■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50 [PR]ぜろちゃんねるプラス[PR]  

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

241 : ◆I15DZS9nBc :2008/03/19(水) 18:51:13 ID:lqYfkwAd0
「ルビスってどこの祠に居たんだっけか、あれ?あれって四作目か?ちくしょう、なんでここまで覚えてないんだよ……」
自分の知識の何が正しく何が間違っているのか、それすら分からないのだ。
魔法がぽんぽん使えるファンタジーに自分の常識が屈伏している。
「いいや待て、金になりそうなことを思いついたぞ俺、そうだよ、ファンタジーだ、産業革命も起きてないんだ、チャンスは幾らでも転がってるじゃないか!」
え!?金がない!?借りれば良いじゃないの!!
子供じゃねーか!?無理!?d
「……現実味がないな、蒸気機関の仕組みは分かるがあんなもん作れるかよってんだ」
熱効率が半端なく悪くさらに強度がなくボロっちいのならイケそうだけどな、とぼやく。話が平行線だ……つーか誰と話してるんだよ俺。

(2)に続く

242 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/19(水) 19:47:44 ID:MoihoE3v0
>>237
ゴメソナサイ

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 11:20:24 ID:KbQnUbkv0
>>238-241
続きに期待!
シニカルな進行がオモロイ


244 :激闘!v.s.カンダタ戦!編1 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:14:52 ID:o1/pPq9qO
長く広い、迷路の様なシャンパーニの塔を迷いながら進んでいった。トラップの仕掛けられた床、侵入者を阻むために配置されたモンスター達、先の階に進ませないためのトリック。
外を見たら分厚い雨雲が塔を覆っていた。
これだけ好調に冒険してきたのにバラモスへの道のりが、進めば進むだけ不安になるのは何故だろう。
全てのモンスターを従えるバラモス。おそろしいほどの魔力。世界を黒く覆い尽くすその存在。その存在があまりに静かで、不気味な気配があるのだ…。
オルテガがただ一人でバラモスを倒すために旅立った。
各地にその伝説は語られていた…。その強さを、勇気を。
しかしその後どうなったかは誰もたぶん知らない。
そう、ぼくはその偉大なるオルテガの息子―勇者として、アリアハンをでたのだ。
ピカ一の剣の実力をもつ戦士サイモン。ただ、いまだ本気で戦っていないようで実力は未知数である―。
オルテガを慕い幼い頃から武闘家の道を選び鍛練を続けてきたエリー。その男勝りの性格の奧にある淋しさややさしさをぼくは知っている。
神を信仰する僧侶ナナ。口数は少ないが、そのあたたかい空気、雰囲気がぼくらを癒してくれる。
―さあ行こう、この上にカンダタがいる、そして国宝を取り返すんだ―。

245 :激闘!v.s.カンダタ戦!編2 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:20:43 ID:o1/pPq9qO
カンダタ「何だおめえらは…? 下の階に子分達がいたはずなんだがなんで此処にいる?」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「全員倒して来たんだよ、あとは君だけだ。―国宝『金の王冠』を返してもらう」
カンダタ「なるほど…おめえらは勇者御一行サマってわけだ」
少しの静寂。対峙している時間がとても長く感じられた。
女武闘家エリー「かんねんしなさいよ」
カンダタ「はっはっは!王冠ならこの塔の屋根に飾ってある。俺を倒せたら持っていっていいぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…なんでロマリアの国宝を盗んだんだ」
男戦士サイモン「そうだな。どんな理由があったんだ?」
カンダタ「いずれ、世界のお宝の全てを手に入れるからだ」
盗賊らしい答えだった。ぼくらがバラモスを倒さなければいけないように、彼もまた確固たる自分の信念があるようだ。
戦いは避けられない―。
『カンダタがあらわれた。』
ついにバトルだ―。
『カンダタが先制攻撃をとった!』
なっ!?
カンダタ「おおおおッッ!!!!」
おそろしい巨体がふるう豪腕――。
『カンダタ、会心の一撃!』
ナナを襲ったその一撃を、サイモンがかばう―。
女僧侶ナナ「…さっ!サイモン!…」
サイモンはナナをおおうように前に立ち、カンダタの攻撃を背で受けた―。
男戦士サイモン「うぐ……。ナ…ナ……」サイモンは膝をつきガクリと倒れた。「……ゆきひろ…こんなところでお前は死ぬなよ………」
…そして目を閉じた…。
サイモンのHPが0…………。
―――サイモンが…、死んだ……。

246 :激闘!v.s.カンダタ戦!編3 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:25:30 ID:o1/pPq9qO
サイモンが死んだ…。
カンダタ「ま、まだやるか?」
敵も少し状況に困惑していた。
女武闘家エリー「あの体力馬鹿がこんなに簡単に……う…あああぁ!!!」
ぼくは攻撃にはいろうとしたエリーを止めた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「やめろ! うかつに飛び込むな、まだサイモンは大丈夫だ、ぼく達だけでカンダタを倒すしかない…。三人で連携してもちこたえて戦うんだ!」
そうは言ったものの長期戦になり、サイモンの死に動揺した今のぼくらに勝ち目はうすかった。
いつのまにか、雨が降りだしていた。
まるでサイモンへ捧ぐレクイエムのようにシトシトと降りそそぎ、そのうち稀にみる大雨――嵐へと変わった。
こんな非力なぼくが勇者なのか? 許されることじゃない。ぼくらはまだ負けるわけにはいかない…。バラモスを倒すために生まれた運命の血…。この血が敗北を許さないだろう。
どくん…。
血が逆流したかのように身体中が熱くなった。
女武闘家エリー「あっ!」
攻撃を防御されたエリーの鉄の爪が折れてしまった。
ナナのMPもきれてしまっていた。
もうぼくしかいないんだ。
バラモスへの道のりをとじるわけにはいかない。
ぼくはカンダタに向かっておたけびをあげて、剣をかまえ走りだした。

247 :激闘!v.s.カンダタ戦!編4 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:28:36 ID:o1/pPq9qO
例えばコンマ数秒のことが鈍く数十秒にも一分にも感じられるという死の直前におこるといわれる走馬燈のように、悲しいほどぼくの一撃はゆっくりとかわされ、カンダタにそのまま身体ごと吹き飛ばされた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ぼくは………」
女武闘家エリー「ゆきひろ!!!」
女僧侶ナナ「大丈夫ですかっ!?…」
二人が駆け寄ってきた…。こんなに頼りないぼくが勇者なんて。
カンダタ「…このまま帰れば生命まではとらないぞ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「か…帰れるわけがない、ぼくは勇者なんだ…だから…。必ずおまえを」
カンダタ「おめえは弱い。弱いヤツとは戦いたくない。出なおしてくるんだな……」
その時雷鳴が鳴り響いた―。
ぼくは弱い…。確かに非力だ。
ナナのような魔力もなければ、サイモンのような腕力も、エリーのような俊敏さもない。
ぼくにあるものはなんだ?
また雷鳴が鳴った。
雷が屋根を吹き飛ばし空が見えた。
この雷のように強くなれたなら―。
速くてそしてなによりも強い力―。
かみなり―雷。
雷だ…。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…カンダタ、勝負だ」

248 :激闘!v.s.カンダタ戦!編5 ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:32:55 ID:o1/pPq9qO
ぼくは剣を天空にむけた。
それがどんなにおそろしいことか分かっていた。
女武闘家エリー「あんた! 何をやる気なの?!」
カンダタ「読めたぞ…。そんなことをしたら死ぬのがわからないのか」
どくん…。
血が逆流する。不死鳥ラーミア。精霊ルビス。ぼくに力を。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「勇者の名において命令する―。雷よ我に力を与えよ―。―雷よ!!!」
雷鳴が鳴った―。
剣を伝いぼくは雷に貫かれた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「………ら、ライデインだ。―これがライデイン…。カンダタをも貫け!」
カンダタに向かってぼくはまた駆け出した。これが最後の力―。
ぼくはカンダタに剣を突き刺したまま、カンダタを逃がさないようにするために自らをもまきこむように呪文を唱えた。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ライデイン!!!!!」
稲妻はカンダタとぼくを直撃した。
『カンダタを倒した。』
これでよかったんだ…。
ぼくの残りのHPは1。紙一重だった。
そしてぼくも倒れた……。
女武闘家エリー「ゆきひろ!」
倒れて意識を失うまでによくエリーの声が聞こえた。
エリー、ごめん…。

249 : ◆Tz30R5o5VI :2008/03/20(木) 20:36:45 ID:o1/pPq9qO
久しぶりに続きを書きました
ぜひご一読ください
投下終わります

250 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 21:32:48 ID:iLI5NdD80
ゆきひろの、何も出来ない焦り、そして土壇場になっての捨て身の大逆転、緊迫しました。
カンダタも、なんだか根っからの悪人じゃないみたいですね。
#まあ、本編どおりだとしたら、性懲りもなく出てくるのですが・・・。

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 22:12:03 ID:yDKWVojqO
テリーが叫ぶだけで役立たずだなwww

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 22:11:12 ID:H6JLvFmS0
スレ宣伝のため浮上


253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 23:55:54 ID:Gfyz9MmA0
>>249
面白い!
勇者が超人でないとこがまたイイ

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 01:05:07 ID:XXjlhrCf0
すげぇ。
3年前にこのスレをはじめて立てた者ですが、まだ残っていたんですね…
頑張ってください。

255 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:19:03 ID:2kL+VFjy0
…………………。




…………。



……。



ん………んン?




