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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
402 :
紫焔一閃【9】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/28(水) 17:29:24 ID:c1qvqYwC0
怒り…悲しみ…嘆き…恨み…一言では到底表現しきれない感情の色。
この世界に存在する全ての負の感情が入り混じった様な色。
怖い…
サトチーを初めて怖いと思った。
「ゲマ!お前だけはっ…!!」
感情をあらわに飛び掛るサトチーの一撃に対し、魔女は一息をついただけ。
そう、小さく息を吐くだけの動作にしか見えなかった。
ふうっ と、青白い吐息を一瞬吹きかけただけで、辺りの温度が急激に低下する。
チェーンクロスはガラスのように砕け散り、一瞬固まったサトチーが崩れ落ちる。
「ほっほっほ…10年振りの再会だというのに穏やかではありませんね。
意識だけは残しておきますから、少し頭を冷やしなさい。」
零下の余波は周囲一体を飲み込み、冷たく輝く風の牙となって中庭を吹き抜ける。
まぶたが、鼻が凍りつく。一瞬で意識から引っこ抜かれそうな寒風。
ブラウンと俺は身を寄せ合って寒さを凌ぐ事しか出来ない。
ヘンリーは倒れたデールに覆い被さり、冷気の直撃から弟を守っている。
その向こう側では、体を半分凍りつかせた兵士達が次々に倒れる。
シャレにならねえ…マジで殺られる…
痛いまでに全身を突き刺していた冷気が止み、再び顔を出す太陽。
格の違い…無防備な目の前の魔女が放つ強烈な重圧に足が震え出す。
居るだけ、そこに存在するだけで周囲を圧倒する絶対的な威圧感。
横に立つヘンリーとブラウンも同じく、その両膝がガクガクと震えている。
403 :
紫焔一閃【10】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/28(水) 17:31:06 ID:c1qvqYwC0
「お…お前がラインハットを狂わせてた元凶だってのかよ…俺達に何の恨みが…」
寒さのせいではなく、心の底から震える声で魔女に問い掛けるヘンリー。
対して、ゲマは俺達を見下したような高笑いを発しながら語る。
「ほっほっほ…勘違いなさらないで下さい。私はただの観客ですよ。
私は王の傍で成り行きを見ていただけ、私自身は何も手を下していませんよ。
先程のゴミも演技力だけはあったようですが、何も出来なかったようですしね。」
「だったら…デールは…そうだ!本物の大后はどうしたって言うんだよ!」
「言ったでしょう?私は居ただけですよ。大事な兄を失った子供の傍にね。
ほぉっほっほっほ…やはり観劇は特等席で見なければ臨場感を味わえませんね。
消えた兄を思う弟の気持ち、遠い地で弟を思う兄の気持ち、堪能させて頂きました。
せめてものお礼です。受け取りなさい。」
魔女が指をかざす先、何もない空間から人の姿が現れる。
刺々しい鎖で空中に縛り付けられているのは、豪華な衣装を身に纏った初老の女。
「おやおや…大后を魔界に幽閉したのは失敗でしたか?呪縛が解けませんね。」
「て…てめえ…ふざけてねえでさっさと…」
ようやく搾り出した俺の声は魔女の一睨みで止められる。
情けねえ…
「それは、天空の剣…ですか?」
俺を睨みつける表情を緩め、笑みを浮かべる魔女。
魔女が指差すのは俺の背に納められた剣。
「天空の剣の剣閃は一切の魔を祓うと伝わりますが…果たしてどうですかね?
その剣の力をもってすれば、大后を縛り付ける呪縛を解く事も可能でしょうが、
ほっほっほ…貴方にその剣の力が引き出せますかね?」
404 :
紫焔一閃【11】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/28(水) 17:32:11 ID:c1qvqYwC0
俺の背に背負われた剣。
一切の魔を祓う天空の剣
嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
この世界と魔界との境界を切り開く伝説の剣。
でも…今、この剣を振るう俺は…
するり と、鞘から剣を引き出し構える。
…が、この後どうすれば良い?
「イサミさん!母上を助けて!」
目を覚ましたデールの懇願が俺の目を覚ます。
「イサミ…お前は俺の子分だ…俺が見込んだお前なら出来る。」
肩を叩くヘンリーの言葉が俺の背を押す。
―!!!―
ブラウンの声援が俺の両腕を持ち上げる。
「…イサミ…君なら…大丈夫だ…」
凍てついた体のまま発せられたサトチーの激励が俺の中に火を点ける。
俺は天空の勇者なんかじゃない…普通の大学生で…今はただの住所不定無職異邦人。
でも、今の状況を何とかしたいと思うのは…親友の声に応えたいと思うのは…
親友を守りたいと思うのは…勇者なんかじゃない俺でも一緒だ。
やってやる!
―オオオォォォ!!―
咆哮と共に振り上げた俺の両腕に力が発現するを感じた。
力が腕から手を伝い、剣に流れ込むのを感じた。
405 :
紫焔一閃【12】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/28(水) 17:33:59 ID:c1qvqYwC0
「…ッリャアアアァァァァァ!!!」
真白い光景だけが目の前を支配する…何も見えない…けど、
一心で振り下ろされた剣の先から、全ての力が流れ出すのを感じた。
俺の中の色んな物が流れ出すのを感じた。
立っていられない疲労感…思わず膝をつく。
脱力感…俺の手から力が抜け、剣が音をたてて地に落ちる。
同時に、霧が晴れるように視界が元の色を取り戻す。
支えを失ったかのように落下する大后を、デールがギリギリで受け止めた。
ウシッ!…とか、やってらんねえ…マジしんどい。
いやいや、まだへばってられねえ。あの紫の鬼ババアを…
「ほっほっほ…見事に魔界の呪縛を解きましたか。しかと見届けましたよ。」
高笑いを浮かべる魔女に剣を向ける…ハッタリだけどな。
戦う力なんか少しも残ってやいねえ。
「無理はなさらない方が良いでしょう。ここで貴方達を殺す気はありません。
残念ながら、そこまでの自由は許されていないようですからね。」
「待て!お前だけは絶対に…」
紫色の霧に包まれる魔女にサトチーが追いすがる。
その足はふらふらとしておぼつかず、再び地面に倒れ伏す。
「ほっほっほ…それではごきげんよう。サトチーと…ホコロビ…
いずれまたお会いしましょう。それまでその命を大事になさい。」
紫色の霧の中、高笑いを残して魔女は消えた。
406 :
紫焔一閃【13】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/28(水) 17:35:08 ID:c1qvqYwC0
「ゲマ!…次こそは…必ず…」
サトチーが虚空に向かって吼える。
…あの鬼ババア、何がしたかったんだ?
全然、聞き足りないのに言いたい事だけ言って帰りやがった。
いや…ここでバトらなかったのは助かったけどさ…
次こそは、か…会いたくないな、出来る事なら二度と…
「後味悪りいけど、デールのやつも正気に戻ったみたいだし…これで一段落か。」
力が抜けたように座り込むヘンリー。
デールは子供の様な表情で大后に泣きすがっている。
「まあ…一件落着なのかな?」
「本当にありがとうな。これできっとラインハットも立ち直る。
サトチーと、イサミと…この剣のお陰だな。」
地に落ちた剣を拾い上げ、俺に手渡すヘンリー。
その手から剣を受け取り、背中の鞘に戻す。
少しずつ傾きつつある太陽の光を受け、竜のレリーフがきらりと光った。
イサミ LV 16
職業:異邦人
HP:4/77
MP:0/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
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