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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/
PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/
ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
175 :
冒険の書6
◆8fpmfOs/7w
:2008/06/28(土) 00:19:05 ID:W0mhiZc40
「それで、ケージさんは私をどうしようって言うの?」
「どうもしませんよ。あなたがやったという証拠は何ひとつないんです。」
「なによそれ……」
「言ったはずですよ。証拠がない限り犯人として扱ってはいけないと。」
「自分がやってって認めているのに?」
「私は何もしません。これからどうするかを決めるのはあなた自身です。」
「そんなこと言ったってどうすればいいのよ! 私のせいでサンディが! サンディが!」
「大丈夫。ジョセフさんがサンディさんを探しに行きました。すぐに見つけてきますよ。」
「私も探しに行く!」
「いえ、ここは彼を信じて待ちましょう。」
私、私は……
「きっと彼ならサンディさんを無事に見つけてきてくれますよ。」
「どうするかは私が決めろってあなたも言ったじゃない!」
「はい。でも、アマンダさんがどうするのか私には見届ける時間がなさそうです?」
「どういうこと?」
「好きで酒を断っているわけではないということです。ちょっと心臓が悪いんです。」
「そんな話聞いてないわよ。」
「薬さえ飲んでいれば大したことないんです。でも、この世界にはそれがない。」
「そんな……」
私が消えてしまえばいいと思った人は、その願いどおりみんないなくなってしまう……
そんなことさせない!
176 :
冒険の書6
◆8fpmfOs/7w
:2008/06/28(土) 00:20:54 ID:W0mhiZc40
それから幾日か経ち、ジョセフがサンディを連れて戻ってきた。
「これでジョセフさんとサンディさんの仲はますます強まることになるでしょう。」
「そっか。結局私のしたこと、何の意味もなかったのね。」
「良かったじゃないですか。」
「これで良かったのかしら?」
「取り返しのつかないことになるところだったのに何も起きなかったんですよ?」
「……そうね。そサンディが無事でよかった。そしてあなたもね。」
「ええ、おかげで助かりました。」
あの毒薬のしおりがはさんであった本に心臓病の薬の作り方が載っていた。
私はそれを必死に調合しケージさんに飲ませたのだ。
ケージさんを助けたことで私は少しだけ罪滅ぼしができたような気がした。
177 :
冒険の書6
◆8fpmfOs/7w
:2008/06/28(土) 00:21:56 ID:W0mhiZc40
「ケージさんも無事に帰れるといいわね。」
「そうしたいところですが世界が平和になるまではここで御厄介になります。」
「ええ、そうしてちょうだい。」
「その間に帰った時の妻への言い訳を考えておきます。」
「ケージさんは奥さんのことばかり考えているのね。」
私はちょっと意地悪く言った。
「いや、そんなことないですよ。職場の人間にも迷惑をかけてしまうことも心配です。」
「こんなときまで仕事のことを気にするなんて変わってるわね。」
「そうですか?」
「前に言っていた株っていうのを売り買いするのがお仕事なのかしら?」
「いえ、それは……昔友達だったやつがデイトレードでやっていただけです。」
デイトレード、前に聞いたお金儲けの方法だっけ。
でも、なんとなく照れくさそうな言い方だったのはなぜかしら?
「ねえ、ケージさんってどんな仕事をしているの?」
「教師です。この世界ではまるで刑事のようでしたけれど。」
「え? ケージさんってケージさんじゃなかったの?」
「いえ、名前は啓司に間違いないです。私の世界には刑事という職業があるんですよ。」
本当によくわからない人だわ。
「大学に入ったばかりのころは法律家を目指していたのですけどね。」
「諦めたの?」
「そうなりますね。まあ、思うところがあり教員になることにしたんです。」
よくわからないけれど、この人もいろいろあったのかもしれない。
「教師として子供達に嘘をつくには覚悟が必要だって言っていますよ。」
私に言った言葉。私も子供扱いだったのね。
ケージさんも覚悟をきめて嘘をついたことがあるのかしら?
178 :
冒険の書6
◆8fpmfOs/7w
:2008/06/28(土) 00:22:58 ID:W0mhiZc40
「アマンダさんはこれから新しい恋を見つければいいんですよ。」
「まあ、ケージさんからそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ。」
「あの天空の花嫁の話、覚えていますか?」
10年ぶりに再会した2人の話よね。
「彼らは私の教え子なんです。その当時はこうなるなんて思ってませんでしたよ。」
「出会いなんてどこに転がっているか分からないってことね。」
「そうですとも。あなたにもきっと赤い口紅よりも似合う色が見つかるはずです。」
赤はジョセフが好きな色。この人そんなことまで調べていたんだ……
「ねえ、ケージさん。いまさらだけどひとつ聞いていいかしら?」
「なんでしょうか。」
「あなた、私にペロの症状を説明したときの言い回しなんてよく覚えていたわね。」
「実を言いますとあのセリフははじめから意識してああ言ったんです。」
「まさかあの前から私が妖しいと思っていたの? どうして?」
「いやいや、それは実にアンフェアなことなんですよ。簡単な理由なんです。」
「まさか私が毒を入れるところを見ていたんじゃないでしょうね。」
「同じようなもんです。実は私、ドラクエ6をやったことがあるんです。」
この人の言うことはやっぱり意味が分からないわ。
「なんなのドラ……何んとかって?」
「私の世界でのこの世界の呼び方です。途中まで気付きませんでしたけれど。」
「ここがどこかわかったっていうこと?」
「そうですね。でも、普通は絶対に来られないところです。」
そう言ったあとケージさんはしばらく考え込んだ。
「いや、もしかしたら来た人間がいたのかもしれません。しかもお金好きの人間が。」
「どうしてそう思うの?」
「ドラクエにエンドールという城があるんですが円もドルも私の世界の通貨単位です。」
エンドールなんて聞いたこともない。やっぱりこの人の言うことは分からないわ。
「その国の建国に私の世界の人間が関わったのかもしれません。」
それはちょっと強引な気がするわ。
179 :
冒険の書6
◆8fpmfOs/7w
:2008/06/28(土) 00:24:58 ID:W0mhiZc40
「私、サンディにきちんと謝らなくっちゃ。許してもらえるかわからないけど……」
「きっと許してくれますよ。友達とは仲直りしたほうがいい。」
「……ねえ、ケージさん今度は私の推理を聞いてもらえるかしら?」
「どんな推理ですか?」
「もしかしてケージさん、あなたにも仲直りしたい友達がいるんじゃないかしら?」
「どうしてそう思うんですか?」
私はふふふと笑うと推理を披露した。
「あなたは『昔友達だったやつがデイトレードでやっていた』って言ったわ。」
ケージさんは驚いたような顔をする。
「昔友達だったってことは今は違うのよね。その人と仲直りしたいんじゃないの?」
何も言わないケージさんに対して私は言葉を続ける。
「デイトレードでひと財産築いた人がいるとも言っていた。きっとその人でしょう?」
お金を持ったことで今までの関係が壊れるなんてありそうなことだわ。
「お見事な推理です。でも、誤解があります。」
「どんなことかしら?」
「デイトレードで大儲けした人と昔の友達というのは別の人間なんです。」
どういうことかしら?
「大儲けした人は為替専門のトレーダーで大学時代の先輩です。彼はすでに故人です。」
「まあ…… 」
「なまじ大金を手に入れてしまったせいか晩年はちょっと歪んでしまっていました。」
「どうしてそんなことに?」
「周りの人間がお金目当てに近づいてくるようにしか見えなくなったのでしょう。」
お金を持つのも考えものね。お金のせいならその人はお財布を落とせば元に戻ったのかしら。
「じゃあ、昔の友達だった人というのは?」
「そっちは株のトレードをしていました。あまり才能はなかったみたいですが。」
「あ! 昔友達だってって、もしかしてその人もすでに……」
「いえいえ、そうじゃないんです。昔はただの友達だったんですが今は……」
「うちのかみさんなんです。」
―完―
180 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 00:57:56 ID:7v7nC1Tc0
>>179
乙かれ
何というか、凄いな。色々と。
毎度期待を裏切らない完成度。
8fpmfOs/7w氏の作品は何となく星新一を思い起こさせる。
もう一度冒険の書1から読み直してくるわ
181 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 02:35:51 ID:rqh23VtC0
ケージの台詞は古畑任三郎で脳内再生されていたのだが、
最後の台詞だけコロンボになったw
182 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 03:41:16 ID:yB6M/cca0
いやー、今回も楽しくよませていただきました。
一番最後のオチが、びっくりでしたね。
それと、天空の花嫁との関係も意外でした。
183 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 04:46:51 ID:yB6M/cca0
連投すいません。
冒険の書4を読み返していました。
嘘をつくには覚悟が必要なんです。たとえそれが相手のことを思う嘘であってもって、その言葉、ジンさんの心にしっかりと根付いてますね。
気づいたとき、正直鳥肌が立った。
すごいよ、すごいよ、8fpmfOs/7wさん。
184 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 18:37:48 ID:8iIeyThQO
相も変わらず高い完成度、そして意外な結末、GJです
…って、ケージさんの台詞…
あの二人まさか…!
