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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

370 :Stage.14 [atgk-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 23:04:06 ID:h37KA7+K0

アルス「しっかし俺もここまで容赦なく叩かれるとは思わなかったぜ……orz」
タツミ「だって僕、 偽 善 者 って嫌いだし」
アルス グッサ━━━━━ΣΣ( Д ;;;)━━━━━━>ッ!!!
タツミ「まさか勇者様が『友達』を身代わりにして逃げるとはね〜?」
アルス「お、俺だって、俺だって…… ウワーン! (((((((((((((((((+。・::。゚+:。ヽ(TДT)ノ。:*゚。::・。


タツミ「……ちょっとやりすぎたかな。
   それでは皆様、次回ゲームサイドでお会いしましょうっ」





本日はここまでです。
20行制限のせいで細切れ&投下に時間がかかってしまって申し訳ありません。



371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 23:18:47 ID:xScTyvd70
リアルタイム遭遇キタ、GJ!

商人→盗賊→遊び人→賢者と仲間の呪文コンプのために
ジパングの洞窟に籠ってメタルスライムを狩り
全員レベル99になるまでルビスの塔最上階に籠ってはぐれメタルを狩ってた
自分の粘着プレイを振り返ってちょっと泣いた

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 01:40:52 ID:J6Ac38+tO
>>369でフイタwww
ここでサンクスコール持ってくるとは

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 02:16:58 ID:yCuZcUqL0
不覚にもバラモスのループ仲間に対する心遣いにキュンとなったw

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 02:48:43 ID:GVyGrmfSO
俺は2回目は勇者の名前と性別変える事にしてるから…
大丈夫だよな!?そんなひどい思いさせてないよな!?

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 09:21:27 ID:AEVegvsU0
>374
女から男になる場合は歴代主人公スレの女3主になるだけだが
逆の場合(ryさらに3回目で男に戻ったら(ry

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 12:32:09 ID:CHN8hwIgO
バラモスに泣いた°・(ノД`)・°・

377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 01:43:10 ID:Z/9TfQ4k0
これでアルスの背景はほぼ明らかになったな
あと謎なのはタツミの過去とアナザーサイドか

しかし誰もタツミの正論ラッシュに突っ込まないのなw
どうせ何か考えがあるんだろうとか思われてるのかw

378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 03:22:57 ID:4Lc9TVaw0
バラモスたん・・・。
何らかの方法で、終わらせられるといいのですが・・。
それにしても、リアルサイドでも、いろいろ他の勇者が暗躍してるし、どうなってしまうのでしょうね。

うちもドラクエ3は何度かやってるからなぁ・・・。主人公、すまん・・・。


379 :携帯まとめ人:2008/04/07(月) 21:50:18 ID:55F3qjQM0
いつもお世話になっております、携帯サイトまとめ人です。
ひとつ職人様と読者様にご協力をお願いしたいことがございます。
詳しくは下記スレに記載があります。
「避難所、まとめサイトについて」
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/l50
お手数ではございますが、ぜひご協力の程よろしくお願いいたします。

380 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 21:53:08 ID:nMlf4H/3O
4の主人公とか最悪だろうな…

381 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:02:54 ID:EgXIK94q0
5主人公ヤバくないか?
10年奴隷、8年石化、嫁と離れ離れ、母親死亡
それでもようやく平和になったと思ったらリセット
ゲーム内不幸はダントツで、
一番幸せになれそうなエンディング後の未来がパーだからな……

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:13:52 ID:oHYCou0a0
そういえば以前出て来たリアルサイドの大ボスっぽい人、DQ5の主人公だったような・・・

383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/07(月) 22:17:51 ID:ioLpoqEh0
5はゲーム内時間経過が年数レベルだから
何度も何度もループしたらもう逃げたくなるよな

384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/08(火) 11:42:20 ID:D7eWdLpuO
だが忘れないでほしい。
5の勇者は主人公じゃなくガキのほうだということを!

385 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:29:33 ID:uW0kET350
一応ジジイにも世話なったし挨拶しとくか。頼むから無茶はするなたまには帰ってこいだと?
これだから辛気臭い年寄は嫌いだ。なにが悲しくてこんなじいさんの顔見に帰らなきゃいけないんだ。
まああのビールとバニーの姉ちゃん見にたまには戻ってやってもいいがなウヘヘ。
ついでに生きてるかどうか確認しに帰ってやるか。いつポックリ逝くかわかったもんじゃねえ。
ジジイは名残惜しそうにまた例の羽を使って帰って行った。 

さて、次の目的地だがどうやらここから南に大きな町があるようだ。
どうせなんのあても無い事だし、とりあえず人の多いとこの方が色々情報が集まるかもしれない。
俺は南を目指す事にした。
ちなみにここでの収穫は「たびびとのふく」と「やくそう」をいくつか買った。
道具屋のおっさんが旅にでるなら絶対持ってけと勧めたからだ。
あっそれと城での飯は超絶最高にうまかった。あの肉の味は忘れまい。



町を出た。

しばらく歩くと頭に防災頭巾の顔色の悪いガキが道端に立っているのを発見する。

386 :総長じいさんと出会う2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:30:43 ID:uW0kET350

!?


そいつは俺を見るや否や弓をかまえ矢を放った。間一髪でかわす俺。
なんてガキだ。親のしつけはどうなってるのだろうか。
知らない人に矢を放っちゃいけませんとは教えられなかったのだろうか。

そんな事を考えてるうちに第二射が飛んで来る。
太ももに刺さった。痛い。しかしこの距離だと反撃できん。じわじわ弄り殺しになるだけだ。
さてどうしたものか。よく見ると連射は出来ないらしくリロード中に隙ができている。

ここだ!俺は勢いよくガキに向かって走りだした。矢が飛んで来る。盾で強引に叩き落す。
そして次の矢を弓に掛ける瞬間俺の中段回し蹴りが直撃した。
中段といっても身長差でちょうどガキの顔面にヒットする。
間髪入れずに左の順突き、右の逆突きが入る。

俺がもっとも得意とするコンビネーションだ。ガキはその場にうずくまる。勝った。
俺は親父の影響でジャリの頃から空手を仕込まれてきた。まさかこんなとこで役に立つとは。
こいつはおそらく町で聞いた魔王の手下の“魔族”と呼ばれる人種だろう。

387 :総長じいさんと出会う3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:31:17 ID:uW0kET350
こんなガキの頃から躊躇無く人に向かって矢が撃てるなんてなかなか感心できる。
昔連れにひとし君というのがいたが、そいつは親が極道で小学生のうちから妙に刃物の扱いがうまかった。
もしかして魔族はそれが一般的なのだろうか。
なんてデンジャラスな人種だ。

立ち上がった色の悪いガキは命乞いしてきた。無論俺は許した。子供を手にかける趣味はない。
法の道は外れようとも人の道は外れないのが族の粋ってもんだろ。イカスな俺。

そさくさと去っていくガキを尻目に俺は刺さった矢を抜いた。困った。
この傷で目的地まで歩けるだろうか。しばらく進むか引き返すか考え込む。
ん、そういや道具やでなんか買ったっけな。たしかこの辺に…あったあった。
俺はやくそうを取り出した。使い方がわからないので傷口にこすり付けてみる。
するとどうだろう。みるみるうちに痛みが引き傷口が塞がっていく。これは便利だ。
次の町ではやくそうを大量に買おうと心に決め俺は歩き出した。が、疲れた。
照りつける太陽がむかつく。やかましいセミの声がむかつく。
あまりにもむかつくので大きな岩の影で小休止する事にした。
なかなか涼しくていい感じだ。いつのまにかうとうとし始める…

388 :総長じいさんと出会う4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:31:47 ID:uW0kET350

グゥウォオオォォッゥ!!!


とてつもない唸り声に飛び起きた。岩の脇から覗くと変なじいさんが2mは優に超す熊に襲われている。
状況は絶望的だ。貧相なじいさんに勝ち目は無い。俺は思った。ご愁傷様だな。
心の中で静かに念仏を唱えてやった。
じいさんも観念したのか目を瞑ってブツブツ言っている。そして叫んだ。


メラミ!!!


え?メラミ?最後の言葉にしちゃヘンチクリンだがまあ気が動転してたんだろう。
誰だって死を目の前にして冷静でいる事の方が難しい。
俺は熊に気づかれる前にこの場を去ろうと逃げる準備をした。

その瞬間あり得ない光景を目にする。

じいさんの手からデカイ火の玉が発射され熊を直撃した。一瞬で熊は黒焦げになった。

389 :総長じいさんと出会う5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:32:38 ID:uW0kET350
情けない事に俺は完全に腰を抜かしてしまった。じいさんが立ち去ろうとする。
このまま帰すわけにはいかない。
おい!と声を上げる。裏返ってしまった。最悪だ。
とりあえずじいさんに駆け寄る。今の炎は何なんだと尋ねる。じいさんはキョトンとしている。

は?おぬし魔法を見たこと無いのかだと?あるわけねーだろバカ。おまえら変態集団と一緒にすんな。
どうやらこのじいさんは職業魔法使いらしい。
魔法使いといっても俺には引田天功かウザイ眼鏡の外国のガキか、柔術マジシャン・ノゲイラしか頭に浮かばない。
しかしこんなじいさんでも熊を倒せるなんて何て強力な力だろう。
じいさんに俺にも魔法を教えてくれと頼んだ。断られた。
かわいい年寄りの大ピンチを傍観しとるようなやつには教えてやらんとニヤニヤしながら言いやがった。

こいつ気づいてやがった…

じいさんが歩き出す。とりあえずついて行きしつこく頼み込む。
…がこのじいさんほんとにとんでもない野郎だった…
肩がこっただの喉が渇いただの腹が減っただの俺を完全にパシらせやがる。
元総長のこの俺様を!こんなヨボヨボが!

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 12:33:59 ID:SGbK6nj6O
支援

391 :総長じいさんと出会う6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:38:15 ID:uW0kET350
挙句の果てに疲れたら背負えと言いやがった。俺は顔面凹ましてやりたい気持ちを抑えつつおぶる。
だいぶ歩いた。もう少しで町だから降ろせと言うので降ろした。どうやら目的地は一緒らしい。
さあ教えろと詰め寄る。じいさんは一言言った。


無理じゃ。


無言で俺のジェットでこぴんがじいさんに炸裂する。じいさんあわてて説明し出す。
要点をまとめるとこういう事だった。
まず魔法には「信じる」力が必要だと。魔法に縁のない環境で育った俺にはできるわけないという意識が先行してしまうし
尚且つ人には向き不向きがあり明らかに戦士系の俺には厳しいだろうということだ。

やれやれまったく凡人の考えだ。だいたいこんなじいさんに出来ておれに出来ないはずがないだろうが。
それでも教えろと脅しをかける。じいさんしぶしぶ基本を教えてくれた。

@頭の中で炎をイメージする。
A相手に手のひらを向ける。
Bメラ

392 :総長じいさんと出会う7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:38:54 ID:uW0kET350
え?こんだけっすか?こんだけで手から火がでるんすか?楽勝じゃん。俺は意気揚々と構えそして叫ぶ。


メェエエエラァアアア!!!





静寂。

沈黙。

ああ今日もいい天気だなあ。

俺のシャウトだけが虚しくこだまする。じいさん腹を抱えて笑う。
俺のババチョップがじいさんの脳天に直撃する。じいさん悶絶。
その後色々聞いたがやはり素人が簡単に使えるものではないようだ。
毎日精神統一の為瞑想したり、よりリアルなイメージが出来るようにトレーニングしたり、
魔法の理論そのものを学んだりと色々やらなきゃ使えるようなはならないらしい

393 :総長じいさんと出会う8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:39:24 ID:uW0kET350
ただ一つ希望があるとすれば、出来はしなかったが俺がメラと叫んだ時本人には「火が出る」という確信があった。
その気持ちがある限りいつかは使えるようになるそうだ。
当たり前だろ。乱立する100もの族を一つにまとめた男ぜ?俺に不可能はない。
町の入り口でじいさんと別れる。町長の家に呼ばれてるので一通り町を回ったら来いとの事だ。
町長=権力者=金持ち=肉
俺は即答でわかったと返事した。

でかい町だ。一日かけても全部回りきれないだろう。
適当に情報集めてからじいさんのとこに肉食いに行くか。
とりあえず道具屋に向かう。やくそうを買いだめするためだ。
途中柄の悪そうな三人のチンピラどもにからまれる。
この世界にも恐喝はあるのか。なんかちょっと嬉しい。
とりあえず釘ひのきで一発ぶん殴る。

バキ  あ…

折れた。今まで酷使していたせいで相当ガタがきていたようだ。さらば相棒…
一人は頭から血を流し倒れもう二人は明らかにビビッてる。所詮群れなきゃ何も出来ない雑魚か。
片方がナイフを取り出した。金を出さなきゃ刺すと凄む。

394 :総長じいさんと出会う9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:40:01 ID:uW0kET350
俺はナイフ程度の刃物はまったく恐くない。
今まで相手の武器でびびったのは日本刀とひとし君が拳銃取り出した時くらいだ。あれは本当にびびった。
まあ素手で対抗するのも何なんで俺もナイフを取り出す。
こないだの極道猪戦で血錆がべっとりのナイフだ。

それを見た二人の顔色がみるみる変わる。
そして今日の所は見逃してやると倒れているやつを担ぎ、超速で逃げていった。
なんてお約束なやつらだ。
しかし困った事に相棒の釘ひのきは折れてしまった。
さすがにこのアウトローな世界を丸腰で旅するのは危険だ。
やくそうより武器が先か。そう考えると俺は武器屋を探し彷徨いだした。ちょうどすぐ角のとこにあった。
ついてるな今日は。中に入る。前のシケた武器屋と違い見るからに強そうな武器が並んでいる。
そこで一際目立つ武器を発見した。「ドラゴンキラー」と書いてある。
まさに覇者たる俺にぴったりの武器だ。
店主は言う。

それは15000ゴールドだぜ。

395 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:40:31 ID:uW0kET350
ここで新たな問題が生まれた。俺は貧乏だった。残金38ゴールド。とても足りない。一応交渉してみる。
おまえには常識がないのかと言われた。正直裸覆面に言われる筋合いはないと思った。
ムカつきつつも武器屋を後にする。金がなけりゃどうにもならんと町長の家に向かう。
途中道端の人に尋ねるが決まってこの町に町長はいないと言われる。あの糞ジジイ…はめやがった…
しかし代わりに新たな情報を得る。どうやら町長はいないが王様はいるらしい。城に向かう事にした。
その城はこんな見るからに怪しい俺でもすんなりと通してくれた。なんて無防備な城だろうか。

中央の階段を昇るとそこは王の間だった。
王様の前にはあのじいさんがいて何か話こんでやがる。俺は何となく無性にむかついた。
しっぺの一発でも決めてやろうと前に進む。とここで王様が話しかけてきた。

前も言ったが俺は権力者が嫌いだ。金に溺れ腐った豚は死ねよと思う。

が、ここの王様は違った。ヤバイ。目がヤバイ。今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた俺にはわかる。
例えるなら武闘派系の組の親分の目だ。只者ではない。俺は身構えた。

頼みがあるのだがー

突然王様は切り出した。そしてその頼みに俺は愕然とした。
盗賊に王冠が盗まれたらしい。それを俺に取り返せと。

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 12:42:56 ID:SGbK6nj6O
支援2

397 :総長じいさんと出会う11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:47:59 ID:uW0kET350
は?


まず王のくせに象徴である王冠を盗まれるという間抜けさ。
続いてそれを見ず知らずの旅人に取り返してくれと言うおおらかさ。本物のバカか大者かどちらかである。
てかとりあえず自分のとこの兵士送れよバカと思ったがそうもいかないらしい。
城の警護で手一杯だそうだ。

王冠盗まれといて今更警備も糞もあるかと思ったが如何せん俺も貧乏だ。
王の願いともなるとかなりの報酬が出るのではないだろうか。
いやむしろその王冠を売っぱらえばかなりの額になるのではないだろうか。
というわけで俺は引き受ける事にした。支度金として5000ゴールドくれた。さすが太っ腹だ。

じいさんの話によると盗賊の名前はカンダタ。手下を引き連れ東の党の塔にアジトを構えている。
かなりのツワモノのようだ。王様はじいさんも連れてけと言ったが断った。
またおぶれとか言われてもめんどくせーし報酬も独り占めしたい。
そもそもこんな性悪ジジイと一緒に旅なんかしたくない。
早速俺は5000ゴールドを持ってさっきの武器屋を訪れた。
散々悩んだ挙句「てつのおの」と「くさりかたびら」を持って店主の所に行く。


398 :総長じいさんと出会う12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:48:30 ID:uW0kET350
なぜか店主は物凄く同情した目でこっちを見てる。
え?この金はどうした?何?自首した方が罪が軽くなるだと?ちょ!おま!俺は強盗なんかしてないっつの!
店主に完全に怪しまれたまま俺は武器屋を後にした。

出発は明日の朝一でいいなと思い今日は宿をとり休む事にした。宿屋の看板を見つけ中に入る。
一泊12ゴールドらしい。これは安い。破格だ。と言ってもただベットが借りれるだけで飯も風呂もついてないようだ。
ライダーズホテルのようなものか。おそらくこの世界は旅人が多いためこの料金でも十分経営が成り立つのだろう。
飯は城に行って勝手に食うとして風呂には入りたい。
聞くと旅人は近くの川で水浴びをすることが多いらしい。

そこで俺も川に向かった。途中道具屋を発見したのでやくそうを買い込む。
服を脱ぎ水につかる。冷たさが心地いい。腹に目をやるとそこにはヤリが刺さった生々しい痕がある。
はたして俺はカンダタとか言うやつに勝てるのだろうか?また死んでしまうのではないだろうか?
いやいやまてまて。負けるはずがない。そもそも相手は同じ人間だ。だったら俺の方が強い。
と、自身に言い聞かせ宿に向かった。しかし酒場の看板が目に留まる。明日に備えて軽く英気を養っとくか。

3時間後残りの全財産を使い切った俺は千鳥足で宿に向かった。



399 :総長じいさんと出会う1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 12:49:48 ID:uW0kET350
支援dd!

夜にまた投下します

400 :王冠を奪い返せ1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:06:01 ID:uW0kET350
−次の日−


目覚めるともう太陽は高かった。寝坊した。頭痛い。腹減った。
俺はふらふらしながらかろうじてポケットに残ってた5ゴールドでパンを買いかじりながら町を出た。

今日もいい天気だ。しばらく歩くと青寒天が出る。相変わらずかわいい。
よくみると隣に色違いの赤寒天までいやがる。
こいつらは噛み付かれるのにだけ注意すればウエイトが軽いため体当たりはまったく効かない。
殺すのも可哀想なんで無視する事にした。後ろから必死に追いかけてくる姿またかわいい。
俺がこの世界を制した暁には寒天を飼おうと思う。楽しみだ。

寒天が諦め追いかけてこなくなると今度は犬が現れた。よく見ると所々が腐っている。気持ち悪りい。
俺は買ったばかりのてつのおので真っ二つにした。何がショックかっていきなり新品の斧がドロドロに汚れた。
新相棒の最初の獲物が腐った犬とは…俺はテンションが下がりつつも塔を目指した。

道中ゾンビ犬だの寒天だのでかいきのこだのが現れるがてつのおのの威力により苦戦する事は無かった。
そしてついに塔が見えてきた。

塔に入る。見張りなどはいない。ひとまず道なりに昇って行く。ややこしい。設計したやつ殴りてえ。

401 :王冠を奪い返せ2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:06:49 ID:uW0kET350
しばらく昇ると妙な三人組みがいた。向こうは俺の顔を見るなり顔色が変わる。

あ!こいつらこないだボコったやつらじゃん。そうかカンダタの手下だったのか。
三人で何か話し合っている。そして逃げた。俺も追って階段を昇る。

そこにはカンダタと思われるパンツに覆面&マントというとんでもない格好のやつがいた。
しかし手下が手下なら親分も親分だ。なんてファッションセンスだ。俺の戦闘意欲はマックスで失せた。

めんどくせーからとっとと終わらそう。
よくも子分をだの俺の名前は大盗賊カンダタだの言ってる間に近づいて一発脳天にてつのおのを見舞う。
ガキンッと金属音が響く。
こいつ覆面の下になんか仕込んでやがるな。カンダタは激怒した。

おまえには騎士道精神ってものがないのか外道!と言われる。盗賊が何言ってんだ…
そして子分にこいつは俺一人で片付けるから手を出すなと言った。アホだ。正真正銘のアホだ。

そこから俺とカンダタのタイマンが始まった。

お互い腕が上がらなくなるまで斧を振り回し、顔がボコボコになるまで殴りあった。


402 :王冠を奪い返せ3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:07:35 ID:uW0kET350
最後に立ってたのは俺だった。

カンダタは観念したのか煮るなりやくなり好きにしろと言う。俺は「きんのかんむり」を取り返した。
もうここには用はない。足早に塔を出た。入り口付近に差し掛かった所でカンダタらしき悲鳴が聞こえる。
無視してよかったのだが何となく見に行ってみた。カンダタがデカ蛙数匹に囲まれている。
手下は気絶している。…弱い…なんて弱い盗賊団なんだ…泣ける…さすがに同情を禁じえない。

適当に蛙を追っ払うとカンダタが涙目で抱きついてきた。
痛いって!そんな力入れるなっつの!俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はねーんだよ!離れろ!

カンダタは世界で一番蛙が苦手らしい。俺は命の恩人と崇められてしまった。なんだこの展開は。
だがしかし次にもっと驚く展開になる。カンダタが俺を子分にしろと聞かない。子分も同じく騒ぐ。
嫌だと言って塔を出たが後ろからゾロゾロついてくる。マジ勘弁してくれ…

そこで俺はこいつらを舎弟にする事にした。新鬼浜爆走愚連隊栄光の船出だ…栄光の…ぐぅ…
栄えある初代のメンバーがこいつらか…

子分は塔の警備役(というか足手まといなんでいらない)として置いていく事にする。
一応俺らは盗賊じゃなく族なんだと言う事を言い聞かせたがこいつらはバカだから理解してないだろう。
まあいい。とりあえず親分じゃなく総長と呼ばすのだけは徹底させよう。

403 :王冠を奪い返せ3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:08:05 ID:uW0kET350
来た道を戻る。もう日が沈みかけている。途中魔物も出たがカンダタが一人で暴れて片付けた。
なかなか使える野郎だ。頭は悪いが腕力だけはある。特攻隊長くらいにしてやってもいいかも知れない。
そうして城に戻った時にはすっかり夜も更けていた。


門番はカンダタを見て腰を抜かしていた。無視して進み王様の前に立つ。
王様にきんのかんむりを渡した。衛兵がカンダタを連行しようとするので止める。
王冠も戻ったしこいつを無罪にしてくれないかと頼んだ。大臣憤怒。
まわりがざわつき始める。もしこいつを引き渡すのを拒否すると俺も連行されるかもしれない。
しかし舎弟のために体を張るのは総長として当然の事だろう。俺はいざとなればこの国と戦争する決意をした。
そして王の重い口が開く。



いいよ。


一瞬時が止まった。



404 :王冠を奪い返せ5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:08:36 ID:uW0kET350
大臣が物凄い勢いで王様をまくし立てる。このバカ王なんてイカしたヤツだろう。最高だ。
じいさんはゲラゲラ笑ってる。次の一言がまたイカレた内容だった。

さあ!王冠を取り返した英雄をもてなす宴の準備をせい!


数時間後。

王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせで宴会が始まった。

カンダタは物凄いペースで酒を飲む。こいつ自分がしでかした事をわかってるのだろうか?
王様も王様でヘラヘラしながらこれまた凄いペースで飲み続ける。
大臣は呆れて物も言えないといった感じだ。

まあそんな事よりも俺はこの国の肉料理に感動した。甘辛く重厚でそれでいてしつこくない。
三人の豪快な食いっぷり、飲みっぷりに即発され兵士達も騒ぎ出し、明け方には全員床で寝ていた。


405 :王冠を奪い返せ6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:10:57 ID:uW0kET350
ひたすら飲まずに食っていた俺はこの光景を見て思った。
ああこの国は純粋にバカなんだと。そら王冠も盗まれるわ。
と、ここでじいさんが話しかけてきた。いきなり身の上話を始める。興味ねえどっかいけよジジイ。

だが話の内容は驚くべき内容だった。このじいさんと王様は昔一緒に冒険した仲らしい。
しかもその冒険というのも魔王討伐だというのだ。その時は多大な犠牲と共に魔王を封印できたらしい。
信じがたい話だが俺は妙に納得した。
あの王様の目はカタギの目じゃない。絶対に人を殺めた事のある目だ。



406 :パンツと呼ばないで7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:11:58 ID:uW0kET350
ー次の日ー

このバカ王はまたまたとんでもない事を言い出した。
は?自分も久々に旅がしたいから代わりに王にならないかだと?こいつラリッてんのか?
……目が笑ってない。本気だ。俺は旅の目的があるのでと断った。
バカ王はそれなら今度こそこのじいさんを連れて行けと言う。
俺はそれも断ろうとした。だがじいさんを連れてく事がカンダタ釈放の条件だと言いやがる。
なるほどさすがに監視役もいないまま犯罪者を野放しにできないというわけか。俺はしぶしぶ了承した。
こうして不本意ながら新鬼浜爆走愚連隊(以下略して鬼浜)に新たな構成員が増えた。
現メンバーは

総長:俺
特攻隊長:カンダタ
構成員:じいさん、子分A,B,C


……非常に頭の痛くなるメンバーだ…硬派にも武闘派にも程遠い…
俺はこの世界に来て初めて自分のやってる事が不安になった…だが今はもう前に進むしかない。
バカ王は報酬として10000Gもくれやがった。やはりバカだ。

407 :パンツと呼ばないで8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:12:38 ID:uW0kET350
その夜、記念すべき第一回鬼浜会議が開かれた。議題は次の目的地についてである。
俺的には早く勇者に会ってどんな輩か確かめたい。じいさんに勇者について何か知らないか聞いてみた。
知っていたのは勇者の故郷はアリアハンという町であるという事だけだった。
一方カンダタにも何か情報がないか聞いてみる。明日の朝は目玉焼きがいいそうだ。
こいつもう今後一切の発言権は無い。とにかく明日から勇者の足取りを順に追ってみようと思う。
今日はもう遅いので宿で一泊する事にした。

次の朝出発の挨拶をしにバカ王の所に行く。まだ王にならんかとか言ってやがる。しつけえ。
アリアハンへ行くと伝えると船をだしてくれるようだ。貸切で。VIP待遇じゃん。
バカ王もたまにはやるな。
そうして船に乗り込んだ一行はアリアハンを目指した。道中暇なのでじいさんに魔法を習う。
どうやら俺には「リアルにイメージする力」が足りないらしい。
じいさんは松明や焚き火ではなく、もっと攻撃的な炎を頭の中に思い描けと言う。

攻撃的な炎…

そういや昔抗争中の族にひとし君の単車のオイルタンクに穴開けられて、気づかずに乗って引火して
炎の塊になって爆走した事あったっけな。よく生きてたなあいつ。
そんな事をぼんやり考えながら俺は手のひらを構えメラッと叫んだ。

408 :パンツと呼ばないで9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:13:33 ID:uW0kET350
出た。

炎の塊が船のマストを直撃する。燃えるマスト。じいさん慌てて手から氷の塊を発射し消化する。
じいさんとカンダタと船長が物凄い勢いで詰め寄ってきた。船を沈める気かと叫んでいる。
しかし俺にはそんな声まったく届いてなかった。出来たのだ。俺にも魔法が使えたのだ。
そこから二日後アリアハンにつくまで俺はひたすら練習を重ねた。徐々に火の玉も大きくなる。
俺は天才かもしれない。自分で自分の才能が怖いぜ。
しかしじいさんはそのくらいの魔法ならガキの頃にもうできたわいと言ってきた。黙れ。目の上のタンコブが。

アリアハンに到着する。

なかなかきれいな町並みだ。じいさんは王様に挨拶に行った。
おまえも来いと言われたが堅苦しいのはいやなんで一人でぶらつく事にした。
カンダタは腹が減ったとうるさいので50ゴールド渡してどっかやった。

きれいな町並みだがシケた所だった。強い武器もない。きれいなねーちゃんもいない。典型的な田舎町だ。
こうなったら昼真っから酒でも飲んでやろうかいと酒場に入る。町の規模にしちゃかなり大きな酒場だ。
そこは酒場兼人材派遣センターのような所らしい。冒険に出る人が有志を募れるシステムだ。
年齢や職業や性別を指定すると合致した人と出会える…え?これって出会い系サイトと同じじゃないか?
もしかして表向きは「冒険者の集まる酒場」だがほんとはただの出会い系酒場なんじゃないのか?

