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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

300 :Stage.13 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:57:56 ID:gv6sb5jB0

「血に弱いとしか聞いてなかったが、仲間にはそこまで話してないのかい?」
 他人のパーティーを心配するレイさんの優しい言葉に、僕は苦笑を返した。
「言えばみんな気にしすぎて、必要以上に制約を設けてしまうからね」 
 それでなくとも最近、みんな戦闘ではなるべく流血沙汰を少なくしようと気を遣ってく
れてるみたいだし。今後イベントのたびに「これは勇者様には刺激が強すぎるのでは?」
なんて協議されるわけにもいかない。

「なるほどなぁ……。仲間に隠し事をするのは感心しないが。冷静に判断した上で黙って
るならいいんじゃないかな」
 レイさんはにっこり笑うと、僕の頭をぽんぽんと叩いた。なんか完全に子供扱いされて
る? 仕方ないけど。

301 :Stage.13 [10-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:59:24 ID:gv6sb5jB0

「先を急ごうか。次はどっちだい」
「右に折れて、あとは道なりに行けば突き当たりの小部屋にゴールの宝箱があるはず」
「ははは、楽で良いな。今後も一緒に旅をしたいくらいだよ」
「僕もだけど。ダメなの?」
 こんなに頼もしい人がパーティに入ってくれるなら、願ってもない。
「私はどちらかというと父上を捜すのが目的だからね。同行することで迷惑になる」
 っち、断られたか。惜しいなー。
 まあ目的があるのに、こんな面倒な連中に構ってられないか。

   ◇



302 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:00:02 ID:JmBxZuRH0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙


303 :Stage.13 [11-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:05:33 ID:DADMtNCE0
 いよいよ試験も終わりだ。地下三階にはまったくと言っていいほど敵の気配は無かった。
上の階で出し尽くしたんだろうか。
 奥の正面の壁に目をやると、大きな人の顔が掘られていた。例の「引き返せー」を言っ
てくるわけだが……ここは黙っておこうw レイさん驚くかなー?

 とかwktkしつつ、そいつの前まで来たら。
 あれ? なにも言わないぞ? レイさんはさっさと左に曲がっていく。壊れてるのかな。
 僕はそいつの顔をペチッと叩いてみた。

『しまった! レイさん、振り向かないでそのまま聞いて』

 いきなりそいつがしゃべった。それも僕そっくりの声で!
「なんだい、青少年?」
『忘れてたんだよ、ここはそういうトラップなんだ。振り向いたらスタート地点に戻され
るっていう』

「ち……!」
 違う! なにデタラメこいてやがんだコイツ!
 と言う前になにかが腹の周りにもズルッと巻き付いて、すごい力で後ろに身体ごと引っ
張られた。

304 :Stage.13 [11-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:08:58 ID:DADMtNCE0

「おいおい、いきなりゴール間近で振り出しに戻るトラップとは」
『ひどいよね。そういうことだから、気をつけて……』
 石の人面とレイさんの会話が、急速に遠ざかっていく。


「ひゃあああ〜!?」
 なんかさっきも同じようなことなかったか?
『騒ぐな』
 頭上から降ってくる低い声。見上げると、金色の鱗がうねうね動いていた。太い蛇のよ
うな身体が僕に巻き付いたまま、狭い通路を器用に飛んでいる。
 僕の記憶が正しければこいつは、
「あんた、スカイドラゴン?」
『当たりだ』
 確かにここの地下深くには、なぜか空の名を冠する金色の龍が出現する。システムバラ
ンスはともかく、生態系としてはどうなんだと突っ込んだ記憶がある。
『暴れるな、取って食ったりはせん』
 金の龍は言った。
『貴殿に話しがあるのだ、異世界の勇者よ』

305 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:10:21 ID:2Kwx4Yi90
お、遭遇!
しえん

306 :Stage.13 [12-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:10:32 ID:DADMtNCE0

 異世界の……僕の素性を知ってる?
『本当なら上の階で分断し、連れてくる予定だったのだが。片割れが絶えず貴殿を気にし
ていて、思うようにならなかったのだ』
「ええ〜!? じゃあ死ななくていいのに殺しちゃった魔物もたくさんいたんじゃないの?
ごめん! そんな事情知らなくて」
 思わず謝ると、金の龍はぐははと笑った。
『気にするな。戦いに興奮して本当に貴殿を襲っていた愚か者もいたようだ。知能が低い
のはちっとも使えんよ』


 そうこう話しているうちに行き止まりについた。ここは宝物部屋の裏側に当たる外れルー
トで、もっとも奥にある人面に「たまには人の話を素直に聞け」と諭される場所だ。
 その最後の人面が、僕を見下ろしている。
 僕の後ろで、金の龍が地に降りて頭を下げた。

 直後に、威圧感。
 圧倒的な――。

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:11:24 ID:wJfI+Z2z0
支援

308 :Stage.13 [12-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:12:41 ID:DADMtNCE0

『われが勇者と語り合うのは、これで五度目となるな』
 壁の顔から声が聞こえた。どこか遠くから流れてきているような、擦れ混じりの声だ。
『だが貴様は、勇者であって勇者ではない。あの孤高の、悲しい少年とは、違う』
「……アルスのこと?」
『そうだ』
 アルスのことを悲しいと言ったそいつは、静かに、決定的なことを僕に告げた。
『われが勇者によって討たれたのは四度。さしもの少年も、四度目には狂いそうな顔をし
ておったよ』

 心臓が、鳴った。
 ずっと考えないようにしてきた事実を、とうとうここで突きつけられてしまった。
「いやぁ……うん、なんとなくわかってたんだけどね。やっぱりそうなんだ。参ったな」


 ――あの、眩暈がするほど高い神竜の塔の最上階で、まるで鏡を見てるようなもう一人
の「僕」が、満面の笑みで手を差し出した。
『キミも勇者になってみなよ。本当に楽しいから』
 吸い込まれるように僕も手を差し出して、そして契約が成立したあの瞬間。
 彼が一瞬、すがりつくような目をしたのを、僕は見たのだ。


309 :Stage.13 [13-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:14:00 ID:DADMtNCE0

 ゲーム……だからこそ、この世界には決定的なものが欠けている。
 決して救われない。どんなにあがいたところでどうしようもない。
 世界を救うはずの彼だけが、ここに未来がないことを知っている。

 
『繰り返される伝説の中で過去を覚えておったのは、勇者たる少年とわれだけであった』
 そうか。それでも他に仲間はいたわけだ。皮肉にも敵の親玉だったみたいだけど。

 本当に参ったなー。
 いやね、最初からどうもおかしいとは思ってたんですよ。だってアイツ『四回も』って
言ってたでしょ? 僕のクリア回数を。
 でもこのゲーム、前回のデータを引き継いだまま最初からプレイはできないから、冒険
の書は一度消さなきゃならない。アイツが前の冒険を覚えてられるはずがないんですよ。
 っていうか、ですよ?
 死に物狂いで旅をして、目の前で父親を殺されるような経験もして、挙げ句にやっとの
思いで魔王を倒したら今度は故郷にも帰れないとか、そんなキッツイ冒険をですよ?
 延々と繰り返されたら……普通、精神イッちゃいますよね?



310 :Stage.13 [13-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:15:33 ID:DADMtNCE0

「魔王を倒してふと気がついたら、一六歳の誕生日の朝に戻されるってわけだ。あなたも、
いつの間にか復活していて?」
『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
能性があるということかな」
『知らぬ。無いのではないか?』
 そんな投げやりにされても。あんた魔王でしょ。
「じゃあなんで呼んだの」
『伝えただけだ。いつもの通りわれの元に来るも良し。なんらかの方法で神竜とやらに会
い、さっさと戻るもよし』
 ただ貴様には会ってみたい気もするがな。壁の向こうで笑う気配があった。
 

311 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/03/31(月) 00:16:58 ID:1H7c0ayR0
支援

312 :Stage.13 [14-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:17:35 ID:DADMtNCE0


 ――そして、そのさらに向こうからレイさんが僕を呼んでいるのが聞こえた。
 僕がいなくなったことに気がついたらしい。
『…………』
 壁の顔は沈黙してしまった。あの圧倒的な威圧感も無くなっていて、後ろを向くとスカ
イドラゴンの姿も消えていた。
 
 ビキッ

 いきなり目の前の壁に亀裂が入った。あっという間に崩れ落ち、埃が舞い上がる向こう
側に、レイさんが剣を構えて立ちつくしている。
「ど、どこに行っていたんだね! 心配したぞ、気がついたらいないから」
「ごめん、なんか変なワープトラップ踏んじゃったみたいで、気がついたらここに飛ばさ
れてたんだ」

313 :Stage.13 [14-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:18:45 ID:DADMtNCE0

 言いながら壁の残骸をまたいで隣の部屋に移動する。そこには二つの宝箱が並んでいた。
「まあ無事で良かったよ。それでこの宝箱だが、どちらかニセモノだったり罠だったりす
るのだろう?」
 それを聞こうとしたら僕がいなかったんだね。さすがレイさん、慎重だ。
「えーと確か……」
 僕は一方の宝箱を、すっと指で示した。

