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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/28(日) 12:25:12 ID:AaT+g6Z00
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言、オリジナル何でも歓迎です。

・スレの性質上、レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
 スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
 (トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
 アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
 をつけるとより読みやすくなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142080254/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
tp://www.geocities.jp/if_dq/
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」避難所
tp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

501 :天空城  ◆gYINaOL2aE :2006/08/20(日) 04:53:43 ID:OH6AsmJP0
「そうとも限りません。お二人が、今まで育ててくれたお父様とお母様を尊敬し、大好きでいたのなら…わざわざ産みの親を探す必要も無いでしょう」

「そうねえ。産みの親ってなるとなんだか本当の親とかって感じになるし…じゃあ育ててくれた人達は偽者の親なのかって言ったらそんなこともないしね」

そういうものだろうか。
…確かにそうかもしれないが…。

「思い返してみれば、かのご婦人と勇者どのたちには、どこか面影がありましたな」

にゅっと顔を突き出してきたから俺たちはびっくりしてしまう。
ライアンが珍しいこともあるものだ。あまり、この手の話には入ってこないのだが。

「いえ、私も疑問の思いましたので。…かのご婦人が…勇者どのたちの、産みの親なのではないかと」

彼女が?
…だけど、その割には何もなかった。
ただ物語を教えてくれただけで――そう、なんだろう。その、感動の再会?
ちょっと俗な言い方だと思うが、お互い名乗りもせず普通に別れてしまっていて、親子の再会という雰囲気ではなかった。
ソフィアたちは顔も覚えていないようだから仕方が無いとして――子供のことを忘れずにいる彼女がどうして名乗らないのだろう?

「それは――私にも理由は解りかねます」

「ほら、掟とかあるみたいだし、その辺りじゃない?」

…なんでそんな掟があるんだろう。
理由は…俺には解らない何かがあるのかもしれない。
だけど、なんだかすっきりしなかった。

502 :天空城  ◆gYINaOL2aE :2006/08/20(日) 04:54:19 ID:OH6AsmJP0
図書館で進化の秘法や戦いの歴史についての本を読んでいる最中に、兵士に呼ばれた。
俺たちは再び集い、一緒に玉座の間の扉をくぐる。

そこには、神がいた。
俺の眼の前に、竜神がいた。
大きく喉が鳴る音が聞こえる。
神――神か。これが、神なのか――!
黄金に輝く、巨大な龍――こんな存在が、本当に居て良いのか――。

「…私はこの城を治めるマスタードラゴン。竜の、神と呼ばれているものだ」

竜神は、こちらが思っているほどに絶対的なものではないのだと歯痒そうに述べ、
ときとして思わぬ力を発揮する種族、人間である導かれし者たちに賭けると言った。

「この城の真下が闇の世界への入り口…。
ソロ、そしてソフィアよ!いくがよい!」

ソロの持っていた天空の剣が輝く。
マスタードラゴンの力を得、剣はまさに神剣と化した。
トルネコの眼が剣と同じ位に光り輝いている。

一同、特にミネアとクリフトが感激に打ち震えながらも、めいめい勇ましく退出していく。
そんな中、俺は一人その場に残った。
最後に出て行ったミネアが、心配そうにこちらを振り返ったが、扉が音を立てて閉められる。

場に残された俺を、竜神の眼光が射抜く。
俺はその…冷たい…いや、冷たいのでは、ない…眼光に、思わず目を伏せてしまった。

503 :天空城  ◆gYINaOL2aE :2006/08/20(日) 04:55:17 ID:OH6AsmJP0
「…どうしたのだ?」

「あ…そ、その…」

落ち着け!落ち着け、俺。俺だって、ここまで旅を続けてきたんだ。
竜だって見てきた!勿論、ここまででかい竜ではなかったが。

「俺、あの…じ、実は!この世界の人間じゃなくて!だから!
ああ、くそ、上手く説明できねえ…だからさ…」


  ――訥々と、自分の境遇、今迄の事、多くを語った。
    余計な事も多分に話した気がするが、神はそれを止めなかった。
    何故だろうか。ただ、そこだけは神らしい――らしい、というのもおかしな話だが――慈悲深さであったかもしれない。


  即ち。


「なるほど。お前は元の世界に戻りたい、というのだな」

「ああ、そうだよ!」

「だが、本当に良いのか?この世界に未練はないのか」

「未練……」

未練は…ある。
そうだ…とりあえず、戻れるのなら、戻る前にやらなきゃならない事は沢山あるのだが。未練…というのは、戻ることそのものについて、だろうか?
ならば…本当に、良いのか?戻れる…なら、戻るのか?
だって…それが、正しい事だと思ってた。それが自然な事だと思ってた!
だから…正しい、んだ…。

504 :天空城  ◆gYINaOL2aE :2006/08/20(日) 05:07:56 ID:OH6AsmJP0
沈黙を肯定と受け取り、竜神は鷹揚に頷いて見せる。

「では――開こう。扉を」

空気が変わった。
俺は背後の気配に振り返る。
空間が――収縮する――それはどこか、見た光で――。
青い…渦、のようなものが…。

ず…ずずず…!!

「な…!?」

引き摺りこまれる!?
堪えようとするが、これは――もたない――。

「ま、待ってくれ!まだ――まだ、やる事が――」

だが。
そう言って振り返り、仰ぎ見る俺を神は――見下ろし。いや、見下し。
嗤って――いたのだ。

505 :天空城  ◆gYINaOL2aE :2006/08/20(日) 05:08:47 ID:OH6AsmJP0
――ばぁぁぁぁぁぁぁん!!

扉の前に控えていた兵士を薙ぎ倒し、巨大な扉が押し開かれる。
そのときには、俺は袖に身体の半ばを渦の中に引き摺りこまれており。

そうして、そのまま。
何事もなかったかのように人を飲み込んだ青い渦は、その姿を消失させた。

残ったのは竜神のみ。
低く嗤っていた神は、小さく呟いた。

「そうだな。戻るのも良かろう。今まで…よく、楽しませてくれた。
もっとも…何処に戻れるのかは保証せんが…な」

くっと、口の端を締める。
そのすぐ後に、導かれし者達がドヤドヤとやってきた。
マスタードラゴンは事情を説明し、ミネアがそれを聞き捕捉をいれた。
異世界の存在――皆、それにそれぞれのリアクションを取っていたが。
デスピサロの件が火急である事を理由に、マスタードラゴンは半ば無理矢理彼らを雲に開いた穴へと導いた。

HP:110/125
MP:20/61
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒

506 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 07:23:13 ID:wIvYkUDDO
4の人GJ!

507 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 08:00:54 ID:iNxqigVx0
先が気になる展開超GJ!
思えば長い旅とお話だよなあ。もう終盤だし。凄いわー。

なんかムカツク竜神様は別の作品のシンシア嬢にでも任せようw

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 08:27:37 ID:KiXm1TGd0
4の人キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!
まだ読んでないけどGJ!w

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 09:03:26 ID:3M+6Mtg+0
まあまあクオリティ高いな
他が低すぎるんだろうけど

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 14:33:49 ID:dzKzdc7WO
乙乙乙乙乙乙乙乙!!!
これからどうなるか超期待してます。

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 20:24:33 ID:TahhMU0H0
4の人乙です。
コンスタントにいい仕事するなあ。尊敬してます。

512 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:09:01 ID:UL8YpUfn0
目が覚めるとそこは海の中だった。
がぼごぼがぼぼぼぼぼあれ?息できる?
おー…なんだろうこの不思議空間…。
もう大抵の事じゃ驚かないと思ってたけど、これはまた…驚いたなあ…。
と、言いつつさほどでも無さそうなのはやっぱり慣れちゃったんじゃないだろうか。悲しいことだが…人は慣れるものだよ…。

しかし、困ったな。
マーニャ達に何も言わずに出てきてしまった。あの女は…碌な挨拶もなしにいいいいって怒り狂ってる気がする…。
なんとも不義理なマネをしてしまった。どうしたものかな。
それに…。
ソフィアは…どうしてる、かな。

いずれにしても、ここでボーっとしている訳にもいかない。
兎に角、歩くか。歩いていれば…恐らく元の世界に戻れるのだろう。
海…水の中を歩くというのも斬新な経験のように思う。
そうでもないかな?ダイバーの人とかなら結構歩いているのか。
尤も、俺にそんなイケメンな趣味は無いが。

暫く歩くと、前方にうっすらと影のようなものが見えてきた。
なんだろう…目をこらしてじっくりと見てみる…ってなんか近づいてきた!
音が聞こえていたかどうかは覚えていない。
だが、恐るべき速度で恐るべき質量が迫り、俺を弾き飛ばしたのは解る。
水中をぐるぐると回転しながら上昇するが、制動もかけられず勢いが弱まるのを待つしかない。
やっととまったときには既に吐いていた。

き、きもちわるい…なんだ、一体。
かなり吹き飛ばされたのに水面が見えないのは不気味だが、それ以上に真下でぐるぐると蠢いている巨大な影のが数倍不気味だ。
なんだあれ…ってまたくる!?

ばちぃっと吹き飛ばされ最早俺の三半規管はぐだぐだになってしまった。
目が回る…奴はそれが狙いだったのか。
動きが完全に止まった俺めがけてその巨大な顎を広げ、一直線に迫り来る!

