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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

201 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 20:16:07 ID:zFPW5C87O
乙!!

勇者ママ、17才でぇす♪

202 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 21:51:10 ID:n4Rsb46E0
総長さん待ってました!勇者の母ちゃん強いwww

203 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:13:14 ID:s5aQgiCe0
お久しぶりです。
やっとこさスランプ脱出できそうです。

勢いに乗って第16話を投下します。
早朝ですので、規制に引っかからぬようまったり投下しようと思います。

204 :唯彼独尊【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:16:05 ID:s5aQgiCe0
甲高い悲鳴のような音をたて、顔が砕けた。
氷雨のように飛び散る冷たい飛沫を前に彼女は居た。

「ゲマ様!いかがなさいましたか!?」

どたどたと足音を荒げて部屋になだれ込む二つの異形。
それには答えず。憎悪に満ちた視線によって打ち砕かれた屑星の中、
主は静かに口を開く。

「お二方に問いましょう。貴方達の働きは誰の為のものなのです?」

主から発せられた脈略のない問いに、不可解な表情を浮かべる二人。
それも一瞬の事。すぐに姿勢を正し、主の前に跪き返答する。

「私とゴンズの役目はゲマ様…しいては魔王様の理想実現のために尽力する事…」
「ジャミの言う通り。あっしらはゲマ様と魔王様のためならいつでも動きますぜ。」

従者として実に模範的な解答。それを聞いた魔女が短く笑った。

「ほほほ…貴方達に聞いた私が愚かでした。良い、下がりなさい。」
「しかしゲマ様…」
「聞こえませんでしたか?二度は言いませんよ?」

魔女はその視線を向けただけ。
ただそれだけで、魔族の中でも高位に位置する二人は慌てたように部屋を後にする。

「ほほほ…愚かな教祖も、三流魔王も…狭い世界で抗っていれば良いでしょう…
 まぁ…私の抗いも定めの中では無駄なのでしょうかね…」

誰もいなくなった部屋で自嘲気味に笑う魔女。
毒々しい紫の瘴気が漂う空間に、綺羅星のように鏡の破片が輝く。

205 :唯彼独尊【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:19:57 ID:s5aQgiCe0
         ◇
さっきまでの凶暴さが嘘のように、喉を鳴らしてサトチーに擦り寄る魔獣。
その行為自体は微笑ましい光景なのだが、如何せん体格に差があり過ぎて、
どう見ても襲われているようにしか見えない。
まあ、当のサトチーが嬉しそうにしているからいいけどね。

「なんと。サトチー様とそちらのキラーパンサーは旧知の仲でありましたか。
 知らなんだとは言えとんだ無礼を…」

十年前。当時のサトチーに付き従い、様々な冒険を共にしたモンスター。
天涯孤独の身であるサトチーの幼少期を知る唯一のモンスター
それがこのキラーパンサー。
なるほどね。戦闘スタイルがサトチーに似てたのもその影響かな?

剣を向けた相手が主の戦友であった事を知り、平伏するピエール。
キラーパンサーにもみくちゃにされながら、サトチーが微笑みを向ける。

「最初は僕も気付かなかったよ。あんなに小さかったのに、すっかり大きくなって…
 そうだ、改めて皆に紹介しておこう。彼は僕の初めての仲間モンスター。
 彼の名前は…………」

そこで、サトチーの言葉が止まる。
言葉を止め、表情を止め、動きを止め、ただその口元が僅かに動く。

「名前…あれ?…プックル…ソロ…チロル?…いや、アンドレ…ボロンゴ?」

じっとキラーパンサーを見つめたまま固まるサトチー。
なぜか、その顔には困惑が浮かぶ。

「…サトチー卿…惑わされるな…正しい記憶は一つだ…」

戸惑い、視線を宙に泳がせるサトチーにスミスが静かに言葉をかけた。

206 :唯彼独尊【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:24:56 ID:s5aQgiCe0
「済まない。少し疲れたのかな…一度に色んな思い出が蘇って混乱してしまったよ。
 …そう、彼の名前はゲレゲレ。仲良くしてやってね。」

―ゲ…ゲレゲレ?なんつうか、凄げぇネーミングセンスだな…

「何と素晴らしいお名前!ゲレゲレ…実に気高く優雅な響き。」
―☆☆☆!!―
「ピエールとブラウンもそう思うかい?実はビアンカが考えた名前なんだけどね。」

工工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
―何コレ?俺のセンスがおかしいの?それともこれも世界の壁ってヤツ?

仲間との微妙な温度差に凍えそうになる俺。

「…この後はどうするのだ?ゲレゲレが無害な魔物だったとしても…
 あの村の人間がすんなりと受け入れるとは到底思えぬ…」

話の流れを変えてくれたのはスミス。マジ感謝。

「大丈夫だよ。あの村の人達も事情を話せばきっとわかってくれるだろうさ。」

相変わらずゴロゴロと喉を鳴らしてサトチーに懐くゲレゲレ。
その豊かな鬣に手を入れ、優しく撫で上げるサトチーは幸せそうだ。
でも、あの村の人間たちにとっては畑を荒らしまわった憎い魔物なわけで…
サトチーには悪いがスミスの言うことも納得できる。

「…やはり無駄か…ならば魔物が現れないうちに脱出するべきだ…」

くるりと踵を返し、洞窟の出口に向かって歩き出すスミス。
その無礼な振る舞いに奥歯を噛み締めるピエールをなだめ、俺達も後を追う。

さて、果たして受け入れてもらえるかね?

207 :唯彼独尊【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:31:36 ID:s5aQgiCe0
「こんの化け物どもが!!」

受け入れてもらえませんでした。
むしろ、殺気立った村の住民に囲まれてピンチ。

まぁ…受け入れてもらえないのも当然と言えば当然なんだが、間の悪い事に
自分達で魔物を討伐しようと、俺達の後から洞窟に入った村人がいたらしく、
さらに、その村人にサトチーがゲレゲレを懐かせた所を見られたらしい。

その場面だけ見たら村を荒らした魔物の一味と勘違いされても当然なんだけど…

「ゲレゲレが村に迷惑をかけたことは許される事ではありません。
 ですが、彼は完全に改心しました。これからは村に迷惑をかける事も…」
「お前らと話すことなんかねえ!!」

ごつっ!!

「サトチー!!」
「おのれ!無礼な…」

村長が投げつけた茶碗が額に当たり、サトチーの言葉が強制的に中断される。
周囲からは『化け物』だの『火炙り』だの物騒な罵声が浴びせられ、
鎌やら鋤やらを手にした村人達は、自分達の言葉でヒートアップして暴走寸前。

―なんだよこれ…本当なら村を救った恩人として感謝されてもいい場面じゃねえの?

「駄目だ!手を出すな!!」

額から一筋の血を流したサトチーが片手で俺達を制する。
爆発しそうになる感情と、喉元から漏れ出しそうな怒声をぐっと飲み込む。
同じ様に耐えているブラウンは涙目で全身をわなわなと震わせ、
固く握りこまれたピエールの両拳から滴る緑色の液体が床をわずかに湿らせる。

208 :唯彼独尊【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:42:26 ID:s5aQgiCe0
「駄目だスミス!村の人たちを傷つけては…」

意外…サトチーの制止に従わず、殺気立つ村人達の前に進み出たのはスミス。
相変わらずの無表情からは一切の感情を読み取ることはできないが、
その気になれば息を一つ吐くだけで、この部屋丸ごとガス室にできる。

「スミス…駄目だよ…」

懇願するように搾り出されたサトチーの声。
その声を背に受けたスミスは首を僅かに傾ける。

「…案ずるなサトチー卿…私はこの者達を傷つけるつもりはない…
 …そして…この者達も私を傷つけることはできぬ…であろう?村長…」

ゆるりと歩を進めるスミス。見る見る青ざめる村長の顔。
何か、とてつもなく恐ろしい物を目の当たりにしたような強張った表情。
その乾いた唇を呼吸困難の金魚のようにパクパクとさせている。

「…気付いたか?…では選択しろ…私と共に灰と化すか…和平か…」

しん…と静まり返る部屋。
殺気に満ちていた村人達も、村長とスミスの間に漂う異様な雰囲気に飲まれたように
微動だにしない。

「…で………いけ…」

村長の乾いた唇から微かに漏れ出した声は形になっていない。
すぅっと一息、大きく深呼吸をした事で、村長の言葉がようやく形を成す。

「…出て行け!一秒でも早くこの村を去れ!!」

209 :唯彼独尊【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:45:44 ID:s5aQgiCe0
「…ご迷惑をおかけしました。僕達はゲレゲレを連れて村を出ます。」
「この…疫病神ども!二度と村に近付くでねえ!!」

―言われなくてもそのつもりだ。気分悪りぃ。
もし、どっかの魔王に『世界の半分をやる』って言われても、
この村だけは熨斗をつけて返品してやらあ。

「…みんな、行こう…」

額の傷口を押さえるサトチー。赤い鬣をしおれさせたゲレゲレ。
その背に乗るブラウン。怒り心頭のピエールの順で村長の小屋を後にする。

「…貴様等は…何度でも同じ事を繰り返すのだな…」

俺の前を歩いていたスミスが、村長の小屋を出る直前に呟いた。
ゆっくりと殺気立つ村人達へ向きなおり、濁った声を投げかける。

「…新たな流れを模索する道の中…堂々巡りを望むのならそれも良い…
 …独楽鼠のように永遠に同じ場所を回っていろ…」

―何を言ってるんだ?

