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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

572 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:27:43 ID:ENWfM0l90
乙でした!
エリスや仲間達の気持ちとか、アルスとの会話とか、タツミの抱えてるものとか、
なんか説明できないんだけどぐっとくる。頭よすぎるのも考えもんだな…。
ピラミッドは夕日のイメージが強かったけど、星降るつながりで来ましたか。
続きめちゃくちゃ気になります、頑張ってください!





俺はロダム燃え。

573 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 19:59:54 ID:+0yplX890
エリスさん、いいですね。
生き返れるとはいえ、できれば無事でいてほしいですね。

サミエルさんもロダムさんも、「いい奴」ですね。
ベストパーティーで、無事冒険の目的を達成できるといいですね。

しかし、現実サイドで暗躍するゲームサイド人・・・。
一波乱ありそうですね。

574 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/14(土) 21:54:03 ID:lsMxx3Yr0
いやーめちゃめちゃ乙
かなりじっくりと読ませていただきました

個人的にいろんなスレでいろんなSSを読んでいるんだけど、
今は◆IFDQ/RcGKI氏のが一番楽しみ

4の人のようにじっくりと続けて欲しいです

575 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:34:52 ID:0YmYRk3X0
○ラダトーム○

ラダトーム・・・・・・・・ここはもょもと達の祖先、アレフが竜王を倒し、ローラ姫と共に
旅立ったという縁の地でもある。

アレフが旅立ち、あれから150年・・・・・町は王国制度というのが廃止され、今は共和国になった国である。
俺の世界で言ったら大統領や総理大臣に当たるものだ。

但し不思議なルールがある。ラルス16世が亡くなった後、ラルスの血を継ぐローラ姫が
アレフと旅立ってしまったため、王家の血がラダトームから途絶えてしまった。

そこで当時の大臣や有権者達は国民の中から王を選び、3年を任期に継続または交代するという
システムを作り上げた。まぁ共和国なので誰でも国の代表者になれるチャンスがあるらしい。
もちろん前任者は国民投票によって継続するか退任するかを決めているみたいなのだが。

って何で俺がこんなこと言っているかというともょもと達が町に入ってしばらくしたら
人が集まってきたのだ。

何でも、もょもとがアレフにそっくりなので人々が集まり、俺達はラダトームの博物館に案内された。

そこにはアレフの使った武器、防具、道具なのが展示されているのだがレヴァティンに関しては
書物より全くなかった。



576 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:35:32 ID:0YmYRk3X0
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。


577 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:01 ID:0YmYRk3X0
>>576はあぼんしてくださいorz

 タケ「(手がかりは無しか)」
 もょ「(まいったな。)」

ムーン「ねえ、みんな。竜王の城に行かない?」

サマル「どうしたんだい?急に。」
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
 リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
 もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」

この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。

竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。

サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
 リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
 もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」

根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。



578 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:38:51 ID:0YmYRk3X0
それにしても廃墟とは言え、進めば進むほど綺麗な雰囲気になっていっている。
誰かが最奥にいるんじゃないのだろうか?

タケ「(気がついたか?)」
もょ「(ああ。)」
タケ「(奥に誰かがおるって事や。まさか竜王か?)」
もょ「(それはないだろう。ごせんぞさまがたおしたはずだぞ。)」
タケ「(しかしムーンブルグやドラゴンの角みたいに邪悪な雰囲気は無いんだけどな。逆に引っかかるわ。)」
もょ「(わかった。タケのいういけんにもいちりがある。きをつけるよ。」

どーやら最下層についたみたいだ。
そこは地下とは言えない美しい場所だった。
例えると綺麗な庭園みたいな感じで心地よい場所だ。
しかもしっかり手入れがされてある。

 リア「きれい・・・・・・」
ムーン「これは凄いわね。地下でこんな物が見れるなんて・・・・・・・・」
サマル「それにしてもどうやって作ったんだろう・・・・?」

感心していると誰かがやってきた。初老の人間だ。




579 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:39:35 ID:0YmYRk3X0
 老人「何か用かな?」
 リア「あ、あの・・・」
ムーン「綺麗な場所だなって思いまして。」
 老人「久々に人間が来たもんだからちょっと嬉しゅうてのぉ。ホッホッホ。」
サマル「人間じゃないの?」
 老人「ワシ等は竜人族じゃ。見た目は人間と変わらんがの。」
 もょ「う〜ん、なるほどなぁ・・・・」

このじーさんにこやかに話して来るんだがどーしても引っかかる・・・・・・・・・・

 老人「ちなみに君達は何しに来たんじゃ?」
サマル「あ、ざいほ・・・・」

ムーンがとっさに口を塞いだ。

ムーン「竜王の城がどんなっているのか見学しに来たんです。
      まさかこんなに綺麗な庭園があるとは思いませんでしたわ」




 老人「なるほどなるほど・・・・・・・・・ってあの世に行く準備は出来ましたかの?」





 リア「えっ!?」

じーさんが態度を変えた。

580 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/07/15(日) 21:40:39 ID:0YmYRk3X0

 老人「ふん。忌々しいアレフの子孫共め!我が一族の積年の恨みを晴らしてくれる!!」
 もょ「どういうことだ!」
 老人「貴様はアレフにそっくりだ!ほっかむりをかぶった女はローラに似ている・・・・」
サマル「ま、まさか・・・・」
 老人「ワシは竜人族最後の生き残りのギィン。貴様等に復讐するチャンスが訪れたのだ。嬉しいことは無いわ。」
 リア「ど、どうしよう・・・・」
ムーン「バカ!逃げるわよ!」

ギィン「逃がすか!」

ギィンが紐みたいな物を引っ張ると壁に囲まれた・・・・・・逃げられない!

ギィン「生を掴みたかったらワシを殺すんだな!かかって来るがいい!そして絶望の底に落としてやる・・・」

もょもと&タケ
Lv.16
HP:112/112
MP:  2/  2
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
 もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
 タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ


581 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:12:42 ID:R+MRP4UbO
レッドマン氏キター(゜∀゜)ーーー!!
お帰りなさいませ。具合は良くなりましたか?

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 22:32:24 ID:XgncK/aJ0
待ってましたレッドマンさん!
久し振りの続編面白!
またいいところで終っちゃってるなぁ
竜王の城が名所扱いになってるのがワロ

583 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/15(日) 23:45:05 ID:b/E6FKHOO
レッドマンが久々の投下か………

( ;∀;)おかえり

584 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/16(月) 15:11:22 ID:z2PeEpKOO
レッドマン乙!そしてお帰り!!
竜王の曾孫敵なんだ!もょ達で相手になるのか…?



最近新人さんたちが頑張ってるけど、
レッドマン
タカハシ
暇つぶし        この三人は数スレ前から続いてる書き手だから、最後まで応援してる。



総長はまた失踪しちゃったし(´・ω・`)

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/18(水) 00:08:48 ID:A3n3p/VlO
>>◆IFDQ/RcGKI氏
GJ!泣いた。
エリス萌え。そしてアルスや仲間達が格好良かった。
>>レッドマン氏
GJ!そしてお帰り!じいさんの変貌ぶりが笑えた。

確かに。真理奈(漢字間違ってたらスマソ)が恋しい。

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/20(金) 12:22:34 ID:rZcYp+yIO
保守

587 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:18:37 ID:zMYJt4JZ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。あ〜あ、前回は情けないトコ見せちゃったなぁ。
   僕、物心ついた頃から人前で泣いたこと一度もなかったのに」
アルス「マジかよ! 俺もたいがい強情なガキだったが、そこまでひどくなかったぞ」
タツミ「ほっとけw 気を取り直して、サンクスコールいってみよー!」

タツミ「>>571様、はい実は仲間3人、僕がタツミだというのは知っていました。
   慣れない異世界生活の様々な面でサポートしてくれて、本当に助かってます」
アルス「>>572様、ピラミッドは夕日もきれいだぜ。バラモス討伐後は安全度もあがって、
   観光名所になってたからな。ちなみに中の罠は、実は外から切ることもできたりして」
タツミ「うう、アルスが最初から素直に教えてくれてればもっと楽に……まあ過ぎたことだけど。
   でもほんと、>>573様のおっしゃるとおり、すごくいい仲間です。
   エリスは……やっぱり間に合わなかったんですが、蘇生後も笑って許してくれました」
アルス「>>574様、良質なSSがいっぱいある中で一番だなんて、嬉しいこと言ってくれるぜ!
   タツミなんて、こんなワケのわからん主人公なのにな」
タツミ「君も主人公の1人だろうが。>>585様、GJありがとう!
   良かったねアルス、格好良かったって。でもエリちゃん人気あるね〜?w」
アルス「別に? エリスが人気あるのはいいんじゃね? 俺はなんっっっにも思わないけどな」
タツミ「はいはいw」
アルス「なんだよ、なにか言いたいのか。え?」
タツミ「なーにーも。ほら、行数も押してるから、そろそろ始めないと」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part1- 】
 リアルサイド

588 :Stage.7-1 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:22:00 ID:zMYJt4JZ0
  Prev >>558-569
 ----------------- Rial-Side -----------------

 ヴヴヴヴヴ.......! ヴヴヴヴヴ.......!

