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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら10泊目

1 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/01(水) 08:47:35 ID:SVgYayco0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1175450270/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

100 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/08/09(木) 21:55:37 ID:8dzan3LO0
お……宿屋の外にわんこがいるぞ。しっぽを振ってるな。
お座りしながらしっぽ振るのは反則だと思う。
可愛いの域を超えている。

  「ハッハッハッ……」

艶やかな毛並み。賢そうな眼差し。
やはりわんこは良いな。
……けれどきっと触らしてくれないんだろうな。
こっちの世界でも動物には嫌われてるし。
肉球プニプニしてみたいんだが……

お、こっちに気付いたな。
?!?!
わんこがこっちに走ってくる!
ピョンと飛びついて来た!!
これは夢か?!

  「くーんくーん」

……
……
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 わんこ! わんこ!
 ⊂彡    肉球! 肉球!

  「おい、犬なんかに構ってるんじゃねぇよ」
  「どうしました? そんなに犬が珍しいのですか?」

♪♪♪〜

  「し、しなのさん……?」

101 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/08/09(木) 22:00:29 ID:8dzan3LO0
ん? 何か言ったか?

  「え、えぇ、まぁ……しなのさんは犬好きなんですか?」

犬に限らないが、動物は好きなんだ。
けれど向こうは何故か私の事を好いてはくれなくてな。

  「そうなんですか。それは良かったですね。
   でもちょっと連れて行くわけにはいきませんね」

駄目? どうしても?

  「飼い主がいるかもしれませんし、
   それにモンスターの危険から守りきれるか分かりません」

そうか……残念だ……
こんなに可愛いのになぁ……お前も私と一緒に行きたいだろう?

  「僕しなのとは一緒に行きたくないでちゅ〜」
  「父さん……変な声出さないで下さいよ……」

仕方なく私は苦渋の決断でわんこに分かれを告げた。
あの純粋そうな目を記憶に焼き付けて、私はいつまでも名残惜しく手を振り続けた。
あぁ……バイバイ私のわんこ……

102 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/08/09(木) 22:05:48 ID:8dzan3LO0
村を出て数時間後、夕暮れ時に早めの食を取る。
林の中の小さな空き地に火を焚いて3人で囲んで食事。
ファンタジーにありがちな一場面も、実際にやる立場となれば面倒の方が多いと知る。
なぁ、勇者って何なんだ?
私は最近思っていた疑問を口にしてみた。

  「……」
  「……」

おいおい、2人が考えてどうする?

  「改めて言われると困るな」
  「そうですね。なろうと思ってなったものでもないですし」

職業って訳じゃないのか。

  「文字通り取れば勇気ある者という事になりますが、
   悪に立ち向かう宿命にある者という解釈ですね、個人的には」
  「まぁ俺なんかは暴れるのが好きだから別にいいけどよ。
   血筋で勝手に勇者だと決め付けるのはあんまりいただけねぇな」
  「誰でもなれるが、誰もがなれる訳じゃない。
   まぁ僕は勇者などいなくていい世界を望みます」
  「そう言えばしなのは何やってた人なんだ?」

パチリと炎の中で木が音を鳴らす。
……私、か?

  「あぁ、お前の世界でって意味な」

ん、とうとう聞かれてしまったな。

  「……と言いますと?」

103 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/08/09(木) 22:10:50 ID:8dzan3LO0
そうだな……
男と席を一緒して酒を作ったり、話をしたり、
嘘笑いをしたり、少し触られたりするような仕事さ。

  「それって……」
  「へぇ、そんなんで金貰えるのか。
   良い仕事だな。じゃあ俺にも酒注いでくれよ」
  「アレフさん!!」
  「あん? 何だよいきなり怒鳴りやがって」
  「……本当に怒りますよ」

いや、いいんだアレン。
アレフ、酒はまた明日な。
今日はもう寝るよ。

  「あぁ頼むぜ。おやすみ」
  「……おやすみなさい」

馬鹿なアレフはいいとして、これでアレンも私の事を嫌ってくれるかな。
そんな事を思いながら目を閉じた。

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/09(木) 22:15:02 ID:OwhTucmc0
わんこかわいいよわんこ支援

105 :作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ :2007/08/09(木) 22:16:11 ID:8dzan3LO0
今日はここまでで。
支援ありがとうございました!

真理奈は愛されてるんだなぁ…嬉しいです。

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/10(金) 14:42:51 ID:hU3EbO610
やっと懐いてくれたわんこなのに、しなのさんがふびんでなりません。
アレンさんにも嫌れたいのかな・・・・。
女心は複雑ですね。

アレンさんは気配りの人ですね


107 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/11(土) 08:57:41 ID:BBTAu6wMO
そのわんこはムーンブルクの王女という可能性は…?

108 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/11(土) 12:42:24 ID:sI0+1angO
後のゲレゲレである

109 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/11(土) 12:47:35 ID:mmL2JZEaO
つまりゲレゲレ=俺の嫁

110 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/11(土) 13:52:14 ID:zgeTdApU0
わんこかわいいよ、わんこ。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/11(土) 18:33:22 ID:NhvIlhAoO
合作乙!
スライムと旅する女子高生…真理奈タン…

112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/13(月) 19:53:08 ID:S8/lsiKU0
盆保守

113 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:22:06 ID:FqGoaygg0
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


         〜作り合わされし世界〜

         → 冒険をする
           → 2:ヨウイチ Lv1

114 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:23:08 ID:FqGoaygg0
一、 森の中の男

静かな森の中で、男は言いました。

「いろいろあったよなぁ」

すっかり、空はくらやみ景色を深い藍色へと変化させていました。
遠くには波の音がざぶんざざんと、まるで空を洗ってしまうかのようにざわめいています。
何かを思い出してくすりと笑い、木々の隙間からのぞく星を眺めるため頭をあげ、そうして思い出すのでした。

115 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:24:35 ID:FqGoaygg0
二、 目覚め

男は考えていました。

 はたしてここはどこだろう?
どうして俺はこんな所で寝ていたんだろう、と。

思い切り頭を振ってみてもほっぺたを平手ではたいても、どうしても思い出すことが出来ません。
ようやく理解できたのは、ここがとても古い宿屋であるという事だけです。

「なんだいったい。 どういうことだ」

ぐいとベッドを跳ね起き、うろうろ檻にいれられた小動物のようにせわしなく動き回りました。
服装を見るとまるでどこかの山奥に住む原住民のような格好です。

 誰かが着替えさせてくれたのだろうか。
 なんだかわけがわからないし不安でたまらない。
 どうしよう、どうしてこんな事になってしまったんだろう。

ふと、足音がするのを感じます。
男はどきりとし、その場を動くことをやめました。

「ようやく目がさめたんだねぇ」

ばたんと戸を開け入ってきたのは一人の女性でした。

「あ…」
「いいからいいから! ほらほらそんな所で突っ立ってないで、まぁお座り」

116 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:27:54 ID:FqGoaygg0
がたがたと引きずられてきた椅子へ腰掛け、けれども男はやっぱり緊張しました。
胸がどきどきと鳴るのを感じます。

 このまま何も聞かずにはいられない。
どうしても聞かなければいけない。

男は勇気を振り絞って窓を開けている女性へ話しかけました。

「あの、ここは?」

目の奥が痛くなって、手の甲でごしごしこすります。

「ここかい? ここは宿屋だよ」

女性は振り返って腰に手をやり、優しい笑顔で答えてくれました。
その笑顔につられ、男の緊張していた心がするりとほぐれ、口は自然と話し始めました。

「宿屋?! いったいどうなってるんですか!」

 どうしてそんなに乱暴な口を利くんだ。 自分はもっと落ち着いて聞くはずだったのに。

男はたいへん悔やみました。
ですが女性はやっぱり優しい顔のままで、答えてくれました。

「私にもそれはわからないよ。 あんた、何にも覚えていないのかい?
 町の外で倒れていたのを私の友人が見つけて、ここまで運んだんだよ」

117 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:29:59 ID:FqGoaygg0
男は何も覚えていませんでした。
なので、返事に詰まってしまいます。
昨晩は確かに自分の部屋で寝ていたはずでした。
それ以外何も、思い出せないのです。

「いいよ、ゆっくりしておいき。 何か思い出すまで私も手伝ってあげるから」

男にとってはここは何か知れない場所で誰かに頼るしかありません。
部屋をうろつきまわっている時から気付いていた事です。
思いもかけない言葉に、男は目元がむずむずするのを感じました。

「…ありがとう」

男は一言つぶやいて、開け放たれた窓から青い空の視線を浴びるのでした。

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 01:30:06 ID:yks/ciK50
支援

119 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:32:50 ID:FqGoaygg0
三、 友人