513 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:10:45 ID:UL8YpUfn0
もう駄目なのか、と。
そうやって死を認識する事すらできなかった。そもそも、死、というものはそういうものなのかもしれないが。
ようやく思考が回り始めたときには、もう決着がついていた。
視界が霞んでいたがうっすらと覚えている。
俺の前に、情けないことに見慣れてしまった小さな背中が、割り込んできたのを。

海底(なんだろうか?)を揺らし巨大な影が血煙を挙げながら崩れる。
暫く残心のまま、やがて小さく息を吐きこちらを振り返るのは――。

「ソフィア!どうして…」

「飛び込んだから」

そう。
あの瞬間、扉を押し開き飛び込んできた影は、そのまま青い渦に飛び込んでいたのだ。

「だって、デスピサロは…もう時間だって…」

「五月蝿い」

ぴしゃりと言葉を遮られ、俺はどきりとした。
怒っている…?
いや、それは…そうだろう。基本的に鈍い俺でもそれくらいは…解る。

「ごめん。色々はっきりしてから…話そうと思ってたんだけど、いきなりで…」

「……いこう」

少女はそっぽを向いたまま歩き出す。
此処に留まっていてもしょうがない。
最初から方角も何も解らないのだから、目的地を定める必要も無い。
俺たちは当ても無く、不思議空間を彷徨い始めた…。

514 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:11:20 ID:UL8YpUfn0
海に生えていた階段を登ると、洞窟へとたどり着いた。
洞窟を抜けると、今度は山の中。山の中を抜けると今度は塔。
明らかに…繋がりがおかしい。
一瞬、目を離すとソフィアの姿が見えなくなって、慌てて手を前に伸ばすと柔らかい肩を掴む感触。
数歩足を前に出すと、そこには不機嫌そうな顔をしたソフィアがいたりして。
試しに右手を横に突き出してみる。
俺の右腕の先が消失する。そして、その消失した腕から先は、天井から生えているといった具合に。
要するに、この空間は酷く歪んでいるのだ。
そのくせ魔物はうじゃうじゃとしている。
それもかなり強力な、だ。今迄で会ってきた魔物たちよりも…強い。
常にほぼ全力を出さなければならず、俺たちの疲労はかなりのスピードで上がって行った。
もっとも、その分大きな経験も得られているのだろうが。
修練の場としてはもってこいなのかもしれない。

傷ついたソフィアに完全治癒(ベホマ)をかける。
少女は憮然としながらも、俺の呪文を受けてくれた。良かった。これで駄々こねられたらどうしようかと思った。
いや、駄々をこねるというのとも違うか…俺が悪いんだからな。

考えてみると、こうやって二人だけで歩くのは…久しぶりかもしれない。
あの頃は…俺は、今以上に何もできなくて、この少女の後ろに隠れてばかりいて。
少女が傷ついても、何もできなくて…苦い、思い出。

ソフィアもまた思い出していた。
右も左も解らなかった。だけど――独りではなかった、旅。
それは短い期間だったけれど…あの頼りなくて、格好悪かった男が、今は自分の背を守り、傷を癒してくれる。
不思議な感覚…どこか、何かが暖かい。それは、傷を癒してくれる光のせいだけではなく。

515 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:12:00 ID:UL8YpUfn0
「おや?人とは珍しい」

突然上から声が降ってきて少々物思いに耽っていた俺たちはビックリする。
慌てて剣を構えると、傍の階段から降りてきたのは人の良さそうな農夫…だった。
いや、農夫なんだからしょうがない。暢気そうに…できる場所ではないとは思うんだが。

「貴方は?」

「ワシは見ての通りの農夫じゃよ。それより、こちらにおいでなさい。お疲れのようだ、ゆっくり休むが良いじゃろう」

そう言って、登ってきた階段を戻っていく農夫。
俺たちは狐につままれた面持ちでその後ろをついていった…。


そこにはかなりの数の人間が生活しているようだった。
教会が中心にあり、その脇にはいくつかの家と、畑のようなものもある。
農夫に導かれ(微妙な導かれかただ)教会の奥に入ると、そこには神父と王冠を被った人物がいた。

「ほう、新たに迷い込んでいた者らか。此処は安全じゃ。安心するが良い」

「あのう…貴方は一体…」

「わしか?わしはサントハイムという国の王じゃよ」

へー。サントハイムの。

「もっとも、こんなところで王だなどと名乗っても失笑ものじゃがな。
だが兵たちの手前、体裁は整えねばならぬのよ。お主たちは他所から来たようじゃから言ってしまうがの」

516 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:12:39 ID:UL8YpUfn0
わっはっはと笑う王様。
王様って人種にも今迄色々あってきたけどさ。
まさか此処でサントハイムの王様に会うとはね。
わっはっはー。

「こんなとこで何油売ってるんっすか!?アリーナが物凄い心配して探し回ってるってのに!!!」

思わず詰め寄る俺。
アリーナと聞いた王の顔は一変した。
詳しい話を求められた俺は、なるべく簡潔に事の経緯を果たした。

「そうか…そのような事に…。
だがわしらとて此処で遊んでいた訳ではないのだ。外を出れば強力な魔物が根を張っている。
それでもこの建物の周りには何故か魔物は現れないので此処を拠点にしてな。
多大な犠牲を経て外へ出てもみたが、得られたのは奥にいる奇妙な男たちが言い争っている風景だけ。
なんとも情けない話だがな…」

本当に悔しそうにそう言われると、俺たちとしては何も言えない。
その奇妙な男たち…とりあえず、彼らに会ってみるべきだろうか。
ゆっくりと休養を取ってから、俺たちは出発する事にした。


ノックをすると、小さな応えが返ってきた。
ソフィアは、こちらに背を向けてベッドに寝転がっている。
俺は手近な椅子を持って傍により、なるべく音を立てないよう腰掛けた。

「……」

ううむ…気まずい。
だが、黙っている訳にもいかない。

517 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:14:50 ID:UL8YpUfn0
「ごめん。本当は…もっと早く言うべきだった。
だけど、俺の世界に戻れるのか…確証がもてなくて。
戻れないなら、いずれにしてもこちらで生きていかなければならないのだから、わざわざ言う事も無いと思った」

「……それで、戻るの?」

「……」

「戻りたいの?」

「……解らない」

解らない。
戻りたいのか、と言われたら…そう答えるしかない。
俺はこの世界に長く居過ぎた。そして、この世界で沢山のものを得すぎた。
今更…元の世界へ戻ったとしても、何があるのか…無くすモノの方が多過ぎる。
きっと…戻りたくないのだ。
だが、それを認められない。
だからこそ、中途半端な事をし続けて――結果的にこうなった。
マスタードラゴンが何をしたかったのかは…よく、解らない。
どうも俺にとって味方…では、無いようではあったが。

「私は戻る。皆の力になりたいから」

煮え切らない俺に向かって、ソフィアははっきりとそう言った。

「それに…ピサロも…」

「…?ピサロも…?」

518 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:15:53 ID:UL8YpUfn0
「長く眠っている間、夢を見たの。
長い夢…ピサロと、ロザリーの夢。
私は…ピサロも救いたい」

「それは…無理だ。
ロザリーは死んでしまった。それに、もう時間も無い…ソロ達は既にデスピサロ討伐に向かっている筈だ」

「こんな所で油を売る羽目になったのは誰の所為だと思っているのかしら?」

グサリ。
きょ、今日のソフィアさんは…なんか怖いよう…うぐぅ。

「お、俺も協力するよ」

いや、別にビビッてそう言った訳じゃないが。

「……貴方は貴方の世界に戻るんじゃないの?
この空間は捻じ曲がっているようだし、あながち戻れないとも言い切れないわ」

「……………………」

考える。考え抜く。
なんとなく、戻らなければならない気がするから。
戻るものだと思うから。
そういう…曖昧な気持ちを抜いて、考え尽くす。
そうして――決めた。

「良いんだ」

この決断は…もしかしたら間違っているのかもしれないな、と思う。
間違っていたら、なんらかの形で俺は何かを失ってしまうのかもしれない。
だけど。

519 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:16:40 ID:UL8YpUfn0
「長く眠っている間、夢を見たの。
長い夢…ピサロと、ロザリーの夢。
私は…ピサロも救いたい」

「それは…無理だ。
ロザリーは死んでしまった。それに、もう時間も無い…ソロ達は既にデスピサロ討伐に向かっている筈だ」

「こんな所で油を売る羽目になったのは誰の所為だと思っているのかしら?」

グサリ。
きょ、今日のソフィアさんは…なんか怖いよう…うぐぅ。

「お、俺も協力するよ」

いや、別にビビッてそう言った訳じゃないが。

「……貴方は貴方の世界に戻るんじゃないの?
この空間は捻じ曲がっているようだし、あながち戻れないとも言い切れないわ」

「……………………」

考える。考え抜く。
なんとなく、戻らなければならない気がするから。
戻るものだと思うから。
そういう…曖昧な気持ちを抜いて、考え尽くす。
そうして――決めた。

「良いんだ」

この決断は…もしかしたら間違っているのかもしれないな、と思う。
間違っていたら、なんらかの形で俺は何かを失ってしまうのかもしれない。
だけど。

520 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:17:23 ID:UL8YpUfn0

「俺は、もう戻らない。俺は、さ。ソフィア。俺は…さ…その…ソフィアのことが…」

「私は貴方が好き」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
先に言われたあああああああああああ!!酷い…男に格好つけさせろ!!!」

「いつ言ってくれるのかと思ってたけど…。
待たせた罰。格好なんてつけさせない。貴方は格好悪いままでいなさい」

「そんな、ひどい…」

よよよと泣き崩れる俺を見て、ソフィアはうふふと笑う。
その笑顔が可愛いから、彼女の意地悪も容認してしまいそうになる。

「貴方はアリーナが好きなんだと思ってたけど」

「アリーナは可愛いよね」

「……」

「しまった、つい本音が……」

「……………………………」

「嘘です。ごめんなさい冗談です」

「バカ」

521 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:18:32 ID:UL8YpUfn0
拗ねる姿も可愛いよなあ!そう思うだろ!
けどなあ、もうちょっと色気があっても良いような気もするんだけどなーこういうシチュエーションは。
いっそ、このまま押し倒s…押し倒せればもしかしたらそういう事もあるのかもしれないけど。
なんだろう。なんだろうな!嬉しいのかな!!
ういー俺みたいなキモメンがこんな可愛い彼女を…いや、可愛いだろ?頭はもこもこしてるけど。
あんまり羨ましがる気配を感じないのは気のせいだろうか…?