409 :パンツと呼ばないで9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:14:05 ID:uW0kET350
とりあえず俺も利用してみる事にする。

と、その時だ。奇抜なピエロの格好をしたかなり大柄な男に声を掛けられる。
どうやら仲間にして欲しいらしい。
腕には自信があるそうだが俺はこれ以上色モノが増えても敵わないので丁重にお断りした。
ジーッと見つめてくる。こっち見んな気持ち悪い。クソが。俺は仕方なく酒場を後にし城に向かった。

城に入り王の間まで行く。じいさんが王様と親しげに話している。しかしこのじいさん侮れない。
各国の王とここまで親しいじいさんは他にいるだろうか。食えないジジイだ。
その後王様と話し、勇者は北に向かったと聞く。北か。今出来ることは追う事だけだ。
この町にこれ以上いる必要もないと思い早速出発する。あっカンダタ忘れてた。
町中探し回ると結局さっきの酒場の中にいた。となりにはあのデカピエロがいる。
二人で酒を飲み意気投合しているようだ。バカ同士気が合うのだろう。

…嫌な予感がする…

案の定カンダタはこいつも連れてけと言う。じいさんはなぜかニヤニヤしている。
はいはい。もうわかりましたよ。好きにしてくれ。という事でまた一人舎弟が増えた。
見るからに怪しいピエロの大男。服装が服装だが相当なマッチョだ。
ん?この目どこかで見たことがあるような…いやいや俺にはこんな変態の知り合いはいないはずだ。

410 :パンツと呼ばないで11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:16:20 ID:uW0kET350
さて、町を出て北に向かう。振り返る。後ろにはヨボヨボじいさん、覆面パンツ男、ピエロの大男…
これから世界征服を狙う組織とはとても思えない。これは酷い。次はまともな舎弟を入れなくては…

しかし戦闘は楽になった。実際このピエロ男がバカ強い。大体の流れはこうだ。
まず敵を見つけるや否や俺、パンツ、ピエロが突撃して袋にする。それでも仕留め切れない場合、
後方からじいさんが炎なり何なりだしてTHE ENDだ。
魔物共も俺達の異様さとその強さに逃げ出す事も少なくない。
むしろ魔物の群れなんかより俺らの方が全然柄悪い。

特に強い魔物も出て来ず暇なので鬼浜軍事訓練を行いながら進む事にした。
軍事訓練と言っても要は俺がパンツ、ピエロとど突き合いながら進むのだ。
これがまたしんどい。この二人その辺の魔物より遥かに強い。
しかし俺も総長としてのプライドがあるため負けるわけにはいかない。
次の町に着いた時は三人とも血だらけのボコボコだった。
みんなやくそうをアホほど買って全身に塗りたくる。
その日は疲れたので宿で一泊した。



411 :出会いと別れ12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:17:52 ID:uW0kET350
ー次の日の朝ー

その辺の人曰く勇者は「いざないのどうくつ」なるとこに向かったらしい。
何か痕跡が掴めるかも知れないので、そこに向かう事にした。

今日はど突き合いではなくじいさんに魔法を習いながら歩く。なんとなくコツがわかってきた。

要はイメージなのだ。

炎が上手くイメージできるやつは炎系の呪文が得意だ、
氷を上手くイメージ出来るやつは氷系の呪文が得意なのだ。

何にせよ、「イメージ」と「確信」と「集中力」が大切なのだ。
俺はやはり天才なのかもしれない。そんな事を考えているうちに洞窟についた。

薄暗い陰気な感じの洞窟だ。
洞窟の中にもじいさんがいたが俺はもう年寄りはお腹一杯なので無視した。
いかにも怪しい爆弾によるだろう吹き飛んだ壁を抜けしばらく歩くと紫色の角うさぎが数匹でてきた。
どうせ雑魚だろうといつものように三人で突撃する。


412 :出会いと別れ13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:18:28 ID:uW0kET350
ラリホー

何故かそこからの記憶は無い。目が覚めるとじいさんが一人でゼーゼー言いながら汗だくで立っていた。
じいさんはキレ気味で初めての敵にはもっと慎重にだの何だの説教を始めたが無視した。
鬼浜には特攻あるのみだ。これだから年寄は嫌いだ。

洞窟を抜ける。妙に懐かしい感じが。とりあえず近くの町に…っておい!ここバカ王の城じゃん!
ピエロがここは無視して先に進もうとしきりに主張する。何故だ。まあいい。
俺ももうこの町に特に用は無いし先に進む事にした。

しかしこのまま北に行くと俺が初めてこの世界に来た町に着くな。ジジイは元気でやってるだろうか。
いやそんな事よりもあのバニーの姉ちゃんはまだあの格好で仕事してんのだろうか。
そう考えると足取りが軽くなる。軍事訓練にも気合が入るというものだ。
三人のボルテージも飛躍的に上がっていく。
町に着く頃には三人ともボロ雑巾のようだった。
このままいくと訓練中に死人が出てもおかしくないかもしれない。



413 :出会いと別れ14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:18:53 ID:uW0kET350
町の中に入る。いきなりガキとすれ違った。
ガキはヤンキー、パンツ、ピエロという三人組を目の前にして固まった。
そりゃそうだろう。正直俺も怖い。まだ酒場は開いてないようなので教会に向かう。
ジジイに再会する。まだ生きててくれたのかと喜ぶジジイ。たりめーだろうが。
ジジイの話によるとこの町に三日前勇者が来たらしい。
なんて事だ。クソ入れ違いかよ…勇者はさらに北の村へ向かったそうだ。

が、その村は数週間前に魔王に滅ぼされた町だというのだ。
一応止めたが聞かずに行ってしまったらしい。
それならまだその辺にいるのかもしれない。これは追いつけるぞ!俺達は急遽そこに向かう事にした。


その村には半日程歩くとついた。


そしてそこで俺は自分の認識の甘さを思い知る。


414 :出会いと別れ15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:19:43 ID:uW0kET350
村。

いやもうそこはそう呼べないだろう。
民家は原型を留めていない。生々しい血の痕がそこらじゅうにある。

魔王はやはり魔王だった。生易しい相手ではなかった。ひとまず村を一周してみる。
普段は陽気なパンツもピエロも終始無言だった。
しかし気になるのは血痕の多さの割には死体が一つもない。

答えはすぐそこにあった。

そこには墓を掘る一人の少年の姿があった。

おそらく村に着いてからずっと掘り続けてたのだろう。
服は真っ黒で顔は疲弊しきっている。だが目は凄まじく澄んでいた。

それをみたパンツとピエロとじいさんが無言で墓堀を手伝う。
墓堀が終わった。少年がこちらに向かいありがとうと言う。

…え!?その声は少年ではなく少女のものだった。

415 :出会いと別れ16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:23:01 ID:uW0kET350
この子が勇者のようだ。




俺は全身ありえないくらいの脱力感に襲われた。屈強な大男との死闘を想像していたのだ。
俺がこんな女の子をぶん殴ったらそれこそ問題じゃないか。犯罪だ。こいつを倒す必然性は無くなった。
パンツが話しかける。じいさんも色々聞きたい事があるらしくこの子に駆け寄る。

話の内容は大体こうだ。
何故一人旅なのか。この子は先代勇者の娘らしい。
それで常に魔物に狙われるのでできるだけ他の人を危険に晒したくないと。
それで16歳になり先代が旅に出たと同じ年齢なったので旅に出たと。

俺は無性にむかついた。この世界のやつらはみんなそうだ。「勇者」という名にすがりたがる。
実際16歳のガキに一体何を望むのだ?魔王がムカつくなら自分で喧嘩売りにいけばいいじゃないか。
世間の理不尽さはどこの世界も変わらないようだ。と、その時、


416 :出会いと別れ17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:24:05 ID:uW0kET350
 カカカこれはこれはこれは勇者サマ!




突然背筋に寒気の走る声がする。振り返るとそこには腕が6本ある骸骨二体と覆面魔術師が立っていた。
この村を襲った残党だろうか。



コンナところで出くわスとハ! その首ヲ我が主への手土産にシましょうカ!




俺達は無言で武器を構える。しかし皆顔に余裕がない。それもそのはずだ。こいつら雰囲気がかなりヤバイ。
明らかに今までの敵とは次元が違う。

417 :出会いと別れ18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:24:52 ID:uW0kET350
均衡状態を撃ち破ったのはじいさんだった。じいさんの手から巨大な火の玉が発射される。
骸骨はそれをかわす。その瞬間残りの4人が飛び掛った。てつのおのにかなりの手ごたえがある。

やったか!?

残念ながらさほどダメージは与えられなかったようだ。逆にパンツとピエロが血を流している。
あの状況できれいにカウンターを決めやがった。こいつマジで強ええ。

じいさんが今度は強烈な氷の突風を放つ。これはかわしようが無く骸骨はその場でふんばり耐える。
このチャンスを逃すまいと俺は骸骨の脳天に全身全霊を込めて一撃を見舞った。
そこにパンツ、ピエロ、勇者と続く。骸骨の6本の剣が踊る。
俺は全身なます切りになりつつも骸骨に留めの一撃を決めた。

もう一体は!?

振り返るとじいさんが必死に杖で対抗している。が、体には深い斬り傷が刻み込まれていく。
骸骨が剣を振り上げじいさんの頭に狙いを定めた瞬間、パンツが後ろからはおい締めにした。
パンツGJ!
骸骨の剣がパンツに深々と突き刺さる。しかしじいさんの火炎球が至近距離で骸骨に直撃する。
骸骨は体半分吹き飛ぶ。

418 :出会いと別れ19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:25:31 ID:uW0kET350
勝った…


辛勝だ。なんとか退けた。鬼浜軍事訓練もあながち無駄ではなかったようだ。
しかしダメージがでかい。とくにパンツとじいさんの傷がひどい。ありったけの薬草を塗り込む。
ひとまず危機は去った。みんな安堵の表情を浮かべる。

…しかしそれはすぐに打ち消された。

そこには見たことも無い魔物の群れを引き連れ薄ら笑いを浮かべる魔術師がいた。




 増援。




 絶望。

419 :出会いと別れ20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:26:10 ID:uW0kET350
皆一応武器を構える。もう顔に覇気が無い。くそっ俺の野望はこんなとこで潰えるのか…。
誰もが諦めたその時、じいさんがおかしな事を言い出した。

俺の目を見て

いいか
魔法で一番大事なのは信じる心だ。
おぬしは絶対にわしをも越えるだろう。何か普通の人とは違う素質がある。自分の可能性を信じろ。


そして勇者に向かい

父は誰よりも強く、そして優しい立派な男だった。
その存在が重荷に感じることもあるだろうが自分の血筋に誇りを持ちなさい。

パンツにも

この世に意味の無い事などない。おぬしのその人並み外れた腕力にもな。
勇者とこれからも旅を続けなさい。さすれば自分の生きる意味を知るであろう。

420 :出会いと別れ21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:30:58 ID:uW0kET350
最後にピエロに

さらば我が戦友にして親友よ。一足先に向こうでまってるぞ。


と言ったと思うと魔物の群れに向かって駆け出した。













メガンテ

421 :出会いと別れ22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:31:28 ID:uW0kET350

















数十秒だったのだろうか。数時間だったのだろうか。
一瞬とも悠久ともとれる時の後、そこには何もなかった。
あるべきはずのものは何もなかった。

422 :出会いと別れ23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:32:03 ID:uW0kET350
パンツは大声を上げて泣いている。ピエロは恐い顔をして考え込んでいるようだ。
勇者は涙ぐみ俯いている。パンツと勇者は口々に魔王軍絶対許さないと言う。





違う。



悪いのは魔王軍ではない。

俺だ。

俺が弱いから悪いのだ。結局これは弱肉強食の潰し合いなのだ。
この村の人も、じいさんも相手より強ければ死ぬ事はなかった。俺は自分の弱さが許せなかった。
何が鬼浜だ。何が世界征服だ。自分の舎弟の命すら守れなくて何が総長だ。
これは相手からの強烈な宣戦布告だと受け取った。俺は売られた喧嘩は必ず買う男だ。
魔王…絶対原型わからなくなるまでぶん殴ってやる。顔面ボコボコに凹ましてやる。

423 :出会いと別れ24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/09(水) 20:32:58 ID:uW0kET350
あああああああああぁぁあああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!

 









突然俺は叫んだ。頭の血管ブチ切れるくらい腹の底から叫んだ。
パンツと勇者はビクッとなりこっちを見る。俺は空に向かってさらに叫んだ。




新鬼浜爆走愚連隊総隊長、魔王のとこまでブッこんでくんで夜露死苦!!!!!!!!


424 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 21:26:26 ID:UJ1UrJ1P0
規制かかった?
一応支援・・・。

425 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 22:59:18 ID:rDRTR6FWO
じいさん…
こうなることは知ってたけど
切ないな…

続きが待ち切れなくて
つい保管庫読み返してしまうんだが
展開変わったりするのかな

426 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 00:24:48 ID:IOL/Osk60
>王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせ
なんだこの宴会wwwww腹筋痛いwwwwwwwwww
笑いながら読んでたらじいさんが…そんな…

427 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:31:00 ID:clzXnlXR0
>>425
大筋は変わんないよ!でもキャラの性格なり矛盾点を解消するために細かい所をいかなりいじってます
元々が今は昔の初代スレを埋めるために書いたものだったので長編になると色々問題が…w

では続き投下します

428 :私の名は勇者 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:32:11 ID:clzXnlXR0
その後、俺達は村の中央にじいさんの墓を作った。

そして村を離れ一旦ジジイのいる町まで戻る。
ジジイはじいさんが減ってる事に気づいたが俺らの表情から事を察し静かに十字をきった。
深夜鬼浜会議が開かれる。ピエロは気になる事があるので城へ帰ると言う。
今まで黙っててすまないが、実はお前らが立ち寄ったロマリアと言う国の王様だったんだと告白する。
 

…いやいやわざわざ告白せんでも未だに気づいてないヤツなんていねーよ…
そんなヤツは正真正銘本物の極限のバカだ…
隣でパンツが驚きの声を上げる。

………。



勇者はまた一人旅を続けるらしい。ちょっとまて。それは無茶だろ。
あいつらのバカ強さお前も身をもって実感しただろうがよ。一人とか死にたいのか?

俺はなんならお前も舎弟にならないかと誘う。勇者はキョトンとしている。

429 :私の名は勇者2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:33:02 ID:clzXnlXR0
いやだからな?俺は世界征服する為に鬼浜という族を結成しててだな…いや族っつてもわからんか…
世界を救うとかまったく興味無いんだが魔王は邪魔だからどっちにしろイワしとかなダメだし、
おまえも魔王潰したいなら一緒に来るかって事!わかるか?

必死に説明する俺。勇者はやっと意味が飲み込めたのか笑顔になる。
是非仲間にして下さい!と言った。

ここで明確にしておかなきゃいけない事がある。世間では勇者様様だがここで一番偉いのは俺だ。
俺の事は総長と呼ぶこと、勇者だか何だかしらんが俺の方が偉いことを説明する。
勇者はニコニコしながらよろしく総長さん!と答えた。ちっなんか調子狂うな…

その日、鬼浜会議は深夜まで続いた。ピエロ改めバカ王からいくつかの提案があった。
一つ目はラーミアの復活。
よくわからんがラーミアっつーのは簡単に言うとバカデカい鳥らしい。
なぜそんな鳥が必要かと言うと、魔王のいる城へは空路でしかいけないのだ。
昔じいさん達が攻めてった時もこの鳥を使ったと言っていた。
デカいってどんだけデカいんだよ…人を数人乗せれる鳥なんてまったく想像がつかない。

人を乗せて飛ぶ巨大な生き物…


430 :私の名は勇者3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:33:41 ID:clzXnlXR0
…モスラ。咄嗟に頭に思い浮かんだ。そうだきっとモスラに違いない。鳥とか言ってるけど
ほんとは蛾なんだろ。こいつはすげえ!モスラが復活したら魔王軍なんて目じゃねえ。
むしろちんけな城一つなんて簡単に壊滅させられるだろ!その後の世界征服も余裕だ!
これは非常に有益な情報だ。一気に俺の覇王への活路が開けた。
さあ復活だ。すぐ復活だ。どこにいるんだモスラは!さあ!どこに!

ちょっと総長さん興奮しすぎ!と勇者に諌められる。

ピエロの話によるとラーミアを復活させるには6つのオーブが必要だそうだ。
そのオーブはじいさん達が自分達で保管してたり元あった場所に安置したりで世界中にバラけてるらしい。

なんて事だ。

俺は大きな勘違いをしていた。まあ当然だ。モスラなんて現実離れした生き物がさすがにこの世界にも
いるわけが無い。オーブ…ボール…集める…集めたボールで復活…空を飛ぶ化け物…と言えば龍……三つの願い…
答えは一つに繋がった。どっちにしろ強力な味方に変わりは無い。

で、ひとつはロマリアにあるので取りに来いと言われた。


431 :私の名は勇者4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:34:12 ID:clzXnlXR0
二つ目は戦力強化。今のままでは絶対に魔王軍に勝てない。強力な武器や防具が必要だ。
じいさんは生涯掛けて究極の魔法を研究していたので、イシスという国にある実家を訪ねれば
何か手がかりがあるかもしれないとのことだ。究極の魔法か。覇王たる俺にピッタリの響きだ。
何の手がかりもないしとりあえずイシスを目指すか。




その日はそのままジジイの家に泊まった。

パンツのいびきがうるせえ。
洗濯バサミでマスクの上から鼻を摘んだ。


………………。


三分後。
息をしていない事に気づく。あわてて洗濯バサミをとった。危うく永眠させる所だった。


432 :私の名は勇者5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:37:24 ID:clzXnlXR0
ー次の日ー



朝食にはおなじみの野菜屑のスープが出た。それをたいらげると早速出発する事にした。

ロマリアに向かう道中勇者とピエロが勇者の親父の冒険について話していた。
ざっとまとめるとこういう事だ。


昔バラモスという輩が人間を滅ぼそうとした
当時16歳の勇者の親父はロマリアの王子(現ピエロ)世界でも有数の魔法使い(故じいさん)
それと「賢者」と呼ばれる何だか凄いヤツと旅に出て、長い冒険の末ついにバラモスを倒した。

世界に平和が訪れた。

そこから月日は流れ、現勇者が生まれた。誰しもがこの平和な日々に何の疑問も抱かなかった。
しかし危機は着々と迫っていた。魔物の活動がまた徐々に活発となる。
魔物は頻繁に「我が主」という言葉を口にする。
数年前、魔王の復活を直感した親父は単身旅に出た。そしてその後消息を絶つ。

433 :私の名は勇者6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:38:08 ID:clzXnlXR0
大体こんな感じだ。それでじいさんもバカ王も旅に出るチャンスを伺ってたらしい。
なるほど。そのバラモスて奴が実は生きていて今また力をつけて暴れてるのか。
倒すべき敵の名前も判明した。バラモス…首洗って待っとけよ…


そうして俺達はロマリアに到着した。黄色いオーブを受け取る。
バカ王は大臣に物凄い勢いで説教されていた。どうやら勝手に旅立ったらしい。
なんて無責任な王なんだ。国民の今後が心配だ。そもそも何でこいつは王になれたんだ。
そんな事考えつつも俺は武器屋に向かった。


あった。

前回は貧乏極まりない為買えなかったドラゴンキラー。今ならギリギリ買える。おい店長これくれ。



断られる。

434 :私の名は勇者7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:41:06 ID:clzXnlXR0
は?客寄せの為に一本だけ仕入れたモンだから実際に売る気はないだと!ふざけんな!!!

俺:ふざけんな!売れ!今すぐ売れ!
店:すみません無理です。
パ:売れ!あっしは大盗賊改め鬼浜の特隊カンダタでやんす!売れでやんす!
店:無理なもんは無理です。
勇:お願いします!私達の旅にどうしても必要なんです!
店:いいよ。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????



何故だ!?店長を問い詰める。店長は言う。だってかわいいんだもん。
その後俺とパンツに袋叩きにされたのは言うまでもない。
その後の商談により俺達は店側の好意で500ゴールドでドラゴンキラーを手に入れた。
うむ。なかなかよい買い物だ。

435 :私の名は勇者8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:41:50 ID:clzXnlXR0
こうして新しい相棒も手に入れ大満足の俺は一同東へ。目指すはイシスだ。
バカ王にオーブのついでに世界地図も貰った。
これで行き当たりばったりの冒険をする必要もなくなったようだ。
しかしこの勇者、筋肉ダルマのピエロ、火力抜群のじいさんの穴を埋めるのはキツイだろう。
ここからは苦しい旅になりそうだ。
気合を入れ直す。魔王にたどり着く前にくたばっちまうわけにはいかなからな。


取り越し苦労だった。


この女べらぼうに強い。

まず剣だ。筋力こそ欠けるものの抜群にスピードが速い。
俺は達人でも何でもないので素人じみた感想になるが、太刀筋が「活きて」いる。
おそらく血の滲むような努力とともに天性の才能もあるのだろう。
次に魔法。数種類の攻撃魔法を使いこなす。
だが何より驚いたのはこいつやくそうなのだ。やくそう魔法が使えるのだ。
ホイミ。それは優しい光と共に瞬時に傷を癒す。

436 :私の名は勇者9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:42:24 ID:clzXnlXR0
もうやくそう買わなくていいじゃん。いいなそれ。おし俺にもその魔法教えろ。
勇者曰く、この魔法は「怪我をする前の姿」をイメージし、
傷口に手をかざしその姿と今の姿を一致させる事によりそれを実現させるようだ。

簡単そうだ。試してみる。誰も怪我してないのでとりあえずパンツぶん殴る。

ホイミ。

メラの件もあるので少し控えめに言ってみた。当然の如く何も起こらない。
パンツはくすぐったいと笑っている。

…まあこれはボチボチ練習してくか。俺に使えない魔法なんてあるわけいいんだから。最強且つ至高の天才の俺様に。

その日は一日中歩いたがまだまだイシスは遠そうだ。野宿する事にする。
しかし…じいさんとピエロが抜けて少しはまともになるかと思えばそうでもなかった。
ヤンキー、パンツ、少女。違った意味でヤバイ。犯罪の臭いすらする。
俺の世界だと確実にポリに呼び止められ、職務質問くらうだろう。
断じて俺達はこの少女をさらったわけではない。

437 :私の名は勇者10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:43:01 ID:clzXnlXR0
更にその夜の鬼浜会議でとんでもない事が判明する。この女天然だ。清々しいまでの天然だ。
やべえ…このメンツヤバ過ぎる…

以下会議議事録。

俺:イシス遠いから途中アッサラームという町に寄ろうと思うがいいか?
パ:総長明日の朝はパンがいいでやんす。
勇:異議アリ。パンもう無いよ。野草摘んでスープ作ろうよ。
俺:いやだからアッサラームにだな…
パ:総長!パンを切らすのは緊急事態でやんす!キメラの翼で一旦戻りましょう!
勇:異議アリ!ここまできたのにもったいないよ!
  だいたいカンダタちゃんがつまみ食いするから、すぐなくなっちゃうんでしょ!!!
パ:異議アリ!違うあれは毒見でやんす!みんなのためを思ってこその…
勇:いいわけしないの!ちょっと総長さん黙ってないでなんか言ってよ!
俺:…………。


もうこいつらに意見を求めるのはやめよう。信じれるのは己だけだ。何なんだこの孤独感は。



438 :私の名は勇者11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:44:25 ID:clzXnlXR0
翌日俺達はアッサラームを目指す。パンツと勇者はまだ口論している。無視して先に進む。
途中パンツが地図を逆さに見ていて迷うというアクシデントもありつつアッサラームには三日後についた。

なかなか活気の溢れる町だ。
よく見ると俺の服ももうボロボロだ。この辺で新調したい。という事で店を探す。

あった。
店に入ると店主が話しかけてくる。妙に慣れなれしい。
あ?友達だと?おまえんか知らねーよどっかいけ。
どこの世界にもサイズ出しますよとか試着しますか的なうるせー!ゆっくり選ばせろ!てタイプの店員はいるようだ。
俺は真っ黒な動きやすそうな服を見つけた。なかなかいい感じだ。

おいこれくれよ。
え?38400ゴールド!?マジで!?…信じられない値段だった。
こいつニコニコしながらかなり悪どい野郎だ。俺をボろうとは舐めたやろうだ。

こんな店で買い物なんかするかいと店を去ろうとすると店主が友達だからまけると言ってくる。
友達だと…?そしてそこから交渉が始まった。


439 :私の名は勇者12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:47:07 ID:clzXnlXR0
結局俺の巧みな交渉術(途中何度か俺とパンツの鉄拳が飛んだ)
により「くろしょうぞく」は800ゴールドで買う事ができた。
ついでに「てつかぶと」を200ゴールドで、「マジカルスカート」を400ゴールドで買った。
パンツ、勇者に渡す。

鉄兜にパンツ一枚の大男、ミニスカの少女、やたら眼つきの悪い一見モジモジ君にも見える俺…
ひょっとして取り返しのつかない事をしてしまったのではないだろうか…

帰り際店主に頼むからもう来ないでくれと土下座されたがおそらくまた来るだろう。
なんたって友達だからな。

道具屋にも寄るがこいつもさっきのやつの親戚らしく
俺とパンツの交渉術により破格の値段で売ってくれた。

とても良心的な店が多い町だ。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな。
町の人の話によるとイシスはここから西の砂漠にあるようだ。水と食料を大量に買いこんでおこう。
その日は宿をとり、翌朝出発する事にした。一同歩き疲れたのか早々にベットに入る。

明け方鋭い空気を裂く音で目が覚める。窓の外を見ると勇者が必死に素振りしていた。

440 :私の名は勇者13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 20:48:30 ID:clzXnlXR0
この子は強い子だと思っていた。
一人で旅に出て、数多くの魔物を倒し人から尊敬を集める。
だが本当はプレッシャーに押し潰されそうになってたに違いない。そもそもたかだか16歳だ。
俺の世界の16歳なんてバカ女子高生の極みだ。
携帯いじり髪を染め顔にとんでもないペイントしてヘラヘラ遊びまわっている年頃だ。

俺が16の時なんて朝から晩まで道場で親父にしごかれ、
学校はほとんどさぼり深夜単車で走り回っていた。


何だか無性に体を動かしたくなった俺はそこからニワトリの鳴き声が聞こえるまで延々と筋トレをした。


441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:21:05 ID:NFLc9Ulc0
しえん

442 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:23:17 ID:kybxctfnO
支援

443 :砂漠の女王1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:29:35 ID:clzXnlXR0
……………………。あちい。

完全になめていた。砂漠。見渡す限り砂漠。歩けど歩けど砂漠。
灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐ。ほんとにこんな地獄の向こうに町などあるのだろうか?
俺達は砂の山を登ったり降りたりしながらひたすら西を目指した。
目の前に何匹かのカニがあらわれた。
涎を垂らし目は完全にイってちゃっている。カニの分際でラリってんのか?
俺は先頭きって切りかかった。只でさえ熱い。頭に完璧血が上っている。
ドラゴンキラーを手に入れてからというもの苦戦した記憶がない。
どうせこいつらも瞬殺だろう。


スクルト




スクルトスクルトスクルト

????

444 :砂漠の女王2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:30:23 ID:clzXnlXR0
カニの分際で何かしらの魔法を唱えやがった。
生意気な魚介類め。まあどっちにしろ俺のドラゴンキラーに敵は無い。
大きく振りかぶると腰を入れて目一杯突き込んだ。金属音と共に派手に弾かれる。
 
硬い。こいつら異常に硬い。なんじゃこりゃあ!!!!?????
カニ如きが俺の攻撃を…天下無敵総隊長の俺の攻撃を…

へこんでいる間に勇者が冷静に強烈な閃光で他のカニを焼き払った。
そっちも援護しよっか?とアイコンタクトを送る。

いらん。
これは俺とカニと男の意地を賭けたタイマンなんだ!
俺は狂ったように殴りまくった。カニはまったく涼しい顔をしている。
あっこいつ今笑いやがった!明らかに俺の事バカにしてやがる!甲殻類の分際で!
クレバーな俺は魔法に切り替える。くらえ!メラ!
多少効いたようだが火力が足りない。ちくしょうどうすればこいつを倒せる!?どうすれば!?


んメエエエェエエエラアアミィイイ!!!!!!!!!!


445 :砂漠の女王3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:30:54 ID:clzXnlXR0
極限状態の俺はとっさに叫んでいた。
じいさんの見よう見まねだ。俺の手からメラの数倍はある火の玉が飛び出す!
カニは一瞬にして灰になった。出来た。出来てしまった。
勇者はすごいすごい!と手を叩く。はっはっは当然だろうが俺を誰だと思ってやがる。


戦闘後、パンツがこのカニ食えそうだと言い出す。おいおい勘弁してくれよ…
俺と勇者は断固拒否したのでパンツはふてくされながら一人で食っていた。
ありえない。今後もできるだけ距離をおこう。ていうか何でコイツ舎弟にしたんだろ…
ちなみに味はうまかったらしい。

一日中あてどなく歩きついに陽が暮れた。
しかしビックリした。砂漠の夜はハンパなく寒いのである。
今日はもうここで寝る事にした。三人身を寄せ合い寒さを凌ぐ。こんな状況なのに勇者は楽しそうだ。
聞くと「仲間」がいる事が嬉しくて仕方がないらしい。
あっそうかこいつずっと一人で旅してたんだっけ。

急に表情が曇る。私のせいで魔物に狙われてみんなを危険にさらすのが怖いと言う。

446 :砂漠の女王4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:31:47 ID:clzXnlXR0
アホかこいつ。
俺は勇者を軽く小突く。
舎弟の分際でいらん心配するな。おまえ俺をなめてんのか?天下の鬼浜の総長様だぜ!
勇者は笑顔でありがとうと言った。これからもほんとによろしくねカンダタちゃん!総長ちゃん!

