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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

360 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:37:45 ID:M221zl7u0
投下は終了です。
今回はさるの邪魔が無くてよかったです。

>>344
まとめ乙です!
いつもまとめサイトには色々とお世話になってます。
>>346
携帯まとめ乙です!GJ!
>>353
サスケ可愛いよサスケ(*´∀`*)

361 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 18:12:00 ID:9KRULlPFO
(´・ω・`)   n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(

362 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 20:52:26 ID:v1K+2esBO
>>360さん乙!いいところで区切りやがって(笑)wktkで待っている

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/26(土) 19:09:30 ID:ryChdz9RO
保守

364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 00:59:19 ID:Ibx7AMqc0
久しぶりに来たが、4の人の完結してたんだな…本当に遅ればせながら面白いSSをありがとう、そしてお疲れ様です。
あれ、最後に主人公はどうなったんだ?死んじゃったのか?

365 :俺王 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:26:20 ID:/bh2DbrV0
前回までのあらすじ>>319-323

「あああああああああ! そうだよ、銅の剣はスーファミじゃねえか!」

 そんなわけでこんにちは。俺です。
 俺は今、ガライの町に来ています。
 いきなりで申し訳ありませんが、とんでもない勘違いをしていました。
 ガライの町にある鍵を使って入る建物内。そこに宝箱が三つあるのは皆さんご存知のことと思います。
 約600G、銅の剣、たいまつが入ってると思って来たわけですが…… S F C 版 と 勘 違 い 。
 中には10G、薬草、たいまつの3つ。……鍵一個と引き換えと考えるとどう考えても損だよなあ。
 仕方ないのでさっさと建物を出る。
 唖然としている宝箱の持ち主らしき親父はスルー。
 私の宝箱が……と呟いてるのは気のせい気のせい。

 この建物内に入る=ガライの墓で銀の竪琴を取りに行く、なんだけど今の俺は無理。
 棍棒と皮の服装備の俺に過度な期待はしないように。

 ともあれ、目的の一つは果たした。
 残る目的はある剣士の捜索。

「……って簡単に見つかったよ」
 武器屋の隣に、目的の剣士はいた。
 にしても、何と声をかけたらいいのか。
 すいません、ちょっとお時間よろしいですか。……これじゃキャッチだな。
 こんにちは! 竜王を斃しに行く途中なんですけど、どうやって斃せばいいのか教えてくださいm(_ _)m
 ……どこの厨だ。
 調べたけどわかりませんでした。

366 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:27:05 ID:/bh2DbrV0
「俺に何か用か?」
「うぉう! 脅かすな!!」
 どう声をかけるべきか俺が迷っていたら剣士から声をかけてくれました。

367 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:27:51 ID:/bh2DbrV0
「ええと……人違いだったら申し訳ない、みやおうさん?」
「いかにも。俺はみやおうだが――」
 ファミコン神拳110番創成期の一人、ミヤ王。
 平成生まれのお子様達にはわからないだろう。詳しくはググれ。

「ワケあってあんたを探してた」
「俺を? 何のためにだ?」
「竜王を斃すために、あんたら――ゆうてい、みやおう、キムこうの力を貸して欲しい」
「なにい?」
「俺の仲間になってくれ」
 ファミコン神拳110番のメンバーである堀井雄二、宮岡寛はドラクエの製作に関わっていた。
 彼らがドラクエに自己を投影させたのかはわからない。
 十中八九お遊びだろうが。
 ともあれ、ドラクエ製作陣が仲間に加えておいて損はない。たとえ別物であってもだ。

「冗談ではないようだな。……話を聞かせてもらおうか」

 ・俺が異世界から来たこと。
 ・竜王を斃すことしか俺が元の世界に戻る可能性がないこと。
 ・俺の世界ではこの世界は創作物であること。

 ミヤ王に語ったことを今北産業用にまとめておく。
 創作物と表現したのはこの世界ではゲーム云々で説明するよりも手っ取り早いと判断してのことだ。
 ゲームとはなんだと聞かれても困るしな。

「嘘ではないようだな」
 黙って俺の話を聞き終えたミヤ王は、じっくりと考え込んでから口を開いた。
『私は異世界から来た人間です、元の世界に帰るには金正日を斃すしか方法はありません。一緒に北朝鮮を攻めましょう』
 なんて言われたら正気を疑うだろ?
 誰だってそーなる。俺もそーなる。
 しかし、ミヤ王は信じてくれたようだ。
 流石はファミコン神拳110番。

368 :俺王 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:28:47 ID:/bh2DbrV0
「ゆうていとキムこうの居場所も知っていると言ったな」
「ああ。ゆうていはマイラ、キムこうはリムルダールにいる」
「間違いはないな?」
 真面目な顔で聞くミヤ王に頷いてみせる。
 ミヤ王がガライの町にいたように他の2人もそれぞれの町にいるはずだ。……確証はないけど。

「竜王を斃す斃さないは俺一人では決められん。二人と合流してからになるが……」
「……ま、リムルダールまでの仲間ってことでもいいさ」
 ここにいる「みやおう」とファミコン神拳の「ミヤ王」は別人。
 だが、現実のミヤ王をモチーフとしている以上、決して見捨てるはずがない。
 3人揃った時は竜王打倒に力を貸してくれるはずだ。

「こっちは実戦慣れしてないんで色々と迷惑かけると思うがよろしく頼む」
 そう言うと、ミヤ王は男らしい笑みを浮かべて、気にするなと言ってくれた。
 いい奴だ。
 ミヤ王になら掘られてもいい。
 実際にそうなったら全力で貞操を守るが。

「マイラにゆうていがいるんだったな」
「ああ。明日、マイラを目指そう」
「今からでもかまわないぞ」
「俺がかまうんだよ。ラダトームから全力疾走はしんどいわ」

 ともあれ、こうしてミヤ王が仲間になった。

ミヤ王のステータス
攻撃力:あたたたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたたっ

369 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 01:33:33 ID:cwiUr2oBO
支援します

370 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:34:48 ID:/bh2DbrV0
投下終了ですが…あああ、どうしてこうミスが多いんだ。
もう自分が嫌になる。
俺なんてハッサンに掘られちゃえばいいんだ。

というわけで訂正です
>>365-366
二つで一つのレスとして読んでください。
>>366-367
×特攻の俺
○俺王



>>344-345
お世話になってます。
今回も本当すいません。

>>346
乙であります。
出先で読めるのはありがたいです。

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 02:05:26 ID:IzksAbqi0

オサーンの俺にはググルらなくとも全てが手に取るように分かるw

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 08:43:18 ID:uKDoWz5E0
ファミコン神拳的パラメータ表示吹いたw

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 12:46:56 ID:1O1uChZSO
分からない俺は間違いなくゆとり。ともあれ乙

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 15:00:59 ID:+EasbWRT0
乙です

メタルサーガ鋼の季節をプレイして
ミヤ王は過去の人なんだなぁと寂しく思った…

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/28(月) 19:58:16 ID:rkQPRYtyO
まともサイト読み返したら、隙間風氏の続きが気になって仕方ない
あのぶっ飛びっぷりがたまらんW

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 02:35:08 ID:0rKudwBk0
hossyu

377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 20:09:08 ID:LmwZfsfmO
スレ違いな話しになっちゃうけど
>>341 のバトロア面白いね!個人的にはドラクエ5の子ども達とバッツの絡みが良かった!
あれはリレー?このスレもリレーの話し出てましたが職人さん頑張って!


378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/30(水) 23:20:20 ID:nBRISody0
田中と鈴木はどうなった!?

379 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/31(木) 16:45:50 ID:KSoMkPaWO


380 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:13:03 ID:3/VUBAzF0
「うあああああああ!!」
 アレフは突然大きな叫び声をあげた。天をつんざく程の大きな叫び。
 その叫びは今まで己を捕らえていたグレッグの腕をほどき、マリアににじり寄る狼男たちの歩みを止めた。
「何事だグレッグ!」
 緑肉――幻術師は慌てた様子で部下の名を呼ぶ。
 その方向には部下とその場にうずくまる少年の姿があった。
 両肩を抱き、震え、その目はどこか虚を見つめている。

(……俺は、俺は……マリアさんを守れなかった……マリアさんが倒れたのは、俺が弱いからだ!)
 アレフは心の中で己に叱咤を浴びせかける。
(さっきの俺はただ逃げ回ってただけじゃないか! マリアさんを守ろうって! 強くなろうって! そう誓ったじゃないか!)
 肩を抱く腕に力が入る。爪が肌を圧迫し、血が滲んでくる。
(神様だって、俺に力をくれた!)
 一瞬思考が止まる。
 アレフは気づいた。自分にはまだマリアを守れる力があるということに。
(……力……そうだ、俺には、あるんだ……あの呪文が……)
 肩から手を放し、ゆっくり立ち上がる。
 数度瞬きをする。すると先程まで虚を見つめていたその目は元の生気ある輝きを取り戻した。
 幻術師は先程とは打って変わった様子のアレフを怪しんだ。
「グレーッグ!」
 幻術師が叫ぶ。その声により正気を取り戻したグレッグは、アレフをもう一度捕らえるため腕を伸ばした。
「チッ!」
 アレフは向かってくるグレッグの方へとその体を向け、真っ直ぐ彼を見つめた。口を引き締める。
(……神様が俺にくれた力、それは――)

