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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 02:57:50 ID:XgSwbg4B0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi

266 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:55:40 ID:ulthyi6uO
「戻れるのかなぁ…」

「え?」

ふと放った一言。
それと共に涙が流れた。
メイサさんが私を落ち着かせようと懸命に話かけるが、その内容はまともに聞こえていなかった。


……
………
…………
……………

「…落ち着いた?」

「うん…」

心配そうに私の顔を見る1人と1匹。
私はたまらなくなって話したのだ。

起きたらトルッカの宿にいたこと、自分の姿が他の人に見えてなかったこと、サスケに出会ったこと、夢見る井戸に飛び込んだことも、冠職人のおじさんを助けたことも、全部、全て。

267 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:16 ID:ulthyi6uO
「頑張ったんだね」

馬鹿、そんな事言わないでよ、私の緩んだ涙腺からさらに涙が分泌されるじゃないか。
涙でまた顔がぐしゃぐしゃになる。

「…じゃあこれからどうするの…?」

そうだ、泣いていても元の世界に戻れる事はないだろう。

「とにかくライフコッドへ行きます…もしかしたらヒントがあるかもしれない…」

「そう…頑張ってね…!」

「はい!」

そのあと薬草セット6セット分と大きめのリュックサック、水と日持ちのよさそうな食糧を購入した、武器はめぼしいものが見つからなかった。
地図はメイサさんからせんべつとして買ってもらった。
その日、疲れた私は食事をとる事なく眠りについた。

268 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:56:59 ID:ulthyi6uO
そして次の朝、朝食中、私はライフコッドに向かうとメイサさんと冠職人のおっさんに言った。
朝食を済ませると貸してもらっている部屋に戻る。

昨日買った薬草セットの1つをコートのポケットに入れ、財布と残りの薬草セット、地図と食糧はリュックの中に詰め込んだ。
これに私の命がかかっていると言っても過言ではない、それから靴の紐を解けないようおもいっきりかたく締める、まるで自分自身に言い聞かせるように。

「入るわよ」

どうぞ、と私が言うと青色のワンピースのような服と一降りのナイフを持ったメイサさんが入ってきた。

「ちょっとしたものだけど…役に立つと思ったから持ってきたわ」

「ありがとう、メイサさん」

なんでもこの世界での旅人の基本的な装束らしい。
元着ていた服はメイサさんの家に置いていく事にした。
宿代には不十分だとは思うがこれが精一杯だった。

269 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 11:58:57 ID:ulthyi6uO
青色の服に袖を通すと、麻が入っているのか、少しチクチクとした。

私の旅が始まるんだ、不安より期待の方が大きすぎるような気がした。

モンスターの知識もあるのだからと言うのが要因だろうか、私は着替えを済ませると後ろから視線が。

 人
(゚д゚)

「こっち見んなw」

旅に乙女心はいらないとわかった。
服にはソードベルトなるものがついていたのでナイフはそこにいれる事にする。
リュックを背負い、サスケを肩に乗せる、ついにお別れだ。

メイサさんには気をつけてねとか忘れないでとか、辛くなったら来てとか言われた。
おっさんも、また来いと行った、その時に髭面の間から涙が見えていたのがわかった。

歩き出した時、後ろからメイサさんの声が聞こえる

「行く前に、名前、教えて」

私の名前…

「星良[セイラ]!星に良いって書いて星良!」

「また会おうね!セーラ!」

こうして私の長い旅が始まった。

270 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 12:02:00 ID:ulthyi6uO
本日の投下はこれにて終了です
ありがとうございました

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:12:46 ID:AqNLWx3jO
サスケwwwww乙ww

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:12 ID:Tn0giKIA0
面白い!
ゲームでいえばまだ序盤なのに大冒険になりそうな予感
自分に自信の無い主人公てのはつい感情移入しちゃいますね

続き期待してます!

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 12:26:36 ID:Y8piABFwO
ちょwwサスケwwこっち見んなwww

274 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/05(土) 14:11:40 ID:ulthyi6uO
× 祭があるのは今から3日もあるらしい。
○ 祭があるのは今から3日後らしい。

まとめる時に修正出来たらお願いします…
さすがゆとりって言われる前に吊ってきます

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/08(火) 09:48:43 ID:OLhBWyJl0
ほっしゅ

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/09(水) 19:54:14 ID:CR90JAoe0
ほしゅーー

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 09:31:03 ID:/xPwAdXfO
ぴるりりゅん!

ぴるりりゅん!

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 11:14:34 ID:7LPR8Gbt0
もょもと

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 16:07:54 ID:DSN9UtZgO
とんぬら

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 23:25:24 ID:AZ6WcEDO0
ゆきのふ

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/11(金) 12:07:43 ID:kiDuyOId0
鈴木さーん、田中ー、生きてるかー?

282 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:16:04 ID:gVvwJ5tL0
皆さんお疲れ様です。
このスレに入って初の投下行っきまーす

283 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:18:25 ID:gVvwJ5tL0
                  〜The Sacrifice of Isaac〜

――――――――――――――――――1――――――――――――――――――――

  「はい、あ〜ん」
  「……」

困惑した表情を浮かべる少女。

  「どうしたの? あ〜んして?」

しかし催促には勝てず、おずおずと唇を動かすと果物がその小さな口に運ばれた。
果実の甘さが舌を満たしていく。

  「ふふ、おいしーね」

問いかけられた少女はどうしたもんかと思いながらも、
自分を抱きしめている人の機嫌を損ねないように小さく頷くのが精一杯だった。
けれど、怖いからそうしているのかと言われると、ちょっと違う気がした。
手を引かれ、木の下まで連れていかれた時は何をされるか不安だったけど、
今のところ、後ろから抱きすくめられながら、果物を食べさせてもらっているだけだから。

これが「お前をたべちゃうぞー!!」とかそういう目的だったなら怖いけど、
このお姉さんは優しいし、髪を撫でてくれるし、可愛いねって言ってくれたから、
何となくそうじゃない、と少女は思う。
お姉さんのそういう行為、それはそれで恥ずかしいのだけれど、
イヤじゃなかった。
けれどこの一連の行為が何の為にあるのか分からない少女だから、
とりあえず逆らわないように事態の流れに身を任せているのだ。
とは言えどう対応したらいいのかも分からないので、
少女は口をぱくぱくさせて、困ったアピールをするのだった。

284 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:21:00 ID:gVvwJ5tL0
  「ん? もっと欲しいの? はいどうぞ。あ〜ん」
  「……何やってんだよ」
  「お〜ジュード。もう出発?」
  「そうだけどよ」
  「ちぇ〜もう何泊かくらいしてってもいいじゃーん」
  「あのなぁ、だいたい爪を修理しに来たのだって寄り道だったんだ。
   余裕はないの。
   アヴァルスだって犯罪者として連合に引き渡す予定なんだし」
  「じゃあ1回アリアハンに帰るの?」
  「そうなるだろうな」

少女は自分とは関係のない話が始まってしまったのを感じた。
一緒にいるのにその輪に入れないのは何となく居心地が悪いものだ。
何だか一人ぼっちになってしまったような気がした。
けれどそう感じるという事はやっぱり構ってもらいたいのだろうか。
そうかと思うと少女は複雑な気分なのである。
答えを出せない少女はいつも微妙な立ち位置にあった。

  「で?」
  「あ、この子? 可愛いでしょ〜?」

頬をスリスリしながら、少女はギュッと強めに抱きしめられる。
こんな風に他人に甘えられた事がないエルフの少女は、
真理奈の行動にいちいちドギマギしてしまう。

  「ねぇ、この子一緒に連れてってもいい?」
  (え?!)

やっぱり誘拐とかされちゃうんだ!
女王様が言ってた通り、人間は怖いんだ(((( ;゚Д゚)))
と少女はガクガクブルブルしてしまう。

285 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:24:07 ID:gVvwJ5tL0
  「ダメ」
  「え〜? ファンタジーな冒険にはエルフは付き物なのにぃ!」
  「知らねぇよ。なんだそりゃ」
  「ジュードのケチっ!」
  「この子は行きたくないってよ」
  「そんな事ないよ〜。ね〜? 一緒に行きたいよね〜?」

同意、というよりは強要に近いように聞こえたのか、
ぁぅぁぅと助けを求めるようにジュードを見上げる少女。
少し涙目になりつつあるのが何とも可哀相だ。
仕方なくジュードが助け舟を出す。

  「分かった分かった。
   じゃあ後で【いつでもエルフに会いに行ける券】やるからそれでいいだろ?
   キメラの翼一年分付きだぞ」
  「お〜それいただきだ〜!」

ぐおーと腕を振り上げる真理奈。
よっぽどエルフの事が好きなんだろう。

  「ったく、小さい子をあんまり困らせるなよ。
   お前が変な事言うから泣きそうじゃねーか」
  「あ〜ゴメンゴメン! もうしないから! ね?」

チュッと頬にキスをし、頭をナデナデする真理奈。
ちょっと必死な真理奈が可笑しかったのか、
少女は片目をつぶりながらも、安心したように笑顔を見せた。

  「よしよし、んじゃあ行きますかね!」

真理奈はヒョイっと立ち上がり、少女をようやく解放した。
そして少女と手を繋いでエルフの里への道を歩き出す。

286 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:27:07 ID:gVvwJ5tL0
  「ジュードも手、繋ぐ?」
  「いらん!」

馬鹿話をしながら真理奈は少女を家まで送っていった。
エルフの少女は手を振って真理奈を見送った。
不思議な人だけど、また会いたいなと思いながら。


エルフの誘拐事件が起こってから3日と経たぬ内に
真理奈一行は出発する事を決めた。
女王の葬式とソールとフォルテの結婚式で1日強滞在したが、
それでも長い休暇だったかもしれない。

  「フィリアねぇ、もう行っちゃうの?」
  「そうだよ、もう少しゆっくりしていってよ」

フィリアは繋いでいた手を解き、ソールとフォルテの頭に乗せた。
フィリアも別れたくはなかったが、やるべき事があるので仕方がない。
もちろん一生会えないという事はないんだけれど。
それでも寂しいものは寂しいのだ。

  「また来るね」
  「約束だよ」
  「ゆびきりしよ?」

そんな子供らしい光景をパトリスは微笑みながら見ていた。
やはり無垢なものは見ていて心が洗われる。
この子らのようにいつまでも純粋にいる事が出来たなら、
きっとエルフが人間から逃げ隠れるような事態は起こりえなかったはずだ。
それが逃れる事の出来ない運命だったとしても、
再びあのような事件を目にすれば悔しいと感じてしまうパトリスだった。
どんな呪文を覚えようとも、運命を変える事はできないのだから。

287 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:29:22 ID:gVvwJ5tL0
  「お待たせ〜」
  「やっと来たか。何をしておったんじゃ」
  「へへへ、ちょっとね〜」
  「ちょっと何じゃ?」
  「考え事〜♪」

そんないい訳にもならない事を言うと真理奈はフィリア達の方へ歩いていった。
後ろから来たジュードがパトリスに告げ口する。

  「アイツ何かエルフを連れて行こうとしてたぜ」
  「なっ…!!」

唖然としたパトリスは慌てて真理奈を追いかける。
が、真理奈さんのすばやさには追いつけない…!