「じゃあ、とりあえず一緒に寝ようか」

「バカ」

追い出されました。
はあ…まあ、良いか。焦る事もあるまいよ。
あの世界で生きると決めた。
結局の所…元の世界に戻らなければならないとは思っていたが、戻りたいとは…思っていなかったのだ、俺は。
だって、こっちの世界にはソフィアが居る。
向こうには誰が居る?勿論、親兄弟もいた…ような気がするけれど、少なくとも…ソフィアは居ない。
許されるのか。それだけが俺には解らなかった。…そして、怖かった。
何を恐れていたんだろう。きっと、誰かに、何かに…怒られるような気がしてた。
そんなことは、ありはしないのに。
俺の人生は俺が決めなければならない。それは――何処で生きるかをも、定めることができるのだ。
責任は大きい。だが、ただ――それだけだ。大きな責任があるだけで、その選択自体は責められるものなどでは…無いのだ。
ソフィアと――添い遂げられれば良いが、いかんせん俺の器ではそれは難しいのかな…。
だけど、努力はしたいと思います。ええ。


今の俺なら何にでも勝てる気がする。
そう思っていた時期が俺にもありました。

522 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:19:03 ID:UL8YpUfn0
「だから鳥より卵の方が偉いんだって!」

「そんな訳あるか!卵より鳥の方が偉いに決まってる!」

眼前で繰り広げられる恐ろしい規模の喧嘩に半ばちびってる俺。
ドラゴン○ール並に岩石が飛び交ったかと思えば、小さいのが物凄い勢いで炎を吐く。
なんだあれは。人間じゃないのか。
しかも喧嘩の中身が恐ろしく…内容が無いように見えるが彼らにとっては大事な事なのだろうか。
ソフィアもとてもじゃないが間に入れないと震えている。
あのソフィアが震えるんだぞ!これがどういう事か解るだろうか。
彼女が武者震いをする相手である、というのがどれほどの事か、正確に解るのはラブラブな俺だけだろう。フフン?
調子こいた俺に次元を超えた罵声が聞こえる(ような気がする)
ハハハ!文句があるなら俺を倒してみろよ!

めりぃっ!!

流れ岩に潰される俺。
…すんませんでした。
なんとかかんとかソフィアに救われたので、改めて考える。
どうしたものか。何とか話をしなければ進まない。その為には喧嘩を止めなければ。
彼らは鳥と卵どちらが偉いかで議論しているらしい。
鳥と卵。どちらが偉いのだろうか。
鳥がいなければ卵は産まれない。だが、卵がなければ鳥は産まれない。
あれ?しかし考えても見ろ。
卵から産まれるのは鳥じゃなくてひよこ(雛)じゃないのか?
卵は鳥から産まれて、ひよこは卵から産まれて、鳥はひよこが成長する。

「つまり本当に欠かせないのはひよこなんだよ!!!」

「な、なんだってー!!」

523 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:19:43 ID:UL8YpUfn0
鳥男と卵男がハモる。
ソフィアはきょとーんとしている。まあそのリアクションが普通なんだろう。

「三つ巴となると決着をつけるというのも難しいなチキーラ」

「実に。ここは一旦休戦としようかエッグラ」

「そうしようそうしよう」

がしっと硬く握手する俺たち。
ノリだけで生きてる俺だけど良い事もあるんだな。
なんだかその後は妙に仲良くなってしまい賑やかに過ごした。
時折思い出したかのようにまた喧嘩を始めようとするのには参ったが。

「そうかそうか。お前らはお前らの世界に戻りたいのか」

「ならその火口に飛び込んだらいいぞ」

痺れを切らしたソフィアが訊ねると、彼等はあっさりとそう答えた。
火口に飛び込むというのも恐ろしい話だが…この歪んだ世界ならばそれもありうるだろう。
何より俺は彼らを信じている。いや、話してみるといいヤツらなのだ。

「ついでにサービスだ。世界樹にいってみろ。鳥に感謝しろよ」

「むがー!じゃあ俺はこの卵をやる!卵に感謝しろよ」

「ちっ。ならば俺はこの剣だ!なんといっても魔界製だぞ!」

「人間に魔界製の武器が使えるものか!賢い俺は魔界の兜を」

524 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:20:18 ID:UL8YpUfn0

な?いいヤツラだろ?
なんだかお土産までもらって悪いなあ。

「…もうっ!」

俺があんまり彼らと仲良くしているもんだからソフィアは膨れて先に火口に飛び込んでしまう。
慌ててその後を追…おうとした。だが、その時後ろからかかった声に、俺の足は止まってしまう。

「お前。自分が誰だか解っているか?」

奇妙に…シンプルな問い。
突然何を言い出すのか、と笑いながら振り返った俺の前には、さきほどまで笑ったり、怒ったりしていた二人が、まるで能面のような無表情で立っている。

「…え?」

「自分の名前を言えるのか?」

俺の…名前?
バカな!何を言ってる。俺は…俺じゃないか。今まで、何度も何度も…仲間達に呼ばれてきた!

「何て、呼ばれてきたんだ――」

525 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:22:45 ID:UL8YpUfn0
――あ。
そう、か……俺……。

「一度も…名前で呼ばれた事、無い…君、とか…お前とか…貴方とか…」

「責めるな。皆、仕方が無いのだ。世界そのものに影響を受けている以上、無意識の内に不自然を感じなくなってしまっている。そう、決められている」

決められている…?
なんだそれは。一体、誰にだよ!?

「もう、解っているんだろ?」

――マスタードラゴン。

「そうだ。我らは、この世界は狭間だからな。こうして忠告もできる。
あの世界に戻るつもりなら止めておけ。先で待つのは名も無き生、個人の崩壊だ。
自覚は無いか?自分が、自分で無くなるような感覚に」

ごくりと喉が鳴る。
そうだ――ある。心当たりが…あって、しまう。

526 :???  ◆gYINaOL2aE :2006/08/21(月) 01:23:16 ID:UL8YpUfn0
「元々、お前はその男の意識として稼動し、そして離脱する予定だった。
だが…飽いたのだな、あの竜が。同じ遊戯を何度も続ければ、それも当然だと思うが」

「故に、今、お前は此処に居る。哀れな混じり物よ。我らはお前に同情している。
今なら――元の世界に我らが戻す事が可能だ。緩慢な死を迎える為にあのような暗い箱庭に戻る必要は無い」

彼らの話しは解る所もあれば、解らない所もあった。
なのに――その手には、強力な魔力が、あった。
眼の前に並べられた二つの手。
それはとても力強く、郷愁を感じるものだった。


HP:153/153
MP:12/84
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒

527 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 01:28:49 ID:TxwSzV5d0
4の人が大豊作だ…!!いっぱい読めて嬉しいぜ
上手い事まとめるなあ

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 01:35:18 ID:4nCbvrfv0
マスタードラゴンは一体何を…????
4の人GJ


529 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 07:58:02 ID:nmDuzmKg0
非常に乙。
ギャグでシリアスで楽しませて貰ってます。先が読めない。

男を見せられる場面が来ねえなあw

530 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 09:39:45 ID:2eq47V9I0
ちょwwww4の人連日更新ktkrwww(*゚∀゚)=3 ハァハァハァハァハァ


>男を見せられる場面が来ねえなあw
いつか「Eパンツ」が装備から外れる日が
                 ハ_ハ  
               ('( ゚д゚∩ こないといいよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)

531 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 12:10:29 ID:i3Df2OUIO
まさか主人公の名前までが伏線とは思わなかった…。

とにかくGJ!!


532 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 18:26:50 ID:EDWnfAvP0
どうにも結び付けようのないあの鳥と卵のダンジョンをそう使うか!
その発想はなかった。すごい。GJ!!

533 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 09:04:49 ID:kKmbUP/p0
エグチキコワス

534 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 17:09:15 ID:h85RXYJI0
4の人乙

535 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 22:00:16 ID:UCY3PyCM0
4の人が2日に渡って投下するとは…ッ!

536 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 00:22:09 ID:yup78yx/O
何かもう凄い!