「…行くぞイサミ…変化を拒む愚者にかける時間など無為だ…」
「お…おう。」

スミスの言葉。どんな意味があるんだろう?
聞いたところで曖昧にはぐらかされるか、俺には理解できないかだろうけど…
永遠に同じ流れ…新たな流れ…俺は大事なことを忘れている気がする。

誰も言葉を発しようとはしない。
ただ、それぞれの胸の内に悶々とした物が広がっているのが言葉以外で感じ取れて…

210 :唯彼独尊【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:51:32 ID:s5aQgiCe0
「みんな…辛い思いをさせてしまって…すまない。」

サトチーが静かに…口を開いた。
一番辛そうなのは、他の誰でもなくサトチーなのに。
その横ではゲレゲレが ぐぉん―と力なく喉を鳴らす。
ふさふさの尻尾を足の間に巻いて、叱られた犬のように目を伏せている。

「違うよ。ゲレゲレが悪いんじゃない…少しイタズラが過ぎたかもしれないけど、
 ゲレゲレも、あの村の人達も、もちろんみんなも、誰も悪くないんだよ。
 みんなに辛い思いをさせたのは僕の不甲斐なさだよね…」

サトチーがそのしおれた鬣の中にふわりと手を入れ、優しく撫でてやると
伏目がちだったゲレゲレがふにゃあと甘えた声を出した。

「サトチー様は我々を愚弄されるのですか?」

荷物を積み込んでいたピエールがその動きを止めた。
その声はいつもの忠臣ピエールの声ではなく、心なしか怒りの色を感じさせる。

「私にとっての誠はサトチー様に身命を賭してお仕えする事。
 サトチー様を否定する事は我々の誠を否定する事。それは即ち我々を否定する事。
 それが…サトチー様自身によるものだとしてもです。」

…なるほどねぇ。やっぱ、ピエールは忠臣だわ。
当のニブニブサトチーは真意がわからずに混乱してるみたいだ。

「いや…僕はそんなつもりで言ったんじゃあ…」
「さっき自分でピエールに言ったろ?自分自身を否定する事を今後一切禁じる。
 信念に従った行動を後悔する事…それも今後一切禁じる。
 部下に命令したことは自分でも守らねえとな。」

211 :唯彼独尊【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:55:23 ID:s5aQgiCe0
そこまで言ってやっと意味がわかったのか、サトチーの顔に笑みが戻った。

「言葉が過ぎました。申し訳ありません。」
「いや、ありがとう。ピエール。君達の信念を無碍にするわけにはいかないね…
 よし!そろそろ出発しよう。」
「じゃあ、とりあえず一回ポートセルミヘ戻るってことで良いのかな?」
「そうだね、ポートセルミを経由して次は西の街に向かおう。」

ぱちーん!と勢いよく自分の両頬を叩いたサトチーが馬車の手綱を握る。
西日が鋭角に差し込む獣道を走る馬車。
その足取りに迷いはない。







イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――

212 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 05:00:29 ID:s5aQgiCe0
第16話一気に投下完了です。

しばらくは鈍足投下が続きそうですが、じわじわ続けますので
どうぞ最後までお付き合いをお願いします。

213 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 08:11:14 ID:Wc2NRk6a0
復活おめ!
スミスの正体がますます気になるよ


もっと気になるのはDS版で追加される嫁候補?が追加されるかどうかだけどw

214 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 08:36:16 ID:R5xa6pBXO
だんだんと物語の核心が見えてきそうな展開だな、乙!!

そしてデボラは頼むからピピンとかと同じサブキャラであってくれ…

215 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 09:56:31 ID:U9HjnaXp0
乙です!

DS版も気になるところだが、GEMAさんには
GEMAさんの物語を書いてもらいたいです

216 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 01:07:39 ID:vIMp/EhH0
カボチ村の連中、相変わらず胸糞悪いですね。
それにしても、スミスの一言で態度が変わる村長。そして、スミスの言葉。
なにかスミスとこの村の間には因縁がありそうですね。
今後の展開が楽しみです。

217 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 07:57:30 ID:fv0POayzO
>>216
メガンテの腕輪をつけてるスミスを攻撃するとですね、腕輪がドカーンで
村人総砕けちりなわけですよ…

218 :お呼び出し:2008/07/06(日) 12:13:05 ID:u6X93chk0
携帯まとめ人より職人様のお呼び出しを申し上げます。

>暇潰し様
テキスト掲載についてご相談があります。
下記「避難所、まとめサイトについて」までお越しください。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/24-27

219 :ラーミア復活!?1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:36:04 ID:VeYPADAv0
アリアハンから出港してはや10日。日に日に肌寒くなっている。
どうやらそのラーミアとやらが封印されている場所は俺の世界で言う北極とか南極とかそんな感じの場所らしい。
まあそれはいいんだよ。今更どんな僻地に行こうがビビッたりはしねえし。ただ問題が一つ

総長さん!あなたはメラやイオ系の呪文の威力には目を見張る所があるわ。
ただヒャド系の呪文に関してはまだまだ修行が足りないわね。大自然の雪と氷を肌で感じる事は
きっとあなたの魔力を飛躍的に伸ばすきっかけになるわ!バシバシいくわよ!

……帰りてえ……


さらに10日ほど航海したのちようやく目的の大陸に着いた。
寒いなんてもんじゃねえ。ねーちゃんが酒を買い込んだ理由がわかったぜ。
パンツと俺は樽を一つずつ担ぐと雪の積もった氷の大地に踏み込んだ。

見渡す限り銀色の世界。
太陽の反射に目が眩む。


さて。どうしたものだろうか。着いたはいいがここからどう進んでいいのかさっぱりだ。
この状況からして遭難=死あるのみ。今は晴れているがいつ吹雪くともわからない。

私にまかせて。


ねーちゃんがそう呟く。………………。しばらく精神を集中させたと思うとスッと指を指した。

220 :ラーミア復活!?2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:37:25 ID:VeYPADAv0
あっちの方に強力な霊場があるわ。おそらくそこにラーミアが封印されているはずよ。

ほうほう心眼って奴ですかい。さすがだ。よしこれで迷う事は無さそうだ。
ねーちゃんの指示のもと俺達は歩き出した。


と、突然轟音と共に地面が盛り上る。

敵だ!おまえら構えろッ!

目の前には氷のデカブツと雲の塊が数匹ずつ。フヘへへ。顔がにやける。

ちょっと!総長ちゃんなんでそんな嬉しそうなのよ!

勇者が叫ぶ。当然だ。船の上の戦闘では海上への呪文による遠距離攻撃が多くろくに剣を振るえなかった。
しかしここならこの超強力な新相棒を思う存分振り回せる!
勇者とねーちゃんは雲を魔法で頼む!俺とパンツはあのデカブツをカキ氷にしてやるぜ!

いくぜゴルァアアアアアアア!!!!!!!!

敵の中心に向かって突撃だ。

ッしゃああああおらああああぁぁぁぁァ!!!!!

全身全霊を込めてはかいのつるぎを振り下ろす。








221 :ラーミア復活!?3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:39:09 ID:VeYPADAv0




一撃。





一撃で5mはあろう氷の塊がバラバラになった。
なんだろうこの感覚は。このはかいのつるぎもそう、じごくのよろいもそう、ふこうのかぶともそうだ。
身に着けるとそれだけで全身の筋力が強化されたような、そんな錯覚に陥る。
実際腕力は格段に上がっている。

総長殿!後ろですぞ!

おっさんの声と同時に背中に強烈な衝撃を感じる。吹っ飛ぶ俺。
大丈夫!?と勇者とねーちゃんが駆け寄った。

………?

何事も無く立ち上がる。まあ確かに痛いは痛いのだがあのインパクトにしては
ダメージが残って無い。……こいつは凄いぜ…。

どっしゃあああああアアああ!!!!

奇声と共に残りの氷の塊をパンツが砕いていた。こいつのまじんのおのとやらも半端無い。

凄い…。二人とももう人間の域じゃないわ…。


222 :ラーミア復活!?4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:40:28 ID:VeYPADAv0
ねーちゃんが息をのむ。
残りの雲を勇者が焼き払う。
うん、今更だが俺達は確実に強くなっている。
ここまで色んな事があった。本当に色んな事があった。

………いくぞ!

ラーミアを復活させたら俺の野望もいよいよクライマックスだ。




ねーちゃんのおかげで迷う事なくラーミアとやらが封印されている祠についた。
まったく霊感みたいなものが無い俺ですら何となくビリビリくる。
こいつは確かに凄い場所…のような気がする。

扉は軽く触れるだけで開いた。

一本道なのでとにかく奥に進む。広い部屋に出る。


おおおおおおおおおおぉおぉォオォ!!!!!


