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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です

・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/02(火) 20:17:22 ID:QMZcPFFEO
>>382
つバシルーラ

今年もイイ(・∀・)!!作品をお願いします。

385 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/03(水) 15:11:16 ID:zfzhE3wXO
初保守!

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/03(水) 19:06:15 ID:Gr4ohUPh0
あいつら全然役に立たないな。

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/04(木) 15:58:57 ID:C+jJUpm90
ほとんど書き込むことはないけど
ねっとりじっくりやらしい目でROMってるので
職人さん方、今年もがんばってください。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/04(木) 23:40:47 ID:g1MOqQOv0
>>387
なんて目なんだ

389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 16:40:02 ID:vs5L38q+O
保守

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 23:45:36 ID:GEoDg2ck0
ネタは有るけど文才が無い

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 00:25:06 ID:o0vWDjBN0
文才が無くても小説の形式守って書いてみればいいんでないか

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 19:24:42 ID:Q96TMrpo0
>>388
死んだ魚のような目

393 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 23:17:36 ID:XTrY0ywj0
>>390
文才は神が与えるものじゃない。磨くものだ。
って誰かが言ってたよ

394 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/09(火) 08:49:31 ID:2s5gRYaA0
あけましておめでとうございます。
今年もゆっくり進んでいくので、よろしくお願いします。
ちょろっと忙しいので、投稿はまた次回。

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 10:00:27 ID:kusHn7+9O
>>394タカハシ!今年もよろしこ!

396 : ◆5uZ1x6RaQw :2007/01/09(火) 12:01:09 ID:8xtnEnwM0
おひさしぶりです
年末年始、ご挨拶に来れなくて申し訳在りません
昨年は純粋な読み手としてとても楽しい時間をいただき
更に書き手としても参加させていただいて
自分の新しい世界を開けた気がします
まだまだ未熟ですが今年も温かく見守っていただければと思います
皆様の良い一年をお祈りしています

>>タカハシさん
まとめいつも乙です
テキストの方、ありがとうございます

>>353
感謝です。やっとアルカパです
ストーリーがわかってても楽しめるものを書きたいですねー

>>暇潰しさん
エルフせつなす・・
自分も盛り上げられるよう頑張ります

では>>349続きです

397 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:04:06 ID:8xtnEnwM0
↑トリップ打ち間違えました・・
失礼しました、◆u9VgpDS6fgです
今度は間違ってないはず

398 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:05:50 ID:8xtnEnwM0

表へ出ると、まだ高い太陽は
相変わらず眩しく世界を照らしていた。
一息ついて樽の探索を始めようと思ったところに
ビアンカが『案内してあげるわ』と俺の手を引く。

外の探索さえ、この町ではやりにくいのか。
本当に厄介だ。

ぶらぶらと道を行き
あそこが教会、あそこがお店、と
その度にビアンカが指をさし示して俺に教えてくれる。

道行く女性に挨拶をしながら「あっちは?」と俺が町外れの建物を指差すと、
『あそこは子供が入っちゃいけないお店』とビアンカに袖を引かれた。

町の中央には広場があり
ビアンカや俺と同じくらいの年恰好の子供達が駆け回っていた。
なんの事はないその風景に、ビアンカがぴたりと足を止める。

『あれって、何してるのかしら』
ビアンカに並んで目をやると、子供が二人
小さな生き物を追い回しては歓声を上げていた。
追いやってはその前に立ちはだかり
摘み上げては地面に投げ出す。

399 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:07:00 ID:8xtnEnwM0

不意にビアンカが駆け出した。
『あんたたち、何やってるのよ!』
突然のビアンカの怒鳴り声に、二人の少年が足を止める。

乱暴に手に掴んでいた生き物が地面に転がり
体を震わせながらぐるる、と奇妙な唸り声を上げた。
頭に鮮やかな色の鬣を蓄えた小さな猫・・・
と言うよりは虎のように見える。

『なんだよ。またお前かよ』
背の低い方の少年が面倒くさそうに答える。
背の高い方がビアンカの顔を不服そうに睨んだ。

『やめなさいよ、かわいそうじゃない!』
怒りを含んだ声でビアンカが怒鳴る。
少年達が顔を見合わせて首を竦める。
母親と子供みたいだな、と俺は眺めながら思った。

『こいつ面白いんだぜ。変な声で鳴くんだ。
お前もやってみりゃいいじゃん』
背の低い方がまた言った。
高い方は猫だか虎だかとビアンカを
忙しなく見比べながら所在なさげに唇を尖らせる。

『だからってかわいそうじゃない。その子をあたしに渡しなさい』
少し落ち着いた様子で話すビアンカに
少年達はあからさまに嫌そうな表情を作り
『どうする?』とお互い目配せをした。

400 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:09:13 ID:8xtnEnwM0

小さいほうがまた口を開く。
『まあ、虐めるのも飽きてきたし、別にやってもいいけどさ。
タダでやるのはなんか癪だからな』
『レヌール城は?』とそこで初めて、背の高い方が声を出した。
ああ、と言うように小さいほうが頷き、
『そうだな。レヌール城のお化けをやっつけたら、やってもいいぜ。交換条件だ』
とにやりと言った。背の高い方があわせるように笑う。

『バカじゃないの?そんなのこっちがいいって言うと思ってるの?』
ビアンカは威嚇するようにまた声を荒げたけれど
少年達はにやにやと笑顔を崩さないままで
『それならこいつは渡せないな。諦めろよ』と言った。

苛立たしげにビアンカは息を吐きながら
『わかったわよ!お化けを退治したらその子を渡すんだからね!約束よ!』
半ば吐き捨てるように言い、踵を返した。

広場を出るビアンカを追うと、怒りに満ちたその背中から
『ほんっと子供なんだから!』と呟く声が聞こえる。

『・・・ねえ、サン』
歩きながら呼びかけられ、俺は歩幅を広げてビアンカの隣に追いついた。
苛立ちと不安の織り交ざった表情でビアンカが足を止めずにこちらを見る。

『猫ちゃんを助けたいの。とっても勝手だって思うけど、
サンもお化け退治を手伝ってちょうだい。だめかな?』
申し訳なさそうに、けれど確固とした意思を宿して見つめる瞳に、
気圧される形で俺は頷いた。
ほっとしたようにビアンカの表情に笑顔が戻った。

401 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:10:24 ID:8xtnEnwM0

複雑な面持ちのままのビアンカを促して宿に戻ると
パパスが帰り支度を始めるところだった。
待たせてすまないな、とパパスが俺に言う。

『ダンカンの容態も薬で落ち着いたようだ。そろそろ帰るとしよう』
椅子につこうとしたビアンカが一瞬、不安げな表情になった。
俺に向けられたその表情がお化け退治は?と訴える。
流れを知っている俺としては嫌にもどかしい一瞬が流れて
助け舟のようにおかみが口を開いた。

『あらやだ、パパス。今夜は泊まっておいきよ』
額から下ろしたばかりの白い布巾を片手に持ったまま
おかみはパパスの元へ歩み寄った。

もう片方の手で手際よく帳簿の確認をする。
従業員の男がおかみから布巾を受け取り、ダンカンのもとへ戻る。

『しかしサンチョを待たせているしな』
パパスは意外そうに、少し渋るように視線を空中に迷わせた。
『一晩くらい大丈夫でしょう。今から戻ったら日も暮れて危険だよ。
空き部屋でよければね、世話になった恩返しをさせてちょうだい』
『・・・うむ、そうか?ではお言葉に甘えるとするかな』

少し考えた後、パパスはやっと首を縦に振った。
おかみの顔と同時に、心配そうだったビアンカの表情も明るくなる。
『ああ良かった。すぐに食事の支度をするからね。
ビアンカ、お部屋までご案内してあげて』。

402 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:11:29 ID:8xtnEnwM0

『はーい、ママ。サン、おじさま、こっちよ!』
おかみの持った宿帳を覗き込み、
ビアンカがぱたぱたと駆けるようにして扉を開いた。
促されるまま階段を上がり、三階のどう見ても一番立派であろう部屋に通される。

『こんな部屋を。もう少し安い部屋でもいいんだがな』
気後れするようにパパスが呟くと、ビアンカが
『いいのよ、どうせ今は暇なんだもの』
と笑った。

食事が出来たら呼ぶね、と言い置いてビアンカは階下へ戻っていく。
荷物を下ろしてパパスは
その広い部屋に感心したように頷きながらベッドに腰を下ろした。

『サン、明日は早めに出るぞ。食事を取ったら今夜はすぐに休もう』
こくりと頷くと、パパスは緊張を解くように大きく伸びをしてベッドに横たわった。

宿の食事は華やかで美味かった。
腹を満たして部屋に戻ると、パパスはすぐに横になりいびきを掻き始めた。

俺も柔らかなベッドに横になったが、
すぐには眠りにつくことはできなかった。
ベッドの感触が肌に慣れ、やっとうとうとしてきた所で
俺は小さな声に呼び起こされた。

403 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:12:37 ID:8xtnEnwM0
本日ここまでです
ありがとうございます

それではまた。

404 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 16:31:49 ID:RipdOf8B0
ビアンカの細かい仕草がカワユス
読んでいてふと結婚イベントが頭をよぎった
主人公がどう決断するにしても、レヌール城は重要なイベントだな
本年も楽しみにROMらせて頂きます。ガンガレ

405 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 17:18:12 ID:Q7+FBPGe0
ゲレゲレたんハァハァ

406 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:28:54 ID:uIbEg1+D0
明けましておめでとうございます。
どうぞ今年も真理奈の物語にお付き合いをよろしくお願いします。

さて、前回に引き続き設定の話を少し。
ドラクエ3に元ネタがあるという話がありましたが、
真理奈の物語にも元ネタを少し盛り込んでありますのです。

ロマリアとイシスが舞台の時、フィリーとプエラが結婚しましたが、
あれはクレオパトラがローマのカエサルと結婚した話が元です。
ゲームでは国同士の交流が全然見られないな、という理由で考えた話です。
ちなみにイシスが近親結婚しか認めていないというのは、
エジプトで本当にあった事です。

次のエジンベアと商人の町での出来事ですが、
これはアメリカ独立戦争を元にしています。
まぁそもそもエジンベアは過去にスーの町に行っているようなので、
ことさら言う必要もないかもしれないですけど。
けれど商人の町の方が植民地っぽいかな、と思いました。

そして今回のエルフさん。
彼女らが何故あのような状況になったのか、という事ですが
これもある歴史上の出来事を元ネタにして考えてみました。
けれど今回だけでは全てを語る事は出来なさそうになってしまいました…
おいおいその全貌を明らかにしていこうと思います。
ゲームでは語られていれば、もっと違ったものになったでしょうけどね。

では今回の投下ですが、その前に一つお詫びを……
この下のレスを>>359の前に付け足すという形で読み進めて下さい。
つまり順番としては>>407>>359-367>>408です。
分かりづらくて申し訳ないです…

407 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:34:35 ID:uIbEg1+D0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
木々の鳴く音がする。
横殴りの風に、私の心も揺れる。
どうして泣いているの?
言葉にならない不安。
悲しみ。
後悔。

  「来ないで」

瞬間、私は否定された。
拒絶。
拒絶…
拒絶……

  「皆と、遊んで、おいでなさい…」

ユラユラと赤が光る。
星のキラキラな瞬きとは違う、優しくないもの。
それが悲劇の色なんだと、その時私は知った。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

408 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:41:52 ID:uIbEg1+D0
薄暗い森の中を駆けていく3人。
世界は既に夕日を迎えており、もう数時間もすると闇に包まれるだろう。
夜に森を進むのはとても危険だ。
等間隔に生えなどしない木々が位置感覚を混乱させていくのに加えて、
視界が利かなくなってしまうとモンスターを視認するのが困難になってしまう。

  「……急ぎますよ」

女王は後続の2人に声をかけ、ピオリムを唱えた。
クンッと体が軽くなり、速度が二倍ほどアップする。

  「うわっ! ……っと!」

危うく木に衝突しそうになったソールを最後尾のフィリアが軌道修正してやる。

  「気をつけて」
  「これが……呪文かぁ……」

初めて体験する呪文に感動し、ソールは目を輝かせながら女王の背中を追っていく。
そしてフィリアも女王に羨望の眼差しを向ける。
時たまバリイドドッグやさまよう鎧がウロウロとしているのに鉢合わせするのだが、
モンスターは全て女王にバシルーラで吹き飛ばされていく。
その半分以上が大きな音を立てて木にぶつかり、気絶してしまう。
運よく上空まで放り出されたとしても雲まで届きそうな勢いで、視界から消える。

  (凄い……)

まさにその一言に尽きた。
おそらくパトリスよりも呪文の力があるだろうとフィリアは推測する。
フィリアやソールも一応の装備はしている。
ソールに与えられたのは、使うとラリホーの効果がある眠りの杖。
フィリアには少々扱いが難しいが、多数の敵を相手にするには適したモーニングスター。

409 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:50:17 ID:uIbEg1+D0
二つとも女王が用意してくれた物だ。
しかしそれらも未だに出番を得る事は出来ないでいた。
女王の独壇場と言っていいだろう。
ここまでレベルが違うならば、むしろ2人は足手まといになってしまうくらいだ。

なのにどうして一緒に行くなどという方法を選んだのだろうか……
現にフィリアとソールの2人と、女王との距離が少しずつ離れてきている。
その足りない素早さをフィリアは2人だけにピオリムを重ねがけして補った。

  「フォルテ…今行くからな……」

黙したまま考え込んでいたフィリアの思考は、ソールの独り言で方向を変える。
すなわち、フォルテは何故連れていかれたのか、という事だ。
エルフが貴重な存在である事は既に知っているが、
誘拐する事の意義がフィリアには分からない。

だいたいエルフの里を簡単に見つける事自体、ほぼ有り得ない事態なのだから。
なぜなら、里に入ろうとした時に感じた違和感。
あれがきっとエルフの里と下界を断絶する効果を持つものなのだろう。
その為にエルフは人間の記憶から忘れられていった、と予想する。
それなのに、フォルテは連れ去られてしまった。

  (後を付けられた……?)

そしてもう一つの気がかりがある。
ソールに"西の洞窟に来い"と告げた男の事。
フィリアの事を知っていて、なおかつ助言するような人物は誰か。
とは言っても、暇そうなジュードしか考えられないのだが……
しかし彼が誘拐犯の側にいる理由が分からない。
けれど、もしそうだとしてもきっと理由はあるはず…

410 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:56:24 ID:uIbEg1+D0

  「見えました」

女王のつぶやきに合わせて走るスピードを緩めると、目の前に洞窟が現れた。

  「ここからは今まで以上に危険です。周囲に気をつけるように」

女王はトヘロスを唱え、洞窟内へと進んで行く。

  「行こう。フィリアねぇ」

ソールがフィリアの手を握ってくる。
ソールの手は少しだけ震えている。
最初に会った時の威勢の良さはどこにいってしまったのだろうか。
不安を吹き飛ばしてあげようと、フィリアも手を握り返す。

  「行こ」

結局疑問は解消されなかったが、この洞窟の底にきっとその答えがあるのだろう。
そう。
分からないならば探しに行けばいいのだ。
それが冒険の醍醐味ではないか。
そしてフォルテを無事に助け出したら、今度は船に乗った時の話をしてあげよう。
そう心に思うフィリアだった。

411 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:03:10 ID:uIbEg1+D0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
  「もし、また彼女に会えるのなら……」

オレはアイツの事を何とも思っていなかった。
いや、そうじゃないな。
金になるとしか考えてなかった。
今思えば最低な野郎だ。

ただこの村から抜け出したかった。
もっと大きな世界を見たかった。
それだけだった。

けどその為に取った手段は、償わなくてはいけない類のものだった。
どこで魔が差したのかはもう覚えてない。
記憶にあるのは彼女の澄んだ瞳だけ。
男達にどれだけ玩ばれようとも、俺を見る視線に変わりはなかった。

そんな彼女にサヨナラを告げられた時、彼女の心に初めて触れた気がする。
けれど俺はどこまでも愚かだった。
汚れた自分に自身をつける為に、この期に及んでなお彼女を試したのだ。

約束の時より遅れて到着すると、彼女の手には赤い糸。
その宝石に彼女が落とす俺の為に流された涙を見て、ようやく決心した。
もう彼女を離しはしない、と。
この地底湖に誓おう。

俺はそこで初めて彼女にキスをした。

  「もし、また彼女に……アンに会えるのなら……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

412 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:11:25 ID:uIbEg1+D0
フィリア達が西の洞窟へとたどり着くより少しばかり前、
湿った土や木の根を踏みつけながら2人の男が走っていた。
人を担いで走るのはこんなに辛いとジュードは知らなかった。
エルフの体重が軽いのがせめてもの救いだが。

  「へへへ、上手くいったな」
  「あぁ…それにしても、手慣れてるな」

ジュードの前を走るのは一時的にジュードの相棒となったアヴァルス。
里に入りエルフを気絶させ、連れ出すまでの彼の手際は鮮やかだった。
決して褒められはしないだろうが。

  「へへ、そうか? オレは元々遺跡専門の盗賊だぜ?」

それでも褒め言葉として受け取ったのだろう。
アヴァルスは、謙遜しつつも嬉しさを隠さない。

  「まぁここ最近は似たような仕事をやってたからな」
  「……人さらいか?」
  「いやぁ、あれは少しばかり危険だよ」
  (やった事があるのか…?)

さも経験があるかのように語るアヴァルスの発言に、嫌悪感を覚える。
都合上ジュードもエルフをさらうことになってしまったが、
当然気持ちの良いものではなく、少々後悔している。
もちろんフィリアの話がなければ違う方法を取っただろう。

そもそもこの怪しい商売を利用してエルフ狩りの連中を捕まえようと考えたのは、
フィリアがエルフと会ったという話があったからであった訳だが。
しかし捕まえるまでは仮の姿とは言え、自身もエルフ狩りを装わなくてはいけない。
それはつまり、ジュードもエルフをさらわなくては怪しまれてしまうという事だ。
いくらなんでも手ぶらでエルフ狩りの依頼主に会う訳にはいかないだろう。

413 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:18:07 ID:uIbEg1+D0
問題はその事に気付いたのがフィリアの後を付けて里に入った時だという点。
行き当たりばったりの行為と言われればそれまでだ。
だいたいエルフを狩ろうとする者が何人いるのかも分からないのだ。
ジュード1人でどうこう出来るレベルの話ではないかもしれない。
何とかフィリアに助けを求めておいたが、どうなる事やら……

  「今はモンスターをさらう仕事をやっている」
  「……?」
  「ある方面ではエライ人気でな。興味あるか?」
  「……」

この後の事を考えていたジュードは一瞬会話についていけない。
そんな事をして金になるのだろうか?
モンスターを食べたりするとか……?
せいぜい、そんな事を考えられたくらいだ。

  「へへへ…やっぱ用心深いんだな。そういうヤツは好きだぜ」

沈黙を勝手に解釈してアヴァルスが話を進める。
そういうお前は間が抜けてるな、とは言わないでおく。
その薄ら笑いから受ける印象は正直あまり良くはない。

  「なぁニイさん。このヤマが終わった後も一緒に仕事しねぇか?」

まだ仕事が終わってもいないのに、次の仕事の話をするアヴァルス。
そこまでジュードの事が気に入ったのだろうか。

  「……どうして俺を?」
  「へへ…目だよ、目」
  「目…?」
  「目は口ほどにモノを言うって言うだろ?
   アンタの目には確固たる決意ってのが宿ってなかった」

414 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:23:21 ID:uIbEg1+D0
  (ケンカ売ってんのか?)

一瞬本気でそう思う。
少なくとも褒め言葉ではない事は確かだ。

  「おっと、怒らないでくれよ? 俺はそれが良いって言ってるんだ。
   人間は迷う。だからいざという時に強くなれる。そうだろ?
   だからオレはそういうヤツとしか組まねぇんだ。
   下手に信念持ってるヤツなんかは逆に危なかったりするんだぜ?
   こんな仕事だと特に、な」

こんな仕事を続ける気は、ジュードにはさらさら無い。
けど、その持論には少しだけ説得力があったような気がした。

  「あぁ、依頼主は別だけどよ?
   金払うヤツに迷われちゃあこっちが困っちまう」
  「はは」

そのギャグには素で笑ってしまった。

  (迷ってる、か…)
  「まぁ考えといてくれや。着いたぜ」

考え込むジュードを横目に、アヴァルスは声をかける。
森の中にひっそりとたたずむように洞窟が口を開けていた。
洞窟の中はさらに気温が下がり、ひやりとした空気が肌を刺す。

  「なぁ、今までどんな所に潜ったんだ?」
  「へへ、そうだな…有名所で言うとガルナの塔に東バハラタの洞窟。
   ピラミッド、シャンパーニってところか。
   今度は西の大陸に渡ろうかと考えてる。
   手付かずの塔があるらしくてな」

415 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:29:35 ID:uIbEg1+D0
自分の功績を話したりするのが好きなようだ。
ペラペラと喋り上げる。
しかし、さすがに経験は豊富なようだ。
アヴァルスは薄暗い通路を迷わずに進んで行く。

  (遺跡専門って……なるほどな)
  「その途中で他の仕事したりしてたんだがな。
   久し振りに洞窟潜ってみたくなってよ、へへ。
   そこでこの話を聞いたって訳だ」

しかし、こんな場所で依頼される話なんて明らかに怪しい。
アヴァルスにはどこか警戒心が薄いようなところがある。
もしくは変わり者だって事だ。
それからは会話もなく、ただ進んでいった。
荷物を持ったままモンスターの相手をするのが厄介だった。
後ろからどーんと体当たりしてくるのは止めてもらいたいものだ、と思う。

二つほど階段を降りると、さっきまでと空気の違う事に気がついた。
ここがおそらく洞窟の最下層なのだろう。
そのフロアの最奥に、これまでとは一転して明るくて広い部屋があった。
ちょっとした泉になっていて、水底から光が溢れている。
こういうのを地底湖というのだろう。
宝箱が一つ、口を開けたまま横倒しに転がっており、
その側で老人が1人背を曲げ、眼前の杖に体重を預けるようにして立っていた。

  「おぉ、早かったですねぇ。それに二つもですか」

挨拶を交わす前から喋り始める。
二つとは、エルフの事だろう。

  「あぁ、思いのほかスムーズに里が見つかったんでな。
   へへへ、こんな楽な仕事は初めてだったよ」

416 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:35:23 ID:uIbEg1+D0
アヴァルスはニヤニヤと笑いながらソイツに近づいていく。

  「はじめまして。私の名はクルエントです」
  「そりゃどうも。アヴァルスだ。こっちはジュード。協力してもらった」
  「そうですか、それはそれは……さぁ、こちらに渡して下さい」

低くしゃがれ気味で、けれど重みのある声色。
フードを深く被っている為に顔を見る事は出来ないが、相当高齢であるのは分かる。
ジュードは彼の声の中に、隠しきれない高揚感を感じ取っていた。

そして同時に後悔していた。
この老人は、危ない。
そう思わせる何かが確実にあった。

  「先に金を見せてもらおうか」
  「一匹十万Gじゃったな」
  「あぁ」

クルエントは荷物の中からGを取り出し、アヴァルスに手渡した。
その金の半分がジュードの分なのだろう。
アヴァルスが腕に抱きかかえているエルフを老人の足元に放り投げる。
エルフは気絶させられている為、起き上がる気配もない。

  「…どうした? アンタの取り分だぜ?」

エルフを渡そうとせず、差し出された金を受け取ろうともしないジュード。
それを不審に思ったアヴァルスとクルエントの視線に少し焦る。

  (リレミトでフィリアと入れ違いになったら困るな…)

フィリアが来れば何とかなるかもしれない。
商人の町で兵士長と戦った時のように。

417 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:41:16 ID:uIbEg1+D0
  「エルフを金で買ってどうするんだ? ペットにでもするつもりか?」

ただの時間稼ぎだ。
取引が終わり、逃げられては元も子もない。
しかし相手の目的を知る事は、彼らを捕まえる理由を作る事にもなるはずだ。

  「私にはそんな趣味はないよ」

声を殺しながら笑うクルエントはフード付きのコートを脱ぎ、素顔を晒した。
深く刻まれた顔の年輪。ツヤのない白髪。どこか達観したような眼。
どうしても老衰というものを感じざるをえない。
老人はコートの中からナイフを取り出し、コートを捨てる。
彼が手にしたのは真っ白な柄に細やかな技巧を凝らしてある、聖なるナイフだ。

  「エルフの価値。そんなはした金などと釣り合うものではないわ!」

声の調子が一気に変わり、視線が鋭くなる。
ナイフの切っ先を足元のエルフの首筋にあて、その美しい皮膚を裂いていく。
傷口から血が噴き出してくるが、そのエルフはビクリとも動かなかった。
そしてクルエントはうなじに垂れていく血を舌で舐め取り始める。

  「お…おい……何してんだよ……」

アヴァルスも二十万Gのはした金を手にしたまま目の前の光景に釘付けになる。
無心に口付けるクルエントの表情は、まさしく愛撫する時のそれだった。
見ていて気持ちのいいものではない。
ピチャピチャと音が鳴る度に、老人に対する恐怖感が強くなる。

  「くくっ…美味いのぉ……世界のどんな料理も勝てはせん」
  「そんな……馬鹿な……」

クルエントが喉をゴクリと鳴らす度に、彼の体に変化が起こる。

418 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:47:44 ID:uIbEg1+D0
顔のシワが薄くなり、肌にみずみずしさが戻ってくる。
白髪に本来の色が戻ってくる。
そして曲がっていた背骨が正され、体格がしっかりとしたものになっていく。

  「若返り…か……?」
  「ふふっ…クククッ……」

堪え切れないといった感じの笑いが、血に濡れた唇から漏れる。
その声はさっきとは違い、確かに若い。

  「私は間違っていなかった……
   これが…これがエルフの正しい使い方よ!!」

老人だった者は立ち上がり、高らかに笑い始める。

  「さぁ、そっちの物も渡せ。そしてエルフの住処を教えるのだ!!」
  (ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…!)

エルフの血を喰らった老人の目線がジュードに突き刺さる。

  「くっ!!」

縛られるような力から逃れるように、クルエントから距離を取るジュード。
抱えているエルフがやけに重たく感じた。

  「フォルテ!!」
  「フォルティス……」

その時、部屋の入り口から悲痛な叫び声が発せられた。
フィリア達がやっと到着したのだ。

  「フォルテっ! 大丈夫か?!」

419 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:52:40 ID:uIbEg1+D0
今にも飛び出しそうなソールをフィリアが止める。

  「ジュード」
  「フィリアか……悪い…」

冷や汗を流すジュードが横目でフィリアに詫びる。

  「最初からお前にも話しとけばよかったな…
   馬鹿な事したぜ……」

首を横に少しだけ振り、謝罪を否定するフィリア。

  「…夕ご飯、ありがとう」
  「あ…?」

ジュードは思い出せない。
お礼を言われるような事をした覚えもない。

  「あの人が悪い人?」
  「お、おう……」

何も責めないフィリアに、ジュードはますます申し訳なくなる。

  「これはこれは……飛んで火に入る夏の虫、というヤツですな」

直立不動で傲慢な態度のクルエントの発言で、ジュードは我に返った。
そんなクルエントに女王が冷たい顔で告げる。

  「……今すぐフォルティスを返して下さい」
  「もう死んでますよ、これは」

その様子を楽しそうに見ながら、彼はつま先で足元に横たわるフォルテを蹴る。

420 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:57:50 ID:uIbEg1+D0
フォルテの頭が女王達の方へと転がる。
顔は既に真っ白で、血の気がまったく感じられない。
そしてカランッと音がなり、フォルテの懐から宝石が転がり落ちる。

  「これは…?」

クルエントが赤い宝石を拾い上げ、調べ始める。
フォルテが持っていった夢見るルビーだ。

  「エルフさんよ、悪いが逃げよう。アイツはヤバい…
   ここは俺とフィリアで食い止めるから――」
  「私の娘をさらった人間が何を言うのです」
  「そうだそうだ! フォルテと一緒じゃなきゃ帰らないぞ!!」

ソールが武器を握りしめながら叫ぶ。
けれどこれ以上エルフが犠牲になるのは一番あってはならない。

  「あのエルフはもうダメだ!! それにアンタまで捕まったら……」
  「私がエルフを見捨ててどうするのです。仮にも私は女王なのです」

ジュードに聞かせるというよりは、自分自身に言い聞かせるようにつぶやく。

  「俺も手伝うよ! 結婚するって決めたんだ! 死なせてたまるかよ!!」
  「ジュード」

フィリアがジュードの手を引く。
真っ直ぐジュードの目を見るフィリアの瞳は「お願い」と言ってるようだった。

  「ちっ…仕方ねぇな…」

借りがあるフィリアには逆らえず、ジュードは戦うことを決意せざるを得ない。
抱えていたエルフを部屋の入り口に寝かせる。

421 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:03:28 ID:L/7YXVDF0
向こうの手に渡らないように気をつけながら戦わなくてはならない。

  (やっぱ最初からフィリアに話しておくんだったぜ…
   真理奈とパトリスは…まだカザーブか……)

帰って来ていたとしても、ここに現れる事はないだろう。
スーッと鞘から剣を抜くジュード。
クルエントは手にしていた宝石を自分の懐に入れる。

  「ふふ、エルフとはおかしな種族おのぅ。
   たった二匹助ける為だけに王が出てくるとはな。
   サービス精神旺盛な事じゃ」
  「うるせ~!! その口調、似合ってないぞ!!」

ソールが耐えかねてか、フィリアの制止を振りほどいて突撃してしまう。

  「くそっ!!」

ジュードがそれを追いかける。
場は一瞬にして戦闘状態へとなだれ込んだ。

  「「ピオリム!」」
  「スクルト」
  「ルカナン」

女王とフィリアがそれぞれ呪文を唱え、パーティーを強化する。

  「イテテテッ! 止めろ! 離せよ!!」

勢いよく突撃したソールの攻撃はあっけなくかわされ、
クルエントはソールの首を掴んで、小さい体を持ち上げた。
続けてジュードがソールを傷つけないように斬りかかる。

422 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:07:40 ID:L/7YXVDF0

  「ベギラマ」

炎の壁が自身の前に築かれ、クルエントの姿が見えなくなる。
しかしジュードは走るのを止めない。

  「フィリア!」
  「バギ!」

ジュードの後ろから追走していたフィリアが壁に穴を開ける。
その呪文はちょうど炎をかき消す程の威力で、ソールを傷つける心配はない。
その道にジュードが飛び込み、壁を切り抜ける。
しかしその先にはクルエントの姿はなかった。

  「まだまだじゃ」

死角から現れたクルエントの攻撃を防げず、炎の中に突き飛ばされる。
その攻撃の瞬間をフィリアがモーニングスターで狙う。
動きを止めようと足元に攻撃をしかけるが、武器ごと踏み抜かれてしまった。
クルエントはフィリアの攻撃を見てなどいなかったはずだ。
驚いているフィリアもバシルーラで吹き飛ばされる。

  「おっと女王様。あなたの大切なお仲間がどうなってもいいのですか?」

続けて攻撃を仕掛けようとしていた女王の動きが止まる。
聖なるナイフを首に突きつけられているソールの姿に躊躇したのだ。
ソールは刃に恐れ、ゴクリ唾を飲み込む。
その小さな動きでさえ、皮膚に刃が食い込みそうになる。

  「……人間など……」

口ではそう言いながらも、行動では人間であるソールの身を案じていた。

423 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:13:29 ID:L/7YXVDF0
  「エルフの血というのはやはり若い方が美味しいんですかねぇ?
   それとも寝かした赤ワインのように歳取った方が味わい深いのかな?」

その嘲笑は女王の感情を逆なでするのに十分だ。

  「ふふふ…さぁその体に流れる血を私に!」
  「……!! イオラっ!!」

女王は呪文を唱えると同時に走り出す。

  「むっ……」

爆発を促すその呪文はクルエントに直接放たれたものではなく、
彼の二メートル手前で地面をえぐった。
巻き上げられた粉塵が炎をかき消し、クルエントの目をくらました。

  「ふっ」

その一息で女王はクルエントとの距離を詰める。
ソールを掴む左腕に一閃の真空刃を放ち、ダメージを与えた。
力の緩んだその手からソールを奪うと同時に、バシルーラを腹に叩き込む。

  「ごぉっ!!」

クルエントが肺の空気を吐き出す音を聞きながら、フォルテを探した。
残り火から上がる煙と、舞い上がった粉塵のせいで視界が悪い。

  「女王様…あ、ありがとう。もう大丈夫だよ」

ソールの礼で彼を抱いていた事を思い出し、降ろしてやった。
ソールは少し恥ずかしそうに頬を赤くしていた。
女王もその素直な礼に、言い得ない気恥ずかしさを覚える。

424 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:18:04 ID:L/7YXVDF0
  「くく…エルフが攻撃的なのはイメージに合わないのぅ」

和やかな一場面も、戦闘中では場違いにさえ思えてしまう。
視界が晴れ、その先にクルエントの姿が確認出来た。
クルエントはフォルテの二の腕を掴み、無理矢理立たせている。

  「フォルテー!!」

フォルテの服は自身の血で染まってしまっていて痛々しい。

  「残念だったねぇ」

対してクルエントはダメージなどないかのように、余裕の表情で笑う。

  「へへへ…クルエントさんよぉ」

そこに今まで傍観していたアヴァルスが現れた。

  「…アヴァルス、とか言ったかの?」
  「あぁ。良い仕事したろ?」
  「くくく、そうじゃのぅ」
  「オレをもう一回雇わねぇか? 邪魔者はオレに任せてくれよ」

呪文で回復したジュードとフィリアが女王の横に並ぶのを示しながら、
アヴァルスは契約を持ちかける。
今まで傍観しながら金になるのかどうかを算段していたのだろう。

  「フィリアねぇ、ありがとう。大丈夫だよ」

心配してくれたフィリアにソールが礼を言う。
どうやらケガはないようだ。
代わりにソールは埃まみれになったフィリアの顔を拭いてやる。

425 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:28:35 ID:L/7YXVDF0
フィリアはくすぐったそうに顔をしかめていた。
しかし小さい子に世話を焼かれている様子は、はたから見れば可愛い。

  「あ、ありがとう…」

その横でジュードはボロボロになった自分の姿をしきりに気にしていた。
炎の中に放り込まれたのがよほどこたえたのだろう。
髪の毛が少し焼けてしまっているのが目立つ。

  (これ終わったら髪でも切るかな)

髪をさっとかき上げ、気合を入れなおす。

  「しかし女王様強いんだな…エルフのイメージ、確かに変わったぜ…」
  「そういうアンタは弱すぎ。フィリアねぇは僧侶だからいいけどさ~」
  「ただ敵につかまるような役よりはいいと思うけどな」
  「アンタは仮にも戦士だろ? 同じ条件ならオレだってやれるぜ」
  「ったく、子供が生意気言うなよ…アイツは強いぜ」
  「どうしよう?」

フィリアが作戦の事を言う。

  「人数では勝ってるんだから、後はコンビネーションだろ」
  「じゃあオレが引き付けて、フィリアねぇは援護。
   アンタは突撃で、女王様が追撃で決まりだね」
  「フィリアよぉ、武器落としたらダメだろ。攻撃できねぇじゃん」
  「うん…ごめん」
  「無視するんじゃねーよ!!」
  「正面からでは駄目ですね。かく乱でいきましょう」
  「よし、オッケー」

レベルの差を見せ付けられてもまだ、士気は下がっていなかった。

426 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:33:17 ID:L/7YXVDF0

  「…悪いな、俺のせいでよ」

自分のせいで皆を巻き込んだ、とジュードは反省する。

  「私にも責任はあります」

つくづく自分は女王に向いていないな、と女王は自嘲する。

  「それより今は助ける方が先だと思う」

妖精をいじめる人間は許せない、とフィリアは憤る。

  「そうだぜ、皆で一緒に帰ろう」

この手でフォルテを助けるんだ、とソールは誓う。

  「くく…作戦は決まったかね?」

その問いかけによって、再び戦いの火蓋が切って落とされる事になる。

427 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:43:02 ID:L/7YXVDF0
今回はここまで~
長すぎ!!というツッコミをお待ちしておりますw

>>タカハシさん
投下まってますよ~

>>◆u9VgpDS6fgさん
ビアンカたんハァハァ
やられました…思わず上目遣いでお願いされるのを妄想w

428 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/11(木) 18:57:11 ID:8Vjqa17a0
>>403,427
お疲れ様です。

ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/12(金) 16:57:33 ID:Ja4v6YGKO
暇つぶし氏乙です!

