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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です
・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/
まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi
29 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/10/30(月) 17:53:05 ID:Uj5f7EUi0
>>28
乙です!
期待wktk
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
30 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/31(火) 03:33:39 ID:pPE4Dy0n0
お。新職人がいる
パパスの末路を知っているようなので
これからどうなるのか期待してます
31 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:06:09 ID:i5dXIzU50
>>タカハシさん
まとめありがとうございます。
皆さんと並べるのが
なんかすげー嬉しいです。
>>30
感謝です。
期待に添えるか自信ないですが
自分なりに頑張ってみようかと。
船をちゃっちゃと終わらせます
(十分長いですが)
>>26
続き投下
32 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:07:49 ID:i5dXIzU50
にわかに船上が慌ただしくなった。
船長が部屋から出て
眩しそうに目を細めて
久し振りの陸地を見つめている。
足元にそっと立つと、
『ぼうや、そろそろ港に着くからお父さんを呼んでおいで』
さっきと変わりない優しい声色で俺に言った。
眼差しの奥に僅かに寂しさが浮かんでいるのを
俺は気付いたけれどそのまま船長の傍を離れた。
船の到着を告げると
パパスは感慨深げにひとつ頷いて
二年ぶりだな、とその蓄えた髭の向こうで呟いた。
大きな体を椅子から引き上げ
数少ない荷物の点検に入る。
33 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:09:13 ID:i5dXIzU50
『お前も忘れ物をするんじゃないぞ。
タンスの中も見ておいてくれ』
言われたとおりに引き出しを確認する。
その中にも薬草と、見覚えのない
小さな木の実の入った小袋があった。
首をかしげた俺に気付いて、
『体を強くする種だ。
それはお前にやるから、必要な時に使いなさい』
そう言い残すとパパスは
荷物袋を抱えて階段へ向かう。
慌てて後を追い外に出ると
あんなに小さかった陸地は
もうすぐそこまで迫っていた。
青空に映える鮮やかな緑色の草原と、その向こう
青々と連なる低い山の輪郭
でこぼこと陰を落とす岩肌までがはっきりと見て取れる。
34 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:10:31 ID:i5dXIzU50
やがて船はゆるやかに速度を落とし
すべるように船着場に近付き、ぴたりと動きを止めた。
船首から聞こえていた波を分ける音も止み
静かに自然の波に船体を踊らせている。
ほっとしたような、
一息つくような空気が船員の中から立ち込め、
それはパパスがタラップの方へ向かうと同時に
別れを惜しむ空気に取って代わった。
『パパスさん、元気でな』
『ぼうず、男だったらもう泣くんじゃねえぞ』
あちこちから船員の歓声のような声と
小さな拍手さえ聞こえてくる。
その瞳に笑みを湛えたまま、
パパスは船に向かって一礼した。
『船長、世話になったな』
『パパスさん、また乗ってくださいよ。
いつでも、待っていますんで』
『うむ。またいつか、世話になる時は頼む』
名残惜しげに談笑するパパスと船長の並んだ向こう側
タラップの下から、別の大きな声が聞こえた。
35 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:12:35 ID:i5dXIzU50
『船長、ルドマン様のお着きですよ』
なんだ?という表情で
パパスが船着場の方に視線を流す。
その体の隙間から首を伸ばすように下を覗き込むと
品の良い高価そうな衣服を纏った
恰幅の良い紳士が(これぞ紳士、って感じだ)
片手を挙げて船長に合図を送った。
『ルドマン様!お待たせしました!
・・・船の持ち主の方ですよ』
最後の台詞はパパスに向けて言い、頷くパパスの横
深々とお辞儀をした船長の頭の先から
大儀そうに紳士が顔を出す。
『この船に、乗り込むときが一番大変ですなあ』
人当たりの良い笑顔を顔いっぱいに浮かべて
紳士―ルドマンは失礼しますよ、と甲板に足を下ろした。
船員の表情に走る緊張感が
空気を伝って俺にも感じ取れた。
36 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:14:08 ID:i5dXIzU50
『久し振りの船旅ですわ。
胃がやられなきゃいいけどねえ。
船長、なるべく揺れないように頼むよ』
船長に向かって笑いかけるルドマンの後ろ
タラップの最後の一段を踏み越えられずに
父に助けを求めるようにひらひらと舞う小さな手を
ひょい、とパパスが抱えあげる。
『ちょっとお嬢さんには難しいようですな』
おやすいません、と振り向いたルドマンの前に、
上等なワンピースを身につけた少女が足を着いた。
青色の鮮やかな細い髪が
潮風になぞられてさらりと揺れる。
『すまんな。大丈夫かい』
問いかけにこくんと頷いて
少女は父の上着に顔をうずめた。
37 :
船
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:15:44 ID:i5dXIzU50
『あ、ありがとう・・・』
顔を上げないまま言ったその声は
俺の耳に辛うじて届く程度だったが
パパスはまた穏やかな、愛しそうな笑顔で少女に頷く。
『それでは、私たちはこれで』
小さく片手を挙げて
パパスは大きな足でタラップへと踏み出した。
船員の別れの挨拶が
あちこちから重なり合って船着場にこだまする。
動かすのがもどかしい小さな体を
やっとの思いでタラップの上に下ろし、
振り向かずに真っ直ぐ進むパパスの背中を追う。
最後にそっと振り返ると、動き出す船の上で
不安げに顔を上げた少女のふたつの瞳が
真っ直ぐにこちらを見ていた。
38 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/10/31(火) 10:17:22 ID:i5dXIzU50
船は以上です。
長くかかってしまいました。
早く戦わせてあげたい・・・
続きはまた。
39 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/31(火) 13:37:13 ID:kRMdjyXi0
新職人さん乙です。
改行入って読みやすくなったと思います。
これからどう展開していくのか、wktk
40 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/10/31(火) 19:35:11 ID:byO8WQ8U0
>>38
乙です
ここまでまとめました
ttp://ifstory.ifdef.jp/warehouse/index.html
41 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:11:48 ID:b2yQ2rzD0
寝苦しくて目が覚めた。
寝返りを打とうとしても何かに当たって動けない。
目を開けてみたら真っ暗だった。
全く何も見えなくてやばいくらい焦る。
いつもと違う事態に一気に目が覚める。
とにかく起きようとするが狭くてほとんど動けない。
どうも何かに閉じ込められているみたいだ。どうしてこんな状態なのか全く分からない。
確か昨日は・・・大学行って後はずっと2ch見てて・・・1時過ぎには部屋で寝たよなぁ。
俺なんかしたっけ?
「************、****」
考えにふけっていると人の声が聞こえてきた。
咄嗟に助けを求めて叫ぶ。
「******」
「**********」
「********」
俺の声に驚いたのか一気に騒がしくなる。
ガチャガチャと音がした後、目の前にあった天井が開いた。
ようやく起きれると立ち上がって周りを見わたして・・・・自分の脳を疑った。
42 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:13:00 ID:b2yQ2rzD0
そこは石造りの大広間だった。周りの人物も日本ではありえなかった。
玉座に座っている王冠被った爺さん、派手な服を何着も着込んでいるおっさん
鎧と槍で完全武装の兵士達、そして俺のすぐそばにいる帯剣した黒髪の少年と3つの棺桶。
その場にいる全員が俺を見て騒いでいるがこっちはそれどころじゃなかった。
いくら昨日『DQ世界の宿屋だったら』スレ見てたからって・・・。俺もう死んだ方がイイのかな。
自分の脳味噌が膿んでしまった事を嘆いてうつむいたら、そこにも棺桶があった。
ああ、そうなんだ。僕は棺桶に入ってたんだね。
「ふっざけんな何で棺桶なんだよ宿屋どころかいきなり死体扱いか!!」
キレて叫びながら棺桶を蹴ったら有無を言わさず少年に取り押さえられた。情けないが全く動けない。
「*******!!」「*****!」「**********!」
おっさんと爺さんが怒鳴り出し、兵士達に何か指示を出しているのを聞いてようやく言葉が分からない事に気付いた。
なんと言っているのか全く聞き取れない、日本語と英語でない事だけは分かるが全く救いにならない。
ショックで固まっていると兵士達に引き渡され、押されるようにして別の場所へと連行された。
連行された場所はどう見ても牢屋だった。牢屋に入るまいと必死に抵抗していると数人がかりで無理やり投げ込まれた。
俺を投げ込み、錠前をかけ牢番と幾らか話した後兵士達は行ってしまった。
何でいきなり投獄されなきゃいかんのだ。せめて事情聴取が先だろうが。
何とかして牢から出してもらうべく無理を承知で牢番に呼びかけ、謝って、事情を話して、謝って、怒鳴って、脅して、罵ったあたりで諦めた。
分かっていたことだけど言葉が通じない時点で説得できるわけが無かった。
やることが無くなったのでしばらく不貞腐れていると、眠くなったころに食事が出た。
ほとんど具の無いスープで味も素っ気も無かった。おまけに量まで無かった。
それでもありがたく完食し、その日は空きっ腹を我慢して牢屋で寝た。
ちなみに牢番は俺の呼びかけに対して完全に無反応を貫いた。驚くべき職業意識だと思う。
43 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:14:32 ID:b2yQ2rzD0
翌朝の目覚めは最悪だった。牢番に水をぶっ掛けられて無理やり起こされた。
鼻に少し入ってしまい随分咳き込んだ。
見ると牢番は他の牢にも水をかけて回っている。どうやら囚人を起こす事が目的みたいだ。
空腹のために2度寝もできず、ただ只管に暇だ。
考えれば昨日丸一日と今日もDQ世界?にいることになる。
これからもこの世界にいる事になるかもしれないので今までの事を振り返ってみる。
まず最初の部屋にいた爺さんは王様だろう。ということはこの国は王国になる。
なら爺さんを説得するなりできれば、牢屋から出してもらえるはずだ。
おっさんや兵士達は王様の部下だとしてあの黒髪の少年はどういう立場なんだ?
