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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

360 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/22(木) 06:31:06 ID:bpgE70UD0
ここから本物の勇者が住む村に舞台は移る。
村人の住人はシンシアに説得してもらい協力してもらった。
今度は村に魔物の群れが襲い掛かってくるような幻を作り出す。
村人たちが地下の倉庫に勇者をつれて来る。
シンシアが勇者の元に行きモシャスで勇者の姿に変身する。
ただゲームと違いここでそっとラリホーを使い勇者を眠らせるのだ。
そして眠った勇者を偽りの村の跡地に連れて行く。
偽りの村にも元の村と同じつくりの地下倉庫は作っておいた。

勇者が眠りから覚めたころ魔物が襲う音をつくり勇者に聞かせる。
そして魔物とピサロのやり取りを再現して聞かせるのだ。
これは重要なことだ。勇者がピサロの名前を知るのはこのときなのだから。
勇者はまさか自分が元の村から離れた別の場所にいるとは気づかないだろう。
この極限状態だ。勇者は自分が眠ってしまったことさえ気づかなかったかもしれない。

やがて勇者は地下から出て村の惨劇を知る。偽物の村とは知らずに。
生まれてから1度も出たことがない村を離れ1人で旅立つ勇者。
勇者は村から出たことがない。だから本当の村がある場所を知らない。
このあとはゲームと同じだ。勇者は世界を回り、仲間を集め、世界を守る。

シンシアは俺のことを許してくれた。
勇者をだますことになるこの作戦に協力してくれたのだ。
村人たちの中には勇者の旅立ちに反対する者もいた。
全て嘘だったと明かし、勇者を鍛え育てようというのだ。
しかし、シンシアが彼らを説得し勇者は冒険を始めた。
「私たちは死んだの。死んでいる人間にできることは見守ることだけよ」
シンシア、君はやっぱり素敵だよ。

361 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/22(木) 06:39:07 ID:bpgE70UD0
そして世界を平和にした勇者は自分の生まれ育った村に戻ってくる。
生まれ育った村だと信じている廃墟に。
ここで勇者の前にシンシアが現れる。エンディングのあのシーンのとおりに。
勇者は夢か幻だと思うかもしれない。でも、幻なのは襲われた村のほうだったのだ。

絶望的な未来を知ってしまったら、なんとしても回避しようとするだろう。
それができたのは俺だけだ。だけど俺はこの物語に干渉することはできない。
だからこの物語の中で俺がしたことは何もない。俺がプレイしたゲームと何も違いはない。
ゲームの出来事を変えないように俺は勇者と顔を合わせることすらしなかった。
俺は勝負に勝ったのだ。ゲーム上の表現に干渉せずシンシアを守るという大勝負に。

この嘘はピサロや勇者だけではなく画面の向こうの人間も騙したことだろう。
つまり、このドラクエ4をプレイする人間にも嘘をついたというわけだ。

ゲームのシンシアは身を挺し勇者を守って死んでしまうから美しいのかもしれない。
だけど俺はこうして出会ってしまった。そして惚れてしまったんだ。
たとえ年老いてしわくちゃになっても生き抜いて欲しいと思うのは当然じゃないか。

好きだと思う気持ちだけで人はここまでできるものなのだ。
人は好きなもののために全力を尽くす。とても凄いことじゃないか。
好きなことを素直に好きだと認めるのは勇気がいることだと思う。
人は自分が好きなものを他人に否定されることがいつの間にか怖くなるのだろう。
俺はドラクエが好きだ。姉ちゃんがドラクエから離れていっても関係ない。
姉ちゃんは自分の家族というもっと大切なものができただけなんだから。

小学生のとき俺は可愛い子を素直に可愛いと言える勇気があった。
でもだんだん臆病になって言ったんだと思う。
だから研究が好きだけどそれを素直に認めようとしなかったのかもしれない。

362 :冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w :2007/11/22(木) 06:41:33 ID:bpgE70UD0
勇者が冒険をする間、キツネとベロリンマンは移民の町に渡った。
俺はシンシアと一緒にすごすことができた。夢のようなひと時だった。
でも、それは束の間の夢。ゲームが終了したことで俺は元の世界に帰るのだ。

不思議な声が俺に語りかけて選択を迫る。この地に残るか元の世界に戻るか。
これはマスタードラゴンの声だろうか。俺は元の世界に戻ることを選んだ。
俺の選択を受け入れて、その声は俺に気をつけて帰れよと言う。
あんたも自分の城に帰る時はトロッコに気をつけろと言いたかったがやめた。
世の中知らないほうがいいこともあるものだ。

俺はここに残らないほうがいい。これは考え抜いた末の行動なんだ。
シンシアには勇者がいる。きっと彼がシンシアを幸せにしてくれるのだろう。
ネズミの嫁入りではないが、一番近くにいた人と結ばれるのが幸せなのだ。
この結末は俺にとってハッピーエンドだといえるのか分からない。
でも、これでいいのだ。
俺は勇者の気持ちになっていた。だから勇者が本当に守りたかったものを守ったまでだ。

俺は大切なものを守るため大きな嘘をついた。偽りの村を作り出すという大きな嘘を。
だけど、それだけじゃなく俺は自分の気持ちにも嘘をついていたのではないだろうか。
……もしかしたら俺は自分に嘘をつき無理やり自分を納得させていただけかもしれない。

この世界から俺の姿が消えていく。
せめて最後に一目だけ、シンシアの、君の姿を見せてくれ。
でも俺にはシンシアが見えない。
シンシアは勇者と抱き合って、俺には勇者の後姿しか見えない。
もじゃもじゃした髪の毛しか……

え。もじゃもじゃ?
ちょっと待て! ひょっとしてこの世界の勇者って女?!

―完―

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 08:48:51 ID:SOFYQ0x/0
完結おめ!

ちょwwwwwラストwwwwwwwwww

364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 10:01:46 ID:gjwwUmahO
乙!!
短編らしく綺麗にまとめられてて読みやすかった!

365 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 10:05:13 ID:9Aaxugk50
すごい話だと感動して読んでいたらラストにふいたwwww
これは予想外wwww

366 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 10:41:21 ID:0OeLdVDH0
女w勇w者wwwww

367 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 11:45:48 ID:VZNdZ1LP0
いい話ぢゃのう・・。
結局、村ひとつを救ったことになるのだし、世界も平和になったものね。
まあ、勇者のために身を引いたら女勇者だったというのはorzだけど、元の世界に戻って、これでよかったのかもしれないね。

368 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 12:49:29 ID:tn2+xU2J0
>>362

これは凄い
ゲーム内ネタで綺麗にまとまってるしオチも利いてる
DS版4の発売日に完結させたのもグッド
巧いね

369 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 16:48:51 ID:iwK910l10
>>362
ナイスファイト!
いい話だったが、俺の30秒前の感動を返せwww

370 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 19:51:38 ID:P5RRv+OkO
主人公GJ!
DS版の4は女勇者でやってみようかなw

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/22(木) 21:57:11 ID:P6XE4tfF0
最後のどんでん返しに吹いたがGJ!

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/23(金) 01:23:02 ID:t3eJ9yDfO
GJ! こんなシンシア復活説は初めて見た。
村人も皆生きてるわけだし、シナリオの隙間をうまく繋げててすごいな。

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/23(金) 03:03:13 ID:9iUBAyDg0
面白かったよ乙

>シナリオの隙間
まるで針の穴を通すようだったな。

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/23(金) 19:53:12 ID:OduXaUN10
おお、奇麗にまとめたなあ。おつかれ。
始まったときはもう少し壮大なストーリーになるかと思ってたのが残念だけど、
これはこれで驚かされた。

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/25(日) 19:51:04 ID:K9OdgXDEO


376 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:03:22 ID:q0tmYPQm0
1.宿の中の三人組

その宿屋の部屋には三人の人間がいた。
静かな部屋だった。部屋の中にあるのは窓の外から聞こえる町の雑踏の音だけだった。
その部屋に小さなうめき声がかすかにした。

「目が覚めたみたいだね。ええと、名前は何ていうの?」
緑色の頭巾をかぶった少年が尋ねた。
「私の名前ですか? そうですね、サクヤとでも呼んでください」
ベッドの上でサクヤが答える。
「ではサクヤ。君は自分に何が起きたのか分かるかい?」
今度は赤いバンダナで頭を覆った少年が聞いた。
サクヤは目をつぶり首を横に振った。
「じゃあ、君はどこに住んでいて何をしているの?」
頭巾の少年が優しく問いかける。しかしサクヤは申し訳なさそうにこう言った。
「わかりません。覚えていないのです」

緑色の頭巾をかぶった少年の名はセブン。
赤いバンダナで頭を覆った少年の名はエイト。
どちらも優しそうな目つきをしていた。

377 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:04:55 ID:q0tmYPQm0
「記憶を失っている割にはあまり焦っているようには見えないな」
エイトが冗談でも言う様な口調で話しかける。
「そうですね。弱みは見せるものではなく付け込むものですから」
サクヤも同じような口調で答える。
「なんてね。正直分からないことだらけで慌てる余裕すらないのですよ」

サクヤはどうして自分がこんなところにいるかも理解していなかった。
ただ自分はこの世界にとっていわば招かざる客であると感じていた。
そのため、安直であるとは思ったが記憶喪失を装うことにしたのだった。

「それで、なぜ私はこんなところにいるのでしょうか」
「君はこの付近の海岸で倒れていたのさ」
「だから僕たちでここに、グランエスタードの宿屋に運び込んだんだよ」
サクヤの問いかけにエイトとセブンが答える。

「君は三日間も眠っていたのさ」
この二人は見ず知らずの自分を三日間ずっと看病していてくれたのだろうか。
エイトの言葉を聞きサクヤはそんなことを思った。そして素直に礼を言うことにした。
「そうでしたか。助けていただきありがとうございました」
「サクヤはどうしてそんなとことにいたのか思い出せない?」
サクヤは再び静かに首を横に振った。

378 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:06:27 ID:q0tmYPQm0
部屋の中には音はなく、ただガヤガヤと外の音が漏れ入ってくる。

「何か身元が分かるものがあればよかったのだがな」
エイトはサクヤの持ち物を調べていた。
しかし、持ち物といえば石でできた板のようなものだけだった。
「もしかしてこれって石版のかけらじゃないかな」
セブンがその石に興味を持った。彼の世界では石版は重要な意味を持っていた。
「でも、ボクの知っているものとは少し違うみたいだね」

「よろしければあなたの知っている石版について教えていただけませんか?」
サクヤの頼みにセブンが答える。
セブンの世界では石版は世界の一部を封印するほどの力を持ったものであること。
ばらばらになった石版をひとつにあわせることで封印された世界にいけること。
その世界が封印された原因を取り除くことで封印が解かれること。
「世界を封印か。すごいアイテムがあったものだ」
エイトがため息をつく。
「世界を封印した奴は僕が倒したんだけどね」
セブンの言葉にエイトが応じる。
「それほどの魔物を倒すとは見かけによらず腕に覚えがあるんだな」
「エイトだって多くのモンスターを倒してきたんでしょ?」
セブンとエイトのやり取りを聞いてサクヤは頭を抑えた。