「キィー!」

突然の声に男は驚きます。
慌てて周りを見回すと、窓から何か見たことの無い生き物がひょいと部屋へと入ってきました。

「キッキッ!」

それは男の周りをふわふわくるくる回ります。

「こここ、これは?!」

女性はあははと笑い、その生き物を抱えました。

「この子は私の友達でドラオっていうんだ、ドラキーだよ」
「えっ? どらきー?」
「大丈夫だよ、人を襲ったりしないからね。 あんたをずいぶん心配していたんだよ」

女性の肩の上で笑ったような表情のまま、ドラオは男を見つめています。

 こんな生き物ははじめてだ。 図鑑でも見たことがないし空を飛んでる!
 ああ、やっぱりここは自分には知れない世界なんだ。

女性とドラオをふと見上げ、少し気持ちが落ち込みました。
けれども、不思議と心の高揚も感じます。

120 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:34:30 ID:FqGoaygg0
「そうそう、私はこの宿屋の女将だよ。 あんたの名前はなんだい?」

名前は覚えていました。
男は、それはもう自信を持って答えます。

「俺はヨウイチです」

女将はふうんとうなずき、ヨウイチとおんなじにはりきって言いました。

「いらっしゃい。 ここはクレージュの宿屋だよ」

121 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:36:58 ID:FqGoaygg0
四、 台所

数日がたち、宿屋の台所では朝からドラオとヨウイチが何かしています。

「キーキッ」
「な、なんだよドラオ。 俺、間違った?」

ヨウイチは相変わらず何も思い出せませんでした。
正しく言えば、思い出せないというよりも身に覚えがないといったふうかもしれません。
なにしろ自分の部屋で眠ったのに、目覚めるとこの世界にいたのです。
夢なら覚めて欲しいと何度おもったことかわかりません。
ですが一向に目は覚めず、それとは反対に身の回りで起こる事はすべてが現実でした。

「じゃー… この皿はここか?」
「キー」
「あってたか。 お前は女将さんより厳しいなぁ」
「キッキッ」
「あーあー わかったわかった。 次をやれってんだろ、はいはい…」

この宿屋でお世話になることになりましたが、何もしないわけにはいきません。

 このまま世話になるといっても本当に何もしなければだめだ。
 とにかく行動しないと何もわからないのだから。

ヨウイチは、それから宿屋のいろんな事を手伝い始めました。
今は食器を洗っている最中なのですが、ドラオがいちいち口を出すので嫌になっていたのです。

「すっかりキレイにしてくれたねぇ、ありがとう。
 もっとゆっくりでもいいんだよ」
「女将さん。 いいんです。 でもドラオがうるさくって仕事になんないですよ」
「ははは。 ドラオはこの宿の主人のつもりなんだよ、なにしろ私のやることにも時々文句を言うからね」
「口ばっかりで手は出さないのは助かりますけどね」

122 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 01:39:38 ID:yks/ciK50
支援

123 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:39:55 ID:FqGoaygg0
「ドラオに手まで出されたら、ほらあの羽だから。 前に皿をたくさん割って」
「キー!キー!」
「おや、本当の事じゃないか。 あれからドラオは口しか出さなくなったんだよ」

ヨウイチは驚きました。
どうやら女将さんはドラオの言葉を理解できているようなのです。

「あの女将さん。 ドラオの言葉がわかるんですか?」
「ええ、なんとなくね。 今はヨウイチの前でそんな事いわないでって言ってたんだよ」

ドラオを見るとほんのちょっとだけ、目をそらしました。
いつでも目は丸くて口は少し笑っている顔なので表情などはわからないのですが、今はそう思えました。

「調味料の片付けは私がやっておくよ。 泊まっていたお客さんはみんな旅立ったからね」
「俺がやりますよ」
「日が暮れる頃までは暇だからね。 ヨウイチも自分の事があるだろうから、自由にしておいで」
「じゃあ、お言葉に甘えて。 じゃあなドラオ!」

さっと手を洗い、不満そうな顔のドラオを置いてヨウイチは台所を出ます。

 何をしよう…
 そうだ、町の人にいろいろ聞いてまわってみよう。 何かわかるかもしれない。

数日のあいだはほとんど宿屋を出なかったので町の人とは話をしていません。
なので何か話を聞けるかもしれないと思うと身体は軽く、思いのほか早足で宿屋を出るのでした。

124 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:41:57 ID:FqGoaygg0
五、 町

揚々と町へ出たヨウイチは、はじめに店へ行こうと決めました。
店の人ならいろんな人と出会うので、きっといい事を知っていると考えたのです。
さっそく、宿屋の目の前にある道具屋へ足を運びました。

「いらっしゃいませ!」

主人が元気よく挨拶をしてくれます。

「あ、どうも。 実は買い物にきたんじゃないんです。
 ええと…」

ヨウイチは考えます。

 ここで元の世界に戻りたいなんて言っても信じてもらえるわけない。
 どう話をすればいいのだろう。

「おや、あんたは宿屋で世話になってるよな?」
「ええ、まぁ。 知ってるんですか」
「知ってるってもんじゃないよ。 町の人間ならみんな知ってるんだ。
 その宿屋にはみんな世話になっててね。 いいよ、なんでも聞いてくれ!」

どうやらヨウイチの事は町中に知れ渡っていました。
でも、別の世界からきたというのは知らないようなのでホッとしました。

「助かります。 それで、何か不思議な噂なんかは聞いたりしませんか?」
「不思議な? なんでまたそんなこと」
「…俺は旅が好きなんです。 面白そうな場所はないかと思って」

125 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 01:52:25 ID:wywAs2E1O
規制されました。
解除までかなりかかるらしいので今夜はここまでにします。
なんという中途半端 orz

>>122
支援ありがとうございます!

126 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 12:41:50 ID:FqGoaygg0
この世界で不思議な事を追いかけていけばもしかすると戻れるかもしれないと、ヨウイチは思いました。
噂を聞くだけならあまり怪しまれることはありません。
ドラオのような見たことのない生き物がいるくらいです。
きっと元の世界へ戻れる不思議な事があってもおかしくはないのです。

「ふぅん。 しかし不思議な噂っていってもなぁ。 特に聞かないよ」
「そうですか… ありがとうございました」
「あ、ちょっと待った。 あんたの名前は何だい?」
「ヨウイチです」
「そうか。 ヨウイチ、何か変わった話を聞いたら聞かせてあげるからまたきなよ!」

手ごたえはありませんでしたが、町の人と話が出来たのでヨウイチは安心しました。
それから武器屋と食堂、教会までまわって話を聞きましたが自己紹介するくらいで何もありません。
町を歩く人も噂はなにもないと言います。
それからしばらく町の中を歩き、いろんな人と話をしたり見たりしてから宿屋へ戻ります。

「おかえりヨウイチ」
「あ、女将さん。 ただいま」
「何か思い出せたかい?」

そうでした。
ヨウイチは本当の事を女将さんにも話していません。

 世話になっているし話さなきゃいけない。
 もし知ったらどんな顔をされてしまうだろうか。
 それでも、女将さんには話しておかなければいけないぞ。

女将さんはちょうど客の受付を始めたので、それが終わるのを待ち話しかけました。

127 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 12:42:58 ID:FqGoaygg0
「ふぅ。 何か話したそうだね。
 何かわかったのかい? お昼も食べないで出かけてたんだから」
「いえ… その、話してないことがあるんです」
「そう。 いいから、話してみて」

女将さんはフロアにある椅子へ腰掛けます。

「実は、俺はこの世界の人間じゃないんですよ」
「…? どういう意味だい」

きょとんとした顔をされましたが、構わず続けます。

「目が覚めたらこの宿屋のベッドの上で… 俺の知ってる場所でもないんです」
「そう言ったって、あんたは町の外に倒れてて─」
「でも、本当なんです。
 俺の知ってる世界じゃなくて、なんていうか、知らないんです全部」

女将さんはヨウイチの顔をじっと見つめます。

「この世界には電気もガスも、車も電車も飛行機もない。
 ありえないんですよ、住んでいた場所はどんなところでも電気くらいはあったから」

ふぅとため息をついて、女将さんは暖かいお茶を運んできました。
そのお茶をヨウイチにもすすめてずずずと飲み、話します。

128 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 12:45:42 ID:FqGoaygg0
「ヨウイチ。 あんたの言っている事はぜんぜんわからないよ。
 …だけど嘘はついてないね。
 私は長年、宿屋でいろんな人間を見てきたからわかるんだ」

嘘じゃないことをわかってもらえただけでも嬉しいことでした。
ヨウイチの顔は思わずほころんでしまいます。

「まぁ、私はなんだっていいんだ。
 悪い人間じゃないようだし、協力させてもらうよ。
 それに… どうしてなのかわからないけど、世話してあげなきゃならない気がしてね」

