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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:46:40 ID:XTl7U9H70
ドラクソなんかの世界に紛れ込んでしまったら自殺するしかないね

3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 00:58:06 ID:h1liBlbJO
乙!
3ゲトズサーー

4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 11:32:18 ID:jdFhU5hLO
>>2
現世でも同じだろ蛆虫

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 00:16:17 ID:xRhWVn4U0
スレ立て乙です。

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 14:12:07 ID:+b8QrQBsO


7 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/02(金) 01:30:56 ID:NmHihLlw0
擦れた手GJ!
前スレの容量まだショート分くらいあるのかな

8 :俺と凶器1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:13:37 ID:p4FDjYNj0
体が宙に浮いたかと思うと目まぐるしく景色が変わり次の瞬間にはもう町の前に立っていた。
相変わらずすげー呪文だぜ。で、ここで何をするんだ?とねーちゃんに尋ねる。



ここにもオーブがあるわ。王様が保管しているてお父様が言っていたわ。
それとここの酒場の倉庫にはお父様達が旅をした際に使った武器や防具、道具がたくさん残ってるらしいの。
今後旅はさらに熾烈を極めるだろうから必要なものは自由に持って行きなさいだって。


なるほど。まあイケにしては気が利くじゃねーか。そういえば俺今丸腰だしな。
長年の相棒はやまたのおろちと戦った時に昇天したし。確かに武器がいる。
そうして俺達は酒場に向かった。道中勇者が口を開いた。

ねえ!今日はあたしんちにみんなで泊まってよ!わたし先に行ってお母さんにみんなが来るって
話してくる!ルイーダさんの店のすぐ近くだからそれだけ伝えたらわたしもすぐ行くから!

そう言って勇者は走って行ってしまった。
しっかし嬉しそうだったな。勇者って言っても16のガキだもんな。
この町にはしばらく滞在しててもいいだろう。そう頻繁には帰ってこれないだろうしな。

そうしているうちに俺達は酒場に着いた。
ほうほうここが噂に名高いルイーダの酒場ですか…おっさんが得意気にこの酒場に関する薀蓄を話し出す。
無視して中に入る。そういやピエロが仲間に加わったのもここだったよな。
懐かしいな。そうそうあのテーブルの所に見るからに怪しいピエロの格好をした大男が……っておいッ!!!!


9 :俺と凶器2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:14:15 ID:p4FDjYNj0
そこにはまたしてもピエロがいた。
こっちに気付くと嬉しそうに駆け寄ってくる。
てめーはこんな所で何をしてるんだ!!!!とっとと城に帰れ!!!!!!
と怒鳴りつける。しかしピエロ曰く自分がいないとここに預けてある荷物持ってけないぞとの事だ。
たしかに俺達が預けたわけじゃないし勝手に持っていってしまってはそれはもうただの泥棒だ。
だから賢者に言われて来たのだと偉そうにするピエロ。まあ別にかまわんがあの大臣心労で死ぬぞそのうち。

ピエロがカウンターで話をしてそのまま裏の倉庫へ案内してもらった。
中に入る。これは…すげえ。

そこには所狭しと大小様々な武器や防具、なんだかよくわからない道具が並んでいた。
どれでも好きなもんを持っていっていいとの事なのでみんな片っ端から物色している。
俺はというと当然武器がいる。繰り返すが相棒のドラゴンキラーは折れてしまった。今後やまたのおろちクラス
の敵とはまた対峙する事になるかもしれない。魔王なんてさらに強烈な化け物だろう。
そいつらとやりあうには確実にドラゴンキラー以上の武器が必要なのだ。

………………。

ダメだ。そこそこよさそうなものはあるのだが今一つこう心にグッとくるものには出会えない。

…………?

その時一際異彩を放つ剣を発見した。いや異彩なんて生易しいものではない。
凄まじく禍々しい。そして恐ろしく破壊力がありそうだ。

思わず手を伸ばす。遠くで見ていたピエロとねーちゃんが叫ぶ。

いかん!いかんぞ!!!
ダメ!!!!!その剣を触ってはダメよッ!!!!!


…え…

10 :俺と凶器3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:14:58 ID:p4FDjYNj0
そんな事言われてももう俺は完全に剣の柄を握ってしまっている。
血相を変えてピエロとねーちゃんが駆け寄ってきた。


マズいわ…よりによってこんな剣を…

…シャナクは使えるかね…

ごめんなさい使えないの…一刻も早く教会で…


何やらヒソヒソ話をしている。何なんだ?なーんか胸糞悪いなチクショウ。
そんなこの剣マズイのか?せっかく強そうだったのに。

俺は無造作に剣を元の場所に戻した。


!!!!!!!!!?????????

ねーちゃんとピエロが目を丸くしている。だからさっきからなんなんだよ!!!!

ねえ…総長さんその剣持って何も変化はなかった?
握ったあと剣が離せなくなったりとか意識が朦朧としたりとか…


ない。
俺はもう一度剣を拾う。そして置く。それを何回か繰り返して見せる。


こんな事って…

ねーちゃんが困惑の表情を見せる。

11 :俺と凶器4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:15:34 ID:p4FDjYNj0
だから何なんだよ!とねーちゃんに詰め寄った。

呪われた装備品についての知識はある?

呪われた装備…。あるわけねーよ。この世界の事なんてまだまだわからない事だらけだ。

聞いた所によるとこの世界には「呪い」のかかった武器や防具があるらしい。
そういう類のものを手にすると気が狂って仲間を斬りつけたり金縛りにかかって
動けなくなったりしてしまうらしい。しかも一度装備してしまうと本人の意思では外せなくなり
外すには特別な魔法や特別な儀式が必要だそうだ。

まさか…この世界に呪いそのものを受け付けない人間がいるとは…

ピエロが呟く。この世界…。ああそうか。きっと俺は元々この世界の人間ではないから呪いがかからないのでは
ないのだろうか。どういう理屈だかさっぱりわからないしわかりたくもないがとにかく俺は呪われないのだ。

という事はこの剣を持っていっても問題ないだろう。
俺は再度剣を拾い上げた。見れば見るほど妖しいオーラを放っている。

それは「はかいのつるぎ」という剣よ。
絶大な攻撃力があるわ。ただしその呪いが故に普通の人なら動けなくなってしまうものなのだけど…。

ねーちゃんが説明してくれた。一振りしてみる。
軽く振っただけなのに空気を切り裂く鋭い音が室内に響く。こいつはすげえ。
もう二度、三度と振ってみる。ちょっと強めに振ってみる。思いっきり振り回してみる。
すげええええ!気に入ったぜ!俺はこいつを新しい相棒にする事を決めた。
はかいのつるぎ。なかなか素晴らしいネーミングセンスじゃねえか。
なんたって破壊だからな破壊。まさに破壊王たる俺に相応しい剣である。
この剣なら魔王だかなんだか知らねえがズッタズタのボロボロにしてやるぜ!!!ガハハ。


12 :俺と凶器5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:16:12 ID:p4FDjYNj0
…やっぱり少し精神に異常が…

いやしかしこの程度なら支障はあるまい…

また二人でコソコソ話してやがる。

しかし呪われた武具が問題ないとなるとここには強力な武具なんて山程あるぞい。
なんせ誰も装備できなくてまとめてここに放置してったからな。

とピエロが言った。マジか!?そいつは素敵だ。俺は呪われた武具を片っ端から漁った。
探せばもうほんと沢山あるある。どいつもこいつも不気味な風貌でかっこいいぜ。

「はかいのつるぎ」

「じごくのよろい」

「ふこうのかぶと」

の三つを装備した。体の奥底から力がグングンと湧いてくる。なんだか今の俺なら魔王にもタイマンで
勝てそうだ。

悪魔…悪魔じゃ…

おっさんを始め以下みんなが俺を見て絶句している。こいつらは本当にファッションセンスってもんが
わかっていない。

キャー総長ちゃんかっこいい!!!どうしたのそれ!?

いつのまにか追いついて来た勇者が駆け寄ってくる。え…もしかして今ここでこの俺の格好いいコーディネート
を理解できてるのは勇者だけなんじゃ…それはそれで逆に不安だ。

13 :俺と凶器6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:27:27 ID:p4FDjYNj0
わたしも新しい服欲しい!うーーーーんっとかわいいやつ!

あーあ、これは長引きそうだ。女ってのは服を買いに行くとあーでもないこうでもないと異常に時間がかかるが
それはこっちの世界でも同じらしい。総長ちゃんもよさそうなのがあったらこっち持ってきて!だと?
ほほう俺のセンスを頼るとはやっぱこいつなかなかわかってるじゃねえか。どれどれ。
俺はさっきまでとは打って変わって女の子目線で使えそうなものを探し始めた。
かわいくてそれでいて強さも兼ね備えた実用的なやつ。うーんこれはこれで意外と難しい。

おお!!!!これは!!!?????

俺はまたまたとんでもない鎧を発見した。いや正確には鎧なんてもんじゃない。
ただのビキニだ。かなり際どい。でへへ…これねーちゃんが装備するべきだな…そうに違いない!

それは「しんぴのビキニ」じゃ。高い防御力と歩くたびに体力が回復するという効果も秘めた
素晴らしい防具じゃ!