「こっちをレイさんにあげる。実はランダムで当たり外れがあるんだ。こればかりは事前
知識じゃわかんないんだよ。それでさ、考えたんだけど……ここくらいはフィフティにい
かない? 当たった方が合格ってことでさ」

   ◇



314 :Stage.13 [14-3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:29 ID:DADMtNCE0

 僕の手にはコインが一枚。初めて手に入れた「小さなメダル」ってヤツだ。向こうでは
レイさんがブルーオーブを片手に、神殿の人たちと更新手続きの件で話しをしている。
 こちらを気にしているようだったので、僕はもう何回目になるのか、「気にするな」と
手を振った。

「心配ありませんよ勇者様、どうせすぐ別の条件で合格できますって!」
「一級討伐士を持つ者は人気が半端でじゃないですからな、退魔機構もそうそう剥奪でき
ません。ヘタなことをすれば世論を敵に回しますし」
「そうッスよ! 俺らも今までと変わんないし。元気出してください!」
 仲間たちが口々に僕を励ましてくれる。
「ありがとう。ごめんね、期待に応えられなくて」
 僕の形ばかりの返事にも、みんなは真剣な顔で言葉を継いだ。
「なに言ってるんスか! 無事に戻ってきただけでホッとしましたよ」
「命あっての物種ですからな」

315 :Stage.13 [14-4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:51 ID:DADMtNCE0

 みんな本当にごめん。僕もいい加減、自分が嫌いになりそうだよ。
 こんなに心配されてるのに……僕もう、そんなのどーでもいいんだよね。
 なんかいろいろ考えることがてんこ盛りで、もう頭の中ワヤクチャだよ。



 さてどうしよう。
 天下の魔王様まで投げちゃったこの大問題を、どうやって片付ける?




316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:21:53 ID:2Kwx4Yi90
支援

317 :Stage.13 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:23:19 ID:DADMtNCE0
本日はここまでです。
多数のご支援ありがとうございました。

しかしさるさんの次は行数制限なのでしょうか。
本日だけのイレギュラーだといいのですけど……。
私の様な文庫ページ換算で書いてる人間には、
さるさんより行数を制限される方がキツイですorz



318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:36:13 ID:JmBxZuRH0
>>317
作者さん超乙!
ドラクエの「リプレイ」は回を経る毎に苦痛だろうな〜
プレイヤーという神を超越しないと輪廻から抜けられないし…
次の展開に期待してます!

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 02:21:58 ID:VCCbLPbm0
>>317
久々乙
いつも楽しみにしてます。
マイペースで頑張ってください。

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 06:13:26 ID:HKT1s1M2O
>>317
乙!ずっと待ってました!
人間ダンプクソワロタwwwww

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 01:05:17 ID:7O8xhSyFi
タツミも大変だなー。
だから映画のレインマン好きなのか?
サヴァンとは違うだろうけど。

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 03:30:44 ID:Uk6B1+hWO
>『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
>「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
>能性があるということかな」
>『知らぬ。無いのではないか?』



ゾーマ様セツナス

323 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 07:56:34 ID:uGxHdLfqO
仕事放棄で読んでたわ。

324 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 22:36:26 ID:YJBNcftg0
保管庫を読み直していて気付いたけど
◆8fpmfOs/7wさんの冒険の書シリーズって
1〜3(ロト三部作)、4と5(天空三部作)がそれぞれ繋がってるんだな。
ドッキリだと思えばとか、勇者でも暗闇が怖いとか
キツネに化かされた魔王とか。改めてGJです。

325 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:01 ID:Ns50myli0




目を開ける。目の前にはジジイがいる。


???????


まったく状況が飲み込めない。



ジジイが口を開く。
どうやら俺は生き返ったらしい。この世界では神様の気まぐれで稀に死人が甦るようだ。
そして生き返ったやつは必ず教会や城に現れる。ジジイも神父だけあって何度か経験あるらしく意外と冷静だった。


326 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:48 ID:Ns50myli0
俺は結局生きていたという結果に妙な脱力感を覚えその場に座りこんだ。
ジジイは俺が無事だとわかると長々と説教を始めやがった。うぜえ。
無視して教会を出ようとすると村人が数人駆け込んできた。あろうことか皆俺に向かって礼を言いやがる。

ちっ他人にすがる事でしか救われない弱者どもが。
負け組みのオーラがプンプンするんだよ俺に近寄るんじゃねえ。てめえらの為じゃねーよ屑共が。

俺は結果的に負けたのだ。この史上最強の総長と恐れられた俺がぶっ殺されたのだ。
……負けて死ぬようならこの糞雑魚野郎共と変わらないじゃないか。
畜生が。

イライラと絶望で何も考えたく無い。誰も近寄るな殺すぞ。とっととその場を離れようとした。
が、その時意外な言葉が舞い込んできた。 

327 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:43:40 ID:Ns50myli0
よっ町の英雄さん今夜一杯どうだい?

酒…つまりこういう事だ。こいつらは畑の魔物を追っ払ってくれた礼に酒を飲ませてくれると。
ふざけるな今はそんな気分じゃねえ。喧嘩無敵の俺様が負けたんだよダボが。酒なんて飲んでる場合…
……酒……?酒…!?酒だと!?

と、いう事で夜町の酒場でささやかなパーティが開かれる事になった。それまで俺は寝る事にする。



−夜−


町の小さな酒場につくとそこには十数人の村人がいた。みな笑顔で気持ち悪い。
進められるままにまずビールを一杯飲む。癖があるがどうしてなかなかこれはこれでうまい。
ガキがこっちを見てる。あ?目が恐いだ?うるせー殴んぞあっち行け。

328 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:44:10 ID:Ns50myli0
と、ここで凄いものを見つけてしまった。バニーの姉ちゃんだ。しかもかなりの食い込み具合。
こっちの酒場ではこれがスタンダードなんだろうか。だとしたらかなり顔がにやける。
最初は気持ち悪いオタのコスプレ集団のような世界だと思ったがこれなら悪くないかもしれない。

さあさあグイっとやってくんな!糞共が俺にお酌しようと列を成してきやがった。
たくこれだから弱い凡人はよ…俺は進められるがままに飲む。


ー3時間後ー


ウップ…もうこの辺で…

バニー「英雄さんかっこいぃ〜!わたしのお酒も飲んでくださ〜ぃ!」

デへへ。飲む飲む!バニーちゃんのお酌なら樽でも飲むぞ!てこれウィスキー…しかも激強…
ウゲっなんとか飲み干し…て何かかえてんの!?えっマジで樽で持ってきたの!?

329 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:45:21 ID:Ns50myli0

例のごとく気づいたらベットの上だった。


とんでもなく頭が痛い。今日は一日中寝てようと決めた矢先ジジイが勢いよく部屋に飛び込んで来た。
うるせー殺すぞジジイ!あっ?これから会わせたい人がいるからすぐ準備しろだ?
知るかボケ!俺は二日酔いで死にそうなんだよ!寝かしとけや!
しかしどうやら相手はかなり金持ちらしくしかも飯を食わせてくれるらしい。
金持ち=肉。俺はすぐに準備を始めた。 

準備ができジジイの所に行く。外へでてジジイが羽のようなものを放り投げた。

その瞬間信じられない事が起こった。

体が宙に浮き空を飛んだ。あっという間に小さな城の前に到着した。
そしてさらに驚いたのが会わせたいというのはそこの王様らしい。粗相のないようにと注意された。
連れられるがままに城の中を進む。さすがにあちらこちらに武装した兵士がいる。
そして階段を上るとそこには大臣らしき人物と王様らしき人物がいた。

330 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:17 ID:Ns50myli0
俺は権力者と金持ちが嫌いだ。権力と財で肥えた豚は死ねと思っている。

適当に話を流していると突然聞かれる。

で、きみは旅人なのかね?何の目的で旅をしてるのかね?

