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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目
172 :
インターミッション/夢
◆u9VgpDS6fg
:2007/04/16(月) 15:00:19 ID:TVMM9Dyk0
大きくて力強い腕が俺を抱き上げた。
そしてそのままその腕の持ち主の頭よりも高く掲げる。
俺は泣いていた。
悲しい訳でも、嬉しい訳でもなかった。
ただその誰もがそうであるように、
この世界に生まれ落ちた証を刻むように大きく呼吸をしていた。
大きな腕の持ち主は大きな声で何か言うと、
暖かくて柔らかいものの上に俺をそっと横たえる。
それを確かめるように今度は、細くて暖かい指先が俺の頬をなでた。
同じように細い指先の持ち主も俺に何か語りかける。
言葉は聞き取れたが、その意味は分からなかった。
ただ、それが愛するものへの慈しみを含んでいる事だけは分かった。
俺は泣いていた。
泣く事しかできなかった。
大きな腕の持ち主と、細い指の持ち主は幾つかの言葉を交わし、
俺は泣きながらただそれを聞いていた。
173 :
インターミッション/夢
◆u9VgpDS6fg
:2007/04/16(月) 15:01:15 ID:TVMM9Dyk0
暖かい布に包まれて世界がゆっくりと揺れだした。
体中に響くような、落ち着かせるような定期的な揺れと
右側から聞こえる定期的に刻まれる音…心音が、
次第に俺の意識を奪い、白く靄ける景色は少しずつ遠ざかって行く。
まだだ。
まだあの場所にいたい。
必死で伸ばそうとした手を嗜めるように、細い指先が
俺の信じられない程小さな手を握った。
視界が白い明かりに包まれて、やがてのぼせて意識を失う時のように、
光が散り散りになって暗闇に吸い込まれて行く。
そして世界は暗転する。
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