…このアマついに俺までちゃん付けしやがった…しかしこの笑顔を見てると何も言い返す気がなくなる。
ちっ…ほんと調子狂うぜ。


ー次の日ー

魔物を蹴散らしながらあいかわらず西を目指していた。遠くにぼんやりとだが町が見える。
みんなのテンションが一気に上がる。結局町に着いたのはその日の昼過ぎだった。

砂漠の町イシス。

俺達はじいさんの家を探すべく聞き込みをする。
ああ大魔導師様の家ですね。この路地のつき当たりですよ。

…大魔導師様!?あのじいさんが!?

447 :砂漠の女王5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:32:11 ID:clzXnlXR0
情報通り進むとそこには家があった。かなりデカイ。困った事に入り口には鍵がかかっている。
扉の前で考え込んでいるとパンツが不思議そうな顔で近づいてくる。

バキッ

錠前ごと引きちぎった。こいつには「鍵」という概念が無いようだ。
結果オーライて事で俺達は中に入る。

一部屋一部屋見て回るが特に変わったものはない。
一番奥の部屋に入る。ここが最後だ。 

うわっ汚ねえ。

そこには本だの巻物だのが散乱していて
よくわからない実験器具のようなものが部屋中を埋め尽くしていた。

何か手がかりになる物はないかと足元の本を拾ったその時、

おい!そこで何をしている!


448 :砂漠の女王6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:36:57 ID:clzXnlXR0
振り返ると数人の兵士がこっちを睨んでいる。何をしてると聞かれても返答に困る。

怪しいやつだ。さては魔導師様の研究を狙う賊だな?こっちに来い!

近くにいた勇者の手を引っ張る。連行する気だ。俺は反論した。

何だと!俺達のどこが怪しいと言うのだ!どこが怪し…どこが…怪…


明らかに怪しい。

思いっきり不法侵入だ。バカパンツが鍵ぶっ壊してるし。


結局俺達は城まで連行された。そして王の前に突き出される。
驚いた事に目の前にいたのは超絶美人の女王だった。
思わず見とれてしまう。
パンツなんて興奮しすぎてその場でスクワット始めやがった。周りの視線が痛い。
俺はこのままだと牢獄行きなので今までの経緯を必死に説明した。

449 :砂漠の女王7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:37:33 ID:clzXnlXR0
……じいさんの死はさすがに衝撃だったようだ。その場の空気が一気に重くなる。
そんな話信じられるかと言っていた側近も勇者の目を見るなり黙りこくった。
なんかこいつの目には人を信じさせる力があるんだよな。

勇者は続ける。
魔王を倒すためにはどうしても力が必要なこと。じいさんの家には何かヒントがあるかもしれないこと。

女王は口を開く。
…いいでしょう。魔導師様が命を賭けて守ったあなた方を信じましょう。
何か困った事があったらいつでも力になります。

わーお。顔だけでなく性格もいい女だ。惚れた。世界征服の暁には是非俺の女に…

ちょっと総長ちゃん何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いよ早くいこーよ!

そうして俺達は再びじいさん宅へ向かった。

450 :砂漠の女王8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:38:05 ID:clzXnlXR0
例の部屋に着く。
みなそれぞれ散乱する本やら巻物を調べていく。パンツはどっかに行ってしまった。
まああいつに本を読めという方が酷だろう。
正直俺もかなり眠い。勇者は何か見つけたらしく読みふけっていた。

数時間後。
夢の世界にいた俺の頭に一本の巻物が落ちてきた。いてーなコラ。燃やすぞ。
まさにメラを唱えようとしたその瞬間ひとつの単語が目に留まる。

「究極攻撃魔法」


…究極攻撃魔法!?



451 :砂漠の女王9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:39:32 ID:clzXnlXR0



 究極の破壊力を持った攻撃呪文。
 それは我々魔法に頼る者にとって生涯の研究課題であり夢である。
 現存する魔法で最高の破壊力を持つのはメガンテであろう。
 これは詠唱者の生命エネルギーを燃料にして
 大爆発を起こす呪文である。
 しかしこれではリスクが大きすぎると考えた古代の賢人達は
 生命エネルギーの代わりに
 精神力そのものを燃料に出来ないかと考えた。
 そうして完成したのがマダンテである。
 マダンテ。
 それは使い手の精神力すべてを一瞬にして
 増幅、圧縮開放してしまうのだ。 

452 :砂漠の女王10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:39:57 ID:clzXnlXR0
 威力が使い手の精神力に依存する事、
 「一瞬で精神力を開放する」ためには人並み外れた集中力が要る事、
 そして何よりその後しばらく一切の魔法が使えなくなる事。
 これは術使用者にとって致命的ではあるが、
 その威力はそれを補うには十分であろう。
 私の知る限りこの呪文を使いこなせた人間は一人しかいない。
 もしあなたがこの呪文を使いたいと願うのなら、
 日々の精神鍛錬を怠らない事だ。
 そして何よりも重要なのは呪文の反動に耐え得るだけの
 強靭な肉体が必要とされる。
 想像を絶する心身の修練の果てに習得が可能な
 まさに究極の呪文なのである………




453 :砂漠の女王11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:40:42 ID:clzXnlXR0
その後は修行の方法やら何やらが延々と書いてあった。
とりあえずこの巻物は貰っておこう。俺ほどの才能があれば使えるに違いない。
俺はその後も部屋を物色した。と、その時パンツが勢い良く部屋に入って来た。
両手には何かゴチャゴチャ何か抱えている。
暇だから他の部屋で使えそうな物を取ってきたというのだ。
さっき回った時はまったく気づかなかったのに。
こいつ頭は悪いがお宝を発見する事にかけては天才なのかもしれない。
飽きてきた俺はパンツと一緒にチェックを始めた。




とんでもないものを見つける。これ例のオーブじゃねーか!?
そうかじいさんもひとつ保管してたのか。あっさりと緑色のオーブを手に入れた。
だがしかし他はすべてガラクタだった。やはりパンツはパンツだった。

勇者は気に入った本が何冊かあったらしくいくつかの収穫を得て俺達はじいさんの家を後にした。


その夜も宿屋で鬼浜定例会議が開かれる。ここで初めて勇者がまともな意見を出した。

454 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/10(木) 21:41:33 ID:hyFJWYr+0
支援

455 :砂漠の女王12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:43:07 ID:clzXnlXR0
どうやら賢者に会いたいらしい。
賢者とは勇者の親父、バカ王、じいさんと共に魔王を倒したあの賢者だ。
じいさんの本によると魔王を倒した時賢者は約300歳らしい。
300歳!?どんなアグレッシブなジジイだよ。
きっと俺達の旅の助けになる何か知恵を授けてくれるんじゃないかと勇者は言う。
俺は個人的に300歳の人間というものが見てみたかったので次の目標は賢者に会う事になった。


ー次の日ー

俺の独断で出発する事を女王に挨拶がてら伝えに行く。相変わらず美人だ。
一応賢者について何か知らないか聞いてみた。

ここから遥か東に「ダーマの神殿」というとこがあってそこの神殿長がかなりの物知りらしい。
そいつなら何か知ってるんじゃないかという事だ。この美人が言うんだから間違いない。
俺は3秒で次の目的地を決めた。
もう砂漠は懲り懲りなので羽を使ってアッサラームまで戻る。
パンツはカニが惜しいのでもう一度砂漠に行こうと言う。
…こいつ砂漠に捨ててきたろか。
友達の店にも寄ろうと思ったが勇者が頼むからやめてくれと言うので即出発した。

456 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/10(木) 21:44:26 ID:clzXnlXR0
本日はここまでです
途中の支援ありがとうございました!
マジで20行規制がひでえ…読みにくくてスマンorz

457 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 21:49:14 ID:2z2EpV6m0
>>456
ぅぅぅううううううううおおおおおっつううううううぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!
久し振りでも面白かったあ!

やっぱり総長いいなぁww

458 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/10(木) 22:19:06 ID:M51LmnZZ0
パンツwwwww
あと、ひとし君が気になってしょうがないw

459 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 02:26:05 ID:u7fR3GkSO
ちょww友達ってwwwwwww

ひでえwwwww

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 12:47:02 ID:PX0ZH76S0
>>456
総長久しぶり
やっぱこの作品おもしれーわ
初代スレの埋めネタだったのが懐かしい

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 03:57:09 ID:e6KEdIPv0
久しぶりに来たら総長復活してる!?
応援してますんで頑張ってください!

462 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 20:03:05 ID:oS4LEGUgO
総長の話読んでると泣かされたり笑わされたり忙しいw

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 22:40:52 ID:3t6CORHCO
http://kjm.kir.jp/?p=179575

464 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:30:05 ID:fG/eVFU50
>>463
うおおおおおうめえw丁度物語の今頃はそんな感じですよ!
絵とかマジ感激!

では続きを投下します


465 :ダーマそしてイケメンへ… ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:31:46 ID:fG/eVFU50
ダーマにはここから東の洞窟を抜けてくらしい。一同洞窟を目指す。ここで魔物の群れが現れた。
むさい鎧野郎とキモいでかいイモムシ。そして空飛ぶ猫だ。この猫かわいい。もの凄くかわいい。
俺が猫に見とれてる間にパンツは鎧男と取っ組み合い、勇者はイモムシを焼き払っていた。
二人とも相手を仕留める。
二人の視線が俺に集まる。



駄目だ出来ない。俺にはこんな愛くるしい猫を斬る事など…

ザクッ

猫の爪が俺の顔にめり込む。痛い。ザクッ。痛い。ザクッ。痛い。ザクッいた…
まったく反撃しない俺をみてパンツは大声を上げて猫を脅かす。猫はビックリして逃げて行った。

戦闘後。
俺は勇者に叱られ列の一番後ろに並ばされた。なんなんだこの不当な扱いは。おれがボスなのに。

466 :ダーマそしてイケメンへ…2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:32:17 ID:fG/eVFU50
その後三日程歩きバハラタに到着した。ここは「くろこしょう」の名産地らしい。
今日は一日ここで休憩して明日の朝出発するか。
何気に武器屋を覗いてみる。なかなかいい品揃えだ。
道具袋の中を見ると2万ゴールド程貯まっていた。
どこの店も俺とパンツをみるとサービスしてくれるので、金は貯まる一方なのである。
ありがたい事だ。パンツがバカデカイはさみのような武器を持ってきた。
おいおいその格好にその武器は変質者のレベルじゃねーよ。俺はやめとけと言った。
しかしパンツは買ってくれるまでここを動かないなどとガキみたいな事言うので仕方なく買ってやった。
今後コイツとはマジでなるべく離れて歩こう。

俺と勇者は「まほうのたて」を買う事にした。
しかしさっきの出費もあるのに一つ2000ゴールドは高い。

おいこれ二つで2000ゴールドに負けてくれ。

店長はまさかそれはできないと言う。
が、後ろでパンツ一丁でおおばさみをジャキジャキ鳴らすパンツを見てひきつった顔で負けてくれた。
そして俺達が店を出るや否や鍵を閉め「本日はもう閉店しました」という張り紙を貼った。
せっかちな奴だ。

467 :ダーマそしてイケメンへ…3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:34:12 ID:fG/eVFU50
そうして街中をウロウロした後、夜になったので宿屋に向かった。
宿をとった後腹が減ったので酒場に向かう。そこで俺は運命的な出会いを果たす。

ここの肉料理はヤバイ。地肉とくろこしょうの絶妙なコンビネーション。
俺達三人は久しぶりの御馳走を堪能した。
パンツはこれは上質の牛肉だとかこの味加減は中々だせないとか知った風な口を聞きやがる。
モンスター食ってうまいとか言ってた奴がなに言っても説得力ねーよバカ。
結局最高の肉料理の魔力により町を出たのは二日後だった。

俺達は町人に言われた通り橋を渡り北上した。段々と山道になる。砂漠の次は山越えか。正直萎える。
前の方でパンツと勇者が何やら楽しそうに話ている。ちなみに俺はまだ最後尾のままだ。
そろそろいいんじゃないかと思い勇者に聞いてみた。

俺前行ってもいい?  

ダメ。  

わかった。  

確認しておくがここのボスは俺だ。

468 :ダーマそしてイケメンへ…4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:07 ID:fG/eVFU50
しかし後ろからだと二人の闘いっぷりがよく見える。
勇者の剣技は相変わらず冴えている。日に日に力強さが増しているようだ。

一方パンツは…いっつも隣にいたため気づかなかったがこの男計り知れない。行動が読めない。
まずムカついたのがせっかく買ってやった「おおばさみ」をほとんど使わない。
どんな敵にもボロボロのてつのおので殴りかかる。
本人曰く相手によって使いわけているらしい。おまえ明らかそんな頭脳派じゃないだろ。
やっと使ったかと思うとそれを両手で持ちそのまま殴りかかる。
その武器ってそうやって使うのか?それならてつのおのでいいんじゃないか?
おそらくこいつに拳銃渡そうが機関銃渡そうがそのまま殴りかかるであろう。
こいつはそういう男だ。そうこうしてるうちに俺達はダーマ神殿に着いた。


ダーマ神殿。

相当古い造りの神殿だ。中には冒険者と思われる奴らが結構いる。有名な神殿のようだ。
中に入り道並みに進むと祭壇があり上に人がいた。こいつが神殿長か。

469 :ダーマそしてイケメンへ…5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:49 ID:fG/eVFU50


まぶしい。



ハゲだ。バーコードだ。

どんな偉い神殿長か知らないがそのバーコードっぷりはもろに俺のツボにはまった。
まともに顔が見れない。


必死に冷静を装う。…ふう。もう大丈夫だ。よし。顔を上げる。が、次の瞬間


ぶほぉッぐへへへへへっうびゃっぱっ



パンツだ。このバカが…せっかく俺が精神を集中させて笑いという雑念を消したと言うのに…

470 :ダーマそしてイケメンへ…6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:36:32 ID:fG/eVFU50
パンツは腹を抱えて笑い転げている。お月様が!お月様が!とか言ってやがる。
俺も気持ちの糸がプッツりと切れた。神殿内を這いずり回って笑い転げる俺とパンツ。


そして数分後見事につまみ出された。ガッデム。
そしてさらに数十分後神殿から出てきた勇者に正座させられ俺達は延々と怒られた。


ここのボスは俺のはずだが最近は自信が無くなってきた。

勇者の話。
賢者は隠居してここからさらに山道を行った北の塔に住んでいる。また山道か。鬱だ。
山道と聞いてほんとは神殿で休憩して行きたかった所なのだが
あのハゲと目を合わせる自信が無いため仕方なく出発する。

パンツはまだ笑っている。…こいつ本気でこの山に捨ててったろか…とにかく俺達は出発した。


471 :ダーマそしてイケメンへ…7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:05 ID:fG/eVFU50
相変わらず後列で戦闘に参加させてもらえない俺は暇なのでこっそり「ホイミ」の練習をしていた。
俺にはこの呪文は向かないのか。
破壊的なイメージはすぐに湧くのだが「治癒」がどうしてもリアルにイメージ出来ない。
ちょうど前でパンツが勇者にホイミをかけてもらっている。
そういや昔ひとし君と喧嘩して刺されて入院した時看護士さんに包帯代えてもらったっけか。
そんな事ボーっと考えながらホイミっとつぶやく。一瞬だが青白い光が俺の掌から放たれた。

…わかった。
そうかコツは「病院」だ。そして俺はもっと重要な事に気づいた。所詮俺は余所者である。
魔法を使う際この世界のモノをイメージしてもうまくいかないのだ。
単車なり病院なり自分に身近だったものを強くイメージし、それを具現化する。
つまりのとこ「魔法」とはそういうものなのだ。

こんな事に気づいてしまう自分の才能が怖いぜ。
俺は自分の天才ぶりにニヤニヤしながら歩く。勇者が心配そうに近寄ってくる。
総長ちゃん大丈夫?どっか頭打った?ってどういう意味だよオイ!
おまえらの方がよっぽど人としておかしいから!

472 :ダーマそしてイケメンへ…8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:57 ID:fG/eVFU50
その後さすがに疲労の見える二人にかわりようやく先頭に復帰した。
久しぶりの出番に暴れまくる俺。
相棒のドラゴンキラーもすこぶる調子がいい。
デカ猿だろうがデカアリクイだろうが俺のドラゴン正拳突きの前に敵はいない。
圧倒的な強さで蹴散らして俺達は順調に塔を目指した。

そこからどれだけ歩いただだろうか。山道の上り下りを繰り返し遂に塔の前に立つ。


でけえ。


早速塔に入ろうとした。が、ドアが開かない

今回ばかりは相手がデカ過ぎてパンツの怪力も通用しない。

仕方ないので辺りを一周してみることにした。ちょうど入り口の反対側に一軒の家があった。
もしかしてここが賢者の家か?ドアをノックする。

出てきたのは300のジジイとはかけ離れた若い女の人だった。

473 :ダーマそしてイケメンへ…9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:38:30 ID:fG/eVFU50
女の目は固く閉じられている。とりあえず話かける。おいここは賢者の家か?女はコクリと頷く。
じゃあ話は早い。おい賢者に会わせてくれ。女はまたコクリと頷き家の中に手招きする。
おかしい。実におかしい。事が順調に運びすぎる。俺達の旅ではありえない展開だ。
絶対何か落とし穴があるに違いない。
まあ尻込みしてても仕方ないので入るか。

中は普通の民家と変わらない。と奥の部屋から一人の男が出てきた。イケメンだ。
青い目、整った顔、金髪のロンゲ、長身。…なぜか無性にムカつく。
俺は基本的にイケメンが大嫌いだ。

とりあえずガン付けつつ話かけた。

おい賢者に会わせろやイケメン君よーちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねーぞコラ。

イケメンはプッと吹いた。

あああ!!!??なんじゃ純日本人顔純日本人体型の俺がそんな面白いか!!?

明らかに見下されている。ここでなめられてはいけない。

474 :顔がいい奴が憎い10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:40:15 ID:fG/eVFU50
俺がまさに胸倉を掴もうとした瞬間みんなの視線に気づいた。
みんな揃ってイケメンを指さしている。
俺は5秒ほど考えた。そしてある一つの結論に至った。

…こいつが賢者なんすか?…

あり得ない。…絶対あり得ない。こいつが300歳とかあり得ねえ!!!!

一応確認する。
おいおまえが賢者なのか!?イケメンはニヤニヤしながら頷く。
こいつ賢者だか何だか知らないがムカツク…何だこの人を小馬鹿しにた態度は!?
勇者が駆け寄ってきイケメンに話かけた。

長くなりそうなんでテーブルを囲み茶でもシバキながら話す事になった。
そしてその話の中で俺は心臓止まるくらい驚いた。いやマジで。

まず何よりも一番ビビッた事。
このイケメンとうの昔に死んでるらしい。俗に言う「幽霊」というやつだ。
元々はすげー魔法使いで寿命を迎え死ぬ時にこの世界の神様(例の精霊ルビスと言う奴だ)
から精霊となり世界に危機が訪れる度にその危機を救うという使命を与えられたとの事だ。

475 :顔がいい奴が憎い11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:10 ID:fG/eVFU50
なんてスケールのでかい野郎だ。
だが前回の戦いで力の大部分を使い果たしたため今は魔力の込められたこの塔周辺でしか
自分を保てないらしい。幽霊も色々大変だな。
そしてこの女(よくみるとかなり美人。しかも年上。俺の好み180%超)はイケメンの娘だとのこと。 
といっても実の娘ではなく、前の戦争の孤児で賢者が引き取って育てたようだ。
魔物に襲われたショックで視力を失ったがイケメンとの修行で「心眼」を会得して
今では世界有数の「僧侶」らしい。やはりこの女も只者ではなかった。

その後もここに俺達が来ることは予言で知ってたとかごちゃごちゃ言ってた。
まあ俺はあんま真剣に聞いてなかった。はいはいイケが何か難しい事言ってますよ。

そして最後に一言。私はもうついて行けないのでかわりにうちの娘を……


!!!????


うちの娘を連れて行って欲しい。我が娘であり愛弟子だ。きっと役に立つ。

……つまりて事はこのきれいなねーちゃんも参加すんのかよ!?イケメングッジョブ!

476 :顔がいい奴が憎い12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:56 ID:fG/eVFU50
ようやく…ようやく鬼浜にまともな面子が追加されそうだ。しかも美人。やったぜ。




その夜はささやかな宴会が開かれた。
イケメンがつけたとかいうワインが出された。味はいいのだがやはりムカつく。
きまって顔がいい奴はワインに詳しかったりするんだよな。
ねーちゃんはわりと飲めるクチのようだ。勇者はヘラヘラしてる。
久しぶりのアルコールだ。がぶ飲みする俺。お約束通り意識が飛ぶ。


‐次の日‐

頭は痛いが爽やかな朝だ。
さて新メンバーも加わったとこで楽しく出発するか。俺はベットから降りて下に向かう。
もう勇者とねーちゃん旅の準備を済ませ待っていた。


じゃあ行ってくるね!総長ちゃんもカンダタちゃんも賢者様の言う事聞いてしっかり修行するんだよ!

477 :顔がいい奴が憎い13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:43:17 ID:fG/eVFU50
……???????
状況がまったく飲み込めない。あっ行っちまった。どういう事だ。
呆気にとられてる俺を見てイケが口を開いた。

…俺が酔いつぶれてる間に話は進んでたらしい…

まとめると
・勇者とねーちゃんは引き続きオーブを探す旅に出る。
・俺とパンツはここで修行する。

ということだ。ちょっと待て。何が悲しくて男三人で山篭りしなければいけないのだ。俺も後を追うぞ。
追いかけようとする俺にむかってイケがボソッと呟いた。…マダンテ。 マダンテ!?
このイケなんとマダンテが使えるらしい。
ちゃんと修行をこなせば俺にも使えるようにしてくれるという。俺は悩んだ。
やはり世界征服及び魔王をボコるために強力な魔法は必要だ。
俺ほどの才能があればすぐに覚えれるだろう。とっとと済ませて後を追うか。
ということで俺とパンツはここで修行する事にした。


そこから俺とパンツの苦悩の日々が始まるとはこの時は知る由も無かった。

478 :顔がいい奴が憎い14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:08 ID:fG/eVFU50
このイケ洒落になんねえ。もはや修行という名の拷問である。

朝:ひたすら走る。山道をどこまでも走る。手を抜くと炎や氷の塊が飛んでくる。危ねえ。死ぬ。
昼:ひたすら闘う。イケが連れてくるよくわかんない魔物と闘う。強い。
  負けたら死ぬから気をつけるようにと言われる。笑えねーよ。死ぬ。
夜:ひたすら寝る。死んだように寝る。


これの繰り返しだ。
本人曰く「健全な肉体には健全な精神が宿る」からまずは基礎体力から鍛えなきゃ駄目らしい。
俺は幾度と無く脱走を試みるがその度に捕まりボコボコにされた。こいつは絶対Sだ。極度のドSだ。
しかし珍しくパンツは文句一つ言わない。つらくないのかと聞いてみると飯がうまいから平気らしい。

なるほど。
おそらくこいつは魔王に最高級のステーキを食わせてやると言われたら簡単に寝返るだろう。



そうして一ヶ月ほど経っただろうか。
やっと次の段階に入る事になった。次の修行はようやく魔法の修行に入るようだ。

479 :顔がいい奴が憎い15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:43 ID:fG/eVFU50
そしてここからはスペシャルゲストも参加するらしい。
どうせこのクソイケだからろくな奴じゃないだろう。何がスペシャルだくたばれ。

嫌な予想程的中する。
スペシャルゲストとして紹介された…そこにいたのはピエロだった。
おまえまた城から脱走してきたのかよ…

しかしちょっと雰囲気が違う。
どうやら塔の魔力により一時的に若返ってるようだ。ガタイが半端ねえ。
こうしてここからは魔法はイケと、格闘はピエロと地獄の特訓が始まった。


とりあえずとにかくピエロ強え。
こいつの全盛期はこんなに強かったのか。組み合っても普通に力負けする。チクショウ。
わしに勝てないようじゃ魔王になんて簡単にひねり潰されるぞだと!?俺の負けず嫌い魂に火が着いた。
同じ人間だ。本気を出せば負けるはずがねえ!その日からさらに「俺メニュー」として
別のトレーニングも追加した。ピエロ如きに負けてるようじゃこの先どうしようもねえぜ。


480 :顔がいい奴が憎い16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:45:13 ID:fG/eVFU50
そしてイケ。こいつ笑えねえ。
よくわからん強力な呪文を連発してきやがる。危ないとかそんなレベルじゃない。

「実際にその呪文をくらって痛い思いをする事で覚える」のがこいつの教育のポリシーらしい。

いやいやその前に死ぬから…俺とパンツは毎日瀕死になりながら修行した。
後一歩で死ぬって絶妙のタイミングでイケメンが回復魔法をかける。生殺し状態だ。
徐々にだが俺の魔法のレパートリーも増えていった。



そしてさらに一月ほど経った。
正確な時間の経過はもう覚えていない。俺達は確実に強くなった。

パンツ。こいつヤバイ。もともとガタイよかったのだがここ二ヶ月でさらにでかくなった。
どのくらいヤバイかってもはや見た目人間か魔物かってわからんくらいヤバイ。
一人で町に入ったら町人総出で討伐されそうだ。
城とか絶対入れてくれなさそうだ。子供が見たら確実に泣き出すであろう。

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 23:46:09 ID:DBW87hHl0
支援

482 :顔がいい奴が憎い17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:23 ID:fG/eVFU50
そして俺。
俺も確実に一回りでかくなった。
イケメンが変な種を調合した薬とか飲ますせいで飛躍的に身体能力は向上した。
おそらくこっちの世界でいうステロイドみたいなもんだろうか。
副作用が心配だ。ちょっと聞いてみる。最悪死にはしないから問題無いらしい。

それって問題無いって言うのだろうか。もうあまり考えない事にしよう。


俺達は幾度と無く死に掛け(死んだおじいちゃんにこっちきちゃだめだって言われた:パンツ談)
最終試練に入る事になった。最終試練とは塔の中で行うようだ。

ずっと近くにあったのに一度も立ち入る事のなかった塔。
ついにその中に足を踏み入れる時がきたようだ。イケは最初に俺に中に入るように言った。

大きな扉の前に立つ。

扉は簡単に開いた。中は真っ暗だ。しばらく足を進める。後ろの扉が消えた。

もう前進するしかない。暗闇の中をズンズン進む。

483 :顔がいい奴が憎い18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:51 ID:fG/eVFU50
しかし真っ暗闇を長時間歩くと不思議なもので段々感覚が麻痺し出す。



どっちが前でどっちが後ろなのかわからなくなってくる。




さらに進む。




もう右も左もわからない。




さらにさらに進む。

484 :顔がいい奴が憎い19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:48:26 ID:fG/eVFU50
ここまでくると自分が上に向かってるのか下に向かってるのかすらわからない。
もの凄く広い部屋の真ん中にいる気もするが細い平均台の上を歩いている気もする。

だがパニックではなく何故か心は落ち着いている。俺はひたすら奥を目指した。




どのくらい進んだだろうか。



急に視界がひらける。見覚えのある村。魔物に荒らされ破壊された村。
俺はその村を空中から見下している。なんとも不思議な感覚だ。やがて数人の人間が入ってくる。

あれは………俺だ。
おれとピエロとじいさんとパンツだ。体中から嫌な汗が噴出す。

勇者と出会う。

485 :顔がいい奴が憎い20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:07 ID:fG/eVFU50
やめろ。

墓を掘る。

やめてくれ。

魔物と鉢合わせる。

もういいだろ。

俺達は命ギリギリで魔物を倒しそこへ増援が現れる。

絶望。

そしてじいさんの決断。

やめろおおぉおおお!!!!!!!!!!


