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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目

1 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 01:28:05 ID:BnV7Gxk50
DQ世界を知らないイサミからすれば
メタスラ狩りに熱くなったりするのは理解できないよなw
そしてあの時覚えたカギの技法はピッキング技術だ確かにwwww

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 09:52:47 ID:+nPDpNEd0
小説ドラクエXを好きな俺は、腐った死体にドラマを感じる事に同意せざるを得ない。
しかし、はたから見るとグロいにも程があるのに、余裕あるなw

65 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 10:17:34 ID:89QzY+EN0
メタスラ狩り、いいですね。まさに目の色をかえるという感じでしょうか。
はぐれメタルなんかでた時にはすごいことになりそう(wwwwwwwwww

腐った死体さんが動くっていうのはゲームだとただの敵キャラですけど、リアルに考えるとこわいですよね。
腐った死体さんの願い、かなうといいですね。でも、会えたとしても、この姿だとお相手さんもびっくりですよね。悲しいけど・・・。

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 10:34:50 ID:kJjJ+8voO
スミス(仮)にもドラマがありそう。
メタスラ狩りは同意出来るな。
暇つぶし、レッドマンも乙。
しかしこのスレでノリさんAAが見れるとはw

67 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 13:13:12 ID:P1xeMY6M0
週末に向けての怒涛の投下!
作家さんたちGJ!

堪能しました〜

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/20(土) 13:42:51 ID:8mcUQYMo0
すげえ……
作者にはそれぞれの色が出ているな。
各主人公で例えると

しなの…ピンク
 タケ…ブラック
イサミ…パープル って感じかな。


69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 06:39:45 ID:OdbIyG/4O
作者の皆さんには感謝している。
続きを読むのがすごい楽しみ。

70 :Stage.9.5 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:03:39 ID:OQlcC0ua0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。まずのっけからごめんなさい。アリスちゃんもうちょっと待ってくださーい!」
アルス「嬉しそうに見えるのは気のせいか?」
タツミ「とんでもない! お待ちいただいてる読者様に申し訳なくて、ああ胸が痛ひ……」
アルス「え〜冗談抜きですんません。現在本編の方で、物語の根幹に関わる部分を書いてまして、
   本編をキリのいいところまで進めてから投下させてください」
タツミ「では前回ご感想いただいた読者様へのサンクスコール!」

タツミ「前スレ>>580様、ドキドキしつつの初リアルタイム支援、ありがとうございます!」
アルス「同じく前スレ>>581様、狙った終わり方になってる?w 楽しみにしていただいて感謝!」
タツミ「そして毎回、たくさんのご支援にも助かっております」

アルス「しかしこの話、リアルサイドとゲームサイドで飛ぶから、流れつかみにくくないのかね?」
タツミ「あるかも。時々番外も入るし、『あれこっちの最後どうなってたっけ?』なんてねー」
アルス「一応、前話へのアンカーと一緒に各サイドの最終アンカーを入れてるけどな」
タツミ「登場人物も多いしね。すでに忘れられてる人もいるよ、きっとw」
???「たとえば僕なんかそうですよね」
タツミ「うわ! え、どなた?」
アルス「お〜久しぶりじゃん! えーと……なんだ、ほら、あれだ」
???「あれだ、はないでしょう。コーラおごったのに。ショウですよ」
タツミ「あ〜いたね、黄色シャツの謎のゲームサイド人。で、なにかご用?」
ショウ「実は今回、僕がけっこう多く出るもので」
アルス・タツミ『へ?』


ショウ「というわけで、今回はアナザー中心『Stage.9.5』をお送りします。
   それでは本編スタート!」


【Stage.9.5 Border Breakers】
 [1]〜[9] リアルサイド・アナザー

71 :Stage.9.5 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:05:47 ID:OQlcC0ua0
  Prev(マエスレ) >>567-576
 ----------------- Rial-Side Another -----------------

 ――彼は「勇者」となるべく育てられた。

 勇者は常に、慈愛に満ちた存在でなければならない。特定の人間に愛を傾けず、世の中
のすべての人間を平等に慈しみ、他人を助け、他人を優先し、他人の非を許せる優しさを
持たねばならない。
 また勇者は、憎悪や嫉妬などの醜い感情を持ってはならない。他人を憎んだり、ねたん
だりするのは「悪」であり、そのような感情はみずから速やかに排除し、自省できる人間
でなければならない。
 また勇者は、清廉潔白でなければならない。俗人と同じ劣情を持たず、他者の感情に左
右されず、泰然としていなくてはならない。
 また勇者は、他者に弱さを見せてはならない。常に平静な状態を保ち、どのような問題
にも完全に対処できなければならない。
 また勇者は――。勇者は――。勇者は――。


 世は文字通りの暗黒時代。
 竜王の魔力によって陽の光は厚い雲に遮られ、真昼でも夜のように暗い日々が続いた。
人々は魔物に怯え、寒さに震え、飢えに苦しみ、ただじりじりと滅亡の道へと追い込まれ
ていくだけだった。

 英雄が必要だった。絶望の淵に追い込まれた人間たちが、最後の心の希望としてすがり
つくための存在が必要だった。
 ゆえに、本来は結果論であるはずの「勇者」をゼロから作り上げるという行為が、どれ
ほど不自然なことなのかも、誰一人気づくことはなかった。

 伝説の再来から、救世の終わりに至るまでの間……誰一人として。

   ◇
 

72 :Stage.9.5 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:07:25 ID:OQlcC0ua0

 腹に突き刺した鉄杭を、さらに正確に蹴りつけてきた相手の格闘センスに、アレフィス
タ・レオールドは内心で舌を巻いた。ただのガキだと思ったが、なかなかどうしてやるじゃ
ないか。さすが伝説の英雄、そうでなければ倒し甲斐がない。

「なあ、本当に大丈夫なのかよ、アレフ。くそ、あの野郎なんなんだよ」
 傍らで不安そうにしている少年は、さっきから同じことを繰り返している。
「わけわかんねえよ。なんでいきなし強くなんだよ。タツミの野郎、運動しんけーとかそ
んな悪くなかったけどよ、あんなんじゃねえよ。なんなんだよ」
「少し黙れ」
 いい加減うっとうしくなり、アレフは低い声で呟いた。少年はビクッと肩を震わせると、
顔色をうかがうように上目遣いにアレフを見つめた。
「わ、わかったよ」
 どうにも使えそうにないヤツだ。未だにあれが別人だと気付いていないのも鈍すぎて呆
れるが、ここは説明してやることにする。
「あいつは、お前が言うミツハラタツミという人間じゃない。俺と同じく、ゲームの世界
からこちらに来た人間だ」
「なんだと!?」
 大声を出す少年を、人差し指を唇に当てて黙らせる。
「たぶん、ミツハラタツミと入れ替わったんだろう。俺が、お前の妹と入れ替わったのと
同じように、な」

 少年の名はエージ……一條栄治という。『現実』に来て最初に出会った人間であり、自
分が入れ替わりのために犠牲にしたプレイヤーの実の兄である。
 妹が異世界に飛ばされたにも関わらず、こいつは「すげぇ!」を連発し、自分に常人以
上の力があると知るや、「タツミというガキを半殺にしてくれ」と頼んできた。話を聞け
ばそれなりの情状はあり、衣食住の世話から武器の調達までおこなってくれたことへの礼
として引き受けたのだが――それがまさか、偉大なるご先祖様だったとは。
「これも運命か……。まあいい、ひとまずここを離れるぞ」
 追っ手がかかれば面倒なことになる。今日は出直した方がいい。
 

73 :Stage.9.5 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:08:26 ID:OQlcC0ua0

「――なるほど、その子に頼まれてやったことだったんですね」
 いきなり声が掛かった。
 木の陰から現れたのは、鮮やかな黄色の服を着た少年だった。首や腕にジャラジャラと
装飾品をぶら下げ、左耳にピアスが光っている。
 肩に妙な形をした大きめの黒いケースを背負っていた。エージの家にもあった、ギター
とかいう楽器をしまうものだったか。
「でも、平穏な生活を望んでいるマジメなPCに手を出すのは、良くないですよ?」
 少年は人の良さそうな笑みを浮かべたまま、二人を交互に見ている。
「なんだぁ? てめえ誰だ……わっ」
「下がってろ」
 吠えかかるエージの襟首をつかんで後ろに転がし、アレフはナイフを抜いた。
 同じ「におい」がする――こいつも、明らかに向こうの人間だ。

「ピーシー、とはなんだ。ヤツのこちらでの名前か?」
 距離を調整しながらアレフが聞く。
「いいえ、まさか。PCというのは、プレイ・キャラクターの略です」
 少年はクスクス笑いながら、ギターケースを地面に置いた。
「僕やあなたのようにゲームから来た人間のことを、僕らはそう呼んでるんですよ。ゲー
ム側の人間、とか、いちいち言いづらいじゃないですか」
 説明しつつ中から取り出したのは、ギターなどではなかった。ジャキッと慣れた様子で、
なにか禍々しさを感じる複雑な構造のもの――間違いなく武器だ――を携える。
「ちなみに、入れ替わりの対象となるプレイヤーのことも、単純にPLと略してますが」
「……嘘だろ、あれ銃だぞっ。やべえよ、あんなんで撃たれたらぜってー死ぬって!」
「だったら逃げろ!」
 また騒ぎ出したエージをアレフが突き飛ばした瞬間、ダン! っと腹に響く音がした。
 現実側の人間よりも遙かに優秀な知覚を持つアレフには、二人の間をなにかが高速で突
き抜けていくのがわかった。撃たれる、というのは今のを食らうことらしい。
「ひ、ひぁ! アレフぅ!」
「行け、邪魔だ!」
 アレフに怒鳴られ、エージはつんのめるように森の奥へと走り出した。
「へえ……現実の人間なんかどうでもいいタイプだと思いましたが」

74 :Stage.9.5 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:09:56 ID:OQlcC0ua0