  「よ〜し!
  「ソール君とフォルテちゃんに今日はお姉さんからプレゼントをあげよう!」
  「え? 何なに?」
  「こらソール、はしたないでしょ?」
  「いいのいいの。貰ってくれないと私が困っちゃうんだから」
  「ほらみろ。遠慮すんなって。何くれるの?」
  「ジャジャーン!」

真理奈はバッグから深緑に光るオーブを取り出して、2人に手渡した。

  「お〜キレイだな」
  「ホントね…」
  「グリーンオーブって言うんだよ〜」
  「……」

パトリスは真理奈ののんきな声に体を震わせ、
怒りが爆発しそうなのを静かに堪えた。

288 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:32:18 ID:gVvwJ5tL0
  「……真理奈さん? ちょっとよろしいかの?」
  「え? 今いいとこなんだけど」
  「どういう事か説明してもらえるとありがたいのじゃが」
  「いや〜エルフって言ったら何か緑ってイメージがあるからさ〜」
  「そうではない! オーブをそんな軽々と――」
  「軽々じゃないよ。ちゃんと考えたもんねーだ!」

パトリスの声を遮った真理奈は腰を手に当て、皆の注目を自分に集める。

  「おほん!
   え〜こうして巡り合ったのも何かの縁!
   という事でエルフの皆にも今日から連合に参加してもらいます!
   さらにエルフは超保護対象とするように
   連合を通じて世界中に通達していきましょ〜!
   これでエルフの皆も安心して暮らせるね♪」
  「……」
  「あれ? どうしたの?」

一同唖然。
ソール・フォルテは何の事か分からずポカーンと真理奈を見、
ジュードとパトリスは判断しかねて考え込み、
フィリアだけはうんうんと小さく頷いていた。

  「なぁじいさん。これっていいのか?」
  「……」
  「そういえば俺らってどこと連合結ぶかって全部決めてないよな?」
  「……そうじゃったかのう」
  「……どうする?」
  「ふ〜む……ここはエルフさんに決めてもらおうかの!」
  「あ、逃げやがったな」

289 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:35:36 ID:gVvwJ5tL0
さすがに真理奈の言葉だけでは説明不足なのでパトリスが補足する。
魔王に対抗する為、世界中で協力しようとしている事。
そして世界中の人々の架け橋となるべく旅をしている事。

  「確かに連合がしっかりと機能すればエルフ保護も出来るかもしれんな」
  「でしょ?! どう? どう?」
  「そうですね。
   私の一存では決められないですけど、お願いしたいです」
  「俺も賛成!」

  「けどさ、『保護』じゃあ立場が対等じゃないだろ。
   協力するんだからもっと違う言葉じゃねぇか?」
  「そうじゃのう。擁護…愛護…庇護…」
  「そんな難しいのなんてダメだよ〜」
  「……友達、がいいと思う」
  「お〜さすがフィリアちゃん! それ採用!!」

有無を言わさず決定という感じでビシっと親指を立てる真理奈。

  「じゃあ友達記念って事で、イエーイ!」
  「イエーイ!」

何のノリか知らないが真理奈はフォルテとソールとハイタッチを交わす。
その時不意に、パトリスの心に懐かしい言葉が甦ってきた。

  "過ぎ去った苦しみの思い出は、喜びに変わるのよ"
  (確かにそうかもしれない。だから生きていける、か)

昔の記憶につられたのかパトリスも少しだけ若さを取り戻した気になり、
真理奈たちがはしゃぐ輪の中に入っていった。
妖精と人間の未来がありますように、と願いながら。

290 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/05/12(土) 00:36:56 ID:gVvwJ5tL0
短いですが、今日はここまで。
ではまた( ^ω^)

291 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 00:39:05 ID:F3yFevY80
乙です!
初リアルタイム遭遇でかなり嬉しい。

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 07:42:44 ID:I8sDJVVs0
乙でした〜。
凝り固まったオトナのジョーシキなんか軽々とぶっ飛ばす真理奈ちゃんは
本当に見ていて清々しいですね。
これからの冒険も応援します。

293 :Stage.4 [前編] 1/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:39:15 ID:1V5Xv7vG0
 前回 >>129-141
【Stage.4 ミイラ男と星空と(前編)】

 ----------------- Game-Side -----------------

「エリス、この手紙をポルトガ王に届けるよう頼んできて。あとこっちはイシス女王へ。
で、こっちがエジンベア王宛てね」
 各手紙の隅に、ロマリア国王直筆の書簡であることを表す判を押して、すっかり秘書役
になっているエリスに手渡す。
 ポルトガ王には「死ぬほど黒コショウ贈ってやるからノルドに道を開けさせろ」。
 イシス女王には「勇者に魔法の鍵を貸してあげて。まだピラミッド内から発掘されてい
ないのであれば、ピラミッド関連の資料を勇者に渡してほしい」というお願い。
 エジンベア王には「いずれ勇者が訪ねるから、番兵一人にいたるまでしっかり伝えてお
くように!」。差別主義のアホな門番一人のために、何度も海を越えてられるかっての。

 エリスは各手紙をくるくる巻いて紐でくくると、遠慮がちに声をかけてきた。
「ところでゆう……じゃなくて新国王様。なにかお召し上がりになりませんか?」
 言われて時計を見ると、正午を回っていた。そういや朝からろくに食べていない。
「じゃあ厨房にサンドイッチでも作らせてくれる? あ、ピクルスは入れないでね」
「わかりました。あまりご無理をなさないでくださいね」
 ふわりと笑って退室するエリス。優しくてよく気がつくコだ。
 ホント、仲間には恵まれたなぁ。

 サミエルたち3人がカンダタから金の冠を取り返して来たのは、実に明け方すぐだった。
最短でという僕の要望に、期待以上に応えてくれた3人には超感謝!
「ロマリアで雇った傭兵の中に、カザーブ出身者がいましてね」
 その人にまずキメラの翼でカザーブまで連れて行ってもらって、今度は地元の猟師から
シャンパーニの塔への近道を教えてもらい、普通は丸1日かかるところを半日で到着した
のだ、とサミエルが得意気に説明する。
「それに、カンダタも賢い男で助かりましたよ、ははは」
 話を引き継いだロダムが思い出したように笑った。手下より大勢の傭兵部隊に囲まれて、
カンダタ一味は剣も抜くことなくさっさと降伏したとのこと。ビビったんだろうなw

294 :Stage.4 [前編] 2/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:41:49 ID:1V5Xv7vG0

 そんなこんなで僕は今、ロマリアの新国王(仮)をやっている。
 朝イチで王様に金の冠を届け、さっそく祝いの宴じゃ!と騒ぐ王様をなだめすかして、
さっさとカジノに追い出した。
 仲間の労をねぎらってやりたい気持ちは山々だったんだけど、
「別に城の公式パーティならいいッスよ」
 肩をすくめるサミエル他、全員が「堅苦しいのはパス」になったので、仲間が泊まって
いる宿にごちそうを運ばせるだけにしておいた。
 それからずっと執務室のデスクに張り付いている。王様権限を駆使して、今の内に打て
る手は打っておかないとね。

 ポルトガへの関所は、真っ先に国王命令で鍵を開けるよう通達を出した。
 なので直接バハラタに向かって黒コショウを手に入れ、ポルトガで船をゲット。
 エジンベアで渇きのつぼを取って、すぐ浅瀬の祠に向かい、最後の鍵を入手してから、
旅の扉を使って世界を回るのが手っ取り早いはずだ。
 ただ鍵関係のイベントは大切だから、イシスには行かないとダメかもしれない。できれ
ばあの罰当たりな墓荒らしイベントは飛ばしたいんだけど。
 あ、よくわからない方は攻略本や攻略サイトをごらんください。

「あとは、あれがこうなってそうなるから、あれは飛ばせるはず。でもあそこをハショる
とヤバイかなぁ。だけど時間無いし……痛ぅ」
 目の奥がズキッとして、僕は両手の親指でこめかみのあたりを抑えた。ドラクエ世界に
飛ばされて、眼精疲労で頭痛を訴える主人公なんて僕くらいだろうな。
 結局きのうもほとんど寝てないし、ダメだ、頭が回らなくなってきた。
 少しだけ仮眠を取るか――。

 と、急にドアが開いた。
 入ってきたのは前国王だった。城の塔の最上階に隠居している、放楽息子に頭を悩ませ
ているロマリア国王の父君その人である。
 僕は慌てて立ち上がり、彼の前に膝をついた。彼は「まあまあ」と言って僕の腕をつか
んで立ち上がらせると、ソファに腰をおろして僕にも座るよう促した。

295 :Stage.4 [前編] 3/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:44:46 ID:1V5Xv7vG0

「いやはや、正直ワシは参っておるよ。うちの息子よりよっぽど評判ではないか」
 言葉とは裏腹に、父君はなにやら上機嫌だ。
 評判もなにも、こんだけ女官さんを抱えてるんだ。若い男の子が一日署長、じゃない、
一日王様やってれば、城中がキャーキャー騒がしくもなるわいな。
「どうじゃ、いっそ本当に継いでみんか?」
 彼はフォフォと笑った。一見すると王族というより、田舎の旅籠のご隠居さんという感
じの、冗談好きのただのおじいちゃんだ。
 でも目が笑ってない。本気らしい。「勇者アルス」のネームバリューの高さを考えれば
傀儡として飼っておきたいと思うのは当然か。
 王様…か。確かに向こうで普通のリーマンやってるよりは楽しいかもなー……。

 いかんいかん。ここで誘惑に負けたらいけない。ヘタに「はい」なんて選んだ日には、
またとんでもないことになるに決まってる。 
「申し訳ありません。このような重責は、わたくしごときには耐えかねます」 
「そうかのう。頭も良し、見目も良し、しかもあのオルテガ殿のご子息とあれば、ワシは
申し分ないが。ほれ、うちの姫も年頃じゃし」
 いやいやそんな、まあ頭脳と容姿は少し自信ありますけどぉ……って、はいぃ!?

