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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

173 :インターミッション/夢 ◆u9VgpDS6fg :2007/04/16(月) 15:01:15 ID:TVMM9Dyk0

暖かい布に包まれて世界がゆっくりと揺れだした。
体中に響くような、落ち着かせるような定期的な揺れと
右側から聞こえる定期的に刻まれる音…心音が、
次第に俺の意識を奪い、白く靄ける景色は少しずつ遠ざかって行く。

まだだ。
まだあの場所にいたい。

必死で伸ばそうとした手を嗜めるように、細い指先が
俺の信じられない程小さな手を握った。
視界が白い明かりに包まれて、やがてのぼせて意識を失う時のように、
光が散り散りになって暗闇に吸い込まれて行く。

そして世界は暗転する。

174 : ◆u9VgpDS6fg :2007/04/16(月) 15:02:54 ID:TVMM9Dyk0
今回これだけ投下しに来ました
ありがとうございます


175 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/16(月) 15:30:55 ID:maZX89UJ0
田中日記

4月15日 あったけえ!

やべーマジやべえ!ネネさんに紹介されたバイトマジ最高!
やべーよバニーのきれいなねーちゃんいっぱい!乳でか!谷間最高!
そして店のママが美人!大人の魅力!やべーよここ天国じゃん!
こんな事ならもっと早く本気出しておけばよかったぜ。
まったくどういう店なんだかわかんないんだがおそらくキャバクラみたいなもんだろう。
ムッキムキの兄貴やらヨボヨボのじーさんやら客層は幅広い。
まあ俺の仕事は掃除に食器洗いだしどんな客がいようが関係無い。
いいなー一生ここで働きたい。もう日本帰りたくねーな…なんちゃって(笑)

176 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/16(月) 15:42:54 ID:maZX89UJ0
鈴木日記

4月16日 晴れ

もうおそらく日本には帰れないだろう。妻にも娘にも会えないだろう。
正直自ら命を絶とうとまで考えた。だがそれは間違いだと気付いた。
私はこの世界で精一杯生き抜いてこそ愛する重子と沙織に示しがつくのではなかろうか。
重子、沙織、父さんはこの訳の分からない世界で頑張ってみるよ。
父さんはこっちで頑張るからきみたちは日本で精一杯頑張ってくれ。
そしてどうか幸せに暮らして下さい。父さんからの願いです。


田中日記

4月16日 あったけえ

うっひょーまったく毎日が楽しくてしょうがないぜ。
今日はバニーのロシーヌちゃんに電話番号聞いてみた。そしたら電話持ってないんだとよ(笑)
やっぱここすげード田舎(笑)
それとママに客に出す料理を教えてもらった。
そうそうここではみんなママとは呼ばないらしい。俺のいたとこではそう呼ぶんだぜって
教えてやったらみんな笑ってた。楽しい職場だぜ(笑)


…あれ俺なんでバイト始めたんだっけ…?

177 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/16(月) 17:36:17 ID:1Nth6+Sn0
田中wwwww
このテンションの差が面白いw

178 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/16(月) 21:21:16 ID:x5d8azWx0
バイトまで始める田中の順応性は異常wwww
鈴木さんが少し前向きになって良かった。

179 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/16(月) 23:22:12 ID:nJYzVSIOO
>>172-173
投下乙
DQ5ネタか?
 
>>175-176
田中wwワロタwww

180 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/17(火) 02:00:18 ID:afVNnRXA0
>>179
今すぐスレ内をu9VgpDS6fgで検索するんだ

181 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/17(火) 20:45:12 ID:6IDX9aUk0
4月17日 晴れ

いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。


田中日記

4月17日 あったかい

ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ

182 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/17(火) 20:46:51 ID:6IDX9aUk0
4月17日 晴れ

いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。


田中日記

4月17日 あったかい

ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ

183 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/17(火) 22:04:07 ID:6IDX9aUk0
4月17日 晴れ

いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。


田中日記

4月17日 あったかい

ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ

184 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/17(火) 22:07:09 ID:6IDX9aUk0
うわああああああマジごめんなさいorz
書き込んでも反映できないなあなんて思って何回か試してたら
俺の専ブラがおかしくなってただけだった…
スレ汚しごめんなさいorz

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/17(火) 22:07:55 ID:xvYUlnuh0
おk
wktk

186 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/18(水) 17:10:22 ID:hoiLO1Pt0
鈴木日記

4月18日 晴れ

今日国王の所へ行き仕事を探している件を話した。明日までにいくつか探しておくから
気に入った所で働くといいと言われた。なんて親身な国王だろうか。
この国は平和だ。残りの人生できるだけこの国の人の役にたって生きていきたい。
見知らぬ土地に投げ出されたからなのかそんな事すら考えるようになった。
ところで田中である。こいつはもう仕事を見つけ既にしっかり働き出している。
逞しいというか鈍いというか。いやはやどっちにしてもこの行動力は私とて
見習うべきではないだろうか。むしろこういう不慮の事態こそこういう
単純で行動力のある人間の方が強いのではないだろうか。
少し田中の事を見直した。


田中日記

4月18日 あったかい

気持ちわりーよ!鈴木さんちょっと元気なったと思ったら急に
俺の事褒めだしやがった!何言ってるか全然わかんねーけど
田中は逞しいだの意外と根性があるだの…こんなの鈴木さんじゃねえ…オェ…
きっと何かのウィルスの頭をやられたに違いない。ここ病院あるのかな?
もしもの時は速攻連れていくわマジで…

187 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/18(水) 17:38:55 ID:x05b+iB70
やべーおもすれー
田中そろそろ異変に気付け

188 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/18(水) 19:03:16 ID:YrNvWmbR0
実は田中、鈴木さんの事割と好きだろw

189 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/18(水) 21:02:47 ID:IuVx1vss0
実は結構イイヤツだよね、田中って。

190 :STORY.1 序曲 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:45:39 ID:6AzXfrMB0

 ――目が覚めると、そこは不思議の世界でした。
 
 そんなフレーズが頭の中をグルグルとまわる。
 昨夜は確かに安アパートの俺の部屋で寝たはずなのに、今いるところは……どこだ。
 上半身を起こし、ぐるりと周囲を見回す。ベッド、タンス、窓、ドア。なにもかもが俺の部屋と違う。
 なにより天井に蛍光灯がない。俺の田舎だって電球くらいあるぞ。
 起き上がりボーッとしていると、突然ノックも無しに部屋のドアが開き人が現れた。
 俺が起きていると思っていなかったのだろう。
 その人は目があった途端ハッと驚いた表情をしてその場に立ち止まった。
「……ああよかった、目を覚ましたんですね」
「え」
 女性だ。青い服、いわゆる修道服だろうか。そして綺麗な淡い金髪をしている。
 ルビーみたいな赤い瞳が青い服と妙にマッチしていて印象的だ。
「あ、ああ……どうも」
 頭が回らない。混乱でもしているのか。
「体の具合はどうです? あなたは5日ほど眠り続けていたんですよ」
「5日……」
 5日なんて、そんなに長い間眠っていた感じはしない。第一、俺は昨日寝たばかりだ。
 彼女は手に持っていた桶をベッド傍の台に置いた。そのまま俺の近くに落ちているタオルを拾い桶の中に入れ絞る。
 タオルから滴り落ちる雫に太陽の光が反射してキラキラ眩しい。
 本当に俺が5日眠っていたとしたら、この人はその間俺を看病してくれていたのか?

