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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

1 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

501 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 19:13:25 ID:LhLPtzsV0
新作乙! 主人公はドラクエは知ってるけど5は知らないんだな。
サトチーwとヘンリーも違和感ないし、文章とか読みやすくて好みだ。
次の投下も楽しみにしてます。

502 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:28:28 ID:uFmNvnQM0
>>500まで第一話を投下させて頂きました。
おおまかなストーリーは考えてあっても文章にするのは難しい…

では、イサミの冒険活劇、第二話の投下まで暫しの幕間で御座います。

503 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 20:36:14 ID:p9UCNGXQ0
読みやすくて良いね。ぜひ完結させて欲しい。
妄想を形にするのは難しいけど、頑張れ。

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 21:15:32 ID:I/dHHXDo0
ちょwサトチーかよwwwwにしてもヘンリー世渡り上手いな
同じく読みやすくて好きな文章なので続き待ってます

505 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:52:59 ID:7ftfxckl0
―中の巻―(>>429-436

鍵の次は船が欲しくなった。船を手に入れるとなるといろいろ大変だ。船舶免許とか税金とか。
だが、それは俺の世界の話。この世界では黒胡椒さえあれば万事解決するらしい。
そんなわけで胡椒を求めいざ東の地へ。

胡椒売りの娘がさらわれたとかで助けてやったらただで胡椒をくれた。
ちなみに犯人はカンダタ。またカンダタか。
結果的にただで胡椒が手に入ったのである意味カンダタGJなのだが。
奴は人質に手荒な真似はしていなかったので許してやった。
また何かやらかして俺たちが手柄を立てることを期待したわけではない。断じてない。

あまりあっさり胡椒を持ち帰るとありがたみがないのではないかと思う。
だからもう少しこの地を探索して時間をつぶすことにした。
その結果、ダーマという神殿を見つけた。ここでは職業や名前を変えることができるらしい。
せっかくだからキャラ的に地味なゲンを、せめて名前だけでも素敵なものに変えよう。
こいつは最早いつかの幽霊のように素手で熊を倒せるくらいに強い。だが存在感がない。
お互いあまりしゃべらないのでこいつとの会話はこんな感じになってしまう。
「この世界で信じられるのは己のみ。だからこそ俺は強さを求めるのだ。」
「あ、そう。」
いい名前を思いついたが「名前というものをなめておるのか?」と言うので改名は断念した。

しかし、その後見つけた村の連中こそ名前をなめていると言っていいだろう。
こいつらオルテガと言う名前をポカパマズさんと呼んでやがった。
俺がそのポカパマズさんに似ていると言ってくるのは何かの嫌がらせだろうか。
だが、似ていると言う理由でポカパマズさんの使っていた兜をくれたのでよしとする。

探索も飽きたので胡椒を船と交換した。思っていたよりもいい船だった。
国王は胡椒をうまそうに食べていた。それは調味料だと教えてやらないほうが親切だろうか。
船を手にいれたら今度はオーブというものを集めることになった。
6個集めると何かが起きるらしい。7個集めるやつなら知っているのだが。

506 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:54:03 ID:7ftfxckl0
夜の船旅では交代で見張りをしている。今は俺とドルが担当だ。
しかし、俺はついうとうとしてしまった。
「うわっ!」
俺は叫び声を上げ夢から目覚めた。
「大丈夫? すごい汗よ。」
「すまん、寝てしまった。ちょっと寝込みを襲われる夢を見てな。」
「そうなの? それにしては寝顔がうれしそうだったわよ。」
まさか本当は猫耳に襲われる夢だったなんて言えない。
「夢と言えばさ。エンは将来の夢ってある?」
夢。……元の世界に帰ることが俺の夢なのだろうか。
「もちろん世界を平和にすることでしょうけど、聞きたいのはその後のことよ。」
俺が答えなかったのを、俺の夢は魔王討伐だと解釈したらしい。
「その後のこと?」
「うん。平和になったあと何するのかなと思ってさ。」
……確かに元の世界に戻れなかったときにことも考えておいたほうがいいかもしれないな。
エンの過去を知る者が多いアリアハンに帰って暮らすのはまずい。他でで働かねば。
この世界の通貨はゴールドで統一されている。為替のトレーダーにとっては住みにくい世界だ。
「そうだな。何か商売を始めてみるかな。よかったら教えてくれないか?」
「私が? いいわよ、教えてあげる。格安で。」
「金取るのかよ!」
「だって私が信じられるのはお金だけだもん。」
素敵な台詞を吐いてくれる。こういう金に執着する姿勢は嫌いではないけど。

「でもさ、バラモスを倒した勇者を周りが放っておくわけないわよ。」
そんなものか。『魔王の倒し方』なんてハウツー本の執筆の依頼が来るかもしれないな。
……待て。そのときにはもう倒すべき魔王はおらんではないか。
「それにさ、勇者が客商売なんてプライドが許さないんじゃないの?」
プライドなら捨てた。猫耳をつけたときに。……うーん、様にならんな。
それと俺は猫耳を引きずりすぎだと思う。

507 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:55:05 ID:7ftfxckl0
「ところでドルの夢って何だ?」
あまり自分の話はしないほうがいい。相手に話を振ることにする。
「私の夢はね、町を作ることなの。誰でも自由に商売ができる町よ。」
「今だって自由に商売できるんじゃないか?」
「まだまだ規制が多いわ。私が目指すのは、がんばった人ががんばっただけ稼げる。そんな町よ。」
どこの世界にも同じようなことを考える人がいるようだ。自由主義経済とか言うんだったかな。
ドルにとっては夢なのだろうが俺の世界では一般的なことだ。俺は知っている。その問題点も……
「そんな町を作りたいんだったらしっかりしたシステム作りが必要だな。」
「システム?」
「ああ、経済を動かす法律、法律を動かす政治、そういった町を動かすシステムのことだ。」
「ずいぶん難しいことを言うのね。」
「ああ、昔ゼミで……いや、昔読んだ本に書いてあった。」
「ふーん。あなたはずっと魔王を倒すための修行をしていたのかと思ったわ。」
「ああ、実を言えば俺はまったく違う世界の人間だからな。」

「……なにそれ?」
ドルは俺言葉の意味を探っているようだった。なぜ俺はこんなことを言ったのだろうか。
ちょっと親しくなっただけで自分の秘密を打ち明けるなんて。
いや、親しいどころか俺は彼女の本名すら知らないではないか。
「いや、修行中にそんなことを考えていたということだ。つまらない冗談だったな。」
俺の言葉にドルは納得していなかったようだが深くは追求しなかった。
そのあと俺たちはドルの夢と俺の昔の知識について語り明かした。
さほど昔のことではないはずなのに大学での勉強はあまり覚えていない。記憶なんて曖昧なものだ。

そして、夜が明けた。

「見て! 陸地が見える!」
朝日の光によって遠くまで見渡せるようになり、うっすらと陸地が見えたようだ。
新しい朝に新しい大陸、まるでドルの夢を象徴しているようじゃないか。
そんなことを考えていた。
ただし、上陸するまでの話だ。……新しい大陸かと思ったらアリアハンでやんの。

508 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:56:07 ID:7ftfxckl0
アリアハンの城に魔法の鍵で開けられる扉があったことを思い出し探りを入れる。
せっかくだから俺は宝物庫の扉を選ぶぜ。
「勇者オルテガにはいろいろ世話になった。ここで何をしようと見てみない振りをしよう。」
宝物庫の番をしている兵士がそう言うので遠慮なくもらうことにしよう。でもオルテガって誰?
「あなたの仕事はこの宝を守ることでしょう。そんないい加減なことでいいの?」
なんとドルが説教を始めた。遠慮なくもらっていきそうなものだが意外と熱い女だ。
仕事と言うものに誇りを持っているのだろう。
最終的に倉庫番の兵士のおっさんが王様に話を通し俺たちが宝をもらえることになった。

おっさんはずっと独り身で身内がいないとのことだった。
だからこそ国王に掛け合うなんて真似ができたのだろう。
おっさんは1人は寂しいと言う。……俺も母に顔くらい見せたほうがいいかもしれない。
そういえばユーロにも身寄りがなかったな。
……これっていい巡り会わせではないだかろうか。
この人がユーロを養子にもらってくれることを俺は想像していた。
砂漠の女王様のところに行くという手もあるが、これはやめておこう。
あの女王の元にいて幸せを感じるかは、何と言うか個人差が大きい。
冒険が終わった後のそれぞれの人生。平和な世界での生活。
仲間たちは俺のつけた名前から元の名前に戻るのだ。
俺はここで思い出した。オルテガとはポカパマズさんのことだと。

509 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:57:09 ID:7ftfxckl0
ひと時の帰郷のあと本格的なオーブ探しが始まった。
レッドオーブは海賊のアジトにあった。
海賊の女のおかしらに「女が海賊をやるのはおかしい?」と聞かれた。
「うちではこんな子供が盗賊をやっている。」と答えておいた。
パープルオーブはジパングと言う国にあった。まるっきり昔の日本だ。
そうか俺はタイムスリップしていたのか! いや、昔でもヤマタノオロチはいない。
ブルーオーブは1人で入らなければならない神殿の奥、地球のへそにあった。
俺がとりに行った。無事に帰ってきたときはユーロは泣いて喜んだ。
グリーンオーブは廃墟にあった。確か夜には村人がいたようだが気のせいだろう。
ユーロはここでもちょっと泣いていた。もっとも泣きたいのは俺も一緒だ。

「ユーロお前ちょっと泣きすぎだぞ。」
「何だよ。さっきはエンあんちゃんだって泣きそうだったじゃないか。」
見られていた。
「……とにかく男は涙を見せないもんだ。泣いているとチャンスも見逃すぞ。」
俺の顔はしっかり見ていたようだが。泣き顔より笑顔のほうがいい。
以前は笑うと歯が欠けているのが見えてかなりナイスだった。今は歯が生えてきているが。
それに養子に出るにも泣く子より笑う子のほうがいいだろう。
あれから何度かアリアハンに立ち寄っている。ユーロもおっさんに懐いているようだ。
俺も母に顔を見せている。そういえば最近、実家に爺さんがいることを発見した。
「わかった。おいら泣かないよ!」
「そうだ。男が泣いていいのは財布を落としたときだけだぞ。」
俺のジョークは受けなかった。俺は顔で笑って心で泣いた。

