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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

401 :王冠を奪い返せ2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:06:49 ID:uW0kET350
しばらく昇ると妙な三人組みがいた。向こうは俺の顔を見るなり顔色が変わる。

あ!こいつらこないだボコったやつらじゃん。そうかカンダタの手下だったのか。
三人で何か話し合っている。そして逃げた。俺も追って階段を昇る。

そこにはカンダタと思われるパンツに覆面&マントというとんでもない格好のやつがいた。
しかし手下が手下なら親分も親分だ。なんてファッションセンスだ。俺の戦闘意欲はマックスで失せた。

めんどくせーからとっとと終わらそう。
よくも子分をだの俺の名前は大盗賊カンダタだの言ってる間に近づいて一発脳天にてつのおのを見舞う。
ガキンッと金属音が響く。
こいつ覆面の下になんか仕込んでやがるな。カンダタは激怒した。

おまえには騎士道精神ってものがないのか外道!と言われる。盗賊が何言ってんだ…
そして子分にこいつは俺一人で片付けるから手を出すなと言った。アホだ。正真正銘のアホだ。

そこから俺とカンダタのタイマンが始まった。

お互い腕が上がらなくなるまで斧を振り回し、顔がボコボコになるまで殴りあった。


402 :王冠を奪い返せ3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:07:35 ID:uW0kET350
最後に立ってたのは俺だった。

カンダタは観念したのか煮るなりやくなり好きにしろと言う。俺は「きんのかんむり」を取り返した。
もうここには用はない。足早に塔を出た。入り口付近に差し掛かった所でカンダタらしき悲鳴が聞こえる。
無視してよかったのだが何となく見に行ってみた。カンダタがデカ蛙数匹に囲まれている。
手下は気絶している。…弱い…なんて弱い盗賊団なんだ…泣ける…さすがに同情を禁じえない。

適当に蛙を追っ払うとカンダタが涙目で抱きついてきた。
痛いって!そんな力入れるなっつの!俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はねーんだよ!離れろ!

カンダタは世界で一番蛙が苦手らしい。俺は命の恩人と崇められてしまった。なんだこの展開は。
だがしかし次にもっと驚く展開になる。カンダタが俺を子分にしろと聞かない。子分も同じく騒ぐ。
嫌だと言って塔を出たが後ろからゾロゾロついてくる。マジ勘弁してくれ…

そこで俺はこいつらを舎弟にする事にした。新鬼浜爆走愚連隊栄光の船出だ…栄光の…ぐぅ…
栄えある初代のメンバーがこいつらか…

子分は塔の警備役(というか足手まといなんでいらない)として置いていく事にする。
一応俺らは盗賊じゃなく族なんだと言う事を言い聞かせたがこいつらはバカだから理解してないだろう。
まあいい。とりあえず親分じゃなく総長と呼ばすのだけは徹底させよう。

403 :王冠を奪い返せ3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:08:05 ID:uW0kET350
来た道を戻る。もう日が沈みかけている。途中魔物も出たがカンダタが一人で暴れて片付けた。
なかなか使える野郎だ。頭は悪いが腕力だけはある。特攻隊長くらいにしてやってもいいかも知れない。
そうして城に戻った時にはすっかり夜も更けていた。


門番はカンダタを見て腰を抜かしていた。無視して進み王様の前に立つ。
王様にきんのかんむりを渡した。衛兵がカンダタを連行しようとするので止める。
王冠も戻ったしこいつを無罪にしてくれないかと頼んだ。大臣憤怒。
まわりがざわつき始める。もしこいつを引き渡すのを拒否すると俺も連行されるかもしれない。
しかし舎弟のために体を張るのは総長として当然の事だろう。俺はいざとなればこの国と戦争する決意をした。
そして王の重い口が開く。



いいよ。


一瞬時が止まった。



404 :王冠を奪い返せ5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:08:36 ID:uW0kET350
大臣が物凄い勢いで王様をまくし立てる。このバカ王なんてイカしたヤツだろう。最高だ。
じいさんはゲラゲラ笑ってる。次の一言がまたイカレた内容だった。

さあ!王冠を取り返した英雄をもてなす宴の準備をせい!


数時間後。

王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせで宴会が始まった。

カンダタは物凄いペースで酒を飲む。こいつ自分がしでかした事をわかってるのだろうか?
王様も王様でヘラヘラしながらこれまた凄いペースで飲み続ける。
大臣は呆れて物も言えないといった感じだ。

まあそんな事よりも俺はこの国の肉料理に感動した。甘辛く重厚でそれでいてしつこくない。
三人の豪快な食いっぷり、飲みっぷりに即発され兵士達も騒ぎ出し、明け方には全員床で寝ていた。


405 :王冠を奪い返せ6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:10:57 ID:uW0kET350
ひたすら飲まずに食っていた俺はこの光景を見て思った。
ああこの国は純粋にバカなんだと。そら王冠も盗まれるわ。
と、ここでじいさんが話しかけてきた。いきなり身の上話を始める。興味ねえどっかいけよジジイ。

だが話の内容は驚くべき内容だった。このじいさんと王様は昔一緒に冒険した仲らしい。
しかもその冒険というのも魔王討伐だというのだ。その時は多大な犠牲と共に魔王を封印できたらしい。
信じがたい話だが俺は妙に納得した。
あの王様の目はカタギの目じゃない。絶対に人を殺めた事のある目だ。



406 :パンツと呼ばないで7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:11:58 ID:uW0kET350
ー次の日ー

このバカ王はまたまたとんでもない事を言い出した。
は?自分も久々に旅がしたいから代わりに王にならないかだと?こいつラリッてんのか?
……目が笑ってない。本気だ。俺は旅の目的があるのでと断った。
バカ王はそれなら今度こそこのじいさんを連れて行けと言う。
俺はそれも断ろうとした。だがじいさんを連れてく事がカンダタ釈放の条件だと言いやがる。
なるほどさすがに監視役もいないまま犯罪者を野放しにできないというわけか。俺はしぶしぶ了承した。
こうして不本意ながら新鬼浜爆走愚連隊(以下略して鬼浜)に新たな構成員が増えた。
現メンバーは

総長:俺
特攻隊長:カンダタ
構成員:じいさん、子分A,B,C


……非常に頭の痛くなるメンバーだ…硬派にも武闘派にも程遠い…
俺はこの世界に来て初めて自分のやってる事が不安になった…だが今はもう前に進むしかない。
バカ王は報酬として10000Gもくれやがった。やはりバカだ。

407 :パンツと呼ばないで8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:12:38 ID:uW0kET350
その夜、記念すべき第一回鬼浜会議が開かれた。議題は次の目的地についてである。
俺的には早く勇者に会ってどんな輩か確かめたい。じいさんに勇者について何か知らないか聞いてみた。
知っていたのは勇者の故郷はアリアハンという町であるという事だけだった。
一方カンダタにも何か情報がないか聞いてみる。明日の朝は目玉焼きがいいそうだ。
こいつもう今後一切の発言権は無い。とにかく明日から勇者の足取りを順に追ってみようと思う。
今日はもう遅いので宿で一泊する事にした。

次の朝出発の挨拶をしにバカ王の所に行く。まだ王にならんかとか言ってやがる。しつけえ。
アリアハンへ行くと伝えると船をだしてくれるようだ。貸切で。VIP待遇じゃん。
バカ王もたまにはやるな。
そうして船に乗り込んだ一行はアリアハンを目指した。道中暇なのでじいさんに魔法を習う。
どうやら俺には「リアルにイメージする力」が足りないらしい。
じいさんは松明や焚き火ではなく、もっと攻撃的な炎を頭の中に思い描けと言う。

攻撃的な炎…

そういや昔抗争中の族にひとし君の単車のオイルタンクに穴開けられて、気づかずに乗って引火して
炎の塊になって爆走した事あったっけな。よく生きてたなあいつ。
そんな事をぼんやり考えながら俺は手のひらを構えメラッと叫んだ。

408 :パンツと呼ばないで9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:13:33 ID:uW0kET350
出た。

炎の塊が船のマストを直撃する。燃えるマスト。じいさん慌てて手から氷の塊を発射し消化する。
じいさんとカンダタと船長が物凄い勢いで詰め寄ってきた。船を沈める気かと叫んでいる。
しかし俺にはそんな声まったく届いてなかった。出来たのだ。俺にも魔法が使えたのだ。
そこから二日後アリアハンにつくまで俺はひたすら練習を重ねた。徐々に火の玉も大きくなる。
俺は天才かもしれない。自分で自分の才能が怖いぜ。
しかしじいさんはそのくらいの魔法ならガキの頃にもうできたわいと言ってきた。黙れ。目の上のタンコブが。

アリアハンに到着する。

なかなかきれいな町並みだ。じいさんは王様に挨拶に行った。
おまえも来いと言われたが堅苦しいのはいやなんで一人でぶらつく事にした。
カンダタは腹が減ったとうるさいので50ゴールド渡してどっかやった。

きれいな町並みだがシケた所だった。強い武器もない。きれいなねーちゃんもいない。典型的な田舎町だ。
こうなったら昼真っから酒でも飲んでやろうかいと酒場に入る。町の規模にしちゃかなり大きな酒場だ。
そこは酒場兼人材派遣センターのような所らしい。冒険に出る人が有志を募れるシステムだ。
年齢や職業や性別を指定すると合致した人と出会える…え?これって出会い系サイトと同じじゃないか?
もしかして表向きは「冒険者の集まる酒場」だがほんとはただの出会い系酒場なんじゃないのか?

