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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 00:08:30 ID:9upw/8Z80
待ってましたあああああああ!!!!!!!!!!!
ルーラの定義面白い!

確かに物理移動の魔法ならメクラ飛びも出来るはずですねえ
考えたこともなかった(^^;)

440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 10:04:48 ID:PpRmbj4m0
GEMAさんも復活か!!
こりゃー面白い年末になりそうだ。
レッドマンさんのシリアス路線とおバカ路線の両方が楽しめるし。

作者さんが来るのは何だか嬉しいもんだ。


441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 10:07:27 ID:FIKZbF0u0
乙です!今回も楽しませていただきました!

>次回はルーラの復活と……
……の部分が激しく気になるw

442 :携帯まとめ人【重要】:2008/12/05(金) 11:26:43 ID:As0051Ga0
いつも楽しませていただいております。
このたび「保管庫@モバイル」のアドレスが変わりました。
ブックマーク(お気に入り)等の変更をお願いいたします。

【もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら保管庫@モバイル】
http://dqinn.roiex.net/

便利にご利用いただけるよう頑張りますので
今後ともよろしくお願いいたします。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/06(土) 08:33:53 ID:ZYQT49KK0
>>442
乙。それにしてもエロ本は確かに新鮮味があるなぁ。
しかし心の友まで言うかw


444 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/06(土) 10:22:12 ID:CJ4Vub1b0
>>438
待ってました! ルーラの解釈とかイサミの軸がぶれてないところとか、
相変わらずサトチーの柔らかさとかそれぞれのキャラの立ち方とか
ほんと大好きだ。息止めて読み入っちまった。

>>442
いつも乙です。


445 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:36:17 ID:1lxK6q9kO
>>419の続き

「あの子、そんなに強いんですか?」
誰もいなくなった酒場でルイーダ姉さんと二人きりになれたというのに、俺の興味は先程の少女に完全に奪われていた。
「え〜っとそうね、前にもあの子ここへ来たのよ。あなたがここへ来てくれるようになるより前のことね。」
「何かしたんですか?」
「仲間を探しにきたの。」
「仲間?」
旅に出る仲間?あんな幼いのに?つーかなぜ客はあんな怯えていたんだ?
割れた酒瓶や食器などをひとまとめにすると、山のようになったのを見てルイーダ姉さんは溜め息をついていた。
「あの子、強い人を探すために酒場にいた戦士さん達に片っ端から戦いを挑んでいったのよ。」
「それで?」
と聞き返したが聞き返すまでもなかった。またルイーダ姉さんも答えるまでもなかった。
この、先程のアレと、今のコレを見れば想像が容易についた。

「多分、あの子16歳になれて旅の許可が貰えたからまた仲間を探しに来たんだわ。」
「え?どういうことです?じゃあ前に酒場にきたってときは?」
「歳を1つ間違えていたらしいわ…。」
「は…?」
…理解するのに数秒かかった。
酒場の奴らを打っ倒した後に、自分はまだ旅に出れないと気づいたのか。やられた奴らはたまらないな…。

なるほど天然ボケか。まぁ自分の歳も記憶に無い俺が人のことを言えたものではないが。

それともう一つ、どうしても知りたいことがあった。
俺がこの町で1番強いんじゃなかったのか、と言うこと。俺だってここの酒場の奴らより実力は上なんだ。
「俺なら勝てるだろうか?」
しかしルイーダ姉さんは考えるまでもなく即答した。
「無理だと思うわ、多分。あの子、何と言うか次元が違うもの。」
「そんなに…?」
多分と付け加えられていたが、俺に気を使って言ってくれた言葉だとすぐに分かった。
勇者の血を引かれし者とそうじゃない者の差。そういう意味では普通の人間の中では俺がこの町で1番と言うことか。
それでも俺は、自分の強さを試してみたいと言う気持ちが逆に益々と膨らんでいった。

そんな気持ちが通じたのだろうか。
キイイイ…と酒場の扉の開く音。
目を向けると、そこにその少女が再び現れた。
この扉の加減さが分かったのか先程とは違って、扉は静かに開けられ普通の登場だった。
いや、しかし先程と違う点はその少女の鼻が洗濯挟みのような物で摘まれているということ。
自分の目を疑ったがそれは紛れも無くピンク色の洗濯挟みだった。
いくら記憶が無い俺でも洗濯挟みは鼻につまむ物ではないことくらい分かる。何をしているんだこいつ??
と思ったが先程の少女の言葉を思い出した。
なるほどこいつはたいした天然野郎だ。だがこの俺は記憶喪失野郎だ。相手にとって不足は無い。

446 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:39:47 ID:1lxK6q9kO
少女は荒れた店内を不思議そうに見渡すと俺達の方へと歩いてくる。
「な゛んで、だでもい゛なぐなっだんだろう??…まぁいい゛か。」
鼻声で何を言っているのかよく分からなかったが客がいなくなったことを気にしている様子。
傍までくるとその少女は頭1つ分以上身長差のある俺を見上げたあと、プイッとルイーダ姉さんの方に振り向いた。
横顔から見る鼻の洗濯挟みは実に目立つ。
身長差に加えてこのマヌケな洗濯挟みが幼く見せるが16歳と言っていたっけか。
背中に交差する2本の剣を差しているあたりとのギャップが何とも妙な雰囲気を醸し出していた。

「仲間探しにぎた、誰でもいい、いぢばん強いヤツ紹介してほしい。」

鼻から息が抜けずに喋りづらそうだが外さない辺り、相当酒の匂いが苦手なのだろう。
ルイーダ姉さんは少女の問い掛けに、パンッと手を叩いてそれならばと言うように俺を見た。

「あら丁度よかったわね!彼がこの町でどんな戦士さんより今1番強いわよ。」

一瞬えっ?と思ったがそりゃそうか、とも思った。
俺がこいつの仲間??ちょっと待て。この少女の強さが気にかかるだけで仲間なんて考えてもみなかった。
再び俺を見上げる少女。品定めをされるかの様で緊張する俺。
少女が一言つぶやいた。
「冗談…?」
は?……冗談?って言ったよな、どういう意味だ?冗談ならばお前のその鼻をつまんでいる物が冗談だろう。
喉まで出かかったが俺はなんとか堪えた。
「もっど、ゴツクてムサイ奴かと思ってた。」
そっちかよ…、となぜかホッとする俺。
「そりゃどーも。」
一応誉め言葉として受け取っておく。
少女はもう一言つぶやいた。
「試す…。」
と同時にルイーダ姉さんが「気をつけて!」と言う言葉が聞こえたが、遅かった。

447 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:51:31 ID:1lxK6q9kO

キィィィィン!!!!

ルイーダ姉さんが言い終わる頃に俺はそれにとっさに反応して腰に付けていた剣を引き抜くだけで精一杯だった。
余りに速く突然に少女が何かをしてきたのでよく分からなかったが、俺に向かって高速で振り下ろされたので
俺は引き抜いた剣でギリギリの所でそれを受け止めた。
それは少女の背中に差されていた2本の内の1本の剣。
つまりいきなり斬りつけられたということ。

「何しやがんだテメェ!!」
突然の行動に、理由も分からぬまま殺されかけたことに今まで抑えていたものが爆発する。
俺より強い!?次元が違う!?上等じゃねえか!!テメェがその気ならやってやる!!

「合格…。」
殺気立つ俺とは裏腹に少女は一言言うと剣を鞘に納めた。
「何が合格だ!!?」
完全に闘る気でいた俺だったがルイーダ姉さんに宥められ少しだけ冷静を取り戻した。
「モンスターはい゛つ襲ってくるか分がらない。今の防げない様じゃ話しにならない…。だから試した。」
「んな試し方があるか!!殺す気だったろ!!」
少女は違うと首を横に振ると背中に差していた剣を少しだけ鞘から引き抜いた。
その剣は真剣ではなく木刀だった。興奮していた俺はそんなことも気づかなかったのか。
「昼間に城の兵士にも゛試してきたが防げたのはお前だげだ。だからお前を仲間にする。」
酒場にいた戦士に止まらず兵士にまで襲い掛かったというのか。恐れ知らずな奴だ。

俺はその問いではなく断定的な言葉に流されてしまったのかどうかはよく分からない
が仲間になるならない別にしても興味が沸いてきたことは確かだった。
「そっちの剣は真剣なのか?」
「そうだ。それがなんだ?」
「いや、何でもない。」
小さくて華奢に見えるその体に2本も剣を差す理由が他には思い浮かばなかった。

「明朝また来゛る。準備しておけ。」
まだ俺は何も答えていないんだがな…。
探していたものが見つかったかのように少女は晴れやかな表情をほんの少しだけ見せて酒場を後にしていく。
少ししか合間見えなかったが基本的に無表情、無愛想のようだ。しかし強い。
だが不意の一撃じゃまだどれくらいのものか分からない…、仲間になれば戦う様も見れるか…。

「おい!待て。」
と、呼び止めると振り返る少女。その無表情さだがなぜか俺は興味をそそられた。
「俺はソラ。お前は?」
その問に少女はやはり無表情で答える。
「私は、サキ…。ソラ、覚えておく。」

これが俺と勇者の娘サキとの出会いであり旅の始まりだった。

448 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:57:05 ID:1lxK6q9kO
一応プロローグ的なものが終わりです。
読んでくれてありがとうございます。タイトルとか考えた方がいいんだろうか?

449 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/07(日) 18:07:16 ID:k4fAHS320
ちょ〜かっこいいっ!!
振りむいて名乗るところもしびれた。

450 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/07(日) 18:41:30 ID:cSGGOzLE0
>>448
天然野郎VS記憶喪失野郎
くそワラタww

読みやすくて面白いぜ

451 : ◆Tz30R5o5VI :2008/12/09(火) 22:53:55 ID:dgKhlXOEO
盛り上がってきたね

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/10(水) 10:39:58 ID:rp72B7YG0
新人から中堅、古参まで息が吹き返しつつあるね。
ガンガン頑張ってくれぃ。


453 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/12(金) 04:19:01 ID:OBLhmCRjO
447の続き

次の日の朝。
サキとの待ち合わせ場所であるルイーダの酒場に先に着いたのは俺だった。
酒場に入るとルイーダ姉さんはいつものように元気な笑顔で俺を出迎えてくれた。
店内はあの後、ルイーダ姉さんと俺とで綺麗に片付けたのですっかり元の雰囲気に戻っていた。
「おはようソラ君!旅に出る支度は済んだの?薬草は?毒消し草は?お金はちゃんと持ってるの?」
「大丈夫。ちゃんと持ってるって。相変わらず心配性だからなぁルイーダ姉さんは。」
「それはあなたがいつも忘れて来るからでしょ。ほら!道具袋の中身お姉さんに見せてみなさい。」
「えぇ。めんどくせぇなぁ。」

それはいつもと変わらない会話。
しかし、それも今日で出来なくなるかと思うと途端に寂しくなった。
「ほら見なさい。薬草1個しか入ってないじゃないのよ〜。ダメヨ、あの子も一緒に行くんだから10個くらい持ってきなさい。」
「えぇ?俺達強いんだから必要無いですって…って何入れてるんですか!?」
道具袋にルイーダ姉さんは布で包まれているものを2つ押し込んだ。
「お弁当よ。あの子の分もあるからお昼に食べてね。」
「そんな、俺達なんかに気使わなくても…でもありがとうルイーダ姉さん。」

本当に俺の姉さんのようだった。出来ればずっとこうして甘えていたい。
今頃になって旅に出ることに少し後悔した。


キィィィ、と酒場の扉が開く。
サキがやってきた。
「よう。」と声を掛けたが予想通りの無反応。だが俺はムッとすることも無かった。
この町の中でただ一人俺だけがこいつに選ばれた人間。このことがこいつの態度に寛容的になれる要因だろう。
「それじゃ、行くか?」と聞くと、小さく「うん。」と答えが返ってきた。

酒場を後にしようとする間際、ルイーダ姉さんは最後に告げた。
「いつでも帰ってきなさい。ここはあなたが帰ってくる場所なんだからね。」と。
俺はその言葉に込み上げる物があったが必死でそれを隠す。
「それじゃ行ってくるよ!元気でね!ルイーダ姉さん!」

酒場の扉を開き、この酒場とルイーダ姉さんに別れを告げた。

454 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/12(金) 04:25:57 ID:OBLhmCRjO
短いけどとりあえず。
こっから先は何も考えていないw

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/12(金) 15:46:10 ID:2/+0BfCp0
ルイーダさん、いい人だなぁ・・・・。
やべぇ・・・惚れそう。

主人公とサキの旅路に幸あれ。

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/14(日) 16:04:15 ID:b0wPSaCRO
ほす

457 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 22:54:40 ID:xfMDhIzDO
>>453の続き

街を離れる前に俺達は道具屋に寄り、ルイーダ姉さんの言葉通りに薬草を買っていくことにした。
この周辺の魔物には蚊に刺される痛みほどのダメージしか俺は受けないが、まぁ一応のためだ。
サキはそんな俺よりさらに強いと言うんだからそんなに心配はいらないのだろうが…。

後は…行く先。
買い物を終えて街を後にする前に俺は聞いた。
「行く宛てはあるのか?」
「…ロマリア。」
「ロマリア?どこだそれ?」
「………。」
この男はロマリアすら知らないのか?という表情に微妙だが見て取れた俺は、その瞬間サキに言っておくべきことを思い出した。

「悪い。今俺記憶喪失なんだ。とは言っても普通の会話と常識は持ち合わせているから気にしないでくれよな。」
「…………………。」
相変わらず変わることの無いサキの表情からは気持ちを読み取ることが出来なかった。
「……大きな街…。このアリアハンと同じくらい。きっと強い仲間が見つかるはず…。」
「ん…あ、そうか、まず仲間を探すわけな。」
こくっと頷くサキ。
俺が記憶喪失だということなど気にしないというか、そんな事などサキにとってはどうでもいい事のようだった。


街を出るとサキは、ロマリアに行くために洞窟を抜けて行くと言った。
その洞窟へ向かうまでにはしばらく草原を歩かなければならず、途中でモンスターと遭遇することになる。
既に倒し飽きるほど倒したことのあるいつものモンスターしか現れないが、俺は早く遭遇しないかと心待ちにしていた。

そしてようやく一角ウサギ3匹にオオアリクイ2匹が現れた。
これだけいればサキがどの程のものなのか判断出来る。

「あいつら倒して見せてくれよ。」
俺はサキにそう言葉をかけた。………かけた筈だった。
しかし、言葉をかける寸前にサキの姿は消え、言葉をかけた時には現れたはずの全てのモンスターが消されていた。
俺が見たのは散らばったモンスターの残骸と既に剣を背にしまうサキの姿。しかも剣は真剣ではなく木刀の方だった。

