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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です
・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/
まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html
避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi
118 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:54:29 ID:+86UdIN/0
最後の一滴を飲み終えるとパパスは
傍らの荷物袋を手にすると一息吐く間もなく立ち上がった。
『サン、父さんはちょっと出かけてくるからな。
いい子にしているんだぞ』
『おや旦那様、もうお出かけですか。
折角ゆっくりなさられるかと思ったのに』
『うむ・・・、もう一仕事終えれば落ち着くからな。
すまないがサンチョ、留守を頼む』
困ったように頷き、サンチョは扉の前までパパスを見送った。
お気をつけて、とその背中に投げかけて、俺を振り返る。
『まったくお忙しいお父上ですな』
にこっと笑う笑顔につられて俺も微笑む。
さあ食事ですぞ、と出された料理は
ジャンクフード慣れしていた俺の舌に驚くほど美味かった。
ふた皿分をぺろりと平らげ、
ジュースのような甘い飲み物を飲み干し
一息つくと俺は
「探検に行ってくる」
とサンチョに言い残し家を出た。
119 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:55:13 ID:+86UdIN/0
今日は少し雲が多いようだった。
太陽が時折雲間から顔を出し
家々をなぞるように照らしていく。
俺はまず基本中の基本
村中の樽の探索から始めることにした。
小さな村とはいえ建物の数はそこそこある。
けれど屋外の樽や壷からは
残念なことにめぼしい収穫はなかった。
気を取り直して入り口側から順に屋内の調査に取り掛かる。
とりあえず一番近場の平屋の扉を開けると
キッチンから若い女があらあ、と笑いかけた。
『パパスさんの。ぼうや今日は一人なの?』
作り笑顔で応えると、
女はにこにこと近寄ってきて俺の目の高さまで屈んだ。
『ぼうやも大きくなったわねえ。
ぼうやがお父さんとこの村に来たときは
まだこーんな赤ちゃんだったのよ?早いものねえ』
身振りを添えながらゆっくりと話し、俺の頭を撫でる。
120 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:56:03 ID:+86UdIN/0
正直、やりにくいな、と思った。
ゲームならこっちからコマンドを入れない限り
相手は俺がいないと同じ振る舞いをするのに。
こう話しかけられると簡単にタンスの中なんて漁りにくい。
子供の無邪気さを武器にしたって
勝手に他人の家を荒らせば咎められるに決まっている。
面倒くさいな。
そう思ったところに後ろから老人が語りかけた。
『パパス殿はここに来る以前は
一体何をしておったんじゃろうなあ。
わしが見るに、あれは只者ではない筈じゃよ。
ぼうやは小さすぎて、昔のことは覚えておらんじゃろうがなあ』
『おじいいちゃんてば、
昨日パパスさんが帰ってからあればっかりなの』
くすくすと小声で笑い、
『きっとおじいちゃんはパパスさんに夢を見てるのね。
おじいちゃんも、昔は旅をしていたらしいから』
耳元でささやくと、女はおじいちゃんお薬は?と
老人に向かって立ち上がった。
121 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:57:25 ID:+86UdIN/0
王様だよ
と言ってしまおうかと思ったけれど、まあやめておいた。
突っ込まれても困るし
パパスが隠しているんだから言うべきではないだろう。
子供の幻想だと笑い飛ばしてくれる可能性もあったけれど
面倒ごとは起こさないことに今決めた。
老人と女のやり取りを尻目に、
俺は奥の引き出しに目をやる。
めぼしいものは、外から見た限りでは解らなかった。
引き出しを開けてみる度胸もなく
俺は「探検の途中だから」と
目一杯無邪気に言うと、家を後にした。
122 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/11(土) 12:58:16 ID:+86UdIN/0
本日ここまでで
ありがとうございます
ではまた
123 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:10:11 ID:1aF9bmVI0
>>122
お疲れ様でした。8スレ目では始めて投下するレッドマンです。
今後もよろしくお願いします。
124 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:10:54 ID:1aF9bmVI0
もょ「おはよう。タケ。」
タケ「もょ、起きたのか。昨日はお疲れ様。」
もょ「さすがにきょうはタケにまかせるぞ。かなりつかれた。」
タケ「それは無理もあらへんな。もょにビッグニュースがあるんよ。」
もょ「どうした?」
タケ「俺も呪文が使える様になったんや。」
もょ「ほ、ほんとうなのか!?」
タケ「ああ、さっきゼシカに魔力を引き出してもらったんよ。しかし俺等の場合はどうなるんやろな?」
もょ「う~ん・・・・おれにじゅもんをうたせてくれないか?」
タケ「ええけど。ただ一発分しか打てへんからな。」
俺達は外に出た。
もょ「しかしいったいどんなじゅもんなんだ?」
タケ「サマルのギラやリアちゃんのヒャド、ムーンのバギに比べたらかなり劣るんやけどな。」
もょ「そうなのか。」
タケ「メラって言う呪文なんだけど取り合えずやってみてれへんか。」
確かゼシカが言うには『呪文を打つ時は集中力を高めて唱える。』って事らしい。
とりあえずもょもとに唱えさせたのだが全く反応が無い。
もょ「あれ!?なんにもでないぞ?」
タケ「じゃあ俺がやってみよか。」
俺が集中力を高めてメラを唱えたが直径30センチくらいの火炎球が出てきたのだ。
125 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:12:05 ID:1aF9bmVI0
タケ「おおっ!!やっぱ使えるで!!」
もょ「じゃあなんでタケだけがつかえるんだ?」
タケ「ゼシカが言うには実戦で呪文に揉まれたから使えるようになったって言っていたで。」
もょ「じゃあおれもつかえるするはずだぞ。」
タケ「もょの場合は生まれつき呪文が使えない体質かもしれへんな。」
もょ「そうなのか・・・・・・・・・」
もょもとも流石にショックを受けたようだ。
タケ「まぁ、気にすんなや。そんなに落ち込む事はないやろ。」
もょ「しかしなぁ・・・・・・・・」
タケ「アホか。お前は呪文を使えない代わりに常人には無い力とスピードがある。人間皆個性があるって言うこっちゃ。」
もょ「な、なるほど。おれはおれらしくすればいいんだな!」
タケ「そやで。判り易く言えばもょはスピードは最低でもククール並み、パワーはヤンガス以上って所やな。ある意味最強の戦士や!」
もょ「ほ、ほめすぎじゃないのか?」
タケ「おう。褒め過ぎやで。」
もょ「まったくタケはひどいやつだなぁ。」
タケ「オマエモナー。実際の話二人と戦って俺なりの判断やけど。まぁ、ええんちゃう?」
しばらく話し込んでいるうちにムーンがやってきた。
126 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:13:59 ID:1aF9bmVI0
ムーン「おはよう!もょもと!」
タケ「おはよ。やたら元気がいいな。」
ムーン「あたりまえじゃない。新しい朝は希望の朝って言うでしょう?」
タケ「それもそうだな。しかしムーンがうかれるって珍しいな。」
ムーン「実は船を提供してくれる人が見つかったの!」
タケ「マジ!?」
ムーン「詳しい事はシャールさんが話してくれるのだわ。」
タケ「わかった。とりあえず旅立つ準備をしようか。サマルとリアちゃんを呼んできてくれ。しかしムーンも手際がいいな。」
ムーン「そんなのあたりまえじゃない!ほらほら!さっさと準備するわよ!」
ムーンは去っていった。
宿屋の玄関で待っていたらシャールがやってきた。
シャール「やぁ。もょもと。おはよう。」
タケ「どうも。おはようございます。」
シャール「君のおかげで何とか上手くいったんだよ。ありがとう。」
タケ「ええッ!?本当ですか!?」
あんな励まし方で上手くいったのかよ・・・・・・?