 頭のすぐ横で妙な音がしている。まくらを通して細かい振動が伝わってきて、ほっぺた
がくすぐったい。
「んあ……なんら?」
 それがマナーモードにした携帯が震えているんだと、俺はようやく気づいた。そう言え
ば昨日、夜間は着信音が出ないように設定しておけとタツミに言われて、そうしたような
覚えがある。
 その後の記憶は曖昧だ。俺はいつの間にか寝てしまったらしい。 
「うに……もしもし、タツミかぁ……?」
『ちょっとタツミはあんたでしょ? なに寝ぼけてんのよ』
「おぁああ!!??」
 予想外に高いキーで返答されて、寝ぼけ半分だった俺の脳ミソはいっきに覚醒した。
「エ、エリス?」
『……ちょっと、エリスって誰?』
 違った、まだ寝ぼけてんな。えーとこの子は、
「片岡百合子?」
『そうですよ。ってかなんでフルネームで呼ぶかな』
 苗字と名前のどっちで呼ぶかまだ決めかねてるからだが。
『まあいいや、おはよう。まったくいつまで寝てるんですか、天才クン』
 ユリコが呆れたように言う。俺、そんなに寝過ごしたんだろうか。
「――ってまだ朝の5時じゃねえか!!」
 時計を見て俺は思わず怒鳴った。電話の向こうでユリコが笑う。
『あはは、起こしてごめんね。とりあえず、出かける支度して降りてきてよ』
「出かけるだぁ? こんな早くにどこ行くんだ」
『いくら平日でも、このくらいの時間に出ないとイイ場所取られちゃうもん』
 なにを言われてるんだかサッパリな俺に、彼女はやはりわからない単語を、実に嬉しそ
うに投げてよこした。
『この季節はやっぱりお花見でしょ! ね?』

589 :Stage.7-1 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:24:21 ID:zMYJt4JZ0

 オハナミってなんだ。しかもこいつ「降りてこい」って言わなかったか?
「もしかして下にいるのか」
『玄関の前で待ってる。お弁当も敷物も用意してるから手ぶらでいいよ』
 おk、レジャー関連のお誘いですね。
 どうすっかな、そういうのは嫌いじゃないが、ゲームの方も気になるし。でも俺の分の
メシまで作って来てるんじゃ、断るのも悪いしな……。
『もしかして今日に限ってなにか用事がある、とか?』
 急に心配そうな声を出すユリコに、俺は「いやいや」と否定した。
「そうじゃないんだ、少し待っててくれ。すぐ折り返す」


 俺はいったん携帯を切って、タツミを呼び出した。
『はいはい、どしたのアルス?』
 タツミの方はワンコールですぐに繋がった。お互いかけても繋がらないってパターンが
多かったから、なんか新鮮だ。
「おう。どうだ、あれから落ち着いたか?」
『え……? そうか、そっちは朝になったばっかりだもんね。おとといはどーも』
 相方が苦笑する。言われて俺も時差のことを思い出した。ピラミッドの夜のことは、向
こうではもう2日前の話になるのか。

 俺が寝る前に消したらしいテレビの電源を入れると、優雅な音楽とともに海原を進む白
い帆船が映った。全体がオレンジ色がかっているから、あっちは夕方のようだ。
「もう船を手に入れたのか。……ってポルトガとバハラタを2日で往復したのか!?」
 とんでもない強行スケジュールだぞ。またこのバカは――。
 俺がムッとすると、気配が伝わったのかタツミは慌てて説明した。
『無理はしてないよ。僕の場合、システム外のショートカットが使えるから。魔法の鍵を
餌に、ロマリア国王からバハラタ座標の入ったキメラの翼をもらって、直行できたんだ』
 そこで、なにか思い出したのか深〜いため息をつく。
『でもそのせいでひずみが出てるのか、なんかストーリーがおかしいんだよねぇ』
「なにがあったんだ」

590 :Stage.7-1 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:26:44 ID:zMYJt4JZ0

『……バハラタに黒胡椒をもらいに行ったら、タニアさんの代わりに僕がさらわれた』
「お前がさらわれたんかよ!」
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシナリオの斜め上を行くんだ。
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
「いやその前に、なぜ勇者がカンダタに拉致られたのか聞きたいんだが――」
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
 ループしやがった。あまり話したくないことらしい。

 まあ俺も人を待たせてるし、そのうち番外で語ってもらおう。
 前回は場合が場合だったから、けっきょくユリコのことも、奨学金やあの不良少年エー
ジとの関係についても、なにも聞けなかったんだよなぁ。
 その辺の確認も、また後回しだな。

「今ユリコから、オハナミに行こうって誘われててさ」
 俺が本題を切り出すと、タツミは急に静かになった。1秒、2秒、3秒。
『あっそう。ユリコがね。うん、いいんじゃない?』
 おや〜、ちょっと引っかかるような言い方だな。しかも普通に名前で呼んでるしぃw
「本・当・にいいのか?」
『なんだよその言い方。いいよ、せっかく現実にいるんだから、楽しんできなよ』
 タッちゃんやーさしー。ではお言葉に甘えさせていただきます。
「んじゃ行ってくるわ。お前もなんかあったらすぐ電話しろよ」
『了解。あ! その前に僕のステータスだけ教えてくれる?』

 そうだった、お互いにそのことを思い出した瞬間に向こうのメンバーが戻って来て、そ
れも後回しになったのだ。
「よし、ステータスウィンドウ出せ」
『えーと? コマンドを思い浮かべればいいのかな』
 ピッという軽い音とともに、画面上に黒いウィンドウが展開される。


 ――その瞬間、俺は言葉を失った。

591 :Stage.7-1 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:28:50 ID:zMYJt4JZ0

『どうしたの』
「あー……詳細ステータスの方を出せるか?」
『やってみる。コマンド>つよさ>ゆうしゃ、かな』
 あいつの言葉に合わせて、画面上で自動的にカーソルが動き、勇者タツミの詳細ステー
タスが表示される。
 なんだこりゃ。こんなステータスってありか?
『ねえどうしたの。そっちからピッピッて聞こえるから、表示は出てるんでしょ?』
 タツミの不安そうな声に、俺はなるべく冷静に事実を告げた。

「実はその――レベルと経験値が『??』でな、最大HPは64だからまあ普通なんだが、
最大MPが999なんだよ。素早さ170は……星降る腕輪の効果か。それでも高い方だな。
賢さが245ってのはどうなんだろう」
『…………なにそのバランスの悪さ。レベル??ってどゆこと。MP999ってなに』
「俺にもわからん。現在のMPは975なんだが、お前、今日なにか呪文使った?」
『まだひとつも使えないよ、呪文の練習なんてしてるヒマないし』
「あ、しかも減った! 今974になったぞ、オイ」
『はぁ? 僕はなにも……あ』
 俺も同時に気がついた。
 もしかしなくても、携帯、だよな?

『えーー!!?? 番外の “携帯の電池がMP” って、あれ冗談じゃなかったの?』
「それに宿屋とかに泊まったあとで最大MPに戻ってないってことは、減った分は増えな
いってことじゃないのか」
『僕のMPはプリペイド式かよ! しかも呪文と電話代の合算請求?』
「ということになるな」
『っもう信じらんない! 電話代もったいないから切るね! 行ってらっしゃい!』
「あ、待てって……」

 ツー ツー
 切られてしまった。しっかし、今後はうかつに長電話できないのか。
 うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシステムの斜め上を行くんだ。

592 :Stage.7-1 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:32:32 ID:zMYJt4JZ0

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 途端に電話がかかってきた。表示は「YURIKO」になっている。
『遅いからかけたんだけど……やっぱりダメかな?』
 こっちはこっちで最初の元気はドコへやら、ふみ〜んと沈んだ声になってるし。
「大丈夫だ。今行くからもう少し待ってろ」
『良かった! 待ってる』
 ありゃま、ずいぶん嬉しそうだなぁ。

 そういやこの子、タツミに惚れてるんだっけ。
「あのさぁ、やっぱりユリコって呼んでいいか?」
 ちょっと聞いてみる。ぶっちゃけ「カタオカ」って言いにくいし。それに、タツミ君も
本当はそう呼びたいみたいですしね♪
『え? ……うん、あんたがそう言うなら、いいよ』
 ふはは、もじもじしてるのが見ないでもわかるww かわいーじゃんw

 エリスもそういうとこあったなぁ、なんてニヤニヤしつつ、俺は簡単に身支度を整えた。
 出がけに別室をそっと覗くと、いつの間に帰ってきていたのか、ヤツの母親が眠ってい
た。こんな時間に起こすのも悪いから、声はかけないでおこう。
 リビングのテーブルにメモを残して、玄関を出る。


 というわけで、現実生活2日目は友達とレジャーでGO!
 昨日はいろいろあったが、俺の異世界ライフ、まあまあ順調じゃねえ?

 ……向こうはワヤクチャみたいだが、まあ頑張ってくれたまえタツミ君。

593 :Stage.7-1 [オマケ] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:34:20 ID:zMYJt4JZ0

   ◇

アルス「はいこれ、宿スレ定番のステータス。だけどお前の場合、意味あるのかねぇ?」
タツミ「知らないよ! なんだよこれぇ……」

【タツミ】
レベル:??
HP:58/64
MP:974/999(プリペイド式)
装備:E聖なるナイフ、E旅人の服、E星降る腕輪

力:12
すばやさ:170
体力:19
賢さ:255
運の良さ:118
攻撃力:22
守備力:18
Ex:??

594 :Stage.7-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/22(日) 20:38:29 ID:zMYJt4JZ0
本日はここまでです。
ここからしばらくはリアルサイドとなります。

タツミ君のステータスが出るのは、たぶん最初で最後な気がします。
しかもさっそく間違えました。賢さは本文でアルスが言ってる「245」が正しいです。

595 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/22(日) 22:06:14 ID:bpKzZS+xO
255が最大値だから、まだあと10上がる余地が…

596 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 00:13:17 ID:RxCmUsPl0
IFDQ/RcGKIさんのSSが楽しみでならない今日この頃。

597 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 18:42:57 ID:fJZrIIgBO
ちょww
二人とも本編で「番外」とか言ってるしw

そういえばリアルサイドはまだまだ明かされてない事多いねぇ。

ともあれGJ!

