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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

426 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2008/12/01(月) 20:27:16 ID:K6pfAKCP0
タケ「それにしてもどの世界共通やな。貴重な本のゲットできたんやし。中々高レベルやな。こっちも。」
もょ「そ、そうなのか?」

タケ「ほほう。もょも興味が出てきたのか?」
もょ「ち、ちがっ・・・・・・」

タケ「恥かしい事やないで。男なら誰もが通る道や。もょも今は思春期の年頃やし。ふんふん。なかなかええ眺めやね。」
もょ「だ、だから・・・・」

タケ「これなんか見ろよ。ムーン以上のナイスバディやで。くー!なかなかええ体系しとるわい。」
もょ「み、みせてくれないか?・・・・な、なんかドキドキしてきたぞ・・・・」

タケ「おっ!それが男の本能やで。ハメを外してはアカンけどな。それにしてもどれもこれもけしからんなぁ〜ケケケ。」









ムーン「ふーん・・・・確かにけしからんわね。特にあんた達が。」









 タケ「げぇっ!関羽!!じゃなくてムーン!い、いつの間に・・・・?」

ムーン「・・・・一体何しているのよ・・・・・しかもエロ犬と一緒に・・・!!」

 タケ「あのー・・・・・後ろから何かが見えるんですけど・・・・もしかして怒ってます?」

427 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2008/12/01(月) 20:29:10 ID:K6pfAKCP0
  *「クゥ〜ン・・・」

 タケ「お前はさっさと逃げろ。これは俺等の問題やから。」
 もょ「ちょ、ちょっとまて!おれもはいっているのか!?もとをいえばタケがほりだしたから・・・」

 タケ「しゃーないやろ!一心同体なんやから。諦めろ。」
 もょ「じゃあおれはひっこむ!」

 タケ「せ、せっけー!お仕置きを食らうのは俺だけかい!潔く諦めんとアカンのかい・・・・」
ムーン「覚悟はいいわね?」

 タケ「け、結果的にはあのワンコのお陰で手っ取り早くラゴスの情報が得たんやけどな〜」
ムーン「何ですって?」

 タケ「(食付きやがったな)お仕置きするんやったら黙秘したろっかな?それよりムーンは収穫出来たのか?」
ムーン「・・・・・・全く駄目だったわ。そんな事よりも卑怯よ!」

 タケ「しゃーないやろ!処刑が怖いんや!取引せーへん?ここはひとつ穏便に・・・・」
ムーン「わかったわよ。もう!」

 もょ「(ナイスだ!タケ!)」
 タケ「(ちょろいもんや。なーに、うまーく話を纏めるさ。)」

俺は手紙とけしからん本について話した。
けしからん本に関してはラゴスを信用させるための切り札になると言う事で処分は免れた。
しかし・・・・

ムーン「この本に関しては私が預かることにしたわ。」



 タケ「何でやねん!そりゃきっついがな!俺の本が!けしからん本が!!心の友が!!!」



ムーン「何が心の友よ!このスケベ!」
 タケ「スケベで何が悪い!これは男のロマンや!女が入る隙間は無ぁい!!」

ムーン「偉そうに屁理屈ばっかり言って・・・・処分するわよ?」
 タケ「そんな殺生な!!やりすぎや〜・・・」

あーあ、性欲を持て余しているのにキツイ仕打ちですよ。旦那。

428 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2008/12/01(月) 20:30:34 ID:K6pfAKCP0
  *「ガルルルルル・・・」
 タケ「お、お前何しにきたんや?俺等は大丈夫やで。」
ムーン「な、何よ・・・?」

その犬はまたまたムーンに飛び掛った!しかも今度は服をグイグイ引っ張って脱がそうとしている。
 
 タケ「おっしゃ!グッジョブや!もっとやったれ!」
ムーン「な、何とかしなさいよ!いい加減に離れなさい!このエロ犬−−!!」

流石にこの光景を眺めていたかったのだが後が怖かったので骨付き肉を買って犬にあげる事にした。
犬は服を脱がすのやめて肉に勢い良く食べかかった。

ムーン「もう!あと少し遅かったら危なかったわ!」
 タケ「チッ!あともう少しやったのに。」

ムーン「・・・・何か言った?」
 タケ「何もございませぬ。お嬢様。」

ってな感じでザハンからぺルポイに向かう事になりました。チャンチャン♪





429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/01(月) 20:36:49 ID:AdYt1U+f0
連投規制ってまだあるのかな?
とりあえず支援

430 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/02(火) 03:24:31 ID:PrPEVTe00
レッドマンさん、投下乙でございます。
ちょwwwwエロ本wwwww
犬さんもナイスです。


431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/02(火) 09:16:48 ID:mhn0/6HQ0
クソワロタw
確かにドラクエの世界ではエロ本は貴重だな。
くやしがるタケの気持ちが理解できる。


432 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:13:15 ID:1zP7a46H0
お久しぶりのGEMAです。
第17話前半部分を投下します。

LOAD DATA 第16話>>204-211

433 :鏡花水月の想【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:15:35 ID:1zP7a46H0
「だぁ!こっちはまた行き止まりだ!!」
「こっちの扉は…さっきと同じ道か。おのれ、ここは魔窟か!?」

俺達は今、かつてない難易度の迷宮を彷徨っている。
行く先々を阻む無情な白亜の壁。無限に続くかのような堂々巡り。
神の塔も、魔物の棲家も、俺達をここまで苦しめはしなかっただろう。

―ルラフェンの町―
それがこの巨大な迷宮の正式名称。
ポートセルミから西に存在するこの町は、周囲を深い森に囲まれており、
獰猛な魔物が跋扈する危険な地域。
そんな地域でありながら、自衛力を持たぬ人々は町の周囲を強固な壁で囲い、
町の中にも岩と煉瓦を積み上げ、入り組んだ迷路のような要塞都市を作り上げた。

なるほどねぇ。魔物の一群が襲ってきても、この迷路みたいな町を彷徨ってるうちに
嫌になって殺る気を削がれちまうかもしれないなあ…
ただ、ヘタしたら自分達の逃げ場がなくなるんじゃね?

へとへとになってようやく辿り着いた一軒家。
町の中心に位置する古代魔法の研究をしている爺さんが住むという家。
古代魔法の知識を得れば、長い旅の助けになるだろうというサトチーの意見で、
この迷宮のような街を延々彷徨っていたってわけ。

「や…やっと着いた…もう足が限界…ぐふっ」
「ホント、凄いねえ。まさかここまで難解な町の造りだとはねえ」

精根尽きはて座り込む俺を見て、他人事のような感想を漏らすサトチー。
生真面目なピエールは思案のしすぎで兜から蒸気を上げている。

町に到着した時は燦々と俺達を照らしていたお日様は、
気づけば既に西の空を赤く染め始めている。

434 :鏡花水月の想【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:18:06 ID:1zP7a46H0
「ふぉっふぉっ…そりゃ難儀じゃったろう。この町に住む者ならともかく、
 旅人がうっかり路地に迷い込んで一晩中彷徨うのも日常茶飯事じゃて」
「はは…僕達が数時間でここに辿り着いたのは運が良いほうなんですかね」

古代魔法の研究を見学したいと申し出た俺達を快く家に招き入れた爺さんが、
さも愉快そうに笑いながらお茶を注ぐ。

テーブルの上。お茶を煮立てるポットの横で、ドブ色の液体が火にかけられ、
ゴボゴボと灰色の蒸気を上げるのも妙な光景だが、差し出されたそのお茶は
香り高く、ほんのりとした甘さが疲れた体に心地よい。

「ふむ…それでは、わしの研究する古代魔法について説明するかのう…」

疲れた体に若干の英気が戻ったころ、爺さんが静かに口を開いた。

               ◇

ごりごりごりごり…

「お前さんはなかなか筋が良いのう。思ったよりも仕事がはかどるわい。
 わしみたいな非力なジジイじゃと、調合はともかく力仕事は難儀でのう」

ケミカルな匂いの立ちこめる薄暗い部屋。やたら大きな器数個分に詰め込まれた
妙な色の草やら、臭い丸薬やら、ぞわぞわ蠢く破片やらを潰して砕いて粉末にして…
サトチー達は実験に必要な最後の材料を採取しに西の草原へ出かけ、
俺はこの家に残って、爺さんの助手をしている。

「うし。こっちの器はおしまい。次は何をすればいい?」
「いや、もう充分じゃ。あとはサトチー達が最後の材料を持って来るのを待つだけじゃ」
「助かった。いや、さすがに腕がパンパンだわ」
「ふぉっふぉっふぉっ…お前さんのおかげでずいぶん楽できたわい。
 あとはわしに任せて、お前さんは少し休むがええ」

435 :鏡花水月の想【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:22:18 ID:1zP7a46H0
怪しげな色の液体がグツグツと煮え立つ釜の前、爺さんが真剣な目つきで
様々な粉末を綿密に計量し、窯の中に放り込んでゆく。

「…なぁ爺さん。一つ質問。その…ルーラって魔法だけどさ。
自分が行ったことのある場所だったら、どこにでも行けるわけ?
それが、どんな遠くでもさ」

瞬間移動魔法『ルーラ』
距離を超越し、遠く離れた場所まで一瞬で移動できる失われた古代魔法。

―その魔法があれば、残された奴隷達を救い出すのも簡単だろう。
いや…もしかしたら…元の世界に帰る事も…

「ふむ…確かにその通りじゃ。お主が行った事のある場所であれば、
 どんなに距離が離れていようとも一瞬で移動できるわい」

僅かに揺れる天秤の針を見つめながら爺さんが答える。
それは、俺が最も期待していた答えで…

「ただし『どんなに遠くでも』と『どこにでも』というのは別じゃのう」

そして、期待通りの結末ってのにはなかなかお目にかかれないわけで…
期待通りではない回答を爺さんが続ける。

「まずは、ルーラという魔法の原理から説明が必要かもしれんのう。
 そもそも、この魔法の定義は『対象の瞬間移動』と認識されていたようじゃが
 その定義からして最初の誤りじゃて。
 …例を出したほうがわかりやすいかのう」

立ち上がった爺さんは俺の目の前に白と黒、二枚の紙を並べ、
白い紙の上に小さなボトルを置いた。

436 :鏡花水月の想【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:26:32 ID:1zP7a46H0
「このボトルをルーラの術者。白い紙が現在地。黒い紙が目的地だとしてじゃ。
 お主はルーラの定義をこう解釈しているのじゃろう?
 ボトルを白い紙の上から黒い紙の上に移す…」

ことり…と、小さな音をたててボトルが黒い紙の上に置かれた。
ルーラが『瞬間移動』の魔法である以上、これ以外の解釈なんてないだろ?

「ふぉっふぉ…釈然としないようじゃのう。ではこれならどうじゃ?
 ボトルは動かさず、白い紙と黒い紙の場所を入れ替える…」
「…あ」
「理解したようじゃのう。これがルーラの本当の定義じゃ。
 人々が解釈を違え、誤った解釈を人々が広めたが故にその本質から逸れた魔法。
 ルーラという言葉の意味を引き出せなくなった以上、遺失するのも当然じゃの。
 この魔法の本来の定義は…もう言わんでもわかるのう?」
「…『術者』の移動じゃなくって、術者の立つ『場所』を入れ替える魔法…」

俺の答えに爺さんが満足したように頷き返す。
ボトルは1ミリも動かず、目的地である黒い紙の上で炎の光を僅かに反射している。

「厳密に言うならば『場』ではなく『座標』じゃがの。
 考えてもみい。『対象の移動』だとするならば、行ったことのある場所という
 制限もいらんはずじゃ。
 自分の現在地の座標と目的地の座標を正確に把握し、視覚化できておらんと
 ルーラは何の効力も発揮せん」

ルーラの定義は理解できた。だけど、今の俺にそれが何の意味を持つ?

真っ暗な樽で漂流した俺が神殿の座標を把握しているはずもなく…
元の世界の座標なんて知り得るはずもなく…
救いたい人達も救えず…帰りたい場所にも帰れず…

437 :鏡花水月の想【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:32:32 ID:1zP7a46H0
「…ルーラにはこんな逸話が残っておる。」

ぼんやりと無力感に包まれる俺の意識を爺さんの声が呼び戻す。

「古代文明でルーラという魔法が派生し、文明は大いに栄えた。
 じゃが、ルーラが広まるにつれ、次第に人々は歩く事を忘れていった。
 歩く事を忘れた人々は。その場で立ち止まったまま前に進むことを忘れた。
 前に進むことを忘れた文明は緩やかに衰退し、緩やかに文明が滅びるとともに
 その魔法も姿を消した…サトチーやお前さんはそうはなるまいて。
 わしはお前さんらの旅の目的は知らぬが、ここまで歩いてきたのじゃろう?
 じゃったら、この先も前に進む事ができるはずじゃ。違うか?」

前に進む…
そうだ、俺には…俺達にはそれしかできない。
あの神殿から逃げ出してここに辿り着いたんだ。神殿に繋がる道はどっかにある。
世界中を回れば、何だって見付けられる。何だって見付けられないわけがない。

きっと…元の世界に帰る道だってどっかに繋がってる。

パンッ!…と、両膝を叩いて気合いを入れる。

「当然だろ。こちとら長い奴隷生活で足腰は鍛えられてるんだ。
 一週間でも一ヶ月でも世界中歩き回ってやるさ」
「ははは…昼間この町で迷ってクタクタになってたのは誰だっけ?」

扉が開き、静かな月明かりとは別の温かい光源が薄暗い部屋をわずかに明るくする。

「お待たせしました。ルラムーン草を採ってきました」

サトチーの手に握られた一束の草が、水に映った月のように優しい光を放つ。
その光はまるで真っ暗な道を照らすランプのようにほのかでいて力強い。

438 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/12/02(火) 23:36:08 ID:1zP7a46H0
17話前半はここまでです。
次回はルーラの復活と……です。

5世界でルーラが失われていた理由とその原理について考えてみました。
小難しいことを考えと筆が遅くなる…反省

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 00:08:30 ID:9upw/8Z80
待ってましたあああああああ!!!!!!!!!!!
ルーラの定義面白い!

