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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/12/28(金) 06:52:11 ID:kjslZuu70
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/l50
PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/ (前スレ中にこちらに移転しています。ご注意ください)
ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
337 :
Stage.14 [1-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:18:10 ID:h37KA7+K0
――アイツはじっと俺の言葉を聞いていた。
携帯の向こうで。
画面の向こうで。
決して混じり合うはずのない二つの世界。
俺たちの出会いは、それ自体はとんでもない奇跡であるはずなのに。
なのに。
なあ、タツミ?
俺はお前が大嫌いだよ。死ぬほど嫌いだ。
だけど俺は、どうしてもお前を嫌うことができない。
それも、お前がそう望んでいるからなのか。
俺の気持ちも、ぜんぶお前が決定していることなのか。
338 :
Stage.14 [1-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:19:29 ID:h37KA7+K0
「さあね。で、これは復讐なの?」
――わかんねえよ。
【Stage.14 Cursing My Dear】
[1]〜[15]
Prev
>>284-315
(Real-Side Prev
>>29-40
)
----------------- Real-Side -----------------
339 :
Stage.14 [2-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:21:00 ID:h37KA7+K0
1周目。
俺が「現実」を「夢」で見るようになったのは、最初の旅の中盤くらいだった。
「夢」の中で俺は、タツミという5、6歳くらいの幼い少年をすぐ近くから見下ろして
いた。まったく知らない世界――そこは、すべてが見知らぬ物ばかりで、しかも毎晩のよ
うに見るもんだから、本気で俺の頭がおかしくなったのかと心配になった。
だが、タツミがしょっちゅう夢の中でやっている「ゲーム」のストーリーが、たった今
自分が歩んでいる冒険を簡略化したものだと気づいた時、俺はこの「夢」を、アリアハン
のはるか未来の世界を見ているのだと解釈した。
謎の「ゲーム」とやらは俺の冒険譚をつづった絵本のような物で、あの小さな男の子は
それを楽しんでいるのだろう、と。そして俺のことが後世に伝説として残っているのなら、
俺は魔王討伐に成功したに違いない、なんて、前向きというか、今思えばずいぶんのんき
に考えていたもんだ。
340 :
Stage.14 [2-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:22:02 ID:h37KA7+K0
妙な「夢」はその後もずっと現れたが、俺はいつしかそれを楽しむようになった。メモ
を取ってあれこれ考察したり、仲間たちにもまるで知らない文化について語ってやるのが
日課になった。
いつかこのタツミって子に会ってみたいなと、そんなふうに考えたりもした。
旅自体は決して楽ではなかったが、それなりに順調に進んだ。エリス、サミエル、ロダ
ム。みんな頼もしい、強い絆で結ばれた大切な仲間たちだ。
特にエリスとは……まあ当然のように恋仲になって。この旅が終わったら結婚しようと
約束を交わした。プロポーズの瞬間は、ホント死にそうなくらい緊張したなぁ。
泣きながら抱きついてきたエリスが、デバ亀してたサミエルに気付いてイオナズンで吹っ
飛ばしたときは、ちょっと早まったかと不安になったが。
やがてバラモスを倒し、センセーショナルなゾーマ様の登場に再び旅立ちを決意し、ギ
アガの大穴から地下世界に赴いた。
俺はそこで、死んだはずの親父が生きていたことを知る。生きてたなら連絡くらい寄越
せと憤りも感じたが、やっぱり嬉しかった。
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPが実況します
:2008/04/05(土) 22:23:32 ID:+3IqaeyH0
支援
342 :
Stage.14 [3-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:24:31 ID:h37KA7+K0
でも結局助けが間に合わなくてさ。親父は俺の目の前で殺されてしまった。
つらかったよ。その場で崩れ落ちそうだったが、それでも仲間たちが懸命に励ましてく
れたお陰で、俺たちはついに魔王を倒すことができた。
が、今度は魔王のバカが半端な仕事しやがってたせいで、故郷に帰りそびれるという始
末。最後までハタ迷惑な野郎だ。
そこも俺はグッと堪えたさ。おふくろやじいちゃんには悲しい思いをさせてしまうが、
やるべきことは果たした。あの二人ならきっとわかってくれる。俺と、そして親父のこと
を誇りに思ってくれるだろうって……。
――そこで俺は、最初のループを体験する。
確かに倒したはずなのに、いつの間にか魔王の城に行く直前に戻されていたのだ。ラダ
トームでの華やかな凱旋式も記憶に新しいのに、なぜかアレフガルドは再び闇に閉ざされ
ていた。
メダパニ状態の一歩手前だった。仲間たちに聞いたら、魔王打倒を願うあまり幻でも見
たんじゃないかと笑われた。マジで?
343 :
Stage.14 [3-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:27:57 ID:h37KA7+K0
俺が納得できないでいると、ロダムが「こんなもの持っていましたっけ?」と首を傾げ
ながらなにかを差し出した。まさに凱旋式のメインイベントで、ラダトーム国王ラルスか
ら授与された「ロト」の証しだった。
「ロトの称号を授けよう!」
という国王の言葉に国中が沸き返り、そのあまりの騒ぎっぷりに俺はつい「ロトってな
に?」と聞き返したら、全員がひっくり返ってしまった。いやだって、アレフガルドじゃ
立派な称号らしいが、俺にはその原義がよくわからんし。
なぜ手元にあるのか? 仲間たちはそれについても覚えがないと言う……。
ふと「真の勇者の称号がなんたら」とか聞いたのを思い出したんで、俺たちは先に竜の
女王の城に向かった。魔王の城を目の前にしてそんな寄り道する余裕もなかったんだが、
どうしても気になってさ。
そこから天界へ昇り、俺たちは神竜と戦うことになる。
344 :
Stage.14 [3-3]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:29:52 ID:h37KA7+K0
神竜は強かったが、俺たちも弱くはなかった。ゴリ押しで叩いてたら意外と早く倒すこ
とができた。偉そうにしてっからだ。
そしたら願いを叶えてやろうと言われた。親父の復活さえ可能だって!?
信じられなかった。この俺が、あの時は心の底から感謝したもんだよ。魔王討伐の後、
あの幻(?)の通りにアリアハンに戻れなくなったとしても、これならおふくろだけが残
されることはない。息子としてはロクな孝行をしてやれなかったけどさ……これで少しは
許されるんじゃないかなぁ、って。
神竜に父親の復活を頼んで、アリアハンで久々に親父とツラを会わせた。
もう言いたいこと、山のようにあった。まずは最初に恨みつらみをぶつけてやる予定だっ
たけどなw 何年も家ほったらかしてこのクソ親父、おふくろがどんだけ苦労したかわかっ
てんのか!
んで十分反省したら、改めて「おかえり」って言ってやろう。
そんな風にさ、いろいろ考えてたんだ。
なのに……最初にちょっと会話しただけで、急にフッと意識が無くなって。
その冒険はリセットされた。
345 :
Stage.14 [4-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:30:52 ID:h37KA7+K0
2周目。
次に意識が戻ったとき、俺は再び16歳の誕生日の朝を迎えていた。
……なぜこんなことが起こったのか、まったく理解できなかった。あれだけ過酷な旅を
したにも関わらず、エリスたちはなにも覚えていないという。
なんだこれ? なぜ俺だけが前の冒険の記憶を持っている??
起きたことは強引に解釈するしかなかった。前の冒険の記憶は、例の不思議な「夢」と
はまた別の「予知夢」かなにかで、ルビス様が事前に教えてくれたのかもしれない。
急げばあの時は助けられなかった親父も死なせずに済むだろう。サマンオサで偽国王に
理不尽に殺されてしまった人や、前の冒険では間に合わなかった人たちを助けることがで
きるんじゃないか。
俺は死に物狂いで突き進んだ。一日でも一秒でも早く進めば、それだけ誰かを救えると
信じていた。でなきゃやってられなかったよ。あの冒険のすべてが夢オチとか、冗談じゃ
ねえ。俺だけが「未来」を知っていることに、なにか意味を持たせたかった。
346 :
Stage.14 [4-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:31:37 ID:h37KA7+K0
旅には同じメンバーを連れて行った。なんど過去の話を振っても誰もなにも思い出して
はくれなかったが、それでも俺の無謀とも言える旅程に必死に付いてきてくれた。
やっぱりこいつらはいい連中だ。大事な仲間だ。――そう自分に言い聞かせて。
エリスに結婚は申し込まなかったけどな。せめて彼女だけでも思い出して欲しかったか
ら。だから、なんか裏切られたようで、どうしても許せなかったんだ。
あの不思議な「夢」もまた見るようになった。ボケッと平和に過ごしているガキが腹立
たしくて、俺はもう無視することに決めた。
結局、俺たちがどんなに頑張っても、未来は変わらなかった。
前の冒険より数ヶ月も早く到着したってのに、レイの父親の勇者サイモンも、他の人た
ちも、みんな間に合わずに死んだ。親父もやはり俺の目の前で殺されてしまった。
347 :
Stage.14 [5]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:33:05 ID:h37KA7+K0
なんで? どうして? 時間軸おかしいだろ!
わかっているのに助けられない。
苦しんでる俺を、エリスたちは本気で心配してくれる。だが本当の意味で俺の苦しみを
理解できてるわけじゃない。否応なく孤独感は増していく。心がすさんでいくのが自分で
わかった。
それでも俺たちはなんとか魔王を倒した。わかりきってた結末だから、達成感はなかっ
たが。凱旋式もその後のパーティーでも、俺はぼんやりと酒を飲んでるだけで、仲間も扱
いに困ってるみたいだった。
どうせこのあとは……とか思ってたら案の定、前回と同じくいったんショートループに
巻き込まれて魔王を倒す前に戻された。
そこから「予定通り」天界へと向かい、神竜と戦って今回も短期決戦で勝利できた。
願いを叶えてくれるというが……しかし二度も救えなかった人々のことを考えれば、
俺だけ親父を生き返らせるなんて、できないだろ?
