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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

1 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

603 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/06(土) 03:34:23 ID:vPdBw58i0
第三話はここまでです。
原作には登場しない奴隷仲間(チョイ役ですが)登場。
作業現場の気の良い仲間達…ってイメージです。
隣の水牢からジャー…では味気ない感じがしまして…


途中、後先考えない連投で見事にバイバイさるさんに引っ掛かりました。
支援してくれていた皆様に申し訳ないです。ゴメンナサイ。
そして、支援ありがとうございます。ゲマの目にも涙です。

604 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 04:03:59 ID:4V9FMkIEO
投下終了まで起きて待ってて良かった。

…(´;ω;`)<ブワッ!
優しい仲間達に泣いた。

605 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 07:57:02 ID:rHmMWW570
いい奴の話は泣ける。ありがとう。

606 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 11:57:15 ID:xz3SmQVE0
右手は挙手。
脚は135度に曲がった姿勢。
右手の高さは調節してあり、ピンッと張っている。これ以上、下に行けない。
行こうとすれば、右の中指から肩口までが重力で地獄を見る。
アリーナの両足首の枷とウエストの鉤付きコルセットは、鎖でつないで連動関係にあるから、
これ以上脚を伸ばして立つこともできない。
「調子どうよ」。アリーナの肩をユサユサする。
2時間近い空気イス、足の可動域はとても狭いけど、意外に様々な姿勢に変えて耐えてきたアリーナ。
肩ユサユサで、ついに「ヴァギャーーーアアア!!!!!」の絶叫。
「唾がかかったぞ・・・こら」。
その頃、ブライとクリフトは魔物側を動揺させるべく、人員を探していた。
「どこの村落や都市社会にも属してなくて、脚気や骨粗鬆症なんか無縁の健康状態で、
地動説を受け入れるぐらい見識と度量があって、冒険が嫌いではない善良な女は居ないものかのー」。
「ついでに姫様が大好きな方がいいですよね。どこかに居られないだろうか・・・・・・」。

607 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:43:40 ID:qNl9ubYi0
    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv8
     → 2:ヨウイチ Lv7
        3:タロウ  Lv6

608 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:44:23 ID:qNl9ubYi0
>>215 から

二十一、 私の世界

まぶたを開けると元の森の中でした。
火は消え、陽は昇りすっかり朝です。

「ふぁぁ…… っと。 二人で寝ちゃったのか」
「キ… キィ…」

はっと気が付き荷物を調べます。
荷物はどうやら無事なようでとりあえず安心しました。

「魔物にも泥棒にも襲われなくてよかったよな。
 完全に無防備だったし」
「キ?」
「大丈夫だ。 さー、いくか!」
「キィ!」

二人は立ち上がり焚き火へ土をかぶせ、森の出口を探し始めます。
しばらく森を迷い、もう出られないのではと思ったところでようやく外の景色を見つけました。
そこを抜けると目の前には路が横断し、その路へ乗り北へと向かう事にします。

「どれくらい遠いんだろうな?」
「キー」
「うーん、そうだよな。 お前はほとんど町から出たことなかったんだっけ」
「キィキィ」
「はは。 そうだな、歩いてればいつかはたどり着くか」

均された土を踏み、とにかく進むことにします。
しばらく歩いてヨウイチが思い出したようにドラオに話しかけます。

609 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:45:22 ID:qNl9ubYi0
「ああ、そういえばシエーナ、だっけ。
 あの町で会った女の人覚えてるか?」
「キィ、キキ」
「そうだった。 お前が最初に話かけ… ちょっかいだしたんだもんな」
「キ!」
「怒るなよ、ほんとだろ?
 でさ、ゲレゲレもだけどあの人もなんか周りの人たちとは違ったよな。
なんていうか、こう…」
「キ? キィ… キーッ!」
「な、馬鹿なこというな!
 鼻の下のばしてなんかないし別にそんなやましいことなんか…!」
「キ〜キ〜〜」
「ぬ… おまえ、ちょっと止まれ、いいから」
「キー!」
「あ! おい逃げるな!」

からかいながらドラオがすいすい空中を泳ぎ、ヨウイチは合わせて飛び跳ねながら追いかけます。
三分くらいそうやって遊んで、ふとヨウイチがいいました。

「もっと話を聞いておくべきだったかも、しれない。
 あの時は違うかもって思ったけど…
 "私の世界"ってどういう事なのか、もしかして俺と同じなのか……
もう一度、どこかで会えたらその時はちゃんと聞こう。
…俺は、一人じゃないのかって」

610 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:46:06 ID:qNl9ubYi0
ドラオがいてくれるから今はなんともありませんでした。
ですが夜になり一人でおきているとどうしても考えてしまうのです。
これが元の世界で一人だったなら、きっといまよりぜんぜん平気でした。

「そういえば名前も聞かなかった」

顔を上げ周りを見渡します。
遠くには薄色の山がそびえ、路はまっすぐに東西南北、それぞれ運んでくれようとしていました。

611 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:48:16 ID:qNl9ubYi0
二十二、 凍えるやま

何度もモンスターと戦い、商人や旅人と挨拶を交わしながら順調に進んできました。
何日、何十日かかったかわかりません。
二人は疲れていましたが、目の前の景色にそれはそれは感動していました。

「この山にマウントスノーの町があるらしい」

目の前はいちめん真っ白な山とふもとに広がる森に覆われています。
話に聞いていたマウントスノーがある山にたどり着いたのです。

「キィ」
「うん。 すごいな、山や周りの大地だけに雪が積もってる」
「キキー」
「そうだと思う、絶対さむい。
 けどお金ないし、節約で町に寄ったりしなかったからな。
お前はどうかわからないけど、俺はこんな薄っぺらな服で…」

途中いくつかの町を横目に見ましたが節約のためだと立ち寄ったりはしませんでした。

「けど大丈夫だろ、たぶん。
 山頂に登るわけじゃないんだし、ふもとからそんなに遠くないって聞いたし。
それに近くまできてるのにそんなに寒くないだろ?
けっこう平気でいけるんじゃないかな、たぶん」

不安はいっぱいありましたが、それでも進まなければなりませんから二人は森へと入ります。
森の中はしっかり路が作られ、それにそんなに寒くもありません。
もしかしたら平気なんじゃないかと二人は顔を見合わせ、どんどん進んでいきました。

612 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:54:50 ID:qNl9ubYi0

「さ、さむい……」
「……」

ヨウイチは自分の甘さを後悔していました。
森を抜け雪の積もる山を登り始めた最初はよかったのです。
足をとられ汗をかき、暑いとさえ感じていました。
ですが体が慣れてくるとそれはもう寒くてたまりません。
毛布で体を包みますが多少マシなだけでした。
ドラオはというと、寒さで凍ってしまったかのように口をつぐみ道具袋の中へ身を隠しています。
歩みは極端に遅くなり、きつくなる山の斜面はなかなか思うように進ませてはくれません。

「おい。 す、少しはしゃべって体を温めたほうがいいぞ…」
「……」
「…ったく。 しょうがないやつだな…」

風もびゅうびゅう吹き、細かい雪の粉が舞い、視界を遮ります。
時々やってくる強風に体が押され倒れそうになりますがなんとか堪えます。
そしてドラオには言いませんでしたが、この時点で方向を見失っていました。
雪に覆われどこに路があるのかぜんぜんわからなかったのです。
後ろを見てもどこを見渡しても飛び回る粉雪に隠されてしまいます。

「はぁ… 俺はなんで… こんなことしてるんだろ…」

山に入って丸二日、ほとんど食べず眠らずで進んできましたが一向に町は見えません。
夜だって早く町へ到着するために這いながら進んだのです。
ですがあまりの寒さと疲労で頭はもうろうと、あんまりよく考えられなくなってしまいます。

 もう、いいじゃないか。
ここまで頑張ったんだ。
ここで眠って目が覚めれば、きっと元の世界だ。
これは夢だ、夢に違いないんだ。

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 13:55:51 ID:up//Ht/i0
支援

614 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 13:59:06 ID:qNl9ubYi0
甘い考えが頭をよぎり、ですがどうしても振り払うことが出来ず、やがてヨウイチはその場にうずくまってしまいます。

「ラーメン… 喰いたいなぁ……
 あ? あの灯りは、屋台かな。
おおーい、客が、ここにいる、ぞぉ…………!!」

ハッと体に力が入り勢い良く立ち上がり、その灯りへ向け雪をもぐり進み始めます。
そうしてとうとう、どうやら人気のある場所へとたどりついたのです。
さっきまでの疲れや眠気がまるでなくなって、もう頭の中はラーメンでいっぱいでした。

「あっはっ!!」

感覚で一時間くらい、実際は十五分です。
思わず笑ってしまいました。

「町だぞ! おいドラオ!!
 ついたんだよマウントスノーに違いない!!」

道具袋がもぞもぞしてドラオが顔を覗かせます。
町は、すっかり雪に埋もれていましたが窓から漏れる明かりはとても暖かく感じました。

615 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 13:59:45 ID:up//Ht/i0
支援

616 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 14:08:29 ID:qNl9ubYi0
二十三、 マウントスノー

「どうだ、体調は」

年老いた男の声で意識がはっきりしてきます。
体を動かしてみると、ふかふかのベッドに寝かされているのがわかりました。

「ここは… 屋台は…?」
「なんの事だ? 私はブルジオといい、ここはマウントスノーで私の家だ。
 君は五日のあいだ眠っていたのだよ」
「あ、俺はヨウイチです。 確か、町に到着したのは覚えてるけど…」
「町の入り口で倒れていたのだ。
 あの吹雪だったろう。 私は町長として外の様子が心配になり数人と見回りをし、騒ぐドラキーを見つけた」
「気を失ったんだ… あ、助けてくれてありがとうございます。
 なんていったらいいか… 本当に感謝します」
「礼には及ばん。 いつもの事で慣れているしな。
 今はすっかりいい天気で、雪もほとんど溶けてなくなった」

ホッとし、ベッドから起き上がってドラオを探しますが見当たりません。

「ドラキー、どこにいますか?」
「さっき広間で─」
「キィーーッ!」

バタバタ飛びながらドラオがヨウイチの顔にしがみついてきました。
羽が当たって痛いのですが、無事で安心します。

「見ての通り元気だし食欲もある。
 君をずっと心配していたよ」

部屋はきらきらした飾りがたくさんあり、暖炉まであります。
床には複雑な刺繍を施した絨毯が敷かれ裕福な家であると教えてくれています。

617 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 14:18:49 ID:qNl9ubYi0
「しかし、ずいぶんと軽い格好で来たようだな。
 それにこの時期のあの三日間だけは山が吹雪いてしまうから、誰も外へは出ないというのに。
下の町で聞かなかったかね?
毎年、君のように迷い運ばれてくる者がいる」
「町へは寄らなかったもので… すみません、そういう時期があるとは…」
「準備も無しに山を登るとは。
 まぁ時期でなければ過ごしやすい気候だから、運がなかったな。
ここマウントスノーは他とは違い特別なのだ」