409 :パンツと呼ばないで9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:14:05 ID:uW0kET350
とりあえず俺も利用してみる事にする。

と、その時だ。奇抜なピエロの格好をしたかなり大柄な男に声を掛けられる。
どうやら仲間にして欲しいらしい。
腕には自信があるそうだが俺はこれ以上色モノが増えても敵わないので丁重にお断りした。
ジーッと見つめてくる。こっち見んな気持ち悪い。クソが。俺は仕方なく酒場を後にし城に向かった。

城に入り王の間まで行く。じいさんが王様と親しげに話している。しかしこのじいさん侮れない。
各国の王とここまで親しいじいさんは他にいるだろうか。食えないジジイだ。
その後王様と話し、勇者は北に向かったと聞く。北か。今出来ることは追う事だけだ。
この町にこれ以上いる必要もないと思い早速出発する。あっカンダタ忘れてた。
町中探し回ると結局さっきの酒場の中にいた。となりにはあのデカピエロがいる。
二人で酒を飲み意気投合しているようだ。バカ同士気が合うのだろう。

…嫌な予感がする…

案の定カンダタはこいつも連れてけと言う。じいさんはなぜかニヤニヤしている。
はいはい。もうわかりましたよ。好きにしてくれ。という事でまた一人舎弟が増えた。
見るからに怪しいピエロの大男。服装が服装だが相当なマッチョだ。
ん?この目どこかで見たことがあるような…いやいや俺にはこんな変態の知り合いはいないはずだ。

410 :パンツと呼ばないで11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:16:20 ID:uW0kET350
さて、町を出て北に向かう。振り返る。後ろにはヨボヨボじいさん、覆面パンツ男、ピエロの大男…
これから世界征服を狙う組織とはとても思えない。これは酷い。次はまともな舎弟を入れなくては…

しかし戦闘は楽になった。実際このピエロ男がバカ強い。大体の流れはこうだ。
まず敵を見つけるや否や俺、パンツ、ピエロが突撃して袋にする。それでも仕留め切れない場合、
後方からじいさんが炎なり何なりだしてTHE ENDだ。
魔物共も俺達の異様さとその強さに逃げ出す事も少なくない。
むしろ魔物の群れなんかより俺らの方が全然柄悪い。

特に強い魔物も出て来ず暇なので鬼浜軍事訓練を行いながら進む事にした。
軍事訓練と言っても要は俺がパンツ、ピエロとど突き合いながら進むのだ。
これがまたしんどい。この二人その辺の魔物より遥かに強い。
しかし俺も総長としてのプライドがあるため負けるわけにはいかない。
次の町に着いた時は三人とも血だらけのボコボコだった。
みんなやくそうをアホほど買って全身に塗りたくる。
その日は疲れたので宿で一泊した。



411 :出会いと別れ12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:17:52 ID:uW0kET350
ー次の日の朝ー

その辺の人曰く勇者は「いざないのどうくつ」なるとこに向かったらしい。
何か痕跡が掴めるかも知れないので、そこに向かう事にした。

今日はど突き合いではなくじいさんに魔法を習いながら歩く。なんとなくコツがわかってきた。

要はイメージなのだ。

炎が上手くイメージできるやつは炎系の呪文が得意だ、
氷を上手くイメージ出来るやつは氷系の呪文が得意なのだ。

何にせよ、「イメージ」と「確信」と「集中力」が大切なのだ。
俺はやはり天才なのかもしれない。そんな事を考えているうちに洞窟についた。

薄暗い陰気な感じの洞窟だ。
洞窟の中にもじいさんがいたが俺はもう年寄りはお腹一杯なので無視した。
いかにも怪しい爆弾によるだろう吹き飛んだ壁を抜けしばらく歩くと紫色の角うさぎが数匹でてきた。
どうせ雑魚だろうといつものように三人で突撃する。


412 :出会いと別れ13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:18:28 ID:uW0kET350
ラリホー

何故かそこからの記憶は無い。目が覚めるとじいさんが一人でゼーゼー言いながら汗だくで立っていた。
じいさんはキレ気味で初めての敵にはもっと慎重にだの何だの説教を始めたが無視した。
鬼浜には特攻あるのみだ。これだから年寄は嫌いだ。

洞窟を抜ける。妙に懐かしい感じが。とりあえず近くの町に…っておい!ここバカ王の城じゃん!
ピエロがここは無視して先に進もうとしきりに主張する。何故だ。まあいい。
俺ももうこの町に特に用は無いし先に進む事にした。

しかしこのまま北に行くと俺が初めてこの世界に来た町に着くな。ジジイは元気でやってるだろうか。
いやそんな事よりもあのバニーの姉ちゃんはまだあの格好で仕事してんのだろうか。
そう考えると足取りが軽くなる。軍事訓練にも気合が入るというものだ。
三人のボルテージも飛躍的に上がっていく。
町に着く頃には三人ともボロ雑巾のようだった。
このままいくと訓練中に死人が出てもおかしくないかもしれない。



413 :出会いと別れ14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:18:53 ID:uW0kET350
町の中に入る。いきなりガキとすれ違った。
ガキはヤンキー、パンツ、ピエロという三人組を目の前にして固まった。
そりゃそうだろう。正直俺も怖い。まだ酒場は開いてないようなので教会に向かう。
ジジイに再会する。まだ生きててくれたのかと喜ぶジジイ。たりめーだろうが。
ジジイの話によるとこの町に三日前勇者が来たらしい。
なんて事だ。クソ入れ違いかよ…勇者はさらに北の村へ向かったそうだ。

が、その村は数週間前に魔王に滅ぼされた町だというのだ。
一応止めたが聞かずに行ってしまったらしい。
それならまだその辺にいるのかもしれない。これは追いつけるぞ!俺達は急遽そこに向かう事にした。


その村には半日程歩くとついた。


そしてそこで俺は自分の認識の甘さを思い知る。


414 :出会いと別れ15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:19:43 ID:uW0kET350
村。

いやもうそこはそう呼べないだろう。
民家は原型を留めていない。生々しい血の痕がそこらじゅうにある。

魔王はやはり魔王だった。生易しい相手ではなかった。ひとまず村を一周してみる。
普段は陽気なパンツもピエロも終始無言だった。
しかし気になるのは血痕の多さの割には死体が一つもない。

答えはすぐそこにあった。

そこには墓を掘る一人の少年の姿があった。

おそらく村に着いてからずっと掘り続けてたのだろう。
服は真っ黒で顔は疲弊しきっている。だが目は凄まじく澄んでいた。

それをみたパンツとピエロとじいさんが無言で墓堀を手伝う。
墓堀が終わった。少年がこちらに向かいありがとうと言う。

…え!?その声は少年ではなく少女のものだった。

415 :出会いと別れ16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:23:01 ID:uW0kET350
この子が勇者のようだ。




俺は全身ありえないくらいの脱力感に襲われた。屈強な大男との死闘を想像していたのだ。
俺がこんな女の子をぶん殴ったらそれこそ問題じゃないか。犯罪だ。こいつを倒す必然性は無くなった。
パンツが話しかける。じいさんも色々聞きたい事があるらしくこの子に駆け寄る。

話の内容は大体こうだ。
何故一人旅なのか。この子は先代勇者の娘らしい。
それで常に魔物に狙われるのでできるだけ他の人を危険に晒したくないと。
それで16歳になり先代が旅に出たと同じ年齢なったので旅に出たと。

俺は無性にむかついた。この世界のやつらはみんなそうだ。「勇者」という名にすがりたがる。
実際16歳のガキに一体何を望むのだ?魔王がムカつくなら自分で喧嘩売りにいけばいいじゃないか。
世間の理不尽さはどこの世界も変わらないようだ。と、その時、


416 :出会いと別れ17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:24:05 ID:uW0kET350
 カカカこれはこれはこれは勇者サマ!




突然背筋に寒気の走る声がする。振り返るとそこには腕が6本ある骸骨二体と覆面魔術師が立っていた。
この村を襲った残党だろうか。



コンナところで出くわスとハ! その首ヲ我が主への手土産にシましょうカ!




俺達は無言で武器を構える。しかし皆顔に余裕がない。それもそのはずだ。こいつら雰囲気がかなりヤバイ。
明らかに今までの敵とは次元が違う。

417 :出会いと別れ18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:24:52 ID:uW0kET350
均衡状態を撃ち破ったのはじいさんだった。じいさんの手から巨大な火の玉が発射される。
骸骨はそれをかわす。その瞬間残りの4人が飛び掛った。てつのおのにかなりの手ごたえがある。

やったか!?

残念ながらさほどダメージは与えられなかったようだ。逆にパンツとピエロが血を流している。
あの状況できれいにカウンターを決めやがった。こいつマジで強ええ。

じいさんが今度は強烈な氷の突風を放つ。これはかわしようが無く骸骨はその場でふんばり耐える。
このチャンスを逃すまいと俺は骸骨の脳天に全身全霊を込めて一撃を見舞った。
そこにパンツ、ピエロ、勇者と続く。骸骨の6本の剣が踊る。
俺は全身なます切りになりつつも骸骨に留めの一撃を決めた。

もう一体は!?

振り返るとじいさんが必死に杖で対抗している。が、体には深い斬り傷が刻み込まれていく。
骸骨が剣を振り上げじいさんの頭に狙いを定めた瞬間、パンツが後ろからはおい締めにした。
パンツGJ!
骸骨の剣がパンツに深々と突き刺さる。しかしじいさんの火炎球が至近距離で骸骨に直撃する。
骸骨は体半分吹き飛ぶ。

418 :出会いと別れ19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:25:31 ID:uW0kET350
勝った…


辛勝だ。なんとか退けた。鬼浜軍事訓練もあながち無駄ではなかったようだ。
しかしダメージがでかい。とくにパンツとじいさんの傷がひどい。ありったけの薬草を塗り込む。
ひとまず危機は去った。みんな安堵の表情を浮かべる。

…しかしそれはすぐに打ち消された。

そこには見たことも無い魔物の群れを引き連れ薄ら笑いを浮かべる魔術師がいた。




 増援。




 絶望。

419 :出会いと別れ20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:26:10 ID:uW0kET350
皆一応武器を構える。もう顔に覇気が無い。くそっ俺の野望はこんなとこで潰えるのか…。
誰もが諦めたその時、じいさんがおかしな事を言い出した。

俺の目を見て

いいか
魔法で一番大事なのは信じる心だ。
おぬしは絶対にわしをも越えるだろう。何か普通の人とは違う素質がある。自分の可能性を信じろ。


そして勇者に向かい

父は誰よりも強く、そして優しい立派な男だった。
その存在が重荷に感じることもあるだろうが自分の血筋に誇りを持ちなさい。

パンツにも

この世に意味の無い事などない。おぬしのその人並み外れた腕力にもな。
勇者とこれからも旅を続けなさい。さすれば自分の生きる意味を知るであろう。

420 :出会いと別れ21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:30:58 ID:uW0kET350
最後にピエロに

さらば我が戦友にして親友よ。一足先に向こうでまってるぞ。


と言ったと思うと魔物の群れに向かって駆け出した。













メガンテ

421 :出会いと別れ22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:31:28 ID:uW0kET350

















数十秒だったのだろうか。数時間だったのだろうか。
一瞬とも悠久ともとれる時の後、そこには何もなかった。
あるべきはずのものは何もなかった。

422 :出会いと別れ23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:32:03 ID:uW0kET350
パンツは大声を上げて泣いている。ピエロは恐い顔をして考え込んでいるようだ。
勇者は涙ぐみ俯いている。パンツと勇者は口々に魔王軍絶対許さないと言う。





違う。



悪いのは魔王軍ではない。

俺だ。

俺が弱いから悪いのだ。結局これは弱肉強食の潰し合いなのだ。
この村の人も、じいさんも相手より強ければ死ぬ事はなかった。俺は自分の弱さが許せなかった。
何が鬼浜だ。何が世界征服だ。自分の舎弟の命すら守れなくて何が総長だ。
これは相手からの強烈な宣戦布告だと受け取った。俺は売られた喧嘩は必ず買う男だ。
魔王…絶対原型わからなくなるまでぶん殴ってやる。顔面ボコボコに凹ましてやる。

423 :出会いと別れ24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:32:58 ID:uW0kET350
あああああああああぁぁあああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!

