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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50
PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)
ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
528 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/15(火) 20:52:04 ID:1NQlYYoX0
愉快な仲間達に恵まれ
歳相応に笑えるようになったんだな勇者良かった良かった
529 :
恐怖の船出17
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 20:56:31 ID:TmeR1zoU0
暫くしてねーちゃんが大きな皿を持って戻ってきた。
これは…皿の上にはうまそうなイカの炒め物?が乗っている。
有り合わせの調味料を使ってイカのソテーを作ったのよとの事。
味は…………うまい!これはうまい!
イケメンも料理うまかったがねーちゃんもかなりの腕だ。本当にこいつがいてよかった…
そしてさらに一週間後。
俺達はランシールに到着した。とりあえずゼッツーの処女航海は無事に終える事ができた。
二週間程の航海だったが俺達は色んな意味で逞しくなったと思う。
魔物を食うなんて一昔前じゃ考えられなかった。
魔物よりも魔王よりも一番しぶとい生き物は人間なのかも知れない。何はともあれ久しぶりの大地だ。
碇を降ろし船を固定すると早速町へ向かった。
毎度の事ながら住人の視線が痛い。場所が場所だけに滅多に旅人も来ないのだろう。
それに加えてこの面子だ。好奇の目に晒されるのは仕方が無い。
530 :
恐怖の船出18
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 20:57:02 ID:TmeR1zoU0
オーブがある「ちきゅうのへそ」の入り口は町の中心にあった。
今日は一晩宿屋で疲れをとってから明日攻める事にしよう。俺達は宿屋へ向かった。
その夜無事航海終えた記念の宴会が開かれる。久しぶりの酒だ。
船にもある程度積んでたんだが初日で飲み干したからな…。
ここの地酒はウイスキー。うまい。が、キツい。調子のってるとすぐ潰れそうだ。
言ってる先からパンツの子分三人組がねーちゃんと飲み比べを始めた。
アホだな。こいつらはまだこの女の殺人的な酒の強さを理解してない。
案の定一人、また一人と倒れて行く。ねーちゃんは涼しい顔してる。
勇者もかなり飲んだらしく相当ヘラヘラしてる。ピーピーうるせえ。
途中料理を運んできたおばちゃんに何の目的で旅してるの?と聞かれて
あのねー私達海賊なの!この町のお宝奪いに来たの!
と言った時のおばちゃんのひきつった顔は笑えた。まあ間違えてはいない。
その日の宴も明け方まで続いた。
531 :
試練そしてじゃんけん19
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 20:57:48 ID:TmeR1zoU0
ー次の日の昼ー
パンツの子分三人組はまだ潰れてるので宿屋に置いてきた。洞窟の入り口の建物に入る。
入り口にはおっさんが一人いた。邪魔だどけ。無視して進もうとすると慌てて止められる。
なんだようぜえな。
この洞窟には一人でしか挑めないらしい。何だよそれ。意味わかんねえ。そんなきまり当然無視だ。
しかしおっさんも頑固で一歩も退かない。目がマジだ。
わしの人生に懸けてここは通さん!通りたければわしを倒してか…ドスッ。
俺の中段突きをモロにみぞおちにくらいうずくまるおっさん。よし。おまえら先に進むぞ。
勇:ちょっと総長ちゃん!かわいそうだよ!ちゃんときまりは守らなきゃダメだよ!
パ:総長!男ならここは一人で攻めるべきでやんす!それが真の漢でやんす!
ね:一人じゃなきゃ先に進めないとかそんな仕掛けがあるんじゃない?
無意味にそんなきまりがあるとは思えないわ。
おまえら…多数決により誰か一人で探索に行く事になった。
532 :
試練そしてじゃんけん20
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 20:58:28 ID:TmeR1zoU0
おっさん:ゴホッゴホッなっ…なんて乱暴な若者じゃ…こんな奴は初めてじゃまったく…
いいか?ここは由緒正しい試練の洞窟でな。
一人で攻略してこそ求めている物が得られるのじゃ。
といってもそんな危険なとこ誰も探索するはずがなく今までは未知の空間じゃった。
勇者様がおそらく歴史上初めて攻略されてオーブを持ち帰ったのじゃよ。
それで次に必要な時が来るまでまたここに封印なされた。ただオーブを封印するだけの為に
これだけ大掛かりなものが造られたとは思えん。きっとまだ謎が隠されておるかもな…
謎…ねーちゃんがピクッと反応した。とにかくそうなれば誰が行くのか決めなければならない。
ここは総長である俺が行くのが筋ってとこだろう。文句ないなおまえら。……明らかに不満顔だ。
勇:あたしも行きたい!お父さんも行った洞窟なんだし…絶対行きたい!
ね:謎…謎が私を呼んでるわ!未知…なんて素晴らしい響き!ここは譲れない!
おいおい…てかねーちゃんあんたそういうキャラだったんだな…さらに輪をかけて
パ:よくわかんないけどズルいでやんす!あっしも行きたいでやんす!仲間外れは嫌でやんす!
533 :
試練そしてじゃんけん21
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 20:59:00 ID:TmeR1zoU0
もうこうなると収拾がつかない。どーせこいつらは総長である俺の意見なんてきかないだろう。
いいんだわかってた事だから…俺がここのボス…自分でそう思ってたらいいんだ…
しかし絶対話し合いでは結論がでない。こいつらはそういう奴らだ。
ここは公平にじゃんけんで誰が行くか決めようじゃないか。
じゃんけん…!?何それ??
どうやらこの世界には「じゃんけん」はないらしい。ルールを説明する俺。
へー楽しそう!と勇者とねーちゃんはすぐ理解したようだ。パンツはまったく理解できてない。
とにかくグーかチョキかパーか何でもいいから出せと教えた。じゃあいくぞ。せーのー
じゃーんけーんポンッ!
………………。
やっちまった。おそらく考え得る中で最悪のパターンだ。
勝ったのは…パンツだった。
534 :
試練そしてじゃんけん22
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:01:04 ID:TmeR1zoU0
………。勇者は本気で悔しがっている。パンツは当然の如くわかってない。
ねーちゃんが勝ったのはあなたよと教えてやった。途端に大喜びするパンツ。
しかし勿論こいつには何のメリットもない。
やったでやんす!これでお宝は俺の物でやんす!
明らかに勘違いしている。もういい。こいつが無事にオーブを持ち帰って来るのを期待するしかない。
ここまでくると運の問題だ。直ぐにでも出発しようとするパンツを制止してありったけの薬草を持たせた。
勇:いいなぁ…お父さんに関係あるものあったら必ず持って帰ってきてね!
ね:いい?こんな手付かずの古代遺跡に入れる機会なんてそうそうないんだから
気を引き締めて行ってくるのよ!この貴重な体験を噛み締めてきなさい!
俺:あの…その何だな…無理しなくていいからな…適当に頑張れ…
パンツは嬉しそうに頷くと意気揚々と行ってしまった。
入り口を守ってたおっさんがほんとのあいつでよかったのかと驚いている。いいわけねーだろバカ。
今更ジタバタしても仕方が無いのでここで大人しく待つ事にする。
535 :
試練そしてじゃんけん23
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:03:45 ID:TmeR1zoU0
丸一日が経った。パンツはまだ帰ってこない。
だからあいつに行かしたくなかったんだよチクショーが!
おっさんの話によると勇者の親父は半日ちょっとで帰ってきたらしい。
つまり明らかに中で迷っている。
という事で第二陣が出発する事になった。問題は誰が行くかだ。
とりあえず勇者だけはマズい。パンツの救出に勇者が行くなんて火に油を注ぐようなもんだ。
確実にミイラ取りがミイラになる。今回に限ってはねーちゃんもヤバい。テンションがおかしすぎる。
遺跡に夢中になりすぎてパンツの事を忘れて帰ってくる可能性が高い。
536 :
試練そしてじゃんけん24
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:04:45 ID:TmeR1zoU0
やはり…俺が行くしかない。
しかし選出方法はじゃんけんじゃきゃこいつらは納得しないだろう。
そうなると俺が勝つ保障は無い。さてどうしたものか。
はやくじゃんけんで決めよーよーカンダタちゃんお腹空かせて待ってると思うよー?
勇者が急かす。うるせーちょっと待ってろ今秘策を考案中だ。
……こうなったら最終手段を使うしかない。これだけは避けたかったのだが。
わかったいくぞ!せーのー!じゃーんけーん…ぽんっ! …今だ!
勇&ね:…………………!!!!????
勝った。俗に言う「後出し」というやつだ。勇者が騒ぎ出す。
うるさい。世の中勝ったやつの勝ちなのだ。
反発する二人を無理やり丸め込み何とか次の挑戦者は俺になった。
目的はオーブ発見&パンツ救出。ちくしょう最初から俺が行けてればこんなめんどくさい事には…
やり場の無い怒りを覚えつつ俺は出発した。
537 :
試練そしてじゃんけん25
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:05:22 ID:TmeR1zoU0
出発前に勇者に大量のパンを持たされた。
ふざけんなてめー荷物になるだろうがと思ったのだがパンツの為に持ってけときかない。
もう一回じゃんけんやり直しとか言われてもややこしいので黙って持ってく事にした。しかしかさばる。
通路を抜けるとそこは大理石のでかい人工的な洞窟だった。不気味な所だ。
俺まで迷ってしまってはシャレにならないので慎重に地図をつけながら進む。
シャー!!!!キシーッ!!!!!! ビッチャザアアアアアア!!!!!
グェェェェエエエエ!!!
ブッヒョーるるる!!! ギブアァアアア!!!!
クソが!ここはなんて魔物が多いんだ!倒しても倒しても後から後から湧いてきやがる!
俺のブチ切れスイッチが入りかける。
538 :
試練そしてじゃんけん26
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:05:59 ID:TmeR1zoU0
呪文で一気に木っ端微塵にしてやりたい所だがこんな入り口付近で精神力が尽きてもいけないと
俺の残り1%の理性が制止をかける。仕方なく相棒のドラゴンキラーでぶっ飛ばして進む。
かなりの魔物を潰した。ひと段落して辺りを見回す。
どうやらここからは一本道の長い通路のようだ。
ん?よく見ると通路に大きな顔型の彫刻が並んでる。気持ち悪い。ここを設計したヤツのセンスを疑う。
まあいい。とりあえず進もう。
……………せ……
ん?
539 :
試練そしてじゃんけん27
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:06:52 ID:TmeR1zoU0
ひ……………せ
ん?ん?
何か声が聞こえた気がした。パンツだろうか。耳を澄ませながら進む。
ひきかえせ
ひきかえせ??今はっきりとひきかえせと聞こえた。誰だ!?誰かいるのか!?
ひきかえせ
540 :
試練そしてじゃんけん20
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:07:36 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ
ひきかえせ
…わかった。この顔型の彫刻喋りやがる。おそらくへタレ冒険者をふるいにかけるためだろう。
フッ…こんな子供騙しにひっかかる俺じゃない。無視だ無視。
ひきかえせ
541 :
試練そしてじゃんけん29
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:08:30 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ
ひきかえせ
しかしこの洞窟暑い。というかジメジメする。
ひきかえせ
ひきかえせ
542 :
試練そしてじゃんけん30
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:09:29 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ
うざい。暑いので黙ってろ。てか迷った。同じ通路をループしてるような気がする。地図は捨てた。
ひきかえせ
ひきかえせ
ひきかえせ
543 :
試練そしてじゃんけん31
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:10:05 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ
ひきかえせ
ひきかえせ
ひきかえせひきかえせ
ひきかえせひきかえせひきかえせひきかえひきかえひきかえひきひきひきひき
うるせえええええええええええええぇえええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!
