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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/25(金) 07:27:11 ID:OqPmcdHjO
>>599
どうぞ気にせずお書き下さい

602 :大怪獣決戦!1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:51:30 ID:tIBBIciw0
ー次の日ー

さすがに今日は誰一人寝坊する事はなかった。パンツですらキチンと起きたのだ。
奇跡。やれば出来るじゃねーかと話かける。ちょうちょが…ちょうちょが…
寝ぼけてるのか何言ってるのかさっぱりわからない。いや違うこれは寝ぼけてるのではなく
寝ているのだ。体は起きているが頭は寝ている。立ったまま寝ている。さすがパンツ侮り難し。

俺達は真っ直ぐ洞窟を目指した。中に入る。一度来ているので今回は進むペースが早い。
迷うことなく扉の前に到着した。一気に開ける。




最深部に奴はいた。咆哮が腹に響く。無意識に後ずさってしまう。チクショウ前に出やがれ
俺の足!みんな完全に気持ちが呑まれてしまっている。ここは先陣きって俺が行くしかない!

俺はダッシュで一直線にデカブツを目指した。ねーちゃんがすかさず補助呪文を唱える。

いくぜええええぇぇぇぇえええ!!!!!!!!
ガキィィィィィィィイイイインンンッッ!!!!

金属音が洞窟内に響き渡る。コイツなんて硬い皮膚してやがんだクソが!…え?

信じられない光景だった。俺の愛用ドラゴンキラーが真っ二つに折れた。

おいおい!ドラゴンキラーとは名ばかりか!いやいや有り得ないから!そしてデカブツと目が合う。
ゆっくり口を開ける。やべえ。次の瞬間凄まじい炎が放たれた。一瞬にして目の前が真っ赤だ。
ねーちゃんが反射的にかけてくれたフバーハのおかげで何とか持ちこたえる。
が、痛い。超熱い。

隣では勇者とパンツが必死に切りかかっていた。炎をギリギリでかわしつつ刃を立てる。
しかし聞こえるのは乾いた金属音だけであまりダメージはないようだ。

603 :大怪獣決戦!2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:52:00 ID:tIBBIciw0
…仕方がない。俺だってバカじゃない。こんな超規格外の相手に丸腰で挑んだりはしない。
昨日一晩考えて奥の手を用意しておいた。毒を以って毒を制す。目には目をデカブツには
デカブツを…!

ド ラ ゴ ラ ム !!!!




いや正直かなりの賭けだった。イケが一回使った呪文を見よう見真似で使うことは。
だがしかし!俺は!賭けに!勝った!ぬをををををおおおおおおおっっ!!!!!!!!

これは…凄い…!

ねーちゃんが唖然としている。そりゃそうだ。俺のドラゴラムはその辺の奴のとは
訳が違う。このデカブツを一目見たときから考えていた。こんな化け物に勝てるのは
ヤツしかいない…そう…幾度と無く日本を壊滅させかけ、終いにはニューヨークにまで
遠征かけた…

ドラゴラムは呪文を唱えた本人の能力やイメージが強く反映されるわ。
ただこれは…禍々しいというか何というか…そうこの世界の生物ではないみたい…!

当たり前だ!俺たちのヒーローをこんな世界のチンケな竜なんかと一緒にすんな!
今日俺は「ゴジラ」の名においてコイツを倒す!!!!!!!!!!!!!

野生の本能かデカブツは即座に俺を敵だと判断すると飛び掛ってきた。
それでもまだなおデカブツの方が二周りはデカい。だがしかし!ゴジラの名において
敗北は許されない!俺は正面から取っ組み合った。

ぐんむぬぬぬガアアアアアァああグアアああッッ!!!!!

604 :大怪獣決戦!3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:52:46 ID:tIBBIciw0
巨体がぶつかり合う。もはや小細工無しの力と力の真っ向勝負!
俺の強烈なパンチが炸裂する!が、相手はたくさんある頭で同時に噛み付いてくる!
ぐッ…これはズルい…キングギドラですたら頭3つだったと言うのに…
俺は渾身の力で全身を叩きつける。体が小さい分小回りが利く。一撃の重さに劣るなら
こっちは手数で勝負だ!洞窟内に硬い皮膚と皮膚がぶつかり合う鈍い音がこだまする。
しかし徐々に押され始める。コイツは文字通り頭数が多すぎる!
ふんぐああぁぁぁぁぁ!!!これでどうだああああああ!!!!!!
力任せに一つの首を締め上げた。フロントチョークみたいな状態だ。そうとう苦しいのか
他の首が一斉に暴れだした。体中噛み付かれてボロボロだ。放さねえ!絶対放さねえ!
やがてゴキッと鈍い音があすると締め上げていた首の力が抜けた。

ぎゅアアアアアアァアアァ!!!!!!

さらに追い討ちと俺は口から強烈な炎を吐いた。温度でこそのダメージは薄いものの強烈な
圧力により相手は怯む。チャンスだ。一気にタコ殴りにする。俺の鉄拳連打が完全に相手を
捕らえた。

一瞬グッタリしたように見えた。まじかよ…コイツは一体何処までタフなんだ!?
直に体制を立て直し反撃に出てきやがった。残った口という口から猛烈な炎を吐く。
衝撃に押されて後退する俺。

バギッックロスッッ!!!!!

ねーちゃんの起こした真空波がデカブツの炎を切り裂き顔面に命中した!
助かったぜナイスねーちゃん!立て続けにパンツが同じ箇所に一撃を見舞う。
この首も動かなくなった。

お父さん…私に力をかして!…ラィッディイイイインンッッ!!!!

勇者が強烈な雷を落とした。こいついつのまにこんな強い呪文を…

ギャアアアアオオオオオオオオおおううウウウウ!!!!!!!

605 :大怪獣決戦!4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:53:15 ID:tIBBIciw0
これはさすがにかなりのダメージを与えたようだ。悶絶するデカブツ。
よしここで俺が一気にカタをつけてやる!あれ?なんかコイツさらに巨大化してないか!?
デカブツの目線がどんどん高くなる…いや違う!これは俺が縮んでるんだ!!!

…元にもどっちまった…。だがこの好機は逃せねえ!炎が効かないなら逆を攻めるのみ!
くらえ!ヒャダイン!!!!!!氷の刃を含む猛吹雪がデカブツを包む。
凍ったせいなのかはたまた体力が尽きたのかデカブツは動かなくなった。
倒したのか…?おそらく一気にダメージをおって動かなくなっただけよ!ねーちゃんが叫ぶ。
膝の力がガクッと抜けた。ち…ちょいとばかし飛ばしすぎたようだ。
もう一息なのに!動け!俺の脚よ動け!