シャール「まぁ大目玉は喰らったんだがな。それはともかく親父が船を貸してくれるんだそうだ。」
タケ「それは助かります。しかし流石に無償って言うわけには行きませんよ。」
シャール「わしも何か対価が必要ではないかと思っていたのだがその点は親父が別に構わないって言ってくれたんだ。」
タケ「本当にありがとうございます。上手くいって良かったですね。」
シャール「その前に親父とマリンに会ってくれないか。どうしてもお礼がしたいらしいんだ。」
タケ「それは構いませんよ。同行させていただきます。」
127 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:15:24 ID:1aF9bmVI0
*「おおっ!!もょもと!シャールが世話になったそうじゃな。父として礼を言わせてもらいますわい。」
タケ「とんでもないですよ。私も命を助けられたんですから。」
マリン「ありがとう。お兄さん。お父さんが戻ってきてすごくうれしかった。」
タケ「親父が無事でよかったな。」
俺はマリンの頭を撫でた。
マリン「えへへ。」
タケ「話は変わりますが本当に無償でよろしいのですか?」
*「ああ。もょもとなら構わんぞ。わしら家族の『絆』を戻してくれたんじゃからな。」
シャール「これからはワシもここで薬剤師として頑張っていくよ。お礼にこれを渡しておこう。」
シャールから上薬草を受け取った。
タケ「何から何までありがとうございます。」
シャール「ラダトームにはここから大体東に向かえば到着するのだがここへ向かうのかい?」
タケ「まずはローレシアに向かいます。ここで仲間達と合流予定ですので。」
シャール「ローレシアにはラダトームより更に東だ。ちょっと時間がかかるぞ。」
タケ「そうなのですか。」
*「では、気をつけて行くんだぞ。後1つ言っておく事がある。」
タケ「どうしたのです?」
シャール「海には荒神がいるらしい。なんでも大昔に船を沈没させたらしいんだ・・・聞いた話しなんだがな。」
タケ「それはまた物騒な話しですね・・・・」
*「何でもこの町の富豪が嵐に巻き込まれたのがその荒神の仕業じゃないかって噂が立っているくらいじゃ。
相当珍しいものに対して強欲だという事も言われているがの。」
荒神=海賊みたいなものか。しかし噂だけじゃ信憑性は無いがとりあえずは頭に叩き込んでおくか。
タケ「そろそろ出発しようと思います。仲間たちを宿屋で待たしていますので。」
*「それならワシらも見送らせてもらいますわい。」
128 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:17:13 ID:1aF9bmVI0
宿屋に戻るとムーン達が待っていた。いつでも出発が出来そうだ。
ムーン「シャールさん。ありがとう。こうして船旅が出来るのは貴方のおかげよ。」
シャール「それ以上に感謝しているのは私達のほうだ。君達の力にいつでもなるよ。」
リア「マリンちゃんも良かったね!!これからお父さん達と一緒に過ごせるんだよ!」
マリン「うん!ありがとうリアお姉ちゃん!!絶対に遊びに来てね!!」
マリンの存在がリアに溜まっていたストレスを解消させたみたいだ。良い表情だなぁ・・・
サマル「ぼーっとしてどうしたんだい?もょ?」
タケ「ああ…すまねえ。それよりゼシカを見なかったか?サマル?」
サマル「ええっ!?ゼシカさんも一緒に来るのかい?」
タケ「そうだけど……何か不都合な点があるのか!?」
サマル「ええっと……その……ぉ、ぉっぱぃが気になるんだ……」
やっぱりこいつもムッツリスケベか。ロト一族はある意味陰湿だなぁ。
タケ「………………………………アーッハッハッハッハッ!!!」
サマル「ど、どうしたんだい!?もょ?」
タケ「いやー君も男なのにそんなつまらん事で気にするなんてさ。これも男のサガだな。思わず笑ってしまったよ。」
サマル「しかし気になっても仕方が無いよ!!」
サマルが必死に弁明した。ある意味戦っている時よりも必死だ。
タケ「まぁ俺も確かにアレは中々見逃せないな。お前の気持ちが分からん事でもないがな。」
サマル「だろ!?僕の気持ちが分かってくれるだろ?」
よしよし。ここはおちょくらないといけないターイムだな。
129 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:19:56 ID:1aF9bmVI0
タケ「ああ。わかったよ。おーい。ムーン。」
ムーン「どうしたの?」
タケ「サマルがゼシカのおっ……」
サマル「わー!わー!わー!!」
ムーン「ど、どうしたの!?サマル?」
タケ「すまんすまん。何でもないよ。」
ムーン「変な二人ねぇ……………………」
ムーンは呆れて離れていった。
サマル「ひどいじゃないか!!もょ!!」
タケ「何で必死に慌てる必要があるんだ?サマル君。ムーンは関係ないだろう?」
サマル「そ、そんな事女の子に言わないでよ!!」
タケ「ごめんごめん。おっ!ゼシカが来たみたいだな。」
タイミング良くゼシカが来てくれた。何とかミッション成功という所か。
ゼシカ「おはよう。もょもと。」
タケ「おぃっす。」
リア「もょもとさん、ゼシカさんも一緒に来るの?」
タケ「ああ。ローレシアまで限定だけどな。」
ムーン「そういえばククール達とローレシアで合流する約束をしていたわね。」
ゼシカ「ええ。少しだけの間だけど皆さんよろしくっス!!」
ゼシカが仁王立ちの構えから頭を下げた。
タケ「おい、サマル。」
サマル「どうしたの?」
タケ「今一瞬だけどゼシカの胸の谷間が見えたぞ。」
サマル「ええっ!!見逃してしまったよ。」
タケ「残念だったな。」
サマル「くすん。」
130 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/11/11(土) 14:22:19 ID:1aF9bmVI0
ムーン「こぉ~ら二人共何やっているのよ!!朝から変よ。もょもと!サマル!」
サマル「え、えっと…」
タケ「おいおい、何言っているんだ!?」
ムーン「えっ!?」
タケ「今日は女性陣に負担をかけない様に俺達男が頑張ろうなって気合入れていただけだぞ。」
ムーン「そ、そうなの!?」
サマル「そ、そうだよ。なぁ、もょ。」
タケ「ああ。昨日はゼシカもかなり疲れただろうし、リアちゃんも危なかった状態だっただろ。俺達がしっかりしないといけないだろう?」
ムーン「確かにその通りね。変に疑って悪かったわ。」
タケ「気にするな。男同士の決意だからあんまり話したくなかったんだけどな。聞かれたら恥ずかしいじゃねーか。」
何とか上手くごまかせた。―――――――――って俺は母親にエロ本がばれるのに必死に弁明している中学生か!!ちゃうっちゅーねん!!
サマル「う、上手くごまかせたね。」
タケ「女の勘はある意味恐ろしい程当たるみたいだからな。気をつけろよ。」
サマル「今後気をつけよう。僕ももっとしっかりしなくっちゃ。」
ゼシカ「しかし間に合ってよかったわ。」
タケ「良く酒場側が止める事を許可してくれたなぁ。結構大揉めしたんじゃないか?」
ゼシカ「それはシャールさんのお父さんが話をつけてくれたの。まぁ私も一肌脱いだんだけどね。」
タケ「マジッすか?」
ゼシカ「それはね…(ここで途切れました。詳細を読むにはハッスルハッスルと書き込んでください)」
サマル「おーい!!もょ。出港するよ!!」
タケ「おう。直に行くよ。親父さん。シャールさん。マリンちゃん。お世話になりました。お元気で!!」
シャール「気をつけな。」
マリン「元気でねー!!バイバーイ!!」
131 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/11(土) 16:19:36 ID:uL9T3qur0
>>122
なんか何処となく切なさを感じて好きだ。
懐かしいというか、不思議な感じ。
楽しみにしてるんで、これからもゆっくりでいいんでよろしく。
規制に引っかかって遅くなったぜ……。
132 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/11(土) 20:19:38 ID:P5ixTjidO
ハッスルハッスル!
133 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/11(土) 23:17:19 ID:rCfdsEsd0
>>◆U3ytEr12Kg
ハッスルハッスル!!
