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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

246 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:29:41 ID:LijMPjN30
「あぶねっ!!」

爆裂音と共に足元が揺らいだ、雑念俺殺すとか洒落にならない。
逃走時に余計なことは考えたららめー。
しかし、じり貧すぎて困る。装備が布の服って時点でファンタジー舐めてるけど誰か剣プリーズ。
ナイフでもあれば一方通行ブーメランでも作って装備するんだが。
あー、そういやジジィ泡吹いて痙攣しててキメェ。

「おーい、じじー起きろー死ぬぞー、足あるんなら走れー」
まあ、腰抜かして気絶するようなジジィに走れというほうが酷だが。
ぶっちゃけ起きてくれたらうれしい、惚れるとか惚れないとかそんな問題は抜きで。
気絶した人間は重心が安定しないというか、なんというか、こう、違う。
ぐにゃってるわりには硬いし持ちにくい、質量的には俺のほうが小さいわけで、何この10歳児。

「町でも逃げ込んで衛兵やら傭兵を引きずりだすか、却下だな、国家転覆ーとか言って打ち首にされかねん:

そもそも装備の関係上アレに対抗するべき手段がない。
アリアハンは恵まれている、モンスターの驚異度という点で見れば。
銅の剣さえあれば訓練を積んだ兵士なら倒せる敵しか発生しないからだ。
だから……強力な武器が流通しない、王は魔物も恐れるが――

247 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:30:14 ID:LijMPjN30
人間も恐れる

過度の装備はそれだけ王政を脅かす、魔法使いの反乱を抑えられなかったのも理由の一つにあがる。
反乱、というが実質的に考えれば革命だ、まだ人間の世の頃、平和を享受している時、革命が起りかけた。
この平和な世界に王は必要ない、むしろ重税を課す王は悪であると。
魔法使いとはすなわち貴族や僧を除けば限られた有識者だ、人による人の支配の否定を行おうとしたのだ。
それがどれだけこの世界に激震を与えただろうか、支配階級にとってその特権を失うことは一番恐ろしいことだ。
はっきりと言えば死よりも恐ろしい、だからこそ驚異度の低い地方では武器の持ち込み制限がある。
身を護るのは当たり前のことで武器は比較的手に入りやすい、これを取り上げては不満は募る。
しかし、それが度を過ぎるのはよくないと考えた。
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

「って、またトリップしちまったじゃないか、思考トラップはマズい」
その罠を自分で仕掛けたとあってはお話にならないとも言う。

「う、うぅぅ……」
胸元でうめき声がした。
あージジィもう少しで覚醒ですか?いまどき眠り姫なんて流行んないからさっさと起きろと。

248 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:33:38 ID:LijMPjN30
(4)に続く

>>244
ジジィを背負い、走り出す十の夜。
>>245
と合間に入るはずだった一行が抜けてしまった
あってもなくてもいいけど今書くとほんとマヌケすぎる


249 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/24(木) 02:54:22 ID:72C7D6Iu0
ぅぅうお乙うぅぅっ!!!!!!!!!!
なんでアリアハンにザ・痛恨の一撃がwww

しかもシビアな世界観!
続きにwktk〜。ジジィはよ起きろw

250 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/26(土) 19:04:13 ID:MMxMhX3C0
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

置き換え→

特例を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは道具として使用すれ半永久的にば魔法を行使することできる魔法使いたちの残した最高の置き土産、その所持は極刑に値する。
魔法とは生物の内部エネルギーたる魔力を燃焼しこの世界に働きかけ、特異な物理現象を引き起こす。
エンチャント装備はその法則を覆し、魔法を使えないものたちとの垣根を破壊する。
もっとも、それらを造るには遺失技術と希少価値の高い物質が必要らしいが……。

251 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/27(日) 21:22:12 ID:19XMLoHl0
保守

252 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/29(火) 20:53:45 ID:1b0a57bp0
保守

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/07/31(木) 21:00:29 ID:9iXv/60m0
保守

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/01(金) 21:13:12 ID:X+irc61o0
保守

255 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:32:40 ID:RRdQs5Dp0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(4)

おめめをパチクリ、とろーんとした目をしたジジィの体に徐々に力が入る。
いや、それはあまりにも急速に引き締まる筋肉、まるでロボットみたいな動きで開こうとした口を俺は押さえつけた。
「むぐぇあぃ……」
声ならぬ声、さすがに耳元で絶叫されるのは御免こうむる。
「ジジィよく聞け、今あのバケモノから逃走中おk?」
そう言ってジジィの顔を下の方へと向けてやる。俺達は今山上を目指して木々の枝を渡っていた。
その後ろには道ができていた。無論、あの巨人が整地としかいいようのない走りで拓いたものだ。
未だ俺はあのバケモノを巻くことができていなかった。硬直するジジィに俺は優しく声をかける。
「ひとまず深呼吸だ深呼吸、ひっひっ、ふー」
何か間違ってそうな気もするが、それにならってジジィも一呼吸、ここで若干の冷静さを取り戻したのか表情が変わった。
「お主、なぜワシを助けた?」
助けるのに理由は要るか?と俺は返し、そろそろ脚がヤバそうだと思った。
ここまでは50m走の速度でかるくマラソンやってるわけだ、たとえ勇者とは言え乳酸は溜まる。
むしろこれはやせ我慢だ、男の子にはやらなきゃいけない時はあるが、もう限界かも知れない。
畜生、アイツは何で疲れないんだよ、粘着質なのは嫌われるぜ……とため息をついた。
「気づいちまったんだからしょうがないだろ、常識的に考えて」
何か変なものを見る目の老人いっちょ出来上がりってか。
「あのなー、ジジィよ、悲鳴上げてるの無視できるほど俺冷血じゃないんだは、最近人にも餓えてたしな」
まあ普通はあそこで介入するべきではなかったとは思うが、それに話し相手が欲しいってのは割と切実。
もう何日も人と会話を交わした記憶がない、人間に必要なのはコミュニケーションだ、単独で成立しねーよ、会話は。
この世界に飛ばされて何度も気が狂いそうになったが今こうしていられるのは勇者の心があるからだ。
勇者は単独行動を行うことが多々あるため精神的な加護は一般人よりも多い。

256 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:33:25 ID:RRdQs5Dp0
けれども――それには限界がある。

人は結局のところ独りでは生きてはいけないのだ。
「そんな理由でワシを助けただと?」
やはり半信半疑のジジィ、それ以外に何が理由だってんだ。むしろ俺が聞きたい。
「まあ、悠長に会話してる場合じゃないんだが……下ヤベーことになってんし、ジジィ、一瞬で良いからアイツに隙作れないか?」
半ば諦め気味に俺はジジィに言った。そんなことができるなら苦労はしないってのに。
「ううむ……少し寝たから魔力には余裕はあるが……閃光を数秒間出すぐらいしかできんぞ」

魔力!?

「魔法使いだったのかジジィ!?」
なら何でアイツから逃げ切れない!?いや、アイツが規格外ってのは分かるが逃走ぐらいなら何とかできるだろう!!
「いや、アレは倒さねばならん……我が集落はアレによって潰され、あの脅威を取り除かねばこの国が滅ぶ……」
それはきっと比喩ではないだろう、合点がいった、ジジィの悲鳴は魔力が底をつき、打つ手がなくなった最後の絶望だったのだろう。
「おーけ、サクッと俺の言うタイミングで魔法を使ってくれ、その一瞬を突く」
うむ、と頷くジジィ、どうやら恐怖の色が若干薄れたのか血色がよくなってきた。もう、後がないという達観なのかもしれないが。

257 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:34:46 ID:RRdQs5Dp0
「よしっ……今だ!!」

速度を早めトップスピードに乗り、木から飛び降りジジィを単眼の巨人へと向ける。
何やら呟きがジジィの口元から漏れるのを塞いだ目越しに聞く、そして魔法が成った。
さすがに薄暗い森の中の中で光を喰らったアイツは怯み、その瞬間待ち望んだ隙が生まれた。
迷うことは何もない、残された力を全て振り絞り、眼に拳を目指す。
全身のバネを使い、飛び上りながらのアッパー、ジジィは邪魔になるのでその辺に落とした。
魔物より早い悲鳴と、抗議の声が聞こえるがそれを軽く流し、突き上げる。

直撃――硬い感触が拳に伝わる――拳の砕ける感覚と奥へと確かに陥没する眼球――そのままクリティカルヒットで突き上げる。

声にならない悲鳴が上がった。己の眼球によって破壊された頭蓋骨が脳をそのまま粉砕する。
破片が基幹に突き刺さり、さらには全身を司る機能を犯す、が……


ここで誤算が起きた。

脳が砕けたというのに、剛腕が俺の身体を薙ぎ払った。それと同時に俺の意識が刈り取られ、死が身体に貫く。
最後の思考はモンスターを侮りすぎた、ということだろう、脊髄にプログラムされた基本動作を嘗めていた。
遠いジジィの声、ああ、俺は最後の最後で勇者に――

258 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:36:31 ID:RRdQs5Dp0
(5)に続く

今回も微妙回、書きたいことが余り書けなかった
戦闘シーンが凄く淡泊です・・・

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 07:02:08 ID:0HKL3vfn0
かっこいいよ。その勇気ある行動、勇者に値するよ。
でも、運命はいかに・・・。続きが気になる終わり方だなぁ(wwwwwww

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 10:41:00 ID:LbaCZqnq0
ちょwwwww
最初はメルヘンなヘタレDQNだと思ってたのに!
ヤバイ惚れるマジパネェっすかっけーwwうぇwww


ふう……。いやいや、本当にすごいです。
>「〜最近人にも餓えてたしな」
特にこのセリフが秀逸。これまでの過酷な状況が凝縮されてる気がする。
相手の事情を察せられる賢さだけじゃ抑えきれない負の感情もあるだろうに……。
この主人公、本当の意味で強い。