「どうでもいいさ。だが、まだ後見人は必要だからな。少々頼りないが」
 相手の皮肉に苦笑で返しつつ逃走ルートを探す。まともにやりあうには分が悪すぎる。
 少年も気づいているのか、ゆっくりと退路に回り込むように動いてくる。
「やめた方がいいですよ。まだ半端なあなたでは無理です」
 瞬間、目の前に少年がいた。とっさに両腕を十字に組んで防御するが、一見ぞんざいと
も見える蹴りに、身体ごと後方に吹き飛ばされた。
 頭ひとつ分の身長差がある、どちらかといえば小柄な少年に簡単にパワーで押し切られ、
アレフは相手が言った「半端な」の意味がわかった。
「っぐ……貴様、制限がないのか?」
 ゲーム内では自身の何倍もあるモンスターを剣一本で両断できるだけのその力を、現実
でも最大限に発揮している。少年が相変わらずの笑顔で肯定した。
「僕はもう移行が完了してますので。ですから、時間制限もありません」
 セリフが終わると同時に、先刻聞いた重い音が轟いた。
 彼の持つ銃器はライフル。本来はストック後端にあるバットプレートをしっかり肩に固
定して狙い撃つものだが、少年は長身の銃器を片手で軽々と持ち、常人なら脱臼しかねな
い強烈な反動も意に介さずトリガーを引いている。  
 ほぼ動物的勘で弾道を読み、危ういところを避けたアレフに、少年が再び肉薄した。ロ
ングレンジの武器を持つにも関わらず接近戦をしかけてくるのは、あまり撃ちたくないた
めか。繰り出したアレフのナイフをスライディングするような姿勢で避け、すり抜けざま
銃の柄で脇腹を殴りつけていく。たまらず膝をついたアレフに容赦なく蹴りが入る。
「あなたのようにおかしくなっちゃう英雄が多いんですよね。そういうPCを『狩る』の
が僕の仕事です。勇者狩り、とでも言うのかな」
「がぁっ……!」
 背中を踏みつけられる。それだけで肋骨がきしみ、呼吸ができなくなった。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」

 ダン! ダン! ダン! と間近で立て続けに発射音が響いた。
 同時にアレフの意識も吹き飛ばされた。

   ◇
 

75 :Stage.9.5 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:18:20 ID:OQlcC0ua0

 ショウは「ふう」と息をつくと、動かなくなった青年を足で転がし、仰向けにさせた。
 PCは総じて現実の人間より遙かに体力も耐久力もあるが、さすがに大型獣用の麻酔弾
を3発もぶち込めば、しばらくは起きないだろう。
 と、胸元で細かい振動が起きた。マナーモードにしていた携帯電話だ。付近の封鎖にあ
たっていた組織の人間からで、逃げた少年についての処置を尋ねてくる。
「いえ、放置してください。まずはこのPCの搬送を頼みます」
 相互置換対象の実兄となれば、一條栄治もまた、他のPCと入れ替わる現象が起きるか
もしれない。泳がせておく方が得策だろう。
 確保したばかりのPCの扱いを手短に指示し、携帯を切る。愛用のライフルをギターケー
スにしまうと、自分はさっさとその場を離れた。

 ふと、たった今逃がしてやった不良少年が、現在監視下にある他のPCに要らぬちょっ
かいをかけていることを考えた。
 あのPCは――タツミと言ったか――今のところ良識的に行動しており、移行完了後の
スカウトも検討している。移行前の半端な状態では使い物にならないので様子を見ている
が、その障害になるようなら、やはり一條栄治も監視しておくべきか。
「いつまでも僕一人じゃキツイしなぁ。タツミ君も早く割り切れればいいけど……」


 ショウは公園を出てその場でタクシーを拾い、1時間後には中央区に戻った。
 オフィス街の一角にある高層ビルの前で車を停めさせる。ビルのフロントにIDカードを
示してギターケースを預け、エレベーターで一気に最上階まで昇り、いくつものセキュリ
ティを通ってたどり着いた先の広いオフィスで、一人の青年が待っていた。
「やあ、お疲れ様」
 やや長めの黒髪を後ろで結い、上品な濃紫のスーツを着ている。
 彼の傍らには美しい秘書が二人控えており、そのうちの一人が無言で進み出た。見事な
ストレートブロンドをゆるやかに編んで肩にかけ、緑のスーツをまとった大人らしい雰囲
気の女性だ。中央にある応接セットのソファに優雅に腰を下ろし、ショウを見て微笑む。
 彼はわずかに眉をひそめたが、にこやかにこちらを見守っている青年を見て、小さくた
め息をついた。ソファに大股で近づいて、秘書の太ももを枕に、乱暴にドサッと背中から
横たわる。

76 :Stage.9.5 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:19:47 ID:OQlcC0ua0

「相変わらず手際がいいね。今度の『勇者』くんはどうだった?」
 青年も向かい側のソファに腰を下ろし、気軽な口調で尋ねてきた。
「どうもこうもないですよ。一度は世界を救った英雄だろうに、どうしてこうネジが外れ
ちゃうんでしょうね」
 ショウは目を閉じたまま、億劫そうにひらひらと手を振った。
 その手ですでに、二人の『狂った勇者』をこの世界から抹消している。現実側での生も
死も仮のものでしかないとわかってはいるが、決して気持ちのいいものではない。
「仕方ないさ。それだけの大命を果たしたからこそ、よけい『現実』とのギャップに苦し
むんだろう。君だって最初、たった一枚のディスクの存在だと知ってどうだった?」
「僕はそれどころじゃありませんでしたから」
 即答する。現実もゲームも、ショウにとってはどうでもいい話だった。
「あなたはどうだったんですか?」
 横目で見つつ逆に問い返すと、青年はあごに指をあてて少し考え込んだ。
「私の場合は……それほど驚きはしなかったな。私の世界にも妖精界だの魔界だの、いく
つも平行世界があったから、『現実』もそんなに突拍子のない話じゃなかったしね」
 自分の息子が伝説の勇者だと知ったときの方がよっぽどショックだったよ、と笑う。

 そこにもう一人の秘書が、コーヒーを煎れて戻ってきた。
 こちらの女性は白を基調としたスーツに身を包み、ほぼ黒に近い濃紺の長髪の上半分を
まとめ、残りを背中に流している。枕にしている方と比較するとやや幼い印象を受けるが、
その物腰には深窓の令嬢を思わせる慎ましさがあった。
「ありがとう。君もここへ」
 ソファを叩いて隣に座らせた彼女を、青年は自然な動作で抱き寄せた。

 どちらの女性も現実の人間だ。青年がゲーム内で妻とした女性たちによく似た人間をわ
ざわざ捜し出し、そばに置いているのだという。
 最初、妻が二人という意味がわからず、重婚ではないのかと聞いたところ、青年はあっ
さり肯定した。こいつのPLはよほど女好きらしいな、と内心で毒づいたものだ。
 あるいは逆に、表向きはとんでもない堅物で、内側に鬱屈を溜め込んでいたタイプか。
どちらにしろ、こいつのプレイヤーも褒められた性格ではなさそうだ。
 

77 :Stage.9.5 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:21:31 ID:OQlcC0ua0

 PL(プレイヤー)の性格や生活環境が、ゲームの未表現領域の設定(ゲーム上で表現
されない詳細設定)に大きく関与していることは、今までの研究でわかっている。
 DQシリーズのコンセプトが「主人公=プレイヤー」である以上それも道理であるが、
問題は、PLの隠れた願望や深層心理が、より顕著に影響を与えるという点にある。
 PLの現実生活が歪んでいれば、それだけ理想や願望は大きく強くなっていく。それら
が強引に投影されることにより、PCは本来のストーリーとの軋轢によって過剰なストレ
スにさらされ続け、あげく『現実とゲーム』というショッキングな事実に直面し、精神に
異常をきたしてしまうのだ。
 先刻確保したPCも、肉親を奪われたにも関わらず懇意にしている一條栄治の異常な行
動を見れば、PLである妹のゆがみ具合もおのずと察せられる。
 アレフも被害者なのだ。でなければ、彼もひとつの世界を救うほどの人物であり、たと
え異世界でも立派にやっていけるだけの器量を保っていられたはずである。

 ――それに自分だって、狂ってない、とは言い切れない。
 しょせんおのれも、PLを犠牲にしてこちらに来た時点で、他の連中と大差はない。
 ただ目的を果たすため、より詳細な研究データを集めるのにやむをえず、この役を引き
受けているだけだ。

「すみません、僕、そろそろ戻ります。向こうにも顔を出さないとまずいし」
 ショウは身体を起こした。
「もう行くのかい?」
 つまらなそうな顔をする青年に「あなたもヒマじゃないでしょう」と言い捨てて、さっ
さとドアに向かう。
「――八城翔君」
 振り返ると、青年はやはり人の良さそうな、少し子供っぽいほどの笑顔で手を振った。
「君の愛しい彼女にヨロシク」
「…………」
 こいつのPLには一度会ってみたいものだ。

   ◇
 

78 :Stage.9.5 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:22:44 ID:OQlcC0ua0

 フロントでギターケースを受け取り、ビルの前ですぐタクシーを拾った。どうせ経費は
すべてあの青年が持つので、遠慮せず楽な方法を使う。
 込み入った中心街を抜け、20分ほどで自分の今の家に着いた。庭付きの一戸建て、こ
のあたりでは割と広い方だろうか。
 ショウが戻ると、やや年かさの母親が満面の笑みで出迎えた。
「おかえりなさい、ショウちゃん。今日は早かったのね。お昼はどうする?」
「さっき軽く食べたから、もう少しあとでいいよ」
 なかなか面倒見のいい、気の優しい親だ。春休みにも関わらず毎日のように出かけてい
ることや、いつも持ち歩いているギターケースについては、大学のサークル活動だと説明
している。中身を知ったら卒倒するに違いない。
「ちょっと疲れたんだ、少し寝るね」
「あら大丈夫なの? 無理しちゃだめよ」
 心配そうにする母親をなだめつつ、ショウは2階の自室に入った。

 ついこの間まではアニメの美少女グッズが山と積まれた最悪の部屋だったが、ショウは
ろくに中身を確認せずに一掃した。万が一、大切な彼女をおもちゃにしたような書籍など
出ようものなら、その場でPLを始末してしまいそうだったからだ。
 ヤシロ・ショウ。 
 最初の旅の頃からずっと相手の生活を夢で追っていたが、どうしようもないクズだった。
入れ替わり、少しいい目を見させてやっただけで、肉親も生活も捨てた無責任な人間だ。
 最近はまた帰りたいと嘆いているらしいが――いまさら遅い。

 まずテレビの電源をつける。音量はゼロにしている。テレビには電源が入りっぱなしの
ゲーム機が接続されており、とあるゲームが無音で始まった。
 自分が生まれ育ち、旅をし……そして一度は救った世界が、そこにある。
 ショウは画面の中が無人であることを確認すると、部屋のドアに鍵を掛けた。
 ピアスなどのアクセサリーを外し、服もすべて脱いで準備をする。食事を取ったのは3
時間以上も前なので、胃の中に未消化物も残っていないはずだ。

【自分以外のいっさいの持ち込み・持ち出しができない】
 

79 :Stage.9.5 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:24:38 ID:OQlcC0ua0