 









突然俺は叫んだ。頭の血管ブチ切れるくらい腹の底から叫んだ。
パンツと勇者はビクッとなりこっちを見る。俺は空に向かってさらに叫んだ。




新鬼浜爆走愚連隊総隊長、魔王のとこまでブッこんでくんで夜露死苦!!!!!!!!


424 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 21:26:26 ID:UJ1UrJ1P0
規制かかった?
一応支援・・・。

425 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 22:59:18 ID:rDRTR6FWO
じいさん…
こうなることは知ってたけど
切ないな…

続きが待ち切れなくて
つい保管庫読み返してしまうんだが
展開変わったりするのかな

426 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 00:24:48 ID:IOL/Osk60
>王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせ
なんだこの宴会wwwww腹筋痛いwwwwwwwwww
笑いながら読んでたらじいさんが…そんな…

427 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:31:00 ID:clzXnlXR0
>>425
大筋は変わんないよ!でもキャラの性格なり矛盾点を解消するために細かい所をいかなりいじってます
元々が今は昔の初代スレを埋めるために書いたものだったので長編になると色々問題が…w

では続き投下します

428 :私の名は勇者 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:32:11 ID:clzXnlXR0
その後、俺達は村の中央にじいさんの墓を作った。

そして村を離れ一旦ジジイのいる町まで戻る。
ジジイはじいさんが減ってる事に気づいたが俺らの表情から事を察し静かに十字をきった。
深夜鬼浜会議が開かれる。ピエロは気になる事があるので城へ帰ると言う。
今まで黙っててすまないが、実はお前らが立ち寄ったロマリアと言う国の王様だったんだと告白する。
 

…いやいやわざわざ告白せんでも未だに気づいてないヤツなんていねーよ…
そんなヤツは正真正銘本物の極限のバカだ…
隣でパンツが驚きの声を上げる。

………。



勇者はまた一人旅を続けるらしい。ちょっとまて。それは無茶だろ。
あいつらのバカ強さお前も身をもって実感しただろうがよ。一人とか死にたいのか?

俺はなんならお前も舎弟にならないかと誘う。勇者はキョトンとしている。

429 :私の名は勇者2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:33:02 ID:clzXnlXR0
いやだからな?俺は世界征服する為に鬼浜という族を結成しててだな…いや族っつてもわからんか…
世界を救うとかまったく興味無いんだが魔王は邪魔だからどっちにしろイワしとかなダメだし、
おまえも魔王潰したいなら一緒に来るかって事!わかるか?

必死に説明する俺。勇者はやっと意味が飲み込めたのか笑顔になる。
是非仲間にして下さい!と言った。

ここで明確にしておかなきゃいけない事がある。世間では勇者様様だがここで一番偉いのは俺だ。
俺の事は総長と呼ぶこと、勇者だか何だかしらんが俺の方が偉いことを説明する。
勇者はニコニコしながらよろしく総長さん!と答えた。ちっなんか調子狂うな…

その日、鬼浜会議は深夜まで続いた。ピエロ改めバカ王からいくつかの提案があった。
一つ目はラーミアの復活。
よくわからんがラーミアっつーのは簡単に言うとバカデカい鳥らしい。
なぜそんな鳥が必要かと言うと、魔王のいる城へは空路でしかいけないのだ。
昔じいさん達が攻めてった時もこの鳥を使ったと言っていた。
デカいってどんだけデカいんだよ…人を数人乗せれる鳥なんてまったく想像がつかない。

人を乗せて飛ぶ巨大な生き物…


430 :私の名は勇者3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:33:41 ID:clzXnlXR0
…モスラ。咄嗟に頭に思い浮かんだ。そうだきっとモスラに違いない。鳥とか言ってるけど
ほんとは蛾なんだろ。こいつはすげえ!モスラが復活したら魔王軍なんて目じゃねえ。
むしろちんけな城一つなんて簡単に壊滅させられるだろ!その後の世界征服も余裕だ!
これは非常に有益な情報だ。一気に俺の覇王への活路が開けた。
さあ復活だ。すぐ復活だ。どこにいるんだモスラは!さあ!どこに!

ちょっと総長さん興奮しすぎ!と勇者に諌められる。

ピエロの話によるとラーミアを復活させるには6つのオーブが必要だそうだ。
そのオーブはじいさん達が自分達で保管してたり元あった場所に安置したりで世界中にバラけてるらしい。

なんて事だ。

俺は大きな勘違いをしていた。まあ当然だ。モスラなんて現実離れした生き物がさすがにこの世界にも
いるわけが無い。オーブ…ボール…集める…集めたボールで復活…空を飛ぶ化け物…と言えば龍……三つの願い…
答えは一つに繋がった。どっちにしろ強力な味方に変わりは無い。

で、ひとつはロマリアにあるので取りに来いと言われた。


431 :私の名は勇者4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:34:12 ID:clzXnlXR0
二つ目は戦力強化。今のままでは絶対に魔王軍に勝てない。強力な武器や防具が必要だ。
じいさんは生涯掛けて究極の魔法を研究していたので、イシスという国にある実家を訪ねれば
何か手がかりがあるかもしれないとのことだ。究極の魔法か。覇王たる俺にピッタリの響きだ。
何の手がかりもないしとりあえずイシスを目指すか。




その日はそのままジジイの家に泊まった。

パンツのいびきがうるせえ。
洗濯バサミでマスクの上から鼻を摘んだ。


………………。


三分後。
息をしていない事に気づく。あわてて洗濯バサミをとった。危うく永眠させる所だった。


432 :私の名は勇者5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:37:24 ID:clzXnlXR0
ー次の日ー



朝食にはおなじみの野菜屑のスープが出た。それをたいらげると早速出発する事にした。

ロマリアに向かう道中勇者とピエロが勇者の親父の冒険について話していた。
ざっとまとめるとこういう事だ。


昔バラモスという輩が人間を滅ぼそうとした
当時16歳の勇者の親父はロマリアの王子(現ピエロ)世界でも有数の魔法使い(故じいさん)
それと「賢者」と呼ばれる何だか凄いヤツと旅に出て、長い冒険の末ついにバラモスを倒した。

世界に平和が訪れた。

そこから月日は流れ、現勇者が生まれた。誰しもがこの平和な日々に何の疑問も抱かなかった。
しかし危機は着々と迫っていた。魔物の活動がまた徐々に活発となる。
魔物は頻繁に「我が主」という言葉を口にする。
数年前、魔王の復活を直感した親父は単身旅に出た。そしてその後消息を絶つ。

433 :私の名は勇者6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:38:08 ID:clzXnlXR0
大体こんな感じだ。それでじいさんもバカ王も旅に出るチャンスを伺ってたらしい。
なるほど。そのバラモスて奴が実は生きていて今また力をつけて暴れてるのか。
倒すべき敵の名前も判明した。バラモス…首洗って待っとけよ…


そうして俺達はロマリアに到着した。黄色いオーブを受け取る。
バカ王は大臣に物凄い勢いで説教されていた。どうやら勝手に旅立ったらしい。
なんて無責任な王なんだ。国民の今後が心配だ。そもそも何でこいつは王になれたんだ。
そんな事考えつつも俺は武器屋に向かった。


あった。

前回は貧乏極まりない為買えなかったドラゴンキラー。今ならギリギリ買える。おい店長これくれ。



断られる。

434 :私の名は勇者7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:41:06 ID:clzXnlXR0
は?客寄せの為に一本だけ仕入れたモンだから実際に売る気はないだと!ふざけんな!!!

俺:ふざけんな!売れ!今すぐ売れ!
店:すみません無理です。
パ:売れ!あっしは大盗賊改め鬼浜の特隊カンダタでやんす!売れでやんす!
店:無理なもんは無理です。
勇:お願いします!私達の旅にどうしても必要なんです!
店:いいよ。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????