598 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 21:53:36 ID:02RbB+Cw0
MPプリペイド式ってwww
今後のこと考えると笑い事じゃないんだが、祈りの指輪や魔法の聖水も効かないのかな。

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/23(月) 23:31:31 ID:geIYf+0Z0
更新ktkr
乙でございます。
エリスさん、無事復活よかった。

すごい呪文が使えるのかとおもったら、まさかこんな罠があろうとは・・・。
リアルサイド、楽しくすすむのかと思えば、なにやら、前回の不良集団や、暗躍するゲームサイド人や波乱の予感。


600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:28:15 ID:4amYMSqk0
4の人の続編をお願いしますm(_ _"m)

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:48:56 ID:qcf7COZc0
俺もその後のストーリーに興味はあるけど、
きれいに完結したものを無理に続けて欲しくはないなぁ。
これで、仮に続編がなんかの理由で完結しなかったら、
あの神作品がまるごと「未完」扱いになっちまうだろ。
それよか新作で心機一転、頑張ってもらいたいと思う。

おっと、これ以上は避難所かな。

602 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 20:44:42 ID:g0vVtQT10
厨にマジレスry>>601


603 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 13:41:47 ID:U3xqoqxLO
保守

604 :Stage.7-2 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:50:03 ID:wKfMMwcN0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
アルス「しかし劇中は春休みですので、俺は今日はお花見に行ってたりします」
タツミ「さくらいろ〜のじだいをわすれなーい〜♪ さて、本日のサンクスコール!」

タツミ「>>595様、まだ上がる余地はあるみたいですが、いまいちピンと来ませんね。
   あと10賢くなるって、どういう感覚なんだろう?」
アルス「>>596様、そんなこと言われちゃったらいろいろサービスするしか!
   夏休みスペシャルでも企画するかぁ」
タツミ「>>597様、リアルサイドの謎って、アルスが変にカッコつけて僕にちゃんと聞かないから、
   おざなりになってるってだけなんですけどね」
アルス「お前がなんか大変そうだったから遠慮してやったんだろうがっ。
   >>598様、こんなプリペイド勇者、心配する必要ないから思い切り笑ってやってくれ」
タツミ「MP節約しないとなぁ。>>599様、エリちゃんを気にかけていただいてありがとうございます。
   僕のフリをしているアルスには、ぜひ大人しくしてて欲しいんですが……無理でしょうね。はぁ」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part2- 】
 リアルサイド 続編

605 :Stage.7-2 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:52:19 ID:wKfMMwcN0
  Prev >>588-593
 ----------------- Rial-Side -----------------

 朝日に照らされた街並みが、のんびりと後方に過ぎていく。窓のすぐ外を等間隔でふっ
飛んでいく柱を見るに、けっこうなスピードなんだろうな――とは思うんだが、初めて乗
る電車は意外と退屈だった。
 風を肌で感じられるラーミアの方が「移動してる」って気はするな……。

 悪い癖がつきかけてる。
 俺は軽く頭を振って、黄金の鳥の幻影を追い出した。ことあるごとに向こうと比較して
懐かしがってたら、この先やっていけない。
「なんか三津原も眠そうだな。俺も倒れそうだよ……ふぁ〜」
 向かいの席で、戸田和弘が大きくあくびをした。
 この長身のスポーツ少年も、片岡百合子に朝早くから駆り出されたとのこと。マンショ
ンの下で再会した俺たちは、「では出発ー!」と腕を振り上げるユリコを挟んで、お互い
に苦笑したのだった。
 朝から元気いっぱいな彼女を少し「ウゼえw」と思わないでもなかったんだが、パステ
ルブルーのワンピースでキメちゃってるユリコちゃんは、ちょっとホンキでかわいいので
俺は許す。カズヒロもそうなんだろう。男って単純よねぇ。

「しかし、あの不良どもをよく振り切れたな」
 俺が聞くと、カズヒロはまたあくびをした。
「あいつら頭悪いからなぁ。こういう言い方はなんだが、所詮、三流高校の連中っつうか」
 そういやあの三人が着てた服、タツミが学校で着てるのとは違ってたっけ。こっちの学
生って、他校の生徒とはほとんど交流が無いものと認識していたが。なんか複雑な背景が
ありそうだ。面倒は避けたいんだがねー。
 カズヒロがちょんと足の先で俺をつついた。
「前にも言ったけど、困ってたら遠慮しないで頼れよ? うちの親父ってほら、市会議員
とかやってっから、あいつらもあんまり俺には手ぇ出してこねえしさ」
「ん、わかった」
 カズヒロの親父さんはエライ人なのか。覚えとこ。

606 :Stage.7-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:53:59 ID:wKfMMwcN0

「お待ちどう。はいどうぞ」
 そこにユリコが戻ってきた。俺とカズヒロに冷たい缶をくれて、となりに座る。
「探したんだけど、豆乳は売ってなかった。お茶で良かった?」
「そうか。いやいいんだ」
 牛乳が体質的に飲めないだけで好き嫌いはねえから、独特の渋みがある「緑茶」も平気。
「お腹空いたでしょう。待ってね」
 ユリコは足下に置いてあったバスケットを膝に抱え上げて、中から半透明の箱を取り出
した。サンドイッチとサラダが、彩り良く収まっている。
「これ朝の分だから、全部食べちゃっていいからね」
「おー、うまそうじゃん」
「いただきまーす」
 あ、うめえ。昨日は結局ロクなモン食ってねえからな。旅してると丸一日食えないなん
てザラだったから苦痛じゃないが、さすがに腹減ってたから幸せだ。
「しっかし片岡も上手になったよなー」
 すぐに二つ目のサンドイッチに手を伸ばしながら、カズヒロが思い出したように笑う。
「俺と片岡、中1ん時に同じクラスだったんだけどさ、家庭科の実習で片岡が作ったマド
レーヌ食って、ハライタ起こしたやつがいたんだぜ」
「マジで?w」
「戸田! もうあんた食べるなッ」
 サッとカズヒロの手からサンドイッチを奪い取るユリコ。すかさず新しいのを取ろうと
した彼から、俺も素早く箱ごと遠ざける。
「だっ、お前ら、なにその連携プレー」
「自分は女の子とご飯の味方っす」
「可哀想に、儚い友情ねぇ」
 一拍おいて、三人で同時に吹き出した。

   ◇

 それから俺たちは二駅目の「サクラ坂台」ってところで降りた。謎の単語「オハナミ」
が出がけに引いた辞書で「花見/桜の花をながめ、遊び楽しむこと。」だとわかったので、
目的通りの地名だ。

607 :Stage.7-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:55:24 ID:wKfMMwcN0

 駅の正面から真っ直ぐゆるい坂が続いていて、その先に、所々淡いピンクに染まった山
があった。
「小学校の何年生だったか、遠足で来たっきりだな」
 カズヒロが懐かしそうに山を見遣る。ユリコが相づちを打った。
「あたしもそうだよ。タツミはその前に引っ越したから、来るの初めてだよね」
 らしいな。ヤツの生まれはこの街だが、幼い頃に遠くに引っ越して、今の高校に入るた
めにまた戻って来たと記憶している。ユリコもヤツの幼なじみではあるが、せいぜいここ
一年の付き合いなのだ。ありもしない「想い出話」に付き合う必要がないから、その辺は
気楽でいい。
 
「このあたりでいいか。三津原、そっち引っ張って」
 20分くらい坂をのぼったところで、カズヒロが敷物を取り出した。俺が手伝ってる間に、
ユリコが風で飛ばないように重石(オモシ)を持ってきて四隅に置いた。
「貴重品だけ持てば大丈夫だろ。この上に広場あったよな。フリスビー持ってきた」
「確かあそこから海も見えたよね」
 荷物を置いてさっそく歩き出した二人の後に、俺もついて行く。
 それにしても、どの木も満開で見事なものだ。
 アリアハン城にもジパングから輸入された木が一本だけあって、エリスと夜中にこっそ
り忍び込んで見に行ったことがあった。月夜の桜もきれいだったな。懐かしい。


「タツミ行ったよー!」
 薄い青空をオレンジの円盤が飛んでくる。背面キャッチ! おーっと歓声を上げる二人
に(かなり力を抜いて)投げ返してやる。
 いいねいいねー。こういう普通のガキっぽい遊び方、憧れだったんだよ。旅の間はどこ
行ってもモンスターの影がちらついて、のんびりできなかったし。
「あ、ごめーん!」
「こーら、どこ投げてんだw」
 その方向は、先が急な坂になっていて、そこを超えると取りに行くのが面倒になる。本
気を出せば取れないことはないけど、ここは追いつけないのが普通かな。

608 :Stage.7-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 14:56:47 ID:wKfMMwcN0

 見当違いな方向に飛んでいったフリスビーは、たまたまそこにいた男の手に収まった。
坂の手前の大きな桜の木に寄りかかって、男はフリスビーをしげしげと眺めている。
 黒いサングラスに、上下は黒いレザー、かな? そんなのを着ている。風雅な桜の下に、
全体的にタイトなその格好はあんまり似合わない気がした。
「すんませーん」
 投げ返してくれ、の意味で声をかけたが、男は逆に俺に手招きした。まさか「ちゃんと
ここに来て謝れ」ってんじゃねえだろうな。