379 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:08:00 ID:q0tmYPQm0
「大丈夫? 頭が痛いの?」
「いえ、この異世界での身の振り方を考えていたところです」
心配するセブンに対し伏目がちにサクヤは答えた。
「身の振り方?」
「ええ、もしかしたら自分は物凄いところにいるのではないかと思いまして」
サクヤの顔色が悪くなる。
「サクヤのいた世界では魔物というのは馴染みのないことなのか」
エイトが驚いたように言った。
「僕の住んでいるところだって元々はモンスターはいなかったんだよ」
セブンの慰めの言葉はサクヤにとって何の意味もなかった。

「でも最近またモンスターが出るようになったよね」
「ああ。もしかすると新たな魔王が現れたのかもな」
セブンにエイトが答える。
「この石版もその魔王が何かを封印したものかもしれないね」

「封印されているのはサクヤ自身かもしれないわよ!」
突然部屋の隅においてある樽の陰から少女が飛び出した。
サクヤとエイトは突然の出来事に戸惑った。
「何をしてるのマリベル……」
セブンは1人困ったようにつぶやいていた。

静かだった部屋は瞬く間ににぎやかになった。

380 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:09:31 ID:q0tmYPQm0
セブンはマリベルを幼馴染だと紹介した。
マリベルはセブンがこの三日宿屋に来ているのを知り忍び込んでいた。
「つまり、マリベルはセブンのことが気になって調べようとしたのだな」
「違うわよ! 私はセブンが私に内緒で面白いことをしていると思っただけ!」
「気になるってのはそういう意味で言ったつもりだ」
にやりと笑ってそう指摘するエイトの台詞にマリベルはより慌てふためいた。

「面白いことを言っていましたね。私が封印されているとか」
エイトとマリベルのやり取りをさえぎってサクヤが話を戻す。
「そう! 私の推理では封印されているのは異世界の人間であるあなたなのよ!」
「ねえ、マリベル異世界ってどういうことなの」
「マリベル様の耳は誤魔化せないわ! サクヤは確かに異世界と言ったのよ!」
「…確かに言っていますね」
サクヤは異世界での身の振り方を考えると言っていた。
「あんたは無意識にここが異世界だと思った。つまりあんたは異世界の人間だったのよ!」

381 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:11:03 ID:q0tmYPQm0
「サクヤが異世界の人間だとして、どうして封印されているこのになるんだ?」
エイトの疑問にマリベルが答える。
「島が封印されていたとき、その島ごとこの世界から消え去ったわ!」
「そうだったね」
「逆に異世界のものが封印されればこの世界に来てもおかしくないじゃない!」
「それは無理があるんじゃ――」
セブンの言葉をさえぎってサクヤが疑問を口にする。
「封印されているとすればどうすれば封印は解かれるのでしょうか?」
「どこかに石版を納める台座があるはずよ。私たちの知っている石版と同じならね」

「でもまだサクヤが封印されているって決まったわけじゃないよ」
「私はこの話に非常に興味があります。ほかに手がかりもありませんし」
セブンの心配をよそにサクヤがマリベルの考えに関心を持った。
「ひとつこれからのことを占ってみると言うのはどうだい?」
それまで黙って話を聞いていたエイトが提案する。
「闇雲に行動するよりはこれからすべきことが見えてくるかもしれないぞ」

窓の外にはきれいな青空が広がっていた。

382 : ◆YB893TRAPM :2007/11/25(日) 20:12:12 ID:q0tmYPQm0
本日はここまでです。

383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/26(月) 02:23:38 ID:0HzmuWDZ0
合作キテター
さらに主人公追加?
いつもの「→冒険をする」がないのは意味ありげな

384 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:04:10 ID:MvAkJ9vU0
第十一話前半投下します。

LOAD DATA 第十話後半 >>333-337

385 :紫焔一閃【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:07:37 ID:MvAkJ9vU0
太陽は高い位置から俺達を見下ろしている。
清々しい日差しがステンドグラスから差し込み、十字架を七色に照らす。
麗かな昼下がり…なのに、俺達の心はどんよりと淀んでいる。

サトチーの腕の中で一通り暴れ、突然電池が切れたように気を失ったブラウン。
ぐったりと動かなくなったブラウンは、シスター達によって治療を受けている。

「ブラウンちゃんは大丈夫。眠っているだけみたいですよ。」
寝室から出てきたマリアの言葉を聞いたサトチーの表情に安堵の色が浮かぶ。
恐らく、俺も同じ表情をしているだろう。

だが、マリアはその青い視線を床に向ける。
「ただ、目が覚めた時に正気に戻っているかどうかは…」
「…その心配はない…だろう…」

気落ちしたようなマリアの言葉を遮るのはスミス。
ブラウンが気になったのか、無理をして日光の中に歩み出たのだろう。
その濁った瞳を眩しそうにこすっている。

「…あの時…ブラウンはプロトキラーの一撃で気を失っていたな…
 …幼いモンスターにはよくある事だが…意識がない状態で強い魔性に触れた時…
 一時的にその意識が魔に支配される事がある…ブラウンの異変はそれだろう…
 意識が戻れば…魔性の呪縛からも開放されている…筈だ…」

…なるほどねぇ…って、俺にはさっぱり理解できない…

「ちょっと待って。あの場にいたのは僕達三人と、あの機械と兵士だけだよ。
 どこに強い魔性の発生源があったって言うんだい?」
サトチーの横槍に、スミスがちらりと俺の方を見る…え?俺?

「知らぬ…」

386 :紫焔一閃【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:11:28 ID:MvAkJ9vU0
「……ていっ!」 びしっ!
「……なんのつもりだ?」

ヘンリーのチョップがスミスの頭部に打ち込まれる。
痛みを感じないスミスには全然効いてねえみたいだけど…

「なんのつもり?それはこっちのセリフだろうがよ。スミスの旦那ぁ。
 大層な講釈を並べておいて知らねえはなしだろうが。」
「…ふむ…ならば表現を変えよう…確信はしているが…肝心の確証がない…
 半端な考察を論じた所で…混乱を招くだけだろう…」

チンピラのように絡むヘンリーを冷静に受け流す。
スミスの言う事はもっともだが、どうにも釈然としない。

「…教会の空気は私には合わぬ…サトチー卿…私は馬車で待たせてもらう…」

うやうやしくサトチーに礼をし、修道院から出て行こうとするスミス。
開け放たれた修道院の門から差し込む太陽の光に、眩しそうに手をかざす。
貴族のような振る舞い…従者のような気配り…学者のような知性…
生前のスミスはどんな人間だったんだろう。

「…そうだ!スミス!」

俺の呼びかけに振り向いたスミスに駆け寄り、カバンから出した物を手渡す。

「サングラス…っていうんだけどさ、これを使えば眩しくないだろ?」
「…異世界の色眼鏡か…なかなか良いものだ…ありがとう…」

サングラスを装着したスミスに礼を言われ、思わず後ずさりする。

血色の悪い顔色…バサバサの髪の毛…ボロボロの衣服…そしてサングラス…
似合ってる…似合ってるんだけど…似合い過ぎてなんかヤダ。

387 :紫焔一閃【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:15:28 ID:MvAkJ9vU0
        ◇           ◇
「しっかし、あれは説得って言うのかねえ。」
小さな鍵をチャラチャラと振り回しながらヘンリーに問い掛ける。

修道院を襲撃した兵士は、ヘンリーの説得で小さな鍵を俺達に手渡した。
『私は先代のラインハット国王に忠誠を誓った身。
 先代の王亡き今、私の主君はデール様ではなくラインハット王国そのもの。
 裏切りではなく、私は王国の未来の為にヘンリー様にこれを託します。
 …あ…だから…カエルはもう…ひいぃぃ…』

どう見ても拷問です。本当に(ry

「トムの奴もずっと苦しんでたんだろうな…」
真正面を見据えながら、ヘンリーが短く答える。

あの兵士もラインハットの異変には気付いていたに違いない。
異変に気付きながら、一介の兵士の身では何も出来ず…
愛国心と忠誠心の間で苦しんでいた。
―王国の未来の為― あれが彼の本音なのだろう。

「終わらそう。あいつの苦しみも…ラインハット王国の悲しみも全部。」
普段とは違う、静かなヘンリーの言葉で一気に気合が入る。

「俺も微力ながらお手伝いさせてもらいますぜ。お・や・ぶ・ん。」
「頼りにしてるぞ。なんてったって、ヘンリー様自慢の子分だもんな。」

緊張して然るべき状況を笑い合いながら歩く二人。
気が緩んでるわけではない。むしろ、千切れ飛びそうに張り詰めている。
それを隠すかのように、互いに笑ってみせる。

ウシッ!行くぞ。今度はこっちから仕掛ける番だ。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 02:16:09 ID:PuBO+dTSO
初リアル遭遇紫煙

389 :紫焔一閃【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:19:04 ID:MvAkJ9vU0
「なあ…念のためもう一度聞くけど…本当に飛び込んで平気なんだな?」
「平気だって。イサミは肝っ玉の小せえ奴だなあ。」

正直ビビってます。何にって…目の前で煌々と輝きながら渦を巻く水色の光。
これがトムから教えられた第二の抜け道。
修道院の南に広がる森からラインハット城の一室に繋がる旅の扉。
例えるなら転送装置みたいなものか…俺の世界には存在しないけど…

「…他に抜け道はないんだな?…マジでコレしかないんだな?」

自分でもヘタレだと思うが、デカイ洗濯機のような光景はマジで怖い。
そのデカイ洗濯機に飛び込もうと言うのだから、嫌でも慎重になる。

何度も念を押す俺に痺れを切らしたのか、ヘンリーが後ろから背中を押す。
「ほれ、チャッチャと行った行った。」
「…ちょ…ば…押すな!まだ心の準備がああぁぁぁ…」

濃淡のある水色が縞模様となって景色を覆い、次第に視界が水色の帯に侵食される。
どっちが上でどっちが下だかもわからない奇妙な浮遊感。
息は出来るので溺れる心配はないみたいだ…が……気持ち悪りぃ…

グニャグニャと捻じ曲がる視界にじっと耐えていると、靴の裏に固い質感を感じた。
水色の帯が霧散し、数秒前とは違った景色が視界に入る。

「な?大丈夫だっただろ?」
「…あぁ…大丈夫だ…けど…二度と使いたくねえ…」
「気分が落ち着いたら行くぞ。そろそろ予定の時間だ。」

本が散らばっている部屋…城の書庫だろうか?その部屋の扉をそぉっと開ける…
その動作は扉の向こうから聞こえる声によって止められた。

「やはりトムは裏切りましたか…まあ、予想通りですがね…」

390 :紫焔一閃【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:20:54 ID:MvAkJ9vU0
「はぁ…この国は凄腕の軍師でも雇ってるのかよ?」