510 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:58:11 ID:7ftfxckl0
そんな会話があったあと町を作りたいと言う老人に出会った。
町を作るには商人が必要であるという。
……これってまさにドルのやりたいことではなかろうか。
俺たちはドルをここに置いていくかを相談することにした。
「俺は反対だ。ここでドルが抜けると戦力的に大きなロスになる。」
「おいらもドル姉ちゃんとお別れするのは嫌だよ。」
ゲンとユーロは反対している。
「俺は……ドルの夢を応援してやりたい。」
「本当に、本当にいいの?」
「ああ、魔王退治だけがすべてじゃないさ。」
「でも……」
「魔王なんて俺たちが倒さなくても柱に小指をぶつけて急死するかもしれないぞ。」
「もう、そんなわけないじゃない!」
分からんぞ。奴がたまたまバリア床で体力を消耗しているときだったら、あるいは……
「とにかく自分のやりたいことを優先させろ。」
「……ありがとう。」
「みんなが幸せに暮らせる町を作れよ。」
「うん! お別れだけど、笑顔で送り出してね!」
「俺は泣くかもしれないけどな。」
「うれし泣きじゃないでしょうね。」
「違うよ。お前がパーティーから抜けるのは財布を落とすようなものだからな。」
空気が凍りついた。あれ俺ってヒャド使えたっけ?
「……そう、私は財布なのね。いいわ。財布は財布らしくお金のために生きてやる!」
ギャグが滑ったことで怒らせてしまったようだ。なんて笑いに貪欲な女だ。
……なんてな。俺に気の利いた台詞は似合わない。これでよかったのだ。
こうしてドルはパーティーから外れた。自由な町を作ると言う彼女の夢を実現させるために。

511 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:59:12 ID:7ftfxckl0
ドルの抜けた穴を埋めるべく、ルイーダの酒場で新たな仲間を加えることにした。
初めて酒場で仲間を募ったときビジネス上の付き合いだと思っていた。
だが、今ではそれ以上の存在になっている。それがいいことなのかは俺にはわからない。
仲間にしたのはポンドと名づけた男の僧侶だ。苦労人という感じがする。
なんとなくリアルの俺の親父を思い出す。親父は平凡なサラリーマンだった。
親父は俺が一回のトレードで自分の年収ほどの金を動かしていたことをどう思っていたのだろうか。
この新しい仲間を見て、そんなことを考えてしまった。

新しいパーティーでサマンオサというところに行き、ラーの鏡ついで変化の杖を手に入れた。
それが船乗りの骨、愛の思い出、ガイアの剣へ変わっていき最後にシルバーオーブにたどり着いた。
ポンドはいきなりレベルの高い戦いに参加することになったがよくやってくれている。
しかし、このパーティーには弱点がある。男ばかりで旅が楽しくないと言うことだ。
……それだけではなく、いろんな意味でドルの存在は大きかったということだろうか。
俺の感想にもいまひとつ面白みがない。

最後のオーブを探し世界中を回る途中、ドルの町に行ってみることにした。
はじめはただの草原であったその場所は見違えるほど立派な町になっていた。
しかし、この町は荒んでる。町の中には為政者への、ドルへの不満がたまっていた。
何とかドルと話をしようとしたが叶わなかった。仕方なくその日は宿に泊まることにした。
そして、夜が明けてしまった。

革命がおき一夜のうちにドルは牢屋の中に入れられていた。
あの日、船の上で語ってくれたドルの夢はこうして終わった。
夢は夜明けとともになくなるもの。俺はそんなつまらないことを考えていた。
「私、自分の夢をみんなに押し付けすぎたみたい。」
牢屋から出してやることはできた。だがドルはもうしばらくここで反省すると言う。
あるいは俺たちに自分の姿を見られたくなかったのかもしれない。
「……屋敷の椅子の後ろを調べてみて。」
別れ際ドルはそういい残した。椅子の後ろにはイエローオーブがあった。
ほかのオーブと同じはずなのにそれはひどく重く感じた。

512 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:59:50 ID:7ftfxckl0
すべてのオーブがそろいラーミアと言うでかい鳥が出てきた。
こいつに乗っていけば魔王の城まで飛んでいける。
魔王さえ倒せばすべての問題は解決する。根拠はないがそんな気がする。
俺は元の世界に帰ることができるのではないだろうか。
ユーロは新しい親の元で幸せな生活を始めることになるだろう。
ゲンにとっても武闘家として魔王を倒す以上の名声はあるまい。
ポンドも僧侶として平和な世界と平穏な生活を望んでいる。
そしてドルも……俺が裏から手を回すことで牢屋から出られるはずだ。
世界を救った勇者の頼みとなればあの町の連中も断れないに違いない。

しかし、世の中そんなにうまくいかないものだ。
俺たちの希望の光は、つまらない理由でかき消されてしまった。
そう、呆れるほどつまらない理由で。

―下の巻に続く―

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/02(火) 19:24:10 ID:/jElPciTO
乙!
うまいなぁ……

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/02(火) 21:12:15 ID:hBNQR1cZ0
乙です。
ドルさんと語り合った日とか、なんかいいですね。
それと、ユーロさんの将来を本気で相談している主人公さんとか、ドルさんが倉庫の宝物を盗まないで王様に話を通してもらったり、いい感じです。

515 :案ずるより鉄拳制裁【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:35:09 ID:XHCbb8Co0
「つまり、魔法ってのは呪文に込められた力を引き出す技術の事だ。」
今、俺は就寝前の時間を使ってヘンリーから魔法の講義を受けている。

ここにやってきて一ヶ月が経った。
奴隷労働は辛い。何度も何度も心を壊されそうになった。
何度も何度も自ら命を絶つ事を考えた。
それでも、その度にサトチーとヘンリーに励まされて自分を保てている。

心を壊しそうになる度にサトチーが俺に語った。
―今日を生きて、明日も生きよう。
  君の死が君を知る人に与える悲しみは君が背負う悲しみよりも深い筈だから―



   そして俺は今日も生きている。



毎日毎日つるはしやスコップを振るって岩盤を掘り進め、
何度も何度も重たい石をトロッコで運ぶ。
時々ヘンリーとサボってる所をムチ男に見付かって鞭を喰らって
苦笑するサトチーにホイミで治してもらう。
最初は愕然とした壷も、今では慣れて普通に用がたせるようになった。
しかし、女の子にとってはキツイよな…アレ…

少しづつ体力もついたようで、筋肉が付いて体中が引き締まった気がする。
ビリーズブートキャンプよりも効果抜群。DOREIエクササイズSUGEEE!!
これを続ければ来年の夏には海岸の視線を独り占め?

絶対続けたくないけどね。

この生活で海水浴とか絶望的じゃん…

516 :案ずるより鉄拳制裁【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:39:00 ID:XHCbb8Co0
[【1】でアンカー忘れ…orz LOAD DATA >>487-492 >>496-500]

さて、この一ヶ月サトチーやヘンリー、奴隷仲間と色々な話をした。
二人の子供時代の話…サトチーの親父さんの話…
ヘンリーがラインハットという国の王子だったという話…
この建築現場の話…教団の話…

魔法の話…モンスターの話…



そして俺は理解してしまったんだ…
正しくはなんとなく理解していても信じたくなかったのだが…
俺が今いる場所は俺の世界とは別世界。





「嘘だろ?別の世界ったって…信じらんねえよ。」
「妖精の国が存在するんだから、他に世界があってもおかしくないさ。」

俺の言葉をあっさりと受け入れるサトチーと半信半疑のヘンリー。
そうか、俺の存在は『妖精の国』と同等のオカルトなのか…
俺の世界での妖精は、ごく一部の心と体が綺麗な男性にしか見えないってのに…

もし、ここを無事に出られたとして俺は家に帰れるのだろうか…
ヘンリーはここを出たら城に帰ると言う。
サトチーは親父さんの遺志を継いで旅をすると言う。
俺は…帰れるのか?

517 :案ずるより鉄拳制裁【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:40:13 ID:XHCbb8Co0
二人から魔法を教わるのも俺の大事な日課だ。
科学技術が通用しない。自動車もガスコンロもクーラーも電話もない世界。

タバコに火を点けるのも魔法が必要って事か…
こっちの世界にタバコがあるのかわからないし、タバコなんて吸える状況ではないが、
でも恐らく火打ち石みたいな物はあるんだろうな。マルメンライトはあるかな?
電子レンジがないのは痛いな。コンビニ弁当なんてのも存在しないだろうし。
そうだよな、"おべんとう"がそこらで手に入ったりする世界なんてないよな。

ともかくこっちで生きるには、こっちで発達している魔法技術を学ぶ必要がある。
魔法を学びたいという俺の申し出を二人は快く引き受けてくれた。



「呪文の言葉の意味を理解し、その過程を想像し、結果を導き出す。
 その過程を通らない魔法はただの言葉。何の効果も発揮しないんだ。」

なるほど、ベギラゴンやジゴスパークやマダンテという言葉は知っていても、
それだけで相手を全員デストロイしたり、汚物を消毒したりは不可能らしい。

そりゃそうだよな、言葉を発しただけで魔法の効果が発揮されちまったら、
『チャル"メラ"』とか『みや"ざき"』って言うだけで辺り一面カオスだし、
『ウホッ!い"いお"とこ』なんて言った瞬間、相手が爆死しちまう。

518 :案ずるより鉄拳制裁【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:41:13 ID:XHCbb8Co0
「例えば魔法の基本とも言える"メラ" あれは『メラ』という呪文の言葉自体に
 『ともしび』という意味がある。弱々しいが大炎の源になる火の力だ。
 火の意味を持つ言葉があると理解したら、どうすれば火が出るのかを考える。
 火を発生させるには何が必要か、その結果どのような火が発生するか、
 過程が繋がって結果を導き出した時、初めて魔法は効果を発揮するんだ。」

城の教育係の受け売りだけどな。と、照れくさそうに笑うヘンリー。


ふむ、言ってる事はなんとなく理解できた。
ある意味では俺の世界の科学にも似ているのかもしれない。
何でも出来るパソコンがあっても、起動方法がわからなければただの箱に過ぎない。
そうだよな、俺も初めてパソコンを接続した時はチンプンカンプンだったもんな。
サポセンの女の人に何度も電話しちゃってさ。
あぁ、でも魔法にはサポセンがないんだよな。自分で全部何とかするしかないのか。
俺がゆとり世代の人間だったら投げてるな。絶対。


「概念をちゃあんと理解できれば魔法なんてすぐに使えるようになるからな。
 親分直々に講義してやってるんだ、しっかりトレーニングしろよ。」

519 :案ずるより鉄拳制裁【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:42:46 ID:XHCbb8Co0
就寝前にヘンリーから魔法の理論や概念を学び、
昼の労働の合間にサトチーから実技を教わる。
「はい、それじゃあ今日もメラを使ってみようか。」

積み上げた石に木の板を立てかけただけの簡素な的。
俺はその的から離れた位置に立ち、掌を向けて集中する。


…考える…火の発生と成り立ちを…俺の掌の先が発火点に達する事を…


「 メラ!! 」





……返事がないただの不発のようだ。





「なんでだ?なんで魔法が出ない!?メラ!メラァ!!メルァァァ!!
 メラメラメラメラめがんてぇぇぇぇぇ!!!!」

「まあ落ち着いて。闇雲に叫んでも魔法は発動しないさ。」
サトチーが優しく微笑みながら俺を制する。
この一ヶ月、一度も魔法が成功していない…orz…

520 :案ずるより鉄拳制裁【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:43:28 ID:XHCbb8Co0
「う〜ん…メラでここまで苦戦するとなると根本の属性が違うのかな?」
「…ぞくせい?」
「うん、攻撃魔法はメラ系、ギラ系って具合に系統属性が分かれててね、
 その人自身が持つ系統属性が合わないと魔法は絶対に発動しないんだ。
 確かにメラは魔法の中で一番簡単に取得できる基本魔法って言われてる。
 でも、その人がメラ系の属性を持たない場合は、どれだけ魔力があっても
 メラは絶対に使えるようにはならないんだ。」
「そうか…じゃあ、自分に合う系統を探せばいいんだな?よし!
 うおおおぉぉ!!!メドローアアアァァ!!!!」
「でも、稀に属性系統を全く持たないで生まれる人もいるんだよね。
 そういう人達は系統に限らず魔法そのものが使えない。」