>>◆u9VgpDS6fg
家人の前で堂々とタンスを漁りにくい~ってところに共感してなんか笑えた。
プレイ初期の頃は他人のタンス漁るなんて常識的に考えて
ありえないだろ!と思ってた。冒険進めるにつれてタンス漁りはDQならではの醍醐味だと思うようになったなぁ
他人の家で鍋の蓋やらステテコパンツやら盗んで装備したのはいい思い出w
134 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/11(土) 23:26:04 ID:6tjNoSoA0
>>133
>鍋の蓋やらステテコパンツ
一般家庭の日用品まで盗んで行くって考えてみると恐ろしいもんだなw
135 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/12(日) 11:52:19 ID:Zzhn9QMl0
>>122
,
>>130
お疲れ様です
まとめサイトをここまで更新しました
http://ifstory.ifdef.jp/warehouse/index.html
136 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/12(日) 13:28:27 ID:tLC7CT9j0
タカハシ氏GJです
137 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:52:45 ID:BGg1IPAd0
>>レッドマンさん
ハッスルハッスル!!
乙です新人です
こちらこそ宜しくお願いします。
>>131
ありがとうございます。
自分の中でドラクエは、レトロというか
どこか懐かしいイメージがあるので
そういうのが出てるのかも知れないですね。
頑張ります!
>>133
醍醐味、わかります!
でも物語の中でその醍醐味を取り払ってしまったので
今後どうしようかと結構深刻に悩んでいます・・・
>>タカハシさん
いつもまとめ乙です
>>121
続き投下します
138 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:54:02 ID:BGg1IPAd0
さて困ったのは、屋内の探索だった。
念のため宿屋を覗いてみると
階下の酒場ではバーテンが忙しそうに仕込みをしていた。
「探検してるんだ」と言うと
バーテンは愉快そうに笑って
『ここにはぼうやの喜びそうなものはないなあ』
と言った。
言ったとおりで、隅の樽の隙間まで調べたが
役に立ちそうなものは見つからなかった。
二階に上がりながら、
まだビアンカ達が滞在していることを思い出す。
手前の部屋は空き部屋だった。引き出しも空っぽだ。
奥の部屋のドアをノックしようとした時
中からおかみの『困ったわ』と言う声が聞こえた。
思わず動きを止めて声に聞き入る。
『どうしようねえビアンカ。親方さん、まだ戻らないみたいよ』
『じゃあ戻るまでここに居ればいいじゃない。
あたしまたサンと遊びたいな』
『そんな訳にも行かないでしょう。お父さんが待ってるんだよ。
誰か探しに行ってくれないかねえ。パパスも留守だったしねえ』
139 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:54:59 ID:BGg1IPAd0
とんとん、と扉をノックすると
『親方さんかしら!』とおかみの声と、軽い足音が聞こえた。
ガチャリと勢い良く開いた扉の向こう
ビアンカの顔が輝くのと同時に、その奥で
おかみの顔が少しだけ残念そうに曇る。
「こんにちは」
努めて明るく呼びかけると、ビアンカが
『遊びに来てくれたのね!嬉しいわ!』
と本当に嬉しそうに俺の手を引いた。
『そうだわ、今度はあたしのご本を読んであげる』
部屋に入り傍らのベッドに腰掛けると
ビアンカは飛び跳ねるようにくるくると室内を行き来
自分の荷物袋から一冊の絵本を探し当てた。
『この村って大人しか居ないんだから。
あたしずっと退屈だったのよ。サンが居て良かったわ』
にこにこと喋りながら、俺の隣にぴったりと座り
お互いの足に渡らせて大きな薄っぺらい絵本を開く。
140 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:55:44 ID:BGg1IPAd0
『あたしの住んでるアルカパには男の子が居るけど、
みんな子供っぽくって。
じゃあここからよ。あたしが読んであげるから
あんたは絵を見ていればいいわ』
妙にませた口調を使うビアンカに
おかみはくすくすと笑いながらまた
不安げに窓の外に目を落とす。
『すてきな、なかよしよにんぐみ。
かしこいボロンゴ、やさしいプックル
かわいいチロル、ゆうかんなゲレゲレ。
・・・聞いてるの?サンってば』
ビアンカの指摘に慌てて本に視線を落とす。
昨日見た本よりも明らかに少ない単純な文字が並び
ページを大きく使って賑やかな絵が描かれていた。
『・・・もう。いい?ここよ?
みんな、ちっともにていない。
とくいなことも、すきなたべものも、
ぜーんぶちがってる。』
141 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:57:01 ID:BGg1IPAd0
ビアンカの声と文字をなんとなしに追っていく。
この世界の文字はまだ読めないが、
それでもゆっくりとしたビアンカの声にあわせて
文字も理解できるような気がした。
おかみが溜息をつく。
「どうしたんですか?」
悪いとは思いながらもビアンカの声を押しやって
知らない振りで俺はおかみに声を掛けた。
きょとんとした顔のビアンカと、困ったように笑うおかみ。
おかみの顔から目線を外さずに居ると
やがておかみはもうひとつ溜息をついた。
『ごめんね、あんたにまで心配かけちゃ悪いね。なんでもないんだよ』
そう言うと俺とビアンカの座るベッドの前に屈み込み
俺の頭を撫でた。
『・・・もうご本はいいみたいね』
面白くなさそうにビアンカが呟いた。
142 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:58:30 ID:BGg1IPAd0
また今度、俺がもう少し文字を覚えたら。
無理矢理の約束を取り付けて、
俺はそそくさと部屋を辞した。
宿屋を出ると、日は随分と高くなっていた。
雲から外れた太陽が俺の足元にも小さな影を作る。
パタパタと駆け出して、俺は小川を渡り村の奥に向かった。
教会の裏を抜けて傾斜を上がると
洞窟のような入り口に
申し訳程度の看板がかかっているのが見えた。
文字はやはり読めない。
そっと扉を開くと、店先のカウンターには誰も居なかった。
頭を突っ込み奥を覗き込むと、若い男が一人
心配そうに忙しなく室内を歩き回っている。
上の空の状態で、声を掛けてもすぐには俺に気付かなかった。
143 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 18:59:53 ID:BGg1IPAd0
『やあ、ぼうや。悪いけど店はお休みなんだ』
小さな訪問者に気付き慌てて笑顔を作った男の表情から
まだ不安の色は消えなかった。
まいったなあ、としきりに口元に手をやって
落ち着きなく体を揺らす。
「親方さんはまだ戻らないんですか?」
尋ねると意外そうな顔で
『ぼうやも知ってるのかい?』
と声を上げる。
『いつもならもう戻ってるはずなんだけど。何かあったのかなあ。
俺が探しに行きたいんだけど、擦れ違ったら厄介だしね』
よく見れば奥のテーブルには
薬草と幾つかの装備品が投げ出されていた。
この男も葛藤してるんだな、と何となく思った。
「じゃあ僕が探しに行くよ」
俺が言うと男は困ったようにその整った顔を崩して
『ぼうや、ありがとう』と言った。
子供のたわ言だと思っている顔だった。
144 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/13(月) 19:00:58 ID:BGg1IPAd0
本日ここまで。
ありがとうございます。
145 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/13(月) 20:51:45 ID:iH8xrwcc0
>>144
洞窟探検編がんばれ。
146 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/13(月) 21:21:49 ID:v9/NPYmd0
>>133
そういえば、他人のステテコパンツはくのも、すごいな。
呪われた音楽が鳴って、かゆくなったりしたらやだな・・・。
147 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/13(月) 22:22:56 ID:dUMD5YJY0
>>144
大人(作者)目線でストーリーが進んでいくから、いつもとは違った視点で
眺められて懐かしいと同時に新鮮ですごくおもしろい
十数年ぶりにまじで5をやりたくなってきた
148 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/14(火) 10:31:20 ID:X8ci4Gfh0
>>144
お疲れ様です
まとめサイト
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
149 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/14(火) 11:10:42 ID:DJkbV8fM0
今北産業
まとめの文章に触発され、久々に筆を取ろうと思うww
150 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/14(火) 17:03:58 ID:SNL7lTHN0
タカハシ氏GJです
>>149
いいね!