痛い。頭がめちゃくちゃに痛い。意識は戻ったのだが目は開きたくない。
もうこのまま死ぬまで眠っていたい気分だ。

…………みっ……みず……。

そう、これは俗に言う二日酔いというやつだ。まあ一年中毎日ゲロゲロになるまで飲んでるから
今更なのだが今日はいつもに増して気持ち悪い。とりあえず水を……おおッ!?

ベッドから起き上がって俺は数秒間フリーズした。これは………どこだ!?
見慣れた小汚いせまっ苦しいボロアパートの一室ではない。確実にない。

きれいなシーツに洋風の家具、窓から覗く空は心なしか普段より澄んで見える。
俺は痛い頭を必死に回転させてある結論を導いた。


256 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:19:55 ID:2kL+VFjy0
……よし!逃げよう!

部屋から出て階段を下る。一目散に出口と思われる扉を目指す。
幸運な事にここの家主はいないみたいだ。おそらく俺は酔っ払ってどこか知らない家に上がりこんで
眠ってしまったに違いない。確実に不法侵入だ。サツはもう懲り懲りだ。

バタンッ!

…………おおおおッうッ!!!!

なんだこののどかな田舎町は!?一瞬強烈な違和感を覚えたがその理由はすぐにわかった。
電柱がない。アスファルトがない。車なんてもっての他だ。
さすがに泥酔して無意識に行動したにしてもこんな僻地まで来るもんだろうか。
俺のアル中も比較的末期のようだ。とりあえず家に帰らなくては。

ここがどこかまったく見当もつかないが探せば駅くらいはあるはずだ。
そこから電車で帰ろう。俺はとりあえず村の出口らしき所から外に出た。
その辺の人に道を聞いてもよかったのだが田舎町ってのは人の出入りがない分よそ者が目立つ。
俺があの変な家から出てくる所を目撃していた人がいるかも知れない。
ここは一刻も早く離れるべきだと俺の直感が伝えていた。

しかし出たはいいものも見渡す限り謎の大自然である。下手したら今日中には帰れないかも知れない。
トボトボ歩き出した目の前に何かが飛び出した。

青い寒天のような物体。寒天に目と口がついている。これは………かわいい……
こんな生き物は見たことがない。もしかしてツチノコとかそういう類か?それなら捕まえたら
金になるかもしれない。つーかかわいい。飼いたい。

頭を撫でようと近づいた。よしよし…………ガブリッ!!いてッ!!!

いきなり噛み付く青寒天。なんて凶暴な生き物だ!俺はすかさず蹴りで反撃した。
青寒天はプゲッと潰れてしまった。田舎の野生生物はなんて危険なのだろう。

257 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:20:39 ID:2kL+VFjy0
また草むらの影から何かが飛び出した。今度はもぐらだ。しかも生意気にもスコップまで持ってやがる。
やたら目つきが悪い。てめえこのヤロー俺にメンチきるなんて上等じゃねえかこのヤロー!
持っていたスコップを取り上げて思い切りブン殴ってやった。

ちくしょうなんてデンジャラスな所なんだ。いつの間にか日も落ちかけている。
もうここは素直に諦めてさっきの村へ戻ろう。事情を話せばサツに突き出される事もないだろう。多分。

そうして俺はまた村の入り口に戻ってきた。

しかしなんだここの人間は。みんなコスプレみたいな格好してやがる。どう考えても現代の日本とは思えない。
不気味な村だ。こうなってくるとあのボロアパートですら恋しくなるぜ。

とりあえず今日は木陰で寝て明日誰かに道を聞いて帰る事にしよう。
野宿なんて不本意だがこんな気持ち悪い連中の世話にはなりたくない。なんだかすげー疲れた。

木陰でウトウトしていると酔っ払ったおっさんが絡んできた。うぜえ。とりあえずブン殴ったら気絶した。
倒れる際に何枚かの硬貨を落とした。これは……見た所外国のお金のようだ。
迷惑料として貰っておくか。

しかしあんな酔っ払いがからんでくるような所じゃ熟睡できない。仕方なく別の場所を探しにまた歩き出した。

と、しょぼくれたジジイが話しかけてきた。なんだよさっきから酔っ払いとかジジイとかよ!
俺は一人が好きなんだよ!ほっといてくれよ!

無視して歩きだすと後ろをついてくる。ああああああうぜえええええええええ
立ち止まるとまた話しかけてきた。


258 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:21:17 ID:2kL+VFjy0
ジジイ「うーむ…見慣れぬその服装…先程の旅のお方かね?」

すかさず胸倉を掴む俺

俺「あーそうだよだったらなんだアぁ?中学から愛用の学校指定ジャージに文句でもあんのかアぁ?」

ジジイ「くっ苦しい…!やっ宿がお決まりでないのなら…我が教会に…ゴフッ!」

宿だと?手を離した。

ジジイ「はぁ…はぁ…その身なりじゃ持ち合わせもないじゃろうて…」

なるほどなるほどつまりこんな時間にみすぼらしい格好でウロウロしてる旅人なんてどうせ金なくて
ホテルなんぞ泊まれないだろうからうちに泊まりに来いって事か。ふざけんな!
確かにボロジャージだがてめえらみてえなコスプレよりはまだ人として正しいぞボケ!
再度捕まりかかろうとする

ジジイ「こすぷれ?なんじゃそれは?とにかくここは寒かろうてうちの来なさい。」

手を止めて考える。確かに野宿は辛い。ここはいっちょこのジジイの世話になるかな。
警察に突き出すって訳でも無さそうだしな。

俺はジジイの後について行く事にした。着いたのは何て事無い今朝いたわりと大きな建物だった。
聞くと所によるとここは教会らしい。ジジイは神父だとさ。
神父…日本ではあまり聞かない。こちとら仏教だ。奈良の大仏なめんな。
まてまてという事はここはもしかして外国!?明らかに違う風貌の村、人、空気。可能性は十分に有り得る。

急過ぎる展開にまた頭痛が。とりあえず寝よう。これは悪い夢だ。そうに違いない。
目が覚めるとまたいつ死んでもいいようなくだらない毎日が始まるんだきっとそうだ。

部屋に案内されるとジジイを無視して俺はベッドに転がりこんだ。そしてすぐに死んだように寝てしまった。

259 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:22:26 ID:2kL+VFjy0
ー次の日ー


朝。目が覚めた。一瞬戸惑ったが昨日の出来事を振り返る。
そもそも俺はなんでこんなおそらく日本では無い謎の場所に来てしまったのだろうか。
頭痛も収まった事だし冷静に振り返ってみよう。

記憶を辿る。たしか俺はいつも通り家で朝から酒を飲んでいた。
そして誰かに呼ばれたような気がしてベランダに出た。
ここまではなんとか思い出した。そしてその後に…


……あ……俺、落ちたんだった………


そうだ落ちたんだ。景色が急速に変わってゆく映像が脳裏に再生される。


つまり。


俺は死んだんだ。そしてここは死後の世界って奴だ。
なんともまあ斬新な展開だ。俺のくだらない人生は終わってしまった。
どうせ朝から酒飲んでるような元ヤンのヒッキーなんて死んでも誰も何とも思わないだろう。
そもそも俺自身自分が死んだという事について何の感情も沸かない。

いやちょっと待てよ…ここは死後の世界だとするとだな
もうあの借金取りに嫌がらせされる事もないんだな?昔もめたヤクザや警察に追い掛け回される事もないんだな?
おいおい最高じゃねーか!ヒャッホゥ!!天国だ!例えそうじゃないとしてもあの地獄の日々に比べたら天国だ!!!