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 13:07:29 ID:KWZUlNiT0
雰囲気変えようとしてるんだな

538 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:16:27 ID:GqcbS9T+0
ぐったりとした導かれし者達を、暖かな光が照らす。
希望の祠――そう呼ばれた場所にしては、あまりにみすぼらしく、暗い。
だが…絶望の中に宿る小さな小さな希望…そういうものだと思えば、なるほどと思わないでも無かった。
デスピサロの居る場所に向かうには結界が張られており、彼等はその結界を張っていたデスピサロ直属の四天王を、今まさに撃破してきたところだった。

マーニャとミネアが、アリーナとクリフトが、ライアンとブライとトルネコが。
そして、ソロはたった独りでエビルプリーストと名乗った邪神官を打ち倒し、最後にこの祠に戻ってきた所だった。

「逃げられたがな…」

そう、呟いた後多くを語ろうとしないソロに、マーニャは苛立ったような声を上げる。
それをミネアが宥めるが、それが逆効果にすらなりそうだ。
ブライが火に油を注ぎ、こういう時に抑えに入るライアンとトルネコはくたびれたように深い息を吐く。

皆、ばらばらだった。
その理由が何かは、痛いほど解ってしまっていた。

「元々ねえ、あいつがむかつくのよ!あいつが…あれだけお世話になった私に一言も無くいなくなるなんて、許されるとおもってるの…!」

「なんじゃ。お主はさっきまでいなくなってせいせいしたと言っておったではないか?」

「な、なんですって!?」

「姉さん落ち着いて!」

止まない喧嘩にソロは小さく嘆息し、一晩休んでから出発しようと提案した。
誰もそれに反論しなかったが、特に賛成もしなかった。

539 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:17:02 ID:GqcbS9T+0


ソフィアが居ない。
そして…彼が、居ない。
たったそれだけで、ここまでバラバラになるなんて。
ソロは勇者だった。だが、違ったのだ。皆、ソフィアという勇者がいたから纏まっていた訳ではない。
妹との器の差にソロは独り苦笑を浮かべる。
それもまた止むを得まい。
このまま皆で突撃しても、いたずらに死者を増やすだけだろう。場合によってはお互いが足を引っ張ってしまうかもしれない。
ならば、やる事は決まっていた。
元々、この魔の世界に日が昇る事はないようだった。
いつ出発したとしても、この薄暗い山道を登る事になっただろう。そう思えば後悔するような事も無い。
デスピサロを殺す。
それは彼の悲願。
誰とも――妹以外とは決して共有できないであろう、暗い夢。
トルネコには妻子がある。
ライアンには誇りがあるが――誇りしか、無い。
クリフトとブライにもそれは言える。彼らには忠誠しかない。
ミネアとマーニャには亡き父に対する責任感が。だが、死者に縛られる事は無いのだ。父が産み出したものだからといって、娘が背負わなければならない道理は無い。
無いのだ。
彼らには――命を賭す理由が。
世界を救う。そんなものは勇者に任せてしまえば良い。
他の、多くの人間がそうしているのだから。彼ら、彼女らがそうして悪い道理が無い。

「じゃあ、私は?」

山道を登りきったところで待ち受けるのは、オレンジ色の髪を靡かせる貴き姫君だった。
何も無いなんて、絶対に言わせない。
その強い瞳がなにより雄弁に語りかける。

540 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:19:42 ID:GqcbS9T+0
私には――父を、城の皆の手がかりを探し出さなければならないという強い責任がある。

「何より、私がそうしたいという強い想いがある!ソロになんか負けない。今のソロになんか負けない!
ソロこそ!死んだ人達の為に復讐するなんて止めてもいいのよ、いつでも!だけど私はそれを否定しない。だから私は誰にも否定されない!!」

「……」

「ソロのバカ!そういう所が皆、解っているの!声を出さなくても、感じてるの!
最後には独りでいってしまう、誰も信じられない…誰かを信じられない人が、誰に信じてもらえるの!?
そんなの…そんな人を信じられる子なんて…本当の大バカしかいないわよ…」

顔を真っ赤にしてそう怒鳴り、ぐしっと鼻をすすって目を擦る。

「…怒ったり、泣いたり、忙しいヤツだな」

「あんたのせーでしょうが。女の子を泣かせたら、責任、取らなきゃならないのよ」

後ろから響くマーニャの声。
導かれし者達が、再び集う。

「王宮戦士の誇りは何者にも砕けませぬぞ」

「商人は、早く世界を平和にしないと物を満足に運べず困るのですよ。武器を売るのも儲かるのですが、本来そんなものは私の主義ではありませんので」

「アリーナ様の意志は私の意志でもあります」

「城の皆を救うのは、この老骨の最後の奉公じゃからな」

「今更私たちだけ仲間はずれってのもないでしょ」

「共に時間を過ごしてきたのですから、最早責任だけで此処に居る訳ではありません」

541 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:20:54 ID:GqcbS9T+0
酔狂な事だ、と。
ソロは優しく笑って言った。


「ぐはあああ……!
なにものだ…おまえたちは?わたしは…わたしはデスピサロ…まぞくの…おう…。
うぐおおおおおおおお!!!!!なにも…わたしにはなにも…おもいだせぬ……。
しかしなにをやるべきかはわかっている。
がああああ……!!おまえたち……にんげんどもを……ねだやしにてくれるわぁぁぁぁぁ!!!!」

姿は…あのエスタークに似ている。
進化の秘法を扱うものは、皆あの巨大な姿を目指すのか。

「これがあの美形の成れの果て、か。少なくとも進化の秘法が私好みじゃないってのははっきりしてるわよね」

つまらなそうに呟きながら、マーニャが両手に焔を迸らせる。
あのエスタークと同じくらいなら、問題ない。自分たちは一度倒している。
ともすれば油断となりそうではあるが、この時はそれがよく作用した。
巨大な両手に握られた巨大な剣。その剣を避けアリーナが跳躍すれば、その剣を身体全体で受け止め押し返すのがライアンだ。

「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!」

武人達の裂帛の気合が辺りをビリビリと奮わせる。
アリーナがデスピサロの右腕を蹴り千切り、ライアンが左腕を叩き斬る。
両腕を失った事でバランスが取れないのか、ぐらぐらとおぼつかない足取りでよろめくデスピサロの頭を、トルネコの破壊の鉄球がずたずたに砕き潰す!

「やっぱりこれはライアンさんが使うべきですよ」

自分の戦果に戸惑ったトルネコが、ライアンと武器を交換しようとしたり。
腕と頭を潰されて、あっさりと地面に倒れ付した魔王に、皆は歓声を上げる。

542 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:21:32 ID:GqcbS9T+0
「なーんだ、私が出るまでもなかったわね!」

「…いや、まだじゃ。伏せろ!!」

油断無くその慧眼を光らせていたブライがマーニャを引き摺り倒す。
何すんのよ――その言葉は身体の上を通過する激しい炎でかき消される。
何処から――?
その疑問は実物を見た上でもすぐには氷解しなかった。

腹が、開いている。
大きく縦横に裂けた腹から、ぶふっ、ごふっ、と不気味な音を立て、残り火が滾っていた。

「なんですか…あれ?…顔…?」

「それに、色も…なんなんだ!?」

腹に浮かび上がったのは口だけでない。
口の上にはなんの冗談か、少し小さめの口――瞳がぎろりと二つ開く。
それだけではなく、全体的に茶色ががっていた身体の色が緑色に――。

「あんたが――翠だなんて、許さない!」

キラーピアスを両の手につけたアリーナが怒りを露に踊りかかる。
私の親友の髪と同じ色――あの人の髪と同じ色――それが、この醜悪な化け物に汚されるのが許せない。

ズドォッ!ゴォッ!!!

デスピサロがあとずさる。
それすらも、姫君は許さない。

543 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:22:13 ID:GqcbS9T+0
「お前が!お前が!!お前がいなければ良かったんだ!
ソロも、ソフィアも…お前がいなければ幸せに暮らせたんだ!
どうして…どうしてあんたみたいのがいたのよ!!!」

既にまともな思考すらも失ったデスピサロに、サントハイムの人々の行方を聞くは叶わない。
だから、彼女はただ怒りをぶつけていた。
もう…これ以上は、嫌だった。
だから自分が怒り狂う。他人の怒りを見れば、人は逆に冷静になるものだから。

鈍い音を立てて弾き飛ばされる。
死角からの攻撃――どこから!?その疑問は離れてデスピサロを見ればすぐに解る。
腕を失くし頭を失くし、腹に顔が浮かび――今度はわき腹…もはやだった位置、と言わざるをえない…から、最初にあったものより三倍は太い腕が――!!

「いやぁぁぁぁぁ!!」

ミネアがあまりの事態に悲鳴を上げる。
それが恐怖を伝播する。
恐ろしい――恐ろしい、のだ。こんなものが存在するなんて。
アリーナが打ち込み、打ち込み、打ち込んで、気味の悪い体液を撒き散らせていたと思った次の瞬間には腕が生え、傷は癒えてしまっている。
終りなど、本当に来るのか――?
永遠に続く悪夢に、自分たちは迷い込んでしまったのではないか?
ミネアが怯え、クリフトの歯は合わさらない。トルネコの背負っていたトレードマークの正義のそろばんがかちゃかちゃと鳴いた。

「――まだだ」

天空の鎧。天空の盾。天空の兜。
そして天空の剣を正眼に構える勇者が、皆の前に立ち塞がる。
ソロには雄々しさが常にあった。だが、今はそれだけではどこか無いようで。
振り返らずに、片手を剣から離し、後方に向かって振る。

544 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:22:53 ID:GqcbS9T+0
――限りを極めた治癒。

ベホマズンの光が辺り一帯を照らし上げる。
その光が収まる頃には――炎に巻かれた仲間が、太い腕に弾き飛ばされたアリーナが、怪我一つ無い状態で立ち上がっていた。

「皆は死なない。行こう――」

ざっざっざっ。
振り返らずに、走る。その走りは孤独なものではない。
クリフトがスクルトを、ミネアがフバーハを、ブライがバイキルトを。
アリーナがソロの横に並ぶ。ライアンが、その後ろを守護するかのように追いかける。
精神を研ぎ澄ますマーニャや他の魔術師達を守るかのように、トルネコが横に身体を広げる。
皆が共にきてくれる――。
ソロを中心に、まとまって攻撃をしかけてくる導かれし者達に対し、デスピサロは――どこか笑ったような、気がした。

戦士たちの攻撃を受けたデスピサロの足が吹き飛ぶ。
しかしすぐに新たな足が生える。今度のそれは、先ほどのものより太く、強そうだ。

「諦めない――諦めてたまるか!いくわよ、ミネア!!」

「ええ、姉さん――真空――竜巻――いけぇぇ!!」

デスピサロの傍に数本の竜巻が発生し、巨体を切り刻む!
血だるまになり苦悶するヤツから、打ち合わせも無しに戦士たちが飛び離れた。
マーニャが皆に向かってウィンクをする。

「これで――おわりよ、全て!!極大、爆裂…イ・オ・ナ・ズゥゥゥゥン!!!」

545 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:24:27 ID:GqcbS9T+0
瞬間。
大気が震えた。
それはあの時によく似た雰囲気。
デスピサロの身体中心に全てが引き込まれ、収縮し――次の瞬間撒き散らされる爆裂の波動!!
響く轟音!!砕ける大地!!破れる身体!!!
稀代の天才魔術師マーニャの一つの完成形がそこには確かに存在する!!