近くにいたおっさんが興奮気味に説明してくれた。ほうほうなるほどな…それはつまり体力が低いねーちゃんに
ピッタリじゃないか!これは我が鬼浜爆走愚連隊の戦力アップのためにも是非装備してもらわなくては!
おっさんと目を合わせる。あいつもニヤけてやがる。

いやーん総長ちゃんのエッチ!そんなの着て外歩けないよー

何を勘違いしたのか勇者が言ってくる。てめーじゃねーよボケ。てめーのまな板じゃビキニは似合わん!
これはスタイルのいい大人の女にこそ似合うのだ!

ねーちゃん!ちょっとこれを…

そこまで言いかけただけなのに返事が返ってきた。

殺すよ?

…………。はい。悪乗りが過ぎました。サーセン…。

14 :俺と凶器7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:28:21 ID:p4FDjYNj0
そんなこんなしているうちにみんなそれぞれ身を固めたようだ。
さてここで俺がみんなをファッションチェックしてやろうと思う。

さてまず勇者からだ。

いなずまのけん
みかがみのたて
ドラゴンメイル
きんのかみかざり

という格好だ。まあこれは俺が選んだんだがな。本当は頭もミスリルヘルムにしようと思ったんだが
重いしかわいくないとの事で却下されてしまった。あんな髪飾りで頭守れるかよと思うがまあ奴も
女の子なのでそのくらいは気を使いたいのだろう。他が重装備なのでよしとするか。



続いてねーちゃん

りりょくのつえ
てんしのローブ
ふしぎなぼうし

いいよいいよー!まさに天使!ねーちゃんにピッタリの衣装だ。
りりょくのつえで精神力を消耗する分ふしぎなぼうしの効果で節約する(ねーちゃん談)
まあ俺には難しい事はさっぱりわからんが相性のいい組み合わせらしい。
うんうんうねーちゃんは頭いいなあ。


15 :俺と凶器8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:29:12 ID:p4FDjYNj0
そして最後がパンツ

まじんのおの
やいばのよろい
ちからのたて
グレートヘルム

おお!これは強そうだ。もうこいつの人間離れは例えるならモンスターみたいな人間ではなく
人間っぽいモンスターだな。パンツ仮面からパンツモヒカンにレベルアップしやがった。
本来なら重すぎて空振りが多い武器らしいがこいつの糞馬鹿力なら問題なく振り回せる。
まさにこいつピッタリの武器だ。

俺達はもともと持っていたボロボロの装備品を捨て…じゃなくてここに保管しておいて
時間も時間なので勇者宅に向かう事にした。

16 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:30:20 ID:p4FDjYNj0
>>1スレたて乙!
新スレ一発目の投下頂きました!


17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 00:51:17 ID:YyjyTbgoO
総長乙でした!

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 02:00:28 ID:P5QUxFz3O
乙でした!
しかしなんという美女と野獣共
パンツはオルテガ的に考えたらそんなにおかしくはない。ギリギリ。
だが総長てめーはダメだ
全身呪い装備とか効果はともかくビジュアル的に酷すぎるwww

19 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 08:57:20 ID:yLgaoimM0
総長外道装備杉ワロタwwwwww
そしてねーちゃんに神秘のビキニ装備して欲しかった俺w

20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 10:26:40 ID:dXDxFnbKO
何という神秘のビキニ
ねーちゃんの姿を想像しただけでワクワクしてしまった
この俺は間違いなく変態




―○-○―




21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 13:59:36 ID:jxc257+T0
勇者ちゃんにこそ神秘のビキニ着て欲しいのに…
総長分かってねーなwwww
しかし悪魔総長と魔物パンツではもう二人で町の中歩けないw

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 14:18:58 ID:mXE1dgEE0
呪いをもはねつける、総長TUEEEEE
総長が装備外したとき(入浴(ってあるのかな?)中とか、就寝中とか、他の仲間が間違ってさわらないように気をつけなくては・・・

23 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:49:13 ID:VFerFGOS0
―憲法は赤口と―

「アマンダさんは天空の花嫁と聞いてどんな人を想像しますか?」
まったく見知らぬ世界から来たような奇妙な男は軽い口調で変な質問をしてくる。
「なあに。ケージさんの知り合いの人?」
「ええ。知り合いの女性が『もし結婚したら天空の花嫁になる。』と言っていましてね。」
「きっと天界に住まう女神のようなお嫁さんなんでしょうね。」
私は自分が花嫁衣裳を着てジョセフの横に並ぶ姿を思い浮かべていた。
「私もそう思いました。しかしそうではないんです。」
あら、あまり綺麗な人じゃないのかしら……
「いえ、美しい女性ですよ。美しいというより可愛らしいと言ったほうが似合うかな。」
私の顔を見て考えを読んだのかケージさんはそんなことを言った。
「この2人は10年ぶりの再開をきっかけにお付き合いを始めたそうなんです。」
「まあ、ロマンチックね。」
「女性が入院している間に男性が引っ越してしまって、思いが伝えられなかったそうです。」
「すれ違いの恋が実ったのね。」
私のジョセフへの想いもすれ違いだった。でも、邪魔する障壁はもうない。

「話がそれました。実は天空の花嫁という言葉で注目すべきは夫のほうだったんですよ。」
「どういうこと?」
「夫が『天空の人』と呼ばれていた。その妻になるから天空の花嫁というわけなんです。」
「あらあら、それは思いもよらなかったわね。」
「もし結婚したら天空の花嫁。ただし天空なのは妻ではなく夫のほうだった。」
ケージさんの口調が変わった。
「そうなんですよ。注目すべき相手が違っていた。この事件もね。」

――この事件。

ペロの餌に毒が入れられた事件。この男はその事件を調べている。
そして少しずつ真相に近づいてきている。

この事件の真犯人である私に……

24 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:50:36 ID:VFerFGOS0
――

私は一冊の本を胸に抱いていた。

偶然道具屋で見つけた古い本。
ぱらぱらとページをめくるとそこには様々な薬の調合法が載っていた。
私はしおりが挟んであるページで手を止めた。
そして、そこに書いてあった薬を見てある計画を思いついた。

すばらしい未来を手に入れるための計画だ。
私とジョセフ。2人の輝かしい未来のための……

私は本を買うと胸に本を抱えたまま買い物を続けた。
薬の材料を揃えていくためだ。
材料のほかに真っ赤な口紅を買った。
きっとジョセフがも気に入ってくれるだろう。

私は自分の家である宿屋に帰ると自分の部屋にこもる。
そっとしおりの挟んであるページを開いた。

私はそこに載っているレシピのとおりに薬を調合していく。
材料の分量を間違えないよう注意深く文字を追う。

カタ。

小さな物音に私は本から顔を上げた。
あたりを見回したが誰もいない。
少しばかり神経質になっているのかもしれないわ。
だが、この薬を作っているところを誰かに見られるわけにはいかない。

25 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:51:37 ID:VFerFGOS0
宿泊客が間違ってこの部屋に入ってくることがないわけではない。
こういうとき宿屋の娘という立場が恨めしく思う。
宿屋という商売は父親が人と接することが好きなのでやっている。
いろんな人と出会うのが楽しみだという。

宿屋にはいろんな人がやってくる。
特に今は変な客がいる。妙な格好をした男だ。
目が覚めたとき、まるでここが見知らぬ世界だったかのような反応だった。
何か変なものでも食べたんじゃないかしら。
その考えに私は声を出して笑いそうになってしまった。
私がこんな心配をするのは酷くおかしなことなんだもの。

何しろこれから私は犬のえさに毒を入れようとしているのだから。

「えーっと、あとはこの草を入れればできあがりっと。」
私は薬の完成を報告するような台詞を声に出して言った。
自分がこれからやろうとしていることに、少しばかり気分が高ぶっているのかもしれない。

「うふふっ。サンディの困った顔が目に浮かぶようだわ。」
私は再び心の声を口にする。
こんなことを誰かに聞かれたら大変なのに。
やはり大胆になっているに違いない。

私は悪い女になろうといていることを楽しんでいるのかもしれない。
今鏡を見たら私はどんな顔をしているのかしら。
冷たい目をして口の端だけを少し吊り上げている姿が思い浮かぶ。
そんなことを思いつつ、私はまた悪女らしい台詞を言う。
「見てらっしゃい。私のジョセフに手を出したりして許さないからっ。」

26 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:52:50 ID:VFerFGOS0
「おお、アマンダ。ちょうどいいところに来た。ちょっと話がある。」
完成した薬を持って家を出ようとしたとき父親に呼び止められた。
「今日からしばらくこの人に家の仕事を手伝ってもらうことにしたんだ。」
そう言って父が紹介してきたのは、例の妙な格好をした男だった。
「どうもよろしくお願いします。」

この男、もうおじさんと呼んでも差し支えなさそうな年齢よね。
帰る方法が見つかるまで家において面倒を見ることにしたという。
こんな得体の知れない人を家におくなんて、父さんも物好きだわ。

それにこの人、宿屋の仕事なんてできるのかしら。
もともと何をしているのか聞くとおじさんはコウムインをやっていると答えた。
何かしらコウムインって。
え、ケイジって言うのが名前なの?
変な名前。本名なのかしら。呼びにくいからケージさんって呼ぶことにするわ。

「ケージさん、しばらくこの宿屋で働くつもりなの?」
「早く帰りたいのは山々ですが、帰る手がかりがまったくない状態でして。」
「町の外から来たってことは旅をしていたんでしょ? 腕に覚えがあるのね。」
「いえ、私のいたところは至って平和なところでして戦いなんて無縁なんですよ。」
「あらまあ、うらやましいわね。」
「法律で軍隊を持つことを禁止されているくらいですからね。」
そんなことしてモンスターが襲ってきたらどうするのかしら?

