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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

1 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

457 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:37:54 ID:EPkVQ+2r0
○竜王○

 タケ「お前が竜王か。どう見てもガキっぽい奴やなぁ……」


ハッキリ言って驚いておるんよ。
竜王って威厳があるおっさん顔の様な奴だと思っていたんやけど、どー見ても中坊ぐらいのガキしか見えへんのや。
けど……幼顔だからっと言って気は抜けへん……
ターバンみたいなモンを被って顔を隠しているんやで。性別すら判断できん。

 竜王「そう睨むな…混沌の戦士よ。まだ戦いを望むか?」

 タケ「アンタがやる気なら……俺はやるで。」

 竜王「無理するのはよせ。実際は立っているのがやっとだろう。回復させてやる。」

あっさり俺の状態を見抜きやがった。
その直後竜王は俺に回復呪文を唱えたんや。疲労も怪我した箇所も一瞬にして回復したで!
しかしスゲエ呪文や。

 タケ「どういうつもりや!?敵に塩を送る真似しやがって。」

俺はとっさに剣を構えた。



 竜王「剣を納めろ。私はお前達と争うつもりはない。少し時間が立てばお前の相棒も目が覚めるだろう。」



一体どういうつもりや?竜王は即座にギィンにも同じ呪文をかけた。

458 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:39:06 ID:EPkVQ+2r0
ギィン「す、すみませぬ。竜王様……」
 竜王「まぁよい。やはり老いには勝てぬか。」
ギィン「お恥ずかしい限りです。」
 竜王「ギィン。お前の執念は理解できるが我慢しろ。今はこの者達と話がしたい。」
ギィン「はっ………かしこまりました。」

 竜王「さて、アレフの子孫達、そして混沌の戦士よ。私が竜王だ。」



ムーン「あ、あなたが……りゅ、竜王……」



 竜王「何を震えておる……私は話をするだけだ。すまないがお前の様な臆病者とは話しにならん。」
ムーン「くっ…」


さりげなくきつい事を言うなぁ…このガキは。けどおどおどした奴と会話する事に対して
腹が立つのは理解できる。

459 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/27(木) 22:40:09 ID:8Vy5dXH0O
おっ!リアルタイム遭遇。支援

460 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:41:16 ID:EPkVQ+2r0
 タケ「なら俺と話するか?」
 竜王「混沌の戦士か………………お前が我々と敵対する状況になっていたとは。正直驚いたぞ。」 


 タケ「勝手にこの世界に呼び出しやがって。済んだ話の事はもうええわい。
    これも一つの因果関係やろ。話は変わるが混沌の戦士と呼ぶのはやめてくれ。俺にはタケって言う名前があるんやで。」


 竜王「名前などどうでも良いだろう?仕方があるまい。
    タケよ、お前はなぜそんな危険な戦い方をしたのだ?死んでいてもおかしくはなかったんだぞ。」


 タケ「運が悪けりゃ死んでいたやろな。ハッキリ言って俺達とギィンではかなりの実力差がある訳や。
    ましてたかが鋼の剣がドラゴンに通用するわけがない。にも関らず通用した事がおかしい。
    それに全盛期のギィンなら確実に全滅していた。
    もょもとに比べたら、あらゆる面で俺が劣っているし。
    俺が勝っているのは知恵と予測能力だけ。それに俺なりの自分の意地があったからな。」


 竜王「意地だと?……理解できん。
    人間とは不思議なものだな。意地で自己犠牲をする価値などあるとは思えんが。」
 
タケ「なんやて?」
 竜王「とりあえずここまでだ。そろそろお前の宿主と代わってもらおう。どうやら目覚めた様だからな。」


あっさり会話を打ち切りやがった。完全に竜王のペースに乗せられちまったわい。

461 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:42:41 ID:EPkVQ+2r0
 もょ「う……ううん………ああ、タ、タケ!だいじょうぶなのか!?しかもかいふくしている…」
 タケ「心配すんな。ちゃんと約束は守ったで。安心しろ。」
 もょ「あ、ありがとう!ムーンがてあてをしてくれたのか?」
 



 タケ「ちゃうよ。手当てをしたのは竜王や。」




 もょ「な、なんだって!?」
 タケ「理由はわからん。しかし俺の存在が完全にばれたわい。ミスしてもうた…すまん…」
 もょ「そうか…」
 タケ「それよりも今は竜王がもょと話したがっている。ここは任せるよ。」


 もょ「おれにはなしがあるとは……どうしたんだ?」

 竜王「成る程。タケとは全く正反対の性格だな。もょもとよ。」

 もょ「なんでおれのなまえをしっているんだ?」

 竜王「お前たちの戦いと今の会話で知ったよ。話は変わるが、危なっかしかったな…」





 もょ「……………だろうな。タケがいなけりゃおれたちぜんいんしんでいた。」

462 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:44:00 ID:EPkVQ+2r0
サマル「なっ………」
  リア「……………」
ムーン「で、でもっ……」

 竜王「臆病者に回答は聞いておらん。それにしてもすんなりと自分の欠点を認めるとは。大した男だ。
    人間とは自分の欠点を認めたがらない生物だからな。」



 もょ「いったいどういうつもりなんだ。なにがいいたい?」







 竜王「本題に入ろう。まず一つ、このままではお前の友タケは消滅する。」

 





俺が……消える!?どういうこっちゃ!?

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/27(木) 22:44:15 ID:8Vy5dXH0O
支援

464 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:45:07 ID:EPkVQ+2r0
タケ「お、おい!どういうつもりやねん!」
竜王「まず私の話を聞け。今更バタバタしても仕方があるまい。」

確かに如何し様もねえ。



竜王「本来は私が別の混沌の戦士を呼び出すはずだった。しかしギィンが勝手に呪文を使用し失敗したため、
   タケの魂だけがこの世界に来たのだ。当然、憑依する肉体がなければ魂がすぐに消滅することになる。」



もょ「そ、そうだったのか…」


竜王「タケがお前の体内に入ったのは、皮肉にもお前の恐怖の波長がタケの魂の波長に一致したために
   緊急避難として最適だったのだ。しかし、いつまでも魂の共有は出来ない。
   それにタケはお前や仲間達を守るために生命を削りながら戦ったのだ。」

もょ「なっ…」


竜王「タケは戦闘中に魔法力が無くなって呪文を唱えられる状態ではなかった。そこでタケは己の生命を削って呪文を唱えたのだ。
   この方法が一番危ない。魂の消滅を更に加速させてしまう。」

もょ「じゃあどうすればタケのたましいをたすけることができるんだ!?」
竜王「ただでは教えるわけにはいかん。だが、お前達が私の条件を飲んだら教えても良い。」

もょ「いいだろう!」

465 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:46:23 ID:EPkVQ+2r0
竜王「封印を解く紋章を集めて精霊ルビスを呼び出すのだ。誰かがルビスを封印したらしい。
    恐らくはハーゴンだろう。」


   
ムーン「ハーゴン………!!!」



 竜王「ほぅ。その名前を聞いただけで恐怖から怒りの感情に変化するとは。只の臆病者ではないな。」
ムーン「いい加減にしなさいよ!誰が臆病者ですって!!」


 タケ「落ち着けムーン。今のお前じゃ勝てん。」


ムーン「うるさいわね!!貴方には関係ないでしょ!」
  タケ「自分を過信し過ぎじゃボケ!お前の呪文がギィンに全く通用せえへんかったやないかい!現実を知れ!」
ムーン「ううっ……」

 竜王「話を戻そう。この呪文の欠点は術者の目の前で召還できないのだ。この世界のどこかに召還されるらしい。」

 リア「不思議な呪文だね……」

 竜王「なぜ精霊ルビスの封印を解く必要がある理由は、他の世界からの人間を召還する呪文の本を頂戴したからだ。
    その本はちょっと特殊でな。一度唱えると呪文を唱えた本人や他の者がいくら試しても二度と唱えることが出来ないみたいなのだ。
    悪魔でもギィンの報告を述べただけだが、実際私も試したが呪文が唱えられなかった。」

466 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:47:18 ID:EPkVQ+2r0
サマル「じゃ、じゃあ……他の世界から来た人間が数人いるのだけどその人達は誰が召還したの?」
 竜王「タケ以外で異世界から来た人間がいるのか!?」
サマル「そ、そうだけど…」
 竜王「もしや……私の予測だが、精霊ルビス本人かハーゴンが呼び出した可能性があるかもしれん。」

ククール達が呼び出したのは多分精霊ルビスだろう。じゃあドルマゲスを召喚したのはハーゴンなのか?

 もょ「タケをたすけるためにはもんしょうをあつめればいいのか?」

 竜王「そう言う事だ。精霊ルビスしか対応できないだろう。私達にとってもタケが必要だからな。
    お互いにとって悪い話ではあるまい。」

 もょ「わかった!おれたちがせいれいルビスのふういんをとこう。そのじょうけんはのむぞ。」
 竜王「交渉成立じゃな。まずはこれを渡しておこう。」

竜王は太陽の形を紋章をもょもとに渡した。

 竜王「この太陽の紋章の他に紋章があるみたいなのだが…確か我が城の書物にあった本によると
    5種類あるらしい。しかし具体的などの場所にあるかはわからぬ。」
 リア「そんな…」
 竜王「心配するのではない。山彦の笛という道具を渡しておこう。
    紋章が近くにある場合笛を吹くと、笛の音と紋章と共鳴して音色が少し遅れてもう一度聞こえるそうだ。」
    
準備周到な奴だ。

 竜王「さて、決まった所でもう一つお前達に渡すものがある。いや、返すというべきか…」
 もょ「なにをだ?」
 竜王「ロトの剣をだ。」

この城に封印されていたのか!!これで確実に戦力が大きく変化する。

467 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/27(木) 22:47:34 ID:8Vy5dXH0O
支援

468 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:49:01 ID:EPkVQ+2r0
ギィン「りゅ、竜王様!あれは私が封印したのですよ!それを忌々しいこやつらに渡すとは一体どういう考えのつもりです!?」
 竜王「ギィン。世の中は変化しておるのだ。それに対応しなければなるまい。」
ギィン「し、しかし…」
 竜王「私なりの考えがある…(ゴニョゴニョゴニョ…)」
ギィン「―――――――――――その理由なら仕方がありませぬ…お前達。着いて来るが良い。」

ギィンが俺達を案内し始めた。何か企みがあるみたいだが今は従うしかあるまい。

ギィンが案内した部屋に到着すると不気味な感じの部屋だった。黒い煙の様な物が剣を取り囲っている。

ギィン「では……封印を解くぞ。」
ギィンが詠唱始めたら黒い煙が徐々に消えていって剣が姿を表した……

サマル「こ、これがロトの剣……」

驚くのは無理もない。何せ150年も封印されていたために剣全体が寂び付いていたのだ!

 竜王「ふむ……長い歳月は聖剣ですら時の流れには逆らえぬみたいだな。」
ムーン「こ、これは本物なの!?貴方達嘘ついているんじゃない!?」

ギィン「貴様何を言っている。封印した私が言っているから間違いない。
    竜王様が不在ならとっくに貴様を切り裂いている所だ!!」

ムーンもいい加減にしてくれよ。こいつは対人恐怖症なのか?