夜になると客は訪れません。
その日は遅くまでヨウイチ自身の、現実世界を話して過ごしました。

129 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 12:55:13 ID:FqGoaygg0
今回ここまで。
また次回。

130 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 12:58:00 ID:WUS2uyOu0
リアルタイム遭遇きたー。支援。
ドラオ、かわいい♪

131 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 13:02:21 ID:FqGoaygg0
六、 町の外

「ありがとうございました。 お気をつけて、良い旅を!」

あれから幾日が過ぎ、ヨウイチはすっかり宿屋の仕事を覚えました。
もうドラオにだって文句は言われません。

「ヨウイチ、すっかりこの仕事にも慣れたねぇ。」

女将さんがカウンターの奥にある小さな倉庫から声をかけてきました。

「おかげさまでようやく。 なんだかもともとこの世界で暮らしていたような気がしますよ」

その言葉で二人は笑い、手早く朝の宿仕事をこなしていきます。

「女将さん。 部屋のシーツ替えと片付けは終わりました」
「ありがとう、じゃあ後はもういいよ」
「じゃあ、朝食を済ませたらまた町を見てまわってきます」
「あんたも好きだねぇ。 こんな小さな町で見ることなんてそんなにないだろうに」
「そうでもないんですよ。 なにせ見たことも聞いたこともない物ばかりですから」
「そうかい。 朝食はフロアに用意してあるからね」

女将さんは何かしているようでしたが構わずヨウイチは朝食を食べます。
今朝は玉子焼きと野菜を一緒に炒めたものです。
この世界で救いだったのは、食べ物がヨウイチの世界とほとんど変わらなかったことでした。

「ドラオー! おいで!」

ドラオもずいぶん懐いてくれて、今ではどこにいくのも一緒です。
ヨウイチもずっと同じに過ごしていたから、ドラオの言いたいことがなんとなくわかるようになっていました。

132 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 13:03:55 ID:FqGoaygg0
「キ〜・・」

宿屋で借りているヨウイチの部屋からふわふわドラオが飛んできます。
朝は弱いらしく、なかなか目を覚ましません。
ですがヨウイチが出かけるときに連れて行ってあげなかったらすごく怒ったことがあって、
それからは必ず連れて行くことにしているのです。

「相変わらず眠たそうだなぁ」
「キィキィ」
「そうか。 まぁいつもの事だから気にしないよ。
 今日も町を歩いてまわろう、行こうか」

毎日、ヨウイチは町の人や立ち寄る旅人にいろんな話を聞きます。
元の世界へ帰る方法を聞くためにやっている事ですが、この頃では楽しみになっていました。
ドラオは一応気にしているのかヨウイチに一言あやまってくれます。
肩辺りにふわふわしながら一緒に宿を出ました。

「とは言っても… 町のほとんどはもう見たから今日はどうするかな。
 町の外に出てみたいけど、それはダメだって言われてるし…」

話には聞いていました。
町の外に出ると恐ろしいモンスターが現れて人間を襲うのです。
ドラオもモンスターですが人間を襲いません。
モンスターには時々人間と仲良くしたがる者がいるらしいのです。

「キーキー」
「危ないって? うーん、だけどちょっとだけなら平気なんじゃないかな?」
「キッ!」
「わかったよ。 歩きながら考えてみようか。 何か見つけるかもしれないし」

二人はゆっくり歩きながら、町の人と挨拶を交わしながら歩きました。
気が付くと目の前には町の入り口で、もう一度ヨウイチは考えます。

133 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 13:05:34 ID:FqGoaygg0
 町で珍しいものはあらかた見て知った。
 傷を治す薬草も、武器も防具も、興味がわいたものは全部見た。
 道具や世界もしつこく聞いてあらかた知った。
 そうなれば、残っているのはやっぱり。

「外に行こう!」
「キ?!」
「いや、町のすぐ近くなら大丈夫だと思うんだよ。
 だってほら、ここから見てもモンスターっていう生き物は見えないし」
「キッキッ!」
「危なくなったらすぐ逃げるし大丈夫だよ。
 なんだったらドラオはここで待っててもいんだよ」

ドラオは考えているようです。
きっと女将さんに心配かけるのを悩んでいるのでしょう。

「ちょっとだけだから、なあ?」
「キ、キー」
「そうか! よし、モンスターを見たらすぐ逃げればいいんだよ。
 早速いってみよう」

ドラオは不安そうでしたが、ヨウイチは嬉しくて仕方がありません。
見たことの無いモノを見たり触れたりする事が、楽しいのです。
二人は周りを気にしながらゆっくりと町を離れました。

134 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 13:07:04 ID:FqGoaygg0
>>130
支援もらったのでちょっと続けましたw

今度こそ、今日はここまで。
また次回。

135 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 20:16:46 ID:WUS2uyOu0
>>134
あわわ、無理させちゃいましたね。
続きの執筆乙&ありがとうございます。

町の外・・・モンスターが出てきそうな悪寒。
wktkしながら待ってますね。

136 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 21:49:44 ID:FqGoaygg0
>>135
読んでくれる人がいて始めて物語になるんだと思ってますから、お気になさらずに。
続きを投稿します。

       〜作り合わされし世界〜

       → 冒険をする
         → 2:ヨウイチ Lv2


137 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 21:51:19 ID:FqGoaygg0
七、 モンスター

緩やかな丘と平地が目の前を続いています。
周りには草木が茂り今にも何かが飛び出してきそうでしたが、モンスターと出会うことはありませんでした。
かわりに旅人と笑顔で挨拶をかわしただけです。
ヨウイチはなんだか拍子抜けしてしまって、ドラオは安心しています。

「なんだ、何にもいないな。
 見てみたかったんだけどなぁ」
「キー」
「なんだ怖いのか? だってなんにもいないじゃないか、平気だよ」

そろそろ引き返そうかと思ったその時、がさりと茂みから音がしました。

「な、なんだ?」
「キ」
「風かな…? だいぶ歩いたしもう戻ろう」

二人は一気に緊張していますぐ町へ帰りたくなってきました。
相変わらず草木はがさり、がさりと音をたてています。
ヨウイチとドラオはまるで走っているかのような早歩きで町の方向へと向かいました。

「キィーーー!」

突然、ドラオが大きな声を上げてヨウイチを追い越していきます。
びっくりして後ろを振り返ると、そこには見たことの無いまるで水彩絵の具を垂らしたような水のかたまり。

「わっ! えっ!」

ぷるぷるする身体に大きな目と口、それは話に聞いたモンスターのスライムでした。

138 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 21:59:54 ID:FqGoaygg0
「おい! ドラオ、どこいった!」

見るとドラオは木の陰に隠れてしまっていました。

「お前もモンスターなんだろ、まったく…」

ヨウイチはスライムをじっと見ました。
大きさはちょうど30センチくらい、見た目はすごく弱そうです。

「ええと、どうしよう。 ちっちゃいけどきっと凶暴だったりするんだろうからここは─」

タッっと、ヨウイチは走り出しました。

「ドラオこい! 逃げるぞ!」

大きな声で叫び、もと来た道を走って戻るつもりでした。
ところがドラオは震えたまま動こうとしません。
仕方が無いのでヨウイチはドラオのいる道から逸れた林の中へ、ドラオを連れに駆け込みました。
スライムは何か騒がしくしながら飛び跳ね、追いかけてきます。

「キィーキィ−!!」
「バカ! 暴れるなって、ほら、おい、逃げるんだよ!」
「キー!!」

あろうことか、ドラオはすごい勢いで更に林の中へと飛んでいってしまいます。
ヨウイチはもう、それは今までで一番だと思えるくらい一生懸命追いかけました。

50メートルは走ったでしょうか、ついにスライムを振り切りドラオに追いつきました。
周りはすっかり木に囲まれ、昼間なのに夕方みたいな暗さでさすがのヨウイチも怖くなってきます。
ドラオはその木の一本に翼ごと抱きついていました。

139 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:01:16 ID:FqGoaygg0
「はぁ… お前、まさかモンスターを見たことがないのか」
「キ、キー」
「見たことはあるって? ふぅ、じゃあなんで逃げたりするんだよ」
「キィー… キィ」
「はぁ、自分と同じモンスターは見たことないのか… にしても、一人で逃げるなよ」

ヨウイチはその場へしゃがみこみ、息を整えます。
そして落ち着いてからドラオを抱え出口を探し始めました。

「こうしてつかまえてたら逃げられないな」
「…! …!」
「逃げようってもがいても今度は離さないぞ。 しかし、ずいぶん奥まできてしまって道はどこなんだ」
「…!! …!!」

あんまりドラオが暴れるので、ヨウイチは周りをよく見ていませんでした。
ふと前の方をみると大きな熊が二人をにらみつけています。
ドラオは恐怖のあまり声が出せずもがいていただけだと、ヨウイチはやっと気付きました。

