■掲示板に戻る■
全部
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
最新50
[PR]
ぜろちゃんねるプラス
[PR]
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50
PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)
ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
60 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/19(土) 01:45:06 ID:WEhfbBhJ0
黒髪のお兄さん……お師匠様がモンスターを連れて来て、ここで面倒を見るんだって。
モンスター爺さんはモンスターの研究をしているのかな?
僕はそのモンスターの世話のお手伝いをすることになるみたいだ。
でもさ、そもそもモンスターって何? 怪獣みたいなの?
「モンスターの世話をしてくれるなら代わりにトモノリが家に戻れる方法を探してみるよ。」
お師匠様は僕の目線までかがみこみ、そう言ってくれた。
「約束だよ。」
僕は小指を立てて前に突き出した。
でもお師匠様はどうしていいかわからないみたい。
「約束をするとき小指を絡ませるるんだよ。」
僕がそう言うとお師匠様はにっこり笑って小指を突き出して僕の小指に絡めた。
約束だよ。……嘘ついたら針千本だからね。
――続く
61 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/19(土) 23:38:20 ID:DuAaA5QP0
>>60
今度の主人公は子供か
5主とヘンリーは人攫いには個人的な恨みもあるから
イナッツさんが止めなきゃきっと本気でモンスターじいさんを
やっちまう気だったんだろうなw
62 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/23(水) 08:52:55 ID:H7R9ca8e0
hosyu
63 :
◆Tz30R5o5VI
:2008/01/25(金) 17:51:08 ID:fHqkqBZNO
でっていう
64 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/25(金) 23:44:53 ID:bRo/hUrXO
>>63
続きマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
俺は待ってるぜ〜
65 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:23:55 ID:XYMYLafC0
―薬指に指輪―(
>>54-60
)
僕ってついてないよね。
何で僕ばっかりこんな目に遭わなきゃならないんだろう。
理由も分からずこんな変なところにいるんだから。
僕はこの場所でモンスター使い見習いとして生活することになったんだ。
そういえばここってベッドがひとつしかないんだって。
イナッツさんのらしいけど一緒に寝るってことでいいのかな?
「それでさ、モンスターってどこにいるの?」
「今はまだいない。あの青年が連れてくるまで待つのじゃ。」
お師匠様しだいなんだ。いつごろになるんだろう。
「モンスターは馬車に入りきれない奴を連れてくる。先の話じゃよ。」
モンスター爺さんはそう言っていたけどお師匠様はモンスターをすぐに連れてきた。
「このホイミスライムの面倒を見て欲しいんだ。」
そう言ってお師匠様が見せてくれてのは宙を漂う青い海月みたいな生き物だ。
「これがモンスターなの?」
「ホイミンって言う名前なんだ。可愛がってやってね。」
「うん!」
どんな怖いのが来るのかと思っていたらこんなに可愛いなら大歓迎だよ。
「ホイミスライムなら馬車に入れておけば何かと便利じゃろうに。預かっていいのか?」
「はい。よろしくお願いします。」
あ、もしかしてモンスター爺さんに押し付けたってことは暴れん坊なのかな?
「ホイミスライムはモンスターの中でも特に優しい性格をしておるのじゃ。」
そっか。良かった。
「こいつはホイミという回復魔法を使い傷ついた仲間を助けるのじゃよ。」
モンスターの次は魔法か。次は神様かな。
「かつては人間になったホイミスライムもいるというぞ。」
僕が子供だと思ってでたらめ言ってるでしょ。
そんなこと言ったら進化論の人が泣くよ。
66 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:25:58 ID:XYMYLafC0
そのあとしばらくして今度はお師匠様と親分が女の人を連れてきた。
マリアさんっていう綺麗な人だよ。どういう関係なんだろう。
お師匠様たちは不思議な鏡を使って何かをする相談をしている。
「ねえねえ、この鏡でどうするの。どんな作戦?」
「子供には関係ない。」
ううう……。親分が冷たい。
「マリアさーん。親分がいじめるよー。」
「まあ、酷い親分さんね。」
「いじめてない! いじめてないですよ! むしろ可愛がっています!」
マリアさんの言葉を親分は否定する。でも、ちょっと必死すぎじゃない?
「ヘンリーさんたちは大切なお話をしているの。私たちは向こうに行っていましょう。」
「うん。おいで、ホイミン。」
ホイミンはふわふわしながら僕に近づいてくる。
「あら、可愛いわね。」
「いいでしょ。お師匠様から面倒を見るように任されているんだ。」
「トモノリさんが寂しくないようにお友達をつれてきてくれたのね。優しいお師匠様ね。」
あれ、そうなのかな。
マリアさんによるとお師匠様たちはあるモンスターの正体を暴く計画を立てているみたいね。
そのモンスターは親分の故郷で人間に化けて悪いことをしているんだって。
お師匠様の故郷もそいつのせいで酷い目にあったらしいよ。
悪いモンスターもいるんだね。
「お2人とも子供のころから苦労してこられて、さらにこんな仕打ちはあんまりです……」
「苦労って、どんな苦労してきたの?」
「あら、2人とも話していませんでしたか。私の口から言ってもいいのかしら?」
マリアさんは話していいものか迷っている。そんなに酷い目に遭ってきたの?
「でも、奴隷だったなんて私の口からは言えないわ。」
天然だ! この人天然だ!
それより何、奴隷……?
「詳しく教えてください!」
67 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:27:14 ID:XYMYLafC0
その夜、僕は眠れずにいた。
ホイミンを抱えたままずっとベッドの上で考え事をしていた。
お師匠様と親分は子供のころ攫われて奴隷として何年も働かされていたって。
その上お師匠様はお父さんを殺されて、家も町も壊されていたんだ……
そんな酷い目に遭ったのにぜんぜんそんな風に見えないよ……
僕がそんな目に遭ったら平気でいられるかな。
ぜんぜん知らないところに来ちゃったのは一緒だけど……
僕はみんな優しくしてくれる。酷い目になんて遭っていない。
でも、これからどうなっちゃうんだろう。
すぐに帰れると思っていたけど、もしこのまま帰れなかったらどうしよう。
もしかしてずっとここで暮らさなきゃならないのかな。
お父さん、お母さん、今頃僕がいなくなって心配しているだろうな……
考えれば考えるほど不安になってくる。
僕は枕に顔をうずめた。
「ホイミ。」
そのとき僕に何かが起こった。まるで毛布で優しく包まれたような……
「ホイミン。君がやったの?」
これが魔法の力なのかな?
「ありがとうホイミン。僕、大丈夫だよ。」
お師匠様たちの作戦はうまくいったみたい。
親分はお城に戻って暮らすんだって。
……それにしてもヘンリー親分が王子様だったなんて。
人は見かけによらないものだね。
お師匠様は船に乗って新しい土地を目指すそうだ。
僕もついていきたかったけどできなかった。
ここでモンスターの世話をするのが僕の仕事できる精一杯のことだから。
どうか新しい土地でお師匠様にいいことがありますように。
68 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:28:20 ID:XYMYLafC0
お師匠様が旅立って何日か過ぎた後、親分が僕を訪ねてきた。
「荒れていた国もだいぶ落ち着いてきたよ。デール……弟が頑張ってくれてな。」
「そっか。良かったね。それで、僕に何か用?」
「いやさ、あいつからお前のことよろしくって頼まれたからな。」
お師匠様、やっぱり僕のこと心配してくれてるんだ。
「それでな。トモノリさえ良ければ俺の国で暮らさないか?」
「ありがとう。でも僕、モンスターの世話をするって約束したから。それに……」
「それに何だ?」
「親分が迎えに行くべきなのは僕じゃなくてマリアさんだよ。」
僕の言葉に親分は慌てふためいている。親分、分かりやすい。
「親分、マリアさんゲットするなら今しかないよ。」
「だから何でそういう話になるんだよ!」
「いいの? マリアさんお師匠様に気があるみたいだから取られちゃうよ。」
「ちょっと待て。それ本当か?」
「マリアさん、お師匠様のこと優しい人だって言ってたよ。気になってる証拠だよ。」
親分は無言になってしまった。
「まあ、冗談だけどね。」
「冗談かよ!」
「ふふふ。親分ってやっぱりマリアさんが好きだったんだね。」
「大人をからかうもんじゃない。俺が子供のころはもっと素直だったぞ。」
本当かなぁ。
「ま、そりゃ気に入った奴を子分にするなんてことはしたけどさ。」
「それ、今でもやってるじゃん。」
あ、親分が凹んだ。
「でもさ、マリアさんに告白するならちゃんと伝えなきゃ駄目だよ。」
「何でだよ。」
「マリアさん天然だから遠まわしに言っても気づかないよ。きっと。」
ストレートに言っても気づくまで1分くらいかかりそうだけどね。
69 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:29:22 ID:XYMYLafC0
ヘンリー親分とマリアさんが結婚した。
親分、行動が早かったね。僕も結婚式に呼ばれたよ。
「マリアさんの花嫁姿すごく綺麗だったよ。」
僕はホイミンにご飯をあげながら話しかけていた。
「それは見てみたかったな。」
どこからか聞き覚えのある声がした。
「お師匠様!」
お師匠様はルーラって言う便利な魔法を覚えて帰ってこれるようになったんだって。
「そのルーラを復活させたのがベネットって言うおじいさんなんだ。」
ベネットさんの家では魔法の研究をしていていつも煙を出しているんだって。
「そのお爺さん、天才は理解されないものだってなんて言っていたよ。」
「でも、きっとそのお爺さんが理解されていないのは天才だからじゃないよね。」
「そうだ、紹介しておくよ。キラーパンサーのプックルだ。」
そう言うとお師匠様はトラのようなモンスターを連れてきた。
ううう……。ちょっと怖いかも。
「心配しなくてもいいよ。とってもいい子なんだ。本当はね……」
あれ、今お師匠様ちょっと寂しそうな顔をした気がする。
「ねえ、何かあったの? 僕でよければ聞いてあげるよ。」
「いや……実はプックルがある村で恐ろしいモンスターだと誤解されちゃってね。」
確かに見た目はかなり怖いからね。でも……
「僕は誤解しないよ。だから安心して。」
お師匠様はちょっと驚いた顔をして、その後にっこり微笑んでありがとうと呟いた。
70 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/01/26(土) 01:30:24 ID:XYMYLafC0
「ところでお師匠様、親分には会ってきた?」
「うん。幸せそうだったよ。だからヘンリーに言ってやったんだ。」
「何って言ったの?」
お師匠様が辛い目に遭っているとき、親分は幸せの絶頂にいたんだよね。
「許さないって言ったのさ。」
「え?」
「マリアさんを不幸にしたら許さないって言ったんだ。」
もう脅かさないでよ!
