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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 12:47:02 ID:PX0ZH76S0
>>456
総長久しぶり
やっぱこの作品おもしれーわ
初代スレの埋めネタだったのが懐かしい

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 03:57:09 ID:e6KEdIPv0
久しぶりに来たら総長復活してる!?
応援してますんで頑張ってください!

462 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 20:03:05 ID:oS4LEGUgO
総長の話読んでると泣かされたり笑わされたり忙しいw

463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 22:40:52 ID:3t6CORHCO
http://kjm.kir.jp/?p=179575

464 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:30:05 ID:fG/eVFU50
>>463
うおおおおおうめえw丁度物語の今頃はそんな感じですよ!
絵とかマジ感激!

では続きを投下します


465 :ダーマそしてイケメンへ… ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:31:46 ID:fG/eVFU50
ダーマにはここから東の洞窟を抜けてくらしい。一同洞窟を目指す。ここで魔物の群れが現れた。
むさい鎧野郎とキモいでかいイモムシ。そして空飛ぶ猫だ。この猫かわいい。もの凄くかわいい。
俺が猫に見とれてる間にパンツは鎧男と取っ組み合い、勇者はイモムシを焼き払っていた。
二人とも相手を仕留める。
二人の視線が俺に集まる。



駄目だ出来ない。俺にはこんな愛くるしい猫を斬る事など…

ザクッ

猫の爪が俺の顔にめり込む。痛い。ザクッ。痛い。ザクッ。痛い。ザクッいた…
まったく反撃しない俺をみてパンツは大声を上げて猫を脅かす。猫はビックリして逃げて行った。

戦闘後。
俺は勇者に叱られ列の一番後ろに並ばされた。なんなんだこの不当な扱いは。おれがボスなのに。

466 :ダーマそしてイケメンへ…2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:32:17 ID:fG/eVFU50
その後三日程歩きバハラタに到着した。ここは「くろこしょう」の名産地らしい。
今日は一日ここで休憩して明日の朝出発するか。
何気に武器屋を覗いてみる。なかなかいい品揃えだ。
道具袋の中を見ると2万ゴールド程貯まっていた。
どこの店も俺とパンツをみるとサービスしてくれるので、金は貯まる一方なのである。
ありがたい事だ。パンツがバカデカイはさみのような武器を持ってきた。
おいおいその格好にその武器は変質者のレベルじゃねーよ。俺はやめとけと言った。
しかしパンツは買ってくれるまでここを動かないなどとガキみたいな事言うので仕方なく買ってやった。
今後コイツとはマジでなるべく離れて歩こう。

俺と勇者は「まほうのたて」を買う事にした。
しかしさっきの出費もあるのに一つ2000ゴールドは高い。

おいこれ二つで2000ゴールドに負けてくれ。

店長はまさかそれはできないと言う。
が、後ろでパンツ一丁でおおばさみをジャキジャキ鳴らすパンツを見てひきつった顔で負けてくれた。
そして俺達が店を出るや否や鍵を閉め「本日はもう閉店しました」という張り紙を貼った。
せっかちな奴だ。

467 :ダーマそしてイケメンへ…3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:34:12 ID:fG/eVFU50
そうして街中をウロウロした後、夜になったので宿屋に向かった。
宿をとった後腹が減ったので酒場に向かう。そこで俺は運命的な出会いを果たす。

ここの肉料理はヤバイ。地肉とくろこしょうの絶妙なコンビネーション。
俺達三人は久しぶりの御馳走を堪能した。
パンツはこれは上質の牛肉だとかこの味加減は中々だせないとか知った風な口を聞きやがる。
モンスター食ってうまいとか言ってた奴がなに言っても説得力ねーよバカ。
結局最高の肉料理の魔力により町を出たのは二日後だった。

俺達は町人に言われた通り橋を渡り北上した。段々と山道になる。砂漠の次は山越えか。正直萎える。
前の方でパンツと勇者が何やら楽しそうに話ている。ちなみに俺はまだ最後尾のままだ。
そろそろいいんじゃないかと思い勇者に聞いてみた。

俺前行ってもいい?  

ダメ。  

わかった。  

確認しておくがここのボスは俺だ。

468 :ダーマそしてイケメンへ…4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:07 ID:fG/eVFU50
しかし後ろからだと二人の闘いっぷりがよく見える。
勇者の剣技は相変わらず冴えている。日に日に力強さが増しているようだ。

一方パンツは…いっつも隣にいたため気づかなかったがこの男計り知れない。行動が読めない。
まずムカついたのがせっかく買ってやった「おおばさみ」をほとんど使わない。
どんな敵にもボロボロのてつのおので殴りかかる。
本人曰く相手によって使いわけているらしい。おまえ明らかそんな頭脳派じゃないだろ。
やっと使ったかと思うとそれを両手で持ちそのまま殴りかかる。
その武器ってそうやって使うのか?それならてつのおのでいいんじゃないか?
おそらくこいつに拳銃渡そうが機関銃渡そうがそのまま殴りかかるであろう。
こいつはそういう男だ。そうこうしてるうちに俺達はダーマ神殿に着いた。


ダーマ神殿。

相当古い造りの神殿だ。中には冒険者と思われる奴らが結構いる。有名な神殿のようだ。
中に入り道並みに進むと祭壇があり上に人がいた。こいつが神殿長か。

469 :ダーマそしてイケメンへ…5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:35:49 ID:fG/eVFU50


まぶしい。



ハゲだ。バーコードだ。

どんな偉い神殿長か知らないがそのバーコードっぷりはもろに俺のツボにはまった。
まともに顔が見れない。


必死に冷静を装う。…ふう。もう大丈夫だ。よし。顔を上げる。が、次の瞬間


ぶほぉッぐへへへへへっうびゃっぱっ



パンツだ。このバカが…せっかく俺が精神を集中させて笑いという雑念を消したと言うのに…

470 :ダーマそしてイケメンへ…6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:36:32 ID:fG/eVFU50
パンツは腹を抱えて笑い転げている。お月様が!お月様が!とか言ってやがる。
俺も気持ちの糸がプッツりと切れた。神殿内を這いずり回って笑い転げる俺とパンツ。


そして数分後見事につまみ出された。ガッデム。
そしてさらに数十分後神殿から出てきた勇者に正座させられ俺達は延々と怒られた。


ここのボスは俺のはずだが最近は自信が無くなってきた。

勇者の話。
賢者は隠居してここからさらに山道を行った北の塔に住んでいる。また山道か。鬱だ。
山道と聞いてほんとは神殿で休憩して行きたかった所なのだが
あのハゲと目を合わせる自信が無いため仕方なく出発する。

パンツはまだ笑っている。…こいつ本気でこの山に捨ててったろか…とにかく俺達は出発した。


471 :ダーマそしてイケメンへ…7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:05 ID:fG/eVFU50
相変わらず後列で戦闘に参加させてもらえない俺は暇なのでこっそり「ホイミ」の練習をしていた。
俺にはこの呪文は向かないのか。
破壊的なイメージはすぐに湧くのだが「治癒」がどうしてもリアルにイメージ出来ない。
ちょうど前でパンツが勇者にホイミをかけてもらっている。
そういや昔ひとし君と喧嘩して刺されて入院した時看護士さんに包帯代えてもらったっけか。
そんな事ボーっと考えながらホイミっとつぶやく。一瞬だが青白い光が俺の掌から放たれた。

…わかった。
そうかコツは「病院」だ。そして俺はもっと重要な事に気づいた。所詮俺は余所者である。
魔法を使う際この世界のモノをイメージしてもうまくいかないのだ。
単車なり病院なり自分に身近だったものを強くイメージし、それを具現化する。
つまりのとこ「魔法」とはそういうものなのだ。

こんな事に気づいてしまう自分の才能が怖いぜ。
俺は自分の天才ぶりにニヤニヤしながら歩く。勇者が心配そうに近寄ってくる。
総長ちゃん大丈夫?どっか頭打った?ってどういう意味だよオイ!
おまえらの方がよっぽど人としておかしいから!

472 :ダーマそしてイケメンへ…8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:37:57 ID:fG/eVFU50
その後さすがに疲労の見える二人にかわりようやく先頭に復帰した。
久しぶりの出番に暴れまくる俺。
相棒のドラゴンキラーもすこぶる調子がいい。
デカ猿だろうがデカアリクイだろうが俺のドラゴン正拳突きの前に敵はいない。
圧倒的な強さで蹴散らして俺達は順調に塔を目指した。

そこからどれだけ歩いただだろうか。山道の上り下りを繰り返し遂に塔の前に立つ。


でけえ。


早速塔に入ろうとした。が、ドアが開かない

今回ばかりは相手がデカ過ぎてパンツの怪力も通用しない。

仕方ないので辺りを一周してみることにした。ちょうど入り口の反対側に一軒の家があった。
もしかしてここが賢者の家か?ドアをノックする。

出てきたのは300のジジイとはかけ離れた若い女の人だった。

473 :ダーマそしてイケメンへ…9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:38:30 ID:fG/eVFU50
女の目は固く閉じられている。とりあえず話かける。おいここは賢者の家か?女はコクリと頷く。
じゃあ話は早い。おい賢者に会わせてくれ。女はまたコクリと頷き家の中に手招きする。
おかしい。実におかしい。事が順調に運びすぎる。俺達の旅ではありえない展開だ。
絶対何か落とし穴があるに違いない。
まあ尻込みしてても仕方ないので入るか。

中は普通の民家と変わらない。と奥の部屋から一人の男が出てきた。イケメンだ。
青い目、整った顔、金髪のロンゲ、長身。…なぜか無性にムカつく。
俺は基本的にイケメンが大嫌いだ。

とりあえずガン付けつつ話かけた。

おい賢者に会わせろやイケメン君よーちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねーぞコラ。

イケメンはプッと吹いた。

あああ!!!??なんじゃ純日本人顔純日本人体型の俺がそんな面白いか!!?