その瞬間俺の中の理性は吹き飛んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおォぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
およそ思いつくあらん限りの魔法を放つ。轟音が狭い通路に反響する。かおの彫刻は大半が吹き飛んだ。
544 :
試練そしてじゃんけん32
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:10:50 ID:TmeR1zoU0
ー地上ー
勇:総長ちゃん大丈夫かなぁ…
ね:魔物にやられる事はないと思うけどね。
お:ここは試練の遺跡じゃぞ。一筋縄にはいかんわい。
ー揺れる地面。鳴り響く轟音ー
勇:キャッ!!!!今の何!?
ね:ただ事ではないわね…総長さんもずいぶん派手に暴れてるみたい。
お:おい!わしは長年ここを守っておるが今のはなんじゃ!初めてじゃぞ!
勇:助けに言った方がいいかな…!?
545 :
試練そしてじゃんけん33
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:11:15 ID:TmeR1zoU0
ね:そうね。
お:ちょっちょっと待て1何人たりとも二人以上でここを通すわけには…
ね:はいはいお話は後で聞くからちょっとどいててね!
勇:ごめんね!すぐ戻ってくるから!
お:こっコラ!待たんかい!おぬしらにはほんと常識てもんが…あ…行ってしまいおった…
546 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/15(火) 21:12:02 ID:TmeR1zoU0
今日はここまでっす
支援ありがとう!
547 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/15(火) 21:15:23 ID:OgYFDAyZO
お疲れさまでした。これからも楽しみにしています
548 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/15(火) 23:41:14 ID:NRiiZmeYO
外道総長キターwwwwwww
549 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/16(水) 00:58:39 ID:crayaNe9O
やっと前回の分を越えましたね、続きが本当に楽しみです。
頑張ってください!
550 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/16(水) 01:07:46 ID:d5XpOWgy0
ランシールアワレwwwww
試練に立ち向かう気さらさら無し!ってのがキモチイイw
551 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/16(水) 14:14:01 ID:TJBPpRY7O
みんなのゼッツーちゃん号wwwww吹いたwwww
552 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/18(金) 23:23:11 ID:axR0EAOP0
ほすほす
553 :
新たなる仲間!……。1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:39:05 ID:f2uRp8ik0
………………………………………………………。
……………………………………。
……………………。
………。
554 :
新たなる仲間!………。2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:40:05 ID:f2uRp8ik0
…ん……。
目を覚ました。俺の名はリュウジ。泣く子も黙る史上最大・最強・最高の暴走族“鬼浜爆走愚連隊”
の総長を務めていた男だ。まあ昔の話だ。今はただ酒びたりのひきこもりだ。
生きていても死んでいても関係ない無気力な毎日。
…………あっ!やっと目覚ましたよ!もう総長ちゃんの寝ぼすけ!
ぞおおおうぅぅううじょぉおおおおおおおおおおういうううう!!!!!!!
甲高い女の声と同時に筋肉ダルマの熊みたいなパンツ男が抱きついてきた。…痛てえ。
555 :
新たなる仲間!………。3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:40:35 ID:f2uRp8ik0
痛てえっつの!
俺はパンツ男を3メートル程吹っ飛ばすとその見るからに怪しい風貌の男は
天井にめり込んだまま沈黙した。
それだけ元気があればもう大丈夫ね。
やたら美人のねーちゃんが口を開く。
…………そうだった。俺はベランダで足を滑らせて気づいたらこの謎の世界に迷い込んだんだった。
ぞううじょうううぅういぎでででよがっだでびゃんずううぅううう
パンツが号泣している。相変わらず頑丈だなコイツ。しかし俺は何故気を失っていたのであろうか。
………思い出した。オーブを求めて洞窟に入り、ちょっとした手違いで洞窟をぶっ壊してしまった。
崩壊していく洞窟の中で記憶が途切れている。あの後どうなったのだろうか。
うんとね、おっきい地震が起こって心配だからあたしとおねーちゃんとで洞窟に助けに入ったの!
そこで総長ちゃんとカンダタちゃん見つけて戻って来たんだよ!オーブもちゃんとだよ!
556 :
新たなる仲間!………。3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:41:05 ID:f2uRp8ik0
……オーブ……オーブ!?危ねえ危うく夢も野望も全て土の中に埋もれる所だったぜ。
しかしこの女二人が俺ら大男二人担いであの崩壊する洞窟を抜けてきたのか。こいつらわりと
パワーあるじゃん。
まさか!そんなの無理だよーあのね、魔法で一発でポーンって出てきたの♪
なんてこった…そんな便利な呪文があるとは…てかそんな呪文使えるならおまえが行けや!
行くって言ったじゃん!総長ちゃんがじゃんけんでずるっこして勝手に行ったんでしょ!
それにほんとにギリギリだったんだから!もう!
ああ。そういやそんな事もあったな。ピーピーうるさい勇者を無視してベットを出る俺。
腹減った。なんか食い物ないかな。その辺の棚を漁る。何も無い。ちっ…しけたとこだな。
部屋を出る。玄関には変なおっさんが顔真っ白にして放心状態だった。おいおっさん腹減ったから
なんか食いもんくれよ。おっさんは小声でブツブツ呟いている。わしの洞窟が…わしの使命が…
話しかけても素無視だ。大丈夫かコイツ。おっようやく俺の存在に気づいたようだ。
…と同時に近くにあった椅子で殴りかかってきた。おいやめろ!あぶねっつの!
557 :
新たなる仲間!………。4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:41:28 ID:f2uRp8ik0
おぬしさえ!おぬしさえ来なければわしの平穏な日常が!ぬおおおおおぉおおお!
反射的に体が反応してカウンターを入れてしまった。やべ。おっさん壁突き破って外まで吹き飛ぶ。
おい。大丈夫か。反応がない。騒ぎを聞きつけて人だかりが出来てきた。マズい。これはマズい。
ヒソヒソ…あいつあれだろ…勇者様御一行の…なんで一般人殴ってんだ…
ママー!しっ!見ちゃいけません!ヒソヒソ…
おまえら帰れ!見せもんじゃねーぞコラァ!ヒーこの子だけはどうかお助けを!なんてやり取りを
していると勇者たちが来た。あー!また総長ちゃん町の人いじめてる!違うこれには深い訳が…
ホイミ
ねーちゃんが魔法をかける。目を覚ますおっさん。
いやはやこれはこれは勇者様。取り乱してしまいしまんですな。
やっと落ち着きを取り戻したようだ。おっさんの家系は代々この「ちきゅうのへそ」という洞窟を
守ってきた。しかしその洞窟は無くなってしまった。確かにちょっと悪い事したかもしれない。
558 :
新たなる仲間!………。5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:46:10 ID:f2uRp8ik0
わしは女房と子供のいる故郷に帰ります。ここ半年程帰ってなかったので。そこで農業でも
始めますわ。ハッハッ八…
そうかこのおっさんも無職か。まあ無職も悪くは無いと慰める。勇者が申し訳なさそうに口を開く。
なんか…悪いことしちゃったね…ゴメンナサイ…
おっさんはいやいや気にしないで下され。それよりもお目当ての宝手に入ってよかったですなと
言っているが確実に目は死んでいる。
あっそうだ!奥さんと子供ってどこに住んでるの?私たち送るよ!
また勇者が勝手な事言い出したが今回は仕方がないだろう。そのくらいはしてやる。
ノアールですじゃ。とんだ田舎で勇者様の旅の妨げになるだろうにわしの事は気にしないで下され。
一瞬時が止まった。ノアール。そう俺と勇者が出会った場所。じいさん最後の場所。
もはやノアールという言葉は町の名前ではない。今となってはただの地名としてしか用を為さない。
559 :
新たなる仲間!………。6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:46:32 ID:f2uRp8ik0
誰も口を開けなかった。破壊された民家。あたり一面の血痕。そしてじいさん…全てが鮮明に
蘇る。ノアールは…もう無い。あそこは魔王に滅ぼされた。またまたご冗談をと笑っていたおっさん
も勇者の目を見ると黙り込んだ。そうですかいやいや酷い世の中ですな!最後にもう一度息子の顔でも
見ときたかったわい…必死に何でもない風に振舞うのが痛いほどわかる。……こいつ強いな。
いやー守るべき場所も家族も同時に無くなってしまうとはさすがに参りましたな。ハハハ
かける言葉がねえ。勇者がいいこと閃いた!っと喋りだした。嫌な予感がする。
ねえねえおじさん!する事無いなら私たちと一緒に旅しよーよ!
へ?
おっさんは突然の申し出に今一状況が飲み込めてない。当たり前だ。俺も訳がわからねえ。
勇者の目はマジだ。もはやこうなったら誰もNOとは言えない。
560 :
新たなる仲間!………。7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:47:33 ID:f2uRp8ik0
あのね、私たちと一緒に旅をして、色んな人に出会って色んな場所にいってね、それでおじさんが
好きな場所やもしかして好きな人に出会ったら、そこでお別れすればいいと思うんだ。うん絶対そう!
そうですな…ここにいても何もありゃせんし勇者様がそう言って下さるならお邪魔しましょうかな!
わーい♪こちらこそよろしくお願いしまーす♪
まただ。また総長様である俺を差し置いて勝手に話が進む…いいんだどうせ…俺は形だけの総長さ…
てなわけで我が鬼浜爆走愚連隊にまた一人メンバーが加わった。不本意ながら。
その日の晩鬼浜定例会議の議題はもっぱら新加入のおっさんについてだ。とりあえず俺が総長であり
このチームのボスである事、勇者を含めここの構成員はすべておれの子分であることははっきりさせて
おかなければいけない。ではまず俺がボスである事から説明しよう。
威厳・強さなどから当然言わなくてもわかってると思うがこのチームのボスは俺d…
ねーねー!おじさん何て呼んだらいい?お名前は何て言うの??
く…このクソガキが…
561 :
新たなる仲間!………。8
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:48:12 ID:f2uRp8ik0
わしの名前はノーマンと申します。好きに呼んで下され。
んとねーじゃあノマさんでいい?そっちの方がかわいいし!
ノマさん…何か照れますな!ホッホッホ
おっさん小娘にデレデレしてんじゃねーよ…しかし相変わらず勇者はすげえ。家族も使命も一日で
失った一人の男がその晩にここまで笑顔で笑えるだろうか。コイツはアホで天然だけど周りの人全てを
巻き込んで幸せにする力を持ってるのかもしれない。
で、次の目的地くらいは決めといた方がいいんじゃない?
ねーちゃんが突っ込む。その通りだ。鬼浜会議はバカ勇者とアホパンツのせいでいつも話がそれる。
今手元にあるオーブは4つ。全部で6つあるらしいから残りは2つだ。しかし何処にあるのか
検討もつかない。さてどうしたものか。一応聞いてみる。
おまえら誰かどんな小さな事でもいいからオーブについて何かしらないか?
パ:あっしの考えによりますとですね…
黙れ。おまえは喋んな。
562 :
新たなる仲間!………。9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:48:42 ID:f2uRp8ik0
勇者とねーちゃんが首を横に振る。
おいおいあてもなく世界中探し回るなんていったい何十年かかるんだよ…
おっさん(以下‘お’):確かな情報じゃないんだが東の果ての‘ジパング’という国に凶悪な巨竜がおり
先代勇者様がその竜を封じるためにオーブを使ったらしいですぞ。
マジか。これは有益な情報だ。こいつの知識は意外と役に立つかもしれない。
そういやまだ確認してなかった。このおっさん果たしてどのくらい戦えるのだろうか。
お:ハッハッハ戦闘?無理無理!無理ですわ。肉体労働は苦手でしてな。
その辺の子供にも負ける自信があるぞい。
……聞かなきゃよかった…。戦力は増えないが悩みの種は一つ増えたようだ。
次の目的地もジパングに決定した所で会議はお開きになった。ドッと疲れた。俺はその日すぐ寝た。
ー深夜ー
今晩は冷える。しょんべんでもしようかと部屋を出る。おっなんかおっさんと勇者が話し込んでいる。
何故か反射的に隠れてしまった。ん…どうやら俺の話題のようだ。
563 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/19(土) 00:51:43 ID:NE0NIdp60
支援
564 :
新たなる仲間!………。10
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:52:27 ID:f2uRp8ik0
しかしわかりませんな。あの総長とかいう男…ただの乱暴者にしか見えないですぞ。
なぜあんな男が勇者様の御一行に…。しかもあやつ自分がボスだとか勇者様は子分だとか…
ふーむわからぬ…
総長ちゃんは見た目恐いし口も悪いけど頼りなるうちのリーダーだよ。ノマさんもそのうちわかるよ!
