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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です

・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

253 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:46:35 ID:WV+yG3so0
あ…また投稿し忘れた…
すいません…
>>249のジュードが起きる前に↓の文が入ります…


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「お前の守りたいものは何だ?」

兄貴のその口グセを思い出す度に、その剣の重さに沈んでしまいそうになる。
両足に力を入れ、膝を掴んで踏ん張り、めいいっぱい叫ぶ。

  「兄貴がそれを守って何になった!!」

それを聞いた兄貴は、男の俺が見とれてしまう程に、それはもう誇らしげに笑う。
そして手を頭の高さくらいに挙げ、俺にサヨナラの合図を送る。
背後の月の光に向かって歩いて行こうとする兄貴。
そこまで行かなくてはいけない衝動に駆られる。
が、剣が枷となり前に進む事が出来ない。
どんどんと重たくなるそれを捨ててしまおうと柄に手をかけ、
鞘から引き抜くと、キレイな刀身がキラキラと輝きを放っていた。
何と心が癒される光だろうか。
その光の奥に誰かがいる……
顔は分からないが、笑いかけられているようだ。
何…?
何を…
何を伝えたい……
やがて剣の輝きが月光と合わさり、全てを包み込んでこの世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

254 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:49:58 ID:WV+yG3so0
  「お、いつ帰って来たんだ? 今探しに行こうかと思ってたんだけど」
  「ちょっと前に」

食事を終えたジュードが部屋へ帰ると、ベッドに腰掛けたフィリアが一番最初に目に入った。

  「ふ〜ん…メシは?」

コクリとフィリア。

  「食ったのかよ。まだかと思って用意したんだけどな」

テーブルに皮の袋が置かれる。
さっきの食堂でお持ち帰りしたのかな。

  「……」

フィリアはそれを手にとってみる。
まだ暖かい。

  「んで、どこまで散歩行ってたんだ?」

袋からジュードへと目を移す。
着替えの為にその視線には気付かないが。

  「……エルフに会ってた」

服の擦れる音と重なり合ったので、聞き間違いかと思う。
でも確かにエルフ、と言った。
フィリアは冗談言わないしなぁ……

255 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:54:14 ID:WV+yG3so0
  「エルフなんてホントにいるのかよ」
  「うん」

即答されてしまった。
エルフなんてロト伝説の中でしか聞いた事ないような存在だ。
もしいたとしても、気軽に会えるようなものでもないだろう。
会えるものならジュードだって会ってみたい。
しかしこうもあっさりと言われるとなぁ……
正直、拍子抜けしてしまう。

  「そ、そうか。良かったな」
  「うん」
  (うんって…嘘言うようなヤツでもないし……)

対処に困ったという感じのジュード。
まぁそりゃそうかもな。
宇宙人に会ったって言うようなもんだからなぁ。

  (何でこういう時に真理奈はいねーんだよ)

確かに真理奈だったら喜んで話に飛びつきそうだけどねw

  「あ、でも俺も会ってみたいかもな」
  「うん…」
  「あ〜…明日はどうすんだ?」
  「うん……」
  「……? 何だ、眠いのか?」
  「……」

フィリアは一点を見つめ、そのまぶたは今にも閉じようとしている。

256 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:58:27 ID:WV+yG3so0
  「よし、じゃあ寝るぞ。ほら、横になれよ」

そう言ってジュードはフィリアの手から皮の袋を取り去り、枕へ誘導してやる。

  「…じゃあ灯り落とすからな」
  「うん……」

フィリアがベッドの定位置に収まったのを見て、ランプの火を吹き消すジュード。
外からの月明かりだけが頼りになる。

  「…おやすみなさい…」
  「お…お休み」

お休みの挨拶されるとは思っていなかったのでジュードはびっくりしてしまう。
いまだに分からないところがあるが、まだまだ子供だなとも思う。
フィリアにも何か守りたいものがあるのだろうか。
そんな事を考えつつ、ジュードも床に就いた。

……… …… …

翌日、フィリアはまたエルフに会いに行くと言って出かけた。
ジュードはいよいよ暇を持て余し、武器屋や道具屋を見て回るが特に目ぼしい物は無かった。
結局メシ屋で時間を潰す事になってしまう。
昨日と変わらずにうるさい空間。
一日の苦労を互いにねぎらう大人達。
だがそこで、ジュードはフィリアの言っていた事の一端を理解する事になるのだった。


257 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:05:26 ID:WV+yG3so0
  「よぉニイさん。1人で食事たぁ寂しいねぇ〜あっちのグループにまざらないのかい?
   盛り上がってるみたいだぜ」

飯を食べ終わろうかという時に男がいきなり隣に座ってきた。
チラリと声をかけてきた奴と、あっちのグループとやらを確認する。
あっちのグループは酒飲みのチャンプを決めるだとかでガヤガヤやっていた。

  「気分じゃないね」
  「へへ、ニイさんこんな辺ぴな村で何してんの? ここの人じゃないよな?」
  「……あんたこそ」

男は薄笑いを崩さない。
男に言い寄られるのは初めてだな。……まぁ女の方もないけど。

  「へへへ、実は儲け話があるんだが、乗らないか?」

まず見ず知らずのヤツにそんな話を持ちかける時点で怪しさ満点だ。

  「へへ、そうだよな。実はよ、確実って訳じゃねぇんだ……
   おーい、こっちにも飲みモン追加だ〜!」

ジュードの酒が無くなるのを見過ごさない。下っ端として経験を積んだのか、とか考えてみる。

  「ただ前金だけでも十分なくらい貰えるんだよ。大抵のヤツはそれだけもらってドロンだ。
   しかしな、それも逆に怪しいと思わないか?
   つまりそれだけの金をだすって事はだな、話の信憑性がグンと上がるって訳よ」

どうやらただのバカじゃないようだ。
けどジュードに話すメリットがいまいち分からない。
そこに2人分の酒が運ばれてくる。

  「おっ、すまねぇな。よし、ここはオレのオゴリだ。飲んでくれや」

258 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:08:54 ID:WV+yG3so0
ソイツはグラスを掴むと、一口で半分飲み干してしまう。

  「へへへ、そろそろ素直に話そうか。ニイさん昨日も1人で飲んでたろ?
   だからニイさんを選んだんだ。腕も悪くなさそうだしなぁ。
   正直オレ1人じゃ無事に事を運べるか心配なんだよ」

なるほど。一応人は選んでる訳だ。
それが正解とは限らないけど。

  「前金で五千Gだ。成功すれば十万G。
   どうだ? 悪くねぇだろ。
   失敗してもおとがめ無し。それでも十分お釣りがくるってもんだ」

……まだ判断するのは早い。
犯罪なら確かめてから捕まえればいいし、くだらないなら辞めればいい。

  「依頼人は?」
  「あぁそれがな、代理のヤツにしか会えねぇんだ。
   オレも顔を見ねぇと信頼できねぇって言ったんだがな……
   案外その代理ってヤツが本物かもしれねぇ。
   へへへ、まぁでももう金は貰ってんだ。
   成功報酬を2人で分けても五万Gだぜ? 悪くねぇだろ」

ソイツのオゴリだという酒に手をつける。
その行為は、もう手を貸すと言っているようなモンかもな。

  「……で、何を?」
  「お、いいねぇいいねぇ〜やる気になったか?」

ソイツは少し嬉しそうにグラスの中身を全て胃に流し込んで言った。

  「獲物はエルフさ」

259 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:10:50 ID:WV+yG3so0
今日はここまで
またしても失敗してスミマセンでした…
いかんなぁ…
反省します

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 13:42:53 ID:OvCxVojk0
あまり俺を怒らせない方がいい

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 20:10:35 ID:YJWk0h4wO
>>259
お疲れでっす

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 00:03:15 ID:CE1WMn8X0
干す?