…当然ではあるが、メドローアは発動しない…orzorz


「そう落ち込まないで。僕だって基本魔法のメラが使えなかったのに、
 バギ系はあっさり使えるようになったんだから。」
「……(軽く涙目)…」
「ヘンリーに色んな呪文を教われば、そのうち自分に合う系統が見付かるよ。
 今は魔力を高める訓練に集中しよう。ぼんやりしてるとまたムチ男に見付かるよ。」

涙目のまま瞑想に入る…

目を瞑り、精神を集中する…その時、いつもとは違う喧騒が俺の耳に入ってきた。

イサミ  LV 1
職業:建設作業員
HP:23/23
MP:3/3
装備:E奴隷の服

521 :案ずるより鉄拳制裁【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:46:51 ID:XHCbb8Co0
第二話の前半部分まで投下です。

イサミのHP・MPが上昇してるのは奴隷労働とトレーニングの効果。
戦闘をしていないのでLVは保留。種を使ったような感じです。

522 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 16:07:06 ID:VO5kLJIgO
>>520
乙!読みやすくてイイヨイイヨ‐(^_^)

523 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 18:27:21 ID:OzoWbGuh0
>>515-521
投下乙。サトチーのセリフとか重いな…。
でも全体的な雰囲気が楽しいから面白いね。
なんかイサミに妙に親近感が沸いてくる。>>517後半の連想アホスw

524 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 23:56:31 ID:UMiyhHZm0
オモスレ〜〜
○○バーグの話はゲームシナリオの中でも異質なエピソードだよなぁ
結構子供のときはショックだった

525 :案ずるより鉄拳制裁【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:28:52 ID:FqCqxEk60
LOAD DATA 第二話前半>>515-520

「…また何か事故でもあったのか?」
「怪我人が出てるといけない。行ってみよう。」

この現場において事故は日常茶飯事だ。
作業の安全対策などは当然皆無。奴隷達は全員満身創痍で注意力も散漫。
落盤・崩落・落下…これまでにも様々な事故があった。
奴隷達の中で唯一、回復魔法が使えるサトチーは事故の度に怪我人を救ってきた。
どんな酷い怪我でも彼がいれば心配する事はない。

今回もきっと…




「な…」

現場に着いた俺達は想像とは違う光景に言葉を失った。


ケタケタと笑いながら鞭を振るい、動けない奴隷を痛めつける二人のムチ男。
それを泣きながら止めようとする一人の女性。
それもまた日常茶飯事の光景。

だが、いつもと違うのは、痛めつけられている奴隷…



「ヘンリー!!」

526 :案ずるより鉄拳制裁【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:30:53 ID:FqCqxEk60
サトチーがムチ男達を押しのけ、痛めつけられているヘンリーを助け起こす。

酷い…
ヘンリーは全身を滅多打ちにされ、体中が赤…を通り越して赤黒く腫れ上がっており、
容赦ない鞭で所々皮膚が裂け、痛々しい傷口から赤い物が見える。
意識も既にないようで、サトチーが揺さぶってもピクリとも動かない。

まさか…


でも一体何があった?
俺の知っている限り、ヘンリーは立ち回りがとても巧い。
要領が良いと言うべきか…サボっていても鞭で叩かれる前にその場を免れ、
他の奴隷が鞭で痛めつけられている時には得意の弁論で切り抜ける。

その彼がなぜ?





「ヘンリー!!ヘンリー!!!」
「サトチー落ち着け!早く回復魔法を!」
俺の声でハッと我に返ったサトチーの手から癒しの魔力が発せられる。
何度も死に瀕した人たちを救ってきた温かな光。
その光に触れた体から傷や痣が消えてゆく。
それでもヘンリーはまだ目を覚まさない…

まさか…遅かった?

527 :案ずるより鉄拳制裁【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:33:11 ID:FqCqxEk60
「…ヘンリー…ヘンリー…」
うわ言のように彼の名を呟き続けるサトチー。
俺にはその光景を黙って見ている事しか出来ない。


「…ん…」


ヘンリーのまぶたがゆっくりと持ち上がる。

よかった、気が付いた。
「…ああ…サトチー……イサミもいるのか……へへ…格好悪いな…俺…
 …コテンパンにやられちまったよ…」
「まだ喋っちゃダメだ!黙ってるんだ!」
「…だってさ…アイツ等…よってたかって女の人を…酷いじゃねえか…
 …女の人を助けるのは……親分の役目だろ?」

俺達の後ろからいやらしい笑い声が浮かぶ。
「ヒャヒャヒャ…奴隷の分際で歯向かうからそうなるんだよ。
 お前等奴隷は家畜なんだ。飼い主に逆らう家畜は処分されて当然なんだよ。」
ムチ男達が笑いながら俺達に言いのける。

家畜?処分?許せない…

一瞬で頭に血が上って沸点に達する。

「ん?なんだ?その目は。お前も痛い目見たいのか?」

過去にこれほどの怒りの感情を自覚した事があるだろうか。

528 :案ずるより鉄拳制裁【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:33:55 ID:FqCqxEk60
「イサミ!!」
ムチ男に飛び掛ろうとしたその時、俺の背後から不意に声がかかる。

何で止めるんだよ…サトチー。

「ヒャハハハ…お前はよくわかってるじゃねえか。止めてやって正解だ。」
「臆病で卑屈な家畜じゃねえと長生きできねえもんなあ。ヒャハハハ…」

「サトチー…俺、我慢できねえ。家畜として生き延びるくらいなら、ここで人として…」
「イサミ…君は間違ってるよ。」
俯いたままのサトチーが俺に静かに語りかける。

間違ってる…何を…?

今日を生きて明日を生きる…って、プライドを捨てて死んだように生きる事なのか?

「僕達は…人として死ぬ事も、家畜として生きる事もない…」
サトチーは顔をあげ、凛とした眼光をムチ男に向ける。

それは…つまり…



「僕(俺)達は人として今日を生きる!!」



俺達の叫びは見事にハモり、二人同時にムチ男に飛び掛った。

529 :案ずるより鉄拳制裁【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:38:15 ID:FqCqxEk60
ムチ男が怒声を上げて俺に鞭を振るう。

右肩から一直線に衝撃が走る…痛い…が、俺達の突進は止まらない。
サトチーが片方のムチ男に殴りかかる。
俺も残ったムチ男に掴みかかり、一心に殴りつける。
接近しちまえば鞭も怖くない。ずっと俺のターン。

お前がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ!


「ケエェェェ!!」
突然の衝撃と胃からこみ上げる不快感。
ムチ男の蹴りが俺の腹部にヒットし、相手を掴んでいた俺の手が緩む。

しまった、距離をとられた。

そう認識した時には、相手は既にムチを振りかざしていた。
ヤバイ!痛恨直撃コースだ!!

「バギ!!」

覚悟を決めた瞬間、ムチ男が見えない何かに吹き飛ばされた。
俺に向かっていた鞭は軌道を変え、明後日の方向に逸れる。
今のはサトチーの魔法か。助かった。

「一気に決めろ!もう僕には魔力が残ってない!」
もう一体と組み合いながら、サトチーが声を上げる。

一気に決める…
しかし、距離がありすぎる…

魔法を…

530 :案ずるより鉄拳制裁【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:39:30 ID:FqCqxEk60
「ヒャッ!小賢しいマネをしやがって。お前の魔力も吸い尽くしてやるぜ。」
起き上がったムチ男が奇妙に体をくねらせる。


くねくねくねくね…


何だ?あの動き…
…ミツメテハイクナイ…


脳が危険を認識した時、俺の中には妙な空虚感が漂っていた。
何だ?何をされた?

「ヒャヒャヒャ…お前の魔力はあらかた吸い尽くしてやったぜ。後は…
 じっくりとムチでいたぶって屠殺処分してやらあぁ!!」

遠い間合いからムチ男が鞭を振る。
完全に俺の間合いの外。近付こうにも、唸りを上げる鞭の連撃がそれを許さない。

鞭が吼える、叫ぶ、狂乱する。
俺の前進を阻むように、一撃で倒れないように鞭が俺の体を刻む。

531 :案ずるより鉄拳制裁【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:40:13 ID:FqCqxEk60
近付かなきゃ…

近付けない…

ならばここから攻撃を…

魔法…

俺に使えるのか…

でも魔力が…

使わなきゃ…

使わなきゃ死ぬ…

考える…

ヤツをぶちのめす一撃…

ソレの在り方…








無意識に、だが自然に俺の拳が天を向く。

532 :案ずるより鉄拳制裁【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:45:49 ID:FqCqxEk60
「ふん。魔力も残ってないクセにハッタリかましやがって。
 これで屠殺処分完了だあぁぁ!!!」

ヤツをぶちのめすのは、俺達が毎日転がしてきたアレだ。

そしてソレは…


す ぐ ソ コ に 既 に 在 る ! ! !


俺の拳が勢いよく地面に叩き付けられる。

大きく揺らぐ視界 轟音と震動に支配された空間
ヤツの真上の岩盤が崩れ、岩石がヤツの頭上に降り注ぐ。


「ヒ……ヒャアアアアァァァァ!!!!」


  岩 石 落 と し


飛び散る礫と舞い上がる砂煙が収まった時、ムチ男は岩の下でのびていた。

鉄拳制裁完了

533 :案ずるより鉄拳制裁【15】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:47:29 ID:FqCqxEk60
イサミ  LV 5
職業:建設作業員
HP:4/38
MP:0/6
装備:E奴隷の服

呪文・特技:岩石落とし(未完成)

534 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:54:32 ID:FqCqxEk60
第二話はここまでです。

イサミの岩石落としは、岩石を放り投げるオリジナルと違い、
相手の上に存在する岩盤を落下させる未完成品です。

後先考えないと、落盤で味方まで巻き込まれて大変な事になります。


535 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 02:03:22 ID:ZLOXdcZ1O
乙!ハラハラドキドキして読んだよー。ペースが早いけど大丈夫か?