「ねえねえ、お師匠様は結婚しないの?」
「ん……。まずは母さんを探さなきゃいけないから……」
うーん。それってどうなんだろう。
「あのね、お師匠様。僕さ、今こうして知らない世界にいるよね。」
「うん。なんとしても帰れる方法を見つけるからね。」
「ありがとう。それでね、もしも僕がお師匠様の子供だったとしてさ。」
「トモノリが? いきなり大きな子供ができちゃったね。」
「仮の話だよ。それで僕がお師匠様のところに帰ってきたらどう思う?」
「それはもちろん良かったと思うよ。すごく安心するだろうね。」
「じゃあさ、いなくなっていた間、僕が幸せに暮らしていて欲しいって思う?」
「もちろんだよ。たとえ会えなくても幸せを願うはずだよ。」
「それって、お師匠様のお母さんも同じだと思うよ。」
きっと僕のお父さんとお母さんもそう思っているよね。
お父さんお母さん心配しないで。僕はこっちの世界で幸せに暮らしているよ。
みんなとっても良くしてくれているんだ。
お師匠様はまたルーラで戻っていった。
今度はサラボナっていう町を目指すんだって。
きっとお師匠様も自分の幸せを考えてくれると思うよ。
でも結婚はまだ先だと思うけどね。10年くらいかかるかも。
――続く。
71 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/26(土) 08:43:34 ID:ItmHE06zO
イナッツと同じベッドで寝てるのだろうか…トモノリはエロい子供だな
72 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/26(土) 13:04:05 ID:LsjNhgES0
やっぱり冒険には参加しないんだね。
なんかこういう視点もおもしろいですね。
次にお師匠様に会う時はビアンカさんをつれてくるのかな。フローラさんをつれてくるのかな。どきどき
>>71
うーん、同じベッドでねてるだろうね(うらやましい)。
73 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/26(土) 14:16:18 ID:nKvdAtysO
トモノリ…ガキのくせに的確なアドバイスばっかしやがって…!
74 :
◆Tz30R5o5VI
:2008/01/26(土) 17:08:07 ID:VixQxJ8sO
>>64
先の長い話なんでお楽しみに・・・
パソコンなおったらハイペースで書きますんで
75 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 02:52:13 ID:sCvKnpPg0
「……What?」
えげれす人でもない生粋の日本人な俺はその唐突な出来事に何かしらの言霊を漏らしていた。
豪奢な造りの天井、一人で寝るにはあまりにも大きすぎるベッド、簡素ながら品のある家財道具。
ぶっちゃければそんな部屋に居た。
「つまりあれか? 昔はやったどっきりか? カメラどこだカメラカメラカメラ……」
――鍵をかける習慣は欠かさないってのにクソッ、大家のクソババァが手を貸しやがったな。
心の中で悪態をつきながら窓を開ける。何ともいえない風が部屋へと吹きそそぐ。
「何この、何? ヨーロッパ村!? ヨーロッパ村ですかここ!?」
違う、ぜってー違う……意識の裏側で俺じゃない俺がツッコミを入れるも唖然として切り返せない。
目前の王城へと放射状に続く道のり、区画を丸ごと保存したとは思えないほどによーろぴあんな人々が歩いているのだ。
これだけの規模を維持しながら観光客が居ないなんて酔狂な話があってたまるかというわけでして……。
「……寝よう、こりゃ南下悪い夢の類だ、いや待てよ……夢なら夢でも良いじゃないの」
「うおっしゃあああああああああああああっっっ!!!!!」
俺は雄叫びを上げながら窓枠からソラへと飛んだ、跳んだじゃなくて飛んだ。
夢の中で夢と気付いたら全力で遊ぶことに決め込んでいるのだ、たまには嫌なリアルを忘れてメルヘンも良いってことなのさ。
76 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 02:53:27 ID:sCvKnpPg0
「いぎゃああぅぇああああああああいっっ????!!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い、何だこれ、何これ痛い痛い痛い、け、ケツの骨が、うぎいいいいいいいいいいい。
夢の中でありえないはず激痛に俺がのた打ち回っているとしばらくして人だかりが出来ていた。
「……ありゃあオルテガんところの子倅じゃねえのか?」
「重圧に押し潰されてついに狂っちまったようだな」
「あらまあ、彼が魔王を倒さないといけないのにどうするのかしら?」
痛ましい目で見る一群、どうやらメルヘンではなく俺がメンヘルだったようだ。
引いてきたとは言えどケツはまだ痛い、というより周りが引いた。
あぶそりゅーとなんたらふぃーるどな距離関係、一定間隔を保ちながら俺を動物園の珍獣の如く眺めている連中をかき分けながら迫る影ひとつ。
初見な人物、いや待て、この夢でまだ知ってる人物に会ってないと、それより聞いてくれ、この背筋をつたう冷たい汗はなんだろう。
心は知らない、体は知ってる、あれ?何かエロくね?一人ツボにはまってケタケタ笑ってると、引っ叩かれた。
77 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 02:54:11 ID:sCvKnpPg0
「ロンリーロンリー、ここ狭くね?」
三階からダイブした俺を心配もせず引っ叩いたご婦人はなんとまあ俺のママンだったのさ、いや待てそれおかしいとか今無しで。
どうやら俺は俺じゃなくなったようなのだ。幸いにも連中は中身が変わったことに気付いていない、逆に危うい立場に居るらしいんだけどな。
なんつーかまあ、あれですよ、俺っつーか、俺じゃねーっつかー、この肉体の持ち主さんは勇者に成る者らしく国からがっぽがっぽ援助してもらってたらしいのね。
下手な貴族も裸足で逃げ出すような巨大なあぱーとめんとに家族三人で住まうなんて基地外じみたことができるのは俺以外に世界の脅威に対抗し得る勢力がないってことで。
スーパーお説教タイムで数時間ガミガミーなら俺でも耐えるさ、でもね、女の人泣いてるのね、うわー俺でも心を痛めるわさ。
そんでその後、豪邸の地下、魔法の訓練室にマジ監禁、真っ暗闇で時間の感覚なんてもうないです。
そろそろ出してくれないとこのまま発狂コースですね、いや、周りから見たら十分黄色い救急車なわけですが。
/
部屋から引きずりだされた俺は馬車にぶち込まれドナドナ気分、上半身裸でへるめっぽなムキムキマッチョな屈強お兄さん怖。
がたごとがたごと、止まれば死刑執行待ち。
/
人を運んでいるとは思えない扱いで俺は王城の赤い絨毯の上をずりずり、摩擦で何かズボンがすけすけで痛いです。
乱暴に投げ飛ばされ王の目前、洒落にならないオーラを纏ったご老体のつんざくような視線に俺素で土下座。
「勇者サードよ、魔王バラモスを倒す旅に出る時が来たようだ。 ここに50ゴールドを用意した。 それで装備を揃え早々我が前から立ち去れよ」
怒気の孕んだ言葉、悪意としか思えない50ゴールド、あれだけでかい家を用意していながらこの落差。
ビビった俺は文句も言えないままに後方へと向かって思いっきり前進した。決して逃げたわけではない。
78 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 02:54:53 ID:sCvKnpPg0
たかが50ゴールド、されど50ゴールド、これが全財産であり、他に装備と言えば寝巻きぐらい。
頼る家もない、50ゴールドじゃ冒険者ギルドと言う名の派遣会社で仲間を雇うこともできない。
ぶっちゃけ今さっき気付いたんだけどこれってドラクエVなんだよね、とりあえず服を買って着替えて薬草調達……武器はその辺で拾う。
何でも風の噂じゃ勇者の特権たる屋内突入強制徴発、別名押し込み強盗は取り消されたらしくもしやって見つかったら首チョンパ。
そして国中の魔法使いを掻き集めて魔法付加された羽のように軽いフルプレートアーマーと薙ぎ払えば鋼鉄の壁さえも切り裂く剣は宝物庫の主と化したらしい。
最悪なことに噂がもう街中に流れているらしくさっさとアリアハンを脱出しなければ命が危ないみたいなのだ。
宿に泊まるなんて論外、野生児的な生活を強いられるらしい。
しかし何がモラルの欠如かと言えば俺の体まだ十にようやくとどくかどうか、ってところなんだよね。
こんなガキを外にほっぽり出すなと思うけど連中の怒りはそれほどのことだったらしく、はあむなしい。
「まあ最終兵器の勇者が使い物にならんとなるとぷっつん行くわな」
あー晩飯どうしよと嘆きながらとぼとぼ道を歩く、お情けに貰ったレンジャー図鑑が重い……でもこれガチで生命線。
とりあえずキノコは食べちゃ駄目ってことだな、道具屋で買った水筒に井戸で汲んだ水を入れたし一日は持ちそうだ。
「そういや朝飯も食ってないし昼飯も食ってない……」
勇者は多少じゃ死なないらしく、1ヶ月ぐらいの絶食なら余裕だそうだ、それ以上は精神が持たずに発狂だってさ、ありえねー。
それでもお腹はすくし凄くひもじい、さっきキノコは駄目と言ったが毒ぐらい食らっても最終的に外的なダメージを受けなければどうってことないらしい。
最悪キノコを食べて繋げばいい、道で転んだら即死だけどな!
79 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 02:55:33 ID:sCvKnpPg0
「ぷにぷにー」
可愛く言ってみたけど凄いグロい、青い半透明ゼリー、通称スライム、俺の初めての敵、きっと食べられない。
取りあえず用意していた拳大の石を二、三個投げつけてみる。
「!!!!!!!!!」
ピギィィィィとかそんな感じの鳴き声?人語じゃちょいと表しにくいけどキレたみたい、まずい。
成人男性を軽く凌駕するポテンシャルとはいえど基本性能はガキ、レベルは底無しに上がるけどレベル1。
魔法の訓練とかやってたみたいだけど俺そんな記憶ないし使えない、マジ宝の持ち腐れ。
「かわいそうだけど俺の糧になってくれ、いや食わないけどな」
獣道にはわりと武器になりそうなものが転がってるんで助かるなーとか思ったり。
岩でぺちゃり、と。
「!!!!!!!!!」
声にならない断末魔、心にチクチクするけどたくさん殺して経験値をたくさん集めないと俺が死ぬ、さらばスライム、そしてこんにちはスライム。
仲間の最期に駆けつけ大軍来たれ、何かカラスの軍勢もやってくる始末……。
「あー焼き鳥食えそうだ、でもアイツら俺の屍突きに来たんだよな、おい」
撤退!撤退!撤退だ!!
/
ライターがなければメラがあるじゃない、俺使えないけどな!