目の前にはバカデカイ卵がある。かろうじて全体像で卵だと認識できるが
もはや卵ってレベルじゃねえ。

一目散にダッシュで近づいてみる。………。俺は俺の中に沸き起こる衝動を必死に抑えた。
叩きたい。思いっきり叩いてみたい。こんなデカイ卵なんて割ってみたいだろうがチクショウが…
誰も見てないのを確認するとちょっとだけ剣で叩いてみた。
鈍い金属音が鳴ったが傷一つついていない。
ゴクリ…さすがは伝説の卵だぜ…

223 :ラーミア復活!?5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:41:36 ID:VeYPADAv0
何気に隣を見ると俺以上にヤバイ目つきの男がいる。パンツだ。
総長…この卵だと目玉焼き何個作れるでやんすかね…
いやでどんだけかくても卵一個なら目玉焼きも一個しかできねーだろこいつは本当にどうしようもない馬鹿だな
なんて思ってる間にパンツは目いっぱい振りかぶるとフルパワーでまじんのおのを振り下ろした。

かいしんのいちげき!

ガキィィィィイイインと轟音が響く。が、やはり卵には傷一つ無い。
こいつがすげーぜ!さすが神龍の卵だ。俺たちごときの攻撃など屁でも無い。
期待できる!でき過ぎる!さあとっとと復活させようじゃないか!

…………コラ……

今まで聞いた事の無いドスの聞いた声がする。
凄まじい殺気だ。振り返るとそこには外の吹雪よりも冷たい目をしたねーちゃんがいた。

で、あなたたちは何をしてるの?

いや何って言われても…。ちょっとした破壊衝動に駆られただけで…


このものからは
このものからは

何か不思議な邪気を感じます
何か不思議な邪気を感じます

本当にあなた方は
本当にあなた方は

選ばれしものたちなのでしょうか
選ばれしものたちなのでしょうか

224 :ラーミア復活!?6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:52:11 ID:VeYPADAv0
急にステレオで謎の声が聞こえる。
よく見ると勇者の両肩に人形サイズの女の子乗っている。
なんだなんだてめーらどっから沸いてきやがった?

目の前にいたよ!総長ちゃんが無視して走って行っちゃったんでしょ!
と勇者が言う。しらねーよこんなチビ視界に入るかっちゅーの。


ラーミアは神の使い

ラーミアは神の化身

人間程度の力では 傷つける事など できません


くっ…ドちび助の癖に何を偉そうに…
傷つける事などできませんだあ?燃えるぜバカヤロウ!

…やめなさい

ねーちゃんに凄まれてしぶしぶと下がるパンツと俺。
部屋のはじっこに追いやられて復活の儀式とやらを見守る事になった。

勇者とねーちゃんとおっさんが部屋に卵を中心として均等間隔で配置してある祭壇にオーブを置いていく。
全部置き終わった所でさっきのちび二匹が卵の前で光り始めた。


さあ いのりましょう
さあ いのりましょう

時は きたれり  今こそ 再び 目覚める時。
大空は おまえのもの  まいあがれ 空高く!

225 :ラーミア復活!?7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:53:05 ID:VeYPADAv0
ピキッ…!

おお…!あれだけ硬かった卵にあっさりとヒビが入る。

ヒビは次第に広がってゆき亀裂から光が漏れる。





………ゴクリ…。




そしてついに殻中に亀裂が入ると一気にこそげ落ち破片は消えてしまった。

中心にはまばゆい光の塊がある。

その光が徐々に収まっていくと共に中の物体がうっすら見えてくる。




ピッ…ピィィィィイイ!!!!!!!!ピィ!!

226 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:54:00 ID:VeYPADAv0
今日はここまでです
まとめの方いつもありがとうございます!

227 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 10:19:50 ID:/IttdIy10
乙であります

228 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 15:59:29 ID:SzSyDQw30
おお、ついにラーミア復活。
卵相手に会心の一撃、和良た(wwww


229 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 16:12:54 ID:p0NBb7Ql0
人形サイズの女の子
…小美人か!!

230 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 17:44:25 ID:jr4TF+vqO
このパーティはどう考えても世界救うために旅してるようには見えないだろ…
総長パンツ的に考えて…

231 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 20:22:30 ID:P2FQgwbXO
総長今回も乙
人形サイズの女の子ってモスラのあれかよwww

232 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 17:14:41 ID:TOFTVcGP0
hosyu

233 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/13(日) 12:37:04 ID:9XWP3i5gO
保守
勇者は俺の嫁
勇者母は俺の義母

234 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/14(月) 06:53:05 ID:QmHnM3BpO
勇者祖父は?

235 : ◆Tz30R5o5VI :2008/07/15(火) 15:43:58 ID:vwXT79x+O
保守といこうか

236 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/17(木) 08:20:06 ID:+vNDXoQRO
ほっしゅるぅ〜

237 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/18(金) 22:06:30 ID:wRFq03eE0
hosyu

238 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:25:55 ID:a76HweYx0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(2)


「とまあボヤいてみたけど品種改良とかやってみたら面白いと思うんだけどな」
コシヒカリとか見てみろ、ありゃもう農家と偉い学者さんの血のにじむような努力の結晶だ。
時間こそ長くかかるが凡人でもやっていける道のりだ。
その間に何度か世代交換があるがその辺は勇者パワーで何とか。
現代に戻るのが無理ぽいなら田畑耕すしかない、この辺を見ればまだ開拓できる土地は有り余ってるし。
つーか、人類未踏の地のほうが多い気がするんだがそこんとこどうよ。
「ぶっちゃけ魔王が居る害ってのが理解できねーしなあ」
飯さえくってりゃ体力無限大だし、幾らでも仕事をこなせるぞ俺、そのためには種モミをかっさらってくる必要があるが……。
しかしモヒカンやろうにも敵は厖大、人類の敵は人類とネルフの偉い人も言ったわけで。
ヤツら魔物にはビビるくせに勇者には冷たいもので、完全に舐められてるぜ。
「あの勢いで魔王のとこまで攻めいりゃ今頃人の世が戻っていたろうに」
まああそこまで軍隊を派兵しようと思ったら兵站が破綻するだろうが……。
中世クラスの、しかも底辺っぽい感じの農業力では辿り着く前に朽ち果てる予感。
「略奪が基本だろこの時代、各自食糧装備集めろじゃ士気最悪の国力ガタ落ちだろうな」
徴兵で主な働き手分捕ったら国傾く、いや余裕で瓦解する。
先にも言ったが品種改良という概念が存在しないし、農業科学も発展していない。
ぶっちゃけ中世と言ったが古代級の生産能力だ、しかもこの大陸は旅の扉まで封鎖しているから物流がない。
定期船は存在するが魔物の襲撃を恐れて大規模な艦隊を組んでるわけでもなし。
「慢性的な飢餓と厭戦感、それに社会不安と鬱憤が溜まれば勇者が希望になるわけか」
四人ほどのパーティーなら動かす余裕があるってことだな、だからこそ俺の裏切りは相当堪えたってことだ。
「海渡れないだろうか、エルフに眠らされたあの村なら人一人隠れて住めそうなんだが……」
呪いを恐れ人も立ち寄らないし荒廃しているとはいえ雨露を凌ぐ屋根に道具が手つかずで残ってるはず。


239 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:27:29 ID:a76HweYx0
何となく思ったんだが。

「魔王の目的は『恐怖』なんじゃねえかなあ……いや、もしくはどうしようもない絶望か」
もしくは緩やかな人類の衰退だな、魔王ってシロモノは相当イイ趣味をしているようだ。
「どう考えてもドSに違いない、絶対どこからか俺のこと監視してニヤニヤ笑ってるんだぜバラモスとゾーマの野郎」
そう考えると腸が煮えりそうになるが我慢我慢、こんなところで叫んで木をぶん殴ったら魔物に気づかれる。
俺にとって恐ろしいのは大量のモンスターの襲撃だ、数が多かったらどうしようもない。
幸いにもこの辺の分布を考えればさほど強いのは居ないが昔のエロい人は言った、戦争は数の暴力であると。
未完のビジュアルクイーン……じゃなくて、決戦兵器である俺には微妙すぎる。
広域戦闘魔法でも使えるようになれば「HAHAHAHAHAHA、今までの恨み晴らすべし!!」とでも笑いながら間引きを行うんだけど。
「国王のおっさん土下座して謝って許してくれないだろうか、せめて専門教育だけでもやってくれないとマズい」

なあんて一人トリップ天国に陥ってると何やら悲鳴。
あー、俺バカだは、こんなにも森がざわめいているのに――

「自分の殻に閉じこもって気付かなかった」
己の勘が警鐘を鳴らす、本格的に危険なシグナル、そして俺は聞いてしまった。
人の悲鳴、どうしようもなく絶望的な悲鳴、魂の底からひねり出す悲鳴、人生の末期、ただいちどだけ許された絶叫を。
現代人が失ったのは思いやりの心だとか、だけれども、俺のそばで、今、失われる命があるということは、絶対に、許容、できない。
次の瞬間には俺は風になっていた。
それは暴風だった。勇者とは即ち勇気あるもの、それは自らに向けるに非ず、それはどうしようもなく放射線状に内側から外側に伸びる力。
だからこその勇者、そのためのブレイブ・ハート。最後の武器は自分の勇気ってこと、それは決してケミカルではない。

単眼の巨人が居た。
その足元にはよく分からないが人の影がある。
正体がバレるなんてことはそのとき全く考えもしなかった。
だからこそその勇気はどうしようもなく本物で、怒りの鉄拳が空気の弾ける音ともに放たれた。

240 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:29:00 ID:a76HweYx0
(3)に続く

ひたすら短い。
というよりもブランクがありすぎてどこまで書いたか記憶にございません。

241 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/21(月) 12:29:49 ID:kVg5M2aD0
キタ━━━ヽ( ゚∀)人(∀゚ )人( ゚∀)人(∀゚ )ノ━━━ !!!
待ってました!