「ドラゴラム!」

381 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:14:22 ID:3/VUBAzF0

 グレッグの腕がアレフを捕らえた瞬間、彼から放たれる光によってグレッグは弾き飛ばされた。
 光、そして大気はそのままアレフの周りを囲むように渦巻く。
 ごうと渦巻くそれは、まるで昇竜のように天高くへと向かっているように見えた。
「ぐっ!」
「な、なにが起きた!?」
 幻術師は言い知れぬ恐怖にその肉に包まれた顔を引きつらせた。
 狼男たちもアレフから感じる威圧感に身を強張らせ、その場を動けないでいる。
(……ア、レフ……)
 マリアは薄れゆく意識の中、アレフを見た。
 そこには以前の力ない少年の姿ではなく、強大な竜の姿があった。


「なんだこいつはッ! お前たち、かかれ、かかれッ!」
 突然目の前に現れたドラゴンに肝を潰し、幻術師は慌てて部下に攻撃するよう命令した。
 しかし狼男たちは飛びかからない。ドラゴンの持つ力に本能から怯えているからだ。
 緑色の身体と金の瞳を持ったドラゴン――アレフは、マリアの元へと向かった。
 ズシン、と一歩進む度に大気が揺れる。
『これがドラゴラム……竜に変身する呪文なのか……』
 アレフは力に飲まれることもなく、はっきりとした意識を持っていた。
「グォォオオオオオ!!」
 天に向かってアレフは雄叫びをあげた。己に活を入れるよう、勇気を出すように。
 すると狼男たちは我を取り戻したのか、一目散に森の方へと逃げ出していく。
 だがアレフはそれを逃がさない。
 ズンと一歩踏み出し大きく息を吸い込む。周囲の空気が震えている。
 そして狼男たちに狙いを定め、勢いよく炎を吐いた。その炎は大きな波となり狼男たちに襲いかかる。
「うわああああ!!」
「熱い! 熱いィッ!」
「助けてくれぇえ!」
 ごうごうと音とともに狼男たちは炎にまかれ、その熱さと痛みにのたうち回った。
 肉の焼ける臭いがする。狼男たちの身体がジュウと焼け、ただれていく。

382 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:15:35 ID:3/VUBAzF0
『マリアさんを傷つけたお前たちを、絶対に許さない!』
 アレフはもう一度炎を吐いた。先程の炎よりも火力を上げた、灼熱の炎を。
 空を燃やすほどの炎。それはもがき苦しむ狼男たちを飲み込み、黒い炭へと変えた。
「ヒィッ!」
 一部始終を見ていた妖術師は、そのあまりにも圧倒的な力の差におののき逃げ腰になる。
『……っ』
 消し炭にした狼男たちの残骸を見ると、ちくりと胸が痛くなる。
 モンスターなんだ、モンスターだから。そう己に言い聞かし、アレフは標的を変えた。
 マリアを守るよう背にし、妖術師へとその巨体を向ける。金色に変化した瞳には既に妖術師しか映ってない。
「くっ、おのれ……おのれぇええッ!!」
 逃げたいと思う本能と逃げてたまるかというプライドの間で揺らぐ。
 足下の小石を蹴り上げ地団駄を踏む。その顔は今までよりも更に醜悪に歪んでいた。
「マヌーサァ!」
 惑わしの霧が杖の先から発生しアレフを包むが、アレフが大きく首を振ると霧はたちまちに散開した。
 その間もアレフの目は妖術師から離れない。金の視線は妖術師を貫く。
 アレフは後ろ足で立ち上がり、ブゥンと尻尾を降って妖術師の乗っている祭壇に衝撃を与えた。
 そのあまりもの揺れに、幻術師はその場を動くことができなかった。
 幾度目かには大きな亀裂が入り、轟音とともに祭壇は大小様々な破片となって崩れていった。
「なっ、ぎゃぁぁあああ!!」
 足場を亡くした妖術師は重力に逆らえるべくもなく地面へと落下していった。
 ズン、ドグチァ。落ちた上から祭壇の破片が降り注ぎ、妖術師は破片の下敷きになった。
 重なった石の間から緑色の体液が流れ出ていく。妖術師はそのまま息絶えた。

383 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:16:30 ID:3/VUBAzF0


「グルルルル……」
 地に倒れ伏しているマリアの前で、アレフは呪文も解かずに為す術もなく立ちつくしている。
 いや、”解かず”ではなく”解けない”の方が正しいだろう。力が不安定らしく、変身を解くことができないのだ。
 敵を倒したのはいいが、アレフは回復呪文を持っていない。
 道具袋の中にあった薬草を使っても治療が追いつかない。
 今はまだマリアに息があるからいいが、このままでは死んでしまう。
『どうしよう、マリアさんが……このままじゃ……!』
 マリアの前で半泣きになっていると、近づいてくる影がひとつやってきた。
 その気配に気づきアレフはそちらへ目を向ける。するとそこにはグレッグの姿があった。
 腕の氷は既に溶けており、自由に動いている。
『グレッグ! 生きてたのか』
 アレフは身構えた。いつでも攻撃に転じることができるよう、呼吸を整える。
 しかし当のグレッグには攻撃する気はないらしい。両手を挙げ降参のポーズで近づいてきたのだ。
「もうおたくらに危害を加える気はねーよ、安心しな」
 出会ったときと変わらない軽い口調で語りかける。だがアレフは気を許さない。
 こいつはマリアさんを襲った狼男たちと同じ種族なのだ。モンスターなのだ。
「この嬢ちゃン、微かに生きてはいるが、このままじゃあちとアブねえな。血が流れすぎてる」
 倒れるマリアの前にひざまずき、状態を確認する。腕を掴み脈をとると、とてもゆっくりとしたリズムだった。
 アレフはとたんに狼狽えだした。どうしようどうしようどうしよう。顔を左右に揺らし落ち着きが無くなる。
「……坊や。この嬢ちゃンを助けて欲しいか?」
 アレンの目が驚きに見開かれる。「本当に?」そう言っているような目だ。
 縋るような思いでアレンは頷く。もう敵であることは関係ない。マリアを助けてくれるのなら。

384 :STORY.6 雄叫びをあげて ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:17:33 ID:3/VUBAzF0
「グルル……」
「了解。ちょっと待ってろ」
 グレッグはマリアの手のひらを天に向け、なにやら呪文を唱えだした。
 するとぽつぽつと水滴が地面へと落ちてきた。雨だ。グレッグによって雨が召喚されたのだ。
 不思議な雨だ。身体に当たっても濡れることがない。まるで幻の雨に当たっているようだ。
 その雨の雫はマリアの背の傷に染み込んでゆき、みるみるうちに傷が塞がっていった。
 意識までは戻らないが、マリアの顔に赤みが増えていく。
『っ、マリアさん……ッ!』
 アレフはその長い鼻先をマリアに近づけ、擦り寄った。助かってよかったという想いを込めて。
「ふう……これで大丈夫だ。坊や、おたくはどう……」
 治療を終えたグレッグはアレフの方へ顔をやった。
 しかし当のアレフはいつの間にか元の姿に戻っており、その場で気絶していたのだ。
 安心して気が抜けてしまったのだろう。その顔には安堵の表情を浮かべていた。
「……ここまで無防備でいいのかねぇ」
 その光景を見て、グレッグは呆れたように耳を掻き苦笑する。
 静かになった森にアレフとマリア、ふたりの寝息が響いた。

385 : ◆aPqItC/JYI :2007/05/31(木) 22:20:28 ID:3/VUBAzF0
投下終了です。
今回はアレフの一人称じゃなくて神視点で話を書きました。

っていうか、途中「アレフ」じゃなくて「アレン」になってる場所があります。
アレンじゃあ2の主人公の名前だよ……
まとめ様、保管庫に入れるときは直してください。すみません。orz

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 00:03:07 ID:eE0i5KeJ0
投下乙です。
グレッグ、なんかいいですね。
早く逃げないと・・・っていうセリフも幻術師が出てくる前に逃がしてあげるつもりだったんでしょうね。
考えてみれば、グレッグさんの言い分も聞かずにこちらから一方的に攻撃してしまったような。

それとドラゴラム、圧倒的ですね。
読んでてもすごい迫力でした。

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 05:45:33 ID:pjc7SiI50
ルビスが出た辺りからふってわいたいやな予感・・・
厨房好みの展開んになってきましたよっと。普通切り札のはずだろ登場早えなオイ。
どうせこれから勇者呪文とか無節操に覚えンだろ。職の概念ないVが下敷きなのはそのためか。
なんでこうホイホイ力をテキトウに力をもらって手軽に強くなるんだろ。レベル幾つなんだよ頭の。
他力本願だな独力でなんとかしようとはおもわんのか、思いつかんのか、おもしろいか。
挙句にわけのわからんオリキャラにオリ呪文かよアホか?
これがゲーム脳かね?わけわかんね。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 09:49:14 ID:+G12BdZs0
>>387
>>69

389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 11:10:56 ID:+XKeG7ksO
というか一人で勝手に続きを予想してそれにケチつけるなんてスゲーな
投下されたものに対する意見だけならまだ許せるけど

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 15:34:14 ID:dZzRIA+uO
>>387これがゲーム脳かね?(笑)

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 16:04:55 ID:vdlhumSi0
みんな落ち着くんだ!
>>387はきっと朝早すぎて寝ぼけながらレスしたに違いない

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 19:42:13 ID:S877CBGR0
ゲーム脳の恐怖・・・・。
Oh!、Noぉぉぉぉぉ〜〜〜〜っ!!!

393 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 20:10:30 ID:+G12BdZs0
実は意外と、読み流しおざなり感想じゃなさげな濃さに思うが。
いや、そうでもないか。

さて、またまったり新作投下を待つとしよう。

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 23:17:42 ID:2ufAussd0
ドリーム少s…いや何でもない

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 23:58:58 ID:oYnUYcuwO
(=ω=.)

