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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

201 :得獣失獣【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 21:49:21 ID:3V5v2oYI0
「騎士の剣は”殺める”為ではなく、”守る”為にある…そうでしたな。サトチー様…
こやつに『明日を生きる』事を命じた私の判断は正しいと信じております…」

消え入りそうな声で語り、再び剣を正面に構えるピエール。
その若草色のボディーを狩らんと、鉛色のスライムを振り回して突進する鈍色の鎧。
対して、ピエールはその場を動かずに構えた剣を引き絞る。

「だからこそ許せぬのです。サトチー様の御心を踏みにじったこやつを。」

怒れる騎士の懺悔に、悲鳴のような音が覆い被さる。
それは例えるなら、ピアノの一番右の鍵盤を大音響で鳴らしたような音。

かたや、鉛色のスライムを前方に振りかざす体勢のまま…
かたや、一直線に伸ばした剣で鉛色のスライムを押し留める体勢のまま…
静止画像のように硬直していた二人。

ゆっくりと剣を引くピエール。メタルライダーは動かない。

鉛色のスライムの胴を透かして鈍色の鎧が見える。
そして、鈍色の鎧を透かして後方の壁が見える。

会心の牙突は鉛色のスライムを貫通し、鈍色の胴にも風穴を開けていた。

「さらば、嘗ての同胞。貴様を殺めたのは私…全ては私の力不足ゆえ…」

動かないメタルライダーの鎧。その隙間という隙間から水銀のような液体が漏れる。
最後に残ったモノは銀色の水溜りと、バラバラになった鎧。
そして、その前に剣を立て追悼の構えを取る若草色の騎士の姿。

―騎士は何度でも立ち上がり、必ず最後に勝利する―
ピエール以外の存在が口にしたなら、これほどの説得力を持っただろうか。
ピエールはその行動をもって自らの言葉を証明した。

202 :得獣失獣【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 21:52:23 ID:3V5v2oYI0
「ピエール…」

俺の呼びかけに対し、ピエールはこちらに背を向けたまま動かない。
生命を失った水溜り。変わり果てた嘗ての同胞の前で騎士は何を思うのだろう。

「…私は…騎士として失格ですな…」

胸の底から絞り出すような声。顔は見えない。

「私は何一つ守れていない…主君の御心を汚し…嘗ての同胞を殺め…
 騎士として守るべき物を何一つとして守れず…」

―それは違う。ピエールは正真正銘…
俺が発しようとした陳腐な言葉は、横から伸ばされた手によって遮断された。

「騎士ピエール。主として君に命じる。」

いつもの優しい声ではあるが、どことなく威厳を感じさせるサトチーの声。
敬愛する主の声に、騎士がようやくこちらを振り向く。

「高潔な騎士である自分自身を否定する事を今後一切禁じる。
 そして、騎士の信念に従った行動を後悔する事…それも今後一切禁じる。
 例えどんな形だろうと、君が導き出した結果を僕は受け入れ、君を祝福する。」

ゆっくりとした動作で剣を地に置き跪くピエール。
水銀色の返り血に塗れたその姿は、勇猛さと同時に気品さえ感じられる。
絞り出すような声は変わらず、けれども、その声に迷いはなく…

「仰せのままに。我が信念はサトチー様の広く深い御心と共に…」

203 :得獣失獣【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:04:10 ID:3V5v2oYI0
治療は終えたが、かなり消耗したピエールを隊列の中央に据えて洞窟を進む。
ピエールの代わりに前衛を務めるのはサトチー。
普段は隊列中央からの回復やサポートに回ることが多く、前線に立つことは稀だが、
長い時間をかけて磨かれた剣の冴えは見事だ。

突進力で相手を突き破るピエールの剣が”動”の剣だとするならば、
相手の踏み込みをいなし、すれ違いざまに相手を斬り伏せるサトチーの剣は”静”の剣。
果敢に攻め込んでいたはずが、気付いたら斬られている受け身の剣術。
恐らく、倒れた相手は斬られた事にすら気付かず命を落とすのだろう。

相手を不必要に傷つける事を嫌うが故に身についた優しい剣技。
それが相手の命を一瞬で刈り取る死神の鎌になるとは皮肉な話だねえ。

「さて…かなり奥まで辿り着いたけど、みんな怪我はないかい?」

その呼びかけに、ついさっきまで治療を受けていたブラウンが全身で答える。

「ははは…ブラウンは元気みたいだね。安心したよ。」
「私は問題ありません。魔力も完全とはいかないまでも回復しております。」
「俺も平気。道中サトチーがマメに回復してくれてたからな。」
「…サトチー卿…失礼ながら貴公の消耗が著しいように見受けられる…」

俺の心許ない回復技で治療を終えたスミスがサトチーに辛辣な言葉を投げ掛ける。
…いや、本意はわからんけど、無表情・無感情な言葉から真意を測るのは難しい。
実際、ピエールが後ろのほうで『無礼者!!』とか叫びながら抜刀してるし…

まぁ、確かに受けに重点を置いたサトチーの剣術は被弾確率が高いよな。
実際にサトチーの左腕には突撃兵の攻撃を受けた痛々しい傷が見える。

「ん?あぁ、これくらいならベホイミで全快できるさ。」
「…ふむ…一つ進言させてもらおう…時に慈悲は足枷となる…
 …慈悲を向ける相手を見誤らぬよう…首領を失った一軍は非常に脆い…」

204 :得獣失獣【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:07:54 ID:3V5v2oYI0
「わかった。君達を危険に巻き込むわけにはいかないからね。」
「…そうではない…貴公にはもう少し我が身を案じて頂きたいだけだ…
 …我々にとって貴公の存在は貴公が考えているよりも重い…」

口下手だが、はっきりと伝わるスミスの心。
ピエールも納得したのか、ようやく剣を鞘に収めてくれた。
当のサトチーには意味がわからないらしく、きょとんとしている。

「素直じゃねえなあ。ハッキリ言わねえとニブニブサトチーには伝わんねえよ。」

―スミス達にとって何よりも大事なのはサトチー自身。それを忘れるな―

つまりはそういう意味だ。
ようやくスミスの言いたい事が伝わったのか、サトチーの顔に笑みが浮かぶ。

「ありがとう。スミス。」
「……治療が終わったのなら先を急ぐべきではないのか?…」

ぷい と、そっぽを向くスミス。
―もしかしてスミス、照れてんのか?この辺はまだサッパリ読めねえけど。

下層に向かうに連れ、狭く入り組んだ様相を見せる洞窟。
足場の悪い通路だろうが、狭い袋小路だろうが襲い掛かってくる魔物。
それらを薙ぎ倒して(時には宝箱に化けた魔物を谷底に蹴り落として)俺達は進む。

そして、辿り着いた最下層。
こぢんまりとした洞窟内の小部屋にソレは居た。

「サトチー様、前衛に出てはなりません。こやつは…キラーパンサー。
 地獄の殺し屋の異名を持つ呪われし魔獣です。」

205 :得獣失獣【15】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:11:13 ID:3V5v2oYI0
地獄の殺し屋 キラーパンサー。
発達したしなやかな筋肉。その体は薄暗がりの中でも明るい金色の毛皮で包まれ、
燃えるように真っ赤な鬣が彩りを添える。首周りに付着しているボロ布が邪魔だが、
その物騒な名前とは裏腹に、その姿は美しい。

…が、象牙のように艶やかに輝く長い牙は紛れもない獰猛な肉食獣のそれ。
同時にカボチ村での風のような身のこなしを思い出し、身が硬くなるのを感じた。

「先手必勝!呪われし魔獣め、そこになおれ!!」

鬨の声を上げたピエールが狭い室内を疾駆し、渾身の突きを繰り出す。
次の瞬間、俺の視界にいたのはピエール一人。

魔獣の姿は消え、前方から呻き声と円盤状の何かが飛んできた。

「ぬう…やはり速い。」
「ピエール!!」

ピエールに後の先の一撃を喰らわせ、その盾を弾き飛ばしたキラーパンサーは、
床を蹴り、壁を蹴り、僅か一足で間合いを飛び越え俺達の背後に回っている。

「心配無用。これしきのカスリ傷…」
「動かないで!すぐに治療しなきゃ!」

ピエールの左腕には三本の傷が刻まれ、緑色の体液が滲み出している。
―鎧で覆われたピエールに傷を負わせるなんて…

―!!!―

隊列の後方を守るブラウンのハンマーが小部屋を揺らす。
身を翻した魔獣は回避の瞬間、ブラウンに強靭な後肢で蹴りを喰らわせる。

206 :得獣失獣【16】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:14:56 ID:3V5v2oYI0
「…これならかわせまい…朽ちて悶えろ…」

スミスの口から迸るドス黒い気体。
強力な毒素を相手に浴びせるスミスの特技『猛毒の霧』
地を這う生物である限り、広範囲に流動する霧から逃げる術はない。

そう…地を這う生物である限り…

目を疑った。
暴れるブラウンをその口に咥え、その四つ足で取っ掛かりのない天井に立つ獣。
強靭な爪を固い岩盤に食い込ませ、落下する事なく天井に文字通り『立って』いる。
これには無感情なスミスも驚きを隠せないらしく、その動作が一瞬止まる。

そして、その一瞬を見逃す相手ではなかった。

「…なるほど…鉄の爪か…」

天井を蹴った魔獣がスミスに襲い掛かり、その背に爪を刻み込む。
事も無げに、猫科特有の身の柔らかさを駆使して地に降り立ったキラーパンサー。

「てめえ!ブラウンを放しやがれ!」

ピエールも、ブラウンも、スミスも一撃で戦闘不能にする戦闘能力。
俺が敵う相手ではないのはわかってるが、せめてその回復の時間を稼ぐ。

キラーパンサーの直前で身を屈め、その足元を狙って水面蹴り。
突進からフェイントで足払い。プロトキラー戦で編み出した俺の必殺コンボだ。

思いっきり外した。

てか、普通に避けられた。

207 :得獣失獣【17】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:19:40 ID:3V5v2oYI0
胸の辺りから黒板を引っ掻くような嫌な音。
足払いをミスった不安定な体勢のまま、胸に重い衝撃を受け、吹き飛ばされる。