考えた事もなかった。
訳もわからずこの世界に来て、ノリで化物相手に喧嘩売って、ぶっ殺されて、生き返って、
今王様の前にいる。俺はこれからどうしたいのだろうか。元の世界に帰りたいのだろうか。


否。


もはや別に帰りたくはない。未練無し。俺はしばらく黙りこくった。そして一つの単語が頭を過ぎる。


…世界征服…

331 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:40 ID:Ns50myli0
そうだ。どうせならこの世界を手に入れてやろうじゃねーか。一度死んだんだ今更恐いものなんてない。
男なら一度は誰もが夢見る世界征服。この世界で実現してやろうじゃねーか。

妙に興奮してきた俺は一応無難に強くなる為の旅をしていると答えておいた。
王様はうんうんと頷くと無茶なお願いをしてきた。今この世界のどこかを勇者が旅をしている。
会ったらそいつに協力しろと言い出しやがる。
奇跡的に生き返った事、魔物を倒したその腕力はもしかしたら俺も選ばれしものの可能性があるとの事だ。

…たくどこまでもおめでてえやつらだな。そんなわけあるかっつの。 
しかしながら旅の軍資金として500G、ちなみにこの世界の通貨はゴールドというようだ、と、
うまい昼飯を食わせてくれるらしいので気が向いたらなと答えておいた。
俺はこの世界について知らなさ過ぎる。利用できるものはなんでも利用しなければ。
いずれこの王とやらも俺の前に跪かせてやるぜ。


332 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:49:48 ID:Ns50myli0
その日は一日中情報集めと旅の準備に走り回った。得られた情報は

@魔王と呼ばれるやつが世界征服しようとしてる
A勇者と呼ばれるやつが魔王討伐の旅に出てる
B選ばれし者は神様の恩恵で(ちなみにこの世界の神様はルビスと言うらしい)生き返る事がある。

つまりまとめるとだな、俺にとって魔王も勇者も邪魔な存在なわけだ。
この世界の覇者になる為にはこいつらをどうにかしないといけない。
俺は考えた。
やはり最初どちらかに味方して片方を倒す。
そしてその後もう片方を潰すのが一番効率が良いだろう。ではどちらに味方するべきか。
普通に考えて勇者の味方だろう。しかし待て。どうも魔王がそこまで強いやつとは思えない。

果たして本当に強いやつが手下を使ってちまちま小さな村の畑なんぞ襲わせたりするだろうか?
もしかして世界征服などたいそうな事しでかしてるわりには数にものを言わせるだけの小心者で雑魚なのかもしれない。
もしくはただのバカか。どちらにせよスケールの小さい男だ。


333 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:50:57 ID:Ns50myli0
仮に勇者が屈強な大男だとした場合、トータル的に手ごわいのは勇者>魔王だろう。
つまり強い勇者を数の多い魔王軍と協力してブチのめし、その後魔王も倒すのが一番賢い。
完璧だ。自分の策士ぶりに我ながらビックリだ。
決まりだ。俺は勇者討伐の旅に出る事にした。
ただ今のままではどちらにも勝てそうにない。一手下でしか無いアホヤクザ猪に苦戦するくらいだ。
やはりここはどう考えても強力な武器がいる。さすがに釘ひのきだけじゃ心もとない。
それと仲間だ。忠実にして強い舎弟が必要だ。
ここで旅の目的が明確に定まった。

「この世界で新鬼浜爆走愚連隊を旗揚げして魔王を従え勇者を潰しその後魔王も葬る」







こうして俺の冒険は今始まった。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 00:06:46 ID:Tyx9tsZY0
総長さん乙です

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 09:16:35 ID:ZQ7JmTafO
樽ワロタwあの勇者タンが登場すんの楽しみに待ってます(*´д`*)

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 00:18:47 ID:d4HuW//B0
>>324
おまいさんのおかげで読み直すことができたわ。
ありがd

>>総長
乙!
へたすりゃDQNなのに、なんか感情移入しちまうなwww

337 :Stage.14 [1-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:18:10 ID:h37KA7+K0

 ――アイツはじっと俺の言葉を聞いていた。

 携帯の向こうで。
 画面の向こうで。

 決して混じり合うはずのない二つの世界。
 俺たちの出会いは、それ自体はとんでもない奇跡であるはずなのに。
 なのに。

 なあ、タツミ?
 俺はお前が大嫌いだよ。死ぬほど嫌いだ。
 だけど俺は、どうしてもお前を嫌うことができない。
 それも、お前がそう望んでいるからなのか。
 俺の気持ちも、ぜんぶお前が決定していることなのか。




338 :Stage.14 [1-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:19:29 ID:h37KA7+K0


「さあね。で、これは復讐なの?」




 ――わかんねえよ。




【Stage.14 Cursing My Dear】
 [1]〜[15]

Prev >>284-315 (Real-Side Prev >>29-40)
 ----------------- Real-Side -----------------

339 :Stage.14 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:21:00 ID:h37KA7+K0

 1周目。

 俺が「現実」を「夢」で見るようになったのは、最初の旅の中盤くらいだった。
 「夢」の中で俺は、タツミという5、6歳くらいの幼い少年をすぐ近くから見下ろして
いた。まったく知らない世界――そこは、すべてが見知らぬ物ばかりで、しかも毎晩のよ
うに見るもんだから、本気で俺の頭がおかしくなったのかと心配になった。

 だが、タツミがしょっちゅう夢の中でやっている「ゲーム」のストーリーが、たった今
自分が歩んでいる冒険を簡略化したものだと気づいた時、俺はこの「夢」を、アリアハン
のはるか未来の世界を見ているのだと解釈した。
 謎の「ゲーム」とやらは俺の冒険譚をつづった絵本のような物で、あの小さな男の子は
それを楽しんでいるのだろう、と。そして俺のことが後世に伝説として残っているのなら、
俺は魔王討伐に成功したに違いない、なんて、前向きというか、今思えばずいぶんのんき
に考えていたもんだ。



340 :Stage.14 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:22:02 ID:h37KA7+K0

 妙な「夢」はその後もずっと現れたが、俺はいつしかそれを楽しむようになった。メモ
を取ってあれこれ考察したり、仲間たちにもまるで知らない文化について語ってやるのが
日課になった。
 いつかこのタツミって子に会ってみたいなと、そんなふうに考えたりもした。

 旅自体は決して楽ではなかったが、それなりに順調に進んだ。エリス、サミエル、ロダ
ム。みんな頼もしい、強い絆で結ばれた大切な仲間たちだ。
 特にエリスとは……まあ当然のように恋仲になって。この旅が終わったら結婚しようと
約束を交わした。プロポーズの瞬間は、ホント死にそうなくらい緊張したなぁ。
 泣きながら抱きついてきたエリスが、デバ亀してたサミエルに気付いてイオナズンで吹っ
飛ばしたときは、ちょっと早まったかと不安になったが。

 やがてバラモスを倒し、センセーショナルなゾーマ様の登場に再び旅立ちを決意し、ギ
アガの大穴から地下世界に赴いた。
 俺はそこで、死んだはずの親父が生きていたことを知る。生きてたなら連絡くらい寄越
せと憤りも感じたが、やっぱり嬉しかった。

341 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/05(土) 22:23:32 ID:+3IqaeyH0
支援

342 :Stage.14 [3-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:24:31 ID:h37KA7+K0

 でも結局助けが間に合わなくてさ。親父は俺の目の前で殺されてしまった。
 つらかったよ。その場で崩れ落ちそうだったが、それでも仲間たちが懸命に励ましてく
れたお陰で、俺たちはついに魔王を倒すことができた。

 が、今度は魔王のバカが半端な仕事しやがってたせいで、故郷に帰りそびれるという始
末。最後までハタ迷惑な野郎だ。
 そこも俺はグッと堪えたさ。おふくろやじいちゃんには悲しい思いをさせてしまうが、
やるべきことは果たした。あの二人ならきっとわかってくれる。俺と、そして親父のこと
を誇りに思ってくれるだろうって……。

 ――そこで俺は、最初のループを体験する。

 確かに倒したはずなのに、いつの間にか魔王の城に行く直前に戻されていたのだ。ラダ
トームでの華やかな凱旋式も記憶に新しいのに、なぜかアレフガルドは再び闇に閉ざされ
ていた。
 メダパニ状態の一歩手前だった。仲間たちに聞いたら、魔王打倒を願うあまり幻でも見
たんじゃないかと笑われた。マジで?



343 :Stage.14 [3-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:27:57 ID:h37KA7+K0

 俺が納得できないでいると、ロダムが「こんなもの持っていましたっけ?」と首を傾げ
ながらなにかを差し出した。まさに凱旋式のメインイベントで、ラダトーム国王ラルスか
ら授与された「ロト」の証しだった。
「ロトの称号を授けよう!」
 という国王の言葉に国中が沸き返り、そのあまりの騒ぎっぷりに俺はつい「ロトってな
に?」と聞き返したら、全員がひっくり返ってしまった。いやだって、アレフガルドじゃ
立派な称号らしいが、俺にはその原義がよくわからんし。
 なぜ手元にあるのか? 仲間たちはそれについても覚えがないと言う……。

 ふと「真の勇者の称号がなんたら」とか聞いたのを思い出したんで、俺たちは先に竜の
女王の城に向かった。魔王の城を目の前にしてそんな寄り道する余裕もなかったんだが、
どうしても気になってさ。
 そこから天界へ昇り、俺たちは神竜と戦うことになる。



344 :Stage.14 [3-3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:29:52 ID:h37KA7+K0
 神竜は強かったが、俺たちも弱くはなかった。ゴリ押しで叩いてたら意外と早く倒すこ
とができた。偉そうにしてっからだ。

 そしたら願いを叶えてやろうと言われた。親父の復活さえ可能だって!?
 信じられなかった。この俺が、あの時は心の底から感謝したもんだよ。魔王討伐の後、
あの幻(?)の通りにアリアハンに戻れなくなったとしても、これならおふくろだけが残
されることはない。息子としてはロクな孝行をしてやれなかったけどさ……これで少しは
許されるんじゃないかなぁ、って。

 神竜に父親の復活を頼んで、アリアハンで久々に親父とツラを会わせた。
 もう言いたいこと、山のようにあった。まずは最初に恨みつらみをぶつけてやる予定だっ
たけどなw 何年も家ほったらかしてこのクソ親父、おふくろがどんだけ苦労したかわかっ
てんのか!
 んで十分反省したら、改めて「おかえり」って言ってやろう。
 そんな風にさ、いろいろ考えてたんだ。

 なのに……最初にちょっと会話しただけで、急にフッと意識が無くなって。


 その冒険はリセットされた。

345 :Stage.14 [4-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:30:52 ID:h37KA7+K0

 2周目。

 次に意識が戻ったとき、俺は再び16歳の誕生日の朝を迎えていた。
 ……なぜこんなことが起こったのか、まったく理解できなかった。あれだけ過酷な旅を
したにも関わらず、エリスたちはなにも覚えていないという。
 なんだこれ? なぜ俺だけが前の冒険の記憶を持っている??