191 :STORY.1 序曲 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:48:04 ID:6AzXfrMB0
「あ、ありがとうございます」
 主語のないお礼を言うと、彼女は「お気になさらず」と笑顔で言ってきた。
「そうだ! ここはどこです? 俺、なんでここにいるんですか?」
 ボーッとしている場合じゃない。
 俺の部屋で寝たはずなのに起きたのが俺の部屋じゃないなんて、これは異常事態なんだ。
 急いで状況確認をしなければ。
「ここは海辺の修道院です。あなたはこの近くの浜に倒れていたんですよ」
「浜に、倒れて……?」
 ってことはこの近くには海があるのか? 俺は海から流れてきたのか? 日本沈没?
 それよりも、修道院って……ああ、頭の中がゴチャゴチャする。
「まだ目覚めたばかりですから、あまり無理しないで下さいね」
 頭を抱えうんうんと唸っていた俺を見てか、彼女は俺の心配をしてくれた。
「……そういえば、あなたは……?」
「あ、申し遅れました。私の名前はマリア。この修道院で修行をしている修道士です」
 修道士のマリアさんか、可愛い名前だな。俺も自己紹介し返さなきゃいけないな。
 ……あれ、俺の名前……
「……俺の名前、なんだろう……思い出せない」
 名前の部分だけ記憶がすっぽりと抜けている。
「まあ……一時的な記憶喪失かしら。しばらくしたら思い出せるかもしれないから……気を落とさないでね」
 彼女はそう言って俺を見つめながら手を握ってくれた。
 ……世に産まれ出てから16年、女性にこんなことをされたのは母以外初めてです、ハイ。

192 :STORY.2 失われた世界 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:50:35 ID:6AzXfrMB0
 あの後、マリアさんは他の修道士たちに俺が起きたことを知らせてくると言い、部屋を出て行った。
「そうそう、ご飯も用意してくるわ。何日も飲まず食わずで、お腹が空いたでしょう?」
 いやー、いい人だなあ。修道院の人たちはみんな、こんなに優しい女性ばかりなのかなぁ。うへへ。

「はいどうぞ。手の凝った料理はものじゃないけど、その分味の方は保証するわ」
 目の前に出されたのはバターロールみたいなパンと野菜のスープ、イモの蒸したものだ。
 見た感じヨーロッパの家庭料理だ。……いやヨーロッパの家庭料理なんて見たこと無いけどさ、きっとこんなのだろうよ。
「じゃあ、いただきます」
 スープを一口飲む。タマネギスープっぽい味がして、なかなか美味しい。表面に浮いている葉っぱがピリリと効く。
 イモはほんのりバター味で、田舎の母さんが作った粉吹き芋を思い出す。母さん元気かな。
 ……ここって、どこだろう。日本ではないことは確かだけど、フランスあたりかな。
「マリアさん、ここはなんていう国ですか?」
「ブランカよ。他に比べたら小さな国だけど、自然がたくさんあって農業が盛んなの」
「ブランカ……」
 そんな国名聞いたことがない。小さな国ってぐらいだから世界地図に載らないくらい小さな国なのか?
「ええと……」
 マリアさんはわざわざ地図を探して持ってきてくれた。日に焼けていて随分年期のはいった地図だ。
「あった、ほら、これがブランカよ。西へ行くと砂漠があって、ここからテルパドール領になるの」
 所々擦り切れた古書のような匂いのする地図をのぞき込み、マリアさんの指し示す場所を目で追う。

193 :STORY.2 失われた世界 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:53:13 ID:6AzXfrMB0
 ……知らない。こんな地図は知らない。日本がない。アメリカがない。ユーラシア大陸がない。
 見覚えのない国名、大陸、世界。――ここは、俺のいた世界じゃない。
「あなたの国はどこ? 海を挟んでだから……グランバニアかしら?」
「……」
「あ……もしかして、住んでいたところも覚えていないの?」
 いっそ全て記憶喪失であったらよかった。
 
 申し訳なかったが、今はひとりにさせて欲しい、そう言ってマリアさんには部屋から出て行ってもらった。
 しばらくベッドの中で考え事をしていた。
 俺の世界のこと、この世界のこと、いままでのこと、これからのこと。
 考えれば考えるほど頭が混乱する。
 信じられない。突飛過ぎる。何でこうなった。誰の仕業だ。
 俺はなにもしていない。朝起きて学校通ってご飯食べて遊んで部活して寝て、ごく普通の生活を送っていた。
 こんなとこに来て、俺は元に戻ることができるのだろうか。不安だ。
 枕に顔を埋め、泣いた。みっともないとは思ったが、涙が止まらなかった。

 それから何時間経っただろうか。俺は落ち着きを取り戻していた。悩むなんて俺のキャラじゃない。
 くよくよしていちゃなにも始まらない、進んでみなきゃ始まらない。レッツポジティブシンキング!
 まずは今後のことについて。俺は元の世界に戻りたい。どうやったら戻れるか世界をまわって調べてみようと思う。
 そうだ、明日マリアさんに相談しよう。色々お世話になっているけど、俺がこの世界で知っている人は彼女しかいない。
 そこまで考えたが、疲れてしまったので寝ることにする。頭を使いすぎた。ではおやすみ。

194 :STORY.2 失われた世界 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:55:43 ID:6AzXfrMB0


 次の日、満足に歩けるほど体力が回復していなかったので、マリアさんに部屋に来てもらって相談をすることにした。
 コンコンとドアがノックされ、少しの間をおいてマリアさんが入ってきた。そのままベッド近くの椅子に腰掛け、こちらを向く。
 記憶喪失だとわかった俺のことを、マリアさんは自分のことのように悲しんでくれていた。本当に、優しい人だ。
 ……俺の言うこと、信じてくれるかな。
「あっ、あの、マリアさん、えーと……驚かないで、聞いてもらえますか?」
「ええ、いいけれど、なにかしら?」
 深く深呼吸をする。緊張するな。俺は落ち着いてゆっくり言葉を出した。
「……実は、俺、この世界の人間じゃないんです」
 マリアさんは信じられないような顔をしている。そりゃそうだ、いきなりそんなこと言われたら普通驚く。
「あ、ごめんなさい。驚かないって言ったのに……」
「いえ、急にこんなこと話した俺が悪いんです」
「でも本当なの? この、世界の……人間じゃない、って」
「はい……」
 うう、段々悲しくなってきた。あ、目から水が……引っ込め水! こんなところで泣くな俺! 負けるな俺!
「そう、なの……で、これからどうするの?」
「とりあえず、元世界に帰る方法を探します……って、マリアさん! 俺の言ったこと信じてくれるんですか!?」
「ええ。……あなたの目、嘘をついている目じゃないから」
 俺は驚いた。信じてもらいたかったはずなのに、いざ信じてもらっちゃうと……。
 嬉しいな!

195 :STORY.2 失われた世界 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 00:59:24 ID:6AzXfrMB0

「……という訳で、旅に出ようかと思うんです」
「ちょっと待って。旅に出るのはいいけど、外にはモンスターがうようよしているのよ」
「モンスター?」
 つまり、怪物? そんな生物がいるなんてキイテナイヨ。
 マリアさんがうーん、と手を顎に当て考え事をしている。どうしたのだろうか。俺の馬鹿さに頭を痛めたのか。
 するとマリアさん、いきなりポンと手を打ち笑顔で話した。
「じゃあ、私と一緒に旅をしない? ひとりよりは心強いでしょう? ね?」
「はい?」
 それはあれか。長い旅路を若い女の人と二人っきりでtqあwせdrftgyふじこlp;@
 思春期まっしぐら多感な16歳にとってこの展開はやばすぎる。
 ん? マリアさんって何歳だろう。
「突然ですがマリアさん、何歳ですか?」
「え? 私の年齢?」
 って、なに尋ねてるんだ馬鹿俺! 
 女性に年齢を聞くことは太古よりタブーとされていることなんだぞ!
「あーあーあ、言いにくかったら別に流してくれても構いませんよ……はは」
「今年で18になるわ」
「へー18歳ですかー俺より2つも年上なんですねーはははー、って女性がそう簡単に年齢言っちゃ駄目ですよ!」
「そうなの?」
 そうですよ。そっか、マリアさんてば18歳なんだ。落ち着いていて大人な人だなとは思ってたけど以外と若いな。
 いやいやいや、だからって老けて見えるとかそういう訳じゃなくて、年齢のわりには老成している……違う違う違う!
 落ち着け俺! 優しくて綺麗で可愛い年上の女性にお誘いを受けたからって浮かれるな俺!