 もょ「いや、もっていこう。」
 リア「ええっ!?」
 もょ「たぶんごせんぞさまがみまもってくれそうなきがするんだ。しかしほんとうにもっていっていいのか?」
 竜王「かまわぬ。お前達が持ったほうが都合が良いだろう。」

ロト剣を手に入れた。しかしただの錆びた剣しか見えないが、御守代わりにはなるだろう。

469 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/09/27(木) 22:50:19 ID:EPkVQ+2r0










竜王の城から出た時にそれが起こった―――――――――――――――――――――
人の醜悪の部分――――――――――避けられぬ状況が――――――――――――










もょもと&タケ
Lv.18
HP: 77/130 
MP:  4/  9
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
 もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
   タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
         火炎斬り

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/27(木) 22:53:53 ID:8Vy5dXH0O
レッドマン乙です!
しかしwktkする展開だな。
続きを待ってるぞ( ^ω^)

471 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/27(木) 23:32:45 ID:rt0mO95o0
レッドマン氏乙

初回からほぼリアルタイムで読ませてもらってるが
正直かなり巧くなってるな
文章もシナリオも

毎回すげー楽しみだ

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/28(金) 14:35:02 ID:qac/B8ie0
レッドマンの最近の展開が読めない。
いい感じだ。GJ!

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/28(金) 21:00:46 ID:oM6IygMU0
あえて苦言を呈させてもらうが、台詞の前にキャラ名を付けるのは何とかならないかな。
読みにくいし。
付けなくても誰の台詞か判る工夫をして欲しい。

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/28(金) 23:07:58 ID:SZkRJD+CO
レッドマン乙!
もぅ
じらさないでよ///

475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/29(土) 13:11:42 ID:Pner0Evt0
作者さんのスタンスだし良いんじゃない?
ただ誤字は良作が駄作になってしまうから気をつけた方がいいね。

次回も期待!

476 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/29(土) 20:30:26 ID:V7PDbWqFO
誤字脱字や各キャラクターの自然なセリフ回しをチェックする簡単な方法。
声に出して感情込めて読む!
最初こそ恥ずかしいかもしれないが、マジお薦め。

477 :Stage.9 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 22:52:58 ID:4pwvblo40

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。まずは改めて皆さんにご紹介します。うちの新メンバー、ヘニョちゃん!」
アルス「その名前どうにかしろ。いくらスライムたって、そんな弱そうなのはないだろ」
タツミ「実はヘニョは愛称なんだもんね。本名は立派だよ?」
アルス「ほぉ、言ってみろ」
タツミ「ヘニョリゲス!」
アルス「もっと弱そうだろ! ワザとか!?」
タツミ「もしドルマゲスがヘニョリゲスだったら、あんなに売れなかっただろうな」
アルス「なんの話だよ……」
タツミ「と、雑談はこれくらいにして、恒例サンクスコールいっきまーす!」

アルス「>>454様、うーん最近は『仲いいのかな』と思い始めてる。なぁタッちゃん?」
タツミ「ヒトを騙し半分で危険な世界に放り込んだ人間がなに言ってんだw
   さて、>>455様……それはつまり黒胡椒を取ってくるあたりも含まれますよね」
アルス「そうだ忘れてた! お前カンダタにさらわれたんだよな? なにがあったんだ」
タツミ「うっ、読者様のリクエストじゃあ断れないもんなー。そのうち語ります、そのうち。
   >>456様、普通の草なんかを食べてるだけだったら、それほどでもないんですけどね。
   もう生きたエサは与えないようにしないと。とほほ」


アルス「いつも感想レスありがとさん!」
タツミ「投下中のご支援にも本当に感謝しています。これからも応援よろしくお願いします」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.9 仮免勇者と彷徨勇者】
 [1]〜[6] ゲームサイド

478 :Stage.9 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 22:56:04 ID:4pwvblo40
  Prev >>442-452
 ----------------- Game-Side -----------------

 トントン、とボールが弾むような音がした。ヘニョだ。相変わらずの笑顔だけど、少し
手前で留まってモジモジしている。気にしてるのかな。
 おいで、と手を差し出すとピョンと飛びついてきた。
「ごめんごめん。君が悪いんじゃないよ」
 スライムも生きているんだから、100%「かわいい」だけで済むはずがない。勝手な理
想を押しつけようとした僕が悪いんだよね。
 リアル……か。

「そう言えば、ロダムは神父さんだったの?」
 さっき気になったことをそれとなく聞いてみる。ロダムは少し口ごもった。
「そうなんですがね……いや、お恥ずかしい話なんですが」
 頭をかく彼に、僕は首をひねった。「神父」と「僧侶」の違いもよくわからない僕には、
なにが「お恥ずかしい」んだかも理解できない。
 ロダムもそれに気づいたのか、「異世界の方なんでしたね……」と苦笑した。
「簡単に言うと、神父は殺生できないから、僧侶になったということですな」

 神父はあくまで「救う」職業であって、たとえ魔物でも無闇に命を奪うわけにいかない。
だが世界規模で魔物被害が拡大している昨今、彼らの強力な退魔能力を正当に利用するた
めに、殺生を許された特別な聖職が設けられた。
 それが「僧侶」。だが名目上はどうあれ、殺すために聖職に就くという矛盾は埋めよう
がなく、特に神父からの転職は「宗旨替え」と中傷を受けることも多かったという。
「最近は理解されてますがね。現実問題、きれいごとで魔物は払えませんしなぁ」
「ロダムはどうして……やっぱり、街が魔物に襲われたから、とかで?」
「よくある話ですよ。妹一家が犠牲になりまして」
 ロダムはただ穏やかに、月明かりに煌めく夜の海を見つめている。
「本来は神父の修行をする『宮廷司祭』も返上するべきなんですが、国王様が認めてくだ
さいましてね。ありがたいことですよ」
 旅が終わったあとは、たとえどんなに殺生を犯してもまた神父に戻っていいってことだ
そうだ。こんな特別待遇を設けてるのは、世界中でもアリアハンだけなんだって。

479 :Stage.9 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 22:58:28 ID:4pwvblo40

「へぇ、あの王様もけっこういいとこあるじゃん」
 優秀な人材が勇者にスカウトされないよう、ルイーダに手を回したりしてたけど。それ
だけ「人」の力を大事にしてるってことなのかもしれないな。


 本当に複雑だ。「現実」と同じように。
 この世界もまた、様々な人間模様があって、そこに悲哀があって、歓喜があって、みん
な一生懸命に生きている。とてもこれが「ゲーム」だなんて思えない。
 いや、ゲームだからなんだっていうんだ? そんなのは、僕の住む世界から見たときの
勝手な枠組みでしかない。ここにはここの、確かな「リアル」がある。

 でも……それでも、彼には耐えられなかったんだろうか。
 すべて投げ出してもかまわないくらい、「ゲーム」という事実が嫌だったんだろうか。

 アルスは捨ててしまった。勇者であることも、家族や恋人や、仲間も、なにもかも。
 そんなこと、アルスを信じ切っているみんなにはとても言えなくて、僕は彼の行き先も、
彼と連絡が取れることも隠している。魔王を倒せば戻ってくる、なんて嘘をついている。

 本当は、ちょっと、苦しい。


「――勇者様?」
「あ、はい! ……え、どうしたの?」
 つい考え込んでしまった僕は、ロダムがなんだか険しい顔をしているのに驚いた。
「大変なことを忘れていましたよ。職業の話で思い出したのですが、勇者様はまだ本試験
に受かっていらっしゃいませんよね?」
「ホンシケン? なにそれ」
「まずい、もう日にちがありませんぞ」
 ロダムは急に僕を船内に引っ張っていった。ヘニョもピョンピョンあとをついてくる。
 僕らに割り当てられた船室に戻るなり、そこにいたエリスやサミエルも交えて、いきな
り作戦タイムに突入。

480 :Stage.9 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 23:02:20 ID:4pwvblo40

 なんと僕、まだ「勇者」の仮免中なんだって。
 ……仮免?

   ◇

「そうですよ、忘れてました! アルス様、本試験の前にいなくなられましたから」
 エリスも口に手を当てて「参ったな」って顔をしている。
「よくわかんないんだけど……僕はまだ正式な勇者じゃないってこと?」
「勇者様は、『勇者』というものについてご存じですか」
 逆に問い返されて、僕はふるふる首を振った。
 ダーマで転職できないから「勇者」が職業だっていうのはわかるんだけど、勇者は勇者
だってなんとなく思ってたし。
「勇者というのは通称なんです。正式には『世界退魔機構認定特別職一級討伐士』という
んですよ」
 そ、そりゃまたご大層な。

 世界退魔機構とは、ほぼ世界中の国や街が加盟している、モンスター被害の対策機構だ。
 ダーマ神殿で認定される「戦士」や「魔法使い」などの一般の冒険職とは別に、この退
魔機構が認定しているのが特別職であり、冒険において格別の特典が与えられる。
 その特典というのが――

 ・加盟国、または加盟店のアイテムを安く提供してもらえる。
 ・ほぼ売買を拒否されない。
 ・アイテムの買取価格が、商品的価値の有無に関わらず売値の4分の3。
 ・宿屋に何時でもチェックイン可能。また宿泊拒否されない。
 ・真夜中でも教会の利用が可能。
 ・親族への生活補助金を、所属国家に支払うよう促す(強制ではない)。

 ――などなど。


481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/09/30(日) 23:03:53 ID:mIVAYlVa0
支援!

482 :Stage.9 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 23:04:39 ID:4pwvblo40

 言われてみれば納得できる。普通は使い古しのステテコパンツなんて絶対に買い取るわ
けないもんな。
 武器や防具なんかも、本当は僕たちが買ってた値段の1.2倍〜1.5倍はするんだとか。

 それだけの特典があるので、当然のように特別職に就くための道は険しい。
 ただし、基本的にこの世界における「職業」はすべて「やる気のある初心者を支援する
ため」の制度であり、特別職においても試験で実務経験を問われることはない。「Lv.1」
の勇者が存在するのもそのためだ。
 でも怠けられても困るから、取得後3ヶ月間は仮免で、その後の本試験を経て正式に認
められる。さらに1年ごとに更新試験があり、資格を維持する方が大変なんだって。

「その本試験ってどんなの? 正直、実技だったらキツイよ僕」
 ペーパーだったら自信あるんだけどなぁ。
「一級討伐士の場合、本試験も更新試験も内容は一緒でして、期限までに次の3つの条件
の内、いずれかをクリアしていればいいんですが……」

 1)なにか大きな人助けをする。
 2)魔物から街や村、教会など慈善組織(海賊等は含まれない)を護る、救う。
 3)世界退魔機構が指定する試練をクリアする。

 サミエルがぽんとひざを叩いた。
「なーんだ、それなら今までの旅の中で、どれか当てはまりそうじゃないッスか?」
「そうですね、それを退魔機構に申請すればいいんですよね」
 エリスもほっと胸を押さえている。が、ロダムはまだ難しい顔をしたままだ。
「無理でしょうなぁ。たとえば大きな人助け、なにかしましたか?」
「金の冠を取り返したじゃないッスか」
「……では、ロマリア国王がそれを認めますか? 対象者が認めない限り、審査を通りま
せんよ」
 申請内容の真偽を確認されるのは当然として。なるほど、冠を盗まれるなんて失態、あ
のロマリア国王が公に認めるわけないよな。魔法の鍵についても同じく。