 起きたことは強引に解釈するしかなかった。前の冒険の記憶は、例の不思議な「夢」と
はまた別の「予知夢」かなにかで、ルビス様が事前に教えてくれたのかもしれない。
 急げばあの時は助けられなかった親父も死なせずに済むだろう。サマンオサで偽国王に
理不尽に殺されてしまった人や、前の冒険では間に合わなかった人たちを助けることがで
きるんじゃないか。

 俺は死に物狂いで突き進んだ。一日でも一秒でも早く進めば、それだけ誰かを救えると
信じていた。でなきゃやってられなかったよ。あの冒険のすべてが夢オチとか、冗談じゃ
ねえ。俺だけが「未来」を知っていることに、なにか意味を持たせたかった。

346 :Stage.14 [4-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:31:37 ID:h37KA7+K0

 旅には同じメンバーを連れて行った。なんど過去の話を振っても誰もなにも思い出して
はくれなかったが、それでも俺の無謀とも言える旅程に必死に付いてきてくれた。
 やっぱりこいつらはいい連中だ。大事な仲間だ。――そう自分に言い聞かせて。
 エリスに結婚は申し込まなかったけどな。せめて彼女だけでも思い出して欲しかったか
ら。だから、なんか裏切られたようで、どうしても許せなかったんだ。

 あの不思議な「夢」もまた見るようになった。ボケッと平和に過ごしているガキが腹立
たしくて、俺はもう無視することに決めた。


 結局、俺たちがどんなに頑張っても、未来は変わらなかった。
 前の冒険より数ヶ月も早く到着したってのに、レイの父親の勇者サイモンも、他の人た
ちも、みんな間に合わずに死んだ。親父もやはり俺の目の前で殺されてしまった。



347 :Stage.14 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:33:05 ID:h37KA7+K0

 なんで? どうして? 時間軸おかしいだろ!
 わかっているのに助けられない。
 苦しんでる俺を、エリスたちは本気で心配してくれる。だが本当の意味で俺の苦しみを
理解できてるわけじゃない。否応なく孤独感は増していく。心がすさんでいくのが自分で
わかった。

 それでも俺たちはなんとか魔王を倒した。わかりきってた結末だから、達成感はなかっ
たが。凱旋式もその後のパーティーでも、俺はぼんやりと酒を飲んでるだけで、仲間も扱
いに困ってるみたいだった。
 どうせこのあとは……とか思ってたら案の定、前回と同じくいったんショートループに
巻き込まれて魔王を倒す前に戻された。
 そこから「予定通り」天界へと向かい、神竜と戦って今回も短期決戦で勝利できた。
 願いを叶えてくれるというが……しかし二度も救えなかった人々のことを考えれば、
俺だけ親父を生き返らせるなんて、できないだろ?
 せめて平和な世の中に似合う娯楽でも増やしてやろうかって。
 仲間の猛反対を押し切って、俺は半ばヤケになりながら新しいすごろく場を頼んだ。

 そのすごろく場でゴールした瞬間、フッと意識が遠のいた。
 ああ、また最初からだと……ゾーマが大喜びしそうな絶望の中で、俺は眠りについた。

348 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 22:34:34 ID:xScTyvd70
 

349 :Stage.14 [6-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:35:04 ID:h37KA7+K0

 3周目。

 16歳の朝に戻ったと気付き、俺はすぐに1回目の自殺を試みたが死ねなかった。寝間
着のままアリアハン王の前にワープしてきたバカは俺くらいだろう。
 そのまま外出許可をもらい、その足で外に出て魔物に食われてみたが、やっぱり無駄に
生き返るので早々に諦めた。死ねないってのもある意味呪いだよなぁ。

 家に戻ったらおふくろが半狂乱になっていた。当然だな、前日までは「明日から勇者と
して頑張るぞ!」とか意気込んでたヤツが、起きるなり割腹自殺を図ったら何事かと思う
わ。いちいち説明するのも面倒だったから無視して旅の支度をし、ルイーダんとこに行っ
た。メンバーは全員違うヤツらで、遊び人とか盗賊とか、なんか楽しそうな連中ばかり適
当に見繕った。……あいつらと一緒にいても俺がツライだけだし。

 かったるい。もはや他人の生き死になんかどうでも良かった。飛ばせるイベントはガン
ガン飛ばした。すごろくやら闘技場やらに入り浸り、冒険はまるで適当だった。さっさと
役目を降りても良かったが、実は勇者ほど金回りのいい職業はないってことは知ってたか
ら、とりあえず続けていただけだ。

350 :Stage.14 [6-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:35:44 ID:h37KA7+K0

 例の奇妙な「夢」は相変わらず見続けていた。
 タツミの世界は平和そのものだ。その頃に気付いたが、向こうはどうもループしていな
いようだった。こっちと比べると恐ろしく時間の進み方が遅いが、前の冒険の頃に見てい
た「夢」よりは明らかに季節が進んでいる。
 なんか知らんが向こうはこれから「ショウガッコウ」とやらに通うことになるらしい。
こちらのことなど露知らず、ガキは妙にはしゃいでいる。
 ったく、俺はお前くらいの年の頃に親父が死んだとか聞かされて、同時に勇者の十字を
科せられたんだからな。こいつブチ殺して入れ替わりてえよ、ホント。

 そんなんでも魔王を倒してしまったんだから、世の中は本当に適当だ。
 親父はまた目の前で死んだ。いっそ火山に落ちた時点で素直にくたばっててくれりゃ良
かったのに。

351 :Stage.14 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:36:54 ID:h37KA7+K0

 ついでだから神竜も倒した。願いはエッチな本ってやつ。別に勇者の肩書きのお陰で女
に不自由はしてなかったが、神様直送便がどんだけスゲエんだって気になったから頼んで
みた。期待してたほどじゃなかったが。

 冒険の最後がエロ本で終了。そして振り出しに戻されるわけだ。
 ったく、すごろくの落とし穴よりひでえ。あんまりひどいと、なんか逆に楽しくなって
くるよ。人間どうしようもなくなると笑うしかないって言うが。
 あははは。
 あはははははははははは。
 






 誰か助けてくれ。




352 :Stage.14 [8-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:40:22 ID:h37KA7+K0

 4周目。

 ……感覚的なものだが、前回から随分と間が空いていたように思う。うんざりしつつも、
久々に冒険に出るような軽い高揚感があった。

 それは間違いじゃなかったんだろう。例の「夢」の中のガキが、急にデカくなっていた
のだ。俺と同い年くらいまで成長していて、しかも驚いたことに、アイツは気味が悪いほ
ど俺とそっくりな顔をしていた。
(これなら本当に入れ替われるな……)
 そう思ったがすぐに打ち消した。くだらねえ、「夢」の中の相手とどうやって入れ替わ
るってんだ。

 変わったことはもう一つあった。俺の他にもう一人、過去を覚えてるヤツがいたのだ。
今までに何度も会っていたのだが、敵同士だったので気付かなかった。
 切っ掛けは些細なことだった。

353 :Stage.14 [8-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:41:02 ID:h37KA7+K0

『何度来ようとも同じこと。このバラモスがどれほど偉大か、思い知らせてくれる』
 はいはい、どうせ俺に倒されるのにご苦労なこって。心の中で嘲笑しつつ(半分は自
嘲だったかもしれない)、剣を構えたときだった。

「……あれ、前はハラワタ食うとか言ってなかったっけ」
 今回の冒険では初対面なのに、「何度来ようとも」だと?
「あんたまさか、前のことを覚えてるのか?」
 そいつの顔色が変わった。
『貴様も覚えているのか!?』
 勇者と魔王が妙な会話を始めたことに仲間たちは動揺している。ウザいんで俺はそい
つらをラリホーで眠らせ、バラモスにバシルーラで片付けてもらった。