196 :STORY.2 失われた世界 ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 01:02:00 ID:6AzXfrMB0
「で、返事はどうなの?」
「えっ?」
「だから、私と一緒に旅ましょう、って」
「あっ、それは……その……」
 嫌なわけではないのだが、どうもこんな状況になるのははじめてなもんでして。どうすればいいか戸惑ってしまう。
 フラフラと目線が泳ぐ。するとマリアさんは、しびれを切らしたのか今までよりも勢い強く喋った。
「はい!? いいえ!?」
「はい!」
 ああっ! マリアさんの勢いに飲まれて反射的に答えてしまった。
 マリアさんの方を見ると、目の前でニコニコと満足そうに笑顔を浮かべていた。
「じゃあ決定ね。出発は……どうする?」
「ええと……まだ身体が本調子じゃないので……もうしばらく待っていてくれれば嬉しいんですけど」
「構わないわよ。ちょうどこの修道院は宿屋も兼ねてるの。お代はもちろん、無料でね」
 ポーズを決めてウィンクを送ってくるマリアさん。修道士のくせに小悪魔かこの人。
 なんかもう精神的に疲れたし、さっさと身体を回復させるため俺はもう寝ることにする。
 あ、そういえばなんでマリアさんが旅したいのか聞くの忘れてた。
 ……ま、いいや。眠たくなってきたし、続きは明日でいいよね。
 いい夢が見られますように。

197 : ◆aPqItC/JYI :2007/04/19(木) 01:06:01 ID:6AzXfrMB0
はじめまして。今回初投下させていただきました。
舞台はオリジナル、天空シリーズをベースにして進めていきたいと思っております。
まだまだ精進が必要な拙い文章ですが、これからよろしくお願いいたします。

198 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/19(木) 01:56:55 ID:TlokL/px0
>>197
投下乙です!5で修道院から目覚めるのは歴代でも初のアイディアかな?
しかし16歳で田舎から出ててアパート暮らしの学生とは、なかなかタフですな。
その精神力もポイントになったりして。いずれにせよ、期待してます。

199 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/20(金) 00:36:16 ID:Kc2iBph/0
>>197
その発想はなかった!
続き期待するぜ。

200 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/20(金) 03:19:35 ID:nhM+rFIV0
修道院でのめざめ、これから待っているマリアさんとの冒険。
わくわくする展開ですね。

#修道院は自給自足が基本ですから、自家製のパンと野菜スープ、じゃがいも料理で大正解だと思います。
客人のことは、キリスト様とおもって誠心誠意おもてなしするので、もしかしたら彼女達が食べているものよりも、いいものを出してくれたのかもしれませんね。

201 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/20(金) 11:32:32 ID:yIYI83Ej0
鈴木日記

4月19日 晴れ

今日は国王が用意してくれたいくつかの資料に目を通した。
しかし殆どが「兵士募集」といったいわゆる警備業務ばかりだ。この齢で肉体労働はいささか厳しい。
とは言うものの雇ってもらう側として贅沢は言えたものではない。
明日面接に向かう事にしよう。


田中日記

4月19日 あったかい

痛てえ…体中が痛てえ…調子のって筋トレし過ぎたぜ…
もう動けない…

202 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/20(金) 14:31:26 ID:40P4+M1x0
新たな展開にwktk

203 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/20(金) 23:21:45 ID:F40//7mX0
田中www

204 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/22(日) 12:38:50 ID:coqswfUbO
ほっほ

205 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/22(日) 15:19:30 ID:Ove36WlJ0
おまえらまだやってたのか。
本当に阿呆ばかりだな。

206 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/22(日) 17:16:34 ID:mCd2l9E00
>>205
誰に対してなんの感想かわからない。
この板全体に対してなら、あまりに感想つかなくて他の板に流れた職人の一人が、
結局向こうでも気に入らない展開になって八つ当たりに来たのかと思ったが。

207 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/22(日) 17:59:09 ID:qqUrmN5c0
構うな

208 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:24:11 ID:hWVRMulU0


 目を開けると前方に光が見えた……大きな、まぶしい光が。
 前へと歩いても光に近づいていく気がしない。ずっと同じ距離のままだ。
『ようこそ……我が世界へ』
 しばらく歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。
 聞こえてくる、というよりも頭の中に響くという方が正しいかもしれない。
 俺はどこから聞こえてくるのかわからない声に警戒し、あたりを見回す。白の空間と光しか見えない。
「誰だ!?」
『私は竜の女王……世界の創造主です』
 創造主……つまり、神様か? もしかして、こいつが俺をあの世界に連れてきたのか?
「神様が俺になんの用だ!」
 声の主の位置が掴めない。俺はとりあえず光に向かって叫んだ。
「俺を元の世界に帰せ! あんたが俺をこっちに連れてきたんなら、帰すことだってできるだろう!?」
『できません』
「どうしてだ!?」
 ふざけるな。俺は元の世界に帰りたいんだ。
 俺の叫びも空しく、神様は淡々とした声で話を先へと進める。
『あなたは導き手。あなたに力を授けましょう』
「……導き、手?」
 意味がわからない。俺がこの世界に連れてこられた理由がそれなのか? 力を授けるって一体……?
「おい、神さ……っ!」
 問いかけようとしたその時、光が強さを増し俺の体を包んだ。
 眩しい、目を開けていられないくらい眩しい。
『あなたに授ける力は一つの呪文。私の力の一部です』
 ”なにか”が俺の中に入っていく感覚がある。その”なにか”は俺の中に入ると染み渡るように全身に広がっていく。
 じわりと体が温かくなっていく。不思議な感覚だ。
「あんたは、俺に、なにをさせたいんだ?」
『導きなさい。勇者を、そしてその仲間たちを』
 導く? 勇者? ああもう、なにがなんだかわからない。

209 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:24:49 ID:hWVRMulU0
「とりあえず俺はその勇者様とやらを導けばいいんだな? ……導いたあと、元の世界に帰れるんだろうな!?」
『……約束しましょう』
 帰れる。元の世界に帰ることができる。暗かった道に希望の光が見えた。
「で、勇者をどこへ導けばいいんだ?」
『天空へ』
「天空?」
 変なことを言う。こんな飛行機もなさそうな世界で、どうやって天空に導けと。
 っていうか勇者って誰だ。名前は何だ。どんな姿をしてるんだ。どこに行けば会えるんだ。
『……時間が来ました……導き手、あなたに授けた呪文、それは――』
「おい! 神様! 神様っ!」
 神様が言い終わる前に、光が一層強くなりあたりは光に包まれた。
 眩しくて反射的に目を閉じた。まぶたを閉じていても強い光を感じる。
 すうっと意識が落ちる感覚。消えそうな意識の中で、神様の声が聞こえた。

 ――ドラゴラム、と。


「っ!」
 ガバッと布団をはね飛ばし目を覚ます。一筋の汗がこめかみを伝い、首まで流れ落ちた。
 ……不思議な夢だった。竜の女王、勇者、導き手、呪文……鮮明に覚えている。
 なぜか心臓がドキドキしている。息苦しい。落ち着こうと、胸に手を乗せてみる。
 大切なものが芽生えているような、そんな温かさを感じた。

210 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:25:59 ID:hWVRMulU0

 
「ごめんね、今用意しているからもう少し待ってて」
 マリアさんはそう言って部屋の中へと戻っていった。暇なのでしばらく教会内を散策してこよう。
 ちなみに先程マリアさんが言っていた用意とは、旅支度のことだ。
 あの夢を見た後、不思議なことに体力が元に戻っていたのだ。神様の力だろうか。
 そのため、急遽旅立つことになってしまった。俺は明日でいいのに。「善は急げ!」らしい。
 
 俺は大広間にある絵を見ていた。広大な海に数隻の船と鳥。全体的に青っぽい絵だ。
 うーん、綺麗だとは思うがいまいち芸術というものがわからない。
 そういえば家の本の中にムンクとかモナリザとかの絵があったな。モナリザは確か、ダヴィンチが描いたんだったか。
 ……旅に出ようと決めた次の日に目標ができるなんて、よくできてるなあ俺の運命。
 やっぱり神様が操作でもしているのかな、人の運命は。創造主だもんな。
 元の世界にいたときなんて、神様なんかテストの時ぐらいしか信じていなかったけど、ここには神様は存在するんだ。
 不思議だなあ。本当に不思議だ。この間まで毎日学校に通って勉強してバイトして……そんな毎日だったのに。
 そんな俺が、剣と魔法のファンタジーな世界に来るなんて。どこの漫画の話だよ。

211 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:26:37 ID:hWVRMulU0

 絵の前でふらふらしていると、小さな女の子が俺に声をかけてきた。
 ちょこんと俺の前にやってきてお辞儀をする。俺もつられてお辞儀をする。
「お兄ちゃん、元気になったんだね!」
「うん、心配してくれたんだね。ありがとう」
 茶色の髪に大きな赤いリボンをつけている。小学校低学年くらいの子供だろうか。
 そういえばこれくらいの妹がいたなと思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。
 妹? そうだ、俺には妹がいる。でも、名前はなんだっただろうか。あれ? 思い出せない……
「……あれ、お兄ちゃん、どうしたの? まだ痛いの?」
「あ、ああ、いや、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだから」
 どうやら難しい顔になっていたらしい。小さい子は人の感情に敏感だっていうよな。
 心配そうにのぞき込む女の子にへらりと笑顔を見せる。女の子も笑顔になった。
「よかった!」
 妹の名前を思い出せないのが少し引っかかるが、ただの記憶喪失だろ。そう思うことにしておいた。

