■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50 [PR]ぜろちゃんねるプラス[PR]  

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 12:00:45 ID:HhmoMgCw0
総長キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━!!!!
微妙にイイ奴のヤンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 16:34:40 ID:pr4s/pKG0
総長おかえり〜!!!
ずっと待ってました。
バラモス戦を今から楽しみにしてます。

無理はしなくていいので、自分のペースでぜひ続けてください!

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 20:36:40 ID:w4LI89Io0
目が覚めてDQの世界にいたら迷わずウィッチレディを狩りに行く

そしてうまく生け捕りにして・・・ 後はわかるな?

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 21:57:05 ID:7W1ay1ooO
総長キタ――――(゜∀゜)―――
おかえりなさい!嬉しくて書き込んだ。今から読む!

274 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 22:18:54 ID:QlFMyEbW0
総長さんキテタ(゚∀゚)
乙です

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/23(日) 01:07:41 ID:5ZECb2V50
tst

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 21:21:53 ID:Vgi15Z2K0
ほっしー

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 23:42:26 ID:jDdw7cD+0
ほすほす

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/27(木) 00:16:56 ID:zNOYc3qw0


279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/29(土) 00:53:53 ID:rpVjk5IZO
職人の数のわりに書き込み少ないね

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 10:29:24 ID:3ftunY9f0
やっぱ感想とか書いた方が職人さんのモチベーション上がるんかね

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 11:09:28 ID:q+t/YqeO0
年度末だしなぁ。色々忙しい時期なんだろうさ

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 22:20:04 ID:HBCAmV9M0
職人さん降臨まで守りまくるよ!

283 :Stage.13 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:11:34 ID:gv6sb5jB0
アルス「ちーっす。みなさんお久し〜。またまた時間たっちまったな」
タツミ「サンクスコールの前におさらいだね。ゲームサイドでは、僕はランシールに勇者試験を
   受けに行きました。ところがそこで同じく勇者(一級討伐士)のレイさんと試験が重なって
   制度を管轄してる世界退魔機構がアホなせいで競争することになっちゃったんだけど……」
アルス「退魔機構に黙って、こっそりレイと協定を組むことにしたんだよな。
   しかしレイは最初からお前に勝ちを譲る気だったハズだが、俺が画面で見てたら、
   お前、あいつに勝ちを譲って不合格になってなかったか?」
タツミ「ま、そのあたりはこれから本編で語りますので。それではサンクスコール!」

タツミ「>>42様、ショウ君いい人だよね。悪く言えなくなっちゃったなー」
アルス「あいつが来なきゃヤバかったよ。ったく、お前の家はどうなってるんだ」
タツミ「なに言ってんの、動物の死骸が届くなんて序の口なんだから、今度はもっとスマートに対応してよ」
アルス「じょ、序の口ってアンタ……」
タツミ「伯母さんヒステリー起こすたびに僕に八つ当たりするけど、他にはけ口ないから付き合ってあげて。
   たまにビールの缶とか飛んでくるから、ガラスや鏡を背中に避けないこと」
アルス「なんだそr」
タツミ「一條栄治のアホは金さえやっときゃ黙るから、都市銀から1万くらいずつ降ろして渡してやって。
   夏休みと冬休みに年齢詐称してバイトした分が信金の口座に30万くらい入ってるから、
   入り用の分だけ都市銀に移して使うこと。あのバカには間違っても信金の方の残高は教えるなよ、
   『なけなしのお金をなんとか工面して渡してる』って信じ込ませてるから」
アルス「あの、その」
タツミ「僕の机のひきだしに胃薬と抗鬱剤が入ってるので用法と用量を守って正しくお使いください。
   さーて、この後のプランニングはどうするか――」

アルス「………………………………>>43様、俺ちょっと頑張れそうにないかもしれません」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.13 勇者試験(後編)】
 ゲームサイド続編 [1]〜[14]

284 :Stage.13 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:15:03 ID:gv6sb5jB0
Prev >>29-40 (Game-Side Prev (マエスレ)>>344-352)
 ----------------- Game-Side -----------------

「薬草は持ちましたか? 毒消し草は? 聖水と満月草もちゃんとありますね?」
「いいですか、危なくなったら迷わず逃げるのですぞっ。絶対に無理はなりませんぞっ」
「っくぅ! 俺が付いて行ければいいんスけどッ、いいんスけどぉ……!」

 あのね、「はじめてのおつかい」じゃないんだからさぁ……。

「「「レイ殿(さん)、くれぐれもうちの勇者様をよろしくお願いします!!」」」
 深々〜と頭を下げる三人組に、
「ま……任せておきたまえ……ップククククク」
 レイさんは必死に笑いを堪えている。

 ――心配してくれるのはありがたいんだけどね。


 そんなこんなで僕とレイさんは、いよいよ試験会場にやってきた。
「ここが入り口らしいな」
 赤茶色の地肌がむき出しの荒野が、地平まで広がっている。そのど真ん中にぽっかりと
空いている空洞。妙に人工的に整った階段が地下へと続いている。
 建材に発光物が含まれているのか、中は地下全体がぼんやりと明るく、視界に不自由は
なかった。降りてすぐ、僕の背丈ほどあるドクロの像が左右に並ぶ通路が続いている。
 眼窩の奥が赤く光っている不気味な彫像を、レイさんが剣の先でつついた。
「まだ新しいな。わざわざ作ったのか?」
「やだね、このいかにも〜って雰囲気。ピラミッドでも感じたなー」
 侵入者を歓迎しない建造物ってのは、えてして随所に恐怖を煽ろうとする「あざとさ」
がある。それでなくとも僕が直接絡むイベントは異常に難易度が高い。また本来のシステ
ムを無視した難問を吹っかけられなければいいけれど。

「しかし、まさか君がこんなふざけた話を承知するとは思わなかったよ、青少年」
 先を歩くレイさんが振り返って言った。なにやら上機嫌だ。

285 :Stage.13 ?? ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:21:38 ID:gv6sb5jB0
あれ? 投下できない。

286 :Stage.13 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:24:03 ID:gv6sb5jB0

「青少年って……レイさんとあんまり変わらないと思うんだけど」
「ははは、一回りも年上なんだ、いいだろう」
 ということは28歳か。それでも世界に名を馳せる勇者としては十分若い。
「君のことだ、てっきり本部に食って掛かると思ったんだがね」
「騒いだって時間を食うだけでしょ。どうせ世の中なんていい加減なもんだし」
 僕がさらっと流すと、レイさんは首をかしげた。
「なんだか前に会った時とは別人のような気がするな」
「そんなに変わったかな」
「怒らないでくれよ? 以前の君は少々ギスギスしてて、人を寄せ付けない雰囲気があっ
たんだが、今は素直というか……かわいい、というのか……」
 かわいい、ねぇ。まあ妥当な評価だな。へたに「デキるヤツだ」と頼られたり警戒され
るより、多少あなどられるくらいが丁度いい。
「それに武器も。剣は使わないのかい?」
 僕の腰に差しているえものをレイさんは珍しそうに見ている。さっき武器屋で新調した
ばかりの物だ。基本的に戦闘は人任せな僕としては使う機会が無いことを祈りたいが、い
ざとなったら自分で身を守らないと、ってんでサミエルに見繕ってもらった。
「使い慣れてるわけじゃないけどね。僕、こういう軽いのじゃないと扱えないから」
 なにより刃物で斬ったり刺したりってのが、どうにもダメだ。その点でもこの武器は僕
の性に合っていると思う。
「まあ人それぞれだが。やはり君は変わったなぁ」

287 :Stage.13 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:26:03 ID:gv6sb5jB0

 ひとまず地下一階は問題なく進んだ。
 僕がさりげなく正解ルートに導いてるせいもあるけど、なにせレイさん、強すぎ。
 途中で二、三体のさまようよろいと出くわしたが、ひとりで瞬く間に倒してしまった。
金属の塊を剣でスッパスッパぶった斬っていくんだから、常軌を逸している。
 最近のサミエルも戦闘が人間離れしてきたと感じていたが、この世界の人たちは能力の
上昇具合が半端じゃない。外側からゲームとして接していた時は考えもしなかったけど、
こうして生で見る分には鳥山先生のDBかって迫力だ。
 しかも洞窟を入る前にさり気なく現在のレベルを聞いてみたら、30を超えたあたりから
面倒で数えていないとか言ってるし、もしかしてこの人、実は単独でバラモス打倒も余裕
なんじゃないだろうか。

288 :Stage.13 [3-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:03 ID:gv6sb5jB0

   ◇

 地下二階に降りると、だだっ広い空間に出た。画面上なら右上の方に正解ルートの下り
階段があるはずだけど、ここからじゃ遠くて見えない。
「たぶんこの方向だと思うけど」
 見当をつけて歩き出そうとした矢先。レイさんが低い声でつぶやいた。
「あのヨロイ共ばかりなら良かったんだが……やはり生身の魔物もいるか」

「グワゥ!!!」
 暗がりから突然ピンクの物体が飛び出してきた。キラーアンプ、蛍光ピンクの殺人ゴリ
ラという、こいつも別の意味で向こうじゃ考えられない生物だ。
 そいつが2、4、6……ちょっと待て、なんだこの数?
「散れ、用はないっ」
 地下室に爆発音が響き渡った。東の二代目のイオラが、押し寄せてきたピンクの群れを
牽制する。