 バラモスが記憶を引き継ぐようになったのは、俺の三回目の冒険の時かららしい。
 二回目の頃からも、なんとなく俺の顔に見覚えがあるなぁとは思っていて、三回目と
四回目(つまり今回)は、最初からしっかり思い出していたそうだ。

354 :Stage.14 [9-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:42:33 ID:h37KA7+K0

『先を知っておるのに、侵略はある点を境に一向にはかどらぬ。まだ力を持たぬうちに貴
様を始末しようと刺客を差し向けたが、それもつど邪魔が入る』
 立場こそ反対だが、こいつはこいつで俺と同じような苦悩を抱えていたようだ。
「しっかし、よりによってお前かよ。こちとら許嫁だった女にも忘れられてんだぜ?」
『こちらのセリフだ。われがなんど進言申し上げても、ゾーマ様は夢でも見たのだろうと
一笑に伏される。たかが人間に討たれるなどと、クドく言えばお怒りに触れるだけだしの』
「あー……上の理解が得られない中間管理職ってのも、大変だな」

 取り引きしないか。俺はバラモスに提案した。紙とペンを用意させ、俺に関わる親類縁
者や親しい者たちの名を片っ端から書き連ねて、手渡した。
「この世界をくれてやる。人間を支配するったって、全員皆殺しにしようってんじゃない
んだろう?」
『な、なにを……』
 ぽかんとしているバラモスに、俺はもっと呆れるような内容を告げてやった。

355 :Stage.14 [9-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:44:06 ID:h37KA7+K0

「お宅の上司、こっちにも簡単に手を出せるほどの力があるのに自ら侵略に来ないのは、
上の世界はとりあえずあんたに一任してるってことだよな? だったらそこに書いてる人
間たちだけは優遇してほしい。その人数なら現場レベルでこっそり調整できるだろ」
『われを信用するのか?』
「してない。でも他に頼めない。でさ、もしもゾーマ直々に上の世界もいじりだして、あ
んたでも庇いきれなくなったら、その時は……逆にあんたがみんなを、苦しまないように
一瞬で楽にしてやってくれ」
『勇者の言葉とは思えんな』
「それくらい思い切らなきゃ、この輪廻から抜け出せない気がする。完全に魔王に支配さ
れた世界でも、それもひとつの未来だろ? 人間中心の世の中が魔物中心に変わるってだ
けで、おふくろも親父も、俺の仲間たちも、来世でモンスターに生まれ変われば、普通に
暮らすんだろうし」

 淡々と語る俺にバラモスさえビビっていた。その時の俺はどんな顔をしていたんだろう。
「俺を封じてくれ。完全に死ぬとアリアハンに戻るだけだから、生かさず殺さずで。つい
でに永遠に苦しむような呪いでもかけてくれよ。その手のは得意だろ?」
 未来を得るために人類を売り飛ばすような勇者には、それくらいしないとなぁ?

356 :Stage.14 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:45:30 ID:h37KA7+K0

 バラモスは承諾した。承諾せざるを得ないだろう。
 これでもかってくらい何重に呪術を施した丈夫な石棺が用意されて、俺はそこに押し込
められた。
「なんか、妙に寝心地いいんですけど」
 中は柔らかくて肌触りのいいシルクが敷かれている。むしろこれじゃあ……。
『さらばだ』
 バラモスの言葉と同時に、石棺の蓋が重々しい音を立てて閉じられていく。同時に強烈
な眠気が襲ってきた。
『安らかに眠っておればよい。これ以上苦しむ必要もなかろう』
 なんだよこいつ、いきなり約束破りやがって。
 魔王のくせに――。



357 :Stage.14 [10-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:47:06 ID:h37KA7+K0

 意識が薄れるのと同時に、いつもの「夢」が現れた。タツミは「ゲーム」が映し出され
ている「テレビ」の前で、なにやら困っているようだった。
「おっかしいなぁ。バラモスごときに負けるなんて。しかもいきなりバグるし」
 ヤツが見つめているテレビの中にはコミカルに描かれたバラモスがおり、「アルスたち
は ぜんめつした!」と表示されている。
 随分あっさりした記述だ。その「ぜんめつ」するまでの行程にどれだけの想いがあった
のか、こいつにはわからないだろう。
 画面は静止していて、なんの操作も受け付けないようだ。タツミはしばらくうなってい
たが、「まあいいか」とスイッチを切った。テレビが暗くなり、俺の世界は眼前から消え
た。あっちはどうなっただろう。バラモスはうまくやってるだろうか。

 今のタツミは「コウコウセイ」とやらになっていた。父親は単身赴任で家におらず、母
親はお稽古ごとだのショッピングだの、自分が楽しいことを優先するタイプなので息子に
はほとんど構っていない。それが少し寂しいと思いつつも、タツミは友人やガールフレン
ドに囲まれ、それなりに楽しく暮らしている。

 俺は「夢」の世界でタツミと一緒に時を過ごした。
 そのまましばらく経った、ある日のことだ。

358 :Stage.14 [11-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:48:01 ID:h37KA7+K0

 いきなり場面が飛んだ。
 学校からの帰りがけに、戸田和弘とマクドなんとかに立ち寄ってダベっていたはずが、
いつの間にか家に戻っていた。
 場面が飛ぶのは今までもよくあったことだが、タツミの様子がおかしい。
「まさか……嘘だろ」
 薄暗い部屋の中で電気もつけず、座り込んでブツブツと呟いている。
「あいつの妹が? 冗談だろ? ……うぐっ!」
 いきなりタツミがむせた。口を押さえて便所に走っていき、ゲホゲホと吐いている。
 キッチンでうがいをして落ち着くと、タツミはまた部屋に戻った。
 しばらくぼうっとしているようだったが、やがて物憂げにテレビの方を見た。あれ以来
ずっとやっていなかった「ゲーム」の機械を引っ張り出し、スイッチを入れた。

 嫌な予感がした。なにが起きるか想像がついた。
 やめろ、ソレに触れるな! あのまま終わらせてくれ! 俺をもう起こさないでくれ!
 俺の祈りは届かず、グンと意識がどこかに引っ張られる感覚があって――。

359 :Stage.14 [11-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:49:30 ID:h37KA7+K0


 目を開けると、俺はダーマ神殿の入り口に立っていた。あの時バラモスのバシルーラで
アリアハンに飛ばされた仲間たちも、何事も無かった顔で俺の後ろに立っている。
「恨むぞ、タツミ……」

 この時になって俺はようやく、この世界と「ゲーム」との因果関係を把握した。
 あっちが「現実」なのだ。
 俺のいるこの世界こそが、ただの「ゲーム」だったのだ。俺たちが物語を作っているん
じゃない、すでに出来上がっているストーリーのコマとして、アイツに動かされているだ
けなのだ。俺も、仲間たちも、魔王ですら。そのことに俺はやっと気がついた。

 再会したバラモスはすべてを諦めたような顔をしていた。お互いに一言も交わさず黙々
と戦い、シナリオ通りにヤツは俺に弊され、ことは運んでいった。
 地下世界。魔王討伐。ショートループ。天界。そして神竜。
 次の願いはなににしようか。もう新しい選択肢は無かったはずだが。

360 :Stage.14 [12-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:51:01 ID:h37KA7+K0

 そこで、奇跡が起きた。


 いきなりそれまでとは違う流れになった。神竜が急に妙なことをほざきだしたのだ。
『オマエノ ネガイヲ カナエヨウ』
 ワケもわからず立ちつくしている俺に、神竜は言った。
『オマエハ タツミニ ナリタイノダロウ?』

 お前はタツミになりたいのだろう?

 意味が――理解できるまでに随分かかった。
 返事をするまでには、さらにかかった。

「……本当、に?」
 掠れている自分の声が、他人のものみたいだった。



361 :Stage.14 [12-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:52:00 ID:h37KA7+K0

【もし目が覚めたら そこが現実世界の一室だったら】


 血を吐くような思いで神竜に願った瞬間。
 渡されたのは、小さな精密機械。
 遠く離れた個人と個人を一瞬でつないでしまう、魔法のような道具。
 開いた途端にコールが始まり、出た相手は、夢の中のあの少年で――。
 
「初めまして、タツミ君。キミ、勇者をやってみる気はないかい?」
 考えるより先に、言葉が出ていた。

   ◇
 

362 :Stage.14 [13-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:53:32 ID:h37KA7+K0

『……そして僕と入れ替わったわけだ』
 俺の長い話しが終わり、携帯の向こうでタツミは大きく溜息をついた。
『で、これは復讐なの?』
「わかんねえよ」
 いや、どうなのかな。考えないようにしてきたが。
 俺はタツミを生け贄にして別な世界に逃げた。それが事実だ。これからタツミは、俺の
代わりに永遠に終わらない伝説をグルグルと紡いでいかなければならない。
『まあ、あくまで僕がクリアに失敗すればだけどね』
「そうだが……」

 タツミの声は普通だった。いつもよりやや冷たい感じはしたが、俺が想像していたより
ずっと冷静だった。俺はもっとこう――
「お前、今の話しを聞いて、なんとも思わないのか」
『なにが。君が僕を身代わりにしたこと?』
「ああ、まあ」
『別に。なに、僕になんか言ってほしいの?』
 すっかり呆れているようなタツミの返答に、俺は戸惑った。
 俺が、なにを言ってほしいって……?