何故だ!?店長を問い詰める。店長は言う。だってかわいいんだもん。
その後俺とパンツに袋叩きにされたのは言うまでもない。
その後の商談により俺達は店側の好意で500ゴールドでドラゴンキラーを手に入れた。
うむ。なかなかよい買い物だ。

435 :私の名は勇者8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:41:50 ID:clzXnlXR0
こうして新しい相棒も手に入れ大満足の俺は一同東へ。目指すはイシスだ。
バカ王にオーブのついでに世界地図も貰った。
これで行き当たりばったりの冒険をする必要もなくなったようだ。
しかしこの勇者、筋肉ダルマのピエロ、火力抜群のじいさんの穴を埋めるのはキツイだろう。
ここからは苦しい旅になりそうだ。
気合を入れ直す。魔王にたどり着く前にくたばっちまうわけにはいかなからな。


取り越し苦労だった。


この女べらぼうに強い。

まず剣だ。筋力こそ欠けるものの抜群にスピードが速い。
俺は達人でも何でもないので素人じみた感想になるが、太刀筋が「活きて」いる。
おそらく血の滲むような努力とともに天性の才能もあるのだろう。
次に魔法。数種類の攻撃魔法を使いこなす。
だが何より驚いたのはこいつやくそうなのだ。やくそう魔法が使えるのだ。
ホイミ。それは優しい光と共に瞬時に傷を癒す。

436 :私の名は勇者9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:42:24 ID:clzXnlXR0
もうやくそう買わなくていいじゃん。いいなそれ。おし俺にもその魔法教えろ。
勇者曰く、この魔法は「怪我をする前の姿」をイメージし、
傷口に手をかざしその姿と今の姿を一致させる事によりそれを実現させるようだ。

簡単そうだ。試してみる。誰も怪我してないのでとりあえずパンツぶん殴る。

ホイミ。

メラの件もあるので少し控えめに言ってみた。当然の如く何も起こらない。
パンツはくすぐったいと笑っている。

…まあこれはボチボチ練習してくか。俺に使えない魔法なんてあるわけいいんだから。最強且つ至高の天才の俺様に。

その日は一日中歩いたがまだまだイシスは遠そうだ。野宿する事にする。
しかし…じいさんとピエロが抜けて少しはまともになるかと思えばそうでもなかった。
ヤンキー、パンツ、少女。違った意味でヤバイ。犯罪の臭いすらする。
俺の世界だと確実にポリに呼び止められ、職務質問くらうだろう。
断じて俺達はこの少女をさらったわけではない。

437 :私の名は勇者10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:43:01 ID:clzXnlXR0
更にその夜の鬼浜会議でとんでもない事が判明する。この女天然だ。清々しいまでの天然だ。
やべえ…このメンツヤバ過ぎる…

以下会議議事録。

俺:イシス遠いから途中アッサラームという町に寄ろうと思うがいいか?
パ:総長明日の朝はパンがいいでやんす。
勇:異議アリ。パンもう無いよ。野草摘んでスープ作ろうよ。
俺:いやだからアッサラームにだな…
パ:総長!パンを切らすのは緊急事態でやんす!キメラの翼で一旦戻りましょう!
勇:異議アリ!ここまできたのにもったいないよ!
  だいたいカンダタちゃんがつまみ食いするから、すぐなくなっちゃうんでしょ!!!
パ:異議アリ!違うあれは毒見でやんす!みんなのためを思ってこその…
勇:いいわけしないの!ちょっと総長さん黙ってないでなんか言ってよ!
俺:…………。


もうこいつらに意見を求めるのはやめよう。信じれるのは己だけだ。何なんだこの孤独感は。



438 :私の名は勇者11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:44:25 ID:clzXnlXR0
翌日俺達はアッサラームを目指す。パンツと勇者はまだ口論している。無視して先に進む。
途中パンツが地図を逆さに見ていて迷うというアクシデントもありつつアッサラームには三日後についた。

なかなか活気の溢れる町だ。
よく見ると俺の服ももうボロボロだ。この辺で新調したい。という事で店を探す。

あった。
店に入ると店主が話しかけてくる。妙に慣れなれしい。
あ?友達だと?おまえんか知らねーよどっかいけ。
どこの世界にもサイズ出しますよとか試着しますか的なうるせー!ゆっくり選ばせろ!てタイプの店員はいるようだ。
俺は真っ黒な動きやすそうな服を見つけた。なかなかいい感じだ。

おいこれくれよ。
え?38400ゴールド!?マジで!?…信じられない値段だった。
こいつニコニコしながらかなり悪どい野郎だ。俺をボろうとは舐めたやろうだ。

こんな店で買い物なんかするかいと店を去ろうとすると店主が友達だからまけると言ってくる。
友達だと…?そしてそこから交渉が始まった。


439 :私の名は勇者12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:47:07 ID:clzXnlXR0
結局俺の巧みな交渉術(途中何度か俺とパンツの鉄拳が飛んだ)
により「くろしょうぞく」は800ゴールドで買う事ができた。
ついでに「てつかぶと」を200ゴールドで、「マジカルスカート」を400ゴールドで買った。
パンツ、勇者に渡す。

鉄兜にパンツ一枚の大男、ミニスカの少女、やたら眼つきの悪い一見モジモジ君にも見える俺…
ひょっとして取り返しのつかない事をしてしまったのではないだろうか…

帰り際店主に頼むからもう来ないでくれと土下座されたがおそらくまた来るだろう。
なんたって友達だからな。

道具屋にも寄るがこいつもさっきのやつの親戚らしく
俺とパンツの交渉術により破格の値段で売ってくれた。

とても良心的な店が多い町だ。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな。
町の人の話によるとイシスはここから西の砂漠にあるようだ。水と食料を大量に買いこんでおこう。
その日は宿をとり、翌朝出発する事にした。一同歩き疲れたのか早々にベットに入る。

明け方鋭い空気を裂く音で目が覚める。窓の外を見ると勇者が必死に素振りしていた。

440 :私の名は勇者13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:48:30 ID:clzXnlXR0
この子は強い子だと思っていた。
一人で旅に出て、数多くの魔物を倒し人から尊敬を集める。
だが本当はプレッシャーに押し潰されそうになってたに違いない。そもそもたかだか16歳だ。
俺の世界の16歳なんてバカ女子高生の極みだ。
携帯いじり髪を染め顔にとんでもないペイントしてヘラヘラ遊びまわっている年頃だ。

俺が16の時なんて朝から晩まで道場で親父にしごかれ、
学校はほとんどさぼり深夜単車で走り回っていた。


何だか無性に体を動かしたくなった俺はそこからニワトリの鳴き声が聞こえるまで延々と筋トレをした。


441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:21:05 ID:NFLc9Ulc0
しえん

442 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:23:17 ID:kybxctfnO
支援

443 :砂漠の女王1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:29:35 ID:clzXnlXR0
……………………。あちい。

完全になめていた。砂漠。見渡す限り砂漠。歩けど歩けど砂漠。
灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐ。ほんとにこんな地獄の向こうに町などあるのだろうか?
俺達は砂の山を登ったり降りたりしながらひたすら西を目指した。
目の前に何匹かのカニがあらわれた。
涎を垂らし目は完全にイってちゃっている。カニの分際でラリってんのか?
俺は先頭きって切りかかった。只でさえ熱い。頭に完璧血が上っている。
ドラゴンキラーを手に入れてからというもの苦戦した記憶がない。
どうせこいつらも瞬殺だろう。


スクルト




スクルトスクルトスクルト

????

444 :砂漠の女王2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:30:23 ID:clzXnlXR0
カニの分際で何かしらの魔法を唱えやがった。
生意気な魚介類め。まあどっちにしろ俺のドラゴンキラーに敵は無い。
大きく振りかぶると腰を入れて目一杯突き込んだ。金属音と共に派手に弾かれる。
 
硬い。こいつら異常に硬い。なんじゃこりゃあ!!!!?????
カニ如きが俺の攻撃を…天下無敵総隊長の俺の攻撃を…

へこんでいる間に勇者が冷静に強烈な閃光で他のカニを焼き払った。
そっちも援護しよっか?とアイコンタクトを送る。

いらん。
これは俺とカニと男の意地を賭けたタイマンなんだ!
俺は狂ったように殴りまくった。カニはまったく涼しい顔をしている。
あっこいつ今笑いやがった!明らかに俺の事バカにしてやがる!甲殻類の分際で!
クレバーな俺は魔法に切り替える。くらえ!メラ!
多少効いたようだが火力が足りない。ちくしょうどうすればこいつを倒せる!?どうすれば!?


んメエエエェエエエラアアミィイイ!!!!!!!!!!


445 :砂漠の女王3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:30:54 ID:clzXnlXR0
極限状態の俺はとっさに叫んでいた。
じいさんの見よう見まねだ。俺の手からメラの数倍はある火の玉が飛び出す!
カニは一瞬にして灰になった。出来た。出来てしまった。
勇者はすごいすごい!と手を叩く。はっはっは当然だろうが俺を誰だと思ってやがる。


戦闘後、パンツがこのカニ食えそうだと言い出す。おいおい勘弁してくれよ…
俺と勇者は断固拒否したのでパンツはふてくされながら一人で食っていた。
ありえない。今後もできるだけ距離をおこう。ていうか何でコイツ舎弟にしたんだろ…
ちなみに味はうまかったらしい。

一日中あてどなく歩きついに陽が暮れた。
しかしビックリした。砂漠の夜はハンパなく寒いのである。
今日はもうここで寝る事にした。三人身を寄せ合い寒さを凌ぐ。こんな状況なのに勇者は楽しそうだ。
聞くと「仲間」がいる事が嬉しくて仕方がないらしい。
あっそうかこいつずっと一人で旅してたんだっけ。

急に表情が曇る。私のせいで魔物に狙われてみんなを危険にさらすのが怖いと言う。

446 :砂漠の女王4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:31:47 ID:clzXnlXR0
アホかこいつ。
俺は勇者を軽く小突く。
舎弟の分際でいらん心配するな。おまえ俺をなめてんのか?天下の鬼浜の総長様だぜ!
勇者は笑顔でありがとうと言った。これからもほんとによろしくねカンダタちゃん!総長ちゃん!

…このアマついに俺までちゃん付けしやがった…しかしこの笑顔を見てると何も言い返す気がなくなる。
ちっ…ほんと調子狂うぜ。


ー次の日ー

魔物を蹴散らしながらあいかわらず西を目指していた。遠くにぼんやりとだが町が見える。
みんなのテンションが一気に上がる。結局町に着いたのはその日の昼過ぎだった。

砂漠の町イシス。

俺達はじいさんの家を探すべく聞き込みをする。
ああ大魔導師様の家ですね。この路地のつき当たりですよ。

…大魔導師様!?あのじいさんが!?