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 13:27:59 ID:T7EY9Gx30
まずは自分のステータスチェックするだろ。
覚えてる技と。

264 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/29(水) 03:42:19 ID:Px8GcEYA0
>>259
お疲れ様です。
教えていただいた箇所を頭へ追加して、保存しました。

ここまでまとめました。
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

しばらく、更新が滞ります。
もしかすると年内かもしれないので、まとめサイトの方はのんびりとお待ちください。
ついでにタカハシの旅も、のんびりお待ちください。

265 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 15:51:07 ID:N/GRhzg1O
たまに思うんだが、ここの住人たちはどんなネタとか設定を持ってるんだろう?って
>>362みたいにチラっとでも書いてみると面白そうな気がするが


266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 16:40:49 ID:JrrGgJWWO
>>362に期待

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 18:29:59 ID:PUoJ95FZO
>>265 キラーパスktkr
>>264 タカハシ氏乙!

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/01(金) 16:34:32 ID:aZ4lL9J6O
保守

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/02(土) 12:03:07 ID:EWw6CSj3O
保守党

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 11:42:33 ID:y0NSrlg2O
補修

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 23:28:24 ID:/nmc4fD7O
皆さん忙しいのかな・・・。

   ヾ"""ツッ
  ミ・ω・ 彡
   ミ   ミ
   """"゙


272 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:45:31 ID:TDxwuxx50
>>227
了解です

>>228
区切りかたがなかなか難しいですね
まだまだ未熟なので、頑張ります
ありがとうございます

>>229
ありがとうございます
魔法の絡め方はすごく迷いました
(今も書きながら悩んでます)

>>タカハシさん
乙です

>>暇潰しさん
乙です
どんどん物語が動いていきますね
楽しみで仕方ないです

タカハシさんに並んで
多忙につき自分も滞りそうです
ともかく>>225続きです

273 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:46:41 ID:TDxwuxx50

右にそれる道を無視して、真っ直ぐ奥へ進む。
開けた空間の中ほど、大きく散らばった幾つかの岩の傍ら
地面に寝そべるいかつい老人の姿が見えた。親方だ。

物凄く長い道のりだった気がした。
傍によると、親方はぐふう、と息を吐いて寝返りを打つ。

つか本当に寝てんのかよ。緊張感ねーな。
呆れ返りながら俺は、親方の肩を揺さぶった。
うん?と口の中をもごもごさせながら親方が体を起こす。

『おや、ぼうや。こんなところで何をしているんだい』
本格的に緊張感のないのんびりした口調で、親方が言う。
俺はがっくりと肩を落としながら
「助けに来ました」と言った。
おやまあと目を細めて、親方が続ける。

『そうかい、ありがとうよ。
じゃあちょっとこの、岩を押してくれんか。
動きそうで動かんのだよ』

そういって目をやる岩の下に
親方の片足が痛々しく押し潰されていた。
濃い色のズボンを破って
肌から赤黒く乾きかけた血が滲んでいる。

274 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:48:04 ID:TDxwuxx50

『隙間に引っかかっているようでな。傷は大したことないんだよ』
不安そうな目の色を察してか、親方がゆっくりと言う。
『ただ押しても引いても抜けんもんでな。いや参った』

わかりましたと頷いて
俺は岩を押しやるのを手伝った。
しかし岩は大きく重く、
子供一人の力が加わったところで動きそうもない。
なんでやねん。また約束が違う。

『やれやれ。やっぱりだめか。
ぼうや、誰か大人を呼んできてくれると助かるんだがな』
子供のプライドを気遣ってか
出来る限り優しい口調で親方が言う。
俺は大人のプライドを持っていたので、逆に悔しかった。
辺りを見回す。

ふと思いつき、
散らばった中から適当な大きさの石を拾って
俺は親方の足の傍に置いた。
売り忘れて持っていたかつての武器を手にする。

岩の隙間に片端を差し込み
俺は石を支えに反対端に思い切り体重をかけた。
僅かでも浮けば。僅かでも。

275 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:49:40 ID:TDxwuxx50

考えを察したのか、親方が
空いた隙間に手を押し込み力を加え
更に自由な方の足を岩の隙間に捻じ込んだ。
木の棒が嫌な音を立ててしなる。
頼む、と俺はさっき祈りをささげた神に祈った。

不意にずるりと、親方の足が抜けた。
かかっていた重力が瞬間的に緩み
からりと乾いた音を立てて棒が転がる。
同時に、詰まらせていた二人分の呼吸と笑い声が空間にこだました。

『いや、ぼうや。助かったよ。賢いねえ』
肩で息をしながら親方が微笑む。
照れ笑いを隠して、俺は棒を拾い上げ腰布に差し込んだ。

親方の傷は本当に軽そうだった。
凝り固まった体を解しながら足首を回し、
『うん、大丈夫そうだな』と言うと
意外なほど身軽に立ち上がる。

『ぼうやありがとうな。みんな心配しているだろう。
早く村に戻らねばならんな。行こうかい』
手を引いて歩き出そうとする親方の申し出を断って
俺は洞窟に留まると伝えた。

「もう少し探検してすぐ帰るから」と言うと、親方は
『こんな洞窟でも、ぼうやには大冒険だろうな』
と笑い、こちらを気にしながら一人階段を上がっていった。

276 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:50:58 ID:TDxwuxx50

簡単に洞窟内の探索を進める。
最深部でも、出てくるモンスターの種類は殆ど変わらず
俺はスライムや昆虫や角の生えたウサギを叩きながら
分かれ道の先を覗いていった。

奥に朽ちた空き箱があり
その縁に布切れが引っかかっている。
手に取ると着衣のようだった。
今の俺の服よりは、少しだけ布が厚く縫製もしっかりしている。

その場で着替えるのはなんとなく気が引けて、
俺は軽く埃を落とすと服の上からそれを羽織り
ひとつだけボタンを留めた。

反対の奥にはスライムがいた。
咄嗟に武器を構えると、
『叩かないで!僕は悪いスライムじゃないよお!』と
慌てたようにその大きな口から人間語を発した。

話を聞いてやると、
三角だか四角だかよく解らないことを
まくし立てるように喋っている。
(こんなところはゲーム通りかよ)

それ以上の収穫はなく、俺は
久し振りの人間語を話したがるモンスターに
達者で暮らせよ、とだけ言い残し帰路についた。

277 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:53:27 ID:TDxwuxx50

洞窟を出ると、赤い鎧の男が笑顔で手を挙げた。
『さっき薬屋の親方が通ったよ。
ぼうや、親方を探しに行ってたんだってなあ』
頷くと、感心したように男は顎に手を当て、
『何も言わずにこんな洞窟の奥にな。恐れ入ったよ。
でも次はおじさんにも相談してくれよ。なんにせよ危険なんだから』
にこにこと勝手に頷きながら、男が俺の頭に手を置く。

言ってもどうせついてこないだろ。
っつか俺を探す前に親方を探せよお前。
思ったが恩があるので黙っておく。

簡単に挨拶を済ませ俺は親方の家へと向かった。
そろりと扉を開け顔を出すと、
店員の若い男が俺に気付いて明るく笑った。
表情の奥にも、もう不安の色は見えなかった。

『ぼうやは昨日の。今日も来てくれたのかい?
親方、さっきやっと戻ったんだよ』
言いながら丁寧な物腰で俺を奥に通す。

『親方、この子昨日も心配して来てくれたんですよ。知り合いなんですか?』
『うん?おお、おお、ぼうやは洞窟で会った』

薬の調合なのか、秤や
見たことのない器具とにらめっこしていた顔をこちらをに向け
忙しなく動かしていた手を止めて、親方が嬉しそうに笑みを零した。

278 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:55:05 ID:TDxwuxx50

え?と声を上げる若者に、親方は
『洞窟まで探しに来てくれたんだよ。
そうだ、お礼をしようと思っていたんだよ。
丁度良かった。ちょっと待ってくれんかな』
言いながら立ち上がり奥のタンスに向かう。