185 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/28(土) 21:40:26 ID:KE3JujeS0
タイトルやタイトルの文字数とかにまでこだわってるのが凄い
DQ1なら全1話
DQ2なら全2話でタイトルも2文字、前後の2つ
DQ3なら全3話でタイトルも3文字、上中下の3つ
DQ4なら全4話でタイトルも4文字、四字熟語
DQ5なら全5話でタイトルも5文字、五本指
DQ6なら全6話でタイトルも6文字、六曜
それぞれちゃんとタイトルに絡めて話が練りこまれているのは凄いとしか言えない
186 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/29(日) 00:34:11 ID:xspm4fUA0
>>185
ちょwwマジだよw
それに気付いたおまいさんも凄いな
…DQ7が書きにくくなったかも試練な
187 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/29(日) 02:56:17 ID:j5Zxe9YG0
>>185
げ、まぢかよ。
Sugeeeeeee
188 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/29(日) 11:13:40 ID:7P2zsQDgO
>>185
DQ6は六曜だけじゃなくて、六法もあるね
DQ7は一体どんなストーリーなるのか…、今から楽しみだw
189 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/06/29(日) 12:58:59 ID:0eYrqsLM0
8fpmfOs/7w氏にはもう、GJしか言えんわ…。
ちなみにDQ4は起承転結だったな。
ただ、本編のDQでもロト編と天空編の間に比べて、7・8は関連性が薄いし
(7の神様と3・6のゼニス、8のレティスと3のラーミアくらいか?)
あまり期待してプレッシャーをかけるのはいくない。と思う。
190 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/01(火) 14:55:05 ID:hl4opYnb0
ほしゅ
191 :
親子1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 03:41:03 ID:5tKe0/qk0
勇者宅は倉庫から目と鼻の先にあった。
おかーさーんただいまー
勇者が先頭で家に入る。ねーちゃんが俺とパンツの格好は物騒過ぎるから装備外して入った方がと耳打ちする。
だが時すでに遅し。奥から感じのよい女の人が出できた。
あらあらうちの子と一緒に旅してる方々ね。
まあなんておませさんな格好でしょうふふ。
???????????
さあさあ長旅で疲れてるでしょうしそんなとこで立ってないで奥に入って下さいな。
今腕によりをかけてご馳走を作ってるわようふふ。
あ…どーもッス…失礼します…
おませさん?ん?何を言ってるんだこのおばさんは…ちょっとアブねーぞ…
俺達は圧倒されつつも案内されるがままに奥に連れていかれテーブルを囲んだ。
ご飯ができるまでもうしばらくかかるからお茶でも飲みながらくつろいでいて下さいな!
そう言いながらテーブルにお茶とクッキーを並べる。
俺には紅茶の味の違いなんてさほどわからないがねーちゃんが絶賛していたからいいお茶なのだろう。
クッキーうまい。素朴な手作りの味だ。
腹が減っていた事もあってパンツと奪い合いながら目の前のクッキーを平らげた。
192 :
親子2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 03:43:22 ID:5tKe0/qk0
あらあらよっぽどおなかがすいてらしたのねえ。よかったらこれもどうぞ。
そう言ってテーブルの上にドンっと乗ったのは特大のケーキだ。
……でけえ。
小規模なウエディングケーキと言っても過言では無い。
勇者母はテキパキと切り分け俺の目の前にはケーキの塊が出現する。
パクッ。……うめええええええ!!!!!!!!これはうまい!!
何を隠そう俺は実は大の甘党なのだ。前の世界では総長という立場柄甘いものが大好き!などとは言えず
日本男児たるものは黙って醤油一筋などと訳のわからない事を言っていた。
たまらん!うますぎる!俺とパンツとピエロは物凄い勢いで食い出した。
ケーキなど無縁の旅だったからな。クリームの甘さが五臓六腑に染み渡るぜ…
大食漢三人相手にさすがの特大ケーキと言えどもみるみる減っていき最後の一切れになった。
睨み合う三人。
今にも殴り合いが始まりそうな空気だ。総長としてここはいさめなければなるまい。
ジャンケンで決めよう
俺のその一言に場の空気が変わる。
パ:ほう…総長はんどの口がそんな台詞を言えたもんでげすかねえ…
あんたはあっしにじゃんけんで一度敗れている!!!さあルールを説明してもらおうでげすか!
ピ:じゃんけん…ルールを教えてもらおうか。「火達磨ピエロ」と呼ばれるギャンブラーのわしに
勝負を挑むなど片腹痛いわ!
パンツ…覚えているとは思わなかったがなんでそんな偉そうに聞くんだ…
ピエロ…火達磨って褒め言葉じゃねーよ…毎回大火傷って事じゃねーか…ギャンブルの才能の欠片もねーよ…
まあいい。この面子なら負ける気がしない。そして俺には「例の秘策」もある…ククク…
193 :
親子3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 03:44:34 ID:5tKe0/qk0
一通り説明した。やはりパンツは理解していなかったが無視して先に進める事にする。
ではいくぞッ!じゃーんけーーーーんッ!ポンッ!!!!
……今だ!俺はタイミングをずらし伝家の宝刀後出しで攻める。この勝負貰ったッ!
まさに今決しようとした瞬間勝負は意外な決着を見た。
あらあらうふふ。まだありますからそんなあわてなさんな!
振り返るとそこにはさらにアホでかいケーキを抱えた勇者母がいた。
百戦練磨、数々の修羅場を潜り抜けた俺達ですら戦慄する。
うふふうふふと笑顔で切り分ける勇者母。チラッとねーちゃんの方に目をやる。
もう無理
声には出さないが唇は確かにそう動いた。
ク…いやだがしかしまだこれだけ食べれるんだ。むしろ好ましい状況じゃないか!
当然の如く10分後には至福の時は地獄の時に変わっていた。
あーもうお腹いっぱい!お母さんわたしも晩御飯の準備手伝うね!と勇者はこの場から消えた。
ねーちゃんも手伝うと言って消えた。残された男衆は目の前の強敵を睨む。
昨日の敵は今日の戦友だ。ここは共同戦線しかない。
まわりのクリームはピエロ、おまえにまかせた!パンツはスポンジを片付けてくれ!
おっさんは二人の援護を頼む!俺は上のイチゴを倒す!…………えっ駄目?
194 :
親子4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 03:45:15 ID:5tKe0/qk0
その後死闘を繰り広げた後山のようなケーキはその場からきれいに姿を消した。
勝った…まさか勇者の実家でこのような強敵に出くわすとは思わなかった。
下を向くと大惨事になりそうなので天井を見つめながら俺は思った。
あのおばさんアホだろ。
………。
ー次の日ー
明け方。
悪夢にうなされ目が覚めた。
糞でかいケーキの魔物にうふふうふふと言われながら喰われる世にも恐ろしい夢だ。
……昨日は本当に辛かった。
今後一年は甘いものを断てる。そう思わせるほど辛かった。
大体何が悔しいってちょっとお茶でも…のお茶でダウンしてしまった俺達は結局その後の
メインディナー所ではなかった。ねーちゃん曰くめちゃめちゃうまい肉だったらしい。
肉を食い逃がすとは俺とした事が…。あのおばさんは本当にありえない。
あのありえなさ具合が逆に勇者の母だって事を実感させる。
あの母にしてこの娘アリ…か。ここまでくると勇者の父親はどんな奴だったのだろうか。
興味は尽きない。
その後朝食のテーブルに一同並ぶ。珍しく寝坊したらしい勇者が目を擦りながら席に着いた。
そうか昨日はお母さんと寝るってちょっと照れながら言ってたもんな。
久しぶりに甘えながら熟睡できたのだろう。時々忘れそうになるがコイツは16歳の小娘なのだ。
195 :
親子5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 03:46:15 ID:5tKe0/qk0
朝食後勇者が駆け寄ってくる。あのね総長ちゃん出発の事だけど…ああその事か。別に急ぐ理由も無いし
もう2、3日ゆっくりしていってもかまわんだろう。勇者に向かってそう伝えようとした瞬間
今日のお昼前にでも王様の所に挨拶して出発した方がいいと思うんだ!と予想外の言葉が飛び出した。
………。おうわかったそうするか!みんなにそう伝えてきてくれ。
勇者には勇者なりの考えがあるのだろう。もしかして長居すればするほど出発が辛いのかもしれない。
この子は必死に自我を殺して世界のため平和のためと戦ってきた。その必死に堰き止めてきた心が
この世界で一番心の許せる母親と一緒にいる事でプッツリきれてもおかしくない。
おそらく本人もそれを感じていたのだろう。
こうして急ではあるが俺達は直ぐに出発する事にした。
勇者母に呼び止められる。このおばさんは苦手だ。うふふうふふでまた土産だとケーキ渡されたらどうしようか。
恐いもの無しのはずのこの俺様の背中を冷や汗が流れる。
総長さん。
な…なんスか…
あの子は戦いになんか向かない優しい子なんです。
………。
でも戦わなければなりません。「勇者の娘」なんです。
…………。
安心しました!
………?
血生臭い旅を続け心が枯れてしまっていたらどうしようかと心配していましたが
あの子は昔と変わらない笑顔で笑っています。それもこれも総長さんやみなさんのおかげです。
これからも…よろしくお願いします!