確かに物理移動の魔法ならメクラ飛びも出来るはずですねえ
考えたこともなかった(^^;)

440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 10:04:48 ID:PpRmbj4m0
GEMAさんも復活か!!
こりゃー面白い年末になりそうだ。
レッドマンさんのシリアス路線とおバカ路線の両方が楽しめるし。

作者さんが来るのは何だか嬉しいもんだ。


441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 10:07:27 ID:FIKZbF0u0
乙です!今回も楽しませていただきました!

>次回はルーラの復活と……
……の部分が激しく気になるw

442 :携帯まとめ人【重要】:2008/12/05(金) 11:26:43 ID:As0051Ga0
いつも楽しませていただいております。
このたび「保管庫@モバイル」のアドレスが変わりました。
ブックマーク(お気に入り)等の変更をお願いいたします。

【もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら保管庫@モバイル】
http://dqinn.roiex.net/

便利にご利用いただけるよう頑張りますので
今後ともよろしくお願いいたします。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/06(土) 08:33:53 ID:ZYQT49KK0
>>442
乙。それにしてもエロ本は確かに新鮮味があるなぁ。
しかし心の友まで言うかw


444 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/06(土) 10:22:12 ID:CJ4Vub1b0
>>438
待ってました! ルーラの解釈とかイサミの軸がぶれてないところとか、
相変わらずサトチーの柔らかさとかそれぞれのキャラの立ち方とか
ほんと大好きだ。息止めて読み入っちまった。

>>442
いつも乙です。


445 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:36:17 ID:1lxK6q9kO
>>419の続き

「あの子、そんなに強いんですか?」
誰もいなくなった酒場でルイーダ姉さんと二人きりになれたというのに、俺の興味は先程の少女に完全に奪われていた。
「え〜っとそうね、前にもあの子ここへ来たのよ。あなたがここへ来てくれるようになるより前のことね。」
「何かしたんですか?」
「仲間を探しにきたの。」
「仲間?」
旅に出る仲間?あんな幼いのに?つーかなぜ客はあんな怯えていたんだ?
割れた酒瓶や食器などをひとまとめにすると、山のようになったのを見てルイーダ姉さんは溜め息をついていた。
「あの子、強い人を探すために酒場にいた戦士さん達に片っ端から戦いを挑んでいったのよ。」
「それで?」
と聞き返したが聞き返すまでもなかった。またルイーダ姉さんも答えるまでもなかった。
この、先程のアレと、今のコレを見れば想像が容易についた。

「多分、あの子16歳になれて旅の許可が貰えたからまた仲間を探しに来たんだわ。」
「え?どういうことです?じゃあ前に酒場にきたってときは?」
「歳を1つ間違えていたらしいわ…。」
「は…?」
…理解するのに数秒かかった。
酒場の奴らを打っ倒した後に、自分はまだ旅に出れないと気づいたのか。やられた奴らはたまらないな…。

なるほど天然ボケか。まぁ自分の歳も記憶に無い俺が人のことを言えたものではないが。

それともう一つ、どうしても知りたいことがあった。
俺がこの町で1番強いんじゃなかったのか、と言うこと。俺だってここの酒場の奴らより実力は上なんだ。
「俺なら勝てるだろうか?」
しかしルイーダ姉さんは考えるまでもなく即答した。
「無理だと思うわ、多分。あの子、何と言うか次元が違うもの。」
「そんなに…?」
多分と付け加えられていたが、俺に気を使って言ってくれた言葉だとすぐに分かった。
勇者の血を引かれし者とそうじゃない者の差。そういう意味では普通の人間の中では俺がこの町で1番と言うことか。
それでも俺は、自分の強さを試してみたいと言う気持ちが逆に益々と膨らんでいった。

そんな気持ちが通じたのだろうか。
キイイイ…と酒場の扉の開く音。
目を向けると、そこにその少女が再び現れた。
この扉の加減さが分かったのか先程とは違って、扉は静かに開けられ普通の登場だった。
いや、しかし先程と違う点はその少女の鼻が洗濯挟みのような物で摘まれているということ。
自分の目を疑ったがそれは紛れも無くピンク色の洗濯挟みだった。
いくら記憶が無い俺でも洗濯挟みは鼻につまむ物ではないことくらい分かる。何をしているんだこいつ??
と思ったが先程の少女の言葉を思い出した。
なるほどこいつはたいした天然野郎だ。だがこの俺は記憶喪失野郎だ。相手にとって不足は無い。

446 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:39:47 ID:1lxK6q9kO
少女は荒れた店内を不思議そうに見渡すと俺達の方へと歩いてくる。
「な゛んで、だでもい゛なぐなっだんだろう??…まぁいい゛か。」
鼻声で何を言っているのかよく分からなかったが客がいなくなったことを気にしている様子。
傍までくるとその少女は頭1つ分以上身長差のある俺を見上げたあと、プイッとルイーダ姉さんの方に振り向いた。
横顔から見る鼻の洗濯挟みは実に目立つ。
身長差に加えてこのマヌケな洗濯挟みが幼く見せるが16歳と言っていたっけか。
背中に交差する2本の剣を差しているあたりとのギャップが何とも妙な雰囲気を醸し出していた。

「仲間探しにぎた、誰でもいい、いぢばん強いヤツ紹介してほしい。」

鼻から息が抜けずに喋りづらそうだが外さない辺り、相当酒の匂いが苦手なのだろう。
ルイーダ姉さんは少女の問い掛けに、パンッと手を叩いてそれならばと言うように俺を見た。

「あら丁度よかったわね!彼がこの町でどんな戦士さんより今1番強いわよ。」

一瞬えっ?と思ったがそりゃそうか、とも思った。
俺がこいつの仲間??ちょっと待て。この少女の強さが気にかかるだけで仲間なんて考えてもみなかった。
再び俺を見上げる少女。品定めをされるかの様で緊張する俺。
少女が一言つぶやいた。
「冗談…?」
は?……冗談?って言ったよな、どういう意味だ?冗談ならばお前のその鼻をつまんでいる物が冗談だろう。
喉まで出かかったが俺はなんとか堪えた。
「もっど、ゴツクてムサイ奴かと思ってた。」
そっちかよ…、となぜかホッとする俺。
「そりゃどーも。」
一応誉め言葉として受け取っておく。
少女はもう一言つぶやいた。
「試す…。」
と同時にルイーダ姉さんが「気をつけて!」と言う言葉が聞こえたが、遅かった。

447 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:51:31 ID:1lxK6q9kO

キィィィィン!!!!

ルイーダ姉さんが言い終わる頃に俺はそれにとっさに反応して腰に付けていた剣を引き抜くだけで精一杯だった。
余りに速く突然に少女が何かをしてきたのでよく分からなかったが、俺に向かって高速で振り下ろされたので
俺は引き抜いた剣でギリギリの所でそれを受け止めた。
それは少女の背中に差されていた2本の内の1本の剣。
つまりいきなり斬りつけられたということ。

「何しやがんだテメェ!!」
突然の行動に、理由も分からぬまま殺されかけたことに今まで抑えていたものが爆発する。
俺より強い!?次元が違う!?上等じゃねえか!!テメェがその気ならやってやる!!

「合格…。」
殺気立つ俺とは裏腹に少女は一言言うと剣を鞘に納めた。
「何が合格だ!!?」
完全に闘る気でいた俺だったがルイーダ姉さんに宥められ少しだけ冷静を取り戻した。
「モンスターはい゛つ襲ってくるか分がらない。今の防げない様じゃ話しにならない…。だから試した。」
「んな試し方があるか!!殺す気だったろ!!」
少女は違うと首を横に振ると背中に差していた剣を少しだけ鞘から引き抜いた。
その剣は真剣ではなく木刀だった。興奮していた俺はそんなことも気づかなかったのか。
「昼間に城の兵士にも゛試してきたが防げたのはお前だげだ。だからお前を仲間にする。」
酒場にいた戦士に止まらず兵士にまで襲い掛かったというのか。恐れ知らずな奴だ。

俺はその問いではなく断定的な言葉に流されてしまったのかどうかはよく分からない
が仲間になるならない別にしても興味が沸いてきたことは確かだった。
「そっちの剣は真剣なのか?」
「そうだ。それがなんだ?」
「いや、何でもない。」
小さくて華奢に見えるその体に2本も剣を差す理由が他には思い浮かばなかった。

「明朝また来゛る。準備しておけ。」
まだ俺は何も答えていないんだがな…。
探していたものが見つかったかのように少女は晴れやかな表情をほんの少しだけ見せて酒場を後にしていく。
少ししか合間見えなかったが基本的に無表情、無愛想のようだ。しかし強い。
だが不意の一撃じゃまだどれくらいのものか分からない…、仲間になれば戦う様も見れるか…。

「おい!待て。」
と、呼び止めると振り返る少女。その無表情さだがなぜか俺は興味をそそられた。
「俺はソラ。お前は?」
その問に少女はやはり無表情で答える。
「私は、サキ…。ソラ、覚えておく。」

これが俺と勇者の娘サキとの出会いであり旅の始まりだった。

448 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/07(日) 07:57:05 ID:1lxK6q9kO
一応プロローグ的なものが終わりです。
読んでくれてありがとうございます。タイトルとか考えた方がいいんだろうか?

449 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/07(日) 18:07:16 ID:k4fAHS320
ちょ〜かっこいいっ!!
振りむいて名乗るところもしびれた。

450 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/07(日) 18:41:30 ID:cSGGOzLE0
>>448
天然野郎VS記憶喪失野郎
くそワラタww

読みやすくて面白いぜ

451 : ◆Tz30R5o5VI :2008/12/09(火) 22:53:55 ID:dgKhlXOEO
盛り上がってきたね

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/10(水) 10:39:58 ID:rp72B7YG0
新人から中堅、古参まで息が吹き返しつつあるね。
ガンガン頑張ってくれぃ。


453 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/12(金) 04:19:01 ID:OBLhmCRjO
447の続き

次の日の朝。
サキとの待ち合わせ場所であるルイーダの酒場に先に着いたのは俺だった。
酒場に入るとルイーダ姉さんはいつものように元気な笑顔で俺を出迎えてくれた。
店内はあの後、ルイーダ姉さんと俺とで綺麗に片付けたのですっかり元の雰囲気に戻っていた。
「おはようソラ君!旅に出る支度は済んだの?薬草は?毒消し草は?お金はちゃんと持ってるの?」
「大丈夫。ちゃんと持ってるって。相変わらず心配性だからなぁルイーダ姉さんは。」
「それはあなたがいつも忘れて来るからでしょ。ほら!道具袋の中身お姉さんに見せてみなさい。」
「えぇ。めんどくせぇなぁ。」

それはいつもと変わらない会話。
しかし、それも今日で出来なくなるかと思うと途端に寂しくなった。
「ほら見なさい。薬草1個しか入ってないじゃないのよ〜。ダメヨ、あの子も一緒に行くんだから10個くらい持ってきなさい。」
「えぇ?俺達強いんだから必要無いですって…って何入れてるんですか!?」
道具袋にルイーダ姉さんは布で包まれているものを2つ押し込んだ。
「お弁当よ。あの子の分もあるからお昼に食べてね。」
「そんな、俺達なんかに気使わなくても…でもありがとうルイーダ姉さん。」

本当に俺の姉さんのようだった。出来ればずっとこうして甘えていたい。
今頃になって旅に出ることに少し後悔した。


キィィィ、と酒場の扉が開く。
サキがやってきた。
「よう。」と声を掛けたが予想通りの無反応。だが俺はムッとすることも無かった。
この町の中でただ一人俺だけがこいつに選ばれた人間。このことがこいつの態度に寛容的になれる要因だろう。
「それじゃ、行くか?」と聞くと、小さく「うん。」と答えが返ってきた。

酒場を後にしようとする間際、ルイーダ姉さんは最後に告げた。
「いつでも帰ってきなさい。ここはあなたが帰ってくる場所なんだからね。」と。
俺はその言葉に込み上げる物があったが必死でそれを隠す。
「それじゃ行ってくるよ!元気でね!ルイーダ姉さん!」

酒場の扉を開き、この酒場とルイーダ姉さんに別れを告げた。

454 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/12(金) 04:25:57 ID:OBLhmCRjO
短いけどとりあえず。
こっから先は何も考えていないw

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/12(金) 15:46:10 ID:2/+0BfCp0
ルイーダさん、いい人だなぁ・・・・。
やべぇ・・・惚れそう。

主人公とサキの旅路に幸あれ。

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/14(日) 16:04:15 ID:b0wPSaCRO
ほす

457 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 22:54:40 ID:xfMDhIzDO
>>453の続き

街を離れる前に俺達は道具屋に寄り、ルイーダ姉さんの言葉通りに薬草を買っていくことにした。
この周辺の魔物には蚊に刺される痛みほどのダメージしか俺は受けないが、まぁ一応のためだ。
サキはそんな俺よりさらに強いと言うんだからそんなに心配はいらないのだろうが…。