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/02(土) 21:54:05 ID:EQKEosTr0


397 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/06/03(日) 22:54:58 ID:7mGjuyeu0
お疲れ様です。
携帯まとめサイトをPCまとめサイトからリンクさせていただきました。

まとめ作業の方はまだ出来ていません。
しばらくお待ちください。

398 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:18:01 ID:VvIV98zV0
お久し振りです、おはようございます
かなり間が開いてしまいましたが
>>173の続きです


399 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:19:45 ID:VvIV98zV0

目を開けると俺は城の外に立っていた。
予想通りだったので動揺はしなかったが、ビアンカは
不可思議そうに辺りを見回して『あら?』と呟いた。
入るときには気付かなかった、城門の内側すぐの小さな観賞用の池のほとりに、
皺だらけで頭の禿げ上がった老人が一人佇み、
俺達はその老人が焚いている小さな焚き火のそばにいた。

『おや、目が覚めたかね』
老人が俺の視線に気付き、しわがれた声で言う。

傷んだはずの腕の痛みは、すっかりと消えてなくなっていた。
触れてみるとすべすべときれいな子供の肌。
疲労していた体も、心も。驚くほどきれいに元に戻っている。
恐怖さえ、僅かな休憩でなかった物のように俺の中から消えている。
そのほとんど気分のいい感覚に、逆に俺は少し気味悪さを覚えた。

寝てる間に変な薬でも飲まされてるんじゃないか。
そんな薬がこの世界にあるのかも判らないけれど。
老人は伺うように俺とビアンカを交互に見、
『この城には幽霊が出るそうじゃから、気をつけなされよ』
言ってほっほっほ、と笑った。

400 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:21:03 ID:VvIV98zV0

『自分のほうが幽霊みたいよね』
とビアンカが俺の耳元で囁いて、俺は思わず笑いそうになった。
ここを後数歩離れた時の、ビアンカの反応が楽しみだ。

期待通りのビアンカの反応をひとしきり(勿論心の中で)笑った後、
俺達はもう一度城に足を踏み入れた。今度は簡単だった。
王の力か、あれだけ固く閉ざされていた正面扉は、驚くほどあっさりとその両の手を解いた。
広間を抜けて真っ直ぐに、俺達は玉座の間を目指した。

出くわすモンスターは敵ではなかった。
呪文を唱える隙も与えず叩き落す。
例え呪文を食らったとしても、覚悟をしていればそれはもう恐ろしいものではなかった。
取り乱すこともなかった。
あの僅かな眠りの中で。何が自分を変えたのか、自分にも測りかねていた。

暗闇に松明の明かりを放って、とうとう俺とビアンカは玉座の間に立っていた。
真っ赤な絨毯と黄金色に装飾された玉座の中央に、
ゴーストの親玉はゆったりと深く腰掛け、こちらを見て微笑んだ。
『ほう・・・、ここまで来るとは。大した餓鬼共だ』
ちらちらと揺れる松明の炎が、浅黒いボスの表情をより不気味に演出している気がした。
つり上がった細い両の目を更に細め、舐めるようにこちらの表情を伺っているのが判る。
時折、暗い色のローブからはみ出した湿った枯れ枝のような細い指で、
持て余すように金の肘掛をかちりと鳴らす。

401 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:22:13 ID:VvIV98zV0

耳元まで避けた口をまた開き、愉快そうにボスはヒヒヒ、と笑い声を上げた。
『ここまで来た褒美に、美味い料理を振舞ってやろうじゃないか。
さあ、こっちに来なさい』
ビアンカは黙りこくり、視線をボスに釘付けたまま首を横に振る。
親玉は目を見開き、威圧を込めた声色で『まさか俺様が怖いのかな?』と言った。
『あんたなんかに従わないわ』
ビアンカがはっきりした声で言う。
ボスはまたヒィヒヒ、と嫌な笑い声を立てると、馬鹿な餓鬼だ、と呟いた。

刹那、世界がぐらりと傾いた。
覚悟はしていた筈なのに、咄嗟の出来事に一瞬、事態の理解が遅れる。
床が抜けたのだと、ボスの足元を通過しながらやっと気付く。
『貴様らに食わせる料理なぞないわ。貴様らは材料―――』

語尾が遠のき、今まで立っていた高さが頭上に消えていく。そして音楽。
物の数秒で大広間を通過し、俺は仄暗い小部屋に尻から着地した。
直後に何かが潰れるような衝撃音と、ビアンカの
キャアとヒャアの間のような悲鳴が耳に届く。

左手に何か柔らかいものがべっとりと張り付いて、俺は手元を見下ろした。
半分腐った果物や、野菜や肉が足元に敷き詰められていて、
それが落下の衝撃を多少和らげてくれたのだろう、
俺の体の下で可哀相なほど無残に潰れ、飛び散っている。
その下には良く割れなかったものだ、白い陶器のような床が見え隠れする。

402 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:23:10 ID:VvIV98zV0

『そ、そんな・・・』
すぐ横で男の声がして俺は振り向いた。
『子供を料理するなんて・・・!私にはできない・・・』
泣き顔のコックが俺の方を見て首を振っていた。
直後、ばちん、と何かが弾ける音がして、コックがひいい、と悲鳴を上げる。

『サン、今のうちに行きましょうよ!』
物語の流れを待っていた俺にビアンカが囁いた。
思わずえ?と間抜けな言葉を返す。
『お化けの親分を倒さなきゃ!なにぐずぐずしてるの?』
ビアンカはもう片足を皿の縁にかけ、今にも飛び降りんという姿勢で俺の腕を引く。
というか、物語を外れるという発想を今まで考えなかったことに、今更ながらに気付いた。
それよりも物語の中のキャラクターであるビアンカが、そんな提案をしていいんだろうか。

呆気に取られている俺に
ビアンカはじれったそうに『なにしてるの?』と声を荒げた。
ああ、うん、と曖昧な返事を返し、どうしようかと思案した刹那
がくん、と足元が揺れた。バランスを崩しかけたビアンカが
悲鳴を上げながら俺の腕にしがみつく。

ぎしぎしと金属が擦れあう音を立てながら、足元の皿が、
正確には皿を載せたゴンドラのようなものが、
ゆっくりとテーブルを離れて持ち上がっていく。
『もう、間に合わなかったじゃない。どうするのよ』
苛立ちを隠さずにビアンカが言った。
ある意味物語の通りなんだけど。俺はちょっと失敗したなあと思っていた。

403 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:32:59 ID:VvIV98zV0

物語を外れたらどうなるのか。そんなこと考えても見なかった。
外れるといっても、お化け退治には違いないからほんの僅かな相違だけれど、それでも。
もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。
ゆっくりと下に流れていくキッチンの壁を見ながら、
俺は言い知れぬ期待が胸に湧き上がるのを感じていた。

頭の中はこの先のストーリーで一杯だった。
浮ついた気持ちのまま三匹の蝋燭を叩き伏せる。
呪文で食らったダメージを薬草で癒し、俺達は再び玉座のフロアへ向かった。
暗闇で松明に火を点しながら、ボス戦に向けて息を整える。

思えば、初めてのボス戦だ。
初めての戦闘・・・三匹のスライムの時に比べれば
多少は経験も積んだし、不安も少ない。
先への期待で揺らぐ集中力を必死で諌めながら、俺は最後のフロアに足を踏み入れた。

先ほどボスが鎮座していた玉座に、今はもう誰もいなかった。
きい、と蝶番が軋む音を立てて、玉座と反対側にある小さな扉が閉まった。
『サン・・・あっち』
ビアンカが声を震わせる。
俺の手を握った指先が震えているのが伝わってくる。
耳の奥で心臓が拍を早め、鼓動が神経を伝い脳まで脈打つようだ。

小さな扉を開けると、冷たい風と雷光が俺を出迎えた。
ごごう、と大きな音を立てて天が震える。

404 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:35:41 ID:VvIV98zV0

ボスは小狭いテラスにもたれ掛かるようにして振り向くと、
『おやあ、奴らはお前達を食い損なったようだな』
待ち構えていたように俺達を見て言った。
風が唸り、松明の明かりが不意に掻き消える。

『ふん、仕方ない・・・俺様が直々に料理してくれるか』
にやあ、と開いた口元から真っ赤な舌が覗いている。
俺はビアンカにちらりと目配せすると、自分の武器を腰紐から引き抜いた。

ざらりと音を立てて、ボスの引きずるほどに長いローブが揺らいだ。
覆い被さるように高く掲げられた両の手から閃光が走る。
ヒィヒヒヒ、とボスの高笑いが響いた刹那、目の前を炎が走った。
ビアンカが悲鳴を上げる。
『人間の餓鬼共が!俺様に勝てると思うなァ』
ボスが吼えるのに呼応するように、天上か雷鳴が降り注ぐ。

ビアンカは怯まなかった。
きっ、と意志の強い瞳でボスを睨み付けると、『なめんじゃないわよっ』と鞭を翻す。
負けじと俺も手にした武器を叩き付けた。鈍い音がしてボスの体がよろめく。
『ヒィヒヒ、やってくれる』
再度呪文の詠唱に入るボスより僅かに早く、ビアンカが叫んだ。
炎の塊が空を切り、ボスの顔面に吸い込まれる。

405 : ◆u9VgpDS6fg :2007/06/04(月) 09:37:20 ID:VvIV98zV0

ギャア、と嫌な悲鳴が雷鳴に掻き消える。ボスはまだ倒れない。
ローブの奥まで切り裂くように俺は力を込めて武器を振り下ろすが、
致命傷を与える前にその腕に振り払われた。
間髪いれず追ってくる一撃を避けきれず、俺は固いタイル張りの床に叩きつけられる。
『この餓鬼共がァ!やってくれるじゃねえか!』
ボスがもう一度何か唱えた。
今度はテラス一面を覆うような大きな炎が、俺達を包む。

