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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です

・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 04:28:44 ID:munzKK4fO
タカハシ乙!!
かなり気になる〜!!!!!

332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:19:33 ID:5UKGsZCq0
現実を見ろ。
世の中甘いもんじゃないぞ。

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:20:51 ID:5UKGsZCq0
お前達はあまりに情けなさすぎるぞ。
もっと立派になれ。
しっかり働け。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 20:29:33 ID:K/zIOl520
タカハシ氏乙でした。
八つのうちの三つ目の世界って…
来年出来そうな九つ目は?なんてね

335 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/17(日) 00:04:23 ID:47kasxap0
>>331,334
ありがとう

そういえば時間の流れで言うと、DQ3は三つ目じゃなかったですね。
ここは「繋がったそれぞれの世界は、必ず時間の流れにしたがうものではない」という理解でお願いします…
DQ9についてはノーコメントw

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 08:19:06 ID:xCpzfoGHO
保守

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 19:38:06 ID:9cJqbe+C0
ぷひゃ

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 20:38:39 ID:snFetdnD0
保守

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 22:19:01 ID:OzBEvtFYO
一日に3回も保守いるのか?w

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 19:04:59 ID:klFuJYKJ0


341 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/20(水) 20:33:01 ID:VXvSkvCeO


342 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:18:50 ID:9GmpBdCv0
>>281
感謝です
頑張ります

>>282
ありがとうございます
あんまり暗くなりすぎないようにはしたいですね。
スライム悩んだんですよ、何言わせるか
結局ゲーム通りに・・・w

>>283
感謝です
なにげにゲーム中も気になってましたw
ゲームまんまで詰まらないんじゃないかと思ってましたが
そう言っていただけると嬉しいです

>>284
ゲーム中の親方は相当酷い大人でしたけどね・・・
まんまじゃあんまりなのでアレンジをw
脇役も人間、キャラクターとしてもっと活かしたいです
精進します

>>288
ありがとうございます
やっぱりそれだけ、心に残るシーンなんですよね
上手く描けるか今から少し不安です
ご期待に沿えるよう頑張ります

343 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:20:13 ID:9GmpBdCv0
ぎゃ
sage忘れましたごめんなさ・・・!

>>暇潰しさん
武器の扱いに感動しました
こういう作品を読むと尚更
自分のはアイテムをいかせてない気がしますね
勉強になります
そしてエルフの今後に期待大!

>>タカハシさん
まとめ乙です
続きが気になる終わり方でむずむずしてますw
待ってますよー!

>>279続きです

344 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:21:53 ID:9GmpBdCv0

目を覚ますとその日は昨日までと様子が違っていた。
階下では複数の人間の話し声が聞こえる。
ストーリーが動き出していることを感じて、俺は体を起こした。

『やっと目を覚ましたのね』
小さな笑い声がして目線を落とす。
くすくすとブロンドを揺らしながらベッドの傍らに肘をついて
ビアンカが俺の顔を覗き込んでいた。
『サンってば、結構お寝坊なのね』

おはよう、と咄嗟に口に出すと
けらけらと笑いながらビアンカも挨拶を返してくる。
『パパのお薬が出来上がったの。残念だけど今日でさよならだわ。
ママとご挨拶に来たのよ。あたしの家にも遊びに来てちょうだいね』
寂しさを誤魔化すためか早口に少女が言う。

大丈夫まだお別れじゃないよ、と
俺はビアンカに慰めを思った。
声には出さなかったけれど。

身支度を整えてビアンカと共に階下に下りると、パパスが顔を上げた。
『サン、やっと起きたのか。
おかみとビアンカは今日帰ってしまうそうだ』
声に対して、目一杯寂しそうな表情を作ってみせる。
おかみはその表情を微笑ましげに眺めている。

345 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:23:14 ID:9GmpBdCv0

にっ、と髭の奥の口角を上げて、パパスは言った。
『女二人では危険だからな。
父さんはアルカパまで二人を送っていこうと思うんだが、
どうだ?お前も来るか?』

俺が頷くよりも先に、ビアンカが
『本当に?』と嬉しそうな声をあげた。
俺も顔を上げて「いいの?」と子供らしく尋ねる。

満足げに目を細めるとパパスは
『そうと決まれば早速出かけることにしよう。
サン、すぐに準備をして来なさい』
言いながら自分の荷物袋を抱え上げる。
俺は自分の装備を簡単に確認すると「大丈夫」と頷いた。

アルカパまでの道程は驚くほど順調だった。
殆どモンスターと遭遇することもなく
日が天頂を通り過ぎる頃には
町の入り口で警備兵と挨拶を交わすことが出来た。
ごくろうさん、とパパスが声を掛けると兵士は
どうぞ、と道を開けパパスの横顔に敬礼した。

346 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:24:25 ID:9GmpBdCv0

アルカパの町は、サンタローズに比べて広々と賑やかだった。
入り口すぐには商店が並び、そこかしこから
買い物をする主婦の声や、
笑いあう子供達の声が聞こえてくる。

きょろきょろと辺りを見回していると
ビアンカが『賑やかでしょう?』と楽しそうに言った。

その町を一望する通りの真ん中
一際大きな建物を構えて佇んでいるのが
ビアンカの住む宿屋だった。

サンタローズにはない大きな建物にしばし見とれてみる。
大きな正面扉をくぐると
広々としたロビーには隅々まで手入れが行き届いており
趣向をあわせた品の良い装飾品が設えてあった。
天井には嫌味でない程度に豪華な
小ぶりのシャンデリアが柔らかな輝きを放っている。

フロントの右手には小さな扉があり
おかみは脇目も振らずに扉の奥へと消えていった。
後を追うビアンカに従ってパパスと俺もその扉をくぐる。

347 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:25:44 ID:9GmpBdCv0

同時に『おかみさん!』という若い声が耳に届いた。
『お帰りなさい、遅かったですね。薬は手に入ったんでしょう?』
きっちりとした制服を着込んだ従業員らしき若い男が
頷くおかみに向かって笑顔を見せた。

『これでこの人も良くなると思うよ。
まったく世話が焼けるったら。手伝ってくれる?』
『はい!だんなさん、お薬ですよ。早く元気になってくださいよ』

応えるように間仕切りの奥のベッドの上で、
青白い顔をした年配の大男がのそりと身を起こした。
弱々しく微笑んだその男がダンカンだろう。
パパスも近付いて『大丈夫か?』と声を掛ける。

医療の知識が皆無な俺にもその様子が
あまり穏やかでないことが見て取れた。

手持ち無沙汰に歩き回っていたビアンカに
おかみが気付き、俺の顔を見る。

『サンちゃん、良かったらビアンカと遊んでらっしゃいよ』
『久し振りだろうから、散歩でもして来たらいい。ただし外には出るなよ』
パパスも振り向いてそう言う。俺は素直に従うことにした。

348 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:27:13 ID:9GmpBdCv0

ビアンカと連れ立ってロビーへ出ると
正面扉へ向かおうとした俺をビアンカが引きとめた。
『おもしろいお話を聞かせてあげる』
と、悪戯っぽく笑みを含んだ瞳で俺の手を引く。

さっきの寝室の向かい側に、
こちらはそれより少しだけ豪華に彩られたもうひとつの扉があった。
その扉を開くと、手入れされた植物に囲まれた小さな中庭。
蔦の絡んだベンチのひとつに、艶やかなローブを身に纏った
女と見紛う程の美しい顔をした男がゆったりと腰掛けている。

『今日もやっぱりここに居たのね』
ビアンカが話しかけると
病的なまでに白い顔を上げて男が微笑んだ。
『ここが好きなんだ。落ち着くじゃない』
『ねえ、あのお話を聞かせてくれない?』
俺のほうをちらりと見ながら、ビアンカが言う。

男は、おもむろに俺の方に向き直るともう一度にこりと微笑む。
その真っ白な頬に僅かに赤みが差した。

『そうか、ぼうやにはまだ話したことがなかったかな』
ビアンカが笑いを堪えるように口元に手をやる。
男は、ひとつ咳払いをすると
大げさに身を乗り出して俺の目を見据えて、口を開いた。

349 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:28:55 ID:9GmpBdCv0

『この町の少し北に、大きなお城があるのは知ってる?』
俺は知らない振りで首を横に振る。

『レヌール城と言うんだ。
昔、そのお城には逞しい王と、それは美しい王妃が住んでいた。
とても仲の良い夫婦だった。
だけど何故か二人には子供が出来ず、
いつしかその王家も途絶えてしまったんだ』