「…痛ってぇ…」

痛みを堪え、なんとか受け身を取って立ち上がる。
ただの意地。だけど、この防具なら一撃に耐えられることがわかったのは大きい。

「さすが鉄の胸当てだ、あの一撃を受けてもなんともない…ぜ…」

胸の防具に目をやって絶句した。
ポートセルミで購入した鉄の胸当て。その表面に三本の太いエッジが刻まれている。

「…イサミ…ヤツは鉄の爪を身に着けている…天井に爪を食い込ませる荒業も…
 …ヤツの異常な攻撃力もその力だ…生身で喰らえば助からぬ…」

背中に三つの傷を浮かべたスミスが倒れたまま忠告する。
鉄の爪…抉り取られた鉄板…もし、これが生身の部分だったら…
子供の頃、テレビの動物番組で見た肉食獣の捕食シーンが脳裏に浮かぶ。

ごくり…と、生唾を飲み込む俺。俺も相手も睨み合ったまま動かない。
こちらの攻撃は全て回避され、その瞬間を狙って強烈な一撃を叩き込んでいる。
動けない…それでも、相手が痺れを切らして襲い掛かってきたらそれまでだろう。

―☆!!☆!―

膠着状態はあっさりと終わりを告げた。
一番先に痺れを切らしたのは俺でも魔獣でもなく、その口に捕われていたブラウン。
小さな体をフルに使ってバタバタ暴れ、その赤い鬣を引っ掴む。
魔獣は堪らず首を大きく振り、ブラウンを俺の胸元へ放ってよこした。

208 :得獣失獣【18】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:22:35 ID:3V5v2oYI0
「…っと、危ねえ!」

魔獣に噛み付かれて振り回されたはずのブラウンは思ったよりも出血がない。
見ると、蹴り飛ばされた時に作ったのか頭に大きなコブができているが、
軽く目を回している以外は引っ掻き傷も噛み傷も見られない。
魔獣に捕われて天井に離脱したのが幸いしてか、猛毒の霧の巻き添えも免れたようだ。

「皆、下がってくれ。」

ピエールの治療を終えたサトチーが、一行の前に進み出る。
低く構えて動かない魔獣を、真っ直ぐにその瞳で捉えながら。あくまでゆっくりと。
その手には、ついさっきブラウンが相手の首からもぎ取ったボロ布。

「サトチー様!なりません!!」
「作戦変更!『僕にまかせろ』イサミとピエールはスミスとブラウンの治療を。」

ピエールにとって、サトチーからの指示は絶対。
強い警戒心をあらわにしたままではあるが、即座にスミスの治療に向かう。
俺にとっても歯痒いが、戦闘の場ではサトチーに従う。それが俺達のルール。

「鉄の爪…この刺繍入りのケープ…大きくなったね…」
―ガァウッ!!―

無造作に振るわれる鉄の爪。サトチーの体にじわりと赤い色が浮かぶ。
それでも、そのゆっくりとした歩みは止まらない。

「サトチー様!!おのれ…」
「大丈夫だ。持ち場を動かないで…」

鉄の爪が何度も振るわれ、金属が擦れ合う音が何度も鳴り響く。
その度にサトチーの服に小さな傷が増える。

209 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/10(月) 22:24:51 ID:vyBj/uwX0
もう一回支援

210 :得獣失獣【19】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:25:09 ID:3V5v2oYI0
―おかしい…
続けられるキラーパンサーとサトチーのやり取りに、何か違和感を憶えた。
俺と同じ違和感を他の仲間達も憶えたらしい。

―???―
「ええ…ブラウン殿の仰る通り奇妙ですな。あれ程の猛攻を繰り出しながら、
 どの攻撃もサトチー様のを浅く傷付けるのみ。それは一つの幸いなのですが…
 だとしても、サトチー様に傷を負わせる蛮行を目の当たりにしてむざむざ…ぬぅ…」
「…我々が受けた傷にしても同じ事が言えるな…あえて浅く…急所を外している…」

無防備な所に受けた傷。だと言うのに、俺達の誰も致命傷は負っていない。
俺が受けた一撃も急所となる首筋や腹部ではなく、胸当ての上を傷付けただけだ。

「ずっと一人で…寂しい思いをさせたね…」
―グウゥゥゥ…―

低い唸りを上げながら、じりじりと魔獣が後ずさる。

「その爪も、このケープも、僕から君にプレゼントした物だよね。
 十年…ずっと大事にしてくれていたんだね。ありがとう…
 僕も君との思い出をずっと大事に持っているんだ。」

―サトチーの腰帯に結び付けられていた、薄汚れた赤い布紐。
白と紫で統一されたサトチーの服装の中で、それは一際異彩を放つ存在。
以前、サトチーに尋ねた事がある。

『なあ、サトチー。気になってたんだけど、それ何かのお守り?』
『そうだね。僕にとっての大事なお守り…そして、いつでも僕を守ってくれる。』
『ふぅん…よくわかんねえけど、俺の世界でのミサンガみてえな物か。』
『みさんが?攻撃系の呪文かい?』

211 :得獣失獣【20】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:28:09 ID:3V5v2oYI0
音もなく解かれた赤い布。
俺の世界でのミサンガは、それが解けた時に持ち主の願いを叶えるお守り。

ふわり…と、赤い紐が魔獣の鼻先を掠めた瞬間、魔獣の唸り声が消える。
何かに憑かれた様に身を伏せ、硬直する魔獣。その首にサトチーの腕が廻された。

「くじけそうになる度に、そのリボン…君とビアンカの思い出が守ってくれた。
 この十年…一度だって忘れた事はないよ。」

鮮やかな赤い鬣に結ばれた薄汚れた赤のリボン。

「生きていてくれて…本当にありがとう…」

身を伏せていた魔獣が、がばっと身を起こす。
その目からは涙が溢れ、その金色の体毛に覆われた顔中を濡らす。

―オオオオォォォォォ…―

洞窟内に響き渡り、反響する遠吠え。それは歓喜の雄叫び。
顔を濡らし、その豊かな毛皮を伝う涙が地面に流れ落ちる。

こっちの世界のミサンガも、それが解けた時に願いを叶えるお守り。
ただ一つ違うのは、持ち主の願いを叶えるお守りではなく…

持ち主と持ち主にとって大事な存在、両方の願いを叶える…

両方にとって、大事な大事なお守り。

212 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/03/10(月) 22:31:55 ID:3V5v2oYI0
イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:41/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――


〜〜〜〜
第十五話はここまでです。
長時間のお付き合いありがとうございました。

193でsage忘れ…マジ申し訳ないです。

213 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/10(月) 22:37:11 ID:vyBj/uwX0
>◆Y0.K8lGEMA さん
お疲れさまです。

リアルタイムで読めて楽しかったです。

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/10(月) 22:40:38 ID:95XWqT6N0
おぉ、ついにキラパンが……!
名前を次回に持ち越すあたりが憎いw

215 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 03:13:47 ID:oje2l/xm0
指輪が気になるな…。
欝展開だけはやめてくれぇ…。

216 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 09:24:55 ID:2UqS+MtF0
このシーンはいつどういう流れで見てもいい話だなー。非常に乙。
スミス生きろ。死んでも生きろ。俺はお前を失いたくない。

217 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 10:22:00 ID:BVHW20sX0
星降る腕輪だってあたい信じてる

218 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 10:24:15 ID:071Gxyot0

目から水が止まらん
サトチーはやっぱり上に立つ素質のある人物なんだな。カッコいい
腕輪とタイトルのことを考えると次回が不安だ

219 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 12:31:17 ID:UOWifcXM0
カボチの奴らの会話からすると多分あの腕輪なんだろうな…
スミスいやだああああああああ

220 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 13:08:46 ID:c24/MXn8O
乙です。
いつも楽しみにしてます!最近職人さん少ないけど頑張って!
誰か死ぬのかな・・・

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/11(火) 14:22:51 ID:gBjMGgUu0
カボチの地下室のあの腕輪か・・・?
・・・・・・スミスううううぅぅぅぅぅ!!!!

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/12(水) 01:18:16 ID:fWxA1Rju0
おつ
カボチにある腕輪だよな。
ま、この村はそれくらいのが納得できるがなw

223 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/12(水) 04:09:46 ID:OAhVARnnO
カボチだけは滅ぼしていいよ、ゲマさん?

224 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/15(土) 11:48:40 ID:hobB94uVO
続き楽しみ保守

225 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 12:51:41 ID:XRq+xQxW0
おおおお、ピエールVSメタルライダーといい、キラーパンサーとの再会といい、正直感動した。
洞窟の入り口の描写といい、メタルライダー戦の緊迫感といい、GJなんてレベルじゃねぇよ。超GJ。

226 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 14:13:04 ID:U6G1ppSM0
おお。久美先生もこの洞窟でピエールvsメタルライダー戦を描いていたが、
こっちの矜持を賭けた我の張り合いも格好良くて好きだなぁ。


227 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 18:01:41 ID:XbwzF01TO
>>226
久美先生て誰?