正直めちゃめちゃおもしろい。
言葉の選択がシャープで重くて、いい意味でゾクゾクします。
ゆっくりでいいのでぜひ続けてください。次回も楽しみにしています!


しかし……主人公のバイタリティ半端ないですね。
この極限状態でよくまあこんなクールに考察できるなぁ。
ちょっと方向性は違うと思いますが、村上龍の5分後の世界を思い出しました。

242 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/22(火) 01:40:10 ID:ZQZp1qVIO
保守

243 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/23(水) 08:47:00 ID:V5DaLLXi0
保守

244 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:27:47 ID:LijMPjN30
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(3)

全てのモンスターに言えることだが一目見ただけで理解した。
あれこそがただ暴力に特化した存在であると、その中でも目前の敵はその更に上を行くことを。
軽く見積もって3m、笑えるまでに逆三角形とそれでぶん殴られたらスイカみたいに弾け跳びそうな棍棒。
俺の鉄拳クリティカルヒットしたはずなのにびくともしない絶対装甲に涙しそう。
あれは無理だ、レベル差が激しすぎる。
「棍棒?嘘だ!!それ電柱だろ常識的に考えて」
風を切る音とともに俺のすぐ横に強烈な音ともに地面が爆散する。
曖昧3cm、人が見ていなかったら漏らしてたぞ多分。
幸い、突然の介入者によってモンスターの意識が削がれたのか悲鳴を上げた人物は無事だった。
ここで俺は落胆した、どうみても気絶したジジィですありがとうございました。
「ちくしょう、ここは美人の姉ちゃんのフラグが立つところだろ、この世界は優しくない!!」
知能が低いとは言え戦闘種族、あまりにも的格な攻撃に怯みながら避ける、避ける、避ける。
この優しくない世界で俺はひたすら逃げまくったせいかレベルアップ時にすばやさだけ極端に上がったようだ。
少なくともあんな大雑把な攻撃当たってたまるものですか!!

245 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:28:23 ID:LijMPjN30
軽いことは軽いが追撃がヤバイ、あの体型でありながら愚鈍とは言い難い。
多少地形的に有利であるが何あのブルドーザー、木々へし折って走ってやんの。
後ろを振り返り、何とも言えない形相で追跡を行うモンスターを見る。
「どう考えても弱点はあの目だろうな、あそこだけが筋肉に覆われていないんだし」
石でも拾って投げつければ若干足が止まるかもしれない……が、ピッチャー返しが一番恐ろしい。
あの筋肉で勇者の投げた石が返されたら力積的に考えてどうなの、俺死ぬの?体に穴空くの?
木々の枝をつたいながら忍者気分、こっちがあちらに優位なのって結局機動力だけなんだよね。
しかも石を回収するには下に降りなければならない、となるとヤツの棍棒の攻撃圏内に入るってことだ。
「却下だ、却下、無理ゲーすぎて困る、そんな上手くいくわけがない」
俺にとって最良の選択肢はアレに見つからないこと、でなければ詰む。
この勝負始まる前から勝敗が決していてガチハードモード、つか息が切れそうなんだけど。
なぜアリアハン周辺であんな高レベルモンスターが居るんだ?
ルーラが使えるほど知能があるとは思えないし、かと言ってあんな存在は見たことがない。
というよりも、強力なモンスターの発生はスライムやおおがらす、いっかくうさぎにとっても脅威になるわけで。
モンスターの世界も弱肉強食、共食いなんてざらですよ。
つーか種の根源的に考えて共食いよりもまず自分より立場の低いものから食うわけだろ?
なのにモンスターはわんさか居る、雑魚モンスターすら駆逐できない人類があんなバケモノを間引くなんてことはありえない。
「となると、外来種である可能性が高い、誰が持ち込んだんだよあのバケモノ」
うすら寒い、待てよ、そもそもアレはこの世界に存在して良いものか?
記憶が曖昧だから不確かだが、そもそもVには……

246 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:29:41 ID:LijMPjN30
「あぶねっ!!」

爆裂音と共に足元が揺らいだ、雑念俺殺すとか洒落にならない。
逃走時に余計なことは考えたららめー。
しかし、じり貧すぎて困る。装備が布の服って時点でファンタジー舐めてるけど誰か剣プリーズ。
ナイフでもあれば一方通行ブーメランでも作って装備するんだが。
あー、そういやジジィ泡吹いて痙攣しててキメェ。

「おーい、じじー起きろー死ぬぞー、足あるんなら走れー」
まあ、腰抜かして気絶するようなジジィに走れというほうが酷だが。
ぶっちゃけ起きてくれたらうれしい、惚れるとか惚れないとかそんな問題は抜きで。
気絶した人間は重心が安定しないというか、なんというか、こう、違う。
ぐにゃってるわりには硬いし持ちにくい、質量的には俺のほうが小さいわけで、何この10歳児。

「町でも逃げ込んで衛兵やら傭兵を引きずりだすか、却下だな、国家転覆ーとか言って打ち首にされかねん:

そもそも装備の関係上アレに対抗するべき手段がない。
アリアハンは恵まれている、モンスターの驚異度という点で見れば。
銅の剣さえあれば訓練を積んだ兵士なら倒せる敵しか発生しないからだ。
だから……強力な武器が流通しない、王は魔物も恐れるが――

247 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:30:14 ID:LijMPjN30
人間も恐れる

過度の装備はそれだけ王政を脅かす、魔法使いの反乱を抑えられなかったのも理由の一つにあがる。
反乱、というが実質的に考えれば革命だ、まだ人間の世の頃、平和を享受している時、革命が起りかけた。
この平和な世界に王は必要ない、むしろ重税を課す王は悪であると。
魔法使いとはすなわち貴族や僧を除けば限られた有識者だ、人による人の支配の否定を行おうとしたのだ。
それがどれだけこの世界に激震を与えただろうか、支配階級にとってその特権を失うことは一番恐ろしいことだ。
はっきりと言えば死よりも恐ろしい、だからこそ驚異度の低い地方では武器の持ち込み制限がある。
身を護るのは当たり前のことで武器は比較的手に入りやすい、これを取り上げては不満は募る。
しかし、それが度を過ぎるのはよくないと考えた。
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

「って、またトリップしちまったじゃないか、思考トラップはマズい」
その罠を自分で仕掛けたとあってはお話にならないとも言う。

「う、うぅぅ……」
胸元でうめき声がした。
あージジィもう少しで覚醒ですか?いまどき眠り姫なんて流行んないからさっさと起きろと。

248 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:33:38 ID:LijMPjN30
(4)に続く

>>244
ジジィを背負い、走り出す十の夜。
>>245
と合間に入るはずだった一行が抜けてしまった
あってもなくてもいいけど今書くとほんとマヌケすぎる


249 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/24(木) 02:54:22 ID:72C7D6Iu0
ぅぅうお乙うぅぅっ!!!!!!!!!!
なんでアリアハンにザ・痛恨の一撃がwww

しかもシビアな世界観!
続きにwktk〜。ジジィはよ起きろw

250 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/26(土) 19:04:13 ID:MMxMhX3C0
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

置き換え→

特例を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは道具として使用すれ半永久的にば魔法を行使することできる魔法使いたちの残した最高の置き土産、その所持は極刑に値する。
魔法とは生物の内部エネルギーたる魔力を燃焼しこの世界に働きかけ、特異な物理現象を引き起こす。
エンチャント装備はその法則を覆し、魔法を使えないものたちとの垣根を破壊する。
もっとも、それらを造るには遺失技術と希少価値の高い物質が必要らしいが……。

251 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/27(日) 21:22:12 ID:19XMLoHl0
保守

252 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/29(火) 20:53:45 ID:1b0a57bp0
保守

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/07/31(木) 21:00:29 ID:9iXv/60m0
保守

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/01(金) 21:13:12 ID:X+irc61o0
保守

255 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:32:40 ID:RRdQs5Dp0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(4)