彼だけは普通の服を着てた。まぁ日本ではまず見ない服装ではあるけどそこは別の世界みたいだし。
それに俺が入っていた棺桶を開けてくれたのはあの少年だ。王の部下という感じではなかったな。
何者なんだろうか。中学生くらいに見えたが・・・。
3つの棺桶も気にはなるが死体を見たいわけではないので見なかったことにする。 するったらする。
それで次は・・・言葉。言語が違うのはもっともな話だけど、でもどうしろっていうんだ。
辞書も無いのに外国語なんか理解できるわけが無い。身振り手振りでどこまで通じるやら。先行き不安だ。
それから牢屋か。ベットらしいでかい木の箱と石畳の床、それから頼もしすぎる鉄格子と牢番。
本当になんだってこんな事になったのか。いきなり牢屋行きはやはり酷過ぎる。
最後は自分の所持品か。これはもう何回見ても2日前寝た時のままだった。
パンツ・ハーフパンツ・Tシャツ・ソックス。ソックスがあるのは最近寒かったからだ。
これが所持品の全て。他には道具も財布もなにも無い。
せめて眼鏡は欲しかった。俺はかなり目が悪い。
眼鏡がないと視界全てがぼやけてろくに見えない。室内ならまだしも屋外だとかなりきつい。
この世界にも眼鏡はあるんだろうか。無かったらどうしよう。
44 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:17:28 ID:b2yQ2rzD0
他に考えること・・・ 考えること・・・
後はこれからの事とかか。
例えば何とかして牢屋から出れたとしてそれからどうするか?
異世界に来たのであればいいが、俺の脳味噌がイカレてしまっただけという可能性もあるので下手な行動は取りたくない。
家族から見てすごく痛い人になっただけならまだしも黄色い救急車や官憲のお世話にはなりたくない。
だから犯罪沙汰になる行為は可能な限り避けたい。具体的には傷害とか窃盗とか殺人とか。家族に迷惑かけるしな。
しかし後ろ盾も無く職も金も無い状態で犯罪に触れずに生きていけるとも思えない。
本当に異世界に来たんだったら特に拘る気も無いが、それでも異世界に来たという確証は得たいし。
もしDQ世界に来たのであれば魔法か薬草辺りで十分だからこれは早いうちに・・・ん。
「************」
見ると牢番がこちらに何か話している。全く分からないが話しかけられたことが嬉しくてつい分かった振りをしてしまう。
するとすぐに俺の牢の前に人がやってきた。
45 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:18:12 ID:b2yQ2rzD0
昨日の王様とおっさんに少年、それと昨日の兵士達とは違う色の鎧を着た兵士がやってきた。王の護衛だろうか?
「***********」
王様達はやってくるとすぐに俺に話し始めた。雰囲気から察するにどうも質問しているようだ。
何度も話しかけてくるがやはり全く分からない。韓国語や中国語・スペイン語なら聞いたことはあるがどれとも違うようだ。
おまけに訛っているせいかめちゃくちゃ聞き取りにくい。
「*** *ル* *ルす」
こちらの様子から言葉が通じていないことが分かったのか少年が自分を指差しながら同じ言葉を繰り返す。
きっと名前だ。俺も彼を指差し彼の名前を言う。
『ルス』 「*ルス アルス」『ルス アルス?』
当たったのか少年が嬉しそうな顔をする。
「アルス アルス」『アルス アルス』「アルス」『アルス』
少年が笑顔で握手を求めてくる。握手しながら彼の名前を連呼する。馬鹿みたいだがとにかく嬉しい。
今度は俺が自分を指差しながら繰り返し名前を言ってみる。
『木原 健太』『木原 健太』「*** け**」「キ** ケ**」
アルスも察してくれたらしい。でも発音が難しいみたいだ。なので名前だけにする。
『健太』「ケンら?」『健太』「ケンツ?」『ケン』「ケン」
それでもうまく発音できなかったので名前も短くする。こんなのは通じればいいんだ。
お互いの名前が分かったのが嬉しくて握手しながら呼び続けてたら、おっさんが呆れた顔でこちらを見ている。
それに気付いたのかアルスが途端に大人しくなる。 少し寂しい。
46 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:19:17 ID:b2yQ2rzD0
アルスとのやり取りを見ておっさんが王様を指しながら繰り返し喋る。
先ほどと同じやり取りを何度も繰り返すが正直長すぎて殆ど聞き取れない。
おっさんもゆっくり話してくれてるのは分かるので聞き取れた箇所だけでも繰り返す。
さっきの何倍もの時間をかけて少しずつ近い音にしていく。
「*** ア*アハ* **ウ *イ」『アアハ ウィ?』「*** アリアハン *ゥウ *イ」『アリアハン?』
おっさんは俺を見ると溜め息をつき頷いた。どうやら王様の名前はアリアハンで正しいようだが・・・。
アリアハンか。アリアハンといえばDQ3の王国だ。すると此処はDQ3の世界になるのか?
DQ3は好きではあったけどクリアしたことないんだよなぁ。途中でセーブ消えるし。最後にやったのは何年前だろ。
「*******ルビス***」『ルビス ルビス』
考えこんでいると王様がこちらに何か話しかけてきた。ルビス神?精霊ルビスだっけ?もう殆ど覚えてない。
とにかく知っている単語が出たので笑顔で繰り返す。
途端に王様が真剣な表情になり牢番に命令した。命令を受けた牢番はすぐに牢の鍵を開け俺を出してくれた。
牢を出るとアルスが握手してきた。もう片方の手で肩を叩き何か話しかけてくる。
展開が理解できないままとにかく笑って手を握り返すと、アルスは手を離し王様に向き直りなにやら話している。
王様とおっさんが真剣な表情で二言三言話すとアルスは何処かへ歩いていく。
俺が呆けているとおっさんが怒ったような顔でアルスを指差し何か話してくる。
アルスを見やると手招きして俺の名前を呼んでいる。彼に付いて行けという事みたいだ。
異世界冒険というのは楽しそうだし、言葉も通じない上暮らす当てもない。
あれこれ理由をつけて頭をよぎる不安を振り払い、アルスを追いかける。
47 :
カラ虎
◆XoO/JGcPO6
:2006/10/31(火) 21:20:52 ID:b2yQ2rzD0
>>all
受信したのでやった。
反省はしていないが後悔はしている。
正直駄文スマソ
48 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/31(火) 21:29:38 ID:byO8WQ8U0
>>47
おつです!
このスレ知ってる、言葉通じない、な展開おもしろい
後悔しないで!w
ぜひ続きをお願いします
49 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/10/31(火) 21:52:43 ID:byO8WQ8U0
まとめサイト
「カラ虎 ◆XoO/JGcPO6」氏の物語を追加しました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
50 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/31(火) 22:31:14 ID:pPE4Dy0n0
>>38
ちょっと序章が長いがなかなか読みやすいので次も待ってる
>>47
言葉通じないの面白いな
アルスがうざいのがいいwwwww
タカハシ氏仕事早いねGJ!!