 それが、自分たちが未だに突破できない障壁であり、最大の研究テーマだ。
 唯一の例外は携帯電話である。ショウはいつものアドレスに向け、空メールを送信した。
 少年の身体の輪郭がぶれ、その姿がメールの送信と共に消えていく。


 ――次に目を開けると、視界が一転していた。
 木調に統一された簡素な室内。長年過ごしてきた、本当の自分の部屋だ。
 衣装ダンスから服を引っ張り出して袖に腕を通す。生地の肌触りなどは現実の物の方が
いいが、こちらの格好の方が落ち着く。黄色のチュニックのポケットに携帯を入れ、ブー
ツを履いて部屋を出ると、鉢合わせた部下がサッと敬礼した。
 自分よりかなり年配の兵士だが、年若い上司によく仕えてくれている。ショウも敬礼を
返し、長い廊下を渡って王宮に入った。

 いくつも階段を上り、最上階のテラスに出たところで、ようやく目当ての姿を発見した。
 この城の王女にして、幼なじみ。そして、永遠の忠誠を誓った愛しい人。
「あまり風に当たりますと、お身体に障りますよ」
 声をかけると、艶やかな黒髪を風に遊ばせていた少女が振り返った。少年の姿を認めて
花のような笑顔を浮かべる。

「――エイト!」

 駆け寄ってきた少女を抱きとめて、彼も微笑んだ。
「ただいま戻りました、ミーティア姫」
 現実では誰にも見せない、心から湧き出す純粋な笑み。
 それが八城翔の名前と人生を奪った少年の――

 トロデーン国近衛隊長・ラグエイト=ハデックの素顔だった。




80 :Stage.9.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/21(日) 18:32:34 ID:0HfV2Tjp0
本日はここまでです。
本当はアサルトライフルかショットガンを持たせたかったのですが、
それだと麻酔弾が使えないのでライフルで我慢。
レミントンM700シリーズに代表される、命中精度の高いボルトアクション方式です。
っていうか、ますますDQ離れしてますね……(^_^;

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 19:11:38 ID:u5b1NhJo0
乙です。

もしかして火器持ち込もうとしてるんだろうか…

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 20:09:54 ID:H0ghTqO00
>>80
乙でした
かなりwktkな展開なんだけど
ここらでちょろっとまとめかあらすじが必要な気がしてきた
個人的には十分付いてこれてるんだけどさ
このスレ始まって以来の複雑な話だと思うんで(もちろんいい意味で)

83 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/21(日) 23:24:11 ID:U+E6ti/c0
乙です。だんだん話が大きくなってきたなぁ…。
完全に移行しちゃうと、現実とゲームの間を自由に行き来できるのか。
エイトのPLはいったいどうなってるんだろう…(((゚Д゚;)))

84 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 00:02:02 ID:sEJiGKSP0
未消化物があった場合・・・(阿鼻叫喚

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 01:55:40 ID:lKZU9rDxO
R氏乙。
エイトも微妙な位置にいるな。善とも悪とも言いきれない感じだ。
しかしあの無表情でライフル振り回してるの想像すると笑えるw

>>82
なんか前の話の後書きで、まとめやるみたいなことR氏本人が言ってたよ。

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 03:15:50 ID:oW1JLbvB0
乙!今回も楽しく読ませて頂きました。
V主人公がラスボスっぽいですねぇ。
いや〜次回も楽しみです。

87 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:39:24 ID:5D4V6BEj0
おはようございます。
早朝に第七話前半投下です。

LOAD DATA 第六話後編 >>56-61

88 :剣魂一擲【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:40:37 ID:5D4V6BEj0
天空の剣

嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
その白金の刀身は、一切の穢れを祓うかの様に荘厳な光を放ち、
柄に装飾された竜神のレリーフは、一切の不浄を退けるかの様に鋭く瞳を輝かせる。

天空の剣、鎧、兜、盾が本当の所持者…伝説の勇者の元に揃った時、
この世界と魔界との境界が切り開かれる。

…この世界と魔界との境界を切り開く力…
それは、別世界との境界を切り開く力…
もしかして…その力があれば、俺も元の世界に帰れるんじゃ…

「父さんは…根拠のない迷信の類いは信じない人だった。」
剣と共に安置されていた手紙…
サトチーの父親…即ち、パパスの遺した手紙に目を通していたサトチーが口を開く。

それはつまり…その伝説の勇者の話は…

「手紙の内容は真実だと思う。勇者の話も、天空の武具の話も、母さんの話も…」
手紙に記されていた内容は、伝説の勇者の話以外にもう一つ。
魔界に捕われているというサトチーの母親の話。
サトチーの母親を魔界から救出するには、魔界に渡れる伝説の勇者の力が必要。

「僕は世界を廻って天空の武具を揃える。そして、必ず母さんを助ける。」
10年の時を跨いで受け継がれた父の遺志。
己の決意を口にするサトチーの目は、あの剣のレリーフの目よりも輝いている。

89 :剣魂一擲【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:41:45 ID:5D4V6BEj0
天空の剣を手にした俺達は、サンタローズを後にしラインハットに向かう。

旅に出ようにも、ラインハット王家の勅命によって、港は封鎖されている。
ただの旅人であるサトチーが開港を嘆願するよりも、王家の人間が間に入ったほうが
話も通じやすいだろうというヘンリーの意見。

ただ一つ、気になる事。
巷では王家の評判はすこぶる悪い。
現に、サンタローズの惨状を目の当たりにした後ではその噂も真実味を増す一方。

「ま…王家で何かおかしなことが起こってても、俺様の凱旋で元に戻るだろうさ。」
ヘンリーの口調はいつも通り軽いが、その表情はどことなく曇っている。

王家に異変が起こっている事を確信しているんだろうな。

思考を邪魔されるのは、いつも同じシチュエーション。
ギャアギャアと、耳障りな声を上げて迫り来るモンスター達。
「おちおち話してもいられねえな…ピッキーの群れか。」
「じゃあ、さっきと同じくヘンリーが後方支援。僕とイサミとブラウンが前線。」
「了解。間違っても俺に魔法を当てるなよ。」
「ガンガン飛ばしていくからな。イオ!」

もうすっかり日常となった光景。
ヘンリーの放つ魔法の弾幕で怯んだ相手に前線の俺達三人が踊りかかる。

サトチーのチェーンクロスが、ピッキーの丸っこい体に絡みつき叩き伏せる。
ブラウンのフルスイングが、鳥型モンスターを遥か彼方までかっ飛ばす。
そして俺の剣が振るわれた先では、赤い液体と極彩色の羽が舞う。

一つ違うのは、俺の武器。

俺の手に握られているのは『天空の剣』

90 :剣魂一擲【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:44:41 ID:5D4V6BEj0
まあ、俺の存在自体がこっちではバグなんだろうなあ。

その剣は、それ自体が意思を持ち、勇者以外の者には持ち上げる事すら叶わないと言う。
事実、安置されていた剣を手にしたサトチーは、持ち上げるのが精一杯と言った様子で、
それを構えて振り回す事など、傍目から見ても不可能である事は明らか。

「参ったな。まるで鉄の塊を持ち上げてるみたいだ。」
カラン…と、まるで重さを感じさせない音をたて、剣が地に置かれる。
どちらかと言えば小振りで薄刃の剣は、怪力のブラウンですら持ち上げるのが辛そうだ。

「さて、こんなに重いんじゃあ持ち運ぶのも一苦労だな。」
「俺が運ぶよ。サトチー達が自由に動けなくなったら大問題だからな。」

情けない話だが、戦闘スキルに於いては俺の存在はパーティーの中で一歩劣る。
肉弾戦に優れるブラウン。魔法戦に優れるヘンリー。総合力で優れるサトチー。
この三名のいずれかが、行動を制限される事は戦力的に大きな損失だろう。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな。本当に重いから気を付けてね。」

腰をやらないように、しっかりと足を地に付けて柄を両手で強く握る。

持ち上がらなかったとか…恥ずかしすぎるよな。気合入れねえと…

深呼吸を一回…二回…そして、一気に持ち上げる。
「おりゃああ!!……でええぇぇぇぇ!?」

あっさりと跳ね上げられた剣は、クルクルと回転しながら天井まで跳ね上がり、
必要以上に力を込めていた俺は、その反動で後ろに思いきりスッ転んだ。

( ゚д゚)<ポカーン ( ゚д゚)<ポカーン ↓ブラウン

一同絶句…

91 :剣魂一擲【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 05:45:36 ID:5D4V6BEj0
「いやあ、あの時は驚いたね。まさかイサミが天空の勇者?…って。」
馬車の前でサトチーがクスクスと思い出し笑いを浮かべる。

きっと、俺の派手な転びっぷりも笑いに一役かってるんだろうな…orz

「イサミはこの世界の人間じゃないから、この世界の伝承に当てはまらない…だっけ?
 ずりいよなあ。つい最近まで剣術のケの字も知らなかったクセにさあ。」
「まあ、おかげで苦労なくこの剣を運べてるんだ。結果オーライじゃね?」

この世界の流れから外れた存在…バグ…特異点…
あっちの世界の法則がこっちの世界で通じないように、
こっちの世界の法則が俺自身に通じない事もあるんだな。

「…ダガ…イレギュラーは常に良イ結果をもたラス物でハなイ…」
「どういう意味だい?スミスの旦那。」
馬車の中から呟いたのはサンタローズで知り合った腐った死体。
『恋人にもう一目会うために旅をしたい』…と、同行を願い出てきた。

「…例えバ…私ノ存在…死と言ウ概念から外れタ…イレギュラー…
 死ト言う…概念を外レ…死ヲ超越シた代償…ガ…この肉体ダ…
 …概念…法則…逸レる事…常に影ガ…付きマトう…」
「つまり、イサミが天空の剣を使いこなせた事で逆に不幸が起こるってのかい?
 スミスの旦那。死体だからって、辛気臭い話は勘弁してくれや。」
「…イサミ…個人…それガ必然デ…アレ…ば…問題ハ…ないの…ダガ…」

俺が伝説の剣を振るう…必然…であるわけないよな。
それは、概念の外。即ち、バグ技。
バグ技にはデメリットが存在する…これは当然。

それっきりスミスは黙り込み、俺達まで無言になった。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 06:35:02 ID:iTkypMcQO
支援

93 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/22(月) 07:14:09 ID:5D4V6BEj0
第七話前半部分投下完了です。

仲間モンスターの選択に悩む今日この頃。
人気の仲間モンスターで固めるか、マイナー路線で行くか…

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 07:40:45 ID:ha9HNS7j0
使える特技で決めるのもいんじゃね?(戦闘描写的な意味で)

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 11:27:37 ID:psm2A7iz0
天空の剣装備可、かっこえーーー。
だけど、バグってなんだろう。まさかプーーーーという音とともにいきなりフリーズするとか(滝汗
気になる。