おめめをパチクリ、とろーんとした目をしたジジィの体に徐々に力が入る。
いや、それはあまりにも急速に引き締まる筋肉、まるでロボットみたいな動きで開こうとした口を俺は押さえつけた。
「むぐぇあぃ……」
声ならぬ声、さすがに耳元で絶叫されるのは御免こうむる。
「ジジィよく聞け、今あのバケモノから逃走中おk?」
そう言ってジジィの顔を下の方へと向けてやる。俺達は今山上を目指して木々の枝を渡っていた。
その後ろには道ができていた。無論、あの巨人が整地としかいいようのない走りで拓いたものだ。
未だ俺はあのバケモノを巻くことができていなかった。硬直するジジィに俺は優しく声をかける。
「ひとまず深呼吸だ深呼吸、ひっひっ、ふー」
何か間違ってそうな気もするが、それにならってジジィも一呼吸、ここで若干の冷静さを取り戻したのか表情が変わった。
「お主、なぜワシを助けた?」
助けるのに理由は要るか?と俺は返し、そろそろ脚がヤバそうだと思った。
ここまでは50m走の速度でかるくマラソンやってるわけだ、たとえ勇者とは言え乳酸は溜まる。
むしろこれはやせ我慢だ、男の子にはやらなきゃいけない時はあるが、もう限界かも知れない。
畜生、アイツは何で疲れないんだよ、粘着質なのは嫌われるぜ……とため息をついた。
「気づいちまったんだからしょうがないだろ、常識的に考えて」
何か変なものを見る目の老人いっちょ出来上がりってか。
「あのなー、ジジィよ、悲鳴上げてるの無視できるほど俺冷血じゃないんだは、最近人にも餓えてたしな」
まあ普通はあそこで介入するべきではなかったとは思うが、それに話し相手が欲しいってのは割と切実。
もう何日も人と会話を交わした記憶がない、人間に必要なのはコミュニケーションだ、単独で成立しねーよ、会話は。
この世界に飛ばされて何度も気が狂いそうになったが今こうしていられるのは勇者の心があるからだ。
勇者は単独行動を行うことが多々あるため精神的な加護は一般人よりも多い。

256 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:33:25 ID:RRdQs5Dp0
けれども――それには限界がある。

人は結局のところ独りでは生きてはいけないのだ。
「そんな理由でワシを助けただと?」
やはり半信半疑のジジィ、それ以外に何が理由だってんだ。むしろ俺が聞きたい。
「まあ、悠長に会話してる場合じゃないんだが……下ヤベーことになってんし、ジジィ、一瞬で良いからアイツに隙作れないか?」
半ば諦め気味に俺はジジィに言った。そんなことができるなら苦労はしないってのに。
「ううむ……少し寝たから魔力には余裕はあるが……閃光を数秒間出すぐらいしかできんぞ」

魔力!?

「魔法使いだったのかジジィ!?」
なら何でアイツから逃げ切れない!?いや、アイツが規格外ってのは分かるが逃走ぐらいなら何とかできるだろう!!
「いや、アレは倒さねばならん……我が集落はアレによって潰され、あの脅威を取り除かねばこの国が滅ぶ……」
それはきっと比喩ではないだろう、合点がいった、ジジィの悲鳴は魔力が底をつき、打つ手がなくなった最後の絶望だったのだろう。
「おーけ、サクッと俺の言うタイミングで魔法を使ってくれ、その一瞬を突く」
うむ、と頷くジジィ、どうやら恐怖の色が若干薄れたのか血色がよくなってきた。もう、後がないという達観なのかもしれないが。

257 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:34:46 ID:RRdQs5Dp0
「よしっ……今だ!!」

速度を早めトップスピードに乗り、木から飛び降りジジィを単眼の巨人へと向ける。
何やら呟きがジジィの口元から漏れるのを塞いだ目越しに聞く、そして魔法が成った。
さすがに薄暗い森の中の中で光を喰らったアイツは怯み、その瞬間待ち望んだ隙が生まれた。
迷うことは何もない、残された力を全て振り絞り、眼に拳を目指す。
全身のバネを使い、飛び上りながらのアッパー、ジジィは邪魔になるのでその辺に落とした。
魔物より早い悲鳴と、抗議の声が聞こえるがそれを軽く流し、突き上げる。

直撃――硬い感触が拳に伝わる――拳の砕ける感覚と奥へと確かに陥没する眼球――そのままクリティカルヒットで突き上げる。

声にならない悲鳴が上がった。己の眼球によって破壊された頭蓋骨が脳をそのまま粉砕する。
破片が基幹に突き刺さり、さらには全身を司る機能を犯す、が……


ここで誤算が起きた。

脳が砕けたというのに、剛腕が俺の身体を薙ぎ払った。それと同時に俺の意識が刈り取られ、死が身体に貫く。
最後の思考はモンスターを侮りすぎた、ということだろう、脊髄にプログラムされた基本動作を嘗めていた。
遠いジジィの声、ああ、俺は最後の最後で勇者に――

258 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:36:31 ID:RRdQs5Dp0
(5)に続く

今回も微妙回、書きたいことが余り書けなかった
戦闘シーンが凄く淡泊です・・・

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 07:02:08 ID:0HKL3vfn0
かっこいいよ。その勇気ある行動、勇者に値するよ。
でも、運命はいかに・・・。続きが気になる終わり方だなぁ(wwwwwww

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 10:41:00 ID:LbaCZqnq0
ちょwwwww
最初はメルヘンなヘタレDQNだと思ってたのに!
ヤバイ惚れるマジパネェっすかっけーwwうぇwww


ふう……。いやいや、本当にすごいです。
>「〜最近人にも餓えてたしな」
特にこのセリフが秀逸。これまでの過酷な状況が凝縮されてる気がする。
相手の事情を察せられる賢さだけじゃ抑えきれない負の感情もあるだろうに……。
この主人公、本当の意味で強い。

続きを心から楽しみにしてます。

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/05(火) 20:47:32 ID:iE2laiW50
保守

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 03:52:55 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに%

263 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:53:49 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに開いた俺の前にジジィが立っていた。
「あ」
ジジィ?ああ、ジジィ……。
「ああ!!俺の助けたジジィか!?すると俺生きてるんだな!?ふー、ビビったぜほんと
あんときゃ絶対死んだと思ったのに、あー勇者パワーすげー、普通死ぬはあのパンチ。
痛恨の一撃だったからな、ほんと、まあ何はともあれ二人生き残って良かったぜほんと」
一気にしゃべり終え、俺は大きくため息をついた。そりゃ人間だもの、ビビることは多い。
「貴様は一度死んだよ、よりにもよってワシを助けたのは王家の狗とは……」
そう言って俺の睨みつけたジジィの目は敵意の色に染まっていた。
あーよくよく見てみると俺拘束されてんじゃん、しかもどう力を入れても抜け出せないような方法で。
「勇者とは言え脊髄にストッパーをかけては動けまい、貴様の命は我ら未登録の魔法使いの排除か?」
魔法が使えないことは分かっているよ、と歪な笑いでジジィは言った。
魔法が使えるなら発声機能なんて残すわけがないといったような様だ。
「ちげーよ、王家?そんなファッキン野郎に俺は放逐されたんだよ、風の噂で聞いてないか?ジジィ」
諸王連合に“よる”勇者の資格を俺は失った、“神授として”の資格は残っているみたいだが。
「ふむ、それが真実と言えるのか貴様は……あの狡猾な者共がワシらを罠にかけようとしてないとどう証明できる」
どうしようもなく疑心暗鬼、駄目だ、完全に聞く耳をもってくれそうにない。
「信じてくれとは言わない……なあ、俺何で生きてるんだ?死んだ、って言ったよな?」

264 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:55:34 ID:zcKbyfKf0
それぐらいは教えてやってもいいだろう、そうジジィは言った。

「貴様は確かに死んだ、瀕死の魔物の放つ強力な一撃によって挽肉のように飛び散った」
新幹線に衝突したような感じだったし、ありえなくはないが、ミンチ?悪い冗談だろ……。
「それなのに貴様は生き返った、生命の法則を完全に無視してな。
 認めよう、貴様は真に勇者のようだな、棺桶がどこからともなく落ちてきた……あれこそが天に祝福された証拠だろう。
 絶対的な死から至極安全な地へと勇者をいざなう神の魔法、神?そん者をワシは認めたくはないがアレを前に認めざるをえん。
 開かれた棺桶に肉片が収束したかと思うと一瞬、それが消えた。
 次の瞬間にはワシの目の前に戻っておったがな、唖然とするワシの前で柩はかき消え貴様の姿だけが残った。
 神官共の使うザオリクとは一線を課す、そうしてワシは思い出したのだ、あの常識外の力を。
 そんな特権が許されるのは人の共同幻想“勇者”のみであると、忌々しい、そんなものがあるから王たちの愚かさが治らんのだ」
間を入れず、早口でジジィは喋った、それを認めてたまるかと、そんな勢いで。
つーか、俺だって腹が立つ、何でこの世界で生かす、俺の世界に戻せとあれほど。
「ワシには貴様を殺すことは出来ぬだろう」
ズキリ、とその言葉が胸の奥に突き刺さる、久々に会った人間の言葉にしては残酷すぎる。
ああ、残酷、途方にくれるぐらいに。この世界はなかなか俺に甘くないようだ。
「なあ、勇者ってそんなに嫌われるものなのか?」
多分、その声は震えていて、泣きそうな声だった。
俺だってたまには泣きたくなることがあるのだ。
「好き、嫌いではない。力を持たぬ者と勇者では歩む道が違いすぎる……それも王の側につくとあるなら憎しみしかない。
 貴様が生まれてからどれだけの民草が重荷を背負ったか、勇者を養うということはそれだけで重税を課す理由になる。
 王は勇者を縛るためにありとあらゆるものを与える、いつか自らの脅威となるものを排除させるためにな。
 民も例外ではない、王に害をもたらす者は勇者をもって排除する、それは決して少ない話ではないだよ坊主」

265 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:58:12 ID:zcKbyfKf0
(6)に続く
何か書き込みエラーが起きてageてしまって申し訳ない
そして毎度のことだけれど話が短い・・・
分割して頻繁に書き込んでないとモチベーションを維持できないんでそのへんはよろしく

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 11:40:46 ID:sq1UWByv0
乙!
まさかの忌避される勇者!
ジジィが黒っぽくみえたと思ったら、巷に響く黒勇者の設定は面白いかも

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/08(金) 20:51:11 ID:fTYg0R3O0
ほしゅ

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/10(日) 08:31:40 ID:nczLtTID0
保守

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/13(水) 04:34:04 ID:2ox/bl190
保守・・・したほうがいいかな?