なんだか恥ずかしくて、ヨウイチは自分の姿を見返します。
ですが旅人の服ではなくて、まるで着た事のない厚手の服に着替えさせられていました。

「元の服はすまないが処分させてもらった。
 もう防具としては機能しないほどにボロボロだったのでな」
「し、しょぶん?!
 それは困る! 俺はまだ旅をしなきゃならないんだから!」
「ふむ。
 なぜ旅をしている? ここマウントスノーに来た理由はなんだね?」

自分の装備を捨てられびっくりしましたが、ブルジオの冷静な質問に落ち着きます。

「…目的は、まぁいろいろあって。
 マウントスノーにきたのは不思議な石版をみてみたいと、思ったからです」
「ほう… 石版を知っているのか。
 見てどうするんだね?」
「それは─」

言われて気づきました。
見るだけでは駄目なのです。
石版を手にし、それを神殿へと持っていかなければ意味がないのです。
ヨウイチは考えを改めることにします。

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 14:26:13 ID:S+ds57ZqO
支援

619 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 14:26:32 ID:qNl9ubYi0
「……正直に言えばその石版を譲ってもらいにきました」
「ふむ。 石版を持っているのは私だ。
 …欲しいのなら一つ、条件を出そう」
「条件? なんです?」
「武器を持っているということは、君は戦いを知っているわけだ。
 そこで頼みがある。
 町の北にある洞窟に、スライムナイトというモンスターが住み着いたのだ。
普段なら町の中まで入ってくるモンスターなどおらないのだが…
あろうことか町へ忍び込みいたずらするようになった。
町の設備を壊したり畑を荒らしたり店の品物を盗んだり貢物を要求したりと、だんだん手におえなくなったのだ」
「え。 まさかそのスライムナイトを退治してくれと?」
「そうだ。
 これまで町に訪れる商人や旅人に依頼してきたが、失敗している」

ブルジオがごそごそ数枚の紙を取り出します。
ドラオがなぜか目を輝かせているのがわかりました。

「これはすごろく券といい、信用できる商人から仕入れたものだ。
 私は行ったことはないがなんでも広大なすごろく場で遊べるものらしい。
これをスライムナイトに渡してきて欲しいのだ」

すごろく券を手渡されますが、ヨウイチはどうにも納得できません。
モンスターがすごろくをするなんて考えられないからです。

「あの… 俺はそのモンスターを知らないんですが、こんな紙切れで大丈夫なんでしょうか」
「いや、大丈夫だ。
 様子を見に行ったときスライムナイトが"どうしてもすごろく場で遊びたい"と話しているのを聞いたからな」
「…そうですか。
 けど、そんな簡単な事でどうして失敗を?」

620 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 14:39:21 ID:qNl9ubYi0
「それは… すごろく券と一緒に誰もが約束を果たさず逃げてしまうんだ。
すごろく場はよっぽど魅力的なのだろう… 私は旅の者と出会うたびに頼んでおる。
もちろん、君は特別に信用している」
「はぁ… で、この券を渡せばモンスターもすごろく場へ行ってくれると。
 でも、券がなくなれば戻ってくると思うんだけど」
「戻るだろう。
 が、それまでに対策を考える。
その時間稼ぎのために、一時でもいいから洞窟をからっぽにしたいのだよ」

なるほど、と考えましたがやっぱり納得できないところもありました。

「でも、渡すだけならそれこそブルジオさんだって出来る事だし」
「いいや。 もし券を渡して襲い掛かってきたら、我々は戦えない」
「あー… なるほど」
「うまくいったら石版は譲ろう。
 頼んだよ、ヨウイチくん」

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 14:52:10 ID:Edfd1jenO
ゐるぽ

622 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 15:09:07 ID:l8Yjy7xSO
規制に引っ掛かってしまうとは情けない!

623 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:09:28 ID:qNl9ubYi0
二十四、 名もない洞窟

あくる日。
町は初めて見たときと全く違って雪はほとんどなくなっていました。
気候も陽のおかげか少し暖かく、あの吹雪が嘘のようです。
ブルジオの家で一泊した二人はぬかるんだ土をじゃぶじゃぶ踏んで北の洞窟へ向かいました。

「キィーキ−キー!」
「え、だめだよ。
 石版をもらうんだから。
革の鎧だって借りたし、持ち逃げなんて出来ない。
それよりほら! 剣と鎧、似合うだろ?」
「キィ…」
「……おまえ、そんなにすごろく場いきたいのか。
 でもなんで知ってる? 町から出たことないのに。」
「キ? …キー キーィ」
「知らないけど知ってる? なんだそれ。
 この世界の常識ってやつか? モンスターの本性ってやつか?」

洞窟は町からあまり離れてはいません。
話しながら歩いているうちに、丘へぽっかり口を開いた洞窟へとたどり着きました。

「ここみたいだ。 なんか薄気味悪いな」
「キキー」
「うん、暗くならないうちに帰ろう。
 中は一本道で短いっていってたし、すぐさ。
それにスライムナイトっていったってスライムなんだろ。 たいしたことなさそうだ」

ランプに灯りをともし洞窟へと入ります。
溶け始めた雪や暖かい日差しのせいでしょう。
中はとても湿っていて嫌な雰囲気です。

624 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 15:11:33 ID:VQqXW+gb0
リアルタイム遭遇ktkr
支援です〜。


625 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:19:46 ID:qNl9ubYi0
「うわぁ。 なんかこんなとこ、ずっといるのはヤだな…」

ところが、ヨウイチの予想と違って二、三分まっすぐ進んだだけで最深部へと着いてしまいました。

「あ、あれ。 なんだもう奥か…」
「なんだおまえ!」

ドキリとして声のした暗がりを見ます。

「マウントスノーの人間か? 貢物ならさっさとよこせ」

そこにはおおきいスライムと鎧を着た人間に近い、背の低いモンスターがいました。
一匹だと思っていたのでヨウイチはあせってしまいます。

「あ、俺は… すごろく券を渡しに来たんだ」
「すっ?! すっ、すごろく券!!」

券の束を差し出すとスライムナイトは素早く奪い取りました。
束を数え、それからヨウイチとドラオをじろじろ見ます。

「間違いない本物だ。 俺は早速遊びにいきたいが、お前が邪魔だ」
「なら、俺はもういくよ」
「ちがうちがう、そういう意味じゃない」

人間みたいなモンスターがおおきいスライムにまたがり、スライムナイトが言いました。

「お前の着てるもの持ってるもの、全部いただくとする。
 だから生身は邪魔だ。 全部置いて帰れ」

626 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 15:28:11 ID:UOTk8ALo0
支援。

627 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:29:35 ID:qNl9ubYi0
二十五、 スライムのくち

「くそっ! やっぱりこんな事になるのかよ!」

ヨウイチは身構えます。
相手は弱そうですが二人、油断はできません。

「ほー。 歯向かって来るなんて生意気だ。
 俺は強いんだぞ? いいのか? 痛い目にあうぞ?」
「うるさい! 目の前に悪党がいるのに引き下がれるか!」
「う、むぅ。 ん、おいドラキー。
 なんで人間の味方してるんだ、さっさとこっちへこい!」
「キィーー!!」
「な、なんだ。
 おまえ、堕落しきった人間にすっかり染まってしまってるな。
ようし…」

スライムに乗った戦士がなにやらドラオへ指を指しゆらゆらさせます。
ヨウイチはドラオをかばうように前へと出て剣でひゅうと威嚇しました。

「あっ! なんだ人間!
 じゃまをするんじゃない!」
「うるさい!
 とっととすごろく券を持って行け!」
「…まぁいい。 中途半端だがもうそのドラキーは俺達の仲間に戻った。
だてにスライムと一緒にいるわけじゃあないぞ!」

ハッとしてドラオへ振り返ります。
ドラオの目はとろんとしてしまい、意識がもうろうとしているみたいでした。

628 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:36:58 ID:qNl9ubYi0
「お、おい! ドラ─」

ドカリと背中に重い衝撃が加わりました。
スライムナイトのスライムが体当たりしてきたのです。
その衝撃でドラオを思わず抱えこんで地面へと転がってしまいました。

「このやろう! 卑怯だぞ!」
「こっちはお前の物がぜんぶほしいんだ。
 綺麗もひきょうもない!」

今度はナイトが剣をびゅうとふるいました。
ドラオをぽいと投げ、剣を構えなおしながらごろごろ転がって避け、しっかりと構えなおします。

「今度はこっちからだ!」

土をけってまるで野球のように剣をぶうんと振り、それをスライムナイトがひょいとよけます。
あんまりに思い切り振ったものですから、ヨウイチは剣に引かれてトトトと横を向いてしまいます。

「ちょろい!」

スライムナイトの剣が風を切ってヨウイチの肌を切り裂きます。

「ピー!!」
「いっつつ!!」

今度はスライムに足をかみつかれてしまいました。
ヨウイチは痛みをこらえて後ろへ下がり、大勢を整えようとします。
切られた腕は思ったより深い溝ができ、足にはスライムの口型が残ってとても痛くてたまりません。

629 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:45:39 ID:qNl9ubYi0
「きぃ」
「お?! おお、ありがとう」

ふらふらしながらドラオが薬草を手渡してくれました。
様子がおかしいので気になりますが、今はそれどころではありません。
薬草を飲み込み傷を癒し、考えます。

 あいつはあまり剣はうまくないし動きも早くない。
それに都合のよいことにとても油断している。
良く見ろ。
落ち着けば必ずかてるぞ。
 弱点だってあるはずだ…

深呼吸を一回、二回。
足元のちょっぴり大きめな石を片手に取りスライムナイトへ駆けていきます。

「もうあきらめて荷物を全部よこすんだな!
 正直ちょっとビビってたがなんともないぜ!」

びゅうんと大振りなナイトの剣がヨウイチの胸すれすれを通り過ぎ、体勢が少しだけくずれます。
ヨウイチはこの瞬間を狙っていました。
油断しているので気にせず剣を振り回すだろうと予想したのです。
そのまま予定通り、スライムの開きっぱなしになっている口へ思いっきり石を投げ込みました。

「ビギッ!! ビーッ!!」
「な! な! スラぼうどうしたのだ?!」

スライムはとても痛がって、それはもう暴れる牛みたいになりました。
そんな状態で、上に乗っているナイトはたまりません。

630 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:54:19 ID:qNl9ubYi0
「こらー! 落ち着けー!!」

どすんと、暴れるスライムからナイトがすべりおち、スライムはさっそく口に入った石をぺっぺと吐き出しています。

「ば、ばかっ! 俺をおろすやつが─」
「さー逆転だ。 どうする?」

地面へへたるナイトへ切っ先をたて、大きいスライムを片足で抑えていいました。

「あ… いや、いや。
 お、俺は地面の上ではちゃんと戦えないんだ…
だから、許してくれ!!」

ナイトが必死に頭をさげます。
スライムは気の毒そうにその様子を見ていましたが、ガツンとした音と一緒にぺったんこになってしまいました。

「なにしてるんだよ! ドラオ!」

見るとドラオが大きな石をスライムめがけて投げつけていたのです。
表情はまるで今までみたことのないこわい顔をしていました。

631 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/10/06(土) 15:58:25 ID:qNl9ubYi0
みなさまお疲れ様です。
今日の投稿はここまでです。
支援、ありがとうございました。

ついでに、まとめサイトへ絵板に投稿された画像のまとめページを新設しました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

632 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 16:01:21 ID:VQqXW+gb0
お疲れ様でした。
なんとか形勢逆転ですね。
それにしても、ドラオさんの豹変、気になりますね・・・・。

催眠術かなにかでしょうか・・・。

633 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/06(土) 23:17:08 ID:sncsb/yf0
ドラオ野生化?