「こ、こいつは危なそうだ…」

足がすくみ、逃げようと考えるのですが一歩が踏み出せません。

 ああ、こんなところで殺されてしまうのだろうか。
 結局なにしにこの世界へきたのだ。
 せめてドラオは逃がすんだ。

「ドラオ、逃げろ!!」

ヨウイチが抱える手を離したのに、ドラオは地面へポトリと落ちて動きません。
見ると目がまるでバッテンになって、気絶してしまったのです。

140 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:02:01 ID:Y6atT0nB0
支援

141 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:02:15 ID:FqGoaygg0
「最悪だ。 こんな森の中じゃ誰にも見つけてもらえないぞ… はぁ…」

足は相変わらずすくんでしまって動かせません。
ですが不思議と頭の中はすっきりしていました。
ヨウイチはもう覚悟を決めて、せめて拳の一発でもお見舞いしてやろうと思います。

「くるなら来い! ちくしょうこんなところでなんにもわからず死ぬなんて!!」


142 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:03:24 ID:FqGoaygg0
八、 旅人

「おい! しゃがめ!」

突然、うしろから大声が聞こえヨウイチは思わずしゃがみこみます。
サッとザクッとグォーの音と声が同時に聞こえ、それからドタリと振動がしました。
ヨウイチはドラオを抱えながら恐るおそる立ち上がります。

「大丈夫か? 怪我してないか」

男の声が聞こえ、目の前を見ると大きな熊は倒れています。

「…!」
「大丈夫そうだな、よっ…と。
 そのドラキーはお前のペットか」

どうして熊が倒れてしまったかはすぐに気づきました。
話しながら男が熊を転がし大きなナイフを抜いていたからです。

「助けてくれてありがとうございます…
 こいつは… そうです、ドラオっていいます」
「そうか」
「この熊死んだんですか」

倒れた熊はピクリとも動きません。
血がどろどろ流れて、ヨウイチは尻込みしてしまいます。

「当たり前だろ。 おかしな事いうなよ」

143 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:04:02 ID:Y6atT0nB0
規制に負けるな支援

144 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:05:33 ID:FqGoaygg0
ヨウイチは思い知らされました。

 なんて恐ろしい世界だろう。
 とんでもない事になってしまった。

男が言った「おかしな事」という言葉は、この世界の厳しさを物語っていました。

 けれど。

覚悟しました。
これからもきっとモンスターに襲われます。
だけどヨウイチは元の世界へ帰らないといけません。
そのためには町を出てこの世界を巡らなければならないでしょう。
ここでくじけるわけにはいかなかったのです。

「ところで、あんたはこんな所で何してたんだ」
「あ、モンスターに襲われて逃げてたら…」
「そうか。 見たところ旅人の服だし武器は持ってないし、戦えないんだな」

男は腰にナイフをぶら下げながらいいました。
ヨウイチはおそるおそる男に話しかけます。

「あの」
「お? どうした」

モンスターの死体を探りながら男は振り返ります。

「俺に、あ。 ええと、戦いを教えてもらえませんか」
「なぜ」
「それは… 見つかるかわからないけど探したい事があるからです。
 それには戦えないとだめなんです」

145 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:06:43 ID:FqGoaygg0
ヨウイチはとっさに言いましたが、意味が通じたかはわかりません。

「…何か知らないがわけありのようだな。
 だが俺の戦い方はお前には無理だ。
 しかし基本動作くらいは教えてやらんこともない。
ただし─」
「え、ただし?」
「俺は長く旅をしてきて疲れている。
 だが金がない、つまり… つまりだな」
「…なんですか」
「ああ、俺の宿賃を授業料だと思って払ってほしいんだ」

少し恥ずかしそうに男が言いました。
この条件にヨウイチはラッキーだと心の中でつぶやきます。
なにしろヨウイチは宿屋の店員なのですから。

「そんな事でいいんですか、それなら平気です」
「そうか!」
「じゃあ、いいんですね?」
「ああ、ああ。 助かる」

男は顔をとてもほころばせて喜びました。

「じゃあ、早速いきましょうか」
「頼む。 この森から出て町へ行くのは俺が案内できる」

両手に抱えられたドラオが目を覚まし不思議そうな顔です。
起こったことを教えると、わかったようなわからないような表情をしていました。

146 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:08:11 ID:FqGoaygg0
九、 修行

ヨウイチは女将さんに事情を説明し、男を宿泊させることに納得してもらいました。
最初は、男を怪しそうに思っていた女将さんでしたがヨウイチの決意に動かされたのです。
男は自分の名前をダンと言いました。

「あんたがそこまで言うのなら。 ただし、あんまり危険な事はしないでおくれよ
 それとヨウイチ、自分で言ったんだから約束は守るんだよ」

ヨウイチは泊めてあげるためなら宿屋の仕事をこれまで以上になんでもする、そう約束していました。
何度も頭を下げ、次の日から始まる戦いの授業に備えその日は早く寝ました。

翌日、午前中に宿屋の仕事をいつも以上に一生懸命やってから、町のはずれで稽古の始まりです。
ですがまだ何もしていないのに身体中がきしみます。
今日から始めた薪割り。
女将さんは楽にやっているように見えましたが実際は違ってとても苦労しました。
ドラオはそんなヨウイチを邪魔にならない場所でふわふわ浮いて見守っています。

「さて。 ヨウイチ、君は俺が使うナイフより剣を覚えるのがいいだろう。
 槍は短期間では習得できないし斧は筋力をつけるのに時間がかかりすぎる。
ナイフは見たところ素早そうではないから不向きだ」
「わかりました」
「よし。 これを持って俺と同じに構えるんだ、そう。
 そしたらこう… ゆっくりと… ちがう、こうだ」

渡された木の棒をダンと同じように振ったり構えたりするのですがなかなかうまくいきません。

147 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:09:29 ID:FqGoaygg0
「最初から出来る訳はないからな。 とにかく動作一つ一つに意識を与えて体で覚えるんだ」
「がんばります」
「あー、それからだ。 そういう話し方はモンスターにもなめられやすい。
 もっと気を強く持ってしゃべった方がいいな。
それじゃ体だってついてこない」
「だけど」
「いいんだ。 そのほうが皆と話しやすいし意思も伝わりやすいもんだよ」
「…わかった」
「その調子だ。 ああ、でも最低限のマナーは守れよ」
「もちろんそれは。 そこはわきまえてます。だ」
「…まぁそれも慣れだな。 体で覚えろ」

ドラオがクスクス笑っているように感じてヨウイチは恥ずかしかったのですが、とにかく頑張りました。
修行は日が暮れるまで続き、疲れきった体でようやく宿屋へ戻りました。

「おかえり。 ずいぶん疲れてるね、先に風呂入るかい?」
「女将さん、ただいま。 先に腹に何か入れたいんだけど」
「ダンさんはどっちがいいですか?」
「私もヨウイチと同じで頼みます」

(ダン、女将さんに丁寧に話してるじゃないか)
(何を言うか。 女将さんには世話になってるんだから当たり前だろう)

「どうしたんだい二人とも」
「女将さん、ヨウイチは心も鍛えなきゃなりません。
 なので話し方も鍛えてやってるんですが、そこも認めてもらえないですか」
「ははぁ、なるほど。 私は構わないよ。
 どっちかというと普通の話し方のほうが接しやすいからね」
「キッ」

ドラオはやっぱりクスクスします。
ヨウイチはドラオを少し追いかけてから、女将さんに礼を言いました。

148 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:09:39 ID:Y6atT0nB0
もし目が覚めたらそこが規制のない世界だったら

149 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:12:04 ID:FqGoaygg0
「ありがとう、女将さん。
 なんか、何から何まで親切にしてもらって」
「いいんだよ。 私は町一番のお節介で通ってるんだから」

食事を済ませ、風呂に入り少し雑談してから部屋のベッドへもぐりこみます。
動かし慣れない動作の連続だったので腕は震え、熱くなっています。

 棒を振り回していただけなのになんてきついんだろう。
明日も宿の仕事があるし薪だって割らなきゃいけない。
だいじょうぶ、だろうか……

気が付くまもなく眠りに入っていきます。
目が覚めればまた宿屋の仕事と稽古、けれどヨウイチはそんな毎日を楽しみにするのでした。

150 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:15:13 ID:FqGoaygg0
十、せきばん

「ヨウイチ、だいぶさまになってきたな。 後は一人で経験をつんでいけば大丈夫だ」

稽古を始めてから二ヶ月ほどがすぎていました。
もうすっかり木の棒を軽々と振り回し、ダンとの練習試合も難なくこなせるようになっていました。

「俺も世話になりすぎた。 そろそろ旅を再開するよ」
「もう? まだいいじゃないか」
「そうはいかない。 なんだかんだで二ヶ月も世話になってしまった。
 それに俺は同じ場所に長くいられないんだ」