430 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/12(金) 22:25:50 ID:gs3XwzC7O
>>タカハシさん
まとめどうもです!

>>429
ありがとうです!

さて、大丈夫だとは思いますが一応触れておいた方がいいのかな?
今回の騒動がどこまで本当なのか自分には分かりませんが、万が一の場合は避難所&まとめサイトがメインという事でいいんですよね?


431 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/13(土) 10:46:46 ID:2xRMUSjZ0
>>430
突然の閉鎖騒動ですね。
毎年恒例みたいですが、相変わらず本当のことがわからないw

万が一の場合は、暇潰しさんの言うように避難所&まとめサイトへ行くしかないですね。
本スレをしたらばあたりに作ればよさそうですが、2chとは違い管理人が必要なんでしたっけ。
どちらにせよまだわからないので、「避難所&まとめサイト」という事になるでしょうね。

432 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/13(土) 16:31:23 ID:BqeL9HNUO
>>431
毎年恒例なんですかー知らなかった…
ちょっと焦って書き込んでしまいましたorz

しかし改めて避難所やまとめサイトがある事のありがたさを実感しましたよ
感謝感謝

433 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/13(土) 17:21:15 ID:2xRMUSjZ0
>>432
恒例、とはいっても今回のはちょっと違うようですね。
ニュースサイトにも扱われているそうですし。
どうなっちゃうんでしょうね、ほんとに。

もし無くなったら… さみしくなるなぁ(´・ω・`)

434 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/15(月) 20:40:48 ID:fHpKD9vI0
保守

435 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/15(月) 20:54:10 ID:9C8422yxO
タカハシ、楽しみにしてるよ~

436 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/17(水) 17:11:41 ID:QCjZR7KgO
結局閉鎖は大丈夫臭いね
よかったよかった

437 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/18(木) 22:20:23 ID:k92fIqeNO
投下待ち保守

438 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/20(土) 13:05:03 ID:jEszPzNqO
保守

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/21(日) 00:19:48 ID:jxYmcrT1O
人いないね…

440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/21(日) 00:21:49 ID:oLfYl6dOO
ちょ……
レッドマン大丈夫か……?

441 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/22(月) 02:53:05 ID:rnoI/rLMO
まだまだ先、所用で忙しく、
当分書くことができません。
まとめも更新する余力がないので、
過去の作品を読み返したりして隙間をお埋めくださいw

442 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/22(月) 15:46:28 ID:0S7/+Hmb0
>>440
レッドマンはどうやら大きな事故に巻き込まれて書き込めなかったらしい。
本人が避難所で報告していたぞ。

>>441
乙です。焦らずに頑張ってください!

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/24(水) 14:28:14 ID:wurjB4Sw0
hosu

444 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:21:56 ID:W6fUJkOc0
>>404
ありがとうございます
結婚イベントは今から頭を悩ませていますが
まずは目の前のイベントをひとつひとつ丁寧に書いていこうと思います

ビアンカを如何にかわいく書くかがレヌール編の課題です

>>405
ありがとうございます
ゲレゲレたんを如何にかわいく(略)

てかまだ名前決めてないや

>>暇潰しさん
乙です
ありがとうございます

やっぱ戦闘の緊迫感が凄いですね、羨ましい・・・
クライマックスすっごい楽しみです
てかクルエントきもっ!きもっ!(とりあえず二回言った)

>>タカハシさん
まとめ乙です
一人でまとめ作業はやっぱり大変だと思うので
無理せず適度に頑張ってください
余裕が出来るまで待ってますよー

>>それでは402続きです

445 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:23:21 ID:W6fUJkOc0

『サン。サン、起きて』
目を開けると暗闇に
輝くようなブロンドと白い肌が浮き上がっていた。
一瞬ぎょっとして体をこわばらせた俺に、ビアンカは怒ったように
『やだ、サンってば寝ぼけてるの?お化け退治に行く約束よ!』
言いながら強引に俺をベッドから引きずり出す。

よろよろと起きだすと、ビアンカは
もう、しゃきっとしてよ、と俺の背を叩いた。
隣のベッドでは相変わらずパパスがいびきを掻いている。

まだ眠りから覚め切れないでいる頭を軽く振って、
俺はやっと背を伸ばしてビアンカの隣に立った。

部屋の中に据え付けられているタンスを開けてみると
中には見覚えのある小さな種と、
根元に装飾のついた羽根飾りのようなものが見つかった。
これはキメラの翼に間違いないだろう。

道具袋にしまい込み、音を立てないよう慎重に扉を開いて
俺とビアンカは廊下へと滑り出た。

予想以上に大きな音を立てて軋む階段や扉に
ヒヤヒヤしながらそろそろと忍び足で正面へ向かい
やっとの思いで宿屋を抜け出す。

神経を尖らせてゆっくりと扉を閉めると
背後でビアンカが大きく息を吐いた。
『ああ、緊張した!こっそり抜け出すなんて初めてだわ!ワクワクしちゃう』
けらけら笑いながら言い、俺の顔を見る。

446 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:24:57 ID:W6fUJkOc0

青白く明るい月がその笑顔を照らしていた。
作り物のように滑らかな肌と糸のような細い髪の毛が光を反射して
神秘的なまでに美しく輝いている。

思わずドキッとした。
とかならラブストーリーとしては正解なのかもしれないけれど、
無邪気に紅潮した頬は子供のそれそのもので
子守、なんて言葉が俺の脳裏を過った。
(早く大人になってくれ)

町を出る前にビアンカの装備を確認する。
薄いワンピースの上に羽織った厚手のケープに
小さな果物ナイフと薄い木製の鍋のふた。
『キッチンから持ってきちゃった』とビアンカが言うとおりに、
それはとても装備とは呼べない品々だった。

幾ら弱いモンスター相手とはいえ
この装備ではやはり不安がある。
手持ちの小銭を確認するが、現段階では
ビアンカの装備を買い揃えるだけの金は、勿論持っていなかった。

仕方なくビアンカに小銭稼ぎを提案するが
『そんなことしてたら夜が明けちゃうわよ』
と一蹴される。

モンスターの危険さとビアンカの身が心配なことを説明し、
何とか理解を求めたが駄目だった。
大きな不安を抱えたまま、急かされるように俺は夜の町を出た。

447 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:26:11 ID:W6fUJkOc0

世界はまさに表情を変えていた。
昼間は気持ち良いほどに青々と茂っていた木々が
夜の青さの中更に暗く影を落とし、
遠くには緩やかな低い山の陰が
夜空をも飲み込みそうに深く黒く浮かび上がっている。

そこらじゅうにモンスターの気配が立ち込め
ビアンカも流石に雰囲気に圧されたのか
押し黙ったまま俺の袖を掴んで歩を進める。

やっぱりレベルを上げていった方がいいと言おうと、
振り向いたところでビアンカがほう、と大きく息を吐いた。

『凄いわ。夜に外に出るなんて、本当に初めてだわ。ドキドキしちゃう』
キラキラと瞳を輝かせて、また辺りを見回す。
この子には不安とか緊張とか言うものがないんだろうか。
俺はがっかりしてまた前を向いた。

アルカパ周辺での初めてのモンスターは
二匹のでかい緑の芋虫だった。
なんだっけこいつ。グリーンワーム?
モンスターの名前っていまいち覚えてない。

戦闘態勢に入ると、ビアンカがいの一番に駆け出した。
手に持ったナイフで『えいっ』と掛け声も高らかに切りつけるが
芋虫は体を竦めただけで傷ひとつつかない。

『何このナイフ。切れ味が悪いわ』
怒ったようにナイフを振り回すビアンカに
芋虫が体当たりを食らわす。
大きな悲鳴を上げて、ビアンカが地面に転がった。

448 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:28:25 ID:W6fUJkOc0

『いった~い!何すんのよこの芋虫!あったまきちゃう!』
口だけは達者だなあと、ビアンカを横目に俺も武器を叩きつけるが、
芋虫は一瞬ごろんと丸まるとすぐに体勢を立て直す。

うーん、やっぱり新しい武器が必要かも。面倒くせえなあ。
芋虫の体当たりを盾で防ぎながら俺は
どうやってビアンカを説得しようか思案していた。

実際のゲームじゃこんなこと考える必要もないのに。
あーマジ面倒臭え。

何度か攻防のやり取りがあり、芋虫は最終的に俺が仕留めた。
というかビアンカは役に立たなかった。
呪文でも覚えれば違うかもしれないけど
結局呪文ばっか使われてもすぐMP切れで役立たずに戻るのか。
あー、いばらの鞭が欲しい。くそ。

自分の攻撃が効かなかったことが余程不満なのか
ビアンカはふてくされるようにその場に座り込んでいた。
手を差し出すと少し間をおいてその手を握る。

『つまんないわ。あたしってそんなに弱いのかしら』
頬を膨らませるビアンカに、俺は再び説得を開始した。

経験をつめば強くなれること。
武器を変えれば攻撃も効くようになること。
そのためにまず町の周囲で
モンスターを狩っていれば一石二鳥なこと。

ビアンカは不承不承頷くと、
つまんないつまんないと言いながら俺の前に立って歩き出した。

449 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:29:42 ID:W6fUJkOc0

町の周りを囲む森をぐるぐると歩きながら
さっきの芋虫や、角ウサギ
(ビアンカは攻撃するのを嫌がったが、
角で突かれたら怒ったようで執拗に叩いていた)、
ドラキーやおおきづちなんかを次々に倒していく。

何匹目かの芋虫を倒したところで
唐突にビアンカが『あっ!』と声を上げた。
『凄いわ。あたしにも呪文の才能があったみたい!』
ビアンカの言葉に思わずえ?と返す。

『パパとママは呪文を使えないから、
あたしもきっと無理だって思ってたのよ』
にこにこと嬉しそうに話すビアンカが
俺の当惑した顔を見てきょとんと瞳を丸くする。
『どうしたの?まさか呪文もまだ知らないの?』

首を振って一応の否定を示しながら
俺はビアンカにおめでとう、と言った。

この世界では呪文なんて、当たり前の概念なんだ。
それを改めて感じて、俺は少しだけ寂しくなった。
少女の感動は、俺の感じたそれとはまるで違うものだ。
俺の世界にはこんなものないのに。
どうかしてる。こんなことで。感傷的に過ぎる。

ビアンカは俺の言葉を聞くと安心したように、
楽しそうに何度かその言葉を呟いていた。

450 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:30:32 ID:W6fUJkOc0

ビアンカもレベルが上がっている。
こういうところはゲーム通りで良かった。
子供の体力のままで冒険を進めるなんて、はっきり言って無理だ。

更に暫く戦闘を重ねていると、ビアンカが唐突に立ち止まり
『ねえ、もう疲れちゃった』
とだるそうに言った。

自分とビアンカの体力と、膨らんだゴールド袋を確認して
俺はじゃあ一度町に戻ろう、と言った。
レヌール城に行く、と言い張られるのを覚悟していたが
ビアンカは意外にもあっさりと頷いた。

商店を覗きたかったが、町に戻ると
ビアンカは真っ直ぐに宿へと戻った。
しきりに瞼をこすりながら『今日はもう休みましょう』と、
強引に俺を階段へ押しやると自分の寝室へ引っ込んで行った。

俺も仕方なく部屋へ戻り
いびきを掻くパパスの隣のベッドへ体を滑り込ます。
疲れていたのか、今度はすぐに睡魔がやってきて
俺は暗闇に目を閉じた。

451 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/25(木) 18:31:38 ID:W6fUJkOc0
今回ここまでです
ありがとうございます

それでは、また

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 20:02:35 ID:Yns9ghuu0
イイヨイイヨ~(・∀・)

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 21:11:42 ID:eHKqGTUd0
ステータスが欲しい所だが、今更何をって話かなぁ?

ビアンカイイ!

454 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 21:47:29 ID:FRcaeHqX0

         ____          __
       /   u \     /´  ヽ 。o O ( たのむッ!イケメンになっててくれぇぇー!)
      /  \    /\    l′    l
    /  し (>)  (<)\   |      |
    | ∪    (__人__)  J |  ヽ   /
     \  u   `⌒´   /  r`┬r'
    ノ           \  (_) ̄ヽ
  /´               ヽ( ̄ ̄`〈
 |    l              (´ ̄` )
         ____          __
       /   u \     /´  ヽ  チラッ
      /  \    ─\    l′    l
    /  し (>)  (●)\   |      |
    | ∪    (__人__)  J |  ヽ   /
     \  u   `⌒´   /  r`┬r'
    ノ           \  (_) ̄ヽ
  /´               ヽ( ̄ ̄`〈
 |    l              (´ ̄` )


455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/26(金) 09:19:55 ID:dVZu55GE0
非常に乙。
>>449の感傷がなんか染みた。気持ちがほろりと来る。
ゲームなのに言動が「ゲームじゃない」のがいいな。
なんかどんどん先が楽しみになるな。少しずつでいいので頑張って。

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/26(金) 09:55:14 ID:4Stm7P350
>>451
待ってました!
ビアンカ肝が据わってて頼もしいwww
LVうpして装備揃えればいい戦力になりそうだ
GJ


457 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/26(金) 18:20:21 ID:kCRBwW4t0
>>451
乙です
なんか俺も書いてみたくなったな

458 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/28(日) 16:04:19 ID:hnZ/iDKQ0
ほしゅ

459 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/29(月) 15:19:36 ID:i7F9B2+PO
保守

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/30(火) 21:15:36 ID:8GH4I6RwO
保守

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/31(水) 18:00:07 ID:YnPuDHgcO
星飛雄馬

462 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/31(水) 20:23:07 ID:ly2MqLBA0
   / ̄ ̄\      / ̄ ̄ ̄\       γ::::::::::::::::母::::::::::::ヽ、
 /ノ( _ノ  \   / ─    ─ \     /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
 | ⌒(●)-(●)/  <○>  <○>; \  γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ
 |     (__人__)|    (__人__)  ; |  (:::::::::/ \   / \:::::::)
 |     ` ⌒´ノ \    ` ⌒´    /  \:/ (●)  (●) \ノ
 |         }   ( r     |        |      (__人__)    |
 ヽ        } ̄ ̄ ヽ○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\    ` ⌒´     /
  ヽ     ノ    \今日の特集はニート問題です・・・/ /
   /    く \ |__| _ ..._.. ,       ___ \      (__ノ
   | 父  \ \ \ /        |\_____\
    |    |ヽ、二⌒)、^        |  |ヽ、      ノ|
今本当にこんな状態、死ねはねる

463 : ◆sql4ixn4VA :2007/02/01(木) 00:02:50 ID:7CVyrSt10
起きなさい、私のかわいいアルスや。」
なんだぁ?もう朝か?誰だよアルスって。ドラクエですか?
「おはよう、アルス。もう朝ですよ。今日はとても大切な日。アルスが王様に旅立ちの許しを頂く日だったでしょ。
この日のために、お前を勇敢な男の子に育て上げたつもりです」
「つーか誰だよお前ぇぇ!!」
「さあ、母さんについていらっしゃい」
シカトですか。つうか何この状況。わけわからねんだけど。確かに昨日は俺の部屋で寝たよな。
何この服。民族衣装ですか?マントつけながら寝てたの?俺。
「目が覚めたようじゃな。」
そこには一匹のハエがいた。しかも杖持って服着てるよ。いよいよおかしくなりそうだ俺。
「これ夢ですか?つーかお前何?ハエ仙人?えらくマイナーなの出てきたなまた。
 俺じゃなかったら多分忘れられてんぞお前。」
「うるせぇこの駄目人間が!!黙って聞け!!もう気づいてると思うがこれはドラクエ3じゃ。
夢ではないぞ。ちなみにお前ゾーマ倒すまで帰れないから。以上。」
「なんだそりゃぁぁぁ!!理不尽すぎてなんて言っていいかわかんねぇよこのウンコ大好き
 ジジイ!つーかお前出てくるの6じゃねぇか!!3関係ねぇだろ!!」
「細かいことは気にするなチンカス野郎。実は神様があまりのお前のダメ人間っぷりに
 嘆いて試練を与えたんじゃ。この冒険を通じて成長するようにの。まぁせいぜい
 がんばれや。わし帰ってエロ本読むから。じゃ。」
「その前にてめぇを殺す!死ねや!」
俺の渾身の右ストレートは空しく空を切った。そこのはもうあのくそジジイの姿はなかった。
神様、僕が何かしましたか?ちゃんと仕事してますよ俺。ニートじゃないよ。
前々から思ってたけどお前俺の事嫌いだろ。ふざけんなこの糞ゴットがぁぁぁ!!


464 : ◆sql4ixn4VA :2007/02/01(木) 00:05:49 ID:n+1kyWyU0
「ここからまっすぐ行くと、アリアハンのお城です。王様に、ちゃんとあいさつするのですよ。……さあ、いってらっしゃい」
この腐れババァ。俺が何言ってもシカトじゃねぇか。若年性痴呆症かよ。
はいはい。王様にあいさつね、行けばいいんでしょ行けば。
まぁなんつーかすごいねこの風景。なにがすごいってそりゃあらくれとかいう変体もそうなんだけど
中世ヨーロッパ風っていうの?これ。しばらく慣れそうもないわ。
臭い、臭いわ。城って臭い。マジで。帰りてぇ。なにこのカビ臭い匂い。
「よく来た! 勇敢なるオルテガの息子、アルスよ!」
「あ、どうも。」
「すでに母から聞いておろう(ry」
バラモスですか。あいつハラワタ食うんですよ王様。と言えるはずもなく黙って王様の話を聞いていた。
つーか死んだらちゃんと生き返るんだろうなこれ。
やっと終わったか。どれルイーダ行くか。五十Gと旅人の服一枚、こん棒二本、ひのきの棒一本を持って
俺はルイーダんちに向かった。もちろんはがねのつるぎよこせと王様に言えるわけはなかった。
「あの仲間3人欲しいんすけど。」
「あ?てめぇに選択の余地はねぇよ。この3人やっからとっとと私の前から消えろや、糞が。
 死んだ魚みてぇな目しやがって。」
あれ?なんかキャラおかしくない?そうして紹介された3人は
戦士  26歳独身   僧侶   14歳     魔法使い   19歳   
男             男             女 
性格 のうきん      性格  ちゅうにびょう  性格  ツンデレ
俺は頭が痛くなった。


465 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/01(木) 03:18:25 ID:CdrAa+bo0
期待

466 : ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:18:40 ID:G8GoAKFJ0
>>452
(・∀・)㌧!!

>>453
ありがとうございます!

ステータスは使い方が難しいっス
一応推奨LV+1~2くらいで考えてます

>>455
感謝です

暗くなるのはさけたいんですがどうも性格が根暗なようでw
でもそんな風に感じてくれて嬉しいです
ゲームそのままにし過ぎると上手く書けなくなってしまうので
程よくドラクエを残しつつ頑張ります!

>>456
感謝です
ビアンカにもそろそろ頑張ってもらわないとなのでw

>>457
書きましょうや!

>>464
ツンデレに期待大です

>>450続きです
微妙にキリが悪かったのでちょっとだけ

467 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:21:26 ID:G8GoAKFJ0

隣のベッドで咳き込む声に、俺は目を覚ました。
パパスが苦しそうに体を折り、
咳をするたびに筋肉が苦しそうに歪む。
傍らにおかみが立って心配そうにそれを覗き込んでいる。

『パパス、その体で戻るのは無理だろう?治るまでここに居なさいよ』
心配そうに盥からタオルを絞ると、汗の浮いたパパスの額を拭う。
眉を寄せたまま『すまない』と言うと
パパスはおかみに促されて身を横たえた。
もう一度固く絞ったタオルを、おかみがパパスの額に乗せる。

『あら、サンちゃん。起こしちゃったかね』
俺に気付きおかみがパパスから視線を外す。
パパスは顔だけで俺を見ると、極まり悪そうに微笑んだ。
『どうやらダンカンの風邪を貰ってしまったらしい。情けないな』

大丈夫?と声を掛けるとパパスはまだ苦しそうに頷くと
『明日には治る』と言い切った。おかみが苦笑いを零す。
『幸い薬は余計にあるしね。
長引くことはないと思うけど、明日はどうかね』

食事を用意するよ、と部屋を出るおかみについて俺も部屋を出た。
背中からパパスが『この部屋には戻るなよ』とかすれた声で言う。
部屋も用意しないとね、とおかみがまた笑った。

468 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:22:44 ID:G8GoAKFJ0

簡単な朝食をいただきロビーに出ると
大きなソファの上でビアンカが欠伸をしていた。
俺に気付き慌てて口を閉じる。

『おはよう、サン。外に行くの?』
正面扉へ向かう俺にビアンカが声を掛ける。頷くと、
『元気なのね。あたし眠くってたまらないわ』
もういちど、今度は口元を手で覆いながら大きな欠伸をする。

すぐに戻る旨を伝えると
戻ったら一緒にお昼寝しましょ、とビアンカが眠そうに手を振った。

町は今日も賑やかだった。町の樽を調べながら
(やっと落ち着いて調べられたけど収穫はなかった。何てこった)
商店のほうへ向かう。

469 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:24:54 ID:G8GoAKFJ0

武器屋、防具屋の品揃えをそれぞれ覗き込んで
財布の中身をチェックする。
幸いある程度の装備は整えられそうだった。
ビアンカを連れて来れば良かったと少し後悔した。

確か盾は装備できた気がするんだけど。
うろ覚えだ。いばらの鞭は間違いないんだけどな。

唸りながら真剣にカウンターを覗き込む俺の姿が可笑しかったのか
武器屋の若い店主は俺を見て笑みを零した。

とりあえず使わなくなった木の棒と古い方の服を売り飛ばし
いばらの鞭と、防具屋に回ってうろこの盾を購入する。
迷った末に、浮いたお金で木の帽子も買っておいた。
ゴールド袋には残り数枚のコイン。薬草も買えない。

広場を覗くと今日も、子供たちは飽きもせず
猫だか虎だかを追い掛け回していた。

470 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:26:14 ID:G8GoAKFJ0

宿に戻ってビアンカと寝室に向かう。
新しく用意された部屋は、
前の部屋よりは手狭だったがよく整えられていた。
並んでひとつのベッドに横になると
すぐにビアンカは寝息を立て始めた。

向かい合うように寝ていると
ビアンカの顔立ちがすぐ傍に見て取れる。
自分もこんな頃があったんだろうかと、
俺は少しだけ自分の世界に、自分の両親に思いを馳せた。

これは夢なんだろうか。
クリアしたら覚めるんだろうか。
港からの道程で、サンタローズの洞窟で、そして昨夜の戦闘で、
魔物から受けた痛みは哀しいほどに現実だった。
もしかして俺はこの世界に絡め取られたまま、二度と現実には戻れずに。

恐ろしい考えを振り払って、俺は目を閉じ
意識的に暗闇に思考を投げ出した。

471 : ◆u9VgpDS6fg :2007/02/01(木) 16:28:08 ID:G8GoAKFJ0
今回ここまでで
短いですが・・・

ありがとうございます

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/02(金) 01:05:13 ID:b/sHlGbeO
おつつー
ビアンカと昼寝……(*´д`)

いかん…俺は汚れてしまったようだ

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/02(金) 03:08:51 ID:kN+wN3OA0
(*´Д`)一つのベッドで

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/02(金) 08:19:17 ID:+yNDFD8T0
>宿に戻ってビアンカと寝室に向かう。
(中略)
>並んでひとつのベッドに横になる

おっきした(*´Д`)

475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/02(金) 10:20:58 ID:Exp2OucQ0
乙です

ビアンカとの昼寝に(*´Д`)しつつ、
>自分の両親に思いを馳せた。
のくだりに。:゚・(つД`)・゚:。

476 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/04(日) 15:00:32 ID:71E5t2o/0
hosh

477 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/04(日) 20:26:51 ID:GmbXIDi40
保守

478 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/06(火) 01:06:40 ID:M/yR0sYW0
hosyu

479 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 13:15:40 ID:s4O+tYgu0
hohhos

480 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 20:24:17 ID:x1nNqCc20
hoooushuuuwwryyyyyyy

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 22:09:00 ID:2tyotp860
文才があると見たので ◆u9VgpDS6fg  に期待してるよ。
>>『パパとママは呪文を使えないから、
  あたしもきっと無理だって思ってたのよ』
に:゚・(つД`)・゚:。
この頃は本当の父母だと知らないんだよな。
・・・で、フローラもなんだが天空人の子孫なんだよな・・・、確か。

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 22:23:28 ID:PQjbNgDw0
>>481
ビアフロって姉妹だったけ?
それって小説だけの話だったけ?

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 09:57:46 ID:M3LTlWWy0
>>482
うんと遠い親戚じゃね?

484 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 11:06:19 ID:zRXKHmWQ0
人を倒しても経験値って得られるのかな?
邪悪主人公を思いついたんだが。

485 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 14:09:52 ID:WXV6L+a3O
カンダタ・マルチェロ・呪われしゼシカ等々
倒したら経験値がもらえる人はいっぱいおりますがな。

486 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 17:24:55 ID:NrXB8F4K0
敵になると「匹」扱いなのが切ないよな。…関係ないけど。

487 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 23:17:27 ID:dNSAUVvM0
DQ4なんか「ミスターハン 1ひき」だからな
武闘大会




「アリーナひめ 1ひき」

488 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 23:44:48 ID:M3LTlWWy0
個人的な事情により、避難所の鯖を引っ越すこととなりました
ブクマ・お気に入りのURLの変更をお願いしますOTL
tp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

489 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/09(金) 22:17:10 ID:Jv1kLIrc0
ほす

490 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/11(日) 01:42:45 ID:B4ReevFo0
保守

491 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/02/11(日) 16:54:16 ID:898pat7Q0
>>488
取り急ぎ、避難所のURLだけを変更しておきました。
まとめのほうは今しばらく、お待ちください。

492 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:16:10 ID:d5Jh/BPq0
あれ・・・・・・
俺は・・・・・・・・・・・・

何があったんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・?


すごく眠い・・・・・・・・・・・・

このまま寝てしまおう・・・・・・楽になるやろ・・・・・・・






----------------------------目を覚ませ!!



マタニゲルノカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?




ほっとけよ・・・・・・・・・俺はもう・・・・・・・・・・






493 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:17:36 ID:d5Jh/BPq0
もょ「タケ!!しっかりしろ!!」
タケ「もょ?お、俺は・・・・・・・・?」

もょ「まったく。しんだようにねむっていたんだからしんぱいしたんだぞ!」
タケ「そ、そうだったのか・・・・・・どれぐらい寝ていたんや?」

もょ「ふつかぐらいねむっていたな。とっくにローレシアについたぞ。ムーンたちはさきにいった。」
タケ「そ、そうなんや。さぁ行こうか・・・・」

もょ「タケ、ようすがおかしんだがだいじょうぶか?」
タケ「こんな時もあるよ。心配せんでええ。大した事が無いからさ。早く行こうや。」

俺達はローレシアに入っていった。

ローレシアに入ってから人々がもょもとの周りに集まってきた。
子供や女性達には暖かく歓迎されたんだが兵士達は仕事だから渋々王子の帰りを歓迎している・・・・って感じだった。

ムーン「へぇ、もょもとって子供や女性には人気があるんだわ。」
  もょ「そ、そうか・・・・?」

サマル「しかしこの城はサマルトリアと違い、兵士も体格が良い人が多いね。」
  もょ「ああ・・・・・・」

ゼシカ「どうしたのもょもと?どうかしたの?」
  もょ「ちょっとふなよいしただけだ・・・・・・」

もょもとの様子がおかしすぎる。



494 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:18:52 ID:d5Jh/BPq0
タケ「(どないしたんや?生きて故郷に帰って来れたにも拘らず、暗い感じやな。)」

もょ「(タケ、おまえにまかせていいか?)」
タケ「(なーに弱気になってるねん。って・・・・・・・・・・・?)」

その時のもょもとは別の恐怖で怯えていた様だった。何があったんだろうか?