爆煙が少しずつ晴れて行く。
終った――これで、決まったろう。
誰もがそう思った。
…勇者、以外は。

悪夢が醒めれば次の悪夢が始まる。
夢から醒めた現実の方がより酷い悪夢である事など、この世界には数限りなくある。

ああ…畏れよ。
畏怖であり、畏敬。これだけの負荷をかけられながら尚、立ちはだかるその――神の御姿に。

腹に生えた顔の上に、更に首が生え、顔がある。
一番初めよりも二倍に膨れ上がったその体躯。強くなる。進化する――戦えば戦う程に、進化する。それも、導かれし者たちを超えるスピードで。

ギャァァァァオオオオオオオ!!!

デスピサロが魂を砕く咆哮を上げる。
竦み上がる皆。浮かび上がる鏡光。

「いかん…マホカンタじゃ…もう、これで魔法は効かぬぞ…」

ブライが警鐘を鳴らす。
力と魔法。その二つが合わさったから、今まで乗り切れた。
今までにマホカンタを使うものがいなかった訳では無い。それでも打ち勝ててきたのは、肉弾戦での征圧が可能だったからだ。
だが…今回ばかりは相手が悪過ぎる。無限に進化するこの化け物が相手では。

546 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:26:35 ID:GqcbS9T+0
「大丈夫だ」

それでも。
尚、皆を鼓舞するその声。

「後、少しだ。これで終りにしよう。マーニャとミネアとブライは全力で魔法を。ライアンと今回はトルネコとクリフトも前に出てくれ。
アリーナは…俺についてこれるか?」

「ハッ!そんなの、当たり前でしょ!!」

「仲間を巻き込むのを恐れるな。俺が全て治す」

「ま、待つんじゃソロ殿!今の彼奴には反射鏡光(マホカンタ)が――」

「大丈夫だ。問題――無い」

勇者の持つ天空の剣が――煌く!!
白光が剣より迸り、デスピサロを貫いた!!

「さあ、行くぞ――今度こそ、終わりだ!!!天招、大雷檄(ギガデイン)!!!」

突き出された左腕より噴き出る雷を追いかけ、ソロが走り出す。
それに続きアリーナが。ライアンが、クリフトが、トルネコが駆ける。
ギガデインの雷は、紛う事無くデスピサロを打ち据えた。
ブライは目を見張る。何故――確かにそこにあった筈の反射鏡光が今は無い!
恐らくは、先ほどの剣の光――そこまでで、ブライは考えるのを止めた。今やるべき事は――。

デスピサロから不可視の波動が迸る。
全員を貫いたそれは傷はつけなかったものの、酷い脱力感をもたらした。
補助呪文の効果が打ち消される――だが、そんなもので止まりはしない!

547 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 01:27:33 ID:GqcbS9T+0
ソロとアリーナが高く高く跳躍する。
その後ろから姿を現した三人が、全力で各々が武器を叩きつけた!

バギクロスが、イオナズンが、デスピサロの肉体は再びずたずたに引き裂く中、今度は更なる力が加わった。

「発動してくれよ…ワシの乾いた魔力よ…絶対氷凍結(マヒャド)ォォォォォ!!!」

収縮し、爆裂した大気が今度は凝固する。
ビキビキと、乾いた音を立て足元から首元まで優しく冷たい氷が覆いつくす!!
デスピサロの細胞は既に破壊し尽され、ズタボロだった。
だが、それでも時間さえ経てば回復してしまうのだろう。

「決めるぞ!アリーナ!」

「決めるわよ!ソロ!!」

勇者と、もっとも勇者らしい少女。
その少女が先に、デスピサロの脳天へと、全体重を載せた踵を落とす!
めこっと気持ちの悪い、だが素晴らしい手応えを伝える音がする。
アリーナは確信した。頭蓋を潰した事を。

後は――。

見上げた先には雷光を招き天空の剣に纏わせる勇者の姿。
雄々しく――神々しいその姿に、アリーナは柄にも無く胸を高鳴らせる。
それはアリーナだけではない。
ライアンも、クリフトもトルネコも、マーニャもミネアもブライですらも、若者の、ライバルの、息子のような、孫のような存在の、頼もしき姿に震える。
勇者の最大最強の一撃。
これで終る。
それは確信だ。
今までのような希望めいたそれではない。確定した事象ですらあろう。

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 01:31:01 ID:cymZKQ7v0
支援

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 01:54:57 ID:zjhiRlbC0
早く続き読みたし

550 :デスピサロ  ◆gYINaOL2aE :2006/08/24(木) 02:03:03 ID:GqcbS9T+0
――だと、いうのに。

いつまでも勝利の凱歌が上がらない。
何故だろう?訝しげに目を擦り、よく、見る。

「何故だ…」

デスピサロの頭上で新たな対峙が起きていた。
起きるべくもない対峙。だから、それを見ても一瞬、それを信じられない。

「何故、止める!!ソフィアァァァァァァァ!!!!」

ソロの慟哭めいた悲鳴が、魔の世界に響き渡った。



HP:
MP:

戦闘:
通常:

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 05:58:57 ID:BcUMNMFP0
がんばってるなあ。

552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 07:48:07 ID:QcTNExeR0
先が気になりすぎて朝からテンション下がらんぜ。
マジGJ。もう幾つ寝ればエンディング、だな。楽しみだ。

553 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 09:28:25 ID:+0s8eoY80
連日お疲れ様です。
勇者たちと彼が、どんな結末に向かうのか楽しみでならんよ。

554 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 10:15:42 ID:fnfnOxO10
俺、4の人の最終回を見たらあの子に告白するんだ…

555 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 13:03:28 ID:PVlElc4ZO
死亡フラグキタコレwwwwwww

556 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 18:47:52 ID:n8Dsw0eI0
カオスを超え ←今ここ
終末の日が
やってくる

557 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/25(金) 00:33:51 ID:sT8EqX/u0
もしかして今日も来るんじゃと期待してしまうじゃないか!!

558 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/25(金) 03:06:55 ID:5errkDxE0
徹夜で待つぜー

559 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 01:14:00 ID:kS1alDXQ0
  _  ∩   _  ∩   _   ∩
( ゚∀゚)彡( ゚∀゚)彡( ゚∀゚)彡 4の人!4の人!  
 ⊂彡   ⊂彡   ⊂彡


560 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 01:20:12 ID:LPhH3g2K0
最初のスレからの住人としては4の人が完結しそうなのはちょっと寂しいかも
ひとつの時代が終わるようなそんな感じ

でも、すげー楽しみだ

561 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 07:44:47 ID:R5vcjIpf0
期待するのは良いがあまり焦らさないようにな。
自分のペースでゆっくり書いてくれればそれでいいや。

562 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 14:20:16 ID:Qk+4FwZB0
保守

563 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 16:32:21 ID:IF/UHjdb0
保守

564 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 16:52:22 ID:0nJKWb5bO
労働

565 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 01:32:19 ID:XR11u3DE0
ネタスレかとおもたらSSですか、そうですか。。。

566 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 02:06:45 ID:EMrQvDl70
今思いついた妄想を超簡単に書いてみる

宿屋で目覚める

異世界の住人だからいろいろな制約に引っかからない。簡単にレベルが上がる

ある程度レベルを上げ。サンタローズで暮らし始める

突如村を燃やし始めた池沼(ラインハット兵)を皆殺しにし往復へ向かう

こっそり城へ忍び込みあっさりと国王を人質にし牢屋に入れ変わりにオレが王になる

反乱とかいろいろあるけど沈める

全世界へ宣戦布告

567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 09:02:41 ID:3ST7SYk5O
 /  /\  /\  ヽ    / 九 ノ| ⊥丶|/  ̄ ̄ ̄ ̄  |        レ
 |             |  <  + |T  = 人 / ̄/ レ   ̄|フ/⌒|   |
 ヽ     ○     ノ    \ ↑ |⊥ 口 人  ̄/  |_  /|   〇ヽ 〇ヽ


568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 14:45:43 ID:jqI/0SSX0
往復…?

569 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 15:27:32 ID:nfiqX0DLO
まさか報復のこと…?

570 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 15:49:45 ID:+GHDX07M0
酔ってたのか

571 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:25:58 ID:N7lIc/5j0

                      ゾーマ

 この世界でその名を冠する事が許されたのは、ただ一匹の魔物だけだった

            それは圧倒的強者であり、魔物達の王

           かつてこの世界を恐怖の内に陥れた張本人

       勇者ロトによって倒されたのは、まだ人々の記憶に新しい

                  しかしそれ故に最強

                 まさに魔王と呼ぶべき者

   その名は自身が滅び去った今でも人々の間で悪の象徴として語られる

             そして今、再びその名を語る者が現れた

                果たして彼は一体何者なのか

       我々の物語はまだ、それを知るには早すぎるのかもしれない

572 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:27:24 ID:N7lIc/5j0
  「ゾ……」

ゾーマ??