96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 13:36:42 ID:AtK5IYnJ0
え?勇者でてきたらどうすんだって思ったら
なるほどバグで天空の剣装備できたのか

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/22(月) 22:44:39 ID:+tBDBbaD0
>>お二方とも
乙であります。

軽く個別に
>>R氏(って呼んでおk?)
連想させてくれる書き方は大好きだわw
確かにまとめ欲しくなってきたかも
いまんとこでギリっすw

>>GEMA氏(ほっほっほw)
スミスいたんだw
ここで天空装備できたらそらスタメンだわなwww
ポカーンワロタw

モンスターは愛着があればなんでもおkじゃね

98 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:05:30 ID:2csESLk60
第七話後半投下
…の前に、仲間モンスターについての助言ありがとうございます。

全種類はさすがに無理ですが、話の中で出来るだけ色んなモンスターを
活躍させられるように頑張ります。

スライムを仲間にしそびれた異端作品orz。どうぞお楽しみください。
では投下です。

99 :剣魂一擲【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:06:26 ID:2csESLk60
星すら見えない夜の森の中、焚き火の前に座り込む人の姿。
赤々と燃える炎によって、血色の悪い顔色を橙色に照らされているスミス。

夜営時の見張りと火の管理は彼の役割。
アンデッドである彼の体は睡眠という物を欲しない。
日中は太陽の光を嫌うアンデッドの体質ゆえに、馬車から滅多に姿を出さないが、
日光の届かない場所や夜間の戦闘では、そのタフさとパワーが非常に頼りになる。

「…起きてイタ…のか?」
「ああ…ちょっと目が冴えちまってね。」
彼の目は火を見つめたまま動かない。

「…夕飯のスープの残リ…温メてあル…飲ンで休メ…」
「サンキュ。」
夕食後にスープをわざわざ火に当てて温めておく様な事は普通はしない。

俺が眠れないでいるの、最初から気付いてたんだな。

節くれだった手で渡されたスープを受け取り、少しづつ喉に流し込む。
銅製のカップに注がれたスープは、熱過ぎず、ぬる過ぎずの丁度良い温度。
遠火で温めてあったのだろう。愚鈍そうにな外見に似合わぬ細やかな気配り。

お互いに無言のまま、静かな時間が流れる。
聞こえるのは焚き木のはぜる音と、俺がスープをすする音。


「…私ノ言葉…気にしテ…いるノダろう?」
相変わらず目は火に向けたまま、感情の読めない声でポツリと呟くスミスの言葉に、
カップを傾けていた俺の手がピタリと止まる。

俺の沈黙を肯定と取ったのだろう、淡々と無感情な言葉が続けられる。

100 :剣魂一擲【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:08:06 ID:2csESLk60
「私ハ…私自身に定めラれタ…生命ノ概念カラ…逸れタ…存在…
 ソノ代償…私自身に降リかカり…この体ト言う咎(トガ)ヲ背負っタ…
 …この世界ノ全てノ概念カラ…逸レた…存在…イレギュラー…
 ソノ…代償…咎が向かう先…恐ラく…世界…」

スミスが言う『この世界のイレギュラー』とは、俺の存在だろう。
言いづらい事をアッサリと言ってくれるな…

スミス個人に発生したバグの代償が、スミス本人に降りかかったように、
この世界そのものに発生したバグの代償は、恐らくこの世界全てに向かう。
俺の存在が世界を狂わせる…

「イサミが振ルう…天空の剣…私ノ目にハ…神性ヲ全く感じナい…
 剣自体ハ素晴ラしい逸品ダガ…それダけノ剣に見えル…
 剣ノ…真の所有者デないカラ?…それとモ…世界ガ…」

気付いていた…実際に剣を振るう俺が一番に。
あれほど荘厳に輝いていたのに、今では神性を感じさせない伝説の剣…
それは、俺が剣の真の所有者じゃないから?
それとも…

「…それとモ…世界ガ…伝説が…イレギュラーを起こし始めテいる…?」

ガツンと、頭の奥のほうを殴られたような感覚。

俺の存在が、世界を狂わし始めている…

「そンな顔ヲするナ…マダ…推測ニ過ぎナい…」

あまりに重すぎる最悪の推測…そうだ、まだ推測の段階だ…
でも、どんなに楽観視しようとしても心の中が押し込まれて苦しくなる。

101 :剣魂一擲【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:09:10 ID:2csESLk60
「…私ハ…私の身に降りカかる咎ヲ…乗り越エてみせル…
 なぜナラ…それガ生きてイる者ノ役目…ダロウ?
 ……喋りスギた…もウ休メ…明日に障ル…」

乗り越える…乗り越える…絶対に乗り越える…
何があっても…それが、生きている人間の役目…

スミスに促され、悶々としたまま野営用のシェラフに入ったが、
胸から消えない感じた事のないプレッシャー…世界に押し潰される…恐怖…

その夜の夢見は最悪だった。



イサミ  LV 12
職業:異邦人
HP:68/68
MP:10/10
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌

102 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/23(火) 04:14:05 ID:2csESLk60
第七話はここまでです。

イサミの振るう天空の剣の威力は、破邪の剣レベル。
少し値の張る市販の剣と同等の威力です。
振っても凍てつく波動は出ません。

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 12:05:13 ID:6HSNYSQq0
腐った死体という名前とその外観からくる嫌悪感とは裏腹に、スミスってほんといい奴ですね。
もし、できることなら、肉体が再生して、マチュアさんと再会できるといいですね。マーサさまならもしかしたら・・・・。
ただ、死後何年経っているんだろう。マチュアさん、まだ生きてるのかな・・・。

しかし、伝説がイレギュラーをおこしはじめる・・・。
するとどうなるのだろう。
伝説の勇者が出現しなくなるとか、この剣が本来の所有者である伝説の勇者に使えなくなるとか。
うーん、心配だ・・・。

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 15:04:16 ID:kItbzrEbO
片言の台詞が読みづらい
昭和の文豪かよ

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 16:13:26 ID:JFv12fYKO
はよ消せや

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/23(火) 20:59:24 ID:C+csvYdQ0
>>101
お前まだガム持ってるのかwwww
天空の剣から神性消えたって興味深いな
イサミの存在がバグだからかな…

107 :Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:11:52 ID:E3XTDxMH0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はゲームサイドか……前回はどうなったんだっけ?」
アルス「あん? 確か、勇者資格がまだ仮免中で、急いで本試験を受けなきゃいけなくて、
   そういうこと事前に説明しとけよ!って俺にキレて電話したらなぜかユリコが出て、
   びっくりしたところで終わってた。――ってかお前が聞くな!」
タツミ「そのあと君のことが心配で電話かけまくってたら、ユリコに怒られたんだよなー」
アルス「……………………MP無駄遣いしてんじゃねえよ」
タツミ「はいはい。では恒例のサンクスコールに参りまーす!」

アルス「>>81様、乙ありがと。ふむ、DQに火器持ち込んだらどんくらい強いんだろうな」
タツミ「魔法と違って初動に時間がかからないのがほとんどだからね、いい線いくかも。
   >>82様、込み入った話ですみません。現在まとめ制作中です。
   次のStageとの間に投下予定でおりますので、もうしばらくお待ちください」
アルス「>>83様、八城翔ってオタク大学生はどうなったんだろうな。俺も心配だ」
タツミ「ではショウ君本人からどうぞw」
ショウ「いきなり呼ばないでください。僕のPLですが、ちゃんと生きてますよ。ええ。
   あと>>84様、準備しないと脱ぎ散らかった服の上に胃酸たっぷりの○○が
   ぶちまけられていて、帰ってきたときの始末が大変です」
アルス「食事中の方すみませんでした。お、次の人もお前についてだぞ」
ショウ「了解です。>>85様、自分では正義か悪かとか、あまり考えてないですね。
   詳しくは言えませんが、目的のための手段として請け負ってるだけですので。では」
タツミ「じゃあね〜。>>86様、Vさん(仮)みたいなタイプがラスボスだと、僕はありがたいけど。
   有無を言わさず世界制服な魔王様と違って、交渉でカタがつきそうだし」
アルス「>>97様、R氏でおk! まとめは上記の通り。あとちょっと我慢してくれな」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 ゲームサイド [1]〜[9]

108 :Stage.10 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:12:52 ID:E3XTDxMH0
  Prev >>71-79 (Game-Side Prev (マエスレ)>>478-484
 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者資格の本試験までまだ若干の日にちがあったから、まずは当初の予定通りエジンベ
アに直行した。ゲームのルールなんて知るかいな。こっちは常識に合わせて行動してるん
だ、それで通らなきゃゲームがおかしいっつーの。

 というわけで、例の差別主義な門番。やっぱり通せんぼをしてきたんだけど、
「ロマリア国王から事前に書状が送られてるはずだけど? ここにあるポルトガ王の紹介
状も疑うわけ? エジンベアは二国の王を敵に回す気か? 国際問題だぞ? あんたごと
きが責任取れんの? ああコラ?」
 詰め寄ってやったら、泡食って上司に報告しにいった。
 こっちは「アルスが襲われて意識不明」なんて話をユリコに聞いた上、彼女からの連絡
待ちの状態でイライラしてるんだ。余計な神経を使わせるな。

 んで、王様から地下への立入許可をもらったはいいけど、これまた予想通りというか。
縦横100マスくらいの広大な地下室に、池やらドクロマークのタイルやらが点在し、動か
す岩も50個以上という超難解なパズルになっていた。
 徹夜で解いて「渇きの壺」をゲット。賢さ245をナメんなよ。

 その後、即行でアリアハンにルーラして一泊。明日の早朝にランシールに向かえば、ギ
リギリ本試験の前日までに到着する予定だ。

 ちなみに、ランシールの本試験は、言わずもがな、例の「一人でお使いできるかな?」
な単身洞窟攻略だ。
 通常、神殿へ入るには「最後の鍵」が必要なのだが、試験のときは特別に開けてもらえ
るとのこと。ここはゲーム本来のストーリーを無視してもOKらしい。
 どうもこの旅は、フラグが立つ基準がよくわからない。ストーリー外のショートカット
が使えるなら素直に使わせてもらうが、またあとで面倒になるのは嫌だなー。

   ◇
 

109 :Stage.10 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:14:52 ID:E3XTDxMH0