228 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 20:08:58 ID:a0hzGAMSO
目覚めたらアリアハンの宿屋のベッドの上でさ、もうね、慌てず騒がす兎にも角にもね、酒場直行だね、ああ、ルイーダ?
うん?ハーレムパーティー?ちっちっ、ノ〜ンノン、ここはあえて女戦士たんオンリー加えなくっちゃね、だめよ、常識的に。
やあよろしく女戦士たん、ん?ああ、いいのいいの、二人なら経験値倍でしょ?(どう考えても目的は別のところにあるのだが)
二人で力を合わせてがんばろうぜ!さ、いくか!
まずは財布と相談しながら多少装備強化、と・・・鎧のサイズ合わせやら試着を免罪符にセクハラチャンスタ〜イム。
いや、ほら、ここ、こんな隙間空いてると動くとズレたり?してまずい?んじゃない?
なんて具合に逞しいエロエロボディにボディタッチ?スキンシップね、やっぱ意志の疎通?的な?色々後々のためにもね、深めとかないとね、最初が肝心。
さあてと、しち面倒臭いが外に出て・・・危ないから城門から極めて近いとこでうろうろすっか。
まずは軽く一戦、あんまりいっぱい出てくんなよ、バカガラスライム軍団。
・・き・・た・・・うりゃ!こんちくしょう!

う〜ん・・・あ痛たたたたた・・・勝ったが・・もう・・だめだ・・女戦士たん、今日のところは・・宿屋で・・回・・復を・・・・・
!!?!
チャンス!!歩くのも辛いような重傷のフリをしてのろのろと足を引きずるように歩くと・・・
案の定、気の短い女戦士たんがこちらの作戦、思惑通りイライラしだして・・・
・・んもぅ!しょうがないね!大丈夫か?
と肩を貸してくれた。
・・す・・すまない・・うっ・・
と非常に安っぽい猿芝居をしながら女戦士たんにもたれかかり、むき出しの素肌胸お腹お尻太腿あたりに狙いをさだめ、かなり際どいボディタッチに挑戦する。
な・・ちょっ・・ぉ・・・い・・
と、嫌そうに拒否られるか怒られるか突き飛ばされるかされないかギリギリのところを見切りつつ危ないヤバいと感じたらすごく苦しそうなフリをしてごまかす。
むほっ、さて、宿屋はもうすぐだ。
はやる気持ちと股間の欲棒を抑えつつ、まだ日は高いが・・・・・


???
スレタイ見てこういう妄想を書きなぐるスレだとおもったんだが・・・

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 21:27:25 ID:1m69yedXO
>>227
DQ5の小説の作者

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/16(日) 21:36:10 ID:XbwzF01TO
>>229 サンクス
つまりプロか
ツマラン

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/17(月) 08:01:13 ID:uKbI7x1O0
>>228
続けてくれw

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/17(月) 19:06:36 ID:TV0MJuZOO
>>228
>YES,I am!チッ♪チッ♪
まで読んだ

233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/19(水) 10:02:15 ID:YCB8zkra0
新たなる可能性が参上してるのか保守

234 :一発ネタ1/3 ◆6hMIYUciEM :2008/03/19(水) 11:39:37 ID:KhNWUY4O0
もし目が覚めたらそこがDQ○世界の宿屋だったら

朝。
窓から容赦なく目を射るまぶしい陽光に目を覚ます。
寝不足の頭を振り、気だるさを振り払う。

そして、頭がはっきりするにつれ、俺はあることに思い至った。
ココハドコダ?
ビルの谷間の俺の部屋の窓からは、はげかけた灰色のコンクリートの壁、そして洗濯物しか見えないはずだった。
陽光が差し込むことなど決してない。
一気に目が覚め、目をこすりながらうす暗い部屋の状況を確認する。

鼻先に洋服掛けの迫る、俺の部屋の四畳半じゃない。しかも古風で質素だが、布団ではなく大きなベッドで寝ている。
窓にはよろい戸があり、その隙間から日光がシマシマの模様を作っている。ちょうど俺の目の位置にもひとすじの日光が当たっていた。
「ちゃんと計算されているんだな。角度とか・・・」
俺は誰に言うともなく、ひとりごちた。

少々立て付けの悪い、鎧戸を開け放つと、俺は思わずまぶしさに目を細めた。
やがて目が慣れてくると、その光景に息を呑んだ。

235 :一発ネタ2/3 ◆6hMIYUciEM :2008/03/19(水) 11:41:12 ID:KhNWUY4O0
窓の外には、まるで西部劇のテーマパークのような光景がそこに広がっていた。
そして、俺のいる部屋のレンガ作りの壁からは飾り文字でINNと書かれた看板が突き出していた。
外を歩く人々も妙な格好をしていた。甲冑をかぶったもの、上半身裸で覆面までかぶったものが前後左右に闊歩している。
女性はさすがに上半身裸ではないが、手の込んだ民族衣装のようなものを着ていたり、いずれにしても俺の見慣れたものではない。
「ここは日本じゃないのか?」
状況が飲み込めず、頭が痛くなってきた。

部屋の中に視線を戻すと、着替えらしいものはなく、甲冑と剣、盾、そして皮袋があった。
皮袋の中には漢方薬のような束ねられた草、ゲーセンのメダルのような金貨、趣味の悪い装飾のついた大きな鍵が入っていた。
もしや・・・。
昨日寝る前に見たスレを思い出す。ここは、噂のDQ世界の宿屋なんじゃないか。
ということはラスボスを倒せば元の世界に戻れるけだ。
それにしてもドラクエいくつなんだろう。それがわからないと目的とこれからすべきことがわからない。
ふくろがあるということは・・。いや、外に出てみればわかるだろう。
とりあえずDQn世界(nは自然数)としておこう。
俺は鎧をみようみまねで身に付けて、武器を身につけて、皮袋を持ち、宿の廊下の階段を下りた。

236 :一発ネタ3/3 ◆6hMIYUciEM :2008/03/19(水) 11:45:56 ID:KhNWUY4O0
そこには、緑色の服に金ボタンをつけた宿の主人が待っていた。
だが、その宿の主人は俺の想像していたお決まりのセリフは言わなかった。
それどころか、くちゃくちゃとガムを噛み、安物の香料臭い息をさせながら眉間にしわをよせ言った。
「あ〜ん?ゆうべは眠れたんか?じゃあさっさと行きな。」
宿の主人はあごでドアの方を示した。

その勢いに気おされながら、黒い金具のついた重厚な扉を開ける。
そこには、二階の客室からは見えなかったが、想像を絶する光景が広がっていた。
俺を押しのけて入れ違いに宿に入っていく者。
宿の玄関前にたむろって、袋にいれた液体を吸う者。
昼間っからラリって、ふらふらと前後左右に不規則に歩く者。
路地から俺をにらみつける者。
地べたに座り車座になる者。

しまった。ここはDQn世界ではなくDQN世界だったのかっ!!orz

おしまい

237 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/19(水) 15:30:17 ID:NwQ4sLR20
なんてひどいんだ

238 : ◆I15DZS9nBc :2008/03/19(水) 18:45:58 ID:lqYfkwAd0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(1)

「山に潜んではや一週間、体臭がヤバイを通り越してもう何も感じなくなりました……でも風呂より温かい料理が食べたいです」
テンションガタ落ち、HP満タン、されどもMP空っぽ、薬草も尽きたわけで食えそうなものを図鑑と見比べ吟味、せめて茹でないと青臭くてかないませんよ。
草特有の灰汁っぽさ、お腹の調子は悪いけれどもひとまずステータス異常とまでは至ってませんよと自分を慰め大きくため息。
「魔法に関連する書物を奪取してこないことには始まらんぞおい、Lv上がったっぽいけど一向に覚える気配ないし」
知識は自分で付けなきゃならないっぽいです、もうちょい上手い具合のシステムを築いて下さい偉い人。
ぶっちゃけ二百年ほど前に魔法使いの反乱が起こって以来魔法はほんの一握りの人間だけが学べる免許制の特殊技能なわけで、必然的に学ぶための書は限られてくる。

239 : ◆I15DZS9nBc :2008/03/19(水) 18:49:45 ID:lqYfkwAd0
ルイーダの店みたいに職業斡旋やってるところでも武道家だとか戦士だとかが余るぐらいたくさん登録されて続いて盗賊、商人と言ったネゴシエーター。
まあダンジョン内での鑑定も受け持つこともあるが圧倒的に交渉事に役に立つ。
そして何より引っ張りだこの僧侶と魔法使い、これの数はイーブン、似たようなもんだし……。
あー忘れてた、遊び人なんて言うふざけた職業もあるが……仲間の下の世話もリーダーの責務というもので、街中で性犯罪なんてものを起こされれば最悪打ち首ですからね!
んで賢者、高慢ちきが多いのと何より絶滅危機種かっつーぐらい個体が少なく保護対象となっているため滅多にお目にかかれないらしい。
いやまあ勇者ほどじゃないんだけど。
「あー何話してたんだっけか? あー魔法だ魔法、脱線しまくってるな」
こんだけだらだら話して何が言いたいかって……魔法習得無理ぽいです、てへ。
「洒落になんねー、無理ぺー、つーか、死ねるぜ」
動物性タンパクなんて当分くってねーなーと夜空に嘆く、カラスは復讐が恐ろしいから手を出さないしキノコマンとか中間すぎて食いたくない。
「誰が考えたんだよあんな万博不思議生命展、植物っぽいくせに肉っぽい感じ、毒持ってるし良いとこねえよ。スライムとか噛り付いたら舌に吹き出物がぶつぶつ出やがるし」
あれには本当に参った、元々ある舌のざらざらの上に数の子みたいな感触の密集体ができて、さらに悪いことに高熱にうなされること二日間。
さらにゲエゲエ吐いてせっかく詰め込んだ草が胃の中から消え去り胃液まで出し尽くす始末。

240 : ◆I15DZS9nBc :2008/03/19(水) 18:50:28 ID:lqYfkwAd0
それだけならまだ良かったが悪いことはかさなるもんで下のほうも壊れた蛇口みたいに噴き出し脱水症状一歩手前。
いやぶっちゃければ重度のになってたんだけどな、干物だ干物。
まあそれでも死なないのが勇者の定め、パラメーター異常が長く続いてたせいもあって筋力と体力が衰えたのもご愛敬。
魔法なし武器なし知恵なし、けれども体は頑丈……だと思いたい、わりと元気じゃないけど今日も生きてます、と。
「つーかなんで魔王襲ってこないんだ?今の段階でフルボッコにしたら立ち向かってくる馬鹿は居ないだろうに……」
勇者を放置することは最悪自らを滅ぼすことに繋がる、ならその災厄の目をサクッと摘むに限る。
というか人類掃討を謳いながらなぜ圧倒的物量を誇る魔王軍を動かさない?
軍産複合体が裏で戦争を継続させている陰謀論、なんてものがあるなら分かりやすいがこれは不可解すぎる。
そんなものがあるなら勇者や魔王なんていう不確定要素があってもらった困るはずだ。