ヘンリーが観念したように扉を開ける。
扉の向こう側。中庭にずらりと並ぶラインハット兵。その後方に控える金髪の王。
いい加減、気が滅入る。こっちの手はお見通しってわけですかい。

「そんなに誉められる事でもないでしょう?僕は万が一を見逃せないだけです。」

壁のように立ち塞がる兵士達が俺達に槍を向ける。
冷たい笑みをうかべ、悦に入ったような表情で続けられる王の演説。

「万が一、プロトキラーが敗れたら…次はそちらが反撃に出てくるでしょう。
 聡明な兄なら、同じ失敗は避ける筈。前回と同じ道を使うとは考えられない。
 ならば、どこから浸入してくるか…不毛な読み合いは時間と労力の無駄です。
 経路を一つ残しておけば、相手は勝手にそこから侵入してくるのですからね。」
「君は敢えてトムさんに鍵を渡しておいた…って事かい?」
「兄を可愛がっていたトムの事です。彼が本気で兄に剣を向けるとは期待しません。
 あなた達は僕の期待通りにプロトキラーを撃退し、僕の期待通りに策を巡らせ、
 期待通りの方法で侵入してくれた。感謝しますよ。期待通りの働きをありがとう。」

「そりゃどうも。俺としても、お前が頭の切れる奴で良かったよ。」
ニヤリと笑うヘンリーに、怪訝そうな顔を向けるデール。

本当、期待通り…だとしたら悪い事したなあ。

死角で起こった異変…知っていた者はいても、気付く者はいなかった。
王の背後…中庭の一角の地面が跳ね上がり、地面の下から二つの影が飛び出した。

「鏡よ!力を示せ!!」

作戦成功。見事に釣り針に食いついた。
鏡を持った本隊はサトチー・ブラウンの二人だ。

391 :紫焔一閃【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:26:21 ID:MvAkJ9vU0
兵達は突然の事態に反応できない。自分の世界に入っていた王は尚更だ。
中庭に構える隊列の背後を取ったサトチーが、ラーの鏡をデールに向ける。

太陽がもう一つ現れたかのような眩い光の奔流。
鏡から発せられた光の帯がデールを飲み込む。

旅の扉から侵入する俺達とは別に、地下から浸入していたサトチーとブラウン。
聡明で狡猾なデールの事、俺達が前回と同じ道を使うとは考えないだろう。
恐らく、兵を率いて扉の出口で待ち構えている筈だというヘンリーの読み。
なら、俺達が囮となってデール達の視線を集中させ、油断した隙を狙う作戦。

兄より優れた弟など存在しねえ!!…ちょっと違うか。

「う…ああああぁぁぁぁぁぁぁぁアアアァァァァ!!!」

王を包み込んでいた光が収縮し、次第に細くなる。
細く、それでもなお一点に集中する光の帯がデールの胸を突き刺す。

完全にもらった。不毛な読み合いは俺達の勝ちだな。

とさり…と、静かに王が倒れると同時に光は消えた。

「デール!!」
「大丈夫…呼吸はしっかりしているし外傷もない。命に別状はないよ。」

倒れたデールに駆け寄り、その身を助け起こすヘンリーと回復を施すサトチー。
兵士達は事態が飲み込めないのか、放心状態で動けない。
俺とブラウンは周囲を取り囲む兵士の動きに集中する。
烏合の衆と化した兵達をかき分け、無言のまま俺達の輪に入る女。
サトチーの手によって地下牢から助け出された大后。

母親だもんな。息子が心配にもなるだろうさ。

392 :紫焔一閃【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:27:44 ID:MvAkJ9vU0
「…デール…」

顔に付着した埃を払うでもなく、薄汚いドレスのままゆっくりと近付く大后。
感動の対面ってヤツか…大后の手に握られたナイフの輝きが目にしみるねえ。

…ん?

…何でナイフ??

「デエェルウゥ!!」
大后が夜叉の形相でデールにナイフを振りかざす。
兵士達だけではなく、突然の事態に反応できないのは俺達も同じ。

…ただ一人を除いて。

何十年も前の無声映画のように流れる光景。
鈍い輝きを放つナイフが、デールの体に吸い込まれるように突き出される。
刹那、緑色の髪が鈍い輝きの前に立ち塞がり、狂乱する鬼女を突き飛ばす。
もんどりうって倒れる鬼女をに飛びかかり、組み伏せる緑色の髪の男。
鬼女を押さえつける腕から滲み出す真紅が緑色の髪に映える。

我に返る。
何が起こったのか理解できない俺の耳に狂騒が飛び込む。

「放せ!このガキだけは…」
「何を考えてるんだ!あんたはデールの母親だろ!!」
「黙れ!黙れ黙れ黙れぇ!このガキゃあ散々俺さまに歯向かいやがって。
 挙句の果てには俺様を牢になんぞぶち込みやがった。絶対に許せねえ!!
 こいつのお陰でラインハットを乗っ取る計画は全部ぶち壊しだ!!」

は?…何を言ってるんだ?ラインハットを乗っ取る?

393 :紫焔一閃【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:30:38 ID:MvAkJ9vU0
「…見るに耐えませんね…」

澄んだ声…濁った声…どちらとも形容できる声。
いつからそこにいたのか、紫のドレスを身に纏った女がデールの傍らに佇む。
一般的な尺度でいえば綺麗の部類に属するであろう造形は作り物の様に冷たい。
その女は俺達に向き直り、目だけで笑う。それは心が焼かれるような残酷な目。

「少しだけお待ち頂けますか?今すぐにゴミを処分しますので。」

サトチーがビクリと大袈裟とも思える反応を示す。
俺もヘンリーも言葉が出て来ない…蛇に睨まれた蛙の心境ってやつか…

「俺様をゴミだと?このアマ…消し炭になって非礼を償えやぁ!」

大后の顔が、体型が、姿が変形し、その裂けた口から紅蓮の業火が迸る。
女は避けようとも防ごうともせず、そのまま燃え盛る炎に飲み込まれ…
炎が花火のように八方に散った。そこには先程の妖艶な女の姿はない。
四散した炎の中央から表れたのは…紫色の闇…

「ほっほっほ…道理はわきまえているようですね。正解ですよ。」

闇色の魔女がかざした手の先に現れたのは、紅い闇色の太陽。

「お前の言う通り、ゴミは焼却処分するのが正解ですからね。」
「な…何で大将がここに…話が違うじゃねえk…」

魔女が放つ紅い闇色の太陽は、悲鳴をあげる執行猶予すらも与えない。
肉の焼ける匂いと蒸発音だけを発し、大后であったモノは消し炭すら残さず消えた。

「ゲマァッ!!」

吼えるサトチーの瞳に、魔女が放った物と同じ色の炎が浮かぶ…そう見えた。

394 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/27(火) 02:32:58 ID:MvAkJ9vU0
真打登場した所で、今日の投下はここまでです。
偽大后とのバトル?…ほっほっほ、知りませんよ。

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 02:37:46 ID:MtPhmK3O0
まさかのゲマ登場に身震いした

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 08:32:04 ID:r+YCHqKE0
なんか凄い展開になってる件。とりあえず乙。
真面目にwktkが止まらない。先が楽しみすぎる。

397 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 10:06:55 ID:gFAChP0f0
お前等なんかせいぜいただの村人でよくてドラキーまでしか倒せないだろうからあんま考えなくていいよ

398 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 10:16:11 ID:dcvAL4Cm0
まさかゲマが出てくるとは思わなかった
まだ鳥肌がおさまらん乙!

399 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/27(火) 11:31:24 ID:loMnsTzR0
むむむ?
ラーの鏡で、姿が戻らなかったということは、やはり悪行をつくしていたのはデール本人なのだろうか。
しかも、ゲマまで出てきてびっくり。

400 :ドラクエ3 ロマリア編5 ◆Tz30R5o5VI :2007/11/28(水) 14:06:48 ID:8sctG+82O
ロマリアの国王「わっはっは。よく来てくれたな、勇者の息子ゆきひろよ! 立ち話もなんだからどこかくつろげる所に行こうではないか。ん? うわっはははは! しかしオルテガの息子は聡明な顔立ちをしておる! わしの若いころにそっくりじゃい!!」
なるほど・・・これは確かに色々な意味でめんどくさい事になりそうではあるような・・・。
まあ拒否権などないのだから、さっさと、話を聞いてしまうしかないだろう・・・。
女武闘家エリー「で、用件はなんなのよ?」
案の定、エリーが国王に先に聞いてしまった。
女僧侶ナナ「エリー・・・」
ロマリアの国王「カンダタという小悪党がおってな・・・。我が国の国宝『金の王冠』が盗まれてしまったのじゃ! なんとかしてくれんかのう。取り戻してくれたら、なにかそのぶんの礼をさせてもらうぞ・・・うむ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「手がかりはありますか」
ロマリアの国王「まあ、あれじゃ。北のカザー・・・・・・??の村でカンダタを見た、・・・という情報くらいしかないんじゃ・・・すまんの」
男戦士サイモン「礼ってのは、期待していいのかい? 慈善事業とはいえ、もらえるものはもらっときたくてなあ、王サマ?」
女僧侶ナナ「サイモン! あなたは・・・」
ロマリアの国王「モチのロンじゃ、我が国の姫でも、わしの地位でも、金でも何でもやろう!! ・・・という勢いはあるほどじゃ(小声)」
とにかく北に行くか。

401 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/28(水) 14:31:59 ID:iLEB4Isx0
支援だよもん。
ていうか投下中なのかな?今回の投下終了なのかな。

ロマリアの王様、お調子者だのう。

402 :紫焔一閃【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:29:24 ID:c1qvqYwC0
怒り…悲しみ…嘆き…恨み…一言では到底表現しきれない感情の色。
この世界に存在する全ての負の感情が入り混じった様な色。

怖い…

サトチーを初めて怖いと思った。

「ゲマ!お前だけはっ…!!」

感情をあらわに飛び掛るサトチーの一撃に対し、魔女は一息をついただけ。
そう、小さく息を吐くだけの動作にしか見えなかった。

ふうっ と、青白い吐息を一瞬吹きかけただけで、辺りの温度が急激に低下する。
チェーンクロスはガラスのように砕け散り、一瞬固まったサトチーが崩れ落ちる。

「ほっほっほ…10年振りの再会だというのに穏やかではありませんね。
意識だけは残しておきますから、少し頭を冷やしなさい。」

零下の余波は周囲一体を飲み込み、冷たく輝く風の牙となって中庭を吹き抜ける。
まぶたが、鼻が凍りつく。一瞬で意識から引っこ抜かれそうな寒風。
ブラウンと俺は身を寄せ合って寒さを凌ぐ事しか出来ない。