「薬草不味ぃ、ちくしょうメラを覚えないことには死活問題だぜ」
さすがに生肉を食べる習慣はない、それになんだろう、火を通せば何でも食えそうな気分になれるのは。
「ばっちいの殺せるけどこの世界の何が悲しいって毒、毒、毒、毒物多すぎ、でも食える魔物が居るのはラッキー、なんか二足歩行なのも居るけど誰だ試した美食家は」
ロールでプレイングなゲームではこんな悩み無かったんだけどなーと乾いた笑い。
「しっかし恐ろしいのはゲームと大幅に時間軸がずれてるってことだ、知識は役に立たない、緒王連合の助けは借りれそうにないし……ロマリアにカンダタ一味が居ないのは幸いか」
いや、あれが無ければ王の信頼も買うことはできない、ジリ貧だ。
80 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 03:01:35 ID:sCvKnpPg0
「どこかで仲間を調達できれば最良なんだが金も無ければ王の後ろ盾も無く、ガキは人を雇う資格はない」
ぶっちゃければ世界に搾取されるとはいえ勇者は王を除けば貴族すら凌ぐ特権階級だ、つーか、神授な時点で王より偉い。
発生率が凶悪に少なく、しかも二代続くとなれば運命を感じずに居られないのが世の定め、裏切られちゃかなわんと今まで贅沢していたわけだこの体は。
殆ど絞っていない体、子供とはいえ勇者とは思えない、実を言えばていのいい厄介払いだったのかもしれない。勇者とはそれほどまでに俗物であるらしい。
「塔に登って鍵を回収しその足で魔法の玉を……でも勝手に入るのは王命により禁じられるか、あの高性能爆薬がなければ大陸からの脱出は難しいぞ」
航路は魔物が溢れ、しかも船数が減っているとなるとチケットの値段が昂騰しているし、子供の一人旅は怪しまれる。
「旅の扉以外に選択肢がない、下手をすれば王軍すら敵に回す覚悟か、最低の勇者じゃねえか」
さすがに海路も分からず風も読めず星なんてさっぱりな状態でイカダを浮かべるのは避けたい。それは別の意味で勇者すぎる。
「時間の調整しかないよなあ、その頃にはほとぼりも冷めてるだろうし動きやすいだろう。 現代と違って人外魔境も多いし姿を隠すには……」
81 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 03:04:08 ID:sCvKnpPg0
ん、今なんて言った?一人言が多い今日この頃だが、自分でなんかありえないことを言った気がする。
「現代? そうだ現代だ、俺の居た場所だ、色々ありすぎて忘れかけてるじゃねえか、どういうことだよ」
魔王?知ったこっちゃねえ、ルビスさえ本気になりゃあなんとかなんだよこんなことは、畜生、そうだよ、帰るんだよ俺は。
「しかしどうすんだよ、最悪神龍まで駒を進めなきゃならんのか?」
それこそ本当に最悪だ、あそこまで到達するのに後何年かかる?俺に思い浮かぶ手段はもっとバッドなことにそれしかない。
畜生、今日何度も呟いた悪態、その度に言葉が軽々しく思えるが逆に深まるのが最悪。
つーか順応してきたのが嫌過ぎる、そうしてもっと最悪があった。
「そういやドラクエ最後にやったのいつだ? 細々としたイベントなんてもう覚えてないな」
原作から脱線しても分からない、そうだ、この時点ですでにゲームと違う、一昼夜で行けるはずの村すら辿り着かない。
マップの密度からしておかしい、市街地戦を想定した入り組んだ迷路のような街だ、さすが城下。
「まあ、何とかなるだろう、多分。 なってほしいなホント」
プロローグ すりりんぐぶれいぶはーと 完
82 :
◆I15DZS9nBc
:2008/01/27(日) 03:39:38 ID:sCvKnpPg0
間幕
目が覚めると横に裸の男が居た。
「……ちょっとお酒が残ってるのかな?」
悪い冗談にしか思えない、僕が同性と一緒に一夜を共にするなんて何かの間違えに違いない。
横ですやすや眠る彼は無邪気そのもの、でも起こそうとは思わない、だってこれは夢なんだから。
たとえ夢であっても万が一男に掘られるなんてことはあってはならないから僕は静かにとこから出てスーツに腕を通す。
やや古めかしい感じが良い味を出してるって思ったけど気分は最低。
カウンターのおじさんもやっぱり同じ風な趣でここはそういうところなんだろう。
このホテルは食事は出さないらしく朝食は……。
「ここどこ?」
道路、じゃない、正真正銘の田舎道、石畳ですらなく土。
舗装こそされているけど踏み慣らされてている場所を除けば凹凸が痛々しい、管理者は何をやっているのか脇は草がぼうぼうと生えてる。
通好み、と言えば聞こえは良いけど多分怠慢。
僕は昨日の晩はこじゃれたバーでお酒を嗜んでいたと思う。
と言うのもどうも記憶が曖昧でよく分からない。
でも空気の良さは買う、清々しい、どうも都会の雰囲気は僕には合わないので良い感じだ。
「さて、駅はどっちだろう?」
とぅびぃこんてぃにゅうど
83 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/27(日) 13:32:30 ID:S84r6+iV0
> どうやらメルヘンではなく俺がメンヘルだったようだ。
和良た
荒削り?だけど勢いがあって、先が楽しみです。
84 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/30(水) 00:30:04 ID:BsEq0GKsO
保守
85 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/01/31(木) 21:25:28 ID:ozCYHK120
文体が面白いな。
一気に読めるし読ませてくれる。
作者の知識もそれなりにあると見える。
楽しみ。
86 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:09:07 ID:EMeSbvNg0
―中指で挑発―(
>>65-70
)
サラボナに行ったお師匠様が帰ってきた。
僕のいるオラクルベリーとサラボナって結構遠いけどすぐに帰ってこれるんだ。
ルーラって便利だね。
「これから火山に行くから暑さに弱いガンドフを預かって欲しいんだ。」
ガンドフは顔の真ん中にひとつ目がある毛むくじゃらのビッグアイっていうモンスターだ。
「うわー! もふもふだね!」
僕はガンドフに飛びついた。
「ううう……」
「どうしたのトモノリ?」
「……獣くさい。」
「火山というのは死の火山じゃな。厄介なところに行くことになったの。」
モンスター爺さんが心配そうに言う。
「これも天空の盾を手に入れるためです。」
サラボナにはすごいお金持ちがいて、その人が家宝にしている盾が欲しいんだって。
「気をつけるのじゃぞ。あそこにいるモンスターはかなり凶悪じゃ。」
火山に行くってだけでも大変なのに悪いモンスターもいるんだ。
「お師匠様、そこに行かなきゃ駄目? そんなに盾が欲しいの?」
「確かに盾は手に入れたい。でも……いや、何でもない。」
あれ。なんだか歯切れが悪いね。何か隠しているのかな?
87 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:10:09 ID:EMeSbvNg0
お師匠様が火山から戻ってきた。しかもまたモンスターを仲間にしたんだって。
「爆弾岩のロッキーだよ。」
ロッキーは大きな石のモンスターだ。生き物なのかな?
「こやつはメガンテというそれはそれは恐ろしい技を使うのじゃ。」
「わー、すごーい! 見せて見せて!」
「馬鹿もん! 恐ろしい技って言ったじゃろ!」
……モンスター爺さんのけちぃ。
「メガンテって言うのは自分の命と引き換えに敵を倒す技なのよ。」
イナッツさんが恐ろしい技の正体を教えてくれた。
「こんなところで爆発されたらひとたまりもないぞ。」
「見せてなんて言ってごめんねロッキー。使ったらロッキー死んじゃうんだよね。」
「知っていたらそんなこと言わなかったよね。大丈夫だよトモノリ。」
「それで、このロッキーを預かればいいのか?」
ロッキーは預けないんだって。馬車に入れて連れて行くんだ。
お師匠様、今度は船に乗って冒険するんだって。
なんだか落ち着かないようなんだけど気のせいかな?
88 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:11:13 ID:EMeSbvNg0
お師匠様が結婚することになった。
僕もその結婚式に招待されたけど寝耳に水だったよ。
火山や船での冒険は結婚するための試練だったんだって。
僕と同じく結婚式に招待されたヘンリーさんとマリアさんが迎えに来てくれた。
「結婚のために危険な冒険をするとはあいつもやるなあ。」
「それがね、何故か最後にお嬢様と幼馴染とでお師匠様をめぐって戦ったらしいよ。」
修羅場だったのかな。うーん、僕もその場にいたかったね。
「俺の聴いた話と少し違うぞ。」
「あいつどんなプロポーズしたんだろうな。」
親分が茶化すように言った。
「そう言う親分はどんなプロポーズしたの?」
「ど、どうだっていいだろ。」
柄にもなく照れちゃってるよ。
「どんなプロポーズだったのマリアさん?」
親分がわーわー大きな声を出しているけどマリアさんは気にせず答える。
「白馬に乗って迎えに来て結婚してくれって言ったんですよ。」
これはまたストレートだね。
「私、プロポーズだって気づくのに3分くらいかかりました。」
強いねマリアさん。
結婚式が始まった。なんだか緊張しちゃう。
綺麗なお嫁さんだね。純白のヴェールを被って神秘的でさ。
お嫁さんと2人並んでお師匠様幸せそうだよ。
いいよね。憧れちゃうよ。
ホントお師匠様良かったね。
僕、うれしいはずなのに涙が止まらないよ。
89 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:12:23 ID:EMeSbvNg0
お師匠様の奥さんの知り合いが僕のいるオラクルベリーの近くにいるらしい。
その人に結婚の報告をするためにお師匠様たちは夫婦で会いに行きたいんだって。
「それならさ、その間モンスターたちは僕が預かるよ。」
「いいのかい?」
「うん。新婚旅行だと思ってゆっくりしてきなよ。」
僕は彷徨う鎧のサイモンをつれて夜の町を散歩する。
「夜道を散歩しながらの一服は最高だね。」
「歩き煙草は駄目だよ、サイモン。」
「ああ、トモノリは煙草が嫌いだったな。」
「誰がそんなこと言ったの?」
「お師匠様だよ。お前のお師匠様だ。」
あれ、僕そんな話したっけ?
「ベネット爺さんの家から出る煙を嫌がっていたろう。だから煙草も嫌いなんだろうって。」
お師匠様そんなこと覚えていてくれたんだ。
「トモノリが煙草嫌いだから私は預けられない。預けるモンスターは大人しいのばかりだ。」
「そういえばホイミンもガンドフも大人しいね。」
うーん。でもそれじゃ僕、お師匠様の旅の助けになってないんじゃないかな?
旅がしやすいようにモンスターを預からなきゃいけないんだよね。
90 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:13:25 ID:EMeSbvNg0
「トモノリは大切にされているんだな。」
「それは僕が別の世界の人間だからだよ。」
昔、別の世界から来た人が活躍したから同じことを期待してるんだよね。
「伝説ではその別世界の人間は滅んだ村を復活させたなんて話も残っているな。」
「もしかして魔法使いか宇宙人だったのかな。」
「天空人説というのはあったな。どうも別の伝説と混ざったようだが。」
「僕とは大違いだね。僕……何もできないよ。」
「いや、何もできないなんてことはないさ。」
サイモンは僕を慰めようとしてくれようとしたみたい。
僕とサイモンはしばらく黙ったまま散歩を続けた。
「実を言えば、その謎の人物は何もしなかったという説もある。」
「何もしなかったのに伝説になってるほうがすごいよ。」
「はっはっは。まあ、本当のところは良く分からないのだ。」
まあ、昔の話だからね。
「このサイモン、守るべきものを守れず死に、その悔恨の念が鎧に宿ったモンスターだ。」
「サイモン?」
「私はただただ彷徨うしかなかった。我が主、お前のお師匠様に出会うまではな。」
「お師匠様に?」
「ああ、あの人に出会うことで私は救われ、生きる道を見つけたのだ。」
「そっか。お師匠様はすごいね。」
モンスター使いってかっこいい。でも僕は何もできないや。
「僕も頑張らなきゃいけないね。」
「うむ。お前のお師匠様も今頃頑張っているころだろう。」
え、何を?