明らかに見下されている。ここでなめられてはいけない。

474 :顔がいい奴が憎い10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:40:15 ID:fG/eVFU50
俺がまさに胸倉を掴もうとした瞬間みんなの視線に気づいた。
みんな揃ってイケメンを指さしている。
俺は5秒ほど考えた。そしてある一つの結論に至った。

…こいつが賢者なんすか?…

あり得ない。…絶対あり得ない。こいつが300歳とかあり得ねえ!!!!

一応確認する。
おいおまえが賢者なのか!?イケメンはニヤニヤしながら頷く。
こいつ賢者だか何だか知らないがムカツク…何だこの人を小馬鹿しにた態度は!?
勇者が駆け寄ってきイケメンに話かけた。

長くなりそうなんでテーブルを囲み茶でもシバキながら話す事になった。
そしてその話の中で俺は心臓止まるくらい驚いた。いやマジで。

まず何よりも一番ビビッた事。
このイケメンとうの昔に死んでるらしい。俗に言う「幽霊」というやつだ。
元々はすげー魔法使いで寿命を迎え死ぬ時にこの世界の神様(例の精霊ルビスと言う奴だ)
から精霊となり世界に危機が訪れる度にその危機を救うという使命を与えられたとの事だ。

475 :顔がいい奴が憎い11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:10 ID:fG/eVFU50
なんてスケールのでかい野郎だ。
だが前回の戦いで力の大部分を使い果たしたため今は魔力の込められたこの塔周辺でしか
自分を保てないらしい。幽霊も色々大変だな。
そしてこの女(よくみるとかなり美人。しかも年上。俺の好み180%超)はイケメンの娘だとのこと。 
といっても実の娘ではなく、前の戦争の孤児で賢者が引き取って育てたようだ。
魔物に襲われたショックで視力を失ったがイケメンとの修行で「心眼」を会得して
今では世界有数の「僧侶」らしい。やはりこの女も只者ではなかった。

その後もここに俺達が来ることは予言で知ってたとかごちゃごちゃ言ってた。
まあ俺はあんま真剣に聞いてなかった。はいはいイケが何か難しい事言ってますよ。

そして最後に一言。私はもうついて行けないのでかわりにうちの娘を……


!!!????


うちの娘を連れて行って欲しい。我が娘であり愛弟子だ。きっと役に立つ。

……つまりて事はこのきれいなねーちゃんも参加すんのかよ!?イケメングッジョブ!

476 :顔がいい奴が憎い12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:41:56 ID:fG/eVFU50
ようやく…ようやく鬼浜にまともな面子が追加されそうだ。しかも美人。やったぜ。




その夜はささやかな宴会が開かれた。
イケメンがつけたとかいうワインが出された。味はいいのだがやはりムカつく。
きまって顔がいい奴はワインに詳しかったりするんだよな。
ねーちゃんはわりと飲めるクチのようだ。勇者はヘラヘラしてる。
久しぶりのアルコールだ。がぶ飲みする俺。お約束通り意識が飛ぶ。


‐次の日‐

頭は痛いが爽やかな朝だ。
さて新メンバーも加わったとこで楽しく出発するか。俺はベットから降りて下に向かう。
もう勇者とねーちゃん旅の準備を済ませ待っていた。


じゃあ行ってくるね!総長ちゃんもカンダタちゃんも賢者様の言う事聞いてしっかり修行するんだよ!

477 :顔がいい奴が憎い13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:43:17 ID:fG/eVFU50
……???????
状況がまったく飲み込めない。あっ行っちまった。どういう事だ。
呆気にとられてる俺を見てイケが口を開いた。

…俺が酔いつぶれてる間に話は進んでたらしい…

まとめると
・勇者とねーちゃんは引き続きオーブを探す旅に出る。
・俺とパンツはここで修行する。

ということだ。ちょっと待て。何が悲しくて男三人で山篭りしなければいけないのだ。俺も後を追うぞ。
追いかけようとする俺にむかってイケがボソッと呟いた。…マダンテ。 マダンテ!?
このイケなんとマダンテが使えるらしい。
ちゃんと修行をこなせば俺にも使えるようにしてくれるという。俺は悩んだ。
やはり世界征服及び魔王をボコるために強力な魔法は必要だ。
俺ほどの才能があればすぐに覚えれるだろう。とっとと済ませて後を追うか。
ということで俺とパンツはここで修行する事にした。


そこから俺とパンツの苦悩の日々が始まるとはこの時は知る由も無かった。

478 :顔がいい奴が憎い14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:08 ID:fG/eVFU50
このイケ洒落になんねえ。もはや修行という名の拷問である。

朝:ひたすら走る。山道をどこまでも走る。手を抜くと炎や氷の塊が飛んでくる。危ねえ。死ぬ。
昼:ひたすら闘う。イケが連れてくるよくわかんない魔物と闘う。強い。
  負けたら死ぬから気をつけるようにと言われる。笑えねーよ。死ぬ。
夜:ひたすら寝る。死んだように寝る。


これの繰り返しだ。
本人曰く「健全な肉体には健全な精神が宿る」からまずは基礎体力から鍛えなきゃ駄目らしい。
俺は幾度と無く脱走を試みるがその度に捕まりボコボコにされた。こいつは絶対Sだ。極度のドSだ。
しかし珍しくパンツは文句一つ言わない。つらくないのかと聞いてみると飯がうまいから平気らしい。

なるほど。
おそらくこいつは魔王に最高級のステーキを食わせてやると言われたら簡単に寝返るだろう。



そうして一ヶ月ほど経っただろうか。
やっと次の段階に入る事になった。次の修行はようやく魔法の修行に入るようだ。

479 :顔がいい奴が憎い15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:44:43 ID:fG/eVFU50
そしてここからはスペシャルゲストも参加するらしい。
どうせこのクソイケだからろくな奴じゃないだろう。何がスペシャルだくたばれ。

嫌な予想程的中する。
スペシャルゲストとして紹介された…そこにいたのはピエロだった。
おまえまた城から脱走してきたのかよ…

しかしちょっと雰囲気が違う。
どうやら塔の魔力により一時的に若返ってるようだ。ガタイが半端ねえ。
こうしてここからは魔法はイケと、格闘はピエロと地獄の特訓が始まった。


とりあえずとにかくピエロ強え。
こいつの全盛期はこんなに強かったのか。組み合っても普通に力負けする。チクショウ。
わしに勝てないようじゃ魔王になんて簡単にひねり潰されるぞだと!?俺の負けず嫌い魂に火が着いた。
同じ人間だ。本気を出せば負けるはずがねえ!その日からさらに「俺メニュー」として
別のトレーニングも追加した。ピエロ如きに負けてるようじゃこの先どうしようもねえぜ。


480 :顔がいい奴が憎い16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:45:13 ID:fG/eVFU50
そしてイケ。こいつ笑えねえ。
よくわからん強力な呪文を連発してきやがる。危ないとかそんなレベルじゃない。

「実際にその呪文をくらって痛い思いをする事で覚える」のがこいつの教育のポリシーらしい。

いやいやその前に死ぬから…俺とパンツは毎日瀕死になりながら修行した。
後一歩で死ぬって絶妙のタイミングでイケメンが回復魔法をかける。生殺し状態だ。
徐々にだが俺の魔法のレパートリーも増えていった。



そしてさらに一月ほど経った。
正確な時間の経過はもう覚えていない。俺達は確実に強くなった。

パンツ。こいつヤバイ。もともとガタイよかったのだがここ二ヶ月でさらにでかくなった。
どのくらいヤバイかってもはや見た目人間か魔物かってわからんくらいヤバイ。
一人で町に入ったら町人総出で討伐されそうだ。
城とか絶対入れてくれなさそうだ。子供が見たら確実に泣き出すであろう。

481 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/12(土) 23:46:09 ID:DBW87hHl0
支援

482 :顔がいい奴が憎い17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:23 ID:fG/eVFU50
そして俺。
俺も確実に一回りでかくなった。
イケメンが変な種を調合した薬とか飲ますせいで飛躍的に身体能力は向上した。
おそらくこっちの世界でいうステロイドみたいなもんだろうか。
副作用が心配だ。ちょっと聞いてみる。最悪死にはしないから問題無いらしい。

それって問題無いって言うのだろうか。もうあまり考えない事にしよう。


俺達は幾度と無く死に掛け(死んだおじいちゃんにこっちきちゃだめだって言われた:パンツ談)
最終試練に入る事になった。最終試練とは塔の中で行うようだ。

ずっと近くにあったのに一度も立ち入る事のなかった塔。
ついにその中に足を踏み入れる時がきたようだ。イケは最初に俺に中に入るように言った。

大きな扉の前に立つ。

扉は簡単に開いた。中は真っ暗だ。しばらく足を進める。後ろの扉が消えた。

もう前進するしかない。暗闇の中をズンズン進む。

483 :顔がいい奴が憎い18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:47:51 ID:fG/eVFU50
しかし真っ暗闇を長時間歩くと不思議なもので段々感覚が麻痺し出す。



どっちが前でどっちが後ろなのかわからなくなってくる。




さらに進む。




もう右も左もわからない。




さらにさらに進む。

484 :顔がいい奴が憎い19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:48:26 ID:fG/eVFU50
ここまでくると自分が上に向かってるのか下に向かってるのかすらわからない。
もの凄く広い部屋の真ん中にいる気もするが細い平均台の上を歩いている気もする。

だがパニックではなく何故か心は落ち着いている。俺はひたすら奥を目指した。




どのくらい進んだだろうか。



急に視界がひらける。見覚えのある村。魔物に荒らされ破壊された村。
俺はその村を空中から見下している。なんとも不思議な感覚だ。やがて数人の人間が入ってくる。

あれは………俺だ。
おれとピエロとじいさんとパンツだ。体中から嫌な汗が噴出す。

勇者と出会う。

485 :顔がいい奴が憎い20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:07 ID:fG/eVFU50
やめろ。

墓を掘る。

やめてくれ。

魔物と鉢合わせる。

もういいだろ。

俺達は命ギリギリで魔物を倒しそこへ増援が現れる。

絶望。

そしてじいさんの決断。

やめろおおぉおおお!!!!!!!!!!