続きを心から楽しみにしてます。

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/05(火) 20:47:32 ID:iE2laiW50
保守

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 03:52:55 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに%

263 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:53:49 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに開いた俺の前にジジィが立っていた。
「あ」
ジジィ?ああ、ジジィ……。
「ああ!!俺の助けたジジィか!?すると俺生きてるんだな!?ふー、ビビったぜほんと
あんときゃ絶対死んだと思ったのに、あー勇者パワーすげー、普通死ぬはあのパンチ。
痛恨の一撃だったからな、ほんと、まあ何はともあれ二人生き残って良かったぜほんと」
一気にしゃべり終え、俺は大きくため息をついた。そりゃ人間だもの、ビビることは多い。
「貴様は一度死んだよ、よりにもよってワシを助けたのは王家の狗とは……」
そう言って俺の睨みつけたジジィの目は敵意の色に染まっていた。
あーよくよく見てみると俺拘束されてんじゃん、しかもどう力を入れても抜け出せないような方法で。
「勇者とは言え脊髄にストッパーをかけては動けまい、貴様の命は我ら未登録の魔法使いの排除か?」
魔法が使えないことは分かっているよ、と歪な笑いでジジィは言った。
魔法が使えるなら発声機能なんて残すわけがないといったような様だ。
「ちげーよ、王家?そんなファッキン野郎に俺は放逐されたんだよ、風の噂で聞いてないか?ジジィ」
諸王連合に“よる”勇者の資格を俺は失った、“神授として”の資格は残っているみたいだが。
「ふむ、それが真実と言えるのか貴様は……あの狡猾な者共がワシらを罠にかけようとしてないとどう証明できる」
どうしようもなく疑心暗鬼、駄目だ、完全に聞く耳をもってくれそうにない。
「信じてくれとは言わない……なあ、俺何で生きてるんだ?死んだ、って言ったよな?」

264 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:55:34 ID:zcKbyfKf0
それぐらいは教えてやってもいいだろう、そうジジィは言った。

「貴様は確かに死んだ、瀕死の魔物の放つ強力な一撃によって挽肉のように飛び散った」
新幹線に衝突したような感じだったし、ありえなくはないが、ミンチ?悪い冗談だろ……。
「それなのに貴様は生き返った、生命の法則を完全に無視してな。
 認めよう、貴様は真に勇者のようだな、棺桶がどこからともなく落ちてきた……あれこそが天に祝福された証拠だろう。
 絶対的な死から至極安全な地へと勇者をいざなう神の魔法、神?そん者をワシは認めたくはないがアレを前に認めざるをえん。
 開かれた棺桶に肉片が収束したかと思うと一瞬、それが消えた。
 次の瞬間にはワシの目の前に戻っておったがな、唖然とするワシの前で柩はかき消え貴様の姿だけが残った。
 神官共の使うザオリクとは一線を課す、そうしてワシは思い出したのだ、あの常識外の力を。
 そんな特権が許されるのは人の共同幻想“勇者”のみであると、忌々しい、そんなものがあるから王たちの愚かさが治らんのだ」
間を入れず、早口でジジィは喋った、それを認めてたまるかと、そんな勢いで。
つーか、俺だって腹が立つ、何でこの世界で生かす、俺の世界に戻せとあれほど。
「ワシには貴様を殺すことは出来ぬだろう」
ズキリ、とその言葉が胸の奥に突き刺さる、久々に会った人間の言葉にしては残酷すぎる。
ああ、残酷、途方にくれるぐらいに。この世界はなかなか俺に甘くないようだ。
「なあ、勇者ってそんなに嫌われるものなのか?」
多分、その声は震えていて、泣きそうな声だった。
俺だってたまには泣きたくなることがあるのだ。
「好き、嫌いではない。力を持たぬ者と勇者では歩む道が違いすぎる……それも王の側につくとあるなら憎しみしかない。
 貴様が生まれてからどれだけの民草が重荷を背負ったか、勇者を養うということはそれだけで重税を課す理由になる。
 王は勇者を縛るためにありとあらゆるものを与える、いつか自らの脅威となるものを排除させるためにな。
 民も例外ではない、王に害をもたらす者は勇者をもって排除する、それは決して少ない話ではないだよ坊主」

265 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:58:12 ID:zcKbyfKf0
(6)に続く
何か書き込みエラーが起きてageてしまって申し訳ない
そして毎度のことだけれど話が短い・・・
分割して頻繁に書き込んでないとモチベーションを維持できないんでそのへんはよろしく

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 11:40:46 ID:sq1UWByv0
乙!
まさかの忌避される勇者!
ジジィが黒っぽくみえたと思ったら、巷に響く黒勇者の設定は面白いかも

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/08(金) 20:51:11 ID:fTYg0R3O0
ほしゅ

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/10(日) 08:31:40 ID:nczLtTID0
保守

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/13(水) 04:34:04 ID:2ox/bl190
保守・・・したほうがいいかな?

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/14(木) 20:42:57 ID:jB3Prsrb0
ほしゅ

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/17(日) 13:55:20 ID:GFezJg8i0
保守


272 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:02:31 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(6)

だが……とジジィは若干表情を崩して言葉を続けた。
「あの魔物を倒してくれたことは感謝する、ワシにはどうすることもできなかったからな。
 そして、坊主があの瞬間死んだお陰でワシと坊主に還元されるはずだった力がワシだけに注ぎ込まれた」
お主、貴様、坊主、俺に対する呼称が転々とし、言葉を切った。
あー、つまり、俺に入るはずだった経験値が……。
「今になって精神と身体を拡張することになるとは、うむ、喜ばしいことだ。
 ああ、そう、これは坊主に対する妬みと奴当たりだよ、ワシは衰える肉体を抑えきれず今回の出来事を起こした。
 贖罪、というべきか、ワシは死ぬよ、魔法使いの里は滅んだ、あの魔物を呼びだしたおかげでねな」
自分語りが激しいなジジィ、何で、何でそんな遠い目してんだよ。
「ルーラとは即ち、点と点を結び移動する魔法、通常は巨大な都市に目印を刻んで行うべき危険な魔法。
 なぜルーラは空間移動魔法であるのに一度宙を舞うと思う?」
そんなものは簡単だ、地上で展開すれば根こそぎ質量を動かすことになる。
都市にマーカーをするのも、空高くに現れるのも……。
「物質と物質が同軸上に存在する場合、最悪の被害が巻き起こる、そして、ルーラは何もこの世界にだけ作用する魔法ではない」
薄々とは感じた、そうだ、アレがこの世界に存在してはいけないのだ。
誰が持ち込んだ、目の前のジジィだ、どうやって?ルーラで。
「別概念の魔法知識をこちら側に持ち込もうとした結果があの大惨事、もはやワシが残すべき言葉はない」
年相応の、枯れた声だった。どうしようもなく生きる気力がなく、死以外のことをもはや見るすべを知らない。
ああっ、俺は、なぜこんなに淡々としているんだろうか。
裏切られたから?いや、そもそも信頼関係を築いていない、何なのだろうか、この感情は。
人が死ぬのは見たくない、見たくないのだが、目の前のジジィを救う方法が見当たらない。

勇者はこんなに脆いものなのか。

精神強化、肉体強化、どんなに強くなっても心に亀裂が入ってしまえば決壊してしまう。
ひねり出すように俺が漏らした言葉は貧弱だった。
「なあ、ジジィ……死ぬぐらいだったら、俺に魔法を、授けてはくれないか?
 俺は世界を救う存在なんだと思う、アンタを救うことはできなくても」

273 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:04:29 ID:J6dqgDuA0
間幕

どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。

274 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:09:51 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話 END
NEXT すりりんぐぶれいぶはーと・第二話

本来(5)と(6)は一緒に書き込むべきだったんだろうけどそんな気力がなかった
間幕は多分、区切りごとの更新になると思われ
今更DSのDQ5をプレイしてて書き込みが遅れ気味なのはどうしたものか
このまま行くと完結は何年後だろう

とりあえずカジノのハイアンドローはすりりんぐでぶれいぶはーとが必要だと思う
あとエースが来た時嬉々としてロウ!と言ったらジョーカーとかやめて

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/19(火) 22:40:11 ID:IpUNNQdB0
やっと規制明け!

