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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
299 :
背水の刃【1】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:03:35 ID:wSm2A5uf0
進軍を告げる太鼓が打ち鳴らされる。
勇ましい太鼓の音に合わせ、足音が通り過ぎる。
人々の歓声は聞こえない。
枠だけの窓にボロのカーテンを閉め、静まり返った町並みを足音が通り過ぎる。
鬨の声は挙がらない。
聞こえるのは一人の兵士の足音と、金属同士が擦れ合う不快な音。
静まり返った町並みを、一人と一個が通り過ぎる。
誰にも祝福されない二つの影が、城下町を通り過ぎる。
城下を一望するラインハット城のバルコニーから、その光景を眺める三つの人影。
血のように赤い酒の注がれたグラスを優雅に傾ける金髪の王。
一歩下がった場所で、ラベルの擦り切れた瓶を抱える初老の大臣。
王の座る椅子の真横に控えるのは、紫のドレスにその身を包んだ女。
「首尾は?」
「上々で御座います。仰せの通り、討伐隊は南の修道院に向かいました。」
「討伐隊…ね…」
若い王が、大臣の言葉にイタズラな少年のような笑みを返す。
「生きた兵士が一人。それで一隊を編成できるとはね…」
「デール王もお人が悪い。アレの戦力を一番よくご存知なのはデール王でしょうに。」
「さてね…結局アレも、人の力がなければ何も出来ない木偶(デク)に過ぎないさ。」
皮肉に笑う王の持つ空のグラスに酒の追加を注ぎながら、大臣も笑ってみせる。
「人々を束ねるのが王。そして、世の愚鈍な王を束ねるのはラインハット王国。
ならば、世の愚鈍な王どもを束ねるラインハット王国の国王である僕…
デリシア=ドラード=コロナ=ド=ラインハットは…神か?」
注がれた酒を一息にあおり、椅子から立ち上がった王が笑う。
その姿を見て、目だけで笑う女。
王の高笑いも届かない静かな城下町を、一人きりの討伐隊が進軍する。
300 :
背水の刃【2】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:05:33 ID:wSm2A5uf0
ラーの鏡を入手した俺達は、修道院の一室で休息を取っている。
下着のままベッドに腰掛け、少し硬めの黒パンを齧りながら明日の作戦を練る俺達。
清楚なシスター達に見られたら”行儀が悪い”と怒られそうな、だらしない姿だが、
その表情も話の内容も真剣そのものだ。
ラインハットの異変…デール王の豹変…明日はそれらにカタをつける。
修道院を守る…人々を守る…失敗は許されない。チャンスは一度限り。
「明日はラインハットにとんぼ返りか…侵入経路は前と同じでOK?」
「いや、前回の一件で警備も厳しくなってるだろうし、同じ経路は使えないよ。」
「そっか…じゃあ、別の隠し通路とかはねえの?…ヘンリー?」
「…すぴー…ぴるるるる…」
―……☆…―
さっきまでブラウンと一緒に騒いでたわりに、やけに大人しいと思ったら
二人して爆睡してやがる…
ラインハット〜神の塔での連戦で疲れが相当溜まっていたんだろうな。
ヘンリーは作戦会議もそこそこに、ベッドに潜って寝息を立てている。
「ふわぁ…見てたら俺まで眠くなってきちまったよ。」
「バタバタした一日だったからね。僕達もたまには早く休もうか。」
真っ白でふかふかの布団に顔を埋めると太陽の香りがする。
不思議だよな。
ベッドのふかふかした感触も、布団に残るお日様の匂いも同じなのに、
こいつらは全部、俺の知らない違う世界のモノ。
理論とか生態系は全然違うけど、心地良いものを求める人間の嗜好ってのは、
世界が変わっても同じなんだな…Zzz…
布団から見えていた茶色い髪の動きが止まり、規則正しい寝息が聞こえてきた。
301 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/11/11(日) 00:07:00 ID:FTG7NxH00
しえん
302 :
背水の刃【3】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:07:27 ID:b7cVpqUV0
「まったく…毛布を蹴飛ばすと風邪ひくよ。」
小さく震えるランプの炎に照らされ、静まり返った部屋。
寝相の悪い二人と一匹に毛布を掛け直していたサトチーが、何かに気付いたように
一点を見つめ、立ち上がる。
その目線の先には鞘に収められ、壁に立てかけられた剣。
別世界からやって来たという少し年上の若者が軽々と操って見せた伝説の剣。
サトチーの手が、ゆっくりと天空の剣に伸びる。
自分の内から響く鼓動さえもうるさく聞こえるような夜の静寂…
「…まじしましま…」
「―!!―」
伸ばしかけたその手が思わず引っ込み、壁から倒れようとする剣を寸前で支えた。