僅かに引きずった片足に
真新しい白い包帯が見え隠れしていた。
あの時は無理をしていたんだと、その時になって気付く。

『ぼうや本当に親方を探しに行ってくれたのかい?』
驚きを隠さずに若者が言った。
頷くと男は、声にならないと言う表情で俺の顔を見つめる。

「探しに行くっていったろ?」
俺が言うと、若者はあはあ、と笑って
『参ったな。ぼうや強いんだなあ。
俺、実はちょっとあの洞窟が怖くってさ』
頭を掻きながら極まり悪そうに言った。
正直な男なんだな、と思い俺もあわせて笑った。

279 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:56:22 ID:TDxwuxx50

ほれ、と親方の手から差し出されたのは
網目の粗く薄いケープだった。
派手な色の糸を編み合わせてあって、
ちょっと俺には着れないなあと失礼なことを思った。

『わしの手編みだよ。出来は良くないがな、ここが入っとるんでな』と
胸に親指を当てながらにやり笑う親方にお礼を言い
丁寧にお礼を言われ、俺は親方の家を出た。

宿屋にも顔を出そうか迷ったが
疲れていたし面倒だったから俺はそのまま家に足を向けた。

パパスは戻っていなかった。
まだ陽は高かったが、
早めの夕食をとるとすぐにサンチョが俺を抱きかかえたので
睡魔に身を委ねて俺は目を閉じた。

280 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:57:35 ID:TDxwuxx50
本日ここまでで
ありがとうございます

また間が空くかもしれませんが
宜しくお願いします

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/04(月) 19:35:39 ID:mzNOGZXU0
洞窟編乙。
お化け退治も期待してるよ。

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 07:51:54 ID:NHZLIX/c0
村のみんながいい人でなんかほっとするなあ。その分が後で響くが。
ゲーム通りなスライムとかw 実際意味不明だよな、確かにw
乙でした。

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 09:56:40 ID:lzhtrVZa0
>言ってもどうせついてこないだろ。
>っつか俺を探す前に親方を探せよお前。
>思ったが恩があるので黙っておく。

ゲームだと気にならないが、リアルに描写されると確かにこう思うなw
ゲームの隙間を補完してくれる感じでいいですね。乙です。

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 14:58:19 ID:1kKdfpDz0
親方が素敵な大人だ
ゲームの登場人物としては全然印象に残ってなかったけど
>>280の活字で読むと彼のような脇役の良さがじわりとしみてくるなぁ

285 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/06(水) 10:22:50 ID:NQPIxtgm0
>>280
お疲れ様です

ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 12:02:04 ID:eSSHWPD3O
タカハシ氏乙です

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/07(木) 22:18:51 ID:etYGKOBgO
保守

288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/08(金) 08:01:09 ID:jmQWhkKQO
後々のパパスに降りかかる悲劇を思うと鬱になる。
だけど、それ程すんなり感情移入できる素晴らしい文章に乾杯

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/09(土) 23:46:28 ID:qs5Rrdm6O
あげぽ

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 00:17:17 ID:L9RmzSvAO
ここもどうせ、オルテガスレみたいになるんだろ?

291 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:38:36 ID:JjvvsK4d0
オルテガスレを知らない自分が小ネタを含め、投下行きますよー


……
………
  「酷い有様だ……」
  「再び人が住めるようになるのでしょうか」
  「砂漠から水が枯れる事はある?」
  「ご加護があります内には…」
  「そうだよね」
  「……」
  「なら僕はそのご加護を全うしようと思う」
  「フィリー…」

  「失礼します! 王子!! モンスターがっ!!」
  「そうか。今行くよ」

  「私も」
  「プエラ……」
  「ダメ、ですか?」
  「危険だ」
  「その為にホイミを覚えたんです」
  「……ありがとう」
  「はい」
  「行こう。未来の為に」
  「はい!」
………
……



では>>258の続きをどうぞ

292 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:48:43 ID:JjvvsK4d0
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「私は全てを照らす太陽になりたいの」

そう言ったお前の横顔は、優しさや慈悲といったものに溢れていた。
だからこそ、そこに儚さと脆さを感ぜずにはいられなかった。
そんな自分は彼女の側にいる資格は無いのだと客観視する一方で、
ますますお前に惹かれる自分にも気付かされる。

お前は愛だった。
愛そのものだった。
自分はもちろん、この世界の存在するもの全てがその愛に照らされて
生きていられるのだと本気で思った事もある。

だから…
だからその愛全てを自分のものにしてしまいたかった。

若かった自分を責める事はいくらでも出来る。
しかし過ぎ去った時間を取り戻す事は出来ない。
懺悔の為に天に手をかざすと、お前に貰った指輪の宝石が光を放ち、
空へと上っていった。

その後には、残ったものが自分の全てになった。
それは暗闇の中で必死に生きようとするマリアの形見の星の光だった。
その光に照らされて、この世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

293 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:53:51 ID:JjvvsK4d0
カザーブ。
その土地にまつわる伝説から、世の格闘家達の修行の拠点になりつつある村だ。
もちろんダーマの方が名が高いのだが、それは多様な知識と触れ合える場所だからだ。
こちらは自分と向き合う事を優先しているような者が集まっている。
とは言え、それでは商業的な発展は見込むべきもない事は確かだ。
まぁそれがまた、この村の落ち着ける理由にもなるんだけど。

  「久し振りじゃの」
  「ん」
  「そっちのは?」
  「あぁ、新しい仲間じゃ。孫は置いてきた」

カザーブの武器屋の店主との会話だ。
パトリスの言っていた通りなら、この老人が腕の良い職人なのだろう。。
それで? と言わんばかりに店主がパトリスに目を向ける。

  「実はな、この爪を直して欲しくれんかと思ってな」

パトリスの意向を察して、真理奈が鉄の爪を取り出す。
店主は切断された鉄の爪を一瞥し、少々目を開かせる。

  「何ぞ腕の良い剣士と決闘でもしたんか」
  「いや〜何か呪文でやられちゃったんだよね〜」

会話に加わった真理奈に、老人は驚いた表情を見せる。

  「……バギか」
  「凄い! よく分かったね!」
  「答えはそれしかないわい。
   しかしこんなにも綺麗サッパリと切るなんて芸能はそうそう出来るものではない。
   よくこんな相手と戦って生きておるな」
  「まぁね〜♪」

294 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:57:56 ID:JjvvsK4d0
  「褒めとりゃせんよ」
  「何でよ……」
  「……結論じゃ。新しいのを買った方がえぇ」
  「む〜それが嫌だからここに来たのに〜」
  「しかしな」
  「ワシからも頼む。まぁ無理なら無理と――」
  「無理ではない。が、手間はかかる」
  「お願いおじーちゃん!」
  「それなりの理由があるという事か。しかしワシにお願いされてもな」
  「え? どういう事?」
  「まずはアンタ次第じゃ」
  「??? 分かるように言って?」

店主はふ〜と一息つけ、パトリスをジロリとにらみつける。

  「……ちゃんと教育せんか」
  「武器はな、ちょいと専門外じゃ」
  「むしろ専門じゃて。魔法使いが聞いて呆れるわ」
  「ではこの不肖息子にご教授お願い致します」
  「授業料、請求するからな」