447 :砂漠の女王5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:32:11 ID:clzXnlXR0
情報通り進むとそこには家があった。かなりデカイ。困った事に入り口には鍵がかかっている。
扉の前で考え込んでいるとパンツが不思議そうな顔で近づいてくる。

バキッ

錠前ごと引きちぎった。こいつには「鍵」という概念が無いようだ。
結果オーライて事で俺達は中に入る。

一部屋一部屋見て回るが特に変わったものはない。
一番奥の部屋に入る。ここが最後だ。 

うわっ汚ねえ。

そこには本だの巻物だのが散乱していて
よくわからない実験器具のようなものが部屋中を埋め尽くしていた。

何か手がかりになる物はないかと足元の本を拾ったその時、

おい!そこで何をしている!


448 :砂漠の女王6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:36:57 ID:clzXnlXR0
振り返ると数人の兵士がこっちを睨んでいる。何をしてると聞かれても返答に困る。

怪しいやつだ。さては魔導師様の研究を狙う賊だな?こっちに来い!

近くにいた勇者の手を引っ張る。連行する気だ。俺は反論した。

何だと!俺達のどこが怪しいと言うのだ!どこが怪し…どこが…怪…


明らかに怪しい。

思いっきり不法侵入だ。バカパンツが鍵ぶっ壊してるし。


結局俺達は城まで連行された。そして王の前に突き出される。
驚いた事に目の前にいたのは超絶美人の女王だった。
思わず見とれてしまう。
パンツなんて興奮しすぎてその場でスクワット始めやがった。周りの視線が痛い。
俺はこのままだと牢獄行きなので今までの経緯を必死に説明した。

449 :砂漠の女王7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:37:33 ID:clzXnlXR0
……じいさんの死はさすがに衝撃だったようだ。その場の空気が一気に重くなる。
そんな話信じられるかと言っていた側近も勇者の目を見るなり黙りこくった。
なんかこいつの目には人を信じさせる力があるんだよな。

勇者は続ける。
魔王を倒すためにはどうしても力が必要なこと。じいさんの家には何かヒントがあるかもしれないこと。

女王は口を開く。
…いいでしょう。魔導師様が命を賭けて守ったあなた方を信じましょう。
何か困った事があったらいつでも力になります。

わーお。顔だけでなく性格もいい女だ。惚れた。世界征服の暁には是非俺の女に…

ちょっと総長ちゃん何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いよ早くいこーよ!

そうして俺達は再びじいさん宅へ向かった。

450 :砂漠の女王8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:38:05 ID:clzXnlXR0
例の部屋に着く。
みなそれぞれ散乱する本やら巻物を調べていく。パンツはどっかに行ってしまった。
まああいつに本を読めという方が酷だろう。
正直俺もかなり眠い。勇者は何か見つけたらしく読みふけっていた。

数時間後。
夢の世界にいた俺の頭に一本の巻物が落ちてきた。いてーなコラ。燃やすぞ。
まさにメラを唱えようとしたその瞬間ひとつの単語が目に留まる。

「究極攻撃魔法」


…究極攻撃魔法!?



451 :砂漠の女王9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:39:32 ID:clzXnlXR0



 究極の破壊力を持った攻撃呪文。
 それは我々魔法に頼る者にとって生涯の研究課題であり夢である。
 現存する魔法で最高の破壊力を持つのはメガンテであろう。
 これは詠唱者の生命エネルギーを燃料にして
 大爆発を起こす呪文である。
 しかしこれではリスクが大きすぎると考えた古代の賢人達は
 生命エネルギーの代わりに
 精神力そのものを燃料に出来ないかと考えた。
 そうして完成したのがマダンテである。
 マダンテ。
 それは使い手の精神力すべてを一瞬にして
 増幅、圧縮開放してしまうのだ。 

452 :砂漠の女王10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:39:57 ID:clzXnlXR0
 威力が使い手の精神力に依存する事、
 「一瞬で精神力を開放する」ためには人並み外れた集中力が要る事、
 そして何よりその後しばらく一切の魔法が使えなくなる事。
 これは術使用者にとって致命的ではあるが、
 その威力はそれを補うには十分であろう。
 私の知る限りこの呪文を使いこなせた人間は一人しかいない。
 もしあなたがこの呪文を使いたいと願うのなら、
 日々の精神鍛錬を怠らない事だ。
 そして何よりも重要なのは呪文の反動に耐え得るだけの
 強靭な肉体が必要とされる。
 想像を絶する心身の修練の果てに習得が可能な
 まさに究極の呪文なのである………




453 :砂漠の女王11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:40:42 ID:clzXnlXR0
その後は修行の方法やら何やらが延々と書いてあった。
とりあえずこの巻物は貰っておこう。俺ほどの才能があれば使えるに違いない。
俺はその後も部屋を物色した。と、その時パンツが勢い良く部屋に入って来た。
両手には何かゴチャゴチャ何か抱えている。
暇だから他の部屋で使えそうな物を取ってきたというのだ。
さっき回った時はまったく気づかなかったのに。
こいつ頭は悪いがお宝を発見する事にかけては天才なのかもしれない。
飽きてきた俺はパンツと一緒にチェックを始めた。




とんでもないものを見つける。これ例のオーブじゃねーか!?
そうかじいさんもひとつ保管してたのか。あっさりと緑色のオーブを手に入れた。
だがしかし他はすべてガラクタだった。やはりパンツはパンツだった。

勇者は気に入った本が何冊かあったらしくいくつかの収穫を得て俺達はじいさんの家を後にした。


その夜も宿屋で鬼浜定例会議が開かれる。ここで初めて勇者がまともな意見を出した。

454 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/10(木) 21:41:33 ID:hyFJWYr+0
支援

455 :砂漠の女王12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:43:07 ID:clzXnlXR0
どうやら賢者に会いたいらしい。
賢者とは勇者の親父、バカ王、じいさんと共に魔王を倒したあの賢者だ。
じいさんの本によると魔王を倒した時賢者は約300歳らしい。
300歳!?どんなアグレッシブなジジイだよ。
きっと俺達の旅の助けになる何か知恵を授けてくれるんじゃないかと勇者は言う。
俺は個人的に300歳の人間というものが見てみたかったので次の目標は賢者に会う事になった。


ー次の日ー

俺の独断で出発する事を女王に挨拶がてら伝えに行く。相変わらず美人だ。
一応賢者について何か知らないか聞いてみた。

ここから遥か東に「ダーマの神殿」というとこがあってそこの神殿長がかなりの物知りらしい。
そいつなら何か知ってるんじゃないかという事だ。この美人が言うんだから間違いない。
俺は3秒で次の目的地を決めた。
もう砂漠は懲り懲りなので羽を使ってアッサラームまで戻る。
パンツはカニが惜しいのでもう一度砂漠に行こうと言う。
…こいつ砂漠に捨ててきたろか。
友達の店にも寄ろうと思ったが勇者が頼むからやめてくれと言うので即出発した。

456 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:44:26 ID:clzXnlXR0
本日はここまでです
途中の支援ありがとうございました!
マジで20行規制がひでえ…読みにくくてスマンorz

457 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:49:14 ID:2z2EpV6m0
>>456
ぅぅぅううううううううおおおおおっつううううううぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!
久し振りでも面白かったあ!

やっぱり総長いいなぁww

458 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 22:19:06 ID:M51LmnZZ0
パンツwwwww
あと、ひとし君が気になってしょうがないw

459 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 02:26:05 ID:u7fR3GkSO
ちょww友達ってwwwwwww

ひでえwwwww

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 12:47:02 ID:PX0ZH76S0
>>456
総長久しぶり
やっぱこの作品おもしれーわ
初代スレの埋めネタだったのが懐かしい

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 03:57:09 ID:e6KEdIPv0
久しぶりに来たら総長復活してる!?
応援してますんで頑張ってください!

462 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 20:03:05 ID:oS4LEGUgO
総長の話読んでると泣かされたり笑わされたり忙しいw

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 22:40:52 ID:3t6CORHCO
http://kjm.kir.jp/?p=179575

464 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:30:05 ID:fG/eVFU50
>>463
うおおおおおうめえw丁度物語の今頃はそんな感じですよ!
絵とかマジ感激!

では続きを投下します


465 :ダーマそしてイケメンへ… ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:31:46 ID:fG/eVFU50
ダーマにはここから東の洞窟を抜けてくらしい。一同洞窟を目指す。ここで魔物の群れが現れた。
むさい鎧野郎とキモいでかいイモムシ。そして空飛ぶ猫だ。この猫かわいい。もの凄くかわいい。
俺が猫に見とれてる間にパンツは鎧男と取っ組み合い、勇者はイモムシを焼き払っていた。
二人とも相手を仕留める。
二人の視線が俺に集まる。



駄目だ出来ない。俺にはこんな愛くるしい猫を斬る事など…

ザクッ

猫の爪が俺の顔にめり込む。痛い。ザクッ。痛い。ザクッ。痛い。ザクッいた…
まったく反撃しない俺をみてパンツは大声を上げて猫を脅かす。猫はビックリして逃げて行った。

戦闘後。
俺は勇者に叱られ列の一番後ろに並ばされた。なんなんだこの不当な扱いは。おれがボスなのに。

466 :ダーマそしてイケメンへ…2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:32:17 ID:fG/eVFU50
その後三日程歩きバハラタに到着した。ここは「くろこしょう」の名産地らしい。
今日は一日ここで休憩して明日の朝出発するか。
何気に武器屋を覗いてみる。なかなかいい品揃えだ。
道具袋の中を見ると2万ゴールド程貯まっていた。
どこの店も俺とパンツをみるとサービスしてくれるので、金は貯まる一方なのである。
ありがたい事だ。パンツがバカデカイはさみのような武器を持ってきた。
おいおいその格好にその武器は変質者のレベルじゃねーよ。俺はやめとけと言った。
しかしパンツは買ってくれるまでここを動かないなどとガキみたいな事言うので仕方なく買ってやった。
今後コイツとはマジでなるべく離れて歩こう。

俺と勇者は「まほうのたて」を買う事にした。
しかしさっきの出費もあるのに一つ2000ゴールドは高い。

おいこれ二つで2000ゴールドに負けてくれ。

店長はまさかそれはできないと言う。
が、後ろでパンツ一丁でおおばさみをジャキジャキ鳴らすパンツを見てひきつった顔で負けてくれた。
そして俺達が店を出るや否や鍵を閉め「本日はもう閉店しました」という張り紙を貼った。
せっかちな奴だ。

467 :ダーマそしてイケメンへ…3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:34:12 ID:fG/eVFU50
そうして街中をウロウロした後、夜になったので宿屋に向かった。
宿をとった後腹が減ったので酒場に向かう。そこで俺は運命的な出会いを果たす。

ここの肉料理はヤバイ。地肉とくろこしょうの絶妙なコンビネーション。
俺達三人は久しぶりの御馳走を堪能した。
パンツはこれは上質の牛肉だとかこの味加減は中々だせないとか知った風な口を聞きやがる。
モンスター食ってうまいとか言ってた奴がなに言っても説得力ねーよバカ。
結局最高の肉料理の魔力により町を出たのは二日後だった。

俺達は町人に言われた通り橋を渡り北上した。段々と山道になる。砂漠の次は山越えか。正直萎える。
前の方でパンツと勇者が何やら楽しそうに話ている。ちなみに俺はまだ最後尾のままだ。
そろそろいいんじゃないかと思い勇者に聞いてみた。

俺前行ってもいい?  