483 :Stage.9 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 23:07:28 ID:4pwvblo40

「バハラタでも、カンダタ一党をこらしめましたが……」
 そう言うエリスも自信なさげだ。答えは聞くまでもない。
「あくまで『人さらいらしい』という噂の範囲で、実害が出ていたわけではありませんか
らね。私たちが向かったのも、勇者様がさらわれたためですし」
 そうそう、変にストーリー狂ったんだよね。思い出したくもない……あの変態オヤジに
は二度と会いたくないよ。
 あ、誤解がないように言っておきますが、宿スレ的にヤバイことはされてませんよ。

「となると3番だけか。『世界退魔機構が指定する試練』って、たとえば?」
「そうですな、今の勇者様でもこなせそうなものとなると……」
 ロダムはしばらくうなっていたが、ようやく言葉を絞り出した。
「……ランシール、でしょうな」

 ガターン! と椅子ごとひっくり返る僕。全員が驚いた顔で僕を見ている。
「ど、どうなされたんですか勇者様!?」
 みんなが助け起こそうとしてくれてるんだけど、さすがに身体に力が入らない。
 じょ、冗談じゃないよ。ポルトガからすぐエジンベアに直行したいからこそ、あれだけ
根回ししたのに! 消え去り草を売っているランシールに先に行くんだったら、同じこと
じゃないか。なんなんだよソレ。

「軌道修正されてるのか……?」
 ロマリアからピラミッド行きを強制されたときにも感じたことだけど。
 確かに、勇者職の話も試験の話もおかしいとは思わない。でもなんでそれが「今」なん
だ? まるでなにか見えない力が、ドラクエ3のストーリーに無理やり当てはめようとし
て、圧力をかけてるように思える。

 それに、考えてみればアルスもアルスだ。こんな大切なことは先に教えておいてくれて
もいいじゃないか。あの夜……ピラミッドで、少しは見直したのに。
「ごめん。ちょっと甲板に出てくる」
「こんな時間にですか?」

484 :Stage.9 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 23:11:57 ID:4pwvblo40

「頼むから人を来させないで。しばらく1人にして欲しい」
 言い捨てて、僕は部屋を飛び出した。ついてこようとしたヘニョをどうするか一瞬迷っ
たけど、立ち止まった途端に飛びついてきたスライムを抱きしめて、また小走りに甲板に
向かう。

 そろそろハッキリ言ってやらなきゃダメだ。あの人は僕をクリアさせたくないみたいだ
けど、それがどういうことなのかわかってないのか?
 故郷に戻れなくなる。そのつらさは、ゾーマを倒したあとに嫌なほど味わってるだろう
に、なんで自分から帰り道を閉ざそうとするんだ。

 プルルルルルル! プルルルルルル! ……ッピ
 
「もしもし、アルス? 楽しんでるところ悪いけど、大事な話があるんだ。ちょっと長く
なると思うんだけど、ユリコたちから離れられる?」
 


『……………………タツミなの?』



 頭の中が、真っ白になった。
 片岡百合子。どうして。

『タツミ? アルスってこの子の名前? ねえ、あんたいったいドコにいるのよ!』
 叫ぶようなユリコの声を、僕はただ呆然と聞いているしか、できなかった。

485 :Stage.9 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/09/30(日) 23:14:33 ID:4pwvblo40
本日はここまでです。

一般冒険職の試験は、職業によってもバラつきがありますが、
有名私立中学の入試、簿記3〜2級、英検3〜2級など、
大人でも子供でも頑張ればいけそうなレベル。

特別職の一次試験は、東大クラスの大学入試、弁護士資格、
くらい難しいと思ってください。

486 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 00:35:08 ID:UvUZ4iqJO
◆IFDQ/RcGKI氏キタ――!!
勇者試験そんなに難しいのか?w
ってことは、アルスも実はすげえ頭いいのかな

ロダムも苦労あったんだな
いつも思うけど、脇役がいい味出してるよ

487 :人生の雨とムチ ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 04:26:18 ID:uFmNvnQM0
目の前に広がる光景をどう理解したものか。

…と、言っても薄暗くカビ臭い部屋…波の音が聞こえるから船の中なのだろうか?
体を動かす事すらままならない今の俺にはその狭い部屋の一部しか見えないのだが、
なんとか周囲に目をやると、なんとも暗〜い表情の人が十余名。
老若男女分け隔てなくそれぞれ後ろ手に腕を縛られ、両足首も拘束された状態で
ここに押し込められている。当然、俺の体も同じように拘束されている。
まぁとにかく俺は今そんな所にいるわけだ。

昨日の記憶を思い返してみてもこの状況に繋がる要素は全くなし。
いつも通り大学に向かう電車の中で一眠り。
そして目が覚めたらこの光景。

ふむ、これはひょっとすると北の国の『アレ』に巻き込まれたかね?
もしくは俺の新鮮な『中身』を移植用に切り売りされるのかね?
はたまたどこかの無人島に投げ出されて『殺し合い』でもさせられたり?

ハハハ…ファンタスティック。


「…って、落ち着いてる場合じゃねえ!」


そうだ、これは明らかにヤバイ。
平和ボケした日本人の俺でも生命の危機をビンビンに感じる。
何とかしないと…
そうだ、まずは今の状況の把握だ。
横で同じように拘束されている男に声をかけてみる。

488 :人生の雨とムチ【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 04:28:44 ID:uFmNvnQM0
「おい、あんた。教えてくれ。ここは一体どこなんだ?」
我ながらマヌケな質問だと心の中で自嘲する。
しかし今はなりふり構っていられない。
男は一度こちらに顔を向けるとすぐに目線を元に戻して語りだした。
「…わからない…一体何が…行商の旅の途中にモンスターに襲われて意識を失って…」

ダメだこいつは…
モンスターだなんて完全に錯乱している。
恐らく屈強な悪の組織(仮定)の連中に襲われたショックでアヒャになっているのだろう。
だいたい科学の発達した近代世界にモンスターだなんてドラクエじゃあるまいs…
ガチャ…ガチャリ

不意に扉の方から金属音がした。
反射的にそちらに目をやった先には
悪の組織にふさわしい覆面で顔を隠した人影(両手は大蛇)に
その周囲をふよふよ飛び回る顔が多数付いた球体。

どう見てもモンスターです。本当に(ry


「…って、落ち着いてる場合じゃねえ!モンスターだあ!!」


錯乱なんかじゃない。現実だ。
部屋の中のあちこちでキャーとかウワーとか悲鳴が上がる。
かく言う俺も腹の底から絶叫したわけだが…

「チッ…暴れられて傷物にでもしちまったら厄介だな…エビルスピリッツ!」
低い声で覆面が言い放つと、浮遊していた球体が前に進み出た。
瞬間、鼻腔をくすぐる甘い香りに包まれて俺の意識は再びまどろみに消えていった…


489 :人生の雨とムチ【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 04:30:21 ID:uFmNvnQM0

……き……ろ………きろ…

心地良い眠りを妨げる雑音は俺の大嫌いなモノの一つだ。
強制的に眠りを覚まされた直後の俺はハッキリ言ってとても機嫌が悪い。
単に『寝起きが悪い』のだが、その性質が災いして目覚まし時計を何度投げ壊したか…
まあ最近では体が学習して、設定した時刻の数秒前に自然と目が覚めるようになった。
これも人体の神秘…そもそも睡眠とは生命の維持にとって不可欠な脳の休息であり…


「起きろ!」


――目が覚めた。

自分でも驚くくらいにパッチリと目が覚めた。
何が起こったのかすぐには理解できなかったが、次の瞬間には体で理解できた。

ヒュッという風きり音に続けてバシィッという乾いた音。
背中の一部が一瞬冷たくなり、一瞬遅れて灼熱したような痛みが走る。

「新入りの分際でいつまで寝てやがる!」

ピエロのような格好をした男が叫びながら手に持った鞭を振るう。
その度に俺の体が乾いた音をあげ灼熱する。

「…ってぇ…いきなり何をする!」
突然理不尽な仕打ちを受ければ、いくら温厚な日本人の俺でもキレる。
だが、怒りに任せて掴みかかった俺の突進は次の鞭の一撃で止められる。

490 :人生の雨とムチ【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 04:31:22 ID:uFmNvnQM0
ボロボロの服から露出している胸元に鞭を受け、俺はたまらず倒れこむ。

俺のお気に入りの白いライダーズブルゾンがいつの間にか子汚いボロの服に
変わっているショックも忘れるくらいの衝撃。

…ゴメン、忘れられないや…

…って、服を気にしてる場合じゃねぇ!


さらに倒れた俺に二度三度と鞭が振るわれる。
痛え…シャレになんねえ…

「威勢がいいじゃねえか…だがなぁ、逆らうヤツはここではこうなるんだ!
 俺様が直々にその体に教訓を叩き込んでやる!!」

四度五度六度…数えるのも嫌になるくらい同じ音を聞き、同じ痛みに襲われる。
生まれて初めて味わう激痛に俺はただうずくまるしかできない。



何分…何十分こうして鞭で打たれているんだろう…
相変わらず鞭が振るわれる乾いた音と半狂乱なピエロ男の声が聞こえているが、
目の前がチカチカしていたのはおさまっている…
むしろ目の前が暗くなってきた…まるで睡眠に入る直前の思考回路のようだな…

「そのくらいにしておいたらどうだ?」
背後から男の声が聞こえ、うるさく響いていた鞭の音が止んだ。
もう視覚も聴覚もグチャグチャだったが、彼の声はなぜか透き通って聞こえた。
「それ以上やったらその人は死んでしまうぞ。」

491 :人生の雨とムチ【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 04:33:12 ID:uFmNvnQM0

  死

…あぁ…死なんて実感した事がなかったなぁ…そうかこれが…


  死?


…嫌だ…



   死にたくない!!

飛び起きた俺の全身を痛みが走り、俺はその場にへたり込んだ。
それでも痛みを堪えて声のほうに目を向けると、ピエロ男に向かい合う二人の男の姿。

片方は紫の布(ターバンっていうのかアレ?)を頭に巻いた男。
恐らく彼がピエロ男を止めてくれたのだろう。

「なんだ?またお前か。いつまでも反抗的なヤツだ。」
ピエロ男が忌々しげに舌打ちをする。

「お前は何度痛い目を見ても懲りないらしいな。」
ピエロ男が鞭をしならせ、バシィッと地面を打ち鳴らす。
ヤツの照準は完全に俺からターバンの男に替わったらしい。

…助かった…けど、このままだとあの男が…

492 :人生の雨とムチ【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 05:02:19 ID:uFmNvnQM0
「まあまあ二人とも落ち着いて。」

険悪な雰囲気の二人の間に、ターバンの男と一緒にいた緑の髪の男が口を挟んだ。
「いつもすみませんね。本当にコイツは反抗的で、俺からも言って聞かせますので。」

…え?俺見捨てられた?…死亡フラグってヤツですか?