「すいません。わざとじゃないよ」
 言いながら近づいていくと、男はサングラスを外して胸のポケットに納めた。
「ここ、いい場所だな」
 男の背景には、住宅街が見下ろせて、その遠くにうっすらと青い水平線が見える。
「あっちの二人は友達か?」
 こっちを見て、彼はフッと笑顔を浮かべた。まだ若い、20代前半くらいか。
「ですけど……あの、それ返してくれませんか」
「ああ――」
 男は円盤を持った手をスッと後ろに引いた。そして……思いっきり海の方に投げた。
 唖然とした俺だったが、男がまだニヤニヤしているのを見て、ついカッときた。
「なにすんだよ!」
 そいつの胸ぐらをつかみかけた、その瞬間。
 俺は逆に腕を取られ、坂に投げ出された。

   ◇

「とっとっとととととと、とあー!」
 前転で着地成功! こんくらいの奇襲で無様に転がる勇者様じゃないぜ。
 って、奇襲されたのか俺?
 ザン! と土を蹴る音がする。反射的に横に避けると、一瞬前まで俺がいた場所に、男
のごっついブーツがめり込んでいた。

609 :Stage.7-2 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:01:06 ID:wKfMMwcN0

「てめ……!」
「あんなくだらないお遊びより、こっちの方が楽しいだろう?」
 男は笑顔のまま、太ももに縛り付けていたホルダーから、刃渡り30センチはあるブレー
ドナイフを取り出した。
 マジかよ。
「タツミ、大丈夫か!?」
 カズヒロとユリコが坂の上で叫んだ。降りてこようとする二人を手で制し、
「来るな!」
 怒鳴り返してから、俺は身を翻した。
 場所を変える。そろそろ増えてきた桜の見物人や、あいつらを巻き込まないためもある
が、なにより俺が思い切り動けねえ。

 桜並木が続く歩道をそれて林道に飛び込むと、男も後を追ってきた。山林の奥まで行け
ば、簡単には第三者の介入もないだろう。
「足も速いな。防御力はどうかな?」
 再び地を蹴る音がする。柔らかい腐葉土の上で音がするって、どんだけの脚力だよ。
 林道のサイドには、散策者が迷い込まないようにか黄色のロープが渡されている。俺は
ロープを通している鉄製の杭を一本引き抜いて、振り向き様、横に払った。
 金属がぶつかる甲高い音が響き渡る。受けた力を手前に逃して、邪魔なロープを相手の
ナイフで切り落とす(いや、わざとやってくれたか)。
 バックステップで距離を取った。
「あっちのヤツ……だよな? 降りかかるメラはギガデインで返すのが俺の流儀だぜ」
「でもこっちじゃ呪文が使えないだろう」
「まあな。名前と理由を述べる気はあるか」
 一応尋ねてみたが、相手は肩をすくめるだけだ。
 あーそう、じゃあもう聞かんよ。――言い訳もな。
「ったく、せっかくの『祝・青春』を3レスで台無しにしやがって、覚悟しろよ」
「覚悟なんてマジメに構えることでもないだろ。これは……お遊びだ」
 左肩をやや下げて、右肘をしぼるように引いてナイフを構える。
 俺と同じ型?
 そう認識したと同時に、相手は一気に間合いを詰めてきた。

610 :Stage.7-2 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/07/27(金) 15:05:29 ID:wKfMMwcN0
本日はここまでです。

次はホントに夏休みスペシャルでもやろうかな、と。
あれ、でもお盆過ぎたら夏休み終わってますか?
それまでにあがらないかも……ダメじゃんw

611 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/27(金) 18:56:47 ID:Q8ne6+leO
乙でした!
着実にホームシックにかかりつつあるアルス少年16歳にニヤニヤしてたら
また波乱の展開キター-(゜∀゜)!!
同じ型ですか、勇者対勇者とかだと燃えますね。

612 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 00:34:25 ID:hp7T1Iv8O
女勇者も出してほしいです
名前はアリスとかで

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/28(土) 12:54:58 ID:dQ/vr3cb0
おおお、更新されてるッ!!!
乙です。

黒服ビンテージ男、怖ぇぇぇ・・・。
いくら勇者VS勇者でも武器がないのはきついですね。アルスがんがれーーー。
リアルサイドでは死んだら生き返らないぞー。
(と無責任に応援をする)

エリス→エリちゃんですか。仲良くなって親しみがこもってる感じでいいですよね。
惚れたな?(w

614 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 15:24:38 ID:mbqmMfCLO
GJです!
まさかの勇者対決!!
続きが楽しみで夜も眠れません。

ゆりこ萌え。

615 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 21:06:36 ID:bUuRQZyW0
ゆりこたんもかわいいけど、やっぱり俺はエリちゃん萌えだな。

616 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/29(日) 22:57:48 ID:Pw4MmSo7O
>>613はビンテージとボンテージ(皮革)を間違えてると思うんだ…

617 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 00:47:53 ID:B9FTepogO
アルスとタツミだけじゃなく、書き手もレベル上がってる感じだなぁ。
マターリとシリアスのバランスが絶妙。


>>振りかかるメラはギガデインで返す
向こう(ゲームサイド)のことわざ?w

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 09:23:17 ID:VMJs1JomO
>>617
ギガデイン使えるのは勇者だけだもの
アルスが自分で考えた格言じゃね?

619 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 16:30:18 ID:5bpRYANeO
小説途中でほっぽってた
ずいぶんスレ進んでんだな

620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/30(月) 23:16:11 ID:N80Kk7rZO
>>619
おかえり

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 01:04:28 ID:cyYxvVr0O
>>619待ってたよ。

622 :ドラクエ3 ロマリア編3 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 10:49:58 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108

巨大都市、ロマリアはそんな言葉がよくにあうのである。
体調もよくなりカラッカラによく晴れている。買い物日和といえるのではないだろうか。
ぼくらの装備品はもう寿命をこえてぼろぼろになっている。
所持金といえば一万ほどあるのだから、贅沢はできないにしても、一通り装備品をそろえるには十分ある。
サイモンはきのう久々に酒を飲んだせいか、まだ酒がぬけてないみたいだった。
男戦士サイモン「おう、ヒーロー、今日は天地がグルグルまわってんなぁ…」
ヒーロー…ぼくのことらしい。
エリーとナナは一日休んで実に晴れやかな表情をしている。
女武闘家エリー「武闘家といえば、つめの武器なのよ? 素手じゃさまようヨロイにまた苦戦するわよ、…もう」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「防具を新調するだけでだいぶ変わると思うよ」
女武闘家エリー「そうかしら……、うん、そうね…。次の街はあるわよね、きっと」
女僧侶ナナ「新しいバンテージにかえましょうエリー、ね」
女武闘家エリー「切らしてたかな?あ、もうない…あぶなかった」

そんなこんなで楽しい久々の装備新調も終わり、ぶらぶらと買い物をしていた。
ある占い師がぼくらを呼び止めた。
謎の占い師「運命に逆らいし、選ばれしもの達…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「? どなたですか?」
男戦士サイモン「ふうん、なんかみえるのかい?」
謎の占い師「おまえたちはこの旅の末にかけがいのないものを失うぞ。バラモス…いや…。もっと巨大な悪によって…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「旅をやめろと? そういうんですか」
謎の占い師「…この道具を持っておくがいい、運命をかえられるかもしれん」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「これはなんですか?」
謎の占い師「虹のペンダント」
風が吹き荒れるといつのまにか、占い師は消えてしまった。

623 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/07/31(火) 17:49:46 ID:6L8o2ACI0
みなさま、お疲れ様です。
ここまでまとめました。
不備がありましたらご指摘ください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 17:59:56 ID:cyYxvVr0O
>>622
GJ!かけがえのないものを失う…気になるな。

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/31(火) 18:02:10 ID:cyYxvVr0O
>>623久しぶり!まとめ乙

626 :ドラクエ3 ロマリア編4 ◆Tz30R5o5VI :2007/07/31(火) 20:45:01 ID:ZeyMjiZSO
前回までのあらすじ>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108>>622

ロマリアの占い師…。虹のペンダント……。
これがなんだというのだろう。
男戦士サイモン「すてちまえよ。そんなもん」
女僧侶ナナ「いえ、不思議な波長の魔法力が凝縮されていますよ…強い力と意志力を感じます」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「じゃあ、もっておくよ」
道具ぶくろに入れておくことにした。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ん?」
二人の兵士がぼくらの前に駆け足できた。
女武闘家エリー「なんなの。あんたたちは!?」
ロマリア城の兵士A「あっ、あなたたちが、勇者御一行でありますか!」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…はい、そうですが」
男戦士サイモン「なんなんだい」
ロマリア城の兵士B「わが国王があなたたちにご相談したいことがあるとの事です! とにかく城に来て下さい、お願いします! 緊急をようします!!」
さっさといってしまった。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「何でこの国に来てるって知っているんだろう?」
女武闘家エリー「あなたね…、ルイーダの酒場で登録した冒険者カード持ってるでしょう。それは本人の位置と健康状態を世界中に知らしてるのよ」
なんという恐ろしいカードだ。
魔王にも知られてたりして、………そんなわけないか。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「なんかあったら、助けにきてくれたりするのかな」
男戦士サイモン「戦闘でたおれたりしたら、体がカードに収納されるんだ。全滅したら最寄りの教会にルーラで飛んでいくんだぜ」
ハイテクだ。
なくさないようにしよう。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「よし。それじゃあ買い物は終わったし、城に行こう」
男戦士サイモン「たしかこの国の王サマは遊び人で有名だったぜぇ。…めんどくさいことにならなきゃいいがなぁ」

627 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:40:19 ID:SVgYayco0
次スレの容量になりましたので立てたいと思います。
テンプレを出す前に告知をさせてください。