期待ほっしゅ
151 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/15(水) 06:20:25 ID:Mv7GmTJaO
>147
むしろ一昨日リメイク版買った。
>144
乙です。ゲームと平行して楽しませてもらってます。
152 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/16(木) 08:16:28 ID:/EGCTUPG0
ほ
153 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/16(木) 19:39:12 ID:XI++634T0
し
154 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/16(木) 20:59:04 ID:LwiDVBw4O
ゅ
155 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/17(金) 13:26:58 ID:r1KQzLZkO
う
156 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 17:55:59 ID:6c11duPV0
>>145
頑張ります。
>>146
それすげーやだw
>>147
ありがとうございます
ゲームだとプレイヤー目線は当たり前なのに
文字にしてみると自分でも新鮮で面白いです
一緒に楽しんでいただけたら幸いです
>>タカハシさん
乙です
>>149
期待!
>>151
ありがとうございます。頑張ります
では
>>143
続きです。
157 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 17:57:22 ID:6c11duPV0
方向を変え、村はずれまで歩く。
只でさえ森に囲まれた村道は
洞窟近くになるとさらに深く影を落としていた。
洞窟の入り口は目に見えてわかりやすかったが
くぐもったその先に足を踏み入れるのは
やはり少しだけ躊躇われた。
村までの道のりはパパスがついていたから
不安はかなり小さかった。
今回は頼れるのは自分ひとりだ。
しかもこの奥は記憶が確かなら
おおきづちとかが出るはずだ。
痛恨を食らったらどうなるか。あまり想像したくない。
自覚している以上に緊張していたのか
肩を叩かれるまで声に気がつかなかった。
はっと息を飲んで振り返ると
緑に映える鮮やかな赤い鎧を着た男が
心配そうにこちらを覗き込んでいた。
158 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 17:58:30 ID:6c11duPV0
『ぼうや、大丈夫か?どうしたんだ?』
額の汗を手のひらで拭って、俺はひとつ深呼吸をした。
「大丈夫。ちょっと探検に行くんだ」
我ながら固い口調だったが
鎧の男はふんと頷いて、
『この先の洞窟か。
ぼうやには少し、危険じゃないかな』
諭すような声色で言う。
どうしても中が見たい、一人で行きたい、と
子供らしく駄々をこねると、男は
地下には降りないこと
危なくなったら大声を出すこと
(反響して入り口にも声が届くから)
という二つの約束を俺にさせ
『迷子になるなよ』と笑って送り出してくれた。
159 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 17:59:53 ID:6c11duPV0
入り口から数歩進むだけで
外の明かりは洞窟内にはもう届かなくなった。
どこかに光源があるのか、中はぼんやりと
進むのに支障がない程度に照らされている。
右手から僅かな水音が聞こえるのは
村の中央に流れる小川の水源だろう。
モンスターはまだ姿を現さないが
岩壁の向こう、もしくは背後に
今にも奴らの呼吸が聞こえてきそうで
俺は唯一の武器、木の棒を握り締めながら慎重に進んだ。
手前に分かれ道が見える。
陰から何か飛び出してくるんじゃないかと息を詰めたが
奥を見渡してもまだ
モンスターの気配すら見当たらなかった。
左に向かう道に進む。
水音が背後に回る。その音に混じった
キキッ、という小さな鳴き声を
俺は聞き逃さなかった。
反射的に振り向く。
向こうは足元の岩陰に隠れたが
鮮やかな青い色を視界の端に捉えた。
スライム。一匹だけか。
160 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 18:01:55 ID:6c11duPV0
足音を殺しながら一歩、踏み出そうとした時
今度は背後から衝撃を受けた。
それに合わせるように
手前のスライムが岩陰から飛び上がる。
もう一匹いた。
囮だったのか。
頭使いやがる。
なんだこいつら。
思考が頭を巡る間に近付いてくる
最初のスライムのつるんとした質感。
俺は咄嗟に右手の木の棒を振り下ろした。
ばちん、と衝撃音がして、スライムが地に転がる。
立て直してくるかと思ったが
それはそのまま沈黙した。
もう一匹がピキーッと甲高い声を上げる。
それに向けてもう一度棒を振り下ろすと
避ける間もなくスライムは地面に転がって動かなくなった。
・・・強くなってる。そう直感した。
パパスの背に隠れて、殆ど戦いに参加する機会はなかったのに。
ちゃんと強くなってる。
不意に緊張が解けるのがわかった。
161 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 18:03:25 ID:6c11duPV0
スライムの死骸から小銭を抜き取ることも忘れずに
俺はさらに奥へ進んだ。
分岐の奥は行き止まりだったが(勿論わかっていた)
奥に打ち捨てられたような、小さな箱が転がっていた。
手に取ると端のほうからぽろぽろと木の屑が落ちる。
壊すようにして蓋を開けると
中から薬草の包みが転がり落ちた。
それを腰袋にしまいこみ、俺は来た道を戻った。
レベルは上がっていく。
それがわかって、俺は少し安心した。
適度に戦闘をこなしながら行けば
この洞窟は問題なく最深部まで辿り着けるだろう。
武器が木の棒だけと言うのが不安だったが、
まあなんとかなる。
何度かスライムや
土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)を叩き潰して
俺は突き当たりの分かれ道に差し掛かった。
右からは水音。左側は道が湾曲していて奥は見えない。
俺は迷わず左の道を行き、最初の階段を下りた。
162 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 18:05:03 ID:6c11duPV0
本日ここまで
ありがとうございます。
やっと冒険らしくなってきた。
こういうの書いてて楽しいです。
163 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/17(金) 18:09:22 ID:LHkQHASu0
リアルタイム遭遇ktkr!
楽しませていただきました。
164 :
帰ってきた暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:13:56 ID:CPxgHfcB0
>>162
乙~ニアミスするところだったw
続きwktkですよ~
さてさて、こっちは新章突入って事で軽くおさらいしておきましょう。
展開を忘れた方はご覧下さい。
学校に向かう途中に突然ドラクエ世界に召喚された能登真理奈さん。
いきなりのモンスターとの戦闘も、仲間の援護に救われ何とか勝利。
その功を称える為の王様との会見で、真理奈はルビスが遣わせた救世主だと思い込まれてしまう。
そこには魔王が復活し、モンスター達が再び活動を始めた事が背景にあったのだ。
以前魔王退治に挑んだのは勇者ロトの少人数パーティーだけだった事を懸念したアリアハンの王は、
今度は世界中の人間が結束して立ち向かうべきだと考え、連合の結成を思いつく。
その大使として真理奈は世界を回る事になったのだ。
真理奈がその役を受けたのは、この世界を救えば元の世界に帰れるというルビスの言葉があったからだ。
武道家・戦士・僧侶・魔法使い、そしてスライムの4人と1匹のパーティーは、
まずロマリアとイシスの王族の結婚話を手伝い、両国を加盟させる事に成功する。
次にエジンベアと商人の町との戦争に巻き込まれるが、犠牲を出さずに治める事に成功した。
その混乱の中で、真理奈は魔王ゾーマを名乗る者に出会う。
アッサラーム・バハラタ・ダーマなどのモンスター襲撃を指揮していた魔王ゾーマとは、
何と真理奈と同じ世界の青年だったのだ。
真理奈は青年に立ち向かうが、レベルの違いなのか、まったく敵わなかった。
しかしその出会いによって、かねてからの悩みだったものの答えを垣間見た真理奈は、
再び連合結成に意欲を燃やす事になったのだ。
そして、かつて勇者ロトの仲間だったという商人プレナのおかげで船を手に入れた真理奈達。
彼女らが次に向かう先は――
とまぁこんな感じですかね。
んじゃあ
>>85
の続きをどうぞ。
165 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:15:59 ID:CPxgHfcB0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「愛しているよ」
それが私の父親の記憶。
「幸せになってね」
それが私の母親の記憶。
けれどその声はとてもあいまいで、男の声なのか女の声なのか分からない。
だからリフレインされるその声が本当に心の底から発せられたものなのかどうか、
私はいつも判断できない。
だから私と私を産んだ者達を繋ぐ唯一の言葉達は私を苦しめる。
愛しているのならどうして私から離れるの?
私の側にいてくれなかったのに幸せを願う権利なんかあるの?