しかし俺の声は届かない。激しい閃光と共にじいさんは魔物のと共に塵になった。

486 :顔がいい奴が憎い21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:49:44 ID:fG/eVFU50
その後何回、何十回、何百回とその場面がフラッシュバックする。気が狂いそうだ。

俺は自分の弱さを呪った。俺が、俺が強ければ。もっともっと強ければ。
この先旅を続けるとまた誰かが死ぬのかもしれない。それはそれで仕方ないだろう。
強い奴が生き残り弱い奴は死ぬのだ。当然の事だ。だが、だが俺は納得できない。
自分の舎弟が俺自身の弱さの為に死んでいくの事など納得できるはずがない。強くなりたい。
誰よりも圧倒的に強くなりたい。俺は心の底から力が欲しいと渇望した。

思えば俺の人生は「強さ」へのあてつけだった。親父は小さな工場の社長だった。
豪気な性格に腕っ節の強さ。けっして裕福とは言えないがそんな親父を慕って
従業員も集まり幸せに暮していた。

だが突然王手の企業がそこに大きな工場を建てたいと言い出し親父に立ち退けと言ってきた。
無論親父は断る。そこから執拗な嫌がらせが始まった。裏に手を回され受注は激減した。
雪ダルマ式に増える借金。従業員も一人、また一人と去って行く。おふくろは過労で倒れた。
そしてそのまま帰らぬ人となった。あろうことかあいつらは俺のチームにまで目を付けた。

「鬼浜爆走愚連隊という暴走族は薬の仲介をしている」

487 :顔がいい奴が憎い22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:52:50 ID:fG/eVFU50
事実無根のでっち上げだ。しかし世の中金というもので事実なんてどうにでも変えれるらしい。
俺は無実の罪で刑務所に入った。獄中に一通の手紙が来る。


親父が死んだ。


488 :顔がいい奴が憎い23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:54:43 ID:fG/eVFU50
「リュウジへ

 おまえが無実なのはみんな知っている。
 馬鹿で喧嘩っぱやくて暴れまわっていたが薬なんぞに手を染めるようなまねは絶対にしない子だ。
 俺が保障する。
 おまえが仲間を守るため一人で無実の罪を被り刑務所に入った事を父は誇りに思う。
 世の中汚い奴が多いがそんななかでもしっかりと自分の信念を貫いて欲しい。

 日頃命は粗末にするななんて言っておいておかしいかもしれないが
 おそらく私はもう長くない。最後に大きな花火を上げて一足先に母さんの所へ行く事にする。

 工場は閉める。借金の事は何の心配もしなくていい。
 刑務所には入っているが、出てきたら堂々と胸を張って歩きなさい。
 リュウジの人生に何一つ負い目を感じる所はないのだから。
 自分のやりたい事を見つけ、精一杯生きなさい。父は母さんと天国から見守ってるぞ。

                                       父より   」

489 :顔がいい奴が憎い24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:55:41 ID:fG/eVFU50
出所してから知ったのだが親父は自分の保険金で借金を返済した。
死因は原因不明の事故らしい。おそらく事故ではないだろう。
俺の工場兼実家はもう無くなっていた。その無くなったという事実が全てを物語っている。
そこにはただ馬鹿デカい無機質な工場があるだけだった。


そこからの俺の人生はひきこもり酒に溺れる毎日だった。
自分を責めた。身の危険を覚悟で交渉に行ったのかもしれない。
もしくは何かしらの弱みを握られて呼び出されたのかも知れない。一つ確実なのはその時に決死の覚悟で
この遺言ともとれる手紙を残した事だ。今となっては何が真実だろうとどうでもいい。
無気力でただ過ぎるだけの毎日を送った。いつ死んでもよかった。
………そして何の因果かこの世界に迷い込む。
俺はずっと考えていた。ベランダから落ちて何故あのまま死ねなかったのだろうか。
これはもしかして神様とやらがくれたチャンスなのではないだろうか。
結局この世界も元の世界と何も変わらない。
強い奴が弱い奴を喰いものにし、弱者は弱者で勇者にただひたすら救いを求める。

どっちも腐ってる。

490 :顔がいい奴が憎い25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:56:13 ID:fG/eVFU50
なら自分で理想の世界を創ればいい。魔王を潰し自分がこの世界の覇者になればいい。
もう誰も俺の「弱さ」のせいで死なせたりはしない。


急に視界が変わる。
見下していた自分の視点に戻ったようだ。
じいさんが魔物へ向かって駆け出そうとした瞬間、俺が遮り逆に魔物の前に立つ。
目を閉じ精神を極限まで集中させる。


魔物のが一斉に飛び掛かる。
時間が止まる。いや、微かに動いている。自分以外の感覚が全てスローモーションになったようだ。
やるべき事は分かっている。心に思い描くまま叫んだ。





マ    ダ     ン    テッッッ!!!!!!!!!!!!!!

491 :顔がいい奴が憎い26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:57:26 ID:fG/eVFU50
叫び声と共に強力な光が発生しそれは球体となり魔物の群れの中心で爆発した。







閃光で視界が無くなる…

 









492 :顔がいい奴が憎い27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/12(土) 23:58:04 ID:fG/eVFU50
次に目を開けた時、そこはもうあの村ではなかった。
暗闇の中一冊の本がぼやけている。
俺は誘われるがままにその本を手にし、開いた。

ぼうっと扉が現れる。

開けるとそこにはイケメンとパンツが立っていた。



おめでとう。


イケメンがニヤニヤしながら手を叩く。こいつには言ってやりたい事が山ほどある。
なんなんだこの胸糞悪い塔は!俺は素でコイツをぶっ飛ばしたかった。イケが口を開く。


塔の中で何を見たのかは私にもわからない。
ただおまえは己の内面に触れた。答えを見つけるのは自分自身だ。

493 :顔がいい奴が憎い28 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:00:32 ID:fG/eVFU50
まったく何を言ってるのかわからない。意味不明だ。
ただ小難しい事をスカした顔で言ってかっこつけてるのはわかった。
これだからナルシストは嫌いだ。うぜえ。もう殴る気も失せた。

パンツが目をキラキラさせながら今度はあっしの番でげすねとか言ってやがる。
コイツはこの塔の恐ろしさを何一つ理解してない。
俺は軽く肩を叩き頑張れと一言だけ伝えた。パンツははいでやんすと意気揚々と塔に入って行った。





そしてその後塔から出てきたのは二日後だった。ちなみに俺は一週間だったらしい。

なんというかパンツの目付きが違う。
脱力しているようで、それでいて鋭く、隙が無い。全てを悟った顔をしている。
きっとこいつも塔の中で想像を絶する体験をしたのだろう。


494 :顔がいい奴が憎い29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:01:08 ID:fG/eVFU50
俺は初めてパンツに感心した。
こいつは普段チャランポランだが色々辛い経験をしてきたに違いない。
じゃなきゃ裸パンツ覆面盗賊なんてできない。常人の感覚ではできるはずがない。

パンツが重い口を開く。成長したパンツは何を言うのだろうか。


腹減ったでやんす…


…………。

最終試練も終えた事だしそろそろ出発の時期かな…。


その後パンツは10人分の飯を食らい死んだように寝た。
その間俺はひたすらマダンテを試みていた。
だがうまくいかない。いけそうな雰囲気はあるのだが最後の詰めが甘いのか集中しきれない。
これはどうやらまだまだ修行が必要なようだ。手応えはある。絶対に魔王のブチ込んでやるぜ。

495 :決戦!イケをブチのめせ30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:02:29 ID:fG/eVFU50
パンツが目を覚ましイケメンの所へ行く。イケは言った。

これより最終試験を始める

?は????
意味わかんねえ。こないだ最終試練終わったばっかじゃねーかよ。何言ってんだこいつ。馬鹿か?


こないだのは最終試練だ。次は最終試験。別物だ。

俺は深く殺意を抱いた。
これだから顔のいいやつは信用できない。こいつほんとどうしてくれようか。
しかしその試験の内容は「イケメンとピエロをぶっ飛ばす」というものだった。願っても無い事だ。
鍛えぬいた俺の体力と魔力!ギタギタのボコボコにしてやるぜッ!
 
イケは静かに一言。…覚悟しとけよ…
 

496 :決戦!イケをブチのめせ31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:22 ID:h7eqr8+40
近くの拓けた場所に移動する。
積年の恨み、今、晴らす時べし!
ハイテンションで身構える俺とパンツ。
イケは構えもせずブツブツと呟いている。チャンスだ。

パンツが飛び掛かろうとした瞬間イケとピエロが青白い光に包まれた。

……!?どんどんその姿が変貌していく…これは!?


そこにはイケとピエロの姿は無く巨大な二匹の魔物がいた。
ヤバイ。直感的にヤバイ。本気ださなきゃ普通に死ぬ。
修行中幾度と無く死にかけたが今回ばかりは洒落にならない。二人(匹?)とも目がイっちゃってる。
本気で俺達を殺る気だ。


強い相手には先制パンチ。これ喧嘩の基本。
俺はパンツに相手の注意を引き付けるように指示しスカラをかけた。

497 :決戦!イケをブチのめせ32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:04:52 ID:h7eqr8+40
パンツは相手に特攻する。その間に俺は精神統一する。
いきなり俺のもてる最強の呪文をぶつけてやる。先手必勝!くらえ!

