんの。
508 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:56:07 ID:7ftfxckl0
アリアハンの城に魔法の鍵で開けられる扉があったことを思い出し探りを入れる。
せっかくだから俺は宝物庫の扉を選ぶぜ。
「勇者オルテガにはいろいろ世話になった。ここで何をしようと見てみない振りをしよう。」
宝物庫の番をしている兵士がそう言うので遠慮なくもらうことにしよう。でもオルテガって誰?
「あなたの仕事はこの宝を守ることでしょう。そんないい加減なことでいいの?」
なんとドルが説教を始めた。遠慮なくもらっていきそうなものだが意外と熱い女だ。
仕事と言うものに誇りを持っているのだろう。
最終的に倉庫番の兵士のおっさんが王様に話を通し俺たちが宝をもらえることになった。
おっさんはずっと独り身で身内がいないとのことだった。
だからこそ国王に掛け合うなんて真似ができたのだろう。
おっさんは1人は寂しいと言う。……俺も母に顔くらい見せたほうがいいかもしれない。
そういえばユーロにも身寄りがなかったな。
……これっていい巡り会わせではないだかろうか。
この人がユーロを養子にもらってくれることを俺は想像していた。
砂漠の女王様のところに行くという手もあるが、これはやめておこう。
あの女王の元にいて幸せを感じるかは、何と言うか個人差が大きい。
冒険が終わった後のそれぞれの人生。平和な世界での生活。
仲間たちは俺のつけた名前から元の名前に戻るのだ。
俺はここで思い出した。オルテガとはポカパマズさんのことだと。
509 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:57:09 ID:7ftfxckl0
ひと時の帰郷のあと本格的なオーブ探しが始まった。
レッドオーブは海賊のアジトにあった。
海賊の女のおかしらに「女が海賊をやるのはおかしい?」と聞かれた。
「うちではこんな子供が盗賊をやっている。」と答えておいた。
パープルオーブはジパングと言う国にあった。まるっきり昔の日本だ。
そうか俺はタイムスリップしていたのか! いや、昔でもヤマタノオロチはいない。
ブルーオーブは1人で入らなければならない神殿の奥、地球のへそにあった。
俺がとりに行った。無事に帰ってきたときはユーロは泣いて喜んだ。
グリーンオーブは廃墟にあった。確か夜には村人がいたようだが気のせいだろう。
ユーロはここでもちょっと泣いていた。もっとも泣きたいのは俺も一緒だ。
「ユーロお前ちょっと泣きすぎだぞ。」
「何だよ。さっきはエンあんちゃんだって泣きそうだったじゃないか。」
見られていた。
「……とにかく男は涙を見せないもんだ。泣いているとチャンスも見逃すぞ。」
俺の顔はしっかり見ていたようだが。泣き顔より笑顔のほうがいい。
以前は笑うと歯が欠けているのが見えてかなりナイスだった。今は歯が生えてきているが。
それに養子に出るにも泣く子より笑う子のほうがいいだろう。
あれから何度かアリアハンに立ち寄っている。ユーロもおっさんに懐いているようだ。
俺も母に顔を見せている。そういえば最近、実家に爺さんがいることを発見した。
「わかった。おいら泣かないよ!」
「そうだ。男が泣いていいのは財布を落としたときだけだぞ。」
俺のジョークは受けなかった。俺は顔で笑って心で泣いた。
510 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:58:11 ID:7ftfxckl0
そんな会話があったあと町を作りたいと言う老人に出会った。
町を作るには商人が必要であるという。
……これってまさにドルのやりたいことではなかろうか。
俺たちはドルをここに置いていくかを相談することにした。
「俺は反対だ。ここでドルが抜けると戦力的に大きなロスになる。」
「おいらもドル姉ちゃんとお別れするのは嫌だよ。」
ゲンとユーロは反対している。
「俺は……ドルの夢を応援してやりたい。」
「本当に、本当にいいの?」
「ああ、魔王退治だけがすべてじゃないさ。」
「でも……」
「魔王なんて俺たちが倒さなくても柱に小指をぶつけて急死するかもしれないぞ。」
「もう、そんなわけないじゃない!」
分からんぞ。奴がたまたまバリア床で体力を消耗しているときだったら、あるいは……
「とにかく自分のやりたいことを優先させろ。」
「……ありがとう。」
「みんなが幸せに暮らせる町を作れよ。」
「うん! お別れだけど、笑顔で送り出してね!」
「俺は泣くかもしれないけどな。」
「うれし泣きじゃないでしょうね。」
「違うよ。お前がパーティーから抜けるのは財布を落とすようなものだからな。」
空気が凍りついた。あれ俺ってヒャド使えたっけ?