  「いや、先程まで侵攻に忙しかったんですよ。しかしその甲斐あってダーマを滅ぼす事が出来ました」  
  「ダーマを……?」

もはや青年の言う事を繰り返すしか出来ないエジンベア王。それは理解が追いつかない証拠だろうか。

  「しかしせっかく僕自ら出向いたっていうのにさ、防衛がこんなもんだったとはね。正直がっかりさ」
  「こらー! てめー!!」

そこに体を侵していた毒から復活した真理奈が、先程の危害について言及しようと立ち上がる。
そして青年と初めて対顔する。

  ―――――――― ドクンッ ――――――――

瞬間、湧き上がる違和感と懐古。
本来この世界の中では明らかにあってはならないものが、そこにはあった。
なおかつ真理奈にとっては懐かしいニオイのするものが。

  「え――?」
  「君は――」

彼の目には、赤を特徴とした制服を身にまとった彼女の姿。
彼女の目には、青を基調としたブレザーを一寸の隙もなく着こなしている彼の姿。

それは元の世界ではどこでも見かけるもの。
しかしこの世界では唯一無二だと思っていたもの。

故にこの出会いは、二人共予想しなかった事態。
数秒の沈黙の中、ただお互いを見つめる。

573 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:29:01 ID:N7lIc/5j0
  「そうか。君も同じか」
  「え? 同じって……?」

青年の方から時を進める。
もう回答を見つけ出したかのようなその口ぶり。頭の回転が速い。
そこに追いつこうと真理奈も脳をフル回転させる。
ドラクエ世界ではない元の世界の服を着た相手が今、ドラクエ世界に、そして真理奈の前にいるという事。
そう、そこから導き出される答えは――

  「あんたもブレザー取られそうになったの?」

…………
いやいや! 違うから!! 
そこは 「あなたも私の世界からいらっしゃったの?」 とかでしょ!?
真理奈の言う事が本当だったらエジンベア王は変態だよ!?
いや、変態かもしんないけどさ……
まったく……
しかし青年はその言葉で、王と真理奈の関係を把握したようだった。

  「…? あぁなるほど、ね。残念だがそれでは0点だ」
  「むっ! じゃあ答え教えろよー!!」
  「もう言った。君はもう少し勉強した方がいい」
  「……友達いないでしょ?」
  「友達か……」

青年は遠くを見るかのように目を細める。
なぜか、憐れむような笑顔…
しかしそれも一瞬の事。

  「まぁいいさ。答えは、君も僕と同じように日本から来たという事さ」

青年の答えを貰い、真理奈の中でようやく目の前の出来事が少しずつ整理されていく。

574 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:32:03 ID:N7lIc/5j0
  「あーあーあーあー、なるほどね〜うんうん。
   って事はあんたも世界を救うために? だったら私と一緒に……
   あれ? でもそしたら何で?」

モンスターが悪だとされているこの世界を救うのに、人を攻撃するヤツはいないだろう。
だから青年の先程の行動が、世界を救う為にしたものだとする事には矛盾が生じる。
それが真理奈の疑問。

  「世界を? ……なるほどね。ありがちな設定だ」

少しバカにしたような言い方。
そりゃそうだけどさ。王道と言ってもらいたいな、王道と。

  「設定?」
  「三つだけいいかな?」
  「むっ!」

さっきから軽く無視されているような感覚に、真理奈は少しイラッとする。

  「まず一つ。僕はこの世界が気に入っている。
   だから僕は別に帰りたいとは思っていない。
   だから君とは一緒には行かない」

指を実際に一つ立てながら説明する。いちいちカッコつけだな……

  「二つ。仮に君と一緒に世界を救っても、僕は帰れないだろう」

二つ目を立てながら、彼は真理奈から視線を逸らし、エジンベア王の元へ静かに歩み寄って行く。

  「え? どうして?」

それを目で追う真理奈。エジンベア王がこっそりと逃げ出そうとしているのが見えた。

575 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:34:36 ID:N7lIc/5j0
  「ひっ!!」

しかし、入り口へ向かう王の前に立ちはだかる者……いや、あれはモンスターだ。
地獄の鎧、キラーエイプ、魔女。
その剣に、その拳に、その衣に、人の血と体の焼けた匂いが染み込んでいる。
城に残っていた兵士を殺して来たのだろうか……
地獄の鎧が目の前に這いつくばっている王をも殺そうと、武器を振り上げる。

  「やめろ」

青年はそれを制するように、地獄の鎧に言葉を投げる。
すると地獄の鎧は、それに素直に従った。
興奮して落ち着きの無かった他の二匹も、動きを止めて待機する。
その一連の流れは、青年が真実魔王である証拠なのだろうか。
そして自分の命がこの青年の肩にかかっている事を理解した王は、モンスターから後ずさりして逃げ、
青年の足にみっとも無くすがり付く。

  「た、助けてくれ!!  いくら欲しいんだ? ん?
   アイテムか?! なら地下の倉庫に――」
  「僕が欲しいのはあなたの命ですよ、閣下」

その物騒な言葉とは裏腹に青年がにっこりと笑い、王の目の前に手をかざす。
そして述べる死の呪文は――

  「ザキ」

それは心を殺す言葉。それに耐え得る精神力だけが、唯一の防御となる。
しかし、王の目は静かに閉じられた。

  「あーっ!!」
  「聞いてなかったみたいだから、自己紹介と三つ目を。
   僕は魔王ゾーマ。つまり、君が倒すべき相手はこの僕さ」

576 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:36:15 ID:N7lIc/5j0

  「…………どうして殺したの?」
  「人を殺す事は悪い事なのか?」
  「は? 当たり前じゃん」
  「なぜ悪いのかって考えた事あるかい?
   僕らは動物を殺して食べるよね。実験の為に動物を殺す。
   恨みや快楽の為に人を殺す。戦争で人を殺す。
   生き物を殺すという行為はたくさんあるのに、罪になったりならなかったりする。
   それを決定するのは何なのか」
  「……」
  「それは圧倒的な強者だよ。
   強者が善悪の基準となり、弱者はそれを享受するのみ」

完全に悦に入った彼の演説は、たった一人の観衆さえも忘れられて続けられた。

  「つまり強者次第では、殺人も罪になるとは限らないんだよ。君だって歴史を習っただろう?
   今はたまたま殺人が罪になる時代だという事だよ。
   この世界も、あっちの世界もね」

力の抜けた王を、足で蹴飛ばして退ける。

  「しかしそれももう終わる。
   この僕が変える」

ニヤリと笑う。それは悪役に相応しい、あの笑顔。
 
  「分かった」
  「それは良かった」
  「あんたがムカつくヤツだって事が分かったって言ってんの」
  「知る事は素晴らしい事だよ」
  「そんなんだから人を殺せるんだよっ!」

577 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:38:36 ID:N7lIc/5j0
真理奈は青年に突進する。
まず足払いを仕掛けて、それをジャンプで避けさせる。
そのまま一回転をして、飛び上がった相手に合わせてこちらも飛び上がる。
その遠心力を利用してソバットを叩き込むという作戦。

  (完璧じゃん!)

何が完璧なのか聞きたいところだが……
念のため右手を引き、パンチのフェイントを入れてから青年の前でしゃがみ込み、右足が床を滑る。
絨毯を擦る音と、何かものに当たる感触。しかしその感触は予想していない。
疑問が生じるが体は止まらずにそのまま予定通り動き、真理奈は蹴りを思いっきり空振りしてコケる。
最初の一撃で既に青年は転倒していたのだ。

  「いった〜……ちょっと! 真面目にやりなさいよ!!」
  「痛いな…真面目にも何も殴って来ると思ったから…」
  「フェイントに決まってんじゃん! 勉強しろとか言っといて、そんなのも分かんないの?」
  「……僕は武術を習った事無いからな」
  「は?」
  「うん、でも君を倒すのに訳は無いから安心して」

何かを小さくつぶやく青年。
真理奈が何を安心すればいのか聞こうとした瞬間、青年の体が真理奈の視界から消え去る。
そして今度は疑問を挟む間も無く、横から衝撃を受ける。

  「く……はっ…!」

自分の位置がいつの間にか変わっている事と、脇腹の痛みで吹き飛ばされた事を真理奈はようやく理解する。
青年はスクルトを唱え、素早さを格段に上げていたようだ。

  「これで分かったろう?」

青年の余裕ある言葉が真理奈には気に食わなかった。

578 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:41:49 ID:N7lIc/5j0

  「この世界で君という存在に出会えたのはとても興味深い出来事だ。
   他にも誰か来てるのかな? 探してみるのも面白そうだ。
   けれど今日は闘う気分にはなれないな。だからもう帰るよ」