196 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/03(木) 04:16:51 ID:NjDGCeYR0
支援〜
197 :
親子6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 04:17:54 ID:5tKe0/qk0
……。何を言っているんだこのオバサンは。俺は何もしてねーしあのバカがいつも勝手にピーピー笑ってるだけだ。
不思議そうな顔をしている俺を見てオバサンはまたうふふと笑った。
さて。そろそろ本当に出発するか。
じゃーねーおかーさん行ってくるねー!カゼとかに気をつけてねー!
勇者は笑顔で手を振っていた。
……。とっとと魔王の糞馬鹿ぶっ飛ばしてーな。さっ王様の所にでも行ってやるか!
城に着く。
暫くみない間に逞しくなったな勇者の娘よ…。それにその仲間達も。
やはりおぬしは勇者と旅をする選ばれし者だったようだな。
…くそが…どいつもこいつも!なんだその言い草は!逆だ逆!俺がボスで勇者が子分なんだっつの!
がああああああとまくしたてようとしたが次の一言で口が止まった。
魔導師様の事だが…
言葉に詰まる。
いや、何も言わなくてもよい。夢に賢者様出てこられてな。全ての経緯は知っておる。
おぬしらがなぜここに来たのかもな。今のおぬしらにはこれを受け取る資格がある。
そう言って兵士に物々しい宝箱を運ばせた。当然中身はあのオーブだ。
198 :
親子7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 04:18:40 ID:5tKe0/qk0
さあ受け取るがよい。戦う力を持たぬ非力な者の代表として頼む事しかできず本当に申し訳ないが
魔王を倒して世界に平和をより戻してくれ。
魔導師様の事だがな、人には天命と言うものがある。魔導師様が蒔いた種が
今こうして活力ある若木に育ちいずれ大樹となるであろう。
おぬしらの顔を見ていると魔導師様の満足気な笑顔が見えてくるわい。
は、当然だな。俺は元々の天才的素質にプラスして超絶性格の歪んだあのじいさんと超弩S野郎の糞イケメンに
ゴリゴリにしごかれてんだ。ここまで強くなってじいさんが満足しないはずがない。
あとは魔王の顔面に右ストレートをブチこんでやるだけだ。
打倒魔王のモチベーションがいきり立った俺たちは城を後にした。
オーブも揃った事だし次はいよいよラーミアの復活だ。
出発を前にねーちゃんが酒を大量に買い込めと支持を出した。
え?いいの!?いつも必要最低限しか認めないねーちゃんが酒を大量に買えだと!?
パンツと俺は大喜びで酒場に走った。ふふふ買ってやったぜ。樽で10樽ほどな。
それらと食料や水を積み込む。出港の準備をしていると人がワラワラ集まってきた。
よく見ると勇者の母や酒場の女マスター、さらに王様やピエロまでいやがる。なんなんだ一体?
勇者様!どうかご無事で! おおあの子がオルテガ様の娘か!
生まれてくるこの子のためにも平和を! おねーちゃんまおうなんかにまけないでね!
ほうほうこいつら俺らを激励する為に集まったのか。まったくこれだから自分じゃ何もできない愚民は困る。
まあおまえらは家で茶でも啜りながらまってるがよい。この俺が魔王なんざ軽くノしてきてやるからよ。
そう言って俺は空に向かってイオナズンを唱えた。
ねーちゃんがまたやりやがったと冷たい目でこっちを見ている。
愚民共は腰を抜かして大騒ぎだ。はっはっはどうだ俺の力は。さて出発するか!
199 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/03(木) 04:19:40 ID:5tKe0/qk0
こんな時間に支援ありがとうございました!
今回はここまでです
200 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/03(木) 04:25:18 ID:NjDGCeYR0
総長様、執筆と投稿お疲れ様でした。
この時間だと書き込みが少ないから、規制かかりますよね。
うう、なんてあたたかい、いい話なんだ〜〜。
勇者ママンも萌へ〜。
王様の言葉もじ〜んときます。やっぱりふるさとって、あったかいものですね。
みんなの期待と声援を背負った出港(準備)シーンも、うるうるしちゃいました。
次回も楽しみに待ってます。
201 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/03(木) 20:16:07 ID:zFPW5C87O
乙!!
勇者ママ、17才でぇす♪
202 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/03(木) 21:51:10 ID:n4Rsb46E0
総長さん待ってました!勇者の母ちゃん強いwww
203 :
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:13:14 ID:s5aQgiCe0
お久しぶりです。
やっとこさスランプ脱出できそうです。
勢いに乗って第16話を投下します。
早朝ですので、規制に引っかからぬようまったり投下しようと思います。
204 :
唯彼独尊【1】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:16:05 ID:s5aQgiCe0
甲高い悲鳴のような音をたて、顔が砕けた。
氷雨のように飛び散る冷たい飛沫を前に彼女は居た。
「ゲマ様!いかがなさいましたか!?」
どたどたと足音を荒げて部屋になだれ込む二つの異形。
それには答えず。憎悪に満ちた視線によって打ち砕かれた屑星の中、
主は静かに口を開く。
「お二方に問いましょう。貴方達の働きは誰の為のものなのです?」
主から発せられた脈略のない問いに、不可解な表情を浮かべる二人。
それも一瞬の事。すぐに姿勢を正し、主の前に跪き返答する。
「私とゴンズの役目はゲマ様…しいては魔王様の理想実現のために尽力する事…」
「ジャミの言う通り。あっしらはゲマ様と魔王様のためならいつでも動きますぜ。」
従者として実に模範的な解答。それを聞いた魔女が短く笑った。
「ほほほ…貴方達に聞いた私が愚かでした。良い、下がりなさい。」
「しかしゲマ様…」
「聞こえませんでしたか?二度は言いませんよ?」
魔女はその視線を向けただけ。
ただそれだけで、魔族の中でも高位に位置する二人は慌てたように部屋を後にする。
「ほほほ…愚かな教祖も、三流魔王も…狭い世界で抗っていれば良いでしょう…
まぁ…私の抗いも定めの中では無駄なのでしょうかね…」
誰もいなくなった部屋で自嘲気味に笑う魔女。
毒々しい紫の瘴気が漂う空間に、綺羅星のように鏡の破片が輝く。
205 :
唯彼独尊【2】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:19:57 ID:s5aQgiCe0
◇
さっきまでの凶暴さが嘘のように、喉を鳴らしてサトチーに擦り寄る魔獣。
その行為自体は微笑ましい光景なのだが、如何せん体格に差があり過ぎて、
どう見ても襲われているようにしか見えない。
まあ、当のサトチーが嬉しそうにしているからいいけどね。
「なんと。サトチー様とそちらのキラーパンサーは旧知の仲でありましたか。
知らなんだとは言えとんだ無礼を…」
十年前。当時のサトチーに付き従い、様々な冒険を共にしたモンスター。
天涯孤独の身であるサトチーの幼少期を知る唯一のモンスター
それがこのキラーパンサー。
なるほどね。戦闘スタイルがサトチーに似てたのもその影響かな?
剣を向けた相手が主の戦友であった事を知り、平伏するピエール。
キラーパンサーにもみくちゃにされながら、サトチーが微笑みを向ける。
「最初は僕も気付かなかったよ。あんなに小さかったのに、すっかり大きくなって…
そうだ、改めて皆に紹介しておこう。彼は僕の初めての仲間モンスター。
彼の名前は…………」
そこで、サトチーの言葉が止まる。
言葉を止め、表情を止め、動きを止め、ただその口元が僅かに動く。
「名前…あれ?…プックル…ソロ…チロル?…いや、アンドレ…ボロンゴ?」
じっとキラーパンサーを見つめたまま固まるサトチー。
なぜか、その顔には困惑が浮かぶ。
「…サトチー卿…惑わされるな…正しい記憶は一つだ…」
戸惑い、視線を宙に泳がせるサトチーにスミスが静かに言葉をかけた。
206 :
唯彼独尊【3】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:24:56 ID:s5aQgiCe0
「済まない。少し疲れたのかな…一度に色んな思い出が蘇って混乱してしまったよ。
…そう、彼の名前はゲレゲレ。仲良くしてやってね。」
―ゲ…ゲレゲレ?なんつうか、凄げぇネーミングセンスだな…
「何と素晴らしいお名前!ゲレゲレ…実に気高く優雅な響き。」
―☆☆☆!!―
「ピエールとブラウンもそう思うかい?実はビアンカが考えた名前なんだけどね。」
工工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
―何コレ?俺のセンスがおかしいの?それともこれも世界の壁ってヤツ?
仲間との微妙な温度差に凍えそうになる俺。
「…この後はどうするのだ?ゲレゲレが無害な魔物だったとしても…
あの村の人間がすんなりと受け入れるとは到底思えぬ…」
話の流れを変えてくれたのはスミス。マジ感謝。
「大丈夫だよ。あの村の人達も事情を話せばきっとわかってくれるだろうさ。」
相変わらずゴロゴロと喉を鳴らしてサトチーに懐くゲレゲレ。
その豊かな鬣に手を入れ、優しく撫で上げるサトチーは幸せそうだ。
でも、あの村の人間たちにとっては畑を荒らしまわった憎い魔物なわけで…
サトチーには悪いがスミスの言うことも納得できる。
「…やはり無駄か…ならば魔物が現れないうちに脱出するべきだ…」
くるりと踵を返し、洞窟の出口に向かって歩き出すスミス。
その無礼な振る舞いに奥歯を噛み締めるピエールをなだめ、俺達も後を追う。
さて、果たして受け入れてもらえるかね?