タケ「(ええよ。但し、俺の好きなようにやらせてもらう。)」
もょ「(な、なにいっているんだよ。)」

タケ「(お前に昔何があったのかしらへんけどな、今のもょは何か物事から逃げたがっているわ。)」
もょ「(うっ・・・・・・・・・・・・・・・)」

タケ「(悪いようにするつもりはあらへん。けど、黙って今から起きる物事を静観してたらええ。)」

  タケ「とっ言いたい所だが、実はククール達が見当たらないから不安なんだ。」
ムーン「それで様子がおかしかったのね。とりあえず私は王様に生還報告をしないといけないのだわ。
      ついでククール達の事も聞きましょ。」

リア「もょもとさんのお父さんってどんな人かなぁ?楽しみ☆」
タケ「会ってみてはわかるよ。じゃあ行こうか。」

王の座についた。
ローレシア王(もょもとの父親)は威圧感が感じられる人物だった。
サマルの親父の様な道楽者ではなく抜け目がなさそうな感じがするのであった。


495 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:20:21 ID:d5Jh/BPq0
ムーン「始めまして。おじ様。ムーンブルグ王国の皇女、ムーンです。」
もょ父「そなたがムーンか。とにかく無事で何よりだ。お父上が無くなった事がは辛い事だと思うが、
        時間をかけて悲しみを乗り越えなければならぬ。頑張るが良い。」

ムーン「は、はい・・・・・・・・・・・」

ムーンが緊張感を漂させた表情をしている。案の定、サマルとリアは表情がこばわっている。

もょ父「そちらの者は?」

王様がゼシカに話しかけた。

ゼシカ「わ、私はゼシカと言います。実はこの国で旅仲間と合流する予定だったので、 
    もょもと王子に頼み込みさせていただいて同行させていただきました。」

もょ父「ほう、もしかしたら、先程拘束した3人組の男の事かも知れぬな。」
 タケ「なんだって!?」


もょ父「貴様はだまっとれ!!」


王様がいきなり吼えた。俺もびっくりしたのだが、それ以上にもょもとから恐怖感が感じられた。
――――――――――――――――――そういう事か。なるほどね。

ゼシカ「ど、どういう事なんです?」
もょ父「町の者から怪しい者達がいるって通報があってな。
    どこから来たのか分からないという事なのでとりあえず拘束したのだ。」

ゼシカ「そんな・・・・・・・・」
 タケ「安心しろ、ゼシカ。俺がすぐに釈放させる。」

496 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:21:46 ID:d5Jh/BPq0
もょ父「貴様なにほざいている・・・・・!?」

 タケ「父上・・・・・いや、ここはあえてローレシア王と呼ばせてもらう。
     王が拘束したもの達の身分に関しては私が保証する。」

もょ父「・・・・・・・・・それで?」

 タケ「その者達に私は命を助けられている。実際問題、ここにいるサマル、リア、ムーンも同様だ。
     責任は王子である私が持つ。その者達の釈放を認めていただけないだろうか?」

もょ父「貴様いつからそんな生意気な口が利けるようになった?この愚息がぁ!!」

 タケ「ハハハ!!逆にわらかせてくれるぜ。諸外国は王は、我が国の王の事を馬鹿にするだろうな。」
もょ父「な、なんだと!?」

 タケ「『視野の狭く、弱者を受け入れる度量もない裸の王様』ってな。…………こりゃ傑作だ!」
もょ父「貴様は許さん!!牢にでもぶち込んでやるわ!」
ムーン「王様!!やめてください!!」

 タケ「いいよ、ムーン。俺が牢に入ったらククール達は釈放。これでいいじゃないか。」
ムーン「で、でも・・・・・・・」
 タケ「俺は喜んで入るぜ。命の恩人に対して敬意を表し、借りを返す。それだけだ。」

もょ父「ならば貴様の望みどおり牢に入れてくれるわ!!ひったてい!!」

俺は牢屋へ豪腕の兵士達によってつれて行かれた。

こんなはずじゃなかったんだけどなぁ・・・・・・・・・・・・・・・

どうやら俺は独房に入れられたみたいだ。あれこれ考えても仕方がない。とりあえず時間を過ぎるのを待つか。

497 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:22:59 ID:d5Jh/BPq0
しばらく時間が過ぎるともょもとが離しかけてきた。

もょ「タ、タケ・・・・・・・・」
タケ「どしたん?」
もょ「お、おれたちどうなるんだろ・・・・?」
タケ「俺の予測どおりになれば明日でも釈放になるやろ。」
もょ「な、なんでそんなことがわかるんだ?」

タケ「まぁ聞いてくれよ。親っていうのは『子供を愛さない親なんていない』って言う事なんや。」
もょ「しかし・・・・・・・・おれは・・・・・」
タケ「もょの場合お母さんが早く亡くなっている訳やんか。そしたら父親としたら立派に育って欲しいって事やねん。」
もょ「う、うん・・・・・・」
タケ「後悔していると思うで。親戚や友人の前で無様な行動を起こしたんだからさ。」
もょ「け、けど・・・だ、だいじょうぶなのかなぁ・・・・・」
タケ「大丈夫。多分親父はもょにしっかりして欲しいから厳しい態度とっているんよ。」
もょ「そ、そうなのか・・・・・・?」

タケ「ああ。自分の息子が情けなかったら親として不甲斐無いんよ。
    だから立ち向かう勇気を持って欲しいと思っているわ。」

もょ「ゆうき・・・・・・・・?」



タケ「そやで。逃げるのは簡単やねん。
   けど逃げ続ければ自分に対する負い目が増えるだけなんよ。それを俺は知っている。」




498 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:24:24 ID:d5Jh/BPq0
もょ「もしかしてタケも・・・・・・・?」
タケ「ご想像の通り、俺もガキの頃は厳しい父親のもとで育ってな。嫌の事あったら逃げていたんだ。
   ある時俺と俺の親父が意見がぶつかってな、対立したんや。」

もょ「それで?」
タケ「普段だったら親父の言いなりになっていいただろ。その時はそう言う訳にはいかなかった。
   自分自身にとって大切の物を失ってしまう状況だった。
   結果的には自分の意思を通し、失敗したんだが後悔はしなかったわ。逆に爽快感があった。」

もょ「そ、そうなのか。いまだからいえるが、
   タケがはむかってくれたことによってなんかすがすがしいきぶんだな。」


タケ「そっか。それなら良かった。俺達は意思を持った人間なんや。
   だからこそ、自分の意思や誇りを他人に委ねる訳にはいかへんって事や。
   これを理解するのに4年はかかったよ。」


もょ「よ、よねんも!?おまえってばかだなぁ。」
タケ「うっさいわ!単純な問いかけほど答えを出すのは難しいんやで。人によって答えは皆違うからな。」

もょ「なるほど、じゃあタケのいまのいけんはタケなりのことなのか?」
タケ「勿論。他人にこの俺自身の答えを譲歩つもりはない。後はもょ自身が決めることや。」


自分の体験談をもょもとに伝えた。
もょもとは辛くなった時、一人で怯え、苦しみ、悲しみながら生きてきたんだろうな・・・・



499 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:26:36 ID:d5Jh/BPq0
隣の独房から声が聞こえてくる・・・・・・・・・・


*「隣の方、どうされたのです?大丈夫でしょうか?」


なんだか心地よい響きだ・・・・・・・けど逆にそれが恐ろしい。




タケ「別に。話しかけてくんな。そんな気分じゃないんで。」
 *「まぁいいでしょう・・・・・・それにしても世の中おかしいと思いませんか?」

タケ「ん?」
 *「悪人がのうのうと暮らしており、力も無き善人は奴隷のようにして生きなければならない。」


タケ「冗談はよしてくれ。牢屋に入っているあんたが言っても説得力は無いね。」
 *「まぁいいでしょう・・・・・貴方と私はまた会う運命でしょう・・・・・・ふふふ。」



気持ちわりぃ。電波ゆんゆんの奴って何するかは分からん。ほっておこう。







500 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:28:58 ID:d5Jh/BPq0
翌朝、俺の予測通り釈放された。
牢屋に出たとたん最初にリアとククールが駆け寄ってくる。

   リア「もょもとさん!」
   タケ「おう、ただいま。シャバの空気はうまいぜ。」

ククール「あんたにはでかい借りが出来てしまったな。」
   タケ「気にするな。逆に無様な真似してしまって申し訳ない。」

ヤンガス「もょもとがしっかりしているにも拘らずここの王様は厳しいでがす。」
   タケ「身内の責任は俺の責任でもあるんだからな。」

  トロデ「しかしもょもとがここの王子だとはの~以外じゃった。立派な青年じゃわい。」
   タケ「そんな、人生経験が浅いガキにそんな事言わないでくださいよ。」

  ムーン「無事に済んで終わったわね。」
   タケ「ああ……ち、…………じゃなかった親父はどうしてる?」
  サマル「伝言を預かっているんだ。『しばらく戻ってくんな。きっちりハーゴンを倒して、必ず生きて帰って来い』ってさ。」
   タケ「そっか。」

  ゼシカ「なーに後味が悪そうな表情しているのよ。結果的には貴方の主張通りになったんだけど。
      王様を説得するのに相当時間がかかったんだから。」

   タケ「どういうことだ?」
  ゼシカ「サマル君やムーン、リアが必死に貴方のことを庇ってくれていたのよ。」
   タケ「でかい借りが出来てしまったな。」

  ムーン「いいのいいの。もょもとに助けてもらってばっかりじゃ良い気しないからね。」
  サマル「僕ももょもとがいなかったら大変だったし。今後、君がいたら心強いよ。」
   リア「それにね、もょもとさんのお父さんって厳しいんだけど優しいそうな感じがしたの。
       だからもょもとさんも優しいんだね!」

501 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2007/02/11(日) 21:31:18 ID:d5Jh/BPq0
   タケ「まぁ、ありがとう・・・・みんな・・・・・・」
ククール「おいおい。何うろたえているんだ。もょもと?」
ヤンガス「げーすげすげすげす。もょもとは照れているんでがすよ。」
   タケ「う、うるさいなあ。もー(///)」

  ムーン「これからどうしようかしら?」」

  トロデ「そうじゃ!この機会だから皆で食事をしようかの。ワシらが異世界の人間とは言え、
      食事ぐらいは一緒に楽しむのも良いもんじゃろ!」
  ゼシカ「それはいいわね。」
ヤンガス「おっさんも流石は一国の王様でがす。」
ククール「合流記念って言う事でいう事だな。もょもと達はどうだ?」

   タケ「異論は無いぞ。俺達全員参加させてもらう。」

   リア「やったぁ!早く食堂に行ってみんなで食べようよ!」

リアの掛け声で食堂へ向かいみんなで食事をした。
飲んで騒いで色々話し合い、楽しい時間を過した。

そして俺達はラダトームへ向かうために、そしてククール達はエイトを探すために別れて旅立つことにした。

もょもと&タケ
Lv.16
HP:112/112
MP:  2/  2
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 
特技 共通技:チェンジ
 もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
 タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ


502 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/12(月) 08:54:56 ID:tDn/AQ6O0
おお!!
レッドマンが復活したか。
最後まで頑張れ。

503 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/12(月) 21:20:24 ID:97ax3Hde0
レッドマンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

504 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/12(月) 21:58:19 ID:t0MT0ahCO
復活ッ!レッドマン復活ッッッッ!

( ;∀;)オカエリ

505 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 00:11:48 ID:IUh3Qnu70
レッドマンさん、ファイトだお

506 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 08:10:01 ID:c2nn0f2oO
べ、別にあんたの作品の続きなんか読みたくないんだからね!

しかし書く以上はしっかりしなさいよ!

507 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 16:32:06 ID:L1W5VAMm0
俺も書いてみた。
舞台はDQ6です。

508 :序章・目が覚めたら…… ◆/Vo4sINk9g :2007/02/13(火) 16:33:30 ID:L1W5VAMm0
「今日はもう寝るかな……」
俺は、あまり意味の無い独り言を呟きながらパソコンの電源を切って、
そのまま、歯も磨かずにベッドにダイブした。

俺はニートだ。
格好良く言えばNEET……いや、大して変わらんな。
まだ17歳だってのに学校にも行かないで、毎日家でダラダラと過ごしている。
部屋から出るのは、ご飯と風呂の時だけ。
外に出るのは、コンビニにジャンプを買いに行くときだけ。
金は親から貰ってる。
働くつもりなんてさらさら無いし、これからもそれは変わらないと思う。
だって汗流して頑張ったって、少しも面白くないし。

(あーあ、もっと面白い世界に生まれたかったなあ)

そんな戯言を考えながら、俺はいつの間にか深い眠りについてしまった。



509 :序章・目が覚めたら…… ◆/Vo4sINk9g :2007/02/13(火) 16:34:10 ID:L1W5VAMm0
深い眠りから覚めて、俺は大きく伸びをする。
今日もまた、退屈な一日が始まるのか……そう思うと憂鬱だ。
「おはようございます、旅のお方」
「あー、おはよ……ん?」
誰だお前。
目の前のおっさんにそう言おうとして、初めて異変に気が付いた。

「どこだここ?」
俺はキョロキョロと周囲を見る。
まるで洞窟の中みたいに、岩の壁に囲まれている小さな小部屋。
その中に簡素なベッドが二つ置いてある。
「いやですねぇ、宿屋に決まってるじゃあないですか」
おっさんが気味良さそうに笑う。

待て待て。
俺、いつ宿屋になんかに泊まった?
昨日、確かに自分の部屋のベッドで寝たはずなんだが。
心の中でツッコミを入れながら、自分の服装を見てみる。
寝たときの上下ジャージの姿ではなく、滅多に着ないお気に入りの一張羅を着ている。
いつ着替えたっけ?
これ何かのドッキリ企画か?
「どうかしましたか?」
ドッキリの看板を探していた俺に、おっさんが話しかけてくる。
「あ……何でもない、です」
とりあえず適当に返事をしておいた。

「ありがとうございました。またおこしください」
一先ず俺は現在地を確かめようと、宿屋から出た。
「えーと……どこだよここ」
外に出ても、ここが何処なんだか、どうして俺がここにいるのかさっぱりわからん。
唯一わかったのは、ここが山で、さっきの宿屋はやはり洞窟の中だったと言うことだけだった。


510 :序章・目が覚めたら…… ◆/Vo4sINk9g :2007/02/13(火) 16:34:50 ID:L1W5VAMm0
「夢じゃないみたいだな……」
何度か自分の顔を殴って確認した。
これは夢じゃない、現実だ。
現実だとしたら、何で俺はこんな所にいるんだ?
親がニートな俺に愛想を尽かして山に捨てたか。
ありそうで怖い。
夢遊病患者の様に、ふらふら歩いて来てしまった。
これは無いな。

「まぁ、何でもいいや。どうにかして家に帰るか」
これ以上考えても無駄そうなので、俺は山を降りて家に帰ることにした。
山を降りれば、町か村かがあるだろう。
そこで警察にでも行って、家に帰してもらおう。
そう思いながら、俺は山にあった階段を下りようとして、ピタリと足を止めた。
階段の下のほうに、変な生き物がいたからだ。


マンドラゴラがあらわれた!


続く

名前:俺
職業:ニート
HP:13
MP:0
装備:お気に入りの一張羅
現在地:ライフコッド周辺・山肌の道

511 : ◆/Vo4sINk9g :2007/02/13(火) 16:35:36 ID:L1W5VAMm0
以上です。
拙い文章ですが、ご容赦を。

512 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 16:43:48 ID:UhwB7EOe0
6は珍しいな
続きwktk

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 16:53:09 ID:h1yWCSzP0
キタイシテルヨ(・∀・)

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/13(火) 16:53:11 ID:t8TfXhtg0
>>DQ6
乙。続きが楽しみだ

515 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/14(水) 22:19:59 ID:CCYrWUaa0
保守


516 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/16(金) 23:32:11 ID:yVgXZEd00
いいかげんに捕手

517 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/18(日) 08:11:19 ID:xnk4yulK0
ほしゆ

時間が出来たら書きたい

518 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/18(日) 22:19:25 ID:J7z+VPOp0
保守

519 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/18(日) 22:20:59 ID:J7z+VPOp0
あげちまったスマソ

520 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/19(月) 20:35:26 ID:WiYlZHfDO
月曜日に保守

521 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/20(火) 21:46:38 ID:u3ybMfiIO
保守

522 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/21(水) 07:52:32 ID:d2GEqEn2O
保守

523 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/21(水) 23:50:04 ID:VuyZpkIx0
>>426の続き、投下します。
けどその前に一言。

レッドマンさん、おかえりなさい!

524 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/21(水) 23:52:53 ID:VuyZpkIx0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
フォルテとの初めての出会いは、彼女の歌声から始まった。
友達とかくれんぼしてた時、いつもより遠く逃げ込んだ森の奥。

  「~~♪」

不意に聞こえてきた楽しそうなメロディ。
彼女の世界に一瞬にして引き込まれてしまった。
ただそれだけで、好きだと思ってしまった。

  「キャッ!」

無遠慮に近づオレに気が付くと、彼女は岩影に体を隠した。
怖がらせてしまったと瞬時に後悔したが、
どうすればいいのかも分からなかった。

  「あのあの……」

恐る恐るといった感じでひょっこりと頭だけを出す彼女。
その可愛さに顔が赤くなり、心臓が跳ねた。

  「歌……どうだった?」

声に出して答えられなくて、何度も必死に頷いた。
フォルテの笑顔がまぶしかった。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

525 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/21(水) 23:56:09 ID:VuyZpkIx0
  「さて、そちらはこの娘を取り戻そうとしているようだが、
   こんな提案はどうだろうか。
   この娘を返す代わりに女王様、あなたの血を頂けないだろうか。
   何も私は戦いたい訳ではないのだよ」

くくっと含み笑いをしながら大げさに手振りを付けて話すクルエント。
喋り方も身体年齢に影響されてか、先程までの老人臭い話し方ではなくなっていた。
しかし負けるなどとは微塵も考えていない、その傲慢さだけは常に変わらない。
提案とは言いながらも実際は選択を迫るような言い方にもそれが見られるだろう。
無抵抗で血を差し出すか、勝てぬ無駄な戦いをするか、選択をしろと言っているのだ。

  「あなた達にエルフは渡さない」

クルエントの問いに対して女王より先にフィリアが答える。
その声は簡潔で迷いがなく、決意に満ちていた。
いつものフィリアとは違って、こんなにも感情をあらわにしているのは珍しい。
予期せぬ一言に女王は言い得ぬ安心を覚える。

  「その通りです。あなた達は自分の立場が分かっていないようですね。
   負けるのはそちら側ですよ」
  「そうだそうだ!」

ソールの元気も相まって、女王のパーティーの士気が高まる。
悪いのはどちらなのか明白だった。
だから、必ず勝てる。

  「ふふふ、そうですか……では」

会話の終わりを感じたジュード達は武器を構えた。
それを見てからクルエントの側で控えていたアヴァルスも自身のダガーを握りしめる。
対してクルエントはその手に掴んでいるフォルテを目線の高さまで上げるだけだった。
見せ付けられるフォルテの体は力無く、だらりとした四肢に生は感じられない。

526 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:00:05 ID:260lfAA50
しかしクルエントが何故今そのような事をするのだろうか。
その行動の意味を計りかねて攻撃のタイミングを逃す。
するとクルエントは足元に転がっていた宝箱を足だけで起こしてフォルテを閉じ込め、
ゴミを捨てるかのように宝箱を背後の湖に蹴り込んだ。
宝箱は大きな水しぶきを立て、水底へと消えていく。

  「フォルテー!!」

その声を合図に全員が動き始める。
ソールはフォルテを助ける為に湖へと全力で走った。
ジュードはアヴァルスに、女王はクルエントに。
それぞれソールの邪魔をされないように、進路を確保する為の動きをとる。
そしてフィリアはマヌーサで敵の攻撃を惑わそうと呪文を唱えた。
マヌーサの効果は視覚障害を引き起こし、強制的に錯覚させるというもの。
クルエントはともかく、アヴァルスは格好から攻撃呪文を使うタイプではないと判断したのだ。
ならば攻撃を封じてしまえばいい。
広範囲を狙う事の出来る武器を使ってこない限りはこちらは有利になる。

  「マヌーサ!」

アヴァルスとクルエントの2人を目標に呪文を仕掛ける。
呪文発動後、ジュードはアヴァルスの右側に回りこんだが、アヴァルスはそれに反応しない。
思惑通りにいったようだ。
アヴァルスは手持ちのダガーを突き出すが、ただ空を切るだけに終わる。
きっとアヴァルスの脳内ではジュードを斬りつけようとしたのだろう。
その隙にジュードはガラ空きのわき腹へと蹴りをおみまいする。
防御もままならないアヴァルスはうめきながら土にまみれた。

  「マヌーサか、やっかいだな」

女王と呪文の応酬を繰り広げているクルエントがアヴァルスが倒れている方に目を向けて、
それほどやっかいだとも思っていないような口調でつぶやく。

527 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:03:49 ID:VuyZpkIx0
クルエントにはマヌーサは効いていないらしい。
呪文への耐性や、精神的な強さがある敵には補助呪文は効きにくくなる。
クルエントのレベルが相当に高い事の証明でもあろう。
そしてクルエントは女王への攻撃を怠らないまま、アヴァルスに一つの呪文をかける。

  「バイキルト!」

痛みに耐えながらもアヴァルスは立ち上がり、口の右端を上げて笑う。

  「へへ……すまねぇな」

ニヤリとしたまま彼はズボンに仕込んであるダガーを取り出し、今度は両手に装備する。
しかしマヌーサの効果が切れている訳ではなさそうだ。
アヴァルスは正確にジュードやフィリアの方向に体を向けてはいない。
何の呪文を掛けられたかしっかりと把握しているはずだが、諦めの表情は見られない。

しかしいくら呪文で攻撃力が上がっていたとしても、攻撃が外れるなら意味は無いのだ。
それでもなおダガーによる攻撃を仕掛けてくるアヴァルス。
ジュードやフィリアの近くを攻撃したりするが、当然ダメージは与えられない。
音を頼りに位置を探ろうとしているのか。
それともまぐれ当たりを期待しているのだろうか。

  (イケる!!)

これなら勝てると判断したジュードは目線だけでフィリアに合図をする。
フィリアの方も、コクリとうなずくだけで了解の意を示した。
声を発してわざわざ居場所を教えてやるまでもない。
汚名を返上しなくてはいけないジュードにとって、このチャンスを見逃す理由は無かった。
フィリアの方もなぜバイキルトなのか、という思考回路は形成されなかった。
ジュードは闇雲に攻撃してくるアヴァルスの背後を取り、背中に斬りかかる。

  (もらった!!)

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/22(木) 00:04:47 ID:4Df63I+/0
支援

529 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:08:06 ID:260lfAA50
両手の力を柄に込めて放った一撃は、刃と刃が交差する音と共に防がれてしまった。

  「な…何……?」

予想していない事態にジュードは焦る。
アヴァルスは右手を肩越しに後ろに回す動きだけで防御したのだ。
前を向いたままなので見えている訳がないのに。
いや、それ以前にマヌーサが効いているはず。

  (足音で気付かれたのか?)

しかし攻撃の軌道までは分からないはずだ。
その疑問の答えを見つける前に、フィリアのモーニングスターによる攻撃が飛ぶ。
時間的に見れば二つの攻撃はほぼ同時だ。
しかしそれすらもアヴァルスは空いている左手で難なく無効化する。
同じくダガーでモーニングスターのチェーンを絡め取ってしまった。

  「へへ……残念」

2人の攻撃を嘲笑ったアヴァルスは、背後のジュードに右足を引っ掛けて体勢を崩させる。
と同時にフィリアの手から武器を取り上げるかのように左手を力の限り引っ張った。
圧倒的な力の前にフィリアは成す術無く、手からモーニングスターをこぼしてしまう。
その目はいつもより見開かれ、驚きを隠せないようだ。

アヴァルスは引っ張る力を利用して左足を軸にその場で反時計回りに回転し、
その遠心力を右足に乗せて、先のお返しとばかりに倒れかけのジュードを蹴り飛ばした。

  「がっ……!!」

攻撃力の上がった蹴りの衝撃で、ジュードは面白いように吹き飛んでいった。
そしてちょうど一回転するところで背中に回していた右腕を伸ばして、
野球のフォームで球を投げるようにダガーをフィリアに投げつける。

530 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:11:37 ID:260lfAA50
引っ張られて前のめりになっていたフィリアは着地を考えずに身を投げ出して
ダガーを避けるが、それを見越したように二本目のダガーがフィリアを襲った。

  「……!!」

フィリアは唯一の防御手段である腕を犠牲にして頭をかばう。
装備している服では守備力が足りずに、ダガーは腕を貫通してしまった。

  (抜いて、回復呪文……)

顔をしかめながらも痛みに負けずに脳がはじき出した対処方法に従おうとするが、
ダガーの柄に手を掛けようとしたところで力が入らなくなり、フィリアは地面に突っ伏した。
フィリアの血が土を濡らしていく。

  「へへへ……こりゃあ思ったよりも上手くいったなぁ」
  「げほっ……フィリア……」


動かそうとしたジュードの右手の甲にもダガーが突き刺さる。
簡単に骨を貫いたその攻撃に、ジュードは剣を落としてしまう。
それは痛みからだったが、ほんの数秒で腕の感覚が無くなってしまった。

  「アサシンダガーの味はどうだ?」

余裕の足取りで歩きながら語りかけるアヴァルス。
惑わされていた先程とは違い、進行方向は確実にジュードへと向けられていた。

  「マヌーサ…効いてなかったのか」
  「いやいや、今でもニイさんの本当の姿は見えてないぜ?」
  「じゃあ何故……」
  「んまぁ、盗賊の能力を測ろうとしなかったニイさん達が悪いって事だな」
  「能力……?」

531 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:17:07 ID:260lfAA50
空間把握能力とアイテム探索能力に長けている盗賊という職業。
彼はマヌーサをかけられた時からある呪文を使っていた。
その呪文の名はレミラーマ。
アイテムの場所を探る効果があり、その場所が光となって知覚されるという。
その光はマヌーサに惑わされずにジュードとフィリアの行動を彼に教えてくれた。
正確には2人の装備している道具がどう移動しているかを把握した、と言うべきか。

しかしジュードにはそんな事に思い至らない。
頭がボーッとして段々と視界が狭まってきた。
どこかで水の音がした気がした。

  「へへへ、さぁどうする? 今ならまだ仲間に戻してやるぞ?」
  「最初から仲間になんかなった覚えはないぜ……」
  「そうか、残念だなぁ…」

心底悲しそうに言う。意外に役者なのだろうか。
しかしニヤニヤ顔が気持ち悪い。

  「アンタみたいに迷ってるヤツに道を示すと何故か迷いがなくなるんだよなぁ。
   こんな仕事でもよ。
   だから引きずり込むのに調度いいんだ。分かるか?
   使い捨てが出来るって事だよ」

バカなヤツに教えてやってんだ、と言わんばかりのアヴァルス。
完全に見下されてるのが分かる。

  「けどアンタに声をかけたのは失敗だったかな?
   下手な潜入捜査のつもりか何だか知らないけどよ。
   最後で裏切られちゃあ困っちゃうよなぁ」

結局利用されるだけだったジュードを悔しさが包む。
けれど毒のおかげで、そのこぶしを握る事も出来ない。

532 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:26:44 ID:260lfAA50
  「俺がいなきゃ里は見つからなかったんだぞ…
   それに…裏切ったから仕事が増えて……ふっ…!
   大好きな金が貰えるじゃねーか……
   やっぱバカなんだな…」

頭が痛い。
喉が渇いて、上手く喋れない。
毒なんか使うなんて卑怯だ…

色んな思いがジュードの中を駆け巡る。
勝てなかった。
守れなかった。
コイツの言う通り、迷いがあるせいなのか…
やっぱり分からない。
まだ求めるべき答えの糸口さえも見つからない。

  「へへ、確かにまぁそうだな。
   じゃあ感謝するよ、ジュードさんよぉ!!」

アヴァルスのアサシンダガーが再び振り下ろされる。
ジュードは動かない体に怒りを覚えながら、最後を覚悟した。
しかし神はまだジュードに終わりを告げはしなかった。
刃物が刺さるより前にポカッと間抜けな音がしたのをジュードは聞いた。
続いて人の倒れる振動が伝わってきた。

  「はぁはぁ……ったく、だらしねぇなぁ…」

薄れ行く意識の中で、濡れた眠りの杖と開けられた宝箱を見た。

533 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/02/22(木) 00:29:13 ID:260lfAA50
短いですが、今日はここまで。
>>528さん支援ありがとうございました。

ではまた。

534 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/22(木) 20:21:47 ID:ALsG+maaO
暇潰し氏乙!
戦いぶり臨場感あるなぁ。

535 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/23(金) 22:58:19 ID:RV9AU7xf0
ホッシュッ!!

536 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/24(土) 22:15:46 ID:+H8wVcyZ0
更新無くても倦まずに保守

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/25(日) 18:42:53 ID:CfuZtWcK0
自分が更新する側になる日を夢見て保守

538 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/02/25(日) 23:36:20 ID:1ImZWZEdO
みなさんお疲れさま保守

539 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/26(月) 21:18:46 ID:f0edg0sb0
保守は3日に1回ほどでいいんじゃない?
最近この板では10日以上書き込みの無いスレでも落ちて無いし。
保守ばっかりで埋まるのもなんだし。

まあ、このスレ初?の1000を目指してみるのもアリか?(今325KB)



でもやっぱり保守

540 : ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 15:55:47 ID:IbD5/7GN0
またまたお久し振りです
遅ればせながらお礼を

>>472
>>473
>>474
……(*´д`)

>>475
感謝です
ちょっと暗すぎやしないかと
最近の展開が心配です

>>481
ありがとうございます
家庭環境(?)については
どうやって書こうかなーって感じで
姉妹にはしないつもりですが
(ゲーム上ではそのへん出てこなかった気が)

>>読んでくださる方
いつもありがとうございます

541 : ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:01:04 ID:IbD5/7GN0
>>タカハシさん
乙です

>>レッドマンさん
改めておかえりなさい
親子いいなあ、ほろりとしました
続き期待してます!

>>暇潰しさん
クライマックスひっぱるなあw
自分も緊迫感ある戦闘シーンを書きたいです
なんかあっさりしてしまう・・

では>>470続きです

542 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:02:39 ID:IbD5/7GN0

目が覚めるともうすっかり夜だった。
ビアンカは先に目を覚まし、既に装備を整えていた。
夕食をとりそこなった事に気づいたが、不思議と腹は減っていなかった。
夢なんだともう一度自分に言い聞かせる。

『起きたのね。今日こそお化け退治に行きましょ』
言いながら、ビアンカが俺の手を取って身を起こさせる。
感傷はまだ残っていたが、俺はビアンカに笑い返してその手に体を預けた。

昼間購入した装備をビアンカに見せる。
ナイフと鍋の蓋はキッチンに戻しておくようビアンカに言い、
真新しい棘の付いた鞭を手渡した。
ビアンカは嬉しそうに『ありがとう』と言い、
初めてのちゃんとした武器を物珍しそうに眺めている。

木の帽子は格好悪いから、と
ビアンカが身に付けるのを嫌がったので自分で被り、
うろこの盾をビアンカに渡した。
渋々それを左腕に装備する。

昨日と同じように慎重に注意を払って宿から抜け出すと、
夜の闇は昨日ほど恐ろしいものではなくなっていた。
月明りは煌々と世界を照らし、
草原の緑が濃い波を立てて風に靡いている。

北の城、と確認して俺とビアンカは、
北へ向かう細い道を辿っていった。

543 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:03:18 ID:IbD5/7GN0

戦闘は随分と楽になった。
いばらの鞭を手にしたビアンカは、昨日とは見違えるほど強くなった。
初めは扱いにくそうにしていたが、
何度かの戦闘で慣れてくると一振りで複数のドラキーを仕留め、
嬉しそうににこにこと鞭を撫でている。

『サンの言ったとおりだったわ。強くなるって楽しいのね』
昨日は苦戦した芋虫の死骸を爪先で蹴りながら、
ビアンカは鼻歌さえ口ずさみそうな声色で俺に言った。
小銭を抜き取りながら返事をして、俺は顔を上げて空を仰いだ。

青黒い空の向こう側に、暗く城の輪郭が見える。
立ち上がって声を掛けると、ビアンカは
ぴょんと跳ねるようにして俺の後ろに付いた。

一歩ずつ、足を進めるごとに城の姿が大きくなっていく。
現れたモンスターはもう簡単に倒すことが出来たが、
べったりと張り付くようにそびえるレヌール城の影が、
何故だか恐怖さえ覚えるほどに不安を掻き立てていった。

ビアンカは相変わらず、そんな不安には無頓着なように
軽い足取りで草原を進んでいく。
これが子供なのか、と俺は羨ましくさえ思った。

544 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:04:24 ID:IbD5/7GN0

『あら、子猫ちゃんだわ』
開け放たれた城門がすぐそこに見えるまで近付いた時、
ビアンカが唐突に声を出した。視線の先には、
町で子供たちが虐めていたのと同じような姿の動物が一匹、
こちらには気付かない様子で横切っていく。

『なんでこんな所に。あの子達町の外に捨てちゃったのかしら』
歩み寄ろうとするビアンカを制止して、俺はモンスターだよ、と囁いた。
相手はまだこちらには気付かない。このままやり過ごせるだろうか。

『モンスター?あの子が?』
俺に倣うように声を潜めてビアンカが言う。
頷いて、同じだけどあの猫じゃない、と俺は言った。
ビアンカの瞳が少しだけ真剣になる。
『じゃあ、あの子達モンスターの仲間を虐めてたの?』
もう一度頷いて、俺はモンスターに目をやった。
ビアンカは信じられないという面持ちで俺の顔とモンスターを見比べている。

ざわ、と風が抜けた瞬間。
通り過ぎかけていたモンスターがひくりと鼻先を震わし、
警戒するようにこちらを振り向いた。
その視線が俺の視線を捉え、剥き出した牙の隙間から
ぐるるる、とこちらにも聞こえるような威嚇の唸り声を上げる。

『猫ちゃん・・・』
呆然とその姿を見つめるビアンカの隣で、俺は武器を抜いて身構えた。
敵の視線が俺とビアンカを見比べ、無防備な少女の前で止まる。

545 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:05:19 ID:IbD5/7GN0

「ビアンカ!」
敵が地面を蹴ると同時に俺は叫んだ。
びくりとビアンカが肩を揺らし、反射的に盾を目の前に掲げる。
敵の牙は盾に弾かれたが、ビアンカは衝撃で後ろに転び尻餅を付いた。
立て直す前の敵の背中に一撃を食らわす。
相手の背中から僅かに液体が飛び散り、武器を汚した。

ぐるる、とまた敵が唸った。
「ビアンカ!」
もう一度呼びかけると、ビアンカは
思い出したように立ち上がり、武器を手に取った。
その手に未だ迷いがあるのが解る。

モンスターはこちらを伺うように唸り声を上げている。
俺のつけた傷が痛むのか、時々僅かに表情をゆがめている。
後一撃あれば、多分倒せるだろう。

止めを刺そうと武器を構えた直後、
ビアンカが何ごとかを発したのが聞こえた。言葉が聞き取れない。

振り向こうとした時、辺りが赤い色に染まった。
眼前を横切って、真っ赤な炎の塊がモンスターに向かって行く。
ビアンカはさっきのままの姿勢でそれを見つめている。

ぼん、という炎のぶつかる音と、モンスターの悲鳴が響き、
余韻も残さずに闇に溶けて世界が沈黙した。

目の前がちかちかする。
目を開けても、ネオンのような緑色の炎の残像が
闇に慣れた眼球を追いかけて視界を濁らす。
何度か瞬きをしながら俺は、ビアンカの傍に歩み寄った。

546 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:08:53 ID:IbD5/7GN0

『あたし、今・・・』
自分の両手を見下ろしながら、ぽつりとビアンカが呟く。
『・・・びっくりしたわ。呪文って凄いのね』

自らの放った炎に呆然としながら、ビアンカが言った。
少女の目に迷いはもうなかった。
見えるのは、純粋な感動と、おそらくは、快感。

まだぼんやりと自分の手を見下ろしているビアンカに、
俺は行こう、とだけ言って城の正門に向かって歩き出した。

何故か胸糞悪かった。
「猫ちゃん」を心配しながら、同じ生き物に手を挙げる。
結局自分もそうなのだ、それは理解しているつもりだけど。
同じ事をする、それを楽しむ、無邪気なビアンカの振る舞いが
今になって何故か哀しかった。

この世界では当たり前だ。
モンスターを殺すことも。自らの強さに酔うことも。
自分だってそうじゃないか。何の疑問も持たずに、異形と判断した生物を。

この世界では。この世界では。
それなら俺の世界はどうだ。
同じことをしていないと、言い切れるのか。
俺はどうだ。
何の迷いもない、それは正しい、本当にそうか。
それなら俺は、この世界では異形のものではないのか。

近付くごとに城が月を遮って、俺は暗闇に足を踏み込んでいく。

547 : ◆u9VgpDS6fg :2007/02/27(火) 16:10:31 ID:IbD5/7GN0
本日ここまでで
ありがとうございます

投下ペースに書くペースが追いつかず
書き溜めが尽きそうです(笑
またゆっくりになるかも

次回も宜しくお願いします

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/27(火) 17:11:48 ID:KokievsS0
乙!
ビアンカ、可愛いなーと読み進めていたが、後半の展開にやられた。
後々メラゾーマをぶっ放す素質ありありですなw
主人公の自然と魔物使いに進みそうな、心の動きが上手い。

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/27(火) 20:21:46 ID:kHsBzMgt0
乙。
現実であれば、魔物と動物の境界なんてないも同然。
その動揺が当たり前で、なんか悩ましいな。なんともいえない。

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/27(火) 21:06:52 ID:3MaoOlEF0
イイヨイイヨ~(・∀・)

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/27(火) 21:25:38 ID:/65jXd/00
今回も面白かった
主人公達と一緒に◆u9VgpDS6fg 氏の文才もLVうpしてるかんじ
続き期待。

552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/28(水) 01:36:39 ID:QVsXJWAO0
うわー、深いです。
ビアンカちゃん、こんなことでこれからやっていけるのかな・・・とおもったら、この展開。
子どもゆえの、無邪気さゆえの残酷さっていうの、ありますよね。
猫ちゃんをいじめていた子ども達と2人がかりで魔物を殺す主人公達とどう違うのか。
いろいろ考えさせられます。

553 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/02(金) 12:54:01 ID:lIB7wMEE0
みなさま、お久しぶりです。
久しぶりにまとめサイトを更新させていただきました。
職人のみなさまお疲れ様です。
タカハシの物語は、続きを書いてあるんですが時間がないため、
直接まとめサイトへ掲載させてもらいました。
まとめのトップからリンクをクリックしてください。
スレへの投下が出来ず、申し訳ありません。

では、また忙しくなるのでそのうちに。

554 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/02(金) 17:53:41 ID:15ZBRHuq0
タカハシ氏乙です!