>>274
乙!
ルーラにそんな秘密が!ルラムーン草がいるわけだなぁ

ハイ&ローでエースにジョーカーが来たこと過去に2回あるw
この理不尽さはなんともいえないw

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/23(土) 08:39:37 ID:+P1gBsP+0
えとえと、保守いたしますわね・・・。

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/24(日) 21:58:55 ID:OqysLa4mO


278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/25(月) 22:23:42 ID:VxMKHtMTO
干し

279 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:20:14 ID:JqDt5M4C0
幕間の短編一話のみですが投下します。
ちょっと時期が遅くなりましたが、イサミの世界の行事ネタです。

280 :番外編 at 一週間遅れ ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:25:55 ID:JqDt5M4C0
「イサミ殿、野菜に棒きれなど刺して…食べ物で遊ぶとサトチー様に叱られますぞ。」
「遊んでるわけじゃねえよ。これは『お盆』って、俺の世界の伝統行事。
 一年に一回だけ先祖に会える日でさ。野菜の馬と牛を飾って先祖を迎えるんだよ。」
「故人を召喚する降霊儀式のようなものですな。いや、死霊を使役する術式とは…
 そのような難解な呪法を容易に操るとは、イサミ殿の世界の住人も侮れませんな。」
「…死霊の召喚儀式とは禍々しい…それなりの代償は覚悟しているのであろうな…」
「なんか…勘違いしてねえか?特にスミス。お前が言うとシャレになんねえ。」
「…なぜ私だけ名指しでツッ込まれるのだ…」
「これは、そんなヤバい行事じゃなくってさぁ。死んだ後でも会いたい大事な人と、
 一年に一回だけでも近くで過ごせるようにって…そんな祭りなんだよ。」
「なるほど、そう言われるとこの妙な儀式にも人の温かみを感じられますな。」
「…ふむ…儀式の思惑には納得したが…イサミにも今一度会いたい故人がいるのか?」
「ん?…あぁ、今回は俺の先祖の為にコレを作ったわけじゃないんだ。」
「はて?では、何の為に?」
「まぁ、もう夜も遅いし寝とこうや。あとはコレを飾っておしまいだからさ。」
「う〜む…異世界の文化は実に奥が深いですな。」

        そして、夜が明けた。

「♪〜 あ、おはようイサミ。よく眠れたかい?」
「ふぁ…おぅ、サトチーおはよ。鼻歌なんか歌ってご機嫌だなあ。」
「まぁね、久しぶりに楽しい夢を見れたんだ。」
「ずいぶん楽しい夢だったんだろうな。…で、どんなんよ?」
「うん、夢の中に父さんが出てきてね。平和だったころのサンタローズで
 一緒に釣りをしたり、いろいろ話したり…うん、そんな夢。
 …おや?ねぇイサミ。この野菜はなんだい?」
「あぁ…それは…ただのおまじないみたいなもんだよ。
 ほら、スミスが馬車で待ってるぞ。早く準備しちまおうや。」

―お前にはずいぶんさみしい思いをさせたな―
『父さん、僕は大丈夫。僕の傍にはいつでも素晴らしい仲間がいます。
 そして、父さんから受け継いだ志がいつでも僕を鼓舞してくれます。』

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 07:21:43 ID:D2zOOBe10
>>279-280
乙です。イイハナシダナー(;∀;)

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 11:03:40 ID:OyOMU78b0
イサミGJすぎる(つД`)
乙でした

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 21:20:09 ID:9w8k/nLQ0
サトチー良かったな!
イサミも儀式wをした甲斐があったw

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/27(水) 11:52:59 ID:iXQyQx5BO
目から汁が出た(´д⊂・゚・。
GEMAさん乙です
降霊儀式ww確かにその通りだww

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/29(金) 20:59:15 ID:otR745pH0
言い方は間違ってないがなんか違うwww

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/31(日) 21:44:15 ID:tuwq4DyC0
保守

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/02(火) 00:53:54 ID:OenAq7Qz0
職人の皆様超GJ!!

288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/03(水) 20:51:21 ID:S0WMXPhb0
ほしゅ

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/05(金) 21:09:09 ID:AtSZD1Ve0
hosyu

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 00:57:27 ID:AW0+2te20
ほす

291 :Stage.17 hjmn1 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:10:34 ID:OOboCCOz0

アルス「ちーっす……」
タツミ「どうもー! すっかりご無沙汰しておりますぅ♪ 残暑も厳しい今日この頃、皆様い・か・が・お過ごしでしょ〜かぁ?☆」
アルス「なにその♪とか☆とかキモ! なんでそんなテンション高いんだ?」
タツミ「バカ空気読め! お騒がせ状態のまま数ヶ月も放置してたんだからもはやテンションで誤魔化すしかないじゃないか!」
アルス「思いっきりホンネ口走っとるがな。前回は本当にお騒がせだったよな、俺も焦ったっつーの」
タツミ「そういえば君もレイさんのこと男だと誤解してたんだっけww」
アルス「笑い事じゃねえよ。それでは遅くなりましてすみません。恒例サンクスコールです」

アルス「>>103様、いや〜俺もマジ物凄く焦りましたよこんちくしょう」
タツミ「>>105様、ほんとエリスもサミエルもあんまり大騒ぎするから僕の方がビビりましたw」
アルス「>>105様、うちの国王も悪い人間じゃないんだが、変なとこが熱血なんだよな。そこがうちの親父と気が合ってたみたいだが」
タツミ「>>106様、驚かせてすいません。Rに関してはすでに壊れ気味な気がしないでもありませんね」
アルス「>>107様ごめんなさい謝ります! ところで……なにを期待したんでしょう? ガチで、えーと??」
タツミ「あー覚えなくてイイよああいう特殊な現実用語は。
   >>116様、レイさん確かにカッコイイですけど、近くで見たら結構な美人さんですよ。ああいうの宝塚系っていうのかな」
アルス「へえ、そうだったのか? 俺は数年前に一度会ったキリだから顔とかあんまり覚えてねえんだよな」
タツミ「向こうはちゃんと覚えてたってのに……。
   >>117様、Rのことだからどこでなに仕掛けてるかわかんないですからね。
   あちこちに伏線はってたりするんで、たまにまとめ読み返していただけると嬉しいです」
アルス「>>118様、レイの家も幼少時から勇者の英才教育してたって聞いてるから、そうなのかもしれないな」
タツミ「>>119様、そこなんですよ〜! エリちゃんとかレイさんとかサヤお母さんとか魅力的な女性が多いのに
   そこがネックで手が出せn……OK悪かった冗談だよアルス。剣をしまおう、ね?」
アルス「俺のおふくろまで範疇なのかお前は!? ユリコに言いつけていいか?」
タツミ「だから冗談だってば、蹴り殺されるからやめて。
   あ、>>120様、僕自身はその手の話題ゼンゼン平気ですよ〜。女子に混じって下着からBLまで平気で語れるタイプなんで」
アルス「うわ、たまーにクラスにいるよなそういう男子。それって男として見られてないからだと思うが。
   >>124様、なにか不思議なロマンを感じる願望ですがそのココロは?」
タツミ「あれじゃない、小さい頃お母さんにおんぶされた思い出が蘇って〜とか?(超憶測)」
アルス「憶測で語るなよ。でもまあ、そういうことならなんとなく覚えてる。懐かしいなぁ」
タツミ「その割りにはサヤお母さんへの態度悪いよね君」
アルス「しつけーな、またそれを言うか。反抗期ってことにしとけもう」

292 :Stage.17 hjmn2 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:12:39 ID:OOboCCOz0

タツミ「ちなみに今回のようにアンカー(>>)があったり明らかに他の読者様へのメッセージに対しては、
   読者様同士の会話に割り込まないという配慮からコールを控えております。ご了承ください」

アルス「お待たせしました、それでは本編スター……」

タツミ「あー待って待って。今回は僕らが語りじゃないから、スタートも彼らにお願いしたいんだけど」
アルス「そうなのか? 俺はかまわないが、お前、本当にそういうとこマメだよな」
タツミ「つねに周囲への気遣いは怠りませんからw」


エリス・サミエル・ロダム『というわけで、俺(私)たちが、本編スタートいたします(ッス)!!』


アルス「お前らもう少し息合わせろ……」


【Stage.17 うちの勇者様】
 続・ゲームサイド [1]〜[14]
  Prev >>83-101

 ----------------- Game-Side Another -----------------

293 :Stage.17 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:15:47 ID:OOboCCOz0

 【サミエル=レイトルフの場合】

 勇者様について? タツミのことッスか。あー……、確かにあいつは得体の知れないや
つッスよ。自分は異世界の人間だ、とか言い出したときは、こいつアタマおかしいんじゃ
ねえかと思ったし。
 んで、いざ一緒に行動してみたらマジでこの世界の習慣を知らないみたいで、「トイレ
の男性用マークはどっちだ」とか聞いてくるから焦ったぜ。「革靴」が男用で「扇子」が
女用のマークだって、世界共通の常識じゃないスか?
 あとほら、よく宿屋でメシの後にサービスでニームの枝がついてくるっしょ。なんとあ
れをポリポリ食っちまったりとか。
「……勇者様、それ噛んで柔らかくして、歯を磨くんスよ」
 と俺が呆れ半分で教えてやったら、えらく感心してたっけ。
 あげくに、パーティの金銭管理はリーダーの仕事だからって俺たちの所持金を預けた時
は、「ええ! ゴールドって銀貨や銅貨もあるの!?」なんてこれまた当たり前のことに驚
いてたし。本当にこいつがリーダーで大丈夫なのかって、俺も不安になったもんッスね。

 だけどタツミって、すごく熱心なんスよね。行く先々の街や城で片っ端から本を読み漁っ
て、暇さえあればロダムやエリスに、呪文や世界の歴史について習ったりしてる。俺にも
魔物との戦いの注意点とか、しょっちゅう質問してくるし。
 今でこそあいつも慣れたもんで、旅のプランニングや経費の計算、売買の交渉とか、冒
険に関する雑務も一通りこなしてるけどさ。もともと記憶力はすこぶるいいヤツだったけ
ど、こんな短期間で覚えたのは、やっぱ努力の賜物ってんじゃないんスかね。

 まあ厳しいことを言えば、この程度はどのパーティでも当たり前にやってることで、冒
険者としてはまだ全っ然なっちゃいないッスけどね。
 まして「勇者」が魔物と戦えないなんざ、よそには絶対に知られたくない話だし……。

294 :Stage.17 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:17:42 ID:OOboCCOz0

 それでもなぁ。
 血がダメなのはかなりマジだろうに、あいつは吐いても吐いても逃げ出さずに俺たちの
戦いを見守ってるんスよ。俺自身が知らないうちに負っていたケガに気付いてくれたり、
エリスもほら、女ゆえのサイクルってのがあるっしょ? それで体調が悪いのを見抜いて、
俺らに「フォローしてあげてね」ってさり気なく頼んできたりとか。
 マメっちゅうかなんちゅうか、いつも俺たちを気遣ってて……自分の方こそ、戦闘のた
びに顔が真っ青になってるってのにな。