ヘンリーは倒れたデールに覆い被さり、冷気の直撃から弟を守っている。
その向こう側では、体を半分凍りつかせた兵士達が次々に倒れる。

シャレにならねえ…マジで殺られる…

痛いまでに全身を突き刺していた冷気が止み、再び顔を出す太陽。

格の違い…無防備な目の前の魔女が放つ強烈な重圧に足が震え出す。
居るだけ、そこに存在するだけで周囲を圧倒する絶対的な威圧感。
横に立つヘンリーとブラウンも同じく、その両膝がガクガクと震えている。

403 :紫焔一閃【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:31:06 ID:c1qvqYwC0
「お…お前がラインハットを狂わせてた元凶だってのかよ…俺達に何の恨みが…」

寒さのせいではなく、心の底から震える声で魔女に問い掛けるヘンリー。
対して、ゲマは俺達を見下したような高笑いを発しながら語る。

「ほっほっほ…勘違いなさらないで下さい。私はただの観客ですよ。
 私は王の傍で成り行きを見ていただけ、私自身は何も手を下していませんよ。
 先程のゴミも演技力だけはあったようですが、何も出来なかったようですしね。」
「だったら…デールは…そうだ!本物の大后はどうしたって言うんだよ!」
「言ったでしょう?私は居ただけですよ。大事な兄を失った子供の傍にね。
 ほぉっほっほっほ…やはり観劇は特等席で見なければ臨場感を味わえませんね。
 消えた兄を思う弟の気持ち、遠い地で弟を思う兄の気持ち、堪能させて頂きました。
 せめてものお礼です。受け取りなさい。」

魔女が指をかざす先、何もない空間から人の姿が現れる。
刺々しい鎖で空中に縛り付けられているのは、豪華な衣装を身に纏った初老の女。

「おやおや…大后を魔界に幽閉したのは失敗でしたか?呪縛が解けませんね。」
「て…てめえ…ふざけてねえでさっさと…」

ようやく搾り出した俺の声は魔女の一睨みで止められる。
情けねえ…

「それは、天空の剣…ですか?」

俺を睨みつける表情を緩め、笑みを浮かべる魔女。
魔女が指差すのは俺の背に納められた剣。

「天空の剣の剣閃は一切の魔を祓うと伝わりますが…果たしてどうですかね?
 その剣の力をもってすれば、大后を縛り付ける呪縛を解く事も可能でしょうが、
 ほっほっほ…貴方にその剣の力が引き出せますかね?」

404 :紫焔一閃【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:32:11 ID:c1qvqYwC0
俺の背に背負われた剣。
一切の魔を祓う天空の剣
嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
この世界と魔界との境界を切り開く伝説の剣。

でも…今、この剣を振るう俺は…

するり と、鞘から剣を引き出し構える。
…が、この後どうすれば良い?

「イサミさん!母上を助けて!」
目を覚ましたデールの懇願が俺の目を覚ます。

「イサミ…お前は俺の子分だ…俺が見込んだお前なら出来る。」
肩を叩くヘンリーの言葉が俺の背を押す。

―!!!―
ブラウンの声援が俺の両腕を持ち上げる。

「…イサミ…君なら…大丈夫だ…」
凍てついた体のまま発せられたサトチーの激励が俺の中に火を点ける。

俺は天空の勇者なんかじゃない…普通の大学生で…今はただの住所不定無職異邦人。
でも、今の状況を何とかしたいと思うのは…親友の声に応えたいと思うのは…
親友を守りたいと思うのは…勇者なんかじゃない俺でも一緒だ。

やってやる!

―オオオォォォ!!―

咆哮と共に振り上げた俺の両腕に力が発現するを感じた。
力が腕から手を伝い、剣に流れ込むのを感じた。

405 :紫焔一閃【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:33:59 ID:c1qvqYwC0
「…ッリャアアアァァァァァ!!!」

真白い光景だけが目の前を支配する…何も見えない…けど、
一心で振り下ろされた剣の先から、全ての力が流れ出すのを感じた。
俺の中の色んな物が流れ出すのを感じた。

立っていられない疲労感…思わず膝をつく。
脱力感…俺の手から力が抜け、剣が音をたてて地に落ちる。
同時に、霧が晴れるように視界が元の色を取り戻す。

支えを失ったかのように落下する大后を、デールがギリギリで受け止めた。

ウシッ!…とか、やってらんねえ…マジしんどい。
いやいや、まだへばってられねえ。あの紫の鬼ババアを…

「ほっほっほ…見事に魔界の呪縛を解きましたか。しかと見届けましたよ。」

高笑いを浮かべる魔女に剣を向ける…ハッタリだけどな。
戦う力なんか少しも残ってやいねえ。

「無理はなさらない方が良いでしょう。ここで貴方達を殺す気はありません。
 残念ながら、そこまでの自由は許されていないようですからね。」
「待て!お前だけは絶対に…」

紫色の霧に包まれる魔女にサトチーが追いすがる。
その足はふらふらとしておぼつかず、再び地面に倒れ伏す。

「ほっほっほ…それではごきげんよう。サトチーと…ホコロビ…
 いずれまたお会いしましょう。それまでその命を大事になさい。」

紫色の霧の中、高笑いを残して魔女は消えた。

406 :紫焔一閃【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:35:08 ID:c1qvqYwC0
「ゲマ!…次こそは…必ず…」
サトチーが虚空に向かって吼える。

…あの鬼ババア、何がしたかったんだ?
全然、聞き足りないのに言いたい事だけ言って帰りやがった。

いや…ここでバトらなかったのは助かったけどさ…
次こそは、か…会いたくないな、出来る事なら二度と…

「後味悪りいけど、デールのやつも正気に戻ったみたいだし…これで一段落か。」

力が抜けたように座り込むヘンリー。
デールは子供の様な表情で大后に泣きすがっている。

「まあ…一件落着なのかな?」
「本当にありがとうな。これできっとラインハットも立ち直る。
 サトチーと、イサミと…この剣のお陰だな。」

地に落ちた剣を拾い上げ、俺に手渡すヘンリー。
その手から剣を受け取り、背中の鞘に戻す。

少しずつ傾きつつある太陽の光を受け、竜のレリーフがきらりと光った。



イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:4/77
MP:0/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――

407 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/11/28(水) 17:38:34 ID:c1qvqYwC0
第十一話投下完了です。
長かったラインハット編も次で終了です。

…そう言えば、まだラインハットだったんだ…

408 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/28(水) 18:10:17 ID:V+J9AxuG0
投下乙でございました。
みんなの応援で天空の剣の力の発現、かっこよかったです。

ほ、ホコロビ。
うーん、気になる。小さなホコロビでもそこから大きな穴があくことがありますからね。

409 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/28(水) 19:56:10 ID:8FEhk7J50
乙。ひと段落は着いたのかね。イサミくん頑張ってていい感じ。
まだ青年編の序盤、小説版なら二巻の初めってところだね。
先は長いけど楽しみにしてます。

410 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/28(水) 20:30:37 ID:D5ifU8230
Vは、ヘンリーと一緒の時までが面白かった・・・・

411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/28(水) 20:59:02 ID:g28dQQ7E0
>>407
ちょ…仕事しろよ!サボるとムチで打たれるぞw
だが投下乙!
ゲマが天空の剣の力を引き出させる為に嗾けたような言い方も気になる
何を企んでるんだろう

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/29(木) 01:21:29 ID:1r1bMF1oO
投下乙。
最後の最後にそう持ってきたか
GEMAさんニヤニヤしてるだろうな

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/29(木) 10:22:45 ID:L5SSIzGS0
乙です。
イサミの頑張りいいな

ずっとゲマをホホホな男だと思っていた自分は、
魔女の表記に違和感を感じた
・・・んだが、この話だと不思議としっくり来るな

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/11/29(木) 12:33:55 ID:11wLY2i+O
呪文・特技欄の―――が気になる

415 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 01:52:42 ID:jXMvelc8O
保守

416 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:35:06 ID:Pb366fGcO
目が覚めた。天井になんか違和感がある。周りを見渡したらどうも俺んちではない。
俺はちゃんとうちに帰ったよな?昨日は大学が終わってバイトをしてからいつものようにバイクに股がりうちへ直行したはずなんだが。
ここはベッドとカンテラとタンスぐらいしかない部屋。さながらホテルのようだ。ここ、何処だ?そして何で俺はこんなところにいる?
俺は悩んでいても仕様がないのでこの部屋から出ることにした。
あ、人がいる。何処にもいそうなおばちゃんだ。あのー、すみません…と俺は話しかけようとしたその時。
「キャー!魔物よ!」
おばちゃんが血相を変えて逃げていった。えっ?ちょっ、何?魔物ってなんだ?
「出ていきなさいよ!」
血相を変えたおばちゃんは箒を持って戻ってきた。俺に向け、俺を攻撃しようと何度も叩こうとする。
何をするんだ!俺はゴキブリじゃないぞ?俺はほうほうのていでおばちゃんから難を逃れた。
俺はあれから逃げ出し近くの湖へと辿り着いた。はぁ疲れた。喉渇いたな。
湖の水は澄んでいるし飲むかと手を差しのべようとしたら手がない。いや手が出なかったんだ。そして水鏡に写った俺の姿は紛れもない、ドラクエのスライムだった。


417 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:35:57 ID:Pb366fGcO
湖をそろそろとゆっくりと早く覗いて見ても俺の姿はどうみてもスライムです。本当に略。
何でどうしてこうして俺はスライムなんだぷるぷる!
うわー動きまでスライムっぽい。俺涙目。
…人の声がする。数人の大人と、子供の声。俺は身体を弾ませ近くの草の中に身を隠した。
姿を隠したはずだが、ちょっ、俺の目の前にスライムが現れた!
「ピキー?」
スライムが俺に話しかけてくる。あんたなんでこんなところにいるの?って言っているようだ。スライム語まで理解してしまう。切ない。
「ピキー」
逃げてきたんだ、と伝える。本当だ。
「駄目じゃないかスラリン。先に行っちゃあ。おや、そのスライムは?」
スラリンと呼ばれたスライムは紫ターバンを巻いた青年に俺の事情を話す。
「逃げてきたんだ。ここらへんはスライムはいない。モンスターが強いからスライムは生息出来ないからね。…どうやら野生ではないようだね。どこからきたんだろう?」
ここらへんは強いモンスターが出るのか…。ターバンの話を聞いて逡巡する。もし出会ったら瞬殺されるな。
なんせ今の俺の姿はドラクエ世界で最弱モンスターと銘打つスライムだもんな。
「ピキー、ぷるぷる」スラリンは身体を震わせターバ