喉から飛び出そうになる大声を必死で飲み込み、そぉっと声の方向を振り向く。
「…むにゃ…Zzz…」
声の主である若者は、深く眠ったままだ。
その額にじっとりと浮かんだ冷や汗を拭い、荒くなった息を整えるサトチー。
「…寝言……ふぅ…僕もどうかしてるね…」
ふわ…と溢れる小さなあくびを口元で押さえ、ベッドに戻るサトチー。
「そんなはずないよね…」
枕元に置かれたランプの炎を吹き消し、部屋に本当の宵闇と静寂が訪れる。
―そういえば、ビアンカは元気かな…
この件が落ち着いたら一度アルカパに行ってみようかな…―
303 :
背水の刃【4】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:08:49 ID:b7cVpqUV0
修道院の朝は早い。
シスター達は皆、夜明け前に起床し、朝の祈りと朝一番の水を神に捧げる。
厳かな祈りが終えた後に宿泊客を起こし、顔を出す朝日の中で朝食の準備が始まる。
時計もないのに実に正確な毎日。
…の筈だが、今日の目覚めはいつもとは明らかに違った。
寝室のドアが勢いよく開け放たれ、血相を変えたシスターが飛び込んでくる。
ドアが壁にぶつかる派手な音で、俺達は叩き起こされた。
「…た…助けてくださいまし。修道長が…」
「落ち着いて。一体何があったんです?」
飛び込んできたシスターが、おろおろと震えながら話を続ける。
「い…今しがたラインハットの兵がやってきまして、ヘンリー様を出せと…
修道長が院の前で足止めされていますが、このままでは…」
ラインハット兵にシスター・シエロが?
鎖帷子を着込み、ひったくるように天空の剣を手に取る。
「サトチー!」
「わかってる。急ぐよ!」
ざわざわした多数の声。荒々しい男の声。子供の泣き声。
静かな修道院には相応しくない喧騒の先にシスター・シエロはいた。
「女を傷付けたくはない!さっさとヘンリー様を出すのだ!」
「お静かに。神の御前で無礼ですよ。迷いがおありなら私がお話を伺います。」
「黙れ黙れ!私に迷いなどあるものか!修道女に用はない!」
大声で威圧する男を前に、シスター・シエロは一歩も下がらない。
「シスター・シエロ!大丈夫か!?」
304 :
背水の刃【5】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:10:27 ID:b7cVpqUV0
シスター・シエロの前に踊り出て、横一列の壁を作る。
相手は一人…周囲を探ってみても、仲間が隠れている気配はない。
「追っ手は君一人かい?」
サトチーが怪訝そうに甲冑の男に問い掛ける。
俺達の前に対峙する兵士は一人。どこかに仲間が隠れている様子もない。
甲冑で身を包んだ男はそれなりに強そうな風体だが、1対5のこの状況で
…今の時間だとスミスは戦えないから1対4か…ともかく負ける気はしない。
…男の背後に置いてある、布をかぶった物体は気になるが…
サトチーの質問を無視して、甲冑の男がこもった声をヘンリーに投げ掛ける。
「ヘンリー様…大人しくデール様の前に出頭して頂けませんか?」
「はぁ?」
剣の柄に手を掛けるヘンリーの口から間抜けな声が漏れる。
「非礼を詫び、王家に忠誠を誓えば、兄であるヘンリー様の命をとるような事は
なさらないでしょう…どうか考えては…」
「却下だ。」
兵士の懇願に親指をピッと下に向けて答えるヘンリー。
「ふん。曲がっちまった子分の性根を叩き直してやるのも親分の役目だ。
迎えなんざよこさなくても城に戻ってテメエの尻っペた引っぱたいてやる。
城に帰ってデールの奴にそう伝えな。」
「ですがヘンリー様…」
まだ何か言いたそうな兵士の前に、サトチーと俺が進み出る。
「だ が 断 る…ってヤツだ。あんたも男なら引き際が肝心だろ?」
「この場は退いてくれません?あなたも勝ち目のない争いは望まないでしょう?」
サトチーの言葉が半ば脅しのように聞こえるがキニシナイ。
「私は…退くわけにはいかない……勝ち目のない争いをするつもりも毛頭ない…
嘗て仕えたヘンリー様を討つのは心苦しい…ですが、今の私は軍人…」
背後の物体にかけられた布に、男の手がかけられる。
305 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2007/11/11(日) 00:11:46 ID:FTG7NxH00
支援
306 :
背水の刃【6】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:12:00 ID:b7cVpqUV0
「ヘンリー様…いや、国賊ヘンリー。主君より賜った任務により討伐する!」
物体を覆い隠していた布が、男の手によって一気に引き剥がされる。
中から現れたソレ…
つるんとした曲線を描くシルバーのボディーから伸びた昆虫のような手足。
左手に大剣、右手にボウガンを搭載したソレの頭部から覗く無機質な目(?)が
俺達一人一人を順に見渡すようにサーチする。
コレは……機械?