後は…行く先。
買い物を終えて街を後にする前に俺は聞いた。
「行く宛てはあるのか?」
「…ロマリア。」
「ロマリア?どこだそれ?」
「………。」
この男はロマリアすら知らないのか?という表情に微妙だが見て取れた俺は、その瞬間サキに言っておくべきことを思い出した。

「悪い。今俺記憶喪失なんだ。とは言っても普通の会話と常識は持ち合わせているから気にしないでくれよな。」
「…………………。」
相変わらず変わることの無いサキの表情からは気持ちを読み取ることが出来なかった。
「……大きな街…。このアリアハンと同じくらい。きっと強い仲間が見つかるはず…。」
「ん…あ、そうか、まず仲間を探すわけな。」
こくっと頷くサキ。
俺が記憶喪失だということなど気にしないというか、そんな事などサキにとってはどうでもいい事のようだった。


街を出るとサキは、ロマリアに行くために洞窟を抜けて行くと言った。
その洞窟へ向かうまでにはしばらく草原を歩かなければならず、途中でモンスターと遭遇することになる。
既に倒し飽きるほど倒したことのあるいつものモンスターしか現れないが、俺は早く遭遇しないかと心待ちにしていた。

そしてようやく一角ウサギ3匹にオオアリクイ2匹が現れた。
これだけいればサキがどの程のものなのか判断出来る。

「あいつら倒して見せてくれよ。」
俺はサキにそう言葉をかけた。………かけた筈だった。
しかし、言葉をかける寸前にサキの姿は消え、言葉をかけた時には現れたはずの全てのモンスターが消されていた。
俺が見たのは散らばったモンスターの残骸と既に剣を背にしまうサキの姿。しかも剣は真剣ではなく木刀の方だった。

「何か言ったか?ソラ?」
「…え?…い、いや、なんでもない…。」
俺は銅の剣を構えたままただ呆然としていた。

458 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 23:00:52 ID:xfMDhIzDO
ロマリアに通じると言う洞窟にやってはきたのだが………
ここまで現れたモンスターは全てサキによって瞬殺。
モンスターが現れたと思った次の瞬間にはもう死んでいて俺は全く手が出せなかった。
集団で現れようがサキは木刀をまるで鞭でもしならせているかのように次々と蹴散らしていく。

………勝てるわけが無い。サキと対峙しているわけでも無いのに、俺の奥歯はカタカタと音が鳴りっぱなしだった。

この洞窟を抜ければもうロマリアはすぐそこらしいのだが、正直なところ俺は必要無いんじゃないだろうか?
なぜ俺なんか…、なぜ俺ごときを仲間にしたんだ?見誤っただろ?いらねぇだろ俺…、なぁ?
ロマリアで捨てられんなこりゃ…。


洞窟もそろそろ出口に差し掛かる頃、そんな俊敏冷徹で一分の隙も見せないサキに異変が起こった。

「ソラ…。眠い…。」
「は?何?」
「だから…眠いんだ…。」
「いや、我慢しろよそれくらい。洞窟の中が暗いったってまだ昼間だぞ?」

何の冗談を言い始めたのかと一瞬考えてしまったが、冗談なんかでは無いとサキの表情を見て気づいた。
それまで全くと言っていいほど無表情だったのがあからさまに眠い顔を見せた。
まぶたが半分閉じかけ頭をカクンっと落とすほど意識が飛んでいる。
「お、おい!どうしたんだ!?急すぎるだろ!?」
両肩を掴み揺さぶってみるが、サキの体は完全に力が抜けて体を揺らす度に頭がガクガクと揺れた。
「こんな所で寝るなよ!おい!」
「…ん…ソラ…。言い忘れたことが…ある…。」
「な、なんだ!?」
「私のこの力は…膨大な睡眠によって…力が得られている……。」
「何!?何を言っている?」
「…済まないが少し寝る…。後は…頼ん…だ…。」
「お、おい!頼んだじゃねえだろ!!起きろよおい!!」

名前を叫び体を揺さぶってみるがまったく反応が無くなった。眠ったと言うより気絶した感じに近い。
こんなモンスターの住家のような所で気絶して、昨日出会ったばかりの俺に後を任せたと言うのか!?
「なんでだ!?なんで俺なんかに頼れんだよ!!テメエの不意打ち一回防いだだけだぞ!!そんなんで分かんのかよ!!」

馬鹿かこいつは!?天然にも程がありすぎる!
眠くなるほどエネルギー使ったってのか!?だったらセーブ出来ねえのかよ!!

……とりあえず洞窟から出なきゃモンスターが集まってくる。
俺はこいつを背中に背負い洞窟の出口へと向かった

459 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/14(日) 23:05:18 ID:xfMDhIzDO
出口へと向かう途中、モンスターが現れた。
お化けアリクイとかいう化け物が3匹だ。
俺は眠りつづけるサキを背負いながら片手で銅の剣を取り出し、そいつらを蹴散らした。

サキに比べれば遥か劣るだろうが、俺はアリアハンではこいつを抜かせば1番強いんだ。
……くそったれ。なめんじゃねぇぞ…。
ビビってなんか…、ビビってなんか無えんだからな!超えてやる!!絶対超えてやる!!
おおおお゛お゛ぉおお゛お゛!!!!!!!

俺は怒りに任せて初見の相手だろうが関係無しに、出現するモンスターに渾身の一撃をぶち込んでいく。
ふっとばす。あいつがやったように。
消し飛ばす!あいつがやったように!!

洞窟の出口に辿り着く頃には俺の身体はズタボロになってはいたが、サキには傷一つ付けてはいなかった。

俺はサキを背中から下ろし薬草で自分の傷んだ身体を治療した。
「いってぇ…。薬草買っといて良かったな…。ルイーダ姉さんに感謝しなきゃな…。」

サキは相変わらず眠っている。
モンスターと対峙した時のサキは恐ろしいとさえ感じるのに、眠っている様は普通の少女にしか見えなかった。
「ったく、こんな小さくて軽いくせに……。まぁあんな動きもすれば眠くもなるか…。ふぅ…、俺も疲れた…。」

俺はモンスターに警戒しながら辺りを見渡していると、遠くに街があるのが見えた。
俺はサキを再び背負いその方向へと歩きだした。

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/14(日) 23:48:24 ID:y3v1u1W10
サキさん、Tueeeee。
でも、まさかそんな弱点があったとは。
さて、無事街までたどり着けるのだろうか・・・。

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/16(火) 16:27:28 ID:jJ5wTohS0
新しい作者さんが来ていたか!
尻に引かれそうな主人公だなw


    ∧_∧
   ( ´∀∧∧
  〜(つ ̄ (,,゚Д゚)
   UU丁と)U
   (__)_)

    ∧_∧    ドルルルルル…
   ( ´∀∧∧, '
  〜(つ ̄ (,,゚Д゚) ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ ミャ
   UU ̄と)U `
    し'^ヽ__)


462 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/18(木) 18:19:22 ID:237n1mpi0
明日(金)の夜10時くらいから投下できそうです。
今回はメ欄もチェックで。
よろしくお願いいたします。

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/18(木) 22:45:36 ID:GJXToRuO0
>>462
うぉう!楽しみでござる

464 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/19(金) 13:28:24 ID:7dOHodSn0
Rです。すみません、仕事が入りまして予定通りの投下は難しくなってきました。
時間がずれるか、明日になるかは現段階ではまだわかりません。
なるべく約束を守れるように頑張ります。

465 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:16:01 ID:JZKGs7T40
目が覚めるとそこは俺の部屋じゃなかった。
しかも、身体が子供の姿になっている。
「どうなってんだ?これは・・・・」
なにがなんだか分からず戸惑っていると、俺の目の前に髪の毛が少ないおっさんが現れた。
「お前、ドラクエXの主人公になったから。じゃ」
そう言って去ろうとするおっさん。
「待たんかぁぁぁぁ!!どういう事?くわしく説明しろや!」
「無理」
「ふざんけんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!」
思いっきりおっさんをブン殴った。
「いてーよ!なにするんだ!この若造がぁぁぁぁぁぁ!!」
俺とおっさんの20分間にもおよぶ死闘が始まった。

466 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:36:36 ID:JZKGs7T40
「ちょ、いたいって!」
泣き叫ぶおっさん。
だがムカツクので構わず攻撃を続けた。
「ひゃあ!ひゃあ!ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」とフリーザのモノマネ。
ただのチョップだけど。
「こいつでトドメだ!くたばれ!」
そこら辺に落ちてあったナイフでおっさんの最後の希望をきりつけた。
「ぎええぇぇぇぇぇぇ!!バ・・バカな・・・この・・・わたし(の毛)が・・・」
ノリのいい奴だ。だがおっさんがショックでがっくりと肩落とす。
「さらばだ!」
え?ちょ、おい。説明しろって!ちょっとぉぉぉぉぉ!?
俺の叫びもむなしくすぐにその姿が消えた。


・・・・・とにかく、ここはドラクエXの世界と言う事か。
現に俺の身体は子供の頃のX主人公の姿だし。くそっ、どうなってやがるんだ一体・・・

ドンッとドアが開く音がして誰かが部屋に入って来た。
「おいっ、どうした?大丈夫か!?」
おー、こいつがパパスか。相変わらずヒゲだなぁ。
「大丈夫だけど」と返事をする。
「ちっ、なんにもねえなら騒ぐんじゃねーよ、クソガキが・・・」
アレッ?パパスっこんなキャラだったっけ?
もしかして俺がX主人公になったからキャラの性格が変わったとか?

467 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 16:56:12 ID:JZKGs7T40
あれからしばらくしたが今は船に乗っているという事が分かった。
よしっ、こうなったらDQの世界をとことんエンジョイしてやるぜ!
フヒヒヒヒ、そうですよ。開き直ってますよ。すいません。
てかドラクエXってやったことないんだよね。だから話とかキャラとか少ししか知らねえ。

そして、時間が経ち港につく。
その港にハゲと2人の女の子(黒髪と紫)がいるんだけどヤバイだろ。この絵ヤバイだろ。
こいつら親子らしいけど知らない人が見たら絶対勘違いするって。通報されるよ?
興味があったので女の子に話しかけてみる。
「こんにちわ」と軽くあいさつ。
黒髪の方は「邪魔よ!」なんて言いやがった。たくっ、これだから近頃のガキは・・・」
紫の方にも挨拶をしてみる。
紫の方はしばらく喋らなかったがやっと口を開いた。
「・・・邪魔だ・・・クズが・・・」
恐っ!

468 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 17:11:37 ID:JZKGs7T40
さて港に降りたがなにをしようかと迷っていると
パパスが地図やるからそこら辺で遊んでこいなんて言う。
無責任な親だ・・・・

さて、なにをしようか?ナンパでもしようかなんて思う俺がいる。
とにかく港の外へ出て見ようか。

「ピキキキー」
なんと紫色の奴が3匹襲いかかってきた!
いや俺も紫のターバンとマント来ているから紫と言われかねんけど。
そうか、こいつらがスライムか。
ダチに聞いた話だと2、3ターンでパパスが助けに来てくれるらしい。
いや、どのくらいの時間が2、3ターンか分からんけど、それまでどうかしてろってか?
「まあいい掛かってこい!」
ドガッ!ぎゃっ先制攻撃された!やばい腹に当たったから腹の具合が・・・

10ターン後
「大丈夫か?」
おせえよクソジジイ・・・・

469 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/19(金) 17:36:59 ID:JZKGs7T40
腹が痛くなったため反撃できなかった。スライムにめった打ちにされつつも
何とか避けてパパスが来るまでもっていた。
すぐにパパスがスライムを倒し戦闘終了。だが身体がかなり痛い。
「と、父さん・・・・ホイミとかいう奴をかけてくれ・・・・」
だがパパスの反応は冷たい者だった。
「すぐに楽にはさせねえよ・・・・」
なにこいつ?俺になんの恨みがあるわけ!?

数時間後にやっとホイミをかけてもらった。
それにしてもパパスの態度が酷すぎる。痛がる俺みながらニヤニヤしてたし。
こいつに殴りかかろうと思ったけど強そうなのでやめておく。

パパスに連れられてどこかの村に着いた。
村に着いたので「ギャー助けてー!知らないおじさんに連れられてるんだー!」と叫んでみた。
すると怪しい奴はみんなタイーホ!とか言いながらピーポ君が登場。パパスがどっかに連れていかれる。
ちょ、なんでこの世界にピーポ君が?
そう思っていると誰かが俺の心に話しかけきた。
この声はさっきの変なおっさんだな。
「お前がX主人公になったからちょっと世界が変わっているんだ」
「へー、で?なんで俺をこの世界に?」
「スリルが味わいたいだろうと思ってさ」
「味わえねーよ、こんな世界じゃ!スリルどころか死ぬわ!
なんだあのパパス!わけ分かんねーよ!それに俺20代だからこの子供の身体は歩きづらくてしょーがないわ!」
「・・・・・さらばだ」
「おいっ・・・・また消えたか・・・」

ズドドドドドドとなにか走ってきた。
それはピーポ君から逃げてきたパパスだった。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!このクソガキャァァァァァァァァァ!!」
そして俺は死ぬほど殴られる。クソ・・・・・

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 18:58:44 ID:T5WDiQO+0
カオスな主人公が来たか!
今後に期待。


471 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 19:28:02 ID:v/zd8nIF0
おもしろいw

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 21:37:13 ID:FkJL1SE20
先が読めなくて楽しみだwww

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 21:42:55 ID:xZ0OTINq0
キャラクターやらなんやら崩壊しすぎワロタww

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 23:43:41 ID:v35Zyyoy0
パパス台無しwwwwwwwwww
メチャおもろい!!!!!
この先まるで展開がつかめんからスゲー期待するよ!