555 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/02(金) 20:42:49 ID:i7N9WZTX0
更新日が未来になっとります

556 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/03(土) 02:52:22 ID:3GwpAAS3O
>>555さん
気づきませんでした…

まとめも途中のをアップしてしまってるし、急ぐとロクな事がないですねorz
折りを見て直しておきます。

557 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/04(日) 23:15:12 ID:PjVleOkg0
ちゃんと感想書けないけど楽しく読ませてもらってるよ保守

558 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/06(火) 07:42:00 ID:QZXOzw+70
二日で保守

559 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/07(水) 22:33:12 ID:+tQVb8sJO
ほす

560 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/09(金) 00:49:15 ID:jX3MZagJ0
守って保つぜ!

561 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/11(日) 01:42:27 ID:1XUevERK0
◆u9VgpDS6fg さんの作品を読んで、DQ5引っぱり出してきちゃった
まとめサイトでも時間を忘れて読みふけってます
ゆっくりと練ってから更新してください。期待してます
と言うわけで、保守。

562 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/12(月) 11:31:06 ID:yy8ZLuG50
このスレ向きじゃないか?
ttp://eucaly.net/~iso50/createStatus/createStatus.html

563 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/12(月) 23:52:42 ID:aYNNQch30
>>562
FC版の夜の青色が大好きだったんだ
癒されるw

564 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/14(水) 01:56:23 ID:5B1ERKLv0
帆狩

565 :焼肉屋:2007/03/15(木) 11:03:49 ID:qf/eOLKpO
あげ

566 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/15(木) 14:00:15 ID:aSIdlme20
hssry

567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/15(木) 15:13:15 ID:7fQyUflqO
久々に>>1から読みふけった

568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/15(木) 20:42:00 ID:oIMRaKZH0
tennou-ha sini-masi-ta

569 :焼肉屋:2007/03/16(金) 10:30:33 ID:LPYWJ/HlO
あげ

570 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 10:01:28 ID:L719GYpYO
保守

571 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 20:10:15 ID:8GZC5S8i0
4の人もうこないのかな(´・ω・`)

572 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:25:50 ID:irPHk7bj0
終章

ピサロがデスパレスに戻って来た時の魔物たちの反応は様々だったが、大半が彼の帰還を喜んでいたのには驚いた。
意外と人望があるのか…いや、魔望…魔にとっての希望なのか。この男が。
玉座まですんなりと昇って行くと、そこには巨体の魔術師がいた。

「エビルプリースト…」

「ピサロ様…いや、ピサロ。今更のこのこと戻ってくるとはな…」

「愚か者め…それは私も同じか。多くは語るまい。それこそ…今更だ」

魔界の剣を抜き放ち、ピサロが構えるのと同時に、ソロ、ソフィア、アリーナが臨戦態勢に入る。
俺もまた剣を抜き、皆より一歩下がった場所で構えた。すぐに術の構成に取り掛かる。
エビルプリーストの身体が変化する――それはデスピサロと同じ変化だった。
腕を飛ばし、頭を潰したあの状態へと変化し、腹に眼が浮かぶ…まるであの戦いを早回しにしたかのような。

「進化のスピードが速まっている…?」

「デスピサロの時と同じ、という事はあの変化がやっぱり進化って事になるのかしら。…私、進化したくないなあ」

最後の決戦が始まる――。
そう、息を呑んだのは良いのだが。

「睡魔(ラリホーマ)」

ソロのラリホーマで一発で寝るエビルプリースト。
ちょ、いいのか!?緊張感たりなくね!?

俺が内心突っ込んでいるとさっさと攻勢力向上(バイキルト)をかけろと言われる。
いいじゃないか…どうせピサロも使えるんだし。
ま、ソフィアに対して使われるとむかつくから俺がやるけどさ!

573 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:26:23 ID:irPHk7bj0
ピサロが回転しながら宙を移動し(!)ソロ、ソフィア、アリーナが打ちかかる。
俺とミネアは後方待機だ。正直、この面子で負ける気がしない、というのが俺の本音。
特にピサロがなあ…あれ変態だわ。
豊富な魔術に強力な剣技。修正してください。

あっという間にエビルプリーストの形態が変化していく。
最早――敵では無かったのだ。その、最初から。
彼奴が死に物狂いで吐き出した冷たく輝く息でさえも――ミネアのフバーハで威力は著しく軽減され、ソロの極限治癒(ベホマズン)が全てを無かったことにする。
アリーナが会心の一撃をぼこぼこに繰り出すし、ピサロは自分に攻勢力向上を施し魔界の剣を振るう。
そして――ソフィアだ。
あの狭間の世界での戦いは彼女を飛躍的にレベルアップさせたらしく、今や彼女の剣は比類なき冴えを放っていた。

「ば…ばかな……。
……それとも これも……進化の秘法が…見せる幻影…なのか……」

ざらざらとした風化し、消えてゆく。
最後まで魔族の王を自称した、愚かな末路。

「……バカめ」

ピサロがぽつりと呟いた。
彼にとっては、愛しき者を奪った憎き敵。で、ある筈なのに。
その眼には憐憫の光が宿っているように思う。
そんな彼のマントの端を、離れて見守っていたエルフの娘がそっと握った。

――そのときだ。
あの、忘れがたい声が響いてきたのは。

声は誘う。
勇者を、天空の城へと。

眩い光が辺りを覆う。ソフィアは、思わず瞳を閉じた…。

574 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:26:55 ID:irPHk7bj0


外に出ると、馬車もまた消え果ていた。
その場に残されたのは、俺と、ロザリーと、ピサロ。

「私は仮にも魔族を束ねるものだ。天空の城に暢気にはいることなど無い」

そう言い捨てて、魔王は歩き出す。
城を出るまで何かしらに集中しているような素振りを見せていたのは、ソロとソフィアにメッセージを投げていたらしい。
…意外と律儀な男だ。

「何をぼんやりしている。速くついてこい」

「……」

「お前とは話したいこともある。
それに…此処に残りたいのか?」

「まさか。…けど、そうだな」

ニヤリと笑うピサロ。
俺はなんとはなしに背後を振り返り――その幽鬼のような城から避けるように前へと進み始めた。
って前は魔王じゃん!ロザリーの後ろについていこう…。

575 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:27:49 ID:irPHk7bj0


ロザリーヒルの丘から空を進む気球を眺める。
のどかな気球の旅が何処か懐かしい。
やがて、ピサロが一人、こちらへと歩いてきた。

「もう、いいのか?」

「ああ…」

俺の問いにピサロは短く答え、歩き出す。
ゆっくりと…小さくなっていく気球から、未練を断つように。

俺はキメラの翼を空に放り投げる。
ブランカへ――だが、空に舞った羽はそのまま地に落ちた。

「ダメだな…そっちは?」

「少し待て。行ける所を探す」

ピサロが瞬間転移(ルーラ)の術を紡ぐ。
だが、それも中々発動しない。暫くの時が流れ、ようやく発動したその術で、俺たちは草原のど真ん中へと現れた。
この風景は…見覚えがある。…そうか、ここは…ブランカの東…か…。
俺達は逸る気持ちを抑え、歩き出した。




576 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:28:26 ID:irPHk7bj0
「今頃、どの辺にいるのかな」

「さてな」

「まずはサントハイムだな!
鳥卵がサントハイムの人達をこっちに帰してくれてる筈だし、今頃アリーナは喜んでるだろうなあ」

飛び跳ねて王に駆け寄る娘。
それをしっかりと受け止める、頼もしき王。
王と兵は姫の帰還を喜び、姫とその忠実なる僕二人は王と兵の帰還を喜ぶだろう。
そして、勇者により世界が救われたことを。

「宴が何日も催されたりして…だけどあんまり長居もできないから、こっそり抜け出してたりしてな」

「あの姫君のことだ。恐らくそう簡単には…そうだな、ソロが残ったかもしれん。アレがいれば暫くは収まるだろう」

「じゃあ次はバトランドだな!ライアンは王宮戦士だから…やっぱり宴とかかなあ」

「あの国は武人の国だ。華美な催しは得手ではあるまい…皆も故郷へ帰りたいと思えば早めに辞しているやもしれん」

「なるほど。…その次はエンドールかな。トルネコさんの奥さんの料理は美味かったなあ…ってそういえば城の中にデスピサロにビビッてるのがいたような…」

「なんだそれは?」

「なんだったかなー剣幕にビビッた思い出。その後はモンバーバラ…かな?」

「…あの小さな村かもしれないな」

「…ああ、そうか。そうかもしれない…」

577 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:30:24 ID:irPHk7bj0
夜が更け、梟の鳴き声が聞こえる。
ぱちぱちと木の爆ぜる音。
静かな森には虫の声も響き、賑やかなことだった。
尤も。
仲間が皆一緒だった旅とは比べ物にはならなかったが。

「それで…」

長い沈黙を破り、ピサロが口を開く。
放った薪がぱちっと乾いた音を立てて燃え上がった。

「何処まで気付いた」

「……ああ」

何処まで――または、何を。

「マスタードラゴンは進化の秘法を使ったな?」

ほう、とピサロの眼が見開かれる。
彼の眼は、彼の神のそれとは違う。
小さなものを見るような眼ではない。彼は、魔王は今、対等に俺を見ている。

「どうしてそう思う?」

「天空城にあった書とエドガンの手記を読めば誰でも想像がつくさ。
ヤツが元々何であったのかは解らない。だけど、究極の進化とは何か――それをあの姉妹の親父さんは掴んでた。
即ち、神へ至る道、だ。そもそも錬金術っていうものは…そういった術、学問であったから」

「…かつて、エスタークと呼ばれた存在がいた。
彼は…神と同じ道程を辿り究極の進化を遂げ、比類なき力を手に入れようとした。
が…神は一つの世界に神が並び立つことをよしとしなかった」

578 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:30:58 ID:irPHk7bj0
「だから、封じた。滅ぼさなかったのは…さて、誤算か意図か、どちらでも良いことかな。
神への反逆者を地獄の帝王と断罪し、地の底へと」

「地上にとっては平和な時間の始まりだ。
だが…奴にとってはその平和な時間も…酷く、退屈なものだった」

深い森。ブランカからこの場所までの道に存在する民家はたった一件だけ。
もう少しで…辿り着く、彼女の村であった場所。

「一人の天空人と一人のきこりの間に産まれた運命の子供が育った村を魔王に滅ぼされ…。
導かれし者達と共に魔を打ち倒す物語…」

「そう。それが数十…数百万と繰り返されてきた。もっとも…私の結末は、流転したが…それも大枠を外れることはない」

「そして…」

「……。急ぐぞ。休憩は終わりだ」

俺たち二人は火の始末をし、再び歩き出した。
嘘であれば良い。
だが、嘘では無いだろう。そう…確信していた。
あの眼をしたものならば、やるだろう。そこに躊躇いなど…あろうはずもない。

懐かしい…風景。
彼女と二人で走った森。
先にあるのは、絶望の象徴。
ああ――なんて、酷い。此処はただの更地では無い。更地であれば良かった。
此処には、人の住んでいた痕跡がある。

579 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:32:34 ID:irPHk7bj0
「私は…後悔はしていない」

ピサロがぽつりと呟く。
ともすれば眼を逸らしたくなる光景を見据え、俺もまた後に続く。
やがて、村であった土地の中央部が見えてくる。
懐かしい…そう、確かあそこには…花畑が――ある訳が無い。

だって、あの土地は焼き尽くされたから。
今尚、爪痕は痛々しく残り、ぼこぼこと不気味な気泡を時折噴き出す浅い沼のようになっている。
そして、その中央に。

「――――――――――」

嘘だと。
言って欲しかった。なのに、ピサロはただその沼地を見詰めている。
俺はふらふらと歩き出した。
ふらふら、ゆらゆらと、夢遊病にかかるとこんな足取りになるのだろうか。
だって、まるで夢心地。
そんなことはあってはならないことだから。なら、それは夢であるべきで。

「……ソフィア」

青白い顔をした少女。
沼地の中央で、まるで眠っているかのよう。
幸せそうに微笑んでいる。きっと、楽しく、嬉しい夢を見ることができたに違いない。
…末期の、夢は。

半分ほど沈み込んでいた少女の身体を引き摺り上げる。
びりびりと、毒素が俺の身体を苛むがそんなことに気を割いている余裕などない。
いや…余裕はあったのかもしれない。
もう…手遅れであったから。

580 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:33:25 ID:irPHk7bj0


仲間を送り、勇者は独り育った村へと戻る…勇者には、そこしか行き場所が無かったから。
滅んだ村――その中央で。勇者は俯き、背負った盾が地に落ちる。

そのとき、奇跡が起きた。
勇者の周囲、毒の沼地がかつての花畑へと変貌し――喪われた命が一つ、輝きを取り戻す。
再会。そして、勇者の仲間たちが駆け寄る……。
まさに絵に描いたようなハッピーエンド――とてもとても、幸せな…夢。


ピサロが行う完全蘇生(ザオリク)の呪。
彼女の瞼は…開く事は無い。

「魔王、などと呼ばれても…神の呪には、届かない。
情けない話だがな…」

「…………」

声も無い俺を、ピサロは責めることはなかった。
ただ、少しだけ…悼ましそうな眼をして。何かに気がついたかのように、森へと視線を転じる。

「…来たか」

荒い息遣いで現れたのは…ソロだった。
呼吸を整える間すらも惜しんで駆け寄って…そして、知る。最愛の妹の…●を。

581 :終章  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:34:03 ID:irPHk7bj0
うぐ。ぎ。ぐう。
ギイ…がぐううううううう嫌だ嫌だ嫌だ認めない知らない…。

違う。
それじゃダメだ。それじゃあ何一つ…俺は成長していないことになる…。
俺の存在。俺の運命。俺の…為すべきこと、成したいと思うこと。

「ソフィア…こんな…。
本当に、これは…奴の…ピサロ、お前が常々言っていた、神の仕業なのか…」

「…確かめてみるがよかろう。彼の神に、直接、な」

「ピサロ…そう、だな。…そうしよう」

勇者と魔王。
決して並び立つ筈のない存在が今再びその道を同じくする。
そして――。

「……行こう」

二つの影が、三つに増える。
全てを終らせる為に。
全てを、変革する為に。
終らない物語を終らせる…為に。

582 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:36:25 ID:irPHk7bj0
天の玉座に竜の神。
世界を統べる、絶対たる王。
その王の前に今、三つの矮小な命がある。

勇者も。
魔王も。
彼の存在にとっては、吹けば飛ぶ程度のものでしかない。
それを、まるで魔王は自分と匹敵するかのように…。
勇者が魔王を打ち倒せる唯一の存在であるかのように…。
祭り上げ、おためごかし、意のままに操り。

「デスピサロ…いや、ピサロ、か…。
そなたも懲りぬな…」

「……」

「数十万という途方も無い数を、たった独りで私に挑み、その度に破れ…。
少々、飽いた。今回は中々に楽しめたというに最後がこれでは――」

「マスター…ドラゴン」

「――ほう。ソロか?ソロもいるのか――これは、そうか…」

喜色を浮かべるマスタードラゴン。
それに対し、疑問とも戸惑いとも言える表情でソロは問う。

「貴方が…ソフィアを…」

「ああ、そうだ。あの結末は私が用意した。
悪くはないだろう?帰るべき場所は既に滅ぼされ…待つ人のいない村に独り戻る勇者…。
本来絶望しか無かった者へのせめてもの手向けだ。実際、あの娘はよくやってくれた」

583 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:37:03 ID:irPHk7bj0
「お、前が……」

「ふむ!それにしても――そうか、魔王と勇者がな…悪くない、実に悪くない。
これも、そのイレギュラーのお陰か…」

竜神は自分の手柄かのように喜んだ。
いや、実際にその通りであったから、かのように、というのは正しくない。

「お前が…俺を喚んだんだな」

「そうだ。私が喚んだ。同じ結末にも飽いていたのでな、別の要素が欲しかったのだが――。
お前は実によく動いてくれた」

最早語るべき言葉はない。
こいつが…ソフィアを殺した。
こいつが…ソフィアにあんな運命を課した。
こいつが…こいつが…!!

「お前が…!」

「――貴様が」

「お前がぁぁぁ!!!!!」

「「「――殺す!!!!」」」

「吠えるな…矮小なるものよ。やれぬことを叫ぶことほど、虚しきものもない」

巨大な竜に立ち向かう三人の男たち。
それぞれに握られる剣――天空の剣。魔界の剣。ドラゴンキラー。
戦いを報せる鈴の音が響くかのように、三本の剣が打ち鳴らされる!

584 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:37:44 ID:irPHk7bj0
「ふふ…魔王単体よりかは楽しませてくれるのだろうな…」

ドラゴンは動かない。
その玉座から、まるで動く必要が無い、かのように。

俺の補助呪文を受け、ソロが左から斬りかかる。
それに呼応するかのように、ピサロは右へと回り込み魔神のごとき迫力で斬りかかった。
目線すら交わさない、なのに鏡で写したかのようなコンビネーション。
今にも刃がその皮膚を引き裂こうとした瞬間、ドラゴンの両翼が大きく開く。
勇者と魔王。
その圧倒的な力を持つ両者を…まるで、羽虫を払うように…無造作に…弾き散らす。

「――ちぃ」

「どうした、ピサロよ…それでは、何も変わらぬではないか…。
今度こそ…我を動かしてみせろよ?」

「黙れ!!」

ピサロが素早く印を組む。
最上級の爆裂呪文。それを見越し、ソロもまた呪の詠唱に入る。

戦いは続く。
神と魔と人。
そして、そのどれでもないもの。
まるで導かれるかのように集い、滅ぼし合う。
そうだ。それはどの世界でも起きた、起きている、起きるであろう戦争だ。
ときに神が勝ち、ときに魔が勝ち…そしてときに人が勝つ。
どこまでも不公平で、平等に訪れる筈の結末を彼等は奪い合う。


585 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:38:14 ID:irPHk7bj0


満身創痍の三人とは対象的に…彼の神はせいぜいが身じろぎをした程度、一歩たりとも元の場所から動いていなかった。
荒い吐息が響く中、神はつまらなそうに…言った。

「やはり、この程度か…興が醒めた」

小さい咆哮。
それは扉の外への合図だ。
今の今まで、扉の外で待機していた有翼の戦士たちが、玉座の間に雪崩こみ狼藉者を押さえ込む。
万全の体勢ならばともかく、今の俺たちではそれを跳ね返すこともできず――。

「――なに?」

ざっ。
どっしりとした足取りで、荘厳な天空の城の床を踏みしめ。
ざっ。
一陣の風を纏い目にも留まらぬ速度で勇者に駆け寄り。
ざっ。
その速さゆえに突出しがちな主を支えるべく。
ざっ。
叡智を宿した眼光で辺りを睨みながら。
ざっ。
おっかなびっくりとした足取りで。
ざっ。
傷ついた勇者と魔王と一人の男に治療を施し。
ざっ。
絶望に満ちた空気を払拭するかのように、自信に満ちた笑みで。

「みんな――」

彼ら、彼女らが並び立つ。

586 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:38:49 ID:irPHk7bj0
「――今回は、あんたを責めないわ」

にやりと口の端に笑みを浮かべながらも、マーニャの頬にはうっすらと汗が見える。
感じているのだ。眼の前の存在の、プレッシャーを。

「そうでしょ?アリーナ」

「うん。その時間すらも、惜しいから」

勇者の隣に立ちながら、その愛らしい耳を飾っていたピアスを外す。

「それに、ソロも――信じていてくれたでしょう?どこかで、期待してくれたでしょう?」

「…ああ。していたよ。来てくれるんじゃないかって。だけど――まさか、全員とは」

「私たちは皆、自分の意志で此処に来たんですよ」

トルネコが正義のそろばんをしゃらりと鳴らす。

「…良いのか。お前には、妻も子も居るのだろう」

「らしくもない。貴方には、ロザリーさんがいる。なのにどうして此処にいるのです?」

「……」

「譲れないのですよ。臆病で、愚鈍な私でも――ね」

「お主は愚鈍でも、ましてや臆病でも無いわい」

つまらなそうに、当たり前のことのように言う老魔道士。
彼の言葉に占い師が頷く。

587 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:40:47 ID:irPHk7bj0
「あの戦いを潜り抜け、そして尚この場に立つものがどうして臆病なのでしょう」

それは、神官へと向けたものでもある。
彼は震えていた。
好意的に見れば武者震い。だが、残念ながらそれだけではない。
神に仕える彼は…今、自分で自分の半生を否定しようとしているのだ。

「…恐ろしいか…クリフト殿」

「ライアンさん…ええ…否定しても仕様が無い…私は、怖い。怖くて仕方が無いですよ――。
なのに、どうして…私の足は前へと進むのでしょう?」

「それは、貴公が――そう、その言葉は何でも良いのかもしれぬ」

男だから。女だから。戦士だから。勇者だから。仲間だから――。
それら全てを内包した、掛け替えの無い友が今、集う。

それなのに、そこには一つだけ、影が足りない。

「ねえ、貴方――あれ?私、どうして貴方の名前が解らないんだろう……」

アリーナが俺に声をかけてきた。
彼女は必死で何かを思い出そうとしている。
思い出は、ある。
そう、あの夜の帳の降りた船の上で――私は、彼と話をした。そして、彼の名前を呼んで――。

それはマーニャも同じだ。
何故、彼の、青年の、少年の名が思い出せない?
彼は自分の下僕で…弟子で…ほっとけない、弟みたいなヤツで…。
ああ!それなのに!

588 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:41:58 ID:irPHk7bj0
ミネアが沈痛な面持ちで俯いている。
全てを知った彼女は、ある意味で尤もこの日を恐れていたに違いない。
伺うように俺の顔を見て…そして、少し意外そうな表情へと変化する。

「ソフィアが死んだ」

俺の言葉が彼らに衝撃を生む。
足りない影。彼らの中心。あの少女が――死んだ。

「…完全蘇生(ザオリク)は!?」

「届かなかった。…ザオリクで蘇ることができるのは、導かれし者たちだけ…そこに居る、神に、な。
神が導くことがなくなれば、それはもう導かれし者達ではない…」

「そんな…どうして…」

アリーナの問いに、玉座で薄ら笑いを浮かべていた神が身をよじる。
それは解らない者にたいして教えたい、という欲求。

「簡単なことだ。幻惑(マヌーサ)で毒の沼地に誘い寄せ、睡眠(ラリホー)で眠らせる。
邪魔が入らぬよう瞬間転移(ルーラ)を封じれば…」

たった。たったそれだけで。
勇者が死んでしまった。勇者と言えど――それで、死んでしまうのだ。
それはつまり、勇者ではない彼等はそれ以上に簡単に――死んでしまう、ということ。

「それでも尚、向かってくるか…?今ならば、お前たちだけ救うこともやぶさかではないぞ。
実際、お前たちはよく楽しませてくれた…これは私からのせめてもの、礼だ」


589 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:42:58 ID:irPHk7bj0
ブライはその慧眼で冷静に観察していた。
その発言の真意は何処にあるのか、を。
此処に居る全員が自分に立ち向かってくることを恐れているのか、を。
しかし残念ながら、神にとってそのような駆け引きはあまりに興味の無いものであったようだ。
彼は死闘を覚悟する。
撤退?ハハハ、この状況でそんなもの――彼女の臣下になったそのときから、考えることはない。

「――ソフィア……私の親友を、よくも……!」

「…姫様」

「止めるの?ブライ?…解ってるわ、私だって…だけど…だけど…!私は…!」

「速度上昇(ピオリム)」

老魔道士の魔力を受けて、アリーナは驚きに目を見開く。

「さあ、背はいつものようにお任せあれ。
サントハイム宮廷魔術師の、そして我が国の誇るべき姫君の教育者の名に恥じぬ働きをいたしましょうぞ」

「うん!」

嬉しそうに微笑む美しい少女。
彼女の笑みは――若き日の己が見た王妃の笑みに、よく似ていて。
老魔道士は不覚にも目頭が熱くなるのを覚える。

「ほら、泣いてないでやるわよ、おじいちゃん」

「ふん…黙れ小娘。遅れを取るでないぞ」

「それはこっちの台詞!」

590 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:44:03 ID:irPHk7bj0
ぱん!っと鉄の扇が開かれる。
踊り子の象徴とも言うべき華麗なる武器を持ち、彼女は戦いに挑む。

「フォローは任せて、姉さん」

「ミネアさんは…複雑、では無いのですか…?」

恐る恐る訊ねたクリフトに対し、ミネアは迷いの無い凛々しい表情を浮かべている。

「はい。私は、姉さんを信じています。勇者様…ソフィアさん、ソロさん…そして仲間の皆さんを信じています。
私に声をかけてくれたのは、神様よりも…皆さんのほうが、多いですから。
…ですが、一つだけ、私にも訊きたいことがあります。
…ハバリアの町の近くのほこら…あの場にいた女性を消したのは…」

「私だ。そも、地底に封印されていた地獄の帝王がどうして聖なる神の御使いを消すことができる?」

「――そう、ですか」

ミネアが、クリフトが、めいめいの武器を構える。
彼らの前に立つのは、ライアンとトルネコだ。
良き父と、頼もしき戦士はまだ若い彼らの壁になるかのように、神との中間に立ち塞がる。

「トルネコ殿。くれぐれもご無理はなされぬよう」

「ええ、心得ておりますとも。――全員で、帰りましょう」

頼もしき男たちが前線を張る。
果たして、永き時を共にしてきた仲間達の、最後の戦いが始まった。

591 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:45:18 ID:irPHk7bj0


マーニャは、考えていた。
自分には天賦の才がある。
だが、その才を持ってしても――ピサロの術には適わない。
人間と、魔王。
その器の差は如何ともし難くて。
全く同じ術なのに、彼女の術は魔王のそれに劣る。

ブライには、敵を攻撃する以外にも仲間を補助する術がある。
翻って自分はどうだ。
その魔術の強力さに胡坐をかき、ただひたすら敵を圧倒する術しか学ばなかった。
勿論、それには仇討ちのためという理由もあった。
だが、仇討ちを完遂した後もひたすら敵へと力をぶつける魔術を習得し、補助といえば精々がトラマナぐらい。
その甲斐あって手に入れた極大の爆裂呪文であったのに、それすらもあっさり魔王に奪われ。

自分は間違っていたのだろうか?
なんのことはない。
彼の師だなどと言ったって、自分が道を間違えていて誰を導くことができるというのか。

竜神に立ち向かうアリーナ。
彼女は巨大な存在に怯むことなく、打ちかかっていく。
親友を殺された、純なる怒りが彼女を怯えから守り、その拳閃をいつもよりも輝かせる。

嘗ては、アリーナとマーニャはパーティーの要であった。
マーニャにとってアリーナはもう一人の妹であり、いつも前線に出張り危なっかしくも助け甲斐のある少女であった。
なのに――。

「随分と、離されたもんだわ」

知らずのうちに苦笑が漏れる。
そんな彼女に、俺は声をかけた。

592 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:46:10 ID:irPHk7bj0
「そんなことはない。師匠(マスター)には、師匠の成してきた道がある」

「私の道?」

「そう。火力を追求してきた道。その道をきたからこそ手に入れられたものがある」

マーニャは少し驚いていた。
彼はいつのまに、こんなに大人びた表情をするようになったろう?
天空の城に来るまでは…まだ違う。
そう、この城で彼とソフィアは一時的にパーティーから離脱し…魔界で合流した、その後から…?

この少年、この青年、この男――今やどれでも形容できる存在は、果たして何を学んだというのか?
何を知れば、このような表情ができるのか――?

「この世界にとって、彼の神の影響は絶大だ。
だが――この世界のものじゃ、なければ。あったじゃないか、マーニャ。君がプライドを捨ててまで手に入れた、小さな灯火が」

瞬間、マーニャの全身に電撃が走る。
マーニャ自身が辿り着いた最後の、危険を伴う賭け。
命が惜しいわけではない。下手をすれば仲間をも巻き込みかねない、最悪の呪であるから。

「マーニャなら、大丈夫さ」

だというのに、あっさりと。

「…むかつくわ。少しはいい男になったじゃない」

「喜んで欲しかったな」

「――いいわ。見せてあげる。これが、私の、天才魔術師マーニャちゃんの、最終、最奥の秘術…!」

593 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:46:51 ID:irPHk7bj0
――我は請う。
最古の力。最古の魔。
最古の闇が灯す暗い炎。


「この血肉をもって契約を!」

マーニャの背中から闇が噴き出した。
仲間達が驚いたように振り返るが、彼女自身が感じているのは噴き出す霧ではなく肩にかかる手であった。
憎悪…嫉妬…怨嗟…彼女が思い出したのはバルザック。
父を殺した憎むべき仇。
ヤツの、いやらしい笑み――。
だがそれに身を任せることはない。旅の中、その心を成長させた彼女が闇に囚われることはない!

「異界の魔王の召喚…素晴らしい…」

神がぽつりと呟く。
その驚嘆に対して、マーニャと魔王がニヤリと嗤う。

「今だ!!!」

ソロの号令が響く。
息のあった動きで、全員が動き出す!
補助呪文が仲間の背を押し、魔法と剣戟に神が一瞬無防備な姿を晒す。

「さあ…いくわよ!大魔王の炎(メラゾーマ)!!」

594 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:47:47 ID:irPHk7bj0
魔王の御名を冠する炎。
それはメラに相応しいとてもとても小さな火の玉。
真っ直ぐに、レーザーのように標的の元へと飛来し、着弾。
巻き上がる渦――焔の渦の中、悶える竜の影が見える。
仲間達から喝采の声があがる。
そして勿論、そこで手を緩めはしない。
ソロが、アリーナが、ライアンが。そして俺もまた、畳み掛けるために疾駆する。

じりっ。
うなじの毛が逆立つ感覚。その感覚を理解したときにはとき既に遅く。

巨大な焔渦を吹き散らし、両の腕でソロとアリーナを吹き飛ばし、冷たく輝く息でライアンを迎撃する。
そして最後の俺には。
既に宙に浮かんでいる俺には何が起こったのかは解らない。
その羽ばたきにすら俺の身体は耐えることができなく宙へと浮かび。
避けられるべくもない尾撃。

ぶつりっと、いやな音がした。
その音は全員の耳に響き、そして否がおうにも現実を直視させる。
男の身体が二つに断たれている。
胴と、足と。
足の方が天空城の床に落ち、胴の方は遠くに弾き飛ばされ、大地へと吸い込まれていく。

「はは…ハハハハハ…よくぞ我を玉座より立ち上がらせたものだ…。
良いだろう!久方ぶりに血沸き肉踊るわ!!」

人々に神と崇められる存在の、愉悦の混じる哄笑が響き渡った。

595 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:48:27 ID:irPHk7bj0




落ちていく。
空の城より、地上へと。まっさかさまに。
腕が動く感覚はある。足の動く感覚は無い。
ごうごうと唸りをあげる大気もやがて気にならなくなり…そして俺は自分が落ちているのかどうかも解らなくなった。

目を覚ます。
いや、気絶していたのかどうかも解らない。
ただ、それまでどうやら目を閉じていて、そして今、その目を開いた、ということだけは解る。
そこはなにやら真っ白な空間で、辺りには何も無かった。

「ここは……」

辺りを見回すために首を巡らせる。
そこで気がついた。
確かに首を回した感じはしたが、視界が変わらないのだ。
いや…そもそも、180度の視界を持っているのかどうかも…。
周りが白一色であり、そこには空も大地も無い、という事実を知覚しているだけに過ぎなかった。

「――ようやく会えたね」

それでも便宜上表現するとしたら、そう、眼前に。
小さな。小さな、ふくろがあった。

「……そうだな。こうやって話すのは初めてか……」

「ずっと一緒にいたのに」

596 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:50:39 ID:irPHk7bj0
そういって、笑う。
笑った雰囲気を感じる。
口もたぬふくろが喋る声を認識する。

「しかしそうか…俺は肝心なところで…悪かったな。結局、何も…できなかった…」

「いいや。そんなことはない。
ボクだけではそれこそ、荷物を運ぶことしかできなかった。
君がいたからこそ…ここまで来ることができた」

「そうかな。…結局、ソフィアは死んだ。皆は…皆には勝って欲しいが…」

「ふふ…さっきから君は何を言っているんだろうと思っていたんだ。
さあ、起こすんだ。彼女を」

「……?」

「君が気付かなければ本当に終ってしまう」

「…………あ…………そう、か…………これか…………」

「君の肉体はもう、壊れてしまった。
これを治す術は僕には無い…。だけど…。神ならざる僕にも、用意できる器がある。
人の身体は無理だけれど。道具なら――全ての道具を収める僕になら、可能だ。
君は、何を望むだろう?勿論、君が望むなら――このまま、器をもたないこともできる。それは、異界への回帰か、消滅か…正直な話、解らないのだけど」

「……」

俺の望み。
そんなものは。あのときから、決まっていた。

597 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:51:32 ID:irPHk7bj0





空が蒼い。
雲は白い。
見慣れた風景。辺り一面の花畑。
ゆっくりと上体を起こす。自分は何故、このような色とりどりの花たちに囲まれているのか。
ぱらぱらと身体から落ちていくものがある。
それはどうやら小さな石や埃…砂のようだった。

(おはよう、ソフィア)

頭の中に響く二つの声。
ずっと傍にいた人たちの声だから、自然と受け入れることができる。
村で育った幼馴染の少女と、村を出てから共に歩いた青年の幻影が空へと消えていく。

手元に転がる壊れた砂時計。
周囲に広がる花畑にも、自身の身体にもかかっている砂。
足元に突き刺さる、細い刀身を持つ剣。

598 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:52:34 ID:irPHk7bj0
ソフィアは壊れた砂時計を左手に、刺さった剣の柄を右手で握る。
なんの抵抗も無く引き抜かれる剣。
その刀身には、こう刻まれていた。

――Sword Of Sofia――

彼女は彼女の、ソフィアの剣を手にする。

(さあ、行こう)

「…どこへ?」

(あの、空へ)

「…どうして?」

(君の、兄と、かけがえの無い友を救うため)

「…どうやって?」

(それは君が一番解っているよ)





599 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:53:19 ID:irPHk7bj0
男が身体を断たれ、地へと落下してから数時間が経ち。
マスタードラゴンの火炎が玉座の間へと降り注ぐ。
ミネアがフバーハでそのダメージを軽減するが、それもこう何度も吹き付けられるとキリがない。
だが、自分たちには彼の神を撃つ手段が無い――。

「…卑怯者!降りてきなさいよ!」

アリーナが地団駄を踏む。
彼女たちは今、完全なる自分の無力を呪っていた。
散発的に飛ぶマーニャたちの攻撃魔法では、決定的なダメージを与えることができない。

マスタードラゴンは凍てつく波動を放たずに、火炎と吹雪を交互に吹き付ける。
ミネアを初めとして仲間たち全員に、火傷と凍傷が少しずつ刻まれていく。
もはや満身創痍となりながら、仲間を癒すクリフト。
だがそれも、心が折れるまでだろう。

「賭けるしか…ないのか…」

だがそれはあまりに分の悪い賭けだ。
それまでの戦闘経験が、未だ機が熟してはいないとソロを押し止める。
だが、このままでは機が熟す前に、全てが終ってしまうだろう。

迷っているのはピサロも同じだ。
あのエビルプリーストの使った進化の秘法。
進化のスピードの速いあの術なら、今この場で使用することもできるだろう。
しかしそれでは…。

「――む?」

600 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:54:14 ID:irPHk7bj0
気が向くままにブレスを吐いていたマスタードラゴンが訝しげな声をあげる。
なんだ?と思った矢先。
下からの一陣の光がその鱗へとぶつかっていく。
神は絶対的な自信をもっていた。
即ち、我が身の鱗を貫けるものなどこの世には創りあげていない、と。

「なんだとお!?」

なのに、何故だ。
今、我が身より弾け、噴出すものは一体なんだ!