がくん、と、膝が落ちるのが自分でもわかった。
辺りには埃の焦げたようなすすけた匂いが立ち込めている。
俺より少し前方に、一瞬尻を着いたビアンカが身を起こしまた駆け出すのが見えた。
反射的に俺は呪文を唱える。
ビアンカが振り返り『ありがと』と言った。
攻撃呪文のように目に見える効果がわからないから心配だったが、
回復呪文はちゃんとその効果を発揮したようだ。
ビアンカの持つ鞭が天に大きく翻る。

振り下ろされるボスの鋭い爪先をひらりとかわすビアンカの姿を確認しながら、
俺はもう一度呪文を唱えた。
体の痛みがすう、と引き、俺は武器を取り立ち上がる。

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 10:09:15 ID:KNhGhnufO
支援です

407 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/04(月) 19:27:49 ID:O9p9uTom0
投下乙です!
いよいよ初のボス戦、クライマックス直前!
続きめっさwktkです。

408 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/06/04(月) 21:21:17 ID:MauHMLqg0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
このカキコミからおよそ3分で更新完了します。
書き手さんの指示してくれた修正点は反映しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

また、まとめサイト内のナビゲーションリンクが今日まで間違っていたのをお詫びします。

409 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:10:06 ID:9aMesSF60
>>399-405
> もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。

今後のことを考えるともの凄いwktkです。なんか今から緊張してきたw
続き期待してます。

410 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/05(火) 00:57:03 ID:/plKNQHo0
重婚展開wktk

411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/06(水) 13:25:45 ID:R7WDkLzg0
期待ほしゅ

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/07(木) 22:48:08 ID:vF5NT0yHO
投下待ち保守

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/08(金) 18:37:57 ID:bOOjCgdRO
保守

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 00:28:58 ID:jCDxDa7WO
ほっしゅ

415 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:02:26 ID:PtFsKJ270
前回のあらすじ>>365-368

 こんにちはこんばんは、俺です。
 昨日はミヤ王を仲間にした後、宿屋で泥のように眠りました。
 平日は日がな一日パソコンとにらめっこしてるような事務職、休日は2ちゃんやゲームが大好きなインドア派。
 全身筋肉痛なのは実に当たり前。……元の世界に戻れたらジムに通おうかなあ。

 そんなわけで俺は今、ミヤ王と一緒にマイラの村に向かっている。
 今のところ出てきたモンスターはスライム、ドラキー、ゴーストといった雑魚のみ。
 ミヤ王のおかげで楽勝www楽しちゃってサーセンwwwwwwwwwwwwwww

「お前は戦いは不慣れなのか?」
 そう訊いてきたのはラダトーム平野とマイラの森を結ぶ橋を渡ってからのことだ。

「やっぱわかるもんなのか?」
「ああ。実戦慣れもしてないが、モンスターの死に対してすら慣れてないようだからな」
「…………」
「図星か」

 そう、俺はまだ殺すことに慣れていない。
 今まで戦ってきた敵は『倒して』終わり。
 完全に『斃して』はいない。

 ミヤ王がドラキーを『斃した』時、無様にも吐き出した。
 滑らかな切り口とすら言える断面から覗く内臓は、健康な人間のそれと同じ色。
 限りなく黒に近い紫色の血。いや、ありゃ体液か?
 鋭利に切断された白いものは骨だろう。
 地面に落ちたショックで飛び出た眼球は白い糸を引いていた。
 鳴き声を発しながら二度三度と痙攣して動かなくなる様を直視することができなかった。

 これが『死』なんだ。

416 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:04:32 ID:PtFsKJ270
 新聞を見ればどこかの国でテロや戦争で死者が出たと載っている。
 テレビをつければ他県の殺人事件の特集を組んでいる。
 だが、俺にとっては『どこかの国』であり、『他県』でしかなかった。
 自分とは無縁の世界の出来事なんだと無意識に思っていた。
 新聞を折り畳めばテロや戦争の記事は目に入らない、テレビを消せば殺人事件の続報は入ってこない。
 決して忙しいとは言えない日常の中で忘れられていくだけの出来事。
 俺にとって『死』とは身近なものではあったが、現実とは遠いところにあった。

 以前、ディルレヴァンガーと名乗る気違いが猫を殺した事件があった。
 ネット上に上げられた殺害の過程の画像は俺も見た。
 すぐに画像を閉じ、なんてことをしやがると憤ったこともある。
 だが、画像を開いたのは俺の意思だ。
 騙したわけでも騙されたわけでもない。
 ディルレヴァンガーが逮捕された時、ニュー速+のスレに誰かがリンクを貼った。ただそれだけだ。
 俺は自分の意思でそれを見たのだ。

 子供の頃、蟻の巣に水をぶちまけたことはある。
 大人になってからも蚊を叩き潰したり、殺虫剤を使ったこともある。
 車に轢かれた猫の死骸を見たこともある。
 だが、それでも俺は自分とは関係ない世界の出来事なんだと思っていた。
 俺にとって、 『殺す』とは無縁の世界だった。

「襲ってくる魔物はためらわずに殺すことだ。そうしないと自分が殺されかねない」
「……ああ」
 それは俺もわかっている。
 この世界では俺のいた世界の常識は通用しない。
 覚悟を決めなきゃ生きていけない。
 動物を殺すのは可哀相と言うのは簡単だ。
 何しろ、自分の命がかかっていないから。
 自分の安全が保障されている世界では真っ当な話だ。
 しかしここでは自分の安全は保障されていない。己の身を守るのは己しかいない。
 ここでは人の命も魔物の命も全てが平等なのだから。

417 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:06:46 ID:PtFsKJ270
「今ここで実戦経験を積むのもいいが、ゆうていと合流してからの方が安全だ」
「なして?」
「ゆうていはホイミが使えるからな」
「みやおうは使えないのか?」
「自慢にならんが魔法の才能はゼロだ。魔力そのものがないらしい」
「魔力の有無なんてわかるもんなのか。俺はどうよ?」
「ある程度魔力を持っていればわかるらしいんだが、俺は全くないからお前が魔法を使えるかどうかはわからんがな」
「ダメじゃん」
「そう言うな。キムこうならわかる」
「キムこうは呪文使えるのか?」
「ああ。ゆうていはそこそこの魔法しか使えないが、キムこうはかなりの使い手だ」

 みやおう=戦士、ゆうてい=魔法戦士、キムこう=賢者。
 この認識でいいのだろうか。
 だとしたらバランスの取れたパーティーだ。
 不安要素は……俺、だよな。
 うん、頑張ろう。

「実戦に勝る修行なしってことだな」
「お前の世界ではそんな言葉があるのか?」
「by躯」
「?」
「……スルーしてくれ」
 ま、要は『飛影はそんなこと言わない』ってことだ。
 わかる奴だけニヤリとして欲しい。

「マイラに向かいながら実戦慣れでもしていくか?」
「何もしないよりはマシかもな。危なくなったらフォロー頼む」
「任せておけ。――タイミングよく大さそりが現れたぞ」

 ゲームと違って結構グロい上にデカくね?
 つうか、怖えーよ!

418 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:09:36 ID:PtFsKJ270
「だああ!」
 地面を素早く移動する大さそりを叩き潰す。
 棍棒を通じて殴った衝撃が俺の手に伝わる。大さそりというモンスターの生を奪う感触。
 しかし怯んではいられない。

「浅い!」
 ミヤ王の言葉通り、一撃を食らった大さそりは持ち前の堅さで持ちこたえていた。
 俺の攻撃を屁とも思わぬ動きで砂塵を巻き上げ、視界から消えた。

「しまっ……」
 背後を取られた俺めがけ、尾が伸びた瞬間――
 ミヤ王の一閃。
 大さそりはきれいに半分になっていた。

「サンキュ、助かった」
「気をつけろ。大さそりの外殻はスライムやドラキーの比じゃないからな」
「棍棒じゃ無理か?」
「鍛えればそのうち素手でも貫ける」
「いやいやもっと無理だから」
 そこで見ていろ、との言葉とともに俺に剣を預け、また新たに現れた大さそりと戦闘に入る。
 先の大さそりが斃されたことに腹を立てているのか、大さそりから攻撃を仕掛けてきた。
 ハサミの攻撃を難なくかわし、大股で大さそりに近づくミヤ王。

「ふっ――」
 軽い呼気をもらしただけで、ミヤ王の五指は大さそりを貫いていた。
 あんぐり、の表現はこういう時のためにある。
 まさしく俺はあんぐりと口を開けてミヤ王を呆然と見ていた。

「意外に簡単だろ? さ、やってみろ」
「できるかボケ!」
 みやおう=バトルマスター。
 こうですか!わかりません><

419 :俺の世界 ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:11:35 ID:PtFsKJ270
 マイラの森に棲む魔物が、素手で大さそりを貫いたミヤ王に恐れをなしたのかどうかはわからない。
 だが、あれから魔物とは一匹も出会わずにマイラの村に到着した。
 途中、野宿したり大さそり相手に苦戦したりゴーストの帽子を取ってハゲなのを確認して大笑いしたり
 スライムを蹴り飛ばしたりミヤ王が百円ライターに感激したりしたが、大して重要なことではないので割愛させていただく。

 普通に歩いてガライから丸一日以上かかった。
 地図で見ると近いが実際は遠いもんだ。ラダトーム→ガライ間をおよそ40分で爆走したのが信じられん。

「ここがマイラか……」
 ラダトームやガライでも思ったが、ゲーム上で見るのと実際に見るのとでは全然違う。
 ゲームではただの緑が多い村でしかないマイラの村は、実に自然豊かな村だ。
 風がそよぐと草花の揺れる音、仄かに香る木々の香り。
 日本では失われているもの――自然との共生がここにはある。……っと、マイラの村に圧倒されている場合じゃないな。

「ゆうていは中央の広場近くだ」
「広場近く……」
「もしかしてあそこにいる戦士じゃね?」
「ゆうてい!」
 俺が指差すよりも早くミヤ王が走り出した。

「……みやおう?」
 戦士は、みやおうの声に驚いた表情を浮かべている。
 どちらかといえば軽装のミヤ王に対し、防具で身を包んだ戦士。
 もし仮にミヤ王がいなくても、彼がゆう帝だということはすぐにわかった。
 やや薄めの頭がその決め手――と言ったら現実世界の堀井雄二は怒るだろうか。
 間違いない、彼がファミコン神拳の一人、ゆう帝だ。

ゆう帝のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたたっ
素早さ:あたたたっ
髪の毛:あっ……ごめん。――ハゲは病気じゃないよ!悩み無用!!