しかし俺の声は届かない。激しい閃光と共にじいさんは魔物のと共に塵になった。

486 :顔がいい奴が憎い21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:44 ID:fG/eVFU50
その後何回、何十回、何百回とその場面がフラッシュバックする。気が狂いそうだ。

俺は自分の弱さを呪った。俺が、俺が強ければ。もっともっと強ければ。
この先旅を続けるとまた誰かが死ぬのかもしれない。それはそれで仕方ないだろう。
強い奴が生き残り弱い奴は死ぬのだ。当然の事だ。だが、だが俺は納得できない。
自分の舎弟が俺自身の弱さの為に死んでいくの事など納得できるはずがない。強くなりたい。
誰よりも圧倒的に強くなりたい。俺は心の底から力が欲しいと渇望した。

思えば俺の人生は「強さ」へのあてつけだった。親父は小さな工場の社長だった。
豪気な性格に腕っ節の強さ。けっして裕福とは言えないがそんな親父を慕って
従業員も集まり幸せに暮していた。

だが突然王手の企業がそこに大きな工場を建てたいと言い出し親父に立ち退けと言ってきた。
無論親父は断る。そこから執拗な嫌がらせが始まった。裏に手を回され受注は激減した。
雪ダルマ式に増える借金。従業員も一人、また一人と去って行く。おふくろは過労で倒れた。
そしてそのまま帰らぬ人となった。あろうことかあいつらは俺のチームにまで目を付けた。

「鬼浜爆走愚連隊という暴走族は薬の仲介をしている」

487 :顔がいい奴が憎い22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:52:50 ID:fG/eVFU50
事実無根のでっち上げだ。しかし世の中金というもので事実なんてどうにでも変えれるらしい。
俺は無実の罪で刑務所に入った。獄中に一通の手紙が来る。


親父が死んだ。


488 :顔がいい奴が憎い23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:54:43 ID:fG/eVFU50
「リュウジへ

 おまえが無実なのはみんな知っている。
 馬鹿で喧嘩っぱやくて暴れまわっていたが薬なんぞに手を染めるようなまねは絶対にしない子だ。
 俺が保障する。
 おまえが仲間を守るため一人で無実の罪を被り刑務所に入った事を父は誇りに思う。
 世の中汚い奴が多いがそんななかでもしっかりと自分の信念を貫いて欲しい。

 日頃命は粗末にするななんて言っておいておかしいかもしれないが
 おそらく私はもう長くない。最後に大きな花火を上げて一足先に母さんの所へ行く事にする。

 工場は閉める。借金の事は何の心配もしなくていい。
 刑務所には入っているが、出てきたら堂々と胸を張って歩きなさい。
 リュウジの人生に何一つ負い目を感じる所はないのだから。
 自分のやりたい事を見つけ、精一杯生きなさい。父は母さんと天国から見守ってるぞ。

                                       父より   」

489 :顔がいい奴が憎い24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:55:41 ID:fG/eVFU50
出所してから知ったのだが親父は自分の保険金で借金を返済した。
死因は原因不明の事故らしい。おそらく事故ではないだろう。
俺の工場兼実家はもう無くなっていた。その無くなったという事実が全てを物語っている。
そこにはただ馬鹿デカい無機質な工場があるだけだった。


そこからの俺の人生はひきこもり酒に溺れる毎日だった。
自分を責めた。身の危険を覚悟で交渉に行ったのかもしれない。
もしくは何かしらの弱みを握られて呼び出されたのかも知れない。一つ確実なのはその時に決死の覚悟で
この遺言ともとれる手紙を残した事だ。今となっては何が真実だろうとどうでもいい。
無気力でただ過ぎるだけの毎日を送った。いつ死んでもよかった。
………そして何の因果かこの世界に迷い込む。
俺はずっと考えていた。ベランダから落ちて何故あのまま死ねなかったのだろうか。
これはもしかして神様とやらがくれたチャンスなのではないだろうか。
結局この世界も元の世界と何も変わらない。
強い奴が弱い奴を喰いものにし、弱者は弱者で勇者にただひたすら救いを求める。

どっちも腐ってる。

490 :顔がいい奴が憎い25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:56:13 ID:fG/eVFU50
なら自分で理想の世界を創ればいい。魔王を潰し自分がこの世界の覇者になればいい。
もう誰も俺の「弱さ」のせいで死なせたりはしない。


急に視界が変わる。
見下していた自分の視点に戻ったようだ。
じいさんが魔物へ向かって駆け出そうとした瞬間、俺が遮り逆に魔物の前に立つ。
目を閉じ精神を極限まで集中させる。


魔物のが一斉に飛び掛かる。
時間が止まる。いや、微かに動いている。自分以外の感覚が全てスローモーションになったようだ。
やるべき事は分かっている。心に思い描くまま叫んだ。





マ    ダ     ン    テッッッ!!!!!!!!!!!!!!

491 :顔がいい奴が憎い26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:57:26 ID:fG/eVFU50
叫び声と共に強力な光が発生しそれは球体となり魔物の群れの中心で爆発した。







閃光で視界が無くなる…

 









492 :顔がいい奴が憎い27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:58:04 ID:fG/eVFU50
次に目を開けた時、そこはもうあの村ではなかった。
暗闇の中一冊の本がぼやけている。
俺は誘われるがままにその本を手にし、開いた。

ぼうっと扉が現れる。

開けるとそこにはイケメンとパンツが立っていた。



おめでとう。


イケメンがニヤニヤしながら手を叩く。こいつには言ってやりたい事が山ほどある。
なんなんだこの胸糞悪い塔は!俺は素でコイツをぶっ飛ばしたかった。イケが口を開く。


塔の中で何を見たのかは私にもわからない。
ただおまえは己の内面に触れた。答えを見つけるのは自分自身だ。

493 :顔がいい奴が憎い28 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:00:32 ID:fG/eVFU50
まったく何を言ってるのかわからない。意味不明だ。
ただ小難しい事をスカした顔で言ってかっこつけてるのはわかった。
これだからナルシストは嫌いだ。うぜえ。もう殴る気も失せた。

パンツが目をキラキラさせながら今度はあっしの番でげすねとか言ってやがる。
コイツはこの塔の恐ろしさを何一つ理解してない。
俺は軽く肩を叩き頑張れと一言だけ伝えた。パンツははいでやんすと意気揚々と塔に入って行った。





そしてその後塔から出てきたのは二日後だった。ちなみに俺は一週間だったらしい。

なんというかパンツの目付きが違う。
脱力しているようで、それでいて鋭く、隙が無い。全てを悟った顔をしている。
きっとこいつも塔の中で想像を絶する体験をしたのだろう。


494 :顔がいい奴が憎い29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:01:08 ID:fG/eVFU50
俺は初めてパンツに感心した。
こいつは普段チャランポランだが色々辛い経験をしてきたに違いない。
じゃなきゃ裸パンツ覆面盗賊なんてできない。常人の感覚ではできるはずがない。

パンツが重い口を開く。成長したパンツは何を言うのだろうか。


腹減ったでやんす…


…………。

最終試練も終えた事だしそろそろ出発の時期かな…。


その後パンツは10人分の飯を食らい死んだように寝た。
その間俺はひたすらマダンテを試みていた。
だがうまくいかない。いけそうな雰囲気はあるのだが最後の詰めが甘いのか集中しきれない。
これはどうやらまだまだ修行が必要なようだ。手応えはある。絶対に魔王のブチ込んでやるぜ。

495 :決戦!イケをブチのめせ30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:02:29 ID:fG/eVFU50
パンツが目を覚ましイケメンの所へ行く。イケは言った。

これより最終試験を始める

?は????
意味わかんねえ。こないだ最終試練終わったばっかじゃねーかよ。何言ってんだこいつ。馬鹿か?


こないだのは最終試練だ。次は最終試験。別物だ。

俺は深く殺意を抱いた。
これだから顔のいいやつは信用できない。こいつほんとどうしてくれようか。
しかしその試験の内容は「イケメンとピエロをぶっ飛ばす」というものだった。願っても無い事だ。
鍛えぬいた俺の体力と魔力!ギタギタのボコボコにしてやるぜッ!
 
イケは静かに一言。…覚悟しとけよ…
 

496 :決戦!イケをブチのめせ31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:22 ID:h7eqr8+40
近くの拓けた場所に移動する。
積年の恨み、今、晴らす時べし!
ハイテンションで身構える俺とパンツ。
イケは構えもせずブツブツと呟いている。チャンスだ。

パンツが飛び掛かろうとした瞬間イケとピエロが青白い光に包まれた。

……!?どんどんその姿が変貌していく…これは!?


そこにはイケとピエロの姿は無く巨大な二匹の魔物がいた。
ヤバイ。直感的にヤバイ。本気ださなきゃ普通に死ぬ。
修行中幾度と無く死にかけたが今回ばかりは洒落にならない。二人(匹?)とも目がイっちゃってる。
本気で俺達を殺る気だ。


強い相手には先制パンチ。これ喧嘩の基本。
俺はパンツに相手の注意を引き付けるように指示しスカラをかけた。

497 :決戦!イケをブチのめせ32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:52 ID:h7eqr8+40
パンツは相手に特攻する。その間に俺は精神統一する。
いきなり俺のもてる最強の呪文をぶつけてやる。先手必勝!くらえ!

俺はメラゾーマと叫んだ。特大の火炎球が元イケメン目掛けて飛んでいく。

もらったッ!!

元イケは大きく息を吸い込むと強烈な炎を吐いた。炎と火炎球が衝突し強烈な熱風が巻き起こる。

相殺された。

なんてこった。いきなり打つ手無しか!?作戦を変えよう。相手の戦力を分析し比較する。
総長たるもの馬鹿みたいに特攻してても駄目なのだ。時には冷静になる必要がある。

イケメン…デカい骨の竜。もの凄い炎を吐く。
ピエロ…でかいおっさん。石っぽい。固そう。力強そう。

俺…強い。
パンツ…頭悪い。


498 :決戦!イケをブチのめせ33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:05:24 ID:h7eqr8+40
おいおい勝てんのか!?
これはまずタイマンはっても勝ち目ないので二人がかりで一匹ずつ倒すしかない。
最初のターゲットはでかいおっさんだ。動き鈍そうだしできるだけ体力温存して潰したい。
と、パンツに伝えようとするがパンツはまた一人で骨に突っ込んでった。コラっバカ!死ぬから!
パンツは骨に一撃見舞ったがカウンターの炎を直撃した。
やべえ!俺はとっさに地面目掛けてイオラを放つ。
大量砂埃が巻き上がり二匹の視界が奪われる。その隙にパンツを引っ張り出し回復させる。
パンツはおじいいちゃん…おじいちゃんとうなされている。
駄目だ!おじいちゃんは駄目だ!帰ってこい!

何とか一命を取り留めた。俺はパンツに先におっさんから倒すぞと言った。パンツは頭を縦に振る。

…理解してくれてる事を祈る。

自分とパンツにバイキルトをかけあえておっさんに肉弾戦を挑んだ。
なぜかというと骨の炎が危険過ぎるからだ。あれは一撃で致死レベルだ。
俺達がおっさんに接近し続ける限り巻き添えを食うから骨は炎を出せない。
というよりほとんど手を出せない。二匹とも図体がデカすぎる。
実質2対2というよりは2対1×2といった所だ。

499 :決戦!イケをブチのめせ34 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:06:29 ID:h7eqr8+40
何とか活路を見出した。冷静に状況を分析し最良の策を立てる。自分の才能が怖いぜ。
とか考えてるうちにパンツはおっさんと殴り合っていた。すかさず加勢する。
いける。おっさんの一撃一撃は重いが単調だ。ある程度はかわせる。
俺達はゴリ押しでおっさんを攻め立てた。

体中に傷が増えていく。だがそれ以上にハイペースでおっさんの体力をけずる。
ついにパンツの渾身の一発がおっさんの脳天を砕いた。ボロボロと崩れ落ちる。
そして元のピエロの姿に戻った。気絶しているようだ。

さて次は問題の骨だ。

……うお!!!!!!!???間一髪で炎をかわす。骨は次の炎を吐く体制に入っている。

第ニ射が来た。何とか避ける。

畜生このままじゃ避けるので精一杯だ。反撃できない。丸焼けになるのも時間の問題だ。
パンツが俺の近くに来る。
あっしが何とか注意を引き付けますんでその隙に総長の魔法でなんとかして下さいだと…?
何か策があるのだろうか?まさか塔で超必殺技でも身に着けたのだろうか?
このままでもジリ貧なのでこいつに賭ける事にした。おまえにまかせる!

500 :決戦!イケをブチのめせ35 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:07:23 ID:h7eqr8+40
合点でやんす!と、次の瞬間パンツが骨の前に仁王立ちになる!











結果的に俺達は骨を倒した。
パンツが骨の前で謎のダンスをし、何事もなかったように骨が炎を吹いた時は本当に終わったと思った。
だがパンツが転んで偶然炎を避け、飛んでった武器が骨の口に挟まり塞いでしまい、
その隙に俺の渾身の鉄拳ドラゴンキラーを連撃でぶち込まれた骨はバラバラになった。
パンツの武器がまたいい具合に作用した。言うなれば電球を口に突っ込んで顔面パンチ。
あれに似てる。限りなく偶然だが運も実力のうちという事にしておこう。

501 :決戦!イケをブチのめせ36 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:07:57 ID:h7eqr8+40
一つ学んだのはパンツはろくな事をしない。本当にろくな事をしない。
前から肝に命じていたのだが塔の試練で何か変わったんじゃと期待した自分がバカだった。
そうして骨もまたイケメンに戻った。


ようやくイケメンから修行終了宣言が出た。
終了証明品として変なでかい本を渡された。塔の中で見たやつだ。
「さとりにしょ」というらしい。
この先何かしらの役に立つから持って行けと言われる。俺は一瞬考えて答えた。


いらない。


イケが驚いた顔をして言った。
いいのか!?賢者の証明だぞ本当にいいのか!? 
いらないものはいらない。
歩いて旅をするのにこんなでかくて重い本邪魔なだけだ。読む気しねーし。
そもそも俺は賢者になりたいなんて言った覚えは無い。
何が賢者だ。ナルシストっぽくて寒気がする。

502 :決戦!イケをブチのめせ37 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:09:13 ID:h7eqr8+40
イケメンが賢者なら俺はそう、例えるなら強者だ。心技体共に揃ったつわものなのだ!
だいたい俺の肩書きは総長なのだ。勝手に変えんな。

イケメンは俺が本気でいらないのを確認すると苦笑いしながら
その方がおまえらしくていいのかもしれないなと言った。

その夜はイケメンの所での最後の晩餐だった。
パンツはここの料理が惜しいのでもう一週間ほど居たいと言った。
100%断る。早くこの山奥から開放されたい。確かにこのワインは惜しいが。
しかしここに居たのも二ヶ月程だろうか。思えば色々あったな。
数え切れないほどイケの魔法をくらいパンツにどつきまわされ死にかけた。
今となってはそれもいい思い出…………ではない。絶対ない。本当に地獄だった。
結局俺達は4人でデカイ樽一つ分のワインを空け、二日酔いに苦しみ出発は次の日の昼になっていた。
まあいつもの事だ。

イケメンは勇者と伝書鳩で連絡を取っていたらしく合流場所はバハラタになった。
今日の夕方待ち合わせなのでボサッとしてないで早く出発せいと言われる。
最後の最後まで人使いの荒いやつだ。ピエロは羽で帰っていった。

さて行くか。とにかく俺達は走った。毎日アホみたいに走らされていたためこのくらい屁でもない。

503 :オーブを求めて38 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:13:02 ID:h7eqr8+40
バハラタには夕方を待たず着いた。
まだ勇者達の来る気配はないのでパンツと二人で時間を潰す事にした。
久しぶりのシャバの空気はうまい。
気分がいい俺達とは対照的に町人達の視線は冷たい。…というか絶対怯えている…
武器屋の前を通る。オヤジと目が合う。
その瞬間物凄い勢いで窓、ドア、その他ありとあらゆる外部と接触している場所に鍵を掛けられた。

…ひどすぎやしないか。まるで凶悪犯扱いじゃないか!誤解を解こうとドアをノックする。

トントン     …。

トントントン   ………。

トントントントン …………………。


バキバッ!!!ドコッ!

思わずドアを破壊してしまった。
中からうぅぅぅぅひぃぃぃいいい!!!!!!!!という悲鳴が聞こえる。

504 :オーブを求めて39 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:14:17 ID:h7eqr8+40
非常にやるせない気持ちになり俺達は武器屋を後にした。
そろそろ勇者が来る頃だろう。町の入り口で待ってやるか。


遅い。


三時間程経過した。すでに真っ暗だ。あのバカイケまさかはめやがったのか!?


総長ちゃんカンダタちゃんおひさ♪

!!!!?????いきなり後ろから声をかけられた。驚く俺。
いつのまに背後に!?入り口は一つしかないはず!?

あはは!驚き過ぎ!ルーラで飛んできたんだよあーお腹痛い

ルーラ???なんじゃそりゃ????

どうやらルーラとは一瞬で町を移動できる魔法らしい。羽のようなもんだ。

505 :オーブを求めて40 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:15:14 ID:h7eqr8+40
あれ?もしかして俺達もわざわざ走らんでも羽で来たらよかったのでは?
おそらく今頃イケはニヤニヤしてるだろう。

あいついつか殺す。もう死んでるけど殺す。

とりあえずいつものように宿屋に移動した。全員集合で鬼浜会議を行うのもひさしぶりだな。
みんなの顔を見回す。ねーちゃんは相変わらず美人だ。
ようやく、ようやく鬼浜にまともなメンバーが…非常に感慨深い。
勇者は髪が伸びだいぶ伸びちょっと大人っぽくなったようだ。
女二人旅ってのも色々苦労があったんだろな。

ちょっと総長ちゃん!しきってくれなきゃ話進まないよ!

おっといけないいけない。
思わず娘に見とれる親の気持ちになってしまった。俺達は別れてからのお互いの出来事を話し合った。
まあこっちは山に篭ってひたすらしごかれてただけでたいして話す事もないのだが
勇者達は色々あって結局例の赤いオーブを手に入れたらしい。
女二人旅なので辛い事もあったのだろうと思いきやかなり楽しかったようだ。

506 :オーブを求めて41 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:16:07 ID:h7eqr8+40
久しぶりに勇者の笑顔を見るとホッとしてしまいその日も俺達はしこたま飲んだ。
そしてうちのチームで一番酒が強いのはこのねーちゃんだという事が発覚した日でもあった。
べらぼうに強い。酔わせてウへへ…何て考えた俺が甘かった。
俺とパンツ二人がかりでも歯が立たない。なんて女だ。

酒を運んできた酒場のバニーちゃんが
さすが勇者様はモンスターも従えてるんですねとかわけわかんねー事言いやがる。

総長!あの女総長見てあんな事言ってるでやんす!しめましょう!!

…おめーの事だ。




507 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:17:34 ID:h7eqr8+40
今日はここまでです!
毎度毎度支援ありがとうございます!

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/13(日) 02:12:36 ID:jcR1H8HT0
乙!
今日も楽しませてもらったよ。

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/13(日) 02:22:22 ID:rjoW1B780
改めて吹いたww
パンツがおもしろすぎるwww

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/14(月) 02:23:17 ID:+Q6uMGopO
>>502
>数え切れないほどイケの魔法をくらいパンツにどつきまわされ死にかけた。
下剋上www

511 :恐怖の船出1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:18:01 ID:TmeR1zoU0
ー次の日ー



ロマリアを目指した。
まあ目指したと言っても勇者の「ルーラ」とやらで一瞬で行けるのだが。
なぜバカ王のとこへ行くかというとこの先オーブを探すにあたり自分達の船が欲しいのだ。
勇者とねーちゃんは二人旅の間商業船に便乗してたらしいのだが、決められた航路外も探索したいし
何よりも自分達のせいで船員を危険に巻き込みたくないらしい。
普通なら船一隻ほいほいとくれるはず無いだろうがおそらくバカ王はくれるだろう。
なぜならバカだからだ。

勇者が呪文をとなえるやいなや体が浮き上がり一瞬でロマリアへ着いた。
これは凄まじく便利だ。一同真っ直ぐ城へ向かう。

階段を上がり王の間へ進む。

???おかしい。王の玉座には誰も座ってない。隣の大臣にどこへ言ったか聞いてみる。

512 :恐怖の船出2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:18:43 ID:TmeR1zoU0
バカ王はこないだ勝手に城を空けた罰として部屋に監禁されているようだ。
しかし家来に監禁される王なんてこいつくらいのもんだろう。

とりあえず大臣に聞いてみる。おい船くれよ。もの凄い剣幕で大臣が怒り出す。

何だかよくわからんが俺達に関わると王様はろくな事をしないとか
パンツはまだ無罪じゃないとか船なんかそんな簡単にやれるかとかそんな事を言っていた気がする。

埒があかないので無視してバカ王の部屋に直接会いに行く事にした。
途中兵士に阻まれたがパンツを見るなりすごすごと道をあけた。

王の部屋には何十にも鍵がかけてあった。
例の如く扉を吹っ飛ばして中に入る。見たところ誰もいない。
ベットが膨らんでいる。おそらくふて寝してるのだろう。
思えばこいつが城を飛び出したのも俺達の修行の為だった。
そう考えると俺にも責任がある気がする。礼の一つでも言うかと思いさすってみる。


513 :恐怖の船出3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:19:08 ID:TmeR1zoU0
反応がない。

熟睡してるのだろうか。

軽く小突く。

反応がない。

大きく揺すってみる。

…やっぱり反応がない。

俺は思い切って布団を引っぺがした。


 
………。やられた。
そこには王の姿はなく「おおさまちゃん(はぁと」と書かれたでかい人形があるだけだった。

514 :恐怖の船出4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:19:55 ID:TmeR1zoU0
やっと駆けつけた大臣はその光景を見て怒りが再発したのかギャ−ギャー騒ぎ遂には倒れてしまった。
コイツは絶対カルシウムが足りてないな。勇者が心配そうに駆け寄る。結局兵士が担いでった。
脱走したとなるとバカ王はどこへ行ったのだろうか。意見を聞いてみる。


勇:きっと凹んでどこかへ気晴らしに行ってるんだよ。お花畑とか。
パ:ピエロの旦那は魔王の呪いで人形にされたでやんす!魔王めがなんて残忍な!許さないでやんす!
ね:頻繁に脱走してるみたいだし城の人に聞いてみたら?

ねーちゃん…あんたがいてよかった…

そこから俺達は手分けして情報を集めた。
どうやらバカ王は無類のギャンブル好きらしい。
そして城下町にモンスター闘技場という賭場があり隙をみてはそこに入り浸っているらしいのだ。
典型的なダメ人間じゃねーか。
他にあても無いので俺達は闘技場を目指す事にした。

515 :恐怖の船出5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:20:23 ID:TmeR1zoU0
闘技場ー階段を降りるとそこは熱気で充満したいた。ギャンブル特有の熱気。
パチンコ狂の俺としては非常に懐かしい。何というか心地いい。
勇者はこういう所は初めてのようでキョロキョロしている。周りの視線がパンツに集まる。マズい。
おそらくみんな逃げ出したモンスターか何かだと思われている。
俺はパンツに300ゴールド渡し、これで何か食って来いと言った。
パンツは嬉しそうに駆けていった。やれやれ一安心だ。

さてこの広い闘技場でこれだけの人の中でバカ王を探すのは苦労しそうだ。
そう思った矢先、闘技場のアリーナに向かって一際大声をあげて大騒ぎしている大男がいる。

見覚えのあるピエロの格好…バカ王だ…目立ち過ぎだろ…
どうやら賭けていた魔物は負けたらしく全身で悔しさを表している。
暑苦しい上にうっとおしい。正直知り合いとは思われたくない。

暫く地面にへたり込んだ後、もの凄い勢いでチケット売り場へ向かった。まだやんのかよ…


516 :恐怖の船出6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:26:33 ID:TmeR1zoU0
バカ:次こそは!次こそはあああああ!!!!
売り場の人:はいはい毎度王さ…じゃなくて謎のピエロさんどうします?
バカ:スライムベスに500ゴールド!
売り場の人:(相変わらずギャンブルの才能ねーな)かしこまりました。
      スライムべスに500ゴールドですね?


当然だがこの町の人みんなこのアホピエロが自分達の王様だと気づいているのだろう。
俺は売り場の人に話かけた。いいのかあんたらの王こんなんだぞ?苦笑いしながらこう答える。

売:いいんですよ!この町の人みんな王様の事大好きですから!
  世界を救った英雄なのに物凄く気さくでしょう?
  何しても憎めないんですよね〜。この国の国民は王様の家族みたいなもんですからね。
  ほんといい国ですよ。


「人を治める」というのは頭がいいだけでも、力が強いだけでも駄目なようだ。
きっと人を惹きつける「何か」が必要なのだろう。
そしてバカ王はバカだがその大切な「何か」を持っているようだ。何となく親父を思い出した。

517 :恐怖の船出7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:27:09 ID:TmeR1zoU0
バカ王に目を向ける。また負けたらしい。悔し泣きしている…
いい歳してこんな事で無くなよ恥ずかしいからさ…

勇者が慰めに行った。ね?もう十分遊んだんだからお城帰ろーよ?みんな心配してるよー?
16歳の女の子に説得されて帰ってくる家出おっさん…。俺達は再び城へ向かった。

途中道端で寝ていたパンツと合流し本日二回目の城へ着いた。
バカ王はピエロの格好から王の格好に着替えた。入り口で兵士が敬礼する。
今回はお早いお帰りですねだと?今回はって…お早いって…いやもう突っ込むのはやめよう。

王の間へ着いた。大臣は部屋で寝込んでるらしい。ストレスの溜まり過ぎだろう。
王が王だけにさすがの俺ですら同情を禁じ得ない。まあいいや。バカ王に船が欲しい旨を話す。
暫く考え込む。
船一隻ともなるとバカでもさすがにホイホイとあげられないのか。
王が口を開く。
この国には船は何隻かあるものの、船乗りは必要最低人数しかいない。
つまり船はやってもいいが船乗りはつける事はできないという事だ。
船があっても動かせなければどうしようもない。これは困った。

パンツ:あっし船操舵できるでやんすよ。

518 :恐怖の船出8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:27:43 ID:TmeR1zoU0
………。俺の聞き間違えだろうか。

パンツ:あっし盗賊になる前は海賊だったでやんす。

………。あり得ない。こいつに操舵ができるはずがない。超絶天然バカのこいつに!
脳ミソまで筋肉化したこいつに!

勇者がすごーいカンダタちゃんすごい♪これで出航できるね!とか言って煽りやがる。
全会一致でパンツを船長にする流れだ。やべえ。これはやべえ。パンツも乗り気だ。
おいやめろバカおまえら考え直せ!こいつが地図逆さに見てて遭難しかけたのもう忘れたのか!?
パンツが船長の船なんてある意味魔王と戦う事なんかより遥かに危険だ!
魔王に殺られるならまだしも遭難難破で海の藻屑になるなんて死んでも死にきれねーぞ!
え?何?今から船に案内するだと?バカ!だから待てって!
おいコラ人の話を聞け!殴んぞ!


俺の必死の抵抗も虚しくパンツが船長になった。終わりだ。俺達の旅は終わった。完全に。
しぶしぶついて行き船の前に着いた。なかなかいい船だ。この船が俺達の棺桶となるのか…

519 :恐怖の船出9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:28:32 ID:TmeR1zoU0
パンツはさすがに一人で操舵はできないらしく子分がいると言ってきた。
子分?ああそういやこいつらのアジトの塔に置いてきたな。
そこでパンツは羽を使って子分を呼びに行くことになった。
一人だと迷子になる可能性大なのでねーちゃんも保護者としてついて行かせた。
ほんとは最初は勇者がついて行くと言ったのだがこいつが行くと余計に事態が悪化するからやめさせた。
勇者はふてくされてずっと頬を膨らませている。ガキか。

道具屋に行く。
パンツとねーちゃんは羽を買うなりさっさと行ってしまった。俺はご機嫌ナナメな勇者様の子守だ。
二人が帰って来るまで町をぶらつく事にした。突然勇者が振り返る。なんだよ。


名前つけなきゃ…これからいっぱい働いてもらうんだし。うん名前がいる!

どうやらあの船に名前をつけたいらしい。
名前とかはどうでもいいがこれで機嫌が直るならそれでいいや。
で、どんな名前がいいんだと聞いてみる。

え?ラブラブネコちゃん号?…それは嫌だ。え?キラキラチューリップちゃん号?


520 :恐怖の船出10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:29:05 ID:TmeR1zoU0
…それも嫌だ。確信した。コイツにはセンスが無い。てか「ちゃん」から離れろ。

じゃあ総長ちゃんもなんか案出してよって言われた。
名前か…そういや俺の族時代の愛車はフレアラインのZU…

漢の単車ゼッツー

思わず口にでた。

何それ全然かわいくない。意味わかんないし。総長ちゃんセンスないね。

…おまえに言われたくねえ…

その後白熱した討論の末名前は「みんなのゼッツーちゃん号」に決定した。
正直もう何でもいい。ゼッツーちゃん号…いい名前じゃん…ははは…

その後うだうだ喋りながらウロウロしてると向こうから柄の悪い集団が来る。パンツ達だ。
しかし見れば見るほど一緒に旅をしたくない連中だ。
兄貴と旅ができて嬉しいっすとか言ってやがる。俺は何一つ嬉しくねーぞ。とにかく船着場に向かった。


521 :恐怖の船出11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:34:54 ID:TmeR1zoU0
船着場に着くなりパンツ共は出航の準備を始めた。
妙に手際がいい。さすが元海賊といった所か。
俺は危うく感心しかけたがやめた。こいつに期待してもいつも裏切られる。もう騙されないぞ。
暇そうにボーっと船を眺める三人。そこにバカ王達がやってきた。なにやら馬車をひいている。
馬車には食料と水が大量に積んであった。餞別に持ってけという。気がきくじゃねーかよ。

ようやく出航の準備が終わる。
さて問題は次の目的地だ。復習だが俺達はシェンロン復活のためオーブを集めている。
バカ王曰くここから遥か南のランシールという町がある島に「地球のへそ」と言われる地下洞があり、
そこに元々オーブがあったらしい。そして勇者の親父が再びそこに封印したらしい。
よしそれなら行き先は決まった。次の目的地はランシールだ。早速船に乗り込む俺達。
下手したらもうこの足で大地を踏みつけるのも最後になるかもしれない。覚悟を決める。

ちょっと総長ちゃん!何してんの早くおいでよ!おいてっちゃうよ!  