289 :Stage.13 [3-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:54 ID:gv6sb5jB0
 だが魔物の群れは怯む気配もなく、さらに数を増して押し寄せてきた。地下室を埋め尽
くさんばかりのモンスター軍団。ピンクのゴリラの波間に、巨大な鹿型モンスター・マッ
ドオックスや、ピラミッドでも散々お世話になったマミーやら腐った死体やらも混ざって
大騒ぎだ。

 やはり来たか、ゲーム設定を大きく無視した局地的ハードモード!
 今回は「エンカウント率が黄金の爪所有時並」というイレギュラーらしい。

「仕方ない。君は下がっていたまえ」
 すうっと流れるように、レイさんは魔物の群れの中に踏み込んでいった。
 瞬間、黒い剣士を中心に殺戮の嵐が巻き起こった。血煙の中を舞う白刃に、迷いはかけ
らも見受けられない。
「グギャア!」
 モンスターの身体の一部が空中を飛んで、ドサリと僕の目の前に落ちてきた。斬られた
本体の方と目が合った瞬間、そいつは後ろから縦に半分にされて転がった。
 いやはや、本当に強いな。これなら僕に出番が回ってくることもなさそうだ。

290 :Stage.13 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:36:12 ID:gv6sb5jB0

「さて……と」
 僕の作戦はいつものことながら「ぼうぎょ」。
 いかに素早く戦線を離れ身の安全を計るかが重要だが、仲間から離れすぎると別の敵と
相対する危険があるため、「にげる」とは違う微妙な距離の取り方が難しい。防御も存外
と奥が深いのだよ。
 ほら、戦闘じゃ全然役に立たない分、せめて邪魔にならないようにしないとね。

 なんて気をつけてたつもりだったんだけど、いきなりバシっと肩のあたりに痺れるよう
な痛みが走った。
「――ッ なんだ?」
 ブーンという昆虫の羽音が近づいてきた。巨大なピンクの蜂が何匹も飛び回っている。
 げっ、ハンターフライだ。確かこいつは通常攻撃の他にもう一つ、ギラを持っている。
順当なルートでこの洞窟に挑んだのなら大したダメージではないはずだが、僕のレベルで
は十分な痛手だ。
「大丈夫か青少年?」
「平気、こっちは気にしないで」
 とは言ったものの、素早いコイツらから逃げ回るのは至難の業だ。
 仕方ない。

291 :Stage.13 [5-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:38:54 ID:gv6sb5jB0

 心は迷ったままだったが、僕の理性はその場で作戦を切り替えた。マントを後ろに払っ
て、新品の武器を引っ張り出す。
「たまには戦います、かっ!」
 ヒュンと空気を裂いて鎖状の刃がうねり、攻撃してきたハンターフライが逆に吹っ飛ん
でいった。

 はがねのむち。
『勇者様は器用っスから、こういう特殊武器の方が合うと思うっスよ。っていうかコレし
かないっしょ! ほらぴったり! 似合う!』
 というサミエルのアドバイスを受けて(なにがそんなに似合うんだか気になったけど)
買ったものだ。今まで扱ったこともない武器をいきなり実戦投入するのは不安だったが、
さすが武器の専門家が見立ててくれただけあって、コイツは意外と思った通りに動いてく
れる。

 僕には一撃で仕留められるほどの腕力は無いが、当たれば痛いものは痛い。本能レベル
で襲って来ているモンスターたちを牽制するには十分だ。
 が。
「え、嘘?」

292 :Stage.13 [5-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:26 ID:gv6sb5jB0

 牽制のつもりで放った一撃が、一匹のハンターフライの片羽を根本から切り落とした。
 偶然だ。テロップでは『改心の一撃!』とか出ているんだろう。足下に墜落してきたピ
ンクの蜂は、狂ったようにその場で暴れている。
 これを放っておくのは……かえって可哀想だよね。とどめをさしてやるべきだ。
 僕は意を決してそいつを足で押さえつけ、聖なるナイフを握った。

 ――手が、動かない。


 耳元には別の敵の羽音が迫っている。
 羽音に混じって、いつもの悪夢がフラッシュバックする。
 刃物が肉を割く音と、飛び散る血と。
『あんたなんて――』




293 :Stage.13 [6-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:58 ID:gv6sb5jB0

 ズサリ、と目の前の蜂に大振りの剣が突き立てられた。
 同時に肩にトン…と重みがかかり、そこがふわあっと暖かくなった。いつの間にか傍ら
に来ていたレイさんが、僕の肩に手を当てている。今のは回復呪文? 
「無理しなくていい。さ、耳を塞いで」
 僕は咄嗟に両耳を手の平で押さえた。
 ドーン! ともの凄い音が轟き、先刻よりさらに激しい光と衝撃が周囲を席捲する。
 イオラのさらに上位呪文、イオナズンに違いない。こんな極大呪文まで溜めナシ詠唱ナ
シで発動できるって、どんだけ熟達してんだろう、この東の二代目は。

 ばしゃ、ばしゃ、と吹っ飛ばされた生物の部品が雨の様に降り注いできた。
 今度は耳じゃなくて口を塞いだ。
「減らないな……立ってくれ、どっちへ行けばいい?」



294 :Stage.13 [6-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:41:47 ID:gv6sb5jB0

 グイっと僕の腕を取って引き起こし、レイさんは微かに焦りをにじませた声で言った。
見ると、敵の数がほとんど減っていない。むしろ増えているみたいだ。
 あくまでここは「試験会場」のはず。このモンスターたちも神殿の管理者がなにかしら
の手段で呼び寄せたんだろうが、もう少し調整があってもいいんじゃないか? 本気で潰
しにかかってるようなこの状況は、どう考えてもおかしい。
「ま、まずあの昇り階段まで。昇らずにそこから北」
 僕は一番近い位置にある昇り階段(結構距離がある)の方を指して言った。あの階段は
ダミールートで、そこを起点に上、つまり北方向に進めば正解ルートの下り階段がある。
 簡単にそれだけを伝えると、レイさんは急にニンマリ笑った。
「緊急事態だ、大目に見てくれたまえ」
 いきなり僕を抱き寄せるように手を回して、
「え?」
 ひょいっと肩に担ぎ上げ――。

295 :Stage.13 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:43:07 ID:gv6sb5jB0

「ひゃあああ〜!?」
「腹に力を入れてないと息が詰まるよ」
 とか言われた途端、すんごいスピードで景色が動き出した。グンッとGがかかって本当
に息が詰まりかける。
 「はい退けて」「邪魔だよ」なんて、そこまで気合いが入ってるようにも聞こえないレ
イさんのかけ声とは裏腹に、進行方向に背中を向けている僕の眼前には、斬られた魔物が
死屍累々と横たわっているのが見えた。ちょ、なにこの人間ダンプ。
「ここから北だったね」
「は、はぇ?」
 気がついたらダミールートの階段に到着していた。

 止まることなく直角に折れてまた走り出すレイさん。背後からどたどたと追いかけてき
た人型モンスター・殺人鬼が斧を振り上げたが、
「レ、レイさん、さつじ……」
 僕が警戒を呼びかけるまでもなく、レイさんはクルッと一回転、次に見たときにはそい
つはあっさり返り討ちにされていた。筋肉質の胸のあたりがぱっくり裂けて、吹き出した
生暖かい液体がピシャリと僕の顔に跳ねた。
「――!」
 抑えろ! 死んでも抑え込まなきゃ!

296 :Stage.13 [8-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:51:42 ID:gv6sb5jB0

「目をつぶってなさい。君が血に弱いのはロダム殿から聞いている」
 一瞬、吐き気も忘れた。
 ロダムから聞いてる?

   ◇

 地下三階への下り階段へ飛び込んだところで、追撃はぴたりとやんだ。魔物にもそれぞ
れの持ち場があるのか。こうなってみるとあれも試験のうちだったのかもしれない。
 先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった地下室に、レイさんの吐息だけが聞こえ
る。さすがの勇者様も少し息が荒い。少しで済んでるのがすごいけど。

「あの……そろそろ降ろしてくれます?」
 やっぱり軽々と地面に降ろされた。よろけた僕をレイさんはすかさず支えてくれた。
「具合が悪そうだったからね。でもよけい酔わせてしまったかな?」
 首だけ振って答える。ここはお礼を言うべきなんだろうが――。
「聞いてたんだね。いつ?」
「君が武器屋に行っていた少しの間にね。旅を始めた頃よりひどくなっていると。ずいぶ
ん心配していたよ」

297 :Stage.13 [8-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:53:16 ID:gv6sb5jB0

 やだなぁ、さすが最年長。見抜かれてたのか。
「なにか血に関してトラウマがあるのかい?」
 レイさんの問う声は軽い。まるで大したことじゃないとでも言うように。本当なら、仮
にも勇者の名を背負っている人間に対して、怒鳴りつけてしかるべきだ。