51 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/02(木) 11:25:58 ID:rbWKMTWfO
保守
52 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:26:16 ID:pDx9fa4G0
>>39
良かった。ありがとうございます
あんまり道筋からそれない展開になりますが
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
>>50
序章にのみならず
今後もガンガン長くなってしまっています。
すいません・・・
タカハシさん
本当仕事早いですよね
乙です。
>>37
続き投下します
サンタローズ編開始です。
53 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:27:07 ID:pDx9fa4G0
『あっ?パパスさん?パパスさんじゃないかい?』
船がゆっくりと離れていくのを見送りながら、
俺は背中越しに男の声を聞いていた。
『いやあ、無事に帰ってきたんだねえ。
よかったよかった。心配していたんですよ』
振り向くと、ただでさえ丸い顔を更にしわくちゃに丸めて
男がパパスの肩に手を置いていた。
懐かしそうに嬉しそうに
パパスが笑うとその手も上下に揺れる。
『わっはっは、痩せても枯れてもこのパパス、おいそれとは死ぬものか』
予想通りの台詞が
パパスの笑い声に混ざり合って俺まで嬉しくなる。
こんな台詞普通使わねーよバッカじゃねーのウケルー
とか思ってたテレビの前の俺、ちょっと死んでこい。
54 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:28:09 ID:pDx9fa4G0
思い出話に花を咲かせる二人の横をすり抜けようとすると、
パパスが顔を上げて『遠くまで行くんじゃないぞ』と叫ぶ。
片手を挙げて了解の合図を送り
俺はまず樽の調査に取り掛かった。
収穫は殆どなかったが、小さな手が幸いしてか
突っ込んだ樽の隙間から小銭を拾った。
大事にゴールド袋に滑り込ませる。
顔を上げると、風が海のにおいと草原のにおいを運んできて
俺は大きく息を吸った。
排気ガスに汚されていない空気なんて生まれて初めてだ。
こんな風なら少しは救われるかもしれない。この世界に。
俺はこの先を知っている。何もかもを。
忘れていることはあっても
憶えていることはそれより遥かに多いはずだ。
死ぬ人も。生きる人も。
今までデジタルでしかなかった
空想でしかなかった世界が、
初めてはっきりと自分の中に重くのしかかる気がした。
55 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:29:20 ID:pDx9fa4G0
「うん。お父さんと一緒に」
素直な子供を演じて言葉を返すと、おかみさんは、
『そういえばねえ、ずーっと前に
ここから旅に出た人がいるのよ。
ぼうやくらいの歳の小さな子と一緒にね。
パパスさんは元気かしら。懐かしいわねえ』
小さなお客に頬をほころばせながら
昔を懐かしむ眼差しで窓の向こうを見やる。
「それ、僕だよ。パパスお父さんと一緒に今船で来たんだ」
無邪気に聞こえるように
ゆっくりと言葉を選びながら言うと
おかみさんはまあ、と声にならない声をあげて
俺の顔をまじまじと見つめ、一層明るい笑顔を零した。
『ぼうやがあの時の・・・。じゃあパパスさん、
無事に探し物は見つかったんだね。良かったねえ』
つられて微笑むと、優しく俺の頭を撫で
おかみさんは俺にこんなものしかないけど、
と言いながら飴玉を握らせてくれた。
その手が暖かくて、俺はさっきの自分の考えを恥じた。
56 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:30:19 ID:pDx9fa4G0
例え夢でも、いや、夢だからこそ
俺の夢の穏やかな日常を、この世界を
壊そうとする奴を俺は許しちゃいけないんじゃないか。
俺は勇者にはなれないかもしれない。
けど、俺がこの世界を救おう。
あまりにもすんなりと、俺は誓いを立てた。
ゲーム脳で良かった、感情移入はお手のものだ。
この時ばかりは俺は自分の単純な脳みそに感謝した。
おかみさんに丁寧すぎるほど丁寧にお礼を言い
俺は改めて表に出た。
相変わらず太陽は眩しく世界を照らしている。
パパスは埠頭で主人と話し込んでいる。
俺は息を整えると、ゆっくりと港の出口へ向かった。
階段を上がる足が覚束ない。初めての戦闘だ。
生まれて初めての、実際の戦闘。
大丈夫。パパスがすぐに駆けつけてくるのはわかっている。
出口でもう一度深く呼吸をして
俺は草原へと踏み出した。
57 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:32:00 ID:pDx9fa4G0
本日一旦ここまでで
ありがとうございます
58 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/02(木) 17:49:05 ID:pDx9fa4G0
>>54
の次が
一区切り抜けてる・・・
非常に申し訳ないですが補填です
夢だ。夢。
誰が死のうと、殺そうと、全てはどうせ夢なんだから。
頭を振って不安を追いやって、
俺は港の傍らの小さな小屋の扉を開けた。
さっきの男のおかみさんか
小太りの女が忙しなく
小さな部屋の中を動き回っている。
外から見ると粗末な小屋も
中は綺麗に整えられていた。
窓際には、一輪挿しから伸びたピンク色の花が
申し訳なさそうに首を傾げている。
『あら、ぼうや今の船から降りたの?』
俺に気付いておかみさんが笑顔を向ける。
子供相手の、屈託のない笑顔。
59 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/02(木) 21:57:23 ID:rbWKMTWfO
応援します。時間がかかっても、必ず書き遂げて下さいね。
今後の展開がとても楽しみです。
60 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/02(木) 22:14:53 ID:PgWgNdu30
GJ!
ちょいちょい入る毒吐きがオモシロイ
DQ5をやったのは消防だったから読んでるとすげー懐かしい
続き期待
61 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/02(木) 23:50:52 ID:BciT6ADO0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
>>50
,
>>52
まとめサイトに自分の作品が掲載されると、やる気もかなり上がると考えます。
なのでなるべく、すぐに反映できるよう今後も頑張っていきます。
>>58
乙です
抜けた部分を補完して掲載しました。
62 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/03(金) 03:28:49 ID:FFMgrSTsO
うおおおおお!!!!タカハシも乙!!!
これぐらいしか言えないが頑張ってくれ!!!
63 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:00:19 ID:6+4jwphb0
>>59
ありがとうございます。
長旅になりそうな予感がしますが
大好きなシリーズなのできっと遣り遂げます。
>>60
感謝です
うわ、自分ではツマンネーかなって思ってたので
めっちゃ嬉しいです
自分も初めてやった時は消防でした。
タカハシさん乙です。
ほんとやる気出ます。モチベーション上がります
>>56
続き投下します
64 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:01:42 ID:6+4jwphb0
青々とした低い草の中
申し訳程度に均された道を辿っていく。
このまま寝転んで一休みしたら気持ちいいだろうけど
周りはモンスターの巣窟のはずだ。
低い草に紛れてどこからスライムが襲ってくるとも知れない。
スライムならまだいいけれど、
他のもう少しでもレベルの高いモンスターに遭遇したら。
今現状を考えれば
スライム相手にも致命傷をもらいかねないのだ。
慎重に辺りを見回しながら、
腰に巻きつけてあった木の棒を握り締める。
後ろを振り返るとまだ
港からは数歩の距離しか離れていない。
戻ろうかと思考を巡らせた刹那、
背後から甲高い鳴き声が聞こえた。
65 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:02:53 ID:6+4jwphb0
動揺し思わずたたらを踏みながら振り向く。
つるんとした質感の、
頭の飛び出た青い物体が、一、二、・・・三つ。
両端に飛び出した目と大きく開かれた笑っているような口で
辛うじて生き物だとわかる。
―――来た。スライムだ。
ピキキ、と鳥の鳴くような声を発して
右端の一匹が飛び跳ねた。
とっさに身を硬くするが
右膝に鈍い痛みが走る。
ゼリー状だって聞いてたけど、結構硬いじゃねえか奴ら。
頭の片隅で冷静な俺が呟く。
左端の奴がまた飛び跳ねるのを
思い出したように木の棒で叩き落すと、
スライムは地面で一回跳ねて体勢を立て直した。
66 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:03:52 ID:6+4jwphb0
やはり今の俺には、スライムさえ強敵に違いない。
警戒するように真ん中の奴が少し後ずさる。俺は息を呑む。
『サン!サン!大丈夫か!何やってる!』
後ろから不意に響いた怒号に
俺はやっと安堵の溜息をついた。
地面まで揺らすような足音を立てて
パパスが俺の元に駆け寄って来る。
『遠くへ行くなと言ったろう!全く』
俺を守るように立ちはだかるパパスの背中にも
安堵がにじんでいるのを感じて、
俺は思わずごめんなさい、と口にした。
パパスが二匹のスライムを切り伏す間に
難を逃れた別のスライムに一発食らったが、
最後は俺の一撃で三匹目のスライムも動かなくなった。
パパスが振り向き、何か呟くと
さっき受けた痛みが嘘みたいに引いていく。
ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。
幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。
67 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:05:21 ID:6+4jwphb0
『お前にはまだ外は危険だ。
今回はたまたま父さんが気付いたから良かったものの・・・
気をつけるんだぞ』
諭すように言いながら
パパスはスライムの亡骸を簡単に調べ始めた。
つるりと反射する三つの青い死骸から