言い得て妙だが死んで生きる気力が沸いてきた。


260 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:26:30 ID:2kL+VFjy0
と、ここでジジイが入って来た。あ?よく休めたかだと?
ふざけんなこんな硬いベッドで休めるかボケ!もっといい部屋に泊めろボケ!と思ったのだが
よく考えたら俺の部屋の万年床と対してかわんねえし何よりも非常に気分がよかったので
まあなっと伝えておいた。飯を用意したから来いとの事だ。
まったくどこまでお人よしなんだこのジジイは。

テーブルの上に並ぶのは恐ろしく貧相な朝飯だった。
小さな屑野菜のスープにカチカチのパン。まあ食えるだけマシか。昨日から何も食ってねえしな。
一瞬で平らげた。その様子を見ていたジジイが足りないなら私の分も食えと言ってきた。
遠慮する事は無い、わしは味見しながら作ったのでもう腹一杯じゃとか言ってやがる。
本当か知らねーが老い先短いこんなジジイよりも俺が食った方が有意義だな。頂くか。

食い終わったあとジジイが自分語りを始めた。うん、まったく興味無い。
が、この世界の事が何もわからない以上ちょっと話は聞いとくべきかもしれない。
ここは教会で村の人のお布施や畑で農作物を作って生活しているようだ。
昔はそれで十分事足りたのだが最近になって夜な夜な村の畑に魔物が出て一切作業が出来ず生活が苦しいとの事だ。

魔物…ああ昨日の寒天やもぐらの事か。
何だか物凄く暴れたい。生前のうっとおしい事全部から脱出できたこの清清しさ。
大暴れしたい。急にそんな気分に駆られた。

俺「よし!その畑に案内しろ。俺が全部潰してやる。」

ジジイが危ないからやめろって言ってきた。
こいつ俺を誰だと思ってやがる。天下無双の暴走族、鬼浜爆走愚連隊の元総長だぞ?
あんな寒天やもぐらなんぞに負ける訳がねえ。

俺はジジイに畑の場所を無理矢理聞き出すと準備のために教会を後にした。

261 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:27:11 ID:2kL+VFjy0
喧嘩には準備が大事だ。いかに喧嘩負け無しの俺様とも言えどこの世界では初めてなので準備は大事だ。

何か武器が必要だなと村をうろついていると「武器屋」なる看板を発見した。
なんとまあ直球ストレートな店だ。……この世界では村中で武器を売っているのか。
この世界のアウトローっぷりに愕然とした。子供の教育によくないぞったくよ…

店の中に足を進めるとそこの店長がまた角突き覆面にパンツ一枚そいてマッチョと言うとんでもない奴だった。
俺は…もしかしてとんでもない世界に来てしまったのではないだろうか…

とりあえずメリケンサックと木刀は無いかと聞いてみる。

ねえよそんなもん。と切り返された。く…なんて態度だ客に向かって…
仕方がないので店を物色した結果この「ひのきのぼう」を買って釘バットを自作しようと思う。
ん?買って?……俺金持ってねーじゃん!仕方が無い…こいつぶちのめしてパクるか。しかしこの店長も中々の風貌。
決戦に備えて出来るだけ体力は温存したい。

何となくポケットに手を突っ込むと硬貨が手に当たる。ああそういや確か…
昨日酔っ払いからブン取ったお金らしきものをカウンターの上に並べた。

これで十分足りるらしい。むしろまだまだ買えるとの事なので
「かわのぼうし」「うろこのたて」を買った。完璧だ。負ける気がしねえ。

それもこれも全部あの酔っ払いのおかげだな。感謝せざるを得ない。また会った際には協力願おうと思う。


262 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:28:01 ID:2kL+VFjy0
太陽も高くなり腹も減ったので一旦教会に戻る事にしよう。っとその前にっと。
武器屋の周りの柵から釘を頂戴して釘バットを作成する。黙々と釘を埋め込む俺。
出来た。釘の間隔、絶妙な重量バランス。最高の一振りだ。さて帰るか。

教会に戻ると数人の人が長いすに座っていた。ジジイは一応神父なので悩み事相談みたいな事もしているようだ。
こんな辛気臭い教会に相談に来るなんてほんとにくだらない連中だな。
どこの世界にも負け組みなんているって事だな。あーやだやだマジで関わりたくねえわ。

そうこうしてるとジジイがこっちに来た。昼飯だと言って小さなバスケットを渡された。
これは…肉!肉だ!うめえ!肉うめえ!村の人が持ってきてくれたものらしい。
体中に肉パワーが染み込んでいく。これならどんな相手でも勝てそうだ。

さて大満足の俺は決戦の夜まで寝る事にした。が、寝れない。外がカンカンカンカンうるせえ。
文句言いに外に出るとジジイが薪割りをしていた。明らかに斧の重量にジジイの腕力が負けている。

くそったれそんなんじゃいつまでたっても終わんねーじゃねーか俺は眠みいんだよ!
無言で斧を取り上げると片っ端から叩き割った。まったく無駄な体力を消費しちまったぜ。


ー夜ー

ジジイが寝たのを確認して畑に向かう。この糞野郎危ないからと言って教会から出そうとしなかったからだ。


263 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:29:04 ID:2kL+VFjy0
畑は村のはずれにあった。もはや畑と言うよりただの荒地だ。
そこにはいるわいるわこないだの寒天やもぐら、アホでかいミミズは角ウサギなどわんさか畑を荒らし回っている。
なんかあれだな。この光景は公園とかコンビニの駐車場でバカ騒ぎしてた昔の自分とちょっとかぶって見える。
そう思うと微笑ましくもある。いやいやそうじゃなかった俺はこいつらをブチのめしに来たんだった。

相手の数が多い時は先手必勝!奇襲をかけて撹乱しその隙に一気に数を減らす。
族時代は1対100でも勝った俺にとってはこのくらいの人数差なんて屁でもねえ。いくぜ!!!

畑の中心まで突っ込んでくと先制パンチとばかりに寒天を数匹潰した。開き直ってもぐらに蹴りを入れる。
薄ら笑いのコウモリを盾で叩き落したのち踏みつける。順調だ。このペースでいけば楽しょ…おおおッ!!!

角うさぎが猛突進をかけてきた。咄嗟に盾を構えるがその上から体当たりされ吹き飛ばされ岩にぶつかる。
こいつ体は小さいがなかなかのパワー持ってやがる。原付並みの馬力だ。
立ち上がり構える俺に向かって再度突撃してくるウサギ野郎。ギリギリの所を横っ飛びでかわした。

ゴベブッ!!という嫌な衝突音と共に角ウサギは岩に衝突して動かなくなった。

所詮獣か。相手がバカで助かったぜ。
残りの雑魚を蹴散らしてゆく。ははは俺に敵うやつなどいねえ!ああ神様強過ぎてごめんなさい…

ノリのノって大暴れする俺は背後に近づく脅威に気付いていなかった。


???「人間風情が随分とオイタしてくれんのぅ小僧が…」

264 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:30:09 ID:2kL+VFjy0
ドスのきいた声に振り返る。そこにはえらくガタイのいい猪が凄まじい殺気を放ってこっちを睨んでいる。
猪のくせに喋りやがって…なんて迫力だ…

???「魔物に立てついてタダで帰れると思うなよ…グハハハ…」

ヤクザだ。こいつは昔愛人のちょっかい出して追い掛け回されたヤクザにそっくりだ。
ふんヤクザごときに俺が殺れるか!返り討ちにしてやる!

…返り討ち

…返り…う…ち…





太い。


腕が太い。


首が太い。


おまけにヤリなんて構えてやがる。これは相当なバケモノだ。だがしかし引くわけにはいかない。
喧嘩上等タイマン負け無しの俺だ。一度終わった命もう恐れる事など何もねえ!

とにかく自分より強い相手に萎縮したらそこで終わりだ。俺の親父の教えだ。
先手必勝!いくぞコラァ!!!!!特攻あるのみ!!!!!
俺は勢いよくヤクザ猪に向かって走り出すと固く握り締めたひのきバットを振りかぶり…


265 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:32:12 ID:2kL+VFjy0
投げた。

相手の視線は宙を舞うひのきバットに釘付けになる。

ブシューっ!!!

その一瞬の隙をついて隠し持っていたナイフを喉に突き立てた。

このナイフは元の世界から常に携帯している護身用のナイフだ。ナイフの一本くらい常に持っているのが
暴走族としての嗜みってもんだろう。

動脈をスッパリやられたヤクザ猪はその場に崩れ落ちた。



勝った。俺は勝った。
意外な強敵の出現で思わぬ苦戦をしたが何とか勝つ事ができた。
緊張が安堵に変わる。全身の力が抜けた。というか力が入らかった。
この程度で腰を抜かすとは俺もまだまだだなっふっ…

体が熱い。返り血に染まった自分の体を眺める…


266 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:34:20 ID:2kL+VFjy0
……え……

一瞬目を疑った。そこにはヤリが深々と突き刺さっている。思わず声をあげる。
が、出ない。代わりに口からはおびただしい量の血が噴出す。
そうか俺はまた死ぬのか。今度目が覚めたらそこにはどんな世界が広がってるのだろうか。
こんな俺の姿を見てジジイはどう思うだろうか。

今まで生死の淵を彷徨った事は二度ある。いやここに来た経緯を入れると三度か。
一度はガキの時に肺炎をこじらせて死に掛けた。あの時は両親そろって心配してくれてたっけ。
二度目は単車で事故った時。すでにその時親父しかいなかったが俺の意識が戻るまで三日間絶食してたらしい。

激しくどうでもいい話だ。なんで俺はこんな事考えてるのだろうか。不思議と安らかな気持ちだ。
段々と意識が遠のいていく。いよいよここまでだな…さよなら俺…







267 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/03/22(土) 09:37:16 ID:2kL+VFjy0
お久しぶりです!
再度投下させていただきました他の職人さんの面白い話読んでると創作意欲が燃えまくりました
今度は完結まで絶対にいきます!
トリップも変更しました
まとめサイトの方見ていましたら前回のと今回を差し替えて欲しいです…
お手数かと思いますがよろしくお願いします

続きはまた今晩きます

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 10:48:58 ID:O8BqNw7b0
総長、途中変なツンデレみたいになってて良いなw
おかえりー、期待してます。

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 11:08:48 ID:9f97E4js0
おかえりなさいませ〜。
神父さん、いい人。総長さんもだんだん影響を受けているようで今後の展開が楽しみです。

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 12:00:45 ID:HhmoMgCw0
総長キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━!!!!
微妙にイイ奴のヤンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 16:34:40 ID:pr4s/pKG0
総長おかえり〜!!!
ずっと待ってました。
バラモス戦を今から楽しみにしてます。

無理はしなくていいので、自分のペースでぜひ続けてください!

