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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

496 :人生の雨とムチ【7 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 18:59:32 ID:uFmNvnQM0
「あ…あぁ…ありがとう…」
差し伸べられた手を取り立ち上がろうとするも、足元がフラついてしまう。
「おっと…ベホイミ…よし、これでもう歩けるだろうけど無理しないほうがいいよ。
 アレの辛さは僕達もよく知っているから。」
ベホイミってあんた…それなんてドラクエ?
かめはめ波を出そうとする小学生じゃあるまいし、こんな場面でそのギャグは…

え?…痛みが消えてる…?

ほんの数秒前までまともに立ち上がることすらできなかったはずなのに、
彼が手をかざして言葉を発した瞬間、全身の痛みが全て消えていた。
あれだけ鞭で打たれたのに、今では痺れも残っていない。

ハハハ…ファンタスティック。
だいたい科学の発達した近代世界に魔法だなんてドラクエじゃあるまいs…
「おや?まだミミズ腫れが残っているね…ホイミ。」

彼が言葉を発すると赤く膨らんでいたミミズ腫れが飛行機雲のように消える。

どう見ても魔法です。本当に(ry

いやいや魔法だなんてそんな馬鹿な。
バミューダトライアングルだって科学的に証明できているこの近代社会に魔法って、
そしたらアレか?もし俺がここでイオナズンとか叫んだら凄い事になるのか?
就活の履歴書に【特技:イオナズン】とか【趣味:ザラキ】とか書けるのか?
ハハハ…それだったら使っちゃいますよ?イオナズン。良いんですか?
しかし、確かに今あれだけの痛みと傷が一瞬で…
いやいや…でも、船の中で見たモンスターとか、魔法とか…
モンスター…魔法…まさかね…

497 :人生の雨とムチ【8 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:01:55 ID:uFmNvnQM0
「知ってて何でお前は毎回歯向かうかなあ。その度に止める俺の身にもなれっての。」

混乱している俺をよそに緑髪がターバンに茶々を入れる。
「…って言うか、お前もいきなりムチ男に殴りかかるなんて何考えてんだ!
 俺達が間に入らなかったら本当に死んでてもおかしくなかったんだぞ?」

そうだ。死ぬところだったんだ…俺…

いまさらの様に思い出して背筋がぞっとする。
あの時、視覚も聴覚も痛みも感覚も消えて意識も手放してたら今頃は…

「本当にありがとう。二人が助けてくれなかったら俺は今頃…」
慌てて立ち上がり、俺は二人に心からの礼を言う。

二人は一瞬驚いたような表情を見せ、次の瞬間には笑顔になっていた。
「気にしなくていいよ。でも、ヘンリーの言った事は覚えていてくれないかい?
 君の命は君自身にとっても、君の大切な人にとってもかけがえのない物なんだ。
 ここの生活でどんなに辛い事があっても、どんなに理不尽で悔しい思いをしても
 まず生きる事を考えて欲しい。君に何かあったら悲しむ人が絶対にいるから。」
ターバンが諭すように僕に語りかける。
表情は笑顔だったが、その瞳は真剣だった。
俺はただ黙って頷いていた。

俺が死んで悲しむ人か…
親父やお袋はやっぱり悲しむのだろうか?
大学の飲み仲間やバイト先の人間はどうだろう?
もう数年連絡を取っていない中学、高校のクラスメイトは…
もう俺の事を忘れてしまっているだろうか…

498 :人生の雨とムチ【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:04:45 ID:uFmNvnQM0
「ま、新入りのお前もすぐにここでの立ち回りがわかるようになるだろうさ。
 そうすりゃ二度とあんな無茶をしないに決まってるぜ。な?」

ヘンリーと呼ばれた緑髪が馴れ馴れしく俺の肩をバンバン叩く。
普段ならウザイと思う所だが、何故か今は心地良い。
「おっ、そうだ。なんならお前もこのヘンリー様の子分にしてやろうか?
 ヘンリー様が直々に奴隷生活のエンジョイの仕方をレクチャーしてやるぜ?」



前言撤回…
普段ならウザイと思う所だが、今でも普通にウザイ。
緑髪の後ろではターバンがこちらに向かって申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら、
顔の前で両手を合わせている。『ゴメン、合わせてやって。』…といった感じか。
これも恐らく毎回の事なのだろう。思わず苦笑がもれる。

「あ〜ん?何笑ってるんだ?新入り。そう言えばお前の名前を聞いてなかったな。
 お前、名前は何て言うんだ?」
「あ…俺の名前はイサミ。村崎 勇。」
促されて慌てて自己紹介をする。


勇…勇ましい…勇気… 
温厚な小市民には不釣合いで好きではない自分の名前。

499 :人生の雨とムチ【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:05:27 ID:uFmNvnQM0
「イサミ…変わった名前だな。俺はヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット
 ヘンリーと呼んでくれ。よろしくなイサミ。」
「そう言えば僕も自己紹介がまだだったね。僕はサトチー。」




前言撤回…
少しだけ自分の名前が好きになりました。

拝啓 お父様、お母様。
 素敵な名前をありがとうございます。


「よ、よろしく。ヘンリーに…えっと…サトチー…?」
半ば引いた笑みを浮かべているのが自分でもわかる。

うん、あえて触れないでおこう。それがオトナの付き合い方ってヤツだ。

「いつまでサボってやがる!新入りの手当てが済んだならさっさと持ち場に戻れ!!」
石壁剥き出しの粗末な部屋の外からムチ男の怒鳴る声が聞こえる。

「あ〜あ、またヒステリーだよ。仕方ない、今日も適当に仕事を終わらせますか。
 ホラ、イサミもついて来い。親分が直々に仕事を教えてやるよ。」

いつの間にか子分になっていた俺は、二人に誘われるままに部屋を後にした。

500 :人生の雨とムチ【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:06:42 ID:uFmNvnQM0
部屋の外で待っていたのは俺の新しい職場。
就職先が就活もせずに決まるなんて大学生にとってはまるで夢のよう。

皆さん額に汗して一心不乱に石や木材を運んでいます。実に健康的です。
上司のムチ男さんは俺達に対して常に真剣に愛の鞭を振るってくれます。
しかも食事付の寮完備。今日の夕飯は腐りかけたジャガイモでした。ヘルシーです。
湿ったゴザに疲れた体を横たえると明日への希望が徐々に失われてゆきます。

どう見てもタコ部屋です。本当に(ry

悪夢のような内定(辞退不可)に目の前が滲んでよく見えません。


イサミ  LV 1
職業:大学生 改め 建設作業員
HP:18/18
MP:0
装備:E奴隷の服

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