いかにも渋々といった感じで真理奈に向き直る店主。
そして、よいか? と前置きする。

  「この爪は切断されておる」
  「見れば分かるよ?」
  「そうではない。精神的にも、という意味じゃ」
  「せーしん?」
  「ちったぁ勉強せい……」
  「うっ……」

295 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:01:35 ID:JjvvsK4d0
この世界でも勉強しろと言われるとはねw
まぁ学だけが勉強ではないという事ですよ、真理奈さん。

  「いいか。武器とは物理的な側面と精神的な側面がある。
   その両側面が合わさっていないと真に武器とは言えんのじゃ。
   この爪はその両側面で切られている」
  「??????????????」
  「物を使い続けるという事は、人と物が一つになっていく事。
   物側から見れば、人の精神が物に宿るという事じゃ。
   そして今、この爪は精神的にも切られている。
   つまり爪の部分と本体の部分は物理的にも精神的にも離れている訳じゃ」
  「それは元には戻せないって事?」
  「お前の心は他人の心になれるか?」

その突然の質問に真理奈はうぅん、と首を横に振る。
そこで店主は初めて鉄の爪に手を伸ばし、何かを確かめるかのように触れる。

  「……これは元からお前さんの者ではないな?」
  「え? どうだろう…おじいちゃんがくれたよ?」
  「確かならば、これはかつての仲間の物じゃな」
  「いかにも。真理奈には言ってなかったか?」
  「へぇ〜初めて聞いたよ?」

店主は半ば呆れ顔で先を続ける。

  「他人が使い古した物を使うという事は、新品を使うのとは訳が違う。
   なぜなら他人の精神がそこに宿されているからだ」
  「ほうほう」

296 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:04:51 ID:JjvvsK4d0
  「……そして状況は更に複雑じゃ。
   お前が途中から使い出したが為に、この爪の精神は二つになっている。
   精神の重複によって爪はさらに脆くなった。
   もちろん物質的に使いこんだという事でもある」
  「も〜説明長いよ〜……結局どうしたらいいの?」
  「ただ物理的に直すだけでは意味がない。
   まずはこの精神を一つにする必要がある」
  「どうやって?」
  「他人になれるか、と聞いて否と答えたな?」
  「うん」
  「では他人になれ、という事じゃ。
   そうすれば説得も出来よう」
  「え〜無理じゃん」
  「それが無理なら、無理だという事じゃ。諦めて新しいのを買うんじゃな」
  「む〜」

話は終わったというように店主は席を立つ。

  「疲れたから今日はもう店じまいじゃ」
  「戸締りには気をつけるんじゃぞ」
  「うるさいヤツじゃ」

そんな会話の後、パトリスは真理奈を促して店から出た。
陽が傾きかけていた。

  「まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えて、決めるんじゃな」

真理奈はじっと両手に乗せた鉄の爪を見たまま、答えなかった。


297 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:11:26 ID:JjvvsK4d0
  「武器の精神か〜……ん〜」

珍しく難しい顔をしている真理奈さん。
宿屋に戻ってきたようですね。
ベッドにあぐらをかき、鉄の爪とにらめっこしてます。
真理奈なりに解決しようとしているようで……

  「お〜い、鉄の爪〜……って、鉄の爪じゃおかしいか。
   じゃあテッちゃんにしよっか?」

何がだよ。

  「テッちゃ〜ん! 真理奈だよ〜握手!」

そう言いながらテッちゃんの甲の部分にタッチする。
もちろん何の反応も無いが。
だいたいそのテツは鉄のテツか、「鉄」と「爪」の頭を取ってテツなのか
非常に突き止めたい訳だが……

  「名前付けてもダメか〜……ん〜難しい」

お困りのようです。
そりゃ物とコミュニケーション取るってのは難しいだろうさ。

  「オッス! オラ真理奈! よろしくなっ!!」

し〜ん……

  「おぉ〜よく見れば傷が結構あるなぁ」

それでもめげずに、ジロジロと観察し始める真理奈。
普段手入れとかはするけど、こんなにマジマジと見た事は無い。

298 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:16:50 ID:JjvvsK4d0
そういう意味では、真理奈は今までで最もテッちゃんと向き合ってる事になるかな。

  「そう言えばずっと一緒にいたのに、何にも知らないもんなぁ〜」

そんな人を好きになり始めの頃に吐くセリフを口にする真理奈。
まぁ知りたいって気持ちがあるのは良い事ですよ。

  「他人になれ、かー。……自を捨て、客となり、己を茄子」

成す、ね。ツッコミ辛いからやめて。

  「……」

正座し、目を閉じる。
自を捨てる事が他人になる第一歩という禅の心得ですか。
その先に再び形成される己は、先の自とは違う者である。
まぁ分かりやすく言えばロト紋のアレですよ。
姿勢を正し、呼吸を正し、心を正していく。

  (めんどくさいからイヤなんだけどなぁ〜
   これもテッちゃんの為、私の為、世界の為ってね)

とは言っても最初は色々考えちゃうんだよね。

  (あ〜懐かしいな、この感じ。昔はよくやらされたもんだ)

厳密に言えば鍛錬じゃないから今では自己流入ってますけどね、
昔はきちんと練習してたみたいですよ。
そうこうしている内に雑念を制し、意識を制する事に成功する。
無意識とも言えない無の状態になってこそ、自を捨てたと言えるだろう。
そこで初めて他になれるんです。
すっと手を伸ばし、鉄の爪に触れる。

299 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:21:03 ID:JjvvsK4d0
そして無の心が相手に触れる。
それは相手の心がこちらに触れてくる事でもある。
……
……
――!
  「真理奈〜おるか〜?」
  「ピィ〜?」
  「だぁ〜!!」

扉が開かれる音と共に、ベッドに倒れこむ真理奈。
入って来たパトリスとブルーは何事かとうろたえる。

  「も〜やめてよおじいちゃん!! もう少しだったのに〜!!!」

そのままベッドの上でバタバタと暴れる真理奈。
これは……失敗だ。

  「おぉ、すまんすまん……もう夕飯じゃぞ〜と言おうと思ってな……」
  「うぅ〜……」
  「ピィ〜……」

涙ぐんだ目で鉄の爪を見る真理奈。
う〜ん……ドンマイっ!!
ブルーが真理奈に擦り寄り、慰めようとする。

  「悪かったの……よし、お詫びと言っては何じゃが、ワシとデートしよう!」
  「イヤ」

即答。

  「まぁそう言わずに……美味しいモンが待っとるぞ〜」
  「犬じゃないもん」

300 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:26:57 ID:JjvvsK4d0
  「腹減ったじゃろう。そうじゃ、今日はお酒も付けるぞ」
  「……未成年だし」
  「さらにデザート!」
  「よし、行こっ!!」

パッと起き上がり、身支度をする真理奈。
そうか……
素早さは身代わりの早さでもあったんだよ!!(ナンダッテー!!