207 :
唯彼独尊【4】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:31:36 ID:s5aQgiCe0
「こんの化け物どもが!!」
受け入れてもらえませんでした。
むしろ、殺気立った村の住民に囲まれてピンチ。
まぁ…受け入れてもらえないのも当然と言えば当然なんだが、間の悪い事に
自分達で魔物を討伐しようと、俺達の後から洞窟に入った村人がいたらしく、
さらに、その村人にサトチーがゲレゲレを懐かせた所を見られたらしい。
その場面だけ見たら村を荒らした魔物の一味と勘違いされても当然なんだけど…
「ゲレゲレが村に迷惑をかけたことは許される事ではありません。
ですが、彼は完全に改心しました。これからは村に迷惑をかける事も…」
「お前らと話すことなんかねえ!!」
ごつっ!!
「サトチー!!」
「おのれ!無礼な…」
村長が投げつけた茶碗が額に当たり、サトチーの言葉が強制的に中断される。
周囲からは『化け物』だの『火炙り』だの物騒な罵声が浴びせられ、
鎌やら鋤やらを手にした村人達は、自分達の言葉でヒートアップして暴走寸前。
―なんだよこれ…本当なら村を救った恩人として感謝されてもいい場面じゃねえの?
「駄目だ!手を出すな!!」
額から一筋の血を流したサトチーが片手で俺達を制する。
爆発しそうになる感情と、喉元から漏れ出しそうな怒声をぐっと飲み込む。
同じ様に耐えているブラウンは涙目で全身をわなわなと震わせ、
固く握りこまれたピエールの両拳から滴る緑色の液体が床をわずかに湿らせる。
208 :
唯彼独尊【5】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:42:26 ID:s5aQgiCe0
「駄目だスミス!村の人たちを傷つけては…」
意外…サトチーの制止に従わず、殺気立つ村人達の前に進み出たのはスミス。
相変わらずの無表情からは一切の感情を読み取ることはできないが、
その気になれば息を一つ吐くだけで、この部屋丸ごとガス室にできる。
「スミス…駄目だよ…」
懇願するように搾り出されたサトチーの声。
その声を背に受けたスミスは首を僅かに傾ける。
「…案ずるなサトチー卿…私はこの者達を傷つけるつもりはない…
…そして…この者達も私を傷つけることはできぬ…であろう?村長…」
ゆるりと歩を進めるスミス。見る見る青ざめる村長の顔。
何か、とてつもなく恐ろしい物を目の当たりにしたような強張った表情。
その乾いた唇を呼吸困難の金魚のようにパクパクとさせている。
「…気付いたか?…では選択しろ…私と共に灰と化すか…和平か…」
しん…と静まり返る部屋。
殺気に満ちていた村人達も、村長とスミスの間に漂う異様な雰囲気に飲まれたように
微動だにしない。
「…で………いけ…」
村長の乾いた唇から微かに漏れ出した声は形になっていない。
すぅっと一息、大きく深呼吸をした事で、村長の言葉がようやく形を成す。
「…出て行け!一秒でも早くこの村を去れ!!」
209 :
唯彼独尊【6】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:45:44 ID:s5aQgiCe0
「…ご迷惑をおかけしました。僕達はゲレゲレを連れて村を出ます。」
「この…疫病神ども!二度と村に近付くでねえ!!」
―言われなくてもそのつもりだ。気分悪りぃ。
もし、どっかの魔王に『世界の半分をやる』って言われても、
この村だけは熨斗をつけて返品してやらあ。
「…みんな、行こう…」
額の傷口を押さえるサトチー。赤い鬣をしおれさせたゲレゲレ。
その背に乗るブラウン。怒り心頭のピエールの順で村長の小屋を後にする。
「…貴様等は…何度でも同じ事を繰り返すのだな…」
俺の前を歩いていたスミスが、村長の小屋を出る直前に呟いた。
ゆっくりと殺気立つ村人達へ向きなおり、濁った声を投げかける。
「…新たな流れを模索する道の中…堂々巡りを望むのならそれも良い…
…独楽鼠のように永遠に同じ場所を回っていろ…」
―何を言ってるんだ?
「…行くぞイサミ…変化を拒む愚者にかける時間など無為だ…」
「お…おう。」
スミスの言葉。どんな意味があるんだろう?
聞いたところで曖昧にはぐらかされるか、俺には理解できないかだろうけど…
永遠に同じ流れ…新たな流れ…俺は大事なことを忘れている気がする。
誰も言葉を発しようとはしない。
ただ、それぞれの胸の内に悶々とした物が広がっているのが言葉以外で感じ取れて…
210 :
唯彼独尊【7】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:51:32 ID:s5aQgiCe0
「みんな…辛い思いをさせてしまって…すまない。」
サトチーが静かに…口を開いた。
一番辛そうなのは、他の誰でもなくサトチーなのに。
その横ではゲレゲレが ぐぉん―と力なく喉を鳴らす。
ふさふさの尻尾を足の間に巻いて、叱られた犬のように目を伏せている。
「違うよ。ゲレゲレが悪いんじゃない…少しイタズラが過ぎたかもしれないけど、
ゲレゲレも、あの村の人達も、もちろんみんなも、誰も悪くないんだよ。
みんなに辛い思いをさせたのは僕の不甲斐なさだよね…」
サトチーがそのしおれた鬣の中にふわりと手を入れ、優しく撫でてやると
伏目がちだったゲレゲレがふにゃあと甘えた声を出した。
「サトチー様は我々を愚弄されるのですか?」
荷物を積み込んでいたピエールがその動きを止めた。
その声はいつもの忠臣ピエールの声ではなく、心なしか怒りの色を感じさせる。
「私にとっての誠はサトチー様に身命を賭してお仕えする事。
サトチー様を否定する事は我々の誠を否定する事。それは即ち我々を否定する事。
それが…サトチー様自身によるものだとしてもです。」
…なるほどねぇ。やっぱ、ピエールは忠臣だわ。
当のニブニブサトチーは真意がわからずに混乱してるみたいだ。
「いや…僕はそんなつもりで言ったんじゃあ…」
「さっき自分でピエールに言ったろ?自分自身を否定する事を今後一切禁じる。
信念に従った行動を後悔する事…それも今後一切禁じる。
部下に命令したことは自分でも守らねえとな。」
211 :
唯彼独尊【8】
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 04:55:23 ID:s5aQgiCe0
そこまで言ってやっと意味がわかったのか、サトチーの顔に笑みが戻った。
「言葉が過ぎました。申し訳ありません。」
「いや、ありがとう。ピエール。君達の信念を無碍にするわけにはいかないね…
よし!そろそろ出発しよう。」
「じゃあ、とりあえず一回ポートセルミヘ戻るってことで良いのかな?」
「そうだね、ポートセルミを経由して次は西の街に向かおう。」
ぱちーん!と勢いよく自分の両頬を叩いたサトチーが馬車の手綱を握る。
西日が鋭角に差し込む獣道を走る馬車。
その足取りに迷いはない。
イサミ LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
212 :
◆Y0.K8lGEMA
:2008/07/04(金) 05:00:29 ID:s5aQgiCe0
第16話一気に投下完了です。
しばらくは鈍足投下が続きそうですが、じわじわ続けますので
どうぞ最後までお付き合いをお願いします。
213 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/04(金) 08:11:14 ID:Wc2NRk6a0
復活おめ!
スミスの正体がますます気になるよ
もっと気になるのはDS版で追加される嫁候補?が追加されるかどうかだけどw
214 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/04(金) 08:36:16 ID:R5xa6pBXO
だんだんと物語の核心が見えてきそうな展開だな、乙!!
そしてデボラは頼むからピピンとかと同じサブキャラであってくれ…
215 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/04(金) 09:56:31 ID:U9HjnaXp0
乙です!
DS版も気になるところだが、GEMAさんには
GEMAさんの物語を書いてもらいたいです
216 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/06(日) 01:07:39 ID:vIMp/EhH0
カボチ村の連中、相変わらず胸糞悪いですね。
それにしても、スミスの一言で態度が変わる村長。そして、スミスの言葉。
なにかスミスとこの村の間には因縁がありそうですね。
今後の展開が楽しみです。
217 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/06(日) 07:57:30 ID:fv0POayzO
>>216
メガンテの腕輪をつけてるスミスを攻撃するとですね、腕輪がドカーンで
村人総砕けちりなわけですよ…
218 :
お呼び出し
:2008/07/06(日) 12:13:05 ID:u6X93chk0
携帯まとめ人より職人様のお呼び出しを申し上げます。
>暇潰し様
テキスト掲載についてご相談があります。
下記「避難所、まとめサイトについて」までお越しください。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/24-27
219 :
ラーミア復活!?1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:36:04 ID:VeYPADAv0
アリアハンから出港してはや10日。日に日に肌寒くなっている。
どうやらそのラーミアとやらが封印されている場所は俺の世界で言う北極とか南極とかそんな感じの場所らしい。
まあそれはいいんだよ。今更どんな僻地に行こうがビビッたりはしねえし。ただ問題が一つ
総長さん!あなたはメラやイオ系の呪文の威力には目を見張る所があるわ。
ただヒャド系の呪文に関してはまだまだ修行が足りないわね。大自然の雪と氷を肌で感じる事は
きっとあなたの魔力を飛躍的に伸ばすきっかけになるわ!バシバシいくわよ!