 どうしてだろう、この世界で僕が深く関わる人たちは、みんな怖いくらい優しい。
 まるで僕の理想が反映されてるみたいに。

「ごめん、今は話せない。口に出すのはちょっとまずいんだよね」
 さっきから過去のつらい感覚が戻りそうになっていて、僕の理性が必死に抑え込んでい
る。街中ならともかく、こんなダンジョンの奥で発作を起こしたら迷惑もいいところだ。
 レイさんは困ったように下を向いた。言葉を探しているようだ。
 話せない理由については、ちゃんと教えないといけないか――。

298 :Stage.13 [9-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:54:57 ID:gv6sb5jB0

「なんていうか……僕は人より記憶力がいいんだ。知識面だけじゃなくて、その時に見た
映像や音、感じたこととかを丸ごと覚えていて、頭の中にそっくり呼び出せる」
「そりゃすごいな」
 レイさんは感心したようにうなずいた。
「でも弊害もあるんだ。今この瞬間に感じてる現実の体感よりも、脳内で再生された疑似
体感の方が勝ってしまえば、僕自身はもう、自分が今どこにいるのかさえわからなくなる
ほどその『記憶』の中に引きずりこまれてしまうんだよ」
 視覚も聴覚も嗅覚も触覚も、あらゆる感覚を処理しているのはあくまで脳だ。その全て
の記憶が忠実に再生されれば、今『それ』を体感しているのと同じことになる。
「そして感情もね。たとえばその当時は本当に死にたいくらい悲しかったとしても、何年
もあとに思い出したら薄れてるものだろう? でも僕の場合は……」
「その場で自殺しそうなくらいの悲しみが、同じ程度で戻ってきてしまう、ってこと?」
「うん。レイさん、理解が早くて助かるよ」

299 :Stage.13 [9-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:56:12 ID:gv6sb5jB0

 それでも、ただ頭の中で思い出すだけならまだ抑制がきく。
 しかし口に出して語るというのは、まず頭の中で言うことをまとめ、音声で形にし、自
分の耳で聞くことでまた脳に還元されるという、三段階で記憶を鮮明にする行為だ。それ
だけですぐに意識が飛ぶってことはないけど、どうしたって感覚がおかしくなるから極力
避けたい。
 ユリコやカズヒロに何度か過去を聞かれたこともあるけど、それが嫌でそのたびに誤魔
化していたものだ。
 別に生まれた時から付き合ってる症状だから対処法もよくわかってるし、日常生活には
そんな支障もなかったんだけどね。うかつに思い出話ができないくらいで。
 でもこの世界に来てガラッと環境が変わって、刺激の強いことも多くて……。



300 :Stage.13 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:57:56 ID:gv6sb5jB0

「血に弱いとしか聞いてなかったが、仲間にはそこまで話してないのかい?」
 他人のパーティーを心配するレイさんの優しい言葉に、僕は苦笑を返した。
「言えばみんな気にしすぎて、必要以上に制約を設けてしまうからね」 
 それでなくとも最近、みんな戦闘ではなるべく流血沙汰を少なくしようと気を遣ってく
れてるみたいだし。今後イベントのたびに「これは勇者様には刺激が強すぎるのでは?」
なんて協議されるわけにもいかない。

「なるほどなぁ……。仲間に隠し事をするのは感心しないが。冷静に判断した上で黙って
るならいいんじゃないかな」
 レイさんはにっこり笑うと、僕の頭をぽんぽんと叩いた。なんか完全に子供扱いされて
る? 仕方ないけど。

301 :Stage.13 [10-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:59:24 ID:gv6sb5jB0

「先を急ごうか。次はどっちだい」
「右に折れて、あとは道なりに行けば突き当たりの小部屋にゴールの宝箱があるはず」
「ははは、楽で良いな。今後も一緒に旅をしたいくらいだよ」
「僕もだけど。ダメなの?」
 こんなに頼もしい人がパーティに入ってくれるなら、願ってもない。
「私はどちらかというと父上を捜すのが目的だからね。同行することで迷惑になる」
 っち、断られたか。惜しいなー。
 まあ目的があるのに、こんな面倒な連中に構ってられないか。

   ◇



302 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:00:02 ID:JmBxZuRH0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙


303 :Stage.13 [11-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:05:33 ID:DADMtNCE0
 いよいよ試験も終わりだ。地下三階にはまったくと言っていいほど敵の気配は無かった。
上の階で出し尽くしたんだろうか。
 奥の正面の壁に目をやると、大きな人の顔が掘られていた。例の「引き返せー」を言っ
てくるわけだが……ここは黙っておこうw レイさん驚くかなー?

 とかwktkしつつ、そいつの前まで来たら。
 あれ? なにも言わないぞ? レイさんはさっさと左に曲がっていく。壊れてるのかな。
 僕はそいつの顔をペチッと叩いてみた。

『しまった! レイさん、振り向かないでそのまま聞いて』

 いきなりそいつがしゃべった。それも僕そっくりの声で!
「なんだい、青少年?」
『忘れてたんだよ、ここはそういうトラップなんだ。振り向いたらスタート地点に戻され
るっていう』

「ち……!」
 違う! なにデタラメこいてやがんだコイツ!
 と言う前になにかが腹の周りにもズルッと巻き付いて、すごい力で後ろに身体ごと引っ
張られた。

304 :Stage.13 [11-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:08:58 ID:DADMtNCE0

「おいおい、いきなりゴール間近で振り出しに戻るトラップとは」
『ひどいよね。そういうことだから、気をつけて……』
 石の人面とレイさんの会話が、急速に遠ざかっていく。


「ひゃあああ〜!?」
 なんかさっきも同じようなことなかったか?
『騒ぐな』
 頭上から降ってくる低い声。見上げると、金色の鱗がうねうね動いていた。太い蛇のよ
うな身体が僕に巻き付いたまま、狭い通路を器用に飛んでいる。
 僕の記憶が正しければこいつは、
「あんた、スカイドラゴン?」
『当たりだ』
 確かにここの地下深くには、なぜか空の名を冠する金色の龍が出現する。システムバラ
ンスはともかく、生態系としてはどうなんだと突っ込んだ記憶がある。
『暴れるな、取って食ったりはせん』
 金の龍は言った。
『貴殿に話しがあるのだ、異世界の勇者よ』

305 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:10:21 ID:2Kwx4Yi90
お、遭遇!
しえん

306 :Stage.13 [12-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:10:32 ID:DADMtNCE0

 異世界の……僕の素性を知ってる?
『本当なら上の階で分断し、連れてくる予定だったのだが。片割れが絶えず貴殿を気にし
ていて、思うようにならなかったのだ』
「ええ〜!? じゃあ死ななくていいのに殺しちゃった魔物もたくさんいたんじゃないの?
ごめん! そんな事情知らなくて」
 思わず謝ると、金の龍はぐははと笑った。
『気にするな。戦いに興奮して本当に貴殿を襲っていた愚か者もいたようだ。知能が低い
のはちっとも使えんよ』


 そうこう話しているうちに行き止まりについた。ここは宝物部屋の裏側に当たる外れルー
トで、もっとも奥にある人面に「たまには人の話を素直に聞け」と諭される場所だ。
 その最後の人面が、僕を見下ろしている。
 僕の後ろで、金の龍が地に降りて頭を下げた。

 直後に、威圧感。
 圧倒的な――。

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:11:24 ID:wJfI+Z2z0
支援

308 :Stage.13 [12-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:12:41 ID:DADMtNCE0

『われが勇者と語り合うのは、これで五度目となるな』
 壁の顔から声が聞こえた。どこか遠くから流れてきているような、擦れ混じりの声だ。
『だが貴様は、勇者であって勇者ではない。あの孤高の、悲しい少年とは、違う』
「……アルスのこと?」
『そうだ』
 アルスのことを悲しいと言ったそいつは、静かに、決定的なことを僕に告げた。
『われが勇者によって討たれたのは四度。さしもの少年も、四度目には狂いそうな顔をし
ておったよ』

 心臓が、鳴った。
 ずっと考えないようにしてきた事実を、とうとうここで突きつけられてしまった。
「いやぁ……うん、なんとなくわかってたんだけどね。やっぱりそうなんだ。参ったな」


 ――あの、眩暈がするほど高い神竜の塔の最上階で、まるで鏡を見てるようなもう一人
の「僕」が、満面の笑みで手を差し出した。
『キミも勇者になってみなよ。本当に楽しいから』
 吸い込まれるように僕も手を差し出して、そして契約が成立したあの瞬間。
 彼が一瞬、すがりつくような目をしたのを、僕は見たのだ。


309 :Stage.13 [13-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:14:00 ID:DADMtNCE0

 ゲーム……だからこそ、この世界には決定的なものが欠けている。
 決して救われない。どんなにあがいたところでどうしようもない。
 世界を救うはずの彼だけが、ここに未来がないことを知っている。

 
『繰り返される伝説の中で過去を覚えておったのは、勇者たる少年とわれだけであった』
 そうか。それでも他に仲間はいたわけだ。皮肉にも敵の親玉だったみたいだけど。

 本当に参ったなー。
 いやね、最初からどうもおかしいとは思ってたんですよ。だってアイツ『四回も』って
言ってたでしょ? 僕のクリア回数を。
 でもこのゲーム、前回のデータを引き継いだまま最初からプレイはできないから、冒険
の書は一度消さなきゃならない。アイツが前の冒険を覚えてられるはずがないんですよ。
 っていうか、ですよ?
 死に物狂いで旅をして、目の前で父親を殺されるような経験もして、挙げ句にやっとの
思いで魔王を倒したら今度は故郷にも帰れないとか、そんなキッツイ冒険をですよ?
 延々と繰り返されたら……普通、精神イッちゃいますよね?