363 :Stage.14 [13-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:54:30 ID:h37KA7+K0
 
『あのさー。なんか僕ムカつかれてるみたいだけど、それ僕のせいじゃないよね。絵本の
登場人物に、ループするから読むなって恨まれても、それ読者の責任か?』
 こんな理不尽な逆恨みもあるかよ、いい加減にしてくれ。

 バッサリ切り捨てられ、俺は完全に言葉を失った。
 タツミは続ける。

『さっき言ってたよね、どうしても僕を嫌いになれないって。イイコぶるのはよせよ、君
の目の前にあるそのゲーム、キャラの気持ちまで操作できないなんて、わかるだろ。単に
僕に罵られたくないだけじゃないの。それとも、僕への哀れみかな? バラモスが君を封
じた時みたいに。僕ってほら、割と物わかりはいい方だからさ。諦めて運命を受け入れて
くれるんじゃないかって期待してるんだろ? だからせめて俺はお前を許してやるって?
自己肯定するにしても、それはちょっと浅ましくないかなー』

 …………。

364 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/05(土) 22:55:47 ID:+3IqaeyH0
支援

365 :Stage.14 [14-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:56:00 ID:h37KA7+K0

『まったく。一度は自分を犠牲にして、人類を引き替えにしてまで未来を勝ち取ろうとし
たってとこまでは、カッコ良かったのにさ。聞いててそこは感心したよ、さすが主人公だ
よなーって。でもだったら最後まで貫いてほしかったな。諦めて逃げ出してハイ終了はな
いっしょ。なにこのクソゲー。ねえ?』
 …………。

『悪いけど僕はクリアするよ。こんな理不尽な要求、呑む気はさらさらないね。だいたい
さ、せっかく僕の親が僕のためにって買ってきたプレゼントに、こんなヒドイ仕打ちをさ
れるって、倫理的に許されるのかよ。親子の愛情とかさ、もう完膚無きまでに踏みにじり
まくってるよね。どう思う、正義の味方の勇者さんとしては?』
 …………。

『でも君だって本当はわかってるんだよね? 自分の望みがどういう意味を持つのか、死
ぬほどよーっくわかってる。だから君は僕を素直に憎めない。可哀想だとは思うよ、同情
する。でも僕はどうなのかな。ねえ、君と僕と、どっちが可哀想なんだろうね?』
 …………。

 俺は…………。

366 :Stage.14 [14-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:57:41 ID:h37KA7+K0

『僕はただゲームをしていただけだ』
 俺は……なにも答えられない。

『ゲームをしていただけなんだよ。平和な世界で、ちょっとしたヒマ潰しに、古いゲーム
を楽しんでいただけだ』
 俺はなにも答えられない。

『でも――君にそれは関係ない。僕に君の苦悩が関係ないように、君の苦悩に対して僕の
権利や主張は関係ない。そうだろう? 運が悪かったんだろうね。僕たちは敵でも味方で
もなくて、起きてしまった現象に巻き込まれて、そこでお互いに譲れないってだけでさ。
だから君は悪じゃないんだ。僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
 なにも、答えられない。

『とりあえず僕が君に要求するとしたら、そっちの時間で明日の朝くらいまで、テレビを
消しててくれってことくらいかな。なんかね、見られてるのがわかるんだよ。どうも落ち
着かないんだ。どうせ金輪際、君にナビを頼むこともないだろうしね。でも本体のスイッ
チは切らないでくれよ? それとも僕と心中したいかな。僕は止めようがないけど』

「いや……切らねえよ」

367 :Stage.14 [15-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:59:31 ID:h37KA7+K0

『ありがとう。――ああそうそう、それともうひとつ』
「なんだ?」
『優しいバラモスさんはできなかったみたいだけど、僕はそんなに優しくないからさ。代
わりに僕から、君に呪いをあげるよ』
 タツミの声が、急に明るくなった。


『それでもね、僕は君が好きだよ。友達になりたいって今でも思ってる』


「……友達?」
『そう。だってすごくない? ゲームの中の勇者と友達になれるとかさ?』
 まるで子供がはしゃいでいるようなタツミの問いかけに。
「そうだな。すごいことだよな」
 俺は、まるで中身のともなわない空虚な言葉を返す。
『だろ? だからさ、友達になってよ』
「いいぜ。友達になろう」

368 :Stage.14 [15-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:01:26 ID:h37KA7+K0

『良かった! 嬉しいよ。あ、画面は消してほしいけど、なにかあったらいつでも電話し
ていいからね。困ったことがあったらなんでも聞いて。簡単なアドバイスくらいしかして
あげられないけどさ』
「わかった。そうする」
『それじゃまたね。おやすみ、アルス』
「ああ――おやすみ、タツミ」


 電話が切れた。
 俺はまず、言われたとおりテレビのスイッチを切った。電気はつけていなかったから、
部屋が暗くなった。カーテン越しに差し込む街灯の明かりが、ぼんやりと室内を照らして
いる。
 次に電源が入ったままのゲームの本体をテレビ台の中に押し込んだ。コントローラーの
ひもを巻いて、それもいっしょに中に入れてガラスの戸をカチッと閉める。

 それから俺は、上着を脱いでベッドの中に潜り込んだ。
 ただ眠りたかった。
 バラモスが用意してくれたあの石棺が――異常に恋しかった。
 

369 :Stage.14 [atgk-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:03:06 ID:h37KA7+K0
タツミ「というわけでっ、君に同情の余地はこれっっっっっぽっちもないね!」
アルス「ひでえっ! お前最低だ!」
タツミ「なんとでも言えば〜?
   さてと、こんな雰囲気の悪いところで本当に申し訳ありませんが……」
アルス「ちょ、やるの!? この状況で!?」
タツミ「うるさい勇者だなー。いただいたレスへの返答は僕らの仕事でしょ。
   それでは恒例、サンクスコールです!」

アルス「>>318様、わかっていただけますか俺のこの苦悩!!?? おっしゃる通り、
   めちゃめちゃキツイんですよ〜。あううう」
タツミ「嫌だわぁ、この期に及んでまだ読者様の同情を買おうとしてる。
   >>319様、暖かいお言葉ありがとうございます。マイペースで頑張りまーす♪」
アルス「はぁ〜……。まあ仕事はきっちりしないとな。
   >>320様、長いことお待たせいたしました。レイはマジで強いんだ、
   正直タイマン張ったら俺でもけっこうヤバイかもな」
タツミ「>>321様、細かいところまで気がついてくれて嬉しいです。
   過去の嫌なことを思い出した時ってあんな感じなんですよ。困ったもんです」
アルス「>>322様、実は前述の通りバラモスだったんですが、あいつもかなり苦労してたみたいで」
タツミ「>>323様、仕事より優先して読んでいただけるとか、本当に職人冥利に尽きますね」
アルス「リアルタイムでのご支援を含め、皆様にはいつも感謝です」

370 :Stage.14 [atgk-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:04:06 ID:h37KA7+K0

アルス「しっかし俺もここまで容赦なく叩かれるとは思わなかったぜ……orz」
タツミ「だって僕、 偽 善 者 って嫌いだし」
アルス グッサ━━━━━ΣΣ( Д ;;;)━━━━━━>ッ!!!
タツミ「まさか勇者様が『友達』を身代わりにして逃げるとはね〜?」
アルス「お、俺だって、俺だって…… ウワーン! (((((((((((((((((+。・::。゚+:。ヽ(TДT)ノ。:*゚。::・。


タツミ「……ちょっとやりすぎたかな。
   それでは皆様、次回ゲームサイドでお会いしましょうっ」





本日はここまでです。
20行制限のせいで細切れ&投下に時間がかかってしまって申し訳ありません。



371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 23:18:47 ID:xScTyvd70
リアルタイム遭遇キタ、GJ!

商人→盗賊→遊び人→賢者と仲間の呪文コンプのために
ジパングの洞窟に籠ってメタルスライムを狩り
全員レベル99になるまでルビスの塔最上階に籠ってはぐれメタルを狩ってた
自分の粘着プレイを振り返ってちょっと泣いた

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 01:40:52 ID:J6Ac38+tO
>>369でフイタwww
ここでサンクスコール持ってくるとは

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 02:16:58 ID:yCuZcUqL0
不覚にもバラモスのループ仲間に対する心遣いにキュンとなったw

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 02:48:43 ID:GVyGrmfSO
俺は2回目は勇者の名前と性別変える事にしてるから…
大丈夫だよな!?そんなひどい思いさせてないよな!?