634 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/07(日) 01:44:45 ID:kTrpigk90
ドキュン世界の宿屋だったら嫌だな。
田舎の学ラン・リーゼントのグループと今風の20代肉体労働者が混在してるのを、
時空的にもカオスな世界だとか勘違いしたりして。
宿屋は通称ドヤ。

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/07(日) 10:33:42 ID:4rst9skZ0
しかもタコ部屋だったりする。
二階には圧力鍋爆弾を作ってるDQNが住み着いている。

636 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:30:54 ID:gO/7QA3i0
―下の巻― (>>505-512)

宝物庫のおっさんが死んだ。

俺たちは魔王バラモスを倒しアリアハンに凱旋した。
おっさんはラッパを鳴らして俺たちを祝福していた。
勝利の報告を国王にしようとしたまさにそのとき。
恐ろしい声が響き渡った。次の瞬間、雷のような、何か黒い力がおっさんに襲い掛かった。
やったのは大魔王ゾーマ。それはゾーマの俺たちに対する煽りだった。
奴にとっては何てことない煽りだったのだろう。つまらない、呆れるほどつまらない理由だ。

ゲンは怒りを隠そうとはしなかった。それは自分の無力さへの怒りかもしれない。
ポンドは手に負えないと分かっていてもおっさんの治療を止めようとはしない。
ユーロは泣きそうな顔をしていたが決して涙は流さなかった。
そうだよ、もう泣かないって俺と約束したもんな。……くそッ!
俺はこの光景をどんな間抜け面で眺めていたのだろうか。

国王は突然の出来事にまるで魂が抜けれいるようだった。
ポンドは王様を介抱するためここに残ると言ってきた。
「それに、今のあなたたちに必要なのは神の力ではないでしょう。」
ポンドは自分の引き際を知っているかのようにそう言った。
俺は父親が自分の生きたいように生きろと言っているような妙な錯覚を覚えた。
その苦労人に礼を言うと俺はゲンとユーロとともにアリアハンを後にした。

637 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:32:58 ID:gO/7QA3i0
ドルの入っていた牢屋はなくなっていた。
最悪の事態を想像したがそれは杞憂に終わった。
町の人間はドルを許したようだ。
許したと言うよりはドル以外誰も町をコントロールできなかったのだろう。
追い出しておいて彼女に頼らざる得なくなる。情けない奴らだ。
そして、その情けない奴は今の俺でもある。
俺たちはドルにこれまでのことを話した。
「そっか。辛かったね……」
自分だって理不尽にも牢屋につながれていたと言うのに。
「この町は私の子供のようなものよ。あれはちょっと反抗期を迎えただけ。」
女は強いな。
「ねえ、もう一度私を冒険に連れてってくれる?」
「お前がいなくてこの町は平気なのか? お前の子供みたいなものなのだろう。」
ゲンが当然の疑問を投げかけてくる。
「町の代表をみんなで選ぶシステムを作ったわ。この町はもう大丈夫よ。」
自分がいなくても町が動くシステムまで作り上げたのか。
「それに……」
「それに?」
「子供はね、いつか親から独り立ちするものよ!」
本当に女は強いな。
「でもさ、いまさらパーティーに商人なんて要らないわよね。」
いや、必要なのは商人じゃない。おまえ自身なんだ。
「だから、私ね、賢者に転職する!」

638 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:34:13 ID:gO/7QA3i0
俺とドルは2人でラーミアの背中に乗り竜の女王の城に向かっていた。
ドルが集めた情報では竜の女王は光の玉と言うものを持っていると言う。
ゲンとユーロは悟りの書と言う賢者になるために必要な本を探している。
ユーロのことは心配なのだが何かしていたほうが気が紛れるだろう。
「本当にいいのか? ……転職。商人はお前の誇りだろ。」
「商人としてやりたかったことはやっちゃったから。いろいろあったけどね。」
「……町のみんなに許してもらえてよかったな。」
「ねえ、覚えてる? 町を作るときエンが言ったこと。」
なんだっけ。どうしてバラモスが小指を柱にぶつけて悶絶する姿が頭に浮かぶんだ?
「私、みんなが幸せに暮らせる町、作れなかった……」
「そんなことない。あの町はみんなが幸せになるところに変わろうとしている。」
「……本当はね、牢屋に入れられたとき、とても辛かった。」
「泣きたいなら泣いていいぞ。……ここには誰もいない。」
そうさ。泣きたいとき人が泣くのを止めさせることなんて誰にもできやしないのだ。
「あなたがいるじゃない。」
「言っただろ。俺は違う世界の人間なんだって。だからカウントしなくていい。」
「……今だったら信じるかも。」
「変わったよな。昔は信じられるのはお金だけって言ってたのに。」
「ふふ、変わったと言うならエンの方よ。」
「俺が?」
そうか、俺は変わったのか。

俺たちは竜の女王から光の玉を託された。その直後、女王は出産とともに亡くなった。
女王は子供のために光のある世界を望んだ。俺たちができることは大魔王を倒すことだけだ。
誰も他人を泣くのを止めさせることなんてできやしない。
だが、暗闇が怖くて泣いている人のために光を灯すことはできるかもしれない。

その後ユーロたちが見つけてきた悟りの書を使いドルは賢者になった。
賢者は魔法のエキスパート。転職すると雰囲気も変わるようだ。
魔法を一から覚える。それがどんなに大変なことでもドルならやってのけるだろう。
そして俺たちは大魔王ゾーマのいる世界に通じるギアガの大穴の中へ飛び込んだ。

639 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:36:16 ID:gO/7QA3i0
穴の中にあったのはアレフガルドと言う闇の世界だった。
イメチェンしたカンダタを華麗にスルーし、大魔王の城へ渡る方法を見つけることにした。
そして奴に対抗できるような強力な武器防具を手に入れることも考えなければ。

強力な防具である勇者の盾、光の鎧は見つけた。鎧のあった塔ではルビスが封印されていた。
全てを司るのに封印されるとは情けない。聞きたいことは山ほどあるが大魔王を倒したあとだ。
封印をといたルビスから聖なる守りを受け取り魔王の城へ行くための虹の雫を手にいれた。
そして王者の剣の情報をドルが手に入れ、その材料となるオリハルコンをユーロが見つけた。
これをマイラと言う村の刀鍛冶に剣にしてもらおうと思ったが話が進まない。
俺は気晴らしに温泉に入ることにした。しばらくたった後ユーロがきた。
「オリハルコンを剣にしてもらえるよ! 今ドル姉ちゃんとゲンあんちゃんが話をしてる!」
「本当か! あの鍛冶屋どういう風の吹き回しだ?」
「鍛冶屋の奥さんがモンスターに襲われていたところをゲンあんちゃんが助けたんだよ!」
「それなんてエロゲ?」
俺はそうつぶやいていた。

「ねえねえ、エンあんちゃん。聞いてもいい? エロゲって何?」
聞かれていた。
昔の俺だったら「自分で調べようね。」という意味のことを3文字で言い放っていたろう。
だがこの世界にはパソコンも検索サイトもない。教えてやることにしよう。
「エロゲというのは男の人と女の人の物語で男にとって魅力的なお話のことだ。」
俺は嘘にならない程度に答えておいた。
「ふーん。ねえ、エンあんちゃんもエロゲしてみたい?」
「ああ、してみたいなー。」
「そっかー、おいらもできるかな?」
「ははははー、ユーロにはまだ早いなー。」
などと、ほのぼのとした会話を繰り広げた。俺っていいあんちゃんだな。
この世界にエロゲを知っている人間はいないのでほのぼのとした会話にしか聞こえまい。

こうして俺たちはエロゲ的な展開で手に入れた剣を持ち、ゾーマの城に乗り込んだ。
……うーん、様にならんな。

640 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:37:17 ID:gO/7QA3i0
ゾーマの城では男がでかいドラゴンのモンスターと戦っていた。
「私はもう駄目だ……。そこの旅の人よどうか伝えてほしい。私はアリアハンのオルテガ。」
戦いに敗れた男は俺に何かを話しかけてくる。
「エンを訪ねオルテガがこう言っていたと伝えてくれ。」
エンとは俺のことではないか。
「平和な世界にできなかったこの父を許してくれ……とな ぐふっ!」
父。そうか、この男はエンの父親なのか。
だが、どうすればいいんだ。エンは俺だがこの男の言うエンは俺ではない。
この男のいうエンにどうやって伝えればいいというのだ。
本当のエンはどこにいるのだ?