「この町だってとても平和そうです。」
町の中にいればモンスターが襲ってくることはない。
いたって平穏な毎日が繰り返されている。
「町の中にいる限りはね。確かに今は平和なものよ。」
でも、これからこの町には大事件が起きるのだ。
「こんなときにこの町に来るなんてあなたも災難ね。」

27 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:54:32 ID:VFerFGOS0
「こんなときと言うと何か良くないタイミングだったのですか?」
そんなこと言える分けないじゃないの。
「今、町の中は平和なものだけどいつ魔王が襲ってくるのか分からないって意味よ。」
うっかり変なことを言ってしまったがうまく誤魔化せたわ。
でもケージさんはきょとんとしたような顔をしていた。

「魔王……そんなものがいるのですか?」
いまどき魔王も知らないなんてずいぶんのんきな人なのね。

「とにかくあなたの身元は分からないわけね。」
「ええ。目が覚めたらこの宿屋にいたとしか言いようがないのですよ。」
本気でそんなことを言っているのかしら。
……まさか本当に何か変なものでも食べたんじゃないでしょうね。

それともこの男、自分が異世界からきたとでも言うのかしら。
どうせ異世界から来るなら世界の救世主となる若くてかっこいい男が良かったのに。
まあ、破壊神だとかそういう恐ろしいものじゃなくてよかったわ。
私は目の前の男を見て私はそんなことを思っていた。

でも、この目の前の男は破壊神よりもはるかにたちの悪いものだった。
今から犯罪を犯そうとする私にとっては……

―続く―

28 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 18:55:44 ID:MYeTaEjK0
リアルタイム遭遇支援

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 18:56:51 ID:MYeTaEjK0
支援したと思ったら終わりかw
今回は6の話みたいだからかなりwktk

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 20:28:53 ID:jxc257+T0
冒険の書シリーズ大好きだ!
今回はサンマリーノのあの事件からから始まるのか
続き楽しみだ

31 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 04:51:05 ID:HhsTFc+QO
今までの流れからいくと、今回は6章立てでしょうか?
ドラクエにまさかの倒叙探偵小説ktkr!
渋いケージさんの推理が楽しみです!

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 06:45:54 ID:6lBXv6bhO
ケージ=刑事か…確かに公務員だわ

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 15:24:15 ID:2ezlh5ct0
な、なるほど。刑事だったのか。
そりゃ、毒殺の犯人にとってはたち悪いわ・・・(wwwww

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 18:14:43 ID:tV7pZdF70
>>33
右京さんだとか十津川さんみたいのが相手だったらもうどうしようもないな

35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 19:13:40 ID:EWI6FhMW0
のっけから総長と冒険の書のダブル更新とか何のご褒美ですか?
お二方とも乙&GJでした。

ロト紋のキラでさえ避けた呪いの武具を躊躇無く装備w
さすが総長!おれたちに(ry

36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 20:26:10 ID:frK+7em9O
ニコラス・ケイジが思い浮かんだのは俺だけでいい。

37 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/05(月) 23:00:13 ID:qW6dnOehO
最近更新しないなと思ってたらこっちだったか………。
仕事中にでも読ませてもらうか!
じゃ、行ってきま〜す。

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 11:39:52 ID:b3Cv6Fjm0
総長の反則装備キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

ドラクエコロンボキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

もうメッチャ期待!

39 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 06:06:35 ID:8dn3gOT2O


40 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/10(土) 08:22:22 ID:bAMWuVID0
hoshu

41 : ◆Tz30R5o5VI :2008/05/10(土) 09:47:47 ID:QDiPxsy0O
>>1


42 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/11(日) 20:20:28 ID:CeMKsIor0
保守

43 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/13(火) 07:23:11 ID:FNQ18FALO
保守

44 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:41:56 ID:+RBulQR60
―刑法を先勝に―

ケージさんという正体不明の男がうちの宿屋で働くことになった。
彼が自分の家に帰るための方法が見つかるまでまでということだ。

「宿屋と言えば客商売よ。ちゃんとできるのしら?」
「もちろんお世話になる以上、何でもやらせていただきます。」
そう言っているけどどこか頼りないのよね。

父さんは彼が働くための準備をあれこれしていた。
「午後にでも教会行って神父様に彼を紹介しようと思うんだ。」
「教会ですか?」
「何かを始めるときには教会でお祈りをするものなんだ。」
父さんの説明にケージさんはしきりに納得している。

何かを始める前には教会でお祈りをするものだ。
でも、今日の私はそれができない。
犯罪の成功を神様にお祈りするわけにはいかないもの。

「教会へは午前中に行ってしまいなさいよ。」
「早く働いてもらって自分が楽しようって言うんだな、アマンダ。」
そう言って父はワハハと笑った。
「違うわよ。何事も早いほうがいいと思っただけよ。」

そう、早いほうがいい。
サンディとジョセフがこれ以上近づく前に手を打つ必要があるのだ。

45 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:45:25 ID:+RBulQR60
余計なやり取りで時間を使ってしまった。
私は瓶に詰めた毒薬を持ってこっそり家を抜け出した。
これから向かうのは町長の家だ。

屋敷に着くと誰にも見つからないように屋敷に忍び込む。

屋敷の中では犬のペロが寝ていた。
ごめんなさい。あんたに恨みはないけど私の未来のために協力してね。
私は心の中でそう呟くと皿に盛られた犬の餌に薬を振りまいた。
それからまたこっそりと屋敷を出る。

大胆な犯行だったが幸いなことに誰にも見られていない。
私はまだ胸の高まりが続いていた。

あの餌を食べるのはペロ。そのペロの面倒を見ているのはサンディだ。
餌を食べてペロが倒れれば誰だってサンディのせいだと思うだろう。
飼い主である町長は犬のペロを可愛がっている。
きっと町長は激怒してサンディを屋敷から追い出すに違いない。
そうなればサンディはもう町長の息子であるジェセフに近づくことさえできまい。
これで私のジョセフへの想いを邪魔するものはいなくなるのだ。

これから起きることを考えて思わず笑みがこぼれる。
帰る途中、毒薬の入っていた瓶を捨てる。
そして何食わぬ顔で自分の家である宿屋に戻った。

46 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:46:42 ID:+RBulQR60
「お出かけでしたか?」
うちに帰り着いたときやはりどこからか帰ってきたケージさんが話しかけてきた。
ああ、そうだ。彼は教会へ行くことになっていたのだった。
「ええ、ちょっとね。」
「大方かっこいい旅の剣士の噂を聞いて探して回っていたんだろう。」
父さんが口を挟む。私はそんなところよと答えておいた。
自分の推理が当たっていたことに父さんは満足しているようだ。
まさか自分の娘が犬の餌に毒を入れていたとは夢にも思ってないのだろう。

「ここでは剣士なんてものがうろうろしているんですか?」
ケージさんが妙な質問をしてくる。
「旅をするならそれくらい普通でしょ? 町の外にはモンスターがうろうろしているもの。」
「モンスター……魔王がいるならモンスターがいても不思議はないと言うわけですね。」
「下手に外へ出たらハエ魔導にヒャドされたりバブルスライムに毒を受けたりするわよ。」
なんだか神妙な顔をしている。まさかモンスターすら知らないのかしら。

「そうそう、彼の身元を捜すなら町長のところにも挨拶に行かないといけないな。」
父さんがそんなことを言い出す。
「それならさっそく行ってきます。」
「でも今行っても町長は家にいないわよ。」
「おや、町長の家に行っていたのですか?」
私は内心しまったと思ったがすぐに切り替えした。
「町長の屋敷へは行ってないわよ。」
とっさに思いついた町長が留守だと思った理由を述べる。
「大通りで町長を見たの。だからまだ帰ってないと思っただけ。」
うっかりぼろを出すところだった。もう少し気をつけなければ。

だけど、この男の前ではそれも無駄な努力だったのかもしれない。

47 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:47:45 ID:+RBulQR60
「どうやら大変な事件が起きたようです。」
ケージさんがそんなことを言い出した。
彼は午後になって町長のところへ挨拶に行き、たった今帰ってきたばかりだ。
「まあ、何があったの?」
「町長の飼っている犬が突然痺れたように痙攣して動かなくなったらしいです。」
「あら、それは大変ね。神父様がペロを診てくださったのかしら?」
「はい。油断はできないが大事に至らないだろうということです。」
「それは良かった。ペロったらいったい何を食べたのかしらね。」
「何でもいつもどおり餌を食べた後、急に具合が悪くなったようです。」
「ペロの面倒を見ているのはサンディよね。大丈夫かしら……」
ちょっと白々しいとも思ったけど十分自然な演技だろう。
「サンディさんというのはお友達ですか?」
「え、ええ。友達よ。」
確かに友達だった。でも友達だから許せないこともあるのよ。
「サンディさんは町長の怒りを買って地下の納屋に入れられてしまったそうですよ。」

「町長はペロを大切にしていたから何か罰を与えるつもりかもね。」
「……まさか絞首刑と言うことはないでしょうね。」
「コウシュケイ?」
「ああ、私のところでは死刑は首をくくるものと決まっているんですよ。」
「なんだか残酷ね。」
「すみません。もちろんサンディさんはそんなことにならないでしょう。」
さすがにあの町長でもそこまでするわけがない。
そんな会話を交わしたあと、私は自分の部屋に戻った。