10スレ目を迎えるにあたり、「10スレを記念して合作を作ろう」企画が進行しています。
誰でも参加可能で、現在話し合いが以下の掲示板にて進行しています。
10スレ記念共同作品 制作進行専用掲示板
ttp://bb2.atbb.jp/ifdqstory/index.php
提案や書いてみたい方など募集中ですのでぜひ参加をお待ちしています。

スレのテンプレですが、お絵かき掲示板とファイルアップローダーも追加しました。
次レスへ書きます。

628 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:41:48 ID:SVgYayco0
スレタイ:もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
----以下テンプレ----
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
----以上テンプレ----

629 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:48:29 ID:SVgYayco0
次スレです
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

合同作品も含め、10スレでもよろしくお願いします。

630 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:30:50 ID:8wfabvRD0
−前編−

まだまだボケる年ではない。
そう思っていたけれど、その考えは改めなくてはならないかもしれないわ。
自分がどこにいるのか、まったく思い出せないのだから。
確かに私は旅行へ出ようとしていた。しかし、飛行機に乗り遅れた。
だからここは旅行先ではない……はずよね。
部屋の中はどこかの地味なホテルの一室のようだった。
窓の外を見ると、どこか外国の田舎の風景のようね。
はっきり言ってまったく知らない場所だわ。つじつまが合わない。
私は家に帰って寝たはずだわ。これは夢なのかしら?
それとも飛行機に乗り遅れたのが夢で本当は旅行に来ていたのかしらね。

「あら、目を覚めましたのね!」
部屋に若い娘が入って来てそう言った。
外国人のようにも見えるけど日本語が達者ね。
このホテルの従業員だろう。もうチェックアウトの時間なのかしら?
そういえばここの宿泊料金はどうなっているのかしら。
ここが旅行先ならお金はツアー会社に払い込んである。だが、そうでないとしたら大変だ。
私は自分の手持ちはいくらくらいあったかしらと考えていた。

ホテル従業員の話では、私はこの町の外に倒れていたらしい。
それを助けてここまで運んでくれたという。お金のことは心配しなくていいとまで言ってくれた。
この世知辛い世の中、奇特な人もいたものだわ。
しかし、どうして倒れていたのか思い出せない。きっとどこかで頭を打ったに違いない。
記憶があいまいなこと以外自覚症状はないが早めに病院に行ったほうがいいわね。
その前に、自分がどこにいるのか確かめなくては。私は従業員に尋ねた。
「すみません。最寄の警察署はどこかしら?」
私の言葉に従業員はきょとんとした顔をしている。
よもやここは日本国内ではないのかしら。私は従業員にここはどこなのかと尋ねた。
「ここはリリザの町ですよ。」

631 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:32:41 ID:8wfabvRD0
リリザ。聞いたこともない地名だわ。私は町の中を歩いてみることにした。
私のいたところはホテルというより宿屋とでも呼んだほうが似合いそうだった。
分からないことだらけだが、私なりに考えてみた。
そして、ひとつの結論に達した。
ここは映画村のようなところなんだわ。
外国風の町並みはドラマや映画を撮るためのものでしょうね。
リリザというのもひょっとしたら『リリ座』という劇団の名前なのかもしれない。

気がつくと私は町の外れに来ていた。
町から出れば都会の町並みが見られると思ったがそうでもなかった。
なんだかすべてが非現実的な気がするわ。
そんなことを考えていたせいか、もっと非現実的なものを見てしまった。

落ち武者だ。

武将というよりは西洋の兵士のような服装だが落ち武者という言葉がぴったり。
その落ち武者はゆっくり私の方に近づくと持っていた槍を構えた。
冗談はやめてほしい。これじゃホラー映画じゃないのよ。
落ち武者はその槍を振り下ろした。

落ち武者の槍は私の後ろにいた大きなねずみに刺さっていた。
こんなねずみ見たことない。保護動物になっていたりしないのかしら。
むやみに珍しい動物を殺したら怒られるだけではすまないかもしれないわ。
そんなことを考えていると落ち武者が叫んだ。
「ムーンブルクの城が陥落した! こんなところにいては危険だぞ!」

どうも映画村という私の考えも間違いだったようだわ。
この落ち武者の人の怪我も特殊メイクには見えない。
そもそも私以外に観光客がいないというのもおかしな話だったのだ。

632 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:33:42 ID:8wfabvRD0
それよりも落ち武者の人の怪我を治療しなくてはならない。
私は彼を無理やりリリザの宿屋に連れて行くことにした。
宿屋の人に迷惑をかけてしまうが我慢してもらおう。
「私は一刻も早くローレシアのお城に……」
などと言っているが、そんなことを気にしている場合ではないわ。

私と宿屋の娘の必死の看病の甲斐もあり、落ち武者君はずいぶん回復した。
しかし、彼はまるで喜んでいなかった。
「私は命に代えてもローレシアの城に行かなければならなかったのに……」
などと泣きそうな顔で言っている。
「私だけが生き残ってしまった……」

この青年は自分の仕事に命をかけているようだわ。
「あなたは仕事熱心なのね。それなら仕事を全うしなくちゃいけないわね。」
男ってみんなこういう考え方をするのかしら。
「いまからでもローレなんとかに行きましょう。それがあなたの仕事なんでしょ?」
女の私にはどうにも理解できないことだ。
「なぜあなたが遅れたのか、私が一緒に言って説明するわ」
理解はできないが、励ますことはできる。
こんなところで腐っているより何かしているほうがいい。

元落ち武者の彼は一緒に来なくていいと言ってきた。
「その代わりサマルトリアへ行ってくれませんか。」
などと頼んできくる。私はよくわからないまま承諾した。
「それで、そこへ行くバスか電車はどこに行けば乗れるのかしら?」

633 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:35:12 ID:8wfabvRD0
……まさか歩いていくことになろうとは。
サマルトリアというのはお城で王様までいるという。ここは日本じゃなかったのね。
とにもかくにも王様にお近づきになれるのはチャンスだわ。
何とか王様に取り計らって日本に帰らなくては。
旅行に行っていることになっている私を誰も探してはくれまい。

私は『せいすい』と呼ばれるものを振りまきながら歩いていた。
こうするとモンスターが近寄ってこないという。
何でもこの辺りでは害獣や害虫をそう呼ぶらしい。

半日ほどかけてサマルトリアのお城らしいところに着いた。
後はあの落ち武者の兵士から預かった手紙を渡せばいい。
さすがに疲れたわ。日ごろからもう少し運動をしておけばよかった。
日本に帰ったら何か運動を始めようと思った。でも、結局しないのよね。

城下町ではよくない噂が広まっていた。それは噂ではなく事実なのだが。
どうやらムーンブルクのお城のほうから煙が上がっているのが見えたらしい。
城に何があったか、わざわざ私が伝えに来ることもなかったかもしれない。
私が煙が見えたなら消防に通報しなさいよと言ったら変な目で見られた。

さすがに単なる旅行者がこんなに簡単に王様に会えるとは思わなかった。
ムーンブルクからの使者だと思われているのかしら。
「せいすい」を使えるなら大丈夫だろうって、どんな基準なのよ。
この国はセキュリティーなんて気にならないほど平和なのかしらね。

私は王様に手紙を渡した。これで私の役目は終わりだわ。
王様は手紙の内容、ムーンブルク陥落に驚いていたようだが覚悟していたようでもあった。
きっとこの国はムーンブルクの同盟国で戦いに協力しなければならないのでしょうね。
平和そうなこの国が戦争に巻き込まれていくのかしら。
なんだかやるせない気持ちになったが私にはどうしようもない。

634 :冒険の書2 ◆8fpmfOs/7w :2007/08/01(水) 21:36:13 ID:8wfabvRD0
私は自分のことで手一杯なのよ。私は自国へ帰れるように王様に願い出てみた。
しかし、王様は日本を知らなかった。日本の知名度は思っていたより低いのかもしれない。
「お主は違う世界から来たのかも知れぬな。伝説の勇者ロトも異世界より来たと言う。」
この国では伝説や神話が事実とされているのかしら。

「もしそうならば、わが願いを聞いてくれ。息子の旅を手助けしてほしいのじゃ。」
王様の話によれば王家の人間は伝説の勇者であるロトの子孫なのだという。
そして世界に危機が訪れたとき悪を討つことになっているそうだ。
なんとも荒唐無稽な話だ。この人は本気でそんなことを言っているのかしら。

王様は息子を紹介してきた。……まだ子供じゃないの。
私は幼い王子様に旅に出ることに不安はないか聞いてみた。
「伝説の勇者ロトも言っています。『勇者だって暗いのは怖い』って。」
どんなご先祖様よ。とにかく怖いことは怖いらしいわね。さらに王子様は続ける。
「この国を作ったご先祖様の言葉です。『ドッキリだと思えば何でもできる』と。」
……もうちょっとマシな言葉は残せなかったのかしらね。

私は断ろうと思ったが無駄だった。拒否すると『そんな酷い』と訴えかけてくる。
有無を言わせぬ強制力。きっとこれが勇者ロトの力なのね。
結局彼がローレシアの王子と合流するまで旅のお供をすることになった。
……私とこの王子様が2人でいたら周りからどんな関係だと思われるだろうか。
親子というにはちょっと無理があるわよね。

「よろしくお願いします。ええと……」
「私の名前はメグミよ。よろしくね。」
「お世話になりますメグミおばさん。あ、おばさんって呼ぶのは失礼かなぁ。」
そんなことを本人に聞いてどうするのよ。
確かにこのちょっとずれている王子様を一人旅に出すのは不安だわね……