  「オッケー、じゃあおじいちゃん行こっか」

チッチッ、とパトリス。
もう古いっす。

  「せっかくのデートじゃ。パトリスと呼びなさい」
  「あはw では参りましょう? パトリスさん」
  「ピー!!」

腕を組ませる真理奈。
いいなぁ〜……
と、そんな感じで村中の食堂に向かった2人。
まぁデートと言っても、都会のおしゃれなお店って訳にはいかないよね。
その代わりに食事の内容をいつもよりも豪華にして、それらしく繕ってみる。

  「ん〜おいしっ!」
  「機嫌は直ったかな?」
  「ん〜ん、一生忘れない」
  「この食事でも駄目ですかな」
  「これはこれ。あれはあれ」
  「冷たいのぉ……」

会話の内容の割りには2人共楽しそうに食事を楽しんでいるみたいだ。

301 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:32:41 ID:JjvvsK4d0
ブルーも満腹になったようで、真理奈の太ももでスヤスヤと寝息を立てている。
それより真理奈さん。あなたお酒飲んでもいいんですか?
この世界では別に良いとかいう設定は残念ながら無いんですけど。
とか言ってる間にも、真理奈はグラスを空にしてしまった。

  「おじ…じゃなくて、パトリスはさっきの話分かった?」
  「そりゃあの」
  「じゃあ、もう少し分かりやすく話してくれたら許してあげる♪」

満面の笑みでお願いする真理奈。
そうじゃなぁ、と少し思案するパトリス。

  「このような食堂のグラスが割れやすいのは何故か知っておるか?」
  「ガラスだから?」
  「ふむ。それが物理的という意味じゃ。
   もう片方で多くの人の手に触れるから、という理由がある」
  「手?」
  「触れる事で無意識にその内の精神が物に宿るという話じゃった。
   じゃからワシの精神が今グラスに注ぎ込まれているんじゃ。
   酒を注ぐようにな」
  「おぉ〜」

パトリスが真理奈のグラスに酒を注ぐ。
少し納得顔の真理奈は、ありがとと言ってパトリスのグラスにも注ぎ返す。

  「得てして壊れやすいのは、ガラスである事とバラバラな意識がそこにあるからじゃ。
   故にバラバラになりやすい。
   しかし道具は人の手を渡る物だとも言える。
   そこに同一の目的意識があれば、まぁそのような事にはなりにくいがの」
  「ん〜なるほどね〜同じ目的かぁ。
   でもテッちゃんの中にいる人の目的なんて分かんないよぉ……
   あ、そうだ。ねぇ、おじいちゃん。おじいちゃんの昔の話聞かせて?」

302 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:37:41 ID:JjvvsK4d0
  「お、名前呼び間違えたの。これでは教えられんわい」
  「あ〜ん、お願いー」

ふふと笑い、パトリスは真理奈をからかう。

  「あれは元々レキウスの武器じゃった」
  「れき……?」

思い出せない真理奈を見て、パトリスは愉快だと笑う。

  「忘れたか。アリアハンの王様じゃ」
  「おぉ〜あの人かぁ」

パトリスはなおもくっくっと笑い続ける。
きっと、王様なのに存在感の無いヤツじゃと心の中で馬鹿にしているんだろう。

  「そっか〜だからパトリスあんなに親しげにしてたんだねー。
   ね、どんな人か教えて」
  「そうじゃのう。たまには昔話もいいかもしれんなぁ」

そう言って、お酒をぐっと飲み干した。

  「レキウスがまだ王子じゃった頃、突然旅に出たいと言い始めての。
   それで3人で一年限定の旅に出る事になったんじゃ。
   当時の王も良い勉強になれば、と楽観視しておったな」
  「ほ〜う。あと1人は?」
  「お城付きの女性じゃった。僧侶になりたてのな。
   レキウスは格闘に興味があったようで武道家を。
   ワシは言わずもがな魔法使い。
   3人ともレベルは低かったし、チームワークも知らない。
   外の歩き方さえ知らない、まったくの初心者じゃった。
   いつ振り返っても酷い旅じゃったのう。野宿は当たり前。

303 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:40:51 ID:JjvvsK4d0
   傷は絶えず、服もボロボロ。
   それでも死ななかったのはルビス様のご加護と僧侶のサポートがあったからじゃろう。
   彼女は物覚えが早く、旅に一番早く適応したのも彼女じゃった」

目を細め、楽しそうに話すパトリス。
その様子から当時の雰囲気がありありと伝わってくるかのようだった。

  「レキウスは武道家のくせに慎重じゃった。敵のスキを見てから攻撃するタイプ。
   反してワシは先制攻撃が大好きでな。
   新しい呪文を覚えた日には先頭切って歩いておった」
  「え〜信じられない! 今と全然違うじゃーん」
  「それだけ年を取ったという事じゃ。
   そしてロマリアからカザーブへとたどり着き、
   ヤツの誕生日プレゼントと称して鉄の爪を贈ったんじゃ」
  「へぇ〜素敵ね」

  「最もヤツは武器より防具を買うべきだと主張しておったがな。
   しかし嬉しそうじゃった。
   そしてその頃には、出発してから既に九ヶ月が過ぎておった。
   そこで最北の村ノアニールを最終目的地にして見事到着。
   旅はそこで終わりじゃ」

それからパトリスはレキウスについての馬鹿話を次々と真理奈に語った。
戦闘中は慎重なクセして、食事ではよく喉を詰まらせていた事。
賭け事を多少は嗜み、しかし弱かった事。
帰った後は、真面目に王としての役割を果たそうと考えていた事。
鉄の爪の元所持者の過去が、その頃を懐かしむかのように語られた、

  「なるほどね〜」
  「ま、そんなとこじゃな」
  「面白かった〜」


304 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:49:05 ID:JjvvsK4d0
2人の顔はとうに赤く染まっている。
ちょっと飲みすぎー。

  「でもそしたらノアニールに寄ってからでも良かったのに〜
   どうして行くのを嫌がったの?」

小船に乗らなかった事を言っているのだろう。
旅の最終地点だったノアニールに思い出もあるはず。

  「別に行きたくない訳じゃ……」
  「え〜でもあれは行きたくないって顔だったもん。
   船漕ぎたかったのにさぁー」
  「どうせルーラで来るんじゃからどっちも変わらんじゃろ。
   それにどうせフィリア達を迎えに行く時に行くしの。
   真理奈が気にする事ではない」
  「ふ〜ん……」

はわわ〜とあくびをして、腕を枕に真理奈はテーブルに突っ伏す。
パトリスも目は虚ろだ。

  「……でもホントは嫌じゃった。
   そういう場所って誰にでもあるじゃろ?」
  「うん……パトリス……」

むにゃむにゃと何かをつぶやく真理奈。
パトリスは自分の手をじっと見つめて動かない。

  「まぁ今さらどうしようも無い事じゃがな」

見つめているのは、指輪だ。

305 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:55:41 ID:JjvvsK4d0
  「……しかしお前が残した星は、今も輝いておるよ」
  (あら、私は輝いていないの?)
  「お前はワシの手の中に」
  (いつまでも……)

薬指の指輪が光る。
それは星の瞬きのように。

  「……帰ろうか。マリア」

結局2人は閉店まで目を覚まさなかった。


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「レキウス。何ぼーっとしてんだ?」

振り返ると2人の男女。
魔法使いと僧侶だ。
格好で分かる。

  「もうすぐ着くはずだ。そいつでしっかり頼むぜ」

俺の右腕を指しながら言うので見てみると、鉄の爪を装備していた。
あぁ、これは私のだ。
でもこの2人は誰?
今度は僧侶の方が声をかけてくる。

  「頑張ってね」

瞬間、心が揺れた。
女性の微笑みで更に嬉しくなる。
嬉しい?

306 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:00:00 ID:JjvvsK4d0
あぁ、これは恋だ。
この人はあの人が好きなんだ。
その事を自覚すると、心は急反転し、落ちていった。
何? なに?