48 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:52:04 ID:+RBulQR60
町の中は事件の話で持ちきりのようだった。
「うっふっふっ。サンディは 地下の納屋に閉じこめられたし……」
私の狙い通りね。
「これで邪魔者はいなくなったわ。もうジョセフは私のものよ。」
計画がうまくいっていることに私は部屋で悦に入っていた。
サンディがあんなことになって落ち込んでいるジョセフを私が優しい声をかける。
そうすればジョセフは私になびくはずだ。
すぐには難しいかもしれないがもう邪魔者はいない。
ゆっくり時間をかけて落とせばいい。

コンコン。

「誰!」
突然のノックに私は思わず大きな声を上げた。
「驚かせてすみません。」
ケージさんだった。
まさか今の台詞聞かれていないでしょうね。

「何の用かしら?」
「アマンダさんはサンディさんのお友達ですから伝えておいたほうがいいと思いまして。」
なにやらもったいぶったような言い回しだ。
「この事件についておかしなところがあるのですよ。」
「事件ってサンディがペロに毒を盛った事件よね。」
「いえ、まだサンディさんがやったと決まったわけではありませんよ。」
何を言い出すのかしらこの男は。
「ですから少し調査をしてみたいと思っているんです。」
調査? この男いったい何をしようというのかしら……

―続く―

49 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 02:38:03 ID:w5Mvdrti0
乙でした
古畑風?

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 03:11:59 ID:8ouNigOt0
乙です。
確かにアマンダさん、いろいろと挙動不審なことをおっしゃってますね。
事件のことを詳しい話を聞く前にやたらよく知っているようですし。
今後の展開が楽しみです。

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 08:42:08 ID:H0OMOp7m0
コロンボも古畑も犯人側に感情移入しちゃうんだよね〜

作者さん乙!続きの捜査篇に期待

52 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 11:39:56 ID:62m6t0P+O


53 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 21:00:55 ID:+enQABRA0
Rです。10時くらいから投下開始します。
慣れてない代替機を使っての投下なので、少々手間取るかもしれません。
ご了承ください。

54 :Stage.15 hjmn [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:07:06 ID:DFY+M6xr0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今日は僕の方、ゲームサイドですね。では前回のおさらいです。
   レイさんとランシールの試験に挑んだ僕は、魔王さんと話をする機会がありました。
   そこでこのゲーム世界には『未来』が無いということを知らされます。
   僕なりにちょっと考えがあったんで、勇者試験は土壇場でレイさんに譲りました」
アルス「その後こいつから俺に電話がかかってきて、俺の過去を話したら、なんか散々言われました」
タツミ「別に間違ったことは言ってないだろ? それではサンクスコールです」

アルス「>>371様、やりこんでるねぇ。同じドラクエ3の主人公としては嬉しいっす。
   こないだの雑談でも言ったけど、まったく気にする必要ないぜ」
タツミ「>>372様、重たい空気のままで終わりたくなかったので、ちょっと構成を変えました。たまには新鮮でしょ?」
アルス「>>373様、バラモスなぁ……あいつもループしてるうちになんか悟ったのかもな」
タツミ「>>374様も周回プレイ大丈夫ですよ。
   でも、僕も名前や性別を変えてプレイしてたらアルスもループしてなかったのかな?」
アルス「記憶を残したまま別人として繰り返されただけじゃないのか、>>374様の考察のとおりに」
タツミ「やっぱりそうか。>>376様、バラモスさんの株、急上昇だね。
   僕もちょっと話したけど、なんか魔王って気がしなかったな」
アルス「>>373様、タツミの過去って、俺が『夢』で見てたのとどう違うんだろうな。
   しかしあの正論ラッシュはいじめだよなぁ? いや正論だからなにも言えないが……」
タツミ「>>378様、↑こんなん言われてますけど、僕もなんとかしたいとは思ってます。一応」
アルス「一応ね」

55 :Stage.15 hjmn [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:09:47 ID:DFY+M6xr0

タツミ「>>380様、あー……4の主人公さんは、ループしたら大変そうですよねー」
アルス「お前、3以外のドラクエは未プレイじゃなかったっけ?」
タツミ「だったんだけど、中の人もナンバリングは全部やってるので番外では把握してる設定で。
   >>381様、5の人だったらキツイですよね〜。もしも僕の親が5を買ってきてたら……」
アルス「入れ替わった時点で本体ごと叩き壊されてたかもなw
   >>382様、Stage.9.5のアナザーサイドで出てきた青年社長だっけ」
タツミ「383様のおっしゃる通り、5って親子三代の壮大な物語ですからね」
アルス「>>384様、5以降は『勇者≠主人公』だもんな。6、7は職業だし。8もはっきりしないし」

タツミ「次は雑談のサンクスコール……なんですけど」
アルス「うちの作者が余計なことを書いてしまって、変に心配かけてすんませんした」
タツミ「詳しくは避難所で。>>595様、>>596様、ご心配おかけいたしました。今は元気ですよ〜」
アルス「>>594様、ご支援サンクスっ。このシリーズはサンクスコールの他に、
   たまに雑談や外伝が入るんだ。まとめて『番外』と言ってます」
タツミ「>>597様、DSのリメ発売、待ち遠しいですよね。リプレイ楽しんでください」

アルス「以上かな? たくさんのレスありがとさん!」
タツミ「いつも本当に励みになってます。今後もよろしくお願いしますっ」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.15 喧嘩と恋とエトセトラ(前編)】
 ゲームサイド [1]〜[10]

56 :Stage.15 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:14:02 ID:DFY+M6xr0
Prev(前スレ) >>337-368 (Game-Side Prev(前スレ) >>284-315)
 ----------------- Game-Side -----------------

「僕のMP、今のでどれくらい減ったのかな」
 現実の通話料に換算すると、けっこう減っちゃったかも。これ、もし最近のサービスを
利用してたらタダだったりしたんだろうか。思い出にこだわらないでさっさと新しい携帯
に機種変しておけば良かったかもしれない。

 窓の外に目をやった。今夜は満月。石畳の歩道と池を挟んだはす向かいの三角屋根から、
月明かりに照らされて怪しげな煙が立ちのぼっているのが見える。
 ここはレーベの村。試験を終えてランシールを出立した僕たちは、アリアハンに戻る前
にこの村に泊まることにした。ここらでちょっと骨休みしようという僕の提案による。最
初はアリアハンに直帰する予定だったのだが、魔王討伐中の勇者一行が地元をうろうろす
るのも気まずいし勝手のわからない街では落ち着けないから、レーベあたりが妥当じゃな
いか――という僕の言い分に、みんなも賛成した。
 それは建前で、なんのことはない。サヤお母さんに「絶対に合格するから」なんて大口
たたいちゃった手前、顔を出しづらいだけなのだが。

「ん、どうしたのヘニョ」
 ベッドに座っている僕の隣にヘニョがやってきた。なぜてやろうと手をのばしたら、思
い切ったようにピョンとひざに飛び乗ってきた。
 まん丸の目が僕を見上げている。なんだかまた心配されているようだ。
「さっきの電話かい? 大丈夫、別にケンカしてたんじゃないよ」

 しっかしあのバカ、よくもまあとんでもない勘違いをしてくれたもんだ。「三津原辰巳
のことはなんでも知ってる」とか言っておいて、まさかなにもわかっていなかったとは。
 父さんは単身赴任で? 母さんは僕に無関心? 友人やガールフレンドに囲まれてそれ
なりに楽しく暮らしてるって? はあ? 誰のことだよそれ?

 それねー、僕が思い描いていた『夢』なんですよ、アルセッドくん。
 アルスが同調(シンクロ)してたのは、現実の僕そのものじゃなくて、僕が「こうだったらい
いなぁ」と思い描いていた理想の自己像だったのだ。

57 :Stage.15 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:15:58 ID:DFY+M6xr0

 なにせ僕の場合、イメージ力が半端じゃないからね。僕のリアルな妄想を「現実」と勘
違いし、彼は「日本のごく平均的な高校生」と入れ替わったつもりでいたわけだ。ずいぶ
ん混乱したことだろう。

「そっか……知らなかったんだ」

 まあ、知らないならその方がいいんだけど。
 アルスのさっきの話を聞けば、僕の方がマシか?って気がしないでもないし。

 さてと、その辺の処理は後でやるとして――。
 レーベには明日いっぱい滞在する予定だ。全員フリーにしておいて、僕はその間にこっ
そり抜け出し、一人で王様のところに行こうと思っている。
 あれだけ言えば、アルスも大人しく言うことを聞いてくれるだろう。向こうの時間で明
日の朝まで、最低でもあと数時間は、絶対にモニタリングさせてはならない。

   ◇

 翌日は抜けるような晴天だった。
「――というわけで、かなり綿密なプランの練り直しが必要なんだよ。一日部屋にこもる
から、悪いんだけどみんな邪魔しないでね」
「了解ッス!」
 即答で敬礼するサミエルの後ろで、エリスとロダムは微妙な表情を浮かべている。
 エリスはわかりやすい。試験に落ちた僕をずっと気にかけているようだから、「今この
人を一人にして大丈夫かしら」とか、女性らしい心配をしているんだろう。うんうん、君
は本当に優しいね。
 ロダムはちょっと怖い。どこまで読まれてるのか……この人は勘がいいからな。