……帰りてえ……
さらに10日ほど航海したのちようやく目的の大陸に着いた。
寒いなんてもんじゃねえ。ねーちゃんが酒を買い込んだ理由がわかったぜ。
パンツと俺は樽を一つずつ担ぐと雪の積もった氷の大地に踏み込んだ。
見渡す限り銀色の世界。
太陽の反射に目が眩む。
さて。どうしたものだろうか。着いたはいいがここからどう進んでいいのかさっぱりだ。
この状況からして遭難=死あるのみ。今は晴れているがいつ吹雪くともわからない。
私にまかせて。
ねーちゃんがそう呟く。………………。しばらく精神を集中させたと思うとスッと指を指した。
220 :
ラーミア復活!?2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:37:25 ID:VeYPADAv0
あっちの方に強力な霊場があるわ。おそらくそこにラーミアが封印されているはずよ。
ほうほう心眼って奴ですかい。さすがだ。よしこれで迷う事は無さそうだ。
ねーちゃんの指示のもと俺達は歩き出した。
と、突然轟音と共に地面が盛り上る。
敵だ!おまえら構えろッ!
目の前には氷のデカブツと雲の塊が数匹ずつ。フヘへへ。顔がにやける。
ちょっと!総長ちゃんなんでそんな嬉しそうなのよ!
勇者が叫ぶ。当然だ。船の上の戦闘では海上への呪文による遠距離攻撃が多くろくに剣を振るえなかった。
しかしここならこの超強力な新相棒を思う存分振り回せる!
勇者とねーちゃんは雲を魔法で頼む!俺とパンツはあのデカブツをカキ氷にしてやるぜ!
いくぜゴルァアアアアアアア!!!!!!!!
敵の中心に向かって突撃だ。
ッしゃああああおらああああぁぁぁぁァ!!!!!
全身全霊を込めてはかいのつるぎを振り下ろす。
221 :
ラーミア復活!?3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:39:09 ID:VeYPADAv0
一撃。
一撃で5mはあろう氷の塊がバラバラになった。
なんだろうこの感覚は。このはかいのつるぎもそう、じごくのよろいもそう、ふこうのかぶともそうだ。
身に着けるとそれだけで全身の筋力が強化されたような、そんな錯覚に陥る。
実際腕力は格段に上がっている。
総長殿!後ろですぞ!
おっさんの声と同時に背中に強烈な衝撃を感じる。吹っ飛ぶ俺。
大丈夫!?と勇者とねーちゃんが駆け寄った。
………?
何事も無く立ち上がる。まあ確かに痛いは痛いのだがあのインパクトにしては
ダメージが残って無い。……こいつは凄いぜ…。
どっしゃあああああアアああ!!!!
奇声と共に残りの氷の塊をパンツが砕いていた。こいつのまじんのおのとやらも半端無い。
凄い…。二人とももう人間の域じゃないわ…。
222 :
ラーミア復活!?4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:40:28 ID:VeYPADAv0
ねーちゃんが息をのむ。
残りの雲を勇者が焼き払う。
うん、今更だが俺達は確実に強くなっている。
ここまで色んな事があった。本当に色んな事があった。
………いくぞ!
ラーミアを復活させたら俺の野望もいよいよクライマックスだ。
ねーちゃんのおかげで迷う事なくラーミアとやらが封印されている祠についた。
まったく霊感みたいなものが無い俺ですら何となくビリビリくる。
こいつは確かに凄い場所…のような気がする。
扉は軽く触れるだけで開いた。
一本道なのでとにかく奥に進む。広い部屋に出る。
おおおおおおおおおおぉおぉォオォ!!!!!
目の前にはバカデカイ卵がある。かろうじて全体像で卵だと認識できるが
もはや卵ってレベルじゃねえ。
一目散にダッシュで近づいてみる。………。俺は俺の中に沸き起こる衝動を必死に抑えた。
叩きたい。思いっきり叩いてみたい。こんなデカイ卵なんて割ってみたいだろうがチクショウが…
誰も見てないのを確認するとちょっとだけ剣で叩いてみた。
鈍い金属音が鳴ったが傷一つついていない。
ゴクリ…さすがは伝説の卵だぜ…
223 :
ラーミア復活!?5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:41:36 ID:VeYPADAv0
何気に隣を見ると俺以上にヤバイ目つきの男がいる。パンツだ。
総長…この卵だと目玉焼き何個作れるでやんすかね…
いやでどんだけかくても卵一個なら目玉焼きも一個しかできねーだろこいつは本当にどうしようもない馬鹿だな
なんて思ってる間にパンツは目いっぱい振りかぶるとフルパワーでまじんのおのを振り下ろした。
かいしんのいちげき!
ガキィィィィイイインと轟音が響く。が、やはり卵には傷一つ無い。
こいつがすげーぜ!さすが神龍の卵だ。俺たちごときの攻撃など屁でも無い。
期待できる!でき過ぎる!さあとっとと復活させようじゃないか!
…………コラ……
今まで聞いた事の無いドスの聞いた声がする。
凄まじい殺気だ。振り返るとそこには外の吹雪よりも冷たい目をしたねーちゃんがいた。
で、あなたたちは何をしてるの?
いや何って言われても…。ちょっとした破壊衝動に駆られただけで…
このものからは
このものからは
何か不思議な邪気を感じます
何か不思議な邪気を感じます
本当にあなた方は
本当にあなた方は
選ばれしものたちなのでしょうか
選ばれしものたちなのでしょうか
224 :
ラーミア復活!?6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:52:11 ID:VeYPADAv0
急にステレオで謎の声が聞こえる。
よく見ると勇者の両肩に人形サイズの女の子乗っている。
なんだなんだてめーらどっから沸いてきやがった?
目の前にいたよ!総長ちゃんが無視して走って行っちゃったんでしょ!
と勇者が言う。しらねーよこんなチビ視界に入るかっちゅーの。
ラーミアは神の使い
ラーミアは神の化身
人間程度の力では 傷つける事など できません
くっ…ドちび助の癖に何を偉そうに…
傷つける事などできませんだあ?燃えるぜバカヤロウ!
…やめなさい
ねーちゃんに凄まれてしぶしぶと下がるパンツと俺。
部屋のはじっこに追いやられて復活の儀式とやらを見守る事になった。
勇者とねーちゃんとおっさんが部屋に卵を中心として均等間隔で配置してある祭壇にオーブを置いていく。
全部置き終わった所でさっきのちび二匹が卵の前で光り始めた。
さあ いのりましょう
さあ いのりましょう
時は きたれり 今こそ 再び 目覚める時。
大空は おまえのもの まいあがれ 空高く!
225 :
ラーミア復活!?7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:53:05 ID:VeYPADAv0
ピキッ…!
おお…!あれだけ硬かった卵にあっさりとヒビが入る。
ヒビは次第に広がってゆき亀裂から光が漏れる。
………ゴクリ…。
そしてついに殻中に亀裂が入ると一気にこそげ落ち破片は消えてしまった。
中心にはまばゆい光の塊がある。
その光が徐々に収まっていくと共に中の物体がうっすら見えてくる。
ピッ…ピィィィィイイ!!!!!!!!ピィ!!
226 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/07/08(火) 09:54:00 ID:VeYPADAv0
今日はここまでです
まとめの方いつもありがとうございます!
227 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/08(火) 10:19:50 ID:/IttdIy10
乙であります
228 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/08(火) 15:59:29 ID:SzSyDQw30
おお、ついにラーミア復活。
卵相手に会心の一撃、和良た(wwww
229 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/08(火) 16:12:54 ID:p0NBb7Ql0
人形サイズの女の子
…小美人か!!
230 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/08(火) 17:44:25 ID:jr4TF+vqO
このパーティはどう考えても世界救うために旅してるようには見えないだろ…
総長パンツ的に考えて…
231 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/08(火) 20:22:30 ID:P2FQgwbXO
総長今回も乙
人形サイズの女の子ってモスラのあれかよwww
232 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/11(金) 17:14:41 ID:TOFTVcGP0
hosyu
233 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/13(日) 12:37:04 ID:9XWP3i5gO
保守
勇者は俺の嫁
勇者母は俺の義母
234 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/14(月) 06:53:05 ID:QmHnM3BpO
勇者祖父は?