 しばらく女の子と会話していると、用意を終えたマリアさんが階段から下りてきた。
 マリアさんの服装はあの青い修道服ではなく、白いローブに赤いずきんをしている。まるで赤ずきんちゃんみたいだ。
 ちなみに俺は水色っぽい服。しかしスカートっぽいひらひらが。まあズボンははいているからそこは安心だ。
 この服装はこの世界での一般的な旅装束らしい。マリアさんが用意してくれたものだ。
 俺は持ち物として食糧といくつかの薬草、木の棒を受け取った。
 薬草とは傷を瞬時に治す優れものの薬で、木の棒はひのきの棒という武器とのこと。ぶっちゃけおもちゃにしか見えません。
 外に出たらモンスターがうようよしている、自分の身を守るのは自分しかいないと言われた。
 ……これは遊びじゃない、ゲームじゃないんだ。
 俺は頬をパァンと叩き気合いを入れた。強く叩きすぎて痛い。

212 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:27:30 ID:hWVRMulU0


 この教会で一番偉いマザーだかいう人にお礼を言い、俺たちは教会を出た。
 あの女の子が窓から手を振ってくれている。俺は大きく手を振り返した。
「まずはここから一番近い町、リムルダールに向かいましょう。そこで大体の装備を調えなくっちゃ」
 世界地図を広げマリアさんは言う。部屋の中で見た地図だ。
 リムルダールはここから南西の草原地帯にある町。一番近い町といっても3日はかかるらしい。それ全然近くない。
 途中大きな森があって、その森は周辺の住人から迷いの森と呼ばれているという。
 入ったっきり出てこられなくなって行方不明になった旅人もいるというのだ。覚悟していかねば。
 あと、この町は湖の上につくられており、内陸でありながら水資源が豊富なのだという。
 町を更に西に行くと砂漠があるため、砂漠を渡る人たちにとって水の豊富なこの町はいい拠点となる。
 俺たちはまだ冒険歴が浅いので砂漠の向こうへ行くようなことはしないが、いつか行くことになるだろう。

213 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 20:28:30 ID:hWVRMulU0

「あ、ねえ、あなたの名前……どうする?」
 手に持っていた地図をしまいながら俺に尋ねる。
 すっかり頭から抜けていた。今俺は記憶喪失なんだった。
「あー……やっぱ名前が無いと不便ですよね。なんて名前にしようかな……うーん……」
 頭を捻って考える。自分の名前を考えるというのも変な感じだが、まあそれは仕方がないだろう。
 名前名前名前……。
「……そうだわ、私があなたの名前を考えてげましょうか?」
「本当ですか?」
 それはありがたい。正直サトチーやらゆきのふやら変な名前しか思い浮かばなかったところだ。
 是非お願いしますと言うと、マリアさんはしばらく考え込み、こう言った。
「トンヌラはどう?」
「全力で拒否させていただきます」
 俺とレベルが変わらないくらいの酷さだ。トンヌラ……なんて間抜けな響きなんだ。
 とてつもない人生を送ることになりそうな名前だ。なんとなく。
「そう? じゃあ、もょもと」
「勘弁して下さい」
 今どうやって発音しましたかマリアさん。
 もよもと、もゅよもと、ももと……言えねえ。
「うーん……なら、アレフはどう?」
「あ、その名前いい!」
 アレフ! 勇者っぽくて格好いい、っていうか今までのより遙かにいい名前だ。
「決まりね。……アレフって名前はね、私の国では聖なる名前なの」
 聖なる名前って……んなご大層な名前俺がもらっちゃっていいんですか。
 
「これからよろしくね、アレフ」
「よろしくお願いします、マリアさん」
 俺たちはどちらともなく手を差し出し、握手を交わした。
 あ、またマリアさんの旅の理由を聞くの忘れてた。まあいいや、歩いている途中にでも聞こう。

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/23(月) 22:09:27 ID:NryVkRQA0
支援

215 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:25:33 ID:hWVRMulU0


 リムルダールへ向かう間、マリアさんはこの世界について話してくれた。
 簡単に纏めると、この世界には竜王という魔王が存在している。けど竜王の住処は誰にもわからない。
 昔人間と一緒に暮らしていたモンスターが凶悪化したのは、この竜王が出す悪の波動の所為らしい。
 闇の波動は年々強力になってきていて、それを見かねた神様が竜王を倒す運命を持った勇者を誕生させた。
 それが今から16年前。ってことは勇者は俺と同い年なのか。
 ていうか、神様……って、この間の夢に出てきた竜の女王のことだよな。竜王と竜の女王か。
「そして、その勇者が誕生したとお告げがあった後に――」
 竜王は自分を脅かす勇者を、力のない子供のうちに潰してしまおうと考えた。
 そして、その年に産まれた子供たちを配下のモンスターを使い、無差別に捕らえて殺していった。
「……っ」
「……私の弟も、その年に産まれたの」
「弟がいるんですか」
「ええ……実はね、私の旅の目的は弟を探すことなんだ」
 いままでこちらを向いていた顔を前方に向け、淡々とした口調で続ける。
 視線は遠くを見つめており、どこか寂しげな雰囲気を出している。

 マリアさんの話を要約すると、幼い頃に彼女の家族が住んでた国はモンスターに滅ぼされてしまった。
 モンスターたちは国中の子供を次々に捕らえていった。その中、マリアさんたちは両親に逃がしてもらう。
 その間に弟さんと色々あってはぐれ、マリアさんはあの修道院に迷い込んだ。
 弟を探しに行こうとしたけどマザーに止められ、力をつけるためにあそこで修行をすることになった。
 で、そろそろ旅に出ようかというときに俺が現れた。
 ひとり旅よりふたり旅の方が危険は少ないから、俺を誘ったと言う訳だ。
 でも俺なんか誘っても……全然戦力にはならないのに。

216 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:26:33 ID:hWVRMulU0
 
 話し終えた後、マリアさんの顔に影が落ちる。辛い話なのに、俺に話してくれて……
「……すみません」
「? ああ、いいのよ。気にしないで。この世界ではそう珍しいことではないし。
 ……あなたには全部話しておかなきゃって思って。なんでそう思ったかはわからないけど」
 俺のいた日本で起きることなんか話にならないくらい、酷い人生を送ってきたマリアさん。
 マリアさんはよく笑う。いつも笑顔だし些細なことでもよく笑う。俺だったらあんな生活送ってきたら笑顔じゃいられない。
 この人は俺よりずっとずっと強い人だ。
 俺も強くならなきゃ。マリアさんがこれからも笑顔でいられるように。マリアさんを守れるように。
 ……って、うわ、俺シリアス! 俺超シリアス! かゆくなった!
 

 話題を変えて、呪文について話すことにした。
 呪文というものは、魔力を使い様々な現象を起こす能力。魔法とも呼ばれている。
 マリアさんも呪文が使えるという。呪文には正の力と負の力があって……うんたらかんたら。
 まあ、攻撃呪文と補助呪文と回復呪文と特殊呪文に分けられるらしい。
 で、マリアさんの得意なのは攻撃呪文。
「修道院にいたら、普通は回復や補助呪文が得意になるはずなのにね……どうも私には合わないみたい」
 との談。ふむ。呪文の習得は、人により得手不得手があるってことか。
 ん? 呪文……そういえば夢の中で神様に呪文をもらったな。あれは俺に使えるんだろうか。
「マリアさん、呪文って俺にでも使えます?」
「魔力と努力があれば誰にでも使えるわよ。あなたには微かだけど魔力があるから、修行すればきっと身につくわ」
「俺にも呪文が使えるのかぁ……」
 目線を自分の両手に落とす。大きな苦労をしてきたことのない綺麗な手。
 まあ実家の畑仕事の手伝いおかげで多少ごつくなってはいるが。
 今までそんな能力とは無関係な世界で生きてきた俺だけど、そんな俺にも呪文が使えるかもしれない。
 ……俺、なんだかワクワクしてきたぞ!