91 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:15:00 ID:EMeSbvNg0
「だけどな、私はトモノリにも救われたのだ。」
「ええ? 僕、何かした?」
「わが主は多くのモンスターを仲間にしている。お前のために。」
「僕のため?」
「お前が寂しくないように、お前が退屈しないように、な。」
……やっぱりそうなんだ。
「だからお前がいなければ私はまだ彷徨い続けていたかもしれない。」
「うーん。それって何か無理やりじゃない?」
「そう考えたほうが人生楽しいってことさ。もっとも私は人間ではなく鉄の塊だがな。」
「鉄の塊じゃないよ。サイモンって熱い魂を持ってるもん。」
「はっはっは。うれしいこと言ってくれるじゃないか。」
おかしいよね。ホイミンやサイモンがモンスターって呼ばれちゃうのさ。
「そうそう。それからな、お前はお師匠様を救っているのだ。」
「えええ?」
「トモノリがいてくれたおかげでずいぶん助けられたと言っていたぞ。」
「お師匠様がそんなことを? でも僕何もしてないよ。」
「どういうことか、直接本人に聞いてみるといい。」
「うん。そうするよ。」
92 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:16:01 ID:EMeSbvNg0
次の日の朝、お師匠様が帰ってきた。
僕は早速本当に僕がお師匠様を助けたのか聞いてみた。
「初めてトモノリと会ったとき昔の自分と重ねて同情していたんだ。」
「お師匠様も子供のとき知らないとところに連れて行かれたんだよね。」
「だからこそ助けてやりたいと考えていた。でも、いつの間にか逆に助けられていたんだ。」
「僕、何にもしてないよ。」
「そんなことないさ。この結婚だってトモノリの言葉で決めたようなものだよ。」
「僕がいなくてもお師匠様は結婚していたと思うよ。でも、僕が助けていたらうれしいな。」
「いつまでも助けられるばかりじゃないさ。人と人の関係なんて移ろい行くものだ。」
「関係が変わっちゃうのって、なんか怖いよね。」
「そんなことないさ。敵だったものが味方になることもあるんだよ。」
「あ、そっか。モンスター使いってそういうことができるんだ。」
やっぱりモンスター使いってすごいね。
「お師匠様、僕モンスター使い見習いだからどんなモンスターでも面倒見るからね。」
「うん。いっぱい仲間にするよ。」
「どんなモンスターとも仲良くなるから大人しいモンスター以外も遠慮なく預けてね。」
「よし、いろんなモンスターを預けるから頑張ってね。」
お師匠様はそう言うとにっこり笑った。
「うん! そういえばお師匠様も昨日の夜は頑張ったんでしょ? サイモンが言ってたよ。」
その後何故かお師匠様はすごい剣幕でサイモンを呼びつけた。
「サイモン。後で話がある。」
サイモンはホイミンと一緒にいる。
「ああー! お師匠さまぁー! サイモンが僕のホイミン取ったぁー!」
「ホイミンとは旧知の仲でね。」
ううう……サイモン嫌い。よく分からないけどお師匠様に怒られるといいよ!
93 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/01(金) 23:17:07 ID:EMeSbvNg0
お師匠様は奥さんとモンスターをつれてまた旅に出た。
今度は船旅だって。どんなところに行くんだろう。
「お師匠様、早くお母さんが見つかるといいわね。」
イナッツさんが僕に話しかけてきた。
「そのためには勇者様を見つけなければならないのよね。」
勇者様を探すために天空の盾が欲しかったんだよね。
「勇者様ってどんな人なの?」
「地獄の帝王が復活するとき生まれて世界の希望となる存在なんですって。」
「なんだかすごい人だね。」
「かつての勇者様もその存在をめぐり多くの人や魔物の運命を変えたらしいわ。」
「今度の勇者様もお師匠様や、いろんな人の人生変えてるよね。歴史は繰り返す、だね。」
歴史は繰り返す。
男の人と女の人が結婚するってこともずっと繰り返してきたんだよね。
そう考えると何か不思議な気がするよ。
でもお師匠様は奥さんといちゃついてる場合じゃないよ。
早く勇者様を探し出さないとね。
僕にもっと力があればその手伝いができるけど、僕にそんな力はない。
でも、僕はモンスターの世話をすることで助けるよ。
僕はお師匠様の弟子、モンスター使い見習いなんだから。
――続く
94 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/01(金) 23:28:16 ID:5rk//Xqw0
オラクルベリー近辺にいる奥さんの知り合いって誰だろな。
お師匠様…ゆうべは おたのしみでしたねwwww
95 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 01:16:14 ID:4/Uohp93O
奥さんの知り合いは建て前で、本当は2人っきりでお楽しみだったのでは
96 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 12:34:33 ID:UM7KsvV60
サイモンの過去もハードだなぁ・・・・。
魔物を仲間にするってことは、相手の人生(魔物生?)も救うってことなんだね。
正直感動した。
> 「うむ。お前のお師匠様も今頃頑張っているころだろう。」
wwwwwwwwwww
結婚相手はビアンカさんかな。フローラさんかな・・・。それともわからないほうがいいのかな。
97 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 13:20:16 ID:3K9fN62V0
>>93
乙でした。続きたのしみ。
>>94-95
普通にアルカパに行ったのでは?
ビアンカの故郷だし。
夜のアルカパ限定イベントあるしね。
98 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 14:33:25 ID:dnWsodWF0
南にはフローラが世話になった修道院があるし、
その辺は読む人が心の嫁を当てはめてくれ、ってスタンスなんじゃないか。
99 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 14:47:58 ID:OuwIhLj/O
>>98
俺の嫁がヘンリーと結婚してしまっている件
100 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/02(土) 22:55:05 ID:V4/NGSaa0
>>98
おお。そうだ。
作者巧いな。
何にしても乙
101 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/04(月) 13:56:45 ID:GiBd/4f/0
ほす
102 :
◆Tz30R5o5VI
:2008/02/04(月) 16:27:18 ID:g6AZuAXOO
偶然かもしれないがサイモンってうちのパーティーにもいるんだが
103 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/04(月) 20:57:26 ID:Qeis4IFo0
なんだこいつ…
104 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/06(水) 22:34:40 ID:GrfkZLFCO
保守
105 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/07(木) 19:24:24 ID:u0T30dmO0
昔あった、「俺が3勇者だったら」というスレに投げ込もうとしていたが
先の展開でちょっと詰まって放っていた書きかけの文章を落としてみる。
「目が覚めたら勇者だった」ではなく、あくまで「俺が勇者だったら」なので
このスレの趣旨とはちょっと違っているが、そこのところはご容赦を。
もう16になる日だというのに、お母さんに起こされて目覚める俺。
そう、今日は旅に出るんだよな。
昨日は遠足気分で準備していて、なかなか寝付けなかった。
いつもよりちょっと豪華な朝食を食べて、おじいちゃんには自信満々な言葉をかけて外に出る。
さて、まずはお城へ行かなきゃならないわけか・・・
・・・途中までお母さんがついてくる。
もういいって、今から外へ旅立とうって言うのについてくるなって。
と思いつつも何もいえない俺。
さすが城へ続く道はきれいだな、と感心しながら歩いてたら、門兵にじろじろ見られた。
きょろきょろしてて挙動不審だったらしい。
身分を明かしてなんとか中に入れてもらうも、やっぱりきょろきょろ。
今度は物珍しさより、階段を上れば国のトップがいるんだ、と思うと緊張して
なかなか前に進めなかった。
意を決して階段を上ると、玉座まで一直線の道になっていた。
ここまで来たら後はきびきび動くしかない、全身の筋肉がこわばる。
・・・あとはあまり覚えてない、緊張の極致だったらしい。
大臣がちょっと胡散臭そうな目をしていたのは覚えてる。
それと「まずは酒場へ行け」なんて言われていた記憶もある。
うん、まずは言われたとおり見に行ってみよう。
106 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/07(木) 19:25:17 ID:u0T30dmO0
こわごわと酒場の扉を開ける。
当たり前だけど酒臭い、少しうらぶれた雰囲気がする。
奥にいるおかみさんがルイーダさんだったと思うけど、なんだか話しかける勇気が湧かない。
テーブルでお客さんが話しているのを横目に見ながら、所在なげに2階へのぼってみる。
ここはどうやら登録所らしく、一階よりは多少清潔になっていた。
張り紙をなんとなく読んでから、カウンターのおじさんに話を聞いてみる。
ふーん、仲間を探すにはここが一番ってことか・・・
基本的なことも分かっていない俺。
多分このおじさんは心の中で笑ってるんだろうな。
結局俺はなにもせず酒場を出た。
仲間と旅するなら、俺がこんなひよっこじゃいけない。
もっと修行を積んで、旅の知識や仲間を守れる強さを身につけてから戻ってこよう。
手元には仲間用の装備と少しの資金があるけど、装備は袋に入れて薬草だけ買い、外へ出る。
はじめて出る外。
魔物が危険だ、お前はもっと大きくなってから、と言われて今まで一度も出る事はなかった。
でも剣の修行は一応マジメにやってたし、なんとかなるだろう。
目の前に広がる大平原が心地いい。
107 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/07(木) 19:25:54 ID:u0T30dmO0
歩くのにも慣れてきた頃、不意に草陰に青いものが見えるのに気づいた。
魔物・・・?こんなに小さいのが?
どんなのか確かめてみよう、と少し近づいてみる。
不意に、その青い塊が俺の頭めがけてすっ飛んできた。
思いっきりボールを顔面に投げつけられたような衝撃を受けて地に突っ伏す俺。
やはり魔物だ、立って剣を抜かなければ・・・と思うが息ができない、前も見えない!
顔に張り付かれたようだ、しかも足まで噛みつかれていて立つ事もできない。
くそ、このまま切り裂いてやる、と剣を抜いたら何か後頭部に激痛が走った。
構わず頭に張り付いた奴をぶったたくが、こんな姿勢じゃ力が入らない。
それでも気合を込めてもう一度斬りつける、剣が頭にはめた環に当たって甲高い音を立てる。
だが避けられたわけではない、顔面を覆っていた青い塊からは力が抜けていった。
左手でぬぐってようやく立ち直す、後頭部が風に触れるだけでも痛む。
息が出来るようになり、視界も戻ってよく見ると、俺は四匹のスライムに襲われたようだ。
こんな雑魚に俺は苦戦しているのか――
なんだかヤケになった俺は、剣術の基本も忘れて力任せにめちゃくちゃに斬りつけた。
ちゃんと戦えば一撃で倒せる相手だった。
108 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/07(木) 19:28:57 ID:u0T30dmO0
完全に殺して剣を収めると、改めて怪我を確認する。後で化膿すると大変だ。
手足の傷は大したこと無いが、後頭部の傷はひどく熱い。
倒れた時に剣の位置がずれて、抜く時にもろに切ってしまったらしい。
それに一匹目を斬った時もほっぺまで切れていたらしく、じんじんする。
・・・触りたくない。
我慢して手当てをした後、その日はもう宿屋に泊まる事にした。
家に戻ってもいいけど「スライム4匹に苦戦して負傷した」とはとても言えなかった。
体の痛みもひどいが、それ以上に今日はなんだかとっても疲れた。
夜、まだ痛む傷を庇って寝返りも満足に打てなかったが、深い眠りについた。
あれから一週間、俺はまだ宿に泊まっていた。
外には一度も出ていない。
怖いのか・・・そんなわけはない、ただまだちょっと傷が痛むだけだ。
けど玉に街中を通るお母さんを見るたび思う、このままじゃまずいよなって・・・
でも傷が痛むのも事実だ、しようがない。
――やっぱり、怖いのかもしれない。
そうして旅立ちの日から、一週間と一日が過ぎた。
宿代が工面できなくなったので仲間用装備を売りに出ると、お母さんと出くわしてしまった。
◆ THE END ◆
推敲も途中だったので、一部文章が変かと思いますが、所詮読みきりとスルーしていただければ。
続きを書く予定はありません。
キリもいいし、今更どう続けようとしていたか思い出せもしない。
109 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/07(木) 20:43:03 ID:MqLRkqYO0
そうだよな。
一晩とまったくらいじゃ、回復しないよな。
ママンもびっくり。
久しぶりに見る息子は顔面に大きな傷、後頭部がざっくり・・・。
110 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:05:14 ID:FRGFVRny0
―ひとさし指―(
>>86-93
)
「モンスター使いとはモンスターの邪悪な心を打ち払うことができる存在なのじゃ。」
僕はモンスター爺さんからモンスター使いの講義を受けていた。
「これはある一族だけが持つ力だと言われておる。」
「ふーん。お師匠様ってその一族の人なんだね。」
「おそらくはな。モンスターを仲間にできる者は目が違うのじゃよ。」
そうなんだ。今度お師匠様の目をじっくり見てみよう。
「あ、それじゃ僕がいくら頑張ってもモンスター使いにはなれないってこと?」
「現状ではそうじゃな。じゃが案ずることはないぞ。」
「何かいい方法があるの?」
「モンスター使いが仲間にしたモンスターの世話をすることをやればよいのじゃ。」
それってモンスター爺さんのことだよね。僕が今やってることでもあるけど。
ん?