310 :Stage.13 [13-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:15:33 ID:DADMtNCE0

「魔王を倒してふと気がついたら、一六歳の誕生日の朝に戻されるってわけだ。あなたも、
いつの間にか復活していて?」
『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
能性があるということかな」
『知らぬ。無いのではないか?』
 そんな投げやりにされても。あんた魔王でしょ。
「じゃあなんで呼んだの」
『伝えただけだ。いつもの通りわれの元に来るも良し。なんらかの方法で神竜とやらに会
い、さっさと戻るもよし』
 ただ貴様には会ってみたい気もするがな。壁の向こうで笑う気配があった。
 

311 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/03/31(月) 00:16:58 ID:1H7c0ayR0
支援

312 :Stage.13 [14-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:17:35 ID:DADMtNCE0


 ――そして、そのさらに向こうからレイさんが僕を呼んでいるのが聞こえた。
 僕がいなくなったことに気がついたらしい。
『…………』
 壁の顔は沈黙してしまった。あの圧倒的な威圧感も無くなっていて、後ろを向くとスカ
イドラゴンの姿も消えていた。
 
 ビキッ

 いきなり目の前の壁に亀裂が入った。あっという間に崩れ落ち、埃が舞い上がる向こう
側に、レイさんが剣を構えて立ちつくしている。
「ど、どこに行っていたんだね! 心配したぞ、気がついたらいないから」
「ごめん、なんか変なワープトラップ踏んじゃったみたいで、気がついたらここに飛ばさ
れてたんだ」

313 :Stage.13 [14-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:18:45 ID:DADMtNCE0

 言いながら壁の残骸をまたいで隣の部屋に移動する。そこには二つの宝箱が並んでいた。
「まあ無事で良かったよ。それでこの宝箱だが、どちらかニセモノだったり罠だったりす
るのだろう?」
 それを聞こうとしたら僕がいなかったんだね。さすがレイさん、慎重だ。
「えーと確か……」
 僕は一方の宝箱を、すっと指で示した。

「こっちをレイさんにあげる。実はランダムで当たり外れがあるんだ。こればかりは事前
知識じゃわかんないんだよ。それでさ、考えたんだけど……ここくらいはフィフティにい
かない? 当たった方が合格ってことでさ」

   ◇



314 :Stage.13 [14-3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:29 ID:DADMtNCE0

 僕の手にはコインが一枚。初めて手に入れた「小さなメダル」ってヤツだ。向こうでは
レイさんがブルーオーブを片手に、神殿の人たちと更新手続きの件で話しをしている。
 こちらを気にしているようだったので、僕はもう何回目になるのか、「気にするな」と
手を振った。

「心配ありませんよ勇者様、どうせすぐ別の条件で合格できますって!」
「一級討伐士を持つ者は人気が半端でじゃないですからな、退魔機構もそうそう剥奪でき
ません。ヘタなことをすれば世論を敵に回しますし」
「そうッスよ! 俺らも今までと変わんないし。元気出してください!」
 仲間たちが口々に僕を励ましてくれる。
「ありがとう。ごめんね、期待に応えられなくて」
 僕の形ばかりの返事にも、みんなは真剣な顔で言葉を継いだ。
「なに言ってるんスか! 無事に戻ってきただけでホッとしましたよ」
「命あっての物種ですからな」

315 :Stage.13 [14-4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:51 ID:DADMtNCE0

 みんな本当にごめん。僕もいい加減、自分が嫌いになりそうだよ。
 こんなに心配されてるのに……僕もう、そんなのどーでもいいんだよね。
 なんかいろいろ考えることがてんこ盛りで、もう頭の中ワヤクチャだよ。



 さてどうしよう。
 天下の魔王様まで投げちゃったこの大問題を、どうやって片付ける?




316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:21:53 ID:2Kwx4Yi90
支援

317 :Stage.13 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:23:19 ID:DADMtNCE0
本日はここまでです。
多数のご支援ありがとうございました。

しかしさるさんの次は行数制限なのでしょうか。
本日だけのイレギュラーだといいのですけど……。
私の様な文庫ページ換算で書いてる人間には、
さるさんより行数を制限される方がキツイですorz



318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:36:13 ID:JmBxZuRH0
>>317
作者さん超乙!
ドラクエの「リプレイ」は回を経る毎に苦痛だろうな〜
プレイヤーという神を超越しないと輪廻から抜けられないし…
次の展開に期待してます!

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 02:21:58 ID:VCCbLPbm0
>>317
久々乙
いつも楽しみにしてます。
マイペースで頑張ってください。

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 06:13:26 ID:HKT1s1M2O
>>317
乙!ずっと待ってました!
人間ダンプクソワロタwwwww

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 01:05:17 ID:7O8xhSyFi
タツミも大変だなー。
だから映画のレインマン好きなのか?
サヴァンとは違うだろうけど。

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 03:30:44 ID:Uk6B1+hWO
>『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
>「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
>能性があるということかな」
>『知らぬ。無いのではないか?』



ゾーマ様セツナス

323 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 07:56:34 ID:uGxHdLfqO
仕事放棄で読んでたわ。

324 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 22:36:26 ID:YJBNcftg0
保管庫を読み直していて気付いたけど
◆8fpmfOs/7wさんの冒険の書シリーズって
1〜3(ロト三部作)、4と5(天空三部作)がそれぞれ繋がってるんだな。
ドッキリだと思えばとか、勇者でも暗闇が怖いとか
キツネに化かされた魔王とか。改めてGJです。

325 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:01 ID:Ns50myli0




目を開ける。目の前にはジジイがいる。


???????


まったく状況が飲み込めない。



ジジイが口を開く。
どうやら俺は生き返ったらしい。この世界では神様の気まぐれで稀に死人が甦るようだ。
そして生き返ったやつは必ず教会や城に現れる。ジジイも神父だけあって何度か経験あるらしく意外と冷静だった。


326 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:48 ID:Ns50myli0
俺は結局生きていたという結果に妙な脱力感を覚えその場に座りこんだ。
ジジイは俺が無事だとわかると長々と説教を始めやがった。うぜえ。
無視して教会を出ようとすると村人が数人駆け込んできた。あろうことか皆俺に向かって礼を言いやがる。

ちっ他人にすがる事でしか救われない弱者どもが。
負け組みのオーラがプンプンするんだよ俺に近寄るんじゃねえ。てめえらの為じゃねーよ屑共が。

俺は結果的に負けたのだ。この史上最強の総長と恐れられた俺がぶっ殺されたのだ。
……負けて死ぬようならこの糞雑魚野郎共と変わらないじゃないか。
畜生が。

イライラと絶望で何も考えたく無い。誰も近寄るな殺すぞ。とっととその場を離れようとした。
が、その時意外な言葉が舞い込んできた。 

327 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:43:40 ID:Ns50myli0
よっ町の英雄さん今夜一杯どうだい?

酒…つまりこういう事だ。こいつらは畑の魔物を追っ払ってくれた礼に酒を飲ませてくれると。
ふざけるな今はそんな気分じゃねえ。喧嘩無敵の俺様が負けたんだよダボが。酒なんて飲んでる場合…
……酒……?酒…!?酒だと!?

と、いう事で夜町の酒場でささやかなパーティが開かれる事になった。それまで俺は寝る事にする。



−夜−


町の小さな酒場につくとそこには十数人の村人がいた。みな笑顔で気持ち悪い。
進められるままにまずビールを一杯飲む。癖があるがどうしてなかなかこれはこれでうまい。
ガキがこっちを見てる。あ?目が恐いだ?うるせー殴んぞあっち行け。

328 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:44:10 ID:Ns50myli0
と、ここで凄いものを見つけてしまった。バニーの姉ちゃんだ。しかもかなりの食い込み具合。
こっちの酒場ではこれがスタンダードなんだろうか。だとしたらかなり顔がにやける。
最初は気持ち悪いオタのコスプレ集団のような世界だと思ったがこれなら悪くないかもしれない。

さあさあグイっとやってくんな!糞共が俺にお酌しようと列を成してきやがった。
たくこれだから弱い凡人はよ…俺は進められるがままに飲む。


ー3時間後ー


ウップ…もうこの辺で…

バニー「英雄さんかっこいぃ〜!わたしのお酒も飲んでくださ〜ぃ!」

デへへ。飲む飲む!バニーちゃんのお酌なら樽でも飲むぞ!てこれウィスキー…しかも激強…
ウゲっなんとか飲み干し…て何かかえてんの!?えっマジで樽で持ってきたの!?

