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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

1 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
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PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
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避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
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ファイルアップローダー
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お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

695 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 14:46:35 ID:kHGSeP9/0
リアルタイム遭遇きたぁぁぁ。
支援でございます。


696 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:47:15 ID:ziCgFva70
  「弱い弱い!」

得意気に、そして勝利を確信したかのように言い張るアレフ。
しかし彼らが傷つけた箇所は蜃気楼のように霞んだ後、
幻から覚めた時のように元通りになっていた。
見ている限り回復呪文は使っていないはずだった。

多少驚愕しつつ再度攻撃を試みるが、敵の傷がまた勝手に癒えてしまう。
三人の巧みな剣術は多大な結果を伴ってはいるのだが、
何故かその結果自体が消え去って最終的には振り出しに戻ってしまっている。
いや向こうの攻撃はこちらに通るし、攻撃するにしても疲れが発生するのだから、
振り出しに戻るのは常にモンスター側の方だけで、
こちらは後退しているような反則的な状況だ。

威厳を見せ付けるように唸り、火を吐くサラマンダー。
その激しい炎をかわしながら再び攻撃に転じようとするアレフ。
しかし急に彼の動きが鈍り、避けきれなかった炎に足を焼かれてしまう。
そしてベホイミを唱えようとする前にサラマンダーはその牙でアレンに噛み付いた。

  「チッ!」

アレンと対峙するマントゴーアは威嚇するようにして口を大きく開け、
そこから巨大な火の塊、メラゾーマを唱えた。
その威力がいくら大きくても真っ直ぐ飛んでくるものを避けない理由はない。
アレンはメラゾーマを飛び越してマントゴーアにカウンターを狙う。

だがマントゴーアの顔に斬りかかろうとした瞬間、
背後からメラゾーマがアレンの体を直撃した。
確かに避けたはず、という思考はマントゴーアの二撃目の中に消えた。

  「そんな……」

697 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:49:58 ID:ziCgFva70
そしてアレルと対峙するのは六つの剣を怪しく動かしているソードイド。
六対一と数の上では負けているがアレルの方が逆に押している形だ。
しかし決め手の一発がどうやっても外れてしまい、
体勢を立て直そうとしたところを何度も斬りつけられてしまう。

不幸としか言いようがないアレルの運の無さ。
そう言えばアレルの呪いは不幸の兜によるものだった。
呪いの具現化と先ほどアレルが言っていたのが関係あるのだろうか。
考えようとしてもアレルの腕に剣が刺さるのを見れば頭が真っ白になる。

  「くっ……!」

血が流れ、傷跡を炎が焦がしていく。
衣服と人と土の焼ける臭いが鼻を突き刺した。
これでは勝てない……
そう思い始めた時、精霊は再び語りだした。

698 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:52:50 ID:ziCgFva70
○第十二話
   『勇者ってなぁに?』

  「あなた達の勇気、こんなものですか」

さも残念そうにして言葉を紡ぐ精霊。
アレン達がモンスターを倒せない事を本気で嘆いているように思えた。

  「僕達の勇気が、足りないと言いたいんですか……」
  「いいえ、この戦いであなた達に勇気などない、と証明されたのです。
   勇気とは何ぞや? それは絶望への糧でしかない。
   少なくともそういう答えしか用意出来ないのであれば、
   いくらその問いに理性で反論しようとも無意味です」
  「なら用意して突きつけてやるよ!!」
  「ベホマズン!!」

アレフがいきり立ち、アレルが両手を天に掲げて呪文を唱える。
すると私達の体を光が包み込み、その傷を完全に癒していった。
メラゾーマの火傷を、魔の牙にえぐられた咬創を、六本の剣による切創を。
その全てを完璧に復元した勇者達は魔物に三度戦いを挑む。

まずアレフがマホトーンでマントゴーアの呪文を封じ、
ラリホーでソードイドを眠らせる。
次いでアレンが会心の一撃でサラマンダーの首をはね、
ソードイドの腕を切り落とし、マントゴーアの翼を引き千切る。
最後にアレルがありったけの魔法力を込めたギガデインを放った。

動きの鈍いアレフは後方支援、
敵の呪文の心配が無くなったアレンが直接攻撃、
そして攻撃の当たらないアレルは呪文による全体攻撃という
時間にして十秒にも満たない素晴らしいコンビネーション攻撃。
見ていただけの私にも感じ取れるくらいに三人には手ごたえがあった。

699 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:57:07 ID:ziCgFva70
  「グググ……」

それなのに、モンスター達は無傷の姿で土煙の中から現れてきた。
あの凄まじい攻撃を受けてなお無傷。
心が折れる音が聞こえた気がした。

  「呪いのベルトは体を締め付ける鎖。
   悪魔のしっぽは無条件で呪文を受け入れる磔。
   不幸の兜は悪運を呼び込む器。
   それらを背負いし弱き勇者達よ、いや愚か者達よ。
   あなた達の心を私が食ろうてやろう」