せめて平和な世の中に似合う娯楽でも増やしてやろうかって。
仲間の猛反対を押し切って、俺は半ばヤケになりながら新しいすごろく場を頼んだ。
そのすごろく場でゴールした瞬間、フッと意識が遠のいた。
ああ、また最初からだと……ゾーマが大喜びしそうな絶望の中で、俺は眠りについた。
348 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/05(土) 22:34:34 ID:xScTyvd70
349 :
Stage.14 [6-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:35:04 ID:h37KA7+K0
3周目。
16歳の朝に戻ったと気付き、俺はすぐに1回目の自殺を試みたが死ねなかった。寝間
着のままアリアハン王の前にワープしてきたバカは俺くらいだろう。
そのまま外出許可をもらい、その足で外に出て魔物に食われてみたが、やっぱり無駄に
生き返るので早々に諦めた。死ねないってのもある意味呪いだよなぁ。
家に戻ったらおふくろが半狂乱になっていた。当然だな、前日までは「明日から勇者と
して頑張るぞ!」とか意気込んでたヤツが、起きるなり割腹自殺を図ったら何事かと思う
わ。いちいち説明するのも面倒だったから無視して旅の支度をし、ルイーダんとこに行っ
た。メンバーは全員違うヤツらで、遊び人とか盗賊とか、なんか楽しそうな連中ばかり適
当に見繕った。……あいつらと一緒にいても俺がツライだけだし。
かったるい。もはや他人の生き死になんかどうでも良かった。飛ばせるイベントはガン
ガン飛ばした。すごろくやら闘技場やらに入り浸り、冒険はまるで適当だった。さっさと
役目を降りても良かったが、実は勇者ほど金回りのいい職業はないってことは知ってたか
ら、とりあえず続けていただけだ。
350 :
Stage.14 [6-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:35:44 ID:h37KA7+K0
例の奇妙な「夢」は相変わらず見続けていた。
タツミの世界は平和そのものだ。その頃に気付いたが、向こうはどうもループしていな
いようだった。こっちと比べると恐ろしく時間の進み方が遅いが、前の冒険の頃に見てい
た「夢」よりは明らかに季節が進んでいる。
なんか知らんが向こうはこれから「ショウガッコウ」とやらに通うことになるらしい。
こちらのことなど露知らず、ガキは妙にはしゃいでいる。
ったく、俺はお前くらいの年の頃に親父が死んだとか聞かされて、同時に勇者の十字を
科せられたんだからな。こいつブチ殺して入れ替わりてえよ、ホント。
そんなんでも魔王を倒してしまったんだから、世の中は本当に適当だ。
親父はまた目の前で死んだ。いっそ火山に落ちた時点で素直にくたばっててくれりゃ良
かったのに。
351 :
Stage.14 [7]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:36:54 ID:h37KA7+K0
ついでだから神竜も倒した。願いはエッチな本ってやつ。別に勇者の肩書きのお陰で女
に不自由はしてなかったが、神様直送便がどんだけスゲエんだって気になったから頼んで
みた。期待してたほどじゃなかったが。
冒険の最後がエロ本で終了。そして振り出しに戻されるわけだ。
ったく、すごろくの落とし穴よりひでえ。あんまりひどいと、なんか逆に楽しくなって
くるよ。人間どうしようもなくなると笑うしかないって言うが。
あははは。
あはははははははははは。
誰か助けてくれ。
352 :
Stage.14 [8-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:40:22 ID:h37KA7+K0
4周目。
……感覚的なものだが、前回から随分と間が空いていたように思う。うんざりしつつも、
久々に冒険に出るような軽い高揚感があった。
それは間違いじゃなかったんだろう。例の「夢」の中のガキが、急にデカくなっていた
のだ。俺と同い年くらいまで成長していて、しかも驚いたことに、アイツは気味が悪いほ
ど俺とそっくりな顔をしていた。
(これなら本当に入れ替われるな……)
そう思ったがすぐに打ち消した。くだらねえ、「夢」の中の相手とどうやって入れ替わ
るってんだ。
変わったことはもう一つあった。俺の他にもう一人、過去を覚えてるヤツがいたのだ。
今までに何度も会っていたのだが、敵同士だったので気付かなかった。
切っ掛けは些細なことだった。
353 :
Stage.14 [8-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:41:02 ID:h37KA7+K0
『何度来ようとも同じこと。このバラモスがどれほど偉大か、思い知らせてくれる』
はいはい、どうせ俺に倒されるのにご苦労なこって。心の中で嘲笑しつつ(半分は自
嘲だったかもしれない)、剣を構えたときだった。
「……あれ、前はハラワタ食うとか言ってなかったっけ」
今回の冒険では初対面なのに、「何度来ようとも」だと?
「あんたまさか、前のことを覚えてるのか?」
そいつの顔色が変わった。
『貴様も覚えているのか!?』
勇者と魔王が妙な会話を始めたことに仲間たちは動揺している。ウザいんで俺はそい
つらをラリホーで眠らせ、バラモスにバシルーラで片付けてもらった。
バラモスが記憶を引き継ぐようになったのは、俺の三回目の冒険の時かららしい。
二回目の頃からも、なんとなく俺の顔に見覚えがあるなぁとは思っていて、三回目と
四回目(つまり今回)は、最初からしっかり思い出していたそうだ。
354 :
Stage.14 [9-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:42:33 ID:h37KA7+K0
『先を知っておるのに、侵略はある点を境に一向にはかどらぬ。まだ力を持たぬうちに貴
様を始末しようと刺客を差し向けたが、それもつど邪魔が入る』
立場こそ反対だが、こいつはこいつで俺と同じような苦悩を抱えていたようだ。
「しっかし、よりによってお前かよ。こちとら許嫁だった女にも忘れられてんだぜ?」
『こちらのセリフだ。われがなんど進言申し上げても、ゾーマ様は夢でも見たのだろうと
一笑に伏される。たかが人間に討たれるなどと、クドく言えばお怒りに触れるだけだしの』
「あー……上の理解が得られない中間管理職ってのも、大変だな」
取り引きしないか。俺はバラモスに提案した。紙とペンを用意させ、俺に関わる親類縁
者や親しい者たちの名を片っ端から書き連ねて、手渡した。
「この世界をくれてやる。人間を支配するったって、全員皆殺しにしようってんじゃない
んだろう?」
『な、なにを……』
ぽかんとしているバラモスに、俺はもっと呆れるような内容を告げてやった。
355 :
Stage.14 [9-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:44:06 ID:h37KA7+K0
「お宅の上司、こっちにも簡単に手を出せるほどの力があるのに自ら侵略に来ないのは、
上の世界はとりあえずあんたに一任してるってことだよな? だったらそこに書いてる人
間たちだけは優遇してほしい。その人数なら現場レベルでこっそり調整できるだろ」
『われを信用するのか?』
「してない。でも他に頼めない。でさ、もしもゾーマ直々に上の世界もいじりだして、あ
んたでも庇いきれなくなったら、その時は……逆にあんたがみんなを、苦しまないように
一瞬で楽にしてやってくれ」
『勇者の言葉とは思えんな』
「それくらい思い切らなきゃ、この輪廻から抜け出せない気がする。完全に魔王に支配さ
れた世界でも、それもひとつの未来だろ? 人間中心の世の中が魔物中心に変わるってだ
けで、おふくろも親父も、俺の仲間たちも、来世でモンスターに生まれ変われば、普通に
暮らすんだろうし」
淡々と語る俺にバラモスさえビビっていた。その時の俺はどんな顔をしていたんだろう。
「俺を封じてくれ。完全に死ぬとアリアハンに戻るだけだから、生かさず殺さずで。つい
でに永遠に苦しむような呪いでもかけてくれよ。その手のは得意だろ?」
未来を得るために人類を売り飛ばすような勇者には、それくらいしないとなぁ?
356 :
Stage.14 [10-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:45:30 ID:h37KA7+K0
バラモスは承諾した。承諾せざるを得ないだろう。
これでもかってくらい何重に呪術を施した丈夫な石棺が用意されて、俺はそこに押し込
められた。
「なんか、妙に寝心地いいんですけど」
中は柔らかくて肌触りのいいシルクが敷かれている。むしろこれじゃあ……。
『さらばだ』
バラモスの言葉と同時に、石棺の蓋が重々しい音を立てて閉じられていく。同時に強烈
な眠気が襲ってきた。
『安らかに眠っておればよい。これ以上苦しむ必要もなかろう』
なんだよこいつ、いきなり約束破りやがって。
魔王のくせに――。
357 :
Stage.14 [10-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:47:06 ID:h37KA7+K0
意識が薄れるのと同時に、いつもの「夢」が現れた。タツミは「ゲーム」が映し出され
ている「テレビ」の前で、なにやら困っているようだった。
「おっかしいなぁ。バラモスごときに負けるなんて。しかもいきなりバグるし」
ヤツが見つめているテレビの中にはコミカルに描かれたバラモスがおり、「アルスたち
は ぜんめつした!」と表示されている。
随分あっさりした記述だ。その「ぜんめつ」するまでの行程にどれだけの想いがあった
のか、こいつにはわからないだろう。
画面は静止していて、なんの操作も受け付けないようだ。タツミはしばらくうなってい
たが、「まあいいか」とスイッチを切った。テレビが暗くなり、俺の世界は眼前から消え
た。あっちはどうなっただろう。バラモスはうまくやってるだろうか。
今のタツミは「コウコウセイ」とやらになっていた。父親は単身赴任で家におらず、母
親はお稽古ごとだのショッピングだの、自分が楽しいことを優先するタイプなので息子に
はほとんど構っていない。それが少し寂しいと思いつつも、タツミは友人やガールフレン
ドに囲まれ、それなりに楽しく暮らしている。
俺は「夢」の世界でタツミと一緒に時を過ごした。
そのまましばらく経った、ある日のことだ。
358 :
Stage.14 [11-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:48:01 ID:h37KA7+K0
いきなり場面が飛んだ。
学校からの帰りがけに、戸田和弘とマクドなんとかに立ち寄ってダベっていたはずが、
いつの間にか家に戻っていた。
場面が飛ぶのは今までもよくあったことだが、タツミの様子がおかしい。
「まさか……嘘だろ」
薄暗い部屋の中で電気もつけず、座り込んでブツブツと呟いている。
「あいつの妹が? 冗談だろ? ……うぐっ!」
いきなりタツミがむせた。口を押さえて便所に走っていき、ゲホゲホと吐いている。
キッチンでうがいをして落ち着くと、タツミはまた部屋に戻った。
しばらくぼうっとしているようだったが、やがて物憂げにテレビの方を見た。あれ以来
ずっとやっていなかった「ゲーム」の機械を引っ張り出し、スイッチを入れた。
嫌な予感がした。なにが起きるか想像がついた。
やめろ、ソレに触れるな! あのまま終わらせてくれ! 俺をもう起こさないでくれ!