宿屋に着き、女将を手伝ってから夕食になります。

「そうかい。 あんたもヨウイチによくしてくれたね」
「いえ、私こそこんなに長く世話になってしまいまして」
「ダン。 いろいろ教えてもらって助かったよ」
「ほんとにねぇ。 ヨウイチもこんなに男らしい態度になって、ねぇ」
「女将さん、それじゃ前は女みたいだって?」
「そうはいわないけど、なんだか頼りない感じだったよ」
「はは。 もうヨウイチは一人でもやっていけます。
 一人旅だっていつでもいける」

ダンのこの言葉にヨウイチは胸がドキリとしてしまいました。
忘れていましたが戦いを教えてもらった理由は元の世界へ戻る方法を探すため。
それはこのクレージュを旅立つということだからです。

その晩は遅くまで話し込み、少し寝ると朝日が昇って朝を告げました。
寝不足のままずいぶん慣れた宿屋の仕事を済ませ、ダンを町の出入り口まで見送ります。

151 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:16:20 ID:Y6atT0nB0
名無しは支援を唱えた!
しかし規制には効かなかった。

152 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:17:04 ID:FqGoaygg0
「ダン、短かったけどありがとう。 これ、女将さんから」

ヨウイチはたくさんの保存食が入った袋を手渡します。
果物や野菜、肉を長く持たせるよう調理した旅には必要な物資です。
ダンは町の人からいろんな依頼を受けてお金を稼いで、必要な物を揃えたり宿代を支払ったりしていました。
ですが小さな用事ばかりだったのであまり稼げていなかったのです。

「すまん。 女将さんには最後まで世話になりっぱなしだな」
「ダン。 …俺も、旅に出るよ。 前言ったように」
「今のお前なら危険な場所にさえ行かなければ大丈夫だろう」
「あんまり自信はないんだけど… やってみたい」

ダンは微笑み町の門をくぐります。
ヨウイチが後姿を見ていると振り返り言いました。

「ああ、そうだ。
 知ってるか、この世界には特別な石版というものがあって、それを神殿に捧げると願いがかなうらしいんだ」
「願い? なんでも叶うのか?」
「願いを叶えたやつがいるなんて聞いたことがないからな
 石版は確かに存在する。 だが、願いが叶うというのは定かじゃない」
「なんでそんな事を俺に?」
「お前言ってたよな、叶わない探し物をしてるって。
 …じゃあな」

ヨウイチはこんな時に聞きたいことが山とわいてきましたが、歩いていくダンに声をかける事ができず
ただただ、見送るだけでした。

153 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/14(火) 22:22:18 ID:wywAs2E1O
規制されました。
これはキツイ…
どうしても回避は不可能らしいです。

>>151
支援がじわじわと効いてくる!
だが運営に願いは届かなかった!

ありがとうございました。

154 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:26:58 ID:Y6atT0nB0
おお支援よ、死んでしまうとは情けない!

タカハシ乙!!

155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/14(火) 22:29:04 ID:WUS2uyOu0
>>154
だが、パーティーの人数を増やしたらなんとかなるかもしれん。

タカハシさん乙。
今夜中に続きが読めるとは。

ダンさん、かっこいい。

156 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 00:54:05 ID:l9e5ZjUKO
3レス目以降2分ずつ空けると規制にかからないみたいですよ。

157 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:35:54 ID:zdNid8tw0
>>154,155
支援どうもです!

>>156
おお、なるほど。
やってみますね、ありがとう。


>>152 からの続きをどうぞ。

158 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:36:52 ID:zdNid8tw0

    〜作り合わされし世界〜

     → 冒険をする
         1:しなの  Lv4
       → 2:ヨウイチ Lv3

159 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:38:16 ID:zdNid8tw0
十一、 旅立ち

「旅に出る?」

時間は昼過ぎ。
女将さんが少し驚いた口調で言いました。

「いままで世話になってきて、何も返せなかったけど… 俺は旅に出たい」
「…何かを探しにいきたいっていうのは知ってたんだよ。
 いつかいつか…
こんなに毎日いっしょに過ごしてたんだ。
覚悟していたけどイザとなるとやっぱり複雑だよ」
「女将さん、ごめん」

ダンがいなくなってから数日、ヨウイチはずっと考えていたのです。
少し寂しげな表情を見ると、心がさわさわして言葉が見つかりません。
けれど、そんなヨウイチとは反対に女将さんは明るく言いました。

「そんなに険しい顔をしないでおくれよ!
 今日のためにあんたと過ごしてきたんだ、私も嬉しいよ」
「ありがとう、女将さん」
「キー!」

話を聞いていたドラオが突然、声をあげました。
なにやら女将さんに言っているようです。

「ドラオ、お前も行くんだね。 ある日いなくなるんじゃないかって思ってたけど…
 いいよ、いっといで」

ヨウイチにもドラオの言うことはわかりました。

160 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:42:19 ID:zdNid8tw0
「さぁ二人とも、決めたんならすぐがいいね。 準備しといで」

準備、といってもヨウイチは何も持っていませんしドラオだって同じです。
女将さんは少しあきれて、自分の部屋から大きなリュックを持ってきました。
リュックはたくさん入っているようでふくらんでいます。

「ほら、言った通り覚悟はしていたんだよ」

リュックを渡しながら女将さんはニコリと笑いました。

「二人とも。 道に迷ったり疲れたりしたらいつでも戻ってきていいんだから。
 それから、用事が済んだら顔だけでも見せに戻ってきておくれよ」
「うん。 ありがとう」
「キーッ!」

女将さんは気丈でした。
暗い顔なんてひとつもみせず二人を元気いっぱいに見送ります。
ヨウイチにはそんな姿がとてもとても切なく感じて、おおきく一言出すのが精一杯でした。

「いってきます!」

161 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:46:26 ID:zdNid8tw0
十二、 足りない準備

町の門をくぐり目の前の森を歩いていきます。
いままでとは何か違う、どこかうわついた心でした。

「ところで… お前はこれからどこへいくんだ」
「キ? キィキー」
「えぇぇ、お前。 俺と一緒に旅するっていうのかよ?」
「キィ」

ドラオはさも当たり前といった顔でふわふわします。
ヨウイチはちょっと戸惑いましたが、一人旅は心細いので納得しました。

「あ、そうだ」

森の道でちょっと広くなった草地に腰掛け、女将さんにもらったリュックを開きます。
もらったのは良かったけれど、何が入っているのかはぜんぜん聞いてなかったからです。

「ええと… これは薬草、水筒、保存食…」

リュックの中には旅に必要な道具がそろっていました。
その中には手紙も入っています。

『ヨウイチ。
 少ないですがお金も入れておきました。
クレージュから近い町はシエーナです。
そこで足りない道具や装備を整えてください。』

「女将さん…」

リュックの奥に大事にしまわれた小さな袋には数百ゴールドのお金が詰め込まれています。
その袋をぎゅっと握り締め、そっとリュックへしまいます。

162 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:54:04 ID:zdNid8tw0
「なぁドラオ。 何を探して何があるのかはわからないけど、また絶対帰ろうな」
「キィッ」

リュックを背負い、再び歩き始めます。
たくさん詰め込まれているので重いのですが薪割りのおかげか苦になりません。
そんな事も思いながら歩いていましたがふと、気づきました。

「あ、あれ」
「キ?」
「そういえばおれ… 武器持ってないや…」
「キー?!」
「本当だ。 まいったなぁ、今から戻るなんてかっこ悪いし…
 シエーナって町までどうにかするしかないぞ」

あわてて周りをきょろきょろしますが太い棒切れしか見つかりません。

 初日からこれじゃあ、これから思いやられてしまう。
生きて元の世界へ戻れるのだろうか。

仕方がないので棒切れを片手に握り、今度は警戒しながら道を進んでくのでした。

163 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 11:59:20 ID:zdNid8tw0
十三、 初めてのよる

棒切れを握りドラオを肩の上に浮かせたまま数時間歩きました。
そのあいだ、幾人もの旅人や商人とすれ違い、休憩しながら話したりしました。

「シエーナは遠そうだな…」
「キ…」

話によるとあと数日はかかるらしいのです。

「もう疲れた… 電車ならすぐなのに…」
「キィ?」
「ああ、電車ってのはな……」

路に座り込み電車を教えているうち、やがて空は夕焼けとなり暗くなり始めました。

「うーん、野宿か。 子供のころ友達とキャンプしかやったことない」
「キィキー、キィ!」
「いや、だからな。 ほんとなんだって。
 鉄の箱でらくらく移動できるんだって……」


適当な場所でリュックにあったオイルで火を起こし、今夜はそこで眠ることにしました。
森の中で、いつモンスターに襲われるかわからない不安の中で、はじめての野宿。
一人ならとても不安でしょうがドラオがいます。
すぐ逃げ出すにしても、話相手をしてもらうことで気晴らしになりました。