ドク…ドク…とバカでかい心音が響く。

ゆっくりとだが動き出しこっちを睨む。こいつどうしたら倒せるんだ!?

まずいわ!体力も回復力も異常だもの!このままでは競り負ける!

次の瞬間デカブツの振り回した頭により勇者とパンツが宙を舞った。
壁に打ち付けられ崩れ落ちる。どうやらパンツが自らを下敷きにして勇者をかばったようだ。
確かにこのままじゃこっちがもたねえ。クソこっちは
5人がかりだというのに…あれ?5人…そういやおっさんどこいった!?

総長殿総長殿…おっさんが話しかけてきた。てめえ無事か!?はい!身の危険を感じた故
あの岩の陰に最初から隠れてました!っていばるなそんなもん!…え!?なんだと?
おっさん曰くあの動きからして頭はたくさんあれど脳は一つらしい。で、その脳の場所だが
全部の首の付け根が怪しいらしい。ほんとか!?

間違いありません!あやつさっきからそこだけかばっておる!わしはずっと見ておった!

606 :大怪獣決戦!5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:53:52 ID:tIBBIciw0
この際試してみるしかない。ねーちゃんに回復してもらう。ある程度はこれで動ける。
問題はどうやってその弱点を狙えるかだ。さてどうするか。今こっちの戦力は…
ねーちゃんはほぼ魔力使い果たし、パンツは完全に動けない。残るは俺と勇者。
勇者を呼び寄せる。俺がなんとかしてアイツの注意をひくからお前が剣で弱点を突け。
俺のドラゴンキラーは折れてしまったためこれがベストの選択だろう。
わかったと勇者が頷く。ここで失敗すると勝ち目は無い。気合入れてくぞ!

ねーちゃんが最後の気力を振り絞って竜巻を巻き起こす。デカブツの注意はこっちにむいたようだ。
勇者が駆け出す。よし後は勇者が回りこむまで俺がヤツを引きつけるだけだ。
とりあえず回りこんでることに気づかれてはいけないので派手なの一発かましとくか。
イオ!!!わざと爆発の中心手前にずらした。デカブツは口をこっちに向けると炎を吐く。

俺はフバーハを張ると後は仁王立ちだ。耐え切ってみせる!!!!
熱風が視界を塞ぐ。だがしかし俺は倒れん!!息切れか炎は止まった。
デカブツが大きく息を吸い込む。俺はポケットに詰めてあった薬草を全部口に押し込んだ。

ぐにゃあ!ぐるぢゃらごういびゃ!(コラ!くるならこいや!)

第二波がきた!俺は男の意地にかけて倒れん!…………ぬううううう………
意識が遠のきそうになる。勇者は!?勇者は今どこだ!?勇者がデカブツによじ登っているのが
見えた。もう少しだ。ちくしょうだが目の前の敵はまた大きく息を吸い込む…きた!!!!

やられてばっかじゃないぜ!ヒャダルコおおおお!!!!!!

冷気が炎を押し返す。ぐうううううううう!!!!…だめだ魔力がもたねえ…!
逆に押し返される。多少勢いは抑えられたようだ。なんとか踏みこたえる。

これはもう限界だ。視界がボヤける。デカブツが二重にも三重にも見える。ここまでか…。
総長!起き上がったパンツが体全体を引き摺りながら寄ってきた。そして俺の横に並ぶ。

607 :大怪獣決戦!6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:57:07 ID:tIBBIciw0
次の一発が最後になるだろう。その間に勇者が一撃見舞えれば俺たちの勝ちだ。
パンツ!俺たちの根性をあのクソデカに見せてやるぞ!はいでやんす!俺達は肩を組むとデカブツを睨み付けた!

怒号共に一際大きな炎が飛んできた。耐える耐える耐える!根性なら誰にも負けん!!!!!
全ての力を振り絞った。もはや体力は尽きている。だが時に気力は体力を凌駕する!!!!

イヤああああァァァァあああああぁ!!!!!!!

勇者の叫び声が聞こえる。どうなったんだ?炎が止まりそこに写ったのは深々とデカブツの
首元に剣を突き立てる勇者の姿だった。

さっきまでの激闘が嘘のように一瞬静まり返る。

……グ……グッウィヲヲオオオオオオオオオオオオ…!!!!!!!!!

明らかにさっきまでとは違う苦しみ方だ。七転八倒して大暴れした後、動かなくなった。
勝った…のか…?満身創痍の俺達が集まる。いやーいやいや凄まじい死闘でしたな!
…いや一人だけピンピンしてやがる奴がいた…だが突っ込む元気もねー…

デカブツはもう完全に動かない。コイツ…本当に強かったな。デカイとはいえこっちは五人がかりだ。
おそらく俺一人でタイマンはってたら勝ち目は無かっただろう。強敵だった。
できる事なら墓の一つでも掘ってやりたいがさすがに無理がある。俺達は洞窟を後にした。
みんな疲弊しきっているのか無言だ。おっさんは一人興奮しているが誰も聞いちゃいねえ。
入り口で立ち止まる。どうしたの総長ちゃんと勇者が振り返る。

イ オ ナ ズ ン  ! ! !

轟音と共に入り口が崩れる。数分後岩盤で埋め尽くされ完全に埋まった。
強敵との闘いに敬意を表してこの洞窟をデカブツの墓標にしてやろう。我ながら粋な計らい…
完全に気力も体力も魔力も使い果たした俺はその場で意識を失った。

608 :大怪獣決戦!7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:57:39 ID:tIBBIciw0
次に目を覚ましたのはあの酒場だった。そう例の神酒のとこだ。パンツがここまで担いできたらしい。
店長は号泣しながら礼を言ってきた。別にお前のためにデカブツと倒したんじゃねえ。
うざいから泣くな。と、ねーちゃんが手招きしている。ははーんさては俺の男の中の男の闘いっぷりに
惚れちまったか?ったくこれだからモテる男はつらいぜ。誘われるがままに店の外に出る。

勇者殿…

来た来た。いつでも準備は万端だぜハニー。今晩は最高級のスイートルームを予約しようかってぬお!
振り返った視線の先にいたのはおっさんだった。なんでてめーがここに居るんだチクショーが!!!
実は洞窟でこんなものを拾ったのですじゃとおっさんが勲章のような物を見せた。
竜の形をしていて真ん中にはよくわからない文字が刻まれている。なんだこりゃ。

それはジパングの紋章よ。それもかなり地位の高い人しか身に付ける事ができないものよ。

ねーちゃんが続ける。男心を弄びやがって酷いぜねーちゃん…ってえ!?どういう事だ!?
あの洞窟にこの国の偉い奴しか身につけられない物が落ちている。どうやら嫌な予感は的中した
ようだ。沸々と湧き上がる俺の怒り。すぐに酒場に戻り全員に召集をかける。

おまえらこれを見て欲しい。

みんなの視線が竜を象った紋章に集まる。

これは洞窟に落ちていたものだ。おっさんが拾った。ブローチだかペンダントだか何だかしらねーが
どうやらこの国のお偉いさんしか身に付ける事ができないものらしい。

勇者の顔が強張る。パンツが何か大発見をしたような顔で喋りだす。総長それはつまり…黙れ。
会議中においておまえに発言権は無い。

俺はハッキリ言ってブチ切れた。今から城に殴りこみに行くぞてめーら!