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/14(木) 20:42:57 ID:jB3Prsrb0
ほしゅ

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/17(日) 13:55:20 ID:GFezJg8i0
保守


272 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:02:31 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(6)

だが……とジジィは若干表情を崩して言葉を続けた。
「あの魔物を倒してくれたことは感謝する、ワシにはどうすることもできなかったからな。
 そして、坊主があの瞬間死んだお陰でワシと坊主に還元されるはずだった力がワシだけに注ぎ込まれた」
お主、貴様、坊主、俺に対する呼称が転々とし、言葉を切った。
あー、つまり、俺に入るはずだった経験値が……。
「今になって精神と身体を拡張することになるとは、うむ、喜ばしいことだ。
 ああ、そう、これは坊主に対する妬みと奴当たりだよ、ワシは衰える肉体を抑えきれず今回の出来事を起こした。
 贖罪、というべきか、ワシは死ぬよ、魔法使いの里は滅んだ、あの魔物を呼びだしたおかげでねな」
自分語りが激しいなジジィ、何で、何でそんな遠い目してんだよ。
「ルーラとは即ち、点と点を結び移動する魔法、通常は巨大な都市に目印を刻んで行うべき危険な魔法。
 なぜルーラは空間移動魔法であるのに一度宙を舞うと思う?」
そんなものは簡単だ、地上で展開すれば根こそぎ質量を動かすことになる。
都市にマーカーをするのも、空高くに現れるのも……。
「物質と物質が同軸上に存在する場合、最悪の被害が巻き起こる、そして、ルーラは何もこの世界にだけ作用する魔法ではない」
薄々とは感じた、そうだ、アレがこの世界に存在してはいけないのだ。
誰が持ち込んだ、目の前のジジィだ、どうやって?ルーラで。
「別概念の魔法知識をこちら側に持ち込もうとした結果があの大惨事、もはやワシが残すべき言葉はない」
年相応の、枯れた声だった。どうしようもなく生きる気力がなく、死以外のことをもはや見るすべを知らない。
ああっ、俺は、なぜこんなに淡々としているんだろうか。
裏切られたから?いや、そもそも信頼関係を築いていない、何なのだろうか、この感情は。
人が死ぬのは見たくない、見たくないのだが、目の前のジジィを救う方法が見当たらない。

勇者はこんなに脆いものなのか。

精神強化、肉体強化、どんなに強くなっても心に亀裂が入ってしまえば決壊してしまう。
ひねり出すように俺が漏らした言葉は貧弱だった。
「なあ、ジジィ……死ぬぐらいだったら、俺に魔法を、授けてはくれないか?
 俺は世界を救う存在なんだと思う、アンタを救うことはできなくても」

273 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:04:29 ID:J6dqgDuA0
間幕

どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。

274 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:09:51 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話 END
NEXT すりりんぐぶれいぶはーと・第二話

本来(5)と(6)は一緒に書き込むべきだったんだろうけどそんな気力がなかった
間幕は多分、区切りごとの更新になると思われ
今更DSのDQ5をプレイしてて書き込みが遅れ気味なのはどうしたものか
このまま行くと完結は何年後だろう

とりあえずカジノのハイアンドローはすりりんぐでぶれいぶはーとが必要だと思う
あとエースが来た時嬉々としてロウ!と言ったらジョーカーとかやめて

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/19(火) 22:40:11 ID:IpUNNQdB0
やっと規制明け!

>>274
乙!
ルーラにそんな秘密が!ルラムーン草がいるわけだなぁ

ハイ&ローでエースにジョーカーが来たこと過去に2回あるw
この理不尽さはなんともいえないw

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/23(土) 08:39:37 ID:+P1gBsP+0
えとえと、保守いたしますわね・・・。

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/24(日) 21:58:55 ID:OqysLa4mO


278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/25(月) 22:23:42 ID:VxMKHtMTO
干し

279 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:20:14 ID:JqDt5M4C0
幕間の短編一話のみですが投下します。
ちょっと時期が遅くなりましたが、イサミの世界の行事ネタです。

280 :番外編 at 一週間遅れ ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:25:55 ID:JqDt5M4C0
「イサミ殿、野菜に棒きれなど刺して…食べ物で遊ぶとサトチー様に叱られますぞ。」
「遊んでるわけじゃねえよ。これは『お盆』って、俺の世界の伝統行事。
 一年に一回だけ先祖に会える日でさ。野菜の馬と牛を飾って先祖を迎えるんだよ。」
「故人を召喚する降霊儀式のようなものですな。いや、死霊を使役する術式とは…
 そのような難解な呪法を容易に操るとは、イサミ殿の世界の住人も侮れませんな。」
「…死霊の召喚儀式とは禍々しい…それなりの代償は覚悟しているのであろうな…」
「なんか…勘違いしてねえか?特にスミス。お前が言うとシャレになんねえ。」
「…なぜ私だけ名指しでツッ込まれるのだ…」
「これは、そんなヤバい行事じゃなくってさぁ。死んだ後でも会いたい大事な人と、
 一年に一回だけでも近くで過ごせるようにって…そんな祭りなんだよ。」
「なるほど、そう言われるとこの妙な儀式にも人の温かみを感じられますな。」
「…ふむ…儀式の思惑には納得したが…イサミにも今一度会いたい故人がいるのか?」
「ん?…あぁ、今回は俺の先祖の為にコレを作ったわけじゃないんだ。」
「はて?では、何の為に?」
「まぁ、もう夜も遅いし寝とこうや。あとはコレを飾っておしまいだからさ。」
「う〜む…異世界の文化は実に奥が深いですな。」

        そして、夜が明けた。

「♪〜 あ、おはようイサミ。よく眠れたかい?」
「ふぁ…おぅ、サトチーおはよ。鼻歌なんか歌ってご機嫌だなあ。」
「まぁね、久しぶりに楽しい夢を見れたんだ。」
「ずいぶん楽しい夢だったんだろうな。…で、どんなんよ?」
「うん、夢の中に父さんが出てきてね。平和だったころのサンタローズで
 一緒に釣りをしたり、いろいろ話したり…うん、そんな夢。
 …おや?ねぇイサミ。この野菜はなんだい?」
「あぁ…それは…ただのおまじないみたいなもんだよ。
 ほら、スミスが馬車で待ってるぞ。早く準備しちまおうや。」

―お前にはずいぶんさみしい思いをさせたな―
『父さん、僕は大丈夫。僕の傍にはいつでも素晴らしい仲間がいます。
 そして、父さんから受け継いだ志がいつでも僕を鼓舞してくれます。』

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 07:21:43 ID:D2zOOBe10
>>279-280
乙です。イイハナシダナー(;∀;)

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 11:03:40 ID:OyOMU78b0
イサミGJすぎる(つД`)
乙でした

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 21:20:09 ID:9w8k/nLQ0
サトチー良かったな!
イサミも儀式wをした甲斐があったw

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/27(水) 11:52:59 ID:iXQyQx5BO
目から汁が出た(´д⊂・゚・。
GEMAさん乙です
降霊儀式ww確かにその通りだww

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/29(金) 20:59:15 ID:otR745pH0
言い方は間違ってないがなんか違うwww

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/31(日) 21:44:15 ID:tuwq4DyC0
保守

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/02(火) 00:53:54 ID:OenAq7Qz0
職人の皆様超GJ!!