 だから、あいつが戦えないなら俺が二人分戦えばいいや、なんて。
 いろいろ頼りないヤツだけど、今の俺たちのリーダーは、やっぱタツミなんスよね。

 そういうことで、王様。
 あいつが理不尽に罰せられるのは許せないッスよ、俺は。

   ◇

 なーんて意気込んでアリアハンの刑場に乗り込んだ俺たちだったんスけどねぇ。
 現在、その王様はひとり壇上でイジけてますよ。先刻の騒動ですっかり存在を忘れられ
ていたのがよっぽど悲しかったらしいッスね。執行役の兵士たちも「どうするよオイ」と
かマゴついてるし、なんかもうすっかりgdgdになってる。

 ピーヒョロロ〜と鳶が暢気に青空に円を描いてて、なーんかマの抜けた空気が漂う中。
 レイさんだけは妙にニコニコしてる。
「王よ、ここはいったん腰を据えて、じっくり話し合うべきではありませんか?」
 まあ無難な提案だわな。王様も渋々壇上から降りてきたんスけど、なんか情けない顔し
てるわ。

 タツミの方も同じように肩を落としてて、俺と目が合うと苦笑いした。
「今の王様の気持ち、僕もよくわかるよ。なんかこうして落ち着いちゃうと、結局のとこ
ろ、『吐け!』『言うもんか!』『じゃあ痛めつけてやる!』『やるならやれよ!』とお
互いに意地を張り合ってただけ――って感じだもんね〜」

295 :Stage.17 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:20:59 ID:OOboCCOz0

「っぷ」
 思わず吹き出した。本当にその通りだもんなぁ。

 タツミはそれで吹っ切れたらしく、一歩前に出ると、王様に思いっきり頭を下げた。
「あの、王様。いろいろ失礼なこと言っちゃって申し訳ありませんでした!」
 そうそう、うちのリーダーは本来、自分が悪いと思ったらすぐにちゃんと謝る人間だも
んな。今回みたいにわざと反感買うような真似してるのは、全然らしくないんスよ。
 王様もしばらーく黙っていたけど、やがて降参とばかりに両手を挙げた。
「わかったもうよい。不問とする。貴様ではないが、だんだん余も面倒になってきたわ。
お前たちも下がってよいぞ」
 どこかスッキリしたように笑いながら、王様は兵士たちに退席を命じた。兵士たちはサッ
と敬礼すると、物騒な道具をかかえてそそくさと刑場を出て行く。あいつらも本当は嫌々
従事していたんだろうな。
 アリアハンはもともと平和ってゆーか、ノンビリした国ッスからね。魔物ガラみの暗い
事件はたびたび起きてるけど、それがなきゃこんな陰気な話は滅多に無い。いつだったか、
王様が自分の息子みたいに大事に思ってるオルテガ様のご子息に不埒な真似をしようとし
たアホな女パーティがいたけど、そいつらも表向きは極刑とされたが、秘密裏に国外に追
放するだけで済まされたし。

「まったく、本当に虫の好かんヤツだ貴様は。余の力量を試すなど、侮辱罪で打ち首にさ
れても文句は言えんのだぞ?」
 王様がチョンと首に手を当てるマネをすると、タツミは胸の前で手を組みつつブンブン
首を振った。
「いやだなー王様、僕そんな恐れ多いことコレっぽっちも思ってませんよ? 偉大にして
神聖なる御国王陛下より直々に賜りし罪なればここは粛々と甘受すべきかとですね」
「だーまーれ、少しは物怖じせんかこのクソガキが。……まあ確かに、余も少しばかり頭
に血が昇っていたかもしれんが」
 ありゃ? なんかこの二人、かえって仲良くなってないか?
「ふむ。やはりアリアハン国王は立派な方だな」
 とか言いつつレイさんはニタニタしてるし。この人も最初から結末が読めてたっぽいな。

296 :Stage.17 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:21:46 ID:OOboCCOz0

「さて、余は譲歩したぞ。次は貴様の番であろう?」
 王様の言葉に、タツミは少し困ったような顔でうなずいた。
「――わかってます、アルス君のことですよね」

 アルセッド=D=ランバート。
 本来、俺たちがともに旅をするはずだった、真の勇者たる少年。

 タツミは間違いなく「彼」の身に起きたことを偽っている。それは王様が疑問に思うま
でもなく、俺たち3人も薄々察していたことだ……が。

 けど実は、「とりあえず向こうが言い出すまではそっとしておこう」って俺たちの中で
話し合いは済んでたりする。実際あいつはマジメに勇者として人助けの旅を続けてるんだ
し、たとえ隠し事をしていようとそれなりの事情があるんだろう、ってさ。
 だいたい、王様がタツミに「アルスの名声を横取りしようとしている不逞の輩」って猜
疑の目を向けるのも、仕方ないっちゃそうだが、現場を知る俺たちから言わせてもらえば、
こんなクソ面倒な大役をわざわざ買って出るくらいなら、一般人でいるほうがよっぽど楽ッ
スからねぇ。

 でもまあ、そろそろ真実を聞いておきたいところではあるなぁ。
 エリスやロダムも同じ考えなのか、じっとタツミの方を見つめてる。

 うちの勇者様もそれに気付いたのか、軽く肩をすくめてうなずいた。
「わかりました。僕にわかる範囲のことはお話します。ひとまず腰を落ち着ける場所を貸
していただけますか、王様?」

297 :Stage.17 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:23:24 ID:OOboCCOz0

 【エリス=ダートリーの場合】

 タツミ様のこと、ですか?
 そうですね。実はその……今だから言える話ですが、最初の頃、私は彼をまったく信じ
ていませんでした。
 タツミ様は一見すると、温和で人当たりが良くて会話上手、他人とすぐに打ち解けられ
る方ですが――その笑顔の裏でいつもクールに場の空気を読み、先を計算しているような
ところがあります。
 私だって、ついついアルス様と比較してしまうからこそ、そういう性質に気付きました
が、普通の人は彼の表面的な笑顔に簡単に騙されるでしょうね。
 あ、ごめんなさい、騙されるというのは言い方が悪いわ。それが彼なりの気遣いや優し
さなんだって、今はもうわかっていますから。

 まあロマリアにいた頃までは私もそんな感じで、
(このニセモノがアルス様の命を握っているのかしら)
 と本気で不安に思っていました。王様が疑っていたように、私も彼が、アルス様に成り
代わろうとしている魔王の手先かなにかでは……と考えていたんです。
 だからモンスター格闘場での八百長じみた大勝にも大げさに感心してみせましたし、お
となしく彼の指示に従って金の冠を取り返しにも行きました。
 どういういきさつなのか一時的にロマリアの国王代理を務めることになった彼から、
「僕、王様してる間にちょっとやっときたいことがあるんだ。そんなにかからないから、
しばらく宿屋でのんびりしててよ」
 そう言われましたが、私は彼に秘書役として手伝いを申し出ました。だって、こんな怪
しい人間にロマリアのような大国の権力を渡すなんて危険じゃないですか。
「ありがとうエリス、本当に助かるよ。ごめんね、疲れてるのに」
 少し照れたように言う彼に、
「いいえ、お気になさらずに。タツミ様の方こそずっと働きづめではないですか、少しは
休まれたほうがいいですよ?」
 なんて白々しく心配するフリをしながら、私は彼の動向を探っていたんです。
 結局、タツミ様は約束どおりすぐに王位を返還し、一日も経たずにロマリアを出立する
ことになりましたけど。

298 :Stage.17 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:27:42 ID:OOboCCOz0

 ――それから、初の魔物との戦闘に至り。
 タツミ様が血に弱いということが、ここで初めてわかりました。
 冒険者の中にも苦手という人はいますよ。ロダムのような僧侶など、基本的に殺生ごと
は好みませんし。でも彼の……血液恐怖症というのでしょうか、あれは半端じゃないです
ね。木陰で吐いているのを見かねて水筒を持って行きましたが、とても演技とは思えない
くらい参っていました。
 なのに、
「ごめんね〜、血はどうも苦手なんだよねw 近いうちに必ずなんとかするからさ」
 と、必死に笑顔を作ろうとするんですもの。
 この人、悪い人じゃないのかしら……?
 ふとよぎったその思いは、ピラミッドで確信に変わりました。

 タツミ様と2人で落とし穴にはまり、魔法が使えない地下道を彷徨い歩き、どうにもな
らなくなって通路の隅に隠れて休んでいた時です。
 気を紛らわせようと雑談をしていたんですけれど。
 その会話の方向性が、私に囮になれと暗に促していることには、最初から気付いていま
した。そういう作戦自体は別に彼じゃなくとも冒険者のパーティなら一度や二度は経験す
ることですから、それについては特にヒドイとは思いませんでしたよ。これまでの経緯を
鑑(カンガ)みて、本当にこのまま見捨てられることはまず無いだろうという計算はありまし
たし。
 むしろ遠回しに誤魔化さないではっきり言ってくれた方が良かったんですが、男の彼か
ら女の私に「身代わりになれ」とはさすがに言い辛いのでしょう。そう思って、親切心で
私の方から言ってあげたんですよ。
 私を置いていけ、と。
 抱きしめてあげたのは、まあちょっとしたサービスで。

 ……すぐに後悔しましたけどね。

299 :Stage.17 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:29:00 ID:OOboCCOz0

 その時のタツミ様の表情は、今でも忘れられません。
 悔恨とか自己嫌悪とか、なにかそういった、自分に刃を向けるような負の感情に一気に
支配されてしまったかのような。
 うまく言えないんですが、たとえば、大切な人をどうしようもない理由で殺してしまっ
た、その直後みたいな。もう他人にはどうすることもできないくらい自分を追い込んでし
まった人を、目の前でただ見ているしかない状態というのか……。