241 : ◆I15DZS9nBc :2008/03/19(水) 18:51:13 ID:lqYfkwAd0
「ルビスってどこの祠に居たんだっけか、あれ?あれって四作目か?ちくしょう、なんでここまで覚えてないんだよ……」
自分の知識の何が正しく何が間違っているのか、それすら分からないのだ。
魔法がぽんぽん使えるファンタジーに自分の常識が屈伏している。
「いいや待て、金になりそうなことを思いついたぞ俺、そうだよ、ファンタジーだ、産業革命も起きてないんだ、チャンスは幾らでも転がってるじゃないか!」
え!?金がない!?借りれば良いじゃないの!!
子供じゃねーか!?無理!?d
「……現実味がないな、蒸気機関の仕組みは分かるがあんなもん作れるかよってんだ」
熱効率が半端なく悪くさらに強度がなくボロっちいのならイケそうだけどな、とぼやく。話が平行線だ……つーか誰と話してるんだよ俺。

(2)に続く

242 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/19(水) 19:47:44 ID:MoihoE3v0
>>237
ゴメソナサイ

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 11:20:24 ID:KbQnUbkv0
>>238-241
続きに期待!
シニカルな進行がオモロイ


244 :激闘!v.s.カンダタ戦!編1 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:14:52 ID:o1/pPq9qO
長く広い、迷路の様なシャンパーニの塔を迷いながら進んでいった。トラップの仕掛けられた床、侵入者を阻むために配置されたモンスター達、先の階に進ませないためのトリック。
外を見たら分厚い雨雲が塔を覆っていた。
これだけ好調に冒険してきたのにバラモスへの道のりが、進めば進むだけ不安になるのは何故だろう。
全てのモンスターを従えるバラモス。おそろしいほどの魔力。世界を黒く覆い尽くすその存在。その存在があまりに静かで、不気味な気配があるのだ…。
オルテガがただ一人でバラモスを倒すために旅立った。
各地にその伝説は語られていた…。その強さを、勇気を。
しかしその後どうなったかは誰もたぶん知らない。
そう、ぼくはその偉大なるオルテガの息子―勇者として、アリアハンをでたのだ。
ピカ一の剣の実力をもつ戦士サイモン。ただ、いまだ本気で戦っていないようで実力は未知数である―。
オルテガを慕い幼い頃から武闘家の道を選び鍛練を続けてきたエリー。その男勝りの性格の奧にある淋しさややさしさをぼくは知っている。
神を信仰する僧侶ナナ。口数は少ないが、そのあたたかい空気、雰囲気がぼくらを癒してくれる。
―さあ行こう、この上にカンダタがいる、そして国宝を取り返すんだ―。

245 :激闘!v.s.カンダタ戦!編2 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:20:43 ID:o1/pPq9qO
カンダタ「何だおめえらは…? 下の階に子分達がいたはずなんだがなんで此処にいる?」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「全員倒して来たんだよ、あとは君だけだ。―国宝『金の王冠』を返してもらう」
カンダタ「なるほど…おめえらは勇者御一行サマってわけだ」
少しの静寂。対峙している時間がとても長く感じられた。
女武闘家エリー「かんねんしなさいよ」
カンダタ「はっはっは!王冠ならこの塔の屋根に飾ってある。俺を倒せたら持っていっていいぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…なんでロマリアの国宝を盗んだんだ」
男戦士サイモン「そうだな。どんな理由があったんだ?」
カンダタ「いずれ、世界のお宝の全てを手に入れるからだ」
盗賊らしい答えだった。ぼくらがバラモスを倒さなければいけないように、彼もまた確固たる自分の信念があるようだ。
戦いは避けられない―。
『カンダタがあらわれた。』
ついにバトルだ―。
『カンダタが先制攻撃をとった!』
なっ!?
カンダタ「おおおおッッ!!!!」
おそろしい巨体がふるう豪腕――。
『カンダタ、会心の一撃!』
ナナを襲ったその一撃を、サイモンがかばう―。
女僧侶ナナ「…さっ!サイモン!…」
サイモンはナナをおおうように前に立ち、カンダタの攻撃を背で受けた―。
男戦士サイモン「うぐ……。ナ…ナ……」サイモンは膝をつきガクリと倒れた。「……ゆきひろ…こんなところでお前は死ぬなよ………」
…そして目を閉じた…。
サイモンのHPが0…………。
―――サイモンが…、死んだ……。

246 :激闘!v.s.カンダタ戦!編3 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:25:30 ID:o1/pPq9qO
サイモンが死んだ…。
カンダタ「ま、まだやるか?」
敵も少し状況に困惑していた。
女武闘家エリー「あの体力馬鹿がこんなに簡単に……う…あああぁ!!!」
ぼくは攻撃にはいろうとしたエリーを止めた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「やめろ! うかつに飛び込むな、まだサイモンは大丈夫だ、ぼく達だけでカンダタを倒すしかない…。三人で連携してもちこたえて戦うんだ!」
そうは言ったものの長期戦になり、サイモンの死に動揺した今のぼくらに勝ち目はうすかった。
いつのまにか、雨が降りだしていた。
まるでサイモンへ捧ぐレクイエムのようにシトシトと降りそそぎ、そのうち稀にみる大雨――嵐へと変わった。
こんな非力なぼくが勇者なのか? 許されることじゃない。ぼくらはまだ負けるわけにはいかない…。バラモスを倒すために生まれた運命の血…。この血が敗北を許さないだろう。
どくん…。
血が逆流したかのように身体中が熱くなった。
女武闘家エリー「あっ!」
攻撃を防御されたエリーの鉄の爪が折れてしまった。
ナナのMPもきれてしまっていた。
もうぼくしかいないんだ。
バラモスへの道のりをとじるわけにはいかない。
ぼくはカンダタに向かっておたけびをあげて、剣をかまえ走りだした。

247 :激闘!v.s.カンダタ戦!編4 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:28:36 ID:o1/pPq9qO
例えばコンマ数秒のことが鈍く数十秒にも一分にも感じられるという死の直前におこるといわれる走馬燈のように、悲しいほどぼくの一撃はゆっくりとかわされ、カンダタにそのまま身体ごと吹き飛ばされた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ぼくは………」
女武闘家エリー「ゆきひろ!!!」
女僧侶ナナ「大丈夫ですかっ!?…」
二人が駆け寄ってきた…。こんなに頼りないぼくが勇者なんて。
カンダタ「…このまま帰れば生命まではとらないぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「か…帰れるわけがない、ぼくは勇者なんだ…だから…。必ずおまえを」
カンダタ「おめえは弱い。弱いヤツとは戦いたくない。出なおしてくるんだな……」
その時雷鳴が鳴り響いた―。
ぼくは弱い…。確かに非力だ。
ナナのような魔力もなければ、サイモンのような腕力も、エリーのような俊敏さもない。
ぼくにあるものはなんだ?
また雷鳴が鳴った。
雷が屋根を吹き飛ばし空が見えた。
この雷のように強くなれたなら―。
速くてそしてなによりも強い力―。
かみなり―雷。
雷だ…。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…カンダタ、勝負だ」

248 :激闘!v.s.カンダタ戦!編5 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:32:55 ID:o1/pPq9qO
ぼくは剣を天空にむけた。
それがどんなにおそろしいことか分かっていた。
女武闘家エリー「あんた! 何をやる気なの?!」
カンダタ「読めたぞ…。そんなことをしたら死ぬのがわからないのか」
どくん…。
血が逆流する。不死鳥ラーミア。精霊ルビス。ぼくに力を。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「勇者の名において命令する―。雷よ我に力を与えよ―。―雷よ!!!」
雷鳴が鳴った―。
剣を伝いぼくは雷に貫かれた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「………ら、ライデインだ。―これがライデイン…。カンダタをも貫け!」
カンダタに向かってぼくはまた駆け出した。これが最後の力―。
ぼくはカンダタに剣を突き刺したまま、カンダタを逃がさないようにするために自らをもまきこむように呪文を唱えた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ライデイン!!!!!」
稲妻はカンダタとぼくを直撃した。
『カンダタを倒した。』
これでよかったんだ…。
ぼくの残りのHPは1。紙一重だった。
そしてぼくも倒れた……。
女武闘家エリー「ゆきひろ!」
倒れて意識を失うまでによくエリーの声が聞こえた。
エリー、ごめん…。

249 : ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:36:45 ID:o1/pPq9qO
久しぶりに続きを書きました
ぜひご一読ください
投下終わります

250 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 21:32:48 ID:iLI5NdD80
ゆきひろの、何も出来ない焦り、そして土壇場になっての捨て身の大逆転、緊迫しました。
カンダタも、なんだか根っからの悪人じゃないみたいですね。
#まあ、本編どおりだとしたら、性懲りもなく出てくるのですが・・・。

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 22:12:03 ID:yDKWVojqO
テリーが叫ぶだけで役立たずだなwww

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 22:11:12 ID:H6JLvFmS0
スレ宣伝のため浮上


253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 23:55:54 ID:Gfyz9MmA0
>>249
面白い!
勇者が超人でないとこがまたイイ

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 01:05:07 ID:XXjlhrCf0
すげぇ。
3年前にこのスレをはじめて立てた者ですが、まだ残っていたんですね…
頑張ってください。

255 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:19:03 ID:2kL+VFjy0
…………………。




…………。



……。



ん………んン?