俺は大声を張り上げた。ちょっと待ってとねーちゃんが話し出す。

609 :大怪獣決戦!8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:00:06 ID:tIBBIciw0
今日はみんな疲弊してる事だし準備を整えて明日改めて訪ねましょう。それにその格好じゃ
多分城の中に入れてくれないわよ。

自分の服を見つめてみる。ボロだ。これは服というより完全なボロだ。いやしかし服装など関係ない!
俺は今殴りこみをかけたいんだ!

あの…お取り込み中失礼しますがささやかですが出来る限りの料理と酒を用意しました!
娘の恩人です!遠慮なく食べて下さい!

……よし。出発は明日にしよう。


ー次の日ー

足取りは重い。場合によっちゃあの城にいる奴ら全員ぶっとばさなきゃ気がすまねえ。
相変わらず衛兵に止められる。ブン投げた。どけ。俺達は最短距離でヒミコの元へ向かった。


ブチのめしたぜ。やまたのおろち。まことか!?とヒミコが驚く。しかし俺たちの浮かない顔を見て
黙り込む。これに見覚えはあるかしら?とねーちゃんが例の勲章のようなものを見せる。
あの洞窟に落ちていた。…………説明してくれ。

一呼吸置いてヒミコは話し出した。

それは…我が国が公的に作っているものじゃ。各役職ごとに異なる紋章を授ける。
古くからの伝統じゃ。そしてそれは…もうよい。本人を直接呼ぼう。

ヒミコは衛兵に何か耳打ちすると衛兵は一礼した後出て行った。数分後。
部屋に入って来たのは最初にこの国に来たときに食ってかかってきた老人だった。

610 :大怪獣決戦!9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:00:41 ID:0AQJ4yVl0
これが封印の洞窟に落ちていた。説明してくれ。

ヒミコはそれだけ言うと紋章を老人に渡した。老人はため息をつくと右手を大きく振り上げた。
突然ドカドカと十数人はいるであろう武装した兵士が部屋になだれ込んで来た。
状況が把握できない。どういう事だ!?ねーちゃんと目が合う。
ねーちゃんが女王様を守って!と指示を出す。何が何だかわからないが俺達は王座を取り囲む様に
円陣を組み備えた。おいおい。ヒミコは顔を強張らせたままどういう事じゃ!と叫ぶ。

姫様…いや今は女王様か。わしは先代国王の時よりずっとこの国の為に心身を奉げてきた。

………?

王妃様はあなたを産んだ後直亡くなられた。偉大な王であった先代の血をひくのはヒミコ様
あなだだけじゃ。王位を継いだ事も女王となった事も何の間違いは無い。

………??

しかし…あなたの思想は危険すぎた。隣国と仲良くとな?笑止万全!何故選ばれた民である我が民と
下民である者たちが手を取り合う必要がある?崇高なるジパング国の指針は一つ!他の国を従える事
のみ!残念だが姫…いや女王様。あなたにはここで退官願う。死をもって!

老人が手をかざすないなや、兵士達が異形の物へと姿を変えた。
コイツ…魔王と手組んでやがったのか!?非常に混乱しているが今しなけりゃいけない事は一つだ。
こいつらを叩きのめす!

俺はねーちゃんと勇者にヒミコの護衛と呪文での後援を頼んだ。そしてパンツと敵陣に切り込む。

数は多いがやまたのおろちに比べりゃ雑魚だ。片っ端から片付けていく。暫く後目の前に敵対するのは
老人だけだった。

ぐぬうううぅぅ…愚かな者達よどこまでも神の国に楯突こうというのか…


611 :大怪獣決戦!10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:01:31 ID:tIBBIciw0


ククク…お困りのようですね…



どこからともなく嫌な声が聞こえる。生理的嫌悪感をもよおすこの声。どこかで聞き覚えがある…

不気味な黒い霧と共に一人の覆面の魔術師的な男が現れた。
俺とパンツと勇者は絶句する。コイツは…コイツは忘れもしねえ!あの時あの時じいさんが自分の命と
引き換えに潰した奴あの時の…言葉が出ない。心の奥底からただ怒りが湧き起こる。

てめえ生きてやがったのか!おまえだけは絶対に俺の手で潰す!

今にも飛び掛ろうとした。が、体が動かない。

落ち着きなさい。相変わらず熱い男だな。今日はおまえらの相手をしにきたんじゃない。
後始末にきただけです。

と、次の瞬間魔術師の手が老人の胸を貫いていた。

今までよく働いてくれました。あなたがジパングに与えた恐怖や絶望…大魔王様もお喜びでしたよ。
ただやまたのおろちを失った今もうあなたは不要です。安らかに地獄に行きなさい。カカカ…

老人は口をパクパクさせながらうわ言のようにジパングと呟くとやがて動かなくなった。
魔術師はボロ雑巾のように老人を投げ捨てるとこっちに向かってきた。

やまたのおろちを倒した所をみると少しはマシになったようだが…この程度の邪気で
身動きが出来ないようじゃまだまだだな。大魔王様もおまえらが自分の存在を脅かすくらい強くなるのを
お待ちですよ。色々な国を回り様々な人を助けもっと勇者とその仲間として完成しなさい。
勇者は人々の希望であるから勇者なのですよ。ククク…


612 :大怪獣決戦!11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:02:19 ID:tIBBIciw0
メェェラゾォォォォッッマァァァァァ!!!!!!!

俺の放った極大の火球が魔術師を捉える!

轟音と共に大量の煤と埃が舞い上がり一瞬視界を遮った。

徐々に視界が回復する。

ほう…さすがこの状況で動けるとは…異世界より迷い込みし賢者よ。少しは楽しませてくれるようだな。

コイツ…俺の必殺技を食らって無傷なのか!?ヤバイ近づいてくるが今度こそまったく指一本動かせない。
く…殺られる……………!