まるでそれは友達の家から帰る時のような軽さを持った発言だった

  「ちょっと待ちなさいよ! まだ勝負は終わってないじゃない!!」
  「いつから勝負になったんだい?」
  「私とあんたが会った時からよ!」

真理奈は自分のバッグにダッシュし、武器を取り出し、装備する。
学校のバッグにこんなモノ入れてるなんて…まったく怖い女子高生だな。

  「鉄の爪か。そんな装備で魔王を倒そうと?」
  「あんたこそ素手でいいの?」
  「そうだね。じゃあ僕の手下がやる事にするよ」

青年がモンスター達に合図をすると、三匹がゆっくりと近づいて来た。

  「卑怯者!!」

叫んだ瞬間、魔女が枯れた声でベギラマを唱える。
炎の波が高級な絨毯を焼いていく。
真理奈は助走を付けてベギラマを飛び越えるように飛翔し、そのまま魔女に攻撃しようとする。
が、そこにキラーエイプの巨大な拳が迫って来る。
巨体のキラーエイプにとっては、ジャンプした真理奈の位置が格好の射程範囲だ。
とっさに鉄の爪をキラーエイプの手の甲に突き刺す真理奈。
そこを支点としてジャンプの勢いを方向転換し、キラーエイプのアゴに強烈なサマーソルトを決める。

579 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:45:39 ID:N7lIc/5j0
  グォッ……

白目を剥き、ゆっくり倒れるキラーエイプ。
音も無くキレイに着地する真理奈。
スカートを押さえるのだけは忘れないで…
着地の瞬間を狙って地獄の鎧が攻撃を仕掛けてくる。
真理奈の頭に向かって来る剣を鉄の爪で受け止め、地獄の鎧の腹に蹴りを入れ吹き飛ばす。
鎧が堅い。足が少し痺れた。

  ククッ……

再びベギラマが真理奈を襲おうとする。
横っ飛びに逃げると、真理奈の後ろにいたキラーエイプが炎に包まれた。
受け身を取って反転し、一気に魔女との距離を詰める。
魔法使いは接近戦が弱いのは知っている。
慌てる魔女に密かに微笑み、真理奈は彼女の乗ってるほうきを奪って魔女を転ばしてしまう。
そしてそのまま、ほうきで頭を殴りつけてやった。

  ガハッ…!!

ほうきを放り出すと、その場でいきなり後ろ回し蹴りをする。
その蹴りは、ちょうど真後ろまで来ていた地獄の鎧の兜にヒットする。
動く時の鎧の音で、真理奈に位置がバレてしまったようだ。
頭を揺らされフラフラとする地獄の鎧。
とどめとばかりに、真理奈は鉄の爪で兜ごと頭を吹き飛ばす。
見事な会心の一撃。ふぅ、と一息つく真理奈。
ガシャーンと、地獄の鎧が倒れる。
絨毯とキラーエイプを燃やす炎が次第に広がっていく。

  「お見事。いや、君は凄いな。本当に強い」

青年がパチパチと拍手をしながら、真理奈に近づいて来る。

580 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:47:09 ID:N7lIc/5j0
  「逃げたんじゃなかったの?」
  「一つ聞いていいかな? 君がこっちの世界に来た時、どこに現れたんだい?」

真理奈はさすがにうんざりとする。こんなに会話出来ないヤツは初めてだ。

  「アリアハン! ってかアンタ何なの?!」
  「やっぱり。グリズリーを倒したのも君だったのか」
  「え? どうして!」
  「また今度会った時には、君の疑問に答えてもいいかもしれないな。今日はホント、もう帰るよ」

青年が真理奈に背を向ける。

  「待て待て待てー!!」

再三、真理奈が青年に突っ込み、鉄の爪で攻撃する。
が、振り返った青年はその細腕でいとも簡単にその刃を受ける。
ブレザーの袖は、一つも傷ついていなかった。

  「なっ……!!」
  「うん、まぁ一応仇を取っとくか。バギマ!」

彼が呪文を唱えると、鉄の爪の周囲だけで真空の刃が生じる。
高速回転するその刃は、鉄の爪の『爪』を綺麗に折ってしまった。
三本の爪が落ち、絨毯に突き刺さる。

  「勝負はお預けだ。今日は殺さない。こういうのは大抵死亡フラグなんだろうけどね。
   まぁ同郷のよしみってヤツさ」

ククッと声を殺して笑う。どこまでも気に触るヤツだ。
青年は再び真理奈に背を向け、出て行く。

真理奈はしばらくの間、炎と煙が充満しつつある玉座の間で立ち尽くしていた。

581 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 17:58:18 ID:r/zSA6MuO
規制喰らったので携帯から
一応今回の投下分はカキコめたので一安心

しかし前回の投稿が>>318で、しかも一ヶ月も空いてしまった…
申し訳ない

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 19:12:06 ID:+GD7/2pHO
盛り上がってきたね。GJ!
あとスクルトじゃなくてピオリムだよね?

583 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/08/27(日) 20:21:42 ID:r/zSA6MuO
ぐはっ…おっしゃる通りです…スマソorz

真理奈の踵落し食らってくる....

584 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 06:55:48 ID:fPlNAETuO
暇さんおかえり!これからも頑張って。

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 17:29:51 ID:jtRTXJrv0
ラスボス候補が現実世界の人間か。
意外な所を疲れたって感じだな。

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 17:33:21 ID:jtRTXJrv0
×疲れた
○附かれた

587 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 17:38:08 ID:VeES1FyZO
過去スレ見て気付いたんたが
プロローグの欝叫びはゾーマだった……のか?

588 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/29(火) 21:21:01 ID:sz87E7GRO
保守

589 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:10:50 ID:yqX1fak50
>>426の続き

 もょ「タケ、シャールさんをさがすのはいいのだがけんとうがつくのか?」
 タケ「この世界で夜に人が集まりやすい場所って言ったら酒場みたいやな。悪魔でも参考程度しかならへんけど。」   
 もょ「とりあえずさかばにむかうか。」

俺達は酒場に向かった。
この町の酒場は宿屋と同様に人が多くいのだが特にバニースーツを着た綺麗なねーちゃんの色っぽさがたまんねぇ!!
流石に俺もニヤってしてしまった。

 もょ「うれしそうだな。タケ。」
 タケ「う、うるせーな。この状況で喜ばへん方がおかしいで。それにしてもこの世界はすげえわ!」
 もょ「そうなのか?」
 タケ「ああ。俺の世界ではあんなにおっぱいがでかくてセクシーなねーちゃんなかなかいねーよ…」
 もょ「そ、そうなのか。」
 タケ「お前もやっぱ男やね〜 話は変わるがククールならすぐナンパしそうやな。」
 もょ「ククールはそんなにすごいのか?」
 タケ「悔しいけどある意味女に関しての行動力はをすごいもん持っているからな。しかしあのバニーのねーちゃんすげーエロいで!」
 もょ「タ、タケ。しかしほんらいのもくてきをわすれてはだめだ。」
 タケ「おっと、そうやったな。そりあえず見回ってからかたっぱしにあたってみるか。」

ここはナンパのやり方をもょもとにみせたかったが流石に今の状況では出来なかった。

結果的にはシャールはみつからなかった。
微妙な情報では浜辺の方に行ったりとか灯台の方にいったりとか酔っ払いの意見は参考にならない。
一発ブン殴りたい所だが他所者が騒ぎを起こすのは不味いと思ったので止めておいた。

 タケ「うまくいかねーなー 町中探すって言ってもかなり時間がかかるで。」
 もょ「はぁ………………………………」
 タケ「ムーン達はどうなんやろなー」
 もょ「とりあえずはとうだいのほうにむかうか。」

590 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:13:29 ID:yqX1fak50
ムーン「もょもとが灯台の方に行ったから私達は浜辺の方に行きましょうか。」
  リア「そうだね!早くシャールさんを探さなくっちゃ。」
ムーン「そうね。しかしもょもとったら他の女の子を見てデレデレしちゃうなんて嫌になっちゃうわ。」
  リア「どうしたの?ムーンさん?」
ムーン「な、何でもないわよ!!もう!!」
 リア「変なムーンさん…………」
ムーン「早く行くわよ!!」

ムーン達は浜辺に向かっていった。浜辺に到着すると言い争っている人が3人いた。
一人はローブを着ていて何処かの魔導師っぽい人間ともう一人はハーゴン教団の特徴である仮面とローブを着ていた。

  リア「あっ!ムーンさん。あいつらハーゴンの手下だよ!どうしたのかな………」
ムーン「あそこに物置があるから隠れて様子を見ましょ。」

   *「一体どういう事だ。何を考えているんだ貴様は。」
   *「わ、私にはそのような事は出来ません……」
   *「グヒッグヒッ!ラーメド様。こいつの娘を無理矢理奪うのが一番です。」
ラーメド「そうだな。ハーゴン様は特に幼い女が好みだからな。まぁ……用済みになったら……ククク……」
   *「そ、それだけは……」
   *「グヒヒ。ハーゴン教団からは逃げれられないのさ。バカナヤツダナ、シャール。」
ラーメド「ヴェイネ。裏切り者の処分はお前に任せる。私はハーゴン様のところに戻るからな。」
ヴェイネ「はは。お任せを下さい。こいつの娘を連れて戻りますので。グヒヒ。」

ラーメドは『ルーラ』と発すると空へ飛んでいった。

  リア 「もう……許さない……!」
 ムーン「勝手に行ってはダメ!!あっ!!」

リアは青銅の剣を抜き戦闘態勢に入った。



591 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:14:49 ID:yqX1fak50
ヴェイネ「ど〜したぁ!?早く逃げないとシヌゾォ〜!!どっちにしても結果は一緒だがな〜」
シャール「ひぃぃっ!」

どうやらシャールは腰が抜けて動けないらしい。
  
  リア 「そんな事させないわ!ヒャドッ!!」

ヴェイネ「ぎゃあっ!!」

リアのヒャドが、まともにヴェイネにヒットした!