「何か言ったか?ソラ?」
「…え?…い、いや、なんでもない…。」
俺は銅の剣を構えたままただ呆然としていた。

458 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 23:00:52 ID:xfMDhIzDO
ロマリアに通じると言う洞窟にやってはきたのだが………
ここまで現れたモンスターは全てサキによって瞬殺。
モンスターが現れたと思った次の瞬間にはもう死んでいて俺は全く手が出せなかった。
集団で現れようがサキは木刀をまるで鞭でもしならせているかのように次々と蹴散らしていく。

………勝てるわけが無い。サキと対峙しているわけでも無いのに、俺の奥歯はカタカタと音が鳴りっぱなしだった。

この洞窟を抜ければもうロマリアはすぐそこらしいのだが、正直なところ俺は必要無いんじゃないだろうか?
なぜ俺なんか…、なぜ俺ごときを仲間にしたんだ?見誤っただろ?いらねぇだろ俺…、なぁ?
ロマリアで捨てられんなこりゃ…。


洞窟もそろそろ出口に差し掛かる頃、そんな俊敏冷徹で一分の隙も見せないサキに異変が起こった。

「ソラ…。眠い…。」
「は?何?」
「だから…眠いんだ…。」
「いや、我慢しろよそれくらい。洞窟の中が暗いったってまだ昼間だぞ?」

何の冗談を言い始めたのかと一瞬考えてしまったが、冗談なんかでは無いとサキの表情を見て気づいた。
それまで全くと言っていいほど無表情だったのがあからさまに眠い顔を見せた。
まぶたが半分閉じかけ頭をカクンっと落とすほど意識が飛んでいる。
「お、おい!どうしたんだ!?急すぎるだろ!?」
両肩を掴み揺さぶってみるが、サキの体は完全に力が抜けて体を揺らす度に頭がガクガクと揺れた。
「こんな所で寝るなよ!おい!」
「…ん…ソラ…。言い忘れたことが…ある…。」
「な、なんだ!?」
「私のこの力は…膨大な睡眠によって…力が得られている……。」
「何!?何を言っている?」
「…済まないが少し寝る…。後は…頼ん…だ…。」
「お、おい!頼んだじゃねえだろ!!起きろよおい!!」

名前を叫び体を揺さぶってみるがまったく反応が無くなった。眠ったと言うより気絶した感じに近い。
こんなモンスターの住家のような所で気絶して、昨日出会ったばかりの俺に後を任せたと言うのか!?
「なんでだ!?なんで俺なんかに頼れんだよ!!テメエの不意打ち一回防いだだけだぞ!!そんなんで分かんのかよ!!」

馬鹿かこいつは!?天然にも程がありすぎる!
眠くなるほどエネルギー使ったってのか!?だったらセーブ出来ねえのかよ!!

……とりあえず洞窟から出なきゃモンスターが集まってくる。
俺はこいつを背中に背負い洞窟の出口へと向かった

459 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 23:05:18 ID:xfMDhIzDO
出口へと向かう途中、モンスターが現れた。
お化けアリクイとかいう化け物が3匹だ。
俺は眠りつづけるサキを背負いながら片手で銅の剣を取り出し、そいつらを蹴散らした。

サキに比べれば遥か劣るだろうが、俺はアリアハンではこいつを抜かせば1番強いんだ。
……くそったれ。なめんじゃねぇぞ…。
ビビってなんか…、ビビってなんか無えんだからな!超えてやる!!絶対超えてやる!!
おおおお゛お゛ぉおお゛お゛!!!!!!!

俺は怒りに任せて初見の相手だろうが関係無しに、出現するモンスターに渾身の一撃をぶち込んでいく。
ふっとばす。あいつがやったように。
消し飛ばす!あいつがやったように!!

洞窟の出口に辿り着く頃には俺の身体はズタボロになってはいたが、サキには傷一つ付けてはいなかった。

俺はサキを背中から下ろし薬草で自分の傷んだ身体を治療した。
「いってぇ…。薬草買っといて良かったな…。ルイーダ姉さんに感謝しなきゃな…。」

サキは相変わらず眠っている。
モンスターと対峙した時のサキは恐ろしいとさえ感じるのに、眠っている様は普通の少女にしか見えなかった。
「ったく、こんな小さくて軽いくせに……。まぁあんな動きもすれば眠くもなるか…。ふぅ…、俺も疲れた…。」

俺はモンスターに警戒しながら辺りを見渡していると、遠くに街があるのが見えた。
俺はサキを再び背負いその方向へと歩きだした。

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/14(日) 23:48:24 ID:y3v1u1W10
サキさん、Tueeeee。
でも、まさかそんな弱点があったとは。
さて、無事街までたどり着けるのだろうか・・・。

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/16(火) 16:27:28 ID:jJ5wTohS0
新しい作者さんが来ていたか!
尻に引かれそうな主人公だなw


    ∧_∧
   ( ´∀∧∧
  〜(つ ̄ (,,゚Д゚)
   UU丁と)U
   (__)_)

    ∧_∧    ドルルルルル…
   ( ´∀∧∧, '
  〜(つ ̄ (,,゚Д゚) ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ
   UU ̄と)U `
    し'^ヽ__)


462 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/18(木) 18:19:22 ID:237n1mpi0
明日(金)の夜10時くらいから投下できそうです。
今回はメ欄もチェックで。
よろしくお願いいたします。

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/18(木) 22:45:36 ID:GJXToRuO0
>>462
うぉう!楽しみでござる

464 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/19(金) 13:28:24 ID:7dOHodSn0
Rです。すみません、仕事が入りまして予定通りの投下は難しくなってきました。
時間がずれるか、明日になるかは現段階ではまだわかりません。
なるべく約束を守れるように頑張ります。

465 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:16:01 ID:JZKGs7T40
目が覚めるとそこは俺の部屋じゃなかった。
しかも、身体が子供の姿になっている。
「どうなってんだ?これは・・・・」
なにがなんだか分からず戸惑っていると、俺の目の前に髪の毛が少ないおっさんが現れた。
「お前、ドラクエXの主人公になったから。じゃ」
そう言って去ろうとするおっさん。
「待たんかぁぁぁぁ!!どういう事?くわしく説明しろや!」
「無理」
「ふざんけんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!」
思いっきりおっさんをブン殴った。
「いてーよ!なにするんだ!この若造がぁぁぁぁぁぁ!!」
俺とおっさんの20分間にもおよぶ死闘が始まった。

466 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:36:36 ID:JZKGs7T40
「ちょ、いたいって!」
泣き叫ぶおっさん。
だがムカツクので構わず攻撃を続けた。
「ひゃあ!ひゃあ!ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」とフリーザのモノマネ。
ただのチョップだけど。
「こいつでトドメだ!くたばれ!」
そこら辺に落ちてあったナイフでおっさんの最後の希望をきりつけた。
「ぎええぇぇぇぇぇぇ!!バ・・バカな・・・この・・・わたし(の毛)が・・・」
ノリのいい奴だ。だがおっさんがショックでがっくりと肩落とす。
「さらばだ!」
え?ちょ、おい。説明しろって!ちょっとぉぉぉぉぉ!?
俺の叫びもむなしくすぐにその姿が消えた。


・・・・・とにかく、ここはドラクエXの世界と言う事か。
現に俺の身体は子供の頃のX主人公の姿だし。くそっ、どうなってやがるんだ一体・・・

ドンッとドアが開く音がして誰かが部屋に入って来た。
「おいっ、どうした?大丈夫か!?」
おー、こいつがパパスか。相変わらずヒゲだなぁ。
「大丈夫だけど」と返事をする。
「ちっ、なんにもねえなら騒ぐんじゃねーよ、クソガキが・・・」
アレッ?パパスっこんなキャラだったっけ?
もしかして俺がX主人公になったからキャラの性格が変わったとか?

467 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:56:12 ID:JZKGs7T40
あれからしばらくしたが今は船に乗っているという事が分かった。
よしっ、こうなったらDQの世界をとことんエンジョイしてやるぜ!
フヒヒヒヒ、そうですよ。開き直ってますよ。すいません。
てかドラクエXってやったことないんだよね。だから話とかキャラとか少ししか知らねえ。

そして、時間が経ち港につく。
その港にハゲと2人の女の子(黒髪と紫)がいるんだけどヤバイだろ。この絵ヤバイだろ。
こいつら親子らしいけど知らない人が見たら絶対勘違いするって。通報されるよ?
興味があったので女の子に話しかけてみる。
「こんにちわ」と軽くあいさつ。
黒髪の方は「邪魔よ!」なんて言いやがった。たくっ、これだから近頃のガキは・・・」
紫の方にも挨拶をしてみる。
紫の方はしばらく喋らなかったがやっと口を開いた。
「・・・邪魔だ・・・クズが・・・」
恐っ!

468 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 17:11:37 ID:JZKGs7T40
さて港に降りたがなにをしようかと迷っていると
パパスが地図やるからそこら辺で遊んでこいなんて言う。
無責任な親だ・・・・

さて、なにをしようか?ナンパでもしようかなんて思う俺がいる。
とにかく港の外へ出て見ようか。

「ピキキキー」
なんと紫色の奴が3匹襲いかかってきた!
いや俺も紫のターバンとマント来ているから紫と言われかねんけど。
そうか、こいつらがスライムか。
ダチに聞いた話だと2、3ターンでパパスが助けに来てくれるらしい。
いや、どのくらいの時間が2、3ターンか分からんけど、それまでどうかしてろってか?
「まあいい掛かってこい!」
ドガッ!ぎゃっ先制攻撃された!やばい腹に当たったから腹の具合が・・・

10ターン後
「大丈夫か?」
おせえよクソジジイ・・・・

469 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 17:36:59 ID:JZKGs7T40
腹が痛くなったため反撃できなかった。スライムにめった打ちにされつつも
何とか避けてパパスが来るまでもっていた。
すぐにパパスがスライムを倒し戦闘終了。だが身体がかなり痛い。
「と、父さん・・・・ホイミとかいう奴をかけてくれ・・・・」
だがパパスの反応は冷たい者だった。
「すぐに楽にはさせねえよ・・・・」
なにこいつ?俺になんの恨みがあるわけ!?

数時間後にやっとホイミをかけてもらった。
それにしてもパパスの態度が酷すぎる。痛がる俺みながらニヤニヤしてたし。
こいつに殴りかかろうと思ったけど強そうなのでやめておく。

パパスに連れられてどこかの村に着いた。
村に着いたので「ギャー助けてー!知らないおじさんに連れられてるんだー!」と叫んでみた。
すると怪しい奴はみんなタイーホ!とか言いながらピーポ君が登場。パパスがどっかに連れていかれる。
ちょ、なんでこの世界にピーポ君が?
そう思っていると誰かが俺の心に話しかけきた。
この声はさっきの変なおっさんだな。
「お前がX主人公になったからちょっと世界が変わっているんだ」
「へー、で?なんで俺をこの世界に?」
「スリルが味わいたいだろうと思ってさ」
「味わえねーよ、こんな世界じゃ!スリルどころか死ぬわ!
なんだあのパパス!わけ分かんねーよ!それに俺20代だからこの子供の身体は歩きづらくてしょーがないわ!」
「・・・・・さらばだ」
「おいっ・・・・また消えたか・・・」

ズドドドドドドとなにか走ってきた。
それはピーポ君から逃げてきたパパスだった。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!このクソガキャァァァァァァァァァ!!」
そして俺は死ぬほど殴られる。クソ・・・・・

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 18:58:44 ID:T5WDiQO+0
カオスな主人公が来たか!
今後に期待。


471 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 19:28:02 ID:v/zd8nIF0
おもしろいw

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 21:37:13 ID:FkJL1SE20
先が読めなくて楽しみだwww

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 21:42:55 ID:xZ0OTINq0
キャラクターやらなんやら崩壊しすぎワロタww

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 23:43:41 ID:v35Zyyoy0
パパス台無しwwwwwwwwww
メチャおもろい!!!!!
この先まるで展開がつかめんからスゲー期待するよ!

475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 01:34:23 ID:lYmWVodU0
ピーポ君wwwww

476 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:47:59 ID:DpVAPJ8KO
新しい作者さんにフキつつ俺も投下↓

とんでも設定理解頂けて良かったです

477 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:51:07 ID:DpVAPJ8KO
>>459の続き
「ちくしょう…。俺としたことが、何て様だ…。」
ロマリアの街を眼前にして現れた甲冑を見に纏ったモンスター1匹に俺は苦戦してしまった。
「たかだか1匹に。しかしあのモンスター剣も盾も上手く扱えていた。モンスターにも頭のいい奴はいるんだな…。」
でもまあ、こいつ背負ってるってハンデがなければ俺の相手じゃないけどな、
等と言い訳をしながら自分の負った傷を見て俺は舌打ちをした。

陽が徐々に落ちかけた頃、俺達は街にようやく到着した。

「おい。街着いたぜ。サキ。」
「………すぅ……。……すぅ……。」
起きるわけは無いと分かっていたが俺は俺の背中で眠りつづけているサキに話しかけた。
当然反応は無い。今は小動物の様に静かに寝息を立てて、俺の背に負ぶさっている。
「………はぁ…、なんだかなぁ…、まぁいいや、宿探すか。」

俺はその背中の眠り姫ならぬ小動物をともかくどうにかしようと、適当に目についた宿屋に入ることにした。
チェックインを済ませ、今夜一泊する一室のベッドにサキを寝かせた。

ようやく解放されたところで、既に俺も限界を超えかけていたのでそのまますぐに横になった。
腹も減ったが起き上がる気力さえもとうに失せていた。
「……まてよ…。一緒の部屋で良かったか?……って関係ねーか、既にこいつ寝ちまってるんだし…。あぁ〜あ疲れた…。」

これからどうするか。とりあえずサキが起きるのを待つか。そういや仲間を探すって言ってたっけか…。
アリアハンでの時みたく力量を量るためにいきなり斬りつけなきゃいいがな…。……ってそうなったら俺が止めんのか…?
何か別の方法があるだろ…。何か…………。
……………Zzz………。

俺はいつの間にかそのまま眠りに着いていた。

478 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:55:09 ID:DpVAPJ8KO
……カツカツカツカツ……、カツカツカツカツ…。

俺はその音で目が覚めた。
何の音かと思い眼を開けるてみると、まるでウサギが人参をカリカリと小刻みに食べるかの様にサキが弁当を食べていた。

(あぁ…こいつはやっぱり小動物だったのか…。)

って違うだろ、何寝ぼけてんだ俺。

「起きたのか。もう大丈夫なのか?」
「…………カツカツカツカツ………。」
ったくこいつは…。相変わらずマイペースな奴だな。
そういや俺も腹減ってたんだ。俺も食べるとするか。