 しかも驚いたのは、彼は次の瞬間には、スッといつもの笑顔でそれらすべてを覆い隠し
てしまったことです。
「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」
 まるでなにごともなかったかのように。正直、私はほっとしました。私には、さっきの
状態の彼にどう対処していいかわからないもの。

 だから、あの時の私の言葉の、本当の意味は。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
 そしてさっさとどこかの街に戻って、宿を取って、この人に暖かくしておいしいものを
食べさせて、ゆっくり眠らせてあげたい。
 そう思ったんです。

 キスをしたのは……よくわかりません。
 私の方こそごめんなさい、って、そんな気持ちの表れだったような気がします。

   ◇


300 :Stage.17 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:32:17 ID:OOboCCOz0

 刑場から応接間に移動した私たちは、そこでタツミ様のお話を聞くことになりました。

「まず謝ります。僕、嘘をついてました。アルス君がいなくなったことに関して、魔王が
直接なにかしたわけじゃないんです」
 アルス様は魔王に封じ込められたのではなく、タツミ様の異世界に飛ばされ、替わりに
タツミ様がこの世界に送られたというのです。
 つまりお二人は入れ替わってしまったのだ、と。
「ではアルセッドはどうしてるのだ? 無事なのか」
 王様の問いかけに、タツミ様は自信が無さそうにうなずきました。
「たぶん。僕が住んでいた世界に魔物はいませんし、アルス君ほどの戦闘技術を持つ人間
もほとんどいません。まず危険はないと思います」
 私も少しですが、タツミ様が住んでいらした世界について聞いたことがありました。魔
術の類はいっさい存在せず、まったく異なる文明を持つタツミ様の故郷。そこは魔王も魔
物もいない平和な世界であると。
 タツミ様はそこで溜息をつきました。
「正直、僕もなにが起こってるのかわかってないんです。この世界に来る直前に、神様だ
かなんだかに簡単な説明をされただけで……。僕がアルス君の代わりに魔王を倒さなけれ
ばいけないらしいんで、やっぱり魔王が間接的に関わっているのかもしれませんけど、そ
れも僕には答えようがありません」
「なるほどな。君も大変だったね、青少年」
 レイさんがしみじみと言いました。
「いきなり見知らぬ世界で『勇者』をやれなんて言われて。よくやってるじゃないか」
「まあなんとか。――ただ、アルス君の方はどうも以前から、僕や、あっちの世界のこと
を知っていたみたいです。『夢を通して見ていた』と言っていました」
 え、夢で見ていた……?

(――聞いてくれよエリス、また例の『夢』を見たんだ。ほんと不思議な世界だよ、ヒコ
ウキってわかるか? 何百人も人を乗せて空を飛ぶんだぜ。ラーミアよりすげえよな!)

 どうしてでしょうか。嬉しそうに語るアルス様の姿が浮かびます。
 そんなこと、過去に一度もなかったはずなのに。

301 :Stage.17 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:01:01 ID:OOboCCOz0

「なんだか貴様はアルセッドを知らぬような口ぶりだな。以前、余に『アルセッドは自分
にとっても大切な存在だ』と言い切ったではないか」
 王様がややキツイ口調で聞きました。タツミ様はそれにも困った顔になりました。
「それは間違いありませんが……。当時は彼がアルスという名で、しかも僕とそっくりだ
なんて知りもしませんでしたけど」
「知らないけれど大切な存在? タツミ殿、どういうことですかな?」
 ロダムが首をひねります。
「えーと、なんて言えばいいのかな。僕の世界では、彼の冒険譚が絵本みたいな形で残さ
れているんだよ。この世界にも古い伝説や神話を描いた子供向けの絵本はあるだろ? 僕
もそういうのを読んで育ったというか……だから、勇者アルスは僕にとって憧れの英雄と
いうか、なんかそんな感じなんだ」
「すでに伝説になってるって? じゃあタツミさんトコの世界って、未来の世界なんスか?
これからどうなるかも知ってるとか」
 興味津々で身を乗り出すサミエルに、タツミ様は微笑みました。
「もしかしたらそうかもね。僕が知ってる話では、勇者は魔王を倒して世界を平和にする
よ。登場人物の名前はハッキリしないんだけど、戦士や僧侶や魔法使いが仲間だったから、
きっと君たちのことなんじゃないかな?」
 おっしゃぁ〜!と嬉しそうにガッツポーズをするサミエルを、王様は呆れたように見て
います。
「まあそれはわかった。で、アルセッドのことだが……まさかと思いたいが、自らの意思
で貴様の世界に行ったのか?」
 王様がそう問いかけると、タツミ様は申し訳なさそうに首を振りました。
「だと思います。でも、なんだかつらそうに見えました。皆さんからこんなに頼りにされ
て、心配されてるんですから、きっとよほどの事情があったんじゃないかな……」
  

 その後もいくつか質問が出ましたが、タツミ様にもはっきりしないことばかりでした。 
「貴様をアルセッドの後継と認めよう。余に報告を怠らぬように」
 最後に王様から正式な許可が下りました。わけもわからず勇者を押しつけられた彼の苦
労が、王様にも察していただけたのでしょう。
 そこでひとまず、私たちは解散したのでした。

302 :Stage.17 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:22:06 ID:OOboCCOz0

 【ロダム=J=W=シャンメールの場合】

 アリアハン城を出た我々は、その足でルイーダの店に向かいました。タツミ殿が、すぐ
にもレイ殿の歓迎パーティーをしたいと言い出したのです。
「僕のせいで変なことになっちゃったし。……それと、なんと言いますか、このままじゃ
サヤさんところに顔を出しづらいし。もちろん、落ち着いたらちゃんと行くけどさ」
 勢いをつけるために先に一杯ひっかけたい、というところでしょうか。気持ちはわから
ないでもありませんが、そこはまずサヤ殿に謝りに帰る方が先では――。
 と思ったのですが、
「ねえねえ、ダメかな〜?」
 タツミ殿の「お ね が い♪ ウルウル瞳攻撃」にレイ殿とサミエルがあっという間
に陥落したため、多数決で即決されました。


 その後、ルイーダの店の2階の一室を借り切って、大いに盛り上がりました。

 2時間くらい盛り上がったでしょうか。
 そろそろドンチャン騒ぎも一通り落ち着いた頃、私はふと、店内にタツミ殿の姿がない
ことに気が付きました。
 彼はあれでなかなかの酒豪で、少々のお酒では参りませんが、酔って絡んできたレイ殿
をあしらったり、それでまたいきり立ったエリスをなだめたり、調子に乗って脱ぎだした
サミエルを酒瓶でドついておとなしくさせたりと忙しく立ち回っていたので、息抜きをし
に行ったのかもしれません。

 私もそっと席を離れ、外へ出ました。少々気になっていたことがあり、この機会にタツ
ミ殿に確かめられればと思ったのです。

 彼は店の横を流れる城の外堀のふちに座っていました。すっかりお気に入りとなったス
ライムのヘニョを抱き、空中に投げ出した足をまるで子供のようにぶらぶらさせながら、
水面に映った月を見つめています。

303 :Stage.17 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:26:55 ID:OOboCCOz0

「疲れましたか」
 私が声をかけると、気配には気づいていたのでしょう、彼は微笑んで片手をあげました。
拒む様子はなく、隣に立った私に彼の方から話かけてきました。
「ごめんねロダム、嫌な思いをさせたね」
「それは、王様との約束のことですか? それともレイ殿のことですか?」
 私の言葉に、彼はあう〜っと情けない声を出しました。

「どっちもだけど――。レイさんのアレさ、やっぱり本気だよね。年下をからかってると
かじゃないよね」
「まあ冗談ではなさそうですな。私も女性の気持ちはよくわかりませんが、少なくともレ
イ殿の人となりからして、ふざけてあのような言動はなさらないでしょう」
「だよねー……。いや確かにレイさんの戦力は欲しかったから、ちょっとは『仕掛け』た
さ。でも別に女心をもてあそぶとか、そんなつもりはまったく無かったんだよ」
 水面の月から上空の月へと仰ぎ見て、またうあ〜っとうなっています。
 私はわざと澄ました顔を作って言いました。
「ほほぉ。わざわざ私に『自分が血に弱いことはレイさんに決して話さないで』と念を押
してから、いかにも話してくれとばかりにサミエルと連れ立って武器屋に行ったり。洞窟
内でも、我々にもまだ話していない悩みをレイ殿だけにはこっそり打ち明けたとか、いや
はや勇者様もなかなかやり手だなと感心しておりましたが?」
 そもそも、普段のタツミ殿はご自分がアルス殿の偽者だとバレないよう第三者への態度
にはかなり気を使っています。しかしレイ殿に限っては妙に適当だったり、わざと弱みを
見せていたりところが、ずっと気になっていたのです。

「だーからー! 『なんか頼りない後輩君をちょっと助けてやろうか』なんて思ってくれ
ればいいなぁ、程度だったの! 王様に実力を計られてる状況でこっちから助力を仰ぐわ
けにもいかないし、でもこんなチャンスは逃したくなかったし。だいたいあんなスゴイ人
が僕みたいなガキに惚れるとか、あり得ないだろ? 普通は思わないってば!」

 レイ殿のことは本当に予想外だったのでしょう。いつもどこか冷静に構えている彼が、
すっかり弱りきった顔で言い訳しています。

304 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 13:28:04 ID:wsWjFWbj0
リアルタイム遭遇きたーー、
支援

305 :Stage.17 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:35:55 ID:OOboCCOz0