痛い。頭がめちゃくちゃに痛い。意識は戻ったのだが目は開きたくない。
もうこのまま死ぬまで眠っていたい気分だ。

…………みっ……みず……。

そう、これは俗に言う二日酔いというやつだ。まあ一年中毎日ゲロゲロになるまで飲んでるから
今更なのだが今日はいつもに増して気持ち悪い。とりあえず水を……おおッ!?

ベッドから起き上がって俺は数秒間フリーズした。これは………どこだ!?
見慣れた小汚いせまっ苦しいボロアパートの一室ではない。確実にない。

きれいなシーツに洋風の家具、窓から覗く空は心なしか普段より澄んで見える。
俺は痛い頭を必死に回転させてある結論を導いた。


256 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:19:55 ID:2kL+VFjy0
……よし!逃げよう!

部屋から出て階段を下る。一目散に出口と思われる扉を目指す。
幸運な事にここの家主はいないみたいだ。おそらく俺は酔っ払ってどこか知らない家に上がりこんで
眠ってしまったに違いない。確実に不法侵入だ。サツはもう懲り懲りだ。

バタンッ!

…………おおおおッうッ!!!!

なんだこののどかな田舎町は!?一瞬強烈な違和感を覚えたがその理由はすぐにわかった。
電柱がない。アスファルトがない。車なんてもっての他だ。
さすがに泥酔して無意識に行動したにしてもこんな僻地まで来るもんだろうか。
俺のアル中も比較的末期のようだ。とりあえず家に帰らなくては。

ここがどこかまったく見当もつかないが探せば駅くらいはあるはずだ。
そこから電車で帰ろう。俺はとりあえず村の出口らしき所から外に出た。
その辺の人に道を聞いてもよかったのだが田舎町ってのは人の出入りがない分よそ者が目立つ。
俺があの変な家から出てくる所を目撃していた人がいるかも知れない。
ここは一刻も早く離れるべきだと俺の直感が伝えていた。

しかし出たはいいものも見渡す限り謎の大自然である。下手したら今日中には帰れないかも知れない。
トボトボ歩き出した目の前に何かが飛び出した。

青い寒天のような物体。寒天に目と口がついている。これは………かわいい……
こんな生き物は見たことがない。もしかしてツチノコとかそういう類か?それなら捕まえたら
金になるかもしれない。つーかかわいい。飼いたい。

頭を撫でようと近づいた。よしよし…………ガブリッ!!いてッ!!!

いきなり噛み付く青寒天。なんて凶暴な生き物だ!俺はすかさず蹴りで反撃した。
青寒天はプゲッと潰れてしまった。田舎の野生生物はなんて危険なのだろう。

257 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:20:39 ID:2kL+VFjy0
また草むらの影から何かが飛び出した。今度はもぐらだ。しかも生意気にもスコップまで持ってやがる。
やたら目つきが悪い。てめえこのヤロー俺にメンチきるなんて上等じゃねえかこのヤロー!
持っていたスコップを取り上げて思い切りブン殴ってやった。

ちくしょうなんてデンジャラスな所なんだ。いつの間にか日も落ちかけている。
もうここは素直に諦めてさっきの村へ戻ろう。事情を話せばサツに突き出される事もないだろう。多分。

そうして俺はまた村の入り口に戻ってきた。

しかしなんだここの人間は。みんなコスプレみたいな格好してやがる。どう考えても現代の日本とは思えない。
不気味な村だ。こうなってくるとあのボロアパートですら恋しくなるぜ。

とりあえず今日は木陰で寝て明日誰かに道を聞いて帰る事にしよう。
野宿なんて不本意だがこんな気持ち悪い連中の世話にはなりたくない。なんだかすげー疲れた。

木陰でウトウトしていると酔っ払ったおっさんが絡んできた。うぜえ。とりあえずブン殴ったら気絶した。
倒れる際に何枚かの硬貨を落とした。これは……見た所外国のお金のようだ。
迷惑料として貰っておくか。

しかしあんな酔っ払いがからんでくるような所じゃ熟睡できない。仕方なく別の場所を探しにまた歩き出した。

と、しょぼくれたジジイが話しかけてきた。なんだよさっきから酔っ払いとかジジイとかよ!
俺は一人が好きなんだよ!ほっといてくれよ!

無視して歩きだすと後ろをついてくる。ああああああうぜえええええええええ
立ち止まるとまた話しかけてきた。


258 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:21:17 ID:2kL+VFjy0
ジジイ「うーむ…見慣れぬその服装…先程の旅のお方かね?」

すかさず胸倉を掴む俺

俺「あーそうだよだったらなんだアぁ?中学から愛用の学校指定ジャージに文句でもあんのかアぁ?」

ジジイ「くっ苦しい…!やっ宿がお決まりでないのなら…我が教会に…ゴフッ!」

宿だと?手を離した。

ジジイ「はぁ…はぁ…その身なりじゃ持ち合わせもないじゃろうて…」

なるほどなるほどつまりこんな時間にみすぼらしい格好でウロウロしてる旅人なんてどうせ金なくて
ホテルなんぞ泊まれないだろうからうちに泊まりに来いって事か。ふざけんな!
確かにボロジャージだがてめえらみてえなコスプレよりはまだ人として正しいぞボケ!
再度捕まりかかろうとする

ジジイ「こすぷれ?なんじゃそれは?とにかくここは寒かろうてうちの来なさい。」

手を止めて考える。確かに野宿は辛い。ここはいっちょこのジジイの世話になるかな。
警察に突き出すって訳でも無さそうだしな。

俺はジジイの後について行く事にした。着いたのは何て事無い今朝いたわりと大きな建物だった。
聞くと所によるとここは教会らしい。ジジイは神父だとさ。
神父…日本ではあまり聞かない。こちとら仏教だ。奈良の大仏なめんな。
まてまてという事はここはもしかして外国!?明らかに違う風貌の村、人、空気。可能性は十分に有り得る。

急過ぎる展開にまた頭痛が。とりあえず寝よう。これは悪い夢だ。そうに違いない。
目が覚めるとまたいつ死んでもいいようなくだらない毎日が始まるんだきっとそうだ。

部屋に案内されるとジジイを無視して俺はベッドに転がりこんだ。そしてすぐに死んだように寝てしまった。

259 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:22:26 ID:2kL+VFjy0
ー次の日ー


朝。目が覚めた。一瞬戸惑ったが昨日の出来事を振り返る。
そもそも俺はなんでこんなおそらく日本では無い謎の場所に来てしまったのだろうか。
頭痛も収まった事だし冷静に振り返ってみよう。

記憶を辿る。たしか俺はいつも通り家で朝から酒を飲んでいた。
そして誰かに呼ばれたような気がしてベランダに出た。
ここまではなんとか思い出した。そしてその後に…


……あ……俺、落ちたんだった………


そうだ落ちたんだ。景色が急速に変わってゆく映像が脳裏に再生される。


つまり。


俺は死んだんだ。そしてここは死後の世界って奴だ。
なんともまあ斬新な展開だ。俺のくだらない人生は終わってしまった。
どうせ朝から酒飲んでるような元ヤンのヒッキーなんて死んでも誰も何とも思わないだろう。
そもそも俺自身自分が死んだという事について何の感情も沸かない。

いやちょっと待てよ…ここは死後の世界だとするとだな
もうあの借金取りに嫌がらせされる事もないんだな?昔もめたヤクザや警察に追い掛け回される事もないんだな?
おいおい最高じゃねーか!ヒャッホゥ!!天国だ!例えそうじゃないとしてもあの地獄の日々に比べたら天国だ!!!

言い得て妙だが死んで生きる気力が沸いてきた。


260 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:26:30 ID:2kL+VFjy0
と、ここでジジイが入って来た。あ?よく休めたかだと?
ふざけんなこんな硬いベッドで休めるかボケ!もっといい部屋に泊めろボケ!と思ったのだが
よく考えたら俺の部屋の万年床と対してかわんねえし何よりも非常に気分がよかったので
まあなっと伝えておいた。飯を用意したから来いとの事だ。
まったくどこまでお人よしなんだこのジジイは。

テーブルの上に並ぶのは恐ろしく貧相な朝飯だった。
小さな屑野菜のスープにカチカチのパン。まあ食えるだけマシか。昨日から何も食ってねえしな。
一瞬で平らげた。その様子を見ていたジジイが足りないなら私の分も食えと言ってきた。
遠慮する事は無い、わしは味見しながら作ったのでもう腹一杯じゃとか言ってやがる。
本当か知らねーが老い先短いこんなジジイよりも俺が食った方が有意義だな。頂くか。

食い終わったあとジジイが自分語りを始めた。うん、まったく興味無い。
が、この世界の事が何もわからない以上ちょっと話は聞いとくべきかもしれない。
ここは教会で村の人のお布施や畑で農作物を作って生活しているようだ。
昔はそれで十分事足りたのだが最近になって夜な夜な村の畑に魔物が出て一切作業が出来ず生活が苦しいとの事だ。

魔物…ああ昨日の寒天やもぐらの事か。
何だか物凄く暴れたい。生前のうっとおしい事全部から脱出できたこの清清しさ。
大暴れしたい。急にそんな気分に駆られた。

俺「よし!その畑に案内しろ。俺が全部潰してやる。」

ジジイが危ないからやめろって言ってきた。
こいつ俺を誰だと思ってやがる。天下無双の暴走族、鬼浜爆走愚連隊の元総長だぞ?
あんな寒天やもぐらなんぞに負ける訳がねえ。

俺はジジイに畑の場所を無理矢理聞き出すと準備のために教会を後にした。

261 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:27:11 ID:2kL+VFjy0
喧嘩には準備が大事だ。いかに喧嘩負け無しの俺様とも言えどこの世界では初めてなので準備は大事だ。