ああみえて根はすーっごく優しいんだ。
そうですかな。まあ勇者様がそう言うなら間違いないでしょうな…。あとあのカンダタという男…
あれは本当に人間ですか?なんと恐ろしい風貌!わしには魔物にしか見えんぞい。
えー!そんなことないよ!カンダタちゃんかわいいじゃん!絶対!
うーむ…いやはや最近の若い子の感性はわからんわいハッハッハ
総長ちゃんもカンダタちゃんもあたしの大好きな仲間です!もちろんカンダタちゃんの子分も
おねーちゃんも…それにノマさんもね!
565 :
東へ11
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:53:48 ID:f2uRp8ik0
……。
一応俺がボスだという事は自覚しているようだな。殊勝な心がけだ。
おっさんは明日絶対殴る。
ー朝ー
俺たちは船に積めるだけの荷を積んで港を後にした。
おっさんの事情を知った町の人達が食料やら酒やらをアホみたいにくれたおかげで
ほとんど買い物せずに済んだ。実は最近かなり金が貯まっている。
何故かと言うと基本的に宿屋もタダだし飲みに行ってもタダだ。
武器も防具も道具も定価の半分から10分の1程で買うことができる。
場合によっちゃお代はけっこうですとか言われる始末だ。
これも全て俺とパンツの巧みな交渉術の賜物だ。特にパンツなんて口を開く事なく目だけで値切る
事ができる。こいつにはきっと天性の商才があるのだろう。
ジパングまではまだ暫らくかかりそうだ。最初はパンツが船長な事に生命の危機を感じたがさすがに
もう慣れた。たいして強い敵もでないしのんびりしとくか。
566 :
東へ12
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:54:22 ID:f2uRp8ik0
いっとくけど気休める暇なんてないわよ。
げ…ねーちゃん…
父から私の使える呪文全部教えるようにって頼まれてるの。まだ全然進んでないじゃない。
ペースあげてくわよ!
いや俺には己の体という最強の武器があるからそこまで呪文にこだわらなくても…
さあじゃあ最初はバギの復習から!
聞いてねえ…
当然俺にブレイクタイムなどあるはずもなくみんながしばしの休息をとってるのを尻目に
今日もコツコツと修行に励むのであった。鬼だ。人の皮を被った鬼だこの女は。
567 :
東へ13
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:55:02 ID:f2uRp8ik0
ちょっと!こら!寝ぼすけ!起きろー!
うぅうんん…ぶぶぁギは精神の統一よりしいいいん空を巻き起こ…zzzzzzz
こら!意味不明な寝言言ってないで起きろー!
………。ん…?なんだもう朝か。夢の中でまでねーちゃんに特訓されちまったぜ。
お?なんだ勇者。なんでおまえがここにいる。とっとと自分の部屋へ帰れ。
帰れじゃないでしょ!もう!着いたよ!ジパングに着いたの!
みんなもう船降りる準備できてるよ?総長ちゃんも早くしてね!
ランシールを出てから一週間ちょっとか。俺たちはようやくジパングに着いた。
しかし辛かった。ねーちゃんのスパルタ度はあのクソイケにも引けをとらないくらいだ。
ほんとに恐ろしい親子だ。…正直できる事ならもう関わりたくない。
568 :
東へ14
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:55:36 ID:f2uRp8ik0
船を泊められそうなポイントを見つけるといつものように船番はパンツの子分共にまかして
俺たちは上陸した。ジパング。言葉の響きもそうだがどこか懐かしい気がする。
おっさん曰くここから東にしばらく歩くと町に着くらしい。このおっさんどうやらかなりの
インテリのようだ。ねーちゃんも頭はいいのだが、如何せんイケと一緒に長いこと塔に引きこもって
た分こういう情報面にはうとい。そういう面では勇者も微妙だしパンツは論外、別世界の俺が
知る訳がない。このおっさんカーナビばりに使えそうだ。
やはり地面は落ち着くな。ぼんやりそんな事を考えていると敵が現れた。
不細工面の蛾が5匹にデカいキノコが三匹。杖もった小デブが2匹。…ちっ多いな面倒くせえ。
とりあえず分担して片付けていくか!みな各々近くにいた相手に飛び掛る。
俺はキノコを焼き尽くすとそのまま翻って小デブに切りかかった。
ヒュン!ザクッ!!
そこじゃ!総長殿お見事ですぞ!
危ない!カンダタ殿後ろじゃ!後ろに魔物が!ああ!噛み付かれた!痛いい!
ガブ!ドカッ!グゥエェェェ!!!
569 :
東へ15
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:56:01 ID:f2uRp8ik0
勇者様頑張ってくだされ!不肖ノーマン応援しておりますぞ!
バシュッ!!!キーン!カキーン!
総長殿あなたもリーダーならもっと全体を見てですな…あ!ほら勇者様が囲まれておる!
うるせええええええぇぇぇえええええ!!!!!!!!!!
魔物に飛ぶはずの鉄拳がついおっさんに炸裂した。
おまえは戦えないなら黙っとけ!邪魔じゃボケ!
うぬうう…すまんつい血がたぎってしまい…面目ない…
ちょっと総長ちゃん!怒っちゃかわいそうでしょ!せっかく応援してくれてるのに!
敵を片付けた勇者達が戻ってきた。いやだってよ!うるせーじゃんこいつ!
その後しばらく勇者と口論した結果、おっさんは戦闘中必要最低限以外口を開いてはいけない
という事で落ち着いた。しょぼくれるおっさん。慰める勇者。
570 :
東へ16
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:59:03 ID:f2uRp8ik0
そうこうしているうちに町が見えてきた。おお!これはかなり大きな町だ。
町の入り口で異常なまでの注目を集めてしまった。好奇の視線。いや、町に着くたび
変な目で見られるのはいつもの事なので気にならないが今回はちょっと違う。
むしろ変なのはこいつらだ。服装、髪型どれをとっても今まで旅してきたどの国とも
当てはまらない。ガキが三人近づいてくる。は?何?田舎もんだと?
あっいてコラ服引っ張んな破れんだろがコラやめろって!
ガキどもを振り払う。何なんだこいつらは…
わーいわーい田舎もんが熊つれてきたぞー田舎もが熊連れてきたぞー
総長!あいつら総長の事を熊呼ばわりしてるでやんす!シメてやりましょう!
いや熊に間違えられたのはおまえの方なんだが…しかしうっとしいガキ共だ。
ガアアアアッッ!
突然パンツが奇声を発して驚かした。一瞬固まりその後号泣しだす子供。正直泣き出す
子供の気持ちもわかる。子供に対してよくやる事と言えばよくやる事だがパンツがやって
しまうとシャレにならない。子供は泣き止まない。バカでかい声で鳴き続ける。
571 :
東へ17
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 00:59:40 ID:f2uRp8ik0
なんだなんだと人が集まってきた。く…いつもそうだ。いつもこうなる。行く先々で注目を
集めてしまうのは俺が天才故に仕方のない事なのか…。気づけばもの凄い人数に囲まれていた。
もはや身動きがとれない。仕方がないこいつらぶっ飛ばして道つくるか。
俺が拳を振り上げたと同時に凄い勢いでおっさんが飛びついて阻止してきやがった。
一般人に手をあげるのはよくないですぞ!ぬおっ!
こいつ弱いくせに。魔物と戦う時も今くらいの根性の一つでも見せて欲しいものだ。
おっさんと取っ組み合ってる間にも事態はさらに悪化していた。明らかにカタギではない
恐い顔した人らに囲まれている。おそらくこの国の兵士だろう。
有無を言わさず俺たちはそのまま連行された。まあこれも経験済みのパターンだ。
この国の王に会って誤解をを解けばなんて事はない。さあ俺を王の前まで連れて行け。
…………。王に会うはずがなぜか地下に向かう。なんだなんだここの王は引きこもりか?
…………。ガチャッ。……え?……。そのまま投獄されてしまった。これは読めなかった。
ちょっと待てコラ!いきなりブタ箱はねーだろ!話くらいさせろクソ共が!兵士はまったく
聞く耳を持たない。てめーマジ黒焦げにすっぞコラ!下っ端兵士のくせに世紀末覇王の俺様を
こんなとこに閉じ込めやがって後悔すんぜ?いいのかコラ!
572 :
東へ18
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:00:20 ID:f2uRp8ik0
…………。無視か…。
今まさにボルテージは頂点へと向かっていた。仮にここに閉じ込められるまでの俺の怒りを
10としよう。だが今は10億10!!!お前らに明日を生きる資格は無い!!!!
くらえ!むぅぅえラゾォオオオオ……総長ちゃんだめ!!!!マァァアッァ!!!!
勇者の叫びも空しく俺の放った特大の火炎球が牢の入り口ごと吹き飛ばした。
響き渡る轟音。吹っ飛ばされる兵士。そしてヒッッヒエェ〜!!!!と奇声をあげて逃げ出した。
俺をこんなとこに閉じ込めるからだ。まったく常識のないヤツらだ。
振り返るとみんな有り得ない程の冷たい視線でこっちを見てる。
なんだよ!俺が何か悪いことしたか!?俺のおかげでおまえらここから出れるんだぞ!
ほんとにこいつらも常識が無い。感謝の一つでもしていいとこじゃねーかまったく。
で?
ねーちゃんが恐ろしく低いイントネーションで言う。いやでって言われても…
で?これからどうするわけ?
ヤバい。完全にブチギレしてる。正直恐い。
573 :
東へ19
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:00:59 ID:f2uRp8ik0
もうここでの情報収集は望めないわ。とにかく人が来る前に逃げましょう。
一旦船に戻ってからもう一度出直すわよ。
みんなぞろぞろとねーちゃんについて行く。なんだよまるで俺が悪者みてーじゃんかよ!
おっいい事思いついたぜ!多分オーブ程の代物となると宝物庫とかそんな感じの場所にあるから
このまま襲って奪っちまおーぜ!
誰も聞いていない。サッサと行ってしまった。俺は泣いた。
すんなり帰れるわけもなく城の入り口付近で今度は完全に武装した50人はいるであろう兵士に
囲まれた。しかし問題は無い。俺は昔河原で一人対100人で乱闘になっても生還した男だ。
この人数ならいけるぜ。一気にぶっ飛ばしてやる。
いい?絶対殺しちゃダメよ。出来るだけ最小限の相手だけ倒して一気に駆け抜けるわよ!
ねーちゃんが指示を出す。おい待て。俺は売られた喧嘩は買う男だ。この状況で逃げるなんて
真似できるか!と思ったがとりあえずここはねーちゃんの指示に従おう。どーせ一人で暴れてても
また置いていかれるのがオチだ。…世界征服したあかつきには絶対こいつら全員島流しにしてやる。
おやめなさい!
女の人の鋭い声が響き渡った。兵士が一斉に構えをとく。そこには女と老人がいた。
女の方は勇者と同じくらいの年齢だろうか。兵士が全員ひれ伏した。
そこまでです異国の者達よ。もしこれ以上騒ぎを起こすようならジパングの女王ヒミコの名において
あなた方を処罰します。大人しく武器を下ろしなさい。
574 :
東へ20
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:01:42 ID:f2uRp8ik0
このクソジャリ女王だか何だかしらねーが偉そうな奴だ。結局ねーちゃんとヒミコとやらが交渉した
結果、正式に謁見する事になった。そのまま奥の間に案内される。
そなた達は何の目的でこの国に参られたのじゃ?