「はぁ疲れきった。 足の裏が痛いし熱いよ。
 お前はいいなぁ、羽動かしてるだけでいいんだもんな」
「キ! キーッ」
「まぁ、そりゃそうかもしれないけど… 疲れたっていう割には今だって飛んでるじゃないか」
「!!」

164 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 12:05:27 ID:f+CVPVCw0
支援トヘロス

165 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 12:09:55 ID:l8bNbGg70
支援

166 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:13:58 ID:zdNid8tw0
ヨウイチに言われてドラオはすぐ羽を止め、地面にしゃがみました。
短い足でちょこんとする姿に、ヨウイチは笑いをこらえるので必死です。

「ぷ。 さ、さーもう寝る。
 何も食べる気がしないし、身体が休めって言ってるしな」
「キィ」

ドラオもお腹は空いていないようでした。
返事といっしょにころんと横になり、一瞬で眠りに落ちてしまいます。
疲れたというのは嘘ではなかったようで、やっぱりヨウイチは少し可笑しくなりました。

「面白いやつだな… 俺も寝よう、おやすみ……」

火を消してリュックを枕に横になり、それから数秒で眠りに落ちるのでした。


「…おい …あんた」

何かが身体を揺さぶります。
けれどヨウイチはすっかり疲れきってしまってすぐに起きる事が出来ません。
ドラオは静かに、まだ眠っているようでした。

「だ、だれ……?」
「ああ、私はここらへんで商売をして歩いてる者だが…
 あんた、外を歩くのはまさか始めてかね?」
「え、え、ええ…」

目をごしごしとこすりながら見ると、松明を片手に持った男がいます。
顔はマスクで覆われ背中には大きな荷物を背負った、見るからに旅の商人でした。

167 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 12:15:44 ID:l8bNbGg70
支援の攻撃!
規制に10のダメージを与えた!

168 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:18:40 ID:zdNid8tw0
「そんなに思い切り寝てしまったんじゃあ、あんたモンスターに殺されちまうよ」
「んん、えぇ?」
「普通は木の幹にもたれてすぐ動けるように武器を抱えて眠るんだ。
 今のあんたは襲われたら一瞬だ」

ドラオはまだ起きません。
この男が言うように今襲われたら抵抗も出来ずに死んでしまいます。

「わかったら、そこのドラキーと交代で番をしながら眠るんだな。
 じゃあ私はもういくよ…」
「あ、あど、ども…」

松明の明かりが遠くへ離れ、辺りは再び暗闇に包まれました。

「ふぅ」

一息ついてリュックを自分の下へ引き寄せます。
口紐が緩んで中が見えていました。

「開けっ放しだったかな…?」

構わず手を突っ込みオイルを探しますが、どうも中身が少し減っているように感じました。

「あ、あれ…」

ありませんでした。
束になった薬草全部と、保存食の半分が無くなっていたのです。
ヨウイチは混乱しましたがやがて気づきました。

169 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:22:01 ID:zdNid8tw0
「あの男だ…! あいつが盗んだんだ……」

声をかけてきた今の男は盗賊だったのです。
恐らく、盗賊は全部盗もうとしたのでしょう。
ですがヨウイチのあまりの無防備さに同情し半分だけを盗み、助言を与えていったのです。
オイルを取り出し火に照らされながら、ヨウイチはそのまま眠れずに初日の夜を過ごすのでした。

170 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:26:15 ID:zdNid8tw0
十四、 初めてのたたかい

あくる日、ヨウイチは寝不足でドラオはすっきりした顔で歩き始めました。

「仕方ないだろ… 俺だって気が回らなかったんだから」
「キーッ!キーッ!」
「わかったわかった。 これから気をつけるからもう言うなよ…」

昨晩のことをドラオと話しながら歩いていきます。
一時間ほど進むと、前触れもなく森がなくなりひろいひろい広野が現れました。

「おぉー!」

遠くには山があり林があり岩がありおおきな空があり、遠くにはまた森も見えます。
その地には人が踏み均した道が続き、まるでこの旅を最後まで導いてくれるかのようでした。
ヨウイチは自分で歩き見つけたその地がとても気に入ってしまいました。
ドラオも高く低く飛び回り喜んでいるようです。

「やったなぁ! 同じ道ばっかりで森から出られなんじゃないかって不安だったんだよ!」
「キッ!」
「いいなぁこういうの。 なんか、あこがれだなぁ」

二人は感傷に浸りながらゆっくり歩きます。
ところがいいことばかりではありませんでした。
途中すれちがった旅人が教えてくれたのです。

「ここから先はモンスターが多いから気をつけなさい」

棒切れを強く握り締め、今になってぐぅぐぅなる腹に保存食を与えながら進んでいきます。
そのうち、小高い丘を越えた辺りでなにかが動く気配を感じ、それはまさにモンスターでした。

171 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:30:11 ID:zdNid8tw0
「おいドラオ!」
「キ…」
「いいかビビるな! 俺が戦うから、声で俺を助けろよ!」
「キキ…!」

ドラオは逃げ出さずヨウイチの話を聞き従ってくれるようです。
ヨウイチはといいますとリュックをおろし、棒切れを両手で握ってモンスターへと近づきます。

「ん、あれはスライムってやつだな… ああ、二匹もいる…」

ダンの教えを思い出します。
じりじりと近づくうちにスライムも二人をみつけ、ぷよぷよ近づいてきます。

「くるならこい! 前の俺とは違うんだ!」

スライムは表情一つ変えません。
そうこうしているうちにお互いの距離まで近づきました。

「こ、こっちからやってやる!」
「キー!」

ヨウイチは思いきって一匹のスライムに棒切れを叩き付けました。
すると、たったそれだけで、スライムはぺちゃんこになって動かなくなってしまいました。

あっけない事に動揺しているともう一匹のスライムがジャンプしてヨウイチに噛み付こうとしてきます。

172 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 12:31:50 ID:l8bNbGg70
すみません。それを買うには支援がたりませんが……

173 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:33:18 ID:zdNid8tw0
「キッ!」
「っ! いててっ!」

ドラオの声に反応してよけたつもりでしたが、意外に鋭い歯が腕に切り傷を作ります。
痛みを我慢して棒切れを握り直し、さっきと同じようにスライムを叩きます。
今度もやっぱりぺちゃんこになって動きません。

始めての戦いに勝ったのです。
わぁわぁと二人で大喜びし、スライムの死骸を見てみます。
気持ちの悪い光景でしたが勝利の気持ちのほうが大きくて、そんな事はなんともありませんでした。

174 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 12:36:09 ID:zdNid8tw0
いったん、止めます。
続きはまた後ほど。

>>164,172
支援ありがとう!
ヨウイチは静かに目を閉じた……

175 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:16:35 ID:zdNid8tw0
    〜作り合わされし世界〜

     → 冒険をする
         1:しなの  Lv4
       → 2:ヨウイチ Lv4

176 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:17:34 ID:zdNid8tw0
十五、シエーナ

幾つもの林を抜け森を抜け数日、二人はようやくシエーナへとたどり着きました。
その数日の間、戦いは何度もありました。
薬草のないヨウイチは傷を増やし、時には逃げながらなんとか生き延びました。
ドラオは、そんなヨウイチを一生懸命に助けながら生き延びました。

ドラキーとも出会い、戦いました。
ドラオが心配でしたが本人はどうやら人間側なんだと割り切っているらしく、なんともない涼しい顔のままです。
逆にヨウイチは、ドラキーが飛んだまま攻撃してくるものですからとても苦労して勝利しました。
もしダンに出会わず旅をしていたら、二人とも無事ではなかっただろうと口には出しませんが思っていました。


シエーナはバザーが催されていてとても賑やかです。
たくさんの出店が並び、人々が行き交いヨウイチもドラオもときめきます。

「ドラオ… 俺たち二人だけでここまでこられたな」
「キィ」
「なんとか最初の目的を果たせたぞ。 つっ… まずは傷を治すという薬草を探すか」

薬草はすぐに見つかりました。
バザーに出店されている店で薬草一つ80ゴールドです。
ヨウイチには物価がわからないので安いのか高いのかわかりません。
変な話し方の店主でしたが傷が痛むので二つ買い、その場で考えます。

「で… どうすればいいんだ?」

ドラオは知らないようです。
仕方がないので変な喋り方の店主に聞くと、葉を食べればいいという事でした。

177 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:21:08 ID:zdNid8tw0
「苦そうだな… 怪しいな… 仕方がないっ!」