 姫なんかいたっけか? 僕は急いで昨日の謁見の模様を脳内再生した。ビデオのように
はっきりと情景が浮かび、偉そうな王様の隣にフォーカスをずらすと――うわ、いた。
 確かに年増の地味な、もとい、熟女の魅力を放つ慎ましやかな姫君が、鎮座ましまして
いらっしゃるぅ! 濃ゆい王様の存在感に負けて、そっちまで意識が行ってなかったよ。
 もちろん、丁重にお断りさせていただきマス。
 だいたい大国ロマリアの姫君ともなれば、引く手あまたのはず。なのに今まで独り身な
のは、あの国王が見かけによらず親バカってことじゃないの?
 ヘタすれば僕の首がハネられる。冗談じゃない。

 前国王はとても残念そうだったけれど、僕に再三断られると、しぶしぶ退室していった。
 ヤ、ヤバかったぁ。ほんと下手な選択肢は選べないゲームだな。

296 :Stage.4 [前編] 4/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:47:59 ID:1V5Xv7vG0


 これ以上長居すると、さらに余計なトラブルに巻き込まれそうだ。
 王様がまだ陽の高い内に帰ってきてくれたのを幸いに、僕はすぐ王位を返還し、その日
の内にロマリアを出発することにした。
「みんな、慌ただしくてゴメンね」
 次の目的地バハラタまでの旅程を確認してから、チェックアウトしてもらう。
「気にしなくていいッスよ。それにしても、ようやく勇者様と旅ができますね」
 サミエルがにかっと笑った。いよいよ冒険らしくなるとウキウキしているようだ。
 僕はこの時点ですでにウツ気味だけどネ。

 はぁああああ。とうとうこの時が来ちゃったよ。
「もう少しでロマリアの警戒域を抜けます。ここからはモンスターが出ますから、お気を
つけてくださいね、勇者様」
 エリスが心配そうに僕を振り返る。
 前にも言ったけど僕は「Lv.1」で「経験値ゼロ」。無論、僕のレベルが低いことは最初
の契約時に確認してることだから、戦闘に慣れるまでは後方支援に徹する、という打ち合
せは済ませている。
 なんだけど、本当に問題なのは、たぶんそこじゃない。

「って、言ってるそばからなんかいっぱいキター!」
 獲物だ、とばかり茂みの中から4つの塊が飛び出してきた。ついに宿スレ定番の初戦闘
シーンだ! ちょっといまさら感もあるけど、そこはほら、初スライムまで平均5時間と
いう噂のDQ7もあることだし。
 敵は紫色の一角ウサギが2匹と、緑色のイモムシが1匹、それに頭から黒いフードをスッ
ポリ被った怪しい人型のが1匹。アルミラージ、キャタピラー、まほうつかいだ。
 ロマリアのモンスター格闘場で遠目には見たけど、間近だとホント迫力ある。
「これまた出ましたねぇ。下がっていてください勇者様」
「はーい、お任せしまーす」
 最後部に回って「ぼうぎょ」に入る僕。って言ってもどうしていいかわからないから、
とりあえず逃げることを優先に構えてるって感じ?
 うはww情けなーwww

297 :Stage.4 [前編] 5/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:51:14 ID:1V5Xv7vG0

 反面、この地点での目標レベルを軽く越えている3人は、余裕の笑みさえ浮かべている。
「精霊界の偉大なる女王ルビスの名において汝らを召還す、ジン、イフリート、サラマン
ドラよ、我のもとに集いて我を守る盾となり、敵を貫く剣となれ……ベギラマ!」
 エリスが高らかに詠唱する。彼女の手の平から目もくらむ閃光が放たれ、ウサギ2匹が
巻き込まれた。
 あっけなく炎上したアルミラージのそばをすり抜け、サミエルがカザーブで買ったとい
うチェーンクロスを巧みに操って、イモムシを薙ぎ払う。
 その間にロダムがまほうつかいにマホトーンをかけて呪文を封じ、オロオロしているソ
イツを、駆けつけたサミエルがすかさず斬り捨てた。
 なんとも鮮やかな連係プレー。初戦闘は、呆気ないほど簡単に終わってしまった。

 だが、問題はここからだ。
 僕の様子を見たロダムが慌てて駆け寄ってきた。
 サミエルも走ってきてくれたが、その彼の背中には、モンスターの体液がベッタリ付着
したチェーンクロスが背負われている。ほっぺたにも紫色の返り血が飛んでたり。
「ちょ、ごめ、やっぱダメ!」
 僕は急いでその場を離れ、適当な木の陰に回りこんで幹にすがりついた。
「うっ…うぇぇっ……ケホ、ゴホッ……」
 ああもう、僕吐いてばっかりいないか? 後世に「吐瀉王伝」などと伝わるのは激しく
抵抗があるんだが。

 でもねー。ここで行われたのは、あくまで「殺害行為」なワケだし。

 アルミラージは火だるまになって、しばらくのたうち回ってから動かなくなった。獣の
体毛と肉の焼ける臭いって、ほんと形容しがたいようなキツさがある。
 サミエルがキャタピラーを斬った時はグチャッと音がしたし、飛び散った体液と内臓器
官は全部ドス黒い紫で、それもしばらくピクピク動いていた(一部まだ動いてる)。
 まほうつかいなんて最悪、本当にモンスターかと疑いたくなるような、まるで人間みた
いな声で悲鳴を上げるんだもん。最期の瞬間、僕の方を見てなにか叫んでたけど、それが
「命乞いだ」と容易に察しがついた時点で、もう限界。

298 :Stage.4 [前編] 6/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:54:07 ID:1V5Xv7vG0

「……どうぞ」
 エリスが遠慮がちに近づいてきて、水筒を差し出してくれた。小さく礼を言って受け取
り、胃酸くさい口内を洗い流す。それからなんとなくバツが悪くて、汚した場所にブーツ
の先で土をかけた。
「大丈夫ッスかー? なーに、最初は誰でもそうですよ」
 サミエルは予想通りといった様子で、カラカラ笑う。
「そうですよ。勇者様は実技の成績もとても優秀でいらしたんですから、場慣れさえすれ
ば、すぐに我々に追いつきますよ」
 ロダムも優しくほほえんでいる。今ちょっと気になるコトを言ってたが(あのバカがな
んだって?)、僕は問い返す気力もなく、素直にうなずいた。


 落ち着いたところで行軍再開。
 3人はまるで何事もなかったように、また談笑している。タフだなぁ。
 僕は彼らの少し後ろを歩きながら、腰のベルトに差してある「聖なるナイフ」の柄に、
そっと触れてみた。銅の剣なんて重量武器は、どう考えたって僕に使えるわけがないので
さっさと売り払ったし、鉄の槍や鎖鎌も同じ理由で却下。とりあえず扱えそうな武器とし
てロマリアで買っておいたのが、このナイフだ。
 次にモンスターが現れたときは、僕もこいつで戦うことになるのか――。

「ま、考えても仕方ないよな」
 殺せというなら殺すさ。たとえどんな手段を使っても、絶対にクリアしなきゃ。

 だって僕が戻れなかったら、アルスも帰ることができないから。
 あのおっちょこちょいのバカ勇者様は、逃げる先を完全に間違えてる。まだ物見遊山で
済んでいるうちにこちらへの退路を確保してあげないと、きっともっと傷つくことになる。

 いろいろ考えたけど、やっぱりね。
 あの人に、あんな現実を押しつけるわけにはいかない。

299 :Stage.4 [前編] 7/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 13:58:14 ID:1V5Xv7vG0

 ----------------- Real-Side -----------------

「へ…っくしゅ!」
 うぃー。冷えてきたかな。もう陽も沈みかけているし。
 俺はちょっと迷ったが、ユリコを呼んでパソコンの後始末の仕方を教わった。このイン
ターネットってやつでだいたいのことは調べたし、図書室は次の機会にしよう。

「そんじゃ付き合ってくれてありがとね」
 ユリコが校門の前で手を振り、そのまま別の方角へ歩いていった。バスの中で、今日は
「ジュク」があるとかで、帰りは学校前で別れることを話していたのだ。
「ところでさーっ」
 少し離れてから、ユリコが振り返って叫んだ。同時にバスがやってくる。
「なんでまた名前で呼ぶことにしたの?」
「は?」
 バスのドアが開く。
「カノジョでもないのに名前で呼ぶのは変だからって、あんたが言い出したのに」
「え?」
「乗らないんですか?」バスの運転手が言うから「いや、乗ります!」思わず乗り込む。
「嬉しいけど……私はやっぱり『片岡』に戻してくれた方が――」
 ドアが締まって彼女の声が途切れ。
 走り出したバスが、片岡百合子を追い越していく。彼女はうつむいて歩いていて、顔は
見えなかった。
 
 ……カノジョじゃないって?