私の思考がそこにたどり着くと、その二つの声は次第に遠ざかって行く。
そして私はこの世界で1人ぼっちになってしまう。
そこで私は、私の光を求めて走る。
走る。
走る。
走る…
走る……
その内、何の為に走っていたのか分からなくなる。
そして私自身の存在意義を疑問に思ったところで、この世界は終わる。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
166 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:18:19 ID:CPxgHfcB0
今日も快晴。
世界は曇る事を知らぬかのように、太陽を遮るものは何も無い。
人が雨の中に絶望を見るのならば、この世界には希望しか存在しないだろう。
そんなくらいに晴れ、という事だ。
そうだよ。
本当にこの世界を支配したいのなら魔王はアレフガルドの様に暗闇で覆うべきなんだ。
さすれば人間達の反抗は影を潜めるだろう。
しかし、この地上には飽きる事無く朝が来る。
いかに人の世が苦しみに満ちていたとしても、その度に光を見るのだ。
また今日が始まるという光を。
また明日もあるという光を。
未来という光……
「ねーねー、ほんで次はどこに行くの~?」
「ジパングだろ。ってかそうするって昨日話したろ?」
「えへへ~聞いてなかったw」
「ったく…」
プレナから貰った新しい船。
真理奈達の、船。
船首が波をかき分けていくにつれて、この船が自分達の物だという感覚が強くなっていく。
嬉しい。
必要な物がようやく手に入ったからだろうか。
誰かの役に立ったという事が、物として現前しているからだろうか。
どちらにせよこの船は、いつ終わるともとも分からないこの旅の支えの一つとなるだろう。
「でもさ~鉄の爪直さないと私戦えないんだけどー」
「そうじゃなぁ…」
「新しいの買えばいいじゃねーか」
「え~ダメ! 思い出があるんだからっ!」
「ピ~…」
167 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:20:35 ID:CPxgHfcB0
その鉄の爪、この世界に来た時からずっと使ってるもんな。
ってか、抱きかかえてるブルーが苦しそうだから力を込めるのは止めた方が…
「それとも、もう直らない…?」
根元からぽっきりと折れた爪の部分。
今はまったく武器としての機能を果たしていない。
「……ロマリアの北にカザーブという村がある。
そこに腕の良い武器職人がおるんじゃ。
頼んでみれば、もしやな」
「行く行く~!」
「仕方ないの。寄り道じゃな」
「のんびりしてる暇あんのかよ…」
「まぁ一応順調に連合参加国も増えておるしのう。
それに何も大国だけではなく、小さな集落にも呼びかけるのも使節の仕事じゃ」
「カザーブはロマリアがどうにかしてくれてるんじゃねーの?」
「そんなに行きたくなきゃ船で待っておれ」
「……サマンオサに向かった使節の方はどうなったの?」
お、フィリア良く覚えてたな。
連合参加を呼びかける使節として活動しているのは真理奈達だけではない。
アリアハンにいた冒険者の多くはそっちに参加したようだ。
その点、真理奈達のパーティーは残り物と言われてもしょうがないかもしれない……
4人中3人は若者だし、1人はもう老人だ。
世界を旅するには少々心もとないかもしれない。
まぁ今さらだけどね。
「そうじゃったの。一旦アリアハンに戻って状況を聞かねばいかんかもしれんなぁ」
「もうアリアハンを発ってから大分経ったよな」
「時が経つのはいつの時も早いものよう」
168 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 18:20:36 ID:q2IdK7+J0
支援
169 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/17(金) 18:23:41 ID:6c11duPV0
ニアミス支援w
170 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:24:07 ID:CPxgHfcB0
そんな会話を背に、真理奈は改めて鉄の爪を見てみる。
その切り口を見ると、ゾーマの事を思い出す。
まったく普通の青年だった。
プレナの言う通り、彼は何か知っているのだろうか。
私達が、この世界に来た理由を。
この世界とあっちの世界の事を。
(ルビスは何て言ってたんだっけ……?)
携帯が使い物にならなくってルビスと話してない。
もうかなり昔の事に思える。
……
携帯…
携帯電話の事だ。
モバイルフォンの事だ。(二回言った)
(お~携帯!! アイツも携帯持ってるかな!!)
アイツはゾーマの事か。
まぁ、有り得無くは無いわな。
ルビスとの繋がり。
それは真理奈の場合、携帯を通じて行われたものであるが、
それは同時に、この世界とあっちの世界の繋がりでもあるように思えた。
もし、だ。
ゾーマを名乗ったあの青年が携帯を持っていたら。
そしてもし。
その携帯がまだ使える状況にあるのならば……
帰れるかもしれない。
しかし"魔王に携帯を借りる"って…
う~ん、ますますシュール。
171 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:26:33 ID:CPxgHfcB0
(ん~…ルビスはこの世界を救えば帰れるって言ってたけど…)
どうなんだろうね。
まぁルビスが嘘を付くとは思えないけどな。
(あ~もう分かんないや。やーめた)
止めんなよ…
物語の核心に迫る大事なトコだろー?
そんな心配をよそに真理奈は暇そうにしているフィリアに近づいて行く。
「ね~ね~フィリアちゃん。いつもあんなに早く起きてるの?」
「うん」
「凄いね~」
「理奈は何であんなに遅く起きるの?」
「んん~……摩訶不思議だね」
眉をしかめて、さも困ったかのように言う真理奈。
ったく、不思議じゃねーよ。
ちゃんと起きなさいよ。
「まか…?」
「そう。七不思議みたいな」
「……分かんない」
「不思議と言えば、呪文って不思議だよね~」
「何で?」
「ってかこの世界は不思議だらけだよ~」
「理奈の方が不思議だよ…」
「マジ? じゃあ皆不思議だw」
172 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:28:11 ID:CPxgHfcB0
いまいち理解できないという表情のフィリア。
「不思議なの好きなの?」
「うん! フィリアちゃんは何が好き?」
「……見た事無いものを見る事、かな」
「へぇ~だから色んなもの真剣に見てるんだね」
「……そう?」
「うん。その時のフィリアちゃん可愛い!」
そう言って楽しそうに笑う真理奈を真剣に見るフィリア。
真理奈の論理がイマイチ分からない。
だからフィリアにとっては真理奈はいつまで経っても不思議の対象だった。
だいたい今だって、何故ブルーを自分の顔にくっつけてくるのかフィリアには理解不可能だ。
でも理由を聞いてもきっと分からないんだろうなと、既に諦めの境地である。
女神なら、真理奈の事も分かるのだろうか。
いつか自分にもその心が分かる日が来るのだろうか。
(やっぱり私も不思議なのが好きなのかも)
「ピ~」
フィリアはブルーのツノを引っ張って、真理奈と笑い合った。
173 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:30:35 ID:CPxgHfcB0
そんなこんなで商人の町から北東の方角へ進むと、やがてエジンベアが見える。
そこを北に迂回していくと、やがてノアニールという村の付近に着く。
この辺りには港が無い為、海岸ギリギリまで船を寄せて停泊させた。
座礁の危険はあるが、強力なモンスターに船を傷付けられるよりはマシだ。
海底の浅い所には比較的弱いモンスターしかいないのだ。
ここからは小さな船で陸に上がる事になる。
もっともこの船は頑丈に造られている上、モンスターが近づきにくい仕掛けがしてあるらしい。
その秘密は材木にあって、トヘロスがどうとかパトリスが言ってたけど…
詳しくは国家機密らしい。
ま、それ故に世界を回るのに最も適した船だと言われるのだけれど。
「では行くとするか。2人はノアニールで待っておれ」
「え~? あそこの浜まで皆で行こうよ~」
「い、や、じゃ! ワシは小船が嫌いなんじゃ」
「ぶーぶー」
頬を膨らませる真理奈をよそに、パトリスはいそいそとルーラを唱えてカザーブへと消えた。
「さてと、俺らはノアニールに行くとするか」
ジュードの問いかけにコクン、とフィリア。
ブルーは真理奈に付いて行ったから、2人きりだね。
上陸して少し歩くと集落が見えてくる。
最北の緯度に位置する村、ノアニールだ。
……
しまった。
今回はパトリスがいないから土地の説明ができないぞ。
……
まぁいいか。
何だか寒いらしいよ?