217 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:27:26 ID:hWVRMulU0

「そうだわ、呪文がどういうものか少し見せてあげる」
 マリアさんはそう言って近くに落ちていた小枝を拾ってきた。なにをする気だろうか。
「この枝と杖を見ててね」
 そう言うとマリアさんは杖を構えた。すると杖を握る手から赤い光が見えた。
 光はそのまま杖を伝い、杖の先の大きな赤い石に。石の中で光がスパークしている。
 そしてその石からからバチリと雷のように反対の手へと流れた光は、人差し指に集まる。
「メラ!」
 なにやら変な言葉を唱えた途端、その指先から火の玉が飛び出す。
 そして指のさし示す先にあった小枝に命中し、小枝は勢いよく燃えた。
 ほんの一瞬の出来事だったが、俺の意識は完璧にその火の玉に持って行かれた。
「すっげー!」
「ふふっ、これはメラといって呪文の中では基本中の基本なのよ」
「あの、質問なんですけど、その杖の役割ってなんです? 先っぽの赤いのからボワーって光が! 赤いのボワーって!」
 興奮の所為か大げさなボディランゲージ付きで話す俺に苦笑し、マリアさんはその杖を手渡してくれた。
 思ったより軽くて、手によく馴染む。ぶんぶんと振ってみるとひのきの棒より振りやすい。
「これは装備者の魔力を増幅させる杖で、その石は魔力が込められている特殊な鉱物なのよ」
「へえええ……」

218 :STORY.3 この道わが旅 ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:28:05 ID:hWVRMulU0
 そう言われ先っぽの石をよく見てみると、石の中心にキラキラした光が見えた。これが魔力か。
 ワクワクドキドキ、俺の中の好奇心がうずく。俺は宙に向かい杖を振り、先程のマリアさんを真似て呪文を唱えてみた。
「……メラァ!」
 アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
 俺の叫びは空に消えていった。隣ではマリアさんがクスクス笑っている。ああ、恥ずかしい!
「魔力があるからっていきなり使えるものじゃないわよ。毎日の精神集中、そして呪文理論について勉強しなくちゃ」
 呪文は一日にしてならずですね。でも大丈夫です。こう見えても俺、勉強好きってわけじゃないけど、嫌いじゃないですから。
 しばらく落ち込んでいたら、マリアさんに励まされた。で、呪文を教わることになった。わーい。
 当面の目標は魔力を増やすこと。魔力がなければ呪文は唱えられないからだ。
 魔力の量は元々の才能もあるけど、努力次第で幾らでも増やせるそうだ。よし、頑張ろう。
 とりあえず元気に前へ進んでみましょうかね。

 神様、竜の女王様。俺たちの旅にどうか祝福を。

219 : ◆aPqItC/JYI :2007/04/23(月) 22:29:39 ID:hWVRMulU0
第三話投下終了しました。
規制に引っかかり途中で止まってしまいました。
>>214さん、支援ありがとうございました。

220 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/23(月) 23:01:06 ID:YZjlrzJk0
乙です。
前向きな主人公に好感!
序盤から気になる伏線も出てきて、
続きが楽しみです。

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 16:37:48 ID:3sU1O7zN0
今4の人◆gYINaOL2aEの作品を読み返してるんだが
何度読み返しても涙が止まらなくなる程感動してしまう件について

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 17:36:19 ID:4ikbC09NO
完結した職人への感想とか完全にチラ裏だろ。自演乙と言われても仕方ないくらいにな

223 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 19:57:15 ID:/oWal092O
頭の中がぼーっする。
なんだか色々ありすぎた気がするから。
なんで私、こんな所にいるんだっけ?
 
寮の自室で眠りについた、あぁ、眠った時もなんだかあやふやだったっけ。
とにかく疲れたな、寝るか…いや寝ているのか?
とりあえず…1匹2匹3…
 
「ピキー!」
 
「うん…3ピキ〜…」
 
ん?ピキー!っtqあwせdrftgyふじこlp;@
 
「ピキー?」
 
「あぁ、ごめんごめん、サスケ」
 
ここは(絶対に)DQ6の世界だったんだ…やっぱり夢ではないらしい。
私達は石畳の上に転がっていた、まわりは霧がたっていて、へたに動けばサスケの姿も見えなくなりそうだった。

224 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:00:22 ID:/oWal092O
「サスケ、ちょっとおいで」
 
見慣れた場所だが、未開の土地だ。
離れたらもう会えないかもしれないと思えたので、とりあえず固まって移動する事にした。
 
そしてふと思った。この言葉の通じない異国のスライムに何度助けられたのだろう。
この肩の重みに、温もりに、本当に最弱の生き物なのだろうか?そんな疑問がうかんだ。
 
霧の切れ目から陽射しが差し込む。出口が近い事を私は確信した。
 
青空が顔を覗かせた。
なかなか清々しい空気だ、さすが車が通っていないだけある。
私の記憶が正しければ南に行って突き当たったら左…また南…うん、とりあえず歩け、私。
 
少年は荒野を行く。
すまん、聖剣伝説だった。

225 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:01:12 ID:/oWal092O
馬鹿な事を考えつつ、南下を続ける、すると一カ所、雰囲気の違う場所があった。
私は近付くと大地にぽっかりと穴が開いていたのだ。
なかなかの圧巻だった。
そこを覗くと、下にはトルッカの街が見え、その上には雲がゆったりと泳いでいた。
 
「すごい…サスケ、街が下に見えるよ」
 
こんなのはなかなか見れないんじゃないの?カメラでも持ってこればよかったと思っていた。
のんきに景色を楽しんでいると、男の人の叫び声がした。
 
「助けてくれェーーー!」
 
幻聴ではない、という事はまた私達はあの大地に滑り落ちるんじゃ…
 
「助けてくれェーーー!」
 
この野郎、私に感謝しやがれ、私は声のする方へ走った。

226 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:02:08 ID:/oWal092O
「誰かー!」
 
「今行きますよー!」
 
当たってくだけろ、くだけちゃいかんが。
注意をしながら大地の穴の周りを見る。
 
「ここだ、ここだ〜!」
 
叫ぶな、まったく。
 
「すまんが引っ張り上げてくれんかのぅ」
 
はいはい。
 
「それは木の枝じゃ!」
 
サーセンwwwww
 
私の力が強かったのか、無事におじさんを助ける事が出来た。
御礼としてシェーナの街まで送ってくれると言って、馬車の荷台に乗せて貰った。
痩せた馬だったが、倒れたりする事なく、夕暮れにはシェーナの街にたどり着いてくれた。
 
おじさんは御飯を御馳走すると言って、私を招きいれてくれた、結構いい奴じゃないか。
 
市場に近い緑の屋根の家の扉を開けると、娘さんらしい赤毛の女性がおっさんに抱き付く。
よっぽど心配していたんだな、と思った。
娘さんは私を見るとこういった。
 
「貴方ね、ライフコッドから来た青い髪の人って!」
 
なんですと?

227 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:04:51 ID:/oWal092O
娘さん…メイサさんの話によると、ライフコッドから頼りなさそうな青い髪の人間がくると連絡があったらしい。
おっさんも「女なのに関心な奴だ!」とガハガハ笑った、けなされていると見ていいのだろうか。
 
何はともあれ、冠職人の家で晩餐をする事になった。
見た事のない料理だったが、これがなかなか美味しい。
材料は私達の食べるものとそう変わらないようで、調味料だけが違うようだった。
 
塩や胡椒はあったものの、醤油はなく、かわりに「ひとしこの実」というのがあった。
なんだか危険な調味料のように見えたが、高級な香辛料らしい。
 
夜になったら部屋を貸してくれた。
なんていい家族なんだろう…1日くらいしかたっていないのに、なんだか久しぶりにシャワーを浴びた気がした。
 
明日、ライフコッドへ向けて歩こう、一応冠を届けなくてはいけない…その前に武器も欲しいなぁ…そんな事を考えながらベットの中に体を滑らせた。
そんな今日はヒツジを数える事なく私と1匹は眠りについた。

228 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/04/24(火) 20:10:18 ID:/oWal092O
今日はここまでです
 
>>166 乙あざっす、でもこっち見んなww
 
>>167 可愛くて健気な奴です、長い目で見てやってください
 
>>168 その辺はよくわからないです…
 
>>169 乙とフォローありがとうございました
 
>>まとめのタカハシ様 次回の更新時に>>159-163を第2話、>>223-227を第3話でまとめていただけませんか?
迷惑かけてすみません

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/24(火) 23:39:35 ID:Ut22lTtHO
乙です
職人方の書くスライムは可愛いなぁ

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/25(水) 02:11:50 ID:clvWPCJs0
スライムたん、かわいいです♪

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/26(木) 21:41:50 ID:RldONRZl0
ほしゅ

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/27(金) 10:35:22 ID:dZUU6VQT0
鈴木はどうなった

233 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/27(金) 23:50:08 ID:Hx34xILu0
鈴木日記