俺の祈りは届かず、グンと意識がどこかに引っ張られる感覚があって――。
359 :
Stage.14 [11-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:49:30 ID:h37KA7+K0
目を開けると、俺はダーマ神殿の入り口に立っていた。あの時バラモスのバシルーラで
アリアハンに飛ばされた仲間たちも、何事も無かった顔で俺の後ろに立っている。
「恨むぞ、タツミ……」
この時になって俺はようやく、この世界と「ゲーム」との因果関係を把握した。
あっちが「現実」なのだ。
俺のいるこの世界こそが、ただの「ゲーム」だったのだ。俺たちが物語を作っているん
じゃない、すでに出来上がっているストーリーのコマとして、アイツに動かされているだ
けなのだ。俺も、仲間たちも、魔王ですら。そのことに俺はやっと気がついた。
再会したバラモスはすべてを諦めたような顔をしていた。お互いに一言も交わさず黙々
と戦い、シナリオ通りにヤツは俺に弊され、ことは運んでいった。
地下世界。魔王討伐。ショートループ。天界。そして神竜。
次の願いはなににしようか。もう新しい選択肢は無かったはずだが。
360 :
Stage.14 [12-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:51:01 ID:h37KA7+K0
そこで、奇跡が起きた。
いきなりそれまでとは違う流れになった。神竜が急に妙なことをほざきだしたのだ。
『オマエノ ネガイヲ カナエヨウ』
ワケもわからず立ちつくしている俺に、神竜は言った。
『オマエハ タツミニ ナリタイノダロウ?』
お前はタツミになりたいのだろう?
意味が――理解できるまでに随分かかった。
返事をするまでには、さらにかかった。
「……本当、に?」
掠れている自分の声が、他人のものみたいだった。
361 :
Stage.14 [12-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:52:00 ID:h37KA7+K0
【もし目が覚めたら そこが現実世界の一室だったら】
血を吐くような思いで神竜に願った瞬間。
渡されたのは、小さな精密機械。
遠く離れた個人と個人を一瞬でつないでしまう、魔法のような道具。
開いた途端にコールが始まり、出た相手は、夢の中のあの少年で――。
「初めまして、タツミ君。キミ、勇者をやってみる気はないかい?」
考えるより先に、言葉が出ていた。
◇
362 :
Stage.14 [13-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:53:32 ID:h37KA7+K0
『……そして僕と入れ替わったわけだ』
俺の長い話しが終わり、携帯の向こうでタツミは大きく溜息をついた。
『で、これは復讐なの?』
「わかんねえよ」
いや、どうなのかな。考えないようにしてきたが。
俺はタツミを生け贄にして別な世界に逃げた。それが事実だ。これからタツミは、俺の
代わりに永遠に終わらない伝説をグルグルと紡いでいかなければならない。
『まあ、あくまで僕がクリアに失敗すればだけどね』
「そうだが……」
タツミの声は普通だった。いつもよりやや冷たい感じはしたが、俺が想像していたより
ずっと冷静だった。俺はもっとこう――
「お前、今の話しを聞いて、なんとも思わないのか」
『なにが。君が僕を身代わりにしたこと?』
「ああ、まあ」
『別に。なに、僕になんか言ってほしいの?』
すっかり呆れているようなタツミの返答に、俺は戸惑った。
俺が、なにを言ってほしいって……?
363 :
Stage.14 [13-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:54:30 ID:h37KA7+K0
『あのさー。なんか僕ムカつかれてるみたいだけど、それ僕のせいじゃないよね。絵本の
登場人物に、ループするから読むなって恨まれても、それ読者の責任か?』
こんな理不尽な逆恨みもあるかよ、いい加減にしてくれ。
バッサリ切り捨てられ、俺は完全に言葉を失った。
タツミは続ける。
『さっき言ってたよね、どうしても僕を嫌いになれないって。イイコぶるのはよせよ、君
の目の前にあるそのゲーム、キャラの気持ちまで操作できないなんて、わかるだろ。単に
僕に罵られたくないだけじゃないの。それとも、僕への哀れみかな? バラモスが君を封
じた時みたいに。僕ってほら、割と物わかりはいい方だからさ。諦めて運命を受け入れて
くれるんじゃないかって期待してるんだろ? だからせめて俺はお前を許してやるって?
自己肯定するにしても、それはちょっと浅ましくないかなー』
…………。
364 :
以下、名無しにかわりましてVIPが実況します
:2008/04/05(土) 22:55:47 ID:+3IqaeyH0
支援
365 :
Stage.14 [14-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:56:00 ID:h37KA7+K0
『まったく。一度は自分を犠牲にして、人類を引き替えにしてまで未来を勝ち取ろうとし
たってとこまでは、カッコ良かったのにさ。聞いててそこは感心したよ、さすが主人公だ
よなーって。でもだったら最後まで貫いてほしかったな。諦めて逃げ出してハイ終了はな
いっしょ。なにこのクソゲー。ねえ?』
…………。
『悪いけど僕はクリアするよ。こんな理不尽な要求、呑む気はさらさらないね。だいたい
さ、せっかく僕の親が僕のためにって買ってきたプレゼントに、こんなヒドイ仕打ちをさ
れるって、倫理的に許されるのかよ。親子の愛情とかさ、もう完膚無きまでに踏みにじり
まくってるよね。どう思う、正義の味方の勇者さんとしては?』
…………。
『でも君だって本当はわかってるんだよね? 自分の望みがどういう意味を持つのか、死
ぬほどよーっくわかってる。だから君は僕を素直に憎めない。可哀想だとは思うよ、同情
する。でも僕はどうなのかな。ねえ、君と僕と、どっちが可哀想なんだろうね?』
…………。
俺は…………。
366 :
Stage.14 [14-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:57:41 ID:h37KA7+K0
『僕はただゲームをしていただけだ』
俺は……なにも答えられない。
『ゲームをしていただけなんだよ。平和な世界で、ちょっとしたヒマ潰しに、古いゲーム
を楽しんでいただけだ』
俺はなにも答えられない。
『でも――君にそれは関係ない。僕に君の苦悩が関係ないように、君の苦悩に対して僕の
権利や主張は関係ない。そうだろう? 運が悪かったんだろうね。僕たちは敵でも味方で
もなくて、起きてしまった現象に巻き込まれて、そこでお互いに譲れないってだけでさ。
だから君は悪じゃないんだ。僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
なにも、答えられない。
『とりあえず僕が君に要求するとしたら、そっちの時間で明日の朝くらいまで、テレビを
消しててくれってことくらいかな。なんかね、見られてるのがわかるんだよ。どうも落ち
着かないんだ。どうせ金輪際、君にナビを頼むこともないだろうしね。でも本体のスイッ
チは切らないでくれよ? それとも僕と心中したいかな。僕は止めようがないけど』
「いや……切らねえよ」
367 :
Stage.14 [15-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 22:59:31 ID:h37KA7+K0
『ありがとう。――ああそうそう、それともうひとつ』
「なんだ?」
『優しいバラモスさんはできなかったみたいだけど、僕はそんなに優しくないからさ。代
わりに僕から、君に呪いをあげるよ』
タツミの声が、急に明るくなった。
『それでもね、僕は君が好きだよ。友達になりたいって今でも思ってる』
「……友達?」
『そう。だってすごくない? ゲームの中の勇者と友達になれるとかさ?』
まるで子供がはしゃいでいるようなタツミの問いかけに。
「そうだな。すごいことだよな」
俺は、まるで中身のともなわない空虚な言葉を返す。
『だろ? だからさ、友達になってよ』
「いいぜ。友達になろう」
368 :
Stage.14 [15-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 23:01:26 ID:h37KA7+K0
『良かった! 嬉しいよ。あ、画面は消してほしいけど、なにかあったらいつでも電話し
ていいからね。困ったことがあったらなんでも聞いて。簡単なアドバイスくらいしかして
あげられないけどさ』
「わかった。そうする」
『それじゃまたね。おやすみ、アルス』
「ああ――おやすみ、タツミ」
電話が切れた。
俺はまず、言われたとおりテレビのスイッチを切った。電気はつけていなかったから、
部屋が暗くなった。カーテン越しに差し込む街灯の明かりが、ぼんやりと室内を照らして
いる。
次に電源が入ったままのゲームの本体をテレビ台の中に押し込んだ。コントローラーの
ひもを巻いて、それもいっしょに中に入れてガラスの戸をカチッと閉める。
それから俺は、上着を脱いでベッドの中に潜り込んだ。
ただ眠りたかった。
バラモスが用意してくれたあの石棺が――異常に恋しかった。
369 :
Stage.14 [atgk-1]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 23:03:06 ID:h37KA7+K0
タツミ「というわけでっ、君に同情の余地はこれっっっっっぽっちもないね!」
アルス「ひでえっ! お前最低だ!」
タツミ「なんとでも言えば〜?
さてと、こんな雰囲気の悪いところで本当に申し訳ありませんが……」
アルス「ちょ、やるの!? この状況で!?」
タツミ「うるさい勇者だなー。いただいたレスへの返答は僕らの仕事でしょ。
それでは恒例、サンクスコールです!」
アルス「
>>318
様、わかっていただけますか俺のこの苦悩!!?? おっしゃる通り、
めちゃめちゃキツイんですよ〜。あううう」
タツミ「嫌だわぁ、この期に及んでまだ読者様の同情を買おうとしてる。
>>319
様、暖かいお言葉ありがとうございます。マイペースで頑張りまーす♪」
アルス「はぁ〜……。まあ仕事はきっちりしないとな。
>>320
様、長いことお待たせいたしました。レイはマジで強いんだ、
正直タイマン張ったら俺でもけっこうヤバイかもな」
タツミ「
>>321
様、細かいところまで気がついてくれて嬉しいです。
過去の嫌なことを思い出した時ってあんな感じなんですよ。困ったもんです」
アルス「
>>322
様、実は前述の通りバラモスだったんですが、あいつもかなり苦労してたみたいで」
タツミ「
>>323
様、仕事より優先して読んでいただけるとか、本当に職人冥利に尽きますね」
アルス「リアルタイムでのご支援を含め、皆様にはいつも感謝です」
370 :
Stage.14 [atgk-2]
◆IFDQ/RcGKI
:2008/04/05(土) 23:04:06 ID:h37KA7+K0
アルス「しっかし俺もここまで容赦なく叩かれるとは思わなかったぜ……orz」
タツミ「だって僕、 偽 善 者 って嫌いだし」
アルス グッサ━━━━━ΣΣ( Д ;;;)━━━━━━>ッ!!!
タツミ「まさか勇者様が『友達』を身代わりにして逃げるとはね〜?」
アルス「お、俺だって、俺だって…… ウワーン! (((((((((((((((((+。・::。゚+:。ヽ(TДT)ノ。:*゚。::・。
タツミ「……ちょっとやりすぎたかな。
それでは皆様、次回ゲームサイドでお会いしましょうっ」
本日はここまでです。
20行制限のせいで細切れ&投下に時間がかかってしまって申し訳ありません。
371 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/05(土) 23:18:47 ID:xScTyvd70
リアルタイム遭遇キタ、GJ!