536 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 03:56:36 ID:TgWoUfgd0
ペース速い方が好きな自分はサクサク読めるのは嬉しい

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 06:21:34 ID:xjHHOECYO
乙!朝から興奮した。
イサミもヘンリーもキャラが立ってるしサトチーも一言一言が深い。
先が楽しみ。

538 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 07:12:08 ID:U2fdb30KO
うおおお! 朝から良いもん見せてもらった!
サクサク読めるのに内容もちゃんとあってすごいな。
ずっと俺のターンって、ふざけてんのかと思うのにカッコいい。

539 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 11:11:30 ID:lGVpm/q20
かっこいいっ!
「人として今日を生きるっ!」
惚れたぜ。

540 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:46:00 ID:YmXtNuKY0
デスパレスで暴力と汚物に塗れて、のた打ち回っているアリーナを現代人が救出するという内容の
原案があります。SS職人の手でSS化していただければ幸甚です。こちらからも、アリーナSSを御礼に
投稿いたします。
SSでは、宿屋で現代人が目覚めるのは中盤です。序盤は、ドラクエ世界帰りの人から、主人公は
呪文を主に学びます。戦士タイプゆえにジエタイか何かじゃないのが悔やまれるとか言われるものの、
実は賢者タイプです。序盤から終盤まで、アリーナはデスパレスで同時進行でのたうちまわります。
主人公の夢の中で、アリーナは助けを求めます。あとは回想シーン(もしあれば)以外はデスパレスで苦悶するのみ。
序盤は、ガーデンブルクでアリーナが人質に残るところから。盗難事件の黒幕はデスピ子飼いのマネマネ。
牢番は、デスピサロから直接もモシャスしたマネマネに三つ指ついて挨拶して、牢の鍵を開ける。
移送だということで、アリーナを縛って連行。牢の近くの天窓がなぜか開放してあって、キメラの翼で移動。
着いた先がデスパレス前で、びびるアリーナ。彼女の地獄の刻が始まった。

541 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:48:03 ID:YmXtNuKY0
デスピの動機は、ロザリーヒルにサントハイム領内からクズ貧民が多く移動してきたため。
16世紀以降のイギリスの貧乏人に対する管理を鑑みれば、状況はだいたい掴んでもらえると思う。
囀りの蜜に関するイベントとは違い、完全に怨恨。敵さんは、じわじわ嬲り衰弱させる所存。
アリーナは、領内演習や要所テンペ奪還等を経た戦士。オテンバとかと少し違う元気な姫。
エンドールの大会でデスピを少し見た事があって、傾奇者みたいなところが魅力で好感を持っていた。
大会では魔物の懐柔融和を模索するエンドール王をも無視して、ベロリンマンを惨○するという所業を
しでかしている。「北斗の拳」のサザンクロス編のクラブを思い出すと、状況はわかり易いと思う。
アリーナは、ベロリンマンのことが原因かと思って、なんとかデスピに赦しを乞おうとする。
デスピ的に、アリーナの性器はきしょいだけ。でも「花の慶次」みたいな感じで打ち解けると、交尾。
それがスクワット1回分の動きで、ヌヴヌヴとデスピの剛直がアリーナに入っていく。デスピが未曾有の生物なのが確かになる。
交尾をしてからは次第に、アリーナはデスピの手にかかるなら・・・・・という心境になる。

542 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:50:40 ID:YmXtNuKY0
「サントハイムの住人を全部収容している」「本当はもう消滅した」などと複数の贋情報でアリーナの心を
まいらせるとか、色々なシーンがあると萌えます。肉体的には、萌えるものほど限界はすぐ来ますからね。
逆エビで砂袋を背中に括りつけて、宙吊りにしてヨーヨーみたいに動かして体中をほぐすとか、
8方向からアリーナを押し合って蹴鞠ルールみたいにして遊ぶとか、ベビーサタンが人間ブランコにするとか。
垢だらけで、乾いた汗や糞尿で臭い体臭、擦過傷も痣も筋疲労もフルコースでヨレヨレの肉体。
デスピにだけは「(アリーナが“艶姿”になって)嬉しい?」などと懐く。宿命を解している男女。
救い出すべき姫だが、病弱薄命女とそれを介抱する若い男の組み合わせよりも萌える何かがある。
延命のための生薬や薬湯薬酒、光合成をするサンオイルのようなファンタジーな外用薬、小麦粉の粥。
「しずめるのかな」と半信半疑で浸かる温泉療法の泉、連行状態での散歩。もしくは、直々の拷虐。
デスピとアリーナの日々。終盤では、氏寸前の責めが慢性的になることで救出物語は手に汗握る展開に。
アリーナヴルSS。

543 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:52:20 ID:YmXtNuKY0
囀りの蜜のイベントだけど、文字盤とか木簡とか、読唇術とか何でも手段はありそうなもんだが。
ハンドベルで、モールス信号の原型になったような方法でいくとか。
なぜ、声じゃなきゃダメだったのか?
識字率が極めて低い国って、凄いな。
アリーナ、阿弥陀籤は知ってるだろうけど絵じゃなきゃわかんないだろうな。
「この文字は何なの・・・・・・?」不安げに訊く。ピサロも、デスピナイト3匹+メタルスライム1匹も
読んであげない。静止する時間。首を竦めて小刻みに震えるアリーナ。

背中もこしまわりも下腹部もケツも太腿も全面、鞭の痕。そして発熱する熱い女体。
薬草で揉み解す。
魔物の餌としても通じる麦飯や黒パン、琴欧州も大好きな主食主菜としてのヨーグルト。
蜂蜜とレモン添加の白ワインやブランデー。牢務怪物やデスピが餌をあげてるから、
逆エビや空気イス監禁をも高Lvオテンバヒメにはフィットネス代わり。
高手小手の姿勢で自分の脚で立つか上半身の関節を地獄にするかという監禁方法で夜通し・・・
ということもたまにしかしないし。

544 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:53:54 ID:YmXtNuKY0
アリーナVSデスピってどの段階が一番いけるのかな。
エンドールの段階じゃ尚早過ぎるし、勇者たちと合流してからじゃ単独行動なんか
陸の女護ヶ島しか機会が無いし。デスパレスの牢か隠れダンジョンみたいなところの牢じゃ、
とても鉄のツメと剣で対戦とか起き得ない。
脚もどこもボロボロのアリーナに逃げろと言って、
殆ど移動もできないのを観て堪能してから回収に行くとか
素手のアリーナを鞘や棍棒でじわじわ追い詰めるとか、
セクハラモードから主に指への関節技に移行とかになるのが関の山。
悩むよな。
原哲夫のマンガみたいに戦うとかって、
敵の手中じゃ無理だし、自由意志に基づく愛も起きないだろう。
アリーナは痣だらけでボロ着の半裸で、マッチョなデスピがクキュクキュに攻撃等をしまくる、
これが意外に、しっくりきてしまう。

545 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:55:35 ID:YmXtNuKY0
アリーナ管理隊のガーデンブルク産兵士が50代のオバチャンだったら嫌だな。
デスピの腕や腹を枕にして寝入る希少な日より幸せそうなアリーナ、これは
百合牝が欠かせない。そんなに太くない腕、常識的な規格の体格。
上級モンスターやデスピの暴虐のどん底で蠢いているアリーナには安らぎと情愛だと思うよ。
存在自体が。
だから、牝兵が醜かったら萌えどころが激減する。要注意だぞこの点は。
大事な注意点は他にもあるよ。
アリーナに対するイヂメが超回復が顕著になるような責めばっかしなのは、ドラクエ好きの女がマネできるようにだよ。
手伝いが欲しければ、いつでも言ってよ。行くからさ。

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:56:42 ID:YmXtNuKY0
現代人がこのスレみたいな状況になったら、♂は浮浪無頼の基地外、♀は女奴隷(村落や街の公共物)でENDだろうな。
現代人の体格とか免疫注射とか科学的思考や知識とかじゃ、克服し難い困難が目白押し。
ここのSSみたいな展開になったら、まさひろのGBサガ小説みたいなオチを予測すべき。

同人デブス、ウエストラインから膝のすぐ上まで、鞭で可愛い色にしてあげるから調教哀願しようよ。
SS形式でもいいぞ。
高手小手がデフォだけど、ソフトレザー使うから安心しようね。壁無し空気イスをさせて、肩をユサユサしてあげるよ。姿勢が崩れたら、生ゴミを食わせる。
顔に自信が無くても、髪の毛を露出する型の全頭マスクがあるから安心しようね。
後ろ手&足首束ねて、ごろごろ転がしてあげるよ。8畳間を10往復ぐらい。
季節手当てとしてポカリスエットを1リットル半、ストローの使用を許可しつつ飲ませるよ。

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:04:51 ID:YmXtNuKY0
それからは、物置で待機。緊縛と垂れ流しと暑さで、本物の女囚になるよヲタク女。
俺は鉄則として、女の首には輪や縄等を付けないし、浴槽を遊び道具にしないから、更に安心しろ。
遊ぶ前には、打ち合わせも1日以上を割いて、しっかりやる。
閉じ込める系も、放置ではない。有線式の赤外線監視カメラと有線式の音声監視機器で、見守る用意がある。
暴れて頭を打ったりしないか心配だからな。
平素から、今日は大災害やチャソコロ戦闘団が50%の日だというぐらいの、手中の女を守る意識。それが俺には有ります。
ドラクエファンの女、調教哀願をしようよ。濃密な時間を過ごして、可愛い姿にしてあげるからさ。

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:06:36 ID:YmXtNuKY0
「ピサロぉ、これとってよぉぉ」痣だらけの臭い体で、アリーナは鉄枷をじゃらつかせた。
錆びた枷が喰い込むリストが、膿んでいる。「かゆいの」。
つかつかとピサロは歩み寄り、ボロボロの汚れた麻の服に覆われたアリーナのお腹を蹴った。
黙るだけじゃない。
うつむいて、苦しそうにしているが、透明ゲロを一滴も垂らさない。
ピサロは高度な魔法金属の靴の底面積を全部使って、
アリーナの横隔膜とピサロの足刀が平行になるように、そして押し込むように蹴ったのだ。
腰の高さから伸びる短い鎖は、アリーナが床に倒れこむことを許さず、彼女の肩を苛んだ。
この鎖のせいで、アリーナはL字型の体勢で眠らざるを得ない。
用便は、足で木桶を引き寄せて、中腰でするのだ。
「ロザリーはなー、お前と違って生理が止まったりしないんだよカス」
処遇の違いが、健康の違いになっているのだ。
そして、木綿のフンドシのようなものをピサロは取り出した。その臭さは、月のものの臭いだ。
「これをクチで洗え。3週間ぐらいかけてやれれば良いよ。わかったな?」
「どうしてこんなことするの(泣)?」

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:07:54 ID:YmXtNuKY0
ピサロはアリーナの胸倉を掴むと、思いっきり立たせた。鎖がピンッと張る。
アリーナの腕が渦巻鉛筆のような捻じられ方をする。
枷は、彼女を後ろ手に固定するようには着けられていない。
胸倉が解放されて、顔を歪ませつつゆっくり座ろうとしているアリーナ。
アリーナが動ける範囲に、木桶の臭い物を垂らす。アリーナが中腰の姿勢で悔しそうにしている。
別の木桶から汚い水を、汚物溜りに流す。
「臭いよー」絞り出す様な高い声で泣き出すアリーナ。
汚物の木桶は、内側に乾いた汚物がこびりついているのだが、
それも生理用品と同じ期限の間に新品同様にしろと言う。
でも、木桶はアリーナのオートミールや飲料水を入れるものにするだけだから、
無理だったらしなくてもいいってさ。
汚物溜りが怖くて中腰。でも、いつまでも続かないし、麻のソックスで包んでいる足はもうどっぷりだし、
麻の服を腰まで捲り上げて下半身マッパになって、
シリを床に着けた。「あッ痛ゥッ!!」玉砂利や馬術道具で嬲った痕に、汚物が滲みる。
ピサロは後屈立ちになってアリーナを眺めているが・・・・・・。