4月20日

今日は屈強な兵士の方と面接をした。
平和だと思っていたこの世界だがその実「魔王」と呼ばれる人物によって危機にさらされているようだ。
よくわからないがどこかの国の独裁者が世界中に戦争を仕掛けたという事だろう。
どの世界でも人はどうしてこう争いだがるのだろうか。
まあそれは置いといて慢性的に兵士が不足しているらしくなんとこんな私でも正式に採用されてしまった。
と言っても前線に立つのではなく城や町の簡単な警備なので問題は無いだろうとの事。
不安は大きいが明日からこの国の平和のために頑張ろうと思う。

田中日記

4つき20にち

いたい
いたいよ
しごとやすみたいよ

234 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/27(金) 23:56:56 ID:Hx34xILu0
鈴木日記

4月21日

私に与えられた仕事は町の見回りだ。さっそく地図を頭に叩き込んでいざ町へ…
だが現実はそんなに甘くなかった。重い。甲冑が非常に重いのである。
もちろん剣も重い。こう見えて私は剣道三段だ。高校大学と剣道部で汗を流したものだ。
だからといって甘く見ていた。それはそうであろう。真剣を振り回した経験など当然無い。
とにかく一番軽装な甲冑を貸してもらい先ずはこの格好で動き回る事から始めなければ。
重子、沙織、お父さん頑張るよ。元戸中商事営業部部長の名にかけて!


田中日記

4月22日 いたい

恐い…ママが凄く恐い…今日さすがに動けなくて仕事休もうと思ったらいきなり押しかけてきた…
目が全然笑ってねーでやんの…俺は思ったね。ママほど「極道の妻」というフレーズが似合う女はそういない!
あとロシーヌちゃんが筋肉痛の腹筋をつついてくる。痛い。凄く痛い。
しかし男田中こんな事でヘコたれるわけにはいかない!
夏にはムキムキになって奇麗なおねーちゃん達と海にいくのだ!

235 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:03:10 ID:MRj3Ydtc0
鈴木日記

4月22日 晴れ

見かねた兵士長が剣の振り方を教えてくれた。なかなかどうして難しいものである。
早く仕事を始めなければいけないのに多数の人に迷惑をかけて非常に申し訳ない。
体を鍛えて技を磨くのも兵士の仕事のうちだと慰めてもらったがいつまでもこのままではいけないだろう。
しかし腰にくるなこの仕事は…


田中日記 

4月22日 あったかいむしろあつい

ちょっと筋肉痛にも慣れてきた。心なしか腹筋が割れてきた気が…
やべ今の俺超かっこいいかも!

236 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:11:41 ID:MRj3Ydtc0
鈴木日記

4月23日 晴れ

今日は町の地理に慣れる為に町を散策した。改めてこの世界の人たちを見て回ったわけだが
古きよき時代の田舎といった所だろうか。道行く人が気さくに声を掛けてくれて非常に心地よかった。
それはそうと今更だが初めて田中の働いてる現場を見た。昼食を田中の働いている店でとったわけだが
破廉恥な格好をした若い女の子にちょっかいかけたり奇麗な店主にデレデレしたり本当に不真面目な奴である…
店主の話によると店の空気が明るくなるし雑用はしっかりこなしているからこれでいいとの事だが
上司としてなんともやるせない気持ちになった。

追伸:田中の手料理とやらを初めてて食べた。これは人前に出すべきでは無い。断じて。


田中日記

4月23日 あったかい

今日鈴木さんが店に来た。ママが自分の実力を試すいいチャンスだと言って俺に飯を作らせた。
鈴木さん感動して固まってやんの(笑)そりゃそうだなかわいい部下がうまい飯作ってくれたんだから(笑)
こんどネネちゃんにも作ってやるか!

237 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/28(土) 00:17:04 ID:tYQ8q3Vc0
支援

238 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/28(土) 00:20:50 ID:rLqBStxL0
じゃあ俺も支援w

239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/28(土) 00:22:17 ID:PV57gD+B0
田中ww

240 :企業戦士鈴木の記録 ◆9iJ0M9nf3E :2007/04/28(土) 00:22:35 ID:MRj3Ydtc0
>>237
いつもありがとうございます!すいません今日ここまでですorz
GW中に追いつく予定で…

241 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/04/28(土) 00:56:02 ID:tYQ8q3Vc0
>>240 さん
おつかれさまです。
気負いしすぎず、ご自分のペースでがんばってください!

職人さんから個別に指定頂いたまとめ方は、反映しています。
もし、考えていたまとめられかたと違う場合は気軽に言ってください。

まとめサイトはここまでまとめました。
また、避難所で要望のあった絵板を設置しています。
アプロダとあわせて、自由に使ってください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

*余談
ファイル数も250を超え、容量もテキストだけなのに過去ログを省いて約4MB…
書いていただいている書き手さん、読んでくれている読み手さん、感謝です。

242 :R:2007/04/29(日) 00:14:30 ID:6E2YpHveO
まとめお疲れさまです!

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 21:54:42 ID:/4dowCYVO
田中は今日何してるんだろな

244 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 23:28:57 ID:4jV8mZnZ0
まとめ人さん乙です。
今日某神書き手さんの作品をプリントアウトしたんだが、えらい紙の量になったw
改めて書き手さん方やまとめ人さんの苦労に乙と言いたい。


245 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/30(月) 23:39:33 ID:adF24d930
こんだけマメなまとめ様がいらっしゃって、ありがたいです。
多謝!

246 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/01(火) 01:33:46 ID:X3Zp195h0
お疲れ様です。

>>242-245
ありがとうございます。
書いてくれる人と読んでくれる人がいないとまとめは成り立ちません。
今後ともよろしく…

絵板、いい絵を描いてくれた人がいますね〜
萌えというヤツですか!

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/02(水) 06:05:07 ID:gDXwYXX4O
保守

248 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 08:31:10 ID:wTE2TpVC0
保守!

249 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:00:58 ID:2VXz2OdM0


 俺たちは迷い森の中へ入った。さっきまでの平野と違って随分歩きづらい。
 森の中は光が入りにくいらしく薄暗い。霧が発生しているようで、視界も絶不調。
 更に同じような木ばかり生えていてさっきまでいた位置と今の位置の区別がつき辛い。迷うわけだ。
 しかも土や木の根がところどころ盛り上がっていて足が取られる。さっきなんてつまずいて転んでしまった。
 幼い頃から裏山の中を駆けずりまわっていた俺だけど、流石にこれは辛い。段々と体力が削られる。
 一方マリアさんはザクザク先へと進んでいく。この世界の人はみんなああも道ならぬ道を歩くのに慣れているのか?
 置いて行かれないよう、俺は震える足を前へ前へと踏み出していった。
 
 突然ガサリと背後の草むらから音がした。
 マリアさんはすぐさま振り向き身構えた。遅れて俺もひのきの棒を取り出し身構える。
 バサバサッという音とともに草むらから出てきたのは、空飛ぶ黒い塊と青いタマネギみたいな生き物が1匹ずつ。
「スライムとドラキーよ! アレフ、気をつけて!」
 どっちがスライムでどっちがドラキーだ! 軽く混乱していると、タマネギが俺に襲いかかってきた。
 タマネギのタックルが俺の腹に直撃。一瞬息が詰まり衝撃で後方に吹っ飛ぶ。マリアさんが俺の名前を叫んだ。
 体当たりされた腹と、地面に打った背中が痛い。起き上がるとタマネギが降ってきた。
 俺は反射的に手に持っていたひのきの棒を振った。するとうまくヒットし、タマネギを吹っ飛ばした。
「このっ、タマネギ!」
 吹き飛んだ方向に向かい、思い切り踏みつけた。ぐにょっとした感触が気色悪い。俺は何度も踏みつけた。
 マリアさんの方を見やると、黒い塊をメラで火だるまにしているところだった。よかった、無事だ。
 もう一度タマネギの方を見る。タマネギはもがいていたがしばらくすると動かなくなり、光になって消えていった。
 消えた後に残っていたのは小さな石。宝石みたいにキラキラしている。何だろう。とりあえず拾っておいた。