商人→盗賊→遊び人→賢者と仲間の呪文コンプのために
ジパングの洞窟に籠ってメタルスライムを狩り
全員レベル99になるまでルビスの塔最上階に籠ってはぐれメタルを狩ってた
自分の粘着プレイを振り返ってちょっと泣いた
372 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/06(日) 01:40:52 ID:J6Ac38+tO
>>369
でフイタwww
ここでサンクスコール持ってくるとは
373 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/06(日) 02:16:58 ID:yCuZcUqL0
不覚にもバラモスのループ仲間に対する心遣いにキュンとなったw
374 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/06(日) 02:48:43 ID:GVyGrmfSO
俺は2回目は勇者の名前と性別変える事にしてるから…
大丈夫だよな!?そんなひどい思いさせてないよな!?
375 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/06(日) 09:21:27 ID:AEVegvsU0
>374
女から男になる場合は歴代主人公スレの女3主になるだけだが
逆の場合(ryさらに3回目で男に戻ったら(ry
376 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/06(日) 12:32:09 ID:CHN8hwIgO
バラモスに泣いた°・(ノД`)・°・
377 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 01:43:10 ID:Z/9TfQ4k0
これでアルスの背景はほぼ明らかになったな
あと謎なのはタツミの過去とアナザーサイドか
しかし誰もタツミの正論ラッシュに突っ込まないのなw
どうせ何か考えがあるんだろうとか思われてるのかw
378 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 03:22:57 ID:4Lc9TVaw0
バラモスたん・・・。
何らかの方法で、終わらせられるといいのですが・・。
それにしても、リアルサイドでも、いろいろ他の勇者が暗躍してるし、どうなってしまうのでしょうね。
うちもドラクエ3は何度かやってるからなぁ・・・。主人公、すまん・・・。
379 :
携帯まとめ人
:2008/04/07(月) 21:50:18 ID:55F3qjQM0
いつもお世話になっております、携帯サイトまとめ人です。
ひとつ職人様と読者様にご協力をお願いしたいことがございます。
詳しくは下記スレに記載があります。
「避難所、まとめサイトについて」
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/l50
お手数ではございますが、ぜひご協力の程よろしくお願いいたします。
380 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 21:53:08 ID:nMlf4H/3O
4の主人公とか最悪だろうな…
381 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 22:02:54 ID:EgXIK94q0
5主人公ヤバくないか?
10年奴隷、8年石化、嫁と離れ離れ、母親死亡
それでもようやく平和になったと思ったらリセット
ゲーム内不幸はダントツで、
一番幸せになれそうなエンディング後の未来がパーだからな……
382 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 22:13:52 ID:oHYCou0a0
そういえば以前出て来たリアルサイドの大ボスっぽい人、DQ5の主人公だったような・・・
383 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/07(月) 22:17:51 ID:ioLpoqEh0
5はゲーム内時間経過が年数レベルだから
何度も何度もループしたらもう逃げたくなるよな
384 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/08(火) 11:42:20 ID:D7eWdLpuO
だが忘れないでほしい。
5の勇者は主人公じゃなくガキのほうだということを!
385 :
総長じいさんと出会う1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:29:33 ID:uW0kET350
一応ジジイにも世話なったし挨拶しとくか。頼むから無茶はするなたまには帰ってこいだと?
これだから辛気臭い年寄は嫌いだ。なにが悲しくてこんなじいさんの顔見に帰らなきゃいけないんだ。
まああのビールとバニーの姉ちゃん見にたまには戻ってやってもいいがなウヘヘ。
ついでに生きてるかどうか確認しに帰ってやるか。いつポックリ逝くかわかったもんじゃねえ。
ジジイは名残惜しそうにまた例の羽を使って帰って行った。
さて、次の目的地だがどうやらここから南に大きな町があるようだ。
どうせなんのあても無い事だし、とりあえず人の多いとこの方が色々情報が集まるかもしれない。
俺は南を目指す事にした。
ちなみにここでの収穫は「たびびとのふく」と「やくそう」をいくつか買った。
道具屋のおっさんが旅にでるなら絶対持ってけと勧めたからだ。
あっそれと城での飯は超絶最高にうまかった。あの肉の味は忘れまい。
町を出た。
しばらく歩くと頭に防災頭巾の顔色の悪いガキが道端に立っているのを発見する。
386 :
総長じいさんと出会う2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:30:43 ID:uW0kET350
!?
そいつは俺を見るや否や弓をかまえ矢を放った。間一髪でかわす俺。
なんてガキだ。親のしつけはどうなってるのだろうか。
知らない人に矢を放っちゃいけませんとは教えられなかったのだろうか。
そんな事を考えてるうちに第二射が飛んで来る。
太ももに刺さった。痛い。しかしこの距離だと反撃できん。じわじわ弄り殺しになるだけだ。
さてどうしたものか。よく見ると連射は出来ないらしくリロード中に隙ができている。
ここだ!俺は勢いよくガキに向かって走りだした。矢が飛んで来る。盾で強引に叩き落す。
そして次の矢を弓に掛ける瞬間俺の中段回し蹴りが直撃した。
中段といっても身長差でちょうどガキの顔面にヒットする。
間髪入れずに左の順突き、右の逆突きが入る。
俺がもっとも得意とするコンビネーションだ。ガキはその場にうずくまる。勝った。
俺は親父の影響でジャリの頃から空手を仕込まれてきた。まさかこんなとこで役に立つとは。
こいつはおそらく町で聞いた魔王の手下の“魔族”と呼ばれる人種だろう。
387 :
総長じいさんと出会う3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:31:17 ID:uW0kET350
こんなガキの頃から躊躇無く人に向かって矢が撃てるなんてなかなか感心できる。
昔連れにひとし君というのがいたが、そいつは親が極道で小学生のうちから妙に刃物の扱いがうまかった。
もしかして魔族はそれが一般的なのだろうか。
なんてデンジャラスな人種だ。
立ち上がった色の悪いガキは命乞いしてきた。無論俺は許した。子供を手にかける趣味はない。
法の道は外れようとも人の道は外れないのが族の粋ってもんだろ。イカスな俺。
そさくさと去っていくガキを尻目に俺は刺さった矢を抜いた。困った。
この傷で目的地まで歩けるだろうか。しばらく進むか引き返すか考え込む。
ん、そういや道具やでなんか買ったっけな。たしかこの辺に…あったあった。
俺はやくそうを取り出した。使い方がわからないので傷口にこすり付けてみる。
するとどうだろう。みるみるうちに痛みが引き傷口が塞がっていく。これは便利だ。
次の町ではやくそうを大量に買おうと心に決め俺は歩き出した。が、疲れた。
照りつける太陽がむかつく。やかましいセミの声がむかつく。
あまりにもむかつくので大きな岩の影で小休止する事にした。
なかなか涼しくていい感じだ。いつのまにかうとうとし始める…
388 :
総長じいさんと出会う4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:31:47 ID:uW0kET350
グゥウォオオォォッゥ!!!
とてつもない唸り声に飛び起きた。岩の脇から覗くと変なじいさんが2mは優に超す熊に襲われている。
状況は絶望的だ。貧相なじいさんに勝ち目は無い。俺は思った。ご愁傷様だな。
心の中で静かに念仏を唱えてやった。
じいさんも観念したのか目を瞑ってブツブツ言っている。そして叫んだ。
メラミ!!!
え?メラミ?最後の言葉にしちゃヘンチクリンだがまあ気が動転してたんだろう。
誰だって死を目の前にして冷静でいる事の方が難しい。
俺は熊に気づかれる前にこの場を去ろうと逃げる準備をした。
その瞬間あり得ない光景を目にする。
じいさんの手からデカイ火の玉が発射され熊を直撃した。一瞬で熊は黒焦げになった。
389 :
総長じいさんと出会う5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:32:38 ID:uW0kET350
情けない事に俺は完全に腰を抜かしてしまった。じいさんが立ち去ろうとする。
このまま帰すわけにはいかない。
おい!と声を上げる。裏返ってしまった。最悪だ。
とりあえずじいさんに駆け寄る。今の炎は何なんだと尋ねる。じいさんはキョトンとしている。
は?おぬし魔法を見たこと無いのかだと?あるわけねーだろバカ。おまえら変態集団と一緒にすんな。
どうやらこのじいさんは職業魔法使いらしい。
魔法使いといっても俺には引田天功かウザイ眼鏡の外国のガキか、柔術マジシャン・ノゲイラしか頭に浮かばない。
しかしこんなじいさんでも熊を倒せるなんて何て強力な力だろう。
じいさんに俺にも魔法を教えてくれと頼んだ。断られた。
かわいい年寄りの大ピンチを傍観しとるようなやつには教えてやらんとニヤニヤしながら言いやがった。
こいつ気づいてやがった…
じいさんが歩き出す。とりあえずついて行きしつこく頼み込む。
…がこのじいさんほんとにとんでもない野郎だった…
肩がこっただの喉が渇いただの腹が減っただの俺を完全にパシらせやがる。
元総長のこの俺様を!こんなヨボヨボが!
390 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/09(水) 12:33:59 ID:SGbK6nj6O
支援
391 :
総長じいさんと出会う6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:38:15 ID:uW0kET350
挙句の果てに疲れたら背負えと言いやがった。俺は顔面凹ましてやりたい気持ちを抑えつつおぶる。
だいぶ歩いた。もう少しで町だから降ろせと言うので降ろした。どうやら目的地は一緒らしい。
さあ教えろと詰め寄る。じいさんは一言言った。
無理じゃ。
無言で俺のジェットでこぴんがじいさんに炸裂する。じいさんあわてて説明し出す。
要点をまとめるとこういう事だった。
まず魔法には「信じる」力が必要だと。魔法に縁のない環境で育った俺にはできるわけないという意識が先行してしまうし
尚且つ人には向き不向きがあり明らかに戦士系の俺には厳しいだろうということだ。
やれやれまったく凡人の考えだ。だいたいこんなじいさんに出来ておれに出来ないはずがないだろうが。
それでも教えろと脅しをかける。じいさんしぶしぶ基本を教えてくれた。
@頭の中で炎をイメージする。
A相手に手のひらを向ける。
Bメラ
392 :
総長じいさんと出会う7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:38:54 ID:uW0kET350
え?こんだけっすか?こんだけで手から火がでるんすか?楽勝じゃん。俺は意気揚々と構えそして叫ぶ。
メェエエエラァアアア!!!