ダメ。  

わかった。  

確認しておくがここのボスは俺だ。

468 :ダーマそしてイケメンへ…4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:07 ID:fG/eVFU50
しかし後ろからだと二人の闘いっぷりがよく見える。
勇者の剣技は相変わらず冴えている。日に日に力強さが増しているようだ。

一方パンツは…いっつも隣にいたため気づかなかったがこの男計り知れない。行動が読めない。
まずムカついたのがせっかく買ってやった「おおばさみ」をほとんど使わない。
どんな敵にもボロボロのてつのおので殴りかかる。
本人曰く相手によって使いわけているらしい。おまえ明らかそんな頭脳派じゃないだろ。
やっと使ったかと思うとそれを両手で持ちそのまま殴りかかる。
その武器ってそうやって使うのか?それならてつのおのでいいんじゃないか?
おそらくこいつに拳銃渡そうが機関銃渡そうがそのまま殴りかかるであろう。
こいつはそういう男だ。そうこうしてるうちに俺達はダーマ神殿に着いた。


ダーマ神殿。

相当古い造りの神殿だ。中には冒険者と思われる奴らが結構いる。有名な神殿のようだ。
中に入り道並みに進むと祭壇があり上に人がいた。こいつが神殿長か。

469 :ダーマそしてイケメンへ…5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:49 ID:fG/eVFU50


まぶしい。



ハゲだ。バーコードだ。

どんな偉い神殿長か知らないがそのバーコードっぷりはもろに俺のツボにはまった。
まともに顔が見れない。


必死に冷静を装う。…ふう。もう大丈夫だ。よし。顔を上げる。が、次の瞬間


ぶほぉッぐへへへへへっうびゃっぱっ



パンツだ。このバカが…せっかく俺が精神を集中させて笑いという雑念を消したと言うのに…

470 :ダーマそしてイケメンへ…6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:36:32 ID:fG/eVFU50
パンツは腹を抱えて笑い転げている。お月様が!お月様が!とか言ってやがる。
俺も気持ちの糸がプッツりと切れた。神殿内を這いずり回って笑い転げる俺とパンツ。


そして数分後見事につまみ出された。ガッデム。
そしてさらに数十分後神殿から出てきた勇者に正座させられ俺達は延々と怒られた。


ここのボスは俺のはずだが最近は自信が無くなってきた。

勇者の話。
賢者は隠居してここからさらに山道を行った北の塔に住んでいる。また山道か。鬱だ。
山道と聞いてほんとは神殿で休憩して行きたかった所なのだが
あのハゲと目を合わせる自信が無いため仕方なく出発する。

パンツはまだ笑っている。…こいつ本気でこの山に捨ててったろか…とにかく俺達は出発した。


471 :ダーマそしてイケメンへ…7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:05 ID:fG/eVFU50
相変わらず後列で戦闘に参加させてもらえない俺は暇なのでこっそり「ホイミ」の練習をしていた。
俺にはこの呪文は向かないのか。
破壊的なイメージはすぐに湧くのだが「治癒」がどうしてもリアルにイメージ出来ない。
ちょうど前でパンツが勇者にホイミをかけてもらっている。
そういや昔ひとし君と喧嘩して刺されて入院した時看護士さんに包帯代えてもらったっけか。
そんな事ボーっと考えながらホイミっとつぶやく。一瞬だが青白い光が俺の掌から放たれた。

…わかった。
そうかコツは「病院」だ。そして俺はもっと重要な事に気づいた。所詮俺は余所者である。
魔法を使う際この世界のモノをイメージしてもうまくいかないのだ。
単車なり病院なり自分に身近だったものを強くイメージし、それを具現化する。
つまりのとこ「魔法」とはそういうものなのだ。

こんな事に気づいてしまう自分の才能が怖いぜ。
俺は自分の天才ぶりにニヤニヤしながら歩く。勇者が心配そうに近寄ってくる。
総長ちゃん大丈夫?どっか頭打った?ってどういう意味だよオイ!
おまえらの方がよっぽど人としておかしいから!

472 :ダーマそしてイケメンへ…8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:57 ID:fG/eVFU50
その後さすがに疲労の見える二人にかわりようやく先頭に復帰した。
久しぶりの出番に暴れまくる俺。
相棒のドラゴンキラーもすこぶる調子がいい。
デカ猿だろうがデカアリクイだろうが俺のドラゴン正拳突きの前に敵はいない。
圧倒的な強さで蹴散らして俺達は順調に塔を目指した。

そこからどれだけ歩いただだろうか。山道の上り下りを繰り返し遂に塔の前に立つ。


でけえ。


早速塔に入ろうとした。が、ドアが開かない

今回ばかりは相手がデカ過ぎてパンツの怪力も通用しない。

仕方ないので辺りを一周してみることにした。ちょうど入り口の反対側に一軒の家があった。
もしかしてここが賢者の家か?ドアをノックする。

出てきたのは300のジジイとはかけ離れた若い女の人だった。

473 :ダーマそしてイケメンへ…9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:38:30 ID:fG/eVFU50
女の目は固く閉じられている。とりあえず話かける。おいここは賢者の家か?女はコクリと頷く。
じゃあ話は早い。おい賢者に会わせてくれ。女はまたコクリと頷き家の中に手招きする。
おかしい。実におかしい。事が順調に運びすぎる。俺達の旅ではありえない展開だ。
絶対何か落とし穴があるに違いない。
まあ尻込みしてても仕方ないので入るか。

中は普通の民家と変わらない。と奥の部屋から一人の男が出てきた。イケメンだ。
青い目、整った顔、金髪のロンゲ、長身。…なぜか無性にムカつく。
俺は基本的にイケメンが大嫌いだ。

とりあえずガン付けつつ話かけた。

おい賢者に会わせろやイケメン君よーちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねーぞコラ。

イケメンはプッと吹いた。

あああ!!!??なんじゃ純日本人顔純日本人体型の俺がそんな面白いか!!?

明らかに見下されている。ここでなめられてはいけない。

474 :顔がいい奴が憎い10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:40:15 ID:fG/eVFU50
俺がまさに胸倉を掴もうとした瞬間みんなの視線に気づいた。
みんな揃ってイケメンを指さしている。
俺は5秒ほど考えた。そしてある一つの結論に至った。

…こいつが賢者なんすか?…

あり得ない。…絶対あり得ない。こいつが300歳とかあり得ねえ!!!!

一応確認する。
おいおまえが賢者なのか!?イケメンはニヤニヤしながら頷く。
こいつ賢者だか何だか知らないがムカツク…何だこの人を小馬鹿しにた態度は!?
勇者が駆け寄ってきイケメンに話かけた。

長くなりそうなんでテーブルを囲み茶でもシバキながら話す事になった。
そしてその話の中で俺は心臓止まるくらい驚いた。いやマジで。

まず何よりも一番ビビッた事。
このイケメンとうの昔に死んでるらしい。俗に言う「幽霊」というやつだ。
元々はすげー魔法使いで寿命を迎え死ぬ時にこの世界の神様(例の精霊ルビスと言う奴だ)
から精霊となり世界に危機が訪れる度にその危機を救うという使命を与えられたとの事だ。

475 :顔がいい奴が憎い11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:10 ID:fG/eVFU50
なんてスケールのでかい野郎だ。
だが前回の戦いで力の大部分を使い果たしたため今は魔力の込められたこの塔周辺でしか
自分を保てないらしい。幽霊も色々大変だな。
そしてこの女(よくみるとかなり美人。しかも年上。俺の好み180%超)はイケメンの娘だとのこと。 
といっても実の娘ではなく、前の戦争の孤児で賢者が引き取って育てたようだ。
魔物に襲われたショックで視力を失ったがイケメンとの修行で「心眼」を会得して
今では世界有数の「僧侶」らしい。やはりこの女も只者ではなかった。

その後もここに俺達が来ることは予言で知ってたとかごちゃごちゃ言ってた。
まあ俺はあんま真剣に聞いてなかった。はいはいイケが何か難しい事言ってますよ。

そして最後に一言。私はもうついて行けないのでかわりにうちの娘を……


!!!????


うちの娘を連れて行って欲しい。我が娘であり愛弟子だ。きっと役に立つ。

……つまりて事はこのきれいなねーちゃんも参加すんのかよ!?イケメングッジョブ!

476 :顔がいい奴が憎い12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:56 ID:fG/eVFU50
ようやく…ようやく鬼浜にまともな面子が追加されそうだ。しかも美人。やったぜ。




その夜はささやかな宴会が開かれた。
イケメンがつけたとかいうワインが出された。味はいいのだがやはりムカつく。
きまって顔がいい奴はワインに詳しかったりするんだよな。
ねーちゃんはわりと飲めるクチのようだ。勇者はヘラヘラしてる。
久しぶりのアルコールだ。がぶ飲みする俺。お約束通り意識が飛ぶ。


‐次の日‐

頭は痛いが爽やかな朝だ。
さて新メンバーも加わったとこで楽しく出発するか。俺はベットから降りて下に向かう。
もう勇者とねーちゃん旅の準備を済ませ待っていた。


じゃあ行ってくるね!総長ちゃんもカンダタちゃんも賢者様の言う事聞いてしっかり修行するんだよ!