「あー! 今気づいたけど僕のやってることってモンスター爺さん見習いじゃないか!」
そうだよ。何で気づかなかったんだろう。
「これモンスター使い見習いじゃないよ! 僕が爺さん見習いっておかしいよ!」
「落ち着け。モンスター使いもモンスター爺さんも似たようなもんじゃ。」
全然違うよぉ……
「それにな。その一族の者でなくてもモンスターを仲間にする方法はある。」
「え、それを早く言ってよ! どうすればいいの?」
「魔王がいなくなればよいのじゃよ。魔物が邪悪な心を持ったのは魔王の影響じゃ。」
111 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:06:42 ID:FRGFVRny0
「魔王っていうのがいなくなればモンスターが大人しくなって仲間にできるの?」
「ま、そういうことじゃな。」
「魔王って地獄の帝王のことなの?」
「いや、魔王は地獄の帝王復活を利用して魔物たちを統率しておるだけなのじゃ。」
うーん。ややこしいね。
「かつて地獄の帝王が復活し勇者が誕生したときも魔王が現れたというぞ。」
「どんな奴だったのかな。」
「何でも1度は勇者を倒したといわれている。」
「ええー! 勇者様やられちゃったの?」
「それは勇者の影武者だったらしい。あるいはキツネに化かされただけなんて話もある。」
え、キツネに化かされたの?
「もしかして魔王って結構お茶目な人なのかな。」
「いや怖い存在じゃ。恐ろしいモンスターたちの親玉なんじゃからな。」
「モンスターっ恐ろしくないよ。いい子ばっかりだもん。」
「ここにいる者はそうじゃ。じゃが野生のモンスターは恐ろしい存在なのじゃ。」
ホイミンやガンドフを見ているととてもそうは思えないんだよね。
「何度も口を酸っぱくして言っておるが野生の魔物がいる町の外に出てはいかんぞ。」
「大丈夫だよ。僕インドア派だからね。それにしてもさ……」
「なんじゃ?」
「口を酸っぱくしてって妊娠したみたいだよね。」
「妊婦は酸っぱいものが欲しくなるだけで口が酸っぱくなるわけじゃないわい。」
あ、そういえばそうだね。
「まったく。どうやったら爺さんが出産するというのじゃ。」
「うーん。口から卵を産んで。」
それって口が酸っぱくなりそうだよね。
「わしゃ化け物か。わしゃモンスター爺さんであってモンスターではないぞ。」
「はーい分かってます。本気で言ってるわけじゃないよ。」
「本気で言っていたらわしゃ泣くぞ。」
とにかく僕はモンスターの世話を頑張ることにするよ。モンスター使い見習いとして。
112 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:07:59 ID:FRGFVRny0
「よし、こんなもんかな。」
僕はイナッツさんとモンスターたちの部屋を掃除していた。
「ご苦労様。きれいになったわね。」
「うん。でもちょっとにおいが気になるよね。」
ここって地下室だからモンスターのにおいが篭るんだよね。
「ねえ、いいものがあるわ。あれよ。」
そう言うとイナッツさんは小さな陶器の瓶を指さした。
「ここに花やハーブのエキスを入れて香り楽しむのよ。」
「アロマセロピーみたいだね!」
「このエキスを布に染み込ませて体を拭けば香水代わりにもなるわよ。」
そうなんだ。
「でも食べたら毒だから口に入れちゃ駄目よ。」
「はーい。口を酸っぱくして言わなくても大丈夫だよ。」
小さな瓶はほのかにいい香りをしてたてている。
「あ、これを使えばガンドフの獣臭さも取れるかな。」
僕は瓶のふたを開けた。これを布に染み込ませて体を拭けばいいね。
「えーと、ただの布きれがどこかにあったよね。」
どこだっけ?
「あったあった。」
いやー探しちゃったよ。布は部屋の外に干してあった。
「あれ、ホイミン?」
僕がモンスター部屋に戻るとホイミンが倒れていた。
「ホイミン! ホイミンってば!」
「ホイミンは大丈夫?」
「峠は越えた。もう心配はないぞ。今眠ったところじゃ。」
ホイミンは間違ってアロマのエキスを飲んじゃったらしい。
でも無事で良かった。本当に良かった。
ごめんねホイミン。僕の不注意で大変な目にあわせちゃって。
僕はその夜ずっとホイミンの看病をした。
113 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:09:34 ID:FRGFVRny0
次の日。お師匠様が来た。タイミング悪いよ……
お師匠様は今まで砂漠の中にあるお城にいたんだって。
どうしよう。僕怒られちゃうかな。
でも、仕方ないよね。僕が悪いんだもん……
ううう……お師匠様怖い顔してる気がする。
お師匠様の目をじっくり見ようと思っていたけど、とてもできないよ。
「今日は大事な話があるんだ。」
何だろう?
ひょっとして「お前は破門だ!」って言われちゃうのかな……
僕が心配している中お師匠様は重い口を開いた。
「もう、お師匠様っていうのをやめて欲しいんだ。」
ああああ……やっぱりそうなんだ。
お師匠様、僕を捨てないでよー。
僕この世界じゃほかに頼る人がいないんだ。
もし元の世界に帰れなかったら僕は、僕は……
「あの、あの……これから、僕は、どうしたら……」
「これからはさ、お父さんって呼んで欲しいんだ。」
114 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:10:15 ID:FRGFVRny0
「え?」
「いやさ、やっぱりお父さんがいないのは寂しいんじゃないかと思ってね。」
「ええと……」
「トモノリが元の世界に帰るまで、お父さんの代わりをさせてほしいんだ。」
「私のことはお母さんって呼んでね。」
目の前の夫婦は2人ともにっこり微笑んでいる。
「トモノリいつもモンスターの世話をしてくれて、ありがとう。」
「でも僕、ホイミンを危ない目にあわせちゃって……」
「ちょっと不注意だったけど、そのあと一晩中つきっきりで看病してくれたんだよね。」
「だけど僕きっとホイミンに嫌われちゃったよ……」
「そうかな? おーいサイモン。」
お師匠様が呼ぶとサイモンがホイミンをつれてやってきた。
「ホイミン! もう起き上がっても大丈夫なの?」
「ああ、もうすっかりよくなったようだな。」
ホイミンはふわふわと僕のほうに近づいてくる。
「やれやれ、ホイミンは俺よりトモノリのそばほうがいいのか。」
サイモンがちょっと寂しそうに言った。
「これでもホイミンに嫌われてると思うのかな?」
嫌われちゃうかと思ったけど、そうならなくて良かった。
「ね、お父さんとお母さんって呼ぶこと考えておいて。」
115 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:11:11 ID:FRGFVRny0
お師匠様と奥さんがお父さんとお母さんになってくれる。
かっこいいお父さんと綺麗なお母さん。
この世界にいる間だけだけど。
……でも、僕いつになったら帰れるんだろう。
こっちにお父さんとお母さんができたから、もうしばらくいてもいいけどね。
もし、このままお師匠様に子供が生まれなかったら本当の子供になっちゃおうかな。
そのためにはもっといい子にならなくちゃね。
そんなことを考えているとサイモンが頼みごとをしてきた。
「おーいトモノリ。煙草を買ってきて欲しいんだ。」
「煙草? お使いだね。いいよ。僕、行くよ。」
「お、ずいぶん素直だな。」
いい子になるって決めたんだもん。
「でもさ、煙草はやめたほうがいいよ。」
「そう思ってもやめられないものなのだ。それに鎧だから健康の心配ない。」
それもそうだね。あれ、でも、そもそもどうやって煙草を吸っているんだろう?
「だが我が身を案じることがないわけじゃないぞ。」
「そうなの?」
「戦闘中ロッキーが攻撃を食らうとメガンテしないかとひやひやする。」
「そうなんだ。ロッキー大丈夫かな。」
「うむ。あれは鎧の身にとっても心臓に悪い。」
「大変だよね。あ、それじゃ僕、お使いに行ってくるよ。」
「そうだ。ついでにレモンを買ってきてくれないか。」
「レモン? 体でも磨くの?」
「違う違う。奥方様が、何か酸っぱいものを食べたいと言っておられたのだ。」
116 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:13:27 ID:FRGFVRny0
「ねえ、お師匠様。僕やっぱりお師匠様のことお師匠様って呼ぶよ。」
「お父さんって呼ぶのは嫌かい?」
「なんだかさ、やっぱり恥ずかしいよ。」
「そっか。可愛い子供ができると思っていたんだけどちょっと残念だね。」
「あなた、無理を言っては駄目よ。」
「ごめんね。お師匠様。おかあさ……おかみさん!」
「え、おかみさん?」
「そう、お師匠様の奥さんだからおかみさんって呼ぶことにしたんだ。」
子供になれなくってごめんなさい。でもさ、お師匠様の願いは……すぐに叶うよ。
「そうだお師匠様。サイモンとロッキー置いていってくれないかな。」
「え? でも……」
「わがまま言ってごめんなさい。でも、一緒にいたいんだ。」
「分かった。そのかわりしっかり面倒見てね。」
117 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/09(土) 21:14:36 ID:FRGFVRny0
お師匠様はサイモンとロッキーを置いてまた旅に出た。
今度はグランバニアって言うお師匠様のお父さんに関係があるを土地を目指すんだって。
「いいのか? 本当は2人の子供になりたかったんじゃないのか?」
サイモンが話しかけてくる。
「いいんだ……」
これでよかったんだよね。
「ところでだ。俺はお前の嫌いな煙草を吸うしロッキーはいっしょにいると心臓に悪い。」
サイモンは不思議そうに尋ねてくる。
「俺とロッキーを置いていけってのは何か意味があるのか?」
「それはね、サイモンは煙草を吸うしロッキーは心臓に悪いからだよ。」
お師匠様自分の奥さんの妊娠に気づいてないみたいだった。
今の僕にできることってこれくらいだ。
僕がおかみさんの妊娠を知ったときはまるで刺されたみたいな衝撃を受けた。
お師匠様が知ったときはどんな顔をするんだろう。
「ま、確かにグランバニアへ連れて行くのにロッキーは危険だな。」
「え? どういうこと。」
「グランバニアへ行くには険しい山道を越えていかねばならんのだ。」
「えええ! だ、大丈夫かな?」
僕は奥さんを置いていくように言うべきだったのかもしれない。
「何かあったらどうしよう……」
お師匠様もおかみさんもお腹の赤ちゃんも、どうか無事にグランバニアに着きますように。
――続く
118 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/09(土) 21:19:26 ID:IEHizg9a0
リアルタイム遭遇ktkr
口を酸っぱく・・・っていうのはこの伏線だったのか。納得。
主人公の勘の鋭さと、心配り、すばらしいです。
119 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/10(日) 23:59:01 ID:uMDNrnlr0
子ども達との掛け合いが楽しみ保守
120 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/11(月) 09:50:34 ID:ikAerZJS0
伏線の張り方と回収上手いなぁ
5主の石化中この主人公はどうなるんだろう
121 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/12(火) 00:09:21 ID:RoaK552E0
>>1
FCの3→いつ世界が消滅するか分からないのでドキドキするw
リメイク3→ロトに会えるので、やっぱりドキドキかな
2〜5なら、ワクワクする
122 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/12(火) 17:57:40 ID:cZOxXvBOO
こうやってたまにこのスレに初めて来てくれた人が、スレタイ通りになったらどうするかを書いていってくれるのを見ると、
何とも嬉しくなるんだ
123 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/13(水) 14:16:43 ID:omEviVx50
下すぎるので
124 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/13(水) 14:22:57 ID:REnXOqE3O
まず、町の人にはなしかけるな。で、モンスターとガチで戦ってみたい!