魔術師が耳元で囁いた。

そして去って行った。

俺達の金縛り?も解けたらしく全員が一斉に動けるようになった。目の前にあるのは魔物の死骸の山と
老人の屍。外にいた兵士が何事ですか!?となだれ込んできた。ヒミコは力なく死骸の片付けと
老人の埋葬を命じた。

ひと段落ついてもう一度ヒミコの座の前に集まる。



重い沈黙。






613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 00:02:27 ID:dB7aKu390
ちょwゴジラに変身しやがったwwwwwwww
ドラゴンなのかそれはw

614 :大怪獣決戦!12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:03:03 ID:tIBBIciw0
重ね重ね礼を言うぞ。勇者とその仲間達よ。やまたのおろちの件だけでは無く命まで助けてもらったようだな。
こんな事言える立場じゃないかもしれんがあの者は手厚く葬った。許してくれとは言わん。
ただ誰よりもこの国を愛するが故の行動だと思っておる。わかってやってくれ。

そして一冊の日記のような物を差し出した。あの老人の部屋にあった物らしい。
内容は要約するとこうだ。ジパング再興のため魔王軍と手を組んだ事。やまたのおろちを使って
ヒミコの世評を下げ退官させようとした事。そして最終的に魔王軍が世界征服した後
ジパングだけは独立を守ることを契約した事…何があの老人をここまで駆り立てたのだろうか。
さっぱり理解できねえ。

さて話を本題に戻そう…。ぬしらが求めていたオーブの話じゃが…

オーブ…ああそうだ忘れてたたしかあの鳥居の洞窟の奥にってオイ!入り口はもう塞いじまったぞ!
やべえすっかり忘れてた。今から掘り返すのか…しかしあそこは俺とデカブツの名誉ある死闘の場所…

あの洞窟にはありませんでした。

ねーちゃんがこれまた驚き発言をする。えっあの状況で探してたのか!?当たり前でしょと多少冷たい目でこっちを見る。
正直先にオーブ見つけてしまってやまたのおろち退治は後回しにしようと思ってたわ。
勝てそうにもなかったし…結果論から言うと勝ててよかったけど総長さんも私達を率いるリーダーなら
その辺もっと慎重に行動して欲しかったわね。

……こんな所で説教しなくてもいいじゃないか…

あやつの手記と共にあったわ。もう我々には必要ないもの。好きにするがよい。

と紫色に輝くオーブを渡された。そうかあの老人が持ってたのか。いやいや結果オーライだな。


615 :大怪獣決戦!13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:05:36 ID:0AQJ4yVl0
ヒミコはさすがに顔色が優れない。そうだろな。これからこの国の奴らにこの一件を
どう説明するのだろうか。差し出した生贄…支払った犠牲を考えると黒幕が魔王とうちの大臣でした
なんて簡単に言えるもんじゃない。事情をしってる周りの大臣や兵士も表情は重い。

俺は考えた。この空気。この雰囲気。問題は山積だがだからこそ立ち止まってはいけない。
一歩ずつでも前に進まなくては。そしてこの状況を打開するには…酒しかねえ。

おいヒミコ。今すぐ宴会の準備をしろ。国をあげて総出の宴会だ。異論反論は許さん。
逆らったらこの国ごと潰すぞ!

一気に城内はザワついた。バカな…あの異国人は何を考えてるのか…この状況で…空気読めよ…
あちらこちらで陰口が聞こえる。ええい黙れ!世界の覇王に最も近い俺に逆らう奴はブン殴るぞ!


数時間後。

夜もすっかり更けたころ、国で一番大きい広場に物凄い人数が集まった。
ブツブツ文句をいってた兵士や使用人もいざ宴の準備を始めるとちょっと楽しそうだった。
頃合を見計らって一番高い演説台に立つ。

…誰も見ちゃいねえ。それどころか何の為に集まったかも知らされていないので不審そうな顔をしている。
目の前には大量の料理と酒。家にあるありったけの酒と料理をもって広場に集まれという
女王からの謎の通達。不審がるのも無理はないか。ここは一発派手に民衆の心を引くしかないようだ。
花火でもあげるか。俺は天を仰ぐと夜空に向かい叫んだ。

イ オ ナ ズ ン !

けたたましい轟音と共に一瞬真昼かと思う程に夜空が光った。突然の出来事にへたり込む奴や
当然子供は泣き出した。うんうん。この反応を待っていた。一息つくと俺は声を張り上げた。



616 :大怪獣決戦!14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:07:34 ID:0AQJ4yVl0
コホン…えー俺は鬼浜爆走愚連隊の総長である!
近い将来この世界の王となる男だ有難く目に焼き付けておけ!

あっけにとられる民衆共。

えーここで一つ報告がある!おまえらを悩ませるやまたのおろちはもういない!
俺達が死闘の末今アイツは洞窟の奥で永遠の眠りについた!感謝しやがれ!

そんな話信じられるか!いやまてしかしヒミコ様の命でここに集められたんだから…あんな異国人の
たわ言など!色んな声が錯綜する。

…やっぱ全然信じてねーなコイツら。おいヒミコ出て来いや!

この者のいう事は真実じゃ。

ヒミコが台の上に立った。一斉に静まり返る。

勇者率いるこの者たちの手でやまたのおろちは倒された。そして今みなに伝えなければならない事がある。

ヒミコはありのままを国民に伝えた。内容が内容だ。中には敵意むき出しでこっちを睨む奴もいる。

再び俺が前に出る。

えー色々思うとこがあるかもしれないがおまえらに一つ命令しておく!今回の事は全て水に流せ!
そしてやまたのおろちと言う天災が去った今、今日この日を記念日にしようと思う!
毎年今日を「鬼浜祭り」として未来永劫祝え!飲め!歌え!踊れ!騒げ!

一気にヒートアップする広場。賞賛と怒号が飛び交う。

えーそれでは鬼浜祭りに…乾杯!!!!!!!!!!!!!!!!!!

617 :大怪獣決戦!15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:09:41 ID:0AQJ4yVl0
そう叫ぶと俺は持っていたグラスに注いである酒を一気に飲み干した。
かんぱーい!と勇者も声をあげパンツやねーちゃん、ヒミコ、兵士、城の使用人、その他みんな一斉に
酒に口をつける。なんだかよくわからないがその雰囲気に呑まれあちらこちらで乾杯の音頭が上がった。

もうあとはとにかく酒を注いで回る。飲ます。飲まされる。一時間だか二時間だか過ぎた頃には
かなりの人数ができあがってきていた。もう誰も恐い顔をしている人はいない。

うんうんこれでいい。やはり祭りはこでなければな。と、むこうから女の子がいっぱい駆け寄ってきた。
これは…もしかして…そうだ。俺はこの国を困らすデカブツを倒した。つまりこの国の英雄ってやつだ。
キャー本当にやまたのおろち倒したんですね!すごーいつよーい!かわいいーーーー!!!!
へへへよせやい照れるべ!?え!?かわいい!?案の定俺を素通りして女の子軍団は勇者とねーちゃんの元に向かった。
パンツが総長総長と寄ってくる。なんだよ気持ち悪いな。こっち来んな。
え?あっちで俺の武勇伝聞きたい奴がいっぱいいるって?しゃーねーなおい行ってやるかデへへ
…そこにいたのは明らかに土方系のイカツイにーちゃん達…あっちの世界でもこっちの世界でも
こんな奴らばっかにモテるのはなぜだろう。チクショウ…



それから更にしばらくたった。ねーちゃんがこっちに来る。ねえ一つ聞きたい事があるんだけど…
あの魔王軍の魔術師、最後総長さんの耳元で何か言ってたでしょ?何を言ってたの?