俺はメラゾーマと叫んだ。特大の火炎球が元イケメン目掛けて飛んでいく。

もらったッ!!

元イケは大きく息を吸い込むと強烈な炎を吐いた。炎と火炎球が衝突し強烈な熱風が巻き起こる。

相殺された。

なんてこった。いきなり打つ手無しか!?作戦を変えよう。相手の戦力を分析し比較する。
総長たるもの馬鹿みたいに特攻してても駄目なのだ。時には冷静になる必要がある。

イケメン…デカい骨の竜。もの凄い炎を吐く。
ピエロ…でかいおっさん。石っぽい。固そう。力強そう。

俺…強い。
パンツ…頭悪い。


498 :決戦!イケをブチのめせ33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:05:24 ID:h7eqr8+40
おいおい勝てんのか!?
これはまずタイマンはっても勝ち目ないので二人がかりで一匹ずつ倒すしかない。
最初のターゲットはでかいおっさんだ。動き鈍そうだしできるだけ体力温存して潰したい。
と、パンツに伝えようとするがパンツはまた一人で骨に突っ込んでった。コラっバカ!死ぬから!
パンツは骨に一撃見舞ったがカウンターの炎を直撃した。
やべえ!俺はとっさに地面目掛けてイオラを放つ。
大量砂埃が巻き上がり二匹の視界が奪われる。その隙にパンツを引っ張り出し回復させる。
パンツはおじいいちゃん…おじいちゃんとうなされている。
駄目だ!おじいちゃんは駄目だ!帰ってこい!

何とか一命を取り留めた。俺はパンツに先におっさんから倒すぞと言った。パンツは頭を縦に振る。

…理解してくれてる事を祈る。

自分とパンツにバイキルトをかけあえておっさんに肉弾戦を挑んだ。
なぜかというと骨の炎が危険過ぎるからだ。あれは一撃で致死レベルだ。
俺達がおっさんに接近し続ける限り巻き添えを食うから骨は炎を出せない。
というよりほとんど手を出せない。二匹とも図体がデカすぎる。
実質2対2というよりは2対1×2といった所だ。

499 :決戦!イケをブチのめせ34 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:06:29 ID:h7eqr8+40
何とか活路を見出した。冷静に状況を分析し最良の策を立てる。自分の才能が怖いぜ。
とか考えてるうちにパンツはおっさんと殴り合っていた。すかさず加勢する。
いける。おっさんの一撃一撃は重いが単調だ。ある程度はかわせる。
俺達はゴリ押しでおっさんを攻め立てた。

体中に傷が増えていく。だがそれ以上にハイペースでおっさんの体力をけずる。
ついにパンツの渾身の一発がおっさんの脳天を砕いた。ボロボロと崩れ落ちる。
そして元のピエロの姿に戻った。気絶しているようだ。

さて次は問題の骨だ。

……うお!!!!!!!???間一髪で炎をかわす。骨は次の炎を吐く体制に入っている。

第ニ射が来た。何とか避ける。

畜生このままじゃ避けるので精一杯だ。反撃できない。丸焼けになるのも時間の問題だ。
パンツが俺の近くに来る。
あっしが何とか注意を引き付けますんでその隙に総長の魔法でなんとかして下さいだと…?
何か策があるのだろうか?まさか塔で超必殺技でも身に着けたのだろうか?
このままでもジリ貧なのでこいつに賭ける事にした。おまえにまかせる!

500 :決戦!イケをブチのめせ35 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:07:23 ID:h7eqr8+40
合点でやんす!と、次の瞬間パンツが骨の前に仁王立ちになる!











結果的に俺達は骨を倒した。
パンツが骨の前で謎のダンスをし、何事もなかったように骨が炎を吹いた時は本当に終わったと思った。
だがパンツが転んで偶然炎を避け、飛んでった武器が骨の口に挟まり塞いでしまい、
その隙に俺の渾身の鉄拳ドラゴンキラーを連撃でぶち込まれた骨はバラバラになった。
パンツの武器がまたいい具合に作用した。言うなれば電球を口に突っ込んで顔面パンチ。
あれに似てる。限りなく偶然だが運も実力のうちという事にしておこう。

501 :決戦!イケをブチのめせ36 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:07:57 ID:h7eqr8+40
一つ学んだのはパンツはろくな事をしない。本当にろくな事をしない。
前から肝に命じていたのだが塔の試練で何か変わったんじゃと期待した自分がバカだった。
そうして骨もまたイケメンに戻った。


ようやくイケメンから修行終了宣言が出た。
終了証明品として変なでかい本を渡された。塔の中で見たやつだ。
「さとりにしょ」というらしい。
この先何かしらの役に立つから持って行けと言われる。俺は一瞬考えて答えた。


いらない。


イケが驚いた顔をして言った。
いいのか!?賢者の証明だぞ本当にいいのか!? 
いらないものはいらない。
歩いて旅をするのにこんなでかくて重い本邪魔なだけだ。読む気しねーし。
そもそも俺は賢者になりたいなんて言った覚えは無い。
何が賢者だ。ナルシストっぽくて寒気がする。

502 :決戦!イケをブチのめせ37 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:09:13 ID:h7eqr8+40
イケメンが賢者なら俺はそう、例えるなら強者だ。心技体共に揃ったつわものなのだ!
だいたい俺の肩書きは総長なのだ。勝手に変えんな。

イケメンは俺が本気でいらないのを確認すると苦笑いしながら
その方がおまえらしくていいのかもしれないなと言った。

その夜はイケメンの所での最後の晩餐だった。
パンツはここの料理が惜しいのでもう一週間ほど居たいと言った。
100%断る。早くこの山奥から開放されたい。確かにこのワインは惜しいが。
しかしここに居たのも二ヶ月程だろうか。思えば色々あったな。
数え切れないほどイケの魔法をくらいパンツにどつきまわされ死にかけた。
今となってはそれもいい思い出…………ではない。絶対ない。本当に地獄だった。
結局俺達は4人でデカイ樽一つ分のワインを空け、二日酔いに苦しみ出発は次の日の昼になっていた。
まあいつもの事だ。

イケメンは勇者と伝書鳩で連絡を取っていたらしく合流場所はバハラタになった。
今日の夕方待ち合わせなのでボサッとしてないで早く出発せいと言われる。
最後の最後まで人使いの荒いやつだ。ピエロは羽で帰っていった。

さて行くか。とにかく俺達は走った。毎日アホみたいに走らされていたためこのくらい屁でもない。

503 :オーブを求めて38 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:13:02 ID:h7eqr8+40
バハラタには夕方を待たず着いた。
まだ勇者達の来る気配はないのでパンツと二人で時間を潰す事にした。
久しぶりのシャバの空気はうまい。
気分がいい俺達とは対照的に町人達の視線は冷たい。…というか絶対怯えている…
武器屋の前を通る。オヤジと目が合う。
その瞬間物凄い勢いで窓、ドア、その他ありとあらゆる外部と接触している場所に鍵を掛けられた。

…ひどすぎやしないか。まるで凶悪犯扱いじゃないか!誤解を解こうとドアをノックする。

トントン     …。

トントントン   ………。

トントントントン …………………。


バキバッ!!!ドコッ!

思わずドアを破壊してしまった。
中からうぅぅぅぅひぃぃぃいいい!!!!!!!!という悲鳴が聞こえる。

504 :オーブを求めて39 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:14:17 ID:h7eqr8+40
非常にやるせない気持ちになり俺達は武器屋を後にした。
そろそろ勇者が来る頃だろう。町の入り口で待ってやるか。


遅い。


三時間程経過した。すでに真っ暗だ。あのバカイケまさかはめやがったのか!?


総長ちゃんカンダタちゃんおひさ♪

!!!!?????いきなり後ろから声をかけられた。驚く俺。
いつのまに背後に!?入り口は一つしかないはず!?

あはは!驚き過ぎ!ルーラで飛んできたんだよあーお腹痛い

ルーラ???なんじゃそりゃ????

どうやらルーラとは一瞬で町を移動できる魔法らしい。羽のようなもんだ。

505 :オーブを求めて40 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:15:14 ID:h7eqr8+40
あれ?もしかして俺達もわざわざ走らんでも羽で来たらよかったのでは?
おそらく今頃イケはニヤニヤしてるだろう。

あいついつか殺す。もう死んでるけど殺す。

とりあえずいつものように宿屋に移動した。全員集合で鬼浜会議を行うのもひさしぶりだな。
みんなの顔を見回す。ねーちゃんは相変わらず美人だ。
ようやく、ようやく鬼浜にまともなメンバーが…非常に感慨深い。
勇者は髪が伸びだいぶ伸びちょっと大人っぽくなったようだ。
女二人旅ってのも色々苦労があったんだろな。

ちょっと総長ちゃん!しきってくれなきゃ話進まないよ!

おっといけないいけない。
思わず娘に見とれる親の気持ちになってしまった。俺達は別れてからのお互いの出来事を話し合った。
まあこっちは山に篭ってひたすらしごかれてただけでたいして話す事もないのだが
勇者達は色々あって結局例の赤いオーブを手に入れたらしい。
女二人旅なので辛い事もあったのだろうと思いきやかなり楽しかったようだ。

506 :オーブを求めて41 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:16:07 ID:h7eqr8+40
久しぶりに勇者の笑顔を見るとホッとしてしまいその日も俺達はしこたま飲んだ。
そしてうちのチームで一番酒が強いのはこのねーちゃんだという事が発覚した日でもあった。
べらぼうに強い。酔わせてウへへ…何て考えた俺が甘かった。
俺とパンツ二人がかりでも歯が立たない。なんて女だ。

酒を運んできた酒場のバニーちゃんが
さすが勇者様はモンスターも従えてるんですねとかわけわかんねー事言いやがる。

総長!あの女総長見てあんな事言ってるでやんす!しめましょう!!