475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 01:34:23 ID:lYmWVodU0
ピーポ君wwwww

476 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:47:59 ID:DpVAPJ8KO
新しい作者さんにフキつつ俺も投下↓

とんでも設定理解頂けて良かったです

477 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:51:07 ID:DpVAPJ8KO
>>459の続き
「ちくしょう…。俺としたことが、何て様だ…。」
ロマリアの街を眼前にして現れた甲冑を見に纏ったモンスター1匹に俺は苦戦してしまった。
「たかだか1匹に。しかしあのモンスター剣も盾も上手く扱えていた。モンスターにも頭のいい奴はいるんだな…。」
でもまあ、こいつ背負ってるってハンデがなければ俺の相手じゃないけどな、
等と言い訳をしながら自分の負った傷を見て俺は舌打ちをした。

陽が徐々に落ちかけた頃、俺達は街にようやく到着した。

「おい。街着いたぜ。サキ。」
「………すぅ……。……すぅ……。」
起きるわけは無いと分かっていたが俺は俺の背中で眠りつづけているサキに話しかけた。
当然反応は無い。今は小動物の様に静かに寝息を立てて、俺の背に負ぶさっている。
「………はぁ…、なんだかなぁ…、まぁいいや、宿探すか。」

俺はその背中の眠り姫ならぬ小動物をともかくどうにかしようと、適当に目についた宿屋に入ることにした。
チェックインを済ませ、今夜一泊する一室のベッドにサキを寝かせた。

ようやく解放されたところで、既に俺も限界を超えかけていたのでそのまますぐに横になった。
腹も減ったが起き上がる気力さえもとうに失せていた。
「……まてよ…。一緒の部屋で良かったか?……って関係ねーか、既にこいつ寝ちまってるんだし…。あぁ〜あ疲れた…。」

これからどうするか。とりあえずサキが起きるのを待つか。そういや仲間を探すって言ってたっけか…。
アリアハンでの時みたく力量を量るためにいきなり斬りつけなきゃいいがな…。……ってそうなったら俺が止めんのか…?
何か別の方法があるだろ…。何か…………。
……………Zzz………。

俺はいつの間にかそのまま眠りに着いていた。

478 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:55:09 ID:DpVAPJ8KO
……カツカツカツカツ……、カツカツカツカツ…。

俺はその音で目が覚めた。
何の音かと思い眼を開けるてみると、まるでウサギが人参をカリカリと小刻みに食べるかの様にサキが弁当を食べていた。

(あぁ…こいつはやっぱり小動物だったのか…。)

って違うだろ、何寝ぼけてんだ俺。

「起きたのか。もう大丈夫なのか?」
「…………カツカツカツカツ………。」
ったくこいつは…。相変わらずマイペースな奴だな。
そういや俺も腹減ってたんだ。俺も食べるとするか。

「上手いだろ?その弁当ルイーダ姉さんが作ってくれたんだぜ。」
俺は道具袋から弁当を取り出そうとした……………が無い。弁当箱は確か2つあったはず。
テーブルの上に目をやると空になった弁当箱が1つ。そしてもう1つもたった今サキが食べ終えて空になっていた。

「お前!2つ食ったろ!1つは俺の分だったんだぞ!」
「………旨かった…。とても…。」
「そうか、ってそうじゃねぇ!これはルイーダ姉さんが俺の為に作ってくれた特製のだな!」
「……ハートマークの飾り付けだった…。」
「何だと!?おまっ!吐け!この野郎!今すぐに!」
「無茶言うな。頭…大丈夫か?」
「…っのやろう…。」

どうしてくれる?今度ルイーダ姉さんの所へ帰った時に、「あの弁当どうだった?」と聞かれたらどう答えたらいいんだ!?
ハートマークの意味は!?本気なのか軽い気持ちなのかどっちなんだよ!?どう答えたらいい!?
俺は食べてもないし中身を見てもいないんだぞ!?
あ〜もうこの野郎は!どうして2つも弁当食いやがったんだ。あんな小さい体のくせに。あんな小動物のくせに。
そういやあいつ背負った時に胸の感触がまるで無かったな。普通背負ったらドキッとするものがある筈だろ。
ぺったんこか。そうか、ぺったんこなのか。まな板のくせになんで2つも食いやがったんだ。
なんで…なんでだ……。
言葉にはしなかったが俺の楽しみを奪われた悔しさと更なる空腹で俺は苛立っていた。

479 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/20(土) 09:59:09 ID:DpVAPJ8KO
「ここは…ロマリア?」
「あぁ?あぁそうだ。お前背負ってモンスターと戦いながらきたんだ。感謝しろよな。」
「ソラ!」
「なんだよ?」
サキの指が俺の顔に当たる。当たった瞬間痛みを覚えた。
「っつ!なんだ!?」
「傷だらけ…。腕も、体も…。」
腕や体の見える部分は薬草で治療してはいたが顔はしていなかった。
「しょうがないだろ。お前かばってきたんだからな。俺だけなら傷なんかしなかったろうな。」
嫌味に聞こえたろうか。まぁいい。食の恨みは高くつくとよく言うがその通りだ。
「仕方ない…。手当てしてやる。」
「あぁ!?いいよ別に。もう血は止まってんだ。」
「よくない。膿んだらどうする。」
そう言うとサキはすり潰した薬草を取り出し俺の傷口に塗ろうとした。
「いいって。自分で出来る。」
「いいから、動くな。」
サキの顔が近くなる。その間俺は目と目が合わない様に目をそらし続けていた。
こんな小動物のようなガキ相手に何を緊張しているんだ俺は…。

「終わりだ。」
「あ、ああ…。」
「街はもう歩いたのか?」
「いや、すぐ宿に入ったからな。そういや今何時だ?」

時計に目をやると、まだ夜になったばかりだった。宿には夕方頃到着したので俺はいくらも寝ていなかったのだ。

「ちょっと回ってくるか?俺なんか食いたいしな。」
「うん。」

酒場辺りにでも行けば強い奴の情報も得られるだろう。俺達は宿を出た。

480 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 14:18:00 ID:hCNoeZxu0
ムハー!投下乙です!

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 19:12:47 ID:n/e/R9MQ0
おお、やばい、サキさんに惚れそうだ。
だが、弁当・・・orz

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 19:53:52 ID:gnJDM1q4O
貧乳関係ねーww

主人公とサキの関係が気に入りました

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/20(土) 20:25:54 ID:fXy3cJb70
>>479
GJ!
先(サキ)が気になるぜ
貧乳もGJ!だぜ

484 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/20(土) 23:48:10 ID:PICDD7nD0
先日は失礼いたしました。これから投下します。
ちょっとパソコンの調子が悪いので、投下の間隔が長くなるかもしれません。

485 :Stage.18 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:01:13 ID:5N8VteG00

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。昨日は予告したのにお約束が守れなくてすみませんでした。
   せめて時間をずらして……と思ったのですが、帰宅が午前4時ではどうすることもできず」
アルス「>>463様はじめ、お待ちいただいた方すみません」
タツミ「それでは恒例サンクスコールです」

アルス「>>393様、力一杯のグッジョブありがとう! ちょうど間があいた時期だったからな、
   うちの作者も一読者として過疎り具合にドキドキしてたみたいだよ」
タツミ「>>394様、面白いというそのお言葉が何よりの執筆燃料ですっ」
アルス「>>395様にも、夢中になって読みました、まで言っていただけて本当に感謝。
   俺も例の件が誤解とわかって心からホッとしたよ」
タツミ「キミのトラウマもわかってもらえたしね。たださ……君が普通っていうより、
   お父様が遙かに超人なだけって気がしないでもないんだけど」
アルス「だよな。そもそもオヤジは、魔法の玉もナシにどうやってアリアハンから出たんだ」
タツミ「まさに謎の英雄……。
   >>396様、いつもお待たせしてすみません。もう少しペース上げられるよう頑張りたいんですが」
アルス「>>398様、おお、確かにサスペンスっぽいかも。まさか殺人事件に巻き込まれるとか……」
タツミ「うちの作者のことだから無いとは言い切れないねー」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです。本日はメ欄もチェックで!』


【Stage.18 SAKURA MEMORY -Part2-】
 続・リアルサイド [6]〜[11]
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 ----------------- Real-Side -----------------

486 :Stage.18 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:07:38 ID:5N8VteG00

   ◇

 俺が最初に胸に抱いたのは、慌てたように警告の電話を入れてくれたショウに対する感
謝ではなく、「また面倒ごとかよ」という唾でも吐きたくなるような気持ちだった。
 次から次へとなんだってんだ。ここは「テレビゲーム」なんてハイテクな玩具が日常に
溢れてるような、平和な国じゃないのかよ。
 それでも冒険者のサガとでも言うか、デートなんてシチュエーションにちょっとふわふ
わしていた俺の意識は、その瞬間に自動的に警戒モードに切り替わった。
「俺が襲われたことを……なんでお前が知ってるんだ、ショウ?」

 昨日の晩ショウに会った時、俺はわざと、昼間に起きたことをひとつも話さなかった。
朝早くから花見に行ったことも、行った先で他のゲームサイドの男に襲われたことも、そ
のあと夕方までタツミの女友達の家で寝込んでいたことも……なにひとつ。 
 ショウの登場のタイミングがあまりに良すぎたから。まるで俺を見張っていたかのよう
で、少し胡散臭いものを感じてカマをかけたのだ。他のゲームキャラに襲われるなんて出
来事、知っていたなら必ず話題を振ってくるだろうし、逆になにも知らないなら、こいつ
を変に巻き込まない為にも俺からわざわざ口にするべきじゃない。
 だがどちらでもなく、こいつは「知っていて」話を避けた。俺だって赤の他人を頭から
信じるほど単純じゃない。
「お前、何者だよ」

『なるほど、昨日そのことに触れなかったのは、僕を試したんですね』
 電話の向こうでショウは感心したように溜息をついた。そして、
『なかなかキレるじゃないですか、かえって安心しました。少なくとも僕は敵じゃないで
すよ。まずは話を聞いてください、あなたに危険が迫っているんです』
 自分のことなどどうでもいいとばかり、あっさり要点を戻された。気に食わないが、俺
が疑っていたこともショウは最初から想定していたようだ。
『あなたを襲った男について、僕も詳しくは知りません。僕と違うゲームナンバー出身の
人ですしね。ただ僕は、こっちに来てからすべてのドラクエをプレイしてるんで、あなた
とあのPCとの関連は知っています。あなたの子孫なんですよ、彼は』
「待て。昨日のあいつが俺の子孫だぁ?」
 そう言えばあのサイコさん、アレフガルド流の騎士の礼を取ってたな。
「それにPCって……」
『ああ、僕はゲームサイドの人間のことを『プレイ・キャラクター』の略で『PC』と呼
んでるんです。子孫と言っても、あくまでゲーム上の設定ですし、深く考える必要はない
と思いますよ。とにかくですね、僕が今からそっちに迎えに行きますから、あなたはそこ
を動かないでください』
 やはりショウは焦っている。まくし立てるような口調で、俺はロクに言葉を挟む余地も
ない。
『アルス君は今ひとりですか? もし誰かと一緒なら、うまく説得して離れてもらった方
がいいと思います。僕もすぐそちらに向かいますから……』
「だから待てっつってんだろ!」
 怒鳴りつけると、はっと息を呑むのが聞こえた。

487 :Stage.18 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:11:24 ID:5N8VteG00

 ったく、従うのが当然みたいに指示すんなよな、シャクに障る。俺への隠し事はもっと
あるだろうし、信用できない人間の言うことを聞く義理はねえぞ。
「今デート中なんだ、邪魔しないでくれるか」
『はぁ? あの、アルス君……?』
 俺の投げやりな返答に、ポカンとしているショウの様子が手に取るようにわかる。
『た、確かに僕もいろいろと黙っていたことは悪かったと思いますが、それも会った時に
ぜんぶお話しするつもりです。今だけは信じてもら――』
「ウザいんだっつーの。あのイカレ頭が襲って来るかもってんだろ? そうなった時に考
えるからいい。もう面倒くせえのはたくさんだ」
 こっちに来てからずーっとワケのわからん状態が続いてるんだ。ようやく穏やか〜なひ
と時を楽しんでるんだから、少しはノンビリさせやがれ。
 はっきり言って、ストレス溜まってんだよバカヤロー!