250 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:01:36 ID:2VXz2OdM0
 
 出発前にマリアさんにもらっていた薬草をかじる。苦い。じいちゃんに無理矢理飲まされた青汁よりまずい。
 しかし腹と背中の痛みがスッと消えていった。おお、凄い効果だ。
 マリアさんが言うには、さっきのモンスターはタマネギがスライムで黒いのがドラキーというらしい。
 どちらも下等なモンスターで、そんなに手強い相手ではない。最初に出会ったのがこいつらでよかった。
 さっき拾った石をマリアさんに見せた。これは”いのちの結晶”というものらしい。
 この世界に存在する生物、人間もモンスターも、このいのちの結晶を身に宿している。核みたいなものだ。
 結晶は本体の種族や能力により色や形が違う。本体が強ければ強いほど結晶の質も上がる。
 それを利用しての報奨金制度というものがこの世界にはあるという。
 町に設置されている施設に結晶を持っていくと、倒したモンスター本体の種類や強さに応じてお金が貰えるのだ。
 ……なんだか、凄い世界だな。
 

 草をかき分け歩いていると、またモンスターが出てきた。今度はドラキーが3匹。
 キィキィ鳴いて俺たちの周りを飛び回る。動きが素早い、目で追いかけるのがやっとだ。
 ドラキーの笑っているような口が俺を馬鹿にしてるみたいに見えて胸くそ悪い。
 ひのきの棒を握る手に汗がにじむ。落ち着け俺。集中するんだ俺。
「メラ!」
 隣にいたマリアさんが呪文を唱えた。指先から火の玉が出て1匹を炎に包む。
 するとギィギィと耳障りな声をあげて地面へと落下していった。
 そちらの方に気を取られていたら、もう1匹のドラキーがこちらへ向かってきた。
 ……さっきの戦いの後、マリアさんはアドバイスをしてくれた。
 ドラキーは動きが速く飛び回るけど、攻撃は体当たりだけ。しかも一直線にしか向かってこない、と。
 向かってくるドラキーにタイミングを合わせ、ひのきの棒を野球バットのようにスウィングする。
 会心の一撃! ひのきの棒にあたったドラキーは向かいの木に衝突し、消滅した。

251 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:02:08 ID:2VXz2OdM0
「やったわね!」
 マリアさんが駆けつけてくる。その顔には笑顔が浮かんでいた。
 緊張が解けた俺は、糸の切れた操り人形のようにその場にへたりと座り込んだ。
 しかもただドラキーを避けて棒をひと降りしただけなのに肩で息をする始末。情けない。
 でも二人とも怪我がなくてよかった。
「モンスターの動きを見極めて攻撃……一度の助言で実行できるなんて、すごいわ」
 ありがとうマリアさん。実は無我夢中でした。きっとまぐれです。
 

 幾ら歩いても出口が見えない。日も傾いてきたし、俺たちはこの近くで野宿をすることにした。
 女性と二人きりの野宿。……ドキドキワクワクってレベルじゃねーぞ!
 さっきのところから少し進むと、草が生えていないそこそこ広い場所があった。
 周りが確認しやすくちょうどいい。俺たちはそこで休むことにした。
 野営に火は付きもの。ということで小枝をいくつか集めてきて焚き火をする。
 着火はマリアさんのメラで一発。なんて便利なんだ呪文。俺も早く使いてー。

 ホウホウとフクロウが鳴く声が聞こえる。この世界にもフクロウがいるのか。
 するとマリアさんが、あれはフクロウではなくてアウルベアーというモンスターだと教えてくれた。
 フクロウみたいな顔をしているけど、体は熊のように大きく腕力も相当なもの。
 夜行性で、まれに寝込みを襲われることがあるから、旅人にとって結構恐れられているモンスターなんだそうだ。
 ガクブル、俺たちのところに来ませんように。
 でも、もしアウルベアーが襲ってきたら俺は戦えるのかな。
 マリアさんみたいに呪文を使える訳でもないし、こんな木の棒で熊に勝負を挑むなんて死にに急ぐようなものだ。

252 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:02:44 ID:2VXz2OdM0

 と、いうわけで早速マリアさんに呪文を教えてもらうことになった。
「必要なのはイメージよ。全身に分散している魔力をを指先に集めるように、そして唱えたい呪文をイメージするの」
「イメージ……」
「メラを唱えるなら火の玉をイメージするといいわ」
 火の玉火の玉……駄目です先生、イメージすればするほどお化けの鬼火しか思いつきません。赤じゃなくて青い炎になります!
「最初は目を閉じててもいいからゆっくり落ち着いて、深呼吸して心を静かに……」
 言われる通りに俺は目を閉じる。深く息を吸ってゆっくりと吐き、深呼吸。頭の中に火の玉を浮かべる。
 ああ、なにか掴める感じがするぞ。メラメラ燃えるメラの炎……
「メラ!」
 アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
「……駄目でした」
「毎日続けていたらできるようになるわ、絶対」
 うなだれる俺の肩に手を置いて励ましてくれるマリアさん。そうですよね、すぐできたら修行なんていりませんよね。
 とりあえずしばらくの間はイメージと集中を重点的にすることにした。


「そろそろ夕食にしましょうか」
 修行を中断し夕食にすることにした。夕食といっても固焼きパンとジャムに少しの木の実だけだ。
 なんだかひもじい気もするが、この先なにがあるかわからない。少しでも食料を節約しなくては。
「マリアさん、この木の実ってなんですか?」
 俺はこの不思議な形をした木の実が気になった。紫色で、貝殻が合わさったような形をしている。
「これは賢さの種といって、能力が上がる効果が稀にある木の実よ」
「へぇ……でもこれって貴重なものじゃないですか?」
「まあ、簡単に人の目には触れるものではないわね。
 昔マザーがどこからか持ってきた苗を育てたらこの実が生った、ということらしいけど。詳しいことはわからないわ」
「そうなんですか……」
 そんなもん栽培してるなんて、マザー何者だ。
 その後マリアさんとの会話もそこそこに、食事を終える。満腹とは言い難いけど、空腹は治まったからいいか。

253 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:03:27 ID:2VXz2OdM0
 
 森が闇に包まれる。俺たちは炎に照らされていて明るいが、火から離れると深く飲み込まれてしまいそうな闇が続く。
「まず私が番をするわ。アレフは寝てていいわよ。なにかあったら起こすから」
「あ、はい」
 番は交代制。マリアさんが眠くなったら俺が起きて番をする。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 地べたにそのまま寝るのは汚いけど、寝袋なんて物はこの世界にはない。
 俺は薄い毛布にくるまり、アウルベアーの鳴き声を子守歌に眠りに落ちた。


「マリアさん、朝です。起きてください」
 相変わらず薄暗い森の中だけど、木の葉の間から光が差し込んできている。朝だ。
 あれからマリアさんと交代し、俺はずっと起きていた。夜更かし早起きは得意だから、そんなに疲れはない。
 今回の野宿は危なげなく終わった。毎回こうだったらいいのに。そう呟きながら俺は朝食のパンを頬張る。
 食事も終え支度をし、俺たちはここを出発した。もちろん火の始末も完璧に。
「西は……こっちね」
 コンパスを片手にマリアさんは方向を指し示す。うっそうと草が茂っており、獣道すらない。
 だが旅に道のあるないは関係ない。さくさく進むことにした。
 腰程まである草をかき分けて進んでいく。足を取られたりしてうっとうしいのこの上ない。
 頭の上からゲアゲアとカラスの鳴き声が聞こえる。まるで俺たちを馬鹿にしているように聞こえる。気味が悪い。
 突然前を歩いていたマリアさんが歩みを止めた。
「マリアさん、どうしました?」
「……私たち、迷ったみたいね」
 マリアさんが見つめる先を見て、俺は驚いた。俺たちは野宿したところに戻ってきてしまっていたのだ。
 俺が砂をかけて消した焚き火の後。間違いなかった。
「これって……」
「流石迷いの森と呼ばれるだけあるわね」
 やれやれとため息を吐くマリアさん。まあ、ある意味振り出しに戻ったのだから仕方がない。
「まあいいわ、とにかく進みましょう」

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:06:02 ID:1oHOWIOmO
携帯から自分で支援(・∀・)

255 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 16:07:12 ID:2VXz2OdM0
 
 コンパスを見て進むも、なぜか最初の場所に戻ってしまう。何度も何度も西へ行っても戻ってきてしまう。
 3周目の時点でドッと疲れが襲ってきた。
 そしてグルグル回って5周目、肉体的にも精神的にも流石に疲れたので休憩を取ることにした。
「……駄目。全然先へ進めないわ」
 疲れ切った声でマリアさんが言う。
 俺たちが休んでいるところはあの寝泊まりした場所。この焚き火の後をもう何回見ただろう。
 長い道を歩いていくより同じところを何度も歩く方が疲れる。
 そう、同じところを何度も。
「……」
 同じところ……同じ道が駄目なら、違う……そう、逆の道とか。
「……そうだ!」
 大声を出すと同時にいきなり立ち上がった俺を、マリアさんは怪訝な目で見つめる。
 俺は立ったままマリアさんに向き直り、声高に話した。
「マリアさん、逆に考えるんだ。押して駄目なら引いてみればいいんだ!」
「引いてみる?」
「はい。西に行くとここに戻ってしまう。なら、反対方向の道……東に行けば!」
「なるほどね……いい考えだわ。このまま回っているのも時間の無駄だし、東に向かってみましょう」