418 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:43:33 ID:Pb366fGcO
「ピキー、ぷるぷる」スラリンは身体を震わせターバンに請う。
「一緒に連れてってもいいか、か。どうだいビアンカ?テンとソラは?」
俺は仲間にして欲しそうに見つめている。
「いいんじゃないかしら」
とビアンカと言われた金髪の三つ編みの女性が言う。
テンとソラと言われた子供たちからも了承を得た。
良かった、俺は救われた。殺そうとする人間もあれば救う人間もいるもんだな。ターバンが俺の名前を聞いている。俺の名前はアキラだよ。
「アキラはレベル1なんだね。まだ戦闘要員にならないから馬車へ行こう」
テンと呼ばれた男の子が俺を馬車へと誘う。「君の仲間がいっぱいいるから仲良くしてね!」
女の子のソラが言う。
誘導された俺が見たものはグッドスメルのくさった死体と八本の腕が馬車内を狭くしているアームライオンと俺を鋭い目で狙うキラーパンサーだった。
アキラですが馬車内が最悪です。
そんななか、嬉しそうに寄り添って頬ずり?してきたスライム、スラリン。何とメスなんだそうだ。スラリンは何かと俺に教えてくれる。
この人間たちは家族であり、あの子供は双子とか、ターバンは魔物使いで魔物と仲良くなれることが出来ること、これから暫くレベルを上げて

419 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:44:43 ID:Pb366fGcO
皆との旅は楽しかった。
子供たちやターバン夫婦は俺を愛してくれるし、アームライオンやキラーパンサーも見た目は怖いが所詮は猫科動物。なつけばゴロゴロと喉を鳴らす。
スラリンは当初から俺に好意を示してきた。一目惚れだったと彼女は言っていた。俺のどこがいいかは分からないが惚れられて悪い気はしなかった、スライムだが。
だから連れて行きたいと言っていたのかな?
人間の目にはスライムの顔なんてどれも一緒に見えるが、スライムの視点からみるととても表情豊かだ。
俺は幼い頃両親を早く亡くして母方の祖父母に預けられ、育てられた。とても良くしてくれ、今通っている大学だってお金を出してくれ、応援してくれている。
だが、どんなに良くてもやはり母や父から愛情を受けたいとずっと渇望していたんだ。
祖父母と俺。ターバン夫婦と子供たちと俺。俺が付け加えられ出来た家族。これだけでもとても幸せだ。
俺は今度は家族を創りたいんだ。子を成し、親になり、愛情を子供に注ぐんだ。自分が両親から受けられなかった愛情をさ。
スラリンならいいお母さんスライムになれる。スラリンも俺のことを深く愛してくれている。…俺も…。


420 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:46:10 ID:nAUHIHyv0
緊急支援

421 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 14:48:54 ID:Pb366fGcO
ターバン夫婦と子供たち、それと俺たちモンスターは死力を尽くして最終ボスを倒した。
やった!俺たち間に喜びが駆け抜ける。皆笑顔だった。ハッピーエンドだ。
と。
俺やスラリン、アームライオン、キラーパンサーが少しずつ身体が透明になってゆく。
ああそうか。俺たちモンスターはきっと最終ボスより作りだされた存在。ボスが消滅してしまえば具現する力を失う。
ドラクエは、ボスがいなくなると他のモンスターもいなくなるもんな。
スラリンが飛び付いてきた。目からぽろぽろ涙が零れている。
アームライオンも、キラーパンサーも。
「行かないで!」
仲良くなったテンとソラ、涙でぐしゃぐしゃな子供たちが俺たちの身体を抱き締めようとしたが、既に触れられなかった。
さよならだ。
ありがとう。ありがとう。俺が消えても、どうか忘れないで下さい。
俺は、ドラクエの世界から消滅した。
俺の身体はベッドに横になり顔に白い布を被されている。俺の横には祖父母が俺の手を握りしめ涙していた。俺はその光景を…天井から見てた。
そうか俺…バイト帰りでバイクに乗って…跳ねられたんだ。
それから意識がなくなっていつの間にかドラクエ5の世界のスライムになっていたんだ。


422 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 15:01:28 ID:nAUHIHyv0
完結・・なのかな?
うおー、なんてこったい、ラスボスを倒すと、味方モンスターまで消滅しちゃうのか。
アキラくんにスラリンちゃん・・・(泣

最後に、死の間際にスラリンちゃんと勇者一家と幸せな思い出ができてよかったの・・・・かな。

モンスターになって勇者一家と旅をする視点は新しいとおもうし、衝撃の結末っ。
投下乙でした。

423 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 15:30:38 ID:Pb366fGcO
俺がドラクエ5をプレイした時3代続く家族物語に感動した。全部のナンバリングをプレイしてきたけど俺の中で一番ずっと心に残る物語。
俺の夢見た夢をドラクエ5の世界は叶えてくれた。現実では俺の夢はもう叶わないから。
俺の身体が消えてゆく。ターバン夫婦やテンやソラ、スラリンやキラーパンサーやアームライオンとお別れした時のように。
今度は祖父母にお別れだ。さようなら。ありがとう。
消えゆく俺の視界にスラリンと両親がいた。迎えに来てくれたんだね。俺は手を差しのべた。

―了―

保守代わりの短編でした。文章が途中で切れてしまって同じ文章を投下したり最後の文章を投下するのに時間がかかったりとハチャメチャでしたが支援と感想ありがとうございました。


424 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 15:45:30 ID:nAUHIHyv0
あー、終とか、了ってないから、おかしいなーとおもってたら、エピローグがあったのねん。これまた失礼しました(汗
主人公くん、迎えに来てくれたスラリンさんとあの世?かどこかの世界で、幸せに暮らせるといいですね。

良作、乙です。

425 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 20:13:47 ID:+1W+BsIS0
>>423
通りすがりだがとても感動した。
死んだ祖父母を想い出してちょっと泣けた。

426 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/01(土) 21:41:55 ID:6IfUCI2X0
>>423
良作短編乙
話に入り込んで涙ぐんでしまった

427 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/02(日) 01:56:07 ID:17b69Kq8O
これは良かった


428 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 22:18:01 ID:77UN1qTT0
退屈な毎日から逃れ出るための逃避行の旅…


ある日俺は夢を見ていた。

耳の形が奇怪な、黒いマントをはおった集団が一人の少女を取り囲み、
何やら言葉を取り交わしている。

「…して……我…闇の主が……」
「……瑠璃……急…」
「エサ………剣さえ…」

少女は青みがかった白いローブに身を包ませながら、
脅えきった眼で周りの連中を見ている。

俺は全く身動きができない。

黒づくめの連中から一人、まがまがしい剣をもった奴が
一歩前に出、少女ののど元にその切っ先を突き立てた。
ゴウンゴウンという耳鳴り、くぐもった呪術の詠唱、重く垂れこめた空気。

俺は必死でもがこうと(少女を助けようとしたのか自分が動けないことが苦しかったのか、
今となっては定かではないが)、身をよじらせたが、吹き出るのは冷たい汗ばかり、
咽はからからで眼の前もだんだん暗くなってくる。

それでも必死に体中の全神経を使って失った器官の能力を再生しようともがき、

「や…め……ろ…」
と声にならない声を振りしぼった。

その瞬間、生贄に歓喜していた全ての悪魔達の眼がこちらに向けられ、
俺は目が覚めた。

429 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 22:25:15 ID:77UN1qTT0
「はは…は……夢か…」

全身汗びっしょりになりながら、不意の夢オチに虚をつかれながら俺は身体を起こした。

「だりい…風邪ひいたかな……」

などと独り言を言いながらゆっくりとベッドから足をおろす。
風邪などではないことは、はっきりとしていた。

なんだ?あの夢?

あのようなシーンは映画やゲームなどで見たような気もするが、
あんな生々しい感じではなかった。
あの夢の登場人物は現実に存在するものとしての体温や息遣い、そして
他者に対する嫌悪感を持っていた。

あんな…夢。

「まあ…仕事で疲れてんだろうな……」

ふらふらする頭をシャッキリさせるために、俺は冷蔵庫の雪印へと
向かおうと廊下へ出ようと扉をあけたその瞬間、
見たことも無い風景が俺の眼前に広がっていた。

430 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 22:36:00 ID:77UN1qTT0
「なんじゃ…こら!?」

どこまでも澄み切った青い空、その下に地平線まで広がる草原。
そこに一本、大きな樹がポーンと立っている。

「アホ…か?」

俺はとっさに振り返った。
確かに俺は、さっき自分の部屋から廊下に出たのだ。
しかし廊下に行くためのドアは無情にも俺を廊下へとはいざなわなかった。
開きっぱなしのドアが手持ちぶさたにキイキイ言いながら
さわやかな草原の風に揺られている。

待てよ待てよ。

俺は昨日どうやって家に帰った?
酒につぶれて帰宅したのか?
それとも知らないうちに死んでて、ここは天国だったりするのか?

「シュールすぎる。」

いつもあり得ないことが起こったときに使う言葉を吐いてみたものの、
世界に存在するのは俺一人じゃないかと思われるように
言葉は空気に散って、目の前にある風景だけが残った。

「会社……行か…なきゃ……」

そう言いながら俺は夢遊病者、はたまたアル中患者みたいに
白昼夢の中をパジャマのままふらふらと歩きだした。


「コンビニ…行かなきゃ……」

431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/02(日) 22:38:50 ID:17b69Kq8O
名前気になるw的支援

432 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 22:58:03 ID:77UN1qTT0
「ストップ!」

突然脳内に高い声がキインと響いた。

「そこから離れちゃ、いけないよ坊や。」

声から察するに小人、いやもっと小さい虫が、
精一杯羽音をばたつかせているようなか細く高い声。
しかしよく通るだけに、混乱した頭をいらつかせる声。

「自分の場所をそう簡単に捨てるもんじゃない。」

自分の場所?