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 20:36:40 ID:w4LI89Io0
目が覚めてDQの世界にいたら迷わずウィッチレディを狩りに行く

そしてうまく生け捕りにして・・・ 後はわかるな?

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 21:57:05 ID:7W1ay1ooO
総長キタ――――(゜∀゜)―――
おかえりなさい!嬉しくて書き込んだ。今から読む!

274 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/22(土) 22:18:54 ID:QlFMyEbW0
総長さんキテタ(゚∀゚)
乙です

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/23(日) 01:07:41 ID:5ZECb2V50
tst

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 21:21:53 ID:Vgi15Z2K0
ほっしー

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 23:42:26 ID:jDdw7cD+0
ほすほす

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/27(木) 00:16:56 ID:zNOYc3qw0


279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/29(土) 00:53:53 ID:rpVjk5IZO
職人の数のわりに書き込み少ないね

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 10:29:24 ID:3ftunY9f0
やっぱ感想とか書いた方が職人さんのモチベーション上がるんかね

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 11:09:28 ID:q+t/YqeO0
年度末だしなぁ。色々忙しい時期なんだろうさ

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 22:20:04 ID:HBCAmV9M0
職人さん降臨まで守りまくるよ!

283 :Stage.13 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:11:34 ID:gv6sb5jB0
アルス「ちーっす。みなさんお久し〜。またまた時間たっちまったな」
タツミ「サンクスコールの前におさらいだね。ゲームサイドでは、僕はランシールに勇者試験を
   受けに行きました。ところがそこで同じく勇者(一級討伐士)のレイさんと試験が重なって
   制度を管轄してる世界退魔機構がアホなせいで競争することになっちゃったんだけど……」
アルス「退魔機構に黙って、こっそりレイと協定を組むことにしたんだよな。
   しかしレイは最初からお前に勝ちを譲る気だったハズだが、俺が画面で見てたら、
   お前、あいつに勝ちを譲って不合格になってなかったか?」
タツミ「ま、そのあたりはこれから本編で語りますので。それではサンクスコール!」

タツミ「>>42様、ショウ君いい人だよね。悪く言えなくなっちゃったなー」
アルス「あいつが来なきゃヤバかったよ。ったく、お前の家はどうなってるんだ」
タツミ「なに言ってんの、動物の死骸が届くなんて序の口なんだから、今度はもっとスマートに対応してよ」
アルス「じょ、序の口ってアンタ……」
タツミ「伯母さんヒステリー起こすたびに僕に八つ当たりするけど、他にはけ口ないから付き合ってあげて。
   たまにビールの缶とか飛んでくるから、ガラスや鏡を背中に避けないこと」
アルス「なんだそr」
タツミ「一條栄治のアホは金さえやっときゃ黙るから、都市銀から1万くらいずつ降ろして渡してやって。
   夏休みと冬休みに年齢詐称してバイトした分が信金の口座に30万くらい入ってるから、
   入り用の分だけ都市銀に移して使うこと。あのバカには間違っても信金の方の残高は教えるなよ、
   『なけなしのお金をなんとか工面して渡してる』って信じ込ませてるから」
アルス「あの、その」
タツミ「僕の机のひきだしに胃薬と抗鬱剤が入ってるので用法と用量を守って正しくお使いください。
   さーて、この後のプランニングはどうするか――」

アルス「………………………………>>43様、俺ちょっと頑張れそうにないかもしれません」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.13 勇者試験(後編)】
 ゲームサイド続編 [1]〜[14]

284 :Stage.13 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:15:03 ID:gv6sb5jB0
Prev >>29-40 (Game-Side Prev (マエスレ)>>344-352)
 ----------------- Game-Side -----------------

「薬草は持ちましたか? 毒消し草は? 聖水と満月草もちゃんとありますね?」
「いいですか、危なくなったら迷わず逃げるのですぞっ。絶対に無理はなりませんぞっ」
「っくぅ! 俺が付いて行ければいいんスけどッ、いいんスけどぉ……!」

 あのね、「はじめてのおつかい」じゃないんだからさぁ……。

「「「レイ殿(さん)、くれぐれもうちの勇者様をよろしくお願いします!!」」」
 深々〜と頭を下げる三人組に、
「ま……任せておきたまえ……ップククククク」
 レイさんは必死に笑いを堪えている。

 ――心配してくれるのはありがたいんだけどね。


 そんなこんなで僕とレイさんは、いよいよ試験会場にやってきた。
「ここが入り口らしいな」
 赤茶色の地肌がむき出しの荒野が、地平まで広がっている。そのど真ん中にぽっかりと
空いている空洞。妙に人工的に整った階段が地下へと続いている。
 建材に発光物が含まれているのか、中は地下全体がぼんやりと明るく、視界に不自由は
なかった。降りてすぐ、僕の背丈ほどあるドクロの像が左右に並ぶ通路が続いている。
 眼窩の奥が赤く光っている不気味な彫像を、レイさんが剣の先でつついた。
「まだ新しいな。わざわざ作ったのか?」
「やだね、このいかにも〜って雰囲気。ピラミッドでも感じたなー」
 侵入者を歓迎しない建造物ってのは、えてして随所に恐怖を煽ろうとする「あざとさ」
がある。それでなくとも僕が直接絡むイベントは異常に難易度が高い。また本来のシステ
ムを無視した難問を吹っかけられなければいいけれど。

「しかし、まさか君がこんなふざけた話を承知するとは思わなかったよ、青少年」
 先を歩くレイさんが振り返って言った。なにやら上機嫌だ。

285 :Stage.13 ?? ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:21:38 ID:gv6sb5jB0
あれ? 投下できない。

286 :Stage.13 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:24:03 ID:gv6sb5jB0

「青少年って……レイさんとあんまり変わらないと思うんだけど」
「ははは、一回りも年上なんだ、いいだろう」
 ということは28歳か。それでも世界に名を馳せる勇者としては十分若い。
「君のことだ、てっきり本部に食って掛かると思ったんだがね」
「騒いだって時間を食うだけでしょ。どうせ世の中なんていい加減なもんだし」
 僕がさらっと流すと、レイさんは首をかしげた。
「なんだか前に会った時とは別人のような気がするな」
「そんなに変わったかな」
「怒らないでくれよ? 以前の君は少々ギスギスしてて、人を寄せ付けない雰囲気があっ
たんだが、今は素直というか……かわいい、というのか……」
 かわいい、ねぇ。まあ妥当な評価だな。へたに「デキるヤツだ」と頼られたり警戒され
るより、多少あなどられるくらいが丁度いい。
「それに武器も。剣は使わないのかい?」
 僕の腰に差しているえものをレイさんは珍しそうに見ている。さっき武器屋で新調した
ばかりの物だ。基本的に戦闘は人任せな僕としては使う機会が無いことを祈りたいが、い
ざとなったら自分で身を守らないと、ってんでサミエルに見繕ってもらった。
「使い慣れてるわけじゃないけどね。僕、こういう軽いのじゃないと扱えないから」
 なにより刃物で斬ったり刺したりってのが、どうにもダメだ。その点でもこの武器は僕
の性に合っていると思う。
「まあ人それぞれだが。やはり君は変わったなぁ」

287 :Stage.13 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:26:03 ID:gv6sb5jB0

 ひとまず地下一階は問題なく進んだ。
 僕がさりげなく正解ルートに導いてるせいもあるけど、なにせレイさん、強すぎ。
 途中で二、三体のさまようよろいと出くわしたが、ひとりで瞬く間に倒してしまった。
金属の塊を剣でスッパスッパぶった斬っていくんだから、常軌を逸している。
 最近のサミエルも戦闘が人間離れしてきたと感じていたが、この世界の人たちは能力の
上昇具合が半端じゃない。外側からゲームとして接していた時は考えもしなかったけど、
こうして生で見る分には鳥山先生のDBかって迫力だ。
 しかも洞窟を入る前にさり気なく現在のレベルを聞いてみたら、30を超えたあたりから
面倒で数えていないとか言ってるし、もしかしてこの人、実は単独でバラモス打倒も余裕
なんじゃないだろうか。

288 :Stage.13 [3-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:03 ID:gv6sb5jB0

   ◇

 地下二階に降りると、だだっ広い空間に出た。画面上なら右上の方に正解ルートの下り
階段があるはずだけど、ここからじゃ遠くて見えない。
「たぶんこの方向だと思うけど」
 見当をつけて歩き出そうとした矢先。レイさんが低い声でつぶやいた。
「あのヨロイ共ばかりなら良かったんだが……やはり生身の魔物もいるか」