俺は小さく頷く。男の穏やかな顔が少しだけ真剣になる。
『ところが、ね。今となっては
誰も住んでいないはずのそのレヌール城から、
夜な夜なすすり泣くような、
物悲しい声が聞こえてくると言う・・・』

ぶる、と肩を震わせて、男は体を戻した。
『どうだい、恐ろしいだろう?』
くすくすと、堪えきれない笑いを漏らすビアンカの横で
俺は深刻な顔を作って頷いて見せた。男もそれに応えて頷くと、
『レヌール城には決して近付いてはいけないよ』
と言ってまたベンチに背中を預けた。

ロビーに戻り扉を閉めると
ビアンカがけらけらと笑い声を上げた。

『サンってば、真っ青になっちゃって。怖かったんでしょ』
否定も肯定もしないまま俺は正面扉へ向かった。
無言を肯定の意味に取ったらしく、
ビアンカは嬉しそうにまた笑って俺の横に立った。

350 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:31:26 ID:9GmpBdCv0
本日ここまでです
ありがとうございます

多少は書き溜めてあるんですが
投下する時間がないのが問題ですね
それではまた

351 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:21:30 ID:2836uusG0
>>350
お疲れ様です

ここまでまとめました
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

352 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:39:52 ID:2836uusG0
>>350
テキストの件ですが、避難所へ返事を書いておきました。

353 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/22(金) 07:36:50 ID:gpiH9PQX0
>>350
乙!ついにアルカパか。そういやサンタローズと比べりゃ随分都会だなw
しかし、真相のわかってる怪談とか笑っちゃうなw

354 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/22(金) 23:26:26 ID:X25R5Pia0
おまえらわろすぼーよみ

355 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/24(日) 07:38:32 ID:4ug+curvO
クリスマスイヴ保守!

356 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/24(日) 16:43:55 ID:art2UaxS0
俺に言わせればおまえらはあまりに情けなさすぎる。

357 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/24(日) 21:13:55 ID:JHjW37RwO
>>353
5やったことない俺からするとwktkなんだが

358 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:35:41 ID:ecXWBrFP0
皆さんお疲れです&メリクリー♪

さて聖夜にも関わらず1人で寂しく書いていた暇潰しです…
先日ドラクエ3の設定の話になったので、
今回は自分の作品について少し語ってから投下したいと思います。

ではタイトルの話でもしましょうか。
タイトルは全て聖書の中から取ってきています。

一番初めのAnnuciationというのは受胎告知と訳し、
マリアがキリストを授かる事を天使から告げられるという場面を指します。
物語の中ではルビスが真理奈にドラクエ世界を救って欲しいと告げるところにかかっています。

Four Nightsはそのまま4人の騎士の事を指すのですが、
ブルーの分が足りないので『+1』となっているわけです。
ここは正直タイトルいらなかったかなぁ…

Forbidden Fruitsは禁断の実をイヴが食べてしまうという有名なヤツですね。
ここではピラミッドから持ち出してはならない黄金の爪の事を指している訳です。

Tower of Babelは巨大なバベルの塔を建てて神に近付こうとした人間達を戒める為に
神が人間達の言葉をバラバラにして、二度と大規模な共同作業が出来ないようにしたのです。
つまり言葉がそれぞれ違うから、この世界はまとまりがないんだという話。
ドラクエ世界では言葉は全世界共通なのにもかかわらず、何で戦争を起こしてしまうんだ
という意味を込めましたが、ちょっと無理やりかもしれませんね。

そして今はJacob's Dreamですが、これは簡単に夢見るルビーとかけているだけです。

こうして見ると分かるように大抵は安直に付けられているのが分かるでしょうw
では>>308からの続きをどうぞ

359 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:38:39 ID:ecXWBrFP0
  「へぇ〜モンスターの大群だなんて怖い……
   それで? その後どうしたの?」
  「真理奈がグリズリーに鉄の爪で止めを刺したの」
  「すげー! オレも武道家になろっかなぁ〜」

森の中の小さな広場。
その中央に位置する岩の上で3人の子供が話をしていた。
3人は肩を互いに合わせて、背中で三角形を作るようにして座っている。
その為それぞれに方々を向き、顔を見て話す事が出来ない。
けれどそれ故に絶えず会話をし、相手の事を感じようと努めているようにも見える。

  「フィリアは? どんな呪文が使えるの?」
  「ホイミとかバギとか」
  「いいなぁ〜オレにも教えてくれよ」
  「さっきは武道家になりたいって言ってたじゃない」
  「呪文も使える武道家になりたいんだよ……
   フォルテはいちいちうるさいなぁ……」
  「ソールが子供なだけよ」

フォルテと呼ばれた少女はエルフという種族の者だった。
エルフという言葉に付いてまわる人間の中でのイメージでは大抵、
大人しいだとか、怒る事がないだとか、
まして何かを憎んだりはしないなどという、まさに聖女のように言われてしまう。
少なくともフィリアが本から得た知識ではそのようなものだった。

しかし実際に目の当たりにしてみると、いかにそれが想像であるかが分かった。
それは同時に人間とエルフとの接触が皆無に近い事をも意味しているだろう。
その点フォルテはエルフという枠組を外してしまえば人間の女の子と変わらなかった。
ちなみに本名はフォルティスというらしいが、普段はフォルテで通しているらしい。

360 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:41:48 ID:ecXWBrFP0
  「砂の街かぁ……その土地にはエルフがいないのね」
  「……どうして分かるの?」
  「だって自然の手助けをするのがエルフの役目なんだもの」
  「フォルテもしてるのか? 自然の助け」
  「うん。だってエルフだもん」
  「凄いなぁ〜オレもやってみたいかも」
  「もう! ソールったら」

フォルテが口に手を当て、肩を揺らして笑う。
その様子が背中を通じて他の2人に伝わった。
笑われたソールはからかわれた事が分かったのか、つまらなさそうな顔をする。

ソールはノアニールに住む少年で、フィリアを助けたのをきっかけに仲良くなった。
大人のような言い方を時折するが、どうしても背伸びをしているようにしか見えない。
しかしそれは自分が子供である事を十分に知っているが故の行動とも言えるだろう。
成長を待ち望んでいる、そんな思いが垣間見れる男の子だった。
それがフィリアの2人に対する人物評価だった。

  「結婚? 結婚って何?」
  「それはあれだろ? ずっと一緒にいるって事だろ?」
  「男と女が協力して新しい家庭を築く事」
  「へぇ〜素敵ね。じゃあ結婚式は??」
  「それはあれだろ? お披露目だよ、お披露目」
  「ルビス様や親しい人達に結婚を誓う事」
  「へぇ〜国同士で開かれる結婚式なんてどれだけ豪華なんだろう!」
  「それで? その後どこ行ったんだ」
  「まだ早いよーもっと詳しく聞かないと!」

そして2人共フィリアよりも数年幼かったが、フィリアよりよく喋った。
フィリアが世界を旅している事を知った2人は、どんな街があるのか、
そしてフィリアがどのような体験をしたのかを盛んに聞きたがった。

361 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:47:19 ID:ecXWBrFP0
2人が関心して聞くので、フィリアも話す事を内心は楽しんでいるようだ。
ソールとフォルテの会話の途切れを探しては話題を提供していった。

  「なるほどね〜1人でぶらついてた時は何してるんだと思ったけど」
  「でもフィリアねぇがここに寄ってくれたおかげで色んな話が聞けて良かった」
  「私もエルフに会えて嬉しい」
  「……ねぇ、結婚するには何が必要なの?」
  「何だよ、突然」
  「ソールには聞いてないよ。どうせ知らないんだから」
  「知ってるさ! 男と女と神父様だろ」
  「……合ってる? フィリアねぇ」

不安そうなフォルテの問いにフィリアは少しだけ考え、
それが最低限必要なものだという結論を出し、大丈夫と答えた。

  「ほら見ろ」
  「……じゃあさ、結婚式しましょ!」
  「は?」

フォルテが2人の方に向き直り、決定だと言わんばかりに告げる。
突然の提案にソールとフィリアもフォルテの顔が見れるように体勢を直した。

  「男オッケー、女オッケー。
   神父様はいないけど、フィリアねぇ僧侶だからそれでいいよね?」

ソールを指し、自分自身を指し、最後は言い含めるようにフィリアの腕を掴む。

  「分かってないなぁフォルテ。結婚っていうのは愛し合う男女がするんだぞ」
  「あら、ソールは私の事好きなんだからいいじゃない」
  「ばっ! いきなり何言ってんだよ!」
  「ほら、何も問題なし」
  「まだ何も言ってなーい!!」