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:09:18 ID:YmXtNuKY0
もうアリーナには汚物の飛沫を足で跳ねる元気も、ない。いいことしよう、などと誘うこともない。
性器を汚物で大変なことにしながら、歯をガチガチ鳴らして洟をすすり上げている。
頑張れアリーナ、毒消し草の免疫がついて人の世への無駄な執着という苦しみが丸4日の苦悶の中に消え、
苦悶の果てに安楽が体の奥深くから湧き上がってくるまで、
そんなに日は無いからな。臭いから食欲も挫かれ、安楽に近づくアリーナ。
アリーナと遊ぶために、何種類かの頭骨を持ってきているピサロは、気が変わり、
「クソなんかね、啜ったらいいんだよ」と優しく語り掛ける。
赤毛を虱だらけにして首を横に振るアリーナに、小袋から蠅を20匹ぐらい放す。
緩慢な動作でハエから逃げるように首を振るアリーナ・・・・・・。牢に棲む肉食の蟲がハエを平らげるまで、それは続く。

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:10:04 ID:XFotTZSu0
スルー推奨

552 :アリーナが可哀想なので、衛生責めは無しにしますね:2007/10/05(金) 13:11:40 ID:YmXtNuKY0
後ろ手で壁にもたれているアリーナ。やや疲れた様子だが、一応は直立している。
彼女の両手首をつなぐ錠前付きの鎖は、60cmほどの手摺と壁の間を通っている。
つまり、アリーナは自分の筋骨で直立していなければ、肩の関節や腕の筋が急激に悲鳴をあげる。
「おい垂れ流し女。何よごしてんだよ?」アリーナの70時間を労うのは、10交替目の荒くれだった。
帯剣したピサロが来ていないということは、別の「短い手摺」に移される心配は無いわけだ。
膝が着かない中腰という程良い高さの手摺、運動器具の鉄棒のように壁ではないところに設けた手摺、
床に足枷がついているところ、アリーナの身長より高いところにある手摺。
「伝えてくださる?あの傾奇者に。なんで人間を恨むのか」。9シフト目のモンスターは去り際に、
木簡にアリーナの請願を記した。「ちょっ(焦)!」それを見せられたアリーナ。破顔する怪物5匹。
木簡には「玉門が痒い」「腰巻のネチョネチョには慣れた」「腕痛い。虎男の肉棒が支柱にできたら」と記されていた。
「なんだこの姐ちゃん。ピサロ様を土人呼ばわりしてるぞ!?」「森の民は動物じゃありませんよ、姫」。
妄語両舌で、アリーナの憔悴した肉体に、恐怖と挫けそうな気持ちがのしかかる。うつむく。膝が震え出す。

「アリーナ」を貴女の御芳名に変換してプリントアウトすると楽しいですよ。

553 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:26:34 ID:fehCZOW/O
見つけた支援

554 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:37:10 ID:fehCZOW/O
何だ支援して損した

555 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 14:31:58 ID:0t7B21Q90
妄想を吐露するスレはここでつか?
それなりの文章力はあると思うんだから、もうすこしだけ、きれいな話にしてくれるとありがたいのだが。

556 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 14:38:31 ID:94CfT0hN0
何処の病院から逃げてきた奴が書き込んだんだろ

557 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 17:03:37 ID:qibKE+QeO
熱意に負けた俺が希望のSS書いてやるよ

うおのめ「ここはどこだ?」

〜中略〜

うおのめ「助けにきたぞ」
アリーナ「でかした」

〜完〜

558 :>>551のブータまんっ♪:2007/10/05(金) 20:04:16 ID:/gueIhfS0
「ガーデンブルクに漢が!?」驚愕し、そして怯えるアリーナ。
今だけは身の頼りであるはずの牢番は、うつむいていた。
屈強な男性どもに「あの、この人はやめてください」などとボソボソ、請願しているが
男が右足で少し踏み込み、鋼の盾で槍の穂先をカコンカコン叩き始めると、牢番は槍を壁に立て掛けて
隅の方に行ってしまった。黒装束の数人が、サントハイムの王家の紋章を染めた布を持ってくる。
「あの、どうぞおかまいなく・・・(怯)」。不穏な一団が、ただの女ではなく自分の身元を知った上で
何かしているのだと察して、怯えるアリーナ。それから、アリーナは頑張った。

559 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 20:06:39 ID:/gueIhfS0
雑魚モンスターなら絶命するような回数、棘の鞭で素肌を打擲する!
頑丈なカラダは瑕疵ばっかり増えてゆく。苦痛に身をくねらせるアリーナ。
そこを荒塩と臭いブランデーで消毒し、薬草と毒消し草を煎じもせずに食わせる。
逆エビに緊縛して、腕脚が×字に交叉する背中に座る。
腕脚の一部に4人が腕を絡ませて、4方向に進む。
筋骨総動員で体の内側が複雑に重層的に深刻に裂けそうになるのを止める、アリーナの体。
肌は玉の汗。
肉と酒と黒パン・麦飯やオートミールを飲食した荒くれの汚物を食わせる。
毒消し草があるのを良い事に、鞭の痕に汚物を塗る。
アリーナを後ろ手にして立たせ、足の甲を鋼の鎧のクツの部分で踏む。
彼女の動物的な啼き声にビクッとなっているのは、
隅の方でレオタードから見えるケツを向けて立っている牢番のみ。
嘶くアリーナ、5秒ぐらいで声が途切れる。
そして、屈強が「いざ!」と宣言して12ダースのパンチをめり込ませる。
酢を口に注いで起こす。体力がやばくなっても、ただ休ませはしない。
土下座や誓言などの強要で心を完全に挫く。

560 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 20:08:20 ID:/gueIhfS0
シンバルや怒声。地下の方から賑やかそうな音が洩れ聴こえる。
半裸でぐったり休むアリーナを、大きな騒音で地味に追い込む。
体中が虚ろに脱力している。アリーナの体に憩い無し。
泥饅頭を捏ねるライノソルジャーを見て、暗澹状態のアリーナ。
「どうして人間が嫌いなの?」「ヒト型の誰かのメイレイで、女の子をいぢめるの?」
騒音が、アリーナのか細い足掻きを掻き消す。
牢番に、準備運動の手伝いを強請する鬼畜怪物。アリーナ自身を、バーベル代わりにしたケダモノも居た。
赤毛や爪先が、床にだらしなく垂れてアーチ状の体勢になるアリーナ。後ろ手。足首は揃えて、括ってある。
足首が×字型に交叉したりしていないのは、魔物の微かな善意か。
「うわッ 臭ェッ」。腹筋等の出力が弱っていて、昨日と違って髪が魔物の腕の高さに広がる。
「シラミじゃねぇかバカ女〜〜(怒)」。背中のストレッチ効果で、ケツからも玉門からもボソボソとガス洩れする。
次にバーベル体操をした怪物に対しては、無理して上体と、それから自動的に脚を持ち上げた。もうガスも洩れなかった。
そして、笑い者が1匹現れた。「シラミ女・・・・・・そうか、俺をなめているのか」。「ち・・・・が・・・・・う・・・・」。
アリーナが数日の絶対安静に陥っても、責任を取るのは牢番の元ガーデンブルク兵(虜囚)である。

561 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 20:10:24 ID:/gueIhfS0
唐突に一掴みの糞便をバッと食わせる!
三日酔いのゲボを口移し!
上から下へ!
パイン入り酢豚の匂いが残存する濃厚なゲボ!

便所臭の濃い手で少し空洞を作り、鼻と口をふさぐ!
鞭痕が発熱する全身を、よこたえることも赦さない!
後ろ手や高手小手だけじゃなく、鉄砲縛りでまで腕の間に鎖を通してアリーナの頭上のどこかに
鍵で接続する。
しかも、常に空気イス系の姿勢じゃなかったら胴から上が捻じられる位置に固定!
末期的な期間になると、その状態でサンドバック化、完全脱力して徐々に脱臼に向かって痛みが蓄積されていく。
激化する痛みと、アリーナの鼻から注ぐ酢が極限まで昏睡を赦さない。
ボロくて頑丈な麻の服の胸倉を掴むと、振動が加わるし姿勢が更に変になるしでグギャッと短く叫ぶ!!
「足払い50本」。こんな、以前のアリーナなら準備体操にもならない事柄が、○刑宣告に等しい力を持つ。
もちろん足技は50匹のモンスターが1回ずつやりにくるのだ。

562 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 20:12:10 ID:/gueIhfS0
膝に8フィートぐらいのヒノキの棒を挟ませて、女の子正座をさせる。
その両脚に、1人ずつ座る。姫だっこをしておいて、胸の高さから落とす。
後ろ手縛りになっている腕に、屈強な腕を絡ませて早足で歩く。
その勢いで、アリーナを牢の床に投げ出す。
次の朝は、後ろ手のアリーナが肩が痛いと泣くのも無視して、五人掛けに挑ませる。

効力の無いワラ人形を、光の戦士特効の攻撃アイテムだと偽り、アリーナに力の注入を強要。
彼女の心が折れて、クリフト・ブライ・勇者を除く仲間たちの分から一つずつ、魂が裂ける想いで
言われたとおりの注入をする。拘禁初期にはまだ元気なアリーナ。
こういう、アリーナの心を玩ぶのもピサロらは堪能する。
不自由に拘束した手足で、土下座して最下級の女として忠誠をデスピに誓うアリーナ。
むき出しの肌には、無数の外傷が・・・・・・。

563 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 20:14:32 ID:/gueIhfS0
ドラクエファンなら、「O嬢の物語」が気に入ると思うんだ。読んでみようよ、面白いから。
マンガ版も出てるよ。アマゾンで注文したらすぐ届くよ。安いよ。
宿屋SSだけど、病弱女とか腕がカタワの女とかの話もきぼり。
ゲームのマップには無い懲治館で呻吟する現代人女性とかも良いぞ。
罹患した女囚として不潔な獄で過酷な肉体的尋問に耐える現代人女性も良いぞ。
濃厚な氏の濃密な影と萌えキャラクターのコントラストも大歓迎だぞ。
監禁で氏に到る妙なんか、創作物ならではの妙なんだから。往生の物語。
ゼシカも、実家の庭に棺収容の際に化粧落し等に使う綿を作るための綿花畑があったりしたら萌える。
ドラクエで棺といえば担架みたいなもんだし、面白いのではないだろうか。
イベントも何もかもを、綿花畑を展望できるところとか同じ敷地内とか言う範囲で進めるわけだ。
儚げ属性や抗う姿は万能属性だぞ。
牢シーンで活きのいい蚯蚓をバラバラッと撒きつける責め手とかも居たら良いな。

564 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 22:16:29 ID:USAPq/uF0
何を求めてこのスレに来てるか知らんが、ここはそういうスレじゃないと思うんだ