「グワゥ!!!」
 暗がりから突然ピンクの物体が飛び出してきた。キラーアンプ、蛍光ピンクの殺人ゴリ
ラという、こいつも別の意味で向こうじゃ考えられない生物だ。
 そいつが2、4、6……ちょっと待て、なんだこの数?
「散れ、用はないっ」
 地下室に爆発音が響き渡った。東の二代目のイオラが、押し寄せてきたピンクの群れを
牽制する。

289 :Stage.13 [3-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:31:54 ID:gv6sb5jB0
 だが魔物の群れは怯む気配もなく、さらに数を増して押し寄せてきた。地下室を埋め尽
くさんばかりのモンスター軍団。ピンクのゴリラの波間に、巨大な鹿型モンスター・マッ
ドオックスや、ピラミッドでも散々お世話になったマミーやら腐った死体やらも混ざって
大騒ぎだ。

 やはり来たか、ゲーム設定を大きく無視した局地的ハードモード!
 今回は「エンカウント率が黄金の爪所有時並」というイレギュラーらしい。

「仕方ない。君は下がっていたまえ」
 すうっと流れるように、レイさんは魔物の群れの中に踏み込んでいった。
 瞬間、黒い剣士を中心に殺戮の嵐が巻き起こった。血煙の中を舞う白刃に、迷いはかけ
らも見受けられない。
「グギャア!」
 モンスターの身体の一部が空中を飛んで、ドサリと僕の目の前に落ちてきた。斬られた
本体の方と目が合った瞬間、そいつは後ろから縦に半分にされて転がった。
 いやはや、本当に強いな。これなら僕に出番が回ってくることもなさそうだ。

290 :Stage.13 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:36:12 ID:gv6sb5jB0

「さて……と」
 僕の作戦はいつものことながら「ぼうぎょ」。
 いかに素早く戦線を離れ身の安全を計るかが重要だが、仲間から離れすぎると別の敵と
相対する危険があるため、「にげる」とは違う微妙な距離の取り方が難しい。防御も存外
と奥が深いのだよ。
 ほら、戦闘じゃ全然役に立たない分、せめて邪魔にならないようにしないとね。

 なんて気をつけてたつもりだったんだけど、いきなりバシっと肩のあたりに痺れるよう
な痛みが走った。
「――ッ なんだ?」
 ブーンという昆虫の羽音が近づいてきた。巨大なピンクの蜂が何匹も飛び回っている。
 げっ、ハンターフライだ。確かこいつは通常攻撃の他にもう一つ、ギラを持っている。
順当なルートでこの洞窟に挑んだのなら大したダメージではないはずだが、僕のレベルで
は十分な痛手だ。
「大丈夫か青少年?」
「平気、こっちは気にしないで」
 とは言ったものの、素早いコイツらから逃げ回るのは至難の業だ。
 仕方ない。

291 :Stage.13 [5-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:38:54 ID:gv6sb5jB0

 心は迷ったままだったが、僕の理性はその場で作戦を切り替えた。マントを後ろに払っ
て、新品の武器を引っ張り出す。
「たまには戦います、かっ!」
 ヒュンと空気を裂いて鎖状の刃がうねり、攻撃してきたハンターフライが逆に吹っ飛ん
でいった。

 はがねのむち。
『勇者様は器用っスから、こういう特殊武器の方が合うと思うっスよ。っていうかコレし
かないっしょ! ほらぴったり! 似合う!』
 というサミエルのアドバイスを受けて(なにがそんなに似合うんだか気になったけど)
買ったものだ。今まで扱ったこともない武器をいきなり実戦投入するのは不安だったが、
さすが武器の専門家が見立ててくれただけあって、コイツは意外と思った通りに動いてく
れる。

 僕には一撃で仕留められるほどの腕力は無いが、当たれば痛いものは痛い。本能レベル
で襲って来ているモンスターたちを牽制するには十分だ。
 が。
「え、嘘?」

292 :Stage.13 [5-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:26 ID:gv6sb5jB0

 牽制のつもりで放った一撃が、一匹のハンターフライの片羽を根本から切り落とした。
 偶然だ。テロップでは『改心の一撃!』とか出ているんだろう。足下に墜落してきたピ
ンクの蜂は、狂ったようにその場で暴れている。
 これを放っておくのは……かえって可哀想だよね。とどめをさしてやるべきだ。
 僕は意を決してそいつを足で押さえつけ、聖なるナイフを握った。

 ――手が、動かない。


 耳元には別の敵の羽音が迫っている。
 羽音に混じって、いつもの悪夢がフラッシュバックする。
 刃物が肉を割く音と、飛び散る血と。
『あんたなんて――』




293 :Stage.13 [6-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:40:58 ID:gv6sb5jB0

 ズサリ、と目の前の蜂に大振りの剣が突き立てられた。
 同時に肩にトン…と重みがかかり、そこがふわあっと暖かくなった。いつの間にか傍ら
に来ていたレイさんが、僕の肩に手を当てている。今のは回復呪文? 
「無理しなくていい。さ、耳を塞いで」
 僕は咄嗟に両耳を手の平で押さえた。
 ドーン! ともの凄い音が轟き、先刻よりさらに激しい光と衝撃が周囲を席捲する。
 イオラのさらに上位呪文、イオナズンに違いない。こんな極大呪文まで溜めナシ詠唱ナ
シで発動できるって、どんだけ熟達してんだろう、この東の二代目は。

 ばしゃ、ばしゃ、と吹っ飛ばされた生物の部品が雨の様に降り注いできた。
 今度は耳じゃなくて口を塞いだ。
「減らないな……立ってくれ、どっちへ行けばいい?」



294 :Stage.13 [6-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:41:47 ID:gv6sb5jB0

 グイっと僕の腕を取って引き起こし、レイさんは微かに焦りをにじませた声で言った。
見ると、敵の数がほとんど減っていない。むしろ増えているみたいだ。
 あくまでここは「試験会場」のはず。このモンスターたちも神殿の管理者がなにかしら
の手段で呼び寄せたんだろうが、もう少し調整があってもいいんじゃないか? 本気で潰
しにかかってるようなこの状況は、どう考えてもおかしい。
「ま、まずあの昇り階段まで。昇らずにそこから北」
 僕は一番近い位置にある昇り階段(結構距離がある)の方を指して言った。あの階段は
ダミールートで、そこを起点に上、つまり北方向に進めば正解ルートの下り階段がある。
 簡単にそれだけを伝えると、レイさんは急にニンマリ笑った。
「緊急事態だ、大目に見てくれたまえ」
 いきなり僕を抱き寄せるように手を回して、
「え?」
 ひょいっと肩に担ぎ上げ――。

295 :Stage.13 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:43:07 ID:gv6sb5jB0

「ひゃあああ〜!?」
「腹に力を入れてないと息が詰まるよ」
 とか言われた途端、すんごいスピードで景色が動き出した。グンッとGがかかって本当
に息が詰まりかける。
 「はい退けて」「邪魔だよ」なんて、そこまで気合いが入ってるようにも聞こえないレ
イさんのかけ声とは裏腹に、進行方向に背中を向けている僕の眼前には、斬られた魔物が
死屍累々と横たわっているのが見えた。ちょ、なにこの人間ダンプ。
「ここから北だったね」
「は、はぇ?」
 気がついたらダミールートの階段に到着していた。

 止まることなく直角に折れてまた走り出すレイさん。背後からどたどたと追いかけてき
た人型モンスター・殺人鬼が斧を振り上げたが、
「レ、レイさん、さつじ……」
 僕が警戒を呼びかけるまでもなく、レイさんはクルッと一回転、次に見たときにはそい
つはあっさり返り討ちにされていた。筋肉質の胸のあたりがぱっくり裂けて、吹き出した
生暖かい液体がピシャリと僕の顔に跳ねた。
「――!」
 抑えろ! 死んでも抑え込まなきゃ!

296 :Stage.13 [8-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:51:42 ID:gv6sb5jB0

「目をつぶってなさい。君が血に弱いのはロダム殿から聞いている」
 一瞬、吐き気も忘れた。
 ロダムから聞いてる?