 そんなこんなで、僕たちは久々にアリアハンに帰ってきた。
 仲間はそれぞれの家に帰り、僕は今、アルスの実家に戻っている。
 もちろん実のお母さんを騙すわけにもいかないから、エリスたち同様、彼女にも僕がニ
セモノであることは出発前に説明している。
 出がけの慌ただしいときに、いきなり重大な話を告げるのも申し訳ないと思ったんだけ
ど、その時のDQ版お母さんの反応は以下の通り。
「あらまぁ、ちっとも気付かなかったわ。言われてみれば、確かに少し違うかしらね」
 さすが勇者の母。

 ちなみに彼女の名前は「サヤ」さん。突然現れた怪しい異世界人にも関わらず、また笑
顔で出迎えてくれたサヤお母さんに、「こんな素敵な人が僕のお母さんだったらいいな」
と素直に話したら、「嬉しいわ」とまたギュっとされました。ちょっと照れるなー。

 そしてもうひとり。
「タツミ君、と言ったかな。旅はどうじゃね?」
 これまたのんびりしたお人柄のデニーおじいちゃんが、夕食のテーブルを挟んで聞いて
きた。僕はヘニョにちぎったパンをやりながら、事前に用意しているセリフを答える。
「アルス君が一級討伐士の資格を取ってくれていたお陰で、とても順調ですよ。仲間も彼
を取り戻そうと、一丸となって協力してくれてますし」
「そうかそうか。しかしあの子も、元気でいるのかのう」
 自慢の孫が消えたんだ、やっぱり心配だよね。本当のことを教えてあげたいけど……

【本人は豆乳に花見に大はしゃぎな挙げ句、サイコな男に襲われて意識不明らしいです】

 ……やっぱり事実を告げるのは僕にはムリです。代わりにアルスをヨイショしておく。
「彼はルビス様に選ばれた、かけがえのない世界でただ一人の勇者です。きっとご無事で
いらっしゃいますよ。――すみません、僕ごときが彼を騙るのは心苦しいのですが」
「いいえ、あの子のために頑張ってくれているんですもの。さ、おかわりはどう?」
 フワンと笑顔を向けてくれるサヤお母さん。そのあたたかい笑みが逆に心苦しい。
 僕は明日の準備を理由に早々に席を辞して、ヘニョを連れて二階に上がった。
 

110 :Stage.10 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:16:52 ID:E3XTDxMH0

 久しぶりに戻ってきたアルスの部屋は、急の帰宅であるにも関わらず、きれいに掃除さ
れていた。
 出るときはゆっくりする余裕もなかったけど、こうして見てみると、文化の違いはあれ
ど年頃の男の子らしい部屋だと思う。
 壁には剣と盾の飾り。怪物と闘う勇ましい騎士の絵がピンで留めてあって(ポスターみ
たいなものかな)、落書きを消した跡とか、なにかおもしろくないことがあって暴れたの
かヘコんでるところもあったり。
 ロダムに取ってくるよう言われた「一級討伐士」の仮免許証を探す。知らないで置いて
出てしまったもので、本試験で必要とのこと。
 それは机の引き出しの中にすぐ見つかった。金色のプレートに彫られている名前は、
【Arsed Deny Rangbart】

 アルセッド=D=ランバート。
 16歳という史上最年少の若さで、特別職一級討伐士の一次試験に合格した、アリアハン
の天才少年。世界的にも有名な討伐士オルテガ=S=ランバートの息子ということもあっ
て、冒険が始まる前から伝説が始まっちゃってるような人物。
 ……なんだそうだ、実は。
 改めて話を聞くと、とんでもないヤツだったんだねー。周囲の反応から薄々感じてはい
たけど、まさかここまでとは。彼のネームバリューの高さも、これで納得がいったよ。


 アルスという少年が、このあと本当に伝説の英雄になれることを、僕は知っている。
 家族から愛されて、世界から愛されて。普通の少年らしい一面を持ちながらも、勇者に
足る能力と資格を有し、実際に過酷な使命を成し遂げてみせるだけの――。

「…………」
 なんか胸につっかえる感じがする。少し外の空気を吸ってこようか。
「ヘニョも行く?」
 まん丸の目で僕を見上げたヘニョは、当然のようにピョンと僕の腕に飛び込んできた。
抱っこ犬とか抱っこ猫とかはよく聞くけど、こいつは抱っこスライムなのかな。
 ヘニョを抱いて階下に降りる。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:16:53 ID:+YAKNage0
そういえばヘニョいたんだっけなww支援

112 :Stage.10 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:18:52 ID:E3XTDxMH0

「ちょっと散歩してきますね」
 台所の方に声をかけたが、サヤお母さんの姿がない。どこに行ったんだろう。

   ◇

 玄関を出て城壁沿いに歩いていった。
 アリアハンは初夏を迎えた頃。現実側よりはだいぶ暖かいけれど、夜風はまだ肌にひや
りとして、身体の熱と一緒にくだらない考えも奪っていってくれる。
(ま、アルスはアルスで、僕は僕なんだし……)
 正面入り口を守る夜番の兵士さんに挨拶しつつ、適当にブラブラしていたら、やがて共
有井戸がある広場に出た。いつの間にか街の端っこまで来ちゃったらしい。

 そろそろ戻るか。そう思ってUターンしようとした、その時だ。 
 風に乗って女性の声が聞こえてきた。聞き覚えのある――サヤお母さん?

 広場の隅の薄暗いところに人影が見えた。間違いない、サヤお母さんだ。人目を忍ぶよ
うな暗い色のマントを着ていて、彼女の前にも同じような格好をした背の高い人がいる。
 そのもう一人が、低い声で言った。
「そなたはなにを考えておるのだ。これ以上好きにさせておく法はないであろう?」
「しかし真相がはっきりするまでは、様子を見るべきかと存じます」
 深刻そうな空気を感じて、僕は咄嗟に物陰に隠れた。
 相手は男の人みたいだけど……ん?

 えーー!!?? こんな夜に男の人と密会デスカ? これなんてFLASHネタ?

「余はもう我慢がならんのだ! あのような紛い物がアルセッドの名を騙り、世界を偽り、
遊び半分に勇者ごっこをしておるのだぞ?」
「ですがいきなり捕らえるとは性急にすぎます。もしあの子の言っていることが真実だと
したら、ルビス様の遣いを害することになる。そうでございましょう、陛下?」

 “これなんてFLASHネタ?” じゃねーや。思いっきり僕のことじゃん。

113 :Stage.10 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:20:51 ID:E3XTDxMH0

 どうやらアリアハン国王その人が、僕の処罰をどうするか、サヤお母さんに聞いている
ようです。
 まあ王様にはバレてて当然か。僕の仲間は全員、城勤めの人間なんだから――。
「ルビスの遣いなどと、そんなたわごとを信じろと? おおかた、どこぞでご子息を見か
けたあやつめが、似た容姿を利用して成り代わろうと画策したのではないのか」
「しかしそれでは、うちの息子がなぜそれを許したのかが……」
「そこらの小童に遅れをとるような子ではないが、ご子息は情が深い。聞けばあの紛い物
め、頭は回るようだからな。騙されてどこぞに封じられておるのやもしれん」
 苦々しく吐き捨てる王様の言葉に、僕は思わず苦笑が漏れた。
 ま、普通はそう考えるよねー。ある意味、この世界に来て一番常識的な意見を聞いた気
がする。実際「ルビスの遣い」なんてデタラメだしね。
 王様は怒り心頭といった様子だ。
「忌々しい。いっそ今すぐ捕らえ、手足の一本も落とせば吐くのではないか? もっとも
亡き親友の忘れ形見を偽った罪、その程度で済ます気はないがな」
「おやめください陛下。仮に偽りであったとしても、魔物に親を殺されたかしたみなしご
が、生きるために取らざるを得なかった手段かもしれません」
「今の世に、親のない子が他にどれだけいると言うのだ。みなそれぞれに働いて生きてい
る。勇者を騙る理由にはならん!」
「ですが、アルセッドと同じ年頃の、それもうり二つの子に、そんなひどい目に遭わせる
なんておっしゃらないで。あなたはもっと優しいお方のはずです」
「……まったく、優しいのはサヤ殿だ。そなたは昔からそうであったな」
 そうか、王様とオルテガさんって親友だったんだ。あの親しげな雰囲気を見るに、昔は
サヤさんを巡って2人が争ったり、なんて青春の日々もあったのかもしれないなー。 

「紛い物、か」
 必要とされているのはアルスであって、僕ではない。ここに僕の居場所はない。
 最初からわかっていたことだ。
「誰かそこにおるのか!?」
 王様が鋭く叫んだ。
 僕はヘニョにこの場で静かにしているよう言いつけて、両手を挙げて出て行った。
「すみません、聞いてしまいました」

114 :Stage.10 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:22:52 ID:E3XTDxMH0

   ◇

 サヤお母さんが、まるで僕を庇うように王様との間に入った。
「なりませんよ、陛下っ」
「……わかっておる」
 咄嗟に剣の柄に手をかけていた王様が、しぶしぶという感じで一歩下がる。どうもサヤ
お母さんには弱いらしい。
 この王様も、基本的にはいい人なんだろうね。
「ご処断はお任せします」僕は言った。「手でも足でも、どうぞ」
「なにを言うの!?」
 驚いているサヤお母さんを制して、僕は王様と向かいあった。
「ただし、それは僕が旅に失敗してからにしてください。僕が勇者の後継を任されてここ
にいるのは本当です。そして旅が無事に終われば、本物のアルスが戻ってくるということ
も。でも、僕が勇者でなくなったら、それは叶わない」

 神龍の前で交わした契約の中に、「主人公」をやめない、というのがある。
 主人公、つまりこの世界における中心キャラクターとしての特別な立場を放棄、あるい
は資格を失うと、物語を進める力がなくなるんだとか。
 たとえば僕が「勇者」でなくなり、町民Aみたいな1NPCになってしまえば、普通に生
活はしていけるだろうけど、魔王を倒すことも、神龍に再び会うことも出来なくなる。
 でなければ、僕は「勇者」なんてとっくに辞めていただろう。ただ神龍に会えばいいだ
けなら、もっと合理的な方法が他にいくらでもあるしね。

 ひゅんと風を切る音がした。
 王様が剣を抜き放ち、その切っ先をぴたりと僕の喉もとに据えていた。
「貴様は何者だ」
「言えません」
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
「なぜ言えない?」

115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:23:53 ID:ValBstli0
支援を唱えた!