329 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:45:21 ID:Ns50myli0

例のごとく気づいたらベットの上だった。


とんでもなく頭が痛い。今日は一日中寝てようと決めた矢先ジジイが勢いよく部屋に飛び込んで来た。
うるせー殺すぞジジイ!あっ?これから会わせたい人がいるからすぐ準備しろだ?
知るかボケ!俺は二日酔いで死にそうなんだよ!寝かしとけや!
しかしどうやら相手はかなり金持ちらしくしかも飯を食わせてくれるらしい。
金持ち=肉。俺はすぐに準備を始めた。 

準備ができジジイの所に行く。外へでてジジイが羽のようなものを放り投げた。

その瞬間信じられない事が起こった。

体が宙に浮き空を飛んだ。あっという間に小さな城の前に到着した。
そしてさらに驚いたのが会わせたいというのはそこの王様らしい。粗相のないようにと注意された。
連れられるがままに城の中を進む。さすがにあちらこちらに武装した兵士がいる。
そして階段を上るとそこには大臣らしき人物と王様らしき人物がいた。

330 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:17 ID:Ns50myli0
俺は権力者と金持ちが嫌いだ。権力と財で肥えた豚は死ねと思っている。

適当に話を流していると突然聞かれる。

で、きみは旅人なのかね?何の目的で旅をしてるのかね?

考えた事もなかった。
訳もわからずこの世界に来て、ノリで化物相手に喧嘩売って、ぶっ殺されて、生き返って、
今王様の前にいる。俺はこれからどうしたいのだろうか。元の世界に帰りたいのだろうか。


否。


もはや別に帰りたくはない。未練無し。俺はしばらく黙りこくった。そして一つの単語が頭を過ぎる。


…世界征服…

331 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:40 ID:Ns50myli0
そうだ。どうせならこの世界を手に入れてやろうじゃねーか。一度死んだんだ今更恐いものなんてない。
男なら一度は誰もが夢見る世界征服。この世界で実現してやろうじゃねーか。

妙に興奮してきた俺は一応無難に強くなる為の旅をしていると答えておいた。
王様はうんうんと頷くと無茶なお願いをしてきた。今この世界のどこかを勇者が旅をしている。
会ったらそいつに協力しろと言い出しやがる。
奇跡的に生き返った事、魔物を倒したその腕力はもしかしたら俺も選ばれしものの可能性があるとの事だ。

…たくどこまでもおめでてえやつらだな。そんなわけあるかっつの。 
しかしながら旅の軍資金として500G、ちなみにこの世界の通貨はゴールドというようだ、と、
うまい昼飯を食わせてくれるらしいので気が向いたらなと答えておいた。
俺はこの世界について知らなさ過ぎる。利用できるものはなんでも利用しなければ。
いずれこの王とやらも俺の前に跪かせてやるぜ。


332 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:49:48 ID:Ns50myli0
その日は一日中情報集めと旅の準備に走り回った。得られた情報は

@魔王と呼ばれるやつが世界征服しようとしてる
A勇者と呼ばれるやつが魔王討伐の旅に出てる
B選ばれし者は神様の恩恵で(ちなみにこの世界の神様はルビスと言うらしい)生き返る事がある。

つまりまとめるとだな、俺にとって魔王も勇者も邪魔な存在なわけだ。
この世界の覇者になる為にはこいつらをどうにかしないといけない。
俺は考えた。
やはり最初どちらかに味方して片方を倒す。
そしてその後もう片方を潰すのが一番効率が良いだろう。ではどちらに味方するべきか。
普通に考えて勇者の味方だろう。しかし待て。どうも魔王がそこまで強いやつとは思えない。

果たして本当に強いやつが手下を使ってちまちま小さな村の畑なんぞ襲わせたりするだろうか?
もしかして世界征服などたいそうな事しでかしてるわりには数にものを言わせるだけの小心者で雑魚なのかもしれない。
もしくはただのバカか。どちらにせよスケールの小さい男だ。


333 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:50:57 ID:Ns50myli0
仮に勇者が屈強な大男だとした場合、トータル的に手ごわいのは勇者>魔王だろう。
つまり強い勇者を数の多い魔王軍と協力してブチのめし、その後魔王も倒すのが一番賢い。
完璧だ。自分の策士ぶりに我ながらビックリだ。
決まりだ。俺は勇者討伐の旅に出る事にした。
ただ今のままではどちらにも勝てそうにない。一手下でしか無いアホヤクザ猪に苦戦するくらいだ。
やはりここはどう考えても強力な武器がいる。さすがに釘ひのきだけじゃ心もとない。
それと仲間だ。忠実にして強い舎弟が必要だ。
ここで旅の目的が明確に定まった。

「この世界で新鬼浜爆走愚連隊を旗揚げして魔王を従え勇者を潰しその後魔王も葬る」







こうして俺の冒険は今始まった。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 00:06:46 ID:Tyx9tsZY0
総長さん乙です

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 09:16:35 ID:ZQ7JmTafO
樽ワロタwあの勇者タンが登場すんの楽しみに待ってます(*´д`*)

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 00:18:47 ID:d4HuW//B0
>>324
おまいさんのおかげで読み直すことができたわ。
ありがd

>>総長
乙!
へたすりゃDQNなのに、なんか感情移入しちまうなwww

337 :Stage.14 [1-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:18:10 ID:h37KA7+K0

 ――アイツはじっと俺の言葉を聞いていた。

 携帯の向こうで。
 画面の向こうで。

 決して混じり合うはずのない二つの世界。
 俺たちの出会いは、それ自体はとんでもない奇跡であるはずなのに。
 なのに。

 なあ、タツミ?
 俺はお前が大嫌いだよ。死ぬほど嫌いだ。
 だけど俺は、どうしてもお前を嫌うことができない。
 それも、お前がそう望んでいるからなのか。
 俺の気持ちも、ぜんぶお前が決定していることなのか。




338 :Stage.14 [1-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:19:29 ID:h37KA7+K0


「さあね。で、これは復讐なの?」




 ――わかんねえよ。




【Stage.14 Cursing My Dear】
 [1]〜[15]

Prev >>284-315 (Real-Side Prev >>29-40)
 ----------------- Real-Side -----------------

339 :Stage.14 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:21:00 ID:h37KA7+K0

 1周目。

 俺が「現実」を「夢」で見るようになったのは、最初の旅の中盤くらいだった。
 「夢」の中で俺は、タツミという5、6歳くらいの幼い少年をすぐ近くから見下ろして
いた。まったく知らない世界――そこは、すべてが見知らぬ物ばかりで、しかも毎晩のよ
うに見るもんだから、本気で俺の頭がおかしくなったのかと心配になった。

 だが、タツミがしょっちゅう夢の中でやっている「ゲーム」のストーリーが、たった今
自分が歩んでいる冒険を簡略化したものだと気づいた時、俺はこの「夢」を、アリアハン
のはるか未来の世界を見ているのだと解釈した。
 謎の「ゲーム」とやらは俺の冒険譚をつづった絵本のような物で、あの小さな男の子は
それを楽しんでいるのだろう、と。そして俺のことが後世に伝説として残っているのなら、
俺は魔王討伐に成功したに違いない、なんて、前向きというか、今思えばずいぶんのんき
に考えていたもんだ。



340 :Stage.14 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:22:02 ID:h37KA7+K0

 妙な「夢」はその後もずっと現れたが、俺はいつしかそれを楽しむようになった。メモ
を取ってあれこれ考察したり、仲間たちにもまるで知らない文化について語ってやるのが
日課になった。
 いつかこのタツミって子に会ってみたいなと、そんなふうに考えたりもした。

 旅自体は決して楽ではなかったが、それなりに順調に進んだ。エリス、サミエル、ロダ
ム。みんな頼もしい、強い絆で結ばれた大切な仲間たちだ。
 特にエリスとは……まあ当然のように恋仲になって。この旅が終わったら結婚しようと
約束を交わした。プロポーズの瞬間は、ホント死にそうなくらい緊張したなぁ。
 泣きながら抱きついてきたエリスが、デバ亀してたサミエルに気付いてイオナズンで吹っ
飛ばしたときは、ちょっと早まったかと不安になったが。

 やがてバラモスを倒し、センセーショナルなゾーマ様の登場に再び旅立ちを決意し、ギ
アガの大穴から地下世界に赴いた。
 俺はそこで、死んだはずの親父が生きていたことを知る。生きてたなら連絡くらい寄越
せと憤りも感じたが、やっぱり嬉しかった。

341 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/05(土) 22:23:32 ID:+3IqaeyH0
支援

342 :Stage.14 [3-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:24:31 ID:h37KA7+K0

 でも結局助けが間に合わなくてさ。親父は俺の目の前で殺されてしまった。
 つらかったよ。その場で崩れ落ちそうだったが、それでも仲間たちが懸命に励ましてく
れたお陰で、俺たちはついに魔王を倒すことができた。

 が、今度は魔王のバカが半端な仕事しやがってたせいで、故郷に帰りそびれるという始
末。最後までハタ迷惑な野郎だ。
 そこも俺はグッと堪えたさ。おふくろやじいちゃんには悲しい思いをさせてしまうが、
やるべきことは果たした。あの二人ならきっとわかってくれる。俺と、そして親父のこと
を誇りに思ってくれるだろうって……。

 ――そこで俺は、最初のループを体験する。

 確かに倒したはずなのに、いつの間にか魔王の城に行く直前に戻されていたのだ。ラダ
トームでの華やかな凱旋式も記憶に新しいのに、なぜかアレフガルドは再び闇に閉ざされ
ていた。
 メダパニ状態の一歩手前だった。仲間たちに聞いたら、魔王打倒を願うあまり幻でも見
たんじゃないかと笑われた。マジで?