565 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 22:17:42 ID:u2PXk4yD0
NGワード ID:/gueIhfS0
専ブラ入れてない奴はスルーでよろ

566 :Stage.9 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:24:05 ID:QuQvl7z70

アルス「ちーっす」
タツミ「ちーっす、じゃないよ、なんで携帯にユリコが出るんだ! 君なにやってんの!?」
アルス「俺のせいじゃねーって! いきなり殺されかけて、こっちだって大変だったんだ」
タツミ「あーもー、勇者はプレイヤーの生活を引っかき回すのが仕事なのかと小一時間(ry」
アルス「それよりほら! まずは読者様が第一だろ! な?」
タツミ「あっと、失礼いたしました。それでは今回のサンクスコールですっ」

アルス「>>486様、勇者になるのけっこう難しいんだよな。
   俺こう見えても、家でも毎日6〜7時間は勉強してたんだぜ」
タツミ「ふぇぇ、実は努力してたんだねぇ」
アルス「実技は得意なんだが、暗記物がなぁ……。
   タツミは見ただけで頭に入るんだろ? ちょっと羨ましいぞ」
タツミ「アルスだってできるんだろ?」
アルス「俺の『おもいだす』って、お前のとはちょっと覚え方が違うんだよ」
タツミ「そうなんだ。どう違うの……って、もう行数ないね」
アルス「だな。その辺はまたいずれ本編で!」(ふぅ、話そらせたか)


タツミ「ところで、今回のは1回貸しだからね。忘れないでよ」
アルス「……ぐ」



アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.9 仮免勇者と彷徨勇者】
 [7]〜[13] リアルサイド

567 :Stage.9 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:25:05 ID:QuQvl7z70
  Prev >>478-484 (Rial Side Prev >>400-407)
 ----------------- Memories of Ars -----------------

「聞いてください、アルス様! 私、とうとう『魔法使い』になりました!」
「あ、そう。……で?」
 嬉々として報告に来たエリスを、俺はいつものように冷たくあしらって、読みかけの呪
文書に目を落とした。
 街から少し離れた草原の木陰で、誰にも邪魔されないよう独りで勉強するのが俺の日課
だったが、この女はしょっちゅう訪ねてくる。うるさくて仕方ない。
「今、ルイーダさんのところにも予約してきたんです。アルス様の旅立ちの時までには、
もっともっとレベルを上げますから、絶対に指名してくださいね!」
「まだ先の話だろうが……。まあ、気が向いたらな」
 確かに、12歳で正式な冒険職ライセンスを取得するやつなど、年に何人もいないが。
 俺から言わせれば、その前に3回も試験に落ちてる時点でアウトだ。ちゃんと計画を立
てて一発で受かる方がよっぽど賢い。
 そこらの冒険者と勇者は違う。多くの人命がかかる旅で「失敗」は許されないのだから。

 俺が黙っていると、エリスは肩を落とした。見るからに落胆している。
 ったく、面倒くさいやつだ。
「今晩、お前の部屋の窓を開けておけ」
「え?」
「いいな。邪魔だからもう行ってくれ」
「あ、はい」
 シッシッと追い払う。エリスは何度も振り返りながら街へと戻っていった。


 その夜、俺はエリスの生家である宿屋に向かった。2階の彼女の部屋を見上げる。言い
つけ通り開けてあった窓に、その場で小石を拾って放り込んだ。
 エリスは待機していたようで、すぐに顔を出した。
「アルス様♪」
「静かにしろ。こっそり降りてこい」
 彼女をつれて、城に向かう。

568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:25:42 ID:+CbdOfoh0
偶然支援

569 :Stage.9 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:26:46 ID:QuQvl7z70

「あのどちらに……?」
 不安そうなエリスを、口に人差し指を立てて黙らせる。城の裏門に回ると、夜番のサミ
エルが俺の顔を見てニカッと笑った。こいつは親父の信者で、他の奴らと違って俺にも悪
い態度は取らない。事情を話し、中庭に通してもらう。

 庭の中心に、ジパングから運ばれてきた「桜」という大きな木があった。
 天頂から照らす月明かりに、満開の桜は薄桃色にぼんやりと輝いている。はらはらと散
る花びらは妖精が戯れているようで、幻想的な情景に、エリスは言葉も出ない様子だ。
「合格祝いだ。きれいだろ」

 が、ふと見るとエリスは両手で顔を覆ってしまっている。
「おい、どうした?」
「アルス様……。私、アルス様みたいに頭も良くないし、剣技も武術も全然ダメです」
 肩を小刻みに震わせて、絞り出すように言う。
「お役に立ちたくて……でも本当は……ヒック……ちっとも自信なくて……ヒック……」
「な、泣くことないだろ。そんなの最初からわかってる。ってか、俺と比べようってのが
おこがましいぞ。そうだろ?」
 困っている俺に、彼女は必死に嗚咽を飲み込んで、そして泣き笑いを浮かべた。
「その通りですね。ごめんなさい、やっぱり私バカですね」
「エリス……」
 彼女の部屋はいつも遅くまで明かりがついている。試験の前にはほとんど寝てなくて、
根を詰めすぎて倒れたのも1回や2回じゃないらしい。暇があれば城の書庫や宮廷魔術師
のもとに通い詰め、呪文学の成績はダントツでトップだ。
 それがすべて俺のためだと、彼女は真っ直ぐに答える。どんなに俺が邪険にしても。

 たまらなくなって、抱きしめた。
 本当はずっと前から、俺も彼女のことが好きだった。なにせひねくれたガキだったから、
この時まで認めようとしなかったけれど。「もしエリスまで他の連中みたいに裏切ったら」
と、怖かったのかもしれない。

 大好きだ。あの時から――そして今でも。

570 :Stage.9 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:28:52 ID:QuQvl7z70


 でも。
 そんな想い出も、彼女も………………すべて作りもの、なんだよな?

 俺自身も、おふくろも親父も、あそこに暮らす人々の誰もが、あの世界のなにもかもが、
ただのゲームでしかなくて。
 俺と仲間たちが命懸けで魔王と戦ったことも、その魔王でさえも、誰かが作り出した虚
構の物語でしかなくて。


 そして……だからこそ、あの世界には決定的なものが欠けている。
 決して救われない。どんなにあがいたところでどうしようもない。
 世界を救うはずの俺だけが、まるで救いがないことを知っている。


 ――なにも知らなければ良かった。
 なにも知らないまま、ゲームの中におとなしく収まっていたなら、俺はただのキャラク
ターとして戦っていられたのに。
 課せられた使命の重さに悩むことはあっても、まさか、今まで信じていたものすべての
価値を見失うなんてことは、なかっただろうに。


 どうして俺は、タツミのことを知ってしまったんだろう。
 どうして俺は、現実への境界を越えてしまったんだろう。


 ただ一人、知ってはならない世界の秘密を知ってしまった勇者は、
 どこへ行けばいい……? 




571 :Stage.9 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:30:53 ID:QuQvl7z70

 ----------------- Rial-Side Yuriko -----------------

(うなされてる……?)
 嫌な夢でも見ているのだろうか。片岡百合子は、眠り込んでいる少年の髪にそっと手を
置いた。
「あの……大丈夫だよ、ここは安全だから。安心して、ね?」
 そう語りかけると、少し表情が和らいだ気がした。
 三津原辰巳によれば、彼こそが家庭用ゲーム界きっての有名RPG「ドラゴンクエスト3」
の主人公だということだ。夢みたいな話だが、入れ替わった本人がそう言うのだから、信
じるしかない。
 それに、確かにあの戦いの跡は尋常なものではなかった。途中で折れていた鉄杭……な
にか刃物で押し切られたようだったが、並の人間同士なら、ああはならない。互いにもの
凄い力をぶつけ合った結果だ。
(でも、見た感じは普通よねぇ……)
 治療にあたっていた掛かりつけの医師は、特に不審に思っている様子はなかった。ケガ
も深い傷はないということでホッとしたが、なかなか目を覚まさないのは心配だ。
「過労のようですね、しばらく安静にしていれば、じき意識も戻るでしょう」
 医師はそう言っていたが、もう5時間は経過している。
(まあ、異世界に来て生活するって大変だよね。よっぽど疲れてたのかな……)
 少年が持っていた時代遅れの携帯電話を見つめ、ユリコは何度目かのため息をついた。


『それで、アルスの様子はどうなの!? ちょっとヘニョおとなしくして、今大事な話をし
てるんだから! え? ああ、ヘニョってスライムの名前なんだけどね』
 スライムって……。自分でなければ、絶対にふざけていると思うだろう。昔から変わっ
たヤツだと思っていたが、異世界で勇者やってます、というのはどうなのだ。
(しかも、戸惑ってるあたしのことなんかそっちのけで、この子の心配してるし……)
 よほど相方(?)が心配なのか、電話も5分置きにかけてくる始末。いい加減しつこい
ので抗議すると、時差がどうのと言っていた。なんのことやら。「寝ている本人にも障り
が出るから、目が覚めたらこちらからかけ直す」と説得して、ようやく静かになった。
 毎度のように思っていることだが、惚れる相手を間違えたかもしれない。

572 :Stage.9 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:32:53 ID:QuQvl7z70

「う…ん……」
 それにしても、よく眠っている。
 こちらも見事に騙してくれたものだ。ロクに知らない相手と「友人」として花見につい
て来るその大胆さに、ユリコは逆に怒る気になれなかった。
 騙された方が悪いというか。
 もっとも、目の前にそっくりの人間がいて、そいつも本人の名を名乗っていれば、多少
様子がおかしいからといって「別人が成り代わっている」とは疑わない。
 だからこそ眠っているこの少年も、タツミ本人も、そう簡単にはバレないと気楽に構え
ていたのだろう。
(そんな電波な発想をしろって方が無理よね)
 違うのはせいぜい瞳の色くらいか。実は少し青みがかって見えた。それも光の角度によ
るのか、通常は普通の黒にしか見えない。起きたらもう一度確かめてみよう。
 
(だいたい、こんな顔がゴロゴロいてたまるかっての。男の子のくせにさぁ)
 この少年もさすが有名ゲームの主人公なだけあって――
(いいなぁ……まつげ長いし。肌とかすっごくキレイだし)
 頬をおそるおそるなぜてみる。
(やーん、やっぱりツルツルだぁ。洗顔料なに使ってんの? ちょっと悔しいかも)
 フニっとつまんでみる。
(向こうの子って、みんなこんなのかなぁ。そりゃこっちの「理想」を形にした世界なん
だから、当然だろうけどぉ)
 フニフニ……。
(かわいい女のコも多いのかな。あいつも勇者なんてご身分ならモテるだろうし……)
 フニフニフニフニ……。
(そういえば、ぱふぱふとかあったじゃない! 3はギャグだったっけ? でもなぁ)


「あお〜、あいやっへんほ?」
「キャアアア!」

 ――あ、起きた。

573 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:32:57 ID:KDAlYdDl0
支援クエスト

574 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:33:21 ID:+CbdOfoh0
つい読みふけってしまった支援

575 :Stage.9 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:34:52 ID:QuQvl7z70