116 :Stage.10 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:24:52 ID:E3XTDxMH0

「僕にとってもアルスは大切な人間だからです。僕は絶対に彼を連れ戻します。あなたが
信じようと信じまいと関係ない」
「答えになっておらんわ!」
 気色ばんだ王様は、次の瞬間にフッと笑った。
「本試験は明後日だったか。貴様の条件からすれば、まず試験に合格しなければ、勇者で
はなくなるぞ?」
「そうですね。ですから、その時は」
 ご自由に。

 しばし無言の時が過ぎた。
 射殺さんばかりに睨み付ける王様の目を、僕はただ見返していた。
 すうっと頭の芯が冷めていく、いつものあの感覚。
 こんな時の僕は、きっとまた冷淡な人間になっているんだろう。

「――まるで正反対だな。その目、見ているだけで虫酸が走る」
 王様が剣を収め、マントを翻して背を向けた。サヤお母さんを一瞥し、通りに向かって
歩き出す。
 二人の兵士が音もなく寄ってきて、王様を守るように前後につくと、彼らは闇に紛れる
ように去っていった。

「もう……タツミさんっ。私でも怒るわよ?」
 サヤお母さんが僕の腕をつかんで、強い口調で言った。そりゃそうだよな。僕に騙され
てたんだと、明白になったんだから。
「ごめんなさい、サヤさん。確かに今は言えないんですけど、でも近いうちに……」
「そうじゃなくて!」
 遮られて、僕は口をつぐんだ。
「なんであんな無茶をするの。無茶な約束を平気でしちゃうの。冗談じゃ済まないことだ
とわかってるでしょう。もっと自分を大切になさいっ」
「サ、サヤさん?」
「どうせなら『知らない』とシラを切ればいいのに、『言えない』なんて正直に言っちゃ
うんだもの。あの子よりよっぽど賢そうなのに、あなた、アルセッドより無鉄砲だわ」

117 :Stage.10 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:26:52 ID:E3XTDxMH0

 あのぉ、えーと。……ど、どうしよう。
 僕の頭が珍しくパニックを起こしている。こんな予想外の反応をされるとは。
「そんなことより、アルス君のことは気にならないんですか?」
「だから『そんなこと』とか言わないの。もちろん気になるわよ、実の息子のことだもの。
でも元気でいるのは本当なんでしょう?」
「ええ、まあ(ちょっと今は寝込んでるみたいだけど)」
「ならいいわ。あなたの言い分だけを信じることもできないから、あの子が帰ってきたら、
一緒にみっっちり話を聞かせてもらいます。いいわね?」
「は、はいっ」
 ぶんぶん首を縦に振る僕に、サヤお母さんはまたいつものフワンとした笑顔を浮かべた。
マントを脱いで僕の肩にかけてくれる。
「なにが起きてるか、私にはよくわからないけれど。でもあなた、あの子を庇ってくれて
るんでしょう? ありがとう、ごめんなさいね」

 ああ、お母さんなんだな――と思った。
 この人は、アルスが自分の意志で消えたことをわかっている。でも、そこには必ず正当
な理由があるはずだと信じてる。そのせいで僕に迷惑がかかっているのなら、責任は母親
の自分が負うべきだという覚悟も持っている。
 そして、僕を真っ直ぐに見る彼女の目には、ちゃんと僕のことも映ってる。アルスへの
信頼と同じように、僕のことも信じようとしてくれている。

 参ったな。今ちょっとでも気を抜いたら……泣きついちゃいそうだw

 僕は慌ててヘニョを呼び出した。我慢しきれなくなったみたいに勢いよく飛び出してき
たスライムに体当たりされて、その場にひっくり返る。
「ごめんヘニョ、忘れてたわけじゃないってば」
 プニプニの身体をなぜてやると、まん丸の目がウルウルしている。スライムにまで気を
遣われるとは情けない。

「王様との約束に関しては心配ありません。僕もそこまで無謀じゃないですよ、それなり
の計算はあります。試験には絶対に合格しますから」

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 01:27:35 ID:ValBstli0
「支援は装備できないけど、それでもいいかい?」

119 :Stage.10 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:28:53 ID:E3XTDxMH0

 僕が断言すると、サヤお母さんは「本当に?」と念を押してきた。しっかりうなずいて
安心してもらう。僕だって腕や足を切られたかないもんね。
「ただ世の中に100%なんてないですし、これからエリスの家に行って、打ち合せしてき
ます。今晩はそちらに泊まりますけど、いいですか?」 
 サヤお母さんはまだなにか言いたいことがあるみたいだったけど、
「わかったわ。でも無理はしないでね」
 僕のおでこにキスをして、家に戻っていった。


「ま……やるしかないよな」
 自分に喝を入れるという意味では、今回の厳しい条件も良かったかもしれない。
 正直なところ、胸の内はまだちーっとも整理がついていない。アルスが羨ましいのは本
音だし、なんで僕がこんな苦労しなきゃなんないんだとも思うし。
 でも僕には、そうするだけの理由がある。立場を完全に交換するわけにはいかないけど、
少しくらいなら、わがままを叶えてあげたい。
 伝説の勇者に実際に会ってみて、ショックなことも多かったけどさ。それでも僕にとっ
てアルスは命の恩人なんだよね。一方的な話ではあるけど。

「向こうは……5時間か。さすがにもう起きたかな」
 携帯を取り出し、リダイアルボタンを押す。最近はこれしか使ってないな。
「もしもし片岡? アルスの様子は……って、え? アルス!?」
 出た相手は、ユリコではなくて彼本人だった。
「ケガは大丈夫なの? うん、うん。ならいいけど――って、はぃい? 片岡のお父さん
と? 試合? ちょ、なにやってんの! ええ?」
 なんか向こうはえらく盛り上がっている。
「ふーん……。あーそう、良かったね」
 話を聞いているうちに、僕は再びイライラしてきて、話の途中で通話を打ち切った。
 こっちは君の立場を考えて、自分の命もヤバイところで駆け引きしてるってのに……。

 ああもう! 電源も切っちゃえ! エリスのとこで試験準備してこよう。
 え、なに話したかって? 次のリアルサイドで本人に聞いてください。ではまたねっ。

120 :Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/24(水) 01:38:45 ID:lKUj41AlO
本日はここまでです。
さるさん回避のために、2分置きくらいに投下しているのですが、
ここで引っかかりました……携帯から投下です。

>>111様 はい、ちゃんとヘニョいますよ〜w
他のご支援の方々も、いつもありがとうございます。感謝!

121 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 12:13:44 ID:RMFdoqHU0
サヤさん、萌え・・・・。
王様にもばればれだったのね・・・。

122 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 15:59:19 ID:u6DqBPRC0
職人さん達に質問です。
初めて読んだ小説って覚えていますか?

123 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 16:49:25 ID:ql8Y0aI90
それは避難所向けの話じゃないかな? スレに関係ないし。
表に出るのを嫌う職人もいるだろうから、
名無しのままで応答するとしたら、ただの名無しの雑談になっちゃうし・・・。

124 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/24(水) 20:37:23 ID:X1CL9aLb0
>>120
いつもながらに乙

やべぇ。ちょっと泣いた。
いい母さんだな。

125 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/25(木) 12:01:12 ID:YvU0JoYd0
そういえばアリアハンの王様、やたらとアルスの家をひいきしてて、
そのせいでご近所から嫌がらせされてたって過去にあった。
サヤさん目当てか王様ww

126 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:35:05 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下です。

いつも湿っぽい表現が多い文章を書いてますが、今回は特に顕著です。
では、どうぞ。

LOAD DATA 第七話 >>88-101

127 :入り旅人に出女【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:36:14 ID:2FnjT+LA0
その町のメインストリートである大通りを歩く人々の顔は暗い。
通りに沿って並ぶ家々の窓は全て壊され、人同士の争いの醜い傷跡を残す。
路地裏では、複数の衛兵が一人の男をを取り囲み、私刑の真っ最中。
それでも、道行く人々の誰もが、我関せず…
荒廃したスラム街。かつては北方の都と呼ばれたラインハット城下町の今の姿。

城下町に入ってから、ヘンリーはずっと険しい顔のまま歩き続けている。
その表情から読み取れるのは、国民を苦しめる王家への怒り…
愛する国が荒廃しきっている現実の悲しみ…
不可抗力とは言え、国を守れなかった自分への悔しさ…
それでも、メインストリートの奥にそびえる城を捕える眼光は力強い。

サトチー・ヘンリー・ブラウン・俺の四人は、逸るヘンリーを抑え、
城に程近い場所にある寂れた宿で部屋をとる事にした。
勿論、サトチーや俺にとっても、急いで城へ向かいたいのは同じだが、
夜営続きで一行の疲労は頂点に達しており、この状態で厳戒態勢の城へ
向かうのは危険だというサトチーの判断だ。
日中は出歩きたがらないスミスは、馬車番として町の外れで待機している。

寂れた宿の埃だらけの窓から見える、スラム街と化した城下町とは不釣合いな城。
ヘンリーの生家でもある城の城門は固く閉ざされ、一切の来訪者を拒むように
物々しい雰囲気を漂わせている。

「確かに、城の内情が把握しきれていない現状では、正面からの突入は危険過ぎる。
 城の外堀から城内へ通じる、王族専用の地下通路を使って浸入しようと思う。」
夜の話し合いで、ヘンリーが出した提案を採り、俺達は明朝ラインハット城内へ
地下から浸入する事が決定した。

「それじゃあ、今夜は良く休んで明日に備えよう。明日の隊列と作戦は…」

窓から見える夜のラインハット城は、昼間と同じく不気味な沈黙を保ったまま、
ちっぽけな俺達を見下ろして威圧しているかのように建ちそびえていた。

128 :入り旅人に出女【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:37:19 ID:2FnjT+LA0
          ◇           ◇
…眠れない…

今夜に限った事じゃないけどさ。
何度も窓の外の月に目をやって、何度も無為な時間が過ぎた事を実感する。
森の中でのスミスとの会話が離れない…

―世界の流れを狂わせるバグ―

気持ちを落ち着かせようと、枕元の水差しを手に取る…が、水差しは空っぽ。
「…井戸はすぐ近くだったよな。」

宿帳をチェックしている女将さんに声を掛け、宿のすぐ傍にある井戸へ向かう。

井戸から掬った水は冷たく、渇いた俺の喉に染み渡り、血が上った頭を休息に冷やす。
色々と不便な世界だけど、こっちの世界の水はミネラルウォーターよりも純粋で旨い。

…今の俺がどうこう出来る問題じゃないのはわかってるけどさ…あれ?