静寂。
沈黙。
ああ今日もいい天気だなあ。
俺のシャウトだけが虚しくこだまする。じいさん腹を抱えて笑う。
俺のババチョップがじいさんの脳天に直撃する。じいさん悶絶。
その後色々聞いたがやはり素人が簡単に使えるものではないようだ。
毎日精神統一の為瞑想したり、よりリアルなイメージが出来るようにトレーニングしたり、
魔法の理論そのものを学んだりと色々やらなきゃ使えるようなはならないらしい
393 :
総長じいさんと出会う8
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:39:24 ID:uW0kET350
ただ一つ希望があるとすれば、出来はしなかったが俺がメラと叫んだ時本人には「火が出る」という確信があった。
その気持ちがある限りいつかは使えるようになるそうだ。
当たり前だろ。乱立する100もの族を一つにまとめた男ぜ?俺に不可能はない。
町の入り口でじいさんと別れる。町長の家に呼ばれてるので一通り町を回ったら来いとの事だ。
町長=権力者=金持ち=肉
俺は即答でわかったと返事した。
でかい町だ。一日かけても全部回りきれないだろう。
適当に情報集めてからじいさんのとこに肉食いに行くか。
とりあえず道具屋に向かう。やくそうを買いだめするためだ。
途中柄の悪そうな三人のチンピラどもにからまれる。
この世界にも恐喝はあるのか。なんかちょっと嬉しい。
とりあえず釘ひのきで一発ぶん殴る。
バキ あ…
折れた。今まで酷使していたせいで相当ガタがきていたようだ。さらば相棒…
一人は頭から血を流し倒れもう二人は明らかにビビッてる。所詮群れなきゃ何も出来ない雑魚か。
片方がナイフを取り出した。金を出さなきゃ刺すと凄む。
394 :
総長じいさんと出会う9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:40:01 ID:uW0kET350
俺はナイフ程度の刃物はまったく恐くない。
今まで相手の武器でびびったのは日本刀とひとし君が拳銃取り出した時くらいだ。あれは本当にびびった。
まあ素手で対抗するのも何なんで俺もナイフを取り出す。
こないだの極道猪戦で血錆がべっとりのナイフだ。
それを見た二人の顔色がみるみる変わる。
そして今日の所は見逃してやると倒れているやつを担ぎ、超速で逃げていった。
なんてお約束なやつらだ。
しかし困った事に相棒の釘ひのきは折れてしまった。
さすがにこのアウトローな世界を丸腰で旅するのは危険だ。
やくそうより武器が先か。そう考えると俺は武器屋を探し彷徨いだした。ちょうどすぐ角のとこにあった。
ついてるな今日は。中に入る。前のシケた武器屋と違い見るからに強そうな武器が並んでいる。
そこで一際目立つ武器を発見した。「ドラゴンキラー」と書いてある。
まさに覇者たる俺にぴったりの武器だ。
店主は言う。
それは15000ゴールドだぜ。
395 :
総長じいさんと出会う1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:40:31 ID:uW0kET350
ここで新たな問題が生まれた。俺は貧乏だった。残金38ゴールド。とても足りない。一応交渉してみる。
おまえには常識がないのかと言われた。正直裸覆面に言われる筋合いはないと思った。
ムカつきつつも武器屋を後にする。金がなけりゃどうにもならんと町長の家に向かう。
途中道端の人に尋ねるが決まってこの町に町長はいないと言われる。あの糞ジジイ…はめやがった…
しかし代わりに新たな情報を得る。どうやら町長はいないが王様はいるらしい。城に向かう事にした。
その城はこんな見るからに怪しい俺でもすんなりと通してくれた。なんて無防備な城だろうか。
中央の階段を昇るとそこは王の間だった。
王様の前にはあのじいさんがいて何か話こんでやがる。俺は何となく無性にむかついた。
しっぺの一発でも決めてやろうと前に進む。とここで王様が話しかけてきた。
前も言ったが俺は権力者が嫌いだ。金に溺れ腐った豚は死ねよと思う。
が、ここの王様は違った。ヤバイ。目がヤバイ。今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた俺にはわかる。
例えるなら武闘派系の組の親分の目だ。只者ではない。俺は身構えた。
頼みがあるのだがー
突然王様は切り出した。そしてその頼みに俺は愕然とした。
盗賊に王冠が盗まれたらしい。それを俺に取り返せと。
396 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/09(水) 12:42:56 ID:SGbK6nj6O
支援2
397 :
総長じいさんと出会う11
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:47:59 ID:uW0kET350
は?
まず王のくせに象徴である王冠を盗まれるという間抜けさ。
続いてそれを見ず知らずの旅人に取り返してくれと言うおおらかさ。本物のバカか大者かどちらかである。
てかとりあえず自分のとこの兵士送れよバカと思ったがそうもいかないらしい。
城の警護で手一杯だそうだ。
王冠盗まれといて今更警備も糞もあるかと思ったが如何せん俺も貧乏だ。
王の願いともなるとかなりの報酬が出るのではないだろうか。
いやむしろその王冠を売っぱらえばかなりの額になるのではないだろうか。
というわけで俺は引き受ける事にした。支度金として5000ゴールドくれた。さすが太っ腹だ。
じいさんの話によると盗賊の名前はカンダタ。手下を引き連れ東の党の塔にアジトを構えている。
かなりのツワモノのようだ。王様はじいさんも連れてけと言ったが断った。
またおぶれとか言われてもめんどくせーし報酬も独り占めしたい。
そもそもこんな性悪ジジイと一緒に旅なんかしたくない。
早速俺は5000ゴールドを持ってさっきの武器屋を訪れた。
散々悩んだ挙句「てつのおの」と「くさりかたびら」を持って店主の所に行く。
398 :
総長じいさんと出会う12
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:48:30 ID:uW0kET350
なぜか店主は物凄く同情した目でこっちを見てる。
え?この金はどうした?何?自首した方が罪が軽くなるだと?ちょ!おま!俺は強盗なんかしてないっつの!
店主に完全に怪しまれたまま俺は武器屋を後にした。
出発は明日の朝一でいいなと思い今日は宿をとり休む事にした。宿屋の看板を見つけ中に入る。
一泊12ゴールドらしい。これは安い。破格だ。と言ってもただベットが借りれるだけで飯も風呂もついてないようだ。
ライダーズホテルのようなものか。おそらくこの世界は旅人が多いためこの料金でも十分経営が成り立つのだろう。
飯は城に行って勝手に食うとして風呂には入りたい。
聞くと旅人は近くの川で水浴びをすることが多いらしい。
そこで俺も川に向かった。途中道具屋を発見したのでやくそうを買い込む。
服を脱ぎ水につかる。冷たさが心地いい。腹に目をやるとそこにはヤリが刺さった生々しい痕がある。
はたして俺はカンダタとか言うやつに勝てるのだろうか?また死んでしまうのではないだろうか?
いやいやまてまて。負けるはずがない。そもそも相手は同じ人間だ。だったら俺の方が強い。
と、自身に言い聞かせ宿に向かった。しかし酒場の看板が目に留まる。明日に備えて軽く英気を養っとくか。
3時間後残りの全財産を使い切った俺は千鳥足で宿に向かった。
399 :
総長じいさんと出会う1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 12:49:48 ID:uW0kET350
支援dd!
夜にまた投下します
400 :
王冠を奪い返せ1
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:06:01 ID:uW0kET350
−次の日−
目覚めるともう太陽は高かった。寝坊した。頭痛い。腹減った。
俺はふらふらしながらかろうじてポケットに残ってた5ゴールドでパンを買いかじりながら町を出た。
今日もいい天気だ。しばらく歩くと青寒天が出る。相変わらずかわいい。
よくみると隣に色違いの赤寒天までいやがる。
こいつらは噛み付かれるのにだけ注意すればウエイトが軽いため体当たりはまったく効かない。
殺すのも可哀想なんで無視する事にした。後ろから必死に追いかけてくる姿またかわいい。
俺がこの世界を制した暁には寒天を飼おうと思う。楽しみだ。
寒天が諦め追いかけてこなくなると今度は犬が現れた。よく見ると所々が腐っている。気持ち悪りい。
俺は買ったばかりのてつのおので真っ二つにした。何がショックかっていきなり新品の斧がドロドロに汚れた。
新相棒の最初の獲物が腐った犬とは…俺はテンションが下がりつつも塔を目指した。
道中ゾンビ犬だの寒天だのでかいきのこだのが現れるがてつのおのの威力により苦戦する事は無かった。
そしてついに塔が見えてきた。
塔に入る。見張りなどはいない。ひとまず道なりに昇って行く。ややこしい。設計したやつ殴りてえ。
401 :
王冠を奪い返せ2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:06:49 ID:uW0kET350
しばらく昇ると妙な三人組みがいた。向こうは俺の顔を見るなり顔色が変わる。
あ!こいつらこないだボコったやつらじゃん。そうかカンダタの手下だったのか。
三人で何か話し合っている。そして逃げた。俺も追って階段を昇る。
そこにはカンダタと思われるパンツに覆面&マントというとんでもない格好のやつがいた。
しかし手下が手下なら親分も親分だ。なんてファッションセンスだ。俺の戦闘意欲はマックスで失せた。
めんどくせーからとっとと終わらそう。
よくも子分をだの俺の名前は大盗賊カンダタだの言ってる間に近づいて一発脳天にてつのおのを見舞う。
ガキンッと金属音が響く。
こいつ覆面の下になんか仕込んでやがるな。カンダタは激怒した。
おまえには騎士道精神ってものがないのか外道!と言われる。盗賊が何言ってんだ…
そして子分にこいつは俺一人で片付けるから手を出すなと言った。アホだ。正真正銘のアホだ。
そこから俺とカンダタのタイマンが始まった。
お互い腕が上がらなくなるまで斧を振り回し、顔がボコボコになるまで殴りあった。
402 :
王冠を奪い返せ3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:07:35 ID:uW0kET350
最後に立ってたのは俺だった。
カンダタは観念したのか煮るなりやくなり好きにしろと言う。俺は「きんのかんむり」を取り返した。
もうここには用はない。足早に塔を出た。入り口付近に差し掛かった所でカンダタらしき悲鳴が聞こえる。
無視してよかったのだが何となく見に行ってみた。カンダタがデカ蛙数匹に囲まれている。
手下は気絶している。…弱い…なんて弱い盗賊団なんだ…泣ける…さすがに同情を禁じえない。
適当に蛙を追っ払うとカンダタが涙目で抱きついてきた。
痛いって!そんな力入れるなっつの!俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はねーんだよ!離れろ!