慎重に何かを抜き取る。
『これはお前にやろう。
初めてモンスターに勝ったごほうびだ。
・・・良くやったな』
そういって笑顔で手渡されたのは、
キラキラと光る三枚のコインだった。
それを頷いて受け取り、ゴールド袋ではなく
小さなポケットに大事に押し込むと
俺はパパスの背を追って歩き出した。
つかテメー外に出ないと話動かねえじゃねーかよ。
と片隅の俺が思ったけれど、
それは心の奥にしまっておいた。
68 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:07:00 ID:6+4jwphb0
村はすぐそこだとパパスは言った。
俺には途方もなく遠く長い道のりに思えた。
幼い足は長旅に慣れているらしく
すぐに疲労を感じることはなかったが、
それでも村の輪郭が遠く
地平の向こうに見える頃には
足の裏は痛み、ふくらはぎもパンパンに張っていた。
パパスは俺の手を握ったまま
俺のペースに合わせて歩いている。
それは心地好い安心感だった。
けれど戦闘の一瞬、手が慎重に解かれるその瞬間だけは
言いようのない不安が俺を襲った。
痛恨の一撃を食らったらお終いだ。
死ぬことはないと解っているけれど
その一瞬の暗闇がどんなものかを想像すると
無意識に膝が震えだす。
村のゲートをくぐるその時まで、
不安は付き纏っていた。
69 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:08:07 ID:6+4jwphb0
午後の陽は傾き始めていた。
刻々と伸びていく自分の影を追いながら
緑の合間に見え隠れする村の風景が
少しずつ生気を増していく。
入り口のゲート脇の警備兵がこちらに気付き
一瞬の訝しげな表情を崩し、顔を輝かせた。
『パパスさん?パパスさんじゃないですか!戻られたんですね!』
満面の笑みで兵士がパパスに駆け寄る。
今帰った、とパパスが言い終わらないうちに
『そうだ!皆に知らせなきゃ!皆に挨拶しなきゃ!パパスさん!』
とパパスの手を引いて村の中に駆け出す。
パパスと繋いだままの手を強く引かれて
俺は慌てて歩調を合わせようと足を速めた。
『皆さん!みんな!パパスさんのお戻りですよ!』
村全体に響き渡るような大声で、兵士が叫ぶ。
何事かと顔を出した住民達が、パパスの顔を認めると
一斉に顔をほころばせるのが見えた。
老若男女。宿や商店の店員までもが
嬉しそうにパパスの元へ駆け寄り、無事を喜び、
俺の頭を撫でたり
感慨深げに顔を覗き込んだりしていった。
影が傾いていく。
70 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:10:00 ID:6+4jwphb0
それぞれに挨拶を済ませ
話し足りない風の村人をなんとかそれぞれの持ち場へと戻し
パパスはゆっくりと、踏みしめるように村の奥へと向かった。
奥まった場所の、古ぼけた一軒家。
質素だが手入れの行き届いた庭。
その向こう、家の玄関先で
小さなふたつの目いっぱいに涙を溜めて
喜びに歪んだ顔の太った男が深々と頭を下げた。
『旦那様。おかえりなさいませ』
『サンチョ。随分と待たせてすまなかったな』
その大きな右手を男の肩に乗せると
男の両目からぽろぽろと雫が零れ落ちた。
『ええ、ええ。旦那様。
生きて戻られると信じてはおりましたが、
この日をどれほどに待ち侘びたことか・・・』
最後は殆ど言葉にならなかった。
深い皺の向こうに長い苦労と不安が垣間見えた気がして
俺は眉間が痛むのを感じて俯いた。
71 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/03(金) 16:12:16 ID:6+4jwphb0
本日ここまでで
ありがとうございます。
ペースを速めたいんですがなかなか
思うように行きません。
だらだらと長くて申し訳ないです。
72 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/03(金) 17:45:27 ID:6qXddtK40
>>◆u9VgpDS6fg氏
文章の節々から5への気持ちが伝わってきます
>ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。
>幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。
不覚にもこの2文に目頭熱くなった
現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情、
この二つがない交ぜになった感じが面白いです
あんまり力まないで、出来る範囲で頑張ってください
続き楽しみにしてます
73 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/04(土) 00:14:27 ID:Q2s6duYE0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
74 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/04(土) 05:00:06 ID:HoiSU/fH0
タカハシGJ!!!
いつもすばやい対応に感謝です
75 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:01:41 ID:BeSJCz7+0
ご無沙汰すいません…
前スレ
>>652
の続きです…
76 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:04:05 ID:BeSJCz7+0
〜Jacob's Dreame〜
――――――――――――――――――1――――――――――――――――――――
夢から唐突に目覚めた朝の現実感の無さは何なのだろうか。
起きているのは分かっているのに未だに夢の中にいるような、ごちゃ混ぜの感覚。
フィリアはその虚ろな時をベッドの中でしばし過ごす。
夢の内容を思い返そうとしていると、逆にどんどんと現実が意識を支配していった。
毎日の習慣がそうさせたのだろうか。
寝床から抜け出し、身だしなみを整える。
当然誰も起きてはいない。
しかしそのような時間に起きるのがフィリアの普通である。
早朝のお祈りをするためだ。
それは小さい頃から欠かした事はない。
場所自体は特に選ばないが、太陽の当たる所が良い。
だから大抵は外に出る事になる。
ふと隣のベッドを見ると、今日も真理奈の寝相が悪いのに気付く。
最近はその寝相を正してやるのも習慣になってきた。
変な体制なのを直そうと体を動かすと、「むー」と眉をひそめるのも何だか楽しい。
真理奈がちゃんとあお向けになったのを確認して、フィリアは部屋を出る。
夜明け前は静かだ。
特に日が昇り、その光が大地や海を照らし始める瞬間は全ての音が消え去ってしまう。
フィリアはその時が何となく好きだった。
その時に神を見出しているのかもしれない。
船首に向かい、適当な所でひざまずき祈る。
目を閉じ、自分の心の奥に向かっていく。
やがて日の光が自分の体を包み込むまで。
77 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:05:22 ID:BeSJCz7+0
その時のフィリアはまさしく僧侶の名にふさわしく、美しささえ覚えるようだ。
真理奈のより若いフィリアの顔立ちは、幼さを残しつつも、整えられている。
髪は背中の真ん中辺りまで伸ばされ、一部の隙もない程ストレートだ。
しかし、真理奈と並べて見てみるとどうしても冷たい印象を受けてしまう。
と言うか、真理奈が明るすぎなのかもしんないけどさ。
ところで何を祈っているんだろう。
フィリアに聞いてみたいんだが、邪魔しては悪いしなぁ。
「お〜フィリアちゃん、めっけ!」
と言ってる側から、突然誰かがフィリアに抱きつく。
その言動からして真理奈しかいないんだけどね。
祈りの邪魔をされたフィリアだったが、動じる事はなかった。
顔を寄せてくるリーダーを若干鬱陶しいとは思っているようだが。
やはりまだ空は暗い。まだ目を開ける時間では無い。
ましてや真理奈が起きてくるなんて事は奇跡に近い。
「んわ〜」とか意味不明な事を口にしているのを見ると凄く眠そうだが、一応起きてはいるようだ。
「早いね」
「ん〜? 何か変な夢見ちゃってさぁ…」
そう言いながらワワワ〜とあくびをする真理奈。
「夢…」
フィリアは今朝の夢の事を思い出す。
やけに生々しく、記憶に残る夢だった。
何だかとても悲しかったような…
……
しかしまたしてもフィリアの思考は妨げられる。
そりゃ頭をスリスリと寄せられれば気にもなるというものだ。
78 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:06:36 ID:BeSJCz7+0
「どうして抱きつくの?」
「え〜? だってフィリアちゃんあったかいんだも〜ん。一人は寒いよ」
ならその格好をまずどうにかしろと言いたいところだが…
毛皮のコートを羽織ってはいるが、丈が足りておらず下半身は相変わらずあらわになっている。
「寒かったら抱きついてもいいの?」
「そうだよ〜」
「……」
そんな寝ぼけ眼の人に説得力も何も無いんだけどなぁ…
けれどフィリアは抱きつかれてるのに悪い気はしなかった。
その感触が心地よかったから。
「スースー……」
黙り込んだと思ったら、真理奈は抱きついたまま再び夢の中へ行ってしまったようだ。
フィリアはその背中にそっと手を回してみる。
「あったかい」
そして朝日が二人を包む。
79 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:08:40 ID:BeSJCz7+0
その数日前――
それはエジンベアの侵略を止め、さらわれた真理奈が無事に返って来てから数日後の事である。
「プレナさん色々とありがとうございます。船までもらっちゃって…」
「いいのよ。気をつけて行ってらっしゃい」
そうなのだ。ついに一行は船を手に入れたのだ。
しかもポルトガ製の新品で一級品だ。
国単位の購入でないと買えないくらいの値段で、普通はとてもじゃないけど手が出ない。
さすがにそこまでは…と断ったのだが、この町を救ってくれたお礼だと言ってプレナは聞かなかった。
しかしこの船があれば、これからの旅が楽になる事は間違いなかった。
プレナの押しにも勝てそうにもないので、ありがたく受け取る事にしたのだ。
そしていよいよ出発の日。
港口に浮かぶ船の前で真理奈とジュードはプレナと話していた。
フィリアは船内の準備をしているのだが、パトリスの姿はどこにもない。
「あ、そうだ! その代わりって訳じゃないけど……はいコレ!」
真理奈が袋からイエローオーブを取り出し、プレナに差し出す。
「受け取って下さい! プレナさんにとって大事なものだったんでしょ?」
「でも……」
「いいんです! ついでにプレナさんを連合大使に任命しちゃいます!!