   ◇

 地下三階への下り階段へ飛び込んだところで、追撃はぴたりとやんだ。魔物にもそれぞ
れの持ち場があるのか。こうなってみるとあれも試験のうちだったのかもしれない。
 先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった地下室に、レイさんの吐息だけが聞こえ
る。さすがの勇者様も少し息が荒い。少しで済んでるのがすごいけど。

「あの……そろそろ降ろしてくれます?」
 やっぱり軽々と地面に降ろされた。よろけた僕をレイさんはすかさず支えてくれた。
「具合が悪そうだったからね。でもよけい酔わせてしまったかな?」
 首だけ振って答える。ここはお礼を言うべきなんだろうが――。
「聞いてたんだね。いつ?」
「君が武器屋に行っていた少しの間にね。旅を始めた頃よりひどくなっていると。ずいぶ
ん心配していたよ」

297 :Stage.13 [8-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:53:16 ID:gv6sb5jB0

 やだなぁ、さすが最年長。見抜かれてたのか。
「なにか血に関してトラウマがあるのかい?」
 レイさんの問う声は軽い。まるで大したことじゃないとでも言うように。本当なら、仮
にも勇者の名を背負っている人間に対して、怒鳴りつけてしかるべきだ。

 どうしてだろう、この世界で僕が深く関わる人たちは、みんな怖いくらい優しい。
 まるで僕の理想が反映されてるみたいに。

「ごめん、今は話せない。口に出すのはちょっとまずいんだよね」
 さっきから過去のつらい感覚が戻りそうになっていて、僕の理性が必死に抑え込んでい
る。街中ならともかく、こんなダンジョンの奥で発作を起こしたら迷惑もいいところだ。
 レイさんは困ったように下を向いた。言葉を探しているようだ。
 話せない理由については、ちゃんと教えないといけないか――。

298 :Stage.13 [9-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:54:57 ID:gv6sb5jB0

「なんていうか……僕は人より記憶力がいいんだ。知識面だけじゃなくて、その時に見た
映像や音、感じたこととかを丸ごと覚えていて、頭の中にそっくり呼び出せる」
「そりゃすごいな」
 レイさんは感心したようにうなずいた。
「でも弊害もあるんだ。今この瞬間に感じてる現実の体感よりも、脳内で再生された疑似
体感の方が勝ってしまえば、僕自身はもう、自分が今どこにいるのかさえわからなくなる
ほどその『記憶』の中に引きずりこまれてしまうんだよ」
 視覚も聴覚も嗅覚も触覚も、あらゆる感覚を処理しているのはあくまで脳だ。その全て
の記憶が忠実に再生されれば、今『それ』を体感しているのと同じことになる。
「そして感情もね。たとえばその当時は本当に死にたいくらい悲しかったとしても、何年
もあとに思い出したら薄れてるものだろう? でも僕の場合は……」
「その場で自殺しそうなくらいの悲しみが、同じ程度で戻ってきてしまう、ってこと?」
「うん。レイさん、理解が早くて助かるよ」

299 :Stage.13 [9-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:56:12 ID:gv6sb5jB0

 それでも、ただ頭の中で思い出すだけならまだ抑制がきく。
 しかし口に出して語るというのは、まず頭の中で言うことをまとめ、音声で形にし、自
分の耳で聞くことでまた脳に還元されるという、三段階で記憶を鮮明にする行為だ。それ
だけですぐに意識が飛ぶってことはないけど、どうしたって感覚がおかしくなるから極力
避けたい。
 ユリコやカズヒロに何度か過去を聞かれたこともあるけど、それが嫌でそのたびに誤魔
化していたものだ。
 別に生まれた時から付き合ってる症状だから対処法もよくわかってるし、日常生活には
そんな支障もなかったんだけどね。うかつに思い出話ができないくらいで。
 でもこの世界に来てガラッと環境が変わって、刺激の強いことも多くて……。



300 :Stage.13 [10-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:57:56 ID:gv6sb5jB0

「血に弱いとしか聞いてなかったが、仲間にはそこまで話してないのかい?」
 他人のパーティーを心配するレイさんの優しい言葉に、僕は苦笑を返した。
「言えばみんな気にしすぎて、必要以上に制約を設けてしまうからね」 
 それでなくとも最近、みんな戦闘ではなるべく流血沙汰を少なくしようと気を遣ってく
れてるみたいだし。今後イベントのたびに「これは勇者様には刺激が強すぎるのでは?」
なんて協議されるわけにもいかない。

「なるほどなぁ……。仲間に隠し事をするのは感心しないが。冷静に判断した上で黙って
るならいいんじゃないかな」
 レイさんはにっこり笑うと、僕の頭をぽんぽんと叩いた。なんか完全に子供扱いされて
る? 仕方ないけど。

301 :Stage.13 [10-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/30(日) 23:59:24 ID:gv6sb5jB0

「先を急ごうか。次はどっちだい」
「右に折れて、あとは道なりに行けば突き当たりの小部屋にゴールの宝箱があるはず」
「ははは、楽で良いな。今後も一緒に旅をしたいくらいだよ」
「僕もだけど。ダメなの?」
 こんなに頼もしい人がパーティに入ってくれるなら、願ってもない。
「私はどちらかというと父上を捜すのが目的だからね。同行することで迷惑になる」
 っち、断られたか。惜しいなー。
 まあ目的があるのに、こんな面倒な連中に構ってられないか。

   ◇



302 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:00:02 ID:JmBxZuRH0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙


303 :Stage.13 [11-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:05:33 ID:DADMtNCE0
 いよいよ試験も終わりだ。地下三階にはまったくと言っていいほど敵の気配は無かった。
上の階で出し尽くしたんだろうか。
 奥の正面の壁に目をやると、大きな人の顔が掘られていた。例の「引き返せー」を言っ
てくるわけだが……ここは黙っておこうw レイさん驚くかなー?

 とかwktkしつつ、そいつの前まで来たら。
 あれ? なにも言わないぞ? レイさんはさっさと左に曲がっていく。壊れてるのかな。
 僕はそいつの顔をペチッと叩いてみた。

『しまった! レイさん、振り向かないでそのまま聞いて』

 いきなりそいつがしゃべった。それも僕そっくりの声で!
「なんだい、青少年?」
『忘れてたんだよ、ここはそういうトラップなんだ。振り向いたらスタート地点に戻され
るっていう』

「ち……!」
 違う! なにデタラメこいてやがんだコイツ!
 と言う前になにかが腹の周りにもズルッと巻き付いて、すごい力で後ろに身体ごと引っ
張られた。

304 :Stage.13 [11-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:08:58 ID:DADMtNCE0

「おいおい、いきなりゴール間近で振り出しに戻るトラップとは」
『ひどいよね。そういうことだから、気をつけて……』
 石の人面とレイさんの会話が、急速に遠ざかっていく。


「ひゃあああ〜!?」
 なんかさっきも同じようなことなかったか?
『騒ぐな』
 頭上から降ってくる低い声。見上げると、金色の鱗がうねうね動いていた。太い蛇のよ
うな身体が僕に巻き付いたまま、狭い通路を器用に飛んでいる。
 僕の記憶が正しければこいつは、
「あんた、スカイドラゴン?」
『当たりだ』
 確かにここの地下深くには、なぜか空の名を冠する金色の龍が出現する。システムバラ
ンスはともかく、生態系としてはどうなんだと突っ込んだ記憶がある。
『暴れるな、取って食ったりはせん』
 金の龍は言った。
『貴殿に話しがあるのだ、異世界の勇者よ』

305 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:10:21 ID:2Kwx4Yi90
お、遭遇!
しえん

306 :Stage.13 [12-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:10:32 ID:DADMtNCE0

 異世界の……僕の素性を知ってる?
『本当なら上の階で分断し、連れてくる予定だったのだが。片割れが絶えず貴殿を気にし
ていて、思うようにならなかったのだ』
「ええ〜!? じゃあ死ななくていいのに殺しちゃった魔物もたくさんいたんじゃないの?
ごめん! そんな事情知らなくて」
 思わず謝ると、金の龍はぐははと笑った。
『気にするな。戦いに興奮して本当に貴殿を襲っていた愚か者もいたようだ。知能が低い
のはちっとも使えんよ』


 そうこう話しているうちに行き止まりについた。ここは宝物部屋の裏側に当たる外れルー
トで、もっとも奥にある人面に「たまには人の話を素直に聞け」と諭される場所だ。
 その最後の人面が、僕を見下ろしている。
 僕の後ろで、金の龍が地に降りて頭を下げた。

 直後に、威圧感。
 圧倒的な――。

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:11:24 ID:wJfI+Z2z0
支援

308 :Stage.13 [12-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:12:41 ID:DADMtNCE0

『われが勇者と語り合うのは、これで五度目となるな』
 壁の顔から声が聞こえた。どこか遠くから流れてきているような、擦れ混じりの声だ。
『だが貴様は、勇者であって勇者ではない。あの孤高の、悲しい少年とは、違う』
「……アルスのこと?」
『そうだ』
 アルスのことを悲しいと言ったそいつは、静かに、決定的なことを僕に告げた。
『われが勇者によって討たれたのは四度。さしもの少年も、四度目には狂いそうな顔をし
ておったよ』

 心臓が、鳴った。
 ずっと考えないようにしてきた事実を、とうとうここで突きつけられてしまった。
「いやぁ……うん、なんとなくわかってたんだけどね。やっぱりそうなんだ。参ったな」


 ――あの、眩暈がするほど高い神竜の塔の最上階で、まるで鏡を見てるようなもう一人
の「僕」が、満面の笑みで手を差し出した。
『キミも勇者になってみなよ。本当に楽しいから』
 吸い込まれるように僕も手を差し出して、そして契約が成立したあの瞬間。
 彼が一瞬、すがりつくような目をしたのを、僕は見たのだ。


309 :Stage.13 [13-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:14:00 ID:DADMtNCE0

 ゲーム……だからこそ、この世界には決定的なものが欠けている。
 決して救われない。どんなにあがいたところでどうしようもない。
 世界を救うはずの彼だけが、ここに未来がないことを知っている。

 
『繰り返される伝説の中で過去を覚えておったのは、勇者たる少年とわれだけであった』
 そうか。それでも他に仲間はいたわけだ。皮肉にも敵の親玉だったみたいだけど。

 本当に参ったなー。
 いやね、最初からどうもおかしいとは思ってたんですよ。だってアイツ『四回も』って
言ってたでしょ? 僕のクリア回数を。
 でもこのゲーム、前回のデータを引き継いだまま最初からプレイはできないから、冒険
の書は一度消さなきゃならない。アイツが前の冒険を覚えてられるはずがないんですよ。
 っていうか、ですよ?
 死に物狂いで旅をして、目の前で父親を殺されるような経験もして、挙げ句にやっとの
思いで魔王を倒したら今度は故郷にも帰れないとか、そんなキッツイ冒険をですよ?
 延々と繰り返されたら……普通、精神イッちゃいますよね?