「そうさ。あんたは言わば新参者。そう簡単にこの世界に飛び出すんじゃないよ」

こいつ、知ってる。
俺がこんな馬鹿げた状況になってる理由を知ってるぞ。

俺は少々ムカついてきた。
早くこんな馬鹿げた状況から抜け出て会社へ行かなきゃ。
遅刻などしたら、日頃の俺の業績に付け込んで上司が面倒なことになる。

「誰だよ!姿を現わせ!」

俺は宙に向かって叫んだ。

433 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 22:59:25 ID:77UN1qTT0
「ハハハハ。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。」

なんだこいつ。完全にバカにしてやがる。

「何がしたいのか知らねえがとっとと元の世界へ戻せ!」

「元の世界?今いる世界が元の世界だとしても?」

「ハア!?俺は会社行かなきゃなんねえんだよ、
いちいちお前のお遊びに付き合ってられるかこのバカ!」

「バカはあんたさ、ぼ・う・や☆」

今度はどこから声がしたのかハッキリわかった。

俺は怒りで一杯の表情で、元いた自分の部屋(今は隔絶された空間にポーンと存在している)
を振り返り、ベッドの上にそいつ、つまり「妖精」を見つけた。

「ようこそ、初めまして。
そして、久し振り」

434 :ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk :2007/12/02(日) 23:02:35 ID:77UN1qTT0
疲れた。これからドラクエになる予定。
ヒマなとき頑張ります

435 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:04:02 ID:8NHbfLAI0
第十二話投下します。

LOAD DATA 第十一話前半 >>385-393  後半 >>402-406

436 :比翼連理の双星【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:06:17 ID:8NHbfLAI0
あのゴタゴタの後、城の中はそれ以上にゴタゴタになっちまった。
当然だよな。国の在り方を変えちまう様な大事件だったんだもんな。

一堂に集められたラインハットの王族や貴族達で緊急対策会議中。
今回の事件を、どのような形で国民に発表するか、誰が発表するか、
どこまでの内容を発表するか…会議は揉めに揉めているらしい。

まず人選。強いカリスマを持つ大后は、長い幽閉の影響で床に伏せっている。
大后が無理のきかない体である以上、発表はおのずとデールからになるだろう。
次に内容。『散々国民の皆さんを苦しめていた王は正気じゃありませんでした。』
…なぁんて発表したって誰も納得しないのは火を見るより明らか。

長い会議の結果、
『王と大后は偽物だった。長旅から凱旋したヘンリー様とその一行が偽者を成敗し、
本物の王と大后を無事に助け出した。めでたしめでたし。』
…って内容の声明を国民に発表する事になったんだ。
大后が偽者だったのは事実だけど、王まで偽物だったいう内容にしたのは、
国民の反発心を最小限に抑える為…らしい。偉い人ってのは大変だな。

その夜、城の中庭には多数の国民が集められた。
不審そうな…不安そうな表情の国民達は皆ざわざわと落ち着かない様子。

バルコニーから国民の前に姿を現すデール。水を打ったように静まり返る中庭。

「この国を狂わせ、大事な国民を苦しめたのはこのデール。弁解の余地はない。」

皆の顔が凍りついた。勿論、俺達の顔も。

「国の混乱は全てこのデールの弱さが招いた事。謝って許される事ではないが…
 償いはさせて欲しい…兄さん、こちらへ…」

バルコニーのデールに手招かれ、ヘンリーがデールの横に立つ。

437 :比翼連理の双星【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:08:28 ID:8NHbfLAI0
「兄さん…この場で僕を斬り捨てて下さい。」

デールが悲しい笑みを浮かべながらヘンリーに剣を手渡す。

「僕の命で許されるとは思っていませんが…せめてもの償いです。
 兄さんなら国を立て直せる…どうか…国をお願いします。」

償いって…命を捨ててどうするんだよ!ヘンリーと一緒に国を立て直せば…
間に入ろうとした俺達を制したのはヘンリー。

「そうか…俺も覚悟を決めていた事だ。そこになおれ。」

冠を外したデールは、ヘンリーの前に進み出て目を瞑る。
駄目だ…そんなの絶対に…やめろ…

「……でえぇぇぇい!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

ヘンリーの渾身の平手がデールの尻を引っぱたく。
うわぁ…痛そう……って、アレ?

「覚悟決めてたんだ。国が乱れた原因がデールの弱さによるものだったら、
 城に戻ってその尻っペた引っぱたいてやる…ってな。」

ヘンリーが民衆に向かい合い、大声で叫ぶ。

「国の皆!こいつのしでかした事がこれっぽっちで許されるとは思っちゃいねえ!
 だから…今日は皆の気が晴れるまでこいつに灸をすえてやる!!」
ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

438 :比翼連理の双星【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:10:25 ID:8NHbfLAI0
「まだまだぁ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

延々と繰り広げられる公開お仕置き尻叩き。
最初は唖然としていた民衆だが、次第にその中から笑い声が漏れ始める。

「おらあっ!反省しやがれえっ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

笑い声は次第に大きくなり、やがて歓声となって中庭を埋め尽くす。

「子分のクセにでしゃばりやがってぇっ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」
「俺が帰ったからには二度と好き勝手はやらせねえぞ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」
『いいぞ!もっとやれー!!』 『ヘンリー様が戻られれば国は安泰だー!!』
『デール様ー!応援しておりますー!!』 『思いっきり引っぱたいてやれー!!』

「これからは…ずっとずっと俺と二人で国を守るぞおっ!!」 ばちいぃぃっ!!!
「痛あぁぁぁっ!!!」

涙で顔中をグシャグシャにするデールを引き起こすヘンリー。
ヘンリー自身も涙目で荒い息をしているが、息も正さずに民衆に向かって叫ぶ。

「俺は王家に戻って国を建て直す!!この泣き虫な馬鹿王と一緒にだ!!
 親分が直々に後見人になるからには、二度と国民に苦しい思いはさせねえ!!
 今宵、俺達兄弟の姿を目に焼き付けろ!!俺達の働きを見届けろーーーっ!!!」

わあっ と、一際大きな歓声が中庭に挙がる。
ヘンリーを讃える声…デールの名を呼ぶ声…二人を応援する声。
さながら大物ミュージシャンのライブ会場の如く盛り上がる民衆。
俺も素直に感心した。やっぱり、ヘンリーのカリスマは天才的だ。

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/03(月) 02:10:42 ID:BbAuWo3YO
し…えん……?

440 :比翼連理の双星【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:13:02 ID:8NHbfLAI0
        ◇           ◇
そして よがあけた …ってやつ?
ラインハット城下町を一望できる国賓用の寝室で朝を迎えた。
うん、なんて清々しい朝だ。

…この二日酔いの気分以外は…

昨日の演説の後、悪ノリしたヘンリーが国をあげての大宴会を宣言。
王族も兵士も国民も死体も一緒になって朝け方まで飲み明かした…ってわけ。

「昨夜はお疲れ様でした。僕も王という身分を忘れて楽しませて頂きました。」

旅立ちの前に謁見の間に立ち寄り、デールに別れの挨拶をする。
サトチーもデールも昨日の宴ではだいぶ酔っていた筈なのに清々しい顔をしている。
下戸のフリして実はザルなんじゃねえの?

「国を救って頂いた事、国民を代表してお礼を申しあげます。本当にありがとう。」

デールは玉座から降り、俺達の前に片膝をついて頭を下げるデール。
その肩に手を置きながら、サトチーが優しく語りかける。

「頭を上げて下さい。デール王。あなたが頭を下げる相手は僕達ではありません。
 あなたを…国を信じて進み続けたヘンリーこそラインハットの救世主です。」
「ヘンリーの活躍がなかったら、俺達もとっくの昔に全滅してましたからねえ。」

…あれ?いつもならここで入る筈のヘンリーの茶々がない。

「えぇ、兄には一番にお礼を言おうと思っていたのですが…」

途端に難しいものになるデールの表情に思わず俺も身構える。

まさか…ヘンリーの身に何か…

441 :比翼連理の双星【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:15:14 ID:8NHbfLAI0
「朝から兄の姿がないのです。城中どこを探しても…」
「いない?こんな時に一体どこに…」

デールの顔が横に振られ、嘆息した様な深い溜息をつく。
家出した子を案じる親の様なデールの表情を見ていると、どっちが兄だかわからない。

「ご存知の通り、兄は堅苦しい王家のしきたりを好まない性格の人ですから…
 勝手に城を抜け出してハメを外してなければ良いのですが…」
「これから苦労しそうですね。」

サトチーとデールの乾いた笑い声が謁見の間に響く。
二人とも声では笑っているが、顔は笑っていない。

「ところで…連絡ではビスタ港に船が入港するのは明日だったはずです。
 もしよろしかったら、今夜も城に泊まられてはいかがでしょう?」
「ありがとうございます。ですが、船出の前に立ち寄りたい所がありますので…」
「そうですか…何の力にもなれませんが、お二人の旅の無事をお祈りしております。
 どうか道中お気をつけて。」

開かれた城門をくぐり抜け、メインストリートから城を振り返る。
固く重く閉ざされていた城門は、全てを受け入れるかのように大きく開かれ、
その城の景観は、道行く人々の幸せそうな顔を見渡すように雄々しくそびえる。
町で無法を働いていた傭兵達は国外に追放され、代わりに子供達が走り回る。
常に耳にしていた怒声の代わりに聞こえるのは、王家を讃える詩人の歌声。
忌まわしい兵器の生産工場は、建築木材の加工場に改造するらしい。
町が元の姿を取り戻すのには、たいして長い時間はかからないだろう。

「そろそろ行こうか。スミス達が町外れで待ってる。」

町外れで俺達を待つ一台の馬車と二頭の白馬。

お待たせパトリシア…と……誰?

442 :比翼連理の双星【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:18:41 ID:8NHbfLAI0
「遅せえ!子分の分際で親分をいつまで待たせやがる!」

パトリシアの隣。もう一頭の白馬の上から声が投げかけられる。
王族らしい豪華な衣服を身に纏い白馬にまたがるヘンリー。その手には花束。

「何やってんの?そんな似合わな…じゃなくって、珍しい格好して。」
「ん…世話になった修道院のシスター達に今回の件のお礼を言いに行くついでに、
 旅立つ子分達を見送ってやろうと思ってな。」

見送り…それはつまり、俺達との別れの証。
わかりきっていた事だけど、実際にその言葉を耳にすると…どうもね…

「そんな情けない顔すんな。最初からわかってたことだろう?それに…
 それにさ…場所が離れてたって俺達はずっと…その…」
「大事な仲間だからね。」

サトチーが発した言葉に、ヘンリーの顔が真っ赤になる。
…本当、素直じゃねえの。

「…っまぁ、辛い奴隷の生活も旅の間もさ…お前達と一緒で…その…楽しかったよ。
 本当に………ありがとうな。」

ぷいっ と、目線を逸らしながらヘンリーが言う。

「ヘンリー…君は本当に大事な仲間だ。体に気をつけて…」
「女の尻ばっか追いかけて、デールさんを困らせるんじゃねえぞ。」
「ふん。お前達が次に来るまでには、この国を今以上に立派な国にしてみせるさ。」

三人、拳を合わせて互いを讃え合う。そのエールに言葉はない。
それでも、そのエールはどんな言葉よりも俺の体の真ん中らへんを揺さぶる。
 ―負けるなヘンリー…負けるなサトチー。 何があっても負けるな…俺―
二頭の白馬が行く道は途中で二つに別れる。 それでも…俺達はずっと仲間だ。

443 :比翼連理の双星【7】&後書き ◆Y0.K8lGEMA :2007/12/03(月) 02:22:26 ID:8NHbfLAI0
イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――



―――
第十二話 ラインハット編エピローグを投下しました。
次回からは新章突入です。

その前に小ネタを挟む予定ですが…

444 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:35:48 ID:Ish8Z3lR0
○微かな癒し○

ムーン達と別れた後、もょもとに上薬草を煎じて貰ったがあまり回復していない。
やはりゼシカの言う通りいきなり上位呪文を唱えると体の負担が大きい。
死なずに済んだのが不思議なくらいだ。