…はいはい。

船の上から勇者達は楽しそうにバカ王に手を振っている。
帆を張り碇を上げると船はゆっくりと動き出した。
バカ王がどんどん小さくなる。ついには見えなくなった。帆船てのもけっこうスピード出るもんだ。

522 :恐怖の船出12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:35:38 ID:TmeR1zoU0
潮風がすげー気持ちいい。天気もいい。船旅も悪くないぜ。これで船長がパンツじゃなけりゃ…。
勇者とパンツは持ち込んだおやつがどうだとか言い合っている。そんなもん持ってきたのかよ。
おそらくこいつらは遠足程度にしか考えてないだろう。しかし勇者は変わったな。
出会った頃の勇者は世界の運命を一身の背負ってますみたいな悲壮感漂うガキだった。
だが今はほんとよく笑う。
ジャリん時から親父に戦闘の英才教育をされ
魔王が復活するなり訳もわからず旅に出され勇者として期待される。
もしかしたら今が一番楽しいのかもしれない。そんな事を考えてるとねーちゃんが話しかけてきた。


父にひと段落ついたらこれを渡すように頼まれたんだけどと手紙を渡された。

………。

内容はおまえは賢者としてはまだまだ呪文のバリエーションも少ないし未熟だから
このねーちゃんに色々教えてもらえって事だった。はっ今更何を。俺が学ぶ事なんてもうねーよ。

キシャーッ!!!

突然海面から硬そうな凶悪な面した魚が群れで飛び出してきた!不意をつかれる俺!

523 :恐怖の船出13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:36:13 ID:TmeR1zoU0
バギッ!!!!

ねーちゃんの手からカマイタチのような線状の空気が飛び出した。悪魚達がひるむ。
この女俺が身構えてる間にもう反撃に移っていた。行動が早い。すげえ。

いい?これが風を操る一番基本の呪文。そして練度が上がるとこういう事もできるようになるわよ!

ねーちゃんは精神統一させ一呼吸置くと叫んだ。

バギッ!!!クロスッ!!!!


轟音と共に巨大な真空の刃が竜巻となり相手を切り刻む!

一瞬で悪魚達はバラバラになった。いやいやほんとすげえ。

さすがイケの娘だけある。強い。何よりも凄いのはその反応速度。
まるで相手が襲ってくるのを知ってたかのような行動だった。
ねーちゃんの説明によると俺達は視力に頼るから感覚が鈍ってるらしい。
心眼というのは超能力でもなんでもなく、極限まで研ぎ澄まされた感覚の事のようだ。

524 :恐怖の船出14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:37:13 ID:TmeR1zoU0
そのくらい感覚が冴えると相手の殺気が読める。
そうなると敵が近づいてくるのも簡単に察知できるとの事だ。わかったようなわからんような…

さっ早速始めるわよ。まずは空気の流れをイメージする事からね。しばらくは私が総長さんの師匠よ。


………へ?


その後ねーちゃんはイケメン並のスパルタ女だった事が発覚した。
俺の安息の日はまだ、来ない。






525 :恐怖の船出15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:37:54 ID:TmeR1zoU0
早くも海に出てから早くも一週間が経った。
そこで重大な問題に直面する。食料が尽きそうだ。
水は海水を蒸発さして造れるため何とかなるのだが食料はそうはいかない。
みんな腹が減ってイライラしてきた。
引き返すべきか。このまま進むべきか。決断を迫られる。

ん?今船が不自然に揺れたような…

パンツ子分Aがランシールまでは確実に飢え死にするので航路を変えて
近くの町で補給しましょうと言う。それもそうだな。船旅も中々難しいもんだ。
特にうちには超絶大飯食のパンツがいるから一般的な貯蔵では追いつかない。

……。

いややっぱこの船変に揺れてねーか?腹減って感覚おかしくなってきたんだろうか。
このままでは非常に危険だ。とにかく世界地図を見ながら現在地と近い町を探して…と

…またまた船が大きく揺れる。

あーもう何事だうぜえええ!!!

526 :恐怖の船出16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:38:30 ID:TmeR1zoU0
と、船の下に巨大な影が見えたと思うやいなやバカでっかいイカの化物が現れた。
こいつが下から船を揺さぶってたようだ。

普段なら間違いなく秒殺してるとこだ。
しかし今回はみんなの眼つきが違う。おそらく考えてる事は一緒だろう。


こいつは…………食える!!!


俺達の異常な殺気にビビッたのかイカは引き腰になっている。やべえこのままじゃ逃げられる…

逃がすかあああああああああ!!!!

一斉に飛び掛る俺達。ここ最近で一番本気の戦闘だ。パンツなんてすでに足に噛み付いている。
イカもでかい図体してるだけあってなかなか強かった。しかし飯の懸かってる俺達の敵ではなかった。
沈んでいくイカから太い足を数本頂戴した。さてどうしたものか。いざ目の前にするとさすがに躊躇する。
食って腹壊したりしないだろな。食中毒死とかマジ勘弁して欲しい。
ねーちゃんが私にまかせてと言うと足を一本持って厨房に入って行った。
パンツは生でイカにかぶりついている。まあコイツは何食っても平気そうだから放っておこう。

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 20:46:54 ID:Y0001/ve0
支援です

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 20:52:04 ID:1NQlYYoX0
愉快な仲間達に恵まれ
歳相応に笑えるようになったんだな勇者良かった良かった

529 :恐怖の船出17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:56:31 ID:TmeR1zoU0
暫くしてねーちゃんが大きな皿を持って戻ってきた。
これは…皿の上にはうまそうなイカの炒め物?が乗っている。
有り合わせの調味料を使ってイカのソテーを作ったのよとの事。

味は…………うまい!これはうまい!

イケメンも料理うまかったがねーちゃんもかなりの腕だ。本当にこいつがいてよかった…



そしてさらに一週間後。

俺達はランシールに到着した。とりあえずゼッツーの処女航海は無事に終える事ができた。
二週間程の航海だったが俺達は色んな意味で逞しくなったと思う。
魔物を食うなんて一昔前じゃ考えられなかった。
魔物よりも魔王よりも一番しぶとい生き物は人間なのかも知れない。何はともあれ久しぶりの大地だ。

碇を降ろし船を固定すると早速町へ向かった。
毎度の事ながら住人の視線が痛い。場所が場所だけに滅多に旅人も来ないのだろう。
それに加えてこの面子だ。好奇の目に晒されるのは仕方が無い。

530 :恐怖の船出18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:57:02 ID:TmeR1zoU0
オーブがある「ちきゅうのへそ」の入り口は町の中心にあった。
今日は一晩宿屋で疲れをとってから明日攻める事にしよう。俺達は宿屋へ向かった。


その夜無事航海終えた記念の宴会が開かれる。久しぶりの酒だ。
船にもある程度積んでたんだが初日で飲み干したからな…。
ここの地酒はウイスキー。うまい。が、キツい。調子のってるとすぐ潰れそうだ。
言ってる先からパンツの子分三人組がねーちゃんと飲み比べを始めた。
アホだな。こいつらはまだこの女の殺人的な酒の強さを理解してない。
案の定一人、また一人と倒れて行く。ねーちゃんは涼しい顔してる。

勇者もかなり飲んだらしく相当ヘラヘラしてる。ピーピーうるせえ。
途中料理を運んできたおばちゃんに何の目的で旅してるの?と聞かれて

あのねー私達海賊なの!この町のお宝奪いに来たの!

と言った時のおばちゃんのひきつった顔は笑えた。まあ間違えてはいない。
その日の宴も明け方まで続いた。



531 :試練そしてじゃんけん19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:57:48 ID:TmeR1zoU0
ー次の日の昼ー

パンツの子分三人組はまだ潰れてるので宿屋に置いてきた。洞窟の入り口の建物に入る。
入り口にはおっさんが一人いた。邪魔だどけ。無視して進もうとすると慌てて止められる。
なんだようぜえな。

この洞窟には一人でしか挑めないらしい。何だよそれ。意味わかんねえ。そんなきまり当然無視だ。
しかしおっさんも頑固で一歩も退かない。目がマジだ。
わしの人生に懸けてここは通さん!通りたければわしを倒してか…ドスッ。
俺の中段突きをモロにみぞおちにくらいうずくまるおっさん。よし。おまえら先に進むぞ。


勇:ちょっと総長ちゃん!かわいそうだよ!ちゃんときまりは守らなきゃダメだよ!
パ:総長!男ならここは一人で攻めるべきでやんす!それが真の漢でやんす!

ね:一人じゃなきゃ先に進めないとかそんな仕掛けがあるんじゃない?
  無意味にそんなきまりがあるとは思えないわ。


おまえら…多数決により誰か一人で探索に行く事になった。

532 :試練そしてじゃんけん20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:58:28 ID:TmeR1zoU0
おっさん:ゴホッゴホッなっ…なんて乱暴な若者じゃ…こんな奴は初めてじゃまったく…
     いいか?ここは由緒正しい試練の洞窟でな。
     一人で攻略してこそ求めている物が得られるのじゃ。
     といってもそんな危険なとこ誰も探索するはずがなく今までは未知の空間じゃった。
     勇者様がおそらく歴史上初めて攻略されてオーブを持ち帰ったのじゃよ。
     それで次に必要な時が来るまでまたここに封印なされた。ただオーブを封印するだけの為に
     これだけ大掛かりなものが造られたとは思えん。きっとまだ謎が隠されておるかもな…

謎…ねーちゃんがピクッと反応した。とにかくそうなれば誰が行くのか決めなければならない。
ここは総長である俺が行くのが筋ってとこだろう。文句ないなおまえら。……明らかに不満顔だ。


勇:あたしも行きたい!お父さんも行った洞窟なんだし…絶対行きたい!
ね:謎…謎が私を呼んでるわ!未知…なんて素晴らしい響き!ここは譲れない!

おいおい…てかねーちゃんあんたそういうキャラだったんだな…さらに輪をかけて


パ:よくわかんないけどズルいでやんす!あっしも行きたいでやんす!仲間外れは嫌でやんす!


533 :試練そしてじゃんけん21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:59:00 ID:TmeR1zoU0
もうこうなると収拾がつかない。どーせこいつらは総長である俺の意見なんてきかないだろう。
いいんだわかってた事だから…俺がここのボス…自分でそう思ってたらいいんだ…
しかし絶対話し合いでは結論がでない。こいつらはそういう奴らだ。
ここは公平にじゃんけんで誰が行くか決めようじゃないか。

じゃんけん…!?何それ??

どうやらこの世界には「じゃんけん」はないらしい。ルールを説明する俺。
へー楽しそう!と勇者とねーちゃんはすぐ理解したようだ。パンツはまったく理解できてない。
とにかくグーかチョキかパーか何でもいいから出せと教えた。じゃあいくぞ。せーのー

じゃーんけーんポンッ!

………………。

やっちまった。おそらく考え得る中で最悪のパターンだ。



勝ったのは…パンツだった。

534 :試練そしてじゃんけん22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:01:04 ID:TmeR1zoU0
………。勇者は本気で悔しがっている。パンツは当然の如くわかってない。
ねーちゃんが勝ったのはあなたよと教えてやった。途端に大喜びするパンツ。
しかし勿論こいつには何のメリットもない。

やったでやんす!これでお宝は俺の物でやんす!

明らかに勘違いしている。もういい。こいつが無事にオーブを持ち帰って来るのを期待するしかない。
ここまでくると運の問題だ。直ぐにでも出発しようとするパンツを制止してありったけの薬草を持たせた。

勇:いいなぁ…お父さんに関係あるものあったら必ず持って帰ってきてね!

ね:いい?こんな手付かずの古代遺跡に入れる機会なんてそうそうないんだから
  気を引き締めて行ってくるのよ!この貴重な体験を噛み締めてきなさい!

俺:あの…その何だな…無理しなくていいからな…適当に頑張れ…

パンツは嬉しそうに頷くと意気揚々と行ってしまった。
入り口を守ってたおっさんがほんとのあいつでよかったのかと驚いている。いいわけねーだろバカ。
今更ジタバタしても仕方が無いのでここで大人しく待つ事にする。

535 :試練そしてじゃんけん23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:03:45 ID:TmeR1zoU0







丸一日が経った。パンツはまだ帰ってこない。





だからあいつに行かしたくなかったんだよチクショーが!
おっさんの話によると勇者の親父は半日ちょっとで帰ってきたらしい。
つまり明らかに中で迷っている。
という事で第二陣が出発する事になった。問題は誰が行くかだ。
とりあえず勇者だけはマズい。パンツの救出に勇者が行くなんて火に油を注ぐようなもんだ。
確実にミイラ取りがミイラになる。今回に限ってはねーちゃんもヤバい。テンションがおかしすぎる。
遺跡に夢中になりすぎてパンツの事を忘れて帰ってくる可能性が高い。

536 :試練そしてじゃんけん24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:04:45 ID:TmeR1zoU0
やはり…俺が行くしかない。
しかし選出方法はじゃんけんじゃきゃこいつらは納得しないだろう。
そうなると俺が勝つ保障は無い。さてどうしたものか。

はやくじゃんけんで決めよーよーカンダタちゃんお腹空かせて待ってると思うよー?
勇者が急かす。うるせーちょっと待ってろ今秘策を考案中だ。

……こうなったら最終手段を使うしかない。これだけは避けたかったのだが。


わかったいくぞ!せーのー!じゃーんけーん…ぽんっ!       …今だ!

勇&ね:…………………!!!!????


勝った。俗に言う「後出し」というやつだ。勇者が騒ぎ出す。
うるさい。世の中勝ったやつの勝ちなのだ。
反発する二人を無理やり丸め込み何とか次の挑戦者は俺になった。
目的はオーブ発見&パンツ救出。ちくしょう最初から俺が行けてればこんなめんどくさい事には…
やり場の無い怒りを覚えつつ俺は出発した。

537 :試練そしてじゃんけん25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:05:22 ID:TmeR1zoU0
出発前に勇者に大量のパンを持たされた。
ふざけんなてめー荷物になるだろうがと思ったのだがパンツの為に持ってけときかない。
もう一回じゃんけんやり直しとか言われてもややこしいので黙って持ってく事にした。しかしかさばる。



通路を抜けるとそこは大理石のでかい人工的な洞窟だった。不気味な所だ。
俺まで迷ってしまってはシャレにならないので慎重に地図をつけながら進む。



シャー!!!!キシーッ!!!!!!    ビッチャザアアアアアア!!!!!
グェェェェエエエエ!!!

ブッヒョーるるる!!!     ギブアァアアア!!!!



クソが!ここはなんて魔物が多いんだ!倒しても倒しても後から後から湧いてきやがる!
俺のブチ切れスイッチが入りかける。

538 :試練そしてじゃんけん26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:05:59 ID:TmeR1zoU0
呪文で一気に木っ端微塵にしてやりたい所だがこんな入り口付近で精神力が尽きてもいけないと
俺の残り1%の理性が制止をかける。仕方なく相棒のドラゴンキラーでぶっ飛ばして進む。


かなりの魔物を潰した。ひと段落して辺りを見回す。
どうやらここからは一本道の長い通路のようだ。
ん?よく見ると通路に大きな顔型の彫刻が並んでる。気持ち悪い。ここを設計したヤツのセンスを疑う。
まあいい。とりあえず進もう。



……………せ……





ん?



539 :試練そしてじゃんけん27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:06:52 ID:TmeR1zoU0
ひ……………せ



ん?ん?

何か声が聞こえた気がした。パンツだろうか。耳を澄ませながら進む。


ひきかえせ




ひきかえせ??今はっきりとひきかえせと聞こえた。誰だ!?誰かいるのか!?




ひきかえせ

540 :試練そしてじゃんけん20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:07:36 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ





ひきかえせ




…わかった。この顔型の彫刻喋りやがる。おそらくへタレ冒険者をふるいにかけるためだろう。
フッ…こんな子供騙しにひっかかる俺じゃない。無視だ無視。


ひきかえせ

541 :試練そしてじゃんけん29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:08:30 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ



ひきかえせ



しかしこの洞窟暑い。というかジメジメする。


ひきかえせ






ひきかえせ

542 :試練そしてじゃんけん30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:09:29 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ



うざい。暑いので黙ってろ。てか迷った。同じ通路をループしてるような気がする。地図は捨てた。

ひきかえせ





ひきかえせ





ひきかえせ

543 :試練そしてじゃんけん31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:10:05 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ

ひきかえせ
ひきかえせ
ひきかえせひきかえせ
ひきかえせひきかえせひきかえせひきかえひきかえひきかえひきひきひきひき



うるせえええええええええええええぇえええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!

その瞬間俺の中の理性は吹き飛んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおォぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
およそ思いつくあらん限りの魔法を放つ。轟音が狭い通路に反響する。かおの彫刻は大半が吹き飛んだ。


544 :試練そしてじゃんけん32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:10:50 ID:TmeR1zoU0
ー地上ー


勇:総長ちゃん大丈夫かなぁ…

ね:魔物にやられる事はないと思うけどね。

お:ここは試練の遺跡じゃぞ。一筋縄にはいかんわい。


ー揺れる地面。鳴り響く轟音ー


勇:キャッ!!!!今の何!?

ね:ただ事ではないわね…総長さんもずいぶん派手に暴れてるみたい。

お:おい!わしは長年ここを守っておるが今のはなんじゃ!初めてじゃぞ!

勇:助けに言った方がいいかな…!?

545 :試練そしてじゃんけん33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:11:15 ID:TmeR1zoU0
ね:そうね。

お:ちょっちょっと待て1何人たりとも二人以上でここを通すわけには…

ね:はいはいお話は後で聞くからちょっとどいててね!

勇:ごめんね!すぐ戻ってくるから!

お:こっコラ!待たんかい!おぬしらにはほんと常識てもんが…あ…行ってしまいおった…




546 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:12:02 ID:TmeR1zoU0
今日はここまでっす
支援ありがとう!

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 21:15:23 ID:OgYFDAyZO
お疲れさまでした。これからも楽しみにしています

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 23:41:14 ID:NRiiZmeYO
外道総長キターwwwwwww

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 00:58:39 ID:crayaNe9O
やっと前回の分を越えましたね、続きが本当に楽しみです。

頑張ってください!

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 01:07:46 ID:d5XpOWgy0
ランシールアワレwwwww
試練に立ち向かう気さらさら無し!ってのがキモチイイw

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 14:14:01 ID:TJBPpRY7O
みんなのゼッツーちゃん号wwwww吹いたwwww

552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/18(金) 23:23:11 ID:axR0EAOP0
ほすほす

553 :新たなる仲間!……。1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:39:05 ID:f2uRp8ik0
………………………………………………………。





……………………………………。




……………………。





………。

554 :新たなる仲間!………。2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:40:05 ID:f2uRp8ik0

…ん……。





目を覚ました。俺の名はリュウジ。泣く子も黙る史上最大・最強・最高の暴走族“鬼浜爆走愚連隊”
の総長を務めていた男だ。まあ昔の話だ。今はただ酒びたりのひきこもりだ。
生きていても死んでいても関係ない無気力な毎日。





…………あっ!やっと目覚ましたよ!もう総長ちゃんの寝ぼすけ!

ぞおおおうぅぅううじょぉおおおおおおおおおおういうううう!!!!!!!

甲高い女の声と同時に筋肉ダルマの熊みたいなパンツ男が抱きついてきた。…痛てえ。

555 :新たなる仲間!………。3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:40:35 ID:f2uRp8ik0
痛てえっつの!

俺はパンツ男を3メートル程吹っ飛ばすとその見るからに怪しい風貌の男は
天井にめり込んだまま沈黙した。

それだけ元気があればもう大丈夫ね。

やたら美人のねーちゃんが口を開く。


…………そうだった。俺はベランダで足を滑らせて気づいたらこの謎の世界に迷い込んだんだった。

ぞううじょうううぅういぎでででよがっだでびゃんずううぅううう

パンツが号泣している。相変わらず頑丈だなコイツ。しかし俺は何故気を失っていたのであろうか。
………思い出した。オーブを求めて洞窟に入り、ちょっとした手違いで洞窟をぶっ壊してしまった。
崩壊していく洞窟の中で記憶が途切れている。あの後どうなったのだろうか。

うんとね、おっきい地震が起こって心配だからあたしとおねーちゃんとで洞窟に助けに入ったの!
そこで総長ちゃんとカンダタちゃん見つけて戻って来たんだよ!オーブもちゃんとだよ!

556 :新たなる仲間!………。3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:41:05 ID:f2uRp8ik0
……オーブ……オーブ!?危ねえ危うく夢も野望も全て土の中に埋もれる所だったぜ。
しかしこの女二人が俺ら大男二人担いであの崩壊する洞窟を抜けてきたのか。こいつらわりと
パワーあるじゃん。

まさか!そんなの無理だよーあのね、魔法で一発でポーンって出てきたの♪

なんてこった…そんな便利な呪文があるとは…てかそんな呪文使えるならおまえが行けや!

行くって言ったじゃん!総長ちゃんがじゃんけんでずるっこして勝手に行ったんでしょ!
それにほんとにギリギリだったんだから!もう!

ああ。そういやそんな事もあったな。ピーピーうるさい勇者を無視してベットを出る俺。
腹減った。なんか食い物ないかな。その辺の棚を漁る。何も無い。ちっ…しけたとこだな。
部屋を出る。玄関には変なおっさんが顔真っ白にして放心状態だった。おいおっさん腹減ったから
なんか食いもんくれよ。おっさんは小声でブツブツ呟いている。わしの洞窟が…わしの使命が…
話しかけても素無視だ。大丈夫かコイツ。おっようやく俺の存在に気づいたようだ。
…と同時に近くにあった椅子で殴りかかってきた。おいやめろ!あぶねっつの!

557 :新たなる仲間!………。4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:41:28 ID:f2uRp8ik0
おぬしさえ!おぬしさえ来なければわしの平穏な日常が!ぬおおおおおぉおおお!

反射的に体が反応してカウンターを入れてしまった。やべ。おっさん壁突き破って外まで吹き飛ぶ。
おい。大丈夫か。反応がない。騒ぎを聞きつけて人だかりが出来てきた。マズい。これはマズい。

ヒソヒソ…あいつあれだろ…勇者様御一行の…なんで一般人殴ってんだ…
ママー!しっ!見ちゃいけません!ヒソヒソ…

おまえら帰れ!見せもんじゃねーぞコラァ!ヒーこの子だけはどうかお助けを!なんてやり取りを
していると勇者たちが来た。あー!また総長ちゃん町の人いじめてる!違うこれには深い訳が…

ホイミ

ねーちゃんが魔法をかける。目を覚ますおっさん。

いやはやこれはこれは勇者様。取り乱してしまいしまんですな。

やっと落ち着きを取り戻したようだ。おっさんの家系は代々この「ちきゅうのへそ」という洞窟を
守ってきた。しかしその洞窟は無くなってしまった。確かにちょっと悪い事したかもしれない。

558 :新たなる仲間!………。5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:46:10 ID:f2uRp8ik0
わしは女房と子供のいる故郷に帰ります。ここ半年程帰ってなかったので。そこで農業でも
始めますわ。ハッハッ八…

そうかこのおっさんも無職か。まあ無職も悪くは無いと慰める。勇者が申し訳なさそうに口を開く。

なんか…悪いことしちゃったね…ゴメンナサイ…

おっさんはいやいや気にしないで下され。それよりもお目当ての宝手に入ってよかったですなと
言っているが確実に目は死んでいる。

あっそうだ!奥さんと子供ってどこに住んでるの?私たち送るよ!

また勇者が勝手な事言い出したが今回は仕方がないだろう。そのくらいはしてやる。

ノアールですじゃ。とんだ田舎で勇者様の旅の妨げになるだろうにわしの事は気にしないで下され。


一瞬時が止まった。ノアール。そう俺と勇者が出会った場所。じいさん最後の場所。
もはやノアールという言葉は町の名前ではない。今となってはただの地名としてしか用を為さない。

559 :新たなる仲間!………。6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:46:32 ID:f2uRp8ik0
誰も口を開けなかった。破壊された民家。あたり一面の血痕。そしてじいさん…全てが鮮明に
蘇る。ノアールは…もう無い。あそこは魔王に滅ぼされた。またまたご冗談をと笑っていたおっさん
も勇者の目を見ると黙り込んだ。そうですかいやいや酷い世の中ですな!最後にもう一度息子の顔でも
見ときたかったわい…必死に何でもない風に振舞うのが痛いほどわかる。……こいつ強いな。

いやー守るべき場所も家族も同時に無くなってしまうとはさすがに参りましたな。ハハハ

かける言葉がねえ。勇者がいいこと閃いた!っと喋りだした。嫌な予感がする。

ねえねえおじさん!する事無いなら私たちと一緒に旅しよーよ!

へ?

おっさんは突然の申し出に今一状況が飲み込めてない。当たり前だ。俺も訳がわからねえ。

勇者の目はマジだ。もはやこうなったら誰もNOとは言えない。


560 :新たなる仲間!………。7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:47:33 ID:f2uRp8ik0
あのね、私たちと一緒に旅をして、色んな人に出会って色んな場所にいってね、それでおじさんが
好きな場所やもしかして好きな人に出会ったら、そこでお別れすればいいと思うんだ。うん絶対そう!

そうですな…ここにいても何もありゃせんし勇者様がそう言って下さるならお邪魔しましょうかな!

わーい♪こちらこそよろしくお願いしまーす♪

まただ。また総長様である俺を差し置いて勝手に話が進む…いいんだどうせ…俺は形だけの総長さ…
てなわけで我が鬼浜爆走愚連隊にまた一人メンバーが加わった。不本意ながら。

その日の晩鬼浜定例会議の議題はもっぱら新加入のおっさんについてだ。とりあえず俺が総長であり
このチームのボスである事、勇者を含めここの構成員はすべておれの子分であることははっきりさせて
おかなければいけない。ではまず俺がボスである事から説明しよう。

威厳・強さなどから当然言わなくてもわかってると思うがこのチームのボスは俺d…

ねーねー!おじさん何て呼んだらいい?お名前は何て言うの??

く…このクソガキが…

561 :新たなる仲間!………。8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:48:12 ID:f2uRp8ik0
わしの名前はノーマンと申します。好きに呼んで下され。

んとねーじゃあノマさんでいい?そっちの方がかわいいし!

ノマさん…何か照れますな!ホッホッホ

おっさん小娘にデレデレしてんじゃねーよ…しかし相変わらず勇者はすげえ。家族も使命も一日で
失った一人の男がその晩にここまで笑顔で笑えるだろうか。コイツはアホで天然だけど周りの人全てを
巻き込んで幸せにする力を持ってるのかもしれない。

で、次の目的地くらいは決めといた方がいいんじゃない?

ねーちゃんが突っ込む。その通りだ。鬼浜会議はバカ勇者とアホパンツのせいでいつも話がそれる。
今手元にあるオーブは4つ。全部で6つあるらしいから残りは2つだ。しかし何処にあるのか
検討もつかない。さてどうしたものか。一応聞いてみる。
おまえら誰かどんな小さな事でもいいからオーブについて何かしらないか?

パ:あっしの考えによりますとですね…

黙れ。おまえは喋んな。

562 :新たなる仲間!………。9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:48:42 ID:f2uRp8ik0
勇者とねーちゃんが首を横に振る。
おいおいあてもなく世界中探し回るなんていったい何十年かかるんだよ…

おっさん(以下‘お’):確かな情報じゃないんだが東の果ての‘ジパング’という国に凶悪な巨竜がおり
           先代勇者様がその竜を封じるためにオーブを使ったらしいですぞ。

マジか。これは有益な情報だ。こいつの知識は意外と役に立つかもしれない。
そういやまだ確認してなかった。このおっさん果たしてどのくらい戦えるのだろうか。

お:ハッハッハ戦闘?無理無理!無理ですわ。肉体労働は苦手でしてな。
  その辺の子供にも負ける自信があるぞい。

……聞かなきゃよかった…。戦力は増えないが悩みの種は一つ増えたようだ。
次の目的地もジパングに決定した所で会議はお開きになった。ドッと疲れた。俺はその日すぐ寝た。


ー深夜ー

今晩は冷える。しょんべんでもしようかと部屋を出る。おっなんかおっさんと勇者が話し込んでいる。
何故か反射的に隠れてしまった。ん…どうやら俺の話題のようだ。

563 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 00:51:43 ID:NE0NIdp60
支援

564 :新たなる仲間!………。10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:52:27 ID:f2uRp8ik0
しかしわかりませんな。あの総長とかいう男…ただの乱暴者にしか見えないですぞ。
なぜあんな男が勇者様の御一行に…。しかもあやつ自分がボスだとか勇者様は子分だとか…
ふーむわからぬ…

総長ちゃんは見た目恐いし口も悪いけど頼りなるうちのリーダーだよ。ノマさんもそのうちわかるよ!
ああみえて根はすーっごく優しいんだ。

そうですかな。まあ勇者様がそう言うなら間違いないでしょうな…。あとあのカンダタという男…
あれは本当に人間ですか?なんと恐ろしい風貌!わしには魔物にしか見えんぞい。

えー!そんなことないよ!カンダタちゃんかわいいじゃん!絶対!

うーむ…いやはや最近の若い子の感性はわからんわいハッハッハ

総長ちゃんもカンダタちゃんもあたしの大好きな仲間です!もちろんカンダタちゃんの子分も
おねーちゃんも…それにノマさんもね!