我流連続斬りとかやりたいなw
125 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 00:55:29 ID:TpTWYuLI0
「我々ヵゞτ〃(≠ゑσレ£⊇⊇маτ〃T=〃」
「ここまで来れば十分だ。さ、他のモンスターに見つからないうちに帰んな」
「……」
「何か用でもあるのか?」
「不思言義ナょ人間ぇ幸ナニ″。――レヽ⊃@日カゝ、ぉ前ぇ幸@ょぅナょ人間カゞ土曽ぇゑ⊇ー⊂をネ斤зぅ」
「できれば俺らの無事も祈っててくれや」
「……±らレ£〃T=〃、勇気ぁゑ人間達∋」
順を追って話そう。
魔の島に渡るには虹の雫が必要。虹の雫を手に入れるためには太陽の石、雨雲の杖が必要。太陽の石を手に入れるためには(ry
ゲーム通り進めばやたら面倒な過程を踏まなきゃならん。
しかし、俺としては一刻も早く元の世界に戻りたい。セーブしちゃったしね。
太陽の石や雨雲の杖なんかを取ってられないのでというか面倒というかアレなんで、直接空から行こうと考えたわけよ。
俺って天才じゃね?
日本で一番最初に新一=コナンって気付いただけのことはあるくらい天才じゃね?
で、問題はどうやって飛んでいくか。
ヒント:ゲゲゲの鬼太郎。
ブランコの両端をカラスが持って空飛んでるシーン見たことないか?
カラスの代わりにキメラで代用。
キメラは空も飛べるし力もそこそこある。ドラキーだとちょっと頼りないしな。
そのためにキメラを捕らえて半ば脅迫のような形で取り引きを持ちかけたわけだ。
結果、交渉成立。
キメラ一族の命を保障するという言葉が決めてだったのかはわからんけど。
ともあれ、無事に魔の島に辿り着いたってわけだ。
126 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 00:57:53 ID:TpTWYuLI0
そんなわけでハッピーバレンタイン!
さすがゴッグ!バレンタインなんて関係ないぜ!とか言っちゃってる奴らも実は気になってんだろ?
義理チョコでいいけどあわよくば本命を…なんて思ってんだろ?
アレフガルドにはバレンタインなんてありませんが何か?今のパーティーは男だけですが何か?
そもそも今日が本当にバレンタインなのかすらもわからんね。実はまだ正月を迎えてないのかもしれんし、ハロウィンすら迎えてないのかも。
できることならば夢オチ希望。
そんなこんなでキメラ達を見送った後、俺達は真っ直ぐ竜王の城を目指した。
鎧の騎士やキラーリカントなんかが出てきたが、俺のヤる気を見せつけただけで逃げていった。
馬鹿め、人間様に敵うとでも思ってるのか。
ファミコン神拳の歩く速度が速くなったのは一刻も早く竜王を斃そうという意思の表れだな。
っておい、待ってくれ。ちょ、速いよ、待てって。待ってくれよ!待てっつってんだろ!
「変態だす!変態が来ただす!」
「誰が変態だよ」
「いきなりモンスター相手に股間露出する奴が変態じゃなくて誰が変態だって言うんですか!」
「お、怒ることないだろ…」
「しかも元気すぎだ。なんで上を向くくらい元気なんだ」
「でっかい男はビッグマンって言うだろ?」
( ゚д゚) ←ゆう帝
(;゚д゚) ←ミヤ王
_, ._
(;゚ Д゚) ←キム皇
……え?何この空気?
なんかまずいこと言った?
ま、まあ、竜王の城に辿り着いたからいいよね?
……ね?
127 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 00:59:35 ID:TpTWYuLI0
竜王の城は玉座には左からぐるっと回らなければならない構造。
地下の玉座に辿り着くまで魔物と戦わざるをえないはず――なんだが、魔物は一匹もいない。
あっという間に玉座まで辿り着いてしまった。
しかも玉座はバリア床になってるはずなのにそれすらもない。
それどころか――
「よく来た、哀れな人間どもよ」
ゲームとは違う現実――玉座には竜王が座っていた。
玉座に辿り着いても竜王の姿はなく、玉座の後ろを調べることで地下に続く階段を発見するはずだ。
「お前が竜王だな」
違う、そんなわかりきったことを聞いてどうする。
他の魔物にはない威風堂々たる存在感、威圧感、どれをとっても竜王そのものじゃないか。
「光の玉、返してもらいます」
「返すとはおかしなことを言う。――クク、そうか、お前達は何も知らないのだな」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる。力ずくでも返してもらう」
「何も知らぬならそれでいい。愚か者どもめ。我が力、思い知るがよい!」
「行くだす!」
キム皇の叫びと同時に、ミヤ王とゆう帝が竜王の左右へと走る。
ミヤ王が左下から斬り上げ、ゆう帝が右から突きを放ち、正面からキム皇の魔法。
三人の攻撃が竜王にヒットした――そう見えた次の瞬間にはミヤ王とゆう帝は地面に叩きつけられていた。
そして、自らの放った魔法に包まれるキム皇。
「愚かな人間どもよ、よもやこの程度ではあるまいな?」
静かに、どこか呆れた口調で、竜王は地に伏した三人を見下ろした。
128 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:01:24 ID:TpTWYuLI0
絶望的な戦いが繰り広げられていた。
すでにミヤ王とゆう帝の剣は折れ、キム皇の回復が追いつかないほど怪我を負っている。
俺も立っているのが不思議なほどだ。
皮の盾はとうのむかしに灰になり、鎖かたびらも役目を果たしていない。
「ベギラゴン!」
キム皇の放つ閃熱系最強呪文ですらも、杖の一閃でかき消されてしまう。
「ロトの時代に使われたと云う古代呪文か。人間にしてはやる」
微塵も疲弊した様子すらない様子で竜王が笑う。
ミヤ王の爆裂拳を軽くいなしながら、だ。
「……強い!」
「そりゃそうだ、相手は王の中の王だからな」
「王の中の王――ふむ、面白いことを言う人間だ。それにあのラルスよりはずっと見所もある」
「どういう意味だ?」
少しでも回復する間を欲しいがための苦し紛れの問いだ。
だが、その問いに意外な答えが返ってきた。
「己の命を助けて欲しいがために自らの娘を差し出すような人間とは違う、ということだ」
「な……」
「わしが望んだのは亡き母の形見――光の玉のみよ。光の玉さえあればこの世界などはいらぬ」
DQ3で竜の女王は勇者ロトに光の玉を残した後、卵を産んで姿を消す。
その卵が何の卵なのか今も某スレでは議論が絶えないが、当時ファミコンでDQをやった人間は誰もがあれは竜王の卵だと思ったはずだ。
そして今、その推測は確信に変わる。
他の誰でもない、竜王の口から。
「わしを産んだ母は姿を消した。天界へと昇ったのやもしれぬ。
わし一人の力では天界へと昇ることはできなかった。だが、この光の玉を使えば……」
DQシリーズ中、数あるラスボスの中で唯一不明だった竜王の目的。
それは母との再会だったのか。
129 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:03:26 ID:TpTWYuLI0
「光の玉を渡せと伝えた時、ラルスは交換条件を出してきた。光の玉を渡す代わりにドムドーラを滅ぼしてくれとな」
「バカな……」
「ラダトームとドムドーラとの間に何があったかは知らぬし興味もない。人間同士の諍いに我らが介入してやる義理すらもない。
我が目的は光の玉のみよ。それ以外はどうでもよい。この世界が滅ぼうが栄えようが、な。
そう答えたらあの男め、その日のうちにドムドーラに攻め入り一晩で廃墟と化したぞ」
翌日にでも、竜王達がドムドーラを滅ぼした…とでも発表すれば何も知らない民は竜王怖し、竜王憎しとなるわけか。
加えて、アレフガルド唯一の王国ラダトーム、ラルス王への支持も上がるって寸法か。
「悪名などどうでもよいとは言え、虚仮にされて黙っているわけにもいかぬ。
軍を率いてラダトームに向かうとあ奴は簡単に光の玉を渡してきたわ。
さらに『私の命を助けてくれるなら娘も差し上げます』とまで言ってな」
「何……だと……?」
「ラルスが何を考えているか、ここまで言えばわかるであろう?」
「竜王に光の玉を奪われ、一人娘ローラも攫われた。後は竜王を斃す勇者を待ち、その勇者をローラと結婚させて娘婿に……ってなとこか」
「その通りだ。勇者の義父となればラルスの地位は磐石のものとなる」
「では何故ローラ姫を解放しないのです?」
「天界に昇った後、ラルスの全ての罪を暴こうとしたまでのことよ。――お喋りも飽きた。続きを始めるとしよう」
違う。
そんな理由で竜王は人間の女を幽閉したりはしない。
それならば俺達と戦う理由はない。
「愚かで勇敢な人間どもよ。お前達に敬意を表し、我が全力を見せてやろう」
竜王の形態が変わる。
人型から、ドラゴンへと。
これが鰤ならドドドと効果音が鳴るんだろうな、なんて考えてる場合じゃない。
人型ですら歯が立たなかったんだ。ドラゴン形態になんてなられたら勝ち目はゼロだ。
そんな考えが頭をよぎった刹那、俺は竜王へと駆け出していた。
130 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:05:18 ID:TpTWYuLI0
「うおらぁぁぁぁあああああああぁぁぁああああぁぁ!!」
変身途中の体に炎の剣で斬りつける。
竜の鱗はわずかにへこんだ程度。
「ギラ!ギラ!ギラ!ギラ!」
掌の中で炎が膨らむが焦げ痕一つつきやしない。
「だあああああああああああ!」
ミヤ王やゆう帝に教わった剣術などお構い無しの技術もへったくれもなしで剣を振り回してもかすり傷一つつかない。
「恐怖で狂ったか」
巨大な尾が俺の腹を薙ぐ。
ミシッともメリッとも聞こえる音が腹から鳴り、やや遅れて襲う激痛――そして吐血。
「何じゃあこりゃああ!!」
「ベホイ――」
「遅い」
回復しようと近寄ったキム皇の頭上に竜の豪腕が叩き落される。
折れた剣で斬りかかるゆう帝には竜の爪、疾風突きを放つミヤ王には口から放たれる業火。
「わしを斃しに来たにしては未熟過ぎるな」
返事をする体力はない。
これだけの激痛で頭がまともに働いていること自体が奇跡だ。
倒れている俺に、黒い影が――違う、竜王の足だ。
人間なんか比じゃない巨体の全体重が……
「がああああああああああ!」
「わしを殺すのではなかったのか?」
竜王が頭を鷲掴みにしてるのか、体が浮かんでいる感覚しかしない。
何を言っているのかすらも聞こえない俺の耳に、キム皇の声が聞こえた。
131 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:08:29 ID:TpTWYuLI0
「……ラ……だす……ギ……ラ……」
「愚かな。古代呪文すら通用せぬわしにギラごとき何になる」
俺の……ギ、ラ……?
――囁き――
ギラ……
――詠唱――
ギラ……
――祈り――
ギラ……
――念じろ!
「ギラ――!」
ベギラゴンを越えたギラが、竜王の顔を直撃した。
「おのれ、よくもこのわしに……!」
竜王に踏み潰された俺の手足には感覚などない。
魔法を放つ杖なんかもない。
た だ し 魔 法 は 尻 か ら 出 る !