174 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:32:13 ID:CPxgHfcB0
「散歩してくる」
と、宿屋のベッドに寝転ぶジュードに告げてフィリアは村を出た。
娯楽も特に無い小さな村だ。
酒場があるみたいだったが、フィリアはまだお酒には興味は無い。
フィリアにはたぶん一生縁が無さそうだけどね。
村の周りには森ばかりで見晴らしの良い景色はまったく無かった。
まぁその森のおかげで冷たい風が吹き抜けないので、海上よりは寒さが楽なんだけど。
毛皮のフードを被っているので耳がかじかむ事もないしね。
道端に落ちていた手頃な長さの木の棒を広い、それをフリフリして歩く。
そして森の奥に入り込んで迷う事の無いように、時々地面に印を付けて行く。
けど1人で出歩くなんて無謀だろ……常識的に考えて……
「危ない!!」
言わんこっちゃ無い。
突然の声とガサガサという草をかき分ける音。
その直後、誰かが背後から飛び掛ってきた。
フィリアはその衝撃に耐えられず、そのまま前へ倒れこんでしまう。
直後、頭上を何かがかすめていくのを感じた。
(モンスター?)
背中に乗っているのが誰だかは知らないが、守ってくれたのだろうと判断し、
フィリアはモンスターの方に気を配る事にした。
素早く立ち上がり上空を索敵する。
「うわっ……!」
後ろの人を振り落としてしまったが、今は気にしていられない。
175 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:34:50 ID:CPxgHfcB0
しかし、茂みや木々のせいでモンスターの姿は見えない。
どこかに隠れているのだろうか。
"目がダメなときは耳を頼れ"
これが冒険者の常識らしい。
ちなみに耳の次は"勘"だそうだ。
フィリアは意識を周囲の音に向ける。
獣のうなり声は聞こえない。
枝が風に揺れ、葉が互いにぶつかり合う…
「……! バギ!」
聞こえた! 羽ばたきの音が!
左方上空に呪文を放つ。
一点集中の狙いはつけられなかったが、モンスターの右腕と右翼を切り裂く事に成功する。
グギャアァァァアアー!!
羽を失ったモンスターはバランスを崩し、地面に落下。
残った左翼をバタつかせながら這いつくばり、茂みの奥へと消えていった。
「ふっ……」
戦闘終了の一息をつくフィリア。
あれはバンパイアだったろうか。
いつか本で読んだ事がある。
ヒャドを使うらしいが、直接攻撃に徹してもらえたおかげで助かった。
「アンタ、大丈夫か?」
声をかけてきたのは、フィリアよりも身長の小さい少年だった。
176 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:38:57 ID:jVh3Uz61O
猿くらった\(^o^)/
177 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 18:39:32 ID:q2IdK7+J0
支援
178 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 18:52:29 ID:jVh3Uz61O
仕方ない…また後で投下しますね(´・ω・`)
あと少しだったんだけどなぁ
179 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 19:04:58 ID:q2IdK7+J0
(´・ω・`)
180 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/17(金) 20:23:37 ID:xtONbCdu0
>>162
洞窟突入からスライム撃破まですごい臨場感。
初めてのスライム戦と比べたら明らかに強くなってるのがわかって、
自分が主人公育てた時みたいに嬉しくなった。
>>178
続き待ってます!
181 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 20:53:24 ID:4/bqkImA0
「あんな風にボケっと歩いてると危ないぞ?
森の中の歩き方知らないのか?」
えらそーな口を利くが、どうみても立派な子供だ。
十代になりたてといったところだろうか。
金に近い茶髪で、少しクセのあるハネっ毛が少年らしくて可愛らしい。
けれど、つり上がった眉と目が少年の自信の強さを表している。
「アンタどこの人? 冒険者らしいけど、1人なのか?」
何も喋らないフィリアをジロジロと見上げる。
「とにかく、さっきの奴が仲間を呼んだらマズイ。
こっち来て!」
少年はフィリアの手を取り、走り出す。
この森の事をよく知っているのだろう。
ノアニールの村の子だろうか。
何度とつまづきそうになるフィリアに対して、森の中での走り方を心得ている。
引っ張られるままに十分程走ると、やがて目の前に小さな広場が現れた。
広場の中央には大人の背丈くらいの高さを持つ岩が埋まっている。
その岩の所まで連れてこられて、ようやく手を放してくれた。
「ふ~……よし、もう大丈夫だろ。
ったく、オレがいなかったらアンタやられてたぜ?
ま、貸しにしといてやるからもう村に戻りな。
ここなら樹に邪魔されないでキメラの翼が使えるからさ」
一方的に喋り続けた少年は、ポケットから羽根を一つ取り出してフィリアに差し出す。
しかしフィリアはすぐには受け取らない。
182 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 21:05:04 ID:4/bqkImA0
「一緒に帰らないの?」
冒険者の自分が村に帰って、この少年がここに残るのはおかしい。
いくら慣れているとは言え、どう見たって少年の方が危険にさらされるだろう。
「あ~…オレはちょっと用事があるからまだ帰らないよ。
あ、キメラの翼ならまだあるから大丈夫だって」
「……」
「いいから帰れってば。仲間も心配してるぞ」
明らかに何かを隠すように慌てている。
しかし出会ったばかりの、そして一応命の恩人でもあるらしい少年の言う事だ。
用事とやらを済ませば、少年は1人でもちゃんと帰れるんだろう。
そう思い、ご好意に甘えようとフィリアは羽根を受け取ろうと手を伸ばした。
「……ソール?」
突然誰かの声がした。
広場には誰もいなかったはず…
「あ……」
その反応で、その声が少年にかけられたものだと気付く。
フィリアが少年の目線の先に顔を向けると、
そこには少年と同じくらいの年頃の少女がいた。
一番最初に目につくのは少女の鮮やかな若緑色をしたストレートの髪。
それが寒風に揺れるのを見ただけで、サラサラなんだろうと分かる。
フィリアは知っている。
これも本で読んだ事がある。
あれはエルフと呼ばれる種族だ、と。
183 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/11/17(金) 21:08:43 ID:4/bqkImA0
今日はここまで~
タカハシさん&u9VgpDS6fgさん&
>>180
さんサンクスでした
書き込めてよかったお( ^ω^)
184 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:35:15 ID:q2IdK7+J0
>>162
,
>>183
お疲れ様です
>>111
からの続きです
●悪夢
「タカハシ! 起きて!」
ん… 誰だ俺を起こそうとするのは…
俺は眠りたいのに……
「今日から一緒に旅するって言ったでしょう! 私よ、メイよ!」
メ…イ?
メイ?!
ガバッと、声のする方へ勢いを付け立ちあがる
「どうしたの? 目は覚めた?」
目の前にいるのは紛れもなく─ メイ
「メイ……!」
「寝坊よ! 待っていたのに寝てるなんて!」
この場所は、見覚えがある
そう確か…… フィッシュベルの宿屋だ
185 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:36:11 ID:q2IdK7+J0
「ここはフィッシュベルの宿屋… か」
「そうよ 扉を叩いてもあなたは出てこないし、部屋の中まで迎えにきたんだから」
「メイ… 生きて………」
時間が戻ったのか
俺がずっと悪い夢をみていたのか
目の前で生き、少し怒った顔のメイに俺は、涙が出そうになる
存在を、確かめようと手を伸ばす─
「迎えにきたのよ、あなたを相応しい場所へ連れていくために…」
「え、連れていくって…」
な、なんだ これはメイじゃ、ない……?
「私は生きていない、なぜ?
だって、フフフフフ… あなたが殺したじゃない フフッ
あなたが剣で、私を斬り殺した…!!」
「な………?!」
メイの姿が突如、霧状の魔物へと変化する
景色も一変し、宿屋の一室から赤く黒くウネウネと動く空と、草一本生えていない土の大地になる
一瞬、言葉が頭の中から消滅し、目の前の出来事が色を無くしてしまったかのよう─
「フフフフ… あなたが、殺した……」
「あ、ああ・…」
186 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:36:49 ID:q2IdK7+J0
ゾーマとの闘い…
俺のこの どろどろとした、心
苦し、い…
現実が、事実がこんなにも苦しい…
これ、で、何度目だ
何度、おなじ光景を見てきた
わかってるじゃ、ないか
もう戻らないなんて、こと
しばらくすれば、気を失うんだ
そうして、また、繰り返す
到底、許されることは、なく
許すこと、なんて、出来ない─
187 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:37:35 ID:q2IdK7+J0
●触れるもの
「タカハシ!!」
響く声にハッと気を取り戻す
「!?」
霧状の魔物は変化無くニヤリと俺を見ている
声の主は目の前じゃない!