477 :顔がいい奴が憎い13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:43:17 ID:fG/eVFU50
……???????
状況がまったく飲み込めない。あっ行っちまった。どういう事だ。
呆気にとられてる俺を見てイケが口を開いた。

…俺が酔いつぶれてる間に話は進んでたらしい…

まとめると
・勇者とねーちゃんは引き続きオーブを探す旅に出る。
・俺とパンツはここで修行する。

ということだ。ちょっと待て。何が悲しくて男三人で山篭りしなければいけないのだ。俺も後を追うぞ。
追いかけようとする俺にむかってイケがボソッと呟いた。…マダンテ。 マダンテ!?
このイケなんとマダンテが使えるらしい。
ちゃんと修行をこなせば俺にも使えるようにしてくれるという。俺は悩んだ。
やはり世界征服及び魔王をボコるために強力な魔法は必要だ。
俺ほどの才能があればすぐに覚えれるだろう。とっとと済ませて後を追うか。
ということで俺とパンツはここで修行する事にした。


そこから俺とパンツの苦悩の日々が始まるとはこの時は知る由も無かった。

478 :顔がいい奴が憎い14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:08 ID:fG/eVFU50
このイケ洒落になんねえ。もはや修行という名の拷問である。

朝:ひたすら走る。山道をどこまでも走る。手を抜くと炎や氷の塊が飛んでくる。危ねえ。死ぬ。
昼:ひたすら闘う。イケが連れてくるよくわかんない魔物と闘う。強い。
  負けたら死ぬから気をつけるようにと言われる。笑えねーよ。死ぬ。
夜:ひたすら寝る。死んだように寝る。


これの繰り返しだ。
本人曰く「健全な肉体には健全な精神が宿る」からまずは基礎体力から鍛えなきゃ駄目らしい。
俺は幾度と無く脱走を試みるがその度に捕まりボコボコにされた。こいつは絶対Sだ。極度のドSだ。
しかし珍しくパンツは文句一つ言わない。つらくないのかと聞いてみると飯がうまいから平気らしい。

なるほど。
おそらくこいつは魔王に最高級のステーキを食わせてやると言われたら簡単に寝返るだろう。



そうして一ヶ月ほど経っただろうか。
やっと次の段階に入る事になった。次の修行はようやく魔法の修行に入るようだ。

479 :顔がいい奴が憎い15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:43 ID:fG/eVFU50
そしてここからはスペシャルゲストも参加するらしい。
どうせこのクソイケだからろくな奴じゃないだろう。何がスペシャルだくたばれ。

嫌な予想程的中する。
スペシャルゲストとして紹介された…そこにいたのはピエロだった。
おまえまた城から脱走してきたのかよ…

しかしちょっと雰囲気が違う。
どうやら塔の魔力により一時的に若返ってるようだ。ガタイが半端ねえ。
こうしてここからは魔法はイケと、格闘はピエロと地獄の特訓が始まった。


とりあえずとにかくピエロ強え。
こいつの全盛期はこんなに強かったのか。組み合っても普通に力負けする。チクショウ。
わしに勝てないようじゃ魔王になんて簡単にひねり潰されるぞだと!?俺の負けず嫌い魂に火が着いた。
同じ人間だ。本気を出せば負けるはずがねえ!その日からさらに「俺メニュー」として
別のトレーニングも追加した。ピエロ如きに負けてるようじゃこの先どうしようもねえぜ。


480 :顔がいい奴が憎い16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:45:13 ID:fG/eVFU50
そしてイケ。こいつ笑えねえ。
よくわからん強力な呪文を連発してきやがる。危ないとかそんなレベルじゃない。

「実際にその呪文をくらって痛い思いをする事で覚える」のがこいつの教育のポリシーらしい。

いやいやその前に死ぬから…俺とパンツは毎日瀕死になりながら修行した。
後一歩で死ぬって絶妙のタイミングでイケメンが回復魔法をかける。生殺し状態だ。
徐々にだが俺の魔法のレパートリーも増えていった。



そしてさらに一月ほど経った。
正確な時間の経過はもう覚えていない。俺達は確実に強くなった。

パンツ。こいつヤバイ。もともとガタイよかったのだがここ二ヶ月でさらにでかくなった。
どのくらいヤバイかってもはや見た目人間か魔物かってわからんくらいヤバイ。
一人で町に入ったら町人総出で討伐されそうだ。
城とか絶対入れてくれなさそうだ。子供が見たら確実に泣き出すであろう。

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 23:46:09 ID:DBW87hHl0
支援

482 :顔がいい奴が憎い17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:23 ID:fG/eVFU50
そして俺。
俺も確実に一回りでかくなった。
イケメンが変な種を調合した薬とか飲ますせいで飛躍的に身体能力は向上した。
おそらくこっちの世界でいうステロイドみたいなもんだろうか。
副作用が心配だ。ちょっと聞いてみる。最悪死にはしないから問題無いらしい。

それって問題無いって言うのだろうか。もうあまり考えない事にしよう。


俺達は幾度と無く死に掛け(死んだおじいちゃんにこっちきちゃだめだって言われた:パンツ談)
最終試練に入る事になった。最終試練とは塔の中で行うようだ。

ずっと近くにあったのに一度も立ち入る事のなかった塔。
ついにその中に足を踏み入れる時がきたようだ。イケは最初に俺に中に入るように言った。

大きな扉の前に立つ。

扉は簡単に開いた。中は真っ暗だ。しばらく足を進める。後ろの扉が消えた。

もう前進するしかない。暗闇の中をズンズン進む。

483 :顔がいい奴が憎い18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:51 ID:fG/eVFU50
しかし真っ暗闇を長時間歩くと不思議なもので段々感覚が麻痺し出す。



どっちが前でどっちが後ろなのかわからなくなってくる。




さらに進む。




もう右も左もわからない。




さらにさらに進む。

484 :顔がいい奴が憎い19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:48:26 ID:fG/eVFU50
ここまでくると自分が上に向かってるのか下に向かってるのかすらわからない。
もの凄く広い部屋の真ん中にいる気もするが細い平均台の上を歩いている気もする。

だがパニックではなく何故か心は落ち着いている。俺はひたすら奥を目指した。




どのくらい進んだだろうか。



急に視界がひらける。見覚えのある村。魔物に荒らされ破壊された村。
俺はその村を空中から見下している。なんとも不思議な感覚だ。やがて数人の人間が入ってくる。

あれは………俺だ。
おれとピエロとじいさんとパンツだ。体中から嫌な汗が噴出す。

勇者と出会う。

485 :顔がいい奴が憎い20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:07 ID:fG/eVFU50
やめろ。

墓を掘る。

やめてくれ。

魔物と鉢合わせる。

もういいだろ。

俺達は命ギリギリで魔物を倒しそこへ増援が現れる。

絶望。

そしてじいさんの決断。

やめろおおぉおおお!!!!!!!!!!


しかし俺の声は届かない。激しい閃光と共にじいさんは魔物のと共に塵になった。

486 :顔がいい奴が憎い21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:44 ID:fG/eVFU50
その後何回、何十回、何百回とその場面がフラッシュバックする。気が狂いそうだ。

俺は自分の弱さを呪った。俺が、俺が強ければ。もっともっと強ければ。
この先旅を続けるとまた誰かが死ぬのかもしれない。それはそれで仕方ないだろう。
強い奴が生き残り弱い奴は死ぬのだ。当然の事だ。だが、だが俺は納得できない。
自分の舎弟が俺自身の弱さの為に死んでいくの事など納得できるはずがない。強くなりたい。
誰よりも圧倒的に強くなりたい。俺は心の底から力が欲しいと渇望した。

思えば俺の人生は「強さ」へのあてつけだった。親父は小さな工場の社長だった。
豪気な性格に腕っ節の強さ。けっして裕福とは言えないがそんな親父を慕って
従業員も集まり幸せに暮していた。

だが突然王手の企業がそこに大きな工場を建てたいと言い出し親父に立ち退けと言ってきた。
無論親父は断る。そこから執拗な嫌がらせが始まった。裏に手を回され受注は激減した。
雪ダルマ式に増える借金。従業員も一人、また一人と去って行く。おふくろは過労で倒れた。
そしてそのまま帰らぬ人となった。あろうことかあいつらは俺のチームにまで目を付けた。

「鬼浜爆走愚連隊という暴走族は薬の仲介をしている」

487 :顔がいい奴が憎い22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:52:50 ID:fG/eVFU50
事実無根のでっち上げだ。しかし世の中金というもので事実なんてどうにでも変えれるらしい。
俺は無実の罪で刑務所に入った。獄中に一通の手紙が来る。


親父が死んだ。


488 :顔がいい奴が憎い23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:54:43 ID:fG/eVFU50
「リュウジへ

 おまえが無実なのはみんな知っている。
 馬鹿で喧嘩っぱやくて暴れまわっていたが薬なんぞに手を染めるようなまねは絶対にしない子だ。
 俺が保障する。
 おまえが仲間を守るため一人で無実の罪を被り刑務所に入った事を父は誇りに思う。
 世の中汚い奴が多いがそんななかでもしっかりと自分の信念を貫いて欲しい。

 日頃命は粗末にするななんて言っておいておかしいかもしれないが
 おそらく私はもう長くない。最後に大きな花火を上げて一足先に母さんの所へ行く事にする。

 工場は閉める。借金の事は何の心配もしなくていい。
 刑務所には入っているが、出てきたら堂々と胸を張って歩きなさい。
 リュウジの人生に何一つ負い目を感じる所はないのだから。
 自分のやりたい事を見つけ、精一杯生きなさい。父は母さんと天国から見守ってるぞ。

                                       父より   」

489 :顔がいい奴が憎い24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:55:41 ID:fG/eVFU50
出所してから知ったのだが親父は自分の保険金で借金を返済した。
死因は原因不明の事故らしい。おそらく事故ではないだろう。
俺の工場兼実家はもう無くなっていた。その無くなったという事実が全てを物語っている。
そこにはただ馬鹿デカい無機質な工場があるだけだった。