618 :大怪獣決戦!16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:10:46 ID:0AQJ4yVl0
そう…あの時からずっと心にひっかかってる事。アイツは…あの時信じられないが俺の事名前で呼びやがった。
この世界に俺の本名を知ってる奴はいない。俺は総長としか名乗っていない。
なのになぜあいつは俺の名前を…

いや違う。無論それも不思議ではあるのだがあの声、あの声はどこか懐かしい。
口調はまったく違うのだが俺の良く知るアイツにどこか似ているー…ちょっと?大丈夫?聞いてる?

いけないいけない自分の世界に浸りこんでしまった。ねーちゃんには本当の事話すべきだろうか。

いいわ…誰にだって知られたくない事はあるし無理に聞こうとは思わないわ。

そう言って微笑むとねーちゃんは去ってしまった。別に隠す程の事でもないんだが…もし
仮に俺が異世界から来た事をぶっちゃけるとコイツらはどう思うのだろうか。

この国のやつらは生まれた国が違うというだけでかなりの偏見を持っていた…俺の場合はそもそも世界が違う。
……ていったい何考えてんだろうか。酒のせいだ酒のせい!
今、目の前にうまい酒がある!それでいいじゃないか!



俺はその日も結局浴びる程飲んだ。



619 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:17:52 ID:0AQJ4yVl0
今日はここまでです
次からはようやく新規更新いくぜ!
今度は絶対完結までいきますんでよろしくおねがいしますです



620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 00:27:02 ID:IhS2bt210
ジパングエピソードおもしれえええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!
作者さん超乙!

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 02:34:28 ID:8XHSKM+00
総長さん乙です!次回も楽しみにしてます!
魔術師の正体が気になる…

622 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 04:14:23 ID:0WieGGiq0
やまたのおろち戦、すごい燃えたっ!
そして、覆面魔術師登場。魔術師も総長さんと同じ世界から来た人物か・・・、あるいは総長さんを呼んだのはそいつか・・・。どきどき。

623 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 04:48:02 ID:6GOUSDnaO
乙ッッッ!!!!!!!


624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 09:38:16 ID:JCxl5wMlO
総長乙!
今度からは新規だね。
面白いんだから最後までやってくれ。待ってる。

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 11:51:25 ID:oI3Rq/xT0
やまたのおろちの正体ヒミコじゃなかったのか!!
魔術師は何で総長の事知ってるのかな…最後まで期待してます

626 :再会1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:47:56 ID:8GnwNDw70
明け方。
フラフラと千鳥足で俺は鳥居の洞窟へ向かった。手には一等うまい酒を持って。
デカブツの話を色々聞いた。古く遡ってはこの国の守護神として崇められていた事。魔王の魔力により
暴れだしそれを勇者の親父達が封印した事。魔王に操られ暴れて封印され今度は権力者にいい様に扱われ
挙句の果てに殺された…正直何が悪なのかなんて俺にはよくわからない。ただコイツにはうまい酒を
飲ませてやりたい。それだけだ。


洞窟の前に立つ。


その辺の岩を切り出して背丈程の石碑を造った。そして上から酒を注いでやる。

…………………。

持ってきたグラスに自分の分も注ぎ無言で乾杯した。

…………。

少しばかり感傷に浸っていた。


なんだか背中の辺りがゾワゾワする。気持ち悪い。
さすがに飲み過ぎだろうか。……いや酔いとはまた違う。この感覚は…覚えがある。
不安が疑問に変わり疑問が確信に変わる。咄嗟に持っていた小さなナイフを抜き身構えた。

吐き気がする程の嫌な感覚。目の前には当然のようにあの魔術師が立っていた。

久シぶりだナ。

627 :再会2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:48:38 ID:8GnwNDw70
聞き覚えのある懐かしい声で声をかけてくる。そしてゆっくりと顔を覆うフードを外す。
そう。この声この顔は…ひとし君だ。暴走族時代の連れで親が極道だったひとし君。年齢は上だけど
いつのまにか同級生になりそして後輩になったひとし君。とにかく危ない男だった。
俺以外とは殆ど口を聞く事なく何を考えてるのかわからない男だった。
喧嘩に日本刀や拳銃を持ち出して「限度」ってものを知らない男だった。
そしてついには動機不明で親を殺し刑務所の中で自殺した。俺が知っているのはここまでだ。

懐かしくそれでいて禍々しい声で続けて話しかけてくる。そのギャップに頭がおかしくなりそうだ。


理解できナいと言った顔ダな。
おまえが知ってルのハ私が親を殺し自殺した所まデか。
そウだな…なぜ私ガ親を殺したか解るカ?


解るわけがない。何とか平静を装い話を理解しようとする。
ひとし君は続けた。



それはあの人達が私の飼っていた鳥を殺したんだ。おまえは極道に生きるには優し過ぎるってな。

そうだ。そういえばひとし君は異常に鳥を可愛がっていた。
喧嘩では徹底的に相手をいたぶる反面、動植物には異常に優しい所があった。いや、しかしだからって…

まだ解らないと言った顔だな。そんな鳥くらいで親を殺すかと思うか?
鳥より人間の命が重いとでも?そもそも鳥と人間どっちが偉いなんて誰が決めた?