何か武器が必要だなと村をうろついていると「武器屋」なる看板を発見した。
なんとまあ直球ストレートな店だ。……この世界では村中で武器を売っているのか。
この世界のアウトローっぷりに愕然とした。子供の教育によくないぞったくよ…

店の中に足を進めるとそこの店長がまた角突き覆面にパンツ一枚そいてマッチョと言うとんでもない奴だった。
俺は…もしかしてとんでもない世界に来てしまったのではないだろうか…

とりあえずメリケンサックと木刀は無いかと聞いてみる。

ねえよそんなもん。と切り返された。く…なんて態度だ客に向かって…
仕方がないので店を物色した結果この「ひのきのぼう」を買って釘バットを自作しようと思う。
ん?買って?……俺金持ってねーじゃん!仕方が無い…こいつぶちのめしてパクるか。しかしこの店長も中々の風貌。
決戦に備えて出来るだけ体力は温存したい。

何となくポケットに手を突っ込むと硬貨が手に当たる。ああそういや確か…
昨日酔っ払いからブン取ったお金らしきものをカウンターの上に並べた。

これで十分足りるらしい。むしろまだまだ買えるとの事なので
「かわのぼうし」「うろこのたて」を買った。完璧だ。負ける気がしねえ。

それもこれも全部あの酔っ払いのおかげだな。感謝せざるを得ない。また会った際には協力願おうと思う。


262 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:28:01 ID:2kL+VFjy0
太陽も高くなり腹も減ったので一旦教会に戻る事にしよう。っとその前にっと。
武器屋の周りの柵から釘を頂戴して釘バットを作成する。黙々と釘を埋め込む俺。
出来た。釘の間隔、絶妙な重量バランス。最高の一振りだ。さて帰るか。

教会に戻ると数人の人が長いすに座っていた。ジジイは一応神父なので悩み事相談みたいな事もしているようだ。
こんな辛気臭い教会に相談に来るなんてほんとにくだらない連中だな。
どこの世界にも負け組みなんているって事だな。あーやだやだマジで関わりたくねえわ。

そうこうしてるとジジイがこっちに来た。昼飯だと言って小さなバスケットを渡された。
これは…肉!肉だ!うめえ!肉うめえ!村の人が持ってきてくれたものらしい。
体中に肉パワーが染み込んでいく。これならどんな相手でも勝てそうだ。

さて大満足の俺は決戦の夜まで寝る事にした。が、寝れない。外がカンカンカンカンうるせえ。
文句言いに外に出るとジジイが薪割りをしていた。明らかに斧の重量にジジイの腕力が負けている。

くそったれそんなんじゃいつまでたっても終わんねーじゃねーか俺は眠みいんだよ!
無言で斧を取り上げると片っ端から叩き割った。まったく無駄な体力を消費しちまったぜ。


ー夜ー

ジジイが寝たのを確認して畑に向かう。この糞野郎危ないからと言って教会から出そうとしなかったからだ。


263 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:29:04 ID:2kL+VFjy0
畑は村のはずれにあった。もはや畑と言うよりただの荒地だ。
そこにはいるわいるわこないだの寒天やもぐら、アホでかいミミズは角ウサギなどわんさか畑を荒らし回っている。
なんかあれだな。この光景は公園とかコンビニの駐車場でバカ騒ぎしてた昔の自分とちょっとかぶって見える。
そう思うと微笑ましくもある。いやいやそうじゃなかった俺はこいつらをブチのめしに来たんだった。

相手の数が多い時は先手必勝!奇襲をかけて撹乱しその隙に一気に数を減らす。
族時代は1対100でも勝った俺にとってはこのくらいの人数差なんて屁でもねえ。いくぜ!!!

畑の中心まで突っ込んでくと先制パンチとばかりに寒天を数匹潰した。開き直ってもぐらに蹴りを入れる。
薄ら笑いのコウモリを盾で叩き落したのち踏みつける。順調だ。このペースでいけば楽しょ…おおおッ!!!

角うさぎが猛突進をかけてきた。咄嗟に盾を構えるがその上から体当たりされ吹き飛ばされ岩にぶつかる。
こいつ体は小さいがなかなかのパワー持ってやがる。原付並みの馬力だ。
立ち上がり構える俺に向かって再度突撃してくるウサギ野郎。ギリギリの所を横っ飛びでかわした。

ゴベブッ!!という嫌な衝突音と共に角ウサギは岩に衝突して動かなくなった。

所詮獣か。相手がバカで助かったぜ。
残りの雑魚を蹴散らしてゆく。ははは俺に敵うやつなどいねえ!ああ神様強過ぎてごめんなさい…

ノリのノって大暴れする俺は背後に近づく脅威に気付いていなかった。


???「人間風情が随分とオイタしてくれんのぅ小僧が…」

264 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:30:09 ID:2kL+VFjy0
ドスのきいた声に振り返る。そこにはえらくガタイのいい猪が凄まじい殺気を放ってこっちを睨んでいる。
猪のくせに喋りやがって…なんて迫力だ…

???「魔物に立てついてタダで帰れると思うなよ…グハハハ…」

ヤクザだ。こいつは昔愛人のちょっかい出して追い掛け回されたヤクザにそっくりだ。
ふんヤクザごときに俺が殺れるか!返り討ちにしてやる!

…返り討ち

…返り…う…ち…





太い。


腕が太い。


首が太い。


おまけにヤリなんて構えてやがる。これは相当なバケモノだ。だがしかし引くわけにはいかない。
喧嘩上等タイマン負け無しの俺だ。一度終わった命もう恐れる事など何もねえ!

とにかく自分より強い相手に萎縮したらそこで終わりだ。俺の親父の教えだ。
先手必勝!いくぞコラァ!!!!!特攻あるのみ!!!!!
俺は勢いよくヤクザ猪に向かって走り出すと固く握り締めたひのきバットを振りかぶり…


265 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:32:12 ID:2kL+VFjy0
投げた。

相手の視線は宙を舞うひのきバットに釘付けになる。

ブシューっ!!!

その一瞬の隙をついて隠し持っていたナイフを喉に突き立てた。

このナイフは元の世界から常に携帯している護身用のナイフだ。ナイフの一本くらい常に持っているのが
暴走族としての嗜みってもんだろう。

動脈をスッパリやられたヤクザ猪はその場に崩れ落ちた。



勝った。俺は勝った。
意外な強敵の出現で思わぬ苦戦をしたが何とか勝つ事ができた。
緊張が安堵に変わる。全身の力が抜けた。というか力が入らかった。
この程度で腰を抜かすとは俺もまだまだだなっふっ…

体が熱い。返り血に染まった自分の体を眺める…


266 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:34:20 ID:2kL+VFjy0
……え……

一瞬目を疑った。そこにはヤリが深々と突き刺さっている。思わず声をあげる。
が、出ない。代わりに口からはおびただしい量の血が噴出す。
そうか俺はまた死ぬのか。今度目が覚めたらそこにはどんな世界が広がってるのだろうか。
こんな俺の姿を見てジジイはどう思うだろうか。

今まで生死の淵を彷徨った事は二度ある。いやここに来た経緯を入れると三度か。
一度はガキの時に肺炎をこじらせて死に掛けた。あの時は両親そろって心配してくれてたっけ。
二度目は単車で事故った時。すでにその時親父しかいなかったが俺の意識が戻るまで三日間絶食してたらしい。

激しくどうでもいい話だ。なんで俺はこんな事考えてるのだろうか。不思議と安らかな気持ちだ。
段々と意識が遠のいていく。いよいよここまでだな…さよなら俺…







267 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:37:16 ID:2kL+VFjy0
お久しぶりです!
再度投下させていただきました他の職人さんの面白い話読んでると創作意欲が燃えまくりました
今度は完結まで絶対にいきます!
トリップも変更しました
まとめサイトの方見ていましたら前回のと今回を差し替えて欲しいです…
お手数かと思いますがよろしくお願いします

続きはまた今晩きます

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 10:48:58 ID:O8BqNw7b0
総長、途中変なツンデレみたいになってて良いなw
おかえりー、期待してます。

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 11:08:48 ID:9f97E4js0
おかえりなさいませ〜。
神父さん、いい人。総長さんもだんだん影響を受けているようで今後の展開が楽しみです。

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 12:00:45 ID:HhmoMgCw0
総長キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━!!!!
微妙にイイ奴のヤンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 16:34:40 ID:pr4s/pKG0
総長おかえり〜!!!
ずっと待ってました。
バラモス戦を今から楽しみにしてます。

無理はしなくていいので、自分のペースでぜひ続けてください!

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 20:36:40 ID:w4LI89Io0
目が覚めてDQの世界にいたら迷わずウィッチレディを狩りに行く

そしてうまく生け捕りにして・・・ 後はわかるな?

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 21:57:05 ID:7W1ay1ooO
総長キタ――――(゜∀゜)―――
おかえりなさい!嬉しくて書き込んだ。今から読む!

274 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 22:18:54 ID:QlFMyEbW0
総長さんキテタ(゚∀゚)
乙です

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/23(日) 01:07:41 ID:5ZECb2V50
tst

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 21:21:53 ID:Vgi15Z2K0
ほっしー

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 23:42:26 ID:jDdw7cD+0
ほすほす

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/27(木) 00:16:56 ID:zNOYc3qw0


279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/29(土) 00:53:53 ID:rpVjk5IZO
職人の数のわりに書き込み少ないね

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 10:29:24 ID:3ftunY9f0
やっぱ感想とか書いた方が職人さんのモチベーション上がるんかね

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 11:09:28 ID:q+t/YqeO0
年度末だしなぁ。色々忙しい時期なんだろうさ

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 22:20:04 ID:HBCAmV9M0
職人さん降臨まで守りまくるよ!