  「パトリスもね」
  「マリアもな」

2人が互いに笑みを交わす。
それを見るのが凄く嫌だ。
心が痛い。
その様子は好きな者同士の仕草だ。
そっか〜、2人は付き合ってるのかな?
え? パトリス?
たまらず私は駆け出した。
2人を追い抜いたところでモンスターが。
俺はいつものように2人からのプレゼントでそれを切り裂いた。
そして2人の仲も切り裂けないかと思案した。
けどそんな自分は嫌いだった。
俺は、どうしようもない人間だな。
私は涙を流す。
その涙を鉄の爪の甲で拭ったところで、世界は終わりを告げた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


  「そっか」

起床。
無意識に紡がれた言葉で目を覚ます。
ここのところ、寝坊しなくなった。
変な夢ばかり見る。
いつもはそれでももっと寝ていたいと思うが、今日は違う。

307 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:04:24 ID:JjvvsK4d0
行かなくては。
やらなくては。
今なら出来そうな気がした。
二日酔いの影響も無く、素早く着替えを済ませる。
そして部屋を飛び出し、真理奈は武器屋に向かった。

  「おじーちゃ〜ん」
  「何じゃうるさいのぉ」
  「おじーちゃんおじーちゃん! お願いしまっす!!」
  「……そうか」

店主は真理奈の顔を見て、準備が整えられた事を悟った。

  「ではやるか」
  「うん」

店主は炉を使用可能にする為、薪に火をくべていく。
折れた爪を溶接する為には、まず炉で鉄を熱しなければいけない。
数千度というレベルで鉄と鉄を「くっつける」のだ。

  「武器とは何ぞや」

よし、とつぶやいた店主は真理奈に問いかける。

  「ん〜前まではただの道具だと思ってた」
  「武器は道具じゃ」
  「でも心があるよ?」
  「その通り。武器の武とは、心の事じゃわ。そして武器の器はうつわ。
   武器とは心の器という名の道具」

ごうっ、と炎が溢れ始める。
爪と爪のかけらを炎の中で熱していく。

308 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:10:34 ID:JjvvsK4d0
  「その心が一つになれば、一心同体。
   ならばその一心、成すがよい」

押さえておれ、と真理奈に指示をする店主。
真理奈はそれに無言で応える。

  「やるぞ」

汗がしたたる。
鉄を叩く音が響く。
爪が鍛接されていく。
その作業をじっと見つめる真理奈。
店主の動きを見逃さないように気をつけつつ、
鉄の爪の心に触れる。

  (失恋したんだね。
   私も泣いちゃったよ?
   でも恋したのは無駄じゃないよ、きっと。
   だってその想いは私に受け継がれたんだもん。
   その想い自体を叶えてあげる事は出来ないけど……
   共有する事は出来たよ。
   だから……
   だから私に力を貸して?
   今度は願いが叶った時の喜びを一緒に体験しようよ。ね?)

真理奈の心に呼応するように、鉄の爪は光を放った。

309 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:18:51 ID:JjvvsK4d0
今日はここまで〜
やはり年末という事でスレが滞りそうですな
続きはなるべく早く書きますね
エルフ全然出てきてないですし……
ではでは

310 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 02:22:16 ID:MScTOOO90
鉄の爪GJ!

311 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 09:38:48 ID:jCczjBqdO
乙。しかし鉄の爪だけでいつまで闘えるのか・・・・・・。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 14:06:50 ID:K65KNZT/0
>310のIDが何気にかっこいい件。

武器には心が宿るんですか。
いいですね。
鉄の爪、名実共に真理奈さんのパートナーとなってますます活躍しそうですね。

313 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 21:17:08 ID:pchuuWGBO
>>310-312
レスありがとうございます〜
新装備に移行しようか迷ったんですけど、こういう形になってしまいましたね
今では、この先ずっと鉄の爪でもいいんじゃね?とか思ったりw


そういえばこの前スーファミ版の説明書を眺めていたら
アリアハンがかつて世界を統治していた、とか
戦争が起こって小国になった、
とか書かれているのを見て愕然としましたね……
そんな設定があったなんて(´・ω・`)

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 21:02:19 ID:MhZ3+LgHO
保守

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 22:13:08 ID:KdhXa9ir0
かつて世界を統治していたが戦争のせいで小国になった、か。元ネタはなんだろう。
真っ先に思い出すのがイギリスだが、じゃあエジンベアって何よってことになるし。

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 23:10:20 ID:EzZLDFGj0
あれま、どうなんでしょうね。
でも、本作の設定に完全にそわなくてもいいですし、戦争は魔王が人間同士にいさかいをおこさせたものだと思えば、魔王軍の思うつぼのならないためにも同盟は意義のあることですよね。

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 01:14:56 ID:49II7dKl0
ほしゅーん

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 20:43:00 ID:NwzI2qCK0
寒いのわかんないの?

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 22:43:29 ID:k8HmJUp40
冬は寒いのはあたりまえだ

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/14(木) 01:19:02 ID:D7sYxrpH0
隙間風氏の再降臨に個人的に期待してる俺がage

321 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/15(金) 10:25:07 ID:4u7zQxZP0
レスだけですが、すいません

>>316さん
どうやら戦争が起こったのはバラモスが現れる前のようです…
んでバラモスが現れたのが、勇者が旅立つ10数年前という設定ですね。

しかしこれはFCの時からある初期設定なのかどうか怪しいと考えてました。
SFCで出すにあたって勝手に付け加えた設定なのでは……?

ドラクエ3が現実の歴史を参考にしているのは有名ですから、
>>315さんが言う通り元ネタが無いのが気になります。
だいたいそんな設定ゲーム中じゃ一つも出てこないですしねwww

とは言ってみたものの、
ウィキペディア見たらアリアハン大陸はムー大陸が元になっていると…
ホントかよw
しかしムー大陸はロト紋でも出てきたしなぁ
となると信憑性は高いのかなぁ〜

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/15(金) 12:14:33 ID:nXvzC8620
FC版の説明書も、かつてアリアハン国は世界中を治めて〜みたいので
始まったはず。

323 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/15(金) 12:33:26 ID:4u7zQxZP0
>>322即レス感謝です
そうですか〜って事は元ネタはムー大陸なんだな
世界を治めていたアリアハンか。
正直想像できませんがwどこかで活かせればなぁと思いつつ……

324 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:54:18 ID:47kasxap0
>>194
ずいぶんと無沙汰してすみません。
からの続きです。


●始め有るものは必ず終わり有り

音が、耳を伝い聞こえてくる
小さくガサガサコソコソ…

久しぶりだ…
自分以外の音を聞くなんて、どれくらいぶりだろう

夢、じゃない
俺はどうやら、永く眠りすぎたようだ
意識はこれまで感じたことがない程、透き通っている
目を開けばまた、戦い明け暮れる日々
…けれど、俺の出来る精一杯を、するために目を開けよう─

ゆっくりと瞼を開く
明るさが無遠慮に目を刺してきた
初めて目を開いたように恐る恐るぱちぱちと、瞬きを繰り返し目を慣らす

ここは… どこかの部屋のようだ
扁平な天井に固い布が身体を覆う感触
俺は、ベッドに寝かされていた

魔王に頭を掴まれ、その後は思い出せないが…
俺はこんな所に連れてこられていたのか─

325 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:56:20 ID:47kasxap0
「ん」

人の気配をすぐ隣に感じ、ふいと目をやる
そこには白い女性が目を瞑り、椅子に座っていた

この女が誰なのかは、わかっている
ルビスだ…

俺の動きに反応し、静かに目を開き、俺の顔を見つめるルビス
白く透き通るような肌に、絵に書いた姿
その瞳はどこか物憂げで、しかし魅力的でもある
俺の想像を遥かに超え、美しい

「メイを、俺に向けさせたのは、あんたか…」

ルビスの姿に少し、戸惑いのような嬉しさのような、複雑な気持ちを抱きつつ話しかけた

「別に、その事をどうこう言うつもりはない
 そしてこれからやらなくちゃならない事もわかってる…
 でも、何もわからないまま戦う事なんてできない
 …全部、話してもらえるよな?」

俺のわからないこと
この世界にきてからずっと、ルビスは肝心な事だけは黙ってきた
やるべき事がわかった以上、それらを聞いておかなければならない
何もわからないまま言われるまま、行動だけをするなんて嫌だからだ