カンダタは世界で一番蛙が苦手らしい。俺は命の恩人と崇められてしまった。なんだこの展開は。
だがしかし次にもっと驚く展開になる。カンダタが俺を子分にしろと聞かない。子分も同じく騒ぐ。
嫌だと言って塔を出たが後ろからゾロゾロついてくる。マジ勘弁してくれ…
そこで俺はこいつらを舎弟にする事にした。新鬼浜爆走愚連隊栄光の船出だ…栄光の…ぐぅ…
栄えある初代のメンバーがこいつらか…
子分は塔の警備役(というか足手まといなんでいらない)として置いていく事にする。
一応俺らは盗賊じゃなく族なんだと言う事を言い聞かせたがこいつらはバカだから理解してないだろう。
まあいい。とりあえず親分じゃなく総長と呼ばすのだけは徹底させよう。
403 :
王冠を奪い返せ3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:08:05 ID:uW0kET350
来た道を戻る。もう日が沈みかけている。途中魔物も出たがカンダタが一人で暴れて片付けた。
なかなか使える野郎だ。頭は悪いが腕力だけはある。特攻隊長くらいにしてやってもいいかも知れない。
そうして城に戻った時にはすっかり夜も更けていた。
門番はカンダタを見て腰を抜かしていた。無視して進み王様の前に立つ。
王様にきんのかんむりを渡した。衛兵がカンダタを連行しようとするので止める。
王冠も戻ったしこいつを無罪にしてくれないかと頼んだ。大臣憤怒。
まわりがざわつき始める。もしこいつを引き渡すのを拒否すると俺も連行されるかもしれない。
しかし舎弟のために体を張るのは総長として当然の事だろう。俺はいざとなればこの国と戦争する決意をした。
そして王の重い口が開く。
いいよ。
一瞬時が止まった。
404 :
王冠を奪い返せ5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:08:36 ID:uW0kET350
大臣が物凄い勢いで王様をまくし立てる。このバカ王なんてイカしたヤツだろう。最高だ。
じいさんはゲラゲラ笑ってる。次の一言がまたイカレた内容だった。
さあ!王冠を取り返した英雄をもてなす宴の準備をせい!
数時間後。
王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせで宴会が始まった。
カンダタは物凄いペースで酒を飲む。こいつ自分がしでかした事をわかってるのだろうか?
王様も王様でヘラヘラしながらこれまた凄いペースで飲み続ける。
大臣は呆れて物も言えないといった感じだ。
まあそんな事よりも俺はこの国の肉料理に感動した。甘辛く重厚でそれでいてしつこくない。
三人の豪快な食いっぷり、飲みっぷりに即発され兵士達も騒ぎ出し、明け方には全員床で寝ていた。
405 :
王冠を奪い返せ6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:10:57 ID:uW0kET350
ひたすら飲まずに食っていた俺はこの光景を見て思った。
ああこの国は純粋にバカなんだと。そら王冠も盗まれるわ。
と、ここでじいさんが話しかけてきた。いきなり身の上話を始める。興味ねえどっかいけよジジイ。
だが話の内容は驚くべき内容だった。このじいさんと王様は昔一緒に冒険した仲らしい。
しかもその冒険というのも魔王討伐だというのだ。その時は多大な犠牲と共に魔王を封印できたらしい。
信じがたい話だが俺は妙に納得した。
あの王様の目はカタギの目じゃない。絶対に人を殺めた事のある目だ。
406 :
パンツと呼ばないで7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:11:58 ID:uW0kET350
ー次の日ー
このバカ王はまたまたとんでもない事を言い出した。
は?自分も久々に旅がしたいから代わりに王にならないかだと?こいつラリッてんのか?
……目が笑ってない。本気だ。俺は旅の目的があるのでと断った。
バカ王はそれなら今度こそこのじいさんを連れて行けと言う。
俺はそれも断ろうとした。だがじいさんを連れてく事がカンダタ釈放の条件だと言いやがる。
なるほどさすがに監視役もいないまま犯罪者を野放しにできないというわけか。俺はしぶしぶ了承した。
こうして不本意ながら新鬼浜爆走愚連隊(以下略して鬼浜)に新たな構成員が増えた。
現メンバーは
総長:俺
特攻隊長:カンダタ
構成員:じいさん、子分A,B,C
……非常に頭の痛くなるメンバーだ…硬派にも武闘派にも程遠い…
俺はこの世界に来て初めて自分のやってる事が不安になった…だが今はもう前に進むしかない。
バカ王は報酬として10000Gもくれやがった。やはりバカだ。
407 :
パンツと呼ばないで8
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:12:38 ID:uW0kET350
その夜、記念すべき第一回鬼浜会議が開かれた。議題は次の目的地についてである。
俺的には早く勇者に会ってどんな輩か確かめたい。じいさんに勇者について何か知らないか聞いてみた。
知っていたのは勇者の故郷はアリアハンという町であるという事だけだった。
一方カンダタにも何か情報がないか聞いてみる。明日の朝は目玉焼きがいいそうだ。
こいつもう今後一切の発言権は無い。とにかく明日から勇者の足取りを順に追ってみようと思う。
今日はもう遅いので宿で一泊する事にした。
次の朝出発の挨拶をしにバカ王の所に行く。まだ王にならんかとか言ってやがる。しつけえ。
アリアハンへ行くと伝えると船をだしてくれるようだ。貸切で。VIP待遇じゃん。
バカ王もたまにはやるな。
そうして船に乗り込んだ一行はアリアハンを目指した。道中暇なのでじいさんに魔法を習う。
どうやら俺には「リアルにイメージする力」が足りないらしい。
じいさんは松明や焚き火ではなく、もっと攻撃的な炎を頭の中に思い描けと言う。
攻撃的な炎…
そういや昔抗争中の族にひとし君の単車のオイルタンクに穴開けられて、気づかずに乗って引火して
炎の塊になって爆走した事あったっけな。よく生きてたなあいつ。
そんな事をぼんやり考えながら俺は手のひらを構えメラッと叫んだ。
408 :
パンツと呼ばないで9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:13:33 ID:uW0kET350
出た。
炎の塊が船のマストを直撃する。燃えるマスト。じいさん慌てて手から氷の塊を発射し消化する。
じいさんとカンダタと船長が物凄い勢いで詰め寄ってきた。船を沈める気かと叫んでいる。
しかし俺にはそんな声まったく届いてなかった。出来たのだ。俺にも魔法が使えたのだ。
そこから二日後アリアハンにつくまで俺はひたすら練習を重ねた。徐々に火の玉も大きくなる。
俺は天才かもしれない。自分で自分の才能が怖いぜ。
しかしじいさんはそのくらいの魔法ならガキの頃にもうできたわいと言ってきた。黙れ。目の上のタンコブが。
アリアハンに到着する。
なかなかきれいな町並みだ。じいさんは王様に挨拶に行った。
おまえも来いと言われたが堅苦しいのはいやなんで一人でぶらつく事にした。
カンダタは腹が減ったとうるさいので50ゴールド渡してどっかやった。
きれいな町並みだがシケた所だった。強い武器もない。きれいなねーちゃんもいない。典型的な田舎町だ。
こうなったら昼真っから酒でも飲んでやろうかいと酒場に入る。町の規模にしちゃかなり大きな酒場だ。
そこは酒場兼人材派遣センターのような所らしい。冒険に出る人が有志を募れるシステムだ。
年齢や職業や性別を指定すると合致した人と出会える…え?これって出会い系サイトと同じじゃないか?
もしかして表向きは「冒険者の集まる酒場」だがほんとはただの出会い系酒場なんじゃないのか?
409 :
パンツと呼ばないで9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:14:05 ID:uW0kET350
とりあえず俺も利用してみる事にする。
と、その時だ。奇抜なピエロの格好をしたかなり大柄な男に声を掛けられる。
どうやら仲間にして欲しいらしい。
腕には自信があるそうだが俺はこれ以上色モノが増えても敵わないので丁重にお断りした。
ジーッと見つめてくる。こっち見んな気持ち悪い。クソが。俺は仕方なく酒場を後にし城に向かった。
城に入り王の間まで行く。じいさんが王様と親しげに話している。しかしこのじいさん侮れない。
各国の王とここまで親しいじいさんは他にいるだろうか。食えないジジイだ。
その後王様と話し、勇者は北に向かったと聞く。北か。今出来ることは追う事だけだ。
この町にこれ以上いる必要もないと思い早速出発する。あっカンダタ忘れてた。
町中探し回ると結局さっきの酒場の中にいた。となりにはあのデカピエロがいる。
二人で酒を飲み意気投合しているようだ。バカ同士気が合うのだろう。
…嫌な予感がする…
案の定カンダタはこいつも連れてけと言う。じいさんはなぜかニヤニヤしている。
はいはい。もうわかりましたよ。好きにしてくれ。という事でまた一人舎弟が増えた。
見るからに怪しいピエロの大男。服装が服装だが相当なマッチョだ。
ん?この目どこかで見たことがあるような…いやいや俺にはこんな変態の知り合いはいないはずだ。
410 :
パンツと呼ばないで11
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:16:20 ID:uW0kET350
さて、町を出て北に向かう。振り返る。後ろにはヨボヨボじいさん、覆面パンツ男、ピエロの大男…
これから世界征服を狙う組織とはとても思えない。これは酷い。次はまともな舎弟を入れなくては…
しかし戦闘は楽になった。実際このピエロ男がバカ強い。大体の流れはこうだ。
まず敵を見つけるや否や俺、パンツ、ピエロが突撃して袋にする。それでも仕留め切れない場合、
後方からじいさんが炎なり何なりだしてTHE ENDだ。
魔物共も俺達の異様さとその強さに逃げ出す事も少なくない。
むしろ魔物の群れなんかより俺らの方が全然柄悪い。
特に強い魔物も出て来ず暇なので鬼浜軍事訓練を行いながら進む事にした。
軍事訓練と言っても要は俺がパンツ、ピエロとど突き合いながら進むのだ。
これがまたしんどい。この二人その辺の魔物より遥かに強い。
しかし俺も総長としてのプライドがあるため負けるわけにはいかない。
次の町に着いた時は三人とも血だらけのボコボコだった。
みんなやくそうをアホほど買って全身に塗りたくる。
その日は疲れたので宿で一泊した。
411 :
出会いと別れ12
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:17:52 ID:uW0kET350
ー次の日の朝ー
その辺の人曰く勇者は「いざないのどうくつ」なるとこに向かったらしい。
何か痕跡が掴めるかも知れないので、そこに向かう事にした。
今日はど突き合いではなくじいさんに魔法を習いながら歩く。なんとなくコツがわかってきた。
要はイメージなのだ。
炎が上手くイメージできるやつは炎系の呪文が得意だ、
氷を上手くイメージ出来るやつは氷系の呪文が得意なのだ。
何にせよ、「イメージ」と「確信」と「集中力」が大切なのだ。
俺はやはり天才なのかもしれない。そんな事を考えているうちに洞窟についた。
薄暗い陰気な感じの洞窟だ。
洞窟の中にもじいさんがいたが俺はもう年寄りはお腹一杯なので無視した。
いかにも怪しい爆弾によるだろう吹き飛んだ壁を抜けしばらく歩くと紫色の角うさぎが数匹でてきた。
どうせ雑魚だろうといつものように三人で突撃する。
412 :
出会いと別れ13
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:18:28 ID:uW0kET350
ラリホー
何故かそこからの記憶は無い。目が覚めるとじいさんが一人でゼーゼー言いながら汗だくで立っていた。
じいさんはキレ気味で初めての敵にはもっと慎重にだの何だの説教を始めたが無視した。
鬼浜には特攻あるのみだ。これだから年寄は嫌いだ。
洞窟を抜ける。妙に懐かしい感じが。とりあえず近くの町に…っておい!ここバカ王の城じゃん!