 リア  「シャールさん!大丈夫!?」

シャール「あ…?ああ……ありがとう………」
ヴェイネ「コムスメが邪魔しやがって………おほっ!!なかなかい〜女じゃねぇか。クヒヒ。」
  リア 「………絶対に私は負けないわ!」
ヴェイネ「それなら俺も戦うとするかぁ。シャールを殺る前にオマエを犯らせてもらうぜぇ〜〜〜〜〜」

ヴェイネが詠唱するとモンスター達が現れた。モンスターが3体現れた。

ヴェイネ「俺のかわ〜いい〜グレムリンちゃん達よ。あの女は殺さずに捕らえるんだ。いいな!」

グレムリン達がリアに襲い掛かったが直にムーンがバギを唱えた。
 ムーン「バギッッ!!」

しかし、グレムリン達はあまりダメージを受けてはいないみたいだった。


592 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:17:46 ID:yqX1fak50
  リア 「ムーンさん!!」
 ムーン「とにかく今はこの状況を乗り切る事よ!………………それにしてもあまり効いていないみたいわね。」

ヴェイネ「グレムリンちゃん達はバギ系の攻撃には耐性があるのだよ。それに俺好みの女に会えるなんて最高の夜だ!
         クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!!!!!!!!」

 ムーン「黙りなさい!!!!この変態!!」
ヴェイネ「おーおーたまんねぇな〜!コムスメとオマエで3p確定!!!さぁグレムリンちゃん達よ。やれ!!」

グレムリン達がリア達に向けて炎を吐くがリアはヒャドで対抗し相殺する。
ムーンは魔導師の杖で火の玉を出して攻撃をするのだがグレムリンの炎で逆に火の玉が吸収され、攻撃を受ける。

 ムーン「きゃあっ!!」
  リア 「ムーンさん!!この!!」

リアがグレムリンに斬りかかったがかすった程度で致命的なダメージが与えられない。

  リア 「はあっ!はあっ!なかなか当たらないわ…」
ヴェイネ「グヒヒ!お前達はまったくダメだな。グレムリンちゃんすら対抗できないのだから。」
 ムーン「ならこれならどうかしら?―――――――――――――――――――イオッ!!」

ムーンがイオを唱えるとグレムリン達に小さな爆発が起こった。効果が抜群でありグレムリンの動きが止まった。

 ムーン「今よ!リア!」
  リア 「えい!!」

リアがグレムリンの一匹に斬りかかり、クリーンヒットした。どうやら倒せたようだ。

  リア 「やったあ!!」
 ムーン「いい感じね!ついでにグレムリン達の動きも鈍くなったみたいよ。一気にやっつけましょ!」
ヴェイネ「そうは簡単にやらせねぇぜ……!!」


593 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:20:30 ID:yqX1fak50
ドォォォォォォン!!!爆発音が聞こえた。

 タケ「な、なんや…今の爆発音は?」
 もょ「はまべのほうからきこえたぞ。なんだろうな?」

 タケ「ちょっと見てみよう。――――あれはムーンとリアちゃんやないか!!シャールさんまでおるで!」

 もょ「なんだって!?」
 タケ「早く俺らも浜辺に向かうで!!モンスターもおるから急がんとヤバイ!」

ドクンッ………………………………!!!

 タケ「うっ……また…………!き、気分が悪い…………」
 もょ「タ、タケ!!だいじょうぶか!?」

すごく息苦しい。体調が悪いわけでもないのに身動きが取れない感じだ…

 タケ「す、すまん…もょ、ここは任せた。」
 もょ「すこしやすんでおけ。タケのぶんまでおれがたたかうことにする。」

何でや!?何で動かれへんのや!!俺は……………俺は……………クソッ!!!



594 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:22:01 ID:yqX1fak50
もょもとが浜辺に向かっている最中サマルを見つけた。

  もょ 「サマル!おきていたのか!?」

サマル「もょ。ど、どうしたんだい?そんなに慌てて。僕は眠れなくて夜風に当たりに来ていたんだけど…」

  もょ 「ちょうどよかった。ムーンとリアちゃんがあぶないんだ。ちからをかしてくれ!!」

サマル「な、なんだって!?リアとムーンが……!わかった!すぐに行こう!」

  もょ 「いそげ!ておくれにするわけにはいかないぞ!」

サマル「もちろんだよ、もょ。早く行こう!」





何やこの感じ……嫌なモンがメッチャ感じる……早く、早く向かわないと……………




「………………………………………………………………」

595 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:23:29 ID:yqX1fak50
もょもととサマルは浜辺に到着した。

 サマル「ああっ!リ、リア!!」
 ムーン「リ、リアが私をかばって………サマル!リアを早く治療をしてあげて!!」
 サマル「わかった!しかし何故ムーンが呪文が使えないの?」
ヴェイネ「グヒヒッ。ほっかむりの女にマホトーンをかけて呪文を封じ込めてやったのさ。
     ちょっとやりすぎちまったか。まぁ死んでないから感謝するんだな!」

  もょ「ふざけるなぁ!!はやぶさぎり!!」

もょもとが隼斬りをはなったんだがグレムリンがヴェイネを庇った。

    *「ぴぎゃーーーーーーーーーーーー」
   もょ「くっ…なんだと!」
ヴェイネ「オマエは許せんよなぁ…最後のグレムリンちゃんを殺しちゃったんだから……これでもくらいな!ベギラマ!」

超至近距離でヴェイネがベギラマを唱えたため、もょもとは防御態勢に入れなかった。

   もょ「ぐはぁっ!!」
 サマル「ああっ!もょ!」
ヴェイネ「グヒヒ。良く耐えたなぁ。野郎には興味が無いからさっさと終わらせてやるぜぇ〜」
   もょ「まだまだ!くらえ!」
ヴェイネ「くっ…パワーはたいしたもんだ。受け流すのが必死で勝てる見込みはねぇ。しかしオマエは呪文を使えないみたいだな。」
   もょ「それがどうしたっていうのだ…?」


ヴェイネ「こんな事も出来るのさ。ルカニ!」



ヴェイネがルカニを唱えるとすごい脱力感が感じられた。しかしその感覚は直に解消された。

596 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:28:45 ID:yqX1fak50
   もょ「しょせんはハッタリか。なんともないな。」
ヴェイネ「グヒヒ!!バカはオマエの方だよ!」

ヴェイネは杖でもょもとの腹を叩こうとしたんだが、もょもとはあえて突っ込んだ。

   もょ「はがねのよろいにきくわけがな…………ぐばぁ!!!」

鉄球で腹部を叩かれた感じだ。もょもとの体が沈んでしまった。
 
   もょ「な、なぜだ!きゅ、きゅうにつよくなった!」
ヴェイネ「その逆さ。オマエの守備力が弱くなったのさ。防具は紙切れ以下の物にしてやった。グヒヒ!愉快だ!」
 サマル「少し調子を乗りすぎじゃないのかい!?」

サマルが鉄の槍で攻撃を仕掛けたのだがあまり効果が無い。

 サマル「こ、鋼鉄の様に硬い。なぜだ!?」
ヴェイネ「物理攻撃用に防御呪文を唱えたのさ。これで俺様に死角はなくなったぜぇ!」

物理攻撃ではあまり効果は無く接近戦で戦うとルカニ&打撃コンボで確実にやられる!

   もょ「ムーン!リアちゃんとシャールさんをつれてにげるんだ!」
 ムーン「で、でも…」
   もょ「おれとサマルでなんとかする!いそぐんだ!」
 ムーン「わかったわ!シャールさん!急ぐわよ!」



597 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:31:39 ID:yqX1fak50
ムーンとシャールがリアを抱えて逃げ出そうとしたのだが…

ヴェイネ「せっかくの獲物は逃がさねぇぜ!ヒャダルコ!」

しまった!ムーン達と離れていて盾になる事すらできない!しかも後ろ向きになっているため――――――


こ     れ     は     や    ば    い


   もょ「ああっ……ムーン!」

 サマル「うぐぅ………!」


サマルがムーンをかばった。

 ムーン「サ、サマル!!大丈夫!?」
 サマル「な、何とか…」
ヴェイネ「グヒヒヒヒ!お涙頂戴ってか!?泣かせるねぇ…」

   もょ「いいかげんにしろ!はやぶさぎり!!」
もょもとが隼斬りをはなったんだがヴェイネの守備力が高まったため致命的なダメージを与えられない。しかし距離をとる事に成功したようだ。

   もょ「サマル!いまのうちにかいふくを!」
 サマル「あ、ああ…」
サマルも結構堪えたらしい。実際問題何とか時間をかせがなければ…




598 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/08/30(水) 08:34:02 ID:yqX1fak50
ヴェイネ「ありがとうよ。お陰で召喚出来る態勢に入ったぜ。俺の最強の駒を出すとするかねぇ。」

ヴェイネが詠唱すると大きな羽の生えた人間が現れた。

 ムーン「あ、あれは鳥人間!?」

ヴェイネ「グヒヒ。あれはガーゴイルよ。魔族の亜種だがな。ガーゴイル!!男共をやれ!!」

ガーゴイルともょもとが互いに攻撃をしているのだがルカニの影響で守勢にまわらないといけない為、攻撃を裁くのに必死だ。

  もょ「くっ…じゅもんのえいきょうさえなければ!」
ヴェイネ「時間の問題だな。お前が力尽きるのは。後はサクサクっと決めちゃいますかぁ。グヒヒ!」



   ?「世の中簡単に思惑通りに上手くいく訳がない。メラミ!!」



いきなり大きな火炎球がガーゴイルに向かって直撃した。 一体誰が………?                



もょもと&タケ
Lv.15
HP:46/105
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/30(水) 13:31:24 ID:SDe7GOS0O
レッドマン氏、暇潰し氏、乙!

600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/30(水) 18:14:42 ID:kPRz9RnU0
普通に面白いから困る

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