発せられた言葉と共に精霊を包んでいた不思議な雰囲気の色が変わる。
彼女の雰囲気は神聖さを感じさせるものだと思っていたが、
今思えばそれは神聖さとは真逆な邪悪さだと気付いた。

彼女の顔が醜く崩れ、とうとう本性を現したというところだろうか。
女の本性は怖いというが、女の私でも怖く感じる程に精霊はおぞましかった。
いや、もう精霊と呼ぶより悪魔と呼ぶべきだろう。
ストレートだった髪が今や乱れに乱れ、眼つきは鋭く口からは牙が見え始めた。
水面が落ち着き無く波立っていた。

  「さてさて、ロトの血肉はどんな味がするのかのう」

舌なめずりをする悪魔の顔は紅潮し恍惚としていた。
このままではアレン達が……
しかし私は呪いで動く事も出来ない。
いや、それが出来たところで私に何が出来るというのか。
結局呪文も使えるようにはならなかったし、
勇者に勝てない怪物達に私が対抗出来るとは到底思えない。
呪いを解く希望の地であったこの場所で旅は終わりか。
そんな思いが私の頭をもたげた。

700 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 14:59:31 ID:ziCgFva70
その時、微かな金属音を耳が捉えた。
アレンに貰ったスライムのアクセサリーだ。
そのピアスに意識が及ぶと、教会でアレン達が見舞いに来てくれた事が思い出された。

素直になれと言ってくれたアレフ。
君の真っ直ぐさを全部真似する事は出来ない。
けど私の持っている問題を解決するには素直になるのが一番なんだろう。
切羽詰った今なら出来そうな気がする。
いや、あの時のようにまた後悔するよりは素直になった方がいいと教えてくれたんだな。

髪を切って私の気持ちを後押ししようとしてくれたアレル。
アレルと同じように強い精神を持つ事は私には出来ない。
けどアレルの話してくれた女性のように私は変われるだろうか。
いや、変わってみせようか。
無口なあなたは私の心を軽くし、変われると教えてくれた。

そして好きだと言ってくれたアレン。
君の隣はとても居心地が良いと私は感じている。
この何も分からない世界で私の居場所を作ってくれた君の優しさに
思わず甘えてしまうくらいに私は君に心を許しているみたいだ。
だから君には一番死んでもらいたくない。
だから私は勇気を出すよ。

私に出来るのは、私の気持ちを伝える事。
私の気持ちをアレン達に伝える事――

  「アレン! アレフ! アレル! 頑張れ! 負けるな!!」

声が、出た。

701 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:04:39 ID:ziCgFva70
そしてアレン達の体に小さな光が降り注ぐ。
私が唱えた回復呪文だ。
数字にすれば10も回復したかどうか分からない程の効果だろう。
アレルのベホマズンには到底及ばない。
だけど、しっかりと私の光は彼らに届いたんだ。

  「な、なにぃ?!」

うろたえる悪魔をよそにアレン達はしっかりと立ち上がる。
呪いが呪いを呼ぶなら、勇気は他人へと伝播する。
そして元々持ち合わせていた勇気と合わさりさらに大きな勇気を生む。
私の勇気と彼らの勇気が溢れ出す。

  「これは……」
  「よっしゃぁ! ナイスしなのっ!!」
  「行きますよっ!」

アレン達は剣を交差するように掲げ、同時に振り下ろす。
その切っ先から放たれた聖なる光がモンスター共々悪魔を飲み込んだ。
まばゆいけれど、暖かい光が呪いを打ち消していった。
悪魔の断末魔さえもその光が包み込んでしまった。
勇気ある者達の勝利だった。

  「勝った、のか……」
  「ざまーみろ! てめーら何かに負けるかっての!!」
  「やりましたね、しなのさん!」

あぁと言おうとした時、聖なる光が消えていきその中から何かが地面に落ちた。
拾い上げるとジグソーパズルのピースのようにいびつな形をした石の板。
これは……

702 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/10/19(金) 15:05:25 ID:kHGSeP9/0
再度支援ですぅ

703 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:07:58 ID:ziCgFva70
それが何なのかを調べようとした時、澄んだ綺麗な声と共にまたもや女性が現れた。

  「ふぅ……ようやく出れました……
   ……あぁ、そう構えないで下さい。
   私は本物の精霊です。
   迂闊にもあのモンスターに閉じ込められてしまったのです」

彼女はあの悪魔と同じように泉に立っていたが、以前のように水面に波紋は現れず、
泉はまるで鏡になったかのようにぴたりと動きを止めていた。

  「信じられないのなら、呪いを解いてみせましょうか?」
  「チッ! もう遅ぇんだよ……」

精霊は私達が自分の力で呪いを解いた事を分かった上でそんな事を言ったのだ。
先ほどの悪魔よりは好感が持てた。

  「ありがとうございます。
   人間にお礼を言うのは久方振りで少し恥ずかしいですが……」

こんな風に顔を赤められてはこちらが困ってしまうな。
可愛い精霊だ。

  「礼なんかいいから何かくれよ」
  「そうですね……では何か希望はありますか?」
  「……しなの」

え? わ、私か?