420 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/09(土) 02:19:01 ID:PtFsKJ270
ここで投下終了です。

>>408
お疲れ様です。
まとまっている自分の分を見てニヤニヤさせてもらっています。

421 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/09(土) 13:30:12 ID:4kXMdp+5O
乙!ステータスに噴いたw

422 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:15:24 ID:AI+IYRnv0
 前回のあらすじ>>415-419

 こんばんは、俺です。
 ついさっきの話ですが、ゆう帝が仲間になりました。
 包み隠さずに全てを打ち明けた俺に対し、ゆう帝は快く協力してくれると言ってくれました。
 さすがはドラゴンクエストの生みの親。心が広い。
               . -―- .
             /       ヽ
          //         ',      俺の言葉を
            | { _____  |        平然と信じてくれるッ!
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′     そこにシビれる!
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ     _ _      あこがれるゥ!
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ


 そんなこんなで今は二人と別行動。
 積もる話もあるだろうし、俺に対する話もしてるはず。
 んで、今の俺は何をしているかと言いますと。
 THE・入浴。
 マイラの村といえば温泉ですよ温泉。
 もっと言うなら混浴ですよ混浴!!ヒャッホーイ!!1!11!

423 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:18:44 ID:AI+IYRnv0
 わたくし思うに、風呂に水着を着て入るといった行為は許されないことなのですよ。
 肌着ですか?あれもダメ。風呂を温泉を混浴を、いや、それ以上に色々と期待する男達を裏切る行為じゃありませんか!
 もしあなたが女で、水着を着て混浴に入ったとしましょう。
 オンドゥルルラギッタンディスカー!!と叫ばれること間違いありません。誰も叫ばなくてもこの俺が叫ぶ!
 とまれ、混浴に対する冒涜行為を減らすため、こうしてマイラ温泉(たった今命名)に浸かっているわけです。
 べ、別に女の裸が見たいからじゃないんだからねっ!

 茹でダコのように真っ赤になった俺が温泉から上がったのは2時間後のことである。
 いや、わかっちゃいたんだけどね。
 わかっちゃいるけどやめられなねぇって植木等さんだって言ってるじゃないか。
 はあ……現実は厳しいよ。

『キャー! のび太さんのエッチ!』
 みたいなイベントがあったっていいじゃない。そのくらい夢見たっていいじゃない。
 あのメガネにはあって俺にはない。
 あれか、俺の机の引き出しがタイムマシンの入り口じゃないからなのか?
 現実は厳しいねえ、厳しいよ。


 ……取り乱しすぎた。
 ここ数日、風呂にさえ入ってなかったことを考えると、久々の入浴ができたと思えばそれでいい。
 うん、それでいいのさ。
 うん……。

 ションボリと宿屋に戻った俺を迎えたのは、実戦慣れのためにしばらくマイラに逗留しようと言ってきたミヤ王とゆう帝だった。
 てことは、もしかしてまだ温泉に入れるってことでFA?
 キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

「やってやるぜ!」
 矢尾一樹ばりの声でガッツポーズまで決めた俺。
 ドン引きされてるのは仕方がない。
 明日からの混浴――もとい、修行を考えると身が引き締まる思いだ。うん、ホントに。

424 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:21:46 ID:AI+IYRnv0
 翌日。ミヤ王、ゆう帝の宣言通りにマイラ周辺で魔物相手に実戦を始めていた。
 この周辺の魔物はスライム、スライムベス、ドラキー、ゴーストに加えて大さそり、魔法使い、メイジドラキー、骸骨である。

「注意するのは魔法使いのギラと骸骨だな」
「ギラ自体は大したダメージにはならないし、ギラを浴びてもすぐにホイミをかけるから安心してください」
 できるか。俺は超人じゃねえんだ。
 そもそも、俺とお前らとのレベル差を考慮しろ。
 ある程度は戦えるといってもスライムやドラキーを相手にした場合だぞ。

「だから、ここいらの敵に苦戦しない程度まで強くなるんでしょう」
「ギラ程度のダメージを恐れるようではこれから先厳しいことになるぞ」
 それを言われると困る。
 俺が戦う相手の竜王はベギラマや火炎の息を平然と吐いてくるような化物だしな。
 ダースドラゴンやスターキメラ、死神の騎士の攻撃なんかは今までよりもずっと痛いんだろう。

「こうなったら腹括るか。本当にすぐに回復頼むぞ?」
「任せてください。ギラ程度のダメージは簡単に治してみせますよ」
 すぐに回復しろよ、すぐに回復するんだぞ、と何度も確認しておきたいがやめておいた。
 俺はダチョウ倶楽部じゃないんだ、ネタ振りと勘違いして回復されなかったら大変だ。
 ――などとバカなことを考えていると魔法使いが現れていた。
 くそ、本当に出てくるんじゃねえ。

「うらあ!」
 魔法使いがギラ放つ前に先制攻撃。
 一撃入魂の棍棒を振りかぶって、そのまま魔法使いの頭上へ――!

 棍棒が根元から折れたと理解したのは、魔法使いが死の間際に放ったギラを無防備な体で浴びてからのことだ。

 棍棒蛾物故割れたwwwwwwwwwwww
 なんて草生やしてる場合じゃねえな。

425 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:23:56 ID:AI+IYRnv0
「……マジ?」
 半ば呆然と口にしたのはミヤ王が魔法使いをぶった切ってからのことだ。
 手元には剣で言う柄の部分しかなく、釘が生えている棍棒は足元に転がっている。
 こうなってしまっては、棍棒もただの釘の生えた塊でしかない。
 焚き木くらいには使えるだろうが武器としては無理だよなあ。

「棍棒ってこんなに簡単に壊れるもんなの?」
「メタルスライムを叩いても壊れないくらい頑丈にできてるはずですが……」
「じゃあこれはどういうこと?」
「元々壊れてたとか……」
「買って5日目なのに?」
「……武器屋に行くか」

 マイラに置いてある武器は銅の剣か鉄の斧……だったな。
 ゲームなら攻撃力の面で鉄の斧一択なんだが、実際はそうはいかないらしい。
「戦いのスタイルは武器によって変わるといっても過言じゃない」
 とのことだ。
 殴ることを主体とした棍棒と斬ることを主体とした剣では確かに戦闘スタイルが違う。
 だが、鋳型に青銅を流し込んだだけの銅の剣よりは鉄の斧の方が……。

「剣ならあることはありますよ」
 武器屋に向かう最中、ゆう帝が言った。

「マジで?」
「ええ」
「なんだよー、最初から渡してくれよー」
「ですがね……扱いにくいんですよ」
「ああ、アレか」
 躊躇うゆう帝に、何か知っているかのようなミヤ王。
 まさか破壊の剣ってオチはねえだろうな。

426 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:27:07 ID:AI+IYRnv0
「この剣だ」
 ゆう帝が宿屋から持ってきた剣は変わった形をしていた。
 変わったと言っても、剣の先がバイブになってるわけでもミサイルが出てくるわけでもない。
 濃いオレンジ色の刀身は、燃え盛る炎の形を象っていた。

「炎の剣……か?」
「知ってるのか?」
「いや……」
 公式ガイドブックで見ただけだがそんなこと言えるはずもなく曖昧に言葉を濁す。

「以前メルキドの旅商人から買ったんだが、どうも扱いにくい剣でな」
「私達向きの剣ではないから売ろうかどうか迷ってたんですよ」
「試してみるか?」
 手渡された炎の剣は見た目よりは軽かった。
 喩えるなら……すまん、思いつかない。そもそも何を喩えようとしたのかもわかんね。

 気を取り直し、炎の剣を構えて振ってみる。
 ――軽い。
 金属を使ってるはずなのに棍棒と同じくらいの重さでしかない。
 もしかしてミヤ王の装備している鋼鉄の剣より軽いんじゃないだろうか。

「随分軽々と……」
「扱ってますね……」
 ミヤ王とゆう帝には悪いが、どこが扱いにくい剣なのかわからない。
 剣なんてのは小学生の頃に傘でアバンストラッシュした程度だが、これは扱いやすいってことくらいわかる。
 もしかしてこれが装備できる奴とできない奴の違いってことか?

「ついでに試し切りもしてみては?」
 二人の間では炎の剣は俺が使うことになったようだ。
 異論はないし、返せといったところで返す気もないがね!
 故人曰く――『お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの』
 ビバ!ジャイアニズム!!