「サラボナ地方を徘徊する古代のカラクリ…メタルハンターはご存知ですか?
それを捕え、ラインハットの技術で改良した究極の殺人用カラクリ…
…名付けて『プロトキラー』…まだ試作段階なので手加減は出来ませんよ。」
金属音と機械音を体中から響かせ、プロトキラーと呼ばれたソレが戦闘体勢に入る。
「こいつ…城の中庭で見たアレじゃねえか。」
「なんで…こっちの世界にこんな技術が…」
「シスター達を巻き込むわけにはいかない。修道院から離れるぞ!」
―!!!!―
サトチーの指示で四人一斉に駆け出し、修道院からの距離をとる。
考えるのは後だ。どうせ考えたって答えなんかわかりゃしねえ。
人殺しの為だけに作られた機械の兵士…
今はとにかく、この忌々しい機械をぶっ壊す。
「メタルハンターの装甲すら粉砕するプロトキラーの力…とくと思い知れ!」
兵士の合図に、プロトキラーの単眼のような光が一層赤く輝き大剣を振りかざす。
無機質な威圧感に自然と震え出す膝を一発引っぱたく。
307 :
背水の刃【7】
◆Y0.K8lGEMA
:2007/11/11(日) 00:13:14 ID:b7cVpqUV0
「ヘンリーはガンガン魔法を!僕達は周囲を囲んで一斉攻撃だ!」
「マリアさんには指一本触れさせねえ!――イオ!!」
ヘンリーが放つ魔法がプロトキラーの表層で爆発を起こす。
周囲に広がる土煙を狼煙代わりに、サトチー・ブラウン・俺が同時に斬りかかる。
――ガギン!ガガン!!
耳に残る金属音と、手から体に伝わる痺れ。
機械は、その頭上に掲げた大剣一本で俺達三人の攻撃全てを無造作に受け止め、
続けざまに振るわれたその大剣で、サトチーと俺を同時に横薙ぎに斬り払う。
「…っが…」
咄嗟に背後に跳んで両断は免れたが、鎖帷子を貫通して内臓に衝撃が伝わる。
口内に溜まった血を吐き出しながら、天空の剣を支えになんとか立ち上がると、
既に機械は次の動作に移っていた。
ヤベエ…動作が速すぎる…
上段から振り下ろされる死の斬撃を横っ飛びに転がりながら避ける。
その隙をついて攻撃を試みるブラウンを返す刀で迎撃する。
回復の為に仲間の元へ走るサトチーを鋼鉄の拳で殴り飛ばし、
イオで足止めしようとするヘンリーをボウガンの矢が襲う。
「おいおい。その動きは反則だろ…っと危ねえ!」
「俺は大丈夫だ!イサミに回復魔法を!!」
「わかってる!なんとかあいつの足止めをしてくれ!このままじゃあ近付けない!」
片手で大剣を振るいながら、片手でボウガンを乱射する殺人兵器。
全ての行動が予備動作なしの最短距離で、且つ同時に飛んでくる。
さらに、全ての攻撃が致命打ときたら攻撃どころじゃねえ。
ジリ貧…避けるので精一杯だ。
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