362 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:53:20 ID:ecXWBrFP0
赤くなりながら弁解するソールをよそに、フォルテは決意を固めてしまったようだ。
嬉しそうな笑顔をして、立ち上がる

  「はい決まり! さっそくママに報告しなきゃ! 行こっ!」

そう言いながらフォルテは2人の腕を引き、岩を降りるように促した。

  「おい! 引っ張るなって!!」

3人は風のようにして森の中へと消えていった。

  「へぇ…スゴ。木がそのまま家になってる……」

ほぉ…とフィリアの口からもため息が漏れる。
フォルテに連れられて森の中を進んで行くにつれて雰囲気が変わっていった。
初めは近寄りたくない気持ちが足をすくめたが、
少し我慢していると何とも清々しい空気に全身が包まれた。

  「ようこそ、私達の里へ」

フォルテが駆け足の状態のまま振り返り、
両手を広げてソールとフィリアに歓迎の意を示した。

  「ここがフォルテの……」
  「おじゃまします」

ソールは感動のままに、そしてフィリアは律儀に挨拶をして里へと入る。
その姿を見た数人のエルフが怯えるように姿を隠そうとした。
フォルテはその様子を少し悲しそうにして見ていたが、
2人にはそれを悟られないようにと、笑顔を絶やさなかった。

  「エルフに会った時も感動したけど……これも言葉に出来ないものがあるな」

363 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 01:58:29 ID:ecXWBrFP0
  「綺麗なところ……」

ソールとフィリアは人間の世界とは違う何かを感じて、
何をしに来たのかを忘れる程に目の前の風景に見入っていた。
一本の木だけを見ても、それが瑞々しいのが感じられるのだ。
空気は澄み切っているという表現が最も相応しい。

  「こっちよ」

2人の手を引き、ずんずんと進んでいくフォルテ。
と、その歩みが突然止まり、2人はフォルテにぶつかりそうになる。

  「どうしたんだ?」

ソールがフォルテの目線の向こうに目をやる。
小さな階段の先、1人の女性が冷たい目でこちらを見ていた。

――♪――

  「ここまできてあなたは何を言っているのですか?」

静かに、けれどキツイ声がその場を支配する。

  「私はソールと結婚すると申し上げたのです」
  「そうではありません。そこまで説明しなくてはならないのですか?」
  「もちろんその上で、認めていただきたいのです」

エルフの里。
森に囲まれ、自然と共に暮らしているエルフが住んでいる。
妖精と言えば手のひらサイズのものを思い浮かべるかもしれないが、
この世界でのエルフは人間と大して身長は変わらない。

364 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 02:02:11 ID:ecXWBrFP0
しかしその他のイメージ――例えば美しさなどと言った――は、
個々人の差があるとは言え、概ね当たっていると言えるだろう。
しかし、この世界にそれを確かめる事が出来る人間がどれだけいるのか
という問題はまた別に存在している訳だが。
そして、その女王の間。
と言っても、その権威を象徴するようなものは自身が座る椅子だけだ。
そもそもここではそれを象徴するなどという事はほとんど意味を成さない。
エルフ自身に尽くす事よりも、世界に尽くすという事が求められるからだ。

  「そんな事をしても、何も生み出しはしませんよ」
  「どうしてそんな事が言えるのですか?!」
  「この世界がその歴史を知っているからです」

そしてこの里に人間が訪れるなどという事は、非常に珍しい出来事である。
それはエルフの里が通常の手段では近寄り難いように隔離されているからで、
この里に生まれて死んでいったエルフの大半が人間という存在を知らないままであった。
そんな慣例の場所にあるこの里で、フォルテが唐突に決めた結婚を女王が許すはずもなく、
不毛な言い合いが続いていた。

  「アンねぇにもそう言ったの?!
   アンねぇがルビーを持って行ったから?!」
  「あの子の事は今は関係ありません」
  「じゃあどうして!!」
  「あなたが知る必要のないものです」

最初は丁寧な言い方をしていたフォルテだったが、今は大声で叫んでしまっている。
それは結婚が認められない事への憤りもあるが、
女王の心を変えなれない自分の無力さを嘆いているようでもあった。

  「私知ってるんだからっ!
   ママがルビーを使ってる事!
   どうしていつも過去ばかり見るの?!

365 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 02:06:18 ID:ecXWBrFP0
   私とソールは仲良く出来てるじゃない!
   これから結婚だってするんだからっ!!」
  「それはあなたが何も知らないからです。
   もう好きとか嫌いとか、そういう次元ではないのです」
   フォルティス……どうして分かってくれないのですか」
  「そんなの知らない! だって何も言ってくれないじゃない!」
  「そうではないのです。
   それは私が知っていればそれでいいのです。
   私は……
   私はエルフが――」
  「言い訳なんかどうでもいい!
   エルフの過去も私には関係ない!
   大事なのはいつもこれからだよ!!」

フォルテは前かがみになるほど大声で叫ぶ。
そして女王に向かって体当たりし、夢見るルビーを奪い去って走っていった。

  「フォルテ!」

ソールがフォルテを追いかけ、外へ飛び出す。

  「……どうしてエルフと人間は仲良くできないの?」
  「それが、エルフと人間という種族なのです」
  「……」
  「キャー!!!」

女の子の悲鳴が聞こえてくる。
それに続いて数人が騒いでいるのが分かった。

  「フィリア、と言いましたね?」

とっさに入り口に向かおうとしたフィリアを女王が呼び止める形になる。

366 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 02:10:26 ID:ecXWBrFP0
女王へと向き直るフィリア。

  「もう少しこちらに寄りなさい」

こんな時に何を言っているのかと思うが、
そうしなくてはならないと思わせる力をフィリアは感じた。

  「……」
  「……」
  「あなた、ご両親は?」
  「今はいない」
  「フィリアねぇ! フォルテが連れてかれたっ!!」

必死になって叫びながらソールが女王の間に駆け込んで来る。
ソールに振り返らずに、コクリとフィリアはうなずく。

  「ごらんなさい。これで分かるでしょう?
   いつもいつも…人間達は我々の事など考えてはいないのです」
  「自分の娘がさらわれてるのに何言ってんだ!!」
  「さらったのはあなたと同じ人間なのですよ?」
  「くっ……」

会話に割って入ったソールは、フィリアの所まで走りその袖を掴むが、
どうしたらいいのか分からないといった感じでおろおろとする。

  「…フィリア。
   あなたにこの私の……
   私達の気持ちが分かりますか」
  「分からない」
  「……分からないという事が示しているのです。
   人間とエルフ、所詮は相容れない存在なのだと言う事を」
  「……」

367 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 02:16:05 ID:ecXWBrFP0
  「人間はエルフの事を理解しようとしない。
   エルフは人間の事を理解できない。
   そこに個人の感情などはやはり関係ないのです」
  「……」
  「それを知っているのはもう私だけでいい。
   エルフである事の悲しみをわざわざ体験しようとする事はないでしょう。
   だから人間と一線を画すように言いつけてあるんです」
  「……」
  「それが、エルフにとっての幸せなのです」

そう言った女王の目は、誰が見ても寂しそうであった。
隠そうとしても隠し切れない、そんな思いが無意識に現れてしまっていた。
今にも泣いてしまいそうな、綺麗な緑色をした瞳……

  「でも」

その瞳をじっと見つめたまま、フィリアは自分の思いを素直な言葉にする。

  「でも、だから、知りたいと思ったの」

その言葉に女王は目を閉じた。
フィリアはソールの手を握り、行こうと促す。
ソールは不安を打ち消すかのようにギュッと力を込めた。

  「どっち?」
  「連れてった男と一緒にいた男が『西の洞窟にフィリアと一緒に来い』って」
  「……そう」
  「待ちなさい」

2人が同時に振り返ると、女王が音もなく歩いてくるのが見えた。

  「私も行きます」

368 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/25(月) 02:24:52 ID:ecXWBrFP0
今日はここまで〜