310 :Stage.13 [13-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:15:33 ID:DADMtNCE0

「魔王を倒してふと気がついたら、一六歳の誕生日の朝に戻されるってわけだ。あなたも、
いつの間にか復活していて?」
『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
能性があるということかな」
『知らぬ。無いのではないか?』
 そんな投げやりにされても。あんた魔王でしょ。
「じゃあなんで呼んだの」
『伝えただけだ。いつもの通りわれの元に来るも良し。なんらかの方法で神竜とやらに会
い、さっさと戻るもよし』
 ただ貴様には会ってみたい気もするがな。壁の向こうで笑う気配があった。
 

311 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/03/31(月) 00:16:58 ID:1H7c0ayR0
支援

312 :Stage.13 [14-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:17:35 ID:DADMtNCE0


 ――そして、そのさらに向こうからレイさんが僕を呼んでいるのが聞こえた。
 僕がいなくなったことに気がついたらしい。
『…………』
 壁の顔は沈黙してしまった。あの圧倒的な威圧感も無くなっていて、後ろを向くとスカ
イドラゴンの姿も消えていた。
 
 ビキッ

 いきなり目の前の壁に亀裂が入った。あっという間に崩れ落ち、埃が舞い上がる向こう
側に、レイさんが剣を構えて立ちつくしている。
「ど、どこに行っていたんだね! 心配したぞ、気がついたらいないから」
「ごめん、なんか変なワープトラップ踏んじゃったみたいで、気がついたらここに飛ばさ
れてたんだ」

313 :Stage.13 [14-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:18:45 ID:DADMtNCE0

 言いながら壁の残骸をまたいで隣の部屋に移動する。そこには二つの宝箱が並んでいた。
「まあ無事で良かったよ。それでこの宝箱だが、どちらかニセモノだったり罠だったりす
るのだろう?」
 それを聞こうとしたら僕がいなかったんだね。さすがレイさん、慎重だ。
「えーと確か……」
 僕は一方の宝箱を、すっと指で示した。

「こっちをレイさんにあげる。実はランダムで当たり外れがあるんだ。こればかりは事前
知識じゃわかんないんだよ。それでさ、考えたんだけど……ここくらいはフィフティにい
かない? 当たった方が合格ってことでさ」

   ◇



314 :Stage.13 [14-3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:29 ID:DADMtNCE0

 僕の手にはコインが一枚。初めて手に入れた「小さなメダル」ってヤツだ。向こうでは
レイさんがブルーオーブを片手に、神殿の人たちと更新手続きの件で話しをしている。
 こちらを気にしているようだったので、僕はもう何回目になるのか、「気にするな」と
手を振った。

「心配ありませんよ勇者様、どうせすぐ別の条件で合格できますって!」
「一級討伐士を持つ者は人気が半端でじゃないですからな、退魔機構もそうそう剥奪でき
ません。ヘタなことをすれば世論を敵に回しますし」
「そうッスよ! 俺らも今までと変わんないし。元気出してください!」
 仲間たちが口々に僕を励ましてくれる。
「ありがとう。ごめんね、期待に応えられなくて」
 僕の形ばかりの返事にも、みんなは真剣な顔で言葉を継いだ。
「なに言ってるんスか! 無事に戻ってきただけでホッとしましたよ」
「命あっての物種ですからな」

315 :Stage.13 [14-4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:19:51 ID:DADMtNCE0

 みんな本当にごめん。僕もいい加減、自分が嫌いになりそうだよ。
 こんなに心配されてるのに……僕もう、そんなのどーでもいいんだよね。
 なんかいろいろ考えることがてんこ盛りで、もう頭の中ワヤクチャだよ。



 さてどうしよう。
 天下の魔王様まで投げちゃったこの大問題を、どうやって片付ける?




316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:21:53 ID:2Kwx4Yi90
支援

317 :Stage.13 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/03/31(月) 00:23:19 ID:DADMtNCE0
本日はここまでです。
多数のご支援ありがとうございました。

しかしさるさんの次は行数制限なのでしょうか。
本日だけのイレギュラーだといいのですけど……。
私の様な文庫ページ換算で書いてる人間には、
さるさんより行数を制限される方がキツイですorz



318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:36:13 ID:JmBxZuRH0
>>317
作者さん超乙!
ドラクエの「リプレイ」は回を経る毎に苦痛だろうな〜
プレイヤーという神を超越しないと輪廻から抜けられないし…
次の展開に期待してます!

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 02:21:58 ID:VCCbLPbm0
>>317
久々乙
いつも楽しみにしてます。
マイペースで頑張ってください。

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 06:13:26 ID:HKT1s1M2O
>>317
乙!ずっと待ってました!
人間ダンプクソワロタwwwww

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 01:05:17 ID:7O8xhSyFi
タツミも大変だなー。
だから映画のレインマン好きなのか?
サヴァンとは違うだろうけど。

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/01(火) 03:30:44 ID:Uk6B1+hWO
>『さすがに飽いたわ。決して手に入らぬ世界を侵攻してなんになる』
>「そういうシナリオだもんねぇ。でも僕に声をかけたということは、僕にそれを壊せる可
>能性があるということかな」
>『知らぬ。無いのではないか?』



ゾーマ様セツナス

323 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 07:56:34 ID:uGxHdLfqO
仕事放棄で読んでたわ。

324 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 22:36:26 ID:YJBNcftg0
保管庫を読み直していて気付いたけど
◆8fpmfOs/7wさんの冒険の書シリーズって
1〜3(ロト三部作)、4と5(天空三部作)がそれぞれ繋がってるんだな。
ドッキリだと思えばとか、勇者でも暗闇が怖いとか
キツネに化かされた魔王とか。改めてGJです。

325 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:01 ID:Ns50myli0




目を開ける。目の前にはジジイがいる。


???????


まったく状況が飲み込めない。



ジジイが口を開く。
どうやら俺は生き返ったらしい。この世界では神様の気まぐれで稀に死人が甦るようだ。
そして生き返ったやつは必ず教会や城に現れる。ジジイも神父だけあって何度か経験あるらしく意外と冷静だった。


326 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:42:48 ID:Ns50myli0
俺は結局生きていたという結果に妙な脱力感を覚えその場に座りこんだ。
ジジイは俺が無事だとわかると長々と説教を始めやがった。うぜえ。
無視して教会を出ようとすると村人が数人駆け込んできた。あろうことか皆俺に向かって礼を言いやがる。

ちっ他人にすがる事でしか救われない弱者どもが。
負け組みのオーラがプンプンするんだよ俺に近寄るんじゃねえ。てめえらの為じゃねーよ屑共が。

俺は結果的に負けたのだ。この史上最強の総長と恐れられた俺がぶっ殺されたのだ。
……負けて死ぬようならこの糞雑魚野郎共と変わらないじゃないか。
畜生が。

イライラと絶望で何も考えたく無い。誰も近寄るな殺すぞ。とっととその場を離れようとした。
が、その時意外な言葉が舞い込んできた。 

327 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:43:40 ID:Ns50myli0
よっ町の英雄さん今夜一杯どうだい?

酒…つまりこういう事だ。こいつらは畑の魔物を追っ払ってくれた礼に酒を飲ませてくれると。
ふざけるな今はそんな気分じゃねえ。喧嘩無敵の俺様が負けたんだよダボが。酒なんて飲んでる場合…
……酒……?酒…!?酒だと!?

と、いう事で夜町の酒場でささやかなパーティが開かれる事になった。それまで俺は寝る事にする。



−夜−


町の小さな酒場につくとそこには十数人の村人がいた。みな笑顔で気持ち悪い。
進められるままにまずビールを一杯飲む。癖があるがどうしてなかなかこれはこれでうまい。
ガキがこっちを見てる。あ?目が恐いだ?うるせー殴んぞあっち行け。

328 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:44:10 ID:Ns50myli0
と、ここで凄いものを見つけてしまった。バニーの姉ちゃんだ。しかもかなりの食い込み具合。
こっちの酒場ではこれがスタンダードなんだろうか。だとしたらかなり顔がにやける。
最初は気持ち悪いオタのコスプレ集団のような世界だと思ったがこれなら悪くないかもしれない。

さあさあグイっとやってくんな!糞共が俺にお酌しようと列を成してきやがった。
たくこれだから弱い凡人はよ…俺は進められるがままに飲む。


ー3時間後ー


ウップ…もうこの辺で…

バニー「英雄さんかっこいぃ〜!わたしのお酒も飲んでくださ〜ぃ!」

デへへ。飲む飲む!バニーちゃんのお酌なら樽でも飲むぞ!てこれウィスキー…しかも激強…
ウゲっなんとか飲み干し…て何かかえてんの!?えっマジで樽で持ってきたの!?