もょ「だいじょうぶか?タケ?」
タケ「すまんのう…少しはマシになったんやけどまだ本調子やないわ。」
もょ「じょうやくそうでもだめなのか!?」
タケ「そうやな。まだ5、6分力が戻ったっていう所やで……全力で動くのはちょっとしんどいかも。」
もょ「そうか…しばらくはおれががんばるよ。」
タケ「最悪の結果を招いてしまったな。サマルやムーン達の関係が修復は不可能レベルまでなったやろ。
   ああ〜 やり過ぎてもうた…」
もょ「もうすんだはなしだ。きにするな。ぎゃくにおれはうれしかったぞ。」
タケ「な、なんでやねん?」
もょ「おれのことがほんとうにだいじだとおもってくれたのがすごくかんじたよ。これほどうれしいものはない。
   それにおれがタケのたちばならおなじことしていた。おれ、バカだからうまくいえないけど。」
タケ「ホンマに悪かったな……」
もょ「もうきりかえていこうぜ!!」
タケ「そうやな………話は変わるが現実問題どうするよ?」
もょ「まずはククールたちとごうりゅうしよう。そのほうがまちがいなくさいぜんさくだろう。」

タケ「そうやな。パワーのヤンガス、スピードと回復のククール、魔法のゼシカ、結構バランスも取れているで。」

もょ「じゃあきまりだな!」

俺達が行動を起こそうとした時誰かがやってきた。

もょ「タケ…ここはおれにまかせろ!」
タケ「ヤバくなったらとんずらするのもありやで。気をつけろ!」   

戦闘体制に入って構えているとやってきたのがリアだった。

445 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:36:52 ID:Ish8Z3lR0
もょ「リ、リアちゃん!?どうしたんだ?」
リア「ま、間に合って良かった〜 どうしてもお礼が言いたくて。――――――――タケさんに。」
もょ「しかし…」
リア「お願い!タケさんにお礼が言いたいの!」

真剣な眼差しにもょもとも承諾するしかなかった。

もょ「タケ…リアちゃんがはなしたがっているぞ。」
タケ「わかったで………………………はじめましてやな、リアちゃん。一体どないしたん?」

リア「は、初めましてタケさん………そ、その……助けてくれてありがとう……」

タケ「ええんよ。俺は当然の事しただけやで。それにもょとの約束もあったしな。」
リア「そ、それとごめんなさい!お兄ちゃんやムーンさんがあんな事言うなんて…」
タケ「もう済んだ話やから別に構へんよ。しかしよく抜け出せてここに来れたなぁ。」


リア「お兄ちゃん達とケンカしちゃって居辛くなったの…」
タケ「マジかいな……やっぱやりすぎたんやで!/(^o^)\ナンテコッタイ」
リア「だって………タケさんは……グスッ…助けてくれたんだもん……2回も……」
タケ「お、おいおい!泣く事もあらへんやんか!今回がともかく、以前いつ助けたっけ?」
リア「ラーの鏡を……取りに行ったとき。」
タケ「ああ……あ、あれはもょがやってくれたんやで。俺やないよ。」
リア「ううん…トーマスさんやカタリナさんが私に話してくれたの。その時の状況を――――――――」



――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――
――――


446 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:38:17 ID:Ish8Z3lR0
〜 ムーンペタ出発前夜 〜

カタリナ「リア様。報告があります。」
  リア「どうしたの?カタリナさん。」
カタリナ「実はもょもと様の事でお話が。」
  リア「もょもとさんの事?」
トーマス「その先からは私から話そう。カタリナ。リア様、結論から言います。もょもと様には別の人格がいます。」
  リア「ええっ!?どう言う事なの?」
トーマス「つまり二重人格です。もょもと様の体内にもう一人分の人間がいるのです。」
  リア「そ、そんな…」
トーマス「確かに信じられない話ですがその御方に私やサマル様、リア様も助けられたのですよ。勿論もょもと様も含まれます。
     その御方の名前はタケと仰っておられました。レオン様と同様、異世界からきた人間らしいのです。」

  リア「そのタケって言う人がもょもとさんの体内にいるわけ?」

トーマス「仰る通りでございます。しかしタケ殿は私達にとって命の恩人なのです。
     もょもと様達が敵の呪文で眠らされた時、タケ殿が代わりに戦ってくださったのです。そこでリア様にお願いがあるのです。」

  リア「お願いって………………私に?」

トーマス「はい。この事実は知っているのは、私達三人のみ。
     もし、王女様やサマル様にこの事実が発覚した場合、もょもと様達と対立するという事がありえるかと思われます。
     仮にその情況が訪れた場合、もょもと様やタケ殿を助けていただきたいのです。」

  リア「で、でも……………」

トーマス「カタリナの報告ではタケ殿は自分を犠牲にしてでも、もょもと様を守る様な御方だと聞いております。
     私もタケ殿が悪人とは思えません。どうかお願いを受け入れて頂けないでしょうか?」

カタリナ「私からもお願いします!リア様!」
  リア「うん………私はもょもとさん達に協力するわ。」
トーマス「ありがとうございます!くれぐれも口外無用でお願い致します!」

447 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:40:41 ID:Ish8Z3lR0
リア「って言う事なの。」

タケ「ちっ、あいつら…余計な事言いやがって……ホンマに………」

リア「それにダースドラゴンの時でも私を守ってくれた……」
タケ「あ、あれはたまたまや。気にすることはないで。」
リア「グスッ……グスッ……ごめんなさい…………」

タケ「よしよし、もう泣いたらアカン。可愛い顔が台無しやで。」

リア「うん……」

もょ「くっくっく…………よかったな、タケ。」
タケ「な、何やねんお前……不気味な笑いをしやがって。」
もょ「リアちゃんみたいなりかいしゃがあらわれたのいいことだろ?」
タケ「うっ…………ま、まぁ結果的にはそうなるわな。俺にとっては嬉しい話やで。」


もょ「それならいいじゃないか。それにタケはいじょうにリアちゃんにはやさしいしなw」


タケ「お、おい!ゴルァ!これ以上アホな発言していたらブン殴るで!!」
もょ「ふだんのおかえしだ。それにじぶんじしんをなぐるつもりなのか?すこしおちつけ。」

タケ「…………クソったれ!!俺からおちょくりのスキルをパクりやがって!」

リア「くすくす………もょもとさんとタケさんて凄く仲良しなんだね。」
もょ「そうなのか?タケ、おまえはどうおもう?」
タケ「うーん、何かこの関係が当たり前って感じやからなぁ……仲が良いとか悪いとかあんまり意識はしてへんで。」
もょ「おれもそんなかんじだな。」
リア「へぇー…自然な感じなんだね。話は変わるけどタケさんはどうして私達に力を貸してくれるの?」


448 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:42:10 ID:Ish8Z3lR0
タケ「そやなー もょの前やから恥ずかしいけど黙秘権は無さそうやし…………
    俺自身がこの男について行こうと決心したからやな。」

リア「タケさん自身が?」

タケ「うん。最初のもょは頼りねー奴だと思っていたけど、処がドッコイ今はすげえ頼れる奴になったんよ。
   それに赤の他人がイキナリ自分の体内に入ったら気持ち悪いにも拘らず受け入れてくれたのもあるわ。
   話は変わるけど、もょの人生でアカンかった所は良き指導者と仲間に出会えてなかった事やと思う。
   そこで俺が少し教えただけで、有り得ないほど成長しやがったからな。ある意味怖いで。
   今後の成長を見たみたいっていう個人的な事情もあるんやけどね。
   それに命の恩人やしな。俺も2回助けてもらっているんよ。」

リア「どういう時に助けてもらったの?」

タケ「ドルマゲス戦と今のサマル&ムーン戦やな。その時どれほど嬉しかった事やら。
   唯一の友達がかなり協力的にやってくれた御蔭で今が自分があるって感じやね。」

完全にリアのペースに乗せられて話してしまった。『この娘の前では素直に本音で話そうか。』って感じになったのだ。ククールもこれにやられた訳か。
タケ「しかし、まぁ…なんや…そういうこっちゃ。」
これ以上あんまり追求されたくなかったので話を打ち切る事にした。

もょ「し、しかしてれるなぁ…そこまでタケがおもっていたとは…」
タケ「しゃーないやろ!かなり本音トークやで!もうこれ以上ネタはないで!!お客さん!!」
もょ「タケ、おまえがこんなにじぶんのことをはなすのは、はじめてじゃないのか?」
タケ「そうやで。もーこの話題は無しや。はい、しゅ〜〜〜〜〜〜〜りょ〜〜〜〜〜〜〜〜
   で、話は変わるが今後はどうするん?」
リア「タケさんを助けるためには紋章を集めないといけないんでしょ?」
もょ「そうだな。リアちゃんもいるし3人でさがそうか。ククールたちにたよるひつようがなくなったしな。」
タケ「それならこれで決まりか。二人共ホンマにありがとう…今後もよろしゅうな!」

3人で談笑していると1人の女がやってきた。どー見てもオロオロしている………
一体何が起きたのか理解していないみたいだ。そいつは俺達に話しかけてきた。

449 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/03(月) 09:44:56 ID:akkEbyxiO
支援

450 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:47:02 ID:Ish8Z3lR0
 *「あんた達。ここがどこ何かわかるかい?」
リア「えっと、竜王の城の近くだよ。どうしたのお姉さん?」
 *「竜王の城!?何だいそれは?」
もょ「もしかして……いせかいからきたのか?」
 *「えっ!?」
もょ「このあたりはたいがいこのせかいにいるにんげんはしっているぞ。まったくしらないひとはいないんだ。」
 *「そうなのかい…弱ったね。まずはどこか街にでも行きたいね。」
リア「それなら近くにラダトームまたはリムルダールっていう街があるよ。」
 *「ありがとう……その前に金も貰おうか!」
リア「えっ!?」
女はいきなりナイフで脅してきた。

 *「金が無ければ何も出来ないからねぇ……あんた達には恨みが無いが――――――拒んだら刺すよ。」

もょもともリアも戦闘態勢に入ったが咄嗟に止める事にした。
 タケ「待てぇ!!」
もょ・リア「えっ!?」
 タケ「金が要るんだろ?100Gくれてやる。」
俺は金を女に渡した。
 *「キップがいい男だね。一体どうしちまったんだい?」
タケ「フン。俺の気まぐれだ。その代わりにアンタがこの世界で見た事や聞いた事、全ての情報を話して貰おうか。」
 *「取引かい?いいよ。金も貰ったし。あんた達位の細身の男とほっかむりをかぶった女がこの先モンスター達に襲われているよ。」
リア「ええっ!」

間違いなくサマルとムーンだ。

 *「助けるのであればさっさと行ってやりな。じゃないとあの二人は死んでしまうからねぇ。」
タケ「サンキュー!恩にきるぜ!でも俺は……」
リア「急ごう!お兄ちゃんとムーンさんが危ない!!」
もょ「そうだな。いまはたすけにいくぞ!」