「今のは……ベギラゴンではない……ギラ……だ……」
……憎いほどに決まったな、今の俺……
132 :
俺の屍を越えてゆけ
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:11:39 ID:TpTWYuLI0
ゆう帝が噛み砕かれ、ミヤ王が踏み潰され、キム皇が投げつけられる。
皆、誰も動かない。
皆を炎が包む。
死んだのか?
目がかすんできた。俺は死ぬのか?
死ぬ?俺は死ぬのか?
こんなところで
いやだ
死にたくない
死にたくない
しにたくない
死にたくないしにたくない
く
「さらばだ、人間よ」 い い
し た
に な き た
DSL『あなたは しにました』
LV:13
HP:0/42 MP:9/29
E:炎の剣 E:Tシャツ
呪文:ギラ ホイミ レミーラ ラリホー
特技:思い出す 舐めまわし 百裂舐め ぼけ つっこみ 雄叫び 口笛 寝る 穴掘り
急所突き マヒャド斬り
道具:携帯電話 網
DSL:聖水 100円ライター 臭い靴下 古びたトランクス アディダスのジャージ
タバコ×7 鍵×18 曲がった釘×6
133 :
◆yeTK1cdmjo
:2008/02/14(木) 01:14:19 ID:TpTWYuLI0
といったところで投下終了です。
次回はエピローグみたいなものを投下して最後となります。
134 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/14(木) 01:16:01 ID:pac0QBiy0
何気なく覗いたらリアルt(ry
激しく乙です
135 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/14(木) 01:54:25 ID:VnOepHaw0
>131
それゲーム違うw
136 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/14(木) 09:50:32 ID:wG6obNqT0
やはりまだ無茶だったか……。シリアス展開乙です。
次回最後か。寂しいけど楽しみ。
キメラの言葉を読むのにちょっと苦労したぜw
137 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/14(木) 13:10:40 ID:N9YpA1SZ0
>>133
久々乙
毎度面白すぎっす
LV:13かよw
138 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/14(木) 19:37:40 ID:cTntGUDD0
>>133
待ってました! 乙です。
意外すぎるが納得させられてしまう理由と展開…次でもう終わっちゃうのか。
寂しいけど、まだ種明かしされていないこともあるし楽しみにしてます。
139 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/15(金) 15:12:21 ID:m/m03BAYO
>>137
1だとそんなもんでない?
140 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/16(土) 20:45:03 ID:Ch58AVzw0
ほす
141 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:50:19 ID:Q4gwM8K/0
―親指立てて―(
>>110
−117)
お師匠様が来た。
「グランバニアには何事もなく着いたよ。ちょっと大変だったけどね。」
そう言うお師匠様はちょっと疲れているみたい。
「あの、あの、赤ちゃんも無事だよね?」
「知っていたのトモノリ?」
僕は小さく頷いた。
「まだお腹の中だけど元気に育っているみたいだよ。」
良かった。何かあったらどうしようかと……
「どうして泣いているんだいトモノリ?」
「だって……だって……」
お師匠様たちがお父さんとお母さんになってくれるって言ったとき、すごくうれしかった。
本当の子供になりたいって思った。
でも、すぐに奥さんが妊娠していることに気づいたんだ。
だから僕、お師匠様の申し出を断ったんだ。
お師匠様にはちゃんと自分の子供ができるんだから。僕の居場所はないから。
だから、もしかしたら、僕……
赤ちゃんが生まれてこなければいいのにって思っちゃったかもしれない。
そう思っていたから、グランバニアへ行くのを止めなかったんじゃないかって思って。
お師匠様大好きなのに、僕、お師匠様の不幸を望んでいたかもしれないから……
僕は声にならない声で思いのたけを吐き出した。
普段でも大きくない声をさらに小さくして。
でも、お師匠様はそんな僕の声をずっと聞いてくれていた。
「……良かれと思って言った事で、かえってトモノリを苦しめてしまっていたんだね。」
お師匠様はちょっと悲しそうに、でも優しい口調で僕に語りかけた。
「ね、少し町を散歩しようよ。2人きりでさ。」
142 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:52:20 ID:Q4gwM8K/0
「こうして2人でゆっくり話をするのってはじめてかもしれないね。」
そうかもしれない。いつもはモンスター爺さんやイナッツさん、モンスターたちがいたから。
「トモノリがこの世界に来てからずいぶん長い時間経ったよね。」
「お師匠様が結婚して赤ちゃんができるくらいだもんね。でも、全然そんな気がしないよ。」
「トモノリは変わらないね。」
「僕が一人前のモンスター使いになるのはまだまだってこと?」
「いや、そうじゃなくってこのくらいの年のころってもっと背が伸びるものだからさ。」
そういえばそうだね。
もともと体は丈夫じゃないから発育がいいほうだとはいえないんだけど……
「もしかしたらこの世界とトモノリの世界とでは時間の流れ方が違うのかもね。」
そんなことがあるのかな。
「ねえ、もっとトモノリのこと教えてくれないかな?」
「僕のこと?」
「うん。お師匠様だなんて言ってもトモノリのこと何も知らなかったみたいだからね。」
「……でも、何を話したらいいんだろう。」
「何でもいいよ。たとえば元々はどんなところに住んでいたの?」
「もともとは……こことは全然違う世界にいたんだ。モンスターも魔法もない世界。」
「そこでトモノリは何をしていたの?」
「小学生だよ。小学校に通って毎日勉強をしていたんだ。」
「元の世界にも勉強を教えてくれるお師匠様がいるのかな?」
先生ってお師匠様なのかな? ちょっと違う気もするけど。
143 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:53:22 ID:Q4gwM8K/0
僕はお師匠様に小学校での思い出を話した。
「僕、いじめられそうになったんだ。僕のしゃべり方が変だって……」
「因縁をつけられちゃったんだね。大丈夫だった?」
「うん。かばってくれた子がいたから。でもお礼が言えなかった。僕に勇気がないから……」
「トモノリはお礼がしたいんだね。それなら元の世界に帰ったらきちんとお礼を言おう。」
「……言えるかな。」
「言えるさ。すぐには言えなかもしれないけど、いつかきっとね。」
「うん。僕帰ったらその子にお礼を言うよ。いつになるかわからないけど必ず……」
その後もずっと、僕はお師匠様と僕の世界の話をした。
長い間話を続けたあと、お師匠は唐突に切り出した。
「ねえ、トモノリ。グランバニアに来てくれないかな?」
「グランバニアに? でも、モンスターの世話はどうするの?」
「それはグランバニアのお城で続ければいいよ。」
「お城で? そんなことして大丈夫なの?」
「それくらいはね。王様の言うことだから。」
「王様の許可を取ったんだね。」
僕がそう言うとお師匠様はクスクスと笑い出した。
「何がおかしいの?」
「ごめんごめん。あのね、これから言うことを笑わないで聞いてくれる?」
「うん。」
「あ、でもちょっとくらいなら笑ってもいいよ。」
「もう、もったいぶらないで教えてよ。」
「あのね、グランバニアの王様は君の目の前にいるんだ。」
「え?」
「王様になっちゃったんだ。正確にはこれから王様になるんだけどね。」
……え? 何それ。ひょっとして革命? 下克上?
「お、お師匠様、きっと、今の王様を倒すより、もっといい解決法があるよ……」
144 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:54:24 ID:Q4gwM8K/0
何でもお師匠様は前の王様の子供だったんだって。
今は王様の代理をお父さんの弟がやっていて、その人から王様になるように言われたらしい。
お師匠様が王族だったなんて驚きだよ。親分もそうだけどちっとも偉そうじゃないもん。
それにあっさり王様になるっていうのもびっくりだね。
僕はお師匠様のルーラでグランバニアへやってきた。
モンスター爺さんとイナッツさんにお別れを言って。
でも、そのうちモンスター爺さんたちもグランバニアへ呼ぶつもりみたい。
お師匠様は王様になるための試練を受けている。これを終えれば王様になるんだって。
僕は頑張ってきてねと言って親指を立ててお師匠様を送り出した。
みんな不思議そうにしていたから、これは幸運を祈るって意味だよと教えた。
僕はお城でお留守番だ。お城にいるオジロンさんやサンチョさんはみんな親切だよ。
でも、お城には悪魔がいた。お師匠様が仲間にしたメッサーラのサーラだ。
僕が言うのもなんだけど、サーラって女の人の名前みたいだよね。
「もうすぐ人間が泣き叫ぶ様が見れると思うと楽しみで仕方ないな。」
「ちょっとサーラ、怖いこと言わないでよ!」
「何を言っている。もうすぐ赤ん坊が生まれるのだぞ。赤ん坊が泣かなくてどうする。」
「……確かにそうだけどさ。」
「赤ん坊というのは本能の赴くままに人間の体液をすするらしいな。」
「そんなことしないよ!」
「おや、赤子とは母乳を飲むものではないのかな?」
「ううう……サーラの意地悪。」
お城にいる悪魔はちょっとひねくれ者みたいだ。
お師匠様は無事に試練を乗り越えて戻ってきた。
帰ってきたちょうどそのとき、おかみさん……お師匠様の奥さんの陣痛が始まった。
今にも赤ちゃんが生まれそうなんだって。
「ねえ、トモノリ。赤ちゃんが生まれるところを見せてもらいなよ。」
「僕がそんなことして大丈夫なの?」
「ああ。きっといい経験になるよ。」
145 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:55:36 ID:Q4gwM8K/0
赤ちゃんはお母さんのお腹の中から一生懸命出てこようとしている。
僕は思わず頑張れって声を出して応援してしまう。
赤ちゃんが取り上げられてからの一瞬。
ほんのわずかな時間だったけど、すごく長く感じた。
そして、長い一瞬のあと、赤ちゃんは泣き出した。
この声はきっとお師匠様にも届いているよね。
みんなは赤ちゃんをお師匠様に見せに行こうとしている。
「待って! まだ、まだ赤ちゃんがいるよ!」
僕は赤ちゃんの泣き声に負けないくらい大きな声を張り上げた。
赤ちゃんがもう1人お腹の中から出ようとしている。
頑張れ。頑張れ。もう少しだよ。
やった! 出てきた。えらいよ。頑張ったね。
こっちの子もさっきの子に負けないくらい元気な声を上げて泣き出した。
生まれた赤ちゃんを見るため、お師匠様がつれてこられた。
「お師匠様! すごいよ。2人も生まれたんだ。男の子と女の子の双子だよ!」
「本当かい? 一度に息子と娘を授かるとは思わなかった。今日はなんて素敵な日だろう。」
「良かったねお師匠様。王様になって。しかもパパになっちゃったんだよね。」
「ああ。トモノリもこの子達を弟と妹だと思って可愛がってやってね。」
「もちろんだよ!」
「ところでトモノリ。赤ちゃんが生まれて欲しくないなんて思ってないことが分かったろう?」
「もしかして、そう思わせるに生まれるところを見せてくれたの?」
お師匠様、本当におめでとう。
今まで苦労した分、これからは幸せになってね。
そう、思っていたのに、何でこんなことになるんだよぉ!