「……そう、私は財布なのね。いいわ。財布は財布らしくお金のために生きてやる!」
ギャグが滑ったことで怒らせてしまったようだ。なんて笑いに貪欲な女だ。
……なんてな。俺に気の利いた台詞は似合わない。これでよかったのだ。
こうしてドルはパーティーから外れた。自由な町を作ると言う彼女の夢を実現させるために。
511 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:59:12 ID:7ftfxckl0
ドルの抜けた穴を埋めるべく、ルイーダの酒場で新たな仲間を加えることにした。
初めて酒場で仲間を募ったときビジネス上の付き合いだと思っていた。
だが、今ではそれ以上の存在になっている。それがいいことなのかは俺にはわからない。
仲間にしたのはポンドと名づけた男の僧侶だ。苦労人という感じがする。
なんとなくリアルの俺の親父を思い出す。親父は平凡なサラリーマンだった。
親父は俺が一回のトレードで自分の年収ほどの金を動かしていたことをどう思っていたのだろうか。
この新しい仲間を見て、そんなことを考えてしまった。
新しいパーティーでサマンオサというところに行き、ラーの鏡ついで変化の杖を手に入れた。
それが船乗りの骨、愛の思い出、ガイアの剣へ変わっていき最後にシルバーオーブにたどり着いた。
ポンドはいきなりレベルの高い戦いに参加することになったがよくやってくれている。
しかし、このパーティーには弱点がある。男ばかりで旅が楽しくないと言うことだ。
……それだけではなく、いろんな意味でドルの存在は大きかったということだろうか。
俺の感想にもいまひとつ面白みがない。
最後のオーブを探し世界中を回る途中、ドルの町に行ってみることにした。
はじめはただの草原であったその場所は見違えるほど立派な町になっていた。
しかし、この町は荒んでる。町の中には為政者への、ドルへの不満がたまっていた。
何とかドルと話をしようとしたが叶わなかった。仕方なくその日は宿に泊まることにした。
そして、夜が明けてしまった。
革命がおき一夜のうちにドルは牢屋の中に入れられていた。
あの日、船の上で語ってくれたドルの夢はこうして終わった。
夢は夜明けとともになくなるもの。俺はそんなつまらないことを考えていた。
「私、自分の夢をみんなに押し付けすぎたみたい。」
牢屋から出してやることはできた。だがドルはもうしばらくここで反省すると言う。
あるいは俺たちに自分の姿を見られたくなかったのかもしれない。
「……屋敷の椅子の後ろを調べてみて。」
別れ際ドルはそういい残した。椅子の後ろにはイエローオーブがあった。
ほかのオーブと同じはずなのにそれはひどく重く感じた。
512 :
冒険の書3
◆8fpmfOs/7w
:2007/10/02(火) 17:59:50 ID:7ftfxckl0
すべてのオーブがそろいラーミアと言うでかい鳥が出てきた。
こいつに乗っていけば魔王の城まで飛んでいける。
魔王さえ倒せばすべての問題は解決する。根拠はないがそんな気がする。
俺は元の世界に帰ることができるのではないだろうか。
ユーロは新しい親の元で幸せな生活を始めることになるだろう。
ゲンにとっても武闘家として魔王を倒す以上の名声はあるまい。
ポンドも僧侶として平和な世界と平穏な生活を望んでいる。
そしてドルも……俺が裏から手を回すことで牢屋から出られるはずだ。
世界を救った勇者の頼みとなればあの町の連中も断れないに違いない。
しかし、世の中そんなにうまくいかないものだ。
俺たちの希望の光は、つまらない理由でかき消されてしまった。
そう、呆れるほどつまらない理由で。
―下の巻に続く―
513 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/02(火) 19:24:10 ID:/jElPciTO
乙!