 なんだか私は、ようやく年相応の勇者様を見られたような気がして、ついつい笑顔になっ
てしまいました。
「ではそういうことにしておきましょう。なに、レイ殿も立派な大人だ、自分の恋はきち
んと自身で責任を取りますよ。あなたを悪く思ったりはしないでしょう」
「う〜……。僕ももう一回、ちゃんと謝るつもりだけどさぁ……」
「そうですね。――まあ、ひとまずレイ殿のことはそれとして」
 それよりも問題は。
 さきほどから、彼がなんとか話題を逸らそうとしている、もう一つの方です。

「……なぜ、我々に黙って国王とあのような約束をなさったんです。しかも、わざと国王
を煽ったでしょう? あなたならもっと穏便に済ませることもできたはずです」
 ヘニョをなぜていたタツミ殿の手が止まりました。
「どうしてですか。理由があるのでしょう?」

 私はなるべく声に棘がないように問いを重ねました。
 アリアハン城でのさっきの話も、私は彼がすべてを語ったとは思っていません。まだな
にか隠しているのは間違いありません。
 ですが、タツミ殿はそこらの15、6歳の子供とは訳が違う。彼が自分の身が可愛くて嘘
や隠し事をするような子ではないことは、これまでの旅でわかっています。この少年がな
にを一人で抱え込んでいるのか、少しでもその重荷を分け持ってあげたいと、そう思うの
です。

「話してはくれませんか? そんなに、我々が信用できませんか」
 スッと月が雲に隠れ、当たりが暗くなりました。

306 :Stage.17 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:38:07 ID:OOboCCOz0





 
「……このゲームは本当に良くできてるよ」





 ようやく、押し殺したような声が彼の口から漏れました。
「ゲーム?」
 聞き返した私に、彼は独り言のように続けます。  
「本気でクリアを目指すなら、どうしたって心の通い合った仲間が必要になる。利害関係
だけのパーティでエンディングに到達できるほど甘くはなさそうだもんね。でもそうして
絆を深めて、一緒に困難を乗り越えて、その先の最後の選択まで到達できた時、果たして
それを全部捨ててまで『あっち』を選べるものなのかな?」

 月が雲の陰から再び姿を現しました。
 タツミ殿が私を見上げます。そして。

「帰りたくないって……思っちゃうのが、普通じゃないのかな?」


 それは、ぐっとなにかに耐えているような。
 私たちには入り込めない深いところで、ひとり孤独な戦いを強いられているような。
 そんな胸が痛くなるような、笑顔でした。

307 :Stage.17 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:40:01 ID:OOboCCOz0

「ここらでちょっと痛い目に遭わないとダメかなぁ、なんてバカなこと考えちゃったんだ。
本当にごめんね、心配かけて。もうあんな無茶はしないよ」
 なんと言っていいのかわからず立ちつくしている私に、タツミ殿はもう、いつもの飄々
とした調子に戻っていました。「寒くなってきたネー」なんて腕をさすりながら、店に向
かいます。
 その後ろ姿が今にもフッと消えてしまいそうな気がして、私も急いで後を追いました。



 彼の言ったことは、私にはよく理解できません。
 ただ、「ゲーム」というからには勝敗がある。
 そしてその負けというのが、先ほどの言葉の通り、「この世界を好きになり、元の世界
に帰りたくなくなってしまうこと」――なのであれば。

 私たちがこうしていっしょに泣いたり笑ったり、心を通い合わせて旅をしていることの
すべてが、彼にとっては重荷にしかならないと、そういうことになるのでしょうか。

 それはひどく悲しい話だと……私は思いました。

308 :Stage.17 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:45:02 ID:OOboCCOz0
本日はここまでです。

お久しぶりです。今回はあまり話が進まなくてすみません。
読み返してみてタツミの行動がいまいち説明不足かなぁと思いまして、
胸の内を少し打ち明けてもらいました。

309 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 21:58:11 ID:PRC/S6sV0
>>308
久しぶり乙です。
なんていうか、深い、ですね。
ロダムの立場に立つと色々と考えさせられます。

貴方のSSは読んでていつも頭の中に映像が浮かびます。
完結までじっくりゆっくり頑張ってください。
続きを楽しみにしてます。

310 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:34:49 ID:3B9GOb7n0
すりりんぐぶれいぶはーと・第二話(1)

魔法を行使するには幾つかの手順が必要となる。
ひとつ、魔法を心に刻む。
ふたつ、脳裏に魔法を思い浮かべる。
みっつ、魔法の呪文を唱える。
魔法特性があるなら特に難しいことはない、一度心に刻み、その魔法を使えるレベルに到達すれば後は自動的に行使できるようになる。
そして脳裏に思い浮かべる、これが俺にとって一番の難関だった。
魔法基盤の存在しない世界に生まれたがために魔法を理解することが容易ではなく、ジジィには才能がないと言われながらも本気で努力した。
そうせざるをえなかった、魔法が使えないとほんとに不便すぎて困るわけで、それはつくづく身に染みていたから朝から晩まで頑張った。
ようやくそれを体得したら後は簡単、魔法の呪文なんて覚えることがない、つーか、呪文というより魔法の名前を告げるだけで良いからだ。
まあ、ある意味呪文は安全装置で、ぶっちゃければ魔法を使うと認識さえできればそれすら必要ない。
だから厄介なもので、百兵をもって魔法使いに挑んでも下手をすると魔法を使えない戦士が全滅することになる。
今、魔法を公式に教わることができるのは王家直属の魔法技師とダーマ神殿ぐらいのものだ、庶民は魔法を刻むなんてことはできない。
ダーマ神殿……無料でその人に合った適正を調べ、さらにそのための肉体改造すら行ってくれる、なんと親切な機関だろうか。
やはりそんなことはなく内情はどす黒い、体面上は職の神を祭るが、実際は諸王連合の利権争いの末に生まれたものだ。
王家にとって王国にとって、兵隊はのどから手が出るほど欲しい、さらにそれが優秀であるならなお良い。
しかし、優秀すぎるのは困るわけで、いつの間にか優秀な兵士が王になっていたんてのは目も当てられない。
だから肉体改造を行う時、従属の印を刻む、それは真実を知るもの以外には悟られていないし、王が死ねと命じれば死すらも拒否することができない。
現実とはかくも恐ろしいものなり、古代叡智の結集であるダーマだが今だかつて勇者を輩出していないのが救いか……。

311 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:35:41 ID:3B9GOb7n0
「いかんいかん、そろそろ晩飯を作らんとジジィのどやされる」

レベルの上がったジジィはあの後何度か自殺を試みたようだが今も元気で他にすることもなく魔法理論の構築に励んでいる。
いやー、あの頃は酷かったね、俺の前でジジィが自らに消滅の魔法をかけて粒子に還元されてんの。
しかもそれが復活すんだから勇者のパーティの呪いって恐ろしいは、人間が骨から内臓、筋肉に包まれていく様はほんと気持ち悪い。
もう二度と勘弁と思う俺が居るわけで、そんなジジィだが魔法そのものに対してはぞっこんラブなんで俺がほっとくとほんと一日中部屋に籠って何かしらやってるわけ。
まあパーティの一員であるから一か月ぐらい食わなくても良いわけだが、どうやらジジィは人間の一員だと思ってる節があるらしく人間っぽい生活から外れると俺に対してキレる。
俺だって人間だっつーの、と思うがそれ以前に勇者に組み込まれたからにはどうしようもない。
なんか最近吹っ切れた、というか、もう諦めた、もう人間駄目だは、俺人間じゃないもの、職業勇者じゃなくて種族勇者みたいな。
ジジィが言うには記憶の書き換えらしいが、もう良い、ここまで深層心理が侵されたらもう後戻りができない。
使命としては魔王討伐だけど、顧みれば特に脅威ってわけでもないからこのままダラダラと生活していても良い気がする。
何度か王軍の追手がちらほらと見えたけどあちら側としては不干渉らしいし。
殺せない相手なんだからしょうがない、殺せないことはないけど魔王級のバケモノでもなければ無理ってあたりが微妙。
獄中死した勇者も居なくはないが、あれは勇者としての密度が低かったんだろうなあと俺は思う。
どこぞのオルテガも下の世界で生きてるんだろうし、まあ、焦る必要もない。
このなんとも言えないバランスをいたずらにつつくのもどうかなと。
むしろバラモスを潰してその後に出てくるヤツが厄介すぎる、アイツは本気で世界を潰しにかかってくるだろうからな。
ここ二年の動向を考えると十中八九、バラモスと王家の連中の間では協定が結ばれてやがる。
あんだけ大げさに言ってやがったのに国は滅びる気配はないし、多少の人口の推移もあるが許容内だ。
逆に人口増加に歯止めをかけて良い感じに間引きしてんじゃねえかな。
農耕地は無限ではないし、上手くコントロールできるよ、この世界。
こう楽観的に考えるのはよくないが、ぶっちゃけこのまま百年経っても今まで通りだと思う。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 02:37:00 ID:3B9GOb7n0
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」

真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺%

313 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:38:33 ID:3B9GOb7n0
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」

真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺の現実はここで、いや、現代への望郷の思いが覚めたわけではない。
やり残したことはいくらでもあるが、ここに来てからあのまま時が流れているのなら俺の席はあそこにはない。
考えてみればなぜ俺がここにいるのか、これは長い夢なのかもしれない。
本当の俺はチューブに繋がれ、脳死状態……

「おーっとマズイ、またトリップしちまった、あー何すっかなー、調味料をどうにかして手に入れればレパートリーも増えるんだが」

314 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:40:28 ID:3B9GOb7n0
(2)に続く
間が空いてしまった
上げてしまってもうしわけない
書き込み失敗これで二度目、何が原因だろうか

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 18:44:23 ID:9i/5FQu50
ここ二日で新作が二つも
うp乙です!!マジで面白い

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 21:55:26 ID:g1l8M0bgO
久々に除いたら新作が!