『冷静になってください。女性と一緒というなら、片岡百合子さんでしょう? 彼女もあ
の男に顔を見られてるじゃないですか、危険なのはあなただけじゃないんですよ』
 まあね。それどころかユリコちゃん、ボッコボコの返り討ちにしちゃったし。
「それもこっちでなんとかする。心配なら勝手に来いよ。どうせ見張らせてんだろ?」
『確かに昨日まではあなたを監視してましたけど……今朝になってやめさせたんです。あ
なたがまっとうな人だとわかったから、プライベートを尊重して。だからさっき、そちら
の居場所を聞いたでしょう?』
「あっそ。そりゃどうも」
 自分でも少し素直じゃねえなとは思うが、今はまともに対応する気になれない。

 互いに沈黙する。
 時間にしたら数秒も無かっただろう。さっきとは違う性質の溜息をついて、ショウはワ
ガママな子供に言い聞かせるように言った。
『わかりました。でも、僕があなたを心配してるってことは信じてくれたんですよね? 
僕も20分くらいでそっちに行けると思いますから、できればそのあたりにいて下さい、
お願いします』

 ップ ツー ツー……

 溜息をつきたいのはこっちの方だ。
 断っておくが、俺はユリコをあぶない目に遭わせる気はない。ショウは離れろと言って
いたが、彼女もあのサイコ野郎の標的にされる可能性がある以上、かえって単独行動させ
る方が危険だ。
 それにショウは最低でも、一日でユリコの身元を割り出す調査力と、人を使って俺を見
張らせるくらいの組織力を持っている。そこから逃げ出して未だに捕まっていないのだか
ら、あのサイコ野郎もそうバカじゃない。こんな街のド真ん中で後先考えずに奇襲をかけ
てくることはまずないだろう。
 ならいっそ、いつ襲われるかわからずビクビクしながら隠れてるより、人混みに紛れて
動き回り、相手を引きずり出してやる方が対策を立てやすいと――

488 :Stage.18 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:21:15 ID:5N8VteG00


「なんか難しい顔してるね、アル君」
 いきなりユリコが、ヒョイっと腰をかがめて下から俺を見上げてきた。
「うひゃ!? い、いや別に、たいしたことじゃないんだ、うん」
 あのですねユリコさん。その角度だと、隙間というか、谷間というかがですね、よく見
えちゃうんですが。目のやり場に困るんですけど。
 一瞬この女ワザとかと思ったが、どぎまぎしている俺をユリコはきょとんと見つめてい
る。もしかユリコちゃん、意外と天然系?
「待たせて悪い。冷めないうちに食べないとな」
 慌てて席に戻ったが、ほら〜、どこまで考えたかわかんなくなったじゃねえか。
「今の電話、お友達から?」
 無邪気に聞いてくる彼女に、俺は再び思考を巡らせた。どうすっかな。
 この子は俺の正体もあのサイコ野郎の存在も知っているから、今さら無理に隠す必要は
ない。でも変に深入りさせて、俺たちゲームサイドの人間――ショウの言う『PC』が、
実はプレイヤーを「犠牲」にするつもりで現世に来ているということまで彼女に知られる
のはマズイ。

 <ゲームは所詮ゲーム、絶対に安全だし、もちろん死ぬこともない。
  クリアすればいつでも帰れるが、現実世界に戻れば二度と交換できない。
  なのでわざとクリアを延ばすプレイヤーもいるらしい……>

 俺がユリコにした説明だ。一番最初にタツミにも同じ内容を伝えた。
 嘘は言ってないが、肝心なこともなにひとつ言ってない。あのお人好しが庇ってくれた
のをいいことに、俺はこの瞬間も、彼女をいいように利用している。

「友達じゃないんだ。役所の人でさ」
 特に悩む間もなく、そんなセリフが出てきた。
「ああ、タツミになんか頼まれてたのね」
「そうそう。ほらアイツ、国から援助金みたいのもらってるだろ。その書類関係のことで
今の電話の人と、タツミの代わりに何度か話してたんだ」
 いまさら嘘のひとつやふたつ重ねたところで同じだ。
「了解です。それにしてもタツミのヤツ、アル君を使いッパにするとはねー」
 ユリコはまったく疑う様子もなくクスクス笑った。俺も愛想笑いで調子を合わせる。
「まあドラクエもお使いイベントが多いしな」
「もうアル君ったら、勇者様がソレ言っちゃおしまいじゃないw」

 勇者様、ねえ……。

 残りのハンバーガーを口に放り込むと、まだ温かいのに急に味気なくなったような気が
した。そんなのは無視して立ち上がる。
「ごちそうさま。次はどこに案内してくれるの、ユリちゃん」
 彼女もハンバーガーの最後のひとかけらを口に放り込むと、指先についたケチャップを
ペろっと舐めつつ視線を泳がせた。こういうちょっとお嬢様っぽくない仕草は親しみやす
くて好感が持てる。

489 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 00:27:08 ID:0WQsVruyO
リアルタイム遭遇キター!
でも2問目わかんねぇw

490 :Stage.18 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:28:12 ID:5N8VteG00

「できるだけアル君のリクエストに合わせるよ?」
「あんまりこっちのこと知らないからな。普通でいいよ、デートの定番コースってやつ。
俺、職業が職業だから向こうでもあんまりそういう経験ないし」
「あらら、アル君モテそうなのに。よーし、そういうことなら任せなさい♪」
 張り切ってガッツポーズを取るユリコちゃん。ウザかわいいってやつだな、うん。
 悪いなタツミ君。まあ今日だけだから許せ。


 今はまだ、もう少しだけ。
 「普通」の16歳でいさせてくれ。

   ◇

 色んな場所を回りたいから、遊園地のような一日がかりになる大型施設は避けることに
した。だいたい、安全を保証されたアトラクションや、動物園や水族館で人形みたいにお
となしい生き物を眺めてても、俺は全然おもしろくない。
 まずは映画館に行った。女の子が好きそうな、異国の若い男女が恋愛がらみでごちゃご
ちゃやってる内容だった。日本語字幕(俺にとっては向こうの公用語)だったからいまい
ちストーリーが掴めない部分もあったけど、まあ概ね楽しめたかな。
 
 俺がそう感想を述べると、ユリコは「ああ!」と声を上げた。
「ごめん気付かなくて! そうだよね、日本語が読めるわけないもんね」
「違う違う。それじゃさっき見てたバイトの書類も読めないだろ」
「あ、そっか」
 この子やっぱ天然だなw
「実は俺、あんまり目が良くないんだよ」 
「え……!? アル君って目が悪かったのぉ!?」
 そこまで大げさに驚くことかね。
「もともと小さい頃から弱くてさ。それに俺の世界じゃ夜はロウソクかランプを使うしか
ないから、遅くまで勉強してるとどうしてもね」
 冒険に出た最初の頃は、延ばした自分の指先も二重に見えるくらいひどかった。旅をし
てる間にかなり回復したが、まだ映画館のような薄暗いところで字幕なんて読めない。
 もっとも向こうは視力を測る習慣が無いから、気付いてないだけで目が悪いやつは他に
も大勢いると思うが。
「じゃあこの世界だとなおさら不便でしょ。なんかゲームの世界より、細かいものが多い
気がするもの」
 実はその通り。初めて外出した時も「標識」の多さに圧倒されたが、現実世界はそこら
中に「文字情報」が溢れている。無意識に片っ端から読もうとしてずっと目を凝らしてる
もんだから、結構しんどいんだよな。
 ユリコは腕を組んで少しうなっていたが、すぐに俺の手を引いて歩き出した。
「よし、お姉さんが眼鏡をプレゼントしてあげよう!」
「いいの? マジで?」
「現実世界に来た記念にね♪」
 ユリコちゃん優しいなぁ。でも以前、インテリ眼鏡ってアイテムを装備した時に仲間に
爆笑されたんだよな。
「俺に似合うかな」
「アル君くらいイケメンさんだったら、なにやったって大丈夫だって」
 それは暗にタツミがイケメンだとノロケてることになるんだが、気付いてないな。

491 :Stage.18 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:32:17 ID:5N8VteG00

 映画館から一番近い眼鏡専門店に行った。落ち着いた雰囲気の店内には、ズラリと陳列
された眼鏡が照明を反射してきらきら光っている。
 ユリコが店員に話をつけ、俺は妙な機械の前に座らせられた。
「そこのレンズに片目をつけてくださ〜い。奥に何が見えてますか〜?」
 妙に間延びした口調の女性店員が、機械を挟んで向かい側でなにやらカチャカチャ操作
している。言われたとおり見てみると、奥に確かになにかの映像は見えているんだが、映っ
ているモノの名称がなんだかわからん。
「ユリちゃん、ちょっと」
 俺は目を離して、そばに立っている彼女の袖を引いた。小声で「アレなに?」と聞いた
ら、ユリコもレンズを覗き込んでから「気球だね」と囁き返してきた。
「えーと、キキュウ……ですね」
「二重に見えてますか〜?」
 店員のおねーさんがまたカチャカチャなにか操作したら、
「おっ、きれいに見えた。すげえな」
「では反対側の目で見てくださ〜い」

 そのあといくつか検査をやって、右が「0.2」、左が「0.8」という数値が出た。かなり
悪い方らしく、結果を聞いたユリコがまた驚いていた。向こうじゃそこまで不自由は感じ
てなかったんだけどな。
「フレームはこれがいいんじゃないかな?」
 ユリコが差し出したのは濃い青色の金属製のやつで、全体的に細いタイプのものだった。
一見ヤワそうに見えるが、形状記憶なんとかって金属でできていて、多少なら折り曲げて
も元に戻るそうだ。
「少しくらい暴れても壊れないヤツ、ね?」
 にっこり笑う。ゲーム世界に戻ったあとも使えるようにと、強度を重視して選んでくれ
たのだろう。チクッと胸が痛んだが、顔には出さずに素直にそれに決めた。かけてみると、
うん、そこまで変じゃないし。
「じゃあフレームはこれでお願いします。できあがりまで何日かかかるんですよね?」
 え……?
「いいえ〜。これだと在庫がありますので〜、40分くらいお待ちいただければ〜」
 良かった。何日もかかるんじゃ作ってもらっても無駄になる。
 その頃には俺、たぶんこの街から姿を消しているだろうから。

 眼鏡が出来上がるまでその辺をブラついて時間を潰すことにした。ずらりと並んでいる
店を片っ端から覗いて歩く。どれも向こうにはない珍しいものばかりでちっとも飽きない。
「こういう時の『金持ちのトモダチ』でしょ! 遠慮しないで買っちゃいなって」
 というユリコちゃんに甘えさせてもらい、気がついたら服も靴もフルチェンジしていた。
どんどん増えていく手荷物が邪魔になり、一度駅に戻ってロッカーに荷物をぶち込んだと
ころで、あっという間に約束の時間になった。
 さっきの眼鏡屋に戻る。さっきの店員のおねーさんに引換券を渡すと、ケースに収まっ
た眼鏡を持ってきた。さっそく取り出してかけてみると、信じられないくらいクリアに見
える。ってか今までずいぶん見えづらい生活を送ってたんだな、俺。
「世の中ってこんなにクッキリしてたのか……。本当に嬉しいよ、ありがとう」
「どういたしまして。こっちに来て見てみなよ、似合うよ」
 ユリコに言われ大きな姿見の前に立つ。そこには、表通りですれ違った若者たちと大差
のない少年が、どこかぼうっとした表情で俺を見返している。
 なんだかなぁ、俺ってもう少し賢そうな顔してなかったっけか。

492 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 00:33:27 ID:0WQsVruyO
ノシ

493 :Stage.18 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:37:14 ID:5N8VteG00
 
 店を出て、さてこれからどうしようか、とユリコと顔を見合わせた。さすがにちょっと
疲れてきたな。
 少し休もうか――と思った直後、すぐ近くから柔らかいメロディが聞こえてきた。ユリ
コが慌てたようにハンドバックを探る。彼女の携帯電話だった。
「戸田? どうかしたの」
 カズヒロからのようだった。そういやカズの方は中途半端になってたっけな。ユリコの
方でうまく誤魔化してくれたようだが……。
「そうよ、けさ言ったじゃない。今日はタツミとデートだからって……え?」
 急に彼女の顔がこわばった。
「それ誰に聞いたの!? なに? ちょっと聞こえないよ、あんたどこにいるの? 戸田?
――やだ切れちゃった」
「どうした?」
 ユリコは戸惑うように俺を見上げた。
「戸田、アル君のこと知ってる」
「なんだって?」
「あたしは言ってないよ。でもあいつアル君の名前を知ってて、それになんか変だった。
なんていうか、泣きそうなっていうか……すごく怯えてるみたいな感じで」
 まさか。
「場所も変だよ、声が反響してるみたいで、とにかく聞き取りづらいの。電波も悪くて何
回も途切れそうになってたし」
 俺の中で不安がふくれあがっていく。嫌な予感。いや、ほとんど確信に近い。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 今度は俺の携帯が鳴った。予想通り表示は「KAZUHIRO」だった。

『……よう、ご先祖様。もうこっちの女をモノにしたのか。なかなか手が早いじゃないか』

 確かに声が反響して聞こえる。それはヤツの絡みつくような口調と相まって、嫌でも暗
く湿った洞窟の中を思い出させた。

494 :Stage.18 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/12/21(日) 00:43:14 ID:5N8VteG00
本日の投下はここまでです。

なんとか投下が終わりました。
実はうちのアルスは目が悪いです。ようやく書けました。



メ欄クイズの答えはこちら。
楽しんでいただけましたら幸いです。

問1:ファルシオン
問2:ルドルフ
問3:エデンの戦士たち
問4:オーディーンボウ
問5:ムオル

495 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/21(日) 17:03:37 ID:yliKsbBp0
投下乙でしたー!
リアルタイムで遭遇したかったw

アルスって目が悪かったんですね。
サイコさんwカズヒロの方にいっちゃったんだ。
確かにあっちも顔見られてたしな。
今後どうなるかますます期待です!