「あれ?イサミ…そっか、お前も眠れないのか。」
カップを片手に宿から出てきたのはヘンリー。彼もまた眠れずにいたのだろう。

「水か?ほら。」
「ん。ありがとな。」
水差しから注がれた冷たい水を飲み干し、ふぅ…と、一息。
そして…暫しの無言。

「王家は…デールはどうなっちまってるんだろうな…」
月に照らされた城の方の目を向け、ヘンリーが口を開く。

デール…確かヘンリーの異母弟で、今のラインハットの国王だったな。
ラインハットが狂っている現状では、国王のデールに何かあったと見るのが当然だ。

129 :入り旅人に出女【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:39:19 ID:2FnjT+LA0
「もし、この国がこうなっちまった原因がデールの弱さによるものだったら、
 俺は王家に戻って、デールを支えて国を建て直す。だが、もし…」
城の方に向けていたグリーンの瞳を地に落とし、深く呼吸をする。

「もし、元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る。」

王家の人間としてではなく、兄としての決意。
そうでないで欲しい…いや、そうでないに決まってる。
悲し過ぎる決意と、小さな希望。

「…全部、明日になればハッキリするんだよな…」
そう言うのが精一杯。何の答えにもなっていない曖昧な返事。
俺達が願う希望は夜の星のように小さい。

気が利かない薄雲は、夜空に広がって小さな星すらも覆い隠す。
薄雲に消え入りそうになりながら、儚く浮かぶ月はそれでもなお公平に、
荒れた町と、狂った城でもがく俺達を照らしている。

そろそろ戻ろうか…そう言い掛けた俺達の耳に入る轟音。
ドン! ドン!と立て続けに数発、夜を引き裂くような轟音。

そして、元通りの夜の静寂。

「な…なんだ?城の中から…」
「イオよりも派手な音だな…こりゃ、本当に城の中がおかしいぞ。」
「とにかく今日は宿に戻ろう。全部、明日になればわかる。」

怪訝な顔をするヘンリーを促し、宿に戻る。
宿に戻った俺達の表情を見て、女将さんが溜息をつきながら話す。

「ふぅ…今夜も派手にやってるわね。驚いたでしょう?」

130 :入り旅人に出女【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:41:27 ID:2FnjT+LA0
薄暗く、堀に通じるからかジメジメとした地下通路。

「…で?本当にヘンリーの王家はどうなってるわけ?」
いきなり喧嘩腰だが、今日の俺は機嫌が相当悪い。
と言うのも、昨夜は結局明け方まで眠れず、やっとの事で眠りについたところで、
ブラウンのハンマーによる爽やかな痛恨の一撃で起こされた。
朝一で側頭部にハンマーの一撃を喰らって、当然悶絶。
寝た筈なのに、HP15位は減った気がする。

本来の寝起きの悪さ+ブラウンによる爽やかモーニング+今の状況
これだけの要素が揃って陽気でいられるほど俺は聖人じゃない。

「いやあ、確かに外敵対策としては素晴らしいんだろうけどね。」
「サトチーも笑い事じゃねえってば。城の地下通路にモンスターが放し飼いって、
 どんなセキュリティーシステム採用してるんだよ?」

王族専用非常脱出経路に、ガメゴンやクックルーや腐った死体を放し飼いにする王家。
これじゃあ、いざ脱出って時にモンスターの餌になっちまうだろ。

まあ、機嫌の悪さが一つの原動力になってか、ここのモンスター達に苦戦はしない。
守りに入ったガメゴンですら、固い甲羅の上からの怒涛の連撃で叩きまくる。

コノヤロウナニビビッテヤガルゴルァテメエノスズシゲナメツキガキニクワネエンダヨグゲァーカミツキヤガッタコンチクショウ…

「…イサミ、相当荒れてるね…」
「まさか、あそこまで寝起きが悪いとはなあ…」
「ブラウンに『起こしておいで』って、曖昧な命令したからまずかったのかなあ…」
「あ…凄え、ガメゴンを剣で叩き潰しやがった。」
「…あれ?おかしいなあ。」

131 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 03:45:34 ID:0Zy6ehcBO
セルフ連投回避

132 :入り旅人に出女【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:57:05 ID:2FnjT+LA0
「ふぅ。相変わらず固ってえの。」
半ば八つ当たりでガメゴンを叩き潰し、一息。さすがに疲れるな。

「はーん…なるほどね、イサミはハンマーで起こせば戦力が上昇するんだな。」
ヘンリーがニヤニヤしながら恐ろしい事を言う。
「勘弁してくれよ。毎朝痛恨じゃ溜まったもんじゃ…ん?どうした?サトチー。」

普段は真っ先にねぎらいの言葉と回復魔法を掛けてくれる筈のサトチーの反応がない。
難しい顔をして、なにやら考え込んでいるような…

「サトチー?」
「ん?…ああ…お疲れ様、イサミ。怪我はないかい?」

やっぱり様子がおかしい。

「なあ、サトチー。何かあった?」
「え?…いや…そうそう、さっきガメゴンに噛み付かれたところ治療しなきゃね。」

サトチーが俺に回復魔法をかける。
その温かな光はいつもと同じだけど…

「あの…サトチー?…もう治ってるけど、いつまで続けるんだ?」
「え?…ああ、済まない。ついボーっとしちゃって。」
「おいおい、大丈夫か?サトチーも寝不足なんじゃねえの?」

ケケケと笑うヘンリーに、心配ないと返すサトチーの表情はいつもと同じ。
続いて、ブラウンの治療に入るサトチー。優しい言葉をかけながら回復魔法を唱える。

…いつもと同じ…かな?気にし過ぎか。

「はい、おしまい。ブラウンとイサミは最前線で消耗も一番激しいだろうからね。
 どこか調子悪くなったらすぐ言うんだよ。」

133 :入り旅人に出女【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 03:57:47 ID:2FnjT+LA0
「そう言えば、ここは城の地下牢も兼ねてるんだったな。」
治療中、周囲を警戒していたヘンリーがボソッと呟く。

冷静に周囲を見渡してみると、なるほど鉄格子がいくつも見える。
囚人は皆、生気のない恨めしそうな目で俺達を眺めている。
何となく、俺達が奴隷として放り込まれた神殿の宿舎を連想させて嫌な気分になるな。

「あれ?…まさか、あの人…」

突然、数多く並ぶ鉄格子の一つ目掛けてヘンリーが走り出す。
誰だ?知り合いか?

「誰か?わらわを助けに来てくれた者かえ?」
その初老の女性は他の囚人と違い、薄汚れてはいるが豪華なドレスを身に纏い、
言葉使いからも高貴な身分の出身である事が窺える。

「なんで…なんで太后のあんたが牢に入ってるんだ?デールはどうした?」
ヘンリーが牢の中の女性に詰め寄る。

ラインハット大后…王妃のいないこの国では、王に次ぐ身分の筈だが、
その王家の有力者が地下牢に幽閉されている。

「そなたは…まさか…ヘンリーかえ?」
「ああ、ヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット、あんたの義理の息子だ。」
「おお、10年間よくぞ生きて…許してたもれ、わらわが間違っておった。」

大后の口から告げられた告白は衝撃的だった。
10年前、奴隷商にヘンリーを攫わせたのはこの大后。
王家の長男であるヘンリーを消し、自分の実の子であるデールを王位に就かせようと
裏で画策をした…とんでもねえ女だな。放置しといて良くね?…あ、ダメ?

134 :入り旅人に出女【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 04:07:37 ID:2FnjT+LA0
「待てよ。あんたがここにいるって事は、誰がこの国を動かしてるんだ?
 誰がこの国を腐らせてやがるんだ?」
てっきり、大后が国を動かしていると思っていたのであろうヘンリーの語気が強まる。

「他でもない…我が子にして、ラインハット国王デールじゃ。」

場の空気が凍る…

呼吸も出来ないほどの冷たい空気…

湿っぽい地下牢の空気が、乾いた物へと変わる…

「デールは、ラインハット王国を世界の頂点に君臨する国にしようと国民に重税を課し、
 若い男達を兵役に就かせ、税金と兵役労働の者を使って他国侵略の準備を進めておる。
 さすがにやり過ぎじゃと進言したわらわをここに幽閉したのも…」

大后の言葉を聞いたヘンリーの顔色が見る見る青白くなり、唇が震え出す。
当たって欲しくなかった最悪の予測…


「ヘンリー…まだ、僕達は全てを知ったわけじゃない。城へ行こう。」
サトチーがヘンリーの肩を叩く。

そうだ、まだ実際にデールに会っていない。
直にデールの口から真実を聞くまでは…

「わかってる…大后さん、暫く待ってな。近い内に出してやるからさ。」
「待て!待つのじゃヘンリー!まさか、そなたデールを…」

無言で踵を返すヘンリーの目は、今まで見た事のない荒々しく悲しい炎を宿し、
その手は、腰に下げた鋼の剣に掛けられていた。

135 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/26(金) 04:12:10 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下完了です。
ちょっとずつバグが出てます。

136 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 04:16:40 ID:nvQ6wGBx0
>>135
乙です!
大后の勘違いかと思ったら、本当にデールの仕業だったのか…。
ヘンリー…(つД`)

137 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 08:41:52 ID:bn3lGS660
乙です。
バグの影響で色々変化あるのかな?よくわかんないから先が楽しみだ。
あと、なんかそのうち天空の剣折れそうな予感。

138 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 10:39:08 ID:nGp1eD+o0
乙です。
少しずつ動き出してきた感がたまらんです。
デールと偽大后がどうなるのか楽しみ。

139 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/26(金) 12:43:46 ID:KAb42TgF0
カメごん破壊攻撃といい、バグで、なんか異常な攻撃力になってるですね。
サトチーさんがとまどったのは、なにかイサミの様子がおかしくなってるのだろうか。

偽大后でわなくてデールさんが悪の元凶だったとわ・・・。

140 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 17:13:13 ID:L0fk9FKj0
今の避難所が携帯対応じゃないっぽいので、こっそり作ってみました。
【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

あくまで今の本家避難所の補佐的にどうかな?というテスト段階です。
ご意見をお願いします。

141 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 20:22:05 ID:pp+BTL+00
>>140
補佐ってよりそちらに完全移行したほうがいいと思うので、
避難所のほうは11月中に削除しようと思います
(管理も全然できてないしOTL)

142 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:24:23 ID:/eqXYdx10
みなさまお疲れ様です。
まとめは恐ろしく遅れていますがお待ちください。

>>140
お疲れ様です。
まとめサイトへの反映はしばらくお待ちください。

>>141
これまでの運営ありがとうございました!
避難所のおかげでたくさん助けられたと思ってます。
これからもよろしくです。


では合作の投下を始めたいと思います。

143 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:25:46 ID:/eqXYdx10
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv8
     → 2:ヨウイチ Lv8
        3:タロウ  Lv6

144 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:27:10 ID:7W9evhlN0
→ 支援をする

145 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:28:19 ID:/eqXYdx10
二十六、 ドラオの変化