「でも、コイツの言うとおりそれ以上やったらその人たぶん死んじゃいますよ。
 今は神殿の完成が最優先ですよね?人手を減らすのはマズいんじゃないですか?」
緑髪がニコニコと愛想笑いをしながらピエロ男に語りかける。
その少し後ではターバンの男がピエロ男を睨みつけている。




数秒の沈黙を破ったのはピエロ男だった。


「ふん。気に食わんがお前の言うとおりだ。今人手を減らすのは得策ではないな。
 今日はこれで勘弁してやるが、お前はその二人にしっかり言い聞かせておけ。
 次に歯向かうような事があったらその時は容赦しないからな。」

ドスドスと乱暴な足音を立ててピエロ男が去っていった。
ターバンの男と緑髪は安堵した表情で顔を見合わせている。

…本当に助かったのか?

ボンヤリしている俺にターバンの男が声をかけてきた。
「酷い目にあったね。大丈夫だったかい?」

493 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 05:05:22 ID:uFmNvnQM0
新作投下してみました。世界は5です。
現実の人間を幼少期から同行させるのは難しかったので青年時代からのスタートです。

494 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 08:15:15 ID:hI19NMb2O
>>492
新作ktkr
次回も楽しみに待ってまつ

495 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 13:48:03 ID:SJLnF0e10
>>487-493
トリップがゲマwww
新作乙! これからどう発展するのか楽しみ

496 :人生の雨とムチ【7 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 18:59:32 ID:uFmNvnQM0
「あ…あぁ…ありがとう…」
差し伸べられた手を取り立ち上がろうとするも、足元がフラついてしまう。
「おっと…ベホイミ…よし、これでもう歩けるだろうけど無理しないほうがいいよ。
 アレの辛さは僕達もよく知っているから。」
ベホイミってあんた…それなんてドラクエ?
かめはめ波を出そうとする小学生じゃあるまいし、こんな場面でそのギャグは…

え?…痛みが消えてる…?

ほんの数秒前までまともに立ち上がることすらできなかったはずなのに、
彼が手をかざして言葉を発した瞬間、全身の痛みが全て消えていた。
あれだけ鞭で打たれたのに、今では痺れも残っていない。

ハハハ…ファンタスティック。
だいたい科学の発達した近代世界に魔法だなんてドラクエじゃあるまいs…
「おや?まだミミズ腫れが残っているね…ホイミ。」

彼が言葉を発すると赤く膨らんでいたミミズ腫れが飛行機雲のように消える。

どう見ても魔法です。本当に(ry

いやいや魔法だなんてそんな馬鹿な。
バミューダトライアングルだって科学的に証明できているこの近代社会に魔法って、
そしたらアレか?もし俺がここでイオナズンとか叫んだら凄い事になるのか?
就活の履歴書に【特技:イオナズン】とか【趣味:ザラキ】とか書けるのか?
ハハハ…それだったら使っちゃいますよ?イオナズン。良いんですか?
しかし、確かに今あれだけの痛みと傷が一瞬で…
いやいや…でも、船の中で見たモンスターとか、魔法とか…
モンスター…魔法…まさかね…

497 :人生の雨とムチ【8 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:01:55 ID:uFmNvnQM0
「知ってて何でお前は毎回歯向かうかなあ。その度に止める俺の身にもなれっての。」

混乱している俺をよそに緑髪がターバンに茶々を入れる。
「…って言うか、お前もいきなりムチ男に殴りかかるなんて何考えてんだ!
 俺達が間に入らなかったら本当に死んでてもおかしくなかったんだぞ?」

そうだ。死ぬところだったんだ…俺…

いまさらの様に思い出して背筋がぞっとする。
あの時、視覚も聴覚も痛みも感覚も消えて意識も手放してたら今頃は…

「本当にありがとう。二人が助けてくれなかったら俺は今頃…」
慌てて立ち上がり、俺は二人に心からの礼を言う。

二人は一瞬驚いたような表情を見せ、次の瞬間には笑顔になっていた。
「気にしなくていいよ。でも、ヘンリーの言った事は覚えていてくれないかい?
 君の命は君自身にとっても、君の大切な人にとってもかけがえのない物なんだ。
 ここの生活でどんなに辛い事があっても、どんなに理不尽で悔しい思いをしても
 まず生きる事を考えて欲しい。君に何かあったら悲しむ人が絶対にいるから。」
ターバンが諭すように僕に語りかける。
表情は笑顔だったが、その瞳は真剣だった。
俺はただ黙って頷いていた。

俺が死んで悲しむ人か…
親父やお袋はやっぱり悲しむのだろうか?
大学の飲み仲間やバイト先の人間はどうだろう?
もう数年連絡を取っていない中学、高校のクラスメイトは…
もう俺の事を忘れてしまっているだろうか…

498 :人生の雨とムチ【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:04:45 ID:uFmNvnQM0
「ま、新入りのお前もすぐにここでの立ち回りがわかるようになるだろうさ。
 そうすりゃ二度とあんな無茶をしないに決まってるぜ。な?」

ヘンリーと呼ばれた緑髪が馴れ馴れしく俺の肩をバンバン叩く。
普段ならウザイと思う所だが、何故か今は心地良い。
「おっ、そうだ。なんならお前もこのヘンリー様の子分にしてやろうか?
 ヘンリー様が直々に奴隷生活のエンジョイの仕方をレクチャーしてやるぜ?」



前言撤回…
普段ならウザイと思う所だが、今でも普通にウザイ。
緑髪の後ろではターバンがこちらに向かって申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら、
顔の前で両手を合わせている。『ゴメン、合わせてやって。』…といった感じか。
これも恐らく毎回の事なのだろう。思わず苦笑がもれる。

「あ〜ん?何笑ってるんだ?新入り。そう言えばお前の名前を聞いてなかったな。
 お前、名前は何て言うんだ?」
「あ…俺の名前はイサミ。村崎 勇。」
促されて慌てて自己紹介をする。


勇…勇ましい…勇気… 
温厚な小市民には不釣合いで好きではない自分の名前。

499 :人生の雨とムチ【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:05:27 ID:uFmNvnQM0
「イサミ…変わった名前だな。俺はヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット
 ヘンリーと呼んでくれ。よろしくなイサミ。」
「そう言えば僕も自己紹介がまだだったね。僕はサトチー。」




前言撤回…
少しだけ自分の名前が好きになりました。

拝啓 お父様、お母様。
 素敵な名前をありがとうございます。


「よ、よろしく。ヘンリーに…えっと…サトチー…?」
半ば引いた笑みを浮かべているのが自分でもわかる。

うん、あえて触れないでおこう。それがオトナの付き合い方ってヤツだ。

「いつまでサボってやがる!新入りの手当てが済んだならさっさと持ち場に戻れ!!」
石壁剥き出しの粗末な部屋の外からムチ男の怒鳴る声が聞こえる。

「あ〜あ、またヒステリーだよ。仕方ない、今日も適当に仕事を終わらせますか。
 ホラ、イサミもついて来い。親分が直々に仕事を教えてやるよ。」

いつの間にか子分になっていた俺は、二人に誘われるままに部屋を後にした。

500 :人生の雨とムチ【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:06:42 ID:uFmNvnQM0
部屋の外で待っていたのは俺の新しい職場。
就職先が就活もせずに決まるなんて大学生にとってはまるで夢のよう。

皆さん額に汗して一心不乱に石や木材を運んでいます。実に健康的です。
上司のムチ男さんは俺達に対して常に真剣に愛の鞭を振るってくれます。
しかも食事付の寮完備。今日の夕飯は腐りかけたジャガイモでした。ヘルシーです。
湿ったゴザに疲れた体を横たえると明日への希望が徐々に失われてゆきます。

どう見てもタコ部屋です。本当に(ry

悪夢のような内定(辞退不可)に目の前が滲んでよく見えません。


イサミ  LV 1
職業:大学生 改め 建設作業員
HP:18/18
MP:0
装備:E奴隷の服

501 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 19:13:25 ID:LhLPtzsV0
新作乙! 主人公はドラクエは知ってるけど5は知らないんだな。
サトチーwとヘンリーも違和感ないし、文章とか読みやすくて好みだ。
次の投下も楽しみにしてます。

502 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/01(月) 19:28:28 ID:uFmNvnQM0
>>500まで第一話を投下させて頂きました。
おおまかなストーリーは考えてあっても文章にするのは難しい…

では、イサミの冒険活劇、第二話の投下まで暫しの幕間で御座います。

503 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 20:36:14 ID:p9UCNGXQ0
読みやすくて良いね。ぜひ完結させて欲しい。
妄想を形にするのは難しいけど、頑張れ。

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/01(月) 21:15:32 ID:I/dHHXDo0
ちょwサトチーかよwwwwにしてもヘンリー世渡り上手いな
同じく読みやすくて好きな文章なので続き待ってます

505 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:52:59 ID:7ftfxckl0
―中の巻―(>>429-436

鍵の次は船が欲しくなった。船を手に入れるとなるといろいろ大変だ。船舶免許とか税金とか。
だが、それは俺の世界の話。この世界では黒胡椒さえあれば万事解決するらしい。
そんなわけで胡椒を求めいざ東の地へ。

胡椒売りの娘がさらわれたとかで助けてやったらただで胡椒をくれた。
ちなみに犯人はカンダタ。またカンダタか。
結果的にただで胡椒が手に入ったのである意味カンダタGJなのだが。
奴は人質に手荒な真似はしていなかったので許してやった。
また何かやらかして俺たちが手柄を立てることを期待したわけではない。断じてない。

あまりあっさり胡椒を持ち帰るとありがたみがないのではないかと思う。
だからもう少しこの地を探索して時間をつぶすことにした。
その結果、ダーマという神殿を見つけた。ここでは職業や名前を変えることができるらしい。
せっかくだからキャラ的に地味なゲンを、せめて名前だけでも素敵なものに変えよう。
こいつは最早いつかの幽霊のように素手で熊を倒せるくらいに強い。だが存在感がない。
お互いあまりしゃべらないのでこいつとの会話はこんな感じになってしまう。
「この世界で信じられるのは己のみ。だからこそ俺は強さを求めるのだ。」
「あ、そう。」
いい名前を思いついたが「名前というものをなめておるのか?」と言うので改名は断念した。

しかし、その後見つけた村の連中こそ名前をなめていると言っていいだろう。
こいつらオルテガと言う名前をポカパマズさんと呼んでやがった。
俺がそのポカパマズさんに似ていると言ってくるのは何かの嫌がらせだろうか。
だが、似ていると言う理由でポカパマズさんの使っていた兜をくれたのでよしとする。

探索も飽きたので胡椒を船と交換した。思っていたよりもいい船だった。
国王は胡椒をうまそうに食べていた。それは調味料だと教えてやらないほうが親切だろうか。
船を手にいれたら今度はオーブというものを集めることになった。
6個集めると何かが起きるらしい。7個集めるやつなら知っているのだが。