「…まず何を話しましょうか」

夢の中で聞いた声そのまま
目の前にいるのは本当に、ルビスなんだな

326 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:58:57 ID:47kasxap0
「まずは、あんたがどうしてこの世界にいるのかを聞きたい」

これはメイがルビスに聞けばわかるといっていた、最初の疑問
なぜ神が魔王の創った世界へいるのか…
だがはっきりいってこの事はどうでもよかった
言葉慣らしの意味での、質問だ

「私は、あなたがゾーマに囚われ異世界へ連れ去られていったのを見ていました
 あなたには重大な使命がある…
 ですから私は力を失うとわかっていながら人間の姿となり、わざと魔物につかまった─」

そうか
人間になる事もできるのか…
なぜ魔王にやられる瞬間、助けてくれなかった事は、もういまさらどうでもいい
神にも手出しできないほどに、それほどに魔王の力は恐ろしいのだろう

「わかった
 次は"いのちの源"について教えてくれないか?」

これもメイの言っていた言葉だ
今後の俺の行動は、どうやらその"いのちの源"の意思であるらしいから─

「"いのちの源"と今回の事は全て繋がり、そして起こりでもあります…
 事を終わらせる為、全てをお話しましょう」

外気はわずかな物音だけをサァサァ伝達し
部屋の肌色が強く目を圧迫する

白い女性ルビスは時折、ふと悲哀に満ちた表情を見せ
それは悲しいことだけれど同時に、なぜかこの世で一番の美しさに感じた


327 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:00:58 ID:47kasxap0
●いのちの循環いのちの記憶

「"いのちの源"とは─
 …全てはそこから始まっているのですよ、タカハシ
 この話を聞けばあなたの疑問は全て解かれることになるでしょう」

"いのちの源"なんて言葉はメイに聞くまで知らなかった言葉だ
そしてルビスはそれが全てだと、言う…
そんな大事な事をなんで今まで話してくれなかったのか─

「…"いのちの源"とはその名の通り、全ての生命の源です
 植物、人間、虫、動物、魔物、ありとあらゆる"いのち"を持つものの根源…」
「魔物も、なのか?」
「そうです
 肉体を抜け出した人や動物、魔物全ては遠く上空を超え、更に果てしない場所で一緒になり混ざり合います
 混ざり合った生命は浄化され、新たな肉体へ宿るときを待っているのです」

じゃあ、死んでいった魔物や人間のいのち…
そしてメイの"いのち"も─

「分け隔てなく善悪も関係なく… タカハシ、命は皆おなじであり平等です」
「平等…だと?」

人を無意味に無差別に殺す魔物達も"平等"なのか
いつか、なんらかの生命の元になって平然と生きていくというのか
殺された側からするとたまったもんじゃないな…

「…"いのちの源"、それは"いのちの輪"です
 空へ昇った"いのち"は輪になり、そうして互いを輪の中で共有する
 未来永劫かぎりなく全ての"いのち"と関わりを持ち、"生きた記憶"を後世へ残してゆく」

328 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:03:58 ID:47kasxap0
難しい、話だ…
童話でも聞いているみたいだが、こんな異世界が存在するほどだ
何を言われても不思議じゃないし、そんなものなんだろう
だけど─

「……それがどうして、俺の疑問が解ける事と関係するんだ?」

少し伸び、俺は身体を起こしベッドから降りる
身体は軽く、不調など全く感じない
それどころか体の奥底から力が沸いてくるようだ

軽く身体をひねり、俺がベッドへ座ったのを確認してから、ルビスは話し出した

「まずゾーマについてお話せなければなりませんね…」
「魔王だろう? 知っている」
「そうではありません
 なぜゾーマが私たち神や勇者を超えることができたのか、という話です」
「どういう事だ?」

少し乱暴に言葉を返したが、
ルビスは気に留めることなく続ける

「ゾーマは"いのちの輪"の繋がりを絶ち、自らの力にする術を知った
 それにより、三つ目の世界で思念となった自身を、若い肉体へと変化させることが出来た」
「三つ目の世界だって?」
「そうです この剣と魔法の世界はそれぞれが独立して八つあるのです
 ゾーマは八つあるうちの三つ目の世界で、やはり邪悪な存在でした
 私は囚われ石にされ、しかし私の導いた勇者にゾーマは打ち倒されました」

ずいぶんと、因縁の仲らしいな…
ついでに聞くが八つの世界は互いに関係するのか?

329 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:06:46 ID:47kasxap0
「はい、同じ"いのちの源"を共有する世界ですから…
 独立していても全く別世界とは言えず、一つの世界の続きであったりもします」
「ふうん……
 まさか、もしかして、俺の世界とも繋がってるのか?
 この世界みたいに魔法はないけど…」

"生命の根源"である"いのちの源"は"いのちの輪"となり全て交じり合うと言ったし、
俺の世界の"いのち"もそれは例外じゃないだろう─

しかし、ルビスの答えは俺の予想とは違っていた

「いいえ、関係はありません」


330 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:09:35 ID:47kasxap0
中途半端感漂いますが、今回はここまで。

>>323
お疲れ様です。
まとめサイトは >>308 までまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

まとめたとき、スレへ報告書き込みしたつもりが出来てなかったです。
もしかしたらどこかに誤爆してしまったのかな… orz

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 04:28:44 ID:munzKK4fO
タカハシ乙!!
かなり気になる〜!!!!!

332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:19:33 ID:5UKGsZCq0
現実を見ろ。
世の中甘いもんじゃないぞ。

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:20:51 ID:5UKGsZCq0
お前達はあまりに情けなさすぎるぞ。
もっと立派になれ。
しっかり働け。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 20:29:33 ID:K/zIOl520
タカハシ氏乙でした。
八つのうちの三つ目の世界って…
来年出来そうな九つ目は?なんてね

335 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/17(日) 00:04:23 ID:47kasxap0
>>331,334
ありがとう

そういえば時間の流れで言うと、DQ3は三つ目じゃなかったですね。
ここは「繋がったそれぞれの世界は、必ず時間の流れにしたがうものではない」という理解でお願いします…
DQ9についてはノーコメントw

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 08:19:06 ID:xCpzfoGHO
保守

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 19:38:06 ID:9cJqbe+C0
ぷひゃ

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 20:38:39 ID:snFetdnD0
保守

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 22:19:01 ID:OzBEvtFYO
一日に3回も保守いるのか?w

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 19:04:59 ID:klFuJYKJ0


341 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/20(水) 20:33:01 ID:VXvSkvCeO


342 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:18:50 ID:9GmpBdCv0
>>281
感謝です
頑張ります

>>282
ありがとうございます
あんまり暗くなりすぎないようにはしたいですね。
スライム悩んだんですよ、何言わせるか
結局ゲーム通りに・・・w

>>283
感謝です
なにげにゲーム中も気になってましたw
ゲームまんまで詰まらないんじゃないかと思ってましたが
そう言っていただけると嬉しいです

>>284
ゲーム中の親方は相当酷い大人でしたけどね・・・
まんまじゃあんまりなのでアレンジをw
脇役も人間、キャラクターとしてもっと活かしたいです
精進します

>>288
ありがとうございます
やっぱりそれだけ、心に残るシーンなんですよね
上手く描けるか今から少し不安です
ご期待に沿えるよう頑張ります

343 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:20:13 ID:9GmpBdCv0
ぎゃ
sage忘れましたごめんなさ・・・!

>>暇潰しさん
武器の扱いに感動しました
こういう作品を読むと尚更
自分のはアイテムをいかせてない気がしますね
勉強になります
そしてエルフの今後に期待大!