…おめーの事だ。




507 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/13(日) 00:17:34 ID:h7eqr8+40
今日はここまでです!
毎度毎度支援ありがとうございます!

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/13(日) 02:12:36 ID:jcR1H8HT0
乙!
今日も楽しませてもらったよ。

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/13(日) 02:22:22 ID:rjoW1B780
改めて吹いたww
パンツがおもしろすぎるwww

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/14(月) 02:23:17 ID:+Q6uMGopO
>>502
>数え切れないほどイケの魔法をくらいパンツにどつきまわされ死にかけた。
下剋上www

511 :恐怖の船出1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:18:01 ID:TmeR1zoU0
ー次の日ー



ロマリアを目指した。
まあ目指したと言っても勇者の「ルーラ」とやらで一瞬で行けるのだが。
なぜバカ王のとこへ行くかというとこの先オーブを探すにあたり自分達の船が欲しいのだ。
勇者とねーちゃんは二人旅の間商業船に便乗してたらしいのだが、決められた航路外も探索したいし
何よりも自分達のせいで船員を危険に巻き込みたくないらしい。
普通なら船一隻ほいほいとくれるはず無いだろうがおそらくバカ王はくれるだろう。
なぜならバカだからだ。

勇者が呪文をとなえるやいなや体が浮き上がり一瞬でロマリアへ着いた。
これは凄まじく便利だ。一同真っ直ぐ城へ向かう。

階段を上がり王の間へ進む。

???おかしい。王の玉座には誰も座ってない。隣の大臣にどこへ言ったか聞いてみる。

512 :恐怖の船出2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:18:43 ID:TmeR1zoU0
バカ王はこないだ勝手に城を空けた罰として部屋に監禁されているようだ。
しかし家来に監禁される王なんてこいつくらいのもんだろう。

とりあえず大臣に聞いてみる。おい船くれよ。もの凄い剣幕で大臣が怒り出す。

何だかよくわからんが俺達に関わると王様はろくな事をしないとか
パンツはまだ無罪じゃないとか船なんかそんな簡単にやれるかとかそんな事を言っていた気がする。

埒があかないので無視してバカ王の部屋に直接会いに行く事にした。
途中兵士に阻まれたがパンツを見るなりすごすごと道をあけた。

王の部屋には何十にも鍵がかけてあった。
例の如く扉を吹っ飛ばして中に入る。見たところ誰もいない。
ベットが膨らんでいる。おそらくふて寝してるのだろう。
思えばこいつが城を飛び出したのも俺達の修行の為だった。
そう考えると俺にも責任がある気がする。礼の一つでも言うかと思いさすってみる。


513 :恐怖の船出3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:19:08 ID:TmeR1zoU0
反応がない。

熟睡してるのだろうか。

軽く小突く。

反応がない。

大きく揺すってみる。

…やっぱり反応がない。

俺は思い切って布団を引っぺがした。


 
………。やられた。
そこには王の姿はなく「おおさまちゃん(はぁと」と書かれたでかい人形があるだけだった。

514 :恐怖の船出4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:19:55 ID:TmeR1zoU0
やっと駆けつけた大臣はその光景を見て怒りが再発したのかギャ−ギャー騒ぎ遂には倒れてしまった。
コイツは絶対カルシウムが足りてないな。勇者が心配そうに駆け寄る。結局兵士が担いでった。
脱走したとなるとバカ王はどこへ行ったのだろうか。意見を聞いてみる。


勇:きっと凹んでどこかへ気晴らしに行ってるんだよ。お花畑とか。
パ:ピエロの旦那は魔王の呪いで人形にされたでやんす!魔王めがなんて残忍な!許さないでやんす!
ね:頻繁に脱走してるみたいだし城の人に聞いてみたら?

ねーちゃん…あんたがいてよかった…

そこから俺達は手分けして情報を集めた。
どうやらバカ王は無類のギャンブル好きらしい。
そして城下町にモンスター闘技場という賭場があり隙をみてはそこに入り浸っているらしいのだ。
典型的なダメ人間じゃねーか。
他にあても無いので俺達は闘技場を目指す事にした。

515 :恐怖の船出5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:20:23 ID:TmeR1zoU0
闘技場ー階段を降りるとそこは熱気で充満したいた。ギャンブル特有の熱気。
パチンコ狂の俺としては非常に懐かしい。何というか心地いい。
勇者はこういう所は初めてのようでキョロキョロしている。周りの視線がパンツに集まる。マズい。
おそらくみんな逃げ出したモンスターか何かだと思われている。
俺はパンツに300ゴールド渡し、これで何か食って来いと言った。
パンツは嬉しそうに駆けていった。やれやれ一安心だ。

さてこの広い闘技場でこれだけの人の中でバカ王を探すのは苦労しそうだ。
そう思った矢先、闘技場のアリーナに向かって一際大声をあげて大騒ぎしている大男がいる。

見覚えのあるピエロの格好…バカ王だ…目立ち過ぎだろ…
どうやら賭けていた魔物は負けたらしく全身で悔しさを表している。
暑苦しい上にうっとおしい。正直知り合いとは思われたくない。

暫く地面にへたり込んだ後、もの凄い勢いでチケット売り場へ向かった。まだやんのかよ…


516 :恐怖の船出6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:26:33 ID:TmeR1zoU0
バカ:次こそは!次こそはあああああ!!!!
売り場の人:はいはい毎度王さ…じゃなくて謎のピエロさんどうします?
バカ:スライムベスに500ゴールド!
売り場の人:(相変わらずギャンブルの才能ねーな)かしこまりました。
      スライムべスに500ゴールドですね?


当然だがこの町の人みんなこのアホピエロが自分達の王様だと気づいているのだろう。
俺は売り場の人に話かけた。いいのかあんたらの王こんなんだぞ?苦笑いしながらこう答える。

売:いいんですよ!この町の人みんな王様の事大好きですから!
  世界を救った英雄なのに物凄く気さくでしょう?
  何しても憎めないんですよね〜。この国の国民は王様の家族みたいなもんですからね。
  ほんといい国ですよ。


「人を治める」というのは頭がいいだけでも、力が強いだけでも駄目なようだ。
きっと人を惹きつける「何か」が必要なのだろう。
そしてバカ王はバカだがその大切な「何か」を持っているようだ。何となく親父を思い出した。

517 :恐怖の船出7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:27:09 ID:TmeR1zoU0
バカ王に目を向ける。また負けたらしい。悔し泣きしている…
いい歳してこんな事で無くなよ恥ずかしいからさ…

勇者が慰めに行った。ね?もう十分遊んだんだからお城帰ろーよ?みんな心配してるよー?
16歳の女の子に説得されて帰ってくる家出おっさん…。俺達は再び城へ向かった。

途中道端で寝ていたパンツと合流し本日二回目の城へ着いた。
バカ王はピエロの格好から王の格好に着替えた。入り口で兵士が敬礼する。
今回はお早いお帰りですねだと?今回はって…お早いって…いやもう突っ込むのはやめよう。

王の間へ着いた。大臣は部屋で寝込んでるらしい。ストレスの溜まり過ぎだろう。
王が王だけにさすがの俺ですら同情を禁じ得ない。まあいいや。バカ王に船が欲しい旨を話す。
暫く考え込む。
船一隻ともなるとバカでもさすがにホイホイとあげられないのか。
王が口を開く。
この国には船は何隻かあるものの、船乗りは必要最低人数しかいない。
つまり船はやってもいいが船乗りはつける事はできないという事だ。
船があっても動かせなければどうしようもない。これは困った。

パンツ:あっし船操舵できるでやんすよ。

518 :恐怖の船出8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:27:43 ID:TmeR1zoU0
………。俺の聞き間違えだろうか。

パンツ:あっし盗賊になる前は海賊だったでやんす。

………。あり得ない。こいつに操舵ができるはずがない。超絶天然バカのこいつに!
脳ミソまで筋肉化したこいつに!

勇者がすごーいカンダタちゃんすごい♪これで出航できるね!とか言って煽りやがる。
全会一致でパンツを船長にする流れだ。やべえ。これはやべえ。パンツも乗り気だ。
おいやめろバカおまえら考え直せ!こいつが地図逆さに見てて遭難しかけたのもう忘れたのか!?
パンツが船長の船なんてある意味魔王と戦う事なんかより遥かに危険だ!
魔王に殺られるならまだしも遭難難破で海の藻屑になるなんて死んでも死にきれねーぞ!
え?何?今から船に案内するだと?バカ!だから待てって!
おいコラ人の話を聞け!殴んぞ!


俺の必死の抵抗も虚しくパンツが船長になった。終わりだ。俺達の旅は終わった。完全に。
しぶしぶついて行き船の前に着いた。なかなかいい船だ。この船が俺達の棺桶となるのか…

519 :恐怖の船出9 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:28:32 ID:TmeR1zoU0
パンツはさすがに一人で操舵はできないらしく子分がいると言ってきた。
子分?ああそういやこいつらのアジトの塔に置いてきたな。
そこでパンツは羽を使って子分を呼びに行くことになった。
一人だと迷子になる可能性大なのでねーちゃんも保護者としてついて行かせた。
ほんとは最初は勇者がついて行くと言ったのだがこいつが行くと余計に事態が悪化するからやめさせた。
勇者はふてくされてずっと頬を膨らませている。ガキか。

道具屋に行く。
パンツとねーちゃんは羽を買うなりさっさと行ってしまった。俺はご機嫌ナナメな勇者様の子守だ。
二人が帰って来るまで町をぶらつく事にした。突然勇者が振り返る。なんだよ。


名前つけなきゃ…これからいっぱい働いてもらうんだし。うん名前がいる!