506 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:54:03 ID:7ftfxckl0
夜の船旅では交代で見張りをしている。今は俺とドルが担当だ。
しかし、俺はついうとうとしてしまった。
「うわっ!」
俺は叫び声を上げ夢から目覚めた。
「大丈夫? すごい汗よ。」
「すまん、寝てしまった。ちょっと寝込みを襲われる夢を見てな。」
「そうなの? それにしては寝顔がうれしそうだったわよ。」
まさか本当は猫耳に襲われる夢だったなんて言えない。
「夢と言えばさ。エンは将来の夢ってある?」
夢。……元の世界に帰ることが俺の夢なのだろうか。
「もちろん世界を平和にすることでしょうけど、聞きたいのはその後のことよ。」
俺が答えなかったのを、俺の夢は魔王討伐だと解釈したらしい。
「その後のこと?」
「うん。平和になったあと何するのかなと思ってさ。」
……確かに元の世界に戻れなかったときにことも考えておいたほうがいいかもしれないな。
エンの過去を知る者が多いアリアハンに帰って暮らすのはまずい。他でで働かねば。
この世界の通貨はゴールドで統一されている。為替のトレーダーにとっては住みにくい世界だ。
「そうだな。何か商売を始めてみるかな。よかったら教えてくれないか?」
「私が? いいわよ、教えてあげる。格安で。」
「金取るのかよ!」
「だって私が信じられるのはお金だけだもん。」
素敵な台詞を吐いてくれる。こういう金に執着する姿勢は嫌いではないけど。

「でもさ、バラモスを倒した勇者を周りが放っておくわけないわよ。」
そんなものか。『魔王の倒し方』なんてハウツー本の執筆の依頼が来るかもしれないな。
……待て。そのときにはもう倒すべき魔王はおらんではないか。
「それにさ、勇者が客商売なんてプライドが許さないんじゃないの?」
プライドなら捨てた。猫耳をつけたときに。……うーん、様にならんな。
それと俺は猫耳を引きずりすぎだと思う。

507 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:55:05 ID:7ftfxckl0
「ところでドルの夢って何だ?」
あまり自分の話はしないほうがいい。相手に話を振ることにする。
「私の夢はね、町を作ることなの。誰でも自由に商売ができる町よ。」
「今だって自由に商売できるんじゃないか?」
「まだまだ規制が多いわ。私が目指すのは、がんばった人ががんばっただけ稼げる。そんな町よ。」
どこの世界にも同じようなことを考える人がいるようだ。自由主義経済とか言うんだったかな。
ドルにとっては夢なのだろうが俺の世界では一般的なことだ。俺は知っている。その問題点も……
「そんな町を作りたいんだったらしっかりしたシステム作りが必要だな。」
「システム?」
「ああ、経済を動かす法律、法律を動かす政治、そういった町を動かすシステムのことだ。」
「ずいぶん難しいことを言うのね。」
「ああ、昔ゼミで……いや、昔読んだ本に書いてあった。」
「ふーん。あなたはずっと魔王を倒すための修行をしていたのかと思ったわ。」
「ああ、実を言えば俺はまったく違う世界の人間だからな。」

「……なにそれ?」
ドルは俺言葉の意味を探っているようだった。なぜ俺はこんなことを言ったのだろうか。
ちょっと親しくなっただけで自分の秘密を打ち明けるなんて。
いや、親しいどころか俺は彼女の本名すら知らないではないか。
「いや、修行中にそんなことを考えていたということだ。つまらない冗談だったな。」
俺の言葉にドルは納得していなかったようだが深くは追求しなかった。
そのあと俺たちはドルの夢と俺の昔の知識について語り明かした。
さほど昔のことではないはずなのに大学での勉強はあまり覚えていない。記憶なんて曖昧なものだ。

そして、夜が明けた。

「見て! 陸地が見える!」
朝日の光によって遠くまで見渡せるようになり、うっすらと陸地が見えたようだ。
新しい朝に新しい大陸、まるでドルの夢を象徴しているようじゃないか。
そんなことを考えていた。
ただし、上陸するまでの話だ。……新しい大陸かと思ったらアリアハンでやんの。

508 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:56:07 ID:7ftfxckl0
アリアハンの城に魔法の鍵で開けられる扉があったことを思い出し探りを入れる。
せっかくだから俺は宝物庫の扉を選ぶぜ。
「勇者オルテガにはいろいろ世話になった。ここで何をしようと見てみない振りをしよう。」
宝物庫の番をしている兵士がそう言うので遠慮なくもらうことにしよう。でもオルテガって誰?
「あなたの仕事はこの宝を守ることでしょう。そんないい加減なことでいいの?」
なんとドルが説教を始めた。遠慮なくもらっていきそうなものだが意外と熱い女だ。
仕事と言うものに誇りを持っているのだろう。
最終的に倉庫番の兵士のおっさんが王様に話を通し俺たちが宝をもらえることになった。

おっさんはずっと独り身で身内がいないとのことだった。
だからこそ国王に掛け合うなんて真似ができたのだろう。
おっさんは1人は寂しいと言う。……俺も母に顔くらい見せたほうがいいかもしれない。
そういえばユーロにも身寄りがなかったな。
……これっていい巡り会わせではないだかろうか。
この人がユーロを養子にもらってくれることを俺は想像していた。
砂漠の女王様のところに行くという手もあるが、これはやめておこう。
あの女王の元にいて幸せを感じるかは、何と言うか個人差が大きい。
冒険が終わった後のそれぞれの人生。平和な世界での生活。
仲間たちは俺のつけた名前から元の名前に戻るのだ。
俺はここで思い出した。オルテガとはポカパマズさんのことだと。

509 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:57:09 ID:7ftfxckl0
ひと時の帰郷のあと本格的なオーブ探しが始まった。
レッドオーブは海賊のアジトにあった。
海賊の女のおかしらに「女が海賊をやるのはおかしい?」と聞かれた。
「うちではこんな子供が盗賊をやっている。」と答えておいた。
パープルオーブはジパングと言う国にあった。まるっきり昔の日本だ。
そうか俺はタイムスリップしていたのか! いや、昔でもヤマタノオロチはいない。
ブルーオーブは1人で入らなければならない神殿の奥、地球のへそにあった。
俺がとりに行った。無事に帰ってきたときはユーロは泣いて喜んだ。
グリーンオーブは廃墟にあった。確か夜には村人がいたようだが気のせいだろう。
ユーロはここでもちょっと泣いていた。もっとも泣きたいのは俺も一緒だ。

「ユーロお前ちょっと泣きすぎだぞ。」
「何だよ。さっきはエンあんちゃんだって泣きそうだったじゃないか。」
見られていた。
「……とにかく男は涙を見せないもんだ。泣いているとチャンスも見逃すぞ。」
俺の顔はしっかり見ていたようだが。泣き顔より笑顔のほうがいい。
以前は笑うと歯が欠けているのが見えてかなりナイスだった。今は歯が生えてきているが。
それに養子に出るにも泣く子より笑う子のほうがいいだろう。
あれから何度かアリアハンに立ち寄っている。ユーロもおっさんに懐いているようだ。
俺も母に顔を見せている。そういえば最近、実家に爺さんがいることを発見した。
「わかった。おいら泣かないよ!」
「そうだ。男が泣いていいのは財布を落としたときだけだぞ。」
俺のジョークは受けなかった。俺は顔で笑って心で泣いた。

510 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:58:11 ID:7ftfxckl0
そんな会話があったあと町を作りたいと言う老人に出会った。
町を作るには商人が必要であるという。
……これってまさにドルのやりたいことではなかろうか。
俺たちはドルをここに置いていくかを相談することにした。
「俺は反対だ。ここでドルが抜けると戦力的に大きなロスになる。」
「おいらもドル姉ちゃんとお別れするのは嫌だよ。」
ゲンとユーロは反対している。
「俺は……ドルの夢を応援してやりたい。」
「本当に、本当にいいの?」
「ああ、魔王退治だけがすべてじゃないさ。」
「でも……」
「魔王なんて俺たちが倒さなくても柱に小指をぶつけて急死するかもしれないぞ。」
「もう、そんなわけないじゃない!」
分からんぞ。奴がたまたまバリア床で体力を消耗しているときだったら、あるいは……
「とにかく自分のやりたいことを優先させろ。」
「……ありがとう。」
「みんなが幸せに暮らせる町を作れよ。」
「うん! お別れだけど、笑顔で送り出してね!」
「俺は泣くかもしれないけどな。」
「うれし泣きじゃないでしょうね。」
「違うよ。お前がパーティーから抜けるのは財布を落とすようなものだからな。」
空気が凍りついた。あれ俺ってヒャド使えたっけ?
「……そう、私は財布なのね。いいわ。財布は財布らしくお金のために生きてやる!」
ギャグが滑ったことで怒らせてしまったようだ。なんて笑いに貪欲な女だ。
……なんてな。俺に気の利いた台詞は似合わない。これでよかったのだ。
こうしてドルはパーティーから外れた。自由な町を作ると言う彼女の夢を実現させるために。

511 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:59:12 ID:7ftfxckl0
ドルの抜けた穴を埋めるべく、ルイーダの酒場で新たな仲間を加えることにした。
初めて酒場で仲間を募ったときビジネス上の付き合いだと思っていた。
だが、今ではそれ以上の存在になっている。それがいいことなのかは俺にはわからない。
仲間にしたのはポンドと名づけた男の僧侶だ。苦労人という感じがする。
なんとなくリアルの俺の親父を思い出す。親父は平凡なサラリーマンだった。
親父は俺が一回のトレードで自分の年収ほどの金を動かしていたことをどう思っていたのだろうか。
この新しい仲間を見て、そんなことを考えてしまった。

新しいパーティーでサマンオサというところに行き、ラーの鏡ついで変化の杖を手に入れた。
それが船乗りの骨、愛の思い出、ガイアの剣へ変わっていき最後にシルバーオーブにたどり着いた。
ポンドはいきなりレベルの高い戦いに参加することになったがよくやってくれている。
しかし、このパーティーには弱点がある。男ばかりで旅が楽しくないと言うことだ。
……それだけではなく、いろんな意味でドルの存在は大きかったということだろうか。
俺の感想にもいまひとつ面白みがない。

最後のオーブを探し世界中を回る途中、ドルの町に行ってみることにした。
はじめはただの草原であったその場所は見違えるほど立派な町になっていた。
しかし、この町は荒んでる。町の中には為政者への、ドルへの不満がたまっていた。
何とかドルと話をしようとしたが叶わなかった。仕方なくその日は宿に泊まることにした。
そして、夜が明けてしまった。

革命がおき一夜のうちにドルは牢屋の中に入れられていた。
あの日、船の上で語ってくれたドルの夢はこうして終わった。
夢は夜明けとともになくなるもの。俺はそんなつまらないことを考えていた。
「私、自分の夢をみんなに押し付けすぎたみたい。」
牢屋から出してやることはできた。だがドルはもうしばらくここで反省すると言う。
あるいは俺たちに自分の姿を見られたくなかったのかもしれない。
「……屋敷の椅子の後ろを調べてみて。」
別れ際ドルはそういい残した。椅子の後ろにはイエローオーブがあった。
ほかのオーブと同じはずなのにそれはひどく重く感じた。