 そのロダム本人がふうっと息を吐いたことで、ことは進んだ。
「わかりました。では我々も一時解散ということで。私は博士を訪ねておりますので、な
にかございましたら、そちらへいらしてください」

58 :Stage.15 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:18:05 ID:DFY+M6xr0

 一礼して退室するロダム。昨日の夕食の時に、魔法の玉を作っているおじいちゃんが、
もとはアリアハンお抱えの発明家だと聞いた。若い頃ロダムも少し勉強を見てもらったこ
とがあるそうだ。
「んじゃ俺は、誘(イザナ)いの洞窟まで行ってます。たまにゃ顔見せろってうるさいんスよ」
 誘いの洞窟にいるおじいちゃんはサミエルの親戚の人なんだって。人口密度の低いアリ
アハンでは、たいていどっかこっかで血が繋がっているんだろう。
「では、私はアイテムの補充をしておきます。道具屋さんにいますから」
 エリスも渋々部屋を出ていった。宿には僕だけが残された。


 廊下に人の気配がなくなったことを確認し、ドアに鍵をかける。ベッドの下から隠して
いたキメラの翼を引っ張り出そうとしたら、なにか引っかかった。
「こらヘニョ、なにやってんの」
 キメラの翼に噛みついて放さないヘニョごと引っ張り出す。置いていかれると本能的に
理解しているのだろう。行くなと目が訴えている。
「いい子だから放して、ね? 別に大したことじゃない。すぐ戻ってくるから」
 現在の膠着した状態を打開するためには必要なことだ。
 半透明のとんがりをこちょこちょしてやると、ヘニョは諦めたように口を開けた。
「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるね」
 僕は窓を乗り越えて外に飛び降りた。二階の高さから地面に落ちるまでの間に、素早く
アリアハンに飛ぶ。

 アルスの実家の前を避け、僕はルイーダの酒場の横から店の裏へ廻り、城の外堀に沿っ
て歩いた。
 城門の近くまで来ると、僕に気付いた若い番兵さんがにこやかに声をかけてきた。
「ジュニアじゃないか、どうしたんだい?」
 たまにアルスのことを「ジュニア」と呼ぶ人がいる。僕はどうも好きじゃないんだが、
今はかまわずに用件だけを告げた。
「王様に会いたいんだけど、取り次いでもらえるかな」
 番兵さんは少し不思議そうな顔をしつつ、奥の詰め所に向かった。そうか、アルスは顔
パスで入城できるんだっけか。

59 :Stage.15 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:19:41 ID:DFY+M6xr0

 しばらくしてさっきの番兵さんが二人の兵士を連れて出てきた。おろおろしている番兵
さんに構わず、厳めしい顔をした兵士たちは両サイドから僕の腕をグイとつかんだ。
「まさか自ら戻るとはな」
 ドスの効いた声だが、なんとなく困惑している。僕がニセ勇者だということと例の「約
束」についてはトップシークレットのはずだから、たぶんこの兵士たちは、サヤさんと王
様が密会していたあの夜、王様の警護に当たっていたSPあたりだろう。
「追っ手を放つ準備をしていたが、手間が省けた」
 どういたしまして。税金を無駄遣いさせなくて良かったよ。

 すぐに牢屋に連行されるかと思っていたのだが、普通に謁見室に通された。
 この部屋の主役である国王はむっつりと押し黙り、ランシールの地下にあった石の人面
より無表情だ。重苦しい雰囲気の中、王様ではなくそばに控えていた大臣が口を開いた。
「……なにか申し開きはあるか」
「すみません」僕はぴょこんと頭を下げた。「落ちました」
 大臣が目を丸くする。広い謁見室は再び静まり返った。
「他に言うことはないのか!」
 たまりかねたように王様が怒鳴った。大臣が止める間もなくづかづか近づいてきて、僕
の襟首をつかんで無理やり引き立たせる。意外と背が高い人で、僕は爪先立ちになった。
王侯貴族なんてみんな貧弱だと思ってたけど、かなりの腕力だ。大勇者オルテガの親友だ
けあって、この人も実はそこらの冒険者より腕が立つんじゃなかろうか。
 なんて考えている僕に、王様は怒声を重ねる。
「この痴れ者が、ようもヌケヌケと現れたものだ! 貴様、よもや自分が吐いた言を忘れ
ておるのではあるまいな?」
「忘れてませんよ。手でも足でも好きに持っていけと言いました。――でも」
 僕は正面から王様を見つめた。
「言い訳はありませんが、ひとつ確認していいですか?」
 王様が手を離した。僕は再び膝を着くことはせず、立ったまま続けた。
 あの不条理な「約束」についての確認を。

60 :Stage.15 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:21:11 ID:DFY+M6xr0

「僕も当時は誤解してたんですけど、今回の本試験に落ちたからって『一級討伐士』の資
格が永久剥奪されるわけじゃないんですね。現地で違う討伐士の方から聞いたんですが、
一時的に特典が利用できなくなるだけで、残り9ヶ月で本試験に合格すればいいんだと。
なんであのとき教えてくれなかったんですか。っていうか、試験に落ちたら勇者じゃなく
なるという王様の言葉、あれは嘘だったってことですよね?」
「……」
 僕の言葉に周囲の空気がわずかに波立った。
「教えてくれたのはサマンオサの一級討伐士の方でしたが、その人と僕が競争になったの
は、王様のご指示だったんでしょうか」
「余ではない。退魔機構の議会が決めたことだ」
「やっぱりご存知だったんですね」
 王様の唇の端がピクリと動いた。
「……なにが言いたい」
「いえ。ずいぶん嫌われたものだなーと、そう思いまして」
 世界退魔機構の創設者であるアリアハン国王に、僕とレイさんの試験が重なったことは
すぐに知らされたはずだ。「面白そうだから競争させろ」なんて超法規的措置(ムチャクチャ)
を黙認し、この瞬間まで触れなかったんだから、王様もなかなか意地が悪い。
 別にみんながみんな、僕の味方をしてくれるなんて楽観してるわけではない。
 ただ――
「正直に言わせてもらいます。僕はあなたの干渉がとても面倒だ。これ以上僕にかまって
欲しくない」

「無礼者が!」
 脇にいた兵士が僕を絨毯に引き倒した。やり方を心得ているというか、顔面からいっ
ちゃって痛いのなんの。毛足の長い高級絨毯だというのに、口の中に血の味がする。落ち
着きなさいって君たち。
「ケン…カを売りたい、わけじゃない。前にも言ったように、僕はアルスを元の鞘に戻す
ことしか考えてないし。だから、王様」
 目の前のピカピカに磨かれた靴先に、僕は血に濡れた唇を押し付けてやった。
「好きなとこ持っていっていいんで……それで手を打ちませんか? サヤさんにも余計な
ことは伝えなくて結構ですから」

61 :Stage.15 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:23:11 ID:DFY+M6xr0

 このときの王様がどんな顔をしてるか見てやりたかったんだけど、僕はすぐに兵士に反
対方向に引きずられ強引に退室させられたので、それは叶わなかった。

   ◇

 今度こそ地下牢にブチ込まれた。さて王様はどうする気だろうか。
 実際問題、僕にはなにひとつ「罪」はない。
 王様<神様 という図式が成り立つこの世界で、ルビス勅命で『アルス』の名を継いだ
僕に詐称罪はあたらない。それはこの国を出立する前に目を通したアリアハン司法全書で
確認している(安易にルビスの遣いを称してるわけじゃないのだよ)。まあアルス本人か
らのご指名だとストレートに言えちゃえばいいんだけど、そうはしたくないからちょっと
ややこしいことになってるんだけどね。
 んで焦点は上述の真偽になるわけだが……ぶっちゃけルビスの遣いなんてデタラメなん
だけど、真実か偽りかを立証するにも、これまでの活動記録を洗うしかないわけで。この
時点で僕のしてきたことに問題は無いはずだ。
 だがここで、僕と王様はこれらとは無関係に「約束」を交わしている。
 その始末の付け方によって、僕の身の振り方も決まる。

「いて――」
 口の中が気持ち悪い。初ホイミを試そうかと思ったが、今後のことを考えるとMPの無
駄遣いは避けたいのでやめた。
 石作りの素っ気無い牢の中はランシールの地下を思い出す。自然とレイさんのことも。
 あの人は別れの間際まで僕のことをずいぶん気にかけていた。世界退魔機構へも、『ど
ちらが合格してもおかしくない接戦だった』と力説していたとか。

「やはり私は、この試験を譲られるべきではなかったように思うよ」
 出発前に「少し話さないか」と呼び出された神殿の裏。大理石の柱にすらっとした長身
を寄りかからせているレイさんは、絵画のように様になっていた。
「譲ったわけじゃないよ、僕が最後にハズレを引いただけ。内容的には間違いなくあなた
の方に軍配が上がると思うしね。なるようになったってことだよ」

62 :Stage.15 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:24:18 ID:DFY+M6xr0