「おっかしーなー…」
 別に「甘酸っぱい青春な毎日!」を期待してこっち来たんじゃねえから(いや多少の憧
れはあるが)、ヤツの女関係なんざどうでもいい。
 しかし「間違う」ってのはどういうことだ? 「知らない」ことはあったとしても、こ
の俺が自発的に覚えようとしたことを記憶違いをすることは絶対ない。

300 :Stage.4 [前編] 8/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:02:40 ID:1V5Xv7vG0

 いっぺんイチから情報を洗い直さなきゃダメか? タツミ本人に聞くのが手っ取り早い
が、ここぞとばかり、あることないこと吹き込まれそうだし。
「三津原ぁ?」
 いっそ頭でも打って、記憶喪失になったフリでもするか。でも下手に大怪我したら治せ
ないで死ぬしな。
「おい、三津原ってば」
 アホみたいな難病も治せるくせに、死んだらそれまでってのは中途半端な話だ。いや、
ベホマだのザオリクだの、究極の回復呪文が存在する向こうが極端なのか――。
「ミツハラタツミー」
「うお!?」
 いきなりポンと肩を叩かれて俺は飛び上がった。振り返ると、黒髪を短く刈り込んだ、
俺より10センチくらい背の高い少年が、俺の大げさな反応に苦笑している。
 肩にでかいバッグをひっかけて、青赤の派手な色合いの服を着ている。黒のごついヒモ
靴は泥だらけ。なんかのスポーツ系の、動きやすそうな格好だ。
 戸田和弘。こいつもヤツの同級生で友人……のはずだが、合ってるかはもはや疑問だ。

「三津原の私服見たの久々だな。お前でも休みに出歩くことあるんだ」
 また言われたよ。うちのプレイヤーはヒキコモリかと、俺はちょっとガックリきた。
「ユ……片岡に付き合わされてさ。携帯、教室に忘れたとかで」
「片岡が。あいつも健気だね。マジお前さ、なんで断ったのよ。付き合ってやれば?」
 なんとヤツの方がフッたのか!? 生意気な! って俺も人のこと言えねえか。
 俺の複雑な心情をよそに、カズヒロが屈託の無い笑顔を見せる。
「まあ三津原にとっちゃ、俺も片岡も子供っぽく見えんのかもしんねえけど。若いもんが
変に達観しててもつまんねえぞ? うん?」
 こいつは「夢」の通りにイイ友達らしい。俺は内心ホッとした。
「ほっとけよ。んでそっちは? あーと…『部活』?」
「ん、試合の帰りだけど。昨日言わなかったっけ?」
 こういう食い違いはこれからいくらでも出てくる。サラッと流すに限る。
「だっけか。すまん、最近どうも記憶力に自信なくてさぁ」
「え、マジで? ヤバイだろ、それ」
 途端に真面目な顔になるカズヒロ。俺そこまで変なこと言ったか?

301 :Stage.4 [前編] 9/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:07:29 ID:1V5Xv7vG0

「まあ三津原なら問題ねえだろうけど……なんか困ってたら言えよ?」
 なんだかわからんが、騙してる手前、心配かけるのは悪い気がする。「大丈夫」と首を
振ったら、相手は一瞬だけ斜め下に視線を流した。
「じゃあ俺にも付き合えよ」
 言いながら「次、停まります」のボタンを押す。
「試合負けちまってさ。気晴らしにゲーセンでも行こうぜ」
 ゲーセン? 気晴らしというならカジノみたいな娯楽施設の一種か。
 それもよくわからんが、さっきからどうもモヤモヤした状態だからな。スッキリできる
場所なら大歓迎だ。俺は一も二もなく賛成して、カズヒロに続いてバスを降りた。


「なるほど、『Game Center』の略でゲーセンか……」
 カズヒロが案内した施設は、向こうのカジノとはまるっきり違っていた。
 雇われ楽士が奏でる景気の良い音楽の代わりに、所狭しと置かれた機械の一個一個が、
好き勝手に甲高い音を垂れ流している。大勢の人間がいるのに、ほとんど「人の声」がし
ない。多少騒いだところで機械の音が掻き消してしまっている。
 うるさいのに静かな、なんか不思議な場所だ。
「なにやる?」
 カズヒロに聞かれて俺は困った。そうだな。
「モンスターとか派手にやっつけるようなの、ないか?」
「へえ、意外。じゃあこれなんかいいよ」
 引っ張っていかれたのは、おどろおどろしい装飾がされたデッカイ画面の前だった。
 前に小さな操作台があって、その横にヒモに繋がれた、赤い「へ」の字型のものが2つ
ひっかけてある。
 カズヒロは慣れた手つきで操作台の穴にコインを投入した。画面に「プレイ人数」だの
「難易度」だのといった文字が浮かび、操作台のボタンで設定していく。
「まずは初心者向けにしとくな。一緒にやろうぜ。ほれ」
 への字型の1つを渡される。あ、前にヤツが観てたテレビに出てたのと形が似てる。
「これ、銃だよな。どーやんの?」
「普通に握りゃいいよ。んで、敵が出たら狙って撃つ!」

302 :Stage.4 [前編] 10/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:11:53 ID:1V5Xv7vG0

「おお!? おおお!!」
 いきなり画面に腐った死体みたいなのが出てきたと思ったら、そいつがバンと弾けて飛
び散った。カズヒロがかっこつけて、銃の先端にフッと息を吹きかけてみせる。
「すげえっ。えーと、狙ってここを引くと……」
 腐った死体をやっつけた!
「おもしれー! うわ、なんかたくさん出てきたぞ。あれみんな敵か?」
「そうだ。左下に弾数が出てるだろ? 無くなったら銃を下に向けると補充されるぞ」
「え? あー撃てなくなった! んで下に向けると、うん増えた」
 ルールは単純だが、あれだけ苦労したゾンビ系モンスターが、こんなもんをカチッとや
るだけで吹っ飛んでいくのは爽快だ。
「っく〜、気ぃ持ちいい〜! なあなあ、これもっといっぱい出てこないか?」
「うまいじゃねえかオイw じゃあ難易度、思いっきり上げてやるよ」
 画面が薄暗くなって止まり、さっきEASYに設定した項目がVERY HARDに変わる。
「足引っ張んなよ、三津原?」
 カズヒロがちょっと意地悪く笑った。
 ふん、挑戦されたら受けて立つのが勇者だぜ。やったろうじゃん!


 ――なんて意気込んで臨んだのだが。
「おいカズぅ、お前また撃ち漏らしたぞ?」
「いや三津原がおかしいから! お前こそ本当に初めてかぁ!?」
 だって簡単なんだもん。前方向しか来ないのに全部の敵に出現予告あるし、弱点とか
見え見えだし。ちょっとのミスで死ぬような向こうのバトルと比べたら、なあ?
「んじゃそっちのも貸して」
 俺はカズヒロからもう1個の銃を取り上げた。画面をほとんど埋め尽くしている敵が、
俺の銃撃で次々と倒されていく。弾数の補充はいちいち腕を下げるより、輪っかの部分
に指を引っかけて銃をクルッと一回転させる方が楽だな。
 あーあ、向こうでもこんな風にやっつけられたら、俺も楽だったのに。
「マジかよ……全国レベルじゃん、このスコア」
 カズヒロが傍らでぼやいている。

303 :Stage.4 [前編] 11/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:17:40 ID:1V5Xv7vG0

 なんとなーく白けた空気が流れた。その時だ。

 プルルルルルル! プルルルルルル!

 携帯? なんだよこんなときに。
 察したカズヒロが俺から銃を取り上げて、目だけで「出てこいよ」と促す。俺は店の入
り口まで移動した。携帯を開けた。みると表示は「TATSUMI」。
 へぇ、向こうからかかってくるとは珍しいこともあるもんだ。

「うーっす。話の途中でブチ切りするような相手に、なにかご用ですかぁ?」
『あの時はごめん。君も、時差のこと知らなかっただけだよね』
 およ? なんか素直じゃないか。まあ俺も時差のことは知っててかけたけどな。
『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
 聞き取りづらい小さな声で、ヤツは言った。
『その――ゾンビ系のモンスターの楽な倒し方って、ある?』

「ップハ!」
 やべえ、なにこのタイミングw 思わず吹き出した俺に、タツミが『なんだよ』とムッ
としたような声を出す。
「悪い、こっちのことだ。リビングデッド系の楽な倒し方だよな? 簡単だぜ」
『ホント? どんな!?』
「まずな、弾切れする前にリロードすること」(だはははは!)
『え、リロード?』
「あとはよーく弱点を狙って撃つことかな。参考になりましたでしょうか?w」
『…………』
 タツミは電話の向こうで黙ってしまった。ありゃ、反応無し?
 ああ、元ネタがわかんねえのか。ヒキコモリ(らしい)コイツが、外にある店のゲーム
を知らないのも仕方ない。
 いやもちろん俺もそこまで性格悪くねえし、ちゃんとナビってやるけどさ。
「なんてな、教えてやるからありがたく思え。有効なのは火炎系魔法だが、もうひとつ、
武器にあらかじめ聖水をかけておくと……」

304 :Stage.4 [前編] 12/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:24:15 ID:1V5Xv7vG0

『もういい!!』

 いきなり怒鳴られて、俺はその場で固まってしまった。
「タ、タツミ?」
『自分でやるよ! 二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!』
 同時にブツッと切られて「ツー、ツー」と数回鳴った後に、静かになる。
「もしかして……マジでヤバいのかな」
 なんかちょっと、泣きそうだった、ような。

 って、しかもお前、ゾンビ系の攻略法を聞いてきたってことは、
「嘘だろ、今ピラミッドかよ!!??」
 俺はてっきり、今頃はアリアハンを脱出したあたりかと踏んでいた。時差があるとしても
早すぎる。いったいヤツはどういうルートをとってんだ。
「すまん、急用ができたから帰るわ!」
 俺はカズヒロに向かって叫び、すぐ店外に走り出した。気のいい友人が追いかけてきてる
かどうかも、気にする余裕はなかった。
 ヘタをしたら俺もヤツもここで「死ぬ」。


 冒険を肩代わりさせるにあたり「ここはナビが必要だ」というポイントがいくつかある。
 ピラミッドもそのひとつだ。
 たぶん現実側からプレイしてる限りわからないだろうが、実はあそこ、とんでもない数の
トラップが仕掛けられている。回避策さえ知っていればなんともないんだが、普通は絶対に
わからないだろう。かなり複雑な謎解きだから誘導してやるにしても、俺もいったん家に戻っ
て、あっちの現状をモニタリングしながらでないと難しい。
 しかもあそこの地下は……頼むから落ちてくれるなよ、普通の神経じゃまず保たねえ。

305 :Stage.4 [前編] 13/13 ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:29:25 ID:1V5Xv7vG0

「ったく、でつながんねえんだよっ」
 何度もリダイアルしたが「電波の届かないところにおられるか……」の繰り返しだ。
 ゲーム内の時間の進み方は現実と比べると恐ろしく早いが、通話している間だけは同期す
るらしい(でなきゃ普通に会話できん)。つながってさえくれりゃ、こっちも同じ時間の流
れで動けるが、このままだと俺が家に帰る前にすべて終わってしまうかもしれない。
 さっきのバス亭に戻り、時刻表を確認する。
「10分後か」
 家はここからそんな遠くない。次の便を待つより走った方が早いか? 判断に迷う。