後編に続く

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/01(水) 22:10:38 ID:Tmrywm0z0
新作(?)キター。

メグミお姉さま、乙でございます。
落ち武者さんも助かってよかった。
それにしても、メグミさんはいくつくらいなんだろう・・。
本来の勇者+落ち武者さん+メグミさんでにぎやかになる予感。

ちなみに、このスレは容量制限で、もうすぐ書きこめなくなるようです。
次スレは>>>629です。

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 08:38:54 ID:T1jZlh160
まだ26KBあるからいけないこともない希ガス

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 12:01:40 ID:Za5GHFwF0
自分も埋め用短編を書いているんですが、ちょっと長くなってきました。
1行40文字折り返しで12レスがビッチリくらいだと、足りなくなりますかね……。

638 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:33:17 ID:aEtRfsXsO
>>637
投稿してみて足りなければ続きは新スレに書けばいいじゃない

639 :Stage.? 埋め用番外編 ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:52:07 ID:Za5GHFwF0

タツミ「なんか今回は『埋め用』の番外編やれって」
アルス「あれ、俺はなんも台本もらってないぞ?」
タツミ「そうなの? 僕の方はさっき渡されたよ。まだ中身は見てないけど」
アルス「お前だけってことは、タツミの知られざる過去とか、そんなんじゃねえのか」
タツミ「そういえば今回はリアルサイドで撮影って言われたな。ひとまず指定スタジオに移動するね」
アルス「おう、行ってらっしゃーい」


アルス「でもなんで俺の出番ないんだろ?」

……バタバタバタ!!
???「きゃーん☆ 遅刻しちゃったお〜。タツミくんと一緒に行く予定だったのにぃ。
   すみませんそこのお兄さん、りあるさいどのすたじおって、ドコですかぁ?」
アルス「へ? ああ、えーと……あっち、だけど」
???「りょーかーい! 急がなくっちゃネ♪」
……バタバタバタ!!

アルス「い――いまの格好って……もしや……?」

   ◇

タツミ「すみません遅くなりましたー。着替え室ってどこですか?
   ってガクラン? 僕、中学も高校もブレザーのはずなんですけど……え、パラレル……?
   いや実は、どうせすぐ頭に入っちゃうから、まだ台本読んでなくて―――(パラララ.....)


   ちょ………………………………はい?…………………………………………なにコレ」


640 :斬殺勇者アリスちゃん![1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:53:29 ID:Za5GHFwF0

【第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん!】

 そりゃ確かに現実は厳しいものですし、「誰かゲームに出てくるようなスゴイ人物が、
都合良く味方になってくれないかなぁ」なんて気持ちもあったことは認めますよ。
 でもあくまでゲームはゲームのままであるからこそ、心から楽しめるものだと僕は思う
わけです。よく「異世界の英雄に会ってみたい」なんてアホな夢語るヤツがいますけど、
別に僕はそういうのには、あまり興味はなかったんです。

 なかったん……ですけども!

「やほー、タ・ツ・ミ・く・ん♪ もう朝なんだよ☆ 起きないと遅刻しちゃうよーん♪」
 クリンクリンの可愛らしい声とともに、「彼女」が僕の布団をひっぱろうとします。
 ですが僕は16歳(花のシックスティーン)の健全な男の子でありまして、いかに普段は
品行方正で通っている高校生でも、眠って起きたあとの身体に生じるごく自然な生理的現
象にまで意識的に紳士な態度を貫くことは困難なのであります。
「ダメダメダメー! アリスちゃん! 今はお布団引っ張っちゃらめぇぇえ!!」
 僕は必死で(そりゃもう必死で)抵抗したのですが、なにせLv.99で「ちから」もMAX
値255を余裕で誇っているアリスちゃんは、いともあっさり僕の秘密のベールを剥ぎ取っ
てしまったのでした。

「っもう、タツミくんのお寝坊さん☆ ほらほら、丸くなってないで起きた起きた〜♪」
「ダメだよやめてよアリスちゃん! ああ、首根っこをつかまないで!」
 握力も255(Kg)なんじゃないかというアリスちゃんが、布団の上でうずくまり、前の方
(主に中心部)を懸命に隠している僕の後ろ首をむんずとつかんで、無理やり引き起こそ
うとします。
「ぐ、ごが…や゛め゛…ア゛リ゛ズちゃ゛………!」
 その瞬間、僕の延髄が「ベキェベキャベキャ」と潰れていくのが自分の耳にしっかり聞
こえました。鼻と口からダラダラ血を流しながらガクリとのけぞった僕に、アリスちゃん
は「きゃあ、大変ッ」とまるで「いやーんクッキー焦がしちゃったぁッ」みたいなノリで
悲鳴を上げました。

641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 16:54:03 ID:LWmhhO5x0
リアルタイム遭遇ktkr

642 :斬殺勇者アリスちゃん![2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:55:49 ID:Za5GHFwF0

「ゴメンねぇ、タツミくん! ベ・ホ・マ〜☆」

 ティロリロリロ♪

 おなじみの呪文とともにどこで鳴っているのか謎な効果音が響き渡り、プロレスラーが
デモンストレーションで潰した空缶のようにひしゃげていた僕の延髄が、みるみる元に戻
ります。
「おっはよ〜だよン、タツミくん♪ サワヤカなお目覚めだネ☆」
「全然サワヤカじゃないよアリスちゃん! 今キレイな川の向こうに死んだおじいちゃん
が見えたよ!」
 ある意味サワヤカかもしれないと思いつつ抗議する僕でしたが、アリスちゃんはニコニ
コしたまま、空中にいくつか浮き上がった小さなフキダシには「?」が一個ずつ書いてあ
るだけです。
「と、に、か、く、ボクのスペシャ〜ルな朝ごはんも用意できて……」
 ふとアリスちゃんが言葉を途切れさせました。大きな愛らしい瞳がパチパチと2、3度
まばたいて、僕の腹部からやや下の方に視線を向けて固まっています。

 あ。

「い……いやぁぁぁあ!!!」
 アリスちゃんは今度こそ掛け値なしの悲鳴をあげて、背中の「王者の剣」をジャキンと
抜き放ちぃぃぃぃぃぃ!!!
「ぃぃぃ落ち着いてアリスちゃん! 朝なんだから仕方なqあwせdrfgtyありす!!!」
 ズゴバァ! と王者の剣が僕の胴体を真一文字に薙いでいきます。僕の上半身と下半身
はそれぞれの方向にキリモミ状態で吹っ飛んでいき、押し入れのフスマに頭から突っ込ん
だ僕は再びキレイな川のほとりに立っていました。

 ティロリロリロ♪

 彼女の回復呪文で、ズルズルズルっと下半身がくっつきます。僕はぜぇはぁ言いながら
フスマから這い出しました。

643 :斬殺勇者アリスちゃん![3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:57:54 ID:Za5GHFwF0

「またやっちゃったぁ。ゴメンねタツミくん。テヘ☆」
 茶目っ気たっぷりに舌を出すアリスちゃん。
「もう、アリスちゃん王者の剣はやめてって……」
 そこで僕は、なにかブニュっとした生モノめいた感触を足の裏に感じました。見ると、
つい先日デパートの精肉コーナーの隅で見かけたカタマリの、もう少し血色のいいモノが
転がっているではありませんか。
「ぎゃあぁぁあ!!! アリスちゃん、なんかしまい忘れてるよぉ!!」
 途端にゴプッと吐血した僕は、三たびキレイな川のほとりへといざなわれたのでした。


   ◇


 僕こと三津原辰巳は、南龍探高校1年生。ちょっとIQが200近かったりジャニーズ系の
カッコカワイイ容姿だったりスポーツもそれなりにーみたいなところはありますが、ごく
普通の男の子です。

 ところが昨日、なにかのきっかけでフッと昔のゲームがやりたくなり、幼少にハマって
いたドラクエ3を始めたときでした。なんと「アリス」と名付けていた最高レベルの女勇
者さんが、突如まばゆい光とともにテレビの画面から飛び出してきたのです!
「ピコピコピコ〜ン☆ ボクはアリス♪ キミを守るためにゲームの世界からやって来た、
正・真・正・銘の、勇者ちゃんだヨーン!」
 そのとき僕は、具現化した彼女の強烈なボディータックルをまともに胸に受け、折れた
肋骨が肺に刺さってのたうち回っていたので、彼女の口上の半分も聞いてあげることがで
きませんでした。
「ああ! ごめんなさい! ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪


644 :斬殺勇者アリスちゃん![4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 16:59:46 ID:Za5GHFwF0

 彼女が指を空中でクルリンと回すと、僕の胸腔で肋骨が所定の位置に戻っていきます。
「な、な、なんだぁぁああ!!!???」
 僕は循環器系が正常に働き出したと同時に手足をめちゃくちゃに動かし、とにかく彼女
から距離を置こうと部屋の隅まで後退しました。

 目の前には、それはもう愛くるしい笑顔の少女が僕を見つめて小首をかしげています。
 ショートの黒髪には青い宝石が埋め込まれたサークレット。首周りから背中を紫のマン
トが覆い、その下には水色のチューブトップスと同色のミニスカート、足は黄色のスパッ
ツで、土足ブッちぎりの革ブーツといういでたちです。
 ロリロリキュートな表情に似合わず、しっかりばっちり発育しているカラダ。しかも彼
女がズイっとさらに近づいてきたので、トップスの上からタプンと揺れる渓谷がしっかり
見おろせてしまいます。なんという絶景かな。僕はゴクリと唾を飲み込みました。