この国に竜を模ったオーブがあると聞いてきました。
旅の目的達成の為どうしてもオーブ必要なんです!
勇者が答える。
オーブはオルテガ様から預かりし我が国の宝。簡単に旅の者に渡すような物ではない。
いったい旅の目的とはなんじゃ?
旅の目的?んなもん決まってんじゃねーか。
俺らの旅の目的が聞きたいか!耳カッポじって良く聞けよ!俺が世界中を旅すんのは世界征服の為だ!
取りあえずその一環として異常に態度のデカイ魔王とやらを一発ブチのめしてやろうと思ってな。
そのためにオーブが必要だ。さあくれ。
周りがザワつく。ヒミコが噴き出す。
はっはっは異国の者はおもしろいのう!世界征服とは大きくでたな!まあ夢は大きい方がいいわい。
はっはっは
この小娘俺よりだいぶ年下のくせに何を偉そうに…。だいたいその年寄りみたいな喋り方が
感に障る。うぜえ。
575 :
東へ21
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:05:29 ID:f2uRp8ik0
お願いします!どうしても必要なんです!
勇者が割って入ってきた。
私は…オルテガの娘です!
一瞬でヒミコの顔つきが変わった。じっと勇者を見つめる。
そなたの眼…嘘は言っておるまいな。
ヒミコは一発で信じたようだ。またこれだ。こいつは本当に相手の目を見るだけで全てを納得
させちまうからすげえ。
しかし今オーブはここには無い。オーブは…
姫!!!!!
隣の老人が割って入ってきた。
姫!異国の者をそんな簡単に信用してはいけませんぞ!もっとジパング大国の女王である
自覚を持たれい!
正直老人の言う事は正しい。自分の事を勇者と名乗る怪しい集団が国宝くれなんて言ってきて
信用するほうが問題ある。
老子よ。この者の眼は本物じゃ。それに異国人という事に何の問題がある?
そのような閉鎖的な時代はもう終わったのじゃ。自らの国の問題を自らで
解決出来ないような我が国に置いて異国と交わるのは今後必要であるだろうぞ。
姫!いくら姫と言えどそのような発言は許されぬぞ!選民であるわが臣民は卑下な異国人と
関わる必要なんてありますまい!
ヒミコは頭を抱えると老子と呼ばれる老人を退室させた。老人は渋々出て行った。
576 :
東へ22
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:07:13 ID:f2uRp8ik0
すまぬな異国のものよ。あやつも人一倍愛国心の強いゆえ、無礼な発言許されい。
いるよなああいう頭の堅いジジイは。ヒミコも大変だな。
それでオーブの件なのだが…ここから北の鳥居のある洞窟に安置されているはずじゃ。
はず?どういう事ですか?
勇者が聞き返す。
この国には「やまたのおろち」という巨大な悪鬼がおりましてな。度々現れては
破壊の限りを尽くしわが民を恐怖に陥れておった。だが先代国王の時オルテガ様が
この国に現れ見事に退治なさった。ただその生命力の強さ故完全に葬り去る事ができず、
北の洞窟に封印されたのじゃ。そして封印をより強固なものとするためオーブをそこに
安置された。
じゃあそこに行きゃオーブあるんじゃねーか。
ヒミコの顔が曇る。
悪鬼が……復活したのじゃ。あの封印は簡単に解けるような物ではない。しかもオーブで強化されて
おるので尚更の事じゃ。おそらく…強大な魔力を持つ者がオーブを持ち去った後封印を解いた
のだろう。もう何度も原因究明のため兵を送ってるのだが誰一人として帰ってこないのじゃ。
強大な魔力を持つ者。おそらくその場にいた全員が同じやつを想像しただろう。
偉大なる勇者オルテガの娘達よ。恥をしのんでお頼み申す。どうか…
断る。
ヒミコが話し終える前に断ってやった。どうせまた退治してくれとか言うんだろ?
何で俺らがそんな事しなきゃいけないんだよ。俺はボランティアでも人助けの為にでも
無い。世の中クソ共全部ぶっ飛ばして俺が覇権を握る為に旅をしているのだ。
577 :
東へ23
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:07:41 ID:f2uRp8ik0
自分の国のゴタゴタは自分で解決しろよ。オーブがないならもうここには用は無い。
おまえら帰るぞ。
ちょっと!総長ちゃんそんな言い方無いでしょ!もう少し考えてよ!
勇者が怒った顔でこっちを見る。うるせえ。俺は人助けなんてまったく興味ねえ。
空気を読んだねーちゃんが簡単には返事できないので話し合い明日また返答すると
その場をまとめた。ヒミコは宿を手配してくれた。
その日の鬼浜会議は荒れた。過去最高に荒れた。
勇者は引き受けるの一点張りだ。あとのメンバーも勇者に賛同する。そろいもそろってアホ共が。
どうやら勇者はかなり勇者の親父が前に倒したという事を気にしているようだ。今度は自分が
この国を救うのが使命とでも考えているのだろうか。付き合いきれん。
そんなに行きたいなら勝手にしろ。俺は絶対に行かん。
総長ちゃんのバカ!わからずや!
ついに勇者は泣きながら出て行ってしまった。
総長!あっしは心底見損なったでやんす!
パンツも出て行った。それを機に自然解散となった。
578 :
東へ24
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:08:17 ID:f2uRp8ik0
ー次の日の朝ー
あいつらはヒミコに会いに行ったようだ。置手紙があった。
無性にイライラする。ちっ…こんな時は飲みに行くしかない。俺はフラフラと宿を出た。
外には小雪がチラついている。どうりで寒いと思った。昨日はそんなでもなかったのにな。
ほんとになんだってんだよあいつら…あの甘ちゃん加減にはほとほと愛想を尽かした。
こうなったら全員辞めさしてまた新しくメンバー集めるか。ったく面倒くせーなチクショウが。
しかし初めて来る場所だ。どこで酒が飲めるかさっぱりわからない。その辺のおばさんに
聞いてみる。少し先に酒屋があるらしい。なぜかおばさんの顔が曇る。まあいい。
そこから500メートル程行った先に酒屋はあった。しかし人気がない。朝だから当然か。
中に入る…うおっこれは酷い。中には店の主人とその奥さんと思われる人がいた。だが凄まじく
顔に生気が無い。世の中終わったみたいな顔をしている。客商売だろ大丈夫かここ!?
……すいません…もうこの店は閉めましたんで…よそに行って下さい…
閉めたって店自体を辞めたって事か?おいおいふざけんな俺は酒を飲みにきたんだ。出せ。
そうですか…なら残ってるお酒全部飲んじゃって下さい…お代は結構ですので…
マジか!?まあせっかくの機会なんで有難く頂く事にしよう。
そしてアホかって程酒が運ばれてきた。マジで店の在庫全部持ってきやがった。
一口飲んでみる……………これは!?それは俺の世界で言うところの焼酎のような味だった。
酒ってのはその時のテンションにより味が大きく左右される。自棄酒の類ってのは大概
どんないい酒を飲んでも不味いもんだ。ましてや今の俺の心境はどん底だ。
なのにこれはうまい。文句なしにうまい。ここまでうまい酒を漬ける事ができるのに何故店を
閉める必要があるのだろうか。ほろ酔いも手伝ってお節介にも聞いてみる。
娘が…選ばれたのです…
579 :
東へ25
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:10:17 ID:f2uRp8ik0
????わけがわからん。何に選ばれたって????
主人が奥から無言で一通の手紙を持ってきた。内容はつまりあんたの娘をやまたのおろちの
生贄にするってもんだった。差出人はジパング…つまり国から直接の指名だ。
うっ……うッ…仕方がないんです…仕方がないんですよ…やっとできた娘なんですが…
国の為に命を差し出せるなら本望です…
俺は無言で手紙を破り捨てた。燃やした。そして主人を殴りつけた。ふっとぶ主人。
な…何をなさるのですか!?
何をなさるのですかじゃねー!!!!!俺はもう一発殴った。てめーはアホか!そんな大事な
娘をなぜ簡単に差し出す!?そんな大事なもんだったらタマ張って守ってみろや!
主人が力なくうな垂れた。
無理です…あの怪物には誰も逆らえないんですよ…人の力ではどうしようもありません…
私は所詮酒を作るしか能の無い人間です…
く…俺はこいつみたいに卑屈な人間が一番嫌いだ。もう一発どついてやろうと近づくと
やめて!お父さんをいじめないで!
小さい女の子が止めに入った。娘だろう。必死に父親にしがみついてこっちを睨む。
その必死な顔を見た瞬間俺の心のモヤモヤはキレイに吹き飛んだ。
うおおおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおお!!!!!!!!!!!!!
もうゴチャゴチャ考えるのは止めよう。俺らしくねえ。俺はやまたのおろちがムカついた。
だからぶっ飛ばす。それでいいじゃないか。誰の為でもない。俺自身の怒りの鉄拳だ。
580 :
東へ26
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:10:49 ID:f2uRp8ik0
いいかてめー店閉めやがったらマジでボコボコにするからな!こんなうまい酒を振舞う
店が無くなっていいわけないだろうがアホが!やまたのおろちは俺を怒らしてしまったため
跡形も無く消し飛ばしてやる!祝勝会はここでするからてめーは準備してまってろ!
主人と奥さんと娘は最初キョトンとしていたがやがてバタバタと駆けずり回ると一本のビンを
持ってきた。
これを使って下さい!これは特別な酵素をつかって我が家に伝わる秘伝の方法でつけた神酒です!
オルテガ様もこれを使いやまたのおろちの動きを止めました!もう残りはこれしかありませんが…
どうせ蔵にあっても眠っているだけです。見ず知らずの旅の方に渡すのも変かもしれませんが
あなたに使って欲しいのです!
俺はビンを受け取ると走った。とにかく走った。粉雪舞い散る中無我夢中で走った。
国一つをここまでかき回す化け物だ。きっと恐ろしく強いのだろう。
頭の中にはあいつらの顔がよぎる。もしかしてもう戦ってるのだろうか。
俺がいなくて大丈夫だろうか。あいつら俺に比べるとあんま強くねーからな…
まさか今頃もうやられてたりは…クソッ!そうなったら総長一生の失態だ。何故あんなつまらん
意地を張ってたんだろうか。自分で自分がムカついて仕方がない。今はただとにかく速く走るのみ!
そして俺は北にある洞窟へついた。おそらくここだろう。周囲の空気が明らかにおかしい。
中から邪気が溢れ出ているように感じる。勇者は!?パンツは!?ねーちゃんは!?
この静けさからおそらくまだ到着してないに違いない。どうやら間に合ったようだ。
もうすぐ来るろう。暫く待つか。
581 :
東へ27
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:11:52 ID:f2uRp8ik0
だが俺の予想は外れた。勇者達が来たのは…二日後だった。
……寒い…
おうやっと来たか。おせーぞてめーら。とっととやまたのなんとかってやつ倒して帰るぞ。
俺は寒いんだ。
ぃぎやぁぁぁぉおおおぁぁぁおううううぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!
パンツ。
ぞうぢょーーーーぢゃーーーーんんん!!!!!!
勇者。
二人とも俺の声を聞くなり涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして奇声を上げながら
飛びついてきた…おいコラ!あっ鼻水ついたきたねっつの!離れろ!あーもう!
こいつらほんと涙もろいな。何はともあれ俺たちはようやく合流した。
582 :
東へ28
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:12:38 ID:f2uRp8ik0
絶対来てくれるって信じてたんだ!