256 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:08:36 ID:1oHOWIOmO
また規制。流しすみません。

257 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:11:09 ID:nlG9FOnx0
>>256
がんがれ支援

258 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:13:03 ID:tk2Z8m2WO
支援

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 16:14:19 ID:1oHOWIOmO
さるさんのおかげで、しばらく投下できません。
時間をおいてからチャレンジしてみます。半端ですみません。

>>257>>258
ありがとうございました。(つ∀`)

260 :STORY.4 忍び寄る影 ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 18:50:57 ID:2VXz2OdM0


 東に向かってしばらくすると、開けた空間が見えてきた。
 そこは石がいくつも積み重ねられ表面は苔生している、祭壇のような場所だった。
 傍に立つ柱は元の形を保っているもの、崩れ落ちているものと、様々だ。
「……なにかの遺跡かしら。だとしても、そうとう古いわね」
「遺跡かあー」
 俺は興味津々に遺跡を見て回る。こういう歴史あるものを見るのは好きなのだ。
 ピラミッドのように何十にも積み重ねられた石たち。中央には頂上へと続く階段がある。
 それの傍には小さな社が左右に一つずつ……片方は崩れていて見る影もないが、たぶんそうだろう。
 俺は崩れていない方の社へ向かった。マリアさんと離れてしまったが、そんなことは気に止めなかった。
 危険の心配よりも好奇心の方が勝ってしまったのだ。
 壁を見ていると、表面に変な模様があることに気がついた。文字だろうか……読めないな。
 よく見ようと表面をこすっていると、突然大きな影が俺に被さった。
「よう、そこの坊や。……なにかお探しかい?」
 声に驚き振り向くと、そこには狼の顔をした人間の姿があった。

261 : ◆aPqItC/JYI :2007/05/04(金) 18:52:10 ID:2VXz2OdM0
祝・規制解除。
以上で今回の投下終了です。

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/04(金) 19:09:53 ID:RP+9TnHc0
しまった、いいとこで終わっちゃってる!


続き期待していますよ〜

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 01:35:28 ID:WKmQog9F0
GW投下、お疲れ様でした!
本当さる規制ウザイですよね。
SS系などの連投がデフォルトのスレはみんな不満みたいです。

モンスター退治とゴールドの関係の処理がうまいですね〜! 違和感ない。
初投下から毎回楽しみです。続きwktkです。

264 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:53:13 ID:ulthyi6uO
次の日メイサさんにシェーナの街を案内してもらった。
なんでもライフコッドで祭があるのは今から3日もあるらしい。

「でもバザーは今日でおしまい、商人達は皆必死よ、きっと良いお買い物ができるわ」

そういったメイサさんの笑った横顔は少し寂しげだった。
バザーが終われば、ここにいるほとんどの人がいなくなるのだろう。
少し複雑な感じだった。
プレイ中にこんな事を考えるなんてなかったから。

「今日は何を買うつもりなの?」

「へ、あ、と…武器とか、薬草を調達しようかな〜…っと」

考えている最中に話かけないでもらいたかったなぁ、なんて思いながら歩いていると辺りから商人の声が飛び交う。

265 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:53:51 ID:ulthyi6uO
「さぁ安いよ!安いよ!薬草が安いよ!薬草6こと聖水1つ!あわせて50Gだよ!」

「革の鎧が230Gのところ200Gだぁ!さぁ買った買った!」

「革の盾が115Gだ!」

とりあえず

「メイサさん」

「何かしら?」

「つかぬ事をお聞きしますが…どれがどのお金に相当するのでしょうか?」

私はこの世界の通貨をよくわからないのだ、財布の中に入っているお金が使えなかったら…とりあえず財布の中身をメイサさんに見せる。
100円玉と10円玉ばかりが入った恥ずかしい財布だったが、その100円玉と10円玉が両替の対象になるとは意外だった。

「案外お金持ってたじゃない!」

「それはどうも…アハハ…」

占めて1250G
とんでもねぇ…ありがとう愛と信頼のゴールド銀行。
お札に至っては「何?この紙きれ」と一蹴されてしまった、が、まぁそれは元の世界に…

266 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:55:40 ID:ulthyi6uO
「戻れるのかなぁ…」

「え?」

ふと放った一言。
それと共に涙が流れた。
メイサさんが私を落ち着かせようと懸命に話かけるが、その内容はまともに聞こえていなかった。


……
………
…………
……………

「…落ち着いた?」

「うん…」

心配そうに私の顔を見る1人と1匹。
私はたまらなくなって話したのだ。

起きたらトルッカの宿にいたこと、自分の姿が他の人に見えてなかったこと、サスケに出会ったこと、夢見る井戸に飛び込んだことも、冠職人のおじさんを助けたことも、全部、全て。

267 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:16 ID:ulthyi6uO
「頑張ったんだね」

馬鹿、そんな事言わないでよ、私の緩んだ涙腺からさらに涙が分泌されるじゃないか。
涙でまた顔がぐしゃぐしゃになる。

「…じゃあこれからどうするの…?」

そうだ、泣いていても元の世界に戻れる事はないだろう。

「とにかくライフコッドへ行きます…もしかしたらヒントがあるかもしれない…」

「そう…頑張ってね…!」

「はい!」

そのあと薬草セット6セット分と大きめのリュックサック、水と日持ちのよさそうな食糧を購入した、武器はめぼしいものが見つからなかった。
地図はメイサさんからせんべつとして買ってもらった。
その日、疲れた私は食事をとる事なく眠りについた。

268 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:59 ID:ulthyi6uO
そして次の朝、朝食中、私はライフコッドに向かうとメイサさんと冠職人のおっさんに言った。
朝食を済ませると貸してもらっている部屋に戻る。

昨日買った薬草セットの1つをコートのポケットに入れ、財布と残りの薬草セット、地図と食糧はリュックの中に詰め込んだ。
これに私の命がかかっていると言っても過言ではない、それから靴の紐を解けないようおもいっきりかたく締める、まるで自分自身に言い聞かせるように。

「入るわよ」

どうぞ、と私が言うと青色のワンピースのような服と一降りのナイフを持ったメイサさんが入ってきた。

「ちょっとしたものだけど…役に立つと思ったから持ってきたわ」

「ありがとう、メイサさん」

なんでもこの世界での旅人の基本的な装束らしい。
元着ていた服はメイサさんの家に置いていく事にした。
宿代には不十分だとは思うがこれが精一杯だった。

269 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:58:57 ID:ulthyi6uO
青色の服に袖を通すと、麻が入っているのか、少しチクチクとした。

私の旅が始まるんだ、不安より期待の方が大きすぎるような気がした。

モンスターの知識もあるのだからと言うのが要因だろうか、私は着替えを済ませると後ろから視線が。

 人
(゚д゚)

「こっち見んなw」

旅に乙女心はいらないとわかった。
服にはソードベルトなるものがついていたのでナイフはそこにいれる事にする。
リュックを背負い、サスケを肩に乗せる、ついにお別れだ。

メイサさんには気をつけてねとか忘れないでとか、辛くなったら来てとか言われた。
おっさんも、また来いと行った、その時に髭面の間から涙が見えていたのがわかった。

歩き出した時、後ろからメイサさんの声が聞こえる

「行く前に、名前、教えて」

私の名前…

「星良[セイラ]!星に良いって書いて星良!」

「また会おうね!セーラ!」

こうして私の長い旅が始まった。

270 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 12:02:00 ID:ulthyi6uO
本日の投下はこれにて終了です
ありがとうございました

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:12:46 ID:AqNLWx3jO
サスケwwwww乙ww

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:12 ID:Tn0giKIA0
面白い!
ゲームでいえばまだ序盤なのに大冒険になりそうな予感
自分に自信の無い主人公てのはつい感情移入しちゃいますね

続き期待してます!

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:36 ID:Y8piABFwO
ちょwwサスケwwこっち見んなwww

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