「実はキミは、大魔王ちゃんに狙われてしまったんだよネ」
 キャロリン♪とサウンドエフェクトがつきそうな可愛い声で彼女が言います。
「大魔王ってゾーマ? なんでゾーマが僕を……」
「でもノープロブレム!なんだヨ♪」
 僕の質問はサクッと無視してガッツポーズをキメるアリスちゃん。
「ボクが絶対にキミを守ってあ・げ・る・か・ら☆」

 もはや宿スレの定義など完璧にドコ吹くです。
 それが僕とアリスちゃんとの、スイートでブラッディなファーストメモリーでした。


   ◇


 朝っぱらから三度も瀕死にされての起床でしたが、遅刻もなにも今日は日曜日です。
 アリスちゃんは週七日サイクルの生活を知らなかったので、いつも通り学校があると思っ
たみたいでした。

645 :斬殺勇者アリスちゃん![5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:02:21 ID:Za5GHFwF0

「なぁんだ、今日はお休みの日だったんだネ! ……じゃあボクもお休みなさーい☆」
「ええ? 寝ちゃうのアリスちゃん!?」
 彼女はモゾモゾと僕の布団に潜り込むと(昨日は押し入れで寝たのですが戻るのが面倒
になったようです)、「スピルル〜…ムニャ」と幸せそうな寝息を立て始めました。
 僕は深々とため息をつきました。僕は二度寝ができないタイプです(人生の大きな損失
だと自分でも思います)。とりあえず顔を洗って朝ご飯を食べることにしました。

 リビングに行くと、アリスちゃんが言っていたスペシャ〜ルな朝ご飯が用意されていま
した。平たくて四角くて真っ黒な物体がお皿の上でおとなしく僕を待っています。デイン
系呪文で一撃された食パンのようです。
 僕はこの炭水化物のなれの果てをリビングの隅にある「燃えるゴミ」に放り込みました。
ふたたび燃やされる運命の食パン君が少々哀れな気もしましたが、僕は七輪ではないので
ほぼ練炭と化した彼を食べてあげることはできません。
 他になにかないかと冷蔵庫をあさってみましたが、見事なまでに空っぽでした。昨晩ま
ではいろいろ入っていたはずですが、どうやらアリスちゃんが朝ご飯の支度中につまみ食
いしてしまったようです。
「仕方ない……コンビニでなんか買ってくるか」
 僕はそう独りごちていったん自室に戻り、眠っているアリスちゃんを起こさないように
そーっと着替えをしました。
 それからなにか書き置きしていこうかとメモ用紙とペンを探しかけたのですが、アリス
ちゃんは起きる様子はないし、こんなワケのわからない女の子がイキナリ同居を申し出て
も「好きにしてちょうだい」の一言で片付ける、放任主義を通り越して無責任きわまりな
い僕の保護者に気を遣う必要もないので、やめました。
「行ってきまーす」
 小さな声で言ってマンションを出ます。


 マンションの裏にまわり、住宅街を200メートルほど歩くと青い看板のコンビニがあり
ます。僕はそこに向かいました。
 と、いつも横切っている小さな児童公園に入ったときです。敷地のちょうど真ん中あた
りに造られている砂場から、突然ボシュ!と光の柱が吹き上がりました。

646 :斬殺勇者アリスちゃん![6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:05:06 ID:Za5GHFwF0

「なんだ……?」
 昨日から不可思議なことが起こりっぱなしでしたので、僕もさすがにこの程度でパニッ
クになったりはしません。
「メラゾーマなんですぅぅ!!!」
 いきなり高いキーの声が響いた瞬間、光の柱から巨大な火球が打ち出されました!
「うわわわわウッキャ〜〜!!!!!!!」
 僕は0.2秒で大パニックに陥り、どうしていいかわからなくてその場にガバッと伏せま
した。火の玉は僕の上を素通りし、道路に停めてあった自動車にあたり、車は無惨に爆発
炎上してしまいます。
「あなたがタツミくんですかぁ?」
 顔を上げると、光の柱がシュウっと細くなって消えていき、中から小柄な少女が一人現
れました。
「き、君は……!?」

 大変です、この女の子もアリスちゃんに負けず劣らずのプリティフェイスです!
 ゆるいカールがかかっている焦げ茶色の髪。ピンクの襟付きマント姿で、緑のゆったり
したローブを着込んでいます。服の上からでもその至福のふっくら感がわかる胸の真ん中
に、大きなペンダントが揺れています。
「あなたがタツミくんで、間違いないですかぁ?」
 僕が言葉につまっていると、彼女は急に瞳をウルウルと潤ませました。今にも泣き出し
そうです。僕は慌てて立ち上がり、彼女に近づいてそのフワフワした髪の毛をポンと軽く
叩きました。
「大丈夫だよ、僕がタツミで間違ってないよ」
 ニッコリ笑いかけます。もちろん斜めから差し込んでいる朝日に白い歯がキラーンと輝
くよう、角度を計算するのを忘れません。
 彼女はフワンと笑顔になりました。見ているこちらまで幸せにな気持ちになるような、
心が洗われる笑顔です。
「良かったですぅ。違う人にメラゾーマしてたら、困っちゃうところでしたぁ」
 困るどころの騒ぎじゃNEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!
 彼女のあまりの可愛らしさに、僕は背後でモクモクと黒煙を吹き上げている自動車の存
在をすっかり忘れていました。

647 :斬殺勇者アリスちゃん![7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:08:46 ID:Za5GHFwF0

 しかも今の話だと、彼女は明確に「僕」に対して攻撃を仕掛けてきたワケです。
「もしかして、キミは魔王の仲間なのかい!?」
 僕が聞くと、彼女はエッヘンと咳払いして両手を腰にあて、プルンと胸を張りました。
「そうですぅ。私は大魔王様の右腕にして上の世界の支配者、魔王バラモス――」
「マヌーサかゴルァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
 僕のコンピュータ並の頭脳は一瞬ですべてを悟りました。
 騙されました騙されました騙しやがったなコノヤロウ。僕の怒りは大空に駆け上る竜神
の如く、1ターンでスーパーハイテンションです!
「貴様カバかぁ! あのモツ好きのカバ親父なのかぁああ!」
 えり首をつかまれてガックンガックン揺すられ、またもや涙目になった相手は必死に首
を振って否定しました。
「ちち違いますぅ! 私は娘のバラミですぅ!」
「へ?」
 バラミと名乗った少女は、僕が手を放すとその場にペタンと座り込んでしまいました。
「ふえ〜ん、タツミくんヒドイですぅぅ」
「あらら、ゴメンねバラミちゃん。ほんとゴメン」
 なんだ娘さんだったのかぁ。こりゃ勘違い。
「いやでも! あの物体からどうしてこんな美少女が!?」
 どう遺伝子改良をほどこしても、あのカバから美少女を造るのは不可能です(断言)。
仮に100%母親似とすると、この子のお母さんもかなりの美女ということになります。カ
バにはあまりに贅沢です、宇宙の摂理が許しても僕が許しません。
「お父様をカバカバ言わないでくださいですぅ。お父様はちょっと個性的なだけですぅ」
「ああ、悪かったよ、個性的なカバなんだね?」
「違いますぅぅ!」
 バラミちゃんはよろよろ立ち上がると、僕を見上げて必死に訴えます。
「大好きなお父様だったのに……アリスちゃんに倒されちゃったんですぅ。でもタツミく
んならお父様を助けられるって聞いたんですぅ!」
「僕が?」
 どうも事情があるようです。
 
   ◇

648 :斬殺勇者アリスちゃん![8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:12:01 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんの話によると、アリスちゃんたち勇者一行に倒された魔王は、しかし完全
に死んでしまうわけでなく、世界のどこかに封じられるだけなのだそうです。
 そしてその封印を解く鍵を持っているのが、この僕、三津原辰巳だというのでした。

「でもねバラミちゃん。悪いけど僕、そんな方法さっぱりわからないよ」
 困惑する僕に、バラミちゃんはますます瞳をウルウルさせます。
「そ、そんなぁ……どうしてイジワルするですかぁ? 教えてくださいですぅ!」
「いやイジワルじゃなくて、本当に知らないんだよ」
 女の子に泣いて頼まれれば、僕だってなんとかしてあげたいと思います。ちょっと殺さ
れかけた過去なんて、もうどうでも良いことです。
 しかし一介の高校生である僕が、異世界の魔王の復活方法を知るはずがありません。
「ふぇ……ふぇえええん……」
 うつむいて華奢な肩を震わせるバラミちゃんに、僕も胸がキューンとなりました。どう
したらいいんでしょう。

「こうなったら……」
 バラミちゃんが低い声で呟きました。彼女の全身からゾワワワっとドス黒いオーラが立
ちのぼり、僕は威圧感に我知らず後ずさりしました。
 クワッと顔を上げたバラミちゃん、目が真っ赤に光っています。まさに魔王の娘!
「拷問してでも吐かしてやりますぅ!!!」
「だから知らないんだってぇ!」
「い・い・か・ら、素直に吐くですぅぅう!!!」
 バラミちゃんが両手を高く掲げます。高圧のエネルギーが凝縮され、宙に巨大な火球が
膨らんでいきます。
「待って! 待ってよバラミちゃん! ってかなんで誰も来ないんだよ!!??」
 これだけ大騒ぎしているのに、公園には他に誰一人やってきません。
「ここは私の結界が張ってあるから、外からは普通の景色に見えるんですぅ!」
 意外と用意周到です。このままでは殺されてしまう! 僕は焦りましたが、星の誕生を
思わせる発動寸前の極大呪文を前に、身体がすくんでしまいました。
 もうダメだ……!