427 :俺は今猛烈に熱血してる! ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:28:06 ID:AI+IYRnv0
 結論から言おう。炎の剣は使いやすい。
 試しに魔法使いや骸骨と戦ってみたが、面白いほどサクサク斬れた。
 ちなみにギラは多少食らったが想像していたほどのダメージではない。痛いし熱いけど我慢すれば何とかなる。
 俺のレベルが上がったからかもしれない。
 もしかしたら竜王斃せるんじゃね?
 みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwwwwwwwwwwww

「落ち着け。今竜王に挑んでも死ぬだけだ」
「ですね。強いのは炎の剣のおかげですし」

        盛
             り
                 上
                     が
                        っ
                          て
                           参
                             り
                              ま
                               し
                               た

 俺涙目wwwwwwwwwwwwwwwwww
 大人しく魔法使いや骸骨相手に実戦経験でも積むとしよう。

LV:9
HP:30/34
MP:20/20
攻撃力:54 防御力:23 素早さ:11
E:炎の剣 E:ジャージ+皮の服 E:皮の盾

428 : ◆yeTK1cdmjo :2007/06/10(日) 01:35:08 ID:AI+IYRnv0
といったところで投下終了です。
次回はマイラで一イベント終わらせてからリムルダールに行く予定です。

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/10(日) 01:58:56 ID:aQlYW0gL0
投下乙!
主人公の俺TUEEEEEEEワロスw

430 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 12:48:05 ID:ihFODq/x0
>傘でアバンストラッシュ
あるあるwww

431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/11(月) 13:40:44 ID:H6DX5WZNO
俺はモップでブラッディスクライドだっちゃ。

432 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 00:59:22 ID:hEAtUHAi0
◆IFDQ/RcGKI氏の続きも気になる。

433 :Stage.5-1 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:28:43 ID:gSbhhAoC0
うは、投下しにきたらすごいタイミングだww
>>432さん
ご期待いただいて光栄です。お待たせしてすみません。

ところで、
「ゲームサイドの携帯の充電はどうしてるのか?」
というご質問が来ましたので、当事者たちに聞いてみました。


アルス「あ、当事者って俺らか」
タツミ「実は僕も気になってたんだよね、携帯の充電。これどうなってんの?」
アルス「んなもん決まってんだろ、お前どこに飛ばされたと思ってんだよ」
タツミ「じゃあ、この電池残量のマークに重なってついてる『M』ってのは……」
アルス「当然『MP』だろ。使う人間の」
タツミ「なるほどー。って、僕にMPなんてあったの!?」
アルス「知らん。お前のステータス見てねえからわかんねえや」
タツミ「遊び歩いてないでちゃんとモニタリングしてくれよ。
   こっちからは客観的な数値がわかんないんだから」
アルス「うるせえ命令すんな。だいたい俺、お前にクリアさせる気ねえし」
タツミ「それ以前に僕が死んだら君もくたばるってこと忘れてない?」
アルス「ほぉ、死ねるモンなら死んでみろ」
タツミ「実際そうなりかけたら大慌てのくせにねぇ」
アルス「なんだと」
タツミ「なにさ」


……なんか脱線してきたので本編に参ります。

434 :Stage.5-1 1/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:30:01 ID:gSbhhAoC0
 前回 >>293-305
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 ----------------- Game-Side -----------------

「もう二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!」
 怒鳴り散らして通話を切り、直後、僕は壁に背をつけてずり落ちるように座り込んだ。
 バカなことをしたのはわかってる。電波状況が最悪のこのダンジョンで奇跡的につな
がった瞬間だったってのに、なんで切っちゃってるんだよ僕。
 まあ今のこの状況で、電話越しのナビがどの程度役に立つかは疑問だけど――。
 すぐに「圏外」表示に戻ってしまった携帯をぼんやり眺めた。ここは、そこら中に散ら
ばる白骨死体がぼんやりした燐光を発している以外、いっさい光の差さない闇の回廊。小
さなモニターから漏れるわずかな明かりさえ、まるで太陽みたいにまぶしく目に映る。
「……ゆ、勇者様……?」
 エリスが身を起こして、不安そうに僕を見上げた。携帯を閉じる。
「ああ、ごめんね。なんでもないよ」
 腕を伸ばし、その頬に手を当てながら「大丈夫だよ。大丈夫だから」と何度も繰り返し
て言ってあげると、彼女は微笑んで、また目を閉じた。

 冷たい石畳に僕のマントをひいて、エリスはぐったりと横たわっている。
 さっき火炎ムカデにやられた彼女の右足は焼けただれ、真っ赤に腫れ上がっている。手
持ちの薬草で簡単な応急処置はしたが、早くロダムに回復してもらわないとまずい。
 ロダム、サミエルの2人とはぐれて、どれくらい経つのか。現実の時刻を示すだけの携
帯じゃよくわからない。このダンジョンに入った時間を考えれば、もうじき外は日暮れ頃
だろう。昼間でも肌寒かった気温はますます下がってる。これからもっと冷え込むんだろ
うか。

 まったく。16歳の健全男子が可愛い女の子と暗闇で二人っきりだっていうのに、まるで
色っぽい思考に走れないって、なんなんだろうね。
 生き残ることしか頭にないって――そんな状況って、なんなんだよ。

   ◇

435 :Stage.5-1 2/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:33:27 ID:gSbhhAoC0

 ロマリアから使者が馬を飛ばして追ってきたのは、僕たちがアッサラームまでまだ3分
の1も来ていない森の中で、早々に野営準備を始めた頃だった。

 二つに斬られて のたうつ魔物〜♪ 飛び散る内臓や 跳ねる血しぶき〜♪
 呪文でバラバラ 見る影もなく〜♪ 勇者がまたもや うしろで吐いた〜♪

 近道しようと公道をそれたせいか、あの後、何度もモンスターと戦うことになった。
 慣れる間もなく次々に惨殺シーンを見せつけられ、かといって戦闘を任せきりにしてい
る仲間に申し訳なくて目をそらすこともできず、吐く物もなくなって完全にグヘ〜となっ
てしまった僕を心配し、まだ早いけど今日はここでキャンプをしましょう――という運び
になったのである。なんとも情けない。
「どうかお気になさらずに。まだ1日目なんですから、当たり前です」
「ありがとう。本当にごめん、必ず近いうちになんとかするから」
 正直なところ僕「血」はダメなんだよ。ホラー映画もサイコ系は平気だけど、スプラッ
タは気分が悪くなって観られない。いざとなればなんとかなるかなーと思ってたんだけど、
なんともならなかった。人間、簡単には変われないもんだね。

 そこへ息を荒くした人馬が走り込んできたのだ。
「ゆ、勇者様でいらっしゃいますね!?」
「そうだけど……」
「良かった、間に合った!」
 国に使わされたのではなく、ある人からの個人的な使者だというその青年は、封蝋もさ
れていない書状を僕に押しつけるように手渡してきた。
 この場で読んでくれ、と急かされて、目を通した僕は思わず舌打ちした。
「どうなさったんです?」
 声を低めるロダムに、黙って書状を回す。
「なになに……魔法の鍵を壊した? 勇者様が!? どういうことですか!?」
「罪をなすりつけられたんだよ。ま、きっかけを招いたのは僕だけど」

436 :Stage.5-1 3/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:36:31 ID:gSbhhAoC0

 ポルトガとの重要な陸路であるはずの関所が、何年も閉鎖されているのは不思議だった
が、なんのことはない。
 ロマリアの現国王が、イシス女王から親善の証として贈られた「魔法の鍵の複製」をダ
メにしちゃって開けられなくなっていたのだ。当然、んなアホな失態を表沙汰にはできな
いから、適当な理由をつけて閉鎖していたらしい。
 ところが僕が開門命令を出したので、ポルトガとの交易を望む商人を始め、国民は大喜
びした。王様が戻ってすぐに撤回されたが、そりゃ不満の声も出てくるだろう。
 今まで閉鎖理由を心底では納得していなかった国民は事実を疑い始め、困った王様は、
「勇者が国王代理を務めている間に勝手に持ち出して壊しおったのだぁ!」
 と思いっきりデタラメこいてくれたのだった。小学生かおまいは。

「んで僕たち、お尋ね者になっちゃったワケだ」
「もちろん勇者様に咎はございません。真実をご存じの前国王様も、まずは勇者様に事の
次第をお伝えし、ご助力差し上げよと私を派遣なさったのです」
 助けたい、ねぇ。
「でもこの手紙の内容だと、結局僕たちが責任を取るんじゃないの?」
 “追っ手は差し止めておくから、その間にピラミッドから『本物の』鍵を取ってくれば万
事解決だよ” ってアンタ、アドバイスにかこつけた命令じゃないか。
 僕がジトーッと横目で睨むと、使者の青年は済まなそうに目を伏せた。
「行くことないッスよ! 真実を話して本人に責任を取らせればいい」
 サミエルがそう息巻くのももっともだ。エリスもロダムも難しい顔をしている。

 だが僕はその時、もう少し別の観点から物事を考えていた。

 ――たぶん僕が懸念していた通り、このイベントはカットできないのだろう。
 だから本来のシナリオに対し、本当に飛ばしても構わないノアニールの話はその片鱗も
出てこないし、魔法の鍵にいたってはやや強引とも思える選択肢がここに用意された。
 「はい」と「いいえ」。僕の中なにか予感めいたものが「断るな」と告げている。
 ここで無理に断れば、物語が破綻して身動きが取れなくなってしまうような……。

437 :Stage.5-1 4/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:38:48 ID:gSbhhAoC0