そんなことをゆっくり考える間もなく魔物たちは容赦なく襲ってくる。
大魔王の側近どもをなぎ倒し俺たちはついに大魔王と対峙した。

負ける気はしなかった。
力のゲン。鍛え抜かれた肉体から放たれる拳は会心の一撃となり大魔王を襲う。
すばやさのユーロ。誰よりも速く賢者の石をかざし味方の危機を何となく救う。
賢さのドル。その英知から繰り出される数々の魔法は仲間を守り大魔王を討つ。
俺の仲間は強い。
差し詰め元デイトレーダーである俺のとりえは運のよさか。
運のよさ。そうだな、こんな仲間と旅ができた俺は幸せものに違いない。

641 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:38:19 ID:gO/7QA3i0
「光あるかぎり闇もまたある……。わしには見えるのだ。再び何者かが闇から現れよう……。」
滅び行く大魔王が最後の捨て台詞を吐く。
……俺はどこまでも大魔王とは気が合わないらしい。
俺に言わせれば光があるから闇があるんじゃない。闇があるから光があるのだ。
誰だって闇は怖い。勇者だって暗闇は怖い。だからこそ人は光を求めるのだろう。
絶望の闇に落とされたからこそ俺たちは誰よりも強く光を求めた。
どうやら絶望を食らうのは大魔王だけではないらしい。人もまた絶望を糧に生きていけるのだ。

642 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:39:21 ID:gO/7QA3i0
大魔王を倒したことで俺はロトという称号を手に入れた。
「エン、エン、私の声が聞こえますか?」
そしてタイミングよくルビスの声が聞こえてくる。どこかで見てやがったか。
「大魔王のいなくなった今なら、あなたの記憶を戻すことができます。」
何を言っているんだ? 意味が分かっていない俺の頭はひとりでに何かを深く思い出す。

……そうだ。思い出した。俺はアリアハンのエン。オルテガの息子だ。
「あの16歳の誕生日、あなたは大魔王の力によってエンとしての記憶を失いました。」
エンはここにいた。じゃあ、デイトレーダーの俺はいったい誰なんだ?
「記憶を失ったあなたに私ができたことは、前世の記憶を呼び出すことだけでした。」
前世の記憶。俺はエンとしての記憶を失いあたかも突然この世界に目覚めたようになったのか。
やはり俺は1度死んでいた。そして生まれ変わった。だがそれは十数年も前のことだった……
そもそも生まれ変わったとして16歳からスタートするなんておかしな話なのだ。
何ってこった。エンと言う名前は思いついたのではなくかろうじて覚えていたことだったのか。
あのときルビスが質問攻めにしたのは前世の俺に対して探りを入れていたというわけだ。
「よくやってくれましたね。エン。」
「褒めるなら仲間たちも一緒にしてくれないか。俺1人ではどうしようもなかった。」
「ええ、もちろんです。ドル、商人としも賢者としてもみなの助けになってくれました。」
「私もみんなに助けられました。」
「ユーロ、子供ながら辛い戦いを乗り越えましたね。」
「えへへ。おいらがんばったよ。」
「そしてゲン。異世界の人間であるにもかかわらずよくやってくれました。」
「……ああ。」
……何を言っているんだ。
「俺はこの世界の人間ではないのだ。ある日、目を覚ましたらこの世界の宿屋にいた。」
まったく最後でこんなどんでん返しが待っているとは。
ゲンは前世の俺がいたまさにその世界から迷い込んできたらしい。
そしてこの世界に体ひとつでやってきたゲンは武闘家として生きることにしたのだ。
俺は異世界からただ1人この世界にきたと思っていたがそれも違っていた。
この衝撃の事実を知って俺が最初に何を思ったか。
それは「やべ、エロゲ知ってる人間いたよ。」ということだった。

643 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:40:23 ID:gO/7QA3i0
大魔王はいなくなりこれから俺たちの新しい生活が始まる。
ゲンは元の世界には帰らなかった。
俺は元の世界では死んでいるので帰れるわけはない。
不思議なことに、今だったら両親が俺の墓の前で泣いている姿が想像できる。
だが俺は涙を見たくない。誰も俺のために泣かないでほしい。
俺はこの世界でこうして生きているのだから!

この世界で俺は勇者になった。ロトと言う最高の称号も手に入れた。
だが、俺がいなくてもこの世界が闇に覆われることはないはずだ。
明るく照らす光によって見たくもないものが見えてしまうかもしれない。
俺の灯した光はすぐに消えてしまうかもしれない。
それでも人は闇を恐れる。人には光が必要なのだ。
だからきっと誰かが光を灯すだろう。
誰もが光を灯すことをできるわけではないかもしれない。
光を灯すことができなくても嘆き悲しまないで欲しい。
闇の暗さを恐れる人は光の大切さを知っているのだから。
光を望む思いがきっと誰かの力になるはずだから。

この世界に案中を求めるより、もう少しこの仲間と冒険を続けたい。
俺やゲンが住んでいた世界に行く方法を探すのも面白い。
どこかまったく違う世界で自分の国をつくってみるのもいい。
世界のどこかにはなんでも願いをかなえてくれる竜がいるという。
まずはそいつを探してみるのもいいかもしれないな。
親父や宝物庫のおっさんも生き返らせることができるかもしれない。

644 :冒険の書3 ◆8fpmfOs/7w :2007/10/08(月) 00:41:25 ID:gO/7QA3i0
「そういえば、お前たちの本当の名前ってどんなものなんだ?」
「教えない。」
ドルがいたずらっ子のような顔をして言う。
「何で?」
「私はね、あなたのつけてくれた名前が気に入ってるのよ。」
「おいらも!」
「俺もいまさら昔の名前を名乗る気はしないな。」
「もうアリアハンへは帰れないもん。」
「ギアガの大穴が閉ざされてしまったからな。」
ユーロとゲンが口々に言う。
帰れない。俺も母を母だと分かった今もう会うことはできなくなった。
いや、俺は希望を捨てない。もう一度上の世界に行く方法を探すというのもいいかもしれない。

そういえば、元の世界でも名前を変わることがある。主に女の苗字が男のものに変わる現象だ。
「帰れないし仕事も捨てたし、これはもう一生面倒見てもらわないと割に合わないわね。」
「おいおい、一生俺から搾り続けようってのか?」
「何でそういう発想しかできないの?」
「だってそれくらいの覚悟が必要だろ。結婚するなら。」
「……ばか。」
ああ、泣かしてしまった。でも、こういう涙ならありかな。


最後に言っておかねばならないことがある。
それは、俺がどこにいてどんな立場なのかを考えれば分かることだ。
俺は「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら」スレにいて実家で目覚めた。
だが、宿屋で目覚めたのはゲンだ。だからこの物語の主人公は奴だったのだ。
反論は認める。

―完―

645 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/08(月) 00:47:24 ID:9VyNVymT0
乙でした!
リアルタイム遭遇でドキドキしながら読ませていただきました。
最後の五行にはやられましたw

646 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/08(月) 02:41:41 ID:9UYElayPO
なんという展開www

647 :晴闘雨読【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:09:02 ID:F1lHfvAb0
LOAD DATA 第三話>>583-601   

コバルトブルーの海を臨む小さな修道院の裏にひっそりと存在する小さな十字架。
朝焼けの中を吹きつける潮風に浸食され、墓碑銘すら読めない朽ち果てた墓。
「シスター・シエロ。ずっと気になっていたんだけど、あの墓は誰の墓なんだ?」

「あの十字架の下に眠るのは、一つの愛に殉じた修道女だと伝えられています。
 ずっと昔…記録には残っていませんが、この修道院ができた頃でしょうか…
 シスター・ビオレッタという修道女が行き倒れの異国の男と恋に落ちました。
 修道女と異国の男が密かに愛し合っているという噂はすぐに教会の耳に入り、
 ビオレッタと男は異端として捕えられ、二人は激しい拷問の末に処刑されました。
 二人は気が狂うような拷問の最中でも互いの不利になる事を口にせず、
 火刑台に上がった時でも最後の瞬間まで互いを愛し続けたと言われています。
 その姿が他の修道女の心を動かし、せめて神の下で二人一緒になれるように…と、
 一つの十字架の下に二人の灰を埋葬したそうです。」

「神の下で一緒に…か…二人で生きる方法はなかったのかな…」

「時代が違いますから…命と引き換えに愛を求めた事を誰も責められないでしょう。」

俺の手が自然と足元に咲く花を一輪摘み、朽ち果てた墓前にそれを供える。
そんな俺を見て、シスター・シエロ…この修道院の院長が微笑む。
「イサミ様はお優しいのですね。シスター・ビオレッタもきっと喜んでましょう。
 …さあ、そろそろ戻りましょうか。そろそろ朝食の準備を始めませんと…
 皆さんと頂く最後の朝食ですからね。」

海の向こうから昇る朝日が小さな墓をゆるやかに照らす。

自由の身になってから一日たりと欠かした事のない毎朝の散歩。
この光景とも今日でお別れか…

つい感傷的になる俺の足元を、さっき供えた花が潮風に吹かれて飛んでいった。

648 :晴闘雨読【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:14:26 ID:F1lHfvAb0
二週間前…俺達を乗せた樽が流れ着いたのは、小さな岬の修道院。
嵐に巻き込まれ、樽の中で気を失っていた俺達はここのシスター達に救助された。

四人全員が無事なまま土を踏めた事を全員で泣いて喜び、
久しぶりに口にする温かい食事を全員で泣きながら食べた。

『行き先がないなら好きなだけ修道院にいても構わない。』
修道院長のシスター・シエロが微笑みながら言った。

サトチーは父親の遺志を継いで、旅を続けると言う…
ヘンリーはラインハットに帰ると言う…
マリアはこの修道院で兄の無事を祈り続けると言う…
「俺は…残してきた仲間達を助ける。何年かかっても絶対だ。」

昨夜、今後の予定を話し合った席で俺は迷わず皆に告げた。
少し前の俺なら、元の世界に帰る方法を探す事を最優先しただろう。
だが、今の俺にはこっちの世界での確固たる目的がある。
仲間達を助けて…その後の事はその時考える。

最初の目的地はこの修道院の北の町 商業都市オラクルベリー。


自由とは、夜明け前の闇を手探りで進むような恐ろしさを併せ持つ。
負けるものか…

…俺は絶対に強くなる。


朝焼けに染まる海を眺めて自分を鼓舞する。

…強くなって、必ずあの神殿に戻る。

649 :晴闘雨読【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:16:08 ID:F1lHfvAb0
「イサミ様…」

シスター・シエロの呼びかけにハッとして振り向く。

「イサミ様はお強い方。ご自身のお悩みも必ず解決できましょう…
 ですが、イサミ様が道に迷った際はいつでもここを訪れてくださいませ。」


朝焼けに照らされたシスター・シエロの姿はいつもより優しそうで…
いつになく寂しそうに見えた。
「…突然申し訳ありません…では、修道院に戻りましょう。」

そう言って背を向け歩き出すシスター・シエロの背中は小さくて…
でも、とても広くて温かく見える。





…確か、母ちゃんの背中もあんなんだったけか…





「長い事お世話になりました。このご恩は忘れません。」
「皆様の旅の安全をお祈りしております。どうかお気をつけて。」
サトチーが代表してシスター達にお礼を述べる。

修道院を後にし、俺達はそれぞれの目的のために歩き出す。

650 :晴闘雨読【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:16:42 ID:F1lHfvAb0
天気は快晴。広い草原の草花を揺らす風が気持ち良い。

へえー、地平線なんて実際に見るの初めてだよ。
あっちの世界じゃあ360°どこを向いても灰色の建物ばっかりだったよなあ。

生まれて初めて見る一面緑の景色に、俺は半ば感動しながら歩く。

「なあ、サトチー。イサミは何でさっきからキョロキョロして歩いてるんだ?」
「さあ?イサミの世界では建物の外に出ない生活が主流なんじゃないかな?」
「はぁ〜〜…それで、外の景色が珍しいって?どうにも退屈な世界だなあ。」
「まあ、僕も想像で言ってるだけだからわからないけど…確かに不健康だよね。」

列の一番後ろを歩く俺の前で、サトチーとヘンリーがヒソヒソと話し込んでいる。
うん、物凄くよく聞こえてるし、明らかに俺の世界が誤解されているな。
確かに『ここ数ヶ月、太陽を見ていませんが何か?』なヒトも一部存在するけど、
それが俺の世界の人間全てだと思われるのは心外d…… どむっ!!