496 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 11:51:42 ID:nwicmV+M0
>>465の最初に題名付け加え
第一話 「俺がドラクエの主人公!?忠犬ハチ公」
>>466-469は同じ

497 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 11:58:49 ID:YxR8LolE0


とりあえず50Gもっているか確認する



498 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:16:00 ID:nwicmV+M0
第二話 「洞窟探検はワクワクドキドキ!ヒデキ感激!」

パパスにボコられ重傷を負いながらも必死でパパスについていく。
村のみんながパパスが帰ってきたことにより喜びの声をあげる。
なんでこんなひどい奴が慕われているんだよ。どんな世の中だよ、コレ・・・
みんなは喜びながらパパスに駈け寄る。
村のみんなからタッチされたりし喜ぶパパス。こんな一面もあるのか。
だが、誰かがどさくさにまぎれて腐ったたまごをパパスにぶつけた。
「みな殺しだぁー!」パパスが叫んだ。

数十分後、村は一面、血の海になった。
パパスはたまごをぶつけた奴はもちろん、関係ない人まで殺したのだ。
俺はあわてて隠れたから無事だった。
神父が生き残っていたのが不幸中の幸い。神父がパパスに殺された人々を
生き返らせていく。だがパパスは問答無用で生き返った人々を殺していく。
パパスが村の人々を殺す→神父のザオリクで村の皆が生き帰る→再びパパスが殺す。
無限ループだよ。どこの地獄絵図だよコレ・・・

さらに数時間後、やっとパパスが落ちついた。村の人々が無事生き返っていく。

499 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:37:16 ID:nwicmV+M0
パパスは何事もなかったようにとある家に向かっていく。
なるほど、ここが俺の家らしい。サンチョとかいう奴に出迎えられて家に入る。
なんか子供がいたのでその子供と遊ぶことに。
なんで俺がガキの子守りをしなきゃなんねえんだ。あっ、俺は今子供の姿だからか。
この子はビアンカとかいう名前らしい。
今のこの姿の俺の年はこの子供より2歳年下らしい。ビアンカは8歳ということは
今の俺は6歳か。なんでガキになっちまったんだ・・・
ビアンカは俺に本を読ませようとするが難しい文字があるのか読みきれてない。
ビアンカは暗い表情で俺を見始めた。
「やっぱり・・・人生って辛いよね・・・生きてるとロクなことがないわ・・・・」
おい、お前の過去に一体なにがあった。お前、8歳だろ。

しばらくして、ビアンカは自分の母とこの村の宿屋に帰って行った。
パパスもどっかに出かけていった。面白そうなので追いかけてみるか。
だが家を出ようとする俺にサンチョが話しかけてきた。
「あんた主人公だったな?」
おい、なんで知ってんだ。いくらこの世界がムチャクチャだからって
俺が主人公って知ってたらまずいだろ。
「お前、大きくなったら、とある3人の娘から嫁を選べるぜ」
しかもネタバレかよ。やってらんねえ。
「まあ、嫁は1人しか選べないから余った2人、俺がいただいてもいいか?」
「・・・・」
「あれ?無言っことは3人とも俺がいただいてもいいっすか?」
俺はデブことサンチョに地獄に落ちろといいながら家を出ていった。

500 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 12:59:39 ID:nwicmV+M0
パパスが入った洞窟に向かったがパパスは俺がいけない通路を通ったため
パパスには会えないだろう。でも道具屋のおっさんがこの洞窟に行ってから
帰ってこないらしいので洞窟に入ることにする。

洞窟に入ると同じにスライムが2匹襲いかかってきた。
この前のようにはいかないぜ!と腹に注意しながらスライム一匹を倒した。
とりのこされたスライムはあきらかにびびっている。
だがスライムは堂々とした表情になると口を開いた
「よくぞスライムAを倒した。どうだ?スライムAの代わりに我が息子にならんか?」
すぐさまスライムBをチョップで倒した。

襲いかかってくる魔物を倒しながら洞窟の最深部にたどりつく。
岩にはさまれて動けないでいた道具屋のおっさんを助ける。
だがおっさんは礼を言わないで去ろうとした。
ムカツクのでひのきの棒でおっさんの脇腹をねらった。
今にも脇腹にひのきの棒が当たろうとしたその時!
おっさんの目がキラーンと光った(ように見えた)
おっさんは体をしゃがみひのきの棒を脇腹ではなく肩に当たらせようとした。
この洞窟の魔物なら一撃で倒せる程強くなった俺だ。当たったらひとたまりもないだろう。
バキーン!とおっさんの肩にひのき棒がぶつかった。
だがおっさんはなにも無かったようにニコッと笑った。
「ありがてえ。ちょうど肩がかゆかったんだ。サンキューな、坊主」
この人に一生ついていきたい。俺はそう思った。


501 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:18:35 ID:nwicmV+M0
おっさんが帰った後、洞窟の最深部になにかないかなと探しまわった。
宝箱を見つけ中身をとりだし帰ろうとする俺に誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出た。

道具屋のおっさんの所にいった。
「おう!さっきの坊主じゃねえか!そこの引き出しになんか入っているから持っていきな!」
引き出しを開けてみるとエロ本とておりケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本を取りここを去ろうとしたらおっさんに引き止められた。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。

村の人々の話を聞き終え家に戻る。
デブがお出迎えすると次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからさ。くれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙れ。この金髪豚野郎が」
この言葉を言うとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと?金髪と言ったか今?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言った事、今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこ怒ってんの!?金髪の他に怒るとこあるだろ!豚野郎に怒れよ!」
「あ、豚野郎は許すわ」
「許すのかよ!普通そこに怒るだろ!」
「てゆうか俺、金髪じゃないし」
「ツっコむのおせーな!」
「それよりも早く寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることに。

502 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:35:24 ID:nwicmV+M0
おっさんが帰ったので最深部になにかないか探す。
宝箱を見つけて中身を取りだし帰ろうとすると誰かが話しかけてきた。
「ぷるぷる。僕は悪いスライムじゃないよ」
俺はスライムをサッカーボールみたいにドリブルしながら洞窟を出ていった。

道具屋のおっさんに会いに道具屋の店に行った。
「おう、さっきの坊主じゃねえか。そこの引き出しに入っているモン持っていっていいぞ」
話の分かる奴だ。だが引き出しを開けるとエロ本とておりのケープがあった。
(どっちだ?どっちなんだ?)
エロ本と決め持ち去ろうとするとおっさんが慌てて叫んだ。
「そっちじゃねえ!ておりのケープだ!」
ちっ、そっちか。

村の人々の話を聞き終え家に帰る。
デブがお出迎えしたと思いきや次にさっきの話をしてきた。
「なー、3人のうち1人でもいいからくれよ〜」
またかよ。それにしてもうぜえな。
「黙ってろ!この金髪豚野郎が!」
するとデブが怒りだした。
「ちょ、おま。金髪だと!?金髪とかふざけんじゃねえぞ!
金髪と言ったこと今すぐ取り消せ!前言撤回しろ!」
「いや、どこに怒ってんだよ!もっと他に怒る所あるだろ!豚野郎と言ったことに怒れよ!」
「あ、それは許すわ」
「許すのかよ!」
「てゆうか、俺金髪じゃねーし」
「いや、ツッコむのおせーな!」
「つーかさっさと寝ろ!」
あれ?こいつツンデレ?こんな奴のツンデレなんて見たくねーよと思いつつ寝ることにした。

503 : ◆DLQmf08qD. :2008/12/22(月) 13:37:09 ID:nwicmV+M0
間違えました。連投すいません。今日はここで終わりです。
こんな駄作でよければ書いていこうと思います。

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 17:11:08 ID:RO0wx9a0O
何だかめちゃくちゃだ…
だがそれがいい

505 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/23(火) 00:10:12 ID:daebOWRS0
パパスwwwwwwww
サンチョwwwwwwwwww
こいつらwwwwwwwwwwwwww

続きを期待していますノシ

506 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:01:55 ID:vl3rV1y4O
>>479の続き

ロマリアの夜の城下街を歩く。
この街はとても広く宿屋や酒場などが多く立ち並んでいて、どこを歩いてきたのか分からなくなってしまうほどだった。
遠くの方に微かに城らしき建物の頂上部の明かりが町並みに見え隠れしている。アリアハン城より大きいかもしれない。
夜だと言うのに人通りは少なくなく、旅人とすれ違うこともしばしばだったが皆立派な武器防具を身につけていた。
きっとあのくらいでないとこの周辺のモンスターには太刀打ち出来ないのだろう。
俺も銅の剣では少し不安ではあるが、サキは木刀でそんなモンスターを軽く蹴散らしてしまえるんだからまだ我慢すべき所か。
強い武器防具に頼っていては強くはなれないと言うし。

俺は適当に雰囲気が良さそうな酒場を見つけ、中で夜食兼情報収集をすることにした。
酒場に入る前にサキは少し躊躇っていたが例のごとく鼻に洗濯挟みを付けて中に入った。
俺は見兼ねて外で待ってろと言ったがサキは首を横にフルフルと振った。
店員が不思議そうにそれを見ていたが、「お前ら笑ったら死ぬぞ」と言うオーラを俺が出していたので誰も突っ込んではこなかった。

ルイーダ姉さんの作った弁当より遥かに劣るであろうメニューを適当に注文し、俺はそれを瞬時に食べ終えていよいよ本題へと入る。

「強い人。」
どう聞けばいいか迷ったがこれで十分な筈。
こんな世界だ。強い奴は嫌でもすぐに名前が知れ渡る。アリアハンで俺がそうだったように。

俺は複数人に尋ねた。
尋ね終えると、俺は自分の中の戦士としての心がその名前の挙がった者にすぐにでも会いたいと心臓を高鳴らせた。
なぜなら酒場にいた一般客、旅人、店員全てが口を揃えて一人の男の名前を言ったからだ。

その男の名前は「カンダタ」と言った。

507 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:07:32 ID:vl3rV1y4O
「カンダタ」
詳しく話を聞いてみるとその男は大盗賊の頭であり、この国では知らぬ者はいないほどの人物だった。
悪名高く、あろうことか先日もこの国の王様から王の冠を盗んで逃走したらしい。
この国の兵士ではまったく歯が立たず、捕らえようとした兵士数十名が斧で斬り殺されたという話だ。
熊の様な大柄で巨斧を軽々と振り回し、人間をまるで紙屑の様に斬り殺す様を見た者は、
「あれは人ではなくモンスターだ。」と口を揃えて言う。

「アンタもしかしてやっつけようとか思ってるのか?」
一人の酔っ払った酒場の客が聞き返してきた。
「いや…、少し興味があっただけなんだ。」
俺は微妙な返し方をした。……嘘だな…。
「だよなぁ。悪いけどアンタ強そうには見えないしなぁ。なっはっは。」
…アリアハンでもよく言われたがやはりここでも言われたか。まぁどうでもいいことだが。

そんなことよりカンダタとか言ったか。
話しから察するに俺より上か…。例え俺より上だとしてもサキには劣るだろうか…。
ロマリアでモンスターと恐れられる盗賊の頭カンダタか…
アリアハン一の戦士の俺が怖じけづくほどの勇者の娘サキか…
………そうか…。俺が戦ってみたいんじゃなくてそのどちらが強いのか見てみたいのか。
…くそっ。なんだよ。俺ってこの程度の人間だったのか………?

「…そいづは…どこに行けば会える…?」
今度はサキが酔っ払いの客に聞き返した。やはりサキはそのカンダタと戦ってみたいのだろうか。
その酔っ払いは、「なんだこのガキは?」という表情を見せたがその少女の背中に差してある2本の剣をマジマジと見ると答えた。
「なんだい嬢ちゃん?あんたがカンダタを倒すなんて言うじゃないだろうなぁ?なっはっは、まさかな。」
「………。」
いつもの様に表情を変えずに真っ直ぐ相手を見据えたまま自分の問いを待つサキ。
「けっ。おもしれぇなぁ。アンタらよく見ると強そうじゃねえか。アンチャンも傷だらけでイイ男だしよぉ。」
「………。」
俺も無言で返してやった。酔っ払いは少し考えた様子の後、手に持つグラスの中のアルコールを一気に飲み干した。
「…っうぅっく。しゃあねぇな。カンダタってのは盗賊団だ。部下を何人か従えている。この街では無い場所にアジトがある筈だ。」
「どこにある?」
「それは分からねぇ。だがこの国の情報によれば北の方からやってくるってことは確かなようだ。」
「北か。曖昧だな。」
「北に行けばガザーブってぇ村がある。知ってるか?」
「いや…。」
「まぁ行ってみることだな。行ったところでどうにもならないかもしれないがなぁ。」
「そうか。ありがとう。」

「はぁ〜あ。俺のせいで死人が出ちまったぜ。若い男女が2人もよぉ。飲まずにいられるかちくしょぉ〜。マスター!酒!」
その酔っ払いは酒場を後にする俺達にわざと聞こえるかの様に酒のお代わりを注文していた。

508 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:13:38 ID:vl3rV1y4O
酒場を出てから俺は、当初の目的が変わってしまっていたことに気が付いた。
俺達はこの街へ強い仲間を探しにやってきたんだった。
それがいつの間にやらカンダタとか言う盗賊の頭に興味が奪われて、戦うか戦わないかの問題になってしまっていた。
どうする?と若干鼻が赤く跡が残っているのを気にしているかの様に、手で隠しているサキに声をかけた。
サキは、あまり自分の顔を見るなと言うような目つきで俺を見た。
…そんなことを気にする奴だったか?やはりこいつの行動には理解し難いものがある。

「…何を…言ってる?」
「いや、だから目的変わっちまってるだろ?」
「…変わってなどない。」
「あ?」
「そいつを…仲間にする。」
「は?」
俺にはそんな発想出来る筈もなく、理解するまで少し間が空いてしまった。
「話し聞いてたのかお前!?盗賊の頭だぞ?極悪野郎だぞ?人も殺してる。」
「関係無い…。」
「か、関係無いことあるか!そんな奴仲間になるわけないだろ!?」
「力でねじふせれば…どうにでもなる…。」
「な!?」

これが女…いや、勇者の娘の言う言葉なのかと俺はその言葉にしばらく度肝を抜かれていた。

強い故に恐ろしい奴に目をつけられたもんだなカンダタとやらも…。
果たしてどうなるんだろうな…。

出発は明日。俺達は宿に戻り明日に備えて早めに眠りに着くことにした。

509 :喪失 ◆GlJDOSjJ1Y :2008/12/23(火) 12:28:36 ID:vl3rV1y4O
この先話がめんどくさくなりそうですがよろしくお願いします。
サキと主人公気に入ってもらえてよかったです

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/24(水) 03:09:04 ID:IPz33B+X0
サキー!!俺だー!!決闘してくれー!!