「ああ! スラぼう大丈夫かー!」

スライムはむくむく元の大きさに戻りましたが、その目はひどくおびえています。

「おおお、おい! 降参してるのに攻撃してくるなんてヒドイぞ!」

ナイトが恨めしそうにヨウイチを睨み、ドラオはもうろうとしていました。

「ドラオ、なんでこんなことを!」
「きぃ」
「おい!」

ドラオをつかみゆさゆさしながら問います。

「もう戦いは終わったんだ、わかったな!」
「き…」
「!!」

ヨウイチは驚きます。
つかむ手を、ドラオは振りほどき噛み付いたのです。
手には歯型が残っていました。

「お… おい…
 なんで、どうしたんだよ…」

声が届いているようには思えません

146 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:31:13 ID:/eqXYdx10
「もしかして… こうなったのはお前が変なことを…!」

ヨウイチはナイトにつめよりました。

「中途半端に手なずける技が効いてしまったからかもしれない。
 だがそれはオレのせいじゃないぞ! お前が…」
「どうでもいい! 早くもとに戻すんだ!」
「いや、出来ない。 戻し方は知らない」
「知らないって適当な…!」

ドラオがふらふら飛びながら壁にぶつかって、そのまま意識をなくしてしまいました。

「大丈夫か…?
 気を失っただけか… とにかく!
券は渡したんだから、さっさとすごろくいって来い!」
「む。 言われなくたってスラぼうが元気になったら行く。
 そっちこそここから早く出て行ってくれ!」

ヨウイチは黙ってドラオを抱え洞窟を後にします。
入るときよりも早く出口を抜け、マウントスノーへと急ぎ足で戻るのでした。

147 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:32:27 ID:7W9evhlN0
ドラオ……( ´・ω・`)

148 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:36:03 ID:/eqXYdx10
二十七、 もうひとつの世界

「…キィキ…」

呼び声がします。

「キィ…」

ぼんやりする意識のなか目を開けると、ドラオがふわふわとんでヨウイチに話しかけていました。

「……!? ドラオ…」
「キィー!」

ドラオは普段のドラオでした。
いつものように顔へしがみつかれ、いつもと同じように羽で叩かれます。

「ここ… ライフ、コッドじゃ…ない?
 ……ああ マウントスノー、なんだな。
 俺… そうか、お前がおかしくなって町へ戻って様子を見てたら眠って……
おまえ、元に戻ったんだな、よかった」
「キィ?」
「大丈夫だ。 俺はどれくらい寝てた?」
「キィキィ」
「一晩…!? たったの一晩……」
「キー?」
「…俺、眠っている間にもう一つの世界を生きてきた。
 こことは別の、似たような世界で。
タカハシとメイ… トルネコやテリー…
彼らと一緒に、長い時間を」

149 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:40:34 ID:/eqXYdx10
ヨウイチは寝ている間、夢とは違う現実を過ごしたのです。
あまりに長い時間だったので、目覚めてもここが元の異世界だとは実感することが出来ずにいました。

「おはよう、ヨウイチくん。
 スライムナイトにすごろく券を渡してくれたんだね。
 町のものに様子を見に行かせたら洞窟はもぬけの殻だった。
感謝する、さあこれを」

声を聞いて部屋へと入ってきたブルジオが、石版を手渡してくれました。

「あ…」

石版を手にしたヨウイチはようやくこの現実へと戻ることが出来ます。

「…ありがとうございます。 いろいろ助かりました」
「こちらこそ助けてもらったよ。
ヤツがいない間に対策を考えねばならない。
そこでどうだろう、君の助けがあれば良いアイデアも出てくると思うのだが」
「…お手伝いしたいのはやまやまですが、すみません。 先を急がないといけないんです」
「そうか。
 ふむ、私が貸してあげた道具は全てもらっていってほしい。
 それから、君の道具袋に食料や薬草を補充しておいた。
君達を苦しめた吹雪は来年までこないからすぐふもとへ降りられるだろう。
私はすぐに対策会議を開かねばならないので失礼するよ。
出発するまでここを好きにしてもらってかまわない。
では気をつけてな、感謝している」

そういい残し、ブルジオは部屋から出て行きました

150 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:43:33 ID:7W9evhlN0
メイ……( ´・ω・`)

151 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:45:34 ID:/eqXYdx10
「…おまえ大丈夫だよな。
 あれはスライムナイトのせいでちょっとおかしくなったんだよな…」
「キキー!」
「覚えてないか。 まぁ、平気だろ」
「キィキー?」
「寝ている間の話を聞きたいって?
 話すには、時間がなさ過ぎるよ。
長かった。 とても、永かったんだよ」

ドラオは目をきょとんとさせています。
ヨウイチは一言だけ、小さくつぶやきました。

「でもあの生きた時間は、足りないのかもしれない……」

気持ちの奥にゆらゆらする、不思議と寂しい思いがなんなのかヨウイチにはわかりません。
ですがどうしても、あの二人を思い出すとそういう気持ちになってしまうのです。

 なんの意味があったのか。
自分には到底わからないことだ。
けれど、誰に意味があるのかは知っている。
 きっとこれ以上考えてあの時間を乱してはいけない。
確かに現実だったけど、あれは自分の現実ではなかったに違いない。
一人の心においておくべきだ。

そんなふうに考え、ヨウイチはこれ以上寝ている間の事についてあれこれと考えるのを止めることにしました。
そうして、渡された石版を改めてしっかり掴みます。

「それより石版、やっと手に入ったな!」
「キキィー!」

石版をくるくる回していろんな方向からゆっくり観察します。
何か文字か絵のようなものが彫ってあるくらいで、後は欠けた石の板でした。

152 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:50:11 ID:/eqXYdx10
「こんなので本当にもとの世界へ帰れるのかな。
 どうも信じられないよ…
けど、今は他に手がかりはないんだよなぁ」
「キィ〜、キーキィ」
「うん。 ちょっと危ない目にもあったりして手に入れたもんな。
 ゲレゲレを信じて次は神殿を探そう!」
「キー!」

二人はすぐに身支度を整えブルジオの家を出ます。
町は最初に訪れた時よりも明るく見えて名残惜しくなってしまいましたが、門をくぐり山を降り始めます。
目指すべき神殿が何処にあるのか、噂ですら聞いたことはありません。
ですが、一つの大きな目標を達成した二人にはなんの躊躇も無く、ひたすら道を進むのでした。

153 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:55:07 ID:/eqXYdx10
今日はここまで。

ごめんなさい、早速まちがいがありました。
名前欄を「作り合わされし世界」にするのを忘れています。
そして、出だしの冒険の書一覧でのしなの編のレベルが間違っていました。
正しくは「1:しなの  Lv10」になります。
申し訳ないです。

最後に確認ですが、前スレの最終レスは706でよいでしょうか?
もし違っていたら、どなたか過去ログをアップローダーにあげてもらえませんか。
DATでもHTMLでも構いません。
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
よろしくおねがいします。

ではまた。

154 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 22:56:16 ID:/eqXYdx10
>>150
支援ありがとうございました。

155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 22:56:23 ID:3Yeof0n+0
おさるさん防止支援

156 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 23:00:47 ID:7W9evhlN0
乙〜
前スレは706であってますよ〜

157 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/27(土) 23:01:13 ID:3Yeof0n+0
ドラオさん、とりあえずなおった?みたいなのでよかったです。
さて、石版を手にいれていよいよ大詰めですね。
wktkしながら次の投下を待ちますね。

158 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/10/27(土) 23:04:28 ID:/eqXYdx10
>>156
あってましたか〜
確認ありがとうございます。

>>157
支援ありがとうございます。
なかなか進展させてあげることができませんが、157さんのwktkでwktkして頑張ります。

159 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/28(日) 09:50:48 ID:/yXpBg2Z0
新避難所管理者です。
前避難所管理者様から正式に委任されました。
ありがとうございます。今まで本当にお疲れ様でした。
今後ともよろしくお願いいたします。

【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

160 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 04:30:34 ID:3mypkaVw0
こんな物を見つけてしまいました。
ttp://lou5.jp/?url=http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/

161 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 08:03:35 ID:0WtuWhw1O
>>160
なんだこれwwwwww面白過ぐるwwww

162 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/29(月) 13:57:11 ID:qhKiAf880
しかも、レス番までずれるところが、芸がこまかい・・・。
なんぢゃこりゃ。

163 :Stage? [雑談] ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/30(火) 00:50:33 ID:qc6FGwzF0
* 本日の雑談はアルス君とユリコさんにお願いします。

アルス「ほいさ。んじゃあ、ユリコってタツミのどこに惚れてんの?」
ユリコ「どこって……。そうねえ、そう言えば前にこんなことがあったわ」

ユリコ「たまには回転寿司もいいわね」
タツミ「そうだねー」
ユリコ「ところで、なんで魚って赤身と白身があるの?」
タツミ「それ先週テレビでやってたな。確か……、
  『我々 ”日常生活謎解き隊” は魚の赤身と白身の違いを探るべく、魚の生態に詳しい池上氏の
  元を訪れた。「謎解き隊の榎本です! こちらは竜探大学の池上博士です」「よろしくお願
  いします」「さっそくですが池上先生、魚には赤身と白身がありますが、どうしてですか?」
  「それは魚の筋肉の種類に関係があるんですよ。魚の筋肉には、瞬発力は高いが持久力のな
  い速筋(普通筋)と、逆に持久力が高い遅筋(血合筋)があります。後者の遅筋にはミオグ
  ロビンという赤い色素蛋白質が多く含まれているため赤く見えます。マグロのように長距離
  を泳ぐ魚は遅筋を多く持つので赤身になり、ヒラメなど海底であまり動かない魚は筋肉組織
  のほとんどが速筋なので白身になるのです」「なるほど! ところでサケとかマスはピンク
  じゃないですか。これは、え〜速筋と遅筋の半々だからなんですか?」「違います。サケや
  マスは実は白身の魚なんです」「白身?」「はい。これはアスタキサンチンというカロチノ
  イド系色素が関係します」「ア、アスタ……」「アスタキサンチンです。カニやエビの体表
  を赤くしている色素で、餌から取り込まれます。甲殻類のプランクトンを食べることで、ア
  スタキサンチンが蓄積され、白身に赤い色素が混じることでピンクになるわけです」「よく
  わかりました! 池上先生ありがとうございました」「いえ」こうして我々 ”日常生活謎解
  き隊” は日常の何気ない疑問をまた1つ解決したのであった! ジャジャジャ-ン!!』
   ……とか言ってたよ。わかった?」

アルス「み、店の中でまるまる再生してみせたってか」
ユリコ「うん、一人芝居で。登場人物の表情とか仕草とかすごい臨場感あって、
   ビデオ観てるみたいだった。こんなおもしろいヤツ他にいないでしょ?」
アルス「俺はそばにいたくないけどな……」

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