343 :Stage.14 [3-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:27:57 ID:h37KA7+K0

 俺が納得できないでいると、ロダムが「こんなもの持っていましたっけ?」と首を傾げ
ながらなにかを差し出した。まさに凱旋式のメインイベントで、ラダトーム国王ラルスか
ら授与された「ロト」の証しだった。
「ロトの称号を授けよう!」
 という国王の言葉に国中が沸き返り、そのあまりの騒ぎっぷりに俺はつい「ロトってな
に?」と聞き返したら、全員がひっくり返ってしまった。いやだって、アレフガルドじゃ
立派な称号らしいが、俺にはその原義がよくわからんし。
 なぜ手元にあるのか? 仲間たちはそれについても覚えがないと言う……。

 ふと「真の勇者の称号がなんたら」とか聞いたのを思い出したんで、俺たちは先に竜の
女王の城に向かった。魔王の城を目の前にしてそんな寄り道する余裕もなかったんだが、
どうしても気になってさ。
 そこから天界へ昇り、俺たちは神竜と戦うことになる。



344 :Stage.14 [3-3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:29:52 ID:h37KA7+K0
 神竜は強かったが、俺たちも弱くはなかった。ゴリ押しで叩いてたら意外と早く倒すこ
とができた。偉そうにしてっからだ。

 そしたら願いを叶えてやろうと言われた。親父の復活さえ可能だって!?
 信じられなかった。この俺が、あの時は心の底から感謝したもんだよ。魔王討伐の後、
あの幻(?)の通りにアリアハンに戻れなくなったとしても、これならおふくろだけが残
されることはない。息子としてはロクな孝行をしてやれなかったけどさ……これで少しは
許されるんじゃないかなぁ、って。

 神竜に父親の復活を頼んで、アリアハンで久々に親父とツラを会わせた。
 もう言いたいこと、山のようにあった。まずは最初に恨みつらみをぶつけてやる予定だっ
たけどなw 何年も家ほったらかしてこのクソ親父、おふくろがどんだけ苦労したかわかっ
てんのか!
 んで十分反省したら、改めて「おかえり」って言ってやろう。
 そんな風にさ、いろいろ考えてたんだ。

 なのに……最初にちょっと会話しただけで、急にフッと意識が無くなって。


 その冒険はリセットされた。

345 :Stage.14 [4-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:30:52 ID:h37KA7+K0

 2周目。

 次に意識が戻ったとき、俺は再び16歳の誕生日の朝を迎えていた。
 ……なぜこんなことが起こったのか、まったく理解できなかった。あれだけ過酷な旅を
したにも関わらず、エリスたちはなにも覚えていないという。
 なんだこれ? なぜ俺だけが前の冒険の記憶を持っている??

 起きたことは強引に解釈するしかなかった。前の冒険の記憶は、例の不思議な「夢」と
はまた別の「予知夢」かなにかで、ルビス様が事前に教えてくれたのかもしれない。
 急げばあの時は助けられなかった親父も死なせずに済むだろう。サマンオサで偽国王に
理不尽に殺されてしまった人や、前の冒険では間に合わなかった人たちを助けることがで
きるんじゃないか。

 俺は死に物狂いで突き進んだ。一日でも一秒でも早く進めば、それだけ誰かを救えると
信じていた。でなきゃやってられなかったよ。あの冒険のすべてが夢オチとか、冗談じゃ
ねえ。俺だけが「未来」を知っていることに、なにか意味を持たせたかった。

346 :Stage.14 [4-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:31:37 ID:h37KA7+K0

 旅には同じメンバーを連れて行った。なんど過去の話を振っても誰もなにも思い出して
はくれなかったが、それでも俺の無謀とも言える旅程に必死に付いてきてくれた。
 やっぱりこいつらはいい連中だ。大事な仲間だ。――そう自分に言い聞かせて。
 エリスに結婚は申し込まなかったけどな。せめて彼女だけでも思い出して欲しかったか
ら。だから、なんか裏切られたようで、どうしても許せなかったんだ。

 あの不思議な「夢」もまた見るようになった。ボケッと平和に過ごしているガキが腹立
たしくて、俺はもう無視することに決めた。


 結局、俺たちがどんなに頑張っても、未来は変わらなかった。
 前の冒険より数ヶ月も早く到着したってのに、レイの父親の勇者サイモンも、他の人た
ちも、みんな間に合わずに死んだ。親父もやはり俺の目の前で殺されてしまった。



347 :Stage.14 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:33:05 ID:h37KA7+K0

 なんで? どうして? 時間軸おかしいだろ!
 わかっているのに助けられない。
 苦しんでる俺を、エリスたちは本気で心配してくれる。だが本当の意味で俺の苦しみを
理解できてるわけじゃない。否応なく孤独感は増していく。心がすさんでいくのが自分で
わかった。

 それでも俺たちはなんとか魔王を倒した。わかりきってた結末だから、達成感はなかっ
たが。凱旋式もその後のパーティーでも、俺はぼんやりと酒を飲んでるだけで、仲間も扱
いに困ってるみたいだった。
 どうせこのあとは……とか思ってたら案の定、前回と同じくいったんショートループに
巻き込まれて魔王を倒す前に戻された。
 そこから「予定通り」天界へと向かい、神竜と戦って今回も短期決戦で勝利できた。
 願いを叶えてくれるというが……しかし二度も救えなかった人々のことを考えれば、
俺だけ親父を生き返らせるなんて、できないだろ?
 せめて平和な世の中に似合う娯楽でも増やしてやろうかって。
 仲間の猛反対を押し切って、俺は半ばヤケになりながら新しいすごろく場を頼んだ。

 そのすごろく場でゴールした瞬間、フッと意識が遠のいた。
 ああ、また最初からだと……ゾーマが大喜びしそうな絶望の中で、俺は眠りについた。

348 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 22:34:34 ID:xScTyvd70
 

349 :Stage.14 [6-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:35:04 ID:h37KA7+K0

 3周目。

 16歳の朝に戻ったと気付き、俺はすぐに1回目の自殺を試みたが死ねなかった。寝間
着のままアリアハン王の前にワープしてきたバカは俺くらいだろう。
 そのまま外出許可をもらい、その足で外に出て魔物に食われてみたが、やっぱり無駄に
生き返るので早々に諦めた。死ねないってのもある意味呪いだよなぁ。

 家に戻ったらおふくろが半狂乱になっていた。当然だな、前日までは「明日から勇者と
して頑張るぞ!」とか意気込んでたヤツが、起きるなり割腹自殺を図ったら何事かと思う
わ。いちいち説明するのも面倒だったから無視して旅の支度をし、ルイーダんとこに行っ
た。メンバーは全員違うヤツらで、遊び人とか盗賊とか、なんか楽しそうな連中ばかり適
当に見繕った。……あいつらと一緒にいても俺がツライだけだし。

 かったるい。もはや他人の生き死になんかどうでも良かった。飛ばせるイベントはガン
ガン飛ばした。すごろくやら闘技場やらに入り浸り、冒険はまるで適当だった。さっさと
役目を降りても良かったが、実は勇者ほど金回りのいい職業はないってことは知ってたか
ら、とりあえず続けていただけだ。

350 :Stage.14 [6-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:35:44 ID:h37KA7+K0

 例の奇妙な「夢」は相変わらず見続けていた。
 タツミの世界は平和そのものだ。その頃に気付いたが、向こうはどうもループしていな
いようだった。こっちと比べると恐ろしく時間の進み方が遅いが、前の冒険の頃に見てい
た「夢」よりは明らかに季節が進んでいる。
 なんか知らんが向こうはこれから「ショウガッコウ」とやらに通うことになるらしい。
こちらのことなど露知らず、ガキは妙にはしゃいでいる。
 ったく、俺はお前くらいの年の頃に親父が死んだとか聞かされて、同時に勇者の十字を
科せられたんだからな。こいつブチ殺して入れ替わりてえよ、ホント。

 そんなんでも魔王を倒してしまったんだから、世の中は本当に適当だ。
 親父はまた目の前で死んだ。いっそ火山に落ちた時点で素直にくたばっててくれりゃ良
かったのに。

351 :Stage.14 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:36:54 ID:h37KA7+K0

 ついでだから神竜も倒した。願いはエッチな本ってやつ。別に勇者の肩書きのお陰で女
に不自由はしてなかったが、神様直送便がどんだけスゲエんだって気になったから頼んで
みた。期待してたほどじゃなかったが。

 冒険の最後がエロ本で終了。そして振り出しに戻されるわけだ。
 ったく、すごろくの落とし穴よりひでえ。あんまりひどいと、なんか逆に楽しくなって
くるよ。人間どうしようもなくなると笑うしかないって言うが。
 あははは。
 あはははははははははは。
 






 誰か助けてくれ。




352 :Stage.14 [8-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:40:22 ID:h37KA7+K0