649 :斬殺勇者アリスちゃん![9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:15:25 ID:Za5GHFwF0

「ラ・イ・デ・イ・ンーーーーーー!!!!!!!!!!」

 高らかな詠唱と同時に、鋭い落雷がバラミちゃんを頭上の火球ごと貫きました!
 ピッシャァァァァアアアアン!!!
 すさまじい電力が僕の身体をもバリバリバリっと焼いていきます。ついで破裂した火球
の爆風に吹き飛ばされ、幼稚園児が好きそうな可愛いワンちゃんの背もたれがついたシー
ソーに背中から突っ込みました。
 ズギャリ、と形容しがたい音がしました。仰向けに倒れている僕の腹から、熱で半分溶
けかかってバリイドドッグのようになったワンちゃんが飛び出ています。
「大丈夫タツミくん! 無事!!??」
 珍しく焦ったような声を出してアリスちゃんが駆け寄ってきます。
「き、君が…来るまでは……ね(ガクッ)」
「バラミちゃんってば、なんてヒドイことを……」
 アリスちゃんが僕を抱き起こしました(バリイドドッグがズボっと抜けました)。
「エイッ、ベホマ〜☆」

 ティロリロリロ♪

「あ、待っておじいちゃん……!」
 意識を失いかけていた僕は、ハッと目を開けました。
 とっても優しかったおじいちゃん。大好きだったおじいちゃん。おじいちゃんは別れ際
に暖かい微笑みを浮かべ、「頑張るんだよ辰巳」と力強く励ましてくれました。
「うう……おじいちゃん」
 この状況でなにをどう頑張れば良いのでしょうか。

「タツミくんをこんなヒドイ目に遭わせて〜。謝ってよバラミちゃん!」
「やったのはアリスちゃんですぅ!」
 僕の前で、彼女たちはバチバチと火花を散らしてにらみ合っています。火花はまだライ
デインの残滓が残っているだけかもしれませんが、真剣な表情はどちらもホンモノです。
 二人の美少女が僕を巡って争うという夢のようなシチュエーションですが、なぜかちっ
とも嬉しくありません。

650 :斬殺勇者アリスちゃん![10] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:18:16 ID:Za5GHFwF0

 バラミちゃんは体中あちこち焦げています。髪の毛のカールもチリチリです。
 やがてバラミちゃんはアリスちゃんから視線をはずして僕の方を見ました。ちょっとだ
け悲しそうな顔をしてから、またキッとアリスちゃんをにらみます。
「仕方ないですぅ。今日は大人しく引き上げますぅ。でも次は必ず!」
 バサッとマントの前を閉じると、バラミちゃんの足下にパァ!と光の魔法陣が浮かび上
がりました。彼女が地面に飲み込まれるように消えていきます。
 同時に、空から「パリン」とガラスが割れるような音が聞こえました。それまで気付か
なかったことですが、完全にシャットアウトされていた「世界のざわめき」のようなもの
が、ふっと戻ってきたのを感じました。
 バラミちゃんが張っていた結界が解けたのでしょう。

「……何度でも来ていいヨ。そのたびにボクが、返り討ちにしてあげるから」
 バラミちゃんが消えていったあたりを見つめ、アリスちゃんがグッと拳を握ります。そ
の横顔は、可愛いけれど、どこか凛々しくて、僕はつい見とれてしまいました。
 やはりアリスちゃんは魔王を討ち倒した、伝説の勇者なんでしょう――。



「お、お、俺の車が〜!!!」
「きゃあ、なにこの公園!!?? え、火事? 火事でもあったの?」
 しまったぁ! バラミちゃんの結界が解けて、一般ピープルの方々が公園の異変に気付
いたようです。
「に、逃げるよアリスちゃん」
「うに〜? なんで?」
「いいから!」
 僕はアリスちゃんの手を引いて、騒ぎのどさくさに紛れてマンションに逃げ帰りました。

651 :斬殺勇者アリスちゃん![11] ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:20:51 ID:Za5GHFwF0


   ◇


 この日の事件について、あとから警察に事情聴取をされたりはしましたが、さいわい僕
たちが原因だと気付いた人はいなかったようでした。
 しかし、アリスちゃんが来てたった二日目でこのざまです。
 この先のことを考えると、僕は暗澹たる気持ちになりました。


 ああ、僕はこれからどうなるのでしょうか。



                 第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん! (完)




652 :斬殺勇者アリスちゃん!atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/08/02(木) 17:21:38 ID:Za5GHFwF0



タツミ「誰かぁ! 誰か止めてくださいぃ! 誰かこの作者を止めてくださいぃぃ!!」
アルス「世界の中心で愛を叫ぶ以上に切なく叫んでるな」
タツミ「冗談じゃないってば! アリスちゃん可愛いけど、これじゃ命がいくつあっても足りないって!」
アルス「こらこらユリコちゃんに言いつけるぞ〜w」
アリス「やほ〜☆ タツミくぅん♪」
タツミ「出たぁぁああ!」
アリス「ダメだよタツミくん、いつ大魔王ちゃんの手下が襲ってくるかわかんないんだから☆
   ちゃんとボクのそばにいないと危険なんだヨ! 死んじゃうかもしれないんだヨ!」
タツミ「君のそばがこの世で一番デンジャーだよ! 僕すでにありえないくらい死にかけたよ!」
アルス「うはww楽しそうでいーねーwww 俺もパラレル番外一本持ちたいなぁ」
タツミ「もう他人事だと思ってぇ〜!」

アリス「以上! 埋め用番外編『斬殺勇者アリスちゃん!』♪
   ここでいったん終了でぇすッ。次回も、お・た・の・し・み・に・ネ☆!」





※本作品は知る人ぞ知る、某ライトノベル「撲殺○使ド○ロちゃん」のパロディです。
※この物語はパラレルです。本編に登場する人物、 団体名とは一切関係ありません。
※次回は、次の次のスレが立ったときに、次のスレの埋め用に書く予定でおります。

 それでは次スレも盛り上がって参りましょう。
 See You Again in Next Sled!!




653 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 17:32:27 ID:LWmhhO5x0
冗談のつもりで言ったアリスまさか採用されるとは・・・・
バラミちゃんはきっとこんなカンジ↓

http://parumezan.sakura.ne.jp/enikki-61.jpg

654 :俺の隣であがけ ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:31:17 ID:e+ZMvCB50

    |                    \
    |  ('A`)      タ・ツ・ミ・ク・ン♪
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   モウアサナンダヨ☆/


    |    !?               \
    |  (゚A゚)         グ、ゴガ…
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄      ヤ゛メ゛…/


    |     ・・・?            \
    |  (;'A`)    ゴメンネェ、タツミクン!
   / ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄   ベ・ホ・マ〜☆/

655 : ◆yeTK1cdmjo :2007/08/02(木) 18:34:25 ID:e+ZMvCB50
◆IFDQ/RcGKさんに便乗してみました、すいません。
>534-541の続きは近いうちに次スレで。

一応次スレ誘導。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

656 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/02(木) 20:04:19 ID:ZCdxrJ3C0
アリス(レベル99)ちゃん、いいですね。
しかし、何度も殺されそうになるのはなんとも(wwwww

でもやっぱりうらやましいかも。

657 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 15:52:21 ID:WMp+2DRrO
埋めようか

658 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 17:36:03 ID:xEBfrTKl0
そして 夜が明けた

659 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 18:58:11 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

660 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 21:21:46 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    どようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:14:00 ID:B446nPZ00
何を勘違いしているんだ?
まだ金曜日は終わってないぜ!

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:36 ID:XM0X97qE0
         ,, -──- 、._ 
       -"´         \ 
      /              ヽ
      /             ヽ   わーい 
     |    /\    /\  |    つきようびだお〜
     l               |  
     ` 、 ///  (__人__) ///.
  ,―――`ー 、_         /ー 、
 l´        `''     ‐''´    `l 
 ` ̄ ̄ ̄ヽ         / ̄ ̄ ̄´
       |         |
       i  `/ ̄`l  / 
       \    / ./
         \__//
         /  /

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:19:57 ID:VC6IObfUO
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン

664 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/03(金) 23:29:58 ID:oztQAM/N0
                      - '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
                    /           \
                     /                  ヽ
                   /   __   、、    「l} ヽ
                  {_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、    ヽ  、
                 / /   /7/j/ /\   ヽ  |    500ゲット!
                  /  /rイ /  / ∠/! /\   |  !     次スレはいよいよ大台10スレ目!
                  | /l |/ /、  /  , -ェ-レ'|/i/ヽ_  | /      みんなで盛り上げていきましょう!
                V i レイr、`/  イr、 }    l/⌒j レ′
                   Vヘゞ'    ゞ'     _,) /_」
                     、"<    ""   r┬' \
                     ヽ、 ‐      /! | ト、|-、
                       ` _--‐  ´   |i/ヽ|   ヽ
                      rく__|       |  /ト、___ム_
                    ,.ィ「!__] _   __〉〈 `丶、` - ゝ
                   rく  iヘ |   入 ` ´ j  >   ` ̄ヽ、
                 /  |  ヽヘ  \ヘ   // |       /7、
  、__,、___       /    ヽ  ヽヘ   〜iヽ/i   |      /7/|
  <      `ヽ    /rァ ,、   \  V!  l 十 i   |      j,7/ !
   \, ---、    ト、  マ\゙ ,、    「^!  i 十 i   |     / /  |
    〈 , - ┴、   | |  ノ  \ ,、    \ニ>、   i   |      レ'     |
    V , --f'′  L__! 」__   ヽ ,、  /  丁 ト、  i   |       |      |
     ヽ , -〈     |ーヘ    | ,、 /    |  | \    |     | \

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