「待てよ三津原」
 その瞬間、グイっと乱暴に肩をつかまれた。
「だから急用だって……っと!」
 カズヒロじゃない、と思うと同時に、咄嗟に避けた耳元を相手の拳がかすめていった。背
後からいきなり殴りかかられたのだ。
「へえ、タッちゃんやるぅ」
 そいつの後ろで手を叩いているのが2人。どいつも見たことのない顔だ。
 俺と同い年くらいの3人組で、揃いの紺色の服を着ている。向こうじゃ王族が着るような
良質の生地だろうに、着こなしがだらしないせいで、ひどく俗っぽい印象を受ける。
「ビックリさしてごめんな? なんせ久々だったからさ〜」
 ニヤついた顔に見て取れるのは明らかな敵意。
「…………」
「ま、待てっつってんだろ!?」
 無言できびすを返した俺の前に、他の2人が回り込む。なに慌ててんだよ。

 ああああああめんどくせええ!!
 なんなのよコイツら! いや不良さんにカラまれちゃったみたいテヘ♪ってのはすぐ理解
したんだけどね、なんで今ここで湧くんだよ!
 時間ねえっつーのに、どうすっかな。黙らせるのは簡単だが、初日から騒ぎを起こすのも
どうよ。俺、静かで平穏な生活を望んでこっちに来たんですけど。
 それにしてもうちのプレイヤー、おとなしそうに見えて、実はロクに出歩けないほど敵が
多いのか? どうなってんだいったい。

306 :Stage.4 [前編] atgk ◆IFDQ/RcGKI :2007/05/12(土) 14:37:45 ID:1V5Xv7vG0
本日はここまでです。
なんか「名前が長すぎる」というエラーが出たので、タイトルはステージ番号にしました。
書いてみて初めてわかりましたが、いろんな規制があるんですね。

エリスのベギラマの詠唱、わかる人にはわかる懐かしネタです(ニヤリ)

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/12(土) 23:34:00 ID:p6Lfrp8y0
>>お二方

乙であります!

くそ、更新されてたら読まねぇわけにはいかんわな
詳しい感想書けなくてすまんが今回も面白かった〜
疲れが吹っ飛んだわ

次回もwktk

308 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:14:15 ID:9in4XXbA0
「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」
「う……う〜ん……あと5分……」
「急がないと8時になっちゃうよ」
「キスしてくれたら起きる」
「……ホントに起きてよ?」

 アホな一人遊びをやめて俺は目を開けた。
 俺には血の繋がらない義妹どころか妹そのものがいねえ。

「おはよう、マイサン」
 しっかりと目が覚めているムスコに呼びかける。股間に話しかける画もかなりシュールに違いない。
 だが許して欲しい。
 ムスコへの呼びかけは精通して以来の日課のようなものだ。
 息子とムスコの違いがわからない奴はぐぐれ。

「9時過ぎか」
 枕元に置いてあった携帯に手を伸ばして時間を確認。
 朝食にはちょっと遅いがホテル内のレストランにでも行くとしよう。
 顔を洗おうとベッドから下りても、ムスコは重力に身を委ねるのを由とせず、地面と平行の姿勢を保っている。
 いつか釘も打てるんじゃないだろうか。

「やらないけどな!」

 洗顔道具を取り出そうとしたが、あるべき場所に鞄がない。
 確かベッド横に置いといたはずなんだが。
 つーか――
「何もなくね?」

 ――騒がしい俺の様子を見に来た宿屋の親父によって、ここがラダトームの宿屋だということを知ることになったのは30分後のことだ。

追記
 さすがにムスコも萎えました。

309 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:14:59 ID:9in4XXbA0
「なるほど。事情はわかった」
「はあ」

 自分がラダトーム城下町の宿屋にいることを理解してから1時間後、俺はラダトーム城内にいた。
 宿屋の親父に事情を話すとすぐにラダトーム城に連れて行かれ、あれよあれよという間にラダトーム王と対面していた。
 信用するかしないかは別として、俺は全てを打ち明けた。
 とはいえ、寝て起きたら宿屋にいたとしか言えないのだが。
 自分でも何を言っているのかわからんというのに、ラダトーム王は何やら納得した様子でいる。

「かつてアレフガルドを救った勇者ロトも天から現れたという」
「それが俺と何の関係が?」
 うげ、何やら嫌な予感。

「そなたもまた、ルビス様が遣わした救世主なのかもしれんな」
「……竜王を斃して光の玉を取り返せと?」
「竜王を知っておるのか?」
「あー……まあ、一応」

 自分で言うのもなんだが、俺はゲームは勿論のこと、漫画小説ドラマCDサントラカードゲーム、果ては同人ゲームにすら手を染めているほどだ。
 DQのストーリーを知らないわけがない。
 俺の精通は水の羽衣を着たムーンブルクの王女で始まったといっても過言じゃない。
 その後アブない水着賢者、踊り娘の服マーニャ、エッチな下着ビアンカ、エッチな下着バーバラ、アイラを経てゼシカに至る。
 魔法のビキニ賢者や神秘のビキニ盗賊、天使のレオタードマーニャでも捨てがたい。
 7のポリゴンアイラで抜いた時の俺は神が降りていたとしか思えない。
 ……いや違う。そういうことじゃない。
 狂信者ってレベルじゃねえぞ!ということだ。

「ならば話が早い。竜王を倒し、その手から光の玉を取り戻してくれ!」

 ほーら、やっぱりきたよ。
 イヤな予感ってのはどうしてこうも当たるんだ。

310 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 00:16:37 ID:9in4XXbA0
「仮に竜王を斃したとして、俺は元の世界に戻れるのか?」
「それはわからんが……他に戻る方法はあるまい」
「……確かに」
 戻れる可能性は五分五分。
 ゲーム中、異世界の話は一切出てきていない。
 EDで勇者とローラは旅に出る。
 ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの三国を建国したのは2で語られるが、その後の勇者の行方は誰にもわからない。
 ローラ姫を抱えて門をくぐったということくらいだったはずだ。――戻れる可能性があるとするならED後しかない。

 ロト編で異世界に移動できるのはルビス、ラーミア=レティス、ハーゴン、マガルギ……後は旅の扉か。
 ギアガの大穴は閉じているはずだし、マサールクリムトコンビは6だ。
 リメ3での神竜はこの時代に生きてるのかどうかも怪しい。
 ハーゴン、マガルギに至ってはこの時代よりも後。
 オルゴも神も7だし……頼みの綱はルビスのみか。

「……わかった」
 王の言いなりになるのは癪だが、それしか方法はなさそうだ。
 竜王よりもルビス目的だがわざわざ言うほど馬鹿でもない。

「おお! まことか! ではわしからの贈り物じゃ! そなたの横にある宝の箱を取るが良い!
 そしてこの部屋にいる兵士に聞けば旅の知識を教えてくれよう」
 現金な奴め。
 渋々宝箱の中から120Gと鍵と松明を取り出した。
 もう少し景気よく出せよドケチ野郎とは口に出さない。

「ローラ姫は取り戻さなくていいんだな?」
 王の返事を待つ前に、俺は階段を下りてラダトーム城を出て行った。
 さて、120Gでどんな装備を整えるとするかな。

311 :俺、参上 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:17:14 ID:9in4XXbA0
 悩みに悩んで結局買ったのは竹竿。
 棍棒を持たせてもらったが重たくてダメだった。
 もうちょっと力をつけないことには持って歩くだけで疲れる。
 そう考えるとレベル1で剣を扱えるDQ勇者すげえ。

 120Gで揃えた竹竿、薬草×3。残金は38Gだ。
 で、俺が持ってた物はパジャマ代わりに着ていたジャージ。あ、トランクスとTシャツもか。
 ドラクエができるからという理由で3年も買い換えてない携帯(N900i)。
 旅のお供のニンテンドーDSライト(ブラック)。
 ホテルに着く前に買っておいた100円ライター×1、タバコ×10。
 着替えや洗面道具を詰めこんだ鞄はなくなっていた。
 どうやらベッドの上に置いてあった物だけがこっちの世界に着たらしい。
 ベッドじゃなくて床で寝ていればこんなことにならなかったんじゃね?

「そうだ!携帯で!」
 ……繋がらない。

俺「もしかして圏外ですかーッ!?」
携帯「YES! YES! YES!」
俺「OH MY GOD」

 ……一人ジョジョごっこに興じる俺は、DSLの画面に文字が現れたことを気付いていなかった。


レベル:1
最大HP:13
最大MP:4
攻撃力:6
すばやさ:8
武器:竹竿
鎧:なし
盾:なし

312 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/13(日) 00:21:56 ID:9in4XXbA0
何の予告もなく投下させてもらいました。
続きは明日以降になると思います。

>>311は鳥忘れです。

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 00:59:41 ID:iG/kA3/A0
wktk

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 02:15:13 ID:NpD8jXgk0
DQ(初代)のストーリーを知ったうえで、うまく立ち回る主人公にわくわく。


315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 02:41:53 ID:jveBO9mB0
なんかここ最近新しい趣向の作品が増えてwktkがとまらないぜ・・・っ

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 08:47:02 ID:+KqiWjCl0
これは期待

きのうはおたのしみでしたねを目指そうぜw

317 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/13(日) 12:43:32 ID:1XLoiDx/0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

またしばらくまとめが滞ると思いますが、よろしくお願いします。

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 14:26:06 ID:kBhAT/50O
まとめ乙です。

DQをゲームとして客観的に知ってる上で冒険するパターンと、
まったく知らず「スライム、はぁ?」から始まるパターンに分かれるよな。

合作話も出てるし、各主人公の座談会とか読んでみたいなw

319 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:12:33 ID:TqHLeIXy0
 こんにちは、俺です。
 わけもわからぬままアレフガルドに来て2回目の朝です。
 戦いにもちょっとだけ慣れてきました。
 ドラキーに多少てこずるものの、スライム、スライムベスはもう敵じゃありません。