>> ◆u9VgpDS6fgさん
ありがとうございます〜
5では重要なアイテムはこれから出てくる訳ですからまだ大丈夫ですよぅ
パパスの剣とかねw

>>タカハシさん
物語の核心、期待しております!
「ようやく語る事ができるんだ」という思いが文章に出てるようなw

369 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/25(月) 04:47:19 ID:IpLSBghY0
>>368
おつかれさまです。
気持ち見破られてるw
この部分に辿り着くまで長かったー
ここからまた説明書みたいな文いっぱいで長いんですけどね…
面白さはないんですが発端みたいな箇所なので、がんばって書きます。

ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/

370 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/25(月) 22:37:33 ID:SCTQvuoKO
このスレ見ながら寝たら…朝起きたらターニアになっていた、という夢を見た。

ジュディ、ランド、子供テリーとパーティー組んでいざダークドレアムってところで起きた。

まぁそんだけ…

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/26(火) 03:47:36 ID:tkZiGj6X0
>>370
楽しそうw

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/26(火) 14:54:07 ID:6YVx2Xp5O
>>370
でもダークドレアムってのがな・・・。

ターニアがいくらレベル上げても勝てなさそう。

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/26(火) 16:35:59 ID:tkZiGj6X0
落ちた?

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/28(木) 17:45:10 ID:ugv/AGRm0


375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/29(金) 09:20:38 ID:VsbhlIRwO
しゅ?

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/29(金) 15:38:18 ID:yRY1kHzA0


377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/29(金) 18:29:24 ID:zsPeCgfK0
しばらくは皆、忙しいだろーねぇ。
気長に待ってます。
皆様 寒いので、カゼに気をつけてねー。

378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/30(土) 20:27:41 ID:br5s//3K0
年末保守

379 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/31(日) 00:21:15 ID:Ol2fVNKu0
今年も本当にあとわずか。
物語のほうはあまり進ませることができませんでしたが、来年もよろしくお願いします。
それでは、よいお年を…

380 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/31(日) 23:33:27 ID:wj5u+L3x0
それでは僕もご挨拶を…
今年から投下を始め、試行錯誤の9ヶ月が過ぎました。
最初の方で真理奈の成長を見て欲しいとか言った気がしますが、
今思うと成長したのは自分の方ばかりで、
真理奈はずっと真理奈のままであり続けているだけなんですよね。
とは言え、まだまだ課題は多い訳ですがw
一つずつレベルアップしていければなぁと思います。

このスレの住民・職人さん達、そして真理奈達に感謝しつつ、
また来年も書き続けていこうと思います。
それではまた〜♪

381 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/01(月) 15:56:29 ID:dGq+IYC10
あけおめ保守

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/01(月) 22:48:52 ID:QItf06f10
注意:このスレは荒らし依頼を出されました。ご注意ください。

板 名:無職・だめ板
スレ名:荒らし請け負います http://human6.2ch.net/test/read.cgi/dame/1167300863/l50

該当レス:http://human6.2ch.net/test/read.cgi/dame/1167300863/23

23 :名無しさん@毎日が日曜日 :2007/01/01(月) 22:32:59 ID:BxcyGpkZ
面白そうなので↓のを
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/


383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/02(火) 10:40:03 ID:/JOQocAV0
荒し、イクナイ(・ω・)

384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/02(火) 20:17:22 ID:QMZcPFFEO
>>382
つバシルーラ

今年もイイ(・∀・)!!作品をお願いします。

385 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/03(水) 15:11:16 ID:zfzhE3wXO
初保守!

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/03(水) 19:06:15 ID:Gr4ohUPh0
あいつら全然役に立たないな。

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/04(木) 15:58:57 ID:C+jJUpm90
ほとんど書き込むことはないけど
ねっとりじっくりやらしい目でROMってるので
職人さん方、今年もがんばってください。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/04(木) 23:40:47 ID:g1MOqQOv0
>>387
なんて目なんだ

389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 16:40:02 ID:vs5L38q+O
保守

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 23:45:36 ID:GEoDg2ck0
ネタは有るけど文才が無い

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 00:25:06 ID:o0vWDjBN0
文才が無くても小説の形式守って書いてみればいいんでないか

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 19:24:42 ID:Q96TMrpo0
>>388
死んだ魚のような目

393 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/07(日) 23:17:36 ID:XTrY0ywj0
>>390
文才は神が与えるものじゃない。磨くものだ。
って誰かが言ってたよ

394 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/09(火) 08:49:31 ID:2s5gRYaA0
あけましておめでとうございます。
今年もゆっくり進んでいくので、よろしくお願いします。
ちょろっと忙しいので、投稿はまた次回。

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 10:00:27 ID:kusHn7+9O
>>394タカハシ!今年もよろしこ!

396 : ◆5uZ1x6RaQw :2007/01/09(火) 12:01:09 ID:8xtnEnwM0
おひさしぶりです
年末年始、ご挨拶に来れなくて申し訳在りません
昨年は純粋な読み手としてとても楽しい時間をいただき
更に書き手としても参加させていただいて
自分の新しい世界を開けた気がします
まだまだ未熟ですが今年も温かく見守っていただければと思います
皆様の良い一年をお祈りしています

>>タカハシさん
まとめいつも乙です
テキストの方、ありがとうございます

>>353
感謝です。やっとアルカパです
ストーリーがわかってても楽しめるものを書きたいですねー

>>暇潰しさん
エルフせつなす・・
自分も盛り上げられるよう頑張ります

では>>349続きです

397 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:04:06 ID:8xtnEnwM0
↑トリップ打ち間違えました・・
失礼しました、◆u9VgpDS6fgです
今度は間違ってないはず

398 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:05:50 ID:8xtnEnwM0

表へ出ると、まだ高い太陽は
相変わらず眩しく世界を照らしていた。
一息ついて樽の探索を始めようと思ったところに
ビアンカが『案内してあげるわ』と俺の手を引く。

外の探索さえ、この町ではやりにくいのか。
本当に厄介だ。

ぶらぶらと道を行き
あそこが教会、あそこがお店、と
その度にビアンカが指をさし示して俺に教えてくれる。

道行く女性に挨拶をしながら「あっちは?」と俺が町外れの建物を指差すと、
『あそこは子供が入っちゃいけないお店』とビアンカに袖を引かれた。

町の中央には広場があり
ビアンカや俺と同じくらいの年恰好の子供達が駆け回っていた。
なんの事はないその風景に、ビアンカがぴたりと足を止める。

『あれって、何してるのかしら』
ビアンカに並んで目をやると、子供が二人
小さな生き物を追い回しては歓声を上げていた。
追いやってはその前に立ちはだかり
摘み上げては地面に投げ出す。

399 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:07:00 ID:8xtnEnwM0

不意にビアンカが駆け出した。
『あんたたち、何やってるのよ!』
突然のビアンカの怒鳴り声に、二人の少年が足を止める。

乱暴に手に掴んでいた生き物が地面に転がり
体を震わせながらぐるる、と奇妙な唸り声を上げた。
頭に鮮やかな色の鬣を蓄えた小さな猫・・・
と言うよりは虎のように見える。

『なんだよ。またお前かよ』
背の低い方の少年が面倒くさそうに答える。
背の高い方がビアンカの顔を不服そうに睨んだ。

『やめなさいよ、かわいそうじゃない!』
怒りを含んだ声でビアンカが怒鳴る。
少年達が顔を見合わせて首を竦める。
母親と子供みたいだな、と俺は眺めながら思った。

『こいつ面白いんだぜ。変な声で鳴くんだ。
お前もやってみりゃいいじゃん』
背の低い方がまた言った。
高い方は猫だか虎だかとビアンカを
忙しなく見比べながら所在なさげに唇を尖らせる。

『だからってかわいそうじゃない。その子をあたしに渡しなさい』
少し落ち着いた様子で話すビアンカに
少年達はあからさまに嫌そうな表情を作り
『どうする?』とお互い目配せをした。

400 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:09:13 ID:8xtnEnwM0

小さいほうがまた口を開く。
『まあ、虐めるのも飽きてきたし、別にやってもいいけどさ。
タダでやるのはなんか癪だからな』
『レヌール城は?』とそこで初めて、背の高い方が声を出した。
ああ、と言うように小さいほうが頷き、
『そうだな。レヌール城のお化けをやっつけたら、やってもいいぜ。交換条件だ』
とにやりと言った。背の高い方があわせるように笑う。