 僕はちょっと大げさな動作で肩をすくめた。レイさんは黙っている。澄んだグレイの瞳
が、なにか物思いにふけるようにじっと地面を見つめている。
 なんとなく落ち着かなくて、ちらちらと横目でうかがっていると、ふいにレイさんが顔
を上げた。
「私はね、君のことが心配なんだよ、青少年。君はいつも、自分のことを二の次にしてい
る気がする。最初に会ったときからね」
 反論を封じるようにぴっと人差し指を立てたレイさんは、一瞬あたりをうかがうように
すると、僕の耳元に口を寄せてきた。
「私は一度会った人間は忘れない。君は『アルス』じゃないだろう?」
「え? ええと……」
 内心焦っている僕に、レイさんは笑みを浮かべた。
「安心したまえ、誰にも言う気はないよ。君が誰だろうと、そんなのはどうでもいい。た
だ私は――『君』が心配なんだ」
 真っ直ぐに僕を見つめて繰り返すレイさんの言葉は、胸に響いた。さすが『勇者』って
いうのかな。すべてを打ち明けて、寄りかかってしまいたくなるような。
 でも、今この人に言うべきことじゃない。僕には僕の、レイさんにはレイさんの役割が
ある。
「他に隠してることや困ってることはないのかい? 言ってくれ、力になるから」
 僕は黙って首を振った。レイさんはもどかしいような表情を浮かべたが、汲み取ってく
れたのだろう。
「わかったよ。じゃあせめて、本当の名前くらいは教えてくれないか」
「タツミ。変わってるだろ?」
「ふむ、タツミか。珍しいが、いい名前だ」
 神殿の表の方から、サミエルが僕を呼んでいる声が聞こえた。出発準備が整ったらしい。
「そろそろ戻るか。ま、なにかあったら連絡してくれたまえ。退魔機構に問い合わせれば
すぐわかるようにしておくから」
「うん、ありがとうレイさん」
 歩き出した東の二代目の後姿に、一人っ子の僕にもし上がいたら、レイさんのような人が
いいな、と思った。
 

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:28:50 ID:1qV9C+kH0
連投規制って今もあるか?支援

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:32:19 ID:DSehGOcU0
支援!

65 :Stage.15 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:34:10 ID:DFY+M6xr0

 ……牢獄はしんと静まり返っている。
 ここにいる人間の気配のすべてが、僕に集中しているのがわかる。事情を知っているの
は牢番だけで、囚人たちは「なぜ勇者が投獄されるんだ?」と興味津々の体で様子を見て
いる状態だ。
 やがて入り口が騒がしくなり、とうとう声がかかった。王様がお呼びだそうだ。手枷を
かまされた時点で下った審判を悟ったが、僕はいっさい表情には出さなかった。

   ◇

 連れて行かれたのは、ぐるっと高い石塀に囲まれた直径30メートルくらいの円形の広
場だった。赤茶色の砂をならした地面。ど真ん中にぽつんと設置されている、腰の高さく
らいの平らな石の台。他にはなにもない殺風景な場所だ。
 真っ青な空に目を細める。今日は本当に天気がいい。

 正面の上段に王様が立っていた。逆光でよく見えないが、先刻より小さくなってしまっ
たように思えた。
「もう一度聞く」
 どこか疲れた声で、王様は以前と同じ質問を投げてきた。
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
 僕の答えも以前と変わらない。

 たっぷり間を置いて。

「……利き腕はどっちだ」
「右、かなぁ?」
 実は両利きなのでどっちでもいいんだけど、そんなんで悩ませても時間の無駄なので、
僕はそう答えておいた。普通に応答している僕に、王様はさらに疲れた様子で、
「お前はなにを考えておるのだ」
 と大きくため息をついた。
 

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:35:00 ID:DSehGOcU0
支援

67 :Stage.15 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:38:28 ID:DFY+M6xr0

 僕が考えてることなんて、大したことじゃないですよ、全然。
 これは単なる…………嫌がらせ。

 そう、嫌がらせだ。
 王様の性格を考えたら悩んだと思うよ、この数時間。もう禿げ上がるくらいね。
 だって世界的に慕われている大勇者オルテガの親友だったんだろ? カッとなりやすい
性質(タチ)ではあるけど、冠を盗まれたどこぞの国王みたいに、そこまでテキトーな人間と
は思えない。サヤお母さんも「本当は優しい」みたいなこと言ってたし。
 そんな彼が嘘をついた。その場の勢いだったとしても、伝えるべき真実を捻じ曲げて、
僕を追い込んだ。
 しかし間違った前提で交わされた「約束」でも、国王直々に申し渡したことをおいそれ
と撤回することはできない。最初から恩赦も考慮にあっただろうが、僕が終始こんな調子
だからね。臣下は全員「容赦するな」って異口同音だったろう。
 だから彼はもう、身動きが取れない。彼が決められるのは刑の執行後のことだけだ。
この「約束」には、その後のことは含まれていないから。

 この世界で『勇者』の肩書きを背負っていくためには、世界退魔機構と無関係ではいら
れない。仮に今回の試験で合格していたとしても、僕がアルスのことを吐かない限り、王
様からいつまでも陰険な妨害を受けるのは目に見えている。
 だからここできっぱり決別を叩きつけてやるために、僕はわざと試験に落ちた。さすが
に決心までは時間がかかったが、アルスの話を聞けば、甘いことも言ってられない。
 王様にはご自分の不実にモヤモヤしていただきながら、今後の不干渉を取り付けさせて
もらおう。

 これが僕の、喧嘩の買い方だ。
 

68 :Stage.15 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:39:48 ID:DFY+M6xr0

 丸く切り取られた青空を、一羽の鳶が横切っていった。その姿が見えなくなるのを見計
らったように、王様がつい、と片手を挙げた。
 手枷が外された。目隠しをされ、石の台にうつぶせに肩を押し付けれた。
 高々と罪状が読み上げられる。小難しい用語を並べているが、要約すると大事な情報を
隠匿したので罰を与えて国外放逐にするとか、そんな内容だった。だいたい予想通りのと
ころに落ち着いたな。

 普通、こういうときに思い浮かぶのはユリコだったりエリスだったり、せめてアルスと
かロダムとかサミエルとか、そのあたりだろう。
 なのに、僕が真っ先に脳裏に描いたのは、レイさんだった。
 おいおい大丈夫かよ僕、と自分に突っ込んだ瞬間。

 それが――来た。
 
 

69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:42:39 ID:l6m+q2Sk0
支援

70 :Stage.15 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:42:51 ID:DFY+M6xr0
本日はここまでです。
やっぱり手間取りました;
ご支援ありがとうございました。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:52:18 ID:A1+p1/Sv0
おっつー
いいところで区切るとは続きが気になるではないか
タツミはどうなるんだろ?

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 23:04:08 ID:1qV9C+kH0
>>70
投下乙!
ちょwこんな気になるとこで終わるなよwww

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 02:42:42 ID:aYnTJyRVO
ここでまさかのパンツ登場

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 02:48:46 ID:ddNMrdCYO
タツミ早まるなww
頭いいくせに一旦キレると見境無く突っ走るタイプだなww

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 11:14:21 ID:CAINLQwn0
ここで切れるなんてwwwwwwwwww
カンダタより暴れそうだwwww

76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 21:27:07 ID:H4GWnXqM0
乙しかし引きがテラ卑怯wwwww

PC早く治るといいな

77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 04:25:07 ID:4Ej8WwJC0
にょわ〜^。気になって寝られないよ〜〜(wwwwww

78 :R ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 19:32:19 ID:446yyUOM0
Rです。勢いで書きあがったので連投いいですか?
10時ごろから投下予定。カブる場合は避難所にご連絡を。
本日はメ欄もチェックで。

79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 19:53:59 ID:Q/kAjOPyO
ダメと答える人がいるだろうか

80 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 19:55:00 ID:SmxGsr090
続きが気になっててモヤモヤしてたから嬉しいw

81 :Stage.16 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:08:45 ID:bvU2J8NF0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。なんか僕ってばピーンチ! だけどまぁそういうこともあるさね」
アルス「あるさね、じゃねぇ。結構イチ大事だろ、マジでなに考えてんだお前は?」
タツミ「さあ? たまに自分でもよくわかんないんだよね。ではサンクスコールでーす」

タツミ「>>71様、僕どうなるんでしょうね。平静そうにしてますが実は心臓バクバクいってます」
アルス「本当かよ? >>72様、ちょっとわざとらしい切り方だとは思ったんだけど、
   投下当日もあそこまでしか書いてなかったんだ。ぎりぎりまで次の展開を悩んでてさ」
タツミ「じゃあ>>73様の言う通り、このあとパンツさんが登場する可能性もアリってワケ!?」
アルス「あるあrwwwねーよwwwww」
タツミ「それ(・∀・)イイ! 実は僕、ひそかに総長さんとこのパンツさん大ファンなんだっ」
アルス「はぁ〜〜!!!???」
タツミ「名物鬼浜会議のボケボケ〜な発言とか、いつもお腹空かせてたりとか、なんかイイよねっ」
アルス「わからねぇ!! そこは普通に女勇者たんに萌えておこうよ!ねえ!!??」
タツミ「もちろん彼女もいいんだけど、『3の女勇者たん』と聞くと、なんかこう恐怖心が」
アルス「例のベホマ〜☆な彼女か。それにしたって……。
   >>74様、俺のプレイヤーはキレてなくてもどっか変な方向に突っ走ってる気がしますorz」
タツミ「なんだよ失礼な。>>75様、大丈夫です、うちにはカンダタなんてヤツぁいませんので、
   きっとパンツさんが大暴れしてくれます!」
アルス「いやカンダタいるから。パンツさんは総長さんとこの人だから勝手に遠征させちゃダメ。
   総長さんホントすんませんマジすんません、コイツにはよく言って聞かせますんで」
タツミ「そういえばアルスの性格判断って『くろうにん』だったよね?」
アルス「お前が苦労させてんだ! ……>>76様、新しいPCが来る前に俺が壊れそうです。
   そして>>77様、俺は別な意味で今後は安眠できなさそうな悪寒がします」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』

【Stage.16 喧嘩と恋とエトセトラ(後編)】
 続・ゲームサイド [1]〜[11]

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:11:45 ID:pvXk49cq0
私怨

83 :Stage.16 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:13:00 ID:bvU2J8NF0
 Game-Side Prev >>56-68
 ----------------- Game-Side -----------------

 「それ」は――相変わらずの勢いだった。

 入り口付近で制止しようとしているらしい兵士たちの情けない悲鳴が聞こえてくる。僕
の肩を掴んでいた執行役も加勢しに行ったので、起き上がって目隠しを外すと、陽光を鮮
やかに反射する黒い甲冑の戦士が、兵士の一人を軽々と投げ飛ばしていた。

 ……嘘だろオイ。マジで? このタイミングで来ちゃうの?
 いくら勇者だからってアンタ……デキすぎじゃね?