「えーと、アルス君、だっけ?」
 身を起こした彼は、今の一言で状況を察したらしい。
「もうタツミに聞いてるんだな。……アルセッド=D=ランバートだ。騙してすまない」
「あ、いえ」
 アルセッドというのが本名なのか。さすが勇者は名前もカッコイイのね。
(って、そうじゃないでしょ。反射的に許しちゃってるし)
 セルフツッコミを入れているユリコに、少年はふと首をかしげた。
「ここずいぶん広いけど、あんたの部屋か? それにその服……他と違うね」
 幾重にも合わせた襟元や、華やかな金糸の帯を、珍しげに見ている。
「やっ、変でしょう? 今時、普段着が着物とかあり得ないよねっ」
「キモノ?」
 さらに首をかしげるランバート少年。そうか、そもそも「着物」を知らないか。
「日本の民族衣装っていうか、昔の正装っていうか、そんな感じ……かな」
 異世界の勇者だとか言われると、どうにも気持ちが焦ってしまう。どこかユーロ諸国
の王子様がお忍びで日本旅行に来ていた、とかの方がまだピンと来るのだが。
(ってどこの厨設定よ。まあでも、要はそんなもんよね)
「そ、それはともかく。キミ、やっぱり呪文とか使えるの? メラとか?」
 まずは気を楽にしてもらおうと、ひとまず笑顔で会話を続けてみる。
 が、少年は「はぁ?」と呆れたような声を出した。
「ここは現実だろ。呪文なんか使えるワケないじゃん、常識で考えて」
 ――意外とリアリストらしい。

 言葉に詰まってしまったユリコを、少年はなんだか不審そうに見ている。
「なあ……あいつ、俺のこと、あんたになんて言ったんだ?」
「え?」
 入れ替わることになった経緯だよ、と彼は視線をそらす。ユリコも気まずくなった。
「それは……なんかタツミが無理に頼んだんだってね。すっかり迷惑かけちゃって。あ
いつも悪気は無かったと思うんだ、許してあげて?」
 手を合わせるユリコに、少年はきょとんとしている。そして盛大にため息をついた。
「ったく、お人好しもほどほどにしろよな……」
 なんのことだろう? ユリコが聞こうとした、その時だ。

576 :Stage.9 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:35:52 ID:QuQvl7z70

 廊下をドスドスと乱暴に踏み鳴らし、誰かが近づいてくる。バンと大きな音を立てて、
障子が左右に開けられた。
 古風な衣装をまとった初老の男が立っていた。ギロリと二人を睨みつける。
「お、お父さん……!」
 ユリコが慌てて間に立ちふさがったが、その彼女を乱暴に突き飛ばし、父親はズカズカ
少年の元まで近づいていくと、
 パーン!
 問答無用で横っ面をひっぱたいた。
「娘には二度と近づくなと、忠告したはずだがね。危険な目に遭わせおって……どう責任
を取るつもりかね」
「いきなりなにするのよ! だいたい人違い……あ、いや、そうじゃないけど」
 なるべく彼の正体をバラさないでくれ、とタツミに頼まれている手前、別人だとも言え
ない。どうしたものか。

 少年はあまりのことに呆然としている様子だった。が、なにか得心したのか、
「なるほどねぇ……」
 小さくうなずくと、いきなり妙なことを父親に尋ねた。
「すみませんね。ところで、お父さんもなにか武芸を嗜(タシナ)んでおられます?」
 ぽかんとしているユリコのとなりで、父親はひたいに血管を浮き上がらせている。
「君にお父さんなどと呼ばれる筋合いはないがね。剣なら多少の心得はあるが、それがど
うかしたのか」
「へぇ……。あそこに飾ってあるカタナ、レプリカじゃなさそうですね」
 そう言いつつ立ち上がると、思ったよりしっかりした足取りで床の間に歩いていく。飾
られていた日本刀を手に取ると、少年は片腕で簡単に持ち上げてしまった。
 本物の日本刀はかなりの重量がある。父親の顔つきが変わった。
 そして――

「試合、してみませんか。お父さん?」
 その瞳が、一瞬だけサファイア・ブルーに煌めく。
 まるでとっておきのイタズラを思いついた子供のような笑顔だった。


577 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:39:44 ID:+CbdOfoh0
あれ?支援

578 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:41:51 ID:+ZLslmraO
漏れも支援

579 :Stage.9 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/05(金) 23:42:08 ID:QuQvl7z70
本日はここまでです。
だいぶ話が込み入ってきたので、次かその次のステージの間に、簡単なまとめをやろうかと思ってます。
読者様からの質問コーナーなんかもできればなぁ、とか。
もしあればですが、なにか疑問などありましたら、よろしくお願いいたします。
あ、でも本スレでこういうのはまずいのかな……?

580 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:46:16 ID:+CbdOfoh0
>>579
いつもながらGJ
ここで「続く」とは正直たまりません
リアルタイム支援は初めてだったんでドキドキしたw

581 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 23:55:57 ID:94CfT0hN0
>>579
投下乙
何ともいいとこで終わったwww
次回楽しみだ

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 00:37:46 ID:GpFDZ4uW0
【萌畑】@御名前を貴女の実名カタカナ表記に差し替えて保存等して遊びましょう。

三日酔いライノサウルスの蕎麦や麺とかの具が多いゲロ。卵焼き系の臭さが特徴的な糞。
8時間の肉体鍛錬の後に酒と加工食品をしこたま食った中量級モンスターの尿。 それらを御名前が、クチ枷の強制力によって完食する。
「う”えええぇぇ・・・御名前どこー」「こっちや、ここや、御名前おるぞ」ドタドタと足音を立てて、そして、 かがんだライノサウルスが
御名前の口をエチケット箱と同様に使用する!
またはおもむろにグレー色の作業員ズボンをずりさげたライノサウルスが。
ぶば ぶちぶちぶち ばふっ 「はー」ケツを拭くと糞で汚れた藁クズを御名前の柔肌に貼る。
赤黒い系の色彩も混じってる尿でグズグズになった糞便が、一筋分ほどこぼれてムネの谷間を垂れていく・・・。最下等食糞女・御名前。



583 :滄海の一涙【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:05:33 ID:vPdBw58i0
LOAD DATA 第二話後半>>525-533

「ひぎゃああぁぁぁぁ!!」
ウシッ! と、空手の決めポーズを決めた俺の後方から悲鳴が上がる。
振り返るとサトチーもまた、もう片方のムチ男をノックアウトした所だった。

「ありがとう。サトチーの援護がなかったら俺はやられてたよ。」
俺の言葉にサトチーが微笑みを見せる。
くじけそうな俺を何度も救ってくれたあの微笑み。
「お礼を言うのは僕の方だよ。」

??

その言葉の意味が理解できない俺にサトチーが続ける。
「ありがとう。ヘンリーの事で怒ってくれて。」

あぁ…そうか…
サトチーとヘンリーはずっと二人でこの最悪の状況を生き延びてきたんだよな。



―人として、明日を生きるために―



「あっ!」
何かを思い出したようにサトチーが珍しく間の抜けた大声を上げる。


「…ヘンリー…」

584 :滄海の一涙【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:06:22 ID:vPdBw58i0



「………あっ!!」
サトチーの呟きを聞いて、俺も間抜けな大声を上げる。


頭に血が上って忘れてた。
ヘンリーの容態は?

「…すぴーー…ぴるるるる……すぴーー……」

俺達の死闘を知らず、女性の膝枕で幸せそうに寝息を立てて眠るヘンリー。

拝啓 お父様、お母様。
 ムチ男よりもコイツをぶちのめしたいと思ってしまいました。


「大丈夫。ベホイミはちゃんと効いたみたいだ。」
ヘンリーの様子を見て安心しきった表情を浮かべるサトチー。

釈然としない物があるが、ヘンリー以上に幸せそうなサトチーの横顔を見ていると、
俺の中のモヤモヤもスッキリと晴れ渡るような気が……モヤモヤ……

…あれ?何だ?…


…視界が…モヤモ……ヤ………し…て………

585 :滄海の一涙【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:08:23 ID:vPdBw58i0

女が泣いている。

黒い翼の男を抱いて泣いている。

女が泣いている。

女が泣きながら男を抱きしめる。

男の体がさぁっと溶ける。

紫色の霧となって男の体が四散する。

女が泣いている。

紫色の霧の中で女が泣いている。

女が呟く。

霧の中で女が呟く。

紫一色の中で霧の中で女が呟く。

呪いの言葉を呟く。

女が笑っている。

…夢に違いないよな…まったく酷い夢だ…



586 :滄海の一涙【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:09:07 ID:vPdBw58i0
こんなにゆっくりと眠ったのはいつ以来だろう。
たっぷりと寝た次の日は実に気持ちがいい。夢はアレだったけど。
奴隷になってから毎日まともに睡眠なんてとってないもんな。
それでも毎朝、定刻の数分前に目が覚めるのは人体の神秘。
寝過ごして鞭で叩き起こされるよりはマシだけどさ。
たまには邪魔されずに心ゆくまで惰眠を貪りたいじゃん?
ま、もう充分に睡眠を楽しんだ。
こんな朝の目覚めはきっと素晴らしいものだろう。

ゆっくりとまぶたが持ち上がる。

「お。やっと目が覚めたなイサミ。」
「よかった。丸二日も起きないから心配したよ。」
「まったく…経験も積まないでいきなり大技を使うからだ。ぶっ倒れて当然だろ。」

もうすっかり見慣れた紫のターバンと緑の髪がぼやけた視界に入る。
二日…そんなに俺は眠っていたのか。
二人ともホッとしたような顔をしているが、心なしか表情に疲労の色が見える。

「サトチーに感謝しろよ。この二日間寝ないでイサミの看病してたんだからな。」
「ふふっ ヘンリーだって心配してほとんど寝てなかったじゃないか。」
「ばっ…俺はただあれくらいの戦闘でへばる子分が不甲斐無くてだな…」

よく見ると二人とも目の下にクマを作っている。
サトチーの息が少し荒いのは、目を覚まさない俺に回復魔法をかけ続けたからだろう。

「ごめん。俺、助けられてばっかだ…」

587 :滄海の一涙【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:11:10 ID:vPdBw58i0
「……ていっ!」 びしっ!
「痛!」

ヘンリーのチョップが俺の頭に打ち込まれる。

「覚えておけ。俺は弱い男は例え土下座しても絶対に子分になんかしない。
 もし、お前が本当に情けない性根の腐った奴なら俺はお前を見捨ててる。
 お前は俺が子分として認めてやったんだ。子分のお前が情けない顔してたら、
 親分の俺まで情けない性根の腐った奴に思われちまうだろ。」
ヘンリーが怒ったように早口でまくし立てる。
キツイ口調だが、その言葉には彼なりの優しさを感じる。

「…うん…ごめ…」
「ふん!情けない男も嫌いだが、言葉を知らない男も嫌いだな。」

イサミの言葉を遮ったヘンリーの背後で、サトチーがクスッと笑みを漏らす。

言葉…あぁ、そうか…

「そうだよな…ありがとうサトチー。それに親分。」
その言葉に、ずっと頬を膨らませていたヘンリーがニヤリと笑う。
「上出来だ。さすがはこのヘンリー様の見込んだ子分。」

いつものように笑いながら俺の肩をバンバン叩…こうとしたヘンリーの手をすり抜け、
サトチーに向き合う。(背後でヘンリーが派手に転んだようだがキニシナイ。)


「…で、ここは…石牢?」

588 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 02:12:13 ID:l8Yjy7xSO
サトチー支援!