『バカじゃないの?そんなのこっちがいいって言うと思ってるの?』
ビアンカは威嚇するようにまた声を荒げたけれど
少年達はにやにやと笑顔を崩さないままで
『それならこいつは渡せないな。諦めろよ』と言った。

苛立たしげにビアンカは息を吐きながら
『わかったわよ!お化けを退治したらその子を渡すんだからね!約束よ!』
半ば吐き捨てるように言い、踵を返した。

広場を出るビアンカを追うと、怒りに満ちたその背中から
『ほんっと子供なんだから!』と呟く声が聞こえる。

『・・・ねえ、サン』
歩きながら呼びかけられ、俺は歩幅を広げてビアンカの隣に追いついた。
苛立ちと不安の織り交ざった表情でビアンカが足を止めずにこちらを見る。

『猫ちゃんを助けたいの。とっても勝手だって思うけど、
サンもお化け退治を手伝ってちょうだい。だめかな?』
申し訳なさそうに、けれど確固とした意思を宿して見つめる瞳に、
気圧される形で俺は頷いた。
ほっとしたようにビアンカの表情に笑顔が戻った。

401 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:10:24 ID:8xtnEnwM0

複雑な面持ちのままのビアンカを促して宿に戻ると
パパスが帰り支度を始めるところだった。
待たせてすまないな、とパパスが俺に言う。

『ダンカンの容態も薬で落ち着いたようだ。そろそろ帰るとしよう』
椅子につこうとしたビアンカが一瞬、不安げな表情になった。
俺に向けられたその表情がお化け退治は?と訴える。
流れを知っている俺としては嫌にもどかしい一瞬が流れて
助け舟のようにおかみが口を開いた。

『あらやだ、パパス。今夜は泊まっておいきよ』
額から下ろしたばかりの白い布巾を片手に持ったまま
おかみはパパスの元へ歩み寄った。

もう片方の手で手際よく帳簿の確認をする。
従業員の男がおかみから布巾を受け取り、ダンカンのもとへ戻る。

『しかしサンチョを待たせているしな』
パパスは意外そうに、少し渋るように視線を空中に迷わせた。
『一晩くらい大丈夫でしょう。今から戻ったら日も暮れて危険だよ。
空き部屋でよければね、世話になった恩返しをさせてちょうだい』
『・・・うむ、そうか?ではお言葉に甘えるとするかな』

少し考えた後、パパスはやっと首を縦に振った。
おかみの顔と同時に、心配そうだったビアンカの表情も明るくなる。
『ああ良かった。すぐに食事の支度をするからね。
ビアンカ、お部屋までご案内してあげて』。

402 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:11:29 ID:8xtnEnwM0

『はーい、ママ。サン、おじさま、こっちよ!』
おかみの持った宿帳を覗き込み、
ビアンカがぱたぱたと駆けるようにして扉を開いた。
促されるまま階段を上がり、三階のどう見ても一番立派であろう部屋に通される。

『こんな部屋を。もう少し安い部屋でもいいんだがな』
気後れするようにパパスが呟くと、ビアンカが
『いいのよ、どうせ今は暇なんだもの』
と笑った。

食事が出来たら呼ぶね、と言い置いてビアンカは階下へ戻っていく。
荷物を下ろしてパパスは
その広い部屋に感心したように頷きながらベッドに腰を下ろした。

『サン、明日は早めに出るぞ。食事を取ったら今夜はすぐに休もう』
こくりと頷くと、パパスは緊張を解くように大きく伸びをしてベッドに横たわった。

宿の食事は華やかで美味かった。
腹を満たして部屋に戻ると、パパスはすぐに横になりいびきを掻き始めた。

俺も柔らかなベッドに横になったが、
すぐには眠りにつくことはできなかった。
ベッドの感触が肌に慣れ、やっとうとうとしてきた所で
俺は小さな声に呼び起こされた。

403 : ◆u9VgpDS6fg :2007/01/09(火) 12:12:37 ID:8xtnEnwM0
本日ここまでです
ありがとうございます

それではまた。

404 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 16:31:49 ID:RipdOf8B0
ビアンカの細かい仕草がカワユス
読んでいてふと結婚イベントが頭をよぎった
主人公がどう決断するにしても、レヌール城は重要なイベントだな
本年も楽しみにROMらせて頂きます。ガンガレ

405 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/09(火) 17:18:12 ID:Q7+FBPGe0
ゲレゲレたんハァハァ

406 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:28:54 ID:uIbEg1+D0
明けましておめでとうございます。
どうぞ今年も真理奈の物語にお付き合いをよろしくお願いします。

さて、前回に引き続き設定の話を少し。
ドラクエ3に元ネタがあるという話がありましたが、
真理奈の物語にも元ネタを少し盛り込んでありますのです。

ロマリアとイシスが舞台の時、フィリーとプエラが結婚しましたが、
あれはクレオパトラがローマのカエサルと結婚した話が元です。
ゲームでは国同士の交流が全然見られないな、という理由で考えた話です。
ちなみにイシスが近親結婚しか認めていないというのは、
エジプトで本当にあった事です。

次のエジンベアと商人の町での出来事ですが、
これはアメリカ独立戦争を元にしています。
まぁそもそもエジンベアは過去にスーの町に行っているようなので、
ことさら言う必要もないかもしれないですけど。
けれど商人の町の方が植民地っぽいかな、と思いました。

そして今回のエルフさん。
彼女らが何故あのような状況になったのか、という事ですが
これもある歴史上の出来事を元ネタにして考えてみました。
けれど今回だけでは全てを語る事は出来なさそうになってしまいました…
おいおいその全貌を明らかにしていこうと思います。
ゲームでは語られていれば、もっと違ったものになったでしょうけどね。

では今回の投下ですが、その前に一つお詫びを……
この下のレスを>>359の前に付け足すという形で読み進めて下さい。
つまり順番としては>>407>>359-367>>408です。
分かりづらくて申し訳ないです…

407 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:34:35 ID:uIbEg1+D0
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
木々の鳴く音がする。
横殴りの風に、私の心も揺れる。
どうして泣いているの?
言葉にならない不安。
悲しみ。
後悔。

  「来ないで」

瞬間、私は否定された。
拒絶。
拒絶…
拒絶……

  「皆と、遊んで、おいでなさい…」

ユラユラと赤が光る。
星のキラキラな瞬きとは違う、優しくないもの。
それが悲劇の色なんだと、その時私は知った。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

408 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:41:52 ID:uIbEg1+D0
薄暗い森の中を駆けていく3人。
世界は既に夕日を迎えており、もう数時間もすると闇に包まれるだろう。
夜に森を進むのはとても危険だ。
等間隔に生えなどしない木々が位置感覚を混乱させていくのに加えて、
視界が利かなくなってしまうとモンスターを視認するのが困難になってしまう。

  「……急ぎますよ」

女王は後続の2人に声をかけ、ピオリムを唱えた。
クンッと体が軽くなり、速度が二倍ほどアップする。

  「うわっ! ……っと!」

危うく木に衝突しそうになったソールを最後尾のフィリアが軌道修正してやる。

  「気をつけて」
  「これが……呪文かぁ……」

初めて体験する呪文に感動し、ソールは目を輝かせながら女王の背中を追っていく。
そしてフィリアも女王に羨望の眼差しを向ける。
時たまバリイドドッグやさまよう鎧がウロウロとしているのに鉢合わせするのだが、
モンスターは全て女王にバシルーラで吹き飛ばされていく。
その半分以上が大きな音を立てて木にぶつかり、気絶してしまう。
運よく上空まで放り出されたとしても雲まで届きそうな勢いで、視界から消える。

  (凄い……)

まさにその一言に尽きた。
おそらくパトリスよりも呪文の力があるだろうとフィリアは推測する。
フィリアやソールも一応の装備はしている。
ソールに与えられたのは、使うとラリホーの効果がある眠りの杖。
フィリアには少々扱いが難しいが、多数の敵を相手にするには適したモーニングスター。

409 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:50:17 ID:uIbEg1+D0
二つとも女王が用意してくれた物だ。
しかしそれらも未だに出番を得る事は出来ないでいた。
女王の独壇場と言っていいだろう。
ここまでレベルが違うならば、むしろ2人は足手まといになってしまうくらいだ。

なのにどうして一緒に行くなどという方法を選んだのだろうか……
現にフィリアとソールの2人と、女王との距離が少しずつ離れてきている。
その足りない素早さをフィリアは2人だけにピオリムを重ねがけして補った。

  「フォルテ…今行くからな……」

黙したまま考え込んでいたフィリアの思考は、ソールの独り言で方向を変える。
すなわち、フォルテは何故連れていかれたのか、という事だ。
エルフが貴重な存在である事は既に知っているが、
誘拐する事の意義がフィリアには分からない。

だいたいエルフの里を簡単に見つける事自体、ほぼ有り得ない事態なのだから。
なぜなら、里に入ろうとした時に感じた違和感。
あれがきっとエルフの里と下界を断絶する効果を持つものなのだろう。
その為にエルフは人間の記憶から忘れられていった、と予想する。
それなのに、フォルテは連れ去られてしまった。

  (後を付けられた……?)