「痛っ!何すんだよヘンリー……??」
背後に何かがぶつかるような衝撃を受け、前に突き飛ばされる。
どうせまたヘンリーの悪ふざけだろうと思った…けど、ヘンリーは俺の前を歩いている。


そぉーっと振り返った俺の目に入ってきたのはアレ。

あぁ、すっかり忘れてたよ。コッチでは出るんだったよね…

やあ、久しぶりだね。モンスター達…


「…って、落ち着いてる場合じゃねえ!モンスターだあ!!」
うん?デジャビュを感じるな…

651 :晴闘雨読【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:17:33 ID:F1lHfvAb0
俺達をぐるりと取り囲むモンスター。

青いタマネギみたいなプルプル…あぁ〜コイツどっかで見たことあるなぁ…
でかいハンマーを担いだ小人みたいなヤツ…アレで殴られたのか…
そして、灰色のイタチみたいなヤツ…でも妙に首が長くてキモイ…


「二人とも落ち着いて。背後を取られないように円陣を組むんだ!
 ヘンリーは魔法で右のスライム達を頼む。数が多いから気を付けて!
 僕が前方のガスミンクを引き受ける。イサミは後方のブラウニーだ。」

サトチーが的確に指示を出し、ガスミンクにチェーンクロスを振るう。
ムチ男との戦闘のときにも思ったが、やはり場慣れしている。

「よぉし、かかって来やがれスライムども!」
ヘンリーがスライム達にメラを放つ。

よし!俺も……  ―!!―



ドゴッ!



不意打ち…いや、戦闘中によそ見をしていた俺が悪いか…
ブラウニーのハンマーは辛うじて俺の頭部を掠めるにとどまったが、
アレを頭に喰らったら大怪我じゃ済まないな。

サトチーから譲り受けた銅の剣を構え、一回深呼吸…

行くぞ!!

652 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/08(月) 03:22:03 ID:T+32Y4EE0
支援!

653 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/08(月) 03:23:36 ID:F1lHfvAb0
今日の投下はここまでです。

地平線…一度でいいから本物を見てみたいな。

654 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/08(月) 08:46:24 ID:FYvz4DZ8O
>>644
展開も面白かったし、オチも最高w やられたwww
だいぶシナリオはしょってるのにそんな気がしなかった。
これでロト編は完結か。天空シリーズも期待してます。

>>653
奴隷仲間のことはプレイ中に気になってたから、
これを目標にする主人公はいいなぁ。
これから長いけど頑張ってください。

655 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/08(月) 12:28:16 ID:E4A24FDB0
gO/7QA3i0さん、完結乙でございました。かっこよすぎる。
ゲンさんが、まさかそんな展開だったとは。
オルテガの死を本当のエンさんに伝えられないと悩む主人公(仮)さんもよかったです。

F1lHfvAb0さん、残してきた仲間を助けると決意した主人公、かっこいいです。
レベル5 異邦人、がんがれ。超がんがれ。


656 :晴闘雨読【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/09(火) 02:48:17 ID:31EFKMrf0
俺の脳天目掛けて振り下ろされるハンマーをサイドステップでかわす。
そんな大振り、不意打ちじゃなきゃ誰が喰らうかってんだ。

空振ったハンマーを足で押さえつけ、剣でブラウニーの胴体を薙ぎ払う。


―!?!?!?!!―

ブラウニーの小さな体は宙を舞い、草むらに頭から突っ込んで動かなくなった。
切れ味の悪い銅の剣だから殺しちゃいないと思うんだけど…後味悪いなあ…

「お疲れさま。二人とも怪我はないかい?」
「はん。俺様がスライム如きに遅れをとるかっての。」
ガスミンクとスライムの群れを撃退した二人の表情は余裕が感じ取れる。
…これがコッチの普通なんだよな…

「イサミは大丈夫かい?」
「…え?…うん、俺も平気。何とか一撃も喰らわないで勝てたよ。」
「そう…なら良いんだけど、難しい顔をしてたからさ。」
参ったな。俺が表情に出やすいのか、サトチーが鋭いのか…
「ああ…ホラ、俺の世界じゃあモンスターなんていなかったからさ、
 どうにも戦闘に慣れていないって言うかさ…」
「…他の生き物の命を奪う事に慣れていない…って?」
本当…鋭いな、サトチーは…


「……ていっ!」 びしっ!
「痛!」
久しぶりにヘンリーのチョップが俺の脳天に叩き込まれる。

…正直、今のは結構痛いツボだったんですけど…

657 :晴闘雨読【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/09(火) 02:50:35 ID:31EFKMrf0
「まぁたイサミはグジグジ言いやがって。お前の目的は何だ?言ってみろ!!
 お前がどんだけ甘い事言ってたって、モンスターにはそんな事お構いなしだ。
 むしろ、相手は無防備・無抵抗な人間を喜んで殺しに来るんだぞ?
 平和な世界を引き摺ったままの考えじゃあ、目的達成の前にモンスターの晩飯だ。
 それが嫌ならさっさと気持ちを切り替えろ!!」
いつも見せるおちゃらけた表情とは違う真面目な顔でヘンリーが俺に語りかける。

…そうだ、平和ボケした考えじゃあこの先を生き残れない。
負けない。強くなる。そう誓ったばかりじゃないか。

「イサミ。ヘンリーの言う通り、これがコッチの世界で生きるための最低条件なんだ。
 すぐには気持ちを切り替えられないかもしれないけど、でなければ生き残れない。
 それに、僕やヘンリーだって相手の命を奪う事に慣れてなんかいないよ。
 いや、人間なら誰だってそうじゃないのかい?」

俺は二人を見つめ、黙って頷いた。
…生き残る…そのためには、降りかかる火の粉は払わなければ…

「まあ…いきなりコッチの世界の常識に合わせるのはは難しいよなあ。
 もし俺がソッチに行って、『家の外に一歩も出ない生活がコッチの常識だ。』
 …なあんて言われたら退屈で退屈で死んじまうよ。」
「そうだよねえ。モンスターが出ない世界なんて羨ましいと思ったけど、
 そう考えるとイサミの世界で生きるのも大変なんだろうね。」

…やっぱり誤解されてるよ…

「だから、俺の世界ってのはそうじゃなくってさあ…」

―この二人に俺の世界の正しい姿を伝える―
…俺の旅にもう一つの目標が加わったが、自動車も電気もガスもコンクリートも…
そもそも科学の概念が通じない二人に説明するのは奴隷の救出よりも難しいのかも…

658 :晴闘雨読【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/09(火) 02:51:12 ID:31EFKMrf0
…ん?足元に何か…

ああ、ブラウニーの持ってたハンマーか。
どうしよう?


拾いますか?

ィァはい
  いいえ

イサミは おおきづち を手に入れた。





イサミ  LV 5
職業:異邦人
HP:35/41
MP:7/7
装備:E銅の剣 Eブルゾン

持ち物:カバン おおきづち

呪文・特技:岩石落とし(未完成)

659 :幕間の弁当時間 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/09(火) 02:54:14 ID:31EFKMrf0

今日の本編投下はここまでですが、ここまでの登場人物のまとめです。
名前の由来がメインです。幕間の幕の内弁当代わりにどうぞ。

主人公…村崎 勇 【ムラサキ イサミ】
(自分の中で)ドラクエ5のイメージカラーである紫→ムラサキ→村崎。
それにドラクエと言えば勇者→勇 …の流れで名前を決めました。
平和な現実世界から突然サバイバルなドラクエ5世界に飛ばされた大学生です。


サトチー 【本名?】
結構やった人いますよね?SFC版で主人公名を『トンヌラ』にした時のアレです。
パパスのセリフだけ見てリセットする人が大多数。
名前はアレだけど、優しい好青年です。
本来の主人公なのに書くことが少ないです。


ヘンリー 【ヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット】
長いです。外人の名前はミドルネームとかあってただでさえ面倒なのに、
貴族・王族だとさらに大変な事になります。
ミドリ…じゃない、ミドルネームのブローマ(broma)はスペイン語で『いたずら』
同じくベルデ(verde)はスペイン語で『緑色の〜』が由来です。
また、〜=ド=ラインハットで『ラインハット王族・貴族の〜』という意味です。
"ド=〜"が、英語の"of〜"に近いニュアンスなようです。

専門知識がある訳ではないので間違ってるかもしれないのが怖いところです。

660 :幕間の弁当時間【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/09(火) 03:11:54 ID:31EFKMrf0
神殿に残った奴隷仲間や、修道院のシスター達。脇役達の名前の由来も…
主にスペイン語から拾ってます。

最初に、奴隷宿舎の室長。アルバニーのオヤっさん。
彼はスペイン語で『石工』(albanileria)から頭文字を抜きました。
屈強な石工職人をイメージです。

元踊り子のベイラルちゃんは、『ダンサー』(bailarin)から、
これは由来の言葉をチョットもじりました。

テルコ爺さんも同じく『頑固』(terco)からです。
照子だと婆さんっぽいんですけどね。

シスター・シエロのシエロは『空』(ciero)から。
空のように広い心をもった上品な大人の女性。

シスター・ビオレッタのビオレッタは『スミレ草』(Violeta)から。
道端に咲く小さくて可憐な花。

ほとんど全てスペイン語から取って、それらを名前っぽくいじってます。
キャラが増えたら、またその時に…


では、次回投下までしばしお待ちください。

661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/09(火) 08:02:15 ID:khAhOaQd0
投下乙

いいもんだね、登場人物の名前にこだわるってのは。

662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/09(火) 10:02:47 ID:d092SX8+0
乙!
面白かった〜!
名前の由来はサトチーしか解らんかったけど全員納得。
次回の投下期待してます

663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/09(火) 12:06:48 ID:HtualGl3O
冒険の書、面白かったです。最後のダイドンデン返しにはビックリした。
イサミの冒険は名前が拘っているなぁ。次回もガンガレ!

664 :兎の耳にアイラビュー【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/11(木) 01:54:23 ID:rFp+6ggU0
LOAD DATA 第四話>>647-658

―商業都市オラクルベリー
北方大陸から隔てられた島の中央に位置するこの町は、交易の町として知られている。
東方と西方の大陸の中間に存在するこの島は、貿易船の物資補給の場として発生し、
西方大陸の玄関『港町ポートセルミ』〜東方大陸の大国『グランバニア王国』間の
海路の中継地点として繁栄した。―

ふーん…交易の町オラクルベリーかあ。道理で商人の姿が多いわけだ。


…さて、この活気溢れる都市で俺達はなぜ途方に暮れているのだろう?




…なぜ俺達は無一文なのだろう?