329 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:45:21 ID:Ns50myli0

例のごとく気づいたらベットの上だった。


とんでもなく頭が痛い。今日は一日中寝てようと決めた矢先ジジイが勢いよく部屋に飛び込んで来た。
うるせー殺すぞジジイ!あっ?これから会わせたい人がいるからすぐ準備しろだ?
知るかボケ!俺は二日酔いで死にそうなんだよ!寝かしとけや!
しかしどうやら相手はかなり金持ちらしくしかも飯を食わせてくれるらしい。
金持ち=肉。俺はすぐに準備を始めた。 

準備ができジジイの所に行く。外へでてジジイが羽のようなものを放り投げた。

その瞬間信じられない事が起こった。

体が宙に浮き空を飛んだ。あっという間に小さな城の前に到着した。
そしてさらに驚いたのが会わせたいというのはそこの王様らしい。粗相のないようにと注意された。
連れられるがままに城の中を進む。さすがにあちらこちらに武装した兵士がいる。
そして階段を上るとそこには大臣らしき人物と王様らしき人物がいた。

330 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:17 ID:Ns50myli0
俺は権力者と金持ちが嫌いだ。権力と財で肥えた豚は死ねと思っている。

適当に話を流していると突然聞かれる。

で、きみは旅人なのかね?何の目的で旅をしてるのかね?

考えた事もなかった。
訳もわからずこの世界に来て、ノリで化物相手に喧嘩売って、ぶっ殺されて、生き返って、
今王様の前にいる。俺はこれからどうしたいのだろうか。元の世界に帰りたいのだろうか。


否。


もはや別に帰りたくはない。未練無し。俺はしばらく黙りこくった。そして一つの単語が頭を過ぎる。


…世界征服…

331 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:47:40 ID:Ns50myli0
そうだ。どうせならこの世界を手に入れてやろうじゃねーか。一度死んだんだ今更恐いものなんてない。
男なら一度は誰もが夢見る世界征服。この世界で実現してやろうじゃねーか。

妙に興奮してきた俺は一応無難に強くなる為の旅をしていると答えておいた。
王様はうんうんと頷くと無茶なお願いをしてきた。今この世界のどこかを勇者が旅をしている。
会ったらそいつに協力しろと言い出しやがる。
奇跡的に生き返った事、魔物を倒したその腕力はもしかしたら俺も選ばれしものの可能性があるとの事だ。

…たくどこまでもおめでてえやつらだな。そんなわけあるかっつの。 
しかしながら旅の軍資金として500G、ちなみにこの世界の通貨はゴールドというようだ、と、
うまい昼飯を食わせてくれるらしいので気が向いたらなと答えておいた。
俺はこの世界について知らなさ過ぎる。利用できるものはなんでも利用しなければ。
いずれこの王とやらも俺の前に跪かせてやるぜ。


332 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:49:48 ID:Ns50myli0
その日は一日中情報集めと旅の準備に走り回った。得られた情報は

@魔王と呼ばれるやつが世界征服しようとしてる
A勇者と呼ばれるやつが魔王討伐の旅に出てる
B選ばれし者は神様の恩恵で(ちなみにこの世界の神様はルビスと言うらしい)生き返る事がある。

つまりまとめるとだな、俺にとって魔王も勇者も邪魔な存在なわけだ。
この世界の覇者になる為にはこいつらをどうにかしないといけない。
俺は考えた。
やはり最初どちらかに味方して片方を倒す。
そしてその後もう片方を潰すのが一番効率が良いだろう。ではどちらに味方するべきか。
普通に考えて勇者の味方だろう。しかし待て。どうも魔王がそこまで強いやつとは思えない。

果たして本当に強いやつが手下を使ってちまちま小さな村の畑なんぞ襲わせたりするだろうか?
もしかして世界征服などたいそうな事しでかしてるわりには数にものを言わせるだけの小心者で雑魚なのかもしれない。
もしくはただのバカか。どちらにせよスケールの小さい男だ。


333 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/03(木) 19:50:57 ID:Ns50myli0
仮に勇者が屈強な大男だとした場合、トータル的に手ごわいのは勇者>魔王だろう。
つまり強い勇者を数の多い魔王軍と協力してブチのめし、その後魔王も倒すのが一番賢い。
完璧だ。自分の策士ぶりに我ながらビックリだ。
決まりだ。俺は勇者討伐の旅に出る事にした。
ただ今のままではどちらにも勝てそうにない。一手下でしか無いアホヤクザ猪に苦戦するくらいだ。
やはりここはどう考えても強力な武器がいる。さすがに釘ひのきだけじゃ心もとない。
それと仲間だ。忠実にして強い舎弟が必要だ。
ここで旅の目的が明確に定まった。

「この世界で新鬼浜爆走愚連隊を旗揚げして魔王を従え勇者を潰しその後魔王も葬る」







こうして俺の冒険は今始まった。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 00:06:46 ID:Tyx9tsZY0
総長さん乙です

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 09:16:35 ID:ZQ7JmTafO
樽ワロタwあの勇者タンが登場すんの楽しみに待ってます(*´д`*)

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/05(土) 00:18:47 ID:d4HuW//B0
>>324
おまいさんのおかげで読み直すことができたわ。
ありがd

>>総長
乙!
へたすりゃDQNなのに、なんか感情移入しちまうなwww

337 :Stage.14 [1-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:18:10 ID:h37KA7+K0

 ――アイツはじっと俺の言葉を聞いていた。

 携帯の向こうで。
 画面の向こうで。

 決して混じり合うはずのない二つの世界。
 俺たちの出会いは、それ自体はとんでもない奇跡であるはずなのに。
 なのに。

 なあ、タツミ?
 俺はお前が大嫌いだよ。死ぬほど嫌いだ。
 だけど俺は、どうしてもお前を嫌うことができない。
 それも、お前がそう望んでいるからなのか。
 俺の気持ちも、ぜんぶお前が決定していることなのか。




338 :Stage.14 [1-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:19:29 ID:h37KA7+K0


「さあね。で、これは復讐なの?」




 ――わかんねえよ。




【Stage.14 Cursing My Dear】
 [1]〜[15]

Prev >>284-315 (Real-Side Prev >>29-40)
 ----------------- Real-Side -----------------

339 :Stage.14 [2-1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:21:00 ID:h37KA7+K0

 1周目。

 俺が「現実」を「夢」で見るようになったのは、最初の旅の中盤くらいだった。
 「夢」の中で俺は、タツミという5、6歳くらいの幼い少年をすぐ近くから見下ろして
いた。まったく知らない世界――そこは、すべてが見知らぬ物ばかりで、しかも毎晩のよ
うに見るもんだから、本気で俺の頭がおかしくなったのかと心配になった。

 だが、タツミがしょっちゅう夢の中でやっている「ゲーム」のストーリーが、たった今
自分が歩んでいる冒険を簡略化したものだと気づいた時、俺はこの「夢」を、アリアハン
のはるか未来の世界を見ているのだと解釈した。
 謎の「ゲーム」とやらは俺の冒険譚をつづった絵本のような物で、あの小さな男の子は
それを楽しんでいるのだろう、と。そして俺のことが後世に伝説として残っているのなら、
俺は魔王討伐に成功したに違いない、なんて、前向きというか、今思えばずいぶんのんき
に考えていたもんだ。



340 :Stage.14 [2-2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/04/05(土) 22:22:02 ID:h37KA7+K0

 妙な「夢」はその後もずっと現れたが、俺はいつしかそれを楽しむようになった。メモ
を取ってあれこれ考察したり、仲間たちにもまるで知らない文化について語ってやるのが
日課になった。
 いつかこのタツミって子に会ってみたいなと、そんなふうに考えたりもした。

 旅自体は決して楽ではなかったが、それなりに順調に進んだ。エリス、サミエル、ロダ
ム。みんな頼もしい、強い絆で結ばれた大切な仲間たちだ。
 特にエリスとは……まあ当然のように恋仲になって。この旅が終わったら結婚しようと
約束を交わした。プロポーズの瞬間は、ホント死にそうなくらい緊張したなぁ。
 泣きながら抱きついてきたエリスが、デバ亀してたサミエルに気付いてイオナズンで吹っ
飛ばしたときは、ちょっと早まったかと不安になったが。

 やがてバラモスを倒し、センセーショナルなゾーマ様の登場に再び旅立ちを決意し、ギ
アガの大穴から地下世界に赴いた。
 俺はそこで、死んだはずの親父が生きていたことを知る。生きてたなら連絡くらい寄越
せと憤りも感じたが、やっぱり嬉しかった。

341 :以下、名無しにかわりましてVIPが実況します:2008/04/05(土) 22:23:32 ID:+3IqaeyH0
支援

481KB
続きを読む

名前: E-mail(省略可)
READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
ぜろちゃんねるプラス