そしてもう一つの気がかりがある。
ソールに"西の洞窟に来い"と告げた男の事。
フィリアの事を知っていて、なおかつ助言するような人物は誰か。
とは言っても、暇そうなジュードしか考えられないのだが……
しかし彼が誘拐犯の側にいる理由が分からない。
けれど、もしそうだとしてもきっと理由はあるはず…

410 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 22:56:24 ID:uIbEg1+D0

  「見えました」

女王のつぶやきに合わせて走るスピードを緩めると、目の前に洞窟が現れた。

  「ここからは今まで以上に危険です。周囲に気をつけるように」

女王はトヘロスを唱え、洞窟内へと進んで行く。

  「行こう。フィリアねぇ」

ソールがフィリアの手を握ってくる。
ソールの手は少しだけ震えている。
最初に会った時の威勢の良さはどこにいってしまったのだろうか。
不安を吹き飛ばしてあげようと、フィリアも手を握り返す。

  「行こ」

結局疑問は解消されなかったが、この洞窟の底にきっとその答えがあるのだろう。
そう。
分からないならば探しに行けばいいのだ。
それが冒険の醍醐味ではないか。
そしてフォルテを無事に助け出したら、今度は船に乗った時の話をしてあげよう。
そう心に思うフィリアだった。

411 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:03:10 ID:uIbEg1+D0
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「もし、また彼女に会えるのなら……」

オレはアイツの事を何とも思っていなかった。
いや、そうじゃないな。
金になるとしか考えてなかった。
今思えば最低な野郎だ。

ただこの村から抜け出したかった。
もっと大きな世界を見たかった。
それだけだった。

けどその為に取った手段は、償わなくてはいけない類のものだった。
どこで魔が差したのかはもう覚えてない。
記憶にあるのは彼女の澄んだ瞳だけ。
男達にどれだけ玩ばれようとも、俺を見る視線に変わりはなかった。

そんな彼女にサヨナラを告げられた時、彼女の心に初めて触れた気がする。
けれど俺はどこまでも愚かだった。
汚れた自分に自身をつける為に、この期に及んでなお彼女を試したのだ。

約束の時より遅れて到着すると、彼女の手には赤い糸。
その宝石に彼女が落とす俺の為に流された涙を見て、ようやく決心した。
もう彼女を離しはしない、と。
この地底湖に誓おう。

俺はそこで初めて彼女にキスをした。

  「もし、また彼女に……アンに会えるのなら……」
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

412 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:11:25 ID:uIbEg1+D0
フィリア達が西の洞窟へとたどり着くより少しばかり前、
湿った土や木の根を踏みつけながら2人の男が走っていた。
人を担いで走るのはこんなに辛いとジュードは知らなかった。
エルフの体重が軽いのがせめてもの救いだが。

  「へへへ、上手くいったな」
  「あぁ…それにしても、手慣れてるな」

ジュードの前を走るのは一時的にジュードの相棒となったアヴァルス。
里に入りエルフを気絶させ、連れ出すまでの彼の手際は鮮やかだった。
決して褒められはしないだろうが。

  「へへ、そうか? オレは元々遺跡専門の盗賊だぜ?」

それでも褒め言葉として受け取ったのだろう。
アヴァルスは、謙遜しつつも嬉しさを隠さない。

  「まぁここ最近は似たような仕事をやってたからな」
  「……人さらいか?」
  「いやぁ、あれは少しばかり危険だよ」
  (やった事があるのか…?)

さも経験があるかのように語るアヴァルスの発言に、嫌悪感を覚える。
都合上ジュードもエルフをさらうことになってしまったが、
当然気持ちの良いものではなく、少々後悔している。
もちろんフィリアの話がなければ違う方法を取っただろう。

そもそもこの怪しい商売を利用してエルフ狩りの連中を捕まえようと考えたのは、
フィリアがエルフと会ったという話があったからであった訳だが。
しかし捕まえるまでは仮の姿とは言え、自身もエルフ狩りを装わなくてはいけない。
それはつまり、ジュードもエルフをさらわなくては怪しまれてしまうという事だ。
いくらなんでも手ぶらでエルフ狩りの依頼主に会う訳にはいかないだろう。

413 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:18:07 ID:uIbEg1+D0
問題はその事に気付いたのがフィリアの後を付けて里に入った時だという点。
行き当たりばったりの行為と言われればそれまでだ。
だいたいエルフを狩ろうとする者が何人いるのかも分からないのだ。
ジュード1人でどうこう出来るレベルの話ではないかもしれない。
何とかフィリアに助けを求めておいたが、どうなる事やら……

  「今はモンスターをさらう仕事をやっている」
  「……?」
  「ある方面ではエライ人気でな。興味あるか?」
  「……」

この後の事を考えていたジュードは一瞬会話についていけない。
そんな事をして金になるのだろうか?
モンスターを食べたりするとか……?
せいぜい、そんな事を考えられたくらいだ。

  「へへへ…やっぱ用心深いんだな。そういうヤツは好きだぜ」

沈黙を勝手に解釈してアヴァルスが話を進める。
そういうお前は間が抜けてるな、とは言わないでおく。
その薄ら笑いから受ける印象は正直あまり良くはない。

  「なぁニイさん。このヤマが終わった後も一緒に仕事しねぇか?」

まだ仕事が終わってもいないのに、次の仕事の話をするアヴァルス。
そこまでジュードの事が気に入ったのだろうか。

  「……どうして俺を?」
  「へへ…目だよ、目」
  「目…?」
  「目は口ほどにモノを言うって言うだろ?
   アンタの目には確固たる決意ってのが宿ってなかった」

414 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:23:21 ID:uIbEg1+D0
  (ケンカ売ってんのか?)

一瞬本気でそう思う。
少なくとも褒め言葉ではない事は確かだ。

  「おっと、怒らないでくれよ? 俺はそれが良いって言ってるんだ。
   人間は迷う。だからいざという時に強くなれる。そうだろ?
   だからオレはそういうヤツとしか組まねぇんだ。
   下手に信念持ってるヤツなんかは逆に危なかったりするんだぜ?
   こんな仕事だと特に、な」

こんな仕事を続ける気は、ジュードにはさらさら無い。
けど、その持論には少しだけ説得力があったような気がした。

  「あぁ、依頼主は別だけどよ?
   金払うヤツに迷われちゃあこっちが困っちまう」
  「はは」

そのギャグには素で笑ってしまった。

  (迷ってる、か…)
  「まぁ考えといてくれや。着いたぜ」

考え込むジュードを横目に、アヴァルスは声をかける。
森の中にひっそりとたたずむように洞窟が口を開けていた。
洞窟の中はさらに気温が下がり、ひやりとした空気が肌を刺す。

  「なぁ、今までどんな所に潜ったんだ?」
  「へへ、そうだな…有名所で言うとガルナの塔に東バハラタの洞窟。
   ピラミッド、シャンパーニってところか。
   今度は西の大陸に渡ろうかと考えてる。
   手付かずの塔があるらしくてな」

415 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:29:35 ID:uIbEg1+D0
自分の功績を話したりするのが好きなようだ。
ペラペラと喋り上げる。
しかし、さすがに経験は豊富なようだ。
アヴァルスは薄暗い通路を迷わずに進んで行く。

  (遺跡専門って……なるほどな)
  「その途中で他の仕事したりしてたんだがな。
   久し振りに洞窟潜ってみたくなってよ、へへ。
   そこでこの話を聞いたって訳だ」