235 :
◆Tz30R5o5VI
:2008/07/15(火) 15:43:58 ID:vwXT79x+O
保守といこうか
236 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/17(木) 08:20:06 ID:+vNDXoQRO
ほっしゅるぅ〜
237 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/18(金) 22:06:30 ID:wRFq03eE0
hosyu
238 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/20(日) 03:25:55 ID:a76HweYx0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(2)
「とまあボヤいてみたけど品種改良とかやってみたら面白いと思うんだけどな」
コシヒカリとか見てみろ、ありゃもう農家と偉い学者さんの血のにじむような努力の結晶だ。
時間こそ長くかかるが凡人でもやっていける道のりだ。
その間に何度か世代交換があるがその辺は勇者パワーで何とか。
現代に戻るのが無理ぽいなら田畑耕すしかない、この辺を見ればまだ開拓できる土地は有り余ってるし。
つーか、人類未踏の地のほうが多い気がするんだがそこんとこどうよ。
「ぶっちゃけ魔王が居る害ってのが理解できねーしなあ」
飯さえくってりゃ体力無限大だし、幾らでも仕事をこなせるぞ俺、そのためには種モミをかっさらってくる必要があるが……。
しかしモヒカンやろうにも敵は厖大、人類の敵は人類とネルフの偉い人も言ったわけで。
ヤツら魔物にはビビるくせに勇者には冷たいもので、完全に舐められてるぜ。
「あの勢いで魔王のとこまで攻めいりゃ今頃人の世が戻っていたろうに」
まああそこまで軍隊を派兵しようと思ったら兵站が破綻するだろうが……。
中世クラスの、しかも底辺っぽい感じの農業力では辿り着く前に朽ち果てる予感。
「略奪が基本だろこの時代、各自食糧装備集めろじゃ士気最悪の国力ガタ落ちだろうな」
徴兵で主な働き手分捕ったら国傾く、いや余裕で瓦解する。
先にも言ったが品種改良という概念が存在しないし、農業科学も発展していない。
ぶっちゃけ中世と言ったが古代級の生産能力だ、しかもこの大陸は旅の扉まで封鎖しているから物流がない。
定期船は存在するが魔物の襲撃を恐れて大規模な艦隊を組んでるわけでもなし。
「慢性的な飢餓と厭戦感、それに社会不安と鬱憤が溜まれば勇者が希望になるわけか」
四人ほどのパーティーなら動かす余裕があるってことだな、だからこそ俺の裏切りは相当堪えたってことだ。
「海渡れないだろうか、エルフに眠らされたあの村なら人一人隠れて住めそうなんだが……」
呪いを恐れ人も立ち寄らないし荒廃しているとはいえ雨露を凌ぐ屋根に道具が手つかずで残ってるはず。
239 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/20(日) 03:27:29 ID:a76HweYx0
何となく思ったんだが。
「魔王の目的は『恐怖』なんじゃねえかなあ……いや、もしくはどうしようもない絶望か」
もしくは緩やかな人類の衰退だな、魔王ってシロモノは相当イイ趣味をしているようだ。
「どう考えてもドSに違いない、絶対どこからか俺のこと監視してニヤニヤ笑ってるんだぜバラモスとゾーマの野郎」
そう考えると腸が煮えりそうになるが我慢我慢、こんなところで叫んで木をぶん殴ったら魔物に気づかれる。
俺にとって恐ろしいのは大量のモンスターの襲撃だ、数が多かったらどうしようもない。
幸いにもこの辺の分布を考えればさほど強いのは居ないが昔のエロい人は言った、戦争は数の暴力であると。
未完のビジュアルクイーン……じゃなくて、決戦兵器である俺には微妙すぎる。
広域戦闘魔法でも使えるようになれば「HAHAHAHAHAHA、今までの恨み晴らすべし!!」とでも笑いながら間引きを行うんだけど。
「国王のおっさん土下座して謝って許してくれないだろうか、せめて専門教育だけでもやってくれないとマズい」
なあんて一人トリップ天国に陥ってると何やら悲鳴。
あー、俺バカだは、こんなにも森がざわめいているのに――
「自分の殻に閉じこもって気付かなかった」
己の勘が警鐘を鳴らす、本格的に危険なシグナル、そして俺は聞いてしまった。
人の悲鳴、どうしようもなく絶望的な悲鳴、魂の底からひねり出す悲鳴、人生の末期、ただいちどだけ許された絶叫を。
現代人が失ったのは思いやりの心だとか、だけれども、俺のそばで、今、失われる命があるということは、絶対に、許容、できない。
次の瞬間には俺は風になっていた。
それは暴風だった。勇者とは即ち勇気あるもの、それは自らに向けるに非ず、それはどうしようもなく放射線状に内側から外側に伸びる力。
だからこその勇者、そのためのブレイブ・ハート。最後の武器は自分の勇気ってこと、それは決してケミカルではない。
単眼の巨人が居た。
その足元にはよく分からないが人の影がある。
正体がバレるなんてことはそのとき全く考えもしなかった。
だからこそその勇気はどうしようもなく本物で、怒りの鉄拳が空気の弾ける音ともに放たれた。
240 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/20(日) 03:29:00 ID:a76HweYx0
(3)に続く
ひたすら短い。
というよりもブランクがありすぎてどこまで書いたか記憶にございません。
241 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/21(月) 12:29:49 ID:kVg5M2aD0
キタ━━━ヽ( ゚∀)人(∀゚ )人( ゚∀)人(∀゚ )ノ━━━ !!!
待ってました!
正直めちゃめちゃおもしろい。
言葉の選択がシャープで重くて、いい意味でゾクゾクします。
ゆっくりでいいのでぜひ続けてください。次回も楽しみにしています!
しかし……主人公のバイタリティ半端ないですね。
この極限状態でよくまあこんなクールに考察できるなぁ。
ちょっと方向性は違うと思いますが、村上龍の5分後の世界を思い出しました。
242 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/22(火) 01:40:10 ID:ZQZp1qVIO
保守
243 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/23(水) 08:47:00 ID:V5DaLLXi0
保守
244 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/24(木) 00:27:47 ID:LijMPjN30
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(3)
全てのモンスターに言えることだが一目見ただけで理解した。
あれこそがただ暴力に特化した存在であると、その中でも目前の敵はその更に上を行くことを。
軽く見積もって3m、笑えるまでに逆三角形とそれでぶん殴られたらスイカみたいに弾け跳びそうな棍棒。
俺の鉄拳クリティカルヒットしたはずなのにびくともしない絶対装甲に涙しそう。
あれは無理だ、レベル差が激しすぎる。
「棍棒?嘘だ!!それ電柱だろ常識的に考えて」
風を切る音とともに俺のすぐ横に強烈な音ともに地面が爆散する。
曖昧3cm、人が見ていなかったら漏らしてたぞ多分。
幸い、突然の介入者によってモンスターの意識が削がれたのか悲鳴を上げた人物は無事だった。
ここで俺は落胆した、どうみても気絶したジジィですありがとうございました。
「ちくしょう、ここは美人の姉ちゃんのフラグが立つところだろ、この世界は優しくない!!」
知能が低いとは言え戦闘種族、あまりにも的格な攻撃に怯みながら避ける、避ける、避ける。
この優しくない世界で俺はひたすら逃げまくったせいかレベルアップ時にすばやさだけ極端に上がったようだ。
少なくともあんな大雑把な攻撃当たってたまるものですか!!
245 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/24(木) 00:28:23 ID:LijMPjN30
軽いことは軽いが追撃がヤバイ、あの体型でありながら愚鈍とは言い難い。
多少地形的に有利であるが何あのブルドーザー、木々へし折って走ってやんの。
後ろを振り返り、何とも言えない形相で追跡を行うモンスターを見る。
「どう考えても弱点はあの目だろうな、あそこだけが筋肉に覆われていないんだし」
石でも拾って投げつければ若干足が止まるかもしれない……が、ピッチャー返しが一番恐ろしい。
あの筋肉で勇者の投げた石が返されたら力積的に考えてどうなの、俺死ぬの?体に穴空くの?
木々の枝をつたいながら忍者気分、こっちがあちらに優位なのって結局機動力だけなんだよね。
しかも石を回収するには下に降りなければならない、となるとヤツの棍棒の攻撃圏内に入るってことだ。
「却下だ、却下、無理ゲーすぎて困る、そんな上手くいくわけがない」
俺にとって最良の選択肢はアレに見つからないこと、でなければ詰む。
この勝負始まる前から勝敗が決していてガチハードモード、つか息が切れそうなんだけど。
なぜアリアハン周辺であんな高レベルモンスターが居るんだ?
ルーラが使えるほど知能があるとは思えないし、かと言ってあんな存在は見たことがない。
というよりも、強力なモンスターの発生はスライムやおおがらす、いっかくうさぎにとっても脅威になるわけで。
モンスターの世界も弱肉強食、共食いなんてざらですよ。
つーか種の根源的に考えて共食いよりもまず自分より立場の低いものから食うわけだろ?
なのにモンスターはわんさか居る、雑魚モンスターすら駆逐できない人類があんなバケモノを間引くなんてことはありえない。
「となると、外来種である可能性が高い、誰が持ち込んだんだよあのバケモノ」
うすら寒い、待てよ、そもそもアレはこの世界に存在して良いものか?