「目の前にあるのはあなたが作り出した幻!
事実とは違うのよ!」
なな、何を言ってるんだ
事実とちがうなんて、違う…
事実なんだ
違うことなんて、何もないんだ!
「違う違う! 私を信じてタカハシ! お願い…!」
信じると言ったって…
「俺は、この声が誰の声なのかを知らないんだ
いや─ 知ってる
知ってるけど、それは本当じゃないかもしれない…!
いや本当で、あるはずがないんだ!」
だからもう、眠らせてくれ
悪い夢のなかで空っぽな夢を、みさせてくれ…
188 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:38:41 ID:q2IdK7+J0
霧の魔物は動かない
ただただ、俺を見下すように、その細く青白い目で刺すだけ
「信じて─」
声の主が言ったその刹那
からだのなかへ何かが入り込んでくる
とても暖かくって切なくって
ずっとずぅっと、欲心深く欲し続けてきたこの感情
目の前の魔物は空気と混ざり合いながら消え
ぎゅうぎゅうに抑え込んでいた感情が、当たり前のように膨れ上がっていく
「こんなこと ほんとに」
景色は一変し暗闇の中
俺の心に触れてくれる確かな声
「メイ… どうして…」
189 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:40:09 ID:q2IdK7+J0
●最善
どうしてメイが…
死んでしまったはずじゃあ
「覚えてる? 静寂の玉を」
ああ、覚えている
だけどあの後いったいどうなってしまったのか
俺はわからないんだ
ここがどこなのかすらも…
「ここはあなたの心の底
そして私は、ルビス様の手助けであなたの心に触れることが出来たの」
ルビスが?
…どういう事なのかわからない
なんでこんな事になってしまったのか
「それはすぐにわかるわ」
メイ
すまない
俺は取り返しのつかないことをしてしまった
この手で、メイを殺してしまった…
「タカハシ あの時の事は誰も悪くないの
あれは魔王の見せたまやかしなのよ
あなたはそれに騙されてしまっただけ
だから─」
190 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:43:30 ID:q2IdK7+J0
ダメなんだ
もう、どうしようもなく俺は自分に失望したんだ
結局、守れなかったよ
なんにも、この手はちっとも役に立たなかった
よりによって大事な人を、殺めてしまったんだ…
「私はあれからたくさんの事を知った…
なぜあなたがこの世界にいるのか、なぜ魔王が存在してしまったのか
他にも、いろいろ」
…
「あなたはきっとこう思ってる
"きっと許してくれない" "許される事じゃない"」
そうだな
その通りだよ
「私は、一度だってあなたに悪い考えを持ったことなんて、ない
それどころか、あなたに出会えてよかったって、思ってる」
それは─
そんな事、だって本人を前にして言えないだろう
本心なんて、言えるはずもない
「ふふ… 私は今、あなたの心に触れているのよ?
嘘なんてすぐに伝わってしまうわ
ね?」
191 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:46:14 ID:q2IdK7+J0
ん…
だけど、でも俺は、自分が許せない
こうして話をしてるけど、失くしてしまった事は事実なんだ…
「固い心ね、もう…
でもそこまで私の事を考えてくれるのは、正直にうれしいな」
…
目の前には暗闇がどこまでも続く
今、俺は戸惑っている
メイが、自分を斬った俺をどう思っているか、はっきりいえば少し不安もあった
だけど今はっきりと、その不安は全く無くなった
俺はどうすればいい?
知ったから、どうなるものでもあるまい?
やはり俺は、ここで自分の愚かさを悔い続けるべきなのでは─
「あなたはこの世界を救うため行動の出来るただ一人の人間なの
私は、私の事は考えずに、その使命を全うしてほしい」
使命?
どういうことだ?
「そう、使命
これはね、"いのちの源"の意思でもあるのよ」
"いのちの源"
それはいったい…
192 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:49:50 ID:q2IdK7+J0
「詳しいことはルビス様に聞いて
私にはうまく説明できない…」
ルビスか
なぁ、メイ
そうする事が今の俺にとって、一番の償いになるんだろうか
そうする事でメイにした事への、償いになりえるんだろうか…
「…私は償ってほしいとか、そういう気持ちは全然ないの
……けれどあなたがそう思い、行動してくれるのなら、きっと」
そうか………
「私だけじゃない たくさんの人が救われるの
あなたも自分の世界へ戻ることが出来る
…あなたが自分の為に動くことが、私や世界の為になる…」
……少し、考えを整理させてくれないか
俺はずっと考えていた
どうしてこんな事になったのかを
自分の未熟さを、愚かさを
どうすれば償えるのかを…
俺は……
193 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/17(金) 21:59:11 ID:FYpT+rHk0
私怨
194 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 21:59:17 ID:q2IdK7+J0
わかった気がする
どうするべきなのかを…
「うれしい… 伝わった、心から伝わってきたわ…」
俺は、できるだけの事をしようと思う
心配かけてすまなかった
もし、もしメイが来てくれなかったら俺はずっとこのままだった…
ありがとう
「うん! 詳しいことはルビス様に聞いて
気がついた先で待ってるから」
ああ、そうする
だけど─
もし魔王を倒せたとしても、メイは戻らないんだよな…
「もういかなくちゃ… タカハシ、あなたならやり遂げられる
私、信じてるから…
自分を取り戻すために、感情をゆっくり開放して…」
ボウと、眼前にメイの姿が薄く
俺は思わず手を伸べるが、それは空しく空を掴むばかり
「……ねぇタカハシ 私は、肉体は失ったけれど心までは失っていないの
わかる? あなたが私を想ってくれたら、それだけで側にいる………」
声は長いエコーが掛かったように響き、やがて、空間のチリとなり
俺の意識はスウと、上とも下ともわからない方向へ引かれていった
195 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/17(金) 22:02:49 ID:q2IdK7+J0
>>193
ありがとうございます、助かりました。
今回はここまでです。
まとめサイト
ここまで更新しました。
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
196 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/18(土) 01:19:59 ID:3Rz2f+RQ0
>>162
GJ!一人旅で痛恨の一撃は即全滅に繋がりかねないからガクブル
>土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)
これ何てモンスターでしたっけ?本気で思い出せない…気になります
>>183
真理奈とフィリアのかけあいが軽快なテンポで楽しいです
キメラの翼を放り投げる時は要注意ですよね
何度勇者達の頭を天上にぶつけたことか…
続きwktk
>>195
主人公タカハシの苦悩がすごく伝わってきます
悪夢の無限ループから抜け出る事ができてよかった…
続き期待!
そしてタカハシ氏まとめ乙です
197 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/18(土) 01:49:23 ID:K9LGYiQO0
>土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)
たぶん”せみもぐら”
ttp://www.parabox.or.jp/~takashin/d5p2.htm
198 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/18(土) 07:35:03 ID:3Rz2f+RQ0
>>197
せみもぐらかぁ。すっきりしました、㌧クス
199 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:48:46 ID:Qd6pfb7F0
>>163
感謝です。
リアルタイム遭遇ドキドキしますねw
>>暇潰しさん
新章乙です
やっぱ真理奈さんかわゆす。
エルフ登場wktkです
>>180
ありがとうございます
意識して丁寧に書いてみました
強くなった実感、って本当に嬉しいですよね!