512 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/02(火) 17:59:50 ID:7ftfxckl0
すべてのオーブがそろいラーミアと言うでかい鳥が出てきた。
こいつに乗っていけば魔王の城まで飛んでいける。
魔王さえ倒せばすべての問題は解決する。根拠はないがそんな気がする。
俺は元の世界に帰ることができるのではないだろうか。
ユーロは新しい親の元で幸せな生活を始めることになるだろう。
ゲンにとっても武闘家として魔王を倒す以上の名声はあるまい。
ポンドも僧侶として平和な世界と平穏な生活を望んでいる。
そしてドルも……俺が裏から手を回すことで牢屋から出られるはずだ。
世界を救った勇者の頼みとなればあの町の連中も断れないに違いない。

しかし、世の中そんなにうまくいかないものだ。
俺たちの希望の光は、つまらない理由でかき消されてしまった。
そう、呆れるほどつまらない理由で。

―下の巻に続く―

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/02(火) 19:24:10 ID:/jElPciTO
乙!
うまいなぁ……

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/02(火) 21:12:15 ID:hBNQR1cZ0
乙です。
ドルさんと語り合った日とか、なんかいいですね。
それと、ユーロさんの将来を本気で相談している主人公さんとか、ドルさんが倉庫の宝物を盗まないで王様に話を通してもらったり、いい感じです。

515 :案ずるより鉄拳制裁【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:35:09 ID:XHCbb8Co0
「つまり、魔法ってのは呪文に込められた力を引き出す技術の事だ。」
今、俺は就寝前の時間を使ってヘンリーから魔法の講義を受けている。

ここにやってきて一ヶ月が経った。
奴隷労働は辛い。何度も何度も心を壊されそうになった。
何度も何度も自ら命を絶つ事を考えた。
それでも、その度にサトチーとヘンリーに励まされて自分を保てている。

心を壊しそうになる度にサトチーが俺に語った。
―今日を生きて、明日も生きよう。
  君の死が君を知る人に与える悲しみは君が背負う悲しみよりも深い筈だから―



   そして俺は今日も生きている。



毎日毎日つるはしやスコップを振るって岩盤を掘り進め、
何度も何度も重たい石をトロッコで運ぶ。
時々ヘンリーとサボってる所をムチ男に見付かって鞭を喰らって
苦笑するサトチーにホイミで治してもらう。
最初は愕然とした壷も、今では慣れて普通に用がたせるようになった。
しかし、女の子にとってはキツイよな…アレ…

少しづつ体力もついたようで、筋肉が付いて体中が引き締まった気がする。
ビリーズブートキャンプよりも効果抜群。DOREIエクササイズSUGEEE!!
これを続ければ来年の夏には海岸の視線を独り占め?

絶対続けたくないけどね。

この生活で海水浴とか絶望的じゃん…

516 :案ずるより鉄拳制裁【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:39:00 ID:XHCbb8Co0
[【1】でアンカー忘れ…orz LOAD DATA >>487-492 >>496-500]

さて、この一ヶ月サトチーやヘンリー、奴隷仲間と色々な話をした。
二人の子供時代の話…サトチーの親父さんの話…
ヘンリーがラインハットという国の王子だったという話…
この建築現場の話…教団の話…

魔法の話…モンスターの話…



そして俺は理解してしまったんだ…
正しくはなんとなく理解していても信じたくなかったのだが…
俺が今いる場所は俺の世界とは別世界。





「嘘だろ?別の世界ったって…信じらんねえよ。」
「妖精の国が存在するんだから、他に世界があってもおかしくないさ。」

俺の言葉をあっさりと受け入れるサトチーと半信半疑のヘンリー。
そうか、俺の存在は『妖精の国』と同等のオカルトなのか…
俺の世界での妖精は、ごく一部の心と体が綺麗な男性にしか見えないってのに…

もし、ここを無事に出られたとして俺は家に帰れるのだろうか…
ヘンリーはここを出たら城に帰ると言う。
サトチーは親父さんの遺志を継いで旅をすると言う。
俺は…帰れるのか?

517 :案ずるより鉄拳制裁【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:40:13 ID:XHCbb8Co0
二人から魔法を教わるのも俺の大事な日課だ。
科学技術が通用しない。自動車もガスコンロもクーラーも電話もない世界。

タバコに火を点けるのも魔法が必要って事か…
こっちの世界にタバコがあるのかわからないし、タバコなんて吸える状況ではないが、
でも恐らく火打ち石みたいな物はあるんだろうな。マルメンライトはあるかな?
電子レンジがないのは痛いな。コンビニ弁当なんてのも存在しないだろうし。
そうだよな、"おべんとう"がそこらで手に入ったりする世界なんてないよな。

ともかくこっちで生きるには、こっちで発達している魔法技術を学ぶ必要がある。
魔法を学びたいという俺の申し出を二人は快く引き受けてくれた。



「呪文の言葉の意味を理解し、その過程を想像し、結果を導き出す。
 その過程を通らない魔法はただの言葉。何の効果も発揮しないんだ。」

なるほど、ベギラゴンやジゴスパークやマダンテという言葉は知っていても、
それだけで相手を全員デストロイしたり、汚物を消毒したりは不可能らしい。

そりゃそうだよな、言葉を発しただけで魔法の効果が発揮されちまったら、
『チャル"メラ"』とか『みや"ざき"』って言うだけで辺り一面カオスだし、
『ウホッ!い"いお"とこ』なんて言った瞬間、相手が爆死しちまう。

518 :案ずるより鉄拳制裁【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:41:13 ID:XHCbb8Co0
「例えば魔法の基本とも言える"メラ" あれは『メラ』という呪文の言葉自体に
 『ともしび』という意味がある。弱々しいが大炎の源になる火の力だ。
 火の意味を持つ言葉があると理解したら、どうすれば火が出るのかを考える。
 火を発生させるには何が必要か、その結果どのような火が発生するか、
 過程が繋がって結果を導き出した時、初めて魔法は効果を発揮するんだ。」

城の教育係の受け売りだけどな。と、照れくさそうに笑うヘンリー。


ふむ、言ってる事はなんとなく理解できた。
ある意味では俺の世界の科学にも似ているのかもしれない。
何でも出来るパソコンがあっても、起動方法がわからなければただの箱に過ぎない。
そうだよな、俺も初めてパソコンを接続した時はチンプンカンプンだったもんな。
サポセンの女の人に何度も電話しちゃってさ。
あぁ、でも魔法にはサポセンがないんだよな。自分で全部何とかするしかないのか。
俺がゆとり世代の人間だったら投げてるな。絶対。


「概念をちゃあんと理解できれば魔法なんてすぐに使えるようになるからな。
 親分直々に講義してやってるんだ、しっかりトレーニングしろよ。」

519 :案ずるより鉄拳制裁【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:42:46 ID:XHCbb8Co0
就寝前にヘンリーから魔法の理論や概念を学び、
昼の労働の合間にサトチーから実技を教わる。
「はい、それじゃあ今日もメラを使ってみようか。」

積み上げた石に木の板を立てかけただけの簡素な的。
俺はその的から離れた位置に立ち、掌を向けて集中する。


…考える…火の発生と成り立ちを…俺の掌の先が発火点に達する事を…


「 メラ!! 」





……返事がないただの不発のようだ。





「なんでだ?なんで魔法が出ない!?メラ!メラァ!!メルァァァ!!
 メラメラメラメラめがんてぇぇぇぇぇ!!!!」

「まあ落ち着いて。闇雲に叫んでも魔法は発動しないさ。」
サトチーが優しく微笑みながら俺を制する。
この一ヶ月、一度も魔法が成功していない…orz…

520 :案ずるより鉄拳制裁【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:43:28 ID:XHCbb8Co0
「う〜ん…メラでここまで苦戦するとなると根本の属性が違うのかな?」
「…ぞくせい?」
「うん、攻撃魔法はメラ系、ギラ系って具合に系統属性が分かれててね、
 その人自身が持つ系統属性が合わないと魔法は絶対に発動しないんだ。
 確かにメラは魔法の中で一番簡単に取得できる基本魔法って言われてる。
 でも、その人がメラ系の属性を持たない場合は、どれだけ魔力があっても
 メラは絶対に使えるようにはならないんだ。」
「そうか…じゃあ、自分に合う系統を探せばいいんだな?よし!
 うおおおぉぉ!!!メドローアアアァァ!!!!」
「でも、稀に属性系統を全く持たないで生まれる人もいるんだよね。
 そういう人達は系統に限らず魔法そのものが使えない。」


…当然ではあるが、メドローアは発動しない…orzorz


「そう落ち込まないで。僕だって基本魔法のメラが使えなかったのに、
 バギ系はあっさり使えるようになったんだから。」
「……(軽く涙目)…」
「ヘンリーに色んな呪文を教われば、そのうち自分に合う系統が見付かるよ。
 今は魔力を高める訓練に集中しよう。ぼんやりしてるとまたムチ男に見付かるよ。」

涙目のまま瞑想に入る…

目を瞑り、精神を集中する…その時、いつもとは違う喧騒が俺の耳に入ってきた。

イサミ  LV 1
職業:建設作業員
HP:23/23
MP:3/3
装備:E奴隷の服

521 :案ずるより鉄拳制裁【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/03(水) 00:46:51 ID:XHCbb8Co0
第二話の前半部分まで投下です。

イサミのHP・MPが上昇してるのは奴隷労働とトレーニングの効果。
戦闘をしていないのでLVは保留。種を使ったような感じです。

522 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 16:07:06 ID:VO5kLJIgO
>>520
乙!読みやすくてイイヨイイヨ‐(^_^)

523 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 18:27:21 ID:OzoWbGuh0
>>515-521
投下乙。サトチーのセリフとか重いな…。
でも全体的な雰囲気が楽しいから面白いね。
なんかイサミに妙に親近感が沸いてくる。>>517後半の連想アホスw

524 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/03(水) 23:56:31 ID:UMiyhHZm0
オモスレ〜〜
○○バーグの話はゲームシナリオの中でも異質なエピソードだよなぁ
結構子供のときはショックだった

525 :案ずるより鉄拳制裁【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:28:52 ID:FqCqxEk60
LOAD DATA 第二話前半>>515-520

「…また何か事故でもあったのか?」
「怪我人が出てるといけない。行ってみよう。」

この現場において事故は日常茶飯事だ。
作業の安全対策などは当然皆無。奴隷達は全員満身創痍で注意力も散漫。
落盤・崩落・落下…これまでにも様々な事故があった。
奴隷達の中で唯一、回復魔法が使えるサトチーは事故の度に怪我人を救ってきた。
どんな酷い怪我でも彼がいれば心配する事はない。

今回もきっと…




「な…」

現場に着いた俺達は想像とは違う光景に言葉を失った。


ケタケタと笑いながら鞭を振るい、動けない奴隷を痛めつける二人のムチ男。
それを泣きながら止めようとする一人の女性。
それもまた日常茶飯事の光景。

だが、いつもと違うのは、痛めつけられている奴隷…



「ヘンリー!!」

526 :案ずるより鉄拳制裁【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:30:53 ID:FqCqxEk60
サトチーがムチ男達を押しのけ、痛めつけられているヘンリーを助け起こす。

酷い…
ヘンリーは全身を滅多打ちにされ、体中が赤…を通り越して赤黒く腫れ上がっており、
容赦ない鞭で所々皮膚が裂け、痛々しい傷口から赤い物が見える。
意識も既にないようで、サトチーが揺さぶってもピクリとも動かない。

まさか…


でも一体何があった?
俺の知っている限り、ヘンリーは立ち回りがとても巧い。
要領が良いと言うべきか…サボっていても鞭で叩かれる前にその場を免れ、
他の奴隷が鞭で痛めつけられている時には得意の弁論で切り抜ける。

その彼がなぜ?