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 09:21:27 ID:AEVegvsU0
>374
女から男になる場合は歴代主人公スレの女3主になるだけだが
逆の場合(ryさらに3回目で男に戻ったら(ry

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 12:32:09 ID:CHN8hwIgO
バラモスに泣いた°・(ノД`)・°・

377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 01:43:10 ID:Z/9TfQ4k0
これでアルスの背景はほぼ明らかになったな
あと謎なのはタツミの過去とアナザーサイドか

しかし誰もタツミの正論ラッシュに突っ込まないのなw
どうせ何か考えがあるんだろうとか思われてるのかw

378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 03:22:57 ID:4Lc9TVaw0
バラモスたん・・・。
何らかの方法で、終わらせられるといいのですが・・。
それにしても、リアルサイドでも、いろいろ他の勇者が暗躍してるし、どうなってしまうのでしょうね。

うちもドラクエ3は何度かやってるからなぁ・・・。主人公、すまん・・・。


379 :携帯まとめ人:2008/04/07(月) 21:50:18 ID:55F3qjQM0
いつもお世話になっております、携帯サイトまとめ人です。
ひとつ職人様と読者様にご協力をお願いしたいことがございます。
詳しくは下記スレに記載があります。
「避難所、まとめサイトについて」
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/l50
お手数ではございますが、ぜひご協力の程よろしくお願いいたします。

380 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 21:53:08 ID:nMlf4H/3O
4の主人公とか最悪だろうな…

381 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:02:54 ID:EgXIK94q0
5主人公ヤバくないか?
10年奴隷、8年石化、嫁と離れ離れ、母親死亡
それでもようやく平和になったと思ったらリセット
ゲーム内不幸はダントツで、
一番幸せになれそうなエンディング後の未来がパーだからな……

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:13:52 ID:oHYCou0a0
そういえば以前出て来たリアルサイドの大ボスっぽい人、DQ5の主人公だったような・・・

383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:17:51 ID:ioLpoqEh0
5はゲーム内時間経過が年数レベルだから
何度も何度もループしたらもう逃げたくなるよな

384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/08(火) 11:42:20 ID:D7eWdLpuO
だが忘れないでほしい。
5の勇者は主人公じゃなくガキのほうだということを!

385 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:29:33 ID:uW0kET350
一応ジジイにも世話なったし挨拶しとくか。頼むから無茶はするなたまには帰ってこいだと?
これだから辛気臭い年寄は嫌いだ。なにが悲しくてこんなじいさんの顔見に帰らなきゃいけないんだ。
まああのビールとバニーの姉ちゃん見にたまには戻ってやってもいいがなウヘヘ。
ついでに生きてるかどうか確認しに帰ってやるか。いつポックリ逝くかわかったもんじゃねえ。
ジジイは名残惜しそうにまた例の羽を使って帰って行った。 

さて、次の目的地だがどうやらここから南に大きな町があるようだ。
どうせなんのあても無い事だし、とりあえず人の多いとこの方が色々情報が集まるかもしれない。
俺は南を目指す事にした。
ちなみにここでの収穫は「たびびとのふく」と「やくそう」をいくつか買った。
道具屋のおっさんが旅にでるなら絶対持ってけと勧めたからだ。
あっそれと城での飯は超絶最高にうまかった。あの肉の味は忘れまい。



町を出た。

しばらく歩くと頭に防災頭巾の顔色の悪いガキが道端に立っているのを発見する。

386 :総長じいさんと出会う2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:30:43 ID:uW0kET350

!?


そいつは俺を見るや否や弓をかまえ矢を放った。間一髪でかわす俺。
なんてガキだ。親のしつけはどうなってるのだろうか。
知らない人に矢を放っちゃいけませんとは教えられなかったのだろうか。

そんな事を考えてるうちに第二射が飛んで来る。
太ももに刺さった。痛い。しかしこの距離だと反撃できん。じわじわ弄り殺しになるだけだ。
さてどうしたものか。よく見ると連射は出来ないらしくリロード中に隙ができている。

ここだ!俺は勢いよくガキに向かって走りだした。矢が飛んで来る。盾で強引に叩き落す。
そして次の矢を弓に掛ける瞬間俺の中段回し蹴りが直撃した。
中段といっても身長差でちょうどガキの顔面にヒットする。
間髪入れずに左の順突き、右の逆突きが入る。

俺がもっとも得意とするコンビネーションだ。ガキはその場にうずくまる。勝った。
俺は親父の影響でジャリの頃から空手を仕込まれてきた。まさかこんなとこで役に立つとは。
こいつはおそらく町で聞いた魔王の手下の“魔族”と呼ばれる人種だろう。

387 :総長じいさんと出会う3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:31:17 ID:uW0kET350
こんなガキの頃から躊躇無く人に向かって矢が撃てるなんてなかなか感心できる。
昔連れにひとし君というのがいたが、そいつは親が極道で小学生のうちから妙に刃物の扱いがうまかった。
もしかして魔族はそれが一般的なのだろうか。
なんてデンジャラスな人種だ。

立ち上がった色の悪いガキは命乞いしてきた。無論俺は許した。子供を手にかける趣味はない。
法の道は外れようとも人の道は外れないのが族の粋ってもんだろ。イカスな俺。

そさくさと去っていくガキを尻目に俺は刺さった矢を抜いた。困った。
この傷で目的地まで歩けるだろうか。しばらく進むか引き返すか考え込む。
ん、そういや道具やでなんか買ったっけな。たしかこの辺に…あったあった。
俺はやくそうを取り出した。使い方がわからないので傷口にこすり付けてみる。
するとどうだろう。みるみるうちに痛みが引き傷口が塞がっていく。これは便利だ。
次の町ではやくそうを大量に買おうと心に決め俺は歩き出した。が、疲れた。
照りつける太陽がむかつく。やかましいセミの声がむかつく。
あまりにもむかつくので大きな岩の影で小休止する事にした。
なかなか涼しくていい感じだ。いつのまにかうとうとし始める…

388 :総長じいさんと出会う4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:31:47 ID:uW0kET350

グゥウォオオォォッゥ!!!


とてつもない唸り声に飛び起きた。岩の脇から覗くと変なじいさんが2mは優に超す熊に襲われている。
状況は絶望的だ。貧相なじいさんに勝ち目は無い。俺は思った。ご愁傷様だな。
心の中で静かに念仏を唱えてやった。
じいさんも観念したのか目を瞑ってブツブツ言っている。そして叫んだ。


メラミ!!!


え?メラミ?最後の言葉にしちゃヘンチクリンだがまあ気が動転してたんだろう。
誰だって死を目の前にして冷静でいる事の方が難しい。
俺は熊に気づかれる前にこの場を去ろうと逃げる準備をした。

その瞬間あり得ない光景を目にする。

じいさんの手からデカイ火の玉が発射され熊を直撃した。一瞬で熊は黒焦げになった。

389 :総長じいさんと出会う5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:32:38 ID:uW0kET350
情けない事に俺は完全に腰を抜かしてしまった。じいさんが立ち去ろうとする。
このまま帰すわけにはいかない。
おい!と声を上げる。裏返ってしまった。最悪だ。
とりあえずじいさんに駆け寄る。今の炎は何なんだと尋ねる。じいさんはキョトンとしている。

は?おぬし魔法を見たこと無いのかだと?あるわけねーだろバカ。おまえら変態集団と一緒にすんな。
どうやらこのじいさんは職業魔法使いらしい。
魔法使いといっても俺には引田天功かウザイ眼鏡の外国のガキか、柔術マジシャン・ノゲイラしか頭に浮かばない。
しかしこんなじいさんでも熊を倒せるなんて何て強力な力だろう。
じいさんに俺にも魔法を教えてくれと頼んだ。断られた。
かわいい年寄りの大ピンチを傍観しとるようなやつには教えてやらんとニヤニヤしながら言いやがった。

こいつ気づいてやがった…

じいさんが歩き出す。とりあえずついて行きしつこく頼み込む。
…がこのじいさんほんとにとんでもない野郎だった…
肩がこっただの喉が渇いただの腹が減っただの俺を完全にパシらせやがる。
元総長のこの俺様を!こんなヨボヨボが!

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 12:33:59 ID:SGbK6nj6O
支援

391 :総長じいさんと出会う6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:38:15 ID:uW0kET350
挙句の果てに疲れたら背負えと言いやがった。俺は顔面凹ましてやりたい気持ちを抑えつつおぶる。
だいぶ歩いた。もう少しで町だから降ろせと言うので降ろした。どうやら目的地は一緒らしい。
さあ教えろと詰め寄る。じいさんは一言言った。


無理じゃ。


無言で俺のジェットでこぴんがじいさんに炸裂する。じいさんあわてて説明し出す。
要点をまとめるとこういう事だった。
まず魔法には「信じる」力が必要だと。魔法に縁のない環境で育った俺にはできるわけないという意識が先行してしまうし
尚且つ人には向き不向きがあり明らかに戦士系の俺には厳しいだろうということだ。

やれやれまったく凡人の考えだ。だいたいこんなじいさんに出来ておれに出来ないはずがないだろうが。
それでも教えろと脅しをかける。じいさんしぶしぶ基本を教えてくれた。

@頭の中で炎をイメージする。
A相手に手のひらを向ける。
Bメラ

392 :総長じいさんと出会う7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:38:54 ID:uW0kET350
え?こんだけっすか?こんだけで手から火がでるんすか?楽勝じゃん。俺は意気揚々と構えそして叫ぶ。


メェエエエラァアアア!!!