どうやらあの船に名前をつけたいらしい。
名前とかはどうでもいいがこれで機嫌が直るならそれでいいや。
で、どんな名前がいいんだと聞いてみる。

え?ラブラブネコちゃん号?…それは嫌だ。え?キラキラチューリップちゃん号?


520 :恐怖の船出10 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:29:05 ID:TmeR1zoU0
…それも嫌だ。確信した。コイツにはセンスが無い。てか「ちゃん」から離れろ。

じゃあ総長ちゃんもなんか案出してよって言われた。
名前か…そういや俺の族時代の愛車はフレアラインのZU…

漢の単車ゼッツー

思わず口にでた。

何それ全然かわいくない。意味わかんないし。総長ちゃんセンスないね。

…おまえに言われたくねえ…

その後白熱した討論の末名前は「みんなのゼッツーちゃん号」に決定した。
正直もう何でもいい。ゼッツーちゃん号…いい名前じゃん…ははは…

その後うだうだ喋りながらウロウロしてると向こうから柄の悪い集団が来る。パンツ達だ。
しかし見れば見るほど一緒に旅をしたくない連中だ。
兄貴と旅ができて嬉しいっすとか言ってやがる。俺は何一つ嬉しくねーぞ。とにかく船着場に向かった。


521 :恐怖の船出11 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:34:54 ID:TmeR1zoU0
船着場に着くなりパンツ共は出航の準備を始めた。
妙に手際がいい。さすが元海賊といった所か。
俺は危うく感心しかけたがやめた。こいつに期待してもいつも裏切られる。もう騙されないぞ。
暇そうにボーっと船を眺める三人。そこにバカ王達がやってきた。なにやら馬車をひいている。
馬車には食料と水が大量に積んであった。餞別に持ってけという。気がきくじゃねーかよ。

ようやく出航の準備が終わる。
さて問題は次の目的地だ。復習だが俺達はシェンロン復活のためオーブを集めている。
バカ王曰くここから遥か南のランシールという町がある島に「地球のへそ」と言われる地下洞があり、
そこに元々オーブがあったらしい。そして勇者の親父が再びそこに封印したらしい。
よしそれなら行き先は決まった。次の目的地はランシールだ。早速船に乗り込む俺達。
下手したらもうこの足で大地を踏みつけるのも最後になるかもしれない。覚悟を決める。

ちょっと総長ちゃん!何してんの早くおいでよ!おいてっちゃうよ!  

…はいはい。

船の上から勇者達は楽しそうにバカ王に手を振っている。
帆を張り碇を上げると船はゆっくりと動き出した。
バカ王がどんどん小さくなる。ついには見えなくなった。帆船てのもけっこうスピード出るもんだ。

522 :恐怖の船出12 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:35:38 ID:TmeR1zoU0
潮風がすげー気持ちいい。天気もいい。船旅も悪くないぜ。これで船長がパンツじゃなけりゃ…。
勇者とパンツは持ち込んだおやつがどうだとか言い合っている。そんなもん持ってきたのかよ。
おそらくこいつらは遠足程度にしか考えてないだろう。しかし勇者は変わったな。
出会った頃の勇者は世界の運命を一身の背負ってますみたいな悲壮感漂うガキだった。
だが今はほんとよく笑う。
ジャリん時から親父に戦闘の英才教育をされ
魔王が復活するなり訳もわからず旅に出され勇者として期待される。
もしかしたら今が一番楽しいのかもしれない。そんな事を考えてるとねーちゃんが話しかけてきた。


父にひと段落ついたらこれを渡すように頼まれたんだけどと手紙を渡された。

………。

内容はおまえは賢者としてはまだまだ呪文のバリエーションも少ないし未熟だから
このねーちゃんに色々教えてもらえって事だった。はっ今更何を。俺が学ぶ事なんてもうねーよ。

キシャーッ!!!

突然海面から硬そうな凶悪な面した魚が群れで飛び出してきた!不意をつかれる俺!

523 :恐怖の船出13 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:36:13 ID:TmeR1zoU0
バギッ!!!!

ねーちゃんの手からカマイタチのような線状の空気が飛び出した。悪魚達がひるむ。
この女俺が身構えてる間にもう反撃に移っていた。行動が早い。すげえ。

いい?これが風を操る一番基本の呪文。そして練度が上がるとこういう事もできるようになるわよ!

ねーちゃんは精神統一させ一呼吸置くと叫んだ。

バギッ!!!クロスッ!!!!


轟音と共に巨大な真空の刃が竜巻となり相手を切り刻む!

一瞬で悪魚達はバラバラになった。いやいやほんとすげえ。

さすがイケの娘だけある。強い。何よりも凄いのはその反応速度。
まるで相手が襲ってくるのを知ってたかのような行動だった。
ねーちゃんの説明によると俺達は視力に頼るから感覚が鈍ってるらしい。
心眼というのは超能力でもなんでもなく、極限まで研ぎ澄まされた感覚の事のようだ。

524 :恐怖の船出14 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:37:13 ID:TmeR1zoU0
そのくらい感覚が冴えると相手の殺気が読める。
そうなると敵が近づいてくるのも簡単に察知できるとの事だ。わかったようなわからんような…

さっ早速始めるわよ。まずは空気の流れをイメージする事からね。しばらくは私が総長さんの師匠よ。


………へ?


その後ねーちゃんはイケメン並のスパルタ女だった事が発覚した。
俺の安息の日はまだ、来ない。






525 :恐怖の船出15 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:37:54 ID:TmeR1zoU0
早くも海に出てから早くも一週間が経った。
そこで重大な問題に直面する。食料が尽きそうだ。
水は海水を蒸発さして造れるため何とかなるのだが食料はそうはいかない。
みんな腹が減ってイライラしてきた。
引き返すべきか。このまま進むべきか。決断を迫られる。

ん?今船が不自然に揺れたような…

パンツ子分Aがランシールまでは確実に飢え死にするので航路を変えて
近くの町で補給しましょうと言う。それもそうだな。船旅も中々難しいもんだ。
特にうちには超絶大飯食のパンツがいるから一般的な貯蔵では追いつかない。

……。

いややっぱこの船変に揺れてねーか?腹減って感覚おかしくなってきたんだろうか。
このままでは非常に危険だ。とにかく世界地図を見ながら現在地と近い町を探して…と

…またまた船が大きく揺れる。

あーもう何事だうぜえええ!!!

526 :恐怖の船出16 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:38:30 ID:TmeR1zoU0
と、船の下に巨大な影が見えたと思うやいなやバカでっかいイカの化物が現れた。
こいつが下から船を揺さぶってたようだ。

普段なら間違いなく秒殺してるとこだ。
しかし今回はみんなの眼つきが違う。おそらく考えてる事は一緒だろう。


こいつは…………食える!!!


俺達の異常な殺気にビビッたのかイカは引き腰になっている。やべえこのままじゃ逃げられる…

逃がすかあああああああああ!!!!

一斉に飛び掛る俺達。ここ最近で一番本気の戦闘だ。パンツなんてすでに足に噛み付いている。
イカもでかい図体してるだけあってなかなか強かった。しかし飯の懸かってる俺達の敵ではなかった。
沈んでいくイカから太い足を数本頂戴した。さてどうしたものか。いざ目の前にするとさすがに躊躇する。
食って腹壊したりしないだろな。食中毒死とかマジ勘弁して欲しい。
ねーちゃんが私にまかせてと言うと足を一本持って厨房に入って行った。
パンツは生でイカにかぶりついている。まあコイツは何食っても平気そうだから放っておこう。

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 20:46:54 ID:Y0001/ve0
支援です

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 20:52:04 ID:1NQlYYoX0
愉快な仲間達に恵まれ
歳相応に笑えるようになったんだな勇者良かった良かった

529 :恐怖の船出17 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:56:31 ID:TmeR1zoU0
暫くしてねーちゃんが大きな皿を持って戻ってきた。
これは…皿の上にはうまそうなイカの炒め物?が乗っている。
有り合わせの調味料を使ってイカのソテーを作ったのよとの事。

味は…………うまい!これはうまい!

イケメンも料理うまかったがねーちゃんもかなりの腕だ。本当にこいつがいてよかった…



そしてさらに一週間後。

俺達はランシールに到着した。とりあえずゼッツーの処女航海は無事に終える事ができた。
二週間程の航海だったが俺達は色んな意味で逞しくなったと思う。
魔物を食うなんて一昔前じゃ考えられなかった。
魔物よりも魔王よりも一番しぶとい生き物は人間なのかも知れない。何はともあれ久しぶりの大地だ。

碇を降ろし船を固定すると早速町へ向かった。
毎度の事ながら住人の視線が痛い。場所が場所だけに滅多に旅人も来ないのだろう。
それに加えてこの面子だ。好奇の目に晒されるのは仕方が無い。

530 :恐怖の船出18 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:57:02 ID:TmeR1zoU0
オーブがある「ちきゅうのへそ」の入り口は町の中心にあった。
今日は一晩宿屋で疲れをとってから明日攻める事にしよう。俺達は宿屋へ向かった。


その夜無事航海終えた記念の宴会が開かれる。久しぶりの酒だ。
船にもある程度積んでたんだが初日で飲み干したからな…。
ここの地酒はウイスキー。うまい。が、キツい。調子のってるとすぐ潰れそうだ。
言ってる先からパンツの子分三人組がねーちゃんと飲み比べを始めた。
アホだな。こいつらはまだこの女の殺人的な酒の強さを理解してない。
案の定一人、また一人と倒れて行く。ねーちゃんは涼しい顔してる。

勇者もかなり飲んだらしく相当ヘラヘラしてる。ピーピーうるせえ。
途中料理を運んできたおばちゃんに何の目的で旅してるの?と聞かれて

あのねー私達海賊なの!この町のお宝奪いに来たの!