「上手いだろ?その弁当ルイーダ姉さんが作ってくれたんだぜ。」
俺は道具袋から弁当を取り出そうとした……………が無い。弁当箱は確か2つあったはず。
テーブルの上に目をやると空になった弁当箱が1つ。そしてもう1つもたった今サキが食べ終えて空になっていた。

「お前!2つ食ったろ!1つは俺の分だったんだぞ!」
「………旨かった…。とても…。」
「そうか、ってそうじゃねぇ!これはルイーダ姉さんが俺の為に作ってくれた特製のだな!」
「……ハートマークの飾り付けだった…。」
「何だと!?おまっ!吐け!この野郎!今すぐに!」
「無茶言うな。頭…大丈夫か?」
「…っのやろう…。」

どうしてくれる?今度ルイーダ姉さんの所へ帰った時に、「あの弁当どうだった?」と聞かれたらどう答えたらいいんだ!?
ハートマークの意味は!?本気なのか軽い気持ちなのかどっちなんだよ!?どう答えたらいい!?
俺は食べてもないし中身を見てもいないんだぞ!?
あ〜もうこの野郎は!どうして2つも弁当食いやがったんだ。あんな小さい体のくせに。あんな小動物のくせに。
そういやあいつ背負った時に胸の感触がまるで無かったな。普通背負ったらドキッとするものがある筈だろ。
ぺったんこか。そうか、ぺったんこなのか。まな板のくせになんで2つも食いやがったんだ。
なんで…なんでだ……。
言葉にはしなかったが俺の楽しみを奪われた悔しさと更なる空腹で俺は苛立っていた。

479 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:59:09 ID:DpVAPJ8KO
「ここは…ロマリア?」
「あぁ?あぁそうだ。お前背負ってモンスターと戦いながらきたんだ。感謝しろよな。」
「ソラ!」
「なんだよ?」
サキの指が俺の顔に当たる。当たった瞬間痛みを覚えた。
「っつ!なんだ!?」
「傷だらけ…。腕も、体も…。」
腕や体の見える部分は薬草で治療してはいたが顔はしていなかった。
「しょうがないだろ。お前かばってきたんだからな。俺だけなら傷なんかしなかったろうな。」
嫌味に聞こえたろうか。まぁいい。食の恨みは高くつくとよく言うがその通りだ。
「仕方ない…。手当てしてやる。」
「あぁ!?いいよ別に。もう血は止まってんだ。」
「よくない。膿んだらどうする。」
そう言うとサキはすり潰した薬草を取り出し俺の傷口に塗ろうとした。
「いいって。自分で出来る。」
「いいから、動くな。」
サキの顔が近くなる。その間俺は目と目が合わない様に目をそらし続けていた。
こんな小動物のようなガキ相手に何を緊張しているんだ俺は…。

「終わりだ。」
「あ、ああ…。」
「街はもう歩いたのか?」
「いや、すぐ宿に入ったからな。そういや今何時だ?」

時計に目をやると、まだ夜になったばかりだった。宿には夕方頃到着したので俺はいくらも寝ていなかったのだ。

「ちょっと回ってくるか?俺なんか食いたいしな。」
「うん。」

酒場辺りにでも行けば強い奴の情報も得られるだろう。俺達は宿を出た。

480 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 14:18:00 ID:hCNoeZxu0
ムハー!投下乙です!

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 19:12:47 ID:n/e/R9MQ0
おお、やばい、サキさんに惚れそうだ。
だが、弁当・・・orz

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 19:53:52 ID:gnJDM1q4O
貧乳関係ねーww

主人公とサキの関係が気に入りました

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 20:25:54 ID:fXy3cJb70
>>479
GJ!
先(サキ)が気になるぜ
貧乳もGJ!だぜ

484 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/20(土) 23:48:10 ID:PICDD7nD0
先日は失礼いたしました。これから投下します。
ちょっとパソコンの調子が悪いので、投下の間隔が長くなるかもしれません。

485 :Stage.18 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:01:13 ID:5N8VteG00

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。昨日は予告したのにお約束が守れなくてすみませんでした。
   せめて時間をずらして……と思ったのですが、帰宅が午前4時ではどうすることもできず」
アルス「>>463様はじめ、お待ちいただいた方すみません」
タツミ「それでは恒例サンクスコールです」

アルス「>>393様、力一杯のグッジョブありがとう! ちょうど間があいた時期だったからな、
   うちの作者も一読者として過疎り具合にドキドキしてたみたいだよ」
タツミ「>>394様、面白いというそのお言葉が何よりの執筆燃料ですっ」
アルス「>>395様にも、夢中になって読みました、まで言っていただけて本当に感謝。
   俺も例の件が誤解とわかって心からホッとしたよ」
タツミ「キミのトラウマもわかってもらえたしね。たださ……君が普通っていうより、
   お父様が遙かに超人なだけって気がしないでもないんだけど」
アルス「だよな。そもそもオヤジは、魔法の玉もナシにどうやってアリアハンから出たんだ」
タツミ「まさに謎の英雄……。
   >>396様、いつもお待たせしてすみません。もう少しペース上げられるよう頑張りたいんですが」
アルス「>>398様、おお、確かにサスペンスっぽいかも。まさか殺人事件に巻き込まれるとか……」
タツミ「うちの作者のことだから無いとは言い切れないねー」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです。本日はメ欄もチェックで!』


【Stage.18 SAKURA MEMORY -Part2-】
 続・リアルサイド [6]〜[11]
  Prev >>387-391

 ----------------- Real-Side -----------------

486 :Stage.18 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:07:38 ID:5N8VteG00

   ◇

 俺が最初に胸に抱いたのは、慌てたように警告の電話を入れてくれたショウに対する感
謝ではなく、「また面倒ごとかよ」という唾でも吐きたくなるような気持ちだった。
 次から次へとなんだってんだ。ここは「テレビゲーム」なんてハイテクな玩具が日常に
溢れてるような、平和な国じゃないのかよ。
 それでも冒険者のサガとでも言うか、デートなんてシチュエーションにちょっとふわふ
わしていた俺の意識は、その瞬間に自動的に警戒モードに切り替わった。
「俺が襲われたことを……なんでお前が知ってるんだ、ショウ?」

 昨日の晩ショウに会った時、俺はわざと、昼間に起きたことをひとつも話さなかった。
朝早くから花見に行ったことも、行った先で他のゲームサイドの男に襲われたことも、そ
のあと夕方までタツミの女友達の家で寝込んでいたことも……なにひとつ。 
 ショウの登場のタイミングがあまりに良すぎたから。まるで俺を見張っていたかのよう
で、少し胡散臭いものを感じてカマをかけたのだ。他のゲームキャラに襲われるなんて出
来事、知っていたなら必ず話題を振ってくるだろうし、逆になにも知らないなら、こいつ
を変に巻き込まない為にも俺からわざわざ口にするべきじゃない。
 だがどちらでもなく、こいつは「知っていて」話を避けた。俺だって赤の他人を頭から
信じるほど単純じゃない。
「お前、何者だよ」

『なるほど、昨日そのことに触れなかったのは、僕を試したんですね』
 電話の向こうでショウは感心したように溜息をついた。そして、
『なかなかキレるじゃないですか、かえって安心しました。少なくとも僕は敵じゃないで
すよ。まずは話を聞いてください、あなたに危険が迫っているんです』
 自分のことなどどうでもいいとばかり、あっさり要点を戻された。気に食わないが、俺
が疑っていたこともショウは最初から想定していたようだ。
『あなたを襲った男について、僕も詳しくは知りません。僕と違うゲームナンバー出身の
人ですしね。ただ僕は、こっちに来てからすべてのドラクエをプレイしてるんで、あなた
とあのPCとの関連は知っています。あなたの子孫なんですよ、彼は』
「待て。昨日のあいつが俺の子孫だぁ?」
 そう言えばあのサイコさん、アレフガルド流の騎士の礼を取ってたな。
「それにPCって……」
『ああ、僕はゲームサイドの人間のことを『プレイ・キャラクター』の略で『PC』と呼
んでるんです。子孫と言っても、あくまでゲーム上の設定ですし、深く考える必要はない
と思いますよ。とにかくですね、僕が今からそっちに迎えに行きますから、あなたはそこ
を動かないでください』
 やはりショウは焦っている。まくし立てるような口調で、俺はロクに言葉を挟む余地も
ない。
『アルス君は今ひとりですか? もし誰かと一緒なら、うまく説得して離れてもらった方
がいいと思います。僕もすぐそちらに向かいますから……』
「だから待てっつってんだろ!」
 怒鳴りつけると、はっと息を呑むのが聞こえた。

487 :Stage.18 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:11:24 ID:5N8VteG00

 ったく、従うのが当然みたいに指示すんなよな、シャクに障る。俺への隠し事はもっと
あるだろうし、信用できない人間の言うことを聞く義理はねえぞ。
「今デート中なんだ、邪魔しないでくれるか」
『はぁ? あの、アルス君……?』
 俺の投げやりな返答に、ポカンとしているショウの様子が手に取るようにわかる。
『た、確かに僕もいろいろと黙っていたことは悪かったと思いますが、それも会った時に
ぜんぶお話しするつもりです。今だけは信じてもら――』
「ウザいんだっつーの。あのイカレ頭が襲って来るかもってんだろ? そうなった時に考
えるからいい。もう面倒くせえのはたくさんだ」
 こっちに来てからずーっとワケのわからん状態が続いてるんだ。ようやく穏やか〜なひ
と時を楽しんでるんだから、少しはノンビリさせやがれ。
 はっきり言って、ストレス溜まってんだよバカヤロー!

『冷静になってください。女性と一緒というなら、片岡百合子さんでしょう? 彼女もあ
の男に顔を見られてるじゃないですか、危険なのはあなただけじゃないんですよ』
 まあね。それどころかユリコちゃん、ボッコボコの返り討ちにしちゃったし。
「それもこっちでなんとかする。心配なら勝手に来いよ。どうせ見張らせてんだろ?」
『確かに昨日まではあなたを監視してましたけど……今朝になってやめさせたんです。あ
なたがまっとうな人だとわかったから、プライベートを尊重して。だからさっき、そちら
の居場所を聞いたでしょう?』
「あっそ。そりゃどうも」
 自分でも少し素直じゃねえなとは思うが、今はまともに対応する気になれない。

 互いに沈黙する。
 時間にしたら数秒も無かっただろう。さっきとは違う性質の溜息をついて、ショウはワ
ガママな子供に言い聞かせるように言った。
『わかりました。でも、僕があなたを心配してるってことは信じてくれたんですよね? 
僕も20分くらいでそっちに行けると思いますから、できればそのあたりにいて下さい、
お願いします』

 ップ ツー ツー……

 溜息をつきたいのはこっちの方だ。
 断っておくが、俺はユリコをあぶない目に遭わせる気はない。ショウは離れろと言って
いたが、彼女もあのサイコ野郎の標的にされる可能性がある以上、かえって単独行動させ
る方が危険だ。
 それにショウは最低でも、一日でユリコの身元を割り出す調査力と、人を使って俺を見
張らせるくらいの組織力を持っている。そこから逃げ出して未だに捕まっていないのだか
ら、あのサイコ野郎もそうバカじゃない。こんな街のド真ん中で後先考えずに奇襲をかけ
てくることはまずないだろう。
 ならいっそ、いつ襲われるかわからずビクビクしながら隠れてるより、人混みに紛れて
動き回り、相手を引きずり出してやる方が対策を立てやすいと――

488 :Stage.18 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:21:15 ID:5N8VteG00


「なんか難しい顔してるね、アル君」
 いきなりユリコが、ヒョイっと腰をかがめて下から俺を見上げてきた。
「うひゃ!? い、いや別に、たいしたことじゃないんだ、うん」
 あのですねユリコさん。その角度だと、隙間というか、谷間というかがですね、よく見
えちゃうんですが。目のやり場に困るんですけど。
 一瞬この女ワザとかと思ったが、どぎまぎしている俺をユリコはきょとんと見つめてい
る。もしかユリコちゃん、意外と天然系?
「待たせて悪い。冷めないうちに食べないとな」
 慌てて席に戻ったが、ほら〜、どこまで考えたかわかんなくなったじゃねえか。
「今の電話、お友達から?」
 無邪気に聞いてくる彼女に、俺は再び思考を巡らせた。どうすっかな。
 この子は俺の正体もあのサイコ野郎の存在も知っているから、今さら無理に隠す必要は
ない。でも変に深入りさせて、俺たちゲームサイドの人間――ショウの言う『PC』が、
実はプレイヤーを「犠牲」にするつもりで現世に来ているということまで彼女に知られる
のはマズイ。

 <ゲームは所詮ゲーム、絶対に安全だし、もちろん死ぬこともない。
  クリアすればいつでも帰れるが、現実世界に戻れば二度と交換できない。
  なのでわざとクリアを延ばすプレイヤーもいるらしい……>

 俺がユリコにした説明だ。一番最初にタツミにも同じ内容を伝えた。
 嘘は言ってないが、肝心なこともなにひとつ言ってない。あのお人好しが庇ってくれた
のをいいことに、俺はこの瞬間も、彼女をいいように利用している。

「友達じゃないんだ。役所の人でさ」
 特に悩む間もなく、そんなセリフが出てきた。
「ああ、タツミになんか頼まれてたのね」
「そうそう。ほらアイツ、国から援助金みたいのもらってるだろ。その書類関係のことで
今の電話の人と、タツミの代わりに何度か話してたんだ」
 いまさら嘘のひとつやふたつ重ねたところで同じだ。
「了解です。それにしてもタツミのヤツ、アル君を使いッパにするとはねー」
 ユリコはまったく疑う様子もなくクスクス笑った。俺も愛想笑いで調子を合わせる。
「まあドラクエもお使いイベントが多いしな」
「もうアル君ったら、勇者様がソレ言っちゃおしまいじゃないw」

 勇者様、ねえ……。

 残りのハンバーガーを口に放り込むと、まだ温かいのに急に味気なくなったような気が
した。そんなのは無視して立ち上がる。
「ごちそうさま。次はどこに案内してくれるの、ユリちゃん」
 彼女もハンバーガーの最後のひとかけらを口に放り込むと、指先についたケチャップを
ペろっと舐めつつ視線を泳がせた。こういうちょっとお嬢様っぽくない仕草は親しみやす
くて好感が持てる。

489 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 00:27:08 ID:0WQsVruyO
リアルタイム遭遇キター!
でも2問目わかんねぇw

490 :Stage.18 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:28:12 ID:5N8VteG00

「できるだけアル君のリクエストに合わせるよ?」
「あんまりこっちのこと知らないからな。普通でいいよ、デートの定番コースってやつ。
俺、職業が職業だから向こうでもあんまりそういう経験ないし」
「あらら、アル君モテそうなのに。よーし、そういうことなら任せなさい♪」
 張り切ってガッツポーズを取るユリコちゃん。ウザかわいいってやつだな、うん。
 悪いなタツミ君。まあ今日だけだから許せ。