283 :Stage.13 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:11:34 ID:gv6sb5jB0
アルス「ちーっす。みなさんお久し〜。またまた時間たっちまったな」
タツミ「サンクスコールの前におさらいだね。ゲームサイドでは、僕はランシールに勇者試験を
   受けに行きました。ところがそこで同じく勇者(一級討伐士)のレイさんと試験が重なって
   制度を管轄してる世界退魔機構がアホなせいで競争することになっちゃったんだけど……」
アルス「退魔機構に黙って、こっそりレイと協定を組むことにしたんだよな。
   しかしレイは最初からお前に勝ちを譲る気だったハズだが、俺が画面で見てたら、
   お前、あいつに勝ちを譲って不合格になってなかったか?」
タツミ「ま、そのあたりはこれから本編で語りますので。それではサンクスコール!」

タツミ「>>42様、ショウ君いい人だよね。悪く言えなくなっちゃったなー」
アルス「あいつが来なきゃヤバかったよ。ったく、お前の家はどうなってるんだ」
タツミ「なに言ってんの、動物の死骸が届くなんて序の口なんだから、今度はもっとスマートに対応してよ」
アルス「じょ、序の口ってアンタ……」
タツミ「伯母さんヒステリー起こすたびに僕に八つ当たりするけど、他にはけ口ないから付き合ってあげて。
   たまにビールの缶とか飛んでくるから、ガラスや鏡を背中に避けないこと」
アルス「なんだそr」
タツミ「一條栄治のアホは金さえやっときゃ黙るから、都市銀から1万くらいずつ降ろして渡してやって。
   夏休みと冬休みに年齢詐称してバイトした分が信金の口座に30万くらい入ってるから、
   入り用の分だけ都市銀に移して使うこと。あのバカには間違っても信金の方の残高は教えるなよ、
   『なけなしのお金をなんとか工面して渡してる』って信じ込ませてるから」
アルス「あの、その」
タツミ「僕の机のひきだしに胃薬と抗鬱剤が入ってるので用法と用量を守って正しくお使いください。
   さーて、この後のプランニングはどうするか――」

アルス「………………………………>>43様、俺ちょっと頑張れそうにないかもしれません」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.13 勇者試験(後編)】
 ゲームサイド続編 [1]〜[14]

284 :Stage.13 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:15:03 ID:gv6sb5jB0
Prev >>29-40 (Game-Side Prev (マエスレ)>>344-352)
 ----------------- Game-Side -----------------

「薬草は持ちましたか? 毒消し草は? 聖水と満月草もちゃんとありますね?」
「いいですか、危なくなったら迷わず逃げるのですぞっ。絶対に無理はなりませんぞっ」
「っくぅ! 俺が付いて行ければいいんスけどッ、いいんスけどぉ……!」

 あのね、「はじめてのおつかい」じゃないんだからさぁ……。

「「「レイ殿(さん)、くれぐれもうちの勇者様をよろしくお願いします!!」」」
 深々〜と頭を下げる三人組に、
「ま……任せておきたまえ……ップククククク」
 レイさんは必死に笑いを堪えている。

 ――心配してくれるのはありがたいんだけどね。


 そんなこんなで僕とレイさんは、いよいよ試験会場にやってきた。
「ここが入り口らしいな」
 赤茶色の地肌がむき出しの荒野が、地平まで広がっている。そのど真ん中にぽっかりと
空いている空洞。妙に人工的に整った階段が地下へと続いている。
 建材に発光物が含まれているのか、中は地下全体がぼんやりと明るく、視界に不自由は
なかった。降りてすぐ、僕の背丈ほどあるドクロの像が左右に並ぶ通路が続いている。
 眼窩の奥が赤く光っている不気味な彫像を、レイさんが剣の先でつついた。
「まだ新しいな。わざわざ作ったのか?」
「やだね、このいかにも〜って雰囲気。ピラミッドでも感じたなー」
 侵入者を歓迎しない建造物ってのは、えてして随所に恐怖を煽ろうとする「あざとさ」
がある。それでなくとも僕が直接絡むイベントは異常に難易度が高い。また本来のシステ
ムを無視した難問を吹っかけられなければいいけれど。

「しかし、まさか君がこんなふざけた話を承知するとは思わなかったよ、青少年」
 先を歩くレイさんが振り返って言った。なにやら上機嫌だ。

285 :Stage.13 ?? ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:21:38 ID:gv6sb5jB0
あれ? 投下できない。

286 :Stage.13 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:24:03 ID:gv6sb5jB0

「青少年って……レイさんとあんまり変わらないと思うんだけど」
「ははは、一回りも年上なんだ、いいだろう」
 ということは28歳か。それでも世界に名を馳せる勇者としては十分若い。
「君のことだ、てっきり本部に食って掛かると思ったんだがね」
「騒いだって時間を食うだけでしょ。どうせ世の中なんていい加減なもんだし」
 僕がさらっと流すと、レイさんは首をかしげた。
「なんだか前に会った時とは別人のような気がするな」
「そんなに変わったかな」
「怒らないでくれよ? 以前の君は少々ギスギスしてて、人を寄せ付けない雰囲気があっ
たんだが、今は素直というか……かわいい、というのか……」
 かわいい、ねぇ。まあ妥当な評価だな。へたに「デキるヤツだ」と頼られたり警戒され
るより、多少あなどられるくらいが丁度いい。
「それに武器も。剣は使わないのかい?」
 僕の腰に差しているえものをレイさんは珍しそうに見ている。さっき武器屋で新調した
ばかりの物だ。基本的に戦闘は人任せな僕としては使う機会が無いことを祈りたいが、い
ざとなったら自分で身を守らないと、ってんでサミエルに見繕ってもらった。
「使い慣れてるわけじゃないけどね。僕、こういう軽いのじゃないと扱えないから」
 なにより刃物で斬ったり刺したりってのが、どうにもダメだ。その点でもこの武器は僕
の性に合っていると思う。
「まあ人それぞれだが。やはり君は変わったなぁ」

287 :Stage.13 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:26:03 ID:gv6sb5jB0

 ひとまず地下一階は問題なく進んだ。
 僕がさりげなく正解ルートに導いてるせいもあるけど、なにせレイさん、強すぎ。
 途中で二、三体のさまようよろいと出くわしたが、ひとりで瞬く間に倒してしまった。
金属の塊を剣でスッパスッパぶった斬っていくんだから、常軌を逸している。
 最近のサミエルも戦闘が人間離れしてきたと感じていたが、この世界の人たちは能力の
上昇具合が半端じゃない。外側からゲームとして接していた時は考えもしなかったけど、
こうして生で見る分には鳥山先生のDBかって迫力だ。
 しかも洞窟を入る前にさり気なく現在のレベルを聞いてみたら、30を超えたあたりから
面倒で数えていないとか言ってるし、もしかしてこの人、実は単独でバラモス打倒も余裕
なんじゃないだろうか。

288 :Stage.13 [3-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:03 ID:gv6sb5jB0

   ◇

 地下二階に降りると、だだっ広い空間に出た。画面上なら右上の方に正解ルートの下り
階段があるはずだけど、ここからじゃ遠くて見えない。
「たぶんこの方向だと思うけど」
 見当をつけて歩き出そうとした矢先。レイさんが低い声でつぶやいた。
「あのヨロイ共ばかりなら良かったんだが……やはり生身の魔物もいるか」

「グワゥ!!!」
 暗がりから突然ピンクの物体が飛び出してきた。キラーアンプ、蛍光ピンクの殺人ゴリ
ラという、こいつも別の意味で向こうじゃ考えられない生物だ。
 そいつが2、4、6……ちょっと待て、なんだこの数?
「散れ、用はないっ」
 地下室に爆発音が響き渡った。東の二代目のイオラが、押し寄せてきたピンクの群れを
牽制する。

289 :Stage.13 [3-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:54 ID:gv6sb5jB0
 だが魔物の群れは怯む気配もなく、さらに数を増して押し寄せてきた。地下室を埋め尽
くさんばかりのモンスター軍団。ピンクのゴリラの波間に、巨大な鹿型モンスター・マッ
ドオックスや、ピラミッドでも散々お世話になったマミーやら腐った死体やらも混ざって
大騒ぎだ。

 やはり来たか、ゲーム設定を大きく無視した局地的ハードモード!
 今回は「エンカウント率が黄金の爪所有時並」というイレギュラーらしい。

「仕方ない。君は下がっていたまえ」
 すうっと流れるように、レイさんは魔物の群れの中に踏み込んでいった。
 瞬間、黒い剣士を中心に殺戮の嵐が巻き起こった。血煙の中を舞う白刃に、迷いはかけ
らも見受けられない。
「グギャア!」
 モンスターの身体の一部が空中を飛んで、ドサリと僕の目の前に落ちてきた。斬られた
本体の方と目が合った瞬間、そいつは後ろから縦に半分にされて転がった。
 いやはや、本当に強いな。これなら僕に出番が回ってくることもなさそうだ。

290 :Stage.13 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:36:12 ID:gv6sb5jB0

「さて……と」
 僕の作戦はいつものことながら「ぼうぎょ」。
 いかに素早く戦線を離れ身の安全を計るかが重要だが、仲間から離れすぎると別の敵と
相対する危険があるため、「にげる」とは違う微妙な距離の取り方が難しい。防御も存外
と奥が深いのだよ。
 ほら、戦闘じゃ全然役に立たない分、せめて邪魔にならないようにしないとね。

 なんて気をつけてたつもりだったんだけど、いきなりバシっと肩のあたりに痺れるよう
な痛みが走った。
「――ッ なんだ?」
 ブーンという昆虫の羽音が近づいてきた。巨大なピンクの蜂が何匹も飛び回っている。
 げっ、ハンターフライだ。確かこいつは通常攻撃の他にもう一つ、ギラを持っている。
順当なルートでこの洞窟に挑んだのなら大したダメージではないはずだが、僕のレベルで
は十分な痛手だ。
「大丈夫か青少年?」
「平気、こっちは気にしないで」
 とは言ったものの、素早いコイツらから逃げ回るのは至難の業だ。
 仕方ない。

291 :Stage.13 [5-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:38:54 ID:gv6sb5jB0