「ピキーッ!」
 竹竿を買ってから、スライムを数匹斃したところでドラキーが登場。
「ピキーッ!」
 宙を飛び交うトリッキーな攻撃に危うく死にそうになりました。
「ピキーッ!」
 念のためにと買っておいた薬草のおかげで何とk
「ピキーッ! ピキーッ!」
「だあああああ! うるせえええええええ! スライムごときが邪魔すんじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
「ピ、ピキーッ!」
「(´・ω・`)ぶち殺すぞ」
「……ぴきー……」

 大人しくなったスライムを海に蹴り飛ばした俺は防具を買いにラダトーム城下町に向かった。
 目的は一つ、竹竿から棍棒へのレベルアップ。――と、その前に便所だ。
 ラダトーム――DQ世界にはトイレというものが存在しない。これ豆知識な。
 住人は草むらや林の中でしている。
 小便をしようと草むらに向かったら下半身丸出しで用を足している女に出会った俺が言うんだ、間違いない。
 俺には気付いていない様子だったので、そのまま田代。別の意味でスッキリさせてもらいました。

 小便をし、棍棒をいくつか見せてもらった俺は、一番手に馴染んだ棍棒を購入した。
 できればもっと攻撃力のある武器がいいんだが、銅の剣を買えるほど金はない。
 棍棒に釘を刺して攻撃力増強を、とも思ったのだが、この棍棒には初めから釘が打ち付けられてある。
 釘の打ち付けられていない棍棒は3からのはずだ。

「まずは……ガライだな」
 ガライには鍵が必要な場所があったな……鍵、か。

320 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:13:26 ID:TqHLeIXy0
 というわけでラダトーム城に到着。
 ガライに行く前に色々と準備が必要なのよ。

 ラダトーム城には鍵屋が存在する。
 しかし城前の池が遮っているため、城内の鍵屋に行くにはリムルダールで鍵を買わなければならない。
 ゲームではそんな二度手間三度手間はイベントの一つかもしれないが、実際問題そんなことはやってられない。
 池を泳いで渡る?
 池を泳いで渡るのは正解に近い。最も限りなく正解に近い。
 でも溺れる可能性もあるので油断は禁物でーす♪
 というわけでボッシュート。

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  /:::::Λ_Λ:::::::::::::::/
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/:::::::(      /::::/  チャラッチャラッチャーン





「城の裏から行けばいいんだよね」





 工エエェェ(´д`)ェェエエ工といった顔の兵士は放置。
 若人よ! 柔軟な発想を持て!

321 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:14:28 ID:TqHLeIXy0
「どんな扉でも開けてしまう魔法の鍵はいらんかな? 一つ85Gでどうじゃ?」
「よし! 買った!」
「ほれ、鍵を一つ渡そ――」
「その前に。壊れたら返品ができるんだよな」
「いや、これは一度きりじゃ」
「ああ? 一回しか使えない鍵が85Gだと? ジジイ、何でそれをもっと早く言わねえんだよ!」
「か、鍵が一度で壊れるのは常識じゃろう」
「それはジジイの常識だろうが。普通の鍵は壊れねえんだよ。舐めてんのか(゚Д゚)ゴルァ!」
「い、いや、別に舐めてるわけでは――」
「“ムカつき”が止まんねーよ……」
「ままま待て待て!」
「教えてやるよ? “ジジ”ィ……ナゼ俺のパールホワイトの“FX”が“最強外道”のカンバンなのかよ……?」

 以上、俺の交渉術でした! よい子もよい大人も悪い子も悪い人もマネしちゃダメだぞ!
 一つ8Gまで負けてくれたんで10個も買っちゃったよ。
 いや〜、いい買い物したなあ。
 危うくジジイは“不運” (ハードラック )と“踊”(ダンス )っちまうところだったんだぜ……?

 予定通り浮いた金でラダトーム城下町で皮の服と皮の盾を購入。
 皮の服ってよりは皮の鎧って感じだな。

「ならば! 『ジャージ』プラス『皮の服』――二刀流!!」
 思わずジョジョ立ちしてしまう俺。これがジョジョならゴゴゴゴゴと文字が出てるくらいだ。

「二刀流じゃないじゃん」
「せっかくノッてるんだから言うなよ――って誰?」
 思わず振り向くと、女がクスクスと笑っていた。
 む、乳がデカい。乳スカウター発動!
 87……88……89……90……バカな、まだ上昇していくだと!

「あなた、昨夜草むらで覗いてたでしょ?」
 /(^o^)\ナンテコッタイ

322 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:15:14 ID:TqHLeIXy0
 というわけで、3日目の朝を迎えました。
 何が起きたかポケモン風に表現だけしておこう。
 つきのひかり
 てんしのキッス
 あまえる
 くすぐる
 メロメロ
 かたくなる
 したでなめる
 がまん
 あくまのキッス
 どくどく
 たくわえる
 のみこむ
 はきだす
 ちいさくなる
 てだすけ
 メガホーン
 のしかかり
 つのでつく
 からみつく
 みだれづき
 しめつける
 こらえる
 はなびらのまい
 だくりゅう
 しおふき
 アンコール
 ねむる
 あさのひざし

   ご 馳 走 様 で し た 。

323 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:17:34 ID:TqHLeIXy0
「どおりゃああああああああああああああああああ!!」
 俺は今、ラダトーム→ガライ間を爆走している。
 鬼気迫る顔をしているのか、モンスターも寄ってこない。
 途中で何匹かスライムを轢いた気がするが、気のせいだ。
 ダンジョン練習場として配置されたであろうロトの洞窟はすでにスルー。

「ダメだ……」
 運動不足が祟ったのか、それとも昨夜の運動が祟ったのか、体が休憩を求めている。
 少し休むか……いや、ダメだ。
 何としても今日中に――少しでも早くガライの町に着かなくては。
 ただでさえ昨日一日を無駄に費やしてしまったんだ。ここで取り返さなくてどうする。

 萎えつつある俺の気力を取り戻すべく、目をつぶって思い出す。
 ――竜王の呪いで変わり果ててしまったモモたん。
 ――良きパートナーであったモモたんを殺さなくてはならなかった剣神勇者の悲しみを。
 こみあげてくる深い悲しみと怒り……

「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!! ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 人間、やればできるもので。
 ラダトーム城下町を出ておよそ40分でガライの町に着きました。


レベル:6
HP:21/21
MP:17/17
攻撃:18
防御:14
すばやさ:6
E:棍棒
E:ジャージ+皮の服
E:皮の盾

324 : ◆yeTK1cdmjo :2007/05/14(月) 00:22:18 ID:TqHLeIXy0
といったところで今日の分はこれまでです。
>>1に書いてあるようにレス安価忘れたのは勘弁してください。
次回以降は気をつけます。
次回は早くて明日、明後日前後だと思います。

>>317
まとめお疲れ様です。
そして掲載ありがとうございます。
更新作業大変でしょうがご自分のペースで頑張って下さい。

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 00:41:37 ID:WALDniG20
>>322
ちょwwエロスwww

326 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 03:32:45 ID:8texZOd8O
町娘たんとお楽しみしたのか!
ローラ様に祟られるぞ…

327 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 11:57:16 ID:LrmXOX3W0
>>310
城の兵士を大量に動員して、ローラー作戦で、ローラ姫を捜索すべし。

328 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 13:43:03 ID:acDpFiJd0
>>327
【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'

329 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:27:51 ID:+qIRY+we0
 剣と魔法の世界。
 ファンタジーの王道であり、その筋の人間なら誰もが一度は夢見る事だろう。
 伝説の剣を手に取り、可憐なヒロインや勇敢な仲間と共に魔王を討ち果たす。
 で、最後はヒロインとハッピーエンド。お決まりだよな。

 俺もそんな事を夢に見なかった、といえば当然嘘になる。
 でも実際行ってみようとはまで思わない。
 いや、年を重ねるにつれ思わなくなった、と言うべきだろう。
 現代の便利な生活が骨まで染みた身に、きっと中世レベルの世界は耐えられないからだ。
 水洗トイレが無い生活。ネットが無い生活。車が無い生活。
 正直考えも付かない。
 更に付き纏う死の危険。
 もうやばすぎだろ、常識的に考えて。

 ん? 前振りが長い? 何が言いたいのかって? 
 それはだな……。

『結局は住み慣れた場所が一番って事。
 世の中そんなに甘くないよな』
「はあ? いきなり何言ってんの!?」
『いや、なんで俺がこんな状況に陥ってるのか今一度自分に問いかけt』

 女性A(仮名)と俺の声が、甲高い金属音にかき消される。
 そして俺の体に軽く衝撃が二度響く。体感震度3って所か。


330 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:28:40 ID:+qIRY+we0
 さて、ここで何が起こったのか説明せねばなるまい。
 女性A(仮名)が敵(なんか中身が空のピンク色の鎧)の鋭い斬撃を受け止め、はじき返したのだ。俺で。
 そしてそのまま女性A(仮名)は攻撃を弾かれ体勢が崩れた相手に縦一閃。俺で。
 哀れ一撃で真っ二つになった鎧はそのまま崩れ落ち、光に還った。

『しかし、とても女の力には見えないよな。腕も細いし』
「ああもう戦闘中にうっさい! へし折るわよ!」
『はいはい』

 女性A(仮名)のお叱りの言葉を戴いた俺は、気の抜けた返事を返す。
 彼女の言葉通り、まだ3体の鎧と箒に乗った婆さんが俺たちを取り囲んでいる。
 死を覚悟とまではいかなくとも、それぞれが弱くは無い連中だ。
 ああ、なんでそんな相手に俺はこんなに落ち着いてるんだろう。慣れか、慣れなのか。

『酷いや皆! 僕はこんな命の遣り取りなんか慣れたくなかったのに!』
「だから! 煩いって! 言ってるでしょっ!」

 人が折角悲劇の主人公を演じてみたというのに、女性A(仮名)はお気に召さなかったらしい。
 婆さんが連続で放つ呪文を、蝶の如くヒラリと避けながらまた怒声。

「……ちぃっ」

 三度目の呪文をアクロバティックな挙動で回避した先、およそ女性らしさとは無縁な舌打ちをかます女(ry
 舌打ちの理由は至って簡潔。
 呪文を回避し終えた瞬間、三方から鎧が突っ込んできた為である。
 中身は無くともその技量と殺意は間違いなく本物。