 今はまだ、もう少しだけ。
 「普通」の16歳でいさせてくれ。

   ◇

 色んな場所を回りたいから、遊園地のような一日がかりになる大型施設は避けることに
した。だいたい、安全を保証されたアトラクションや、動物園や水族館で人形みたいにお
となしい生き物を眺めてても、俺は全然おもしろくない。
 まずは映画館に行った。女の子が好きそうな、異国の若い男女が恋愛がらみでごちゃご
ちゃやってる内容だった。日本語字幕(俺にとっては向こうの公用語)だったからいまい
ちストーリーが掴めない部分もあったけど、まあ概ね楽しめたかな。
 
 俺がそう感想を述べると、ユリコは「ああ!」と声を上げた。
「ごめん気付かなくて! そうだよね、日本語が読めるわけないもんね」
「違う違う。それじゃさっき見てたバイトの書類も読めないだろ」
「あ、そっか」
 この子やっぱ天然だなw
「実は俺、あんまり目が良くないんだよ」 
「え……!? アル君って目が悪かったのぉ!?」
 そこまで大げさに驚くことかね。
「もともと小さい頃から弱くてさ。それに俺の世界じゃ夜はロウソクかランプを使うしか
ないから、遅くまで勉強してるとどうしてもね」
 冒険に出た最初の頃は、延ばした自分の指先も二重に見えるくらいひどかった。旅をし
てる間にかなり回復したが、まだ映画館のような薄暗いところで字幕なんて読めない。
 もっとも向こうは視力を測る習慣が無いから、気付いてないだけで目が悪いやつは他に
も大勢いると思うが。
「じゃあこの世界だとなおさら不便でしょ。なんかゲームの世界より、細かいものが多い
気がするもの」
 実はその通り。初めて外出した時も「標識」の多さに圧倒されたが、現実世界はそこら
中に「文字情報」が溢れている。無意識に片っ端から読もうとしてずっと目を凝らしてる
もんだから、結構しんどいんだよな。
 ユリコは腕を組んで少しうなっていたが、すぐに俺の手を引いて歩き出した。
「よし、お姉さんが眼鏡をプレゼントしてあげよう!」
「いいの? マジで?」
「現実世界に来た記念にね♪」
 ユリコちゃん優しいなぁ。でも以前、インテリ眼鏡ってアイテムを装備した時に仲間に
爆笑されたんだよな。
「俺に似合うかな」
「アル君くらいイケメンさんだったら、なにやったって大丈夫だって」
 それは暗にタツミがイケメンだとノロケてることになるんだが、気付いてないな。

491 :Stage.18 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:32:17 ID:5N8VteG00

 映画館から一番近い眼鏡専門店に行った。落ち着いた雰囲気の店内には、ズラリと陳列
された眼鏡が照明を反射してきらきら光っている。
 ユリコが店員に話をつけ、俺は妙な機械の前に座らせられた。
「そこのレンズに片目をつけてくださ〜い。奥に何が見えてますか〜?」
 妙に間延びした口調の女性店員が、機械を挟んで向かい側でなにやらカチャカチャ操作
している。言われたとおり見てみると、奥に確かになにかの映像は見えているんだが、映っ
ているモノの名称がなんだかわからん。
「ユリちゃん、ちょっと」
 俺は目を離して、そばに立っている彼女の袖を引いた。小声で「アレなに?」と聞いた
ら、ユリコもレンズを覗き込んでから「気球だね」と囁き返してきた。
「えーと、キキュウ……ですね」
「二重に見えてますか〜?」
 店員のおねーさんがまたカチャカチャなにか操作したら、
「おっ、きれいに見えた。すげえな」
「では反対側の目で見てくださ〜い」

 そのあといくつか検査をやって、右が「0.2」、左が「0.8」という数値が出た。かなり
悪い方らしく、結果を聞いたユリコがまた驚いていた。向こうじゃそこまで不自由は感じ
てなかったんだけどな。
「フレームはこれがいいんじゃないかな?」
 ユリコが差し出したのは濃い青色の金属製のやつで、全体的に細いタイプのものだった。
一見ヤワそうに見えるが、形状記憶なんとかって金属でできていて、多少なら折り曲げて
も元に戻るそうだ。
「少しくらい暴れても壊れないヤツ、ね?」
 にっこり笑う。ゲーム世界に戻ったあとも使えるようにと、強度を重視して選んでくれ
たのだろう。チクッと胸が痛んだが、顔には出さずに素直にそれに決めた。かけてみると、
うん、そこまで変じゃないし。
「じゃあフレームはこれでお願いします。できあがりまで何日かかかるんですよね?」
 え……?
「いいえ〜。これだと在庫がありますので〜、40分くらいお待ちいただければ〜」
 良かった。何日もかかるんじゃ作ってもらっても無駄になる。
 その頃には俺、たぶんこの街から姿を消しているだろうから。

 眼鏡が出来上がるまでその辺をブラついて時間を潰すことにした。ずらりと並んでいる
店を片っ端から覗いて歩く。どれも向こうにはない珍しいものばかりでちっとも飽きない。
「こういう時の『金持ちのトモダチ』でしょ! 遠慮しないで買っちゃいなって」
 というユリコちゃんに甘えさせてもらい、気がついたら服も靴もフルチェンジしていた。
どんどん増えていく手荷物が邪魔になり、一度駅に戻ってロッカーに荷物をぶち込んだと
ころで、あっという間に約束の時間になった。
 さっきの眼鏡屋に戻る。さっきの店員のおねーさんに引換券を渡すと、ケースに収まっ
た眼鏡を持ってきた。さっそく取り出してかけてみると、信じられないくらいクリアに見
える。ってか今までずいぶん見えづらい生活を送ってたんだな、俺。
「世の中ってこんなにクッキリしてたのか……。本当に嬉しいよ、ありがとう」
「どういたしまして。こっちに来て見てみなよ、似合うよ」
 ユリコに言われ大きな姿見の前に立つ。そこには、表通りですれ違った若者たちと大差
のない少年が、どこかぼうっとした表情で俺を見返している。
 なんだかなぁ、俺ってもう少し賢そうな顔してなかったっけか。

492 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 00:33:27 ID:0WQsVruyO
ノシ

493 :Stage.18 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:37:14 ID:5N8VteG00
 
 店を出て、さてこれからどうしようか、とユリコと顔を見合わせた。さすがにちょっと
疲れてきたな。
 少し休もうか――と思った直後、すぐ近くから柔らかいメロディが聞こえてきた。ユリ
コが慌てたようにハンドバックを探る。彼女の携帯電話だった。
「戸田? どうかしたの」
 カズヒロからのようだった。そういやカズの方は中途半端になってたっけな。ユリコの
方でうまく誤魔化してくれたようだが……。
「そうよ、けさ言ったじゃない。今日はタツミとデートだからって……え?」
 急に彼女の顔がこわばった。
「それ誰に聞いたの!? なに? ちょっと聞こえないよ、あんたどこにいるの? 戸田?
――やだ切れちゃった」
「どうした?」
 ユリコは戸惑うように俺を見上げた。
「戸田、アル君のこと知ってる」
「なんだって?」
「あたしは言ってないよ。でもあいつアル君の名前を知ってて、それになんか変だった。
なんていうか、泣きそうなっていうか……すごく怯えてるみたいな感じで」
 まさか。
「場所も変だよ、声が反響してるみたいで、とにかく聞き取りづらいの。電波も悪くて何
回も途切れそうになってたし」
 俺の中で不安がふくれあがっていく。嫌な予感。いや、ほとんど確信に近い。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 今度は俺の携帯が鳴った。予想通り表示は「KAZUHIRO」だった。

『……よう、ご先祖様。もうこっちの女をモノにしたのか。なかなか手が早いじゃないか』

 確かに声が反響して聞こえる。それはヤツの絡みつくような口調と相まって、嫌でも暗
く湿った洞窟の中を思い出させた。

494 :Stage.18 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:43:14 ID:5N8VteG00
本日の投下はここまでです。

なんとか投下が終わりました。
実はうちのアルスは目が悪いです。ようやく書けました。



メ欄クイズの答えはこちら。
楽しんでいただけましたら幸いです。

問1:ファルシオン
問2:ルドルフ
問3:エデンの戦士たち
問4:オーディーンボウ
問5:ムオル

495 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 17:03:37 ID:yliKsbBp0
投下乙でしたー!
リアルタイムで遭遇したかったw

アルスって目が悪かったんですね。
サイコさんwカズヒロの方にいっちゃったんだ。
確かにあっちも顔見られてたしな。
今後どうなるかますます期待です!

496 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 11:51:42 ID:nwicmV+M0
>>465の最初に題名付け加え
第一話 「俺がドラクエの主人公!?忠犬ハチ公」
>>466-469は同じ

497 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 11:58:49 ID:YxR8LolE0


とりあえず50Gもっているか確認する



498 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:16:00 ID:nwicmV+M0
第二話 「洞窟探検はワクワクドキドキ!ヒデキ感激!」

パパスにボコられ重傷を負いながらも必死でパパスについていく。
村のみんながパパスが帰ってきたことにより喜びの声をあげる。
なんでこんなひどい奴が慕われているんだよ。どんな世の中だよ、コレ・・・
みんなは喜びながらパパスに駈け寄る。
村のみんなからタッチされたりし喜ぶパパス。こんな一面もあるのか。
だが、誰かがどさくさにまぎれて腐ったたまごをパパスにぶつけた。
「みな殺しだぁー!」パパスが叫んだ。

数十分後、村は一面、血の海になった。
パパスはたまごをぶつけた奴はもちろん、関係ない人まで殺したのだ。
俺はあわてて隠れたから無事だった。
神父が生き残っていたのが不幸中の幸い。神父がパパスに殺された人々を
生き返らせていく。だがパパスは問答無用で生き返った人々を殺していく。
パパスが村の人々を殺す→神父のザオリクで村の皆が生き帰る→再びパパスが殺す。
無限ループだよ。どこの地獄絵図だよコレ・・・

さらに数時間後、やっとパパスが落ちついた。村の人々が無事生き返っていく。

499 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:37:16 ID:nwicmV+M0
パパスは何事もなかったようにとある家に向かっていく。
なるほど、ここが俺の家らしい。サンチョとかいう奴に出迎えられて家に入る。
なんか子供がいたのでその子供と遊ぶことに。
なんで俺がガキの子守りをしなきゃなんねえんだ。あっ、俺は今子供の姿だからか。
この子はビアンカとかいう名前らしい。
今のこの姿の俺の年はこの子供より2歳年下らしい。ビアンカは8歳ということは
今の俺は6歳か。なんでガキになっちまったんだ・・・
ビアンカは俺に本を読ませようとするが難しい文字があるのか読みきれてない。
ビアンカは暗い表情で俺を見始めた。
「やっぱり・・・人生って辛いよね・・・生きてるとロクなことがないわ・・・・」
おい、お前の過去に一体なにがあった。お前、8歳だろ。

しばらくして、ビアンカは自分の母とこの村の宿屋に帰って行った。
パパスもどっかに出かけていった。面白そうなので追いかけてみるか。
だが家を出ようとする俺にサンチョが話しかけてきた。
「あんた主人公だったな?」
おい、なんで知ってんだ。いくらこの世界がムチャクチャだからって
俺が主人公って知ってたらまずいだろ。
「お前、大きくなったら、とある3人の娘から嫁を選べるぜ」
しかもネタバレかよ。やってらんねえ。
「まあ、嫁は1人しか選べないから余った2人、俺がいただいてもいいか?」
「・・・・」
「あれ?無言っことは3人とも俺がいただいてもいいっすか?」
俺はデブことサンチョに地獄に落ちろといいながら家を出ていった。

500 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:59:39 ID:nwicmV+M0
パパスが入った洞窟に向かったがパパスは俺がいけない通路を通ったため
パパスには会えないだろう。でも道具屋のおっさんがこの洞窟に行ってから
帰ってこないらしいので洞窟に入ることにする。

洞窟に入ると同じにスライムが2匹襲いかかってきた。
この前のようにはいかないぜ!と腹に注意しながらスライム一匹を倒した。
とりのこされたスライムはあきらかにびびっている。
だがスライムは堂々とした表情になると口を開いた
「よくぞスライムAを倒した。どうだ?スライムAの代わりに我が息子にならんか?」
すぐさまスライムBをチョップで倒した。

襲いかかってくる魔物を倒しながら洞窟の最深部にたどりつく。
岩にはさまれて動けないでいた道具屋のおっさんを助ける。
だがおっさんは礼を言わないで去ろうとした。
ムカツクのでひのきの棒でおっさんの脇腹をねらった。
今にも脇腹にひのきの棒が当たろうとしたその時!
おっさんの目がキラーンと光った(ように見えた)
おっさんは体をしゃがみひのきの棒を脇腹ではなく肩に当たらせようとした。
この洞窟の魔物なら一撃で倒せる程強くなった俺だ。当たったらひとたまりもないだろう。
バキーン!とおっさんの肩にひのき棒がぶつかった。
だがおっさんはなにも無かったようにニコッと笑った。
「ありがてえ。ちょうど肩がかゆかったんだ。サンキューな、坊主」
この人に一生ついていきたい。俺はそう思った。


501 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:18:35 ID:nwicmV+M0
おっさんが帰った後、洞窟の最深部になにかないかなと探しまわった。
宝箱を見つけ中身をとりだし帰ろうとする俺に誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出た。

道具屋のおっさんの所にいった。
「おう!さっきの坊主じゃねえか!そこの引き出しになんか入っているから持っていきな!」
引き出しを開けてみるとエロ本とておりケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本を取りここを去ろうとしたらおっさんに引き止められた。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。

村の人々の話を聞き終え家に戻る。
デブがお出迎えすると次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからさ。くれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙れ。この金髪豚野郎が」
この言葉を言うとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと?金髪と言ったか今?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言った事、今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこ怒ってんの!?金髪の他に怒るとこあるだろ!豚野郎に怒れよ!」
「あ、豚野郎は許すわ」
「許すのかよ!普通そこに怒るだろ!」
「てゆうか俺、金髪じゃないし」
「ツっコむのおせーな!」
「それよりも早く寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることに。

502 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:35:24 ID:nwicmV+M0
おっさんが帰ったので最深部になにかないか探す。
宝箱を見つけて中身を取りだし帰ろうとすると誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出ていった。

道具屋のおっさんに会いに道具屋の店に行った。
「おう、さっきの坊主じゃねえか。そこの引き出しに入っているモン持っていっていいぞ」
話の分かる奴だ。だが引き出しを開けるとエロ本とておりのケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本と決め持ち去ろうとするとおっさんが慌てて叫んだ。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。