 心は迷ったままだったが、僕の理性はその場で作戦を切り替えた。マントを後ろに払っ
て、新品の武器を引っ張り出す。
「たまには戦います、かっ!」
 ヒュンと空気を裂いて鎖状の刃がうねり、攻撃してきたハンターフライが逆に吹っ飛ん
でいった。

 はがねのむち。
『勇者様は器用っスから、こういう特殊武器の方が合うと思うっスよ。っていうかコレし
かないっしょ! ほらぴったり! 似合う!』
 というサミエルのアドバイスを受けて(なにがそんなに似合うんだか気になったけど)
買ったものだ。今まで扱ったこともない武器をいきなり実戦投入するのは不安だったが、
さすが武器の専門家が見立ててくれただけあって、コイツは意外と思った通りに動いてく
れる。

 僕には一撃で仕留められるほどの腕力は無いが、当たれば痛いものは痛い。本能レベル
で襲って来ているモンスターたちを牽制するには十分だ。
 が。
「え、嘘?」

292 :Stage.13 [5-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:26 ID:gv6sb5jB0

 牽制のつもりで放った一撃が、一匹のハンターフライの片羽を根本から切り落とした。
 偶然だ。テロップでは『改心の一撃!』とか出ているんだろう。足下に墜落してきたピ
ンクの蜂は、狂ったようにその場で暴れている。
 これを放っておくのは……かえって可哀想だよね。とどめをさしてやるべきだ。
 僕は意を決してそいつを足で押さえつけ、聖なるナイフを握った。

 ――手が、動かない。


 耳元には別の敵の羽音が迫っている。
 羽音に混じって、いつもの悪夢がフラッシュバックする。
 刃物が肉を割く音と、飛び散る血と。
『あんたなんて――』




293 :Stage.13 [6-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:58 ID:gv6sb5jB0

 ズサリ、と目の前の蜂に大振りの剣が突き立てられた。
 同時に肩にトン…と重みがかかり、そこがふわあっと暖かくなった。いつの間にか傍ら
に来ていたレイさんが、僕の肩に手を当てている。今のは回復呪文? 
「無理しなくていい。さ、耳を塞いで」
 僕は咄嗟に両耳を手の平で押さえた。
 ドーン! ともの凄い音が轟き、先刻よりさらに激しい光と衝撃が周囲を席捲する。
 イオラのさらに上位呪文、イオナズンに違いない。こんな極大呪文まで溜めナシ詠唱ナ
シで発動できるって、どんだけ熟達してんだろう、この東の二代目は。

 ばしゃ、ばしゃ、と吹っ飛ばされた生物の部品が雨の様に降り注いできた。
 今度は耳じゃなくて口を塞いだ。
「減らないな……立ってくれ、どっちへ行けばいい?」



294 :Stage.13 [6-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:41:47 ID:gv6sb5jB0

 グイっと僕の腕を取って引き起こし、レイさんは微かに焦りをにじませた声で言った。
見ると、敵の数がほとんど減っていない。むしろ増えているみたいだ。
 あくまでここは「試験会場」のはず。このモンスターたちも神殿の管理者がなにかしら
の手段で呼び寄せたんだろうが、もう少し調整があってもいいんじゃないか? 本気で潰
しにかかってるようなこの状況は、どう考えてもおかしい。
「ま、まずあの昇り階段まで。昇らずにそこから北」
 僕は一番近い位置にある昇り階段(結構距離がある)の方を指して言った。あの階段は
ダミールートで、そこを起点に上、つまり北方向に進めば正解ルートの下り階段がある。
 簡単にそれだけを伝えると、レイさんは急にニンマリ笑った。
「緊急事態だ、大目に見てくれたまえ」
 いきなり僕を抱き寄せるように手を回して、
「え?」
 ひょいっと肩に担ぎ上げ――。

295 :Stage.13 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:43:07 ID:gv6sb5jB0

「ひゃあああ〜!?」
「腹に力を入れてないと息が詰まるよ」
 とか言われた途端、すんごいスピードで景色が動き出した。グンッとGがかかって本当
に息が詰まりかける。
 「はい退けて」「邪魔だよ」なんて、そこまで気合いが入ってるようにも聞こえないレ
イさんのかけ声とは裏腹に、進行方向に背中を向けている僕の眼前には、斬られた魔物が
死屍累々と横たわっているのが見えた。ちょ、なにこの人間ダンプ。
「ここから北だったね」
「は、はぇ?」
 気がついたらダミールートの階段に到着していた。

 止まることなく直角に折れてまた走り出すレイさん。背後からどたどたと追いかけてき
た人型モンスター・殺人鬼が斧を振り上げたが、
「レ、レイさん、さつじ……」
 僕が警戒を呼びかけるまでもなく、レイさんはクルッと一回転、次に見たときにはそい
つはあっさり返り討ちにされていた。筋肉質の胸のあたりがぱっくり裂けて、吹き出した
生暖かい液体がピシャリと僕の顔に跳ねた。
「――!」
 抑えろ! 死んでも抑え込まなきゃ!

296 :Stage.13 [8-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:51:42 ID:gv6sb5jB0

「目をつぶってなさい。君が血に弱いのはロダム殿から聞いている」
 一瞬、吐き気も忘れた。
 ロダムから聞いてる?

   ◇

 地下三階への下り階段へ飛び込んだところで、追撃はぴたりとやんだ。魔物にもそれぞ
れの持ち場があるのか。こうなってみるとあれも試験のうちだったのかもしれない。
 先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった地下室に、レイさんの吐息だけが聞こえ
る。さすがの勇者様も少し息が荒い。少しで済んでるのがすごいけど。

「あの……そろそろ降ろしてくれます?」
 やっぱり軽々と地面に降ろされた。よろけた僕をレイさんはすかさず支えてくれた。
「具合が悪そうだったからね。でもよけい酔わせてしまったかな?」
 首だけ振って答える。ここはお礼を言うべきなんだろうが――。
「聞いてたんだね。いつ?」
「君が武器屋に行っていた少しの間にね。旅を始めた頃よりひどくなっていると。ずいぶ
ん心配していたよ」

297 :Stage.13 [8-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:53:16 ID:gv6sb5jB0

 やだなぁ、さすが最年長。見抜かれてたのか。
「なにか血に関してトラウマがあるのかい?」
 レイさんの問う声は軽い。まるで大したことじゃないとでも言うように。本当なら、仮
にも勇者の名を背負っている人間に対して、怒鳴りつけてしかるべきだ。

 どうしてだろう、この世界で僕が深く関わる人たちは、みんな怖いくらい優しい。
 まるで僕の理想が反映されてるみたいに。

「ごめん、今は話せない。口に出すのはちょっとまずいんだよね」
 さっきから過去のつらい感覚が戻りそうになっていて、僕の理性が必死に抑え込んでい
る。街中ならともかく、こんなダンジョンの奥で発作を起こしたら迷惑もいいところだ。
 レイさんは困ったように下を向いた。言葉を探しているようだ。
 話せない理由については、ちゃんと教えないといけないか――。

298 :Stage.13 [9-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:54:57 ID:gv6sb5jB0

「なんていうか……僕は人より記憶力がいいんだ。知識面だけじゃなくて、その時に見た
映像や音、感じたこととかを丸ごと覚えていて、頭の中にそっくり呼び出せる」
「そりゃすごいな」
 レイさんは感心したようにうなずいた。
「でも弊害もあるんだ。今この瞬間に感じてる現実の体感よりも、脳内で再生された疑似
体感の方が勝ってしまえば、僕自身はもう、自分が今どこにいるのかさえわからなくなる
ほどその『記憶』の中に引きずりこまれてしまうんだよ」
 視覚も聴覚も嗅覚も触覚も、あらゆる感覚を処理しているのはあくまで脳だ。その全て
の記憶が忠実に再生されれば、今『それ』を体感しているのと同じことになる。
「そして感情もね。たとえばその当時は本当に死にたいくらい悲しかったとしても、何年
もあとに思い出したら薄れてるものだろう? でも僕の場合は……」
「その場で自殺しそうなくらいの悲しみが、同じ程度で戻ってきてしまう、ってこと?」
「うん。レイさん、理解が早くて助かるよ」

299 :Stage.13 [9-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:56:12 ID:gv6sb5jB0

 それでも、ただ頭の中で思い出すだけならまだ抑制がきく。
 しかし口に出して語るというのは、まず頭の中で言うことをまとめ、音声で形にし、自
分の耳で聞くことでまた脳に還元されるという、三段階で記憶を鮮明にする行為だ。それ
だけですぐに意識が飛ぶってことはないけど、どうしたって感覚がおかしくなるから極力
避けたい。
 ユリコやカズヒロに何度か過去を聞かれたこともあるけど、それが嫌でそのたびに誤魔
化していたものだ。
 別に生まれた時から付き合ってる症状だから対処法もよくわかってるし、日常生活には
そんな支障もなかったんだけどね。うかつに思い出話ができないくらいで。
 でもこの世界に来てガラッと環境が変わって、刺激の強いことも多くて……。



300 :Stage.13 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:57:56 ID:gv6sb5jB0

「血に弱いとしか聞いてなかったが、仲間にはそこまで話してないのかい?」
 他人のパーティーを心配するレイさんの優しい言葉に、僕は苦笑を返した。
「言えばみんな気にしすぎて、必要以上に制約を設けてしまうからね」 
 それでなくとも最近、みんな戦闘ではなるべく流血沙汰を少なくしようと気を遣ってく
れてるみたいだし。今後イベントのたびに「これは勇者様には刺激が強すぎるのでは?」
なんて協議されるわけにもいかない。

「なるほどなぁ……。仲間に隠し事をするのは感心しないが。冷静に判断した上で黙って
るならいいんじゃないかな」
 レイさんはにっこり笑うと、僕の頭をぽんぽんと叩いた。なんか完全に子供扱いされて
る? 仕方ないけど。

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