  「そうだな、今日のMVPはお前だ!」
  「僕もそれに賛成です」

ありがとう。それじゃあ――

704 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:11:06 ID:ziCgFva70
○第十三話
    『さよなら、ばいばい』

  「ではでは、乾杯!」
  「イエー!!」
  「乾杯」

乾杯!
その声をかき消すようにグラスを叩き合う。
晴れて呪いから開放された私達は、いの一番に飲み屋へと直行して祝杯を上げた。
アレフのテンションはいつもに増して高く、ビールを一気飲みしてしまった。
けれどアレンやアレフもまた嬉しそうにグビグビと酒を飲み干す。
久し振りの人間らしい食事と飲み物にありつけた事もそうだが、
やはり苦難を乗り越えた後というのは達成感でいっぱいになる。
それはグラス一杯では到底満たせるものではない。
だから今日はたくさんたくさん注いでやろう。
酒の席を共にしようという約束がようやく果たされた訳だしな。

  「いや〜それにしても楽勝だったな! 一発で消し飛んでやんの」

戦いに勝ったから言える台詞だとツッコミを入れる者はいない。
酒の力も手伝ってか、そんな冗談が心地良い程に私達の気分は高揚していた。

  「あそこで君が呪文を使うとは思わなかったよ」
  「そうそうそれそれ! よくやったぞしなの!
   やっぱ俺の指導が良かったんだな!」

まったくその通りだな、ありがとうアレフ。
と、おだてるように言うとアレフはうんうんと満足そうに頷いた。
ホントに面白いヤツだ。

705 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:14:27 ID:ziCgFva70
いやしかしアレルの呪文には到底適わないよ。
あれは凄かった……

  「そりゃそうだろー、何たって伝説の勇者ロトの称号を持つお方だぜ?
   ベホマズンにギガデインの二連発だなんて俺でも適わねぇよ」

え?! アレルが勇者?!
アレルに目をやるが、黙って酒を飲むだけで否定しなかった。

  「そうですよ、しなのさん知らなかったんですか?」

……誰もそんな事言ってくれなかったじゃないか。
そうやって拗ねてみせると三人に笑われてしまった。
しかしその割にはタメ口で話すんだな。
とても敬ってるようには見えないが。

  「まぁ同じ勇者としてそういうのはあんまり好きじゃないって分かってるからなぁ」
  「血の繋がった親子関係にあるのに、どういう訳か歳も離れていないようですしね」
  「私としては孫の孫が目の前にいるというのはとても不思議に思うよ」

そんな風にして目を細めるアレル。
伝説の勇者か、どうりで強い訳だ。
しかし勇者だらけのパーティーに私が入っていたなんてな。
場違いにも程があると今更ながら思ってしまった。

  「しかしなぁ、もうしなのとはお別れか」

時が経ち、馬鹿騒ぎも落ち着いたところでそんな話になった。
あの悪魔が落としていった石版は、例の噂の石版のようだった。
この石版を神殿に持って行きさえすれば願いが叶うという。
その神殿がある場所は精霊さんに教えてもらった。
それはつまり私は私の世界に帰る事にした、という事だ。

706 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/10/19(金) 15:17:32 ID:ziCgFva70
  「けどその噂、本当なのか?」

ん……まぁその真偽を確かめる為にも神殿に行ってみたいと思う。
そう遠くはないしな。

  「そっかそっか、んじゃあ明日キメラの翼を山ほど買ってやるよ。
   それがあればまた会えるだろ」
  「キメラの翼で世界を行き来できる訳ないでしょう」
  「そうなのか? じゃあしなのがルーラを覚えてだな」

もう二度と訪れない四人の夜が更けていった。



宿屋への帰り道。
アレフとアレルは疲れたと言って先に帰ってしまった。
だから今はアレンと二人きりだ。
彼の手を取ってみる。

  「……しなのさん、酔ったんですか?」

うぅん、私はそうそう酔わないよ。

  「でも顔が赤いですよ」

そうか、それは誰かに見られたらマズいな。
隠さないと。
そんな事を言ってアレンに身を寄せた。

  「そうやって心の中も隠しちゃうんですか?」

それはきっと返事を聞きたいって事なんだろうな。

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