 4周目。

 ……感覚的なものだが、前回から随分と間が空いていたように思う。うんざりしつつも、
久々に冒険に出るような軽い高揚感があった。

 それは間違いじゃなかったんだろう。例の「夢」の中のガキが、急にデカくなっていた
のだ。俺と同い年くらいまで成長していて、しかも驚いたことに、アイツは気味が悪いほ
ど俺とそっくりな顔をしていた。
(これなら本当に入れ替われるな……)
 そう思ったがすぐに打ち消した。くだらねえ、「夢」の中の相手とどうやって入れ替わ
るってんだ。

 変わったことはもう一つあった。俺の他にもう一人、過去を覚えてるヤツがいたのだ。
今までに何度も会っていたのだが、敵同士だったので気付かなかった。
 切っ掛けは些細なことだった。

353 :Stage.14 [8-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:41:02 ID:h37KA7+K0

『何度来ようとも同じこと。このバラモスがどれほど偉大か、思い知らせてくれる』
 はいはい、どうせ俺に倒されるのにご苦労なこって。心の中で嘲笑しつつ(半分は自
嘲だったかもしれない)、剣を構えたときだった。

「……あれ、前はハラワタ食うとか言ってなかったっけ」
 今回の冒険では初対面なのに、「何度来ようとも」だと?
「あんたまさか、前のことを覚えてるのか?」
 そいつの顔色が変わった。
『貴様も覚えているのか!?』
 勇者と魔王が妙な会話を始めたことに仲間たちは動揺している。ウザいんで俺はそい
つらをラリホーで眠らせ、バラモスにバシルーラで片付けてもらった。


 バラモスが記憶を引き継ぐようになったのは、俺の三回目の冒険の時かららしい。
 二回目の頃からも、なんとなく俺の顔に見覚えがあるなぁとは思っていて、三回目と
四回目(つまり今回)は、最初からしっかり思い出していたそうだ。

354 :Stage.14 [9-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:42:33 ID:h37KA7+K0

『先を知っておるのに、侵略はある点を境に一向にはかどらぬ。まだ力を持たぬうちに貴
様を始末しようと刺客を差し向けたが、それもつど邪魔が入る』
 立場こそ反対だが、こいつはこいつで俺と同じような苦悩を抱えていたようだ。
「しっかし、よりによってお前かよ。こちとら許嫁だった女にも忘れられてんだぜ?」
『こちらのセリフだ。われがなんど進言申し上げても、ゾーマ様は夢でも見たのだろうと
一笑に伏される。たかが人間に討たれるなどと、クドく言えばお怒りに触れるだけだしの』
「あー……上の理解が得られない中間管理職ってのも、大変だな」

 取り引きしないか。俺はバラモスに提案した。紙とペンを用意させ、俺に関わる親類縁
者や親しい者たちの名を片っ端から書き連ねて、手渡した。
「この世界をくれてやる。人間を支配するったって、全員皆殺しにしようってんじゃない
んだろう?」
『な、なにを……』
 ぽかんとしているバラモスに、俺はもっと呆れるような内容を告げてやった。

355 :Stage.14 [9-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:44:06 ID:h37KA7+K0

「お宅の上司、こっちにも簡単に手を出せるほどの力があるのに自ら侵略に来ないのは、
上の世界はとりあえずあんたに一任してるってことだよな? だったらそこに書いてる人
間たちだけは優遇してほしい。その人数なら現場レベルでこっそり調整できるだろ」
『われを信用するのか?』
「してない。でも他に頼めない。でさ、もしもゾーマ直々に上の世界もいじりだして、あ
んたでも庇いきれなくなったら、その時は……逆にあんたがみんなを、苦しまないように
一瞬で楽にしてやってくれ」
『勇者の言葉とは思えんな』
「それくらい思い切らなきゃ、この輪廻から抜け出せない気がする。完全に魔王に支配さ
れた世界でも、それもひとつの未来だろ? 人間中心の世の中が魔物中心に変わるってだ
けで、おふくろも親父も、俺の仲間たちも、来世でモンスターに生まれ変われば、普通に
暮らすんだろうし」

 淡々と語る俺にバラモスさえビビっていた。その時の俺はどんな顔をしていたんだろう。
「俺を封じてくれ。完全に死ぬとアリアハンに戻るだけだから、生かさず殺さずで。つい
でに永遠に苦しむような呪いでもかけてくれよ。その手のは得意だろ?」
 未来を得るために人類を売り飛ばすような勇者には、それくらいしないとなぁ?

356 :Stage.14 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:45:30 ID:h37KA7+K0

 バラモスは承諾した。承諾せざるを得ないだろう。
 これでもかってくらい何重に呪術を施した丈夫な石棺が用意されて、俺はそこに押し込
められた。
「なんか、妙に寝心地いいんですけど」
 中は柔らかくて肌触りのいいシルクが敷かれている。むしろこれじゃあ……。
『さらばだ』
 バラモスの言葉と同時に、石棺の蓋が重々しい音を立てて閉じられていく。同時に強烈
な眠気が襲ってきた。
『安らかに眠っておればよい。これ以上苦しむ必要もなかろう』
 なんだよこいつ、いきなり約束破りやがって。
 魔王のくせに――。



357 :Stage.14 [10-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:47:06 ID:h37KA7+K0

 意識が薄れるのと同時に、いつもの「夢」が現れた。タツミは「ゲーム」が映し出され
ている「テレビ」の前で、なにやら困っているようだった。
「おっかしいなぁ。バラモスごときに負けるなんて。しかもいきなりバグるし」
 ヤツが見つめているテレビの中にはコミカルに描かれたバラモスがおり、「アルスたち
は ぜんめつした!」と表示されている。
 随分あっさりした記述だ。その「ぜんめつ」するまでの行程にどれだけの想いがあった
のか、こいつにはわからないだろう。
 画面は静止していて、なんの操作も受け付けないようだ。タツミはしばらくうなってい
たが、「まあいいか」とスイッチを切った。テレビが暗くなり、俺の世界は眼前から消え
た。あっちはどうなっただろう。バラモスはうまくやってるだろうか。

 今のタツミは「コウコウセイ」とやらになっていた。父親は単身赴任で家におらず、母
親はお稽古ごとだのショッピングだの、自分が楽しいことを優先するタイプなので息子に
はほとんど構っていない。それが少し寂しいと思いつつも、タツミは友人やガールフレン
ドに囲まれ、それなりに楽しく暮らしている。

 俺は「夢」の世界でタツミと一緒に時を過ごした。
 そのまましばらく経った、ある日のことだ。

358 :Stage.14 [11-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:48:01 ID:h37KA7+K0

 いきなり場面が飛んだ。
 学校からの帰りがけに、戸田和弘とマクドなんとかに立ち寄ってダベっていたはずが、
いつの間にか家に戻っていた。
 場面が飛ぶのは今までもよくあったことだが、タツミの様子がおかしい。
「まさか……嘘だろ」
 薄暗い部屋の中で電気もつけず、座り込んでブツブツと呟いている。
「あいつの妹が? 冗談だろ? ……うぐっ!」
 いきなりタツミがむせた。口を押さえて便所に走っていき、ゲホゲホと吐いている。
 キッチンでうがいをして落ち着くと、タツミはまた部屋に戻った。
 しばらくぼうっとしているようだったが、やがて物憂げにテレビの方を見た。あれ以来
ずっとやっていなかった「ゲーム」の機械を引っ張り出し、スイッチを入れた。

 嫌な予感がした。なにが起きるか想像がついた。
 やめろ、ソレに触れるな! あのまま終わらせてくれ! 俺をもう起こさないでくれ!
 俺の祈りは届かず、グンと意識がどこかに引っ張られる感覚があって――。

359 :Stage.14 [11-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:49:30 ID:h37KA7+K0


 目を開けると、俺はダーマ神殿の入り口に立っていた。あの時バラモスのバシルーラで
アリアハンに飛ばされた仲間たちも、何事も無かった顔で俺の後ろに立っている。
「恨むぞ、タツミ……」

 この時になって俺はようやく、この世界と「ゲーム」との因果関係を把握した。
 あっちが「現実」なのだ。
 俺のいるこの世界こそが、ただの「ゲーム」だったのだ。俺たちが物語を作っているん
じゃない、すでに出来上がっているストーリーのコマとして、アイツに動かされているだ
けなのだ。俺も、仲間たちも、魔王ですら。そのことに俺はやっと気がついた。

 再会したバラモスはすべてを諦めたような顔をしていた。お互いに一言も交わさず黙々
と戦い、シナリオ通りにヤツは俺に弊され、ことは運んでいった。
 地下世界。魔王討伐。ショートループ。天界。そして神竜。
 次の願いはなににしようか。もう新しい選択肢は無かったはずだが。

360 :Stage.14 [12-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:51:01 ID:h37KA7+K0

 そこで、奇跡が起きた。


 いきなりそれまでとは違う流れになった。神竜が急に妙なことをほざきだしたのだ。
『オマエノ ネガイヲ カナエヨウ』
 ワケもわからず立ちつくしている俺に、神竜は言った。
『オマエハ タツミニ ナリタイノダロウ?』

 お前はタツミになりたいのだろう?