>>タカハシさん
抜けましたか!乙です
うっかり三部のラスト読み返してしまいました
ちょっと泣きました。
今後のタカハシに期待です
>>196
>>197
ありがとうございます
そう、せみもぐらです
昨日の今日ですが
>>161
続きです
200 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:49:48 ID:Qd6pfb7F0
下り切ったところは、左右に伸びる道の真ん中だった。
どっちだっけ、と僅かな時間考え込む。
宝箱が幾つかあったはずだから
歩き回っても問題ないだろう。
そう考えて俺は、そこから
左に向かう道のほうへ歩き出した。
すぐに右手に分かれる道が見える。
曲がって進むとすぐに突き当たったが
装飾のはがれかけた荷箱の中から小銭袋を拾った。
中身は確認せずそのまま自分のものにする。
少し戻りさらに進むと
僅かに水音が聞こえてくるのがわかった。
視界が開ける。
大きくはない、けれど渡れそうもない洞窟内の湖だった。
上階の水源から染み出してくるのか
壁伝いに幾つか筋が出来て
透明な水が湖に流れ込んでいる。
どこからか同じように水が流れ出しているらしく
湖は一定の深度を保ったまま静かにたゆたっていた。
水面を覗き込むと恐ろしく深い。底は見えない。
201 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:51:46 ID:Qd6pfb7F0
奥まったところには中瀬のような陸地が出来て
誰が作ったのか階段が設えてあった。
あの奥にはパパスがいるんだろう。
こっちじゃないな、と俺は思う。
スライムや、昆虫や
どらきち(早く仲間にしたい)とかを叩きながら道を戻る。
反対側の道が開けて
また左右に分かれる道が出来ていた。
ここは繋がってるはずだからととりあえず右へ曲がると
ぐるりと迂回した向こうに
木箱がひとつあるのが見えた。
期待を込めて駆け寄る。中身は――盾だ。
皮をなめして貼り付けただけのような
粗末な盾だったが俺にはありがたかった。
これで随分と楽になるだろう。
意気揚々と進んでいくと、また分かれ道に出た。
盾を手に入れた安心感から
俺は何も考えずに左へ進む。行き止まり。
202 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:52:38 ID:Qd6pfb7F0
戻ろうと振り向いた時
今までとは違う低い鳴き声が洞窟に響いた。
反響から一瞬。相手の居所がわからない。
慌てて見回した俺の目の前。
岩陰から不意にそいつは姿を現した。
丸々として、異様な毛を蓄えた外観。
手にした大きなハンマー。
出た。おおきづちだ。
こいつの一撃がやばいのはわかっていた。
慎重に少しずつ後ずさる。
背後に、今後にしたばかりの、壁。
そいつがぐう、と低い鳴き声をあげると
陰からもう二匹のおおきづちが姿を現した。
追い詰められた。やばい。
盾に安心して回復を怠っていたことをはたと思い出す。
左腕の痛みが不安と同じ速度で体を巡っていく。
203 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:53:38 ID:Qd6pfb7F0
薬草を取り出そうとした刹那
一匹がハンマーを振り上げた。
つんのめる様に壁沿いに身をかわす。
やつら、やっぱり動きは遅い。これなら避けられる。
もう一匹の攻撃を盾で受け止めると
相手は芯を外したようで跳ね返って転がった。
痛んでいた腕が更にじわりと熱を持つが
まだ致命傷には遠い。
右手の棒で一匹の動きを捉え、叩きつける。
ぐう、と一声鳴いてそいつは後ずさったが
相手にも致命傷を与えることは出来なかった。
敵の目に、怒りの色が滲む。
ちっと舌打ちした次の瞬間
背中に重い衝撃を受けて俺はよろめいた。
体を捻ってどうにか尻をつく。
攻撃に気を取られて、背後への注意が疎かになっていた。
肩口がひどく痛む。痛恨だ。くそ。
薬草を取り出そうと腰袋に手を突っ込んだ時
最後の一匹がハンマーを振り上げるのが見えた。
咄嗟に両手を目の前に掲げるが、間に合わなかった。
視界が暗転する。
204 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 13:55:35 ID:Qd6pfb7F0
今回ここまでで。
多分後程また投下しに来ます
最近時間が出来るとPCの前に・・・
205 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 18:59:23 ID:Qd6pfb7F0
『ぼうや。ぼうや、気がついた?』
涼やかな女の声に、俺は目を開けた。
様々な色が眩しく俺の上に降りかかってきて、眉間に皺を寄せる。
『ああ、よかった。気がついたのね。神父様』
女が呼びかけると、隣で何か呟き続けていた男が
声を止めて組んでいた手を解いた。
『洞窟の奥で倒れていたんですって。
少しやんちゃが過ぎるんじゃないかしら』
身を起こすと、女が優しくそれを支えてくれた。
教会の中だとすぐに解った。
ああ俺死んだんだな、と
まだぼんやりと霞む頭の中で思う。
なんかの映画で見たのと同じ
色ガラスを組み合わせた天井から光が差し込み
白い床に不思議な模様を描いている。
紺色の修道服姿のシスターと
刺繍が施された真っ白い衣服の男。これが神父様、か。
206 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 19:00:38 ID:Qd6pfb7F0
『彼が見つけて運んできてくださったのよ』
示す方向に目をやると
少し離れた椅子に赤い鎧の男が心配そうに腰掛けていた。
『戻るのが遅いんで、探しにいったんだよ。
まさかあんな所まで降りているとはな』
約束を破ったな、と男は微笑んで見せる。
ぺこりと頭を下げると
男は立ち上がって真新しい
小さな布袋を俺の膝の上に置いた。
中から金属のこすれるような音がする。
中を覗くと何枚かのコインが
色ガラスを反射して虹色に光っていた。
『袋が破れていてな。出来る限り拾ったが・・・
足りていなくても恨まんでくれ』
『あら、助けていただいて恨むなんて』
少しばつが悪そうな鎧の男に、シスターが笑う。
鎧の男とシスターを見比べながら
俺はありがとう、と口にした。
シスターの頬がほころび、
男が照れ臭そうに兜の上から頭をさする。
207 :
サンタローズ
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 19:02:00 ID:Qd6pfb7F0
『お父様とサンチョ様には内緒にしておいてあげる』
というシスターにもう一度礼を言って
俺は鎧の男と連れ立って教会を後にした。
日はもう傾きかけ
次第に橙色に染まっていく太陽が
点在する家屋を照らしている。
『ぼうや、もう無茶をするんじゃないぞ』
兜の奥の瞳を少しだけ細めて
男は言いながら、腰を落とした。
真っ直ぐに真剣な眼差しが、俺の両目を捉える。
『正直、ぼうやを見くびっていた。ぼうやは勇敢な子だ。
でもな、勇敢なのと、無茶をするのは少し違う。わかるな?』
俺がはい、と頷くと、男は満足げに俺の頭を撫で
『さて仕事に戻るか』と踵を返した。
俺はもう一度頭を下げると
夕暮れ色に染まっていく空気の中
帰るべき我が家へと歩き出した。
208 :
◆u9VgpDS6fg
:2006/11/18(土) 19:03:08 ID:Qd6pfb7F0
今度こそここまでで
ありがとうございます。
ではまた。
209 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/18(土) 20:52:26 ID:0vxzak7lO
乙ー
まだ早いけど、未来の自分に会うトコ期待w
210 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/19(日) 08:05:30 ID:2nGqguXC0
俺昔あえて未来の自分に話しかけないでシナリオ進めたことが
211 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/19(日) 09:01:12 ID:ZYhvrXiZ0
>>210
あるあ…ねーよwww
>>208
やられた後のゴールド半減仕様は鬼だと思う。
>夕暮れ色に染まっていく空気の中
>帰るべき我が家へと歩き出した。
ってのが切ないなー。
この先サンが向かうのは孤独で暗い時代だって事を感じざるをえない。
212 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/19(日) 13:53:28 ID:RhagEX+f0
乙です
>>210
俺もあるよ
特に何も変わらんかったよね
213 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/11/19(日) 13:54:30 ID:nekJYNrJ0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html
214 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/19(日) 17:32:28 ID:PQPRQHqO0
乙!
このスレはいいスレですね
215 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/19(日) 19:03:05 ID:SIMjOgc7O
活気が出て来たかな
216 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/20(月) 00:18:01 ID:YsR8SfZH0
タカハシ氏乙です
217 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/21(火) 11:08:11 ID:Om0b//7cO
保守
218 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/11/22(水) 12:04:02 ID:9tjMcrzl0
ほす
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