ダメだ。この声を聞いていると本気で気が狂いそうになる。

628 :再会3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:49:59 ID:8GnwNDw70
私は考えたよ。もし鳥に人間以上にの腕力があれば立場は逆転してたんじゃないか。
例えば私が拳銃を持った時あの人たちは虫ケラ以下の存在なんじゃないかってね。

何を言っているのかさっぱりわからない。わかりたくもない。きもちわるい。
あたまがおかしくなりそうだ。このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは
このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえはこのこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは

結局の所悟ったのだよ。弱い奴は強い奴に殺されても文句は言えない。
強い奴が全てなんだ。弱い奴に生きる権利なんてないんだってね。
夢を見たんだ。そこでは人間は人間よりはるかに強大な存在に脅えながら暮らしている。
時にその強大な存在は理不尽に、簡単に、無慈悲に人の命を奪う。
その行為はむしろ自然の摂理に則った美しい行為だとは思わないかね。
私は心から力を望んだ。弱い存在を蹂躙したかった。強く強く気が狂う程強く願ったんだよ。
そうしてある日目を覚ましたらそこはいつもの独房ではなかった。
暗く重い空間の中で目の前にいたのは世の中の全ての恐怖を凝縮したような存在だった。
すぐにそれが強大な存在だと理解した。
言葉のやり取りは無かった。だが意志は通じた。私は力を求め彼の存在は絶望を求めた。
私は彼の存在の力を与えられ絶望を生む事を約束した。

人は脆い。絶対的な存在の前では虫ケラと変わらないくせに愛だの希望だのを語る。
なんとも滑稽な生きものだ。そうだな。滑稽と言えばあの町で会ったあの老人。
自ら命を絶ってまで私の存在を消そうとしたが犬死だったわけた。
カッカッカ…無力とは罪なものだな!



ひとしィィィィッ!!!!!!てめええええええェェぇええッッっっ!!!!!!



犬死…その一言で正気に戻った俺は殴りかかった。手ごたえがまったくない。

629 :再会4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:50:57 ID:8GnwNDw70



もっとだ…もっと怒れ…
あの勇者と共に人々に希望を植えつけろ…絶頂までにな…
待っているぞ。その時まで…


そうしてあの魔術師は消えた。


あいつの言葉一つ一つが激しく心を揺さぶる。
俺のやろうとしている事は結局あいつと同じなのだろうか。強い奴が生き弱い奴は死ぬ。
………わからねえ。



…ちゃn……そうちょう……てば…


もう!総長ちゃんてば!ボーっとしてないで呼んでるんだから返事してよ!

ふと我に返るとそこにはみんなが立っていた。

もう!何一人で恐い顔してんの!探したんだよ!そろそろ出発する段取り決めようよ!
総長ちゃんがいなきゃ話進まないよー

なんだか勇者の顔を見ると一気に気が抜けた。
そうだ。何も難しく考える必要はない。一つ確実なのはあいつにしろ魔王にしろいけ好かねえって事だ。
俺のぶっ飛ばすリストにひとしの名前が加わっただけだ。
知能腕力共に常人を遥か凌駕して優れている俺だ。グチグチ考えるのは性に合わねえ。
天才は悩む必要などないのだ。俺が正しいと思ったをするしかないのだ。

630 :再会5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:51:42 ID:8GnwNDw70
ッしゃァ!この国にきて色々あったがとにかく気合入れ直してガンガン行くか!
また長い船旅になるからおまえら心しておけよ!


ならないわよ。


ねーちゃんがあっさりと否定する。え…なんでっスか…


次の目的地はアリアハンよ。ルーラでアリアハンへ飛ぶわよ。
お父様から連絡があったの。アリアハンへ行けば道が開けるって。

ああそうですか…俺の気合は空回りですか…
…?て連絡があったってどういう事だ?


夢よ。夢に出てきたの。


ああなるほど。まああの糞イケの魔力ならそのくらいできるだろうよ。
しかしせっかくの睡眠時間なのにあんなのが出てきたらたまらんな。俺の夢には絶対に出て来ないで頂きたいもんだ。
ん?しかし船はどうするんだ?俺達だけ移動してもダメだろ?

船も一緒に飛ばせるよー!


631 :再会6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:54:02 ID:8GnwNDw70
言葉に出したわけじゃないが俺の疑問を察知したらしく勇者が答えた。
この船にはよくわからん護符みたいなもんが付いてて勇者がルーラで飛んだあと自動的に近くの海に着水するらしい。
なんだかわからんがすげー仕組みだ。というかそもそもルーラって魔法自体がすげえ。
攻撃呪文でも回復呪文でもないから軽視しがちだが瞬間的に長距離を移動できるなんてありえねーだろ。
この世界の人にはそれが当たり前過ぎて何とも思わないだろうが俺にはどんな呪文よりも強力な呪文に思える。
……この呪文を応用したらすっげー破壊力の呪文が作れそうだな。まさに逆転の発想。
まあ今考えるのもめんどうだしもういいや。




俺達は最後の挨拶にヒミコの所へ向かった。
ヒミコは多少疲れた顔をしている。そりゃそうだろうな。わだかまりは俺様が大宴会により溶かしてやったにしろ
民衆共から不信を募った事に間違いは無い。まあしかしこいつならこの国をしっかり立て直す事ができるだろう。

そうかもう出発するのか。もう少し留まって欲しい所だがそなたらも目的がある旅故仕方ないの。

ヒミコはそう言うとさらに続けた。

ゆっくり礼を言う暇もないな。そなたら何か望みはないか?できる限りの事はするぞ。


マジか。何かないかな。別に金に困ってるわけでもねーし。しかしせっかくの機会だ。あっそうだ。
大事な事を忘れていた。俺はヒミコにやまたのおろちの墓を作った事を伝えた。
まあぼちぼち暇な時にでも花でも酒でも備えてやってくれ。

わかった。あの怪物も今回の件では利用されただけだからな。今日この日を記念日とし
やまたのおろちは古来のようにこの国の土着の神として毎年手厚く奉る事を誓おう。
他には何かないか?

632 :再会7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:58:10 ID:8GnwNDw70
他には…そうだ俺達も酒をもらおう。ここの地酒はまた格別だった。樽でたくさんもらおう。
そう思いつき言葉にしようとした瞬間勇者が遮って話だした。

ヒミコさま。わたし達は望む事はただ一つ。ジパングをみんなが笑顔で過ごせる国にして下さい。



そうか…。そうじゃな。今度そなたらが来る時までにはそなたらが望むような国にする。
ジパング正統王室相続女王の名にかけてでもな。また顔を見せにきておくれ。

勇者はにっこりと微笑む。ヒミコのつられて微笑む。
よく見ると兵士達もニコニコしている。急にこの場が和んだようだ。やっぱ勇者はすげーな。

ってそうじゃねーよバカ!だいたい将来的にはこの国も俺の支配下になるんだからそういう事はむしろ
俺に言え!俺が望んでるのは酒だっつーの!酒をよこせ酒を…ッ痛ッ!!!

ねーちゃんが俺の耳をつまんで歩き出す。いやまてまだ帰るのは早い!勇者が何言おうが俺の用は済んでねーって!

城の外まで引っ張られた。もう!オーブももらったんだしもういいでしょ!どうせ総長ちゃんのことだから
お酒でもくれって言おうとしてたんでしょ?

この女鋭い。あーあせっかくの機会だったのに…しょうがない今回は諦めるか。



すいませーーーーーん!