静寂。

沈黙。

ああ今日もいい天気だなあ。

俺のシャウトだけが虚しくこだまする。じいさん腹を抱えて笑う。
俺のババチョップがじいさんの脳天に直撃する。じいさん悶絶。
その後色々聞いたがやはり素人が簡単に使えるものではないようだ。
毎日精神統一の為瞑想したり、よりリアルなイメージが出来るようにトレーニングしたり、
魔法の理論そのものを学んだりと色々やらなきゃ使えるようなはならないらしい

393 :総長じいさんと出会う8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:39:24 ID:uW0kET350
ただ一つ希望があるとすれば、出来はしなかったが俺がメラと叫んだ時本人には「火が出る」という確信があった。
その気持ちがある限りいつかは使えるようになるそうだ。
当たり前だろ。乱立する100もの族を一つにまとめた男ぜ?俺に不可能はない。
町の入り口でじいさんと別れる。町長の家に呼ばれてるので一通り町を回ったら来いとの事だ。
町長=権力者=金持ち=肉
俺は即答でわかったと返事した。

でかい町だ。一日かけても全部回りきれないだろう。
適当に情報集めてからじいさんのとこに肉食いに行くか。
とりあえず道具屋に向かう。やくそうを買いだめするためだ。
途中柄の悪そうな三人のチンピラどもにからまれる。
この世界にも恐喝はあるのか。なんかちょっと嬉しい。
とりあえず釘ひのきで一発ぶん殴る。

バキ  あ…

折れた。今まで酷使していたせいで相当ガタがきていたようだ。さらば相棒…
一人は頭から血を流し倒れもう二人は明らかにビビッてる。所詮群れなきゃ何も出来ない雑魚か。
片方がナイフを取り出した。金を出さなきゃ刺すと凄む。

394 :総長じいさんと出会う9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:40:01 ID:uW0kET350
俺はナイフ程度の刃物はまったく恐くない。
今まで相手の武器でびびったのは日本刀とひとし君が拳銃取り出した時くらいだ。あれは本当にびびった。
まあ素手で対抗するのも何なんで俺もナイフを取り出す。
こないだの極道猪戦で血錆がべっとりのナイフだ。

それを見た二人の顔色がみるみる変わる。
そして今日の所は見逃してやると倒れているやつを担ぎ、超速で逃げていった。
なんてお約束なやつらだ。
しかし困った事に相棒の釘ひのきは折れてしまった。
さすがにこのアウトローな世界を丸腰で旅するのは危険だ。
やくそうより武器が先か。そう考えると俺は武器屋を探し彷徨いだした。ちょうどすぐ角のとこにあった。
ついてるな今日は。中に入る。前のシケた武器屋と違い見るからに強そうな武器が並んでいる。
そこで一際目立つ武器を発見した。「ドラゴンキラー」と書いてある。
まさに覇者たる俺にぴったりの武器だ。
店主は言う。

それは15000ゴールドだぜ。

395 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:40:31 ID:uW0kET350
ここで新たな問題が生まれた。俺は貧乏だった。残金38ゴールド。とても足りない。一応交渉してみる。
おまえには常識がないのかと言われた。正直裸覆面に言われる筋合いはないと思った。
ムカつきつつも武器屋を後にする。金がなけりゃどうにもならんと町長の家に向かう。
途中道端の人に尋ねるが決まってこの町に町長はいないと言われる。あの糞ジジイ…はめやがった…
しかし代わりに新たな情報を得る。どうやら町長はいないが王様はいるらしい。城に向かう事にした。
その城はこんな見るからに怪しい俺でもすんなりと通してくれた。なんて無防備な城だろうか。

中央の階段を昇るとそこは王の間だった。
王様の前にはあのじいさんがいて何か話こんでやがる。俺は何となく無性にむかついた。
しっぺの一発でも決めてやろうと前に進む。とここで王様が話しかけてきた。

前も言ったが俺は権力者が嫌いだ。金に溺れ腐った豚は死ねよと思う。

が、ここの王様は違った。ヤバイ。目がヤバイ。今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた俺にはわかる。
例えるなら武闘派系の組の親分の目だ。只者ではない。俺は身構えた。

頼みがあるのだがー

突然王様は切り出した。そしてその頼みに俺は愕然とした。
盗賊に王冠が盗まれたらしい。それを俺に取り返せと。

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 12:42:56 ID:SGbK6nj6O
支援2

397 :総長じいさんと出会う11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:47:59 ID:uW0kET350
は?


まず王のくせに象徴である王冠を盗まれるという間抜けさ。
続いてそれを見ず知らずの旅人に取り返してくれと言うおおらかさ。本物のバカか大者かどちらかである。
てかとりあえず自分のとこの兵士送れよバカと思ったがそうもいかないらしい。
城の警護で手一杯だそうだ。

王冠盗まれといて今更警備も糞もあるかと思ったが如何せん俺も貧乏だ。
王の願いともなるとかなりの報酬が出るのではないだろうか。
いやむしろその王冠を売っぱらえばかなりの額になるのではないだろうか。
というわけで俺は引き受ける事にした。支度金として5000ゴールドくれた。さすが太っ腹だ。

じいさんの話によると盗賊の名前はカンダタ。手下を引き連れ東の党の塔にアジトを構えている。
かなりのツワモノのようだ。王様はじいさんも連れてけと言ったが断った。
またおぶれとか言われてもめんどくせーし報酬も独り占めしたい。
そもそもこんな性悪ジジイと一緒に旅なんかしたくない。
早速俺は5000ゴールドを持ってさっきの武器屋を訪れた。
散々悩んだ挙句「てつのおの」と「くさりかたびら」を持って店主の所に行く。


398 :総長じいさんと出会う12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:48:30 ID:uW0kET350
なぜか店主は物凄く同情した目でこっちを見てる。
え?この金はどうした?何?自首した方が罪が軽くなるだと?ちょ!おま!俺は強盗なんかしてないっつの!
店主に完全に怪しまれたまま俺は武器屋を後にした。

出発は明日の朝一でいいなと思い今日は宿をとり休む事にした。宿屋の看板を見つけ中に入る。
一泊12ゴールドらしい。これは安い。破格だ。と言ってもただベットが借りれるだけで飯も風呂もついてないようだ。
ライダーズホテルのようなものか。おそらくこの世界は旅人が多いためこの料金でも十分経営が成り立つのだろう。
飯は城に行って勝手に食うとして風呂には入りたい。
聞くと旅人は近くの川で水浴びをすることが多いらしい。

そこで俺も川に向かった。途中道具屋を発見したのでやくそうを買い込む。
服を脱ぎ水につかる。冷たさが心地いい。腹に目をやるとそこにはヤリが刺さった生々しい痕がある。
はたして俺はカンダタとか言うやつに勝てるのだろうか?また死んでしまうのではないだろうか?
いやいやまてまて。負けるはずがない。そもそも相手は同じ人間だ。だったら俺の方が強い。
と、自身に言い聞かせ宿に向かった。しかし酒場の看板が目に留まる。明日に備えて軽く英気を養っとくか。

3時間後残りの全財産を使い切った俺は千鳥足で宿に向かった。



399 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:49:48 ID:uW0kET350
支援dd!

夜にまた投下します

400 :王冠を奪い返せ1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:06:01 ID:uW0kET350
−次の日−


目覚めるともう太陽は高かった。寝坊した。頭痛い。腹減った。
俺はふらふらしながらかろうじてポケットに残ってた5ゴールドでパンを買いかじりながら町を出た。

今日もいい天気だ。しばらく歩くと青寒天が出る。相変わらずかわいい。
よくみると隣に色違いの赤寒天までいやがる。
こいつらは噛み付かれるのにだけ注意すればウエイトが軽いため体当たりはまったく効かない。
殺すのも可哀想なんで無視する事にした。後ろから必死に追いかけてくる姿またかわいい。
俺がこの世界を制した暁には寒天を飼おうと思う。楽しみだ。

寒天が諦め追いかけてこなくなると今度は犬が現れた。よく見ると所々が腐っている。気持ち悪りい。
俺は買ったばかりのてつのおので真っ二つにした。何がショックかっていきなり新品の斧がドロドロに汚れた。
新相棒の最初の獲物が腐った犬とは…俺はテンションが下がりつつも塔を目指した。

道中ゾンビ犬だの寒天だのでかいきのこだのが現れるがてつのおのの威力により苦戦する事は無かった。
そしてついに塔が見えてきた。

塔に入る。見張りなどはいない。ひとまず道なりに昇って行く。ややこしい。設計したやつ殴りてえ。

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