しかし、こんな場所で依頼される話なんて明らかに怪しい。
アヴァルスにはどこか警戒心が薄いようなところがある。
もしくは変わり者だって事だ。
それからは会話もなく、ただ進んでいった。
荷物を持ったままモンスターの相手をするのが厄介だった。
後ろからどーんと体当たりしてくるのは止めてもらいたいものだ、と思う。

二つほど階段を降りると、さっきまでと空気の違う事に気がついた。
ここがおそらく洞窟の最下層なのだろう。
そのフロアの最奥に、これまでとは一転して明るくて広い部屋があった。
ちょっとした泉になっていて、水底から光が溢れている。
こういうのを地底湖というのだろう。
宝箱が一つ、口を開けたまま横倒しに転がっており、
その側で老人が1人背を曲げ、眼前の杖に体重を預けるようにして立っていた。

  「おぉ、早かったですねぇ。それに二つもですか」

挨拶を交わす前から喋り始める。
二つとは、エルフの事だろう。

  「あぁ、思いのほかスムーズに里が見つかったんでな。
   へへへ、こんな楽な仕事は初めてだったよ」

416 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:35:23 ID:uIbEg1+D0
アヴァルスはニヤニヤと笑いながらソイツに近づいていく。

  「はじめまして。私の名はクルエントです」
  「そりゃどうも。アヴァルスだ。こっちはジュード。協力してもらった」
  「そうですか、それはそれは……さぁ、こちらに渡して下さい」

低くしゃがれ気味で、けれど重みのある声色。
フードを深く被っている為に顔を見る事は出来ないが、相当高齢であるのは分かる。
ジュードは彼の声の中に、隠しきれない高揚感を感じ取っていた。

そして同時に後悔していた。
この老人は、危ない。
そう思わせる何かが確実にあった。

  「先に金を見せてもらおうか」
  「一匹十万Gじゃったな」
  「あぁ」

クルエントは荷物の中からGを取り出し、アヴァルスに手渡した。
その金の半分がジュードの分なのだろう。
アヴァルスが腕に抱きかかえているエルフを老人の足元に放り投げる。
エルフは気絶させられている為、起き上がる気配もない。

  「…どうした? アンタの取り分だぜ?」

エルフを渡そうとせず、差し出された金を受け取ろうともしないジュード。
それを不審に思ったアヴァルスとクルエントの視線に少し焦る。

  (リレミトでフィリアと入れ違いになったら困るな…)

フィリアが来れば何とかなるかもしれない。
商人の町で兵士長と戦った時のように。

417 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:41:16 ID:uIbEg1+D0
  「エルフを金で買ってどうするんだ? ペットにでもするつもりか?」

ただの時間稼ぎだ。
取引が終わり、逃げられては元も子もない。
しかし相手の目的を知る事は、彼らを捕まえる理由を作る事にもなるはずだ。

  「私にはそんな趣味はないよ」

声を殺しながら笑うクルエントはフード付きのコートを脱ぎ、素顔を晒した。
深く刻まれた顔の年輪。ツヤのない白髪。どこか達観したような眼。
どうしても老衰というものを感じざるをえない。
老人はコートの中からナイフを取り出し、コートを捨てる。
彼が手にしたのは真っ白な柄に細やかな技巧を凝らしてある、聖なるナイフだ。

  「エルフの価値。そんなはした金などと釣り合うものではないわ!」

声の調子が一気に変わり、視線が鋭くなる。
ナイフの切っ先を足元のエルフの首筋にあて、その美しい皮膚を裂いていく。
傷口から血が噴き出してくるが、そのエルフはビクリとも動かなかった。
そしてクルエントはうなじに垂れていく血を舌で舐め取り始める。

  「お…おい……何してんだよ……」

アヴァルスも二十万Gのはした金を手にしたまま目の前の光景に釘付けになる。
無心に口付けるクルエントの表情は、まさしく愛撫する時のそれだった。
見ていて気持ちのいいものではない。
ピチャピチャと音が鳴る度に、老人に対する恐怖感が強くなる。

  「くくっ…美味いのぉ……世界のどんな料理も勝てはせん」
  「そんな……馬鹿な……」

クルエントが喉をゴクリと鳴らす度に、彼の体に変化が起こる。

418 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:47:44 ID:uIbEg1+D0
顔のシワが薄くなり、肌にみずみずしさが戻ってくる。
白髪に本来の色が戻ってくる。
そして曲がっていた背骨が正され、体格がしっかりとしたものになっていく。

  「若返り…か……?」
  「ふふっ…クククッ……」

堪え切れないといった感じの笑いが、血に濡れた唇から漏れる。
その声はさっきとは違い、確かに若い。

  「私は間違っていなかった……
   これが…これがエルフの正しい使い方よ!!」

老人だった者は立ち上がり、高らかに笑い始める。

  「さぁ、そっちの物も渡せ。そしてエルフの住処を教えるのだ!!」
  (ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…!)

エルフの血を喰らった老人の目線がジュードに突き刺さる。

  「くっ!!」

縛られるような力から逃れるように、クルエントから距離を取るジュード。
抱えているエルフがやけに重たく感じた。

  「フォルテ!!」
  「フォルティス……」

その時、部屋の入り口から悲痛な叫び声が発せられた。
フィリア達がやっと到着したのだ。

  「フォルテっ! 大丈夫か?!」

419 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:52:40 ID:uIbEg1+D0
今にも飛び出しそうなソールをフィリアが止める。

  「ジュード」
  「フィリアか……悪い…」

冷や汗を流すジュードが横目でフィリアに詫びる。

  「最初からお前にも話しとけばよかったな…
   馬鹿な事したぜ……」

首を横に少しだけ振り、謝罪を否定するフィリア。

  「…夕ご飯、ありがとう」
  「あ…?」

ジュードは思い出せない。
お礼を言われるような事をした覚えもない。

  「あの人が悪い人?」
  「お、おう……」

何も責めないフィリアに、ジュードはますます申し訳なくなる。

  「これはこれは……飛んで火に入る夏の虫、というヤツですな」

直立不動で傲慢な態度のクルエントの発言で、ジュードは我に返った。
そんなクルエントに女王が冷たい顔で告げる。

  「……今すぐフォルティスを返して下さい」
  「もう死んでますよ、これは」

その様子を楽しそうに見ながら、彼はつま先で足元に横たわるフォルテを蹴る。

420 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/09(火) 23:57:50 ID:uIbEg1+D0
フォルテの頭が女王達の方へと転がる。
顔は既に真っ白で、血の気がまったく感じられない。
そしてカランッと音がなり、フォルテの懐から宝石が転がり落ちる。

  「これは…?」

クルエントが赤い宝石を拾い上げ、調べ始める。
フォルテが持っていった夢見るルビーだ。

  「エルフさんよ、悪いが逃げよう。アイツはヤバい…
   ここは俺とフィリアで食い止めるから――」
  「私の娘をさらった人間が何を言うのです」
  「そうだそうだ! フォルテと一緒じゃなきゃ帰らないぞ!!」

ソールが武器を握りしめながら叫ぶ。
けれどこれ以上エルフが犠牲になるのは一番あってはならない。

  「あのエルフはもうダメだ!! それにアンタまで捕まったら……」
  「私がエルフを見捨ててどうするのです。仮にも私は女王なのです」

ジュードに聞かせるというよりは、自分自身に言い聞かせるようにつぶやく。

  「俺も手伝うよ! 結婚するって決めたんだ! 死なせてたまるかよ!!」
  「ジュード」

フィリアがジュードの手を引く。
真っ直ぐジュードの目を見るフィリアの瞳は「お願い」と言ってるようだった。

  「ちっ…仕方ねぇな…」

借りがあるフィリアには逆らえず、ジュードは戦うことを決意せざるを得ない。
抱えていたエルフを部屋の入り口に寝かせる。

421 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:03:28 ID:L/7YXVDF0
向こうの手に渡らないように気をつけながら戦わなくてはならない。

  (やっぱ最初からフィリアに話しておくんだったぜ…
   真理奈とパトリスは…まだカザーブか……)

帰って来ていたとしても、ここに現れる事はないだろう。
スーッと鞘から剣を抜くジュード。
クルエントは手にしていた宝石を自分の懐に入れる。

  「ふふ、エルフとはおかしな種族おのぅ。
   たった二匹助ける為だけに王が出てくるとはな。
   サービス精神旺盛な事じゃ」
  「うるせ〜!! その口調、似合ってないぞ!!」