勇者が満面の笑みで言う。いいから顔ぬぐえ。まだ鼻垂れてんぞ。俺たちは嫌な空気が
プンプンする洞窟の中へ入った。なんて事はない普通の天然洞だ。
へックシュッ!クシャミが止まらない。勇者が総長ちゃんはこんな寒いのにそんな薄着でウロウロ
するから風邪ひくんだよとかぬかしやがる。いや誰のせいで…そういやこいつら二日間も何してた
んだろうか。ねーちゃんに聞いてみる。
やまたのおろちについて色々調べ事してたのよ。強敵だから。でもあまり有益な情報は
得られなかったわ。一つだけあったんだけど…弱点が
おいおい弱点だなんて有益この上ないじゃないか。さすがねーちゃん。
どうやらやまたのおろちの苦手な植物がこの辺に生えているらしいの。それをつかってつけたお酒を
使えばかなり動きを鈍くできるみたい…ただそのお酒探し回ったけど見つからなかったわ。
一軒だけ置いてるお店見つけたんだけど最後の一本旅の人にあげちゃったみたいで…
正攻法で攻めるしか無いわね。
うーむそんな貴重な酒を持ってくとはかなりの酒通の旅人ですな。しかしもしかしたら簡単に
退治できたかもしれぬのに実に残念ですな。
やべ。俺は持っていたビンをそっと捨てた。だって飲んじゃったんだもん…この二日間凍死せずに
すんだのもこの酒のおかげ…神酒だけあって確かに燃えるようなうまさだった…
総長ちゃんぶつぶついっちゃってるけど頭大丈夫!?もしかして風邪が頭まで回った!?
………。仮にそうだとしても普段のおまえらよりは正常な自信はある。絶対に。
そうして俺たちは巨大な門の前に着いた。
583 :
東へ29
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:13:19 ID:f2uRp8ik0
しかしでかい。しかも開いてない。鍵はかかってないようだがこんなもん開けれるか。
おいおいこれじゃ開かなねーぞどうするよ?なんだよ。はいはい。わかりましたよ。
俺とパンツは左右の扉の前に立つとあらん限りの力を振り絞って押した。
く…ピクリともしない。ねーちゃんが俺とパンツにバイキルトをかけた。力が漲る。
ふんッ…ぬうううう…ぬおおおおおぉおぉぉぉ…
血管がはち切れそうになりながら必死になる俺とパンツ。やがて扉は少しづつ開いていく。
ある程度開くとあとは惰性でわりと楽に開いた。
熱い。さっきまでの寒気が吹き飛ぶほど熱い。なんだこの熱気は。
そりゃそーだ。これは溶岩だ。所々地面の隙間から熱気が噴出している。
とにかく俺たちは進むしかない。汗を拭いながらひたすら歩いた。
そうしてたどり着いた先は行き止まりだった。一際大きな空洞で立ち止まった。
つーか熱いだけで何もねえ。
…ん?今微かに地面が揺れたような。いや気のせいだろう。気のせいという事にしておこう。
…やはり揺れている…。
……しかも徐々に振動が大きくなる。みんな終始無言だ。
ねえ…ちょっと…揺れてない…?
勇者がついに口を開く。あーあやっちゃったよ。こいつ明らかにズラの人に向かってカツラですか?
って聞くタイプだな絶対。ここは総長としてみんなを鼓舞しなければ。
先頭を歩いていた俺は振り返る。
いいかおまえら。例えこれから相対する敵がどんな怪物だとしてもだ。例えどんな
山のような化け物だとしてもな…鬼浜爆走愚連隊は最強だという誇りをもってだな…
584 :
東へ30
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:13:55 ID:f2uRp8ik0
なんだ?みんな目が点になっている。俺の顔になんかついてるか?そんなジロジロ見んな。
おっさんがガタガタ震えながら後ろを指差す。何だよまったく。
俺は後ろを振り返った。そしてとんでもないものを目撃した。
………ダッシュ……
俺が小さな声で呟くやいなやそれはそれは凄い速さで転進した。おそらくマッハはでていた。
むおおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!!!!!!!
全員さっきの扉をこえると一気に閉めた。今度はみんなで閉める。必死だ。
落ち着け。あまりの突然の出来事に引き返してきてしまった。逃げてどーする…
おーーーーーーっきかったねー
勇者が半笑いで言った。まあ確かに笑うしかない。冷静に記憶を呼び覚ましてみるが
とりあえず頭らしきものが三本見えた。あれに胴体がついて…うーん…
とにかくとんでもないデカブツだ。これは気を引き締めてかからなければ俺たち全員
あの化け物の胃の中に納まる事になる。
ガンッ!!!ガンガンガンッッッ!!!!!!
突然金属音が響き渡る。どうやらあのデカブツが扉を叩いているようだ。
ガンガンガンッ!!!!ガンッ!ガンッ!
…ちょっと様子見るか。
ガンッ!!!ガンガンガンッ!ガン!!!!!!
あーうるせえ!わかったわかった今すぐぶっ飛ばしやるから静かにしてろ!
585 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/19(土) 01:14:36 ID:NE0NIdp60
支援
586 :
東へ31
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:14:43 ID:f2uRp8ik0
俺が扉を開けようとするとねーちゃんに止められた。
待って…妙だわ。もう少し待ってみて。
暫くして音は消えた。どうやら帰ったようだ。
やっぱり。やまたのおろちは自分ではこの扉開けられないわ。
え?どういう事だ…?理解するまで三秒程かかった。つまりだ。あのデカブツは
自力でここを開けられない。でもはジパングを襲われている。
わかったでやんす!アイツは透明人間になって瞬間移動できて空を飛べるで
やんすね!?とんでもな化け物でやんすな!
…つまりだ。自力でここを出れないとなると何者かがここをいちいち開けている事になる。
そして国を襲わせていると。一体何の為にだ!?謎だらけだ。
どうやらやまたのおろちを退治すればいいだけの問題じゃなさそうね。
ねーちゃんが難しそうな顔をする。とりあえず俺たちは一旦引き返して出直す事にした。
587 :
東へ32
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:15:27 ID:f2uRp8ik0
パンツが腹が減ったとごねるので飯にする事にした。ここでいいんじゃないさっきも
寄ったしと勇者が立ち止まる。げっここは…ここは例の酒屋だ。ヤバイバレる。
おいここはやめて別のとこにしようぜなんか辛気臭い店だしってオイ!総長である
俺を差し置いて勝手に店に入るな!あーあ行っちゃったよ。
中に入るなり店長と目が合う。意味深な目で見つめる俺。いいかくれぐれも俺に神酒を
渡した事は喋るなよ…そんな視線。店長はコクッと頷いた。通じたようだ。
やはり真の男同士は目で語れるものだ。店長イカスぜ!あんたも漢だ!
あなたはさっきの!生きてたんですね…!神酒は役に立ちましたか!?
一気に俺に集まる視線。な…なんだよその目は!見るな!こっちを見るな!
まあいいわとりあえず座りましょうとねーちゃんが誘導する。
さて。うんそうだな。まあここは英気を養うためにまず一杯…ピシッ!
ねーちゃんの張り手が持ちかけた俺のグラスを叩き落した。やっべ目が座ってる。
仕方がないので酒は一旦諦めて真面目に会議をする事にする。
議題は二つ
・どうやってあのデカブツを葬るか。
・誰があの扉を開けて町を襲わせているのか。
デカブツは本気だせばどうかなるだろ?大体酒飲ませて動けなくなったとこ襲うなんて
男の闘い方じゃねえ!
…………。まあいわ。それよりも問題はあの扉。まず考えられるのは魔王軍。
でも私はこの線は薄いと思う。
…なんと。大本命をいきなり切り捨てやがった。てかありえねーだろ。わざわざあんな
化け物をけし掛けたり閉じ込めたり繰り返す様な奇特なバカは魔王以外いねー。
588 :
東へ33
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:16:00 ID:f2uRp8ik0
しかしねーちゃんが続ける。
魔王軍なら一気に滅ぼしてしまうと思わない?なぜ中途半端に襲わせるのかしら。
見たところこの町に目立った被害わないわ。生贄が要求されるくらい。
そんな回りくどい事をするメリットなんて無いわ。見せしめに一気に潰した方がいいもの。
……なるほどな。そう言われりゃそーだ。じゃあ一体誰が…
あの洞窟は普段人は近寄るのかとねーちゃんが店長に尋ねる。店長曰く国の御触れでなるべく
近寄らないようにとの事だそうだ。近づいたら牢ぶっこむぞって程でもないが、
あまりいい思い出の場所でもないので滅多に自発的に行こうという人はいないらしい。
益々行き詰る。いや行き詰るというよりはなんだろうこれは。強烈な違和感を感じる。
……………。まさかな。そんなはずはない。ねーちゃんと目が合う。どうやら同じ事を
考えていたようだ。
ヒミコの所へ行こう。
まさか国が犯人だとは思えない。ただこんな大掛かりな事をできるのは魔王軍かこの国の
機関かのどちらかだ。少なからず何かは知っているはずだ。
勇者とおっさんは難しい顔をしていたが仕方ないと頷いた。パンツは寝ている。
俺達は店長一家に礼を言うと足早に城を目指した。
衛兵の制止を振り切り俺達は中に入った。そしてヒミコの前に立つ。
勇んで来たはいいものを何をどう説明しようか。やべこのままじゃまた只の侵入者だ。
と、ねーちゃんが簡潔に事情を説明した。ひみこはため息をつくとそこにいる全員席を
外せと命令した。
589 :
東へ34
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:16:24 ID:f2uRp8ik0
実は…確かにおかしいのじゃ。突然解けた封印。姿を見せるが実際大して暴れたりはせん。
しかし封書で生贄を出せと要求する。無論あの化け物がそんな事できるわけは無い。
その存在だけで国の民は脅えおる。
コイツは本当に何も知らなさそうだ。……………。よし。明日もう一度あの洞窟へ行こう。
面倒くせえ。ごちゃごちゃ考えるのはアイツをぶっ飛ばしてからだ!
すまんな勇者殿達よ。
勇者はいいんです頑張ってきますと笑顔で答えた。決戦は明日だ。
590 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/19(土) 01:19:30 ID:f2uRp8ik0
支援いつもありがとうです!
20行規制解除きたああああああああああっしゃあああああああ
駄文ですがこれからは32行フルに使えるのだ多少は読みやすくなるかと…
591 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/19(土) 01:32:18 ID:NE0NIdp60
おっさん…ノアニール出身だったのか…
絶対何処ででも必要以上に騒ぎ起こすなあ鬼浜はw
592 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/19(土) 17:58:04 ID:15DieSlcO
勇者の言動にいちいち萌える(*´д`*)
593 :
Stage.? 雑談
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/20(日) 15:53:51 ID:y4U4//8fO
※ 今回はゲーム世界の謎について主人公sに考察してもらいます。
タツミ「ではさっそく。アルスの過去もいろいろ解明されましたが、
今回はいまいちわからない部分を考察したいと思います」
アルス「そういやお前、あの世界が丸ごと無限ループだってこと、薄々気づいてたみたいだな」
タツミ「まあね。でも確信はなかったんだ。だっておかしいだろ。
君の冒険が『ロト伝説』としてドラクエ1&2に継承されていく以上、
ストーリー上『語られない未来』があるのは間違いないんだから」
アルス「だよな〜。1と2の主人公は『ロトの血を継ぐ者』ってはっきり言われてんだから、
俺は子孫を残したってことだろ? なんで俺の未来がねえのよ」
タツミ「思うに、ゲームの枠を逸脱してしまった『君』だけに起きたイレギュラーなんじゃないかな。
Stage.10.5のまとめでも、これはあくまでソフト単位の話であって、
君たちはドラクエというゲームの代表としての存在じゃないって言ってるし」
アルス「他のプレイヤーの勇者たちは、ループなんかしてないってことか」
タツミ「というわけで、読者の皆様がお持ちのドラクエの主人公たちは、
うちのアルスみたいなことにはなりません。何周でもプレイしてあげてください」
アルス「やり込むほどに味わい深くなるのがドラクエだからな」
タツミ「ところで今回の雑談、よく引き受けたね」
アルス「なにがだよ」
タツミ「いや、前回散々言ったから、本当は僕と口をきくのも嫌なんじゃないかなーって」
アルス「本編の確執をいちいち番外に持ち込んでたら仕事にならんだろうが」
タツミ「そりゃそうだけど。……君って意外とオトナだよね」
アルス「意外は余計だ」
594 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/20(日) 16:06:10 ID:ZDaeM8rS0
サンクスコール?リアルタイム遭遇ktkr
支援
595 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/20(日) 21:10:15 ID:wdPMd9m10
>593
ちょ、メル欄…
雑談しとらんで養生しる!