村の人々の話を聞き終え家に帰る。
デブがお出迎えしたと思いきや次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからくれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙ってろ!この金髪豚野郎が!」
するとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと!?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言ったこと今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこに怒ってんだよ!もっと他に怒る所あるだろ!豚野郎と言ったことに怒れよ!」
「あ、それは許すわ」
「許すのかよ!」
「てゆうか、俺金髪じゃねーし」
「いや、ツッコむのおせーな!」
「つーかさっさと寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることにした。

503 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:37:09 ID:nwicmV+M0
間違えました。連投すいません。今日はここで終わりです。
こんな駄作でよければ書いていこうと思います。

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 17:11:08 ID:RO0wx9a0O
何だかめちゃくちゃだ…
だがそれがいい

505 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/23(火) 00:10:12 ID:daebOWRS0
パパスwwwwwwww
サンチョwwwwwwwwww
こいつらwwwwwwwwwwwwww

続きを期待していますノシ

506 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:01:55 ID:vl3rV1y4O
>>479の続き

ロマリアの夜の城下街を歩く。
この街はとても広く宿屋や酒場などが多く立ち並んでいて、どこを歩いてきたのか分からなくなってしまうほどだった。
遠くの方に微かに城らしき建物の頂上部の明かりが町並みに見え隠れしている。アリアハン城より大きいかもしれない。
夜だと言うのに人通りは少なくなく、旅人とすれ違うこともしばしばだったが皆立派な武器防具を身につけていた。
きっとあのくらいでないとこの周辺のモンスターには太刀打ち出来ないのだろう。
俺も銅の剣では少し不安ではあるが、サキは木刀でそんなモンスターを軽く蹴散らしてしまえるんだからまだ我慢すべき所か。
強い武器防具に頼っていては強くはなれないと言うし。

俺は適当に雰囲気が良さそうな酒場を見つけ、中で夜食兼情報収集をすることにした。
酒場に入る前にサキは少し躊躇っていたが例のごとく鼻に洗濯挟みを付けて中に入った。
俺は見兼ねて外で待ってろと言ったがサキは首を横にフルフルと振った。
店員が不思議そうにそれを見ていたが、「お前ら笑ったら死ぬぞ」と言うオーラを俺が出していたので誰も突っ込んではこなかった。

ルイーダ姉さんの作った弁当より遥かに劣るであろうメニューを適当に注文し、俺はそれを瞬時に食べ終えていよいよ本題へと入る。

「強い人。」
どう聞けばいいか迷ったがこれで十分な筈。
こんな世界だ。強い奴は嫌でもすぐに名前が知れ渡る。アリアハンで俺がそうだったように。

俺は複数人に尋ねた。
尋ね終えると、俺は自分の中の戦士としての心がその名前の挙がった者にすぐにでも会いたいと心臓を高鳴らせた。
なぜなら酒場にいた一般客、旅人、店員全てが口を揃えて一人の男の名前を言ったからだ。

その男の名前は「カンダタ」と言った。

507 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:07:32 ID:vl3rV1y4O
「カンダタ」
詳しく話を聞いてみるとその男は大盗賊の頭であり、この国では知らぬ者はいないほどの人物だった。
悪名高く、あろうことか先日もこの国の王様から王の冠を盗んで逃走したらしい。
この国の兵士ではまったく歯が立たず、捕らえようとした兵士数十名が斧で斬り殺されたという話だ。
熊の様な大柄で巨斧を軽々と振り回し、人間をまるで紙屑の様に斬り殺す様を見た者は、
「あれは人ではなくモンスターだ。」と口を揃えて言う。

「アンタもしかしてやっつけようとか思ってるのか?」
一人の酔っ払った酒場の客が聞き返してきた。
「いや…、少し興味があっただけなんだ。」
俺は微妙な返し方をした。……嘘だな…。
「だよなぁ。悪いけどアンタ強そうには見えないしなぁ。なっはっは。」
…アリアハンでもよく言われたがやはりここでも言われたか。まぁどうでもいいことだが。

そんなことよりカンダタとか言ったか。
話しから察するに俺より上か…。例え俺より上だとしてもサキには劣るだろうか…。
ロマリアでモンスターと恐れられる盗賊の頭カンダタか…
アリアハン一の戦士の俺が怖じけづくほどの勇者の娘サキか…
………そうか…。俺が戦ってみたいんじゃなくてそのどちらが強いのか見てみたいのか。
…くそっ。なんだよ。俺ってこの程度の人間だったのか………?

「…そいづは…どこに行けば会える…?」
今度はサキが酔っ払いの客に聞き返した。やはりサキはそのカンダタと戦ってみたいのだろうか。
その酔っ払いは、「なんだこのガキは?」という表情を見せたがその少女の背中に差してある2本の剣をマジマジと見ると答えた。
「なんだい嬢ちゃん?あんたがカンダタを倒すなんて言うじゃないだろうなぁ?なっはっは、まさかな。」
「………。」
いつもの様に表情を変えずに真っ直ぐ相手を見据えたまま自分の問いを待つサキ。
「けっ。おもしれぇなぁ。アンタらよく見ると強そうじゃねえか。アンチャンも傷だらけでイイ男だしよぉ。」
「………。」
俺も無言で返してやった。酔っ払いは少し考えた様子の後、手に持つグラスの中のアルコールを一気に飲み干した。
「…っうぅっく。しゃあねぇな。カンダタってのは盗賊団だ。部下を何人か従えている。この街では無い場所にアジトがある筈だ。」
「どこにある?」
「それは分からねぇ。だがこの国の情報によれば北の方からやってくるってことは確かなようだ。」
「北か。曖昧だな。」
「北に行けばガザーブってぇ村がある。知ってるか?」
「いや…。」
「まぁ行ってみることだな。行ったところでどうにもならないかもしれないがなぁ。」
「そうか。ありがとう。」

「はぁ〜あ。俺のせいで死人が出ちまったぜ。若い男女が2人もよぉ。飲まずにいられるかちくしょぉ〜。マスター!酒!」
その酔っ払いは酒場を後にする俺達にわざと聞こえるかの様に酒のお代わりを注文していた。

508 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:13:38 ID:vl3rV1y4O
酒場を出てから俺は、当初の目的が変わってしまっていたことに気が付いた。
俺達はこの街へ強い仲間を探しにやってきたんだった。
それがいつの間にやらカンダタとか言う盗賊の頭に興味が奪われて、戦うか戦わないかの問題になってしまっていた。
どうする?と若干鼻が赤く跡が残っているのを気にしているかの様に、手で隠しているサキに声をかけた。
サキは、あまり自分の顔を見るなと言うような目つきで俺を見た。
…そんなことを気にする奴だったか?やはりこいつの行動には理解し難いものがある。

「…何を…言ってる?」
「いや、だから目的変わっちまってるだろ?」
「…変わってなどない。」
「あ?」
「そいつを…仲間にする。」
「は?」
俺にはそんな発想出来る筈もなく、理解するまで少し間が空いてしまった。
「話し聞いてたのかお前!?盗賊の頭だぞ?極悪野郎だぞ?人も殺してる。」
「関係無い…。」
「か、関係無いことあるか!そんな奴仲間になるわけないだろ!?」
「力でねじふせれば…どうにでもなる…。」
「な!?」

これが女…いや、勇者の娘の言う言葉なのかと俺はその言葉にしばらく度肝を抜かれていた。

強い故に恐ろしい奴に目をつけられたもんだなカンダタとやらも…。
果たしてどうなるんだろうな…。

出発は明日。俺達は宿に戻り明日に備えて早めに眠りに着くことにした。

509 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:28:36 ID:vl3rV1y4O
この先話がめんどくさくなりそうですがよろしくお願いします。
サキと主人公気に入ってもらえてよかったです

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/24(水) 03:09:04 ID:IPz33B+X0
サキー!!俺だー!!決闘してくれー!!

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/24(水) 22:16:38 ID:EFpMXNItO
一応検討しておきます。

512 :IV 第一章:プロローグ ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:13:48 ID:KQ11zLxV0
 雨がひどい。少しでもアスファルトがへこんでいるところは水たまりになっていて、革のブーツがびじょびじょになる。
ジーンズの膝が色濃くなって、夜道を照らす青い街灯の光りを黒く吸い込んでいた。私は走っている。
夜なのにサングラスもとらずに、ただひたすら自宅アパートに向かった。
 組んでいるバンドのボーカルが死んだ。交通事故だった。新聞やニュースを見れば、毎日必ず一度は目にする人の死亡要因だ。
自分やその周りには降りかかる悲劇ではないと、誰もがたかをくくって生きている。
明日になれば、新聞の地域欄に彼が死んだという簡素な記事が載る。
葬儀を終えて、練習スタジオキャンセルがどうしてもできないからと密室でギターを引き続けた私も、
ドラムやベースといった私以外のメンバーも、無表情に意気消沈して時間通りに解散した。
 深い水たまりに左足がはまった。高く上がった雨水が細い柱のように伸びてきた。「え?」と思った瞬間、
水は渦を巻き私の腰を絡め取ってずるんと足のつかない感覚へ引きずり込んだ。
 反時計回りの激流の中、何が起こったのかもわからず回らない頭でドブにでも落ちたのかと考える。それにしては深すぎた。
脳味噌がかき回されているように意識が体から振りほどかれて、ぱちんと暗転した。


513 :VI第一章:イムル ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:14:25 ID:KQ11zLxV0
 目蓋を開けると視界は白い太陽光に照らされて明るかった。なんだか手足が左右上下ばらばらに引っ張られているような疲れがある。
それでも頑張って体を起こして周囲を見渡した。胸までかかっていた薄い布団をとっさに握り締める。
 ここは私の部屋じゃない。
 木の板を隙間なく打ち付けた壁に、シンプルな額縁に入った風景画が飾られている。
曇りのないガラスがはめ込まれた窓枠はかなり質素な作りになっていて、必要最低限の技術で固めた建築物、
その一室に置かれたベッドに寝かされていたようだった。
 背の低いタンスがベッドの横に置いてあった。手作りらしいリリアンの上に、サングラスがある。
もう少しよく部屋を見回すと、タンスの引き出しは少し開いていて、黒光りする何かがある。
中を覗くと、さっきまで着ていた革ジャンが無理やり畳まれて入っていた。
 ドアが開く音に飛び上がる。あわててサングラスをかけてドアを凝視していると、中年の男性が部屋に入ってきた。
誰だろう? 見たこともない。鮮やかな黄緑色の帽子にそろいの上下をあわせ、白いエプロンをつけている。
エプロンはところどころ、食べ物の染みなんかで汚れていた。食事の支度でもしていたんだろうか。
 「おや!お目覚めになりましたか?で、どうです?体のぐあいは」
 男性の服は、映画や漫画でちらりとしか見たことのない装飾が施されていた。
装飾とは言っても、やっぱりそれはほんの小さなアクセントにしかならない程度のもので、私が見知ったデザインとは違う。
 「平気、です。あの、ここは」
「ここはイムル。イムルの旅の宿ですよ。あなた、この村から西にある湖に浮かんで漂っていたんですよ?
よく溺れずにいましたねぇ、あんなに重たい服を着て」
 たぶん、彼は私の革ジャンのことを言ってるんだと思う。湖に浮かんでいた、って……なんで沈まなかったんだろう。
疑問だけれど考えたって仕方がない。男性はこの「旅の宿」のご主人らしい。あなたが私を助けてくれたのかと尋ねると、
自分ではないという。隣の部屋に止まった「ライアン」という王宮戦士が、湖に浮かんでいた私を引っ張り上げて、
ここにつれてきてくれたのだそうだ。


514 :VI第一章:イムル2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:15:00 ID:KQ11zLxV0
 湖の中にいたのにどうして沈まなかったんだろう、ということよりも、もっとわからないことがある。
イムルなんていう地名、聞いたことがない。西方に湖がある村なんて日本中探したってそうたくさんはない。
それに、周囲を形作るこれらのものたち。ここは日本じゃない。それだけしかわからない。
 宿のご主人がいなくなってから(何かあったらいつでも下の受付に来てくれと言ってくれた)、持ち物を確認した。
水たまりで溺れたときに私が持っていたのは、シザーケースに入れたお財布と携帯電話、市販の鎮痛剤にサングラスのケース、
ジーンズの後ろポケットに入れてたラークマイルドとライター。
 それから、命と家族の次に大切なジェームス・バートン・テレキャスター。
 湖に浮かんでいた、ってことは……携帯電話とテレキャスターはまさか……両方とも……?!
 でも、丁寧に革ジャンと一緒にしまってあったシザーケースの中は渇いていて、
革製のお財布もサングラスのケースもちっとも傷んでいなかった。ベッドの上でシザーケースをひっくり返す。
 出てきたのは、お財布・サングラスのケース、のみ。鎮痛剤と携帯電話がない。部屋中よく探してみても、
テレキャスターは見つからない。
 お財布を開けて見てさらにびっくりしたのは、ひとつめに硬貨の形や紙幣の絵柄がまったく違うこと。
「100G」と印刷された紙幣が6枚と、「10G」の文字と装飾の硬貨が5枚、それから、「1G」の硬貨8枚。
お財布に入れてたのはだいたい6500「円」ちょっとだったはずなのに。
ふたつめに、クレジットカードや会員証なんかのバーコードや磁気読み取りつきのカードがなかったこと。
人の手でチェックされたり、スタンプを押すようなのは無事だった。


515 :VI第一章:イムル3 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:15:42 ID:KQ11zLxV0
 私服に着替えてから一階に降りて(柔らかい布の服にいつのまにか着替えさせられてた。誰がやってくれたかはあえて考えない)、
さっきのご主人にテレキャスターやカード類の特徴を説明してそこらで見なかったか聞いてみるも、そんなものはなかったと返された。
ジーンズのポケットに手を入れると、タバコの箱は入っていたのにライターだけが見つからない。
スタンプカードやタバコはちゃんとあるのに、どうして他のものは出てこないんだろう?
 むーむー唸りながら考えていると、二階から背の高い男性が降りてきた。
 鉄製の鎧兜に身を包み鋭い槍を手にしたその人は、青くて丸いものに黄色いぱやぱやがたくさんついた奇妙な生き物と一緒だった。
 「おお、お嬢さん、この方があなたを助けたライアンさんですよ」
 口ひげをたくわえた「ライアン」さんが、私のほうを見た。まんまるい目をくりくりさせた青いのも一緒になってこっちを見ている。
お礼をしようと向き直ると、彼は私に対して一礼し、強い意志を秘めた眼差しを鉄兜を脱いで見せた。
 得体の知れない、それでもとても強くてまっすぐな「何か」に胸を貫かれた気がした。
 「ご無事なようで何よりです。私はバトランド王宮戦士のライアンと申します」
 無駄な線ひとつ描かない会釈に気をとらわれていたが、私もすぐにお礼と自己紹介を口にした。
 「助けていただいて、ありがとうございました。私は『メイ』です」
「『メイ』殿、ですな」
 彼が「王宮戦士」であることは聞いたけど、さっきこの胸を貫いたように感じたのは、
ライアンさんが持つ地位や、相手をねじ伏せるための強さとかそんな安っぽいものじゃない。
私が今まで覚えた言葉や現象を使っても、けっして説明のつかないような雰囲気を、彼は持っていた。