記憶が曖昧だから不確かだが、そもそもVには……
246 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/24(木) 00:29:41 ID:LijMPjN30
「あぶねっ!!」
爆裂音と共に足元が揺らいだ、雑念俺殺すとか洒落にならない。
逃走時に余計なことは考えたららめー。
しかし、じり貧すぎて困る。装備が布の服って時点でファンタジー舐めてるけど誰か剣プリーズ。
ナイフでもあれば一方通行ブーメランでも作って装備するんだが。
あー、そういやジジィ泡吹いて痙攣しててキメェ。
「おーい、じじー起きろー死ぬぞー、足あるんなら走れー」
まあ、腰抜かして気絶するようなジジィに走れというほうが酷だが。
ぶっちゃけ起きてくれたらうれしい、惚れるとか惚れないとかそんな問題は抜きで。
気絶した人間は重心が安定しないというか、なんというか、こう、違う。
ぐにゃってるわりには硬いし持ちにくい、質量的には俺のほうが小さいわけで、何この10歳児。
「町でも逃げ込んで衛兵やら傭兵を引きずりだすか、却下だな、国家転覆ーとか言って打ち首にされかねん:
そもそも装備の関係上アレに対抗するべき手段がない。
アリアハンは恵まれている、モンスターの驚異度という点で見れば。
銅の剣さえあれば訓練を積んだ兵士なら倒せる敵しか発生しないからだ。
だから……強力な武器が流通しない、王は魔物も恐れるが――
247 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/24(木) 00:30:14 ID:LijMPjN30
人間も恐れる
過度の装備はそれだけ王政を脅かす、魔法使いの反乱を抑えられなかったのも理由の一つにあがる。
反乱、というが実質的に考えれば革命だ、まだ人間の世の頃、平和を享受している時、革命が起りかけた。
この平和な世界に王は必要ない、むしろ重税を課す王は悪であると。
魔法使いとはすなわち貴族や僧を除けば限られた有識者だ、人による人の支配の否定を行おうとしたのだ。
それがどれだけこの世界に激震を与えただろうか、支配階級にとってその特権を失うことは一番恐ろしいことだ。
はっきりと言えば死よりも恐ろしい、だからこそ驚異度の低い地方では武器の持ち込み制限がある。
身を護るのは当たり前のことで武器は比較的手に入りやすい、これを取り上げては不満は募る。
しかし、それが度を過ぎるのはよくないと考えた。
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。
「って、またトリップしちまったじゃないか、思考トラップはマズい」
その罠を自分で仕掛けたとあってはお話にならないとも言う。
「う、うぅぅ……」
胸元でうめき声がした。
あージジィもう少しで覚醒ですか?いまどき眠り姫なんて流行んないからさっさと起きろと。
248 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/24(木) 00:33:38 ID:LijMPjN30
(4)に続く
>>244
ジジィを背負い、走り出す十の夜。
>>245
と合間に入るはずだった一行が抜けてしまった
あってもなくてもいいけど今書くとほんとマヌケすぎる
249 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/24(木) 02:54:22 ID:72C7D6Iu0
ぅぅうお乙うぅぅっ!!!!!!!!!!
なんでアリアハンにザ・痛恨の一撃がwww
しかもシビアな世界観!
続きにwktk〜。ジジィはよ起きろw
250 :
◆I15DZS9nBc
:2008/07/26(土) 19:04:13 ID:MMxMhX3C0
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。
置き換え→
特例を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは道具として使用すれ半永久的にば魔法を行使することできる魔法使いたちの残した最高の置き土産、その所持は極刑に値する。
魔法とは生物の内部エネルギーたる魔力を燃焼しこの世界に働きかけ、特異な物理現象を引き起こす。
エンチャント装備はその法則を覆し、魔法を使えないものたちとの垣根を破壊する。
もっとも、それらを造るには遺失技術と希少価値の高い物質が必要らしいが……。
251 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/27(日) 21:22:12 ID:19XMLoHl0
保守
252 :
名前がない@ただの名無しのようだ
:2008/07/29(火) 20:53:45 ID:1b0a57bp0
保守
253 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/07/31(木) 21:00:29 ID:9iXv/60m0
保守
254 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/01(金) 21:13:12 ID:X+irc61o0
保守
255 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/04(月) 03:32:40 ID:RRdQs5Dp0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(4)
おめめをパチクリ、とろーんとした目をしたジジィの体に徐々に力が入る。
いや、それはあまりにも急速に引き締まる筋肉、まるでロボットみたいな動きで開こうとした口を俺は押さえつけた。
「むぐぇあぃ……」
声ならぬ声、さすがに耳元で絶叫されるのは御免こうむる。
「ジジィよく聞け、今あのバケモノから逃走中おk?」
そう言ってジジィの顔を下の方へと向けてやる。俺達は今山上を目指して木々の枝を渡っていた。
その後ろには道ができていた。無論、あの巨人が整地としかいいようのない走りで拓いたものだ。
未だ俺はあのバケモノを巻くことができていなかった。硬直するジジィに俺は優しく声をかける。
「ひとまず深呼吸だ深呼吸、ひっひっ、ふー」
何か間違ってそうな気もするが、それにならってジジィも一呼吸、ここで若干の冷静さを取り戻したのか表情が変わった。
「お主、なぜワシを助けた?」
助けるのに理由は要るか?と俺は返し、そろそろ脚がヤバそうだと思った。
ここまでは50m走の速度でかるくマラソンやってるわけだ、たとえ勇者とは言え乳酸は溜まる。
むしろこれはやせ我慢だ、男の子にはやらなきゃいけない時はあるが、もう限界かも知れない。
畜生、アイツは何で疲れないんだよ、粘着質なのは嫌われるぜ……とため息をついた。
「気づいちまったんだからしょうがないだろ、常識的に考えて」
何か変なものを見る目の老人いっちょ出来上がりってか。
「あのなー、ジジィよ、悲鳴上げてるの無視できるほど俺冷血じゃないんだは、最近人にも餓えてたしな」
まあ普通はあそこで介入するべきではなかったとは思うが、それに話し相手が欲しいってのは割と切実。
もう何日も人と会話を交わした記憶がない、人間に必要なのはコミュニケーションだ、単独で成立しねーよ、会話は。
この世界に飛ばされて何度も気が狂いそうになったが今こうしていられるのは勇者の心があるからだ。
勇者は単独行動を行うことが多々あるため精神的な加護は一般人よりも多い。
256 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/04(月) 03:33:25 ID:RRdQs5Dp0
けれども――それには限界がある。
人は結局のところ独りでは生きてはいけないのだ。
「そんな理由でワシを助けただと?」
やはり半信半疑のジジィ、それ以外に何が理由だってんだ。むしろ俺が聞きたい。
「まあ、悠長に会話してる場合じゃないんだが……下ヤベーことになってんし、ジジィ、一瞬で良いからアイツに隙作れないか?」
半ば諦め気味に俺はジジィに言った。そんなことができるなら苦労はしないってのに。
「ううむ……少し寝たから魔力には余裕はあるが……閃光を数秒間出すぐらいしかできんぞ」
魔力!?
「魔法使いだったのかジジィ!?」
なら何でアイツから逃げ切れない!?いや、アイツが規格外ってのは分かるが逃走ぐらいなら何とかできるだろう!!
「いや、アレは倒さねばならん……我が集落はアレによって潰され、あの脅威を取り除かねばこの国が滅ぶ……」
それはきっと比喩ではないだろう、合点がいった、ジジィの悲鳴は魔力が底をつき、打つ手がなくなった最後の絶望だったのだろう。
「おーけ、サクッと俺の言うタイミングで魔法を使ってくれ、その一瞬を突く」
うむ、と頷くジジィ、どうやら恐怖の色が若干薄れたのか血色がよくなってきた。もう、後がないという達観なのかもしれないが。
257 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/04(月) 03:34:46 ID:RRdQs5Dp0
「よしっ……今だ!!」
速度を早めトップスピードに乗り、木から飛び降りジジィを単眼の巨人へと向ける。
何やら呟きがジジィの口元から漏れるのを塞いだ目越しに聞く、そして魔法が成った。
さすがに薄暗い森の中の中で光を喰らったアイツは怯み、その瞬間待ち望んだ隙が生まれた。
迷うことは何もない、残された力を全て振り絞り、眼に拳を目指す。
全身のバネを使い、飛び上りながらのアッパー、ジジィは邪魔になるのでその辺に落とした。
魔物より早い悲鳴と、抗議の声が聞こえるがそれを軽く流し、突き上げる。
直撃――硬い感触が拳に伝わる――拳の砕ける感覚と奥へと確かに陥没する眼球――そのままクリティカルヒットで突き上げる。
声にならない悲鳴が上がった。己の眼球によって破壊された頭蓋骨が脳をそのまま粉砕する。
破片が基幹に突き刺さり、さらには全身を司る機能を犯す、が……
ここで誤算が起きた。
脳が砕けたというのに、剛腕が俺の身体を薙ぎ払った。それと同時に俺の意識が刈り取られ、死が身体に貫く。
最後の思考はモンスターを侮りすぎた、ということだろう、脊髄にプログラムされた基本動作を嘗めていた。
遠いジジィの声、ああ、俺は最後の最後で勇者に――
258 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/04(月) 03:36:31 ID:RRdQs5Dp0
(5)に続く
今回も微妙回、書きたいことが余り書けなかった
戦闘シーンが凄く淡泊です・・・
259 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/04(月) 07:02:08 ID:0HKL3vfn0
かっこいいよ。その勇気ある行動、勇者に値するよ。
でも、運命はいかに・・・。続きが気になる終わり方だなぁ(wwwwwww
260 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/04(月) 10:41:00 ID:LbaCZqnq0
ちょwwwww
最初はメルヘンなヘタレDQNだと思ってたのに!