さすがにこの情況では拒否は出来ず、俺達はサマル達の元に向かった。

451 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:47:46 ID:Ish8Z3lR0
サマルとムーンがマンイーターや泥人形達と戦っているのだがどうも様子がおかしい。  
ムーンの得意な呪文が唱えられないみたいだしサマルも相変わらず腰が引けてまともな攻撃が出来ていない。

ムーン「くっ…こんな奴らごときに手こずるなんて…サマル!!しっかりしなさいよ!」
サマル「で、でも泥人形達の不思議な踊りの影響で魔法力が無くなっているよ!」
ムーン「うるさいわね!言い訳は無用なのだわ!!」
サマル「こんな時に……もょ達がいれば……」
ムーン「あ、あいつらがいなくても私達だけで乗り切らないといけないのだわ!!」

ムーンは相変わらず強情を張っている。

 タケ「…………あいつ(ムーン)はアホか!変に意地を張りやがってホンマに……
    しゃーないのう!もょ!俺の呪文で火炎斬りを出来る様にするから戦闘は任せていいか?」
 もょ「ああ!ここはおれにまかせてくれ。きっちりふたりをたすけるよ。いくぞ!リアちゃん!」
 リア「うん!」

もょもととリアがモンスター達に立ち向かっていった。

サマル「も、もょ…それにリアまで…」
ムーン「い、一体何しに来たのよ!」
 もょ「はなしはあとだ!いまはこいつらをやっつけるぞ!」

 リア「もょもとさん!まずは私に任せて!!え〜〜いっ!!ベギラマ!!」

リアから大きな火炎が繰り出して大半のモンスター達をやっつけたのだが血を吐いている。
まだ不慣れな証拠だ。

 もょ「だ、だいじょうぶか!?」
 リア「う、うん…」
 もょ「あとはおれがやるからまかせろ。いくぞ!かえんぎり!」

もょもとがモンスター達を勢い良く斬り込んで行った。火炎の影響がある御蔭かすんなりとモンスターを倒すことが出来た。

452 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 09:49:14 ID:Ish8Z3lR0
もょ「ふー。それにしてもまほうけんってすごいな。かなりらくにたおせたぞ。ちょっとやけどしてしまったけどな。」
タケ「しかし俺の場合と比べたら火炎の持続時間が短いな。」
もょ「おれがじゅもんをつかえないからじかんがみじかいとおもう。」
タケ「かもな。それより二人を手当てしてやれ。無事でよかった。」
もょ「よし、わかった。」

もょもと達はサマル、ムーンの手当てを始めた。

ムーン「ど、どうして助けに来たのよ!誰も助けろとは頼んでいないのだわ!!」
 タケ「大概にせえ!もょやリアちゃんに感謝するんやな。そうじゃないと誰がお前等など助けるか!ボケェ!!」
 もょ「ふたりともいいかげんにしろ!!けんかしているばあいじゃないだろう!!」
 タケ「す、すまねぇ……」
ムーン「ご、ごめんなさい……」
流石にマジギレしたもょもとには俺もムーンも少し竦み上がった。

 もょ「はなしをかわるがおれとタケ、リアちゃんはもんしょうをさがすことにするがふたりはどうする?」
サマル「ええっ!?どういう事だい?」
 もょ「おれたちとわかれてハーゴンをたおしにいくのはかまわない。しかしいまのままでは
    ハーゴンどころかドルマゲスすらおれたちはたおすことができない。いまはちからをあわせるときなんだ。」
ムーン「………………確かに現実問題はそれが最善策なのだわ。」
サマル「そ、それじゃあ………」
ムーン「仕方がないのだわ。サマル。確かに今の私達だけじゃ無駄死にするだけだわ。
    タケがいるのは気に食わないだけど。」

こいつは………もう、あきれて何も言えへん…しかし回復呪文が使えない俺達にとっても
欠点が塞がる訳だからここは我慢して妥協するか。

 もょ「それならきまりだ!タケもリアちゃんもそれでいいだろ。」
 リア「…………………………うん。」
 タケ「成り行きやし、しゃーないわ…………お前に従うよ。もょ。」

ムーン「何か文句あるのならハッキリいいなさいよ!!」

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/03(月) 09:51:15 ID:akkEbyxiO
支援

454 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/12/03(月) 10:44:34 ID:Ish8Z3lR0
 タケ「はいはい。こんなに見苦しい馬鹿女は俺の世界でもめったにおらへんわ。これだけ言っといてやるわ!
   『思い込む』という事は何よりも『恐ろしい』事や。
    しかも自分の能力や才能を優れたものと過信している時はさらに始末が悪いしな。
    その場合、我が身だけではなく回りの仲間にも迷惑をかける事になるんや!
    後、お前がアホ過ぎて反論する気にもならへん。」

ムーン「フ、フン!!何よ!!え、偉そうな事ばっかり言って……」

ムーンが反論したが流石に欠点を突かれたらしく無理に反論した感じだった。

 タケ「あっそ。もう終了な。キリが無いから。もょ。話は変わるが今から紋章探しか?」
 もょ「ああ。もんしょうをそろえることができたらせいれいルビスにあえるからな。それにタケもじったいかするかもしれない。」
サマル「そ、そうするのが今後の計画なんだね………?」

サマルがビビリながら発言するのは無理もない。
 タケ「今は仲良くしようや。言っておくがこっちから仕掛けることは無いから安心せえ。」
サマル「し、信用してもいいのかい?」
 タケ「勿論や。ただし、そっちから仕掛けてきたら………………確実に殺すで。ええな?」

サマルは震えながら頷いた。

もょ「よし。じょあもんしょうさがしにいくとするか。」

もょもと&タケ
Lv.18
HP: 56/130 
MP: 0/  9
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
  タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
       火炎斬り

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/03(月) 20:39:08 ID:akkEbyxiO
二人とも乙!なかなかの力作だった。

>>GEMAさん
良い感じな兄弟愛だな。
呼んでいるだけでも和んだ。
>>レッドマンさん
物語より人間賛歌が重視しているみたいだな。
色々と考えさせる。

しかしヘンリーもタケもちょっとツンデレかw

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/03(月) 21:12:49 ID:1u+Pe9e70
お二方とも乙。
それにしても嫁を差し置いて比翼連理とは、マリアが嫉妬するぞw

457 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/12/04(火) 19:32:00 ID:HHfoHnmT0
2.人形劇の舞台裏 (>>376-381)

サクヤはエイトとセブンとの二人とともに占い師ルイネロの元に行った。
マリベルもついていこうとしたが親のアミットに止められてかなわなかった。
ルイネロの占いでは次のような結果が出た。


まず、この世界が、いくつもの世界が合わさって出来上がっている世界だということ。

例えばセブンとエイト、本当ならばこの二人が出会うはずはなかった。
この二人はそれぞれ長い旅しており、それぞれの世界をよく知っていた。
しかし二人の知っている世界はまったく違うものだった。
それは二人は違う世界の住人なのだから当然なのだが。
しかし、こうして出会っている。
二人の住む世界がつながってしまっていたのだ。
さらにつながっているのは二つの世界だけではなかった。
二つ以上の世界が合わさろうとしているようだった。

458 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/12/04(火) 19:34:11 ID:HHfoHnmT0
次に、異世界の人間が複数この世界に迷い込んでいるらしいこと。

異世界とは、合わさっているこの世界のさらに外にある世界の事である。
その世界の人間がある一枚の石版に封印されたのだ。
セブンやエイトとはまた異なる世界で生きてきたサクヤが、
この世界にとって招かざる客だと感じたのは、自分が彼らとは違う存在だからだ。
マリベルの勘はある意味正しかったのだ。


最後にこの異変は、先の石版がバラバラに砕けてしまったのが原因だということ。

サクヤの持っている石版の欠片は、その石版のパーツで間違いないだろうということ。
そしてそれらの石版をあわせることで世界が元に戻るということ。
合わせる場所はどこかの神殿であること。
この神殿に異世界の人間が集まり石版を合わせる姿が見えること。
ただし、その場所には人間でないものもいるようであること……

459 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/12/04(火) 19:36:45 ID:HHfoHnmT0
「世界が元に戻ると言うことは異世界の人間である君も元の世界に戻れると言うことだろう」
ルイネロの占いの結果を受けエイトが言う。
「石版をあわせるときに人間でないものの姿も見えると言っていたのが気になるね」
「モンスターが待ち構えているのかもしれないな」
「在り得るね」
エイトとセブンがうなずきあう。
「封印されたものの中に犬か何かが混ざっているなんてことかもしれませんよ」
二人の心配をよそにサクヤは楽観的な意見を述べた。
「そんな都合のいい話があると思うのか?」
「この世界ではそういうところにボスが待ち構えていると考えるのが定石だよ」
一番奥にボスがいる。どこの世界もそういうものなのかとサクヤは思った。

「そうだ。ボスと戦うとなるとサクヤを鍛えないといけないな。お前何か得意な武器は?」
サクヤはないと答えた。
サクヤは自分がモンスターと戦う姿を想像できなかった。
だがここではそれをしなければならないのだろう。
「それなら効果つきアイテムをいくつか渡しておくから使うといい」


「とにかく占いにしたがって石版を集めることにしましょう」
サクヤは石版集めの話を進めることにした。
「占いのとおりにするためには石版のほかに異世界の人間を神殿に集めなきゃいけないね」
「異世界の人間を探すとなると結構骨が折れるな」
「…その異世界の人たちはサクヤと同じように石版を持っているのかな」
セブンがふとそんな疑問を抱く。
「どうでしょうね。私がたまたま石版を握りしめていただけかもしれません」
「人も石版も別々の場所に現れたとしたら全部見つけるのは一苦労だな」
「これで占いが外れていたら目も当てられないよね」
「それは…そうだ。――サクヤは占いの結果を信じるのか?」
エイトの質問にサクヤは静かに答える。
「私にはこれに頼るしか道はないですから」

460 :作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM :2007/12/04(火) 19:39:09 ID:HHfoHnmT0
そんな話をしているうちに日が暮れてきていつの間にか空には星が瞬いていた。
夜はモンスターが活発になる。一向は寝泊りできる場所を探すことにした。
屋敷があったので一晩の宿をお願いしようということになった。
しかしその屋敷には人の気配はない。中は暗い。人はいないのかもしれない。
サクヤたちは大きな扉を開けて屋敷の中に入る。不気味なほど静かな闇の中に。


――ばたん。

扉が閉まる。

静かな屋敷は一変する。屋敷の中には人ならざるものの気配で満ち溢れていた。
サクヤたちの前に泥人形やミステリードールが現れ、襲い掛かってくる。

「サクヤは下がってて!」
セブンとエイトは剣を構える。
二人は襲ってくる人形たちを次々に打ち倒していく。
ザクザクと斬っていく。
しかし人形は何度倒されても起き上がってくる。
サクヤは部屋の隅でその戦いを見守るしかなかった。

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