私達と一緒にゾーマと戦いましょう!!」
「真理奈ちゃん……」
満面の笑顔で、そしてなお、力強い。
それを見れば勇気付けられるのはなぜだろうか。
そこに一片の迷いも無いからだろうか。
その向こうに未来を見れるからだろうか。
それに背中を押されたのか、プレナは手を差し出しオーブを受け取る。
80 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:10:19 ID:BeSJCz7+0
プレナができた勇者への唯一の恩返しの証。
それが自分の所へと返ってきたのだ。
数日前に見た時は辛かった昔を思い出したが、今は違う。
こうして手にすると、勇者にありがとうと言われている気がした。
イエローオーブの輝きはあの頃とまったく変わらずそこにあったのだから。
思わず涙が溢れてくる。
「おいおい勝手に決めるなよ。プレナさんにだって都合があるんだからよ。
だいたい、ついでってのは失礼だろ?」
「い〜のっ! ね〜プレナさん!」
「えぇ、もちろん。その役立派に果たしてみせましょう!」
「やった!」
涙を拭いながら返事をするプレナ。
嬉しそうな真理奈と、その後ろで「何がいーんだか」と呆れているジュードの対比が可笑しい。
「ええっと、連合はこの世界の平和の為に国同士の連携を図る目的で結成されています。
連合参加にあたっては情報交換や武器・防具・アイテム類の交易、
さらには人材派遣などを通して魔物との戦いを有利に進めていければ、と思います。
あぁ、でもそういうのはプレナさん得意そうだから安心ですね」
「おぉ〜!!」
真理奈が一息付いたところで、ジュードが感嘆の声を上げる。
しかし少し小馬鹿にした感じも含まれている。
「…何よ」
「いや? お前がちゃんと仕事してるから凄いな〜って感心したんだよ」
「ふふ〜ん。まぁね」
「丸暗記だけどな」
「うっ…うるさいなー」
「ふふ。分かりました。この町はもちろん、スーの村の皆も協力は惜しまないでしょう」
「良かった。よろしくお願いしますね」
81 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:13:19 ID:BeSJCz7+0
「……ところでその連合にはエジンベアは参加しているの?」
「まさか。そんな話をするどころじゃありませんでしたよ」
「ならその役目、私に任せてもらってもいいかしら?」
「それは願ってもない事じゃな」
これ以上無いタイミングでパトリスが突然現れる。
狙ってやがったな。
「おじいちゃん! どこ行ってたの?」
「ん、エジンベアじゃ」
「何してたんだよ。朝からいないと思ったら…」
「すまんのう。その代わりニュースを一つ。エジンベア王が生きておったわい」
「え?!」
「一命は取り留めたんじゃが、精神的にまいっているらしい。
まぁやら命の石というアイテムのおかけで助かったようじゃな」
「へぇ〜よく分かんないけど」
持ってて良かった命の石。
とか言う標語は無いけど、レアアイテム収集がそんなところで功を奏すなんてな…
(元気になったら絶対ブッ飛ばしに行こっと)
とは、真理奈の心情。王様…ある意味可哀相だな。
「あの王はともかく、エジンベアの国力は魅力じゃ。
連合の意向に同調してくれるならそれに越した事はないじゃろ」
「えぇ、良く話合えば分かり合えるでしょう」
「本来なら我々の仕事なんじゃがな……」
「いえ、どちらにせよエジンベアとは手を取り合いたいと願っていたのです。
ましてやそれが世界の為となるのなら喜んで」
82 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:16:25 ID:BeSJCz7+0
「ありがとうございます。
あとの詳しい事はアリアハン、及び諸国と連絡を取っていただければと」
「分かりました。世界の平和、必ず我々の手で」
「おー!!」
「ピー!!」
腕を振り上げ、飛び上がる真理奈。ブルーも真理奈の肩で飛び跳ねる。
……
ブルーの事ずっと忘れてた……
この前の戦闘シーンでまったく出番なかったよね。ゴメンね…
激しい炎でも使えれば活躍出来るんだけどなぁ〜(それはドラクエ5です)
しかしこれでエジンベアの事はプレナに任せて、次の目的地へと出発できるね!
さっそく新しい船に乗りこもうとする真理奈をプレナが引き止めた。
「はい?」
「真理奈ちゃん、この世界の下にもう一つ世界があるって知ってる?」
「え?! 知りません…地下帝国ですか?」
何の影響ですかそれは。プレナも分からないようで苦笑する。
83 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:17:26 ID:BeSJCz7+0
「かつて魔王ゾーマはその世界から全世界を支配しようとしたのよ。
私も行った訳じゃないから実感なんて無いけど…
けど勇者が行ったんだから、違う世界があるっていうのは信じてもいいみたい」
「ほぉ〜凄いですねぇ〜」
「うん。だから真理奈ちゃんの世界もどこかで繋がってるのかもしれないって思ったの。
だとしたら、戻れる可能性はあるんじゃないかって。
一方通行な訳無いと思うし。
それに真理奈ちゃんが出会ったゾーマを名乗ったその人もその世界の人なら、
もしかしたら何か知ってるかもしれないよ」
「お〜なるほど! さすがプレナさん。考えもしませんでしたー。聞いてみますね!」
「うん!」
真理奈の元気な声を聞いて安心するプレナ。もうすっかり大丈夫みたいだ。
しかし聞いてみますってアンタ…
魔王と話し合いをするっていうのも、ちょっと考えると何だかシュールな気がするよね。
「じゃあ行きますね。色々とありがとうございました」
一人ひとりプレナと握手を交わして、一行は出発する。
やはりパーティーというのは良いものだとプレナは改めて思う。
ほんの少しだけあの頃に戻ったような感覚に陥り、勇者と別れた日の事を思い出す。
「勇者……会いたいな。うん、今度会いに行こう」
プレナは船が見えなくなってもしばらく海を眺めていた。
84 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 18:23:16 ID:BeSJCz7+0
今回はここまで
まず長い間行方不明になっていた事をお詫びします…
また物語の続きを書いていきます。
そして新人さんたち始めまして!
どんな物語になるのか楽しみにしてるのでよろしくです。
あとは避難所にて
85 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/04(土) 19:06:02 ID:nbtBpB8L0
うわ…一番最初に入れる文が抜けてた…
タカハシさんまとめの際、〜Jacob's Dreame〜の下に↓の文を挿入を
よろしくお願いします。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
どんどん自分の中の好きって気持ちが大きくなっていく。
抑えきれなくなりそうなくらいに。
あなたの声を聞くだけで満たされる。
あなたの事を思うだけで眠れなくなる。
あなたの存在を感じるだけで幸せになる。
でもこの恋は許されない恋。
誰からも認められず、誰からも祝福される事はないだろう。
だからこの気持ちは消さなくちゃならない。
他の人にバレないように、自分の心の中だけで止めて、ゼロに戻そう。
そうすれば彼は私より良い人を見つけて、今よりもっと幸せに…
そう幸せな日々を送れるはず。
だから私は忘れます。
そして姿を消します。
この妖精の村のように。
あぁ、あなたに会いたい……
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
86 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 01:31:36 ID:jLhwfUH20
>>85
おかえりです
指定していただいた一文を教えていただいた箇所へ挿入し、まとめました。
意図と違った場合は指摘してください。
まとめサイト、ここまで更新しました
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
87 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:40:21 ID:jLhwfUH20
以下の前スレからの続き
http://ifstory.ifdef.jp/log/ifyado_log007.html#R822
〜第五部〜
●魔王ゾーマ
不気味に唸る城
それはライフコッドより北に位置し、魔物を押し込めるおぞましい建造物
「ゾーマ様」
サタンジェネラル
魔王の直ぐ側へ仕える魔物
その言葉に、詠唱を止める魔王ゾーマ
広い一室
魔王が"いのちの源"から力を引き出す為に作らせた、特別で無機質な間
魔物達からは"祈りの部屋"と呼ばれ、魔王に許された者しか立ち入ることが出来ない
そして、サタンジェネラルは入室を許された一人
「何用だ」
声をかけた魔物には一瞥もくれず、魔王は返答する
「は… 私が言うことではないと思うのですが…」
サタンジェネラルは戸惑い、言葉を繋げられずにいる
その気配を感じ、魔王が聞く姿勢を見せた
88 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:41:15 ID:jLhwfUH20
「言ってみろ」
「は…」
床へ片膝を付けたまま、サタンジェネラルは話し始める
「ゾーマ様はもうすでに全てを超えた力を持ったと、私は思います
もうそれ以上"いのちの力"は必要ないのでは、と…」
魔王が目を瞑り、高揚したサタンジェネラルは更に続ける
「その力は危険すぎます!
"いのちの力"だからでしょうか、その… 力として使うには純粋すぎるのです!