ヨウイチは勇気を出して葉を丸めて口へ放り込み、数回噛んでから飲み込みます。
すると、痛みがあっという間に消え傷はふさがりすっかり元通りになってしまいました。

「おおおぉぉぉぉ…… こ、これはすごい……」

驚き、葉をしげしげと見つめますが変わった様子はなく、ただの葉っぱです。
味は渋いお茶に近く、お茶好きなヨウイチはますます気に入ります。
盗まれた薬草の事を考えると腹が立ちましたが、授業料だと思いあきらめました。

「さー、ドラ… あれ?」

さっきまでそばで浮いていたドラオの姿がありません。
うろうろ探してみると、ドラオは女の人のそばで羽ばたいていました。

「キ〜!」

何か見つけたような声を出しながら、女の人の顔の前でふわふわしています。

「こらドラオ! 知らない人を驚かしちゃあダメじゃないか!
 ゴメンな。勝手に飛び回るものだから……」

女の人は気にしないといった風に言います。

「いや大丈夫だ。この動物は……?」
「ドラキーを知らないのか?」
「私の世界にはいなかったからな」

178 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:26:03 ID:zdNid8tw0
まさかと思いました。
自分と同じ世界の人かと考えましたが、ヨウイチはこの世界をまだ良く知りません。
もしかすると別の意味かもしれないと考え直します。
詳しく聞きたい気持ちは強いのですが、変な噂になるのは嫌でした。

「あぁなるほど…… あ、こらドラオ! やめろっ」

ドラオが、ヨウイチの肩に乗ろうと一生懸命にしています。
羽が顔に当たってちょっと痛いのです。

「よく懐いているな」
「ドラオは人を怖がらないからな。 触ってみるか?」

落ち着かないドラオをつかまえ差し出し、女の人がドラオを触ろうとします。
ところが、さっきまで頭の上を飛んだりしていたのに、ドラオは逃げるように何処かへいってしまいました。
まるで触られるのを嫌ったようです。

「……何て言うか、その……」

ヨウイチはきまずくなって、けれど言葉が出ません。
ドラオは人懐こいはずなのに、どうして逃げてしまったのかわからなかったのです。

「羨ましいな。 どうやって仲良くなったんだ?」
「え? いや、普通に友達になったんだけど」
「むぅ…不公平だ! 私とも友達になってくれ!」
「俺に言われてもな……」

虚しそうに空を見上げる女の人には気の毒でしたがドラオを探さないといけません。
ヨウイチはこっそり素早く、ドラオの飛んでいったほうへ歩くのでした。

179 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:30:59 ID:zdNid8tw0
十六、 ドラオのたから

ドラオは出店ではないよろず屋にいました。
この世界の人たちは悪意のあるモンスターとそうでないモンスターの区別が付くようです。
童話のお姫様が頭に載せる、そんなような冠を店主と一緒にとぼけた顔で自分とあわせています。

「お客さん似合いますよ!」
「キィ?」

ヨウイチはあきれながらドラオと店主のやりとりを見ていました。

「キィ」
「おや、お気に召しませんでしたか? それでは… これはどうです?」
「キィキィ!」

緑色のガラス玉がぶらさがった小さなちいさな首飾りを店主につけてもらい、ドラオは満足したようです。

「どうです、お気に召したようですね」
「…キィ」
「ええと… お買い上げですか?」
「キィキィ、キィ」
「えー… お買い上げですね! 80ゴールドになります!」

あわててヨウイチは二人に割って入ります。

「ちょ、ちょっと待った!」
「ああ、お客さん申し訳ない。 このネックレスはこの方が」
「い、いえ… 友達で。 ドラオ!」

声が聞こえないように小声で話します。

180 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:34:43 ID:zdNid8tw0
「お前わかってるのか。 お金はそんなにないんだよ」
「キ!」
「いいか。 俺だってアレコレ買い物したいんだ。
 でも我慢してるんだぞ? なのにお前─」
「キィー……?」
「う、おい。 や、やめろよ、そんな目で見るんじゃない…」
「キー」
「く…… わかった、買ってやるからもうその目はやめろ…」
「キッ!」

ヨウイチの言葉にドラオがぱたぱた飛び回ります。

「いつもはなんにも考えてないような目のくせになんという…
 すみません、80ゴールドでしたよね。 これで…」
「ありがとうございます、よくお似合いですよ!」

お金を支払い店を出ると、ドラオはネックレスをまるで大勢にみせつけるかのように胸を張って飛んでいます。

「はぁ… こんな事はこれでもう最後だぞ?
 さて、宿屋を探して今日はもう休もう。
ちょうど陽も傾いてきたし」

バザーの雰囲気だけを楽しみながら宿屋を探します。
たくさんの人が楽しそうに出店をまわり、その雰囲気は二人の疲れを軽くしてくれました。

181 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/08/15(水) 18:35:56 ID:zdNid8tw0
今日はここまで。
続きはまた後日投稿します。

182 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/15(水) 19:57:57 ID:f+CVPVCw0
おおお、シナノさんが・・・。シナノさんがでてきた。
「こうきたかっ!」っていう感じで、(いい意味で)予想を裏切られた感じです。

旅先で合流して一緒に戦う日もくるのでしょうか・・・。わくわく。

183 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/16(木) 00:19:46 ID:7JDGwSN40
>>合作
乙です。
リンクしあってるのって良いよなぁ。
wktkが止まらない

冒険の書がちゃんと二つになってるのがたまらんw


184 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/17(金) 00:05:18 ID:UfC39d0AO
合作乙!!
しなのさんキタ━━(゚∀゚)━━
ドラオでア〇フルのCM思い出したwww


あと合作以外の作品もwktkしてる。

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/19(日) 21:13:38 ID:X8G77rnL0
wktk保守

186 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:18:54 ID:AqZ9/iTZ0
    〜作り合わされし世界〜

     → 冒険をする
        1:しなの  Lv4
      → 2:ヨウイチ Lv5

187 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:21:11 ID:AqZ9/iTZ0
十七、 うわさ

日が変わり昼、二人は買い物や用事を済ませシエーナの門にいます。
ヨウイチは買い物がてら町の人に話を聞いて回っていました。
石版の話をダンから知って以来、噂ではなく本当なんじゃないかとずっと考えていたのです。
ここシエーナでも聞いて回り、商人から貴重な話を聞くことが出来ました。

「ここだけの話、マウントスノーに石版を持っている金持ちがいるらしいぜ。
 その石版をどこかの神殿に捧げると、願いがなんでも叶うそうだ」

話を聞いて、ヨウイチは石版を持つ人に会おうと決めました。
神殿についてはそれ以上の話は知らないらしく聞くことが出来ません。
まだ嘘か真かわかりませんが、今のヨウイチには元の世界へ戻るための唯一の手がかりになります。

「次はマウントスノーだ。 遠いらしいから覚悟しろよ」
「キキーキ?」
「いや。 途中に立ち寄れる町はないそうだよ。
 かなり北にあるらしいから寒いって話だ」
「キィ…」
「そんなに気を落とすなよ。 ほら、こんなに食料だって薬草だって買い込んだ。
 水は樹木から採れるって聞いたし大丈夫だろ。
毛布だって買ったんだぞ」
「キッキッ」
「ベッド? そんなの我慢しろよ。 それよりもう一つ、いい事きいたんだ」

石版の話のほかに別のうわさも聞いていたのです。
食料を売っていた商人が教えてくれました。

188 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/20(月) 00:23:47 ID:3d1IXtP/O
リアルタイム遭遇(゚∀゚)

189 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:24:14 ID:AqZ9/iTZ0
「うわさ? そうですねぇ…
 噂じゃないんですが商人仲間の話でしてね。
 ここから北に進んだ森の中で不思議な町を見たって言うんですよ。
あの森には町なんてないんですけどね。
だいたい、あの男はいつもホラふ…─」

ヨウイチは噂や不思議な物事が好きでした。
商人の話を全部聞かないうちにドラオをつかまえ、出入り口までやってきたのです。
ドラオは興味がないので反対しましたが、ヨウイチの強引な押しに負けました。

「さー出発だ!」
「キィ…」

広い大地を目の前にして、能天気なヨウイチと不満なドラオは北へ向けてシエーナを発ちました。

190 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:27:12 ID:AqZ9/iTZ0
十八、 まほう

シエーナで買ったものは食糧や薬草、毛布だけではありません。
装備も買っていました。

「これは銅の剣っていうんだ。 かっこいいよな」
「キィー?」
「い、いや。 初めてなんだよ、本物は…」

銅の剣はずっしり重く、形は剣ですがまるで金属の塊でした。
初めての本物は不安ですが、自分がとても強くなった気にさせてくれます。

「キキキ?」
「防具は… もう金がなくて買えなかった」
「キィー……」
「ちがうよ。 ネックレスじゃなくてあのいんちきな薬草のせいだよ。
 あれがなければ革の鎧っていう、ごついのが買えたんだけど」
「キッキキ」
「これ? これは旅人の服っていうんだ。
 冒険者見習いの証らしいよ。 防具屋の人が最初はそれでいいって言ってた」