ソールが耐えかねてか、フィリアの制止を振りほどいて突撃してしまう。

  「くそっ!!」

ジュードがそれを追いかける。
場は一瞬にして戦闘状態へとなだれ込んだ。

  「「ピオリム!」」
  「スクルト」
  「ルカナン」

女王とフィリアがそれぞれ呪文を唱え、パーティーを強化する。

  「イテテテッ! 止めろ! 離せよ!!」

勢いよく突撃したソールの攻撃はあっけなくかわされ、
クルエントはソールの首を掴んで、小さい体を持ち上げた。
続けてジュードがソールを傷つけないように斬りかかる。

422 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:07:40 ID:L/7YXVDF0

  「ベギラマ」

炎の壁が自身の前に築かれ、クルエントの姿が見えなくなる。
しかしジュードは走るのを止めない。

  「フィリア!」
  「バギ!」

ジュードの後ろから追走していたフィリアが壁に穴を開ける。
その呪文はちょうど炎をかき消す程の威力で、ソールを傷つける心配はない。
その道にジュードが飛び込み、壁を切り抜ける。
しかしその先にはクルエントの姿はなかった。

  「まだまだじゃ」

死角から現れたクルエントの攻撃を防げず、炎の中に突き飛ばされる。
その攻撃の瞬間をフィリアがモーニングスターで狙う。
動きを止めようと足元に攻撃をしかけるが、武器ごと踏み抜かれてしまった。
クルエントはフィリアの攻撃を見てなどいなかったはずだ。
驚いているフィリアもバシルーラで吹き飛ばされる。

  「おっと女王様。あなたの大切なお仲間がどうなってもいいのですか?」

続けて攻撃を仕掛けようとしていた女王の動きが止まる。
聖なるナイフを首に突きつけられているソールの姿に躊躇したのだ。
ソールは刃に恐れ、ゴクリ唾を飲み込む。
その小さな動きでさえ、皮膚に刃が食い込みそうになる。

  「……人間など……」

口ではそう言いながらも、行動では人間であるソールの身を案じていた。

423 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:13:29 ID:L/7YXVDF0
  「エルフの血というのはやはり若い方が美味しいんですかねぇ?
   それとも寝かした赤ワインのように歳取った方が味わい深いのかな?」

その嘲笑は女王の感情を逆なでするのに十分だ。

  「ふふふ…さぁその体に流れる血を私に!」
  「……!! イオラっ!!」

女王は呪文を唱えると同時に走り出す。

  「むっ……」

爆発を促すその呪文はクルエントに直接放たれたものではなく、
彼の二メートル手前で地面をえぐった。
巻き上げられた粉塵が炎をかき消し、クルエントの目をくらました。

  「ふっ」

その一息で女王はクルエントとの距離を詰める。
ソールを掴む左腕に一閃の真空刃を放ち、ダメージを与えた。
力の緩んだその手からソールを奪うと同時に、バシルーラを腹に叩き込む。

  「ごぉっ!!」

クルエントが肺の空気を吐き出す音を聞きながら、フォルテを探した。
残り火から上がる煙と、舞い上がった粉塵のせいで視界が悪い。

  「女王様…あ、ありがとう。もう大丈夫だよ」

ソールの礼で彼を抱いていた事を思い出し、降ろしてやった。
ソールは少し恥ずかしそうに頬を赤くしていた。
女王もその素直な礼に、言い得ない気恥ずかしさを覚える。

424 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:18:04 ID:L/7YXVDF0
  「くく…エルフが攻撃的なのはイメージに合わないのぅ」

和やかな一場面も、戦闘中では場違いにさえ思えてしまう。
視界が晴れ、その先にクルエントの姿が確認出来た。
クルエントはフォルテの二の腕を掴み、無理矢理立たせている。

  「フォルテー!!」

フォルテの服は自身の血で染まってしまっていて痛々しい。

  「残念だったねぇ」

対してクルエントはダメージなどないかのように、余裕の表情で笑う。

  「へへへ…クルエントさんよぉ」

そこに今まで傍観していたアヴァルスが現れた。

  「…アヴァルス、とか言ったかの?」
  「あぁ。良い仕事したろ?」
  「くくく、そうじゃのぅ」
  「オレをもう一回雇わねぇか? 邪魔者はオレに任せてくれよ」

呪文で回復したジュードとフィリアが女王の横に並ぶのを示しながら、
アヴァルスは契約を持ちかける。
今まで傍観しながら金になるのかどうかを算段していたのだろう。

  「フィリアねぇ、ありがとう。大丈夫だよ」

心配してくれたフィリアにソールが礼を言う。
どうやらケガはないようだ。
代わりにソールは埃まみれになったフィリアの顔を拭いてやる。

425 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:28:35 ID:L/7YXVDF0
フィリアはくすぐったそうに顔をしかめていた。
しかし小さい子に世話を焼かれている様子は、はたから見れば可愛い。

  「あ、ありがとう…」

その横でジュードはボロボロになった自分の姿をしきりに気にしていた。
炎の中に放り込まれたのがよほどこたえたのだろう。
髪の毛が少し焼けてしまっているのが目立つ。

  (これ終わったら髪でも切るかな)

髪をさっとかき上げ、気合を入れなおす。

  「しかし女王様強いんだな…エルフのイメージ、確かに変わったぜ…」
  「そういうアンタは弱すぎ。フィリアねぇは僧侶だからいいけどさ〜」
  「ただ敵につかまるような役よりはいいと思うけどな」
  「アンタは仮にも戦士だろ? 同じ条件ならオレだってやれるぜ」
  「ったく、子供が生意気言うなよ…アイツは強いぜ」
  「どうしよう?」

フィリアが作戦の事を言う。

  「人数では勝ってるんだから、後はコンビネーションだろ」
  「じゃあオレが引き付けて、フィリアねぇは援護。
   アンタは突撃で、女王様が追撃で決まりだね」
  「フィリアよぉ、武器落としたらダメだろ。攻撃できねぇじゃん」
  「うん…ごめん」
  「無視するんじゃねーよ!!」
  「正面からでは駄目ですね。かく乱でいきましょう」
  「よし、オッケー」

レベルの差を見せ付けられてもまだ、士気は下がっていなかった。

426 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:33:17 ID:L/7YXVDF0

  「…悪いな、俺のせいでよ」

自分のせいで皆を巻き込んだ、とジュードは反省する。

  「私にも責任はあります」

つくづく自分は女王に向いていないな、と女王は自嘲する。

  「それより今は助ける方が先だと思う」

妖精をいじめる人間は許せない、とフィリアは憤る。

  「そうだぜ、皆で一緒に帰ろう」

この手でフォルテを助けるんだ、とソールは誓う。

  「くく…作戦は決まったかね?」

その問いかけによって、再び戦いの火蓋が切って落とされる事になる。

427 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/10(水) 00:43:02 ID:L/7YXVDF0
今回はここまで〜
長すぎ!!というツッコミをお待ちしておりますw

>>タカハシさん
投下まってますよ〜

>>◆u9VgpDS6fgさん
ビアンカたんハァハァ
やられました…思わず上目遣いでお願いされるのを妄想w

428 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/11(木) 18:57:11 ID:8Vjqa17a0
>>403,427
お疲れ様です。

ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/12(金) 16:57:33 ID:Ja4v6YGKO
暇つぶし氏乙です!

430 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2007/01/12(金) 22:25:50 ID:gs3XwzC7O
>>タカハシさん
まとめどうもです!

>>429
ありがとうです!

さて、大丈夫だとは思いますが一応触れておいた方がいいのかな?
今回の騒動がどこまで本当なのか自分には分かりませんが、万が一の場合は避難所&まとめサイトがメインという事でいいんですよね?


431 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2007/01/13(土) 10:46:46 ID:2xRMUSjZ0
>>430
突然の閉鎖騒動ですね。
毎年恒例みたいですが、相変わらず本当のことがわからないw

万が一の場合は、暇潰しさんの言うように避難所&まとめサイトへ行くしかないですね。
本スレをしたらばあたりに作ればよさそうですが、2chとは違い管理人が必要なんでしたっけ。
どちらにせよまだわからないので、「避難所&まとめサイト」という事になるでしょうね。

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