ですから─」
「聞け…」
サタンジェネラルの言葉を遮る魔王ゾーマ
遮られた本人は相当の覚悟を決め進言したのだろう
頭を下へ向けたまま上げることが出来ずにいる
「私は… 闇雲に力を取り込んでいるわけでは、ない」
魔王は決して、己の部下である魔物に対し罰を与える事が無かった
だが、サタンジェネラルは怯えた
それは魔王ゾーマの行動に、異を唱えたからに他ならない
過去に、主の行いを疑問に考える者は皆無だったからだ
「しかし、お前の気遣いに答えようと思う」
これまで行動の理由など、一切を話す事がなかった
それは残された側近がサタンジェネラルだけになった事も、あったのだろう
側近アトラス、バトルレックスは既に倒されている
89 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:42:03 ID:jLhwfUH20
「私は数百年、いやもっと過去であっただろうか…
ルビスの遣いと戦った事がある
その時も私は究極であった…!」
空気が、変わる
普通の人間なら気を失いかねないほどに強烈な、威圧感
「あったにも拘らず、私は倒され意識だけの存在となり…
その後"いのちの源"へ吸収されることもせず、彷徨った…
冷たく、永く、遠い時間を さまよったのだ……」
サタンジェネラルは物言わず、ただただと聞くだけ
「ある時、見つけたのだ この"いのちの源"には輝く力が蓄えられていると…
そしてその力を利用する術を!」
「私はいま、そうして我が身へ取り込み、何者も敵わぬ力を手にしている」
「だが─ だが! ルビスの遣いはソレを上回ることが出来る!」
ドンと、魔王の気に押されるサタンジェネラル
「過去、己の力を過信しすぎ私は斃れた」
「その過ちは二度と! …私は力を取り込み続ける」
「神など、もはや敵ではない」
「人間だ 神々の加護を受ける人間なのだ」
90 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:46:01 ID:jLhwfUH20
サタンジェネラルは思う
"なぜ、神の加護を受けたあのタカハシという人間を殺さなかったのか"
"確実に、グランバニア南で殺せていたはずだ"
わからなかった
自ら恐ろしい敵だとしながら、生き長らえさせる理由を、知りたいと思った
「それはな…」
心を読まれ狼狽するサタンジェネラル
「私は完璧として存在する必要がある
あのルビスの遣い… タカハシと言ったか、やつはまだ完全な力を発揮できていない
完全な力を倒さねば、真に完璧とは言えぬのだ…」
91 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:53:50 ID:jLhwfUH20
サタンジェネラルが去り
"祈りの部屋"へ一人、魔王はその天井を見上げ、考えていた
決して見せてはならない、側近へ語ったモノとは違う、本心
やがてここへやってくるであろうルビスの遣い
取り込む力としてだけ生かしたつもりであったが─
"いのちの源"を取り込むほどに、我が身の運命とは…
果たして、変えられぬ物なのか
私は滅ぶべき存在だというのか
そのような意識を私に齎らすものは
魔の繁栄を阻む生命の記憶…
ならば試さねばならない
私はだが、破れはせぬ
万有の力を、この手に─
92 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/06(月) 03:54:39 ID:jLhwfUH20
今日はここまで。
93 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 17:55:31 ID:bBLweRls0
>>72
ああ、ありがとうございます。すごい嬉しいです。
>現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情
これは結構、自分的にテーマの部分でもあったりするので
伝わってるんだって事がわかって感動しています。
今はまだ勢いがあるんで大きいこと言いますが
自分も楽しみながら、ゆっくり頑張りたいと思います。
>>暇潰しさん
乙です!
真理奈さんかわゆす。(こればっか)
やっぱ会話のテンポ凄いですね。
参考にしたいけど自分の文章じゃ厳しかったり・・・
>>タカハシさん
乙です!
重々しくなる空気がたまりません。
ドキドキしながら読んでます。
続き楽しみです。
自分も頑張ります。気が引き締まります。
>>70
続きです
94 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 17:56:47 ID:bBLweRls0
やっと部屋に落ち着いても
サンチョはひとしきり泣いて
ひとしきり喜びの言葉を口にしていた。
パパスはひとつひとつに頷いて、
苦労をかけたな、と一言だけ口にした。
子供として掛ける言葉が見つからず
ただそれを眺めていると
階上から小さな足音が聞こえた。気がした。
『おじさま、お帰りになられたのね!お帰りなさい』
階段の手すりから顔を覗かせて
綺麗なブロンドを両耳の上で括った少女が
弾けるように笑顔で階段を飛び降りた。
着地でぐらつき、照れたように頬を赤らめる。
姿を見なくても解った。ビアンカだ。
95 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 17:57:35 ID:bBLweRls0
『サンチョ、この子は』
『あたしの娘だよ。パパス、久し振りだねえ』
大きな体を億劫そうに揺らしながら
パパスと同年輩の女がゆっくりと階段を下りて来て言う。
『おかみじゃないか、隣町の宿屋の。
じゃあこの子はビアンカちゃんか。いや、大きくなって』
少女とおかみを見比べるようにぱちぱちと目を瞬き
パパスが驚きの混じった笑顔を浮かべる。
『じゃあダンカンも来ているのか?』
問いかけにおかみは困り笑顔を浮かべ、
『それがあの人ったら、病気で臥せっちまってね。
ちょいとこっちまで薬を貰いに来たんだよ』
『折角なので寄っていただいたんですよ。
旦那様も私も、お世話になっておりますので』
いつの間にかすっかり涙を拭いて、サンチョが口を割る。
96 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 17:58:35 ID:bBLweRls0
おかみが椅子につくと同時に、
隅でもじもじと足元を見ていたビアンカが俺の腕を小突いた。
『ねえ、上に行かない?大人の話って長くって』
こくんと頷くとビアンカは
じゃあ行きましょ、と俺の手を取った。
今の俺と変わりない小さな手。
その温かさになんだか俺は妙にほっとした。
なんとなく、ゲームの中でやっと
気を許せる相手を見つけた気がした。
思考が幼児化しているな、と気付く。
ビアンカ―この幼い少女を
同年代の相手と無意識に認識している。
感情移入もここまで来ると少し危うい気がして
俺はほんの少し気を引き締めた。
97 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 17:59:41 ID:bBLweRls0
本棚とベッドだけの小さな二階の部屋に上がると
ビアンカは周りを見回して『ここって何もないのよね』と洩らした。
と、くるりと振り向き俺の両手を取って
『ね、あたしのこと覚えてる?
前にうんとちっちゃい頃、会ってるんだから。
でもあんたはもっとちっちゃいから、覚えてないかな』
にこにこと子供をあやすように語り掛ける。
曖昧に頷くとふん、と溜息をついて
『あたしはあんたよりふたつも、お姉さんなんだからね?』
と両手を腰に当て、
威張れる相手を見つけた幼子の
小さな威厳に満ちた瞳で俺の目を真っ直ぐ見下ろす。
『そうだ、ご本を読んであげるわ。お姉さんだもの』
綺麗に編み込まれたブロンドを揺らして
ビアンカは本棚に向き直った。
『どれがいいかな』と口元に指を当てる。
自分より僅かに身長の高い少女の隣について
俺は読めもしない本の中から適当に「これ」と指差した。
ビアンカの瞳が輝く。
98 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 18:00:45 ID:bBLweRls0
『仕方ないわね。じゃあそれにしましょ』
大儀そうに分厚い本を抱えてベッドの上に開き置き
うつ伏せに寝転んでぽんぽん、と自分の隣を示す。
やはり高く感じるベッドによじ登ると、
俺は少女に倣って隣にうつ伏せた。
ビアンカは満足そうに頬づえを付いて足を揺らし
鮮やかな挿絵のページを繰っていく。
ビアンカが体を動かすたびに
ブロンドの一本一本がくすりと俺の頬を撫でる。
『そら・・・うーんと、そ、ら、に、・・・く、せし・・・難しいわ』
小さな額に皺を寄せてビアンカが整然と並んだ文字を追う。
あまりに一生懸命な少女の姿に
俺は思わず沸いてくる笑みを抑えた。
『ビアンカ、降りてらっしゃい!そろそろ戻りますよ』
押し黙って文字を追う最中
階下から聞こえた声にはっと顔を上げて、
『残念だわ、宿に帰らなきゃ。ご本はまた今度ね』
ほっとしたようにビアンカが笑う。
99 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 18:01:35 ID:bBLweRls0
本を閉じ小さな手を俺の額に重ねて、
『また遊びに来るわ。あんたも字を覚えるといいのに』
もう一度にっこりと笑うと、
少女は本を抱えてベッドを降りていった。
本棚の隙間に分厚い本を押し込み
階下へと降りていくビアンカの背中を見送ってから
俺は体を起こした。
刹那、どすん、と大きな音がして
階下から大人たちの笑い声が響く。
『ごめんなさいね、この子ったらもう』
笑うおかみさんの声を聞きながら階下を覗き込むと
階段の真下、尻餅をついたままの体勢で
ビアンカがけらけらと笑っていた。
俺の視線に気付き
照れ臭そうに唇だけでやっちゃった、と言うと
ひょい、と身軽に立ち上がる。
挨拶もそこそこに扉をくぐると
宿まで送ろうかと言うパパスの申し出を丁寧に断り
二人は薄暗闇の中手を繋いで帰っていった。
100 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 18:03:43 ID:bBLweRls0
階段の一番上に座り込んで
暫く大人二人の会話に聞き耳を立てる。
今までの旅のいきさつと、サンチョを気遣うパパスの言葉。
特にこれと言って収穫はなく
立ち上がろうかと言うところで
物音を聞きつけてパパスが口を開いた。
『なんだ、サン、まだ起きているのか?』
そっと立ち上がって階下に顔を出すと
サンチョが丁度腰を浮かせたところだった。
『ぼっちゃん、お疲れでしょう。今日はもうお休みになられますかな。
旦那様、少しお待ちくださいね』
笑顔で俺を抱き上げ、ゆっくりと気遣いの速度で階段を上がる。
サンチョの腕は温かく
パパスのそれとは少し違った力強さだった。
戦いに出る男と、帰る場所を守る男。
その違いだろうかと、心地好く押し寄せる睡魔の中で思った。
101 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/06(月) 18:06:40 ID:bBLweRls0
本日ここまでで
ありがとうございます。
なんだか今週は多忙になりそうです
できるだけ書いていきたいんですが・・・
102 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/06(月) 19:35:00 ID:4Q9Ure2B0
サンタクロース
103 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/06(月) 19:57:33 ID:AxHATyFf0
【中米】オルテガ元大統領の16年ぶり政権奪還が焦点【ニカラグア】
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1162641046/
104 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/07(火) 01:05:08 ID:XxdT4ElxO
>そ、ら、に、・・・く、せし・・・
未だにこの穴埋めができなくて気になるなぁ
105 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/07(火) 01:35:44 ID:bIVIv2sb0
空にそびえる鉄の城のくせして生意気なんだからっ!