596 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/21(月) 01:45:37 ID:INeekOoN0
>>593
病室ってどうしたん?
無理せず休んでくれ
597 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/21(月) 06:33:32 ID:0ifDap8J0
>>593
了解!
さっそくDS発売前の5をリプレイしてくるぜ!
>>596
避難所参照
598 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/23(水) 09:14:22 ID:ilq2N/md0
やっと規制明け。乗り遅れた〜
作者の皆さん乙!
楽しみにしてますよ
599 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/24(木) 21:09:39 ID:i20I3VgjO
ざっとまとめ一覧見てきたんだがここってひょっとしてモンスターズは含まないの?
まあでも宿屋ないからスレタイに反するのかな
600 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/24(木) 22:28:45 ID:WTJaf9bS0
DQM2には宿屋あるぞ
・・・異世界にだがw
601 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/25(金) 07:27:11 ID:OqPmcdHjO
>>599
どうぞ気にせずお書き下さい
602 :
大怪獣決戦!1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:51:30 ID:tIBBIciw0
ー次の日ー
さすがに今日は誰一人寝坊する事はなかった。パンツですらキチンと起きたのだ。
奇跡。やれば出来るじゃねーかと話かける。ちょうちょが…ちょうちょが…
寝ぼけてるのか何言ってるのかさっぱりわからない。いや違うこれは寝ぼけてるのではなく
寝ているのだ。体は起きているが頭は寝ている。立ったまま寝ている。さすがパンツ侮り難し。
俺達は真っ直ぐ洞窟を目指した。中に入る。一度来ているので今回は進むペースが早い。
迷うことなく扉の前に到着した。一気に開ける。
最深部に奴はいた。咆哮が腹に響く。無意識に後ずさってしまう。チクショウ前に出やがれ
俺の足!みんな完全に気持ちが呑まれてしまっている。ここは先陣きって俺が行くしかない!
俺はダッシュで一直線にデカブツを目指した。ねーちゃんがすかさず補助呪文を唱える。
いくぜええええぇぇぇぇえええ!!!!!!!!
ガキィィィィィィィイイイインンンッッ!!!!
金属音が洞窟内に響き渡る。コイツなんて硬い皮膚してやがんだクソが!…え?
信じられない光景だった。俺の愛用ドラゴンキラーが真っ二つに折れた。
おいおい!ドラゴンキラーとは名ばかりか!いやいや有り得ないから!そしてデカブツと目が合う。
ゆっくり口を開ける。やべえ。次の瞬間凄まじい炎が放たれた。一瞬にして目の前が真っ赤だ。
ねーちゃんが反射的にかけてくれたフバーハのおかげで何とか持ちこたえる。
が、痛い。超熱い。
隣では勇者とパンツが必死に切りかかっていた。炎をギリギリでかわしつつ刃を立てる。
しかし聞こえるのは乾いた金属音だけであまりダメージはないようだ。
603 :
大怪獣決戦!2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:52:00 ID:tIBBIciw0
…仕方がない。俺だってバカじゃない。こんな超規格外の相手に丸腰で挑んだりはしない。
昨日一晩考えて奥の手を用意しておいた。毒を以って毒を制す。目には目をデカブツには
デカブツを…!
ド ラ ゴ ラ ム !!!!
いや正直かなりの賭けだった。イケが一回使った呪文を見よう見真似で使うことは。
だがしかし!俺は!賭けに!勝った!ぬをををををおおおおおおおっっ!!!!!!!!
これは…凄い…!
ねーちゃんが唖然としている。そりゃそうだ。俺のドラゴラムはその辺の奴のとは
訳が違う。このデカブツを一目見たときから考えていた。こんな化け物に勝てるのは
ヤツしかいない…そう…幾度と無く日本を壊滅させかけ、終いにはニューヨークにまで
遠征かけた…
ドラゴラムは呪文を唱えた本人の能力やイメージが強く反映されるわ。
ただこれは…禍々しいというか何というか…そうこの世界の生物ではないみたい…!
当たり前だ!俺たちのヒーローをこんな世界のチンケな竜なんかと一緒にすんな!
今日俺は「ゴジラ」の名においてコイツを倒す!!!!!!!!!!!!!
野生の本能かデカブツは即座に俺を敵だと判断すると飛び掛ってきた。
それでもまだなおデカブツの方が二周りはデカい。だがしかし!ゴジラの名において
敗北は許されない!俺は正面から取っ組み合った。
ぐんむぬぬぬガアアアアアァああグアアああッッ!!!!!
604 :
大怪獣決戦!3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:52:46 ID:tIBBIciw0
巨体がぶつかり合う。もはや小細工無しの力と力の真っ向勝負!
俺の強烈なパンチが炸裂する!が、相手はたくさんある頭で同時に噛み付いてくる!
ぐッ…これはズルい…キングギドラですたら頭3つだったと言うのに…
俺は渾身の力で全身を叩きつける。体が小さい分小回りが利く。一撃の重さに劣るなら
こっちは手数で勝負だ!洞窟内に硬い皮膚と皮膚がぶつかり合う鈍い音がこだまする。
しかし徐々に押され始める。コイツは文字通り頭数が多すぎる!
ふんぐああぁぁぁぁぁ!!!これでどうだああああああ!!!!!!
力任せに一つの首を締め上げた。フロントチョークみたいな状態だ。そうとう苦しいのか
他の首が一斉に暴れだした。体中噛み付かれてボロボロだ。放さねえ!絶対放さねえ!
やがてゴキッと鈍い音があすると締め上げていた首の力が抜けた。
ぎゅアアアアアアァアアァ!!!!!!
さらに追い討ちと俺は口から強烈な炎を吐いた。温度でこそのダメージは薄いものの強烈な
圧力により相手は怯む。チャンスだ。一気にタコ殴りにする。俺の鉄拳連打が完全に相手を
捕らえた。
一瞬グッタリしたように見えた。まじかよ…コイツは一体何処までタフなんだ!?
直に体制を立て直し反撃に出てきやがった。残った口という口から猛烈な炎を吐く。
衝撃に押されて後退する俺。
バギッックロスッッ!!!!!
ねーちゃんの起こした真空波がデカブツの炎を切り裂き顔面に命中した!
助かったぜナイスねーちゃん!立て続けにパンツが同じ箇所に一撃を見舞う。
この首も動かなくなった。
お父さん…私に力をかして!…ラィッディイイイインンッッ!!!!
勇者が強烈な雷を落とした。こいついつのまにこんな強い呪文を…
ギャアアアアオオオオオオオオおおううウウウウ!!!!!!!
605 :
大怪獣決戦!4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:53:15 ID:tIBBIciw0
これはさすがにかなりのダメージを与えたようだ。悶絶するデカブツ。
よしここで俺が一気にカタをつけてやる!あれ?なんかコイツさらに巨大化してないか!?
デカブツの目線がどんどん高くなる…いや違う!これは俺が縮んでるんだ!!!
…元にもどっちまった…。だがこの好機は逃せねえ!炎が効かないなら逆を攻めるのみ!
くらえ!ヒャダイン!!!!!!氷の刃を含む猛吹雪がデカブツを包む。
凍ったせいなのかはたまた体力が尽きたのかデカブツは動かなくなった。
倒したのか…?おそらく一気にダメージをおって動かなくなっただけよ!ねーちゃんが叫ぶ。
膝の力がガクッと抜けた。ち…ちょいとばかし飛ばしすぎたようだ。
もう一息なのに!動け!俺の脚よ動け!
ドク…ドク…とバカでかい心音が響く。
ゆっくりとだが動き出しこっちを睨む。こいつどうしたら倒せるんだ!?
まずいわ!体力も回復力も異常だもの!このままでは競り負ける!
次の瞬間デカブツの振り回した頭により勇者とパンツが宙を舞った。
壁に打ち付けられ崩れ落ちる。どうやらパンツが自らを下敷きにして勇者をかばったようだ。
確かにこのままじゃこっちがもたねえ。クソこっちは
5人がかりだというのに…あれ?5人…そういやおっさんどこいった!?
総長殿総長殿…おっさんが話しかけてきた。てめえ無事か!?はい!身の危険を感じた故
あの岩の陰に最初から隠れてました!っていばるなそんなもん!…え!?なんだと?
おっさん曰くあの動きからして頭はたくさんあれど脳は一つらしい。で、その脳の場所だが
全部の首の付け根が怪しいらしい。ほんとか!?
間違いありません!あやつさっきからそこだけかばっておる!わしはずっと見ておった!
606 :
大怪獣決戦!5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:53:52 ID:tIBBIciw0
この際試してみるしかない。ねーちゃんに回復してもらう。ある程度はこれで動ける。
問題はどうやってその弱点を狙えるかだ。さてどうするか。今こっちの戦力は…
ねーちゃんはほぼ魔力使い果たし、パンツは完全に動けない。残るは俺と勇者。
勇者を呼び寄せる。俺がなんとかしてアイツの注意をひくからお前が剣で弱点を突け。
俺のドラゴンキラーは折れてしまったためこれがベストの選択だろう。
わかったと勇者が頷く。ここで失敗すると勝ち目は無い。気合入れてくぞ!
ねーちゃんが最後の気力を振り絞って竜巻を巻き起こす。デカブツの注意はこっちにむいたようだ。
勇者が駆け出す。よし後は勇者が回りこむまで俺がヤツを引きつけるだけだ。
とりあえず回りこんでることに気づかれてはいけないので派手なの一発かましとくか。
イオ!!!わざと爆発の中心手前にずらした。デカブツは口をこっちに向けると炎を吐く。
俺はフバーハを張ると後は仁王立ちだ。耐え切ってみせる!!!!
熱風が視界を塞ぐ。だがしかし俺は倒れん!!息切れか炎は止まった。
デカブツが大きく息を吸い込む。俺はポケットに詰めてあった薬草を全部口に押し込んだ。
ぐにゃあ!ぐるぢゃらごういびゃ!(コラ!くるならこいや!)
第二波がきた!俺は男の意地にかけて倒れん!…………ぬううううう………
意識が遠のきそうになる。勇者は!?勇者は今どこだ!?勇者がデカブツによじ登っているのが
見えた。もう少しだ。ちくしょうだが目の前の敵はまた大きく息を吸い込む…きた!!!!
やられてばっかじゃないぜ!ヒャダルコおおおお!!!!!!
冷気が炎を押し返す。ぐうううううううう!!!!…だめだ魔力がもたねえ…!
逆に押し返される。多少勢いは抑えられたようだ。なんとか踏みこたえる。
これはもう限界だ。視界がボヤける。デカブツが二重にも三重にも見える。ここまでか…。
総長!起き上がったパンツが体全体を引き摺りながら寄ってきた。そして俺の横に並ぶ。
607 :
大怪獣決戦!6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:57:07 ID:tIBBIciw0
次の一発が最後になるだろう。その間に勇者が一撃見舞えれば俺たちの勝ちだ。
パンツ!俺たちの根性をあのクソデカに見せてやるぞ!はいでやんす!俺達は肩を組むとデカブツを睨み付けた!
怒号共に一際大きな炎が飛んできた。耐える耐える耐える!根性なら誰にも負けん!!!!!
全ての力を振り絞った。もはや体力は尽きている。だが時に気力は体力を凌駕する!!!!
イヤああああァァァァあああああぁ!!!!!!!
勇者の叫び声が聞こえる。どうなったんだ?炎が止まりそこに写ったのは深々とデカブツの
首元に剣を突き立てる勇者の姿だった。
さっきまでの激闘が嘘のように一瞬静まり返る。
……グ……グッウィヲヲオオオオオオオオオオオオ…!!!!!!!!!