楽しませていただきました乙です

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/10(水) 09:59:35 ID:olHLZKrlO
>>308
R様乙です!

待ちに待った新作だぜコンチクショウ!!

自分もサミサミ同様タツミに惚れ込んでるッス!深みのあるキャラで最高ッス!

今後もご自分のペースで書き進めていってください。楽しみに待っております。

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/12(金) 18:55:37 ID:RBcoA4hs0
ほしゅ

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/13(土) 09:17:49 ID:33N6kYXf0
移転ほしゅ

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/13(土) 09:19:03 ID:33N6kYXf0
おおやっと書き込めた

ついでに>314
たぶん「1行に書ける最大文字数」の制限にひっかかってるんじゃね?
レス番〜IDまでの長さ(全角35文字ぐらい?)を目安に改行入れてみたらどうだろ

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/13(土) 20:33:01 ID:SKnCBX3A0
スレの作品、いつも楽しませて貰ってます。

行数32、1行文字数255、容量2KB、名前欄は(トリ含めて)全角24(半角48)文字分、
1行目が空欄の投稿を連続2回以上

移転後も同じかは分からないけど、上の条件に引っ掛かると投稿エラーになるよ。
何かの参考になれば。

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/15(月) 11:06:22 ID:2wpMgue30
ほしゅ

323 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/16(火) 21:23:48 ID:sQPX0hWU0


324 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/17(水) 23:43:52 ID:TsdrJRtE0
私は夢も希望もない人間です。
何の才能もないため毎日遅くまで仕事をしなければなりません。
つまらない仕事を繰り返すだけのつまらない毎日です。
でも生きていくためには働かねばなりません。
どこかに何もしないで暮らせるところはないものなのでしょうか。

目が覚めると私はトルネコと呼ばれる男になっていました。
トルネコにはきれいな奥さんと可愛い子供がいます。
彼は商売人として武器屋というところで雇われています。
仕事は単調ですがそれまでの私からすれば考えられないような恵まれた職場環境です。
でも贅沢を言えば結婚前の恋愛というものも経験してみたかったものです。

次に目が覚めると元の世界に戻っていました。
あれは一時の夢だったのでしょうか。
私はいつものように部屋の中で何もしない日々が待っています。
いえ今日は久しぶりに古い友人と会う約束がありました。
現実世界でも夢のように何かいい出会いがあればよいのですが。

友人と会いましたが特に何もないまま終わり家に戻り就寝しました。
目が覚めるとまたトルネコになっていました。
そこで仕事を捨てて放浪の旅に出ることになりました。
労働者として経営者からから搾取されるだけの生活に耐えられなかったのです。
旅先で妙な村に迷い込みました。そこでは一人の男が彼女ができたと喜んでいます。

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/17(水) 23:44:53 ID:TsdrJRtE0
目が覚めるとまた元の世界です。
どうやら眠るたびにあちらの世界とこちらの世界を行き来するみたいです。
ところでこの前会った友人から女の子を紹介してもらえるということになりました。
私にもようやく春がめぐってきたようです。
それともまだ夢を見ているのでしょうか。

狐を追い払い男が正気に戻ったことでエンドールへ向かう橋が修復されました。
ボンモールの王子様の手紙をエンドールのお姫様に届けることになりました。
私の活躍で二つの国は戦争を回避することができました。
この二人は結婚することになりそうです。
どうやら春を迎えるのは私だけではないようです。

紹介されたのは思っていたよりもずっと可愛い女の子でした。
夢の中で勇気を出して冒険を始めたようにちょっと勇気を出して告白しました。
なんとこの女の子とお付き合いすることになりました。
これから現実でも楽しい日々が始まることでしょう。
もう夢を見ることはないかもしれません。

夢は見ました。夢の中で店を持つことができました。これで私も経営者です。
国王にコネクションがあるため仕事も発注してもらえました。
そのうち店を大きくして従業員を雇えるようになりたいものです。
けれども経営者と言うのは労働者の敵です。私も敵が増えて行きそうです。
気をつけることにしましょう。敵はどこに潜んでいるか分かりません。

326 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/17(水) 23:46:09 ID:TsdrJRtE0
些細なことで彼女と喧嘩してしまいました。彼女は恐ろしい言葉を口にします。
何ともおぞましいことです。夢の世界で言うところの魔王のようなものです。
奴らは平和に生活する善良な市民の生活を脅かす敵なのです。滅ぶべきなのです。
彼女は邪な存在です。性根が腐っていると言っていいでしょう。
腐ったものを放置すると害にしかなりません。どうにかしなければいけません。

仕事は順調で王さまからの依頼品を納めかなりのお金を手に入れることができました。
このお金でトンネルを掘り新たな商売の可能性を広げることにしました。
そうそう久しぶりにレイクナバへ戻った時に破邪の剣というものを手に入れました。
この武器があれば文字通り邪なものを破ることができるのです。
私はどんな邪悪なものでもうち払える力を手に入れたのです。

彼女はもう二度と邪な考えを抱くことはないでしょう。
私はそばに横たわる彼女の顔を覗き込みます。
なぜか前に見たときよりも可愛いものではないように思えました。
でも恐ろしい言葉は言いません。
今度は腐らないようにちゃんと防腐処理をしておきましょう。

私の店は順調です。奥さんが商才を発揮してくれています。
それなのに私は天空の剣を探す旅に出ることになりました。
強力な敵と戦うために力を持った人とコネクションを作る必要もあります。
でもこれは私の意志ではないような気がします。まるで何かに導かれるようです。
私は危険を冒さず簡単な仕事をして細々とした生活を送りたかった。

魔王を倒せば平和を愛する人々から賞賛されます。
でもこの世界ではそうはいかないようです。
相手が人間ならば罰せられ刑務所に入れられてしまいます。
私はそこで単調な作業を繰り返しています。
この私と馬車の中にいるだけの私、はたしてどっちが夢だったのでしょうか。

327 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/18(木) 22:29:55 ID:FYsJiqip0
>>326
うぉぉぉ!
キレイに纏まった短編お見事。
冒険の書の人っぽいな。

…でも怖かったよ。

328 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/18(木) 23:07:08 ID:bNQdEu9C0
彼女のセリフ

「みなのもの ひきあげじゃあ!」

329 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/19(金) 15:52:58 ID:2hS1m+E4O
荘子…

330 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/21(日) 21:09:01 ID:0NMe/TTY0
ほしゅ

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/23(火) 18:48:01 ID:btVWWztZO
保守

332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/25(木) 13:45:56 ID:Io8TcM+GO
保守ついでに
心に残った名シーンをあげてみる

総長さんのじいさんメガンテは衝撃だった
割とギャグっぽいノリだったからシリアスに徹底した展開にビックリした

冒険の書シリーズで4のジン君と5のトモノリの関係がわかったとき
読んでて目がカッてなった


333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/28(日) 13:41:56 ID:grmH1y4/O
保守

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/01(水) 08:36:12 ID:uZyKAzD50
hoshu

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/03(金) 21:12:49 ID:62cxe6kw0
ほしゅ

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/04(土) 02:24:50 ID:zEQGBH6w0
   ◇       ミ ◇
   ◇◇   / ̄|  ◇◇
 ◇◇ \  |__| ◇◇
    彡 O(,,゚Д゚) /<捕手
       (  C `O
      /彡#_|ミ\
       </」_|凵_ゝ
        `´ `´


337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/04(土) 18:02:58 ID:Ph/Q5Izc0
たまにはあげてみる

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 12:08:05 ID:Gk8gexYE0
職人さん達、最近こないな・・・
GEMAさんや総長さんや他の職人さん達の小説楽しみにしてます。
早く続きがみてぇ。

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 12:40:38 ID:VvF5ctIK0
332みたいに感想とか書くのが燃料になるんじゃないかな?

自分は今「すりりんぐぶれいぶはーと」が楽しみで仕方ない。
急かすとかじゃなくて、 マイペースで続けてもらいたい。

340 :男道1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:43:52 ID:LCkHUhcm0





いなかった。
そこには魔王を焼き尽くすような恐怖の怪物はいなかった。
願いを叶えてくれるような龍はいなかった。
俺ら全員を乗せて縦横無尽に飛び回るような巨大な蛾はいなかった。


いたのは………ひよこ?


きゃあああああ!!!!!かわいいいいいぃいいい!!!!!!

勇者が物凄い勢いで突撃していった。

気持ちいぃいい!!モフモフしてる!!!





終わった。





終了だ。完全に終了だ。
……これが…これが俺たちの旅の結末なのか…
生き埋めになりかけて…規格外のデカブツと死闘を繰り広げて…
世界中を駆けずり回ってついに復活させたラーミア…
クソが…

その場にガックリとうな垂れてしまった。


ああ これは

なんということでしょう
なんということでしょう

ラーミアは 先の働きで 力を使い果たしてしまったのです
このままでは あなた方を乗せて飛ぶなどということは できません なんということでしょう

341 :男道2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:44:37 ID:LCkHUhcm0
……。その力はいつ回復するのかしら。

ねーちゃんがこれ以上ない的確な質問を入れる。
そしてその答えが仮に聞く前を絶望の崖に立っていたとするならそこから完全に突き落とすようなものだった。


50年


ああそうか50年かなるほどな。つまりあと50年ほど心身共に鍛えまくって
準備万端でさあいざ魔王をブチのめしにっておい…

俺はゆっくりとチビ助2匹に近寄ると軽くデコぴんをお見舞いしてやった。
ポテっと倒れるチビ助。


はああああぁぁああああ?????
50年!?50年も待てと!?50年待たなきゃ魔王と闘えないと????
ふざけんなボケッ!50年後なんてもうジジイじゃねーかよタイマン所じゃねーよアホか!!
おまえらは今すぐこのデカひよこを何とかしろ!魔王のとこ攻め込めるくらいの鳥にしろ!!!!