Lv.1 メイ
HP:14 MP:0
E −
E −
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス

戦闘呪文:−
所持金:658G
※テレキャスター=アメリカのギター会社フェンダーのエレクトリック・ギター

516 : ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:17:02 ID:KQ11zLxV0
新参者ですが、以後よろしくお願いします。

517 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/27(土) 04:51:10 ID:0L6iFKzzO
新人さんktkr
機械系はダメなのかなーテレキャスで戦うとか想像したw

518 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/27(土) 23:35:43 ID:05KOkQAyO
>>516
期待しちょります

>>517
>テレキャスで戦うとか想像したw
俺漏れもw音撃とか斬鬼さんに変身とか妄想したw

519 :魔法使用方法論1 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:08:59 ID:ulrUGKEH0
>>512-515の続き

 「だいじょうぶ?落ち着いた?」
「宿の主人がミルクを温めてくれたが、……飲めるだろうか?」
 イムルの宿屋でライアンさんと対峙して、ホイミンくんという名前のホイミスライムが挨拶をしてくれた瞬間、
緊張の糸が切れて混乱のドツボにはまりこんでしまった。「ここはどこ?どうしてここにいるの?」という、
忘れよう忘れようとしていた不安要素が、ライアンさんを前にして崩れ落ちてきたみたいだった。
多分、ライアンさんが強く優しい人で、なおかつ正しい道を歩んでいるから安心しちゃったんだと思う。
うぅ……まさかハタチをすぎてから人前でわーわー泣くことになるなんて。恥ずかしいよ恥ずかしいよオゥイェーア。
 ひとしきり、イムルの旅の宿のカウンターの前で泣いてから、私はありのままこの身に起きたことを彼らに話した。
すると、あまり喋るのが得意ではないライアンさんに代わり、ライアンさんが私を湖から助け出したときのことを教えてくれた。
 最近、イムルを含めこのあたりを統治しているバトランドは奇妙な事件でもちきりなんだそうで、それもタチの悪いことに、
「子どもが神隠しにあうように、ふっと目の前から消えていなくなってしまう」というものだった。
ライアンさんとホイミンくんは手にした情報を元に、イムルの村の西にある塔が怪しいと目論んでいたけれど、
塔は湖に囲まれて人の足では近寄れない。イカダを運ぼうにも、距離があり魔物も出るから難しいということだった。
 魔物だとか、ホイミスライムだとか、神隠しだとか、そういった件についてはもう割合してしまう。
目の前で見せ付けられている「青いのに黄色いぱやぱや」の生物とか、その生物が唱えた不思議な魔法とかは、
もう喋るよりも頭で整理するよりもさっさと見たほうが早いもん。
 それで、ライアンさんたちは「とりあえず、塔の近辺に行って様子を探ってこよう」と湖畔を散策することに決めた。
私を見つけた経緯だった。
 「私が湖で仰向けに浮かんでいたメイ殿を岸に上げた瞬間、メイ殿の衣服や荷物を濡らしていた水が蒸発した。
何事もなかったかのように、メイ殿はさらさらと渇いた髪を風になびかせて眠っていたのです」
「あれ、魔法の匂いだったよね。ぼく、わかるもの」
 ぬるくなりつつあったホットミルクのカップを握り締める。カップの熱とは裏腹に指先が冷たくなった。
魔法の匂いがする得体の知れない存在になってしまった自分を、せめて私だけは認めなきゃ。


520 :魔法使用方法論2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:09:37 ID:ulrUGKEH0
 「魔法ってね、魔力を発するだけじゃダメなんだ。魔力を受け取る力と、発する力。
両方を持って理解して、初めて使えるんだよ」
 ホイミ、と口にしてライアンさんのケガを治して見せたホイミンは、
湖から引っ張り上げられた私が放つ魔法の匂いの説明をしてくれた。魔法、ねぇ……。なんかもう、信じられない。
つい昨日までは、マーシャルのアンプを力ずくで運んで、ギターのチューニングしてギュインギュイン弾いてた人間が、ね?
今は青くて黄色のぱやぱやに、人間が夢見続けてきた幻想の力について講義を受けているのですよ。
 「私のような武術を得意とする者は、たいてい魔力を発する力に長けていないからその道を選んでいる。
メイ殿は、ホイミンが言う限りでは、魔法の才が多少なりともおありなようだ。異界から来たにも関わらず。
目が覚めてここにいたのには、何か特別な理由があるように思いますぞ」
 んー……、ああ、なるほど。
インターネット回線でメールやネットするときは、受信と送信の両方が出来て初めて役に立つもんね。
送信ばっかりしてたら相手のメールの内容なんてわかんないし、受信ばっかりしてたら自分の言いたいことが言えないからか。
 魔法も、要は同じってことかなぁ。
 「魔力を受け取ることが出来ないと魔法の本質そのものを得ることができないから、受け取る力もなきゃいけないと?」
「そうそう!例えば今ぼく、魔法を唱えたよね?魔力を受け取る力がある人は、誰かが魔法を使っていたり、
何かから出てる魔力を感じて『魔法や魔力ってこういうものなんだ』って、感じられるの。
それで、魔法や魔力を理解できたら、今度はそれを自分から出すんだ。それが『魔力を発する』ってことなんだよ」
 ……えーと。うん。あれか、大切なのは習うより慣れろってことですね。
 「メイさん、魔法は使えないの?使ったこと、ない?なんだか素質ありそう〜」
 眉間を寄せてやっぱりむーむー唸っていた私の顔をホイミンくんが下から覗き込む。
 「いや……私のいた世界は、魔法なんてなかったから。素質なんてないよ。何の変哲もないただのギタリストだもん」
「おお、それなら魔法の素質があるというホイミンの言葉にも、納得がいきますな」
 今までやけに静かにしていたライアンさんがずい、と身を乗り出した。
 「音楽と踊り、詩文と言葉は魔法を介するものたち。内に秘めた力を外に出すための、最大の方法だと言いますぞ。
メイ殿はおそらく、音楽を奏でることによって、この世界の魔法に似た力を使うことが出来たのでしょうな」
「それはありませんよ」
 自分で思っていたよりもずっと、即答で否定が出てきてしまって驚いた。
 ステージの上で、音や言葉に乗せて色んな人を力で引き寄せていたのは、私ではなくて―――「彼」だ。
 「そんなことないよ!だったら、ぼくが教えてあげるから、魔法つかってみて!ね!?」
 必死なホイミンくんに苦笑しながら付き合ったら、あっという間に「ホイミ」を習得してしまった。
自分のギターの音色を、良い方向に自認しているような気がした。


521 :湖の塔1 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:10:21 ID:ulrUGKEH0
 昨夜、ホイミンくんから教わったのは「ホイミ」と「メラ」の二つの魔法だった。
 口と声で魔法の名前である「呪文」を唱え、それに魔力を乗せて相手に飛ばす。それが「魔法」というものだった。
私にはなかなかの魔法の才能があるらしい。もといた世界に戻るのにも魔法が必要ならばと、
魔力めいた神隠しの真相を探り帰路へのヒントを掴むため、ライアンさんたちに同行させてもらうことになった。
 ちっちゃいころは女の子の大半が、ピンクや赤のふりふりがついたお洋服を着て、星やハートや三日月のついた
魔法のステッキを持って、かわいい魔女になることを夢見ていた。
 私だって、三歳や四歳のころからハードロックやヘヴィメタル一色だったわけじゃない。
今でも魔法が使えるなら、そういう「かわいい」杖を持ってシャララーンと悪いやつをやっつけたい。
 ……なんて、いい大人が持つもんじゃない考えを持っていたのは、つい三時間ほど前のことで―――。
 「しゃあッ!」
 力むときの妙なクセとなってしまった掛け声と共に私が振り下ろしたのは、ライアンさんとお揃いの「鉄の槍」。
有り金をはたいて武器を買おうと店のラインナップを見て、あんなに重たそうなもの絶対に扱えない!
って思ってました。最初のほうは。だけども悲しいことに、アンプやスピーカを移動させたりとか、
片手にマイクスタンドを三本とか四本とかまとめて持ったりするとか、
そういった肉体労働のおかげで、私はこの世界の重い武器をありがたくもないことに扱えるみたいだった。
これならテレキャスターでギャンギャン騒音聞かせたところをヘッドやネックで殴りかかったほうが私らしい気がするけど、
見つからないものはもう仕方ない。ものすごく悲しいけど。給料半年間貯金しつづけて買ったやつだけども。
 ライアンさんのお下がりの「うろこの盾」をもらいうけ「鉄の槍」を手に、私たちは湖の塔の地下を目指している。
 ライアンさんがホイミンくんと出会った古井戸で見つけた靴は魔力がこもったものだった。
ホイミンくんを左腕にしがみつかせ、右腕で私を抱きかかえて靴を履いたライアンさんは、二人と一匹分の体重なんて
ものともしないで重力に逆らい大空を舞った。飛び上がった瞬間、稲葉浩志にも負けないぐらいのシャウトをしちゃったのは、
まあここだけの話ということで。
 塔なのに地下へ向かうのはなぜか。それは、空飛ぶ靴で着陸したのが塔の屋上だったことと、
屋上から大目玉が子どもを無理やりつれて階下に向かうのを見たから。
 長い階段を下りて地下に向かうためには、まず入り組んだ塔の内部を探索して階段がどこにあるのかを探さなくちゃならない。
それに付け加えて、塔には地上とは比べ物にならないほど強い魔物がたくさん出る。
さっきからぜんぜん息が整わない私に、ライアンさんは木製の水筒を差し出しながら言った。
 「メイ殿は、力があるのに体力がありませんな。気をつけてください。体力の無さは打たれ弱さの証です。
けっして無理をしませんよう」


522 :湖の塔2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:11:23 ID:ulrUGKEH0
 呼吸のたびに肺からびゅうびゅう嫌な音がするのは十四歳のころから。ライアンさんたちと同行するのを決めたとき、
覚えたてのメラで残っていたタバコすべてに火をつけて、一口ずつだけ吸ってあとは全部燃やした。
ずいぶんと突拍子のない理由で禁煙することになったけど、これから毎日こんな長距離移動が待ち受けているなら、
タールやニコチンなんて吸ってられない。バンドマンはボーカリストじゃないかぎり、大抵の人が喫煙者。
私も例外じゃないわけで、鼻でらくらく呼吸をしているライアンさんとは違い、さっきからゼーゼー言いっぱなし。
 「重い装備が出来る人って、普通は打たれ強いはずなんだけどなぁ」
「常識が通じない人間も中にはいるよ」
 気づかれないようにしていたのだろう、ソロ〜リと後ろから近寄ってきたダックスビルを槍でなぎ払う。
トドメに遠距離からメラを打って完了。着々と強くなるのが実感できて、元いた世界でよく味わってた歯がゆさも
忘れちゃいそう。
 ……ギターなんて、元から弾けたわけじゃないもの。ボーカル下ろされてギタリストにされて、弾けなくて弾けなくて。
 「……メイ殿?どうなされた?なんだか遠いところを見ていたようだが」
「っあ、いや、なんでもないです、ごめんなさい」
 危ない危ない。魔物が出るところで昔のいろいろを思い出してる時間はないんだった。
 「だいじょうぶ?痛いの?ホイミする?」
 心配そうにこっちを見つめるホイミンくんが黄色のぱやぱやにホイミの魔力を宿し始める。違う違う!
痛くないから! 大丈夫だから!
 微笑みながらも気を抜かないという、そんな矛盾に張り詰めた意識を蹴破ったのは、
ライアンさんの立てる足音が突然早く、強くなったことだった。
 「ゼノン!」
 ライアンさんが叫んだのは、人の名前らしかった。ホイミンと一緒に、走っていくライアンさんを追いかける。
壊れたバトランド王家の紋章がついた鎧の兵士が、床にはいつくばっていた。鉄の鎧を鋭い爪が抉ったあとがあり、
そこに至近距離からメラを打ち込まれたのだろう。肌が焼け焦げ、赤とピンクの内臓がはみ出している。
ホイミンくんがぎゅっと目をつぶった。私も震える手を隠すためにホイミンくんを抱きしめた。
 倒れていたのはライアンさんの仲間のバトランド王宮戦士だった。戦士は語った。
この塔の地下を拠点とした魔物たちは、世界を魔の手から救う勇者の復活を恐れているらしい。
いずれ成長し強くなる勇者を子どものうちに始末しようと、魔族たちは躍起になっているのだそうだ。
子どもたちの遊び場になっていた古井戸に、さっき履いてきた空飛ぶ靴を置いておけば、あとは待つだけというわけ。卑劣極まりない。
 「……行こう。この下だ」
 友の死に唇を噛み締めるライアンさんの後ろで、ホイミンくんが遺体にホイミをかけていた。
せめて死した後は人間らしくきれいに、と。
 「……何がいいとか悪いとか、区別が付け辛い世界なんだね」と独り言を呟いて、ライアンさんに続いた。