神が身をよじり、地より飛来した何かを見る。
白い翼。自身の眷属として生み出した者たちが持つ、美しき羽。
彼女の持つ剣。それが何なのか一瞬、解らない。
だが神はすぐに理解する。つまり、神が解らないものであるということが、一つの決定的な意味をもつのだから。
異界の物質。異界の剣。即ち、己を殺し得る剣!

天空城から空を眺める者たちは見た。
彼らがその身と心を預けていた少女が、今――。

ソフィア殿!ソフィアさん!ソフィア!!

「ミネア!マーニャ!祝詞を捧げて!彼の残した卵とオーブに向かって!」

そう告げるや否や、ソフィアは背の翼を巧みに操り神へと向かっていく。
その小さな背を追うようにピサロが飛んだ。
竜の尾撃がソフィアに向かって放たれる。その射線上から彼女を突き飛ばし、その勢いを利用し自分もまた逃れる。

「――ヤツはどうした?」

「あの人なら、ここにいるわ」

601 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:55:30 ID:irPHk7bj0

掲げられる細身の剣。

「……そうか」

ピサロもまたそれ以上は言わず。
二人は神へと挑んでいく。


「祝詞…ミネア、なんのことか解る?」

「いえ、私にも…」

アリーナが辺りに散乱していた彼の遺した道具から、一つの卵と六つのオーブを持ってくる。
だが、祝詞を捧げてくれと言われた二人が困惑していた。

(ミネア…マーニャ…)

「…え?ミネア、今の…!」

「…私にも聞こえたわ、姉さん!」

(今から捧げるべき言霊を伝えるから…繰り返して…)

頭に直接響く声。
それを、二人は復唱していく。
その唱和は、彼が狭間で得た二人の友の、餞別へと届いていく。

602 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:56:07 ID:irPHk7bj0
「時はきたれり」

「今こそ、目覚めるとき」

(大空は、お前のもの)

「舞い上がれ――」

「――空高く!」

ミネアの真摯な祈りが。
マーニャの捧げる神域の踊りが。
本来、羽ばたく筈の無い翼を蘇らせる――。


炎の直撃を受けるソフィア。
だというのに、まるで怯まず己に突っ込んでくる。
いかな勇者と言えど、おかしい。
心が折れなかったとしても、肉体が傷つけば動きはどう足掻いても鈍くなる。

「…まさか」

神は眼をこらした。
少女を、ではない。少女の持つ、異界の物質を。
上位治癒(ベホイミ)の光。
それだけではない。
神が凍てつく波動を放てば、攻勢力向上(バイキルト)の光が、物理障壁(スカラ)の輝きが、少女を包む。
そういうことか――。だが、それでも。
万が一にも敗れることはない。
竜身を完全治癒(ベホマ)の光輝が包み込む。
少女と魔王、彼女らとはポテンシャルが違いすぎる。
時間をかければ如何様にもできる。それが、神の結論。

603 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:57:06 ID:irPHk7bj0
「…愚かな娘よ。幸福な夢から望まず目覚めさせられ…戦いを強いられている。その剣のせいで…」

「……」

「沈黙は肯定か?では、そのような剣など捨ててしまえ。我のそなたへの感謝は本物だ。
また、安らかに…眠らせてやろう」

「……それは、道具への感謝よね?」

「そうだ。そなたとて、道具を使い終わったら、道具が使えなくなったら処分するだろう?
そうしなければ延々と溜まっていくだけだ」

「ええ。中には捨てるものもある。売るものもある。
…だけど。私は全てをそうしようとは思わない。例え壊れてしまったものでも――」

少女の腰に揺れる壊れた砂時計。

「大切なもの。ずっと、一緒にいたいもの。そういうものが、きっとある。
貴方にとって私たちはそうじゃなかったのかもしれない。
だけど、だからといって――はい、そうですかと破棄されるのなんてごめんだわ」

握る剣に力が篭もる。
少女の意思に応えるように、剣は震える。

「――では、破壊するまでだ。さらばだ、勇者よ!」

神の攻撃が激しくなる。
そんな中、ソフィアはただじっと耐えていた。
たった一度のチャンスを逃さないために。

大魔王の炎(メラゾーマ)が横合いから神を撃つ。
馬鹿な。この高さの我に、どうやって――。

604 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:58:44 ID:irPHk7bj0
神は見た。
己と同等の存在が。
空を自由に駆ける翼神が――!
この世界で、己以外に存在してはならない存在が――!!

ブライの放つ巨大な氷柱。ミネアの巻き起こす大気を裂く竜巻。
寸分違わず直撃し、神の動きを拘束する!

翼神の加護を受けた4つの流星が縦横無尽に駆け回り、神の鱗に叩きつけられる。
その一撃一撃が、重い。竜鱗をすら砕く一撃へと変貌していた。
ライアンが、アリーナが、クリフトが、トルネコが、砕き、斬り裂き、貫く!

「――ソロ」

「――ピサロ」

その間、勇者は仲間達の魔力を借りて。
魔王は、己自身の魔力の全てを練り上げて。
辿り着いた神域の魔術を――開放する。

「ミナデイーーーン!!!)」

「マダンテ!!!」

鼓膜を破壊しかねない轟音と、衝撃。
まさに全身全霊。
仲間達の築いたその道に、ソフィアが最後の一撃を放つ。
天使の翼が羽ばたくと、少女の姿は一筋の光と化した。

深々と突き刺さる、ソフィアの剣。
神は叫ぶ。苦痛に悶絶しながらも、治癒の叫びを。

605 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 20:59:27 ID:irPHk7bj0
「…眠りましょう、一緒に」

ソフィアは解っていた。
これだけでは、止めにならないことを。
だから、覚悟していた。

そして、ソロもまた。
覚悟をしていた。
魔王は大丈夫。彼にはロザリーがいるから。
神も、勇者もいなくても。
きっと、幸福が沢山できる。
…あれほど魔王を憎んだ自分が、こんな感情を抱くとは。ソロは、小さく笑った。

翼神の背から飛び降りるソロ。
神の背へと降り立ち、妹の元へと駆け寄る。

妹は兄へと笑顔を向けて。
同じ結論に達した兄に、申し訳なさと、嬉しさの混ざった笑みで。

「――ダメェェェェ!!」

アリーナの悲痛な叫び。
二人は、少しだけすまなそうに、仲間達を見て、同時に手袋を外す。

606 :神殺  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:00:17 ID:irPHk7bj0
神の身体が完全治癒の光に包まれる。
だが、それよりも速く。
ソフィアの剣が引き裂いた、神の鱗の内部にソロが手を突きいれ。

「ありがとう、皆。――大好きだよ、みんな!」

少女もまた、兄の手に、己の手を添えた。


楽しかった思い出。悲しかった思い出。
故郷を出て、旅をして、様々な人に出会って、色々な土地に赴いて。
一秒一秒が輝いていた。

ありがとう。
だから、これはお礼。
大好きな女の子への、小さな、小さな…。


座標融解現象が巻き起こるその中心で。
最後に大きな泡を生み出し、少女の剣は砕け散った。

607 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:03:14 ID:irPHk7bj0
空気を裂く音が響く。
大勢の兵士の前で型を披露したライアンに、万雷の拍手が送られる。
武門の誉れ高きこのバトランド王国において、ライアンに勝る戦士は――いない。

「なんと…また、旅に出たいと申すか…」

頭を垂れるライアンに、バトランド王は残念そうに呟いた。

「だが、何故だ?嘗て、そなたは勇者を探す旅に出た。
では、今度は何ゆえに旅出る?」

ライアンは王宮戦士だ。
王宮に仕える戦士が、任務以外でバトランドを離れるなど、本来あってはならないこと。
世界は平和を取り戻した。
最早、彼が旅に出なければならない理由は無い。
王は、この無骨な戦士に、ゆっくりと休んでもらいたかった。

「…私は戦士。戦士は、戦いこそ生業。
幸いなことに、今、この国は平和です。ですが…それでも、この世界には悲しみが満ちている」

608 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:03:47 ID:irPHk7bj0
「だが、それは――」

魔物が人を喰らうとか、ある意味単純なことではない。
人は、人を傷つける。
そこから生み出す悲しみを打ち消そうとすれば、それは矛盾とやるせなさに焼かれることになる。
戦士の役割では、無い。

「ライアンよ。…悲しみを消すことは…できぬぞ?」

「それでも――減少させることはできると信じます」

「……」

バトランド王は大きく嘆息した。
目の前の大戦士を止められる言葉など、存在しないことを悟ったからだ。

「あい、解った。行け、ライアン。…だが、偶には顔を見せろよ?」

「ハッ!必ず!!」

609 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:04:22 ID:irPHk7bj0
「あーあ…退屈」

ベッドの上で足をばたつかせる。ぼすぼすと蹴られる枕。
変形してしまったそれは、特に文句を言うことはない。いつものことだし、優しいメイドがまた形を直してくれるから。

「退屈ならばお勉強を」

ブライのツッコミは完全にスルーだ。
馬耳東風とはまさにこのこと。そんな様子をクリフトは苦笑を浮かべて見守る。

「ところで、クリフトにブライが揃って私の部屋に来るなんてなんの用?」

「王が見合いの話を持っていけと仰られましてな」

「帰れ」

「私もなんとかお止めしようとしたのですが…」

「流石クリフト。忠臣ね」

アリーナに褒められ、まんざらでもなさそうなクリフト。
それを見て普段なら青筋を立てて怒るブライが、なにやら神妙な様子だ。
アリーナもクリフトもある程度予想していた事態が起こらなかったために、疑問符を浮かべる。

「実はわしも、もう良いのではないかと思い始めましてな」

意外なぶっちゃけトークに、クリフトの口があんぐりと開く。
対照的にアリーナは小躍りをして喜んでいる。

「ブライ!解ってくれたのね!」

610 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:05:10 ID:irPHk7bj0
「ええ。このブライ、恋愛沙汰には決して疎くはありませぬ。
どうやらアリーナ姫様には心に思う方がおられる様子。ならば、見合いなどをしても幸せにはなれぬでしょう」

ひげを整えながらしれっと言うブライに、今度はアリーナが慌てふためいた。
クリフトは…開けた口から魂が抜けてしまったのか、呆けてしまっている。

「ちょ、な、何言ってるのよブライ!」

「王を安心させるためにも、彼を探しにいきましょう。旅ですぞ、姫様」

「…まあ、そこまで言うなら…旅は楽しそうだしね…」

婿探しの旅というのはアリーナ的には非常に気になる所だが。
それでも、彼女自身旅は大好きだし、それに…。

「クリフト、いつまで呆けている。
…旅先で色々あって、結局一番身近な人の大切さを知ることもあるかもしれぬぞ」

ブライにぼそっと囁かれ覚醒するクリフト。
彼とて、負けてはいない。いや、負けられない!と、意気込む。
アリーナは二人がなにやらこそこそしてるのに首を傾げていた。

611 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:05:52 ID:irPHk7bj0
エンドールの小さな武器屋。
その二階で、トルネコは椅子に座りじっと何かを考え込んでいた。
夫のそんな様子は珍しく、ネネは邪魔にならないように、それでもトルネコが自分を呼んだらすぐに返事ができるように、
傍で繕い物をしている。

「…ネネ」

「はい?」

「私は夢を叶えた。世界一の武器屋になるという夢…天空の剣こそ手に入りはしなかったけれど、
武器は元々使い手がもってこそ輝くもの。あの剣の輝きが見れただけでも私は満足だし、今や武器屋の間で私の名前を知らないものはいない」

レイクナバ、田舎の小さな村で店員のバイトをしていた頃から比べれば考えられない出世をした。
富も、名声も得た大商人だったが、それなのにどことなく最近のトルネコは暗い顔をしていることが多かった。

「…すまない、ネネ。私は、また――」

「ええ。用意はできていますよ、あなた」

トルネコが言い終わる前にネネはすっかり整理の終った旅の荷物を机の上に置いた。
眼を白黒させるトルネコに、くすくすと微笑む。

612 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:06:43 ID:irPHk7bj0
「ただし、条件があります」

「じょ、条件?」

「今度の旅には、私もポポロも一緒に連れて行くこと――前の旅よりも、危険は少ないでしょう?」

この妻には自分は一生敵わないだろう。
そんな予感をトルネコはいつも抱いている。
だからこそ、この展開も、実の所考えてはいたのだ。
そしてそれは――彼にとっても、嬉しいことで。

「解った。行こう、ネネ。だけど、ポポロには此処に友達がいるんじゃないのかい?」

すーすーと眠る息子、ポポロを見る。

「ふふ…もし、またあなたが旅に出るようなら、絶対についていくと言い出したのはこの子ですよ」

「そうか…」

一組の家族の幸せな夜は静かに更けて行く。

613 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:07:25 ID:irPHk7bj0

ごとごとと揺れる幌の中でマーニャはぱたぱたと鉄扇で風を迎え入れる。
他に見ているものもいないので、中々だらしない格好をしているのだが。
共に旅するミネアはパトリシアの手綱を握っているので、自由なものだ。

「ねーミネア」

「なあに、姉さん」

「コーミズ村で、父さんに報告したら…どうしよっか」

ミネアはマーニャからその言葉が出るのが少し意外だった。
マーニャならばてっきり、あの住み心地の良いモンバーバラで過ごそうとするものだとばかり思っていたから。

「だって、ミネア、あんまり好きじゃないでしょ?」

…何も考えていないようで、時折鋭いことを言う。
マーニャにはひょっとすると自分以上の占い師としての才能があるんじゃないだろうか?
以前そんな話をしたら、マーニャは一笑に付した。
曰く、

614 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:08:01 ID:irPHk7bj0
「私が解るのは、私が好きな相手限定だもの」

とのことで。
面と向かって好きだと言われて赤面してしまったミネアは、その後マーニャにからかわれることになったのだが。
閑話休題。

「だけど、モンバーバラじゃなければ何処にいくの?」

「んー…ミネアの占い次第ってのはどう?」

「…私には、もうどちらに行くべきかなんて見えないわよ姉さん」

「違う違う。つまり、ミネアちゃんが行きたい方角に行ってみるってこと!根拠なんてなくていいの」

けらけらと笑う姉に、ミネアははあっと嘆息する。
それはもはや放浪に近い。

「父さんの話、覚えてるでしょ。私達の母さん、ジプシーだったって。
…私達は、ジプシーの姉妹。だから、旅が似合うんじゃないかって思ってさ」

「…ジプシー、か。
…そうね、そうしよっか。姉さん」

ひひーん、と、道程は任せろとばかりにパトリシアが嘶いて。
姉妹は朗らかに笑い合う。

615 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:09:02 ID:irPHk7bj0
ロザリーヒル近くの丘の上で、エルフの少女が歌っている。
花畑の中央に座り、少女の膝を枕に銀色の髪の青年が身体を大地に横たえており。
その綺麗な歌声を堪能している。

「…ピサロ様」

「……」

ピサロは返事をしない。
だが聞いてはいるのだろう。
微かな身じろぎを膝に感じたのでロザリーはそのまま続けた。

「…私…色々なものを、見てみたいです…ピサロ様と一緒に…」

616 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:09:38 ID:irPHk7bj0
控えめな少女が控えめに伝えた願い。
いずれ、そう言うのではないかと考えていた。
魔王とて、少女を籠の鳥にしたくてあの塔に押し込めた訳ではない。
しかし…。
これからも人は増え続ける。
平和な世で育った人は、きっとそうではない世で育った人よりも――酷い生き物になるのではないか。
そんな、予感めいたものをピサロは感じていた。

「――私は……」

お前が心配だ。
お前を喪いたくない。

そんな言葉を直接発することはない。
それでも、少女には届いていた。

「……行くか」

「……はい!」

青年と少女は以心伝心であり、心がすれ違うことなど二度とありはしないだろう。
少女が行きたいと言うのなら。
叶えてやりたいと思う。その、願いを。

617 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:12:11 ID:irPHk7bj0
「…ふむ。これは…面白い、な」

ぽつりと呟く緑髪の男。
ソロはとある洞窟の中にいた。
今は失われた技術が眠ると言われる洞窟の中にあった、箱のような乗り物。
その中には、中年の男性が乗っており、延々と同じ線路の上を走らされている。
どういう原理かは解らないが、誰かがスイッチを切り替えてやらなければ止まらないようだ。
男が何か言っているようだが、よく聞き取れない。

「ま、そこで暫く反省してくれ。…なあに、あんたにとっては大して永いと呼べる時間じゃあないだろうさ」

結局ソロは男性を助けず、その洞窟を抜けた。
眩しく差し込む日の光をかざした手で遮る。

「……さて、と」

故郷を喪い、父母を喪い。
まるで運命を暗示しているかのような名前をつけられた青年は、太陽に向かって腕を突き出し、大きく伸びをした。

――次は、何処へ行こうか。
それが言葉になることはない。彼には、旅の連れ合いはいないのだから。
だが、それでも彼の顔は明るく、希望に満ちていた。
勇者ソロの旅は、まだまだ続いていく。
終りでは、無い。そのことにこそ、喜びを感じているかのように。

孤独な男の右の耳には、スライムのピアス。
そして左の耳には、再会を誓って交換したキラーピアスが輝いていた。

618 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:13:45 ID:irPHk7bj0
そして――。

岬の上に置かれた墓石。
刻まれる名前は無い。名が無いことこそ、ここに眠る存在の証。
跪く、緑色のふわふわの髪をした少女。

「皆、旅立って行ったよ」

「ライアンもアリーナもクリフトもブライも、トルネコもミネアもマーニャも…ピサロもロザリーも、兄さんも…」

「皆、元気。皆、嬉しそう。一つが終って、これからに向かって、歩いていってる」

「私は」

「私は――……」

「……ぐすっ」

「……私は、もうちょっと時間がかかるかもしれない」

「……ほら、デスパレスもこのままにしておけないから。ピサロはロザリーを幸せにしないといけないから…私が面倒見ないと」

619 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:14:17 ID:irPHk7bj0
「なんだか、逆になっちゃったね!前は…私が喋れなくて…あなたばかり…喋らせちゃってて…」

「だけど、いつかは…」

「いつか…」

「返事を、してもらいたいから…お話したいから…」

「私も、旅に出る」

「――あなたを、探しに。だから、覚悟しておいてね」

ミニデーモンの小さな影が少女に近づき、デスパレスで魔物たちの喧嘩が始まったことを知らせる。
少女の背の翼が広がり、天空へと羽ばたいて行く――。
彼女の腰で、壊れた砂時計と、刀身の喪われた剣の柄が揺れていた。


620 :導かれし者たち  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:15:21 ID:irPHk7bj0
















    ――ドラゴンクエスト4 導かれし者たち...if...――














                                    THE END

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 21:18:43 ID:1f14MV/Q0
泣いた

622 :4の人  ◆gYINaOL2aE :2007/03/17(土) 21:21:37 ID:irPHk7bj0
いつものステータスが出せないので投下終了宣言ということで
挨拶やお礼のあとがきみたいな文は用意していなかったので…後日にでも

623 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 21:30:39 ID:1f14MV/Q0
うおい
感動のあまり呆然としてたぜ
リアルタイムで4の人の物語の最後に立ち会えた。・゚・(ノД`)・゚・。
毎日マダカナマダカナしててよかった。・゚・(ノД`)・゚・。
とにかくっ!
4の人今までとってもいっぱいおっぱい乙でしたあああああ。・゚・(ノД`)・゚・。

624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 21:48:00 ID:sssKIf3F0
。・゚・(ノД`)・゚・。

もう4の人にキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━!!できないんだな…
4の人ありがとう本当にありがとう

625 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 22:31:01 ID:S/oVqa8m0
ついに完結してしまったか。珠玉の物語乙でした!!
読み終わった後、余韻から抜け出せなくて放心してしまった
本当にこの話を書き続けてくれてありがとう!!

626 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 22:43:54 ID:sssKIf3F0
忘れないうちに

  ,j;;;;;j,. ---一、 `  ―--‐、_ l;;;;;; 
 {;;;;;;ゝ T辷iフ i    f'辷jァ  !i;;;;;  ステータス欄の「E パンツ」は
  ヾ;;;ハ    ノ       .::!lリ;;r゙   いつか装備から外れる日が来る
   `Z;i   〈.,_..,.      ノ;;;;;;;;>
   ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',.    ,f゙: Y;;f    そんなふうに考えていた時期が
   ~''戈ヽ   `二´    r'´:::. `!   俺にもありました

627 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 23:33:54 ID:oLxfseN80
4の人ありがとう。ありがとう。乙でした。
今日久しぶりにリメイク版4の電源入れたんだ。
物語はまだ途中でクリアなんかしてなかったけど、絶対クリアする。

最初から追いかけてきて、本当に良かった。
途中、色々あって投下しにくい時とか、あったと思うけれど、
最後まで仕上げてくれて本当にありがとう。
ごめんな。上手いこと言えねぇや。

そして、>>626にワロタ

628 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 01:52:12 ID:Nx1BpL6y0
。・゚・(ノД`)・゚・。おつかれさまです

629 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 02:09:32 ID:wCT+B3Rc0
まさに


感   無   量


2年に渡る超大作、4の人本当にありがとう。おつかれさまでした。

630 :571:2007/03/18(日) 02:57:50 ID:lDDu/iTZ0
(  Д )      ゚   ゚ 
4の人来てるうううう!?

寝る前にもう一回覗きに来て良かった
明日じっくりと読ませて頂きますm(__)m

631 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/18(日) 04:03:04 ID:Aa/HOd+g0
まとめサイトを更新しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

「4の人  ◆gYINaOL2aE」さん、約二年お疲れ様です。
ありがとうございました。

632 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 05:40:11 ID:l0/yCdLAO BE:348214853-2BP(1)
あぁぁぁ、4の人お疲れ様です
あなたがスレに現れた最初からずっと見てました
途中色々あったけど最後まで続けてくれて凄い嬉しい、というかなんというか
もう読めなくなるのかと多少ショックもあったり
とにかくお疲れ様です!
こんな大作を最後まで諦めずに書き終えたあなたは凄い!!

633 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 08:43:24 ID:IGiovnU80
泣いた。ドキドキした。鳥肌たった。
凄いわ。ずっと読み続けて待ち続けて良かった。本当に。
最後の方は凄い展開でもうね。感動した。

マジお疲れ様でした。心からありがとうございました。
彼と彼女に幸せが訪れるよう、祈らずにはいられません。

634 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 10:05:45 ID:gQ6E457v0
まとめサイト◆gYINaOL2aEさんの「???」のところ、
一部文章の重複があるよ。

635 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/18(日) 16:11:00 ID:Aa/HOd+g0
>>634
指摘、ありがとうございます。
修正しました。

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 19:11:09 ID:kOsNNjOu0
いつの間にか4の人来てる――!?
待ち続けたかいがあった・・・(つД`)
お疲れ様です。これで最後かと思うと・・・

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/18(日) 22:54:17 ID:5Psh+9xj0
うおおおおおおおお
涙でモニターが…
もうほんと乙です…

638 :4の人  ◆gYINaOL2aE :2007/03/18(日) 23:16:19 ID:szkMA+uX0
ハンドルを使うつもりはなかったのですが、よくこう呼ばれていましたので、感謝の気持ちをこめて。こんばんは、4の人です。
数年にわたるお付き合いありがとうございました。そして長々と申し訳ありませんでした。
色々と悩みながら作りました…拙い話ですが、最後まで読んでいただいて本当にありがとう。としか言えないですね。
最後は、エピローグとしてFF6ワールドで彼が目覚める展開も考えていたのですが、蛇足を恐れてやめました。
続きを匂わせるのも責任が発生しますからねw
後書きめいたこの文章も蛇足といえばそうなりそうですが…けじめということで一つ、大目にみてやってください。

1つのお話はこれで終りましたが、まだまだ進行中のお話は沢山あります。
綴る人は是非完結を目指して、読む人は是非自分にしてくれたように皆を励ましてあげてください。

まとめサイトの管理人さん、避難所の管理人さん、いつもお疲れ様です。
まとめサイトはカッコいいデザインで、見るのが楽しいですし、避難所はこのスレに何かあったときの為にも必要だと思います。
最初に、完結までメル欄でのちょっとした訂正以外喋らないと決めていたので、感想に対してろくに反応もせず申し訳ありませんでした。
本当はコテありコテなし関わらずもっと思い出や、御礼を言いたいのですが、長居もあまりよくないかなと思います。

名残は惜しいですがこの辺りで。
いずれ、また。此処か、または別の場所で再会できたら嬉しいです。

それでは、失礼いたします。
…と、お別れのような台詞を吐きつつも、レスの必要な事態も考えてまだ見てますけどねw
ひとまずは、これにて。

639 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 00:24:10 ID:HNxh0Rv/O
4の人お疲れさま。
ただ一言凄いとしか言い様うがないなぁ…

640 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 00:51:44 ID:aNS0cCT40
4の人本当に本当にお疲れ様!
お金を出して読まないと申し訳ないような素晴らしい作品でした。
初めは笑い、最後の方は緊迫と涙で、本当に心を揺さぶられました。
とにかくお疲れ様と感謝の気持ちでいっぱいです。

もしもし気が向いてまた書きたくなったら、気軽に短編でも何でも投下しにきてください。


641 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 01:52:24 ID:SDb4M6ZpO
4の人、お疲れ様でした。
素敵な物語をありがとう。

642 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 03:02:09 ID:qM9XGohm0
>>638
「完結まで喋らないと決めていた」のかあ。なんか (・∀・)カコイイ!!
あとがきは蛇足なんかじゃないと思うよ。
4の人の素の文章が読めて嬉しかったし。
みんなの感想レスもちゃんと読んでてくれてたんだなあと…。
このスレの住人で本当に良かった。

ところで、>>571のすぐ後で投下を始めたのは偶然ですか?
前回も確か「4の人マダー」レスの直後に投下された気がしますが(・∀・)ニヤニヤ

643 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 04:55:58 ID:bJE5CPzM0
4の人よ、これだけは言わせてくれ

 貴 方 様 は マ ジ ネ申

今まですげえいい話読ませてもらったわ・・・・
とにかく本当に乙

644 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 17:16:09 ID:VmWouGBv0
4の人が頻繁に投下してたときは毎朝このスレをチェックするのが日課でした。
この作品を読むのがいつも楽しみで仕方なかったです。
この作品が始まってすぐにリメイク4をやってしまいました。
特別好きな作品が終わる瞬間というのは、いつも寂しい気持ちになります。
この作品がまさにそれです。

本当に長い間ありがとうございました。

645 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 21:27:29 ID:kZyBZnEkO
4の人氏お疲れさまです!笑いあり涙ありのすばらしい作品でした。自分は4やったことなかったけど全然楽しめました!気が向かれたらまた投稿してください!本当にお疲れさまでした

646 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/19(月) 22:30:24 ID:dPN1SykR0
4の人、2年間本当にお疲れ様でした。
私が4をプレイした理由は、4の人の作品を見て非常に感動したからでした。
素晴らしいお話だったと思います。
最後まで書いて頂いて本当にありがとうございました。
改めて、今までお疲れ様でした。

647 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 00:50:06 ID:kAuyLGSf0
最後まで書き続けてくれてありがとうございます。
この作品に出会うことができ、心から幸せに思います。
お疲れ様でした。

しっかしこのスレがこんなに続くとは思わなかった~。
根気強く保守し続ける住人のみんなと、何より書き手さん達のがんばりのおかげですね。
これからもwktkしながらスレを覗き続けます。

648 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 03:03:54 ID:xGFj8sax0
「俺は――俺は、ソフィアの、剣になりたい。決めた。今、決めた!!」


。・゚・(ノД`)・゚・。

649 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 10:47:50 ID:jIqpt3cWO
誰か映画化してこいよ
ほら、ほら!

650 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 13:14:08 ID:yIC1LOsp0
4の人乙でした
楽しく読ませて頂きました

651 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 18:26:18 ID:GfSW6yJLO
4の人乙です!      今まで長い間楽しませてくださって本当にありがとうございました、お元気で!

652 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 19:00:03 ID:zOf/wSKh0
>>648
そこ2回目読むとヤバイよね。
台詞、行動、至るところで最後へつながっていて、本当に初めからつくりこまれてるのが良く分かる。
ピサロやソロ側の、ある程度世界を分かっていた人達の行動なども、読み返すとまた感慨深いものがある。
仮の世界ではあるけど、きちんと4の世界を生かした上で、さらに素晴らしい物語と結末を作りあげた4の人、ネ申!
これからも繰り返し拝読させて下さい。お疲れ様でした!

653 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 19:25:39 ID:deNE6kM4O
やばい。まだ余韻から抜け出せない…

654 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 19:34:10 ID:XLosX4ipO
とりあえず本日徹夜で頭から読み返し1日中物語が脳内駆け巡ぐった漏れがいる。
足掛け2年間本当にお疲れさまでした。

655 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 19:45:55 ID:wIvP73UK0
4の人、GJで、乙で、この作品を書いてくれてありがとうございました。

ところで主人公が『剣』になったということは、
ひょっとして『刀身の喪われた剣の柄』というのはパンt

656 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 22:56:43 ID:ELLKiBB50
>>655
      _人人人人人人人人人人人人人人_
        >    な なんだってー!!    <
        ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
        _,,.-‐-..,,_       _,,..--v--..,_
    /     `''.v'ν Σ´        `、_,.-'""`´""ヽ
    i'   / ̄""''--i 7   | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ          ヽ
.     !ヘ /‐- 、u.   |'     |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、   |
    |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ!     iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
.   ,`| u       ..ゝ!     ∥  .j     (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\   (二> /      !  _`-っ  / |  7   ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' /        \ '' /〃.ヽ `''⊃  , 'v>、
 !、\  \. , ̄        γ/| ̄ 〃   \二-‐' //`

657 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/21(水) 02:02:18 ID:aUA24AYQ0
もうあれだよな4の人は神だよな。
そしてほかの作者さん達の話の続きもwktkしてます。

658 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/21(水) 04:05:42 ID:brsXJxRb0
4の人乙でした。毎回わくわくしながら楽しみに読んでたよ。
マスドラとの戦いや、その後トロッコに放置wとか自分の中で公式歴史になりそうだw
パンツの彼も勇者が二人同時に存在する事も違和感が湧かない。

現在連載中の作者さん達も応援してます
投下楽しみに待ってるよ!どうか最後まで読ませてください
続きがきになってしょうがねえ!