「………」 びしっ!
「痛!」
ヘンリーのチョップが俺の脳天に叩き込まれる。
はい、チョップの理由は俺自身よくわかっています…

「………」
わかっています。謝りますから何か喋ってください。
謝りますから…(#^ω^)←こんな顔で俺を見つめないで下さい。

「まあ…ね…過ぎた事を責めても仕方がない。問題はこの後どうするかだ。」
サトチーの気遣いの言葉の裏に感じる疲労感が重いです。

665 :兎の耳にアイラビュー【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/11(木) 01:56:50 ID:rFp+6ggU0
オラクルベリーに辿り着いた俺達は、武器の新調を考え、武器屋に足を運んだ。
攻撃魔法が使えるサトチーとヘンリーはともかく、近距離戦がメインの俺にとって、
武器の性能は死活問題。
(…岩を降らすヤツもマスターしてないし…てか、あれから一度も成功してねえ…)
また、サトチーのチェーンクロスも10年前に買ったという事でだいぶガタが来ており、
攻撃魔法が得意なヘンリーも、魔力が尽きた時を考えるとある程度の武器は必要。
てなわけで武器屋に訪れたわけだが…

「う〜ん…全然金が足りないなあ…」
「僕達は脱走した身だからね。何か売れる物あったっけ?」
「売れる物…さっき拾ったハンマーと…俺のブルゾン…結構気に入ってるんだけど…」

結局、ブラウニーが落としたおおきづちと、俺のお気に入りのブルゾンを売っても
145Gにしかならなかった。

内訳は汚いハンマーの売値が110G、俺のブルゾンが35G…

『はあ?下北沢で20000円もした俺のブルゾンが何で汚いハンマー以下なんだよ!
 旅人の服?何だよソレ?どこに目ぇ付けてるんだこの×××が!!』
…と、言いたかったけど武器屋の店主は筋肉隆々の覆面男。逆らったら多分死ぬ。
ガックリと三人で肩を落とす。俺チョット涙目。

コッチの世界ではファッション性よりも、武器防具としての性能が価値基準らしい。


「こうなったら勝負をかけるしかないな。」

最初に持っていた500G強と、今の145Gを合わせて700G弱。
この逆境から這い上がる方法は一つしかない。

「いざ行かん。俺達の未来を煌々と照らすあのネオン(カジノ)の下へ!!」

666 :兎の耳にアイラビュー【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/11(木) 01:58:09 ID:rFp+6ggU0
「ほら、止めなかった僕たちにも責任はあるからさ…」
むくれるヘンリーをサトチーが必死になだめる。

スロットには自信があったんですよ。
目押しには絶対の自信があるんでコッチでも何とかなると思ったんです。
世紀末の覇者だって何度も昇天させたしさ。
でも、コッチのスロットは目押しできねえの。自分でビックリです。

…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…



全額カジノのスロットマシーンにつぎ込んで、あっという間にスカンピン。
今夜の宿代も失い、暮れ行く都会の道端で佇む三人。

奴隷労働から逃げ出したと思ったら路上生活者か…世は無常だなあ…



ずっとむくれてたヘンリーは、カバンに入ってたガムをあげたら機嫌が直ったようで、
壁に背をもたれてクチャクチャやってる。
緑髪の男が道端でガムをクチャクチャやってる姿はどう見てもDQNだがあえて触れない。

店の主がマッチョな覆面だったり、バニーガールが普通に町を歩いてるような世界だ、
町の人もDQNには免疫があるのだろう。


…バニー?


ウサ耳、バニースーツ、フサフサ尻尾、網タイツのバニーを雑踏の中に見つけ、
俺の両眼がスナイパースコープのようにその姿をサーチする。

667 :兎の耳にアイラビュー【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/11(木) 01:59:28 ID:rFp+6ggU0
スキャン開始

顔偏差値…70
スリーサイズ…B91 W58 H86
足ライン…規格クリア
衣装ポイント…+500ポイント
総合偏差値…測 定 不 能
戦況…相手は重そうな袋を両手に下げ、さらに大きな箱を抱えている。

結論…
我々は今、このト・キ・メ・キ☆を結集し、バニーちゃんに叩きつけて
初めて真の愛を得ることが出来る。あのウサ耳こそ、男達全てへの最大の魅力となる。
俺よ立て!思案を煩悩に変えて、立てよ俺!バニーちゃんは俺の力を欲しているのだ。
ジーク・バニー!!
アホか俺…って、なんかコッチ見てる…え?向こうから近付いてきた。

「ねえ。ちょっとだけ私の仕事場に来てもらえないかしら?」

疾風の如くYES。
もうお兄ちゃん君の荷物を持っちゃうよ。

「ありがとう。それじゃあ箱は私が持つから袋をお願いてもいいかしら?」

(心の中で)高く飛び上がり、(心の中で)回転しつつYES。
なにやら食材が大量に詰まった買い物袋の重さも感じないぜ!

「ねえ、あのターバンのお兄さんもお友達でしょ?一緒に来てもらえないかしら?」

あ…なんだか一気に袋が重くなってきたなあ…

仕事場まで一緒に来て欲しいと言うバニーちゃんの後を、俺たち三人がついて行く。
…俺だけが重い買い物袋を両手に下げて。

668 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/11(木) 02:04:29 ID:rFp+6ggU0
第四話の前半部分を投下しました。
戦闘時以外のイサミは色んな意味でオトコノコです。

ちなみに、イサミのブルゾン(旅人の服)は売ってしまいましたが、
中にTシャツを着てます。全裸ではありません。
旅人の服→布の服って感じですね。

669 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/11(木) 07:54:49 ID:5jEci5k20
乙です

イサミスカウター吹いたwww

670 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/11(木) 13:06:30 ID:eusw/VKNO

ガムで機嫌を直すヘンリーカワイス

671 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/11(木) 21:04:22 ID:DAkYNxYrO
乙。もしやイナッツちゃんか?
俺の嫁ktkr

672 :兎の耳にアイラビュー【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:17:50 ID:5ytk/+MG0
「ただいま〜☆」
バニーちゃんの仕事場は町の一角の地下。

中にいたのは…爺さん一人?あれ?地下バーじゃなかったの?

「おかえり…おや?その人達はどなたかな?」
「町で見付けた旅の人なんだけど…どうかしら?」
「ふむ…」
爺さんが俺達の顔を交互に眺める。

「どうなの?おじいさん。」
「うむ、良くやったのイナッツや。合格じゃ。」
「きゃー☆ついに見付けたのネ☆」
「あの〜…さっぱり話が読めないんですけど…」

サトチーが不安そうに、キャーキャーはしゃぐ二人の間に割って入る。
ヘンリーは…話を聞いてない…てか、まだクチャクチャやってる。
ガムがよっぽど気に入ったんだな。

「おお、初対面の方に失礼じゃったな。スマンスマン自己紹介がまだじゃった。
 ワシの名はエントレ。『モンスター爺さん』と呼ばれておる。
 モンスターと人の共存をテーマに、ここで日々研究をしておる。」
「そして私はイナッツ。モンスター爺さんの助手よ。ヨロシクネ☆」
「はぁ、よろしく…」

モンスター爺さんがサトチーを見つめ、話を続ける。
「ワシ等は、研究の一環として『モンスター使い』の素質のある人間を探しておった。
 本来、人間にとって敵であるモンスターを手懐ける事のできる能力者じゃ。
 イナッツが町で素質のありそうな人をスカウトし、ワシが判定しておったんじゃが、
 やはりモンスターへの恐怖心や敵対心が強すぎる者ばかりでのう…
 どうしても、モンスターが味方になるとは信じられないと言う者ばかりじゃった。
 じゃが、お主の目は違う。お主はモンスターをただ敵としては見ておらん筈じゃ。」

673 :兎の耳にアイラビュー【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:19:31 ID:5ytk/+MG0
何か思案に耽る顔を見せていたサトチーが口を開く。
「…仰る通りです。僕は子供の頃にベビーパンサーと旅をしていました。
 理由あって、そのモンスターの子とは離れ離れになってしまいましたが…
 モンスターと人とが通じ合う事は可能だと思っています。」

静かだが、力強い答えにモンスター爺さんがうんうんと頷き返す。
「うむ、お主ならば旅の中で多くのモンスターを手懐ける事が可能じゃろうて。
 モンスターへの愛を持って戦えば、モンスターはその心に応えてくれよう。
 どうじゃろう?ワシの研究の手助けをしてくれる気はないかの?
 心配せんでも、お主等の旅が終わった時に旅の話が聞きたいだけじゃ。
 その話だけで充分に研究の助けになる。」

そのくらいなら…と、承諾するサトチー。



モンスターへの愛を持って戦う…かあ。

難しそうだな。

情熱的に『アイラビュー!』とか、叫びながら剣を振る?
それとも、控えめにラブレターを剣でモンスターに突き刺す?
組み伏せた相手の耳元でロマンチックに愛のポエムを囁きつつ絞め落とす?
遠くから激しいラブビーム(メラ)でモンスターの心臓(ハート)を狙い撃ち?

もしくはこうか?

674 :兎の耳にアイラビュー【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:21:07 ID:5ytk/+MG0

\愛のイオナズン! スライムさんに届け!!
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ⊂二 ̄⌒\  ハァハァ          ノ)
     )\   ( ∧_∧         / \
   /__   )*´Д`)    _ / /^\)
  //// /       ⌒ ̄_/
 / / / // ̄\      | ̄ ̄
/ / / (/     \    \___
((/         (       _  )
            /  / ̄ ̄/ /
           /  /   / /
         / /   (  /
        / /     ) /
      / /      し′
    (  /
     ) /                          人
     し′                      Σ (∀・)<ビクッ!!



……違うよな。わかってる。

「ねえ…おじいさん…」
イナッツちゃんがモンスターじいさんにヒソヒソと耳打ちする。
何やら俺をチラチラ見てる。さては惚れられたか?

「うむ…その話は後でよい。…で、その箱は何じゃ?」
モンスター爺さんがイナッツちゃんの持っていた箱を指差す。

675 :兎の耳にアイラビュー【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:22:14 ID:5ytk/+MG0
「そうそう、さっき町外れで泣いてるモンスターの子を見付けてね、
 可哀想でココに連れて来ちゃったの。何かワケありの子じゃないかしら?」
「ふむ、話を聞いてみようかの。どれどれ?」

爺さんが箱の中を覗き込み、なにやらブツブツと話し掛ける。
箱の中からはギュイギュイと意味不明な声が聞こえる。
あの箱の中身はモンスターだったのか…持たなくて良かった。

「ふむふむ…なるほどのう。この子が大事にしていた武器を人間に奪われたそうじゃ。
 可哀想に…酷い人間がいるもんじゃ。」
「はぁ〜…とんでもねえ人間がいるもんだ。同じ人間として恥ずかしいや。
 ホラ、チビスケ。ガムやるから泣きや…め…??」

箱の中のモンスターにガムを差し出した俺の手がピタリと止まる。

箱の中で泣いていたのは、さっき戦闘でぶっ飛ばしたブラウニー。
やあ、久しぶりだね。

ん〜?て事は、こいつの武器を奪った酷い人間って俺?
こいつの武器って確か…

「あぁ〜…ゴメン。あのハンマー売っちゃった。テヘッ☆」

―!!!?!?!!!!―

「だからゴメン…痛!!暴れるなって、な?もう泣くな。ホラ、ガムやるから。」
カバンからガムを取り出そうとした俺の目に、とある物が映る。

676 :兎の耳にアイラビュー【9】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:22:51 ID:5ytk/+MG0
「…なあ、サトチー。魔法効果があるアイテムって、いくらくらい?」
「魔力がこもったアイテムは高いよ。消耗品の爆弾石で600Gくらいするし、
 破邪の剣とか炎の爪みたいな魔法武器になると5000G以上はするね。」
「小さな火が出せるアイテム…高く売れるかな?」

俺の手に握られていたのは『100円ライター』

コッチの世界ではさしずめ、
―メラの効果がある道具。何度か使うと壊れる。(コッチの世界では)非売品。―
…って所か。結構いい値段で売れるんじゃねえ?