146 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:56:18 ID:Q4gwM8K/0
……僕、さらわれちゃった。
お師匠様の奥さんと一緒にモンスターに連れ去られてしまった。
今はどこかの建物の中にとらわれている。窓から外を見るとかなり高い位置みたい。
「心配しないで。絶対にあの人が助けに来てくれるわ。」
そうだよね。きっと来てくれるよ。
「わっはっはっ! 来たら後悔することになるだろう。」
僕たちをさらった馬みたいな奴がいやな笑い声を上げる。
こいつが悪いモンスターなのかな。
「グランバニア王をおびき出し、抹殺して奴に成りすますことが俺の目的なのだからな!」
ううう……すごく悪いモンスターだ……
期待通りお師匠様が助けに来てくれた。サイモン、サーラ、ホイミンと一緒に。
馬の魔物相手に最初は苦戦していたけど、奥さんの不思議な力で形勢が逆転して勝利した。
だけど、やられる間際に馬の魔物は別の魔物を呼び出した。
そいつのせいで、お師匠様は、奥さんと一緒に、石にされてしまった……
147 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:57:09 ID:Q4gwM8K/0
「ほっほっほっ。おや? 人間の子供がいますね。」
……僕のことだ。
「勇者ではないようですね。教団のために働いてもらうには少々貧相です。」
それじゃ僕はどうなるの……
「それに人間に味方をする魔物たち。魔性の力を取り戻させねばなりませんね。」
魔物はサイモンとサーラとホイミンに向かって語りかける。
「そうだ。いいことを思いつきました。お前たち、この子供を始末しなさい。」
「ほっほっほっ。主を失った今、私に歯向かえるはずもないでしょう。」
サイモン、サーラ、ホイミン……
「こうなってしまっては致し方あるまい。」
そう言ったのはサーラだった。サーラはゆっくり僕に近づいてくる。
「トモノリに何をするつもりだ?」
サイモンとホイミンがサーラの前に立ちはだかった。
「邪魔をしないでもらえるか。」
サーラはサイモンを足蹴りした。サイモンは壁まで吹っ飛びガラスの窓が派手に割れる。
「サイモン!」
僕はホイミンをぎゅっと抱きしめた。
「そうだ大人しくしていろ。少し痛いかもしれないが我慢してくれよ。すぐに済むからな。」
サーラの手が僕の体を掴んだ。
僕たちは割れた窓から外へ飛び出し宙を舞っていた。
「怪我はないか? なるべくガラスに当たらないよう飛び出したのだが。」
サーラが僕を抱えたまま翼を羽ばたかせている。
「頑張れよサーラ。俺たちの運命はお前の翼にかかっている。」
そう言うサイモンはサーラの足にしがみついている。
「何とかスピードを殺しながら落下するのが精一杯だ。」
「しかしお前の演技はたいしたものだな。さすがは悪魔だ。」
「悪いが話は後にしてもらえるか。……森に突入するぞ!」
僕たちは木の枝で衝撃を和らげながらなんとか地面にたどり着くことができた。
148 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:58:31 ID:Q4gwM8K/0
少しかすり傷を負ったけどホイミンが魔法で治してくれた。
「ここまでくれば安心だ。奴も私たちを探すようなことはしないだろう。」
「本当?」
「あいつにとってはそこまでして私たちを始末する意味も価値もない。」
悔しいけど、そうなんだろう。
「怖くなかったか?」
サーラが何事もなかったかのように言ってくる。
「怖かったに決まってるよ! 飛んでるときも、飛ぶ前も……」
「脅かしてしまって悪かったな。これも奴の目を欺くためだ。」
それは分かってるけどさ……
「お前には騙されたよサーラ。蹴りをくれる前、窓から逃げるぞと小声でささやくまでな。」
サイモンも知らなかったんだ。それじゃ本気で僕を助けようとしてくれたんだね。
「とにかく今は城へ戻ろう。こうなってしまっては俺たちには何もすることができない。」
「ああ! そうだよ。お師匠様が……」
「……私はまた守れなかったのだな。」
そういえばサイモン言っていたよね。昔、守るべきものを守れなかったって。
落ち込まないで。サイモンは何も守れなかったわけじゃないよ。
「ねえ、サイモン。僕を守ってくれてありがとう。サーラもホイミンもありがとう。」
「お前子供なんだからそこまで気を使うことないぞ。……だが、ありがとうなトモノリ。」
グランバニアへ戻ると僕はサンチョさんに事情を説明した。
僕の話を聞いてグランバニアの兵士がお師匠様たちを探しにいった。
でも、お師匠様たちは見つからなかった。
どこに行っちゃったんだよ……
グランバニアで今後どうするかという会議が開かれた。
結論はお師匠様を探すこと、そして石化から元に戻す方法を見つけることだ。
僕はお師匠様たちが無事に戻るまで、約束どおり赤ちゃんたちの面倒を見ることにするよ。
そう、思っていたのにまたしても僕の希望はかなえられなかった。
149 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/16(土) 23:59:07 ID:Q4gwM8K/0
別れのときは突然やってきた。
グランバニアの学者さんが僕を元の世界に戻す方法を見つけたんだ。
「私は国王様の命を受け呪いを解く方法を探していました。」
「呪いって、どんな呪い?」
「はい。異世界の者を呼び寄せる呪いについてです。」
それって、僕のことだよね……
「でも、いったい誰が呪いなんてかけたんだろう。」
「あなたが目的だったとは限りません。何かの術に巻き込まれたのかもしれませんから。」
「そんなことが起きるの?」
「強力な魔法や術が使われればその副作用で呪いに似た現象が起きることがありえます。」
「そんな強力な魔法があるの?」
「どこかに時空を越える術があるらしいです。そんな術ならばきっと……」
時空を越える……どこかで誰かが過去や未来に行く術を使ったのかな?
「どちらにしても、貴方は呪いを解くことで元の世界に戻ることができるのです。」
「話は聞かせてもらった。」
唐突に懐かしい声がした。
「ヘンリー親分! どうしてここに?」
「あいつが行方不明になってって聞いて心配して来たんだ。」
「そう……」
「良かったなトモノリ。元の世界に帰れるんだ。」
「でも、僕……まだこの世界に……」
「よく考えて決めればいい。」
僕はどうすれば……赤ちゃんの面倒見るって約束したのに……
赤ちゃんたちはお父さんもお母さんもいないなんて可愛そうだよ。
でも、それは……
「決めた。親分、僕、元の世界に帰る!」
150 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/17(日) 00:01:52 ID:Q4gwM8K/0
せっかくお師匠様が帰れる方法を見つけてくれたんだもんね。
赤ちゃんたちには城のみんながいるし、モンスターたちはモンスター爺さんが見てくれる。
僕がいなくなっても大丈夫だよ。
だから僕は、お父さんとお母さんのところに帰ったほうがいいんだ。
帰りさえすれば、僕はお父さんとお母さんのそばに、いられるんだから。
もし、お師匠様との約束のために僕が帰らなかったら、お師匠様、悲しむと思うから。
「ねえ、親分。僕はさ、笑って、笑って帰ったって、伝えておいて……」
僕の言葉にヘンリー親分は分かったと言ってハンカチをくれた。
呪いを解いてもらうことでこの世界から僕は消える。
僕はヘンリー親分、城のみんな、仲間のモンスターたちに囲まれてそのときを待っていた。
「こっちのことは心配するな。あいつは必ず見つけ出す。」
ヘンリー親分が僕を励ます。
「お前たちも協力してくれるよな?」
親分はモンスターたちにそう言ったけど誰も返事をしない。
「おい、どうしたんだよ。」
「いやなに、我らはモンスター使いに命令して欲しいのだ。たとえそれが見習いでも。」
サイモンがモンスターたちを代表してそう言った。
「なるほどな。よし、トモノリ。最後にモンスター使いとしてこいつらに命じてやれ。」
「うん! みんな必ずお師匠様を見つけて元に戻してあげてね!」
「了解!」
ありがとうみんな。僕はみんなに親指を立てて別れの挨拶をした。みんなも同じように返す。
そして、最後に一度だけ呼んでいいよね。ありがとう、この世界のお父さんお母さん……
こうして僕は元の世界に戻っていった。
お師匠様との約束、みんな中途半端になっちゃった。
モンスターの面倒を見ることも、赤ちゃんを世話してあげることも。
ああ、でも、ひとつだけ、ひとつだけ守れる約束があった……
151 :
冒険の書5
◆8fpmfOs/7w
:2008/02/17(日) 00:03:09 ID:d0mKKZxK0
――
「その約束が君にお礼を言うことなんだ」
そう。僕は約束したんだ。帰ってきたら必ずお礼を言うって。
「あのときは、いじめられそうになった僕を助けてくれて本当にありがとう」
「……いや、たいしたことじゃない」
ああ、ちょっと戸惑ってるみたい。無理もないか、こんな話を聞かされたんだもんね。
「この夢はきっと心の中でお礼を言いたいって思っていたから見たんだと思うんだ」
「夢じゃない。……夢じゃなく大切な思い出なんだろ?」
僕の話、信じてくれたのかな……
「うん。大切な思い出だよ。お師匠様はいまごろ遠い世界で幸せに暮らしている」
歴史は繰り返すって言うけど、お師匠様ならその因縁も打ち破るんじゃないかな。
きっとやってくれるよね。勇者様と地獄の帝王の両方を仲間にしちゃうとかさ。
「ごめんね。こんなに時間がかかっちゃって。でも、やっぱりすぐには言えなかったんだ」
「もう、10年以上も前のことだっけ。俺も今日、来て良かったよ」
「今はこっちに住んでないんだよね?」
「ああ、姉ちゃんがこっちで出産するんでそのお見舞いついでに同窓会に来たんだ」
「お姉さんいいタイミングで妊娠してくれたね。出産見せてもらいなよ。感動するよ」
「いやいや、それは勘弁して……」
「あれ、じん君ってシスコンじゃないんだ」
「……ところでさ、ドラゴンクエストって知ってる?」
「ゲームだっけ。ごめん僕あんまり詳しくないや」
そういえば僕のいたあの世界ってそういうゲームみたいな世界だったよね。
「それにしても変な世界だった。僕、あそこではずっとトモノリって呼ばれてさ」
しゃべり方のせいもあるけど、話だけ聞くとまるっきり男の子だよ。
声が小さかったことが原因なのかな。きっと最後のほうが聞き取れなかったんだよね。
「僕は本名の『友野理香』って言おうとしたけど、4文字目までしか名乗れなかったんだ」
―完―
152 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/17(日) 00:04:05 ID:oJB4/Ld80
乙
そういうオチかwwww楽しませてもらったよ
153 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/17(日) 00:33:33 ID:tqMZ8PeP0
サーラがいいキャラすぐるw
DQ世界ルールで名前の文字数制限とかすげえなw面白かった!
次回作も楽しみに待ってます
154 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/17(日) 06:17:33 ID:yzCfRCVzO
乙
このオチの発想はなかったわw
155 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 00:31:57 ID:0sfcdgdD0
乙でした!
久々にウルっときたよ
改めて読みなおしてみるわ
156 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 10:56:08 ID:7yePM2lYO
…だよな…夫である5主が別室待機なのに、赤の他人のトモノリを出産に立ち会い
させるなんておかしいと思ったんだ…
いくら子どもでも、男に奥さんの大股開き見せるのはまずかろう
女の子なら出産立ち会いさせてもらえても自然だね
157 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 16:23:45 ID:ND506bOa0
>>151
そりゃリカちゃんの話を信じる気になるさ。
そのじん君も(たぶん)つい最近ドラクエ4の世界に飛ばされて、おまけに最後にどんでん返しをくらって帰ってきたんだから。
158 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 17:54:18 ID:LRjx8D+K0
>>157
読み直した。確かに書いてある。スゲー。
159 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 18:09:36 ID:KeJeFxDQ0
ホントだ。冒険の書シリーズ、二重三重にすげぇ。
160 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/02/18(月) 18:44:58 ID:grPqd0Zc0
>>157
いやこれ…ちょ…すげえ!!!新たな感動が俺を包み込むwww
481KB
続きを読む
掲示板に戻る
全部
前100
次100
最新50
名前:
E-mail
(省略可)
:
READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
ぜろちゃんねるプラス