ピエロがここは無視して先に進もうとしきりに主張する。何故だ。まあいい。
俺ももうこの町に特に用は無いし先に進む事にした。
しかしこのまま北に行くと俺が初めてこの世界に来た町に着くな。ジジイは元気でやってるだろうか。
いやそんな事よりもあのバニーの姉ちゃんはまだあの格好で仕事してんのだろうか。
そう考えると足取りが軽くなる。軍事訓練にも気合が入るというものだ。
三人のボルテージも飛躍的に上がっていく。
町に着く頃には三人ともボロ雑巾のようだった。
このままいくと訓練中に死人が出てもおかしくないかもしれない。
413 :
出会いと別れ14
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:18:53 ID:uW0kET350
町の中に入る。いきなりガキとすれ違った。
ガキはヤンキー、パンツ、ピエロという三人組を目の前にして固まった。
そりゃそうだろう。正直俺も怖い。まだ酒場は開いてないようなので教会に向かう。
ジジイに再会する。まだ生きててくれたのかと喜ぶジジイ。たりめーだろうが。
ジジイの話によるとこの町に三日前勇者が来たらしい。
なんて事だ。クソ入れ違いかよ…勇者はさらに北の村へ向かったそうだ。
が、その村は数週間前に魔王に滅ぼされた町だというのだ。
一応止めたが聞かずに行ってしまったらしい。
それならまだその辺にいるのかもしれない。これは追いつけるぞ!俺達は急遽そこに向かう事にした。
その村には半日程歩くとついた。
そしてそこで俺は自分の認識の甘さを思い知る。
414 :
出会いと別れ15
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:19:43 ID:uW0kET350
村。
いやもうそこはそう呼べないだろう。
民家は原型を留めていない。生々しい血の痕がそこらじゅうにある。
魔王はやはり魔王だった。生易しい相手ではなかった。ひとまず村を一周してみる。
普段は陽気なパンツもピエロも終始無言だった。
しかし気になるのは血痕の多さの割には死体が一つもない。
答えはすぐそこにあった。
そこには墓を掘る一人の少年の姿があった。
おそらく村に着いてからずっと掘り続けてたのだろう。
服は真っ黒で顔は疲弊しきっている。だが目は凄まじく澄んでいた。
それをみたパンツとピエロとじいさんが無言で墓堀を手伝う。
墓堀が終わった。少年がこちらに向かいありがとうと言う。
…え!?その声は少年ではなく少女のものだった。
415 :
出会いと別れ16
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:23:01 ID:uW0kET350
この子が勇者のようだ。
俺は全身ありえないくらいの脱力感に襲われた。屈強な大男との死闘を想像していたのだ。
俺がこんな女の子をぶん殴ったらそれこそ問題じゃないか。犯罪だ。こいつを倒す必然性は無くなった。
パンツが話しかける。じいさんも色々聞きたい事があるらしくこの子に駆け寄る。
話の内容は大体こうだ。
何故一人旅なのか。この子は先代勇者の娘らしい。
それで常に魔物に狙われるのでできるだけ他の人を危険に晒したくないと。
それで16歳になり先代が旅に出たと同じ年齢なったので旅に出たと。
俺は無性にむかついた。この世界のやつらはみんなそうだ。「勇者」という名にすがりたがる。
実際16歳のガキに一体何を望むのだ?魔王がムカつくなら自分で喧嘩売りにいけばいいじゃないか。
世間の理不尽さはどこの世界も変わらないようだ。と、その時、
416 :
出会いと別れ17
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:24:05 ID:uW0kET350
カカカこれはこれはこれは勇者サマ!
突然背筋に寒気の走る声がする。振り返るとそこには腕が6本ある骸骨二体と覆面魔術師が立っていた。
この村を襲った残党だろうか。
コンナところで出くわスとハ! その首ヲ我が主への手土産にシましょうカ!
俺達は無言で武器を構える。しかし皆顔に余裕がない。それもそのはずだ。こいつら雰囲気がかなりヤバイ。
明らかに今までの敵とは次元が違う。
417 :
出会いと別れ18
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:24:52 ID:uW0kET350
均衡状態を撃ち破ったのはじいさんだった。じいさんの手から巨大な火の玉が発射される。
骸骨はそれをかわす。その瞬間残りの4人が飛び掛った。てつのおのにかなりの手ごたえがある。
やったか!?
残念ながらさほどダメージは与えられなかったようだ。逆にパンツとピエロが血を流している。
あの状況できれいにカウンターを決めやがった。こいつマジで強ええ。
じいさんが今度は強烈な氷の突風を放つ。これはかわしようが無く骸骨はその場でふんばり耐える。
このチャンスを逃すまいと俺は骸骨の脳天に全身全霊を込めて一撃を見舞った。
そこにパンツ、ピエロ、勇者と続く。骸骨の6本の剣が踊る。
俺は全身なます切りになりつつも骸骨に留めの一撃を決めた。
もう一体は!?
振り返るとじいさんが必死に杖で対抗している。が、体には深い斬り傷が刻み込まれていく。
骸骨が剣を振り上げじいさんの頭に狙いを定めた瞬間、パンツが後ろからはおい締めにした。
パンツGJ!
骸骨の剣がパンツに深々と突き刺さる。しかしじいさんの火炎球が至近距離で骸骨に直撃する。
骸骨は体半分吹き飛ぶ。
418 :
出会いと別れ19
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:25:31 ID:uW0kET350
勝った…
辛勝だ。なんとか退けた。鬼浜軍事訓練もあながち無駄ではなかったようだ。
しかしダメージがでかい。とくにパンツとじいさんの傷がひどい。ありったけの薬草を塗り込む。
ひとまず危機は去った。みんな安堵の表情を浮かべる。
…しかしそれはすぐに打ち消された。
そこには見たことも無い魔物の群れを引き連れ薄ら笑いを浮かべる魔術師がいた。
増援。
絶望。
419 :
出会いと別れ20
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:26:10 ID:uW0kET350
皆一応武器を構える。もう顔に覇気が無い。くそっ俺の野望はこんなとこで潰えるのか…。
誰もが諦めたその時、じいさんがおかしな事を言い出した。
俺の目を見て
いいか
魔法で一番大事なのは信じる心だ。
おぬしは絶対にわしをも越えるだろう。何か普通の人とは違う素質がある。自分の可能性を信じろ。
そして勇者に向かい
父は誰よりも強く、そして優しい立派な男だった。
その存在が重荷に感じることもあるだろうが自分の血筋に誇りを持ちなさい。
パンツにも
この世に意味の無い事などない。おぬしのその人並み外れた腕力にもな。
勇者とこれからも旅を続けなさい。さすれば自分の生きる意味を知るであろう。
420 :
出会いと別れ21
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:30:58 ID:uW0kET350
最後にピエロに
さらば我が戦友にして親友よ。一足先に向こうでまってるぞ。
と言ったと思うと魔物の群れに向かって駆け出した。
メガンテ
421 :
出会いと別れ22
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:31:28 ID:uW0kET350
数十秒だったのだろうか。数時間だったのだろうか。
一瞬とも悠久ともとれる時の後、そこには何もなかった。
あるべきはずのものは何もなかった。
422 :
出会いと別れ23
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:32:03 ID:uW0kET350
パンツは大声を上げて泣いている。ピエロは恐い顔をして考え込んでいるようだ。
勇者は涙ぐみ俯いている。パンツと勇者は口々に魔王軍絶対許さないと言う。
違う。
悪いのは魔王軍ではない。
俺だ。
俺が弱いから悪いのだ。結局これは弱肉強食の潰し合いなのだ。
この村の人も、じいさんも相手より強ければ死ぬ事はなかった。俺は自分の弱さが許せなかった。
何が鬼浜だ。何が世界征服だ。自分の舎弟の命すら守れなくて何が総長だ。
これは相手からの強烈な宣戦布告だと受け取った。俺は売られた喧嘩は必ず買う男だ。
魔王…絶対原型わからなくなるまでぶん殴ってやる。顔面ボコボコに凹ましてやる。
423 :
出会いと別れ24
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/09(水) 20:32:58 ID:uW0kET350
あああああああああぁぁあああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!
突然俺は叫んだ。頭の血管ブチ切れるくらい腹の底から叫んだ。
パンツと勇者はビクッとなりこっちを見る。俺は空に向かってさらに叫んだ。
新鬼浜爆走愚連隊総隊長、魔王のとこまでブッこんでくんで夜露死苦!!!!!!!!
424 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/09(水) 21:26:26 ID:UJ1UrJ1P0
規制かかった?