べ、べべべ別にあんたのこと心配して言ってるわけじゃないんだから、勘違いしないでよねっ!(////)
by アフロダイA
106 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/07(火) 01:48:19 ID:x2QP7WR90
>>105
バロスwwww
107 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/07(火) 04:46:03 ID:nTNgDsiZ0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
108 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/07(火) 09:28:28 ID:65YWBc/B0
>>104
尻尾巻いて過去のサンタローズへお帰り
109 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/08(水) 06:58:43 ID:GPmkFC2Y0
>>91
からの続き
●なれはて〜世界
肌色に伸びる螺旋の建物
ルビスはテリーとミレーユのなれはてを、感知していた
「ありがとう テリー…
貴方達は死んだわけではありません
ただ少しの間、眠るだけです 本来の世界が創り直されるまで」
ベッドに横たわるタカハシは
まだ変化を見せてはいない
「タカハシ 早く戻ってきてください
もう、もう時間がありません…
これ以上、魔王が力を持ってしまうと手遅れに……」
答えることなく眠るタカハシ
彼はいま、己を自ら縛りつけ─
"静寂の想い"は静静と─
110 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/08(水) 06:59:28 ID:GPmkFC2Y0
●混濁
佇む心
身体は微塵も動かせず
動かす意思も無く
「俺が殺したんだ…」
何万回目の同じ言葉か
思考は一つに支配され
両の手で膝を抱えたまま
固く硬い柔らかな空間
突然、異世界へ飛ばされ
見た事も聞いた事も無い世界での毎日
その日常の中ではっきりと"生と死"を感じ
闘いの中へと身を置いて来た
今まで意識もしなかった
見慣れた景色のように
自分の手で生き死にを決定する世界
己の身を守るため
誰かを守るため
慣れない世界で剣の腕を磨き
不可解な理由で旅する事を強要され
それでも懸命に歩いてきた
それが自分の世界へと戻る唯一の方法であったから─
111 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/08(水) 07:00:04 ID:GPmkFC2Y0
旅のある日
見知らぬ男と出合った
それは混沌の根源、魔王ゾーマ
魔王との闘いのさなか
彼は仲間を斬った
まやかしに踊らされ殺した
気付いたときは手遅れで
自らの愚かさで─
無理も無い事だった
彼は閉じ篭り
感情を表に出す事に怯える
なぜ
今の現状はあるのか
その理由を求め
二度と戻ることの無い
久遠の旅路へ踏み出そうと していた
知る事のない理由を
知る事が出来ないと知る為に
112 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/08(水) 07:00:38 ID:GPmkFC2Y0
今回はここまで
113 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/08(水) 19:23:19 ID:jAK3WVCo0
XoO/JGcPO6の物語は永遠のアセリアを思い出すなぁ
114 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/09(木) 09:40:08 ID:QAi4u4AwO
☆湯
115 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/10(金) 08:16:05 ID:NwJA3Cv2O
補習
116 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:52:57 ID:+86UdIN/0
みなさん乙です
>>100
から続きいきます
117 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:53:47 ID:+86UdIN/0
目が覚めたらもとの俺の部屋で
コントローラを握ったまま眠っていた―――
なんて都合のいい展開を期待していたけれど
目を開けるとそこは昨夜眠りについたままの簡素な寝室だった。
掌は相変わらず小さく、階下からは
食卓の準備をしているのだろう
食器のぶつかるような音が聞こえる。
ほんの少しだけ落胆した後、
俺は起き上がって簡単に身支度を整えた。
階下に下りると既に食事を終えたパパスが
のんびりとカップから飲み物を啜っているところだった。
『おはよう、サン。良く眠れたようだな』
笑顔のパパスにおはよう、と小さく挨拶すると、
『随分お疲れだったんですよ。ぼっちゃんはまだ小さいんですから。
すぐに朝食をお出ししますからね。少しお待ちください』
使い終えた食器を片付け、
新しい食器を棚から下ろしながらサンチョが笑う。
118 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:54:29 ID:+86UdIN/0
最後の一滴を飲み終えるとパパスは
傍らの荷物袋を手にすると一息吐く間もなく立ち上がった。
『サン、父さんはちょっと出かけてくるからな。
いい子にしているんだぞ』
『おや旦那様、もうお出かけですか。
折角ゆっくりなさられるかと思ったのに』
『うむ・・・、もう一仕事終えれば落ち着くからな。
すまないがサンチョ、留守を頼む』
困ったように頷き、サンチョは扉の前までパパスを見送った。
お気をつけて、とその背中に投げかけて、俺を振り返る。
『まったくお忙しいお父上ですな』
にこっと笑う笑顔につられて俺も微笑む。
さあ食事ですぞ、と出された料理は
ジャンクフード慣れしていた俺の舌に驚くほど美味かった。
ふた皿分をぺろりと平らげ、
ジュースのような甘い飲み物を飲み干し
一息つくと俺は
「探検に行ってくる」
とサンチョに言い残し家を出た。
119 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:55:13 ID:+86UdIN/0
今日は少し雲が多いようだった。
太陽が時折雲間から顔を出し
家々をなぞるように照らしていく。
俺はまず基本中の基本
村中の樽の探索から始めることにした。
小さな村とはいえ建物の数はそこそこある。
けれど屋外の樽や壷からは
残念なことにめぼしい収穫はなかった。
気を取り直して入り口側から順に屋内の調査に取り掛かる。
とりあえず一番近場の平屋の扉を開けると
キッチンから若い女があらあ、と笑いかけた。
『パパスさんの。ぼうや今日は一人なの?』
作り笑顔で応えると、
女はにこにこと近寄ってきて俺の目の高さまで屈んだ。
『ぼうやも大きくなったわねえ。
ぼうやがお父さんとこの村に来たときは
まだこーんな赤ちゃんだったのよ?早いものねえ』
身振りを添えながらゆっくりと話し、俺の頭を撫でる。
120 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:56:03 ID:+86UdIN/0
正直、やりにくいな、と思った。
ゲームならこっちからコマンドを入れない限り
相手は俺がいないと同じ振る舞いをするのに。
こう話しかけられると簡単にタンスの中なんて漁りにくい。
子供の無邪気さを武器にしたって
勝手に他人の家を荒らせば咎められるに決まっている。
面倒くさいな。
そう思ったところに後ろから老人が語りかけた。
『パパス殿はここに来る以前は
一体何をしておったんじゃろうなあ。
わしが見るに、あれは只者ではない筈じゃよ。
ぼうやは小さすぎて、昔のことは覚えておらんじゃろうがなあ』
『おじいいちゃんてば、
昨日パパスさんが帰ってからあればっかりなの』
くすくすと小声で笑い、
『きっとおじいちゃんはパパスさんに夢を見てるのね。
おじいちゃんも、昔は旅をしていたらしいから』
耳元でささやくと、女はおじいちゃんお薬は?と
老人に向かって立ち上がった。
121 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:57:25 ID:+86UdIN/0
王様だよ
と言ってしまおうかと思ったけれど、まあやめておいた。
突っ込まれても困るし
パパスが隠しているんだから言うべきではないだろう。
子供の幻想だと笑い飛ばしてくれる可能性もあったけれど
面倒ごとは起こさないことに今決めた。
老人と女のやり取りを尻目に、
俺は奥の引き出しに目をやる。
めぼしいものは、外から見た限りでは解らなかった。
引き出しを開けてみる度胸もなく
俺は「探検の途中だから」と
目一杯無邪気に言うと、家を後にした。
122 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:58:16 ID:+86UdIN/0
本日ここまでで
ありがとうございます
ではまた
123 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:10:11 ID:1aF9bmVI0
>>122
お疲れ様でした。8スレ目では始めて投下するレッドマンです。