「わかりました。お引き受けしましょう」
「勇者様!」
 そろって抗議の声をあげる3人に、僕は苦笑を返した。
「仕方ないよ。どちらにしても鍵は必要なんだから、僕たちが責任を取ってなんとかする
のが一番すっきり治まる。一度そう発表されてしまった話を二転三転させても、ロマリア
国民の不安を煽るだけだしね」
 それから小声で、
「ヘタに言い訳したって話がややこしくなるだけだしさ。鍵さえ手に入れば、今度はこっ
ちから王様に『いろいろ』お願いできるかも?」
 とたんに3人の目がキラーンと光る。

 薄ら笑いを浮かべ合う僕たちには気付かず、使者の青年はブワッと涙を溢れさせた。
「すばらしい、さすが勇者様です! 感動です! あの、これ!」
 ふくろからゴソゴソと引っ張り出してきたのは、キレイな装飾の腕輪だった。
「前国王より預かって参りました、『星降る腕輪』というものです。不思議な力が込めら
れているそうで、きっと勇者様の冒険をお助けしてくれるだろうと」
 ほお、ここで手に入っちゃうんだ。話が話だけにイシス女王に挨拶には行けないから、
さっき引き受けた時点でコレは諦めていたんだが。
「そしてこれがですね……」
 使者の青年はさらになにか取り出して、満面の笑みで差し出した。
 今度はなんだろう。前国王ってばなかなか気前いいじゃん。
「ピラミッドの場所を記憶させた特別なキメラの翼です。追っ手をとどめるにも限界がご
ざいますし、すぐにも向かった方がよろしいかと」
 ちょ、待てコラそっこう行けってかww

 そうこう言ってる間に、遠くにロマリアの旗を掲げた一団が現れた。本当に追っ手を差
し止めていたのか? なんて考えるだけムダだ。王族なんてもう信用ならない。
 僕たちは慌てて、渡されたばかりのキメラの翼でピラミッドに飛んだ。

438 :Stage.5-1 5/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:44:00 ID:gSbhhAoC0

   ◇

 乾燥したきった空気と照りつける日差しの強さは、想定していたから驚きはしなかった。
 砂漠とはこんなものなんだろう、と認識するに留まる。問題はピラミッドだ。
「結構……きれいなんだね」
 本物は観たことないが、現実側のそれはしょっちゅうテレビで紹介されている。今その
通りの光景が目の前にあり、それがかえって僕に奇妙な感想を抱かせた。
 観光名所として手入れの行き届いているエジプトの王墓ならともかく、こちらはもっと
自然のままに、砂に埋もれたり崩れたりしているもんじゃないのかな。
「きっとイシスの人間が、定期的に清掃を行っているのかもしれませんね」
 王墓なのだからあり得そうだが、そう言うエリスも腑に落ちない顔をしている。国が管
理している遺跡に、他国の冒険者が土足でズカズカ入り込むことを黙認するだろうか?

「あ、そうだ」
 僕はロマリアでくすねてきた紙の巻物を取り出した。この世界は羊皮紙が一般的だが、
普通の「紙」の方がインクのノリも良いし薄くて軽い。でも高くてなかなか手に入りにく
いから、ここぞとばかりクスねてきたのだ。
 巻物には、これから向かうことになるダンジョンのマップが描かれている。ロマリアに
泊まった夜に、僕が事前に描いておいたのだ。
 最初の方にピラミッド内部の簡易図もある。念のため描いておいたけど、まさかこんな
に早く使うことになるとは思わなかった。
 そこをビリッと破ってロダムに渡す。僕は頭に入っているから、実質2枚の内部図を分
けて持つことになる。
「これもルビス様のお告げですか? どれが人食い箱かもわかるのですね」
 ロダムが苦笑する。
 まあ自分でもちょっと異常な気はするけど、そこは気にしない気にしない。

 その他、簡単に打合せを済ませて、いよいよピラミッドへ突入だ!

 
 と、勇んで踏み込んだは良かったが……。

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:45:07 ID:s/zle9kv0
さるさる回避

440 :Stage.5-1 6/12 ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:46:29 ID:gSbhhAoC0

 中に入った瞬間だった。いきなり僕たちのうしろで「ズゥゥン!!!」と大きな音がした。
「うそ、閉じこめられた!?」
 こんな演出、ゲームにはなかったはず。
 わずかな明かり取りの窓から入る光だけとなり、視界の明度が一気に落ちる。サミエル
が手早くたいまつに火を灯すと、それが合図だったように、暗がりから大量のモンスター
が襲いかかってきた。

 それでも普通に戦闘をこなすだけならば、出発時よりさらにレベルが上がっているエリ
スたちの敵ではない。
 中も存外に広い造りで、人が3人余裕で並んで歩けるくらいの通路が真っ直ぐに続いて
いる。天井も高く、これくらい広さがあれば互いにカバーしながら戦える。余裕のはずだ。
「持つよ、気をつけて」
 僕がサミエルからたいまつを受け取ると、彼はニカッといつものいい笑顔を見せて、前
に出た。

 だが、切り込みを買って出たサミエルが、何歩か進んだそのとき――。「うあ!」と叫
んで剣を取り落とし、彼はその場に倒れ込んでしまった。
 エリスが慌ててベギラマを唱え、倒れた戦士に群がるミイラたちを牽制する。
 駆け寄ってたいまつをかざすと、サミエルの脇腹に数本の矢が刺さっていた。

「トラップ……?」
 全身から血の気が引いた。
「みんな伏せてぇ!!」
 エリスとロダムが弾かれたように身を伏せる。瞬間、風を切る音がいくつも聞こえ、近
くまで寄っていた蛙型のモンスターが真っ二つになって吹っ飛んでいった。今度は矢では
なく、巨大な刃物のようなものが横切っていったのだ。
 入り口からたいした進んでもいないのに、ここまでのわずかな距離に、一撃で命に関わ
るような罠がいくつも仕掛けられているのだ。
 なにこれ。話が違いすぎだろ?

441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:47:24 ID:s/zle9kv0
支援

442 :Stage.5-1 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:49:35 ID:gSbhhAoC0
本日はいったんここまでとなります。
あんまり間が空きすぎるので、
今回から小分けして投下してみることにしました。
7/12-12/12は数日後に。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/12(火) 22:58:12 ID:s/zle9kv0
新作GJ
ピラミッドのトラップ怖いな。
窮地に追い込まれたタツミが、これからどう行動するのか気になるw
続きwktkしながら待ってますねw


444 : ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/12(火) 22:59:57 ID:gSbhhAoC0
>>439
支援ありがとうございます。

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 19:02:59 ID:A1yrz2fxO
うはww
新作の投下超ナイスタイミング。
なにはともあれGJです。

446 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:50:17 ID:WcZO1yAJO
苦しい!息ができない!身動きがとれない!右も左も上も下もあったもんじゃない!
光はどっち?
もがけばもがくだけ、絡 ま っ て …

ふっ、と浮き上がるように目が覚めた。
妙に胸が騒ぐ。焦躁。幻想?
額に手を当てると酷く冷たく濡れていた。
気をやれば、全身が汗でびっちょりなことに気付く。
――夢か。
ビビった!いやまじで。死ぬかと。もう死ぬかと。
いや、でもありえないよね、いきなり海で溺れるとかさ。
海なんてもう5年は行ってないんだぜ。ありえないんだぜ。
と、安心しようとする私を、打ち落とす事実。
嫌でも鼻につく磯の香に、波の音。そしてこの見知らぬ部屋の窓から、望むこのオーシャン…ビュー……
「やってらんないんだぜ!」
夢だと思い込もうにもこのハイクオリティ!
いくら私が想像力(妄想力)豊かな花の16歳とはいっても!
色々考えた末に私はもう一度ベッドに潜った。
都合の悪い事からは目を逸らす。無かった事にする。これがゆとりクオリティ。
……。
……………。

お腹、減った。




447 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 21:52:44 ID:WcZO1yAJO
結局人間欲には勝てないのだ。
睡眠欲は満たされてしまっているから、次は食欲。
ああー良い匂いがする。
匂いに誘われて私は階段を下りた。

「あらあらあら!ようやく起きたみたいだね」

階下には、なんというか、肝っ玉母ちゃんを絵で描いたような女性がいた。
母ちゃんはこうも続けた。
「あんたが海に打ち上げられてるの見た時は驚いたよ!無事でよかった」
……。網に。ふぅん。
……。
「夢じゃなかったんかい。」
呆然として呟くと同時にグーキュルルルル、とお腹がなった。
「お腹が空くなら大丈夫だね」
にっこり笑った女性は忙しく食事の用意を始めた。
魚を3枚に卸して刺身。余った身と骨、内臓を叩いて丸めて揚げた団子とたっぷりの野菜を煮込んであったスープ。それに作り置いてあった小魚の佃煮に茶碗いっぱいに盛られた白ご飯がテーブルに並べられた。
「さあ、ぼーっと立って無いで、食べな!」





448 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/13(水) 21:55:20 ID:V4ORlyJRO
支援

449 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:08:06 ID:WcZO1yAJO
肝っ玉母ちゃん――マーレさんのご飯は死ぬほど美味しかった。
お腹が空いてるってだけじゃない。きっと食材が新鮮なのも、単にマーレさんの料理の腕が良いのもあるだろう。
とにかく、いままで食べたご飯の中で一番美味しかった。
「ご馳走さまでした!」
マーレさんはにこにこ、お粗末様でした、とお皿を下げる。そして、さて、と話を始めた。
まず、私の名前から始まり、何故海岸に打ち上げられていたのか、そもそもどこから来たのか。
私も出来るだけ正確に、分かるだけの範囲で答えた。
私の名前はユウキで、何故海岸に打ち上げられていたのかは、私も分からない。ここに来る前は日本という所でギリギリながらも女子高生をしていました。
私の答えにマーレは目をぱちくりさせた後に訝しげに細くなった。
「…ニホン?」
「ニッポンともジャパンともジパングとも言うけど」
「…グランエスタードでも、フィッシュベルでもないのね」
「ええと、そうみたい」
何か言い辛そうに、マーレさんが口を開いた。
「世界にはこのグランエスタード島以外に人が住んでる島なんて、ないんだよ」

な、なんだってー!!