………。
………。

痛いです。
痛いです。

私たちの力では どうすることも できません。



どうする事もできません…か。ああ確かにこんなチビ助共にどうする事もできねーだろうよ。
もはや怒る気さえ失せてしまった。




復活の間隔が短か過ぎたようね…。

ねーちゃんがため息をつく。伝説の神の鳥はそれに見合うだけの充電期間が必要だってか。
クソ…これじゃまるで詐欺じゃねーか。まったくどこのどいつだこんな飛ぶ飛ぶ詐欺に俺をハメやがった奴は!
………。クソイケか。脳裏にあの人を小馬鹿にしたような笑みが浮かぶ。
……。そういやあいつ私にわからない事などは無いなんて事を偉そうに自慢していたよな。
…。なあねーちゃんと声をかける。ねーちゃんが私も今それを考えていた所よと返してきた。

さすがねーちゃんだ何もかもお見通しというわけか。それならば早速出発だ!!
いざゆかん!!!俺達をよくも騙し腐ってくれたイケをボコボコに!!!!………え?…違うとな?

342 :男道3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:45:22 ID:LCkHUhcm0


………。



ねーちゃんの提案で賢者様(笑)に知恵を貸してもらう事になった。
認めねえ!俺こんな展開認めないぞ!だってオーブ集めろっつったのあいつじゃん!!!!

しかし怒りが再燃した所でどうしようもなるわけではなくしぶしぶ、本当にしぶしぶイケの元に向かう事になった。

もちろんこのヒヨコを連れて。

…おい、とっとと行くぞ役立たずが。こい。
なんだその目は。おまえみたいのが睨んでも怖くねーんだよ行くぞオラ

ぐいっと羽を引っ張ったその瞬間

イテッ…!痛いって!!いやつつくな痛いから!!やめろ!!!…ッイテ

敵意むき出しの俺に向かって攻撃してくるヒヨコ。

ちょっと!!!総長ちゃんがいじめるから怒ってるんだよ!!!!もう!!!

…いじめる?まあいい。勇者の言う事を聞くならそれでいい。もうどうでもいい。

外に出るとルーラを使いイケの元へ向かった。





目まぐるしく変わる景色共に見覚えのある塔の前にやってきた。

イケは当然来るのを察知していたかのように腕を組んでそこに立っていた。
糞ヒヨコに近づくと何か考え込んでいる。

…おい

イケ:…ああすまんちょっと考え事をな。
   しかしこのような展開になるとはさすがに予測できなかったな。


そりゃそうだろ。で、どうすりゃいいんだと皆がイケに詰め寄る。


イケ:……。方法は無い事も無い。……。いやもうそれしかないだろう。
   これは非常事態だ。今のラーミアには圧倒的に力が足りない。全てにおいてだ。
   解決方法は二つ。力を蓄えるまで待つか、もしくは外部から力を与えてやるかだ。


外部から力を与える?おいおいそんな事ができるのかよ。くやしいがさすがはイケだ。
よしよしこれでなんとかなりそうだ。

イケ:ただし外部から力を与えると言っても簡単では無い。並大抵の魔力では無理だ。


……まさか今度はそのためのスーパーオーブとかそんなものを集めて来いとは言わないだろうな。

イケ:ならば方法は一つ。私がラーミアと融合しよう。

343 :男道4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:46:05 ID:LCkHUhcm0
ねーちゃん:!!!????

融合…?話が見えてこねーぞどういう事だ?

イケ:私は厳密にはもう生命ではない。大精霊ルビスの力によって魔力を得た霊体のようなものだ。
   大分消費されたとは言えまだこの体には莫大な力が蓄えられている。それをそのままラーミアに託す。

ねーちゃん:お父様!!それってつまり…

イケ:……そういう事だ。

ねーちゃん:………。


そういう事ってどういう事だ。つまりイケがこのヒヨコと合体してそしたらヒヨコは本来の力取り戻して
ってそういう事なのか?じゃあイケはどうなるんだ?


イケ:悲しむ事は無い。今お前たちが目にしている個としての私が消えるだけであって私自身が無に帰るわけではない。
   

ねーちゃん:でも…でも!!もう今までようにお話はできないの!?
      お父様の作ったワインを片手に語り合ったり天気のいい日は私が焼いたクッキーでピクニックにいったり…
      そんな…そんな…


ねーちゃんが号泣するとこなんて初めてだ。

………。

344 :男道5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:46:42 ID:LCkHUhcm0
イケ:総長。この子の事は頼んだ。そして世界の事も。
   勇者は確かに勇者だ。勇者の存在が力となり世界を救うだろう。
   ただ…いまお前たちが立ち向かおうとしている敵は普通では無い。
   先代勇者が行方不明になっている事といい今回のラーミアの件といい確実に
   大精霊ルビスですら予測し得ない“何か”が起こっている。
   そんな異常事態の中世界を救う救世主と呼ぶにはまだ幼い勇者やうちの娘が心を保って旅を続けられているのは
   総長、おまえのおかげだ。礼を言う。
   本当に長く自我を保った存在としてこの世界にいたが最後におまえのような弟子を持てて幸せだったぞ。



…………。


他に方法があるかも知れない!考えようよ!と言う勇者を止める。
男には例え自分を賭してでも進まなければ行けない道がる。イケにとってはこれがその男道なんだ。
それを止めるなんて無粋な事はできない。一人の男として認めた相手だから。

………気持ちは受け取った。

ただ一言そう伝えた。それに対してフッといつも通りのキザな笑みを浮かべる。

今度こそこれを持っていけ、とイケはいつかのあの分厚くてデカイ本を俺に渡してきた。

イケ:我が奥義は全てそこに残せり。汝らの力となり魔を滅ぼさん。

そう言うとイケはヒヨコの前に、
もはや誰も止めようとする者はいない。
勇者も、ねーちゃんも力強い目でイケを見つめている。

さよなら…お父様…。

ねーちゃんがそう呟いたと同時にイケとヒヨコが光に包まれた。
球体状の閃光が晴れた後、そこには目を奪われるような雄雄しく美しい一匹の巨鳥がいた。

……きれい…

勇者が手を触れる。俺ですら目を奪われたくらいだ。七色に光る羽。
戦いなんて忘れさせてしまうような色合いをしている。

ねーちゃんが鳥の背中の一部に一段と輝く金色の羽が生えている場所を見つける。

……まるでお父様の髪のよう…

そっと優しく何本か抜くとこっちへ持ってきた。

みんな…これをどこか体に身につけるというのはどうかしら?

ねーちゃんの提案。断る理由などあるはずがない。

賛成!私たちってほんといろんな人に助けられてここまでこれたよね…
その羽根つけよう!

こうして俺たちは各々自分の好きな場所に金色に輝く羽根をつけた。
なんだろう。気のせいだろうが心の底から力が沸いてくる。
…みんなに助けられて…か…。
まあ俺は当然最強なのだが確かにここに至るまでは色々世話になったな。

負けられねえ。負けるつもりなんてさらさらないが絶対に負けられねえな今回の喧嘩だけはよ。

345 :男道6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:48:01 ID:LCkHUhcm0
さっそくラーミアの背中に乗り船の届いた場所まで戻る。

はええ。高けえ。伊達に伝説の鳥だけあってその飛ぶ姿は何者をも寄せ付けない雄大さがあった。

船に戻るとお馴染みの鬼浜会議だ。
イケの件もあってか驚く程にまともに話は進んだ。
相変わらずパンツと勇者はズレまくりだがまあそれなりに真剣なんだろうというのは伝わってくる。

ええ…では魔王の所にカチ込みかける前に最後にするべき事は
イケのくれた本をみんなで読む事と装備の最終チェックを入念にする事と
あとラーミア復活をチビ助共に報告する、この三つでいいんだな?

ちょっと待ってくだされ。

おっさんが口を開いた。

……。実はずっと考えていた事なんじゃが魔王と対峙するに当たりわしは明らかに足手まといですじゃ。
なのでラーミアで送ってくれないだろうか……ノアニールへ。


固まる空気。ノアニール…あの魔王に滅ぼされた村。じいさんの墓のある村。

わしなりに考えてました。いやはや戦闘においてはまったく戦力にならないもんで
何が自分なりに勇者殿の力になれる事…世界のためにできる事…
そこで閃いたんです。あの村を復興させようと!何年かかるかはわかりませんがね。
あの村でわしはわしなりの戦いを始めてみようかと思います。

…………。
あそこにはおっさんの家族の墓もある。
復興なんて言うがあの状態は生易しい覚悟ではできない。
もちろんおっさんは直で見た事ないだろうが馬鹿じゃないし俺たちの表情から十分過ぎるほど察してるはずだ。
強いな。本当に強い。人として。

総長ちゃん泣いてる…?

やべっ

泣いてねーよアホッ

ポコ

いったー叩かなくでもいーじゃんもう!

私は賛成だわ。

とねーちゃん。

あっしもでやんす!魔王を倒したらすぐにかけつけて手伝うでやんすよ!力仕事は得意なんで!

とパンツ。

ちょっと寂しそうな勇者も賛成のようだ。


決まりだな。


おし!!!!!!今日はもう遅い!!!!出発は明日だ!!!!
イケの所から持ってきたワインやらビールやら色々あるんで今日は宴会だ!!!!!
おっさん新たな門出とイケへの感謝を込めて乾杯するぞコラァ!!!!!!!!!

346 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/10/07(火) 19:50:16 ID:LCkHUhcm0
なんと6レスに収まるというすごいや60行規制!

てなわけで久しぶりに投下しました
いろいろプライベートでゴタついてなかなか投下できずすみません…

今後はもっとちょくちょく投下していきたいのでよろしくお願いします

500KB
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