今後もよろしくお願いします。
124 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:10:54 ID:1aF9bmVI0
もょ「おはよう。タケ。」
タケ「もょ、起きたのか。昨日はお疲れ様。」
もょ「さすがにきょうはタケにまかせるぞ。かなりつかれた。」
タケ「それは無理もあらへんな。もょにビッグニュースがあるんよ。」
もょ「どうした?」
タケ「俺も呪文が使える様になったんや。」
もょ「ほ、ほんとうなのか!?」
タケ「ああ、さっきゼシカに魔力を引き出してもらったんよ。しかし俺等の場合はどうなるんやろな?」
もょ「う〜ん・・・・おれにじゅもんをうたせてくれないか?」
タケ「ええけど。ただ一発分しか打てへんからな。」
俺達は外に出た。
もょ「しかしいったいどんなじゅもんなんだ?」
タケ「サマルのギラやリアちゃんのヒャド、ムーンのバギに比べたらかなり劣るんやけどな。」
もょ「そうなのか。」
タケ「メラって言う呪文なんだけど取り合えずやってみてれへんか。」
確かゼシカが言うには『呪文を打つ時は集中力を高めて唱える。』って事らしい。
とりあえずもょもとに唱えさせたのだが全く反応が無い。
もょ「あれ!?なんにもでないぞ?」
タケ「じゃあ俺がやってみよか。」
俺が集中力を高めてメラを唱えたが直径30センチくらいの火炎球が出てきたのだ。
125 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:12:05 ID:1aF9bmVI0
タケ「おおっ!!やっぱ使えるで!!」
もょ「じゃあなんでタケだけがつかえるんだ?」
タケ「ゼシカが言うには実戦で呪文に揉まれたから使えるようになったって言っていたで。」
もょ「じゃあおれもつかえるするはずだぞ。」
タケ「もょの場合は生まれつき呪文が使えない体質かもしれへんな。」
もょ「そうなのか・・・・・・・・・」
もょもとも流石にショックを受けたようだ。
タケ「まぁ、気にすんなや。そんなに落ち込む事はないやろ。」
もょ「しかしなぁ・・・・・・・・」
タケ「アホか。お前は呪文を使えない代わりに常人には無い力とスピードがある。人間皆個性があるって言うこっちゃ。」
もょ「な、なるほど。おれはおれらしくすればいいんだな!」
タケ「そやで。判り易く言えばもょはスピードは最低でもククール並み、パワーはヤンガス以上って所やな。ある意味最強の戦士や!」
もょ「ほ、ほめすぎじゃないのか?」
タケ「おう。褒め過ぎやで。」
もょ「まったくタケはひどいやつだなぁ。」
タケ「オマエモナー。実際の話二人と戦って俺なりの判断やけど。まぁ、ええんちゃう?」
しばらく話し込んでいるうちにムーンがやってきた。
126 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:13:59 ID:1aF9bmVI0
ムーン「おはよう!もょもと!」
タケ「おはよ。やたら元気がいいな。」
ムーン「あたりまえじゃない。新しい朝は希望の朝って言うでしょう?」
タケ「それもそうだな。しかしムーンがうかれるって珍しいな。」
ムーン「実は船を提供してくれる人が見つかったの!」
タケ「マジ!?」
ムーン「詳しい事はシャールさんが話してくれるのだわ。」
タケ「わかった。とりあえず旅立つ準備をしようか。サマルとリアちゃんを呼んできてくれ。しかしムーンも手際がいいな。」
ムーン「そんなのあたりまえじゃない!ほらほら!さっさと準備するわよ!」
ムーンは去っていった。
宿屋の玄関で待っていたらシャールがやってきた。
シャール「やぁ。もょもと。おはよう。」
タケ「どうも。おはようございます。」
シャール「君のおかげで何とか上手くいったんだよ。ありがとう。」
タケ「ええッ!?本当ですか!?」
あんな励まし方で上手くいったのかよ・・・・・・?
シャール「まぁ大目玉は喰らったんだがな。それはともかく親父が船を貸してくれるんだそうだ。」
タケ「それは助かります。しかし流石に無償って言うわけには行きませんよ。」
シャール「わしも何か対価が必要ではないかと思っていたのだがその点は親父が別に構わないって言ってくれたんだ。」
タケ「本当にありがとうございます。上手くいって良かったですね。」
シャール「その前に親父とマリンに会ってくれないか。どうしてもお礼がしたいらしいんだ。」
タケ「それは構いませんよ。同行させていただきます。」
127 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:15:24 ID:1aF9bmVI0
*「おおっ!!もょもと!シャールが世話になったそうじゃな。父として礼を言わせてもらいますわい。」
タケ「とんでもないですよ。私も命を助けられたんですから。」
マリン「ありがとう。お兄さん。お父さんが戻ってきてすごくうれしかった。」
タケ「親父が無事でよかったな。」
俺はマリンの頭を撫でた。
マリン「えへへ。」
タケ「話は変わりますが本当に無償でよろしいのですか?」
*「ああ。もょもとなら構わんぞ。わしら家族の『絆』を戻してくれたんじゃからな。」
シャール「これからはワシもここで薬剤師として頑張っていくよ。お礼にこれを渡しておこう。」
シャールから上薬草を受け取った。
タケ「何から何までありがとうございます。」
シャール「ラダトームにはここから大体東に向かえば到着するのだがここへ向かうのかい?」
タケ「まずはローレシアに向かいます。ここで仲間達と合流予定ですので。」
シャール「ローレシアにはラダトームより更に東だ。ちょっと時間がかかるぞ。」
タケ「そうなのですか。」
*「では、気をつけて行くんだぞ。後1つ言っておく事がある。」
タケ「どうしたのです?」
シャール「海には荒神がいるらしい。なんでも大昔に船を沈没させたらしいんだ・・・聞いた話しなんだがな。」
タケ「それはまた物騒な話しですね・・・・」
*「何でもこの町の富豪が嵐に巻き込まれたのがその荒神の仕業じゃないかって噂が立っているくらいじゃ。
相当珍しいものに対して強欲だという事も言われているがの。」
荒神=海賊みたいなものか。しかし噂だけじゃ信憑性は無いがとりあえずは頭に叩き込んでおくか。
タケ「そろそろ出発しようと思います。仲間たちを宿屋で待たしていますので。」
*「それならワシらも見送らせてもらいますわい。」
128 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:17:13 ID:1aF9bmVI0
宿屋に戻るとムーン達が待っていた。いつでも出発が出来そうだ。
ムーン「シャールさん。ありがとう。こうして船旅が出来るのは貴方のおかげよ。」
シャール「それ以上に感謝しているのは私達のほうだ。君達の力にいつでもなるよ。」
リア「マリンちゃんも良かったね!!これからお父さん達と一緒に過ごせるんだよ!」
マリン「うん!ありがとうリアお姉ちゃん!!絶対に遊びに来てね!!」
マリンの存在がリアに溜まっていたストレスを解消させたみたいだ。良い表情だなぁ・・・
サマル「ぼーっとしてどうしたんだい?もょ?」
タケ「ああ…すまねえ。それよりゼシカを見なかったか?サマル?」
サマル「ええっ!?ゼシカさんも一緒に来るのかい?」
タケ「そうだけど……何か不都合な点があるのか!?」
サマル「ええっと……その……ぉ、ぉっぱぃが気になるんだ……」
やっぱりこいつもムッツリスケベか。ロト一族はある意味陰湿だなぁ。
タケ「………………………………アーッハッハッハッハッ!!!」
サマル「ど、どうしたんだい!?もょ?」
タケ「いやー君も男なのにそんなつまらん事で気にするなんてさ。これも男のサガだな。思わず笑ってしまったよ。」
サマル「しかし気になっても仕方が無いよ!!」
サマルが必死に弁明した。ある意味戦っている時よりも必死だ。
タケ「まぁ俺も確かにアレは中々見逃せないな。お前の気持ちが分からん事でもないがな。」
サマル「だろ!?僕の気持ちが分かってくれるだろ?」
よしよし。ここはおちょくらないといけないターイムだな。
129 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:19:56 ID:1aF9bmVI0
タケ「ああ。わかったよ。おーい。ムーン。」
ムーン「どうしたの?」
タケ「サマルがゼシカのおっ……」
サマル「わー!わー!わー!!」
ムーン「ど、どうしたの!?サマル?」
タケ「すまんすまん。何でもないよ。」
ムーン「変な二人ねぇ……………………」
ムーンは呆れて離れていった。
サマル「ひどいじゃないか!!もょ!!」
タケ「何で必死に慌てる必要があるんだ?サマル君。ムーンは関係ないだろう?」
サマル「そ、そんな事女の子に言わないでよ!!」
タケ「ごめんごめん。おっ!ゼシカが来たみたいだな。」
タイミング良くゼシカが来てくれた。何とかミッション成功という所か。
ゼシカ「おはよう。もょもと。」
タケ「おぃっす。」
リア「もょもとさん、ゼシカさんも一緒に来るの?」
タケ「ああ。ローレシアまで限定だけどな。」
ムーン「そういえばククール達とローレシアで合流する約束をしていたわね。」
ゼシカ「ええ。少しだけの間だけど皆さんよろしくっス!!」
ゼシカが仁王立ちの構えから頭を下げた。
タケ「おい、サマル。」
サマル「どうしたの?」
タケ「今一瞬だけどゼシカの胸の谷間が見えたぞ。」
サマル「ええっ!!見逃してしまったよ。」
タケ「残念だったな。」
サマル「くすん。」
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