 それに対し、女(ryは正面から迫る鎧に俺を投擲。
 当然余裕で弾かれるが、それこそ女(ryの狙い。
 弾かれ宙を舞う俺を疾駆、跳躍しながらキャッチ。そして鎧を飛び越える。
 再び俺を構える頃には鎧の包囲の外。相変わらず見事な手並みである。

331 :DQ3 第一話 二ヵ月後 ◆IVyU7Lg59g :2007/05/14(月) 14:32:11 ID:+qIRY+we0
『そして流石は俺だ。手荒に扱われてもなんともないぜ!
 ていうか、ここまで自分を客観的に見れるようになるって結構悲しい事だと思うんだけどどうよ』
「…………」

 さて、ここに来ていよいよ目と殺気が本気と書いてマジになった女(ry。
 こうなったらもう俺の話なんて聞いちゃくれない。
 仕方ないので俺は故郷を偲ぶという名の現実逃避に入るとしよう。

――拝啓 親父様、お袋様、お元気でしょうか。
「スカラ! ピオリム! スカラ! バイキルト! ピオリム!」
――そちらでは俺が蒸発してしまい、大変な事になっている事でしょう。
「ボミオス! ボミオス! ボミオス!」
――ご迷惑をおかけしてしまい、まことに申し訳ありません。
「ルカナン! ルカナン! ルカナン!」
――ですがご安心を。不肖の息子は異世界で元気に生きております。……剣として。
「ずっと私のターン!」
『どう見ても格下相手をレイプです。本当にありがとうございました』

 追伸
 俺のHDDは中身を見る前に物理的手段をもって破壊していただきたい所存であります。


332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 19:40:10 ID:LrmXOX3W0
なんかへんだな?と思っていたが、そういうオチだったか。
第一話、ということは続くのかな?
元の世界に戻れるのだろうか?
せめて元の姿に戻れるのだろうか。wktk

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/16(水) 00:52:53 ID:X8Jo0VjE0
期待ほす

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/17(木) 23:34:55 ID:2NA6ZwuJO
保守

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/18(金) 23:20:47 ID:0eJL2YsHO
保守

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/19(土) 16:25:10 ID:ZRNyXIm/O
レッドマンは元気だろうか…

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/20(日) 18:14:11 ID:hmCffOiaO
保守

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/21(月) 01:41:24 ID:JA3TVn+P0
1週間ほど来なかったら新作の嵐だったとは!
どれもこれも面白い!皆さんGJです!
今度はこまめによって感想書きます

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/21(月) 09:06:39 ID:AcaFUuD20
>>338
書き手の一人ですが、嬉しいお言葉です。
一言でもご感想をいただけるとウラン並の執筆燃料になります!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 10:17:26 ID:l2P2n+iEO
保守

341 :携帯まとめ申請:2007/05/22(火) 12:29:17 ID:9d7j93O30
突然失礼いたします。
こちら宿スレの携帯向けまとめを作らせていただきたいな、
と思っているのですが、よろしいでしょうか。
可・不可、条件等、ご遠慮なくおっしゃってください。
どのような感じになるかは、現在稼動している下記サイトをご参考ください。

【DQ歴代主人公が雑談するスレ保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/dqzdn/

【FFDQバトルロワイアル保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/

342 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 19:50:52 ID:LIVH/BATO
携帯で見れるのは嬉しいだろうから俺はwktk

343 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/22(火) 20:09:14 ID:SeIABa0wO
>>341
もはや超GJといいたいくらいだ

344 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/23(水) 03:09:58 ID:ktTpY5jD0
お疲れ様です。

>>341
携帯まとめサイト、良いと思います。
正直、いつか「携帯のまとめマダー」と書かれるんじゃないかとヒヤヒヤしてましたからw
PC版は時間があかない限り更新はしないのですが、よろしくお願いします。

345 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/05/23(水) 03:11:12 ID:ktTpY5jD0
書き忘れ。
まだPC版は最新へ更新されていません、ごめんなさい。
また後日。

346 :携帯まとめ(暫定):2007/05/23(水) 04:38:32 ID:rXkmUX4R0
>>342>>343 >>タカハシ様
ご許可いただきましてありがとうございます。
さっそくですが、暫定的にここまでまとめてみました。
リンク切れや改善点など、ご連絡いただけると助かります。

【もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら 保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

347 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/23(水) 10:05:54 ID:wRfJy0IBO
>>346さんGJです
携帯からも見れるなんて嬉しい限りです

348 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:37:28 ID:/lTcDKcTO
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!」

どう見ても基地外です、本当にどうもありがとうございました、と言われるほど私は爆走しています。

「たまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖い」

オニオーン
シェーナ周辺に出没するたまねぎ型の魔物…ゲーム内では序盤ザコとして登場、単体であれば初期装備で叩けるが…

「まだ追ってくるー!」

集団で出てこられるとかなり厄介なのはゲームでも、ここでも同じようだ。
サスケの知り合いがここにはいないため、説得して平和的な方法が実行出来なかった。

349 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:39:45 ID:/lTcDKcTO
私の腰にはメイサさんに渡されたナイフ(たぶんブロンズナイフだろう)が出番を待っているが、攻撃力があっても勇気がないため、攻撃をためらってしまった。

相手は姿形は人や見知った動物でなくても生き物だ、いざ攻撃となると胸が痛くなる。

「ピキーッ!」

あれこれ思案しているそばからサスケの悲鳴が聞こえた。

囲まれた、完璧に。

逃げ道はなさそうだ、ついに最終手段実行だと思った。
ベルトに収まっていた刃物に手をかける。

もう、ためらっては駄目だ。

すっとその刃が姿を表す。
曇りのない刃、私は恐る恐る右手に構える。

350 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:40:36 ID:/lTcDKcTO
傍から見ればへっぴり腰で顔もひきつっていて、見るからに弱そうなのは私でもわかる。
初めて構えた命を奪う物はとても重い気がした。

「さぁ来い!」

勇気を持って叫ぶ、自分で言うの何だと思うが、かなり声が震えていた。

その言葉を待っていたと言わんばかりにオニオーン達が私に飛び掛かる。
複数の敵に取り囲まれた私は戦うと言うよりも、相手を振り払うような形になった。
たまねぎの魔物どもは攻撃の手を休めない、休めているのだろうが、数が多過ぎる。
戦闘に集中しているがゆえに仲間へのミスが出る。

「ピーッ!」

「サスケ!」

351 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:41:46 ID:/lTcDKcTO
サスケはオニオーンの角(と言うよりも茎?)によって跳ね飛ばされてしまった。
どうしよう、助けたい、助けられない。

仲間のピンチなのに、このたまねぎめ、うら若き乙女を囲むとは、もう許せない。

「──っ!ぎゃっ!」

サスケを突き飛ばしたオニオーンの中心にナイフが突き刺さる。
会心の一撃だろうか、オニオーンはそのまま動かなくなった。

その様子を見た他のオニオーン達は我れ先に、とでも言わんばかりに退却していった。

倒した、オニオーンはもう動かない。
私の中には安心と小さな罪悪感が渦巻いていた。
倒したと言う事は相手の生を奪った事。
危なかったとは言え、殺してしまった。

352 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:42:57 ID:/lTcDKcTO
「ピキーッ」

涙目になったサスケが私に飛び付く。
敵の命を奪う事で私は仲間を助けた。

自己中心的な考え方だが、サスケが死んでいない、私はサスケを助けた、それでよいじゃないか。
自分を正当化させなければきっとこの世界ではやっていけれないんだ。

「ピキー!」

サスケが倒れたオニオーンの方に誘導する、そうだナイフを回収しなくちゃ。
とっさに投げたナイフが当たってよかった。

ナイフの持ち手に力をかけて引き抜く、生々しい音とともに刃が顔だす、そしてその先には宝石のようなものがくっついている。

「なんだろう」

まさかとは思ったが、どうやらこの世界の魔物は宝石モンスターに属するらしい。

「アベル伝説かよ」

小さくつっこむ私だった。

353 :DQVI ◆55fvMgOfnY :2007/05/23(水) 20:49:30 ID:/lTcDKcTO
今日はこれで終了です

>>271-273
感想ありがとうございます
感情移入等をしてくださるなんて感激です

>>携帯まとめ様
自分も携帯厨なのでうれしい限りです
ありがとうございました

>>タカハシ様
まとめでの訂正、ありがとうございました
御迷惑をお掛けしてすみませんでした

354 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/23(水) 20:54:24 ID:lXjeX65BO
おつんつん!
乙女ぃぃょ乙女

355 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:31:30 ID:M221zl7u0


「……誰だ」
「それはこっちの台詞だぜ坊や。あンたこそ誰だい? ここでなにしてるンだ?」
 その狼男は大きな口から舌をだらりと出しこちらを見つめている。
 ――嫌な予感がする。
 俺はゆっくりと壁から離れた。狼男はそれに気づいたのか、じりじりと間合いを詰めてきた。
 手に汗がにじみ、心臓もドキドキと大きな音がする。
「アレフー! どこいったのー!」
 マリアさんの声が聞こえた。なんだか迷子の子供を呼んでいる見たいに聞こえる。
 それを合図に俺は声のした方向へとダッシュする。すると狼男も俺の後をついてきた。
「待て!」
「っ、マリアさん!」
 角を曲がるとすぐにマリアさんが見えた。
 こちらを向き困り顔を見せたが、俺の後ろの狼男を見てすぐさま顔を引き締めた。
「モンスターね!?」
「……もう一人いたのか」
 狼男が忌々しげに呟く。俺はそのままマリアさんのところへと思いっきり走った。
「アレフ、伏せて! メラ!」
 ボウッという音とともにマリアさんの指から火の玉が飛び出す。俺は慌てて前へと倒れ込んだ。
 間一髪火の玉は俺の頭上すれすれを通過。後ろから炎が燃え移ったような音がした。
 狼男に当たった音かと思い振り返る。するとそこには短めの剣を手にした狼男が無傷で立っていた。
「な、メラを弾くなんて……」
「お嬢ちゃン、魔法使いか」
 狼男の眼帯をしている方とは反対の目がギラリと輝く。金色をした、鋭い目付きをしている。
 どうやらこの狼男はマリアさんのメラを弾き飛ばしたらしい。なんて奴だ。
「俺にメラは効かねえ、ぜ」
 ぶんと剣を振って威嚇してくる。怖い。俺は立ち上がり、急いでマリアさんの方へ走った。
 ……この光景は漫画でもゲームのシーンじゃない。本当にすぐそこで起きていることなんだ。
「っ! それなら、ヒャドッ!」