「へえ〜、初めて見る物だけど、それなら相当高く買い取ってくれそうだ。
 …でも、売ってしまって良いのかい?珍しいアイテムじゃないの?」
「いや、俺の世界では安く買えるんだ。さあ、早く武器屋に行ってみようぜ。
 コイツのハンマーも買い戻さなきゃいけないしさ。」
大人しくガムを噛んでいるブラウニーを挟んで、顔に希望を浮かべるサトチーと俺。

「…なあ、その前に教会に行かないか?」
唐突に、さっきから黙っていたヘンリーが口を開く。
「え?どうしたヘンリー。毒でも喰らってた?だったら毒消し草が…」
「…いや…(クチャクチャ)このキャンディー呪われてるらしくてさ。
 いくら舐めても、いくら噛んでも全然なくならないんだ。(クチャクチャ)
 もうさ、顎が疲れて泣きそうだぜ…(クチャクチャ)」

いや、ソレはガm「呪いだって?大変だ。すぐに教会で解呪してもらわないと!」
説明する俺を無視して、血相を変えたサトチーが半泣きのヘンリーを教会へ引っ張る。

…コレが異文化交流の難しさってヤツかね?

677 :兎の耳にアイラビュー【10】 ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:23:33 ID:5ytk/+MG0
三人(+ブラウニー)が出て行き、静まり返った地下室。
三人を見送ったイナッツが、モンスター爺さんと向かい合っている。

「ねえ、おじいさん。さっきの男の人…」
「彼は良いモンスター使いになろうて…心配することはない。」
「ううん…違う。」

チラチラ揺れるランプの炎と、その炎によって揺らされる二人の影以外、
この場所で動く物はない。

「…魔王の魔力によって歪められた存在。それがモンスターじゃ。
 そして、魔王の魔力は生きている人間の魂を歪める事はない。」
「……うん。でも、あの人の魂はモンスターより…」
「…モンスターを超える魂の歪み…魔王の魔力によらない歪んだ存在…
 どちらも存在するはずはない…のじゃがのう…」

爺さんの座る椅子が、キィ…と小さな音を立てて軋む。

そして、再び無言の時間が流れ出した。




イサミ  LV 5
職業:異邦人
HP:41/41
MP:7/7
装備:E銅の剣 E布の服
持ち物:カバン(ガム・ライター他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成)

678 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:29:14 ID:5ytk/+MG0
第四話投下終了です。
イサミの妄想癖が凄い事になってる…orz

※仲間モンスター一号としてブラウニーが加わりました。


679 : ◆Y0.K8lGEMA :2007/10/12(金) 00:37:50 ID:5ytk/+MG0
470KBを超えたので、新スレを立てました。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/

680 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/12(金) 03:05:22 ID:TzTj8vPI0
>>678
投下&スレ立て乙!
魔物のえさ代わりになったり、呪いアイテム扱いだったりガムすげえwww
大人しくガム噛んでるブラウニーカワイス。
さてさて100円ライターいくらになるかな

681 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/12(金) 22:20:24 ID:M7KxrfsgO
もう次スレがたったのか・・・
◆IFDQ/RcGKI氏のアリスちゃんとか
埋め用短編くるかなwktk

682 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/14(日) 23:17:39 ID:DTVvJAoB0
斬殺勇者マダー?

683 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/16(火) 08:39:19 ID:I0H0VcixO
保守

684 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/17(水) 19:04:42 ID:mU7lhTRe0
保守?
埋め?

685 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/17(水) 20:10:51 ID:wK/yMBxp0
新スレあるから埋めだろ

686 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/18(木) 00:50:02 ID:CvBUJuQE0
あともう少しでしなのさん編投下出来るので僕も埋めに協力しようと思いますw

687 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/18(木) 07:34:47 ID:6mImZhmvO


688 : ◆IFDQ/RcGKI :2007/10/18(木) 10:34:11 ID:iUhOjIkY0
現在アリスちゃん執筆中。
なるべく間に合わせたいとは思いますが、
埋まっちゃったら新スレに投下します。

689 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 10:41:58 ID:dhZo5XLU0
うめうめ

690 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:32:05 ID:ziCgFva70

    〜作り合わされし世界〜


     → 冒険をする
       → 1:しなの  Lv10
          2:ヨウイチ Lv7
          3:タロウ  Lv6

691 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:35:44 ID:ziCgFva70
○第十一話
   『気持ち』

ひんやりとした空気が少しずつ私達の体を包んでいく。
吐く息が白いのだから洞窟の中には寒い空気が蔓延しているはず。
実際アレフ達は時折体を擦り、体温を保とうとしていた。

しかし私自身は洞窟が寒いと思わなかったし、自分の肌に触れても熱いとは思わなかった。
通常の体温としては熱を持ちすぎているとアレン達は言うのだが、
呪いのせいで感覚が狂っているのかもしれない。
まぁ感覚も何も既に私には痛み以外はよく分からなくなってるようだったが。
そのうち思考するだけで頭が悲鳴を上げだすかもしれない。

三日間も気を失った上に、ようやく辿り着いた教会でベッドを使わせてもらった私。
けど少しも体調が良くなるという事はなく、むしろ体の不調は増していくばかりだった。
動かせば動かす程にボロボロと崩れ落ちていく砂の体。
すっかり弱ってしまった私にはそんな表現がぴったりだと思う。

しかし聖水によってその身を固めて形を保つ事ももはや出来ない。
その程度の応急処置では返って私の中の呪いが過剰反応を起こし、
返って辛さが増すだけだからだ。

呪いを解く為にはこの洞窟にある勇者の泉で清めてもらわなくてはいけないらしい。
しかしこんなにも呪われたパーティーはきっとここだけだろうな。
そんな私達を快く受け入れてくれた神父には感謝してもしきれない。
喋る事の出来ない今の私にそれをきちんと伝える事は出来なかったが。

私が話せないのとは別に旅の疲れも溜まってか沈黙が多くなっていた私達だが、
いつしか四人の息遣いだけがお互いのコミュニケーションになっていた。

692 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:38:13 ID:ziCgFva70
痛みはあるか?  何か見つけた。
水が飲みたい。   休憩しようか?

そんな風な会話を言葉を交わさずに成していく。
それが成り立つのは幾らかの時間を共にしてきたからだが、
そこにある種の安堵感を見出していたのは私だけではないと思う。
苦しい時に頼れるものがあるのは嬉しい事だ。

アレンとアレフとアレル。
私と同じように呪われた身でありながら魔を退け続ける強き者達。
私の心が砂漠のように枯れてしまわなかったのは彼らのおかげだと思う。
彼らと出会わなければこのような苦しい状況になる事はなかったのだろう。
でもその代わりに私はどこにも行けず、ただモンスターに食われていたに違いない。
そして何よりこの辛く楽しい旅を経験する事も出来なかったはずだ。
だから彼らには感謝している。

もしこの三人が兄弟なら、アレルが兄、アレンが次男、アレフが三男という感じだろうな。
問題は名前が似過ぎて覚えづらい事か。
あとはアレルもアレンやアレフと同じように勇者だったら完璧だったのになぁ。
呪いを解いた後に世界異変の原因を突き止めようとしている三人だ。
勇者だらけのパーティーなんて強そうだし、何でも解決できそうな気がする。
まぁアレルが勇者でなくても、それだけの力が彼にはあると思う。

世界異変の原因、それが分かれば私も元の世界に帰れるのだろうか。
けどそれを待つまでもなく、ある石版があれば元の世界に帰れるという噂もある。
正確には、石版を神殿に持っていく事で願いが叶うという事みたいだが。
もっとも石版や神殿がどんな物でどこにあるのか全く分からないし、
その噂自体が本当に信じていいものなのかも判断しかねる。
嘘を付く事を許されない教会で訪れる者皆がみんなその話をすると言うのが
噂の信憑性を高めているとアレンは言っていたような気がする。
そこに望みを託してみるかどうかは考慮しなくてはいけないな。

693 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:41:27 ID:ziCgFva70
しかしそういった問題に平行して私を悩ますもう一つの問題があった。
今肩を貸してくれているアレンの事だ。
彼は出会った時から私を良く思ってくれていたようだが、
昨日初めてしっかりと好きだと聞かされた。
それを問題だと認識しているのは、
彼に対しての自分の気持ちがどういうものか分からないからだと思う。

決して嫌いな訳ではない。
だからアレンの告白は、嬉しかった。
好き、なんだろうな。
でもどのように好きなのかが分からなかった。
だからアレンの告白にどう答えればいいのか分からなかった。
アレン……私は君を利用しているだけなのかもしれないんだよ……


  「よくぞここまで辿り着きました」

水の上に立つという事が奇跡であるならば、
私は今それを目の当たりにしている事になる。
洞窟の一番奥までたどり着くとそこには泉があり、
人とは思えない程に端正な造形をした女性がその上に浮かんでいた。
水面は微かに揺れ、波紋が絶えず綺麗な円模様を描いている。
その紋様を崩さないように浮かぶ女性は目を閉じたまま無表情に佇んでいる。
何とも不思議な雰囲気を醸し出しているその姿を見るだけで、
彼女が精霊であると信じてしまえた。

  「アンタがここの主って訳か。
   んじゃあさっさと呪いを清めてくれや」

疲れているとはいえ、アレフが何とも失礼な言葉使いで頼む。
例え相手が神様であったとしてもこの態度は変わらないんだろうな。
しかしようやく呪いから開放されるという希望はすぐには叶わなかった。

694 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:44:19 ID:ziCgFva70
  「あなた達が真に勇気ある者ならば、その証を今ここに示して下さい。
   さすればその呪いも解かしてみせましょう」

そう言うやいなや、精霊がその腕を横に軽く振る。
すると反論する暇も与えられない間にアレン達の前に靄のようなものが吹き出し、
そこからモンスターが出現して襲ってきた。