565 :東へ11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:53:48 ID:f2uRp8ik0

……。
一応俺がボスだという事は自覚しているようだな。殊勝な心がけだ。
おっさんは明日絶対殴る。



ー朝ー

俺たちは船に積めるだけの荷を積んで港を後にした。
おっさんの事情を知った町の人達が食料やら酒やらをアホみたいにくれたおかげで
ほとんど買い物せずに済んだ。実は最近かなり金が貯まっている。
何故かと言うと基本的に宿屋もタダだし飲みに行ってもタダだ。
武器も防具も道具も定価の半分から10分の1程で買うことができる。
場合によっちゃお代はけっこうですとか言われる始末だ。
これも全て俺とパンツの巧みな交渉術の賜物だ。特にパンツなんて口を開く事なく目だけで値切る
事ができる。こいつにはきっと天性の商才があるのだろう。

ジパングまではまだ暫らくかかりそうだ。最初はパンツが船長な事に生命の危機を感じたがさすがに
もう慣れた。たいして強い敵もでないしのんびりしとくか。

566 :東へ12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:54:22 ID:f2uRp8ik0
いっとくけど気休める暇なんてないわよ。

げ…ねーちゃん…

父から私の使える呪文全部教えるようにって頼まれてるの。まだ全然進んでないじゃない。
ペースあげてくわよ!

いや俺には己の体という最強の武器があるからそこまで呪文にこだわらなくても…

さあじゃあ最初はバギの復習から!

聞いてねえ…

当然俺にブレイクタイムなどあるはずもなくみんながしばしの休息をとってるのを尻目に
今日もコツコツと修行に励むのであった。鬼だ。人の皮を被った鬼だこの女は。






567 :東へ13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:55:02 ID:f2uRp8ik0




ちょっと!こら!寝ぼすけ!起きろー!

うぅうんん…ぶぶぁギは精神の統一よりしいいいん空を巻き起こ…zzzzzzz

こら!意味不明な寝言言ってないで起きろー!

………。ん…?なんだもう朝か。夢の中でまでねーちゃんに特訓されちまったぜ。
お?なんだ勇者。なんでおまえがここにいる。とっとと自分の部屋へ帰れ。

帰れじゃないでしょ!もう!着いたよ!ジパングに着いたの!
みんなもう船降りる準備できてるよ?総長ちゃんも早くしてね!


ランシールを出てから一週間ちょっとか。俺たちはようやくジパングに着いた。
しかし辛かった。ねーちゃんのスパルタ度はあのクソイケにも引けをとらないくらいだ。
ほんとに恐ろしい親子だ。…正直できる事ならもう関わりたくない。

568 :東へ14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:55:36 ID:f2uRp8ik0
船を泊められそうなポイントを見つけるといつものように船番はパンツの子分共にまかして
俺たちは上陸した。ジパング。言葉の響きもそうだがどこか懐かしい気がする。
おっさん曰くここから東にしばらく歩くと町に着くらしい。このおっさんどうやらかなりの
インテリのようだ。ねーちゃんも頭はいいのだが、如何せんイケと一緒に長いこと塔に引きこもって
た分こういう情報面にはうとい。そういう面では勇者も微妙だしパンツは論外、別世界の俺が
知る訳がない。このおっさんカーナビばりに使えそうだ。

やはり地面は落ち着くな。ぼんやりそんな事を考えていると敵が現れた。
不細工面の蛾が5匹にデカいキノコが三匹。杖もった小デブが2匹。…ちっ多いな面倒くせえ。
とりあえず分担して片付けていくか!みな各々近くにいた相手に飛び掛る。

俺はキノコを焼き尽くすとそのまま翻って小デブに切りかかった。

ヒュン!ザクッ!!

そこじゃ!総長殿お見事ですぞ!

危ない!カンダタ殿後ろじゃ!後ろに魔物が!ああ!噛み付かれた!痛いい!

ガブ!ドカッ!グゥエェェェ!!!

569 :東へ15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:56:01 ID:f2uRp8ik0
勇者様頑張ってくだされ!不肖ノーマン応援しておりますぞ!

バシュッ!!!キーン!カキーン!

総長殿あなたもリーダーならもっと全体を見てですな…あ!ほら勇者様が囲まれておる!
うるせええええええぇぇぇえええええ!!!!!!!!!!

魔物に飛ぶはずの鉄拳がついおっさんに炸裂した。

おまえは戦えないなら黙っとけ!邪魔じゃボケ!

うぬうう…すまんつい血がたぎってしまい…面目ない…


ちょっと総長ちゃん!怒っちゃかわいそうでしょ!せっかく応援してくれてるのに!

敵を片付けた勇者達が戻ってきた。いやだってよ!うるせーじゃんこいつ!
その後しばらく勇者と口論した結果、おっさんは戦闘中必要最低限以外口を開いてはいけない
という事で落ち着いた。しょぼくれるおっさん。慰める勇者。

570 :東へ16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:59:03 ID:f2uRp8ik0
そうこうしているうちに町が見えてきた。おお!これはかなり大きな町だ。
町の入り口で異常なまでの注目を集めてしまった。好奇の視線。いや、町に着くたび
変な目で見られるのはいつもの事なので気にならないが今回はちょっと違う。
むしろ変なのはこいつらだ。服装、髪型どれをとっても今まで旅してきたどの国とも
当てはまらない。ガキが三人近づいてくる。は?何?田舎もんだと?
あっいてコラ服引っ張んな破れんだろがコラやめろって!
ガキどもを振り払う。何なんだこいつらは…

わーいわーい田舎もんが熊つれてきたぞー田舎もが熊連れてきたぞー

総長!あいつら総長の事を熊呼ばわりしてるでやんす!シメてやりましょう!

いや熊に間違えられたのはおまえの方なんだが…しかしうっとしいガキ共だ。


ガアアアアッッ!

突然パンツが奇声を発して驚かした。一瞬固まりその後号泣しだす子供。正直泣き出す
子供の気持ちもわかる。子供に対してよくやる事と言えばよくやる事だがパンツがやって
しまうとシャレにならない。子供は泣き止まない。バカでかい声で鳴き続ける。

571 :東へ17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:59:40 ID:f2uRp8ik0
なんだなんだと人が集まってきた。く…いつもそうだ。いつもこうなる。行く先々で注目を
集めてしまうのは俺が天才故に仕方のない事なのか…。気づけばもの凄い人数に囲まれていた。

もはや身動きがとれない。仕方がないこいつらぶっ飛ばして道つくるか。
俺が拳を振り上げたと同時に凄い勢いでおっさんが飛びついて阻止してきやがった。

一般人に手をあげるのはよくないですぞ!ぬおっ!

こいつ弱いくせに。魔物と戦う時も今くらいの根性の一つでも見せて欲しいものだ。
おっさんと取っ組み合ってる間にも事態はさらに悪化していた。明らかにカタギではない
恐い顔した人らに囲まれている。おそらくこの国の兵士だろう。
有無を言わさず俺たちはそのまま連行された。まあこれも経験済みのパターンだ。
この国の王に会って誤解をを解けばなんて事はない。さあ俺を王の前まで連れて行け。


…………。王に会うはずがなぜか地下に向かう。なんだなんだここの王は引きこもりか?
…………。ガチャッ。……え?……。そのまま投獄されてしまった。これは読めなかった。
ちょっと待てコラ!いきなりブタ箱はねーだろ!話くらいさせろクソ共が!兵士はまったく
聞く耳を持たない。てめーマジ黒焦げにすっぞコラ!下っ端兵士のくせに世紀末覇王の俺様を
こんなとこに閉じ込めやがって後悔すんぜ?いいのかコラ!

572 :東へ18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:00:20 ID:f2uRp8ik0

…………。無視か…。

今まさにボルテージは頂点へと向かっていた。仮にここに閉じ込められるまでの俺の怒りを
10としよう。だが今は10億10!!!お前らに明日を生きる資格は無い!!!!
くらえ!むぅぅえラゾォオオオオ……総長ちゃんだめ!!!!マァァアッァ!!!!

勇者の叫びも空しく俺の放った特大の火炎球が牢の入り口ごと吹き飛ばした。
響き渡る轟音。吹っ飛ばされる兵士。そしてヒッッヒエェ〜!!!!と奇声をあげて逃げ出した。

俺をこんなとこに閉じ込めるからだ。まったく常識のないヤツらだ。
振り返るとみんな有り得ない程の冷たい視線でこっちを見てる。
なんだよ!俺が何か悪いことしたか!?俺のおかげでおまえらここから出れるんだぞ!
ほんとにこいつらも常識が無い。感謝の一つでもしていいとこじゃねーかまったく。

で?

ねーちゃんが恐ろしく低いイントネーションで言う。いやでって言われても…

で?これからどうするわけ?

ヤバい。完全にブチギレしてる。正直恐い。


573 :東へ19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:00:59 ID:f2uRp8ik0
もうここでの情報収集は望めないわ。とにかく人が来る前に逃げましょう。
一旦船に戻ってからもう一度出直すわよ。

みんなぞろぞろとねーちゃんについて行く。なんだよまるで俺が悪者みてーじゃんかよ!
おっいい事思いついたぜ!多分オーブ程の代物となると宝物庫とかそんな感じの場所にあるから
このまま襲って奪っちまおーぜ!

誰も聞いていない。サッサと行ってしまった。俺は泣いた。


すんなり帰れるわけもなく城の入り口付近で今度は完全に武装した50人はいるであろう兵士に
囲まれた。しかし問題は無い。俺は昔河原で一人対100人で乱闘になっても生還した男だ。
この人数ならいけるぜ。一気にぶっ飛ばしてやる。

いい?絶対殺しちゃダメよ。出来るだけ最小限の相手だけ倒して一気に駆け抜けるわよ!

ねーちゃんが指示を出す。おい待て。俺は売られた喧嘩は買う男だ。この状況で逃げるなんて
真似できるか!と思ったがとりあえずここはねーちゃんの指示に従おう。どーせ一人で暴れてても
また置いていかれるのがオチだ。…世界征服したあかつきには絶対こいつら全員島流しにしてやる。

おやめなさい!

女の人の鋭い声が響き渡った。兵士が一斉に構えをとく。そこには女と老人がいた。
女の方は勇者と同じくらいの年齢だろうか。兵士が全員ひれ伏した。

そこまでです異国の者達よ。もしこれ以上騒ぎを起こすようならジパングの女王ヒミコの名において
あなた方を処罰します。大人しく武器を下ろしなさい。

574 :東へ20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:01:42 ID:f2uRp8ik0
このクソジャリ女王だか何だかしらねーが偉そうな奴だ。結局ねーちゃんとヒミコとやらが交渉した
結果、正式に謁見する事になった。そのまま奥の間に案内される。

そなた達は何の目的でこの国に参られたのじゃ?

この国に竜を模ったオーブがあると聞いてきました。
旅の目的達成の為どうしてもオーブ必要なんです!

勇者が答える。

オーブはオルテガ様から預かりし我が国の宝。簡単に旅の者に渡すような物ではない。
いったい旅の目的とはなんじゃ?

旅の目的?んなもん決まってんじゃねーか。

俺らの旅の目的が聞きたいか!耳カッポじって良く聞けよ!俺が世界中を旅すんのは世界征服の為だ!
取りあえずその一環として異常に態度のデカイ魔王とやらを一発ブチのめしてやろうと思ってな。
そのためにオーブが必要だ。さあくれ。

周りがザワつく。ヒミコが噴き出す。

はっはっは異国の者はおもしろいのう!世界征服とは大きくでたな!まあ夢は大きい方がいいわい。
はっはっは

この小娘俺よりだいぶ年下のくせに何を偉そうに…。だいたいその年寄りみたいな喋り方が
感に障る。うぜえ。

575 :東へ21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:05:29 ID:f2uRp8ik0
お願いします!どうしても必要なんです!

勇者が割って入ってきた。

私は…オルテガの娘です!

一瞬でヒミコの顔つきが変わった。じっと勇者を見つめる。

そなたの眼…嘘は言っておるまいな。

ヒミコは一発で信じたようだ。またこれだ。こいつは本当に相手の目を見るだけで全てを納得
させちまうからすげえ。

しかし今オーブはここには無い。オーブは…
姫!!!!!

隣の老人が割って入ってきた。

姫!異国の者をそんな簡単に信用してはいけませんぞ!もっとジパング大国の女王である
自覚を持たれい!

正直老人の言う事は正しい。自分の事を勇者と名乗る怪しい集団が国宝くれなんて言ってきて
信用するほうが問題ある。

老子よ。この者の眼は本物じゃ。それに異国人という事に何の問題がある?
そのような閉鎖的な時代はもう終わったのじゃ。自らの国の問題を自らで
解決出来ないような我が国に置いて異国と交わるのは今後必要であるだろうぞ。

姫!いくら姫と言えどそのような発言は許されぬぞ!選民であるわが臣民は卑下な異国人と
関わる必要なんてありますまい!

ヒミコは頭を抱えると老子と呼ばれる老人を退室させた。老人は渋々出て行った。

576 :東へ22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:07:13 ID:f2uRp8ik0
すまぬな異国のものよ。あやつも人一倍愛国心の強いゆえ、無礼な発言許されい。

いるよなああいう頭の堅いジジイは。ヒミコも大変だな。

それでオーブの件なのだが…ここから北の鳥居のある洞窟に安置されているはずじゃ。

はず?どういう事ですか?

勇者が聞き返す。

この国には「やまたのおろち」という巨大な悪鬼がおりましてな。度々現れては
破壊の限りを尽くしわが民を恐怖に陥れておった。だが先代国王の時オルテガ様が
この国に現れ見事に退治なさった。ただその生命力の強さ故完全に葬り去る事ができず、
北の洞窟に封印されたのじゃ。そして封印をより強固なものとするためオーブをそこに
安置された。

じゃあそこに行きゃオーブあるんじゃねーか。

ヒミコの顔が曇る。

悪鬼が……復活したのじゃ。あの封印は簡単に解けるような物ではない。しかもオーブで強化されて
おるので尚更の事じゃ。おそらく…強大な魔力を持つ者がオーブを持ち去った後封印を解いた
のだろう。もう何度も原因究明のため兵を送ってるのだが誰一人として帰ってこないのじゃ。
強大な魔力を持つ者。おそらくその場にいた全員が同じやつを想像しただろう。

偉大なる勇者オルテガの娘達よ。恥をしのんでお頼み申す。どうか…

断る。

ヒミコが話し終える前に断ってやった。どうせまた退治してくれとか言うんだろ?
何で俺らがそんな事しなきゃいけないんだよ。俺はボランティアでも人助けの為にでも
無い。世の中クソ共全部ぶっ飛ばして俺が覇権を握る為に旅をしているのだ。

577 :東へ23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:07:41 ID:f2uRp8ik0
自分の国のゴタゴタは自分で解決しろよ。オーブがないならもうここには用は無い。
おまえら帰るぞ。

ちょっと!総長ちゃんそんな言い方無いでしょ!もう少し考えてよ!

勇者が怒った顔でこっちを見る。うるせえ。俺は人助けなんてまったく興味ねえ。
空気を読んだねーちゃんが簡単には返事できないので話し合い明日また返答すると
その場をまとめた。ヒミコは宿を手配してくれた。


その日の鬼浜会議は荒れた。過去最高に荒れた。
勇者は引き受けるの一点張りだ。あとのメンバーも勇者に賛同する。そろいもそろってアホ共が。
どうやら勇者はかなり勇者の親父が前に倒したという事を気にしているようだ。今度は自分が
この国を救うのが使命とでも考えているのだろうか。付き合いきれん。

そんなに行きたいなら勝手にしろ。俺は絶対に行かん。

総長ちゃんのバカ!わからずや!

ついに勇者は泣きながら出て行ってしまった。

総長!あっしは心底見損なったでやんす!

パンツも出て行った。それを機に自然解散となった。




578 :東へ24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:08:17 ID:f2uRp8ik0
ー次の日の朝ー

あいつらはヒミコに会いに行ったようだ。置手紙があった。
無性にイライラする。ちっ…こんな時は飲みに行くしかない。俺はフラフラと宿を出た。
外には小雪がチラついている。どうりで寒いと思った。昨日はそんなでもなかったのにな。
ほんとになんだってんだよあいつら…あの甘ちゃん加減にはほとほと愛想を尽かした。
こうなったら全員辞めさしてまた新しくメンバー集めるか。ったく面倒くせーなチクショウが。
しかし初めて来る場所だ。どこで酒が飲めるかさっぱりわからない。その辺のおばさんに
聞いてみる。少し先に酒屋があるらしい。なぜかおばさんの顔が曇る。まあいい。

そこから500メートル程行った先に酒屋はあった。しかし人気がない。朝だから当然か。
中に入る…うおっこれは酷い。中には店の主人とその奥さんと思われる人がいた。だが凄まじく
顔に生気が無い。世の中終わったみたいな顔をしている。客商売だろ大丈夫かここ!?

……すいません…もうこの店は閉めましたんで…よそに行って下さい…

閉めたって店自体を辞めたって事か?おいおいふざけんな俺は酒を飲みにきたんだ。出せ。

そうですか…なら残ってるお酒全部飲んじゃって下さい…お代は結構ですので…

マジか!?まあせっかくの機会なんで有難く頂く事にしよう。


そしてアホかって程酒が運ばれてきた。マジで店の在庫全部持ってきやがった。
一口飲んでみる……………これは!?それは俺の世界で言うところの焼酎のような味だった。
酒ってのはその時のテンションにより味が大きく左右される。自棄酒の類ってのは大概
どんないい酒を飲んでも不味いもんだ。ましてや今の俺の心境はどん底だ。
なのにこれはうまい。文句なしにうまい。ここまでうまい酒を漬ける事ができるのに何故店を
閉める必要があるのだろうか。ほろ酔いも手伝ってお節介にも聞いてみる。

娘が…選ばれたのです…

579 :東へ25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:10:17 ID:f2uRp8ik0
????わけがわからん。何に選ばれたって????
主人が奥から無言で一通の手紙を持ってきた。内容はつまりあんたの娘をやまたのおろちの
生贄にするってもんだった。差出人はジパング…つまり国から直接の指名だ。

うっ……うッ…仕方がないんです…仕方がないんですよ…やっとできた娘なんですが…
国の為に命を差し出せるなら本望です…

俺は無言で手紙を破り捨てた。燃やした。そして主人を殴りつけた。ふっとぶ主人。

な…何をなさるのですか!?

何をなさるのですかじゃねー!!!!!俺はもう一発殴った。てめーはアホか!そんな大事な
娘をなぜ簡単に差し出す!?そんな大事なもんだったらタマ張って守ってみろや!
主人が力なくうな垂れた。

無理です…あの怪物には誰も逆らえないんですよ…人の力ではどうしようもありません…
私は所詮酒を作るしか能の無い人間です…

く…俺はこいつみたいに卑屈な人間が一番嫌いだ。もう一発どついてやろうと近づくと

やめて!お父さんをいじめないで!

小さい女の子が止めに入った。娘だろう。必死に父親にしがみついてこっちを睨む。
その必死な顔を見た瞬間俺の心のモヤモヤはキレイに吹き飛んだ。

うおおおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおお!!!!!!!!!!!!!

もうゴチャゴチャ考えるのは止めよう。俺らしくねえ。俺はやまたのおろちがムカついた。
だからぶっ飛ばす。それでいいじゃないか。誰の為でもない。俺自身の怒りの鉄拳だ。

580 :東へ26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:10:49 ID:f2uRp8ik0
いいかてめー店閉めやがったらマジでボコボコにするからな!こんなうまい酒を振舞う
店が無くなっていいわけないだろうがアホが!やまたのおろちは俺を怒らしてしまったため
跡形も無く消し飛ばしてやる!祝勝会はここでするからてめーは準備してまってろ!

主人と奥さんと娘は最初キョトンとしていたがやがてバタバタと駆けずり回ると一本のビンを
持ってきた。

これを使って下さい!これは特別な酵素をつかって我が家に伝わる秘伝の方法でつけた神酒です!
オルテガ様もこれを使いやまたのおろちの動きを止めました!もう残りはこれしかありませんが…
どうせ蔵にあっても眠っているだけです。見ず知らずの旅の方に渡すのも変かもしれませんが
あなたに使って欲しいのです!

俺はビンを受け取ると走った。とにかく走った。粉雪舞い散る中無我夢中で走った。
国一つをここまでかき回す化け物だ。きっと恐ろしく強いのだろう。
頭の中にはあいつらの顔がよぎる。もしかしてもう戦ってるのだろうか。
俺がいなくて大丈夫だろうか。あいつら俺に比べるとあんま強くねーからな…
まさか今頃もうやられてたりは…クソッ!そうなったら総長一生の失態だ。何故あんなつまらん
意地を張ってたんだろうか。自分で自分がムカついて仕方がない。今はただとにかく速く走るのみ!




そして俺は北にある洞窟へついた。おそらくここだろう。周囲の空気が明らかにおかしい。
中から邪気が溢れ出ているように感じる。勇者は!?パンツは!?ねーちゃんは!?
この静けさからおそらくまだ到着してないに違いない。どうやら間に合ったようだ。
もうすぐ来るろう。暫く待つか。

581 :東へ27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:11:52 ID:f2uRp8ik0











だが俺の予想は外れた。勇者達が来たのは…二日後だった。




……寒い…


おうやっと来たか。おせーぞてめーら。とっととやまたのなんとかってやつ倒して帰るぞ。
俺は寒いんだ。


ぃぎやぁぁぁぉおおおぁぁぁおううううぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!
パンツ。

ぞうぢょーーーーぢゃーーーーんんん!!!!!!
勇者。

二人とも俺の声を聞くなり涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして奇声を上げながら
飛びついてきた…おいコラ!あっ鼻水ついたきたねっつの!離れろ!あーもう!
こいつらほんと涙もろいな。何はともあれ俺たちはようやく合流した。

582 :東へ28 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:12:38 ID:f2uRp8ik0
絶対来てくれるって信じてたんだ!

勇者が満面の笑みで言う。いいから顔ぬぐえ。まだ鼻垂れてんぞ。俺たちは嫌な空気が
プンプンする洞窟の中へ入った。なんて事はない普通の天然洞だ。

へックシュッ!クシャミが止まらない。勇者が総長ちゃんはこんな寒いのにそんな薄着でウロウロ
するから風邪ひくんだよとかぬかしやがる。いや誰のせいで…そういやこいつら二日間も何してた
んだろうか。ねーちゃんに聞いてみる。

やまたのおろちについて色々調べ事してたのよ。強敵だから。でもあまり有益な情報は
得られなかったわ。一つだけあったんだけど…弱点が

おいおい弱点だなんて有益この上ないじゃないか。さすがねーちゃん。

どうやらやまたのおろちの苦手な植物がこの辺に生えているらしいの。それをつかってつけたお酒を
使えばかなり動きを鈍くできるみたい…ただそのお酒探し回ったけど見つからなかったわ。
一軒だけ置いてるお店見つけたんだけど最後の一本旅の人にあげちゃったみたいで…
正攻法で攻めるしか無いわね。

うーむそんな貴重な酒を持ってくとはかなりの酒通の旅人ですな。しかしもしかしたら簡単に
退治できたかもしれぬのに実に残念ですな。


やべ。俺は持っていたビンをそっと捨てた。だって飲んじゃったんだもん…この二日間凍死せずに
すんだのもこの酒のおかげ…神酒だけあって確かに燃えるようなうまさだった…

総長ちゃんぶつぶついっちゃってるけど頭大丈夫!?もしかして風邪が頭まで回った!?

………。仮にそうだとしても普段のおまえらよりは正常な自信はある。絶対に。

そうして俺たちは巨大な門の前に着いた。

583 :東へ29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:13:19 ID:f2uRp8ik0
しかしでかい。しかも開いてない。鍵はかかってないようだがこんなもん開けれるか。
おいおいこれじゃ開かなねーぞどうするよ?なんだよ。はいはい。わかりましたよ。
俺とパンツは左右の扉の前に立つとあらん限りの力を振り絞って押した。
く…ピクリともしない。ねーちゃんが俺とパンツにバイキルトをかけた。力が漲る。
ふんッ…ぬうううう…ぬおおおおおぉおぉぉぉ…

血管がはち切れそうになりながら必死になる俺とパンツ。やがて扉は少しづつ開いていく。
ある程度開くとあとは惰性でわりと楽に開いた。

熱い。さっきまでの寒気が吹き飛ぶほど熱い。なんだこの熱気は。
そりゃそーだ。これは溶岩だ。所々地面の隙間から熱気が噴出している。
とにかく俺たちは進むしかない。汗を拭いながらひたすら歩いた。
そうしてたどり着いた先は行き止まりだった。一際大きな空洞で立ち止まった。
つーか熱いだけで何もねえ。
…ん?今微かに地面が揺れたような。いや気のせいだろう。気のせいという事にしておこう。


…やはり揺れている…。

……しかも徐々に振動が大きくなる。みんな終始無言だ。

ねえ…ちょっと…揺れてない…?

勇者がついに口を開く。あーあやっちゃったよ。こいつ明らかにズラの人に向かってカツラですか?
って聞くタイプだな絶対。ここは総長としてみんなを鼓舞しなければ。
先頭を歩いていた俺は振り返る。

いいかおまえら。例えこれから相対する敵がどんな怪物だとしてもだ。例えどんな
山のような化け物だとしてもな…鬼浜爆走愚連隊は最強だという誇りをもってだな…


584 :東へ30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:13:55 ID:f2uRp8ik0
なんだ?みんな目が点になっている。俺の顔になんかついてるか?そんなジロジロ見んな。
おっさんがガタガタ震えながら後ろを指差す。何だよまったく。
俺は後ろを振り返った。そしてとんでもないものを目撃した。

………ダッシュ……

俺が小さな声で呟くやいなやそれはそれは凄い速さで転進した。おそらくマッハはでていた。

むおおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!!!!!!!

全員さっきの扉をこえると一気に閉めた。今度はみんなで閉める。必死だ。
落ち着け。あまりの突然の出来事に引き返してきてしまった。逃げてどーする…

おーーーーーーっきかったねー

勇者が半笑いで言った。まあ確かに笑うしかない。冷静に記憶を呼び覚ましてみるが
とりあえず頭らしきものが三本見えた。あれに胴体がついて…うーん…
とにかくとんでもないデカブツだ。これは気を引き締めてかからなければ俺たち全員
あの化け物の胃の中に納まる事になる。

ガンッ!!!ガンガンガンッッッ!!!!!!

突然金属音が響き渡る。どうやらあのデカブツが扉を叩いているようだ。

ガンガンガンッ!!!!ガンッ!ガンッ!

…ちょっと様子見るか。

ガンッ!!!ガンガンガンッ!ガン!!!!!!

あーうるせえ!わかったわかった今すぐぶっ飛ばしやるから静かにしてろ!

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 01:14:36 ID:NE0NIdp60
支援

586 :東へ31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:14:43 ID:f2uRp8ik0
俺が扉を開けようとするとねーちゃんに止められた。

待って…妙だわ。もう少し待ってみて。

暫くして音は消えた。どうやら帰ったようだ。

やっぱり。やまたのおろちは自分ではこの扉開けられないわ。

え?どういう事だ…?理解するまで三秒程かかった。つまりだ。あのデカブツは
自力でここを開けられない。でもはジパングを襲われている。

わかったでやんす!アイツは透明人間になって瞬間移動できて空を飛べるで
やんすね!?とんでもな化け物でやんすな!

…つまりだ。自力でここを出れないとなると何者かがここをいちいち開けている事になる。
そして国を襲わせていると。一体何の為にだ!?謎だらけだ。

どうやらやまたのおろちを退治すればいいだけの問題じゃなさそうね。

ねーちゃんが難しそうな顔をする。とりあえず俺たちは一旦引き返して出直す事にした。



587 :東へ32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:15:27 ID:f2uRp8ik0
パンツが腹が減ったとごねるので飯にする事にした。ここでいいんじゃないさっきも
寄ったしと勇者が立ち止まる。げっここは…ここは例の酒屋だ。ヤバイバレる。
おいここはやめて別のとこにしようぜなんか辛気臭い店だしってオイ!総長である
俺を差し置いて勝手に店に入るな!あーあ行っちゃったよ。

中に入るなり店長と目が合う。意味深な目で見つめる俺。いいかくれぐれも俺に神酒を
渡した事は喋るなよ…そんな視線。店長はコクッと頷いた。通じたようだ。
やはり真の男同士は目で語れるものだ。店長イカスぜ!あんたも漢だ!

あなたはさっきの!生きてたんですね…!神酒は役に立ちましたか!?

一気に俺に集まる視線。な…なんだよその目は!見るな!こっちを見るな!
まあいいわとりあえず座りましょうとねーちゃんが誘導する。

さて。うんそうだな。まあここは英気を養うためにまず一杯…ピシッ!
ねーちゃんの張り手が持ちかけた俺のグラスを叩き落した。やっべ目が座ってる。
仕方がないので酒は一旦諦めて真面目に会議をする事にする。

議題は二つ
・どうやってあのデカブツを葬るか。
・誰があの扉を開けて町を襲わせているのか。

デカブツは本気だせばどうかなるだろ?大体酒飲ませて動けなくなったとこ襲うなんて
男の闘い方じゃねえ!