と言った時のおばちゃんのひきつった顔は笑えた。まあ間違えてはいない。
その日の宴も明け方まで続いた。



531 :試練そしてじゃんけん19 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:57:48 ID:TmeR1zoU0
ー次の日の昼ー

パンツの子分三人組はまだ潰れてるので宿屋に置いてきた。洞窟の入り口の建物に入る。
入り口にはおっさんが一人いた。邪魔だどけ。無視して進もうとすると慌てて止められる。
なんだようぜえな。

この洞窟には一人でしか挑めないらしい。何だよそれ。意味わかんねえ。そんなきまり当然無視だ。
しかしおっさんも頑固で一歩も退かない。目がマジだ。
わしの人生に懸けてここは通さん!通りたければわしを倒してか…ドスッ。
俺の中段突きをモロにみぞおちにくらいうずくまるおっさん。よし。おまえら先に進むぞ。


勇:ちょっと総長ちゃん!かわいそうだよ!ちゃんときまりは守らなきゃダメだよ!
パ:総長!男ならここは一人で攻めるべきでやんす!それが真の漢でやんす!

ね:一人じゃなきゃ先に進めないとかそんな仕掛けがあるんじゃない?
  無意味にそんなきまりがあるとは思えないわ。


おまえら…多数決により誰か一人で探索に行く事になった。

532 :試練そしてじゃんけん20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:58:28 ID:TmeR1zoU0
おっさん:ゴホッゴホッなっ…なんて乱暴な若者じゃ…こんな奴は初めてじゃまったく…
     いいか?ここは由緒正しい試練の洞窟でな。
     一人で攻略してこそ求めている物が得られるのじゃ。
     といってもそんな危険なとこ誰も探索するはずがなく今までは未知の空間じゃった。
     勇者様がおそらく歴史上初めて攻略されてオーブを持ち帰ったのじゃよ。
     それで次に必要な時が来るまでまたここに封印なされた。ただオーブを封印するだけの為に
     これだけ大掛かりなものが造られたとは思えん。きっとまだ謎が隠されておるかもな…

謎…ねーちゃんがピクッと反応した。とにかくそうなれば誰が行くのか決めなければならない。
ここは総長である俺が行くのが筋ってとこだろう。文句ないなおまえら。……明らかに不満顔だ。


勇:あたしも行きたい!お父さんも行った洞窟なんだし…絶対行きたい!
ね:謎…謎が私を呼んでるわ!未知…なんて素晴らしい響き!ここは譲れない!

おいおい…てかねーちゃんあんたそういうキャラだったんだな…さらに輪をかけて


パ:よくわかんないけどズルいでやんす!あっしも行きたいでやんす!仲間外れは嫌でやんす!


533 :試練そしてじゃんけん21 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 20:59:00 ID:TmeR1zoU0
もうこうなると収拾がつかない。どーせこいつらは総長である俺の意見なんてきかないだろう。
いいんだわかってた事だから…俺がここのボス…自分でそう思ってたらいいんだ…
しかし絶対話し合いでは結論がでない。こいつらはそういう奴らだ。
ここは公平にじゃんけんで誰が行くか決めようじゃないか。

じゃんけん…!?何それ??

どうやらこの世界には「じゃんけん」はないらしい。ルールを説明する俺。
へー楽しそう!と勇者とねーちゃんはすぐ理解したようだ。パンツはまったく理解できてない。
とにかくグーかチョキかパーか何でもいいから出せと教えた。じゃあいくぞ。せーのー

じゃーんけーんポンッ!

………………。

やっちまった。おそらく考え得る中で最悪のパターンだ。



勝ったのは…パンツだった。

534 :試練そしてじゃんけん22 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:01:04 ID:TmeR1zoU0
………。勇者は本気で悔しがっている。パンツは当然の如くわかってない。
ねーちゃんが勝ったのはあなたよと教えてやった。途端に大喜びするパンツ。
しかし勿論こいつには何のメリットもない。

やったでやんす!これでお宝は俺の物でやんす!

明らかに勘違いしている。もういい。こいつが無事にオーブを持ち帰って来るのを期待するしかない。
ここまでくると運の問題だ。直ぐにでも出発しようとするパンツを制止してありったけの薬草を持たせた。

勇:いいなぁ…お父さんに関係あるものあったら必ず持って帰ってきてね!

ね:いい?こんな手付かずの古代遺跡に入れる機会なんてそうそうないんだから
  気を引き締めて行ってくるのよ!この貴重な体験を噛み締めてきなさい!

俺:あの…その何だな…無理しなくていいからな…適当に頑張れ…

パンツは嬉しそうに頷くと意気揚々と行ってしまった。
入り口を守ってたおっさんがほんとのあいつでよかったのかと驚いている。いいわけねーだろバカ。
今更ジタバタしても仕方が無いのでここで大人しく待つ事にする。

535 :試練そしてじゃんけん23 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:03:45 ID:TmeR1zoU0







丸一日が経った。パンツはまだ帰ってこない。





だからあいつに行かしたくなかったんだよチクショーが!
おっさんの話によると勇者の親父は半日ちょっとで帰ってきたらしい。
つまり明らかに中で迷っている。
という事で第二陣が出発する事になった。問題は誰が行くかだ。
とりあえず勇者だけはマズい。パンツの救出に勇者が行くなんて火に油を注ぐようなもんだ。
確実にミイラ取りがミイラになる。今回に限ってはねーちゃんもヤバい。テンションがおかしすぎる。
遺跡に夢中になりすぎてパンツの事を忘れて帰ってくる可能性が高い。

536 :試練そしてじゃんけん24 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:04:45 ID:TmeR1zoU0
やはり…俺が行くしかない。
しかし選出方法はじゃんけんじゃきゃこいつらは納得しないだろう。
そうなると俺が勝つ保障は無い。さてどうしたものか。

はやくじゃんけんで決めよーよーカンダタちゃんお腹空かせて待ってると思うよー?
勇者が急かす。うるせーちょっと待ってろ今秘策を考案中だ。

……こうなったら最終手段を使うしかない。これだけは避けたかったのだが。


わかったいくぞ!せーのー!じゃーんけーん…ぽんっ!       …今だ!

勇&ね:…………………!!!!????


勝った。俗に言う「後出し」というやつだ。勇者が騒ぎ出す。
うるさい。世の中勝ったやつの勝ちなのだ。
反発する二人を無理やり丸め込み何とか次の挑戦者は俺になった。
目的はオーブ発見&パンツ救出。ちくしょう最初から俺が行けてればこんなめんどくさい事には…
やり場の無い怒りを覚えつつ俺は出発した。

537 :試練そしてじゃんけん25 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:05:22 ID:TmeR1zoU0
出発前に勇者に大量のパンを持たされた。
ふざけんなてめー荷物になるだろうがと思ったのだがパンツの為に持ってけときかない。
もう一回じゃんけんやり直しとか言われてもややこしいので黙って持ってく事にした。しかしかさばる。



通路を抜けるとそこは大理石のでかい人工的な洞窟だった。不気味な所だ。
俺まで迷ってしまってはシャレにならないので慎重に地図をつけながら進む。



シャー!!!!キシーッ!!!!!!    ビッチャザアアアアアア!!!!!
グェェェェエエエエ!!!

ブッヒョーるるる!!!     ギブアァアアア!!!!



クソが!ここはなんて魔物が多いんだ!倒しても倒しても後から後から湧いてきやがる!
俺のブチ切れスイッチが入りかける。

538 :試練そしてじゃんけん26 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:05:59 ID:TmeR1zoU0
呪文で一気に木っ端微塵にしてやりたい所だがこんな入り口付近で精神力が尽きてもいけないと
俺の残り1%の理性が制止をかける。仕方なく相棒のドラゴンキラーでぶっ飛ばして進む。


かなりの魔物を潰した。ひと段落して辺りを見回す。
どうやらここからは一本道の長い通路のようだ。
ん?よく見ると通路に大きな顔型の彫刻が並んでる。気持ち悪い。ここを設計したヤツのセンスを疑う。
まあいい。とりあえず進もう。



……………せ……





ん?



539 :試練そしてじゃんけん27 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:06:52 ID:TmeR1zoU0
ひ……………せ



ん?ん?

何か声が聞こえた気がした。パンツだろうか。耳を澄ませながら進む。


ひきかえせ




ひきかえせ??今はっきりとひきかえせと聞こえた。誰だ!?誰かいるのか!?




ひきかえせ

540 :試練そしてじゃんけん20 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:07:36 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ





ひきかえせ




…わかった。この顔型の彫刻喋りやがる。おそらくへタレ冒険者をふるいにかけるためだろう。
フッ…こんな子供騙しにひっかかる俺じゃない。無視だ無視。


ひきかえせ

541 :試練そしてじゃんけん29 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:08:30 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ



ひきかえせ



しかしこの洞窟暑い。というかジメジメする。


ひきかえせ






ひきかえせ

542 :試練そしてじゃんけん30 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:09:29 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ



うざい。暑いので黙ってろ。てか迷った。同じ通路をループしてるような気がする。地図は捨てた。

ひきかえせ





ひきかえせ





ひきかえせ

543 :試練そしてじゃんけん31 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:10:05 ID:TmeR1zoU0
ひきかえせ

ひきかえせ
ひきかえせ
ひきかえせひきかえせ
ひきかえせひきかえせひきかえせひきかえひきかえひきかえひきひきひきひき



うるせえええええええええええええぇえええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!