「これはどういうことだ!」
 レイさんの澄んだアルトの声が場を一喝する。後ろにはエリスたちの姿もあった。
「東の!?」
「いったい彼はなんの罪で裁かれているのだ? 誰にとっても無益だろう、これは!」
 出会い頭に世にも正論ブチかまされて、王様もたじたじになっている。引け目があるか
らなおさらだ。
「なぜそなたが……?」
 王様が逆に問い返すと、レイさんはふんと鼻を鳴らした。
「世界退魔機構が私と彼の競争を取り決めたときから、ずっと疑問だったんだ。そんな埒
外を、『公明』と名高いあなたが理由も無く看過するはずがない。その上、彼がアルセッ
ド=D=ランバート本人ではないと判明して、もしやと思ってね」
 たっぷり嫌味のこもったセリフを投げつけてから、僕には柔らかく笑いかける。
「決め手は君がわざと試験を譲ったことだがね、青少年。神殿の人間に確認したら、最後
の二つの宝箱の中身を変えることなどないと言っていたよ。まんまと騙されたな」
 そこチェックされたかー。その場の思いつきだったし、やはり無理があったかな。
「勇者様! あなたはどうしてこう、全部ひとりで片付けようとするんですか!」
 我慢できなくなったようにエリスが駆け寄ってきた。
「最初から私たちを頼ってくださったら、もっといい解決方法がいくらだって、い、いく
らだって……もう! もうこのバカ勇者! バカ! バカバカ!」
「うわわ、ごめん泣かないでエリスっ。僕もまさかこんな――いったぁ!」

84 :Stage.16 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:15:24 ID:bvU2J8NF0
 今度はスパコーンと頭を叩かれた。
「ロダム、杖は痛いよ……」
「じゅーぶん加減しておりますよ。まったく、サミエルが忠義をのけて明かしてくれなけ
れば、我々は知らぬ間に後悔させられるところでしたぞ?」
「宿を出たフリしてすぐ戻ったってのに、部屋はもぬけの殻で俺も焦ったッスよ」
 ええっ? 3人のうち誰かが王様から見張りを命じられてるのは察していたが。
「もしかして僕の『監視役』って……」
「俺ッス。試験に落ちたって報告した途端、逃げないように取り押さえろって指令が来て
びっくりッスよ。本人に戻る意思があるからって、様子見に徹してたんスけど」
 サミエルは悪びれもせずうなずいた。てっきりロダムが監視役だと思ってたけど、サミ
サミってば意外と役者?
「でも俺はありのままのことしか伝えてないッスよ。『アリアハンの一級討伐士として相
応しい行動をしている』って。なのに、たかが試験に落ちたくらいでなんスかこれ。失礼
ながら王様、俺もうこの役、降ろさせてもらいますね」
 最後はキッと主君を睨みつけるサミエル。
「わ、わきまえろレイトルフ!」
 目を剥く王様に、サミエルは涼しい顔をしている。その隣にエリスとロダムが「自分も
同意だ」とばかり無言で並ぶ。クビ確定、ヘタをすれば反逆罪で逮捕される可能性だって
あるのに……。

「さて、私も少し格好つけるとしようか」
 うるうるしている僕の肩をぽんと叩いて、レイさんが一歩踏み出した。優雅な動作で膝
を着き、「騎士の礼」を取る。
「王よ。ルビス勅命という彼の言葉が信じられぬなら、私が神命に誓って保証する」
 堂々と宣言する一級討伐士に、王様は息を呑んだ。しかも――、
「どうしても許されないなら、代わりに私の腕をもげばいい」
「なに言ってんのレイさん!?」
 これには王様どころか、エリスたちや周りで成り行きを見守っている兵士たちも驚いた。
当たり前だ、他国の『勇者』が簡単に口にしていいことじゃない。
「レイ=サイモンともあろう者が、この紛い物ごときになぜ……」
「そうだよ! 無関係のあなたがそこまでする義理はないでしょ?」

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:16:21 ID:pvXk49cq0
四円

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:16:31 ID:SmxGsr090
支援

87 :Stage.16 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:18:30 ID:bvU2J8NF0

 今回ばかりは僕も王様と同意見だ。慌ててレイさんの腕を引っ張って、撤回してくれと
訴えた。

 するとレイさん。ちょっと首をかしげると、僕の両肩に手を置いて、静かに告げた。
「無関係なんて言わないでくれ。惚れた弱みというものだよ、青少年」

 ……はい?

 ブッ飛んだセリフを僕の脳みそが理解する前に、強く抱きしめられた。
「んんっ――!?」
 唇に柔らかい感触が重ねられる。最初こそジタバタしたが、剣一本でモンスターの大群
を蹴散らすような相手になんの抵抗ができようか。
「……んん…ん……」
 しかもあれだ。大人のチューってやつですか? 何度も角度を変えてついばまれている
うちに、そのせいなのか単に酸素不足なのか、頭がボーっとなってきた。

「ん……っふ…ぁ…」
 ようやく解放されたときには、ろくに立っていられなくて。しなやかな長身にすがりつ
くように身体を預けたまま、ぼんやりしている頭を振る。
「すまない。でも好きなんだ。初めて逢った時から、ずっと」
 耳元で熱っぽく囁かれ、のろのろと視線を上げると、端正な顔が間近で微笑んでいた。

「レイさん……僕は……」
 どうしよう。急にそんなこと言われても。
 困った僕が振り返ると。
 



 全員が (OдO) という顔で固まっていた。
 

88 :Stage.16 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:21:46 ID:bvU2J8NF0

「いやぁああ!! うちの勇者様にナニしてくれやがってんのこの人ぉ!?」
「こンの変態が勇者様から離れろぉ! ってスリスリするなぁあ!!」
「だってカワイイんだもん。あ、こら返せ」
 サミエルが僕の服をガシッとつかみ、レイさんから一気に10メートルくらいズザザザッ
と引き離した。
「大丈夫ですか勇者様!? ああ可哀相に、びっくりなさったでしょう」
 エリスなんか、まるで交通事故に遭いかけた幼い我が子を心配する母親のようだ。さっ
き腕が切られかけていたときより激しくないか? 仲間たちのものすごい剣幕に、僕もど
う反応していいのやら。
「えっと、そ、そりゃびっくりしたけど。変態は言いすぎじゃあ……」
「勇者様!? まままままさか」
「本気ッスか!?」
 サーッと青ざめる二人に、ロダムだけはいつもの穏やかな口調で、
「落ち着きなさいエリス、サミエル。混乱してはなりません。ほら、衆道も武士の嗜みと
申しますし??」
「武士ってなんスかー!? あんたが一番混乱しとるわ!」 
 アリアハン第二近衛隊副長に蹴飛ばされて転がる宮廷司祭殿。散々な言われようにも関
わらず、レイさんは楽しそうに笑っている。
「ははは、厳しいね。私はそんなに不釣合いかな?」
「うがー!! まだ言うか! 叩っ斬るぞ変態勇者!」
 ちょっ、そりゃいくらなんでも言いすぎだ。
「やめなってサミエル! た、確かに僕とレイさんは……」
 世間一般では受け入れられないのはわかるよ。でも、
「一回りくらいの年の差ならアリだとおm」
「「「そこじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」」」
 なにそのツッコミ。
「いや俺らだって、勇者様がその気だってんなら応援してやりたいッスよ?」
「でもここはグッとこらえてください。流されてはいけませんっ」
 半泣きで必死に説得する仲間たちは、まるで身分違いの恋をした主君を必死に諌める臣
下のようなぁ〜ってもううまい比喩が見つかんねーよ、なんなんださっきから! お前ら
偏見持ちすぎだっつーの!