「ヘンリー!!ヘンリー!!!」
「サトチー落ち着け!早く回復魔法を!」
俺の声でハッと我に返ったサトチーの手から癒しの魔力が発せられる。
何度も死に瀕した人たちを救ってきた温かな光。
その光に触れた体から傷や痣が消えてゆく。
それでもヘンリーはまだ目を覚まさない…

まさか…遅かった?

527 :案ずるより鉄拳制裁【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:33:11 ID:FqCqxEk60
「…ヘンリー…ヘンリー…」
うわ言のように彼の名を呟き続けるサトチー。
俺にはその光景を黙って見ている事しか出来ない。


「…ん…」


ヘンリーのまぶたがゆっくりと持ち上がる。

よかった、気が付いた。
「…ああ…サトチー……イサミもいるのか……へへ…格好悪いな…俺…
 …コテンパンにやられちまったよ…」
「まだ喋っちゃダメだ!黙ってるんだ!」
「…だってさ…アイツ等…よってたかって女の人を…酷いじゃねえか…
 …女の人を助けるのは……親分の役目だろ?」

俺達の後ろからいやらしい笑い声が浮かぶ。
「ヒャヒャヒャ…奴隷の分際で歯向かうからそうなるんだよ。
 お前等奴隷は家畜なんだ。飼い主に逆らう家畜は処分されて当然なんだよ。」
ムチ男達が笑いながら俺達に言いのける。

家畜?処分?許せない…

一瞬で頭に血が上って沸点に達する。

「ん?なんだ?その目は。お前も痛い目見たいのか?」

過去にこれほどの怒りの感情を自覚した事があるだろうか。

528 :案ずるより鉄拳制裁【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:33:55 ID:FqCqxEk60
「イサミ!!」
ムチ男に飛び掛ろうとしたその時、俺の背後から不意に声がかかる。

何で止めるんだよ…サトチー。

「ヒャハハハ…お前はよくわかってるじゃねえか。止めてやって正解だ。」
「臆病で卑屈な家畜じゃねえと長生きできねえもんなあ。ヒャハハハ…」

「サトチー…俺、我慢できねえ。家畜として生き延びるくらいなら、ここで人として…」
「イサミ…君は間違ってるよ。」
俯いたままのサトチーが俺に静かに語りかける。

間違ってる…何を…?

今日を生きて明日を生きる…って、プライドを捨てて死んだように生きる事なのか?

「僕達は…人として死ぬ事も、家畜として生きる事もない…」
サトチーは顔をあげ、凛とした眼光をムチ男に向ける。

それは…つまり…



「僕(俺)達は人として今日を生きる!!」



俺達の叫びは見事にハモり、二人同時にムチ男に飛び掛った。

529 :案ずるより鉄拳制裁【11】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:38:15 ID:FqCqxEk60
ムチ男が怒声を上げて俺に鞭を振るう。

右肩から一直線に衝撃が走る…痛い…が、俺達の突進は止まらない。
サトチーが片方のムチ男に殴りかかる。
俺も残ったムチ男に掴みかかり、一心に殴りつける。
接近しちまえば鞭も怖くない。ずっと俺のターン。

お前がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ!


「ケエェェェ!!」
突然の衝撃と胃からこみ上げる不快感。
ムチ男の蹴りが俺の腹部にヒットし、相手を掴んでいた俺の手が緩む。

しまった、距離をとられた。

そう認識した時には、相手は既にムチを振りかざしていた。
ヤバイ!痛恨直撃コースだ!!

「バギ!!」

覚悟を決めた瞬間、ムチ男が見えない何かに吹き飛ばされた。
俺に向かっていた鞭は軌道を変え、明後日の方向に逸れる。
今のはサトチーの魔法か。助かった。

「一気に決めろ!もう僕には魔力が残ってない!」
もう一体と組み合いながら、サトチーが声を上げる。

一気に決める…
しかし、距離がありすぎる…

魔法を…

530 :案ずるより鉄拳制裁【12】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:39:30 ID:FqCqxEk60
「ヒャッ!小賢しいマネをしやがって。お前の魔力も吸い尽くしてやるぜ。」
起き上がったムチ男が奇妙に体をくねらせる。


くねくねくねくね…


何だ?あの動き…
…ミツメテハイクナイ…


脳が危険を認識した時、俺の中には妙な空虚感が漂っていた。
何だ?何をされた?

「ヒャヒャヒャ…お前の魔力はあらかた吸い尽くしてやったぜ。後は…
 じっくりとムチでいたぶって屠殺処分してやらあぁ!!」

遠い間合いからムチ男が鞭を振る。
完全に俺の間合いの外。近付こうにも、唸りを上げる鞭の連撃がそれを許さない。

鞭が吼える、叫ぶ、狂乱する。
俺の前進を阻むように、一撃で倒れないように鞭が俺の体を刻む。

531 :案ずるより鉄拳制裁【13】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:40:13 ID:FqCqxEk60
近付かなきゃ…

近付けない…

ならばここから攻撃を…

魔法…

俺に使えるのか…

でも魔力が…

使わなきゃ…

使わなきゃ死ぬ…

考える…

ヤツをぶちのめす一撃…

ソレの在り方…








無意識に、だが自然に俺の拳が天を向く。

532 :案ずるより鉄拳制裁【14】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:45:49 ID:FqCqxEk60
「ふん。魔力も残ってないクセにハッタリかましやがって。
 これで屠殺処分完了だあぁぁ!!!」

ヤツをぶちのめすのは、俺達が毎日転がしてきたアレだ。

そしてソレは…


す ぐ ソ コ に 既 に 在 る ! ! !


俺の拳が勢いよく地面に叩き付けられる。

大きく揺らぐ視界 轟音と震動に支配された空間
ヤツの真上の岩盤が崩れ、岩石がヤツの頭上に降り注ぐ。


「ヒ……ヒャアアアアァァァァ!!!!」


  岩 石 落 と し


飛び散る礫と舞い上がる砂煙が収まった時、ムチ男は岩の下でのびていた。

鉄拳制裁完了

533 :案ずるより鉄拳制裁【15】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:47:29 ID:FqCqxEk60
イサミ  LV 5
職業:建設作業員
HP:4/38
MP:0/6
装備:E奴隷の服

呪文・特技:岩石落とし(未完成)

534 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/04(木) 00:54:32 ID:FqCqxEk60
第二話はここまでです。

イサミの岩石落としは、岩石を放り投げるオリジナルと違い、
相手の上に存在する岩盤を落下させる未完成品です。

後先考えないと、落盤で味方まで巻き込まれて大変な事になります。


535 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 02:03:22 ID:ZLOXdcZ1O
乙!ハラハラドキドキして読んだよー。ペースが早いけど大丈夫か?

536 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 03:56:36 ID:TgWoUfgd0
ペース速い方が好きな自分はサクサク読めるのは嬉しい

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 06:21:34 ID:xjHHOECYO
乙!朝から興奮した。
イサミもヘンリーもキャラが立ってるしサトチーも一言一言が深い。
先が楽しみ。

538 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 07:12:08 ID:U2fdb30KO
うおおお! 朝から良いもん見せてもらった!
サクサク読めるのに内容もちゃんとあってすごいな。
ずっと俺のターンって、ふざけてんのかと思うのにカッコいい。

539 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/04(木) 11:11:30 ID:lGVpm/q20
かっこいいっ!
「人として今日を生きるっ!」
惚れたぜ。

540 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:46:00 ID:YmXtNuKY0
デスパレスで暴力と汚物に塗れて、のた打ち回っているアリーナを現代人が救出するという内容の
原案があります。SS職人の手でSS化していただければ幸甚です。こちらからも、アリーナSSを御礼に
投稿いたします。
SSでは、宿屋で現代人が目覚めるのは中盤です。序盤は、ドラクエ世界帰りの人から、主人公は
呪文を主に学びます。戦士タイプゆえにジエタイか何かじゃないのが悔やまれるとか言われるものの、
実は賢者タイプです。序盤から終盤まで、アリーナはデスパレスで同時進行でのたうちまわります。
主人公の夢の中で、アリーナは助けを求めます。あとは回想シーン(もしあれば)以外はデスパレスで苦悶するのみ。
序盤は、ガーデンブルクでアリーナが人質に残るところから。盗難事件の黒幕はデスピ子飼いのマネマネ。
牢番は、デスピサロから直接もモシャスしたマネマネに三つ指ついて挨拶して、牢の鍵を開ける。
移送だということで、アリーナを縛って連行。牢の近くの天窓がなぜか開放してあって、キメラの翼で移動。
着いた先がデスパレス前で、びびるアリーナ。彼女の地獄の刻が始まった。

541 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:48:03 ID:YmXtNuKY0
デスピの動機は、ロザリーヒルにサントハイム領内からクズ貧民が多く移動してきたため。
16世紀以降のイギリスの貧乏人に対する管理を鑑みれば、状況はだいたい掴んでもらえると思う。
囀りの蜜に関するイベントとは違い、完全に怨恨。敵さんは、じわじわ嬲り衰弱させる所存。
アリーナは、領内演習や要所テンペ奪還等を経た戦士。オテンバとかと少し違う元気な姫。
エンドールの大会でデスピを少し見た事があって、傾奇者みたいなところが魅力で好感を持っていた。
大会では魔物の懐柔融和を模索するエンドール王をも無視して、ベロリンマンを惨○するという所業を
しでかしている。「北斗の拳」のサザンクロス編のクラブを思い出すと、状況はわかり易いと思う。
アリーナは、ベロリンマンのことが原因かと思って、なんとかデスピに赦しを乞おうとする。
デスピ的に、アリーナの性器はきしょいだけ。でも「花の慶次」みたいな感じで打ち解けると、交尾。
それがスクワット1回分の動きで、ヌヴヌヴとデスピの剛直がアリーナに入っていく。デスピが未曾有の生物なのが確かになる。
交尾をしてからは次第に、アリーナはデスピの手にかかるなら・・・・・という心境になる。

542 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:50:40 ID:YmXtNuKY0
「サントハイムの住人を全部収容している」「本当はもう消滅した」などと複数の贋情報でアリーナの心を
まいらせるとか、色々なシーンがあると萌えます。肉体的には、萌えるものほど限界はすぐ来ますからね。
逆エビで砂袋を背中に括りつけて、宙吊りにしてヨーヨーみたいに動かして体中をほぐすとか、
8方向からアリーナを押し合って蹴鞠ルールみたいにして遊ぶとか、ベビーサタンが人間ブランコにするとか。
垢だらけで、乾いた汗や糞尿で臭い体臭、擦過傷も痣も筋疲労もフルコースでヨレヨレの肉体。
デスピにだけは「(アリーナが“艶姿”になって)嬉しい?」などと懐く。宿命を解している男女。
救い出すべき姫だが、病弱薄命女とそれを介抱する若い男の組み合わせよりも萌える何かがある。
延命のための生薬や薬湯薬酒、光合成をするサンオイルのようなファンタジーな外用薬、小麦粉の粥。
「しずめるのかな」と半信半疑で浸かる温泉療法の泉、連行状態での散歩。もしくは、直々の拷虐。
デスピとアリーナの日々。終盤では、氏寸前の責めが慢性的になることで救出物語は手に汗握る展開に。
アリーナヴルSS。