その瞬間俺の中の理性は吹き飛んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおォぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
およそ思いつくあらん限りの魔法を放つ。轟音が狭い通路に反響する。かおの彫刻は大半が吹き飛んだ。


544 :試練そしてじゃんけん32 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:10:50 ID:TmeR1zoU0
ー地上ー


勇:総長ちゃん大丈夫かなぁ…

ね:魔物にやられる事はないと思うけどね。

お:ここは試練の遺跡じゃぞ。一筋縄にはいかんわい。


ー揺れる地面。鳴り響く轟音ー


勇:キャッ!!!!今の何!?

ね:ただ事ではないわね…総長さんもずいぶん派手に暴れてるみたい。

お:おい!わしは長年ここを守っておるが今のはなんじゃ!初めてじゃぞ!

勇:助けに言った方がいいかな…!?

545 :試練そしてじゃんけん33 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:11:15 ID:TmeR1zoU0
ね:そうね。

お:ちょっちょっと待て1何人たりとも二人以上でここを通すわけには…

ね:はいはいお話は後で聞くからちょっとどいててね!

勇:ごめんね!すぐ戻ってくるから!

お:こっコラ!待たんかい!おぬしらにはほんと常識てもんが…あ…行ってしまいおった…




546 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/15(火) 21:12:02 ID:TmeR1zoU0
今日はここまでっす
支援ありがとう!

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 21:15:23 ID:OgYFDAyZO
お疲れさまでした。これからも楽しみにしています

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/15(火) 23:41:14 ID:NRiiZmeYO
外道総長キターwwwwwww

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 00:58:39 ID:crayaNe9O
やっと前回の分を越えましたね、続きが本当に楽しみです。

頑張ってください!

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 01:07:46 ID:d5XpOWgy0
ランシールアワレwwwww
試練に立ち向かう気さらさら無し!ってのがキモチイイw

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/16(水) 14:14:01 ID:TJBPpRY7O
みんなのゼッツーちゃん号wwwww吹いたwwww

552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/18(金) 23:23:11 ID:axR0EAOP0
ほすほす

553 :新たなる仲間!……。1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:39:05 ID:f2uRp8ik0
………………………………………………………。





……………………………………。




……………………。





………。

554 :新たなる仲間!………。2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:40:05 ID:f2uRp8ik0

…ん……。





目を覚ました。俺の名はリュウジ。泣く子も黙る史上最大・最強・最高の暴走族“鬼浜爆走愚連隊”
の総長を務めていた男だ。まあ昔の話だ。今はただ酒びたりのひきこもりだ。
生きていても死んでいても関係ない無気力な毎日。





…………あっ!やっと目覚ましたよ!もう総長ちゃんの寝ぼすけ!

ぞおおおうぅぅううじょぉおおおおおおおおおおういうううう!!!!!!!

甲高い女の声と同時に筋肉ダルマの熊みたいなパンツ男が抱きついてきた。…痛てえ。

555 :新たなる仲間!………。3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:40:35 ID:f2uRp8ik0
痛てえっつの!

俺はパンツ男を3メートル程吹っ飛ばすとその見るからに怪しい風貌の男は
天井にめり込んだまま沈黙した。

それだけ元気があればもう大丈夫ね。

やたら美人のねーちゃんが口を開く。


…………そうだった。俺はベランダで足を滑らせて気づいたらこの謎の世界に迷い込んだんだった。

ぞううじょうううぅういぎでででよがっだでびゃんずううぅううう

パンツが号泣している。相変わらず頑丈だなコイツ。しかし俺は何故気を失っていたのであろうか。
………思い出した。オーブを求めて洞窟に入り、ちょっとした手違いで洞窟をぶっ壊してしまった。
崩壊していく洞窟の中で記憶が途切れている。あの後どうなったのだろうか。

うんとね、おっきい地震が起こって心配だからあたしとおねーちゃんとで洞窟に助けに入ったの!
そこで総長ちゃんとカンダタちゃん見つけて戻って来たんだよ!オーブもちゃんとだよ!

556 :新たなる仲間!………。3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:41:05 ID:f2uRp8ik0
……オーブ……オーブ!?危ねえ危うく夢も野望も全て土の中に埋もれる所だったぜ。
しかしこの女二人が俺ら大男二人担いであの崩壊する洞窟を抜けてきたのか。こいつらわりと
パワーあるじゃん。

まさか!そんなの無理だよーあのね、魔法で一発でポーンって出てきたの♪

なんてこった…そんな便利な呪文があるとは…てかそんな呪文使えるならおまえが行けや!

行くって言ったじゃん!総長ちゃんがじゃんけんでずるっこして勝手に行ったんでしょ!
それにほんとにギリギリだったんだから!もう!

ああ。そういやそんな事もあったな。ピーピーうるさい勇者を無視してベットを出る俺。
腹減った。なんか食い物ないかな。その辺の棚を漁る。何も無い。ちっ…しけたとこだな。
部屋を出る。玄関には変なおっさんが顔真っ白にして放心状態だった。おいおっさん腹減ったから
なんか食いもんくれよ。おっさんは小声でブツブツ呟いている。わしの洞窟が…わしの使命が…
話しかけても素無視だ。大丈夫かコイツ。おっようやく俺の存在に気づいたようだ。
…と同時に近くにあった椅子で殴りかかってきた。おいやめろ!あぶねっつの!

557 :新たなる仲間!………。4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:41:28 ID:f2uRp8ik0
おぬしさえ!おぬしさえ来なければわしの平穏な日常が!ぬおおおおおぉおおお!

反射的に体が反応してカウンターを入れてしまった。やべ。おっさん壁突き破って外まで吹き飛ぶ。
おい。大丈夫か。反応がない。騒ぎを聞きつけて人だかりが出来てきた。マズい。これはマズい。

ヒソヒソ…あいつあれだろ…勇者様御一行の…なんで一般人殴ってんだ…
ママー!しっ!見ちゃいけません!ヒソヒソ…

おまえら帰れ!見せもんじゃねーぞコラァ!ヒーこの子だけはどうかお助けを!なんてやり取りを
していると勇者たちが来た。あー!また総長ちゃん町の人いじめてる!違うこれには深い訳が…

ホイミ

ねーちゃんが魔法をかける。目を覚ますおっさん。

いやはやこれはこれは勇者様。取り乱してしまいしまんですな。

やっと落ち着きを取り戻したようだ。おっさんの家系は代々この「ちきゅうのへそ」という洞窟を
守ってきた。しかしその洞窟は無くなってしまった。確かにちょっと悪い事したかもしれない。

558 :新たなる仲間!………。5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:46:10 ID:f2uRp8ik0
わしは女房と子供のいる故郷に帰ります。ここ半年程帰ってなかったので。そこで農業でも
始めますわ。ハッハッ八…

そうかこのおっさんも無職か。まあ無職も悪くは無いと慰める。勇者が申し訳なさそうに口を開く。

なんか…悪いことしちゃったね…ゴメンナサイ…

おっさんはいやいや気にしないで下され。それよりもお目当ての宝手に入ってよかったですなと
言っているが確実に目は死んでいる。

あっそうだ!奥さんと子供ってどこに住んでるの?私たち送るよ!

また勇者が勝手な事言い出したが今回は仕方がないだろう。そのくらいはしてやる。

ノアールですじゃ。とんだ田舎で勇者様の旅の妨げになるだろうにわしの事は気にしないで下され。


一瞬時が止まった。ノアール。そう俺と勇者が出会った場所。じいさん最後の場所。
もはやノアールという言葉は町の名前ではない。今となってはただの地名としてしか用を為さない。

559 :新たなる仲間!………。6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:46:32 ID:f2uRp8ik0
誰も口を開けなかった。破壊された民家。あたり一面の血痕。そしてじいさん…全てが鮮明に
蘇る。ノアールは…もう無い。あそこは魔王に滅ぼされた。またまたご冗談をと笑っていたおっさん
も勇者の目を見ると黙り込んだ。そうですかいやいや酷い世の中ですな!最後にもう一度息子の顔でも
見ときたかったわい…必死に何でもない風に振舞うのが痛いほどわかる。……こいつ強いな。

いやー守るべき場所も家族も同時に無くなってしまうとはさすがに参りましたな。ハハハ

かける言葉がねえ。勇者がいいこと閃いた!っと喋りだした。嫌な予感がする。

ねえねえおじさん!する事無いなら私たちと一緒に旅しよーよ!

へ?

おっさんは突然の申し出に今一状況が飲み込めてない。当たり前だ。俺も訳がわからねえ。

勇者の目はマジだ。もはやこうなったら誰もNOとは言えない。


560 :新たなる仲間!………。7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/04/19(土) 00:47:33 ID:f2uRp8ik0
あのね、私たちと一緒に旅をして、色んな人に出会って色んな場所にいってね、それでおじさんが
好きな場所やもしかして好きな人に出会ったら、そこでお別れすればいいと思うんだ。うん絶対そう!

そうですな…ここにいても何もありゃせんし勇者様がそう言って下さるならお邪魔しましょうかな!

わーい♪こちらこそよろしくお願いしまーす♪

まただ。また総長様である俺を差し置いて勝手に話が進む…いいんだどうせ…俺は形だけの総長さ…
てなわけで我が鬼浜爆走愚連隊にまた一人メンバーが加わった。不本意ながら。

その日の晩鬼浜定例会議の議題はもっぱら新加入のおっさんについてだ。とりあえず俺が総長であり
このチームのボスである事、勇者を含めここの構成員はすべておれの子分であることははっきりさせて
おかなければいけない。ではまず俺がボスである事から説明しよう。

威厳・強さなどから当然言わなくてもわかってると思うがこのチームのボスは俺d…

ねーねー!おじさん何て呼んだらいい?お名前は何て言うの??

く…このクソガキが…

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