明らかにさっきまでとは違う苦しみ方だ。七転八倒して大暴れした後、動かなくなった。
勝った…のか…?満身創痍の俺達が集まる。いやーいやいや凄まじい死闘でしたな!
…いや一人だけピンピンしてやがる奴がいた…だが突っ込む元気もねー…
デカブツはもう完全に動かない。コイツ…本当に強かったな。デカイとはいえこっちは五人がかりだ。
おそらく俺一人でタイマンはってたら勝ち目は無かっただろう。強敵だった。
できる事なら墓の一つでも掘ってやりたいがさすがに無理がある。俺達は洞窟を後にした。
みんな疲弊しきっているのか無言だ。おっさんは一人興奮しているが誰も聞いちゃいねえ。
入り口で立ち止まる。どうしたの総長ちゃんと勇者が振り返る。
イ オ ナ ズ ン ! ! !
轟音と共に入り口が崩れる。数分後岩盤で埋め尽くされ完全に埋まった。
強敵との闘いに敬意を表してこの洞窟をデカブツの墓標にしてやろう。我ながら粋な計らい…
完全に気力も体力も魔力も使い果たした俺はその場で意識を失った。
608 :
大怪獣決戦!7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/26(土) 23:57:39 ID:tIBBIciw0
次に目を覚ましたのはあの酒場だった。そう例の神酒のとこだ。パンツがここまで担いできたらしい。
店長は号泣しながら礼を言ってきた。別にお前のためにデカブツと倒したんじゃねえ。
うざいから泣くな。と、ねーちゃんが手招きしている。ははーんさては俺の男の中の男の闘いっぷりに
惚れちまったか?ったくこれだからモテる男はつらいぜ。誘われるがままに店の外に出る。
勇者殿…
来た来た。いつでも準備は万端だぜハニー。今晩は最高級のスイートルームを予約しようかってぬお!
振り返った視線の先にいたのはおっさんだった。なんでてめーがここに居るんだチクショーが!!!
実は洞窟でこんなものを拾ったのですじゃとおっさんが勲章のような物を見せた。
竜の形をしていて真ん中にはよくわからない文字が刻まれている。なんだこりゃ。
それはジパングの紋章よ。それもかなり地位の高い人しか身に付ける事ができないものよ。
ねーちゃんが続ける。男心を弄びやがって酷いぜねーちゃん…ってえ!?どういう事だ!?
あの洞窟にこの国の偉い奴しか身につけられない物が落ちている。どうやら嫌な予感は的中した
ようだ。沸々と湧き上がる俺の怒り。すぐに酒場に戻り全員に召集をかける。
おまえらこれを見て欲しい。
みんなの視線が竜を象った紋章に集まる。
これは洞窟に落ちていたものだ。おっさんが拾った。ブローチだかペンダントだか何だかしらねーが
どうやらこの国のお偉いさんしか身に付ける事ができないものらしい。
勇者の顔が強張る。パンツが何か大発見をしたような顔で喋りだす。総長それはつまり…黙れ。
会議中においておまえに発言権は無い。
俺はハッキリ言ってブチ切れた。今から城に殴りこみに行くぞてめーら!
俺は大声を張り上げた。ちょっと待ってとねーちゃんが話し出す。
609 :
大怪獣決戦!8
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:00:06 ID:tIBBIciw0
今日はみんな疲弊してる事だし準備を整えて明日改めて訪ねましょう。それにその格好じゃ
多分城の中に入れてくれないわよ。
自分の服を見つめてみる。ボロだ。これは服というより完全なボロだ。いやしかし服装など関係ない!
俺は今殴りこみをかけたいんだ!
あの…お取り込み中失礼しますがささやかですが出来る限りの料理と酒を用意しました!
娘の恩人です!遠慮なく食べて下さい!
……よし。出発は明日にしよう。
ー次の日ー
足取りは重い。場合によっちゃあの城にいる奴ら全員ぶっとばさなきゃ気がすまねえ。
相変わらず衛兵に止められる。ブン投げた。どけ。俺達は最短距離でヒミコの元へ向かった。
ブチのめしたぜ。やまたのおろち。まことか!?とヒミコが驚く。しかし俺たちの浮かない顔を見て
黙り込む。これに見覚えはあるかしら?とねーちゃんが例の勲章のようなものを見せる。
あの洞窟に落ちていた。…………説明してくれ。
一呼吸置いてヒミコは話し出した。
それは…我が国が公的に作っているものじゃ。各役職ごとに異なる紋章を授ける。
古くからの伝統じゃ。そしてそれは…もうよい。本人を直接呼ぼう。
ヒミコは衛兵に何か耳打ちすると衛兵は一礼した後出て行った。数分後。
部屋に入って来たのは最初にこの国に来たときに食ってかかってきた老人だった。
610 :
大怪獣決戦!9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:00:41 ID:0AQJ4yVl0
これが封印の洞窟に落ちていた。説明してくれ。
ヒミコはそれだけ言うと紋章を老人に渡した。老人はため息をつくと右手を大きく振り上げた。
突然ドカドカと十数人はいるであろう武装した兵士が部屋になだれ込んで来た。
状況が把握できない。どういう事だ!?ねーちゃんと目が合う。
ねーちゃんが女王様を守って!と指示を出す。何が何だかわからないが俺達は王座を取り囲む様に
円陣を組み備えた。おいおい。ヒミコは顔を強張らせたままどういう事じゃ!と叫ぶ。
姫様…いや今は女王様か。わしは先代国王の時よりずっとこの国の為に心身を奉げてきた。
………?
王妃様はあなたを産んだ後直亡くなられた。偉大な王であった先代の血をひくのはヒミコ様
あなだだけじゃ。王位を継いだ事も女王となった事も何の間違いは無い。
………??
しかし…あなたの思想は危険すぎた。隣国と仲良くとな?笑止万全!何故選ばれた民である我が民と
下民である者たちが手を取り合う必要がある?崇高なるジパング国の指針は一つ!他の国を従える事
のみ!残念だが姫…いや女王様。あなたにはここで退官願う。死をもって!
老人が手をかざすないなや、兵士達が異形の物へと姿を変えた。
コイツ…魔王と手組んでやがったのか!?非常に混乱しているが今しなけりゃいけない事は一つだ。
こいつらを叩きのめす!
俺はねーちゃんと勇者にヒミコの護衛と呪文での後援を頼んだ。そしてパンツと敵陣に切り込む。
数は多いがやまたのおろちに比べりゃ雑魚だ。片っ端から片付けていく。暫く後目の前に敵対するのは
老人だけだった。
ぐぬうううぅぅ…愚かな者達よどこまでも神の国に楯突こうというのか…
611 :
大怪獣決戦!10
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:01:31 ID:tIBBIciw0
ククク…お困りのようですね…
どこからともなく嫌な声が聞こえる。生理的嫌悪感をもよおすこの声。どこかで聞き覚えがある…
不気味な黒い霧と共に一人の覆面の魔術師的な男が現れた。
俺とパンツと勇者は絶句する。コイツは…コイツは忘れもしねえ!あの時あの時じいさんが自分の命と
引き換えに潰した奴あの時の…言葉が出ない。心の奥底からただ怒りが湧き起こる。
てめえ生きてやがったのか!おまえだけは絶対に俺の手で潰す!
今にも飛び掛ろうとした。が、体が動かない。
落ち着きなさい。相変わらず熱い男だな。今日はおまえらの相手をしにきたんじゃない。
後始末にきただけです。
と、次の瞬間魔術師の手が老人の胸を貫いていた。
今までよく働いてくれました。あなたがジパングに与えた恐怖や絶望…大魔王様もお喜びでしたよ。
ただやまたのおろちを失った今もうあなたは不要です。安らかに地獄に行きなさい。カカカ…
老人は口をパクパクさせながらうわ言のようにジパングと呟くとやがて動かなくなった。
魔術師はボロ雑巾のように老人を投げ捨てるとこっちに向かってきた。
やまたのおろちを倒した所をみると少しはマシになったようだが…この程度の邪気で
身動きが出来ないようじゃまだまだだな。大魔王様もおまえらが自分の存在を脅かすくらい強くなるのを
お待ちですよ。色々な国を回り様々な人を助けもっと勇者とその仲間として完成しなさい。
勇者は人々の希望であるから勇者なのですよ。ククク…
612 :
大怪獣決戦!11
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:02:19 ID:tIBBIciw0
メェェラゾォォォォッッマァァァァァ!!!!!!!
俺の放った極大の火球が魔術師を捉える!
轟音と共に大量の煤と埃が舞い上がり一瞬視界を遮った。
徐々に視界が回復する。
ほう…さすがこの状況で動けるとは…異世界より迷い込みし賢者よ。少しは楽しませてくれるようだな。
コイツ…俺の必殺技を食らって無傷なのか!?ヤバイ近づいてくるが今度こそまったく指一本動かせない。
く…殺られる……………!
魔術師が耳元で囁いた。
そして去って行った。
俺達の金縛り?も解けたらしく全員が一斉に動けるようになった。目の前にあるのは魔物の死骸の山と
老人の屍。外にいた兵士が何事ですか!?となだれ込んできた。ヒミコは力なく死骸の片付けと
老人の埋葬を命じた。
ひと段落ついてもう一度ヒミコの座の前に集まる。
重い沈黙。
613 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 00:02:27 ID:dB7aKu390
ちょwゴジラに変身しやがったwwwwwwww
ドラゴンなのかそれはw
614 :
大怪獣決戦!12
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:03:03 ID:tIBBIciw0
重ね重ね礼を言うぞ。勇者とその仲間達よ。やまたのおろちの件だけでは無く命まで助けてもらったようだな。
こんな事言える立場じゃないかもしれんがあの者は手厚く葬った。許してくれとは言わん。
ただ誰よりもこの国を愛するが故の行動だと思っておる。わかってやってくれ。
そして一冊の日記のような物を差し出した。あの老人の部屋にあった物らしい。
内容は要約するとこうだ。ジパング再興のため魔王軍と手を組んだ事。やまたのおろちを使って
ヒミコの世評を下げ退官させようとした事。そして最終的に魔王軍が世界征服した後
ジパングだけは独立を守ることを契約した事…何があの老人をここまで駆り立てたのだろうか。
さっぱり理解できねえ。
さて話を本題に戻そう…。ぬしらが求めていたオーブの話じゃが…
オーブ…ああそうだ忘れてたたしかあの鳥居の洞窟の奥にってオイ!入り口はもう塞いじまったぞ!
やべえすっかり忘れてた。今から掘り返すのか…しかしあそこは俺とデカブツの名誉ある死闘の場所…
あの洞窟にはありませんでした。
ねーちゃんがこれまた驚き発言をする。えっあの状況で探してたのか!?当たり前でしょと多少冷たい目でこっちを見る。
正直先にオーブ見つけてしまってやまたのおろち退治は後回しにしようと思ってたわ。
勝てそうにもなかったし…結果論から言うと勝ててよかったけど総長さんも私達を率いるリーダーなら
その辺もっと慎重に行動して欲しかったわね。
……こんな所で説教しなくてもいいじゃないか…
あやつの手記と共にあったわ。もう我々には必要ないもの。好きにするがよい。
と紫色に輝くオーブを渡された。そうかあの老人が持ってたのか。いやいや結果オーライだな。
615 :
大怪獣決戦!13
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:05:36 ID:0AQJ4yVl0
ヒミコはさすがに顔色が優れない。そうだろな。これからこの国の奴らにこの一件を
どう説明するのだろうか。差し出した生贄…支払った犠牲を考えると黒幕が魔王とうちの大臣でした
なんて簡単に言えるもんじゃない。事情をしってる周りの大臣や兵士も表情は重い。
俺は考えた。この空気。この雰囲気。問題は山積だがだからこそ立ち止まってはいけない。
一歩ずつでも前に進まなくては。そしてこの状況を打開するには…酒しかねえ。
おいヒミコ。今すぐ宴会の準備をしろ。国をあげて総出の宴会だ。異論反論は許さん。
逆らったらこの国ごと潰すぞ!