543 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:52:20 ID:YmXtNuKY0
囀りの蜜のイベントだけど、文字盤とか木簡とか、読唇術とか何でも手段はありそうなもんだが。
ハンドベルで、モールス信号の原型になったような方法でいくとか。
なぜ、声じゃなきゃダメだったのか?
識字率が極めて低い国って、凄いな。
アリーナ、阿弥陀籤は知ってるだろうけど絵じゃなきゃわかんないだろうな。
「この文字は何なの・・・・・・?」不安げに訊く。ピサロも、デスピナイト3匹+メタルスライム1匹も
読んであげない。静止する時間。首を竦めて小刻みに震えるアリーナ。

背中もこしまわりも下腹部もケツも太腿も全面、鞭の痕。そして発熱する熱い女体。
薬草で揉み解す。
魔物の餌としても通じる麦飯や黒パン、琴欧州も大好きな主食主菜としてのヨーグルト。
蜂蜜とレモン添加の白ワインやブランデー。牢務怪物やデスピが餌をあげてるから、
逆エビや空気イス監禁をも高Lvオテンバヒメにはフィットネス代わり。
高手小手の姿勢で自分の脚で立つか上半身の関節を地獄にするかという監禁方法で夜通し・・・
ということもたまにしかしないし。

544 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:53:54 ID:YmXtNuKY0
アリーナVSデスピってどの段階が一番いけるのかな。
エンドールの段階じゃ尚早過ぎるし、勇者たちと合流してからじゃ単独行動なんか
陸の女護ヶ島しか機会が無いし。デスパレスの牢か隠れダンジョンみたいなところの牢じゃ、
とても鉄のツメと剣で対戦とか起き得ない。
脚もどこもボロボロのアリーナに逃げろと言って、
殆ど移動もできないのを観て堪能してから回収に行くとか
素手のアリーナを鞘や棍棒でじわじわ追い詰めるとか、
セクハラモードから主に指への関節技に移行とかになるのが関の山。
悩むよな。
原哲夫のマンガみたいに戦うとかって、
敵の手中じゃ無理だし、自由意志に基づく愛も起きないだろう。
アリーナは痣だらけでボロ着の半裸で、マッチョなデスピがクキュクキュに攻撃等をしまくる、
これが意外に、しっくりきてしまう。

545 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:55:35 ID:YmXtNuKY0
アリーナ管理隊のガーデンブルク産兵士が50代のオバチャンだったら嫌だな。
デスピの腕や腹を枕にして寝入る希少な日より幸せそうなアリーナ、これは
百合牝が欠かせない。そんなに太くない腕、常識的な規格の体格。
上級モンスターやデスピの暴虐のどん底で蠢いているアリーナには安らぎと情愛だと思うよ。
存在自体が。
だから、牝兵が醜かったら萌えどころが激減する。要注意だぞこの点は。
大事な注意点は他にもあるよ。
アリーナに対するイヂメが超回復が顕著になるような責めばっかしなのは、ドラクエ好きの女がマネできるようにだよ。
手伝いが欲しければ、いつでも言ってよ。行くからさ。

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 12:56:42 ID:YmXtNuKY0
現代人がこのスレみたいな状況になったら、♂は浮浪無頼の基地外、♀は女奴隷(村落や街の公共物)でENDだろうな。
現代人の体格とか免疫注射とか科学的思考や知識とかじゃ、克服し難い困難が目白押し。
ここのSSみたいな展開になったら、まさひろのGBサガ小説みたいなオチを予測すべき。

同人デブス、ウエストラインから膝のすぐ上まで、鞭で可愛い色にしてあげるから調教哀願しようよ。
SS形式でもいいぞ。
高手小手がデフォだけど、ソフトレザー使うから安心しようね。壁無し空気イスをさせて、肩をユサユサしてあげるよ。姿勢が崩れたら、生ゴミを食わせる。
顔に自信が無くても、髪の毛を露出する型の全頭マスクがあるから安心しようね。
後ろ手&足首束ねて、ごろごろ転がしてあげるよ。8畳間を10往復ぐらい。
季節手当てとしてポカリスエットを1リットル半、ストローの使用を許可しつつ飲ませるよ。

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:04:51 ID:YmXtNuKY0
それからは、物置で待機。緊縛と垂れ流しと暑さで、本物の女囚になるよヲタク女。
俺は鉄則として、女の首には輪や縄等を付けないし、浴槽を遊び道具にしないから、更に安心しろ。
遊ぶ前には、打ち合わせも1日以上を割いて、しっかりやる。
閉じ込める系も、放置ではない。有線式の赤外線監視カメラと有線式の音声監視機器で、見守る用意がある。
暴れて頭を打ったりしないか心配だからな。
平素から、今日は大災害やチャソコロ戦闘団が50%の日だというぐらいの、手中の女を守る意識。それが俺には有ります。
ドラクエファンの女、調教哀願をしようよ。濃密な時間を過ごして、可愛い姿にしてあげるからさ。

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:06:36 ID:YmXtNuKY0
「ピサロぉ、これとってよぉぉ」痣だらけの臭い体で、アリーナは鉄枷をじゃらつかせた。
錆びた枷が喰い込むリストが、膿んでいる。「かゆいの」。
つかつかとピサロは歩み寄り、ボロボロの汚れた麻の服に覆われたアリーナのお腹を蹴った。
黙るだけじゃない。
うつむいて、苦しそうにしているが、透明ゲロを一滴も垂らさない。
ピサロは高度な魔法金属の靴の底面積を全部使って、
アリーナの横隔膜とピサロの足刀が平行になるように、そして押し込むように蹴ったのだ。
腰の高さから伸びる短い鎖は、アリーナが床に倒れこむことを許さず、彼女の肩を苛んだ。
この鎖のせいで、アリーナはL字型の体勢で眠らざるを得ない。
用便は、足で木桶を引き寄せて、中腰でするのだ。
「ロザリーはなー、お前と違って生理が止まったりしないんだよカス」
処遇の違いが、健康の違いになっているのだ。
そして、木綿のフンドシのようなものをピサロは取り出した。その臭さは、月のものの臭いだ。
「これをクチで洗え。3週間ぐらいかけてやれれば良いよ。わかったな?」
「どうしてこんなことするの(泣)?」

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:07:54 ID:YmXtNuKY0
ピサロはアリーナの胸倉を掴むと、思いっきり立たせた。鎖がピンッと張る。
アリーナの腕が渦巻鉛筆のような捻じられ方をする。
枷は、彼女を後ろ手に固定するようには着けられていない。
胸倉が解放されて、顔を歪ませつつゆっくり座ろうとしているアリーナ。
アリーナが動ける範囲に、木桶の臭い物を垂らす。アリーナが中腰の姿勢で悔しそうにしている。
別の木桶から汚い水を、汚物溜りに流す。
「臭いよー」絞り出す様な高い声で泣き出すアリーナ。
汚物の木桶は、内側に乾いた汚物がこびりついているのだが、
それも生理用品と同じ期限の間に新品同様にしろと言う。
でも、木桶はアリーナのオートミールや飲料水を入れるものにするだけだから、
無理だったらしなくてもいいってさ。
汚物溜りが怖くて中腰。でも、いつまでも続かないし、麻のソックスで包んでいる足はもうどっぷりだし、
麻の服を腰まで捲り上げて下半身マッパになって、
シリを床に着けた。「あッ痛ゥッ!!」玉砂利や馬術道具で嬲った痕に、汚物が滲みる。
ピサロは後屈立ちになってアリーナを眺めているが・・・・・・。

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:09:18 ID:YmXtNuKY0
もうアリーナには汚物の飛沫を足で跳ねる元気も、ない。いいことしよう、などと誘うこともない。
性器を汚物で大変なことにしながら、歯をガチガチ鳴らして洟をすすり上げている。
頑張れアリーナ、毒消し草の免疫がついて人の世への無駄な執着という苦しみが丸4日の苦悶の中に消え、
苦悶の果てに安楽が体の奥深くから湧き上がってくるまで、
そんなに日は無いからな。臭いから食欲も挫かれ、安楽に近づくアリーナ。
アリーナと遊ぶために、何種類かの頭骨を持ってきているピサロは、気が変わり、
「クソなんかね、啜ったらいいんだよ」と優しく語り掛ける。
赤毛を虱だらけにして首を横に振るアリーナに、小袋から蠅を20匹ぐらい放す。
緩慢な動作でハエから逃げるように首を振るアリーナ・・・・・・。牢に棲む肉食の蟲がハエを平らげるまで、それは続く。

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:10:04 ID:XFotTZSu0
スルー推奨

552 :アリーナが可哀想なので、衛生責めは無しにしますね:2007/10/05(金) 13:11:40 ID:YmXtNuKY0
後ろ手で壁にもたれているアリーナ。やや疲れた様子だが、一応は直立している。
彼女の両手首をつなぐ錠前付きの鎖は、60cmほどの手摺と壁の間を通っている。
つまり、アリーナは自分の筋骨で直立していなければ、肩の関節や腕の筋が急激に悲鳴をあげる。
「おい垂れ流し女。何よごしてんだよ?」アリーナの70時間を労うのは、10交替目の荒くれだった。
帯剣したピサロが来ていないということは、別の「短い手摺」に移される心配は無いわけだ。
膝が着かない中腰という程良い高さの手摺、運動器具の鉄棒のように壁ではないところに設けた手摺、
床に足枷がついているところ、アリーナの身長より高いところにある手摺。
「伝えてくださる?あの傾奇者に。なんで人間を恨むのか」。9シフト目のモンスターは去り際に、
木簡にアリーナの請願を記した。「ちょっ(焦)!」それを見せられたアリーナ。破顔する怪物5匹。
木簡には「玉門が痒い」「腰巻のネチョネチョには慣れた」「腕痛い。虎男の肉棒が支柱にできたら」と記されていた。
「なんだこの姐ちゃん。ピサロ様を土人呼ばわりしてるぞ!?」「森の民は動物じゃありませんよ、姫」。
妄語両舌で、アリーナの憔悴した肉体に、恐怖と挫けそうな気持ちがのしかかる。うつむく。膝が震え出す。

「アリーナ」を貴女の御芳名に変換してプリントアウトすると楽しいですよ。

553 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:26:34 ID:fehCZOW/O
見つけた支援

554 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 13:37:10 ID:fehCZOW/O
何だ支援して損した

555 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 14:31:58 ID:0t7B21Q90
妄想を吐露するスレはここでつか?
それなりの文章力はあると思うんだから、もうすこしだけ、きれいな話にしてくれるとありがたいのだが。

556 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 14:38:31 ID:94CfT0hN0
何処の病院から逃げてきた奴が書き込んだんだろ

557 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/05(金) 17:03:37 ID:qibKE+QeO
熱意に負けた俺が希望のSS書いてやるよ

うおのめ「ここはどこだ?」

〜中略〜

うおのめ「助けにきたぞ」
アリーナ「でかした」

〜完〜

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