そこからの俺の人生はひきこもり酒に溺れる毎日だった。
自分を責めた。身の危険を覚悟で交渉に行ったのかもしれない。
もしくは何かしらの弱みを握られて呼び出されたのかも知れない。一つ確実なのはその時に決死の覚悟で
この遺言ともとれる手紙を残した事だ。今となっては何が真実だろうとどうでもいい。
無気力でただ過ぎるだけの毎日を送った。いつ死んでもよかった。
………そして何の因果かこの世界に迷い込む。
俺はずっと考えていた。ベランダから落ちて何故あのまま死ねなかったのだろうか。
これはもしかして神様とやらがくれたチャンスなのではないだろうか。
結局この世界も元の世界と何も変わらない。
強い奴が弱い奴を喰いものにし、弱者は弱者で勇者にただひたすら救いを求める。

どっちも腐ってる。

490 :顔がいい奴が憎い25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:56:13 ID:fG/eVFU50
なら自分で理想の世界を創ればいい。魔王を潰し自分がこの世界の覇者になればいい。
もう誰も俺の「弱さ」のせいで死なせたりはしない。


急に視界が変わる。
見下していた自分の視点に戻ったようだ。
じいさんが魔物へ向かって駆け出そうとした瞬間、俺が遮り逆に魔物の前に立つ。
目を閉じ精神を極限まで集中させる。


魔物のが一斉に飛び掛かる。
時間が止まる。いや、微かに動いている。自分以外の感覚が全てスローモーションになったようだ。
やるべき事は分かっている。心に思い描くまま叫んだ。





マ    ダ     ン    テッッッ!!!!!!!!!!!!!!

491 :顔がいい奴が憎い26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:57:26 ID:fG/eVFU50
叫び声と共に強力な光が発生しそれは球体となり魔物の群れの中心で爆発した。







閃光で視界が無くなる…

 









492 :顔がいい奴が憎い27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:58:04 ID:fG/eVFU50
次に目を開けた時、そこはもうあの村ではなかった。
暗闇の中一冊の本がぼやけている。
俺は誘われるがままにその本を手にし、開いた。

ぼうっと扉が現れる。

開けるとそこにはイケメンとパンツが立っていた。



おめでとう。


イケメンがニヤニヤしながら手を叩く。こいつには言ってやりたい事が山ほどある。
なんなんだこの胸糞悪い塔は!俺は素でコイツをぶっ飛ばしたかった。イケが口を開く。


塔の中で何を見たのかは私にもわからない。
ただおまえは己の内面に触れた。答えを見つけるのは自分自身だ。

493 :顔がいい奴が憎い28 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:00:32 ID:fG/eVFU50
まったく何を言ってるのかわからない。意味不明だ。
ただ小難しい事をスカした顔で言ってかっこつけてるのはわかった。
これだからナルシストは嫌いだ。うぜえ。もう殴る気も失せた。

パンツが目をキラキラさせながら今度はあっしの番でげすねとか言ってやがる。
コイツはこの塔の恐ろしさを何一つ理解してない。
俺は軽く肩を叩き頑張れと一言だけ伝えた。パンツははいでやんすと意気揚々と塔に入って行った。





そしてその後塔から出てきたのは二日後だった。ちなみに俺は一週間だったらしい。

なんというかパンツの目付きが違う。
脱力しているようで、それでいて鋭く、隙が無い。全てを悟った顔をしている。
きっとこいつも塔の中で想像を絶する体験をしたのだろう。


494 :顔がいい奴が憎い29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:01:08 ID:fG/eVFU50
俺は初めてパンツに感心した。
こいつは普段チャランポランだが色々辛い経験をしてきたに違いない。
じゃなきゃ裸パンツ覆面盗賊なんてできない。常人の感覚ではできるはずがない。

パンツが重い口を開く。成長したパンツは何を言うのだろうか。


腹減ったでやんす…


…………。

最終試練も終えた事だしそろそろ出発の時期かな…。


その後パンツは10人分の飯を食らい死んだように寝た。
その間俺はひたすらマダンテを試みていた。
だがうまくいかない。いけそうな雰囲気はあるのだが最後の詰めが甘いのか集中しきれない。
これはどうやらまだまだ修行が必要なようだ。手応えはある。絶対に魔王のブチ込んでやるぜ。

495 :決戦!イケをブチのめせ30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:02:29 ID:fG/eVFU50
パンツが目を覚ましイケメンの所へ行く。イケは言った。

これより最終試験を始める

?は????
意味わかんねえ。こないだ最終試練終わったばっかじゃねーかよ。何言ってんだこいつ。馬鹿か?


こないだのは最終試練だ。次は最終試験。別物だ。

俺は深く殺意を抱いた。
これだから顔のいいやつは信用できない。こいつほんとどうしてくれようか。
しかしその試験の内容は「イケメンとピエロをぶっ飛ばす」というものだった。願っても無い事だ。
鍛えぬいた俺の体力と魔力!ギタギタのボコボコにしてやるぜッ!
 
イケは静かに一言。…覚悟しとけよ…
 

496 :決戦!イケをブチのめせ31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:22 ID:h7eqr8+40
近くの拓けた場所に移動する。
積年の恨み、今、晴らす時べし!
ハイテンションで身構える俺とパンツ。
イケは構えもせずブツブツと呟いている。チャンスだ。

パンツが飛び掛かろうとした瞬間イケとピエロが青白い光に包まれた。

……!?どんどんその姿が変貌していく…これは!?


そこにはイケとピエロの姿は無く巨大な二匹の魔物がいた。
ヤバイ。直感的にヤバイ。本気ださなきゃ普通に死ぬ。
修行中幾度と無く死にかけたが今回ばかりは洒落にならない。二人(匹?)とも目がイっちゃってる。
本気で俺達を殺る気だ。


強い相手には先制パンチ。これ喧嘩の基本。
俺はパンツに相手の注意を引き付けるように指示しスカラをかけた。

497 :決戦!イケをブチのめせ32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:52 ID:h7eqr8+40
パンツは相手に特攻する。その間に俺は精神統一する。
いきなり俺のもてる最強の呪文をぶつけてやる。先手必勝!くらえ!

俺はメラゾーマと叫んだ。特大の火炎球が元イケメン目掛けて飛んでいく。

もらったッ!!

元イケは大きく息を吸い込むと強烈な炎を吐いた。炎と火炎球が衝突し強烈な熱風が巻き起こる。

相殺された。

なんてこった。いきなり打つ手無しか!?作戦を変えよう。相手の戦力を分析し比較する。
総長たるもの馬鹿みたいに特攻してても駄目なのだ。時には冷静になる必要がある。

イケメン…デカい骨の竜。もの凄い炎を吐く。
ピエロ…でかいおっさん。石っぽい。固そう。力強そう。

俺…強い。
パンツ…頭悪い。


498 :決戦!イケをブチのめせ33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:05:24 ID:h7eqr8+40
おいおい勝てんのか!?
これはまずタイマンはっても勝ち目ないので二人がかりで一匹ずつ倒すしかない。
最初のターゲットはでかいおっさんだ。動き鈍そうだしできるだけ体力温存して潰したい。
と、パンツに伝えようとするがパンツはまた一人で骨に突っ込んでった。コラっバカ!死ぬから!
パンツは骨に一撃見舞ったがカウンターの炎を直撃した。
やべえ!俺はとっさに地面目掛けてイオラを放つ。
大量砂埃が巻き上がり二匹の視界が奪われる。その隙にパンツを引っ張り出し回復させる。
パンツはおじいいちゃん…おじいちゃんとうなされている。
駄目だ!おじいちゃんは駄目だ!帰ってこい!

何とか一命を取り留めた。俺はパンツに先におっさんから倒すぞと言った。パンツは頭を縦に振る。

…理解してくれてる事を祈る。

自分とパンツにバイキルトをかけあえておっさんに肉弾戦を挑んだ。
なぜかというと骨の炎が危険過ぎるからだ。あれは一撃で致死レベルだ。
俺達がおっさんに接近し続ける限り巻き添えを食うから骨は炎を出せない。
というよりほとんど手を出せない。二匹とも図体がデカすぎる。
実質2対2というよりは2対1×2といった所だ。

499 :決戦!イケをブチのめせ34 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:06:29 ID:h7eqr8+40
何とか活路を見出した。冷静に状況を分析し最良の策を立てる。自分の才能が怖いぜ。
とか考えてるうちにパンツはおっさんと殴り合っていた。すかさず加勢する。
いける。おっさんの一撃一撃は重いが単調だ。ある程度はかわせる。
俺達はゴリ押しでおっさんを攻め立てた。

体中に傷が増えていく。だがそれ以上にハイペースでおっさんの体力をけずる。
ついにパンツの渾身の一発がおっさんの脳天を砕いた。ボロボロと崩れ落ちる。
そして元のピエロの姿に戻った。気絶しているようだ。

さて次は問題の骨だ。

……うお!!!!!!!???間一髪で炎をかわす。骨は次の炎を吐く体制に入っている。

第ニ射が来た。何とか避ける。

畜生このままじゃ避けるので精一杯だ。反撃できない。丸焼けになるのも時間の問題だ。
パンツが俺の近くに来る。
あっしが何とか注意を引き付けますんでその隙に総長の魔法でなんとかして下さいだと…?
何か策があるのだろうか?まさか塔で超必殺技でも身に着けたのだろうか?
このままでもジリ貧なのでこいつに賭ける事にした。おまえにまかせる!

500 :決戦!イケをブチのめせ35 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:07:23 ID:h7eqr8+40
合点でやんす!と、次の瞬間パンツが骨の前に仁王立ちになる!











結果的に俺達は骨を倒した。
パンツが骨の前で謎のダンスをし、何事もなかったように骨が炎を吹いた時は本当に終わったと思った。
だがパンツが転んで偶然炎を避け、飛んでった武器が骨の口に挟まり塞いでしまい、
その隙に俺の渾身の鉄拳ドラゴンキラーを連撃でぶち込まれた骨はバラバラになった。
パンツの武器がまたいい具合に作用した。言うなれば電球を口に突っ込んで顔面パンチ。
あれに似てる。限りなく偶然だが運も実力のうちという事にしておこう。

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