288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/03(水) 20:51:21 ID:S0WMXPhb0
ほしゅ

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/05(金) 21:09:09 ID:AtSZD1Ve0
hosyu

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 00:57:27 ID:AW0+2te20
ほす

291 :Stage.17 hjmn1 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:10:34 ID:OOboCCOz0

アルス「ちーっす……」
タツミ「どうもー! すっかりご無沙汰しておりますぅ♪ 残暑も厳しい今日この頃、皆様い・か・が・お過ごしでしょ〜かぁ?☆」
アルス「なにその♪とか☆とかキモ! なんでそんなテンション高いんだ?」
タツミ「バカ空気読め! お騒がせ状態のまま数ヶ月も放置してたんだからもはやテンションで誤魔化すしかないじゃないか!」
アルス「思いっきりホンネ口走っとるがな。前回は本当にお騒がせだったよな、俺も焦ったっつーの」
タツミ「そういえば君もレイさんのこと男だと誤解してたんだっけww」
アルス「笑い事じゃねえよ。それでは遅くなりましてすみません。恒例サンクスコールです」

アルス「>>103様、いや〜俺もマジ物凄く焦りましたよこんちくしょう」
タツミ「>>105様、ほんとエリスもサミエルもあんまり大騒ぎするから僕の方がビビりましたw」
アルス「>>105様、うちの国王も悪い人間じゃないんだが、変なとこが熱血なんだよな。そこがうちの親父と気が合ってたみたいだが」
タツミ「>>106様、驚かせてすいません。Rに関してはすでに壊れ気味な気がしないでもありませんね」
アルス「>>107様ごめんなさい謝ります! ところで……なにを期待したんでしょう? ガチで、えーと??」
タツミ「あー覚えなくてイイよああいう特殊な現実用語は。
   >>116様、レイさん確かにカッコイイですけど、近くで見たら結構な美人さんですよ。ああいうの宝塚系っていうのかな」
アルス「へえ、そうだったのか? 俺は数年前に一度会ったキリだから顔とかあんまり覚えてねえんだよな」
タツミ「向こうはちゃんと覚えてたってのに……。
   >>117様、Rのことだからどこでなに仕掛けてるかわかんないですからね。
   あちこちに伏線はってたりするんで、たまにまとめ読み返していただけると嬉しいです」
アルス「>>118様、レイの家も幼少時から勇者の英才教育してたって聞いてるから、そうなのかもしれないな」
タツミ「>>119様、そこなんですよ〜! エリちゃんとかレイさんとかサヤお母さんとか魅力的な女性が多いのに
   そこがネックで手が出せn……OK悪かった冗談だよアルス。剣をしまおう、ね?」
アルス「俺のおふくろまで範疇なのかお前は!? ユリコに言いつけていいか?」
タツミ「だから冗談だってば、蹴り殺されるからやめて。
   あ、>>120様、僕自身はその手の話題ゼンゼン平気ですよ〜。女子に混じって下着からBLまで平気で語れるタイプなんで」
アルス「うわ、たまーにクラスにいるよなそういう男子。それって男として見られてないからだと思うが。
   >>124様、なにか不思議なロマンを感じる願望ですがそのココロは?」
タツミ「あれじゃない、小さい頃お母さんにおんぶされた思い出が蘇って〜とか?(超憶測)」
アルス「憶測で語るなよ。でもまあ、そういうことならなんとなく覚えてる。懐かしいなぁ」
タツミ「その割りにはサヤお母さんへの態度悪いよね君」
アルス「しつけーな、またそれを言うか。反抗期ってことにしとけもう」

292 :Stage.17 hjmn2 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:12:39 ID:OOboCCOz0

タツミ「ちなみに今回のようにアンカー(>>)があったり明らかに他の読者様へのメッセージに対しては、
   読者様同士の会話に割り込まないという配慮からコールを控えております。ご了承ください」

アルス「お待たせしました、それでは本編スター……」

タツミ「あー待って待って。今回は僕らが語りじゃないから、スタートも彼らにお願いしたいんだけど」
アルス「そうなのか? 俺はかまわないが、お前、本当にそういうとこマメだよな」
タツミ「つねに周囲への気遣いは怠りませんからw」


エリス・サミエル・ロダム『というわけで、俺(私)たちが、本編スタートいたします(ッス)!!』


アルス「お前らもう少し息合わせろ……」


【Stage.17 うちの勇者様】
 続・ゲームサイド [1]〜[14]
  Prev >>83-101

 ----------------- Game-Side Another -----------------

293 :Stage.17 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:15:47 ID:OOboCCOz0

 【サミエル=レイトルフの場合】

 勇者様について? タツミのことッスか。あー……、確かにあいつは得体の知れないや
つッスよ。自分は異世界の人間だ、とか言い出したときは、こいつアタマおかしいんじゃ
ねえかと思ったし。
 んで、いざ一緒に行動してみたらマジでこの世界の習慣を知らないみたいで、「トイレ
の男性用マークはどっちだ」とか聞いてくるから焦ったぜ。「革靴」が男用で「扇子」が
女用のマークだって、世界共通の常識じゃないスか?
 あとほら、よく宿屋でメシの後にサービスでニームの枝がついてくるっしょ。なんとあ
れをポリポリ食っちまったりとか。
「……勇者様、それ噛んで柔らかくして、歯を磨くんスよ」
 と俺が呆れ半分で教えてやったら、えらく感心してたっけ。
 あげくに、パーティの金銭管理はリーダーの仕事だからって俺たちの所持金を預けた時
は、「ええ! ゴールドって銀貨や銅貨もあるの!?」なんてこれまた当たり前のことに驚
いてたし。本当にこいつがリーダーで大丈夫なのかって、俺も不安になったもんッスね。

 だけどタツミって、すごく熱心なんスよね。行く先々の街や城で片っ端から本を読み漁っ
て、暇さえあればロダムやエリスに、呪文や世界の歴史について習ったりしてる。俺にも
魔物との戦いの注意点とか、しょっちゅう質問してくるし。
 今でこそあいつも慣れたもんで、旅のプランニングや経費の計算、売買の交渉とか、冒
険に関する雑務も一通りこなしてるけどさ。もともと記憶力はすこぶるいいヤツだったけ
ど、こんな短期間で覚えたのは、やっぱ努力の賜物ってんじゃないんスかね。

 まあ厳しいことを言えば、この程度はどのパーティでも当たり前にやってることで、冒
険者としてはまだ全っ然なっちゃいないッスけどね。
 まして「勇者」が魔物と戦えないなんざ、よそには絶対に知られたくない話だし……。

294 :Stage.17 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:17:42 ID:OOboCCOz0

 それでもなぁ。
 血がダメなのはかなりマジだろうに、あいつは吐いても吐いても逃げ出さずに俺たちの
戦いを見守ってるんスよ。俺自身が知らないうちに負っていたケガに気付いてくれたり、
エリスもほら、女ゆえのサイクルってのがあるっしょ? それで体調が悪いのを見抜いて、
俺らに「フォローしてあげてね」ってさり気なく頼んできたりとか。
 マメっちゅうかなんちゅうか、いつも俺たちを気遣ってて……自分の方こそ、戦闘のた
びに顔が真っ青になってるってのにな。

 だから、あいつが戦えないなら俺が二人分戦えばいいや、なんて。
 いろいろ頼りないヤツだけど、今の俺たちのリーダーは、やっぱタツミなんスよね。

 そういうことで、王様。
 あいつが理不尽に罰せられるのは許せないッスよ、俺は。

   ◇

 なーんて意気込んでアリアハンの刑場に乗り込んだ俺たちだったんスけどねぇ。
 現在、その王様はひとり壇上でイジけてますよ。先刻の騒動ですっかり存在を忘れられ
ていたのがよっぽど悲しかったらしいッスね。執行役の兵士たちも「どうするよオイ」と
かマゴついてるし、なんかもうすっかりgdgdになってる。

 ピーヒョロロ〜と鳶が暢気に青空に円を描いてて、なーんかマの抜けた空気が漂う中。
 レイさんだけは妙にニコニコしてる。
「王よ、ここはいったん腰を据えて、じっくり話し合うべきではありませんか?」
 まあ無難な提案だわな。王様も渋々壇上から降りてきたんスけど、なんか情けない顔し
てるわ。

 タツミの方も同じように肩を落としてて、俺と目が合うと苦笑いした。
「今の王様の気持ち、僕もよくわかるよ。なんかこうして落ち着いちゃうと、結局のとこ
ろ、『吐け!』『言うもんか!』『じゃあ痛めつけてやる!』『やるならやれよ!』とお
互いに意地を張り合ってただけ――って感じだもんね〜」

295 :Stage.17 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:20:59 ID:OOboCCOz0

「っぷ」
 思わず吹き出した。本当にその通りだもんなぁ。

 タツミはそれで吹っ切れたらしく、一歩前に出ると、王様に思いっきり頭を下げた。
「あの、王様。いろいろ失礼なこと言っちゃって申し訳ありませんでした!」
 そうそう、うちのリーダーは本来、自分が悪いと思ったらすぐにちゃんと謝る人間だも
んな。今回みたいにわざと反感買うような真似してるのは、全然らしくないんスよ。
 王様もしばらーく黙っていたけど、やがて降参とばかりに両手を挙げた。
「わかったもうよい。不問とする。貴様ではないが、だんだん余も面倒になってきたわ。
お前たちも下がってよいぞ」
 どこかスッキリしたように笑いながら、王様は兵士たちに退席を命じた。兵士たちはサッ
と敬礼すると、物騒な道具をかかえてそそくさと刑場を出て行く。あいつらも本当は嫌々
従事していたんだろうな。
 アリアハンはもともと平和ってゆーか、ノンビリした国ッスからね。魔物ガラみの暗い
事件はたびたび起きてるけど、それがなきゃこんな陰気な話は滅多に無い。いつだったか、
王様が自分の息子みたいに大事に思ってるオルテガ様のご子息に不埒な真似をしようとし
たアホな女パーティがいたけど、そいつらも表向きは極刑とされたが、秘密裏に国外に追
放するだけで済まされたし。

「まったく、本当に虫の好かんヤツだ貴様は。余の力量を試すなど、侮辱罪で打ち首にさ
れても文句は言えんのだぞ?」
 王様がチョンと首に手を当てるマネをすると、タツミは胸の前で手を組みつつブンブン
首を振った。
「いやだなー王様、僕そんな恐れ多いことコレっぽっちも思ってませんよ? 偉大にして
神聖なる御国王陛下より直々に賜りし罪なればここは粛々と甘受すべきかとですね」
「だーまーれ、少しは物怖じせんかこのクソガキが。……まあ確かに、余も少しばかり頭
に血が昇っていたかもしれんが」
 ありゃ? なんかこの二人、かえって仲良くなってないか?
「ふむ。やはりアリアハン国王は立派な方だな」
 とか言いつつレイさんはニタニタしてるし。この人も最初から結末が読めてたっぽいな。