うまいなぁ……
514 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/10/02(火) 21:12:15 ID:hBNQR1cZ0
乙です。
ドルさんと語り合った日とか、なんかいいですね。
それと、ユーロさんの将来を本気で相談している主人公さんとか、ドルさんが倉庫の宝物を盗まないで王様に話を通してもらったり、いい感じです。
515 :
案ずるより鉄拳制裁【1】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/03(水) 00:35:09 ID:XHCbb8Co0
「つまり、魔法ってのは呪文に込められた力を引き出す技術の事だ。」
今、俺は就寝前の時間を使ってヘンリーから魔法の講義を受けている。
ここにやってきて一ヶ月が経った。
奴隷労働は辛い。何度も何度も心を壊されそうになった。
何度も何度も自ら命を絶つ事を考えた。
それでも、その度にサトチーとヘンリーに励まされて自分を保てている。
心を壊しそうになる度にサトチーが俺に語った。
―今日を生きて、明日も生きよう。
君の死が君を知る人に与える悲しみは君が背負う悲しみよりも深い筈だから―
そして俺は今日も生きている。
毎日毎日つるはしやスコップを振るって岩盤を掘り進め、
何度も何度も重たい石をトロッコで運ぶ。
時々ヘンリーとサボってる所をムチ男に見付かって鞭を喰らって
苦笑するサトチーにホイミで治してもらう。
最初は愕然とした壷も、今では慣れて普通に用がたせるようになった。
しかし、女の子にとってはキツイよな…アレ…
少しづつ体力もついたようで、筋肉が付いて体中が引き締まった気がする。
ビリーズブートキャンプよりも効果抜群。DOREIエクササイズSUGEEE!!
これを続ければ来年の夏には海岸の視線を独り占め?
絶対続けたくないけどね。
この生活で海水浴とか絶望的じゃん…
516 :
案ずるより鉄拳制裁【2】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/03(水) 00:39:00 ID:XHCbb8Co0
[【1】でアンカー忘れ…orz LOAD DATA
>>487-492
>>496-500
]
さて、この一ヶ月サトチーやヘンリー、奴隷仲間と色々な話をした。
二人の子供時代の話…サトチーの親父さんの話…
ヘンリーがラインハットという国の王子だったという話…
この建築現場の話…教団の話…
魔法の話…モンスターの話…
そして俺は理解してしまったんだ…
正しくはなんとなく理解していても信じたくなかったのだが…
俺が今いる場所は俺の世界とは別世界。
「嘘だろ?別の世界ったって…信じらんねえよ。」
「妖精の国が存在するんだから、他に世界があってもおかしくないさ。」
俺の言葉をあっさりと受け入れるサトチーと半信半疑のヘンリー。
そうか、俺の存在は『妖精の国』と同等のオカルトなのか…
俺の世界での妖精は、ごく一部の心と体が綺麗な男性にしか見えないってのに…
もし、ここを無事に出られたとして俺は家に帰れるのだろうか…
ヘンリーはここを出たら城に帰ると言う。
サトチーは親父さんの遺志を継いで旅をすると言う。
俺は…帰れるのか?
517 :
案ずるより鉄拳制裁【3】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/10/03(水) 00:40:13 ID:XHCbb8Co0
二人から魔法を教わるのも俺の大事な日課だ。
科学技術が通用しない。自動車もガスコンロもクーラーも電話もない世界。
タバコに火を点けるのも魔法が必要って事か…
こっちの世界にタバコがあるのかわからないし、タバコなんて吸える状況ではないが、
でも恐らく火打ち石みたいな物はあるんだろうな。マルメンライトはあるかな?
電子レンジがないのは痛いな。コンビニ弁当なんてのも存在しないだろうし。
そうだよな、"おべんとう"がそこらで手に入ったりする世界なんてないよな。
ともかくこっちで生きるには、こっちで発達している魔法技術を学ぶ必要がある。
魔法を学びたいという俺の申し出を二人は快く引き受けてくれた。
「呪文の言葉の意味を理解し、その過程を想像し、結果を導き出す。
その過程を通らない魔法はただの言葉。何の効果も発揮しないんだ。」
なるほど、ベギラゴンやジゴスパークやマダンテという言葉は知っていても、
それだけで相手を全員デストロイしたり、汚物を消毒したりは不可能らしい。
そりゃそうだよな、言葉を発しただけで魔法の効果が発揮されちまったら、
『チャル"メラ"』とか『みや"ざき"』って言うだけで辺り一面カオスだし、
『ウホッ!い"いお"とこ』なんて言った瞬間、相手が爆死しちまう。
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