450 :気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/13(水) 23:10:24 ID:WcZO1yAJO
私はそのビックリ情報に目を見開いた。
「あ、アメリカ大陸も?」
マーレさんは無言で首を横に振った。
「ユーラシア大陸も!?」
「聞いたこともないねえ」
「オーストラリアは?アフリカは?え?インドネシアも?パプアニューギニアも?ガラパゴスも?」
マーレさんが頷く事はなかった。大陸も、島も、ここ一つ………?
「そ、そんなっ……」
ありえない!そんな、今まで考えたくなくて避けて来たけど、やっぱりここは、まるで、異世界、じゃないか。

行き着くべき結論に至って、私は絶句した。
夢ではない、でも私の現実ではありえない、この事実。
「何かショックな事があって記憶を落としてきちゃったのかねぇ」
マーレさん――なんて呑気な――
私は意識を保つのに精一杯だった。\(^O^)/オワタ!とかおどけて見せるので。
その時、扉が開いた。
マーレさんが優しい笑顔で「おかえり」と言う。
振り向くとそこには緑色の服を着た少年がいた。
\(^O^)/……
↑の状態の私を見て多少引きつっているが、なかなかに感じのよい笑顔だ。
少年は、アルスといって、マーレさんの息子だった。
マーレさんは息子さんに私の紹介をし、簡単に事情の説明をしてくれた。
「で、アルス。この子に見覚えはないかい?」
「ええと、ユウキ…さん?」
「は、はい」
「見覚え…ないなぁ。」
そりゃそうでしょうとも。私は声にならない言葉で返事すると、ため息をついた。
そのため息を落胆の意味と捉えたのか、アルスは慌てて慰めるような口調で
「じゃ、じゃあ…グランエスタードに、行って見る?」
と、言った。



451 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 11:47:49 ID:a80QQpm0O
新作乙!
7の世界だね。応援しているよ

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 18:37:42 ID:Lvgrew1o0
新作乙。
アルスさんと恋の予感・・・。

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/14(木) 21:16:28 ID:FY/xd5ec0
乙おつー!
7キタワァ^^
ツンデレマリベルに期待wwwww

454 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/16(土) 01:45:31 ID:+oX9XX/u0
うわお
こんな面白いのが投下されてたのにdion軍の超長規制のせいで
何にも書けんかった〜

作家さん達皆さん乙!
続きwktkしてます

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/17(日) 08:41:14 ID:5iMBz8ACO
保守

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/19(火) 00:30:25 ID:mDLNjS9O0
7の世界大好きだからwktkwww
しかも女の子主人公ww
次回を楽しみにまってます!

457 :Stage.5-2 [hjmn] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:28:18 ID:h6mFqMtJ0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。続編投下にきましたっ。けどその前に……」
アルス「まずはサンクスコール!」

アルス「改めて>>439様、そして>>441様、規制回避支援サンキュです!」
タツミ「>>443様、wktk言われてつい張り切っちゃいましたよ。ご期待に添えられたかなぁ」
アルス「>>445様、やっぱGJは嬉しいぜ。今回のタイミングはどうでしたでしょーかw」


アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』


 前回 >>434-440
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】

 Game-Side 続編

458 :Stage.5-2 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:29:41 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
 どこからともなく低くくぐもった声が響いてくる。これって確か、上の階の宝物庫にあ
る宝箱を開けたときのセリフだったっけ? 内容が少し違う気もするが、それなりにゲー
ムを継承しているわけだ。
 こんなえげつない罠が仕掛けられている時点で、すでにドラクエとは言えないけどさ!

「く……油断したッス……」
「大丈夫サミエル!?」
 苦しそうにうめくサミエルの脇腹に、みるみる血がにじんでいく。人間の、まして仲間
のケガだ。心臓が跳ね上がった。でもここで、血はダメだなんて言ってられない。
「立てる? 早くロダムに回復を――」
 瞬間、目の前にユラリと黒い影が現れた。そいつの腕が首に巻き付いてきて、一気に締
め上げられる。見た目と裏腹にとんでもない力だ。
「!……!…!!」
 声が出ない。く、首の骨が折れる〜!
「青き女王の御子ら氷の精霊たちよ古き盟約に従い我が戦陣に馳せ汝が力を示せヒャド!」
 エリスがものすごい早口で詠唱を完了させた。青く煌めく氷の刃が、僕をシメあげてい
たモンスターに突き刺さった。
 グギャア、とおぞましい悲鳴をあげて飛びすさる影。
 その場に投げ出された僕は、肺に無理やり新しい空気を送り込むのと、転がってるたい
まつを手に持つのと、反対の手でサミエルを引きずって後ろに下がるのとを同時にやって
のけた。おお、すごいぞ「星降る腕輪」効果。

「……の精霊の名においてかの者たちに癒しの光を――ホイミ、ベホイミ!」
 先に詠唱を開始していたロダムが、這い戻ってきた僕とサミエルにタイミング良く回復
呪文をかけた。喉の痛みがすうっと引いていく。サミエルの脇腹から折れた鏃(ヤジリ)が自
然に押し出されて出血も止まった。
 瞬間的に負傷度合いを測り、呪文を使い分ける年配僧侶に感心しつつ、僕は通路の奥に
向き直った。

 さて、仕切り直しだ。

459 :Stage.5-2 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:33:34 ID:h6mFqMtJ0

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
「うるさいなぁ。エリス、なるべく中央に向けてベギラマお願い」
「はい勇者様っ」
 彼女の閃光呪文が、追いすがってきたモンスターを散らすついでに、通路の奥の方まで
明るく照らし出した。

 両サイドの壁にはいかにもエジプトっぽい絵が延々と描かれている。
 そして床。
 僕たちが待機している場所は真っ平らだが、やや先の方から、床に1メートル平方の大
きな石がタイル状に敷き詰められているのがわかった。タイル1枚1枚にエジプトの象形
文字のような(あるいはそのものか)レリーフが刻まれている。
 そのうち数枚が、周りと比べてやや下に引っ込んでいた。1枚はちょうどサミエルが踏
み出したあたりではないだろうか。「蛇」の形をしたマークの文字だ。
 一番手前に目をやる。たいまつの光に浮かび上がるのは「鳥」をかたどった文字のタイ
ル。さっき戻ってきたときに、間違いなく僕はこれを踏んでいるが、なにかが動いた気配
はなかった。暫定的に「鳥」は安全ルートと決定。もう少し検証したいところだが、そん
な余裕はない。

 エジプト神話における「蛇」の象徴は多々あるが、ここは有名な悪い蛇の神様「アポピ
ス」と見立てていいだろうか。「墓守の蛇の女神」といういかにもな神様もいるけど、壁
画はその女神とは無関係の神話のものだし。だとすると……アレかな。

 ――ここまでの思考を数秒でまとめる。
 えい、読みが外れたらそれまでだ。僕は腹を据えた。
「この中で一番身軽なのは、今のところ僕だよね」
「それはどういう意味ですか」
 トラップ地帯をすり抜けて迫ってきたあやしい影を真空呪文で吹き飛ばしつつ、ロダム
が訝しげに問う。
「なにかわかったんスか!?」
 逆にサミエルが期待に満ちた声を上げる。剣を構えて前方を睨みつけているが、接近戦
が得意の彼としては、思い切り戦えないこの状況が歯がゆいだろう。

460 :Stage.5-2 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:34:53 ID:h6mFqMtJ0

「うん、任せて」
 その彼に僕は持っていたたいまつを返した。星降る腕輪が「途中」で外れないようグッ
と上に押し上げて、それから片膝を立てて前傾姿勢で両手を床につける。
 こういうのは勢いが大事。クラウチング・スタートの体勢から重心を前に移動し――、
「まさか、勇者様?」
「援護ヨロシク!」
 
 タイルの模様と位置は、さっきベギラマで見えたときに、すべて頭に叩き込んだ。
 通路は薄暗いが、敵のモンスターがどこにいるかくらいは視認できる。トラップ障害の
条件は敵方も同じ。まごついているモンスターたちの足下をすり抜け、飛び石を渡るよう
に「鳥」のタイルを踏みながら、目的の場所へ!

【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ……】
「だからうるさいっつーの!」
 襲いかかってきたミイラ男のすぐ前にあった「蛇」マークを思いっきり踏んづけて、横
の「鳥」に転がる。ドカカッ!と矢だらけになってひっくり返ったそいつを飛び越えたと
ころで、物理トラップ無効のあやしい影が、サッと前に回り込んできた。
「ヤバ……」
 仲間の援護を信じて、とっさにその場に伏せる。
「「バギ・ベギラマ!!」」
 同時に、灼熱を伴った真空波が実体のない魔物をぶち抜いていった。その狙いの精度と、
仲間に向かって迷い無く呪文を放てる思い切りの良さは、大したものだ。

 チラッと壁に目をやる。延々と続く壁画は、数あるエジプト神話の中でも最も有名なス
トーリーを描いたものだ。僕が目指しているのはそこにいるべき、ある神様。
 ヘリオポリス九柱神の一人であり、厄災の蛇神「アポピス」の天敵とされる、地下世界の
王「セト」。「蛇」を鎮めるなら、そのお方しかいないでしょう!

 ……たぶん。
 ノーヒントじゃこれが限界です。これで読み違えてたら諦めるしかありません。

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