659 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/21(水) 12:53:54 ID:kDBvA9lRO
ェアみんながんばれ

660 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/21(水) 13:53:09 ID:Jz4KAYoEO
彼がいつも荷物運びさせられてたのは、「ふくろ」だったからなのか…
ふくろカコイイ

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/21(水) 22:55:32 ID:SeKTF3KJ0
4の人お疲れ様です

662 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/22(木) 16:28:08 ID:DO0/+Ndp0
>>4の人さん
長期間お疲れさまです。鳥肌立ちました!
自分は途中からだったんですが、こんな良作の最後に立ち会えて幸せです。ありがとうございます。
>完結まで喋らない
か、格好いい・・・。自分は喋りすぎですか。そうですか。沈黙は金ですか。
見習って自分も完結まで頑張ろうと思います。

てゆうか、エピローグ案か ぶ っ た(つД`)

続き投下しようと思ったんですが
ものっそ投下し難い雰囲気にビビッてます。

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/22(木) 16:49:37 ID:x8/Y80uV0
早く投下してくれえええええええええええええええええ

664 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/22(木) 19:20:19 ID:xnBVA3jpO
>>662
みんな楽しみにしてますよ!

665 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/22(木) 21:31:43 ID:UbPJeHt60
>>662
wktkwktk

666 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 01:46:46 ID:PH6p2EXF0
>>662
まぁこれだけのネ申作品が完結した後だけに
自分の作品出そうと思っても出したくない、という気持ちは分からんでもないがw
つか俺なら絶対(´・д・`)ヤダw

てか4の人はなんでこんなに文才あるのにここで作品投下してるんだろうかね・・・
これマジ小説本にして売り出せるよ

667 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 01:47:27 ID:PH6p2EXF0
下げ忘れたスマソ

首吊って

668 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 02:19:24 ID:vIWBWaNI0
恥や外聞を捨てる事から全ては始まる
その時が来たら
私は血も心も捧げます
正気にては大業ならず
ネタスレに限らず、創作はシグルイなり

669 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 02:24:13 ID:BQZrQ54t0
4の人お疲れ様でした。いままでご苦労様です。大変楽しませていただきました。

けどソフィアも幸せにしてあげて欲しかったです。

670 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 02:39:04 ID:bToxa5CC0
総長・・・(・ω・`)

671 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 02:43:35 ID:jODi2nwb0
俺も総長読みたい

672 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:04:08 ID:gX2wgl65O
総長という流れをよまず、オリジナル書いてみますた。
一応出来たとこまで書き込みます。
これテストなんで、つまらんくて目に毒っぽいならやめるんで教えてください。

話として続きはどんどん明るく、バカバカしく、口悪く書いてこーかと思いますww

673 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:05:13 ID:gX2wgl65O
全ては―たった1つのレスから始まった。

『ドラ糞マジつまんね』

…このような心無い書き込みなど2ちゃんでは日常茶飯事だと言うのは重々承知している。
しかし、その日は酒が入っていたせいだろう。
俺はどうしてもそのレスが許せず、ついつい反応してしまった。

『氏ね。ドラクエの面白さが分からんヤシはうんこ』

そいつはすぐにレスを返してくる。

『俺も昔はドラクエ好きだったよ?ただ「ドラクエ課」が「第9開発事業部」に変わってからは糞。
…あと、悪口に「うんこ」しか思い付かないお前は童T(ry』

…俺は怒りのあまり体が震えていたことに気付いた。

許せない。確かにFC、SFC時代の作品は素晴らしいが、7、8だって良い所はあるんだ。
俺はこいつを許さない。ドラクエを糞呼ばわりしたこいつを…俺の童貞を見抜いたこいつを……絶対に許せない。

674 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:06:03 ID:gX2wgl65O
俺は再びキーボードに指を走らせる。

俺はこいつにドラクエの良い所を知ってもらいたかった。
別にマンセーして欲しいわけではないが「糞」の一文字で片付けられてしまうのは余りに切ない。
さっきはああ言ったが、もう俺の童貞なんてどうでもいい。

だが…酔っぱらっているせいか?
うまくキーボードを叩くことができない。
PCの画面が揺らめく。
映しだされた文字が、まるでゲシュタルト崩壊を起こした時のように認識することが出来なくなっていた。

…ヤバイ…気持ちわりぃ…このままじゃ吐き…いや、ぶっ倒れそうだ。
もう意識を保つことで精一杯。
今さっき考えていたことすら思い出すせなくなってしまっていた。

…くそ、俺は18年も生きてて「思い出す」すら覚えていないのか…?
だが書き込まなければ……ハッタリでいい。たった一言でいいんだ。……打ち込め!!

『俺は童貞じゃない!!』とッ!!

675 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:12:29 ID:gX2wgl65O
『…ここ…どこだ?』

何も見えない、聴こえない。

…あぁそうか。俺はカキコする直前に力尽きたのか…

だが…何故だろう?
さっきまでとは打ってかわって意識がハッキリしている。
それに、落ち着いたからだろうか?
さっきまでスレ上でやりあっていたヤシも気にならない。
単なるアンチとスルーできる心の余裕も戻った。

『真っ暗だな…』

ここが夢かどうかは定かでは無いが…1つだけ確定していることがある。それは……
次に目覚めた時、俺はきっとドラクエの宿屋のベッドの上にいる。と言うことだ。
それは、さっきまでドラクエを擁護していたという完璧なフラグと、このレスがこのスレに書き込まれているという事実から容易に推測できる。

俺は腹をくくった。

……別に昨日母親にオナヌーを見られたからこんな逃避をしているわけではない。
俺は主人公として全てを受け入れると決めただけなのだ。

676 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:13:34 ID:gX2wgl65O
しかし…そう意気込んだものの…

『………』

俺は常闇の空間でふと思った。

振り返ると…なんのイベントもない冒頭だったものだな。と…

魔王に敗れ、体を分離させられたわけでもない。
夢で性格診断もされていない。

虚しさを全く感じないと言えば嘘になる。

…しかしこれが現実。
俺の物語はゲロを我慢して気絶したところから始まったのだ。

677 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 07:14:41 ID:gX2wgl65O
『納得できるわけねぇ』

そんな冒頭なんて俺、不憫過ぎ。
1つだけ我儘を言わせてください。
せめて性格は『むっつりスケベ』にしてください。
あの能力値の成長度が魅力的なんです。
決して僕はむっつりではありませんが、お願いします。

などと虚空に向かって懇願し続ける俺。これまでに費やした時間は、軽く1時間を越えているだろう。

しかし…中々イベントが始まってくれない。
このままでは冒険に出られないという大惨事が起こってしまう。
恐らくこれは俺がまだレム睡眠だからいけないんだと思う。
深い眠りから醒めればそこはきっと宿屋のはず…

『さて、冒険の書を作るとしますか…』

俺はそう呟き、全身の力を抜いた。

一応…「むっつりスケベ」になる努力はしておこう。

俺は薄れゆく意識の中、チャモロ×ハッサンを妄想しながら、深い眠りを待つことにした。

678 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 07:23:46 ID:tjodah3FO
支援

679 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:33:11 ID:TAboHnyD0
おはようございます。
総長~新作という流れを全く読まず
>>546続き投下します

680 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:34:46 ID:TAboHnyD0

城門を抜けると、闇は一層濃くなった気がした。
ビアンカが『なんだか不気味ね・・・』と呟く。
低い塀に沿って正面に向かうと、扉の前には
風雨に曝され続けてきたのだろう幾つもの墓石が立ち並んでいた。
ビアンカが嫌そうに顔をしかめる。

『やだ。どうしてお城の入り口にこんなに沢山お墓があるの?』
問いの答えは持ち合わせていなかった。
わからない、と首を振って墓の間を抜けていく。
扉は開かない。

ビアンカが一緒に手をかけるが、幾ら押しても引いても扉は固く閉ざされたままだった。
正面を諦め、城の外壁に沿って裏手へ回る。
途中に転がっていた壷を調べると、薬草とキメラの翼があった。
拾い上げて更に城の裏へ向かう。

月灯りが見えてくるかと思ったが、
僅かの間に空は分厚く黒い雲で覆われていた。
今にも雨が降り出しそうに、空気が湿り気を帯びている。

681 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:36:40 ID:TAboHnyD0

城には裏口はなく長く高い上階までの螺旋階段があった。
金属で出来ているらしいそれはすっかり錆び付いて、
触れるとざらついた感触が掌に張り付く。

細い手摺意外に支えのない剥き出しの階段をゆっくりと慎重に上っていく。
ビアンカが手摺に当てたのと反対の手で俺の服を掴んだ。

時間をかけて一番上まで辿り着くと、
ぽっかりと口をあけた大きな入り口があった。
真っ暗なその中は、サンタローズの洞窟を彷彿とさせる。
躊躇いながらの口調でビアンカが『ねえ、先に行って?』と呟いた。
その声が微かに震えていて、俺はなんだかほっとした。

ビアンカの手を引いたまま暗闇に踏み出す。
瞬間、空間を震え上がらすような大きな雷の音が響いた。
反射的に耳を覆う間もなく、真後ろで鉄扉がけたたましい音を立てて閉じる。
ビアンカが小さく悲鳴を上げる。

まるで一瞬のうちに全てが起こり、聴力が奪われたかのような沈黙が戻った。
青紫色の雷光が、余韻を落とすかのように室内を一瞬だけ照らした。
小刻みに震えるビアンカの掌を感じて、俺はその小さな手を握り返す。

682 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:37:59 ID:TAboHnyD0

『ねえ・・・、閉じ込められちゃったの?』
動揺を隠さずにビアンカが泣きそうな声を出す。
雷の音が、応えるように天から唸り声をあげる。
途切れ途切れに照らされる部屋の中央には棺桶が並び、奥に階段が見えた。

階段を示すとビアンカは少し安心したように
『進んでいけば大丈夫よね・・・』と言った。
手は離さないまま棺桶の間を進む。

一つ一つのその箱からは、何者の気配も感じなかった。
試しにひとつ開けてみようとすると、
ビアンカが『やめてよ、サン』と気味悪そうに言った。

諦めて階段まで差し掛かったところで、ゴトン、と背後から、物音が響いた。

恐る恐る振り返る。
ゴトン、ゴトン、と音を立てて、
並べられた棺桶の蓋がひとつずつ床に滑り落ちていた。
なにあれ、とビアンカが悲鳴交じりの声を上げる。
ぬるりと、中から得体の知れない何かが、姿を現す。

不意にまた部屋が闇に包まれた。
ビアンカの悲鳴。
咄嗟に繋いでいた手に力を込めたが、それは否応なしに暗闇に引き剥がされた。
視界が戻る。開け放たれた棺桶。
ビアンカの姿はもうない。

683 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:39:03 ID:TAboHnyD0

大丈夫、何処に居るかはわかっている。
もしそれを知らなかったら俺は、この孤独な暗闇の中で途方に暮れるしかないだろう。
俺は身を返すと一気に階段を駆け下りた。

広い通路には鎧を纏った戦士の像が立ち並んでいる。
そのうち一体が微かに動いたような気がしたが、
とりあえずそれを無視して俺は奥の扉を開けた。

荒れた広いバルコニーに、小さな墓石がふたつだけ並んでいた。
入り口前にあった物と同じように風雨に削られ朽ちていたが、
崩れかけたそれらに掘り込まれた装飾が他のものと違うことは一目で解った。
黒い雲がまた紫色に光り、雷鳴が響く。

その音に混じって、小さく呻くか細い声が聞こえた。
手前の墓石を調べたが変化はない。

もうひとつに目を遣ると、もう一度少女の声がした。
それを手がかりにもうひとつの墓石を調べる。
動かせないんじゃないかと不安だったが、乗せられた石の蓋は、
俺が力を込めると簡単に台座から滑り落ちた。
同時に少女が大きな棺の中から顔を出す。

684 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:40:38 ID:TAboHnyD0

『ああ!苦しかったわ!もう、なにしてたのよ!遅いじゃない!』
転がるように暗い穴の中から這い出して、
ビアンカは息苦しそうに大きく息を吐いた。
手を取って立たせると、体に纏わり付いた砂埃をぱたぱたとはたく。

『もう・・・まあいいわ。探してくれてたのよね。早く行きましょ?』
ぎこちないままの笑顔で差し出されたビアンカの手を握って、
俺は少女の前に立って反対の扉に向かった。

中はかび臭い書庫だった。
幾つも並べられた本棚は何者かが掻き回した後のように乱れ、
分厚い本が何冊も床に散乱している。

今くぐった場所のほかには見渡す限り扉はなく、
一歩踏み込むごとに足元に舞い上がる細かなほこりが
大きな窓から瞬くように差し込む青紫色の光に照らし出されていく。

ぴかり、ともう一度雷が瞬いた時に、
ビアンカが小さく悲鳴をあげて俺の手を強く握った。

その瞬間まで気付かなかった。
窓の手前、白く輝く何かが、こちらに背を向けてふわりと佇んでいた。
視界の半分を遮る本棚を迂回して一歩、それに近付くと、
外光を反射した白いそれはゆっくりと、こちらを振り向いた。

685 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:46:16 ID:TAboHnyD0

ビアンカの手が緩むのを感じた。
暗闇に浮き上がるようにぼんやりと白いその女性の笑顔は、
あまりにも寂しそうで、悲しいほどに美しかった。

言葉が出なかった。
女性はじっと俺とビアンカを見つめると、そっと目を閉じる。
その睫毛の先から、透明な雫が一筋、頬を伝い落ちた気がした。

刹那、弾けるような雷鳴と、何かが床を引きずる嫌な音が背後に響いた。
ビアンカが悲鳴を上げる。
振り向くと、部屋の真ん中を占拠していた大きな本棚が、
何冊もの本をばたばたとこぼしながら床を滑り
壁に衝突して最後うつ伏せに倒れ込んだ。

空気が変わるのを感じてもう一度窓に向き直る。
女性の姿はなく、淀んだ夜空が怒りを表すかのようにびかりと光った。

『あの人、もしかして・・・』
無くなった本棚の下から現れた階下へと続く小さな階段を見下ろしながら、
俺はビアンカの冷たくなった指先をもう一度握りなおした。

686 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:47:35 ID:TAboHnyD0

階段を下りると、城内は更に傷み、
かびと埃の交じり合った湿っぽい匂いが強く鼻を突いた。
窓から差し込む雷光と出所の知れないぼんやりとした灯りで、
歩き進むことには不自由はなかった。

蝶番の壊れかけた扉の先には毛羽立って変色した絨毯が敷き詰められ、
中ほどには城内で初めての両開きの大きな扉が設えてあった。
この城がまだ幸せに平和に存在していた頃の、
きっと高貴な人間の場所だったんだろうとそれだけで解った。

そっと扉に触れる。
ささくれ立って面影さえ残さない上質な上紙が
俺の掌に抵抗もせずぱりぱりと剥がれ落ちた。

扉を開く。

やはりそこは王と、王妃の部屋だった。
天蓋の付いた大きなベッドが並び
扉の外れた背の高い衣装箱が置き去られたまま佇んでいる。

反対側のソファには、さっき見た女性が静かに俯いていた。
泣いているようにも見えたが、
顔を上げた女性の表情は書庫で見たそれよりもずっと穏やかだった。
その姿からは、不安も、恐怖も感じない。
女性は俺を見、ビアンカを見、少し躊躇うように口を開いた。

687 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:48:52 ID:TAboHnyD0

『わたしは、このレヌールの王妃、ソフィアと言います』
耳を澄まさないとすぐに薄闇に消えてしまいそうな、か細い声。
俺は歩を進めて、彼女の傍に立った。

『もう十数年も前、この城の者は皆、魔物に襲われ殺されてしまいました。
邪悪な者が世界中で、身分のある子供をさらっているとは聞いておりました。
でも、わたしくとエリック・・・王の間には、子供は居なかったのです。
どうしてあんなことに・・・』

声が震えているのが俺にもわかった。
王妃は気丈に笑顔を保っている。
その睫毛の先に一滴、涙が零れ落ちるのを拒むように震えている。

『今となってはもう、嘆いても仕方のないことです。
せめてわたくし達は静かに眠りたい・・・ですが今、
この城にはゴースト達が住み着き、城の皆を呪われた舞踏会に縛り付けています・・・。
どうか、どうかあのゴースト達を追い出してください・・・』

王妃のぼんやりと透き通った姿が
今にも消え入りそうにまた俯いた。


『王妃さま・・・かわいそう・・・』
部屋を出て扉を閉じると同時に、ビアンカが表情を曇らせて呟いた。
うん、と声に出して頷くと、俯いたままビアンカは小さく
『サン、頑張ろうね。どうせお化け退治に来たんだもの。いいよね』
言って、その小さな左手を胸の前で握り締めた。

がんばろう。そう、口の中だけで呟き返して
俺は廊下の向こう、来たのと反対側の扉を見据えた。

688 : ◆u9VgpDS6fg :2007/03/23(金) 08:56:07 ID:TAboHnyD0
本日ここまでで
ありがとうございます。

689 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/23(金) 08:57:12 ID:K0iAoS6w0
休暇支援

690 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/23(金) 09:04:28 ID:K0iAoS6w0
お疲れ様です。

>>677
続き、期待してます。

>>688
ぐは
先が気になります。

691 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/23(金) 09:49:37 ID:K0iAoS6w0
まとめサイト、ここまで更新しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

692 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 12:31:03 ID:gX2wgl65O
>>691
タカハシさん乙です。
ありがとうございます。

1つ聞きたいんですが、先程の話でいくつか(てゆーか沢山)コピーをミスってたんですが修正って可能ですか?
あと、こういう質問はこれからはまとめサイトの方でするべきですか?

本当に御迷惑かけてしまって申し訳ありませんorz

693 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/23(金) 16:39:54 ID:K0iAoS6w0
>>692 ぼーちんさん
修正は、その箇所を書いていただければ出来ますよ。
修正や変更の依頼はそうですね、まとめサイトからいける「非難所掲示板」の
「避難所、まとめサイトについて」でお願いします。
今後も遠慮なく言って下さい。

694 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 16:41:14 ID:bToxa5CC0
>>692
気楽に行こうぜ
修正しちゃいなよ、you

695 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 19:21:05 ID:gX2wgl65O
>>693>>694
てことは修正したやつをまた貼ればいいということですね?

これからなにかあった時は、その「避難所掲示板」の方に質問させて頂きます。

レスの返答ありがとうございましたww

696 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 19:51:17 ID:gX2wgl65O
>>675からの修正です。

『…ここ…どこだ?』

何も見えない、聴こえない。

…あぁそうか。俺はカキコする直前に力尽きたのか…

だが…何故だろう?
さっきまでとは打ってかわって意識がハッキリしている。
それに、落ち着いたからだろうか?
さっきまでスレ上でやりあっていたヤシも気にならない。
単なるアンチとスルーできる心の余裕も戻った。

『真っ暗だな…』

ここが夢かどうかは定かでは無いが…1つだけ確定していることがある。
それは……次に目覚めた時、俺はきっとドラクエの宿屋のベッドの上にいる。と言うことだ。
それは、さっきまでドラクエを擁護していたという完璧なフラグと、このレスがこのスレに書き込まれているという事実から容易に推測できる。

俺は腹をくくった。

……別に昨日母親にオナヌーを見られたからこんな逃避をしているわけではない。
俺は主人公として全てを受け入れると決めただけなのだ。

しかし…そう意気込んだものの…

『………』

俺は常闇の空間でふと思った。

振り返ると…なんのイベントもない冒頭だったものだ。

697 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 20:02:32 ID:gX2wgl65O
魔王に敗れ、体を分離させられたわけでもない。
夢で性格診断もされていない。

虚しさを全く感じないと言えば嘘になる。

…しかしこれが現実。
俺の物語はゲロを我慢して気絶したところから始まったのだ。

…しかしそんなの…

『納得できるわけねぇよな…』

…確かに、気絶して気付いた時は見知らぬ場所…ってのはカコイイよ。
でも、問題はそのシチュエーションだろう。

698 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 20:03:22 ID:gX2wgl65O
そうだな…例えば……


好きな女の子をパンツ男に誘拐されてしまう。

そして俺は勇敢にも敵のアジトに乗り込むんだ。
…しかし、やはり相手もさる者。キングヒドラと互角に渡り合っただけはある。

強い…このままじゃ……

その時、変態の斧の一閃がその子へと襲いかかった。

『危ない!!』
『きゃっ!』

頭で考えたことじゃなかった。
気付いた時には体が勝手に動いていた。

この子を助けたい。絶対に…俺の命に代えても―

俺が力の限り突き飛ばしたことで、その子は窮地から脱することができただろう。

しかし……斧が俺の体に――

『うわあぁぁぁぁッ』

699 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 20:04:07 ID:gX2wgl65O
………てな感じが良かったよ。
ううん。そこまで贅沢は言わないよ。だけど…

『ゲロを我慢して気絶』はないだろう!?
そんな冒頭なんて俺、不憫過ぎだろ!?

…はぁ…はぁ……
いや…落ち着け、落ち着くんだ俺。

過去は変えることができないのは理解している。
だからもう気絶方法はとやかく言わない。
でも…1つだけ我儘を言っても許されるのなら、俺はこれから訪れる未来に祈ろう。

…せめて性格は『むっつりスケベ』にしてほしい。
あの能力値の成長度が魅力的なんです。
俺は決してむっつりではありませんが、どうかお願いします。

などと虚空に向かって懇願し続ける俺。これまでに費やした時間は、軽く1時間を越えているだろう。

700 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 20:05:02 ID:gX2wgl65O
しかし…中々イベントが始まってくれない。
このままでは冒険に出られないという大惨事が起こってしまう。
恐らくこれは俺がまだレム睡眠だからいけないんだと思う。
深い眠りから醒めればそこはきっと宿屋のはず…

『…さて、冒険の書を作るとしますか…』

俺はそう呟き、全身の力を抜いた。

一応…「むっつりスケベ」になる努力はしておこう。

俺は薄れゆく意識の中、チャモロ×ハッサンを妄想しながら、深い眠りを待つことにした。

701 :ぼーちん ◆VEWEB6Zhlo :2007/03/23(金) 20:06:25 ID:gX2wgl65O
以上、修正です。

タカハシさん。お手数かけてどうもすいませんでしたorz

702 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 22:02:37 ID:/6xLlty70
おつんつん

703 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/24(土) 02:53:52 ID:FIgZYGvB0
>>701
お疲れ様です。
修正しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

704 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/25(日) 16:09:20 ID:XU9aHJarO


705 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/26(月) 02:43:44 ID:hYeHSG5k0


706 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 06:33:13 ID:O5X31nx50
age

707 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 07:21:40 ID:3kKQgolVO
ゆうべはおたのしみでしたね

ひとりで!!

708 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 07:42:22 ID:8Fwu+WDC0
まさに、外道!!

709 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 20:51:49 ID:EHq5VSf70
新規参入を考えている者なのですが、質問があります。
今考えている企画が「宿屋で目覚める」という条件から外れてしまいます。
少々無理をすれば、「冒険開始から数日後の宿屋」からスタートし、
ストーリー上の初日(宿屋ではない目覚め)を回想とする形で、
処理することもできないことはない……のですが。
読者様方のご意見としては、やはり宿屋からを希望されますでしょうか?

710 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 21:08:58 ID:8Fwu+WDC0
全く無問題と思われ。


711 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 21:32:57 ID:2T8b0MN+0
目が覚めたら、裸の女と一緒にベッドで寝てたっていう展開からキボンヌ

712 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 00:25:04 ID:bq6f9qzI0
厳密に考えれば宿屋スタートなんだろうが、過去作品でもそうじゃないものもあるからね。
「もし目が覚めたらそこがDQ世界だったら」ということでもいいのでは?
というかぜひ新作見てみたい。期待してまつ。

713 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 02:18:56 ID:diO828Qi0
個人的には「もしこっち(現実)の世界の人がドラクエの世界に来てしまったら」だと思ってるから全く問題はない

714 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 10:48:21 ID:5XOhpYWIO
昔はやけにこだわってた気もするが、無理矢理宿屋からスタートして、
ストーリーが破綻するよりは百倍いいな。気にせず投下してくれ。

715 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 11:14:23 ID:rT7kxW8uO
みんなそう思ってんだったらスレタイの方を変えりゃいいのに、って
前の宿屋スタートか否か問題のときにもそう言われてなかったか。
なんでいつまでもこのスレタイのまんま?

716 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 11:50:17 ID:9GIsI1R3O
流れじゃない?
あえて変える必要もないというか、愛着があるというか

717 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 12:54:05 ID:OR2BFEJB0
愛着だな、もうこのスレタイで何年もきたんだし今更変えて欲しくない(・ω・`)ってのはある

718 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 18:55:15 ID:7R4Xl0JN0
このスレタイのままに一票

719 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/28(水) 20:06:29 ID:5XOhpYWIO
かといって毎回この話題が出るのも何だし、テンプレに補足くらいはいれるべきかもな

720 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:23:04 ID:rOVW5ToX0
お久し振りです( ^ω^)

まず4の人こと◆gYINaOL2aEさん本当にお疲れ様でした。
スレが止まってる時に現れては颯爽と去っていく救世主、4の人。
僕の中ではそのような印象があります。
余計な事まで喋っている僕にとってはあなたの姿勢は尊敬に値します。
それでも僕はあなたの話を色々と聞いてみたかったですw
僕も完結まで頑張りたいと思います。
ありがとうございました。


それでは投下しますね。

721 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:26:36 ID:rOVW5ToX0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
  「あんっ! あぁ! 見ないでっ……!」

私を見る彼女の目が見開かれた。
その瞳を通じて彼女の心が見て取れる。
助けて欲しい。
けれど、見られたくはない。
そんな矛盾した感情。

  「あっあっあっ! くっ……ふっ……」

彼女は意思に反して漏れる声を、口を塞ぐ事で聞かせまいとした。
そんな彼女を嫌らしい目で見つめる男…
その息遣いが生々しい。

  「はぁはぁ…いいぞ……気持ち良いんだろ? もっと締めろ!」

そんな事を言いながら、体を彼女に打ち付ける。
気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い……
私はその場で胃の中のものを全て吐き出してしまった。

  「いくぞ…いくぞ……はっはっ! いくっ!!」
  「イヤイヤ! やめて! ん~っ!!」

彼女が嫌悪の声を上げるが力が入らないようで、男を跳ね除けることができない。
しばらく動きを止めていた男は一息つけると、彼女から体を離した。
彼女はそのままの体制でぐったりとしたまま動けない。
しかし男は私の存在に気付いていたのだろう。
顔をこちらに向け、ニヤリと笑みを見せた。

  (嘘……)

722 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:28:40 ID:rOVW5ToX0
そして裸身を隠そうともせず、むしろ見せ付けるようにして歩いてくる。

  「次はお前かぁ~、確かに数は多い方がいいよな。
   まだ出し足りなかったところだし」

何を勝手な事を言っているんだ…
私にもソレをしようとしているのか?
本能的に後ずさる。
一歩でも遠く、この醜き者から離れたい。
これが、人間のする事なのか……?

  「今気持ちよくしてやるからな。その代わりちゃんと産めよ?」

男の手が私の体に触れようとする。
その汚らわしい手で。

  「うわあぁぁぁぁぁぁぁー!!」

私はそこで初めて叫び声を上げた。
無意識の内に、その声に魔法力を込めていた。
男は一瞬にして人の形を失い、私の前から姿を消す。

  「はぁはぁ……」
  「……うっ…ううぅ……」

荒い息をしていた私は、彼女の嗚咽で我に返る。
私はフラフラと彼女の側に寄っていった。

723 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:30:43 ID:rOVW5ToX0
  「ひっ!! やめてっ!!」

怯えた目。
私の事を先程の男だと思ったのだろう。
彼女の体はがくがくと震えていたが、
私が自分と同じエルフだと認識すると、恐怖は消え去ったようだ。
彼女の頬に手を当て、目元の涙を拭ってやる。
すると彼女は、にっこりと笑った。

  「……して……」
  「……?」
  「自分では…出来ないから……」

彼女があごを上げて首元を私に晒し、
私の両手をそこへ添えるようにそっと促した。
それで彼女の望みを理解する。
その時の私にまともな思考などありはしなかった。
ただそうするしかないんだ、と思った。
手で輪を作るようにして、彼女の首にあてがった。
汗でしっとりと濡れた肌を少しずつ圧迫していく。
トクトクと流れる彼女の血液の動きが、私の手の平を力無く押し返した。
その働きのなんと力強いことか。
いっその事、私の手を跳ね除けてくれれば良かったのに。
締められる痛みと、酸素の不足で彼女の顔が歪む。
しかしそれでも彼女は一切抵抗する事はなかった。
目を閉じ、あ・り・が・と・う、と唇を小さく動かして私に伝える。
そして間もなく、彼女は息をしなくなった。

  「……」

私は彼女と同じように息を殺して泣いた。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

724 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:32:47 ID:rOVW5ToX0
彼女は夢を見ていた。
彼女が女王となる前。
人間の尺度で言い換えれば昔も大昔の事だ。
彼女は今とは違う地で平和に暮らしていた。
まぁその頃はまだ魔王も存在しておらず、平和が当たり前だったのだが。

しかし彼女は人間のように毎日の繰り返しに飽きる事もなく、
ただただエルフとしての使命を全うする、一般的なエルフの一員だった。
エルフとして生まれた事をルビス様に感謝し、
この世の全てに希望を見出し、
水の冷たささえ愛していたかもしれない。

けれどある時を境に彼女の生活は一変する。
同じ土地に住んでいた人間とエルフとの関係が急激に悪化したのだ。
その原因は一重に人間の側にあり、
それに柔軟に対応できる程エルフは裏表の無い純粋な生き物なんだというのが、
事後に当時を思い返した彼女の結論である。

もちろん当時の彼女がどこまで事態の推移を把握していたのかと問われれば、
ほんの一部に過ぎないと言わなくてはならない。
しかしその出来事は、彼女に非常に大きな衝撃を与えた。

その後、虚ろに一点を見つめ続けて涙を流しているのを年長のエルフに発見され、
彼女は幼きエルフ達と供に遠い地へと避難する事が決定された。
その判断は迅速ではあったが、同時に事件の規模の大きさを物語っていただろう。
そしてその時の母親達の様子はやはり尋常ではなかったと記憶している。
混乱と、焦りと、不安と。
多くの感情がない交ぜとなったあの表情は忘れられなかった。

725 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:34:58 ID:rOVW5ToX0
移住した遥か遠方の地において、彼女は一族の長の名で呼ばれるようになった。
そこでの年長者は彼女しかいなかったのだから、それは自然な事である。
決して望んだ事ではなかったが。

しかしそれからの彼女は、その名に相応しくあろうと努力するようになった。
彼女は女王として幼き子らの幸せを考えようとする。
女王としての使命。
それは里を守る事だと思った。
里のエルフを守る事だと。
その為に女王は里のエルフ達にあの事件については何も教えず、
人間との関係を絶って、ひっそりと暮らすように里を外界から隔離する事を決めた。

しかし悲劇は何度も繰り返される。
そこでもアンのように何人かのエルフが人間と関わり、やはり不幸になった。
人間と関わったエルフ達は一様に女王である彼女の方針を非難したが、
女王はそれがエルフの幸せに繋がると信じられなかった。
もし彼女達が女王の胸の内を知っていれば、また違う結果を生んだかもしれない。

誰にも言えない思いを抱えた女王はただ沈黙するしかなかった。

彼女は夢を見ている。
脳が勝手に作り出すあの、ちぐはぐでいい加減な内容ではない。
体の中に深く刻まれた、記憶という名の夢。
思い出すよりも鮮明に、この夢はその時を彼女に体験させた。
最も嫌悪する彼女のトラウマの種。
何回も何回も何回も何回も何回も夢に見た夢。

ルビーを使って自らが望んでいつも見る過去の夢ではない。
忘れたくても忘れられないもの。
自然に汗が噴き出してくる。
唾を飲み込もうとするが、喉が潤いを欲しているのを自覚するだけだった。

726 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:37:32 ID:rOVW5ToX0
夢とは通常、寝ている間に見られるものだ。
しかし今彼女が見ているのは、夢と現実の両方。
もちろん片方は現実ではないのだが、
夢を見ているまさにその時のようなリアリティを持って迫ってくる。

夢と現実。
それが同一なものとして認識される。
そして夢を見ている間だけ、女王は"彼女"に戻っていた。
今や夢の中の男に対する嫌悪感は、現実に相対するクルエントへ向けられた。
だから、彼を、殺さなくてはいけない。
その感情の移り行き。

  「うわあぁぁぁぁぁぁぁー!!」

もしこの世界に歴史というものがあったとしても、
彼女の物語は決して紡がれる事はないだろう。
語り継がれざる彼女の思いが、言葉の代わりに呪文となって発せられた。

  「むぅ…」

思わずうなったのはクルエント。
先の戦闘で女王が見せたいくつかの呪文は質・量共に熟練しており、
彼女のレベルの高さを物語っていた。
が、こと二回目の戦闘においては、
まるで別人を相手にしているかのような変化をクルエントは感じていた。

一般的に、呪文は使用するMPの量で威力が決まると考えられがちであるが、
それは無知による誤解である。
いや中級者に至ってなお、その事に気付かぬ魔法使いもいるのだから、
そのような言い方は適切ではないかもしれない。

727 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:39:38 ID:rOVW5ToX0
呪文に最も必要な要素であり、質を高める事にも繋がるそれは、集中力だ。
意識を集中という事だけではなく、威力を集中させるという意味も持っている。
ただ膨大な量のMPを垂れ流すだけではなく、
いかに目標だけに集中出来るのかが威力を決定する。
それが上級への第一歩だとされている。

しかし今の女王は明らかに集中力を欠いていた。
放たれる呪文に現れる使い手の意思は強烈過ぎたし、
精密だった狙いがだんだんと狂い始めている。
そしてなおかつ呪文一発あたりのMPの量を増やしつつあった。
それは事態を悪い方向へと誘う契機になりかねない。

洗練された技は、方法さえ間違わなければ対処しやすくもあるが、
暴れ狂うホースから噴出する水のように女王の呪文は制御を失っている。
最悪洞窟が崩れるような事も有り得るかもしれない。

  「しかしな」

彼にとって洞窟など関心の対象ではない。
もし崩れ去ったとしてもリレミトで簡単に脱出できるのだから。
しかしそのせいで女王が生き埋めになってしまっては困るのだ。
女王とてリレミトぐらい唱えられるだろうが、
今の女王の様子では状況判断が正確に出来そうもない。