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/24(水) 22:16:38 ID:EFpMXNItO
一応検討しておきます。

512 :IV 第一章:プロローグ ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:13:48 ID:KQ11zLxV0
 雨がひどい。少しでもアスファルトがへこんでいるところは水たまりになっていて、革のブーツがびじょびじょになる。
ジーンズの膝が色濃くなって、夜道を照らす青い街灯の光りを黒く吸い込んでいた。私は走っている。
夜なのにサングラスもとらずに、ただひたすら自宅アパートに向かった。
 組んでいるバンドのボーカルが死んだ。交通事故だった。新聞やニュースを見れば、毎日必ず一度は目にする人の死亡要因だ。
自分やその周りには降りかかる悲劇ではないと、誰もがたかをくくって生きている。
明日になれば、新聞の地域欄に彼が死んだという簡素な記事が載る。
葬儀を終えて、練習スタジオキャンセルがどうしてもできないからと密室でギターを引き続けた私も、
ドラムやベースといった私以外のメンバーも、無表情に意気消沈して時間通りに解散した。
 深い水たまりに左足がはまった。高く上がった雨水が細い柱のように伸びてきた。「え?」と思った瞬間、
水は渦を巻き私の腰を絡め取ってずるんと足のつかない感覚へ引きずり込んだ。
 反時計回りの激流の中、何が起こったのかもわからず回らない頭でドブにでも落ちたのかと考える。それにしては深すぎた。
脳味噌がかき回されているように意識が体から振りほどかれて、ぱちんと暗転した。


513 :VI第一章:イムル ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:14:25 ID:KQ11zLxV0
 目蓋を開けると視界は白い太陽光に照らされて明るかった。なんだか手足が左右上下ばらばらに引っ張られているような疲れがある。
それでも頑張って体を起こして周囲を見渡した。胸までかかっていた薄い布団をとっさに握り締める。
 ここは私の部屋じゃない。
 木の板を隙間なく打ち付けた壁に、シンプルな額縁に入った風景画が飾られている。
曇りのないガラスがはめ込まれた窓枠はかなり質素な作りになっていて、必要最低限の技術で固めた建築物、
その一室に置かれたベッドに寝かされていたようだった。
 背の低いタンスがベッドの横に置いてあった。手作りらしいリリアンの上に、サングラスがある。
もう少しよく部屋を見回すと、タンスの引き出しは少し開いていて、黒光りする何かがある。
中を覗くと、さっきまで着ていた革ジャンが無理やり畳まれて入っていた。
 ドアが開く音に飛び上がる。あわててサングラスをかけてドアを凝視していると、中年の男性が部屋に入ってきた。
誰だろう? 見たこともない。鮮やかな黄緑色の帽子にそろいの上下をあわせ、白いエプロンをつけている。
エプロンはところどころ、食べ物の染みなんかで汚れていた。食事の支度でもしていたんだろうか。
 「おや!お目覚めになりましたか?で、どうです?体のぐあいは」
 男性の服は、映画や漫画でちらりとしか見たことのない装飾が施されていた。
装飾とは言っても、やっぱりそれはほんの小さなアクセントにしかならない程度のもので、私が見知ったデザインとは違う。
 「平気、です。あの、ここは」
「ここはイムル。イムルの旅の宿ですよ。あなた、この村から西にある湖に浮かんで漂っていたんですよ?
よく溺れずにいましたねぇ、あんなに重たい服を着て」
 たぶん、彼は私の革ジャンのことを言ってるんだと思う。湖に浮かんでいた、って……なんで沈まなかったんだろう。
疑問だけれど考えたって仕方がない。男性はこの「旅の宿」のご主人らしい。あなたが私を助けてくれたのかと尋ねると、
自分ではないという。隣の部屋に止まった「ライアン」という王宮戦士が、湖に浮かんでいた私を引っ張り上げて、
ここにつれてきてくれたのだそうだ。


514 :VI第一章:イムル2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:15:00 ID:KQ11zLxV0
 湖の中にいたのにどうして沈まなかったんだろう、ということよりも、もっとわからないことがある。
イムルなんていう地名、聞いたことがない。西方に湖がある村なんて日本中探したってそうたくさんはない。
それに、周囲を形作るこれらのものたち。ここは日本じゃない。それだけしかわからない。
 宿のご主人がいなくなってから(何かあったらいつでも下の受付に来てくれと言ってくれた)、持ち物を確認した。
水たまりで溺れたときに私が持っていたのは、シザーケースに入れたお財布と携帯電話、市販の鎮痛剤にサングラスのケース、
ジーンズの後ろポケットに入れてたラークマイルドとライター。
 それから、命と家族の次に大切なジェームス・バートン・テレキャスター。
 湖に浮かんでいた、ってことは……携帯電話とテレキャスターはまさか……両方とも……?!
 でも、丁寧に革ジャンと一緒にしまってあったシザーケースの中は渇いていて、
革製のお財布もサングラスのケースもちっとも傷んでいなかった。ベッドの上でシザーケースをひっくり返す。
 出てきたのは、お財布・サングラスのケース、のみ。鎮痛剤と携帯電話がない。部屋中よく探してみても、
テレキャスターは見つからない。
 お財布を開けて見てさらにびっくりしたのは、ひとつめに硬貨の形や紙幣の絵柄がまったく違うこと。
「100G」と印刷された紙幣が6枚と、「10G」の文字と装飾の硬貨が5枚、それから、「1G」の硬貨8枚。
お財布に入れてたのはだいたい6500「円」ちょっとだったはずなのに。
ふたつめに、クレジットカードや会員証なんかのバーコードや磁気読み取りつきのカードがなかったこと。
人の手でチェックされたり、スタンプを押すようなのは無事だった。


515 :VI第一章:イムル3 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:15:42 ID:KQ11zLxV0
 私服に着替えてから一階に降りて(柔らかい布の服にいつのまにか着替えさせられてた。誰がやってくれたかはあえて考えない)、
さっきのご主人にテレキャスターやカード類の特徴を説明してそこらで見なかったか聞いてみるも、そんなものはなかったと返された。
ジーンズのポケットに手を入れると、タバコの箱は入っていたのにライターだけが見つからない。
スタンプカードやタバコはちゃんとあるのに、どうして他のものは出てこないんだろう?
 むーむー唸りながら考えていると、二階から背の高い男性が降りてきた。
 鉄製の鎧兜に身を包み鋭い槍を手にしたその人は、青くて丸いものに黄色いぱやぱやがたくさんついた奇妙な生き物と一緒だった。
 「おお、お嬢さん、この方があなたを助けたライアンさんですよ」
 口ひげをたくわえた「ライアン」さんが、私のほうを見た。まんまるい目をくりくりさせた青いのも一緒になってこっちを見ている。
お礼をしようと向き直ると、彼は私に対して一礼し、強い意志を秘めた眼差しを鉄兜を脱いで見せた。
 得体の知れない、それでもとても強くてまっすぐな「何か」に胸を貫かれた気がした。
 「ご無事なようで何よりです。私はバトランド王宮戦士のライアンと申します」
 無駄な線ひとつ描かない会釈に気をとらわれていたが、私もすぐにお礼と自己紹介を口にした。
 「助けていただいて、ありがとうございました。私は『メイ』です」
「『メイ』殿、ですな」
 彼が「王宮戦士」であることは聞いたけど、さっきこの胸を貫いたように感じたのは、
ライアンさんが持つ地位や、相手をねじ伏せるための強さとかそんな安っぽいものじゃない。
私が今まで覚えた言葉や現象を使っても、けっして説明のつかないような雰囲気を、彼は持っていた。



Lv.1 メイ
HP:14 MP:0
E −
E −
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス

戦闘呪文:−
所持金:658G
※テレキャスター=アメリカのギター会社フェンダーのエレクトリック・ギター

516 : ◆fzAHzgUpjU :2008/12/26(金) 00:17:02 ID:KQ11zLxV0
新参者ですが、以後よろしくお願いします。

517 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/27(土) 04:51:10 ID:0L6iFKzzO
新人さんktkr
機械系はダメなのかなーテレキャスで戦うとか想像したw

518 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/27(土) 23:35:43 ID:05KOkQAyO
>>516
期待しちょります

>>517
>テレキャスで戦うとか想像したw
俺漏れもw音撃とか斬鬼さんに変身とか妄想したw

519 :魔法使用方法論1 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:08:59 ID:ulrUGKEH0
>>512-515の続き

 「だいじょうぶ?落ち着いた?」
「宿の主人がミルクを温めてくれたが、……飲めるだろうか?」
 イムルの宿屋でライアンさんと対峙して、ホイミンくんという名前のホイミスライムが挨拶をしてくれた瞬間、
緊張の糸が切れて混乱のドツボにはまりこんでしまった。「ここはどこ?どうしてここにいるの?」という、
忘れよう忘れようとしていた不安要素が、ライアンさんを前にして崩れ落ちてきたみたいだった。
多分、ライアンさんが強く優しい人で、なおかつ正しい道を歩んでいるから安心しちゃったんだと思う。
うぅ……まさかハタチをすぎてから人前でわーわー泣くことになるなんて。恥ずかしいよ恥ずかしいよオゥイェーア。
 ひとしきり、イムルの旅の宿のカウンターの前で泣いてから、私はありのままこの身に起きたことを彼らに話した。
すると、あまり喋るのが得意ではないライアンさんに代わり、ライアンさんが私を湖から助け出したときのことを教えてくれた。
 最近、イムルを含めこのあたりを統治しているバトランドは奇妙な事件でもちきりなんだそうで、それもタチの悪いことに、
「子どもが神隠しにあうように、ふっと目の前から消えていなくなってしまう」というものだった。
ライアンさんとホイミンくんは手にした情報を元に、イムルの村の西にある塔が怪しいと目論んでいたけれど、
塔は湖に囲まれて人の足では近寄れない。イカダを運ぼうにも、距離があり魔物も出るから難しいということだった。
 魔物だとか、ホイミスライムだとか、神隠しだとか、そういった件についてはもう割合してしまう。
目の前で見せ付けられている「青いのに黄色いぱやぱや」の生物とか、その生物が唱えた不思議な魔法とかは、
もう喋るよりも頭で整理するよりもさっさと見たほうが早いもん。
 それで、ライアンさんたちは「とりあえず、塔の近辺に行って様子を探ってこよう」と湖畔を散策することに決めた。
私を見つけた経緯だった。
 「私が湖で仰向けに浮かんでいたメイ殿を岸に上げた瞬間、メイ殿の衣服や荷物を濡らしていた水が蒸発した。
何事もなかったかのように、メイ殿はさらさらと渇いた髪を風になびかせて眠っていたのです」
「あれ、魔法の匂いだったよね。ぼく、わかるもの」
 ぬるくなりつつあったホットミルクのカップを握り締める。カップの熱とは裏腹に指先が冷たくなった。
魔法の匂いがする得体の知れない存在になってしまった自分を、せめて私だけは認めなきゃ。


520 :魔法使用方法論2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:09:37 ID:ulrUGKEH0
 「魔法ってね、魔力を発するだけじゃダメなんだ。魔力を受け取る力と、発する力。
両方を持って理解して、初めて使えるんだよ」
 ホイミ、と口にしてライアンさんのケガを治して見せたホイミンは、
湖から引っ張り上げられた私が放つ魔法の匂いの説明をしてくれた。魔法、ねぇ……。なんかもう、信じられない。
つい昨日までは、マーシャルのアンプを力ずくで運んで、ギターのチューニングしてギュインギュイン弾いてた人間が、ね?
今は青くて黄色のぱやぱやに、人間が夢見続けてきた幻想の力について講義を受けているのですよ。
 「私のような武術を得意とする者は、たいてい魔力を発する力に長けていないからその道を選んでいる。
メイ殿は、ホイミンが言う限りでは、魔法の才が多少なりともおありなようだ。異界から来たにも関わらず。
目が覚めてここにいたのには、何か特別な理由があるように思いますぞ」
 んー……、ああ、なるほど。
インターネット回線でメールやネットするときは、受信と送信の両方が出来て初めて役に立つもんね。
送信ばっかりしてたら相手のメールの内容なんてわかんないし、受信ばっかりしてたら自分の言いたいことが言えないからか。
 魔法も、要は同じってことかなぁ。
 「魔力を受け取ることが出来ないと魔法の本質そのものを得ることができないから、受け取る力もなきゃいけないと?」
「そうそう!例えば今ぼく、魔法を唱えたよね?魔力を受け取る力がある人は、誰かが魔法を使っていたり、
何かから出てる魔力を感じて『魔法や魔力ってこういうものなんだ』って、感じられるの。
それで、魔法や魔力を理解できたら、今度はそれを自分から出すんだ。それが『魔力を発する』ってことなんだよ」
 ……えーと。うん。あれか、大切なのは習うより慣れろってことですね。
 「メイさん、魔法は使えないの?使ったこと、ない?なんだか素質ありそう〜」
 眉間を寄せてやっぱりむーむー唸っていた私の顔をホイミンくんが下から覗き込む。
 「いや……私のいた世界は、魔法なんてなかったから。素質なんてないよ。何の変哲もないただのギタリストだもん」
「おお、それなら魔法の素質があるというホイミンの言葉にも、納得がいきますな」
 今までやけに静かにしていたライアンさんがずい、と身を乗り出した。
 「音楽と踊り、詩文と言葉は魔法を介するものたち。内に秘めた力を外に出すための、最大の方法だと言いますぞ。
メイ殿はおそらく、音楽を奏でることによって、この世界の魔法に似た力を使うことが出来たのでしょうな」
「それはありませんよ」
 自分で思っていたよりもずっと、即答で否定が出てきてしまって驚いた。
 ステージの上で、音や言葉に乗せて色んな人を力で引き寄せていたのは、私ではなくて―――「彼」だ。
 「そんなことないよ!だったら、ぼくが教えてあげるから、魔法つかってみて!ね!?」
 必死なホイミンくんに苦笑しながら付き合ったら、あっという間に「ホイミ」を習得してしまった。
自分のギターの音色を、良い方向に自認しているような気がした。