589 :滄海の一涙【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:16:13 ID:vPdBw58i0
重い規則違反をした奴隷達が投げ込まれる石牢。
奴隷達の宿舎として提供されている薄暗い部屋よりもなお暗い部屋。
奴隷達の寝床として配給されている湿ったゴザよりもなお冷たい石床。

奴隷管理人であるムチ男に歯向かった罰として俺達は投獄された。

朝晩の食事すら支給されず、飢えて死ぬまでただ放置される刑場。

ここに入れられる事は即ち死刑宣告。


「雨水が壁の隙間から染み出してるから飲み水は何とかなるけど、
 それでも水だけじゃ長くは持たねえよなあ。」

奴隷宿舎に取り付けられた扉よりも、はるかに頑強な鉄格子が俺達の生と死を遮断する。
腹が減ったな。二日間何も食わないで寝てたんだから当然だけど…
そう言えば、サトチーとヘンリーは二日間一睡もせず何も食わずに俺の看病をしていた?
俺よりもよっぽど極限状態なはずなのに、そんなそぶりは全く見せない。
一番休んだ俺が真っ先に根を上げてどうするんだ。

「この鉄格子を壊せればいいんだろ?」


俺はゆっくりと立ち上がり、拳を天に向け…


「ちょ…イサm…」


その拳を全力で地面に叩きつける!!

590 :滄海の一涙【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:17:54 ID:vPdBw58i0
「おりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」






ゴキッ!






うん…手が痛い…

サトチーが慌てて変な方向に曲がった俺の手に治療を施す。


「……ていっ!」 びしっ!
「痛!」
ヘンリーのチョップが再び俺の頭に打ち込まれる。

「ばっかやろ。経験不足のお前にその技はまだ無理だって言っただろ!
 今度こそ本当に目を覚まさなくなったらどうするんだ!!」
「…でも…」
「だぁ!口答えするな子分のクセに!!」 びしっ!
「痛!」
ヘンリーのチョップが三度俺の頭に打ち込まれる。

591 :滄海の一涙【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:20:26 ID:vPdBw58i0
「まあ、ヘンリーの言う通りだね。僕達が考えなきゃいけないのはただ一つ。
 『三人とも無事に』ここを出る方法だ。無理はしちゃいけないよ。
 イサミに何かあるとヘンリーが心配するからね。」
そこまで言ってサトチーがクスクス笑い出す。

「だから俺は別に…もういい!」
壁のほうを向いてふて腐れるヘンリーを見てサトチーがまた笑う。
それを見て俺の顔にも笑みが漏れる。

緊迫する状況なのに、なぜか俺達は笑っていた。


「石牢で笑うとは変わった奴等だな…」


背後からの声に、俺とサトチーの顔から笑みが消える。

振り向いた俺の目に入ったのは鉄格子の向こうに立つ男。
その男が身につける純白の鎧の胸に下げられているのは 教団シンボルのエンブレム。

神殿衛兵…ムチ男の上に位する教団の兵士。

ひょっとして、ここで俺達を始末する気か。

俺とサトチーの体に力が入る。
来るなら来い!


「そう身構えるな。お前らをここから出してやる。」

592 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 02:21:08 ID:l8Yjy7xSO
再度支援

593 :滄海の一涙【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 02:22:33 ID:vPdBw58i0
聞き間違いか?俺達をここから出す?牢の外に?
いや、さては俺達を天国に送ってやるって意味か?
俺達を舐めやがって。ここに一歩でも入ってきたらフルボッコにしてやr…

ガチャ…

入ってキタ――――――――!!
「出してやる代わりに一つ頼みがある。マリア、こちらへ。」

マリア様にお祈りして安らかに逝けってか。上等じゃねえか。
よし、そっちがその気ならムチ男を一撃粉砕した俺の爆熱ゴッドフ○ィンガーで瞬殺…
いや、こいつを気絶させて人質にして奴隷解放を要求してやろうか…

背後に隠した拳に全力を集中する俺の前に、金髪の女性が歩み出る。
人質?卑怯な…てめえの血は何色だあー!!
「このたびは助けていただいてありがとうございました。」

…ん?この女の人は確かヘンリーに膝枕をしていた人…
衛兵への怒りが急速に冷める。(と同時にヘンリーへの嫉妬が沸々と湧き上がる…)

「紹介が遅くなったが、私はヨシュア。そしてこっちが妹のマリアだ。」
兄が神殿衛兵で妹が神殿の奴隷…妙な兄妹だな。

「頼みというのはマリアの事だ。お前らにはマリアを連れてここから逃げて欲しい。」
…ん?今度こそ聞き間違いか?奴隷の管理者が奴隷に対して逃げろ?おかしくね?

「…失礼、あなたは神殿衛兵ですよね?そのあなたの妹が奴隷として働いている。
 さらに、神殿衛兵のあなたが俺達奴隷に対して妹さんを連れて逃げろと頼む。
 正直あなたの言動は神殿衛兵としても、兄としても疑問だらけなんですよね。」
俺の中で渦巻いていた疑問をヘンリーが言葉にしてヨシュアに投げかける。
そんな虫の良い話、にわかには信じられない。


594 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 02:52:12 ID:sncsb/yf0
支援効果あるかな

595 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 02:55:31 ID:ljdZIKsR0
支援射撃 撃ち方はじめ

596 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 02:56:56 ID:JdzCIZXV0
ダイの大冒険VSドラゴンボール
面白映像
http://jp.youtube.com/watch?v=OQbYaMlR1do&mode=related&search=dragon%20quest%20las%20aventuras%20de%20fly%20avan%20pop%20man%20dragonball%20papunica%20heroes%20sacrificio%20hola


597 :滄海の一涙【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 03:08:13 ID:vPdBw58i0
ヨシュアが重々しく口を開く。
「私を信じられないのも当然だ。確かに私は妹を…お前達を苦しめてきた側の人間だ。
 妹を見殺しにしたと言われても仕方がない…妹が奴隷になると告げられた時も、
 妹がその細腕で大岩を運んでいる時も、私には何もできなかったのだからな…
 衛兵としての自分の身を案じた訳ではない……私は恐れていた…
 教祖様の思想に反する行動をとれば、恐らく私もマリアも教団の手によって…」

搾り出すように続けられるヨシュアの言葉。
その言葉から感じられるのは妹を救えなかった兄の後悔…悔恨…懺悔…

「だが…マリアのために戦うお前達を見て、私は自分の成すべき事を悟った。」
はっきりした口調で言い放つヨシュアの右手がヨシュア自身の胸に当てられる。

「ただ一人の妹を救えずに何が兄か! 最愛の妹をこの地獄から救えるならば…」
胸に当てられていたヨシュアの手が持ち上がる。
その手に握られているのは…


「愚かしくも敬愛した教団も、愚かな私自身の命も…喜んで捨ててやる!!」
ヨシュアの手に握られていたものが石の床に叩きつけられ砕け散る。


砕け散ったそれは 教団のエンブレム

衛兵が教団エンブレムを破壊する…

それは、教団への決別の意思…

そしてその行動は、懐疑的だった俺達の心を溶かすのに充分すぎる熱情を放つ。

「わかりました。妹さんの件は責任を持ってお引き受けします…
 ただし、こちらからも条件を出します。」

598 :滄海の一涙【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 03:09:22 ID:vPdBw58i0
黙ってヨシュアの言葉を聞いていたサトチーが口を開く。
「僕の出す条件は二つです…一つは、自分の命を捨てるなんて二度と口にしない事。
 二つ目は、妹さんと生きて再会する事。この二つをここで誓って下さい。」

サトチーとヨシュアの視線が交差する…

「わかった…神に…いや、偉大なる精霊ルビスの名に誓おう。」
ヨシュアの手が、再度ヨシュア自身の胸に当てられる。
偽りのエンブレムで飾られる事のない、自分自身の心に誓うように…

「そうと決まれば早速。さあ、見回りが来る前に急いでこっちへ。
 神殿裏手通路を抜けた先にある死体処理用の水路。そこから逃げてもらう。」
ヨシュアに促され、石牢を後にする。

何度も夢見たここからの脱出…
もうすぐこの手に掴める自由…

自由…


自由になったら…


俺は何をすれば良い?

元いた世界でも、こっちの世界でも感じた事のない自由。
自由という物を俺は知らないのかもしれない…

自由という言葉の意味を知らないまま、俺は走り出す。

自由を手に入れるために。

599 :滄海の一涙【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 03:12:45 ID:vPdBw58i0
「静かに…止まれ…」

建設中の神殿裏手通路を駆ける俺達に、先頭を走るヨシュアが告げる。
「まずい…通路の先から見回りが来る…隠れろ。」
「隠れろったって…隠れる場所なんかないぜ。」

神殿裏手通路は狭い一本道、隠れられるドアも資材の山もない。

「…くっ…騒ぎを起こすのはマズイが…やるしかない。」

息を潜め、曲がり角で身構える…一撃で昏倒させれば…



ガラガラガラガラ……ガシャーーン!!!



「何だぁ?お前等、何をやっている!!」
通路の先で響き渡る何かが崩れるような音。
それを耳にした見回りのムチ男が通路の先に走ってゆく。

『スミマセンねぇ。突然資材の山が崩れちまいまして。
 あぁ、危ないんで今は通路を通らない方が良いッスよ。』

高所作業等の足場の上から男の声が聞こえる。
ナイスタイミング!ナイスアクシデント!!

「ふひゅー…焦ったぜ。」
「危なかったな…今のうちに通路を抜けるぞ。」

ナイスタイミングだけどさ…タイミング良すぎじゃね?

600 :滄海の一涙【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 03:16:03 ID:vPdBw58i0
ふと目をやると、足場の上から建設現場を見下ろす屈強な奴隷の姿。
奴隷宿舎の室長で、いつも俺達の面倒を見てくれたアルバニーのオヤっさん。

俺と目が合うと、親指を立て"ニッ"と笑ってみせる。

…ありがとう。

通路の先から水路まで不自然なくらい一直線に建築資材が積まれている。

資材の山の上から元踊り子のベイラルちゃんが俺達にウィンクをする。
誰よりも頑固だけど、誰よりも優しかったテルコ爺さんが小さく手を振る。


…みんな、ありがとう。


俺は泣きながら走っていた。
サトチーもヘンリーも泣きながら走っていた。

水路に繋がる小屋へ駆け込み、ヨシュアが用意した大樽に乗り込む。



…必ずみんなを助ける…だから…生きて…

水門が開放され、俺たちを乗せた樽が自由な世界へ放たれる。

俺は今、生まれて初めての自由の中での確かな道標を見つけた。

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