一気に城内はザワついた。バカな…あの異国人は何を考えてるのか…この状況で…空気読めよ…
あちらこちらで陰口が聞こえる。ええい黙れ!世界の覇王に最も近い俺に逆らう奴はブン殴るぞ!
数時間後。
夜もすっかり更けたころ、国で一番大きい広場に物凄い人数が集まった。
ブツブツ文句をいってた兵士や使用人もいざ宴の準備を始めるとちょっと楽しそうだった。
頃合を見計らって一番高い演説台に立つ。
…誰も見ちゃいねえ。それどころか何の為に集まったかも知らされていないので不審そうな顔をしている。
目の前には大量の料理と酒。家にあるありったけの酒と料理をもって広場に集まれという
女王からの謎の通達。不審がるのも無理はないか。ここは一発派手に民衆の心を引くしかないようだ。
花火でもあげるか。俺は天を仰ぐと夜空に向かい叫んだ。
イ オ ナ ズ ン !
けたたましい轟音と共に一瞬真昼かと思う程に夜空が光った。突然の出来事にへたり込む奴や
当然子供は泣き出した。うんうん。この反応を待っていた。一息つくと俺は声を張り上げた。
616 :
大怪獣決戦!14
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:07:34 ID:0AQJ4yVl0
コホン…えー俺は鬼浜爆走愚連隊の総長である!
近い将来この世界の王となる男だ有難く目に焼き付けておけ!
あっけにとられる民衆共。
えーここで一つ報告がある!おまえらを悩ませるやまたのおろちはもういない!
俺達が死闘の末今アイツは洞窟の奥で永遠の眠りについた!感謝しやがれ!
そんな話信じられるか!いやまてしかしヒミコ様の命でここに集められたんだから…あんな異国人の
たわ言など!色んな声が錯綜する。
…やっぱ全然信じてねーなコイツら。おいヒミコ出て来いや!
この者のいう事は真実じゃ。
ヒミコが台の上に立った。一斉に静まり返る。
勇者率いるこの者たちの手でやまたのおろちは倒された。そして今みなに伝えなければならない事がある。
ヒミコはありのままを国民に伝えた。内容が内容だ。中には敵意むき出しでこっちを睨む奴もいる。
再び俺が前に出る。
えー色々思うとこがあるかもしれないがおまえらに一つ命令しておく!今回の事は全て水に流せ!
そしてやまたのおろちと言う天災が去った今、今日この日を記念日にしようと思う!
毎年今日を「鬼浜祭り」として未来永劫祝え!飲め!歌え!踊れ!騒げ!
一気にヒートアップする広場。賞賛と怒号が飛び交う。
えーそれでは鬼浜祭りに…乾杯!!!!!!!!!!!!!!!!!!
617 :
大怪獣決戦!15
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:09:41 ID:0AQJ4yVl0
そう叫ぶと俺は持っていたグラスに注いである酒を一気に飲み干した。
かんぱーい!と勇者も声をあげパンツやねーちゃん、ヒミコ、兵士、城の使用人、その他みんな一斉に
酒に口をつける。なんだかよくわからないがその雰囲気に呑まれあちらこちらで乾杯の音頭が上がった。
もうあとはとにかく酒を注いで回る。飲ます。飲まされる。一時間だか二時間だか過ぎた頃には
かなりの人数ができあがってきていた。もう誰も恐い顔をしている人はいない。
うんうんこれでいい。やはり祭りはこでなければな。と、むこうから女の子がいっぱい駆け寄ってきた。
これは…もしかして…そうだ。俺はこの国を困らすデカブツを倒した。つまりこの国の英雄ってやつだ。
キャー本当にやまたのおろち倒したんですね!すごーいつよーい!かわいいーーーー!!!!
へへへよせやい照れるべ!?え!?かわいい!?案の定俺を素通りして女の子軍団は勇者とねーちゃんの元に向かった。
パンツが総長総長と寄ってくる。なんだよ気持ち悪いな。こっち来んな。
え?あっちで俺の武勇伝聞きたい奴がいっぱいいるって?しゃーねーなおい行ってやるかデへへ
…そこにいたのは明らかに土方系のイカツイにーちゃん達…あっちの世界でもこっちの世界でも
こんな奴らばっかにモテるのはなぜだろう。チクショウ…
それから更にしばらくたった。ねーちゃんがこっちに来る。ねえ一つ聞きたい事があるんだけど…
あの魔王軍の魔術師、最後総長さんの耳元で何か言ってたでしょ?何を言ってたの?
618 :
大怪獣決戦!16
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:10:46 ID:0AQJ4yVl0
そう…あの時からずっと心にひっかかってる事。アイツは…あの時信じられないが俺の事名前で呼びやがった。
この世界に俺の本名を知ってる奴はいない。俺は総長としか名乗っていない。
なのになぜあいつは俺の名前を…
いや違う。無論それも不思議ではあるのだがあの声、あの声はどこか懐かしい。
口調はまったく違うのだが俺の良く知るアイツにどこか似ているー…ちょっと?大丈夫?聞いてる?
いけないいけない自分の世界に浸りこんでしまった。ねーちゃんには本当の事話すべきだろうか。
いいわ…誰にだって知られたくない事はあるし無理に聞こうとは思わないわ。
そう言って微笑むとねーちゃんは去ってしまった。別に隠す程の事でもないんだが…もし
仮に俺が異世界から来た事をぶっちゃけるとコイツらはどう思うのだろうか。
この国のやつらは生まれた国が違うというだけでかなりの偏見を持っていた…俺の場合はそもそも世界が違う。
……ていったい何考えてんだろうか。酒のせいだ酒のせい!
今、目の前にうまい酒がある!それでいいじゃないか!
俺はその日も結局浴びる程飲んだ。
619 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/27(日) 00:17:52 ID:0AQJ4yVl0
今日はここまでです
次からはようやく新規更新いくぜ!
今度は絶対完結までいきますんでよろしくおねがいしますです
620 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 00:27:02 ID:IhS2bt210
ジパングエピソードおもしれえええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!
作者さん超乙!
621 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 02:34:28 ID:8XHSKM+00
総長さん乙です!次回も楽しみにしてます!
魔術師の正体が気になる…
622 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 04:14:23 ID:0WieGGiq0
やまたのおろち戦、すごい燃えたっ!
そして、覆面魔術師登場。魔術師も総長さんと同じ世界から来た人物か・・・、あるいは総長さんを呼んだのはそいつか・・・。どきどき。
623 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 04:48:02 ID:6GOUSDnaO
乙ッッッ!!!!!!!
624 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 09:38:16 ID:JCxl5wMlO
総長乙!
今度からは新規だね。
面白いんだから最後までやってくれ。待ってる。
625 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/27(日) 11:51:25 ID:oI3Rq/xT0
やまたのおろちの正体ヒミコじゃなかったのか!!
魔術師は何で総長の事知ってるのかな…最後まで期待してます
626 :
再会1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/28(月) 19:47:56 ID:8GnwNDw70
明け方。
フラフラと千鳥足で俺は鳥居の洞窟へ向かった。手には一等うまい酒を持って。
デカブツの話を色々聞いた。古く遡ってはこの国の守護神として崇められていた事。魔王の魔力により
暴れだしそれを勇者の親父達が封印した事。魔王に操られ暴れて封印され今度は権力者にいい様に扱われ
挙句の果てに殺された…正直何が悪なのかなんて俺にはよくわからない。ただコイツにはうまい酒を
飲ませてやりたい。それだけだ。
洞窟の前に立つ。
その辺の岩を切り出して背丈程の石碑を造った。そして上から酒を注いでやる。
…………………。
持ってきたグラスに自分の分も注ぎ無言で乾杯した。
…………。
少しばかり感傷に浸っていた。
なんだか背中の辺りがゾワゾワする。気持ち悪い。
さすがに飲み過ぎだろうか。……いや酔いとはまた違う。この感覚は…覚えがある。
不安が疑問に変わり疑問が確信に変わる。咄嗟に持っていた小さなナイフを抜き身構えた。
吐き気がする程の嫌な感覚。目の前には当然のようにあの魔術師が立っていた。
久シぶりだナ。
627 :
再会2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/28(月) 19:48:38 ID:8GnwNDw70
聞き覚えのある懐かしい声で声をかけてくる。そしてゆっくりと顔を覆うフードを外す。
そう。この声この顔は…ひとし君だ。暴走族時代の連れで親が極道だったひとし君。年齢は上だけど
いつのまにか同級生になりそして後輩になったひとし君。とにかく危ない男だった。
俺以外とは殆ど口を聞く事なく何を考えてるのかわからない男だった。
喧嘩に日本刀や拳銃を持ち出して「限度」ってものを知らない男だった。
そしてついには動機不明で親を殺し刑務所の中で自殺した。俺が知っているのはここまでだ。
懐かしくそれでいて禍々しい声で続けて話しかけてくる。そのギャップに頭がおかしくなりそうだ。
理解できナいと言った顔ダな。
おまえが知ってルのハ私が親を殺し自殺した所まデか。
そウだな…なぜ私ガ親を殺したか解るカ?
解るわけがない。何とか平静を装い話を理解しようとする。
ひとし君は続けた。
それはあの人達が私の飼っていた鳥を殺したんだ。おまえは極道に生きるには優し過ぎるってな。
そうだ。そういえばひとし君は異常に鳥を可愛がっていた。
喧嘩では徹底的に相手をいたぶる反面、動植物には異常に優しい所があった。いや、しかしだからって…
まだ解らないと言った顔だな。そんな鳥くらいで親を殺すかと思うか?
鳥より人間の命が重いとでも?そもそも鳥と人間どっちが偉いなんて誰が決めた?
ダメだ。この声を聞いていると本気で気が狂いそうになる。
628 :
再会3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/28(月) 19:49:59 ID:8GnwNDw70
私は考えたよ。もし鳥に人間以上にの腕力があれば立場は逆転してたんじゃないか。
例えば私が拳銃を持った時あの人たちは虫ケラ以下の存在なんじゃないかってね。
何を言っているのかさっぱりわからない。わかりたくもない。きもちわるい。
あたまがおかしくなりそうだ。このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは
このこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえはこのこえはこえはこえはこえはこえはこえはこえは
結局の所悟ったのだよ。弱い奴は強い奴に殺されても文句は言えない。
強い奴が全てなんだ。弱い奴に生きる権利なんてないんだってね。
夢を見たんだ。そこでは人間は人間よりはるかに強大な存在に脅えながら暮らしている。
時にその強大な存在は理不尽に、簡単に、無慈悲に人の命を奪う。
その行為はむしろ自然の摂理に則った美しい行為だとは思わないかね。
私は心から力を望んだ。弱い存在を蹂躙したかった。強く強く気が狂う程強く願ったんだよ。
そうしてある日目を覚ましたらそこはいつもの独房ではなかった。
暗く重い空間の中で目の前にいたのは世の中の全ての恐怖を凝縮したような存在だった。
すぐにそれが強大な存在だと理解した。
言葉のやり取りは無かった。だが意志は通じた。私は力を求め彼の存在は絶望を求めた。
私は彼の存在の力を与えられ絶望を生む事を約束した。
人は脆い。絶対的な存在の前では虫ケラと変わらないくせに愛だの希望だのを語る。
なんとも滑稽な生きものだ。そうだな。滑稽と言えばあの町で会ったあの老人。
自ら命を絶ってまで私の存在を消そうとしたが犬死だったわけた。
カッカッカ…無力とは罪なものだな!
ひとしィィィィッ!!!!!!てめええええええェェぇええッッっっ!!!!!!
犬死…その一言で正気に戻った俺は殴りかかった。手ごたえがまったくない。
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