ヤバイ惚れるマジパネェっすかっけーwwうぇwww
ふう……。いやいや、本当にすごいです。
>「〜最近人にも餓えてたしな」
特にこのセリフが秀逸。これまでの過酷な状況が凝縮されてる気がする。
相手の事情を察せられる賢さだけじゃ抑えきれない負の感情もあるだろうに……。
この主人公、本当の意味で強い。
続きを心から楽しみにしてます。
261 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/05(火) 20:47:32 ID:iE2laiW50
保守
262 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/07(木) 03:52:55 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)
天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見
修復プログラム起動
失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。
「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに%
263 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/07(木) 03:53:49 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)
天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見
修復プログラム起動
失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。
「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに開いた俺の前にジジィが立っていた。
「あ」
ジジィ?ああ、ジジィ……。
「ああ!!俺の助けたジジィか!?すると俺生きてるんだな!?ふー、ビビったぜほんと
あんときゃ絶対死んだと思ったのに、あー勇者パワーすげー、普通死ぬはあのパンチ。
痛恨の一撃だったからな、ほんと、まあ何はともあれ二人生き残って良かったぜほんと」
一気にしゃべり終え、俺は大きくため息をついた。そりゃ人間だもの、ビビることは多い。
「貴様は一度死んだよ、よりにもよってワシを助けたのは王家の狗とは……」
そう言って俺の睨みつけたジジィの目は敵意の色に染まっていた。
あーよくよく見てみると俺拘束されてんじゃん、しかもどう力を入れても抜け出せないような方法で。
「勇者とは言え脊髄にストッパーをかけては動けまい、貴様の命は我ら未登録の魔法使いの排除か?」
魔法が使えないことは分かっているよ、と歪な笑いでジジィは言った。
魔法が使えるなら発声機能なんて残すわけがないといったような様だ。
「ちげーよ、王家?そんなファッキン野郎に俺は放逐されたんだよ、風の噂で聞いてないか?ジジィ」
諸王連合に“よる”勇者の資格を俺は失った、“神授として”の資格は残っているみたいだが。
「ふむ、それが真実と言えるのか貴様は……あの狡猾な者共がワシらを罠にかけようとしてないとどう証明できる」
どうしようもなく疑心暗鬼、駄目だ、完全に聞く耳をもってくれそうにない。
「信じてくれとは言わない……なあ、俺何で生きてるんだ?死んだ、って言ったよな?」
264 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/07(木) 03:55:34 ID:zcKbyfKf0
それぐらいは教えてやってもいいだろう、そうジジィは言った。
「貴様は確かに死んだ、瀕死の魔物の放つ強力な一撃によって挽肉のように飛び散った」
新幹線に衝突したような感じだったし、ありえなくはないが、ミンチ?悪い冗談だろ……。
「それなのに貴様は生き返った、生命の法則を完全に無視してな。
認めよう、貴様は真に勇者のようだな、棺桶がどこからともなく落ちてきた……あれこそが天に祝福された証拠だろう。
絶対的な死から至極安全な地へと勇者をいざなう神の魔法、神?そん者をワシは認めたくはないがアレを前に認めざるをえん。
開かれた棺桶に肉片が収束したかと思うと一瞬、それが消えた。
次の瞬間にはワシの目の前に戻っておったがな、唖然とするワシの前で柩はかき消え貴様の姿だけが残った。
神官共の使うザオリクとは一線を課す、そうしてワシは思い出したのだ、あの常識外の力を。
そんな特権が許されるのは人の共同幻想“勇者”のみであると、忌々しい、そんなものがあるから王たちの愚かさが治らんのだ」
間を入れず、早口でジジィは喋った、それを認めてたまるかと、そんな勢いで。
つーか、俺だって腹が立つ、何でこの世界で生かす、俺の世界に戻せとあれほど。
「ワシには貴様を殺すことは出来ぬだろう」
ズキリ、とその言葉が胸の奥に突き刺さる、久々に会った人間の言葉にしては残酷すぎる。
ああ、残酷、途方にくれるぐらいに。この世界はなかなか俺に甘くないようだ。
「なあ、勇者ってそんなに嫌われるものなのか?」
多分、その声は震えていて、泣きそうな声だった。
俺だってたまには泣きたくなることがあるのだ。
「好き、嫌いではない。力を持たぬ者と勇者では歩む道が違いすぎる……それも王の側につくとあるなら憎しみしかない。
貴様が生まれてからどれだけの民草が重荷を背負ったか、勇者を養うということはそれだけで重税を課す理由になる。
王は勇者を縛るためにありとあらゆるものを与える、いつか自らの脅威となるものを排除させるためにな。
民も例外ではない、王に害をもたらす者は勇者をもって排除する、それは決して少ない話ではないだよ坊主」
265 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/07(木) 03:58:12 ID:zcKbyfKf0
(6)に続く
何か書き込みエラーが起きてageてしまって申し訳ない
そして毎度のことだけれど話が短い・・・
分割して頻繁に書き込んでないとモチベーションを維持できないんでそのへんはよろしく
266 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/07(木) 11:40:46 ID:sq1UWByv0
乙!
まさかの忌避される勇者!
ジジィが黒っぽくみえたと思ったら、巷に響く黒勇者の設定は面白いかも
267 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/08(金) 20:51:11 ID:fTYg0R3O0
ほしゅ
268 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/10(日) 08:31:40 ID:nczLtTID0
保守
269 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/13(水) 04:34:04 ID:2ox/bl190
保守・・・したほうがいいかな?
270 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/14(木) 20:42:57 ID:jB3Prsrb0
ほしゅ
271 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/17(日) 13:55:20 ID:GFezJg8i0
保守
272 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/18(月) 08:02:31 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(6)
だが……とジジィは若干表情を崩して言葉を続けた。
「あの魔物を倒してくれたことは感謝する、ワシにはどうすることもできなかったからな。
そして、坊主があの瞬間死んだお陰でワシと坊主に還元されるはずだった力がワシだけに注ぎ込まれた」
お主、貴様、坊主、俺に対する呼称が転々とし、言葉を切った。
あー、つまり、俺に入るはずだった経験値が……。
「今になって精神と身体を拡張することになるとは、うむ、喜ばしいことだ。
ああ、そう、これは坊主に対する妬みと奴当たりだよ、ワシは衰える肉体を抑えきれず今回の出来事を起こした。
贖罪、というべきか、ワシは死ぬよ、魔法使いの里は滅んだ、あの魔物を呼びだしたおかげでねな」
自分語りが激しいなジジィ、何で、何でそんな遠い目してんだよ。
「ルーラとは即ち、点と点を結び移動する魔法、通常は巨大な都市に目印を刻んで行うべき危険な魔法。
なぜルーラは空間移動魔法であるのに一度宙を舞うと思う?」
そんなものは簡単だ、地上で展開すれば根こそぎ質量を動かすことになる。
都市にマーカーをするのも、空高くに現れるのも……。
「物質と物質が同軸上に存在する場合、最悪の被害が巻き起こる、そして、ルーラは何もこの世界にだけ作用する魔法ではない」
薄々とは感じた、そうだ、アレがこの世界に存在してはいけないのだ。
誰が持ち込んだ、目の前のジジィだ、どうやって?ルーラで。
「別概念の魔法知識をこちら側に持ち込もうとした結果があの大惨事、もはやワシが残すべき言葉はない」
年相応の、枯れた声だった。どうしようもなく生きる気力がなく、死以外のことをもはや見るすべを知らない。
ああっ、俺は、なぜこんなに淡々としているんだろうか。
裏切られたから?いや、そもそも信頼関係を築いていない、何なのだろうか、この感情は。
人が死ぬのは見たくない、見たくないのだが、目の前のジジィを救う方法が見当たらない。
勇者はこんなに脆いものなのか。
精神強化、肉体強化、どんなに強くなっても心に亀裂が入ってしまえば決壊してしまう。
ひねり出すように俺が漏らした言葉は貧弱だった。
「なあ、ジジィ……死ぬぐらいだったら、俺に魔法を、授けてはくれないか?
俺は世界を救う存在なんだと思う、アンタを救うことはできなくても」
273 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/18(月) 08:04:29 ID:J6dqgDuA0
間幕
どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。
274 :
◆I15DZS9nBc
:2008/08/18(月) 08:09:51 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話 END
NEXT すりりんぐぶれいぶはーと・第二話
本来(5)と(6)は一緒に書き込むべきだったんだろうけどそんな気力がなかった
間幕は多分、区切りごとの更新になると思われ
今更DSのDQ5をプレイしてて書き込みが遅れ気味なのはどうしたものか
このまま行くと完結は何年後だろう
とりあえずカジノのハイアンドローはすりりんぐでぶれいぶはーとが必要だと思う
あとエースが来た時嬉々としてロウ!と言ったらジョーカーとかやめて
275 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/08/19(火) 22:40:11 ID:IpUNNQdB0
やっと規制明け!
>>274
乙!
ルーラにそんな秘密が!ルラムーン草がいるわけだなぁ
ハイ&ローでエースにジョーカーが来たこと過去に2回あるw
この理不尽さはなんともいえないw
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