どこからか呼び止められる。ああなんだてめーか。そこにはあの例の酒場の店長が立っていた。

633 :再会8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 20:01:10 ID:8GnwNDw70
どこからか呼び止められる。ああなんだてめーか。そこにはあの例の酒場の店長が立っていた。


本当に…本当に色々ありがとうございました!
もう出発されると聞きまして…何せうちにはお酒しかないものでせめてもの気持ちです。

と俺に大きな瓶を差し出した。これは…店長GJ!

まあ気を使ってもらってすいません…。ほら!ちゃんとお礼を言いなさい!

ねーちゃん…いつからそんなお母さんみたいなキャラになったんだよ。
俺はなされるがままに礼を言った。おまえの店はなかなか酒も料理もイケてたぞ。
世界征服した暁にはまた来てやる。

店主が見えなくなるまでみんな手を振っていた。





さて。そろそろ出発するか。
勇者が目を閉じている。久しぶりだなあ家に帰るの…そう呟いた。あっそうかアリアハンてこいつの地元なんだよな。







ルーラ!!!!!!!

634 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 20:02:27 ID:8GnwNDw70
しまった>>633の一行目はコピペミスなんで脳内削除して下さい
今日はここまでです

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 02:40:35 ID:Nhekaez10
乙です

やっぱひとしだったか・・・
にしても総長のキャラが(笑)

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 03:46:11 ID:CJ/x4Vhd0
むむむ・・・・。
魔王の力を得てスーパーになったひとしくん、怖ぇぇぇぇ。

> ……この呪文を応用したらすっげー破壊力の呪文が作れそうだな。まさに逆転の発想。
オリジナル呪文フラグ立った。
やまたのおろちのために墓をつくったり、ヒミコに後を頼んだり、総長いい奴。

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 05:32:12 ID:yZPd85kVO
総長ルーラ使えなくね?

638 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 06:19:00 ID:oNxMXmEDO
>>637
飛行機あたりをイメージしたらルーラもいけるかもしれん…
職業賢者だから、デイン系以外は全部使えてもおかしくないし

639 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 08:22:25 ID:qBqFK6tOO
>>636
>スーパーになったひとしくん
スーパーひとしくんってことはラスボスは世界ふしぎ発見のあの人か

640 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 09:56:18 ID:JN4Im1kfO
>>639
徹子か!!!!

641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 11:30:01 ID:IGSKSijc0
>>640
いやいやそこは草野さんだろう。

642 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 16:33:47 ID:B7bsmgZc0
>>640
勝てねぇw

643 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 22:19:52 ID:hvOZ+6lu0
>>634
総長おもしれええええええええええ!!!111!!
俺的最高SSで4の人と双璧だな
完結までまったり待ってるぜ!

644 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:45:06 ID:m1wsBb0V0
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1209480163/

作者のみなさま乙であります
470KBこえたのでたてておきました





645 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 00:17:13 ID:xZiPs/Kx0
>>644
スレ立て乙であります!

646 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 08:10:35 ID:od4AJ32eO
乙です

647 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 11:31:01 ID:jdFhU5hLO
>>641
スーパーひとし君のことかーーーー

648 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 14:33:04 ID:99E9KTwhO
埋め埋め

649 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/02(金) 01:29:44 ID:NmHihLlw0
ぢおn軍規制解除でやっと書き込めるよ…

おもしれええぜ!総長!
これからの展開に期待!

650 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 12:35:12 ID:bu7ssWsZO
ゆうべは おたのしみ…


は!まさか、セックルて言いたいの?ばーか!

651 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 19:47:39 ID:QA7b90Bp0
>>650
おまえら、セックスのことをセックルとかセクロスとか言うなよな。
言うんだったら堂々とセックスと言え。

652 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/10(土) 21:04:26 ID:DfosPmwV0
みなさま、お疲れ様です。
そしてご無沙汰しておりました。
まとめサイトのほう、全く更新が出来ず申し訳ないです。
そして合作エピローグも全く公開できず、本当に申し訳ない。

タカハシの物語ですが、第五部を一応終わらせました。
ほとんどすっかりを忘れてしまっているので、強引過ぎるくらいに展開させてしまいましたが、
完結を目指す私の方針転換なんだと、ご理解いただければ幸いです。
また、間が驚くほど空いてしまったので最後あたりは書き方がかわって戸惑うかもしれません。
これもまた、ご理解いただければ……

長く投稿している間が無いので、失礼ながら今回はテキストファイルをアップロードさせていただきます。
ttp://www.uploader.jp/dl/ifdqstory/ifdqstory_uljp00018.txt.html

ではまた、そのうちに。

653 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/10(土) 21:10:34 ID:DfosPmwV0
ああ、こっちは前スレでした…
空気を乱すといけないので、このままにしておきます。

654 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/10(土) 22:29:12 ID:uA96dSyS0
>>652、653
乙でございます。
あまり無理しないでくださいね。

655 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/11(日) 01:09:15 ID:aYEBL8s00
>>652
GJ
最終話まで気長に待つよ

656 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:07:03 ID:50sD3Ncn0
>>652からの 続き

〜 最終部 〜

●隠されるモノ達

心は、いつだって一つではなく、肉体はまるで入れ替え可能な入れ物だ。
やると思えばどうにでも、ある水準にまでは性格すらも切り替えられる。
誰にだって気軽にだって出来るわけではなく、俺にとって初めての試みで、自分の意思として今、違う自分を作り出している。
うまくいっているように思えるが、実際、これがどうとにもならず逆に苦しみを増やしているんじゃないかとさえ、考える。
けれどこの通り過ぎる時間を遣り過ごすには、そうやってあの出来事たちを抑える必要があった。
でなければ、まるでそこに意思とは関係が無い一人を作ってしまうからだ。

「お前達の主人はどこにいる」
「お、教えるものか。なんで人間になどあの神聖な……」
「そうか」

鋼の剣がボウと空間へ亀裂を立て、死絶寸前の醜い魔物の頭上へと鋭く研ぎ澄まされた刃を触れる。
骨を砕き肉をえぐる悲鳴は、もう数千と聞き慣れた。べたりと這う色の無い塊は、ざらざらと巡るしぶきを落としている。
俺はいま、魔王へと一直線に向かうべきとし、そうしようと進んでいた。
襲う魔物も見つける魔物も全てを薙ぎ倒しながら、まっすぐとライフコッドであっただろう残骸を踏み、山を谷を越えてきた。
なのに、あるはずの邪悪でいっさいが神聖ではない往くべき根城が、見つからない。
もう数日は同じところをぐるぐるざつざつと、岩や土や水も草も樹も枝も踏み続けている。

「またきたか……」

独特の感触をもたらす嫌な気配を感じた。
薄っぺらな声をあげ、少し離れた場所でいくつかの影を呼び出す蠢くもの。
この地ではよくある風景で、辿り着いた黒い── もはや俺には黒い塊にしか見えない魔物達は凝りもせず襲ってくるのだ。