振り返るとシエーナははるか彼方、前のほうにはうっそうとした森が見えます。

 嘘じゃないとしたらどうして騒ぎにならないのだろう。
遠いといっても見えるのに。

それでもヨウイチは自分の好奇心を抑え切れません。
もしかするとこの森の中で、元の世界へ戻れるかもしれないと思ったからでした。

191 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/20(月) 00:28:22 ID:WyzySJvP0
支援

192 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:30:18 ID:AqZ9/iTZ0
路を外れ森へ足を踏み入れます。
ほとんど人が通ったことのないような、そんな雰囲気にヨウイチは心がわくわくします。
ドラオは体にまとわりつくツタや葉にとまどいながら、ヨウイチにピッタリくっつきました。

「隠された町なのかな。 森の広さで見るとかなり狭そうだ… ん!」

がさがさと音を立て、目の前にくらげのようなモンスターが現れました。
ホイミスライムです。
スコップを持ついたずらもぐらも、のそのそ後から出てきました。

「初めて見るモンスターだな。 剣の練習するんだったらスライムがよかったけど…」

いたずらもぐらがスコップをふいふいと振り臨戦態勢になります。
ホイミスライムは笑顔でじっとしていますが、それが逆に不気味でした。
ヨウイチは覚悟を決め、まずいたずらもぐらを倒すことに決めました。

「おらー!」

重たい剣をぶんと振り、いたずらもぐらをかすります。
腕にニブい感触が伝わり、どうやら小さな傷を負わせたようです。
それを見たホイミスライムが突然、たくさんの足をいたずらもぐらにくねくねとしました。
ヨウイチは驚きます。
傷がふさがり血は止まり、いたずらもぐらが元気を取り戻してしまったのです。

「ななな…!?」

今度はスコップが、動揺するヨウイチをかすりました。
ドラオはどうしていいかわからずにそこらを飛び回りおろおろしています。

「なんだったんだ??」
「キキッ?」

193 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:33:22 ID:AqZ9/iTZ0
考えてみても、いたずらもぐらの傷を治したのは薬草ではありません。
意味がわかりませんでしたが必死に剣を振るいスコップを払い、それを繰り返します。
何度かカチンカキンとしているうちにもう一度いたずらもぐらに当てることができました。
今度はかなり深い傷で、もぐらは動きが鈍くなっています。
よくわからない事をさせないように止めを刺そうと剣を大きく持ち上げたとき、
ささっとホイミスライムがくねくねしていたずらもぐらの傷を治してしまいました。

「また…!!」

いたずらもぐらはひょいと体を翻し、剣の落ちる場所から離れます。
そのままスコップで足を乱暴に叩き、ヨウイチはその一撃で膝をついてしまいました。

「あつっ!」
「キキキー!」

ドラオが道具袋から薬草をちぎって取り出し、ヨウイチの口へ押し込みます。
飲み込むと痛みは治り、こんな状況なのにドラオの器用さに感心してしまいました。

「あ、ありがとう。 いま思い出したけど、あれは魔法ってやつなのかもしれない」
「キィ?」
「…聞いてくれ。 いいか……」
「キ?!」

余裕な表情を浮かべじりじりとモンスター達が近づいてきます。

「魔法の事は後で教える! 生きてたら!」
「キィィィ〜〜〜!?」

ヨウイチの耳打ちに戸惑うドラオでしたが、ヨウイチは構わずいたずらもぐらを攻め立てます。
ホイミスライムは時々ふらふら動くのですが、勝利を確信しているのでしょう、攻撃はしてきません。
その証拠にスコップのほうが生身を切り裂く音をたてるのです。

194 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:37:12 ID:AqZ9/iTZ0
「いてぇぇ!! ちくしょうぅぅ!!」

もうボロボロで痛くて、剣も鈍くなっていましたが懸命に攻撃し続けます。
気迫に押されてしまったのでしょうか、いたずらもぐらが少し後ずさりした所に大きな一撃を与えます。

「よしっ! はぁはぁ!」

かなり堪えたのでしょう。
もぐらはクラクラして目の焦点があっていません。
とどめのために剣を振り上げます。
瞬間、ホイミスライムがくねくねしようと細い足を一本持ち上げました。

「キ、キキキー!!!」

大きなドラオの声が響き、ホイミスライムはくねくねしますがいたずらもぐらの傷は治りません。
ドラオの羽がホイミスライムの口を完全に塞いでいたのです。

「もう治してもらえないな」

力いっぱい剣を振り下ろし、いたずらもぐらにごすんと強烈な一撃があたります。
血は流しませんでしたがぐたりとその場に倒れこみ、いたずらもぐらが動くことはありませんでした。

「よっしゃ! ドラオよくやった!」
「キー!」

ヨウイチの声でドラオはホイミスライムから離れます。

「ふぅ。 さーお前、まだ戦うのか」

薬草を飲み込みながらホイミスライムを威嚇してみます。
無言のホイミスライムでしたが少しの沈黙のあと、静かにこの場を離れていきました。

195 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/20(月) 00:38:19 ID:WyzySJvP0
支援スライム

196 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/20(月) 00:38:46 ID:3d1IXtP/O
携帯支援

197 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:40:40 ID:AqZ9/iTZ0
十九、 眠りのまち

戦いを終えた二人は少し休むことにしました。

「ダンに聞いた話の受け売りだけど、魔法っていうのはな。
 魔力を持つ人やモンスターが、その魔力を使って特別な力で攻撃したり癒したりするものらしい」
「キィ、キー?」
「うーん、魔力は… ごめん、俺もそこまでは覚えてないんだ。
 で、さっきくらげみたいなやつが使っていた魔法はホイミっていって、傷を治す魔法だそうだ。
魔法を使うには魔法の名前を口に出さなきゃいけなくて、お前に塞いでもらった。
だからホイミは使えなかったってわけだ」
「キキー! キキィキキッキー」
「え。 なんだ、お前知ってたのかやつらの名前!
 えー、もぐらがいたずらもぐらで、くらげがホイミスライムか… 変な名前だ。
てか、ホイミスライムはそのまんまじゃないか」
「キ」
「よく知ってたな。 モンスターだからか?」
「キキッ。 キィ〜」
「知らないけど知ってた……? よくわからないけどやっぱりモンスターだよ」

長く人間と暮らしていたものですから、そういった部分が潜んでしまっていたのでしょう。
何度かのモンスターとの遭遇で意識の深い部分が目を覚ましたのです。

「けど、突然おれを襲ったりしないでくれよ。 ははは」
「キ… キ!」

ドラオは笑わず、だけど強い返事を返しました。

198 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:44:16 ID:AqZ9/iTZ0
休憩を終わらせ、二人は森の探索を続けます。
森は、感じた以上にスカスカでした。
ヨウイチはここでよやく不安を覚えます。

「ほんとにあるのか…」

狭いとはいえある程度の広さを持った森です。
何度かの戦いを経て、周りはすっかり暗くなってしまいました。

「これ以上は… 松明を持ってても危険だ。
 しょうがないから今日はここで寝よう」
「キ!? キィキィィ」
「仕方ないだろ。 どこから出られるかわからないんだ。
 下手に動くとまたモンスターに襲われるし」
「キィ…」

野宿の準備を済ませ、保存食を食べます。
クレージュの保存食と違って少し甘い感じがします。
町によって味付けが違うのでしょう。

「さて… 今日はお前から寝ていいよ」
「キー」

ドラオが横になり、ヨウイチは銅の剣を抱え座り炎を見つめます。

「結局、町はなかった…
 うそだったんだろうな、期待してたのに…」

少し、気が抜けてしまいます。
と同時にとても眠たくなって、ヨウイチはそのまま目を閉じてしまいました。

199 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/08/20(月) 00:47:05 ID:WyzySJvP0
キング支援スライム

200 :作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. :2007/08/20(月) 00:49:30 ID:AqZ9/iTZ0
「うぅむ… あ!」

大きな声を出してヨウイチは飛び起きます。
ハッと周りを見渡すと見たこともない景色です。
いえ、景色というよりはどこかの町にいたのです。

「え、え、え??」
「キィ… キッ!?」

隣で寝ていたドラオも驚き飛び起きます。

「な、なぁ。 俺たちシエーナの北で眠っていたはず…
 いや俺は見張って… あぁ、急に眠くなって寝てしまったんだ…」
「キー?」
「ああ。 これが商人の言ってた町… なんだろうな!」

驚きはしましたが、ヨウイチは嬉しくて仕方ありませんでした。
こんな不思議な世界でこんなに不思議な体験が出来たのです。
それに商人の話が本当だったということは、石版や神殿の話だって本当かもしれません。
気持ちは高ぶり、大きな期待を抱くのでした。

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