>>タカハシさん
まとめ乙です
続きが気になる終わり方でむずむずしてますw
待ってますよー!

>>279続きです

344 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:21:53 ID:9GmpBdCv0

目を覚ますとその日は昨日までと様子が違っていた。
階下では複数の人間の話し声が聞こえる。
ストーリーが動き出していることを感じて、俺は体を起こした。

『やっと目を覚ましたのね』
小さな笑い声がして目線を落とす。
くすくすとブロンドを揺らしながらベッドの傍らに肘をついて
ビアンカが俺の顔を覗き込んでいた。
『サンってば、結構お寝坊なのね』

おはよう、と咄嗟に口に出すと
けらけらと笑いながらビアンカも挨拶を返してくる。
『パパのお薬が出来上がったの。残念だけど今日でさよならだわ。
ママとご挨拶に来たのよ。あたしの家にも遊びに来てちょうだいね』
寂しさを誤魔化すためか早口に少女が言う。

大丈夫まだお別れじゃないよ、と
俺はビアンカに慰めを思った。
声には出さなかったけれど。

身支度を整えてビアンカと共に階下に下りると、パパスが顔を上げた。
『サン、やっと起きたのか。
おかみとビアンカは今日帰ってしまうそうだ』
声に対して、目一杯寂しそうな表情を作ってみせる。
おかみはその表情を微笑ましげに眺めている。

345 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:23:14 ID:9GmpBdCv0

にっ、と髭の奥の口角を上げて、パパスは言った。
『女二人では危険だからな。
父さんはアルカパまで二人を送っていこうと思うんだが、
どうだ?お前も来るか?』

俺が頷くよりも先に、ビアンカが
『本当に?』と嬉しそうな声をあげた。
俺も顔を上げて「いいの?」と子供らしく尋ねる。

満足げに目を細めるとパパスは
『そうと決まれば早速出かけることにしよう。
サン、すぐに準備をして来なさい』
言いながら自分の荷物袋を抱え上げる。
俺は自分の装備を簡単に確認すると「大丈夫」と頷いた。

アルカパまでの道程は驚くほど順調だった。
殆どモンスターと遭遇することもなく
日が天頂を通り過ぎる頃には
町の入り口で警備兵と挨拶を交わすことが出来た。
ごくろうさん、とパパスが声を掛けると兵士は
どうぞ、と道を開けパパスの横顔に敬礼した。

346 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:24:25 ID:9GmpBdCv0

アルカパの町は、サンタローズに比べて広々と賑やかだった。
入り口すぐには商店が並び、そこかしこから
買い物をする主婦の声や、
笑いあう子供達の声が聞こえてくる。

きょろきょろと辺りを見回していると
ビアンカが『賑やかでしょう?』と楽しそうに言った。

その町を一望する通りの真ん中
一際大きな建物を構えて佇んでいるのが
ビアンカの住む宿屋だった。

サンタローズにはない大きな建物にしばし見とれてみる。
大きな正面扉をくぐると
広々としたロビーには隅々まで手入れが行き届いており
趣向をあわせた品の良い装飾品が設えてあった。
天井には嫌味でない程度に豪華な
小ぶりのシャンデリアが柔らかな輝きを放っている。

フロントの右手には小さな扉があり
おかみは脇目も振らずに扉の奥へと消えていった。
後を追うビアンカに従ってパパスと俺もその扉をくぐる。

347 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:25:44 ID:9GmpBdCv0

同時に『おかみさん!』という若い声が耳に届いた。
『お帰りなさい、遅かったですね。薬は手に入ったんでしょう?』
きっちりとした制服を着込んだ従業員らしき若い男が
頷くおかみに向かって笑顔を見せた。

『これでこの人も良くなると思うよ。
まったく世話が焼けるったら。手伝ってくれる?』
『はい!だんなさん、お薬ですよ。早く元気になってくださいよ』

応えるように間仕切りの奥のベッドの上で、
青白い顔をした年配の大男がのそりと身を起こした。
弱々しく微笑んだその男がダンカンだろう。
パパスも近付いて『大丈夫か?』と声を掛ける。

医療の知識が皆無な俺にもその様子が
あまり穏やかでないことが見て取れた。

手持ち無沙汰に歩き回っていたビアンカに
おかみが気付き、俺の顔を見る。

『サンちゃん、良かったらビアンカと遊んでらっしゃいよ』
『久し振りだろうから、散歩でもして来たらいい。ただし外には出るなよ』
パパスも振り向いてそう言う。俺は素直に従うことにした。

348 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:27:13 ID:9GmpBdCv0

ビアンカと連れ立ってロビーへ出ると
正面扉へ向かおうとした俺をビアンカが引きとめた。
『おもしろいお話を聞かせてあげる』
と、悪戯っぽく笑みを含んだ瞳で俺の手を引く。

さっきの寝室の向かい側に、
こちらはそれより少しだけ豪華に彩られたもうひとつの扉があった。
その扉を開くと、手入れされた植物に囲まれた小さな中庭。
蔦の絡んだベンチのひとつに、艶やかなローブを身に纏った
女と見紛う程の美しい顔をした男がゆったりと腰掛けている。

『今日もやっぱりここに居たのね』
ビアンカが話しかけると
病的なまでに白い顔を上げて男が微笑んだ。
『ここが好きなんだ。落ち着くじゃない』
『ねえ、あのお話を聞かせてくれない?』
俺のほうをちらりと見ながら、ビアンカが言う。

男は、おもむろに俺の方に向き直るともう一度にこりと微笑む。
その真っ白な頬に僅かに赤みが差した。

『そうか、ぼうやにはまだ話したことがなかったかな』
ビアンカが笑いを堪えるように口元に手をやる。
男は、ひとつ咳払いをすると
大げさに身を乗り出して俺の目を見据えて、口を開いた。

349 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:28:55 ID:9GmpBdCv0

『この町の少し北に、大きなお城があるのは知ってる?』
俺は知らない振りで首を横に振る。

『レヌール城と言うんだ。
昔、そのお城には逞しい王と、それは美しい王妃が住んでいた。
とても仲の良い夫婦だった。
だけど何故か二人には子供が出来ず、
いつしかその王家も途絶えてしまったんだ』

俺は小さく頷く。男の穏やかな顔が少しだけ真剣になる。
『ところが、ね。今となっては
誰も住んでいないはずのそのレヌール城から、
夜な夜なすすり泣くような、
物悲しい声が聞こえてくると言う・・・』

ぶる、と肩を震わせて、男は体を戻した。
『どうだい、恐ろしいだろう?』
くすくすと、堪えきれない笑いを漏らすビアンカの横で
俺は深刻な顔を作って頷いて見せた。男もそれに応えて頷くと、
『レヌール城には決して近付いてはいけないよ』
と言ってまたベンチに背中を預けた。

ロビーに戻り扉を閉めると
ビアンカがけらけらと笑い声を上げた。

『サンってば、真っ青になっちゃって。怖かったんでしょ』
否定も肯定もしないまま俺は正面扉へ向かった。
無言を肯定の意味に取ったらしく、
ビアンカは嬉しそうにまた笑って俺の横に立った。

350 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:31:26 ID:9GmpBdCv0
本日ここまでです
ありがとうございます

多少は書き溜めてあるんですが
投下する時間がないのが問題ですね
それではまた

351 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:21:30 ID:2836uusG0
>>350
お疲れ様です

ここまでまとめました
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

352 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:39:52 ID:2836uusG0
>>350
テキストの件ですが、避難所へ返事を書いておきました。

353 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/22(金) 07:36:50 ID:gpiH9PQX0
>>350
乙!ついにアルカパか。そういやサンタローズと比べりゃ随分都会だなw
しかし、真相のわかってる怪談とか笑っちゃうなw

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