…………。まあいわ。それよりも問題はあの扉。まず考えられるのは魔王軍。
でも私はこの線は薄いと思う。

…なんと。大本命をいきなり切り捨てやがった。てかありえねーだろ。わざわざあんな
化け物をけし掛けたり閉じ込めたり繰り返す様な奇特なバカは魔王以外いねー。

588 :東へ33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:16:00 ID:f2uRp8ik0
しかしねーちゃんが続ける。

魔王軍なら一気に滅ぼしてしまうと思わない?なぜ中途半端に襲わせるのかしら。
見たところこの町に目立った被害わないわ。生贄が要求されるくらい。
そんな回りくどい事をするメリットなんて無いわ。見せしめに一気に潰した方がいいもの。

……なるほどな。そう言われりゃそーだ。じゃあ一体誰が…
あの洞窟は普段人は近寄るのかとねーちゃんが店長に尋ねる。店長曰く国の御触れでなるべく
近寄らないようにとの事だそうだ。近づいたら牢ぶっこむぞって程でもないが、
あまりいい思い出の場所でもないので滅多に自発的に行こうという人はいないらしい。

益々行き詰る。いや行き詰るというよりはなんだろうこれは。強烈な違和感を感じる。
……………。まさかな。そんなはずはない。ねーちゃんと目が合う。どうやら同じ事を
考えていたようだ。

ヒミコの所へ行こう。

まさか国が犯人だとは思えない。ただこんな大掛かりな事をできるのは魔王軍かこの国の
機関かのどちらかだ。少なからず何かは知っているはずだ。

勇者とおっさんは難しい顔をしていたが仕方ないと頷いた。パンツは寝ている。
俺達は店長一家に礼を言うと足早に城を目指した。


衛兵の制止を振り切り俺達は中に入った。そしてヒミコの前に立つ。
勇んで来たはいいものを何をどう説明しようか。やべこのままじゃまた只の侵入者だ。
と、ねーちゃんが簡潔に事情を説明した。ひみこはため息をつくとそこにいる全員席を
外せと命令した。

589 :東へ34 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:16:24 ID:f2uRp8ik0
実は…確かにおかしいのじゃ。突然解けた封印。姿を見せるが実際大して暴れたりはせん。
しかし封書で生贄を出せと要求する。無論あの化け物がそんな事できるわけは無い。
その存在だけで国の民は脅えおる。

コイツは本当に何も知らなさそうだ。……………。よし。明日もう一度あの洞窟へ行こう。
面倒くせえ。ごちゃごちゃ考えるのはアイツをぶっ飛ばしてからだ!

すまんな勇者殿達よ。

勇者はいいんです頑張ってきますと笑顔で答えた。決戦は明日だ。




590 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 01:19:30 ID:f2uRp8ik0
支援いつもありがとうです!

20行規制解除きたああああああああああっしゃあああああああ

駄文ですがこれからは32行フルに使えるのだ多少は読みやすくなるかと…

591 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 01:32:18 ID:NE0NIdp60
おっさん…ノアニール出身だったのか…
絶対何処ででも必要以上に騒ぎ起こすなあ鬼浜はw

592 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 17:58:04 ID:15DieSlcO
勇者の言動にいちいち萌える(*´д`*)

593 :Stage.? 雑談 ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/20(日) 15:53:51 ID:y4U4//8fO
 ※ 今回はゲーム世界の謎について主人公sに考察してもらいます。

タツミ「ではさっそく。アルスの過去もいろいろ解明されましたが、
   今回はいまいちわからない部分を考察したいと思います」
アルス「そういやお前、あの世界が丸ごと無限ループだってこと、薄々気づいてたみたいだな」
タツミ「まあね。でも確信はなかったんだ。だっておかしいだろ。
   君の冒険が『ロト伝説』としてドラクエ1&2に継承されていく以上、
   ストーリー上『語られない未来』があるのは間違いないんだから」
アルス「だよな〜。1と2の主人公は『ロトの血を継ぐ者』ってはっきり言われてんだから、
   俺は子孫を残したってことだろ? なんで俺の未来がねえのよ」
タツミ「思うに、ゲームの枠を逸脱してしまった『君』だけに起きたイレギュラーなんじゃないかな。
   Stage.10.5のまとめでも、これはあくまでソフト単位の話であって、
   君たちはドラクエというゲームの代表としての存在じゃないって言ってるし」
アルス「他のプレイヤーの勇者たちは、ループなんかしてないってことか」
タツミ「というわけで、読者の皆様がお持ちのドラクエの主人公たちは、
   うちのアルスみたいなことにはなりません。何周でもプレイしてあげてください」
アルス「やり込むほどに味わい深くなるのがドラクエだからな」

タツミ「ところで今回の雑談、よく引き受けたね」
アルス「なにがだよ」
タツミ「いや、前回散々言ったから、本当は僕と口をきくのも嫌なんじゃないかなーって」
アルス「本編の確執をいちいち番外に持ち込んでたら仕事にならんだろうが」
タツミ「そりゃそうだけど。……君って意外とオトナだよね」
アルス「意外は余計だ」

594 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/20(日) 16:06:10 ID:ZDaeM8rS0
サンクスコール?リアルタイム遭遇ktkr
支援

595 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/20(日) 21:10:15 ID:wdPMd9m10
>593
ちょ、メル欄…

雑談しとらんで養生しる!

596 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/21(月) 01:45:37 ID:INeekOoN0
>>593
病室ってどうしたん?
無理せず休んでくれ

597 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/21(月) 06:33:32 ID:0ifDap8J0
>>593
了解!
さっそくDS発売前の5をリプレイしてくるぜ!

>>596
避難所参照

598 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/23(水) 09:14:22 ID:ilq2N/md0
やっと規制明け。乗り遅れた〜
作者の皆さん乙!
楽しみにしてますよ

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/24(木) 21:09:39 ID:i20I3VgjO
ざっとまとめ一覧見てきたんだがここってひょっとしてモンスターズは含まないの?

まあでも宿屋ないからスレタイに反するのかな

600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/24(木) 22:28:45 ID:WTJaf9bS0
DQM2には宿屋あるぞ

・・・異世界にだがw

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/25(金) 07:27:11 ID:OqPmcdHjO
>>599
どうぞ気にせずお書き下さい

602 :大怪獣決戦!1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:51:30 ID:tIBBIciw0
ー次の日ー

さすがに今日は誰一人寝坊する事はなかった。パンツですらキチンと起きたのだ。
奇跡。やれば出来るじゃねーかと話かける。ちょうちょが…ちょうちょが…
寝ぼけてるのか何言ってるのかさっぱりわからない。いや違うこれは寝ぼけてるのではなく
寝ているのだ。体は起きているが頭は寝ている。立ったまま寝ている。さすがパンツ侮り難し。

俺達は真っ直ぐ洞窟を目指した。中に入る。一度来ているので今回は進むペースが早い。
迷うことなく扉の前に到着した。一気に開ける。




最深部に奴はいた。咆哮が腹に響く。無意識に後ずさってしまう。チクショウ前に出やがれ
俺の足!みんな完全に気持ちが呑まれてしまっている。ここは先陣きって俺が行くしかない!

俺はダッシュで一直線にデカブツを目指した。ねーちゃんがすかさず補助呪文を唱える。

いくぜええええぇぇぇぇえええ!!!!!!!!
ガキィィィィィィィイイイインンンッッ!!!!

金属音が洞窟内に響き渡る。コイツなんて硬い皮膚してやがんだクソが!…え?

信じられない光景だった。俺の愛用ドラゴンキラーが真っ二つに折れた。

おいおい!ドラゴンキラーとは名ばかりか!いやいや有り得ないから!そしてデカブツと目が合う。
ゆっくり口を開ける。やべえ。次の瞬間凄まじい炎が放たれた。一瞬にして目の前が真っ赤だ。
ねーちゃんが反射的にかけてくれたフバーハのおかげで何とか持ちこたえる。
が、痛い。超熱い。

隣では勇者とパンツが必死に切りかかっていた。炎をギリギリでかわしつつ刃を立てる。
しかし聞こえるのは乾いた金属音だけであまりダメージはないようだ。

603 :大怪獣決戦!2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:52:00 ID:tIBBIciw0
…仕方がない。俺だってバカじゃない。こんな超規格外の相手に丸腰で挑んだりはしない。
昨日一晩考えて奥の手を用意しておいた。毒を以って毒を制す。目には目をデカブツには
デカブツを…!

ド ラ ゴ ラ ム !!!!




いや正直かなりの賭けだった。イケが一回使った呪文を見よう見真似で使うことは。
だがしかし!俺は!賭けに!勝った!ぬをををををおおおおおおおっっ!!!!!!!!

これは…凄い…!

ねーちゃんが唖然としている。そりゃそうだ。俺のドラゴラムはその辺の奴のとは
訳が違う。このデカブツを一目見たときから考えていた。こんな化け物に勝てるのは
ヤツしかいない…そう…幾度と無く日本を壊滅させかけ、終いにはニューヨークにまで
遠征かけた…

ドラゴラムは呪文を唱えた本人の能力やイメージが強く反映されるわ。
ただこれは…禍々しいというか何というか…そうこの世界の生物ではないみたい…!

当たり前だ!俺たちのヒーローをこんな世界のチンケな竜なんかと一緒にすんな!
今日俺は「ゴジラ」の名においてコイツを倒す!!!!!!!!!!!!!

野生の本能かデカブツは即座に俺を敵だと判断すると飛び掛ってきた。
それでもまだなおデカブツの方が二周りはデカい。だがしかし!ゴジラの名において
敗北は許されない!俺は正面から取っ組み合った。

ぐんむぬぬぬガアアアアアァああグアアああッッ!!!!!

604 :大怪獣決戦!3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:52:46 ID:tIBBIciw0
巨体がぶつかり合う。もはや小細工無しの力と力の真っ向勝負!
俺の強烈なパンチが炸裂する!が、相手はたくさんある頭で同時に噛み付いてくる!
ぐッ…これはズルい…キングギドラですたら頭3つだったと言うのに…
俺は渾身の力で全身を叩きつける。体が小さい分小回りが利く。一撃の重さに劣るなら
こっちは手数で勝負だ!洞窟内に硬い皮膚と皮膚がぶつかり合う鈍い音がこだまする。
しかし徐々に押され始める。コイツは文字通り頭数が多すぎる!
ふんぐああぁぁぁぁぁ!!!これでどうだああああああ!!!!!!
力任せに一つの首を締め上げた。フロントチョークみたいな状態だ。そうとう苦しいのか
他の首が一斉に暴れだした。体中噛み付かれてボロボロだ。放さねえ!絶対放さねえ!
やがてゴキッと鈍い音があすると締め上げていた首の力が抜けた。

ぎゅアアアアアアァアアァ!!!!!!

さらに追い討ちと俺は口から強烈な炎を吐いた。温度でこそのダメージは薄いものの強烈な
圧力により相手は怯む。チャンスだ。一気にタコ殴りにする。俺の鉄拳連打が完全に相手を
捕らえた。

一瞬グッタリしたように見えた。まじかよ…コイツは一体何処までタフなんだ!?
直に体制を立て直し反撃に出てきやがった。残った口という口から猛烈な炎を吐く。
衝撃に押されて後退する俺。

バギッックロスッッ!!!!!

ねーちゃんの起こした真空波がデカブツの炎を切り裂き顔面に命中した!
助かったぜナイスねーちゃん!立て続けにパンツが同じ箇所に一撃を見舞う。
この首も動かなくなった。

お父さん…私に力をかして!…ラィッディイイイインンッッ!!!!

勇者が強烈な雷を落とした。こいついつのまにこんな強い呪文を…

ギャアアアアオオオオオオオオおおううウウウウ!!!!!!!

605 :大怪獣決戦!4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:53:15 ID:tIBBIciw0
これはさすがにかなりのダメージを与えたようだ。悶絶するデカブツ。
よしここで俺が一気にカタをつけてやる!あれ?なんかコイツさらに巨大化してないか!?
デカブツの目線がどんどん高くなる…いや違う!これは俺が縮んでるんだ!!!

…元にもどっちまった…。だがこの好機は逃せねえ!炎が効かないなら逆を攻めるのみ!
くらえ!ヒャダイン!!!!!!氷の刃を含む猛吹雪がデカブツを包む。
凍ったせいなのかはたまた体力が尽きたのかデカブツは動かなくなった。
倒したのか…?おそらく一気にダメージをおって動かなくなっただけよ!ねーちゃんが叫ぶ。
膝の力がガクッと抜けた。ち…ちょいとばかし飛ばしすぎたようだ。
もう一息なのに!動け!俺の脚よ動け!

ドク…ドク…とバカでかい心音が響く。

ゆっくりとだが動き出しこっちを睨む。こいつどうしたら倒せるんだ!?

まずいわ!体力も回復力も異常だもの!このままでは競り負ける!

次の瞬間デカブツの振り回した頭により勇者とパンツが宙を舞った。
壁に打ち付けられ崩れ落ちる。どうやらパンツが自らを下敷きにして勇者をかばったようだ。
確かにこのままじゃこっちがもたねえ。クソこっちは
5人がかりだというのに…あれ?5人…そういやおっさんどこいった!?

総長殿総長殿…おっさんが話しかけてきた。てめえ無事か!?はい!身の危険を感じた故
あの岩の陰に最初から隠れてました!っていばるなそんなもん!…え!?なんだと?
おっさん曰くあの動きからして頭はたくさんあれど脳は一つらしい。で、その脳の場所だが
全部の首の付け根が怪しいらしい。ほんとか!?

間違いありません!あやつさっきからそこだけかばっておる!わしはずっと見ておった!

606 :大怪獣決戦!5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:53:52 ID:tIBBIciw0
この際試してみるしかない。ねーちゃんに回復してもらう。ある程度はこれで動ける。
問題はどうやってその弱点を狙えるかだ。さてどうするか。今こっちの戦力は…
ねーちゃんはほぼ魔力使い果たし、パンツは完全に動けない。残るは俺と勇者。
勇者を呼び寄せる。俺がなんとかしてアイツの注意をひくからお前が剣で弱点を突け。
俺のドラゴンキラーは折れてしまったためこれがベストの選択だろう。
わかったと勇者が頷く。ここで失敗すると勝ち目は無い。気合入れてくぞ!

ねーちゃんが最後の気力を振り絞って竜巻を巻き起こす。デカブツの注意はこっちにむいたようだ。
勇者が駆け出す。よし後は勇者が回りこむまで俺がヤツを引きつけるだけだ。
とりあえず回りこんでることに気づかれてはいけないので派手なの一発かましとくか。
イオ!!!わざと爆発の中心手前にずらした。デカブツは口をこっちに向けると炎を吐く。

俺はフバーハを張ると後は仁王立ちだ。耐え切ってみせる!!!!
熱風が視界を塞ぐ。だがしかし俺は倒れん!!息切れか炎は止まった。
デカブツが大きく息を吸い込む。俺はポケットに詰めてあった薬草を全部口に押し込んだ。

ぐにゃあ!ぐるぢゃらごういびゃ!(コラ!くるならこいや!)

第二波がきた!俺は男の意地にかけて倒れん!…………ぬううううう………
意識が遠のきそうになる。勇者は!?勇者は今どこだ!?勇者がデカブツによじ登っているのが
見えた。もう少しだ。ちくしょうだが目の前の敵はまた大きく息を吸い込む…きた!!!!

やられてばっかじゃないぜ!ヒャダルコおおおお!!!!!!

冷気が炎を押し返す。ぐうううううううう!!!!…だめだ魔力がもたねえ…!
逆に押し返される。多少勢いは抑えられたようだ。なんとか踏みこたえる。

これはもう限界だ。視界がボヤける。デカブツが二重にも三重にも見える。ここまでか…。
総長!起き上がったパンツが体全体を引き摺りながら寄ってきた。そして俺の横に並ぶ。

607 :大怪獣決戦!6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:57:07 ID:tIBBIciw0
次の一発が最後になるだろう。その間に勇者が一撃見舞えれば俺たちの勝ちだ。
パンツ!俺たちの根性をあのクソデカに見せてやるぞ!はいでやんす!俺達は肩を組むとデカブツを睨み付けた!

怒号共に一際大きな炎が飛んできた。耐える耐える耐える!根性なら誰にも負けん!!!!!
全ての力を振り絞った。もはや体力は尽きている。だが時に気力は体力を凌駕する!!!!

イヤああああァァァァあああああぁ!!!!!!!

勇者の叫び声が聞こえる。どうなったんだ?炎が止まりそこに写ったのは深々とデカブツの
首元に剣を突き立てる勇者の姿だった。

さっきまでの激闘が嘘のように一瞬静まり返る。

……グ……グッウィヲヲオオオオオオオオオオオオ…!!!!!!!!!

明らかにさっきまでとは違う苦しみ方だ。七転八倒して大暴れした後、動かなくなった。
勝った…のか…?満身創痍の俺達が集まる。いやーいやいや凄まじい死闘でしたな!
…いや一人だけピンピンしてやがる奴がいた…だが突っ込む元気もねー…

デカブツはもう完全に動かない。コイツ…本当に強かったな。デカイとはいえこっちは五人がかりだ。
おそらく俺一人でタイマンはってたら勝ち目は無かっただろう。強敵だった。
できる事なら墓の一つでも掘ってやりたいがさすがに無理がある。俺達は洞窟を後にした。
みんな疲弊しきっているのか無言だ。おっさんは一人興奮しているが誰も聞いちゃいねえ。
入り口で立ち止まる。どうしたの総長ちゃんと勇者が振り返る。

イ オ ナ ズ ン  ! ! !

轟音と共に入り口が崩れる。数分後岩盤で埋め尽くされ完全に埋まった。
強敵との闘いに敬意を表してこの洞窟をデカブツの墓標にしてやろう。我ながら粋な計らい…
完全に気力も体力も魔力も使い果たした俺はその場で意識を失った。

608 :大怪獣決戦!7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/26(土) 23:57:39 ID:tIBBIciw0
次に目を覚ましたのはあの酒場だった。そう例の神酒のとこだ。パンツがここまで担いできたらしい。
店長は号泣しながら礼を言ってきた。別にお前のためにデカブツと倒したんじゃねえ。
うざいから泣くな。と、ねーちゃんが手招きしている。ははーんさては俺の男の中の男の闘いっぷりに
惚れちまったか?ったくこれだからモテる男はつらいぜ。誘われるがままに店の外に出る。

勇者殿…

来た来た。いつでも準備は万端だぜハニー。今晩は最高級のスイートルームを予約しようかってぬお!
振り返った視線の先にいたのはおっさんだった。なんでてめーがここに居るんだチクショーが!!!
実は洞窟でこんなものを拾ったのですじゃとおっさんが勲章のような物を見せた。
竜の形をしていて真ん中にはよくわからない文字が刻まれている。なんだこりゃ。

それはジパングの紋章よ。それもかなり地位の高い人しか身に付ける事ができないものよ。

ねーちゃんが続ける。男心を弄びやがって酷いぜねーちゃん…ってえ!?どういう事だ!?
あの洞窟にこの国の偉い奴しか身につけられない物が落ちている。どうやら嫌な予感は的中した
ようだ。沸々と湧き上がる俺の怒り。すぐに酒場に戻り全員に召集をかける。

おまえらこれを見て欲しい。

みんなの視線が竜を象った紋章に集まる。

これは洞窟に落ちていたものだ。おっさんが拾った。ブローチだかペンダントだか何だかしらねーが
どうやらこの国のお偉いさんしか身に付ける事ができないものらしい。

勇者の顔が強張る。パンツが何か大発見をしたような顔で喋りだす。総長それはつまり…黙れ。
会議中においておまえに発言権は無い。

俺はハッキリ言ってブチ切れた。今から城に殴りこみに行くぞてめーら!

俺は大声を張り上げた。ちょっと待ってとねーちゃんが話し出す。

609 :大怪獣決戦!8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:00:06 ID:tIBBIciw0
今日はみんな疲弊してる事だし準備を整えて明日改めて訪ねましょう。それにその格好じゃ
多分城の中に入れてくれないわよ。

自分の服を見つめてみる。ボロだ。これは服というより完全なボロだ。いやしかし服装など関係ない!
俺は今殴りこみをかけたいんだ!

あの…お取り込み中失礼しますがささやかですが出来る限りの料理と酒を用意しました!
娘の恩人です!遠慮なく食べて下さい!

……よし。出発は明日にしよう。


ー次の日ー

足取りは重い。場合によっちゃあの城にいる奴ら全員ぶっとばさなきゃ気がすまねえ。
相変わらず衛兵に止められる。ブン投げた。どけ。俺達は最短距離でヒミコの元へ向かった。


ブチのめしたぜ。やまたのおろち。まことか!?とヒミコが驚く。しかし俺たちの浮かない顔を見て
黙り込む。これに見覚えはあるかしら?とねーちゃんが例の勲章のようなものを見せる。
あの洞窟に落ちていた。…………説明してくれ。

一呼吸置いてヒミコは話し出した。

それは…我が国が公的に作っているものじゃ。各役職ごとに異なる紋章を授ける。
古くからの伝統じゃ。そしてそれは…もうよい。本人を直接呼ぼう。

ヒミコは衛兵に何か耳打ちすると衛兵は一礼した後出て行った。数分後。
部屋に入って来たのは最初にこの国に来たときに食ってかかってきた老人だった。

610 :大怪獣決戦!9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:00:41 ID:0AQJ4yVl0
これが封印の洞窟に落ちていた。説明してくれ。

ヒミコはそれだけ言うと紋章を老人に渡した。老人はため息をつくと右手を大きく振り上げた。
突然ドカドカと十数人はいるであろう武装した兵士が部屋になだれ込んで来た。
状況が把握できない。どういう事だ!?ねーちゃんと目が合う。
ねーちゃんが女王様を守って!と指示を出す。何が何だかわからないが俺達は王座を取り囲む様に
円陣を組み備えた。おいおい。ヒミコは顔を強張らせたままどういう事じゃ!と叫ぶ。

姫様…いや今は女王様か。わしは先代国王の時よりずっとこの国の為に心身を奉げてきた。

………?

王妃様はあなたを産んだ後直亡くなられた。偉大な王であった先代の血をひくのはヒミコ様
あなだだけじゃ。王位を継いだ事も女王となった事も何の間違いは無い。

………??

しかし…あなたの思想は危険すぎた。隣国と仲良くとな?笑止万全!何故選ばれた民である我が民と
下民である者たちが手を取り合う必要がある?崇高なるジパング国の指針は一つ!他の国を従える事
のみ!残念だが姫…いや女王様。あなたにはここで退官願う。死をもって!

老人が手をかざすないなや、兵士達が異形の物へと姿を変えた。
コイツ…魔王と手組んでやがったのか!?非常に混乱しているが今しなけりゃいけない事は一つだ。
こいつらを叩きのめす!

俺はねーちゃんと勇者にヒミコの護衛と呪文での後援を頼んだ。そしてパンツと敵陣に切り込む。

数は多いがやまたのおろちに比べりゃ雑魚だ。片っ端から片付けていく。暫く後目の前に敵対するのは
老人だけだった。

ぐぬうううぅぅ…愚かな者達よどこまでも神の国に楯突こうというのか…


611 :大怪獣決戦!10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:01:31 ID:tIBBIciw0


ククク…お困りのようですね…



どこからともなく嫌な声が聞こえる。生理的嫌悪感をもよおすこの声。どこかで聞き覚えがある…

不気味な黒い霧と共に一人の覆面の魔術師的な男が現れた。
俺とパンツと勇者は絶句する。コイツは…コイツは忘れもしねえ!あの時あの時じいさんが自分の命と
引き換えに潰した奴あの時の…言葉が出ない。心の奥底からただ怒りが湧き起こる。

てめえ生きてやがったのか!おまえだけは絶対に俺の手で潰す!

今にも飛び掛ろうとした。が、体が動かない。

落ち着きなさい。相変わらず熱い男だな。今日はおまえらの相手をしにきたんじゃない。
後始末にきただけです。

と、次の瞬間魔術師の手が老人の胸を貫いていた。

今までよく働いてくれました。あなたがジパングに与えた恐怖や絶望…大魔王様もお喜びでしたよ。
ただやまたのおろちを失った今もうあなたは不要です。安らかに地獄に行きなさい。カカカ…

老人は口をパクパクさせながらうわ言のようにジパングと呟くとやがて動かなくなった。
魔術師はボロ雑巾のように老人を投げ捨てるとこっちに向かってきた。

やまたのおろちを倒した所をみると少しはマシになったようだが…この程度の邪気で
身動きが出来ないようじゃまだまだだな。大魔王様もおまえらが自分の存在を脅かすくらい強くなるのを
お待ちですよ。色々な国を回り様々な人を助けもっと勇者とその仲間として完成しなさい。
勇者は人々の希望であるから勇者なのですよ。ククク…


612 :大怪獣決戦!11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:02:19 ID:tIBBIciw0
メェェラゾォォォォッッマァァァァァ!!!!!!!

俺の放った極大の火球が魔術師を捉える!

轟音と共に大量の煤と埃が舞い上がり一瞬視界を遮った。

徐々に視界が回復する。

ほう…さすがこの状況で動けるとは…異世界より迷い込みし賢者よ。少しは楽しませてくれるようだな。

コイツ…俺の必殺技を食らって無傷なのか!?ヤバイ近づいてくるが今度こそまったく指一本動かせない。
く…殺られる……………!


魔術師が耳元で囁いた。

そして去って行った。

俺達の金縛り?も解けたらしく全員が一斉に動けるようになった。目の前にあるのは魔物の死骸の山と
老人の屍。外にいた兵士が何事ですか!?となだれ込んできた。ヒミコは力なく死骸の片付けと
老人の埋葬を命じた。

ひと段落ついてもう一度ヒミコの座の前に集まる。



重い沈黙。






613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 00:02:27 ID:dB7aKu390
ちょwゴジラに変身しやがったwwwwwwww
ドラゴンなのかそれはw

614 :大怪獣決戦!12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:03:03 ID:tIBBIciw0
重ね重ね礼を言うぞ。勇者とその仲間達よ。やまたのおろちの件だけでは無く命まで助けてもらったようだな。
こんな事言える立場じゃないかもしれんがあの者は手厚く葬った。許してくれとは言わん。
ただ誰よりもこの国を愛するが故の行動だと思っておる。わかってやってくれ。

そして一冊の日記のような物を差し出した。あの老人の部屋にあった物らしい。
内容は要約するとこうだ。ジパング再興のため魔王軍と手を組んだ事。やまたのおろちを使って
ヒミコの世評を下げ退官させようとした事。そして最終的に魔王軍が世界征服した後
ジパングだけは独立を守ることを契約した事…何があの老人をここまで駆り立てたのだろうか。
さっぱり理解できねえ。

さて話を本題に戻そう…。ぬしらが求めていたオーブの話じゃが…

オーブ…ああそうだ忘れてたたしかあの鳥居の洞窟の奥にってオイ!入り口はもう塞いじまったぞ!
やべえすっかり忘れてた。今から掘り返すのか…しかしあそこは俺とデカブツの名誉ある死闘の場所…

あの洞窟にはありませんでした。

ねーちゃんがこれまた驚き発言をする。えっあの状況で探してたのか!?当たり前でしょと多少冷たい目でこっちを見る。
正直先にオーブ見つけてしまってやまたのおろち退治は後回しにしようと思ってたわ。
勝てそうにもなかったし…結果論から言うと勝ててよかったけど総長さんも私達を率いるリーダーなら
その辺もっと慎重に行動して欲しかったわね。

……こんな所で説教しなくてもいいじゃないか…

あやつの手記と共にあったわ。もう我々には必要ないもの。好きにするがよい。

と紫色に輝くオーブを渡された。そうかあの老人が持ってたのか。いやいや結果オーライだな。


615 :大怪獣決戦!13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:05:36 ID:0AQJ4yVl0
ヒミコはさすがに顔色が優れない。そうだろな。これからこの国の奴らにこの一件を
どう説明するのだろうか。差し出した生贄…支払った犠牲を考えると黒幕が魔王とうちの大臣でした
なんて簡単に言えるもんじゃない。事情をしってる周りの大臣や兵士も表情は重い。

俺は考えた。この空気。この雰囲気。問題は山積だがだからこそ立ち止まってはいけない。
一歩ずつでも前に進まなくては。そしてこの状況を打開するには…酒しかねえ。

おいヒミコ。今すぐ宴会の準備をしろ。国をあげて総出の宴会だ。異論反論は許さん。
逆らったらこの国ごと潰すぞ!

一気に城内はザワついた。バカな…あの異国人は何を考えてるのか…この状況で…空気読めよ…
あちらこちらで陰口が聞こえる。ええい黙れ!世界の覇王に最も近い俺に逆らう奴はブン殴るぞ!


数時間後。

夜もすっかり更けたころ、国で一番大きい広場に物凄い人数が集まった。
ブツブツ文句をいってた兵士や使用人もいざ宴の準備を始めるとちょっと楽しそうだった。
頃合を見計らって一番高い演説台に立つ。

…誰も見ちゃいねえ。それどころか何の為に集まったかも知らされていないので不審そうな顔をしている。
目の前には大量の料理と酒。家にあるありったけの酒と料理をもって広場に集まれという
女王からの謎の通達。不審がるのも無理はないか。ここは一発派手に民衆の心を引くしかないようだ。
花火でもあげるか。俺は天を仰ぐと夜空に向かい叫んだ。

イ オ ナ ズ ン !