657 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:08:41 ID:50sD3Ncn0
「最近ここらで暴れている人間とはお前のことか。
 どうも、信じられん。なんと小さな存在であることか。
 それにしてもお前、よくここまで生きてこられたな」

似たような言葉を今日だけで何十回と聞いただろう。
こいつらは、同じ言葉を下等な魔物全員の意識間で共有しているのじゃないか。
だから同じ文句しか言えず、同じ行動しかしないのではないのか。
そうなら、こいつら魔物達は単に姿かたちが違っているだけで、ぜんぶ運命共同体ということに成る。
結局は魔王の存在たった一つが、それらにたった一つのどうやりようもない邪悪を与え、動かしているに過ぎないのだ。

「おい。なんとかいえ。せっかく、お前に喋る機会を与えてやっているのに。
 俺達を楽しませろ。もう人間という餌がなかなか見つからないから、我々は退屈しているのだ」
「そうか。逆に言わせてもらうが、ならばお前達こそ、この俺を楽しませてほしい。
 これは俺の頼みだ。どうしてもというわけではないが、それなりに楽しませてはくれないだろうか」
「こいつ……! 黙っていれば生意気を言う。
 お前の願いを叶える事などまっぴらだが、ゆっくり痛めつけてその口を後悔させてやろう。
 どうだ。少なくとも俺達の望みは叶うのだ。
 ああ、そうだ。もしお前が、痛みを好むのならお前の願いも叶うというわけだ。ガッハハハ!」

大きな黒が笑うと、周りの中くらいの黒たちもぎゃあぎゃあと笑った。
いったい、どんな魔物なのだろう。
俺の目に映るごわごわと動くソレは、まるでぼんやりと反射する黒い生命体にしかわからない。
こんなものを生命体と呼ぶにも、まったくがふさわしくなどなく、先刻できたばかりの残骸のほうが高尚だ。

「痛みなら、もう十分にある。好きではないが、今では嫌いでもない。
 生きている限りどうしたって痛みは発生するのだから、嫌っていても逃れられない。
 俺はそういった感触とどう付き合っていくのかが、大事なんだと思う。
 けれどまだ、俺に答えは見えていないから、こうやって自分を隠して歩く。
 なぁ、いい話題だ。
 なのに、お前たちには理解できないんだろう。
 なぜなら、お前等は思考もまっとうな感情すら持たず、あわよくば生きているだけの、下等で下劣でただ動く肉なのだから」

658 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:10:48 ID:50sD3Ncn0
ぐっと、邪悪な波動がこの淀んだ空気を波立てる。
言った台詞はどうも、黒い者達を刺激したらしい。
もっともだと思えるから、少し可笑しかった。

「お前が、殺されるのは、既に決定していることだから、こうして会話でもしてお前を死の緊張から解いてやろうと、してやっているというのに。
 良かったな、俺は他のやつらと違って、気が大きいんだ。
 だが、もう俺はお前の叫びや掠れた声や血や肉を喰いたい。
 イライラとする身体を慰めてやりたいと思う。おい、人間よ」
「ああ。そう出来るのならすればいい。その前に、俺の話を聞いてもらえないか。
 逃げ惑い地を這いずりながら命乞いをし掠れた声で空に助けを求め、最後はこの両手でお前にすがると約束する」

黒い魔物はふふんと鼻を鳴らした。
今の言葉が相当に楽しみで、今にもすすりたそうに感じる。
次の声は喜びで微かに震えていたのだから。

「おお。いいだろういいだろう。なんでも言ってみろ」
「ありがとう。では聞くが、魔王の元へはどうやって行ったらいいんだ。
 さっきまで見えていた城が、まるで見当たらなくなった」
「魔王様の…… お前、約束は必ず守るんだろうな」
「いまさら、嘘を言ったってどのみちお前達に殺されるんだろう」
「それもそうだな。よし、教えてやる。
 魔王様の城は、美しく強大な邪悪の魔力によって守られているのだ。
 だから、ルビスなどという神にすがる人間に見えるはずなどない、というわけだ」
「なるほど、そういう事か。 じゃあ、俺を案内してはくれないか」
「バカな。誰がそんな事をするというのだ。
 それより俺はもう我慢が出来ん。十分話してやったのだから、お前を約束のためじわりじわり殺そう」

大きな黒は、何か武器を持っているようだった。
それを大きな身振りで構え、左右にまた大きくゆっくりと振る。
どうやら中くらいの黒たちに手を出すなと、合図しているらしかった。

「さぁ。命乞いをしてみろ」

659 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:12:28 ID:50sD3Ncn0
黒い武器は、剣のようでそれがそこそこの速さで俺を突こうとしてくる。
俺もまた剣を抜き、その暗闇からにゅうと出る刃を激しく叩き、弾いた。
黒の魔物は驚いた様子を見せ、やや狼狽しながらも強気を見せる。

「お前! 約束したではないか! 抵抗など、そんな意味の無いことなど……!」
「約束はした。だが、お前らが守らないものを俺が守る道理などない。
 ついでに言うが、殺されると決まっていたのはお前達で、俺ではないよ」

こいつら魔物は、自分の都合の良い事に関してだけは気安く「約束」などという言葉を使う。
今までに守ったことの無い単なる飾りと化したその言葉を、今度は人間の俺にやられたのだ。
怒りは分かるが、その意味など理解できようもなく、やはりこいつらは哀しい塊にすぎない。

「や、やくそくが──」

まっすぐ衝き立て、大きな黒の首をゴツリと刎ね、更に四方八方へ刃を振るい全てを小さな個々とする。
中くらいの黒たちが一斉に飛び立ちばらばらに、やがて重たい雲の中へと消えていく。

「さて。どうしたらいいものか」

その場で少しの間を考え、そのうち俺は元来た路を引き返し、山を谷を越え始める。
城を暴く方法が無いのもあるが、魔物を易々と粉砕していくことに、少しばかり疲れていた。
ライフコッドの跡地で身体を休め、気力をも充実させなければならない。
今の廃れきった状態ではすぐ、代わられてしまう。
なにもかもが弱すぎる、たった一つのそんな自分に。

660 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:18:33 ID:50sD3Ncn0
今回はここまで。
次回更新がいつになるかわかりませんが、まだ続きます。

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 09:18:55 ID:H0OMOp7m0
>>660
乙です!
サイトの話も一気に読んじゃいました!
続きも期待してます!
気長に待ちますのでマイペースでやって下さい

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 23:56:14 ID:51jUCkFMO
>>370

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/22(木) 23:07:01 ID:AJ3WF+Rj0
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