523 :湖の塔3 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:12:19 ID:ulrUGKEH0
 破邪の剣と鉄の槍の切っ先が、揃って「ピサロの手先」と名乗ったバケモノの喉元へ突きつけられる。
噴出される炎を避けて、召喚された大目玉たちを突き刺し、殴ったり殴られたりしながら決着をつけた。
ライアンさんは戦士というだけあって、槍づかいもすごかったけれど、塔の途中で手に入れた破邪の剣の扱いはさらにすごかった。
無駄な動きひとつせずに、最低限の一閃で敵を斬る。槍のなぎ払いでよろめいた大目玉たちを一刀両断にするさまは、
まさに剣の神様だった。
 「このまま去るか?何もせず、今後も悪事をはたらかないと誓うなら、今ここで見逃そう」
 ライアンさんの重く厳しい声に、ピサロの手先は涙を流して頷いて、子どもたちを閉じ込めていた牢の扉を開けた。
 「さあ、おいで。もう大丈夫だ」
 殺し合いの目をやめたライアンさんが、優しく子どもたちに手を差し伸べた。
 背後から火の息の熱気が襲い掛かってくる。とっさに盾で身をかばった私とライアンさんの後ろで防御したホイミンをすり抜け、
ピサロの手先は安心感に顔をほころばせていた子どものうちの一人を掻っ攫い、まるでゴキブリみたいに階段を上っていった。
 「しまった!」「嘘っ!?」「たいへんだぁ!」
 三者三様の言葉を口に、ピサロの手先を追いかける。屋上まで追い詰めたはいい。だけど、ピサロの手先が持っている
杖の先端は細く小さな首に当てられていて、今にも頚椎をへし折ってしまいそうだ。
 「うわあぁあん!助けてぇ!」
「うるせぇぞクソガキ!……おい!武器を捨てろ!」
 どこの世界にもこういうタイプはいるものなんだ。と、やけに冷静な頭で思いつつ鉄の槍を手放した。
ライアンさんも同じように破邪の剣を捨てるけど、戸惑いとかうろたえた様子なんて一切無い。
 「メイ殿」小さく、私とホイミンにしか聞こえない声でライアンさんが言った。
「メラ!」
 さっきの戦闘では肉弾戦ばっかりで使わなかった魔法を、今初めて発動する。火球はピサロの手先の顔面にぶち当たり、
断末魔によろめいて床のないところへとフラフラ後ずさっていく。武器を拾い、みんなで奴と子どものほうへ走った。
 「あっ……あ……わぁあ!」揺らぐ視界に子供が叫ぶ。
 ぐらり、とピサロの手先が子供を羽交い絞めにしたまま床を踏み外す。子供を拘束する腕の力は緩まない。
吐き気がするのをこらえて、私は鉄の槍をピサロの手先の胸に突き刺した。ライアンさんが子供をしっかり捕まえる。
 うん、まあ、お約束というかなんというか。この下は湖だから、死にはしないだろうけれど。
 「一緒に落ちるとか、本末転倒もいいとこだー……」
 せめてもの衝撃緩和に、事切れたピサロの手先の死体を下敷きに落ちていく。湖水に飲み込まれたのを認識すると、
驚いたことに痛みもショックもまったくないことがわかった。


524 :湖の塔4 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:13:45 ID:ulrUGKEH0
 早く岸に上がって、ライアンさんたちを待たなきゃ。と、思った矢先。
私の頭からつま先まですべてを包み込んでいた湖水が、突然うねり始める。波は徐々に丸まり、反時計回りに渦を巻く。
 死の匂いを含んだ雨の降るあの日、私を飲み込んだ水たまりと同じ動きを湖は始めた。
もしかしたら、もとの世界に戻れるのかもしれない。テレキャスターと携帯電話と鎮痛剤は見つからなかったけど、
そんなものまた買えばいい。今度はテレキャスターじゃなくてストラトキャスターにしよう。
 鉄の槍の柄とうろこの盾の取っ手を握り締め、続かなくなる呼吸と意識を早く手放そうと目を瞑った。
遠くでライアンさんの声が聞こえた気がする。本当はすぐにでも彼らのところに行きたい気分だったけど、
この渦は私を解放してはくれなかった。



 「メイ殿!メイ殿ぉー!」
 メイが落ちるのを、ライアンは確かに見ていた。子供を捉えたまま塔から落ちて自害しようとしたピサロの手先にトドメを刺し、
メイはそのまま落ちていった。あの場合、ああするしか子供を助ける方法はなかった。ピサロの手先は、
ライアンたちに討たれ死ぬのなら、せめて子供一人ぐらい道連れにと考えていた。メイのメラでひるんだ隙に子供だけを
連れ戻そうとしたが、執念の強さは子供を拘束する力の強さとなって現れていた。完璧に殺さなければいけなかった。
 ライアンはほんの一瞬、躊躇したのだ。あの高さから、トドメの一撃のはずみで落ちてしまうことに。
しかし、メイは躊躇うことなくピサロの手先に鉄の槍を突き刺した。まるでライアンが子供をしっかり受け取ることを
確信していたように。
 湖にメイが落ちたのは見た。しかし、一向に彼女は上がってこなかった。
塔の屋上から飛び降り、真昼の太陽がきらめく湖面を見つめたが、物影ひとつ浮かんではこなかった。
 ただひとつ―――湖の中が不自然に光っていた。白っぽい糸が集い、丸くなり、渦を巻いているように見えた。
あれはまるで、書物でしか知らない移動魔力の集合体―――旅の扉のようだった。



第一章 完


Lv.6 メイ
HP:21/26 MP:27/38
E 鉄の槍
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス

戦闘呪文:ホイミ・メラ
所持金:345G(湖の塔での戦闘で獲得したゴールドを全額受け取っている)


525 : ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:16:08 ID:ulrUGKEH0
テレキャスターで戦おうとはメイ本人も考えていたみたいですw
二章への移動は年明けに書かせていただきます。それでは、よいお年を!

526 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/29(月) 22:55:08 ID:h3oaDFCp0
おおお!!次は二章か…!
楽しみにしてます

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:46:27 ID:xfml+5nr0
>>428の続き
○ヘルポイの歌姫○


 タケ「うっひょー!ついに来たでぇ!!ヘ・ル・ポ・イ〜♪イヤッッホォォォオオォオウ!」

ムーン「ちょっとぉ!何でそんなに浮かれているのよ!」
 タケ「ラゴスとアンナに会えるんやで!!新しい出会いが楽しみや!」

 もょ「タケのばあいはアンナめあてとおもうけどな。」
 タケ「余計な発言すんなや!アホ!しっかしツッコミが冴えてきたなぁ。もょは。」

ムーン「タケに全ての原因があるから仕方が無いわね。」
 タケ「何で俺が原因やねん!しっかしムーンもカリカリしているし・・・もしかしてせ・・・・」



バキッ!!



 タケ「痛い><」
ムーン「あら、ごめんね。腕が当たっちゃった。」

こいつ絶対にワザとやりやがった。全くジョークが通用しないから困る。


銀の鍵と金の鍵を使い街中へ入場した。
ヘルポイの町は銀の鍵と金の鍵が通行許可証みたいな感じで両方持っている俺達はVIP待遇で入場できた。
金の鍵だけのみなら入場料を支払い、(それでもかなり高いと思うくらいだが)身体検査をされてしまう。
銀の鍵だけのみなら囚人服みたいな番号入りの服を強制的に着せられる。


建前は犯罪防止のためと言われるのだが別の意味も込められていそうだ。



528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:47:22 ID:xfml+5nr0
町の人々の会話が聞こえてくる……………………


「おい!今日はやたら人が多いな。」


「無理も無いさ。今日から『ヘルポイの歌姫』のお披露目会だぜ!
 外部からの人間が多いから警備も厳重にしているからな。」


「しかし囚人服着てまで見たいとはイカにも罪人ですってアピールしていると思うんだがね?」

「なーに。そこまでしてでも人間離れした美しい歌を聴きたいのだろう。」

お披露目会=歌姫のコンサートのため警備が厳重ってことか。
話をこっそり聞いているうちに分かった事はこの町は紹介制でじゃないと入場できない。

紹介された人間はお金を納めて銀・金そして金銀の両方の鍵を得る事が出来るのだ。


 タケ「しかし俺らがここに入れたのは運命的やったって事かい。
    (MLMとほざいてネズミ講のと同類なシステムやな)」

ムーン「ここまで厳重なんて・・・・・ある意味怖いわね。」
 もょ「お、おい!あれはなんだ!?」

もょもとが指差したところを見ると派手な看板がある・・・・

向かってみるとそこはカジノだ。ポ−カーやビンゴ(ホイミスライム.Ver)・スロットマシーン・・・・・
それに立ち飲みバー、飲食店、さらに×××などがある。



529 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:48:53 ID:xfml+5nr0
 タケ「ちっ・・・・・この町臭いわ・・・・・」
ムーン「ど、どうしたの?急に険しい表情になって。」

 タケ「こういう人間の本能を擽るモンを作るのは大概ヤクザまたはマフィアが仕切っているんよ。」
 もょ「やくざ?まふぃあ?それはなんだ?」


 タケ「こっちではそういう言葉は無かったか。すまん。分かり易く言えば悪党が資金稼ぎのために店を開いているんや。」


ムーン「ま、まさか・・・・」
 タケ「察しの通りやで。」
 もょ「しかしまちはかなりへいわだぞ?」

 タケ「警備している奴らの目を見て見ろよ。ちょっとおかしいで。関わりたくも無いのが普通やろな。」

ムーン「じゃ、じゃあどうすればいいの?」

 タケ「普通に成りすませたら問題は無いよ。騒ぎをさえ起こさへん様に頼むで。厄介事は起こしたらあかん。
     変に気張る必要は無いわ。ここは無難に歌姫のお披露目会に向かった方がベターやな。」


歌姫のお披露目会場―――――――――――――

開示時間まであと僅かと言う事もあって会場には大勢の人が集まっている。
会場を見る限りではの大規模(って言っても300人程度だが)
VIP・金持ち・囚人服ブロックに分かれている。

VIPである俺達は椅子が用意されいる。
騒ぎ声が徐々に鎮まっていく・・・・・・そろそろ始まりそうだ。


530 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:50:09 ID:xfml+5nr0
「レディース&ジェントルメェェェェェン!!今夜は世界の楽園、ヘルポイにお越しに下さってありがとうございます!」
「当街のメインでありますヘルポイの・・・・いや、世界の歌姫を紹介致しまぁす!」

司会者が紹介した後には一人の女性が現れた。

「早速歌っていただきましょう・・・・・アンナの『LoveSong探して』」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm286572(←知らない人はこれを参考に・・・・・)

歌姫とはアンナの事だった。アンナは人間離れした美しい歌声で歌っている。
確かに歌は上手い。しかし何か洗脳されそうな感じだ。
聴いていく内に何か似取り込まれる感じがする。
次第に自我が失われる・・・・
意・・織・・が・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・




「今回も上手くいったな。」
「ああ。これならラーメド様もお喜びになるだろう。」
「金持ちの豚共はどうやら威厳という虚像に弱いみたいだからな。チョロイもんだぜ。」
「女共はいつもの手で行くか。野郎共はどうする?」
「ノルマがある以上は過剰に洗脳させておくぞ。ハーゴン教団の新しい駒としてな。」



ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!




「な、何だ?」
「何かが爆発したぞ!!」
「クソが!周辺が待ったくみえねぇ!!」


・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・


531 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:51:55 ID:xfml+5nr0
俺は夢を見た。元の世界で友人達と一緒に遊んでいる夢だ。
確か学生時代の楽しい一時だ。
次第に景色が歪んでくる・・・・誰かが呼ぶ声がする。いったい誰だ?

 *「ワンワン!!」
タケ「うっ・・・・ううん・・・・」
 *「ハッハッハ・・・・ワン!!」
 *「おっ!ようやく目が覚めたか。」

周りを見渡すといつの間にか森の中にいた。一人の男が俺達に話しかけてきた。

タケ「ここは・・・・?」
 *「安心しな。ヘルポイの町の外だ。ここなら安全だぜ。」

タケ「あんたが俺達を助けてくれたんか?―――――ムーンがおらへん!」
 *「一体どうしたんだ?」

タケ「いや、一緒にいた仲間がおらへんのや・・・・・」
 *「俺はお前しか助けていない。連れがいたと言う事はもしかしたら捕まった可能性が高い。」

タケ「何やと!?」
 *「落ち着け。あの町の事情を話してやる。」

男はヘルポイについて話し始めた。
ヘルポイは元々移民の町だったらしい。人口をかき集めるために犯罪者だろうが何であろうが
町を発展させるために在住の許可を簡単に出したそうだ。
そこでハーゴン教団が目を付けて洗脳させた教徒達を在住させようとした。
当時の町長はもちろん反対したのだが、時はすでに遅し。
数の力で事実上、町を乗っ取られてしまった。
ハーゴン教団にいたアンナを利用し眠りの歌を歌い、訪れた人間の金品を巻き上げたり洗脳させたりするそうだ。



まさに『庇を貸して母屋をとられる』である。



現状起きている日本国の最悪の結末がこの街で起こったのである。

532 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:53:25 ID:xfml+5nr0
タケ「安易な政策が招いた結果かいな・・・・・しかし何であんたは俺を助けたんや?」
 *「こいつが俺に言ったのさ。『助けて貰った恩がある。』ってな。」


男が犬を呼び出すと犬は嬉しそうに尻尾をふっている。確かこいつはザハンにいたエロ犬だ。



 タケ「もしかして・・・・アンタがラゴスかいな?」
ラゴス「そうだ。やっと会えたな。同士よ。いや、もょもと王子。」
 タケ「!!」


ラゴス「警戒はするな。世界中を旅しているから一国の王子の名前と姿位は知っているさ。
    しかしサマルトリアの王子とは違って戦士の目つきをしているな。」


 タケ「ふん・・・・」


ラゴス「王子。俺の頼みを聞いてもらえないか?」
 タケ「頼みとは?」
ラゴス「ああ。結論から言えばアンナを助けたい。」


 タケ「何やて!?アンナはハーゴン教団の人間やろが!」


ラゴス「アンナは無理やりさせられているだけなんだ。」
 タケ「それならお前の理由を正直に話せや。何もかもな。」


ラゴスは話し始めた。
アンナは妖精族と言う種族らしく普通の人間や魔物では出来ない特技を持つ種族らしい。
歌を聴いた者は眠らせさせたり、癒されたり・・・・更には洗脳も可能なそうだ。
それをハーゴン教団が目を付けて何らかの方法で無理やり歌わされている。




533 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 19:55:05 ID:xfml+5nr0
 タケ「しかしラゴス。アンタが何でそんなにアンナに執着しているんや?」
ラゴス「・・・・・・・・・そこまで言わないといけないのか?」
 タケ「ああ、話してもらうで。普通ならアンナは処刑するべき存在やからな。」



ラゴス「俺が惚れた女だからだ。彼女を守りたい。」



 タケ「・・・・・・・」
ラゴス「馬鹿馬鹿しい理由だろ?」


 タケ「ああ。最高級の大馬鹿野郎やで。ホンマ。
    けど悪い気はせーへん。逆にそれがエエわ。アンタには助けて貰った借りがある。」


ラゴス「それじゃあ協力してくれるのか?」
 タケ「そやで。すばらしぃ本も見せて貰ったしな。ここはスケベ同士で手を組みますか!」
ラゴス「ははっ、王子がそんな発言して良いのか?」

 タケ「まぁええんちゃう?男の本能やし。王族と言って威張り散らすなど恥ずかしいマネなんかはしたくないんや。
     俺もい・・・いや、仲間を助けんとアカンからな。」

ラゴス「へえ!変わった人間だな。王族だからといえば堅苦しい印象しかなかったんだが。」
 タケ「偉そうにしても後で自分が惨めになるだけ。それよりもお互いに協力するって事でええか?」

ラゴス「異議無しだ。それなら決まりだな。よろしく頼むぜ。王子。」


 タケ「もょもとでええよ。戦うのに王族も平民も関係あらへん。俺は仲間を助けたい。
     お前は惚れた女を助ける・・・・お互いに利害が一致したな。」


ラゴス「ああ。それなら再度ヘルポイに向かうぞ。」

Lv.19
HP:141/141
MP: 12/ 12
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
  タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ・火炎斬り