けたたましい轟音と共に一瞬真昼かと思う程に夜空が光った。突然の出来事にへたり込む奴や
当然子供は泣き出した。うんうん。この反応を待っていた。一息つくと俺は声を張り上げた。



616 :大怪獣決戦!14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:07:34 ID:0AQJ4yVl0
コホン…えー俺は鬼浜爆走愚連隊の総長である!
近い将来この世界の王となる男だ有難く目に焼き付けておけ!

あっけにとられる民衆共。

えーここで一つ報告がある!おまえらを悩ませるやまたのおろちはもういない!
俺達が死闘の末今アイツは洞窟の奥で永遠の眠りについた!感謝しやがれ!

そんな話信じられるか!いやまてしかしヒミコ様の命でここに集められたんだから…あんな異国人の
たわ言など!色んな声が錯綜する。

…やっぱ全然信じてねーなコイツら。おいヒミコ出て来いや!

この者のいう事は真実じゃ。

ヒミコが台の上に立った。一斉に静まり返る。

勇者率いるこの者たちの手でやまたのおろちは倒された。そして今みなに伝えなければならない事がある。

ヒミコはありのままを国民に伝えた。内容が内容だ。中には敵意むき出しでこっちを睨む奴もいる。

再び俺が前に出る。

えー色々思うとこがあるかもしれないがおまえらに一つ命令しておく!今回の事は全て水に流せ!
そしてやまたのおろちと言う天災が去った今、今日この日を記念日にしようと思う!
毎年今日を「鬼浜祭り」として未来永劫祝え!飲め!歌え!踊れ!騒げ!

一気にヒートアップする広場。賞賛と怒号が飛び交う。

えーそれでは鬼浜祭りに…乾杯!!!!!!!!!!!!!!!!!!

617 :大怪獣決戦!15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:09:41 ID:0AQJ4yVl0
そう叫ぶと俺は持っていたグラスに注いである酒を一気に飲み干した。
かんぱーい!と勇者も声をあげパンツやねーちゃん、ヒミコ、兵士、城の使用人、その他みんな一斉に
酒に口をつける。なんだかよくわからないがその雰囲気に呑まれあちらこちらで乾杯の音頭が上がった。

もうあとはとにかく酒を注いで回る。飲ます。飲まされる。一時間だか二時間だか過ぎた頃には
かなりの人数ができあがってきていた。もう誰も恐い顔をしている人はいない。

うんうんこれでいい。やはり祭りはこでなければな。と、むこうから女の子がいっぱい駆け寄ってきた。
これは…もしかして…そうだ。俺はこの国を困らすデカブツを倒した。つまりこの国の英雄ってやつだ。
キャー本当にやまたのおろち倒したんですね!すごーいつよーい!かわいいーーーー!!!!
へへへよせやい照れるべ!?え!?かわいい!?案の定俺を素通りして女の子軍団は勇者とねーちゃんの元に向かった。
パンツが総長総長と寄ってくる。なんだよ気持ち悪いな。こっち来んな。
え?あっちで俺の武勇伝聞きたい奴がいっぱいいるって?しゃーねーなおい行ってやるかデへへ
…そこにいたのは明らかに土方系のイカツイにーちゃん達…あっちの世界でもこっちの世界でも
こんな奴らばっかにモテるのはなぜだろう。チクショウ…



それから更にしばらくたった。ねーちゃんがこっちに来る。ねえ一つ聞きたい事があるんだけど…
あの魔王軍の魔術師、最後総長さんの耳元で何か言ってたでしょ?何を言ってたの?


618 :大怪獣決戦!16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:10:46 ID:0AQJ4yVl0
そう…あの時からずっと心にひっかかってる事。アイツは…あの時信じられないが俺の事名前で呼びやがった。
この世界に俺の本名を知ってる奴はいない。俺は総長としか名乗っていない。
なのになぜあいつは俺の名前を…

いや違う。無論それも不思議ではあるのだがあの声、あの声はどこか懐かしい。
口調はまったく違うのだが俺の良く知るアイツにどこか似ているー…ちょっと?大丈夫?聞いてる?

いけないいけない自分の世界に浸りこんでしまった。ねーちゃんには本当の事話すべきだろうか。

いいわ…誰にだって知られたくない事はあるし無理に聞こうとは思わないわ。

そう言って微笑むとねーちゃんは去ってしまった。別に隠す程の事でもないんだが…もし
仮に俺が異世界から来た事をぶっちゃけるとコイツらはどう思うのだろうか。

この国のやつらは生まれた国が違うというだけでかなりの偏見を持っていた…俺の場合はそもそも世界が違う。
……ていったい何考えてんだろうか。酒のせいだ酒のせい!
今、目の前にうまい酒がある!それでいいじゃないか!



俺はその日も結局浴びる程飲んだ。



619 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/27(日) 00:17:52 ID:0AQJ4yVl0
今日はここまでです
次からはようやく新規更新いくぜ!
今度は絶対完結までいきますんでよろしくおねがいしますです



620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 00:27:02 ID:IhS2bt210
ジパングエピソードおもしれえええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!
作者さん超乙!

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 02:34:28 ID:8XHSKM+00
総長さん乙です!次回も楽しみにしてます!
魔術師の正体が気になる…

622 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 04:14:23 ID:0WieGGiq0
やまたのおろち戦、すごい燃えたっ!
そして、覆面魔術師登場。魔術師も総長さんと同じ世界から来た人物か・・・、あるいは総長さんを呼んだのはそいつか・・・。どきどき。

623 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 04:48:02 ID:6GOUSDnaO
乙ッッッ!!!!!!!


624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 09:38:16 ID:JCxl5wMlO
総長乙!
今度からは新規だね。
面白いんだから最後までやってくれ。待ってる。

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 11:51:25 ID:oI3Rq/xT0
やまたのおろちの正体ヒミコじゃなかったのか!!
魔術師は何で総長の事知ってるのかな…最後まで期待してます

626 :再会1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:47:56 ID:8GnwNDw70
明け方。
フラフラと千鳥足で俺は鳥居の洞窟へ向かった。手には一等うまい酒を持って。
デカブツの話を色々聞いた。古く遡ってはこの国の守護神として崇められていた事。魔王の魔力により
暴れだしそれを勇者の親父達が封印した事。魔王に操られ暴れて封印され今度は権力者にいい様に扱われ
挙句の果てに殺された…正直何が悪なのかなんて俺にはよくわからない。ただコイツにはうまい酒を
飲ませてやりたい。それだけだ。


洞窟の前に立つ。


その辺の岩を切り出して背丈程の石碑を造った。そして上から酒を注いでやる。

…………………。

持ってきたグラスに自分の分も注ぎ無言で乾杯した。

…………。

少しばかり感傷に浸っていた。


なんだか背中の辺りがゾワゾワする。気持ち悪い。
さすがに飲み過ぎだろうか。……いや酔いとはまた違う。この感覚は…覚えがある。
不安が疑問に変わり疑問が確信に変わる。咄嗟に持っていた小さなナイフを抜き身構えた。

吐き気がする程の嫌な感覚。目の前には当然のようにあの魔術師が立っていた。

久シぶりだナ。

627 :再会2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:48:38 ID:8GnwNDw70
聞き覚えのある懐かしい声で声をかけてくる。そしてゆっくりと顔を覆うフードを外す。
そう。この声この顔は…ひとし君だ。暴走族時代の連れで親が極道だったひとし君。年齢は上だけど
いつのまにか同級生になりそして後輩になったひとし君。とにかく危ない男だった。
俺以外とは殆ど口を聞く事なく何を考えてるのかわからない男だった。
喧嘩に日本刀や拳銃を持ち出して「限度」ってものを知らない男だった。
そしてついには動機不明で親を殺し刑務所の中で自殺した。俺が知っているのはここまでだ。

懐かしくそれでいて禍々しい声で続けて話しかけてくる。そのギャップに頭がおかしくなりそうだ。


理解できナいと言った顔ダな。
おまえが知ってルのハ私が親を殺し自殺した所まデか。
そウだな…なぜ私ガ親を殺したか解るカ?


解るわけがない。何とか平静を装い話を理解しようとする。
ひとし君は続けた。



それはあの人達が私の飼っていた鳥を殺したんだ。おまえは極道に生きるには優し過ぎるってな。

そうだ。そういえばひとし君は異常に鳥を可愛がっていた。
喧嘩では徹底的に相手をいたぶる反面、動植物には異常に優しい所があった。いや、しかしだからって…

まだ解らないと言った顔だな。そんな鳥くらいで親を殺すかと思うか?
鳥より人間の命が重いとでも?そもそも鳥と人間どっちが偉いなんて誰が決めた?

ダメだ。この声を聞いていると本気で気が狂いそうになる。

628 :再会3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:49:59 ID:8GnwNDw70
私は考えたよ。もし鳥に人間以上にの腕力があれば立場は逆転してたんじゃないか。
例えば私が拳銃を持った時あの人たちは虫ケラ以下の存在なんじゃないかってね。

何を言っているのかさっぱりわからない。わかりたくもない。きもちわるい。
あたまがおかしくなりそうだ。このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは
このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえはこのこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは

結局の所悟ったのだよ。弱い奴は強い奴に殺されても文句は言えない。
強い奴が全てなんだ。弱い奴に生きる権利なんてないんだってね。
夢を見たんだ。そこでは人間は人間よりはるかに強大な存在に脅えながら暮らしている。
時にその強大な存在は理不尽に、簡単に、無慈悲に人の命を奪う。
その行為はむしろ自然の摂理に則った美しい行為だとは思わないかね。
私は心から力を望んだ。弱い存在を蹂躙したかった。強く強く気が狂う程強く願ったんだよ。
そうしてある日目を覚ましたらそこはいつもの独房ではなかった。
暗く重い空間の中で目の前にいたのは世の中の全ての恐怖を凝縮したような存在だった。
すぐにそれが強大な存在だと理解した。
言葉のやり取りは無かった。だが意志は通じた。私は力を求め彼の存在は絶望を求めた。
私は彼の存在の力を与えられ絶望を生む事を約束した。

人は脆い。絶対的な存在の前では虫ケラと変わらないくせに愛だの希望だのを語る。
なんとも滑稽な生きものだ。そうだな。滑稽と言えばあの町で会ったあの老人。
自ら命を絶ってまで私の存在を消そうとしたが犬死だったわけた。
カッカッカ…無力とは罪なものだな!



ひとしィィィィッ!!!!!!てめええええええェェぇええッッっっ!!!!!!



犬死…その一言で正気に戻った俺は殴りかかった。手ごたえがまったくない。

629 :再会4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:50:57 ID:8GnwNDw70



もっとだ…もっと怒れ…
あの勇者と共に人々に希望を植えつけろ…絶頂までにな…
待っているぞ。その時まで…


そうしてあの魔術師は消えた。


あいつの言葉一つ一つが激しく心を揺さぶる。
俺のやろうとしている事は結局あいつと同じなのだろうか。強い奴が生き弱い奴は死ぬ。
………わからねえ。



…ちゃn……そうちょう……てば…


もう!総長ちゃんてば!ボーっとしてないで呼んでるんだから返事してよ!

ふと我に返るとそこにはみんなが立っていた。

もう!何一人で恐い顔してんの!探したんだよ!そろそろ出発する段取り決めようよ!
総長ちゃんがいなきゃ話進まないよー

なんだか勇者の顔を見ると一気に気が抜けた。
そうだ。何も難しく考える必要はない。一つ確実なのはあいつにしろ魔王にしろいけ好かねえって事だ。
俺のぶっ飛ばすリストにひとしの名前が加わっただけだ。
知能腕力共に常人を遥か凌駕して優れている俺だ。グチグチ考えるのは性に合わねえ。
天才は悩む必要などないのだ。俺が正しいと思ったをするしかないのだ。

630 :再会5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:51:42 ID:8GnwNDw70
ッしゃァ!この国にきて色々あったがとにかく気合入れ直してガンガン行くか!
また長い船旅になるからおまえら心しておけよ!


ならないわよ。


ねーちゃんがあっさりと否定する。え…なんでっスか…


次の目的地はアリアハンよ。ルーラでアリアハンへ飛ぶわよ。
お父様から連絡があったの。アリアハンへ行けば道が開けるって。

ああそうですか…俺の気合は空回りですか…
…?て連絡があったってどういう事だ?


夢よ。夢に出てきたの。


ああなるほど。まああの糞イケの魔力ならそのくらいできるだろうよ。
しかしせっかくの睡眠時間なのにあんなのが出てきたらたまらんな。俺の夢には絶対に出て来ないで頂きたいもんだ。
ん?しかし船はどうするんだ?俺達だけ移動してもダメだろ?

船も一緒に飛ばせるよー!


631 :再会6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:54:02 ID:8GnwNDw70
言葉に出したわけじゃないが俺の疑問を察知したらしく勇者が答えた。
この船にはよくわからん護符みたいなもんが付いてて勇者がルーラで飛んだあと自動的に近くの海に着水するらしい。
なんだかわからんがすげー仕組みだ。というかそもそもルーラって魔法自体がすげえ。
攻撃呪文でも回復呪文でもないから軽視しがちだが瞬間的に長距離を移動できるなんてありえねーだろ。
この世界の人にはそれが当たり前過ぎて何とも思わないだろうが俺にはどんな呪文よりも強力な呪文に思える。
……この呪文を応用したらすっげー破壊力の呪文が作れそうだな。まさに逆転の発想。
まあ今考えるのもめんどうだしもういいや。




俺達は最後の挨拶にヒミコの所へ向かった。
ヒミコは多少疲れた顔をしている。そりゃそうだろうな。わだかまりは俺様が大宴会により溶かしてやったにしろ
民衆共から不信を募った事に間違いは無い。まあしかしこいつならこの国をしっかり立て直す事ができるだろう。

そうかもう出発するのか。もう少し留まって欲しい所だがそなたらも目的がある旅故仕方ないの。

ヒミコはそう言うとさらに続けた。

ゆっくり礼を言う暇もないな。そなたら何か望みはないか?できる限りの事はするぞ。


マジか。何かないかな。別に金に困ってるわけでもねーし。しかしせっかくの機会だ。あっそうだ。
大事な事を忘れていた。俺はヒミコにやまたのおろちの墓を作った事を伝えた。
まあぼちぼち暇な時にでも花でも酒でも備えてやってくれ。

わかった。あの怪物も今回の件では利用されただけだからな。今日この日を記念日とし
やまたのおろちは古来のようにこの国の土着の神として毎年手厚く奉る事を誓おう。
他には何かないか?

632 :再会7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 19:58:10 ID:8GnwNDw70
他には…そうだ俺達も酒をもらおう。ここの地酒はまた格別だった。樽でたくさんもらおう。
そう思いつき言葉にしようとした瞬間勇者が遮って話だした。

ヒミコさま。わたし達は望む事はただ一つ。ジパングをみんなが笑顔で過ごせる国にして下さい。



そうか…。そうじゃな。今度そなたらが来る時までにはそなたらが望むような国にする。
ジパング正統王室相続女王の名にかけてでもな。また顔を見せにきておくれ。

勇者はにっこりと微笑む。ヒミコのつられて微笑む。
よく見ると兵士達もニコニコしている。急にこの場が和んだようだ。やっぱ勇者はすげーな。

ってそうじゃねーよバカ!だいたい将来的にはこの国も俺の支配下になるんだからそういう事はむしろ
俺に言え!俺が望んでるのは酒だっつーの!酒をよこせ酒を…ッ痛ッ!!!

ねーちゃんが俺の耳をつまんで歩き出す。いやまてまだ帰るのは早い!勇者が何言おうが俺の用は済んでねーって!

城の外まで引っ張られた。もう!オーブももらったんだしもういいでしょ!どうせ総長ちゃんのことだから
お酒でもくれって言おうとしてたんでしょ?

この女鋭い。あーあせっかくの機会だったのに…しょうがない今回は諦めるか。



すいませーーーーーん!



どこからか呼び止められる。ああなんだてめーか。そこにはあの例の酒場の店長が立っていた。

633 :再会8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 20:01:10 ID:8GnwNDw70
どこからか呼び止められる。ああなんだてめーか。そこにはあの例の酒場の店長が立っていた。


本当に…本当に色々ありがとうございました!
もう出発されると聞きまして…何せうちにはお酒しかないものでせめてもの気持ちです。

と俺に大きな瓶を差し出した。これは…店長GJ!

まあ気を使ってもらってすいません…。ほら!ちゃんとお礼を言いなさい!

ねーちゃん…いつからそんなお母さんみたいなキャラになったんだよ。
俺はなされるがままに礼を言った。おまえの店はなかなか酒も料理もイケてたぞ。
世界征服した暁にはまた来てやる。

店主が見えなくなるまでみんな手を振っていた。





さて。そろそろ出発するか。
勇者が目を閉じている。久しぶりだなあ家に帰るの…そう呟いた。あっそうかアリアハンてこいつの地元なんだよな。







ルーラ!!!!!!!

634 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/28(月) 20:02:27 ID:8GnwNDw70
しまった>>633の一行目はコピペミスなんで脳内削除して下さい
今日はここまでです

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 02:40:35 ID:Nhekaez10
乙です

やっぱひとしだったか・・・
にしても総長のキャラが(笑)

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 03:46:11 ID:CJ/x4Vhd0
むむむ・・・・。
魔王の力を得てスーパーになったひとしくん、怖ぇぇぇぇ。

> ……この呪文を応用したらすっげー破壊力の呪文が作れそうだな。まさに逆転の発想。
オリジナル呪文フラグ立った。
やまたのおろちのために墓をつくったり、ヒミコに後を頼んだり、総長いい奴。

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 05:32:12 ID:yZPd85kVO
総長ルーラ使えなくね?

638 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 06:19:00 ID:oNxMXmEDO
>>637
飛行機あたりをイメージしたらルーラもいけるかもしれん…
職業賢者だから、デイン系以外は全部使えてもおかしくないし

639 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 08:22:25 ID:qBqFK6tOO
>>636
>スーパーになったひとしくん
スーパーひとしくんってことはラスボスは世界ふしぎ発見のあの人か

640 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 09:56:18 ID:JN4Im1kfO
>>639
徹子か!!!!

641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 11:30:01 ID:IGSKSijc0
>>640
いやいやそこは草野さんだろう。

642 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 16:33:47 ID:B7bsmgZc0
>>640
勝てねぇw

643 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 22:19:52 ID:hvOZ+6lu0
>>634
総長おもしれええええええええええ!!!111!!
俺的最高SSで4の人と双璧だな
完結までまったり待ってるぜ!

644 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:45:06 ID:m1wsBb0V0
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1209480163/

作者のみなさま乙であります
470KBこえたのでたてておきました





645 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 00:17:13 ID:xZiPs/Kx0
>>644
スレ立て乙であります!

646 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 08:10:35 ID:od4AJ32eO
乙です

647 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 11:31:01 ID:jdFhU5hLO
>>641
スーパーひとし君のことかーーーー

648 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 14:33:04 ID:99E9KTwhO
埋め埋め

649 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/02(金) 01:29:44 ID:NmHihLlw0
ぢおn軍規制解除でやっと書き込めるよ…

おもしれええぜ!総長!
これからの展開に期待!

650 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 12:35:12 ID:bu7ssWsZO
ゆうべは おたのしみ…


は!まさか、セックルて言いたいの?ばーか!

651 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 19:47:39 ID:QA7b90Bp0
>>650
おまえら、セックスのことをセックルとかセクロスとか言うなよな。
言うんだったら堂々とセックスと言え。

652 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/10(土) 21:04:26 ID:DfosPmwV0
みなさま、お疲れ様です。
そしてご無沙汰しておりました。
まとめサイトのほう、全く更新が出来ず申し訳ないです。
そして合作エピローグも全く公開できず、本当に申し訳ない。

タカハシの物語ですが、第五部を一応終わらせました。
ほとんどすっかりを忘れてしまっているので、強引過ぎるくらいに展開させてしまいましたが、
完結を目指す私の方針転換なんだと、ご理解いただければ幸いです。
また、間が驚くほど空いてしまったので最後あたりは書き方がかわって戸惑うかもしれません。
これもまた、ご理解いただければ……

長く投稿している間が無いので、失礼ながら今回はテキストファイルをアップロードさせていただきます。
ttp://www.uploader.jp/dl/ifdqstory/ifdqstory_uljp00018.txt.html

ではまた、そのうちに。

653 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/10(土) 21:10:34 ID:DfosPmwV0
ああ、こっちは前スレでした…
空気を乱すといけないので、このままにしておきます。

654 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/10(土) 22:29:12 ID:uA96dSyS0
>>652、653
乙でございます。
あまり無理しないでくださいね。

655 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/11(日) 01:09:15 ID:aYEBL8s00
>>652
GJ
最終話まで気長に待つよ

656 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:07:03 ID:50sD3Ncn0
>>652からの 続き

〜 最終部 〜

●隠されるモノ達

心は、いつだって一つではなく、肉体はまるで入れ替え可能な入れ物だ。
やると思えばどうにでも、ある水準にまでは性格すらも切り替えられる。
誰にだって気軽にだって出来るわけではなく、俺にとって初めての試みで、自分の意思として今、違う自分を作り出している。
うまくいっているように思えるが、実際、これがどうとにもならず逆に苦しみを増やしているんじゃないかとさえ、考える。
けれどこの通り過ぎる時間を遣り過ごすには、そうやってあの出来事たちを抑える必要があった。
でなければ、まるでそこに意思とは関係が無い一人を作ってしまうからだ。

「お前達の主人はどこにいる」
「お、教えるものか。なんで人間になどあの神聖な……」
「そうか」

鋼の剣がボウと空間へ亀裂を立て、死絶寸前の醜い魔物の頭上へと鋭く研ぎ澄まされた刃を触れる。
骨を砕き肉をえぐる悲鳴は、もう数千と聞き慣れた。べたりと這う色の無い塊は、ざらざらと巡るしぶきを落としている。
俺はいま、魔王へと一直線に向かうべきとし、そうしようと進んでいた。
襲う魔物も見つける魔物も全てを薙ぎ倒しながら、まっすぐとライフコッドであっただろう残骸を踏み、山を谷を越えてきた。
なのに、あるはずの邪悪でいっさいが神聖ではない往くべき根城が、見つからない。
もう数日は同じところをぐるぐるざつざつと、岩や土や水も草も樹も枝も踏み続けている。

「またきたか……」

独特の感触をもたらす嫌な気配を感じた。
薄っぺらな声をあげ、少し離れた場所でいくつかの影を呼び出す蠢くもの。
この地ではよくある風景で、辿り着いた黒い── もはや俺には黒い塊にしか見えない魔物達は凝りもせず襲ってくるのだ。

657 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:08:41 ID:50sD3Ncn0
「最近ここらで暴れている人間とはお前のことか。
 どうも、信じられん。なんと小さな存在であることか。
 それにしてもお前、よくここまで生きてこられたな」

似たような言葉を今日だけで何十回と聞いただろう。
こいつらは、同じ言葉を下等な魔物全員の意識間で共有しているのじゃないか。
だから同じ文句しか言えず、同じ行動しかしないのではないのか。
そうなら、こいつら魔物達は単に姿かたちが違っているだけで、ぜんぶ運命共同体ということに成る。
結局は魔王の存在たった一つが、それらにたった一つのどうやりようもない邪悪を与え、動かしているに過ぎないのだ。

「おい。なんとかいえ。せっかく、お前に喋る機会を与えてやっているのに。
 俺達を楽しませろ。もう人間という餌がなかなか見つからないから、我々は退屈しているのだ」
「そうか。逆に言わせてもらうが、ならばお前達こそ、この俺を楽しませてほしい。
 これは俺の頼みだ。どうしてもというわけではないが、それなりに楽しませてはくれないだろうか」
「こいつ……! 黙っていれば生意気を言う。
 お前の願いを叶える事などまっぴらだが、ゆっくり痛めつけてその口を後悔させてやろう。
 どうだ。少なくとも俺達の望みは叶うのだ。
 ああ、そうだ。もしお前が、痛みを好むのならお前の願いも叶うというわけだ。ガッハハハ!」

大きな黒が笑うと、周りの中くらいの黒たちもぎゃあぎゃあと笑った。
いったい、どんな魔物なのだろう。
俺の目に映るごわごわと動くソレは、まるでぼんやりと反射する黒い生命体にしかわからない。
こんなものを生命体と呼ぶにも、まったくがふさわしくなどなく、先刻できたばかりの残骸のほうが高尚だ。

「痛みなら、もう十分にある。好きではないが、今では嫌いでもない。
 生きている限りどうしたって痛みは発生するのだから、嫌っていても逃れられない。
 俺はそういった感触とどう付き合っていくのかが、大事なんだと思う。
 けれどまだ、俺に答えは見えていないから、こうやって自分を隠して歩く。
 なぁ、いい話題だ。
 なのに、お前たちには理解できないんだろう。
 なぜなら、お前等は思考もまっとうな感情すら持たず、あわよくば生きているだけの、下等で下劣でただ動く肉なのだから」

658 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:10:48 ID:50sD3Ncn0
ぐっと、邪悪な波動がこの淀んだ空気を波立てる。
言った台詞はどうも、黒い者達を刺激したらしい。
もっともだと思えるから、少し可笑しかった。

「お前が、殺されるのは、既に決定していることだから、こうして会話でもしてお前を死の緊張から解いてやろうと、してやっているというのに。
 良かったな、俺は他のやつらと違って、気が大きいんだ。
 だが、もう俺はお前の叫びや掠れた声や血や肉を喰いたい。
 イライラとする身体を慰めてやりたいと思う。おい、人間よ」
「ああ。そう出来るのならすればいい。その前に、俺の話を聞いてもらえないか。
 逃げ惑い地を這いずりながら命乞いをし掠れた声で空に助けを求め、最後はこの両手でお前にすがると約束する」

黒い魔物はふふんと鼻を鳴らした。
今の言葉が相当に楽しみで、今にもすすりたそうに感じる。
次の声は喜びで微かに震えていたのだから。

「おお。いいだろういいだろう。なんでも言ってみろ」
「ありがとう。では聞くが、魔王の元へはどうやって行ったらいいんだ。
 さっきまで見えていた城が、まるで見当たらなくなった」
「魔王様の…… お前、約束は必ず守るんだろうな」
「いまさら、嘘を言ったってどのみちお前達に殺されるんだろう」
「それもそうだな。よし、教えてやる。
 魔王様の城は、美しく強大な邪悪の魔力によって守られているのだ。
 だから、ルビスなどという神にすがる人間に見えるはずなどない、というわけだ」
「なるほど、そういう事か。 じゃあ、俺を案内してはくれないか」
「バカな。誰がそんな事をするというのだ。
 それより俺はもう我慢が出来ん。十分話してやったのだから、お前を約束のためじわりじわり殺そう」

大きな黒は、何か武器を持っているようだった。
それを大きな身振りで構え、左右にまた大きくゆっくりと振る。
どうやら中くらいの黒たちに手を出すなと、合図しているらしかった。

「さぁ。命乞いをしてみろ」

659 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:12:28 ID:50sD3Ncn0
黒い武器は、剣のようでそれがそこそこの速さで俺を突こうとしてくる。
俺もまた剣を抜き、その暗闇からにゅうと出る刃を激しく叩き、弾いた。
黒の魔物は驚いた様子を見せ、やや狼狽しながらも強気を見せる。

「お前! 約束したではないか! 抵抗など、そんな意味の無いことなど……!」
「約束はした。だが、お前らが守らないものを俺が守る道理などない。
 ついでに言うが、殺されると決まっていたのはお前達で、俺ではないよ」

こいつら魔物は、自分の都合の良い事に関してだけは気安く「約束」などという言葉を使う。
今までに守ったことの無い単なる飾りと化したその言葉を、今度は人間の俺にやられたのだ。
怒りは分かるが、その意味など理解できようもなく、やはりこいつらは哀しい塊にすぎない。

「や、やくそくが──」

まっすぐ衝き立て、大きな黒の首をゴツリと刎ね、更に四方八方へ刃を振るい全てを小さな個々とする。
中くらいの黒たちが一斉に飛び立ちばらばらに、やがて重たい雲の中へと消えていく。

「さて。どうしたらいいものか」

その場で少しの間を考え、そのうち俺は元来た路を引き返し、山を谷を越え始める。
城を暴く方法が無いのもあるが、魔物を易々と粉砕していくことに、少しばかり疲れていた。
ライフコッドの跡地で身体を休め、気力をも充実させなければならない。
今の廃れきった状態ではすぐ、代わられてしまう。
なにもかもが弱すぎる、たった一つのそんな自分に。

660 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2008/05/12(月) 22:18:33 ID:50sD3Ncn0
今回はここまで。
次回更新がいつになるかわかりませんが、まだ続きます。

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 09:18:55 ID:H0OMOp7m0
>>660
乙です!
サイトの話も一気に読んじゃいました!
続きも期待してます!
気長に待ちますのでマイペースでやって下さい

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 23:56:14 ID:51jUCkFMO
>>370

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/22(木) 23:07:01 ID:AJ3WF+Rj0
埋め

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