 意味が――理解できるまでに随分かかった。
 返事をするまでには、さらにかかった。

「……本当、に?」
 掠れている自分の声が、他人のものみたいだった。



361 :Stage.14 [12-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:52:00 ID:h37KA7+K0

【もし目が覚めたら そこが現実世界の一室だったら】


 血を吐くような思いで神竜に願った瞬間。
 渡されたのは、小さな精密機械。
 遠く離れた個人と個人を一瞬でつないでしまう、魔法のような道具。
 開いた途端にコールが始まり、出た相手は、夢の中のあの少年で――。
 
「初めまして、タツミ君。キミ、勇者をやってみる気はないかい?」
 考えるより先に、言葉が出ていた。

   ◇
 

362 :Stage.14 [13-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:53:32 ID:h37KA7+K0

『……そして僕と入れ替わったわけだ』
 俺の長い話しが終わり、携帯の向こうでタツミは大きく溜息をついた。
『で、これは復讐なの?』
「わかんねえよ」
 いや、どうなのかな。考えないようにしてきたが。
 俺はタツミを生け贄にして別な世界に逃げた。それが事実だ。これからタツミは、俺の
代わりに永遠に終わらない伝説をグルグルと紡いでいかなければならない。
『まあ、あくまで僕がクリアに失敗すればだけどね』
「そうだが……」

 タツミの声は普通だった。いつもよりやや冷たい感じはしたが、俺が想像していたより
ずっと冷静だった。俺はもっとこう――
「お前、今の話しを聞いて、なんとも思わないのか」
『なにが。君が僕を身代わりにしたこと?』
「ああ、まあ」
『別に。なに、僕になんか言ってほしいの?』
 すっかり呆れているようなタツミの返答に、俺は戸惑った。
 俺が、なにを言ってほしいって……?

363 :Stage.14 [13-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:54:30 ID:h37KA7+K0
 
『あのさー。なんか僕ムカつかれてるみたいだけど、それ僕のせいじゃないよね。絵本の
登場人物に、ループするから読むなって恨まれても、それ読者の責任か?』
 こんな理不尽な逆恨みもあるかよ、いい加減にしてくれ。

 バッサリ切り捨てられ、俺は完全に言葉を失った。
 タツミは続ける。

『さっき言ってたよね、どうしても僕を嫌いになれないって。イイコぶるのはよせよ、君
の目の前にあるそのゲーム、キャラの気持ちまで操作できないなんて、わかるだろ。単に
僕に罵られたくないだけじゃないの。それとも、僕への哀れみかな? バラモスが君を封
じた時みたいに。僕ってほら、割と物わかりはいい方だからさ。諦めて運命を受け入れて
くれるんじゃないかって期待してるんだろ? だからせめて俺はお前を許してやるって?
自己肯定するにしても、それはちょっと浅ましくないかなー』

 …………。

364 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/05(土) 22:55:47 ID:+3IqaeyH0
支援

365 :Stage.14 [14-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:56:00 ID:h37KA7+K0

『まったく。一度は自分を犠牲にして、人類を引き替えにしてまで未来を勝ち取ろうとし
たってとこまでは、カッコ良かったのにさ。聞いててそこは感心したよ、さすが主人公だ
よなーって。でもだったら最後まで貫いてほしかったな。諦めて逃げ出してハイ終了はな
いっしょ。なにこのクソゲー。ねえ?』
 …………。

『悪いけど僕はクリアするよ。こんな理不尽な要求、呑む気はさらさらないね。だいたい
さ、せっかく僕の親が僕のためにって買ってきたプレゼントに、こんなヒドイ仕打ちをさ
れるって、倫理的に許されるのかよ。親子の愛情とかさ、もう完膚無きまでに踏みにじり
まくってるよね。どう思う、正義の味方の勇者さんとしては?』
 …………。

『でも君だって本当はわかってるんだよね? 自分の望みがどういう意味を持つのか、死
ぬほどよーっくわかってる。だから君は僕を素直に憎めない。可哀想だとは思うよ、同情
する。でも僕はどうなのかな。ねえ、君と僕と、どっちが可哀想なんだろうね?』
 …………。

 俺は…………。

366 :Stage.14 [14-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:57:41 ID:h37KA7+K0

『僕はただゲームをしていただけだ』
 俺は……なにも答えられない。

『ゲームをしていただけなんだよ。平和な世界で、ちょっとしたヒマ潰しに、古いゲーム
を楽しんでいただけだ』
 俺はなにも答えられない。

『でも――君にそれは関係ない。僕に君の苦悩が関係ないように、君の苦悩に対して僕の
権利や主張は関係ない。そうだろう? 運が悪かったんだろうね。僕たちは敵でも味方で
もなくて、起きてしまった現象に巻き込まれて、そこでお互いに譲れないってだけでさ。
だから君は悪じゃないんだ。僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
 なにも、答えられない。

『とりあえず僕が君に要求するとしたら、そっちの時間で明日の朝くらいまで、テレビを
消しててくれってことくらいかな。なんかね、見られてるのがわかるんだよ。どうも落ち
着かないんだ。どうせ金輪際、君にナビを頼むこともないだろうしね。でも本体のスイッ
チは切らないでくれよ? それとも僕と心中したいかな。僕は止めようがないけど』

「いや……切らねえよ」

367 :Stage.14 [15-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:59:31 ID:h37KA7+K0

『ありがとう。――ああそうそう、それともうひとつ』
「なんだ?」
『優しいバラモスさんはできなかったみたいだけど、僕はそんなに優しくないからさ。代
わりに僕から、君に呪いをあげるよ』
 タツミの声が、急に明るくなった。


『それでもね、僕は君が好きだよ。友達になりたいって今でも思ってる』


「……友達?」
『そう。だってすごくない? ゲームの中の勇者と友達になれるとかさ?』
 まるで子供がはしゃいでいるようなタツミの問いかけに。
「そうだな。すごいことだよな」
 俺は、まるで中身のともなわない空虚な言葉を返す。
『だろ? だからさ、友達になってよ』
「いいぜ。友達になろう」

368 :Stage.14 [15-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:01:26 ID:h37KA7+K0

『良かった! 嬉しいよ。あ、画面は消してほしいけど、なにかあったらいつでも電話し
ていいからね。困ったことがあったらなんでも聞いて。簡単なアドバイスくらいしかして
あげられないけどさ』
「わかった。そうする」
『それじゃまたね。おやすみ、アルス』
「ああ――おやすみ、タツミ」


 電話が切れた。
 俺はまず、言われたとおりテレビのスイッチを切った。電気はつけていなかったから、
部屋が暗くなった。カーテン越しに差し込む街灯の明かりが、ぼんやりと室内を照らして
いる。
 次に電源が入ったままのゲームの本体をテレビ台の中に押し込んだ。コントローラーの
ひもを巻いて、それもいっしょに中に入れてガラスの戸をカチッと閉める。

 それから俺は、上着を脱いでベッドの中に潜り込んだ。
 ただ眠りたかった。
 バラモスが用意してくれたあの石棺が――異常に恋しかった。
 

369 :Stage.14 [atgk-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:03:06 ID:h37KA7+K0
タツミ「というわけでっ、君に同情の余地はこれっっっっっぽっちもないね!」
アルス「ひでえっ! お前最低だ!」
タツミ「なんとでも言えば〜?
   さてと、こんな雰囲気の悪いところで本当に申し訳ありませんが……」
アルス「ちょ、やるの!? この状況で!?」
タツミ「うるさい勇者だなー。いただいたレスへの返答は僕らの仕事でしょ。
   それでは恒例、サンクスコールです!」

アルス「>>318様、わかっていただけますか俺のこの苦悩!!?? おっしゃる通り、
   めちゃめちゃキツイんですよ〜。あううう」
タツミ「嫌だわぁ、この期に及んでまだ読者様の同情を買おうとしてる。
   >>319様、暖かいお言葉ありがとうございます。マイペースで頑張りまーす♪」
アルス「はぁ〜……。まあ仕事はきっちりしないとな。
   >>320様、長いことお待たせいたしました。レイはマジで強いんだ、
   正直タイマン張ったら俺でもけっこうヤバイかもな」
タツミ「>>321様、細かいところまで気がついてくれて嬉しいです。
   過去の嫌なことを思い出した時ってあんな感じなんですよ。困ったもんです」
アルス「>>322様、実は前述の通りバラモスだったんですが、あいつもかなり苦労してたみたいで」
タツミ「>>323様、仕事より優先して読んでいただけるとか、本当に職人冥利に尽きますね」
アルス「リアルタイムでのご支援を含め、皆様にはいつも感謝です」

370 :Stage.14 [atgk-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:04:06 ID:h37KA7+K0

アルス「しっかし俺もここまで容赦なく叩かれるとは思わなかったぜ……orz」
タツミ「だって僕、 偽 善 者 って嫌いだし」
アルス グッサ━━━━━ΣΣ( Д ;;;)━━━━━━>ッ!!!
タツミ「まさか勇者様が『友達』を身代わりにして逃げるとはね〜?」
アルス「お、俺だって、俺だって…… ウワーン! (((((((((((((((((+。・::。゚+:。ヽ(TДT)ノ。:*゚。::・。


タツミ「……ちょっとやりすぎたかな。
   それでは皆様、次回ゲームサイドでお会いしましょうっ」





本日はここまでです。
20行制限のせいで細切れ&投下に時間がかかってしまって申し訳ありません。



481KB
続きを読む

名前: E-mail(省略可)
READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
ぜろちゃんねるプラス