534 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2008/12/30(火) 19:56:50 ID:xfml+5nr0
トリップ忘れてました。すんません。
今年もありがとうございました。
では良いお年を。


535 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/31(水) 11:48:40 ID:RsBy+KRQO
>>508の続き

次の日。
カンダタの情報を求めて俺達はガザーブの村へとやってきた。
小さな村ではあるが中央にほとりがあり、それを囲むように家が建てられていて綺麗な村だった。

早速カンダタの情報収集に取り掛かると、驚くことに村人一人目にしてすぐに情報を得ることが出来た。

「カンダタ?あいつら村の酒場に時々現れては暴れていく困った奴らなんだ。」
「西のシャンパーニの塔に住んでいるらしい。」
「5人くらいの子分を連れていてそいつらも強いんだ。村の若い連中じゃ手も足も出ない。」

なんだなんだ。すぐに情報が出てきたじゃないか。ロマリアの国もたいした国じゃないのか?
それともモンスターに手一杯でカンダタを相手にするほどお国は暇じゃないってことか。

俺達はこの村で一泊することにして、サキの弱点が芽を出さぬようにたっぷりと睡眠を取り、明朝にシャンパーニの塔へと出発した。
塔は村から微かだが肉眼で見える距離にそびえ立っていたので、おかげで迷うことなく塔へと辿り着くことが出来た。

塔の中にはモンスターが住み着いていたがまるで襲いかかって来なかった。
人間を恐れている?盗賊を?カンダタを?
塔の最上階へ上ると、一人の大柄な男が俺達を待ち構えていた。

「なんだ、誰が登ってきたのかと思えばガキみてえな奴らじゃねぇか。ロマリアの兵士じゃなさそうだが誰だ?」

その男は立ち上がると手の間接をバキバキと鳴らした後に巨大な斧を軽々と手に取った。
悍ましいほどの筋肉美を晒しているがその顔は覆面に被われていて表情は読み取ることは出来ない。
盗賊団のボスだけあって、今までに感じたことのない気迫に押された俺は未だに剣を差し向けることが出来ずにいた。
しかし…奴一人?仲間が見当たらないのはなぜだ?
「んだぁ?俺様を獲りにきたんじゃねぇのか?おい坊主?」
対するカンダタは斧を俺の方へと差し向けて挑発している。
「(……やるのは俺じゃねえんだがな。)…サキ。どうする?」
「とりあえず…倒す。」
と言うと同時にサキは木刀を鞘から抜くと、一気にカンダタ目掛けて飛び出した。

ガタンッ!!!
という音と同時にサキが目の前から突然床に消える。
サキの能力かと勘違いしたがそれはカンダタの罠であったことに気づく。
床がパッカリと抜け落ちていた。

「まさかお姫さんの方から飛びかかってくるとはな。今頃下の階で俺様の子分共にメッタ刺しにされてるぜ。可哀相にな。」
「(なるほどそういう罠か。だったらサキを心配する必要も無いか…。問題は…)俺がお前とやるのか…?」

536 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/31(水) 11:54:06 ID:RsBy+KRQO
サキが戻ってくるまでの間、俺がこいつと戦わければならない。
俺はようやく銅の剣をカンダタに差し向けた。
つい先程カンダタに出会うまでの俺は、どうせサキがカンダタを一発でぶっ倒してそれで終わるんだろ、と楽観視していた。
ただの傍観者、そう思っていた俺は全くと言っていいほど俺の闘志はエンジンがかかっていなかった。

「けっ。誰だか分かんねぇが俺様に盾突いたこと後悔させてやんぜ!!」
巨体とは思えぬほどの軽々としたジャンプで落とし穴を回避したカンダタは、そのままの勢いで斧を振り回し切り掛かってきた。
咄嗟に剣と盾の両方で防ぐが、凄まじく重い一撃は皮製の盾を一瞬にして破壊し、さらに俺の体ごと吹き飛ばした。
剣は手離さなかったが握っていた手はジンジンと痺れて震えている。
「……ッ!」

ヒュンヒュンヒュンッ!!!
立ち上がる隙も与えずに風切音を立てて斧が俺目掛けて一直線に飛んできた。
ズガンッ!!!!
間一髪に避けた斧が床に鋭く突き刺さった。その斧に目を奪われた俺はカンダタを一瞬見失ってしまう。
咄嗟にガードの構えを取るが俺の身体は凄まじい衝撃を受けて壁にまで吹き飛ばされていた。

「ガハッ…、」
口から血が流れた。まるでサッカーボールのように俺は10メートル以上も蹴り飛ばされていた。

カンダタは床に突き刺さった斧を引き抜くと、舌打ちをしながら明らさまにつまらなさそうな態度を取った。
「おいおい相手にならんぜ?何しにきたんだお前は?」

「……くそっ…。」
何ボケッとしてんだよ俺…、殺されるぞ俺…。
サキがカンダタをやっつける?って今いないだろう。これじゃ時間稼ぎにすらならねーじゃねーか。

俺はその痛みでようやく目が覚めた。
床に剣を刺して寄り掛かりながらフラフラと立ち上がる。
カンダタは余りに手応えの無さにやる気を無くしてしまい追い撃ちも仕掛けてこなかった。
それどころか俺に背を向けて、階段を降りて行こうとしている。

その態度が、俺の闘志にようやく火が付きエンジンがかかりはじめる。

「まてよ…。」
俺の声に足を止めるカンダタ。
「あぁ?」
「……まだ…、まだ勝負ついてねぇだろうが!!階段降りるなら俺を殺してからにしろッ!!」
アリアハン一番の戦士と言われた俺が、完全に見下されていることに俺は許せなくなっていた。
その声にカンダタは笑みを浮かべる。
「ッハッハ!死にてぇらしいな。馬鹿が。」
「そうだな…。サキならお前を確実に倒せるだろう。…けどそうじゃない。」
俺は剣を床から思い切り引き抜いて、剣先をカンダタの眼先に真っ直ぐに差し向けた。
「サキがお前を倒すのを見たいんじゃない!!俺がお前を倒してぇんだ!!カンダタ!テメェをぶっ倒す!!」

537 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/31(水) 11:59:07 ID:RsBy+KRQO
さきほど受けたダメージはどこへいったのか分からないほど、俺は高揚し自分の体から力が沸いて来るのを感じた。
やれる。俺は闘える。「アイツを倒せる!」と身体の奥そこから湯水の様に自信が溢れ出て来る。
俺が本気になったのはこれが初めてかもしれない。

先程までの軟弱な野郎とは掛け離れる物を感じ取ったカンダタは、再び笑みを浮かべたが表情はガラリと変わっていた。
「ハッハッハッ!ぶっ殺すだぁ!?おもしれぇ!テメェみてえな野郎ますます殺したくなってきたぜぇ!かかってこいや!」

「おおおおぉ!!!!」

俺は声を張り上げ、一気にカンダタとの距離を縮めた。
少しでも躊躇えば俺の体は両断される。
奴の振り回す斧は受け止めることなんて出来やしないと先程の一撃で分かった。
避けるか攻撃の前に殺すかの二択。
あんな筋肉ゴリラ野郎の巨体にフェイントなんかいらない。先手必勝だ!
対するカンダタは斧を高く振り上げる。
「隙だらけだ馬鹿野郎!」
俺は渾身の一撃をカンダタの胴体に食らわした。
「ハッ!きかねえよ!」
血が吹き出しているのも関わらずまるで効いたそぶりも見せずに、カンダタは振り上げていた斧を一気に俺向けて振り下ろす!
俺は思い切り上体を反らしそれを紙一重で退けた。
ドガン!!!と空を斬った斧が地面を打ち砕き威力の凄まじさを物語る。

避ける自信はあった。俺の本気の一撃を受けたまま攻撃に転ずることなど出来る筈が無いからだ。
避けることが出来れば奴は隙だらけの筈。
しかし…、俺は剣を握っている手の力が一瞬抜けてしまい攻撃せずに距離をとった。
「…っつ!」と自分の右肩を見るとサックリと服が破れて血が流れ出ていた。
くそっ。確かに交わした筈。間違いなく交わした。まさか!?あの斧の風圧で!?
それに対してカンダタに本気で一撃入れた部分は分厚い筋肉によって守られてまるで致命傷には至っていなかった。
裸の癖に何と言う防御力だ。
くそっ。俺もちゃんと防具買っとくんだったぜ。…じゃねえか。もっといい武器持ってりゃ殺せていたか。
…いや、そうでもない。俺の銅の剣を見てあいつはあんな隙だらけで構えていたんだ。

「よくそんな貧相な武具で俺様と戦えたもんだ。称賛に値するぜ。」
「へっ。貴様なんかこれで十分ってことだ。」

…あの野郎、胴体に思い切り叩きこんだってのに息一つ乱れちゃいねぇのかよ。
…どうする?
「どうした?こねぇのか?怖じけづくにはまだ早ぇぜオイ。」
「作戦考えてんだよ!だったらお前から来いよ!」

その時だった。
「ソラ!」
階段を駆け登ってくる音と共にサキの声が聞こえた。

538 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/31(水) 12:04:21 ID:RsBy+KRQO
「ちっ!仲間がきやがったか。俺様の子分共がまさか負けちまうたぁなぁ。」
「へっ。言っとくがうちのお姫様はバケモンだからな。テメエどころかバラモスだって目じゃないぜ。」
サキはフロアに上がり俺達を見つけると全速力でこちらに向かってきた。
そのサキの姿を一目見て俺は一安心した。サキには万が一の弱点があるから。強いくせに心配させやがる、困った奴だ。

「来るなサキ!!お前はそこで見ていろ!!」

俺は今まで出したことのないくらいの声を張り上げてサキを制止させた。
立ち止まるサキ。
「悪い。こいつと決闘したいんだ。一対一で。邪魔したら許さないからな。」
「ソラ…。」
相変わらず無表情で分かり難かったがサキは木刀を背中にしまうと、一言だけ話しかけ壁際の方へと離れた。
「…死んだら、嫌なんだから…。」
「ああ。」
分かってる。負けたくないし負けるつもりもない。
「よし…!(一か八かアレやってみるか!)」

俺は左手をかざし意識を集中させると、ゆっくりだがジワジワと熱を帯び始めた。
「ほう、魔法か。だが戦士が魔法なんざたかが知れてるだろ。」
「やってみなきゃわかんねえぜ…。」
魔法は昨日覚え始めたばかりだ。あいつとの…サキとの差を縮めるためにロマリアの街の本屋で見つけた魔法の書。
辞書の様に分厚く活字ばかりでまだ数ページしか読んでないし、全くと言っていいほどまだ魔法力もない。
初歩の初歩であるメラでさえまともに放てるかも分からない上、放つのにタメが必要なくらい下手くそだがやるだけやってやる。
タメの時間を与えたテメェの負けになるんだ。

「そういやさっきバラモスがどうとか言ったよなぁ!?そんなもん俺様にゃ眼中ねぇんじゃ!!
 あるのはテメェみてえな熱くなれる野郎だ!!久々燃えてきたぜ!ほらどうした!?かかってこいやぁ!!」
「言われなくてもいくっつーんだよ!!」

俺は再びカンダタに距離を詰める。カンダタは俺の策略に対応するためか斧を短く持ち俺を向かい討つ気でいる。
俺は左手にメラを溜め込んだまま両手持ちで力一杯切り掛かった。
カンダタもさすがに無視出来ずに俺の攻撃を斧で弾く。
きたっ―。
弾かれた瞬間俺は左手を離しカンダタ目掛けて至近距離で溜め込んでいたメラを放つ。
上手く当たらなくてもいい、ダメージなんか考えてない。少しでも奴のバランスを崩せればそれでいいんだ!

「うぅっ!?」
メラは成功し上手くカンダタの顔面に当たった。威力は無いが目眩ましにはなる。
このチャンスを見逃すわけにはいかない!
少しは脆くはなっているであろう先程一発食らわした箇所目掛けて俺は、再び渾身の一撃を打ち込んだ。

バキバキッ!とカンダタの自慢の巨体が破壊する音とともに、「うがぁ!」と声を上げカンダタは地に臥せた。

539 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/31(水) 12:08:59 ID:RsBy+KRQO
「ハァッ……、ハァッ……。」

確かな手応えだった。普通の人間であれば確実に命を絶つほどの感触。
半分気絶しているのかカンダタは起き上がってはこない。勝負あったようだ。

俺は力尽きる様にその場に座り込み、その戦いが終わった様子を見てサキは駆け寄ってきた。
「ソラ…、大丈夫?」
「あ…あぁ…。それよりこいつ…、治療してやんなきゃな。」

俺は薬草を使い、カンダタの体力が回復するのを待つことにした。
サキが倒したカンダタの子分達は気絶させてあるだけで心配は無いとサキは言った。

しばらくしてカンダタが目を覚ました。
カンダタは起き上がると、今までに行(おこな)ってきた数々の盗品や強奪品の全てを俺達に差し出した。
「俺達の負けだ。これはお前らにやる。」
その金ぴかに輝く盗品の中にはロマリア国王の冠も含まれていた。
「いや、別に俺達はこれを奪い返しにきたわけじゃないんだ。なあサキ?」
「…うん。お前を…カンダタを仲間にする。」
「あ?俺を!?」
目を丸くして、こいつらは一体何を言ってるんだという表情のカンダタにこれまでのいきさつを説明した。

「本気かよ。俺様は世界指名手配かかってんだぜ。お前らなんかと一緒に旅はできねえよ。」
「…関係無い。」
「そうだな。世の中の人々を救える旅だ。罪を償えるってもんだぜ?」
「けっ。罪を償う気なんざさらさらねぇってんだ。」
「…そうか。だそうだサキ。諦めるか?」
「………。」

サキは背を向けて何も言わずに去っていく。俺も続いてこの場を立ち去ろうとした。

「…おい待てよテメェら。」
「…?」
「俺様…俺はこの悪行を誇りにすら思ってる。…モンスターだろうがバラモスだろうがそんなの興味も無ぇ。」
「…。」
「だがな、貴様は俺を初めて負かした野郎だ。貴様に興味がある。それじゃダメか?」
「…何が?」
「だから!テメェらについていくって行ってんだボケ!!仲間にしろや!!」
「カンダタ!聞いたかサキ!」
「ふん…。」

「だからといって言っとくけどなぁ!俺様がお前を倒すまでの話しだ!テメェを倒せりゃすぐに抜けてやるんだからな!そこんとこ覚えとけよコラ!」

まさかではあったがサキの思惑通りに盗賊の頭カンダタが仲間に加わり、俺達の旅は続いて行くのだった。

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