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:23:52 ID:pvXk49cq0
しえん

90 :Stage.16 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:24:52 ID:bvU2J8NF0

「エリスもサミエルもいい加減にしろよ、あんまり失礼だろ!」
「ですが殿方同士の恋愛なんて宿スレ的にブッチぎりでアウアウじゃないですかっ。巣に
帰れって大荒れするに決まってますでしょう!?」
「確かにビジュアル的にはちょいヤバかもだけど、どうせテキスト表現なんだから設定が
女性ならセフセフじゃないのかよ!?」
「そりゃこいつが女なら……………………………………え?」

 全員がいっせいにレイさんを振り返った。
「「「お、女〜!?」」」

 本人は腹を抱えてゲラゲラ笑い転げている。
「アーハハハハハ! か、彼らを責めてはいけないよ、青少年。君のその鋭い観察眼が、
他の人間にも備わっていると思わないほうがいい」

   ◇

 なんと、みんなレイさんのこと本当に男だと思い込んでいたらしい。
 おいおい、普通わかるだろ? 注射とかで改造してるわけじゃなし、どうしたって違和
感あるじゃん。そんなのマンガとかゲームの話だけで

 ……ゲームだった orz

「いつから気付いてらっしゃったんですか?」
 まだ半信半疑のような口調でエリスが聞いてくる。
「最初から。僕はてっきり公然の秘密なんだと思ってたよ。だからレイさんのことも一度
も『彼』とか『彼女』って言ったことないし」
 僕の言葉に3人は「えっ?」と顔を見合わせた。
「前スレ! じゃない、前の前のスレだっけ?」
「とっくにdat落ちしてるわよ。まとめサイトまとめサイト!」
 ちなみにレイさんの初登場はStage.11の中盤からですが。

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:26:16 ID:SmxGsr090
支援

92 :Stage.16 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:28:27 ID:bvU2J8NF0

「本当だ……マジで言ってないッスね」
「そのせいでたまに文章が不自然になってますな」
 うるさい、仕方ないじゃないか、僕だって気を遣ってたんだ。

 原作ではレイさんにあたるNPC(ノンプレイヤー・キャラクター)は、はっきりと「サイモンの息子」
と言っている。にも関わらず女性だったから「また設定がズレてるなー」と思ったのだ。
最初はこんなハンサムなおねーさまが存在していいのかって驚いたもんだよ。
 聞けば本名を伏せてるとか、有名人っぽい苦労してるらしいし、僕も曖昧にしておいた
方がいいだろうと判断したんだけどね。

 こみ上げる笑いを抑えつつ、その「彼女」はカードサイズの金色のプレートを取り出し
た。アルスも持っていた、一級討伐士の身分証だ。
「いちいち説明するのも面倒で、今は男で通すようにしているが。この通り世界退魔機構
には『レイチェル=サイモン(女)』で登録されているよ」
 決定的な証拠を見せられ、サミエルとロダムはようやく安心したようにうなずきあった。
エリスはまだジトーっとレイさんを睨んでいるが、不機嫌な彼女をよそに、サミエルは当
然のごとく次の矛先をこっちに向けてきた。
「そうなると、勇者様はどうなんスか〜?」
 ニマニマしつつ僕をヒジで小突く。ロダムも同じ顔だ。
「しっかり見せつけられてしまいましたしなぁ。おや勇者様、耳まで真っ赤ですぞ?」
「あ、当たり前だっつーの……」
 さっきは照れる間もなく大騒ぎになったけど、僕だってまだ16なんだぞ、そこまで耐性
できとらんわい。

 でも返事はしないとな。マジでどうしよう。ったく、こういう色恋沙汰とか、ドラクエ
らしからぬ部分はやっぱり僕の担当らしい。
 正直、レイさんみたいに男顔負けのカッコイイおねーさまがお相手じゃ、どう考えても
恋人ってより弟かツバメがいいとこだ。僕だって男だぜ、そんな年上にいいように翻弄さ
れるなんて…………まあ…………悪くないかな……

93 :Stage.16 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:32:29 ID:bvU2J8NF0

「ぬぅあぁにを考えていらっしゃるんですか、勇者様ぁ?」
「もちろんどうお断りしたら角が立たないかなーってことだよははははは」
「当然ですわ。勇者様には重大な使命があるんですもの、女にうつつをぬかしてるヒマな
んざありませんわよねぇ?」
 にっこり。
 エリス怖いよ。
「あー、ということで……レイさんゴメンなさい」
 僕は腰から90度で頭を下げた。
 いやまあ、僕の年齢では不純異性交遊になるし、そうなるとやっぱり宿スレ的にヤバイ
気もするし、だからといって成熟した女性にずっとプラトニックでいてくれというのも酷
な話だし、僕だってアレがコレでソレだから、いろいろと……ねえ?

 レイさんは一瞬すごく切なそうな顔をしたが(本当にごめんなさーい!)、すぐに笑顔
になった。
「まあそうだろうな。いいさいいさ、悩ませてすまなかった」
 が、またもやとんでもないことを言い出した。
「でもせめて、しばらくは一緒に旅をさせてくれないかな?」
 え? つい身構えてしまった僕に、黒の剣士はひらひら手を振る。
「諦めは早い方だよ。信じてくれ、誓ってもう手は出さないから」
 途端にうちのパーティは祭り状態になった。
「信じられません! 絶対また勇者様になにかするに決まってるわ!」
 猛反対するエリスに、さっきまでの拒絶っぷりはどこへやら、女性と判明した途端すっ
かり肯定派に回ってしまったサミエルが反論する。
「そこは信じてやれよエリス、レイさんは嘘をつくような人じゃないだろ。それに東の二
代目が入ってくれりゃあ百人力だぜ。なあロダム」
「そうですな。先ほどのように勇者様個人に私的感情で近づかれては全体の士気に関わる
ので私も賛成しかねるが、あくまでメンバーとして加わっていただけるなら問題ないので
は。レイ殿は呪文についても造詣の深い方だ、我々も学ぶことが多いでしょうし」

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:35:51 ID:SmxGsr090
しえん

95 :Stage.16 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:37:18 ID:bvU2J8NF0

 中立だったロダムも今はサミエル側のようだ。確かにアレやコレやを置いとけば、純粋
な『戦力』としては桁外れだからな。
 仲間になだめられ、エリスは口を尖らせている。だが彼女も変に意固地になるような子
ではない。ギュッと目を閉じた後、レイさんに向き直った。
「あなたほどの実力者にご協力いただけるなら、我々の方こそ頭を下げるべきだと思いま
す。ですが申し上げた通り、勇者様は重大な使命を背負われています。ですから……その
妨げとなさらぬよう、それだけは気を付けてくださいね」
「もちろんだとも」
 わーっと歓声があがり、パチパチパチとサミエルとロダム、さらには成り行きを見守っ
ていた兵士さんたちも盛大な拍手を送る。
「素晴らしい。それでこそエリスですな」
「改めてよろしくッス、レイさん!」
「こちらこそ」
 あっという間に和気あいあいムードができあがり、「今夜は歓迎パーティーだ!」とか
はしゃいでいる。とりあえず一件落着のようだね。良かった良かった。

 ま、ただ一つ言いたいとすれば。
 僕の意見はまったく無視ですかそうですか。
「いいけどさー……」
 今後うちのパーティのリーダーは、間違いなくレイさんになるんだろうな。



96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:39:46 ID:SmxGsr090
紫煙

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:41:03 ID:2Q8ycesi0
支援

98 :Stage.16 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:42:16 ID:bvU2J8NF0




 ……と、和やかに帰りかけた僕たちの背後から。

「ま、待たんか皆の者おぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 魂の底から搾り出すような絶叫が響いて来た。

「まだこっちの話は終わっておらんぞ! 空気読んでずっと黙っていたというに、最後ま
でシカトとはあんまりではないかぁ!!!」



 (OдO)…ア 



 やべ、王様のことすっかり忘れてた。


 

99 :Stage.16 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:45:04 ID:bvU2J8NF0
 ----------------- Real-Side -----------------

 ……何時間経っただろうか。寝ようと思っても、意識は冴える一方だった。
 ベッドの中で何度も寝返りをうっていた俺は、我慢できなくなって身体を起こした。

 さっきの電話。ヤツが俺に叩きつけてきた言葉のうちの、9割は嘘だった。
 ヤツの癖なんだろうが、タツミがわっとまくし立てるのは、本心を隠したいときだ。俺
を責めるその内容はいちいち正論だったが、口に出している方は心にもない言葉を並べて
いるだけで、そんなことは考えてもいない……声から相手の心情を読むのが得意な俺には、
それがはっきりと伝わってきた。

 本音は、わずか二箇所。
『僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
『友達になりたいって、今でも思ってる』
 そこだけだったのだ。
 わからない。タツミは俺のことを、まったく恨んでいないのか? 

 テレビ台の下に押し込んだゲーム機本体の電源ランプが、小さな赤い光を放っている。
ヤツと俺の命綱としてはあまりに頼りない。
 ベッドを降りて、投げ出していた携帯とテレビのリモコンを拾う。
 もう少しだけ、話してみようか。そう決意して俺は画面に向けてスイッチを入れた。

 ブンと音がして、茶を基調とした鮮やかな光彩が部屋を染めた。限界まで絞り込んだ音
は「王宮のロンド」。ほぼ画面いっぱいをうめる砂地の円形の広場の中心に、タツミたち
4人組と、黒装の剣士(レイに違いない)がおり、彼らを挟むように正面に王様、後ろに
数人の兵士が控えている。
 どこの城だろう。幼い頃に見た気もするが、実際の風景とゲーム画面は別物なので、はっ
きりとは思い出せない。
 まあ本人に聞けば済むことだ、と携帯に目を落とす寸前、「ティロロロ」というテロッ
プの表示音が流れて、俺は反射的に画面を見た。
 そこで俺h


100 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:47:17 ID:SmxGsr090
試演

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READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
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