ならば女王の呪文の威力を全て封じて、なおかつ女王をモノにしてみせよう。
そんなクルエントの気迫である。
元々血気盛んな男であったのだ。
そして今は若さを取り戻した高揚感もある。
万が一にも失敗など起こりえるはずもない。
ただ若さにかまけた自信ではなく、確固たる自負に基づいた意気込み。

728 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:43:33 ID:rOVW5ToX0
  「最盛の力こそ美たりえるのだ」

己の考えに浸っていたクルエントは、
自身の懐が光っている事に気付かなかった。
赤く、赤く、赤く。
誰の意思に応じる訳でもなく、夢見るルビーはその力を発揮していた。


激突する呪文と呪文。
女王が一つ呪文を唱える間に、クルエントは三つ呪文を放つ。
クルエントは呪文のランクを下げつつ、数で対抗する事を選んだ。
女王と同じレベルの呪文を唱えていては押し負けてしまうからだ。

それ程に女王の呪文は威力が高い。
これで先程のように洗練された技術を上乗せされていたら確実に負けていただろう。
そういった部分ではクルエントは負けを認めていた。
しかし完全な敗北ではない。
呪文の連続詠唱は立派な高等技術の一つであり、
クルエントの詠唱スピードは世界でも一二を争うに違いない。

そしてそれは制御の行き届いていない女王の呪文の勢いを止めるのにも一役買っていた。
ややもすると天井や壁に呪文の余波が向かおうとするが、
それを完璧に抑え込んでいる。
いやむしろ、クルエントの方がジリジリと押し込んでいるのだからたちが悪い。
敵としてこんなにも緻密な戦法を取ってくるのはイヤらしいとしか言いようがない。

  「終わりにしようか、愚かなクイーンよ」

クルエントは口角を上げてニヤリと笑う。
そして女王の呪文を止めるのには無駄な一発を地面に向けて放った。
衝撃で土石が飛び跳ねる。
それらが女王の気をそらせる事で有効な一手となった。

729 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:45:35 ID:rOVW5ToX0
先に女王が使った戦法と同じだ。
女王が目をつぶり、一瞬顔をそむける。
そこでクルエントは一気に畳み掛けた。
数幾の攻撃に女王は対抗できず、とうとう直撃を食らった。

  「見たか!」

勝ち誇った声。
クルエントを包むのは最高級の満足感。

エルフの女王。
彼女の実力は確かだった。
彼女に勝つという事は己の技量の強さを証明する事でもある。

と同時にその力を取り戻してくれたものに彼は全幅の信頼を置いた。
これで衰えなどに気を病む必要はもうない。
この力を保ったまま死ねる事も出来るかもしれない。
いや、もしくはもっと……

死ぬ事は怖くない。
失う事が怖いのだ。
生ではなく、積み上げてきた、誰にも誇れるこの力が。

  「ふふふ、さぁデザートの時間だ」

クルエントは夢の実現の為に、再び歩を進めた。

730 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:47:37 ID:rOVW5ToX0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

  「ねぇお母さん。妖精さんってどこにいるの~?」

  「急になに?」

  「この本にね、出てくるの。
   すっごく綺麗なんだって!
   会ってみたいな~」

  「そうね。真理奈が良い子にしてたら会えるかもしれないわ」

  「ホント?!」

  「あぁ。だからピーマン食べなさい?」

  「ヤダ! 赤くないんだもん!」

  「緑のも赤のも一緒でしょ!」

  「違うもん!」

  「ったく……そんなんじゃ妖精に会えないよ!」

  「え~? そんなのズルイよ~」

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

731 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:49:40 ID:rOVW5ToX0
  「ま、待てっ!」

震えた声。
クルエントは横目でその主を見る。
ソールだ。

  「もうやめろよ…何でこんな事するんだよ……」

立ち尽くすソール。
彼はフォルテを湖から引き上げ、アヴァルスを倒したが、
フォルテの息は既になく、フィリアとジュードは毒で弱っていき、
女王が戦い敗れるのをただ見ているしかなかった。

  「絶望したか? 少年」
  「フォルテはいい子だったんだ。女王様だってきっとそうさ…」
  「会いたいならすぐにあの世へ送ってやろうか?」
  「殺したのはお前だろ?!」

そのセリフが面白かったのだろうか。
クルエントは声に出して笑った。

  「好きだったのにっ……」

悔しい。
握りしめた拳が痛かった。

  「とぉーっう!!」

その時、疾風のように全速力で部屋に突入してくる者が一人。
どこかのヒーローよろしく掛け声を発しながら登場するアホっぷりだ。
しかも背後からクルエントに綺麗な跳び蹴りをかますオマケ付き。
そして吹き飛ぶクルエントをよそに着地も完璧にこなす。

732 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:51:52 ID:rOVW5ToX0
漫画なら、シュタッ! と擬音が付けられただろう。

  「はっはっはー!! 真理奈ちゃん参上ーっ!!」

さらに背景に斜線で強調線を書き加えなくてはいけないようだ。
ビシッ! と敵に指を突きつけ、ポーズまで決めてしまった。

  「助けに来たよ~♪」
  「ピィ~!」

真理奈の背負うバッグの中からブルーが飛び出し、元気良く跳ねる。
ブルーの口に薬草などの道具が入った皮袋をくわえさせた真理奈は、
ソールに向かってブルーを放り投げた。

  「フィリアちゃんとジュードよろしくね!」

ぽかーんとしたままブルーを受け取るソール。
皮袋の中身があればジュード達は大丈夫だろう。
ピィピィと鳴きながらソールに看護するように促すブルー。
訓練された犬のようにキビキビと動くブルーは、飼い主に似ず頭が良いのかもしれない。

  「はぁはぁ……元気じゃのう……」
  「女王様!」
  「女王……」

そこに遅れてパトリスも到着する。
その後ろからはエルフが何人も顔を見せていた。
意識を失い倒れている女王を見るなり、エルフ達は悲痛な表情を見せた。
女王のもとに今にも駆け出しそうなのをパトリスが手で制す。
その視線の先にはクルエントが立ちはだかっていた。
近寄らせない、と言わんばかりに。
デザートがおあずけになったのだから不機嫌なのは仕方ないかもしれない。

733 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:53:58 ID:rOVW5ToX0
  「貴様らは何故私の邪魔をする」
  「だってどう見てもアンタ悪モンじゃん。
   悪モンは正義のヒーローにやっつけられるって決まってるの、知らないの?
   アンタはそういう運命なの。それに…」

真理奈も女王の姿を見て悲しげに目を細めた。

  「私もエルフが好き。それだけ」
  「好き? それが何だと言うのだ」
  「関係無いのが何さ。だいたい私はこの世界の人間じゃないんだ」
  「おかしな事を言う! ならば引っ込んでいろ!!」
  「違うから出来る事だって…あるんだっ!!」
  「人は同じでなければ分かり合えない」
  「だー! もううるさいな~私はそういうツマラナイ話はキライなんだよぅ!
   理屈よりも勝負!
   どっちが正義か決めようぜ!」

清々しいまでの潔さ。
彼女のペースに誰もが引き込まれてしまう。
それは一種の魅力と言っていいだろう。
ニカッとしたその笑顔の何と純粋な事か。

  「くくく。お前が正義ならそれでもいいさ」

クルエントがすぅっと息を整える。
理屈好きこそ単純なものに心を打たれ易い。
もはや彼に真理奈と戦う理由は無いのだが、
真理奈の卑怯な不意打ちも、それまでの戦いの疲れも忘れて、
クルエントは彼女との勝負に臨もうとしていた。
そうさせる力を真理奈は持っていた。

  「真理奈」

734 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:56:00 ID:rOVW5ToX0
パトリスが声をかける。
場の状況から敵の力は相当なものだと推測したからだ。
しかし真理奈は助けはいらないとピースで返事をして、敵に向き直る。

そして真理奈はカザーブで元の姿に戻った鉄の爪を取り出した。
いや、元と言うよりは新しく生まれ変わったと言うべきだろうか。
右腕に装備し、指を開いたり閉じたりしてその感触を何度も確かめる。

  (う~ん! イイ感じ!)

初めて鉄の爪に触れた時には不思議と懐かしさを感じた。
そして今鉄の爪を装備した感覚は、それと似ているようで異なっていた。
一度折れてしまった鉄の爪を再び甦らせた真理奈は、
かつて無いほどの一体感を経験していた。

意思疎通が上手くいっているとでも言えばいいのだろうか。
真理奈の要求に確実に答えてくれるだろう。
そして鉄の爪の望みに完璧に応えてやれるだろう。
そんな確信。

  「よーし! エルフに代わってオシオキよ!!」

そして誰にも分からないネタをかまして真理奈も準備を終えた。
しかし両者ともすぐには動かず、互いにきっかけを探した。
均衡した状態を作り出せるのは実力伯仲しているからだ。
その場合どんな戦法を取るかも大事だが、タイミングが最重要なのだ。
これを間違えると負ける。
その合図となったのは音もなく舞い落ちる葉や、
不意に吹き抜ける一陣の風ではなく、
静まり返る場に業を煮やしたブルーの鳴き声だった。

  「ピピィ~!!」

735 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/28(水) 23:58:02 ID:rOVW5ToX0
同時に仕掛ける。
クルエントは呪文を。
真理奈は直接攻撃を。
飛び道具である以上、呪文の方が先に真理奈に迫り来る。
しかしその威力がどんなに大きくとも、
彼女にとっては真正面からの何の特徴もないストレートパンチのようなものだ。
かわしてくれと言っているのに等しい。

真理奈は左前に避けつつ、脇を通り抜けていくメラゾーマに鉄の爪を突っ込ませる。
三本の爪により、メラゾーマは四分割されて霧散する。
そしてクルエントの二発目が放たれる前に、真理奈は彼の眼前へと迫った。
真理奈の素早さはクルエントの連続詠唱速度を超えた。

  「ベギ――」

その後の言葉は続けられなかった。
いとも簡単に懐に入られたクルエントは、驚きの為に目を見開く。
敵を認識しろ、という本能からの訴えかけもあっただろう。
しかし対応は出来ない。
真理奈の掌底が下から突き上げるようにしてみぞおちにヒットし、
クルエントの肺から空気が漏れ、意識が薄れる。
それと共に唱えようとしていた呪文は霧散した。
接近戦で魔法使いが武道家に勝てる可能性はゼロに近いだろう。
クルエントの負けは、距離を詰められた時点で決まってしまう。
メラゾーマの熱を持った鉄の爪が、クルエントの胸部を切り裂く。
無数の赤い飛沫が宙に舞った。

  「え?」

その時、違う、という言葉が真理奈の頭に浮かぶ。
血じゃない。
キラキラ光る――赤い色の――宝石だ――

736 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:00:14 ID:rOVW5ToX0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


  あぁ……また会えたのね……


  アン……アン……俺はお前に……


  いいの……私はもう、幸せを手にしたのですから……


  愛してる……あぁ、この言葉を…想いを伝えたかったんだ……


  えぇ、えぇ…! 私も愛しています……永久に……


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

737 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:02:22 ID:rOVW5ToX0
キラキラ、キラキラ。
宝石のかけらがそれぞれに光を発しながら洞窟の地面へとゆっくり落ちていく。
その光は2人の愛を示すかのように、暖かみのある光だった。

  「ぐ……がが……!」

もはや言葉にならない声を上げるクルエント。
その手がルビーのかけらを掴もうと天井に向かって持ち上げられるが、
震える手では何も捕らえる事は出来なかった。

そして一回だけ大きな咳をすると、その体は急速に力を失っていった。
伸ばされた腕がクルエントの本来の姿に戻りながら落ちていく。
いや、腕だけではない。
髪は白に、皮膚にはシワが、そして体格が小さくなっていく。
毛が抜け、歯が落ち、骨が枯れる。

  「な…何これ……?」

人が歳を取る様を録画し、早送りで見るとこんな感じになるのだろうか。
三倍速でも足りない程のスピードでクルエントは老いた。
そしてあっという間に元の年齢を通り越し、命の果てにたどり着く。
その先にあるのは死。
かつて魔法界で名を馳せた男の末路は、他の誰とも変わらず衰えによるものだった。

738 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:04:27 ID:rOVW5ToX0
  「女王……女王……!」
  「レギーナ、大丈夫か?」

パトリスとエルフ達が横たわる女王のもとに集まっていた。
気がついたようで女王の目が静かに一度だけ開けられたが、
パトリスとエルフ達の顔を確認するとまた閉じられる。

  「負けたのですね」

不思議とすっきりした意識の中で、彼女は自らの敗北を理解する。

  「しっかりしろ。あの人間は倒したぞ。今回復を」

パトリスに促され毒から回復したフィリアが女王の体に手をかざす。
しかし呪文を唱えても女王の傷は少しも癒える事がなかった。
フィリアは混乱した目でパトリスに助けを求めた。
しかしパトリスにはどうする事も出来ない。
女王がフィリアの手を掴み、感謝の意を示す。

  「私は人間の事が嫌いです。
   でもあなただけは信じてもいいと思ったのです。
   なぜでしょうね……」

その言葉にフィリアは涙を流した。
もう別れが近いのだろう。

  「レギーナ……里に帰るんじゃろ?」

懇願したいのを堪えるかのように、苦しそうに語りかけるパトリス。
しかし女王はそれには応じなかった。

739 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:06:31 ID:rOVW5ToX0
  「パトリス……エルフの血に特別な力などありません。
   エルフを誤解しないように――」
  「分かった…分かったから……頼む……」
  「……最期にお願いがあります」

彼女の手がパトリスの左手の指輪に触れる。
その動作だけでパトリスは彼女の望みを理解した。
他でもない彼女の頼みだ。
言う通りにせねばなるまい。
その指輪がいかに大切だとしても。
観念したパトリスは左手の薬指にある指輪を使い、女王のMPを回復した。

  「ありがとう」

あのエルフと同じ言葉で、同じように笑う女王。

  「メガザル」

孤独の女王、レギーナ。
その命と引き換えに娘を救ったその姿は、王として立派だった。

………
……


740 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:08:37 ID:gNiUrdmu0
  「今日という日がめでたく迎えられました。
   それは何と素晴らしい事でしょう。
   それも我らが創造主ルビス様のご加護と、勇者ロトの導きによるものです。
   そして何より我々の心に先代女王レギーナがいつまでもあるように、
   心よりの感謝を祈りと代えて届けるとしましょう」

里近くの森にある小さな広場。
そこにちょっとした式場が用意されていた。
整列したエルフ達を前に式を進行しているのはフィリアだ。

  「それではこれより、夫となる者ソールと、
   妻になる者フォルティスの婚礼の儀を始めます。
   まずは人間の少年ソール。
   汝は汝らを縛りつけようとする、ありとあらゆるものに立ち向かい、
   エルフの少女フォルティスとの契りを主に誓いますか?」
  「ち、誓います!」

少し緊張しているようなソールに、フォルテがクスリと笑ってしまう。

  「ではエルフの少女フォルティス。
   汝は汝らを縛りつけようとする、ありとあらゆるものに立ち向かい、
   人間の少年ソールとの契りを主に誓いますか?」
  「はい、誓います」

対してフォルテは緊張の色も見せず、嬉しそうに答えた。

  「よいでしょう。ではその誓いの証として、指輪の交換を行って下さい」

フィリアから指輪を渡された二人が向き合う。
夢見るルビーのカケラを飾った、二つで一つの指輪。
それが互いの薬指にはめられた。

741 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:12:32 ID:gNiUrdmu0
フォルテの柔らかい笑顔にソールは思わず赤面してしまった。
その様子を微笑ましく見守るエルフ達。

  「種族の壁を越えるという偉業を成し遂げようとする事。
   それは同時に苦労の連続でもあります。
   だからこそ彼と彼女には助けが必要なのです。
   この夫婦の力になる事を参列者の皆様にもまた誓って頂きたいと思います。
   賛同して下さる方々は、拍手でもってお応えをお願いします」
  「ふふふ、どう? おじーちゃん。孫が立派に努めを果たしてる姿は」
  「うるさい。今いいところなんじゃ。話かけるでない」

真理奈達は広場の最後尾で式の様子を見ていた。
パトリスは今にも泣きそうな目でフィリアの事を見ていた。
やはり孫は可愛いものなのだろう。

  「ソール、フォルティス。
   過ぎ去った苦しみの思い出は喜びに変わり、
   あなた達の行く道はきっと明るく、未来へと続いていきます。
   これからはいつまでも2人一緒に歩んでください。
   では最後に、契約の口付けを……」

そして小さな夫婦が誕生した。
拍手と歓声が沸き起こる。

  「素敵ね。女王様にも見せてあげたかったな」
  「そうじゃのう」

もし女王が生き残っていたなら、やっぱり結婚は許されなかったんだろうか。
もうそれを確かめる事はできない。

742 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:18:23 ID:gNiUrdmu0
  「何て悲しい呪文……命と引き換えに奇跡を起こしたんだね」
  「命と引き換え……エルフの血……
   そうか……ようやく意味が分かったわい」
  「何の?」
  「ジュードはエルフの血を吸ってヤツが力を宿したと言っておったが、
   女王は血に力はないと……」
  「じゃあ、どうして?」
  「その力はヤツの命と引き換えに引き出された、
   一種の呪文だったのじゃろう」
  「え? それって……」
  「命と引き換えに回復力を得るのがメガザルという呪文じゃ。
   それを応用してかつての力を得たんじゃろう、と思う。
   エルフの血には力はない。
   ないが……
   強いて言うなら、ヤツの思い込みがエルフの血に力を込めたんじゃ。
   狂信者のような思い込みは実際に力を発揮する事もある。
   たとえそれが夢のような事でもな」
  「それが本当ならヒドイよ……
   どうしてそんな夢を見るんだろう……
   私だったらエルフと仲良くする楽しい夢を見るのになぁ」

真理奈がつぶやいた一言は、くしくも女王が望んで見ていた昔の夢だった。

                             ――Jacob's Dream 完――

743 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/03/29(木) 00:28:07 ID:gNiUrdmu0
今日はここまでです。

終わる物語があれば、始まる物語もある。
という事で新人さんにwktkしつつ……

ではまた。

744 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/29(木) 01:34:11 ID:gEfeUGur0
更新GJ!
久しぶりに主役登場だな。

745 : ◆cmhnxUQ6us :2007/03/29(木) 02:38:27 ID:lFobSgkE0
最初に
自分は>>709氏とは別の人間です。
同じ新参書き手として>>709氏の作品を楽しみにさせていただきます
ではどうぞ

746 : ◆cmhnxUQ6us :2007/03/29(木) 02:45:32 ID:3YdHk8k20

 沈殿していた意識が浮上する。

――爽やかな風が髪と頬を撫でている、ような気がする。

 どうやら今日は目覚ましのお世話にならなかったらしい。俺にしては中々珍しい事だ。

――優しい木漏れ日が目に届いている、ような気がする。

 目を覚ますまでの、このぬるま湯に浸かるような時間は、麻薬に近いものがある。

――動物たちの声が聞こえている、ような気がする。

 二度寝になるかならないか、この無駄な緊張感もこの快感を生み出すのに一役買っているだろう。

――懐かしい匂いがするような気がする。ような気がする。ような……。

「……」

 半ば無視していたこの妙な感覚が気になり、目を開ける。
 最初に目に入ったのは眩しいほどの朝日。そして

「も、り……?」

 ……森だった。問答無用なまでに森の中だった。これ以上ないってくらい森の中だった。
 ひょっとしたら林かもしれないが、この際そんな事はどうでもいい。
 俺に何が起こった? もしや酔い潰れてこんな所で寝たとか? 軽く苦笑。
 しかし飲みすぎたのだろうか、妙に体に違和感がある。
 まあ、とりあえず体をおこs……

747 : ◆cmhnxUQ6us :2007/03/29(木) 02:49:43 ID:3YdHk8k20
――ギシッ。
 体全体に鈍い、重い抵抗を感じる。
 布団にしては重すぎるその感触に閉口しながら、唯一動くらしい頭で自分の状態を確認し、
「……ははっ。どうしたもんかね」
 乾いた笑いと共に、再度目を閉じた。
 軽口とは逆に、俺の心は混乱の極み。そして恐怖。
――ドッドッドッドッドッドッドッドッド。
 動悸が速度を増していく、ような気がする。
 誘拐? 事件?
 ……違う。何故かは判らないが、そういうものではない。ありえない。
 明らかに異常なこの状態に、自制が聞かない。恐れ、震えが止まらない。
 いっそ狂ってしまえれば楽だろうに。
――誘拐でもなく、事件に巻き込まれたわけでもないのに、知らない場所にいる。それは一体どういう事?
 ……夢。そうだ、夢に決まってる。
 こんな不条理、それこそ夢でなければ説明がつかない。
 そうでもなけりゃ、“目が覚めたら体がでっかいブロックみたいな石人形になってて、森の中で蔦に縛られてました”なーんて笑える 状況になる筈が無い。
 よし、そうと決まればさっさと寝なおそう。

 懐かしさに泣きたくなる程強い草と土の匂い、痛いくらい心地よい朝の空気に包まれながら、急速に覚醒しようとする意識を無理  矢理押さえつける。
 幸い、意識が埋没するまでにそう長い時間はかからなかった。先日の疲れがまだ取れていなかったのだろう。
 ……果たして今の体に疲れがあるのかは判らないが。

 これは夢。起きればあの退屈で楽しい日常が俺を待ってる。バイトにも行かないといけないしな。
 しかし数分後、再度深い眠りに落ちる寸前、

(……現実に絶望するのは起きてからでも遅くはないよな。……多分)

 俺はそんな事を考えていた。
 なんとなく判っていたのだろう。
 例えどんなに非現実でも。例え俺がこの状況をどんなに望んでいなくても。
 これが紛れも無い「リアル」だという事に……。

748 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/03/29(木) 06:55:05 ID:JuEqP+Xy0
朝っぱらからここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>743
お疲れ様です。
書き出しでドキドキしてしまいましたw

>>745
お疲れ様です。
wktk続き待ってます。

>>710-719
どうもです。
まとめのテンプレに
・DQ世界であれば宿屋でなくても歓迎します
という行を追加してみました。

749 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/29(木) 06:57:27 ID:v5t6jPji0
ちょwwwゴーレムかよwwww

750 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/30(金) 13:19:01 ID:8JBhlaul0
ほす

751 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 15:42:29 ID:p7ixGkdt0
709です。たびたびすみません、もう一つ質問です。
実は3ベースでストーリーを考えていたんですが、
3基盤の大型ストーリーが数本ある現状では、
読者様的にもお腹いっぱいなのでは……と思いました。
別ナンバーで企画を練り直した方が良いでしょうか。

(完結まで責任を持ちたいので、最初に慎重になっています。
 投下前にグダグダとみっともなくてすみません。)

752 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 15:47:58 ID:EV1WaJ4kO
書きたいものを書いてくれればいいと思いますよ

753 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 17:52:40 ID:wkelICxo0
DQならなんでもおkだお

754 :単発ネタ ◆8fpmfOs/7w :2007/03/31(土) 20:41:48 ID:jkz/eBh80
朝、目が覚めると見知らぬ宿屋にいた。
誘拐とか拉致とか言う話ではない。
ここは私のいた世界とはまったく別の世界なのだ。

私は元の世界に戻るための調査を開始した。
この世界は御伽噺のような魔法が存在する世界。
きっと元に戻る方法があるはずだ。

調査をしているうちに面白いことが分かった。
この世界には私以外にも私のいた世界からつれてこられた人間がいるということだ。
彼らの中には元の世界に戻らずこの世界で暮らすことにしたものもいた。

そして、私はついに元に戻る方法を見つけた。
方法はいたってシンプル。
元の世界にいる人間を自分の代わりにするというものだ。

元の世界の人間には異世界での私たちの様子を見て喜んでいる輩がいるらしい。
そんな奴らを自分の身代わりにすることに私は何の抵抗もない。
問題はそいつらがどこにいるかということだ。私は奴らを探すことにした。


 ( ゚д゚) 何処だ?


 (゚д゚ ) 何処にいるんだ?


 ( ゚д゚ ) !

755 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 21:08:33 ID:XBhpp3QIO
ちょwwwこっちみんなwwwwwwwww

>>751
被らないようにする方が難しいんじゃないかなぁ?
読む側としては全然構わないと思う

むしろ今考えてるモノが3以外にしても大丈夫なのかが疑問だけど


756 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 21:33:23 ID:NxOItOFi0
茶を噴いたw

757 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 22:26:51 ID:+wAco3Pg0
>>751
大風呂敷広げすぎて永遠の未完成に終わらないようにがんがってくれ。

758 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/31(土) 22:48:11 ID:fik983rh0
>>754
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

759 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 01:18:07 ID:1Ex24lj10
>>754
らめえええええいしぇかいいっひぁううううう

760 :709:2007/04/01(日) 01:55:10 ID:bvrIZgUT0
あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ちょwwっwwwwwwwwwwwまっwwwwwwwwwwwwwwww


………………………………………………カブッタ.......orz


>>754さんとネタかぶりましたぁ!wwwwww

今考えてる企画、ゲームキャラが現実世界のプレイヤーを
身代わりにしようと考えるところからスタートなんですよwwwww
いやーこればっかりは出したモン勝ちですもんね。
すみません、ここはもう潔く棄権します!
お邪魔しました!

761 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 02:03:32 ID:RcAgO1jtO
うはwwキツイなそれ。
アイディアは先に出した方が元祖になるからなー。

762 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 03:50:43 ID:RcAgO1jtO
あーでも、754の人は単発ネタだし、
カブッたっても出だしだけのことだろ。
気にしないで投下していいんじゃないか?

763 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 04:26:15 ID:Oyo1MnLQO
いちいち確認とらないで最初から投下しておけばよかったものをw
いいから投下せいww

764 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 09:02:48 ID:aCzuyG2DO
同じ世界観の元なんだから被るのはしょうがない
まるっきり一緒ってんじゃないなら気にしなくていいんじゃ

765 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 10:44:39 ID:u6FWBbGaO
どうやって現実の人間をイケニエにするのか気になるところだな

そしてもうすぐ次スレかな?
1000はいかなそうだね

766 : ◆8fpmfOs/7w :2007/04/01(日) 11:15:52 ID:FwbfHAna0

     ( ゚д゚ )っ
      (っ ,r どどどどど・・・・・
.       i_ノ┘

       
    ⊂( ゚д゚ )
.     ヽ ⊂ )
     (⌒) |どどどどど・・・・・
        三 `J

       
     
   
  /   O    O   \
  |       Д       |   >>709氏書くの辞めんな!
  \              /



私の思いつきの単発ネタのせいで作品がひとつ書かれなくなるのは心苦しいです。
是非とも「754があんなネタさえ書かなければよかったのに」と言わせないでください。
あなたが書かないことにすれば、私も責任を取り今後単発ネタ等を書かないことにします。
棄権するという発言を撤回をすることに抵抗を感じるかもしれませんが大丈夫。
運がいいことに、今日は1年に1度だけ発言に責任を持たなくても許される日ですから。

767 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/01(日) 11:24:25 ID:xvf6hbEV0
>>754
こっちみ(ry

ここまでまとめました。
暇潰しさんのジャンルが「オリジナル」になっていたのを「DQ3」へ修正し、>>754氏を新規に追加しました。
暇潰しさん、今まで気付かなくてすみません…
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>760
気にせず、投下してしまっても良いと思いますよ。

スレ容量がおそらくこのカキコミで470kbになると思います。
が、スレ立て出来ませんでした orz
でかけなきゃならないので後ほど、自治スレか依頼スレでお願いしようと思っています。
ですがもしスレ立てできる方がいましたら、まとめのテンプレでお願いします。

…WebブラウザでみるとこのスレがすでにDAT落ちの表示がでてあせりました。

768 :709:2007/04/01(日) 13:22:47 ID:IZfMit+30
まだ書いて大丈夫かな……とても新スレに引っ張れる話じゃないのでここで。

◆8fpmfOs/7wさんすみません! 自分が浅はかでした。
アイディア横取りしたみたいで失礼にあたるかと思って棄権したんですが
考えてみればその方がよっぽど失礼ですよね。俺バカだ。

お言葉と日付に甘えて、棄権宣言はわたぬきってことで。
新スレ立ったら投下してみます。

769 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 13:36:02 ID:u6FWBbGaO
>>768
wktkwktk


避難所のURLが変更になってるので、テンプレは注意

770 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/01(日) 20:28:14 ID:ULFoczp/0
ん~、そろそろウダウダ言いすぎな希ガス
ごちゃごちゃ言う前にとりあえず投下しろと

771 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/01(日) 21:30:48 ID:xvf6hbEV0
酔いすぎて理性を失う前に、自治スレへスレ立て依頼を出してきました。
桜なんて全く見ませんでした。

>>768
ぜひ、投下してください。
楽しみにしています!

772 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:59:46 ID:XgSwbg4B0
次スレ

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

773 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 16:18:21 ID:oy3dDAbEO
>>772
乙です!

埋めうめ

774 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 16:30:31 ID:03BWrMvP0
ume

775 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 17:58:10 ID:ZAG7nJmV0
埋めマンは!埋めマンはまだかっ!

776 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 18:48:11 ID:qH14Zi9G0
思ったんだけど

ゲームキャラが現実世界のプレイヤーを
身代わりにしようと考えるところからスタート



>754が現実世界のプレイヤーを
身代わりにしようと考えるところからスタート

にすればいいんじゃね?

777 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:23:49 ID:hrZAYtTR0
時は20××年。
私は地球という惑星の、とある国の、とある地域で暮らしている。
いわゆる地球人ってヤツね。
詳しくはプライベートだから秘密なんだけど、
この国は相も変わらず落ち着きがない、とは私のおじいちゃんの弁。
戦争こそないものの、様々な問題は絶えず我々一般人を苦しめ続けている。
つまりはそんな時代だ。
そして私も悩みを抱えて日々を生きるフツーの女の子の一人。
あ、もう『女の子』だなんて言える歳じゃないんだけどね。
そこら辺は目をつむって欲しい。
でも内面は可愛らしいと思うよ、うん。
そんでさ。
そんな私でもね、声を高らかに主張したい事があるのですよ。
何かって言うと――

  「我がゲーム大国万歳!!」

……呆れた?
呆れたよね。
でもさ。
それだけで『この国に生まれてよかった~』なんて言えちゃうんだから凄いと思わない?
思わないか……
……

でもさでもさ!
私が言いたいのはイマドキのゲームが凄いっていうんじゃないの。
私はすっごく昔の、ふるーいゲームが大好きなんだ。
こんな事を言うと、大抵の人は良い返事をしないんだけどね。
もっと昔に生まれたかったなぁ……
そしたら皆と同じ意見にだったろうに。

778 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:26:54 ID:hrZAYtTR0
しかーし!
この時代に生まれた事を私は感謝するようになるってんだから人生は不思議。
何でかって言うと、新しいプログラムソフトの発売が最大の理由なの。
ソフト名はズバリ! 
【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】
何というネーミングセンス。
間違いなくこのソフトは売れない。
と思ったら、世のゲーマー達はこぞって飛びつく事となったのですよ、奥さん。
その名の通り架空の世界に入れるというありふれたソフトなんだけど、
これまでとの決定的な違いは、自分の好きなゲームソフトの世界に行けるってところ。
しかもそれがどんなに古いソフトでもオーケーという代物。
これを製作した方はニーズを分かってらっしゃる。
そしてジャジャジャーン!!
ねんがんの そふとを てにいれたぞ!!
サンタや彼氏からのプレゼントじゃないのが残念だけど、ワガママは言ってられない。

という事でさっそく私が選ぶソフトは、もちろんコレ。
【ドラゴンクエスト】
RPGというジャンルを確立したと言っても過言ではない。らしい。
断定できないのは、聞いた話だからだ。
話の主はおじいちゃん。
おじいちゃんはこのゲームが大好きで、
おじいちゃん子だった私は多大な影響を受けたのだった。
私がつたない腕でボスを倒そうとするのをニコニコと見守ってくれたのを覚えている。
おじいちゃんは口癖のように言っていたものだ。

  「古臭い物ほど味がある」

今ならその意味が良く分かる。
みんな絵がショボイとか、操作性悪すぎとか、ボタン押すとか新鮮(笑)とかとか。
分かってないよね~お前らは何も分かってない!
今のゲームには無いこの凄さをさ。

779 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 19:29:10 ID:h3o2RFfp0
期待&支援

780 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:31:08 ID:hrZAYtTR0
【もし(ry】のプログラムを起動し、ドラクエのデータを読み込ませる。
次にクリア条件を決めるのだが、これは自由に決める事が出来る。
私は迷わずに【魔王を倒すまで】と入力した。
すると、『ドラクエ世界へ出発しますか?』の文字が私の目に飛び込んでくる。
ドキドキと胸が高鳴った。

やっぱり最初はレベル1なんだろうなぁ。
装備品は布の服だけなのかしら。
そう言えばパンツとか化粧とか売ってるのか?
間違ってもハダカやすっぴんだけはイヤだ。
恥ずかしいし。
徹夜でレベル上げとかしなくちゃいけないのかな?
う~ん、お肌に悪そうだ。
村人は毎回同じ事を話してくれるのだろうか。
向こうに着いたら壁にぶつかってドゥンドゥンと音を出してみたいものである。
宝箱を開ける瞬間の期待感はたまらないんだろうなぁ。
しかしその前には幾数ものモンスターが待ち受けているのだ!
苦戦しながらもギリギリで勝利!
く~燃えるね~!!