一応支援・・・。
425 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/09(水) 22:59:18 ID:rDRTR6FWO
じいさん…
こうなることは知ってたけど
切ないな…
続きが待ち切れなくて
つい保管庫読み返してしまうんだが
展開変わったりするのかな
426 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2008/04/10(木) 00:24:48 ID:IOL/Osk60
>王冠を盗んだカンダタ、盗まれた王様、取り返した俺という異色中の異色の組み合わせ
なんだこの宴会wwwww腹筋痛いwwwwwwwwww
笑いながら読んでたらじいさんが…そんな…
427 :
総長
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:31:00 ID:clzXnlXR0
>>425
大筋は変わんないよ!でもキャラの性格なり矛盾点を解消するために細かい所をいかなりいじってます
元々が今は昔の初代スレを埋めるために書いたものだったので長編になると色々問題が…w
では続き投下します
428 :
私の名は勇者
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:32:11 ID:clzXnlXR0
その後、俺達は村の中央にじいさんの墓を作った。
そして村を離れ一旦ジジイのいる町まで戻る。
ジジイはじいさんが減ってる事に気づいたが俺らの表情から事を察し静かに十字をきった。
深夜鬼浜会議が開かれる。ピエロは気になる事があるので城へ帰ると言う。
今まで黙っててすまないが、実はお前らが立ち寄ったロマリアと言う国の王様だったんだと告白する。
…いやいやわざわざ告白せんでも未だに気づいてないヤツなんていねーよ…
そんなヤツは正真正銘本物の極限のバカだ…
隣でパンツが驚きの声を上げる。
………。
勇者はまた一人旅を続けるらしい。ちょっとまて。それは無茶だろ。
あいつらのバカ強さお前も身をもって実感しただろうがよ。一人とか死にたいのか?
俺はなんならお前も舎弟にならないかと誘う。勇者はキョトンとしている。
429 :
私の名は勇者2
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:33:02 ID:clzXnlXR0
いやだからな?俺は世界征服する為に鬼浜という族を結成しててだな…いや族っつてもわからんか…
世界を救うとかまったく興味無いんだが魔王は邪魔だからどっちにしろイワしとかなダメだし、
おまえも魔王潰したいなら一緒に来るかって事!わかるか?
必死に説明する俺。勇者はやっと意味が飲み込めたのか笑顔になる。
是非仲間にして下さい!と言った。
ここで明確にしておかなきゃいけない事がある。世間では勇者様様だがここで一番偉いのは俺だ。
俺の事は総長と呼ぶこと、勇者だか何だかしらんが俺の方が偉いことを説明する。
勇者はニコニコしながらよろしく総長さん!と答えた。ちっなんか調子狂うな…
その日、鬼浜会議は深夜まで続いた。ピエロ改めバカ王からいくつかの提案があった。
一つ目はラーミアの復活。
よくわからんがラーミアっつーのは簡単に言うとバカデカい鳥らしい。
なぜそんな鳥が必要かと言うと、魔王のいる城へは空路でしかいけないのだ。
昔じいさん達が攻めてった時もこの鳥を使ったと言っていた。
デカいってどんだけデカいんだよ…人を数人乗せれる鳥なんてまったく想像がつかない。
人を乗せて飛ぶ巨大な生き物…
430 :
私の名は勇者3
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:33:41 ID:clzXnlXR0
…モスラ。咄嗟に頭に思い浮かんだ。そうだきっとモスラに違いない。鳥とか言ってるけど
ほんとは蛾なんだろ。こいつはすげえ!モスラが復活したら魔王軍なんて目じゃねえ。
むしろちんけな城一つなんて簡単に壊滅させられるだろ!その後の世界征服も余裕だ!
これは非常に有益な情報だ。一気に俺の覇王への活路が開けた。
さあ復活だ。すぐ復活だ。どこにいるんだモスラは!さあ!どこに!
ちょっと総長さん興奮しすぎ!と勇者に諌められる。
ピエロの話によるとラーミアを復活させるには6つのオーブが必要だそうだ。
そのオーブはじいさん達が自分達で保管してたり元あった場所に安置したりで世界中にバラけてるらしい。
なんて事だ。
俺は大きな勘違いをしていた。まあ当然だ。モスラなんて現実離れした生き物がさすがにこの世界にも
いるわけが無い。オーブ…ボール…集める…集めたボールで復活…空を飛ぶ化け物…と言えば龍……三つの願い…
答えは一つに繋がった。どっちにしろ強力な味方に変わりは無い。
で、ひとつはロマリアにあるので取りに来いと言われた。
431 :
私の名は勇者4
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:34:12 ID:clzXnlXR0
二つ目は戦力強化。今のままでは絶対に魔王軍に勝てない。強力な武器や防具が必要だ。
じいさんは生涯掛けて究極の魔法を研究していたので、イシスという国にある実家を訪ねれば
何か手がかりがあるかもしれないとのことだ。究極の魔法か。覇王たる俺にピッタリの響きだ。
何の手がかりもないしとりあえずイシスを目指すか。
その日はそのままジジイの家に泊まった。
パンツのいびきがうるせえ。
洗濯バサミでマスクの上から鼻を摘んだ。
………………。
三分後。
息をしていない事に気づく。あわてて洗濯バサミをとった。危うく永眠させる所だった。
432 :
私の名は勇者5
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:37:24 ID:clzXnlXR0
ー次の日ー
朝食にはおなじみの野菜屑のスープが出た。それをたいらげると早速出発する事にした。
ロマリアに向かう道中勇者とピエロが勇者の親父の冒険について話していた。
ざっとまとめるとこういう事だ。
昔バラモスという輩が人間を滅ぼそうとした
当時16歳の勇者の親父はロマリアの王子(現ピエロ)世界でも有数の魔法使い(故じいさん)
それと「賢者」と呼ばれる何だか凄いヤツと旅に出て、長い冒険の末ついにバラモスを倒した。
世界に平和が訪れた。
そこから月日は流れ、現勇者が生まれた。誰しもがこの平和な日々に何の疑問も抱かなかった。
しかし危機は着々と迫っていた。魔物の活動がまた徐々に活発となる。
魔物は頻繁に「我が主」という言葉を口にする。
数年前、魔王の復活を直感した親父は単身旅に出た。そしてその後消息を絶つ。
433 :
私の名は勇者6
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:38:08 ID:clzXnlXR0
大体こんな感じだ。それでじいさんもバカ王も旅に出るチャンスを伺ってたらしい。
なるほど。そのバラモスて奴が実は生きていて今また力をつけて暴れてるのか。
倒すべき敵の名前も判明した。バラモス…首洗って待っとけよ…
そうして俺達はロマリアに到着した。黄色いオーブを受け取る。
バカ王は大臣に物凄い勢いで説教されていた。どうやら勝手に旅立ったらしい。
なんて無責任な王なんだ。国民の今後が心配だ。そもそも何でこいつは王になれたんだ。
そんな事考えつつも俺は武器屋に向かった。
あった。
前回は貧乏極まりない為買えなかったドラゴンキラー。今ならギリギリ買える。おい店長これくれ。
断られる。
434 :
私の名は勇者7
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:41:06 ID:clzXnlXR0
は?客寄せの為に一本だけ仕入れたモンだから実際に売る気はないだと!ふざけんな!!!
俺:ふざけんな!売れ!今すぐ売れ!
店:すみません無理です。
パ:売れ!あっしは大盗賊改め鬼浜の特隊カンダタでやんす!売れでやんす!
店:無理なもんは無理です。
勇:お願いします!私達の旅にどうしても必要なんです!
店:いいよ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????
何故だ!?店長を問い詰める。店長は言う。だってかわいいんだもん。
その後俺とパンツに袋叩きにされたのは言うまでもない。
その後の商談により俺達は店側の好意で500ゴールドでドラゴンキラーを手に入れた。
うむ。なかなかよい買い物だ。
435 :
私の名は勇者8
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:41:50 ID:clzXnlXR0
こうして新しい相棒も手に入れ大満足の俺は一同東へ。目指すはイシスだ。
バカ王にオーブのついでに世界地図も貰った。
これで行き当たりばったりの冒険をする必要もなくなったようだ。
しかしこの勇者、筋肉ダルマのピエロ、火力抜群のじいさんの穴を埋めるのはキツイだろう。
ここからは苦しい旅になりそうだ。
気合を入れ直す。魔王にたどり着く前にくたばっちまうわけにはいかなからな。
取り越し苦労だった。
この女べらぼうに強い。
まず剣だ。筋力こそ欠けるものの抜群にスピードが速い。
俺は達人でも何でもないので素人じみた感想になるが、太刀筋が「活きて」いる。
おそらく血の滲むような努力とともに天性の才能もあるのだろう。
次に魔法。数種類の攻撃魔法を使いこなす。
だが何より驚いたのはこいつやくそうなのだ。やくそう魔法が使えるのだ。
ホイミ。それは優しい光と共に瞬時に傷を癒す。
436 :
私の名は勇者9
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:42:24 ID:clzXnlXR0
もうやくそう買わなくていいじゃん。いいなそれ。おし俺にもその魔法教えろ。
勇者曰く、この魔法は「怪我をする前の姿」をイメージし、
傷口に手をかざしその姿と今の姿を一致させる事によりそれを実現させるようだ。
簡単そうだ。試してみる。誰も怪我してないのでとりあえずパンツぶん殴る。
ホイミ。
メラの件もあるので少し控えめに言ってみた。当然の如く何も起こらない。
パンツはくすぐったいと笑っている。
…まあこれはボチボチ練習してくか。俺に使えない魔法なんてあるわけいいんだから。最強且つ至高の天才の俺様に。
その日は一日中歩いたがまだまだイシスは遠そうだ。野宿する事にする。
しかし…じいさんとピエロが抜けて少しはまともになるかと思えばそうでもなかった。
ヤンキー、パンツ、少女。違った意味でヤバイ。犯罪の臭いすらする。
俺の世界だと確実にポリに呼び止められ、職務質問くらうだろう。
断じて俺達はこの少女をさらったわけではない。
437 :
私の名は勇者10
◆Lh6WfP8CZU
:2008/04/10(木) 20:43:01 ID:clzXnlXR0
更にその夜の鬼浜会議でとんでもない事が判明する。この女天然だ。清々しいまでの天然だ。
やべえ…このメンツヤバ過ぎる…
以下会議議事録。
俺:イシス遠いから途中アッサラームという町に寄ろうと思うがいいか?
パ:総長明日の朝はパンがいいでやんす。
勇:異議アリ。パンもう無いよ。野草摘んでスープ作ろうよ。
俺:いやだからアッサラームにだな…
パ:総長!パンを切らすのは緊急事態でやんす!キメラの翼で一旦戻りましょう!
勇:異議アリ!ここまできたのにもったいないよ!
だいたいカンダタちゃんがつまみ食いするから、すぐなくなっちゃうんでしょ!!!
パ:異議アリ!違うあれは毒見でやんす!みんなのためを思ってこその…
勇:いいわけしないの!ちょっと総長さん黙ってないでなんか言ってよ!
俺:…………。
もうこいつらに意見を求めるのはやめよう。信じれるのは己だけだ。何なんだこの孤独感は。
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