521 :湖の塔1 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:10:21 ID:ulrUGKEH0
 昨夜、ホイミンくんから教わったのは「ホイミ」と「メラ」の二つの魔法だった。
 口と声で魔法の名前である「呪文」を唱え、それに魔力を乗せて相手に飛ばす。それが「魔法」というものだった。
私にはなかなかの魔法の才能があるらしい。もといた世界に戻るのにも魔法が必要ならばと、
魔力めいた神隠しの真相を探り帰路へのヒントを掴むため、ライアンさんたちに同行させてもらうことになった。
 ちっちゃいころは女の子の大半が、ピンクや赤のふりふりがついたお洋服を着て、星やハートや三日月のついた
魔法のステッキを持って、かわいい魔女になることを夢見ていた。
 私だって、三歳や四歳のころからハードロックやヘヴィメタル一色だったわけじゃない。
今でも魔法が使えるなら、そういう「かわいい」杖を持ってシャララーンと悪いやつをやっつけたい。
 ……なんて、いい大人が持つもんじゃない考えを持っていたのは、つい三時間ほど前のことで―――。
 「しゃあッ!」
 力むときの妙なクセとなってしまった掛け声と共に私が振り下ろしたのは、ライアンさんとお揃いの「鉄の槍」。
有り金をはたいて武器を買おうと店のラインナップを見て、あんなに重たそうなもの絶対に扱えない!
って思ってました。最初のほうは。だけども悲しいことに、アンプやスピーカを移動させたりとか、
片手にマイクスタンドを三本とか四本とかまとめて持ったりするとか、
そういった肉体労働のおかげで、私はこの世界の重い武器をありがたくもないことに扱えるみたいだった。
これならテレキャスターでギャンギャン騒音聞かせたところをヘッドやネックで殴りかかったほうが私らしい気がするけど、
見つからないものはもう仕方ない。ものすごく悲しいけど。給料半年間貯金しつづけて買ったやつだけども。
 ライアンさんのお下がりの「うろこの盾」をもらいうけ「鉄の槍」を手に、私たちは湖の塔の地下を目指している。
 ライアンさんがホイミンくんと出会った古井戸で見つけた靴は魔力がこもったものだった。
ホイミンくんを左腕にしがみつかせ、右腕で私を抱きかかえて靴を履いたライアンさんは、二人と一匹分の体重なんて
ものともしないで重力に逆らい大空を舞った。飛び上がった瞬間、稲葉浩志にも負けないぐらいのシャウトをしちゃったのは、
まあここだけの話ということで。
 塔なのに地下へ向かうのはなぜか。それは、空飛ぶ靴で着陸したのが塔の屋上だったことと、
屋上から大目玉が子どもを無理やりつれて階下に向かうのを見たから。
 長い階段を下りて地下に向かうためには、まず入り組んだ塔の内部を探索して階段がどこにあるのかを探さなくちゃならない。
それに付け加えて、塔には地上とは比べ物にならないほど強い魔物がたくさん出る。
さっきからぜんぜん息が整わない私に、ライアンさんは木製の水筒を差し出しながら言った。
 「メイ殿は、力があるのに体力がありませんな。気をつけてください。体力の無さは打たれ弱さの証です。
けっして無理をしませんよう」


522 :湖の塔2 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:11:23 ID:ulrUGKEH0
 呼吸のたびに肺からびゅうびゅう嫌な音がするのは十四歳のころから。ライアンさんたちと同行するのを決めたとき、
覚えたてのメラで残っていたタバコすべてに火をつけて、一口ずつだけ吸ってあとは全部燃やした。
ずいぶんと突拍子のない理由で禁煙することになったけど、これから毎日こんな長距離移動が待ち受けているなら、
タールやニコチンなんて吸ってられない。バンドマンはボーカリストじゃないかぎり、大抵の人が喫煙者。
私も例外じゃないわけで、鼻でらくらく呼吸をしているライアンさんとは違い、さっきからゼーゼー言いっぱなし。
 「重い装備が出来る人って、普通は打たれ強いはずなんだけどなぁ」
「常識が通じない人間も中にはいるよ」
 気づかれないようにしていたのだろう、ソロ〜リと後ろから近寄ってきたダックスビルを槍でなぎ払う。
トドメに遠距離からメラを打って完了。着々と強くなるのが実感できて、元いた世界でよく味わってた歯がゆさも
忘れちゃいそう。
 ……ギターなんて、元から弾けたわけじゃないもの。ボーカル下ろされてギタリストにされて、弾けなくて弾けなくて。
 「……メイ殿?どうなされた?なんだか遠いところを見ていたようだが」
「っあ、いや、なんでもないです、ごめんなさい」
 危ない危ない。魔物が出るところで昔のいろいろを思い出してる時間はないんだった。
 「だいじょうぶ?痛いの?ホイミする?」
 心配そうにこっちを見つめるホイミンくんが黄色のぱやぱやにホイミの魔力を宿し始める。違う違う!
痛くないから! 大丈夫だから!
 微笑みながらも気を抜かないという、そんな矛盾に張り詰めた意識を蹴破ったのは、
ライアンさんの立てる足音が突然早く、強くなったことだった。
 「ゼノン!」
 ライアンさんが叫んだのは、人の名前らしかった。ホイミンと一緒に、走っていくライアンさんを追いかける。
壊れたバトランド王家の紋章がついた鎧の兵士が、床にはいつくばっていた。鉄の鎧を鋭い爪が抉ったあとがあり、
そこに至近距離からメラを打ち込まれたのだろう。肌が焼け焦げ、赤とピンクの内臓がはみ出している。
ホイミンくんがぎゅっと目をつぶった。私も震える手を隠すためにホイミンくんを抱きしめた。
 倒れていたのはライアンさんの仲間のバトランド王宮戦士だった。戦士は語った。
この塔の地下を拠点とした魔物たちは、世界を魔の手から救う勇者の復活を恐れているらしい。
いずれ成長し強くなる勇者を子どものうちに始末しようと、魔族たちは躍起になっているのだそうだ。
子どもたちの遊び場になっていた古井戸に、さっき履いてきた空飛ぶ靴を置いておけば、あとは待つだけというわけ。卑劣極まりない。
 「……行こう。この下だ」
 友の死に唇を噛み締めるライアンさんの後ろで、ホイミンくんが遺体にホイミをかけていた。
せめて死した後は人間らしくきれいに、と。
 「……何がいいとか悪いとか、区別が付け辛い世界なんだね」と独り言を呟いて、ライアンさんに続いた。


523 :湖の塔3 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:12:19 ID:ulrUGKEH0
 破邪の剣と鉄の槍の切っ先が、揃って「ピサロの手先」と名乗ったバケモノの喉元へ突きつけられる。
噴出される炎を避けて、召喚された大目玉たちを突き刺し、殴ったり殴られたりしながら決着をつけた。
ライアンさんは戦士というだけあって、槍づかいもすごかったけれど、塔の途中で手に入れた破邪の剣の扱いはさらにすごかった。
無駄な動きひとつせずに、最低限の一閃で敵を斬る。槍のなぎ払いでよろめいた大目玉たちを一刀両断にするさまは、
まさに剣の神様だった。
 「このまま去るか?何もせず、今後も悪事をはたらかないと誓うなら、今ここで見逃そう」
 ライアンさんの重く厳しい声に、ピサロの手先は涙を流して頷いて、子どもたちを閉じ込めていた牢の扉を開けた。
 「さあ、おいで。もう大丈夫だ」
 殺し合いの目をやめたライアンさんが、優しく子どもたちに手を差し伸べた。
 背後から火の息の熱気が襲い掛かってくる。とっさに盾で身をかばった私とライアンさんの後ろで防御したホイミンをすり抜け、
ピサロの手先は安心感に顔をほころばせていた子どものうちの一人を掻っ攫い、まるでゴキブリみたいに階段を上っていった。
 「しまった!」「嘘っ!?」「たいへんだぁ!」
 三者三様の言葉を口に、ピサロの手先を追いかける。屋上まで追い詰めたはいい。だけど、ピサロの手先が持っている
杖の先端は細く小さな首に当てられていて、今にも頚椎をへし折ってしまいそうだ。
 「うわあぁあん!助けてぇ!」
「うるせぇぞクソガキ!……おい!武器を捨てろ!」
 どこの世界にもこういうタイプはいるものなんだ。と、やけに冷静な頭で思いつつ鉄の槍を手放した。
ライアンさんも同じように破邪の剣を捨てるけど、戸惑いとかうろたえた様子なんて一切無い。
 「メイ殿」小さく、私とホイミンにしか聞こえない声でライアンさんが言った。
「メラ!」
 さっきの戦闘では肉弾戦ばっかりで使わなかった魔法を、今初めて発動する。火球はピサロの手先の顔面にぶち当たり、
断末魔によろめいて床のないところへとフラフラ後ずさっていく。武器を拾い、みんなで奴と子どものほうへ走った。
 「あっ……あ……わぁあ!」揺らぐ視界に子供が叫ぶ。
 ぐらり、とピサロの手先が子供を羽交い絞めにしたまま床を踏み外す。子供を拘束する腕の力は緩まない。
吐き気がするのをこらえて、私は鉄の槍をピサロの手先の胸に突き刺した。ライアンさんが子供をしっかり捕まえる。
 うん、まあ、お約束というかなんというか。この下は湖だから、死にはしないだろうけれど。
 「一緒に落ちるとか、本末転倒もいいとこだー……」
 せめてもの衝撃緩和に、事切れたピサロの手先の死体を下敷きに落ちていく。湖水に飲み込まれたのを認識すると、
驚いたことに痛みもショックもまったくないことがわかった。


524 :湖の塔4 ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:13:45 ID:ulrUGKEH0
 早く岸に上がって、ライアンさんたちを待たなきゃ。と、思った矢先。
私の頭からつま先まですべてを包み込んでいた湖水が、突然うねり始める。波は徐々に丸まり、反時計回りに渦を巻く。
 死の匂いを含んだ雨の降るあの日、私を飲み込んだ水たまりと同じ動きを湖は始めた。
もしかしたら、もとの世界に戻れるのかもしれない。テレキャスターと携帯電話と鎮痛剤は見つからなかったけど、
そんなものまた買えばいい。今度はテレキャスターじゃなくてストラトキャスターにしよう。
 鉄の槍の柄とうろこの盾の取っ手を握り締め、続かなくなる呼吸と意識を早く手放そうと目を瞑った。
遠くでライアンさんの声が聞こえた気がする。本当はすぐにでも彼らのところに行きたい気分だったけど、
この渦は私を解放してはくれなかった。



 「メイ殿!メイ殿ぉー!」
 メイが落ちるのを、ライアンは確かに見ていた。子供を捉えたまま塔から落ちて自害しようとしたピサロの手先にトドメを刺し、
メイはそのまま落ちていった。あの場合、ああするしか子供を助ける方法はなかった。ピサロの手先は、
ライアンたちに討たれ死ぬのなら、せめて子供一人ぐらい道連れにと考えていた。メイのメラでひるんだ隙に子供だけを
連れ戻そうとしたが、執念の強さは子供を拘束する力の強さとなって現れていた。完璧に殺さなければいけなかった。
 ライアンはほんの一瞬、躊躇したのだ。あの高さから、トドメの一撃のはずみで落ちてしまうことに。
しかし、メイは躊躇うことなくピサロの手先に鉄の槍を突き刺した。まるでライアンが子供をしっかり受け取ることを
確信していたように。
 湖にメイが落ちたのは見た。しかし、一向に彼女は上がってこなかった。
塔の屋上から飛び降り、真昼の太陽がきらめく湖面を見つめたが、物影ひとつ浮かんではこなかった。
 ただひとつ―――湖の中が不自然に光っていた。白っぽい糸が集い、丸くなり、渦を巻いているように見えた。
あれはまるで、書物でしか知らない移動魔力の集合体―――旅の扉のようだった。



第一章 完


Lv.6 メイ
HP:21/26 MP:27/38
E 鉄の槍
E うろこの盾
E 革の服(革ジャン)
E −
E サングラス

戦闘呪文:ホイミ・メラ
所持金:345G(湖の塔での戦闘で獲得したゴールドを全額受け取っている)


525 : ◆fzAHzgUpjU :2008/12/29(月) 15:16:08 ID:ulrUGKEH0
テレキャスターで戦おうとはメイ本人も考えていたみたいですw
二章への移動は年明けに書かせていただきます。それでは、よいお年を!

526 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/29(月) 22:55:08 ID:h3oaDFCp0
おおお!!次は二章か…!
楽しみにしてます

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