モンスターと言えばスライムはぜひとも触ってみたい。
おっぱいより柔らかそうな感じ。
でも私がモンスターと戦えるのかなぁ?
武器とか扱える自信ないし……
ゲーム補正でなんとかなるのかもしんないけど。
あ、死んじゃったらどうするんだろ?
誰か生き返らせてくれるのかしら。
待って待って。
そもそも魔王を倒すだなんて大事を成し遂げられるの?
向こうで体験する事は実際の出来事と何ら変わらない。
ケガすれば痛いんだ。
ましてや呪文なんて……

781 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:36:38 ID:hrZAYtTR0
  「今のはメラゾーマではない。メラだ」

なんて言われた日には、漏らしてしまうかもしれない。
よし、じゃあ条件を甘くしよう。
例えば【一日経過したらクリア】とかとか。
何か一日署長みたいでイイかも?
でもそんなちっぽけな志しでどうするんだよぅ。
中途半端に体験したって意味無いんだからさ。
でもでも……
なんて色々考えていたら、結局私は冒険に出る事はできなくなってしまった。

  「いただきまーす」

夕食はポテトサラダとパスタにコーンスープ。
もちろん私の手作りではない。
お母さんの料理はやっぱり美味しい。
もしドラクエ世界に行ったら食べられなくなるんだよなぁ。

  「ねぇお母さん」
  「んー?」
  「もし、さ。
   もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」
  「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを探そうかしら」

そういってお母さんは笑った。
しょせん冗談話だ。
お母さんだって本気では言ってない。
でも私はちょっとだけ涙が出そうになった。
お母さんはそこまで行動力のある人じゃない。
実際にそうなったら、私が帰ってくるのをずっと待つに違いない。
この家で、たった一人で。
やっぱり向こうに行くのは止めよう。

782 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 19:39:59 ID:h3o2RFfp0
やばい、まだ冒険がはじまっていないのにちょーわくわく。
お母さんもいいお母さんだなぁ。

783 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:40:14 ID:hrZAYtTR0
  「いいなぁ~」

日付が変わる頃、私は黄ばんだページをパラパラとめくっていた。
すっごく久し振りに読む、ドラクエの攻略本だ。
劇中では表現されない武器や道具が絵にしてあったりして、
見ているだけでも全然飽きない。
カッコイイ装飾が施された剣や、
とても戦うために作られたとは思えない素敵なデザインのドレス。
それを装備している自分を創造してニヤニヤする。。
かしこさの種があれば頭が良くなったのにーとか考えるのは私だけじゃないはず。

  「ん?」

パサッと何かが落ちる。
ページの間に挟まっていたのだろう紙切れだった。
二つ折りになっていたのを開くと、
やけに達筆な字で書かれた文章がタイムカプセルのように当時のまま残っていた。
この字は、きっとおじいちゃんだ。

  『創造する事の喜び。それをドラクエは教えてくれたと思う』

その通りなんだろう。
創造するから楽しいのだ。
きっとゲームの登場人物達は、現実の人と同じように悩みを抱えているに違いない。
創造するだけなら例え一時であったとしても、その悩みを忘れる事ができる。
そしてそれが悩みに立ち向かう勇気にもなるのだ。
明日にでもプログラムソフトは売ってしまおう。
そう思いながら文章の続きを読んでいく。

784 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:45:12 ID:hrZAYtTR0
  『けれど。
   決して口には出さなかったけれど。
   毎晩のように願う事があった。
   ずっとずっと、遠い昔から。
   それが実現する夢をよく見たものだ。

   いつかドラクエ世界に行ってみたい、と』

心臓が跳ねた。
ドラクエ世界に行ってみたい。
その文字を何度も繰り返して読む。
やっぱりおじいちゃんもそうだったんだ。
聡明なおじいちゃんの事だ。
どんな世界で生きるにしても大変な事を分かっていたから、言わなかったのだろう。
けれどその希望は捨て切れなかったんだ。
こんな紙切れに書く事で、諦める事にしたのかもしれない。
その紙を閉じると私はすぐさま【もし目が覚めたら○○の世界だったら】を立ち上げた。
ドラクエのデータは既に読み込んである。
クリア条件を【一日経過したらクリア】から【魔王を倒すまで】に上書きした。

  『ドラクエ世界へ出発しますか?』 →はい
                         いいえ

いいえを選んでも無限ループにはならないけれど、私は『はい』を選んだ。
これでもう後戻りは出来ない。
お母さんごめんね。
ごめんなさい。
でも……
おじいちゃんと私の夢なの。
分かって。

そして私の冒険は始まった――

785 :埋め用短編:2007/04/02(月) 19:50:59 ID:hrZAYtTR0
終了です('A`)

『埋め用』とうたっておきながら全然埋まらなかった件…
もっと書けばよかったかなぁ~

とりあえず全然ドラクエじゃありませんでしたが、
短編という事でお許しを。

ではでは。

786 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 19:56:33 ID:h3o2RFfp0
乙です。
おじいちゃんの時代にはできなかったゲームの中の世界に入る夢、感動しましたよ。
よい作品をありがとうです。
ドラクエの世界に入った、主人公さんの冒険も機会があったら読んでみたいです。

787 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 20:38:58 ID:hrZAYtTR0
>>786
支援ありがとうございました。

設定等を深く考えず、ただ勢いに任せて作ったので
続きがあるかどうかは分かりません……
けど暇があれば書いてみたいですね。

しかし一人称は書きやすいですな。

788 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 21:17:40 ID:3J9GJd7J0
いつもこのスレ楽しませてもらってます。

>>777-784
>   「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを探そうかしら」
ヤバイ、ここだけでしんみり来ちゃった時分は涙腺弱すぎなのかw
DQ3をダブらせたのか分からないんだけど。
もう少し掘り下げると、この“「ゲーム」と「現実」を結ぶソフト”の存在する世界を舞台にした
【もし目が覚めたら~】っていう展開はとても面白いと思った。面白いというか少し恐いかな。

っていうか時分はこの後の母親の行動を想像してwktkした。
消えた娘を探すうちに祖父(母親にとっては父)の残した手記と、このプログラムの存在を知り
救出のために動こうとするけど「お気の毒ですが~」とか「呪文が違います!」とか、そんな展開。
それで冒険中の娘と並行してストーリー進んでいったらすげー楽しそうw
ごめん、勝手に妄想し過ぎたけど機会があったらぜひ続き書いてください。楽しみにしてます。

789 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 23:59:49 ID:hrZAYtTR0
>>788
そこまで想像していただけるとは…書いて良かった!
とすると、母親サイドで未来世界の設定を出し、
娘サイドではソフトの設定枠内でドラクエを書く事になる訳ですな。
やりがいがありそうですなぁ。
しかしヘタに【魔王を倒すまで】とか書いてしまったが為に長編になりそうな予感w
某浦沢さんのようにして書くのは無理なのでホントに機会があったらになりそうです。
代わりに設定考えてもらえませんか?
冗談ですwww

790 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/03(火) 00:04:20 ID:T7w04izM0
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>785
お疲れ様です。
完結ということですが続きを読みたくなりますね。
時間ができたらぜひ、冒険編もお願いします。

>>638
まとめ方はこれで本当に良いのか、まだ考えたりもします。
ですが、そう言っていただけるととっても嬉しいです。
また、新しい物語を見つけられたら聞かせてください。
お疲れ様でした。

791 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:02:34 ID:q+QRSQ6b0
>>777-784に便乗)


私の父を知る人は皆、口を揃えて「とても賢く仕事の良くできる人だった」と言います。
だからでしょうか? 幼い頃、父が家にいる事はあまりありませんでした。
当時はとても仕事が忙しかったのだと母は言っていました。父のことを語る母の顔は誇らしげで、
一方でどこか淋しそうでもありました。
きっと母は、父のことをとても愛していたのだと思います。私は、母ではないから想像でしかありませんし、
直接訊いたところで恥ずかしがり屋の母は多くを語ろうとはしませんでした。

けれど私は、父のことをあまり良く思っていませんでした。
父の姿を思い出そうにも、少ない記憶をかき集めてようやく出て来たのはゲームに興じる背中だけ。
娘の話よりもゲームに夢中だった父が、私はあまり好きではありませんでした。
そして父が夢中になっていたゲームが、私は好きになれませんでした。


人並みに悩みながら成長し、平凡ではあるけれど穏やかな生活を送る中で歳を取り、
ありふれた出会いを経て、娘をもうけたことを告げると、父はとても喜びました。
まるであの頃の罪滅ぼしとでも言うように、父は「愛孫だ」と言って娘を可愛がってよく遊んでくれました。
父が知っている遊びと言えばゲームしかありません。
長い年月を経て、今度は父と娘が並んでゲームを楽しんでいる背中を見る事になりました。
私はその風景の中に嬉しさのような、淋しさのような、もどかしさに似た不思議な思いを抱きました。
それはきっと、年齢が離れていても同じ楽しみを共有できる娘を少し羨ましく思っていたからだったのかも知れません。
こうして娘は、大の“おじいちゃん子”として健やかに成長したのです。
もちろん、おじいちゃん譲りのゲーム好き。……そこだけは少々困った点ではありましたが。
娘とふたり、慎ましくも幸せな日々を送っています。

792 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:06:20 ID:q+QRSQ6b0



そんなある日。
いつものように娘と夕飯を食べていたときのこと。娘にこんな事を訊かれました。
  「もし、さ。
   もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」
その言葉を聞いて脳裏を過ぎったのは、居間で父と並んでゲームをしていた光景でした。
『違う世界』――それがたとえばゲームの世界だったとしたら?
ゲームを実際に遊んだことがないので良くは分かりませんが、
父の話によれば、『勇者』は数々の苦難を乗り越えて成長し、最後は『魔王』と戦うのだと言います。
……途方もない話です。

  「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを捜そうかしら」

もちろん、他愛のない会話の1つだと思いました。
ゲームの世界、それは画面の中にだけ存在する架空の世界。
絵本の中の世界に吸い込まれてしまう、どこかのおとぎ話でもあるまいし。
そんなことが起きるはずがない。
……でも。
もしも仮に、そんなことになってしまったら、私はどうするだろう?
いつ戻るか分からない人を、一人で待つというのはとても苦しい事はよく知っている。
大切な人を失う苦しみは、もう二度と味わいたくない。
かといって、どう行動したらいいのかなんて想像もつかない。

しばらくして、いつの間にか真剣に考えていた自分に気付くと思わず苦笑いが出ます。
取り留めもないことを考えるのは止めよう。
こうしていつもと変わらない一日が終わり、夜は更けていきました。

793 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:10:14 ID:q+QRSQ6b0



迎えた翌朝。
私はいつものように、いつまで経っても起きてこない娘の部屋に向かいました。
朝寝坊のクセは大きくなっても直りません。
部屋のドアをノックしても、大きな声で名前を呼んでも起きないのもいつものこと。
躊躇わずにドアを開け、もう一度娘の名前を呼びました。

  返事がない、もぬけの殻のようだ。

いつも寝ているはずのベッドにも娘の姿はなく、
それどころか部屋のどこを見ても、娘はいませんでした。
カーテンとカギの掛かった窓を開け外を見れば普段と変わらない風景が広がっていました。
開けた窓からは肌に心地の良い風が部屋に吹き込んで来ます。
それからクローゼットを開けたり、机の引出を開けたり、ゴミ箱の中やベッドの下を覗いたり、
鏡の中を見つめたり、鞄まで開けてとにかく部屋中のあらゆる場所を捜してみましたが、娘は見つかりませんでした。
昨日、夕飯を終えたあと娘は自室に戻ってから家の外へは出ていないはずです。
  「……そうだ!」
部屋を出て玄関まで来るとドアの取っ手を掴んで思い切り押しましたが開きません。
鍵は閉まったままです。
玄関と脇の靴箱を開けて見てみましたが、無くなっている物は1つもありません。スリッパも含めて、履き物すべてです。
それから私は家中のドアというドア、窓という窓、収納や冷蔵庫、排水口に至るまで、トイレはもちろんお風呂も
台所も居間も、とにかく開けられる場所のぞける場所をくまなく徹底的に捜しましたが、娘の姿を見つけ出す事は
できませんでした。

794 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:13:08 ID:q+QRSQ6b0
娘は家の外には出ていない、かといって家の中のどこにもいない。
では、娘はどこに?
暑くはないはずなのに、額と手のひらには汗がにじんでいました。
焦りの中、視界の隅に映ったのは電話機でした。
  (お、落ち着いて。落ち着いてよく考えて、まだ捜していない場所や見落としている場所があるはずよ)
気が付くと私は、娘の部屋に戻っていました。
いつもと同じ部屋。無くなっている物は何もありません。
ただ、娘だけが忽然と消えた。
事件だとしても不可解な事ばかり。
救いを求めるように、あるいは振り向けば「驚いた?」なんて笑顔を向ける娘がいてくれる事を願いながら、
私は振り返りました。
けれど娘の姿はありませんでした。
視界の中央には、ふだん娘が使っている机が見えました。
そこであることに気が付きます。
電源が入ったままで放置されているモニタと、その横に広げられていた本、それに何かの箱。
まず本を手に取ってみてみれば、タイトルには「攻略本」との文字が記されていました。
  (これは……)
そう、父が好きだったゲームの攻略本です。
そして、その中に挟まっていた父の手記を初めて目にしました。

  『いつかドラクエ世界に行ってみたい、と』

心臓の動きが止まったかと思いました。
その文字に釘付けになって私はしばらく紙切れから目を離せずに、その場に立ち尽くしたまま動く事ができませんでした。
まさかと思いながら、恐る恐る電源が入ったままのモニタに視線を動かします。
真っ青の画面上には、大きくこう表示されていたのです。

795 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:17:07 ID:q+QRSQ6b0
  『DRAGON QUEST』

表示されているタイトルは、ゲームをしない私にも聞き覚えのある名称でした。
高音が些か耳障りにも感じるメロディは、ゲームをしない私の耳にも馴染みのある行進曲でした。
画面上にはこのタイトル以外に「START」の文字しか表示がなくて、とても殺風景でした。
カーソルは、タイトルすぐ下に表示されている「START」の箇所で点滅を繰り返していました。
このボタンを押せばゲームがスタートする、そのぐらいのことは察しがつきます。
その時ふと、昨夜の会話が脳裏に過ぎりました。

  ――「もし、さ。
      もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」

心に浮かんだのはあまりにも突飛で、恐ろしく不吉な予感。

  (まさか、まさか……いくらなんでも)

そんな予感を、私の理性は否定しようとしました。
しかしその理性を否定するように、目の前の画面はひとりでに動き出しました。
まるで、この画面に気付いてくれる人間が現れるのを待っていたかのように。

  (……な、なに?)

画面は暗転し、ひらがな五十音が表示された画面に切り替わりました。
音楽も、先ほどの行進曲よりは耳に馴染みのない大人しい曲調に変わります。
じっと画面を見つめていた私は、そこで更に恐ろしい物を目の当たりにする事になりました。

  『なまえを いれてください』

そのメッセージの下には、確かに娘の名前が入力されていたのです。
驚いた私は、机の上にあった箱を手に取りました。
パッケージには【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】との表示。
どうやら娘が購入したらしいソフトの様です。

796 :埋め用短編@母親の場合:2007/04/03(火) 04:21:05 ID:q+QRSQ6b0
私は急いで箱から取扱説明書を取り出し、このソフトの正体と、今起きている事態を把握しようと試みました。
説明書には次のように書かれていました。

・既存のゲームソフトを利用して、そのプログラム内の世界を再構築するソフト。
 それが【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】 (以下、「当ソフト」)。
・まず当ソフトを起動した人物は、既存のゲームソフトを用いて好みの世界を設定します。
・次に当ソフトを起動した人物は、【クリア条件】を設定します。
・最後に表示された選択肢に『はい』と答えれば、プログラムは実行され起動した人物を含めて世界を再構築します。
・【クリア条件】を満たさない限り、プログラムは終了せず起動者はプログラムから出る事は不可能です(以下、「ループ現象」)ので、
 当ソフト起動前には必ず本取扱説明書を熟読の上、自己責任で実行してください。
・尚、ループ現象回避の手段として、外部からの操作を可能とする機能を実装しています。
 但しこの場合、“CONTINUE”は無効となりますので充分ご注意下さい。

……つまり娘は、このソフトを起動し自らの意志でプログラムを実行した。
そして私は、このゲームの主人公となった娘の行方を見守りながら、彼女をクリアへと導かなければならない。

分からない。
だけどやるしかない。

こうして私の冒険は始まってしまったのです――

797 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 04:25:37 ID:q+QRSQ6b0
788です、まとまりない文章でごめんなさい。
そして改めて>>785さん、勝手に借用した挙げ句、変な妄想加えてすみません。
読んで閃いた衝動で書かせてもらいました。今は色々と反省してますですはい。でも後悔はしてませんw

ちなみに。

・「主人公としてドラクエ世界に行った娘」と「プレーヤーとして娘を見守る(時に操作する)母親」のそれぞれの戦い、みたいな。
・「ふっかつの呪文」(これDQ1にありましたっけ?)が結ぶゲームと現実2つの世界。
 (実はクリアのヒントが隠されたアナグラムだとかそう言うネタ)

……冷静に考えると母親のパートはちょっとスレの主旨から外れてしまう事に気付きました。
重ね重ね失礼いたしました。そんなわけで埋め。

798 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 11:42:26 ID:eRL5/rkeO
埋め

799 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 13:33:25 ID:+xrcS94k0
生め

800 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 19:07:19 ID:O1nEHjvfO
残りは埋めるだけなので、少々雑談で使わさせてもらいます。
ですがこの雑談の為に埋めて下さるのを止めるような事はしないようにお願いします。
あくまでも埋めるのが第一目的ですから。


>>797
母親サイド、面白そうな感じですね~
キャラ作りも何だかよさ気ですし。
少しだけ気になった点を言わせてもらうと、
・プレイヤーはあくまで娘であって、現実世界からの操作は無しなんじゃないか?
なぜなら「ゲームをするのは、その世界に入った張本人」である事があの時代の基本となっていて、
【もし(ry】のソフトが特別なんじゃないという設定なんです。
これは何も設定にこだわっている訳ではなくて、
そういうゲームソフトを買う人が他人に操作されるのを好むだろうか、という疑問があるからです。
もし自分がゲームの世界に入れたとしても、ただの1キャラとして扱われるだけだと面白くないような気が……
だから母親側は傍観者として画面の中で動く娘を見る事しかできない。
けどそれじゃあ面白くないからもう少し考えて、
・現実世界から「読み込ませたゲーム」への干渉はできないけど、【もし(ry】側の設定はイジることができる
とかとか。
画面で娘のピンチを見て助け出さなくてはいけないと思う。
けど母親はゲームとかはよく分からない。
だからどうすれば助けられるのか、その方法を探して翻弄する。
(まぁ解決策の一つとして文字通り母親もゲームに入るってのもアリかもしれない)

みたいな。
ちょっと話が大きいですかね?w
とりあえず母親がクリアを導くとなると、母親がヒッキーになってしまう予感w

801 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 22:18:06 ID:sqYgJlsf0
同じく埋め作業の一貫として。(1/2)



> ・プレイヤーはあくまで娘であって、現実世界からの操作は無しなんじゃないか?
そうです、そうなんです。
ドラクエというゲームが世に「RPG」を広めたキッカケとなった事と、
技術進歩によりゲームの世界に本当に行ける世の中になった事。
この『埋め用短編』中の現実世界において、もはや「RPG」の概念は崩壊していると言えなくはないか?
それに対する皮肉のような物が今回のお話なんじゃないか?
>>777-784を拝見したとき、この作品にはそんな意図を含んでいるような気がしたんです。
それがちょうど、指摘されている問題にも繋がるのですが。

> そういうゲームソフトを買う人が他人に操作されるのを好むだろうか

“ロールプレイングゲーム=ゲーム世界中で、ある人物の役割を演じる”のではなく
“自分がその役割(それ自体)になる”事が可能となった世界では、主人公となる娘はもはや
“プレイヤー”ではなくその世界に生きる“人”そのもの(だから原理としては自律行動。外部からの操作は受け付けない)であり、
それを外から見守る母親こそがロールプレイングゲームの“プレイヤー”なのではないか?
(そのこと自体には娘自身も気付いてる:>>783下から5行目「きっとゲームの登場人物~」の件)
そう言うことを書きたかったんですが、なかなか難しいw

つまり主人公としてゲーム世界で自律行動をするのは娘。彼女は既にプレイヤーではなくゲーム世界に生きる一個人。
その娘の役になってゲームを見守る(プレイする)母親は、その行為(ロールプレイング)を通して
好きになれなかったゲームと、あまり好きではなかった父親の事を理解していく。

802 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 22:20:57 ID:sqYgJlsf0
(2/2)


主人公(娘)のクリア条件は【魔王を倒す】事であり。
母親のクリア条件は【ゲームをクリアする】事そのもの。
同じ“エンディング”に到達するためには、娘・母親がそれぞれの課題をクリアしなければならない。
ってそう言う話の展開だと面白いかなと思ったんです。

ここから先は理屈が良く分からないけど感覚として、ゲーム内で自律行動する娘の役になってプレイ(画面外から
見守る母親)との同調がどれだけ取れるかがクリアの鍵なんじゃないかなと。
竜王からの提案受けた時なんか見てる母親はハラハラするだろうなーとかw
May god be always with you!←最後は神じゃなくていい気がしたりして。

…DQ1未プレイ者ですが好き勝手言ってホントすいませんw
でももし機会があれば是非書いてください。マターリ待ってます。

803 :希望の世界 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/03(火) 23:09:14 ID:ibF1/24j0
私は仕事の手を止め休憩をとることにした。
何も急ぐことはあるまい。
ここでは上司の目を気にする必要もないのだ。

私は沼をさらい、あるものを探し当てた。
ロトの印。
これがあれば私は勇者ロトの子孫と認めてもらえるらしい。
ずいぶんいい加減なものだ。しかし、私には好都合なのだ。

私は自分がロトなる人物の子孫であると証明する手立てがない。
そもそも私にはこの世界に関する知識が一切ないのだ。

ある日、目が覚めたら私はこの世界の宿屋にいた。
この世界での私は青い鎧を着た青年だ。
私はこの国の王により姫を助ける命を受けているようだった。

元の世界へ戻る手段が分からない私は仕方なく姫を探すことにした。
この冒険を終えれば元の世界に戻れるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いてのことだった。

しかし、姫を助けても元には戻らなかった。
今度は姫を攫った竜王なる化け物を退治することになった。

姫は私――姿こそ違うが――私を好いているようだった。
うまく立ち回れば姫と結ばれることができるかもしれない。
一国の姫との結婚。本来の私であったら到底できることではないが……

私はこのままこの青年として生きていくしかないのだろうか。
見ず知らずの人間として――。

ここで私はふと思った。
私の精神がこの青年の中にある今、この青年の精神は何処にあるのだろうか、と。

804 :希望の世界 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/03(火) 23:10:16 ID:ibF1/24j0
俺は目の前にいる男は竜王のひ孫だと名乗った。
竜王とは俺が探していた男だ。いや、かつての俺がと言うべきか。
今の俺は昔の俺ではない。どうやら俺は未来の世界に飛ばされたらしい。

この世界での俺はローレシアという国の王子だった。
彼は、今の俺だが、俺と同じ勇者ロトの血を引くものだという。
俺は同じようにロトの血を引く仲間と旅をしている。
王子自ら世界の危機を救おうというのだからたいしたものだ。

竜王のひ孫の情報を頼りに俺達は紋章というものを探すことにした。
この城から船で南に行くと紋章のひとつが眠る大灯台があるらしい。
仲間と船。どちらもかつて旅をしていたとき欲したものだ。
こんな形で手に入るとはなんとも皮肉な話ではあるが。

―――――
仲間が転職して戦士になった。元が魔法使いなので魔法もつかる戦士だ。
転職を重ねることで仲間達はどんどん強くなっていく。
しかし勇者である自分は転職ができない。

確かに強い仲間が欲しいと思ったこともある。
自分も魔法が使えたらと思ったこともある。
今はそのどちらも手に入れた。自分ではない自分となって。

異世界で違う自分になる。
ひょっとしてこれはハーゴンの見せる幻だろうか。
それならば何とかして打ち破らねばなるまい。
伝説の勇者ロトの子孫として。
きっとご先祖様も見守ってくれているはずだ。

805 :希望の世界 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/03(火) 23:12:16 ID:ibF1/24j0
ライアンという男が仲間になり導かれし者たちがそろった。
導かれし者たちとは勇者とその元に集まる運命を背負った者たち。
俺はこの世界でも勇者だった。

以前の俺は勇者という存在の意義が見出せないでいた。
しかし今の俺は勇者として多大な期待を寄せられていた。
仲間達は俺が世界を救う唯一の希望だと言う。
魔物たちは勇者である俺を亡き者にしようと画策する。

勇者であることがこれほど辛いと思ったことはない。
何故こんなことになったのだろう。
俺はふと鏡を覗き込んだ。
鏡には緑色の髪をした妙に強面の青年が映っていた。

―――――
俺は眠っている子供達の顔を見ていた。
この子供達は俺の息子と娘だという。
いきなり俺は2児の父となったのだ。

この世界の俺は勇者ではなかった。
以前、勇者という重責から逃げ出したいと思ったこともあった。
それがこんな形でかなってしまった。

その結果勇者という運命を他人に背負わせることになった。
いや、他人ではない。それは俺の息子なのだから。
なんと言う運命の皮肉だろう。

自分では分からなくてもこの子たちの親は俺なのだ。
この子達はれがしっかり守っていこう。
かつて俺の父と母がしてくれたように……

806 :希望の世界 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/03(火) 23:13:20 ID:ibF1/24j0
兄弟が欲しいと思ったことがあった。
一人っ子というものは寂しいものだ。
だが、今の自分には妹がいる。

自分の息子に勇者という荷が重過ぎると思ったことがあった。
勇者とは世界に1人だけの存在だからだ。
だが、この世の勇者は1人ではない。

違う世界で自分は違う自分になっていた。
まったく理解しがたいことだが。

これは夢だと思った。そして、ここは夢の世界だった。
しかし現実世界も見知らぬところだった。
現実とはいったい何なのだろう。

―――――
自分が誰か分からなくなったことがあった。
いま、あの時以上に自分が何者か分からなくなっている。
俺は誰だ?

かつて自分を失うという運命を呪ったことがある。
しかし不幸なのは自分だけではない。
それが、この世界では身にしみて分かる。

もしかして自分が誰かなんて誰にも分からないのではないか。
しかし自分は自分が誰なのか考えることができる。
重要なのは自分は生きていることだ。

807 :希望の世界 ◆8fpmfOs/7w :2007/04/03(火) 23:14:16 ID:ibF1/24j0
おとなしい幼馴染が欲しいと思った。
そして手に入れた幼馴染は馬だった。
僕は今、呪われた彼女を救おうとしている。

弟分が欲しいと思った。
そして手に入れた弟分は年上の男だった。
この元盗賊の男は僕を兄貴と慕う。

魔物のような王様の命令で道化師を探す旅。
呪いには道化師が関係しているらしい。
この世界での僕はある国の兵士だ。

欲しいものを手に入れるために何かを犠牲にすることがある。
その犠牲が自分自身だったのだろうか……

―――――
私は手に入れたばかりのロトの印を見つめていた。
元の世界では私は一介の兵士に過ぎない。
そんな自分が姫と結ばれることは許されない。
この世界は自分の望みそのものなのかもしれない。
だが……

私は私の望んでいたはずの、誰にも干渉されない1人旅を続けるだろう。
気楽だと思っていたが気苦労も多い。
隣の芝は青く見える。私はそんな言葉を思い出した。

この世界は本当に自分の欲しかったものなのだろうか。
それがどうしても思い出せない。


おしまい

808 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 01:42:27 ID:t5xoVVlmO
やべえwww
1回目は全然分かんなかったが、2回目でようやく分かった
これはお疲れと言いたい

809 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 03:03:00 ID:yDY4PrZf0
埋め用とは言えないほどの、なんか凄い実験作品が投下されまくってるな
短編だが超面白かった>>803-807希望の世界

九泊目の方も順調に伸びてるしいい事だ
つかもう492KBだ
1000は無理だったか

810 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 03:23:29 ID:VGQhpNkH0
希望の世界すごい面白かった!
しかも読みやすくていいね

811 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 03:30:49 ID:dfX6D1+s0
最初何かなと思ったら歴代主人公の意識の交換かー
この発想はあるようでなかったな
GJ

812 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 09:52:57 ID:2Of2Dn390
希望の世界面白かった!
最初は分からなかったが、2回読んで鳥肌が立ったよ。
スレ趣旨とはちょっと違うかもしれないが、梅用には
もったいないほどの作品だった!GJ!

最近のここの活性化っぷりはすごいなー。
応援しか出来ませんが、職人さん、まとめ管理人さん、
無理せず頑張ってください。

813 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 14:29:42 ID:OJY/LpeQ0
>>801-802
なるほどなるほど、ようやくすれ違いの原因が分かりました。
自分であぁいう文章書いといて何なんですが、
僕は「ゲームの世界に本当に行ける」という事を肯定的に捉えていたんです。
新しいゲームの可能性の一つとして、です。
だからゲームの中に入ったとしても、その人はプレイヤーとして特別なんだと思ってました。
言い換えればプレイヤーとしてゲームの中に入れる、と。

けれどsqYgJlsf0さんはそうじゃなかった。
「ゲームの世界に入る=その世界に生きる人になる」
言われてみればその通りかもしれませんね。
自分でそういう話を書いておきながら、全然気付かなかった事にショックですw

けどこの対比は凄く面白い話ですよね。
この2人のすれ違いをそのまま話に組み込む事さえ出来るんじゃないか?
そんな風に感じました。
つまり「RPG」の概念が崩壊しているか否か、という問題。
それを示唆するだけにするか、第三者を登場させて語らせるか……

今回の一連の対話、僕には凄く刺激になっています。
やはり一人で考え付く事には限界があるのでしょう。
きっとあのまま続きを書いたとしても大したものにはならなかったと思います。
しかし、おかげさまで凄く続きが書きたくなってしまいましたw
そこまで含めて「ありがとう」です。


神じゃなくていいなら、
May Mother be always with you! (間違ってるかな……

814 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 22:54:40 ID:zn5ZOZTP0
引き続き埋め作業(1/2)

僭越ながらもう少し書かせていただきます。

> 言い換えればプレイヤーとしてゲームの中に入れる
> 「ゲームの世界に入る=その世界に生きる人になる」
そうなんですよ! この差異って面白いですよね。

>>777-784を読んだとき、「ゲームの世界に行く事を望んで行った」主人公(娘)を、
どう捉えるか(肯定・否定)によってこの物語の様相は大きく変わると思ったんですね。
自分は真っ先に母親側(一種のゲーム否定)に立った為に母親編が思いついた訳ですが、
これはきっと人の数だけ(作中で言えばソフトを手にした人の数だけ)動機や結論があると思います。
・どんなソフトをロードしたのか?(目的地の設定)
・ロードした世界に求めている物(=設定したクリア条件)は何なのか?
 (たとえばプレイした物語の結末を変えたいとか、単なる現実逃避とか、空飛ぶ絨毯に乗ってみたいとか。
 ゲームの世界へ“望んで行った”人達には大小を問わず“動機”がそれぞれにある筈です)
・自分の行動の先に辿り着く“結論”(クリア条件を満たす)と、その後の行動の選択。
 (実際に会ったら思いの外ゾーマが良い奴で一緒に王政廃止のために奮闘するとか、絨毯酔いしたから二度と乗らないとか)
・最終的にはそのゲームを終了(現実へ帰還)するor続ける(現実への不帰)かの選択を迫られる。

それは同時に、ソフトを実行した人を送り出した側(母)にも。
・どうしてそんなソフトをロードしたのか?
・望んで出て行った者をどうしたいのか?(強制的に帰還させるのか、相手の意志を尊重し見守るか、この機会に現実世界から葬り去るか)
・最終的にはそのプログラムを終了(現実へ帰還)させて出迎えるorプログラム続行(現実への不帰)を認めるのか。(葬ry)

という側面があるわけで。
それが“ソフトを手にした人の数”だけ展開されるとすれば、実際は相当な社会現象だと思いますよ。
(まさにDQがそうだった様にw)
新しいゲームの可能性を追求した結果起きた“RPGの進化”と、そこにはらむ問題がこの話(世界)のテーマ。
(その舞台が両方ともDQだったというのが嬉しいかなとw)

母娘という小さな範囲に限った物語だとしても、含んでいる物は大きいんじゃないかな…と。

815 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 23:03:06 ID:zn5ZOZTP0
埋め作業に便乗(2/2)


それは

> つまり「RPG」の概念が崩壊しているか否か、という問題。
> それを示唆するだけにするか、第三者を登場させて語らせるか……

このスレの主旨「もし目が覚めたら~」そのものが、RPGという枠を越えた文字通り「もし」の世界なんですよね。
(作品として読む・書く以上はロールプレイですが、物語中の人物にとってはそこが紛れもない現実である事)

スレへ投下されるそれぞれの物語には、
書く人の動機と登場人物の思い、があって。
文章によって紡がれ導き出される結論がある。
それを、そのまま物語としたのが『埋め用短編』の世界だったのではないかと(それを暗喩しているのだと)感じたわけです。
…とは言え、あくまでも作品を読んで浮かんだ個人的な考えなので、
他の書き手さんや、諸々の解釈の行き違いがあったら申し訳ないなと同時に思うわけでして。

とにかくテーマとしては非常に魅力的だなと思ったので、それをお伝えすべく筆…じゃないやキーボードを叩いた次第です。
毎度まとまりない長文で申し訳ないです。

816 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/04(水) 23:09:07 ID:h9U9eX6/0
                      - '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
                    /           \
                     /                  ヽ
                   /   __   、、    「l} ヽ
                  {_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、    ヽ  、
                 / /   /7/j/ /\   ヽ  |    500ゲット!
                  /  /rイ /  / ∠/! /\   |  !     みんな埋め作業乙
                  | /l |/ /、  /  , -ェ-レ'|/i/ヽ_  | /      次スレでも職人さんたちは頑張ってください!
                V i レイr、`/  イr、 }    l/⌒j レ′
                   Vヘゞ'    ゞ'     _,) /_」
                     、"<    ""   r┬' \
                     ヽ、 ‐      /! | ト、|-、
                       ` _--‐  ´   |i/ヽ|   ヽ
                      rく__|       |  /ト、___ム_
                    ,.ィ「!__] _   __〉〈 `丶、` - ゝ
                   rく  iヘ |   入 ` ´ j  >   ` ̄ヽ、
                 /  |  ヽヘ  \ヘ   // |       /7、
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