296 :Stage.17 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:21:46 ID:OOboCCOz0

「さて、余は譲歩したぞ。次は貴様の番であろう?」
 王様の言葉に、タツミは少し困ったような顔でうなずいた。
「――わかってます、アルス君のことですよね」

 アルセッド=D=ランバート。
 本来、俺たちがともに旅をするはずだった、真の勇者たる少年。

 タツミは間違いなく「彼」の身に起きたことを偽っている。それは王様が疑問に思うま
でもなく、俺たち3人も薄々察していたことだ……が。

 けど実は、「とりあえず向こうが言い出すまではそっとしておこう」って俺たちの中で
話し合いは済んでたりする。実際あいつはマジメに勇者として人助けの旅を続けてるんだ
し、たとえ隠し事をしていようとそれなりの事情があるんだろう、ってさ。
 だいたい、王様がタツミに「アルスの名声を横取りしようとしている不逞の輩」って猜
疑の目を向けるのも、仕方ないっちゃそうだが、現場を知る俺たちから言わせてもらえば、
こんなクソ面倒な大役をわざわざ買って出るくらいなら、一般人でいるほうがよっぽど楽ッ
スからねぇ。

 でもまあ、そろそろ真実を聞いておきたいところではあるなぁ。
 エリスやロダムも同じ考えなのか、じっとタツミの方を見つめてる。

 うちの勇者様もそれに気付いたのか、軽く肩をすくめてうなずいた。
「わかりました。僕にわかる範囲のことはお話します。ひとまず腰を落ち着ける場所を貸
していただけますか、王様?」

297 :Stage.17 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:23:24 ID:OOboCCOz0

 【エリス=ダートリーの場合】

 タツミ様のこと、ですか?
 そうですね。実はその……今だから言える話ですが、最初の頃、私は彼をまったく信じ
ていませんでした。
 タツミ様は一見すると、温和で人当たりが良くて会話上手、他人とすぐに打ち解けられ
る方ですが――その笑顔の裏でいつもクールに場の空気を読み、先を計算しているような
ところがあります。
 私だって、ついついアルス様と比較してしまうからこそ、そういう性質に気付きました
が、普通の人は彼の表面的な笑顔に簡単に騙されるでしょうね。
 あ、ごめんなさい、騙されるというのは言い方が悪いわ。それが彼なりの気遣いや優し
さなんだって、今はもうわかっていますから。

 まあロマリアにいた頃までは私もそんな感じで、
(このニセモノがアルス様の命を握っているのかしら)
 と本気で不安に思っていました。王様が疑っていたように、私も彼が、アルス様に成り
代わろうとしている魔王の手先かなにかでは……と考えていたんです。
 だからモンスター格闘場での八百長じみた大勝にも大げさに感心してみせましたし、お
となしく彼の指示に従って金の冠を取り返しにも行きました。
 どういういきさつなのか一時的にロマリアの国王代理を務めることになった彼から、
「僕、王様してる間にちょっとやっときたいことがあるんだ。そんなにかからないから、
しばらく宿屋でのんびりしててよ」
 そう言われましたが、私は彼に秘書役として手伝いを申し出ました。だって、こんな怪
しい人間にロマリアのような大国の権力を渡すなんて危険じゃないですか。
「ありがとうエリス、本当に助かるよ。ごめんね、疲れてるのに」
 少し照れたように言う彼に、
「いいえ、お気になさらずに。タツミ様の方こそずっと働きづめではないですか、少しは
休まれたほうがいいですよ?」
 なんて白々しく心配するフリをしながら、私は彼の動向を探っていたんです。
 結局、タツミ様は約束どおりすぐに王位を返還し、一日も経たずにロマリアを出立する
ことになりましたけど。

298 :Stage.17 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:27:42 ID:OOboCCOz0

 ――それから、初の魔物との戦闘に至り。
 タツミ様が血に弱いということが、ここで初めてわかりました。
 冒険者の中にも苦手という人はいますよ。ロダムのような僧侶など、基本的に殺生ごと
は好みませんし。でも彼の……血液恐怖症というのでしょうか、あれは半端じゃないです
ね。木陰で吐いているのを見かねて水筒を持って行きましたが、とても演技とは思えない
くらい参っていました。
 なのに、
「ごめんね〜、血はどうも苦手なんだよねw 近いうちに必ずなんとかするからさ」
 と、必死に笑顔を作ろうとするんですもの。
 この人、悪い人じゃないのかしら……?
 ふとよぎったその思いは、ピラミッドで確信に変わりました。

 タツミ様と2人で落とし穴にはまり、魔法が使えない地下道を彷徨い歩き、どうにもな
らなくなって通路の隅に隠れて休んでいた時です。
 気を紛らわせようと雑談をしていたんですけれど。
 その会話の方向性が、私に囮になれと暗に促していることには、最初から気付いていま
した。そういう作戦自体は別に彼じゃなくとも冒険者のパーティなら一度や二度は経験す
ることですから、それについては特にヒドイとは思いませんでしたよ。これまでの経緯を
鑑(カンガ)みて、本当にこのまま見捨てられることはまず無いだろうという計算はありまし
たし。
 むしろ遠回しに誤魔化さないではっきり言ってくれた方が良かったんですが、男の彼か
ら女の私に「身代わりになれ」とはさすがに言い辛いのでしょう。そう思って、親切心で
私の方から言ってあげたんですよ。
 私を置いていけ、と。
 抱きしめてあげたのは、まあちょっとしたサービスで。

 ……すぐに後悔しましたけどね。

299 :Stage.17 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:29:00 ID:OOboCCOz0

 その時のタツミ様の表情は、今でも忘れられません。
 悔恨とか自己嫌悪とか、なにかそういった、自分に刃を向けるような負の感情に一気に
支配されてしまったかのような。
 うまく言えないんですが、たとえば、大切な人をどうしようもない理由で殺してしまっ
た、その直後みたいな。もう他人にはどうすることもできないくらい自分を追い込んでし
まった人を、目の前でただ見ているしかない状態というのか……。

 しかも驚いたのは、彼は次の瞬間には、スッといつもの笑顔でそれらすべてを覆い隠し
てしまったことです。
「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」
 まるでなにごともなかったかのように。正直、私はほっとしました。私には、さっきの
状態の彼にどう対処していいかわからないもの。

 だから、あの時の私の言葉の、本当の意味は。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
 そしてさっさとどこかの街に戻って、宿を取って、この人に暖かくしておいしいものを
食べさせて、ゆっくり眠らせてあげたい。
 そう思ったんです。

 キスをしたのは……よくわかりません。
 私の方こそごめんなさい、って、そんな気持ちの表れだったような気がします。

   ◇


300 :Stage.17 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:32:17 ID:OOboCCOz0

 刑場から応接間に移動した私たちは、そこでタツミ様のお話を聞くことになりました。

「まず謝ります。僕、嘘をついてました。アルス君がいなくなったことに関して、魔王が
直接なにかしたわけじゃないんです」
 アルス様は魔王に封じ込められたのではなく、タツミ様の異世界に飛ばされ、替わりに
タツミ様がこの世界に送られたというのです。
 つまりお二人は入れ替わってしまったのだ、と。
「ではアルセッドはどうしてるのだ? 無事なのか」
 王様の問いかけに、タツミ様は自信が無さそうにうなずきました。
「たぶん。僕が住んでいた世界に魔物はいませんし、アルス君ほどの戦闘技術を持つ人間
もほとんどいません。まず危険はないと思います」
 私も少しですが、タツミ様が住んでいらした世界について聞いたことがありました。魔
術の類はいっさい存在せず、まったく異なる文明を持つタツミ様の故郷。そこは魔王も魔
物もいない平和な世界であると。
 タツミ様はそこで溜息をつきました。
「正直、僕もなにが起こってるのかわかってないんです。この世界に来る直前に、神様だ
かなんだかに簡単な説明をされただけで……。僕がアルス君の代わりに魔王を倒さなけれ
ばいけないらしいんで、やっぱり魔王が間接的に関わっているのかもしれませんけど、そ
れも僕には答えようがありません」
「なるほどな。君も大変だったね、青少年」
 レイさんがしみじみと言いました。
「いきなり見知らぬ世界で『勇者』をやれなんて言われて。よくやってるじゃないか」
「まあなんとか。――ただ、アルス君の方はどうも以前から、僕や、あっちの世界のこと
を知っていたみたいです。『夢を通して見ていた』と言っていました」
 え、夢で見ていた……?

(――聞いてくれよエリス、また例の『夢』を見たんだ。ほんと不思議な世界だよ、ヒコ
ウキってわかるか? 何百人も人を乗せて空を飛ぶんだぜ。ラーミアよりすげえよな!)

 どうしてでしょうか。嬉しそうに語るアルス様の姿が浮かびます。
 そんなこと、過去に一度もなかったはずなのに。

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