   「――!!」

さすがの反射神経で彼らはモンスターの攻撃を受け流し、三匹のモンスターと対峙した。

  「何なんだよっ!」
  「……ソードイド、サラマンダー、マントゴーアか」

骸骨に、龍に、ライオンの形をした怪物達。
六本の腕がある骸骨、ソードイドがかぶっている兜はアレルの不幸の兜と同じもので、
その中から骨むき出しの顔と不気味な目を輝かせている。
青いたてがみに緑の体をしたライオン、マントゴーアは羽を持っており、
振っている尻尾はアレンが装備している悪魔のしっぽと同じ形だった。
とすればアレフの呪いのベルトはあのサラマンダーに関係しているのだろうか。

  「呪いの具現化、か」
  「はっ、龍の皮で作ったベルトって訳だな」

アレルの言葉から推測した事実にアレフがニヤリと楽しそうに笑う。
つまり皆の呪いがモンスターの形をして襲って来たのだろう、という仮説。

  「倒して呪いに打ち勝てって言いてぇのかよ!」

怒りを込めて吠え、サラマンダーに向かって斬り付けるアレフ。
硬い印象の龍の鱗に見事傷をつける事に成功する。
同じようにしてアレンとアレルも電光石火の一撃をモンスター達に食らわせていた。

695 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 14:46:35 ID:kHGSeP9/0
リアルタイム遭遇きたぁぁぁ。
支援でございます。


696 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:47:15 ID:ziCgFva70
  「弱い弱い!」

得意気に、そして勝利を確信したかのように言い張るアレフ。
しかし彼らが傷つけた箇所は蜃気楼のように霞んだ後、
幻から覚めた時のように元通りになっていた。
見ている限り回復呪文は使っていないはずだった。

多少驚愕しつつ再度攻撃を試みるが、敵の傷がまた勝手に癒えてしまう。
三人の巧みな剣術は多大な結果を伴ってはいるのだが、
何故かその結果自体が消え去って最終的には振り出しに戻ってしまっている。
いや向こうの攻撃はこちらに通るし、攻撃するにしても疲れが発生するのだから、
振り出しに戻るのは常にモンスター側の方だけで、
こちらは後退しているような反則的な状況だ。

威厳を見せ付けるように唸り、火を吐くサラマンダー。
その激しい炎をかわしながら再び攻撃に転じようとするアレフ。
しかし急に彼の動きが鈍り、避けきれなかった炎に足を焼かれてしまう。
そしてベホイミを唱えようとする前にサラマンダーはその牙でアレンに噛み付いた。

  「チッ!」

アレンと対峙するマントゴーアは威嚇するようにして口を大きく開け、
そこから巨大な火の塊、メラゾーマを唱えた。
その威力がいくら大きくても真っ直ぐ飛んでくるものを避けない理由はない。
アレンはメラゾーマを飛び越してマントゴーアにカウンターを狙う。

だがマントゴーアの顔に斬りかかろうとした瞬間、
背後からメラゾーマがアレンの体を直撃した。
確かに避けたはず、という思考はマントゴーアの二撃目の中に消えた。

  「そんな……」

697 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:49:58 ID:ziCgFva70
そしてアレルと対峙するのは六つの剣を怪しく動かしているソードイド。
六対一と数の上では負けているがアレルの方が逆に押している形だ。
しかし決め手の一発がどうやっても外れてしまい、
体勢を立て直そうとしたところを何度も斬りつけられてしまう。

不幸としか言いようがないアレルの運の無さ。
そう言えばアレルの呪いは不幸の兜によるものだった。
呪いの具現化と先ほどアレルが言っていたのが関係あるのだろうか。
考えようとしてもアレルの腕に剣が刺さるのを見れば頭が真っ白になる。

  「くっ……!」

血が流れ、傷跡を炎が焦がしていく。
衣服と人と土の焼ける臭いが鼻を突き刺した。
これでは勝てない……
そう思い始めた時、精霊は再び語りだした。

698 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:52:50 ID:ziCgFva70
○第十二話
   『勇者ってなぁに?』

  「あなた達の勇気、こんなものですか」

さも残念そうにして言葉を紡ぐ精霊。
アレン達がモンスターを倒せない事を本気で嘆いているように思えた。

  「僕達の勇気が、足りないと言いたいんですか……」
  「いいえ、この戦いであなた達に勇気などない、と証明されたのです。
   勇気とは何ぞや? それは絶望への糧でしかない。
   少なくともそういう答えしか用意出来ないのであれば、
   いくらその問いに理性で反論しようとも無意味です」
  「なら用意して突きつけてやるよ!!」
  「ベホマズン!!」

アレフがいきり立ち、アレルが両手を天に掲げて呪文を唱える。
すると私達の体を光が包み込み、その傷を完全に癒していった。
メラゾーマの火傷を、魔の牙にえぐられた咬創を、六本の剣による切創を。
その全てを完璧に復元した勇者達は魔物に三度戦いを挑む。

まずアレフがマホトーンでマントゴーアの呪文を封じ、
ラリホーでソードイドを眠らせる。
次いでアレンが会心の一撃でサラマンダーの首をはね、
ソードイドの腕を切り落とし、マントゴーアの翼を引き千切る。
最後にアレルがありったけの魔法力を込めたギガデインを放った。

動きの鈍いアレフは後方支援、
敵の呪文の心配が無くなったアレンが直接攻撃、
そして攻撃の当たらないアレルは呪文による全体攻撃という
時間にして十秒にも満たない素晴らしいコンビネーション攻撃。
見ていただけの私にも感じ取れるくらいに三人には手ごたえがあった。

699 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:57:07 ID:ziCgFva70
  「グググ……」

それなのに、モンスター達は無傷の姿で土煙の中から現れてきた。
あの凄まじい攻撃を受けてなお無傷。
心が折れる音が聞こえた気がした。

  「呪いのベルトは体を締め付ける鎖。
   悪魔のしっぽは無条件で呪文を受け入れる磔。
   不幸の兜は悪運を呼び込む器。
   それらを背負いし弱き勇者達よ、いや愚か者達よ。
   あなた達の心を私が食ろうてやろう」

発せられた言葉と共に精霊を包んでいた不思議な雰囲気の色が変わる。
彼女の雰囲気は神聖さを感じさせるものだと思っていたが、
今思えばそれは神聖さとは真逆な邪悪さだと気付いた。

彼女の顔が醜く崩れ、とうとう本性を現したというところだろうか。
女の本性は怖いというが、女の私でも怖く感じる程に精霊はおぞましかった。
いや、もう精霊と呼ぶより悪魔と呼ぶべきだろう。
ストレートだった髪が今や乱れに乱れ、眼つきは鋭く口からは牙が見え始めた。
水面が落ち着き無く波立っていた。

  「さてさて、ロトの血肉はどんな味がするのかのう」

舌なめずりをする悪魔の顔は紅潮し恍惚としていた。
このままではアレン達が……
しかし私は呪いで動く事も出来ない。
いや、それが出来たところで私に何が出来るというのか。
結局呪文も使えるようにはならなかったし、
勇者に勝てない怪物達に私が対抗出来るとは到底思えない。
呪いを解く希望の地であったこの場所で旅は終わりか。
そんな思いが私の頭をもたげた。

700 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:59:31 ID:ziCgFva70
その時、微かな金属音を耳が捉えた。
アレンに貰ったスライムのアクセサリーだ。
そのピアスに意識が及ぶと、教会でアレン達が見舞いに来てくれた事が思い出された。

素直になれと言ってくれたアレフ。
君の真っ直ぐさを全部真似する事は出来ない。
けど私の持っている問題を解決するには素直になるのが一番なんだろう。
切羽詰った今なら出来そうな気がする。
いや、あの時のようにまた後悔するよりは素直になった方がいいと教えてくれたんだな。

髪を切って私の気持ちを後押ししようとしてくれたアレル。
アレルと同じように強い精神を持つ事は私には出来ない。
けどアレルの話してくれた女性のように私は変われるだろうか。
いや、変わってみせようか。
無口なあなたは私の心を軽くし、変われると教えてくれた。

そして好きだと言ってくれたアレン。
君の隣はとても居心地が良いと私は感じている。
この何も分からない世界で私の居場所を作ってくれた君の優しさに
思わず甘えてしまうくらいに私は君に心を許しているみたいだ。
だから君には一番死んでもらいたくない。
だから私は勇気を出すよ。

私に出来るのは、私の気持ちを伝える事。
私の気持ちをアレン達に伝える事――

  「アレン! アレフ! アレル! 頑張れ! 負けるな!!」

声が、出た。

701 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:04:39 ID:ziCgFva70
そしてアレン達の体に小さな光が降り注ぐ。
私が唱えた回復呪文だ。
数字にすれば10も回復したかどうか分からない程の効果だろう。
アレルのベホマズンには到底及ばない。
だけど、しっかりと私の光は彼らに届いたんだ。

  「な、なにぃ?!」

うろたえる悪魔をよそにアレン達はしっかりと立ち上がる。
呪いが呪いを呼ぶなら、勇気は他人へと伝播する。
そして元々持ち合わせていた勇気と合わさりさらに大きな勇気を生む。
私の勇気と彼らの勇気が溢れ出す。

  「これは……」
  「よっしゃぁ! ナイスしなのっ!!」
  「行きますよっ!」

アレン達は剣を交差するように掲げ、同時に振り下ろす。
その切っ先から放たれた聖なる光がモンスター共々悪魔を飲み込んだ。
まばゆいけれど、暖かい光が呪いを打ち消していった。
悪魔の断末魔さえもその光が包み込んでしまった。
勇気ある者達の勝利だった。

  「勝った、のか……」
  「ざまーみろ! てめーら何かに負けるかっての!!」
  「やりましたね、しなのさん!」

あぁと言おうとした時、聖なる光が消えていきその中から何かが地面に落ちた。
拾い上げるとジグソーパズルのピースのようにいびつな形をした石の板。
これは……

702 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 15:05:25 ID:kHGSeP9/0
再度支援ですぅ

703 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:07:58 ID:ziCgFva70
それが何なのかを調べようとした時、澄んだ綺麗な声と共にまたもや女性が現れた。

  「ふぅ……ようやく出れました……
   ……あぁ、そう構えないで下さい。
   私は本物の精霊です。
   迂闊にもあのモンスターに閉じ込められてしまったのです」

彼女はあの悪魔と同じように泉に立っていたが、以前のように水面に波紋は現れず、
泉はまるで鏡になったかのようにぴたりと動きを止めていた。

  「信じられないのなら、呪いを解いてみせましょうか?」
  「チッ! もう遅ぇんだよ……」

精霊は私達が自分の力で呪いを解いた事を分かった上でそんな事を言ったのだ。
先ほどの悪魔よりは好感が持てた。

  「ありがとうございます。
   人間にお礼を言うのは久方振りで少し恥ずかしいですが……」

こんな風に顔を赤められてはこちらが困ってしまうな。
可愛い精霊だ。

  「礼なんかいいから何かくれよ」
  「そうですね……では何か希望はありますか?」
  「……しなの」

え? わ、私か?

  「そうだな、今日のMVPはお前だ!」
  「僕もそれに賛成です」

ありがとう。それじゃあ――

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