356 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:32:23 ID:M221zl7u0

 マリアさんが杖を狼男へと向けると、杖の先からキラキラしたものが飛び出した。
 そのキラキラは狼男目掛けて飛んでいく。狼男は直ぐさま避けたが、完璧に避けられず左肩へと命中した。
 すると左肩からみるみるうちに氷が広がり、狼男の左腕は氷漬けになってしまった。
「くっ、ヒャドも使えるのか」
 悔しそうに呟きながらその氷を忌々しそうに見やる。力を込めているようだが、左手はぴくりとも動かない。
「……おい、お嬢ちゃンたち。悪いことは言わねえ、早くここから立ち去りな」
「なんですって?」
 突然狼男は氷に向けていた目線をこちらに移し、俺たちに逃げろと言った。
「私たちを襲ったモンスターの言葉を信じるわけがないでしょう?」
 マリアさんが構えを解かないまま威圧感たっぷりの声音で話す。
 俺もマリアさんと考えることは同じだ。向こうから先に襲ってきたのに、逃げろって言うのはどうも信じられない。
 俺たちが逃げようと後ろを向いた瞬間、攻撃でもするつもりなんだろうか?
「モンスター、ね。まあ、信じないのは当然だよなあ。でもさっさと逃げてくれねえと、俺が困るンだよ」
 狼男は頭をボリボリと掻きながらそう言う。
「あなたの事情なんて関係ないわ」
 スッとマリアさんは杖を構える。戦闘態勢だ。
 狼男がこちらへ向ける目を一瞬細めた気がした。
 

「今度はこれをくらいなさ……」
「グレッグ」
 マリアさんが呪文を唱えようとした瞬間、狼男の後ろからしわがれた声が聞こえた。
 狼男はそれに驚いたのか目を見開き、ゆっくりとその声の主の方へ向いた。
「グレッグ……どうした、そんな大声を出して」
「……ボス」
 のしのしと俺たちに近づいてきたそいつは、緑色をしたしわくちゃの肉の塊でとても気色が悪い姿をしている。
 この緑肉は狼男をグレッグと呼んでいる。だとしたらこの狼男の名前はグレッグというのだろう。
 グレッグは俺たちの方に目線を向けた後、耳を掻いて下を向いた。

357 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:33:22 ID:M221zl7u0
「ん? グレッグ、こいつらは旅人か?」
 緑肉は俺たちに気づき、そのたぷんとした肉に囲まれた目玉をギョロリと動かす。死んだ魚のような濁った目玉だ。
「そうか、お前たちが迷い込んだ旅人だな? フェフェフェ、そちらから出向くとは……実に好都合。手間が省けたわ」
 なんて耳障りな笑い声だ。
 顔をしかめていると、マリアさんが緑肉を睨んで言った。
「もしかしてあなたたち、迷い込んだ人たちを……?」
「フェッ、お前たちのような旅人はなかなか良い魔力を持っているのでな……よい栄養になるわ」
「っ!」
 こいつら、旅人を食べて……! なんてやつらだ!
「……なら、ここであなたたちを始末しておかなきゃ、犠牲者は次々と出るって訳ね」
 マリアさんが一歩踏み出す。その声音は淡々としているが、怒気が含まれており威圧感がある。
 それを馬鹿にしたようにふふんと緑肉は鼻息を噴き、手に持っていた杖を振る。
 一方グレッグは動かず、このやりとりを見つめているだけだ。俺も見つめているだけだが。
「お前に我らが殺せるか? 小娘」
「もちろんよ! ギラ!」
 先制攻撃! マリアさんの両手から発された炎は帯状になり緑肉へと向かっていく。
 俺は戦闘の邪魔にならないよう脇に離れる。戦力にならなくてすみませんね! ふんだ!
「ギラか……甘いわ!」
 緑肉はしたり顔(肉で表情はよく読めないが多分)でマリアさんを見つめ、杖を振った。
 すると炎は風に巻かれたように一瞬でかき消された。
 嘘だろ、呪文が消されるなんて!
「なっ!?」
 マリアさんも今の光景が信じられないという表情をしている。
 すると緑肉は俺の方を見てからグレッグの方を見やり、手を振ってなにか合図をした。
 その合図を受けたグレッグは、指を口に当て口笛を吹いた。ピィーというその口笛独特の音は森の中に響いていった。
「これでいいですかい、ボス」
「……なにをしたの?」
「なあに、ちょっとした余興よ」

358 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:34:28 ID:M221zl7u0
 余裕といった表情(多分)で俺たちを見つめる緑肉。くそ、馬鹿にしやがって。
「よくわからないけど、まあいいわ……くらいなさい! ヒャド!」
 杖から出たキラキラが緑肉の方へと向かう。緑肉はその場から動く気配がない。やった、命中する!
 しかしキラキラは緑肉との間に突然飛び込んできた影に当たった。
 そいつはグレッグによく似た狼男だった。その狼男は両腕が氷に包まれたまま緑肉の横に立った。
「おお、来たか」
 緑肉は手にしていた杖をカツンと地面に一打した。
 するとマリアさんの周囲に狼男たちが出現した。数はグレッグを入れて6匹。
 マリアさんのところへ行こうと足を出した時、背後から羽交い締めにされてしまった。
「アレフ!」
 しまったと思ってももう遅く、俺はグレッグに捕らわれてしまった。
 凄い力だ、片手で押さえられているのに苦しい。潰れてしまいそうだ。
「くっ、卑怯者!」
「フェッ、なんとでも言うがいい……食料よ」
 噛みつくように声をあげるマリアさん。しかし緑肉は勝ち誇ったように高笑いをあげる。
 マリアさんの周りには5匹の狼男がいる。危ない!
 グレッグの手を引き剥がそうともがくが、手応えがない。逆に力を入れられて押さえつけられる。
「大人しくしてな、坊や」
 おまっ、坊やって呼ぶな! そう言おうとしても声が出ない。
「……だから、早く逃げなって言ったのによ」
 グレッグはそう小さな声でボソリと俺の耳元で呟いた。……グレッグ?
 ふと狼の鳴き声が聞こえてきた。俺はハッと顔を上げ、声のした方へ意識をやった。
 狼男たちが剣を抜き、マリアさんに近寄っていく。緑肉は祭壇の上の方で高みの見物を決め込んでいるようだ。

359 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:35:27 ID:M221zl7u0
「っ……ギラ!」
 マリアさんはギラを放つ。炎は大きくうねり狼男たちを包み込んだ。
 しかし火力が弱かったのか、炎は狼男たちの服を一部焼くだけだった。
 俺はグレッグの脇腹にエルボーを喰らわした。何度も打ったが、角度が悪いらしく力を込めて打つことができない。
 野郎! このままじゃマリアさんが、マリアさんが! くそッ! 放せッ! 放せよッ!
「この……っ、は!」
 もう一度呪文を唱えようとマリアさんが杖を構えた瞬間、背後からの剣撃が降り注いだ。
 そしてそのまま崩れるように地面へと倒れていく。その光景がまるでスローモーションのように感じる。
 背中から流れ出る血が白いローブを真っ赤に染め上げた。

 ――ドクン

 その光景を目にした刹那、俺の中で”なにか”が動き出した。

360 :STORY.5 戦闘 -生か死か- ◆aPqItC/JYI :2007/05/23(水) 22:37:45 ID:M221zl7u0
投下は終了です。
今回はさるの邪魔が無くてよかったです。

>>344
まとめ乙です!
いつもまとめサイトには色々とお世話になってます。
>>346
携帯まとめ乙です!GJ!
>>353
サスケ可愛いよサスケ(*´∀`*)

361 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 18:12:00 ID:9KRULlPFO
(´・ω・`)   n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(

362 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/24(木) 20:52:26 ID:v1K+2esBO
>>360さん乙!いいところで区切りやがって(笑)wktkで待っている

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/26(土) 19:09:30 ID:ryChdz9RO
保守

364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/27(日) 00:59:19 ID:Ibx7AMqc0
久しぶりに来たが、4の人の完結してたんだな…本当に遅ればせながら面白いSSをありがとう、そしてお疲れ様です。
あれ、最後に主人公はどうなったんだ?死んじゃったのか?

365 :俺王 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:26:20 ID:/bh2DbrV0
前回までのあらすじ>>319-323

「あああああああああ! そうだよ、銅の剣はスーファミじゃねえか!」

 そんなわけでこんにちは。俺です。
 俺は今、ガライの町に来ています。
 いきなりで申し訳ありませんが、とんでもない勘違いをしていました。
 ガライの町にある鍵を使って入る建物内。そこに宝箱が三つあるのは皆さんご存知のことと思います。
 約600G、銅の剣、たいまつが入ってると思って来たわけですが…… S F C 版 と 勘 違 い 。
 中には10G、薬草、たいまつの3つ。……鍵一個と引き換えと考えるとどう考えても損だよなあ。
 仕方ないのでさっさと建物を出る。
 唖然としている宝箱の持ち主らしき親父はスルー。
 私の宝箱が……と呟いてるのは気のせい気のせい。

 この建物内に入る=ガライの墓で銀の竪琴を取りに行く、なんだけど今の俺は無理。
 棍棒と皮の服装備の俺に過度な期待はしないように。

 ともあれ、目的の一つは果たした。
 残る目的はある剣士の捜索。

「……って簡単に見つかったよ」
 武器屋の隣に、目的の剣士はいた。
 にしても、何と声をかけたらいいのか。
 すいません、ちょっとお時間よろしいですか。……これじゃキャッチだな。
 こんにちは! 竜王を斃しに行く途中なんですけど、どうやって斃せばいいのか教えてくださいm(_ _)m
 ……どこの厨だ。
 調べたけどわかりませんでした。

366 :特攻の俺 ◆yeTK1cdmjo :2007/05/27(日) 01:27:05 ID:/bh2DbrV0
「俺に何か用か?」
「うぉう! 脅かすな!!」
 どう声をかけるべきか俺が迷っていたら剣士から声をかけてくれました。

501KB
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